ランチタイムコメント
日経平均は続伸、テクニカル好転も強気になりきれない背景
配信日時:2022/11/01 12:20
配信元:FISCO
日経平均は続伸。58.88円高の27646.34円(出来高概算6億3187万株)で前場の取引を終えている。
10月31日の米株式市場でダウ平均は128.85ドル安(−0.39%)と7日ぶり反落。連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に控えた警戒感から売りが先行。月末の持ち高調整や利上げ減速期待を背景とした買いでダウ平均は一時プラス圏を回復する場面もあったが、戻り売りに押されて再び下落。長期金利の上昇でハイテク株も軟調で、ナスダック総合指数も−1.02%と反落。日経平均は27.18円高の小幅高でスタート。日本時間で3日未明3時頃に結果公表を控えるFOMCを前に様子見ムードが強い中ではあったが、好決算銘柄を中心に買いが優勢の展開となった。時間外取引のナスダック100先物が上昇していたほか、香港ハンセン指数の大幅高などアジア市況の上昇も追い風に、日経平均も前引けにかけて上げ幅を広げる展開となった。
個別では、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、日立<6501>、ファナック<6954>、リクルートHD<6098>など主力のハイテク・グロース株が大幅に上昇。本日決算発表を予定している三井物産<8031>のほか、伊藤忠<8001>、子会社の業績上方修正があった三菱商事<8058>など商社株が強い動き。日本製鉄<5401>、大阪チタ<5726>、INPEX
<1605>など市況関連株も高い。決算が評価に繋がったところでJVCケンウッド<6632>、日本冶金工業<5480>、ファイズHD<9325>、SREHD<2980>、マクニカHD<3132>などが急伸。メルカリ<4385>も決算を材料に大幅高。ほか、旭有機材<4216>、JT<2914>、NTN<6472>、栗田工業<6370>、パナHD<6752>などが決算を受けて大きく上昇。コマツ<6301>
も業績上方修正で買い優勢。
セクターでは卸売、食料品、鉄鋼が上昇率上位となった一方、金属製品、海運、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の48%、対して値下がり銘柄は47%となっている。
日経平均は堅調な値動きで続伸し、27500円からの上方乖離を100円超に広げ、上値抵抗線である75日移動平均線も上抜けてきている。日足一目均衡表では、本日は雲の上限と下限が捻じれる変化日に当たるが、ローソク足はちょうどその交差部分をも上抜けようとする位置にまで上昇してきている。テクニカルではFOMC後の保ち合い上放れが期待できそうな形になってきた。
一方、10月21日のウォールストリート・ジャーナル(WJ)の報道およびその後のサンフランシスコ連銀のデーリー総裁などの高官発言を受けて急速に高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速期待には早くも黄色信号が灯っている。
28日に発表された米9月個人消費支出(PCE)コアデフレータや米7−9月期雇用コスト指数の予想並みとはいえ強い結果に加えて、30日には上述のWJ報道の発信者であるニック・ティミラオス記者が、FRBのターミナルレート(政策金利の最終到達点)が、現在想定する水準よりも引き上がる可能性などについて報じた。同報道では、家計の過剰貯蓄を背景に、利上げを通じた失業率の増加とそれに伴う収入・支出の落ち込みという、通常の景気減速原理が機能しなくなっていることなどにも言及しており、FRBの積極的な利上げを肯定するかのような内容となっている。
こうした背景もあり、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは、28日には2023年3−5月時点をピークに4.7%強にまで低下していたが、その後4.9%台後半にまで再上昇している。一方、日米の株式市場はリバウンド後のしっかりとした基調を継続しており、利上げ減速期待は根強い様子。
しかし、今一度念頭に置きたいのは、今話題になっているのはあくまで「利上げ減速」であり、「利上げ停止」でもなければ当然「利下げ転換」でもない。利上げ幅が縮小されたとしても、「利上げ=(金融引き締め)」であることには変わりなく、株式市場にはネガティブな状況のままだ。また、FRBのデータ次第という姿勢は変わっておらず、今週末の米10月雇用統計以降の賃金・物価に関するデータが強いままであれば、来年前半と想定されている利上げ停止すらも覚束ないことになる。
