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ランチタイムコメント 日経平均は反発、「強弱感交錯」から「様子見」へ?  日経平均は反発。116.59円高の27365.46円(出来高概算6億3000万株)で前場の取引を終えている。 週明け7日の米株式市場でNYダウは1ドル高とほぼ横ばいで取引を終えた。新型コロナウイルス感染者数の減少による経済活動の回復期待や、春節明けの中国株の上昇を支えに景気敏感株などに買いが入った。一方、長期金利の高止まりからハイテク株に売りが出て、ナスダック総合指数は-0.58%となった。東京市場では前日、米金利上昇を受けてグロース(成長)株を中心に株価下落しており、本日の日経平均はその反動もあって69円高からスタートした。前場中ごろに差し掛かり27461.33円(212.46円高)まで上昇する場面もあったが、引き続き主要中央銀行による金融引き締めやウクライナ情勢の緊迫化への懸念が根強く、10日の米1月消費者物価指数(CPI)発表やその後の3連休を前に上値を追う動きは限られた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、塩野義<4507>、トヨタ自<7203>などがまずまずしっかり。塩野義<4507>は月内にも新型コロナ飲み薬の承認を申請する方針と伝わったが、上値では利益確定売りも出ているようだ。郵船<9101>や商船三井<9104>は2%超上昇し、川崎船<9107>は5%の上昇となっている。製品の値上げを発表したコカBJH<2579>、決算発表のタカラトミー<7867>やマルハニチロ<1333>は急伸。また、DI<4310>やシグマクシス<6088>、名鉄<9048>が東証1部上昇率上位に顔を出している。一方。ソニーG<6758>や任天堂<7974>がさえない。オリンパス<7733>は連日で売りがかさみ6%超の下落。決算発表・業績修正銘柄ではグリー<3632>などが急落し、エンビプロHD<5698>やDIC<4631>が東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、水産・農林業、海運業、空運業などが上昇率上位。一方、パルプ・紙、その他金融業、精密機器などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の62%、対して値下がり銘柄は33%となっている。 前場の日経平均は一時200円あまり上昇したものの、その後やや伸び悩む展開となった。日足チャートを見ると、1月27日取引時間中の安値26044.52円から2月2日取引時間中の高値27564.62円まで急ピッチのリバウンドを見せたのち、ここ数日は27000円台前半でのもみ合いが続いている。本日は27300円台に位置する5日移動平均線水準を維持しようとする動き。売買代金上位では高配当の海運株、米金利上昇が材料視される金融株の買いが続き、その他全般に小じっかりという印象だ。値がさグロース株は反発しつつも、上値の重い印象が拭えない。前引けの日経平均が+0.43%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.52%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱と先週に比べやや減っている。 新興市場ではマザーズ指数が-0.89%と4日続落。日経平均の反発につれて前場中ごろまで上昇する場面もあったが、米金利の高止まりで新興グロース株の先行きに対する個人投資家の警戒感はなお強いのだろう。新興市場銘柄では本日、マザーズのJTOWER<4485>やジャスダックのハーモニック<6324>が決算発表を予定している。また、IPO(新規株式公開)では明日9日、ライトワークス<4267>が新規上場する。ここまでリカバリー<9214>、セイファート<9213>と2社続けて公開価格割れスタートを強いられており、個人投資家のセンチメントをはかるうえでもライトワークスの株価動向を注視したい。 さて、日経平均はここまで1日の当欄「早々に戻り売り目線?」での「目先26000~27000円台でもみ合う展開」という予想に沿った値動きと言えるだろう。値動き的には一段高への期待を残す格好となっており、1月25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)にかけて積み上がった売り持ち高の買い戻し、それに新型コロナ感染減少や堅調な企業決算も支えとなる。一方、引き続き主要中央銀行による金融引き締めへの懸念も強く、グロース株の買い意欲が高まりづらい。それに全体として戻り売り目線の投資家も多いだろう。 日経平均と同様、米国でもNYダウが戻り一服後、35000ドル近辺でもみ合う展開となっている。個別株では決算を受けた動きがあるとはいえ、日米とも株価指数の方向感に乏しくなり、市場参加者からは「どうにもやりようがない」などといった嘆き節も聞かれる。現物株、先物とも徐々に売買が落ち着きつつあるのは、市場のムードが「強弱感交錯」から「様子見」へ変わってきたことを映しているのかもしれない。 前日の米市場で原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)は1バレル=91.32ドル(-0.99ドル)と7日ぶりに反落したが、米金融大手ゴールドマン・サックスは商品市況について「何もかも欠乏して」おり、「今のような市場は見たことがない」などと指摘したと海外メディアが報じている。コストプッシュによるインフレへの懸念も拭えず、10日発表の米1月CPIへの注目度が一段と高まりそうだ。 また、国内でも本日はソフトバンクG、明日はトヨタ自と注目企業の決算発表が相次ぎ、これらの内容を見極めたいとの思惑も出てくるだろう。アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が反落していることもあり、後場の日経平均は上値の重い展開が続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/08 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は反落、米金利高など嫌気、米CPI後のポジティブシナリオの実現性は?  日経平均は反落。236.33円安の27203.66円(出来高概算6億7075万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でNYダウは21.42ドル安(-0.06%)と小幅続落。1月雇用統計の想定以上の強い結果を受けて年内の利上げ観測が一段と強まるなか金利上昇が嫌気され、寄り付き後下落。雇用の改善で消費拡大期待も強まりダウは一時上昇に転じるも引けにかけては再び失速。一方、オンライン小売りアマゾンの好決算による急伸が支援し、ハイテクは終日堅調推移、ナスダック総合指数は+1.57%と大幅反発となった。一方、先週末に既にアマゾンの好決算を織り込んでいたこともあり、週明けの日経平均は112.36円安と反落スタート。米10年国債利回りの上昇を嫌気したハイテク・グロース(成長)売りが先行し、朝方に27085.32円(-354.67円)まで下落する場面があった。ただ、心理的な節目の27000円を意識した買い戻しも入り、その後は急速に下げ渋った。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、キーエンス<6861>などのハイテク株のほか、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>、ラクス<3923>などのグロース株が総じて軟調。郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株は大幅安。先週末に決算を発表したところでオリンパス<7733>、太陽誘電<6976>、イビデン<4062>などが大きく下落。業界再編機運の後退を嫌気した動きが再燃したかSUMCO<3436>、信越化<4063>のシリコンウエハー関連も大幅下落。 一方、ソフトバンクG<9984>が大幅高で、米金利上昇を追い風に三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>も上昇。日本製鉄<5401>、INPEX<1605>、住友商事<8053>などの資源関連、武田薬<4502>や日本郵政<6178>などの高配当利回り株も堅調。決算が好感されたダイフク<6383>、スクエニHD<9684>、三菱製鋼<5632>、日東紡績<3110>などは急伸。 セクターでは海運業、精密機器、金属製品などが下落率上位に並んだ。一方、保険業、銀行業、パルプ・紙などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の58%、対して値上がり銘柄は37%となっている。 週明けの日経平均は売り先行でスタート後はやや下げ渋ったものの、3桁の下落幅で前場を終えた。25日移動平均線の回復が依然遠いなか再び5日線を割り込む展開となっている。 米1月雇用統計での非農業部門雇用者数は前月比46万7000人増と市場予想の12万5000人増を大幅に上回った。また、平均賃金の伸びは前月比で0.7%増、前年同月比5.7%増とともに市場予想を上回った。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の影響が想定されていたにも関わらず、非常に力強い労働市場の回復が示され、個人消費の高まりなど景気支援要因が期待される一方、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念が一段と強まる形になった。 さらにWTI原油先物価格は1バレル=92ドルと7年ぶりの高値を付けており、雇用統計の結果と合わせて踏まえるとインフレ高進への警戒感は一段と高まったといえよう。実際、先週低下に転じていた米長期金利は再び1.9%台まで大幅に上昇している。一方、こうしたなかでも、先週末の米国市場でアマゾンの好決算などを背景にナスダックが大幅高となったことはポジティブに捉えられる。これまでの相場動向を踏まえれば、企業の好決算よりも、金融引き締め懸念が強まる内容となった雇用統計をネガティブに捉える動きの方が強めに出てもおかしくなかったはずだ。 この動きを楽観的に捉えるなら、年始からの目まぐるしいハイ・ボラティリティー(変動率)相場変遷を受けて、市場は金融政策の不透明感に伴う相場調整を一気に織り込み、企業業績などファンダメンタルズを反映しやすい状況になってきたと考えられる。 今週10日には注目度の高い米1月消費者物価指数(CPI)が予定されている。総合のCPIは前年同月比7.3%上昇と、前年比での伸びが1982年前半以来の大きさになったと見込まれている。現時点で既にある程度CPIの結果は織り込まれているだろうが、実際に結果を受けた直後の相場反応が、今後の相場展開を占ううえで注目される。 年始からの動向を踏まえれば普通に考えて、CPIが記録的な伸びでかつ市場予想も上振れた場合、相場は再びFRBの金融引き締めへの警戒感から深押しするだろう。しかし、予想を上振れた場合でも相場が大きく下げないようなことがあれば、雇用統計後のナスダック大幅高の動きが正当化される。つまり、上述した1月ハイボラ相場の間に市場は金融引き締めの不透明感を相当に織り込んだという仮説の説得力がより強まることになる。この場合、好決算だったにもかかわらず買いが続かなかったハイテク・グロース株などには押し目買いが効いてくる可能性があろう。 しかし、週明けの東京市場をみても、市場の金融引き締めを巡る疑心暗鬼は依然根強い。上述のCPI後のポジティブシナリオも、週末の雇用統計を踏まえた上でのあくまでの一仮設に過ぎず、蓋然性は高くはない。また雇用統計後のナスダック高につても、今晩の米国市場でナスダックが大きく下げれば、先週末の株高はあや戻しに過ぎなかったということになり、シナリオの前提も崩れる。今晩の米国市場が底堅く推移した場合には、ポジティブシナリオの可能性が存続するため、その時は頭の片隅でも置いておいてほしい。 他方、上記のシナリオは短期的な話。中長期では、やはり長年の超金融緩和策の反転、緩和マネーの縮小や、積み上がったレバレッジの解消といった、これまでの相場支援要因の巻き戻しを想定せざるを得ず、長期トレンドは下方向を維持しておいた方がよいと考えている。 さて、後場の日経平均はもみ合いになると予想する。アジア市況では春節明けの中国株式市場が上昇しているが、これは休場中だった先週一週間の世界の株式市場の回復を遅れて反映しているに過ぎない。他方、香港ハンセン指数や時間外取引の米株価指数先物はやや軟調な展開となっている。手掛かり材料難のなか、日経平均は27000~27500円を意識したレンジ相場が続きそうだ。 <AK> 2022/02/07 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続落、随所に見られる「強弱感交錯」  日経平均は小幅続落。7.48円安の27233.83円(出来高概算6億7000万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに大幅反落し、518ドル安となった。英イングランド銀行(中央銀行)が追加利上げに踏み切ったほか、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も年内の利上げの可能性を否定しなかったことから、幅広い年限で金利が上昇。メタ(旧フェイスブック)の決算を受けた株価急落も投資家心理を冷やし、ハイテク株を中心に売りが広がった。ナスダック総合指数は-3.73%と大幅に下落し、本日の日経平均もこうした流れを引き継いで145円安からスタート。寄り付き後はメタの急落を前日にある程度織り込んでいたこと、またアマゾン・ドット・コムが時間外取引で急伸したことなどから、朝方に一転27336.12円(94.81円高)まで上昇する場面もあった。しかし、前場中ごろには一時27075.99円(165.32円安)まで下落するなど、方向感に乏しい展開となった。 個別では、キーエンス<6861>が2%の下落となり、ソフトバンクG<9984>も軟調。レーザーテック<6920>やソニーG<6758>は小安い。決算発表銘柄では花王<4452>が6%超の下落。また、UACJ<5741>、カドカワ<9468>、板硝子<5202>、古河電<5801>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>や川崎船<9107>が大幅に上昇。ともに前日は前引け後の決算発表を受けて荒い値動きとなったが、改めて配当利回りの高さなどから買いが入っているようだ。商船三井<9104>も堅調で、業績予想の上方修正が好感された任天堂<7974>は4%超の上昇。また、日ケミコン<6997>、コナミHD<9766>、冶金工<5480>や川崎船が東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、ガラス・土石製品、輸送用機器、不動産業などが下落率上位。一方、海運業、その他製品、倉庫・運輸関連業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の51%、対して値上がり銘柄は43%となっている。 本日の日経平均は方向感に乏しい展開となっており、小安い水準で前場を折り返した。日足チャートを見ると、27200円台に位置する5日移動平均線を割り込んでスタートしたのち、同線水準を取り戻そうと陽線を引く格好。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりと前日並みに多く、強弱感が交錯している印象を受ける。個別株を見ても、海運株が前日から決算を受けて荒い値動きだ。前引けの日経平均が-0.03%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.13%。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、業種別騰落状況も同様となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-1.98%と続落。第2四半期決算が赤字転換したメルカリ<4385>は売買代金トップで9%の下落となり、指数を押し下げている。一方、売買代金2位のFRONTEO<2158>は株価持ち直しに期待した買いが優勢となっており、ここでも強弱感の交錯が窺える。なお、本日はセイファート<9213>がジャスダック市場に新規上場し、公開価格比-8.0%という初値を付けた。前日上場した2022年IPO(新規株式公開)第1号のリカバリー<9214>に続き厳しい滑り出しである。リカバリーは公募・売出金額が20億円弱あったが、セイファートは10億円弱だ。この規模でも取引開始当初の換金売りを吸収するだけの買いが入らないところに、個人投資家のセンチメントの弱さが透けて見える。 さて、英BOEは政策金利を0.25%引き上げて0.5%としたほか、保有資産の縮小を開始。また、金融政策委員会(MPC)メンバー9人のうち4人は0.5%の利上げを主張し、金融市場では英利上げ加速を織り込む動きが強まった。ECBでも年内利上げの可能性が浮上。このところ米連邦準備理事会(FRB)要人らが3月の0.5%利上げに消極的な姿勢を見せ、主要中銀による金融引き締めへの懸念は和らぎつつあったが、こうしたBOEやECBの動向を受けて再浮上してきた格好だ。 米債券市場では10年物国債利回りが1.83%(+0.06%)となるなど、幅広い年限で金利が上昇した。また、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)が7年4カ月ぶりに90ドル台に乗せる一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.38%(-0.03pt)に低下。グロース(成長)株にとって逆風となるだろう。 また、米ハイテク大手の決算と時間外取引での株価動向が連日話題となっている。前の日に急落を強いられたメタに反し、アマゾンが時間外取引で急伸。昨年10-12月期の1株利益が市場予想を大きく上回ったことが好感されたようだ。もっともこれは11月に上場したリヴィアン・オートモーティブの株式評価益が押し上げたもので、1-3月期の売上高見通しは市場予想に届かず、実態として良好とは言えないとの見方もある。今晩の米市場での株価動向を見極めたいところだろう。 それに本日は米1月雇用統計も発表される。前哨戦のADP雇用統計では非農業部門雇用者数が予想外に減少し、新型コロナウイルス感染拡大による雇用悪化はある程度想定されているだろう。それ以上に注目されそうなのが賃金の伸びである。サービス部門の雇用者数が落ち込んでいることで平均賃金が予想以上に伸び、インフレ懸念を強めるのではないかといった見方も出てきている。 こうした状況を踏まえれば、強弱感が交錯するのもうなずけるだろう。後場の日経平均も方向感に乏しい展開が続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/04 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は5日ぶり反落、個人の更なるセンチメント悪化に不安  日経平均は5日ぶり反落。305.66円安の27227.94円(出来高概算6億5000万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でNYダウは4日続伸し、224ドル高となった。1月のADP雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想に反して減少したが、金利低下やアルファベットの好決算が支えとなり、ハイテク株を中心に買いが入った。しかし、取引終了後に発表されたメタ(旧グーグル)の決算が失望され、同社を含むSNS(交流サイト)関連銘柄が時間外取引で揃って急落。本日の東京市場でもナスダック100先物の下落を受けて値がさグロース(成長)株を中心に売りが先行し、日経平均は202円安からスタートした。寄り付き後は軟調もみ合いの展開となり、前場中ごろを過ぎると27165.93円(367.67円安)まで下落する場面があった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が7%超の下落。ほかに東エレク<8035>、キーエンス<6861>、任天堂<7974>といった値がさ株や、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎船<9107>といった海運株の軟調ぶりが目立つ。今期業績予想を上方修正したソニーG<6758>だが6%超下落しており、同じく決算発表のエムスリー<2413>やパナソニック<6752>、1月の国内「ユニクロ」既存店売上を発表したファーストリテ<9983>も大きく下落。また、IT・インターネット系の中小型グロース株に売りが出て、メドピア<6095>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、塩野義<4507>やデンソー<6902>は3%超上昇し、トヨタ自<7203>もしっかり。豊田通商<8015>などは決算を受けて大きく買われ、新日科学<2395>が東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、電気機器、海運業、機械などが下落率上位。一方、ゴム製品、パルプ・紙、輸送用機器などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は31%となっている。 メタを中心とした米ハイテク株の時間外取引での急落に加え、国内でもソニーGやエムスリーなどの値がさ株に決算を受けた売りが出たことで、本日の日経平均は300円あまりの下落で前場を折り返した。もっとも売り一辺倒ということでもなく、日足チャートを見ると27100円近辺に位置する5日移動平均線水準で下げ渋っている。値動き良化への期待は何とか保てている状況だろう。日経平均への寄与が大きいところでは、ファーストリテが約94円、東エレクが約59円、エムスリーが約36円の押し下げ要因となっている。これら値がさ株に加え海運株なども軟調ぶりが目立つが、一方で自動車関連に見直しの動きがある。前引けの日経平均が-1.11%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.67%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとなっている。 