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ランチタイムコメント
日経平均は大幅に3日続伸、インフレ鈍化・FOMCあく抜けへの期待過剰は禁物
日経平均は大幅に3日続伸。438.23円高の25784.71円(出来高概算6億1600万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でNYダウは599.10ドル高と大幅続伸。2月生産者物価指数(PPI)が予想を下回り、インフレピークアウトの可能性が示唆されたとの解釈から上昇スタート。ロシアのプーチン大統領がウクライナでの攻撃を継続する強硬姿勢を示し、一時伸び悩む場面もあったが、原油価格の反落が景気後退懸念を和らげ、終日堅調に推移。連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果前に持ち高調整の買い戻しも入り、ナスダック総合指数は+2.92%と4日ぶりに大幅反発。原油先物相場の落ち着きが安心感を誘うなか、米株高を引き継いで日経平均は228.42円高でスタート。FOMCの公表結果とパウエル議長の記者会見を日本時間で明朝に控えるなか、売り方の買い戻しが断続的に入り、前引け直前には25785.53円(439.05円高)まで上昇した。 個別では、東エレク<8035>、ルネサス<6723>などの半導体関連のほか、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、HOYA<7741>などの値がさグロース(成長)株が高い。ほか、OLC<4661>、リクルートHD<6098>、日立<6501>、日本電産<6594>などが3~4%上昇。JAL<9201>やJR東海<9022>などの旅行関連や、住友鉱<5713>、JFE<5411>などの川上セクターの一角が大幅に上昇。好決算を受けて前日にストップ高比例配分となった三井ハイテク<6966>は本日もストップ高まで買い進まれた。パーク24<4666>は決算が好感され6%高。一方、川崎汽船<9107>やINPEX<1605>、コマツ<6301>などが軟調。アスクル<2678>は決算を受けて8%近く売られた。 セクターでは空運業、電気機器、その他製品などが上昇率上位に並んだ。一方、鉱業、水産・農林業、銀行業の3業種が下落となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は35%となっている。 日経平均は値幅を伴った上昇で大幅高となっているが、東証1部の出来高は6億弱と、前日同様、先週までに比べると少ない。値幅の割に出来高がそこまで多くないことを踏まえると、売り方による先物主体での買い戻しの様相が強そうだ。 明日のFOMC公表結果における政策金利見通しや経済見通しに加え、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見が目先の大きな手掛かり材料となるが、結果を受けた株価反応は読みにくい。仮に想定よりハト派寄りの内容となっても、ウクライナ情勢を巡る不透明感が根強いなか、相場がポジティブに反応するかは定かでない。また、ポジティブに反応したとしても、短命で終わる可能性が高いだろう。 米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が過去最高値圏で高止まりしていることは市場のインフレ懸念を表しているといえ、そうした中で、FRBのハト派寄りの姿勢が確認されたとしても、むしろ、ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)への警戒感を高めてしまうだろう。無難に想定通りの結果に終わっても、先日の議会証言でパウエル議長は「(金融政策の動向は)データ次第」と含みを持たせているため、5月FOMCでの大幅利上げへの警戒感はくすぶり、あく抜け感も高まりづらいだろう。 昨日の米株市場では、PPIの伸びが前月比で鈍化したことでインフレピークアウト感が示唆されたなどという市況解説が散見されたが、こうした期待はあまりに時期尚早だろう。前年同月比では+10%増という驚異的な伸びで、前の月からは横ばいで鈍化していない。食品・エネルギーを除いたコアでも前年同月比+8.4%と、予想(+8.7%)を下回ったとはいえ、前の月の+8.3%から拡大している。 また、ウクライナでのロシア軍の戦闘はまったく止んでいないし、仮に停戦に至ったとしても、経済制裁が直ちに解除されるわけではないため、制裁の影響は残る。先週、アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)加盟国に増産を働きかけたことや、米国がベネズエラ産の原油確保に動いているなどという報道もあり、原油相場は足元下落している。しかし、イランがイスラエル戦略拠点を攻撃したことなどから、一時高まっていたイランによる増産期待は足元で後退。また、ロシア産原油の代替調達先候補のベネズエラからの輸入再開についても、米議会の一部与野党議員からは反対の声が上がっており、難航しそうだ。このため、資源価格の上昇が一服しても、高止まりする可能性が高く、今後インフレ懸念を払しょくするような物価指標の大幅な鈍化が見られるとは期待しにくい。 さらに、中国では再び新型コロナウイルス感染が拡大し、複数の都市でロックダウン(都市封鎖)が実施されている。これを受け、トヨタ自<7203>や台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は工場稼働を一時停止している。サプライチェーン(供給網)の混乱がさらに長引くことが懸念され、こうした背景も、インフレ鈍化を妨げかねない。 ウクライナ情勢を巡っても、ロシアのプーチン大統領が停戦交渉に懐疑的な姿勢を示したなどと伝わっており、事態はなお混迷としている。ウクライナの主要都市の制圧に想定以上に時間がかかり、軍の士気的にも経済的にも追い込まれつつあるロシアが、形勢逆転を狙って戦術核を使う可能性があるなどという恐ろしい観測も上がっている。最悪の事態はまだ織り込めていないとみられ、まだ相場の底入れを確信できる段階ではなかろう。投資家には引き続き慎重な姿勢を求めたい。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いとなりそうだ。中国での新型コロナ感染拡大や、当局によるハイテク企業の締め付けなどを背景に、前日にかけて上海総合指数や香港のハンセン指数は大幅な下落に見舞われた。本日は底堅く推移していることもあり、投資家心理の下支えとなろう。一方、売り方の買い戻しは午前の間に一巡している可能性もあり、午後は上値は限られるとみておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/03/16 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、原油下げるも「中国」「引き締め」懸念
日経平均は続伸。77.26円高の25385.11円(出来高概算6億株)で前場の取引を終えている。 週明け14日の米株式市場でNYダウは1ドル高とほぼ横ばいで取引を終えた。一時451ドル高まで上昇したが、その後126ドル安まで下落する場面もあった。中国を巡り新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)やロシア支援への懸念が台頭。一方、中国での需要鈍化を意識した原油価格の反落やロシアとウクライナの停戦交渉への期待が株式相場を下支えした。また、15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に金利が幅広い年限で大きく上昇し、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-2.04%。本日の日経平均はやや売りが先行して79円安からスタートしたが、その後は前日終値を挟みもみ合う展開が続いた。ここまでの高値は9時37分に付けた25423.95円(116.10円高)、安値は9時に付けた25219.13円(88.72円安)となっている。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が5%近い上昇。トヨタ自<7203>は2%超上昇し、東エレク<8035>もしっかり。好決算のMSOL<7033>、子会社売却による業績上方修正などを発表した日機装<6376>、中古車取引価格の上昇が買い材料視されたIDOM<7599>は急伸。また、三井ハイテク<6966>はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、中国を巡る懸念からソフトバンクG<9984>とファーストリテ<9983>が4%前後下落し、原油などの商品市況の下落でINPEX<1605>と住友鉱<5713>は8%近く下落している。郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株も軟調。ノーリツ<5943>は株式売出しによる需給悪化を懸念した売りが先行した。また、大平洋金<5541>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、保険業、輸送用機器、食料品などが上昇率上位。一方、鉱業、非鉄金属、石油・石炭製品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の76%、対して値下がり銘柄は20%となっている。 本日の日経平均は続伸して前場を折り返したが、ここまで方向感に乏しい展開となっている。日足チャートを見ると、上向きに転じた5日移動平均線が下値を支え、寄り付き直後を安値に陽線を引く格好だ。個別・業種別では市況関連株が大きく下落する一方、金融株や自動車株に買い。米金利上昇や円相場の弱含みが意識されているとみられる。売買代金上位の値がさグロース(成長)株はやや方向感がつかみづらい。前引けの日経平均が+0.31%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.88%。なお、ここ2日ほどBofA証券のTOPIX先物買い越しが目立っていた。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりで、株価指数先物・オプション3月物の特別清算指数(SQ)算出日だった先週末11日の後場あたりからやや低調となっている印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-1.06%と3日続落。こちらは朝方に一時653.27pt(-16.78pt)まで上昇すると、その後プラス圏に浮上する場面もあったが、買いは続かず失速している。このところ下値で押し目買いが入るものの、米インフレ・金利上昇でグロース色の強い新興株にとってはなお厳しい環境だろう。時価総額トップのメルカリ<4385>など主力IT株は総じて軟調。短期の値幅取りを狙った物色はサイエンスアーツ<4412>のように小型で値動きの軽い銘柄に向かざるを得ない。なお、本日はビジョナル<4194>が決算発表を予定しており、力強い成長が続いているか注視したい。 さて、商品市況の高騰と円安進行で「交易条件の悪化」懸念が広がっていた日本株にとって原油価格の反落は安心材料だが、その理由が中国経済の鈍化懸念となると素直に買いづらいところではあるだろう。また、各種中国株指数や香港ハンセン指数の連日の急落を見ると、単なるロックダウンの影響を意識した売りとは考えづらい。ウクライナ紛争で中国がロシアを援助する意思を示したと一部メディアが報じており、西側諸国の経済制裁が中国にも及ぶことが懸念されているようだ。 また、前日の米市場では金利の上昇も目を引いた。10年物国債利回りは2.13%(+0.14pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物は1.86%(+0.11pt)となった。短期金融市場では一時、年内7回のFOMC全てで0.25ptの利上げが行われることを完全に織り込んだという。 ウクライナ紛争により世界経済の先行き不透明感が増すなか、今回のFOMCで参加者らの政策金利見通し(ドットチャート)が市場想定ほど利上げ加速に傾かなければ、短期的なリバーサル(株価の反転)につながる可能性はある。新年度に向けた配当再投資の動き(市場推計で1兆円超)や機関投資家の買い観測も日本株のリバウンドを後押しするかもしれない。 もっとも、供給不安を背景に商品高・インフレ観測は根強いようだ。実際、前日の米市場では原油先物相場が急反落したにもかかわらず、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.93%(-0.01pt)と高水準を維持している。インフレ懸念がくすぶる限り、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速シナリオも残り続けるだろう。また、1ドル=118円台前半まで円安が進み、17~18日に金融政策決定会合が控える日銀でもいわゆる「為替防衛ライン」が話題となってきそうだ。 中国・上海総合指数や香港ハンセン指数が朝方の売り一巡後に下げ渋っているのはやや安心できる材料だが、本日からのFOMCを前に積極的な売買は手掛けづらいところか。後場の日経平均ももみ合いが続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/03/15 12:21
ランチタイムコメント
日経平均は反発、円安支援で上昇も失速、ウクライナ情勢や各国金融政策を見極めへ
日経平均は反発。174.61円高の25337.39円(出来高概算6億1443万株)で前場の取引を終えている。 先週末11日の米株式市場ではNYダウが229.88ドル安と続落。ロシアのプーチン大統領がウクライナとの停戦交渉で前向きな動きがあると発言したとの報道で、停戦期待から寄り付き後上昇。しかし、ウクライナ外相などが報道を否定したことで停戦期待が後退したほか、3月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想を下回ったこともあり、上げ幅を縮小。バイデン大統領がロシアに対して世界貿易機関(WTO)協定に基づく最恵国待遇を取り消すなど追加制裁を発表したこともあり、引けにかけて下げに転じた。3月米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした警戒感もあり、ナスダック総合指数は-2.17%と大幅に続落。 一方、週明けの日経平均は175.86円高でスタートすると、朝方は買いが先行し、一時25631.01円(468.23円高)まで上昇。先週末に500円超と大きく下落していたこともあり、1ドル=117円台後半へと進んだ大幅な円安が支援要因となるなか買い戻しが先行した。ただ、買い一巡後は上げ幅を縮め、もみ合いがしばらく続いた後に、前引けにかけては一段と失速する展開となった。 個別では、商船三井<9104>などの海運株のほか、米長期金利の上昇を背景に三菱UFJ<8306>や東京海上<8766>の金融株が大幅に上昇。円安・ドル高進行を追い風にトヨタ自<7203>も買われ、三菱商事<8058>やJFE<5411>などの資源関連も堅調。政府が「まん延防止等重点措置」解除基準の緩和を検討との報道を手掛かりにJAL<9201>、JR西<9021>、エアトリ<6191>などのアフターコロナ関連が大幅高。ほか、決算が好感されたところでシーイーシー<9692>、オハラ<5218>などが急伸し、ヤーマン<6630>はストップ高となっている。一方、レーザーテック<6920>やソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、日本電産<6594>、HOYA<7741>など値がさグロース(成長)株が軟調。株式売出を発表したミルボン<4919>などが東証1部値下がり率上位に入っている。 セクターでは不動産業、保険業、証券・商品先物取引業などが上昇率上位に並んだ。一方、精密機器、電気・ガス業、小売業の3業種が下落となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の66%、対して値下がり銘柄は28%となっている。 ウクライナ情勢の先行きが読めないなか、週明けの東京市場は方向感に欠ける動きとなっている。ロシア軍によるウクライナ首都キエフへの総攻撃が懸念されるほか、米政府などはロシア軍による化学兵器の使用の可能性などを警告しており、事態の一層の深刻化が警戒されている。一方で、ロシアとウクライナの間では継続的にオンラインでの協議が続いているもよう。ウクライナのゼレンスキー大統領は、12日、ロシア側との交渉がこれまでより中身のある内容になってきた兆候があるとも述べたと伝わっており、停戦に向けた期待も残る。 また、サリバン米大統領補佐官は、中国の外交を統括する楊共産党政治局員と14日に会談する予定。ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから初となる米中高官の対面会談となる。米国側は引き続きロシアに対する影響力をもつ中国に停戦に向けた協力を求めていく方針。ロシアとウクライナの双方と近しい関係をもつ中国にとって仲裁役は非常に難しい立場であり、あまり期待はできないが、中国が仲裁に向けた何らかのアクションを示唆するような可能性を考慮すると、売り方も今の水準から積極的に仕掛けるのは難しいだろう。 15-16日には今週最大のイベントであるFOMCも控えている。参加メンバーらが示す政策金利見通し(ドットチャート)などが注目される。金利先物市場は既に年6-7回の利上げを織り込んでいるが、一部の調査機関によると、エコノミストの多くは年内の利上げ回数を約4回と予想していることが分かっている。4-5回程度が示されれば市場には安心感がもたらされ、短期的には相場の反発要因となりそうだ。 一方、パウエル議長は経済データ次第では0.5ptの利上げの可能性を否定していない。また、独アリアンツの首席経済顧問モハメド・エラリアン氏は13日、ロシアのウクライナ侵攻に伴う影響により、米国のインフレ率は一段と上昇する可能性が高く、2月に前年同月比+7.9%と40年ぶりの高水準を記録した米消費者物価指数(CPI)はピーク時には「10%に極めて近い水準もしくはそれを超える」水準になると指摘。米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレに対する対応の遅さを改めて批判した。サマーズ元米財務長官も、ウクライナ侵攻以降、商品相場が急伸していることを踏まえると、インフレ率は今後数カ月は高止まりすると予想している。こうした背景もあり、FOMC通過後もインフレ及び大幅利上げの懸念はくすぶり、一時的に株価が上昇することはあっても、短命に終わりそうだ。 本日も、朝方大幅高で始まった東エレク<8035>など主力ハイテク株は大きく上げ幅を縮める展開となっている。こうした動きからも、投資家の先行き警戒感が窺える。いまはニュースのヘッドライン次第で短期的には上下に振れやすいものの、基調としてはインフレと景気減速、そして金融引き締めに対する懸念から、下落トレンドが続いている局面なのだということを再認識する必要がある。基調の本格的な転換には、ウクライナ情勢の混乱解消のほか、インフレの明確なピークアウトや、それを受けた金融当局による引き締めペースの緩和などを確認する必要があると考えられるが、それらを確認するのには年後半まで待つ必要があろう。 後場の日経平均は引けにかけて騰勢を弱めた前場の流れを引き継いで、冴えない展開が予想される。香港ハンセン指数が大幅に下落しているなか、投資家マインドは上向きにくい。15日以降にFOMCや、英国、日本での金融政策決定会合を控えるなか、結果を見極めたいとの思惑から模様眺めムードが漂いやすいだろう。
<AK>
2022/03/14 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、焦点は「景気悪化」にシフト
日経平均は大幅反落。625.66円安の25064.74円(出来高概算8億株)で前場の取引を終えている。 10日の米株式市場でNYダウは反落し、112ドル安となった。ロシアとウクライナの外相による停戦交渉で進展がなく、さらに2月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+7.9%と40年ぶりの高い伸びとなったことから、一時466ドル安まで下げ幅を広げた。その後下げ渋ったが、連邦準備理事会(FRB)の利上げを警戒した売りも出て、終日軟調に推移した。インフレへの懸念や金利上昇を背景に、ハイテク比率の高いナスダック総合指数は-0.94%。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで195円安からスタートすると、下げ幅を広げる展開となった。前日が1000円近い大幅上昇だっただけに売りがかさみ、前引けにかけて25051.23円(639.17円安)まで下落する場面があった。 なお、日経平均先物・オプション3月物の特別清算指数(SQ)は概算で25457.94円となっている。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が9%超の下落。前日の米市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-2.17%となったほか、政府がハイテク製品の対ロ輸出禁止を決定したとも伝わっている。その他売買代金上位も東エレク<8035>などが軟調で、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>は大きく下落。また、決算発表の菱洋エレク<8068>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、川崎船<9107>、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といったメガバンク株は小じっかり。INPEX<1605>は3%上昇している。三井海洋<6269>は受注・建造したFPSO(浮体式生産設備)の原油生産開始を発表し、日揮HD<1963>などは米LNG(液化天然ガス)プラントを巡る思惑から急伸。また、好決算の鎌倉新書<6184>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、輸送用機器、電気機器、精密機器などが下落率上位。一方、鉱業、石油・石炭製品、銀行業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の84%、対して値上がり銘柄は13%となっている。 メジャーSQを通過した本日の日経平均は大幅反落し、600円超の下落で前場を折り返した。既に前日の上昇幅の3分の2近くを失い、日足チャートでは25100円近辺に位置する5日移動平均線を再び割り込んでいる。SQ値も下回って推移しており、心理的な重しになっていることが窺える。 個別・業種別ではグロース(成長)株を中心に総じて軟調で、原油など市況関連株の一角や銀行株のみ堅調。優良大型株やグロース株は前日大きく買われただけに、取引参加者のダメージは小さくないだろう。前引けの日経平均が-2.44%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.99%。ここまでの東証1部売買代金は1兆9000億円弱。メジャーSQだったことを踏まえると、前日から売買が大きく膨らんでいる印象は薄い。 新興市場ではマザーズ指数が-4.64%と大幅反落。時価総額トップのメルカリ<4385>は12%を超える下落となっている。特段の悪材料は観測されていないが、グロース株への売り圧力が改めて強まったことに加え、節目の3000円を明確に割り込んだことで損失覚悟の売りが広がったとみられる。これまで度々指摘してきたが、メルカリは昨年12月から株価下落局面が続くなかでも信用買い残を積み上げてきた。株式需給は良好とは言いづらい。 ここまでの動きを見る限り、前日の当欄「『あや戻し』か『収束期待』か」で懸念していたとおりの展開と言わざるを得ないだろう。メジャーSQ後の需給好転に期待する向きもあったが、前日の大幅上昇で先食いしてしまった感がある。むしろ外部環境の不透明感から改めて下方リスクのヘッジニーズが高まることが想定された。 また、前日の米市場動向を見渡すと、金融市場の懸念するシナリオも窺える。注目の原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=106.02ドル(-2.68ドル)と続落。投機的資金の流入一服とともに、価格高騰が需要鈍化につながるとの見方もあったようだ。とはいえ石油のシェブロン株が+2.74%となったのを見ると、価格高止まりが意識されているのがわかる。実際、本日の東京市場ではアラブ首長国連邦(UAE)が独自増産を否定したことを受け、原油先物相場は朝方上昇する場面があった。金先物はインフレヘッジ目的の買いにより国内外市場で上昇している。 米国債市場では10年物を中心に幅広い年限で金利が上昇。10年物国債利回りは1.99%(+0.04pt)となった。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.86%(+0.02pt)に上昇。為替市場では欧州中央銀行(ECB)理事会結果を受けて一時ユーロが買われたが、上値の重さが拭えない。ECB理事会では量的緩和の縮小を加速する方針が発表されたものの、ラガルド総裁は記者会見で景気の下振れリスクに言及したという。 これらの動向が示唆するのは、「目先の商品高の行方」から「インフレ高止まりによる景気悪化」に金融市場の焦点が移ってきているということだろう。特に日本株は交易条件の悪化懸念がくすぶるだけに、グローバル投資家から買いの手が出にくいかもしれない。それと今晩の米国で発表される3月のミシガン大学消費者態度指数の注目度が一段と増してきそうだ。2月の同指数は62.8と10年4カ月ぶりの低水準だったが、インフレ観測が消費者心理を一段と冷やす恐れがあるだろう。 前引けのTOPIX下落率がぎりぎり2%に届かず、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施への期待も持ちにくいか。後場の日経平均も軟調な展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/03/11 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり大幅反発、「あや戻し」か「収束期待」か