想定通り、来年前半に利上げが停止されたとしても、それにより株価収益率(PER)
の低下は止まるだろうが、一株当たり利益(EPS)については景気後退色が強まる中、来年前半時点でも依然として低下傾向にある恐れもある。その場合、金融政策は利下げ転換には至っていないため、PERが横ばいの傍ら、EPSの下向きは維持される構図となる。米株式市場の大底は今年6月だった可能性があるが、今後最安値を更新しなくても、それがそのまま相場の上昇基調への転換を意味することにはならない。株式市場は安値圏でのもみ合いが長期化する可能性が高いと見ておいた方がよいだろう。
また、気掛かりな点では中国経済の低迷も挙げられる。5年に一度の中国共産党大会が22日に閉幕し、習近平国家主席の3期目入りが決まった。3期目入りが確定すれば、それまで頑なに堅持していた「ゼロコロナ」政策も緩和されるだろうと予想していた向きも多かったとみられるが、実際、その後に緩和の兆しは見られていない。むしろ、湖北省の省都・武漢や青海省の省都・西寧など複数の都市ではコロナ規制が強化されている。また、米アップルについては、中国鄭州市にある「iPhone」の主要製造工場において、厳格なコロナ対策が敷かれ、生産状況が混乱しているという。一部のアナリストは今後数週間で状況が改善されない場合、10−12月期のiPhoneプロモデルの出荷が1000万−1200万台不足する可能性があると指摘している。
31日に中国国家統計局が発表した10月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と、9月(50.1)から0.9pt低下し、拡大・縮小の境目である50および市場予想(50.0)を2カ月ぶりに下回った。また、本日午前に発表された民間版の財新中国10月製造業PMIは49.2と9月(48.1)からは改善したが、こちらも分岐点となる50を下回った。安川電機
<6506>やファナック、ナブテスコ<6268>の業績予想の下方修正などからも窺えるように、中国経済の低迷長期化は日本企業の業績悪化に繋がる。半導体市況の底入れに時間がかかる中、機械市況の低迷も長引くと、円安という追い風があるとはいえ、日本の製造企業の業績もしばし厳しい状況が続きそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
10月31日の米株式市場でダウ平均は128.85ドル安(−0.39%)と7日ぶり反落。連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に控えた警戒感から売りが先行。月末の持ち高調整や利上げ減速期待を背景とした買いでダウ平均は一時プラス圏を回復する場面もあったが、戻り売りに押されて再び下落。長期金利の上昇でハイテク株も軟調で、ナスダック総合指数も−1.02%と反落。日経平均は27.18円高の小幅高でスタート。日本時間で3日未明3時頃に結果公表を控えるFOMCを前に様子見ムードが強い中ではあったが、好決算銘柄を中心に買いが優勢の展開となった。時間外取引のナスダック100先物が上昇していたほか、香港ハンセン指数の大幅高などアジア市況の上昇も追い風に、日経平均も前引けにかけて上げ幅を広げる展開となった。
個別では、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、日立<6501>、ファナック<6954>、リクルートHD<6098>など主力のハイテク・グロース株が大幅に上昇。本日決算発表を予定している三井物産<8031>のほか、伊藤忠<8001>、子会社の業績上方修正があった三菱商事<8058>など商社株が強い動き。日本製鉄<5401>、大阪チタ<5726>、INPEX
<1605>など市況関連株も高い。決算が評価に繋がったところでJVCケンウッド<6632>、日本冶金工業<5480>、ファイズHD<9325>、SREHD<2980>、マクニカHD<3132>などが急伸。メルカリ<4385>も決算を材料に大幅高。ほか、旭有機材<4216>、JT<2914>、NTN<6472>、栗田工業<6370>、パナHD<6752>などが決算を受けて大きく上昇。コマツ<6301>
も業績上方修正で買い優勢。
セクターでは卸売、食料品、鉄鋼が上昇率上位となった一方、金属製品、海運、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の48%、対して値下がり銘柄は47%となっている。