新興市場ではマザーズ指数が-4.74%と5日ぶりに大幅反落。東証1部市場でもIT・ネット系の中小型グロース株が下落率上位に多く顔を出しているが、マザーズ市場はそうした傾向が色濃く出ている。引け後に決算発表を控えたメルカリ<4385>は7%近い下落。度々指摘しているとおり、昨年11月からの下落局面で信用買い残が増えており、決算発表前に手仕舞いしようという個人投資家が多いことが窺える。また、本日はリカバリー<9214>がマザーズ市場に新規上場した。2022年最初のIPO(新規株式公開)だったが、初値は公開価格比-13.7%となった。ここまで新興株が大幅下落してきた経緯から、IPO時の価格設定も難しくなってきた。また、さほど大型でない案件でも上場中止となるものが出てきており、IPOを巡る環境の悪化が懸念される。 さて、注目を集めているメタの決算は昨年10-12月期の1株利益やユーザー数の伸び、それに1-3月期の売上高見通しなどが市場予想に届かず、時間外取引で約20%も急落したという。同社は経済環境の悪化による広告主の予算制約の影響などと説明しているもようで、他のSNS関連銘柄にも売りが波及した。一方で、20%も急落するような決算内容なのかと疑問を呈する声も少なからずある。 コール(買う権利)オプションの買い観測などが聞かれた電気自動車(EV)のテスラのように、仮想空間「メタバース」への期待が高かったメタもハイテク株の戻りに乗じて買い持ちを増やす動きがあった可能性がある。今回の「メタ・ショック」が強気の買いを入れていた投資家のセンチメントに冷や水を浴びせてしまったのは明らかだろう。本日の東京市場を見ても、個人投資家に人気のレーザーテック、海運株、マザーズ銘柄の下落が大きい。逆張り志向が強く、下落局面で買い支え役となる個人投資家の一段のセンチメント悪化は今後の不安材料となりそうだ。(小林大純) <AK> 2022/02/03 12:23 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に4日続伸、想定超のリバウンドも間もなく一服か  日経平均は大幅に4日続伸。419.12円高の27497.60円(出来高概算6億6223万株)で前場の取引を終えている。 1日の米国株式市場でNYダウは273.38ドル高(+0.77%)と3日続伸。良好な企業決算に加え、予想を上回った1月ISM製造業景況指数や12月JOLT求人件数を好感。ISM指数の支払価格の上昇を受け長期金利が上昇に転じると、売りが強まる場面も見られた。しかし、全国34州でコロナ入院患者が減少したとの統計を受け、回復期待が強まったことで景気敏感株がけん引し再び上昇。引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数も+0.74%と3日続伸。米株高を引き継いで日経平均は224.51円高でスタート。米アルファベットやAMDが好決算を発表し時間外取引で急伸していることも投資家心理の改善につながった。日経平均は27500円手前で一時伸び悩む場面があったが前場中頃には同水準を突破。前引け間際に失速したものの本日の高値圏で終えている。 個別では、レーザーテック<6920>、スクリン<7735>などの半導体関連株のほか、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>、三菱UFJ<8306>、日立<6501>、、信越化<4063>、リクルートHD<6098>、日本製鉄<5401>などセクターを問わず主力株が総じて高い。SHIFT<3697>、ZHD<4689>、Sansan<4443>などの強さが目立ち、グロース(成長)株の買い戻しが相対的に強い印象。好決算を発表したキーエンス<6861>、アシックス<7936>、野村<8604>、ANA<9202>などは大幅に上昇し、業績予想を上方修正したアイロムG<2372>、ラクスル<4384>なども大幅高。一方、商船三井<9104>などの海運株のほか、ファーストリテ<9983>、NTT<9432>などが軟調。大塚商会<4768>、ベネフィット・ワン<2412>、カルビー<2229>、マンダム<4917>などは決算が失望感を誘い、大幅に下落。 セクターでは空運業、証券・商品先物取引業、鉄鋼を筆頭にほぼ全面高。一方、海運業、電気・ガス業のみが下落。東証1部の値上がり銘柄は全体の90%、対して値下がり銘柄は7%となっている。 本日の日経平均は前引けにかけて失速したものの、前場の間にあっさりと27500円を回復すると、同水準上で長く推移する時間帯があった。昨日は、午前の大幅高の後に急失速し、結局下落に転じたこともあり、先週末からの戻りは一服したものかと思われた。 昨日の米国市場では、一昨日の月末最終営業日と同様、主要株価指数が揃って引けにかけて上げ幅を広げるなど引け味の良い形で終わった。一昨日の大幅高については、年金基金等のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いが指摘されており、昨日はその反動安も懸念されるところだったが、良い意味で裏切ってくれたことで、足元の投資家心理が一段と改善したようだ。また、引け後に決算を発表したGAFAM銘柄の一角であるアルファベットや半導体企業AMDが時間外取引で急伸していたことも、値がさハイテク・グロース株の買い戻しに弾みをつけたと考えられる。こうした好材料が重なったことが、本日の日経平均の27500円回復の要因の一つだろう。 また、昨日までの米連邦準備制度理事会(FRB)高官らによる発言の影響も大きいと思われる。1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長の会見は金融政策の先行き不透明感をむしろ強めてしまう最悪も同然の内容で、その後も、米アトランタ連銀のボスティック総裁が3月FOMCでの0.5%の利上げを示唆などと報じられ、悪材料が続いた。しかし、昨日にかけて、まずボスティック総裁が、上述の一部で報じられた3月の0.5%の利上げは本意でない発言したことが伝わったほか、他の複数の高官からも、緩和縮小にあたっては実体経済へ混乱を及ぼさないよう慎重に進めることが肝要との発言が相次いだ。また前日には、米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が経済データ次第としながらも基本的には3月の利上げ幅として0.5%は望ましくないと発言。 こうした一連の高官発言などが米金融政策の先行きに対する過度な警戒感を緩和し、売り方の買い戻しに弾みをつけたのだろう。また、相場が大きく戻るなか商品投資顧問(CTA)などの短期筋も買いに乗じた可能性があり、こうした動きが本日までの大幅なリバウンド基調の背景と考えられよう。 しかし、米金融政策の先行き不透明感が払しょくされたわけではない。上述の高官らの発言も、経済データ次第では想定以上にタカ派に振れる可能性を残している。こうした中、今週末には米1月雇用統計が控えており、平均賃金の伸び次第では、週明けからは再び金融引き締め懸念が高まる可能性もある。日経平均が次の節目の28000円を回復するにはまだ材料不足と思われ、さすがに今日までの強いリバウンド基調も間もなく一服するだろう。リバウンドを楽しめる賞味期限は楽観的にみても今週いっぱいと捉えておいた方がよさそうだ。 中国市場や香港市場が休場のなか、後場の日経平均は27500円を挟んだ一進一退が続くとみられる。ただ、上述した通り、リバウンド基調が間もなく一服することを考えれば、後場はやや騰勢一服感が強まると考えられ、失速には注意したい。逆に、27500円を優に上回って終えることができれば、明日以降のリバウンドの短期継続も考えられよう。 <AK> 2022/02/02 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、早々に戻り売り目線?  日経平均は3日続伸。192.68円高の27194.66円(出来高概算7億3000万株)で前場の取引を終えている。 週明け1月31日の米株式市場でNYダウは大幅続伸し、406ドル高となった。1月のシカゴ購買部協会景気指数が市場予想に反して上昇したほか、金利が落ち着いて推移していたこともあり、ハイテク株を中心に買いが入った。これまでの大幅な株価下落で、年金基金等のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いが入っているとの指摘もあった。ナスダック総合指数は+3.40%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+5.44%となった。本日の日経平均は米株高を引き継いで165円高からスタート。引き続き良好な企業決算が多く見られることも相場を押し上げ、日経平均は前場中ごろに一時27410.79円(408.81円高)まで上昇した。ただ、先週末からの戻りが急ピッチだったことから、上値では利益確定の売りも出て急速に伸び悩む場面があった。 個別では、郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株の上昇が目立つ。前日は商船三井が業績・配当予想の上方修正を発表して急伸したが、本日も郵船の業績観測が報じられて買いが続いている。ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>といった値がさ株も堅調。新型コロナウイルス飲み薬の試験結果を公表した塩野義<4507>は9%超上昇し、7&iHD<3382>は百貨店のそごう・西武売却報道を受けて4%近い上昇。決算発表銘柄ではTDK<6762>が11%超上昇し、Jパワー<9513>なども急伸している。一方、売買代金トップのレーザーテック<6920>は受注計画引き上げを好感した買いが先行するも、失速して2%超の下落。トヨタ自<7203>は小安い。業績下方修正の日本精工<6471>、樹脂製品の第三者認証に絡み不適切行為があったと公表した東レ<3402>は急落している。 セクターでは、海運業、陸運業、電気機器などが上昇率上位。一方、繊維製品、鉱業、ガラス・土石製品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は37%となっている。 引き続き米株の戻りや良好な企業決算が相場を押し上げ、本日の日経平均は一時400円あまり上昇したが、その後失速して前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日の上昇で26800円台に位置する5日移動平均線を上抜けたが、本日は27000円台半ばに迫り上ひげを付けた格好。米ハイテク株高を受けて買いが先行した東エレクなどは寄り付き直後を高値に長めの陰線を引いており、上値の重い印象が拭えない。レーザーテックの失速は半導体関連企業の決算ハードルの高さを窺わせる。1月の下落局面で信用買い残を積み上げてきたこともネックだろう。 半面、前日はアルプスアル<6770>、本日はTDKが決算を受けて急伸しており、電子部品株に見直しの動きがある。Jパワーは前期、電力市場価格の高騰を受けて業績予想を取り下げた(価格高騰のマイナス影響がネガティブサプライズだった)経緯があるだけに、今回上方修正されたことは安心感につながるだろう。加えて、海運株も同様だが配当利回りの高さが注目されている面もありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりに膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+3.83%と大幅に3日続伸。引き続き米ハイテク株高を追い風に主力IT株が買われ、戻りを試している。一時800pt台を回復する場面もあったが、そこからは日経平均と同様にやや上値が重い。3日に決算発表を控えるメルカリ<4385>の動向が目先の焦点となりそうだ。 さて、1月の騰落率は日経平均が-6.22%、NYダウが-3.32%などとなり、年金等のリバランス買いの規模はかなり大きいとの観測が伝わっている。実際、ここ2日ほど東証株価指数(TOPIX)先物に海外勢の買い戻しの動きが見られるものの、現物株の賑わいの方が目を引く。 また、米国ではアトランタ連銀のボスティック総裁が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%利上げする可能性を示唆しつつ、「自分の望む政策ではない」などと述べたことで金利が伸び悩み、ハイテク株買いを後押しした。金融大手の投資判断引き上げが観測された電気自動車(EV)のテスラは10%を超える上昇となった。同社を巡っては、著名投資家キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベスト・マネジメントの買い増しが伝わるとともに、コール(買う権利)オプションの買いが再び活発化しているとの指摘もある。 ただ、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め姿勢に転じ、流動性相場の終えんが意識されつつあるなか、米個人投資家のこうした行動には危うさを感じざるを得ない。日本でも市場全体の信用買い残高がなお高水準であり、同様のことが言えるだろう。 米金融大手のストラテジストが米株の一段安リスクを指摘するなど、引き続き先行き警戒感は根強い。また、先週の株価急落局面で積極的に買い向かった日本の個人投資家だが、ここ2日のネット証券の取引状況を見ると、日経レバETF<1570>が早々に売り超に転じてきている。戻り売りの目線は日経平均で27000円近辺まで引き下がっているのだろう。決算発表シーズン中は堅調な企業業績が下支えとして機能しそうだが、それでも日経平均は目先26000~27000円台でもみ合う展開になるとみておきたい。 なお、本日は日本でキーエンス<6861>、村田製<6981>、HOYA<7741>、ANA<9202>などが、米国ではアルファベット、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、ゼネラル・モーターズ(GM)などが決算発表を予定している。また、1月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数や12月の米求人件数(JOLT)も発表される。(小林大純) <AK> 2022/02/01 12:25 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、グロース大幅反発も短期リバーサルの範囲内  日経平均は続伸。264.55円高の26981.89円(出来高概算5億7986万株)で前場の取引を終えている。 28日の米国市場でNYダウは564.69ドル高(+1.65%)と4日ぶり大幅反発。ウクライナ情勢や連邦準備制度理事会(FRB)の大幅な利上げを警戒した売りから寄り付き後下落。ただ、注目となっていた10-12月期雇用コスト指数が予想を下回る伸びにとどまったため金利が低下。アップルやビザの好決算も手伝い、ハイテクを中心に買われ上昇に転じた。ナスダック総合指数は+3.12%だった。一方、時間外取引で米国株高の動きを先週末に一部織り込み済みだったため、日経平均は26.74円安でスタートすると、26541.65円(-175.69円)まで下げる場面があった。しかし、ハイテク・グロース(成長)株を中心に買い戻しが強まるなか早々に切り返す展開に。時間外取引の米株価指数先物が下げ幅を縮めるなか、日経平均は前引けまで上げ幅を広げる動きが続き、26995.65円まで上昇した。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>などの半導体関連のほかソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、村田製<6981>などハイテクが上昇。商船三井<9104>や川崎汽船<9107>などの海運株やINPEX<1605>も高い。また日本電産<6594>、OLC<4661>、HOYA<7741>、エムスリー<2413>などのグロース株が総じて強い動き。自社株買いを発表したリクルートHD<6098>は6%近い上昇。好決算が評価されたアルプスアルパイン<6770>は急伸し、トプコン<7732>はストップ高まで買われ、ZOZO<3092>も大幅に上昇。一方、米長期金利の低下を受けて三菱UFJ<8306>、東京海上<8766>など金融株が下落。業績予想を下方修正したオムロン<6645>や中部電力<9502>が大幅に下落し、東京電力HD<9501>などは連れ安の形に。 セクターでは精密機器、サービス業、鉱業などが上昇率上位に並んだ。一方、保険業、電気・ガス業、銀行業などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の72%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 本日の日経平均は朝安後に切り返すと上げ幅を300円近くにまで広げ、心理的な節目の27000円を窺う位置まで回復した。先週末に時間外取引の米国株の動きを織り込んでいたこともあり、28日の米国市場でナスダックなどが大幅高となるなか夜間取引の日経平均先物は軟調だった。そのため、週明けも反動安などが懸念されたものの、しっかりと続伸してきたことは評価できる。恐怖指数とも呼ばれる変動性指数の米VIXが30台から20台へと低下してきたこともあり、市場心理の改善が買い戻しを促しているようだ。日経平均は27000円を早々に回復できれば、再び同水準を下値支持帯とした展開にも期待がもてそうだ。 本日は、直近まで相対的に強かった三菱商事<8058>などの商社や、住友鉱<5713>などの商品市況関連の銘柄の動きが鈍い一方で、下値模索の展開を続けていたマザーズ指数が4%を超える大幅反発となっている。東証1部でもSHIFT<3697>、JMDC<4483>、ラクス<3923>など下落のきつかったグロース株の多くが大幅に反発しており、年始からの物色のリバーサル的な動きが見られている。 ただ、こうした動きが継続性する可能性は高くない。年始からの下落率の大きさを踏まえれば、先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過し、これから決算を迎えるというタイミングで一旦これまでの動きの反動が出てきても不思議ではない。しかし、先週のマザーズ銘柄の弁護士ドットコム<6027>の動きなどを見ている限り、決算ハードルはかなり高く、決算後も買いが続くとは考えにくい。また、決算が一巡してくる2月半ばにもなれば、再び3月のFOMCに向けた思惑が台頭してくるだろう。さらに、今週末には金融政策の決定に重要な米1月雇用統計の発表が控えており、これを前にグロース株の反発基調が長く続くことも考えづらい。本日の動きはあくまで短期的なリバーサルと捉えておいた方がよいだろう。 さて、後場の日経平均の動きには注目だ。前場に一気に27000円回復を窺うところまで切り返してきたが、結局、同水準の完全回復にはまだ至っていない。本日の間にこの水準を回復し、終値でも維持できれば、投資家心理は一段と改善し、今後の好決算銘柄に対しても素直に評価する動きが出やすくなるだろう。週明け早々に東京市場は目先の正念場を迎えた。 <AK> 2022/01/31 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は4日ぶり大幅反発、それでも不安定な展開が続きそう  日経平均は4日ぶり大幅反発。549.76円高の26720.06円(出来高概算6億6000万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でNYダウは小幅に3日続落し、7ドル安となった。昨年10−12月期の国内総生産(GDP)成長率が市場予想を上回り、一時600ドルあまり上昇したが、連邦準備理事会(FRB)による急速な金融引き締めへの懸念から伸び悩んだ。テスラや半導体関連の下落が目立ち、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-1.39%と反落。一方、日経平均は前日に米連邦公開市場委員会(FOMC)結果を受けて800円を超える大幅下落を強いられており、本日は買い戻しが先行する形で259円高からスタートした。朝方は戻り待ちの売りも出て伸び悩む場面があったが、信越化<4063>などの良好な決算を追い風に、前場中ごろを過ぎると一時26731.02円(560.72円高)まで上昇した。 個別では、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、郵船<9101>、トヨタ自<7203>などが堅調。前述の信越化は第3四半期決算が市場予想を上回る大幅増益となり、同時に通期予想や期末配当の上方修正を発表して7%を超える上昇となっている。その他決算発表銘柄ではアドバンテス<6857>が買い優勢で、新光電工<6967>や野村不HD<3231>は急伸。また、富士電機<6504>はファイズHD<9325>などとともに東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、売買代金トップのレーザーテック<6920>は米半導体株安を受けて2%超の下落。東エレク<8035>も小安い。決算発表銘柄ではキヤノン<7751>が売り優勢。また、部材不足の影響が出た富士通<6702>は9%の下落となり、コーセーRE<3246>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、輸送用機器、化学、パルプ・紙などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのは鉄鋼のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の89%、対して値下がり銘柄は9%となっている。 前日の大幅下落の反動、それに良好な企業決算もあり、本日の日経平均は500円を超える上昇で前場を折り返した。日本でも10-12月期の決算発表が本格化し、富士通のように部材不足や原材料高の影響を受ける企業が散見される一方、信越化や新光電、富士電のように良好な内容のものが多く見られる。直近の株価下落がきつかったためだろうが、本日のところは好決算に割と素直に反応している点も安心できる材料だろうか。もっとも、これら銘柄や日経平均は朝方伸び悩む場面もあり、戻り待ちの売りの根強さも感じられた。業種別騰落率は景気敏感セクターを中心に全般堅調だが、鉄鋼が下に振らされる格好。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりで、FOMC通過直後の前日並みに膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+0.44%と反発。