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ランチタイムコメント 日経平均は8日続落、独歩高から独歩安、インフレ懸念もあるが国政がもはや重しか  日経平均は8日続落。278.06円安の27544.06円(出来高概算8億3640万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でのNYダウは311.75ドル高(+0.91%)と反発。9月のISM非製造業景況指数が61.9と市場予想(59.9)を上回ったことで景気回復期待が再燃。また、与党民主党内で交渉が続いている税制・支出法案を巡り、反対姿勢を示していた穏健派のマンチン上院議員が規模で妥協する姿勢を示したことも好感され、上げ幅を拡大。米長期金利が1.5%台半ばまで上昇していた中ではあったが、ハイテク株も押し目買いが優勢となり、ナスダック総合指数は1.25%高と大幅に反発した。 米株高を引き継いだ日経平均は211.79円高の28033.91円でスタートすると、そのまま28209.82円(387.70円高)まで上げ幅を拡大。しかし、その後に伸び悩むと急失速の展開となった。前場中頃にはマイナス圏に転じると、ずるずると下げ幅を拡げ、一時は27475.88円(346.24円安)まで下げた。前引けかけては下げ渋ったが、本日の安値圏で前場を終えている。 個別では、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>など大手海運株が大幅下落。朝方上昇していた東エレク<8035>やアドバンテス<6857>などの半導体関連も下落に転じている。ソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>も軟調で、トヨタ<7203>は大幅に下落。そのほか、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、村田製<6981>なども冴えない。リオープン(経済活動再開)銘柄への物色も一段落で、JAL<9201>、JR東海<9022>、エイチ・アイ・エス<9603>、エアトリ<6191>、ラウンドワン<4680>なども総じて大きく売りに押されている。 一方、セメント出荷価格の引き上げを発表した太平洋セメント<5233>が急伸し、住友大阪セメント<5232>などと共に値上がり率上位に入った。また、好決算や業績上方修正を手掛かりにTSI HD<3608>や日金銭<6418>が大幅高。証券会社によるレーティング格上げなどを背景に日本電気硝子<5214>、ダイセキS<1712>、ZHD<4689>なども買われている。そのほか、東証1部売買代金上位では任天堂<7974>、キーエンス<6861>、三菱UFJ<8306>、信越化<4063>、ダイキン<6367>、INPEX<1605>、ルネサス<6723>、東京電力HD<9501>などが上昇となっている。 セクターでは空運業、海運業、輸送用機器などが下落率上位となっている一方、鉱業、石油・石炭製品、パルプ・紙などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の30%、対して値上がり銘柄は65%となっている。 本日の日経平均は前引け時点でなんと8日続落。前日まで7日続落で、この間の下げ幅は2426.69円にも及ぶ。これだけ下げればさすがに自律反発するのも不思議ではないと思ったが、朝方の反発もむなしく、急失速の展開となり、28000円台の回復は束の間の出来事に終わった。東証1部全体でみれば値上がり数が値下がり数を上回っているが、上昇している銘柄の多くも、朝方から急失速し、上げ幅を半分以上に縮めているものばかりだ。 それもそのはず。前日と今日とで特に何も変わっていない。株価急落を生み出した要因は何も解消されていない。中国での恒大集団をはじめとした不動産業資金繰り問題や深刻な電力不足、米連邦政府の債務上限問題などは依然くすぶる。米国の政治問題については与野党の間のチキンレースに過ぎず、長期的な波乱要因にはならないと考えるが、短期的にはテクニカル的な調整色を強めている米国株の一層の下押し圧力にはなり得る。 そして、中国の問題については長期的な話だ。不動産業の停滞から消費減などを通じて他産業へ影響が及べば、実体経済の後退につながる恐れがある。電力不足問題も、同国の環境規制強化のほか、石炭価格の高騰、世界的な脱炭素への急速シフトに伴う構造的変化など複数の要因が絡み合っており、すぐに解決できる問題とはいえない。 さらに、世界的なインフレ懸念も根強い。石炭価格のほか、天然ガスや原油など世界的にエネルギー価格が高騰している。初期は、コロナ禍からの需要回復や供給体制構築の遅れなど、一時的な需給バランスの乱れによるものと捉えられていた。しかし、世界が同時的に脱炭素へ急速にシフトした結果、再生可能エネルギーなどの新エネルギー分野と、化石燃料などの旧エネルギー分野との間での投資シフトの時間軸での整合性が取れず、需給バランスが構造的な形で崩れているようだ。こうなってくると、自らも懐疑的になってきていると思われる「インフレは一時的」とする米連邦準備制度理事会(FRB)の主張にも一層疑念がもたれる。 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米10年国債利回りが急速に上昇してきたが、初期は、その上昇要因のうちほとんどが実質金利の上昇で説明できた。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は緩やかに上昇していたはいたが、直近のレンジ内に収まっており、インフレ懸念が過度に強まっていた印象はなかった。 しかし、その米10年物BEIは5日に2.45と、7月29日の2.43を上抜き、直近3カ月程のレンジを上抜けてきた。上昇確度が高くなり、加速度的な上昇となっており、ここにきてインフレ懸念が強まってきた様子。WTI原油先物価格は5日、期近で2014年11月以来およそ7年ぶりの水準まで上昇した。このままエネルギー価格の高騰が続くと、今年前半に見られた「インフレ懸念・長期金利急騰」の再来もありうる。相場が神経質になってきている分、リスク要因として留意したい。 そして、国内に目を向けても懸念要素はある。前日、各メディアが岸田新内閣誕生後の世論調査の結果を発表した。内閣支持率はどこも60%を割っており、高いところでも日本経済新聞社とテレビ東京が共同で行ったもので59%。これでも、同調査によれば、政権発足時としては過去3番目に低かったという。ちなみに、読売新聞社が行った調査では56%、低いところでは朝日新聞社の45%、毎日新聞社の49%などがあった。 菅元首相の退陣で支持率が上がり、衆院選での与党圧勝への期待が高まったことで、9月半ばまでは政局相場による株高基調が生まれていた。しかし、蓋を開けてみれば、支持率に劇的な改善は見られなかった。こうなってくると、株高要因として期待されていた衆院選は今後はリスク要因とみなされかねない。すでに政局相場は終了し、前日までの間に日経平均は8月末以降の上昇分をすべて吐き出しているが、更なる下押しも想定しておいた方がよさそうだ。今日の朝高後に失速した日経平均の動きを見ていても、今後の日本株については前途多難と言わざるを得ない。 <AK> 2021/10/06 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に7日続落、「世界の景気敏感株」に逆戻り  日経平均は大幅に7日続落。786.58円安の27658.31円(出来高概算7億8000万株)で前場の取引を終えている。 週明け4日の米株式市場でNYダウは反落し、323ドル安となった。香港市場で中国恒大集団株が売買停止になったとの報道が嫌気された。また、産油国の「OPECプラス」会合で大幅増産が回避され、NY原油先物が7年ぶり高値を付けたほか、セントルイス連銀のブラード総裁も高インフレが2022年まで続く可能性を示唆。インフレへの警戒感が強まったうえ、バイデン大統領が連邦政府の債務上限突破のリスクを警告したことも投資家心理を悪化させた。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで394円安からスタートすると、その後も下げ幅を大きく拡大。国内では岸田文雄首相が金融所得課税の見直しを検討すると明言したことなども売りを誘い、日経平均は前場中ごろを過ぎると27460.29円(984.60円安)まで下落する場面があった。 個別では、ファーストリテ<9983>が7%近い下落。9月の国内「ユニクロ」既存店売上が前年同月比19%減となり、嫌気した売りが出ている。その他売買代金上位も郵船<9101>、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>、川崎船<9107>など軒並み軟調。好決算のキユーピー<2809>やネクステージ<3186>、不二越<6474>も売りに押され、国際紙パルプ商事<9274>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、原油高に伴いINPEX<1605>が4%超の上昇。リソー教育<4714>は決算を好感した買いが優勢で、アジュバンHD<4929>などとともに東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、精密機器、機械、電気機器などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガス業の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は10%となっている。 本日の日経平均は大幅に7日続落し、800円近い下落で前場を折り返した。下落が始まる前の9月24日終値(30248.81円)比でここまでの下げ幅は2600円近くに達し、取引時間中としては政局相場が始まる前の8月23日以来の安値を付ける場面もあった。国内「ユニクロ」の苦戦が続くファーストリテが1銘柄で日経平均を約192円押し下げているが、中国の電力不足等でコンテナ船市況が急落していると伝わった海運株も引き続き軟調。グロース(成長)株は米ハイテク株の大幅下落が響き、逃避資金の向かう先はINPEXなどの原油関連株に限られている。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりで、前日までと大きな変化はない。 新興市場でもマザーズ指数が-2.53%と大幅続落。前場中ごろにかけて4%超下落する場面があった。下値での押し目買い意欲は根強そうだが、米国でインフレ懸念と長期金利の上昇圧力が強まっているとなれば、先高期待も持ちづらいところだろう。先週後半に米長期金利の上昇が一服した場面では主力IT株の底堅さを感じたものの、一転して足元軟調となっている。 動向が注目される香港市場では、不動産株の売買停止が相次いでいるほか、インターネット関連株が軒並み軟調になっているという。もっとも、本稿執筆時点で香港ハンセン指数は0.4%程度の下落。前日のNYダウは-0.94%であり、日経平均の軟調ぶりは海外の主要株価指数と比べ際立っている。当欄では自民党新総裁が決定した翌9月30日、海外投資家による株価指数先物の売り転換を捉えて日本株の投資スタンスを「強気」から「当面様子見」に修正した。日本の「変化」に期待して買いを入れていた海外投資家だが、もはやこうした期待が後退しているのは明らかだろう。日経平均は菅義偉前首相が退陣表明して以降の上昇分を全て吐き出し、「世界の景気敏感系バリュー(割安)株」に逆戻りした感がある。 中国では不動産会社の資金繰り問題や電力不足、米国では連邦政府の債務上限問題やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)懸念がくすぶるなか、「世界の景気敏感株」である日本株のアウトパフォームは期待しづらいだろう。米国では5日にサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数、6日にADP雇用統計、8日に雇用統計と9月分の経済指標の発表が相次ぎ、これらの内容を見極めたいとの思惑も買いの手を鈍らせそうだ。 4日発足した岸田新政権はさっそく、19日公示・31日投開票の衆院選に向けて経済対策の編成に動き出した。債務上限問題に揺れる米国との比較で、積極的な財政支出が期待されることは日本株の下支えになるかもしれない。しかし、経済対策で国内総生産(GDP)を一時的に数%押し上げるのと、(人口動態や産業構造等をあえて度外視するが)構造改革を経て欧米株並みにバリュエーションが向上するのとでは期待値が全く違うとも言える。やはり日本経済の浮上に向けた「変化」が見られると海外投資家に受け止められることが日本株の再上昇に不可欠だろう。(小林大純) <AK> 2021/10/05 12:20 ランチタイムコメント 日経平均は6日続落、もはや不透明感だけでは説明できない日本株安  日経平均は6日続落。273.50円安の28497.57円(出来高概算7億0659万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でのNYダウは482.54ドル高(+1.43%)と大幅反発。9月ISM製造業景況指数が予想外に改善を示したことに加え、新型コロナウイルス感染の沈静化や製薬大手メルクが開発中の新たな治療薬などへの期待から景気循環株に押し目買いが向かった。長期金利の低下を受けてハイテク株も下げ止まり、ナスダック総合指数は0.82%高と反発。米株の反発を受けて週明けの日経平均も273.40円高の29044.47円でスタートしたが、寄り付きを高値に失速し始めると、間もなくマイナスに転じ、その後もずるずると下げ幅を拡大。前場後半には一時395.81円安の28375.26円まで下げた。前引けにかけてはやや下げ渋ったが、28500円を割った水準で終えている。 個別では、前週下落がきつかった日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの大手海運株が本日も急落し、値下がり率上位に入っている。そのほか、第3四半期は順調ながらもサプライズなく出尽くし感につながった大有機化<4187>、6-8月期の収益鈍化が嫌気された象印マホービン<7965>、東京エレクトロンデバイス<2760>、KeePer技研<6036>などが値下がり率上位に並んでいる。主力株では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連株が大幅に下落。ソフトバンクG<9984>、村田製<6981>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、日本電産<6594>なども大きく売られており、これまで値持ちの良かった富士フイルム<4901>やAGC<5201>も大きく下落している。 一方、株主優待制度の新設を発表した一家HD<7127>が急伸し値上がり率トップとなっている。また、直近IPOのシンプレクスHD<4373>のほか、フルキャスト<4848>、経営統合直後で前週末に22年3月期の業績見通しを新たに公表したマツキヨココカラ<3088>などが値上がり率上位に並んでいる。そのほか、10月に入って緊急事態宣言が解除され、旅行予約数などが急増していることを受けて、JAL<9201>やANA<9202>、OLC<4661>、JR東<9020>、JR西<9021>、資生堂<4911>、アサヒ<2502>などのリオープン(経済活動再開)銘柄が軒並み高となっている。 セクターでは海運業、電気機器、ガラス・土石製品などが下落率上位となっている一方、空運業、鉱業、不動産業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の53%、対して値上がり銘柄は42%となっている。 週明けの日経平均は前週末のNYダウの大幅反発もむなしく、朝高後に急失速の展開となっている。中国での不動産業資金繰り問題や深刻な電力不足、世界的なインフレ懸念、米債務上限問題など、外部環境の不透明感が根強い。今月下旬からは主力企業の7-9月期決算が控えており、今週末にはその前哨戦に当たる安川電機<6506>の決算も控えているだけに、積極的に買える状況にはないことが、売り優勢の状況を生み出しているようだ。 ただ、前週からの日本株の急落の背景は、どうも外部環境の不透明感だけでは説明できない気がする。日経平均が、菅元首相の退陣表明を受けてからの上昇幅のほとんどを吐き出してしまってきていることを踏まえれば、8月末以降の日本株独歩高を生んできた「日本政治への期待」がはく落してしまったことが一つの要因と考えられる。 不人気だった菅元首相が退陣することで、落ち込んでいた自民党支持率が回復し、衆院選での与党大敗という最悪のシナリオが後退すること、加えて、日本政治への“変化”の期待が、海外投資家の日本株の見方を変え、これまでの上昇相場を創出してきた。 しかし、前週の自民党総裁選で、改革色が強く海外投資家から人気の高かった河野氏の劣勢が伝わった段階から、先物主導での売りが膨らんでいた。また、今年前半(2月半ば~8月下旬)の日本株の長い調整局面において、TOPIX先物を長らく売り越していたBofA証券(バンク・オブ・アメリカ)は、9月半ばまでの上昇相場においては大量にTOPIX先物を買い戻していたが、前週の日経平均急落局面では、一転して週を通して大量に売り越していた。 もちろん、同証券の背後には当然複数の顧客がおり、一連の手口が全て同じ筋によるものとはいえない。また、同証券の手口が日本株のすべてを左右するともいえない。しかし、少なくとも、日経平均やTOPIXなど、日本の代表的な株価指数の今年の動きと、同証券の手口の連動性はかなり高い。そのため、河野氏の敗北とBofA証券の手口から察するに、これまでの日本株上昇を生み出してきた大きな要因である、「日本政治への変化の期待」が大きく削がれてしまったと言わざるを得ないのではないだろうか。 