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ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、26000円割れも買いたい意欲は湧き上がらず・・・
日経平均は大幅続落。341.74円安の25998.76円(出来高概算5億478万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でダウ平均は365.85ドル安(−1.10%)と3日ぶり反落。中国や香港の新型コロナ規制緩和が買い材料となり上昇スタート。しかし、来年の景気後退を織り込む売りが上値を抑制。また、米10年債利回りが11月以来の高水準にまで上昇したことでハイテク株も売られた。終盤にかけては節税対策の売りが加速、加えて、米政府が中国からの渡航者に対してコロナ陰性証明を義務付けると発表し、経済の悪化を警戒した売りに拍車がかかり、下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は−1.35%と大幅続落。米国株の下落を引き継いで日経平均は265.6円安からスタート。序盤は心理的な節目の26000円を維持しようとする動きも見られたが、前場中ごろに同水準を割り込むと下げ足を速め、一時25953.92円(386.58円安)まで下げ幅を広げた。 個別では、景気後退を織り込む動きから、川崎汽船<9107>、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、三井物産<8031>、住友商事<8053>、丸紅<8002>の商社、日本製鉄<5401>、DOWA<5714>の鉄鋼・非鉄など景気敏感株が総じて大きく下落。直近、値持ちのよかったIHI<7013>、三菱重<7011>、川崎重<7012>の防衛関連のほか、三井住友<8316>、りそなHD<8308>、第一生命HD<8750>、東京海上<8766>など金融も軒並み安。ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>、信越化<4063>などの値がさ株や、東エレク<8035>、SUMCO<3436>、イビデン<4062>、エムスリー<2413>などのハイテク・グロース株も軟調。JT<2914>やINPEX<1605>は配当落ちで処分売りが優勢。クスリのアオキ<3549>は決算が嫌気されて急落している。 一方、中国当局が輸入オンラインゲームの国内提供を認可したと伝わり、コーエーテクモ<3635>、ネクソン<3659>などが大幅高。マルマエ<6264>は第1四半期2ケタ営業増益が好感されて急伸。好決算が評価されてウェザーニューズ<4825>も高い。東証スタンダード市場では増益決算が好感されたERI HD<6083>が急伸、大幅増配を発表したグラファイトデザイン<7847>がストップ高となっている。 セクターでは、鉱業、海運、ゴム製品を筆頭に全般売り優勢となった一方、電気・ガス、不動産の2業種が上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の70%、対して値上がり銘柄は25%となっている。 日経平均は大幅続落で心理的な節目の26000円も割り込んでいる。米株式市場では、電気自動車のテスラや大型IT「GAFAM」の一角であるアップル、アマゾン・ドットコムなどが年初来安値を更新しており、アルファベットも11月に付けた年初来安値にほぼ並んでいる。年末休暇に入っている投資家が多く、市場参加者が少ないとはいえ、株式市場の軟弱さがあまりに際立つ。 前日の先物手口では、薄商いながら、JPモルガン証券が日経225先物を差し引き1000枚、TOPIX先物では1500枚とそれぞれ売り越していた(日中立ち会いのみ)。来年の景気後退を織り込む形で、投資家は粛々とリスク資産の持ち高を圧縮しているようだ。 また、米長期金利の上昇が続いており、米10年債利回りは28日、3.88%まで上昇してきた。景気後退を反映する形で期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が低下してきていることもあり、名目金利から期待インフレ率を差し引いた10年物実質金利は1.6%と、直近の安値1.06%(12月2日)から大きく上昇してきている。これが株価の下押し圧力として効いているようだ。 米株式市場については、株価収益率(PER)がコロナ禍で上昇した分をすべて吐き出したことから、バリュエーション調整は済んだと考える向きもいる。しかし、当コンテンツではチャートをお見せできず申し訳ないが、2000年以降の動向を振り返ると、米長期金利の現在の水準を考慮すると、バリュエーション調整はまだ十分とはいえない。また、S&P500種株価指数の構成企業を対象とした予想配当利回りと米長期金利の対比でみたイールドスプレッドの観点からみても、やはりバリュエーション調整にはまだ余地が残されているとみえる。 アナリストの12カ月予想一株当たり利益(EPS)も下方修正されてきているが、まだ織り込みが不十分にもみえる。中国の経済再開など明るい材料も出てきてはいるが、株式市場が本格回復を辿るにはまだ時間がかかりそうだ。こうした中、引き続き、インバウンド需要の回復で今後の業績インパクトが期待できそうなリオープン・インバウンド関連などに投資対象を絞りたい。一方、米実質金利が上昇するなかでのグロース株投資には勇気が必要だが、今年の8月から10月にかけて米実質金利が大幅上昇した際にも株価が上昇したグロース株は意外にも多く存在する。同期間に堅調な株価推移を見せた銘柄には固有の成長力が秘められていると推察され、こうしたグロース株を長期目線で仕込むのも良いだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/29 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反落、景気後退とインフレの板挟み脱却には時間がかかろう
日経平均は3日ぶり反落。156.91円安の26290.96円(出来高概算5億4440万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でダウ平均は37.63ドル高(+0.11%)と小幅続伸。中国政府が1月8日から入国時の強制隔離を撤廃すると発表、規制緩和を好感したアジア、欧州市場の流れを引き継いで買いが先行した。しかし、長期金利の上昇を警戒した売りに押され一時下落に転換。一方、建機や化学、エネルギーなどの景気敏感セクターの上昇が下値を支え、ダウ平均はプラス圏を維持して終了した。ナスダック総合指数は金利高が重荷となり終日軟調に推移、−1.37%の大幅反落となった。 米ハイテク株の下落を受けて日経平均は138.53円安からスタート。序盤は売りが優勢で、前場中ごろには26199.67円(248.2円安)まで下げ幅を広げた。ただ、心理的な節目が近づいたところで下げ止まり、その後は膠着感を強めた。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>など半導体関連のほか、ソフトバンクG<9984>、メルカリ<4385>、村田製<6981>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>などのハイテク・グロース株が総じて下落。 決算が市場予想を下振れたスギHD<7649>が急落していて、Jフロント<3086>もサプライズに乏しい決算から前日の急伸の反動が膨らんだ。東証プライム市場の値下がり率上位にはSREHD<2980>、ラクス<3923>、サイボウズ<4776>、ラクスル<4384>、Sansan<4443>、チェンジ<3962>などの中小型グロース株が多く入った。 一方、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、みずほ<8411>、りそなHD<8308>の銀行、第一生命HD<8750>、東京海上<8766>の保険は本日も揃って堅調。1対5の株式分割を発表したOLC<4661>も買われた。国内証券がレーティングを格上げしたしまむら<8227>が大幅に反発し、マルキチの子会社化を発表したヨシムラフード<2884>、自社株買いが好感されたピックルスHD<2935>は急伸している。 セクターでは、不動産、空運、鉱業が下落率上位となった一方、電気・ガス、保険、銀行が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 前日堅調な値動きだった日経平均は一転して本日は再び値幅を伴った下落で軟調な展開となっている。前日+2.2%と大幅に上昇したマザーズ指数も本日は反落、朝方は下落率も大きかった。マザーズ指数は前日に一時200日移動平均線を超えたものの、その後伸び悩んだ。直後の本日の下落とあって、同線が上値抵抗線として意識されてしまい、チャートでは嫌な形となっている。 物色動向を見ていても市場の陰鬱なムードが伝わってくる。前日は中国での新型コロナ規制の緩和を好感し、インバウンド関連株が賑わっていたが、ハイテクや自動車などの輸送用機器を中心に景気敏感株は全般軟調だった。本日も、半導体関連などハイテクは続落しており、また、為替はむしろ円安に傾いているものの、自動車関連でも続落している銘柄が多い。 さらに、本日は米ナスダック指数の下落もあり、グロース株までもが冴えない。12月に入って一時3.4%台前半にまで低下していた米10年債利回りが27日、3.85%まで上昇、再び4%台乗せが視野に入ってきたことがグロース株の軟調さにつながっていると考えられる。 この金利上昇の背景としては、米国でくすぶるサービス分野のインフレや、それに伴う米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続方針が一つ大きな要因としてあろう。 ただ、その他にも、多方面の市況解説や調査レポートによると、中国での経済再開の動きが資源価格の高騰を通じて世界のインフレを再燃させる可能性も指摘されている。27日の中国政府による入国者への隔離措置の撤廃を受けて、前日の債券市場で米長期金利が大きく上昇した背景には、こうした中国発のインフレ懸念もあるという指摘だ。 28日付けの日本経済新聞朝刊の一面記事「世界景気『悪化』4割迫る」によると、国内主要企業145社の社長(会長などを含む)を対象に12月2−16日に実施したアンケートでは、世界景気の現状認識は「悪化」「緩やかに悪化」の合計が36.5%と9月時点調査(31.1%)から約5ポイント増加した。また、悪化と答えた経営者に要因(複数回答)を聞いたところ、「資源や原材料価格の上昇・高止まり」が69.8%で最多になったという。 以上の話をまとめると、話しはやや複雑だ。つまり、景気後退懸念が強まる中、中国経済の正常化は本来歓迎すべきことだが、インフレ再燃を通じて企業コストの高止まりないしは増加、また各国中央銀行による金融引き締めの長期化の可能性が高くなるということで、中国経済の再開には大きな副作用が伴うということになる。株式市場は景気後退懸念とインフレ懸念の板挟み状態にあるということだ。 こうした懸念を払拭するには時間がかかると思われ、株式市場が底入れして本格的な上昇トレンドを描くまでには我慢の時間を長く強いられそうだ。当面は引き続き国内経済の回復の恩恵を享受できるリオープン・インバウンド関連や、高配当のディフェンシブ銘柄などに相対的な妙味があると考える。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/28 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、中国のコロナ規制緩和も強気に転じ切れない投資家心理
日経平均は続伸。137.60円高の26543.47円(出来高概算4億7924万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場及び欧州株式市場はクリスマスの振替休日で休場。手掛かり材料難と見られたが、中国政府が新型コロナ対策として入国者に義務付けてきた隔離措置を来年1月8日から撤廃すると発表したことを好感し、日経平均は164.91円高からスタート。寄り付き直後は買い先行で26620.49円(214.62円高)まで上昇したが、戻り待ちの売りから失速。ただ、下落に転じることはなく、その後は再び緩やかに上げ幅を広げる展開となった。 個別では、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、りそなHD<8308>の銀行、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>の保険が堅調。メルカリ<4385>、エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>などのグロース株もしっかり。中国でのコロナ規制緩和を受けてリオープン・インバウンド関連が軒並み大幅高となっており、JAL<9201>、ANA<9202>、JR西<9021>、JR東海<9022>のほか、マツキヨココ<3088>、パンパシHD<7532>、共立メンテナンス<9616>、日本空港ビルデング<9706>などが上昇。高島屋<8233>は好決算と通期計画の上方修正も加わり急伸。三越伊勢丹<3099>、Jフロント<3086>も連れて大幅高。資生堂<4911>、コーセー<4922>などの化粧品関連も軒並み急伸している。米イーライリリーとライセンス契約を締結したペプチドリーム<4587>は急騰。 一方、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、アドバンテスト<6857>、信越化<4063>、ディスコ<6146>、ファナック<6954>、ダイキン<6367>など値がさ株やハイテク株で軟調なものが散見される。また、為替の動きに大きな変化はないが、トヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、日産自<7201>、デンソー<6902>など輸送用機器が全般冴えない。業績予想を下方修正したパンチ工業<6165>、配当を増額も株主優待制度の一部を廃止したVTHD<7593>、今期減益見通しを示した象印マホービン<7965>、好決算ながらも出尽くし感が先行したしまむら<8227>、などが下落。商品棚卸の計上ミスで第1四半期業績を遡及修正したシルバーライフ<9262>は急落している。 セクターでは、空運、小売、陸運が上昇率上位となった一方、輸送用機器、電気・ガス、機械が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の76%、対して値下がり銘柄は19%となっている。 海外市場が休場の中にもかかわらず、日経平均はしっかり続伸し、26500円を回復してきている。中国でのゼロコロナ政策の緩和が大きな支援要因になったもようだ。一方、先週までの大幅下落を踏まえれば、戻りとしてはまだ動きが弱く、買い戻しの機運が強いとはいえない。 中国のコロナ規制緩和についても手放しでは喜べない。有効性の高いワクチンの接種率が低い中国では、規制緩和の代償として感染者が拡大しており、医療機関の需給が逼迫しているほか、各地の薬局で在庫不足が発生、学校の休校が相次ぐなど社会的な混乱が起きている。暗いトンネルの出口に向けた動きを歓迎しつつも、まだ予断を許さないだろう。東京市場が休場の間の31日には中国国家統計局がまとめる製造業・非製造業の購買担当者景気指数(PMI)が、1月2日には民間版の財新製造業PMIがそれぞれ発表される。数字としては低調な結果が予想され、年明けの東京市場への影響などにも注意しておきたい。 また、中国発の明るいニュースでインバウンド関連銘柄が賑わっている中、主力のハイテク株などは冴えないものが多い。自動車関連も為替の円高進行が一服しているにもかかわらず、本日は下落しているものが多い。こうした辺りに、強気に転じ切れていない慎重な投資家心理が透けて見える。世界経済の景気後退に対する懸念を完全に織り込み切ったというにはまだ早く、今後も慎重なスタンスで臨みたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/27 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は反発、更なる下落シナリオは現実味を帯びている?
