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自公惨敗により日本短命内閣(回転ドア)が続けば中国には有利【中国問題グローバル研究所】
*10:27JST 自公惨敗により日本短命内閣(回転ドア)が続けば中国には有利【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党が惨敗し、自公連携が過半数を割った。これに関して中国は強い関心を示し、日本メディアや米メディアの転載を主としながら、一斉に報道している。その中から見えてくるのは「日本に回転ドアのように短命内閣が続けば中国に有利」という視点だ。◆中共中央宣伝部の管轄下にある中央テレビ局CCTVの速報中央テレビ局CCTV端末は、28日の午前零時から朝7時にかけて、連続3本も速報で衆院選に関するニュースを報道した。まず10月28日午前零時に<日本の連立与党 衆議院選挙で過半数を獲得できず>(※2)という見出しで、27日の日本の衆院選の最新の開票状況を速報した。立憲民主党など野党側が得票を伸ばし、自公連立が過半数を取れなかったことが明確になったとし、石破茂氏が10月1日に首相に就任したばかりなのに戦後最速の衆議院解散を9日に表明した結果だと結んでいる。同日午前4時になるとCCTV端末は再び衆院選の最終結果が出たと報道(※3)した。概略は以下の通り。●自民191議席、公明24議席、両党合わせても215議席で過半数(233)割れをした。自民党は2012年以降のすべての衆院選で過半数以上の議席を獲得してきたが、その優位性も失った。●野党は、立憲民主党148議席、維新38議席、国民民主28議席など躍進した。●日本は議院内閣制を採用しており、憲法は、統治するために衆議院において過半数が必要とは規定していないが、首相指名と議会決議の大多数の可決には過半数の票が必要であるため、議席の過半数を獲得するかどうかにかかわらず、衆議院で過半数を獲得できるかどうかは、連立与党が議会で発言する権利があるかを判断する重要な基準となる。●日本のメディアは、選挙で惨敗する中、石破茂首相が責任を問われる可能性があると分析し、石破茂氏が権力を維持し続けることができるかどうかが焦点となっている。●日本の衆議院選挙は4年ごとに行われ、現衆議院議員の任期は当初2025年10月に満了する予定だったのに、石破茂氏が新首相に選出された瞬間に、9日の衆院解散を表明したことが招いた結果だ。同日7時42分になると、CCTV端末は、今度は<裏金の影に包まれた日本の衆院選 石破茂就任後初の「試験」は失敗に終わった>(※4)という見出しで、以下のような角度から石破首相の惨敗の原因を報道している。●裏金スキャンダルに経済問題が重なり選挙に影響し、自公連立与党は大幅に議席を減らし、過半数割れをした。●自民党側は維新や国民民主との連立を模索しているが、両党の党首とも自公連合には参加しないと表明している。●自公連立が惨敗した背景の一つには経済の問題がある。近年、日本は自公連立のもと、世界第3位の経済大国からドイツに追い抜かれ世界第4位に転落した。日本国民の多くは経済生活の現状に不満を抱いている。●そこに加えて自民党の議員だけが利益を得ているような裏金事件が明るみに出て、日本国民の政治に対する信頼は失われつつある。CCTVにしては珍しくネット民のコメントがあったが、そこには「日本がアメリカの束縛から抜け出し自我(独立)を実現することを望む。なんならBRICS+に加盟してもいいんだぜ。共に手を携えて世界の平和と安定の発展を守っていかないか?」という皮肉が書いてある。◆環球時報:日本は再び回転ドア首相時代に入るのか?10月28日午前7時40分、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」電子版「環球網」は<米メディア「石破茂が下野すれば、日本は再び首相が頻繁に交代する時代に戻る可能性がある」>(※5)という見出しで、米メディアの見方を伝えている。中国にとって最も関心が高いのは、アメリカが日本の政権をどう見ているかで、日本の首相が短命でコロコロ変わっていった時代のことを「回転ドア首相時代」と呼んでいる。回転ドア政権になると日本の発言力は極度に下落し、対米追随をしても威力がないので、中国としては喜ばしい。事実、1989年6月4日天安門事件後の対中経済封鎖を解除させたときから1992年10月の天皇陛下訪中に足る頃の日本の首相は、日本人でさえ印象的でないほど、回転ドアのように次から次へと交代していた。たとえば、その前後の日本の首相名を書くと任期を書くと以下のようになる。1987年11月6日~1989年6月3日:竹下登1989年6月3日~1989年8月10日:宇野宗佑1989年8月10日~1990年2月28日:海部俊樹(第一次)1990年2月28日~1991年11月5日:海部俊樹(第二次)1991年11月5日~1992年8月9日:宮澤喜一1992年8月9日~1993年4月28日:細川護煕この期間、中国は日本を思うように操ることができた。1989年6月の対中経済封鎖を日本がイの一番に解除したことによって、中国のその後の経済発展を可能ならしめたし、1992年2月に訪日した江沢民は、「天皇訪中さえ実現すれば、中国は二度と再び歴史問題を提起しない」と約束しておきながら1994年から激しい反日教育を開始している(詳細は『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』)。日本は中国に舐められているのだ。加えて、このように日本の内閣に短命な回転ドアが始まると、中国は日本をさらにコントロールしやすくなる。それを手ぐすね引いて待っているのである。環球網が引用しているのは27日のニューヨークタイムズ<Japan Election: Governing Party Projected to Lose Majority>(※6)(日本選挙:与党が過半数を失う見通し)やBBCの<Japan’s ruling party loses its majority in blow to new PM>(※7)(日本の与党、新首相に打撃を与え過半数を失う)などで、BBCは「自民党は深い穴を掘っており、そこから這い上がるのは簡単ではない」と述べている。◆「嘘をついた」石破首相の自業自得こんなことになったのも、もとはと言えば石破首相が「嘘をついた」のが原因だ。自民党総裁選期間中には、あれだけ「せめて予算委員会を開催してからでないと解散してはいけない。それが私の意見です」と何度も表現を変えながらも「すぐ解散」だけはしないと主張してきたのに、総裁に当選するや否や、まだ総理大臣の指名さえもらってないのに、9月末日の時点で「すぐ解散」を言い始めた。この時点で、「この人は絶対に信用できない」という深い印象を持った。主義主張の問題以前に、人間として信用できない総理を、国民の誰が喜ぶのかということだ。総裁選の時には、あれだけ激しく「アジア版NATO」を主張して「私は防衛が分かっているんだ」という「軍事オタク」の側面を誇らしげに誇張しておきながら、総理になった瞬間に「アジア版NATO」を引っ込め、「そんなこと言いましたか」とばかりに平然としている節操のなさ。「アジア版NATO」は究極の対中包囲網で、しかも非現実的な机上の空論に過ぎない。いかにも現在の安全保障状況の国際情勢を知らない素人が妄想するような代物だ。それでいて10月20日のコラム<犯人は日本の外相か? 日中首脳会談「石破発言」隠し>(※8)に書いたような小汚い細工をする。「中国とともに闘う」ことと「アジア版NATO」精神は完全に矛盾するからだ。石破茂氏が首相になり「すぐさま解散」をしたことによって、日本は国際社会で激しく信用を失ってしまった。そのことが日本の国益を甚だしく損ね、日本国民にも多大なマイナスの影響を与えることを肝に銘じてほしい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。2024年 衆議院選挙 投開票日から一夜 石破首相が会見(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=15704207535381446355(※3)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=11611148186993138506(※4)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=8768252961522500342(※5)https://world.huanqiu.com/article/4K1DYyEW5um(※6)https://www.nytimes.com/2024/10/26/world/asia/japan-election.html(※7)https://www.bbc.com/news/articles/c8xpev42g78o(※8)https://grici.or.jp/5699(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/72c9b7c934f84b60d34765fae102dc10842b389c
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2024/10/29 10:27
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国家観なき日本の政治家は「対中カード」なし 遺憾砲では救えない【中国問題グローバル研究所】
*10:44JST 国家観なき日本の政治家は「対中カード」なし 遺憾砲では救えない【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。深センにある日本人学校児童が殺害されたり、中国に滞在中の日本人がスパイ容疑で逮捕されたりしたときに、日本政府はただ「甚だ遺憾だ」という遺憾砲を発するか、「毅然とした姿勢で!」といった精神論を発するだけで、実効のある手段を取ったことがない。それは中国に対する「カード(切り札)」を持っていないからだ。なぜカードを持てないかというと、敗戦後、GHQ(General Headquarters、連合国軍最高司令官総司令部)により徹底した贖罪意識を植え付けられ、ひたすらアメリカの顔色を伺うことに明け暮れる一方、中国に対しても「悪いのは日本でございます」という姿勢を取ってきたからだ。その結果、日本国はどうあるべきかという理念のような独立国家としての「国家観」を持つことができず、政治家は選挙で自分が当選するか否かだけにしか関心を持たないという、劣化した民主主義選挙だけが蔓延している。◆「国家観」より「自分が当選できるか否か」だけが最大の関心事自民党は、長いこと自党が政権与党でいられるために、旧統一教会の組織的な支援や裏金問題など、さまざまな手段を取ってきた。そこにあるのは「ともかく当選したい」という各議員の私欲であり、公明党と連立を組んできたのも自民党が政権与党でいたいためだ。政権与党でいられるためには手段を選ばず、主義主張は右から左まで、ほとんど全て自民党内に揃っていて、二階俊博元自民党幹事長のような極端な親中派がいてもいいし、数多くの対中強硬派がいてもいい。かつて筆者は自民党機関誌「自由民主」で中国問題に関して論考を連載していたが、「習近平国家主席を国賓として日本に招くか否か」に関して、ほんの僅かでも批判的なことを書いた原稿を提出したときなど、「党内にはいろいろな考えを持った議員がおりますので」と却下された経験がある。自民党にとって、「何としても」という、党の共通項としての「国是」はなく、共通しているのは「何としても国会議員に当選すること」という我欲であることを痛感させられた。日本は民主主義国家のはずだから、選挙は国民の思いを反映したものでなければならないが、民意が選挙に反映されないのは、これまでは旧統一教会の組織票があったからで、最近では政治資金パーティなど、不正な裏金で「票を買う」ような事態が起きていたからだろう。中国の習近平政権の行動を、党内派閥闘争として批判する論者が日本には多いが、わが国の自民党内における派閥闘争ほど激しいものは滅多にない。アメリカのように民主党と共和党という別の党派間の闘争ならわかるが、日本の場合は、同じ自民党内の闘争なのだから、派閥は解消することにはなったものの、現在(少なくとも今月27日まで)の石破政権は元安倍派を排除する私怨が目的であったような状況だから、結局のところ党内派閥闘争でしかない。このような状況では、「国家観」を論じるような姿勢には至らないのも当然だろう。◆スパイ容疑で逮捕拘束されている日本人に無力な日本政府たとえば2023年4月3日のコラム<カードなしに拘束日本人解放を要求し、「脱中国化はしない」と誓った林外相>(※2)で書いたように、訪中した、当時の林芳正外相は旧友の王毅政治局委員(中国外交トップ)に会って嬉しくてならないという笑顔を振りまいただけで、同年の3月25日にアステラス製薬の駐在員が北京でスパイ容疑により拘束されたことに関して「交渉のカード」を持っていなかった。ただ口頭で「遺憾の意」を表しただけで、「解放しないのなら~~するぞ!」といった効果的なカードを見せることもなく、外交トップと会っているのに、この上なく嬉しそうな顔をしているのを台湾のメディア「中天新聞」(※3)が皮肉たっぷりに紹介しているほどだ。◆中国の反日教育の実態を知らなすぎる日本筆者は1980年初頭から中国人留学生の世話をしてきたが、当時の留学生は「戦後30年ほどしか経っていない日本が、中国と比べて天と地の開きがあるような凄まじい発展を遂げていること」に仰天し、日本に憧れ、日本を敬い、日本を礼賛するばかりだった。日本がかつて「中国を侵略したこと」などおくびにも出さず、反日感情は完全にゼロだった。それが変化し始めたのは2000年に近くなったころだ。生まれた時から日本アニメに染まった日本アニメ大好きな若者が成人して日本の大学や大学院に留学してくる頃になると、突然「反日感情」が併存し始めていることに気が付いた。1994年から、愛国主義教育の名のもとに江沢民による「反日教育」が始まったからだ。日本アニメ大好きな若者たちを筆者は「中国動漫新人類」と名付け同名の書籍も出版しているが、80年代初期に日本に殺到した中国人留学生や就学生と違って、2000年前後以降の中国人留学生たちは日本語も流暢で金持ちで、アニメや漫画以外では日本を尊敬しておらず、上から目線でかつての「日本の侵略戦争」に対する悪感情を併存させていた。このような状況を招いた主たる原因は、江沢民の実父が日中戦争時代、日本の傀儡政権であった汪兆銘政権の官吏だったことを隠すためという狡い戦略にあったが、中国を不遜にさせ、上から目線で日本を見るような若者を作った原因の一つは日本にあると言っても過言ではない。1989年6月4日の天安門事件で中国共産党による一党支配体制が崩壊したかもしれないのに、愚かな自民党政権は「トウ小平を孤立させてはならない」という考えから天安門事件に対する対中経済封鎖をイの一番に解除させた。それにより多くの外資が中国の市場を求めて殺到するという状況を招いたのだ。そして中国が経済成長するきっかけを作ってあげたのである。天安門事件により中共中央総書記になった江沢民は1992年に訪日し、「天皇陛下訪中を実現させたら、中国は絶対に歴史問題に関して日本を責めない」と誓いながら、1992年10月に史上初の天皇陛下訪中が実現すると、江沢民はすぐさま前言を翻して1994年から愛国主義教育の名のもとの反日教育を始めた。そのため1980年以降に生まれた中国動漫新人類は、反日教育の洗礼を受けているため、80年代初頭の中国人留学生には皆無だった反日感情を持っているという皮肉な現状がある。反日教育の環境下では、反日ものの映画やドラマならすぐに許可が下りたので、90年代半ばから反日ものの映画やドラマが急増し、それがネット時代に入って動画配信のビジネスへと転換していった。靖国神社石柱への落書きはその流れの一環で、反日は今やビジネスになっているほどなので、「反日無罪」が中国社会の軸にある。2012年9月、日中国交正常化後、前例がないほど激しく燃え上がった反日暴動の中で誕生した習近平政権(同年11月)は、その流れに逆らうことができず、「日中戦争中に最も勇敢に日本軍と戦ったのは中国共産党軍だ」という偽物語をでっちあげ、その結果、反日教育に力を入れざるを得ない政策を推進してきた。この現実を大所高所から認識し、独立した主権国家としての「国家観」を日本は持たなければならないが、それどころではない。どうやれば自分が国会議員として生き残れるかしか考えていない。「国家観」どころの騒ぎではない。中国に対して「カード」が切れるような、大所高所からの戦略が出てくる状況にはないのである。こんな日本では、国民は尊厳を以て生きていくことはできないし、安全に生活していくこともできないだろう。これらの詳細は11月1日出版の『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』で述べた。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。国会議事堂(写真:つのだよしお/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4201(※3)https://www.youtube.com/watch?v=a7tHLI6f7eY(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5b7f0bdf76cff0effdfbbd48241bfd8f51e6684a
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2024/10/25 10:44
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対中包囲網・石破案「アジア版NATO」をASEAN諸国がどう見たかを中国が分析【中国問題グローバル研究所】
*16:01JST 対中包囲網・石破案「アジア版NATO」をASEAN諸国がどう見たかを中国が分析【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」や青年版「中国青年報」が一斉に「アジア版NATO」に対するASEAN諸国の反応を報道した。石破・李強会談を経て、自信を強めたという勢いが読み取れる。二紙の考察と中国ネット民の雑感を紹介する。◆環球時報社評:「アジア版NATO」がASEANで壁にぶつかった事実は何を物語るのか?10月12日、環球時報は<“亚洲版北约”在东盟碰壁说明什么>(「アジア版NATO」がASEANで壁にぶつかった事実は何を物語るのか)(※2)という見出しで社評を発表している。かなり長いので、概略を個条書き的に拾うと以下のようになる。●10日に開催された第27回中国・ASEAN(10+1)首脳会議では、中国・ASEAN自由貿易地域バージョン3.0の格上げ交渉が実質的に妥結したことを発表した。 これは、中国とASEANが共同で東アジアの経済統合を主導する大きな動きであり、多国間主義と自由貿易を支持する双方の明確な態度を示し、安定・協力・発展の追求こそが中国・ASEAN地域の揺るぎない主流であることを改めて証明した。●ハイレベル会合の前に、米国、日本などはブロック対立と地政学的対立を会議に持ち込む準備をしていたようだが、会議は明らかに冷たい壁でそれを阻んだ。特に、日本の石破茂新首相が提唱したいわゆる「アジア版NATO」は、域内で強い抵抗に遭っている。●マレーシアのハッサン外相は、「ASEANにNATOは必要ない」と単刀直入に述べた。インドネシアの英字新聞ジャカルタ・ポストは、「アジア版NATO」は中国に対抗することを狙っており、ASEAN10カ国にとって「極めて攻撃的」であると警告した。●この大きな反発により、石破茂は会議で「アジア版NATO」に言及するという考えを断念せざるを得なくなったが、これは何を物語っているのだろうか。1.NATOや米国の一部の同盟国が自分たちに満足しているのとは異なり、それ以外の多くの国々の目には、ただ単に「紛争と戦争のメーカー」としてのイメージを強化ただけだ。特にASEAN諸国の世論から判断すると、NATOに対する嫌悪感と反感には言葉では言い表せないほど激しいものがある。2.この地域の国々は、NATOモデルをアジア太平洋地域に持ち込むことに反対するだけでなく、NATOに代表される冷戦精神やブロック対立をアジア太平洋地域に持ち込むことにも反対し、中国を地政学的紛争の「仮想敵」とすることに反対している。3.NATOの哲学は、アジア諸国のそれとは大きく異なる。NATOは西側陣営が支配する軍事同盟であり、アジア諸国は独立に焦点を当てている。NATOの目的は、軍事力によるいわゆる「抑止と防衛」を促進することだが、ほとんどのアジア諸国は平和を重んじ、開発を優先することに同意している。4.NATOは外国の干渉に取り憑かれ、しばしば他国の主権と人権を踏みにじる一方で、多くのアジア諸国は近代において植民地化され侵略されるという悲劇的な経験をしており、地域諸国は外部からの干渉を心から深く嫌悪し平和共存を望んでいる。5.NATOは、その存在を永続させるために共通の「敵」の確立に依存しており、昔は「ソ連」で現在は「ロシア」だ(アメリカは一極支配を維持するために「共通の敵」がいないと困る)。6.アジアではそのような脅威は存在せず、「共通の敵」を中国に向ける試みは成功しない。中国は15年連続でASEANの最大の貿易相手国であり、ASEANも4年間中国の最大の貿易相手国であり続けている。7.中国とASEANはRCEPを完全かつ高品質で実施し、中国・ラオス鉄道とジャカルタ・バンドン高速鉄道は一帯一路構想の名刺となり、デジタル経済やグリーン経済などの新興産業での協力が強力な推進力を与えている。●シンガポールのYusof Ishak研究所の東南アジア研究センターが4月に発表した調査によると、ASEAN諸国は米国よりも中国に対して良い評価を与えている。日経アジアンレビューも、フィリピンでさえ、オブザーバーが「アジア版NATO」という考えを非現実的と見なしていることを認めている。一部の欧米メディアさえ「アジア版NATO」が適切だとは思っていない。●石破首相本人はASEANでの李強首相との会談で、日中関係の着実かつ長期的な発展を促進することへの希望を表明している。(以上、環球時報社評より)環球時評社評の中で、最も注目を引いたのは「多くのアジア諸国は近代において植民地化され侵略されるという悲劇的な経験をしており、地域諸国は外部からの干渉を心から深く嫌悪し平和共存を望んでいる」という文言だった。岸田政権の時もバイデン大統領の言いなりになって、西側の現存のNATOの「アジア化」を形成しようと岸田元首相は努力したが、環球時報に書いてあるこの現実を日本はあまりに認識していない。環球時報の社評に対する判断に関しては、ここでは言及しないが、少なくとも、この現実だけは深く認識すべきだと思う。◆中国青年報:インドネシアが「アジア版NATO」を弄ぶなと石破に警告10月11日、中国青年報は<インドネシアのメディアが「アジア版NATO」を弄ぶなと石破に警告>(※3)という見出しで、おおむね以下のような内容の報道をした。●石破茂首相は日本政界の「古き顔(老面孔)」としてASEANで外交デビューした。しかし彼が到着する前に、インドネシアのジャカルタ・ポストから「アジア版NATO」に対する単刀直入の警告を受けた。●ジャカルタ・ポスト紙によると、中国、米国、EU、日本はASEANの貿易相手国であるものの、2020年以降、ASEANの最大貿易相手国は中国であり続けている。ASEAN諸国にとって、日本やその同盟国が「ASEANはインド太平洋地域の中心だ」と主張して「密かにASEANをまとめて中国に立ち向かわえようとしているもくろみ」は、まったく非現実的であり、到底受け入れられるべきものではない。ASEANは、日本が地域の緊張を悪化させるだけの「軍事同盟国」ではなく、信頼できる貿易・経済パートナーになることを望んでいる。●日本の経済力が衰退し、ASEANの力が大きくなる中で、石破茂は今でもまだ「日本はASEAN諸国のリーダーを引きつけるほどの影響力を持っている」という幻想を抱いているのだろうか。日本政界の「古き顔」は、世界情勢の事実認識に関しても「古き視点」しか持ってないのかもしれない。(以上、中国青年報から抜粋)◆中国ネット民:石破茂は総理になって初めて世界の現実を知ったのではないか?中国のネットでは「日媒称」(日本メディアによれば)とか 「美媒称」(アメリカメディアによれば)という書き出しで、実に多くの情報が即時的に中国語に訳されて報道されている。中国のネット民はそれらを熱心に読んでいる者が多いので、実に当意即妙を得た反応が数多く見られる。それらを列挙するのは至難の業だが、「中国青年報」で取り扱っているようなテーマに関する書き込みを拾い上げると、たとえば以下のようなものがある。●石破茂は自民党で長い間「干されていた」ので、現在進行形の世界情勢を認識する力がないんじゃないの?●日本の政治評論家が石破内閣を「在庫一掃内閣」と評していたけど、あれって、おもしろいよね。今まで主流派から外されていた人たちをかき集めたんだろ?●石破茂は「防衛問題オタク」って言われているようだけど、家の中で組み立てたプラモデルで構築した「アジア版NATO」は、机上の空論だったってことが、総理になって初めて分かったんじゃいの?●そうじゃないと、自民党総裁選の選挙運動の時にあれだけ主張しておきながら、総理になったとたんに引っ込めるって、おかしいだろ?●西側式の民主主義って、ほんとにいいのかね?選挙公約は当選した瞬間に捨てていいんだったら、選挙なんかする必要ないじゃない?●中国式民主主義の方がよっぽどいいよ。選挙のたびに方針を変える必要がないから、国家戦略を貫くことができて、結局、新産業技術においても西側式民主主義国家を超えている。●日本みたいに自民党政権がずーっと継続している国って、ほんとに「西側式民主主義国家」なんだろうか?アメリカはまだ二大政党が常に拮抗して争っているけど、それでも選挙のために国力を使い果たして、どんどん衰退していってる側面があるじゃない?日本はほぼ自民党による一党支配だから、もっと成長していいはずなのに、結局「自分が当選したい!」という欲望に駆られた議員ばかりだから、当選するための裏金問題とか内部の派閥争いで腐っていって、経済も新産業技術も立ち遅れていくばかりだよね。●そんな日本がアジアをリードして「軍事同盟」を作って中国やロシアや北朝鮮を包囲していくって、なに考えてるの?バカじゃない?●いや、だからさ、石破は総理になって、初めて少しだけ「現実」を知り始めたんだよ。初めて現在進行形の国際情勢が見えたんじゃないの?だから李強との会談で、「田中角栄の日中共同声明の立場を堅持する」って誓ったんじゃないの?●そんなに「揺れ動いてばかりいて」、それで一国の総理が務まるのかな?●そうだね。でも、石破を選んだのは現場にいたはずの政権与党の自民党だろ?「現実」を知っていたはずじゃないの?西側式民主主義って何?・・・・・・以上、中国のネットから適宜、興味深いものを選んでみた。表現は、無数にある書き込みや民間ウェブサイトの主張などを、平均的にまとめたものである。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。就任会見の時の石破首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.youtube.com/watch?v=SfJcXh0qm3o(※3)https://news.qq.com/rain/a/20241011A018LH00(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/dd6c42371c1e358a5988a60d48fd11e8508a1202
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2024/10/15 16:01
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中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:55JST 中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆台湾メディア:石破茂が李強に「中日共同声明を堅持する」と叫んだのは日台関係に危機をもたらす10月11日、台湾の「中時新聞網」は<石破茂は李強に中日共同声明を堅持すると叫んだ 対日関係は危険になったか?>(※2)という見出しで、石破首相の「日中共同声明堅持」発言を問題視している。それによれば、民進党の元立法委員の沈福雄氏が石破発言に関して以下のように述べているとのこと。●石破茂が内閣を組閣した後、日中関係は悪化するのではなく、良くなる方向に動くだろう。●何と言っても李強との会談で台湾問題について石破は「中日共同声明を堅持する立場は変えていない」と明言したのだから。それは「一つの中国」を遵守することであり、「台湾独立を認めない」と表明したということになる。●政治家は権力を握る前と握った後では、まったく違うことを言うこともあるが、石破茂の場合は掌(てのひら)返しがひどすぎる。沈福雄元立法委員が出演した番組は、国民党の副総統に立候補した趙少康氏(2023年11月26日のコラム<台湾総統選、国民党支持率急上昇の謎が解けた>(※3)にある写真を参照)が主宰する「少康戦情室」というテレビ番組である。その番組では出演者が、日本の自民党総裁選挙前に台湾を訪問し頼清徳総統とも会談して民進党を喜ばせたことを踏まえ、「石破茂に期待を寄せた民進党を非常に失望させている」と述べている。◆中文圏のネット民に広がる石破首相への不信感中国大陸および大陸以外の中文圏のネット民の間では「石破茂への不信感」が広まっている。たとえば台湾関係では、以下のようなものがある。●自民党総裁選の前に台湾を訪問して頼清徳にまで会ったのは、「選挙活動」のために決まってるじゃないか。親中だと当選しないから、台湾を訪問して反中の姿勢を見せただけさ。●それでいて李強に会った瞬間にコロリと態度を変えて「台湾独立反対」を表明するために田中角栄を持ち出して「中日共同声明を堅持する」って言って見せるんだから、石破の言うことなんか、何も信じない方がいいよ。●「中日共同声明を堅持する」と李強に誓って見せることは、きっと早くから決まっていたんだぜ。だって、その埋め合わせをするために10月10日には山東昭子が引率する「日本の国会議員団」を祝賀のための台湾に派遣してるじゃないか。(筆者注:台湾の総統府のウェブサイト(※4)によれば、10月10日、自民党の元参議院議長を務めた山東昭子氏が「国会議員祝賀団」を引き連れて台湾を訪問し、午後頼清徳総統と会ったようだが、そのホームページには「日本の石破首相の指導の下」と書いてある。双方に良い顔をしようとして双方からの信用を失っている。)●そもそも日本の総理になったらすぐには議会解散をしないと選挙期間中にあれだけ言っていながら、その舌の根も乾かぬうちに回線宣言をしてしまったんだから、石破が何を言おうと、信頼などしちゃいけないよ。◆馬英九元総統が頼清徳の「新二国論」を批判10月10日、馬英九は双十節祝賀式典を欠席しただけでなく、<新二国論は違憲だ>とも述べている(※5)。報道によれば馬英九は「新二国論は違憲であるだけでなく、台湾の民衆を危険な境遇へと道連れしていく」と警告し、以下のように主張しているとのことだ。●中華民国の現行憲法によれば、台湾と本土は2つの国ではなく2つの地域であり、互いに平和的に共存できる。頼清徳の主張は憲法に違反しており、「新二国論」を提唱し、台湾海峡に緊張をもたらしたことで、世界は頼清徳を「トラブルメーカー」だと深刻に懸念している。●頼清徳路線を疑問視する多くの国際的な声があり、その中には頼清徳を「蔡英文前総統よりも挑発的だ」と批判するアメリカの「ワシントン・ポスト」や、ベルギーの首都ブリュッセルに拠点を置く世界的に有名な国際NGOもまた、「頼清徳は憲法や両岸人民関係条例に基づいて両岸問題を解決すべきで、挑発的な言葉を避けるべきだ」と、最近出した報告書で勧告している。●頼清徳は一刻も早く冷静になり、崖っぷちから引き返し、全台湾人民の幸福を第一に考え、不条理で違憲の「新二国論」を放棄し、台湾人民全員を危険にさらすのをやめるべきだ。(報道からの引用は以上)石破首相が李強首相との対談で、台湾問題について「日中共同声明の立場を堅持する」と明言したことを公開しなかったのは、日本のメディアだけのようだ。筆者が書かなかったら、日本は「そんなことはありませんでした」のままスルーするつもりだったのだろうか。筆者がいなくなった後は、誰が真相を明かす役割を果たしてくれるのだろうかと、肌寒く思う。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。「双十節」式典で演説する台湾の頼清徳総統(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.chinatimes.com/cn/realtimenews/20241011005009-260407?chdtv(※3)https://grici.or.jp/4850(※4)https://www.president.gov.tw/NEWS/28776(※5)https://www.zaobao.com.sg/realtime/china/story20241010-5015085(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9c369c86038e2dc965dbde9d8b163fdb596830fe
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2024/10/15 10:55
GRICI