各種メディアが、岸田新政権の布陣構成をみて派閥に配慮した論功行賞の人事だと批判を強めているが、こうしたニュースのヘッドラインを見ている海外投資家からすれば、変化への期待がはく落してしまったとしても不思議ではないだろう。今日の日本株の朝高後の急失速も、米国の債務上限問題など海外要因よりは、こうした日本政治に対する海外勢の見方の変化によるものと捉えた方が適切な気がしてならない。 今後、もし組閣後の自民党支持率が、菅元首相の退陣前と大きく変わっていないことなどが判明すると、株高期待の背景となっていた衆院選も、今後は再び上値抑制リスクとならざるを得ない。ここからの日本株の戻りは当面鈍いと想定しておいた方がよさそうだ。 さて、本日の香港ハンセン指数は寄り付き直後から大幅に下げている。時間外の米株価指数先物も軒並み軟調なため、後場の日経平均も戻りは鈍く、軟調な動きが続きそうだ。 <AK> 2021/10/04 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は5日続落、日本株再浮上への「試練」  日経平均は5日続落。590.83円安の28861.83円(出来高概算6億9000万株)で前場の取引を終えている。 9月30日の米株式市場でNYダウは大幅反落し、546ドル安となった。週間の失業保険申請件数が予想外に増加したほか、与野党が連邦債務の上限引き上げで合意できず、イエレン財務長官やパウエル連邦準備理事会(FRB)議長が深刻な事態をもたらすと再度警告したこともあって投資家心理が悪化。引けにかけて上下院が暫定予算案を可決して政府機関閉鎖が回避されたが、月末・四半期末の売りで一段安となった。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで217円安からスタート。日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では大企業・製造業の業況判断指数が市場予想を上回ったこともあり、朝方下げ渋る場面があったが、時間外取引でのNYダウ先物の下落とともに下げ幅を拡大し、一時28837.09円(615.57円安)まで下落した。 個別では、前日の引けにかけて日経平均採用に伴う買いが入った任天堂<7974>や村田製<6981>、それに川崎船<9107>やファーストリテ<9983>の下げが目立つ。公募増資実施を発表したSUMCO<3436>は4%近く下落し、その他売買代金上位も郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>など全般軟調。また、前日に経済活動の正常化や政策期待で買われた銘柄が急反落し、ポピンズHD<7358>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、売買代金上位ではレーザーテック<6920>と商船三井<9104>が逆行高。楽天グループ<4755>は楽天銀行の上場準備を発表し、東芝<6502>は米ファンドの保有株買い増しが報じられて買われている。また、大規模な自社株買い実施を発表したグリー<3632>はストップ高水準での買い気配が続いている。 セクターでは、その他製品、金属製品、卸売業などが下落率上位で、その他も全般軟調。上昇したのは鉱業のみだった。東証1部の値下がり銘柄は全体の89%、対して値上がり銘柄は8%となっている。 本日の日経平均は朝方下げ渋ったのち大きく値を崩し、取引時間中としては9月3日以来およそ1カ月ぶりに29000円を割り込んだ。東証1部銘柄の9割近くが下落する全面安の展開で、物色の矛先が向いているのは個別材料株の一角に限られる。米10年物国債利回りが1.5%割れまで下落し、朝方には新興株が買われる場面もあったが、結局マザーズ指数は伸び悩んでほぼ横ばい。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円ほどで、値幅が大きく出たとあって前日よりやや膨らんでいる。 さて、前日の当欄で日本株の投資スタンスを「強気」から「当面様子見」に修正した筆者だが、早々にこれほど値を崩すとまではさすがに想定していなかった。四半期末、それに日経平均の銘柄入れ替えという需給イベントを通過し、岸田文雄新総裁のもとでの自民党執行部の陣容も伝わっていたことから、むしろ本日は日経平均の29200~29300円あたりでの底堅さ発揮に期待する向きが多かったように見える。こうした期待はあっけなく裏切られてしまった。 米国ではひとまず暫定予算案が可決されたものの、なお債務上限問題が残っている。また、エネルギー価格高騰に伴いインフレへの警戒感がくすぶっており、サマーズ元財務長官などスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)に陥ることを懸念する声も上がる。不動産会社の資金繰り不安や電力不足に揺れる中国も景気減速懸念が拭えず、景気敏感色の強い日本株にとっては逆風となるのはやむを得ない。 但し、日本株にとっての「試練」はそれだけでないだろう。前日の当欄では、投資判断引き下げの理由として9月28日以降観測されているBofA証券の東証株価指数(TOPIX)先物売りを挙げた。30日の先物手口を見ると、BofA証券のみならずUBS証券、ゴールドマン・サックス証券といった多くの外資系証券でTOPIX先物売りが観測された。 政局が流動的になってから自民党総裁選までの間、海外情勢に多少の不安があっても、出遅れていた日本株のアウトパフォーム期待から海外勢の先物買いは根強く入っていた。それを踏まえると、足元でも経済正常化・政策期待で根強く買いを入れている現物株投資家と異なり、グローバルマクロ系を中心とした海外ファンド勢はやはり日本株のエクスポージャー(投資残高)を高める機運が後退してしまったように感じられる。これらは前日述べた日本の政治に「安定」より「変化」を求めた海外投資家だろう。 もちろん、日本株が再浮上の糸口をつかめるかどうかは岸田新政権の手腕次第となる。再配分重視を強調する点に眉をひそめる市場関係者もあるが、米国でバイデン民主党政権が誕生したように世界的な趨勢であり、米株の推移を見ても再配分施策そのものが決定的に株安要因となることはないだろう。ちなみに、これは競争政策重視の傾向が見られた菅政権と大きくスタンスが異なる点であり、前日に子育て・介護などの関連銘柄が大きく値を上げたのもうなずける。積極的な買い姿勢を維持している現物株投資家にとっては有望な投資機会となり得るだろう。 しかし、日本株全体として再び高値を目指していくためには、やはり日本経済の浮上に向けた「変化」が見られると海外投資家に受け止められる必要があるだろう。そうした背景から「当面様子見」の投資スタンスとしたい。 なお、本日から中国が国慶節休みに入り、中国本土市場や香港市場が休場となっている。今晩の米国では9月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が発表される予定。米株の動向を注視したいとの思惑から、後場の日経平均も戻りの鈍い展開となる可能性がある。(小林大純) <AK> 2021/10/01 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、海外勢が期待したのは「安定」か「変化」か  日経平均は4日続落。104.92円安の29439.37円(出来高概算6億4000万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でNYダウは反発し、90ドル高となった。長期金利の上昇がひとまず一服し、8月の中古住宅販売成約指数が予想以上に伸びたことも好感された。ただ、連邦政府の債務上限問題がくすぶるなか、引けにかけて上げ幅を縮小。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.2%の下落となり、マイクロン・テクノロジーの決算を受けてフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は1.5%の下落となった。米株がまちまちとなったことを受け、本日の日経平均は24円高と小高くスタート。しかし、半導体関連などの値がさ株や海運株を中心に売りが出て前場中ごろから弱含みの展開となり、香港株の反落スタートも重しとなって一時29311.34円(232.95円安)まで下落した。 個別では、郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株が揃って大幅安で、川崎船<9107>は10%の下落となっている。値がさ株ではレーザーテック<6920>が3%超下落し、日経平均への寄与が大きいソフトバンクG<9984>や東エレク<8035>も軟調ぶりが目立つ。系列販売会社での車検不正が判明したトヨタ自<7203>は3%近い下落。東京電力HD<9501>は柏崎刈羽原発を巡る報道を受けて売りがかさみ、グローブライ<7990>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、ファーストリテ<9983>が3%近く上昇し、新型コロナウイルスの治療用飲み薬について年内の承認申請を目指すと伝わった塩野義<4507>は5%超の上昇。キーエンス<6861>もしっかり。また、緊急事態宣言等が30日で終了することから、エアトリ<6191>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、輸送用機器、非鉄金属などが下落率上位。一方、陸運業、医薬品、空運業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の52%、対して値上がり銘柄は44%となっている。 本日の日経平均は4日続落し、3ケタの下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日同様に29300円台で下げ渋る動きを見せているものの、前引け時点で29400円台後半に位置する25日移動平均線をやや下回っている。個別では引き続き海運株や半導体関連株の調整がきつい。ネット証券売買代金ランキングを見ると、これらは個人投資家の物色人気が高かったため、資金余力に影響が出てくるかもしれない。比較的強い値動きだったトヨタ自が長めの陰線を付けて下落しているのも気になるところだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまり。 新興市場ではマザーズ指数が+0.14%と4日ぶり小幅反発。積極的に戻りを試す動きとはなりづらいようだが、前日も1100pt近辺で下げ渋り、600円超下落した日経平均と比べると底堅い印象を受けた。監視カメラシステムの有力スタートアップ企業として知られ、29日上場したセーフィー<4375>はここまで良好な値動き。やはりテック企業への期待は根強い。本日新規上場したアスタリスク<6522>は公開価格を74.5%上回る初値を付けた。 さて、岸田文雄氏が自民党新総裁に選出された。メディアでは国内外の市場関係者の声として「安定的な政権運営」に期待する声が多く出ている印象だ。ただ、筆者は菅義偉首相の退陣表明から「強気」としていた日本株への投資スタンスを「当面様子見」に修正したい。 注目したのは、28~29日と続けてBofA証券から東証株価指数(TOPIX)先物のまとまった売りが出ている点だ。ちょうど総裁選最終盤の情勢が伝わったタイミングだろう。もちろん米中を中心に海外情勢の不透明感が強まってきたことが影響している可能性もあるが、むしろ9月第3週(13~17日)まではBofA証券の積極的な買い越しが観測されていたため、海外実需筋の日本株に対する投資スタンスの変化を感じざるを得ない。 以前当欄で述べたとおり、外国人投資家は日経平均が2月高値を付けた2月15日週から8月23日週までの日経平均先物(短期筋が取引主体とみられる)の売り越し分を早々に買い戻していたが、TOPIX先物(実需筋が取引主体とみられる)についてはなお買い戻し余地が大きくあった。日経平均の株価純資産倍率(PBR)は足元1.2倍台半ばであり、2~4月には1.3倍を超える局面があったことから、水準訂正の一巡が意識されるタイミングでもないだろう。 菅首相の退陣表明からこれまでを振り返ると、後継レース序盤に河野太郎行政改革担当相が世論調査で先行すると、夜間取引中の先物にまとまった買いが入って相場上昇に弾みが付く場面があった。小泉政権誕生時の反応を見ても、海外投資家はとかく「改革派イメージの強いトップ」に期待する傾向がある。歯に衣着せぬ物言いで改革推進を訴え、世論支持率の高い河野氏に期待した海外投資家の買いは少なからず入っていただろう。短期的に失望売りが出ることは十分想定される。 もちろん、党内でのあつれきが多かったとみられる河野氏より、ベテラン議員を中心に支持を集めた岸田氏の方が安定的な政権運営が期待できるとの見方は妥当だし、足元の新型コロナ感染減による経済活動の正常化や衆院解散・総選挙に向けた経済対策にも期待できる。ただ、改めて強調するが日本株のトレンドはグローバルマクロ系を中心とした海外ファンド勢の先物売買に影響を受けやすい。これら海外投資家が「安定」と「変化」のどちらを期待したのか見極める必要があるだろう。差し当たり政権運営を支える当初支持率、それにリベラル色の強い宏池会(岸田派)出身の岸田氏がどのような政策を打ち出してくるか注目されそうだ。 なお、本日は引けにかけて日経平均の銘柄入れ替えに伴う売り需要(市場推計で5000億円程度)が発生するとみられている点にも注意しておきたい。(小林大純) <AK> 2021/09/30 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に3日続落、米株急落で連れ安も過度な悲観は不要  日経平均は大幅に3日続落。741.82円安の29442.14円(出来高概算7億4613万株)で前場の取引を終えている。 28日の米国市場でのNYダウは569.38ドル安(-1.63%)と大幅反落。9月消費者信頼感指数が予想外に悪化したことに加え、イエレン財務長官が政府機関閉鎖などのリスクを警告したことで投資家心理が悪化。米長期金利が6月中旬以来となる水準まで上昇したこともあり、ハイテク株を中心に売られ、景気敏感株もエネルギーや金融以外は大きく売られた。急ピッチでの金利上昇が嫌気されたナスダック総合指数は2.82%安、米フィラデルフィア半導体(SOX指数)は3.80%安と特に下げがきつかった。 本日の日経平均は、ほぼ全面安となった米国市場の流れを引き継いだほか、9月末の配当権利落ちで180円程の下げも加わり、572.04円安の29611.92円とギャップダウンでスタート。寄り付き直後は29600円前後でのもみ合いが続いていたが、前場中頃からは下げ幅を拡げはじめ、前引け近くには一時825.70円安の29358.26円まで下げる場面があった。 個別では、米ハイテク株安の急落を背景に東エレク<8035>、アドバンテス<6857>などの半導体関連株のほか、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>、キーエンス<6861>などの値がさ株を中心に急落しており、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、武田薬<4502>、日立<6501>、リクルートHD<6098>、村田製<6981>、ファナック<6954>など主力株も軒並み大幅に下落している。米長期金利が上昇している中ではあるが、三菱UFJ<8306>などの大手金融株も大幅安に。そのほか、政府が保有する株式の第3次売却を年内実施する方針と伝わった日本郵政<6178>、第1四半期が大幅減益決算となったハニーズHD<2792>などが大幅安となり、今期の成長鈍化見通しや減配計画が嫌気されたヒマラヤ<7514>は下落率2桁台の急落で、公募増資の実施を発表したヒューリック<3003>と共に値下がり率上位に並んだ。 一方、9月末での緊急事態宣言の全面解除が決まり、10月からの行動制限緩和の期待を背景に、エイチ・アイ・エス<9603>やエアトリ<6191>などの旅行関連が大幅高、ANA<9202>などの大手空運株も上昇し、JR東<9020>などの陸運大手、OLC<4661>などのレジャー関連も堅調。前日までの急落が目立っていた海運大手については、日本郵船<9101>が底堅く、川崎汽船<9107>は大幅な上昇となっている。 セクターでは精密機器、電気機器、保険業などが下落率上位となっている一方、空運業、海運業の2業種のみが上昇となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の87%、対して値上がり銘柄は9%となっている。 本日の日経平均は配当権利落ちに米株大幅安が加わり、急落している。午後からは自民党総裁選の投開票が控えていることもあり、様子見ムードが強く、積極的な押し目買いもみられない。 前日は、上院銀行委員会証言において、イエレン財務長官が、連邦債務が10月18日に上限に達する公算大だと指摘し、債務上限が引き上げられなければ金融危機やリセッションに直面する可能性を警告。加えて、米10年国債利回りが1.56%と6月中旬以来となる水準にまで上昇したこともあり、悪材料が重なった結果、ここ最近みられていた投資家心理の悪化に拍車がかかり、売りが膨らんだようだ。 そこに、配当権利落ちや明日に控える日経平均銘柄入れ替えに伴う売り需要という需給イベントへの警戒のほか、自民党総裁選の投開票という日本特有のイベントも重なり、本日の下落っぷりが演出されていると思われる。 ただ、過度な悲観は不要と考える。米連邦政府の債務上限引き上げ問題については、過去にも何度も表面化し、その度にマーケットに短期的な波乱をもたらしているが、政府機関のデフォルトなど国民を犠牲にするような最悪の事態を招くとは合理的には考えにくく、最終的には何らかの形で落ち着くことが想定される。長引くと更なる相場下押し圧力になりかねないが、中期的にはこの問題を要因にもたらされる下落は一過性のものにすぎないと思われる。 また、米長期金利の上昇については、上昇ペースが速いために警戒されるのは致し方ないが、水準としては3月に付けた1.78%にはまだ距離がある。 