日経平均は反発。134.52円高の26369.77円(出来高概算4億5276万株)で前場の取引を終えている。 前週末23日の米株式市場のNYダウは176.44ドル高(+0.53%)と反発。12月ミシガン大消費者信頼感指数が改善したことは相場のサポート材料となったが、11月PCEコアデフレーターは連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢を和らげるほどではなく、根強い景気後退への懸念から上値が重い展開となった。また、長期金利の上昇がハイテク株の重石となった。ナスダック総合指数も反発、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を受けて、日経平均は前週末比64.29円高の26299.54円と反発でスタート。その後は、プラス圏での堅調もみ合い展開が続いている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が堅調に推移、ファーストリテ<9983>やニトリホールディングス<9843>、トヨタ自<7203>などの大型株が上昇した。また、ソニーグループ<6758>やリクルートHD<6098>などのグロース株の一角、三井物産<8031>や三菱商事<8058>などの商社株の一角、三菱重工業<7011>やINPEX<1605>、JT<2914>なども上昇している。資産売却益の計上で当期利益を上方修正したイトーキ<7972>、自社株買い実施を発表したおきなわFG<7350>も大幅上昇。ほか、日鉄物産<9810>、タツタ電線<5809>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>、みずほ<8411>などの金融株が軟調に推移した。また、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株、NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信株も下落。ほか、東京電力HD<9501>や日本電産<6594>、gumi<3903>なども軟調に推移、コスト高が響いて業績予想を下方修正したニイタカ<4465>が大幅下落となった。そのほか、ジェイテックコーポレーション<3446>、チェンジ<3962>、ビジネスエンジニアリング<4828>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、非鉄金属、石油・石炭製品が上昇率上位となった一方、保険業、電気・ガス、銀行業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の54%、対して値下がり銘柄は40%となっている。 本日の日経平均株価は、プラス圏での堅調もみ合い展開が続いている。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均はやや買いが先行。先週の大幅な下落に対する自律反発といったところで寄り付き後に上げ幅を3桁に広げた。ただ、26日は米国のほか主要な株式市場がクリスマスの振替で休場となることから、海外勢のフローは限られ薄商いになると見込まれている。 一方、新興市場では軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、マザーズ指数が軟調もみ合い展開に、東証グロース市場Core指数は前週末終値付近まで下げ幅を縮小して、プラス圏に浮上する場面も見られた。年末特有の個人投資家の損出し売りもすでに一巡してきたと推察され、需給面での重荷は大分和らいでいる。ただ、米長期金利は上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株は手掛けにくい展開が続いている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.35%安、東証グロース市場Core指数が0.09%安。 さて、前週は世界的に様々なリスクが散見されるなか、日銀金融政策決定会合は想定外のネガティブサプライズとなった。前週はこの話題で持ちきりだったため、詳細は前週の当欄を見てほしいため詳細な解説は控える。ここで注目しておきたいことは、従来の月曜日当欄で述べてきたように市場が動揺する材料がいきなり飛び込んできた事実である。 引き続き、雇用統計やインフレ指標、FRB高官の発言、地政学リスクの動向など、警戒する材料は多い。上記材料の中で、今後市場にとってネガティブな材料が出てくる可能性もあろう。また、何度も言うように、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTX破綻と似たことが、株式市場でもいきなり起きる可能性は0ではない。 FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は、11月の総合指数が前年同月比で1年強ぶりの低い伸びとなった。ただ、パウエル議長率いるFRBにとって、賃金は急ペースでの上昇が続いている。利上げサイクルの終盤に近づいているものの、物価上昇圧力が持続的な減速トレンドになるまで、金利は長期にわたり高水準に据え置かれる見通しとなっている。 前週の記事で恐縮だが、22日には「米モルガン・スタンレーやJPモルガンなどの有力ストラテジストは、来年上期に株はまたも下落すると警戒感を示す。」とブルームバーグが報じている。経済成長の鈍化や高インフレが企業利益に影響を及ぼすだけでなく、中央銀行がタカ派姿勢を維持していることが背景となる。弱気派として知られるモルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、「来年1-3月期にS&P500はさらに最大21%落ち込む可能性もある。」と示唆している。 また、電気自動車(EV)メーカー米テスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は株式市場で「集団パニック」が起きるリスクがあると警鐘を鳴らしている。マスク氏はポッドキャストで、景気後退が間近で2009年のような規模の景気悪化になるとの自らの見解をあらためて示したようだ。「下降相場では、かなり極端なことが起こり得る」と主張したうえで、「不安定な株式市場で証拠金負債を持たないようにアドバイスしたい。」と語ったとブルームバーグで報じている。 筆者や多くの市場関係者が従来から警戒するように、来年初めにかけて更に下落するというシナリオが現実味を帯びてきたといっても過言ではない。本日は海外勢の多くがすでにクリスマス休暇などに入って全体的に商いが薄く、年末ということもあり今年最終週となる今週にさらに大きく動くことは考えにくい。筆者は、今週の動きを注視しつつも、来年どのように株式市場が推移していくかじっくり考える時間としたい。さて、後場の日経平均はもみ合い展開が続くか。年末で取引参加者の減少が続くなか、日経平均がプラス圏を維持できるかに注目しておきたい。
<AK>
2022/12/26 12:15
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、個人の買い支え期待も次第に薄れる
日経平均は大幅反落。297.18円安の26210.69円(出来高概算6億3697万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場でダウ平均は348.99ドル安(−1.04%)と3日ぶり反落。7−9月期国内総生産(GDP)確定値が改定値から上方修正され、市場予想を上回った一方、新規失業保険申請件数は小幅な増加で労働市場の堅調さを示したため、利上げ懸念が再燃。過剰な利上げが景気後退を招くとの警戒感が相場の重石となった。半導体メーカーのマイクロン・テクノロジーの低調な決算を材料にハイテク株が大きく売られたことも投資家心理を悪化させた。ナスダック総合指数は−2.17%と3日ぶり大幅反落。米国株安を引き継いで日経平均は300.1円安からスタート。序盤は売りが続き、一時26106.38円(401.49円安)まで下げ幅を拡大。一方、心理的な節目の26000円が近づいたことで、その後は押し目買いなどから下げ渋る展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が軒並み大幅安。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、信越化<4063>、SMC<6273>の値がさ株、イビデン<4062>、ローム<6963>、TDK<6762>のハイテクも軟調。トヨタ自<7203>、日産自<7201>、SUBARU<7270>の輸送用機器も大幅に下落。連日で買われていた川崎汽船<9107>などの海運も本日は騰勢一服で売り優勢。東証プライム市場の値下がり率上位には、SREHD<2980>、メドレー<4480>、SHIFT<3697>のグロース株が多く入っている。 一方、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、りそなHD<8308>の銀行は大幅続伸。第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>、MS&AD<8725>の保険も高い。政府がGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で脱炭素社会実現に向けた基本方針をまとめ、原発の建て替えなどを盛り込んだことを好感し、東京電力HD<9501>を筆頭に関西電力<9503>、東北電力<9506>、四国電力<9507>、九州電力<9508>が軒並み大幅高。エレコム<6750>は国内証券のレーティング格上げを材料に急伸した。 セクターでは、海運、非鉄金属、不動産が下落率上位となった一方、電気・ガス、保険、銀行が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の70%、対して値上がり銘柄は25%となっている。 米国株の大幅下落を受けて、週末の東京市場は売り優勢。日経平均は大幅に下落し、心理的な節目の26000円が一時視野に入った。また、日本銀行のサプライズ政策修正を機に、新興株の崩れ方が悪化しており、本日もマザーズ指数は大幅安。日経平均に続き、マザーズ指数も週足だけでなく日足でも主要な移動平均線をすべて下回ってきている。新興株については、新規株式公開(IPO)ラッシュによる需給面の重荷という特殊要因があるが、それを差し引いても厳しい地合いだ。 IPO銘柄も、初値は公開価格を上回るものが多いが、その後の株価推移は苦戦を強いられているものが多い。地合いが悪化している中、IPO当選者は早々に換金売りを実行しているようだ。また、連日の日経平均の大幅下落が個人投資家の含み損益を悪化させ、新興株の下落に拍車をかけているもよう。日経レバETF<1570>の純資産や信用買い残の水準を見ると、どちらも10月下旬以来の高水準となっている。下落局面で押し目買いをしている個人投資家の多くが、連日の日経平均の下落で痛みを強いられている。 一方、海外投資家はクリスマス休暇入りしているところが多いだろうが、先物手口の動向をみると、日銀のサプライズ政策修正があった20日から連日で海外勢の売り越しが観測されている。特にゴールドマン・サックス(GS)は22日まで3日連続でTOPIX先物を大きく売り越している。 これまで、海外勢が売り越す局面では、個人投資家の買い越しや企業の自社株買いが下支えする構図が見られていた。しかし、足元では、個人投資家の買い越し余力も限られてきた様子。今後、個人投資家の手仕舞い売りが膨らんだ場合には、下落に拍車がかかる恐れもある。日経平均の26000円処での踏ん張りに期待したいところだが、目先は慎重に臨んだ方がよさそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/23 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は6日ぶり反発、追加政策変更や一段の円高への警戒から上値重い
日経平均は6日ぶり反発。104.94円高の26492.66円(出来高概算5億8402万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でダウ平均は526.74ドル高(+1.60%)と大幅続伸。ナイキとフェデックスの決算が好調だったことを好感し、上昇スタート。景気後退が懸念される中でも、企業業績が想定よりは良い可能性があるとの期待につながった。また、12月消費者信頼感指数が市場予想を上回ったことも投資家心理を改善させた。ナスダック総合指数は+1.53%と大幅続伸。米国株高や為替の円高進行の一服を受けて、日経平均は164.71円高からスタート。一方、連日の下落で需給環境が悪化しているようで、戻り待ちの売りに押され、寄り付き直後からは伸び悩む展開。時間外取引のナスダック100先物の上昇や香港ハンセン指数の大幅高を支援要因に下落に転じることはなかったが、前引けまでもみ合いが続いた。 個別では、追加株主還元を示唆する社長インタビューが伝わってから、川崎汽船<9107>が大幅に3日続伸しており、郵船<9101>、商船三井<9104>も高い。円高進行の一服により、トヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、日産自<7201>などが大幅に反発。日銀金融政策決定会合のサプライズ政策修正から大きく売られていた不動産も反発しており、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>が上昇。11月訪日外国人旅行者数の拡大を好感し、ソースネクスト<4344>が急伸。米メルク子会社との間で共同研究開発およびライセンス契約を締結したと発表したペプチドリーム<4587>が大幅に上昇。KDDI<9433>は国内証券のレーティング格上げが好感された。株式公開買い付け(TOB)を材料にタツタ電線<5809>、日鉄物産<9810>がストップ高買い気配で終えている。 一方、直近急伸が続いていた三井住友<8316>、みずほ<8411>、東京海上<8766>、第一生命HD<8750>が反落。ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>などハイテク株の一角も軟調。サイボウズ<4776>、MSOL<7033>、Sansan<4443>、ラクスル<4384>、ネットプロHD<7383>など中小型グロース株の多くが東証プライム市場の値下がり率上位に入っている。 セクターでは、鉱業、海運、輸送用機器が上昇率上位となった一方、保険、パルプ・紙、医薬品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は17%となっている。 前日の米主要株価指数は揃って大幅に続伸したが、本日の日経平均は寄り天井の形で伸び悩んでいる。米国では警戒されていたナイキとフェデックスの決算が想定程には悪くなかったことで安心感が台頭。消費者信頼感指数が予想以上に改善した一方、期待インフレ率が低下したことも投資家心理の回復につながったもよう。 一方、日本株の上値は重い。日銀金融政策決定会合の後に急速に進んだ円高・ドル安は、1ドル=130円台を維持する形で一服しているが、今後のさらなる政策変更への思惑が強まる中、一段の円高進行への警戒感が日本株の上値を抑えている可能性が高い。すでに輸出企業の平均想定為替レートである1ドル=134−135円を割り込んでいるため、一段の円高は外需企業の業績悪化懸念を強めることになる。 また、米国市場の引け後に発表された半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーの決算は市場予想を下回り、時間外取引で同社株価は軟調に推移している。最高経営責任者(CEO)は会見で、業界の需給バランスは直近13年で最悪の状態にあると指摘。通期の設備投資計画を70億−75億ドルと、従来目標の最大120億ドルから下方修正した。同社の設備投資計画は四半期決算の度に下方修正される傾向にあり、業界の先行きは依然として厳しい様子。在庫については、2023年半ばごろまでに健全な水準に移行し、下期には同社売上高も改善するとの見通しを示しているが、東京市場の関連企業の株価反応を見ても、あく抜け感は高まっていないようだ。 日経平均は本日を含め、5日連続での陰線となっており、下値模索の展開が続いている。一方、25日移動平均線からの下方乖離率は5%近くにまで達しており、突っ込み警戒感は強い。目先の自律反発に期待したいところだが、米国株の大幅続伸という追い風がある中での今日の弱い動きを見る限り、むしろ、一段の下落には注意したいところだ。すでに日足と週足ともに、主要移動平均線のすべてを下抜けてしまっており、サポートになりそうな水準が見当たらない点も懸念される。 こうした中、日本政府観光局(JNTO)が21日に発表した11月の訪日外国人旅行者数が93万4500人と、10月(49万8600人)から2倍近く増加したことが伝わっている。新型コロナ感染拡大前の2019年の同月と比べると6割を超える水準にまで回復してきている。為替の円高進行が懸念される中、以前ほどには円安メリットが強調されることはなくなってきたが、主要各国との物価上昇率の差なども考慮すれば、依然として日本のモノ・サービスに対する割安感は強い。今後も持続的なインバウンド需要の回復が期待され、外部環境の不透明感が強まる中、リオープン・インバウンド関連の銘柄に引き続き焦点を当てたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/22 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は5日続落、景気と為替の両面からダブルパンチ
日経平均は5日続落。59.30円安の26508.73円(出来高概算9億9383万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でダウ平均は92.20ドル高(+0.28%)と5日ぶり反発。サプライズとなった日銀の政策決定を受けて下落スタート。プラス圏で推移する場面でも、主要各国中央銀行による金融引き締めが景気後退を招くとの懸念や米長期金利の上昇が相場の重石となった。株式市場が年末にかけて上昇しやすい「サンタクロース・ラリー」への期待も薄れる中、終始方向感に欠ける展開が続いた。ナスダック総合指数は+0.01%と小幅ながら5日ぶり反発。米国株の反発がありながらも、急速な為替の円高進行が嫌気され、日経平均は20.86円安からスタートすると、序盤は売りが先行し、26269.80円(298.23円安)まで下げ幅を拡大。ただ、連日の急ピッチでの下落から短期的な戻りを狙った押し目買いなども強まり、前場中ごろからは切り返してプラス圏にまで浮上。ただ、その後は騰勢一服で再び下落した。 個別では、前日の後場に続き金融関連が軒並み高となっており、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>が急伸しているほか、みずほFG<8411>、りそなHD<8308>、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>などが大幅に上昇。為替の円高が進行する中、ニトリHD<9843>、神戸物産<3038>、F&LC<3563>、ニチレイ<2871>、明治HD<2269>など内需企業が堅調。川崎汽船<9107>は引き続き追加株主還元期待から大幅続伸し、郵船<9101>、商船三井<9104>も高い。リコー<7752>と資本提携したサイボウズ<4776>は急伸。ツルハHD<3391>は決算が、インフォコム<4348>は国内証券の目標株価引き上げがそれぞれ好感された。 一方、円高進行が嫌気され、トヨタ自<7203>、日産自<7201>、三菱自<7211>、SUBARU<7270>の輸送用機器が軒並み大幅続落。国内の金利上昇が重荷となる不動産セクターも総じて軟調で、三井不動産<8801>、東京建物<8804>が大幅安。キーエンス<6861>、村田製<6981>、ルネサス<6723>、TDK<6762>のハイテク株も安い。第3四半期の好業績に関する観測報道が伝わっている高島屋<8233>は市場コンセンサス比でのサプライズに乏しく、続落となっている。 セクターでは、輸送用機器、不動産、電気機器が下落率上位となった一方、銀行、海運、保険が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体52%、対して値上がり銘柄は43%となっている。 前日の日銀金融政策決定会合は想定外のネガティブサプライズとなった。日経平均は下値支持線とみられた200日移動平均線を大幅に下抜け、ドル円も200日線を下抜けた。一方、本日の日経平均は短期的な戻りを狙った押し目買いや突っ込み警戒感からの買い戻しで、一時プラス圏に浮上するなど底堅い展開となっている。 しかし、200日線を下抜けたことで下方向に弾みがついたドル円は今後さらに下落(ドル安・円高)する可能性が高い。この場合、海外投資家から見たドル建ての日経平均のパフォーマンスが改善する一方、輸出企業の円安メリットの剥落がこれを相殺する形が考えられる。輸出企業の想定為替レートの平均値は1ドル=134円台とされており、足元のドル円がこれを大幅に下回り、今後120円台への突入も予想される中、円高進行は指数ベースでみれば全体的にややネガティブと捉えられる。 今回の日銀の政策決定はこれまでの黒田総裁の発言内容からみて整合性があるとは言いにくく、唐突な印象が強い。今回、長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度へと拡大させた一方、金利の急上昇を防ぐために、長期国債の購入額を従来の毎月7.3兆円から毎月9兆円程度へと増額した。黒田総裁も緩和的な政策を引き締め方向に転じる意味を持つものではないとした。しかし、政策レジームの変更を見込んで金利の上昇を予想し、日本国債を売っていた海外投資家からすれば、今回の一件は実質的に「日銀に勝った」とも言える出来事で、味を占めてしまったと言える。今後も仕掛け的な国債売りを続けていくことが予想され、来年4月から新体制を迎える日銀の政策動向への影響が懸念される。 米商品先物取引委員会(CFTC)が公表しているデータによると、投機筋の円ポジションは12月13日時点で、ネットで5万3188枚の売り越し。一時10万枚を超えていた売り越しからは半減しているが、依然として円売りポジションは大きい。今後、円買いに傾ける余地が多分に残されているといえ、投機筋による仕掛け的な売りでドル円が120円台へと突入する可能性もあろう。輸出企業にとっては今後の世界景気の減速に加えてのダブルパンチとなる。一方、今年前半に資源価格の高騰と歴史的な円安進行により打撃を受けていた内需企業にとってはコスト高圧力の緩和につながる。外部環境の不透明感が強まる中、ディフェンシブ性の高さからも内需企業は選好されやすいため、追い風が吹いてきた内需企業に今後はさらに注目していきたい。(仲村幸浩)
<NH>
2022/12/21 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり反発、200日線が下支えも下放れ懸念が拭えない