ただ、ここまで前日終値を挟みもみ合う展開を強いられている。前日は6%を超える下落となり、終値で2020年4月22日以来の安値を付けただけに、戻りの鈍い印象は拭えない。前日の決算発表前にストップ安水準まで売り込まれた弁護士コム<6027>は、注目される電子契約サービスの伸びがまずまず好印象だったように思う。しかし、本日は寄り付き直後を高値に失速。ジャスダックでも業績上方修正の東映アニメ<4816>が売りに押される展開となっている。ここまでの新興株安による個人投資家のダメージの大きさ、それに中小型グロース(成長)株に対する先行き警戒感の根強さが窺える。 伸び悩みが鮮明なマザーズ指数や日経ジャスダック平均はともかく、500円を超える上昇となっている日経平均もここ3日間の下落幅(1418.07円安)の半値戻し、あるいは日足チャートで26900円近辺に位置する5日移動平均線に達しておらず、自律反発の域を出ないだろう。前日の日経レバETF<1570>の押し目買いに絡み後場一段と強含む可能性はあり、26000~26500円あたりを目先の下値メドとみていた向きは意を強くしそうだが、先行きに十分警戒しつつ取り組む必要があるのには変わりない。 かくいう筆者も昨年末、1株指標の増額とPBR(株価純資産倍率)のレンジ推移を想定したうえで、2022年の日経平均の下値メドを26500円としていた。21年の日経平均のPBR推移を見ると8月に1.17~1.18倍あたりまで低下したところが底だったが、昨日再び1.2倍を割り込むところまで低下している。しかし、米国の金融引き締めにより景気減速懸念が浮上するなか、従来のバリュエーションレンジが有効かどうか改めて検討する必要はある。昨年9-11月期の決算発表を挟んだここ1カ月は1株指標がやや減額傾向にあったが、今回の10-12月期決算発表を受けて増勢に復帰できるかという点にも注目したい。 いつものとおり米市場の動向にも目を向けると、10年物国債利回りが1.80%(-0.06pt)に低下する一方、2年物については1.19%(+0.04pt)に上昇。FRBによる利上げとそれに伴う景気抑制が意識され、利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)が一段と進む格好となった。NYダウの伸び悩みやナスダック総合指数の反落を見ても、金融引き締めへの懸念の根強さがわかる。 金融政策を巡る不透明感だけでなく、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が30.49(-1.47)と高止まりしている点も気掛かり。月末から月初にかけて、VIX上昇に伴いリスク削減の売りが出てくることが想定される。目先は不安定な相場展開が続くとみておいた方がよいだろう。なお、本日は国内でOLC<4661>やKDDI<9433>の決算、米国で12月個人所得・個人支出(PCE)やキャタピラーなどの決算が発表される。(小林大純) <AK> 2022/01/28 12:21 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に3日続落、米金融引き締め懸念はむしろ強まった  日経平均は大幅に3日続落。690.00円安の26321.33円(出来高概算6億8000万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でNYダウは続落し、129ドル安となった。連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の会見は、3月以降全ての会合での利上げを否定せず、また利上げ実施後の量的引き締め(QT)の方針も示すなど、タカ派的な内容と受け止められた。短期の年限を中心に金利が急上昇し、会見前には大幅上昇する場面もあったNYダウは急速に伸び悩んだ。ナスダック総合指数は+0.02%と小幅に上昇。一方、本日の日経平均はFOMC通過による買い戻し、それに日本電産<6594>やファナック<6954>の決算を好感した買いが先行し、128円高からスタートした。しかし、米金融引き締めへの警戒感が一段と強まったことで値がさグロース(成長)株を中心に売りが広がり、前引けにかけて26305.51円(705.82円安)まで下落する場面もあった。 個別では、売買代金上位のレーザーテック<6920>とソニーG<6758>が6%前後、ソフトバンクG<9984>が8%超の大幅下落。前述の日本電産は寄り付きをこの日の高値に失速し、4%超の下落で前場を折り返した。その他売買代金上位も東エレク<8035>、郵船<9101>、トヨタ自<7203>など軒並み軟調。決算発表銘柄では日東電<6988>なども売りがかさんでおり、サイバー<4751>は東証1部下落率上位に顔を出している。一方、前述のファナックが伸び悩みながらも3%の上昇で前場を折り返し、ガビロン穀物事業の売却が評価された丸紅<8002>も3%近く上昇している。決算発表銘柄ではキヤノンMJ<8060>が急伸。また、業績・配当予想を上方修正したクロスキャット<2307>が東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、精密機器、サービス業、情報・通信業などが下落率上位で、その他も全般軟調。鉱業、保険業の2業種のみ上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の90%、対して値上がり銘柄は7%となっている。 FOMC通過後の日経平均はあく抜け期待に反し、大幅な下落を強いられる展開となっている。取引時間中としては2020年11月26日以来の安値を付ける場面もあった。米金利上昇を受けて値がさグロース株の下げがきつく、東証1部下落率上位には中小型グロース株が多くランクインしている。米金融引き締めによる景気悪化が懸念されているのだろうが、景気敏感株もグロース株ほどではないにしろ軟調。日経平均の-2.55%に対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.98%となっている。日本電産の大幅下落やファナックの伸び悩みを見ると、今後の企業決算に対する株価反応にも警戒せざるを得ないか。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりと、値幅の大きさに伴いかなり膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が-5.78%と大幅反落。こちらも取引時間中としてはコロナショック直後の2020年4月24日以来の安値を付けている。東証1部市場と同様、中小型グロース株への逆風が一段と強まり、メルカリ<4385>を中心に主力IT株は軒並み軟調。前日にマクアケ<4479>が決算を受けてストップ安まで売り込まれたのが意識されてか、本日決算発表が控えている弁護士コム<6027>は一時ストップ安を付けている。従前指摘していたとおり、メルカリなど人気のマザーズ銘柄では信用買いを膨らませて押し目を拾う動きが見られていた。そうした銘柄もここにきて一段安を強いられ、個人投資家のダメージはかなり大きいとみておいた方がよいだろう。 さて、FOMC後のパウエルFRB議長の会見は、3月以降全ての会合での利上げを否定しなかった、また利上げ実施後の量的引き締め(QT)の方針が示された、などの点で想定よりタカ派的と受け止める市場関係者が多かったようだ。また、明確な言質も与えなかったことで金融政策の不確実性が高まったとの指摘があり、更なる引き締め加速への懸念はむしろ強まった感がある。 やはりと言うべきか、米債券市場では3月FOMCでの0.25pt以上の利上げを織り込む動きが強まり、2年物国債利回りが1.15%(+0.13pt)に急上昇。10年物も1.86%(+0.09pt)に上昇した。原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)は地政学リスクの高まりから1バレル=87.35ドル(+1.75ドル)に上昇したが、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.38%(-0.03pt)に低下している。 その割にNYダウは129ドル安にとどまり、「事前に持ち高削減の売りはかなり出た」との見方を強める市場参加者もいたようだが、むしろ戻りが鈍かったと受け止めるべきだろう。実際、NYダウ先物は時間外取引で下落している。直近では景気減速懸念から景気敏感株にも売り持ちを増やす動きが見られたが、FOMC直前のウクライナ情勢を巡る相場乱高下の際にこれらの買い戻しを先食いしてしまった感がある。 これらの結果、金融引き締めを意識してグロース株を中心に持ち高縮小の動きが続くだろう。もちろん日本株もそれと無縁ではいられない。前引けのTOPIX下落率がぎりぎり2%に届かず、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施が見込みづらいことから、後場の日経平均も不安定な展開になるとみておきたい。なお、本日は日本で信越化<4063>、キヤノン<7751>、富士通<6702>などの決算、米国で昨年10-12月期国内総生産(GDP)や12月耐久財受注、アップルなどの決算が発表される。企業業績や米経済指標も注視しておく必要があるだろう。(小林大純) <AK> 2022/01/27 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は続落、明日のFOMCは無風通過か?  日経平均は続落。107.26円安の27024.08円(出来高概算5億1074万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でNYダウは66.77ドル安(-0.19%)と小幅反落。ウクライナを巡る緊張に加え、日本時間明日未明に結果公表を控える連邦公開市場委員会(FOMC)への警戒感から売りが続いた。ただ、アメリカン・エキスプレスなどの企業の好決算や5年債入札の結果を受けた安心感からNYダウは一時上昇に転じる局面もあった。ハイテク株への売りは続きナスダック総合指数は-2.27%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は-3.70%とそれぞれ大幅に反落した。小幅安にとどまったNYダウを受け日経平均は25.36円安でスタート。寄り付き直後に一時27184.54円(+53.20円)とプラスに転じる場面もあったが、FOMCの結果公表を目前に控えるなか買い手に乏しくすぐに失速。早々に27000円を割り込むと下値模索の動きが続いたが、引けにかけては急速に下げ渋り27000円を回復した。 個別では、米ハイテク株安を受けて東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連株のほか、村田製<6981>、TDK<6762>、ローム<6963>などが下落。本日大引け後に決算発表を控える日本電産<6594>とファナック<6954>は出尽くしへの警戒感から4%近く下落。また、22年度に6年ぶりとなる過去最高の世界生産台数の計画を発表したトヨタ自<7203>は足元の減産報道から計画への懐疑的な見方もあり下落、デンソー<6902>も安い。一方、傘下の英アームの新規株式公開(IPO)の準備について伝わったソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>が大幅高。郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの海運株、三菱UFJ<8306>、日本製鉄<5401>、住友鉱<5713>などの景気敏感株の一角も高い。ほか、ベイカレント<6532>、HOYA<7741>、マネーフォワード<3994>などグロース(成長)株の一角も買われている。 セクターでは石油・石炭製品、パルプ・紙、食料品などが下落率上位に並んだ。一方、その他製品、海運業、精密機器などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の44%、対して値上がり銘柄は49%となっている。 本日の東京市場では主要株価指数がまちまち。イベント前に大型株を手掛けにくいなか日経平均や東証株価指数(TOPIX)は軟調だが、幕間つなぎの物色でJASDAQ平均とマザーズ指数は小幅ながら上昇している。東証1部全体では値上がり数と値下がり数の割合はほぼ拮抗しており、FOMC前の模様眺めの雰囲気が伝わってくる。前場、日経平均は一時26858.68円まで下げる場面があり、売り仕掛けのような動きも見られたが、前引けにかけては再び27000円を回復するなど、心理的な節目を意識した底堅さも見られた。 さて、明日はいよいよFOMCの結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見の内容を織り込むこととなる。市場ではすでに年4回の利上げと年央からの量的引き締め(QT)はほぼ織り込み済みだ。焦点は3月の利上げ幅が0.25%と0.5%のどちらなのか、量的緩和縮小(テーパリング)のペースを一段と加速した上でQTの前倒しがあるのかといった点だろう。 足元、米国では経済指標の下振れが目立つ。12月の小売売上高が前月比1.9%減と市場予想を大きく下振れたほか、18日に発表されたNY連銀製造業景気指数は予想の25.0を大幅に下回る−0.7だった。また、24日に英IHSマークイットが発表した1月の購買担当者景気指数(PMI)の総合は50.8と前月から6.2ポイントも低下し、1年半ぶりの低水準となった。さらに、前日に発表された1月リッチモンド連銀製造業指数は8と前月から半減し、予想の14も大きく下振れた。 前日には国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表し、世界経済全体の実質成長率は4.4%と昨年10月時点の予測から0.5pt引き下げられた。特に際立たったのが、1.2pt引き下げられた米国と0.8pt引き下げられた中国だ。米国では長期化するインフレやバイデン政権が進める大型歳出・歳入法案の遅れ、金融政策の引き締めなどが反映され、中国は感染封じ込めのための厳しい「ゼロコロナ」政策による内需停滞が要因だ。22年の米国の成長率は4.0%と21年の5.6%から大きく後退し、中国は4.8%と21年の8.1%から大幅に低下する。 米国をはじめとした各国の経済指標の下振れ傾向に加え、世界経済大国のツートップである米中の景気見通しの大幅下方修正は景気減速懸念を一層高めるような内容だ。米10年国債利回りは19日に一時1.9%を付けた後は足元1.7%台半ばで安定している。また、ドル円は1ドル=116台の高値を付けた後は失速し、足元では113円台後半だ。米長期金利やドル円の上昇一服は、景気減速の兆候が見られるなかでのFRBによる金融引き締めが景気後退を招くのではないかとの不安を表していると考えられる。 一方、昨日に発表された米11月S&Pコアロジック・ケース・シラー・住宅価格指数は前年同月比+18.3%と引き続き高い伸びではあったが、10月の同+18.5%からは伸びが鈍化し、伸びが減速したのは4カ月連続となった。 インフレ指標への反映に遅行性のある平均賃金や住宅価格の伸びがインフレ長期化の懸念を強めているわけだが、後者の住宅価格については若干ながらもこのように鈍化の兆候が見られている。ベース効果などの影響もあり、市場では年央からのインフレ鈍化というシナリオも根強い。こうした背景もあり、足元の経済・物価指標を見る限りでは、さすがのFRBも景気やマーケットに配慮し明日のFOMC結果公表において、市場予想を上回るような過度な引き締め策を発表することはないのではと考えている。その通りとなれば目先のあく抜け感から相場の反発も短期的には期待できそうだ。しかし、昨年12月からのFRBの急速なタカ派転換は目覚ましく、都合のよい予想が裏切られるリスクもあろう。投資家には慎重な対応を求めたい。 後場の日経平均は引き続き27000円を意識した一進一退となりそうだ。アジア市況が小高いなか、時間外取引の米株価指数先物も本日は今のところ落ち着いている。材料難のなかイベント直前に持ち高を大きく動かす向きは少ないとみられ、後場は落ち着いた展開が想定される。 <AK> 2022/01/26 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、値幅ほどの悲観は不要か?  日経平均は大幅反落。561.14円安の27027.23円(出来高概算6億1550万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でNYダウは99.13ドル高(+0.28%)と7日ぶりに反発。ウクライナ情勢の緊迫化や25-26日開催予定の連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした警戒感から寄り付き後下落。NYダウは一時1100ドル超下落したが、売られ過ぎとの見方や値ごろ感からの買いから下げ渋ると、引け間際に買戻しが加速し主要株価指数は上昇に転じて終了。一時下落率が5%程だったナスダック総合指数は結局0.62%の上昇と5日ぶりに反発。ただ、前日に時間外取引の米株価指数先物の上昇を受けて先んじて上がっていた日経平均は売りが先行し121.55円安と反落してスタート。時間外の米株指数先物が下げ幅を広げるなか東京市場では売りが続き、日経平均は一時27006.37円(-582円)まで下げた。 個別では、前日に大幅高となっていた郵船<9101>、川崎汽船<9107>などの海運株が急反落。リクルートHD<6098>、日本電産<6594>、ベイカレント<6532>などのグロース(成長)株でも下落が目立っており、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>などの半導体関連株や、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、信越化学<4063>などの主力株も大幅安。トヨタ自<7203>や三菱UFJ<8306>のほか、日本製鉄<5401>、三菱商事<8058>、INPEX<1605>などの資源関連株も総じて軟調。第3四半期決算の発表を延期した日本M&A<2127>、第1四半期好決算も地合い悪化で出尽くし感に繋がったインソース<6200>などが東証1部下落率上位に並んだ。一方、地政学リスクの高まりが刺激材料となった石川製作所<6208>、業績予想を上方修正した共立印刷<7838>が急伸した。 セクターでは海運業、サービス業、機械などを筆頭に全面安となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は6%となっている。 本日の日経平均は想定以上の大幅安となっている。前日の米国市場はNYダウが一時1100ドルも急落した後に急速に下げ渋ってプラスに転じるという、なかなかしびれる展開だった。一時急落していたナスダックとフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も揃って反発に転じ、SOXに至っては+1.31%と大幅反発にまで至った。 前日の日経平均は朝安後に切り返してプラス圏に浮上する強い動きを見せていた。背景として、時間外取引のナスダック100先物などの大幅高があったことから、昨晩の米株市場の上昇はすでに織り込み済みだったとも解釈できるが、さすがに、NYダウの1100ドルの下げからのプラス転換を織り込んでいたとは考えにくい。あれだけの急落から切り返してプラスに転じたのだから、むしろ、本日も米株の売り一巡感を好感して多少なりとも上昇してもよかったくらいではとも思う。 そういう意味では今日の東京市場の動きには正直落胆せざるを得ない。しかし、前引け時点での東証1部の売買代金は1兆5000億円台と、まずまず活況ながらも値幅の割には商いが膨らんでいない印象。また、前日の先物手口でも、日中の指数の乱高下にも関わらず目立った手口は少なかった。一方で本日のネット証券の売買代金ランキング上位では日経レバETF<1570>がなかなかの活況ぶり。つまるところ、地政学リスクという分かりやすい悪材料が浮上してきたのに加え、前日の米株市場の値幅の大きさなど高いボラティリティーを目の当たりにした個人投資家が日経レバの売買を通して指数の変動幅を大きく見せている可能性がある。その一方で機関投資家はそこまで大きく動いていないのかもしれない。 他方、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は前日、一時38.94(+10.09、+34.97%)まで急伸する場面があった。ただ、その後は株価の戻りに歩調を合わせるように低下していき、終値では29.90(+1.05、+3.63%)と前営業日からほぼ変わらずで終えた。VIX指数がピークを付けてから低下基調を辿るのは市場の底入れサインとして捉えられることが多く、前日のVIXの急低下と株価指数の急速な戻りは、今週25日からのFOMCを前にして続いていた厳しい売りにもようやく一巡感が出てきたことを示唆しているともいえる。 昨日の米株の急速な下げ渋りから売り方もそこそこの利益を取って買い戻したともみられる。機関投資家のFOMCを前にした持ち高調整は大方済んでいて、今日の東京市場の大幅な下げが上述の通り、仮に個人主体の売買によるところが大きいのだしたら、本日の指数の下落率以上に過度な悲観に陥る必要はないかもしれない。市場ではすでにFRBによる年4回の利上げ、年央からのバランスシート縮小(QT)くらいの内容は織り込んでいる。3月利上げ幅が0.25%でなく0.5%、QTの市場予想よりも早い時期への前倒しなど、相当なサプライズがない限りは、年始からの下落率もあり、相場はあく抜け感から短期的には戻りを試す展開となりそうだ。 むろん、VIX指数は依然高水準にあり、FRBによる金融引き締め懸念が1月FOMC通過後に完全に払しょくされるわけでもないだろう。そのため、相場が反発したとしても、あや戻しに終わる可能性もあるため、その点は留意しておきたい。 さて、後場の日経平均は下げ渋りが予想される。前場は売り一辺倒といった様相だったが、日経平均は心理的な節目の27000円ギリギリのところでは度々踏ん張る動きを見せ、ある程度の底堅さや、ここが下値と思わせるような意識を持たせてくれた。また、東証株価指数(TOPIX)の前場の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの期待も高まりやすい。アジア市況や時間外取引の米株価指数先物の動き次第でもあるが、後場は下げ幅を縮める展開に期待したい。