金利上昇の背景には、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利見通し引き上げなど、公表結果を受けた後の投資家の持ち高修正が続いているとの見方のほか、インフレ懸念の再燃が挙げられている。インフレ懸念については最近のイベントや要人発言によるところが大きい。米連邦準備制度理事会(FRB)は今までインフレは「一時的」としていたが、9月FOMCでは当局者のインフレ見通しが引き上げられたほか、28日の米上院議会証言では、パウエルFRB議長が「インフレは予想以上に大きく、長く続いている」と発言。さらに、様々な要因による需給ひっ迫からもたされた最近の欧州でのガス・電力価格の高騰や原油先物価格の高騰などが加わり、インフレ懸念が台頭しているという構図だ。 しかし、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は、米長期金利が急ピッチで上昇している間ほぼ横ばいで、市場のインフレ懸念がここ数日で一段と強まったとは言えなさそうだ。また、米長期金利の上昇についても、中長期的には更なる上昇は避けられないだろうが、短期的にはそろそろ一巡感が出てくる可能性がある。 3月につけたピーク以降の金利低下の背景としては、日本国内の機関投資家による債券買いが寄与したところが大きかったようだが、今回も国内機関投資家による買いが金利上昇を抑制する可能性がある。東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向によれば、年金基金などの機関投資家の動向を表すとされる信託銀行は、9月第2週(9月6~9月10日)に2100億円程、第3週(9月13~9月17日)に3700億円程それぞれ株式を現物で売り越している。政局流動化をきっかけに日経平均が急騰していたなか、リバランス売りを行っていたようだ。ここで、換金した余力分が、再び投資妙味を増してきた米国債に向かう可能性があり、そうなれば、金利上昇に一旦の歯止めがかかることが考えられる。 むろん、中国では不動産業の資金繰り問題や電力不足など問題が山積みだ。米国政治も短期的には更なる波乱もありうる。しかし、それでも、上述したように、米国の債務上限引き上げ問題や長期金利上昇を背景とした株価の急落が長く続くことは想定しにくい。 さて、午後の日経平均は自民党総裁選の投開票を控えて、引き続き本日の安値圏でのもみ合いとなりそうだ。決選投票になる可能性は高く、その場合は取引時間中に結果は確定しない。様子見ムードが強まるなか、仕掛け的な売りなども警戒されるが、慌てず対処していきたい。 <AK> 2021/09/29 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は続落、国内外・市場内外でイベントや懸案多い  日経平均は続落。100.41円安の30139.65円(出来高概算6億9000万株)で前場の取引を終えている。 週明け27日の米株式市場でNYダウは4日続伸し、71ドル高となった。米国の新型コロナウイルス感染者数の減少で経済活動再開への期待が高まった。8月の耐久財受注(速報値)が市場予想を上回ったほか、金利上昇や原油高もあって景気敏感株に買いが入った。ただ、ハイテク株には売りが出て、ナスダック総合指数は0.5%の下落。本日の東京市場でも値がさの半導体関連株などで売りが先行し、日経平均は97円安からスタート。また、本日は9月末の配当等の権利付き最終売買日となるが、権利落ちを前に海運株などで売りがかさみ、日経平均は朝方に一時30001.99円(238.07円安)まで下落する場面があった。ただ、ファーストリテ<9983>やソフトバンクG<9984>が堅調で、日経平均は3万円台を維持して前引けにかけて下げ渋った。 個別では、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株が揃って急落し、売買代金上位と下落率で東証1部上位に顔を出している。値がさ株ではレーザーテック<6920>が3%超下落し、キーエンス<6861>や任天堂<7974>、東エレク<8035>も軟調。あさひ<3333>は決算を嫌気した売りがかさみ、上場廃止に係る猶予期間入り銘柄となったグリーンズ<6547>はストップ安を付けている。一方、前述したファーストリテやソフトバンクG、それに東証株価指数(TOPIX)への寄与が大きい時価総額上位のトヨタ自<7203>やメガバンク株が堅調。原油高でINPEX<1605>は3%超上昇している。JR西<9021>など経済活動の正常化に期待のかかる銘柄も引き続き買い優勢。また、業績上方修正のジューテック<3157>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、その他製品、精密機器などが下落率上位。一方、鉱業、輸送用機器、銀行業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の66%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 本日の日経平均は朝方に下げ幅を200円超に広げる場面もあったが、そこから底堅さを発揮して3万円台を維持している。米長期金利の上昇による値がさグロース(成長)株の下落はある程度想定されただろうが、高配当利回りの海運株が権利落ちを前に大きく売られたのには意外感があるかもしれない。ただ、以前当欄でも述べたが、信用買い残の増加やネット証券での売買動向などを見ると、短期志向の個人投資家の買いもかなり入っている印象を受けた。荒い値動きとなる場面が出てくるのもやむを得ないだろう。一方、指数寄与の大きいファーストリテやソフトバンクG、それに時価総額上位銘柄の堅調ぶりには日本株の先高観の根強さが感じられる。トヨタ自は連日で取引時間中の上場来高値更新だ。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円強で、前日までと変わらぬペース。 新興市場ではマザーズ指数が-2.54%と大幅続落。やはり新興株でも米長期金利の上昇が重しとなっているが、直近安値を割り込む展開とはなっていない。本日は9月後半のIPO(新規株式公開)でもピークとなる4社が新規上場。ロボペイ<4374>はなお買い気配が続いているが、その他3社は公開価格を3割強上回る初値を付けた。いずれも小型のマザーズIPOだったものの、複数同時上場による投資資金の分散が初値を抑制したようだ。このところ「初値トレード」はまずまず活発だが、初値後軟調な銘柄も多かった。しかし、キャッシュレス決済システムのジィ・シィ企画<4073>は前引け時点でストップ高。明日は監視カメラシステムの有力スタートアップ企業として知られるセーフィー<4375>など2社が新規上場し、IPO銘柄の動向が一段と注目されそうだ。 ちなみにセーフィーは公募・売出し規模が252億円とマザーズIPOとしてはかなり大きかったが、同社指定の海外ファンドへの販売分を含め、公開株の68.4%が海外販売分となった。ブックビルディングでは海外投資家の需要が旺盛だったもよう。短期的に金利上昇などの上値抑え要因があるとはいえ、日本のテック企業に対する海外からの評価の高さは捨てたものではない。 さて、金融市場全体としては中国恒大集団に続く中国不動産会社の資金繰り問題の表面化、米国では長期金利の急ピッチの上昇に連邦政府の債務上限問題と、海外情勢に不透明感が残る。また、国内では明日29日に自民党総裁選の投開票が予定され、株式市場でも9月末の配当再投資需要の発生(市場推計で8000億円程度)、日経平均の銘柄入れ替えに伴う売り需要の発生(同5000億円程度)と需給イベントが相次ぐ。日本株は根強い先高観に支えられつつも、短期的に上下に振らされる場面が多く出てくるだろう。 このうち、米長期金利の動向を巡っては、今晩の米国でパウエル連邦準備理事会(FRB)議長やイエレン財務長官の議会証言、それに7年物国債の入札などが予定されているため、トレンドに変化が出てくるか注視したい。21~22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容がタカ派的と受け止められて金利水準の訂正が急速に進んでいるが、米国内外で懸念がくすぶるなか景気拡大期待が高まっているとも言えず、前日に一時上回った1.5%が目先の上限と予想する向きは多い。 中国不動産会社の債務問題を巡っては、中国人民銀行が「不動産市場の健全な発展を守る」と表明したことが安心感につながったようで、本日の香港ハンセン指数は大幅続伸している。後場の東京市場は香港株高を支えとしつつも、国内外の重要イベントを前に様子見ムードが強まる可能性がある。(小林大純) <AK> 2021/09/28 12:20 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、リスク要因くすぶるも株高に乗らざるを得ない投資家心理  日経平均は続伸。109.81円高の30358.62円(出来高概算6億7145万株)で前場の取引を終えている。 24日の米国市場でのNYダウは33.18ドル高(+0.09%)と小幅に3日続伸。中国恒大集団のドル建て社債利払いの行方に警戒感がくすぶり、寄り付き後に下落。しかし、世界金融市場への大きな波及は避けられるとの見方が根強く下値も限定的に。8月新築住宅販売件数が予想を上回ったことで景気回復期待も強まり、金融や消費サービス関連などの景気循環株を中心に買われた。一方、米10年国債利回りが約2カ月半ぶりに1.4%台半ばへと上昇するなかハイテク株の上値は抑えられたが、引けにかけては下げ渋り、ナスダック総合指数は0.03%安とほぼ変わらずとなった。 本日の日経平均は29.01円高の30277.82円と小高い水準でスタートすると、取引開始早々に165.80円高の30414.61円まで上値を伸ばした。29日投開票の自民党総裁選が近くづくなか次期政権への期待に加え、緊急事態宣言の9月末での全面解除への期待なども加わり、相場を後押しした。しかし、恒大集団にまつわる懸念は完全に払しょくされていないこともあり、戻り待ちの売りも強く、日経平均は一時マイナス圏に沈む場面もみられた。それでも、押し目買いから前引けにかけては再度上げ幅を拡げる動きとなった。 個別では、業績・配当予想を引き上げたノリタケ<5331>が一時ストップ高で、業績予想を上方修正した長野計器<7715>などと共に値上がり率上位に並んだ。9月の既存店売上高がプラスに転じたしまむら<8227>は約3カ月ぶりの水準にまで上昇。早ければ明日にも緊急事態宣言の解除の可否が決まることを受け、リオープン(経済活動再開)銘柄が軒並み高に。ANA<9202>などの空運大手、JR西<9021>などの陸運大手が大幅に上昇しているほか、エイチ・アイ・エス<9603>やエアトリ<6191>、オープンドア<3926>などの旅行関連が急騰している。そのほか、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、トヨタ<7203>、日立<6501>、OLC<4661>、JFE<5411>など主力処も買われており、米長期金利や原油先物価格の上昇を背景に三菱UFJ<8306>、INPEX<1605>なども大幅に上昇している。 一方、8月の月次売上が嫌気された神戸物産<3038>が急落。自民党総裁選の投開票が迫るなか、脱炭素の政策テーマとして買われてきたレノバ<9519>など再生可能エネルギー関連が利益確定売りに押されている。そのほか、商船三井<9104>などの海運大手の一角、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、日本電子<6951>などの半導体関連株が軟調。また、恒大集団の問題をきっかけに中国経済の減速懸念が高まるなか、中国での売上比率が高い銘柄にさえない動きが続いており、ダイキン<6367>や日ペHD<4612>、キーエンス<6861>、SMC<6273>などが大きく下落している。その他の主力では、村田製<6981>や太陽誘電<6976>、ニトリHD<9843>、KDDI<9433>、NTT<9432>などがさえない。 セクターでは鉱業、空運業、陸運業などが上昇率上位となっている一方、海運業、機械、倉庫・運輸関連業などが下落率上位に並んでいる。東証1部の値上がり銘柄は全体の44%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 週明けの日経平均はまずまずしっかりの展開となっている。中国恒大集団は23日期限到来のドル建て社債の利払いをまだ終えていないうえ、次のまとまった支払い期限は30日に来る予定ということで、今後も警戒感はくすぶる。 しかし、それでも、恒大集団の問題は世界の金融経済に影響を及ぼすようなシステミックなリスクには至らないという見方が依然として支配的。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)も無難に通過したことで目先の米中にまつわる不透明感は一時後退、再び国内へ視線が向きやすいなか、自民党総裁選の投開票が29日に迫り、大胆な経済対策など次期政権への期待が一層強まりやすい様子。加えて、10月からの国内での行動制限緩和が視野に入り、衆院選に向けた株高アノマリーに対する思惑なども踏まえると、ひとまずは相場上昇に賭けるしかないといったところが投資家の本音か。少なくとも、前週末にかけての日米株式相場の力強い反発を目の当たりにしてしまった以上、乗り遅れまいとする動きが強まってきていても不思議ではない。 一方、恒大集団に関する今後の展開のほか、債務上限の引き上げなど米国政治の行方など外部環境の不透明感は残る。また、足元では、経済活動再開に伴うエネルギー需要の高まりに加え、異常気象による工場生産の停止、サプライチェーン(供給網)の乱れなどが相まって、欧州でガスや卸電力価格が急騰しているほか、中国でも電力需給がひっ迫していることで新たな供給サイドのリスクが世界的に台頭してきている。場合によっては来月下旬から始まる7-9月期決算などへの影響も懸念される。相場は神経質ながらも目先は上目線でいるべきだろうが、リスク要因も日に日に増えてきている印象で、過度なレバレッジは取らずに常にリスクヘッジにも気を配った投資戦略が求められそうだ。 さて、本日は香港ハンセン指数などアジア市場も堅調に推移している。午後に緊急事態宣言解除に関するポジティブな報道などがあれば、日経平均は大引けにかけてもう一段騰勢を強める可能性があろう。 <AK> 2021/09/27 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反発、ひとまず不安後退も払しょくまでには至らず  日経平均は3日ぶり大幅反発。561.49円高の30200.89円(出来高概算7億3000万株)で前場の取引を終えている。 米株式市場ではNYダウが22日に338ドル高、23日に506ドル高と大きく上昇した。22日まで開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では、次回11月の量的緩和縮小(テーパリング)開始決定が示唆されたものの、想定内と受け止められて安心感が広がった。また、中国恒大集団の債務問題を巡っても、中国政府が目先のドル建て社債の債務不履行(デフォルト)を回避するように指示したと報じられ、不安がひとまず後退した。祝日明けの日経平均はこうした流れを引き継いで502円高からスタートし、3万円台を回復。寄り付き直後には一時30248.72円(609.32円高)まで上昇したが、中国恒大問題の影響を見極めたいとの思惑から上値では戻り待ちの売りが出て、堅調もみ合いの展開となった。 個別では、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株が揃って6~8%超の大幅上昇となっているほか、その他売買代金上位もソフトバンクG<9984>、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>など全般堅調。三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といったメガバンク株は米長期金利の上昇、日本製鉄<5401>は一部メディアの副社長インタビュー報道を受けて買いが入っているようだ。また、自己株式の消却を発表した国際紙パルプ商事<9274>、業績・配当予想を上方修正した古野電<6814>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、信越化<4063>やJR西<9021>は小安い。22日上場のシンプレクスHD<4373>は初日ストップ高水準で取引を終えたが、本日は一転売りに押され、井筒屋<8260>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、全33業種がプラスとなり、海運業、鉱業、鉄鋼、保険業、銀行業などが上昇率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の94%、対して値下がり銘柄は4%となっている。 本日の日経平均は祝日の間の海外株高を受けて大幅なギャップアップスタートとなり、3万円台を回復した。日足チャートでは30100円手前に位置する5日移動平均線を上回り、同線が下値をサポートする一方、日中上値追いというムードでもなく堅調もみ合いの様相。上下の値幅は140円弱となっている。個別、業種別騰落状況とも全面高の展開で、規模別指数にもさほど偏りは見られないが、米長期金利の上昇で海運業を中心とした景気敏感系のバリュー(割安)株が特に強い印象。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円弱とまずまず膨らんでおり、現物株に戻り待ちの売りが出ていることが窺える。 新興市場ではマザーズ指数が+2.63%と3日ぶり大幅反発。祝日前は株式相場全体の流れから軟調だったが、1120pt台に位置する25日移動平均線水準で粘り腰を見せ、出遅れていた個人投資家の押し目買い需要が強いことが再確認できた。