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GRICI トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】 *15:59JST トランプ氏、取材で台湾有事への回答を回避し「台湾は米国に防衛費を支払うべき」と主張【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」(※2)は、トランプ氏を独占取材した記事を掲載。取材でトランプ氏は「中国大陸に対抗する台湾を防衛するか?」という問いには答えず、「台湾は米国から半導体を100%奪っていった」とかわし、「台湾はわれわれに防衛費用を支払うべきだ」と主張した。中国はこのトランプ発言を「みかじめ料を要求された島(台湾)は大騒動」という見出しで、主として台湾の情況を中心に報道している。◆ブルームバーグの独占取材記事まず、7月16日発売の雑誌「Bloomberg Business Week」が、どのような記事を掲載したのか、台湾防衛関係の部分だけを抜き出してご紹介したい。●トランプ氏の外交政策に対する取引的な見方と、あらゆるディール(取引)を「勝ち取る」という願望は、世界中に影響を及ぼす可能性があり、米国との同盟関係を断絶させることさえある。●「アジアの民主主義(台湾)を分離独立の地域とみなす中国から台湾を守るという米国の取り組み」について尋ねられたトランプ氏は、「台湾に対する最近の(米国内)超党派の支持にもかかわらず、中国の攻撃に立ち向かうことについては、せいぜいよく言って、生ぬるい」と表明した。(筆者注:米国は台湾を守るか否かに関しては回答を回避した。)●彼(トランプ氏)の懐疑的な姿勢の一部は、経済的な憤りに根ざしている。「台湾はわれわれから半導体事業を奪った」と彼は言う。「つまり、われわれはどれだけ愚かなのか? 彼らはわれわれの半導体事業をすべて奪った。彼らは途方もない巨額の富を手にしたのだ」と彼は続けた。彼が台湾に望んでいるのは、米国に防衛費(保護料)を支払うことだ。「われわれは保険契約と何ら変わらないと思うんだよ。なぜだ? なぜ、われわれはこんなことをしているんだい?」と彼は尋ねた。(筆者注:最後の「こんなこと」は英語では「this」だけだし、一瞬の会話の中で出てきた言葉なので、受け取る側が解釈するしかないが、「保険契約なら契約料を毎月支払うはずだが、それを受け取ってないのに、なぜ台湾を守らなければならいんだ?」という意味を示唆していると考えられる。)●彼(トランプ氏)が懐疑的になるもう一つの要因は、地球の反対側にある小さな島を守ることの実際的な難しさだ。「台湾は9,500マイルも離れているんだよ。それに比べて、中国からは68マイルしか離れていない」と彼は言う。台湾への関与を放棄することは、米国の外交政策の劇的な転換をもたらすだろう。それはウクライナへの支援を停止するのと同じくらい重大なことだ。しかし、どうやらトランプは、これらの関係を根本的に変える代替案の準備ができているようにも見える。(筆者注:この最後の文章は、おそらく「守ってほしければ金を払え」という言葉を指しているものと推測される。)ブルームバーグの独占取材記事の台湾に関する部分は概ね以上だが、別途、台湾問題に焦点を絞った討論番組<Watch Trump Suggests Taiwan Should Pay US for Protection - Bloomberg(トランプが「台湾は防衛費を支払うべきだ」と言ったことをウォッチしよう)>(※3)も報道されている。冒頭に掲げたタイトル画像は、この番組からのスクリーンショットである。トランプ氏の主張には、一貫した外交観が滲み出ている。すなわち、NATOに関してもトランプ氏は「その国の軍事費負担が不十分ならば米国はその国を守らず、ロシアに『好きにするよう促す』」(※4)とさえ言っている 。トランプ政権時代には日本や韓国に対しても、駐留米軍に対する経費をもっと支払わないと米軍を撤退させるようなことをほのめかしたことがある。台湾に対しても、「米軍に守ってもらおうと思うなら、米国に保護料を支払え」というわけだ。この姿勢であるなら、中国は喜ぶだろう。◆中国での報道7月18日の中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は<みかじめ料をトランプに要求され、島内(台湾)は大騒動>(※5)という見出しの、かなり長い記事を発表した。ほとんどは、ブルームバーグの独占取材記事の解説と、台湾がどのように報じたかに関する内容が多いが、いくつかの要点をピックアップしてお示しする。