日経平均は4日ぶり反発。77.90円高の27315.54円(出来高概算4億6783万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でダウ平均は162.92ドル安(−0.49%)と4日続落。先週大きく下げていたため、寄り付きこそ小幅に上昇したものの、終日軟調に推移。米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続が景気を冷やし、企業業績が悪化するとの懸念が引き続き相場の重荷となった。また、長期金利が上昇したこともハイテク株を中心とした売りにつながった。ナスダック総合指数は−1.48%と4日続落。他方、先週末からの連日の大幅下落を受けた値ごろ感や200日移動平均線手前からの反発を狙った買いで、日経平均は19.71円高と反発してスタート。断続的な買いで徐々に上値を伸ばし、前場中ごろには27339.49円(101.85円高)まで上昇した。 個別では、今期の追加株主還元を示唆した社長インタビューが伝わった川崎汽船<9107>が大幅高となり、郵船<9101>、商船三井<9104>も連れ高。米長期金利が上昇したことを受け、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、第一生命HD<8750>、SOMPO<8630>の金融が軒並み上昇。原油価格の上昇などを背景にINPEX<1605>のほか、三井物産<8031>、三菱商事<8058>、住友商事<8053>、丸紅<8002>の商社が高い。 防衛省の2023年度予算案に関する報道を材料に三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連が堅調で、カーリットHD<4275>、東京計器<7721>、豊和工業<6203>も関連株として人気化。株主優待制度の一部変更と拡充を発表したソーダニッカ<8158>、プラズマ援用研磨装置の開発機を受注したジェイテックコーポレーション<3446>なども急伸。積水化<4204>は国内証券のレーティング格上げが好感された。 一方、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、日本電産<6594>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>、イビデン<4062>などのハイテク・グロース株の一角が軟調。サイボウズ<4776>、BEENOS<3328>、ネットプロHD<7383>、SREHD<2980>などの中小型株が東証プライム市場の値下がり率上位に並んだ。 セクターでは、海運、保険、鉱業が上昇率上位となった一方、サービス、ガラス・土石、パルプ・紙が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の63%、対して値下がり銘柄は32%となっている。前日の米株式市場はハイテク株を中心に下落し、主要株価指数は4日続落となったが、本日の日経平均は反発し、底堅い展開となっている。前日も大きく下落したものの、200日移動平均線が下値支持線としてしっかり機能し、本日も同線がサポートしている。 一方、景気減速のスピードが加速してきている中、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が必要以上に金融引き締めを長期化し、過度な景気後退につながりかねないとの懸念は根強い。米国株が下値模索の展開となれば、日本株も無傷ではいられないだろう。 こうした中、懸念要素は景気や企業業績といったファンダメンタルズだけでなく、需給面でもある。先週、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのクロスアセットストラテジストが、S&P500種株価指数が15日に3895.75で引けた中、同指数が3933を下回って推移を続けた場合、商品投資顧問業者(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドが売りに転じる可能性が高いと指摘していた。実際、13日の一時200日移動平均線超えをピークに、綺麗に再び下落基調に転じているS&P500は、週明けも下落が続いている。 先週の間に、各国中央銀行の金融政策イベントを終え、海外では機関投資家が徐々にクリスマス休暇に入り始めている。実需筋の売買が減少することで株式市場の流動性は低下し、薄商いでボラティリティーが高くなりやすい中、CTAなど短期筋の売りが膨らめば、米国株の下値模索の展開は十分に考えられる。 今晩は物流大手フェデックス、スポーツアパレルブランドのナイキの決算が予定されている。フェデックスは9月に、世界的な輸送需要の低下を背景に収益見通しを下方修正し、景気後退懸念を強めた経緯がある。ナイキは供給網のひっ迫による商品納入の遅延を要因に、在庫が積み上がり、値引き販売を強いられる形で粗利益率の悪化が懸念されている。これら企業の決算は相当程度警戒されているとはいえ、内容が悪ければ、来年の景気後退を織り込む動きが売りを促し、そこにCTAの売りが加わることで下落が加速する展開も想定され、注意したい。 昼頃には日銀金融政策決定会合の結果公表がある。緩和政策の現状維持はほぼ確実だろうが、来年4月からの総裁交代を前に、政策変更に対する思惑は根強い。黒田東彦総裁の記者会見で発言のニュアンスに微妙な変化があるかなども注目されよう。日本株の米国株に対する相対パフォーマンスは為替動向と連動性が高いため、これら結果を受けた後の為替も注視する必要があろう。ドル円はちょうど25日線と200日線の間に挟まれたレンジ推移となっており、イベント後に25日線を上放れる、もしくは200日線を下放れた場合には、トレンドが出る可能性もありそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/20 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、連日の米株安受けて軟調な展開続く
日経平均は大幅続落。305.83円安の27221.29円(出来高概算5億1188万株)で前場の取引を終えている。 前週末16日の米株式市場のNYダウは281.76ドル安(-0.85%)と続落。12月製造業・サービス業PMI速報値が想定外に11月から悪化したため景気後退を懸念した売りに下落。米連邦準備制度理事会(FRB)高官がインタビューや講演で、FRBの政策金利を高水準で長期にわたり維持する姿勢を再確認したため長期金利やドルが上昇したことも更なる売り圧力となり、相場をさらに押し下げた。年末にかけたポジションの手仕舞い売りも目立った。ナスダック総合指数も続落、軟調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前週末比247.20円安の27279.92円と3営業日続落でスタート。その後は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が軟調に推移、ファーストリテ<9983>やソフトバンクグループ<9984>、トヨタ自<7203>などの大型株が下落した。また、ソニーグループ<6758>やメルカリ<4385>、リクルートHD<6098>などのグロース株、三菱重工業<7011>や武田薬<4502>、オリエンタルランド<4661>なども大きく下落している。TOB総額の引き下げ検討とも伝わっている東芝<6502>、成城石井の株式上場申請取り下げを嫌気されたローソン<2651>も大幅下落。ほか、プロレド・パートナーズ<7034>、ティーガイア<3738>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 一方、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>、みずほ<8411>などの金融株が堅調に推移した。NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信株も上昇。第3四半期累計営業益は減益もあく抜け感が先行した西松屋チェ<7545>、自社株買い実施を発表したオカモト<5122>などが大幅上昇、そのほか、ジェイテックコーポレーション<3446>、アツギ<3529>、丸文<7537>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、精密機器、医薬品が下落率上位となった一方、パルプ・紙、銀行業、情報・通信業が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の45%、対して値下がり銘柄は49%となっている。 本日の日経平均株価は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比190円安の27280円。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均は売りが先行。FOMCの結果発表以降に米国株の下げが続いていることは、個人投資家心理の悪化に繋がった。本日の下落により日経平均は75日移動平均線を明確に下回ってきたため、センチメントの悪化を警戒した様子見ムードも強まりやすいとの指摘が一部市場関係者からは聞かれている。 一方、新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、マザーズ指数が軟調もみ合い展開に、東証グロース市場Core指数は下げ幅を縮小した。長期金利の低下自体は株式の支援要因と考えられるが、全面的なリスクオフの地合いとなっており新興株も厳しい地合いが続いている。そのほか、本日東証グロース市場に新規上場したトリドリ<9337>は買い気配が続いている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.94%安、東証グロース市場Core指数が0.21%安。 さて、前週の当欄でも述べたが直近で多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始め、買いのチャンスをうかがっている印象を受ける。具体的には、日経平均株価は米国経済失速懸念で来年前半に調整する場面があるが、その後は好調な内需や業績の回復期待、大統領選挙の前年というところもあり上値を試すと予想している。また、CFRAのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストーバル氏は「リセッションに向かっているが、それは来年の2つの話のうちの半分で後半は株式市場が回復する可能性が高い」と指摘している。 複数の世界最大級ファンドが年内に合わせて最大1000億ドル(約13兆6700億円)相当の株式を売る見通しとも、ブルームバーグで報じられている。株式相場は10-12月(第4四半期)ではプラス圏を維持しているため、他の資産クラスと比べた株式のバリューが高まっており、資産配分ルールに厳密に従う運用者は目標を満たすため株売りを余儀なくされる。つまり、資産配分の長期目標を満たすため、株式を売り債券保有増やす可能性があるようだ。 前述の売り材料には注視しておきたいが、相場はすでに底入れしている可能性も示唆した。ブルームバーグでは、ルーソルド・グループの最高投資ストラテジストであるジム・ポールセン氏が「底入れしており、新たな強気相場が始まりつつあると思う」と発言したことを報じている。行き過ぎた悲観論、はポジティブなサプライズの扉を開くと予想し、米金融政策や利上げの影響に投資家は集中し過ぎており景気は減速していると付け加えたようだ。現在の株式相場は弱い状況にあるが、筆者はこのような回復シナリオも想定して相場を見守っている。 ただ、筆者も多くの市場関係者と同様に、更なる下落シナリオを念頭に置いている。引き続き、雇用統計やインフレ指標、FRB高官の発言、地政学リスクの動向など、警戒する材料は多い。いまだに世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、軟調な展開が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/12/19 12:13
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日経平均は大幅続落、景気減速下での高金利継続シナリオが重荷
日経平均は大幅続落。431.04円安の27620.66円(出来高概算5億2879万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でダウ平均は764.13ドル安(−2.24%)と大幅続落。米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を高水準で長期にわたり維持する計画が示されたことに続き、欧州中央銀行(ECB)も定例理事会で当面利上げを継続する必要があるとタカ派色を強めたため、売りが先行して始まった。米11月小売売上高など経済指標が軒並み低調だったことも景気後退懸念を強め、終盤まで下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数も−3.22%と大幅続落。米国株安を引き継いで日経平均は345円安からスタート。売り先行後は心理的な節目の27500円を手前に下げ渋っていたが、ほとんど買い戻しは入らず、安値圏での底這いが続き、前場後半に27582.37円(469.33円安)と本日の安値を付けた。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体、ソフトバンクG<9984>、メルカリ<4385>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>のグロース株、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、ダイキン<6367>、HOYA<7741>の値がさ株が大きく下落。 一方、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運は高い配当利回りがディフェンシブ性を帯びてか上昇。三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、東京海上<8766>、JT<2914>などその他の高配当利回り銘柄も堅調。東芝<6502>は、三井住友銀行やみずほ銀行が日本産業パートナーズによる同社の買収提案に対して総額1兆2000億円規模の融資をする方針と伝わり上昇。業績予想を上方修正したサイボウズ<4776>、今期大幅増益見通しのパーク24<4666>は急伸。上期堅調決算のアスクル<2678>も大幅高。神戸物産<3038>は今期見通しが市場予想を下振れも、保守的な計画は想定線であく抜け感が優勢となっている。 セクターでは電気機器、精密機器、機械が下落率上位となった一方、銀行、海運、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の61%、対して値上がり銘柄は33%となっている。 日経平均は大幅に下落し、心理的な節目の28000円や25日移動平均線を明確に下放れた。一方、27500円や75日線、26週線、13週線が下値支持帯として意識され、下げ渋る動きも見せている。しかし、米S&P500種株価指数は13日の一時200日超えをピークに、綺麗に再び下落基調にあり、テクニカル面では今後も売りが続く可能性が高い。米国株が下値模索の展開となった場合、日経平均も上記のサポート水準を下抜ける可能性があろう。日経平均27300−27500円のレンジには日足、週足の主要移動平均線が集中しているため、ここを下抜けてしまうと、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが膨らむ可能性があり、注意したい。 15日、欧州中央銀行(ECB)も米連邦準備制度理事会(FRB)に続き、0.5ptへと幅を縮小した上で追加利上げを決定した。ただ、ラガルド総裁はインフレの水準は依然高すぎるとし、沈静化に向けて同様の利上げがしばらく続くと投資家に警告。今回の利上げ幅の縮小を「ECBの政策転換だと考えるのは誤りだ」とタカ派な姿勢を強調した。 一方、米11月小売売上高は前月比−0.6%と市場予想(−0.2%)を大幅に下回り、10月(+1.3%)から大幅に減速。自動車とガソリンを除いた基準でも−0.2%と市場予想(+0.0%)と10月(+0.8%)を大きく下回った。また、米11月鉱工業生産も前月比−0.2%と市場予想(+0.0%)を下振れた。さらに、企業のセンチメントを示すニューヨーク連銀製造業景気指数は−11.2と予想(−1.0)を大幅に下振れ、フィラデルフィア連銀景況指数も−13.8と予想(−10.0)を下振れた。 インフレは既に伸び率ではピークアウトしているものの、水準としては依然として各国中央銀行の目標を大幅に上回っている。世界的な金融引き締めが長期化する公算が大きくなっている一方で、経済指標には減速の兆しが見られはじめていて、今後は来年前半にかけて、景気後退・企業業績悪化を織り込む動きが加速していきそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/16 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小反落、FOMCショックはないが時間差でじわじわ来る?
日経平均は3日ぶり小反落。74.66円安の28081.55円(出来高概算4億9234万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でダウ平均は142.29ドル安(−0.41%)と3日ぶり反落。利上げ減速期待から買いが先行して始まった。しかし、米連邦公開市場委員会(FOMC)で想定通り利上げ幅の0.5ptへの縮小が決定されるも、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派な会見内容やFRBスタッフ予測を受けて来年の利下げ観測が後退、一気に下落に転じる流れとなった。ナスダック総合指数も−0.76%と3日ぶり反落。米国株安を引き継いで日経平均は165.07円安からスタート。ただ、根強い利下げ期待などを背景に前日の米債券利回りが全般伸び悩んで長期の年限ではむしろ低下していたことから、寄り付き直後から下げ渋る展開となった。早い時間帯に一時プラス圏にまで回復したが、その後は騰勢一服で、再び下落に転じた。 個別では、レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>、SMC<6273>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>など値がさ株を中心にハイテク・グロース株が軟調。東証プライム市場の値下がり率上位にはSansan<4443>、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>などの中小型グロース株の代表格が並んでいる。 一方、郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛、三井物産<8031>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>の商社、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業などが高い。決算を材料にクミアイ化学<4996>、ブラス<2424>、MSOL<7033>が急伸しており、中期経営計画を発表したDMG森精機<6141>も大幅高。バイオ燃料製造プラントに関するプロジェクトについて発表しているユーグレナ<2931>も急伸。東証スタンダード市場ではサプライズ決算を材料に山王<3441>がストップ高買い気配のまま終えている。 セクターでは精密機器、サービス、電気機器が下落率上位となった一方、鉱業、倉庫・運輸、海運が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の40%、対して値上がり銘柄は53%となっている。 前日の米株式市場は上昇推移が続いていたが、総じてタカ派な米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見を受けて、一気に下落に転じた。注目された政策金利見通し(ドットチャート)では、2023年末の政策金利中央値が前回9月時点の4.6%から5.1%へと引き上げられ、24年末の中央値は4.1%とされた。 FOMCの直前にフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込んでいた政策金利水準は来年5月頃をピークに4.8%程度で、23年末では4.3%程度となっていた。来年後半には0.25ptの利下げが2回行われると予想していたと考えられ、今回、FRBが示した見通しと大きな乖離がある。また、ドットチャートが示す23年末の政策金利中央値5.1%は事前の予想を上回っているが、さらに、5.4%以上を望むメンバーが7人もいたことから、FRBのタカ派姿勢の鮮明化は著しいといえる。 パウエル議長の会見内容も全体的にタカ派的だった。今回の0.5ptの利上げにより、政策金利の誘導目標レンジは4.25−4.50%へと引き上げられたにもかかわらず、パウエル議長は「いまだ十分に景気抑制的な政策スタンスではない」としたほか、「インフレを目標の2%に戻すことに強くコミットする」、「インフレが2%に向かうとの確信が持てるまでは利下げは有り得ない」などと発言し、市場の利下げ期待をけん制した。 一方で、今回のFOMCを受けても、FF金利先物市場が織り込む金利水準は前日からほとんど変化していない。前日の米国市場での10年債利回りは一時急上昇した後に戻して、結局むしろ低下した。市場は依然として来年後半に利下げが行われると考えているようだ。 13日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)では、食品・エネルギーを除いたコア指数が前年比+6.0%にまで低下してきた。しかし、パウエル議長が主張するように、FRBがこの先、インフレが2%にまで低下することに自信が持てるまで利下げに転じないとすれば、来年は景気が減速する中での利上げの継続、そして高水準の金利据え置きが行われることになり、必要以上に引き締めすぎるオーバーキルのリスクが高まると考えられる。来年後半の利下げを信じ続けている市場はまだこのリスクを十分に織り込み切れていないだろう。 株価は一株当たり利益(EPS)と株価バリュエーション、市場の期待値ともされる株価収益率(PER)で決まる。来年は予想通りであれば、3月、早ければ2月には利上げが停止となるため、金利上昇を通じた株価バリュエーションへの下押し圧力はなくなるが、景気後退懸念が強まる中、今後はEPSの低下圧力が株価を下押ししていくと考えられる。 すでにアナリストによる米国企業の業績予想は来年4−6月期にかけて下方修正が進んでいるが、S&P500種株価指数を構成する企業から算出される株価バリュエーションのPERは過去の水準からみて依然として割高感が否めないため、さらなる株価下落余地はあると考えられる。 今晩は米国で重要指標が多く発表される。年末商戦での駆け込み需要から米11月小売売上高は堅調が予想されるものの、NY連銀とフィラデルフィア連銀が公表する製造業景気指数など企業のセンチメントを表す指数は低調が予想され、結果次第では、年末にかけて来年の景気後退を織り込む動きが加速するかもしれない。投資対象としては、引き続きディフェンシブセクターやリオープン関連などを選好したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/15 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、「FRBに逆らうな」に従うならば・・・
日経平均は続伸。186.56円高の28141.41円(出来高概算5億687万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でダウ平均は103.60ドル高(+0.30%)と続伸。米11月消費者物価指数(CPI)が予想以上に鈍化したため、インフレピークアウト期待が強まり、買い先行で始まった。ただ、根強い景気後退懸念からダウ平均は一時下落に転じる場面もあった。一方、ドル安や金利低下が企業収益の改善につながるとの期待などもあり、押し目買いから終盤にかけてはプラス圏を回復した。ナスダック総合指数は+1.01%と続伸。米国株高を引き継いで日経平均は50.18円高の28005.03円からスタート。日本時間15日午前4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に序盤は一進一退となったが、午前中ごろからは本日のレンジを上抜ける形で上値を伸ばす展開。終盤に28175.44円(220.59円高)まで上昇した後は騰勢一服となったが、底堅い動きが続いた。 個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の上昇を支援要因にレーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>、ソシオネクスト<6526>など関連株が大幅高。信越化<4063>、ダイキン<6367>、ソニーG<6758>の値がさ株も高い。中国の経済再開期待が続いているようで、住友鉱<5713>、DOWA<5714>の非鉄金属やJFE<5411>、ナブテスコ<6268>、INPEX<1605>などが上昇。 米航空会社のユナイテッドが航空機メーカー・ボーイングの787ドリームライナー航空機について、過去最高となる100機の購入を発表したことで、ボーイングを大口顧客にもつ東レ<3402>が急伸。米電気自動車メーカー・ルーシッドにリチウムイオン電池供給を開始すると伝わっているパナHD<6752>は買い優勢。経済産業省の水素普及支援策を材料に岩谷産業<8088>も大きく上昇。ヤーマン<6630>、ネオジャパン<3921>は決算を受けて大幅高となっている。 一方、為替の円高・ドル安進行を受けて三菱自<7211>、SUBARU<7270>の自動車の一角や、現在為替レートよりも円安水準に想定為替レートを設定しているオリンパス<7733>などが下落。米長期金利の低下を受けて第一生命HD<8750>、りそなHD<8308>の金融は全般冴えない。正栄食<8079>は減益見通し決算が嫌気されて急落している。 セクターでは繊維製品、鉱業、非鉄金属が上昇率上位となった一方、空運、倉庫・運輸、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の62%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 日経平均は徐々に上値を伸ばす展開で、心理的な節目の28000円を優に回復。12月2日に割り込んだ25日移動平均線上への復帰も果たしている。一時75日線割れとなった8日に長い下ヒゲを伸ばしてからは、チャートの形状が大きく改善してきている。 前日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除いたコア指数で前年同月比+6.0%と市場予想(+6.1%)を下回り、10月(+6.3%)から減速。モメンタムを示す前月比でも+0.2%となり、市場予想(+0.3%)と10月(+0.3%)から減速した。また、エネルギー価格の下落を要因に、総合では前年同月比+7.1%と10月(+7.7%)から大きく減速、市場予想(+7.3%)も下回った。 インフレ減速期待が高まる中、米金利は全般低下しており、株式市場への影響力の大きい米10年債利回りは3.51%(−0.1pt)まで低下した。一方、日米の株式市場での好反応は控え目となっている。日本時間15日午前4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に、さすがに買い上がる向きは限定的のようだ。 今回のFOMCでは四半期に一度の政策金利見通しや経済成長見通しが公表される予定だが、ブルームバーグ通信などは、見通しは米CPI発表前に既にまとめられている可能性が高いとしている。これまでの各連銀総裁の一連の発言からしても、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は9月時点の4.6%から5%をやや超える水準にまで引き上げられる可能性が高いとみる。 一方、米CPIの2カ月連続での予想以上の減速を受けて、市場でのインフレ・金利引き上げのピークアウト観測はさらに強まっており、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは来年5月前後を目安に4.85%まで低下している。また、来年末の政策金利水準の織り込みは4.17%まで低下してきた。ここから、市場は来年後半に0.25ptの利下げが2回以上行われると予想していると解釈できる。 米CPIの明確な減速傾向は歓迎すべきことではある。しかし、改めて8月のジャクソンホール会合以降のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の主張を振り返ると、ウィリアム・ミラー議長時代の早期利下げ転換によるインフレ再発に対する警戒感を完全には解いていないとみられる。このため、来年2−3回の利下げを織り込んでいる市場はやや先走っている印象が否めない。明日公表される政策金利見通し(ドットチャート)で高水準の金利が長く据え置かれることが示され、さらに、パウエル議長の会見で利下げ転換は時期尚早とのスタンスが再表明された場合のリスクには注意が必要だろう。 株式市場の焦点もすでにインフレや金利動向そのものよりも、高水準の金利が長く据え置かれた場合にもたらされる実体経済へのダメージに移っている。米CPIの明確な減速傾向は確かに明るい材料だが、インフレのモメンタムが減速しても水準は依然としてFRBの目標より非常に高い状況だ。市場が常に先読みして動くことは道理ではあるが、FRBが利上げ幅の縮小からさらにもう一歩踏み込んで利上げ停止の明確な時期を示唆するなどスタンスをもう一段ハト派化しない限りは、株式市場が本格的に戻り基調に復帰するには時期尚早だと考える。筆者が過度に弱気派なだけかもしれないが、今一度、市場の格言として有名な「FRBに逆らうな」の意味を再考したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/14 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は反発、引き続き物色の選別が重要