また、22日から9月後半のIPO(新規株式公開)がスタートしており、本日マザーズ市場に上場したレナサイエンス<4889>は公開価格を46%上回る初値を付けた。シンプレクスHDが初日ストップ高を付けたことで、「初値トレード」が刺激されているのだろう。もっとも、初値後の値動きを見ると短期の値幅取りを狙った投資資金中心という印象は拭えず、初値に過熱感はないかなど慎重に見極めて取引参加する必要がありそうだ。 さて、注目のFOMCでは11月にもテーパリング開始を決定することが示唆され、参加者の政策金利見通し(ドットチャート)は2022年の利上げ予想が前回の7人から9人へ増加した。内容としてはタカ派的と受け止められたが、事前に早期緩和縮小への警戒感から米株式相場は大きく下落していたため、むしろヘッジ目的の売り解消を伴って急反発したようだ。また、株高・長期金利上昇(債券価格は下落)の一方で、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.3%近辺で落ち着いているところを見ると、インフレ過熱懸念に適切に対応していると前向きに評価する市場参加者が多いのかもしれない。 また、中国恒大問題では当局がドル建て社債を含めたデフォルト回避を指示し、当局もハードランディング(強行着陸)を望んでいないと受け止められているのだろう。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は「中国特有の問題」であり、「米国は直接の投融資が多くない」ため、影響は限られるとの見方を示した。ただ、本稿執筆時点ではなお23日分の利払いがなされていないと報じられており、懸念払しょくまでには至らなさそうだ。本日の香港市場では不動産株が軒並み下落しており、不動産バブル抑制のため当局による締め付けが続くことへの警戒感も根強いようだ。 ここ数日の先物手口を見ると、海外短期筋のものとみられる日経平均先物の売りが出ていた。地理的な近さから日本株も中国不安の影響を免れづらい。新政権への期待を背景とした根強い先高観に支えられつつも、改めて上値を試す展開となるには今しばらく時間がかかるかもしれない。(小林大純) <AK> 2021/09/24 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は続落、独歩高の展開から一転、安易な押し目買いは避けたい  日経平均は続落。174.29円安の29665.42円(出来高概算6億3362万株)で前場の取引を終えている。 21日の米国市場でのNYダウは50.63ドル安と4日続落。中国恒大集団の経営問題への懸念がくすぶるなか、米連邦公開市場委員会(FOMC)結果公表を明日に控えた警戒感から、ダウは上昇して始まったが結局下落に転じた。テスラやアップルなどのハイテク株の一角には押し目買いが入り、ナスダック総合指数は0.22%高と3日ぶりに反発したが上げ幅は限定的となった。 まちまちな反応のうえ戻りが限られた米国市場の動きを受けて、本日の日経平均は94.98円安の29744.73円でスタート。前日の急落後とあって自律反発狙いの買いから下げ渋る場面も見られたが、祝日を前に様子見ムードも強く、前場中頃には265.83円安の29573.88円まで下押しした。その後、押し目買いから急速に下げ幅を縮小し、一時は28.39円高の29868.10円と上昇に転じる場面もあったが、祝日を前に利益確定売りも出て、前引けにかけては改めて下げ幅を3桁に拡げた。 個別では、前日同様に資源関連株や中国経済との結びつきが強い銘柄を中心に厳しい売りが続いており三井物産<8031>、丸紅<8002>、日立建機<6305>、ファナック<6954>、オークマ<6103>など、商社、建機、機械関連などの主力株で大きく下げている銘柄が多い。また、リスクオフの円買いによる対ドルでの円高進行を受けて日産自<7201>やデンソー<6902>などの輸送用機器関連の一部も売られている。そのほか、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、アドバンテス<6857>などの半導体関連株もさえない。 一方、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの大手海運は押し目買いから反発。傘下の米地銀MUFGユニオンバンクの個人・中小企業部門を売却すると発表した三菱UFJ<8306>が大きく上昇しているほか、任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>、第一三共<4568>なども買われている。業績予想や配当予想を上方修正したアイホン<6718>、オーケストラ<6533>はそれぞれ急伸し、第1四半期(6-8月)が2桁増益となった日本オラクル<4716>などと並んで値上がり率上位に入っている。 セクターでは卸売業、機械、食料品などが下落率上位となっている一方、不動産業、海運業、鉱業などが上昇率上位に並んでいる。東証1部の値下がり銘柄は全体の78%、対して値上がり銘柄は17%となっている。 前日の660円安に続き、日経平均は本日も一時は3桁の値幅を伴った下落となっている。急速にクローズアップされてきた米中の不透明要因の存在が大きいのだろう。 中国恒大集団を巡る問題については、一部で中国版リーマンショックになるのではとの警戒する声がある一方、中国政府が何らかの形で手を差し伸べるとの見立てから、波乱には至らないとの見方が現状は支配的だ。しかし、中国恒大集団は、主力債権銀行少なくとも2行に対して20日期限の利払いを行わなかった。また、次に注目される支払い期限は23日とされており、前日に当たる今日この段階に至っても、まだ中国政府からはアクションがない。最終的には政府がどうにかしてくれるという楽観論に傾きすぎている市場の支配的なムードも含め、中国政府のだんまりにはやや不気味さを感じる。 最近、習近平政権は中国経済をけん引してきたテクノロジー企業などへの締め付けを強めているが、こうした背景には“共同富裕”という習政権が強く掲げている大きな目標がある。そして、この共同富裕を達成するにあたっては、格差拡大の大きな要因とされている不動産価格の上昇、これを是正することが喫緊の課題となっており、こうした動きが、今回の中国恒大集団の資金繰り悪化につながったとも指摘されている。 だとすれば、格差拡大の元凶の象徴のような存在にも見做されかねない中国恒大集団を果たして中国政府は救済してくれるのだろうか。もちろん、世界経済が混乱してショックが大きくならないよう、万が一の際には何かしらの形では出てくるかもしれないが、市場が思っている程までにそこまで優しく手を差し伸べてはくれないかもしれない。現状は、マーケットに大きなショックがもたらされる可能性は低いとみているが、中国政府が具体的に言動に出るなど、問題収束の兆しや全貌が見えてくるまでは、警戒感を強めておくに越したことはないだろう。 また、中国のことばかりがクローズアップされているが、米国にも注目すべき材料が目先豊富だ。まずは明日に結果公表を控えるFOMC。最新の米8月雇用統計の数値が予想外に悪かったこともあり、今回のFOMCでの量的緩和縮小(テーパリング)決定の可能性は一段と遠のいた。このため、波乱はないとの見方が主流だが、今回は政策金利見通し(ドットチャート)が公表されるため注目度は決して低くない。前回6月は参加者18人のうち7人が2022年中に利上げがあると見込み、3月時点の4人からかなり増えた。今回、22年の利上げを想定するメンバーが7人からどれだけ増えるかが注目されている。 サプライチェーン(供給網)の乱れなどを背景に世界的なインフレ懸念が根強くくすぶる一方、新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の拡大を受けて足元では世界的な景気不透明感が強まっている。こうしたなか、22年内の利上げを支持するメンバーが想定以上に増えるとなると、景気減速懸念が一層強まり、インフレと景気減速が併存するスタグフレーションへの警戒感が高まりかねない。市場が神経質になっている最中、波乱要因となりかねないため、一時的な相場下押しに用心しておきたい。 テーパリング決定に加えて、22年内の利上げ支持者が増える可能性も低いとみている向きが多いようだが、その根拠とされている米消費者物価指数(CPI)の伸び鈍化の一方で、一部の乱高下した品目を除いて計算したクリーブランド連銀公表の「刈り込み平均」指数についてはまだ明確な鈍化の兆しが見られていない。“一時的”ではなく“恒常的”なインフレにつながりかねない住宅価格や帰属家賃の上昇も鈍化していない。米バイデン政権はガソリン価格や食品価格の高騰を受けて、価格を不正につり上げていないか各業界への監視を強める動きなどもみせている。こうした政権への配慮などから、22年内の利上げ支持者が予想以上に増える可能性などもテールリスクとして注意しておきたい。 さらに、米国の債務上限引き上げを巡る問題。財務省はデフォルト(債務不履行)を回避するための特例措置が10月中に尽きる可能性を警告しており、債務上限の凍結は急務となっている。しかし、与野党の交渉はこう着状態にあり、解決の目途はたっていない。デフォルトなど誰にとっても最悪の事態でしかないため、過去の経験からみても最終的には解決するとは思われるが、こう着状態が無駄に長引くと、相場の売り口実とされかねないため、注意が必要だ。 8月30日以降、日経平均は目を見張る上昇っぷりを見せてきた。業績による裏付け、米国対比でのバリュエーション割安感など株高を根拠づける要因は多く、次期政権への期待に基づく先高観も依然根強い。中長期では良い買いだと私自身個人的にも思っている。ただ、上述した背景から、短期的には一段の下押しも想定されるため、米中の各種不透明要素に解消の兆しがみられるまでは、安易な押し目買いは控えた方がよいだろう。 <AK> 2021/09/22 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、中国恒大巡る欧米の楽観修正はやむを得ない  日経平均は大幅反落。601.48円安の29898.57円(出来高概算6億9000万株)で前場の取引を終えている。 日本の連休中、米株式市場ではNYダウが17日に166ドル安、20日に614ドル安と大きく下落した。中国恒大集団の経営危機が欧米経済や金融市場にも波及することが懸念され、連邦政府の債務上限問題や連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の縮小(テーパリング)への警戒感も広がった。また、主要株価指数が直近のトレンドを下抜けしたとの見方に、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が節目の20を上回ったことも重なり、システム的な売りに拍車がかかったとみられている。連休明けの日経平均はこうした流れを引き継いで478円安からスタート。寄り付き直後に一時29832.52円(667.53円安)まで下落すると、押し目買いが入って3万円台まで値を戻す場面もあったが、中国恒大問題の行方を見極めたいとの思惑から一段の戻りを試す動きは限られた。 個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が5%を超える下落。中国企業への投資リスクが改めて意識されたようだ。その他売買代金上位も郵船<9101>、レーザーテック<6920>、川崎船<9107>、商船三井<9104>、トヨタ自<7203>など全般軟調。日本製鉄<5401>とJFE<5411>が揃って4%前後下落し、TOTO<5332>なども中国経済の鈍化懸念から下げが目立つ。また、立会外分売の実施を発表したキャリアインデ<6538>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、英社と共同開発している抗がん剤の試験結果が良好と伝わった第一三共<4568>は7%超の上昇。緊急事態宣言の解除検討との報道でJAL<9201>などが買われ、業績上方修正の旭ダイヤ<6140>やダイセキS<1712>は東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、鉄鋼、機械、海運業などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、空運業、電気・ガス業、医薬品の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は7%となっている。 本日の日経平均は連休中の海外株安を受けて大幅なギャップダウンスタートを余儀なくされた。20日も中国恒大の株価急落が続き、香港株安が欧米市場にも伝播する格好となった。日本を含むアジア株は中国恒大問題が各種メディアでクローズアップされるようになった先週後半から不安定な値動きを示しつつあったが、欧米では地理的な遠さもあってか先週まで「当局がソフトランディングに導くべく救済に乗り出すのでは」「金融市場への影響は限られるだろう」という楽観的な見方が多く、市場反応もアジアほど見られなかった。しかし、負債3000億ドル(約33兆円)以上と言われる中国恒大の経営危機は中国内外の経済や金融市場に相応の影響があるとみられ、欧米投資家は楽観的過ぎた感がある。 本日の香港ハンセン指数は朝方の売りが一巡すると下げ渋っている。ひとまずリスクオフ的な動きに歯止めはかかるだろうが、中国恒大問題の行方を見極めるまで積極的に買いづらいとのムードは残るだろう。ここにきて事業面で中国の影響が大きい日本株への慎重論もやや増えてきた。実際、TOTOなどは先週後半からの下げがかなりきつい。日経平均が下値模索にまでは至らずも、戻りの鈍い展開となっていることはこうしたムードを如実に表しているだろう。 さらに、今週は23日も秋分の日の祝日となり、21~22日には日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)という重要イベントがある。自民党総裁選を前にした日本株の先高期待は根強く、中国恒大問題が浮上した先週後半も海外実需筋の東証株価指数(TOPIX)先物の買い戻しや出遅れていた個人投資家の押し目買いが入っていた。総裁選後も当面は新首相による政策期待が高まると考えれば、日本株の相対的な好パフォーマンスが続くと予想するが、短期的に不安定な相場展開となることにも十分備えておきたい。(小林大純) <AK> 2021/09/21 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反発、やはり海外勢の買い余地はなお大きい  日経平均は3日ぶり反発。161.77円高の30485.11円(出来高概算5億4000万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でNYダウは反落し、63ドル安となった。8月の小売売上高が市場予想に反して増加する一方、新規失業保険申請件数が増加したことなどから、景気敏感株を中心に売りが出た。ただ、NYダウは一時274ドル安まで下落したのち下げ渋った。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+0.13%と小じっかり。中国恒大集団の債務問題への懸念から前日軟調だった日経平均だが、本日は米国株の底堅い展開を受けて64円高からスタートした。また、自民党総裁選の告示で次期政権への期待が続いたほか、香港・上海株がひとまず反発したこともあり、日経平均は前場中ごろを過ぎると30506.58円(183.24円高)まで上昇する場面があった。 個別では、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株や、レーザーテック<6920>、エムスリー<2413>といった値がさハイテク株の一角で堅調ぶりが目立つ。ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、東エレク<8035>もしっかり。来年3月に水素発電所を稼働すると発表したイーレックス<9517>、自社株買い実施を発表したジョイ本田<3191>、決算が好感されたアスクル<2678>などが買われ、クロスキャット<2307>はストップ高を付けている。一方、転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行を発表した日本製鉄<5401>は6%の下落となり、サインポスト<3996>などとともに東証1部下落率上位にランクイン。JFE<5411>など他の鉄鋼株も軟調となっている。JR西<9021>やファーストリテ<9983>は小安い。 セクターでは、海運業、倉庫・運輸関連業、医薬品などが上昇率上位。一方、鉄鋼、非鉄金属、不動産業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の46%、対して値下がり銘柄は48%となっている。 本日の日経平均は反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。前日の米国株が底堅く、香港ハンセン指数なども小幅反発していることから、中国恒大問題への不安が幾分和らいだのだろう。市場では中国当局がソフトランディングに導くべく救済に乗り出すのでは、などと期待する声が聞かれた。もっとも、前日の下落分を完全に埋めきれないあたり、やはり警戒感はくすぶっているものと考えられる。産業界の引き締めを強める中国当局が民間企業の救済に乗り出すのでは示しがつかないし、負債3000億ドル(約33兆円)以上ともなれば中国内外の経済や金融市場に相応の影響があるだろう。特に日本は週明け20日が敬老の日で祝日となるため、この間の海外リスクを考えると買いの手が出にくい投資家も多そうだ。 売買代金上位は海運株や値がさグロース(成長)株の一角を中心に堅調な印象を受けるが、東証1部全体としては値下がり銘柄の方がやや多い。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱。新興市場ではマザーズ指数も+0.85%と3日ぶりに反発しているが、前日に-3.65%と大きく下落したことを踏まえれば、戻りは限定的と言わざるを得ない。 さて、日本取引所グループが16日発表した9月第2週(6日~10日)の投資主体別売買動向では、外国人投資家が現物株を2745億円、東証株価指数(TOPIX)先物を3642億円、日経平均先物を4520億円それぞれ買い越していた。3日の菅義偉首相の退陣表明をきっかけに、海外勢が次期政権への期待から日本株の積極投資に転じてきたことが改めて確認された。9月第1週(8月30日~9月3日)との合計では現物株が6400億円程度、TOPIX先物が4700億円程度、日経平均先物が6000億円弱の買い越しだ。 ただ、前日当欄で指摘したとおり、日経平均が2月高値を付けた2月15日週から8月23日週までに外国人投資家はTOPIX先物を1兆円強、日経平均先物を7000億円強売り越していた。短期筋中心とみられる日経平均先物の買い戻しは早々に進んだが、実需筋中心とみられるTOPIX先物はなお買い戻しの余地が大きいことがわかる。実際、ここ2日の相場下落局面でもBofA証券など外資系証券の一角が買い越しを継続していた。 また、前日からのマザーズ銘柄の値動きやネット証券での売買動向などを見ると、海外勢のみならず、急ピッチの相場上昇に乗り遅れた個人投資家らの押し目買い需要も根強いことが窺えた。中国恒大問題がくすぶることに加え、来週は日銀金融政策決定会合(21~22日)、米連邦公開市場委員会(FOMC、21~22日)といった重要イベントがある一方、20日と23日(秋分の日)が祝日で取引日が少ないことを念頭に置く必要があるものの、日本株の先高期待はなお強く、相場を下支えするだろう。(小林大純) <AK> 2021/09/17 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は続落、中国恒大問題は気掛かりだが…  日経平均は続落。179.07円安の30332.64円(出来高概算6億1000万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でNYダウは反発し、236ドル高となった。9月のNY連銀製造業景況指数が34.3と8月(18.3)から大きく改善し、原油先物相場の上昇も加わって景気敏感株を中心に買いが入った。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで94円高からスタート。ただ、寄り付き直後に一時30622.39円(110.68円高)まで上昇した後は上値が重く、マイナスへ転じた。中国恒大集団の債務問題への懸念から香港ハンセン指数が下落し、時間外取引のNYダウ先物もマイナス転換したことで、前場中ごろを過ぎると30308.69円(203.02円安)まで下落する場面があった。また、新興株の下げがきつく、マザーズ指数は-4.28%で前場を折り返した。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、東エレク<8035>、任天堂<7974>といった値がさ株の軟調ぶりが目立つ。郵船<9101>や商船三井<9104>は小安い。外資系証券の投資判断引き下げが観測されたディスコ<6146>は売りがかさみ、第1四半期が減益だったコーセル<6905>も急落。また、宮越HD<6620>は中国恒大集団を巡る不安が波及したとみられ、東証1部下落率上位に顔を出した。一方、川崎船<9107>、トヨタ自<7203>、ファーストリテ<9983>などは堅調。原油高で出光興産<5019>などが買われ、ユナイテド海<9110>など中小型海運株の物色も活発のようだ。また、特別配当実施を発表した日本空調<4658>が乾汽船<9308>などとともに東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、その他製品、証券、情報・通信業などが下落率上位。一方、石油・石炭製品、鉱業、食料品などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の72%、対して値上がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は米株高の流れを引き継いで反発スタートしたが、その後上値が重く、前場中ごろからは値を崩す格好となった。中国恒大の債務問題を巡っては、20日期限の利払いを行わない見込みと当局が銀行に伝えたと報じられている。中国では中秋節と国慶節の休暇(それぞれ9月19~21日、10月1~7日)が控えていることも、破綻処理への思惑を強めているもよう。負債は3000億ドル(約33兆円)以上に上るとされており、中国経済への影響が懸念されるばかりでなく、中国恒大株・債券を保有する海外投資家も多い。 マザーズ指数については1180pt近辺に位置する200日移動平均線水準まで急上昇してきたため、目先の利益確定の売りが出やすかったとの指摘もあるが、なかなかそれだけでは説明しづらい下げ方だろう。日本でも来週は20日(月)が敬老の日、23日(木)が春分の日で祝日となるため、この間の海外リスクを嫌った個人投資家に利益確定の売りが広がったと考えられる。ここまで大きく上昇してきた中小型株ほど本日の下げ幅は大きい。 中国恒大は債務整理や政府・銀行による救済、さもなくば倒産が不可避とみられており、中国内外の経済や金融市場にどのような影響を与えるか注視する必要があるだろう。もっとも、前場のネット証券売買代金ランキングを見ると、レーザーテックや郵船などが買い超となっている。やはり出遅れていた個人投資家の押し目買い需要は強いようだ。また、海外でも8月末以来の強い値動きに日本株への関心が広がっているという。前日は日経平均が反落したが、先物手口を見ると海外短期筋の利益確定とみられる売りが観測される一方、UBS証券、BofA証券、JPモルガン証券などが日経平均先物や東証株価指数(TOPIX)先物を買い越していた。 日経平均が2月高値を付けた2月15日週から8月23日週までの投資主体別売買動向を見ると、外国人投資家は現物株を2000億円弱、TOPIX先物を1兆円強、日経平均先物を7000億円強それぞれ売り越していた。グローバルマクロ系を中心とした海外ファンドが売り目線だったことが日本株伸び悩みの背景だったという当欄の見立てと整合的で、さらに言えばここからの買いの余地が大きいことがわかる。 また、10日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆2596億円と3週連続で減少し、約3カ月ぶりの低水準になったという。やはり2月高値以降の調整局面で積み上がっていた買い持ちの解消も順調に進んでいる。 今晩の米国では8月小売売上高の発表が予定されており、中国恒大問題も含め海外情勢に大きく左右される場面は出てきそうだ。ただ、明日17日には自民党総裁選が告示され、新政権への期待を支えに日本株への強気ムードは続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2021/09/16 12:26 ランチタイムコメント 日経平均は反落、週末にかけ短期警戒も過度な不安視は不要か  日経平均は反落。160.05円安の30510.05円(出来高概算6億0934万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でのNYダウは292.06ドル安(-0.84%)と反落。8月消費者物価指数(CPI)が予想を下回り、高インフレへの警戒感が後退した一方、景気減速懸念が強まり、米長期金利が低下するなか金融、建機、化学などを中心に景気敏感株が広く売られた。また、CPIの結果を受けて金融緩和の長期化が意識されたものの、ハイテク株も売りが優勢となり、ナスダック総合指数は0.45%安と5日続落した。 前日にバブル崩壊後の最高値を記録したばかりの日経平均は目先の目標達成感もあり、米株安や対ドルでの円高進行も背景に本日は205.93円安の30464.17円でスタート。取引開始直後は下げ渋って30500円台まで戻す場面も見られたが、上値は重く、その後はじりじりと下げ幅を拡げる展開となり、一時は30347.30円(322.80円安)まで下げた。ただ、前引けにかけては押し目買いが入り、再度下げ渋って30500円を回復している。 個別では、新株発行などを発表したタカショー<7590>、22年7月期最終利益が減益見込みとなったLink−U<4446>などが値下がり率上位となっている。また、上半期の低進捗率が嫌気されたエニグモ<3665>、第3四半期(5-7月)が引き続き大幅な赤字となったパーク24<4666>などが値下がり率上位に並んでいる。今期2度目となる業績予想の下方修正を発表したプロレド<7034>はストップ安売り気配となっている。主力どころでは、ソフトバンクG<9984>や三井ハイテク<6966>、リクルートHD<6098>、SUMCO<3436>などの売りがきつく、村田製<6981>や日本製鉄<5401>、昭和電工<4004>、HOYA<7741>、ベイカレント<6532>なども大きく下落している。そのほか、三井住友<8316>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>、トヨタ<7203>、JR西<9021>、東京海上<8766>なども軟調。 一方、第1四半期(5-7月)が想定以上の大幅増益となったヤーマン<6630>が一時ストップ高になるなどして値上がり率上位に踊り出ているほか、サインポスト<3996>が上昇率トップとなっている。また、業績および配当予想を増額修正した川西倉庫<9322>、第3四半期(5-7月)の大幅増益が好感されたギフト<9279>やMSOL<7033>も急伸している。主力では、川崎汽船<9107>を筆頭に商船三井<9104>などの大手海運株のほか、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連株などが堅調、エムスリー<2413>や日立造船<7004>は大幅に上昇している。そのほか、武田薬<4502>、富士フイルム<4901>、KDDI<9433>、7&iHD<3382>などが堅調に推移。 セクターでは鉄鋼や不動産、証券・商品先物取引業などを筆頭にほぼ全面安で、海運業のみが上昇している。東証1部の値下がり銘柄は全体の89%、対して値上がり銘柄は8%となっている。 本日の日経平均は久々に値幅の伴った下落となっている。ただ、前日までの上げ幅を踏まえれば、スピード調整はあっても当然のことで、想定内だろう。全体が売り優勢の中でも東エレクやアドバンテス<6857>などの半導体関連株やエムスリーなどのグロース株の一角では上昇しているものもある。商船三井などの大手海運も未だに右肩上がりのチャートが崩れていない。 ただ、やや気掛かりなのが、前週あたりから軟調に推移している米株式市場で、きな臭さがその濃厚さを増している。前週末に8月生産者物価指数(PPI)が発表された際には、インフレ懸念が改めて高まり、米国株はやや下落した。このため、今週の8月米消費者物価指数(CPI)の結果次第では、インフレ懸念がさらに強まり、長期金利の上昇などをきっかけに米国株の調整色がさらに強まる可能性なども想定された。 しかし、実際には前日に発表されたCPIの結果は杞憂に終わった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数の前年同月比での伸びは市場予想及び前回7月分を下回り、前月比でも7月からは伸びが鈍化した。 これを受けて、インフレ懸念が収まることで相場はポジティブに反応するとも思われたが、実際は、米10年国債利回りが大幅に低下したこともあり、景気敏感株を中心に大きく下げた。また、金融緩和長期化が意識されやすい流れであったとも思うが、ハイテク株も軟調で、ナスダック総合指数は5日続落した。NYダウもナスダックも日足チャートでの頭打ち感が見られ、調整色が強まっている印象を受ける。 ただし、こうした軟調な米株市場について過度に不安視することは不要かもしれない。東京市場では前週末に先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)を終えているが、米株市場では今週末にSQを控えている。SQにかけては、オプション取引が活発化することに加え、ディーラーのヘッジ目的の先物売りなどが嵩みやすいため、相場が崩れやすいことがこれまでにも確認されている。足元の米国株の軟調さの背景にはこうした需給特有の要因もあると考えられ、そうであれば、一過性の話に過ぎない。 しかし、いずれにせよ、ここまで急ピッチで上昇してきた日本株についても、短期的には今週末にかけては警戒しておいた方がよいだろう。上述したように、スピード調整が入りやすいタイミングで米国版SQが今週末に控えているほか、来週の国内市場は祝日の関係で立会が3営業日に限られる。連休前を口実にした利益確定売りなども出やすいため、短期的には下に振れそうだ。ただし、SQを通過すれば米国株も再び持ち直すことが想定されるほか、政局流動化をきっかけにした日本株の見直し機運は始まったばかりでもあるため、押したところは良い買い場になりそうだ。 <AK> 2021/09/15 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、新興株などにも見える「海外投資家の旺盛な買い意欲」  日経平均は3日続伸。115.05円高の30562.42円(出来高概算6億7000万株)で前場の取引を終えている。 週明け13日の米株式市場でNYダウは6日ぶりに反発し、261ドル高となった。下院民主党が法人税率を現行の21%から26.5%に引き上げることを提案したが、バイデン大統領が当初提示した28%を下回り、安心感が広がった。原油先物相場の上昇もあって、景気敏感株を中心に押し目買いが入った。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで137円高からスタートすると、寄り付き後も上げ幅を拡大。引き続き自民党総裁選を前に次期政権への期待が相場を押し上げ、前場中ごろを過ぎると日経平均は一時30795.78円(348.41円高)まで上昇して取引時間中の年初来高値を更新した。ただ、目先の達成感やここまでの大幅上昇による過熱感から上げ幅を急速に縮めて前場を折り返した。 個別では、日本郵船<9101>、レーザーテック<6920>、商船三井<9104>などが堅調で、川崎船<9107>は4%近く上昇している。公募株の受渡日となった昭電工<4004>は6%超、自社株買いを発表した東京海上<8766>は5%超の上昇。財務改善へ子会社株を一部売却するWSCOPE<6619>や決算発表の学情<2301>、業績上方修正のアークランド<9842>も大きく買われ、シンシア<7782>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、欧州でゲーム機「ニンテンドースイッチ」を値下げすると報じられた任天堂<7974>は2%近い下落。ソフトバンクG<9984>、JR西<9021>、キーエンス<6861>もさえない。また、神戸物産<3038>やHameeは<3134>は決算を受けて売りがかさみ、東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、保険業、石油・石炭製品、海運業などが上昇率上位。一方、その他製品、電気・ガス業、医薬品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の44%、対して値下がり銘柄は50%となっている。 本日の日経平均は米株高の流れを引き継いで続伸スタートすると、取引時間中の年初来高値を更新した。その後上げ幅を急速に縮めたが、さすがに目先の達成感や過熱感が意識され、海外短期筋などから株価指数先物の売りが出たのかもしれない。先物の日々の売買高は徐々に落ち着いた水準となってきており、まとまった売買が出れば相場全体が大きく振らされやすい状況だろう。アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が朝方軟調だったほか、今晩の米国では8月の消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、短期的な持ち高調整の動きがある可能性も考えられる。米CPIではインフレ圧力の強さが再確認されるか気になるところではある。 売買代金上位や業種別の騰落状況を見ると、市況関連を中心とした景気敏感株が堅調だが、決算や自社株買い、証券各社の投資判断を手掛かりにした個別物色が中心という印象も受ける。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりで、日経平均の高値更新に伴い現物株でも売り買いが交錯したと考えられる。新興市場ではマザーズ指数が-0.05%と3日ぶりに小幅反落。朝方の買いが一巡すると、利益確定の売りに上値を抑えられる格好となっている。ただ、今期3割超の増収見通しを示したビジョナル<4194>は大幅高だ。 さて、注目の自民党総裁選を巡っては、河野太郎規制改革相が石破茂元幹事長に協力を求め、石破は出馬見送りの意向を固めたなどと報じられている。日本経済新聞社とテレビ東京が9~11日に実施した世論調査では、自民党総裁に「ふさわしい人」で河野氏が27%、石破氏が17%、岸田文雄前政調会長が14%、高市早苗前総務相が7%という回答結果だった。自民党支持層では河野氏31%、石破氏13%、岸田氏17%、高市氏12%となっている。石破氏の支持を得られれば党員票では河野氏が抜け出る格好となりそうだが、岸田氏はベテラン議員ら、高市氏は保守系議員らを中心に支持を集めているもよう。今週17日の告示、また29日の投開票に向けて引き続き情勢を見極めたい。 もっとも、白熱する総裁選の行方をよそに日本株への関心は高まる一方のようだ。一部海外メディアは海外勢による日本株買いがアベノミクスへの期待が高まった2013年以来の高水準に達しそうだなどと報じているが、実際に証券各社では海外投資家から日本企業へのミーティング依頼がかなり増えているようだ。 