日経平均は5日ぶり大幅反発。950.32円高の25667.85円(出来高概算7億4000万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに大幅反発し、653ドル高となった。アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)加盟国に増産を促していると伝わり、NY原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=108.70ドル(-15.00ドル)と急反落。スタグフレーション(景気悪化と物価高の併存)への懸念が和らいだほか、ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアの要求する中立化などの点で「ある程度妥協する準備がある」と発言したことも安心感につながった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで390円高からスタートすると、前日までの4日続落で1800円あまり下落していたこともあって上げ幅を拡大。前場中ごろを過ぎると25697.23円(979.70円高)まで上昇する場面もあった。 個別では、レーザーテック<6920>が5%超上昇し、ソニーG<6758>は7%近い上昇。前日の米市場ではハイテク株比率の高いナスダック総合指数が+3.59%となり、東京市場でも値がさグロース(成長)株を中心に大きく上昇している。その他売買代金上位も郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>、川崎船<9107>、トヨタ自<7203>など全般堅調。トヨタ自は豊田章男社長が4月以降の生産計画の見直しに言及したと伝わっているが、ネガティブ視する向きは限られるようだ。昭電工<4004>は政策保有株の売却方針が報じられて急伸。また、ギフティ<4449>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、原油価格の急反落を受けてINPEX<1605>が軟調。コスモエネHD<5021>は筆頭株主の株式売出しも嫌気されて急落し、Bガレジ<3180>は決算を受けてストップ安を付けている。 セクターでは、ガラス・土石製品、輸送用機器、その他金融業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのは鉱業のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の97%、対して値下がり銘柄は3%となっている。 本日の日経平均はウクライナ危機や商品高への懸念が和らいだことを背景に急反発し、900円を超える上昇で前場を折り返した。前日までの下落幅の半値戻しを達成。日足チャートでは25200円台に位置している5日移動平均線を一気に上抜けてきたことで、復調に期待する投資家が少なからずいるだろう。鉱業などを除き全面高の展開だが、前日の米ナスダック総合指数の上げ幅が大きかっただけに、グロース株の上昇が目立つ。米アマゾン・ドット・コムが株式分割や自社株買いを発表して時間外取引で急伸しており、今晩の米市場でのハイテク株高を先取りする動きもありそうだ。前引けの日経平均が+3.84%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+3.58%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりと前日並みだが、7~8日ほどは多くない印象だ。 新興市場ではマザーズ指数が+3.97%と7日ぶり大幅反発。メルカリ<4385>などの主力IT株を中心に全般堅調だ。ただ、上げ幅を広げる展開となっている日経平均に対し、マザーズ指数のここまでの高値は9時36分に付けた704.59ptとなっている。売買代金が大きく膨らんでいるわけではないところを見ると、700ptを上回る場面では上値追いに慎重な個人投資家が多いのかもしれない。 そもそも中小型グロース株は投資家心理の改善による影響こそ大きいだろうが、前日の米市場では10年物国債利回りが1.95%(+0.10pt)に上昇する一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.69%(-0.06pt)に低下。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇しており、グロース株にとって好環境とまでは言いづらいか。 さて、日米株とも反発の値幅の大きさが目を引く。ただ、それが直ちに「投資家心理の改善度合い」を示すかどうかについては慎重に見極める必要があるだろう。ウクライナ危機や商品市況の高騰で経済・金融市場の先行き不透明感が強まっていることで、日経平均オプション取引では明日SQ(特別清算指数)算出日を迎える3月物、次の4月物とも権利行使価格24000~25000円のプット(売る権利)の建玉がかなり多い。SQ前のリバウンドとあってこうしたプットの建玉解消の動きが出ている可能性があるほか、最近の市場動向を見ていると、カウンターパートとなっている金融機関によるヘッジ目的の株価指数先物の売買が相場に与える影響も大きくなっている印象を受ける。 また、ロシアとウクライナの外交交渉による事態収束などといった「一定の楽観があるのは間違いない(米メディアの為替市場関係者のコメント)」だろう。東京株式市場でも、4日申込み時点の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)が3兆3522億円(+1142億円)と7週ぶりに増加した。昨年12月から減少する週の方が多いものの、相場下落時などに大きく増加するため、残高の水準はさほど大きく低下していない。 もっとも、スイス金融大手クレディ・スイスが原油の一段の値上がりと株価下落のリスクについて警鐘を鳴らすなど、先行きに慎重な市場関係者は依然として多いようだ。米債券市場の動きに現れているように、そもそもインフレ抑制に向けた各国中央銀行の金融引き締めが株式にとって逆風であることに変わりないといった見方もある。一部で聞かれるとおり「あや戻し」に過ぎないか、危機収束を視野に戻りを試すか慎重に見極めたいところだ。差し当たり本日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会や米2月消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、金融政策の方向性が注目されそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/03/10 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり反発、ウクライナ情勢に配慮した金融政策は長期不安材料?
日経平均は4日ぶり反発。182.78円高の24973.73円(出来高概算7億1692万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場ではNYダウが184.74ドル安と4日続落。バイデン大統領によるロシア産原油禁輸計画の発表を控えた警戒感から寄り付き後下落。その後、ウクライナのゼレンスキー大統領がNATO(北大西洋条約機構)への加盟を断念する可能性を示したとの報道を受けて、停戦期待から一時買戻しが加速し大幅上昇に転じた。しかし、不透明感を払しょくできず、また、燃料価格上昇に伴うインフレ高進への懸念も重しとなり、引けにかけて再び下落した。ナスダック総合指数も-0.27%と4日続落となった。前日までの3日間で1800円近くも下落していた日経平均は、自律反発狙いの買いも入り、85.54円高でスタート。時間外取引の米株価指数先物の上昇を追い風に前場中ごろには25000円を回復。しかし、戻り待ちの売りに押され、前引けにかけては上げ幅を縮め、再び25000円割れとなった。 個別では、ソフトバンクG<9984>と日立<6501>が6%超と急反発。三菱UFJ<8306>やオリックス<8591>も大幅に反発。JAL<9201>、コマツ<6301>、アサヒ<2502>などの上昇率も際立つ。そのほか、INPEX<1605>、三菱商事<8058>、住友鉱<5713>などの資源関連株や、郵船<9101>、川崎汽船<9107>などの海運株も買われた。国内グループ会社で募集した早期退職に過去最大規模の3031人が応募したと発表した富士通<6702>は来期の固定費削減への期待から大幅高となっている。一方、日本電産<6594>、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株の一角が軟調。原油高が懸念されて東京電力HD<9501>も大幅安。パナソニック<6752>、TDK<6762>など電子部品の一角も安い。業績予想を下方修正したUTGROUP<2146>は急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは空運業、ゴム製品、鉱業などが上昇率上位に並んだ。一方、電気・ガス業、精密機器、医薬品などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の68%、対して値下がり銘柄は26%となっている。 本日の日経平均は反発。米国がロシア産原油禁輸計画を発表した一方、ドイツなど欧州は慎重な姿勢を示していることで、ロシアへの経済制裁を巡る目先の悪材料は一先ず出尽くしたとの見方が強まったもよう。また、ウクライナがNATOへの加盟を断念する可能性を示唆したことで、停戦期待が高まったことも支援要因となった。 しかし、ウクライナでの戦闘は止んでいない。停戦のためには、ロシアのプーチン大統領はウクライナに「中立化」とは別に「非軍事化」も必要と求めているが、これが満たされる可能性は低い。ロシアと西側諸国の間の隔たりは依然大きく、予断は許さない。WTI原油先物価格も1バレル=125ドル台と高止まりしており、市場は先行き警戒感を解いていない様子。日経平均も25000円回復を維持できず、反発よりも上値の重さが印象付けられる。このまま戻りが鈍いと、逆に戻り待ちの売りを誘いやすくなろう。 期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は8日、2.90%と前の日から0.13ptと大幅に上昇し、連日で過去最高を記録した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ptの利上げを支持している。しかし、市場はウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁の長期化や、世界経済のブロック化によるグローバル化の逆戻り、これらに伴うインフレ高進の長期化などを警戒しているようだ。 また、3月FOMCでの0.25ptの利上げでは足元のインフレ沈静化には焼け石に水とみているもよう。ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)に陥ったFRBが将来、大幅な利上げを強いられる可能性などを懸念しているようだ。本日の東京市場でも、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が一段と低下しているが、マザーズ指数は続落しており、東証1部の主力グロース株も軟調なものが散見される。 明日10日には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開催される。今年に入ってから、利上げに消極的だったECBが年内の利上げの可能性を排除しない姿勢へと大きく転換してきたが、ウクライナ情勢を受けた景気減速懸念が強まるなか、そうした姿勢に変化があるのかが注目される。足元でスタグフレーション(景気後退と物価高の併存)リスクが高まっているなか、仮に再び利上げなど金融引き締めに慎重な姿勢が示されれば、短期的には株式市場に安堵感をもたらす可能性がある。しかし、上述したFRBのようにビハインド・ザ・カ−ブに陥るリスクもあり、長期的な視点からみれば、手放しで喜べることでもないだろう。 後場の日経平均は25000円手前に上値の重い展開となりそうだ。ウクライナ情勢を巡る不透明感がくすぶるなか、明日10日には上述のECB定例理事会のほか、米2月消費者物価指数(CPI)が発表予定。3月FOMC前の最後の物価関連指標ということもあり、注目度も高い。積極的な買いに転じる材料がほとんど見当たらないなか、戻り待ちでじりじりと値を下げる展開が想定されよう。
<AK>
2022/03/09 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日続落、「総悲観なお遠い」のがリスク?
日経平均は3日続落。77.89円安の25143.52円(出来高概算8億6000万株)で前場の取引を終えている。 週明け7日の米株式市場でNYダウは大幅に3日続落し、797ドル安となった。原油価格の高騰でインフレ高進や景気後退への懸念が強まり、売りが広がった。ロシアとウクライナの3回目の停戦交渉で進展がなかったことや、超党派議員がロシア産原油・エネルギー製品の輸入禁止とロシア・ベラルーシとの貿易関係を解消する内容を盛り込む法案で合意したとの報道も売りに拍車をかけた。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで247円安からスタートし、取引時間中としては2020年11月以来およそ1年4カ月ぶりに25000円を割り込んだ。先週末からの下落が急ピッチだったこともあり、下値では個人投資家の押し目買いが入って下げ渋った。国内外市場での原油先物相場の反落、ユーロ相場の下げ渋りなども安心感につながったとみられる。 個別では、郵船<9101>と川崎船<9107>が2%超の下落。前日まで急伸してきた市況関連株に利益確定の売りが出ており、INPEX<1605>や住友鉱<5713>は5%超の下落となっている。欧州各国の首脳がロシア産原油の輸入禁止措置を巡り、早期実施に慎重な姿勢を示していることも意識されているようだ。日野自<7205>はエンジン認証不正を嫌気した売りが継続。また、日本コークス<3315>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>が堅調。値がさグロース(成長)株に押し目買いが入っており、キーエンス<6861>は4%の上昇となっている。海運株でも商船三井<9104>は小じっかり。また、ホクシン<7897>が東証1部上昇率トップで、メドピア<6095>やSansan<4443>といった中小型グロース株が上位に多く顔を出している。 セクターでは、石油・石炭製品、鉱業、鉄鋼などが下落率上位。一方、電気機器、倉庫・運輸関連業、サービス業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の58%、対して値上がり銘柄は37%となっている。 本日の日経平均はおよそ1年4カ月ぶりに25000円を割り込んでスタートするも、その後グロース株を中心に押し目買いが入って下げ渋る展開となっている。ドイツのショルツ首相が欧州のロシアからのエネルギー輸入について「現時点ではほかの方法で確保することができない」と述べるなど、早期の禁輸実施に慎重な姿勢を示し、原油先物相場が反落していることが安心感につながったとみられる。為替市場で動向が注目されるユーロも足元下げ渋り。株式市場ではグロース株が堅調な一方、市況関連株に利益確定売りが出ている。前引けの日経平均が-0.31%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.52%。ここまでの東証1部売買代金は1兆9000億円あまりと引き続き多い。 新興市場ではマザーズ指数が+1.34%と5日ぶりに反発。グロース株高の流れを追い風に、前日割り込んだ700pt水準を維持しようとする動きを見せている。再生細胞薬の国内承認申請を発表したサンバイオ<4592>は朝高後に利益確定売り優勢。メルカリ<4385>は変わらずだが、FRONTEO<2158>やJTOWER<4485>が買い優勢。業績上方修正のアスカネット<2438>は急伸している。 さて、欧州首脳らが禁輸への慎重姿勢を示し、エネルギーの供給不安がやや和らいだ格好だろうが、ロシアはなおウクライナ侵攻の手を緩めておらず、追加制裁への不安は残るだろう。米超党派議員によるロシア産原油の禁輸などを盛り込んだ法案は、早ければ9日にも下院で採決されるという。デリバティブ(金融派生商品)市場では、月内の1バレル=200ドル突破を視野に入れたオプション取引も行われているようだ。 英バークレイズや米JPモルガン・チェースといった金融大手は世界成長見通しを引き下げるとともに、インフレ予想を引き上げ。また、米モルガン・スタンレーやシティグループは株式相場の大きな波乱を予想しているという。商品価格の先高観とスタグフレーション(景気悪化と物価高の併存)への懸念は拭いづらそうだ。 また、インフレの高進に対し「米金融引き締めは不可避」「0.25ptペースの利上げでは不十分」といった市場関係者の声が多く出てきている。金利上昇による米財政への影響を不安視する向きもあるようだ。米連邦準備理事会(FRB)は10日発表の2月消費者物価指数(CPI)を確認したうえで15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)に臨むが、度々指摘しているとおり金融政策の舵取りは難しさを増している。エネルギーの供給不安がくすぶる欧州でも10日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開かれ、注目されるだろう。 こうした局面でも、各国株式市場では個人投資家の押し目買い意欲が根強いようだ。米国でも足元、ハイテク株投資で知られるキャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントの上場投資信託(ETF)に資金流入が見られるという。日本でも個人投資家に人気の高いマザーズ銘柄は信用買い残の整理がさほど進んでおらず(あるいは増えており)、根強い買いが入っていることが窺える。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は7日、36.45(+4.47)に上昇した。ただ、1月下旬に一時40近くまで上昇したのち反落した経緯があり、この水準でも「総悲観」というにはまだ遠いだろう。先行き不透明ななかでの「強気の押し目買い姿勢」は、今後の更なる波乱を暗示しているかもしれない。(小林大純)
<AK>
2022/03/08 12:21
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、下値メドなど当てにならない、既にスタグフレーション入りか