日経平均は反発。103.76円高の27946.09円(出来高概算4億7996万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は528.58ドル高(+1.57%)と大幅反発。今週に控える多くのイベントを前に買い戻しが先行。また、NY連銀調査による期待インフレ率が短中期ともに低下したことで、インフレや利上げのピークアウト観測が強まり、買い戻しも加速した。ナスダック総合指数は+1.26%と大幅反発。米国株高を受けて日経平均は225.04円高の28067.37円と心理的な節目を回復してスタート。しかし、今晩の米11月消費者物価指数(CPI)などのイベントを前に買いが続かず、寄り付き直後から大幅に失速。早々に28000円を割り込むと、午前中ごろには27907.49円(65.16円高)まで上げ幅を縮小。下落には転じなかったが、その後も本日の安値圏での推移にとどまった。 個別では、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運大手、三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連、キーエンス<6861>、ダイキン<6367>の値がさ株の一角、ホンダ<7267>、三菱自<7211>、SUBARU<7270>の自動車などが高い。INPEX<1605>、日本製鉄<5401>、丸紅<8002>、コマツ<6301>など資源・景気敏感株も上昇。ラクスル<4384>、グッドコムA<3475>、萩原工業<7856>は決算が、明和地所<8869>は株主優待制度の導入がそれぞれ好感され急伸。東邦チタニウム<5727>は国内証券による目標株価引き上げを受け大幅高。一方、東エレク<8035>、ファナック<6954>、日本電産<6594>、TDK<6762>のハイテクの一角が軟調。MonotaRO<3064>は月次動向が嫌気され、アイケイケイ<2198>は好決算や増配を発表も出尽くし感から売られた。くら寿司<2695>は前期実績及び今期見通しの市場予想下振れが嫌気された。 セクターでは保険、その他金融、鉱業を筆頭に全般買い優勢。一方、ゴム製品、精密機器の2業種が下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の71%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 今晩の米11月消費者物価指数(CPI)の発表や、日本時間15日午前4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、東京市場は様子見ムードが広がっている。前日の米株式市場では買い戻しが活発化し、主要株価指数が揃って大幅反発したのに比べて、東京市場は上値の重い展開で、日経平均と東証株価指数(TOPIX)はともに25日移動平均線前後の水準で動意に乏しい。 今晩のCPIが予想を下回れば、インフレ減速期待は強まり、米株式市場ではFOMC前にさらに買い戻しが強まりそうだが、日本株は本日のように膠着感の強い展開が続きそうだ。理由は為替動向だ。CPIの下振れを受けて米長期金利が低下した場合、為替は再び円高・ドル安方向に振れる可能性が高い。日本株の米国株に対する相対パフォーマンスは為替との連動性が高いため、円高が進行した場合、輸出企業の採算改善期待が後退する形で日本株の上値は重くなるだろう。本日は自動車関連の株価などは堅調だが、指数の米国相対比での上値の重さにはこうした背景があるのかもしれない。 また、インフレ減速期待が高まっても、直後のFOMCにおいて利下げ転換には程遠いなどと米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派スタンスが再強調されれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)への警戒感が強まり、来期の業績下振れリスクを織り込む動きが加速する可能性もある。このケースでも、世界の景気敏感株と称される日本株には厳しい展開が予想される。 今回のCPIとFOMC後の株価反応を予想するのは非常に困難だが、事前の織り込み度合いからは、過度に楽観にも悲観にも傾いていない印象だ。イベント通過後のあく抜けに期待する声も聞かれるが、年明け以降の明るいニュースが見えてこない中、株価上昇の持続性にも疑問符が付く。世界が怯える景気後退リスクに加えて為替リスクが加わる日本株の先行きに楽観視は禁物だろう。引き続き景気や為替の動向と連動性の低い、内需系ディフェンシブやリオープン関連、内需系グロースなどのセクター・テーマへの投資に徹するべきと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/13 12:11
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日経平均は反落、今週はインフレ指標の結果やパウエル氏の発言に注目
日経平均は反落。79.89円安の27821.12円(出来高概算4億7946万株)で前場の取引を終えている。 前週末9日の米株式市場のNYダウは305.02ドル安(-0.90%)と反落。11月卸売物価指数(PPI)が予想を上回ったため来年の利下げ観測が後退。12月ミシガン大1年期待インフレ率が予想外に低下したため主要株式指数は一時プラス圏を回復も、長期金利の上昇を警戒した売りに押された。翌週発表される生産者物価指数(CPI)への警戒感も強まり、下げ幅を拡大し終了。ナスダック総合指数は反落、軟調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前週末比159.91円安の27741.10円と反落でスタート。その後は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が軟調に推移、ファーストリテ<9983>やソフトバンクグループ<9984>、キーエンス<6861>などの大型株が下落した。また、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、東邦チタニウム<5727>や大阪チタ<5726>、日本製鉄<5401>なども大きく下落している。今期業績見通しが市場期待値を下回ったトビラシステムズ<4441>、8-10月期はコンセンサス下振れで前四半期比減益となった三井ハイテック<6966>も大幅下落。ほか、鳥貴族HD<3193>、日本ハウスHD<1873>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 一方、日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株が堅調に推移した。トヨタ自<7203>や資生堂<4911>、野村総合研究所<4307>なども上昇。メルカリ<4385>やベイカレント<6532>、ソニーグループ<6758>などのグロース株の一角も上昇、第1四半期大幅増益決算や自社株買い実施を好感された日駐<2353>、8-10月期大幅増益決算や自社株買いを高評価された鎌倉新書<6184>などが大幅上昇、そのほか、アグロカネショ<4955>、gumi<3903>、エイチーム<3662>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉄鋼、非鉄金属、金属製品が下落率上位となった一方、海運業、その他金融業、空運業が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の47%、対して値下がり銘柄は46%となっている。 本日の日経平均株価は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均はやや売りが先行。先週でメジャーSQは通過したものの、13日に発表される米11月CPIへの警戒感も高まるなか、ひとまずは先週末の上昇に対する反動安が意識されやすいところとなっている。 一方、新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、じりじりと下げ幅を縮小する展開となっている。米国でインフレ鎮静化への期待がやや後退したことは、国内の個人投資家心理にもネガティブに働いている。また、13日に米11月消費者物価指数(CPI)、14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見などを控えて、様子見ムードも広がっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.30%安、東証グロース市場Core指数が0.60%安。 さて、11月の米卸売物価指数は前年比、前月比ともに上昇率が市場予想を若干上回った。11月米PPIは前月比0.3%上昇、前年比7.4%上昇で10月の8.1%から鈍化している。サービス価格が前月比0.4%上昇と全体の上昇の大半を占め、財(モノ)の価格は0.1%上昇となり、食品価格が3.3%上昇した一方、エネルギー価格が3.3%下落した。根強いインフレ圧力が再度浮き彫りとなり、投資家心理にネガティブに働いている。 明日13日には米11月消費者物価指数(CPI)が発表される。食品・エネルギーを除いたコアCPIでは前月比+0.3%と10月から横ばいが予想されているが、前年同月比では+6.1%と10月(+6.3%)から減速する見込みだ。総合指数は前年同月比7.3%上昇(前月7.7%上昇)の見込み。前回のように市場予想を下回る伸びとなれば、インフレ減速期待を高めることになり投資家心理を下支えする展開となろう。 ただ、米11月PPIのように予想を上振れると地合いは悪化しそうだ。財のコア・インフレが落ち着きつつある中、注目はサービス分野の価格の伸びに移りつつあるという。住宅分野はいずれ方向を転じると予想されており、インフレの最終的な軌道は賃金が鍵を握るとみられている。これらの分野の数値にもしっかりと注目しておきたい。 14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見なども重要。FOMCは0.5ポイントの利上げを決めると広く予想されているため、投資家はパウエル議長の記者会見での発言に注目している。ブルームバーグでは、「FOMCの米経済見通しと金利予測の変化の有無も焦点。」と報じている。 毎週月曜日の当欄では、来年に大きな下落を想定して相場を見守っていることを都度発信していた。ただ、直近で多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始め、買いのチャンスをうかがっている印象を受ける。株式市場は予想が傾きすぎると、大方の予想に反して動くため、筆者は相場の展望を再考している。前週では「タックスロス・セリング」を例に挙げて、12月中旬から年末にかけて大きな下落を見せる可能性を示唆した。あまり現実的ではないが、このような動きをする可能性も頭の片隅に置いている。 一方で、相場はすでに底入れしている可能性もあるという。ブルームバーグでは、ルーソルド・グループの最高投資ストラテジストであるジム・ポールセン氏が「底入れしており、新たな強気相場が始まりつつあると思う」と発言したことを報じている。行き過ぎた悲観論、はポジティブなサプライズの扉を開くと予想し、米金融政策や利上げの影響に投資家は集中し過ぎており景気は減速していると付け加えたようだ。また、別の記事で「金融引き締め策は新型コロナ禍で膨張した資産バブルの縮小に大きな効果を発揮している。」と報じた上で、「現在の資産デフレは、FRB議長らが求める経済のソフトランディング実現に寄与する可能性がある」と示唆している。このような視点も持って相場を見守っていきたい。 今後の株式市場の動向を予想するうえで、現段階ではやはり米11月CPIやFOMCの結果公表、パウエル議長の記者会見に最大の注目をしておきたい。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、上値の重い展開が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/12/12 12:18
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反発、SQ値上回るも本番は今晩から
日経平均は3日ぶり反発。371.78円高の27946.21円(出来高概算6億2779万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は183.56ドル高(+0.54%)と続伸。中国政府がコロナ規制を緩和する兆しを見せたことが好感された。また、週次失業保険申請件数の増加に伴う労働市場の逼迫緩和の兆候も来年の利上げ観測の後退に繋がり相場をさらに押し上げた。ナスダック総合指数は+1.12%と5日ぶり反発。米国株高を受けて日経平均は59.53円高からスタート。12月先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)に絡んだ売買が交錯する中、寄り付きから上げ幅を広げる流れとなった。その後も徐々に上値を伸ばす展開となり、前引け直前に27952.80円(378.37円高)と本日の高値を付けた。なお、SQ値は概算で27576.37円。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、TDK<6762>、村田製<6981>、ローム<6963>などのハイテク株が総じて高い。住友鉱<5713>、信越化<4063>、三井物産<8031>、三菱重<7011>など景気敏感株も堅調。コナミG<9766>、カプコン<9697>、コーエーテクモ<3635>などゲーム関連の上昇も目立つ。業績・配当予想を上方修正したRSテクノ<3445>、NTT<9432>との連携に関するリリースが材料視されたイマジカG<6879>、決算があく抜け感につながったBガレジ<3180>、レーティング格上げが確認されたフジクラ<5803>、証券会社が目標株価を引き上げた東北電力<9506>などは大幅に上昇。NRI<4307>との資本業務提携を発表したキューブシステム<2335>も大きく上昇した。 一方、軟調な原油市況を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が下落。地合いが良い中にもかかわらず、メルカリ<4385>、NRIは逆行安。市場予想は上回ったものの減益決算や内容が嫌気された積水ハウス<1928>は売り優勢。トミタ電機<6898>、アイモバイル<6535>も決算で売られた。ラウンドワン<4680>は既存店売上高動向の鈍化が引き続き重荷になったもよう。 セクターでは電気・ガス、電気機器、精密機器を筆頭に全般買い優勢。一方、鉱業、石油・石炭製品、水産・農林の3業種が下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は17%となっている。 日経平均は大幅反発し、再び75日移動平均線上に復帰。前日は27500円を割り込む場面もあったが、本日は心理的な節目の28000円を窺う位置にまで戻してきている。SQ値も大きく上回る水準で前場を終えている。直近の売られ過ぎ感から前日の米株式市場でハイテク・グロース株が買い戻されたことが、東京市場にも好影響を及ぼしているようだ。ただ、イベント前のポジション調整的な域を出ていないといえ、今後の動向は今晩からの海外市場睨みとなろう。 今晩は米11月卸売物価指数(PPI)のほか、12月ミシガン大学消費者信頼感指数が発表される。食品・エネルギーを除くコア指数は前月比で+0.2%と10月(+0.0%)から加速する見込みだが、前年比では+5.9%と10月(+6.7%)から大きく減速する見込みとなっている。予想通りとなれば、インフレ減速・利上げペース減速への期待が高まり、相場の支援要因となろう。 12月ミシガン大学消費者信頼感指数での1年先期待インフレ率は4.9%と11月(4.9%)から横ばい、5−10年先長期期待インフレ率も3.0%と11月(3.0%)から横ばいが予想されている。期待インフレ率は、消費者心理への影響が大きいガソリン価格に左右されやすいとされるが、軟調な原油市況を背景にガソリン価格も低水準におさまっているため、期待インフレ率が予想よりも低下すれば、長期金利のさらなる低下を通じて相場を下支えしそうだ。 一方で、前日の当欄での主張の繰り返しになるが、年内最後のビッグイベントとなる13−14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではまだリスクが残る。政策金利見通し(ドットチャート)が公表される予定だが、現在のフェデラルファンド(FF)金利先物市場はターミナルレート(政策金利の最終到達点)として5%を下回る水準までしか織り込んでいないうえに、来年半ば以降の利下げ転換まで予想している。しかし、5%を大きく上回るターミナルレートが示される可能性は十分にある。また、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、これまで明らかにしているように利上げの累積効果を見極めるために利上げペースの減速が適切との見解は繰り返し主張するだろうが、インフレ沈静化のために利上げ停止は時期尚早との主張も同時に再表明する可能性がある。 利下げ転換まで織り込んでいる市場はやや先走り過ぎている印象が否めない。また、今後、米国経済の景気後退が不可避とされ、予想一株当たり利益(EPS)の低下が予想されている中、足元のS&P500種株価指数を構成する企業から成る予想株価収益率(PER)はヒストリカルで見て割安感に乏しく、むしろ割高感すらある。日本株についてはバリュエーションの割高感はないが、3月期本決算企業の上半期決算を終え、輸出企業の想定ドル円レートの平均値が1ドル=138円とされる中、今後の円高リスクも想定すると、割安感だけでは投資妙味に乏しいだろう。 これも日々、当コンテンツ内で繰り返している主張になるが、金利や景気、為替などの動向に不透明感が強い中、これらファクターに左右されやすい企業の投資妙味は乏しいと考えられる。強いて言えば、景気後退懸念で長期金利の上昇圧力が抑えられる中、金利動向に左右されやすいグロース株のうち、内需系セクターの銘柄には投資妙味があるといえる。 その他では、やはり不透明感の強い外部ファクターの影響がもっとも小さいと思われるリオープン関連が望ましいだろう。中国でのコロナ規制がさらに緩和されない限り、インバウンド需要の本格回復は見込みにくいが、中国を除いたインバウンド需要は非常に速いペースで回復している。また、全国旅行支援の延長が決まっている中、国内の旅行需要の旺盛さも続くことが予想される。ホテルや旅行予約サイト、鉄道などの関連株には物色余地がまだあると考えたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/09 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は続落、金利低下が支えとならず、FOMCでは一段安の可能性残す