台湾報道に関しては当然、中国大陸にとって都合のいいものを拾い上げているとは思うが、台湾で報道されていること自体は事実だし、中国がどのように受け止めているかも見えてくるので、考察する価値はあるだろう。●台湾の世論は、民進党当局の徹底した「親米・反中」政策が今後の台湾にとって厳しい課題となると一般に考えている。●トランプ氏は「米国に保護してほしいのなら、台湾はみかじめ料を支払うべきだ」とストレートに言った。トランプ氏の「台湾防衛」に対する態度が冷淡であることのもう一つの理由は、何千マイルも離れた小さな島を守るのは非常に難しいと考えていることだ。●トランプ氏は、今年4月の、タイム誌とのインタビューでも同様の見解を表明した。彼は、米国に依存する欧州とアジアの同盟国が米国に資金を支払うことを望んでいる。●タイム誌は「中国が台湾を攻撃した場合、米国は台湾を守るべきか」と質問し、トランプ氏は「この質問は何度も受けているが、(私の切り札が明らかになるので)答えたくない」と明言を避けた。●台湾にみかじめ料の支払いを求めるトランプ氏の発言に対し、民進党「立法院」議員団の呉思耀幹事長は17日、米国は「台湾の防衛に協力している」と述べ、台湾の卓栄泰行政院長は、「台湾は台湾海峡とインド太平洋地域にわたる共通の責任に対して、より多くの費用を支払う用意がある」と述べた。これに対して台湾の多くのネット民は不満を表明し、台湾のソーシャルプラットフォームPTTでは「お前が払えよ。私に払わせるな。みんなを水の中に引きずり込むな」と民進党当局を罵倒した。また、少なからぬ人が「我々が望んでいるの海峡の平和共存だ」、「みかじめ料は『台湾独立』を叫んでいる人から徴収せよ!」と呼びかけた。●国民党の立法委員である王鴻薇氏は、「台湾の米軍からの兵器購入額が最高値を更新し続けている今、米国の武器売却やみかじめ料に対処するために、将来さらに多くの資金を提供する必要があるのだろうか?」問うた。●元台湾空軍副司令官の張延廷氏は、「保護費は天文学的な金額になる」と述べ、「台湾は全体的な環境を理解しなければならず、米国の操り人形になってはならない」と語った。●元立法委員の蔡正元氏は17日、台湾の一部の愚か者は台湾と米国は「価値ある同盟」だとよく言っているが、「台湾は米国の単なる属国に過ぎない」とした上で、「台湾と米国の間には友好関係はない。すべては金銭的な関係にすぎない」と述べた。●米国在住の学者、翁履中氏は、「台湾がトランプを満足させるために、もっとみかじめ料を支払っても構わないが、いくら払っても彼を満足させることはできないのではないか」と心配している●国民党の立法委員である馬文君氏は、「唯一確かなことは、トランプは台湾の安全保障上の利益を考慮するのではなく、米国の利益を最優先しているということだけだが、民進党はそれを明確に理解することができない」とした上で、「鍵となるのは両岸関係だ。両岸関係がうまく処理されれば、台湾は他国に支配される必要はない」と述べた。●台湾国立政治大学国際関係センターの研究者厳振生氏は、「台湾海峡の問題解決を米国に依存することは、台湾にとって多大な損失をもたらし、効果的ではない」と述べた。●台湾聯合新聞網は17日、「最近の典型的なケースは、台湾は古い第4世代戦闘機F-16Vを購入したが、これは他国が第5世代ステルス戦闘機F-35を購入するよりも高価だったということである」と報道している。また「トランプ氏もバンス氏も現実主義者であり、(中国)大陸の軍事発展により、米国は台湾への派兵は極めて採算の合わない取引であり、米国の国益に合致しないとの認識を強めている」と書いている。(以上、「環球網」より)台湾では国民党の趙少康氏は18日に「頼清徳は今のところ押し黙っているが、このまま米国に跪(ひざまず)き続けるのだろうか?」と投稿し(※6)、民衆党の柯文哲主席は「保護費だって?それって、米国が台湾に支払うのか、それとも台湾が米国に支払うのか、どっちなんだい?だって、台湾が米国のために第一列島線を守ってあげてるんだから、米国が台湾に支払うべきなのでは?」(※7)という趣旨のことを書いている。なお、トランプ氏の台湾防衛に関する回答と発言は昨年から何度もくり返されているが、これまでの発言に関しては拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第一章 TikTokと米大統領選と台湾有事】の【二 もしトランプが大統領に当選したら台湾有事はどうなるか?】で詳細に考察した。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。