日経平均は堅調な値動きで続伸し、27500円からの上方乖離を100円超に広げ、上値抵抗線である75日移動平均線も上抜けてきている。日足一目均衡表では、本日は雲の上限と下限が捻じれる変化日に当たるが、ローソク足はちょうどその交差部分をも上抜けようとする位置にまで上昇してきている。テクニカルではFOMC後の保ち合い上放れが期待できそうな形になってきた。
一方、10月21日のウォールストリート・ジャーナル(WJ)の報道およびその後のサンフランシスコ連銀のデーリー総裁などの高官発言を受けて急速に高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速期待には早くも黄色信号が灯っている。
28日に発表された米9月個人消費支出(PCE)コアデフレータや米7−9月期雇用コスト指数の予想並みとはいえ強い結果に加えて、30日には上述のWJ報道の発信者であるニック・ティミラオス記者が、FRBのターミナルレート(政策金利の最終到達点)が、現在想定する水準よりも引き上がる可能性などについて報じた。同報道では、家計の過剰貯蓄を背景に、利上げを通じた失業率の増加とそれに伴う収入・支出の落ち込みという、通常の景気減速原理が機能しなくなっていることなどにも言及しており、FRBの積極的な利上げを肯定するかのような内容となっている。
こうした背景もあり、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは、28日には2023年3−5月時点をピークに4.7%強にまで低下していたが、その後4.9%台後半にまで再上昇している。一方、日米の株式市場はリバウンド後のしっかりとした基調を継続しており、利上げ減速期待は根強い様子。
しかし、今一度念頭に置きたいのは、今話題になっているのはあくまで「利上げ減速」であり、「利上げ停止」でもなければ当然「利下げ転換」でもない。利上げ幅が縮小されたとしても、「利上げ=(金融引き締め)」であることには変わりなく、株式市場にはネガティブな状況のままだ。また、FRBのデータ次第という姿勢は変わっておらず、今週末の米10月雇用統計以降の賃金・物価に関するデータが強いままであれば、来年前半と想定されている利上げ停止すらも覚束ないことになる。
想定通り、来年前半に利上げが停止されたとしても、それにより株価収益率(PER)
の低下は止まるだろうが、一株当たり利益(EPS)については景気後退色が強まる中、来年前半時点でも依然として低下傾向にある恐れもある。その場合、金融政策は利下げ転換には至っていないため、PERが横ばいの傍ら、EPSの下向きは維持される構図となる。米株式市場の大底は今年6月だった可能性があるが、今後最安値を更新しなくても、それがそのまま相場の上昇基調への転換を意味することにはならない。株式市場は安値圏でのもみ合いが長期化する可能性が高いと見ておいた方がよいだろう。
また、気掛かりな点では中国経済の低迷も挙げられる。5年に一度の中国共産党大会が22日に閉幕し、習近平国家主席の3期目入りが決まった。3期目入りが確定すれば、それまで頑なに堅持していた「ゼロコロナ」政策も緩和されるだろうと予想していた向きも多かったとみられるが、実際、その後に緩和の兆しは見られていない。むしろ、湖北省の省都・武漢や青海省の省都・西寧など複数の都市ではコロナ規制が強化されている。また、米アップルについては、中国鄭州市にある「iPhone」の主要製造工場において、厳格なコロナ対策が敷かれ、生産状況が混乱しているという。一部のアナリストは今後数週間で状況が改善されない場合、10−12月期のiPhoneプロモデルの出荷が1000万−1200万台不足する可能性があると指摘している。
31日に中国国家統計局が発表した10月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と、9月(50.1)から0.9pt低下し、拡大・縮小の境目である50および市場予想(50.0)を2カ月ぶりに下回った。また、本日午前に発表された民間版の財新中国10月製造業PMIは49.2と9月(48.1)からは改善したが、こちらも分岐点となる50を下回った。安川電機
<6506>やファナック、ナブテスコ<6268>の業績予想の下方修正などからも窺えるように、中国経済の低迷長期化は日本企業の業績悪化に繋がる。半導体市況の底入れに時間がかかる中、機械市況の低迷も長引くと、円安という追い風があるとはいえ、日本の製造企業の業績もしばし厳しい状況が続きそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
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