日経平均は続落。205.91円安の27480.49円(出来高概算5億3376万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は1.58ドル高(+0.00%)と横ばい。景気後退懸念がくすぶり下落スタート。需要鈍化懸念を背景に携帯端末のアップルが売られ、ハイテクセクターの下落が全体の上値を抑制。一方、長期金利の低下やドル安が企業収益の回復に繋がるとの見方が下支えとなり、終盤にかけてはダウ平均は下げ幅を帳消しにした。ナスダック総合指数は終日軟調推移で−0.51%と4日続落。米国株安を引き継いで日経平均は64.1円安からスタート。オランダ政府が半導体製造装置の新たな対中輸出規制を計画していると報じられる中、半導体セクターの影響の大きい台湾加権指数が大きく下落。東京市場でもハイテク株に断続的な売りが入り、日経平均は11時頃に27415.66円(270.74円安)まで下げ幅を広げた。その後は下げ止まったが、この日の安値圏で前場を終えている。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、日本電産<6594>、TDK<6762>、ローム<6963>のハイテク、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>の値がさ株が総じて大きく下落。メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、SHIFT<3697>などグロース株も軟調。米長期金利の大幅低下を受けて三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行株も大幅安。ブルームバーグ通信がスマホ市場のさらなる下振れに懸念を示した社長インタビューを報じたことで、村田製<6981>も下落。為替の円安への戻りが一服したことでトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、SUBARU<7270>など自動車関連も安い。業績予想を下方修正した丹青社<9743>、レーティング格下げが観測されたVコマース<2491>は急落。 一方、ソフトバンクG<9984>、NRI<4307>、SMC<6273>、ディスコ<6146>が逆行高。景気敏感株では郵船<9101>のほか、三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社の一角が高い。第一三共<4568>、アステラス製薬<4503>の医薬品も堅調。好決算が確認されたアイル<3854>は急伸。東証スタンダード市場ではKDDI<9433>との資本業務提携が材料視されたクロップス<9428>が急伸した。ほか、外資証券による新規買い推奨が観測されたBIPROGY<8056>、レーティング格上げが観測された日ペHD<4612>、ニフコ<7988>、カチタス<8919>が高い。 セクターではその他金融、銀行、電気機器が下落率上位となった一方、食料品、医薬品、卸売が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の75%、対して値上がり銘柄は21%となっている。 日経平均は続落し、ここ数日の間、下値支持線として機能してきた75日移動平均線をあっさり下回ってきた。また、心理的な節目の27500円をも割り込んだ。一方、日足一目均衡表の雲上限近くでは下げ渋っており、踏ん張る動きも見られている。 前日の米株式市場は引き続き冴えない展開となった。前日はゴールドマン・サックス・グループ主催の投資家会合の2日目が開催されていた。一昨日に続き、米金融大手の経営陣からは景気の先行きに対して悲観的な見通しが相次いで示されたようで、こうした背景が、連日で軟調となっている米株式市場の要因として考えられそうだ。 当該会合において、USバンコープの最高経営責任者(CEO)は「個人消費はなお健全さを維持しつつも、現在は転換点に差し掛かっている」としたほか、「現状は良好だが、現金残高が近いうちになくなり始め、消費の鈍化につながる見通し」などと発言したという。また、 バンク・オブ・アメリカ(BofA)のCEOも11月の同行カード支出の伸びが鈍化し、消費者の預金残高も減少し始めたことを指摘したという。米国の国内総生産(GDP)の7割と最大の割合を占める個人消費が今後落ち込んでいくとすれば、多くの金融グループが予想するように、来年の米国経済の景気後退は不可避となりそうだ。 こうした懸念を反映してか、米10年債利回りは7日、3.42%(−0.11pt)と9月半ば以来の水準にまで大幅に低下した。一方で、気掛かりなのが、これだけ金利が低下している中にもかかわらず、前日の米株式市場でハイテク・グロース株は総じて下落しており、本日の東京市場でも関連株の多くが売られている。まさしく金利低下(=債券買い)と株式売りという、典型的なリセッション(景気後退)トレードの構図となっている。こうした投資家によるリスク回避の動きは続いているようで、ドイツ銀行によると、11月28日−12月2日の週において株式ファンド(投資信託、ETF)からは162億ドルの資金流出が発生したという。これは週間の資金流出額としては過去5カ月で最大だったとされている。 今週末9日には米11月卸売物価指数(PPI)、来週には13日に米11月消費者物価指数(CPI)、そして14日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見が予定されている。これら一連のイベントを消化した後には、米国ではクリスマス休暇入りとなる投資家も多いとされている。現在続いているリセッショントレードがこうした休暇入り・イベント前の最後の持ち高調整に過ぎないという話であれば、いまの株式下落をそこまで悲観的に捉える必要はないだろう。 ただ、年内最後の株式売りがFOMC結果公表後に訪れる可能性はある。現在、リセッションを反映する形で、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は来年5月頃をピークに4.93%程度となっている。また、金利先物市場は年央からの利下げ転換まで予想しており、来年12月の政策金利水準としては4.45%程度となっている。 しかし、直近の米11月の雇用統計やISM非製造業(サービス業)景気指数の強い結果なども踏まえると、FOMCにて公表される政策金利見通し(ドットチャート)では、来年末の政策金利が5%を優に超えてくることは十分にあり得る話だ。また、24年末までの見通しから、高水準の金利が長く据え置かれることも合わせて示される可能性もあろう。こうしたリスクに対して、今の株式市場が織り込めているかといえば、まだ不十分なようにも見える。 金利低下を背景に株式の投資妙味が高まっていると前向きに考えたいところだが、押し目買いの好機は今ではないのかもしれない。こうした中、金利動向や景気動向に左右されにくい内需系ディフェンシブ銘柄や、さらなるインバウンド需要が見込めるリオープン関連などの銘柄に相対的な妙味があると考える。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/08 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反落、景気後退を織り込む動きが加速
日経平均は3日ぶり反落。128.93円安の27756.94円(出来高概算4億9702万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は350.76ドル安(−1.03%)と大幅続落。利上げ長期化を懸念した売りが先行。また、ゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)が景気後退に備えてボーナス減額や人員削減を示唆。バンク・オブ・アメリカやJPモルガンなどの金融各社のCEOも来年の経済に悲観的な見方を示したため、景気後退懸念が強まるなか一段と売りが広がった。ナスダック総合指数は−2.00%と大幅に3日続落。米国株安を引き継いで日経平均は215.58円安からスタート。一方、為替の円安進行を支援要因に寄り付き直後からは下げ渋る展開となり、前場中ごろには27786.25円(99.62円安)まで下げ幅を縮めた。ただ、景気後退懸念も根強く、その後は騰勢一服となり膠着感の強い展開となった。 個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落を受けてレーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ソシオネクスト<6526>など半導体関連株が大きく下落。自動運転計画のネガティブな報道を背景に米アップル株が下落したことを受け、イビデン<4062>、新光電工<6967>、TDK<6762>など関連株が大幅安。メルカリ<4385>、SHIFT<3697>などグロース株も冴えない。東京一番フーズ<3067>は立会外分売実施による需給悪化懸念で急落。 一方、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、みずほ<8411>、りそなHD<8308>の銀行や、東京海上<8766>、第一生命HD<8750>の保険などが堅調。大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>が揃って大幅高で、三菱マテリアル<5711>、住友鉱<5713>などその他の非鉄金属も上昇。日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼は中国の経済再開期待から続伸。韓国子会社が大手鉄鋼メーカーポスコ子会社とイオン交換膜スタックモジュールの供給に関する基本合意書を締結したダブル・スコープ<6619>は急騰。著名個人投資家の保有比率の拡大が判明した住石HD<1514>も急伸している。 セクターでは鉱業、電気機器、海運が下落率上位となった一方、非鉄金属、電気・ガス、銀行が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の29%、対して値上がり銘柄は66%となっている。 日経平均は反落も、前日と同様、朝安後は切り返して下げ渋る展開となっている。日足チャートでは引き続き75日移動平均線がサポートラインとして機能している形だ。米国株が連日で大きく下落したのに対して下落率が軽微にとどまっているのは、為替の円高進行が一服していることが大きいだろう。先週末には一時1ドル=133円台を付ける場面があったが、本日は137円程度まで戻している。 一方、米国株は厳しい状況が続いている。前日の米株式市場で主要株価指数は寄り付きから取引終盤までじわじわと下げ幅を広げる展開となった。米大手銀行の各CEOから景気の先行きに対して悲観的なコメントが相次いだことなどを背景に、ロングオンリー(買いのみで空売りをしない)の長期目線の投資家による現物株の持ち高削減が粛々と進められたほか、ショートカバー(空売りの買い戻し)をしていたヘッジファンドなども午後は再度売りに転じていたとの指摘が聞かれた。 一昨日にはブルームバーグ通信が匿名条件の関係者の話として、電気自動車大手テスラが需要動向を勘案して、中国・上海工場で減産に踏み切る方針とも報じていた。12月に入って、大手企業から雇用削減や需要鈍化のメッセージが増えてきている点は非常に気掛かりだ。 また、直近の7−9月期決算の際には、SaaS型のクラウドサービスなどを提供する米国のIT企業の多くが、決算説明会にて景況感の悪化を背景とした契約サイクルの長期化を口にしていた。米国で不況の音は確実に近づいているようだ。 5日に大きく反発した米10年債利回りは景気後退懸念が重くのしかかる中、6日は再び低下した。米長期金利が再び急ピッチで上昇してこない限り、株価収益率(PER)の低下を通じた株価下押し圧力は限定的だろう。しかし、企業から景気先行きに対する悲観的なメッセージが止まないと、年明けに控える10−12月期決算への警戒感から、予想一株当たり利益(EPS)の低下を通じた株価の下落が続くことになりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/07 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、円高一服が支えも米長期金利の基調転換は要警戒
日経平均は続伸。81.71円高の27902.11円(出来高概算4億9969万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は482.78ドル安(−1.40%)と大幅反落。ISM非製造業景気指数が予想外に改善したため、長期金利の上昇を警戒した売りが先行。また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のFedウォッチャーが、賃金の上昇を受けてペースは減速も来年も利上げ継続の可能性が高いことに言及したことで、金利先高観が再燃し一段安となった。ナスダック総合指数は−1.93%と大幅続落。米国株安を受けて日経平均は116.34円安からスタート。ただ、先週末にかけて日本株の下落につながっていた急速な為替の円高進行が一服してきたことや、中国での経済再開への期待感も引き続き投資家心理を改善させ、寄り付き直後からは下げ渋る展開となった。朝方早い時間帯に上昇転換した後は前日終値近辺でのもみ合いが続いていたが、引けにかけては上げ幅を広げた。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>など半導体関連株がハイテクの中で逆行高。為替の円安を受けて三菱自<7211>、マツダ<7261>、SUBARU<7270>の自動車関連のほか、任天堂<7974>が大きく上昇。米長期金利の上昇を背景に第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>、三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>など金融も高い。 ほか、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の原発・防衛関連、三井物産<8031>、住友商事<8053>の商社、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼などが上昇。第1四半期決算での定期顧客件数の伸長が評価につながったファーマフーズ<2929>、業績予想の大幅上方修正と増配を発表したダイコク電機<6430>がそれぞれ急伸。バイオ医薬品の受託生産強化のための投資が伝わっているタカラバイオ<4974>は大幅高。月次売上が好感されたクスリのアオキ<3549>、エービーシー・マート<2670>も高い。 一方、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、HOYA<7741>、エムスリー<2413>、ZHD<4689>などのハイテク・グロース株が総じて軟調。東証プライム市場の値下がり率上位にはMSOL<7033>、SREHD<2980>、ギフティ<4449>、マネーフォワード<3994>、Sansan<4443>などの中小型グロース株が多く入った。ほか、サッカーワールドカップでの日本の敗退を受けてサイバー<4751>、ハブ<3030>など関連株が大きく下落している。 セクターでは保険、鉄鋼、海運が上昇率上位となった一方、鉱業、サービス、精密機器が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は55%となっている。 日経平均は朝方の売り先行後は下げ渋って反発に転じている。下向きの5日移動平均線が25日線を上から下に抜けるデッドクロスが示現しそうな一方、75日線がしっかりと下値支持線として機能していて、前日の米国株が大きく下落していたことを踏まえると、かなり健闘していると言えそうだ。 一方で、大きく下落しているのがマザーズ指数など新興市場の銘柄だ。マザーズ指数は前日に1.5%と大きく下落したが、本日も1%を超える下落率で推移。前日は、ロックアップ解除への警戒感が高まったANYCOLOR<5032>をはじめ、急落する銘柄が散見され、荒い様相となった。今月半ばから本格化する新規株式公開(IPO)ラッシュを前に、換金売り圧力なども新興株には重石として働いているようだ。 また、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に神経質になりやすいタイミングにおいて、これまで低下基調にあった米10年債利回りが反発に転じてきていることも新興株をはじめ、グロース株の上値抑制要因として働いていると考えられる。米長期金利が反発に転じた理由は、言わずもがな、米国で相次いだ強い経済指標だ。 先週末に発表された米11月雇用統計では、雇用者数の伸びが市場予想を大幅に上回っただけでなく、平均賃金の伸びが前月比で予想の2倍となったほか、労働参加率が低下するなど、総じて逼迫した労働市場が続いている様子が示唆された。加えて、前日に発表された米11月ISM非製造業景気指数は56.5と、10月(54.4)からの低下が想定されていた市場予想(53.5)に反して大きく上昇した。先週、ISM製造業景気指数の50割れで景気後退懸念が強まっていたことを踏まえれば、こうした懸念が緩和されたとポジティブに捉えたいところだが、むしろ、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の舵取りやマーケット関係者の先行きの予想を困難にする結果として捉えられ、あまり喜べない。 ISM非製造業景気指数の項目をみると、景況感が64.7と10月(55.7)から大きく上昇。年末商戦による駆け込み需要などが影響した可能性もあるが、やや強すぎる印象だ。加えて、支払価格の項目は70.0と10月(70.7)から僅かに低下したものの、依然として拡大・縮小の境界値である50を大幅に上回る状態で、サービス分野のインフレ圧力のしぶとさが窺える内容となった。 製造業指数で50を割り込み、景気後退懸念が強まる一方、労働市場やサービス分野では需要の過熱感が残っていて、これではFRBは利上げを続けざるを得ないだろう。また、市場の予想通り、来年3月会合で利上げが打ち止めになったとしても、すぐには利下げに転じることは期待しにくい。かえって、非製造業景気指数の方も50を割り込んでくれていた方が、利下げ転換期待が高まって株式市場には好都合だったかもしれない。 米10年債利回りは10月下旬に一時4.3%を超えた後は低下が続き、先週末には3.49%まで低下していた。しかし、前日は3.59%へと反発。週足チャートでみると、ちょうど26週移動平均線の手前から上昇する形となっている。7月にも同線が下値支持線として機能し、そこから10月下旬まで大幅上昇した経緯があり、目先は金利の反発基調が続きそうだと考えられる。 来週に米11月消費者物価指数(CPI)や米FOMCを控えているタイミングでもあることから、グロース株は、今週は小休止となりそうだ。こうした中、緩やかながら、中国での経済活動正常化への動きが期待されていることもあり、今週はリオープン・インバウンド関連などの内需系企業に相対的な妙味が出てきそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/06 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は反発、米雇用統計の結果受けてどっちつかずの動きに
日経平均は反発。30.84円高の27808.74円(出来高概算5億4217万株)で前場の取引を終えている。 前週末2日の米株式市場のNYダウは34.87ドル高(+0.10%)と反発。11月雇用統計で雇用者数や賃金が想定以上の伸びとなり売りが優勢に。ただ、インフレや金利ピークの思惑も根強く、押し目からの買いに下げ止まった。さらに、別世帯調査の結果では雇用が減少したことが明らかになり金利が伸び悩むと買い戻しが強まり終盤にかけて、ダウは上昇に転じた。ナスダック総合指数は小幅安、まちまちな展開となった米株市場を受けて、日経平均は前週末比24.91円安の27752.99円と小幅続落でスタート。その後は、プラス圏に浮上するも上げ幅は限定的で、前日終値付近でのもみ合い展開が続いている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>などの一部の半導体関連株が堅調に推移、ファナック<6954>やJFEホールディングス<5411>、日本製鉄<5401>、エーザイ<4523>などが大幅に上昇。メルカリ<4385>やダブル・スコープ<6619>、ベイカレント<6532>などのグロース株も上昇している。既存店売上は5カ月ぶりマイナスもネガティブ反応が限定的となったファーストリテ<9983>も大幅上昇。ほか、ハークスレイ<7561>、テモナ<3985>、セック<3741>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株、三菱商事<8058>などの商社株、日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株が軟調に推移した。任天堂<7974>やオリンパス<7733>、トヨタ自<7203>、日立<6501>なども下落した。上半期決算が下振れ着地となったアインHD<9627>が大幅下落、そのほか、BEENOS<3328>、日医工<4541>、日本電波工業<6779>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉄鋼、鉱業、空運が上昇率上位となった一方、電気・ガス業、精密機器、水産・農林業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の25%、対して値下がり銘柄は71%となっている。 本日の日経平均株価は、売り買いが交錯して動意の乏しい展開が継続している。今週は週末に12月限の先物オプション特別清算指数算出(メジャーSQ)を控えている他、足元での為替の円高推移が引き続き重荷となる。一方で先週末の大幅な下げに対するリバランスの動きも意識されやすく、積極的な動きは限られるとはいえ、底堅い展開を予想する声が市場からは聞かれている。そのほか、中国・香港市況は堅調に推移している一方、米株先物は軟調な展開が続いている。 一方、新興市場は軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした。その後は、じりじりと下げ幅を拡げてマイナス圏での軟調な展開となっている。米11月雇用統計で非農業部門雇用者数と平均賃金の伸びが大きく市場予想を上回っており、国内の投資家心理が悪化している可能性がある。また、新興市場では12月のIPOラッシュを前にした換金売りも広がっている可能性もある。前引け時点で東証マザーズ指数が1.38%安、東証グロース市場Core指数が0.67%安となっている。 さて、前週末2日に米11月雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数が+26.3万人と市場予想(+20万人)を大きく上振れたほか、平均賃金の伸びは前月比+0.6%と市場予想(+0.3%)より伸び、前年同月比5.1%上昇した。失業率は3.7%で市場予想と同水準、前月比で横ばいだった。雇用統計の結果は金融引き締め懸念を強める内容となり、米連邦準備制度理事会(FRB)による今後の利上げペース減速が十分に正当化されるほど経済が弱くなっているという市場の見方を打ち消す格好となった。 米11月雇用統計の結果に対して市場関係者からは、「市場にとっては悪い統計だと言えそうだ。」「今回の雇用者数の伸びはやや衝撃だった。」「11月の雇用統計はFRBのインフレとの戦いにとって明らかに悪いニュースだ。」などネガティブな声が散見されている。パウエル議長は先週、インフレ抑制には雇用市場の需給の緩みや企業の収益率鈍化が必要になるとの認識を示しており、こうした統計は懸念材料と捉えられている。 また、5日のブルームバーグでも、「米金融当局者の眼前には憂慮すべきインフレデータが十分なほどある。」と述べられている。FRBは今月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.5ポイントの利上げを実施した後、来年の会合でも同じ幅で引き上げる必要が生じるかもしれないことを示唆している。セントルイス連銀のブラード総裁は、FRBは政策金利を「最低」でも5-5.25%に引き上げるべきだと述べているようだ。FRBが政策金利のピーク水準を引き上げ、長期にわたってその状態を維持せざるを得ない可能性があるとの見方が台頭している。 前週の当欄では、多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始めたため、大方の予想に反して12月末から大きな下落が生じる可能性もあると示唆した。あくまで予想にすぎないが、「タックスロス・セリング」にも警戒しておきたい。これは、あえて保有していたポジションを処分して損を確定させ、今までの実現益と相殺することで少しでも納税を軽減させようとする動きである。例年12月中旬から年末にかけて活発になるため、このような動きが相場に影響する可能性も頭の片隅に置いておきたい。 現段階では、米10月CPIや卸売物価指数(PPI)、個人消費支出(PCE)コアデフレータではインフレのピークアウト感が見られており、インフレ減速・利上げペース減速への期待は根強く残ると考えられている。今後は、週末9日の米11月PPI、来週13日の米CPI発表を控えている。景気後退懸念が強まっているなか、インフレ減速・利上げペース減速が再度確認されるか、やはり再度注目が集まるだろう。さて、後場の日経平均は、もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、上値の重い展開が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/12/05 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、景気後退の織り込みが想定よりも早かった
