GRICIニュース一覧
GRICI
トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:45JST トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」 高市政権は未だバイデン政権の対中戦略の中(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆中国に歩み寄るトランプ政権:米中蜜月状態中国は韓国での米中首脳会談以降、レアアースに関しても不十分ながら米国に対して緩和策を実施し始めており(※2)、中国全体の10月のレアアース磁石の輸出は2ヵ月連続で減少しているが、米国の出荷だけは急増している(※3)。そこで11月26日、米通商代表部は「2025年11月29日に関税猶予期限切れ予定だった178件の中国製品に関して、有効期限を2026年11月10日まで延長することを決定した」(※4)と発表している。また同じ11月26日、米国商務長官ラトニックが「トランプがNVIDIAの最先端AIチップH200を中国に販売することを認めるか否かを、いま正に検討中だ」(※5)と表明している。2年前に発売されたH200は、前世代のH100よりも大きな高帯域幅ストレージを備え、高速なデータ処理を実現している。中国にとっては喉から手が出るほど欲しい最先端AIチップだ。NVIDIAにとって中国は世界一の巨大市場だが、一部の米議会議員は反対している。しかし、ラトニックは「全ての情報と方向性に関する決断はトランプ大統領が掌握している」と述べている。トランプはこの決断をするか否かの最終的な瞬間の中にいる。それを高市総理の「台湾有事に関する国会答弁」で邪魔されたくないと考えているだろう。それは研ぎ澄まさなければならない判断と決断にとって「雑音」となる。さらに驚くべきは11月22日に新華網が<11月18日から22日にかけて中国軍と米軍は海上軍事安全協議メカニズムの第二回作業部会年度会議をハワイで開催した>(※6)と報道したことだ。加えて11月25日、米メディアのCNBCはベッセント米財務長官が11月24日の米中首脳電話会談のあと取材に対して「来年は4月のトランプ訪中、その後は習近平の訪米、さらに11月深センでのAPECサミットおよび12月米ドラールでのG20があるので、習近平とトランプは来年4回も会うかもしれない」(※7)と発言し、米中の蜜月をアピールしている。このように米中は今、かつてないほどの「蜜月状況」にあることを見落としてはならない。そこにはトランプの命運がかかっている。◆高市政権は未だバイデン政権の対中戦略観の中にいるこういった現状に立っ日米中を眺めてみると、わが国で起きている「存立危機事態」論議自体が、トランプにとっては「存立危機状況」に相当するにちがいない。トランプはきっと、「親愛なる高市総理よ、あなたと私の友情は変わらないが、しかし頼むから習近平の神経を逆なでするような言動をしないでほしい」と切に願っていることだろう。「日中関係の悪化が、その兄弟姉妹国である私のビジネスを巻き込まないでほしい」という声が聞こえるようだ。そもそも今年8月15日、トランプは習近平が自分に対して「あなたが大統領である限り、台湾に対する武力侵攻はしない」と言ったと主張しているとCNNが報道している(※8)。10月20日にはトランプは、オーストラリア首相との会談後の記者会見で「中国は台湾侵攻を望んでいない」(※9)と発言している。高市発言後の11月20日のFox Newsの取材で、司会者がトランプに対して、高市発言に関する薛剣の発言をどう思うかと質問したが、トランプは「多くの同盟国もわれわれの友達ではない」(※10)と躱(かわ)し、直接の回答を避けた。つまり、高市総理が台湾有事に関して「存立危機事態」になり得る場合もあると発言したその前提として述べた「たとえば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。こういった事態も想定される」という事態は、「現在のトランプ政権では基本的に起きない」ということだ。トランプ政権の現状においては「米軍の来援」ということは基本的に存在しない。バイデン政権の場合は、2014年6月11日の論考<台湾有事に関するバイデン&トランプの発言と中国大陸&台湾の反応>(※11)に書いたように、バイデンは台湾有事に関して5回も「米軍が出動する可能性がある」と発言している。つまり高市発言は、あくまでもバイデン政権における対中包囲網形成を前提とした発想である。おまけに台湾独立を必死になって煽ってきたのは第二のCIAと呼ばれているNED(全米民主主義基金)であることは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述したし、一部は論考でも書いてきた。それを主導してきたのはバイデン前大統領系列だ。ところがトランプは、そのNEDの活動を潰してしまっているのである(詳細は今年2月21日の論考<習近平驚喜か? トランプ&マスクによるUSAID解体は中国の大敵NED瓦解に等しい>)(※12)。高市政権はこの現実を認識しきれていない。未だバイデン政権時代のアメリカの思考回路の中に取り残されたママであることを危惧する。習近平はそこを狙い、徹底して高市政権を叩くことに余念がない。事実、11月23日の論考<中国の「高市非難風刺画」は「吉田茂・岸信介」非難風刺画と同じ――そこから見える中国の本気度>(※13)にある風刺画をよくご覧になっていただきたい。吉田茂や岸信介の風刺画の背後にはいつも米国がいるが、高市総理の風刺画には「米国の影は皆無」である。いま日中米の間で起きている事態の全てが、この風刺画に象徴されている。かかる事態が起きることを避けるために筆者は、たとえば10月23日の論考<高市総理に「日米首脳会談」までに認識してほしい、トランプ大統領の対中姿勢(対習近平愛?)>(※14)などを書いて、高市政権および日本国民を守るために必死になって警告を発し続けてきた。しかし残念ながら、その声は政権運営には反映されなかったようだ。高市政権がバイデン政権時代の思考回路から脱却し、国際社会の現実を認識して、トランプ政権の現状に即応した政権運営をしてくれることを期待したい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※15)より転載しました。韓国における米中首脳会談後のトランプ大統領と習近平国家主席(習近平の耳元で「習近平愛」を囁くトランプ)(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/china-starts-work-easing-rare-earth-export-rules-short-trump-hopes-sources-say-2025-11-07/(※3)https://www.reuters.com/world/asia-pacific/china-october-rare-earth-magnet-exports-fall-second-month-us-shipments-surge-2025-11-20/(※4)https://www.voachinese.com/a/ustr-extends-exclusions-from-china-section-301-tariffs-related-to-forced-technology-transfer-investigation-20251126/8087410.html(※5)https://www.voachinese.com/a/trump-weighs-allowing-nvidia-to-sell-advanced-ai-chips-to-china-20251125/8086060.html(※6)http://www.news.cn/world/20251122/01000030a9cb4e5685ee8de582397114/c.html(※7)https://www.cnbc.com/2025/11/25/cnbc-transcript-us-treasury-secretary-scott-bessent-speaks-with-cnbcs-squawk-box-today.html(※8)https://edition.cnn.com/2025/08/16/asia/trump-xi-taiwan-invasion-intl-hnk(※9)https://rollcall.com/factbase/trump/transcript/donald-trump-remarks-bilat-anthony-albanese-australia-october-20-2025/(※10)https://rollcall.com/factbase/trump/transcript/donald-trump-interview-laura-ingraham-fox-news-november-20-2025/(※11)https://grici.or.jp/5327(※12)https://grici.or.jp/6005(※13)https://grici.or.jp/6952(※14)https://grici.or.jp/6786(※15)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e599ad4676311db2551e02c7037588a76ec28568
<CS>
2025/11/28 16:45
GRICI
トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:42JST トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。11月24日夜、トランプ大統領が習近平国家主席に電話をして会談した。トランプはトランプ2.0では「習近平愛」を今のところ続けている。バイデン政権の政策を全て覆したいトランプは、バイデン元大統領の対中包囲網的強硬策を撤廃し、どこまでも(今のところ)「習近平愛」に満ちている。11月5日の論考<トランプが「中国を倒すのではなく協力することでアメリカは強くなる」と発言! これで戦争が避けられる!>(※2)でご紹介した米中の笑顔外交の延長線上で、トランプは習近平とギリギリの貿易交渉を続けており、習近平のご機嫌を損ねないようにすることが優先している。11月25日にトランプが高市総理にも電話してきたことに関して、ウォールストリート・ジャーナルが<トランプは高市に台湾巡り中国を刺激しないよう助言した>(※3)とブルームバーグが日本語で報道しているが、日本政府は否定。その真偽は別として、少なくともトランプが対中貿易を優先していることだけは事実だ。今年7月末、「習近平の嫌がることはやりたくないから」という理由で、台湾の頼清徳総統がニューヨークに立ち寄ることも拒否しているほどである(詳細は7月31日の論考<台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」三角関係を読み解く>)(※4)。高市政権は、アメリカの対中政策に関する「大転換」への認識が不十分で、未だにバイデン政権時代の対中強硬策の中に取り残されたママなのかもしれない。高市総理の11月7日における台湾有事に関する国会答弁は、その意識の欠如の表われではないかと解釈することができる。台湾有事になっても米軍が支援に来るという前提が崩れれば、存立危機事態も成立しない。したたかなトランプは、習近平に「台湾問題安泰」という「餌」を見せつけて習近平から有利な条件を引き出そうとしている。一方の習近平は米中蜜月に自信を持ち、滅多にないこのチャンスを利用して、徹底して日本を叩く決意で動いている。◆11月24日夜の習近平・トランプ電話会談に関する中国の発表11月24日、中国政府の通信社である新華社電子版新華網は、<習近平とトランプの電話会談>(※5)に関して、おおむね以下のように報道している。・習近平は、先月韓国釜山で会議を成功裏に開催し、多くの重要な合意に達したことを指摘した。これらは中米関係の巨大な船の着実な進展に方向性を合わせ、推進力を与え、世界にも前向きなメッセージを送った。・習近平は台湾問題に関する中国の原則的立場を明確にし、台湾の中国への帰還が戦後の国際秩序の重要な一部であると強調した。また中国とアメリカはファシズムと軍国主義と共に戦ってきたが、今こそ第二次世界大戦の勝利の成果を守るために共に取り組むべきだと述べた。・トランプは習近平主席を偉大な指導者だと表明した。また「釜山での習近平主席との会談は非常に愉快だったし、二国間関係に関するあなたの見解に全面的に同意する。両国は釜山会談で達成された重要な合意を、今まさに全面的に実行しようとしている。中国は第二次世界大戦の勝利に重要な役割を果たし、アメリカは台湾問題が中国にとって重要であることを理解している」と述べた。(新華網からの引用は以上)◆米中電話会談に関してトランプがTruthで述べた感想その夜トランプは自分のSNSであるTruth(※6)で、おおむね以下のような感想を述べている。・習近平主席と非常に良い電話会談を行った。・ウクライナ/ロシア問題、フェンタニル、大豆をはじめとする農産物など、多くの問題について話し合った。私たちは偉大な農民のために、良好かつ非常に重要な合意をまとめることができた。・われわれの中国との関係は極めて強固だ!・習近平主席は4月に私を北京に招待し、私はこれを承諾しました。その招待に応じ、来年内に習近平主席をアメリカに国賓として招くことも決まった。・われわれは頻繁にコミュニケーションを取ることが重要であることで一致したが、それを楽しみにしている。(Truthからの引用は以上)◆トランプは対中貿易で政治生命をかけた交渉に没頭している最中トランプのTruthに書いている通り、11月25日、VOA中文は<米・農務長官は、米中大豆購入協定がまもなく最終決定されると述べた>(※7)という見出しで、米中が今まさに大豆の具体的な協議をしている最中である状況を報道している。それによれば、農務長官ブルック・ローリンズは11月24日、米政府が今後2週間以内に(米国内の)農家支援と中国による米国産大豆調達に関する合意を発表すると述べ、北京は「今週か来週」に購入計画を最終決定する可能性があると述べたとのこと。中国は先週158万4,000トンの米国産大豆を購入したが、10月末の米中首脳会談以来、中国のアメリカ産大豆総購入量は200万トンから300万トンに達する可能性があると米側は見積もっているようだ。農務省のデータによると、中国の国有穀物購入者である中糧集団(COFCO)は、10月下旬以降、米国産大豆を100万トン以上注文している。しかし、ホワイトハウスの年間購入目標である1200万トンを大きく下回っている。トランプ関税を回避するため、中国は大豆購入を既にアメリカから南米へとシフトしてしまっているからだ。そこを何とかしようと、トランプは必死だ。だから習近平にわざわざ電話して、新華網の発表にあるように「アメリカは台湾問題が中国にとって重要であることを理解している」と表明して、なんとか習近平のご機嫌を取ろうと試みている最中なのである。その台湾問題を、同盟国である日本が「突っついては困る」というのがトランプの本音だろう。関税政策が正しくなかったとか、票田である農家の不満が蓄積し、中間選挙で共和党が負けるかもしれない。この農業問題を解決させて、トランプ関税は正しかったと米国民に納得させ、農家の票田を獲得しなければならない。トランプの政治生命に関わる重大な分岐点なのである。だからトランプは高市総理にも電話したものと解釈される。電話ではどういう表現を用いたかは別として、「どうか、対中ビジネスの邪魔をしないでくれ…」というのがトランプの本音だろう。「トランプ氏の習近平・高市両氏への電話目的は「対中ビジネス」 高市政権は未だバイデン政権の対中戦略の中(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。韓国における米中首脳会談後のトランプ大統領と習近平国家主席(習近平の耳元で「習近平愛」を囁くトランプ)(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6854(※3)https://news.yahoo.co.jp/articles/9d7e5a22b3863cbba6abe809fe595f34db66e4e1(※4)https://grici.or.jp/6526(※5)http://www.news.cn/politics/leaders/20251124/9c9191096e0547a9a3f26e903fc6995e/c.html(※6)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/115605897178712132(※7)https://www.voachinese.com/a/us-agriculture-secretary-says-us-china-soybean-purchase-agreement-imminent-20251124/8085760.html(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e599ad4676311db2551e02c7037588a76ec28568
<CS>
2025/11/28 16:42
GRICI
高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:24JST 高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆習近平はなぜ、ここまで激怒しているのか?それにしても、今般の中国の反応はあまりにヒステリックで尋常ではない。習近平はなぜここまで激怒しているのかを考察する必要がある。一つには、習近平は国家主席として在位中に、何としても「台湾統一」という「中華民族の悲願」を成し遂げたいと思っているからだ。これまで国家主席の座は「任期5年、最大2期まで」と決まっていた。それを、中華人民共和国憲法を改正してまで国家主席の任期制限を撤廃したのは、在位中に「台湾統一」を成し遂げたいからに他ならない。その邪魔をした高市発言に対する怒りがあるのだろう。そうでなくとも、11月1日の論考<日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑>(※2)に書いたように、高市自民党総裁誕生により、中国が愛している「公明党」が政権与党から追い出された(と習近平は思っている)。だから高市総理誕生に際して、(日本の歴代総理誕生で初めて)祝電を送らなかった。それでも総理としての所信表明演説で日中間の「戦略的互恵関係」に触れるなどしたので、「まあ、仕方ないからAPECでの日中首脳会談に応じてやるか…」という「善意」を、習近平としては高市総理に示したつもりだ。ところがAPEC期間中、台湾代表と会うことだけなら許容範囲内だが、高市総理はそのツーショットをXで公開してしまった。これは日本の歴代総理で誰もやらなかった抑制的ラインである。そのラインを超えて習近平の顔に泥を塗った。このことは、トランプの対習近平の姿勢との比較において11月5日の論考<トランプが「中国を倒すのではなく協力することでアメリカは強くなる」と発言! これで戦争が避けられる!>(※3)の【図表6:APECにおける日・台代表との会談と中国からの抗議の有無】で説明した。この時点で習近平の堪忍袋の緒は切れていたのである。そこに加えて、習近平の国家命運をかけた「台湾統一」問題に関して高市発言があったので、習近平としては自分の人生をかけた目標を、あの「高石早苗が邪魔をするのか!」と、激怒したのだろうと思う。◆日本は台湾問題に口実を求めずに、堂々と日本の防衛力を強化すべき冒頭に書いたように、第二次世界大戦で敗戦国となった「日独伊」3ヵ国のうち、現在、自国を防衛するための軍隊を持っていないのは日本だけである。ドイツの場合は、第二次世界大戦直後は、いかなる軍隊も持つことが禁止されていたが、冷戦を機に1955年に再軍備を開始しており、同年、NATOに加盟して、堂々と軍隊を持つに至っている。イタリアの場合は、1943年に自ら敗戦を宣告し連合国側に付いたので、戦後もそのまま軍隊を保つことができた。初期は規模を制限していたが、冷戦により規模の制限を徐々に撤廃していった。イタリア共和国憲法第11条で、「戦争行為」自体は制限している(「イタリア共和国は他国市民の自由を抑圧する為の戦争行為、または国家紛争を調停する為の戦争行為を行ってはならない」と謳っている)。それに比べて、わが日本国はどうなのか?冒頭に書いたように、戦後GHQの統治下で制定された日本国憲法は、アメリカの要求により「軍隊を持ってはならない」ことになっている。日本には今、防衛力の強化に関して(総理が国会答弁で言うか否かは別として)、念頭には台湾有事があり得るから防衛力を強化しなければならないと主張している人が多い。しかし台湾の独立はアメリカの第二のCIAと呼ばれているNED(全米民主主義基金)が煽った結果である要素が大きい。もちろん国共内戦から76年が経ち、台湾で生まれて新しい世代が増えてきたので台湾の人々の中には国共内戦の結果であるということを知らない新しい世代が生まれ台湾アイデンティティが定着しつつあることも確かだ。しかし中華民国時代、台湾を含めて台湾は「中華民国」という中国の領土であった。そのことは歴然とした事実だ。国連で「一つの中国」を認め、日中共同声明がある以上、日本の防衛力強化に台湾有事を結びつけるのは筋合いが違う。どうしても防衛力を強化したいというのであれば、台湾問題などを口実にするという姑息な手段を使わずに、堂々と軍事力を強化する道を模索した方が筋が通っている。ヒトラーがソ連やヨーロッパ諸国を侵略しても、いま現在軍隊を持つことが許されているのに、日本は中国を侵略したのだから軍隊を持ってはいけないとは、中国は言えない。そのような論理は成立しないからだ。日本はサンフランシスコ平和条約によって独立国家になった。ここでもし中国が抗議を始めたら、国際社会全体で中国に対抗すべき事態になる。日本が軍隊を持ってはならないと制限したのはアメリカだ。しかし、くり返そう。日本は独立国家だ!アメリカの意図に沿って制定された日本国憲法を改正するというのが、最も正直な道であり、正道ではないのだろうか。日本国民のその選択に対して、中国には何も言う資格はない。なお、それでも「いま日本に何ができるのか」、「日本はいかなるカードを持っているのか」という喫緊の課題がある。それに関しては別途、他の論考で公開したい。追記:日本が台湾有事を口実にしている限り、どこかで不意の事態が生じ、逆に戦争に突入しやすい。本稿はその戦争を避ける目的で書いたものである。その意図が伝わるようにタイトルも一部書き換えた。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6937(※3)https://grici.or.jp/6854(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/40aec9b3e178b4e12608ee4c1584305415f6e95c
<CS>
2025/11/25 10:24
GRICI
高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:23JST 高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。11月7日における高市総理の国会答弁に対して習近平が烈火の如く怒っている。そのために中国が次々にくり出す日本叩きカードに関しては広く報道されているし不愉快なので、ここでは触れない。本稿では、「習近平がなぜそこまで激怒しているのか」を考察し、もし日本がどうしても防衛力を強化したいのなら「日本は台湾問題を口実にせずに日本独自の防衛力を強化すべきなのではないか」という論を張りたい。第二次世界大戦で敗戦国となった「日独伊」3ヵ国のうち、自国の軍隊を持っていないのは日本だけだ。それこそが逆に異様なのであって、この異様な日本の国防状況をもたらしているのは、戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治下(実際はアメリカの占領・統治下)で日本国憲法が作られたからに他ならない。台湾問題を口実にして安保法制を論じること自体、筋違いだ。もっと堂々と正道を歩むべきではないのだろうか。◆習近平は高市発言の、どの部分に怒っているのか?高市総理は11月7日の衆議院予算委員会における立憲民主党の岡田委員の存立危機事態に関する質問に対して、「たとえば海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかの他の武力行使が行われる。こういった事態も想定される」と前置きした上で、中国の台湾統一に言及し、「たとえば台湾を統一、完全に中国北京政府の支配下に置くようなことの為にどのような手段を使うか、それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし…」と答弁し、「それがやはり戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これは、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」と続けた。中国はこれに対して激しく反応し、留まるところを知らない。習近平が激怒しているのは、言うまでもなく、高市答弁のA:台湾を統一、完全に中国北京政府の支配下に置くようなことの為にどのような手段を使うか。B.それがやはり戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これは、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」に対してだ。Aに関しては、「中国にとって、台湾はあくまでも中華民国時代における国共内戦の延長戦上にあり、他国に指図される覚えはない」という大原則がある。特に1972年の国交正常化における日中共同声明(※2)で、日本国は中国(中華人民共和国)に対して二、日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。三、中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。と誓い、署名捺印している。したがって、発言Aからして、すでに内政干渉だと中国は受け止めている。筆者自身、国共内戦中の1947年から48年にかけて中共軍による長春包囲作戦によって包囲網の中で家族を餓死で失い、国共両軍の空間地帯であった「チャーズ」に閉じ込められ」餓死体の上で野宿させられた経験を持っている。その原体験から見れば、台湾は「長春包囲作戦」で敗退した蒋介石率いる国民党軍の終着駅であって、国共内戦はまだ終わっていない。朝鮮戦争勃発により中断されたまま、こんにちに至っている。日本は1945年8月の敗戦により関東軍司令部の関係者は一般の日本人を見捨てて日本に引き揚げ、1946年には在中国の一般の日本人も、特定の日本人技術者以外は基本的に日本に引き揚げることができたので、現在の日本政府も、中国人が持っている「台湾は国共内戦の終着駅」という大きな事実を認識することができないようになってしまっていると思う。日本政府は、まずこの絶対的事実を深く認識した方がいいのではないだろうか。それは日本の一般庶民の生活を守るための「戦略」として必須だと思われる。Bに関しては、中国は台湾を統一するときに「武力攻撃」をするというのは現時点では考えにくく、「長期的大規模軍事演習」を、台湾を囲む形で行なうと考えられる。2週間ほど「軍事演習」をすれば、台湾はエネルギー源が枯渇して白旗を挙げる可能性が高い。そのことは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いたし、2024年5月26日の論考<アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威>(※3)でも書き、また2024年10月18日の<中国、台湾包囲軍事演習 シグナルの一つは「アジア版NATO」への警告か?>(※4)でも少し触れている。それなのに、高市総理が「それがやはり戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば」と答弁しているのは、高市総理を応援している者の一人として残念に思う。軍事演習で飛ぶ「砲弾」は「武力行使」ではない。日本も日米軍事演習などに参加し、その際に近代的な最先端の「砲弾」を使用するだろう。それは「武力行使」ではない。中国は「武力行使」と非難されないようにするために「軍事演習」という手段を使うという戦略を描いている。なぜなら万一にも統一されたときに、武力攻撃などをしたら台湾の人々が中共政府に従うわけがないし、半導体産業の最先端TSMCを「傷を付けずに中国が頂く」ということもできなくなるからだ。国際社会では「軍事演習」に対しては、いかなる他国も干渉できないのが通例だ。高市総理周辺は、中国のこの戦略に関して高市総理に情報提供をしていないとすれば不勉強で、これでは高市総理を守ることができない。もっとも高市総理が「戦艦」という、第二次世界大戦後、今では世界のどの国も使ってない軍艦の艦種を、これまでも何度も使って「存立危機事態」を説明しているところを見ると、防衛相も外務省も「奉仕できない」形で高市総理の独断で「国家の代表である総理として」国会答弁をした可能性がある。それが日本の庶民生活に甚大な影響をもたらすに至ったのは、高市内閣全体の責任かもしれない。◆なぜ中国は日本だけをターゲットにするのか?中国はバイデン元大統領が5回も「中国が台湾を武力攻撃したら米軍は台湾を支援する(not=米軍を派遣する)と豪語していたのに、そのたびにアメリカに対して激しい抗議活動を展開していたかと言うと、そうではない。なぜか?それは第二次世界大戦で、アメリカは中国を侵略した国ではないので、アメリカに対して「中華民族の屈辱」を味わったとは思っていないからだ。何なら習近平は9月3日の「抗日戦争勝利80周年記念」で、アメリカを「反ファシスト戦争の仲間」として讃えたほどだ。日本だけをターゲットにするのは、第二次世界大戦で日本が中国を侵略したからだ。もちろん中国共産党軍を率いていた毛沢東は日中戦争中、日本軍と結託して中国人民を裏切っていた。そのことは2024年8月16日の論考<中国共産党には日本に「歴史問題を反省せよ」という資格はない 中国人民は別>(※5)で書いたし、拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』で詳述した。しかし、中国人民、一般庶民の感情としては侵略されたときに受けた数多くの心の傷跡があり、少しでも火を点ければ燃え盛り始める。それも江沢民が「反日教育」を始める前までは日本に憧れる中国人が多かったが、火を点けてしまったので逆戻りは出来ない。この終戦と逆行して燃え始めた「民族の怒り」を習近平政権も受け継ぐしかないのである。そうでなければ中国を統治することができない。だから高市発言のように「着火点」的役割をする事態が発生すれば、いつでも燃え上がる態勢でいなければならないのが、現在の中国だ。「高市発言に習近平はなぜここまで激怒するのか? 日本は台湾問題を口実にせず防衛力に戦略を(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html(※3)https://grici.or.jp/5278(※4)https://grici.or.jp/5692(※5)https://grici.or.jp/5541(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/40aec9b3e178b4e12608ee4c1584305415f6e95c