日経平均は大幅続落。819.24円安の25166.23円(出来高概算8億9036万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場ではNYダウが179.86ドル安と続落。ロシアがウクライナにあるザポロジエ原子力発電所を制圧したことを警戒し、寄り付き後下落。2月雇用統計の予想以上に強い結果を受けて下げ幅を縮小する場面もあったが、ウクライナ戦争激化への懸念を拭えず終日軟調に推移。ナスダック総合指数は-1.65%と大幅続落となった。さらに、欧米諸国がロシア産原油の輸入禁止を検討しているとの報道で、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油の期近4月物が一時1バレル130.50ドルと2008年7月以来の高値を記録。実体経済への影響が懸念されるなか、週明けの日経平均は351.38円安でスタート。先行きが見えないなか、下値模索の展開が続き、前場終盤には25006.26円(979.21円安)まで下落した。 個別では、レーザーテック<6920>、日立<6501>、SMC<6273>などが7%超の下落で、トヨタ自<7203>は5%超、デンソー<6902>は6%超の下落。ソフトバンクG<9984>、JAL<9201>、信越化<4063>、日本電産<6594>、ダイキン<6367>、アドバンテスト<6857>などが大幅安。板硝子<5202>やマキタ<6586>などの欧州売上比率が高い銘柄も急落。業績予想を下方修正したラクーンHD<3031>も大きく売られ、データ改ざんなど不正を発表した日野自動車<7205>はストップ安となっている。一方、原油先物価格をはじめ資源価格の高騰を受けてINPEX<1605>、三菱商事<8058>、住友鉱<5713>などが上昇。供給網混乱への思惑から商船三井<9104>など海運も高い。東証1部上昇率上位には日本コークス<3315>などが並んでいる。 セクターでは空運業、輸送用機器、機械などが下落率上位に並んだ。一方、鉱業、石油・石炭製品、海運業などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は9%となっている。 日経平均は一気に25000円近辺まで下落。心理的な節目の一歩手前で下げ止まると、前引けにかけてはで下げ渋る動きも見られているが、もはやこうなってくると下値メドなどはあってないようなもの。単純な値ごろ感やPERなどの株価バリュエーション指標は短期的には役に立たないと考え、売りが枯れたと思えるまで需給の改善を待つしかないだろう。 マーケットを巡る環境は混沌としている。ウクライナ情勢については、ロシアのプーチン大統領に手を緩める気配は一向に見られず、ロシア軍は核施設まで制圧対象にしてきているほか、ここにきて民間人までも攻撃対象としている様子で、行動がますます過激化している。こうした事態の深刻化を受けて、欧米諸国はロシア産原油の輸入禁止を検討していると伝わっている。これまで経済への影響を考慮して避けてきたエネルギー産業への制裁強化も避けられないとの見方に転じつつあるようだ。 歴史的な価格高騰を見せているのは原油や石炭価格、液化天然ガス(LNG)などのエネルギーだけでなく、小麦やトウモロコシなど食品価格まで幅広い品目にまで及んでいる。身の回りの生活必需品の価格がこれだけ高騰し、今後もロシアへの経済制裁の継続により高止まりするとなると、企業の仕入コスト増加や個人消費の停滞など、実体経済への影響がいよいよ深刻化する。市場では、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)への警戒感が高まっていると指摘されているが、米ミシガン大学消費者信頼感指数など、センチメントを図る指標はすでに歴史的な低水準にあり、もはやスタグフレーションは始まっていると言っても過言ではないだろう。 こうしたなか、連邦準備制度理事会(FRB)は今月の連邦公開市場委員会(FOMC)から利上げを開始する公算だ。その先にはバランスシートの縮小(QT)も控える。景気後退局面入りでの金融引き締めという、市場が最も恐れていた悲観シナリオがほぼ実現することが決まったとも言える。先週末に発表された2月雇用統計では、雇用者数が力強い伸びを見せ、失業率も改善した一方で、平均賃金の伸びが予想に反して横ばいになるなど、インフレ鈍化の兆しも見られた。しかし、今回のデータだけで、利上げ回数などFRBによる引き締めペースの織り込みが大きく後退するには材料不足だろう。 市場では、企業業績が堅調でバリュエーションの割安感に着目すれば買いだとの声も聞かれるが、足元で進んでいるこれだけハイペースのインフレが今後どれだけ続くかという見通しがつきにくいなか、今後は企業業績の後退懸念もつきまとうだろう。そうなれば、今のバリュエーションは参考指標にはなりにくい。もちろん、資源価格の高騰による業績鈍化を踏まえても、ヒストリカルでみてバリュエーションに割安感があるとの見方もあろうが、地政学リスクや金融政策の動向などマクロ環境にこれだけ強い不透明感がくすぶるなか、リスクプレミアムの上昇を通じてPERなどバリュエーションの調整(低下)が一段と進む可能性もあるだろう。いまはファンダメンタルズよりも売り枯れの兆しなど、需給面のテクニカル要素に着目した方がよいだろう。 後場の日経平均は軟調ながらもやや下げ渋る展開か。日経平均は前場の間に一時25000円割れを見ようかとするところまで一気に急落した分、短期筋の買い戻しが入りやすい。また、前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの思惑も広がりやすい。ただ、先行き不透明感がくすぶるなか、買い戻しが入っても上値は限定的だろう。
<AK>
2022/03/07 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、「原発攻撃」に「インフレと金融政策の舵取り」不安も
日経平均は大幅反落。556.67円安の26020.60円(出来高概算8億1000万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でNYダウは反落し、96ドル安となった。ロシアとウクライナの2回目の停戦交渉への期待から上昇する場面もあったが、2月のISM(サプライマネジメント協会)非製造業景況指数が予想外に悪化。さらに、ロシアのプーチン大統領が軍事作戦の目的を必ず遂行すると強硬姿勢を強調したため、下落に転じた。ロシア・ウクライナが次回交渉開催で合意したとの報道を受けて一時下げ止まったものの、警戒感は払しょくせず終日軟調に推移した。ハイテク株も金融引き締め観測から売られ、ナスダック総合指数は-1.55%。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで155円安からスタートした。その後、ウクライナのザポロジエ原子力発電所でロシア軍の攻撃により火災が発生したと報じられて急落。前場中ごろには25774.28円(802.99円安)まで下落する場面があった。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>が3~4%超の下落。米ハイテク株安を受けて値がさグロース(成長)株を中心に売りが広がっているようだ。その他売買代金上位でも川崎船<9107>やトヨタ自<7203>が軟調。AGC<5201>などの下げがきつく、JESHD<6544>やSansan<4443>といったグロース色の強い中小型株も東証1部下落率上位に多く顔を出している。一方、海運市況の先高観から郵船<9101>や商船三井<9104>は堅調。INPEX<1605>も小高い。三菱重<7011>は一部証券会社の投資判断引き上げが観測されて5%超の上昇。また、日立物流<9086>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、ガラス・土石製品、輸送用機器、非鉄金属などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、海運業、鉱業、倉庫・運輸関連業の3業種が上昇している。東証1部の値下がり銘柄は全体の75%、対して値上がり銘柄は21%となっている。 本日の日経平均は「ロシア軍がウクライナ原発を攻撃」と伝わったことで波乱の展開となっている。前場中ごろには下げ幅を800円あまりに広げ、26000円を割り込む場面もあった。海運など市況関連セクターの一角を除き総じて軟調だが、特にグロース株やロシア・欧州等でのビジネスへの懸念が強い銘柄の下げが大きい。供給ひっ迫による一段の商品市況の上昇や、インフレ圧力の高まりによる金融引き締め懸念が意識されているのは明白だ。前引けの日経平均が-2.09%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.59%。ここまでの東証1部売買代金は2兆円に達しており、情勢が大きく動いたことでかなり膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が-4.34%と大幅に3日続落。730pt台に位置する25日移動平均線を再び割り込んだ。中小型グロース株に売りが広がっているとあって、マザーズは特に逆風がきつい。ただ、メルカリ<4385>が-2.31%にとどまっているのを見ると、新興株の持ち直しに期待する向きは依然として少なくないのかもしれない。改めてメルカリの信用取引状況を見ると、足元で買い残は一段と増加。これまでもたびたび指摘しているが、株式市場全体として米金融引き締め観測に伴い買い残の減少が続く一方、新興株の一角で買い残の増加が株価を下支えする構図となっているのは気掛かりだ。 ロシア軍によるウクライナ原発の攻撃を巡っては、ウクライナのクレバ外相が「火災が発生している」としたうえで「爆発すればチェルノブイリ原発事故の10倍の被害が出る」などと述べている。また、一部報道によれば発電ユニット1基が被弾し、発電所の一部が燃えているが、攻撃により消火活動を行えていないという。一時「原発周辺の放射線量の上昇が検知された」などとも報じられたが、国際原子力機関(IAEA)がウクライナ側からの報告として「放射線レベルに変化はない」と公表。これを受けて日経平均は前引けにかけて下げ渋ったようだ。もっとも現地がかなり混乱していることは容易に想像でき、引き続き警戒感は拭いづらいだろう。 商品市場の動向にも注目しておきたい。イラン核合意の再建協議が近く妥結するとの観測が浮上し、前日のNY原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=107.67ドル(-2.93ドル)と反落した。もっともウクライナ情勢の悪化で需給ひっ迫の思惑も残り、本日の国内外市場では売り買いが交錯しているようだ。しかし、その他商品は小麦などを中心に値上がりが著しい。 前日の米債券市場では10年物国債利回りが1.84%(-0.03pt)に低下する一方、金融政策の影響を受けやすい2年物は1.53%(+0.02pt)に上昇。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進む形となった。原油先物相場の反落が意識されたか、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.69%(-0.02pt)とやや低下したが、商品市況の上昇が続いてインフレ懸念は拭いづらい。 こういった難しい状況下で米連邦準備理事会(FRB)による金融政策の舵取りへの不安もじわり広がっているようだ。ウクライナ情勢に関心が向きがちではあるが、今晩の米国では2月雇用統計の発表が控えている。米金融政策の行方を占ううえで内容を注視しておく必要があるだろう。 前引けのTOPIX下落率は2%に達しておらず、日銀の上場投資信託(ETF)買い入れ実施による下支えは期待しづらい。後場の日経平均も不安定な展開を強いられるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/03/04 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は反発、パウエル証言「本当の」市場解釈は?
日経平均は反発。215.18円高の26608.21円(出来高概算6億1000万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに大幅反発し、596ドル高となった。ロシアとウクライナが2回目の停戦協議を計画していることが明らかになったほか、2月のADP雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を上回る伸びとなったことも好感された。また、注目されたパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言は、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ptの利上げを支持する姿勢を示したことなどから、ハト派的な内容と受け止める向きもあった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+1.62%。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで235円高からスタートすると、寄り付き直後には一時26704.85円(311.82円高)まで上昇した。ただ、引き続きウクライナ情勢などを巡り先行き不透明感が残ることから上値追いの動きは鈍く、伸び悩む場面も見られた。 個別では、米金利上昇を受けて三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といった金融株が買われている。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>、郵船<9101>、商船三井<9104>、任天堂<7974>などが堅調。NY原油先物相場の大幅続伸でINPEX<1605>は3%超の上昇となり、住石HD<1514>や三井松島HD<1518>は商いを伴って急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>、ファナック<6954>といった日経平均への寄与が大きい値がさ株はさえない。ファーストリテは2月の国内「ユニクロ」既存店売上高が7カ月連続の減収となった。公募増資や株式売出し、ヤフーとの提携見直しを発表したSREHD<2980>はストップ安を付けている。 セクターでは、全33業種がプラスとなり、鉱業、石油・石炭製品、保険業、銀行業、卸売業などが上昇率上位だった。一方、情報・通信業や精密機器は小幅な上昇にとどまっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は19%となっている。 前日の米株が大幅反発した流れを引き継ぎ、本日の東京市場でも買いが先行したが、日経平均は寄り付き直後を高値に伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、26500円台に位置する5日移動平均線水準でもみ合いの様相。ここまで下降する25日移動平均線に上値を抑えられているだけに、値動き良化への期待が高まりづらいのかもしれない。売買代金上位や業種別の騰落状況を見るとかなり堅調な印象を受けるが、値がさ株がさえず日経平均を抑制している。前日の先物手口ではBofA証券などの外資系証券が日経平均先物を売り越ししていたが、本日もそうした流れが続いている可能性はあるだろう。前引けの日経平均が+0.82%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.27%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、前日までと比べ少なくなってきた印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-1.22%と続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、マイナスに転じる展開となっている。一方、このところ米金融引き締め観測の後退とともにマザーズ銘柄のリバウンドに期待する市場関係者の声が聞かれ、下値では押し目買いも入っているようだ。マザーズ売買代金が1日、昨年12月28日以来の2000億円台乗せとなった際はまとまった投資資金が入った印象を受けた。ただ、翌2日は1791億円となり、資金流入が加速しているとは言いづらい。マザーズ指数が740pt台に位置する25日移動平均線を上回ってきたところで、今後の方向感を見極めたいと考える個人投資家が多いものと考えられる。 なお、本日マザーズ市場に新規上場したイメージマジック<7793>は公開価格比+60.9%という堅調な初値を付けた。好需給のIPO(新規株式公開)銘柄にはなお物色の矛先が向きやすいようだ。 さて、直近FRB高官から「3月FOMCで0.5ptの利上げ検討」といった発言が出ていたうえ、前日の米株がハイテク関連を含め大幅反発したこともあり、パウエルFRB議長の議会証言はハト派的だったとする市況解説が散見されたが、実際に金融市場の受け止め方がそうだったかという点には疑問がある。 前日の米債券市場の動向を見ると、国債利回りが幅広い年限で上昇。10年金利が1.87%(+0.13pt)となったほか、金融政策の影響を受けやすい2年金利も1.51%(+0.17pt)となった。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進行。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.71%(+0.09pt)に上昇した。商品市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=110.60ドル(+7.19ドル)と大幅に3日続伸。こうした金融市場全体の動向が示唆するパウエル氏証言の解釈は「金融引き締め姿勢を再確認したが、それはインフレ進行に追いついていないのでは」というものだろう。 実のところ、スワップ取引で見た3月FOMCでの利上げ織り込みは前の日までに0.25pt弱まで後退していたという。既に「金融引き締め観測の後退を想定する局面」ではなく、「改めて金融引き締めを織り込む余地がある局面」だったということだ。これを踏まえ、一昨日の当欄「中小型グロース株高の構図に持続性は?」で述べたことも再強調しておきたい。 米国では今晩の2月ISM(サプライマネジメント協会)非製造業景況指数や4日の2月雇用統計といった重要経済指標の発表が控えており、ロシアとウクライナの停戦協議の行方も見通しづらい。引き続き方向感の出にくい相場展開となりそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/03/03 12:26
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり大幅反落、ウクライナ情勢一段と悪化、パウエル・プットに期待してよいのか?
日経平均は4日ぶり大幅反落。502.77円安の26341.95円(出来高概算7億2755万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場ではNYダウが597.65ドル安と大幅続落。増強したロシア軍がウクライナの首都キエフの包囲を狙って準備を進めているとの報道で警戒感が高まり、寄り付き後下落。対ロ制裁が一段と強化される可能性などから投資家心理が悪化し、終日軟調に推移。さらに、原油価格が7年ぶりの高値を更新するなど燃料価格の急激な上昇で景気回復が鈍化するとの懸念も強まり、引けにかけて一段安となった。ナスダック総合指数も-1.59%と4日ぶりに大幅反落した。こうした流れを引き継いで、日経平均は312.52円安でスタート。しばらくもみ合いが続いていたが、アジア市況が軟調なこともあり、午前中ごろを過ぎると、一段と下げ幅を広げる展開となった。一時26332.38円(512.34円安)まで下げ、そのまま下げ幅を500円超で前場を終えた。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連が大幅安。ソニーG<6758>やキーエンス<6861>、ファナック<6954>、ベイカレント<6532>などの値がさグロース(成長)株も大きく下落。米金利低下を受けて三菱UFJ<8306>や東京海上<8766>なども軟調。トヨタ自<7203>やデンソー<6902>も3%を超える下落。太平洋セメ<5233>や三井海洋開発<6269>はレーティング格下げもあり下落。一方、資源価格の高騰を支援要因にINPEX<1605>や大紀アルミ<5702>が急伸し、住友鉱<5713>や三菱商事<8058>も上昇。日経平均に新規採用されたオリックス<8591>は朝高後に失速してマイナスに転じている。 セクターではゴム製品、保険業、輸送用機器などが下落率上位に並んだ。一方、鉱業、石油・石炭製品、海運業などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の85%、対して値上がり銘柄は11%となっている。 WTI原油先物価格は時間外取引で1バレル=108ドルを挟んだ水準で推移。ロシアへの経済制裁による商品市況の逼迫が警戒され、節目の100ドルを突破すると一気に駆け上がってきた。国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網からの排除など、厳しい経済制裁の実施後もロシアの姿勢に変化は見られず、ウクライナの主要都市では砲撃がむしろ強化されているもよう。これを受け、西側諸国は更なる経済制裁の実施も検討していると伝わっている。事態の収束目途はいつなのか、実体経済への悪影響はどれ程のものになるのか、先行き不透明感が一段と強まるなか、株式市場ではリスク回避の動きが再び強まっている。 こうした中、今晩、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は下院金融サービス委員会での証言に臨む予定。足元では、ウクライナ情勢を巡る不透明感に配慮し、FRBが金融引き締めペースを遅らせるのではないかとの期待が高まっている。実際、明日の証言では、パウエル議長からウクライナ情勢に対する懸念などが示される可能性は高い。 しかし、ウクライナ情勢混乱による実体経済への影響が懸念されるなか、景気下振れリスクに配慮してFRBが引き締めペースを遅らせるのではという市場の期待は、そもそもエネルギー純輸出国である米国は、欧州ほどにはロシアへの経済制裁による悪影響がないということを無視していると思えてならない。下方硬直性のある賃金や住宅価格の歴史的な高騰が、地政学リスクで後退するとも考えにくい。 住宅価格の伸びはピークを過ぎたとの指摘もあるが、12月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数の伸びは11月を上回っている。また、FRBによる利上げが予想されるなか、金利上昇前に住宅を購入しておこうとする駆け込み需要が高まってきていることも報告されており、今後はむしろ伸びが再加速していく可能性もある。地政学リスクの高まりも、資源価格の高騰を通じて、むしろFRBの引き締めを加速させる要因となり得る可能性がある。 そうした中でも、市場のFRBによる利上げ織り込みは足元で急速に後退しており、これが新たな市場の波乱要因とならないか心配だ。可能性としては低いが、仮に、明日の議会証言でパウエル議長が想定ほどにはウクライナ情勢に配慮せず、これまでのインフレファイターの姿勢を維持することを示唆した場合、利上げ後退期待で前日までリバウンドしていた株式市場が一段の下げに見舞われる可能性はあり得る。 1日、イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会(MPC)のソンダース委員とキャサリン・マン委員が、インフレ抑制のため中銀の迅速な行動が必要だと主張し、利上げに引き続き積極的な姿勢を示したことも気掛かりだ。ウクライナ情勢が緊迫化する前は、インフレファイターへと変貌したFRBの姿勢を確認した上で、株価の下値を支えるてくれる「パウエル・プット」はもう存在しないことを市場参加者は認識していたはず。それが、ここにきて再びパウエル・プットに期待する声が増えていることが心配だ。筆者の見解が悲観的過ぎるだけであればいいが、明日のパウエル議長の議会証言が期待通りに作用するか見守りたい。 後場の日経平均は引き続き軟調な展開となろう。上述した通り、今晩のパウエル議長の議会証言を控え、積極的な押し目買いは手控えられやすい。また、ウクライナでの戦闘激化など新たなヘッドラインへの懸念もあり、売り方優位の地合いが続きやすいだろう。時間外取引の米株価指数先物の動き次第では、一段と下値模索の展開になる可能性もあろう。
<AK>
2022/03/02 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は大幅に3日続伸、中小型グロース株高の構図に持続性は?