一方、仮に日銀のETF買いが観測されず、日経平均が27000円を割り込むようだと、下値模索となり、週足一目均衡表の雲下限に相当する26600円近辺まで突っ込む可能性があろう。 <AK> 2022/01/25 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は続落、FOMC通過でのあく抜け期待もあるが…  日経平均は続落。151.15円安の27371.11円(出来高概算5億4000万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でNYダウは6日続落し、450ドル安となった。ロシアによるウクライナ侵攻が警戒されるなか、米政府がウクライナ駐留外交官の家族に対し国外退避を検討していると報じられ、地政学リスクの高まりが意識された。また、引き続き金融引き締めへの懸念が根強く、動画配信のネットフリックスが決算を受けて急落したこともあり、ハイテク株に売りが広がった。ナスダック総合指数は-2.72%と4日続落。週明けの日経平均は米株安の流れを引き継いで263円安からスタートすると、朝方には一時27203.33円(318.93円安)まで下落した。一方、時間外取引でのNYダウ先物の上昇などを支えに押し目買いが入り、下げ渋る場面も見られた。 個別では、ソフトバンクG<9984>が3%下落しているほか、今週26日に決算発表を予定している日本電産<6594>が4%超の下落となっている。トヨタ自<7203>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>も軟調。先週末に決算と自社株買いを発表した東製鉄<5423>は朝高後に急反落した。また、前期業績の下方修正や期末無配を発表した三井海洋<6269>はストップ安水準での売り気配が続いている。一方、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎船<9107>といった海運株が揃って堅調で、東エレク<8035>やファーストリテ<9983>は小じっかり。地政学リスクの高まりで原油の供給不安が意識されたか、INPEX<1605>は4%超上昇している。キヤノン<7751>やAGC<5201>は業績観測報道を受けて買い優勢。また、サイバーコム<3852>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、精密機器、証券、その他製品などが下落率上位。一方、鉱業、海運業、銀行業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の51%、対して値上がり銘柄は44%となっている。 週明けの日経平均は引き続き下値での押し目買いに支えられつつも、3ケタの下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、先週後半から米株安を受けて売りが先行しつつも、日中下げ渋る形で陽線を形成している。27000円台前半での底堅さが意識されそうだが、上値切り下げの形状となっている点にも注意する必要があるだろう。個別では今週決算発表を予定している日本電産が軟調だが、米ネットフリックスの急落を見ると、業績期待の高いグロース(成長)株にも警戒せざるを得ないのかもしれない。また、東証1部下落率上位には中小型のグロース株が目立つ。一方、海運株はコロナ禍で需給ひっ迫が続くとみられているのだろう。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと先週に比べ少なく、25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)や今後本格化する企業決算の発表を前に、やや様子見ムードが広がっているものと考えられる。 新興市場ではマザーズ指数が-2.20%と大幅続落。先週後半は800ptを割り込んだところで下げ渋っていたが、本日は前場中ごろに一時784.54pt(-28.22pt)まで下落した。ビジョナル<4194>は高評価を支えに戻りを試しているものの、メルカリ<4385>など主力IT株は総じて軟調だ。メルカリは14日、東証新市場「プライム」への変更申請を発表したこともあり、先週+1.78%となった。その他、従前人気だったマザーズ銘柄にも下げ渋る動きが見られたが、信用買い残を一段と積み上げた銘柄も少なからずあり、一段安となれば影響は大きいだろう。 さて、先週末の米市場では期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.34%(+0.01pt)とほぼ横ばいで、10年物国債利回りは1.76%(-0.04pt)に低下した。このため、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の上昇にはいったん歯止めがかかったが、結局ハイテク株はネットフリックスの急落などが重しとなって軟調だった。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は28.85(+3.26)まで上昇している。オプションの満期日とあって需給的に荒い値動きになったとの見方がある一方、連日で引けにかけて弱い値動きとなり、機関投資家によるリスク削減目的の売りが出ているとの指摘もあった。 もっとも、金融市場では既に更なるテーパリング(量的緩和の縮小)前倒しや3月FOMCでの0.5%利上げといったシナリオも取りざたされているため、25~26日のFOMCを通過すれば短期的にあく抜け感が意識される可能性はある。東京市場でも先週末、クレディ・スイス証券や野村證券が日経平均先物を(さほど大きくはないが)買い越していた。27000円近辺まで調整が進んだことで個人投資家が積極的に日経レバETF<1570>を買っているほか、海外短期筋がFOMC通過によるあく抜けを先取りする形で買いを入れているとも考えられる。 しかし、連邦準備理事会(FRB)による急激な金融引き締めへの警戒感は簡単には拭いづらいだろう。リスク削減の動きが続くことも十分想定して取り組む必要がある。差し当たり後場もFOMCや決算発表を前にした様子見ムード、それに香港ハンセン指数の下落もあって軟調もみ合いが続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/01/24 12:24 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、苦境での「押し目買いの勝機」は?  日経平均は大幅反落。395.49円安の27377.44円(出来高概算6億2000万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でNYダウは5日続落し、313ドル安となった。金利低下に伴ってハイテク株などに買いが先行し、460ドル超上昇する場面もあった。しかし、連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めへの懸念は根強く、ハイテク株から景気敏感株まで幅広い銘柄に売りが出た。ナスダック総合指数は-1.29%となり、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-3.25%と大幅続落した。さらに、時間外取引では動画配信大手ネットフリックスが決算を受けて急落。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで368円安からスタートすると、朝方には一時27129.61円(643.32円安)まで下落した。一方、27000円近辺まで調整が進んだことで押し目買いも入り、その後は軟調もみ合いの展開となった。 個別では、連日の米半導体株安を受けてレーザーテック<6920>や東エレク<8035>が大幅に下落。INPEX<1605>は5%超の下落だが、NY原油先物が時間外取引で下落しているほか、一部証券会社の投資判断引き下げが観測されている。その他売買代金上位も郵船<9101>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>など軒並み軟調。また、ミクニ<7247>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、売買代金上位では住友鉱<5713>が逆行高。非鉄金属市況の上昇が買い材料視されているようだ。エアトリ<6191>など旅行関連株の一角は前日に続き堅調で、投資判断引き上げが観測されたコナミHD<9766>や空港施設<8864>も買い優勢。またネットプロHD<7383>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、鉱業、輸送用機器、石油・石炭製品などが下落率上位。一方、空運業、陸運業、電気・ガス業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の62%、対して値上がり銘柄は33%となっている。 本日の日経平均は米株安を受けてギャップダウンスタートすると、27000円台前半で軟調もみ合いの展開となっている。日経平均は-1.42%、東証株価指数(TOPIX)は-1.00%で前場を折り返した。前日の当欄でも指摘したが、昨年10月以降の調整局面では27000円台前半から半ばを底に切り返したため、これを意識した押し目買いが入っているものと考えられる。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりで、前日ほどではないがまずまず多い。引き続き押し目買いとリスク削減目的の売りが交錯しているのだろう。 米金融引き締めへの警戒感から半導体関連を中心とした値がさグロース(成長)株の苦境が続くうえ、景気悪化への懸念が強まってきたことで景気敏感株も下落。売買代金上位で買われているのは非鉄金属市況の上昇が材料視された住友鉱くらいだ。国内では新型コロナウイルスの感染拡大が続いているが、欧米では既にピークアウトが指摘されたり、行動規制が緩和されたりしていることから、旅行関連株も前日に続き堅調。ただ、「買えそうな銘柄が限られる」といった事情もありそうだ。業種別騰落率を見ると、景気の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄への資金シフトの動きも窺える。 新興市場ではマザーズ指数が-2.08%と大幅反落。こちらも軟調もみ合いの展開だが、前日同様に800ptを割り込む場面が見られた。売買代金トップのウェルスナビ<7342>は朝方こそ前期業績の上方修正を好感した買いが入ったが、その後売り優勢となっている。メルカリ<4385>など他の主力IT株も総じて軟調だ。 さて、前日の日経平均は後場強含んで300円あまり上昇したが、先物手口を見ると外資系証券はおおむね売り越しという印象だった(日経平均先物はドイツ証券、TOPIX先物はモルガン・スタンレーMUFG証券やゴールドマン・サックス証券が売り越し)。一方、野村證券が日経平均先物を買い越し。日経平均が800円近く下落した19日、ネット証券では日経レバETF<1570>が大幅に買い超だったため、これに絡んだ先物買いもあったとみられる。27000円近辺まで調整が進み、個人投資家が積極的に買い向かっていることが窺える。 次に前日の米市場を見ると、10年物国債利回りが1.80%(-0.06pt)に低下した。しかし、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.33%(-0.07pt)とさらに水準を切り下げている。かねて当欄で予想しているとおり、やはり名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の上昇傾向に変わりはない。朝方押し目買いが入っていたハイテク株が失速したのもうなずけるだろう。主要株価指数は連日で長めの陰線を引き、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は25.59(+1.74)まで上昇しており、市況悪化が鮮明となってきた感がある。運用会社グランサム・マヨ・ヴァン・オッテルロー(GMO)の共同創業者ジェレミー・グランサム氏は、米株が「スーパーバブル」の状態にあると指摘しているという。 日米株とも押し目買いの動きが見られるように、まだ「ここまで下げたのだから切り返すのだろう」という期待が根強く残っているのだろう。しかし、コロナ禍を受けた未曽有の金融緩和のもと投資レバレッジを拡大してきた反動が出てくるのは、むしろこれからだと考えられる。差し当たり来週25~26日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えており、引き続き神経質な相場展開とならざるを得ないだろう。(小林大純) <AK> 2022/01/21 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反発、忘れつつあった20年の教訓「中銀に逆らうな」  日経平均は3日ぶり反発。127.06円高の27594.29円(出来高概算6億6000万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でNYダウは4日続落し、339ドル安となった。金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)やモルガン・スタンレーの決算を好感して上昇する場面もあったが、連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めへの警戒感がくすぶり、下落に転じた。引けにかけて下げ幅を拡大し、この日の安値圏で取引を終えた。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-1.14%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-3.09%となった。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで65円安からスタートすると、前日に790円安と大幅下落した反動から、朝方には一時27726.52円(259.29円高)まで上昇。ただ、前場中ごろには一転して27217.59円(249.64円安)まで下落する場面も出てくるなど、売り買いが交錯してやや方向感に乏しい展開となった。 個別では、ソニーG<6758>が3%超の上昇。前日は米マイクロソフトのゲーム会社買収に絡んで急落したが、過剰反応との見方もあるようだ。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>が堅調で、自社株買い実施を発表した伊藤忠<8001>は3%超の上昇。次世代バイオ燃料の試験実施を発表したユーグレナ<2931>や業績・配当予想を修正したワイエイシイ<6298>は急伸し、シンシア<7782>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、米半導体株安を受けてレーザーテック<6920>や東エレク<8035>が軟調で、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎船<9107>といった海運株は大幅に下落。グレイス<6541>は大幅に6日続落し、海運株などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、精密機器、食料品、その他製品などが上昇率上位。一方、海運業、鉱業、保険業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の69%、対して値下がり銘柄は26%となっている。 本日の日経平均は朝方こそ自律反発に期待する向きもあったものの、結果的には上下に振らされてやや方向感に乏しい展開となっている。昨年10月以降の調整局面では27000円台前半から半ばを底に切り返したため、これを意識した押し目買いが入っているのだろう。しかし、前日に800円近く下落したことを踏まえると、戻りの鈍い印象は拭えない。個別ではトヨタ自こそ反発しているものの、鉄鋼株に続き海運株が値を崩したことで、金利上昇局面で買いとみられていた大型バリュー(割安)株にも警戒感が広がっている。米金融引き締め懸念から、半導体関連を中心に値がさグロース(成長)株もさえない。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとまずまず多く、押し目買いとリスク削減目的の売りが交錯していることが窺える。 新興市場ではマザーズ指数が+0.40%と反発。こちらも日経平均と同様、前日終値を挟み一進一退の展開だ。ただ、取引時間中としては2020年5月7日以来、およそ1年8カ月ぶりに800ptを割り込む場面があった。時価総額上位ではビジョナル<4194>が6%超上昇する一方、メルカリ<4385>が3日続落。全体としてトレンド好転の兆しは見出しづらく、メルカリなどは当欄で度々指摘してきたとおり、信用買い残の積み上がりがネックになってきた印象を受ける。 さて、前日の米市場では10年物国債利回りが1.86%(-0.01pt)となったものの、一時1.90%と2020年1月以来2年ぶりの高水準を付けた。原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI2月物)は楽観的な需要見通しや地政学リスクの高まりを背景に続伸したが、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.40%(-0.06pt)に低下。結果的に当欄の見立てどおり、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は一段と上昇している。主要株価指数は揃って軟調となり、ナスダック総合指数が終値で200日移動平均線を下回るなど調整局面入りが意識されつつある。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は23.85(+1.06)となお上昇が続いている。 バイデン米大統領は19日、就任1年を前にした記者会見で、金融当局がインフレ抑制のため必要に応じて政策を「再調整」することが適切だなどと述べたという。「インフレの政治問題化」を裏付ける発言と言えるだろう。金融市場では3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの利上げを予想(あるいはそれが必要だという主張)する向きが増え、英マラソン・アセット・マネジメントのブルース・リチャーズ最高経営責任者(CEO)からはFRBがインフレ抑制のため8回の利上げを行うという予想が出てきている。 半面、前日の当欄でも取り上げられていたBofAの1月グローバルファンドマネジャー調査によると、景気高揚とインフレ鈍化を予想する機関投資家が多く、利上げ予想も3回にとどまった。心理学的に「正常性バイアス」が働いているとも考えられるし、2020年のコロナショック直後、戻り相場で売り負けた記憶がまだ鮮明であることも影響している可能性がある。 しかしその際、著名ファンドマネジャーらが反省の弁のなかで述べていた教訓は「中央銀行に逆らうな」だったはずである。FRBがインフレへの対応で金融引き締め姿勢を強める以上、借り入れコストの増大などを通じて消費・投資行動に大きな影響を及ぼすとみておくべきだろう。例えば東京市場でも信用買い残高がコロナショック前を大きく上回っており、今後、投資レバレッジの縮小なども十分想定される。2020年の教訓を再確認しておきたい。(小林大純) <AK> 2022/01/20 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、FRBの急激なタカ派シフトへの対応に機関も苦慮?  日経平均は大幅続落。512.41円安の27744.84円(出来高概算6億7502万株)で前場の取引を終えている。 連休明け18日の米株式市場でNYダウは543.34ドル安(-1.51%)と大幅に3日続落。ゴールドマン・サックスの決算に失望した金融の下落や米10年国債利回りが2年ぶりの水準にまで上昇した警戒感から下落。著名投資家が3月連邦公開市場委員会(FOMC)での50ベーシスポイントの利上げの可能性を指摘するなど、急激な金融引き締めを警戒した売りが続き、終日軟調に推移。ハイテク・グロース(成長)株の売りが厳しく、ナスダック総合指数は-2.59%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-4.43%となった。こうした流れを受け日経平均は328.36円安の27928.89円でスタート。心理的な節目の28000円を割り込んだことで売りに拍車がかかり、一時27689.98円(-567.27円)まで下落。その後は下げ渋ったものの安値圏でのもみ合いが続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、HOYA<7741>などの半導体関連が5%前後の下落。米マイクロソフトのゲーム大手買収発表を受けて競争激化懸念が高まったソニーG<6758>は9%安と急落。レーティング格下げが観測された村田製<6981>と太陽誘電<6976>も大きく売り込まれた。2月の生産計画の下振れが伝わったトヨタ自<7203>も売られ、デンソー<6902>も大幅安。ほか、郵船<9101>や商船三井<9104>など海運株も大幅に下落し、日本製鉄<5401>、JFE<5411>などの鉄鋼株も安い。一方、マイクロソフト買収報道を刺激材料に任天堂<7974>、カプコン<9697>、スクエニHD<9684>などゲーム関連の一角が買われ、12月の月次動向が好感されたパーク24<4666>のほか、安川電機<6506>が逆行高。 セクターでは海運業、電気機器、精密機器などを筆頭にほぼ全面安。その他製品、石油・石炭製品、パルプ・紙の3業種のみが上昇。東証1部の値下がり銘柄は全体の89%、対して値上がり銘柄は9%となっている。 本日の日経平均は急落し、昨年12月3日安値27588.61円に迫る水準にまで下落。共に下向きの75日移動平均線が200日線を上から下抜けるデッドクロス(DC)を示現し、テクニカル的には中長期での下落局面入りとなったもよう。 米連邦準備制度理事会(FRB)の急速なタカ派シフトへの対応に苦慮している投資家は、個人や機関を問わずに多くいる様子。昨年12月のFOMCで、今年に想定される政策金利の引き上げ回数が前回時点の1回から3回へと一気に高まった矢先、年明けにはFOMC議事録の公表を受けて、量的引き締め(QT)まで早期に行われる可能性が高まり、3月FOMCでの利上げはほぼ確実視される状況に。 さらに、投資家に休む間を与えることなく、複数のFRB高官から年3回の利上げどころか、4回の利上げに賛同する声が相次いだ。