<CS>
2025/11/25 10:23
GRICI
日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】
*11:06JST 日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆日中両国発表内容の比較と問題点●祝意に関してまず「総理就任の祝意」に関してだが、会談冒頭の各国記者向けの対談は各国がその動画を持っているはずだ。日本の民間放送には要約ではなく、話された全てを公開した動画があるが、同時通訳者の日本語が全く事実と乖離しているので使えない。そこで同時通訳のない英語圏の会談冒頭動画(※2)を詳細に観察してみたが、習近平国家主席は、ただの一言たりとも「祝意」など述べていない。冒頭でどう言ったのかを書くと以下のようになる。――高市首相とは初めてお会いします。(首相)就任後、あなたは「中国と日本は重要な隣国で、建設的で安定的な対話関係を構築し、両国の戦略的互恵関係を全面的に推進する必要がある」と表明しました。これはあなたと新内閣が中日関係を重視していることを体現しています。私もまた、「意思疎通を維持し、中日関係の正しい発展を共に推進していくこと」に同意します。(引用以上)本稿冒頭にも書いたように、中国は「高市総裁は公明党が与党連立から離脱せざるを得ないところに追い込んだ」と解釈しているし、祝電も打っていない。したがって「祝意」を表するというのは考えにくい。外務省の「1」にある「祝意が表明されました」という言葉には疑問がある。●台湾問題に関して中国側は常に細かな対話内容は書かずに、中国の首脳が何を言ったかだけを書き(言ってない言葉は書かない)、相手側首脳が何を言ったかは、基本的に「4対1」程度の重みで「中国にとって都合のいい所だけを抜き出して書く」(言っていない言葉は書かない)というのが長年の慣例だ。この視点から見ると、台湾問題に関して、中国側発表にある「日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する」という言葉を、高市総理が言っていないというのは考えにくい。しかし日本側発表「3」の中にはそれがない。日中首脳会談後の高市総理の記者会見(※3)を見ると、そこには「台湾に関して、先方から少しお話がございましたので、やはりこの地域の安定、そして安全というものは、やはり両岸関係が良好であることが非常に重要であるということは申し上げました」とある。ここにも「日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する」という言葉はない。この点は明確にしてほしいと思う。これによって今後の日中双方の動向とその考察が変わってくるからだ。●レアアースの輸出制限に関して日本側発表の「3」に、「高市総理大臣から中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を表明した」とある。中国がレアアースの輸出制限を今年10月9日になって新たに言い出したのは、10月27日の論考<トランプはなぜ対中100%関税を延期したのか? その謎解きに迫る>(※4)および10月30日の論考<米中首脳会談 予測通り障壁は「50%ルール変更」だった!>(※5)に書いたように、あくまでも9月29日にアメリカのラトニック商務長官が「50%ルール変更」を宣告したからだ。NHKを含め日本メディアは、どうしてもこの現実を報道しようとしないので、結局、高市総理にもまちがったインプットをしてしまい、責任は重大だ。このようなことを日本メディアが継続すれば、日本は世界の動向を読み取れなくなり高市政権にもマイナスの影響を与える。警告したい。◆結論結論的に言えるのは、中国側は「高市総裁が率いる自民党が、公明党を離脱せざるを得ない状況に追い込んだ」として不愉快に思っているが、高市総理が総理就任の所信表明演説で「戦略的互恵関係」に触れながら対中安倍路線を踏襲することが分かったので、実は「安堵」していることが見て取れる。2012年9月に、自民党総裁選に当たって、筆者はそのときの総裁選立候補者である「安倍晋三、石破茂、林芳正、石原伸晃」(町村氏は病欠)の4氏とテレビ会談をしたことがある。そのときは民主党政権から自民党政権へと移行させようといううねりがあった時期でもあったので、テレビ出演寸前の待機時間に思い切って中国の老幹部に電話をしてどう思うかを聞いた。すると老幹部は「そりゃあ、自民党が良いに決まっているでしょう。民主党ではだめですよ、あの尖閣問題を見てください」と即答した。これをスタジオで自民党総裁選立候補者4人にぶつけたところ、全員が身を乗り出して「お―!」と声を上げ、特に安倍元総理は「もう一度言ってください!」と意気込んだことがある。いま思うに、中国側には「自民なら公明が付いているから安心」という思惑があったのではないかと解釈される。今般はその公明が抜けたので、習近平国家主席は高市総理には就任の祝電も送らなかった。しかし所信表明演説で安倍元総理が提唱した「戦略的互恵関係」に言及したので、「対中安倍路線を歩むのなら歓迎するが、しかし公明党を連立から追い出した自民党執行部体制は許さない」ということから、「罰」を与えるために日中首脳会談開催を、開催寸前まで決定しなかったということかと結論付けることができる。それにしても、高市総理はその難関をよく耐えた。期待したい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。写真:中華人民共和国外交部のウェブサイトから転載(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.youtube.com/watch?v=FAmnA5pH7J8(※3)https://www.kantei.go.jp/jp/104/statement/2025/1031kaiken.html(※4)https://grici.or.jp/6816(※5)https://grici.or.jp/6835(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c45f947fc3636925c9e2a97583ea3752497f00e1
<CS>
2025/11/04 11:06
GRICI
日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(1)【中国問題グローバル研究所】
*11:03JST 日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。日本が、日中首脳会談を韓国で行なうべく「調整している」というニュースを流し始めたのは10月29日から(※2)だったと思う。しかし中国は「そのようなことは承知していない」(※3)として、無視し続けた。「調整中」ではなく「行われる」という情報が日本のネットに現れたのは10月31日会談当日の14時になってからだ(※4)。実際に会談が行われたのは10月31日17時05分からなので、会談の3時間前まで高市総理は不安定な中に置かれたことになる。そのストレスたるや、尋常ではなかっただろう。よく耐えたと思う。これは何を意味しているかというと、10月11日の論考<自公決裂!組織票欲しさに二大宗教団体を利用した自民党のツケ 遂に中国の支配から抜け多党制に移行か>(※5)に書いたように、中国が熱心に支持していた公明党が与党連立から抜けたことを中国は喜んでないということを示唆する。事実、連立を解消するか否かの論議の真っ最中だった10月6日に、公明党の斉藤代表は国会内で中国の呉江浩駐日大使と面会している(※6)。おそらく自公連立から離脱しないように斉藤代表を説得したのだろうと推測される。その結果、中国から見れば、公明党が自公連立から離脱せざるを得ないところに公明党を追い込んだのは高市総裁だということになっているのだろう。だから習近平国家主席は、これまでは日本に新しい首相が誕生するたびに祝電を送っていたのに、「憎っくき高市総理」には、総理就任の祝電を送らなかったものと考えることができる。したがって高市総理をじらせて、一種の「罰」を与えたのだろう。「いいか、対中強硬策などやるなよ」ということを思い知らせようとしたものと解釈される。さて、それでは実際には、どのような会話が成されたのだろうか。◆中国側発表10月31日19:23に中共中央管轄下の中央テレビ局CCTVは<習近平日本首相と会談>(※7)という見出しで、CCTV以外の新聞記者を一切入れない会談の内容を報道した。他国の新聞記者はいないので、会談冒頭の記者向けの対談以降の本格的な会談風景を観ようと思ったら、これを観るしかないので、興味のある方はリンク先をクリックしていただきたい。同日22:00になって、ようやく中国外交部の文字による会談内容の発表(※8)があった。習近平の口から出た実際の言葉なので、「習近平が何を考えているか」を深く考察する取っ掛かりになるだけでなく、この内容を日本の外務省の発表と比較したいので、以下、省略せずに全て記したい。( )内は筆者加筆。***現地時間10月31日午後、国家主席・習近平は韓国慶州でアジア太平洋経済協力機構(APEC)第32回首脳非公式会議に出席している期間中、(日本の)要請に応じて日本の首相・高市早苗と会談した。習近平は次のように指摘した。中日両国は一衣帯水であり、互いに重要な近隣国である。中日関係の長期的な健全かつ安定した発展を促進することは、両国国民と国際社会の一般的な期待に合致する。中国側は日本側とともに、中日四つの政治文書で確立された原則と方向に沿い、両国間関係の政治的基礎を維持し、戦略的互恵関係を推進し、新時代の要請に適った建設的で安定した中日関係の構築に尽力する用意がある。習近平は強調した。現在の中日関係には機会と挑戦が併存している。日本の新内閣が正しい対中認識を樹立し、両国の先人の政治家や各界人士が中日関係の発展のために注いできた心血と努力を大切にし、中日平和・友好・協力の大方向を堅持することを望む。一、 重要なコンセンサスを厳守すること。「戦略的互恵関係の全面的推進」、「互いに協力パートナーであり、相互に脅威とならない」、「歴史を鑑とし、未来に向かう」といった政治的コンセンサスを実行に移す。歴史、台湾などの重大な原則問題について中日四つの政治文書が行った明確な規定を厳守し履行し、中日関係の基礎が損なわれず、揺らがないようにする。「村山談話」は日本の侵略の歴史を深く反省し被害国に謝罪したものであり、この精神は発揚に値する。二、 協力ウィンウィンを堅持すること。中国共産党第二十期四中全会は「十五五(第十五回五ヵ年計画)」における中国発展の青写真を描いた。中日協力には広大な空間がある。中国と日本はハイエンド製造、デジタル経済、グリーン発展、財政金融、医療と高齢者介護、第三国市場などの分野で協力を強化し、多角的貿易体制と産業チェーン・サプライチェーンの安定的かつ円滑な維持を共に図ることができる。三、人的交流を促進すること。政府、政党、立法機構などのコミュニケーションを継続し、人文および地方交流を深化・拡大し、国民感情を改善する。四、多国間協力を強化すること。善隣友好、平等互利、内政不干渉の原則を堅持し、真の多国間主義を実践し、アジア太平洋共同体の構築を推進する。五、相違を適切に制御すること。大局に着目し、相違点を残しつつ共通点を求め、共通点を集めて相違を解消することで、対立や相違が両国関係を規定してしまうことのないようにすること。高市早苗は次のように述べた。中国は日本の重要な隣国であり、日中両国は地域と世界の平和と繁栄に重大な責任を負っている。日本側は中国側とハイレベル交流を維持し、各レベルの交流を緊密化し、コミュニケーションを強化し、理解を増進し、協力を促進し、両国の戦略的互恵関係を着実に推進し、建設的で安定した日中関係を構築することを望んでいる。台湾問題については、日本は1972年の日中共同声明における立場を堅持する。(以上)◆日本側発表日本の外務省は10月31日(時間は明記されていない)、日中首脳会談|外務省(※9)を以下のように発表している。日本語なのでリンク先をご覧になればお分かりいただけるわけだが、視覚的に比較できるよう、これも全て列挙する。+++現地時間10月31日17時05分(日本時間同刻)、APEC首脳会議に出席するため韓国を訪問中の高市早苗内閣総理大臣は、習近平中国国家主席と約30分間(同時通訳)、首脳会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。1. 習主席から高市総理大臣就任に対する祝意が表明されました。両首脳は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築するという日中関係の大きな方向性を改めて確認しました。その上で、高市総理大臣から習主席に対し、地域と国際社会の平和と繁栄という重責を果たしていく重要性について働きかけました。高市総理大臣から、安全保障や経済安全保障など懸案や課題があるからこそ、それらを減らし、理解と協力を増やし、具体的な成果を出していくとともに、首脳間で、戦略的互恵関係を進める意思を確認する重要性を指摘しました。両首脳は、首脳間での対話、そして日中間の幅広い分野での重層的な意思疎通を行う重要性を確認しました。2. 両首脳は、日本産水産物の輸入再開を前向きに受け止め、引き続き昨年9月に両政府で発表した「日中間の共有された認識」をきちんと実施していくことを確認し、高市総理大臣から、日本産水産物の輸入の円滑化を求めました。高市総理大臣から、日本産牛肉の輸入再開と10都県産の農水産物など残された輸入規制撤廃の早期実現に向けて、関連協議の促進を求めました。また、両首脳は、第三国市場協力、グリーン経済、医療・介護・ヘルスケア等の分野において、具体的な協力の進展を図っていくこと、グローバルな課題で協力していくことで一致しました。高市総理大臣から、大阪・関西万博での中国館の金賞受賞に対し祝意を示しました。3. 高市総理大臣から、尖閣周辺海域を含む東シナ海での中国によるエスカレーションや海洋調査活動、我が国周辺の中国軍の活動の活発化につき、深刻な懸念を伝え、中国側の対応を求めました。両首脳は、防衛当局間の実効性のある危機管理と意思疎通の確保の重要性について一致しました。高市総理大臣から中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を表明し、両首脳は、日中輸出管理対話を始め、当局間の意思疎通を強化していくことを確認しました。高市総理大臣から、中国での邦人襲撃事件や邦人拘束が発生する中で、中国滞在に不安を感じている日本国民のため、安全確保を求めるとともに、拘束中の邦人の早期釈放を求めました。高市総理大臣から、台湾海峡の平和と安定の我が国を含む国際社会にとっての重要性を強調しました。また、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を表明しました。4. 両首脳は、拉致問題を含む北朝鮮情勢等についても意見交換を行いました。(以上)「日中首脳会談ようやく実現 寸前までじらせた習近平の思惑(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※10)より転載しました。写真:中華人民共和国外交部のウェブサイトから転載(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.jiji.com/jc/article?k=2025102900922&g=pol(※3)https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202510/t20251029_11743157.shtml(※4)https://www.47news.jp/13388137.html(※5)https://grici.or.jp/6742(※6)https://www.yomiuri.co.jp/politics/20251007-OYT1T50236/(※7)https://tv.cctv.com/2025/10/31/VIDEc1QNjiTvnJlMImcLZOht251031.shtml(※8)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202510/t20251031_11745194.shtml(※9)https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/pageit_000001_02536.html(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c45f947fc3636925c9e2a97583ea3752497f00e1
<CS>
2025/11/04 11:03
GRICI
トランプはなぜ対中100%関税を延期したのか? その謎解きに迫る【中国問題グローバル研究所】
*10:11JST トランプはなぜ対中100%関税を延期したのか? その謎解きに迫る【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。アメリカのベッセント財務長官は10月26日、マレーシアで中国の何立峰副総理(経済政策担当)らと行った米中閣僚会議の後「中国製品に対する100%の追加関税は回避され、中国のレアアース輸出規制が1年延期されることになる」と述べた。その背景には何があったのだろうか?アメリカが譲歩したのか、それとも中国が譲歩したのか?そのヒントは実は、10月23日の論考<高市総理に「日米首脳会談」までに認識してほしい、トランプ大統領の対中姿勢(対習近平愛?)>(※2)に書いた事実にある。その論考では、「10月10日にトランプ大統領がTruthで11月1日から対中関税を100%に引き上げると書きながら、12日にはすぐさまその考えを引っ込めてしまった」と書いた。トランプは、なぜすぐに引っ込めたのか?26日の米中閣僚会議後の発表を受けて、中国のネットには「勝利だ―!」、「遂に中国が勝ったのだ―!」という声が満ちている。何が起きているのか、その謎解きに迫りたい。それによりトランプ政権がより明確に見えてくると期待する。◆中国はなぜ10月9日にレアアース輸出制限を発表したのか?話は9月29日にさかのぼる。アメリカ商務省の産業安全保障局(BIS=Bureau of Industry and Security)は9月29日、<上場事業体の関連会社を対象に事業体リストを拡大>(※3)という見出しで、「制限リストの重大な抜け穴を塞ぎ、輸出管理体制全体を強化する新しい規則」を発表した。そこでは「新しい規則では、エンティティリストまたは軍事最終使用者(MEU)リストに掲載されている1つ以上の事業体によって、少なくとも 50% 所有されている事業体は、それ自体が自動的にエンティティリストの制限の対象となる」と書いてある。何のことだか、わかるようで、ややこしい。そこで、噛み砕いて、自分にもわかり易い言葉で表現すると【これまでアメリカは中国の軍事最終利用者に対するエンティティリストを発表し指定していたが、それでは抜け穴があるので、「エンティティリストに含まれる企業が、50%以上の株を持っている他の企業」に対しても、同じ扱いをするというルール変更を行う】ということである。それまでは、中国企業と商売をする時に、従来のエンティティリストを見て、その企業が含まれているか否かを確認すれば良かったのだが(それとても、中国は非常に不満であったが)、この「50%ルール変更」以降は、相手の企業の株主、さらにその株主の株主などをたどって、細かく調べなければならないことになる。そうなると、商売をするときに調査しなければならない作業が一気に膨大に増加する。その結果、調査するに時間がかかり、かつ調査が不十分なリスクが常にあるので、中国企業向けのサプライチェーンが一時的に中断するという事態が発生した。日本では10月1日から中国の建国記念日である「国慶節」大型連休による観光客の報道が花盛りで、このようなニュースには誰も目を向けていなかっただろうが、中国政府側では大変なことになっていた。関連企業から「こんなこと、やってられるか――!」というクレームが来るし、中国政府としても「話が違うだろう!なぜ約束を破ったのか!」と激怒し、それなら「目には目を、歯には歯を」で、アメリカの致命傷である「レアアースを輸出制限してやるわ――!」ということに、相成ったわけだ。◆なぜトランプは「対中関税100%にする!」と言いながらすぐ引っ込めたのかこれこそが最もおもしろい謎解きで、カギは「50%ルール変更」を発表したのが「商務省である」ということに回答が潜んでいる。実は商務省BISには「激しい反中」のランドン・ハイド(Landon Heid)氏という人物がいて、今年年2月に商務省の輸出管理担当次官補として指名された(※4)。ところが9月になると、指名が取り消されている(※5)。すなわち、更迭だ。というのは、この「50%ルール導入」はハイド氏が強烈に主張してきたからだ。そのハイドを更迭したという事実は、トランプは「50%ルール導入」には反対なのだという、何よりの証拠と受け止めていいだろう。しかしラトニック商務長官はハイドに影響されたのか(このプロセスを書くと長すぎるので省略するが)、「50%ルール導入」を採用し、おそらくトランプには「サラッと」報告したものと思う。トランプがキチンとは認識する前に「イエス」を取り付け、9月29日に公表したのではないかと思うのである(一部の香港メディアにも、そのような報道が見られる)。筆者自身は、10月1日にアメリカ政府を閉鎖したりしていたので、トランプはそれどころではなく、十分に頭が回らなかったのかもしれないと考えている。しかしラトニックはトランプの承諾を得たものとして9月29日に「50%ルール変更」を発表した。すると中国が激しく反応し、「それなら、アメリカが最も困ることをやってやる!」としてレアアースおよびその関連技術の輸出制限を10月9日に公開。これはトランプに大きな衝撃を与えたはずだ。ほぼ反射的に10月10日に「そんなことをするのなら、中国には100%の関税をかけてやる!」とTruthに書いた。しかし、なぜ中国が「突然」、レアアースの輸出制限などをしたのかをじっくり調べてみると、ラトニックが、トランプがハイドを更迭してまで反対していた「50%ルール導入」を発表していたことを明確に認識した。そこで10月12日にあわててTruthに再び投稿して、「100%対中関税を引っ込めるようなニュアンスのこと」を書いた(Truthの投稿内容などのリンク先は冒頭に挙げた論考に書いてあるので、興味のある方は、そちらをご参照いただきたい)。こういう流れではないかと推測されるのである。◆その証拠にラトニックは6月以降の米中閣僚級会談には出ていないそのような論理はただ単なる推測ではないか、というご意見も出てくるだろう。筆者もそう思う。そこでもう一歩進めて調べてみたところ、ラトニックは6月までの米中閣僚級会談にはベッセント財務長官やグリア通商代表部代表と出ていたが、それ以降の会談には出ていない。というのは今年7月、ニューヨーク・ダウなどのあのダウ・ジョーンズのウェブサイトに、BIS50%ルール:企業にとっての影響 Dow Jones(※6)という形で評論が載り、「50%ルールの導入」が、どれだけ多くの弊害をもたらすかに関して議論していたからだ。株に敏感なトランプのこと。こういったアドバイスは素早くキャッチしていたにちがいない。だから、それ以降、米中閣僚級会議にはラトニックを参加させないようにしたのだろう。もちろん、今般のマレーシアにおける会談にもラトニックは参加していない。◆導かれる回答こういった流れを考えると、詳細は発表されていないが、おそらくトランプは「50%ルール変更」を取り下げさせたのではないかと思われる。それを取り下げるなら、中国としても新たなレアアース輸出制限をする必要もなくなるので、中国側がレアアース輸出制限を取り下げた。そうであるなら、トランプとしても、対中100%関税を言い出す必要はない。その結果、今般のベッセントの発表へとつながったものと推測される。中国のネットにおける「勝利宣言」のような膨大な書き込みは、きっと「50%ルール変更」を取り下げさせてやった、という歓喜の声かもしれない。そこで最後にひとこと。高市政権は、ぜひともこのラトニックの、というか商務省BISの言動には留意した方がいいのではないかとも思う。特に明日の高市総理とトランプ大統領との会談に当たり、この辺を心得ておくのも、無駄にはならないかもしれないと思う次第だ。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。トランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6786(※3)https://www.bis.gov/press-release/department-commerce-expands-entity-list-cover-affiliates-listed-entities(※4)https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/02/nominations-sent-to-the-senate/(※5)https://exportcompliancedaily.com/news/2025/09/12/US-Withdraws-Nominee-to-Lead-BIS-Export-Administration-2509110007(※6)https://www.dowjones.com/ja/business-intelligence/blog/bis50%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%83%ab%ef%bc%9a%e4%bc%81%e6%a5%ad%e3%81%ab%e3%81%a8%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%ae%e5%bd%b1%e9%9f%bf/(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/38d293c65cfcdfe5c1663b7148c08b3f84f0e61d
<CS>
2025/10/28 10:11
GRICI
靖国参拝で公明党に譲歩した高市総裁 結局は中国のコントロール下になり続ける道を選んだ自民党【中国問題グローバル研究所】