筆者が主に調査を手掛ける新興株でも、HENNGE<4475>やBASE<4477>などに見られたように、このところ時価総額300~1000億円クラスのSaaS(クラウドサービス)・プラットフォーマー企業を中心に証券各社の調査開始や海外機関投資家の買いが多く観測されているように感じられる。また、IPO(新規株式公開)では22日東証1部上場のシンプレクス・HDが公開株の65%を海外売出しに充て、29日マザーズ上場のセーフィーも公開株の海外ファンドへの販売を予定している。新興IT株にも海外投資家の関心のすそ野が広がっていることがわかる。 今後も短期的に振らされる場面は出てくるかもしれないが、こうした海外投資家の旺盛な買い意欲を背景に、日本株はまだまだ強い値動きが続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2021/09/14 12:21 ランチタイムコメント 日経平均は反落、想定以上の底堅さみせる、短期警戒も上昇ポテンシャル大きい  日経平均は反落。89.00円安の30292.84円(出来高概算5億7319万株)で前場の取引を終えている。 10日の米株式市場でのNYダウは271.66ドル安(-0.78%)と5日続落。直近の下落からの押し目買いが強まり上昇して寄り付いたが、8月生産者物価指数(PPI)が予想を上回ったことで高インフレへの警戒感から売りに拍車がかかり下落に転じた。また、民主党が企業の自社株買いに対する課税案を検討しているとの報道や、2001年9月11日の同時多発テロから20周年を迎え地政学的リスクなども懸念され、引けにかけて下げ幅を拡大した。軟調な米株市場ではあったが、週明けの日経平均は9.82円安の30372.02円とほぼ変わらずでスタート。想定以上の底堅さを受けた押し目買いから即座に切り返すとプラスに転じ30434.46円まで上昇する場面も見られた。ただ、直近2週間での急騰で短期的な過熱感もくすぶり、利益確定売りも根強く、その後は前週末終値水準での一進一退となった。 個別では、追加の減産計画を発表したトヨタ<7203>、関連銘柄のデンソー<6902>やトヨタ紡織<3116>、アイシン<7259>などが大幅に下落。22年7月期が2桁減益見通しとなったシルバーライフ<9262>、第1四半期大幅増益も上方修正がなかったザッパラス<3770>、上半期2桁増益も5-7月期のモメンタム鈍化や上方修正がなかったアセンテック<3565>などがそれぞれ急落。そのほか、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、日本郵船<9101>、商船三井<9104>、NTT<9432>、KDDI<9433>、SBI<8473>、ホンダ<7267>などがさえない。 一方、、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の上昇も手伝い、東エレク<8035>、ルネサス<6723>、アドバンテス<6857>、SUMCO<3436>などの半導体関連株が堅調で、原油価格の上昇を背景にコスモエネHD<5021>やINPEX<1605>などが買われている。上半期大幅増益で今期2度目の通期上方修正を発表した三井ハイテク<6966>は急伸、業績予想を大幅に上方修正した石井表記<6336>、ファミリーマートが無人のコンビニエンスストア店舗を2024年度末までに約1000店出店するとの報道が刺激材料となったサインポスト<3996>はそれぞれストップ高買い気配となっている。また、1対4の株式分割を発表した大真空<6962>も大幅高に。そのほか、川崎汽船<9107>、キーエンス<6861>、信越化<4063>などが堅調。 セクターでは輸送用機器、パルプ・紙、証券・商品先物取引業などが下落率上位となった一方、石油・石炭製品、鉱業、銀行業などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の50%、対して値上がり銘柄は44%となっている。 週明けの日経平均は想定以上に底堅い展開。米国株や米国経済の見通しを引き下げる専門家が増え、前週末までの間にNYダウが5日続落するなど、足元の米株式市場は調整色を強めてきている。こうした中、急伸の反動から週明けの東京市場でも売りが優勢となる可能性が想定されたが、良い意味で予想を裏切ってくれている。自民党総裁選の告示が17日に迫るなか、各候補者のメディア露出も増えてきており、政局流動化という国内特有の政治要因が投資家心理を下支えている。 しかし、次期政権への期待感という漠然としたものだけが日本の株高を生んでいるわけではないだろう。もともと、多くの企業が業績好調な中、日本株だけが国内の様々な不透明要因を理由に投資対象から外されてきた。それが、新型コロナウイルスの感染ピークアウトとほぼ同時期の菅首相の自民党総裁選不出馬をきっかけに一気に解消された。不透明要素が拭われた結果、これまで見過ごされてきた好要因を素直に評価できる地合いになってきたということで、単なる期待感だけで上昇してきたわけではなく、ようやく正当な評価をされる環境になったということだろう。そうした意味で、足元の株高は、確かにペースは速かったが、ファンダメンタルズの裏付けのあるものといえ、危うさには乏しい。 また、9月第1週(8月30日~9月3日)の投資主体別売買動向を見ると、海外投資家は現物株を3636億円、日経平均先物で1434億円、東証株価指数(TOPIX)先物で1082億円と目立った買い越しの動きを見せていたが、値幅の割には小額な印象で、まだまだ買い余力はあるだろう。海外投資家は今年前半に先物を2兆円以上も売り越しており、先物の買い戻し余地だけでも大きく、現物株の新規買いなども合わせればポテンシャルは大きい。 先週末の日経平均およびTOPIXのPERはそれぞれ14.0倍、16.5倍と、米S&P500種株価指数の22.8倍と比べるとまだ割安感が強い。マスク着用を嫌う層の一定数の存在などもあり、ワクチン接種が先行していた米国では、デルタ株流行によって新型コロナ新規感染者数が再び増加してきている。対して、協調性を重要視する国民性もあり、日本でのワクチン接種率は今後、8割以上と欧米を大きく上回る水準にまで上昇する見込み。米国株のバリュエーションの割高感を指摘する声などが増えてきている状況も踏まえると、今後は、米国株から日本株への資金シフトも想定される。日本株の持たざるリスクが大きくなる中、日本株の先高観はより確かなものとなっていきそうだ。 ただし、不安要素が全くないわけではない。先日に続くトヨタの減産報道はかなりネガティブな印象が強い。前回は後半の挽回生産により通期生産計画は維持したままだったが、今回は通期計画も900万台と3%下方修正している。サプライチェーンの中枢を担う東南アジアでのコロナ感染拡大やワクチン接種の遅れは今後も警戒が必要だ。 また、米国株の調整がマイルドであれば、日本株の先高観は変わらないだろうが、仮に米国株の下げが大幅なものになると、さすがに、投資家のポジション調整の影響を免れないだろう。米国株の下げが健全なものにとどまるかどうかという点も一つ焦点となってきそうだ。9月は米国株が下げやすい季節性要因もあるだけに、注意したい。 さて、香港ハンセン指数が大きく下落しているなか新規材料難ということもあり、後場の日経平均は引き続きもみ合いにとどまりそうだ。国内では、ワクチン接種を2回済ませた人の割合が遂に5割を超えたとのことで、財務健全でファイナンスリスクの小さい外食やサービスといった出遅れ経済活動再開銘柄を仕込んでおきたいところだ。 <AK> 2021/09/13 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は反発、市場データに見る「先高観」と「需給良化」  日経平均は反発。339.22円高の30347.41円(出来高概算8億2000万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは4日続落し、151ドル安となった。マイクロソフトが従業員のオフィス復帰を無期限に延期したほか、航空各社が予約減少で先行きに慎重な見方を示したことから、新型コロナウイルス変異株の感染拡大による景気鈍化懸念が広がった。ただ、欧州中央銀行(ECB)が資産購入の縮小を発表したにもかかわらず、欧州株は全般に小じっかり。東京市場でも引き続き次期政権への期待が高いうえ、先物・オプション9月物の特別清算指数(SQ)算出に絡んだ買いが入り、日経平均は81円高からスタート。寄り付き後は利益確定の売りが出て上げ幅を縮める場面もあったが、前場中ごろを過ぎると香港株の反発などを追い風に急伸し、30378.24円(370.05円高)まで上昇する場面があった。なお、SQ値は概算で30085.93円となる見通し(新生銀<8303>をストップ高で計算)。 個別では、米半導体関連株がまずまず堅調だったこともあり、東エレク<8035>が12日続伸で上場来高値を大きく更新。一部証券会社の投資判断引き上げが観測されたルネサス<6723>は5%超の上昇となっている。その他ではレーザーテック<6920>が小高く、日経平均への寄与が大きいソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>はしっかり。政策期待の高いレノバ<9519>は連日で賑わい、大幅に7日続伸。また、SBI<8473>による株式公開買付け(TOB)が発表された新生銀はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、エーザイ<4523>が8%近い下落。米バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病治療薬について、当初見込みより販売ペースが遅いとのコメントが伝わっているようだ。また、Bガレジ<3180>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、証券、その他金融業、銀行業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのは電気・ガス業、医薬品の2業種のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の76%、対して値下がり銘柄は20%となっている。 本日の日経平均はSQ通過で伸び悩みを予想する声が多かったのに反し、前場中ごろを過ぎて急伸する展開となった。SQ推計値を大きく上回り、取引時間中としては3月18日以来の高値を付けている。東証1部の値上がり銘柄は全体の7割強あるが、特に値がさの半導体関連株の上昇が日経平均の押し上げに寄与。東エレクの12連騰は圧巻と言わざるを得ない。再生可能エネルギー発電のレノバなど、政策期待での物色も引き続き活発だ。ここまでの東証1部売買代金はSQ算出に絡んだ売買もあって2兆2000億円あまりに膨らんでいる。 新興市場でもマザーズ指数が+1.47%と反発。投資判断の新規付与が観測されたBASE<4477>、海外勢の買い観測で前日取り上げたHENNGE<4475>などが賑わっている。足元で9月IPO(新規株式公開)のブックビルディング(需要申告)が進行しているが、その需要状況からは日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する海外からの期待の根強さが窺える。 さて、本日は河野太郎規制改革相が午後4時から記者会見で自民党総裁選への出馬を表明する予定となっている。各種報道によれば、前日には所属する麻生派会長の麻生太郎副総理・財務相から出馬への了承を取り付けたもようだ。既に出馬表明した岸田文雄前政調会長や高市早苗前総務相とともに、党内での支持集めや政策論争といった動きが本格化してきそうだ。 市場関係者からはここまでの急ピッチの株価上昇に警戒する声も多いが、次期政権への期待を背景とした先高感の高さや買い方優位での需給良化は市場データからも窺える。日経平均オプション10月物の建玉を見ると、行使価格3万円超のコール(買う権利)が大きく積み上がっているのに対し、プット(売る権利)の積み上がりは鈍い。特に行使価格3万円に次いで30500円のコールの建玉が膨らんでおり、このあたりまでの上昇を視野に入れている市場参加者は多いのだろう。 また、買い持ちに傾いていた投資家の利益確定も順調に進んでいるとみられる。菅義偉首相が退陣表明した3日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆2766億円と2週連続の減少。ネット証券売買代金ランキングでは、日経平均の上昇に連動する形で日経レバETF<1570>が売り超となり、今月初めまで4000億円規模で推移していた純資産総額は9日時点で3016億円まで減少した。 9月第1週(8月30日~9月3日)の投資主体別売買動向を見ると、やはり外国人投資家が現物株で3636億円、日経平均先物で1434億円、東証株価指数(TOPIX)先物で1082億円と目立った買い越しの動きを見せてきた。しかし、マクロ系ファンドを中心とした海外勢の株価指数先物のポジションはなお買い持ちの余地が大きいとの指摘もある。こうした市場データを見ても、まだまだ日本株への強気のスタンスを維持できると考えてよいだろう。(小林大純) <AK> 2021/09/10 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は9日ぶり反落、スピード調整も次期政権睨みの先高観変わらず  日経平均は9日ぶり反落。139.88円安の30041.33円(出来高概算6億2000万株)で前場の取引を終えている。 8日の欧州株式市場では、9日の欧州中央銀行(ECB)理事会を前に金融緩和縮小の観測が広がり、主要株価指数が揃って軟調だった。米株式市場でも、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が「年内に資産購入のペースを下げ始めることが適切」などと発言したほか、地区連銀経済報告(ベージュブック)で景気回復ぺースがやや鈍化したことが明らかになり、NYダウは68ドル安と3日続落した。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで222円安からスタート。ただ、寄り付きを安値に下げ渋り、3万円近辺でもみ合う展開となった。前日までの8日続伸で2500円超上昇しただけに短期的な過熱感が意識される一方、自民党総裁選に向けた次期政権への期待が相場を下支えした。 個別では、前日にかけて大きく買われていたソフトバンクG<9984>が5日ぶり反落。高値更新基調だったレーザーテック<6920>も4%近い下落となっている。任天堂<7974>、キーエンス<6861>、トヨタ自<7203>は小安い。公募・売出価格が決まった日電子<6951>、公募・売出株の受渡日となるコロワイド<7616>も売り優勢。また、ヤクルト<2267>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、東京電力HD<9501>が商いを伴って11%超の大幅上昇。自民党総裁選への出馬が見込まれる河野太郎規制改革担当相が安全な原発の稼働を容認する姿勢を示し、警戒感が後退したようだ。ただ、再生可能エネルギー発電のレノバ<9519>も引き続き賑わっている。郵船<9101>、商船三井<9104>、東エレク<8035>は小じっかり。また、決算発表のミライアル<4238>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、空運業、ゴム製品、機械などが下落率上位。一方、電気・ガス業、食料品、海運業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は31%となっている。 本日の日経平均は9日ぶりに反落し、3ケタの下落で前場を折り返した。ただ、寄り付きがこの日の安値で、日足チャートでは連日の陽線。また、前引けでは3万円台を維持しており、前日までの上昇幅の大きさを踏まえれば調整らしい調整とはなっていない。個別ではソフトバンクGやレーザーテックに利益確定売りが出ているものの、東京電力HDやレノバの賑わいからは、引き続き自民党総裁選の有力候補と目される河野氏の動向が物色を刺激していることがわかる。東京など19都道府県の緊急事態宣言が30日まで延長される見通しとなり、JAL<9201>で劣後ローンでの資金調達観測が報じられる一方、酒類提供などの制限緩和への期待も根強く、経済活動再開に絡んだ銘柄は強弱まちまち。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりで、前日までと比べやや落ち着いてきた感はある。 新興市場ではマザーズ指数が-0.35%と4日ぶり反落。やはりここまで上昇ピッチが急だった銘柄を中心に利益確定売りが出ているが、売買代金トップのHENNGE<4475>などは堅調で、マザーズ指数はプラス圏に浮上する場面もあった。HENNGEはこのところ海外運用会社から大量保有報告書が相次ぎ出ており、新興IT株への海外勢の買いも期待されるところだろう。 さて、買い持ちに傾いていた現物株投資家の利益確定売りや年金基金等からの株価急伸に伴うリバランス(資産配分の再調整)目的の売り、それに株価指数先物の売り持ちを膨らませていたマクロ系ファンド等の海外勢の買い戻し一服もあって、日経平均の3万円近辺でのスピード調整はやむを得ないだろう。また、ECB理事会を前に欧州株の下げが目立ったように、主要中央銀行による資産購入の縮小やマネーサプライ(通貨供給量)の伸び鈍化が意識され、米国では景気減速やインフレが懸念されるなど、グローバルなリスク要因もある。 ただ、一昨日の当欄で述べたとおり、自民党総裁選の有力候補と目される「河野氏による規制改革」というストーリーのもと、海外勢の日本株買いが相場を押し上げるとの見方は変わらない。実際、ゴールドマン・サックス証券はどの候補が勝利しても日本株の一段高を見込むものの、「河野太郎氏が最もマーケットから好感される可能性が高い」と指摘。