また、ハト派とされてきたNY連銀総裁のウィリアムズ総裁は年3~5回の利上げの可能性を示唆したほか、ウォラー理事もインフレ動向次第で5回の利上げもあり得ると発言。さらに追い打ちをかけるかのように、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)や、著名投資家のビル・アックマン氏が3月FOMC時の利上げは0.25%ではなく、0.5%になる可能性を警告。12月FOMC直後の市場の利上げに関する予想は今年6月からの0.25%の引き上げ、そして年後半からのQTだった。この目が回るような速さでのFRBの急激なタカ派姿勢への変化に投資家も対応が後追いとならざるをえないだろう。 バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した1月のグローバルファンドマネジャー調査によると、機関投資家の71%が「景気ブーム」を予想し、56%がインフレを「一時的」と回答した。差し引き48%が今後のインフレ鈍化を予想しており、この比率は2009年以降で最も高いという。また、機関投資家の資産配分では、株式の債券に対する相対選好度が2011年2月以降で最も高くなったとのこと。ここから窺えるのは、機関投資家の多くがインフレは次第に鈍化し、結果、FRBが想定ほどには急いで引き締めに動くことはないと予想しているもよう。 しかし、上述したFRBの急激なタカ派シフトから窺うに、11月の中間選挙が近づくなか、もはや政治問題化しているインフレに対して、FRBは早期に沈静化するよう政権から圧力をかけられている様子。仮に、FRBが政治的な忖度から年央からのインフレ鈍化を確認することなく、このまま早期引き締めに着手するとなれば、それは1月調査時点の機関投資家の読みとは異なり、投資家は修正対応を迫られることになる。連休明けの米国市場で株式相場が再び崩れたのにはこうした背景があるのかもしれない。となれば、相場の調整は思ったより長引きそうで、現在のグロース株に厳しい局面は少なくとも25-26日のFOMC結果を確認するまでは続くだろう。 昨日発表された米1月のNY連銀製造業景況指数は-0.7と予想の25を大幅に下回った。サプライチェーンの乱れの影響もあるだろうが、新規受注の指数は32.1ポイント下げて、-0.5、出荷の指数は26.1ポイント低下して1となった。最近は、米国の経済指標の水準低下や予想対比での下振れ傾向がやや多い印象。景気鈍化の中でのインフレ後追い型による金融引き締めともなれば、景気敏感株にも逆風となりそうだ。実際、足元、資源関連株の騰勢もやや一服してきている様子。ハイテク・グロースが買えなければ、景気敏感・バリュー(割安)を買えばいいという単純な話が通用する可能性も高いとはいえず、投資家にとって厳しい局面が続きそうだ。 後場の日経平均は引き続き冴えない展開が続きそうだ。アジア市況はまちまちで、時間外取引の米株価指数先物にも大きな動きが見られないなか、ここから一段と売り込む余地は大きくないと考えられる。一方、今晩以降の米株式市場が下げ止まるかを見極めたいとの思惑も働きやすい。積極的な押し目買いは期待しにくく、日経平均は心理的な節目の28000円を下回った推移が続きそうだ。 <AK> 2022/01/19 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、インフレ下で注目集まる日銀会合結果  日経平均は続伸。240.63円高の28574.15円(出来高概算5億1000万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場はキング牧師誕生日の祝日で休場だった。ただ、欧州の主要株式指数は揃って上昇し、本日の日経平均はこうした流れを引き継いで117円高からスタート。足元の新型コロナウイルス感染者数の増加を受けて政府が11都県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針と報じられる一方、感染拡大がピークアウトに向かうと期待する声も出ており、前場の日経平均は28598.21円(264.69円高)まで上昇する場面があった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が4%超の上昇。ファーストリテ<9983>は3%超上昇し、日経平均の押し上げ役となっている。その他売買代金上位もトヨタ自<7203>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>など全般堅調で、ベイカレント<6532>は引き続き決算を好感した買いが優勢。増配を発表したリソー教育<4714>などは急伸し、業績上方修正のシュッピン<3179>は東証1部上昇率トップとなっている。一方、日本製鉄<5401>とJFE<5411>が揃って5%超の下落。年明けからの上昇ピッチが速かった鉄鋼株には利益確定売りが出ているようだ。また、デンソー<6902>から燃料ポンプ事業を買収すると発表した愛三工<7283>が急落し、フィルカンパニー<3267>や鉄鋼株とともに東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、鉱業、サービス業、精密機器などが上昇率上位。一方、鉄鋼、ゴム製品、パルプ・紙などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 前場の日経平均は欧州株高や新型コロナ感染ピークアウトへの期待などから堅調な展開となった。日足チャートを見ると、28400円台に位置する5日移動平均線を上回り、28600円台に位置する25日移動平均線に迫る動き。14日に一時28000円を割り込んだところからやや値を戻してきており、短期的なトレンド好転を意識した買いが入っている可能性もあるだろう。個別株では、トヨタ自が連日で取引時間中の上場来高値(株式分割考慮)を更新し、初めて時価総額40兆円に達したことが話題となっている。その他景気敏感株の一角もまずまず堅調だが、値がさグロース(成長)株のリバーサル(株価の反転上昇)の様相が強い。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりと、前日の米休場もあってやや低調だ。 新興市場ではマザーズ指数が+2.41%と4日ぶりに大幅反発。ここ3日の下げ幅が70ptあまりとかなり大きく、グロース株のリバーサルの流れに乗って主力IT株はおおむね堅調だ。売買代金上位では、前日ストップ高のEnjin<7370>が大幅続伸し、外資系証券の投資判断引き上げが観測されたビジョナル<4194>は急反発している。 さて、前日の米市場は休場だったが、日本時間18日朝の取引で米10年物国債利回りは一時1.8%台に上昇した。また、米2年物国債利回りは2020年2月末以来の1%台乗せとなった。東京市場のグロース株高を見るとわかりづらいが、引き続き米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが強く意識されているようだ。 こうしたなか、本日まで開催される日銀金融政策決定会合への注目度も高まっている。世界的にインフレ圧力が高まるなか、事前に「日銀がインフレ目標2%を達成する前に利上げ開始できるか議論している」などと報じられたためだ。今回の会合では政策の現状維持が決まるとみられているが、公表文や黒田東彦総裁の会見内容から経済・物価の見通しや金融政策の行方を見極めたいとの思惑が強い。 日米ともリベラル色の強い政権となり、インフレへの不満に目配りする姿勢を示すことで金融政策にも影響が出てくるとの見方がある。実際、11月に中間選挙が控える米国では、パウエル議長の再任指名と前後してFRBが「インフレファイター」へと変貌を遂げた。また、当欄で度々指摘しているとおり、日銀は2023年4月に黒田総裁の任期満了が控えており、市場では「黒田緩和の出口」を意識する向きも出てきている。 本稿執筆時点では確認できないが、後場は日銀決定会合結果を受けて相場展開が大きく変わる可能性もあるだろう。また、海外では1月のドイツZEW(欧州経済研究センター)景況感指数、米NY連銀製造業景気指数、それに米ゴールドマン・サックス決算などが発表される。NY連銀製造業景気指数では足元のサプライチェーン(供給網)混乱の影響が注目されており、引き続き外部環境を注視しておきたい。(小林大純) <AK> 2022/01/18 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶりに反発、グロースへの警戒感継続  日経平均は3日ぶりに反発。194.26円高の28318.54円(出来高概算5億4688万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でNYダウは201.81ドル安(-0.55%)と続落。12月小売売上高や1月ミシガン大学消費者信頼感指数が予想を下回ったことで景気回復期待が後退。JPモルガンの決算を受けた金融の下げも影響し終日軟調に推移。一方、ハイテクには値ごろ感からの買いが入り、ナスダック総合指数は引けにかけて上昇に転じ反発、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+2.32%と大幅に反発した。米ハイテク株高を支援要因に自律反発狙いの買いも入るなか、週明けの日経平均は208.44円高でスタート。前場中ごろには一時28449.99(+325.71円)まで上値を伸ばしたが、その後は戻り待ちの売りから失速すると、前引けにかけて上げ幅を縮めた。なお、午前に発表された中国の経済指標は、小売売上高が市場予想を大きく下振れた一方で鉱工業生産は予想を上回ったが、市場の反応は限定的だった。 個別では、東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などの半導体関連が買われた。米長期金利の上昇や円高・ドル安進行の一服を背景に三菱UFJ<8306>、トヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、デンソー<6902>も堅調。また、原油先物価格などの上昇を刺激材料にINPEX<1605>が大幅高となり、三井物産<8031>や丸紅<8002>、日本製鉄<5401>なども上昇。好決算や業績上方修正で押し目買いが活発化したSHIFT<3697>とベイカレント<6532>がそれぞれ急伸。一方、川崎汽船<9107>を筆頭に海運業のほか、SUMCO<3436>、日ペHD<4612>、SMC<6273>、エムスリー<2413>などが軟調。月次売上動向が嫌気されたスノーピーク<7816>や7-9月期最終損益が赤字となったアウトソーシング<2427>、第3四半期営業減益が嫌気された古野電気<6814>などはそれぞれ急落。 セクターでは鉱業、ゴム製品、精密機器などが上昇率上位となっている一方、海運業、保険業、金属製品などが下落率上位となった。東証1部の値上がり銘柄は全体の45%、対して値下がり銘柄は49%となっている。 一時300円超まで上げ幅を広げた日経平均は前引けにかけて大きく失速。下向きの25日移動平均線が上値抵抗線となっており、日足ローソク足で付けた長めの上ヒゲですら同線に遠く及ばない格好となっており、上値の重さが強く印象付けられる。 先週末の米国市場では、13日に1.70%まで低下していた米10年国債利回りが1.79%へと再び大きく上昇している中でもハイテク・グロース株に押し目買い入ったことで、買い戻しも入りやすいかと思われたが、来週25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えるなか、警戒感は依然かなりくすぶっているようだ。個別では、半導体関連の一部に買いが入っている一方で、資源関連株などの景気敏感・バリュー(割安)株への買いの方が本日も目立っており、こうした物色動向からもまだグロースへの懸念は根強い様子。 特に、今日も下落しているマザーズ指数が気掛かりだ。ナスダック総合指数が反発しても下落が止まらないところから深刻さが窺える。プライム市場への変更申請をしたメルカリ<4385>は久々に上昇しているものの、BASE<4477>、JTOWER<4485>、HENNGE<4475>、ビジョナル<4194>、Appier<4180>など時価総額上位銘柄の下落ぶりが依然として目立つ。その他も全般として軟調な銘柄が多く、下落局面でも買い向かっていた個人投資家の含み損益は相当に悪化しているようで、本格的な持ち直しにはかなり時間がかかりそうだ。 後場の日経平均は5日移動平均線が位置する28380円近辺でのもみ合いが続きそうだ。朝方の買い戻しが一巡し、今晩の米国市場がキング牧師誕生記念日で休場となるなか、手掛かり材料難で買い戻しが再度強まる可能性は低そうだ。アジア市況もまちまちで方向感は出にくいだろう。 <AK> 2022/01/17 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、「実質金利の更なる上昇」と「FRBに続き日銀も?」  日経平均は大幅続落。543.43円安の27945.70円(出来高概算7億4000万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、176ドル安となった。昨年12月の卸売物価指数(PPI)が前月比0.2%上昇と市場予想(同0.4%上昇)を下回り、長期金利の低下とともにハイテク株が買われる場面もあった。しかし、連邦準備理事会(FRB)副議長への指名で米上院の公聴会に臨んだブレイナード理事が利上げに意欲を示し、FRB高官による相次ぐタカ派的な発言が金融引き締めへの警戒感につながった。結局、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-2.51%と大きく下落。本日の東京市場でも米株安の流れを引き継ぎ、日経平均は242円安からスタートした。値がさグロース(成長)株の軟調ぶりが目立つほか、このところ比較的堅調だった景気敏感株にも利益確定売りが出て、日経平均は前引けにかけて27889.21円(599.92円安)まで下落する場面があった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が3%超下落しているほか、リクルートHD<6098>やキーエンス<6861>といった値がさグロース株が大きく下落。その他売買代金上位もトヨタ自<7203>、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>など全般軟調に推移している。決算発表銘柄では久光薬<4530>などが急落。また、日立<6501>による保有株売却が伝わった日立建機<6305>は東証1部下落率トップとなっている。一方、ファーストリテ<9983>が7%超上昇し、7&iHD<3382>は5%近い上昇。ともに堅調な決算が買い安心感につながったようで、売買代金上位のなかでも逆行高となっている。乃村工芸<9716>や竹内製作<6432>も決算を好感した買いで大きく上昇。また、キャリアリンク<6070>が東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、サービス業、機械、不動産業などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、水産・農林業、空運業、小売業の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は9%となっている。 FRBによる金融引き締めへの警戒感が強まるなか、本日の日経平均は500円超の下落で前場を折り返した。取引時間中に28000円を割り込むのは昨年12月20日以来で、同月6日以来の安値を付けている。日足チャートを見ると、各種移動平均線が集中する28000円台半ばから後半を下放れる格好。引き続き値がさグロース株の下げが大きく、特に中小型は厳しい状況だ。景気敏感株も利益確定売りに押され、前引けの日経平均が-1.91%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-2.02%となっている。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりで、ここ数日と比べかなり膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が-4.19%と大幅続落。900pt割れで持ちこたえていたものが下抜けしてしまい、取引時間中としては2020年5月15日以来の安値を付けている。引き続きマザーズは中小型グロース株への逆風をもろに受ける形で、メルカリ<4385>が6%超下落し、フリー<4478>に至っては10%超の下落だ。重ねて強調するが、株式市場全体として昨年12月は信用買い残が減少したものの、個人投資家に人気のマザーズ銘柄などはむしろ買い残を積み上げてきた。こうした銘柄が損失拡大で売りを迫られるなど、株式需給の一段の悪化も想定しておく必要があるだろう。 さて、米国では13日、12月PPIの下振れを受けて10年物国債利回りが1.70%(-0.04%)に低下した。しかし、インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.43%(-0.05pt)とさらに低下。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は一段と上昇する形になった。また、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が20.31(+2.69)と再び節目の20を上回ってきたことにも注目しておきたい。 ブレイナードFRB理事は公聴会で、インフレが米国人を苦しめているとの認識とともに、早期利上げを示唆したという。これまでFRB高官のタカ派的な発言が相次いでいたものの、ハト派的と目されていたブレイナードのこうした発言は、改めてFRBの「インフレファイター」への変貌ぶりを金融市場に意識させたようだ。米金融大手モルガン・スタンレーなど、実質金利の更なる上昇を予想する声が相次いでいる。 また、日銀もインフレ目標2%を達成する前に利上げ開始できるか議論しているなどと報じられた。昨年末の当欄で述べたが、FRBが金融政策の正常化へと傾くなか、今年は黒田東彦総裁の任期満了(23年4月)まで1年を切る日銀の動向も注目されてくるだろう。既に上場投資信託(ETF)買い入れ頻度などは大きく低下しているが、「黒田緩和」の総括や今後についての議論の行方が気になるところだ。 短期的な急変動を見ると反動を想定したくなるのが心理的な傾向だが、コロナ禍を受けての緩和相場が転換点を迎えた可能性もあるとみておくべきだろう。 その他、国内では13日、新型コロナウイルス新規感染者数がおよそ4カ月ぶりに17000人を超えた。東京都では3124人まで増え、警戒レベルを1段階引き上げている。また、今晩の米国で発表される12月の小売売上高や鉱工業生産も注目されるだろう。前引けのTOPIXが2%超の下落とあって、後場は久々に日銀によるETF買いが実施される可能性があるものの、引き続き不安定な相場展開を想定したうえで慎重に取り組んでいきたい。(小林大純) <AK> 2022/01/14 12:21 ランチタイムコメント 日経平均は反落、早々にイベント通過の買い戻し一服?  日経平均は反落。247.72円安の28517.94円(出来高概算5億8000万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でNYダウは続伸し、38ドル高となった。昨年12月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+7.0%と39年ぶりの高い伸びとなったが、市場予想並みだったことから長期金利が一時低下し、ハイテク株を中心に買いが入った。ただ、複数の連銀総裁から利上げやバランスシートの縮小に前向きな発言が出てきたことを受け、長期金利が上昇に転じるとともにハイテク株も伸び悩んだ。前日に543円高と大きく上昇した日経平均だが、本日はこうした流れから売りが先行して107円安でスタート。為替市場で円相場が1ドル=114円台半ばに上昇したことや、国内で新型コロナウイルス感染者が急拡大していることも重しとなり、前場中ごろを過ぎると28484.69円(280.97円安)まで下落する場面があった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が2%下落しているほか、イオン<8267>が決算を受けて4%超の下落。キーエンス<6861>やリクルートHD<6098>などの値がさグロース(成長)株、それにオリンパス<7733>やHOYA<7741>といった医療機器関連株の軟調ぶりも目立つ。その他、売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、郵船<9101>、川崎船<9107>、東エレク<8035>がさえない。また、MSコンサル<6555>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、トヨタ自<7203>や三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>はしっかり。日本製鉄<5401>やJFE<5411>、住友鉱<5713>といった鉄鋼・非鉄金属株は大きく上昇。また、決算発表銘柄ではベル24HD<6183>などが買われ、OSG<6136>やローツェ<6323>は東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、精密機器、小売業、サービス業などが下落率上位。一方、鉄鋼、非鉄金属、パルプ・紙などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の71%、対して値上がり銘柄は24%となっている。 米12月CPIの発表を通過し、本日の日経平均は一転して軟調な展開となっている。日足チャートを見ると、28600円台に位置する25日移動平均線を再び下抜け。景気敏感株はまずまず堅調で、商品市況の先高観などから関連銘柄が大きく上昇しているものの、値がさグロース株の反落が日経平均を下押しする格好となっている。前引けの日経平均は-0.86%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.58%。東証1部銘柄の7割あまりが下落し、下落率上位には中小型グロース株が目立つ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、ここ数日と比べるとやや少ない印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-3.04%と4日ぶり大幅反落。