*10:14JST 靖国参拝で公明党に譲歩した高市総裁 結局は中国のコントロール下になり続ける道を選んだ自民党【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党の高市早苗総裁が今年の靖国神社秋季例大祭中の参拝を見送ることが、公明党との連立に関する会談後に判明した。公明党の斉藤鉄夫代表は10月7日、高市氏との会談で、中国、ロシア、北朝鮮が連携を強めるなど日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中「靖国参拝が外交問題になるべきではない」と伝えたという。うまく言いくるめたものだ。うまいと思う。同様に「うまく公明党を使っている」という意味では、「中国も実にうまい」と思う。その巨大な長期的戦略の下で、日本は対米追随だけでなく対中追随もひたすら続けていることに、自民党は本当に気づいていないのだろうか?◆なぜ公明党は中国でこんなに高く評価されているのか? 自民党をコントロールする「中国と公明党の連携メカニズム」2021年10月27日の論考<日本を中国従属へと導く自公連立――中国は「公明党は最も親中で日本共産党は反中」と位置付け>(※2)で、2017年 3月30日に中国共産党の機関紙「人民日報」電子版「人民網」に掲載された1本の論考を紹介した。論考のタイトルは<公明党は長年にわたり「対中友好」を堅持し、日中関係の発展を推進してきた>(※3)である。クリック先の下の方に現れるので、下の方までスクロールしてみていただきたい。タイトルをもう少しかみ砕いて書くと「いかに公明党は親中であるか、いかにして日本政府を親中に導いているか」ということになる。この論考は、中国政府のシンクタンクである中国社会科学院の日本研究所が発行している『日本学刊』という学術誌(2017年第二期)に寄稿されたもので、作者は日本の創価大学教授で中国の復旦大学日本研究センター研究員でもある汪鴻祥氏だ。筆者は2004年まで同じく中国社会科学院社会学研究所の客員教授を務めていたが、日本研究所は、まるで創価学会の巣窟かと思われるほど創価学会関係者が多く、中国における宗教は弾圧しているのに、日本の宗教は「公明党」に限り絶賛していたことに、非常な違和感を覚えた経験がある。その違和感は、この汪氏の論考により、ものの見事に消えていった。同じ内容をくり返して申し訳ないが、是非とも高市氏および新しく決まったばかりの自民党役員に読んでいただきたいので、ここに再度掲載する。汪氏は論考で以下のように述べている。1.1968年9月8日、創価学会第11回学生部会総会において、公明党の創始者である池田大作は講演し、日中関係の問題を解決するために、「(1)中華人民共和国の正式な承認と日中国交の正常化、(2)中国の国連での合法的な座席の回復、(3)日中の経済・文化交流の発展」という3つの明確な提案を行った。2.1971年初頭、公明党は、台湾問題は中国の内政問題であるという認識を示し、国務院外交部日本課の王暁雲課長は、中国卓球代表団の副団長として訪日し、公明党の竹入義和会長と会談した。 これが公明党と中国との正式な交流の始まりである。3.会談後、竹入は「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府と認め、台湾からの米軍撤退と中国の国連への回復を主張し、さらに日台条約(日華条約)は破棄すべきという声明を発表した。4.中日国交正常化のため、公明党の代表団は1971年6月に初めて訪中し、周恩来首相が会見した。5.1972年7月7日、田中内閣が発足した。 1972年7月25日、公明党代表団は3度目の訪中を行い、周恩来首相と日中国交正常化に関わる重要事項について3回の会談を行った。 1972年9月、田中角栄首相が訪中し、毛沢東主席、周恩来首相と会談し、29日には日中国交正常化の共同声明を発表した。6.このように日中国交正常化を実現させて真の功労者は公明党である。7.こんにち、公明党が政権与党の一翼を担うことには非常に大きな意義がある。なぜなら自民党を対中友好に導いていくことが可能だからだ。8.公明党は常に中国と緊密に連絡を取り合い、自民党の一部の保守系政治家に対して、日中関係の正しい方向から外れた言動を慎むように圧力をかけてきた。この功績は大きい。9.今後も日中関係において、公明党が日本の政党を対中友好に導いていくという役割は計り知れなく大きい。(以上)このうち、「なぜ公明党が中国で高く評価されているか」は「1~6」に書かれており、どのようにして自民党をコントロールしているかは「7,8,9」に明記されている。なぜ公明党は「1」のような党是を決議したかと言うと、ここには書かれてないが、実は結党当時は、日本のどの政党にも「親中と反中」がいて、方向性が二分しているために勢いが削がれていた。そこで池田大作氏は「どちらか一方向に徹底した党を創って成長していこう」と考え、「徹底した親中の方向」を選んだというのだから、相当の傑物であると評価していいだろう。◆「偉大なる毛沢東の戦略」は日本を徹底して利用したそして、国共内戦を勝ち抜いて新中国(中華人民共和国)を建国した毛沢東はまた、その遥か上を行く傑物であった。なんと言っても拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いたように、最大の政敵・蒋介石(国民党)を打倒するのに際して、日本の「中国侵略」を最大限に利用したのだから。これ以上に頭のいい傑物は滅多に出現しない。日本(当時の「大日本帝国」)が戦っていた相手は「中華民国」で、その「中華民国」を率いていたのは国民党の党首であった蒋介石だ。あの広大な大地で天下を取るためなら、どんなことでもやってきた中国。そこには5000年の歴史がある。毛沢東が日本軍を利用したからと言って、何の悪いことがあるだろう。天下を取るために、頭を使っただけのこと。蒋介石は真っ正直だから、この頭の回転、戦略において「大陸的ではなかった」と言えるかもしれない。彼は日本に留学して日本的思考を持っていた。毛沢東の戦略の壮大さは、天下を取るために日本軍を利用しただけでは終わらない。なんと、公明党を使って、日本を陥落させ(=日中友好条約を結んで中国との国交を成立させ)、その流れの中で国連加盟を果たさせたのである。すなわち、中国という天下を取るために日本軍を利用し、国連加盟という「世界の舞台」への登場に、やはり日本の公明党を利用しつくした。その過程は前掲の「1~6」をご覧になれば明らかだろう。そして今、「毛沢東の亡霊」が高市早苗総裁に、「公明党に譲歩する」という道を選択させたのだ。自民党はこの呪縛から抜け出すことができない!◆自公連立は「一丁目一番地」と断言する高市総裁 連立しなかったら「高市総理」になれない危険性が高市氏に対する岩盤支持層には、「公明党との連立なんか、さっさと解消してしまえ!」と主張したい人も多いだろう。しかしもし公明党が連立を解消したら、過半数が取れないので、首班指名選挙(内閣総理大臣指名選挙)で必ずしも高市総裁が総理大臣に選ばれるとは限らない。現段階で衆議院の議席数は「自民党+無所属の会:196」、「公明党:24」、「立憲民主党:147」、「日本維新の会:35」、「国民民主党・無所属クラブ:27」・・・となっている。衆議院の議席数は465だから過半数は233議席になり、自公が連立しても「合計:220」にしかならないが、上位2名で決選投票を行って上位者を総理に指名する。首班指名では衆参両院における選挙が行われる。両院の指名が一致していなければ衆議院における決定が優先されるので衆議院の場合で考えると、公明党との連立を解消しても、他の党、たとえば国民民主党と組めば、首班指名でクリヤーできるかもしれないという可能性がないわけではない。しかし国民民主党はもともと民主党から派生したものなので、背後には連合がおり、自民党との連立を許さない。連立すれば連合の労働組合からの組織票を失って、国民民主党は議席を減らすことになる。公明党は自民党との連立を維持するか否かに関して「靖国参拝などの歴史認識問題」、「外国人排斥問題」、「政治と金(自民党の裏金議員)問題」および「連立拡大(特に日本維新の会との連立)問題)などを条件として挙げているが、「靖国参拝問題」は冒頭に書いたように、高市氏が「秋の例大祭には参加しない」として譲歩したが、裏金問題に関してはすでに(高市氏が言うところの「傷もの」である)萩生田光一氏を幹事長代行に任命していることから、折り合いは難しくなっている。連立の合意が成立しなければ、首班指名選挙で「高市早苗」とは書かないと、公明党は言っている。その場合はひょっとしたら「高市総理」が生まれない可能性もゼロではない。このように、中国が日本政府に潜ませているカードのような公明党は、「保守的な自民党」を生存させない役割を果たしていると言っていいだろう。遡(さかのぼ)れば、毛沢東の戦略が日本を呪縛しているという恐るべきスケールの大きな現実に、日本は気が付いた方が良いのではないだろうか。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。自民党の高市早苗新総裁(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/2724(※3)https://world.people.com.cn/n1/2017/0330/c1002-29179878.html(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c5407d4ccaa6642335cf3cff8099effa6b799045
<CS>
2025/10/09 10:14
GRICI
「古~い自民党」を見せつけた総裁選 総理の靖国神社参拝なら自公連立は解消か?【中国問題グローバル研究所】
*16:28JST 「古~い自民党」を見せつけた総裁選 総理の靖国神社参拝なら自公連立は解消か?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党の総裁選なのに、必死になって国民に呼びかける5人の立候補者たちの姿は、主張がどうであれ、「われこそは」という必死さが美しかった。中国の選挙と違って、民主主義は良いものだと実感させられた。しかし選挙当日の終盤、決選投票に入ったとき、結局のところ麻生派閥がものを言い、昔ながらの「ボス」の一声で議員票が一気に動いた姿に深い失望を覚える。「古い自民党」から「解党的な出直し」をするのではなかったのか。もちろん、期待されていた小泉氏の決選投票前でのスピーチはお粗末だったことは否めない。「解党的出直し」どころか「党内融和」を強調するばかりで、政策さえ口にしなかった。これではダメだと思ったので、高市氏に票が流れたのは理解できないわけではない。しかし総裁選の直前になって地方党員票が高市氏に有利だと分かった瞬間、「決戦投票になったら獲得票の多い方に投票しろ」という麻生氏の号令が決定打になったのを否定することはできないだろう。案の定、「麻生氏へのお礼」に、どうやら高市新総裁は、幹事長に麻生派の鈴木俊一総務会長(72)を充て、副総裁には麻生氏(85)を検討しているようだ。これが本当なら、もう「古~~い自民党」を、そのまんま絵に描いたようではないか。その一方では、公明党は「高市総裁」が「高市総理」になったときに靖国神社を参拝するならば「連立を組むのは困難」という意思表示をしている。2021年10月7日の論考<「公明党から国交大臣」に喜ぶ中国――「尖閣問題は安泰」と>(※2)に書いたように、中国では海外の政党として最も信頼しているのが公明党だ。中国は公明党を「楔(くさび)」のように使って、日本政府をコントロールしてきた。◆「解党的出直し」とはほど遠い自民党総裁選もちろん高市早苗氏が総裁に当選したのは悪いことではない。「鉄の女」サッチャーを目指すというド根性は見上げたものだし、地方党員を重視してきた努力も評価すべきだろう。自民党結党以来の女性総裁の出現で、総理になれば日本で初めて女性総理が生まれることになり、その意義は大きいかもしれない。しかし、結局のところは麻生氏に頼り、最後は「ボス」の計略通りに議員が動いて当選したという時点で、せっかくのこれまでの努力の「美しさ」は消え去ってしまった。何のことはない、党内の勢力抗争であり「コップの中の嵐」に過ぎず、勝ち馬に乗るか乗らないかの策略が党内を駆け巡っただけだ。自民党の中には右も左もいて、左のボスが党内親中派の筆頭格・二階俊博氏だったが、二階氏の引退に伴いその系列は林芳正氏に受け継がれながら、林氏は今のところ「親中」を封印している。その意味では右のボスである麻生太郎氏にとっては、最後の「我が世の春」にちがいない。高市当選で、その手腕を遺憾なく発揮して、さぞご満悦のことだろう。こんなに右も左もいるのなら、「解党的出直し」などと偽善的なことを言わずに、解党すればいいと思うほどだ。解党しないのは、一塊でいる方が権力維持が容易になるからだろう。「党内で政権交代」することにより「自民党の政権」を維持している。◆総裁選に入る前に靖国参拝に関してクギを刺していた公明党前回、2024年9月における自民党総裁選で、9月9日に出馬を表明した高市氏は「首相に就任した場合でも靖国神社を参拝することに変わりはない」という趣旨の発言をしていた(※3)。それもあってか、今年9月7日、石破総理の辞任表明を受けて、公明党の斉藤代表は次の総裁について、「私達の理念に合った方でないと連立政権を組むわけにはいかない」と述べている(※4)。総理になった場合の想定を考えてのことだろう。すると今般の総裁選で高市氏は、なんと、「靖国神社参拝」を完全に封印してしまったのだ。当選後の記者会見でも靖国参拝問題を問われ、「適時適切に」と言葉を濁した。それでいて「自公連立は基本」と言っているのだから、「総理になったら靖国参拝はしません」と言っているようなものだ。ところが、記者会見後に公明党代表にご挨拶に行ったところ、先述したように「理念が合わないと連立は困難」という回答を得たわけだ。中国関係の問題だけで言うなら、「総理になっても靖国神社参拝をするようなら、連立を組むわけにはいきません」と言ったことになる。2024年の総裁選では「総理になっても参拝する」と誓っていた高市氏。それ故のファンも多いはずだ。だというのに、公明党の制限を受けたがゆえにファンとの約束事を破るとなったら、高市政権には、支持者の信頼を持続することができるのか否かというジレンマが待ち受けている。◆自公連立後の小泉政権と安倍政権における総理の靖国参拝ウィキペディアで申し訳ないが、<靖国神社問題>(※5)の情報に基づけば、小泉氏の場合は総理就任後の「2001年8月13日、2002年4月21日、2003年1月14日、2004年1月1日、2005年10月17日、2006年8月15日」に参拝しており、安倍氏の場合は総理就任後の「2013年12月26日」に参拝している。もちろん公明党は猛烈に反対した。しかし小泉氏が最初に参拝したのは2001年。1999年に公明党と連立を組み始めてから日が浅い。連立してようやく政権与党として浮上しているのに、公明党としても政党存亡を秤にかけた場合、「靖国参拝をやめないのなら、連立を解消します!」とは言えなかったものと推測される。その心理を読み取ってか、小泉氏は参拝をし続けた。すると2005年に中国で「反日デモ」が爆発した。反日デモがすぐには起きなかったのは、2001年9月11日にアメリカで同時多発テロ事件が起きて、それどころではなくなってしまったからだ。小泉氏は同年10月に中韓両国を訪問することさえしている。2002年にはAPEC首脳会議に参加して江沢民と会談したりなどもしている。それでも小泉氏の靖国参拝はやまず、03年も04年も参拝を継続した。その結果、2005年に遂に反日大暴動が起きたのである。安倍氏の場合は複雑だ。第一次安倍政権発足直後の2006年10月に中韓両国を訪問し、関係修復に努めている。しかし2012年12月の第二次安倍政権発足後、13年12月に靖国神社を参拝している。これに先立ち、習近平が国家主席になる1ヵ月ほど前の2013年1月25日には、公明党の山口那津男代表が安倍氏の書信を携えて、習近平(中共中央総書記)と会っている(※6)。習近平はこのとき「山口氏の訪中を非常に重視しており、公明党が引き続き日中関係の発展を促進する上で建設的な役割を果たすことを期待している」と述べている。山口氏は「公明党は日本の連立与党の一つとして、日中友好の伝統を継承・継承し(中略)日中関係の改善と発展に積極的に努力する」と述べ、安倍氏の自筆書簡を習近平氏に手渡した。 安倍氏は書簡の中で、「日中関係は最も重要な二国間関係の一つであり、両国はアジア太平洋地域と世界の平和と発展に対する責任を共有している」と述べながら、その年の12月26日には靖国参拝をしているのだ。それでも大きな事件に発展しなかったのは自民党内の「左のボス」二階氏がいたからだ。これに関しては2019年4月26日のコラム<中国に懐柔された二階幹事長――「一帯一路」に呑みこまれる日本>(※7)をご覧いただきたい。特にそのタイトル画像をご覧いただければ、もう何も語る必要はないだろう。◆石破政権になっても、公明党の北京詣では続いていた今年4月28日、上海にある「解放日報」系ウェブサイト「上観新聞」は<日本の与党幹部が2週間以内に3回も中国を訪問 なぜ「異例」と言われるのか?>(※8)という見出しで、「異様さ」を報道している。「2週間で3回訪中」の内訳は以下のようになっている。・4月22日~24日:斉藤鉄夫・公明党代表訪中団・4月27日〜29日:森山自民党幹事長率いる日中友好議員連盟訪中・4月28日~30日:山口那津男・公明党常任顧問一行訪中このように公明党の中国への「熱い思い」が、中国から見てさえ「異様」と映るほどなのである。その公明党が、自民党内「最右端」である高市総裁が、同じく「最右端のボス」である麻生氏のバックアップの下で自民党と連携していくことは困難ではないかと推測される。しかし逆に、高市氏が自公連立を重んじて、これまでの自分の主義主張を「総理になったのだから」という理由で封印するとすれば、右寄りだったファンたちは高市氏に騙されたと思って、高市氏への信頼を失っていくだろう。高市氏は、どちらの方向への決断を選ぶのか?公明党がいなくなっても、他の政党と連立を組むから構わないと決断したとしても、その政党が、さすがに総理大臣が靖国神社を参拝することを容認するとは限らない。トランプ関税の重圧の下、最大貿易相手国である中国との関係を重視しないと日本国民の経済向上を図れないという側面が圧し掛かるとすれば、公明党に妥協するしかなくなる。いずれにしても、もし総理に選ばれた場合の高市政権には大きなジレンマが待ち受けている。この視点に立ち、今後の高市氏の選択を観察していきたい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。自民党総裁の椅子に座る高市早苗新総裁(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/2684(※3)https://www.sankei.com/article/20240909-3KDEHWF7RBOAVATIVTZMFG3DNY/(※4)https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2155644?display=1(※5)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%96%E5%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE%E5%95%8F%E9%A1%8C#%E6%AD%B4%E4%BB%A3%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%81%AE%E9%9D%96%E5%9B%BD%E7%A5%9E%E7%A4%BE%E5%8F%82%E6%8B%9D%EF%BC%88%E5%9B%9E%E6%95%B0%EF%BC%89(※6)https://www.fmprc.gov.cn/web/gjhdq_676201/gj_676203/yz_676205/1206_676836/xgxw_676842/201301/t20130125_7992265.shtml(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c9a30738840d34dc9fd8757723767759a68f5118(※8)https://www.jfdaily.com/wx/detail.do?id=901704(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5fd223051ca00c2226b3caa3f7f0c2ab93bc6833
<CS>
2025/10/06 16:28
GRICI
【習近平・プーチン・金正恩】 トランプが会いたい3人が「反ファシスト祭典」で揃う(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:32JST 【習近平・プーチン・金正恩】 トランプが会いたい3人が「反ファシスト祭典」で揃う(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「【習近平・プーチン・金正恩】 トランプが会いたい3人が「反ファシスト祭典」で揃う その心は?(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆トランプ関税が習近平と金正恩を接近させた金正恩がプーチンにだけでなく、習近平にもなびいた方が良いと判断したのは、「トランプ関税により中国の圧倒的優位性が示されたからだ」と考えていいだろう。4月13日の論考<米軍武器の部品は中国製品! トランプ急遽その部品の関税免除>(※2)や4月16日の論考<中国最強カードを切る! 「米軍武器製造用」レアアース凍結から見えるトランプ関税の神髄>(※3)で考察したように、トランプ関税は中国の製造業とレアアースの圧倒的な力を見せつける結果となり、相互関税に関して、トランプは対中国関税のみ「一時停止して11月10日まで延期する」と宣言している。習近平の機嫌を損ねて、「それなら中国製部品やレアアースを輸出しない」と言われたら、「米軍の武器を製造することはできないという事態に陥る」ということが判明したのだ。すなわち「製造業を制する者が軍事力を制する」ということが判明したことになる。となると、アメリカに対して何としても軍事的に負けられないために核を保有しようとしている金正恩は、習近平に接近し、中朝軍事同盟を明示しておいた方が有利になる。◆トランプは「習近平にもプーチンにも金正恩にも」会いたがっているトランプは8月25日の米韓首脳会談において、「金正恩に会いたい」という思いを吐露しており(※4)、「金正恩も自分に会いたがっているだろう」という趣旨のことを言っている。金正恩としては、「北を追い詰めるための激しい米韓軍事演習を展開しておきながら、何を言っているか!」という憤りを持ちながらも、いざという時の米朝首脳会談のために、米軍兵器製造に関して圧倒的優位に立っている習近平と「一体なんだぞ」ということをトランプに見せつけておきたいだろう。習近平としては、ひょっとしたら10月31日から11月1日にかけて韓国で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議でトランプと会談することになるかもしれず、そのときには11月10日がデッドラインとなっているトランプの対中相互関税に関して有利な方向に持って行きたいと考えているにちがいない。そのときに、タイトル画像に描いたような【習近平・プーチン・金正恩】という非米陣営トリオが大きな塊として構えていることは、トランプにとっては少なからぬ圧力となり得るだろう。トランプは常に「私は習近平が大好きだ。ずーっと好きだった」(※5)と言ってきた。この大陸続きの非米陣営トリオの存在は、トランプにとって「ラブコールを送り続けてきた強いリーダー」であると同時に、今後の世界情勢の地殻変動をもたらすファクターを内在させていることに気がついているだろうか。指をくわえて「憧れの非米陣営トリオ」を見ている場合ではないかもしれない。なお、「抗日戦争勝利記念」に必ず「反ファシスト戦争勝利記念」がペアで付くのは、8月26日の論考<日本政府が中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべき もう一歩進んで具体的理由を示すべきか>(※6)で書いた、江沢民が1995年5月にモスクワで開催された「世界反ファシスト戦争勝利記念祭典」が、「抗日戦争勝利記念」を中国で全国レベルで行なうきっかけとなった何よりの証拠であることを最後に付言したい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。「【習近平・プーチン・金正恩】 トランプが会いたい3人が「反ファシスト祭典」で揃う その心は?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。【習近平・プーチン・金正恩】の団結を指をくわえて見ているトランプ大統領(筆者作成 トランプ像は筆者AI作成)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6219(※3)https://grici.or.jp/6236(※4)https://www.politico.com/news/2025/08/25/trump-says-he-could-meet-again-with-kim-jong-un-00523328(※5)https://www.youtube.com/watch?v=-R7ax7ZlSdk(※6)https://grici.or.jp/6574(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/707a095f0cdc856ee6261fb90b130a7cb971d15c
<CS>
2025/09/01 10:32
GRICI
【習近平・プーチン・金正恩】 トランプが会いたい3人が「反ファシスト祭典」で揃う(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:31JST 【習近平・プーチン・金正恩】 トランプが会いたい3人が「反ファシスト祭典」で揃う(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。9月3日に北京で挙行される「中国人民抗日戦争・世界反ファシスト戦争勝利80周年記念式典」に北朝鮮の金正恩総書記も参加することがわかった(※2)。中露朝という隣接する「非米陣営」の「巨頭」(独裁政権トリオ?)が一堂に会するのは異例なことだ。皮肉にもこの3人はトランプ大統領が「会いたがっている」リーダー集団でもある。おまけに「反ファシスト戦争勝利」と言うなら、旧ソ連を別とすれば、アメリカやドイツ・イタリアを除いたヨーロッパなど西側諸国が勝利者の主人公のはずではないか。その「世界反ファシスト戦争勝利80周年記念式典」に勝利者が参加せず、「反ファシスト戦争」が終結した4年後に誕生した「中華人民共和国」が主人公となって「反ファシスト戦争勝利記念」で巨大な「非米陣営」の塊を形成していく。これをどう読み解くのか、【習近平・プーチン・金正恩】3者それぞれの思惑を、トランプ大統領の位置との関係において考察する。これを分岐点として世界の勢力マップに大きな地殻変動が起きるだろう。◆習近平とプーチン習近平は、プーチンがウクライナに対する軍事侵攻をしたことに賛成ではない。なぜならプーチンのウクライナ軍事侵攻の表面的な理由は「ウクライナ東部のドンバスなどの地域の住民が、ゼレンスキー政権によって(ウクライナ東部住民の母語であるロシア語を使ってはならないなどの)差別を受け弾圧されているので、ロシアに助けを求めたからだ」というものであった。そんなことを理由にされたのでは、たとえば中国のウイグル自治区やチベット自治区などの住民が、「習近平政権に不当な弾圧を受けている」として他国に救いを求めたら、他国は中国に軍事侵攻していいことになる。クリミア半島併合に関しても、バイデン(当時副大統領)などがNED(全米民主主義基金)を使ってウクライナ西部地域の住民を焚きつけマイダン革命を起こさせて親露政権を転覆させたことへの仕返しだということは分かっていても、やはりクリミア半島の住民投票という手段を使って「民主的に」併合したという事実に対して、習近平は認めたくない。もし自国内のウイグル自治区の住民が自主的な住民投票によって反旗を翻したら中国から独立して他国に併合されていいという理屈につながるので、何れも賛同できないのである。しかしながら、プーチンの決断が「アメリカに虐められた結果の反応」であるという意味においては、中国の発展を阻止するために「アメリカに虐められている中国」としては、「虐められている者同士」としてプーチンを応援したい。そうでなくとも中露関係は「非米陣営」として上海協力機構やBRICSなど独自の勢力圏を構築していたので、習近平としては「経済的にはプーチンを徹底して支援する」という立場を貫いてきた。今後もそれは強化されるにちがいない。プーチン側からしても、習近平は世界で最も頼りになるリーダーだ。たしかに習近平は軍事的には中立を保ち、決して軍事参加はしないものの、経済的には世界第二位で、ハイテク産業においては世界トップを行っている。プーチンとしては、その中国にはピタッと寄り添っていくつもりだ。◆プーチンと金正恩それでも習近平が軍事的にプーチンとは一定の距離を保ったまま、これを絶対に変えようとしないことをプーチンは十分に認識しており、何としても軍事的支援をしてくれる「仲間」が欲しい。見れば、すぐ隣に「軍事的に秀でようと、一歩たりとも譲らない金正恩(キム・ジョンウン)」がいるではないか。領土は狭いながらも、何としても核保有国として認められ、核保有によって自国を守ろうと、凄まじい気炎を吐いている金正恩の存在は、領土の狭さを超越して存在感を発揮している。おまけに仇敵の韓国が、米韓軍事同盟に基づき、北に圧力をかけようと軍事演習をやめようとはしない。そこでプーチンは金正恩に声をかけ、核開発やミサイル開発などの技術支援をするので「ウクライナ戦争でロシア側に付いて支援しないか」と呼び掛けた。金正恩は二つ返事で承諾!これまでどの国からもそのような形で認めらたことのない金正恩は、きっと有頂天になり、積極的に兵力の支援を引き受けたにちがいない。この金正恩の力をプーチンが頭を下げて求めてくる。金正恩の表情は日に日に自信を増すようになっている。それからの露朝蜜月は、世界が唖然とするほど緊密なものとなった。そして2024年6月19日、訪朝したプーチンは金正恩と会談し、両国が相互友好条約に署名する準備があることを発表し、11月9日、プーチンは北朝鮮との安全保障協力の拡大などを定めた「露朝包括的戦略パートナーシップ条約」をロシアが批准する法案に署名した。条約は、一方の国が武力攻撃を受けた場合に他方の国が軍事支援を行うことなどを規定し、事実上の露朝軍事同盟に相当する。期間は無期限だ。◆金正恩と習近平この二人の関係は実に複雑だ。中国は1950年に始まった朝鮮戦争において、スターリンと金日成(キム・イルソン)の陰謀により、無理矢理に北朝鮮に中国人民志願軍を派遣する形で北朝鮮を軍事支援する形に追い込まれた歴史がある。中国は最大の犠牲者を出したというのに、金日成はあたかも北朝鮮軍が戦ったからこそ米帝を退けることができたかのように国内で宣伝し、中国人民志願軍の勇猛果敢な戦いと犠牲を軽んじる言動をした。この時点から中朝関係はしっくりしていなかったが、金日成はその「血の同盟」を良いことに、1961年5月16日に韓国の朴正煕(パク・チョンヒ)(のちの朴槿恵大統領の父)が軍事クーデターを起こして軍事政権を樹立した際に、中露に軍事同盟の締結を求めた。金日成は、米韓軍事同盟(米韓相互防衛条約)を結んでいる韓国がアメリカと組んで北を軍事攻撃することを危惧したからだ。その結果、中国とは同年7月11日に「中朝友好協力相互援助条約」という軍事同盟を締結している。旧ソ連とも「ソ朝友好協力相互援助条約」という軍事同盟を締結したが、1991年末にソ連が崩壊しロシアになったあと、1996年9月に(アメリカに操られていた)エリツィン(大統領)が「ソ朝友好協力相互援助条約」を廃棄したため、露朝軍事同盟は消滅した。改革開放が進んだ後の中国では、北朝鮮との軍事同盟は重荷で、20年ごとの契約更新時期が来ると、破棄しようとする動きが何度もあったが、結局のところ2021年に習近平は三度目の更新をしている。なぜなら2017年に発足したトランプ1.0が対中制裁をかけてきたので、2015年に発布したハイテク国家戦略「中国製造2025」を完遂するには、アメリカによる中国の成長を阻止しようとする動きには、北朝鮮とも同盟を結んでおいた方が賢明だと判断したからだろう。実は金正恩と習近平政権の間には金正恩政権誕生の時からいざこざがある。2017年2月19日のコラム<金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材>(※3)に書いたように、金正恩の父親である金正日(キム・ジョンイル)政権の時の後継者争いの中で、金正日の長男である金正男(キム・ジョンナム)が「暗殺される危険があるので助けてくれ」と中国に助けを求めたことがある。金正日がまだ生きていた時のことだ。金正男は後継者になる気などは皆無だが、金正日と元在日朝鮮人の女性との間に生まれた金正恩(三男)は、自分こそが正当な後継者で、異母兄弟の長男・金正男を仇敵とみなしていた。そんなわけで2011年に金正日が他界したあとは、事実上金正恩が最高指導者になった。しかし、2012年に総書記になり、2013年に国家主席になった習近平に対して、金正男問題があるために、金正恩は最初から敵愾心を持っていた。そのため2014年6月30日のコラム<習近平「訪韓」優先、その心は?――北朝鮮への見せしめ>(※4)に書いたように、中国が1992年8月に韓国と国交を正常化して以来、国家主席が北朝鮮を先に訪問しないで、韓国を先に訪問するようなことはやったことがない。しかし習近平は北朝鮮を訪問する前に韓国を訪問し、朴槿恵(パク・クネ)大統領と会い、2015年の抗日戦争勝利70周年記念には、天安門楼閣に朴槿恵と並んで祝賀したという、これまでになかった現象さえ見られた。それが一転したのは、米朝首脳会談が行われることになったからだ。トランプに会う前に、金正恩は毎回訪中して習近平に教えを乞うている。金正恩が2018年3月に中国を訪問したのは、トップになったあと初めての公開外遊だった(※5)。そのお返しとして習近平は2019年6月に北朝鮮を訪問したが、中国の首脳が北朝鮮を訪問するのは2005年以来だ(※6)。ここで既に仲直りしているのであって、ウクライナ戦争後にプーチンが金正恩に近づいたことによって、中朝関係がギクシャクしているというようなことはない。それよりも決定的なファクターは、トランプ関税だ。「【習近平・プーチン・金正恩】 トランプが会いたい3人が「反ファシスト祭典」で揃う その心は?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。【習近平・プーチン・金正恩】の団結を指をくわえて見ているトランプ大統領(筆者作成 トランプ像は筆者AI作成)(※1)https://grici.or.jp/(※2)http://www.news.cn/zt/kzsl80zn/jzh0828/index.html(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c20dbf4c5792d00910f6909b24efb4eb3d3621c2(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/941f391b1aa10ddfad646d9db9f6a3fe3cd345dc(※5)https://www.bloomberg.com/politics/articles/2018-03-26/north-korean-leader-kim-jong-un-is-said-to-be-visiting-china(※6)https://edition.cnn.com/2019/06/19/asia/xi-jinping-pyongyang-hnk-intl/index.html(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/707a095f0cdc856ee6261fb90b130a7cb971d15c