中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:54JST 中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。台湾の頼清徳総統は10月10日の「双十節」(建国記念日)式典演説で「中国には台湾を代表する権利はない」などと表明した。中国(大陸)はこれを「新二国論」として激しい抗議を展開している。台湾内でも国民党の馬英九元総統は事前に公表されていた頼清徳総統の主張に反対し、建国記念日祭典の出席を拒絶した。そのような中、石破首相が李強首相との会談で「台湾問題は日中共同声明を堅持」(=独立反対)と明言したことが台湾で「日台関係に危機をもたらす」と危険視されている。中文圏のネット民の間には「石破茂に対する不信感」広がっている。◆双十節における頼清徳総統の演説1911年10月10日に辛亥革命が勃発し1912年1月1日に「中華民国」が誕生するが、台湾はこの辛亥革命勃発の日を今も「中華民国」の建国記念日として祝賀する。「10」が二つあることから「双十節」とも呼ぶ。今年、113回目の「双十節」式典において、頼清徳総統が総統就任後初めての「双十節」演説(※2)で、「中華人民共和国(中国)には台湾を代表する権利はない」と表明した。それ以外にも両岸関係(中台関係)に関して概ね以下のような発言をしている。●中華民国はかつて国際社会から追放されたが、台湾国民は一度も自国を放棄したことはない。●現在、中華民国は台湾本島・澎湖島・金門馬祖に根を下ろしており、中華人民共和国には属しておらず、この地では民主主義と自由が栄えている。●台湾は国家主権を堅持しており、中国による侵犯と併合を許さない。(以上)頼清徳総統は10月5日に開催された「双十節」記念ベントでも「中華人民共和国は中華民国の祖国になり得ない」と述べており、その理由として「中華人民共和国は10月1日に75歳の誕生日を迎えたばかりだが、数日後に中華民国は113歳の誕生日を迎える」ことを挙げた。すなわち、中華人民共和国の方が若いのだから、「祖国」と言うのなら、「中華人民共和国の祖国が中華民国」と言えると皮肉ったわけだ。そうでなくとも頼清徳総統は今年5月の就任演説で、「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と述べている。したがって「双十節」式典で、頼清徳総統が何を言うかは事前にわかっていたので、台湾の国民党の馬英九元総統は、抗議を表明するために当日になって式典の出席を拒絶した。◆激しく燃え上がる中国大陸における頼清徳「新二国論」への批判10月10日、中国のありとあらゆる報道機関は「頼清徳双十講和」に対する激しい批判報道を展開した。国務院台湾事務弁公室(国台弁)は<頼清徳の“双十”講和は両岸の緊張を高め台湾海峡の平和と安定を激しく破壊する>(※3)という見出しで、双十講和を激しく批判した。批判概要は主として以下のようなものである。●頼清徳は講和の中で「互いに隷属しない」という「新二国論」を提唱し続け、「台湾独立」の誤謬を編み出し、分離主義的な見解を広め、海峡両岸間の敵意と対立を扇動した。これは、頼清徳が頑固に「台湾独立」の立場を堅持し、対立的な思考に満ち、絶えず挑発し、両岸の緊張を故意に悪化させ、台湾海峡の平和と安定を深刻に損なっていることを十分に表している。●中華民族の偉大なる復興を実現することは、現代の中華民族の最大の夢であり、それは常に(台湾海峡)両岸の同胞の未来と運命に影響を与えるものである。1840年のアヘン戦争後、外国の侵略を打ち負かし、民族解放に努め、民族統一を実現するために、中国人民は次々と前進し闘ってきた。●台湾は古くから中国の神聖なる領土であり、近代には外国の侵略軍に侵略され占領されて、台湾の民衆は大きな苦しみを味わった。1945年、中国人民は抗日戦争で大勝利を収め、それに伴い台湾は失地を回復した。1949年以降、中国の内戦の継続と外部勢力の干渉により、海峡両岸は長期にわたる政治的対立の特殊な状態に陥ったが、台湾は常に中国の領土の一部分であり、台湾の同胞は常に中華民族の一員であり、中華人民共和国政府は常に台湾を含む中国全土を代表する唯一の正当な政府であり、中国は常にすべての中国人民の偉大な祖国であり、一つの中国の原則を堅持することは常に国際社会の普遍的なコンセンサスである。●頼清徳は故意に国を分裂させる根拠を寄せ集め、「台湾独立」の命題を強引に植え付け、「民主主義対権威主義」という古い概念をくり返し、「民主と自由」を装って「外国に頼って独立を謀り」、「武力による独立を求める」ことを続け、台湾を「台湾独立」という戦車に結びつけようと試みているた。●頼清徳が何と言おうと、台湾が中国の一部としての法的地位と、海峡両岸が一つの中国に属しているという事実と現状を変えることはできない。われわれには、祖国の完全な統一を実現する自信と能力がある。いかなる人も、いかなる勢力も、民族の復興と国家統一という歴史的な大勢を阻むことはできない。われわれは「一つの中国」原則と「92年コンセンサス」を堅持し、広範な台湾同胞大衆と団結し、「台湾独立」分裂主義行為と外国の干渉とたくらみに反対し、両岸交流と協力を積極的に推進し、両岸の統合と発展を引き続き深化させ、祖国の統一を断固として推進する。(国台弁の抗議概要は以上)同様の抗議を中央テレビ局CCTV(※4)も報道し、さらに数えきれないほどの特集番組を展開して、中国側に立つ海外の見識者や政治家の賛同なども報道した。見識者の多くは「1971年10月25日の国連総会において通過した【第2758号決議】を重視すべきで、中華人民共和国はその決議により『中国を代表する唯一の国家』として認められたのだから、それを覆さない限り中華民国を国家として認めるのは国連決議に違反する」と主張した。言うまでもなく、中国の外交部も10月10日の定例記者会見(※5)で頼清徳の講和を徹底して批判し、「いかなる事態になっても中国の意思は変わらない」と断言した。石破首相が中国の李強首相と会談したのは、まさにこの真っただ中だったので、10月11日のコラム<石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う>(※6)のような事態になったのは、中国としては、どんなに歓迎すべきことだったか、想像に難くない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。「中国、台湾総統「新二国論」に激しい抗議 日台関係に危機をもたらす石破発言(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。「双十節」式典で演説する台湾の頼清徳総統(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.youtube.com/watch?v=2J5Cz9tBzV4(※3)http://www.news.cn/tw/20241010/cfbabbb57f514762928ff3463d4a17af/c.html(※4)https://tv.cctv.com/2024/10/10/VIDELrcxu3PeuTEjRnv7EnQJ241010.shtml(※5)https://www.mfa.gov.cn/web/wjdt_674879/fyrbt_674889/202410/t20241010_11504884.shtml(※6)https://grici.or.jp/5675(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9c369c86038e2dc965dbde9d8b163fdb596830fe
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2024/10/15 10:54
GRICI
石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う【中国問題グローバル研究所】
*10:23JST 石破首相、李強首相との会談で台湾問題に関し「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持」と誓う【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。10月10日にラオスで中国の李強首相と会談した石破首相は、自分は田中角栄元首相の愛弟子だとして「日中友好」を重んじ、何よりも台湾に関して「日本は日中共同声明で定められた立場を堅持する」と誓った。10月10日の台湾の頼清徳総統の「二国論」演説で激しい批判を展開している中国は、この一言さえ引き出せば、あとはどうでもいいのである。日本のメディアでは、石破首相が強硬な姿勢で日本側の要求を主張したと、一斉に石破首相の姿勢を礼賛しているようだが、中国側から見ると、まったく別の景色が見えてくる。◆日本メディア、一斉に石破首相の主張を礼賛いつものことではあるが、日本のメディアは日本側に都合のいいことだけしか報道しないので、どのメディアも多少の違いはあるものの、おおむね以下のような論調で石破・李強会談を報道している。●石破首相は、8月の中国軍機による日本の領空侵犯など中国軍の活動について深刻な懸念を表明した。●石破首相は、深圳市の日本人学校に通う男児が襲われて死亡した事件の事実解明や邦人保護の徹底を求めた。●石破首相は、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、中国が続けている日本産水産物の禁輸措置について協議した。●石破首相は、中国のネットにおける反日的なSNSの取り締まりを要求した。●一方、石破首相は、師と仰ぐ、日中国交正常化を実現させた田中角栄元首相の言葉を引用し、「日中両国の指導者が明日のために話し合うことが大事だ」と呼びかけ、戦略的互恵関係を続けたいと表明した。(日本メディア報道の例は以上)このように日本メディアは、あたかも「石破首相が勇ましく日本側の主張を中国側に突き付けた」というトーンで報道しており、最後の田中角栄元首相に触れた報道は少なかった。◆李強・石破会談に関する中国側の報道中国の外交部は10月10日夜9時31分、<李強は日本の首相石破茂と会見した>(※2)という見出しで、会見の模様を報道した。以下、中国側が発表した李強発言と石破発言の概略を示す。李強:習近平国家主席が(石破首相就任祝電で)指摘したように、中国と日本は一衣帯水の隣国であり、平和共存、永遠の友好、互恵協力の道を追求することが両国国民の基本的利益だ。日本が中日間の四つの政治文書の原則と合意を真摯に遵守し、二国間関係の正しい方向をしっかりと維持し、二国間関係の政治的基盤を維持し継続することを期待する。日本が、両国間の戦略的互恵関係を包括的に推進し、新たな時代の要請に応える建設的で安定した中日関係の構築に努めることを期待する。李強:中国と日本の発展はお互いにとって挑発ではなく重要な機会である。中国は日本と協力してそれぞれの比較優位性をさらに活用し、技術革新、デジタル経済、グリーン開発などの分野での協力のための新たな成長点をさらに模索し、輸出管理対話メカニズムをうまく活用し、産業サプライチェーンの安定性と円滑性、および世界的な貿易システムの維持に取り組んでいきたい。また共同で地域の平和と繁栄発展を促進していきたい。石破:日中両国は現在、戦略的互恵関係を包括的に推進し、建設的で安定した二国間関係の構築に努める方向で進んでいる。日本は中国と協力して将来を見据え、ハイレベル交流を強化し、あらゆるレベルでの対話と意思疎通を密接に行い、協議を通じて懸案問題を解決し、互恵協力を引き続き推進し、日中関係を安定的かつ長期的に促進していきたいと望んでいる。日本は中国との「ディカップリング(切り離し)や関係の断絶」をするつもりは全くなく、各領域における実務協力を深め、その成果が両国のより多くの国民に利益をもたらすよう希望している。台湾問題については、日本は≪日中共同声明≫で定められた立場を堅持しており、変更する意思は全くない。日本は国際問題や地域問題について中国との意思疎通を強化し、課題に対処していきたいと考えている。(以上)このように中国側から見れば、石破首相は模範的な表明をしていることになる。「≪日中共同声明≫で定められた立場を堅持する」ということはすなわち、「一つの中国」を堅持し、「台湾独立を絶対に認めない」ということに相当する。もちろん日本側は石破首相が、中国が喜ぶ満額回答をしていることは一切報じないが、中国の外交部は、少なくとも石破首相が言っていないことを発表したりするようなことはしない。そのようなことをしたら、たちどころに日本側からクレームが来るのを知っているからだ。日本の外務省あるいは駐中国の日本大使館などが異議を表明してないということは,石破首相はまちがいなく中国外交部が発表した言葉を言っているということになる。◆中国にとってはコントロールしやすい石破内閣中国にとっては、総理になったら靖国神社を参拝すると公言した高市早苗議員が総理にならなかっただけでも歓迎すべきことだと思っている。懸念は石破氏が自民党総裁選前に台湾を訪問していたことだったが、このたびの李強との会談で、「台湾独立は支援しません」と誓ったようなものだから、これで、その懸念材料はほぼなくなった。中国にとって石破茂個人に関する懸念は、内閣を組むまではさまざまあったが、その後に発表された石破内閣のメンバーを見て、「おおかた親華(親中)」とみなしており、御しやすいとみなしていた。加えて今般、台湾問題について、田中角栄の名前まで出して、日中国交正常化の時の基本方針を堅持すると誓ったのだから、もう何の心配もない。石破氏が総理になる前から唱えてきた「アジア版NATO」は、総理大臣所信表明で自ら封印してしまったし、アジアのどの国が日本ごときと軍事同盟を組む可能性があるかと、中国は石破の国際感覚を、今ではバカにしている。中国政府自身はそのようなことは言わないが、中国のネットに湧き出ている声を削除していないので、中国政府もネットの声に肯定的だということが窺(うかが)える。総体的に見て、「石破には現在進行している国際的時局を見る目が皆無だ」と思っているので、台湾問題に関して田中角栄が発表した「日中共同声明」を模範とすると誓ってくれれば、それ以外のことはどうでもいいのである。中国は今、同じ10月10日に台湾の頼清徳総統が講演で表明した「二国論」への批判に燃え上がっており、他のことにはほぼ無関心だ。頼清徳発言と、石破首相外交デビューのASEAN諸国にとってのアジア版NATOに関しては、別途改めて論じたいと思う。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※3)より転載しました。写真: 出典:新華社(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202410/t20241010_11505060.shtml(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7c87345f7a3b948525d9c7db095e064a49055446
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2024/10/15 10:23
GRICI
中国は石破首相をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
*10:24JST 中国は石破首相をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。習近平国家主席が石破首相に祝電を送ったのは毎回のことなので特記するほどのことではない。中国政府側メディアは内政干渉になるとして評価はしないが抗議はする。それらを含めて中国が全体として石破首相の誕生をどう思っているかに関して考察を試みる。◆習近平国家主席の石破首相に対する祝電10月1日、習近平国家主席は石破茂首相に祝電を送り(※2)、日中は一衣帯水の隣国であると指摘した上で、「両国が平和共存、永遠の友好、互恵協力、共同発展の道を歩むことは、両国国民の基本的利益にかなう」と述べた。また「日中間の4つの政治原則と合意を遵守し、両国間の戦略的互恵関係を包括的に推進し、新時代の要求に沿った建設的で安定的な日中関係を構築することに尽力することを期待する」とも表明している。岸田(元)首相就任の際も、それ以前の日本の首相が就任した際にも送っている祝電で、目新しいことではない。李強国務院総理も同日、石破首相に祝電を送っている。中国は全ての国に対して、同様のことをしている。以下に示すのは、主として民間のウェブサイトに見られる膨大な情報の中から抽出した主だった見解である。◆「タカ派の高市氏でなく、親中の石破氏で良かった」と中国のネット民石破茂氏は中国では「親華派」(親中派)と見られることが多い。自民党議員でありながら常に自民党に反旗を翻してきたからだ。特に麻生氏や安倍元総理に対しては「背後から刺す」行動を取ることが多かったので、麻生氏や安倍氏を「アメリカ追従の軍国主義者」と見ている中国では、石破氏は「最終的には中国の味方」的な感覚を、全体としてフワーっと持っている。一方、高市早苗氏は、根っからの強烈な右翼だと見ている中国のネット民は多く、特に今般の自民党総裁選挙運動のときに「総裁に就任したら(→総理に就任したら)、靖国神社に参拝する」と明言したので、「どんなことがあっても高市氏には総理になってほしくない」という書き込みが中国のネットで数多く見られた。だから、そのような人物を総裁に選ばなかった自民党は、全体としてはやはり「親中」に傾いていると安堵しているという側面がある。この一連の情報の中で「おや?」と興味を引いたのは以下のような見解だった。●なんで石破が日本国民に人気があったか、ようやくわかったよ。日本国民は自民党にしか任せられないと思っているのが多いだろ?でもその自民党に不満を持っている。だから、野党ではないけど、自民党に弓を引く石破が人気だったのかもね。●でもさ、総理になったら結局「古い自民党」に戻っただけだろ?だから総理になったとたん、「嘘つき内閣」って呼ばれて、今は日本国民に嫌われてるようだよ。支持率だって、歴代総理の中で下から二番目の支持率の低さ。一番低いのが麻生総理で、その次に低いのが石破だよ。短命政権に終わるんじゃない?(中国のネットからの引用はここまで)ここに挙げた中国ネット民の最後の主張は、その通りだと思う。総裁選の選挙期間中は、あれだけ「すぐ解散」には反対だという趣旨のことを、さまざまな表現を使って主張してきたではないか。小泉進次郎氏が主張する「すぐ解散」を何度も否定し、「せめて予算委員会を開催したあとでないと、国民には自民党が何を主張しているかを理解してもらうのは困難だ」と言いながら、小泉氏の主張した通りのことをやっているではないか。日本国民が石破内閣を「嘘つき内閣」と呼ぶのは当然だと思う。当選した瞬間に、ここまで前言を翻(ひるがえ)す総理は見たことがない。何一つ信用できない。個人的感想は控えなければならないが、しかし、こればかりは言わずにはいられないので、お許し願いたい。◆「石破は総裁選の前に台湾を訪問していることに警戒せよ」と中国のネット民さて、中国側の見方の話に戻る。「石破は親中」と書いているネット民に対して、一方では「何を単純なことを言っているんだ」という他のネット民の反論も数多く見受けられる。理由の一つとして、石破氏ら日本の国会議員団が8月に台湾を訪問し、石破氏が8月13日に頼清徳総統と会談したことを挙げている。これに関してはネット民だけでなく、中国大陸の外交部など、中国政府は、「台湾独立派を激励するもの」として激しく抗議を表明している。その意見に賛同するネット民は、「総裁選のための人気取りに決まってるじゃないか」というのが多く、「日本では台湾を支援していない政治家は生きていけないんじゃないか?」という類のもある。◆アジア版NATOには中国全体が反対岸田元総理は、バイデンべったりだったので、バイデンのご機嫌に沿うためにも「(西側の)NATOのアジア化」に専心した。中国はもちろん激しく抗議してきた。今回、石破氏が唱えるのは「アジア版NATO」で、少しニュアンスが異なる。日米同盟は重視するものの、日米地位協定などを改正して「日米が対等」になる形に持っていき、むしろ日本が中心になって周辺諸国に呼び掛けてアジア版の軍事同盟的なものを形成していこうというのが石破氏の主張だ。これに関してはアメリカも肯定的でない。中国政府は言うまでもなく「アジア版NATO」には絶対に反対で激しい抗議を示している。そもそもASEAN諸国などが、こういった形で白黒つけて米中のどちら側に立つかを示すことを最も嫌がっているのに、それをやろうというのだから、日本人から見ても非現実的だ。結果、中国全体としては石破政権がこのまま進むことに対して喜んではいない。しかし高市氏なら総理になったとたんに靖国神社に参拝するだろうから、それよりは「まだマシか」というのが中国全体の見方だ。いずれにしても、自民党である限り、誰がトップに立とうと大差ないと中国は思っている。◆総理になって3日目に検挙?10月3日、中国大陸のネットを見ていて驚いた。いきなりスクープのように、次から次へと「石破氏、総理になって3日目に検挙?」という文字が躍った。その一つ一つをリンクさせるのは大変なので、関連情報をひとまとめにしたリンク先を示す(※3)。興味のある方は、リンク先をご覧いただきたい。日本ではニュースになっていなかったので、驚いて日本のネットに戻ってみたところ、共同通信が<石破首相らを大学教授が告発 収支報告書に過少記載の容疑>(※4)と書いているのを知った。「告発」を「検挙」と表現していただけのようだ。それにしても「裏金議員」を自民党公認候補に入れるか否かを議論しているときに、石破氏自身が金額は少なくても「収支報告書に過少記載」があるのでは話にならないだろう。このニュースを、こんな凄いスピードの速報の形で伝えている中国は、石破政権が短命で終わることを望んでいるのかと、そのことが興味深かった。◆高市氏はなぜ逆転されたのか?もちろん投票前に「総理になったら靖国神社に参拝する」と公言してしまったことが、心の中では親中派の多い自民党議員に警戒心を招いただろうし、公明党との連立が困難になるだろうから、解散選挙などがあったときに自民党が勝てない(=自分が当選できない)かもしれないと懸念した議員が多かったのだろうということは容易に想像がつく。また日本政治の専門家たちが指摘しておられるように、万一にも決選投票に持ち込まれた時には「〇〇に乗れ」といったキングメーカーの指示もあったのかもしれない。ただ、筆者自身の感覚から言うと、決選投票の直前までは高市氏が議員票においても石破氏を大きく引き離していたので、こういった説明には、なにか納得がいかないものを個人的には感じていた。筆者個人の少ない経験からすると、「3分間で答えてください」という要求をテレビやラジオあるいは講演などで要求された場合、「3分以内に回答する」ということを瞬時に計算して起承転結を構成することは、何としても守ってきた鉄則のようなものだった。総裁選の第1回目の投票が終わった後に、「5分間」、石破氏と高市氏にスピーチをすることが許された。「ここが勝負だ!高市さん、頑張れ!」と息をのむような緊張感の中で二人のスピーチを聴いた。石破氏の場合、いつもの陰湿で低い声の受け答えと違い、はっきりと大きな声で明確に「自分が総裁になったら何をする」ということを、起承転結を考えて5分以内言い切った。それに対して、期待した高市氏は、歴代の総理に感謝するという趣旨のことに時間を使い、「自分が総理になったら、必ずこうする!」という強いメッセージがないまま時間オーバーになってしまった。司会者から制限時間が過ぎたことを告げられた高市氏が最後に放ったひとことは「公明党との協力」だった。ああ、だめだ・・・。勝負があったな・・・。高市さんともあろう人が、あの人生の全てを懸けたはずの「5分間」を自ら殺してしまったのではないか・・・。敗北会見で高市氏は「私の力不足以外の何物でもない」という趣旨のことを仰っておられたように思うが、力不足は、あの最後の「5分間」だったように思う。自民党の中には右から左まで、どんな人でもいる。自民党機関誌で中国問題を長いこと連載させていただいたり、自民党本部で数多くの講演もさせていただいたが、もう自民党一党だけで日本の左翼も右翼も代表できるほど、非常に幅広く網羅していると痛感したものだ。それに比べて野党は、やたら細かな主張の違いにこだわって別の党を結成している。これでは野党は勝てない。自民党政治が長続きする裏には「旧統一教会」や裏金の「お陰」もあったかもしれないが、むしろ、この「政治的スタンス」に関する「幅の広さ」あるいは「寛容さ?」にあるのかもしれないと、つたない経験ながら思う次第だ。追記:念のため、習近平国家主席は2021年10月4日に、岸田首相が就任した時にも岸田首相宛に祝電を送っている(※5)。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。発足した石破内閣(写真: 代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202410/content_6978125.htm(※3)https://haokan.baidu.com/web/search/page?query=%E6%97%A5%E9%A6%96%E7%9B%B8%E7%9F%B3%E7%A0%B4%E8%8C%82%E7%AD%894%E4%BA%BA%E8%A2%AB%E6%A3%80%E4%B8%BE(※4)https://nordot.app/1214396377421972120?c=302675738515047521(※5)https://www.gov.cn/xinwen/2021-10/04/content_5640969.htm(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0d8816223d643edb438581aa8e97c5feee16ab3d
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2024/10/07 10:24
GRICI
自民党総裁候補者に問う 「日本の官公庁のデータは中国人が作成している実態」をご存じか?【中国問題グローバル研究所】
*10:25JST 自民党総裁候補者に問う 「日本の官公庁のデータは中国人が作成している実態」をご存じか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党総裁候補者が14日、日本記者クラブで討論会を開催。その質疑応答は見ごたえがあった。何名かの立候補者が対中防衛策やデータの絶対的機密性を必要とするマイナンバーなどの実行を強調しておられたが、「日本の官公庁のデータのほとんどは中国人が作成している実態」をご存じだろうか?防衛や経済安全保障は声高に叫ばれても、誰一人、それを実行するための膨大なデータ作成を誰がやっているかに関する認識はないように(あるいは知っていても見ぬふりをしているように)見受けられた。日本の官公庁のデータ作成に関する実態の一端を指摘し、各立候補者にネットを通して問いを投げかけたい。◆日本の全省庁統一資格が隠れ蓑周知のように日本のすべての官公庁には<全省庁統一資格>(※2)が設けられている。このリンク先に書いてある通り、全省庁統一資格とは「各省庁における物品の製造・販売等に係る一般競争(指名競争)の入札参加資格(全省庁統一資格)」のことだ。この資格は、各省庁申請受付窓口に掲げる申請場所のいずれか1か所に申請し、資格を付与された場合において、その資格は該当する競争参加地域のうち、希望する地域ごとに所在する各省庁の全調達機関において有効な入札参加資格となる。本資格が有効となる各省各庁は「衆議院、参議院、国立国会図書館、最高裁判所、会計検査院、内閣官房、内閣法制局、人事院、内閣府本府、宮内庁、公正取引委員会、警察庁、個人情報保護委員会、カジノ管理委員会、金融庁、消費者庁、こども家庭庁、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省で外局及び附属機関その他の機関並びに地方支分部局」だ。競争参加地域及び都道府県名はリンク先に列挙してある通り、北は北海道から南は沖縄県までの日本全国を網羅する。入札して落札する可能性のある企業に対する<付与数値・等級等>(※2)を見る限り、日本の大手企業しか受注できないような仕組みになっている。ここが肝心だ。官公庁の業務を受注した日本の大手企業が、実際には何をやっているか、ご存じだろうか。この大手企業が隠れ蓑となり、実際のデータ作成業務は、中国大陸にある「小さな中国企業」あるいは「中国人個人」が実施している流れをご紹介する。◆「全省庁統一資格企業」→「日本の下請け子会社」→「中国人孫請け業務」たとえば日本政府の官公庁の中央が、入札する資格を持っている「全省庁統一資格企業」Aに100億円のプロジェクトXを発注したとする。データ作成やウェブサイトの作成や補修をする場合、ふつうならば、企業AがA社内に多くのIT人材を抱えていて忠実にプロジェクトXを実行しなければならないはずだ。ところが、日本には優秀なIT人材が少なく、A社内で実行することが困難と判断する「全省庁統一資格企業」が少なくない。実行できる人材を抱えていれば給料を支払わなければならないし、そのプロジェクトに専念していなければならないので、儲けが大きくはならない。そこで少なからぬ「全省庁統一資格企業」は官公庁から受注した業務を、「日本国内の下請け子会社」に委託する。その際、仮に受注金が100億円のケースでは、良くても数億円、極端な場合は1億円程度で下請けの子会社にやらせるのである。そうすれば企業Aはボロ儲けをし、社員などほとんどいなくても受注金をたっぷりA社で貯めこむことができる。A社から受注した「日本の下請け子会社」は、本来なら100億円ほどかかる業務を数億円か1億円程度でこなさなければならないので、普通に日本人のIT人材を雇用してプロジェクトXの業務を完遂することなどできるはずがない。そこで格安の報酬でも引き受けてくれる中国人IT人材を使用することになる。「日本国内にある下請け子会社」は、自社で中国人元留学生を雇用する場合もあれば、中国にいるIT人材に遠隔で依頼する場合もある。国家全体としてのGDPは2010年から中国が日本を上回り、中国は世界第二の経済大国になっているが、現状ではまだ平均的な給料からすれば、日本の方が中国よりはやや高いので、中国人IT人材は、今のところ静かにじっと耐え、日本の官公庁の個人データを黙々と入力し、日本の官公庁のウェブサイトを黙々と制作補修している。筆者自身は1980年初頭から中国人留学生の世話をし続け、それなりの人脈もまだいくつか残っているので、実際に日本の官公庁の業務を、薄給で日夜遂行している実態を知っている。悪いのは中国人IT人材ではない。悪いのは日本政府であり、この実態を(おそらく)薄々知りながら、徹底究明をしようとしない日本の国会議員たちだ。もちろん、最も悪質なのは受注した「全省庁統一資格企業」だが、その「闇のからくり」を知りながら目をつぶる政府与党国会議員の罪は計り知れなく重い。◆中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた!2023年7月26日、ジャーナリストでもあり作家でもある岩瀬達哉氏が、<中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容>(※4)という論考を発表しておられる。岩瀬氏は事件の概要を、以下のように書いておられる。《事件の概要》2017年の大幅な税制改正を受け日本年金機構は、厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作成し直す必要があった。約770万人の厚生年金受給者に「扶養親族等申告書」を送付。記載内容に漏れや間違いがないかをチェックしてもらうとともに、あらたにマイナンバーや所得情報を記入し、送り返すよう要請。送り返されてきた「申告書」をデータ入力することでプログラム化をはかることとした。機構はその入力業務を、東京・池袋のデータ処理会社、SAY企画に委託したものの、同社が中国大連市のデータ処理会社に再委託したため、そこから日本の厚生年金受給者の個人情報が、中国のネット上に流出した。(以上、岩瀬氏の論考から引用)岩瀬氏は2023年7月28日にも<【追及スクープ】「500万人のマイナンバーと年収情報」を中国に丸投げした池袋の企業に支払われた「7100万円の報酬」>(※5)を公開しておられ、それらの論考を詳細にご覧になればわかるが、この問題は何度も国会で取り上げられている。約10日間にわたった衆参両院での集中審議を行ったようなので、国会議員で、この事件を知らない者がいるとは思いにくい。しかし岩瀬氏の記述によれば、「国会での虚偽答弁の連発」により、うやむやにされてしまい、まるでなかったかのようなことになっているようだ。岩瀬氏の論考には、以下のようなことが書いてある。――すべてのはじまりは、’17年12月31日の大晦日だった。この日、日本年金機構の「法令等違反通報窓口」に2通のメールが届いた。メールの中身は、「最近中国のデータ入力業界では大騒ぎになっております。『平成30年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の大量の個人情報が中国のネットで入力(ママ。公開のミスか?)されています。普通の人でも自由に見られています。一画面に受給者氏名、生年月日、電話番号、個人番号(マイナンバー)、配偶者氏名、生年月日、個人番号、配偶者の年間所得の見積額等の情報が自由に見られます。誰が担当しているかはわかりませんが、国民の大事な個人情報を流出し、自由に見られても良いものでしょうか? ネットからハードコピーを取りましたが、アップできませんでした。残念です。対策が必要と思います。宜しくお願い致します」というものだった。(岩瀬氏の論考の引用はここまで)これは過去のことでなく、日本の官公庁のデータ入力やウェブサイトの制作補修は、今この瞬間にも中国人IT人材が行っている。◆自民党総裁候補は自覚してほしい冒頭に書いた自民党総裁候補者が14日に日本記者クラブで行った討論会および質疑応答の中で、河野太郎候補をはじめ、少なからぬ候補者はマイナンバーの早期徹底化に関して強調しておられたが、筆者は裏の実態を知っているので、日本で最後の一人になってもマイナンバーの登録をする気はない。候補者の方々は、この現実をご存じなのか否か、ご存じでもスルーしているだけなのか、拙稿をご覧くださった関係記者の方たちには、ぜひ明らかにするように候補者の取材をお願いしたい。高市早苗候補の回答は見事だったが、しかし現役の経済安全保障大臣として、「全省庁統一資格企業」の一部が下請け子会社に業務を丸投げしている状況をご存じだろうか?子会社が「下請け」でしか生きていけない現状こそが「経済安全保障」に最も欠かせない課題で、そこが解決されない限り「孫請け中国人IT人材」の問題は日本から消えない。小林鷹之候補は「日本が世界をリードする国にならなければならない」として、「イノベーション」を例の一つに挙げておられたが、日本の知的水準が、世界レベルで見たときに、どれだけ低いかご存じだろうか。これに関しては一つのコラムでは書ききれないので、せめて6月21日のコラム<Natureの研究ランキング「トップ10」を中国がほぼ独占>(※6)に書いた事実を直視してほしい。1980年初頭から中国人留学生の教育に携わってきた筆者としては、最近の中国人人材の知的レベルの高さと、それに反比例するような日本人人材の低迷に当惑している。その原因がどこにあるのかを究明するために日々苦闘しているが、「孫請け中国人」が現れる原因の一つには、この問題もあることを見逃さないでほしい。言ってはならないことを書いてしまったが、真実を求める姿勢を崩すことはできないので、日本国民のために、あえて吐露した次第だ。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。自民党総裁候補者が討論会(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.p-portal.go.jp/pps-web-biz/geps-chotatujoho/resources/app/html/shikaku.html(※3)https://www.p-portal.go.jp/pps-web-biz/geps-chotatujoho/resources/app/pdf/bekki.pdf(※4)https://gendai.media/articles/-/112337(※5)https://gendai.media/articles/-/113087(※6)https://grici.or.jp/5381(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d3296f703edd924317ee43f8ccf6de55785cb0c4