SMBC日興証券も「自民党支持層を中心に支持率が高い河野太郎・規制改革相にやや分があると言え」、「改革イメージの強さが海外からの資金流入の呼び水になるだろう」などと指摘している。 もちろん、河野氏は正式な出馬表明前(10日にも出馬表明との観測)であり、既に出馬表明した岸田文雄前政調会長や高市早苗前総務相を含む各候補が支持集めに奔走するなか、断定的な判断は避けるべきだろう。しかし、株式市場は早々に「有力候補による次期政権」を織り込んでいく。(小林大純) <AK> 2021/09/09 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は8日続伸、買い戻し主体から全員参加型の買い相場へ  日経平均は8日続伸。245.71円高の30161.85円(出来高概算6億2990万株)で前場の取引を終えている。 連休明け7日の米株式市場でのNYダウは269.09ドル安(-0.76%)と続落。先週発表された8月雇用統計が予想を大幅に下回ったことで景気回復ペースの減速が警戒されるなか、新型コロナウイルスのデルタ株による経済への影響や財政支援の終了でエコノミストが成長予測を引き下げたこともあり、ダウは終日軟調に推移。一方、米長期金利は1.3%台後半へと上昇する中ではあったが、ハイテク株の買いは続き、ナスダック総合指数は連日史上最高値を更新した。ダウの下落を受けて本日の日経平均は96.59円安の29819.55円でスタート。ただ、米ハイテク株高や根強い次期政権による経済対策への期待から買い優勢の地合いは継続しており、即座に切り返してプラス圏に浮上。断続的に買いが入り前場中頃には3万を回復、その後も上げ幅を拡げる動きが続いた。 個別では、前日にドイツテレコムと長期戦略的パートナーシップおよびTモバイル株に関する株式交換に合意したと発表したソフトバンクG<9984>が連日の急伸劇を見せている。上半期業績は大幅な上振れ着地となったCasa<7196>、業績予想を上方修正した長大<9624>、自社株買いを発表したライドオンE<6082>などもそれぞれ大幅に上昇。前日が公募の払込期日だったケイアイスター<3465>は需給悪化懸念の後退で大幅反発。そのほか、次期首相候補を睨んだ物色が引き続き旺盛で、脱炭素関連のレノバ<9519>が連日の急伸、新興市場では、米アマゾンと三菱商事<8058>の太陽光発電設備の開発受託に関する報道を受けてウエストHD<1407>が急騰している。 主力株では、レーザーテック<6920>が大幅高で上場来高値を更新し、これに刺激を受けたかアドバンテスト<6857>も大幅高。米長期金利の上昇を背景に三菱UFJ<8306>などの大手金融株もしっかり。そのほか、ベイカレント<6532>が大幅に上昇し、米バイオ製薬ノババックス製ワクチンの国内での生産・供給を担う武田薬<4502>や、東エレク<8035>、JR東<9020>、塩野義<4507>、リクルートHD<6098>、資生堂<4911>、第一三共<4568>、HOYA<7741>などが堅調。 一方、非公開化が正式発表されTOB(株式公開買い付け)価格にサヤ寄せする動きとなったNIPPO<1881>が大きく下落。エルサルバドルで世界で初めて法定通貨となったビットコイン価格が、同国でのシステムトラブルで急落したことを背景にマネックスG<8698>が大幅に下落した。そのほか、日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの大手海運株、一昨日に日経平均に新たに採用されることが発表された任天堂<7974>や村田製<6981>、投資判断の格下げが観測されたJFE<5411>などが軟調。 セクターでは、情報・通信業、銀行業、電気・ガス業などが上昇率上位となった一方、その他製品、海運業、水産・農林業などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 前日に一時3万円に乗せたものの、その後に上値の重さも見られた日経平均は、本日はしっかりと3万円に乗せてきている。これまでの短期間での上げ幅や前日の一服感で、今週末の先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)を前にした海外勢による買い戻しは一巡し、スピード調整が入りそうとの声も多く聞かれたが、買いの意欲はまだまだ旺盛のようだ。 8月30日以降の上昇相場の前半は、先物主導での上昇だったことから、年前半に2兆円以上も先物で売り越しを積み上げてきた海外勢による買い戻しが主体だったと思われる。しかし、ここにきて、現物株市場での日経平均が先物の価格を一時上回る動きを見せてきていることから、実需筋の買いも入ってきているようだ。こうなってくると、売りは一層仕掛けづらく、買い手優位の相場が色濃くなってきた。 さらに、ここに、個人投資家の踏み上げが加わっているようだ。8月27日からの動向をみると、日経レバETF<1570>の信用買い残が大きく減少するなか売り残が急速に積み上がっている。また、日経ダブルインバETF<1357>では売り残が大きく減少するなか、買い残が2倍以上に膨れ上がっている。日経平均が急伸するなかで逆バリ目線の個人が日経平均の下げに賭けたポジションを取ってきたことで、足元の上昇により踏み上げられてしまっているようだ。 上昇初期はグローバルマクロ系のヘッジファンドの買いが商品投資顧問(CTA)の買いを呼ぶ海外勢主体の展開だったが、ここにきて実需筋の買いが入ってきはじめた。そして、そこに更に個人の踏み上げも加わり、株価上昇に拍車がかかってきている。売り方に回っていた個人が今後買いに回ってくるとなれば、全員参加型の買い相場となり、日経平均の一段の上昇も想定される。 物色動向では、米長期金利がじわり上昇するなか対ドルでの円安が進展し、自動車や電気機器などの輸出関連の大型株が特に強い様子。一方、国内での新型コロナウイルス新規感染者数の減少傾向や、一部で伝わっている政府によるワクチン接種進展に合わせた、10月以降の段階的な行動制限緩和を睨んだ動きから、再び旅行関連をはじめとしたアフターコロナ関連銘柄も強い動きとなっている。これまで、欧米対比での割安感が長らく放置されてきたが、日本株の追い上げ相場に今後も期待したい。 短期的な過熱感もくすぶるところだが、買い遅れた投資家も多く、押しても小幅なものになりそうだ。後場の日経平均は3万円台を固める動きに期待したい。 <AK> 2021/09/08 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は7日続伸、ストーリー出現で潮目は変わった  日経平均は7日続伸。235.03円高の29894.92円(出来高概算6億3000万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場はレーバーデーの祝日で休場だったが、欧州市場では主要株価指数が全般堅調だった。また、東京市場では先週末の菅義偉首相の退陣表明を受けて次期政権への期待が高まっており、本日の日経平均は224円高からスタート。朝方には一時30048.23円(388.34円高)まで上昇し、取引時間中としては4月9日以来およそ5か月ぶりに3万円台を回復する場面があった。ただ、ここまでの急ピッチの上昇だったこともあり、節目の3万円に乗せた後は利益確定の売りが出て上値を抑えた。 個別では、ソフトバンクG<9984>が売買代金トップで5%超の上昇。5月以降軟調な展開が続いたが、日経平均の大台回復もあってインデックス買いが入っているとの見方がある。日経平均への採用が発表された村田製<6981>やキーエンス<6861>も大きく上昇し、任天堂<7974>はしっかり。トヨタ自<7203>は1万円台を回復する場面があった。レノバ<9519>などは引き続き政策期待で活況。また、決算が好感されたACCESS<4813>やアイル<3854>は東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株が軟調。OLC<4661>は2%超下落しているが、日経平均に採用されなかったことで売りが出ているようだ。また、除外銘柄となった洋缶HD<5901>や日清紡HD<3105>は東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、倉庫・運輸関連業、空運業、陸運業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。一方、海運業、金属製品、パルプ・紙の3業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 本日の日経平均は7連騰し、200円を超える上昇で前場を折り返した。8月27日終値からここまでの上昇幅は2200円を超える。朝方にはおよそ5か月ぶりに3万円台を回復する場面があり、東証株価指数(TOPIX)に至っては既にバブル崩壊後の高値を連日で更新する勢いだ。個別では、日経平均への寄与が大きいソフトバンクGがインデックス買いを交えてリバウンドを試す展開となっており、新規採用に絡んで村田製やキーエンスも高い。再生可能エネルギー発電を手掛けるレノバなどは前日の急伸で利益確定売りが出つつも、なお堅調に推移している。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりで、やはり終日で3兆円に乗せるペースだろう。新興市場ではマザーズ指数が+1.10%と続伸している。 さて、筆者は3月以来、「日経平均の緩やかな上値切り下げトレンド」を予想するなど慎重姿勢を示していたが、先週末3日の後場を境に明確にトレンドが変わったと述べておきたい。こうして記述が遅くなったことは担当曜日の都合のためご容赦頂きたい。 2日の当欄「パウエルラリーの続きを日本株で」で述べたとおり、8月31日にかけて相次いだ観測報道を受けて、高値警戒感がくすぶる米国株から政局が流動化しつつあった日本株に軸足を移したうえで、緩和マネーによるラリー継続を期待する向きはあった。筆者は「政権筋」とする各種報道に懐疑的だったが、結果的にこれが9月3日の菅首相の退陣表明につながるとまではさすがに考えていなかった。 これ以降、17日告示・29日投開票の自民党総裁選に向けて立候補を模索する各候補の動きが一段と活発化し、株式市場でも大きな投資論点となっている。しかし、特に市場が注目しているのは、菅首相の退陣表明で出馬の意向を明確にした現職閣僚の河野太郎規制改革相だろう。週明け6日の取引では再エネ関連銘柄や脱ハンコ(電子契約)関連銘柄が急動意を見せる一方、原発政策の不透明感から電力各社の下げが目立ったが、いずれも河野氏の過去の発言や取り組みに沿ったものだ。また、日経平均先物が夜間取引で3万円台に乗せた場面では、石破茂元幹事長が河野氏の支援を検討しているとの報道が観測された。 政局とは「一寸先は暗黒」のため断定的な判断は避けたいが、共同通信が4~5日に実施した世論調査で次の総理に「誰がふさわしいか」聞いたところ、河野氏が31.9%でトップに立った。安倍晋三前首相の退陣時と違い、早々に派閥単位で有力候補の支持を打ち出す動きが見られないなか、世論調査で先行する河野氏が有利との見方は妥当なように思われる。 ここ数日、夜間取引での日経平均先物の強い動きが目立ち、昨晩も30200円まで上昇する場面があった。これまで売り持ちに傾いていた海外投資家が多かっただけに急速な買い戻しによるものとの見方が多いが、売買高を大きく膨らませての急伸劇は海外勢が買い持ちに傾いてきた証左と考えた方がいいだろう。規制改革に意欲を見せる河野氏は海外から高く評価されやすいタイプに映る。 一方、これまで当欄で指摘してきたとおり現物株投資家はかなり買い持ちに傾いていたし、株価急伸に伴い年金基金等からはリバランス(資産配分の再調整)目的の売りが出るだろう。日中の現物株指数が夜間の先物ほど上昇しないのは、こうした売りが上値を抑えているからと考えられる。しかし、過去のデータを見ても株式相場全体の方向感を決定づけるのは海外勢だ。総裁選を巡る情勢を注視しつつも、当面は「河野氏による規制改革」というストーリーのもと、海外勢の日本株買いが相場を押し上げる展開となる可能性はあるだろう。(小林大純) <AK> 2021/09/07 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に6日続伸、日本株の水準訂正継続、買い戻しに押し目買い加わり底堅い展開  日経平均は大幅に6日続伸。510.06円高の29638.17円(出来高概算6億2488万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でのNYダウは74.73ドル安(-0.21%)と小幅に反落。8月雇用統計の非農業部門雇用者数の伸びは前月比23.5万人増と市場予想の72.5万人を大幅に下回った。景気回復ペースの減速を警戒した売りが広がり、ダウは終日軟調に推移。一方、量的緩和縮小(テーパリング)の開始が遠のくなど、金融緩和長期化への思惑からハイテク株買いは根強く、ナスダック総合指数は連日史上最高値を更新して終了した。まちまちな米株市場ではあったが、東京市場では、国内での政局流動化を受けた政策期待が続いており、本日の日経平均は373.11円高の29501.22円とギャップアップでスタート。取引開始後まもなく29600円を超えると、一時は利益確定売りで伸び悩んだものの、継続する買い戻しや旺盛な押し目買いのもと高値圏での推移が続いた。 個別では、出資先企業が第三者割当増資を実施すると発表したgumi<3903>が急騰し、先日の大幅増配が引き続き材料視された明和産業<8103>と並んで値上がり率上位に並んでいる。また、今期大幅増益見通しを示した日駐<2353>も大幅に上昇。主力どころでは、商船三井<9104>や日本郵船<9101>などの大手海運株が急伸で直近高値を更新。自民党総裁選での政策討議活発化を睨んで、再生可能エネルギー関連株が再び動意づいており、レノバ<9519>、テスHD<5074>、イーレックス<9517>、新興市場ではウエストHD<1407>などが急伸している。 また、JFE<5411>や日本製鉄<5401>などの大手鉄鋼株、菅首相の実質的な退陣を受けて携帯産業の改革後退などの思惑から、NTT<9432>、KDDI<9433>などの大手通信株が大幅高となっている。そのほか、株式市場の売買活発化を受けて野村<8604>が大幅続伸で売買代金上位に入っている。 一方、プライム市場上場維持基準への適合に向けた社長による株式売出が発表されたクロスマーケ<3675>、通期計画を上方修正も第2四半期(5-7月)実績を含め物足りないと捉えられたポールHD<3657>などがそれぞれ急落。投資ファンドによる株式買い増しなどの思惑で前週に賑わっていた東京機<6335>は利益確定売りで値下がり率上位に入っている。 セクターでは、海運業、証券・商品先物取引業、情報・通信業などが上昇率上位となった一方、電気・ガス、鉱業、パルプ・紙などが下落率上位に並んだ。東証1部の値上がり銘柄は全体の58%、対して値下がり銘柄は36%となっている。日経平均の前週からの急伸劇は今週も継続している。日経平均は日足一目均衡表で雲を大きく上放れ、三役好転の買い手優位の状態に一気に転換。遅行線の強気シグナルも増大しており、騰勢は当面維持されそうだ。本日の大幅高で、日経平均の直近6日間の上げ幅は2000円近い。大台の3万円も視野に入るなか、さすがに短期的な過熱感も漂うところではあるが、上昇をけん引してきた日経平均先物には本日も買い戻しが断続的に入っている様子。 海外勢は今年、先物では大幅な売り越しポジションにあり、まだまだ買い戻しは始まったばかりと思われる。今週末には先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)が控えており、売り方による買い戻しの進展を想定すれば、目先的な利益確定売りが入っても底堅く推移しそうだ。また、前週からの急ピッチでの上昇に付いていけていない投資家も多いとみられ、下げた局面ではすかさず押し目買いが入りそうだ。実際、午前はそうした動きが見られている。 もともと史上最高値更新を続ける米国株などに対して日本株だけ出遅れ感が著しかった。主力企業の4-6月期決算は好調で通期計画の上方修正も例年に比して多かった。アナリストの業績上方修正も増え、今期予想EPS(一株当たり利益)が上昇傾向を辿る一方、予想PER(株価収益率)は低下傾向が続いていた。 ただ、こうした背景として度々挙げられていた日本の新型コロナウイルス感染拡大やワクチン接種の遅れも揃って解消に向かってきている。新規感染者数は依然として多いものの、8月半ばからは前週比での減少傾向が確認されており、ピークアウトが見られているほか、ワクチン接種は欧米に勝るスピードで追い上げてきている。日本株のバリュエーションディスカウントの要因が解消されてきたのであれば、株価の水準訂正にも納得感が持てる。そこに、政局流動化に伴う政策期待も相まったという格好だ。 とはいえ、一気に楽観に傾いてきている分、改めて警戒も必要だろう。新型コロナ感染動向についていえば、確かに、新規感染者数は減少傾向にあるが、コロナの行方だけは誰にも確定的なことはいえない。デルタ株に変わる新たな変異株、従来ワクチンが効きにくい景気回復の大前提を覆すような変異株の拡大など、リスクは常に存在する。世界保健機関(WHO)は8月末、警戒レベルが上から2番目の「注目すべき変異型(VOI)」に南米の一部の国で流行するミュー型を加えた。このVOIリストにはそのほかラムダ型などを加え、5種類も変異株が存在する。どれがいつ「懸念される変異株(VOC)」に格上げされるかは分からない。 また、新規感染者数は減少傾向といっても、ワクチン接種が遅れている新興国でのデルタ変異株の収束はまだまだ道半ばだ。ゴールドマン・サックス証券やシティグループ証券などはデルタ株拡大による世界経済下方修正リスクを警告している。先日のトヨタの減産報道によるショックは、第1四半期決算発表時に既に織り込み済みで、年間生産計画に変更がないこともあり、挽回生産も可能とのことで市場の動揺はひとまず収まった。しかし、減産背景にある東南アジアでの感染拡大などによるサプライチェーンの混乱が、この先再び起こることがないという保証はない。