<CS>
2025/09/01 10:31
GRICI
日本政府が中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべき(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:40JST 日本政府が中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべき(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「日本政府が中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべき もう一歩進んで具体的理由を示すべきか(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆愛国主義教育を反日教育に持って行った江沢民には個人的な理由が…江沢民がトウ小平の指名を受けて中共中央総書記に就任したのは天安門事件後間もない1989年だが、国家主席に就任したのは1992年3月である(全人代の承認が必要)。上海から突然中央にやってきた「おのぼりさん」を、北京派閥たちは嫌った。中でも北京市の書記をしていた陳希同は、自分が次期国家主席に指名されるべきだという願望を持っていたので、トウ小平に江沢民の出自をばらした。江沢民の実父は、日中戦争時代、日本の傀儡政権であった汪兆銘政権管轄下にあった「ジェスフィールド76号」(通称:76号)という特務機関の官吏だった。だから金持ちの家で育っただけあって、江沢民はピアノも弾ければダンスもできる。酒が入れば炭坑節だって歌い出す。ところが日本が敗戦すると、あわてて実父の弟の革命烈士(中国共産党員)の養子になったと偽り、共産党に入党した。今ではその過去を知らない人は少ないが、当時は、こんことを口にするのは絶対にタブーだった。陳希同を恨んだ江沢民は1995年に陳希同を牢屋にぶち込み、出自の過去を封印した。もし出自の秘密がばれたら、「売国奴」と罵倒され、国家主席どころか、共産党員になる資格さえない。そこでその封印をより強固にして、「自分がいかに反日であるか」を人民に植え付けるために、「反日」を声高に叫び始めたのである。反日傾向に逆らう者は、逆に「売国奴」として罵倒される。1980年ごろから大陸に上陸した日本動漫(アニメと漫画)で育った中国の若者(中国動漫新人類)たちは、愛国主義教育によって「初めて知った反日感情」と「日本動漫大好きな日本愛」との間で葛藤していたが、日本アニメ上陸への厳しい検閲と、中国産アニメの増加および反日教育の中で、「中国共産党への愛」を育み始めている。◆日中戦争中、毛沢東は日本軍と共謀していた何度も書いてきたので、再び取り上げるのは心苦しいが、拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いたように、毛沢東は日中戦争中、配下のスパイ・藩漢年らを上海にあった日本の外務省所轄の「岩井公館」に潜り込ませ、国民党の軍事情報を高値で日本側に売っていた。今年7月10日の論考<習近平、BRICS欠席して抗日戦争「七七事変」を重視 百団大戦跡地訪問し「日本軍との共謀」否定か>(※2)の図表2に示したように、毛沢東は中共軍と日本軍との間での「停戦」をさえしようと藩漢年を通して日本側に伝えさせている。スパイ相関図に関しては2024年8月16日の論考<中国共産党には日本に「歴史問題を反省せよ」という資格はない 中国人民は別>(※3)の図表に示したので、興味のある方はご覧いただきたい。習近平としては何としても「中国共産党は抗日戦争の中流砥柱(中心的柱)である」として、中国共産党政権を維持したいと必死だろうが、父親の習仲勲は延安にいたので、延安時代の毛沢東の日本軍との共謀に関するスパイ行為に関しては知っている可能性がある。少なくとも習仲勲が最後まで守ろうとした胡耀邦は、毛沢東の日本軍との共謀を知っていた。だから、なおさら、習近平としては何としても抗日戦争勝利80周年記念式典と軍事パレードを大成功に持って行きたいのだろうが、そのような「虚構」は必ずいつかは人類に不幸をもたらす。過度に誇張した反日映画の上映も、江沢民の1995年のあの分岐点が無かったら、本来ならばなかったものであったかもしれないし、いずれ中国人民にも長い目で見れば、幸せをもたらすものではない可能性がある。◆日本政府に望む冒頭に書いたように、日本政府が今般、中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべきことだ。可能ならば今後は、もう一歩進んで「なぜ適切ではないのか」、「なぜ参加を自粛すべきかのか」を書面に記して、各国に配布し、中国政府にも堂々と「日中戦争の真相と、1995年以降の反日教育の動機の不純さ」を示していくべきではないだろうか。必要であるなら、「毛沢東が日本軍と共謀した事実」を、実際に日本軍と戦った「国民党軍」関係者とともに審議しチェックしていくことも試みるべきだろう。2015年8月10日のコラム<戦後70年有識者報告書、中国関係部分は認識不足>(※4)に書いたように、10年前の報告書はあまりにもお粗末で、「反日教育」を「抗日教育」と書き間違えるほどレベルの低いものだった。日本はアメリカにも中国にも恐れることなく、堂々と独立国家としての見解と見識を広めていくべきだと思う。それこそが「戦争を再び招かない未来」へとつながっていく道だと固く信じる。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。中国 抗日戦争勝利80周年軍事パレードのリハーサル(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6453(※3)https://grici.or.jp/5541(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9218d09c402d54d4d6de0473f7e3f8052ed6e9d3(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2dc3f68e50cdbab4eb2961d0775b662f5bef316b
<CS>
2025/08/27 10:40
GRICI
日本政府が中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべき(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:35JST 日本政府が中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべき(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。8月24日、日本の共同通信は<中国の抗日行事に「参加自粛を」 日本政府、各国に呼びかけ>(※2)という見出しでハッとするような報道をした。日本政府が「遺憾砲」以外に、こうして具体的に「参加自粛」を欧州やアジア各国に外交ルートを通して呼びかけたことなど、未だかつて聞いたことがないように思う。正直、「石破政権、なかなかやるじゃないか」と思った。可能ならば、なぜ「抗日行事」が始まったのかを直視し、中国共産党が持つ決定的な弱点と虚偽を、静かに示せるようにしてほしいと切望する。毛沢東はただの一度も「抗日行事」を開催したことがないが、1995年に江沢民が「抗日行事」を全国化して以来、反日感情は逆行して燃え盛り、それがまた日本の若者に反中感情を植え付ける原因の一つになっている。この悪しきサイクルという負の遺産を子々孫々にまで残さないようにするのは、まだ現実を知っているわれわれ世代の義務だと思う。そうしないと、いつかこの負の感情の連鎖が戦争を起こすことにつながるかもしれない。それを防ぐためにも、これまで何度も書いてきたが、ここでもう一度、中国の「抗日行事」の真相を振り返りたい。◆毛沢東は抗日戦争勝利を祝ったことがない2015年8月25日のコラム<毛沢東は抗日戦勝記念を祝ったことがない>(※3)に書いたように、中国建国の父、毛沢東は、抗日戦争勝利記念行事を一度も行ったことがない。中共中央文献研究室が編集し、中央文献出版社から出版した『毛沢東年譜』を詳細に見ると、中国(中華人民共和国)が1949年10月1日に誕生すると、その年の12月23日に中央人民政府政務院(現在の国務院に相当)が抗日戦争勝利記念日を「8月15日」にしようと決定した。しかし実際には実行されておらず、1951年に8月13日に、記念日を「9月3日」にすると、文書上で決めた。毛沢東はそれも無視して、9月2日に旧ソ連のスターリンに祝電を送ることだけしかやっていない。1952年でも、9月2日に毛沢東がソ連のスターリンに祝電を送っただけで、国内行事はゼロだった。1953年3月にスターリンが他界すると、それ以降は周恩来が旧ソ連のマレンコフ(第二代閣僚会議議長)やモロトフ(外相)宛てに祝電を送っただけで、1955年からは中ソ対立が始まったので、その祝電もなくなり、もちろん国内行事などは一切行ったことがない。なぜなら「抗日戦争に勝利したのは毛沢東の最大の政敵である国民党の蒋介石率いる中華民国」であって、毛沢東にとっては「蒋介石を称えることになる」からだ。詳細は後述するが、そのようなわけで、毛沢東が逝去した1976年9月9日まで、中国では「抗日行事」など開催したことがないのである。ただし、1972年9月には、日本の田中角栄元首相の訪中と日中国交正常化に関する記述に多くのページが『毛沢東年譜』で割かれ、日本を礼賛している。◆全国的な抗日行事は1995年に江沢民が始めた2015年8月26日のコラム<抗日戦勝記念式典は、いつから強化されたのか?>(※4)に書いたように、大々的な全国性の抗日戦争勝利式典は1995年9月から始まった。式典という形でなく、北京やその他の地方における地域性の座談会的なものは、改革開放後の80年代初頭から徐々に始まっている。しかしそれも、江沢民が国家主席になるまでは、全国的な行事ではなく、また式典という形で行われたことはない。1995年5月9日、第二次世界大戦終結50周年という大きな節目にあたり、冷戦構造崩壊後の旧ソ連すなわちロシアにて、「世界反ファシズム戦争勝利50周年記念」が開催された。当時の中国の国家主席・江沢民は、当時のロシアのエリツィン大統領の招聘を受けて、会議に出席した。連合国側の国家として戦ったのは「中華民国」なのだから、「中華人民共和国」が連合国側の国家として招聘されるというのは、奇妙な話だ。しかし「中華人民共和国」が「中国」を代表する国家として国連に加盟していたので(1971年)、中華民国の業績も中華人民共和国の業績として受け継ぐことになったと解釈することが許されたと、中国は思ったにちがいない。江沢民にとっては、どれだけ誇らしく、かつ自信をくすぐる大きな出来事だったか、想像に難くない。1950年代半ばから、ソ連とは中ソ対立があり敵国同志だったが、そのソ連が1991年末に崩壊しロシアとなったため、ようやく中国と和解したしるしでもあった。その夜、モスクワのクレムリン宮殿では、式典を祝賀するための晩餐会が開かれ、各国首脳が顔をそろえていた。午前中に開かれた記念式典でスピーチをした首脳は、この晩餐会ではもうスピーチをしないことになっていたのだが、司会者がなぜか、アメリカのクリントン大統領やフランスのミッテラン大統領をはじめ、主たる国家の首脳を再び壇上に上がらせ、乾杯の音頭のための挨拶をさせ始めた。舞台下の宴会場には、江沢民国家主席がいた。しかしいつまでたっても江沢民の名前は呼ばれない。見ればアジアから来た国家代表は江沢民だけではないか。「欧米首脳にのみ舞台に上がらせて、中国人民を代表するこの私(江沢民)を舞台に上げないとは何ごとか!」江沢民は乾杯を拒否してエリツィンの秘書を呼びつけ、自分にも祝杯の辞を述べさせろと要求したが、反応がないまま、舞台のマイクが下げられ、次の催しに入ろうとしていた。江沢民は怒り、焦った。自分で直接エリツィンのもとに走って行き、「中国の代表として発言を求める」とエリツィンに迫った。エリツィンはすぐに同意し、江沢民は舞台に立った。あわてて元に戻されたマイクに向かって、江沢民は声高々と次のように語ったのである。――私は中国政府と人民を代表して、すべての反ファシスト戦争勝利に貢献した国家と人民に熱烈なる祝賀を表するとともに、かつて中国人民による抗日戦争を支え援助してくれた全ての国家と人民に心からなる感謝と敬意を表したい。(詳細は『為了世界更美好江沢民出訪紀実』世界知識出版社、2006年。タイトルは簡体字。)この瞬間から、中国共産党の抗日戦争は「世界反ファシズム戦争」として位置づけられるようになった。そして同年9月3日、中国では盛大なる「抗日戦争勝利記念大会」が全国的な国家行事として開催され、おまけにこれを「世界反ファシスト戦争勝利記念大会」と位置付けるようになったのである。人民大会堂におけるスピーチの中で、江沢民は次のように述べている。――私がここで特に明らかにしなければならないのは、ソ連、アメリカ、イギリス等の反ファシズム同盟国家は、中国の抗戦に人力的にも物質的にも甚大な支持をしてくれた。したがって抗日戦争に勝利した紅旗の中には、こういった各国の友人たちの血の跡が刻まれている。なんと、中国共産党にとって神聖であるはずの紅旗(赤旗)の紅い血の色の中に、アメリカの血が入っていると言ったのだ。世界が「赤化」することを最も警戒していたアメリカに対してである。「日本政府が中国の抗日行事に「参加自粛」呼びかけたのは賞賛すべき もう一歩進んで具体的理由を示すべきか(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※)より転載しました。中国 抗日戦争勝利80周年軍事パレードのリハーサル(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://news.yahoo.co.jp/articles/6b1c0a92c9b2245caa35156d43917e6b3063b640(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/60e73533ebe688bd45af8df381346fa483e7cad3(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4a7d43670b8dfcb2784b4ccffad5eb661f03dd6c(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2dc3f68e50cdbab4eb2961d0775b662f5bef316b
<CS>
2025/08/27 10:35
GRICI
台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」関係を読み解く(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:58JST 台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」関係を読み解く(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」三角関係を読み解く(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆「米中台」三角関係 前代未聞のアメリカの対応に彷徨う台湾台湾の対米トランジット外交は、1994年に李登輝総統が中南米歴訪の時に給油のためにホノルルを経由したことがきっかけとなっている。帰途、ホノルルでの短期滞在を要求したが、時のクリントン政権が「一つの中国」政策を理由に、給油は許したもののビザの発行は拒否している。しかし李登輝の抗議と、米議会議員からの激しい批判に遭い、クリントンは李登輝が1995年に私人としてコーネル大学を訪問することを許可した。あれ以来、アメリカの大都市立ち寄りというトランジット外交が始まり、これまで基本的に拒否されたことがない。2006年の陳水扁総統によるアメリカ立ち寄りの失敗は、台湾の方がアメリカ経由をキャンセルしたような恰好(※2)なので例外とすれば、今回のトランプによる拒否は、米中国交回復以来、米台関係史の中で初めての出来事であるということもできる。問題は、これをどう解釈するかだ。トランプは同盟国であろうがなかろうが、ほぼアメリカにとって有利であるか否かだけで、相手国との関係を「二国間関係」により決めていく傾向にある。その上、世界の専制主義的な大物リーダーが好きだ。最初の内はプーチンと習近平が気に入り、特に「自分が大統領になったら、1日でウクライナ戦争を停戦にさせる」と豪語していただけに、何としてもプーチンとの1対1の良好な関係でウクライナ戦争を解決しようとしていた。ところがプーチンは口先ではトランプとの電話でトランプが気に入るような言葉を発しながら、一方では(トランプに言わせると「夜になると」)言葉とは裏腹の激しいウクライナ攻撃をする。遂にトランプの堪忍袋の緒が切れて厳しいロシア制裁に出ると言い始めている。残るは習近平だ。習近平だけが(自分の面目を保つための)「頼みの綱」なのである。そうでなくとも大統領就任早々、「私は習近平が好きだ!これまでもずーっと好きだった」(※3)とまで公言している。おまけに米中貿易では圧倒的に中国が勝っている上に、中国製品や中国のレアアースがないと、アメリカは武器さえ製造できないような惨状だ。「アメリカ・ファースト」を貫き、来年の中間選挙を勝ち抜くには、「習近平の機嫌を損ねたくない」という気持ちが働いているのではないかと判断される。台湾などは二の次で、もともと強い興味を示していなかったのだが、ここに来て中国大陸優先モードに入っているように見える。しかし政権は対中強硬論者で固めているので、ルビオ国務長官などが黙っていない。そこら辺とのバランスを図りながら、それでも「習近平重視路線」は続けるだろう。このような中、習近平の「台湾に対する堪忍袋の緒が切れないように」持って行き、台湾有事を引き起こさせるような頼清徳政権の独立志向を抑え込む。堪忍袋の緒を固く締めて耐える役割は頼清徳にさせる。これが当面の「米中台」三角関係ではないだろうか?7月28日のストックホルムにおける米中貿易交渉では、8月12日だった関税暫定停止期間を、さらに90日間延期させることに決まったようだ。少なくともこの90日の間では、上記の「米中台」三角関係が続く可能性がある。途中で米中首脳会談などがあった日には、どのような「変数」が待ち構えているかわからない。見ものだ。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。頼清徳総統(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.voachinese.com/a/a-21-w2006-05-04-voa26-63208082/968595.html(※3)https://www.youtube.com/watch?v=-R7ax7ZlSdk(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8e1accb8a6a5cd2fe8cd00020e49ca89a2ee3915
<CS>
2025/08/01 10:58
GRICI
台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」関係を読み解く(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:56JST 台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」関係を読み解く(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。フィナンシャル・タイムズ(FT)は7月28日、「習近平国家主席との会談予定や米中貿易合意に向けての交渉のさなか、トランプ大統領は習近平との関係を重んじて、頼清徳総統が8月にニューヨークに立ち寄るのを拒否した」と報道した(※2)(登録、有料)。中国側の猛烈な抗議を配慮した結果だという。すると、「トランプは中国大陸を重んじて台湾をないがしろにした」と、台湾メディアは燃え上がった。特に「なにも、頼清徳に世界大衆の面前で恥をかかせることはないだろう。なぜそれをマスコミに流してしまったのか」と大荒れで、頼清徳は「もともと予定していた(と言われている)8月の南米訪問は、そもそも存在していなかった」という形で「屈辱」をかわそうとしている。そのことが台湾メディアをいっそう掻き立て、頼清徳は「笑いもの」の的になっているのが現状だ。アメリカのペロシー元下院議長もトランプの決断を激しく攻撃(※3)。それも含めて台湾メディアは面目を失った頼清徳を追い詰めていた。ところが一転。7月29日になると、米国務省報道官が「そもそも台湾総統の外遊予定はなかったので、アメリカの台湾に対する立場は不変だ」と宣言したのだ(※4)。頼清徳のメンツを守った形だが、これがまた台湾メディアを刺激した。いずれにしても、以上の顛末は、トランプがいかに習近平を重んじているか(相対的にいかに台湾を軽んじているか)の証しであり、またトランプ周辺の対中強硬派とのバランスも垣間見せる。今後のトランプ政権の対中・対台湾姿勢が気になる。◆「トランプが頼清徳のニューヨーク立ち寄りを拒否」に色めき立つ台湾メディアトランプが頼清徳のニューヨーク立ち寄りを拒絶したというニュースに台湾のメディアは燃え上がった。中央通信社CANは7月29日、<トランプが頼総統のニューヨーク立ち寄りを拒否 ペロシー:危険信号>(※5)という見出しで報道し、同じく7月29日、聯合新聞網は<FT:頼清徳総統はアメリカがニューヨーク立ち寄りを許さないことを知った後に、8月の外遊を取り消した>(※6)と明確に因果関係をばらしてしまった。7月29日、BC東森新聞は<頼清徳がニューヨーク経由を拒否された? 学者らが「トランプのそろばん勘定」を暴露:目を覚ます時が来た>(※7)という見出しで学者の意見を載せている。「トランプが何を考えているか、気が付くべきだ。台湾の人々よ、目を覚ますときが来た」という趣旨の論考だ。要は「トランプは台湾を重要していない。いざとなった時に(台湾有事に)、アメリカが必ずしも台湾を助けてくれるとは限らない」と切実だ。威勢よくまくしたてるのは「新聞大白話」のYouTubeだ。7月29日、<トランプが頼清徳のニューヨーク立ち寄りを拒否? ペロシーが「台湾危険シグナル」を響かせたよ>(※8)というタイトルで、面白おかしく現状を斬っている。7月29日、聯合新聞網は、もう一本関連記事を発信して、頼清徳が支援する市民団体がリコール対象としていた国民党の王鴻薇書記長の<トランプにニューヨーク立ち寄りを拒否されて、約束していた南米訪問をも取り消すのは、国交のある南米の国に失礼ではないか>(※9)という趣旨のコメントを報道している。「ニューヨーク経由の拒否を受けて、頼清徳は台湾南部の台風被害やトランプ関税対応などを理由に、『もともと海外訪問の予定はなかった』などとしているが、8月にパラグアイ、グアテマラ、ベリーズなどの外交関係を持つ国を訪問する予定で、そのときにニューヨークを経由するということは、知らない人はいないくらい知れわたっている。それを今さら『訪問する予定はそもそもない』などと言い逃れるのは、相手国に失礼ではないか!」というのが王鴻薇の主張だ。台湾総統府はたしかに正式に声明を出したことはないが、すでに訪問するはずだった相手国からの発信さえある。◆頼清徳の8月南米訪問は既定路線だったたとえば今年7月15日の「公視新聞網」は<(台湾の)林佳龍(外交部長)は代表団を率いて南米の友人であるパラグアイを訪問 パラグアイのサンティアゴ・ペニャ大統領は「8月に頼清徳総統が訪問する」と述べた>(※10)というタイトルで報道し、パラグアイのペニャ大統領が「8月には頼清徳総統の訪問を受ける」と明らかにし、かつ「今からの30日間は頼清徳総統をお迎えするために準備万端進めております」とさえ言っていることを伝えている。また、台湾メディアによると頼清徳は8月に「グアテマラ、ベリーズにも行き、ニューヨークとテキサス州ダラスを経由する予定だ」と報道している。7月15日の聯合新聞網も<頼清徳は来月中南米を訪問 米国ニューヨークとダラスを経由する予定>(※11)という見出しで報道し、それに先立ち、台湾の林佳龍外交部長が訪問したと書いている。類似の報道はあまりに多いので省く。注目すべきは、中国大陸(北京政府)の方の外交部が7月15日に記者会見で抗議したことだ(※12)。ロイター社の記者が「パラグアイの大統領が、台湾の頼清徳総統が来月同国を訪問するので、その準備を進めていると述べました。頼総統はベリーズも訪問する予定で、アメリカを経由する可能性が高いと言われています。中国はアメリカに対し、頼総統のアメリカ経由を認めないよう要請したのでしょうか?またアメリカの反応はどうでしたか?」という質問をしている。それに対して林剣報道官は「一つの中国」原則を踏みにじっているパラグアイに激しく抗議するとともに、アメリカ経由の可能性に関する質問に対して「中国はアメリカと台湾の間のいかなる形式の公式交流にも断固として反対し、台湾当局の指導者がいかなる名義、いかなる理由であれアメリカに出入りすることに断固として反対し、アメリカが“台湾独立”分離主義者とその分離活動をいかなる形でも黙認し、支援することにも断固として反対する。アメリカは台湾問題の高い敏感性を認識し、『一つの中国』原則と米中3つの共同コミュニケを堅持し、最大限の注意を払って台湾問題に対処すべきだ」と激しく憤りを顕わにした。トランプは、これに対して配慮したものと思われる。7月30日のFTは、<アメリカが6月の時点で、台湾の国防部長(国防相)が訪米することを拒否していた>(※13)(登録、有料)という事実までつかんでいたことを報道している。その理由は「中国との貿易交渉が迫っていたからだ」とのこと。一部の米当局者は、「台湾の顧立雄国防部長の訪米を認めれば、米中貿易交渉が損なわれ、習近平国家主席との首脳会談実現に向けたトランプ大統領の努力にも悪影響が出ると懸念していた」とFTは記事の中で書いている。「台湾総統のニューヨーク立ち寄りを拒否したトランプ政権の顛末 「米中台」三角関係を読み解く(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※14)より転載しました。頼清徳総統(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.ft.com/content/21575bec-5cdd-47ee-9db2-3031c4ea7ca7(※3)https://x.com/SpeakerPelosi/status/1949978882360139948(※4)https://www.state.gov/briefings/department-press-briefing-july-29-2025/(※5)https://www.cna.com.tw/news/aipl/202507293001.aspx(※6)https://udn.com/news/story/6656/8902747(※7)https://tw.news.yahoo.com/%E5%82%B3%E8%B3%B4%E6%B8%85%E5%BE%B7%E8%A2%AB%E6%8B%92%E9%81%8E%E5%A2%83%E7%B4%90%E7%B4%84-%E5%AD%B8%E8%80%85%E6%9B%9D-%E5%B7%9D%E6%99%AE%E7%AE%97%E7%9B%A4-%E8%A9%B2%E6%B8%85%E9%86%92%E4%BA%86-032700206.html(※8)https://www.youtube.com/watch?v=S7gOfRvNuzA(※9)https://udn.com/news/story/6656/8903469(※10)https://news.pts.org.tw/article/760861(※11)https://udn.com/news/story/6656/8872571(※12)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/jzhsl_673025/202507/t20250715_11671019.shtml(※13)https://www.ft.com/content/baf4a261-1fce-4c38-b05f-ccd01d3be750(※14)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8e1accb8a6a5cd2fe8cd00020e49ca89a2ee3915