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2024/09/17 10:25
GRICI
NHK元中国人スタッフ自身が「何を考えていたか」を発信 「次の反乱」に無防備な日本【中国問題グローバル研究所】
*10:28JST NHK元中国人スタッフ自身が「何を考えていたか」を発信 「次の反乱」に無防備な日本【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月31日に靖国神社に落書きをした犯人は、「靖国神社を侮辱する動画を流せば人気が出て、再生数が多くなり金儲けができる」というのが動機だった。8月19日未明に同じ場所に落書きした模倣犯は「仲間に,カッコいいだろ!」と自慢したかったからだ。日本を最大限の形で侮辱したのは「英雄的行為だ」という認識を持っている。8月19日午後に、その模倣犯の犯行に関するニュースを報道していたNHKの中国人外部スタッフが原稿にない文言「釣魚島(尖閣諸島)は中国の領土」や「南京大虐殺を忘れるな」などと報道したあと中国に帰国し、中国のSNSの一つウェイボーで自分の思いを数多く発信している。そこには強烈な「反日感情」が滲み出ている。中国で「胡越」という名で特定され絶賛されている彼は、NHKで22年間も働いていた。それでもなお、帰国後の発信から見える「反日感情」は、日本にいる、第二、第三・・・の「胡越」、いや無限に潜んでいるかもしれない「次の胡越」の出現を示唆し、無防備な日本に背筋が寒くなる。◆帰国後のNHK中国人元スタッフの発信が示す「第二の胡越」の出現中国で明らかにされているNHKの中国人元外部スタッフの名前は「胡越」だ。8月31日のコラム<5月の靖国神社落書き犯は2015年から監獄にいた犯罪者 PartII―このままでは日本は犯罪者天国に>(※2)に書いたように、「胡越」は8月26日にウェイボーで「ゼロに戻った、帰ってきた」、「22年間、22秒間」、「全ては22秒間に濃縮した」と発信している。彼のウェイボーにおけるアカウントは「ジュゴtreetalk」(ジュゴは樹語の簡体字で、「雲南から発布」とあるので、帰国した先は雲南のようだ。8月29日になると「胡越」は「ジュゴtreetalk」で(※3)、「多くの網友(ネットにおける友人=応援してくれるネット民)に感謝する。心が温まる」と書き、「現在の日本のメディアは歴史の真実を隠蔽している」などと書いている。8月30日午前11時24分に「胡越」は「ジュゴtreetalk」で、(※4)「日本は上から下まで、隠そうとすればするほどボロが出るような喧騒と狂乱の中にあるが、それは想定内のことだ」と、まず書いている。ここで「胡越」が使った中国語は「欲盖弥彰」という4字熟語で、「悪事は隠そうとすればするほど露呈しやすい(隠すより現るるはなし)」という意味だ。この4字熟語を見たときに、2020年7月にヒューストンの中国総領事館が閉鎖された一件を想起させた。このときも中国の外交部は「做賊心虚、欲善弥彰」(※5)(アメリカは悪事の露見をおそれてビクビクしているんだろうが、それを隠そうとすればするほどボロが出る)という言葉を用いてアメリカを非難した(と、中央テレビ局CCTVが報道した)。「胡越」はジャーナリストなので、中国外交部の発言および中共中央宣伝部が管轄するCCTVの報道をしっかり把握していることだろう。だから敢(あ)えて、その中共中央と同じ言葉を使ったものと思う。ということは、同じ思想的立場にある人間がNHKの外部スタッフとして22年間も仕事をしてきたのかと、ふと、そのことに背筋の寒くなる思いがよぎった。「胡越」はさらに「(日本は)すでに歴史の真相に敵対する歴史修正主義という戻れない道を選んだのだから、公義(道義、正義)を主張する個人の声を圧殺するしかない。私が声を発するのでなかったとしても、声を発する他の人が必ず現れるだろう。事実は非常に簡単なことだ」と書いている。これはすなわち、「第二、第三の自分が必ず現れるだろう」ということを示唆したものであり、日本には「第二、第三の胡越」どころか、数えきれないほどの隊列が潜んでいると覚悟した方がいい。8月30日15時35分、「胡越」は「ジュゴtreetalk」で(※6)、以下のように「自分が原稿にない内容の報道をしたことの正当性」を主張している。###報道の操守(そうしゅ)(節操、規範。信念を固く守って心変わりしないこと)や職業倫理に違反するか否かに関しては、以下の点が参考になる:1) 生放送では、台本から脱線することはよくあることだ。番組によっては、脱線の自由度も自ずと違ってくる。台本から脱線することは、直接的にはニュース報道の操守に違反したことを意味するものではない。2)脱線した報道の内容こそがカギだ。契約書に放送内容に関する取り決めがあるだろうか?一般的な契約書には、公序良俗や社会正義などに違反してはならないという報道のガイドラインが引用される。この「22 秒間」をあなたは「違反」だと思うのだろうか?3)(契約者の)甲と乙の間で内容に異議がある場合、それは契約上の紛争であって、報道操守とはいかなる関係もない。原稿にない言葉を発するという原稿脱線は、報道操守と社会正義を守っている(その範囲内だ)という例は、どこにでもあることだ。###以上が「胡越」の意思表明だ。すなわち「胡越」は、あの「報道テロ」のような事件を、「合法的な行為」として正当化しているのである。NHKの稲葉会長は8月22日、「副会長をトップとする検討体制を設けて、可能な限り原因究明を行う」とした上で、今後「損害賠償請求を行い、刑事告訴を検討する」という趣旨のことを言っているが、そのためには「胡越」本人が日本にいなければならない。日中の間には「犯罪人引渡条約」がないからだ。だというのに、追及を可能にする実働的な措置を何も取っていない。本気で原因究明を行ない、刑事訴訟にまで持って行くつもりなら、たとえば、「胡越」が日本を離れられないように、せめて「事件の究明が終わるまで、パスポートを一時預かる」くらいのことはしていいはずだ。しかし、まるで「スムーズにお帰り頂くための準備をしてあげた」かのように何もしなかったので、「胡越」は8月26日には、いかなる妨害も受けることなくスムーズに帰国してウェイボーで発信を始めたわけだ。◆「第二、第三の胡越」が出て来る危険性を秘めている在日中国人の現状日本の国立大学をはじめ大手の私立大学にも、「中国人留学生学友会」というのがあり、会長は必ず日本にある中国大使館に留学生の活動状況を報告しなければならない。つまり中国大使館の管轄下にあるのだ。日本には企業を経営している中国大陸から来た中国人が大勢おり(出入国管理統計から引用したデータ(※7)によると、2023年7月時点で、500万円の出資で2名以上の雇用を有する経営・管理ビザを持っている中国人の人数は15,986人)、日本の年末年始などにはそういった会社の社員なども集まって盛大なパーティを開く。そこには中国大使館の官員がゲストで参加することが多い。つまり中国政府もしくは中国共産党と親しく結びついているのである。また日本の企業で働いている大勢の中国人(主として元留学生)もいるが、ほとんどは非政治的であるものの、心の中では中国共産党を愛し肯定している者も少なくない。大学等で教育職に就いている中国人の中にも、中国共産党を愛し肯定している者が相当数おり、日本のメディアはむしろ迎合的にゲストとして呼んで、知らない間に中共中央統一戦線部のプロパガンダに与(くみ)しているテレビ局などさえあるくらいだ。NHKやフジテレビの一部番組などがその典型と言っていいだろう。念のため、日本の出入国在留管理庁<令和5年(2023年)末現在における在留外国人数について>(※8)によると、2023年末の「在日中国人総数は821,838人」となり、「留学在留資格の中国人は134,651人」となっている。これら巨大な母数の中で、いつ「第二、第三の胡越」が出現してもおかしくない。「胡越」のウェイボーに書かれているメッセージのうち「反日感情」に基づく発露は論外として、唯一正しいことを言っているのは、まさにこの「第二、第三の自分が出ても不思議ではない」という趣旨の発言だ。しかし日本には、その警戒心が完全に欠落している。そのことに気が付いている人は何人いるのだろうか?いたとすれば、NHKはこのような失敗をしなかったはずだ。今回の「報道テロ」で責められるべきは「胡越」ではなく、警戒心が欠落しているNHKもしくは日本政府であると結論付けることができる。「胡越」を帰国させてしまったNHKと日本政府の行動は、なによりも「警戒心の欠如」を如実に表していることを見逃してはならない。なお、中国における「反日感情がどのようにして植え付けられたのか」に関しては、次回のコラムで考察することとする。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。写真:NHK放送センター(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5604(※3)https://passport.weibo.com/visitor/visitor?entry=miniblog&a=enter&url=https%3A%2F%2Fweibo.com%2F7942871901%2FOut47dKDd&domain=weibo.com&ua=Mozilla%2F5.0%20%28Windows%20NT%2010.0%3B%20Win64%3B%20x64%29%20AppleWebKit%2F537.36%20%28KHTML%2C%20like%20Gecko%29%20Chrome%2F109.0.0.0%20Safari%2F537.36&_rand=1725326437723&sudaref=(※4)https://weibo.com/7942871901/OuDtopW83(※5)https://m.news.cctv.com/2020/09/25/ARTIzQtqfZRcdvpSC9O4FVhy200925.shtml(※6)https://weibo.com/7942871901/OuF7mt3c6(※7)https://common-s.jp/tousich.html(※8)https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00040.html(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/45ed333947715e15a2834eeaf85fa55a9cda0484
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2024/09/03 10:28
GRICI
ハリス氏願望とは逆行 米「飛行士が地球に帰還できぬ事態に」、中「月面土壌から水生成法を発見」【中国問題グローバル研究所】
*10:25JST ハリス氏願望とは逆行 米「飛行士が地球に帰還できぬ事態に」、中「月面土壌から水生成法を発見」【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。米民主党党大会においてハリス大統領候補は指名受諾演説で「宇宙とAIで米国が中国に勝つ」という理念を断行するという趣旨の約束をしたが、その足元で米国は宇宙開発において信じられないような失敗を続けている。NASAが新型宇宙船の帰還を断念したという。今年6月6日に有人飛行船スターライナーで国際宇宙ステーションに送り込み、8日間ほどで地球に戻るはずだった宇宙飛行士が宇宙に取り残されたままになっている。その状態が来年2月まで続くという。その一方で、人類で初めて月の裏側に着地することに成功した中国の月探査衛星は、これも人類で初めて月の裏側から土壌を持ち帰ることに成功したのだが、このたび、月の表側から持ち帰った土壌を用いて大量の水を生成することに成功した。◆米国――NASA新型宇宙船帰還断念し、飛行士が地球に帰れぬ事態に今年6月6日に、米航空宇宙大手ボーイング社製の新型宇宙船「スターライナー」が2人の宇宙飛行士を、米主導の国際宇宙ステーション(ISS)に送り込んだ。当初は8日間で2人を乗せて地球に帰還することになっていた(※2)。ところがさまざまなトラブルが生じて、スターライナーの有人飛行による予定期間以内の地球帰還が困難になったことが6月10日頃から何度も報道されるようになっていた。そして今年8月24日、NASA(米航空宇宙局)は遂に「スターライナーの有人での地球帰還を断念した」と発表したのである(※3)。推進装置などに不具合が発生したためで、テストパイロットを務める宇宙飛行士2人は2025年2月にスペースXのクルードラゴンで地球に帰還する。ISS内の物資が足りなく立ったため、ロシアに頼んで補給物資を届けてもらう始末だ。<ロシア補給船「プログレス」、ISSに到着-食料や備品など2.8トンを運ぶ(UchuBiz)>(※4)にも、その辺の事情が書かれている。スターライナーはNASAが2010年に「商業乗員輸送開発1」契約として、ボーイング社にこの宇宙船の基礎設計として1800万ドル(26億円)を払い、2011年の「商業乗員輸送開発2」契約では9300万ドル(134億円)払った。たび重なる開発遅延により2024年8月時点で、超過コストが16億ドル(2300億円)を超える赤字プロジェクトとなっている。それでもISSに宇宙飛行士などを運ぶ役割を担う宇宙船が必要だったのは、ISSに飛行士を運ぶ宇宙船は、ロシアのソユーズしかなかったからだ。ロシアに全面的に頼っているのは危険だと米国は判断したのだろう。だから民間会社のボーイング社に有人飛行船の製造を委託していた(のちにはスペースX社のクルードラゴンにも委託している)。だというのに、ボーイング社のスターライナーは膨大な予算を喰っただけでなく、製造完成は遅々として進まず、ようやく完成してISSに飛行士を運んだと思ったら、今度は「飛行士を乗せて帰還することが困難になった」という、あり得ない事態にあるのが、米国の宇宙開発の実態だ。◆中国は月の裏側に着地しただけでなく、回収した月土壌から水生成にまで成功それに比べて中国は月の裏側着地とその土壌サンプルの回収に成功しただけでなく、持ち帰った月の表側の土壌から大量の水を生成することに成功している。「月の裏側に着地できた」というのは前代未聞のことで、そのこと自体、人類として初めての成功だった。なぜなら、月の自転と公転が一致しているため、地球からは月の片面だけしか見えていなくて、それを「表側」と称すれば、反対側の「裏側」には、地球自身に遮られて、地球からは直接信号を送ることができないからだ。かつて旧ソ連も米国も試みたが、すべて失敗に終わっている。ところが2018年5月、中国は通信を中継するための人工衛星「鵲橋(じゃっきょう)号」を打ち上げ、「ラグランジュ点」にピタリと打ち当てることができた。ラグランジュ点というのは二つの天体があった時の力の相互作用のうち、引力が相殺されて平衡を保つ点のことである。中継通信衛星「鵲橋号」を、まず地球と月を結ぶ直線上で、月の公転軌道の外側にあるラグランジュ点で静止させ、それを反射鏡として使ってして月の裏側の定位置のコントロールを地球上から行うという論理である。同年12月8日、嫦娥(じょうが)4号(月面探査機)を打ち上げ、2019年1月3日に月の裏側に軟着陸した。その後2020年に嫦娥5号を月の表側に軟着陸させて月の表側の土壌をサンプルとして回収。2024年6月には嫦娥6号が月の裏側に軟着陸して「月の裏側の土壌」をサンプルとして地球に持ち帰った。米国の科学者がかつて「鵲橋号」を使わせてくれと依頼してきたので、中国は快く承諾したが、NASAには月の裏側に行くだけの能力がなく、また今年6月の「月の裏側の土壌」に関しては、「人類共有のものなので、米国にも供与せよ」と中国に「上から目線」で要求した。中国のネットでは「あれだけ中国を潰そうとしているくせに、中国の成果だけは寄こせって言うんだ――!」という不満の声が上がっていたが、そうこうしている内に中国は8月22日に、<嫦娥5号が回収した土壌から、大量の水を生成する方法に成功した>(※5)。嫦娥5号が回収した土壌ということであるなら、「月の表側」の土壌だということになる。しかし、月の表だろうと裏だろうと、月面基地を建築しようとしている中国にとって、これは大きな発見だし、人類にとっても初めての発見なので、宇宙開発の新たな一歩を踏み出したと言えよう。◆「引退する米国主導のISS」と「稼働し始めた中国の宇宙ステーション」アメリカが主導するISS(国際宇宙ステーション)の寿命は、本来2024年までとされていた。しかしトランプ政権のときにそれを2030年まで延長させたが、このたびNASAは2031年1月にはISSを制御して落下させることを決定した(※6)。中国は早くから、何としても中国もISSに参加させてくれと米国に懇願してきたが、米国はそれをかたくなに拒み続けた。そこで中国は、中国独自の宇宙ステーションを建設しようと決意し、遂に2022年10月に中国独自の宇宙ステーション「天宮」の稼働に入ったのである。2022年11月1日のコラム<決戦場は宇宙に移った 中国宇宙ステーション正式稼働>(※7)にも書いたが、中国宇宙ステーションには「ロシア、インド、ドイツ、ポーランド、ベルギー、イタリア、フランス、オランダ・・・」など数多くの国がすでに国際協力プロジェクトを立ち上げている。また同年5月にはBRICS諸国が「BRICS宇宙協力連合委員会」を発足させた。◆ハリス演説とは逆行している宇宙の現実8月25日のコラム<ハリス指名受諾演説、対中政策なく理念だけ トランプ氏猛口撃>(※8)に書いたように、米民主党党大会においてハリス大統領候補は指名受諾演説で「宇宙とAIで米国が世界を未来に導き、米国が中国に勝つ」という趣旨のことを誓っている。ハリス副大統領は現在、米政府の宇宙政策を統括する「国家宇宙会議」の議長を務めている。トランプ政権のときは当時のペンス副大統領が議長だった。このたびNASAが、スターライナーの有人飛行による地球帰還を断念したことは、ハリス氏にとっては大きな痛手で、大統領選挙にもマイナスの影響を与えるし、共和党の大統領候補であるトランプ氏にとっては、格好の攻撃材料となるだろう。そもそもハリス氏は「国家宇宙会議」の議長でもあるのだから、スターライナーの大失態を知らないはずがないし(知っていなければならないし)、知っているとすれば、指名受諾演説で、アメリカが中国を打ち負かす分野として「宇宙」などを持ってこなければ良かったのにと思う。半導体を例に挙げるならまだしも、自分自身が議長をしている「国家宇宙会議」管轄下のNASAの大失敗を掌握していなかったという可能性もあり、好ましいことではない。前述したように、スターライナーの肩代わりをするのはイーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースXだ。2031年のISS落下に関しても、落下処理を行なう宇宙船の製造委託先にスペースXが選ばれている。そのイーロン・マスク氏をトランプ氏は味方につけて、11月の大統領選で当選したら、起用すると表明している。8月22日のコラム<トランプ氏「当選すればマスク氏起用の可能性」と言うが、マスク氏は習近平と仲良し 対中政策はどうなる?>(※9)に書いたが、そのイーロン・マスク氏は親中であるだけでなく、習近平とは仲良しだ。なまじハリス氏が指名受諾演説で「宇宙において勝つのは中国ではなくアメリカだ」という趣旨のことを「理念的に(願望的に?)」言ったために、宇宙空間における実態が浮き彫りになってしまった。彼女の演説は明るくエネルギッシュで、心に訴えることには成功したように見えるが、論理を詰めていくと痛手になるのかもしれない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※10)より転載しました。写真: 不具合を続けるボーイング社スターライナー(提供:Bill Ingalls/NASA/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.space.com/boeing-starliner-first-astronaut-mission-end-june-18(※3)https://www.nasa.gov/news-release/nasa-decides-to-bring-starliner-spacecraft-back-to-earth-without-crew/(※4)https://news.yahoo.co.jp/articles/85a004943bccb83c4e63b1515d2b65ad2c0862bd(※5)https://news.cctv.com/2024/08/22/ARTIDfu2QC7JgZB43Vd1acwz240822.shtml(※6)https://www.nasa.gov/wp-content/uploads/2015/01/2022_iss_transition_report-final_tagged.pdf?emrc=4c4497(※7)https://grici.or.jp/3746(※8)https://grici.or.jp/5580(※9)https://grici.or.jp/5567(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5b5c89cd4becc25887fadae935709e5d761eba88
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2024/08/27 10:25
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トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】
*15:59JST トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」(※2)は、トランプ氏を独占取材した記事を掲載。取材でトランプ氏は「中国大陸に対抗する台湾を防衛するか?」という問いには答えず、「台湾は米国から半導体を100%奪っていった」とかわし、「台湾はわれわれに防衛費用を支払うべきだ」と主張した。中国はこのトランプ発言を「みかじめ料を要求された島(台湾)は大騒動」という見出しで、主として台湾の情況を中心に報道している。◆ブルームバーグの独占取材記事まず、7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」が、どのような記事を掲載したのか、台湾防衛関係の部分だけを抜き出してご紹介したい。●トランプ氏の外交政策に対する取引的な見方と、あらゆるディール(取引)を「勝ち取る」という願望は、世界中に影響を及ぼす可能性があり、米国との同盟関係を断絶させることさえある。●「アジアの民主主義(台湾)を分離独立の地域とみなす中国から台湾を守るという米国の取り組み」について尋ねられたトランプ氏は、「台湾に対する最近の(米国内)超党派の支持にもかかわらず、中国の攻撃に立ち向かうことについては、せいぜいよく言って、生ぬるい」と表明した。(筆者注:米国は台湾を守るか否かに関しては回答を回避した。)●彼(トランプ氏)の懐疑的な姿勢の一部は、経済的な憤りに根ざしている。「台湾はわれわれから半導体事業を奪った」と彼は言う。「つまり、われわれはどれだけ愚かなのか? 彼らはわれわれの半導体事業をすべて奪った。彼らは途方もない巨額の富を手にしたのだ」と彼は続けた。彼が台湾に望んでいるのは、米国に防衛費(保護料)を支払うことだ。「われわれは保険契約と何ら変わらないと思うんだよ。なぜだ? なぜ、われわれはこんなことをしているんだい?」と彼は尋ねた。(筆者注:最後の「こんなこと」は英語では「this」だけだし、一瞬の会話の中で出てきた言葉なので、受け取る側が解釈するしかないが、「保険契約なら契約料を毎月支払うはずだが、それを受け取ってないのに、なぜ台湾を守らなければならいんだ?」という意味を示唆していると考えられる。)●彼(トランプ氏)が懐疑的になるもう一つの要因は、地球の反対側にある小さな島を守ることの実際的な難しさだ。「台湾は9,500マイルも離れているんだよ。それに比べて、中国からは68マイルしか離れていない」と彼は言う。台湾への関与を放棄することは、米国の外交政策の劇的な転換をもたらすだろう。それはウクライナへの支援を停止するのと同じくらい重大なことだ。しかし、どうやらトランプは、これらの関係を根本的に変える代替案の準備ができているようにも見える。(筆者注:この最後の文章は、おそらく「守ってほしければ金を払え」という言葉を指しているものと推測される。)ブルームバーグの独占取材記事の台湾に関する部分は概ね以上だが、別途、台湾問題に焦点を絞った討論番組<Watch Trump Suggests Taiwan Should Pay US for Protection - Bloomberg(トランプが「台湾は防衛費を支払うべきだ」と言ったことをウォッチしよう)>(※3)も報道されている。冒頭に掲げたタイトル画像は、この番組からのスクリーンショットである。トランプ氏の主張には、一貫した外交観が滲み出ている。すなわち、NATOに関してもトランプ氏は「その国の軍事費負担が不十分ならば米国はその国を守らず、ロシアに『好きにするよう促す』」(※4)とさえ言っている 。トランプ政権時代には日本や韓国に対しても、駐留米軍に対する経費をもっと支払わないと米軍を撤退させるようなことをほのめかしたことがある。台湾に対しても、「米軍に守ってもらおうと思うなら、米国に保護料を支払え」というわけだ。この姿勢であるなら、中国は喜ぶだろう。◆中国での報道7月18日の中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は<みかじめ料をトランプに要求され、島内(台湾)は大騒動>(※5)という見出しの、かなり長い記事を発表した。ほとんどは、ブルームバーグの独占取材記事の解説と、台湾がどのように報じたかに関する内容が多いが、いくつかの要点をピックアップしてお示しする。台湾報道に関しては当然、中国大陸にとって都合のいいものを拾い上げているとは思うが、台湾で報道されていること自体は事実だし、中国がどのように受け止めているかも見えてくるので、考察する価値はあるだろう。●台湾の世論は、民進党当局の徹底した「親米・反中」政策が今後の台湾にとって厳しい課題となると一般に考えている。●トランプ氏は「米国に保護してほしいのなら、台湾はみかじめ料を支払うべきだ」とストレートに言った。トランプ氏の「台湾防衛」に対する態度が冷淡であることのもう一つの理由は、何千マイルも離れた小さな島を守るのは非常に難しいと考えていることだ。●トランプ氏は、今年4月の、タイム誌とのインタビューでも同様の見解を表明した。彼は、米国に依存する欧州とアジアの同盟国が米国に資金を支払うことを望んでいる。●タイム誌は「中国が台湾を攻撃した場合、米国は台湾を守るべきか」と質問し、トランプ氏は「この質問は何度も受けているが、(私の切り札が明らかになるので)答えたくない」と明言を避けた。●台湾にみかじめ料の支払いを求めるトランプ氏の発言に対し、民進党「立法院」議員団の呉思耀幹事長は17日、米国は「台湾の防衛に協力している」と述べ、台湾の卓栄泰行政院長は、「台湾は台湾海峡とインド太平洋地域にわたる共通の責任に対して、より多くの費用を支払う用意がある」と述べた。これに対して台湾の多くのネット民は不満を表明し、台湾のソーシャルプラットフォームPTTでは「お前が払えよ。私に払わせるな。みんなを水の中に引きずり込むな」と民進党当局を罵倒した。また、少なからぬ人が「我々が望んでいるの海峡の平和共存だ」、「みかじめ料は『台湾独立』を叫んでいる人から徴収せよ!」と呼びかけた。●国民党の立法委員である王鴻薇氏は、「台湾の米軍からの兵器購入額が最高値を更新し続けている今、米国の武器売却やみかじめ料に対処するために、将来さらに多くの資金を提供する必要があるのだろうか?」問うた。●元台湾空軍副司令官の張延廷氏は、「保護費は天文学的な金額になる」と述べ、「台湾は全体的な環境を理解しなければならず、米国の操り人形になってはならない」と語った。●元立法委員の蔡正元氏は17日、台湾の一部の愚か者は台湾と米国は「価値ある同盟」だとよく言っているが、「台湾は米国の単なる属国に過ぎない」とした上で、「台湾と米国の間には友好関係はない。すべては金銭的な関係にすぎない」と述べた。●米国在住の学者、翁履中氏は、「台湾がトランプを満足させるために、もっとみかじめ料を支払っても構わないが、いくら払っても彼を満足させることはできないのではないか」と心配している●国民党の立法委員である馬文君氏は、「唯一確かなことは、トランプは台湾の安全保障上の利益を考慮するのではなく、米国の利益を最優先しているということだけだが、民進党はそれを明確に理解することができない」とした上で、「鍵となるのは両岸関係だ。両岸関係がうまく処理されれば、台湾は他国に支配される必要はない」と述べた。●台湾国立政治大学国際関係センターの研究者厳振生氏は、「台湾海峡の問題解決を米国に依存することは、台湾にとって多大な損失をもたらし、効果的ではない」と述べた。●台湾聯合新聞網は17日、「最近の典型的なケースは、台湾は古い第4世代戦闘機F-16Vを購入したが、これは他国が第5世代ステルス戦闘機F-35を購入するよりも高価だったということである」と報道している。また「トランプ氏もバンス氏も現実主義者であり、(中国)大陸の軍事発展により、米国は台湾への派兵は極めて採算の合わない取引であり、米国の国益に合致しないとの認識を強めている」と書いている。(以上、「環球網」より)台湾では国民党の趙少康氏は18日に「頼清徳は今のところ押し黙っているが、このまま米国に跪(ひざまず)き続けるのだろうか?」と投稿し(※6)、民衆党の柯文哲主席は「保護費だって?それって、米国が台湾に支払うのか、それとも台湾が米国に支払うのか、どっちなんだい?だって、台湾が米国のために第一列島線を守ってあげてるんだから、米国が台湾に支払うべきなのでは?」(※7)という趣旨のことを書いている。なお、トランプ氏の台湾防衛に関する回答と発言は昨年から何度もくり返されているが、これまでの発言に関しては拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第一章 TikTokと米大統領選と台湾有事】の【二 もしトランプが大統領に当選したら台湾有事はどうなるか?】で詳細に考察した。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。写真: ブルームバーグTV番組からのスクリーンショットに筆者が和訳加筆(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.bloomberg.com/features/2024-trump-interview/(※3)https://www.bloomberg.com/news/videos/2024-07-16/trump-suggests-taiwan-should-pay-us-for-protection-video(※4)https://www.bbc.com/japanese/articles/cevrjpgn418o(※5)https://taiwan.huanqiu.com/article/4IeY497cZfM(※6)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E5%97%86-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E6%90%B6%E6%99%B6%E7%89%87%E7%94%9F%E6%84%8F-%E8%B6%99%E5%B0%91%E5%BA%B7-%E5%8F%B0%E7%81%A3%E8%A2%AB%E7%95%B6%E8%82%A5%E7%BE%8A-073741087.html?guccounter=1(※7)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E8%A6%81%E5%8F%B0%E7%81%A3-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E8%B3%B4%E6%B8%85%E5%BE%B7%E6%B2%89%E9%BB%98%E4%BB%A5%E5%B0%8D-%E6%9F%AF%E6%96%87%E5%93%B2%E9%9C%B8%E6%B0%A3%E5%8F%8D%E5%97%86-%E5%B9%AB%E4%BB%96%E6%93%8B%E9%82%84%E8%A6%81%E4%BB%98%E9%8C%A2-065547831.html(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ef4b86f8b564211b82b54d1f5d2e9a97b14de7e7
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2024/07/19 15:59