日経平均は大幅に3日続伸。390.15円高の26916.97円(出来高概算6億株)で前場の取引を終えている。 週明け2月28日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、166ドル安となった。西側諸国がロシアの一部銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網から排除したほか、米政府がロシア中央銀行との取引禁止を発表し、ウクライナ危機を巡る対ロ制裁の強化を受けて世界経済の減速懸念が広がった。ただ、停戦協議の進展への期待もあって下げ幅を縮小。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は金利低下を受けて+0.41%となった。本日の東京市場でも停戦協議への期待や米ハイテク株高で投資家心理が改善し、日経平均は309円高からスタート。寄り付き後も上げ幅を広げる展開となり、前場中ごろを過ぎると27013.26円(486.44円高)まで上昇する場面があった。 個別では、売買代金トップの商船三井<9104>が7%の上昇。31日を基準日として1株につき3株の割合で株式分割を実施すると発表している。郵船<9101>や川崎船<9107>も上げが目立つ。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>や東エレク<8035>が堅調で、トヨタ自<7203>は小幅に上昇。また、「物言う株主」として知られる香港の投資ファンドが大量保有報告書を提出したマネックスG<8698>は東証1部上昇率トップとなっている。一方、レーザーテック<6920>やソニーG<6758>、三井物産<8031>はさえない。三井物産は英シェルがロシアの天然ガス事業「サハリン2」から撤退すると発表し、引き続きロシア事業の先行き懸念がくすぶっているようだ。また、前日まで急騰していたフジ<8278>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、鉱業、サービス業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。一方、空運業、銀行業、ゴム製品など4業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の65%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 前日のNYダウは世界経済の減速懸念から反落するも下げ渋り、米ハイテク株には金利低下を受けて買いが入った。本日の東京市場でもこうした流れから先行き懸念が和らいだとみられ、日経平均は大幅に3日続伸し、前場に27000円台を回復する場面があった。日足チャートを見ると、26400円台に位置する5日移動平均線を寄り付きから大きく上回り、値動き良化に期待した買いが入っていそうだ。一方、27000円あまりのところに位置する25日移動平均線近辺まで上昇し、目先の利益を確保する売りも出やすいか。前引けの日経平均が+1.47%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.93%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円ほどとまずまず多い。 売買代金上位では株式分割の実施を発表した商船三井を中心に海運株の上昇が目立ち、上昇率上位には中小型グロース(成長)株が多くランクインしている。一方、金融株がやや軟調で、三井物産などロシア事業への懸念がくすぶる銘柄にも売りが続いている。 新興市場ではマザーズ指数が+5.81%と大幅に3日続伸。こちらは先んじて740pt台に位置する25日移動平均線を上回ってきた。前述のとおり中小型グロース株高の追い風が大きい。2月24日安値(648.20pt、取引時間中)から急ピッチのリバウンドを見せており、個人のセンチメントや資金余力の改善につながっているのだろう。振り返ってみると、東証1部でも海運株を中心に個人投資家に人気の銘柄が賑わっている印象を受ける。 さて、前日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=95.72ドル(+4.13ドル)と反発。商品市況の先高観から期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.62%(+0.08pt)に上昇した。一方、世界経済の減速懸念とともに金融引き締めを織り込む動きが一段と後退し、金利は幅広い年限で低下。10年物国債利回りは1.82%(-0.14pt)となった。「対ロ制裁の影響は限定的」とか「停戦協議の進展に期待」といった声もあるが、これらの動きはウクライナ危機の長期化を見据えたものだろう。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は低下し、特にこれまできつい調整を強いられてきた中小型グロース株の押し目買いの手掛かりとなっているようだ。 また、2月月間で日経平均は-1.76%(-475.16円)、TOPIXは-0.47%(-9.00pt)と2カ月連続で下落しており、株式相場全体としてリバランス(資産配分の再調整)目的の買い需要に期待する向きもある。 もっとも米金融政策を巡っては、アトランタ連銀のボスティック総裁が「持続的な高インフレが示されれば、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの利上げを検討」する可能性を示唆している。ウクライナ危機の陰であまり注目されなかったが、2月25日に発表された1月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+6.1%と大幅に伸び、商品市況の高止まりからもインフレ懸念は拭いづらいだろう。「金利低下+期待インフレ率上昇=グロース株買い」の構図が持続的なものかよく見極めたうえで取り組む必要があるだろう。 ウクライナ情勢についても、ロシア側が強硬な停戦条件を突き付けていると報じられていることに加え、米国防総省などの戦況分析でロシア軍に攻勢を緩める気配が感じられないのも懸念される。これまでの米政府の発表を見ると、米情報機関は侵攻開始前からロシア軍の動きをかなり正確につかんでいる印象を受ける。危機収束はなお見通しづらく、金融市場も不安定な状況が続くとみておいた方がよさそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/03/01 12:14
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日経平均は反落、停戦協議に賭けた押し目買いは危うし
日経平均は反落。83.08円安の26393.42円(出来高概算5億9409万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場ではNYダウが834.92ドル高と大幅続伸。ロシアのプーチン大統領がウクライナとの高官レベル協議に前向きとの報道を受け投資家心理が改善し、寄り付き後上昇。予想を上回る経済指標も手伝い、終日堅調に推移した。ナスダック総合指数は+1.64%だった。その後、西側諸国はロシアの一部の銀行を国際決済システム「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することで合意。 実体経済への影響を懸念し、週明けの日経平均は18.98円安と下落スタート。朝方は売りが先行し一時26262.63円(213.87円安)まで下落。ただ、ロシアとウクライナの停戦協議への期待もあり、前場中ごろにプラスに転じると、26644.56円(168.06円高)まで上昇する場面があった。しかし、先行き不透明感が根強いなか、時間外取引のナスダック100先物などが大きく下落していることもあり、前引けにかけては再びマイナスに転じた。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>など半導体を中心としたハイテク株が安い。キーエンス<6861>やリクルートHD<6098>などのグロース(成長)株も軟調。ウクライナ情勢を巡ってロシアでの事業展開が警戒された三井物産<8031>をはじめとした大手商社やJT<2914>も下落。ほか、オリンパス<7733>、コマツ<6301>、日産自<7201>などの下落が目立つ。 一方、ウクライナ情勢の混迷を受けて原油高や供給網混乱への思惑から、INPEX<1605>のほか、郵船<9101>を筆頭とした大手海運が大幅高。JFE<5411>など鉄鋼大手、住友鉱<5713>も高い。スクリン<7735>や新光電工<6967>などハイテクの一角で高いものも散見される。ほか、任天堂<7974>、武田薬<4502>、JAL<9201>、三菱重<7011>などの上昇が目立つ。東証1部の上昇率上位には、ロシアへの経済制裁に伴う供給懸念への思惑が追い風となった大阪チタ<5726>などが入った。 セクターでは卸売業、電気機器、保険業などが下落率上位に並んだ。一方、鉄鋼、海運業、非鉄金属などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の28%、対して値上がり銘柄は67%となっている。 週明けの東京市場はウクライナ情勢を巡る不透明感から方向感の定まらない展開。日経平均は朝安後に早々にプラスに切り返したかと思えば、その後再びマイナスになるなど、市場参加者も先行きについて見極めがつかない様子。また、指数がマイナスな一方で、東証1部全体では値上がり銘柄数が7割近くに及び、全体的にちぐはぐな様子。値がさ株の多いハイテクやグロースの下げが相対的に大きいのだろう。 実際、資源価格の高騰や供給網の混乱などが連想される鉱業や海運には強い動きが見られるが、半導体関連株は総じて大きく下げているものが多い。トヨタ自<7203>やデンソー<6902>などの人気EV(電気自動車)関連も冴えないところを見る限り、投資家心理は停滞したままのようだ。マザーズ指数が先週末に続き大きく上昇しているが、東証1部の主力株が手掛けにくいなか、幕間繋ぎの短期物色の域を出ないだろう。 ウクライナ情勢を巡っては日に日に事態が悪化しており、先行き不透明感がくすぶる。ロシアのウクライナへの本格侵攻から、西側諸国によるSWIFTからのロシアの排除制裁など、当初は可能性が低いとされていたことが急速展開で相次いで起こっている。SWIFTからの排除については、世界的な燃料価格の急騰を招かないよう、全ての銀行ではなく大手銀行のみを対象とするなど、ある程度の制約をかけているようだが、既に実施済みの制裁だけでも、実体経済への影響は小さくないうえ、ここまでの経緯を踏まえれば、この先の展開にも油断はできない。 ロシアはこうした対ロ制裁に反発し、けん制の意味も込めて核戦力をちらつかせるなど、かなり威嚇的な動きを見せている。戦争という非合理的ともいえる事態が発生するのは、偶発的な条件が重なることによるものとされている。ロシアと西側諸国がお互いに引くに引けない背景からエスカレートした動きに出れば、事態の一段の混迷化も避けられない。また、現在、ロシア・ウクライナの停戦協議が事態打開のきっかけとして期待されているわけだが、平和的な解決につながるかは不透明。交渉が物別れになった場合の、事態深刻化をむしろリスクとして警戒しておいた方がよいだろう。 さて、後場の日経平均も引き続き26500円前後でのもみ合い展開となりそうだ。関連のヘッドラインには注意が必要だが、アジア市況が総じて軟調で、時間外取引の米株価指数先物も大きく下落しているなか、積極的な買いは期待できないだろう。今週末には米雇用統計が控えているほか、週半ばの3月2~3日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言が予定されている。内容を見極めたいとの思惑から買いが手控えられるなか、売り手優位の地合いが続きそうだ。
<AK>
2022/02/28 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は6日ぶり大幅反発、米金融引き締め懸念はやや後退も…
日経平均は6日ぶり大幅反発。382.76円高の26353.58円(出来高概算7億株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でNYダウは6日ぶりに反発し、92ドル高となった。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて投資家心理が悪化し、アジア・欧州株安を引き継いで一時859ドル安まで下げ幅を広げた。しかし、対ロ制裁が厳しいものでないと受け止められたほか、連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを遅らせるのではといった期待がハイテク株の買い戻しや押し目買いにつながった。ナスダック総合指数は+3.34%と急反発。日経平均も前日までの5日続落で1500円近く下落しており、本日は米株の上昇を受けて242円高と反発スタートした。値がさグロース(成長)株の上昇が日経平均を押し上げ、朝方に一時26419.89円(449.07円高)まで上昇すると、その後は堅調もみ合いの展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>といった値がさ株や、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株の堅調ぶりが目立つ。しまむら<8227>は2月既存店売上の増収を受けた買いが優勢で、期末配当が前期比増となったエムスリー<2413>、配当方針の変更と増配を発表した日本CMK<6958>は大きく上昇。また、フロンティアM<7038>が東証1部上昇率トップとなっているほか、これまで下げのきつかった中小型グロース株が上昇率上位に多く顔を出している。一方、任天堂<7974>が軟調で、INPEX<1605>はNY原油先物相場の伸び悩みを受けて6%の下落。また、地政学リスクの高まりとともに買われていた防衛関連の石川製<6208>や豊和工<6203>が急反落し、東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、電気機器、空運業などが上昇率上位。一方、鉱業、保険業、銀行業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の55%、対して値下がり銘柄は42%となっている。 前日はロシアのウクライナ侵攻が報じられて金融市場全体にリスク回避ムードが広がり、ロシアの株価指数RTSが一時50%超下落するなどの混乱が見られた。しかし、NYダウが829ドル安からプラス圏に浮上する動きを見せたことで、本日の東京市場は一転、買い戻し優勢の展開となっている。これまで下げのきつかったグロース株の上昇が目立ち、日経平均を押し上げる格好。ただ、日経平均の値幅の割に値上がり銘柄数は多くない印象も受ける。業種別騰落率を見ると、鉱業・金融セクターの下げが大きい。前引けの日経平均が+1.47%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.72%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとなっており、前日から上下に振らされたことで膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+6.18%と6日ぶりに大幅反発。中小型グロース株の反発の流れに乗って、主力IT株を中心に大きく上昇している。時価総額上位ではメルカリ<4385>が+4.31%、ビジョナル<4194>が+11.97%、フリー<4478>が+8.97%となり、売買代金トップのFRONTEO<2158>も4日ぶりに大幅反発。ただ、本日マザーズ市場に新規上場したマーキュリーRI<5025>は公開価格比+6.7%という初値にとどまった。前日上場のBeeX<4270>は株式相場全体に軟調地合いのなかで約2.3倍という初値を付けたが、本日は既存マザーズ銘柄のリバウンドに乗ろうとする動きからマーキュリーRIに関心が向きにくいのかもしれない。物色トレンドは日替わりの様相だ。 さて、米金融引き締め懸念の後退がグロース株高の要因の1つに挙げられている。前日の米市場の動向を見ると、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が一時1バレル=100ドル台に乗せるも、利益確定売りが出て伸び悩み。10年物国債利回りが1.96%(-0.03pt)となるなど幅広い年限で金利は低下したが、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.55%(+0.02pt)と上昇が続いた。これらの動きは金融引き締めを織り込む動きが和らいだことを示唆するとともに、グロース株の反発につながるだろう。 もっとも、ウクライナの混乱で原油が一段高となる可能性は残るといった見方は依然としてくすぶっており、インフレ圧力の高まりから米金融引き締めは回避できないとの声も根強く聞く。実際、FRBのウォラー理事はウクライナ情勢を注視しつつも、インフレ指標の高止まりが続けば3月15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの利上げを議論することに前向きな姿勢を示している。3月FOMCまで米金融引き締めペースを巡り様々な見方が交錯することになりそうだ。 またウクライナ情勢についても、ロシアが首都キエフに進軍し、本日中にも陥落する可能性があるという西側情報当局者の発言が伝わっている。従来「一部侵攻にとどまるのでは」といった市場関係者の声が多かったが、もはやロシアの狙いがゼレンスキー政権の転覆にあることは明白だ。引き続き関連ニュースに金融市場が急変動する可能性もあるとみて取り組んだ方が良いだろう。 誌面の都合で後日また述べたいが、このところの株価調整は海外短期筋による株価指数先物の売りという市況解説にもやや疑問があり、実際には買い持ち削減の動きが続いていることが背景にあるという印象を受ける。そうしたトレンドが本格的に転換するとみるのは時期尚早とも付言しておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/25 12:22
ランチタイムコメント
日経平均は5日続落、不透明要因の長期化で底入れの兆し見えず
日経平均は5日続落。288.15円安の26161.46円(出来高概算6億4850万株)で前場の取引を終えている。 日本が祝日だった間の22、23日の米株式市場ではNYダウが482.57ドル安、464.85ドル安と大きく下落。米ロ外相会談が中止となり、ロシアによるウクライナへの本格的な侵攻が警戒されるなか、ウクライナが全土非常事態宣言を発令したこともあり、リスク回避の動きが続いた。ハイテク・グロース(成長)株にも売りが強まり、ナスダック総合指数も-1.23%、-2.57%と大幅に下落。こうした流れを引き継いで、祝日明けの日経平均は168.26円安でスタート。一時下げ渋る動きも見られたが、時間外取引の米株価指数先物が軟調ななか、戻り待ちの売りに押されると、下値模索の展開が続き、午前中ごろには26122.83円(326.78円安)まで下落。香港ハンセン指数の下落も重しとなり、前引けにかけては安値圏での一進一退が続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ファナック<6954>、ファーストリテ<9983>などの値がさのハイテク・グロース株の一角が大きく下落。ANA<9202>やJR東<9020>などのアフターコロナ関連、トヨタ自<7203>やデンソー<6902>などの輸送用機器が安く、アステラス製薬<4503>、イオン<8267>、KDDI<9433>などディフェンシブ系も冴えない。三菱商事<8058>をはじめとした商社も軟調。 一方、川崎汽船<9107>を筆頭に大手海運株が大幅高で、東エレク<8035>、キーエンス<6861>、リクルートHD<6098>などのグロース株の一部が逆行高。INPEX<1605>、JFE<5411>などの資源関連の一角も高い。住友鉱<5713>は期末配当の増額修正で上昇。特別配当実施でノーリツ鋼機<7744>はストップ高。オムロン<6645>との資本業務提携が好感されたJMDC<4483>も上昇。アウトソーシング<2427>とグリー<3632>は目標株価引き上げで大幅高。 セクターではゴム製品、空運業、ガラス・土石製品などが下落率上位に並んだ。一方、鉱業、海運業、サービス業などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の61%、対して値上がり銘柄は33%となっている。 祝日明けの日経平均は下値模索の展開となっている。ロシアへの経済制裁では、米国がインフラ整備や軍需産業の資金調達を担うロシア国営銀行の米国内での取引を禁止したほか、ロシア政府系ファンドなどを金融市場から遮断することを発表。欧州でもロシアを金融市場から遮断したほか、ドイツは、同国とロシアを結ぶガス輸送パイプライン「ノルドストリーム2」の承認を中止し、完全中止も「大いにあり得る」と言及した。 一方、銀行間の国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除する制裁はまだ実施されていないほか、ノードストリーム2を除けば、エネルギー関連の制裁はない。また、ロシア国営銀行との取引中止についても、最大手の銀行などは含まれていない。制裁内容が致命的なほどではないとの見方もあり、現状の株価の下落は行き過ぎとの指摘もあるようだ。確かにこれらの案は、世界経済への影響も大きいため、発動がそもそも難しいという背景もあろう。 しかし、ロシアに対する各国の対応が、将来的な中国による台湾への動きを左右しかねない背景も踏まえれば、ロシアの出方次第では、さらなる追加制裁の可能性は拭えない。また、米ロの外相および首脳会談が中止となったことで、外交的解決への希望は薄れている。追加制裁が発動されれば、高止まりしているエネルギーや食料品の価格の一段の上昇が予想され、インフレ高進による個人消費の停滞など実体経済の落ち込みが警戒される。また、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めに対する思惑が強まりかねない。 米国市場ではテスラやエヌビディアといった個人投資家から人気の高い銘柄の下落率がきつくなっており、東京市場でも、レーザーテックをはじめとした半導体関連など、人気度の高い銘柄のチャート形状の悪化が鮮明となっている。コロナ禍相場の中で日米ともに積み上がったレバレッジは依然解消余地が大きいため、含み損益の悪化を通じたレバレッジの一段の解消などが懸念され、地合い悪化時の更なる下落のほか、相場反発時の上値抑制要因として働くことが想定される。 このため、目先のリバウンドを狙った短期勝負と割り切る分にはいいが、安易な底入れ期待に基づく押し目買いには注意が必要だろう。日経平均については、26000円を割り込めば、25000円近辺までの下落余地は優に出てくる。個人投資家には慎重な対応が求められよう。 後場の日経平均は心理的な節目の26000円を意識した正念場となる。足元の下落相場のなか、商品投資顧問(CTA)など短期筋の売り持ち高がかなり積み上がってきたようで、短期的には26000円を手前に買い戻しも考えられる。しかし、ニュースフロー次第では、26000円割れにより、一段と売りに拍車がかかる可能性もある。後場も時間外取引の米株価指数先物の推移などを睨みながら神経質な展開が続きそうだ。
<AK>
2022/02/24 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は大幅に4日続落、ロシア強硬姿勢に「あく抜け期待」も続かず?