<CS>
2025/08/01 10:56
GRICI
トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:18JST トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信 怒る中国のネット(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆トランプ「イラン爆撃」と「原爆発言」に対する中国ネット民のコメント以下、ロックンロール付きのはしゃいだ動画を見た人がどれくらいいるかは判断できないが、少なくともトランプがイラン地下核施設爆撃をしたことと、それを「広島・長崎」への「原爆投下」と同じだと言ったことに対する、中国のネット民のウェイボー(Weibo)におけるコメントを、いくつか拾いあげてみた。・まさか、原爆投下と比べるなんて、こんな比喩は普通の人には思いつかないよ。・どこまでも、越えてはならないレッドラインを、平気でどんどんぶち壊していく。・トランプは本当にビッグマウスで、何でも言うし、限度もない。結局のところ、ただの傲慢なメンタリティだ。「俺は世界のボスだ、われわれは誰をも恐れない」ってことさ。「他人の気持ちなど、知ったことか」と思っている。・だったら、なんぜイスラエルにも爆撃しないんだ?イスラエルだって核開発やってるのは知ってるはずだろ?・「広島の例も長崎の例も挙げたくない」って言ってるけど、もう全部列挙したんじゃないかい? しかもあなたは、それらを美味しそうに紹介した。・幸いにも石破茂はそこにいなかった(筆者注:いても何も言ってないよ、岩屋外相がいたが、何も言っていない)。・トランプはイランへの軍事行動を広島と長崎への原爆投下に例え、多くのネットユーザーから批判を浴びた。歴史認識の欠如を非難されただけでなく、危険な誤解を招く発言だとも批判された。トランプが言いたかったのは、「自分をレーガン、リンカーン、イエス・キリストと比較したくはないが、私は本質的にそういう人間だ」ということだったのかもしれない。・トランプはイランへの攻撃を日本への原爆投下に例えた!イランへの空爆を原爆に例えるなんて、またしてもトランプは大口をたたいているのか?本当に自分が救世主だと思っているのか!アメリカは至る所で火に油を注いでおり、中東情勢はさらに混沌としている。このような脅迫と威嚇で平和がもたらされるのだろうか?誰も信じないだろう!・トランプは本当に天才だ。この発言は、彼らの爆弾よりも多くの被害をもたらしました。・本日の(日本における)記者会見で、ある記者が、トランプが広島と長崎を米軍によるイランの核施設攻撃にたとえた発言について、日本政府にどう評価するかを尋ねた。すると、日本の林芳正官房長官は、「関連する歴史的出来事については専門家が解説すべきだ」と述べ、質問に直接答えなかった。・イランの核施設への爆撃を広島への原爆投下と比較するというのか? この歴史修正主義は、(事故を起こし続けている)美肌フィルターよりも冷酷だ! 当時、日本は第二次世界大戦末期に核爆弾を投下された。今、イランは核兵器もまだ持ってないのに、「予防的攻撃」を受けたに過ぎない。トランプは「根拠のない」発言をアメリカの得意技にしてしまったようだ。トランプには歴史の授業をもう一度受けてみることをお勧めする。広島では20万人が亡くなったが、イランの核施設では犠牲者は出ていない。これで「爆撃(原爆投下)により、多くの命を救った」と言えるのか?トランプは無理やり「戦時大統領」というドラマを創り上げている。(筆者注:この指摘は鋭い。すなわち、イラン爆撃を広島・長崎への原爆投下になぞらえることによって、今は「緊急事態」なので、米議会を通さなくとも、「大統領令」だけでトランプの独断で動いていいことの「正当性」を求めようとした、という論理になる。)・アメリカが時折、日本人の傷口に塩を塗り込むのは偶然ではない。それは、傷が癒えた後も痛みを忘れないよう、日本人に警告するためだ。たとえば、トランプの最近の発言は、日本に関税の更なる譲歩を促しているが、これは実際には脅しだ!・トランプは、世界平和はすべて自分の功績だと言っているのだから、私たちは彼に感謝すべきだ。・トランプ氏は戦争屋だ! 彼は米国議会の承認なしに主権国家への攻撃を開始し、国際法を著しく侵害した!(中国のネット民のコメントは以上)◆軍事力で問題を解決する恐ろしさ日本でも、多くのネット民がトランプの「原爆発言」に対する怒りと、それを批判しない日本政府の姿勢に、さらなる憤りを表明している。しかし、日本ではメディア自身が強く批判しているのはあまり見かけないし、またトランプがTRUTHでイラン爆撃を軽快なロックのリズムに合わせて動画化している報道を見かけないように思う(見逃していたら、お許しいただきたい)。環球時報は一方で、林官房長官がトランプの「原爆発言」に関して記者会見で聞かれ「そういったことは専門家が考えればいい」と回答を交わしたことを、淡々と、しかし動画付きで紹介している(※2)。他の多くの中国のメディアもトランプの「原爆発言」に対する日本政府の回答に関して報道しており、その行間には一種の「日本政府の姿勢に対する批判」を見出すことができる。そこに共通しているのは、日本政府の「自尊心のなさ」と「過度の対米追従」であるように感ぜられる。アメリカはかつてイラクを攻撃するときも、まるでゲームを楽しむように爆撃機をリモコンで操縦し、逃げ惑う市民を笑いながら殺している動画を何度も見たことがある。今般のイラン攻撃もトランプにとっては「自分がどれだけ素晴らしいかを世界に見せるためのゲーム」に過ぎないのだ。それを日本への原爆投下に喩(たと)えたということは、それもまたトランプにとっては「おもしろいゲームだった」と言ったのに等しい。読者の皆様にお願いしたい。もう一度、トランプがTruthに投稿した「イラン爆撃」をおちょくった動画(※3)をご覧いただきたい。そして日本の敗戦はこのように位置づけられていることを再認識していただきたい。日本人として、戦後80年間、「軍事力」によって世界を支配してきたアメリカの傲慢さを、このまま見逃し続けていいのかを問わなければならないのではないだろうか。そしてこのまま対米追従を続けることが、日本人の平和につながるのか、日本はこれで「独立国家なのか否か」を問わなければならないだろう。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。NATO首脳会議 米大統領が会見(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://world.huanqiu.com/article/4NFZ6ElF49t(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114740882500667664(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/545dd454d77832833a664d3ab77949163b42c384
<CS>
2025/06/27 16:18
GRICI
トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:16JST トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。アメリカのドナルド・トランプ大統領はイランの地下核施設への爆撃を、日本への原爆投下と比較しながら、「広島の例は使いたくない。長崎の例も使いたくない。しかし、本質的には同じことだ。あれが、あの戦争を終わらせたのだ」と正当化した。6月25日、NATO首脳会議が行われているオランダ・ハーグでの記者会見でのことだ(※2)。日本が戦争を起こしたことはまちがいのない事実ではあるが、広島・長崎に原爆を落とされたことを「非人道的だ」と非難する資格は日本にはないのか。何十万もの無辜の民を、あれだけ残虐な形で殺されたことを、イランの地下核施設爆撃と「同じだ」として正当化されることに対して、「それでいいのか」という思いを抱かない日本人はいないだろう。このことに対して、もし日本政府がトランプの論拠に何も反論しないのだとすれば、「日本は真の独立国家なのか」を日本政府に問いたい。どうやら林芳正官房長官は6月26日の記者会見で、このトランプ発言に関して聞かれ「一般的に歴史的な事象に関する評価は専門家により議論されるべきものだ」と論評を避けたようだ(※3)。広島・長崎に原爆を落とされたのは「一般的に歴史的な事象に関する評価は専門家により議論されるべきものだ」と切り捨てていい対象なのか?これによって日本は降伏したのだとアメリカは断言し、敗戦後はGHQ(事実上アメリカ)によって占領され、戦後80年間、ひたすらアメリカ従属の政府を維持してきたのではないのか?これは「日本国家」の問題だ!日本政府こそが真正面から向き合うべき問題であり、政府こそが回答すべき「国家の基本姿勢」の話だ。「逃げるな!」と言いたい。では、中国ではトランプの「原爆発言」をどううけとめているのだろうか。そう思って中国のネットを調べていた時だ。驚いた。なんと、トランプがNATO首脳会議に参加する前の6月24日に、イラン攻撃を軽快なロックンロールのメロディーに乗せて「爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!」とはしゃいでいるのを発見したのである。◆6月24日、トランプはロックンロールを流しながらイラン爆撃の動画を発信最初にそれを見つけたのは、中国共産党系メディア「環球時報」の報道においてだった。環球時報がトランプの「原爆発言」をどう論じているかで、中国のこの件に関する見解が概ねわかる。そこで発見したのは、なんと、<トランプはB-2爆撃機が爆弾を投下するビデオを、「イラン爆撃」のパロディー音楽とともに公開し、物議を招いている>(※4)という見出しの動画だった。公開時間は6月25日、14:03。製作者は王力氏。ともかく読者の方には、まずこの動画のURLをクリックしていただきたい。このメロディー(動画のBGM)のオリジナルバージョンは「バーバラ・アン」だ。このシングルは元々、アメリカの「リージェンシー・バンド」が1961年にリリースした。1965年にアメリカのロックバンド「ビーチ・ボーイズ」が歌い、アルバムに収録されている。環球時報の解説によれば、1980年の「イライラ戦争(イラン・イラク戦争)」の際に、アメリカのバンド「ヴィンス・ヴァンス・アンド・ザ・ナイツ」がこの曲をパロディー化した「イラン爆撃」が発表されたという。トランプが自分のSNSであるTruthで公開した「Bomb Iran(イラン爆撃)の動画」はこちら(※5)で見ることができる。使われている音楽は、1980年のアレンジバージョンだ。環球時報は以下のように解説している。・「タイムズ・オブ・イスラエル」は、トランプが24日、自身のソーシャルメディアにB-2爆撃機が飛行しながら爆弾を投下する60秒の編集動画を投稿したと報じた。この動画には「イランを爆撃せよ」というパロディーソングが添えられており、ソーシャルメディア上で物議を醸し、不満を招いた。・動画では、B-2爆撃機が空中を飛行し、時折数十発の爆弾を投下していた。BGMでは「イランを爆撃せよ」というフレーズが繰り返し流れていた。BGMの歌詞には、「サムおじさん(=アメリカ=トランプ:筆者注)はもうかなり怒っている。イランを駐車場に変えてやる時が来た。イランを爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!」というフレーズも含まれていた。・イスラエルとイランが停戦合意に達したばかりであることを考えると、この情報が発するシグナルは世界を混乱させている。・この動画はインターネット上で瞬く間に論争を巻き起こし、多くの人々が反発した。あるネットユーザーは「これは真面目な政府ではない。これまでもそうだった。彼らはそれを隠そうともしない」とコメントした。・あるネットユーザーは、「もしかしたら私がただのつまらない人間なのかもしれないけど、こういう投稿は支持できない… 国を爆撃するという投稿がそんなに面白いのか? 爆撃に反対しているわけではないけど、こういうことを冗談にしたり、軽視したりしていいのだろうか? 君ならそうかもしれないけど、私には無理」とコメントした。・あるネットユーザーは、「大統領にしては子供じみている」とコメントした。・あるネットユーザーは、「大統領がこんな投稿をするなんて面白いのか?」とコメントした。・あるネットユーザーは、「平和(の実現)を願うべきだ。戦争は民間人の苦しみを意味する」とコメントした。(環球時報からは以上)中国がアメリカの行動をおもしろく思っていないことは分かっているが、しかし日本では見られないような、「トランプの戦争ゲーム化」に対する批判が、ここまで強烈に表現されている記事も少ないと痛感した。これが日本のメディアでは見られないのはなぜなのか?「トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信 怒る中国のネット(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。NATO首脳会議 米大統領が会見(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.huffpost.com/entry/trump-hiroshima-nagasaki-iran_n_685bf52ee4b024434f988a73(※3)https://news.yahoo.co.jp/articles/8317af9565727bbb0ff34cfde0e7b0d1a608a301(※4)https://world.huanqiu.com/article/4NEf8Cx5L4p(※5)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114740882500667664(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/545dd454d77832833a664d3ab77949163b42c384
<CS>
2025/06/27 16:16
GRICI
習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:36JST 習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「習近平の奇策か パキスタンを使い「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆習近平が「トランプのノーベル和賞候補」の手を使うのは二回目2月22日の論考<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※2)で書いたように、習近平が「トランプがノーベル平和賞を欲しがっていることを利用して、トランプを落とそうとした」のは、これが初めてではない。2月12日のウォール・ストリート・ジャーナルはExclusive | China Tries to Play the Role of Peacemaker in Ukraine(中国はウクライナに和平をもたらす役割を果たそうとしている) -WSJ(※3)というタイトルで、タイトルからは推測しにくい内容の報道をした。そこには「習近平はトランプがノーベル平和賞を受賞したがっていることを知っているので、ウクライナ戦争の停戦問題をトランプが前面に出て解決してはどうか」という趣旨の提案を水面下で行なっていた」という趣旨のことが書いてある。事実、トランプ2.0の国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツは、今年2月21日、「すべてがうまくいくだろう。戦争は終わり、ドナルド・J・トランプの名前の隣にノーベル平和賞が置かれることになる」(※4)と言っている。また1月23日のダボス会議にオンライン参加したトランプが「私は習近平が大好きだ。ずっと好きだった」と公言している(※5)。従って、習近平は1月20日の就任式までに、すでに水面下での米中間ビッグディールを画策していたのだろうことが、うかがわれる。実は今般は、6月16日に、駐パキスタンの姜再冬・中国大使が、パキスタンのカマル商務大臣と会談し、二国間の経済・貿易協力の推進について意見交換を行った(※6)。パキスタンのアフザル首相調整官やポール商務省事務次官も出席している。それ以外にも細かな接触があるが、どうも、このあたりで、「習近平の奇策」が話し合われたのではないかと推測される。それが6月18日以降のパキスタン側の行動へとつながったと考えるのが妥当かもしれない。◆核拡散防止条約も核兵器禁止条約も非合理的だが、イスラエルの横暴は目に余るそもそも、「アメリカ、フランス、イギリス、中国、ロシア」という核保有5か国だけが核を保有してよく、他の国は核兵器を今後保有してはならないなどという「核拡散防止条約」もナンセンスであるなら、ましてや「核兵器禁止条約」もまた、あまりに核保有国に有利過ぎて、話にならないほど不合理な条約だ。このような不合理な条約に則って、イスラエルがイランに対して「お前は核兵器を製造してはならない」として、ガザに対するのと同じようなジェノサイドを断行しようとすること自体、あまりに非人道的で黙って見ていることが耐えられない。そこにトランプが、自国における選挙のためにユダヤ人ロビーを味方に付けようとしてイラン攻撃に加担するなど、「民主主義制度に基づく選挙」とは何なのかと義憤を感じ得ない。選挙に勝つために他国の無辜の民をゴミのように虐殺する行為と、民主主義制度の精神は一致するのかと、G7の決議にも納得がいかない。習近平としては、せっかくイランとサウジアラビアの仲を仲介して中東諸国間の「和解雪崩現象」の流れを作ったのに、それを阻害されるのは面白くないだろう。しかし、誰とも敵対せずに、「ノーベル平和賞候補者」という「手」でトランプの戦争への道を防げるのなら、悪くはない選択と思っているかもしれない。言論弾圧をする国として世界から警戒されている中国ではあるが、トランプ2.0の嵐によって、なにやら相対的に漁夫の利を得ているような感もなくはない。それが功を奏するのか否か、しばらく成り行きを見守りたい。この論考はYahoo!ニュースエキスパート(※7)より転載しました。習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6039(※3)https://www.wsj.com/world/china-tries-to-play-the-role-of-peacemaker-in-ukraine-6a9175fe(※4)https://www.nbcnews.com/politics/donald-trump/trumps-hostility-ukraine-creates-conservative-rift-rcna193155(※5)https://www.youtube.com/watch?v=-R7ax7ZlSdk(※6)https://www.fmprc.gov.cn/web/zwbd_673032/wshd_673034/202506/t20250619_11653138.shtml(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7f9a19179209d4cb1b57ced9efe7bef140c0ad08
<CS>
2025/06/23 10:36
GRICI
習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:33JST 習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。トランプ大統領がイスラエルを支援してイラン攻撃に参加するか否かに関して世界の関心が集まっている。習近平国家主席はプーチン大統領と電話会談をして「外交努力を」と通り一遍のことを言うのがせいぜいのところだろうと思う人が多いだろうが、どうやら、とんでもない「手」を打っているようだ。先のインド・パキスタン戦争で、「トランプが停戦をさせた」ような話が出ていたが、実はインドが使ったフランス製の戦闘機が、パキスタンが使った中国製の戦闘機に惨敗している。ところが習近平はこれを逆手に取って、「インド・パキスタン戦争を中止させたのはトランプだ」として、パキスタンに「トランプにノーベル平和賞を!」という売れ込みで、「ノーベル平和賞受賞候補者」に持ち込んで、トランプによるイラン攻撃を阻止させようと企てているようなのだ。◆パキスタン政府はトランプを「ノーベル平和賞推薦」と発表6月21日、午前5:30、パキスタン政府@GovtofPakistanは、「ドナルド・J・トランプ大統領を2026年のノーベル平和賞に推薦」という見出しのポストを投稿(※2)した。そこには概ね、以下のようなことが書いてある。・パキスタン政府は、最近のインド・パキスタン危機におけるドナルド・J・トランプ大統領の断固たる外交介入と極めて重要なリーダーシップを称え、2026年のノーベル平和賞に正式に推薦することを決定した。・国際社会は、インドによるパキスタンに対する侵略行為を目の当たりにした。これはパキスタンの主権と領土保全に対する重大な侵害であり、女性、子供、高齢者を含む罪のない人々の悲劇的な犠牲をもたらした。パキスタンは自衛の基本的権利を行使し、ブニャナム・マルスース作戦を開始した。これは、抑止力の再構築と領土保全の確保を慎重に行い、民間人の被害を意図的に回避した、慎重かつ断固とした、的確な軍事対応だ。・地域の混乱が激化する中、トランプ大統領は優れた戦略的先見性と卓越した政治手腕を発揮し、急速に悪化する情勢を緩和、最終的に停戦を実現した。この介入は、トランプ大統領が真の平和推進者としての役割を担い、対話による紛争解決に尽力してきたことの証しだ。・2025年のパキスタン・インド危機におけるトランプ大統領のリーダーシップは、実利的な外交と効果的な平和構築という彼の伝統が継承されていることを如実に示している。パキスタンは、ガザで展開されている非人道的な悲劇やイランをめぐる情勢悪化といった中東における継続的な危機において、トランプ大統領の真摯な努力が地域および世界の安定に引き続き貢献することを期待している。 (以上)最後のフレーズ「イランをめぐる情勢悪化といった中東における継続的な危機において、トランプ大統領の真摯な努力が地域および世界の安定に引き続き貢献することを期待している」は、なんとも見事な締めくくりではないか。これに対してトランプ自身も、概ね以下のようなポストを発表(※3)している。・インドとパキスタンの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、セルビアとコソボの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、エジプトとエチオピアの平和を維持したとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう。・また、中東でアブラハム合意を行ったとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう。・いや、ロシア/ウクライナ、イスラエル/イランを含め、私が何をしても、結果がどうであれ、ノーベル平和賞は受賞しないだろうが、国民は知っているし、私にとってそれがすべてだ! (以上)おやおや・・・。トランプにしては少々斜めからの発言だが、「ほかにもこんなに多くのノーベル平和賞に値することをやっているよ」というのを、強調しているようにも読める。つまり、まんざらではないということになろうか。流れとしては、6月18日にトランプがパキスタン陸軍司令官と面会し、イランの件も話しあった。(※4)6月19日にトランプは「2週間以内に決断する」という趣旨のことを発言した。(※5)6月18日以降は、それ以前よりも発言内容が穏やかになっている。という傾向にある。ちなみにインドは「インド・パキスタン紛争の停戦とトランプはいかなる関係もない」的なことを言っているが、インドが使用していたフランスの戦闘機が、パキスタンが使用していた中国の戦闘機に敗けたとも言っていない。◆パキスタン軍が使用した中国製軍用機「殲10ce」が、インド軍が使用したフランス製軍用機「ラファール」などを撃墜少し前のことになるが、今年5月7日、インドがOperation Sindoorを発動してミサイルを使ってパキスタン国内を襲撃(※6)した。さらに大量の戦闘機を使ってパキスタンを攻撃したが、パキスタンが反撃して、中国製の「殲10ce」などを使って、フランス製のラファール(3機)、旧ソ連時代のMiG-29(1機)、ロシアン製のSU-30MKI(1機)を撃墜したと、パキスタン政府側は主張した(有料)(※7)。パキスタン側は、「インドは70機くらい出動させ、パキスタンは28機を出動した。パキスタンはインドの戦闘機10機以上を撃墜できるが、事態を拡大さえたくないために5機のみを撃墜した」と発表した(※8)。インドは1機が2.18億ドルという高い価格でフランスの軍用機「ラファール」を調達しているが、パキスタンは1機4000万ドル程度の低価格で中国の軍用機「殲10ce」を購入していると言われている。これまで世界の評価では、ラファールは4.5世代の戦闘機で、殲10c(輸出用は殲10ce)はそれより遥かに性能が悪い戦闘機とされてきた。ところが、初めての戦闘で、殲10ceは全く傷を受けることなくラファールを3機も撃墜したことが、軍事分野で大きな話題になった。中国は実戦で軍用機を使ったことがないので、中国にとっても初めての実戦経験になったわけだ。もっとも、インドは撃墜されたことを認めず、あくまでもインドが勝利したことと主張し、Operation Sindoorの勝利を10日間祝う活動を今やったほどだ。どうやらフランスの軍事評論家は、ラファールの性能が悪いのではなく、あくまでもインド軍の操縦レベルが低かったのだと主張したようだが、あやふやなまま、戦争は終えた。この論考はYahoo!ニュースエキスパート(※9)より転載しました。「習近平の奇策か パキスタンを使い「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://x.com/GovtofPakistan/status/1936159807326900577(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114717932061341718(※4)https://www.ndtv.com/world-news/us-president-donald-trump-hosts-pakistan-army-chief-asim-munir-for-lunch-india-iran-israel-attacks-8704673(※5)https://www.bbc.com/japanese/articles/cglz4kz6nxxo(※6)https://www.bbc.com/japanese/articles/c20907gv4lyo(※7)https://www.reuters.com/world/pakistans-chinese-made-jet-brought-down-two-indian-fighter-aircraft-us-officials-2025-05-08/(※8)https://dunyanews.tv/en/Pakistan/882736-pakistan-could-have-shot-down-more-indian-jets-if-paf-given-free-hand(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7f9a19179209d4cb1b57ced9efe7bef140c0ad08
<CS>
2025/06/23 10:33
GRICI
ハーバード大留学生を速攻で獲得しようと動く中国 全世界の対米留学ビザに規制を拡大する米国【中国問題グローバル研究所】