日経平均は大幅反落。546.24円安の27679.84円(出来高概算7億204万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でダウ平均は194.76ドル安(−0.56%)と3日ぶり反落。11月ISM製造業景気指数が新型コロナ・パンデミック以降で最低水準に落ち込んだため、景気後退入りを懸念した売りが先行した。一方、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ減速期待を背景に長期金利がさらに低下したことでハイテクが買い戻され、相場の下値を支えた。ナスダック総合指数は+0.12%と小幅続伸。まちまちな米株式市場を受けた東京市場では、米国の低調な経済指標を受けた急速な為替の円高進行を受けて売りが先行し、日経平均は242.9円安からスタート。寄り付き後も断続的な売りが入り、前引けまで下げ幅を広げる展開となった。 個別では、景気後退懸念や為替の円高進行を背景にトヨタ自<7203>、日産自<7201>、ホンダ<7267>の自動車関連のほか、郵船<9101>や川崎汽船<9107>の海運、キーエンス<6861>、SMC<6273>の機械、村田製<6981>、TDK<6762>のハイテク、INPEX<1605>、日本製鉄<5401>、三菱マテリアル<5711>、コマツ<6301>、三井物産<8031>などの資源関連まで幅広いセクターの銘柄が総じて大きく下落。NTT<9432>、KDDI<9433>の通信、第一三共<4568>、アステラス製薬<4503>の医薬品、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>の不動産などディフェンシブ銘柄も大幅安。ヤクルト本社<2267>、JFE<5411>、バンナムHD<7832>、コナミG<9766>はレーティング格下げも重石として働いた。 一方、レーザーテック<6920>とディスコ<6146>が逆行高で、その他の半導体関連株も総じて底堅い動き。円高進行がメリットになるニトリHD<9843>のほか、資生堂<4911>などディフェンシブの一角が小じっかり。サイバー<4751>はサッカーワールドカップでの日本の決勝トーナメント進出を受けてABEMA事業への期待感から大きく上昇。三菱マテリアルとのリチウムイオン電池リサイクルにおける共同開発を発表したエンビプロHD<5698>は急伸。マキタ<6586>は複数の証券会社からのレーティング格上げが観測されて上昇となっている。 セクターでは医薬品、不動産、卸売を筆頭に全面安となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の94%、対して値上がり銘柄は5%となっている。 日経平均は大幅反落で、大きく28000円を割り込んだほか、下値支持線とみられていた25日移動平均線をも割り込んできている。前日の米株式市場で主要株価指数はまちまちで、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を受けた後の株高の勢いは早々に息切れした。FRBの利上げペース減速期待に加えて低調な経済指標もあり、米10年債利回りは3.50%(−0.1pt)へと大幅に低下したにもかかわらず、ナスダック指数も+0.12%とほぼ横ばいだったことは株式市場の上昇の勢いが衰えてきていることを示唆している。 前日の当欄では、今後の物価指標や13−14日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果次第とはしながらも、基本的には年末までの1カ月間に限っては、インフレ減速・利上げペース減速への期待を背景に株式市場の強含みが続くと予想していたが、こうした期待は早々に崩れる可能性が高まってきた。 景気が減速する中で高水準の金利が据え置かれることで、景気後退は不可避となるため、来年は年前半を中心に相場は低迷とすると予想していたが、そうした懸念を織り込むのは早くても年明けからだと考えていた。しかし、前日は米10月個人消費支出(PCE)コアデフレータが前月比+0.2%と市場予想(+0.3%)を下回り、金利も大幅低下したにもかかわらず、株式は軟調に推移。それよりも、サプライマネジメント協会(ISM)が発表した11月の製造業景気指数が49.0と市場予想(49.7)を下回り、拡大・縮小の境界値である50を割り込んだことを素直に嫌気する形となった。50割れは元々想定されていたため、FRBの利上げペース減速期待がこれを相殺すると考えていたが、ネガティブな反応の方が強まる形となった。 株式市場が景気後退を織り込む局面が想定より早まった印象を受ける中、13−14日のFOMCで公表される四半期に一度の政策金利・経済見通しの重要度は一段と高まったと考える。これまでのFRB高官の発言から、2023年末の政策金利(中央値)は9月FOMCの4.6%から5%程度へと引き上げられることは織り込み済みだ。 ただ、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は11月28日に、2023年末の見通しとしてPCEデフレータの伸び率で3.0−3.5%、失業率で4.5−5.0%との見解を示した。いずれも前回公表での見通し中央値(2.8%、4.4%)より高く、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)的な予想といえる。ISM製造業景気指数の予想下振れに神経質に反応している株式市場が、次回FOMCでこうしたスタグフレーション的な見通しを示された場合にどう反応するかは注意が必要になってきたといえよう。 また、前日のダウ平均が小幅な下落だった中、本日の東京市場が大幅に下落しているのは、やはり急速な為替の円高進行だろう。FRBの利上げペース減速と低調な米経済指標を受けて、10月までの記録的な円安・ドル高トレンドの反転が強まっている。日本の貿易赤字に伴う、実需筋によるドル買い・円売りがドル円の下値をある程度は下支えするとはいえ、投機筋の売買動向に振らされる要素の方が大きいとみられる。トレンド転換を意識した投機筋のドル売り・円買いの動きはしばらく続きそうで、今後も日本株の上値を抑えることになりそうだ。3月期本決算企業の上期決算が11月半ばに終わったばかりだが、想定為替レートを足元の1ドル=135円台に再設定している輸出企業が多かったため、今後の業績下振れリスクにも注意したいところだ。 日本株はバリュエーション面での割安感があるとはいえ、世界経済の景気後退懸念に加えて、拠り所とされていた為替も逆風に変わるのだとすれば輸出企業を中心に景気敏感株を積極的に買うことは難しい。こうした中、やはり、景気や為替の動向に左右されにくい内需系グロース株に投資妙味があると考える。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/02 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反発、年末ラリーに向けたシナリオを考える
日経平均は5日ぶり反発。312.05円高の28281.04円(出来高概算6億7447万株)で前場の取引を終えている。 11月30日の米株式市場でダウ平均は737.24ドル高(+2.17%)と大幅続伸。新型コロナ規制を巡り中国政府に軟化の兆しが見られたことで買いが先行。また、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が早くて12月会合での利上げ幅縮小の可能性を示唆したことで、長期金利が大幅に低下するなか引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+4.40%と4日ぶり大幅反発。米国株高を受けて日経平均は304.14円高からスタート。寄り付き直後は買いが先行し、一時28423.46円(454.47円高)まで上昇した。一方、為替の円高進行が重石となり、心理的な節目の28500円手前からは戻り待ちの売りで失速。騰勢一服となった後はもみ合い展開が続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連を筆頭に、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、日本電産<6594>、TDK<6762>、新光電工<6967>のハイテク・グロース株が大幅高。エーザイ<4523>は前日の臨床試験結果が引き続き好感されて急伸。東証プライム市場の値上がり率上位にはSansan<4443>、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>などの中小型グロース株が多く並んでいる。四半期営業黒字への転換が好感されたACCESS<4813>はストップ高まで買われ、ITアウトソーシングサービスの受注を発表したニーズウェル<3992>、配当予想の増額を発表したシキボウ<3109>なども急伸した。 一方、為替の円高進行を受けてトヨタ自<7203>、SUBARU<7270>、三菱自<7211>が下落。米長期金利の低下を受けて三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>、第一生命HD<8750>なども総じて軟調。三井不動産<8801>、三菱地所<8802>の不動産や、KDDI<9433>、ソフトバンク<9434>の通信、日本郵政<6178>、武田薬<4502>などのディフェンシブ系も冴えない。 セクターでは電気機器、海運、化学が上昇率上位となった一方、保険、不動産、銀行が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の38%、対して値下がり銘柄は58%となっている。 前日のナスダック総合指数の上昇率が4%超えだったことも踏まえると、日経平均の上昇率は控え目だが、10月半ば以降のナスダックの相対的に劣後していた株価パフォーマンスを踏まえれば、買い戻し時のパフォーマンスに差が出ることは不思議ではない。 ただ、日本株の上値の重さについては為替動向も理由として挙げられるだろう。前日のパウエルFRB議長の発言を受けて、ドル円は東京時間に1ドル=136円台と、8月下旬以来となる円高・ドル安水準にまで振れている。これまで、記録的な円安・ドル高が米国株の急落した直後の日でも日本株がさほど下落しない底堅さの要因として機能してきたわけだが、円高・ドル安となればロジックは正反対に働くことになる。米国企業にとっては金利低下がもたらす直接的な効果に加えて、これまでのドル高による収益圧迫要因が和らぐことで追い風になるが、日本株にとっては輸出企業の採算悪化を通じて全体としてはマイナスとなる(むろん、日本の貿易赤字が続いていて、実需筋のドル買い・円売り要因は根強いため、一本調子でのドル円の下落は考えにくい)。 一方、昨日の米ハイテク株の急激ともいえる上昇率はやや過剰反応な印象を受ける。前日のパウエルFRB議長の発言については、直近、米長期金利の低下基調が続き、金融緩和的な状況につながっていたことから、市場を諌めるようなタカ派な主張が事前には警戒されていた。しかし、実際には特別タカ派な発言は見られず、むしろ、利上げ幅の縮小を再主張したためにハト派的に捉えられた。 ただ、同時に政策金利が以前の想定よりも高くなるほか、利上げ幅そのものよりも、金利をどこまで引き上げ、いつまで高水準を維持するかの方が重要な議論であり、これらについては依然として流動的な部分があるとの従来の見解も合わせて示した。つまり、総じて事前の想定の域を出ないサプライズのない内容にとどまった。こうした背景にもかかわらず、ナスダックが賑やかなまでに大きく上昇したのは買い戻しが主体とはいえ、市場が上に行きたがっている証だろう。 一方で、昨日は他にも好材料がいくつか確認された。一つは、米国の労働市場の減速を示すデータだ。前日に発表された11月ADP雇用統計の民間雇用者数の伸びは12万7000人と、市場予想の20万人を下回り、転職しなかった雇用者の賃金の伸びは2カ月連続で減速。また、同日に労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS)では、10月の求人件数が前月比35万3000件減少し、失業者1人に対する求人件数は1.7件と前月の約1.9件から減少した。一連のデータは、労働市場に由来する粘着性のあるインフレにトレンド転換のサインが出てきたと捉えられ、今後のFRBの利上げペース減速を裏付けるものといえる。 二つ目に中国の経済動向。前日、中国政府の対コロナ政策を担当する孫副首相が声明を発表しており、「(中国の)新型コロナとの闘いは新たな段階にある」と語った。会合後の発表文によると、ゼロコロナを意味する「動態清零」という言葉が使用されなかったもよう。ゼロコロナ政策の緩和に向けた動きと捉えられ、世界経済の景気後退懸念が和らぐものとして好材料と捉えられる。 さて、12月に入ったが、短期的には年内の株式市場については強含みが予想される。昨日発表された労働市場のデータから、週末に発表を控える雇用統計への警戒感は和らいでいる。市場予想では、雇用者数の伸びと平均賃金の伸びがともに前の月から減速することが見込まれており、予想通りとなれば、FRBの利上げペース減速期待がさらに強まりそうだ。 その前に、今晩には米11月ISM製造業景気指数が控えており、事前には景気の拡大・縮小の境界値である50割れが予想されているが、FRBの利上げペース減速、ひいては来年半ばの利上げ停止への期待が高まる中、さほど悪材料視されることはなさそうだ。また、今晩は米10月PCEコアデフレータも発表されるが、10月の卸売物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)が予想を大きく下振れていたことを踏まえると、市場の予想通り、前年比と前月比で伸びは減速し、株式市場にとってはポジティブな結果となる可能性が高いと考えられる。 来週以降については、9日と13日に、それぞれ米11月のPPIとCPIが発表されるが、前回10月分では、どちらも食品・エネルギーを除いたコア指数で明確な減速が確認されていた。前年の10月辺りから伸びが加速していたことも踏まえると、ベース効果で前年比の伸びは今後抑えられやすいと考えられ、11月分もネガティブサプライズの可能性は低いと予想される。 14日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル議長の記者会見があり、ここでは四半期に一度公表される政策金利見通しが注目される。これまでの高官発言からすると、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5%前後になる見通し。現在、金利先物市場が織り込んでいる水準もこのレベルになっており、大きなブレがなければ、FOMCは無風通過となろう。ここまでのシナリオで、大きなネガティブサプライズがなければ、年末にむけてのラリーが期待できそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/12/01 12:15
ランチタイムコメント
日経平均は4日続落、調整の範囲内も一段高には材料不足か
日経平均は4日続落。169.68円安の27858.16円(出来高概算5億4540万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でダウ平均は3.07ドル高(+0.00%)と横ばい。中国政府が高齢者対象のワクチン接種の強化計画を発表したことで、経済再開への期待感から買いが先行。しかし、長期金利の上昇を受けたハイテク売りが相場を押し下げた。一方、今晩の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演や週末の雇用統計などの重要イベントを控えるなか下値も限られた。ナスダック総合指数は−0.59%と3日続落。米ハイテク株安を受けた日経平均は141.17円安の27886.67円からスタート。今晩以降の米国発の重要イベントを前に警戒感が高まる中、持ち高調整の売りが優勢となり、指数寄与度の大きい値がさ株を中心に下落するなか、日経平均は終始28000円を割り込んだ水準での推移が続いた。 なお、午前に国家統計局が発表した中国の11月購買担当者景気指数(PMI)は、製造業が48.0と市場予想(49.0)を下振れ、10月(49.2)からも悪化。また、非製造業は46.7と市場予想(48.0)を大幅に下振れて、10月(48.7)からも大きく悪化した。 個別では、レーザーテック<6920>、ディスコ<6146>、ルネサス<6723>などの半導体関連が全般下落しており、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、HOYA<7741>、SMC<6273>、日本電産<6594>、ファナック<6954>、TDK<6762>、新光電工<6967>、ローム<6963>などの値がさ株を中心としたハイテク株も総じて軟調。メルカリ<4385>、エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>のグロース株も冴えない。大株主による保有株の一部売却が発表されたメタウォーター<9551>も大きく下落した。 一方、前日に急落したエーザイ<4523>が大幅に反発しており、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運大手3社は揃って大きく上昇。三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連も揃って上伸。IHIは国内証券による目標株価引き上げも好感されたようで、とりわけ上昇率が目立っている。ほか、日本製鉄<5401>、JFE<5411>の鉄鋼、大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>のチタン関連、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>の保険などが堅調。昭電線HD<5805>は国内証券による新規買い推奨、日本電波工業<6779>、オイシックス<3182>は国内証券による目標株価引き上げが好感されて大幅高。日本金属<5491>は会社リリースを材料に急伸している。 セクターでは精密機器、電気機器、サービスが下落率上位となった一方、海運、鉄鋼、保険が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 日経平均は4日続落と冴えない展開が続いている。一方、上向きの25日移動平均線が位置する水準まで下落してきたことで、短期的な過熱感は解消された。セオリー通りであれば、テクニカル的にはここからは押し目買いのチャンスとみられる。 一方で、今週はイベントが多いだけに押し目買いを躊躇せざるを得ない背景もある。今晩の米国市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がブルッキングス研究所主催のイベントで講演する予定で、発言が注目される。前日にかけて既に複数のFRB高官からタカ派発言が出ており、事前の警戒感が高まっている分、ネガティブサプライズの可能性は低いとみられる。ただし、一昨日までの米長期金利の大幅な低下が金融緩和的な状況を生み出していることを踏まえれば、タカ派な発言が出る可能性の方が高く、強気に傾きにくい。 また、想定内の発言にとどまったとしても、翌12月1日の米サプライマネジメント協会(ISM)が公表する11月製造業景気指数のほか、週末2日の米11月雇用統計を目前に控える中、あく抜け感は台頭しにくいだろう。加えて、1日には米雇用動態調査(JOLTS)の発表もあり、求人件数の結果次第では、雇用統計前に緊張感が高まる場面もあり得る。中国での新型コロナ感染再拡大を受けたサプライチェーン(供給網)の混乱を受けて、改めて景気減速への懸念も強まる中、拡大・縮小の境界値である50割れが予想されているISM製造業景気指数の結果を受けた市場反応も注目される。 先週は東証株価指数(TOPIX)の上昇が全体をけん引したが、その背景にあったゴールドマン・サックス証券(GS)によるTOPIX先物買いの勢いも一服してきた。GSは先週1週間だけでTOPIX先物を累計1万2000枚超も買い越しており(日中取引立ち会いに限る)、今週に入ってからも、週初の28日は1700枚超買い越していた。ただ、前日29日は900枚超の買い越しと1000枚を切ってきた。先週24日の約7500枚や22日の約3500枚の買い越しからの騰勢一服感は明らかだ。 FRBの利上げペース減速への期待から10月半ば以降は株価の上昇が続いてきたが、日経平均でいえば、28000円がちょうどフェアバリューとの見方も多く、この水準から一段と上昇するには新規の材料が必要だろう。1日の米10月個人消費支出(PCE)コアデフレータや2日の米11月雇用統計の平均賃金の伸びなどで、明確な減速が確認されるのをまずは待ちたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/30 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は3日続落、短期的には強含み継続の公算大
日経平均は3日続落。163.01円安の27999.82円(出来高概算5億6829万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でダウ平均は497.57ドル安(−1.44%)と大幅反落。中国政府の「ゼロコロナ」政策に対する市民の抗議行動の拡大を受けて、サプライチェーン混乱を懸念した売りが広がった。また、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁やセントルイス連銀のブラード総裁らが来年の利上げ継続の可能性に言及するなど、タカ派な姿勢を見せたことで、さらなる売り圧力となった。ナスダック総合指数は−1.57%と大幅続落。米国株安を受けて日経平均は171.33円安の27991.50円からスタート。ただ、寄り付き直後に27899.98円(262.85円安)まで下落した後はすぐに下げ渋る展開となった。ゼロコロナ政策の緩和への期待から香港ハンセン指数が大きく上昇していたことも投資家心理の下支えとなり、日経平均は前場中ごろには28055.91円まで下げ幅を縮めた。ただ、その後は騰勢一服となった。 個別では、レーザーテック<6920>、ルネサス<6723>、アドバンテスト<6857>などの半導体関連から、キーエンス<6861>、SMC<6273>、ダイキン<6367>、日本電産<6594>などの値がさのハイテク株が総じて下落。また、中国工場での混乱を通じた米アップルのスマートフォン生産への影響を懸念し、TDK<6762>、村田製<6981>、太陽誘電<6976>、イビデン<4062>などが大きく下落。中国武漢市での工場稼働停止を嫌気し、ホンダ<7267>が売られ、トヨタ自<7203>、日産自<7201>などの他の自動車株も軒並み売られている。エーザイ<4523>は、バイオジェンと共同開発しているアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」との関連性が考えられる2例目の死亡が報告されたことが警戒されて急落。バカマツタケの商業生産設備の着工の延期を発表した多木化学<4025>も急落となっている。 一方、三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>、りそなHD<8308>、東京海上<8766>、第一生命HD<8750>の金融が全般堅調。ファーストリテ<9983>のほか、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛・原発関連株も高い。グロース株ではSHIFT<3697>が逆行高。ほか、三越伊勢丹<3099>、高島屋<8233>、JR西<9021>、エアトリ<6191>のリオープン関連の上昇が目立つ。ベクトル<6058>は国内証券による新規買い推奨が好感されて急伸。太平洋セメント<5233>は国内証券によるレーティング格上げ、石原産業<4028>は国内証券による目標株価の引き上げを受けてそれぞれ大幅高。三櫻工業<6584>は大手自動車グループであるステランティス・グループから主力製品の一つであるブレーキ配管を受注したと発表し、大きく上昇した。 セクターでは金属製品、輸送用機器、機械が下落率上位となった一方、保険、銀行、空運が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の73%、対して値上がり銘柄は24%となっている。 日経平均は前引け時点で3日続落。ただ、朝方の売り先行後は前引けにかけて下げ幅を縮める動きを続けており、日足ローソク足は下ヒゲを伴った陽線を形成。上向きの25日移動平均線手前から反発する形となっており、底堅さが感じられる。前引け終値ではやや下回ったものの、心理的な節目の28000円を序盤から即座に回復したあたり、この水準での押し目買い需要は強いようだ。 中国での新型コロナ感染の再拡大と前日にかけての「ゼロコロナ」政策に反対する民衆デモの拡大を受けて、サプライチェーンが再び混乱するのではないかといった同国を巡る先行き不透明感が強まったことが、株式市場の下落につながったとされている。実際、中国河南省の省都、鄭州市にある米アップルの工場で混乱が生じていることを背景に、同社は今年、約600万台の「iPhoneプロ」の生産不足に陥る可能性が高いと報じられている。また、日本企業でも、ホンダが中国武漢市の工場の稼働を停止したと伝わっている。 一方、中国のデモについては、警備隊の派遣を通じてすでに沈静化しているようだ。今後の動向に注意は必要だが、むしろ、今回の一件で、中国政府がゼロコロナ政策の解除に向けてさらに前進する可能性も出てきたともいえる。直近の一連の報道を受けて、中国ゼロコロナ政策の緩和期待はいったん剥落していたため、ゼロコロナ政策緩和に向けた動きが今後再び出てくれば、株式市場にはポジティブに働きやすいだろう。 ほか、前日は米連邦準備制度理事会(FRB)高官からタカ派発言が相次いだ。タカ派筆頭とされているセントルイス連銀・ブラード総裁は、FRBがインフレ抑制のために来年、一段と利上げを行う必要が生じる可能性を金融市場が過小評価していると発言。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も、インフレは依然高過ぎるとし、さらなる引き締めが必要との見解を示した。さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も、利上げ幅の縮小については賛同している一方、「利上げの一時停止が近いとは考えていない」などと発言した。 こうした発言が株式市場の重石として働いたようだが、今週は元々、30日のパウエルFRB議長の講演や、週末の米雇用統計を前に警戒感が高まりやすかった。これを踏まえれば、今回の高官のタカ派発言を受けて、むしろ、後に残るイベントによるネガティブサプライズの可能性が低くなったとも捉えられる。また、一連のタカ派発言があった中でも、前日の米10年債利回りは3.683%と、先週末の3686%からむしろ小幅ながら低下している。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)も、来年5月前後の5%程度をピークとした予想に変化は生じていない。 前日の米国市場から本日の東京市場の動きをみて、改めて足元の株式市場の悪材料に対する底堅さが確認されたといえよう。もっとも、個人的には、来年の景気減速下での高水準の金利据え置きにより、米国経済の景気後退は不可避と考えているため、企業業績の悪化とともに中長期的には株式市場は低迷していくと予想している。ただ、今年前半のように、高官のタカ派発言などに対して大きく一喜一憂するような展開はもう終わったのだと考えている。今後の業績悪化を織り込むにはまだ時間がかかるとみられる中、目先はまだ株式市場の強含み基調が続きやすいと予想する。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/29 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は続落、来年にかけて弱気相場再来か?