900ptを割り込んだところで下げ渋っていたが、前述のとおり中小型グロース株への逆風が再び強まっている。メルカリ<4385>やフリー<4478>、ビジョナル<4194>といった主力IT株は軒並み軟調だ。これまでも指摘しているが、比較的人気の高いマザーズ銘柄は11月後半からの下落局面で信用買い残を積み上げてきており、株価が一段と下押しするようなら影響は大きいだろう。 さて、米国では11日にパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の再任に絡んだ議会上院の公聴会、12日に12月CPI発表という重要イベントを通過し、日米株とも大きく上昇する場面があった。米長期金利が一時低下したこともあり、市況解説では「FRBによる早期金融引き締めへの警戒感が後退」といったものが多かった。 ただ、債券サイドの関係者のコメントなどから、パウエル氏の発言を受けて「引き締め加速」の見方に大きな変化があったようには感じられない。各種報道を見ても、著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏が金融緩和の巻き戻しによるリセッション(景気後退)に警鐘をならし、JPモルガン・アセット・マネジメントの債券運用責任者であるボブ・マイケル氏は10年物国債利回りが年内に最高3%に達する可能性があると示唆している。 実際、12日の米債券市場では10年物国債利回りが一時低下したものの、セントルイス連銀のブラード総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁によるタカ派的な発言が伝わり、結局1.74%(+0.01pt)となった。短期の年限の金利は一段と上昇。一方、インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.48%(-0.06pt)と再び大きく低下した。FRBの「インフレファイター」ぶりがなお意識されていることの証左と言える。一時的な長期金利の低下(債券価格の上昇)やハイテク株の上昇は「警戒されていたイベントを通過したことによる短期的なあく抜け」の様相が強い。しかし、こうした売り方の買い戻し(ショートカバー)の動きも早々に一服したように感じられる。 また、為替相場の変動率(ボラティリティ)が高まってきたのも気掛かりだ。米CPI発表後は1ドル=115.40円近辺から一時114.40円近辺まで急落。大方のドル高期待に反しての動きで、痛手を受けた投機筋が多いものと考えられる。国内では12日、新型コロナ新規感染者数が13244人とおよそ4カ月ぶりに1万人を上回った。もっとも、米金融大手の顧客調査で日本株のアウトフォームに期待する向きが極めて少ないのは、なにもコロナ禍のせいだけではないのかもしれない。 米国では今週後半も卸売物価指数(PPI、13日)、小売売上高や鉱工業生産(14日)といった昨年12月の重要経済指標の発表が続き、国内でも11月締めの決算の発表がピークを迎える。従来どおり相場全体として上下に振らされる場面が続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/01/13 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は4日ぶりに大幅反発、グロース底打ち感や安川電機の上昇でセンチメント改善  日経平均は4日ぶりに大幅反発。525.73円高の28748.21円(出来高概算6億0247万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でNYダウは183.15ドル高(+0.50%)と5日ぶりに反発。再任指名に伴う公聴会での連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の証言は一段と金融引き締め懸念を強めるものではなかったことから警戒感が後退。金利が低下に転じたことでハイテク株を中心に買戻しに弾みがつき、軟調に推移していた主要株式指数は上昇に転じた。ナスダック総合指数は+1.40%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+1.84%となった。こうした流れを引き継いで日経平均は227.05円高でスタート。朝方の買い一巡後はもみ合いが続いていたが、アジア市況の上昇が追い風となり、前場中頃からは再び騰勢を強めると上げ幅を500円超に広げた。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、SUMCO<3436>などの半導体関連のほか、ソフトバンクG<9984>、村田製<6981>などのハイテク株が大幅高。直近下落が目立っていたキーエンス<6861>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などのグロース(成長)株の一角も大幅に反発。ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>、ファーストリテ<9983>、日本電産<6594>なども堅調で、川崎汽船<9107>やINPEX<1605>などの市況関連の急伸ぶりも目立つ。9-11月期業績は市場予想を下振れ、通期計画も据え置かれた安川電機<6506>は売りが先行したものの、受注の好調も評価され切り返して反発。好決算が評価された技研製作所<6289>が大幅高で、業績予想を上方修正したタマホーム<1419>は東証1部の上昇率上位に躍り出た。 一方、米長期金利の上昇一服から三井住友<8316>や東京海上<8766>が軟調で、第一生命HD<8750>が大きく下落。直近上昇が続いていたデンソー<6902>が利益確定売りに押され、エーザイ<4523>やKDDI<9433>などのディフェンシブ銘柄でも冴えないものが散見される。今期業績見通しが市場予想を下回ったキユーピー<2809>は大幅安となり、9-11月期業績が失望感を誘った東京個別<4745>やわらべやHD<2918>が急落し、業績予想を下方修正したブイキューブ<3681>と共に東証1部の下落率上位に並んだ。 セクターでは鉱業、金属製品、海運業を筆頭にほぼ全面高となっており、保険業、電気・ガス業、銀行業の3業種のみが下落している。東証1部の値上がり銘柄は全体の87%、対して値下がり銘柄は10%となっている。 日経平均は大幅反発。朝方の買い一巡後は心理的な節目の28500円近辺で伸び悩む場面も見られたが、前場中頃から騰勢を強めると同水準を大きく超え、25日移動平均線を回復してきた。直近の下落がきつかったことを踏まえれば、驚くほどの上昇ではないものの、米12月消費者物価指数(CPI)の発表を控えるなか、戻り待ちの売りから失速することなく、前引けにかけてもう一段の上昇を見せてきたことは強い動きと言える。 10日に一時1.8%を超え、およそ2年ぶりの高値をつけた米10年国債利回りは、11日、1.74%まで低下し、上昇一服感が強まった。10日に一時2%を超える下落率で推移していたナスダックは金利上昇の一服により急速に買い戻され、同日は結局小幅高に転じ、金利低下が鮮明となった11日は大幅に上昇した。下落基調が目立っていたマザーズ指数も、前日は日経平均や東証株価指数(TOPIX)が下落していたなか小幅ながら上昇で終え、本日は大幅に続伸している。金利上昇の一服とともに日米ともにハイテク・グロースに目先の底打ち感が出てきたことはポジティブに捉えたい。 製造業決算の前哨戦とも位置付けられる安川電機が良好な受注動向を映して大幅高に転じてたことも投資家心理を明るくさせる。米国でも今週末から大手金融企業を皮切りに決算発表が始まる。外部環境が落ち着いてきたタイミングで決算シーズンに突入し、日米ともに良好な企業決算が相次げば、相場のムードも再び明るくなりそうだ。 一方、今晩には米12月CPIの発表が予定されており、市場予想では前年比の伸びが+7.0%と、11月の+6.8%を更に上回る見込みだ。さらに、25~26日は今年最初の米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えている。そのため、まだまだ楽観視できる状況でもないだろう。しかし、それでもCPIの伸びは事前に警戒されていることから、多少上回る程度であれば、波乱なく通過しそうだ。また、FOMCも、昨年12月開催分のFOMC議事録の公表以降、FRBの複数の高官から相次いで3月時点での利上げや速やかなバランスシート縮小に賛同する言動が確認されていることから、こちらも相当程度に織り込みが進んでいると考えられる。3月FOMCが近づくタイミングでは再び、金利動向を含め市場が神経質になる展開が予想されるが、目先は戻りを試す局面となることに期待したい。 さて、香港ハンセン指数が大幅高となるなか、米ハイテク株の底打ち感への期待もあり、後場の日経平均は引き続き強い動きが継続しそうだ。後場も失速することなく、高値圏での推移を維持できれば、明日以降の戻りや29000円回復にも期待が持てそうだ。 <AK> 2022/01/12 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は3日続落、米雇用引き締まりを確認してパウエル氏証言へ  日経平均は3日続落。247.25円安の28231.31円(出来高概算6億1000万株)で前場の取引を終えている。 東京市場は10日、成人の日の祝日で休場だった。この間、米市場ではNYダウが7日4ドル安、10日162ドル安と4日続落。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数はそれぞれ-0.96%、+0.04%となった。7日発表の12月雇用統計が労働需給の引き締まりを意識させる内容となり、連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めへの警戒感が一段と広がった。もっとも、10年物国債利回りは一時1.8%まで上昇すると伸び悩み、ハイテク株に押し目買いが入る場面があった。本日の日経平均は連休中の米株安を受けて97円安からスタート。朝方には前週末終値近辺まで戻す場面があったが、今晩の米国ではパウエルFRB議長の再任に絡んだ米議会上院の公聴会が予定されており、積極的な買いは手控えられた。前場中ごろを過ぎると一時28089.49円(389.07円安)まで下落した。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が3%超の下落。キーエンス<6861>は6%超の下落となるなど、値がさグロース(成長)株の売りが続いている。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、東エレク<8035>などが軟調で、トヨタ自<7203>や郵船<9101>は小安い。ローソン<2651>や良品計画<7453>といった小売株は決算を受けて売りがかさみ、金融各社による株式売出しを発表した日ペHD<4612>は東証1部下落率トップとなっている。一方、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>といった金融株や任天堂<7974>はしっかり。中小型株ではネクステージ<3186>が前週末に続き賑わいを見せており、決算が好感されたエスクローAJ<6093>は東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、電気機器、鉱業、化学などが下落率上位。一方、保険業、銀行業、空運業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は28%となっている。 注目された米12月雇用統計を受けて米株が下落し、連休明けの東京市場も売り優勢の展開となっている。もっとも、米市場では景気敏感株やハイテク株が循環的に買われる場面があり、日経平均はNYダウやナスダック総合指数と比べ一段と弱い印象を受ける。売買代金上位を見ると値がさグロース株の下げがきつく、日経平均を下押ししている感があるものの、東証株価指数(TOPIX)も-0.72%と日経平均(-0.87%)並みに軟調。時価総額上位のトヨタ自は比較的底堅く、金融株などは堅調だが、TOPIXを下支えしきれていない。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりで、ここ数日並みの水準となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-0.63%と反落。こちらは前場中ごろにプラス圏へ浮上する場面もあった。前週の下げがきつかっただけに押し目買いが入ったとみられるが、買いが続かないところに中小型グロース株への警戒感の根強さが窺える。売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>は昨年12月後半のきつい調整から切り返し、大幅に3日続伸。11月に上場したばかりだが、時価総額300億円あまりの小型株で、市場流通株も非常に少ないとみられる。マザーズ市場全体の売買代金は7日、株価不調に伴い1611億円まで減少。短期の値幅取りを狙った物色は少額の買いで株価を押し上げやすい小型株に向かわざるを得ないだろう。 さて、米12月雇用統計は非農業部門就業者数が前月比+19.9万人(11月は+24.9万人、修正後)となり、市場予想(+42万人程度)を下回った。一方、失業率は3.9%(同4.2%)に改善し、平均時給は前年同月比+4.7%と予想(+4.2%)を上回った。高賃金でも人々が労働市場に復帰せず、需給のタイト化が続いている構図だ。これにより米債券市場ではFRBの3月利上げを織り込む動きが一段と強まり、短期の年限を中心に金利が上昇。米金融大手ゴールドマン・サックスなどは今年4回の利上げを予想しているという。ただ、金融引き締めによる景気悪化を懸念する向きもあるようで、10年物国債利回りは1.8%近辺で伸び悩み。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.5%を下回ったところでいったん下げ止まっている格好だ。 こうしたなか、今晩の米国ではパウエルFRB議長の再任を巡り、上院銀行委員会で公聴会が行われる。度々当欄で指摘しているとおり、11月の中間選挙を前に消費者のインフレへの不満が意識されざるを得ない。公聴会ではパウエル氏にインフレ対応への質問が相次ぐだろう。いきおい、発言もタカ派色が強くなりやすいと考えられる。実際、証言草稿では「高インフレが定着するのを防ぐために我々の政策手段を用いる」との認識が示されているようだ。 そもそも市場に身を置いていると誤解しがちだが、中央銀行関係者にとってイレギュラーな金融政策を長期間続けることは不名誉なことである。次の景気悪化局面での政策対応余地も限られてしまう。パウエルFRBが金融政策の正常化を急ぐのは、なにも政治の圧力が強まっているからというわけでもないだろう。 米国ではほかにも12月の消費者物価指数(CPI、12日)、卸売物価指数(PPI、13日)、小売売上高や鉱工業生産(14日)といった重要経済指標の発表が相次ぐ。また、国内でも安川電<6506>や小売大手など11月締めの決算発表が多くある。これらの内容を睨み、相場全体として上下に振らされる場面が続きそうだ。(小林大純) <AK> 2022/01/11 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は続落、米雇用統計前に実質金利はさらに上昇  日経平均は続落。92.63円安の28395.24円(出来高概算6億6000万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でNYダウは続落し、170ドル安となった。5日に公表された昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けて、引き続き金融引き締めへの警戒感がくすぶった。週間の失業保険申請件数の増加や、12月のサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数の予想下振れなども嫌気された。一方、ハイテク株の一角には押し目買いが入り、ナスダック総合指数は-0.12%。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+0.75%となった。前日に844円安と大幅下落した日経平均も、本日は自律反発に期待した買いが先行して223円高からスタート。朝方には28813.09円(325.22円高)まで上昇する場面があったが、今晩の米12月雇用統計の発表を前に一段と上値を追う動きは限られ、前場中ごろを過ぎるとマイナスへ転じた。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が2%超下落しているほか、川崎汽船<9107>やファーストリテ<9983>が軟調。ソニーG<6758>や東エレク<8035>は小安い。米市場で電気自動車(EV)株が売られた影響からか日本電産<6594>や三井ハイテク<6966>の下げが目立ち、業績下方修正の4℃ HD<8008>も売り優勢。また、シンプレクスHD<4373>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、ソフトバンクG<9984>が2%近い上昇。投資先の中国アリババ集団などの株価上昇が買い材料視されているようだ。米金利上昇を受けて三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といった金融株が堅調で、NY原油先物相場の上昇でINPEX<1605>なども買い優勢。また、通期決算及び中期経営計画を発表したネクステージ<3186>が東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、電気機器、サービス業、陸運業などが下落率上位。一方、銀行業、鉱業、鉄鋼などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は29%となっている。 本日の東京市場では朝方こそ自律反発期待の買いが先行したが、日経平均は-0.33%、東証株価指数(TOPIX)は-0.41%で前場を折り返した。前日のNYダウが下落したとはいえ、アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が上昇しているのを見ると、相変わらず日本株の軟調ぶりが目立っている。日経平均の日足チャートは、下降する5日移動平均線に上値を抑えられ、連日で長めの陰線を引く形。金融株や市況関連株の一角が上昇しているが、東証1部銘柄の6割強が下落しており、引き続き中小型グロース(成長)株の下げが目立つ。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。米雇用統計の発表や3連休を控えたタイミングながら、日中値幅が大きいだけに前日並みの水準となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-1.96%と5日続落。こちらは日経平均に先んじてマイナスへ転じた。連日で取引時間中の昨年来安値を更新しており、前日も述べたとおり2020年5月以来の安値水準となっている。時価総額トップのメルカリ<4385>こそ底堅く推移しているが、その他主力IT株は全般軟調。売買代金上位ではFRONTEO<2158>が5日続落している。個人投資家のセンチメントや資金余力の悪化は鮮明で、日本株の弱さの一因となっているのかもしれない。 他に考えられる要因としては、日本国内における新型コロナウイルス感染者数の増加などといったところか。東京都の新規感染者数の推移は4日151人、5日390人、6日641人となっている。前日の先物手口を見ると、クレディ・スイス証券やJPモルガン証券、BofA証券といった外資系証券が日経平均先物を売り越していた。本日も陸運株や旅行関連株の一角が軟調で、感染拡大への警戒感が窺える。もっとも日本株の評価が高まらない根本的な理由は別にあるかもしれないが、そのあたりの議論は別の機会にしたい。 さて、6日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI2月物)が一時80ドル台まで上昇した。産油国カザフスタンの政情不安などが取り沙汰されたが、このところ原油需要増加への期待が高いことも背景にある。こうした動きの一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.46%(-0.07pt)とさらに低下した。金利は短期の年限を中心に上昇し、10年物国債利回りは1.72%(+0.02pt)。一時1.75%と昨年3月以来の高水準を付けた。 セントルイス連銀のブラード総裁は6日、「早ければ3月のFOMCで政策金利の引き上げを開始することが可能で、その後インフレ対応における次のステップとしてバランスシート縮小に着手することもあり得る」などと述べたという。FOMC議事要旨に続き、ブラード氏の発言がFRBの「インフレファイター」ぶりを意識させたとみられる。 これらを受け、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の上昇が続く形となっている。株式市場では米ハイテク株などの押し目買い意欲の根強さが窺えるものの、逆風が止んだとは言えない。今晩発表される12月雇用統計を受けてこうしたトレンドが続くのか、あるいは転換点となるのか見極めたいところ。なお、市場予想では12月雇用統計について、非農業部門雇用者数が前月比44万人あまりの増加(11月は21万人増)、失業率が4.1%(同4.2%)、平均時給が前月比0.4%増(同0.3%増)になるとみられている。(小林大純) <AK> 2022/01/07 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反落、やはり「FOMC議事録」からが本番だった  日経平均は3日ぶり大幅反落。610.67円安の28721.49円(出来高概算5億8000万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、392ドル安となった。12月のADP社の12月全米雇用リポートで雇用者数の増加が市場予想を大きく上回り、上昇する場面もあった。しかし、12月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で従来想定されていたより早いペースで利上げ・バランスシート縮小を実施する可能性が示唆され、売りが広がった。