*15:57JST ハーバード大留学生を速攻で獲得しようと動く中国 全世界の対米留学ビザに規制を拡大する米国【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月22日、米政権がハーバード大学にいる留学生や訪問学者を大学から追放し、同大学の留学生および訪問学者の受け入れ資格を取り消すと宣言すると、中国は素早く動いた。香港やマカオの大学にハーバード大学にいる留学生を破格的な好条件で受け入れると宣言させたのだ。すでに数十名のハーバード大留学生からの問い合わせが来ていると香港メディアは伝えている(国籍は不明)。中国のネットでは、「トランプが中国を再び建国させる」という意味の「川建国」(川はトランプ=川普の意味)が再登場し、トランプ政権の留学生追放を大歓迎している有り様だ。一方、5月27日、米メディアのPOLITICOは「マルコ・ルビオ国務長官が署名した電報によると、学生ビザ申請者のための新しい面接を一時停止するように全世界の米国大使館と領事部に命じた」とのこと。「人材奪取に奔走する中国」と「人材を締め出そうとする米国」。このままでは「川建国」が大活躍することになるではないか。◆人材奪取に速攻で動いた中国中国外交部の毛寧報道官は5月23日の定例記者会見(※2)で、「中国と米国の教育協力は互恵的だ。中国は、教育協力の政治化に常に反対してきた。米国側の関連する行動は、米国のイメージと信頼性を損なう。中国は、海外の中国人学生と学者の正当かつ合法的な権利と利益を断固として保護する」と述べた。同日、香港科技大学は<世界的な学問的変化に対応して、ハーバード大学の学生に門戸を開く>(※3)旨の告知をした。また5月24日早朝の「香港文匯網」(※4)は、<米国がハーバード大学留学生受入を禁止 香港の大学が火速(火のような速さ)で「人材収奪」:無条件入学+奨学金特設>(※5)という見出しで、香港の大学全体の対応を詳細に報道している。それによれば、香港科技大学以外に、香港城市大学、嶺南大学、香港中文大学、香港理工大学、香港大学など、ほぼ全ての大学がハーバード大学留学生受け入れに手を挙げ、それぞれ以下のような優遇策を打ち出している。・無条件で編入を受け入れ、学業を継続できる措置を取る。・単位互換などの手続きを含むあらゆる支援をする専門チームを設置。・宿舎や特別奨学金を支給する。・ハーバード大学の指導教官ごと雇用し共同で指導に当たる。・ハーバード大学同窓会窓口を活用する。・・・・などなど、至れり尽くせりの厚遇を揃えて人材誘致に全力を尽くしている。特に拙著『米中新産業WAR』の【第四章 世界シェアの90%をいく中国のドローン】で書いたように、ドローンの王者DJIの創設者・汪滔(おうとう)は香港科技大学の卒業生だ。1980年に浙江省杭州市で生まれ、小さい頃に「赤いヘリコプターの冒険物語」という漫画に惹かれてドローンを造るようになり、中国を世界一のドローン大国に導いている。科学技術を目指す若者で知らない人は少ないほどのイノベーター精神がそこにはある。香港メディアによれば、5月26日時点で数十名のハーバード大学留学生から問い合わせがあったとのことだ。国籍を明かしてないが、おそらく主として中国大陸あるいは香港からハーバード大学に行った留学生ではないかと推測される。中共中央が管轄する中央テレビ局CCTVもまた5月25日に<香港マカオの大学が人材収奪合戦:米国留学生の転校を受け入れ用意>(※6)という見出しで、この現状を報道している。◆中国のネットで活躍する「川建国(トランプが中国を再建国させる)」中国ではトランプをその発音に漢字を当てはめて「特朗普」と書いたり「川普」と書いたりする。庶民の間では「川普」の方が多い。「川」一文字でトランプを表すこともある。冒頭に書いたように「川建国」は「トランプが中国を再建国させる」という意味である。タイトル画像にあるのは、「川建国」のイラストの一つだ。中国のネットには再び「川建国」が現れ始め、たとえば5月27日には<トランプ政権はハーバード大学と戦争状態に! ハーバード大学は共産党と結託しているのか? トランプはハーバード大学の留学生資格を取り消すと脅した。表面上は党派や個人的な恨みの問題だが、実際にはトランプはアメリカ文化のソフトパワーの最強の拠点を直接破壊したのだ! 川建国に感謝!>(※7)という非常に長いタイトルのユーチューブなども現れている。あまりに長いし早口なので、このユーチューバーが言わんとしている概略を抜き出し、中国の現状説明も加えながら要点を列挙したい。・トランプはなぜハーバード大学を攻撃するのか。それはハーバードが民主党の拠点であり、知の殿堂であるからだ。反ユダヤ主義だろうと、反中国共産党だろうと、トランプにとっては、どうでもいいことだ。・トランプはエリートが大嫌いだ。トランプの支持者たちは小学卒かせいぜい中学卒の者が多い。農民であり、労働者であり、その岩盤支持層に歓迎されるには知識人を打倒することが肝心なのだ。知識人は民主党の岩盤支持層でもある。だから、知識人の象徴であるハーバード大学をトランプは狙う。・毛沢東も知識人が大嫌いだった。トランプの「打倒ハーバード」は「文化大革命のアメリカ版」だ。・トランプの行動(奇行)は、すべて中国に有利に働く。やはり「川建国」だ。「川建国万歳!」(以上)中国は毛沢東が農民を中心に革命を起こさせ建国した国なので、革命的闘士とトランプが肩を並べるイラストが流行ったものだ(参照:タイトル画像)。そのトランプの奇行がいつも中国に有利に働くとして、トランプは、毛沢東が中国を建国したように、中国を再建国してくれると中国のネット民は喜んでいる。その意味で中国人はトランプが大好きだ。高関税を中国にかけておきながら、中国が報復関税で抵抗すると、トランプはいきなり115%も対中関税を引き下げた。これは「中国の大勝利だ」と中国人は拍手大喝采している。トランプはこのようにいつも中国に有利なことばかりやってくれるので、「川建国万歳!」なのである。だから<中国と欧州が、ハーバードから追い出される留学生(エリート難民)を頂こうと「人材争奪合戦をしている」>(※8)という論評なども見受けられる。その冒頭には「川建国再出神操作!」(川建国が再び神の操作を始めた!)とある。そしてアメリカから科学者が脱走しようとしているとして、イギリスの科学誌ネイチャーの調査結果を取り上げている。どうやら早くも3月27日に<アメリカの75%もの科学者がアメリカから逃げ出そうと思っている>(※9)(有料)という調査結果をネイチャーが出したようだ。◆ルビオ国務長官が全世界の米大使館に新入生ビザ面接の一時停止を指示そのような中、5月27日のアメリカのメディアの一つであるPOLITICO(ポリティコ)は、<ルビオ国務長官が署名した新たな学生ビザの申請受付を一時停止するよう全世界の米大使館に指示を出した>(※10)という趣旨の報道をしている。これは9月の新学期を迎えるに当たり、「新たに新入生としてビザ申請をする人たちの面接を一時中止せよ」というもので、理由は「審査基準厳格化の拡大」にあるらしい。この電報は、将来のソーシャルメディア審査が何を選ぶのかを直接詳しく説明していないが、テロリストを締め出し、反ユダヤ主義と戦うことを目的とした大統領令をほのめかしているという。だとすれば、中国にとって、またもや「川建国」現象が増えたことになりはしないか。5月28日、中国外交部の毛寧報道官は定例記者会見(※11)で、トランプ政権が留学生のビザ取得のための新規面接予約を一時停止するよう指示したことについて、「正常な教育協力や学術交流が妨害受けるべきではない」と、もっともらしいことを言っているが、本心は違うだろう。本当は「トランプが中国に有利になることを又やってくれた」と喜んでいるのではないだろうか。「川建国」がこれ以上活躍しないことを祈らずにはいられない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※12)より転載しました。イラスト: 中国のネットで流行っている「川建国」(トランプが中国を再び建国させる)のイラスト。革命的青年と共に毛沢東のスローガンの一つであった「社会主義新農村を建設しよう」と書いてある。(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202505/t20250523_11631472.shtml(※3)https://hkust.edu.hk/zh-hant/news/hkust-opens-doors-harvard-students-amid-global-academic-shifts(※4)https://www.wenweipo.com/a/202505/24/AP68310a88e4b0dd619293bf02.html(※5)https://www.wenweipo.com/a/202505/24/AP68310a88e4b0dd619293bf02.html(※6)https://news.cctv.com/2025/05/25/ARTIb4dCLAN2V5xm6rULUqAl250525.shtml(※7)https://www.youtube.com/watch?v=_ITWOOX4yy4(※8)https://baijiahao.baidu.com/s?id=1832959389768198452&wfr=spider&for=pc(※9)https://www.nature.com/articles/d41586-025-00938-y(※10)https://www.politico.com/news/2025/05/27/trump-team-orders-stop-to-new-student-visa-interviews-as-it-weighs-expanding-social-media-vetting-00370501(※11)http://www.news.cn/world/20250528/2837287d05774b74adbd48874b18eccc/c.html(※12)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3db9ab49a7d087abe669d218f30bfde4a9ecad1e
<CS>
2025/05/29 15:57
GRICI
トランプ関税はEUを中国に近づけた アメリカなしの世界貿易新秩序形成か?【中国問題グローバル研究所】
*10:36JST トランプ関税はEUを中国に近づけた アメリカなしの世界貿易新秩序形成か?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。習近平国家主席にとってEUとの投資協定である「中欧投資協定」は長いこと悲願だった。しかしバイデン政権の介入や中国の安価なEVの「津波」によって挫折し、EUは2024年10月にEVに関する対中関税を決定。両者の関係は冷え込んでいた。ところが「トランプ関税」がEUにも圧し掛かってきたことによってEUの対中姿勢は一転。EVに対する対中関税を撤廃し、価格協定で折り合う方向に動き始めた。実は2021年にEUがウイグル問題で中国の官員を制裁し、中国がEU官員を報復制裁することで中欧投資協定が凍結されていたのだが、中国はその報復制裁を解除すると言い出したこともあり、習近平宿願の「中欧投資協定」が復活しつつある。トランプ関税は中国と東南アジアの緊密度を強化する役割をしただけでなく、EUに近づけたことになる。その結果、「アメリカなしでの世界貿易新秩序」が形成しつつあるのを見逃してはならない。◆トランプ相互関税直後、欧州委員会委員長が中国の李強首相に電話トランプ大統領が4月2日に発表した相互関税は同盟国を含んだ全ての対米貿易黒字国を相手にしたものなので、当然、EUもその対象になっていた。激怒したEUは一部に関して報復関税をかけると同時に、4月8日にフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が中国の李強首相に電話して会談を行った。中国側の発表は中国の外交部(※2)にあり、EU側の発表はEuropean Commission(※3)に載っている。中国外交部の報道は以下のようなものである。・今年は中国とEUの外交関係樹立50周年になり、二国間関係の発展は重要な機会に直面している。年初、習近平国家主席はアントニオ・コスタ欧州理事会議長と電話会談を行い、中国とEUの関係を深める方向性を示した。・中欧双方は、戦略、経済、貿易、グリーン、デジタルの分野で、新たなハイレベル対話の開催をできるだけ早く推進する必要がある。・李強は「米国が中国と欧州を含むすべての貿易相手国にさまざまな口実で無差別に関税を課すと発表したが、これは一国主義、保護主義、経済的いじめの典型的な行為である」と指摘した。さらに「中国がとった断固たる措置は、自国の主権、安全、発展の利益を守るためだけでなく、国際貿易ルールと国際的な公正と正義を守るためでもある。人類は同じ地球村に住んでいる。保護主義に出口はなく、開放性と協力が世界にとって正しい道だ」と述べた。・フォン・デア・ライエンは「EUは常に中国との関係を非常に重要視してきた。(トランプ関税がある)現在の状況では、中欧関係の継続性と安定性の維持が不可欠だ。EU側は未来に期待し、中欧外交関係樹立50周年を共同で祝うために、適切な時期に新たな中欧首脳会談を開催することを楽しみにしている」と述べた。さらに「EUは中国と協力して、さまざまな分野でのハイレベル対話を促進し、経済と貿易、グリーン経済、気候変動の分野で互恵的な協力を深める用意がある。米国が課した関税は、国際貿易に深刻な影響を及ぼし、欧州、中国、脆弱な国々にも深刻な影響を与えている。中欧は、WTOを中核とする公正で自由な多角的貿易体制を維持し、世界の経済貿易関係の健全で安定的な発展を維持することにコミットしている。これは、中欧双方と世界の共通の利益である」と強調した。(中国外交部報道は以上)一方、EU側の報道は以下のようになっている。・中欧両首脳は、二国間及びグローバルな課題について検討し、建設的な議論を行った。世界経済の安定性と予見可能性が極めて重要であることを強調した。・トランプ関税によって引き起こされた広範な混乱に対応して、フォン・デア・ライエン委員長は「世界最大の市場である欧州と中国が、自由で公正で、公平な競争条件に基づいた強力な改革された貿易システムを支援する責任」を強調した。・中欧間貿易のバランスを取り戻し、欧州の企業、製品、サービスの中国市場へのアクセスを改善するための構造的解決策の緊急性を示唆した。・フォン・デア・ライエン委員長は「ウクライナにおける公正で永続的な平和に対するEUの確固たる支持を再確認し、平和のためのいかなる条件もウクライナによって決定されなければならないこと」を強調した。彼女は中国に対し、和平プロセスに有意義な貢献をするための努力を強化するよう呼びかけた。・フォン・デア・ライエン委員長は、今年7月に開催される中欧首脳協議が外交関係樹立50周年を記念する適切な機会になると指摘した。(EU側報道は以上)中国側とEU側の報道で、一つ異なるのはウクライナ問題だ。どうやらEUでは、トランプが当初、ウクライナなしで停戦交渉に進もうとしていたのを、中国の介入によって阻止させたいという目論見もあったことがうかがわれる。しかし行間には、アメリカ無しの新たな貿易秩序を形成していこうという別の意図が流れているのが読み取れる。◆トランプ関税が中欧を軸に世界貿易新秩序形成を促進4月11日のベルリン発ロイター電は<EUと中国は中国製EVの最低価格設定を検討するとEUが言った>(※4)という見出しの報道をした。それによれば、「EUと中国は昨年10月にEUが中国製EVに関した45.3%の関税に関して撤廃し、その代わりに、中国製EVの最低価格を設定することを検討することに合意した」と、欧州委員会の報道官が述べたとのこと。ロイターは別途<中国とEU、アメリカの懲罰的関税に対抗して貿易を協議>(※5)という見出しでもこの件を扱っている。これに対して中国の商務部でも、<王文濤部長、欧州委員会のシェフチョビッチ欧州委員会貿易・経済安全保障担当委員とテレビ会談>(※6)という見出しで、中欧が関税ではなく価格設定で問題を解決しようという方向の交渉に入ったことが詳細に説明している。これはトランプが導入した「相互関税」に対抗するもので、中欧双方でアメリカなしの世界貿易新秩序を形成していこうというコンセンサスに基づいて行われたものだ。会談の中でシェフチョビッチは「米国が課した関税は国際貿易に深刻な影響を及ぼし、欧州、中国および脆弱な国々に深刻な影響を与えている。米国は世界の物品貿易の13%しか占めておらず、EUは中国を含む他のWTO加盟国と協力して、世界貿易の正常な運営を確保する用意がある。EUは、EUと中国の経済・貿易関係を非常に重視しており、双方向の市場アクセス、投資、産業協力の拡大を促進するために、中国との対話とコミュニケーションを強化する用意がある」と述べている。これら一連の動きに呼応して<中国、EU議員に対する制裁を解除し、貿易交渉を活性化へ>(※7)とアメリカメディアのPolitico(ポリティコ)は4月30日に書いている。そこには「トランプ大統領の貿易戦争は、中国とEUを、その違いにもかかわらず、より緊密に結びつけている」とある。まったくその通りだ。中国の報復制裁に関しては2021年7月15日の論考<習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結――欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議>(※8)で詳述した。◆中欧首脳会議開催場所に関するEU側の譲歩と配慮実は中欧(中国EU)首脳会議は、中国側代表として、北京で開催する時は国家主席(習近平)が出席し、ブリュッセルで開催する時は首相(李強)が出席する慣例になっている。昨年は北京で開催されたので習近平が出席し、今年(7月)はブリュッセルで開催するので、李強が出席することになっている。ところがEU側が、今年は中欧外交関係樹立50周年記念なので、ブリュッセルで開催する順番ではあるが、是非とも習近平に来てほしいと強く要望した。しかし習近平は滅多なことでは外訪しないので、李強に行かせることで通そうとしたらしい。するとEU側が、なんと、それならブリュッセルで開催せずに北京で開催しようと申し得てきたのだという。4月11日、ドイツ国営の国際放送ドイチェ・ヴェーレ(ドイツの波、 Deutsche Welle)は、<中欧首脳会議は7月に中国で開催>(※9)と伝えている。そこには、「トランプ関税が中欧の友好関係を強化する?」という小見出しのフレーズがある。どの角度から斬り込んでいっても、トランプ関税が中欧関係を緊密にさせたことは事実のようだ。習近平は5月2日の論考<東南アジアは日中どちらを向いているのか? 習近平vs.石破茂?>(※10)に書いたように、中国は完全に東南アジアを押さえにかかっているが、これで欧州も手中にし、さらにアフリカや中東あるいは南米などのグローバルサウスとの親密な関係も背景にあるので、EUが示唆するところの「アメリカ無しの世界貿易新秩序」を形成することに成功するのかもしれない。どれだけトランプに気に入ってもらおうかとする国々は淘汰される危険性もあり、注意が必要ではないだろうか。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※11)より転載しました。訪中した仏大統領と欧州委員長が習近平国家主席と会談(2023年)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202504/t20250408_11590251.shtml(※3)https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/read_25_1004(※4)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/eu-china-start-talks-lifting-eu-tariffs-chinese-electric-vehicles-handelsblatt-2025-04-10/(※5)https://www.reuters.com/markets/china-eu-discuss-trade-resume-ev-talks-2025-04-10/(※6)https://wangwentao.mofcom.gov.cn/zyhd/art/2025/art_8d73de08afad4dffa5e35f0b0a908db5.html(※7)https://www.politico.eu/article/china-sanctions-eu-lawmakers-human-rights-trade-talks/(※8)https://grici.or.jp/2389(※9)https://www.dw.com/zh/%E4%B8%AD%E6%AC%A7%E9%A2%86%E5%AF%BC%E4%BA%BA7%E6%9C%88%E5%9C%A8%E5%8D%8E%E4%B8%BE%E8%A1%8C%E5%B3%B0%E4%BC%9A/a-72215086(※10)https://grici.or.jp/6292(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b439a521fff50439132e977522f66e733cea9c85
<CS>
2025/05/07 10:36
GRICI
トランプ「報復関税を表明した中国に50%の追加関税」 習近平はどう出るのか?【中国問題グローバル研究所】
*15:59JST トランプ「報復関税を表明した中国に50%の追加関税」 習近平はどう出るのか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。4月6日の論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※2)で、トランプ大統領が4月2日に発表した対中相互関税34%に対して、中国が報復関税34%表明したと書いた。さらにホワイトハウスの大統領令には、別途、「報復関税をした国・地域には、さらに相互関税を増額させる」という趣旨の文言がある。中国はそれを承知で報復関税を宣言したのだろうが、トランプは4月7日、自身のSNS(※3)で「中国が8日までに34%の報復関税を撤回しなければ、9日から50%の追加関税を課す」と書いている。4月2日の「相互関税」発表までは、対米貿易をしている全ての国・地域が対象だったが、中国の報復関税により事態は一気に米中貿易戦に引き上げられた感を呈している。◆50%の追加関税は、すなわち対中関税合計104%を意味するのか?トランプが7日に自分のソーシャル・メディアTruth Social(※4)にある英文を読むと「もし中国が2025年4月8日までに34%の報復関税を撤回しなければ」、 the United States will impose ADDITIONAL Tariffs on China of 50%, effective April 9th.(米国は4月9日から中国に対して50%の追加関税を課すことになる)と書いている。この“ADDITIONAL”が、「新たに50%を追加」なのか、「34%を50%にする」なのか、この英文では判然としない。日本の、たとえば毎日新聞は<トランプ氏、中国に50%の追加関税を示唆 報復関税の撤回要求>(※5)と書いており、本文では「8日までに撤回しない場合、中国に対する50%の追加関税を9日に発動すると表明」と書いている。まさに、トランプの文言からは、こういう翻訳の仕方しかない。しかし、「追加関税」なので、「34%を50%にする」のではなく、「新たに50%を追加する」という意味でのADDITIONAL Tariffs(追加関税)であるならば、冒頭に書いた論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※6)の図表2に示した関税を合計すると20%+34%+50%=104%なので、中国には「104%」の関税を課すということになる。前代未聞だ。◆中国の反応これに対して中国側は直ちに抗議した。4月8日、中国共産党の機関紙「人民日報」は<圧力と脅威は、中国に対処するための正しい方法ではない>(※7)という見出しの報道をした。そこでは主として以下のような主張が書いてある。・アメリカの一方的なやり方に対して、中国は断固として自国の発展と利益を守り、国際的な公正と正義に準じて必要な措置をとってきたし、これからも続けるだろう。・同時に、中国は高水準の開放を揺るぎなく推進し、開発の機会を他国と共有し、相互利益とウィンウィンの結果を達成する。・アメリカの「相互関税」は、本質的には「アメリカの覇権」を追求する権力政治の現れだ。中国は決して、それを恐れない。歴史と現実は、圧力と脅威が中国に対処する正しい方法ではないことを証明している。・自国を発展させることは世界のすべての国の普遍的な権利であり、一部の国を保護するためではない。アメリカは関税を通して、現在の国際経済貿易秩序を転覆させようとしており、国際社会から強い反発を招いている。・アメリカの一方的ないじめ行為に対する中国の断固たる対抗は、真の多国間主義を擁護し、多角的貿易体制を維持するために必要だ。・中国の対外貿易は、これまでもアメリカによる圧力のもと、強い回復力を示している。・中国は完全な産業システムを備えた超大国であり、製造国から製造大国に移行しており、国連統計グループのほぼすべての国と地域の輸出入記録があり、150を超える国と地域の主要な貿易相手国だ。・それに比べてアメリカは貿易赤字を削減し、製造業の復活を促進するという目標を達成するどころか、自国の企業や消費者に損失をもたらした。現在、アメリカは再び大きな関税を振り回している。・中国の発展に対して短期的には一定の負の影響をもたらすだろうが、中国はショックに対処する自信を持っている。中国は(アメリカ以外の)すべての貿易相手国とウィンウィンの協力を揺るぎなく強化しており、これによりすべての貿易相手国の発展を強化するだけでなく、自国の発展の回復力を強化し、課題に対応する能力が十分にある。(人民日報からの抜粋は以上)中国はこのまま、断固戦う方向に動くものと考えられる。この中国の自信は4月6日の論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※8)の図表3に現れているが、もう一つは『米中新産業WAR』に書いた製造業、特に新産業における中国のアメリカに対する圧倒的優位性から来ているものと考えられる。事実、その本の中でも書いたが、中国は「アメリカに制裁されたがゆえに成長した分野」が非常に多い。4月8日、新華網も中国商務部の報道官の発言を報道している(※9)。趣旨は「人民日報」とほぼ同じだが「さらに一歩進んで50%の関税を課す」と表現しているので、結局、中国に対する関税は合計「104%」とみなすべきなのだろう。◆習近平は「台湾統一」以外の外的要素は軽視か習近平にしてみれば、トランプがNED(全米民主主義基金)の活動に反対していてくれるのなら、他はすべて二の次三の次だ。関税に関しては恐れていないだろう。トランプはTruth Socialで「中国が34%の報復関税を撤回しなければ、今後は中国とのいかなる交渉にも応じない」とも書いているが、習近平が「どうか緩和してほしい」と交渉する姿勢には出ない可能性の方が高い。なぜなら、習近平にとって「台湾統一」こそは核心中の最重要核心的使命だからだ。それ以外の問題は、たとえ関税104%であっても、重視しない可能性がある。NEDは長年にわたって台湾独立を支援してきた。そのNEDの財政的支柱であるUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)をトランプは解体しようとしている。習近平にとっては、それだけで十分のはずだ。それさえ保証されていれば、習近平はむしろ報復関税によってアメリカに対抗し、4月6日の論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※10)の図表3の色を、より赤く染めていく方向に向かうにちがいない。これは、アメリカ無しでも世界貿易が成り立っていくという、「新たな貿易秩序」を形成する強烈なきっかけになると、習近平は逆に野心を燃やしているかもしれない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※11)より転載しました。トランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6187(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114297331052690348(※4)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114297331052690348(※5)https://news.yahoo.co.jp/articles/8788e1251607a5d1d17e34fdca91a400b1f5073a(※6)https://grici.or.jp/6187(※7)http://world.people.com.cn/n1/2025/0408/c1002-40455064.html(※8)https://grici.or.jp/6187(※9)http://www.news.cn/fortune/20250408/7cfd5234dee34dcba7d4e442ef130564/c.html(※10)https://grici.or.jp/6187(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e3ec6ddd9de1870259cb1a93b0e1d8d3d0519094
<CS>
2025/04/08 15:59
GRICI
習近平・プーチン・トランプの相互関係(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:44JST 習近平・プーチン・トランプの相互関係(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。●ハーバード大学教授:トランプは対中強硬派か?一方、ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院ダグラス・ディロン行政学のグラハム・アリソン教授は、2月5日にワシントン・ポストに<トランプは対中強硬派か? トランプはニクソンのように中国とどのように協力関係を築くことができるのか>(※2)という見出しの論考を書いている。その要旨だけを拾い上げると、以下のようになる。●共和党の80%が嫌中の中、ドナルド・トランプは以下のように言っている。「私は中国を尊敬している」「私は習近平国家主席を非常に尊敬している」「習近平国家主席は素晴らしい。私が習近平国家主席を素晴らしいと言うとマスコミは嫌がるが、まあ、彼は素晴らしい人だ」「私は中国が素晴らしいことを成し遂げてほしい。そう願っている」「私は中国を愛している」●大統領選の勝利直後、トランプは習近平を就任式の特別ゲストとして招待しただけでなく、国際的なゲストの中で習近平が第一の地位を占めると保証した。●12月7日、ノートルダム大聖堂の再開に際し、ウクライナのゼレンスキー大統領とフランスのマクロン大統領と三者会談した後、トランプ大統領は会話を要約した投稿を(Truth Social)にしているが、そこには奇妙な一文が含まれていた。ウクライナ和平の見通しについて、トランプ大統領は「China can help(中国が助けてくれる)」と書いたのだ。これは興味深い。国連でも、NATOでも、ローマ法王でもなく、中国だ。トランプ大統領と習近平主席、そして習近平主席とプーチン大統領との最近の電話会談に関する公式報告書の行間を読むと、トランプ大統領はウクライナ戦争を終わらせるための停戦交渉または停戦の実施に習近平主席をパートナーとして関与させようとしているように私には思える。(以上)その通りである。さすがに、鋭い勘だ。トランプの投稿はTruth Social(※3)にあるが、そこにはI know Vladimir well. This is his time to act. China can help. The World is waiting! (私はウラジミールを良く知っている。今こそ彼が動くべき時だ。中国が助けてくれる。世界は待っている!)と書いてある。このウラジミールは言うまでもなくウラジミール・プーチンのことだ。二人はファーストネームで呼び合う。世界の誰も気にしていないChina can helpの3つの単語に、よくぞ注目したものだと、ハーバード大学のグラハム・アリソン教授に敬意を払わずにはいられない。もし彼が拙稿<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※4)を読んでくれたら、きっと、すべてのジグゾーパズルが綺麗に填め込まれるのを発見することができるのではないかと期待する。結論を言えば、トランプがウクライナ問題解決を急ぐのは、決して対中強硬策に集中したいからではない。トランプはむしろ、ウクライナ問題を習近平の水面下での協力を得ながら、プーチンに接近し解決しようとしていると言っていいのではないだろうか。ノーベル平和賞を貰いたがっているトランプの心理を、習近平とプーチンが思う存分「活用」していると表現してもいいのかもしれない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。アメリカ、中国、ロシアの国旗(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.washingtonpost.com/opinions/2025/02/05/trump-china-ukraine-xi-hawks-doves/(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/113615912452824634(※4)https://grici.or.jp/6039(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/737efab8fb220c22273772e21c782616057928bb