日経平均は大幅に4日続落。582.97円安の26327.90円(出来高概算5億4000万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場はプレジデントデーの祝日で休場だった。ただ、ロシアがウクライナ東部で親ロシア派が実効支配する地域の独立を承認。これを受けてバイデン米政権も経済制裁を発動すると発表し、ウクライナ情勢を巡る懸念が一段と強まった。ロシアの株価指数RTSは-13.2%と急落し、ドイツのDAXやフランスのCAC40も-2%と軟調。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで395円安からスタートすると、軟調もみ合いの展開が続いた。朝方の売りが一巡し、前場中ごろにかけてやや下げ渋る場面もあったが、その後一時26305.28円(605.59円安)まで下落した。米休場明けとあって取引参加者はさほど多くないとみられ、今晩の米市場の反応を見極めたいとの声もあった。 個別では、レーザーテック<6920>、郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>、ソニーG<6758>など売買代金上位は全般軟調。東エレク<8035>が4%超の下落となり、川崎船<9107>やSUMCO<3436>、アドバンテス<6857>も大きく下落している。シャープ<6753>は引き続き堺ディスプレイプロダクトの完全子会社化に向けた動きがネガティブ視されて連日の大幅安。株式の売出しが発表された特種東海<3708>は東証1部下落率上位に顔を出している。一方、第一三共<4568>は東証1部上昇率トップ。英アストラゼネカと共同開発している乳がん治療薬の試験結果が好感されている。その他売買代金上位ではリクルートHD<6098>が逆行高。地政学リスクの高まりから石川製<6208>などの防衛関連銘柄にも思惑買いが入っているようだ。 セクターでは、ゴム製品、ガラス・土石製品、輸送用機器などが下落率上位で、その他も全般軟調。医薬品と鉱業の2業種のみ上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の86%、対して値上がり銘柄は10%となっている。 ロシアが親ロ派地域の独立承認に踏み切ったことでウクライナ情勢への懸念が一段と強まり、本日の日経平均は600円近い下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、27200円台に位置する25日移動平均線水準を一段と下振れ、ボリンジャーバンドの-2σの下限割れまで突っ込んでいる。個別・業種別では、第一三共がけん引役となっている医薬品、地政学リスクの高まりが原油の先高観につながっている鉱業を除き全般軟調。ただ、リクルートHDなどグロース(成長)株の一角にも買いが入っている。前引けの日経平均が-2.17%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.76%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりとさほど多くない。なお、前日は1日を通じ2兆3068億円と今年最低だった。 新興市場ではマザーズ指数が-1.42%と4日続落。連日で取引時間中の昨年来安値を更新しているが、こちらは朝方プラスに転じる場面があった。前引け時点でもメルカリ<4385>やサンバイオ<4592>が堅調で、FRONTEO<2158>も小幅ながらプラスを確保。本日マザーズ市場に新規上場したCaSy<9215>は公開価格比+48.2%という初値を付けた。ただ、前引けでは初値比-22.6%。前の週に上場したエッジテクノロジ<4268>も初値高の反動がきつい。 一部のグロース銘柄に買いが入っていることについては、地政学リスクの高まりを受けて米金融引き締めを織り込む動きが和らぎ、米長期金利が低下するとの思惑などが背景にあるようだ。また、ウクライナ問題を巡るロシアの狙いがある程度見えてきたとして、あく抜けに期待する声も聞かれる。 しかし、マザーズ市場などは個人・外国人といった純投資家が取引主体のため、市場センチメントの影響を受けやすい面もある。特に個人投資家は過去の市場動向を見ても地政学リスクに敏感であることがわかる。IPO(新規株式公開)銘柄の値動きに象徴されるように、投資資金の逃げ足の速さに注意する必要があるだろう。 また、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を受け、緩衝地帯を設けるために西側諸国との対立も辞さないことが浮き彫りになったと言える。既にロシアのプーチン大統領は今回独立承認した地域への軍派遣を指示したと伝わっているが、ロシアに隣接するウクライナ東部の他地域でも火種がくすぶりそうだ。プーチン大統領には「NATO東方不拡大の約束が反故にされた」との思いがあると指摘されており、対話による解決は容易でないだろう。 香港ハンセン指数、また時間外取引でのNYダウ先物などは揃って大幅に下落。為替市場ではドル・円相場が朝方に一時1ドル=114.50円近辺まで下落してからやや戻したが、足元弱含みで推移している。前引けでのTOPIX下落率が2%に届かず、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施への期待も持てない。やはり金融市場全体にリスク回避的なムードが広がっており、後場の日経平均も軟調な展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/22 12:18
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日経平均は3日続落、「遠くの戦争は買い」は果たして本当か・・・
日経平均は3日続落。196.06円安の26926.01円(出来高概算5億2590万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でNYダウは232.85ドル安(-0.68%)と3日続落。米ロ外相が会談を予定していることなどが明らかになり、寄り付き後一時上昇。しかし、ウクライナ東部の親露派指導者が一部住人をロシアに避難させたとの報道などから再び緊張が高まり売りが広がった。一方、終日軟調に推移したが、オプション満期日に絡んだ買いが下値を支えた。週末の米株安や再び高まってきている地政学リスクを嫌気し、週明けの日経平均は350.49円安でスタート。朝方は売りが先行し、一時26549.00円(573.07円安)まで下落した。その後、米ロ首脳会談が行われることが伝わると、急速に買い戻され、前場中頃には26998.47円(123.60円安)まで下げ渋ったが、27000円手前で買い戻しが一巡すると、その後はもみ合いとなった。 個別では、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、信越化<4063>、キーエンス<6861>、任天堂<7974>など、主力のハイテク・グロース(成長)株が軟調。先週好調だった川崎汽船<9107>などの大手海運株も大幅に下落。商船三井<9104>は自動車運搬船の火災事故の報道も重しになっているもよう。堺ディスプレイの完全子会社化を発表したシャープ<6753>は財務悪化懸念から急落。レーティング引き下げを受けてSUMCO<3436>やナブテスコ<6268>も大幅安。東証1部下落率上位には、公募・売出実施を発表した明治電機<3388>などが入った。 一方、INPEX<1605>や三菱商事<8058>なの資源関連が底堅く、JFE<5411>や住友鉱<5713>などは上昇。三菱UFJ<8306>やソフトバンク<9434>は配当利回りを意識した買いから上昇。そのほか、業績・配当予想を増額修正したミタチ産業<3321>や自社株買いを発表したファンコミ<2461>などが大幅高となっている。 セクターでは海運業、陸運業、金属製品などが下落率上位に並んだ。一方、銀行業、鉄鋼、保険業などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の71%、対して値上がり銘柄は24%となっている。 週明けの日経平均は波乱スタート、前場の下げ幅は一時600円近くまでに及んだが、その後、急速に下げ渋った。先週末は取引時間中に米ロ外相会談の報道が伝わったことで買い戻されたが、本日はバイデン米大統領とロシアのプーチン大統領による首脳会談に関する報道が伝わったことで下げ渋った。 ただ、依然としてウクライナ情勢は緊張感に包まれている。今週行われる外相会談に加えて新たに決まった首脳会談により、外交的解決の可能性はゼロではないが、欧米とロシアの主張には依然として大きな隔たりがあり、物別れに終わる可能性もある。また、週明けにかけては、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力を隔てる境界線周辺で停戦合意違反の動きが急増していると伝わるなど、まさしく一触即発の状態が続いている。 前場の東京市場は急速に下げ渋ったとはいえ、積極的な押し目買いが入っているというよりは、先週と同様、短期筋の先物主導での動きによるところが大きそうだ。この先も関連ヘッドラインに反応した短期筋に翻弄されることは濃厚だろう。「遠くの戦争は買い」などという格言もあり、地政学リスクによる株価下落は往々にして買い場になるとの指摘もあるが、少なくとも現時点での押し目買いは危険だろう。上述の米ロによる外相・首脳会談の行方もそうだが、最終的にロシアによるウクライナ侵攻が実行されるかどうか、これが決定的な事項となるまでは、関連報道に一喜一憂する展開が続く。 不謹慎な話だが、仮に実際にウクライナ侵攻が始まれば不透明感後退であく抜け上昇に繋がるなどという声も聞かれるが、今回の場合はそうならない可能性もある。資源大国であるロシアへ経済制裁が科されることになれば、資源価格の一段の高騰を通じて、インフレ高進や米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念を一段と強めかねず、その点でむしろ、先行き不透明感を高めてしまうシナリオも考えられる。いまは安易な押し目買いは避け、様子見に徹した方が無難だろう。 後場の日経平均も引き続き神経質な展開が続きそうだ。ただ、米ロ首脳会談の報道を受けた買い戻しが既に一服していることや、心理的な節目の27000円目前で失速しているところを見ると、後場は上値の重い展開、もしくは、改めて下値模索の展開となる可能性にも留意しておきたい。
<AK>
2022/02/21 12:11
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日経平均は続落、気掛かりはウクライナ情勢だけでない
日経平均は続落。138.71円安の27094.16円(出来高概算6億株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でNYダウは大幅続落し、622ドル安となった。政府がウクライナ国境のロシア軍が増強されていると発表したほか、バイデン大統領がロシアによるウクライナ侵攻の可能性が「非常に高い」と述べたことで、地政学リスクの高まりを嫌気した売りが出た。週間の失業保険申請件数の増加や1月の住宅着工件数の予想下振れも投資家心理を冷やした。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで337円安からスタートすると、朝方には一時26792.54円(440.33円安)まで下落。ただ、来週末にブリンケン米国務長官がロシアのラブロフ外相と会談することが報じられると急速に下げ幅を縮めた。 個別では、レーザーテック<6920>と東エレク<8035>が揃って3%前後の下落。前日の米市場でアプライド・マテリアルズやエヌビディアといった半導体関連株が決算を受けて売られ、東京市場にも波及しているようだ。キーエンス<6861>やリクルートHD<6098>もさえない。決算発表銘柄ではトレンド<4704>が大幅に下落。また、外資系証券の投資判断引き下げが観測されたファナック<6954>は5%近い下落で、THK<6481>は東証1部下落率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎船<9107>といった海運株が堅調で、ソフトバンクG<9984>やトヨタ自<7203>もしっかり。富士ソフト<9749>は投資判断引き上げ観測があり、朝日インテック<7747>は前日の説明会内容を受けて買われているようだ。また、イソライト<5358>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、鉱業、ゴム製品、銀行業などが下落率上位。一方、海運業、輸送用機器、鉄鋼などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の59%、対して値上がり銘柄は36%となっている。 本日の日経平均は米株安の流れを引き継いで27000円割れからスタートしたが、米ロ外相会談による緊張緩和への期待で下げ渋って前場を折り返した。日足チャートを見ると27000円を下回る場面での底堅さが感じられる一方、上値切り下げの形状となっている。「政局相場」で盛り上がる以前の昨年2~8月に似た動きという印象を受ける。個別では半導体関連を中心とした値がさグロース(成長)株の一角が前日に続きさえない。半面、海運株は輸送需要の増加を意識した買いが続いているようだ。前引けの日経平均が-0.51%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.43%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりで、1日を通じては3兆円前後といったところか。 新興市場ではマザーズ指数が-1.18%と続落。こちらも朝方から売りが先行し、取引時間中としては2020年4月14日以来、およそ1年10か月ぶりに700ptを下回る場面があったが、日経平均とともに下げ渋った。FRONTEO<2158>は新サービス発表を材料視する向きもあって-1.13%に踏みとどまっているが、前日までの大幅下落を踏まえれば戻りの鈍さが意識されざるを得ないか。買いを集めているのは前日上場したばかりのエッジテクノロジ<4268>などで、株式需給重視の物色となっていることが窺える。 さて、金融市場全体としてウクライナ情勢に関するニュースに振らされる展開となっている。米ロ外相による対話の機会が設けられたのは明るい材料だが、米政権から「ロシアが侵攻の口実作りのために偽旗作戦を進めている」「侵攻は目前」などといった発言が相次ぎ出ている点は気掛かり。前日にはロシアメディアがウクライナ軍による砲撃を報じている。懸念が完全に払しょくされるのにはなお時間を要するだろう。 また、前日の米株市場では、失業保険申請件数や住宅着工件数といった経済指標の悪化に加え、セントルイス連銀のブラード総裁が「物価制御のため中立金利以上に政策金利を引き上げる必要もあるかもしれない」と述べるなど、投資家心理を冷やす材料が多かった。雇用市場だけでなく、住宅市場の状況もインフレ・金利上昇のもとで注目度が高まっている。今晩の米国では1月の中古住宅販売件数、来週22日には12月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数が発表される。もちろん金融政策の行方にも少なからず影響を与えるだろう。 FRB高官に加え、市場関係者からも引き続き金融引き締め加速を予想したり、その必要性を強調したりする声が多く出ている。JPモルガン・アセット・マネジメントのボブ・マイケル最高投資責任者(CIO)などが0.5%の利上げでインフレ抑制を図ることに期待を示しており、米金融大手モルガン・スタンレーは年内の利上げ回数予想を6回、合計の引き上げ幅を1.5%(従来は1.25%)に上方修正した。 アジア市場では上海総合指数が小幅に下落し、香港ハンセン指数は0.5%程度の下落。ドル・円相場は米ロ外相会談の報道を受けて一時1ドル=115.20円台まで急伸したが、足元伸び悩んでいる。株式市場でも売り方の買い戻しが入る可能性こそあるが、週末を前に積極的に買い持ち高を増やしづらいだろう。引き続きウクライナ情勢関連のニュースや米経済指標を見極めたいところでもあり、後場の日経平均は戻りの鈍い展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/18 12:18
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日経平均は反落、「リスクとれば報われる」への慣れ?