日経平均は続落。175.24円安の28107.79円(出来高概算6億2388万株)で前場の取引を終えている。 前週末25日の米株式市場のNYダウは152.97ドル高(+0.45%)と続伸。感謝祭祭日後のブラックフライデーでの年末商戦入りへの期待感から買いが先行。株式や債券市場は短縮取引となり調整も見られたが、季節的な要因などから年末に向けた買いも目立ち相場を押し上げた。一方で、ハイテク株は携帯端末アップル(AAPL)の下落が重石となったほか、根強い金利先高観から売りが優勢となり、ナスダック総合指数は下落、まちまちな展開となった米株市場を横目に、日経平均は前週末比62.47円安の28220.56円と続落でスタート。その後は、マイナス圏での軟調な展開となっている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が軟調に推移、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株が下落した。ファーストリテ<9983>やソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>などの大型株も下落。ほか、株式売出による短期的な需給悪化を懸念された野村総合研究所<4307>、サッカーW杯における日本の敗戦で反動安の流れとなったハブ<3030>が急落した。サイバーエージェント<4751>、シンクロフード<3963>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。 一方、ストライク<6196>やM&Aキャピタルパートナーズ<6080>などの一部のM&A仲介関連株が堅調に推移した。保有する野村総合研究所の株式を全て売却すると発表したジャフコ グループ<8595>が急騰、そのほか、インテリジェント ウェイブ<4847>、チャーム・ケア・コーポレーション<6062>、酉島製作所<6363>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉄鋼、鉱業、不動産が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の21%、対して値下がり銘柄は74%となっている。 本日の日経平均株価は、米ハイテク株安の流れも重しとなりやや売りが先行している。今週の米国では週末の雇用統計など重要な経済指標のほか、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見など重要イベントが相次ぐことから、積極的な売買は手控えられるとの見方が強いことも背景にあるようだ。下落してスタートした後は、マイナス圏での軟調な展開となった。そのほか、中国・香港市況は軟調に推移、米株先物も売り優勢の展開が続いている。 一方、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした。その後は、上げ幅を広げたが、買いが続かず上値の重い展開となっている。米長期金利が3.6%台まで低下していることは、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって引き続き追い風となっている。ただ、日経平均株価が軟調に推移する中、前週末上昇した分の利食い売りが優勢。引き続き、個別材料株に物色が向かっており、前引け時点で東証マザーズ指数が0.28%高、東証グロース市場Core指数が0.49%高となっている。 今週は、米11月雇用統計や米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景気指数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、中国の購買担当者景気指数(PMI)など注目材料が多くある。また、30日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演が予定されている。米国のインフレ指標の大幅な減速が確認されて以降、米長期金利の低下と株価上昇の流れが続いているが、引き続き経済指標の結果やパウエル議長の発言に神経質に反応する展開に変わりはないため、今週からは再度注意を払っていきたい。 ブルームバーグは28日、「12月2日に公表される最新の米雇用統計では、雇用の伸びは米金融当局が求める下降軌道寄りにあることが示される見通しだ。」と報じている。11月の非農業部門雇用者数は前月比20万人前後の増加が見込まれ、雇用統計では平均時給の伸び鈍化も見込まれているという。ブルームバーグが集計した予想中央値は前年同月比4.6%増で2021年8月以来最小の伸びとなるようだ。失業率は前月と同じ3.7%と予想されている。 さて、10月CPIの減速確認により短期的に上昇基調が続いてきた。ただ、市場関係者の間では弱気相場はさらに続く余地があるとの見方が広がっている。米ゴールドマン・サックスの世界株担当チーフストラテジストであるピーター・オッペンハイマーは、値動きは今後さらに激しくなると予想しているという。また、S&P500種株価指数は来年「最後の」安値をつけたあと、年末には4000ポイントに戻して年初とほぼ同水準で終えるとのシナリオを示している。モルガン・スタンレーのリサ・シャレット氏も、来年は利上げの影響が明らかになるにつれて経済への懸念が強まっていくだろうと警鐘を鳴らしているようだ。 また、世界的に様々なリスクが散見されるなか、国際金融協会(IIF)は来年の世界経済成長率が金融危機後の2009年並みの低水準になると予測している。IIFによると、成長減速は戦争の影響が最も大きい欧州が中心になる見込みで、ユーロ圏は消費者・企業景況感の急激な悪化で2%のマイナス成長になると予想している。 25日のブルームバーグでは、「ドイツ連邦銀行は国内の金融安定状況が今年は悪化に大きく転じたとの判断を踏まえて警鐘を鳴らした」と報じている。ドイツ連銀は年次金融安定報告書で、成長見通し悪化やインフレ高止まり、金利とリスクプレミアム上昇に対する市場の反応を受けて銀行や保険会社、投資ファンドは既に損失を計上していると指摘。「エネルギー危機悪化や急激な景気の落ち込み、市場金利の急上昇でドイツ金融システムは甚大な圧力にさらされる恐れがある」とした上で、「結果として将来的な信用リスクが高まりつつある」と見解を示している。 先週の当欄でも示唆したが、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始めたため、大方の予想に反して12月末から大きな下落が生じる可能性もあるだろう。 やはり、インフレ指標の確認は非常に重要で、12月13日の米消費者物価指数の発表には注意が必要か。下落の要因が何になるかだれも予想はできないが、筆者も引き続き、12月末から来年にかけて株式市場が大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、売り優勢の展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄に物色が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/11/28 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり小反落、年末株高の期待は高いが・・・
日経平均は4日ぶり小反落。96.15円安の28286.94円(出来高概算5億1389万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場は感謝祭の祝日で休場。欧州市場では英FTSEが+0.01%、独DAXが+0.77%、仏CAC100が+0.42%と揃って堅調だった。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(11月)で参加者の多くが利上げペースの減速を支持していたことに続き、10月の欧州中央銀行(ECB)定例理事会の議事要旨で少数ながら一部の参加者が0.5ptの小幅な利上げを支持していたことが世界の中央銀行のハト派化を示唆したと捉えられたもよう。欧州株高を引き継いで日経平均は15.68円高からスタート。ただ、手掛かり材料難の中、前日に大きく上昇していた反動もあり、寄り付き直後から失速。その後一時持ち直したが、香港ハンセン指数の下落などが重石となり、前引けにかけてはだれる展開となった。 個別では、全体的に動意に乏しい中、塩野義<4507>、大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>、川崎汽船<9107>、キーエンス<6861>、ブリヂストン<5108>、電通グループ<4324>、ダイキン<6367>、ルネサス<6723>、ファナック<6954>などが軟調で、ハイテク株の軟調さがやや目立っている。ホシデン<6804>は自社株買いの終了が嫌気されているようだ。一方、東京電力HD<9501>、東京海上<8766>、ニトリHD<9843>、レノバ<9519>、INPEX<1605>、JR東海<9022>、JR西<9021>などが大きく上昇。サッカー・ワールドカップを機に人気化したサイバー<4751>は本日も大幅高。月次動向が好感された神戸物産<3038>やしまむら<8227>のほか、目標株価の引き上げが好感された川崎重<7012>、SANKYO<6417>、円谷フィHD<2767>も大きく上昇。今仙電機<7266>は自社株買いが好感された。 セクターではゴム製品、電気機器、医薬品が下落率上位となった一方、電気・ガス、鉱業、空運が上昇率上位になった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の44%、対して値上がり銘柄は49%となっている。 日経平均は前日終値からほぼ横ばいでの推移でしっかりとした基調を維持。テクニカル面では、日足一目均衡表で三役好転が続いているほか、上向きの25日移動平均線が75日線を下から上抜けるゴールデンクロスを示現するなど良好な形状となっている。 昨日の当欄でも指摘したグローバルマクロ系ファンドによるTOPIX先物買いが前日も観測された。昨日24日はTOPIXが8月17日以来となる高値を記録し、節目の2000ptを回復した。こうした中、24日には、ゴールドマン・サックス証券(GS)がTOPIX先物を7500枚近く大幅に買い越していた。前日23日には3500枚超買い越していたため、二日間で1万1000枚程の買い越しとなる。また、前日はJPモルガン証券(JPM)やドイツ証券も約1700−1900枚、TOPIX先物を買い越していた。 最近の市況解説記事では、世界経済の減速スピードが思った程までには悪くないといった内容のものが散見される。米国の経済指標がまちまちとはいえ、総じて低調なものが多い中、こうした論調にはやや疑問符が付くが、一方で確かに、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ幅縮小の期待が高まる中、FRBのスタンス変化を理由に、グローバルマクロ系ファンドがTOPIX先物の売り持ち高を解消することはそこまで不思議でもないだろう。 しかし、大阪取引所とBloomberg(ブルームバーグ)のデータによると、前日24日の時点での12月限TOPIX先物の建玉をみると、GSは約9500枚の買い持ち高となっており、直近二日間の大幅な買い越しにより、すでに売り持ち高から買い持ち高に転じてきていることが分かる。こうした点から、余程の買い材料でも出てこない限り、GSによるTOPIX先物の買い越しもすでに一服したのではないかと推察する。 日経平均も心理的な節目の28500円を手前に材料待ちの状態。こうした中、これまで日本株の下値を支えていた為替の円安・ドル高には一服感があり、今後はむしろ円高・ドル安への反転にも注意しなければならないところ。また、今晩のブラック・フライデーを皮切りに、米国は年末商戦が本格化するが、状況が明らかになるにつれ、今後徐々に景気悪化がクローズアップされる可能性もあろう。 下値の堅さや良好なテクニカル面、米中間選挙後の株高アノマリー、ハロウィーン効果(10月末に株式を買って翌年4月末に売るとパフォーマンスが良いアノマリー)などの条件を拠り所に、株式市場は年末株高への期待を根強く持っているようだが、危うさも同時に孕んでいることを念頭に置いておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/25 12:11
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日経平均は3日続伸、需給良好も一段の上昇には材料不足か
日経平均は3日続伸。332.84円高の28448.58円(出来高概算7億335万株)で前場の取引を終えている。 日本が祝日の間の22、23日の米株式市場でダウ平均は397.82ドル高、95.96ドル高と続伸。一部小売企業の好決算や低調な経済指標を受けた金利低下・ドル安を背景に買いが優勢となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では参加者の多くが利上げペースの減速を支持していることが判明し、さらなる金利低下を受けてハイテク株を中心に買いを後押しした。ナスダック総合指数は+1.36%、+0.99%と続伸。祝日明けの日経平均は257.98円高からスタートすると、取引開始して間もなく28502.29円(386.55円高)まで上値を伸ばした。ただ、心理的な節目の回復に伴う短期的な達成感から売りも出やすく、その後は騰勢一服。一方、時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移する中、下値は堅く、この日の高値圏での膠着状態が続いた。 個別では、レーザーテック<6920>を筆頭に東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などの半導体関連株が軒並み急伸。SHIFT<3697>、エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>のグロース株も全般大幅高となっており、サイボウズ<4776>は月次動向も好感されて急伸。子会社のりらいあ<4708>との業務提携が材料視されたチェンジ<3962>は東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出している。サッカー・ワールドカップでの日本のドイツに対する勝利でABEMAの視聴者数拡大が思惑視されたサイバー<4751>も急伸となった。ほか、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運大手や、三菱商事<8058>、三井物産<8031>の商社などの上昇が目立っている。 一方、為替の円高・ドル安を受けてトヨタ自<7203>、マツダ<7261>、三菱自<7211>の自動車関連が揃って軟調。東証プライム市場の売買代金上位ではソフトバンクG<9984>とファーストリテ<9983>がハイテク・グロース株高のなか逆行安。KDDI<9433>、JR東海<9022>のディフェンシブ系の一角のほか、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛3社が軟調となっている。 セクターでは海運、銀行、卸売を筆頭にほぼ全面高となっており、石油・石炭製品のみが下落している。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の86%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 日経平均は祝日の間の米国株高を好感して大幅続伸。一方、朝方に心理的な節目である28500円を一時超えた後は騰勢一服となっており、上値での戻り待ちの売りの根強さも窺える。ただ、米国市場が感謝祭の祝日を前に閑散ムードが広がっている中、本日の東京市場は前引け段階で東証プライム市場の売買代金が1兆8000億円台とそれなりの規模に達している。短期筋の先物買いが吊り上げているというよりはまとまった現物買いも入っているようだ。 祝日前の22日の東京市場では、午後にグローバルマクロ系のヘッジファンドから買いが入っているとの声が聞かれた。実際、当日の先物市場を振り返ると、日中売買高は日経225先物が3万1898枚だったのに対して、TOPIX先物が5万193枚と、長期目線の投資家が手掛けることの多いTOPIX先物の方が、商いが活発だった。その日の手口では、TOPIX先物でゴールドマン・サックス証券が3500枚超買い越していたほか、モルガン・スタンレー証券が2400枚近く買い越していた。上述のグローバルマクロ系ファンドの買い観測は当たっていた可能性が高いようだ。 前日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(11月1−2日開催)では、参加者の多くが利上げペースの減速で見解が一致していたことが判明しており、米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派スタンスの軟化が示された。これを受けて23日の米10年債利回りは3.70%と、東京市場の祝日入り前の21日時点での3.83%から大幅に低下した。本日はこうした金利低下を好感して、ハイテク・グロース株で大幅高となっている銘柄が多く見られる。 日経平均は10月3日の安値をボトムにした上昇トレンドに弾みをつけているほか、先週に約1年6カ月ぶりに52週移動平均線を超えたマザーズ指数も足元で上昇を加速させるなど、株式市場を巡る環境はかなり良好になってきている様子。今後、12月FOMCまでに発表される米国の賃金や物価指標でさらなる減速が確認されれば、株式市場は年末株高への勢いを強めることになりそうだ。 一方で、FRBは利上げペースの減速を支持している反面、利上げ停止については多くの高官が時期尚早との見解を示している。現在の市場コンセンサスでは来年3月会合での利上げが最後になる予想だが、一部のFRB高官は来年後半までの利上げを示唆しており、この点が明確化されてこないことは懸念材料だ。また、仮に来年前半で利上げが停止されても、利下げへの転換は相当にハードルが高い。来年、景気後退色が強まる中で高水準の金利が据え置かれることによる悪影響を、株式市場が楽観視している感が否めないことも気掛かりだ。 上述したように、グローバルマクロ系ファンドのTOPIX先物買いや、まとまった現物買いも観測されているが、来年の景気後退が不可避と捉えている投資家が多い中、実際、そうした動きが今後どこまで続くのかは不透明だ。こうした動きは、足元で過度に弱気に傾いていた持ち高を調整したものに過ぎないかもしれない。本日、日経平均が28500円手前で見事に伸び悩んでいるのも、こうした懸念が反映されている証のような気がするのは筆者だけだろうか。 日経平均でいえば需給面での要因から29000円程度までの回復余地はあるかもしれないが、そこから先、3万円を回復することについてはどうだろうか。今後の世界経済の動向を踏まえると、3万円回復には決定的に材料が不足しているという気がしてならない。高すぎるアナリストの業績予想が今後引き下げられる可能性を指摘する声もある。 全体の底上げが期待しにくい中、今後は投資家の選別力が重要になってくるだろう。米金利に頭打ち感がある中、外需に左右されにくい内需系グロース株などには妙味がありそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/24 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、利上げ停止期待と業績悪化懸念の拮抗がつづこう
日経平均は続伸。205.71円高の28150.50円(出来高概算6億1196万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でダウ平均は45.41ドル安(−0.13%)と小幅反落。新型コロナ感染急拡大により中国各地で都市封鎖が再開されたことを嫌気し売りが先行。連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派継続姿勢も重石となり、特にハイテク株が売られた。一方、サンフランシスコ連銀・デーリー総裁が行き過ぎた利上げに懸念を示したことが投資家心理を改善させ、引けにかけては下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は−1.09%と反落。一方、時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移している中、国内祝日を前にした売り方の買い戻しも入って、日経平均は114.72円高の28059.51円と節目を回復してスタート。前場中ごろには28203.35円(258.56円高)まで上昇したが、中国での新型コロナ感染再拡大を背景にアジア市況が軟調な中、買い上がる向きは少なく、その後は膠着感の強い動きが続いた。 個別では、為替の円安進行を背景にトヨタ自<7203>、マツダ<7261>、三菱自<7211>の自動車関連が大きく上昇。前日に米著名投資家ウォーレン・バフェット氏による買い増しで人気化した三井物産<8031>、三菱商事<8058>、住友商事<8053>、丸紅<8002>、伊藤忠<8001>の大手商社は揃って大幅続伸。サウジアラビアが石油輸出国機構(OPEC)プラスの12月会合に向けて台頭していた増産報道を否定したこともあり、INPEX<1605>、ENEOS<5020>なども高い。ほか、新型コロナ飲み薬の承認期待が高まっている塩野義<4507>、ヒートポンプ暖房の生産拠点の新設が材料視されたパナHD<6752>、主力製品の再値上げを発表した江崎グリコ<2206>などが大幅高となっている。 一方、ソフトバンクG<9984>のほか、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>の半導体関連や、ファーストリテ<9983>、メルカリ<4385>、エムスリー<2413>などのハイテク・グロース株の一角が軟調。東証プライム市場の値下がり率上位にはSREHD<2980>、ラクス<3923>、ギフティ<4449>、Sansan<4443>、チェンジ<3962>、インソース<6200>などの中小型グロース株が多く入っている。 セクターでは電気・ガス、輸送用機器、卸売を筆頭に全面高となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の81%、対して値下がり銘柄は16%となっている。 日経平均は28000円を回復して堅調推移。前日の米株式市場は反落となったが、明日の国内祝日を前に売り方の買い戻しが入っているもよう。日経平均は上向きの5日移動平均線上で推移しているほか、25日線が上向きの75日線を下から上に抜くゴールデンクロスの示現が目前に迫るなど、テクニカルな形状は良好だ。手掛かり材料難ではあるが、下値も堅い中、根強い年末株高への期待から、今後上放れしそうなチャートになってきた。 前日、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、金融政策の実体経済に及ぼす影響に時間差が伴うタイムラグ効果を踏まえて利上げの行き過ぎに懸念を示した。また、タカ派な発言が目立っていたクリーブランド連銀のメスター総裁からも、次回12月13−14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅縮小について賛同の意が示されるなど、米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢に軟化の兆しが改めて確認された。 こうした中でも、前日の米株式市場が反落したのは、市場の関心がすでにFRBの金融政策から企業の業績悪化など景気後退に移ってきているからであろう。なお、上述のメスター総裁は一方で、「利上げ停止に近づいているとは考えられない」ともしており、タカ派な姿勢も維持している。FRBが物価指標の中で最も重要視している個人消費支出(PCE)コアデフレータは最新の9月分で前年比+5.1%と、FRBのインフレ目標である+2%を大幅に超過している。 遅行データに頑なに固執した政策運営を疑問視する声も一部で聞かれるが、インフレ動向を見誤り、利上げ着手に遅れたFRBとしては、インフレのぶり返しを絶対に避けたいと考えているため、PCEコアデフレータの明確な減速と2%への収束が確信できるまでは高水準の金利を維持する可能性が高い。現在の市場コンセンサス通り、来年3月で利上げが停止されたところで、来年中の利下げへの転換にはハードルが高いため、景気後退が深まる中での高水準での金利据え置きとなり、企業業績の悪化が懸念されても不思議ではないだろう。 今後は12月に発表される米11月消費者物価指数(CPI)でのインフレ減速確認による株高期待と、来年度の米国企業業績のアナリスト予想の下方修正による株安懸念が拮抗する状態がつづこう。利上げ停止と年末株高への期待から下値は堅い一方、上値も重い状況が長期化するとみておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/22 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は続落、上昇スタートもマイナス圏に転落