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NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:14JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆ハンガリー外務大臣「NATOが反中ブロックになることに賛同しない」7月12日、ロイター社は<ハンガリーはNATOが「反中」ブロックになることを支持しない、と大臣は言う>(※2)という見出しでNATOワシントン宣言に反対するハンガリーの意見を報道した。それによればハンガリーのシーヤールトー(シャルト)・ペーテル外務大臣は「ハンガリーはNATOが反中ブロックになることを望んでおらず、そうすることを支持しない」と述べたとのこと。彼はまた「ウクライナが軍事同盟に加盟すれば、NATOグループの結束が弱まるだろう」とも述べている。さらに「NATOは防衛同盟だ…反中ブロックに組織化することはできない」と、ハンガリー国営テレビの質問に対し答えたという。7月10日のコラム<嗤(わら)う習近平――ハンガリー首相訪中が象徴する、したたかな中露陣営と弱体化するG7>(※3)に書いたように、ハンガリーは欧州議会の新たな右派会派「欧州の愛国者」をフランスのマリーヌ・ルペン氏が率いる極右政党「国民連合」を迎えて誕生させている。ルペン氏は<バイデン政権は中国に対してあまりに攻撃的過ぎて、アメリカは自国の同盟国がアメリカの統治下で団結できるようにするために敵を作りたいだけだ。アメリカが欧州を中国の敵に誘導している>(※4)と述べている。欧州が一枚岩でないということは、NATOも一枚岩ではないことになる。◆NATOワシントン宣言は「日本を戦争に誘い込む」シナリオ特に冒頭に書いたNATOワシントン宣言を詳細に読むと、これはNATOの思いというより、バイデン大統領の米大統領選に対する意図が全面的に出ており、トランプ前大統領との討論会の失態を挽回するために書かれたもののように映る。NATO諸国には「もしトランプが大統領に選ばれたらNATOは消滅する」と脅迫し、米大統領選でバイデンに有利になるために作成された宣言であるという印象を深くした。あと4ヵ月後に、もしトランプが大統領に当選したらウクライナ支援をやめて、アメリカの代理戦争であるウクライナ戦争をすぐさま停戦に持って行くと、トランプは豪語している。NATOがもっと多くの拠出金を分担しなければ、ロシアの好き勝手にさせてNATOを守ることをしないとまでトランプは言っているのだ。事実、トランプ政権時代には戦争は起きなかった。それどころかトランプはまるで「禁じられた恋」のように秘かにプーチンを慕い、北朝鮮の金正恩とも会って和平に向けて動こうとした。しかしバイデン政権になった瞬間からウクライナ戦争、イスラエル戦争と、世界に戦争をばらまく戦争屋ネオコンの本領が再び発揮され始めた。もし、それを信じない方がおられたら、ぜひとも拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の【図表6-2 朝鮮戦争以降にアメリカが起こした戦争】(p.234~p.235)および【図表6-8 「第二のCAI」NEDの活動一覧表】(p.253~p.255)をご覧いただきたい。アメリカは、トランプ政権時代を除いて、第二次世界大戦が終わったあとから、ただひたすら全世界で戦争を巻き起こしてきたのだ。そのためにはルペン氏が言っているように「アメリカは敵を必要としている」。旧ソ連を崩壊させるに当たって、アメリカは「NATOを1インチたりとも東方に拡大させない」と約束しておきながら、ゴルバチョフがそれを信じてワルシャワ機構を解体させソ連が崩壊するのを見届けると、その瞬間から東方拡大を始めたではないか。それでも飽きずに、「戦争の種」を求めて、今度は台湾有事を創り出して、親米的でない国家「中国」を潰そうとしている。その大きな枠組みの中で人類が動かされていることに、日本人は気づこうとしないし、気づきたくないようだ。そして気づいた時には、日本人はアメリカの駒として戦場に送られていることになる。その視点でNATOワシントン宣言を見ると、NATOワシントン宣言は結局のところアメリカの世界一極支配を維持するために「日本を戦争に誘い込むシナリオ」であることが浮かび上がってくる。日本国民の命を守るために、その視点を一人でも多くの日本人と共有したいと切に望む。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/world/europe/hungary-will-not-support-nato-becoming-anti-china-bloc-minister-says-2024-07-11/(※3)https://grici.or.jp/5437(※4)https://www.nytimes.com/2022/04/13/world/europe/le-pen-nato-russia-germany.html(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef
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2024/07/12 16:14
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NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:12JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。ワシントンで開かれていたNATOサミットがアメリカ時間7月10日に宣言を出し、その中で中国に関して、ロシアの侵攻に対する「決定的な支援者だ」と批判した。インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化も盛り込んだ。これに対して中国は激しく抗議している。両者の言い分を考察すると、日本人がやがてアメリカの駒として戦場で戦わされるシナリオが見えてくる。◆NATOワシントン宣言の対中批難部分アメリカ時間7月10日、NATOサミットは<Washington Summit Declaration(ワシントン・サミット宣言)>(※2)というタイトルの宣言を発表した。その4項目目に「戦略的競争、蔓延する不安定性、そしてくり返されるショックが、われわれのより広範な安全保障環境を特徴づけている」とした上で、中国に対する警告が盛り込まれている。また26項目および27項目にも対中批難が書かれているので、それらの概要をまとめて以下に記す。●野心と威圧的な政策を表明してきた中華人民共和国(以下、中国)は、われわれの利益、安全保障と価値観に引き続き挑戦している。●ロシアと中国の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づく国際秩序を無効化させ再構築しようとする試みは、深刻な懸念の原因となっている。われわれは、ハイブリッド、サイバー、宇宙、その他の脅威と悪意のある活動にも直面している。●中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に可能にしている。これにより、ロシアが近隣諸国と欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。われわれは中国に対し、ロシアの戦争活動に対するすべての物質的および政治的支援を停止するよう求める。●中国は、自国の利益と評判に悪影響を及ぼさずに、ヨーロッパにおける近年最大の戦争を可能にすることはできない。●中国は、欧州大西洋の安全保障に体系的な挑戦を取り続けている。われわれは、中国に起因する偽情報を含む悪意のあるサイバー活動とハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。われわれは中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。●われわれは中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。われわれは中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。●中国は核弾頭の増加と高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。われわれは中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。(概ね以上)◆中国の反論これに対して駐EUの中国使節団の報道官は、7月11日の記者会見で以下のように反論した(※3)。●NATOサミットの宣言は、冷戦のメンタリティと好戦的なレトリックに満ちており、中国関連の内容は、挑発、嘘、扇動、中傷に満ちている。●周知の通り、中国はウクライナ危機の生みの親でもなければ当事者でもない。ウクライナ問題に関する中国の核心的立場は、和平交渉と政治的解決を促進することであり、これは国際社会から広く認識され、高く評価されている。●中国は紛争当事者に殺傷力のある武器を提供したことはなく、民生用ドローンの輸出を含む軍民両用物品を常に厳しく管理してきた。中国とロシアの間の正常な貿易は第三者に向けられたものではなく、外部からの干渉や強制の対象であってはならない。●ウクライナ危機は今のところ長引いているが、誰が火に油を注いでいるのか、誰がこの機会を利用して個人的な利益を求めているのか。国際社会は、このことをはっきりと認識している。われわれはNATOに対し、国際社会の正当な声に注意深く耳を傾け、自らが行っていることを深く反省し、責任を転嫁したり他国を非難したりするのではなく、事態の悪化を緩和し、問題を解決するための具体的な行動をとるよう求める。●アジア太平洋地域は平和的発展の高地であり、地政学的な駆け引きの競技場ではない。NATOは再三再四にわたって「ユーラシア安全保障のつながり」誇大宣伝しているが、その意図は何処(いずこ)にあるや?●われわれはNATOに対し、北大西洋における地域防衛機関としての地位を堅持し、アジア太平洋地域の平和と安定を台無しにしたり、特定の大国の覇権の道具にならないよう要請する。●中国は世界平和の建設者であり、世界の発展に貢献し、国際秩序の擁護者である。われわれはNATOに対し、中国に対する誤った認識を直ちに正し、冷戦のメンタリティとゼロサムゲームを放棄し、いわゆる中国の脅威を声高に叫ぶのをやめ、対立と対抗を扇動するのをやめ、世界の平和と安定のためにより実践的なことを行うことを要求する。(以上)一方、中国の外交部はやはり7月11日の記者会見で(※4)以下のように抗議している。●NATOの「ワシントン首脳宣言」は、アジア太平洋地域の緊張を誇張し、冷戦思考と好戦的な発言に満ちており、中国関連の内容には偏見・中傷・挑発に満ちており、われわれは強烈な不満を抱いており、断固として反対する。●今回のNATOサミットにはNATO創設75周年という背景がある。存続の必要性を示すために、米国とNATOは会合前にNATOの「栄光」と「団結」を誇示し、NATOを「平和維持組織」であるかのように見せかけているが、実は「冷戦の遺物」であることを覆い隠すことはできない。●NATO軍は「人道的災害の回避」を旗印にしながら、かつてユーゴスラビアに対して78日間にわたる爆撃を実施した。NATOの黒い手が伸びるところはどこでも、混乱が現れる。NATOのいわゆる安全保障は、他国の安全保障を犠牲にして成り立っている。NATOが売り込む「安全保障上の不安」の多くは、NATO自身が引き起こしている。NATOが誇るいわゆる「成功」や「力」は世界にとって大きな危険を意味する。「仮想敵国」を設定することで存在を維持し、国境を越えて勢力を拡大するのはNATOの常套手段であり、中国に対する「体制的挑戦」の誤った位置付けに固執し、中国の内政・外交政策の信頼を損なうことはまさにそれを体現している。●ウクライナ問題に関して、NATOが「中国の責任」論を主張するのは荒唐無稽であり、邪悪な意図がある。NATOはいかなる証拠もなく、米国が捏造した虚偽の情報を拡散し続け、公然と中国を中傷し、中国とEUの関係を破壊し中欧協力を潰したいのだ。ウクライナ危機を今日まで延期させ、火に油を注いでいるのが誰であるか、国際社会は知っている。NATOは、危機の根本原因と自らの行動を熟考し、国際社会の公正な声に注意深く耳を傾け、責任を転嫁したり他国を非難するのではなく、状況を緩和するために実際的な行動を取るよう勧告する。●NATOはその範囲をアジア太平洋にまで拡大し、中国の近隣諸国や米国の同盟国との軍事・安全保障上の関係を強化し、「インド太平洋戦略」の実施において米国に協力してきたが、その行為は中国の利益を損ない、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊し、すでに地域諸国の疑念と反対を引き起こしている。●中国はNATOに対し、冷戦思考・陣営対立・ゼロサムゲームという時代遅れの概念を放棄し、中国に対する誤った理解を正し、中国の内政干渉をやめ、中国のイメージを汚し、中国とEUの関係に干渉しないよう求める。ヨーロッパを混乱させた後、アジア太平洋を混乱させるのをやめよ。●中国は自国の主権・安全保障・発展利益を断固として守り、自国の発展と対外協力を通して、世界の平和と安定にさらなる安定と前向きなエネルギーを注ぎたい。(以上)外交部のこの回答は7月11日の新華網(※5)が掲載し、中央テレビ局CCTV(※6)も同じ内容で報道した。したがって、外交部の記者会見での回答が中国政府の正式見解であると解釈していいだろう。「(NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm(※3)http://eu.china-mission.gov.cn/stxw/202407/t20240711_11451831.htm(※4)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202407/t20240711_11452358.shtml(※5)http://www.news.cn/world/20240711/9707b00c867b4840bef0f9f4da2e6ac8/c.html(※6)https://tv.cctv.com/2024/07/11/VIDENC0MeGRaeb3gQsqlcFeW240711.shtml(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef
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2024/07/12 16:12
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プーチン訪朝で国境の豆満江開放 中国海警局の船も日本海に!【中国問題グローバル研究所】
*10:38JST プーチン訪朝で国境の豆満江開放 中国海警局の船も日本海に!【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。6月19日、北朝鮮を訪問していたプーチン大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長との間で「包括的戦略パートナーシップ」が締結された。軍事同盟に近い「互いの国が第三国から攻撃された場合には互いに支援する」という項目が盛り込まれたようだが、同時に合意文書には「豆満江(とまんこう)に架かる国境道路橋の建設に関するロシア連邦政府と朝鮮民主主義人民共和国政府間の合意」も謳われている。豆満江は「中露朝」三ヵ国の国境に接する河で、日本海に注ぐ国際河川だ。中国にとっては、旧ソ連以来塞(ふさ)がれていた豆満江の航行が自由化されることになる。それは立ち遅れていた「東北大振興政策」を大きく飛躍させ中国にとっては大きな収穫だが、日本にとっては厳しいダメージをもたらすだろう。なぜなら貨物を運ぶコンテナ船だけでなく、中国海警局の大型船舶も北の豆満江から日本海に直行できるようになるからだ。これらはアメリカによる「中露朝」に対する制裁や包囲網がもたらした結果でもあることを見逃してはならない。◆中露間に横たわっていた豆満江航行閉鎖問題中国の東北部吉林省の東端(地図で見て右端)は、「中国・ロシア・北朝鮮」三ヵ国の国境が接する地区につながっている。そこには豆満江(中国語では図們江)という河が流れており、朝鮮戦争のときに旧ソ連と北朝鮮をつなぐ「ソ朝友誼大橋」が架けられた。1952年のことで、最初は武器やその他の支援物資をソ連から北朝鮮に運ぶための簡易な木製の大橋だったが、1959年に金属製に強化された。問題は橋の高さだ。水面からわずか7メートルほどしかないので、中国領土の吉林省の琿春(こんしゅん)市防川村までしか中国の大型船は航行できず、中国東北部は本来なら豆満江を下れば日本海に出られたのに、それが出来なかった。中国はこれまで何度も何度もロシアに対して大橋を解体して中国の大型船舶が通れるように改善して欲しいと頼んできたのだが、ロシアは、プーチン時代に入ってからも首を縦に振らなかった。それが突如変わったのは、ウクライナ戦争で西側からの厳しい制裁を受ける中、習近平が経済面に関しては徹底してプーチンを支援してきたからだと断言していいだろう。それ以外に思い当たる理由はない。◆中国20年来の「東北大振興政策」がウクライナ戦争により実現中国建国当時、東北部は「旧満州国」が遺した重工業施設が豊富だったので、第一次五ヵ年計画は東北部の重工業を中心として経済建設が推進され、改革開放までは中国経済の花形として、その骨格を成していた。しかし1980年代から自由経済の波が中国全土を覆うにつれ、国営企業を中心とした重工業地帯・東北部は経済発展から取り残され、荒廃の一途をたどっていったので、胡錦涛政権時代に入った2003年に「東北大振興政策」が打ち出された。あれから20年。遅々として進まなかった東北大振興に新しい光をともしたのはロシアのプーチンだ。ウクライナ戦争により西側からの制裁が激しいため、活路を東側に見いだし、中国語で「看東方」と呼ばれる東方重視策に着手した。拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第五章 ウクライナ戦争と「嗤う習近平」】の【三 中国20年来の「東北大振興政策」が初めて実現できた】で書いたように、2023年9月7日に、習近平が黒竜江省ハルビン市で「新時代の東北全面振興を推進する」という座談会を開いた。すると、それに呼応するように数日後の9月11日から13日にかけてウラジオストクで開催した「東方経済フォーラム」で、プーチンは「ロシアは遠東重点戦略に着手する」と宣言。今年5月16日から17日にかけて、プーチンは国賓として訪中し習近平と会談して共同声明を発表した。その中で、「(中露)両国は図們江(豆満江)下流域を航行する中国船舶の問題について朝鮮民主主義人民共和国と建設的な対話を行う」と謳っている。今般のプーチンによる訪朝の目的の一つは、まさにこの「豆満江における中国船舶航行問題」を解決することにある。日本のメディアでは、「露朝の接近に中国ジレンマ」といった傾向の報道が多く、中国が露朝接近を警戒しているのではないかと思っているようだが、実際はまったくその逆だ。◆豆満江を航行できれば、中国海警局の大型船舶も直行で日本海に出航できるこれまで堰(せ)き止められていた豆満江流域の吉林省琿春市防川村から日本海までは、わずか15キロメートルしかない。目の前が日本海だ。ただ露朝間に架けられている友誼大橋の高さは7メートルなので、貿易用のコンテナ船であれ海警局の大型艦艇であれ、せめて水面から30メートルほどの高さがないと安心して通ることはできないだろう。したがって現在の友誼大橋を取り壊して、新しく水上最低30メートルほどはある鉄橋を建設するしかない。建設費用は中国が持つだろうが、ここが「大海」に開放されれば、中国東北部の経済繁栄に大きく寄与するのは確実だ。中国にとって露朝会談は大歓迎なのだが、問題は日本に対する安全保障上のリスクが急激に高まるということである。中国はこれまで北朝鮮を動かそうと思えばできたはずだが、今回習近平は先ずプーチンを説得してから、プーチンに北朝鮮の金正恩を説得させた。それは習近平がウクライナ戦争によりプーチンの足元を見ている証拠なのだが、金正恩は習近平の話よりもプーチンの話の方に、より耳を傾ける傾向にある。北朝鮮の建国の父である金日成(キム・イルソン)はソ連の支援を得て北朝鮮を建国したからだ。一方、中朝は軍事同盟を結んでいるが、露朝は(旧)ソ連崩壊によってそれまでソ朝間で締結されていた軍事同盟は消滅していた。プーチンによる24年ぶりの訪朝は、まさにその軍事同盟に近い同盟関係を露朝間にもたらしたことになる。それも、もとはと言えばバイデン大統領がアメリカによる一極支配を維持したいためにウクライナをそそのかし、NATOを焚きつけてプーチンがウクライナを侵略するしかないところにプーチンを追い込んだことが最も大きな要因と言える(ウクライナを侵略したプーチンは悪いが、戦争中であればウクライナはNATOに加盟できないので、ウクライナをNATO加盟させないために戦争を仕掛けたという側面もあるだろう。アメリカはソ連を崩壊させるときにNATOを1インチたりとも東方に拡大させないと旧ソ連に約束したが、その約束を限りなく破ってきたという経緯がある)。もしトランプ前大統領が第二期目も大統領を務めていたら、ウクライナ戦争は起きていなかったことを考えると、その因果関係は明白だろう。トランプはNATOやウクライナを動かしてプーチンを倒そうとするどころか、「NATOなど要らない」と繰り返し、プーチンとは仲良くしたくてならなかった大統領だった。北朝鮮の金正恩と電撃的な会談を行なって、朝鮮戦争以降の北朝鮮問題を解決しようとさえしたではないか(トランプはキッシンジャーのようにノーベル平和賞をもらいたいと思っていた。だから故安倍総理にノーベル平和賞への推薦状を依頼したほどである)。トランプは、アメリカを軍事産業によって運営していこうとするネオコンではないために、ネオコンによって北朝鮮との雪解けは封じられてしまった。朝鮮半島が平和になるとアメリカの軍事産業が要らなくなるので、ネオコンは困るのだ。こうして世界中に戦争をばらまいた、バイデンに代表されるアメリカの戦争屋たちが、「中露朝」という、非米陣営のブロックを形成させる結果を招いたことを見逃してはならない。日本に脅威をもたらすのは、アメリカであることが見えてくるプーチンの訪朝であったと思う次第だ。なお筆者は1947年から48年にかけて吉林省長春市で中国共産党による食糧封鎖に遭い、餓死体の上で野宿させられた経験を持つ。国共両軍の真空地帯である卡子(チャーズ)を脱出したあとは北朝鮮に接する吉林省延吉市に難民として流れ着いた。その延吉で豆満江を見ながら2年間の歳月を過ごし、1950年には朝鮮戦争を迎えた。したがって筆者にとって豆満江は、「二度と戦争を起こしてはならない」と筆者に決意させる象徴の一つでもある。そのため、誰が戦争を起こさせるのかを生涯かけて追究している。その視点から論考を書いていることを読者の方々にご理解いただきたいと、心から願う。この論考はYahoo(※2)から転載しました。写真: プーチン大統領と金正恩委員長(ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4dd0680ec41df27097d0de1173bac50ce79fd406
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2024/06/20 10:38
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ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:55JST ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆中国&ブラジル和平案の「6項目コンセンサス」とは?では、ウクライナ戦争に対する中国とブラジルが共同で提唱する和平案とはどういう内容なのだろうか?今年5月23日、王毅・中共中央政治局委員兼外交部長は、北京でブラジルのアモリン大統領首席補佐官と会談し、「ウクライナ危機の政治的解決のための、中国&ブラジル6項目コンセンサス」に合意した(※2)。以下に、その「6項目コンセンサス」を記す。1.すべての関係者に対し、緊張緩和の「3つの原則」、すなわち、「戦場の拡大禁止、戦闘激化の禁止、戦争を煽ることを禁止」を遵守するよう呼びかける。2.対話と交渉がウクライナ危機から抜け出す唯一の実行可能な方法であると信じる。 当事者は、直接対話を再開するための条件を整備し、全面的な停戦に達するまで緊張緩和を促進すべきである。中国とブラジルは、「ロシアとウクライナ双方が認め、各方面が平等に参加し、すべての和平案について公正な議論を行えるような」国際平和会議を適切な時期に開催することを支持する。3.より大規模な人道危機の発生を未然に防ぐため、関連分野における人道支援を強化すべきである。 民間人や民間施設への攻撃は避けるべきであり、女性、子供、戦争捕虜などの民間人は保護されるべきである。 紛争当事者間の捕虜交換を支援する。4.大量破壊兵器、特に核兵器、化学兵器、生物兵器の使用に反対する。 核拡散を防止し、核危機を回避するために可能な限りの努力をする。5.原子力発電所やその他の平和的な原子力施設への攻撃に反対する。 すべての当事者は、原子力安全条約などの国際法を遵守し、人為的な原子力事故を断固として回避すべきである。6.世界の分断と閉鎖的な政治的または経済的ブロックの形成に反対する。世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を維持するために、エネルギー、通貨、金融、貿易、食料安全保障、石油・ガスパイプライン、光海底ケーブル、電力・エネルギー施設、光ファイバーネットワークなどの重要インフラの安全保障に関する国際協力を強化することを求める。中国とブラジル双方は、上記のコンセンサスに対する国際社会の支持と参加を歓迎し、事態の緊張緩和と和平交渉の促進に共同で建設的な役割を果たす。(以上が中国の外交部ウェブサイトに載っている説明だ。)ここで肝心なのは、「2」にある「ロシアとウクライナ双方が認める」という言葉で、中国&ブラジル案は、「排除の論理」に立っていないことが明らかである。当事者双方が参加し、他のいかなる国や国際組織も平等に自由に参加することを謳っている。また、「4」にあるように、「核兵器の使用を禁じる」という意味では、ロシアに一定の圧力を与えることになる。停戦交渉を行なう時に、戦争をしている当事国を招かないで、片方の国だけが相手国を排除した形で仲間を集めるのでは、停戦に結びつくはずがない。おまけにゼレンスキー和平案はロシア軍が2014年以前までの状態に戻るまで一人残らずウクライナから撤退するというのが絶対条件で、ウクライナの完全勝利以外の結果は絶対に受け付けない。しかし欧州外交問題評議会(ECFR)が今年1月に行った世論調査(※3)では、「わずか10%の欧州人しかウクライナの勝利を信じている人はいない」ことがわかった。この状況でゼレンスキー案が受け入れられる可能性は極めて低いだろう。もちろんロシアがウクライナに軍事侵攻したのが悪い。しかし、そこに追い込んだバイデン政権(副大統領時代からのバイデン個人の動き)を考えると、ロシアだけを一方的に非難することもできない。バイデンは2013年末にウクライナでNED(全米民主主義基金)をフル活用してマイダン革命を仕掛け、ウクライナの親露政権を転覆させ、親米傀儡政権をウクライナに樹立させた。もし仮に日本に激しい反中政権があり、中国共産党が日本で暗躍して日本の反中政権を転覆させ、日本に親中政権を樹立させるようなことがあったとしたら、日本は許すだろうか?あり得ない他国干渉であり、国際秩序を激しく乱すものとして全力で厳しく抗議するだろう。その同じことをアメリカがウクライナでやっているのに、なぜそこはスルーするのか。アメリカなら何をやっても許されるのか。アメリカの都合で(NEDの見えない糸の影響下で)動く日本のメディアは、真相から目をそらさせ、結局のところ日本を戦争へと導いている。そのことを、より多くの日本人が、上記の矛盾からも洞察してくださることを祈らずにはいられない。この論考はYahoo(※4)から転載しました。ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mfa.gov.cn/wjdt_674879/wjbxw_674885/202405/t20240523_11310686.shtml(※3)https://ecfr.eu/publication/wars-and-elections-how-european-leaders-can-maintain-public-support-for-ukraine/(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557
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2024/06/17 10:55
GRICI
ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:54JST ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。6月15日から16日にかけてスイスでウクライナ戦争の停戦に関して「ロシアの参加を排除したゼレンスキー案」に基づいたウクライナ平和サミットが開かれている。会議にはロシアを参加させないという条件があるため、中国は参加しないと表明していた。それに対してウクライナのゼレンスキー大統領は6月2日、シンガポールでの「アジア安全保障会議」で「中国がウクライナ平和サミットに参加しないように各国に呼び掛けている」、「中国は戦争支持者だ」と激しく中国を非難した。だというのに、6月13日になるとイタリアG7サミット後のバイデン大統領との共同記者会見で、突如、「習近平は電話会談でロシアに武器を送らないと約束している」と中国擁護に回り、バイデンが慌てて否定する場面があった。ロシアを含めたすべての国が平等に参加すべきとする「中国&ブラジルが提案している和平案」とともに、何が起きたのかを検証する。◆前言を翻(ひるがえ)したゼレンスキー6月2日、シンガポールのシャングリラホテルで開催されていた「アジア安全保障会議」に出席したゼレンスキーは、記者会見で「中国が他国にウクライナ和平サミットに出席しないよう圧力をかけている」(※2)と非難し、また「中国はロシアの手先であり、戦争の支持者だ」(※3)とまで言って中国を激しく罵倒した。そのゼレンスキーは6月13日になると突然、G7サミットでのバイデンとの共同記者会見で「習近平国家主席がゼレンスキーとの電話会談で、中国がロシアに武器を売却しない」(※4)と約束したと言い出した。この電話会談がいつ行われたものかに関しては触れていない。しかしゼレンスキーは「習近平が立派な人物であれば、私に約束した以上、売却しないだろう」と述べたという。すると、共同記者会見に臨んだバイデンは「武器を生産する能力とそれに必要な技術を提供している。つまり、中国は実際にロシアを支援している」と述べ、反論したほどだ。このことは、<中国に対する見方で温度差 対ロ支援巡って―米ウクライナ首脳>(※5)など、日本の少なからぬメディアも報道している。では、6月2日から13日迄の間に、いったい何が起きたのだろうか?◆ウクライナ高官が訪中し、ゼレンスキーはサウジアラビアに飛んでいた2日のゼレンスキーによる激しい対中批難が公表されると、中国外交部の報道官は定例記者会見で直ちに「中国がウクライナ平和サミットに出席しないように他国を説得した事実は皆無だ!」(※6)と反論し、王毅政治局委員兼外相は6月4日に、訪中していたトルコのフィダン外相と北京で共同記者会見をし「中国はスイスが(ウクライナ平和サミットのために)行った作業を非常に尊重し、スイス側に対して建設的な提案を繰り返し行い、スイス側は常にこれを称賛し、感謝してきた」と述べ(※7)、暗にゼレンスキーの発言を否定した。すると、ウクライナの外務省はそのウェブサイトで<王毅発言に対する(肯定的な)コメントを発表>(※8)し、その翌日の6月5日には、あわててウクライナのアンドリー・シビハ第一副外相(第一外務次官)を北京に派遣し(※9)、中国の孫偉東外交部副部長と会談。それは電光石火のような勢いで、アンドリー・シビハ氏は続けて中国政府の李輝・ユーラシア担当特別代表(※10)および中共中央聯絡部の陳州副部長とも会っている。さらに翌6日には上海に飛び、上海全人代常務委員会副主任(※11)と会談し、さらに中国の13社の企業代表(※12)と面談した。中国はウクライナの最大貿易国で、中国はこれまでウクライナとの友好を重んじ、ウクライナに対する人道支援金などもしてきた。その中国を敵に回すのは賢明でないと判断したためだろう。李輝はこれまで何度もウクライナを訪問して、中国の和平案に関して説明し、かつゼレンスキーから称賛を得ている。今般の中国&ブラジル案に関しても事前にウクライナを訪問し了承を取り付けてから公開している。そのことをゼレンスキーは思い出したのかもしれない。さらに決定打的なことがあった。中国がイランとサウジアラビアを和解させてからは、サウジアラビアの中国への接近が激しくなっている。そこでゼレンスキーは6月12日にサウジアラビアを訪問しムハンマド皇太子と会談している(※13)のだ。スイスで開催するウクライナ平和サミットへの参加を呼びかけたが、どうやらムハンマド皇太子は断ったようだ。平和サミットは首脳級が参加することになっているが、ムハンマド皇太子は結局参加せず、義理のように外相を参加させてお茶を濁した。それもそのはず、5月31日には北京で中国・アラブ諸国協力フォーラム第10回閣僚級会議(※14)が開催され、父親の病気で出席できなかったムハンマド皇太子の代わりに外相が出席し、王毅と会談したばかりだ。さらに6月10-11日にロシアで開催されたBRICS外相会議にも二人は揃って出席している。もちろん中国&ブラジル案が提唱している和平案にサウジアラビアは賛同している。したがって、むしろ、ゼレンスキーに、あのような対中批判などすべきではないと説教した可能性さえある。あれだけウクライナをも支援してきた中国を敵に回せば、それこそゼレンスキー自身が世界を二分させる冷戦構造を形成するのに貢献することになる。このような経緯があり、ゼレンスキーは対中批判を引っ込めたものと考えられる。なお、電話会談は2023年4月に行われたもの(※15)を指しているとしか考えられず、「あの時の習近平との約束を忘れたのか」と諭されたのではないかと思うのである。だから今頃になって1年ほど前の習近平との電話会談を持ち出したのではないだろうか。「ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo(※16)から転載しました。ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://apnews.com/article/ukraine-singapore-shangrila-russia-defense-94ebb72539182a0215c85895725cdd48(※3)https://edition.cnn.com/2024/06/02/europe/zelensky-ukraine-shangrila-address-intl-hnk/index.html(※4)https://jp.reuters.com/world/ukraine/BH666KDFL5IWHCTTLO32WRVUBA-2024-06-13/(※5)https://www.jiji.com/jc/article?k=2024061400319&g=int(※6)https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202406/t20240603_11375826.shtml(※7)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202406/t20240604_11376586.shtml(※8)https://mfa.gov.ua/en/news/komentar-mzs-ukrayini-shchodo-ostannih-zayav-ministra-zakordonnih-sprav-knr(※9)https://mfa.gov.ua/en/news/ukrayina-ta-kitaj-proveli-politkonsultaciyi(※10)https://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/sjxw_674887/202406/t20240606_11377617.shtml(※11)https://mfa.gov.ua/en/news/andrij-sibiga-proviv-zustrich-iz-zastupniceyu-golovi-postijnogo-komitetu-narodnih-zboriv-shanhayu(※12)https://mfa.gov.ua/en/news/andrij-sibiga-proviv-zustrich-z-predstavnikami-dilovih-kil-knr(※13)https://jp.reuters.com/world/ukraine/5WGJXPGG3RIT3BO2673BKD7HUU-2024-06-13/(※14)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202405/t20240531_11366748.shtml(※15)https://www.president.gov.ua/en/news/vidbulasya-telefonna-rozmova-prezidenta-ukrayini-z-golovoyu-82489(※16)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557