日経平均は反落。64.55円安の27395.85円(出来高概算5億2000万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でNYダウは反落し、54ドル安となった。ロシアがウクライナ国境付近から軍の一部撤収や対話姿勢を強調する一方、各国が「軍の増強を継続している」と指摘し、ウクライナ情勢を巡る懸念から下げ幅を340ドルあまりに広げる場面があった。ただ、1月25~26日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が懸念されたほどタカ派的ではないと受け止められ、引けにかけて買い戻しが入った。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も-0.11%と反落。本日の東京市場ではこうした流れを引き継ぎ、日経平均は28円安からスタートした。寄り付き後、ウクライナ情勢を見極めたいとの思惑などからマイナス圏でもみ合う展開が続いたが、前場中ごろを過ぎると27306.53円(153.87円安)まで下落する場面があった。 個別では、キーエンス<6861>やベイカレント<6532>が4%超、リクルートHD<6098>が5%の下落。米10年物国債利回りが2%台を維持しており、値がさグロース(成長)株の一角で軟調ぶりが目立つ。その他では川崎船<9107>やソフトバンクG<9984>が小安く、トヨタ自<7203>はさえない。また、乾汽船<9308>や近鉄エクス<9375>、配当・株主優待権利落ちのあさひ<3333>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、売買代金トップの郵船<9101>は2%超上昇し、商船三井<9104>も堅調。1月の海上コンテナ輸送が好調だったと伝わっている。レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、任天堂<7974>は小じっかり。日立<6501>は前日開催したスモールミーティングの内容が好感されて4%超の上昇。また、日本金属<5491>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、倉庫・運輸関連業、サービス業、輸送用機器などが下落率上位。一方、鉱業、空運業、陸運業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の58%、対して値上がり銘柄は36%となっている。 本日の日経平均は小安くスタートしたのち、マイナス圏で推移して前場を折り返した。日足チャートを見ると、27300円弱に5日移動平均線、27400円強に25日移動平均線が位置しており、この水準でややこう着感の強い展開。ここまでの上下の値幅は125円弱だ。個別では、米長期金利の高止まりでグロース株が主力から中小型まで全般軟調。一方、1月の海上コンテナ輸送が好調だった海運や、一部証券会社の目標株価引き上げが観測された商社は堅調だ。また、私鉄各社も上昇率上位に複数顔を出している。前引けの日経平均が-0.24%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.35%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、決算発表の一巡や外部環境の不透明感から減少している。 新興市場ではマザーズ指数が-1.81%と反落。こちらも前場中ごろを過ぎて712.71pt(-21.97pt)まで下落する場面があり、取引時間中の昨年来安値を更新した。ひとまず底割れするような動きとはなっておらず、本日新規上場したエッジテクノロジ<4268>が前引け時点でなお買い気配であることなど、引き続き個人投資家の物色意欲の根強さが感じられる部分はある。しかし、主力のメルカリ<4385>が-4.48%となっており、下落トレンドを脱せず。一昨日の当欄で触れたFRONTEO<2158>は連日の大幅下落である。これら銘柄は再三強調しているとおり、個人投資家が信用買いを膨らませてきた銘柄だ。昨年11月から人気のマザーズ銘柄の株価急落が相次ぎ、一段の損益悪化に苦しむ個人投資家は少なくないと考えられる。 こうした状況を見るにつけ、筆者は金融引き締めを「織り込んだかどうか」といった議論に違和感を持たざるを得ない。「織り込んだ」などという見方には、金融引き締めを単なるネガティブイベントとしてしかとらえていないことが透けて見える。 金融緩和は借り入れコストの縮小などを通じて消費や投資を刺激する。実際、金融市場ではコロナ禍を受けた各国中央銀行の緩和策のもと、世界的に証拠金債務(マージンデット)を膨らませてきた。東京株式市場でも信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は2020年1月31日申込み時点の2兆4637億円から、直近ピークだった21年11月26日申込み時点の3兆7401億円まで大きく拡大した。こうした動きは金融市場だけではない。数年前に住宅購入を検討した筆者は年収の10倍前後のローン借入れを勧められた。金利水準が大きく異なるとはいえ、5~7倍程度が妥当という親世代の話を聞いていていただけに驚いたものだが、実際に購入に踏み切った消費者は少なくないだろう。 金融引き締めは借り入れコストの増大などを伴い、こうした消費・投資行動の前提が大きく異なってくるということである。果たして投資家や消費者の行動は緩和的な金融環境からの脱却を睨んで変化してきているだろうか。マザーズ銘柄の取引状況などを見ると、「積極的にリスクテイクすれば報われる」という意識がなかなか抜けづらいような気がしてならない。長い金融緩和の後遺症と言えるだろう。10日の当欄で取り上げた米ユニバーサ・インベストメンツのマーク・スピッツナーゲル最高投資責任者(CIO)の発言「『現在の流動性がいかに金融システムに組み込まれているか』というリスク」とは、こうしたことを示しているのではないだろうか。 なお、2月10日申込み時点の信用買い残高は3兆2874億円。やはり金融引き締め観測とともに減少してきたが、コロナショック前と比べれば依然高水準だ。 FOMC議事録がおおむね市場の想定内とはいえ、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め方向にあることは変わらず。また、ウクライナ情勢を巡る報道も錯綜していて、先行きを見極めづらい。日経平均は目先、上値の重い展開が続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/17 12:19
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり大幅反発、懸念材料は後退したといえるか・・・
日経平均は3日ぶり大幅反発。562.83円高の27428.02円(出来高概算5億8701万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でNYダウは422.67ドル高と4日ぶり大幅反発。ロシアが軍の一部撤収を発表したためウクライナ侵攻懸念が緩和し、寄り付き後上昇。プーチン大統領がドイツのショルツ首相と会談し引き続き外交的解決に前向きな姿勢を強調したことなどもプラス材料となり、終日堅調に推移。引けにかけて、バイデン大統領がロシア軍の撤収が未確認としたものの、パンデミック収束に伴う経済再開銘柄の買いが相殺し、上げ幅を拡大。ナスダック総合指数は+2.52%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+5.46%となった。米株高を引き継いで日経平均は403.86円高でスタートすると、朝方は買いが先行し27450.28円(585.09円高)まで上昇。戻り待ちの売りから失速するも、もみ合いが続いた後、香港ハンセン指数の上昇などを追い風に、前引けにかけては再度騰勢を強めた。 個別では、東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などの半導体関連や、信越化<4063>、SMC<6273>、TDK<6762>などのハイテク株が総じて大幅高。商船三井<9104>、ファーストリテ<9983>のほか、ANA<9202>やOLC<4661>、オープンドア<3926>などのアフターコロナ関連の一角も高い。米長期金利の上昇を追い風に三菱UFJ<8306>や第一生命HD<8750>などの金融も強い動き。決算発表銘柄ではブリヂストン<5108>、アサヒ<2502>などが買われた。一方、地政学リスク緩和を受けた原油先物価格の下落を材料にINPEX<1605>や石油資源開発<1662>が大幅に下落。キーエンス<6861>、ニトリHD<9843>、住友鉱<5713>も軟調。決算発表銘柄では、山崎パン<2212>、JACR<2124>、ピジョン<7956>などが売られ、ツバキ・ナカシマ<6464>は急落。 セクターではゴム製品、海運業、空運業などが上昇率上位に並んだ。一方、鉱業、石油・石炭製品の2業種のみが下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の81%、対して値下がり銘柄は16%となっている。 日経平均は前日までの2日間だけで800円超も下げていたこともあり、地政学リスクの緩和を受けた米株高を背景に、本日は大幅反発。ただ、25日移動平均線を手前に伸び悩んでおり、戻り待ちの売りの根強さも窺える。 また、本日の株高の持続性には依然懐疑的とならざるを得ない。ロシアは軍の一部撤収を発表したが、北大西洋条約機構(NATO)やバイデン米大統領はこうした動きについて「確認していない」と述べている。ロシア軍は依然としてウクライナ近辺で常時戦闘に入れる状態を維持しているとも伝わっており、地政学リスクは払しょくされていない。米国務省が言及しているに過ぎず、真偽は定かでないが、16日は当初ロシアがウクライナ侵攻をすると噂されていた日でもあり、依然警戒感は拭えない。 一方、ウクライナ情勢を巡る報道でかき消された感があるが、前日に発表された米1月生産者物価指数(PPI)は市場予想を大幅に上回った。前年同月比で+9.7%(予想の+9.1%)となり、前月比では+1.0%(同+0.5%)と予想比で2倍の伸びとなった。変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアでも前月比+0.8%(同+0.5%)と予想を大きく上回った。もともと、前回の12月分に続き2カ月連続で伸びが鈍化し、インフレ懸念の沈静化につながるとの期待がああったわけだが、完全に予想を覆す形となり、米10年国債利回りも再び2%台にまで上昇している。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めペース加速を一段と正当化しうる材料といえ、このPPIの上振れは、今後、じわじわと影響を与えそうだ。 明日未明には、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月開催分)が公表予定。すでに、市場では今年の全てのFOMCでの利上げを織り込みつつあるほか、4-6月中の量的引き締め(QT)開始も織り込み始めている。そのため、議事録公表がネガティブサプライズに働く可能性は低いと考えられるが、QTに関する言及の仕方次第では、PPIの上振れと合わせて改めて金融引き締め懸念が強まる可能性も捨てきれない。 仮にこれを無難に通過したとしても、3月FOMCまでの間には2月雇用統計など重要指標の発表も控えている。決算シーズンが一巡し、手掛かり材料難ということもあり、相場が上昇基調へ転換するというシナリオは描きにくいだろう。 一方、今晩の米国市場では、FOMC議事録の公表以外に、米1月小売売上高や半導体企業のエヌビディアやアプライド・マテリアルズの決算が予定されている。小売売上高は前月比でマイナスだった12月から一転してプラスが予想されている。FOMC議事録がタカ派色を一段と強める内容でないことに加えて、小売売上高や半導体企業の決算が予想を上回るものとなれば、短期的にはあく抜け感から一段の買い戻しなども想定されよう。 指数が一日に1~3%上下に動く日が珍しくなくなっており、ボラティリティー(変動率)の高い相場が続いている。今は短期的にはどちらに振れてもおかしくない地合いのため、引き続き慎重なリスクコントロールが求められよう。 さて、後場の日経平均は引き続き25日線を手前にしたもみ合いが続くと予想する。上述したように、今晩の米国市場では重要な見極め材料が多く予定されている。これらを確認する前に一段の上値追いは想定しにくく、25日線や心理的な節目の27500円を手前に伸び悩む構図に変化はないと考えられよう。
<AK>
2022/02/16 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は続落、外部環境の不透明感は依然拭えず
日経平均は続落。72.93円安の27006.66円(出来高概算6億2000万株)で前場の取引を終えている。 週明け14日の米株式市場でNYダウは3日続落し、171ドル安となった。緊迫するウクライナ情勢への懸念に加え、セントルイス連銀のブラード総裁が金融引き締めを前倒しで実施する必要性を強調したことから、一時400ドルを超える下落となった。その後、ロシアのプーチン大統領がウクライナ問題の外交的解決の可能性を示し下げ渋る場面もあったが、米政府がキエフにある大使館の移転計画を明らかにすると、引けにかけて再び売りに押された。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数はほぼ変わらず。前日に600円あまり下落した日経平均だが、本日は良好な企業決算などを支えに押し目買いが先行する形で103円高からスタートした。ただ、外部環境の不透明感から戻りを試す動きは限られ、早々にマイナス転換すると26933.87円(145.72円安)まで下落する場面があった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>などがさえない。決算発表銘柄では日本郵政<6178>が3%の下落となり、リクルートHD<6098>やクボタ<6326>、ゆうちょ銀行<7182>は急落。また、Dスタンダード<3925>が東証1部下落率トップとなり、ネットプロHD<7383>はストップ安を付けている。一方、売買代金トップのレーザーテック<6920>は堅調。決算が好感されたSMC<6273>は4%超上昇し、これにつれてかキーエンス<6861>も買い優勢だ。キリンHD<2503>はミャンマー事業撤退や自社株買い実施を受けて買われている。その他の決算発表銘柄では日ペHD<4612>やコーセー<4922>、住友林<1911>などが急伸。また、朝日インテック<7747>がストップ高を付け、スノーピーク<7816>はストップ高水準での買い気配が続いている。 セクターでは、サービス業、保険業、鉱業などが下落率上位。一方、ゴム製品、小売業、倉庫・運輸関連業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の34%、対して値上がり銘柄は61%となっている。 本日の日経平均は朝方こそ押し目買いが先行したものの、その後おおむねマイナス圏で推移して前場を折り返した。日足チャートを見ると27000円近辺で下げ渋る動きだが、連日の陰線形成にムードの悪さは拭えない。前日に5日移動平均線を割り込んだことで値動き良化への期待は後退か。改めて、10日に下降する25日移動平均線を一時上回ったところが戻り売り機会だったという見方もできる。規模別指数では大型が軟調だが、中型や小型はまずまず堅調。前引けの日経平均が-0.27%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.23%。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりで、前日までと比べやや減少している印象だ。 決算発表銘柄ではSMCなど好反応を示すものも少なからずあるとはいえ、比較的評価の高いリクルートHDの急落に売り圧力の強さが感じられる。医療器具の朝日インテック、アウトドア・キャンプ用品のスノーピークなど、業績鈍化・落ち込み懸念を打ち返した企業の方が戻り余地の大きさから買いが入りやすいものと考えられる。 新興市場ではマザーズ指数が-0.04%と続落。前日の米市場でハイテク株の一角に押し目買いが入った流れから、マザーズ指数も朝方の売りが一巡すると前日終値近辺で推移している。東証1部の中小型株と同様、個人投資家の物色意欲は根強いことが窺える。一方、マザーズ指数は前日に-4.54%という大幅下落を強いられており、戻りの鈍い印象も拭えない。また、前日に決算発表したFRONTEO<2158>の動向も注目したい。取引時間中に売買成立する場面もあったが、前引け時点ではストップ安水準での売り気配。同社は個人投資家に人気が高く、信用買い残も相応に高水準となっている。個人投資家の資金余力やセンチメントの更なる悪化が懸念される。 さて、前日の米市場ではウクライナ情勢の緊迫化などから原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)の上昇が続き、1バレル=95.46ドル(+2.36ドル)となった。これが意識されてか、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.48%(+0.05pt)に上昇した。 こうしたインフレ圧力の高まりから金融引き締め観測も強く、米債券市場では短期の年限を中心に金利が上昇。2年1.57%(+0.07pt)、10年1.99%(+0.05%)となった。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進む格好となっている。セントルイス連銀のブラード総裁はインフレ対応が遅れれば米連邦準備理事会(FRB)への「信頼性が損なわれる可能性がある」としたうえで、「計画されている緩和解除を従来よりも前倒しする必要がある」などと発言したという。 市場関係者からは「米長期金利の上昇余地は限られる」といった声も根強く聞かれる。しかし、米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査では欧州投資家が社債を売り、現金の保有比率を高めていることがわかったなどと米メディアが報じている。米金融大手ゴールドマン・サックスは資産配分における社債の投資判断を引き下げ、逆に現金を引き上げた。これまでの金利上昇(債券価格の下落)で債券投資家の多くは損失が出ているものとみられている。債券投資家の現金選好が一段と強まる可能性もあるだろう。 結局のところ株式投資家の押し目買い意欲が根強いといえ、外部環境の不透明感は拭いづらい。また、今週も16日の米連邦公開市場委員会(FOMC、1月25~26日開催)議事録公表を始め、米中の主要経済指標の発表など注目イベントは多い。後場の日経平均も引き続き戻りの鈍い展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/15 12:19
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり大幅反落、悪材料顕在化で深押し、押し目買いは時期尚早
日経平均は4日ぶり大幅反落。725.74円安の26970.34円(出来高概算7億0829万株)で前場の取引を終えている。 日本が3連休の間の10、11日の米株式市場でNYダウは526.47ドル安、503.53ドル安とそれぞれ大幅に下落。ナスダック総合指数も-2.10%、-2.78%と大幅に下落した。米1月消費者物価指数(CPI)の上振れで米10年国債利回りが一時2%超えを実現。セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言もあり、ハイテク・グロース(成長)株主導で下落。さらに、米政府が北京五輪中でもロシアのウクライナ侵攻の可能性を警告したことで地政学リスクも急速に高まり、売りに拍車がかかった。リスク回避の動きが強まるなか週明けの日経平均は390.16円安でスタートすると、売りが膨らんだ。節目の27000円で一旦下げ渋る動きも見られたが、戻り待ちの売りから失速すると、前場中頃には27000円を割り込んだ。香港ハンセン指数も大幅安のなか、日経平均はそのまま本日の安値圏で前場を終えている。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、村田製<6981>、キーエンス<6861>などのハイテク株のほか、エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>、Sansan<4443>などのグロース株が総じて厳しい下げに見舞われている。東エレク<8035>は好決算を発表も、地合いに押されて下落。ラクス<3923>はグロース売りのなか減益決算が嫌気され20%安と急落。シスメックス<6869>も決算を受けて急落し、セレス<3696>は今期の減益見通しが失望感を誘い、ストップ安気配となっている。一方、地政学リスクの高まりを受けた原油市況の上昇を支援要因にINPEX<1605>が大幅に上昇。業績予想を上方修正したコスモエネHD<5021>も大幅高。ほか、決算を受けてパンパシHD<7532>、ミルボン<4919>、イーレックス<9517>などが大きく上昇している。 セクターではゴム製品、精密機器、電気機器などが下落率上位に並んだ。一方、鉱業、石油・石炭製品、不動産業の3業種のみが上昇となった。東証1部の値下がり銘柄は全体の81%、対して値上がり銘柄は16%となっている。 本日の日経平均は世界的なリスク回避ムードの高まりから免れることはできず、700円超安と、一気に27000円を割り込んできている。先週末に回復したばかりの25日移動平均線を再び大きく下放れた。日足チャートでは目先の下値支持になる目安が見当たらず、週足では一目均衡表の雲下限(26796.62円)が唯一サポートとして期待される位置にある。ここを下回ると、短期的には1月27日に付けた26044.52円を目指す展開が想定される。先週末に、ザラ場ベースとはいえ、1月5日の29388.16円から1月27日の26044.52円までの下げ幅の半値戻しを達成したばかりだっただけに、チャート形状の再悪化は下落トレンド長期化を想起させるようで、印象が悪い。 相場急落のきっかけは従来から懸念されていた悪材料の顕在化、すなわち、米国をはじめとした主要各国中央銀行による金融引き締めとウクライナ情勢を巡る地政学リスクだ。先週、米1月CPIが予想を上回り、40年ぶりとなる最大の伸びを記録したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め加速化を正当化させるとの思惑から、幅広い年限で米国債利回りが急上昇し、米長期金利は10日に2%を超えた。週末11日には、ウクライナ情勢を巡る地政学リスクの強まりを受けて、安全資産である債券に買いが入ったことで、2%を割り込んだが、金利先高観は根強い。 ロシアのウクライナ侵攻が実際に行わることがあれば、短期的には相場は一段と深押しするだろうし、仮に侵攻が行われず、地政学リスクが後退したとしても、今度は再び金利先高観が相場の頭を抑えるだろう。FRBだけでなく、利上げに消極的だった欧州中央銀行(ECB)までもが利上げを検討するなか、市場では米長期金利の2%超えは通過点に過ぎず、年内に2.5~3.0%まで上昇するとの予想も多くなっている。 サマーズ元米財務長官は、FRBは臨時会合を即時開催し、インフレ抑制への決意を強調するべきだと主張しているほか、米民主党のマンチン上院議員は、FRBがインフレとの闘いで「煮え切らない態度をやめ」、「真正面から取り組む」必要があると言及していることが伝わっている。FRBへのプレッシャーは日に日に増している。こうしたプレッシャーに耐え切れず、FRBが引き締めペースを加速させれば、それ程にまでFRBは追い詰められているのかと、市場に動揺を与えかねない。一方で、そうした後手に回っている感を与えないために、引き締めを漸進的に進めることに固執すれば、インフレ高進が続いた場合、将来払う代償は大きくなる。FRBは非常に苦しい立場に置かれており、投資家は、「FRBはこの難局を切り抜けられる」、「実際に利上げすればあく抜けで上昇」などと、高を括らない方がよいだろう。 16日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月開催分)が公表される。市場では利上げについての織り込みは急速に進んでいるものの、量的引き締め(QT)に対しては依然として不透明な部分が多く、織り込みが十分に進んでいるとは考えにくい。FRBの金融引き締めを反映する短中期の金利が急上昇するなか、将来の景気減速も反映しつつある長期金利は相対的に上昇ペースが鈍く、長短金利差が縮まってきている。逆イールドの発生は景気後退のシグナルとされ、FRBにはこれを避けたいとの考えがあるだろう。イールドカーブの一段のフラット化を避けるために、市場では、FRBが長期の年限の債券を売却するのではないかとみる向きもいる。FRBは償還のきた債券の再投資をしない自然減でのバランスシート縮小を検討しており、売却の可能性は低いだろうが、市場の思惑はくすぶる。 米国では15日に米1月生産者物価指数(PPI)が発表予定で、こちらは伸びの鈍化が予想されている。予想通りとなれば、相場は、一旦は落ち着きを取り戻すかもしれないが、16日のFOMC議事録を確認するまでは神経質な展開が想定され、積極的な押し目買いは期待しにくいだろう。 前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀の上場投資信託(ETF)買いが見込まれる。こうした思惑から、後場の日経平均はやや下げ渋ることも想定されるが、週明けの米株市場が下げ止まるか見極めたいとの思惑もあり、積極的な押し目買いには期待しづらいだろう。心理的な節目の27000円を回復できるかが短期的な焦点となろう。
<AK>
2022/02/14 12:11
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日経平均は小幅に3日続伸、米株高は今後のリスクの大きさ映す?