ニュースのヘッドライン次第で相場の雰囲気は一変してしまうことに留意しておきたい。 国内政治も、いまは期待ばかりが先行しているが、実際のところ、誰が新首相になったとしても、コロナという不確実性の高い相手との戦いが困難であることに変わりはない。また、政策の中身もまだ明らかになってはいないが、財源問題も含めて実現可能性などが低いと判断されば、簡単に期待が萎む可能性もある。 当面は強気で臨むべきとは思うが、みなが強気に傾きすぎた時ほど怖いものはない。常にリスクを睨みながら相場に臨みたいものだ。 <AK> 2021/09/06 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は5日続伸、米雇用統計・自民党人事を前に期待高める  日経平均は5日続伸。243.84円高の28787.35円(出来高概算4億7000万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でNYダウは4日ぶりに反発し、131ドル高となった。週間の新規失業保険申請件数が市場予想より少なく、新型コロナウイルスが感染拡大した昨年3月以降で最低となったことから、景気敏感株を中心に買いが入った。また、原油先物相場の上昇も景気敏感株の買いを促した。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.1%上昇し、連日で過去最高値を更新。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで82円高からスタートすると、前引けにかけて大きく上げ幅を広げ、一時28835.57円(292.06円高)まで上昇した。取引時間中としては7月13日以来の高値となる。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が6%の上昇で、取引時間中の上場来高値を大幅に更新。外資系証券の強気の投資判断が観測された鉄鋼株も上げが目立ち、JFE<5411>が4%超、日本製鉄<5401>が3%超上昇している。その他、郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>などがしっかり。政府のリカレント教育(社会人の学び直し)推進が刺激材料となったBBT<2464>、持分法適用会社がミクシィ<2121>と資本業務提携したセレス<3696>はストップ高を付けている。一方、任天堂<7974>が小安く、8月の国内ユニクロ既存店売上が大幅減収となったファーストリテ<9983>もさえない。また、利益確定売りがかさんだベイカレント<6532>、決算発表のアインHD<9627>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、鉄鋼、石油・石炭製品、医薬品などが上昇率上位で、その他も全般堅調。精密機器のみ小幅に下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の71%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 本日の日経平均は5日続伸し、200円超の上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、2月高値30714.52円(取引時間中)以降の上値切り下げトレンドを抜けてきたような印象があり、一段の買い戻しを誘っている可能性がある。米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を受け、米国では長期金利の伸び悩みとともにハイテク株に買いが入っていたが、前日は景気敏感株のリバーサル(株価の反転上昇)の様相。失業保険申請の減少が手掛かりとなったが、そもそも今晩の8月雇用統計発表を前に、持ち高調整による短期的な巻き戻しが生じたとも考えられる。いずれにせよ景気敏感色の強い日本株にとっては追い風となり、直近の政局流動化に伴う政策期待の高まりとともに株価の押し上げに寄与したのだろう。 米8月雇用統計については、足元で非農業部門雇用者数の市場予想中央値は前月比72.5万人程度となっている。米金融大手の予想を見ると50万人程度から80万人台まであり、ばらつきが大きいのはやや気になるところ。1日に発表された雇用サービス会社ADPの統計では市場予想を大幅に下回った。ただ、最近の傾向としてADP版は弱め、政府版は強めの数値が出ているので、失業保険申請の減少も相まって雇用の回復期待は根強くあるようだ。 週明け6日には自民党役員人事が実施される予定となっており、市場もこれら重要イベントを前に様子見ムードというよりも期待を高めているもよう。後場の日経平均も強含みで推移する可能性がありそうだ。(小林大純) <AK> 2021/09/03 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は小幅に4日続伸、「パウエルラリーの続きを日本株で」  日経平均は小幅に4日続伸。24.99円高の28476.01円(出来高概算5億5000万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でNYダウは小幅に3日続落し、48ドル安となった。雇用サービス会社ADPの8月雇用統計で非農業部門雇用者数(政府部門除く)が前月比37.4万人増と市場予想(60万人程度の増加)を大幅に下回ったほか、9月相場入りで利益確定売りも根強く出た。一方、10年物国債利回りの伸び悩みなどからハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.3%上昇し、過去最高値を更新。本日の東京市場でも値がさ株を中心に買いが先行し、日経平均は71円高からスタートすると、寄り付き直後には一時28626.20円(175.18円高)まで上昇した。ただ、前日までの3日間で既に800円あまり上昇していたことから、上値では利益確定の売りが出て、前日終値を挟みもみ合う展開となった。 個別では、東エレク<8035>などの半導体関連株が堅調で、レーザーテック<6920>は3%超、ルネサス<6723>は4%超の上昇。ルネサスの柴田英利社長が一部メディアの取材で、半導体の安定供給へ集中投資すると話したことが伝わっている。任天堂<7974>やソフトバンク<9434>も上昇。フジ<8278>はMV西日本<8287>との経営統合が好感され、東京機<6335>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、公募増資の実施を発表したJR西<9021>が15%を超える下げで東証1部下落率トップ。JR東<9020>などの他の鉄道株や、やはりコロナ禍の影響が大きいH.I.S.<9603>などの旅行関連株にも警戒した売りが波及しているようだ。JFE<5411>と日本製鉄<5401>が揃って3%超下落し、郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株もさえない。 セクターでは、金属製品、その他製品、情報・通信業などが上昇率上位。一方、陸運業、鉄鋼、空運業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の32%、対して値下がり銘柄は62%となっている。 本日の日経平均は4日続伸して始まったものの、買いが一巡すると伸び悩んで前場を折り返した。前日までの上昇幅の大きさに加え、日足チャート上で28300円近辺に位置する75日移動平均線を上回ってきたことなどから、目先の利益を確保する売りが出やすい局面ではあるだろう。1日先行する形で75日線水準を回復していたマザーズ指数も、その後上値の重い展開となっている。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと前日並みの賑わい。 直近で買われる場面のあった鉄道などの経済再開関連銘柄だが、JR西の公募増資実施で累積ダメージの大きさや先行き不透明感が意識されるだろう。そもそも超長期視点で収益見通しと投資計画を組む鉄道各社には、短期的なコロナ禍の影響のみならず、中長期的な社会変化の影響が重くのしかかりそうだ。海運株なども市況下落で軟調。一方、ルネサス柴田社長への取材記事などを手掛かりに半導体関連株は堅調で、日経平均を押し上げている。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、東証株価指数(TOPIX)は-0.21%。 マザーズ市場では本日、モビルス<4370>とメディア総研<9242>が新規上場。モビルスは公開価格を43.0%、メディア総研は7.1%それぞれ上回る初値を付けたが、個人投資家の初値買いへの警戒感は根強く残っている印象を受ける。9月下旬はIPO(新規株式公開)が多いため、やや気掛かりな状況だ。 さて、一昨日の当欄で述べたとおり、米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演を受けて「ラリー継続」への期待を高めた市場参加者だが、ナスダック総合指数が高値更新基調の一方で、経済指標の相次ぐ予想下振れなどからNYダウは伸び悩みとなっている。半面、日本株は自民党総裁選や党役員人事絡みの観測報道が相次いだ8月31日の後場以降、久々に国内要因で米国株に比べ強い値動きを見せてきた。実際、証券会社のデスクには国内政治の今後の見通しに関する問い合わせが多く寄せられているという。現物株の売買が増加しただけでなく、先物手口を見ても全員参加とまでは言えないものの、海外勢の循環的な買いが観測される。 さすがに米国株の高値警戒感が拭えないなか、政局の流動化が政策期待を高め、日本株の出遅れ修正を見越した買いが入っているのだろう。さながら「パウエルラリーの続きを日本株で」といった様相だ。従来の予定どおり9月29日投開票で実施される公算となった総裁選、その後の衆議院解散・総選挙にかけてこうした思惑が続く可能性もあるだろう。 もっとも、政治に関心を持つ者として私見を述べれば、8月31日にかけて断続的に出ていた観測報道は一部勢力のリークに基づくものだが、党内の根回しが十分になされていない印象を受けた。実際、菅義偉首相は9月1日の記者会見で観測報道の出ていた9月解散を否定。前日まで相次いでいた「政権幹部筋」とする報道もぱったり止んだ。真偽のほどをよく見極める必要があるかもしれない。 最後に、ADP雇用統計が予想下振れとなったものの、最近の傾向から想定内と受け止め、週末の政府版雇用統計を見極めたいという市場参加者が多いようだ。週末にかけて日米市場とも様子見ムードが強まる可能性がある。(小林大純) <AK> 2021/09/02 12:25 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続伸、月末アノマリー打破で様相一変、楽観ムードの先にリスクはないか?  日経平均は大幅続伸。357.27円高の28446.81円(出来高概算5億5763万株)で前場の取引を終えている。 8月31日の米株式市場でのNYダウは39.11ドル安(-0.11%)と小幅続落。8月の消費者信頼感指数やシカゴ購買部協会景気指数が予想を下回ったことに加え、月末の持ち高調整の売りが上値を抑えた。一方、金融緩和長期化への期待から下値は限定的だった。ナスダック総合指数は0.04%安と小幅に反落した。米主要株価3指数は揃って軟調に終わったものの、取引開始前に発表された4-6月期法人企業統計で設備投資が5四半期ぶりのプラスとなり、市場予想も上回ったことが好感され、本日の日経平均は89.50円高の28179.04円と小幅続伸でスタート。そのまま28445.13円まで大きく上値を伸ばした。その後一時伸び悩んだが、前場中頃からは再度騰勢を強め、28446.81円と本日の高値で前場を終えている。 個別では、キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメントが8月半ば以降、ほぼ毎日買い増していると一部で伝わったコマツ<6301>が大幅高。上半期の業績・配当予想を上方修正したミライアル<4238>、半導体製造装置の大口受注を獲得した岡本工<6125>がそれぞれ急伸。また、大幅増配を発表した明和産業<8103>はストップ高買い気配となっている。一方、公募増資や売出を発表した日本電子<6951>、上方修正後の通期計画が市場予想に届かなかったトリケミカル<4369>、米系大手証券による格下げが観測されたイリソ電子<6908>などが大幅に下落。第1四半期が2桁の営業減益となったラクーンHD<3031>はストップ安となっている。 東証1部の主力では、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、トヨタ<7203>、ソニーG<6758>、アドバンテスト<6857>などが堅調。任天堂<7974>、キーエンス<6861>、三菱UFJ<8306>、村田製<6981>、ファナック<6954>、ルネサス<6723>、NTT<9432>、SUMCO<3436>、塩野義<4507>、中外薬<4519>、エムスリー<2413>、神戸物産<3038>、安川電機<6506>、ANA<9202>、JAL<9201>、SMC<6273>などは大幅上昇。オムロン<6645>は大幅高で上場来高値を、太陽誘電<6976>は大幅高で年初来高値をそれぞれ更新している。一方、前日にまで賑わっていた海運大手や鉄鋼大手は利益確定売りで小休止となっている。 セクターでは、パルプ・紙、空運業、保険業などが上昇率上位で、ほぼ全面高。一方、海運業、鉄鋼の2業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の67%、対して値下がり銘柄は27%となっている。 前日の日経平均は12カ月ぶりに月末最終営業日の株安アノマリーを破り、節目の28000円も突破した。それまで相場のムードは良くなかっただけに、このアノマリー破りは非常に印象的で、今後の年後半相場への転換点となる可能性がありそうだ。本日も、前日急伸の反動安が想定されてはいたが、良い意味で裏切る形で非常に強い動きを続けている。前引け時点での売買高・売買代金からもかなり膨らんでおり、商いは活況のようだ。 これまで日本株の上値を抑えてきた大きな要因としては、新型コロナウイルスの感染動向、政局不透明感、景気減速懸念などが挙げられていた。新型コロナ感染動向については、社会的にはピークアウト等の議論するのは憚られるが、株式市場ではすでにそうした兆しを捉えてポジティブな方向に転換してきているようだ。実際、全国の中でも先行性の高い東京都の新規感染者数は、30日には1915人と、約1カ月ぶりに2000人を下回った。31日は2909人だったが、8月第3週の5000人台と比べると確かに水準としては高くても、モメンタムとしてはピークアウトしたと捉えられそうだ。 政局不透明感については、菅首相が二階幹事長の交代を含む自民党執行部の顔ぶれを来週にも刷新すると伝わっている。また、人事を行って党の求心力を高めたうえで9月中旬にも衆院解散に踏み切る意向とも報道されている。こうした事態を受けて、政権求心力の回復や経済対策への期待が高まってきているほか、衆院選に向けては日本株が上昇しやすいというアノマリーなども意識されているようだ。 景気減速懸念については、米サプライマネジメント協会(ISM)発表の製造景況指数、中国製造業購買担当者景気指数(PMI)のモメンタム鈍化や、日本株と連動性の高い米長期金利の低下などが背景にあると考えられてきた。ただ、日経平均が2月の30714.52円から8月の26954.81円まで半年以上かけて調整した値幅を考慮すると、指標のモメンタム鈍化はすでに十分に織り込んだともいえる。水準としては、米製造業ISMは今後も50台後半の高水準が続くと予想されるほか、50ギリギリまで低下した中国製造業PMIも、緩やかながらマクロ政策が緩和方向に転じつつあるなか、底打ち感が強まってきたともいえる。 このように、今まで日本株の上値抑制要因として働いてきた大きな要素が最悪期を脱したのであれば、昨日、今日の株高ムードも一過性のものではないのかもしれない。 勿論、デルタ株に変わる新たな変異株拡大の可能性や経済対策が小粒に留まる可能性などもある。また、景気減速の捉え方についても、水準でなくあくまでモメンタムで景気減速を捉える向きが多ければ、上述の背景を理由とした株高演出は難しいだろう。 他方、前日に発表された6月の米S&P・コアロジック/ケース・シラー住宅価格指数は、前月に続き過去30年余りで最大の伸びを示した。前年比18%以上の伸びで、リーマンショック前の住宅バブル期を超える勢いだ。 米連邦準備制度理事会(FRB)は依然として「(過度な)インフレは一過性」との姿勢を維持しているが、想定以上にインフレが長期化する可能性や、インフレ懸念による個人消費鈍化が引き起こす景気減速といった可能性もあるだろう。 前日には、欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバーであるクノット・オランダ中銀総裁はユーロ圏のインフレ見通しがすでに著しく改善したことで、ECBによる刺激策の即時減速とパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の来年3月終了を正当化できる可能性があるとも指摘したという。 程度の差こそあれど、インフレが想定以上に強まっているのは米国だけでなく、欧州も同様のようだ。世界的に長期化した緩和政策がもたらす弊害が今後徐々に表れてくる可能性は十分にあるだろう。足元で楽観ムードが強まってはいるが、リスクはいつもすぐ傍にあることに留意したい。 なお、今晩は米国で8月ADP全米雇用リポート、ISM製造業景況指数が発表予定だ。週末の米雇用統計も結局は株高材料として捉えられる可能性が高そうだが、28500円近辺まで一気に上げてきた日経平均はここから、目先の目標達成感もあり、しばし様子見ムードに入ると想定しておきたい。 <AK> 2021/09/01 12:10

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