<CS>
2025/02/27 10:44
GRICI
習近平・プーチン・トランプの相互関係(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:38JST 習近平・プーチン・トランプの相互関係(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。2月24日、プーチン大統領が習近平国家主席に電話をし、中露の緊密さは永遠に変わらないことを誓い合った。トランプ大統領がどんなに対露接近をしても、トランプ政権が終われば、また民主党のNED(全米民主主義基金)を駆使した「民主を掲げながら親米的でない国家や政府を倒す方針」に戻ることが考えられるからだ。したがって中露の緊密度が変わることはない。一方のトランプは「習近平が大好きだ」と公言している。大統領就任式にも習近平を招待したほどだ。実現はしなかったが大統領選挙中に主張した「対中一律60%関税」は無期延期に近い措置を連邦政府に指示した。加えてトランプは「ウクライナ問題の解決には中国の協力が必要だ」とさえ言っている。このような中、「トランプがプーチンに急接近しているのは、ウクライナ問題を解決した後、対中攻撃に集中するためだ」という言説がまかり通っているが、それは正しいのだろうか?ハーバード大学教授の見解も引用しながら考察する。◆ウクライナ侵攻3周年の日にプーチンが習近平に電話プーチンによるウクライナ侵攻3周年に当たる2月24日午後、プーチンが習近平に電話をして会談を行った。中国外交部の報道(※2)によれば、主として以下のようなことを話し合ったとのこと。●習近平:中露両国は、中国人民抗日戦争勝利80周年と世界反ファシズム戦争勝利80周年を記念する活動の実施を含め、各分野での協力を着実に進めている。歴史と現実は、中露は決して引き離すことのできない良き隣国であり、苦楽を共にし、支え合い、共通の発展を目指す真の友人であることを示している。●習近平:中露関係は独自の戦略的価値を有しており、いかなる第三者に向けられたものではなく、いかなる第三者からも影響を受けるものではない。●習近平:国際情勢がどのように変化しても、中露関係は冷静に前進し、互いの発展と活性化に貢献し、国際関係に安定とプラスのエネルギーを注入するだろう。●プーチン:「ロシアは中国との関係を非常に重視している」、「中国との関係発展は、ロシアが長期的視点から行った戦略的選択であり、決して一時的な措置ではなく、一時的な出来事によって左右されることも、外部要因によって妨げられることもない。現在の状況下で、ロシアと中国が緊密な意思疎通を維持することは、新時代の両国の包括的戦略的協調パートナーシップの精神に合致しており、ロシアと中国が国際情勢において安定的な役割を果たしていることを示す前向きなシグナルを送ることにもなる。●プーチン:米露接触に関する最新状況とウクライナ危機に関するロシアの原則的な立場について説明し、「ロシアはウクライナ紛争の根本原因を排除し、持続可能で長期的な和平計画に到達することに尽力している」と述べた。●習近平:昨年9月、中国、ブラジル、南半球のいくつかの国は、ウクライナ危機の政治的解決を促進するための雰囲気を醸成し、条件を蓄積するために、共同でウクライナ危機に関する「平和の友人」グループを設立した。中国は、危機解決に向けてロシアとその他の関係国が行った積極的な努力を歓迎する。●中露双方:今後もさまざまな手段を通じて意思疎通と調整を維持していくことで合意した。(以上)これらから読み取る限り、中露双方とも、「(米露接近など)いかなる国際情勢の変化があろうとも、中露関係は永遠に不滅である」ことを強調しているように見える。現実問題として中国は石油や天然ガスなどを大量にロシアから輸入し、ロシアは広範囲にわたる製品を中国から輸入している。この日常生活における相互依存は、ちょっとやそっとの外圧によって崩れるものではないだろう。中露首脳電話会談に関してロシア側の発表(※3)もあるが、そこには「習近平の5月9日の訪露」や「プーチンの9月3日の訪中」そして「上海協力機構サミット(今年は中国が主催国)のスケジュールを再確認」などの具体的な日程の記述があり、プーチンが習近平に、最近の米露接触に関する報告をしたとも書いてある。そして習近平が「米露間で対話が開始されたことを支持し、ウクライナ紛争の平和的解決に向けた道筋を見出すために中国には協力する用意がある」ことを表明したとある。最後に「中露両首脳は、中露の政治的つながりは世界情勢を安定させる上で不可欠な要素であると強調した。この関係は戦略的な性質を持ち、政治的偏見に左右されず、誰かを標的にするものでもない」と強調されている。ロシア側からの視点を見ても、米露接触による中露関係はさらなる高みへと進展していくことを強調している。「米露接近」という言葉を使わず、「米露接触」という言葉に徹しているのも見どころか。トランプ政権のときのみ、トランプがプーチンに接近しているのであって、その期間は非常に短く、すぐにロシアを最大の敵とみなしてきた民主党政権に変わるのは分かっているので、プーチンが安全弁として習近平を手放すはずはないだろう。◆トランプは対中攻撃を用意しているのだろうか?トランプ側からしても、トランプの「習近平愛」と「プーチン愛」は尋常ではない。何度も書いて申し訳ないが、トランプは就任直後の1月23日に開催されたダボス会議にオンライン参加し(※4)、●But I like President Xi very much.(しかし私は習主席が大好きだ)●I’ve always liked him.(私はずーっと彼が好きだった)●We always had a very good relationship.(私たちの関係はいつも素晴らしかった)と言っている。それはホワイトハウスのウェブサイトに書いてあるので、間違いがないだろう。彼の肉声を確認したい方は、こちらのリンク先(※5)を、ぜひともクリックしてご覧いただきたい。まぎれもない事実だ。なぜトランプがこのようなことを、就任3日後の1月23日に言ったのかに関しては、2月22日のコラム<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※6)が理由の一つとして考えられる。ウォールストリート・ジャーナルの報道から推測すると、トランプの大統領当選がわかった11月5日以降辺りから習近平は「深い深い水面下で」、「ウクライナを外したプーチンとトランプだけの和平交渉を進めてはいかがですか?」という「甘い言葉」をトランプ側に投げかけていたことになる。トランプとしては、もともとからバイデンによるNEDを使った他国干渉を非難し、「民主」を掲げて非親米政府を転覆させては紛争を巻き起こし戦争ビジネスで国家運営をしていく米政府のやり方に不満を抱いていた。だからNEDの資金支援をしているUSAIDを解体しようと動いているのである。2月12日のコラム<習近平驚喜か? トランプ&マスクによるUSAID解体は中国の大敵NED瓦解に等しい>(※7)に書いたように、USAID解体はNEDの活動を抑え込むので、習近平としてはありがたくてならない。現にトランプが対中強硬でない証拠に、フェンタニルに関する「中国10%、カナダ・メキシコ25%」関税に関しては断行しているが、選挙中に叫んでいた「対中輸入品一律60%」に関しては、トランプ1.0の時の「第一段階合意」(2020年)の実績検証をするよう連邦政府機関に指示しただけだ。実績検証など「まだ検証中です」と言えば、いくらでも延期できる。60%は無期延期したに等しい。したがって、<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※8)に描いた相関図(図表2)には、それなりの信ぴょう性があると考えていいのではないだろうか。その他さまざまなトランプの「習近平愛」現象は、拙著『米中新産業WAR』の【終章 習近平とトランプとイーロン・マスクと】で詳述した。トランプの「プーチン愛」もまた尋常ではない。トランプは初めての大統領選を戦おうとしていた時に、2016年5月に、キッシンジャー(元国務長官)に師事して外交戦略を学んだ。キッシンジャーは2016年2月3日に、プーチンの招待でモスクワを訪問し、5月18日にトランプを自宅に招いたのである。このときトランプにとっては「キッシンジャーがベトナム戦争終結に貢献したとして、1973年に平和賞を授与された」ことが何より印象的だったのだと、トランプ1.0の時の元側近から聞いている。筆者はその元側近と、日々メールを交換したり国際電話をかけたりなどして、非常に仲良くしていた。2016年11月に大統領に当選したトランプは、プーチンと電話会談をし、盛んに「プーチンはいい奴だ」と言うようになった。中国では「トランプとプーチンが口づけしているイラスト」がネットに出回ったほどだ。しかしトランプのその「熱い思い」はロシアゲート疑惑によって裂かれてしまった。トランプ2.0では、トランプは「憎きバイデンが起こしたウクライナ戦争」と位置づけ、プーチンとトランプを再度近づけさせたという流れだ。「習近平・プーチン・トランプの相互関係 トランプはウクライナ問題解決後、対中攻撃を考えているのか?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。アメリカ、中国、ロシアの国旗(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202502/t20250224_11561364.shtml(※3)http://en.kremlin.ru/events/president/news/76325(※4)https://www.whitehouse.gov/remarks/2025/01/remarks-by-president-trump-at-the-world-economic-forum/?utm_source=substack&utm_medium=email(※5)https://www.youtube.com/watch?v=-R7ax7ZlSdk(※6)https://grici.or.jp/6039(※7)https://grici.or.jp/6005(※8)https://grici.or.jp/6039(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/737efab8fb220c22273772e21c782616057928bb
<CS>
2025/02/27 10:38
GRICI
米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(2)【【中国問題グローバル研究所】
*11:00JST 米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(2)【【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆憤慨する中国中国のネットには、米・国防総省が予算獲得のために「中国の脅威」を手段として使うことに対する憤慨が数多く見られる。特に、上記の「1」や「4」にあるように、アメリカは、習近平が2027年までに台湾を武力攻撃するというデマを拡散させて国防予算を獲得しようとしたり、日本を煽って日本の国防費を増額させようと画策したりしてきた。このことは2023年2月15日のコラム<「習近平は2027年までに台湾を武力攻撃する」というアメリカの主張の根拠は?>(※2)にも書いた通りだ。すなわち、中国では2020年10月26日から29日まで北京で第19回党大会の五中全会(第五回中央委員会全体会議)が開催され、10月29日に<第19回党大会五中全会公報>(※3)が中国共産党網で発布された。公報の全文は約6800文字あるが、その中の「確保二〇二七年実現建軍百年奮闘目標」という、わずか「17文字」が、「建軍百年に向けた奮闘目標を確保しよう」と書いてあるだけだ。国のトップが、「建軍百周年記念に向かって頑張ろう!」と兵士に向かって激励するのは、どの国でも自然のことだろうが、アメリカは「しめた!」とばかりに、この「17文字」に飛びついた。すると、日本政府も日本の中国論者たちもまた、まるで「鬼の首でも取った」かのように、アメリカのこの「ご高説」に飛びつき、台湾武力攻撃説を喧伝しまくったのである。バカバカしいだけでなく、日本人の命を戦火の中に巻き込む危険な「フェイク」なので、筆者はいたる所で、その虚偽性と扇動性に関して書いてきたが、日本人は「好戦的な論説」の方を好むという、愚かな選択をしている。中国の嫌日感情の主たる源泉は、ここにあると言っても過言ではないだろう。中国のネットには、あまりに多くの「報告書」に対する批判と抗議と冷笑があるので、どれか一つを取り上げて解説するのは困難だが、それでも一応、まずは中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」の論説を見てみよう。2月20日の環球時報は<米国は「中国軍事力報告書」を発表して中国人民解放軍を中傷 中国は「事実を無視し、偏見に満ち、“中国脅威論”を広めていると反駁>(※4)している。目新しい内容としては、環球時報が軍事専門家の意見として「今年の報告書には、認知戦闘能力や、西太平洋で軍事紛争が発生した場合に中国がエネルギー供給能力を確保する上で直面する課題など、いくつかの新しい内容が追加されている。これは、将来、西太平洋で軍事紛争が発生した場合、米国が軍事介入し、中国のエネルギー供給ラインに悪の手を伸ばし、中国のエネルギー供給を遮断することを示している。これは中国が非常に警戒すべきことだ」と報道していることだ。中国はむしろ「報告書」を分析して、アメリカが何を狙っているかという分析を深めていることが興味深い。12月19日には、比較的に知識人が集まる観察者網が<米・国防総省は中国の核拡大を誇大宣伝しており、2030年には1,000発の核爆弾を保有するとしている>(※5)という見出しで「報告書」を分析している。この分析で「報告書」に関して注目している興味深い話題を挙げると、以下のようなものがある。●「報告書」によると、軍艦、海上兵器、電子システムの生産において、中国の防衛産業は「ほぼすべての造船ニーズを満たすことができる」という。報告書は、中国海軍が世界最大の海軍であり、140隻以上の主要な水上艦を含む370隻以上の艦艇と潜水艦を保有し、米国海軍の290隻を上回っていると評価しており、中国はさまざまな建造段階にある新しい駆逐艦や強襲揚陸艦も多数保有していると評価している。●アメリカのメディアは、アメリカの国防予算が依然として世界最高であり、アメリカは実戦に投入できる核弾頭を約1550発も保有していると言及している。●昨年、米国が発表した年次報告書(『中国軍事力報告書』)について、中国外交部の毛寧報道官は、「米国こそが世界で最大かつ最先端の核兵器を保有している国であり、核兵器の先制使用を主張し、核戦力の増強に多額の投資を続け、同盟国に対する“拡大抑止”を強化している」と指摘した。◆ビリビリ動画:米・国防部は予算の20%しか武器装備費に使ってない一方、中国の人気動画であるビリビリ動画が12月9日に<米軍(の予算)9000億ドルは、いったい何に使っているんだい?なんで(9000億ドルもあるのに)足りないんだ? :米軍2025年装備購入分析>(※6)というタイトルの分析を賑々しく公開している。その分析は、今年3月11日に発表された米国の<2025年の国防総省予算要求>(※7)に基づいて行われており、要点は以下のようなものである。●米軍の2025年の軍事予算は9000億ドルと巨額であるものの、実際に装備品調達に使われる部分は比較的少なく、約1675億ドルで、全体のわずか20%にも満たない。●中国の軍事予算は約3000億ドルと言われているけれど(ストックホルム国際平和研究所が推測した中国の2023年の軍事費)、その30%~40%は装備品調達に使われているようなので、米軍の装備品調達費は中国やロシアよりも低いか、トントンくらいだ。●予算要求では、戦闘機や装甲車、軽火器など、米軍のさまざまな装備品の具体的な購入額が詳しく紹介されているが、国防産業部門の単価の高さには驚く。これは今後数年間で米軍の軍事力が徐々に縮小していくだろうことを示唆している。(動画の概要は以上)となると、まさにイーロン・マスクが指摘した通り、米国の国防総省の予算は「無駄が多く、非効率的だ」ということになる。国防総省はそれを知っているので、イーロン・マスクがどのように言うかを見届けてから発表しようとして、今年は「報告書」の発表を遅らせたのではないだろうか。ご参考までに書くと、この年次報告(『中国軍事力報告書』)はここのところ、「2020年9月1日/2021年11月3日/2022年11月29日/2023年10月19日/2024年12月18日」という日時で発表されている。例年に比べると、今年はいやに遅い。きっとイーロン・マスクが「政府効率化省」で何をするかを見届けたかったために遅れたのにちがいない。なお、「報告書」が指摘する「汚職摘発で中国の軍事力が向上している可能性」は薄く、中国の腐敗は「底なしか」と筆者は思っている。それに関しては、機会があれば別途考察を試みたい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。写真: 米・国防総省が発表した年次報告2024『中国軍事力報告書』のカバー(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4015(※3)https://www.12371.cn/2020/10/29/ARTI1603964233795881.shtml(※4)https://mil.huanqiu.com/article/4Kj5IuAVPuh(※5)https://www.guancha.cn/internation/2024_12_19_759324.shtml(※6)https://www.bilibili.com/video/BV15CqNYzErK/(※7)https://comptroller.defense.gov/Budget-Materials/Budget2025/(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/937e0f78070679355f75b0cfea4625e69c145fc8
<CS>
2024/12/25 11:00
GRICI
米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:58JST 米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。米・国防総省が12月18日に『中国軍事力報告書』を発表し、「(中国の)汚職摘発が進んだためにロケット軍の作戦能力が向上する可能性がある」と指摘した。したがって「台湾武力攻撃で失敗したら、中国は核兵器の先制使用をするだろう」とも予測している。トランプ第二次政権(トランプ2.0)で「政府効率化省」を担当することになっているイーロン・マスク氏が「国防費の無駄と非効率化」を盛んに表明しているので、そのことに対する警戒感からか、米・国防総省は国防費獲得のために「中国の脅威」を誇張しているものと思われる。しかし、そのようなことに利用された中国はたまったものではないにちがいない。激しい抗議と批判と、中には冷笑も中国のネットに溢れている。◆米・国防総省が発表した『中国軍事力報告書』の内容12月18日、アメリカの国防総省は、毎年発表している『中国軍事力報告書』の2024年版を発表した。正確にはMilitary and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2024(※2)(中華人民共和国に関わる軍事・安全保障の動向 2024)というタイトルだ。ここでは中国で用いている通称『中国軍事力報告書』(以下、「報告書」)で話を進める。180ページにも及ぶ長編の「報告書」なので、ザックリとしたポイントだけを並べると、以下のようになる。1.2023年、中国人民解放軍は汚職関連の調査と上級幹部の解任の新たな波を経験し、2027年の近代化目標に向けた進捗を妨げた可能性がある。2.一方、汚職事件は中国のミサイル産業が急成長していた時期に起きた弾道ミサイル用地下サイロ建設に関する詐欺事件と関係があるようなので、その摘発は中国指導者に対する信頼を高め、核任務が特に重要であることを軍に認識させた。その結果、サイロを拠点とする部隊の全体的な作戦即応性が向上したと考えられる(筆者注:ここで言う「サイロ」とはミサイルサイロのことで、大陸間弾道ミサイルなどの大型ミサイルを格納する建築物のことである。今ではそれが地下に建設されていることが多い)。3.その結果、中国が保有する運用可能な核弾頭は去年より100発ほど増え、今年半ばで600発以上所有していると推定される。4年間で3倍になっている。2030年までには1000発を超えるだろう。新型大陸間弾道ミサイルが開発され運用可能になれば、中国は米国本土、ハワイ、アラスカの標的に対して通常攻撃を行うことができるようになる。4.中国が台湾に対する武力攻撃に失敗した場合は、中国は核兵器の先制使用をする可能性がある。(主要概略は以上)思うに、米・国防総省が毎年発表している「中国軍事力」に関する年次報告は、米議会へのアピールで、「これだけ中国軍の脅威が差し迫っているのだから、もっと軍事予算を増やせ」と、米議会予算委員会に対して主張することが主要な目的だと考えていいだろう。◆イーロン・マスクの米・国防費に対する批判テスラCEOのイーロン・マスク氏はトランプ2.0で「政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)」を率いることになると、トランプ次期大統領は今年11月12日に発表している。DOGE(ドージ)という名称はイーロン・マスクが支持する仮想通貨ドージ・コイン(Doge Coin)の「Doge」から取ったものだと言われている。イーロン・マスクは、年間5,000億ドルの無駄な政府予算の削減を計画していると何度も表明し、11月17日には<国防総省は費用対効果が非常に悪い>(※3)とXに投稿し、DOGEはそれを改善するという一連の発言をしている。たとえば、トランプ1.0で国家安全保障問題担当大統領補佐官(2018年4月~2019年9月)を務めたジョン・ボルトンがイーロン・マスクに対して「DOGEで節約した費用を軍事費に充てるべきだ」と言ったのに対して、イーロン・マスクは11月23日に<DOGEは国防費の効率性を改善させる>(※4)と応答している。11月24日にはイーロン・マスクは中国の壮大なドローン動画を引用(※5)しながら、「ところで、一部のバカどもは、未だにF-35のような有人戦闘機を製造している」と国防総省を揶揄した。11月25日には、民主党のロー・カンナ下院議員も、<民主党はイーロン・マスクの「政府効率省」(DOGE)と協力して国防予算を削減することができる>(※6)と賛同の意を表している。同じく民主党のバーニー・サンダース上院議員は、12月2日に<イーロン・マスクは正しい>(※7)とした上で「8,860億ドルの予算を抱える国防総省は、7回連続で監査に失敗した。何十億ドルもの金額を把握できていない。昨年、軍産複合体と無駄と詐欺に満ちた国防予算に反対票を投じた上院議員はわずか13人だった。これは変えなければならない」とXに投稿している。これに対してイーロン・マスクはアメリカ国旗のマークを2つ貼り付けて返信した(※8)。このように、国防総省にとっては、そうでなくとも増加しなかった国防予算を、トランプ2.0になったら、イーロン・マスクが徹底して削減することへの危機感がある。だから、「中国軍はこんなに強くなった」と米議会に対して訴えるために「報告書」を発表しているわけだが、中国としては、そんなことに利用されるのは我慢ならないといったところだろう。「米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。写真: 米・国防総省が発表した年次報告2024『中国軍事力報告書』のカバー(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://media.defense.gov/2024/Dec/18/2003615520/-1/-1/0/MILITARY-AND-SECURITY-DEVELOPMENTS-INVOLVING-THE-PEOPLES-REPUBLIC-OF-CHINA-2024.PDF(※3)https://x.com/elonmusk/status/1857924169393975482(※4)https://x.com/elonmusk/status/1859996677316510131(※5)https://x.com/elonmusk/status/1860574377013838033(※6)https://thehill.com/homenews/house/5008598-elon-musk-department-efficiency-defense-budget/(※7)https://x.com/SenSanders/status/1863268770371772863(※8)https://x.com/elonmusk/status/1863297860651069586(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/937e0f78070679355f75b0cfea4625e69c145fc8
<CS>
2024/12/25 10:58
GRICI
中国半導体最前線PartIV 半導体微細化「ムーアの法則」破綻の先を狙う中国【中国問題グローバル研究所】