日経平均は小幅に3日続伸。18.24円高の27598.11円(出来高概算7億3000万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは3日続伸し、305ドル高となった。NY州が室内でのマスク着用義務化を撤廃し、英国も新型コロナウイルス感染抑制のための規制撤廃を計画しているなど、経済活動の正常化への期待が高まった。また、アトランタ連銀のボスティック総裁がインフレ鈍化の見通しを示し、インフレを巡る警戒感が後退。10年債入札が好調だったこともあり、10年物国債利回りは1.94%(-0.02%)に低下し、ハイテク株の買いを誘った。ナスダック総合指数は+2.08%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+3.35%となった。本日の日経平均はこうした米株高の流れを引き継いで238円高からスタートすると、朝方には一時27880.70円(300.83円高)まで上昇。ただ、今晩の米1月消費者物価指数(CPI)発表や明日からの国内の3連休を前に伸び悩んだ。 なお、日経平均オプション2月物の特別清算指数(SQ)値は概算で27835.60円となっている。 個別では、東エレク<8035>、郵船<9101>、ソニーG<6758>などがまずまずしっかり。好決算の半導体関連株が大きく買われ、SUMCO<3436>が5%近い上昇、ルネサス<6723>が7%の上昇となっている。その他の決算発表銘柄ではホンダ<7267>が5%超上昇し、ISID<4812>やフジクラ<5803>も急伸。また、ヴィンクス<3784>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、売買代金トップのレーザーテック<6920>がマイナス転換。ソフトバンクG<9984>とトヨタ自<7203>も反落し、揃って3%あまり下落している。決算発表銘柄ではテルモ<4543>などが売りに押され、住友ゴム<5110>は急落。また、ファインデクス<3649>などとともにヤマトHD<9064>や博報堂DY<2433>が東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、化学、金属製品、医薬品などが上昇率上位。一方、輸送用機器、ゴム製品、銀行業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の51%、対して値下がり銘柄は43%となっている。 本日の日経平均は朝方に上げ幅を300円まで広げる場面があったものの、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、27600円台に位置する25日移動平均線を上回って始まったが、同線をやや下回るところまで押し返されて陰線を引く格好。ひとまずSQ値を上回る場面こそあったものの、下降中の25日線を上回って売りというセオリーどおりで、値動き良化で買いを入れていた短期投資家の期待はややしぼまざるを得ないか。価格帯別の出来高を見ると、昨年10月や12月に下げ渋る動きを見せた27800円前後が膨らんでおり、戻り売り圧力が強そうなことも窺える。前引けの日経平均が+0.07%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.05%。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりだが、オプションSQの影響を除くとここ数日とおおむね同水準だろう。 SUMCOやルネサスといった半導体関連、それに自動車のホンダなどが決算を受けて大きく買われているのは明るい材料だが、朝方からトヨタ自の軟調ぶりが目立った点には不安もあった。また、半導体関連でも失速したレーザーテックを見ると、個人投資家のセンチメントはさほど改善していない印象を受ける。ヤマトHDや博報堂DYが急落するなど、決算発表銘柄も好調なものばかりでない。 新興市場ではマザーズ指数が+1.27%と続伸。メルカリ<4385>などの主力IT株は全般堅調だ。前日上場したばかりのライトワークス<4267>が連日でストップ高を付けており、値幅の大きさを狙った新興株物色も窺える。ただ、マザーズ指数も朝方の買いが一巡すると上値が重く、2日高値808.64ptを抜けられないあたり、本格的にトレンド好転した印象はなお薄い。 さて、米国では経済活動の正常化への期待に10年物国債利回りの低下も加わり、主要株価指数が揃って続伸した。ボスティック氏の発言だけでなく、一部から「1月CPIが予想を下回る」との話も伝わってきたことで、インフレを巡る警戒感が和らいだとみられる。もっとも、2年物国債利回りは1.35%(+0.01pt)と横ばいを維持。引き続き金融引き締めペースの加速を示唆する発言があり、3月の0.5%利上げ観測もくすぶっているようだ。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は19.96(-1.48)と、節目の20を下回るまで低下した。これまで金融引き締め観測とともに売り持ち高が積み上がっていたところ、VIXの低下などから買い戻しを迫られる向きが多かったのが米株の堅調ぶりにつながっていると考えられる。ただ、一部メディアでVIXが株価の先行きを示す指標として機能しづらくなっていると指摘しているのが注目される。また、ブラックスワン・ファンドを運用する米ユニバーサ・インベストメンツのマーク・スピッツナーゲル最高投資責任者(CIO)は米メディアのインタビューで「現在の流動性がいかに金融システムに組み込まれているか」というリスクについて、市場は「理解が極めて不足している」などと述べたという。 実際、筆者も強気の投資家・市場関係者は金融緩和下での流動性を前提にシナリオを描いている印象を受けている。金利上昇下での米株高は市場リスクの大きさも映しているのかもしれない。 差し当たり今晩発表の米1月CPIだが、予想値やその後の市場反応についての見方がかなりばらついている印象。3連休を挟んで国内企業の決算発表もラストスパートとなり、後場の取引は様子見ムードが強まってくるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/10 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、金利上昇下での米ハイテク株高を好感
日経平均は続伸。246.30円高の27530.82円(出来高概算7億1090万株)で前場の取引を終えている。 8日の米国市場でNYダウは371.65ドル高(+1.05%)と続伸。企業決算を好感した買いから寄り付き後上昇。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」感染の流行がピークをつけた可能性から経済活動再開への期待が一段と高まり、引けにかけて上げ幅を拡大。ハイテク・グロース(成長)株にも買いが入り、ナスダック総合指数は+1.27%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は+2.40%となった。こうした流れを引き継いで日経平均は204.13円高でスタートすると、取引開始直後に27543.76円(259.24円高)まで上昇。節目の27500円近辺では戻り待ちの売りが根強く一時失速する場面もあったが、香港ハンセン指数の上昇などを支えに再度騰勢を強めると、再び27500円を回復。その後は同水準を挟んだ一進一退となった。 個別では、SOX指数高を受けてレーザーテック<6920>、ルネサス<6723>が大幅高となり、米長期金利の上昇を追い風に三菱UFJ<8306>も上昇。丸紅<8002>や三菱商事<8058>などの商社が堅調で、郵船<9101>もしっかり。業績予想を上方修正した日産自<7201>が大幅高となり、本日後場に決算発表予定のトヨタ自<7203>も堅調。ほか、決算が好感されたところでJFE<5411>、AGC<5201>、IHI<7013>などが大幅に上昇し、CMK<6958>、シマノ<7309>、ジェイリース<7187>などは急伸し、東証1部値上がり率上位に並んだ。一方、原油先物価格の下落を受けINPEX<1605>やENEOS<5020>が下落、NTT<9432>、KDDI<9433>、第一三共<4568>など内需系の一角も軟調。ほか、決算が失望感を誘ったところでデジハHD<3676>、BEENOS<3328>、レノバ<9519>、ポピンズHD<7358>などが値下がり率上位に並んでいる。 セクターでは精密機器、鉄鋼、輸送用機器などが上昇率上位に並んだ。一方、鉱業、石油・石炭製品、食料品などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の67%、対して値下がり銘柄は26%となっている。 本日の日経平均は3桁の上昇で心理的な節目の27500円を超えてきている。上値抵抗線とみられる25日移動平均線に近づいており、上昇一服も意識されるところだが、東証株価指数(TOPIX)はすでに25日線を超えてきている。TOPIXが先んじて上値抵抗線だった同線を超えてきたことはトレンド転換に期待を持たせてくれる。また、朝方の上昇後に一時失速した日経平均だが、そのまま軟調が続けば、27500円での上値の重さが改めて印象付けられてしまい、嫌な流れになるところだったが、すぐに切り返して再び同水準を上回ってきたことは強い動きを印象として与える。 前日の米国市場では米10年国債利回りが一時1.97%と2019年11月以来の高水準にまで上昇した。注目点は、そうした中でも、ナスダックやSOXが大幅に上昇したことだ。これは、株式市場が金融引き締めを相当程度織り込んできた証左とも考えられ、ポジティブに捉えられる。実際、米金利先物市場は年内の利上げ回数として5回以上をほぼ完全に織り込んでいるうえ、6回以上の織り込みも進んできている。他方で、米連邦準備制度理事会(FRB)では、複数の高官から、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅として0.5%は考えていないなどと、ややハト派に修正するような発言が出はじめている。市場が想定している以上にタカ派的な引き締め確率が下がっているのだとすれば、株式市場の足元での買いも無謀なものではなく合理的といえる。 しかし、10日に発表予定の米1月消費者物価指数(CPI)を確認するまではまだ楽観できない。既に記録的な伸びは予想されているため、市場予想並みにとどまれば無難に通過することが見込まれるが、仮に大幅に上振れると再び楽観の揺り戻しが起きかねない。また、来週には1月FOMCの議事要旨が発表予定だ。1月5日の議事要旨(昨年12月開催分)公表を受けて相場が急落したことを踏まえれば、注目度は高く、これを見極めたいとの思惑もくすぶるだろう。足元の相場は悲観的になり過ぎで、絶好の買い場と指摘する大手金融機関もある。ただ、年始からの急落相場のなかで醸成された過度な悲観を徐々に修正することは必要だろうが、依然過度な楽観に傾くことには慎重になった方がよいだろう。 さて、後場の日経平均は27500円を上回ったまま推移できるかが焦点となる。そうした中、後場中頃には注目のトヨタの決算が予定されており、内容次第では全体の流れを左右しそうだ。トヨタの決算がポジティブなものとなり、日経平均が一段高となって27500円を優に上回った状態で本日を終えることができれば、市場のムードも好転してきそうだ。
<AK>
2022/02/09 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は反発、「強弱感交錯」から「様子見」へ?
日経平均は反発。116.59円高の27365.46円(出来高概算6億3000万株)で前場の取引を終えている。 週明け7日の米株式市場でNYダウは1ドル高とほぼ横ばいで取引を終えた。新型コロナウイルス感染者数の減少による経済活動の回復期待や、春節明けの中国株の上昇を支えに景気敏感株などに買いが入った。一方、長期金利の高止まりからハイテク株に売りが出て、ナスダック総合指数は-0.58%となった。東京市場では前日、米金利上昇を受けてグロース(成長)株を中心に株価下落しており、本日の日経平均はその反動もあって69円高からスタートした。前場中ごろに差し掛かり27461.33円(212.46円高)まで上昇する場面もあったが、引き続き主要中央銀行による金融引き締めやウクライナ情勢の緊迫化への懸念が根強く、10日の米1月消費者物価指数(CPI)発表やその後の3連休を前に上値を追う動きは限られた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、塩野義<4507>、トヨタ自<7203>などがまずまずしっかり。塩野義<4507>は月内にも新型コロナ飲み薬の承認を申請する方針と伝わったが、上値では利益確定売りも出ているようだ。郵船<9101>や商船三井<9104>は2%超上昇し、川崎船<9107>は5%の上昇となっている。製品の値上げを発表したコカBJH<2579>、決算発表のタカラトミー<7867>やマルハニチロ<1333>は急伸。また、DI<4310>やシグマクシス<6088>、名鉄<9048>が東証1部上昇率上位に顔を出している。一方。ソニーG<6758>や任天堂<7974>がさえない。オリンパス<7733>は連日で売りがかさみ6%超の下落。決算発表・業績修正銘柄ではグリー<3632>などが急落し、エンビプロHD<5698>やDIC<4631>が東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、水産・農林業、海運業、空運業などが上昇率上位。一方、パルプ・紙、その他金融業、精密機器などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の62%、対して値下がり銘柄は33%となっている。 前場の日経平均は一時200円あまり上昇したものの、その後やや伸び悩む展開となった。日足チャートを見ると、1月27日取引時間中の安値26044.52円から2月2日取引時間中の高値27564.62円まで急ピッチのリバウンドを見せたのち、ここ数日は27000円台前半でのもみ合いが続いている。本日は27300円台に位置する5日移動平均線水準を維持しようとする動き。売買代金上位では高配当の海運株、米金利上昇が材料視される金融株の買いが続き、その他全般に小じっかりという印象だ。値がさグロース株は反発しつつも、上値の重い印象が拭えない。前引けの日経平均が+0.43%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.52%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱と先週に比べやや減っている。 新興市場ではマザーズ指数が-0.89%と4日続落。日経平均の反発につれて前場中ごろまで上昇する場面もあったが、米金利の高止まりで新興グロース株の先行きに対する個人投資家の警戒感はなお強いのだろう。新興市場銘柄では本日、マザーズのJTOWER<4485>やジャスダックのハーモニック<6324>が決算発表を予定している。また、IPO(新規株式公開)では明日9日、ライトワークス<4267>が新規上場する。ここまでリカバリー<9214>、セイファート<9213>と2社続けて公開価格割れスタートを強いられており、個人投資家のセンチメントをはかるうえでもライトワークスの株価動向を注視したい。 さて、日経平均はここまで1日の当欄「早々に戻り売り目線?」での「目先26000~27000円台でもみ合う展開」という予想に沿った値動きと言えるだろう。値動き的には一段高への期待を残す格好となっており、1月25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)にかけて積み上がった売り持ち高の買い戻し、それに新型コロナ感染減少や堅調な企業決算も支えとなる。一方、引き続き主要中央銀行による金融引き締めへの懸念も強く、グロース株の買い意欲が高まりづらい。それに全体として戻り売り目線の投資家も多いだろう。 日経平均と同様、米国でもNYダウが戻り一服後、35000ドル近辺でもみ合う展開となっている。個別株では決算を受けた動きがあるとはいえ、日米とも株価指数の方向感に乏しくなり、市場参加者からは「どうにもやりようがない」などといった嘆き節も聞かれる。現物株、先物とも徐々に売買が落ち着きつつあるのは、市場のムードが「強弱感交錯」から「様子見」へ変わってきたことを映しているのかもしれない。 前日の米市場で原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)は1バレル=91.32ドル(-0.99ドル)と7日ぶりに反落したが、米金融大手ゴールドマン・サックスは商品市況について「何もかも欠乏して」おり、「今のような市場は見たことがない」などと指摘したと海外メディアが報じている。コストプッシュによるインフレへの懸念も拭えず、10日発表の米1月CPIへの注目度が一段と高まりそうだ。 また、国内でも本日はソフトバンクG、明日はトヨタ自と注目企業の決算発表が相次ぎ、これらの内容を見極めたいとの思惑も出てくるだろう。アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が反落していることもあり、後場の日経平均は上値の重い展開が続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/08 12:16
ランチタイムコメント
日経平均は反落、米金利高など嫌気、米CPI後のポジティブシナリオの実現性は?
日経平均は反落。236.33円安の27203.66円(出来高概算6億7075万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でNYダウは21.42ドル安(-0.06%)と小幅続落。1月雇用統計の想定以上の強い結果を受けて年内の利上げ観測が一段と強まるなか金利上昇が嫌気され、寄り付き後下落。雇用の改善で消費拡大期待も強まりダウは一時上昇に転じるも引けにかけては再び失速。一方、オンライン小売りアマゾンの好決算による急伸が支援し、ハイテクは終日堅調推移、ナスダック総合指数は+1.57%と大幅反発となった。一方、先週末に既にアマゾンの好決算を織り込んでいたこともあり、週明けの日経平均は112.36円安と反落スタート。米10年国債利回りの上昇を嫌気したハイテク・グロース(成長)売りが先行し、朝方に27085.32円(-354.67円)まで下落する場面があった。ただ、心理的な節目の27000円を意識した買い戻しも入り、その後は急速に下げ渋った。 個別では、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、キーエンス<6861>などのハイテク株のほか、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>、ラクス<3923>などのグロース株が総じて軟調。郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株は大幅安。先週末に決算を発表したところでオリンパス<7733>、太陽誘電<6976>、イビデン<4062>などが大きく下落。業界再編機運の後退を嫌気した動きが再燃したかSUMCO<3436>、信越化<4063>のシリコンウエハー関連も大幅下落。 一方、ソフトバンクG<9984>が大幅高で、米金利上昇を追い風に三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>も上昇。日本製鉄<5401>、INPEX<1605>、住友商事<8053>などの資源関連、武田薬<4502>や日本郵政<6178>などの高配当利回り株も堅調。決算が好感されたダイフク<6383>、スクエニHD<9684>、三菱製鋼<5632>、日東紡績<3110>などは急伸。 セクターでは海運業、精密機器、金属製品などが下落率上位に並んだ。一方、保険業、銀行業、パルプ・紙などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の58%、対して値上がり銘柄は37%となっている。 週明けの日経平均は売り先行でスタート後はやや下げ渋ったものの、3桁の下落幅で前場を終えた。25日移動平均線の回復が依然遠いなか再び5日線を割り込む展開となっている。 米1月雇用統計での非農業部門雇用者数は前月比46万7000人増と市場予想の12万5000人増を大幅に上回った。また、平均賃金の伸びは前月比で0.7%増、前年同月比5.7%増とともに市場予想を上回った。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の影響が想定されていたにも関わらず、非常に力強い労働市場の回復が示され、個人消費の高まりなど景気支援要因が期待される一方、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念が一段と強まる形になった。 さらにWTI原油先物価格は1バレル=92ドルと7年ぶりの高値を付けており、雇用統計の結果と合わせて踏まえるとインフレ高進への警戒感は一段と高まったといえよう。実際、先週低下に転じていた米長期金利は再び1.9%台まで大幅に上昇している。一方、こうしたなかでも、先週末の米国市場でアマゾンの好決算などを背景にナスダックが大幅高となったことはポジティブに捉えられる。これまでの相場動向を踏まえれば、企業の好決算よりも、金融引き締め懸念が強まる内容となった雇用統計をネガティブに捉える動きの方が強めに出てもおかしくなかったはずだ。 この動きを楽観的に捉えるなら、年始からの目まぐるしいハイ・ボラティリティー(変動率)相場変遷を受けて、市場は金融政策の不透明感に伴う相場調整を一気に織り込み、企業業績などファンダメンタルズを反映しやすい状況になってきたと考えられる。 今週10日には注目度の高い米1月消費者物価指数(CPI)が予定されている。総合のCPIは前年同月比7.3%上昇と、前年比での伸びが1982年前半以来の大きさになったと見込まれている。現時点で既にある程度CPIの結果は織り込まれているだろうが、実際に結果を受けた直後の相場反応が、今後の相場展開を占ううえで注目される。 年始からの動向を踏まえれば普通に考えて、CPIが記録的な伸びでかつ市場予想も上振れた場合、相場は再びFRBの金融引き締めへの警戒感から深押しするだろう。しかし、予想を上振れた場合でも相場が大きく下げないようなことがあれば、雇用統計後のナスダック大幅高の動きが正当化される。つまり、上述した1月ハイボラ相場の間に市場は金融引き締めの不透明感を相当に織り込んだという仮説の説得力がより強まることになる。この場合、好決算だったにもかかわらず買いが続かなかったハイテク・グロース株などには押し目買いが効いてくる可能性があろう。 しかし、週明けの東京市場をみても、市場の金融引き締めを巡る疑心暗鬼は依然根強い。上述のCPI後のポジティブシナリオも、週末の雇用統計を踏まえた上でのあくまでの一仮設に過ぎず、蓋然性は高くはない。また雇用統計後のナスダック高につても、今晩の米国市場でナスダックが大きく下げれば、先週末の株高はあや戻しに過ぎなかったということになり、シナリオの前提も崩れる。今晩の米国市場が底堅く推移した場合には、ポジティブシナリオの可能性が存続するため、その時は頭の片隅でも置いておいてほしい。 他方、上記のシナリオは短期的な話。中長期では、やはり長年の超金融緩和策の反転、緩和マネーの縮小や、積み上がったレバレッジの解消といった、これまでの相場支援要因の巻き戻しを想定せざるを得ず、長期トレンドは下方向を維持しておいた方がよいと考えている。 さて、後場の日経平均はもみ合いになると予想する。アジア市況では春節明けの中国株式市場が上昇しているが、これは休場中だった先週一週間の世界の株式市場の回復を遅れて反映しているに過ぎない。他方、香港ハンセン指数や時間外取引の米株価指数先物はやや軟調な展開となっている。手掛かり材料難のなか、日経平均は27000~27500円を意識したレンジ相場が続きそうだ。
<AK>