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2024/06/17 10:54
GRICI
中露蜜月はなぜ堅固なのか? プーチンは習近平にスパイ極秘情報を渡していた【中国問題グローバル研究所】
*10:41JST 中露蜜月はなぜ堅固なのか? プーチンは習近平にスパイ極秘情報を渡していた【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月16日に訪中したプーチン大統領は、習近平と12時間にわたって時間を共にしているが、どうやらその間にプーチンが習近平に極秘スパイ情報を渡していたことがのちにわかった。それは中露両国政府を転覆させようとする外国勢力による中露国内におけるスパイ活動のリストらしい。6月15日から16日にかけてスイスでウクライナ戦争の停戦案に関する会議が開催されるが、ロシアが呼ばれていない上に、中国&ブラジルによる共同の和平案を新たに公開していることなどから習近平も出席しない。その背後には「秘密スパイ情報」によってますます強固になっていく二人の蜜月がある。「外国勢力」とは誰のことを指すのか?世界はその「外国勢力」によって大きく二分されながら重要な転換点を迎えようとしている。◆中露首脳会談とスパイ極秘情報もう1ヵ月ほど前のことになるが、今年5月16日、プーチンは北京を訪問し習近平と会談した(※2)。中露国交樹立75周年記念であることと、習近平が三期目の国家主席に就任した後に最初に訪問したのがロシアであったためその返礼としてプーチンが5度目の大統領に就任したので、最初の訪問国を中国にしたと、双方が言っている。首脳会談では「中露国交樹立75周年に当たっての新時代の全面的パートナーシップに関する共同声明」(※3)を発表したり、16日の夜には中南海で二人だけの会談をしたり(※4)などしたことは、広く知られているところだ。その合計の接触時間は12時間以上であったと、ロシアのタス通信は伝えている(※5)。注目すべきは5月18日にロシアの衛星通信であるスプートニクが爆弾情報を公開したことである。5月18日、<ロシア議会下院:中国とロシアに対する政府転覆活動に関する資料がロシアから中国に渡された>(※6)というスプートニクの情報が中国語に翻訳されて報道された。そこには以下のようなことが書いてある。――ロシア議会下院のロシア内政干渉調査委員会のワシーリー・ピスカレフ委員長は、ロシアと中国の政府を転覆させようと活動している外国組織の情報を、最近ロシアが中国側に渡したと述べた。同委員会のテレグラム・チャンネルは、ピスカレフ氏の発言を引用して「われわれは最近、ロシアと中国に対する外国組織の政府転覆活動に関する資料を中国側に渡した」と報道した。ピスカレフはまた、「新たな挑戦や脅威に直面し、ロシアと中国に対する外圧が日々高まる中、当該委員会は近い将来、ロシアは中国というパートナーとの協力を継続し、外国の干渉に対する主権と立法を保護する最も優れた方法を実施する計画である」と表明した。報道は以上で、非常に短いものだ。◆中国とは事前に調整し合っていたのか?中国の民間ウェブサイト騰訊新聞 (qq.com)は5月20日、この情報に関して<ロシアは機密資料を送った、外国による政府転覆活動、国家安全部(国安部)は集中的に情報発信、西側スパイは大きな問題に直面している>(※7)という見出しで、かなり長文の報道をしている。報道の一部には以下のようなことが書いてある。――外国が中国に対して政府転覆活動を行なっているのは、決して驚くべきことではない。中国の国家安全部は国務院のすべての部局の中で最も「謎」が多く、公式ウェブサイトがない唯一の部局でもある。この部局に関する外部の情報は公安部部長の名前と履歴に限られており、その他は一切知らされていない。しかし、そんな謎の部門が昨年7月末、独自のWeChat公式アカウントを開設し、通報(密告)チャンネルを発布した。もし外国による中国政府転覆活動がますます横行していないのだったら、何のために国家安全部が舞台裏から表舞台に出る必要があるのか?最近、国家安全部はスパイ摘発事件のニュースに関してWeChatの公開アカウントを集中的に更新している。5月17日、国家安全部は、航空宇宙分野における複数のスパイ事件の摘発経過を紹介する文書を発表した。それによれば5月13日、国家安全部は、スパイが外国人教授になりすまして我が国の生態系データを盗んだ事件を明らかにした。また、利益誘導やポルノ誘惑などの手段も使用されているのを確認している。現在、国家安全部は基本的に週に 2 ~ 3 件の特別報告を報道しており、これは、スパイ事件が毎週偵察され看破されていることを意味する。(騰訊新聞からの引用は以上)◆「外国勢力」の正体は「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)いうまでもなく、極秘情報が言うところの「外国勢力」の正体は、基本的に「第二のCIA」と呼ばれているNED(全米民主主義基金)だ。ロシアでは2012年から「外国の代理人」法を設け、予算の20%以上を外国から提供されている団体に対し、いわゆる「外国の代理人」として登録することを義務づけている。2024年には、「団体」を「個人」にまで拡大させた。それは、2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※8)の4回シリーズを通して書いたように、ソ連時代からアメリカは何としてもソ連を倒したいとしてNEDに暗躍させてきた。そのことは2023年10月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartI>(※9)で考察した。特に近年は、コラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※10)の図表2で示したアレクセイ・ナワリヌイのように、NEDの支援金の活動対象が特定の人物に象徴されるようになってきた。だからプーチンは「外国の代理人」を組織団体から個人にまで拡張したものと思われる。習近平の場合も、「反スパイ法」の強化や香港特別行政区の国家安全維持法制定などを断行して、NEDが中国に潜り込んで(あるいはネットを使って)中国政府の転覆を謀ろうとしているのを必死で抑え込もうとしている。◆アメリカは中露を離間させたいが、アメリカにより中露は蜜月化その結果、習近平もプーチンも、互いの国をNEDの政府転覆活動から守ろうと、絆を一層強くさせている。習近平にしてみれば、2014年にNEDが主導したマイダン革命によりウクライナの親露政権が転覆させられたように、万一にもロシアに潜り込んだNEDによってプーチン政権が転覆させられロシアが民主的政権にでもなろうものなら、中国包囲網が強靭化し、ほぼ四面楚歌に至ると懸念しているだろう。それだけは絶対に避けねばならないと習近平は思っているだろうから、何が何でもプーチンを応援する方向に動いている。ただウクライナへの軍事侵攻をしたプーチンの軍事行動を容認すると、中国にいるウイグル族やチベット族などが他国に助けを求めたときに他国が中国に侵攻していいことになってしまうので、それだけは絶対に認めていない。それでいながらプーチン政権には絶対に崩壊してほしくないので、何としてもプーチンとの絆を深めてプーチン政権(あるいは専制主義的政権)の持続を望んでいるだろう。NEDの暗躍による政府転覆のリスクという共通項があれば、なおさら絆は深くなる方向に動く。◆中露が民主化してしまうと、実は困るアメリカしかし、万一にもだが、ロシアに民主的な政権が生まれ、それに伴って中国も民主化してしまった場合、実はアメリカは困るのではないだろうか。NEDを主導するネオコンは、基本的に軍事産業を国家運営の骨格に置いているので、中露という大国が平らかに民主化してしまった時に、「戦争を仕掛けていく暗躍の場」がなくなり、「民主の衣」を着て非親米的政権を倒す場がなくなって、活躍の対象を失う。何と言ってもロシアに民主的政権が生まれて、ロシアが欧州と仲良くなってしまうと、NATOの存在意義がなくなるので、アメリカの軍事産業は行き場を失い、「君臨する相手国(NATO諸国)」が存在しなくなるので、逆にアメリカによる世界の一極支配は衰退する方向に傾いていくと言っても過言ではない。トランプ政権が復活しても、トランプは大統領任期中に何度も「NATO無用論」を唱えてきたし、「アメリカ・ファースト」であって「他国の民主化」などに余計な力を注いで軍事ビジネスで国家運営をしていこうというネオコン系列ではないので、類似の現象は起きるかもしれない。現在、ゼレンスキーが唱えるウクライナ戦争和平案に基づく会議に参加する国の数は約90ヵ国・国際組織で、中国&ブラジルが唱える和平案に賛成する国は101ヵ国・国際組織である。これらの国の一部は重複しているかもしれないが、少なくとも全人類の85%は対露制裁に加わっていないので、残り15%の人類をアメリカ側に引き寄せているに過ぎない現状は、すでにアメリカの劣化を物語っている。中露の絆の強化は、その趨勢の中での分岐点をわれわれに突きつけている。もっとも、それでもなお、習近平がプーチンの足元を見ていることは拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第五章 ウクライナ戦争と「嗤う習近平」】で詳述した。この論考はYahoo(※11)から転載しました。訪中したプーチン大統領と習近平国家主席 写真: 代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240516_11305617.shtml(※3)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240516_11305860.shtml(※4)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240517_11305902.shtml(※5)https://tass.com/politics/1789297(※6)https://sputniknews.cn/20240518/1059159252.html(※7)https://new.qq.com/rain/a/20240520A044NL00(※8)https://grici.or.jp/4885(※9)https://grici.or.jp/4683(※10)https://grici.or.jp/4885(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7781d9020315b44953fb4abc6543363ffe7c08f0
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2024/06/14 10:41
GRICI
禁止令を出しながらTikTokで若者の大統領選人気を競うバイデンとトランプ【中国問題グローバル研究所】
*10:25JST 禁止令を出しながらTikTokで若者の大統領選人気を競うバイデンとトランプ【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国企業バイトダンス(ByteDance)が運営する動画アプリTikTokの米国内でのアプリ配信禁止令法案を超党派で可決しておきながら、バイデン大統領もトランプ前大統領もTikTokのアカウントを持ち、大統領選で若者層を取り込もうと競っている。禁止令に従わなければ米国に売却しろと言われたTikTok側は、禁止令は憲法に違反しているとして差し止めを求める訴えを起こした。大統領選のためなら、どんなに矛盾したことでもするアメリカだが、バイデンは自分自身が選挙活動のためにTikiTokを利用しながら禁止令を出し、トランプは禁止令に反対し最近になってTikTokの公式アカウントを設定し、バイデンのフォロワー数を遥かに超えている。中国との関係において、この現象を考察してみたい。◆バイデンがTikiTokの米国内での配信禁止令を出したわけ2024年3月13日、アメリカ議会下院は安全保障上の懸念があるとして、中国の企業バイトダンス(中国語では「抖音=ドウイン」)が運営するTikTokの米国内でのアプリ配信禁止令法案を超党派で可決した。米国内での事業を180日以内にアメリカに売却しなければ米国内での配信を禁止するというものだ。理由は「敵対国からの安全保障上の脅威」だとしているが、実は米大統領選におけるプロパガンダであるとする見解が、身内のバイデン政権側からも出ている。3月13日、国家情報長官のアヴリル・ヘインズ議員は下院情報委員会の公聴会で「中国はソーシャルメディア・アプリTikTokを使って2024年のアメリカ大統領選挙に影響を与える可能性がある」と語っていると、イギリスメディアのザ・ガーディアン紙が報道している(※2)。4月23日には米議会上院でも賛成79票、反対18票で可決され、4月24日にバイデンが大統領として署名し禁止令は成立した。それによれば、ByteDanceは法案の可決から270日以内にTikTok事業を米国に売却しなければならず、株式保有率は20%未満でなければならない。この計算に基づくと、ByteDanceがTikTokの米国事業を売却する期限は2025年1月19日となる。この期限が、バイデンが米大統領としての現在の任期の最終日であることは注目に値する。最初の「180日以内」から「270日以内」に延期したのは、米国各地で禁止令に反対する抗議デモが若者を中心に展開されたため、大統領選においてバイデンに不利に働くことに気が付いたからだろうが、そもそも禁止令を出したのも、やはり大統領選でバイデンに不利に働くと判断したからと思われる。というのは、前回の大統領選が行われた2020年における若者層(30歳未満の有権者)の支持率は、バイデンが61%だったのに対し、トランプはわずか36%でしかなかった。ところが2024年2月25日から28日にかけてFOXニュースが行った調査では、若者層の51%が今年11月の大統領選ではトランプに投票する予定だと回答したのに対し、バイデンに入れると回答したのは45%に留まったとのこと。だからこそバイデンは、若者が多く使っているTikTokの使用禁止令を出したものと考えることができる。◆禁止令に反対したトランプがTikiTokにアカウントを設け一気に人気上昇その証拠に、最初にバイデンが禁止令を言い出したときに、トランプは間髪を入れずに「禁止令反対」を表明した。トランプは3月11日に、アメリカのニュース専門放送局CNBCの取材を受け、TikTok禁止令に反対したと、CNBCは以下のような形で報道している。――2017年から2021年まで米大統領を務めたドナルド・トランプは月曜日(11日)のCNBC番組「スクワークボックス」のインタビューで、「TikTokがなくなれば、フェイスブックを大きくすることになってしまう。フェイスブックは国民の敵だと私は考えている」と語った。(中略)さらに 「TikTokを気に入っている人はたくさんいる。TikTokがなければ気が狂ってしまうような若い子さえ大勢いる」とトランプ前大統領は語った。事実、アメリカにおけるTikTok利用者の数は1億7000万人に上る。アメリカの総人口は2021年統計で約3億3000万人だ。そのうち赤ちゃんや超高齢者などスマホやiPadなどを使えない人口を考えると、大まかに言って50%以上がTikTokを利用していることになろうか。その内の有権者の数を考えれば無視できない要素となる。そこでトランプは、5月30日に有罪判決が出るとすぐ、6月1日にTikTokの公式アカウントを設定した。するとフォロワー数が1日で300万人を超え、その3日後には400万人を超えた。今年2月にTikTokを利用し始めたバイデン陣営のフォロワー数34万人の10倍越えだ。トランプ自身、大統領在任中は、国家安全保障上の懸念を理由にTikTokの使用を禁じる大統領令に署名しているが、カリフォルニア州の連邦地裁が「言論の自由」への懸念を理由に、同命令を差し止める判断を下している。◆TikTok 中国親会社が「表現の自由を侵害した」として米政府を提訴一方、TikTokは中国の親会社とともに5月8日(米時間7日)、「この法律(禁止令)は憲法に違反している」として差し止めを求める訴えを起こした(※3)。訴状の中でTikTok側は「憲法に違反し、憲法で保障された表現の自由を侵害するものだ」と指摘し、「配信を停止しなければTikTokを米国に売却するという条件は、商業的にも、技術的にも、法的にも不可能だ」と主張している。つまり、絶対に売却しないということだ。TikTok側の「禁止令は表現の自由に反する」という主張が、米国内の若者を中心とした「禁止令抗議デモ」の主張と一致するというのも、なんとも奇妙な話だ。TikTok側では、トランプ政権時代にも、「言論の自由」を理由にTikTok配信禁止令を連邦地裁が取り下げていることを強みとして、勝算は高いと見ているようだ。もし勝てば、米中言論闘争に関して「中国側が自由を勝ち取った」という、実にねじれた社会現象が生まれることになる。◆トランプが「絶対にTikTokを禁止しない!」と強く表明6月7日、トランプは「ターニング・ポイントUSA」の創設者チャーリー・カーク氏との対談で、若い有権者にリーチするためのより大きな戦略について語った際に<「私は絶対にTikTokを禁止しない!」と、非常に強いトーンで誓ったという>(※4)。そしてバイデンを「史上最悪の大統領」と呼んだそうだ。アリゾナ州のタウンホールでトランプをもてなしたカーク氏は、トランプを「TikTok お気に入りの大統領」と呼んで、トランプとのやり取りのTikTok動画にキャプションを付けている。トランプがTikTok支援側に立つようになったのは、自身の選挙運動への大口献金者で、バイトダンスの15%の株を保有するジェフリー・ヤス氏と会ったからだ(※5)と一部に報じられたが、トランプはそれを強く否定している。◆中国はトランプを応援しているのか?この流れから見ると、あたかも中国がトランプを応援していて、それがTikTokに反映され、バイデンに不利になっているように見える。中国政府自身は「他国の選挙干渉」として何も表明しないが、しかし実際上、バイデンが「台湾有事の際には米軍が台湾を応援する」と何度も表明し台湾独立を煽っているのに対して、トランプは台湾有事に関してはノーコメントを貫いている。その意味において、当然中国はトランプに当選してもらった方が「まだマシか」とは思っている可能性が高い。この分析に関しては、別の機会に譲りたい。なお詳細は拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第一章 TikTokと米大統領選と台湾有事】で考察した。この論考はYahoo(※6)から転載しました。写真:ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.theguardian.com/technology/2024/mar/13/china-tiktok-us-election-influence-avril-haines-us-house-of-representatives(※3)http://www.news.cn/world/20240508/2a72b7b61e3340428a44d99fdf2c3527/c.html(※4)https://nypost.com/2024/06/07/us-news/trump-vows-he-will-never-ban-tiktok-in-strongest-statement-yet-on-social-media-giant/(※5)https://nypost.com/2024/03/07/us-news/billionaire-tiktok-investor-bullies-lawmakers-to-stop-sale/(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/58858e2b9af412bdf5b4383254b09e51b1a0fe70
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2024/06/10 10:25
GRICI
アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威【中国問題グローバル研究所】
*10:29JST アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月13日、アメリカン・エンタープライズ研究所と戦争研究所の共同プロジェクトである台湾連合防衛プロジェクトは、「中国は軍事侵攻ではない形で台湾統一をするつもりで、われわれは長いこと、それを見逃してきた」という趣旨の共同報告書を発表した。同日、アメリカメディアのTHE HILLも「中国は台湾統一をするために(台湾を)侵略する必要はない」というタイトルでこの報告書を報道。これは正に筆者が長年にわたって主張し、警鐘を鳴らし続けてきた分析とほぼ完全に一致しており、アメリカがやっとその事に気が付いてくれたかと、感慨深い。5月23日のコラム<中国の威嚇的兵器ポスターと軍事演習 頼清徳総統就任演説を受け>(※2)で書いた今般の軍事演習も、実はその作戦に沿ったものなのである。軍事演習をしているのに「戦争をしない」などと言えるのかと思われる方もおられるかもしれないが、むしろ、それこそがアメリカを勘違いさせてきたキーポイントだ。拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第三章 習近平は台湾をどうするつもりなのか?】で詳細に分析した「港湾封鎖作戦」により、回答を示した。◆アメリカン・エンタープライズ研究所と戦争研究所の共同報告書5月13日、アメリカのシンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所(American Enterprise Institute=AEI)と戦争研究所(Institute for the Study of War=ISW)の共同プロジェクトである「台湾連合防衛(Coalition Defense of Taiwan)」プロジェクトは、<From Coercion to Capitulation: How China Can Take Taiwan Without a War(威圧から降伏へ:中国はいかにして戦争をせずに台湾を奪取できるか)>(※3)というタイトルの共同報告書(以下、報告書)を発表した。この報告書に関して、アメリカの政治専門紙THE HILL(ザ・ヒル)は同日、<China doesn’t need to invade to achieve Taiwanese unification(中国は台湾統一のために侵略する必要はない)>(※4)という見出しの報道をしている。報告書と報道によれば、結局のところ「アメリカがこんにちまで行ってきたシミュレーションの盲点に気が付いた」と、率直に認めている。その盲点というのは、主として、1.アメリカは台湾の防衛に関し、中国の侵攻を抑止または打ち負かすことにほぼ専ら焦点を当てており、すでに進行中の可能性の高いシナリオである「侵略には程遠い形で台湾を北京の支配下に置く中国の威圧作戦」をほとんど無視してきた。2.中国は、いわゆる武力攻撃によって台湾を統一するのではなく、「台湾周辺における軍事演習を強化し、台湾行きの船舶の立ち入り捜査を通して、台湾を準封鎖状態に置く」などの手段によって統一を成し遂げるだろうことに気が付いた。3.中国はそれにより次の総統選挙である2028年を目標にして、中台和平協定の締結に持ち込むつもりだ。このことに警戒せよ。(報告書と報道のまとめは以上)◆習近平の「港湾封鎖作戦」 台湾のエネルギー資源は2週間しか持たない冒頭で書いた拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第三章 習近平は台湾をどうするつもりなのか?】で、徹底して分析したのが「台湾港湾封鎖作戦」で、これは報告書の「2」に合致する。第三章で特に焦点を絞ったのは「台湾のエネルギー資源」の問題である。習近平は台湾の平和統一を第一の目標に置いているが、もし台湾が独立を叫び、どうしても武力によって独立を阻止するしかないところに追い込まれた場合は、「台湾包囲作戦」を考えている。なぜなら「台湾の港湾を封鎖し、エネルギー資源を遮断すれば、台湾は2週間しか持たない」からだ。台湾はエネルギーを自給自足できず、2022年データで97.3%を輸入に頼っている。エネルギー資源は主として液化天然ガス(LNG)と石炭だが、その入り口は港湾だ。貯蓄量は2週間ほど(天然ガスの在庫は11日間、石炭の在庫は39日間)しか持たないため、港湾を封鎖してしまえば、台湾島に武力攻撃をしなくても、台湾を降参に追い込むことができる。台湾は島国なので、天然ガスのパイプラインを敷くことができないから、天然ガスは全て「液化天然ガス」で、港湾から入ってくる。台湾政府の「2022年(民国111年)發電概況」(※5)によると、2022年の発電源の割合は、・石炭:42.0%・液化天然ガス:38.%・原子力発電:8.2%・再生エネルギー:8.3%%・その他:2.6%となっている。つまり発電量の80.9%は石炭と天然ガスとなる。原発はたったの8.2%で、港湾を封鎖されたときに、半導体製造を動かすことは不可能だ。半導体製造には多くの電力を必要とし、2022年ではTSMC一社だけで、台湾の全エネルギー源の7.5%を使う(※6)。原発で市民の基本インフラを保ち、政府の基本機能のネット連絡を保ち、かつ半導体製造を機能させるということは不可能だということが言える。太陽光発電は2022年の再生エネルギーの44.8%を占めているが、8.3%の内の44.8%だから全体の3.7%くらいしか占めておらず、何もできない。民進党は原発絶対反対で、国民党や民衆党は原発推進派だが、現在の立法院でエネルギー資源に関して妥協し改善しなければ、台湾の安全は保障されない。習近平はここに焦点を当て、「港湾封鎖」のための軍事演習をくり返している。港湾を封鎖するだけで、台湾島自体への砲撃は行わないから、台湾の一般市民の命が砲撃により失われることはない。つまり地上戦は行わないということだ。その意味では「台湾武力攻撃」という「戦争」ではない。この手段を採用すれば、習近平が「喉から手が出るほどに欲しい」TSMCなどの最先端半導体産業を傷つけることもないし、統一後に「親族の命を奪われた」として中共を激しく恨む台湾人も出てこない(→統一後に増加しない)ので、中国共産党による一党支配体制が、「怨みによって起きる暴動(あるいはクーデター)」などによって崩壊に追い込まれる危険性も少なくなるだろうという計算だ。◆5月23-24日の軍事演習「聯合利剣―2024A」の位置づけ中国人民解放軍東部戦区が23日から24日にかけて行った軍事演習「聯合利剣―2024A」は東部戦区の「陸軍、海軍、空軍、ロケット軍」などの兵力を総合的に結び付けた軍事演習だが、この「2024A」の「A」に注意しなければならない。今後必ず「B、C、D…」と続き、かつ「2025A…」も2025年になったら始まるものと位置付けた方がいい。それは「2026A…」、「2027A…」と続き、報告書にある通り、「2028年の総統選」の時には、台湾人が「もう嫌気がさして、中台平和協定締結する政党を選ぶ」というところにまで至るだろうというのが、報告書の見立てと一致するところとなる。今般の「聯合利剣-2024A」の特徴は、「海空合同戦闘即応性パトロール」、「戦場総合支配権の合同奪取」などを重点的に訓練し、艦艇や航空機が台湾島周辺に接近した際の「即応性パトロール」や「列島線内外一体化連動」などを実施している点だ。これは報告書の「2」に書いた「船舶の立ち入り検査」の訓練に相当し、実際、中国の中央テレビ局CCTVはその訓練の様子を<海警2304艦隊が台湾島東方海域で総合的な法執行訓練を実施した>(※7)という見出しで報道している。準拠する法は、日本の海上保安庁法(※8)第十七条にもある「疑義がある場合」の「船舶の進行を停止させて立ち入り検査」をする権利と同じで、中華人民共和国海警法(※9)第十六条 や第十八条にある立ち入り検査をする権利に基づくものと思われる。これにより、たとえば台湾に武器やエネルギー資源を輸送する船舶などにターゲットを絞って運行を停止させ、事実上の海上封鎖を行うに等しい行動に出るものと推測される。◆習近平の哲理「兵不血刃(ひょうふ・けつじん)」筆者は昨年『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で習近平の哲理である「兵不血刃」に関して詳述した。これは「刃(やいば)に血塗らずして勝つ」という意味で、毛沢東もこの哲理に基づいて「長春食糧封鎖」を断行し、数十万に及ぶ長春市内の一般庶民を餓死に追いやって、国民党が支配する長春を陥落させた。この長春陥落によって、中国共産党軍は一気に南下して、全中国解放を成し遂げるに至ったのである。この国共内戦における蒋介石率いる国民党の逃れた先が台湾で、筆者にとって台湾は、あの『もう一つのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』の終着点でもある。だから中国共産党がいかにして「チャーズ」の終着駅である台湾問題を解決させるかは、筆者の生涯の強い関心事でもあるのだ。その執念に基づいて追いかけてきた台湾問題に関して、筆者が結論に至った「台湾港湾封鎖作戦」が、奇しくもアメリカのシンクタンクの分析と一致したことに、言葉には表せないほどの複雑で深い感慨を覚える。「台湾有事」とはしゃがずに、一人でも多くの日本人が、筆者とアメリカのシンクタンクが一致したこの視点を共有してくれることを望まずにはいられない。そうしてこそ、真の警鐘を鳴らすことができると信じるのである。なお、『嗤う習近平の白い牙』の「白い牙(きば)」は、「兵不血刃」の構えを表しており、「牙を血で紅く染めない(=野心はあるが、自ら積極的に戦争はしない)」の意味である。この論考はYahoo(※10)から転載しました。写真: 習近平国家主席(ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5258(※3)https://www.aei.org/research-products/report/from-coercion-to-capitulation-how-china-can-take-taiwan-without-a-war/(※4)https://thehill.com/opinion/international/4657439-china-doesnt-need-to-invade-to-achieve-taiwanese-unification/(※5)https://www.moeaea.gov.tw/ECW/populace/content/Content.aspx?menu_id=14437(※6)https://ec.ltn.com.tw/article/paper/1592848(※7)https://news.cctv.com/2024/05/24/ARTINDoASE8etSa06Wf1WOJV240524.shtml(※8)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000028(※9)http://legal.people.com.cn/n1/2021/0202/c42510-32019526.html(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/cb76207f7cf4ea0ef222967c9fb398d2b34f728e
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2024/05/27 10:29
GRICI
全人代会期中の「経済・外交・民生」三大主題記者会見はボトムアップ【中国問題グローバル研究所】