*16:23JST 中国半導体最前線PartIV 半導体微細化「ムーアの法則」破綻の先を狙う中国【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。半導体の微細化に関して「半導体の性能が18ヵ月で2倍になる」という経験則「ムーアの法則」は実際上かなり前から破綻しているが、人々は「3nm、2nm…」と競い合っている。ならば、「3nm、2nm…」の実態は何かと言えば、それは商品番号にすぎず、実際TSMCでも、たとえば「TSMC 3nm」チップとは言わずに、TSMC「3N」(※2)と、「こっそりと商品番号に置き換えている」ことに気が付かなければならない。その意味では製造者側は、実は良心的に「ムーアの法則」の破綻を認識していると言っていいだろう。多くの研究者は、物理学的には「3nm」辺りから事実上それ以上の微細化はできないとする「ムーアの法則」限界理論を10年以上前から展開はしている。しかしビジネス界はわかっていながらも、互いに「騙し騙され」、「3nm、2nm…」を唱えてきたのである。投資家に気付かれるのを避けるためだろう。いま現在は、既に「ムーアの論理」は破綻していると見る専門家は多く、中国もその中の一例だ。破綻すればどの関連企業も実際にはそれ以上先へは進めないので、「どん詰まり」のところで足踏みをすることになるだろう。アメリカが全方位的に中国の半導体技術を潰そうとしても、西側が限界領域で足踏みしている間に中国もその限界領域にまで達し、その頃にはAIを含めた新産業において中国は一気にアメリカを追い抜くという「心づもり」で動いていることを、今回は考察したい。◆「ムーアの法則」はなぜ破綻するのか?「ムーアの法則」に関してはご存じの方が多いとは思うが、念のために書くと以下のような経緯で生まれたものである。1965年、のちに(1968年に)アンディ・グローブ氏とともにインテル社を創業したゴードン・ムーア氏が大規模な集積回路(Integrated Circuit =IC、以後IC)の製造・生産に関して、IC当たりの部品数あるいは性能が毎年2倍になると予測し、その成長率があと10年は続くと予測したことから始まった。10年後の1975年になると次の10年を見据えて「2年ごとに2倍になる」に修正し、さらに「1.5年ごとに2倍」とも予測して、それが維持されたことから「ムーアの法則」と呼ばれるようになった。しかし、ICの微細化が進むにつれ、半導体チップの性能も驚異的に高まってはいったが、それにつれて「ムーアの法則」の破綻に関して数多くの論考が発表されるようになった。身近なところで言うならば、たとえば、早くも2014年05月21日にはITmediaから<ムーアの法則の終焉──コンピュータに残された進化の道は?>(※3)という論考が発表され、2016年3月4日には、当時の東京工業大学の岩井洋教授が<半導体微細化ロードマップ終焉とその後の世界>(※4)という、実にすばらしいプレゼンテーションをPDFにして公開しておられる。東京工業大学(現在の東京科学大学)に連絡して岩井(元)教授に確認を願いしたところ、岩井(元)教授自身は、このようなPDFをネット公開した覚えはなく、公的な論文はH. Iwai, “End of the downsizing and world after that,” 2016 46th European Solid-State Device Research Conference (ESSDERC), Lausanne, Switzerland, 2016, pp.121-126, doi: 10.1109/ESSDERC.2016.7599603.にあるとのことだった。それにアクセスするのは困難だ。これ以外にも非常に多くの論考や分析がネットに公開されているので、それ等から総合的に判断すると、どうやら物理学的に見て約「3nm」が限界値であるらしい。それ以上線幅を小さくすると、量子力学におけるトンネル効果が出現してきて、トンネル電流が流れてしまい、発熱して不安定状態になり破壊するリスクが激増するという。量子力学はかつてこよなく愛したエリアなので、ここで量子力学の話が出てくると嬉しくてならない。中国人留学生を助けたいという気持ちが80年代初期に湧き出てこなければ物理を捨てることもなかったのにと、恨めしい気持ちも覚える。その量子力学に戻って少しだけ説明させていただくなら、電子を粒子と考えたときに、それを隔てる絶縁物であるはずの「壁」(エネルギー・ポテンシャル障壁)があまりに薄いと(相対的にエネルギーレベルが低いと)、「壁」は絶縁物ではなくなり、電子は量子効果としての「波動」になって壁を通り抜け「トンネル電流(電子流)」を惹起してしまう。これを量子力学的に計算すると「トンネル長」は約「3nm」が限界であるという結果が出てくるようだ。したがって「3nm」以下の微細化は、物理学的に「安定的状態では」作れないはずなのである。これを「ムーアの法則」の破綻と称する。現に、<半導体、3nm・2nmという数字のウソ>(※5)というYahoo!エキスパートの、非常に簡潔な情報もあるので、ご一読なさると納得感が深まるかもしれない。◆中国は「ムーアの法則」の破綻を認識し、その先を睨んでいる12月7日のコラム<中国半導体最前線PartI アメリカが対中制裁を強化する中、中国半導体輸出額は今年20.6兆円を突破>(※6)に書いたように、今年12月2日のバイデン大統領による対中制裁強化(エンティティ・リスト大量追加)が発表されると、12月5日に「人民日報」は<米国がチップ制裁を強化している間に、中国の半導体輸出は1兆元(20.6兆円)を突破>(※7)を発表した。そこには専門家の意見として、以下のような中国の思惑が書いてある。●2017年、特に2019年以降、アメリカは中国の先端チップに対する制裁をくり返し強化してきたが、2023年10月以降、その対象にある変化が見られるようになった。それはハイテク産業の中でもAIに集中し始めたということだ。●このシフトは、アメリカも実は「ムーアの法則」の破綻を意識し始めていることを示唆する。●最近の半導体チップ製造は2nmまたは1nm未満のプロセスに入ったとみなされているが、実はチップの素子サイズは既に物理的限界に達している。この微細化によるチップ業界のアップグレードが終点の近辺で立ち止まっている間に、中国は進歩を遂げ、終点に追いつくことになる。その間中国は成長する。●アメリカがどんなに中国を潰そうとしても、中国はアメリカからの激しい制裁によりサプライチェーンを自国内で形成することに成功しつつあるので、アメリカは中国の成長に手出しをすることができない状況に追い込まれつつある。●微細化の王国を築いた「ムーアの法則」はAI半導体の分野には適用できず、AIエリアには「アーキテクチャ、接続帯域幅、アルゴリズムの最適化…」などさまざまな新たなパラメータを取り入れた未来予測が必要となってくる。(概ね以上)つまり中国は「ムーアの法則」破綻を認識し、その先を睨んでいることになる。アメリカの半導体工業会(Semiconductor Industry Association) (※8)は、2024年版米国半導体産業白書を発表した。アメリカの半導体における圧倒的優位は変わらないものの、2023 年の自動車市場における半導体の需要は 15% 増加したのに対し、スマホなどの通信機器市場は 1.8%減少し、パソコン市場は 7.1% 減少している。すなわち現在、半導体市場の成長の勢いは、自動車および工業セクターに傾いることを意味している。自動車用チップや工業用チップは、携帯性に対する要件が遥かに小さく、高度なプロセスに関しては、現在5nmから7nmに焦点を当てているのに対し、スマホ、パソコンなどの業界は、それより遥かに難しい2nmから3nmのプロセスに焦点を当てている。後者が「ムーアの法則」破綻の危機にある中、前者における中国の発展は著しく、アメリカは中国に大きな後れを取っている。成熟したプロセスに関しては、それが中国の得意とするところだ。したがって「アメリカは、中国半導体の直線的な発展を体系的に抑制することはできない」と、人民日報は結論付け、「中国はラスト・マイルに向けて取り組み続けることができる」としている。◆Google元CEOが中国のAIエリアの成長を肯定アメリカの戦略コミュニティは、「中国のチップ企業が抑圧の中で成長し、米国企業は競争力を失っている」という現象に注目している。これに関しては非常に多くの情報があるので特定しにくいが、あえて言うならこのような情報(※9)を挙げることができる。中国はEVなど製造業が強いことから、AI効果に関する実体経済における膨大な実験を実行することが可能なので、AIの実用化という面で優れている。また生成AIには莫大な電気量を必要とすることから、12月11日のコラム<中国半導体最前線PartIII AI半導体GPUで急成長した「中国版NVIDIA」ムーア・スレッド>(※10)の図表に示したように、AI開発では電気量において将来的には中国に優位性があると言えるのかもしれない。その証拠に最近、Former Google CEO Eric Schmidt Says U.S. Trails China in AI Development | News | The Harvard Crimson(※11)にあるように、Googleのエリック・シュミット元CEOが、最近、中国の方がAIの開発が進んでいるという趣旨の観点を発信している。同氏は、ハーバード政治研究所のフォーラムで、「より強力なAI開発競争でアメリカは中国に遅れをとっている」と述べたとのこと。ハーバード・ケネディスクールの元学長、グラハム・T・アリソン氏(1962年卒)が司会を務めたこのイベントでのシュミット氏の発言は、昨年10月のIOPで「アメリカがAI開発で中国をリードしている」と述べた立場から逆転している。講演の中でシュミット氏は、「アメリカのような優秀なエンジニア、強力なチップ、大規模なデータソースへのアクセスに加えて、中国はAIモデルのトレーニングに必要な電力をより多く持つことでも恩恵を受けている」と述べている。これは筆者の「中国半導体PartIII」での独自分析が正しかったことを裏付けてくれて、ホッとしている。ただ、日本としてはホッとしているわけにはいかないだろう。少なからぬ日本人にとっては、見たくない不愉快な現実だろうとは思うが、この「中国半導体最前線シリーズ」で書いたことは、日本の真の発展あるいは政策の方向性にとっては、無視できない「現実」であることを認識していただきたいと切望する。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※12)より転載しました。米アマゾンのラボAIチップ開発など研究(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.tsmc.com/english/dedicatedFoundry/technology/platform_HPC_tech_advancedTech(※3)https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1405/21/news012.html(※4)https://semicon.jeita.or.jp/STRJ/STRJ/2015/2015_08_Tokubetsu_v2.pdf(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/20b6ff18f1af61aecf56b53c1327ff989cb45bf6(※6)https://grici.or.jp/5891(※7)http://politics.people.com.cn/n1/2024/1205/c1001-40376144.html(※8)https://www.semiconductors.org/(※9)https://www.investors.com/news/technology/semiconductor-stocks-gear-makers-getting-china-boost/(※10)https://grici.or.jp/5904(※11)https://www.thecrimson.com/article/2024/11/19/eric-schmidt-china-ai-iop-forum/(※12)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3445ed89b794463c97c011a2b1db2b52cb5fbde4
<CS>
2024/12/13 16:23
GRICI
帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(2)【【中国問題グローバル研究所】
*16:21JST 帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(2)【【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆日本の株式制度における「企業防衛」の危うさそれに比べて日本企業の外資投入あるいは株主提案権に関する規制は世界一緩く、東京証券取引所及び大阪取引所の売買代金の約60%以上は海外投資家によって占められており(※2)、上場企業の金額ベースでみた外国人の日本株保有率は31.8%になっている(※3)。株主提案権を取得するための株式保有要件も非常に緩く、提案内容の制限もほとんどないというのが現状のようだ。株式を5%以上保有すると「大量保有報告書」を提出する義務があり、その後1%以上の変動があるたびに追加で報告することが法律で定められているだけだ。これらの状況が「ウルフパック」のような手法を生み、企業を乗っ取るグレーゾーンを招いている。「企業防衛」、「国家防衛」は「武器を手段とした防衛力」などでは到底守り切れない経済安全保障上のリスクの落とし穴を露呈している。投資者の道徳心に期待するには限界があるだろう。仮に万一、中共中央統一戦線がグレーゾーンを突いてきたらどうなるだろうか。たとえば日本がアメリカに追随し、台湾独立を支援する路線を明確にしたときなどは、武器による報復ではなく、グレーゾーンを用いた、日本の国家インフラを含めた日本企業乗っ取りという金融手段を用いる可能性はゼロではない。そうでなくとも日本は米国の餌食になっている側面が否めないのに、ウォール街と中南海がその気になれば、日本国など「消えてなくなる」危険性が潜んでいる。中国の富裕層が習近平政権を嫌がって日本に避難してきているといった類の記事が目立つが、喜んでいる場合ではない。また、懲罰を重くすればいいだけの話ではなく、日本はもっと抜本的に、そして予防的に規制ラインを引き上げなければならない。それができないのはなぜか?上述した対中貿易重視という日本政府や経団連の基本姿勢があるだけでなく、遅まきの対米追随にばかり目が行っていて、日本の国家を守るのだという「独立国家としての国家観」を持っていないところに根源があるのではないだろうか。この「国家観の欠如」は拙著『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』でも詳述した。本稿で論じたのは氷山の一角にすぎず、日本はあらゆるエリアで「隙だらけ」であることを露呈している。この「日本の脆弱性」に対して、国は早急に規制を強くする方向で法整備の見直しをする必要がある。警鐘を鳴らしたい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。東証 株価ボード(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.jpx-recruit.jp/company/business05/(※3)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB022T70S4A700C2000000/(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c39e87aee47e00c6b10bef040ee0ca0c0cc4694b
<CS>
2024/11/27 16:21
GRICI
帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【【中国問題グローバル研究所】
*16:16JST 帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。米中の新産業力を比較考察する本を執筆する過程で、日本を参考比較対象としてみた。すると、「なぜ日本の製造業はこんなにまで没落してしまったのか」、「なぜNatureの研究者ランキングなどで、日本はここまで低いのか」といった疑問にぶつかった。そこに共通しているのは「短期的成績が求められるようになったから」という事実で、日本企業の場合、その原因は「物言う株主」(アクティビスト)の存在であることが浮かび上がってきた。事実、製造業関係の社長を取材したところ、「最近は物言う株主の存在が大きくなりましてね、大型の設備投資など、とてもできません。短期的に目に見える利益を出さないと、物言う株主が許してくれないんですよ。日本の製造業が成長などするはずがありません」と嘆いておられた。その流れの中で<市場を赤く染める「中国系仕手集団」の“ウルフパック戦術” 電線メーカー「三ッ星」が白旗寸前>(※2)という事実を知り、非常な危機感を抱きながら近く出版する本の原稿を書いていたのだが、加えて金融界でも類似の動き(※3)があることを知った。そうでなくとも11月19日には、「ハゲタカ・ファンド」とも言われるほど激しい投資をすることで有名な米ヘッジファンド運営会社エリオット・インベスト・マネージメント(以下、エリオット)が、東京ガスの株式を5.03%獲得し(※4)、東京ガスが保有する新宿パークタワーなどの不動産について、非中核事業だとして売却を求めていると報道されたばかりだ。日本の国家インフラにまで「物言う株主」が口を出し、日本の国家の軸を揺さぶり始めている。注意しなければならないのは、かつての資本市場改革で株主の権利を強くしたために、「物言う株主」のみならず昔ながらの乗っ取りスタイルも息を吹き返しているということである。このまま放置すれば、日本はやがて中国人を含めた、何らかの形での外国人投資家に乗っ取られてしまう危険性がある。日本の「企業防衛」は、そして日本国の「インフラ防衛」は大丈夫なのだろうか。一方の中国。実は改革開放は、グローバリゼーションを唱え資本市場改革を促した新自由主義経済学者・フリードマンの論理を基礎にして進められてきた。したがって習近平は絶対にグローバリゼーションを崩さないし、その上で社会主義体制を軸にしているので国家インフラは国有企業で守りを固め、民営企業も証券法で外資投入を規制し企業崩壊を防いでいる。それに比べて日本の外資投入規制はあまりに緩く無防備だ。このままでいいのか、警鐘を鳴らしたい。◆帰化中国人集団が日本企業を乗っ取ろうとしていたケース冒頭に書いたように、2022年8月18日、<市場を赤く染める「中国系仕手集団」の“ウルフパック戦術” 電線メーカー「三ッ星」が白旗寸前>(※5)という見出しで、帰化中国人仕手(して)集団が日本企業を乗っ取ろうとしたケースが報告されている。「ウルフパック」というのは、実際はつながっている複数の共同投資家が、多数の異なる名義を利用し、水面下で分散的に大量の株式を購入し、ある日突然「狼の群れ」が姿を現して「株主提案権」を発揮し、当該企業を乗っ取るという手法のことである。本来、これらの株式が事実上共同で5%以上保有されている場合には、共同名義として「大量保有報告書」を提出する義務がある。しかし実際は、5%以上の株式を所有している某グループは、それぞれがあたかも関係のない人物であるかのようになりすまして異なる名義で5%以下の株式を所有する形を偽装するケースが頻発している。報道によれば、「相手企業に警戒心を抱かせないように各々が無関係を装い、株式を分散取得し、傘下株主の申し立てで臨時株主総会の開催に漕ぎつけると、共闘で乗っ取り劇を演じた」とのこと。典型的な「狼の群れ」だ。加えて「その中心人物と目されるのは、2003年10月に日本国籍を取得した帰化中国人」と、上記の記事には書いてある。それが真実だとすれば、いかにも「赤く染めそうな雰囲気」を醸し出しているではないか。この結末は2024年8月22日の<「狼」のような個人投資家が徒党を組み、狙った企業を買い上がる…!究極の敵対的買収「ウルフパック戦術」の行方>(※6)に見られるように、ウルフ3者に「計98万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した」だけで終わっている。こんなことでは、「狼の群れ」はいくらでも姿を変えて暗躍し、日本の製造業だけではなく、金融界あるいは日本の国家インフラさえ乗っ取ることが可能になってしまう。2023年3月31日の<「中国系仕手集団」頭目に弄ばれ、ついに上場廃止になった「アジア開発キャピタル」>(※7)を見ると、なんと、日本の複数の衆議院議員が役職に就くなどして、すでに国家ぐるみの犯罪が横行していることがわかる。その危機感を2023年4月1日の<何人もの「側室」を抱えるのが、「中国系仕手集団」の頭目>(※8)が報道しており、検索すると果てしなくこの手の情報が湧き出てくる。それでも大手メディアが大きく取り扱おうとしないのはなぜなのだろうか?この報道にもあるように経団連や国会議員などに親中派が多く、実は政府として中国との貿易にすがっているからかもしれない。「ウルフパック」は基本的に非合法性が高いものの、その「狼の群れの共謀性の程度」によって合法の範疇に入れられる場合もあり、グレーゾーンということができる。それも取り扱いを困難にさせている側面の一つとして考えられる。さらにやっかいなのは、日本の国家インフラを狙ったエリオットなどは、「物言う株主」として、実は合法的手段で株式購入活動を行なっているのだ。だから現在の法体制の下では、日本国を守ることはできない。◆中国は早くから米国の「ハゲタカ・ファンド」に警戒では、中国はどうだろうか?中国自身は自国インフラや自国企業を守るために米国の「ハゲタカ・ファンド」に早くから激しい警戒心を見せてきた。たとえば「ハゲタカ・ファンド」エリオットなどを「経済テロ」と称して警鐘を鳴らしている。2022年9月29日、中国政府の「新華社」電子版「新華網」は<「経済テロリスト」 - 米国の「ハゲタカ・ファンド」を暴く>(※9)という見出しで、エリオットが南米のアルゼンチンやアフリカの32カ国を「ハゲタカ・ファンド」に巻き込んで「喰い物にしている」状況を解説している。記事では、米国の金融覇権を維持するための手段の一つが、悪名高い「ハゲタカ・ファンド」だと位置付けている。「ハゲタカ・ファンド」に目を付けられたが最後、骨の髄まで喰い尽くされるとしている。記事は米国のエリオットの子会社であるNMLキャピタルの血に飢えた金融攻撃の様子を「経済テロ」と位置づけ、米国の新自由主義が生んだ残虐性を説明しているが、いや、待てよと思う。◆改革開放はフリードマン理論の下で遂行 ウォール街とつながる中南海そもそも中国は改革開放を推進するにあたり、冒頭に書いたようにグローバリゼーションを唱え資本市場改革を促した新自由主義経済学者であるミルトン・フリードマンの論理を基礎にしてきた。フリードマンはシカゴ大学の教授であったため、新自由主義を唱える経済学者を「シカゴ派」とか「シカゴ・ボーイズ」と称する。彼らは政府による介入を否定し、自由な市場経済を主張した。その主張が資本市場改革の流れを生み、最終的にはこんにちの「物言う株主」制度へと発展していったと位置付けることもできる。このフリードマンを中国に招聘すべきだと提案したのは、中国政府のシンクタンク中国社会科学院の世界経済研究所の研究員だ。この提案が中国政府に採用され、1980年にフリードマンは訪中して中南海のリーダーたちと会っている。その後も1988年、1993年と、計3回も訪中し、中国のトップリーダーたちに会い、中国における市場経済発展に関する論議をくり返している(※10)のだ。したがって中国はフリードマンの唱えるグローバリゼーションを基礎に置き、2001年にWTO(世界貿易機関)に正式加盟した。2000年には米中国交正常化を促したヘンリー・キッシンジャー元国務長官の勧めで清華大学経済管理学院に顧問委員会を設置した(※11)。ウォール街の金融大手などのトップを顧問委員会の委員にさせたのはキッシンジャーで、当時は中国入りのためにはコンサルティング会社「キッシンジャー・アソシエイツ」を通さなければならなかった。現在の顧問委員会のトップに君臨しているのはもちろん習近平国家主席(清華大学卒)だが、顧問委員会委員(※12)には、今もウォール街関連の錚々(そうそう)たるメンバーが名を連ねている。スティーブン・シュワルツマンは習近平が国家主席になった2013年に蘇世民書院(シュワルツマン・カレッジ)(※13)の発足式を挙行した。蘇世民はシュワルツマンの中国語名だ。2016年9月から金融を中心としたグローバル・リーダーを養成し、世界に羽ばたかせている。その意味で、中南海はウォール街と緊密に直結しており、フリードマン理論が生きている。だから習近平は絶対にグローバリゼーションを変えないのだが、それでいながら社会主義体制を軸にしているので、国家インフラなどは国有企業で固めていて絶対に海外資本の浸食を許さない。民間企業でも証券法で外資投入をかなり厳しく規制している(※14)のは、外資によって中国企業が破壊されるのを防ぐためであって、決して閉鎖的であるためではない。中国は外資に対する「企業防衛」が非常に堅固だ。これは中国の強みだと言えよう。「帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※15)より転載しました。東証 株価ボード(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08181040/?all=1(※3)https://www.kushim.co.jp/wp-content/uploads/2024/11/ir_20241125-3.pdf(※4)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-20/SN7ZXST1UM0W00(※5)https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08181040/?all=1(※6)https://gendai.media/articles/-/135977?imp=0(※7)https://access-journal.jp/71386(※8)https://ameblo.jp/s2021751/entry-12796316351.html(※9)http://www.news.cn/world/2022-09/29/c_1129042829.htm(※10)https://finance.sina.cn/sa/2006-11-19/detail-ikftpnny2058670.d.html(※11)https://www.sem.tsinghua.edu.cn/xygk/gwwyh/gwwyhjs.htm(※12)https://www.sem.tsinghua.edu.cn/guwenweiyuanhuimingdan20241113.pdf(※13)https://www.sc.tsinghua.edu.cn/gywm.htm(※14)https://www.chinanews.com.cn/cj/2023/12-29/10137839.shtml(※15)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c39e87aee47e00c6b10bef040ee0ca0c0cc4694b
<CS>
2024/11/27 16:16
GRICI
トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:56JST トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆イーロン・マスク:(バイデン政権における)対中関税反対を表明イーロン・マスクは今年5月23日にパリで開催された大手テクノロジー企業の経営者などが集まる毎年恒例のビバテック会議に登壇し、「現在、中国のEVに対する米国の関税に反対する」(※2)と表明した。バイデン政権が、トランプ前大統領が導入した多くの関税を維持しながら、中国のEVに対する関税を4倍の100%以上に引き上げることに関して、イーロン・マスクは「市場を歪めるような措置は好ましくない」と述べている。イーロン・マスクはもともと民主党を支持する傾向にあったが、2021年8月5日にバイデンが呼び掛けたEVサミットにイーロン・マスクだけが招待されなかったことがあった(※3)。バイデンはホワイトハウスにゼネラルモーターズ、フォード、(フィアット・クライスラーとフランスのPSAが合併して設立された)ステランティスのCEOたちを招待しながら、世界最大のEVメーカーであるテスラのCEOイーロン・マスクを招待しなかったのだ。イーロン・マスクは当日Xに「いやー、テスラが招待されなかったのは奇妙じゃないかな」と投稿し(※4)、不満を漏らした。以来、バイデンから心が離れていき、2024年7月14日に起きたトランプ銃撃事件により、一気に強烈なトランプ支持に変わっていったようだ。翌日の7月15日にコラム<中国ネット民 トランプの「突き上げた拳」を熱狂絶賛――「これぞ強いリーダー!」>(※5)を書いたが、なんだか筆者には、中国のネット民とイーロン・マスクには一脈通じるものがあるように感ぜられる。◆イーロン・マスク:戦争屋ネオコンに反対と投稿トランプが勝利宣言をすると、イーロン・マスクは11月6日にXで<ネオコンの戦争屋に力を与えるべきではないことに賛同する>(※6)と投稿した。ご存じのようにネオコン(Neoconservatism、新保守主義者)は自由主義や民主主義を重視して「民主」を輸出し、世界各地の親米的でない政権を転覆させて武力介入も辞さない政治思想集団だ。いうまでもなくNED(全米民主主義基金)は、このネオコンのもと世界各地で暗躍し、「民主」を輸出して戦争を仕掛ける組織である。トランプが米国の利益を最重要視するのに対して、ネオコンはグローバリゼーションを広げて世界における米一極支配を目指す。トランプがNEDを嫌うことは11月5日のコラム<トランプは実は習近平やプーチンが好きで、民主の輸出機関NEDが嫌い>(※7)で書いた。ネオコンはトランプ1.0政権ではジョン・ボルトン(大統領補佐官)などが一部入り込んでいたため、たとえばトランプが金正恩と会談して朝鮮半島における第二次世界大戦以降の紛争を解決しようとしたことを阻止してしまった。トランプはどれだけこの事を後悔しているかしれないと推測する。トランプは朝鮮半島問題を解決して、ノーベル平和賞をもらいたかったのだ。2016年5月に、ベトナム戦争終結に寄与したとしてノーベル平和賞を受賞したキッシンジャー元国務長官から外交に関する手ほどきを受けた時から、トランプはノーベル平和賞受賞を目指していた。そのトランプが嫌う「戦争屋ネオコン(→NEDの暗躍)」をイーロン・マスクも嫌っていることを知ったのは、筆者にとっても大きい。◆トランプ2.0は、習近平にとっては悪くない以上さまざまな側面から、イーロン・マスクはトランプ2.0の対中高関税に対する緩衝材になるだけでなく、何よりもNEDの暗躍を一定程度は抑え込むだろうということによって、習近平にとっては非常に悪くない政権になるのではないかと思うのである。中国は米国から高関税などの制裁を受けることに関しては、少しも恐れていない。むしろ、その制裁があったからこそ自力更生を加速強化させてくれたし、結果ハイテク国家戦略「中国製造2025」は、その目標年である来年2025年までにほぼ完遂する。最先端の半導体製造装置に関しては未達成だが、他の新産業のほとんどの分野において中国は今や世界一になっている。また、仮に高関税をかけられても、中国はBRICS+という非米側陣営を拡大することによって経済的な結びつきを強化し、米一極支配から抜け出そうとしている。そのことは10月30日のコラム<中露を軸とした「BRICS+」の狙い G7を超えて「米一極支配からの脱出」を図る>(※8)で書いたとおりだ。実際にどうなるか、未知数はあるものの、少なくともトランプ2.0は習近平にとって決して悪いものではないと考えていいだろう。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。ドナルド・トランプ前大統領を応援するテスラのイーロン・マスクCEO(写真:REX/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/elon-musk-im-against-tax-incentives-evs-2024-05-23/(※3)https://edition.cnn.com/2021/08/05/business/tesla-snub-white-house-event/index.html(※4)https://x.com/elonmusk/status/1423156475799683075(※5)https://grici.or.jp/5451(※6)https://x.com/elonmusk/status/1853944431512314093(※7)https://grici.or.jp/5746(※8)https://grici.or.jp/5725(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/107c839d144ea564fd20c010880197274142511b
<CS>
2024/11/11 16:56