2022/02/07 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続落、随所に見られる「強弱感交錯」
日経平均は小幅続落。7.48円安の27233.83円(出来高概算6億7000万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに大幅反落し、518ドル安となった。英イングランド銀行(中央銀行)が追加利上げに踏み切ったほか、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も年内の利上げの可能性を否定しなかったことから、幅広い年限で金利が上昇。メタ(旧フェイスブック)の決算を受けた株価急落も投資家心理を冷やし、ハイテク株を中心に売りが広がった。ナスダック総合指数は-3.73%と大幅に下落し、本日の日経平均もこうした流れを引き継いで145円安からスタート。寄り付き後はメタの急落を前日にある程度織り込んでいたこと、またアマゾン・ドット・コムが時間外取引で急伸したことなどから、朝方に一転27336.12円(94.81円高)まで上昇する場面もあった。しかし、前場中ごろには一時27075.99円(165.32円安)まで下落するなど、方向感に乏しい展開となった。 個別では、キーエンス<6861>が2%の下落となり、ソフトバンクG<9984>も軟調。レーザーテック<6920>やソニーG<6758>は小安い。決算発表銘柄では花王<4452>が6%超の下落。また、UACJ<5741>、カドカワ<9468>、板硝子<5202>、古河電<5801>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>や川崎船<9107>が大幅に上昇。ともに前日は前引け後の決算発表を受けて荒い値動きとなったが、改めて配当利回りの高さなどから買いが入っているようだ。商船三井<9104>も堅調で、業績予想の上方修正が好感された任天堂<7974>は4%超の上昇。また、日ケミコン<6997>、コナミHD<9766>、冶金工<5480>や川崎船が東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、ガラス・土石製品、輸送用機器、不動産業などが下落率上位。一方、海運業、その他製品、倉庫・運輸関連業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の51%、対して値上がり銘柄は43%となっている。 本日の日経平均は方向感に乏しい展開となっており、小安い水準で前場を折り返した。日足チャートを見ると、27200円台に位置する5日移動平均線を割り込んでスタートしたのち、同線水準を取り戻そうと陽線を引く格好。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりと前日並みに多く、強弱感が交錯している印象を受ける。個別株を見ても、海運株が前日から決算を受けて荒い値動きだ。前引けの日経平均が-0.03%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.13%。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、業種別騰落状況も同様となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-1.98%と続落。第2四半期決算が赤字転換したメルカリ<4385>は売買代金トップで9%の下落となり、指数を押し下げている。一方、売買代金2位のFRONTEO<2158>は株価持ち直しに期待した買いが優勢となっており、ここでも強弱感の交錯が窺える。なお、本日はセイファート<9213>がジャスダック市場に新規上場し、公開価格比-8.0%という初値を付けた。前日上場した2022年IPO(新規株式公開)第1号のリカバリー<9214>に続き厳しい滑り出しである。リカバリーは公募・売出金額が20億円弱あったが、セイファートは10億円弱だ。この規模でも取引開始当初の換金売りを吸収するだけの買いが入らないところに、個人投資家のセンチメントの弱さが透けて見える。 さて、英BOEは政策金利を0.25%引き上げて0.5%としたほか、保有資産の縮小を開始。また、金融政策委員会(MPC)メンバー9人のうち4人は0.5%の利上げを主張し、金融市場では英利上げ加速を織り込む動きが強まった。ECBでも年内利上げの可能性が浮上。このところ米連邦準備理事会(FRB)要人らが3月の0.5%利上げに消極的な姿勢を見せ、主要中銀による金融引き締めへの懸念は和らぎつつあったが、こうしたBOEやECBの動向を受けて再浮上してきた格好だ。 米債券市場では10年物国債利回りが1.83%(+0.06%)となるなど、幅広い年限で金利が上昇した。また、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)が7年4カ月ぶりに90ドル台に乗せる一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.38%(-0.03pt)に低下。グロース(成長)株にとって逆風となるだろう。 また、米ハイテク大手の決算と時間外取引での株価動向が連日話題となっている。前の日に急落を強いられたメタに反し、アマゾンが時間外取引で急伸。昨年10-12月期の1株利益が市場予想を大きく上回ったことが好感されたようだ。もっともこれは11月に上場したリヴィアン・オートモーティブの株式評価益が押し上げたもので、1-3月期の売上高見通しは市場予想に届かず、実態として良好とは言えないとの見方もある。今晩の米市場での株価動向を見極めたいところだろう。 それに本日は米1月雇用統計も発表される。前哨戦のADP雇用統計では非農業部門雇用者数が予想外に減少し、新型コロナウイルス感染拡大による雇用悪化はある程度想定されているだろう。それ以上に注目されそうなのが賃金の伸びである。サービス部門の雇用者数が落ち込んでいることで平均賃金が予想以上に伸び、インフレ懸念を強めるのではないかといった見方も出てきている。 こうした状況を踏まえれば、強弱感が交錯するのもうなずけるだろう。後場の日経平均も方向感に乏しい展開が続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/02/04 12:18
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日経平均は5日ぶり反落、個人の更なるセンチメント悪化に不安
日経平均は5日ぶり反落。305.66円安の27227.94円(出来高概算6億5000万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でNYダウは4日続伸し、224ドル高となった。1月のADP雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想に反して減少したが、金利低下やアルファベットの好決算が支えとなり、ハイテク株を中心に買いが入った。しかし、取引終了後に発表されたメタ(旧グーグル)の決算が失望され、同社を含むSNS(交流サイト)関連銘柄が時間外取引で揃って急落。本日の東京市場でもナスダック100先物の下落を受けて値がさグロース(成長)株を中心に売りが先行し、日経平均は202円安からスタートした。寄り付き後は軟調もみ合いの展開となり、前場中ごろを過ぎると27165.93円(367.67円安)まで下落する場面があった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が7%超の下落。ほかに東エレク<8035>、キーエンス<6861>、任天堂<7974>といった値がさ株や、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎船<9107>といった海運株の軟調ぶりが目立つ。今期業績予想を上方修正したソニーG<6758>だが6%超下落しており、同じく決算発表のエムスリー<2413>やパナソニック<6752>、1月の国内「ユニクロ」既存店売上を発表したファーストリテ<9983>も大きく下落。また、IT・インターネット系の中小型グロース株に売りが出て、メドピア<6095>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、塩野義<4507>やデンソー<6902>は3%超上昇し、トヨタ自<7203>もしっかり。豊田通商<8015>などは決算を受けて大きく買われ、新日科学<2395>が東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、電気機器、海運業、機械などが下落率上位。一方、ゴム製品、パルプ・紙、輸送用機器などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は31%となっている。 メタを中心とした米ハイテク株の時間外取引での急落に加え、国内でもソニーGやエムスリーなどの値がさ株に決算を受けた売りが出たことで、本日の日経平均は300円あまりの下落で前場を折り返した。もっとも売り一辺倒ということでもなく、日足チャートを見ると27100円近辺に位置する5日移動平均線水準で下げ渋っている。値動き良化への期待は何とか保てている状況だろう。日経平均への寄与が大きいところでは、ファーストリテが約94円、東エレクが約59円、エムスリーが約36円の押し下げ要因となっている。これら値がさ株に加え海運株なども軟調ぶりが目立つが、一方で自動車関連に見直しの動きがある。前引けの日経平均が-1.11%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.67%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとなっている。 新興市場ではマザーズ指数が-4.74%と5日ぶりに大幅反落。東証1部市場でもIT・ネット系の中小型グロース株が下落率上位に多く顔を出しているが、マザーズ市場はそうした傾向が色濃く出ている。引け後に決算発表を控えたメルカリ<4385>は7%近い下落。度々指摘しているとおり、昨年11月からの下落局面で信用買い残が増えており、決算発表前に手仕舞いしようという個人投資家が多いことが窺える。また、本日はリカバリー<9214>がマザーズ市場に新規上場した。2022年最初のIPO(新規株式公開)だったが、初値は公開価格比-13.7%となった。ここまで新興株が大幅下落してきた経緯から、IPO時の価格設定も難しくなってきた。また、さほど大型でない案件でも上場中止となるものが出てきており、IPOを巡る環境の悪化が懸念される。 さて、注目を集めているメタの決算は昨年10-12月期の1株利益やユーザー数の伸び、それに1-3月期の売上高見通しなどが市場予想に届かず、時間外取引で約20%も急落したという。同社は経済環境の悪化による広告主の予算制約の影響などと説明しているもようで、他のSNS関連銘柄にも売りが波及した。一方で、20%も急落するような決算内容なのかと疑問を呈する声も少なからずある。 コール(買う権利)オプションの買い観測などが聞かれた電気自動車(EV)のテスラのように、仮想空間「メタバース」への期待が高かったメタもハイテク株の戻りに乗じて買い持ちを増やす動きがあった可能性がある。今回の「メタ・ショック」が強気の買いを入れていた投資家のセンチメントに冷や水を浴びせてしまったのは明らかだろう。本日の東京市場を見ても、個人投資家に人気のレーザーテック、海運株、マザーズ銘柄の下落が大きい。逆張り志向が強く、下落局面で買い支え役となる個人投資家の一段のセンチメント悪化は今後の不安材料となりそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/02/03 12:23
ランチタイムコメント
日経平均は大幅に4日続伸、想定超のリバウンドも間もなく一服か
日経平均は大幅に4日続伸。419.12円高の27497.60円(出来高概算6億6223万株)で前場の取引を終えている。 1日の米国株式市場でNYダウは273.38ドル高(+0.77%)と3日続伸。良好な企業決算に加え、予想を上回った1月ISM製造業景況指数や12月JOLT求人件数を好感。ISM指数の支払価格の上昇を受け長期金利が上昇に転じると、売りが強まる場面も見られた。しかし、全国34州でコロナ入院患者が減少したとの統計を受け、回復期待が強まったことで景気敏感株がけん引し再び上昇。引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数も+0.74%と3日続伸。米株高を引き継いで日経平均は224.51円高でスタート。米アルファベットやAMDが好決算を発表し時間外取引で急伸していることも投資家心理の改善につながった。日経平均は27500円手前で一時伸び悩む場面があったが前場中頃には同水準を突破。前引け間際に失速したものの本日の高値圏で終えている。 個別では、レーザーテック<6920>、スクリン<7735>などの半導体関連株のほか、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>、三菱UFJ<8306>、日立<6501>、、信越化<4063>、リクルートHD<6098>、日本製鉄<5401>などセクターを問わず主力株が総じて高い。SHIFT<3697>、ZHD<4689>、Sansan<4443>などの強さが目立ち、グロース(成長)株の買い戻しが相対的に強い印象。好決算を発表したキーエンス<6861>、アシックス<7936>、野村<8604>、ANA<9202>などは大幅に上昇し、業績予想を上方修正したアイロムG<2372>、ラクスル<4384>なども大幅高。一方、商船三井<9104>などの海運株のほか、ファーストリテ<9983>、NTT<9432>などが軟調。大塚商会<4768>、ベネフィット・ワン<2412>、カルビー<2229>、マンダム<4917>などは決算が失望感を誘い、大幅に下落。 セクターでは空運業、証券・商品先物取引業、鉄鋼を筆頭にほぼ全面高。一方、海運業、電気・ガス業のみが下落。東証1部の値上がり銘柄は全体の90%、対して値下がり銘柄は7%となっている。 本日の日経平均は前引けにかけて失速したものの、前場の間にあっさりと27500円を回復すると、同水準上で長く推移する時間帯があった。昨日は、午前の大幅高の後に急失速し、結局下落に転じたこともあり、先週末からの戻りは一服したものかと思われた。 昨日の米国市場では、一昨日の月末最終営業日と同様、主要株価指数が揃って引けにかけて上げ幅を広げるなど引け味の良い形で終わった。一昨日の大幅高については、年金基金等のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いが指摘されており、昨日はその反動安も懸念されるところだったが、良い意味で裏切ってくれたことで、足元の投資家心理が一段と改善したようだ。また、引け後に決算を発表したGAFAM銘柄の一角であるアルファベットや半導体企業AMDが時間外取引で急伸していたことも、値がさハイテク・グロース株の買い戻しに弾みをつけたと考えられる。こうした好材料が重なったことが、本日の日経平均の27500円回復の要因の一つだろう。 また、昨日までの米連邦準備制度理事会(FRB)高官らによる発言の影響も大きいと思われる。1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長の会見は金融政策の先行き不透明感をむしろ強めてしまう最悪も同然の内容で、その後も、米アトランタ連銀のボスティック総裁が3月FOMCでの0.5%の利上げを示唆などと報じられ、悪材料が続いた。しかし、昨日にかけて、まずボスティック総裁が、上述の一部で報じられた3月の0.5%の利上げは本意でない発言したことが伝わったほか、他の複数の高官からも、緩和縮小にあたっては実体経済へ混乱を及ぼさないよう慎重に進めることが肝要との発言が相次いだ。また前日には、米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が経済データ次第としながらも基本的には3月の利上げ幅として0.5%は望ましくないと発言。 こうした一連の高官発言などが米金融政策の先行きに対する過度な警戒感を緩和し、売り方の買い戻しに弾みをつけたのだろう。また、相場が大きく戻るなか商品投資顧問(CTA)などの短期筋も買いに乗じた可能性があり、こうした動きが本日までの大幅なリバウンド基調の背景と考えられよう。 しかし、米金融政策の先行き不透明感が払しょくされたわけではない。上述の高官らの発言も、経済データ次第では想定以上にタカ派に振れる可能性を残している。こうした中、今週末には米1月雇用統計が控えており、平均賃金の伸び次第では、週明けからは再び金融引き締め懸念が高まる可能性もある。日経平均が次の節目の28000円を回復するにはまだ材料不足と思われ、さすがに今日までの強いリバウンド基調も間もなく一服するだろう。リバウンドを楽しめる賞味期限は楽観的にみても今週いっぱいと捉えておいた方がよさそうだ。 中国市場や香港市場が休場のなか、後場の日経平均は27500円を挟んだ一進一退が続くとみられる。ただ、上述した通り、リバウンド基調が間もなく一服することを考えれば、後場はやや騰勢一服感が強まると考えられ、失速には注意したい。逆に、27500円を優に上回って終えることができれば、明日以降のリバウンドの短期継続も考えられよう。
<AK>
2022/02/02 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、早々に戻り売り目線?
日経平均は3日続伸。192.68円高の27194.66円(出来高概算7億3000万株)で前場の取引を終えている。 週明け1月31日の米株式市場でNYダウは大幅続伸し、406ドル高となった。1月のシカゴ購買部協会景気指数が市場予想に反して上昇したほか、金利が落ち着いて推移していたこともあり、ハイテク株を中心に買いが入った。これまでの大幅な株価下落で、年金基金等のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いが入っているとの指摘もあった。ナスダック総合指数は+3.40%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+5.44%となった。本日の日経平均は米株高を引き継いで165円高からスタート。引き続き良好な企業決算が多く見られることも相場を押し上げ、日経平均は前場中ごろに一時27410.79円(408.81円高)まで上昇した。ただ、先週末からの戻りが急ピッチだったことから、上値では利益確定の売りも出て急速に伸び悩む場面があった。 個別では、郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株の上昇が目立つ。前日は商船三井が業績・配当予想の上方修正を発表して急伸したが、本日も郵船の業績観測が報じられて買いが続いている。ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>といった値がさ株も堅調。新型コロナウイルス飲み薬の試験結果を公表した塩野義<4507>は9%超上昇し、7&iHD<3382>は百貨店のそごう・西武売却報道を受けて4%近い上昇。決算発表銘柄ではTDK<6762>が11%超上昇し、Jパワー<9513>なども急伸している。一方、売買代金トップのレーザーテック<6920>は受注計画引き上げを好感した買いが先行するも、失速して2%超の下落。トヨタ自<7203>は小安い。業績下方修正の日本精工<6471>、樹脂製品の第三者認証に絡み不適切行為があったと公表した東レ<3402>は急落している。 セクターでは、海運業、陸運業、電気機器などが上昇率上位。一方、繊維製品、鉱業、ガラス・土石製品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は37%となっている。 引き続き米株の戻りや良好な企業決算が相場を押し上げ、本日の日経平均は一時400円あまり上昇したが、その後失速して前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日の上昇で26800円台に位置する5日移動平均線を上抜けたが、本日は27000円台半ばに迫り上ひげを付けた格好。米ハイテク株高を受けて買いが先行した東エレクなどは寄り付き直後を高値に長めの陰線を引いており、上値の重い印象が拭えない。レーザーテックの失速は半導体関連企業の決算ハードルの高さを窺わせる。1月の下落局面で信用買い残を積み上げてきたこともネックだろう。 半面、前日はアルプスアル<6770>、本日はTDKが決算を受けて急伸しており、電子部品株に見直しの動きがある。Jパワーは前期、電力市場価格の高騰を受けて業績予想を取り下げた(価格高騰のマイナス影響がネガティブサプライズだった)経緯があるだけに、今回上方修正されたことは安心感につながるだろう。加えて、海運株も同様だが配当利回りの高さが注目されている面もありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりに膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+3.83%と大幅に3日続伸。引き続き米ハイテク株高を追い風に主力IT株が買われ、戻りを試している。一時800pt台を回復する場面もあったが、そこからは日経平均と同様にやや上値が重い。3日に決算発表を控えるメルカリ<4385>の動向が目先の焦点となりそうだ。 さて、1月の騰落率は日経平均が-6.22%、NYダウが-3.32%などとなり、年金等のリバランス買いの規模はかなり大きいとの観測が伝わっている。実際、ここ2日ほど東証株価指数(TOPIX)先物に海外勢の買い戻しの動きが見られるものの、現物株の賑わいの方が目を引く。 また、米国ではアトランタ連銀のボスティック総裁が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%利上げする可能性を示唆しつつ、「自分の望む政策ではない」などと述べたことで金利が伸び悩み、ハイテク株買いを後押しした。金融大手の投資判断引き上げが観測された電気自動車(EV)のテスラは10%を超える上昇となった。同社を巡っては、著名投資家キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベスト・マネジメントの買い増しが伝わるとともに、コール(買う権利)オプションの買いが再び活発化しているとの指摘もある。 ただ、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め姿勢に転じ、流動性相場の終えんが意識されつつあるなか、米個人投資家のこうした行動には危うさを感じざるを得ない。日本でも市場全体の信用買い残高がなお高水準であり、同様のことが言えるだろう。 米金融大手のストラテジストが米株の一段安リスクを指摘するなど、引き続き先行き警戒感は根強い。また、先週の株価急落局面で積極的に買い向かった日本の個人投資家だが、ここ2日のネット証券の取引状況を見ると、日経レバETF<1570>が早々に売り超に転じてきている。戻り売りの目線は日経平均で27000円近辺まで引き下がっているのだろう。決算発表シーズン中は堅調な企業業績が下支えとして機能しそうだが、それでも日経平均は目先26000~27000円台でもみ合う展開になるとみておきたい。 なお、本日は日本でキーエンス<6861>、村田製<6981>、HOYA<7741>、ANA<9202>などが、米国ではアルファベット、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、ゼネラル・モーターズ(GM)などが決算発表を予定している。また、1月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数や12月の米求人件数(JOLT)も発表される。(小林大純)
<AK>
2022/02/01 12:25