金利上昇とともにハイテク株の売りがかさみ、ナスダック総合指数は-3.34%とおよそ1年4カ月ぶりの下げ幅を記録。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで195円安からスタートすると、国内での新型コロナウイルス感染者数の増加なども警戒され、この日の安値圏で前場を折り返した。自動車や海運といった景気敏感株の一角が買われる一方、値がさグロース(成長)株の軟調ぶりが目立った。 個別では、ソニーG<6758>が売買代金トップで6%超の下落。前日は電気自動車(EV)市場参入への期待から大きく上昇したが、米長期金利の上昇により利益確定売りが広がっているようだ。昨年12月の国内「ユニクロ」既存店売上高が2ケタ減収となったファーストリテ<9983>は3%超の下落。その他、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>などが軟調で、キーエンス<6861>やリクルートHD<6098>の下げが目立つ。また、エムスリー<2413>やテルモ<4543>が急落し、SHIFT<3697>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。テルモは一部証券会社の投資判断引き下げが観測された。一方、トヨタ自<7203>が3日続伸し、郵船<9101>や商船三井<9104>は小じっかり。また、リョービ<5851>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、サービス業、電気機器、精密機器などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、輸送用機器、海運業、鉄鋼など4業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の86%、対して値上がり銘柄は11%となっている。 注目されたFOMC議事要旨で米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢が改めて意識され、本日の日経平均は600円を超える下落で前場を折り返した。日足チャートでは、29000円前後に位置する5日移動平均線と75日移動平均線を一気に下抜け。朝方は節目意識の働く29000円近辺で下げ渋る動きも見られたが、支えきれなかった。個別では景気敏感株買い、グロース株売り継続だが、東証1部全体としては8割強の銘柄が下落。挽回生産への期待が持てる自動車株、国内外での新型コロナ感染拡大で供給ひっ迫が続きそうな海運株など、「買える銘柄」は限られるのかもしれない。東証株価指数(TOPIX)は-1.39%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりとなっている。 新興市場ではマザーズ指数が-4.18%と大幅に4日続落。節目の900ptを割り込み、取引時間中としては昨年5月20日以来の安値を付けている。時価総額上位のメルカリ<4385>など全般軟調。売買代金トップのFRONTEO<2158>は大幅に4日続落しているが、昨年末にかけて信用買い残を大きく積み上げていただけに厳しいところだろう。 当欄では度々、5日のFOMC議事要旨公表からが新年相場の本番と強調してきたが、やはりと言うべきか、日米株とも急反落を強いられる格好となった。FOMC議事要旨は決定内容を踏まえるとさほどサプライズがあるとも思えないが、「実際にかなりタカ派的なイメージの強いものになった(SMBC日興証券)」などと捉えられている。特に利上げ・バランスシート縮小の加速が「既定事実であるような書きぶり」がタカ派姿勢を強く意識させたようだ。それに金融市場がここ数日、景気高揚への期待を高めるとともに、金融引き締めを織り込む動きがやや薄れていた反動も大きいだろう。 実際、米国債利回りは5日、短期の年限を中心に大きく上昇。景気の先行きに対する根強い期待もあり、10年物国債利回りは1.70%(+0.05pt)と昨年4月以来の水準に上昇した。一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.53%(-0.04pt)に低下。FRBが「インフレファイター」の姿勢を鮮明にしたことが影響しているのだろう。 結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇する方向となり、特にハイテク株にとって逆風となっている。もっとも、景気敏感株も「相対的に安心感がある」だけで、株式全体として実質金利の上昇はポジティブではないだろう。市場では金融引き締めによる景気腰折れを警戒する向きがあるほか、利回り水準重視の債券投資家の買いも想定されることから、長期金利が一段と上昇するかどうかまでは見通しづらい。ただ、長期金利の低下圧力、それにBEIの上昇圧力が強まりそうな材料は乏しいとみられる。 また、日米ともハイテク株の需給状況には厳しいものがありそうだ。市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は昨年12月30日申込み時点で3兆3576億円。12月は一貫して減少が続いていたが、ヒストリカルで見ればなお高水準にある。コロナ禍以降、世界的に個人がレバレッジを効かせた取引を活発化させていたのは昨年末の当欄で指摘したとおり。12月のIPO(新規株式公開)ラッシュと年末の損出し売りを通過すればマザーズ市場の需給状況は改善すると当欄では期待していたが、金利上昇によるハイテク株売りが水を差してしまった格好だ。再び損失覚悟の売りを迫られる個人投資家が多く出てくる可能性がある。 それに、米国ではハイテク株投資で知られるキャシー・ウッド氏の運用会社アーク・インベストメント・マネジメントの苦境も取りざたされている。同氏に賛同する個人投資家らから資金を集め、「破壊的イノベーション」に投資するという手法は一見すると時流に乗るものと感じられる。ただ、資金流出の懸念が常に付きまとう上場投資信託(ETF)で長期的なイノベーションを見越した投資を行うことは本質的に難しいと筆者は考えている。 今晩の米国では11月の貿易収支や12月のサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数、明日7日には12月の雇用統計が発表される。その後も経済指標の発表が続き、25~26日にはFOMCと重要イベントが目白押しとなる。方向感を見出すのは容易でないが、警戒感をもって取り組む必要がありそうだ。(小林大純) <AK> 2022/01/06 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続伸、バリュー買い・グロース売りの流れはいつまでか  日経平均は小幅続伸。11.43円高の29313.22円(出来高概算6億4280万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でNYダウは214.59ドル高(+0.58%)と続伸し、連日で史上最高値を更新。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」感染収束に伴う景気回復を期待した買いが相場をけん引。建機や金融、化学など景気敏感・バリュー(割安)株が大幅高となった。一方、長期金利の先高観が嫌気されたハイテク株は売られ、ナスダック総合指数は-1.32%と大きく反落。米ハイテク株安が重しとなり、日経平均は12.99円安と小反落でスタート。ただ、円安・ドル高も追い風に自動車関連など割高感の乏しい景気敏感株への買いが下値を支え、前場中頃には一時29388.16円(+86.37円)まで上昇。その後は伸び悩んだが、前日終値近辺で底堅く推移した。 個別では、トヨタ自<7203>とデンソー<6902>が連日で上場来高値を更新し、マツダ<7261>や日産自<7201>も大幅に上昇。また、川崎汽船<9107>が前日に続き急騰し、郵船<9101>なども買われた。そのほか、ソニーG<6758>、日立<6501>、三菱UFJ<8306>、東京海上<8766>、JFE<5411>、コマツ<6301>など景気敏感株を中心に主力株が大幅高。資本・業務提携先のデンソーの株価上昇が刺激材料となったイーソル<4420>は東証1部上昇率トップとなっており、国内証券が目標株価を引き上げたマルマエ<6264>も上位に顔を出した。 一方、ハイテク株には売りが広がっており、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、アドバンテスト<6857>、三井ハイテク<6966>が軟調。また、ファーストリテ<9983>、リクルートHD<6098>、任天堂<7974>、エムスリー<2413>、HOYA<7741>、信越化<4063>、ベイカレント<6532>、ZHD<4689>など値がさ株やグロース(成長)株の下落が目立っており、東証1部下落率上位にはJMDC<4483>、SHIFT<3697>、メドピア<6095>、Sansan<4443>、ストライク<6196>、インソース<6200>などの株価バリュエーションの高い銘柄が並んでいる。また、投資判断の格下げを受けてマネーフォワード<3994>やシスメックス<6869>なども下落率上位に顔を出している。 セクターでは保険業、鉱業、輸送用機器などが上昇率上位となっている一方、精密機器、サービス業、医薬品などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の43%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 東証1部の出来高は久々に前引けの段階で6億株を超え、売買代金も1兆6000億近くにまで上っており、一日を通じて3兆円を超えてきそうな勢い。こうした中、トヨタ自やデンソーなど、日本を代表する企業が年明けから連日で上場来高値を更新してきたところは、日本株全体にとっても明るい材料だろう。 前日の米株市場および本日の東京市場ではバリュー買い・グロース売りの動きが鮮明になっている。今晩は、米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派にシフトした昨年12月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表される。利上げや量的引き締め(QT)に対する見解を見極めたいとの思惑が働きやすいほか、週末には12月米雇用統計も控えていることから、グロース株には持ち高調整の売りが出やすいタイミングだろう。 一方、前日の米債券市場では短期金利が低下した一方で長期金利が上昇していた。金融引き締め懸念よりも、コロナ収束後の景気回復を期待した動きが反映されていたといえそうだ。景気回復期待が強まる中でのバリュー買い・グロース売りとあって、一見、昨年前半のリフレトレードを彷彿とさせるかのような動きだ。 こうした動きが長期化する可能性は低いとみるが、少なくとも今週末の米雇用統計を通過するまでは、同様の物色傾向が続きやすいだろう。年明け後も軟調な展開が続くマザーズ指数は本日も4%近い大幅下落で、昨年12月21日の安値をも下回ってきているが、底打ちは来週以降に持ち越されそうだ。 後場の日経平均は前日終値を挟んだ一進一退が続きそうだ。FOMC議事録の公表などを控え、ハイテク・グロースへの押し目買いが限られるほか、香港ハンセン指数を筆頭にアジア市況の下落が上値抑制要因となりやすい。一方、トヨタ自など割高感に乏しく今年度も成長ストーリーが描きやすい銘柄への買いが全体を下支えしよう。 <AK> 2022/01/05 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反発、一見好発進も「気になる点」  日経平均は3日ぶり大幅反発。396.45円高の29188.16円(出来高概算5億1000万株)で前場の取引を終えている。 東京市場が年末年始に休場だった間、米市場ではNYダウが12月30日に90ドル安、31日に59ドル安となったものの、年明け1月3日には246ドル高となり過去最高値を更新した。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の感染拡大が続く一方、「流行は短期で収束する」との専門家の見解を受けて、景気回復への期待が相場を押し上げた。電気自動車のテスラが急騰したほか、半導体関連株も揃って堅調で、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+1.20%と5日ぶりに反発。休場明けの東京市場でも米株高を受けて投資家心理が上向き、日経平均は306円高からスタートすると、その後も上げ幅を広げる展開となった。前場中ごろを過ぎると一時29253.78円(462.07円高)まで上昇し、取引時間中としては昨年11月26日以来の高値を付ける場面があった。 個別では、トヨタ自<7203>や東エレク<8035>に加え、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株が大きく上昇。トヨタ自は2025年をメドに独自の車載用基盤ソフトを実用化すると報じられている。東エレクは米半導体株高の流れを引き継ぎ、取引時間中の上場来高値を更新した。その他売買代金上位もソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>など全般堅調。また、一部証券会社の目標株価引き上げが観測されたラクーンHD<3031>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、売買代金トップのレーザーテック<6920>は利益確定売りが出て朝高後に反落。新型コロナ感染拡大が警戒されてOLC<4661>も軟調で、昨年末にかけて急落したレノバ<9519>は再び売りがかさんでいる。また、レノバとともに三井松島HD<1518>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、輸送用機器、非鉄金属などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのはパルプ・紙のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 名実ともに新年相場入りした本日の日経平均は400円近い上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、上昇する5日移動平均線が下値を支える形となり、昨年12月に上値抵抗線として意識されていた75日移動平均線を上抜け。値動き良化を受けて短期筋の買いが入っている可能性もありそうだ。売買代金上位を見ても、時価総額トップのトヨタ自や昨年の好パフォーマーである半導体関連株、海運株が大きく上昇しており、2022年相場の先行きに期待を持たせる動きとなっている。 もっとも、東証1部の値上がり銘柄数は6割強で、日経平均や東証株価指数(TOPIX、+1.27%)の上げ幅が大きい割にやや少ない印象を受ける。規模別指数を見ると大型株が特に堅調で、個人投資家の物色も半導体関連や海運といった主力大型株に向いている可能性がありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまり。さすがに昨年末より増えているが、さほど大きく膨らんでいるわけでもない。 新興市場ではマザーズ指数が-1.20%と続落。局所的に賑わっている銘柄も限られ、昨年12月に上場したばかりの直近IPO(新規株式公開)銘柄の一角は下げがきつい。こうしたマザーズの動向も「主力大型株先行」という見方を裏付けるものだろう。 このように、日経平均や主力大型株を見ると好調な出足という印象が強いが、マザーズを中心とした中小型株まで見渡すとまちまちといったところか。年末にかけて取引を手控えていた機関投資家の買いが入っている可能性がある一方、個人投資家は中小型株から主力大型株への物色シフトにとどまっている感がある。 やはり年明け好発進となった米株も、重要な経済指標の発表やイベントが相次ぐ本日からが本番かもしれない。特に注目されているのが5日公表される昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録。12月のFOMCでは資産購入の減額(テーパリング)を加速させることが決まったほか、2022年内に3回の利上げを行う見通しが示された。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ対応で急速に金融引き締め姿勢に傾くなか、FOMCでどのような議論がなされたのか注視する必要があるだろう。 また、4日には昨年12月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数や11月の米求人件数(JOLT)、5日には12月のADP社の全米雇用リポートが発表される。本日、中国メディア財新などが発表した12月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.9と前月比1.0pt上昇した。米国でも企業業績への期待が根強い一方、求人件数などの雇用関連統計には注意が必要かもしれない。10月のJOLT求人件数は過去2番目の高水準だったが、それが供給制約による労働需給ひっ迫を意識させ、インフレ観測を強めた経緯がある。もちろん、7日発表の米12月雇用統計もFOMC議事録と並んで注目度が高い。 これらの重要イベントを前に、3日の米債券市場では10年物国債利回りが1.63%(+0.12pt)となるなど、幅広い年限で金利が急上昇した。期待先行で始まった日米株式相場もイベントに対する反応が気になるところだ。(小林大純) <AK> 2022/01/04 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続落、2021年市場データから得られる示唆は?  日経平均は小幅続落。20.79円安の28886.09円(出来高概算3億3000万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でNYダウは6日続伸し、90ドル高となった。11月8日以来およそ1か月半ぶりに過去最高値を更新し、S&P500指数も最高値を付けた。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の感染が拡大する一方、大規模な都市封鎖(ロックダウン)につながる可能性は低いとの楽観的な見方から景気敏感株を中心に買われた。ただ、長期金利の上昇を受けてハイテク株は伸び悩み。また、東京市場は明日から年末年始で4日間の休場となることから持ち高を手仕舞うための売りも出て、本日の日経平均は112円安からスタートした。朝方には一時28579.49円(327.39円安)まで下落したが、年末年始を前に取引参加者は少なく、一段と売り込もうとする動きは限られた。前場中ごろを過ぎると前日終値近辺まで値を戻した。 個別では、任天堂<7974>が2%近く下落し、商船三井<9104>、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>もさえない。国内外の新型コロナ感染者数の増加が意識されているようで、オープンドア<3926>やエアトリ<6191>といった旅行関連株の下げが目立つ。また、サインポスト<3996>やエムアップ<3661>が東証1部下落率上位に顔を出している。一方、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>は小じっかり。ZHD<4689>は4%超上昇しているが、韓国ネイバーを巡る報道が手掛かり材料となっているようだ。ハイデ日高<7611>は決算を受け、SCREEN<7735>は生産増強観測が報じられて買い優勢。また、カワタ<6292>や明和産<8103>が東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、その他製品、空運業、水産・農林業などが下落率上位。一方、ゴム製品、パルプ・紙、機械などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の53%、対して値上がり銘柄は40%となっている。 本日の日経平均は朝方こそ300円超下落する場面があったが、前引けにかけて小安い水準でもみ合う展開となっている。ここまでの東証1部売買代金は8000億円あまりと薄商い。4日間の休場を前に個人投資家などから手仕舞い売りが出やすいだろうが、取引参加者が少なく、積極的に売り持ちに傾こうとする向きは限られるだろう。アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が反発しているのも下支えとなりそうだ。2020年末の日経平均は27444.17円で、21年通年ではプラスで終えそうな情勢だ。新興市場ではマザーズ指数が-1.04%と3日ぶりに反落。こちらは個人投資家の手仕舞い売りの影響が出やすいとみられ、物色の矛先も指数組み入れ前の直近IPO(新規株式公開)銘柄に向いているようだ。年明けの新年相場での躍進に期待したい。 さて、年末を前に2022年の注目イベント等が取り沙汰されているが、本日の当欄では21年の市場データを振り返り、今後の相場展望を巡るヒントを得たいと思う。(1)現物株の投資主体別売買動向 1月4日週から12月13日週までの累計で、主な買い主体は事業法人(1兆6000億円程度)、海外(4000億円あまり)、個人(2000億円あまり)となっている。一方、主な売り主体は信託銀行(2兆2000億円あまり)、投資信託(1兆2000億円あまり)など。信託銀行や投信の売りは株高に伴い資産配分を維持するためのものだろう。年金運用の目安となる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオでは、国内株式の構成割合を25%(かい離許容幅として±8%)としている。セオリーで言えば少子高齢化(受給者比率の上昇)が進むなか、リスク資産の構成割合を一段と引き上げるのは難しいところかもしれない。逆に、株価の支え役となったのは企業による自社株買いだったことも窺える。(2)海外投資家の株価指数先物の取引状況 1月4日週から12月13日週までの累計で、東証株価指数(TOPIX)先物が4000億円程度の売り越し、日経平均先物が1兆6000億円あまりの売り越しとなっている。まとまった買いが見られたのは菅義偉前首相の去就に絡んだ「政局相場」時で、TOPIX先物は8月23日週から9月21日週まで、日経平均先物は8月23日週から9月13日週までにそれぞれ8000億円あまり買い越していた。