*10:27JST 全人代会期中の「経済・外交・民生」三大主題記者会見はボトムアップ【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。11日に閉幕した全人代(全国人民代表大会)を、日本のメディアはこぞって「習近平への権力一極集中が強化された大会だった」と結論付け「より不透明になった」と批判しているが、中国の政治構造の真相を正確に知っていれば、そういう解釈は出てこないはずだ。たしかに全人代閉幕後の国務院総理記者会見は無くなったが、しかし会期中に開催された前代未聞の規模と数にのぼる国務院各中央行政省庁側の内外記者会見は、政府活動報告審議に反映されるという意味でボトムアップだったと言える。中央行政省庁は、「政府活動報告における2024年計画を、実際にいかにして実行するかを明確にして責任を負う側」と位置付けることができ、むしろ政府方針がよりオープンになったと見るべきだ。その証拠に国務院組織法の改正には、「政務の公開を堅持する」という言葉が新たに加わっている。その一方で、同じ改正国務院組織法で党の指導を明確にするなど、憲法に書かれていた党と政府の関係が表面化しているが、これは中国大陸内にもNED(全米民主主義基金)が入り込み、中国政府転覆を狙っているため、第二のゴルバチョフにならないための措置であるとみなすことができよう。◆政府活動報告の冒頭で「外部圧力」強調3月5日の全人代初日で李強国務院総理は政府活動報告を行った(※2)が、開口一番「異常なほどの複雑な国際環境」のもと、「全国の各民族人民は外部圧力に耐え」という言葉を発したのを聞いた時は、ハッとした。これまでの政府活動報告で「外部圧力」というストレートな言葉までが出てきたのは初めてだからだ。事実、2023年の活動報告の冒頭(※3)では「荒れ狂う国際環境」とあるだけで、2022年の政府活動報告の冒頭(※4)では、「複雑かつ厳しい国内外情勢」とあり、2021年の政府活動報告(※5)では、「コロナ」が強調されているだけだ。その意味で今般李強が「複雑な国際環境」に重ねた「外部圧力」という言葉は、中国が如何にアメリカを中心とした西側諸国からの圧力に苦しんでいるかが窺(うかが)われる。日本が半導体産業で世界一になった時、アメリカは「安全保障問題に係わる」として日本の半導体産業を叩き潰した。自動車産業も同じだ。どの国であれ、アメリカを凌駕しそうな国や産業分野が現れると、アメリカは叩き潰さずにはおられない。いま最も集中的に潰さなければならないのは中国なので、中国が少しでもアメリカを抜いて発展しそうな産業分野があると、アメリカは中国に制裁をかけ「安全保障上の問題がある」という理由で叩き潰している。それを李強は「外部圧力」という言葉で表現したのだ。逆に言えば、ある意味、2月27日のコラム<NHKがCIA秘密工作番組報道 「第二のCIA」NEDにも焦点を!>(※6)で書いたNHKの番組が示したように、CIA同様、まず特定の国の印象を極点に悪くすることにNEDは成功していることになる。いま現在、その「特定の国」は中国で、中国はNEDが潜伏しているので反スパイ法を強化し、それによって海外企業が離れていき、アメリアによる対中制裁と相まって、中国経済を苦しくしているという現実を浮き彫りにしているとも言える。◆前代未聞の「経済・外交・民生」三大主題記者会見【経済主題記者会見】まず3月6日に開催された「経済主題記者会見」(※7)を見てみよう。圧巻なのは会見に出席したのが「国家発展改革委員会の鄭柵潔主任、財政部の藍佛安部長、商務部の王文濤部長、中国人民銀行の潘功勝総裁、中国証券監督管理委員会の呉清主席」という面々だということだ。このような経済・商務・財務・金融・証券などに関する中央行政のトップが勢ぞろいした記者会見など、中華人民共和国建国以来、見たことも聞いたこともない。長時間にわたる質疑応答が繰り返され、主として以下のような回答があった。●国家発展改革委員会・今年の経済成長率5%程度という目標は、「第14次5カ年計画」の年間要件に沿っており、基本的に経済成長の潜在力と一致している。・今年は大規模な設備の更新と消費財の下取りを促進する政策を実行する。設備更新は年間5兆元以上の規模を持つ巨大市場になる。・超長期特別国債の発行は、現在と長期の双方にとって有益である。・民間企業が主要な国家工程プロジェクトと短期プロジェクトの建設に参加することを奨励し、最大限支援する。●中国人民銀行・2月までに、中国の国境を越えた決済の30%近くが人民元で決済された。・物価の安定を維持し、物価の緩やかな回復を促進することは、金融政策の重要な検討事項である。●財務部・今年は構造的な税制・手数料引き下げ政策を検討し導入する。・今年の教育・社会保障・雇用予算は4兆元を超える。●商務部今年は自動車や家電製品などの消費財の下取りを促進し、サービス消費を後押しする。●中国証券監督管理委員会・投資家、特に中小規模の投資家の正当な権利と利益を保護する。・制度の抜け穴を更にふさぎ、技術的離婚などの迂回や違法な持ち株の売却を厳しく取り締まる。【外交主題記者会見】3月7日には、「外交主題記者会見」(※8)が行われたが、ここに参加したのは中共中央政治局委員で外交部長でもある王毅一人だった。●中露関係中露は、旧冷戦時代とは全く異なる大国関係の新しい規範を生み出している。●中米関係・もし「中国」という二文字を聞いただけで緊張し焦るなら、アメリカの大国としての自信はどこにあるのか?・もしアメリカがいつまでも言行不一致を続けるなら、大国としての信用はどこにあるのか?・もしアメリカが自国の繁栄だけを維持して、他国の正当な発展を許さないというのなら、国際正義(公理)はどこにあるのか?・もしアメリカがバリューチェーンのハイエンドを独占し、中国を何としてもローエンドに留まらせていきたいと固執するなら、公正な競争はどこにあるのか?●パレスチナ・イスラエル紛争国際社会は、即時停戦と敵対行為の停止を最優先事項としなければならない。●中国・EUの関係中国とEUが互恵のために協力する限り、ブロック対立はあり得ない。●台湾問題「一つの中国」の原則が強ければ強いほど、台湾海峡の平和はより安全になる。台湾地区の選挙は中国の地方選挙に過ぎず、選挙結果は台湾が中国の一部であるという基本的な事実を変えることはできないし、台湾が祖国に戻るという歴史的必然性を変えることもできない。選挙後、180以上の国と国際機関が「一つの中国」原則の堅持を再確認した。「台湾独立」を容認し支持する人々がいまだにいるとすれば、それは中国の主権に対する挑戦である。●ウクライナ危機中国はウクライナ危機を終わらせるための和平交渉への道を開いた。【民生主題記者会見】3月9日、「民生主題記者会見」(※9)が開催された。出席したのは「教育部の懐進鵬部長、人的資源社会保障部の王暁萍部長、住宅城郷(都市農村)建設部の長倪虹部長、国家疾病予防制御局の王賀勝局長」だ。これも錚々たるメンバーで、若者の就職難や不動産バブル崩壊などが問題視されている中、その部局のトップが出てきて質疑応答に当たるということ自体、相当に覚悟がないと出来ないことだ。このテーマの質疑応答を詳細に書きたいが、あまりに問題が深いだけに、略記するのに困難を来たすので、非常に残念ながら省略し、いつかチャンスがあったら、この深い問題点における質疑応答を考察したいと思う。以上が三大主題記者会見の紹介だが、全人代閉幕式の11日に決議された政府活動報告書には、この三大主題記者会見だけでなく、3月6日のコラム<全人代総理記者会見をなくしたのは習近平独裁強化のためか?>(※10)に書いた「部長通道」なども含めた、全人代におけるあらゆる審議の結果が反映されている。全人代閉幕後の総理記者会見ではもう遅く、その前に政府活動報告書の審議修正が終わっているので、その意味で、国政に関して閉鎖的になったのではなく、逆にオープンになったとみなすことができる。◆国務院組織法改正案から見えるものその証拠は冒頭にも書いたように、改正される前の1982年の国務院組織法(※11)には「政務公開」という文言はないが、今般の全人代で改正された国務院組織法(※12)には、「堅持政務公開(政務を公開することを堅持する)」という文言が第十七条に加筆された。それが前述した三大主題記者会見であり部長通道だ。もっとも、中華人民共和国憲法(※13)の序文と第一条にある「全国の各民族人民は中国共産党の指導の下」という思想が、国務院組織法にも反映されるようになったという点では、もともと中華人民共和国建国以来の思想が徹底されたと言うべきなのかもしれない。1980年前後に、「党政分離」の話が出たことがあったが、なんと、その議論には習近平の父・習仲勲が介在していたという皮肉な現実がある。なお、習近平政権になったあとの2017年には新華網に<党政分離と党政分業は違う>(※14)という論考が載っており、習近平政権は早くから「党政分離」は考えていない。これは冒頭に書いたように、アメリカが旧ソ連を崩壊させたように中国を崩壊させようと企んでいることへの自己防衛だとみなしていいだろう。中国共産党の統治を強くして崩壊の余地を少なくさせようという目論見だろうが、それが吉と出るか凶と出るかは、アメリカの大統領選や非米側諸国の動きなどの影響もあり、静かに考察していくしかない。この論考はYahoo(※15)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://tv.cctv.com/2024/03/05/VIDEIh7n0CnlO3ysYhj8SY3w240305.shtml(※3)https://www.gov.cn/premier/2023-03/14/content_5746704.htm(※4)https://www.gov.cn/premier/2022-03/12/content_5678750.htm(※5)https://www.gov.cn/premier/2021-03/12/content_5592671.htm(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3de7c06ef21ccd8115f04681175360add9784205(※7)https://tv.cctv.com/2024/03/06/VIDEQhMQkqom53dVdCPmTnMn240306.shtml(※8)https://tv.cctv.com/2024/03/07/VIDE19aja2r9WthsBpO3MQBP240307.shtml(※9)https://tv.cctv.com/2024/03/09/VIDE8qufe0j1lBYkR9fboIJY240309.shtml(※10)https://grici.or.jp/5107(※11)https://www.gov.cn/gjjg/2005-06/10/content_5548.htm(※12)https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202403/content_6938923.htm(※13)https://www.gov.cn/guoqing/2018-03/22/content_5276318.htm(※14)http://www.xinhuanet.com/politics/2017-04/11/c_1120784896.htm(※15)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1ca6c38d649aa3d9c8e23f92c6fe03f0e4fb19b6
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2024/03/13 10:27
GRICI
中国の失業率は5.2% ようやく正式な統計が【中国問題グローバル研究所】
*10:25JST 中国の失業率は5.2% ようやく正式な統計が【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。3月5日に開幕する全人代のためだろう。2月29日、中国の国家統計局は<中華人民共和国2023年国民経済と社会発展公報>(※2)(以下、公報)を発布した。それによれば、2023年の年間失業率平均は5.2%だったという。昨年7月に発表された若者失業率算出の時に国家統計局が現役の在学生まで対象に入れたために出てきた20%というデータが世界を驚かせ、その後、国家統計局が計算方法改善のためデータ発表を暫時やめてしまったという事実がある。加えて、中国大陸の一人の大学教員が、専業主婦など就職意欲を持っていない者まで対象に入れて計算した失業率46.5%をネットに上げたため、その情報に一部の日本人が飛びつき「中国失業率46.5%説」が飛び交った。そういった経緯があるので一部の日本人は今般の公報のデータに疑いを持つかもしれない。本稿では、失業率を計算するのが困難な社会主義国家・中国の特殊な経緯と現状を考察したい。◆公報が発表した雇用者数や失業率などに関するデータまず、公報が発表した雇用者数や失業率などに関する現在の詳細なデータを見てみよう。公報には以下のように書いてある。●2023年末時点における国内の雇用者数は7億4,041万人で、このうち都市部での雇用者数は4億7,032万人、全国雇用人口の63.5%を占める。2023年、年間を通して都市部での新規雇用者数は1,244万人で、前年より38万人増加した。●全国都市部調査による年間失業率平均値は5.2%で、2023年末時点での全国都市部調査による失業率は5.1%だった。●全国の農民工の総数は2億9,753万人で、前年比0.6%増だった。その内、外出農民工(沿海部大都市に行く農民工)は1億7,658万人で2.7%増加し、本地農民工(もといた農村付近の小都市で働く地元農民工)は1億2,095万人で2.2%減少した。これが公報に書いてある失業率の基本情報だ(図表を別として)。都市部で働いている農民工は「都市部雇用者数」の範疇に入れているが、もし沿海部の大都市から内陸にある生まれ故郷近くの「中小都市」に戻って再就職先を見つけた場合は、大小の違いはあれ「都市」なので、「都市部調査失業率」の中で「就職者扱い」になるので変化しない。もし沿海部の都市から農村に戻って農業に従事した場合は、「都市部での雇用の減少」に反映される。農村部では畑仕事(土地経営)が多いため、失業率は都市部に比べて非常に低いので、「農村部調査失業率」というカテゴリーが統計上ない。◆現在の「調査制」による失業率計算法は2018年4月17日から中国は社会主義国家だ。改革開放後も教育機関における「国家培養」と「分配制度」は続き、1992年にようやく制度上撤廃して、1994年辺りから社会主義制度における形式から実際上抜け出し始めた。「国家培養」というのは、教育機関での勉学は完全に無料で、国家が人材を育てるという制度を指す。衣食住も国家が保証する。大学・大学院などは基本的に全寮制。「国家培養」は幼稚園から大学院博士課程まで一貫して徹底されていた。その代わりに卒業後は国家が定めた職場で働くことが義務付けられ、個人が職場を選ぶという権利はなかった。これを「分配制度」と称する。国家が就職先を「分配する」という意味だ。したがって中国にはそのころまでは「失業」という概念がなく、市場経済が走り出し国営企業が立ち行かなくなって株式会社化して国有企業になり、無駄な従業員を「一時退職」させたころに、初めて「待業」という概念を生み出した。「待業」というのは「失業」ではなく、「家で待機して次の業務復帰への指示を待ちなさい」という意味で、「待業手当」も支給された。当時の貨幣価値で月200元ほど貰っていたので、悪くない生活は保たれたと思う。従業員にはもともと宿舎が無料であてがわれていたので、住居に関する問題に大きな変化が出て来るまでは、そこそこに待業生活を送ることができていた。実はそのころ筆者は1950年代の天津での幼馴染と再会しており、庶民の生活をリアルで体験しているので実感がある。また中国の中央行政の一つである国家教育部と提携して『中国大学総覧』の編集にも当たっていたので、日本で言う(中国でもその後定義された概念である)「公務員」の劇的な変化にうろたえる日常も、目の前で見てきた。社会は混乱し、国家統計局が全国調査をするのではなく、個人や職場などの申し出によって失業者数や本来の従業員数を把握する「登録制」によって国家は「失業率」を計算していた。しかし、それでは正確なデータが得られず、中国政府の通信社「新華社」や中国共産党機関紙「人民日報」などの数多くの情報で裏打ちされた実態から言うならば、国家統計局が統一的に全国調査するという「調査制」による失業率データが公表されるようになったのは「2018年4月17日」(※3)であるとのこと。この日までは「待業登録」を「失業登録」に改名したり、農民工のような流動人口の就業者をどう計算するかなど、紆余曲折の経緯を経てきた。◆若者失業率計算に大学などの在校生を調査対象にしていた国家統計局そのような経緯がある中、2023年7月28日のコラム<中国の若者の高い失業率は何を物語るのか?>(※4)に書いたように若年層(16~24歳)の失業率が20%に至るという「怪奇」に近い現象が起きた。その原因は調査対象者に大学や専科学校あるいは大学院などの「在校生」を含めるという不適切なことをしていたからである。おまけに7月に出した統計は、まだ卒業してない5月時点での現役在学生を含んでおり、その人たちは「学生」で、「失業者」ではないのに、「(16歳以上の)労働可能な人口」の中に入れていたため、失業率が膨れ上がった。背景には当該コラムの図表1に示した、信じられないほどの大学進学者の急増がある。そこで、国際的に見て、失業者を計算する時には在校生を入れてないことを考慮して国家統計局は計算方法を見直すために暫時データ発表をやめた(※5)。これを以て日本では、「中国は中国経済の惨状を隠すために統計データを公開するのをやめた」との情報が飛び交い、「中国の統計を信じるな」と少なからぬ「中国問題専門家」やメディアがはしゃいだものだ。実際は2022年、中国における16-24歳の都市人口9600万人強のうち、在校生は6500万人強で、この在校生のうち「現在職場で働いていない者、調査時期の3ヵ月前以内に就職先を探そうとしたことがある者、もし就職先を紹介したら2週間以内に(大学を捨てて=退学して)就職する者」を「失業者」扱いするという計算が成されていたのである。そもそもまだ卒業していないのだから職場で働いているはずがないが、それを失業者扱いすること自体、ナンセンスだ。◆国際基準に合わせて改善した国家統計局の失業率計算法とデータそのようなことから、2024年1月17日に再開した国家統計局の失業率計算(※6)では、「在校生は含まない」ことになった。その結果、国家統計局が今年1月17日に発表した年間失業率(※7)では、●16-24歳:14.9%●25-29歳: 6.1%●30-59歳: 3.9%となっている。このようにして計算方法を国際水準に合わせた結果の2023年の年間失業率平均が冒頭にある「5.2%」というデータである。若年層に関しては在校生を除外しても14.9%なので、相変わらず高いと言わねばなるまい。◆専業主婦まで失業者に入れたデータに飛びつく一部の日本人冒頭に書いた「16~24歳の失業率が46.5%」という情報に関しては、昨年7月17日北京大学の張丹丹准教授が個人の見解として発表した文章(※8)によるもので、彼女の場合は「在校生」だけでなく、「躺平(寝そべり族)」や「啃老族(親が富裕なので働くつもりがない「脛(すね)かじり族」)」、さらには「外で働く意思を持っていない専業主婦」まで「失業者」の中に入れているので、論外だと言わねばなるまい。目立とうとして一種の「遊び」を試みたのか、動機は分からないが、戯言(ざれごと)に近い「私見」に飛びついて「これこそが中国の真相」とはしゃぐ「一部の日本人」の判断力の無さには唖然とするばかりだ。さて、3月5日に、本稿で述べた国家統計局が出した新しいデータも踏まえながら発表されるであろう李強国務院総理の政府活動報告がどのようなものになるのか、待ちたい。この論考はYahoo(※9)から転載しました。写真: ロイター/アフロ
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2024/03/04 10:25
GRICI
ウクライナ戦争3年目突入 中国は現状をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
*10:34JST ウクライナ戦争3年目突入 中国は現状をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。本日2月24日でロシアによるウクライナ侵攻は3年目を迎える。中国では決して「ウクライナ戦争」とは呼ばず、あくまでも「ウクライナ危機」とか「露ウ衝突」といった言葉を使う。それだけでもプーチンへの配慮が窺(うかが)われるが、2年経った今、中国はウクライナ危機をどう見ているのか、中国側の第一次情報をご紹介したい。◆環球時報:西側諸国はウクライナ危機を「戦争ビジネス」だとみなしている中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」(の「環球資訊広播」)は2月22日、<露ウ衝突2周年:西側は結局「危機をチャンスに変えた」>(※2)というタイトルでウクライナ危機を総括している。長文なので概略を個条書き的にピックアップしてご紹介したい。●EU(欧州連合)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は最近、EUは近い将来、ロシアの凍結資産から得た収益をウクライナ支援に使用することを承認する計画であると述べた。 同氏は、凍結されたロシア資産収入が「ロシアのものではない」ことを保証するためにEUが関連法的手続きを開始したと説明した。●これは尋常な窃盗ではない。イタリア銀行のパネッタ総裁は、ユーロ圏は自国通貨を世界的な紛争の武器として使用すべきではないと警告した。なぜなら、それは最終的にユーロ自体を弱体化させることになるからだという。●西側諸国にとっては「利益」が最優先なのだ。実際、「ウクライナの戦後復興」は、西側諸国が長い間注目してきた魅力的な「ケーキ」だった。最新の例は、日本が開催したばかりの「日本・ウクライナ経済復興推進会議」だ。●米国の投資大手ブラックロックは昨年、ウクライナに手数料を支払うことなく、ウクライナのエネルギーインフラ、送電網、農業投資、およびすべての国営企業を正式に買収することでウクライナと合意に達した。潜入調査記者が公開したビデオで、ブラックロックの従業員が「ウクライナ紛争はビジネスにとって、すごく良いことだ」と真実を語っている。●戦争自体もビジネスなのだ。西側の政府と企業が共謀してウクライナ危機を引き起こし、「他人の危険」を「自分たちのチャンス」に変えていることは、多国籍の巨大企業が巨額の戦争利益を得ようとしていることからも明らかだ。 ロシアのエネルギーが西側諸国によって禁輸される中、エクソンモービル、シェブロン、シェル、トタルエナジーズなど西側のエネルギー大手はいずれも莫大な利益を上げている。●最も大きな利益を上げているのは間違いなく西側の軍産複合体だ。西側諸国が危機を煽り続ける中、危機はさらにエスカレートしており、世界の武器市場をリードする米国の軍需産業大手5社は言うに及ばず、欧州の中小軍需産業企業もこの「ゴールドラッシュ」を逃してはいない。●ただ、皮肉なことに、バイデン政権の新会計年度のウクライナへの資金提供は、共和党強硬派によって阻止されている。それも米大統領選挙のための政治的交渉の道具に過ぎない。軍産複合体の利益に合致する限り、米国議会がウクライナへの供給を完全に遮断するとは誰も信じていない。●しかし米コロンビア大学のサックス教授は、ロシアメディアとの最近のインタビューで、米国が巨額の戦争利益を得ていることを批判し、「米国は一方では一極支配という覇権を維持するためにNATO拡大を推進し、他方では戦争自体がビジネスになっている」と述べた。(「環球時報」からの引用はここまで)◆新華社フォーラム:2024年、露ウ衝突のゆくえを決める5大要素今年1月15日、中国政府の通信社である新華社は第14回新華網「世界の議論」国際問題シンポジウムを開き、その中で中国政府のシンクタンクである中国社会科学院ロシア・東欧・中央アジア研究所の孫荘志所長が<2024年、この5つの要素が露ウ衝突のゆくえに影響を与える>(※3)という演題で講演をした。冒頭で孫荘志は「米国と西側はウクライナ支援に疲れの兆しを見せているが、露ウ衝突は長引くだろう」、「西側諸国はメリット・ディメリットを天秤にかけ、紛争における自国の利益をどのように守るかを検討している」とした上で、2024年の露ウ紛争には注目すべき5つの要素があるとして、以下の5項目を挙げている。第一:ロシアとアメリカの選挙。露ウ紛争自体、大国間の地政学的な駆け引きと米露の対立の結果によって引き起こされた悲劇であるため、米露の国内政治動向が露ウの展開傾向を決定する。第二:西側諸国の支援。ウクライナは現在、財政支出のほぼ半分を西側が支払っているが、西側からの支援は今後どんどん少なくなるだろう。この場合、ウクライナは自国の造血機能を高める必要があるが、これは無力な選択である。第三:和平交渉を説得し推進すること。しかし、実際上、紛争は和平交渉に適した雰囲気と環境を持っていないことを示している。第四:黒海危機。2024年には黒海地域が露ウ間の争いの焦点となる。ゼレンスキーは、今年のウクライナの主要標的はクリミア半島と黒海だと述べた。第五:対ロシア制裁。対露経済制裁はロシアにどのような打撃を与えることができるのか? 2023年のロシア経済の全体的なパフォーマンスは良好で、2024年も昨年のような比較的良好な成長傾向を維持できれば、ロシアは耐久力を維持できる。西側諸国はロシアを弱体化させ最大限に打撃を与えたいと考えているが、制裁に関する手持ちのカードはますます少なくなっている。(新華網シンポジウムからの抜粋は以上)◆中国大陸のネットに溢れる民間の見解中国では、党と政府が言えることには限りがあるので、案外ネットで削除されずに残っている民間の見解は、「中国の本心」を表していることがあり、疎かにできない。むしろ党や政府が言えないことを一個人の名前で発表させたりする場合さえあるくらいだ。ネットに溢れる情報の中からいくつか拾うと以下のようなものがある。●この衝突はバイデンが仕掛けた。2008年に副大統領になってから息子ハンターに金儲けさせることとロシアをやっつけるという両方の目的に適っているウクライナに目を付け、マイダン革命を起こさせてウクライナを米国の傀儡政権に創り上げた。バイデンの私利私欲のために、なぜ世界がこんなに大きな犠牲を払わなきゃならないんだ?●ノルドストリーム破壊はバイデンの指示であることを疑う者はいない。●バイデンはウクライナ人の最後の一人が死ぬまで戦わせるつもりだ。その意味ではゼレンスキーも同じ。戦場の癒着状態を指摘した、国民に人気の高いザルジニー軍最高司令官を更迭してセルスキー(元陸軍総司令官)に置き換えたが、結局二人とも戦場はゼレンスキーが望む勝利に向けた突撃ができる状態でないと判断。そこでアウディーイウカ撤退をミュンヘン安全保障会議に合わせて決定したのは、これ以上の支援を躊躇する西側諸国に「支援しなかったら、こういうことになる」って脅しをかけたかったからさ。●自国の軍事力では戦えず、他国の支援だけで戦う戦争って、「あり」か?ウクライナは米国の傀儡政権であるだけでなくウクライナ衝突は「米国の傀儡戦争」で、ウクライナはバイデンのための道具に過ぎない。ウクライナが勝つわけ、ないだろ?最初から負けてる。だから「敗登(中国読み:バイデン)」なのさ。●西洋人には本気で、この現実が見えてないのか?●わが中国が中立を守り続けているのは賢明な判断だ。◆習近平の腹づもりウクライナ戦争が始まったと同時に、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』を出版し、「軍冷経熱」(軍事的には冷ややかに距離を置くが、経済的には熱く支援する)というキーワードを軸に習近平の対露戦略を論じたが、その軸は今も変わっていない。変わったのは、ウクライナ戦争によって習近平とプーチンの仲が空前絶後に緊密になったことと、非米側諸国の中露側につく濃度が、予想以上に高まったことくらいだろう。その意味で「得をしているのは中国だ」と言っていいのではないだろうか。昨年の2月24日に習近平が提案したウクライナ戦争に関する停戦案であるところの「和平案」は「停戦ラインを明示していない」ところに特徴がある。一方、ゼレンスキーが提案している停戦案は「領土の完全奪還とロシア兵の完全撤退」という「絶対的な停戦ラインを強く要求したもの」なので、現状でゼレンスキー案が通ることはありそうにない。ここは数千年に及ぶ戦火の歴史が積み上げてきた「中国の知恵」がものを言う。おまけに習近平の「和平案」は2023年2月23日のコラム<プーチンと会った中国外交トップ王毅 こんなビビった顔は見たことがない>(※4)に書いたように、プーチンの納得を得ている。停戦は戦争をしている両国が納得しなければ成立しないし、戦局的にウクライナ劣勢となった今、ゼレンスキー案が受け入れられる可能性は限りなくゼロに近い。もちろんプーチンがウクライナに侵攻したことは肯定しない。しかし「民主の衣」を着て世界中に紛争を撒き散らしてきた(今やバイデンやヌーランドの根城と化している)NED(全米民主主義基金)の罪の重さから目を背けることはできない。その意味では「戦争屋・米国」の罪が「各国の国民」によって裁かれる時代に入ったのではないかと思う。「もしトラ」が「ほぼトラ」に変わりつつある現在、「軍冷経熱」により「中立」を守った習近平に有利に働きそうだ。トランプが、NEDを主導するネオコンでないために、トランプ政権時代に米国は戦争を起こしていないことにも注目すべきだろう。なお、CIAと「第二のCIA」と呼ばれるNEDがダ二次世界大戦後、世界中でどれだけ戦争を起こし続けてきたかは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述した。この論考はYahoo(※5)から転載しました。写真: 代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://world.huanqiu.com/article/4Gh9YAuWDS5(※3)http://www.news.cn/world/20240115/2adcae0ae5f4425eb77cfae789d04ca0/c.html(※4)https://grici.or.jp/4053(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/672498255418fabb1662ff6dab94f5d94f5884c5
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2024/02/26 10:34
GRICI
「ミュンヘン安全保障2024」の“Lose-Lose”とは? 習近平の論理との対比【中国問題グローバル研究所】
*10:28JST 「ミュンヘン安全保障2024」の“Lose-Lose”とは? 習近平の論理との対比【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。2月12日に公開された「ミュンヘン安全保障指数2024」の表紙には“Lose-Lose?”という文字が大きく書いてある。これは18日に閉幕したミュンヘン安全保障会議2024に秘められている哲学的軸で、「誰もが損をするゼロサム思考の悪循環から抜け出すには、どうすればいいか」というテーマを指す。習近平政権の外交戦略は“Win-Win”を軸とした「人類運命共同体」。時代はゆっくり、しかし大きく動き始めている。それを見極める哲学的視点を持たなければならない。◆“Lose-Lose”とは何か?2月17日のコラム<「ミュンヘン安全保障指数2024」 日本以外の国は「中露は大きな脅威ではない」と回答>(※2)に書いた「ミュンヘン安全保障指数(MSI)2024」(MSI2024)(※3)の表紙に書いてあるタイトルは“Lose-Lose?”である。今さら言うまでもないが、“lose”は「失う」、「利益がない(損をする)」あるいは「負ける」という意味だ。したがって“Lose-Lose”は「双方が損をする」意味で反対語は“Win-Win”(ウィン-ウィン)。MSI2024の表紙に大書してある“Lose-Lose?”は具体的に何を指しているのかを解明することは、今後の世界の趨勢を分析する上で非常に重要なポイントとなる。MSI2024の冒頭には「誰もが損をするゼロサム思考の世界につながる悪循環をどうすれば回避できるのか?」と書いてある。ゼロサムとは、「合計するとゼロになること」で、参加者の得点(利益)と失点(損失)の総計(サム)が0(ゼロ)になり、「一方の利益が他方の損失になること」を指す。MSI2024では、そのリスクを理解するために以下の4つのキーポイントが挙げられている(以下、概略を示す)。キーポイント1:冷戦後の地政学的・経済的な楽観主義は消え去った。その時代に得られた利益が、人類に均等に分配されることはなかった。それは人類の多くに不満を抱かせている。キーポイント2:地政学的な緊張の高まりと経済の不確実性が懸念される中、「西側諸国、強大な独裁国家、そしてグローバル・サウス」は相対的な損得をますます懸念するようになった。キーポイント3:現行の政策は世界全体としての利益を食いつぶす恐れがある。また、各国が相対的な損得を重視することで、ゼロサムの世界がもたらす悪循環を引き起こす危険性もある。キーポイント4:大西洋をまたぐパートナーは、「相対的な利益を求めて競争すること」と、「包括的で人類全体の利益を実現するために協力すること」の間のバランスをとる必要がある。志を同じくする民主主義国家間の信頼に基づく協力を守る必要があるのは確かだが、しかしその一方で、独裁的な挑戦者との競争にガードレールを導入し、競合相手とも互いに協力できる有益な分野を模索し、より包括的な利益を確保することができるような新しいグローバルなパートナーシップを構築することにも努めなければならない。(以上、MSI2024から引用)全体を通して読むと、「米一極を中心とした西側諸国は、西側諸国が独裁国家と定義しているグループやその独裁国家との連携が比較的に強いグローバル・サウスというグループとの互恵的協力関係を模索しないと、どの国も負けて勝者がいないという結果を招く危険性があり、それは人類に破壊をもたらすだけで、繁栄をもたらさない」というイメージになろうか。◆中国のネットでは“Lose-Lose”(双輸)の話題が満載中国語では「負ける」ことを「輸(shu、スー)と書く。したがって“Lose-Lose”は中国語では「双輸」(双方が負ける)と称する。2月12日にMSI2024が公表されるとすぐ、中国のネット空間には「双輸」という単語が溢れた。どの情報を読んでも「双輸」に満ちているので、中国がMSI2024をどう受け止めているかを理解するにはリポートの表紙にある“Lose-Lose?”とは何かを解明する以外にないと思ったほどだ。「双輸」に関する情報はあまりに多いので、どの記事を取り上げてご紹介すればいいか分からないが、とりあえず中国政府の通信社である新華社の論考を見てみたいと思う。2月13日、「新華社ベルリン電」は<ミュンヘン安全保障報告“双輸”論調は欧州の焦りを表している>(※4)という見出しで、MSI2024を考察している。ここではMSI2024を「報告書」という単語で表現しているが、統一を図るためMSI2024に置き換えて記事の内容をご紹介する。記事には概ね、以下のようなことが書いてある。●MSI2024の序文でミュンヘン安全保障会議のクリストフ・ホイスゲン議長は、「双輸」が今年の非公式なテーマとなっていると述べている。●清華大学戦略安全保障研究センターの副所長:MSI2024は、ゼロサム思考ではグローバルな課題に対処できないことを一部の西洋人が理解していることを反映している一方、グローバルな問題を解決するに当たり、選択的に協力することしかできない他の国々と「志を同じくする国」を区別しており、西側の矛盾を反映している。中国は、国際社会において、常に多国間主義を実践し、ウィン-ウィン協力を中心とする新しいタイプの国際関係の構築を推進してきた。●近年、中国が提案している人類運命共同体の構築こそは地球規模の課題に対処するための思考である。●パキスタン発展経済学研究所のイクラム・ハク氏:中国は西側諸国のゼロサムゲームとは全く異なる「和平建設」の哲学を堅持している。 (以上、新華社通信より)◆習近平の提唱する「人類運命共同体」と「ウィン-ウィン」論理2012年11月、習近平は第18回党大会において「人類運命共同体」という概念を発表し(※5)、その後「一帯一路」完遂のためにも外交スローガンとして用いるようになった。事実、2015年3月28日のボアオ会議において習近平は以下のように述べている(※6)。――「ウィン-ウィン」の協力を通してのみ私たちは発展することができる。「あなたが負けて私が勝つ」というゼロサムゲームの古い考え方を捨て、自分の利益を追求する際には相手の利益も考慮するという「ウィン-ウィン」概念に基づかなければ、自分自身の発展をも遂げることができない。(引用以上)この情報が「一帯一路」のウエブサイトに載っていることから、「人類運命共同体」というスローガンが「一帯一路」遂行のためにも使われていることが分かる。同じ2015年の5月7日にはモスクワで開催された反ファシスト勝利記念日に出席するために習近平はメッセージを発表し(※7)、「勝者総取りやゼロサムゲームは人類発展への道ではない。戦争ではなく平和を、対立ではなく協力を、そしてゼロサムではなくウィン-ウィンを求めることこそが、人類社会の平和・進歩・発展の永遠のテーマだ」と述べている。また2022年1月17日にオンライン参加した世界経済フォーラム(※8)で習近平は「国家間に対立や相違がるのは避けられないが、あなたが負けて私が勝つというゼロサムゲームをするのは無駄だ」と述べている。2023年4月6日午後、北京を訪問したフランスのマクロン大統領とともに中仏企業家委員会の閉幕式に出席した習近平は(※9)、「ゼロサムゲームには勝者はなく、ディカップリングによって中国の発展を阻止しようとすることはできない」と、アメリカを中心とする西側諸国への批判を露わにした。この「ゼロサムゲームに勝者はいない」という言葉は、このたびのMSI2024の表紙を飾った“Lose-Lose?”と同じで、ミュンヘン安全保障会議の「隠れテーマ」が習近平の哲理と同じだということは注視すべきだ。そうしないと危ないことになる。◆習近平の哲理「兵不血刃(ひょうふけつじん)」(刃に血塗らずして勝つ)拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述したように、習近平の哲理は「兵不血刃」すなわち「刃(やいば)に血塗らずして勝つ」ことである。これは毛沢東と一致しており、毛沢東は独自に荀子の教えである「兵不血刃」をモットーとしていた。「戦わずして勝つ」のだから「平和を愛するのか」などと思ったら、とんでもない間違いだ。筆者は1947~48年にかけて、長春で毛沢東による食糧封鎖を受け、家族を餓死で亡くしただけでなく、餓死体の上で野宿し、恐怖のあまり記憶喪失になったという経験さえある。数十万の餓死体には流す血さえなかった。それでも、その真相は伝えられない。中国共産党を非難する言動は許されないからだ。特に習近平政権になってからの言論統制は激しく、筆者など北京空港の地に降り立った瞬間、捕まってしまうかもしれないので、習近平政権になってからは一度たりとも中国に行ったことがないくらいだ。NED(全米民主主義基金)が潜伏しているので、そのための対応策だということは分かっていても、捕まる可能性が低くなるわけではない。そのような中国による「人類運命共同体」を軸とする「ゼロサムゲームに勝者はない」という習近平の論理が、ミュンヘン安全保障会議の「隠れテーマ」と同じであるということは、中国の動き方に、少なからぬ国が賛同しているということにつながる。中国と聞いただけで猛批判する連中は日本にいくらでもいるが、「批判」によって中国が損害を被ることはなく、むしろ習近平の論理が「じわりと世界に浸透していること」の方がよっぽど怖いのである。それが見えないと、日本は生き残っていけない。筆者はそのことに警鐘を鳴らし続けている。日本人の心に、この願いが届くことを祈るばかりだ。この論考はYahoo(※10)から転載しました。画像:ミュンヘン安全保障指数2024から筆者作成(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5014(※3)https://securityconference.org/en/munich-security-report-2024/munich-security-index-2024/(※4)http://www.news.cn/world/20240213/7c03cbc8bb4a4f8c9c37bdb2f958a207/c.html(※5)http://cpc.people.com.cn/18/n/2012/1111/c350825-19539441.html(※6)http://2017.beltandroadforum.org/n100/2017/0407/c27-11.html(※7)http://ru.china-embassy.gov.cn/chn/gdxw/201505/t20150507_3069784.htm(※8)https://www.mfa.gov.cn/zyxw/202201/t20220117_10601025.shtml(※9)http://politics.people.com.cn/n1/2023/0407/c1024-32659032.html(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/82202fbe67e35e4287525ec3df29f3129cd35e72