日経平均は続落。28.68円安の27871.09円(出来高概算4億8908万株)で前場の取引を終えている。 前週末18日の米株式市場のNYダウは199.37ドル高(+0.59%)と反発。予想を上回った小売り決算を好感したが、ボストン連銀のコリンズ総裁のタカ派発言を受けて長期金利が一段と上昇すると金利高を警戒した売りに押され上げ幅を縮小した。ただ、景気減速の際に強いディフェンシブ株の買いが根強く、翌週に感謝祭の連休を控えた買戻しも強まり、プラス圏で終了。ナスダック総合指数は小反発、プラス圏で推移した米株市場を受けて、日経平均は前週末比82.23円高の27982.00円と反発でスタート。その後は、上げ幅を縮小してマイナス圏でのもみ合い展開となっている。 個別では、ソフトバンクグループ<9984>、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、INPEX<1605>が下落、業績予想の下方修正を発表したSOMPO<8630>やMS&AD<8725>などの保険株が大幅に下落した。NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信も軟調に推移した。ほか、前週末大幅に値を上げたLIFULL<2120>が利食い売り優勢に、ミクニ<7247>、東海カーボン<5301>、メドピア<6095>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。 一方、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの一部の半導体関連株が上昇、日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株、三菱商事<8058>や丸紅<8002>などの商社株も堅調に推移した。大阪チタ<5726>や東邦チタニウム<5727>も大幅に上昇、ソニーG<6758>やトヨタ自<7203>なども上昇した。そのほか、TDCソフト<4687>、CIJ<4826>、飯野海運<9119>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、保険、その他製品が下落率上位となった一方、鉄鋼、非鉄金属、卸売業が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 本日の日経平均株価は、米株高の流れを追い風にやや買い先行で取引を開始した。ただ、今週は経済指標などの目立った材料も少なく、日米ともに祝日を挟むことから、週を通じて商いは膨らみづらく様子見ムードも強まりやすいとみられている。前場中ごろにかけて上げ幅を縮小してマイナス圏に転落、その後は軟調もみ合い展開となった。そのほか、中国・香港市況は軟調に推移、米株先物もやや売り優勢の展開が続いている。 新興市場は軟調もみ合い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、前日終値付近まで下げ幅を縮小した。ただ、明確にプラス圏で推移することはできず、軟調もみ合い展開が続いている。FRB高官のタカ派発言を受けて米長期金利が3.8%台まで上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株は積極的には手掛けにくい。引き続き、個別材料株に物色が向かっているが、前引け時点で東証マザーズ指数が0.09%安、東証グロース市場Core指数が0.26%安となっている。 さて、一部のFRB高官からは利上げ停止には程遠いなどとタカ派的な発言が出ている。一連の高官発言を受けて、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が5%前後になるであろうことも織り込み済みであるほか、来年の世界経済の景気後退懸念を背景に、米長期金利の上昇余地も限られてきたとみられる。 ただ、ブルームバーグでは、「ディストレスト債投資を手掛けるオークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者ハワード・マークス氏は世界金融危機以降で有数の好機が訪れると見込む。」と報じられた。マークス氏は、消費者の志向変化と借り入れコストの上昇で、多くの企業が「深刻な苦境」に陥るだろうとみている。また、米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、FRBが高インフレ抑制に向けた追加利上げの方針から外れないために、米金融市場の一部にある構造的な脆弱性に比較的早期に対応する必要があると述べている。 10月CPIの減速確認により短期的に上昇基調が続いてきた。アナリストの買い推奨は過去最高近辺とのデータも存在しており、12月にかけて堅調な展開が続くことは想定しておきたい。ただ、やはり、インフレ指標の確認は非常に重要で、12月13日の米消費者物価指数の発表には注意が必要だろう。仮にここで、市場予想を上回ってインフレ減速が確認できない場合は、誰も予想できていないため株安要因となるだろう。 いまだに世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。暗号資産価格は、いまだに軟調に推移しておりFTX破綻の影響は長引くと考えられている。筆者は変わらず、12月13日のCPI発表まで上昇基調が継続したとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/11/21 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は反発、上値追いの材料待ち、グロース株は選別が重要
日経平均は反発。47.49円高の27978.06円(出来高概算5億5459万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でダウ平均は7.51ドル安(−0.02%)とほぼ横ばい。セントルイス連銀ブラード総裁のタカ派発言を受けて売りが先行し、序盤は大幅下落。失業保険申請件数の減少で労働市場の強さが証明され、利上げを後押しする結果となったことで一段安となった。その後、押し目買いや予想を上回った一部企業決算を好感した買いが下支えとなり、終盤にかけては下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は−0.34%と続落。一方、引け後に発表された米半導体企業の堅調な決算も手伝い、日経平均は79.25円高からスタート。時間外取引のナスダック100先物の堅調推移や香港ハンセン指数の上昇が支援要因になる一方、新規の買い手掛かりに欠ける中、上値は重く、28000円を挟んだ一進一退が続いた。 個別では、米アプライド・マテリアルズの予想を上回る決算を受けてアドバンテスト<6857>、ソシオネクスト<6526>の半導体関連の一角が上昇。為替の円安により日産自<7201>、三菱自<7211>の自動車も高い。インドの主要二輪車メーカーから燃料噴射システムを受注したミクニ<7247>は急伸。トランス・コスモス<9715>は国内証券による新規買い推奨が材料視された。ほか、前日の決算説明会の内容が好感された日本電波工業<6779>が大幅に上昇している。一方、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>のハイテク・グロース株が下落。キーエンス<6861>、HOYA<7741>、信越化<4063>など値がさ株も軟調。東証プライム市場の値下がり率上位にはメドピア<6095>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>など中小型グロース株が散見される。 セクターでは保険、繊維製品、輸送用危機が上昇率上位となった一方、海運、サービス、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の66%、対して値下がり銘柄は28%となっている。 日経平均は小じっかり。前日の米株式市場も軟調ではあったが総じて底堅く推移しており、下値の堅さを連日で確認する格好となっている。一方で、日経平均は28000円前後で何度も往って来いの展開になっているのは気がかり。決算発表も一巡し、新規の手掛かり材料に欠ける中、買い上がる決め手を見出しあぐねている様子だ。 前日はセントルイス連銀のブラード総裁が政策金利を5.00−5.25%へと引き上げることが「最低条件」との見解を示し、米株式市場は一時大きく下落する場面があった。ただ、同氏は米連邦準備制度理事会(FRB)高官内で最もタカ派とも呼べる存在であり、その点は踏まえて言動を捉えるべきであろう。また、そもそも、これまでの高官発言を受けて、すでにターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5%前後になるであろうことはほとんど織り込まれているため、特段のサプライズでもない。実際、米株式市場はその後急速に下げ幅を縮小して終えている。 一方、一昨日はウォラーFRB理事が「政策金利の引き上げは2023年の後半まで続く」などと発言していることもあり、FRBの利上げ停止時期が現在の市場コンセンサスである来年3月時点から延びる可能性は残されている。米国の10月の物価指標の明確な減速から、その可能性は低いとは思われるが、適宜挟まれる高官からのタカ派発言もある中、株式市場はどこまで上値を伸ばしていけるか見物だ。 ほか、前日の米株式市場では引け後に半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズの決算が発表された。一昨日、半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが市況見通しの下方修正を発表していたこともあり、警戒感は高まっていたが、22年11月−23年1月の売上高見通しが市場予想を上回り、同社株は時間外取引で3%程上昇している。一方、前日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1%超反発し、アプライドの無難な決算もある中でも、本日の東京市場では半導体関連株は高安まちまちで上値の重さが残る。前日の当欄でも指摘したが、好調が続いているロジック向けでもネガティブな材料が増えてこない限り、完全な悪材料出尽くしには至らないと考えられる。 ターミナルレートの上限が見えてきて、来年の世界経済の減速も懸念される中、米長期金利の上昇は抑えられ、これはグロース株の追い風になると予想されるが、景気との連動性が高い電気機器、機械などのセクターに属するハイテク系グロース株の上値は当面重いとみておきたい。グロース株の中でも景気連動性の低い内需系グロース株、情報・通信やサービスといったセクターに属する銘柄の方がパフォーマンスは良好とみられ、今後の投資戦略の参考にしていただきたい。 東京証券取引所が16日に発表した11月11日時点での裁定取引に係る現物ポジションは、前週末比178.63億円減(売り越し)とネットベースで194.44億円の売り越しとなった。 9月半ばには1兆2000億円超の買い越しとなっていた時もあり、裁定買い残が大きく解消されたことは需給面での重石が解消されたことになる。一方、売り越し幅がさほど積み上がっていないことから、買い圧力も働きにくい。短期筋による先物主導での動きが反映される裁定残がほぼネットベースで中立水準にある中、短期筋の先物持ち高もほぼ中立に近いのだろう。 米株式市場については、S&P500種株価指数(17日終値は3946)が200日移動平均(4070)を上回ってくれば、上場投資信託(ETF)など指数連動型のパッシブ資金の流入が加速するとの指摘も聞かれている。こうしたテクニカルな要因で何であれ、何か一つでもきっかけとなる材料があれば、東京市場でも短期筋の先物買い持ち高の積み上げが加速するとみられ、株価上昇に弾みがつきそうだ。今はまだきっかけ待ちだが、年末にかけては株高が続きやすいとみている。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/18 12:13
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日経平均は反落、リバウンドの脆さを露呈した半導体関連株?
日経平均は反落。112.72円安の27915.58円(出来高概算5億4024万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でダウ平均は39.09ドル安(−0.11%)と小幅反落。ディスカウント小売のターゲットが業績予想を下方修正したことで警戒感から売りが先行。一方、米10月小売売上高は予想を上回ったため、景気後退懸念が緩和して下支えとなった。終盤にかけては、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事のタカ派発言を受けて金利先高観が強まったことでハイテク株が大きく売られ、相場を押し下げた。ナスダック総合指数は−1.53%と大幅反落。日経平均は76.09円安からスタートすると、半導体関連株を中心にハイテク・グロース株に売りが先行する中、寄り付き直後に27910.01円(118.29円安)まで下落。その後は下げ渋ったが、香港ハンセン指数の大幅安が投資家心理を悪化させた。一時は心理的な節目の28000円を回復したが定着せず、同水準を前にした上値の重い展開が続いた。 個別では、米半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーの見通し下方修正を受けてレーザーテック<6920>が急落し、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>なども大きく下落。ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、信越化<4063>など値がさ株も軟調。新光電工<6967>、太陽誘電<6976>、TDK<6762>のハイテク株や、サイボウズ<4776>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>のグロース株のほか、住友鉱<5713>、大阪チタ<5726>の資源関連の一角も安い。東芝<6502>の買収案への参画が判明したローム<6963>は財務負担への懸念から大幅安。 一方、前日に10月訪日外国人旅行者数が前月比で2.4倍に急増したことが判明したことで、JAL<9201>、JR東海<9022>、高島屋<8233>などのインバウンド関連が軒並み大幅高。エアトリ<6191>は外資証券による新規買い推奨も手伝い急伸。ほか、世界最大級のエチレンプラントを受注したと伝わっている日揮HD<1963>、大型受注を発表した平田機工<6258>などが大きく上昇。上半期業績予想を上方修正したヤーマン<6630>はストップ高買い気配のまま終えている。 セクターでは電気機器、非鉄金属、ゴム製品が下落率上位となった一方、陸運、空運、食料品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の29%、対して値上がり銘柄は67%となっている。 日経平均は反落しているが、上向きの5日移動平均線に沿ったトレンドを大きくは脱しておらず、前日のナスダック指数やフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅安だったことを踏まえれば、かなり健闘している印象を受ける。一方で、28000円を超えると途端に上値が重くなる動きが続いていることは気がかり。米国のナスダック指数も同様だが、物価指標の改善後の長期金利の低下トレンドが続いているにも関わらず、上値の重さが感じられる点は買い上がる向きが少なく、むしろ売り需要の強さを示唆しており、ネガティブに捉えられる。 前日、米半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが市場環境に対応するため、DRAMとNANDのウエハーを6−8月期比で約20%減産する方針を明らかにしたと伝わっている。同社は「来年の市場見通しは最近になって弱くなった」と説明しているという。これが前日のSOX指数の急落につながった。先週、業績予想を大幅下方修正したにもかかわらず株価の大幅高が続いていた東京エレクトロン<8035>の動きから、半導体関連株の底入れ感が強まってきた印象があったが、水を差された格好だ。 しかし、ノートパソコンなど民生向け市場の落ち込みで半導体のメモリ市場が急減速していることは既に3カ月ほど前からも分かっていることで、今回の情報に目新しさはない。むしろ、直近の株価上昇率が大きく反動が出やすかったとはいえ、ほとんど既知の情報に対して大きく反応するのは、足元の半導体株のリバウンドの脆さを露呈したといえる。 今後気を付けなければならないのは、ロジック分野の落ち込みだ。半導体各社の見通しが相次いで下方修正されているが、総じてメモリ向けが弱いのに対してロジック向けは依然として好調と強気の姿勢を維持したままの企業が多い。しかし、人工知能(AI)など最先端機能を備えた産業向けに多いロジックの需要は、たしかに民生向け中心のメモリに比べて底堅いとはいえ、新型コロナによる供給網の混乱期に過剰な前倒し発注が行われた可能性は高い。このため、現在メモリから始まっている半導体業界における在庫調整の波が今後ロジックを襲うことは十分に考えられる。いまの半導体関連の株価にロジックの調整は織り込まれていないとみられ、今後の決算においてロジック分野での需要について会社側からのトーンが低くなることには注意しておきたい。 前日は米連邦準備制度理事会(FRB)高官からのタカ派発言も米株式市場の重石となった。ウォラーFRB理事は「政策金利の引き上げはまだまだ続く、2023年の後半まで続く」などと発言したもよう。また、FRBの利上げペース減速を最初に示唆したサンフランシスコ連銀総裁のデーリー総裁も「利上げ停止は議論になっていない」などと発言し、タカ派的な姿勢を見せた。こうした中でも、景気後退懸念を映してか、米10年債利回りは16日、3.69%と一段と低下した。 長期金利が再び大きく上昇してこない限り、株式市場の下値は堅いと思われるが、昨日の米国市場と本日の東京市場をみる限り、本格的な上昇もなかなか期待しにくい。前日の米株式市場では半導体銘柄が大きく下落したが、それ以外でも、電気自動車大手のテスラが大きく下落し、年初来安値の更新を窺う展開となっている。半導体やテスラといった指数へのインパクトが大きい銘柄が弱いと、全体相場もなかなか盛り上がることが難しいだろう。 一方で、こうした中でも、東京市場では業績良好な銘柄で年初来高値を更新しているものも多い。今年上半期のように何でも売られるような局面はすでに終わっていると考えられ、投資家の銘柄選別力が試されるフェーズに入ってきたといえそうだ。 後場の日経平均は引き続き心理的な節目の28000円を挟んだもみ合いが続くと予想される。先週から相場のけん引役となってきた半導体関連株が日米そろって崩れている中、今晩の米国市場では半導体大手アプライド・マテリアルズの決算も予定されており、決算内容と株価反応が注目される。金利が低下基調にある中でもナスダック指数の下落が続くのか、この点についても焦点となってこよう。 全体的に不穏な空気が漂う中、前日、日本政府観光局(JNTO)が発表した10月の訪日外国人旅行者数が前月比で2.4倍に急増したことが判明した。新型コロナ感染拡大前の2019年の同月比では80%減と依然として低水準だが、インバウンド需要の鍵を握る中国が規制緩和の兆候を見せていることもあり、今後の回復期待は高いだろう。本日は関連銘柄も久々に動意づいており、再びリオープン・インバウンド関連銘柄への物色を検討してもよい頃合いかもしれない。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/17 12:14