当時も本欄で度々述べたが、グローバル投資家が日本に求めているものは「変化」であることが改めてわかる。なお、裁定取引残高は1月4日週が差し引き9000億円程度の売り越しだったのに対し、12月13日週は2000億円弱の買い越しとなっている。(3)信用取引残高 東名2市場、制度・一般合計で、1月8日申込み時点の買い残が2兆4124億円、売り残が8593億円だった。これが12月24日申込み時点では買い残が3兆4344億円、売り残が7989億円となっている。コロナ禍以降、米中などで証拠金債務(マージンデット)が拡大していることが度々話題となるが、個人の取引が活発化して信用買いの持ち高を膨らませているのは日本も同様だと言える。なお、買い残高のピークは11月26日申込み時点の3兆7401億円だが、増勢が強かったのは夏ごろまでだったように見受けられる。主要中央銀行が金融引き締め姿勢に傾き、国内外で個人投資家のレバレッジをかけた取引にも影響が出てくる可能性はある。(4)日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ 通常買い入れの実施状況を月ごとに見ると、1月4回(計2004億円)、2月1回(501億円)、3月5回(2705億円)、4月1回(701億円)、5月0回、6月1回(701億円)、7月0回、8月0回、9月1回(701億円)、10月1回(701億円)、11月0回、12月0回(29日まで)となっている。4月以降の回数減少が鮮明だが、従来、前引け時点でTOPIXが0.5%超下落した際に実施していたところを2%超に変更した可能性があるなどと捉えられている。2020年は「売り手にならない」日銀のETF買いが下値を支え、売り方の買い戻しが相場上昇を演出したが、今年下支え役となったのはこれまで見てきたとおり企業の自社株買いと個人投資家の信用買いだろう。節目節目で上値が重かったこともうなずける。 なお、2022年の投資論点としてあまり話題に上がっていないが、日銀の黒田東彦総裁の任期満了(23年4月)まで1年を切り、「黒田緩和」の総括や今後についての議論が活発となる可能性もあるだろう。動向が注目されるのは米連邦準備理事会(FRB)ばかりではなさそうだ。(小林大純) <AK> 2021/12/30 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は反落、「掉尾の一振」より手仕舞い売り優勢か  日経平均は反落。259.30円安の28809.86円(出来高概算4億0214万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でNYダウは95.83ドル高(+0.26%)と5日続伸。S&P500指数は一時過去最高値を更新したが失速し小反落。疾病対策センター(CDC)が、新型コロナウイルスに感染した無症状の国民に対する隔離推奨期間を従来の10日間から5日間に短縮したことが景気回復に対する楽観的な見方を支援。航空機メーカーのボーイング(BA)や消費関連株の上昇がけん引し終日堅調に推移した。ハイテク株は利益確定売りに押され、ナスダック総合指数は-0.56%と反落。 米株高の小休止を受けて日経平均は73.43円安からスタート。寄り付き直後に一時29106.28円まで切り返したがすぐに失速。29000円を維持しようと下げ渋る動きも見られたが、前場中頃からは軟調なアジア市況や時間外のNYダウ先物に連れ安し、同水準を割り込むと下げ幅を拡大。前引け直前には一時28729.61円(-339.55円)まで下げた。 個別では、連日で上場来高値を更新していた東エレク<8035>やレーザーテック<6920>が利益確定売りに押され反落。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、村田製<6981>、三井ハイテック<6966>などの値がさ株やハイテク、グロース(成長)株が総じて軟調。配当や優待の権利落ちでJT<2914>やすかいらーく<3197>も大きく下落。前日まで2日連続でストップ安となったレノバ<9519>は30%超の下落率で急落。上半期決算発表で目先の出尽くし感が先行したERI HD<6083>も急落。第1四半期好決算も出尽くし感が優勢となったマルマエ<6264>は4%近く下げた。 一方、久々に商船三井<9104>や川崎汽船<9107>の海運株のほか、ソフトバンクG<9984>が大きく上昇。武田薬<4502>、NTT<9432>、JR東<9020>、JAL<9201>、神戸物産<3038>などのディフェンシブ銘柄やアフターコロナ銘柄の一角も堅調。9-11月期が大幅増益となったJフロント<3086>は大幅高。調査報告書受領を受けた警戒感の後退や過年度決算の修正による実体面での影響は限定的との見方から、アウトソーシング<2427>が急反発した。 セクターではゴム製品、ガラス・土石製品、電気機器などが下落率上位となっている一方、海運業、空運業、石油・石炭製品などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の34%、対して値上がり銘柄は60%となっている。 前日におよそ一カ月ぶりに29000円を回復した日経平均は、本日は想定以上の下落ぶりで、早々に29000円割れに後戻り。日足チャートでは前日に回復したばかりの200日移動平均線を割り込んだ。また、気になるのは、本日の下落により、その上にある75日線が強烈な上値抵抗線として存在感を強める形になってしまったことだ。12月8、16日と並び、3度も戻り局面で同線を明確に突破することができず、この先も、上昇しても戻り待ちの売りが意識される状況だ。 一方、東証株価指数(TOPIX)の下落率は、0.51%と日経平均の0.89%より軽微にとどまっており、東証1部の値上がり銘柄も全体の60%と過半数を上回っている。売買高も4億株程度と低調なところを見ると、薄商いのなか短期筋が日経平均先物を主体に売っている影響が大きいとみられる。そのため、過度な悲観までは不要だろう。 ただ、前日に大幅増収増益の好決算を発表したマルマエが大きく売られていることは気になる。もともと株価が上場来高値圏にあったほか、前日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が反落していたこともあり、出尽くし感が先行しやすい状況ではあった。しかし、好決算でも年末年始を跨ぎたくない投資家心理も窺え、いまの市場センチメントがそこまで強気でないことを示唆しているようだ。「掉尾の一振」が期待されてはいたが、今年は手仕舞い売りが優勢となりそうで、明日の大納会への望みはやや剥落したか。 後場の日経平均は引き続き軟調な展開となりそうだが、前引け間際にかけては下げ渋る動きが見られた。商いが薄い分、アジア市況や時間外のNYダウ先物による影響が大きいだろうが、28500円が近づく場面ではさすがに押し目買いが入るだろう。 <AK> 2021/12/29 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反発、「実需筋なき年末ラリー」を再強調  日経平均は3日ぶり反発。276.30円高の28952.76円(出来高概算4億6000万株)で前場の取引を終えている。 連休明け27日の米株式市場でNYダウは4日続伸し、351ドル高となった。S&P500指数は連日で過去最高値を更新。クレジットカード会社のマスターカードのデータで年末商戦の売上高が高い伸びを示したことが好感された。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の入院リスクが従来型に比べ低いとの最新の研究結果もあり、景気回復が続くとの期待が相場を押し上げた。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで276円高からスタートすると、朝方には一時29121.01円(444.55円高)まで上昇し、取引時間中としては11月26日以来およそ1カ月ぶりの高値を付ける場面があった。ただ、その後は上値が重く伸び悩む展開となった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が3%超の上昇。東エレク<8035>も堅調に推移し、ともに連日で取引時間中の上場来高値を更新している。27日の米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が+2.72%と大きく上昇し、レーザーテックや東エレクもこうした流れを引き継いだ。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>がしっかり。しまむら<8227>やあさひ<3333>は決算が好感されて買われ、井筒屋<8260>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎船<9107>といった海運株や任天堂<7974>は小安い。前日にストップ高比例配分となったタムラ製<6768>など、直近大きく上昇した中小型株は利益確定売りに押される展開となっている。 セクターでは、精密機器、金属製品、パルプ・紙などが上昇率上位で、その他も全般堅調。一方、海運業、電気・ガス業、石油・石炭製品の3業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の71%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 連休明けの米株が強い値動きを見せ、本日の日経平均も朝方400円を超える上昇となる場面があったが、その後上げ幅を縮め前場を折り返した。日足チャートを見ると、29000円台に位置する75日移動平均線や16日に付けた直近高値29070.08円を一時的に上回ったものの、上ひげを付ける格好。売買代金上位では半導体関連を中心とした値がさ株の堅調ぶりが目立つものの、東証1部全体としても7割ほどの銘柄が上昇し、東証株価指数(TOPIX)は+0.86%となっている。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまり。海外がクリスマス休暇だった24日、27日と比べると増えているが、年末を前に売買はなお低調だ。株価指数先物の売買高も同様の印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-0.35%と続落。前日終値を挟みもみ合う展開となっており、日足チャートでは連日の陰線形成と、日経平均以上に伸び悩んでいる印象がある。前日上場したアジアクエスト<4261>などの直近IPO(新規株式公開)銘柄やアスタリスク<6522>などの個別材料株の一角が買われているが、メルカリ<4385>やビジョナル<4194>といった時価総額上位の主力株が軟調。前日までリバウンドしていたFRONTEO<2158>も売りに押される展開となっている。 こうした動向を見ると、24日の当欄「『実需筋なき年末ラリー』の賞味期限は?」での見立てに沿った相場展開となっていることが窺える。実需筋を中心とした機関投資家の多くが年末を前に不在のなか、米株上昇を受けた海外短期筋による株価指数先物の買い戻しが日経平均の上昇を演出しているのだろう。現物株、先物とも薄商いとなっているため、こうした買い戻しの影響は強く出やすいと考えられる。 一方、節目の29000円を上回ってきたことで、個人投資家からは利益確定売りが出ているだろう。日経レバETF<1570>のネット証券での取引状況は28500円を超えたあたりから売り超となっていたが、27日時点の純資産総額も4337億円とまずまず高水準にある。また、本日は12月末の権利付き最終売買日となるため、節税目的の損出し売りが出やすいとも考えられる。マザーズの軟調ぶりからもそれがわかる。 もっとも、主要中央銀行の金融引き締め姿勢への傾斜に警戒感を強めるファンドマネジャーらが休暇中、さらに「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は17.68(-0.28)と低下基調にあることを踏まえると、損出し売りが一巡した後は年末にかけて売りが出にくい需給状況となるかもしれない。 とはいえ、個人と中心とした国内投資家は年末年始の4日間の休場中に持ち高を維持するか悩ましいところか。トルコ・リラが不安定とあって、年末年始の為替相場の急変動などが意識される可能性はあるだろう。また、重ねて強調するが、年明け後は1月5日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の内容が注目されており、米主要経済指標の発表や25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と重要イベントが目白押しだ。改めて年末の「実需筋なきラリー」の賞味期限を意識しつつ、投資家それぞれのリスク許容度や時間軸に沿って対応していく必要がありそうだ。(小林大純) <AK> 2021/12/28 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は続落、200日線前で伸び悩み、今晩の米株市場に注目  日経平均は続落。71.47円安の28711.12円(出来高概算3億7926万株)で前場の取引を終えている。 先週末24日の米株式市場はクリスマスの祝日で休場。英FTSE100と仏CAC40は小幅に下落した。週明けの日経平均は3.74円高とほぼ横ばいでスタートしたが、日本国内でも新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の市中感染が相次いで報告されるなか、警戒感も根強く、即座に下げに転じると取引開始直後に28658.82円(123.77円安)まで下落。一方、日本でも米製薬会社メルクの新型コロナ経口薬「モルヌピラビル」が承認されたこともあり、過度な悲観には至らず、下げ渋ると、その後は軟調もみ合いが続いた。 個別では、東エレク<8035>が大幅続伸で先週末に続き上場来高値を更新。アドバンテスト<6857>やディスコ<6146>も上昇。主力株では商船三井<9104>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>、三井住友<8316>、キヤノン<7751>、OLC<4661>、JR東<9020>が堅調で、神戸物産<3038>、エーザイ<4523>は2%を超える上昇。ほくほく<8377>は自社株買いを発表し大幅高。大型受注を発表したヘリオステクノ<6927>が急伸し、伊藤忠<8001>と業務委託契約を締結したアトラG<6029>はストップ高、上半期決算が上振れ着地となったミタチ産業<3321>もストップ高まで買い進まれた。三井金<5706>が完全子会社化を目指して株式公開買付(TOB)を実施すると発表した三井金属エンジニアリング<1737>はTOB価格にサヤ寄せする形でストップ高買い気配となっている。 一方、第3四半期営業減益が業績鈍化の警戒感を高めたニトリHD<9843>、今期減益見通しが失望感を誘った象印マホービン<7965>が急落。3月に経営破綻した英金融会社グリーンシルを巡る資金回収を進めているスイス金融大手クレディ・スイスGが提訴する方向と伝わったことが嫌気されたソフトバンクG<9984>も大きく下落。そのほか、ファーストリテ<9983>、NTT<9432>、村田製<6981>、ZHD<4689>、HOYA<7741>、日本電子材料<6855>、ルネサス<6723>、ベイカレント<6532>などの下落がやや目立つ。 セクターでは非鉄金属、情報・通信業、電気・ガス業などが下落率上位となっている一方、ゴム製品、その他金融業、保険業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の66%、対して値上がり銘柄は27%となっている。 週明けの日経平均はやや手掛かり材料難のなか軟調もみ合い。200日移動平均線を手前に伸び悩んでおり、同線の上値抵抗線としての存在感が強くなってきている。先週末の米株市場が休場だったことで動意に乏しいのは致し方ないが、年内の間に、この水準を突破しておかないと、年明け以降の株高に期待を繋ぎにくくなる。 今週は年内最後の週となり、声高に言うほどでもないが、まだ「掉尾の一振」に期待した投資家もいるだろう。欧米では、既に年始までの長期休暇に入っている投資家もいるだろうが、今週はクリスマス休暇明けで相場に戻ってくる投資家もいるとみられ、新年度に向けた買いも期待されるところ。そうした中、まずはクリスマス休暇前に引け味よく終わった米株市場が、今晩どのような動きを見せてくるかを見極めたい思惑も強いだろう。連休明けの今晩の米株市場が強い動きを見せれば、東京市場でも、「損出し」売りが一巡すると思われる明日28日を境とした年末に向けた株高への期待が高まる。 後場の日経平均は引き続き動意薄の動きが続きそうだ。本日は香港市場が休場のなか、上海総合指数は小幅高で推移しており、時間外取引の米株価指数先物はまちまち。手掛かり材料難のなか、今晩の米株市場を確認したい様子見ムードが一段と強まりそうだ。 <AK> 2021/12/27 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は小幅に4日続伸、「実需筋なき年末ラリー」の賞味期限は?  日経平均は小幅に4日続伸。22.98円高の28821.35円(出来高概算3億9000万株)で前場の取引を終えている。 23日の米株式市場でNYダウは3日続伸し、196ドル高となった。S&P500指数は過去最高値を更新。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の入院リスクや重症化率は従来のデルタ株等と比べ低いという調査結果が相次いで出たことや、米製薬大手メルク(MRK)の新型コロナ経口薬の緊急使用が承認されたことで安心感が広がった。また、12月のミシガン大学消費者態度指数(確報値)が上方修正されるなど、経済指標が良好な内容だったことも投資家心理の改善につながった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで37円高からスタートすると、朝方には一時28870.13円(71.76円高)まで上昇。ただ、ここ数日と同様に薄商いのなか一段の上値追いの動きは限られ、戻り待ちの売りも出て小高い水準でもみ合う展開が続いた。 個別では、レーザーテック<6920>が売買代金トップで3%超の上昇。半導体関連では東エレク<8035>も堅調で、揃って取引時間中の上場来高値を更新している。その他売買代金上位では三井ハイテク<6966>や神戸物産<3038>、ZHD<4689>の上昇が目立ち、任天堂<7974>やソニーG<6758>は小じっかり。業績上方修正や増配を発表したローランドDG<6789>が東証1部上昇率トップとなり、親会社の品川リフラ<5351>による完全子会社化が発表されたイソライト工業<5358>はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、川崎船<9107>が2%超下落し、郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>、トヨタ自<7203>は小安い。品質不正に関する調査結果の第2報等を公表した三菱電<6503>に売りが出ているほか、ネットプロHD<7383>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、機械、精密機器、電気機器などが上昇率上位。一方、保険業、陸運業、海運業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の47%、対して値下がり銘柄は45%となっている。 米市場では新型コロナ「オミクロン型」への懸念後退につながるニュースや良好な経済指標を受け、主要株価指標が揃って3日続伸。S&P500指数は過去最高値を更新し、東京市場もこうした流れを引き継いだ。ただ、日経平均は米株価指標と比べ上値の重さが鮮明で、東証株価指数(TOPIX)に至っては-0.01%で前場を折り返した。ここまでの日経平均の日中値幅は66円ほどにとどまっており、東証1部売買代金は8700億円あまりと前日以上に低調だ。なお、前日の東証1部売買代金は1日を通じ1兆8853億円と、7月6日以来の低水準だった。東証1部の値上がり銘柄数は値下がり銘柄をやや上回る程度で、業種別騰落率では下落しているセクターの方が多い。 前日も触れたが、海外投資家の多くはクリスマス休暇中(欧米アジアの主要株式市場も振替休場となる)。また、年末を前に持ち高を大きく動かす機関投資家は限られる。主な取引参加者は残った個人投資家や機械的に売買するタイプの機関投資家のみとみられ、このことは東証1部売買代金、それに売買代金上位の顔ぶれや値動きを見てもわかるだろう。 前日の日経平均は後場に入り強含み、高値引けとなったが、先物手口を見ると外資系証券各社がTOPIX先物をやや買い越ししていた。香港などのアジア株が堅調だったことを受けた買い戻しとみられる。株価指数先物の取引も低調となっているため、多少の買い戻しでも相場に与える影響が大きいと考えられる。 ここから年末年末にかけて目立ったイベントはなく、年明け1月5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表まで休暇を決め込む米ファンドマネジャーが多いという。S&P500指数の高値更新は短期筋の買いや売り方の買い戻しが演出した「実需筋のいないラリー」なのかもしれない。 日本株はというと、前日もネット証券では日経レバETF<1570>が売り超だった。日経平均が28500円を上回り、個人投資家が利益確定売りのスタンスであることが上値を抑えている要因の1つであると考えられる。もっともS&P500指数が高値更新したくらいであるから、海外勢の先物買い戻しによりもう一段戻りを試す可能性はあるだろう。 ただ、年明け以降はFOMC議事要旨の内容に加え、各種物価統計、1月25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果などを見極めたいとする声が多い。先日取り上げたとおり、米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した調査によれば、多くのファンドマネジャーが最大のリスクとして意識しているのは新型コロナ「オミクロン型」などではなく「タカ派的な中央銀行」である。年末の「実需筋なきラリー」の賞味期限がいかほどか、注意する必要があるだろう。(小林大純) <AK> 2021/12/24 12:17

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