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2024/02/20 10:28
GRICI
中国は米大統領選「トランプかバイデンか」をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
*10:27JST 中国は米大統領選「トランプかバイデンか」をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国のネットではトランプ(中国語表記:川普)を「川建国」(中国を再建国したトランプ)と呼び、バイデン(中国語表記:拝登)を「拝振華」(中華を振興させたバイデン)と呼んで茶化している。何れも「中国を虐めることによって中国人民の愛国心と団結心を強化してくれた人」という意味だ。中国政府自身は「内政干渉」として米大統領選に関して沈黙しているが、中国政府の思惑をそれとなく示唆するシンガポールの「聯合早報」や大陸の知識層が愛読するウェブサイトなどから、中国にとっての「川建国」と「拝振華」のメリット・デメリットが浮かび上がってくる。◆トランプが当選したら、それは中国にとって良いことか悪いことか?まず、2月1日のシンガポール「聯合早報」に掲載された<トランプが当選したら、それは中国にとって良いことか悪いことか?>(※2)という記事に書いてある分析を見てみよう。「聯合早報」は中国政府としては口にすることができないが「本当はこう思っている」という内容を第三者に書かせるときがある。中国大陸のネットで削除されずに載っている場合は、そういうケースであることが多い。今般ももちろん、中国大陸のネット空間で、むしろ目立っていた。だから、これは中国の本心(に近いもの)なのだろうと受け止めたので、ご紹介する。以下、個条書きのように番号を付けて概略を羅列する。1.1月25日に発表されたロイターの世論調査では、トランプ前大統領が40%の支持を得て、バイデン現大統領を6%リードしている。中国のネットで「川建国」と「拝振華」と呼ばれている2人の政治家が年末に再び対決する可能性がある。2. 感情的でビジネスマン的な性格のトランプが、前政権の時のように北朝鮮に舞い戻ってきたら中国に有利か不利か何とも言えないが、全体としてメリットとデメリットはある。3.前回の米大統領選では、中国のネットはトランプ再選に期待する声に満ちていた。トランプは次から次へと西側同盟から抜けて「アメリカ・ファースト」を重んじたので、どんなにトランプが中国に高関税をかけハイテク産業発展を阻止しても、国際社会におけるアメリカの孤立化が進み中国の活躍の場が増えたからだ。しかしトランプを破ったバイデンは、「アメリカ・ファースト」などトランプ時代の外交政策を一気に放棄し、トランプ政権の4年間で分断された同盟体制をいち早く立て直し、インド太平洋地域で中国をより包括的・組織的に包囲するために小規模な仲良しグループを動員し、東シナ海、台湾海峡、南シナ海における「三海連関」の現状を形成した。4.もしトランプが当選して自分のやり方に戻せば、バイデンが必死になって再構築した軍事同盟体制や仲間を集めた小さなグループも、指導者不在の砂と化し、中国を封じ込めるためのアメリカとその同盟国の結集力は大幅に低下するだろう。これは北京にとって大きなメリットとなる。5.台湾問題では、トランプはビジネスマンの利益追求に基づいて評価し、今年1月20日のFOXニュースのインタビューで、「北京が武力攻撃した場合、台湾を守るかどうか」という質問には答えなかった。トランプは「質問に答えることは交渉で非常に不利な立場に立たされる」と述べ、「台湾がアメリカの半導体事業のすべてを奪った」と付け加えた。トランプが同様の回答をしたのは昨年7月以来2回目で、バイデンが大統領在任中に、「アメリカは台湾防衛のために軍隊を派遣する」と4回も公式に発言したのとは強烈な対照を成している。6.中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は水曜日(1月31日)、トランプが「台湾防衛」を拒否したことに関し、アメリカは常に「アメリカ第一主義」を追求し、台湾はいつでも「(利用できる)駒」から「捨て駒」に変わり得ると述べた。7.ホワイトハウスが来年1月に政権交代した場合、台湾はトランプと取引し、安全保障上の約束と引き換えにアメリカへのハイエンドチップの移転を加速させるために、より高い代償を払わなければならないかもしれない。台湾海峡で何かが起こったときに米軍は高みの見物を決める可能性があり、第二次世界大戦後にアメリカがひたすら築いてきた軍事力は、トランプにとってはそれほど価値が高いものではないので、台湾はホワイトハウスとの取引を試みる必要が出てくるかもしれない。8.昨年から緊張が高まっている南シナ海でも同じことが起きる可能性がある。トランプがホワイトハウスに復帰すれば、フィリピンを堅固に防衛するというバイデン政権のコミットメントが見直され、マルコス・ジュニア政権は中国に対して強硬姿勢をとる自信を失う可能性がある。9.トランプは日韓駐留米軍の予算も削減し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との4回目の会談を再開するかもしれないし、「三海連関」戦略も自滅的だ。10.米主導の同盟体制が弱体化すれば、中国が国際情勢や地域情勢で影響力を行使する余地が広がる。11.しかし、トランプの2度目のホワイトハウス入りは、中国にとって良いことばかりではない。対中タカ派で米中貿易戦争の立案者であるライトハイザーや親台湾派のポンペオなど、国家安全保障と経済の分野でトランプから重要な任務を任される可能性が高い。そうなった場合、中国の最恵国待遇も撤廃され、アメリカに輸出される中国製品に40%以上の関税が課せられ、米中間のデカップリングが加速し、技術戦争と貿易戦争の激しさがさらにエスカレートする可能性がある。12.1月27日、ワシントン・ポストは3人の情報筋の話として、トランプが中国からの輸入品すべてに一律60%の関税を課す可能性について顧問と話し合ったと報じた。これは、米中貿易戦争でトランプが科した懲罰的関税より35%も高く、中国製品を米国市場から追い出すに等しい。13.予測不可能なことをするトランプは、台湾問題に関する中国本土のレッドラインを無視し、北京の忍耐力と決意を試し、両国が誤って軍事衝突を引き起こす可能性も逆にないわけではない。14.昨年11月にサンフランシスコで行われた中米首脳会談以降、米中両国はハイレベルな意思疎通を再開し、あらゆる面で対話を強化し、昨年8月のペロシー米下院議長の台湾訪問後の谷から抜け出すための努力を強めている。バイデンの再選後の米中関係は依然として波乱含みではあるものの、その傾向はより予測可能であるという点においてメリットがある。それに反してトランプは常識に従ってカードを使わず、予測不可能な道筋は北京に誤算をさせる可能性も否定できない。(以上、聯合早報の概要。)◆知識層向けウェブサイトの見方中国大陸内のウェブサイトで、比較的に知識層が集まる「観察者網」では2月5日、<トランプは「もし当選すれば対中貿易戦は行わず関税増強は継続する」と言っている>(※3)と題する論考を公開した。以下、要点だけをピックアップする。●ブルームバーグと香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、現地時間2月4日、トランプはFOXニュースのインタビューを受け、「選挙に勝てばすべての中国製品に少なくとも60%の関税を課す」と脅した。「しかし、これは貿易戦争ではなく、中国とは平和に暮らしたい」とも述べた。トランプは続けて「私は中国を傷つけたくない。 私は中国と平和に暮らしたい。 米中友好は素晴らしいと思う」と付け加えたが、金融関係者はトランプ再選後に起こりうる市場の混乱に備えている。●注目すべきは、バイデンは大統領就任後、前政権(トランプ政権)時代の政策を否定するために「対中関税の引き下げを検討している」とくり返し主張しているものの実現しておらず、米経済界に不満を抱かせている。●2022年7月、米国国際貿易委員会は公聴会を開催し、輸入に依存する製品の米国の輸入業者と製造業者は、関税が既存の貿易の流れを混乱させると主張し、中国への関税の継続に強く反対した。アメリカの原告6000人以上が、対中関税で支払った数十億ドルの賠償金を米政府に要求し、同政策は適切な手続きを経ずに策定されたものであり、侵害にあたると主張している。●昨年3月、米国国際貿易委員会は報告書を発表し、調査の結果、トランプ政権が3000億ドル以上の中国製品に関税を課し、「中国に支払わせる」と脅したが、実際にはその代償を支払ったのはアメリカの輸入業者と消費者であり、それに応じて米企業の輸入価格と米国内における価格が上昇したと指摘した。ブルームバーグによると、これは米国企業が米国の対中関税のほぼ全額を負担することを意味する。(以上、観察者網の概略。)◆一般ネット民の見方中国大陸のネット市民は米大統領選に強い関心を持っており、さまざまな意見が見受けられる。いくつかの例を挙げると以下のようなものがある。●そこまで高い関税なら、デカップリングということだな。●川建国も拝振華も、ともかく中国を封じ込めたいことに変わりはない。選挙に有利なように対中強硬競争をしている。理由は簡単。中国が強くなり、アメリカを凌駕するのを阻止しないと、選挙民の支持が得られないから。●川建国も拝振華も中国を抑圧する方法が違うだけだ。トランプの有権者群はアメリカのブルーカラー労働者が大半を占める。このグループは一般的に教育レベルが高くない。だからトランプは誰にでもわかるような単純な言葉を使うし、誰の目にも見えるような短期間で結果を生む政策を好む。バイデンは熟練された政治家なので「戦略的」で「長期計画」的だ。例えば日本、韓国、インド、フィリピンなどに甘い言葉をかけ対中包囲網を創り上げる。●もし、川建国と拝振華のどちらかを選ばなければならないとしたら、私はむしろトランプを選ぶかな。というのも、拝振華が与える「長期的痛み」は狡猾で目に見えにくいが、川建国が与える「短期間的痛み」は正直で誰の目にも明らかだ。拝振華がエリート層を相手にし、川建国はブルーカラーを相手にしているというのも、何だか奇妙な好感が持てるのだ。●っていうか、民主主義っていいの?前の政権が言ってた政策を全て覆さないと大統領選に勝てないというのをくり返して、国益になるのかね?アメリカ、大統領選のために内戦起きそうじゃない?(ネットの意見はここまで。)最後の意見はおそらく「もっとも、中国のように言論弾圧が強いのもなんだが…」と書きたいところだろうが、書いたら削除されていただろうから、これは暗黙の認識、暗示として誰でも読むのではないかと、興味深く考察した。この論考はYahoo(※4)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.kzaobao.com/mon/keji/20240201/155666.html(※3)https://www.guancha.cn/internation/2024_02_05_724562.shtml(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4959cc3e7a74ef08bf36799bb5eb7849fb858e07
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2024/02/13 10:27
GRICI
台湾有事は遠のくのか? 立法院長に国民党が当選「民進党を訴える」と「柯文哲の乱」!【中国問題グローバル研究所】
*10:55JST 台湾有事は遠のくのか? 立法院長に国民党が当選「民進党を訴える」と「柯文哲の乱」!【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。2月1日、台湾立法院(国会)の院長(議長=台湾では首相に相当)選挙で、対中融和的な国民党の韓国瑜氏が当選した。5月20日に発足する親米的な民進党の頼清徳政権にとっては「ねじれ国会」の「ねじれ度」がさらに強くなり、国防予算案などを通しにくくなるだろう。一方、韓国瑜が当選したのは新立法院委員(国会議員)の中にいる2名の無党派が国民党側に付いたからだが、今後の立法院運営(国会運営)では柯文哲氏が率いる民衆党委員(議員)8人が民進党の案に賛成するか国民党の案に賛成するかによって予算案の可否が決まる。ところがなんと、その柯文哲が民進党を訴えると怒っていることが2月2日にわかった。となれば、予算案などは対中融和の方向で決まっていく可能性が高い。何が起きているのだろうか?「柯文哲の乱」を紐解こう。◆国民党の韓国瑜が当選した背景1月15日のコラム<どう出る、習近平? 台湾総統選、親米民進党勝利>(※2)に書いたように、総統選では民進党の頼清徳氏が勝ったが、立法院では全議席113のうち、「国民党:52議席、民進党:51議席、民衆党: 8議席、無党派2議席」となり、国民党が第一党となった。そのコラムでは、2月1日に行われる立法院院長・副院長選挙で、ひょっとしたら「緑(民進党)白(民衆党)合作」があり得るかも知れず(頼清徳が示唆)、もし頼清徳の要望に応じたら、民衆党の柯文哲氏は完全に選挙民の信頼を失ってしまうだろうと懸念した。柯文哲は、「藍(国民党)白合作」を破局させながら、民進党からのモーションに応じるというようなことは、さすがにしなかったようだ。結果的に柯文哲はどちらにも付かず「独自路線」を貫いた。結果、2月1日の投票(※3)では民衆党も独自の立候補者を立てて、1回目の投票では以下のようになった。●韓国瑜(国民党):54票(48.2%)●游錫堃(民進党):51票(45.5%)●黄珊珊(民衆党): 7票(6.3%)院長に当選するには過半数(50%以上)を獲得していなければならないので、上位2位の立候補者に関する決選投票に入ることになった。このとき民衆党は退場して参加せず、国民党にも民進党にも投票しないという姿勢を貫いたことになる。となると、民衆党議員を除いた議員による決選投票となり、無党派の2人を国民党が引き寄せるか民進党が取り込むかのどちらかによって結果が逆転するわけだが、無党派の2人は、共に国民党側に付いたので、結果として●韓国瑜(国民党):54票(51.4%)●游錫堃(民進党):51票(48.6%)となり、韓国瑜が勝利したわけだ。無党派の2人は陳超明氏(※4)と高金素梅氏(※5)で、やや国民党寄りの傾向があり、1月13日に行われた立法院選挙においても国民党の支援を得ている。こういう時のために選挙期間中に支援するというのは、相当に周到であったということになろうか。副院長も国民党の江啓臣氏(2020年3月9日~2021年10月5日の期間のみ国民党主席)が当選した。◆「柯文哲の乱」――民衆党の柯文哲氏が民進党を訴えると激怒!ここで問題になるのは、今後、行政院で民衆党がどう動くかだ。そう思って柯文哲の動きを追っていたところ、なんと、2月2日の「09:38」にシンガポールの「聯合報」が、<(柯文哲が)民進党に電話して緑白合作を呼びかけたと報道され、柯文哲は「嘘八百だ!」と怒り、「午後、民進党を訴える」と批判>(※6)と報道しているのを知った。このリンク先には柯文哲が激怒している動画があるので、ぜひリンク先をクリックして動画をご覧いただきたい。これ以上の証拠はなく、文字化されたものも動画の画面に出て来るので、漢字や表情から概ねの内容は想像いただけるものと思う。簡単に書くと、民進党(緑)の報道担当者(中国語では発言人)が、「柯文哲の方から民進党に電話してきて、緑白合作をしようと持ちかけてきた」と言ったとのこと。それを知った柯文哲は激怒し、「何を言ってるんだ!連絡してきたのは民進党の方じゃないか!民進党から連絡があり、民進党関係の医療業界の長老に電話するようにと頼んできたので、長老だから(失礼がないように)言われた通りに返電するという形で連絡したに過ぎない。それを私(柯文哲)の方から緑白合作しようと持ちかけたなどというのは本末転倒!民進党はもう全く信用できん!もう、これ以上は我慢ならない!訴えてやる!」と反論。頼清徳も元医者なら、柯文哲も元医者。そこで頼清徳陣営が医者仲間の老練の大家の名前を出して、柯文哲が返電をしないわけにはいかない所に追い込みながら、柯文哲が自ら積極的に「緑白合作をしよう」と頼清徳陣営に持ちかけてきたのだと民進党が言い始めたのだ。柯文哲は激怒し、「こんな信用のできない、大ウソつきの民進党(特にその報道官と記者)は、今日の午後にも訴えてやる!見てろよ!」と威勢よく激しい。それに対して民進党も「おお!結構!法廷で会おう!」と強気の構えだ。この「事件」に関しては、どうやら台湾の中時新聞網が先に報道しているようで(※7)、時間を見ると2月2日の「04:10」。ただ、中時新聞には動画がないので、聯合報をご覧になる方が、分かりやすいかもしれない。いずれにせよ、立法院で民衆党が民進党の提案に賛成するという可能性は、これで無くなったと言っていいだろう。◆台湾有事は遠のくのか?したがって立法院では、対中融和路線の中で国防予算等の議決がなされるようになるだろうから、たとえばアメリカから大量の兵器を購入するとか、米軍による軍事訓練を増やすといった種類の予算案は否決される傾向に動くだろう。そうでなくとも、1月30日のコラム<米中の力関係が微妙に逆転? ガザ紛争が招いた紅海危機問題で>(※8)で書いたように、ガザ紛争以来イランと対峙しているアメリカは、アメリカ自身が中東戦争に直接参戦することは避けたいという事情もあり、中国にイランを説得するよう動いてほしいために、中国に対して低姿勢だ。当該コラムで書いたように、台湾総統選で民進党の頼清徳氏が勝った時に、バイデン大統領はすかさず「アメリカは台湾の独立を支持しない」(※9)と表明したし、ウクライナだけでなく中東と台湾での三面戦争に関与することができないことから、昨年12月の時点ですでに米国在台湾協会(AIT)は民進党に「アメリカは台湾独立に反対し、一方的に現状を(台湾が)変更することに反対する」と言い渡した。EUも「台湾は一方的に独立を宣言すべきではない」と表明している。そのため12月1日の台湾の中時新聞は<アメリカが釘を刺した 頼清徳は台湾独立を謳った民進党綱領(の是正)を回避できない>(※10)という見出しで、民進党が身動きできない状況を報道している。あらゆる面から見て、アメリカは今では「台湾有事を誘発させるな!」という趣旨のシグナルを民進党に対して発しているのである。となれば台湾の方から中国の武力侵攻を誘発する行動には出ないことになるので、習近平としても武力統一をする理由は皆無となる。そうでなくとも習近平は芳しくない国内の経済事情や恐るべき党内、特に軍部の大規模腐敗に直面し、何とか武力衝突が起きないように必死だ。あれだけ信用して抜擢した秦剛前外相などは、不倫を通して情報漏洩さえしているという恐ろしさ。どんなに厳重に身体検査をしても、怖くてなかなか任命できないという状況に習近平は苦しんでいるはずだ。あらゆる側面から見て、台湾の立法院正副院長の選挙結果からも、「台湾有事は遠のいている」という結論に行きつくのではないだろうか。日本は台湾有事を前提として、むしろ「勇ましくなり」、臨戦態勢に向かって「はしゃいでいる」ように見受けられる。自民党の裏金問題など、長きにわたる日本政治の根本が揺らいでいるのに、そこから目を逸らさせ「外敵創り」によって保身を試みる自民党政権と同調圧力に騙されないように、日本国民は俯瞰的視点を持たなければならない。そうでなければ、日本人は「自ら好んで」戦争に突入し、日本国民の命を奪う道を「自ら選択」する結果を招く。日本が軍事力を強化することには反対しないが、自ら戦争を招く世論形成は避けねばならない。この論考はYahoo(※11)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4943(※3)https://www.cna.com.tw/news/aipl/202402015004.aspx(※4)https://zh.wikipedia.org/zh-hans/%E9%99%B3%E8%B6%85%E6%98%8E(※5)https://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%87%91%E7%B4%A0%E6%A2%85(※6)https://udn.com/news/story/6656/7750029(※7)https://www.chinatimes.com/cn/newspapers/20240202000481-260118?chdtv(※8)https://grici.or.jp/4973(※9)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※10)https://www.chinatimes.com/cn/realtimenews/20231201002359-260407?ctrack=pc_main_alert_p04&chdtv(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/42b9cdf729fc4a002532eced94cf42a20a424644
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2024/02/05 10:55
GRICI
米中の力関係が微妙に逆転? ガザ紛争が招いた紅海危機問題で【中国問題グローバル研究所】
*10:32JST 米中の力関係が微妙に逆転? ガザ紛争が招いた紅海危機問題で【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。1月26~27日、アメリカのサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と王毅(中央政治局委員、中央外事工作委員会弁公室主任兼)外交部部長(外相)がタイのバンコクで会談した。イエメンの反政府勢力「フーシ派」の紅海における船舶への攻撃をアメリカは阻止しようとしたが効果なく、背後にいるイランがフーシ派への支援をやめるよう「イランを説得してくれ」と、アメリカが中国に頼んでいるからだ。しかし中国は台湾問題への内政干渉をアメリカがやめることが先決問題だとして強気の姿勢を崩していない。バイデン大統領は大統領選があるため台湾の民進党に「独立色を減色せよ」(中国を刺激するな)という趣旨の指示を出す傾向にある。そもそもタイで会談したのは、王毅がタイとの査証相互免除締結など多くの協力協定を結ぶためにタイに行ったからで、サリバンはその王毅に「会ってもらうため」にのみタイまで行った段階で、米中の立場が逆転している。アメリカは大統領選があるので国際的信用を回復するために、暫定的ではあっても、中国に譲歩し、台湾有事が起きない方向に舵取りをする可能性がある。日本は梯子を外されないように気を付けなければならない。◆王毅とサリバンの会談1月26日から27日にかけて、王毅とサリバンがタイのバンコクで会談したと中国の外交部が伝えている(※2)。それによれば米中は昨年サンフランシスコで両首脳が約束した事項に沿って話し合いを緊密に持つとのこと。王毅は「今年は米中国交正常化45周年。双方は対等な立場で話し合うべきで、相手国の核心的利益に決定的な損害を与えるような内政干渉をしてはならない」として台湾問題を最優先事項とする姿勢を崩さず、「他国の発展を阻止するような行動は取ってはならない」とも主張した。その上で、「外交、軍隊、経済、金融、商務、気候変動」あるいは麻薬取締などの領域で協力し合うとしている。二人は中東、ウクライナ、朝鮮半島および南シナ海などの国際問題に関しても話し合ったと、外交部はいたって包括的で無難な報道しかしていない。◆紅海危機でアメリカの矛盾を酷評した「環球時報」社評しかし、実際は12時間にも及ぶ話し合いの内容は熾烈なもので、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は1月26日の社評で<アメリカは紅海に関して中国に頼みごとがあり、まずはキチンと話し合いを>(※3)という見出しで、相当に辛辣なことを書いている。長いので概要を個条書きすると以下のようになろうか。●アメリカは紅海で1ヵ月以上にわたり同盟国の船舶の武装護衛を組織し、半月以上にわたってフーシ派武装勢力を武力攻撃してきたが、効果は見られなかった。紅海で挫折したアメリカは、あたかも背後に中国がいるかのような国際世論誘導を謀って「中国責任論」を展開しながら、一方では中国に「どうか、フーシ派の背後にいるイランを説得してほしい」と懇願してきた。動機が不純だ。●紅海は物品やエネルギーの重要な国際貿易ルートなので、紅海危機以来、中国はあらゆる関係者と緊密な意思疎通を維持し、緊張緩和に積極的に取り組んできた。中国は民間船舶への攻撃の停止を求めており、関係者に対し紅海の緊張を高めることを避け、紅海の水路の安全を共同で維持するよう求めている。●アメリカが紅海危機の平和的解決を共同で促進するために中国の協力を得たいと望むのであれば、下心を排除して虚心坦懐に話し合いをすればいいだけのことだ。中国とイランは経済協力をしているが、中国とイランのいかなる関係もアメリカにとっては好ましくないようだ。●今回のパレスチナ・イスラエル紛争勃発以来、アメリカ当局者らは中国に対し、中国にイランを説得してくれと頼んでいるが、アメリカの同盟国船舶護送が成功しないと、すぐさま「中国責任論」を掲げて中国を非難する。この自己矛盾は、国際舞台における米国の利己主義とダブルスタンダードを最もよく反映している。●多くの西側メディアさえ、軍事攻撃は逆効果でしかないとコメントし、アメリカの 国防総省当局も、フーシ派と戦う軍事計画は「機能しない」と認めた。アメリカが護衛作戦を開始した際に思い描いていた「繁栄の守護者」のリーダー像は消え、紅海での対応に疲れ、ますます受動的になったアメリカの姿だけが残った。●民間船を攻撃しているのは確かにフーシ派だが、危機の根本原因はガザ紛争の波及にあり、すべての当事者は一刻も早くパレスチナとイスラエルの間の停戦を実現し、戦争を終わらせるという基本に立ち返り、実行する必要がある。しかしアメリカはガザ攻撃をするための強烈な武器をイスラエルに提供し続けている。●ウクライナでも成功していないアメリカは、地域危機に対する責任を可能な限り中国に転嫁したいという考えにとりつかれている。これは地域危機に対応できないアメリカの常習犯的な行動でもある。●アメリカは中東に残したいわゆる「力の空白」を中国が埋めることを常に懸念しており、そのため中国と地域諸国との正常な協力を絶えず悪者扱いし、中東における中国の「影響力」を抹殺しようと、あらゆる手段を試みてきた。(引用以上)◆ガザ紛争、直近のキッカケは中国によるイラン・サウジ和解「環球時報」の最後の項目にある「力の空白」とは、アフガニスタン撤退の際にみっともない姿を見せてしまったアメリカが「中東に及ぼす力を無くしてしまった」ことを指しており、2023年3月10日に中国がイランとサウジアラビア(以下、サウジ)を和解させたことをアメリカが妬んでいるということを指す。そのため、2023年10月11日のコラム<ハマスの奇襲 背景には中東和解に動いた習近平へのバイデンの対抗措置>(※4)で指摘したように、バイデンはサウジをイスラエルと仲良くさせことを試み、サウジを甘い言葉で誘惑してイスラエルと国交を樹立させるべく背後で動いていた。イスラエル建国の時には全ての中東諸国が一致団結してアラブ地域を守るべく中東戦争を起こした。しかしその後、アメリカの数多くの謀(はかりごと)により、いくつかのアラブ諸国がイスラエルと国交を樹立し、それによって踏みにじられてきたパレスチナの苦悩が忘れられていくことをパレスチナは怖れた。アラブの盟主であるようなサウジまでがイスラエルと国交を樹立すれば、パレスチナの凄惨な状況を世界が気にしなくなっていくだろうことを怖れて、ハマスの奇襲があったと位置付けることができる。だからハマスの奇襲があった後サウジは直ぐに「イスラエルとは国交を樹立しない」と表明し、中東諸国を団結させ一丸となって、イスラエルのガザ攻撃をやめさせようとしている。◆紅海でのアメリカの無力は、中国に有利に働く2023年10月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartI>(※5)から、飛び飛びだが、2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?ParIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※6)に詳細に書いてきたので、ウクライナ戦争の原因はアメリカ、特にバイデンが創ってきたことは既に明らかだろう。そして最も得をしているのは中国で、実はガザ紛争に関しても、中国には有利に働いている。中国はウクライナ戦争に何らかの形で参画しているわけではないし、ガザ紛争においても「イランとサウジを和解させた」という事実があり、「イランとは経済的に他の国同様に結びついている」というだけで、中国が得をするのはなぜか?それは、中国は「アメリカから制裁を受けている国」としてロシアやイランと同じ立場にあるからだ。アメリカにとってロシアやイランは敵国以外の何ものでもないので話し合いなどできないが、中国となら話ができる。だからウクライナ戦争やガザ紛争でアメリカに不利な要素が出て来ると、中国を通してロシアやイランを説得してもらおうと、アメリカが中国に低姿勢にならざるを得ない状況に来ている。だからサリバンがわざわざ王毅のスケジュールに合わせてタイまで飛んでいくという力関係が米中間に生まれているのだ。ハマスの奇襲もバイデンが原因を創っているので、バイデンが招いた戦争で「習近平が笑う」という構図が生まれつつある。◆アメリカがハシゴを外すかもしれない台湾問題中国はここぞとばかりに、「フーシ派に関してイランに掛け合ってくれなどと頼む前に、台湾問題に関して内政干渉をするな!」と居丈高だ。「台湾問題が先だ!」と一歩も譲らない。だからバイデンは大統領選もあるので、アメリカの弱さを見せるわけにはいかないので、「習近平とは常に意思疎通をしている」という口実を設けて格好をつけ、実は習近平に「頼むから紅海問題でイランを説得してくれ」と腰を低くしているのである。そのため台湾の総統選で民進党の頼清徳氏が勝った時に、バイデンはすかさず「アメリカは台湾の独立を支持しない」(※7)と表明したし、民進党側にそれとなく「独立を叫ぶ方向に動くな」(※8)とクギを刺している。となれば、台湾有事は、よほどの突発的なことでもない限り起きにくいことになる。日本はハシゴを外されないように気を付けた方がいいだろう。この論考はYahoo(※9)から転載しました。写真: 代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mfa.gov.cn/web/wjdt_674879/gjldrhd_674881/202401/t20240127_11234565.shtml(※3)https://opinion.huanqiu.com/article/4GK0vBaqlXw(※4)https://grici.or.jp/4703(※5)https://grici.or.jp/4683(※6)https://grici.or.jp/4885(※7)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※8)https://www.chinatimes.com/cn/realtimenews/20231201002359-260407?ctrack=pc_main_alert_p04&chdtv(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0370de8f701677cded896ce27f6c237fa90b6b20
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2024/01/31 10:32
GRICI
日本の裏金・派閥と中国の政治構造【中国問題グローバル研究所】
*10:54JST 日本の裏金・派閥と中国の政治構造【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党の裏金・派閥問題が深刻化している。一党支配体制である中国ではどうなのだろうか?民主主義と専制主義における政治体制のメリット・ディメリットを比較考察してみよう。◆日本の自民党の裏金と党内派閥自民党の裏金と派閥問題に関しては日本で十分に情報提供されているので、今ここで改めて説明することはしない。しかし何かお役に立つかもしれないので、私が実際に経験した模様から少しだけ状況をご紹介してみたい。2012年3月に江沢民時代と胡錦涛時代における凄まじい権力闘争を描いた『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』を出版すると、たちまち増刷され日本記者クラブで講演したり、NHKの日曜討論に出演したりするようになった。自民党からも声が掛かり、いわゆる「パーティー」への招待状が来たり、安倍政権時代になると「桜を見る会」の招待状が来たりと賑々しくなったものだ。ここでは「パーティー」だけに話を絞ろう。パーティーには「御招待」と一般参加の別があるようで、私の場合は「御招待」と書いてあるが、それでも「一口二万円」という文字が載っている資料が同封してあったように思う(資料があまりに多いので捨てているか、捨てていなかったとしても探し出すのは困難なので、同封してあった資料の文言などに関しては、多少正確さを欠いている部分もあるかもしれない)。送られてきた書類には事務担当者の連絡先があったので、この「一口二万円」に関して「参加費なのか」を尋ねたところ、「いえいえ、先生は御招待客でいらっしゃいますから、ともかくご参加いただけるか否かのお返事のおハガキだけ返送して下されば、それで十分でございます」という回答があった。パーティーには必ず「招待状」を持参するようにと念を押されたので、パーティー会場受付で「招待状」を見せると、「よくぞいらっしゃってくださいました。さあさあ、どうぞ奥へお進みください」とパーティー会場に案内された。著名な大物自民党議員の派閥のパーティーなので、派閥の長が挨拶をし、満場の拍手で迎えられていた。その後何名かの代表者のスピーチがあって乾杯に入ると、会場はまるで戦場のような熱気に包まれた。大企業の社長は、その派閥が輩出している関係大臣筋などにご挨拶をするために争って前に出ようとする場面もあれば、あまりに人数が多い場合は長い列を作ったりと、あちこちに「熱い塊」ができ上っていた。議員自身も、デンと椅子に座っている派閥の長の前に列を作り、挨拶する際は跪(ひざまず)いて(膝を床に付けて!)神々しき相手に話をする姿勢だ。おお――!何という序列社会――!のちに関係者から聞いたところによれば、派閥の長の「覚え愛でたい」存在でなければ出世は絶対に無理なので、同じ派閥の議員でも派閥の長に直接話をする機会は少ない場合もあるので、この時ぞとばかりに好印象を与えようと必死なのだという。また外部からの民間企業の社長などは、仕事の発注の際に便宜を図ってもらうために少なくとも「十口」くらいは出す人が多く、それらがその派閥の活動資金に使われるのだそうだ。派閥の人数が多くないと、自民党総裁候補の時などに自派から出せないので、ともかく自身の派閥の人数を増やし、その議員が再当選できるように派閥は努力する。それが裏金として還流させる原因を作っているのだろう。派閥では確かにその派閥独自の学習会を開いていて、私はその学習会にも講師として呼ばれ何度も講演を行ったものだ。それらを通して感じたのは、たとえば対中問題などに関して派閥ごとに違いがあるなど、こんなに主義主張が異なるなら、同じ自民党にいないで、共通の理念だけを持つ派閥が離党して他の政党を作ったらどうなのだろうかということだった。しかし分党しないのは、同じ自民党にいるからこそ「政権与党」として大臣にもなれれば、時には総理大臣にもなれるわけだから、他党連合のような強固な派閥が党内にあったとしても、当選と立身出世のためにのみ議員になっている政治家が多いので、「自民党」という枠組みは崩さないようだ。ほとんどの議員は選挙の際の当選と、当選後の出世しか考えておらず、決して「日本国民を幸せにしよう」とか「日本国の国益のために頑張ろう」といった動機があるわけでないことも段々にわかってきた。派閥は新人の教育のためにもあるという言い訳は、タレント議員など、それまで政治と無関係の「人気がありさえすればそれでいい」あるいは「自身の派閥の議員数が増えればそれでいい」といった人数の多寡により党内の力にたよって党が運営されていることが理由の一つにもなっている。統一教会との連携なども、「票数」が増えればそれでいいという「当選」が目的化しているからに他ならない。◆中国の腐敗と派閥では、中国ではどうなのだろうか。1月10日のコラム<習近平に手痛い軍幹部大規模腐敗と中国全土の腐敗の実態>(※2)でも書いたように、中国の腐敗は一種の文化で、特に江沢民時代に軍部の腐敗がピークに達していた。なぜなら江沢民は1989年6月4日の天安門事件で、時の最高権力者であったトウ小平が個人的に指名して中共中央総書記&中央軍事委員会主席になったようなものだから、北京に政治や人脈的地盤がない。そこで「カネ」でつながった利害関係のネットワークを構築したものだから「腐敗文化」に火が付き、このまま放置したら中国は腐敗で滅亡する寸前まで来ていた。特に軍部における腐敗の蔓延は軍事力を弱体化させ、米中覇権競争に踏み込み始めた中国にとっては致命的な弱点となっていた。そのため、2013年に国家主席になった習近平は反腐敗運動を大々的に行って軍部の腐敗の巣窟を徹底して叩き、2015年にはハイテク国家戦略「中国製造2025」と軍事大改革を行ったのである。何度もくり返すが、反腐敗運動は権力闘争などではなく、腐敗の巣窟を叩いて軍事力のハイテク化と中国の製造業や宇宙開発のハイテク化などを推進させるためのものだった。胡錦涛政権時代までは、腐敗系列が形成した派閥が激しく、党内は一枚岩どころか江沢民を中心として「反腐敗運動をさせまいとする」強固な派閥が胡錦涛政権を抑え込んでいたが、習近平政権になってからは激しい反腐敗運動を展開したので、「カネ」でつながる派閥が形成される余地が少なくなっていった。その意味では「習近平独裁」という言葉を使うこともできるが、どちらかというと「中国共産党による専制政治の側面を強化した」という表現も出来る。国務院に与えられていた権限が、中共中央に集中化し、真相を見誤る要素を多分に孕んでいる。これに関して論じ始めるとまた長文になってしまうので、少なくとも「党内に党がある」という危険なまでの派閥というのは無くなったと言っていいだろう。また日本のように個人が政治家になるために「選挙のための不正」をしなければならないという要素も、中国には基本的にない。選挙がないわけではなく、党内選挙は村レベルから中央レベルまであるし、立法機関である全人代(全国人民代表大会)の代表(議員)や諮問機関である全国政治協商会議の代表を選ぶ選挙も全国津々浦々行われている。但し、立候補者を中国共産党が管理する選挙管理委員会がコントロールしているので、西側諸国のような「普通選挙」が行われているわけではない。人材育成に関しては、6歳から入隊できる少年先峰隊(1億1467万人)から始まり、14歳から入隊資格を得る中国共産主義青年団(7358万人)、28歳で入党資格を持つ中国共産党員(9804万人)という訓練と評価を経て中央に駆け上っていく。日本のようにタレント議員などという現象が入り込む余地はない。その意味では国家戦略を練るに当たり、日中では比較の対象にさえなり得ないと言っていいだろう。ただ、14億の人民の心を「中国共産党こそが最高である」という理念でつないでおくことなど出来ようはずもないので、中国には言論の自由がなく、中国共産党は平気で歴史を塗り替え「国家として嘘をつく」。◆「日本式一党支配」を招く自民党の裏金派閥問題そういう国にだけはなって欲しくないが、だからといって日本の政治がこのままでいいことにはつながらない。野党が育たない、いや正確には「野党が育たないようにしていく」という日本の政治構造は、自民党内の派閥や「当選と出世だけが目的」という自民党の実態を、今般の裏金・派閥問題が炙りだしてくれた。その結果、まるで「自民党独裁」の中で、派閥だけが時々交代する「日本式一党支配」を招いているという見方もできる。それは同時に、「日本国民の幸せを中心に考えているのではない政治」の真相を露呈させたということにもなろう。日本の国益を甚だしく損ねている現実を、国民一人一人が自分自身のこととして直視するのに、残念ながら、良い事例なのかもしれない。この論考はYahoo(※3)から転載しました。写真: アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4931(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d40180f7cef863f353c2313e57297c65306dbee2
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2024/01/25 10:54
GRICI
どう出る、習近平? 台湾総統選、親米民進党勝利【中国問題グローバル研究所】
*10:28JST どう出る、習近平? 台湾総統選、親米民進党勝利【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。台湾総統選で親米の民進党・頼清徳氏が勝利した。立法院に関しては国民党が議席を増やしたものの過半数に達せず、1議席しか民進党に勝っていない。「ねじれ国会」は民衆党が国民党側に付くか民進党側に付くかによって方向性が決まる。中国は頼氏の得票率が40%でしかないことを以て、この選挙結果は台湾の主流世論ではないと主張。これまでの姿勢を変えない構えだ。国民党の意外な敗因と今後の中台の動向を考察する。◆総統選での民進党の勝利と立法院における議席1月13日、台湾総統の選挙結果と立法院議員の選挙結果が出た。先ず総統選の開票結果は民進党の頼清徳氏:558万6019票(40.05%)国民党の侯友宜氏:467万1021票(33.49%)民衆党の柯文哲氏:369万 466票(26.46%)で、頼清徳が当選した。蔡英文総統の方針を受け継ぐと宣言し、圧倒的な親米路線を継続することになる。一方、立法院の方は全議席113のうち、国民党:52議席(改選前より15議席増)民進党:51議席(改選前より11議席減)民衆党: 8議席(改選前より3議席増)となり、いわゆる「ねじれ国会」状況となった。国民党がここまで議席数を伸ばすことができたのは、内政に関する民進党に対する不満があるからで、それは2022年11月に行われた、内政が問われる統一地方選挙で国民党が圧勝し、民進党が惨敗したことからも窺(うかが)われる。しかし、対外政策が重視される総統選においては、親米寄りの民進党が勝利した。その背景には言うまでもなくアメリカの力があり、「第二のCIA」と呼ばれるNED(全米民主基金)は台湾にその支部である「台湾民主基金会」を2003年に設立しているほどだ(詳細は拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の【図表6‐8 「第二のCIA」NEDの活動一覧表】など)。その浸透力は大きい。その証拠に、2023年11月20日のコラム<米国在台湾協会は3回も台湾総統候補者を面接試験し、柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている>(※2)に書いたように、民衆党の柯文哲は野党一本化である「藍(国民党)白(民衆党)合作」に署名したことを発表した瞬間に、AIT(米国在台湾協会)から連絡が来て「おまえ、何するつもりだ?」と威嚇され、「藍白合作」は破局した。柯文哲自らが告白しているので間違いはないだろう。もし、「藍白合作」が潰されていなかったら、得票率(頼清徳40.05%、侯友宜33.49%、柯文哲26.46%)から言って、野党連合は59.95%前後の票を獲得していた可能性があり、野党連合が圧勝したはずだ。したがって、この選挙はアメリカと中国大陸との闘いでもあり、アメリカが戦略的に勝利したということもできる。事実、頼清徳は勝利宣言のスピーチ(※3)で、中国大陸の選挙活動介入を「外部勢力の介入」と批判しており、アメリカの介入は台湾に浸透しきっていて「内部勢力」と認識していることになる。◆国民党の敗因は国民党自身に「緑白合作」も?もう一つの国民党の敗因は、国民党自身にある。侯友宜は選挙期間中、「九二コンセンサス」とか「一つの中国」、ましてや「統一」などといった類の言葉を使わないように慎重に言葉を選んでいたのに、選挙直前(1月8日)になって、馬英九元総統が、DW(Deutsche Welle、ドイツの声)の取材に答えて<「九二コンセンサス」を讃えたり、習近平を信じるべきだと言ったり>(※4)などしたからだ。この情報が1月10日に公開された。選挙民は一気に国民党から離れていったのは否めないだろう。そのためもあってか、選挙後、頼清徳は<何なら民衆党と組む可能性もなくはない>(※5)と示唆しているので、「ねじれ国会」が解消される可能性もある。しかし、これで民衆党の柯文哲が今度は緑(民進党)と「緑白合作」という連立内閣を組むようなことをしたら、もう柯文哲の信用はガタ落ちになるのではないだろうか?柯文哲はそもそも「民進党のやり方は絶対に許さない!」と叫んで民衆党の産声を上げたようなものだし、台北市長時代は<「両岸は一つの家族」と中国を讃えていた>(※6)のに、節操がなさ過ぎるだろう。立法委員の任期は2月1日からなので、今年も2月1日に立法院の院長・副院長が選出される(※7)。今回、国民党と民進党はどちらも全議席の過半数に達してないので、民衆党がどちらに付くかによって、立法院の院長が国民党になるか、あるいは民進党になるかが決まる可能性が高い。したがって2月1日になれば、「緑白合作」という、あり得ないような状況の有無が明らかになるものと推測される。◆中国の反応では、今般の選挙結果に関して、中国はどのように反応しているのだろうか?習近平にしてみれば、あまりに衝撃的な結果だったのでしばらく報道が規制されていたくらいだったが、いつまでもそうもいくまい。夜中の22:46になって、最初に公的見解を発表したのは国務院台湾弁公室(※8)だった。その見解は概ね以下のようなものである。●民進党が台湾の主流世論を代表しているわけではない。●台湾は中国の台湾で、今回の選挙が両岸関係の基本的な発展の方向性を変えることは絶対にできない。祖国がいずれ、そして必然的に統一されるという大勢を阻止することはできない。●台湾問題を解決し、祖国統一を成し遂げるという(中国の)姿勢は一貫しており、その意志は磐(いわお)のように揺るぎない。「一つの中国」原則を体現する「九二コンセンサス」を堅持し、「台湾独立」の分離主義行動と外部勢力の干渉に断固として反対し、台湾の関連政党、組織、各界の人民と協力して、両岸関係の平和的発展を促進し、祖国統一の偉大な偉業を前進させる。(以上)頼清徳の得票率が40%であったため、残り60%の民意を合わせたものが「台湾の民意だ」という主張は、台湾内にもあるが、上記見解の冒頭部分は、そのことを指している。同様の内容は13日夜、外務省報道官の意思表明(※9)にもあり、14日の中央テレビ局CCTVのお昼のニュース(※10)でも、ほぼ同じ文面で報道した。いずれも悔しさが滲み出ている。◆習近平はどう出るのか? 腐敗で軍事力は弱ってないのか?バイデン大統領は台湾総統選における民進党の勝利に関し<台湾の独立は支持しない>(※11)と言ってはいる。おまけに「台湾は中国の一部だ」とまで一歩踏み込んで発言したのは珍しい。しかし一方では同報道(※12)で、バイデン政権の高官が「バイデンは民進党政府への支持を示すため、台湾に非公式の代表団を派遣する予定だ」と言っているという。相変わらずの言行不一致だ。非公式であるにせよ、米政界人が訪台したりなどすれば、中国は又もや軍事演習で威嚇するかもしれない。その威嚇は4年後の台湾総統選にプラスに働くとは思わないが、中国が軍事的威嚇をしないという保証はない。いや、するだろう。しかし、1月10日のコラム<習近平に手痛い軍幹部大規模腐敗と中国全土の腐敗の実態>(※13)にも書いたように、ロケット軍を中心にこのような大規模腐敗があるようでは、中国の軍事力も大幅に衰退するのではないかと思うのが普通だろう。そこで関連データに当たってみたところ、当該コラムの図表4および図表5に示したように、案外に衰退していない。タイムラグがあるからかもしれないとも考えたが、同じ疑問を持つ人はシンガポールにもいたようだ。1月9日の聯合早報は<解放軍 組織ぐるみの刑事事件>(※14)という見出しで、「激しい腐敗は解放軍の戦力に影響を与えるのか」というテーマに関して考察している。聯合早報の駐北京記者は「腐敗があるということは投資が普通ではなく多いということで、腐敗があっても、それによって軍が弱体化するところまではいかず、習近平は軍の秩序を掌握している」というニュアンスの分析をしている。筆者が前掲のコラムで示した図表4と図表5の関連データは、聯合早報の分析に近い状況を示しているので、当該コラムでも書いたように、江沢民時代のような腐敗全盛時代は、習近平政権になってからの反腐敗大運動で一定程度は鎮静化しており、それほどの大きな影響は受けないのかもしれない。であるならば、今まで通り、いや、それ以上に軍事演習で威嚇する可能性がある。それでも、台湾が政府として独立を宣言しない限り、武力攻撃するという確率はやはり小さいだろう。中国にとってメリットがないからだ。ちなみに、昨年11月に訪米してサンフランシスコでバイデンに会った時に、習近平は<2027年とか2035年に台湾を武力攻撃するなどという話は聞いたことがない」と言った>(※15)そうだ。拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いたことは正しかったことになろうか。まずは2月1日の立法院の動きを待ちたい。この論考はYahoo(※16)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4822(※3)https://tw.news.yahoo.com/2024%E7%B8%BD%E7%B5%B1%E5%A4%A7%E9%81%B8-%E8%B3%B4%E6%B8%85%E5%BE%B7%E6%89%93%E7%A0%B4-8%E5%B9%B4%E9%AD%94%E5%92%92-%E5%AE%A3%E5%B8%83%E5%8B%9D%E9%81%B8-%E8%87%B4%E8%A9%9E%E5%85%A8%E6%96%87%E6%9B%9D%E5%85%89-132521553.html?guccounter=1(※4)https://www.dw.com/zh/%E9%A6%AC%E8%8B%B1%E4%B9%9D%E5%B0%B1%E5%85%A9%E5%B2%B8%E9%97%9C%E4%BF%82%E8%80%8C%E8%A8%80%E5%BF%85%E9%A0%88%E7%9B%B8%E4%BF%A1%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3/a-67934445(※5)https://www.cna.com.tw/news/aipl/202401140113.aspx(※6)http://hk.crntt.com/doc/1036/9/0/0/103690067_2.html?coluid=93&kindid=2910&docid=103690067&mdate=0331095309(※7)https://www.ly.gov.tw/Pages/List.aspx?nodeid=149(※8)http://www.news.cn/tw/20240113/de4b608e529742d6bb428d5993c66c41/c.html(※9)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202401/t20240113_11223310.shtml(※10)https://tv.cctv.com/2024/01/14/VIDESC7EVTcywZAe3Nrvxgf1240114.shtml?spm=C45305.PqDAXWMng6mR.EIEv9BrzSCjy.35(※11)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※12)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※13)https://grici.or.jp/4931(※14)https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20240109-1460955(※15)https://www.voachinese.com/a/xis-denial-of-plan-to-invade-taiwan-caused-a-stir-in-taiwans-presidential-candidates-20231122/7366374.html(※16)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3bbb1e9015f975bfda921548182cdb516cfefb16
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2024/01/15 10:28
GRICI
習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:36JST 習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆毛沢東は何度も台湾の平和統一を提案しているでは、毛沢東がなぜ台湾の平和統一を提唱し、「台湾同胞に告ぐ書」を発表するに至ったのかを考察してみよう。毛沢東が1949年10月1日に新中国「中華人民共和国」の誕生を宣言したとき、台湾の解放はまだ成されていなかった。「解放」というのは中国共産党の軍隊である中国人民解放軍が国共内戦(=解放戦争=革命戦争)において、その地における国民党による支配を打倒し、勝利した解放軍側の共産党が統治することを言う。国共内戦で大陸において敗北した国民党軍を率いる蒋介石は、1949年12月に中華民国の首都・南京を脱出し台湾に逃れ、台北に遷都した。台湾は海路か空路でないと攻撃できないので、海軍も空軍も弱かった中国人民解放軍は、旧ソ連のスターリンに依頼し、新中国誕生を宣言した後にすぐ、ソ連から海軍や空軍の支援を得て台湾解放を実現させる約束を取り付けていた。ところが北朝鮮の金日成(キム・イルソン)が南北朝鮮を統一するため朝鮮戦争をスターリンと結託して1950年6月に起こしたため、台湾解放のためのソ連の支援は実現されなかった。新中国誕生を宣言したのは、中国大陸を次々に解放していったので、まだ残されている海南島や台湾は宣言後に一気に解放していこうと、毛沢東は計画していた。しかし朝鮮戦争で中国人民志願軍が全力投入してアメリカの北上を食い止めたため消耗していた上に、アメリカが第七艦隊を台湾海峡に付けていたため、海南島などは宣言後に解放しているが、国共内戦をそのまま継続させることが困難になってしまった。そこで毛沢東は「平和統一」を模索し始めたのである。詳細は2009年8月13日の中国新聞網に新華網からの転載として<毛沢東はかつて武力で台湾を解放しようとしていたが、なぜ実現できなかったのか?>(※2)という見出しで書いてある。一方、2021年3月9日の「中国台湾網」は、その昔の新華網の情報として1956年における<毛主席の和平統一思想>(※3)を公開している。それによると、1956年1月、毛沢東は「国共(国民党と共産党)はすでに二回合作している。いま我々は第三回目の合作を準備している」とスピーチし、平和統一の条件などを述べている。・台湾に行ったままの軍人や政治家には、本土(大陸)に残した親戚や友人が多いだろう。自由に行き来して互いに会うといい。如何なる制限も設けず、便宜と支援を提供する。・台湾がアメリカとの関係を断絶しさえすれば、台湾は北京中央で開催している全国人民代表大会や中国人民政治協商会議全国委員会に参加するための代表(議員)を送り込むこともできる。但し、外国軍(米軍)は台湾から撤退しなければならない。(以上、中国台湾網よりの引用)ほかにも多くの文献があるが、1957年以降のことは前掲の中国新聞網の情報がわかりやすい。ただ長文なので、要点だけを拾うと以下のようになろうか。1.1956年7月、毛沢東は「台湾平和解放工作強化に関する中共中央の指示」を発布し、蒋介石の息子・蒋経国と仲が良かった曹聚仁という学者を(香港から)招き和平工作に関して話し合った。そこで第三回国共合作という毛沢東側の意図を、曹聚仁を通して蒋経国に伝えてもらった。しかし台湾側は肯定的な反応を示さなかった。2. 1957年4月、「人民日報」は初めて、毛沢東には第三回国共合作をする用意があることを公表した。3. 新中国誕生後、毛沢東は本来、台湾を解放するに当たり金門と馬祖を解放して、次に台湾解放につなげようとしていたのだが、1958年、金門・馬祖解放を当面は実行しないと表明した。すると、「中華民国」の領土として「大陸奪還」のチャンスを狙っていた台湾の蒋介石は中国大陸の沿岸部を爆撃し始めた。しかも米軍に支援を求めたのだ。そこで同年7月、毛沢東は金門への砲撃準備を指示した。ところが米軍は、最初は強硬姿勢を示していたが、実際は国民党の船団を金門から3海里のみ護衛するに留め、「国共内戦」に巻き込まれることを避けた。アメリカは「大陸と台湾」が一つになることを嫌い、「二つの中国」あるいは「一つの中国と一つの台湾」となること(=台湾が独立すること)を望み、蒋介石に「大陸奪還」を諦めさせようとした。しかし蒋介石は断固として拒否!(筆者注:拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』のp.255前後にも書いたが、実は台湾に逃れた蒋介石は、何としても大陸を奪還しようとして、日中戦争で戦った相手の旧日本軍の岡村寧次大将に依頼し、元日本陸軍参謀から成る「白団」という軍事顧問団を1950年2月、秘密裡に台湾に招聘した。ところがアメリカに気づかれ、アメリカに猛反対されて「白団」は消滅している。それくらいアメリカは蒋介石が「大陸奪還」のために戦うことを阻止した。)4. しかし、毛沢東にとっても蒋介石にとっても「一つの中国」しかあり得ず、革命戦争前の「中華民国」を「毛沢東が取るか、蒋介石が取るか」の二者択一しかなかった。つまり、毛沢東と蒋介石の考え方が一致していて、毛沢東は「蒋介石がアメリカの考え方を拒否している事実」に目を付けたのである。そこで毛沢東は金門攻撃を突如停止させた。金門と馬祖を蒋介石に渡しておく方が、「一つの中国」という、毛沢東(共産党)と蒋介石(国民党)の共通の利益に合致すると判断した。金門と馬祖を蒋介石が領有していれば、蒋介石はそれを足掛かりに「大陸奪還」の夢を捨てないだろうから「一つの中国」という概念が持続するからだ。そのため毛沢東はわざと時々小規模な攻撃を行って、今はまだ国共内戦中で、「一つの中国しかない」という認識を蒋介石と共有した(筆者注:これは現在の大陸による軍事演習に相当する)。5. 1958年10月6日、毛沢東は「台湾同胞に告ぐ書」を発表。「台湾、澎湖島、金門、馬祖は中国の領土の一部であり、世界には“一つの中国”しか存在しない」、「われわれ(共産党と国民党)の共通の敵はアメリカ帝国主義である」とした上で、統一後の台湾の状況に関して「蒋介石は彼の軍隊を維持していい」および「蒋介石には軍隊と政治経済システムと権力構造の保持を認める」と表明した。(筆者注:そのため、現在も台湾平和統一後は、台湾は軍をそのまま維持していいことになっている。)6. 1958年10月25日、毛沢東は「台湾同胞に再び告ぐ書」を発表。アメリカが台湾に内政干渉してくる目的を明らかにし、アメリカは台湾を利用して自らの覇権を維持しようとしているだけなので「アメリカの有毒な計画に注意せよ」と警告した。以上が毛沢東の台湾平和統一構想の経緯と「台湾同胞に告ぐ書」の流れである。なお長男・毛岸英を朝鮮戦争で失った毛沢東は、「台湾は百年かかっても解放する(統一する)」と誓っている。その言葉は、たとえば<毛沢東は晩年、中米関係をどのように処理しようとしていたか>(※4)や、『毛沢東年譜』に書いてある1973年11月17日における<毛沢東とキッシンジャーとの会話>(※5)などにも表れている。◆祖国統一は歴史的必然中国は、毛沢東が「いざとなったら武力的手段によって台湾を解放することを否定はしないが、基本的には何としても政治外交的に(=平和的に=話し合いによって)台湾問題を解決したい」と主張し、「第三次国共合作があってもいい」と言い続けていたことを基本として国家運営をしてきた。それはあくまでも「国共内戦をどういう形で終わらせるか」という中国国内の問題であり、そこにアメリカが内政干渉してくるのはおかしいと主張し続けてきているのだ。これは1950年に朝鮮戦争が起きたために中断された国共内戦の問題なので、「祖国統一は歴史的必然性」であるという位置づけを貫いている。以上より、習近平だけが台湾統一を主張しているのではなく、毛沢東以来の国家的課題であることが明らかになったのではないかと期待する。もちろん、あまりに長い時間が経ちすぎ、国共内戦を知らない世代が多くなり、台湾人としてのアイデンティティも芽生えてきたので、静かに1月13日の台湾総統選の結果を待ちたい。この論考はYahoo(※6)から転載しました。写真: CCTVより(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.chinanews.com.cn/cul/news/2009/08-13/1816313.shtml(※3)http://www.taiwan.cn/xwzx/zxzt/2021zhuanti/__deleted_2021.05.11_11.10.34__jdybzn/ghlc/202103/t20210309_12337043.htm(※4)http://www.charhar.org.cn/newsinfo.aspx?newsid=16440(※5)http://www.zywxpress.com/c/2021-02-25/1350306.shtml(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f61ef11aa9fec3d6e71bd3651629a1c0852d1d6f
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2024/01/09 16:36
GRICI
習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:34JST 習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。昨年末に習近平国家主席は、中央テレビ局CCTVを通して「二〇二四年新年の挨拶」を表明した。その中で台湾問題に関して「祖国統一是歴史必然」(祖国統一は歴史的必然である)と述べている。日本のメディアはこれを以て、習近平は野心家なので台湾統一をしようとしているというニュアンスで「台湾有事」を警戒しているが、「台湾統一」は1950年代に毛沢東が「祖国の使命」として強調したもの。新中国(中華人民共和国)誕生以来のスローガンだ。台湾は国共内戦で後回しにされた一部分に過ぎない。1月13日にはその分岐点となる台湾総統選挙もあるので、「歴史的必然性」の経緯を考察してみよう。◆習近平の2024年新年の挨拶習近平は2023年12月31日夕方(北京時間19:28)、「二〇二四年新年賀詞」(※2)を、CCTVやラジオあるいはインターネットを通して発表した。その文字版は、2024年1月1日の中国共産党機関紙「人民日報」(電子版)に掲載された(※3)(リンク先は中国共産党新聞網)。12月31日に翌年の新年の挨拶をする習慣はかなり前からあって、最初は毛沢東がまだ新中国誕生を宣言する前の1949年1月1日の挨拶を、1948年12月31日にラジオを通して放送し、翌日の1949年1月1日の「人民日報」に全文が掲載されたことから始まる。その年の10月1日に新中国「中華人民共和国」の誕生が宣言されるので、毛沢東としては「革命の成功まで、あともう一歩だ!頑張ろう!」と全国人民に呼びかけたかったものと思う。当時はまだ同時放送はラジオしかなく、元旦の人民日報に間に合わせるには、前日の夜に放送するしかなかったことが原因だったが、その後、天安門事件があった1989年の12月31日に江沢民(当時、中共中央総書記&中央軍事委員会主席)がCCTVのインタビューを受けて新年の祝辞を述べ、1990年12月31日に楊尚昆(当時、国家主席)が新年の挨拶をして以来、中国の指導者は毎年12月31日に新年の挨拶を行う慣わしになっている。「二〇二四年新年賀詞」約1600文字のうち9文字の「祖国統一是歴史必然」が西側諸国に注目され、あたかも習近平だけが「台湾統一」を強行しようとしているかのごとく、日本でも報道されている。しかし古くは毛沢東をはじめ、トウ小平や江沢民あるいは胡錦涛も同様の言葉を使っていた。それは党大会や新年の挨拶など、さまざまなケースで常套句化している。特に注目すべきは、毛沢東は1950年代に2回も「台湾の平和統一」を呼びかける「台湾同胞に告ぐ書」を発表し、トウ小平もそれを基本として1979年1月1日に「台湾同胞に告ぐ書」を発表しており、習近平が2019年1月2日に「台湾同胞に告ぐ書」を発表した(※4)のは、あくまでもトウ小平の同書の40周年記念として繰り返したということである。「習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo(※5)から転載しました。写真: CCTVより(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=5265176553760067645&toc_style_id=feeds_default&track_id=117DA711(※3)http://cpc.people.com.cn/n1/2024/0101/c64094-40150459.html(※4)http://www.xinhuanet.com/politics/leaders/2019-01/02/c_1123937757.htm(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f61ef11aa9fec3d6e71bd3651629a1c0852d1d6f
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2024/01/09 16:34