写真: ブルームバーグTV番組からのスクリーンショットに筆者が和訳加筆(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.bloomberg.com/features/2024-trump-interview/(※3)https://www.bloomberg.com/news/videos/2024-07-16/trump-suggests-taiwan-should-pay-us-for-protection-video(※4)https://www.bbc.com/japanese/articles/cevrjpgn418o(※5)https://taiwan.huanqiu.com/article/4IeY497cZfM(※6)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E5%97%86-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E6%90%B6%E6%99%B6%E7%89%87%E7%94%9F%E6%84%8F-%E8%B6%99%E5%B0%91%E5%BA%B7-%E5%8F%B0%E7%81%A3%E8%A2%AB%E7%95%B6%E8%82%A5%E7%BE%8A-073741087.html?guccounter=1(※7)https://tw.news.yahoo.com/%E5%B7%9D%E6%99%AE%E8%A6%81%E5%8F%B0%E7%81%A3-%E4%BA%A4%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%B2%BB-%E8%B3%B4%E6%B8%85%E5%BE%B7%E6%B2%89%E9%BB%98%E4%BB%A5%E5%B0%8D-%E6%9F%AF%E6%96%87%E5%93%B2%E9%9C%B8%E6%B0%A3%E5%8F%8D%E5%97%86-%E5%B9%AB%E4%BB%96%E6%93%8B%E9%82%84%E8%A6%81%E4%BB%98%E9%8C%A2-065547831.html(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ef4b86f8b564211b82b54d1f5d2e9a97b14de7e7 <CS> 2024/07/19 15:59 GRICI NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(2)【中国問題グローバル研究所】 *16:14JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(2)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆ハンガリー外務大臣「NATOが反中ブロックになることに賛同しない」7月12日、ロイター社は<ハンガリーはNATOが「反中」ブロックになることを支持しない、と大臣は言う>(※2)という見出しでNATOワシントン宣言に反対するハンガリーの意見を報道した。それによればハンガリーのシーヤールトー(シャルト)・ペーテル外務大臣は「ハンガリーはNATOが反中ブロックになることを望んでおらず、そうすることを支持しない」と述べたとのこと。彼はまた「ウクライナが軍事同盟に加盟すれば、NATOグループの結束が弱まるだろう」とも述べている。さらに「NATOは防衛同盟だ…反中ブロックに組織化することはできない」と、ハンガリー国営テレビの質問に対し答えたという。7月10日のコラム<嗤(わら)う習近平――ハンガリー首相訪中が象徴する、したたかな中露陣営と弱体化するG7>(※3)に書いたように、ハンガリーは欧州議会の新たな右派会派「欧州の愛国者」をフランスのマリーヌ・ルペン氏が率いる極右政党「国民連合」を迎えて誕生させている。ルペン氏は<バイデン政権は中国に対してあまりに攻撃的過ぎて、アメリカは自国の同盟国がアメリカの統治下で団結できるようにするために敵を作りたいだけだ。アメリカが欧州を中国の敵に誘導している>(※4)と述べている。欧州が一枚岩でないということは、NATOも一枚岩ではないことになる。◆NATOワシントン宣言は「日本を戦争に誘い込む」シナリオ特に冒頭に書いたNATOワシントン宣言を詳細に読むと、これはNATOの思いというより、バイデン大統領の米大統領選に対する意図が全面的に出ており、トランプ前大統領との討論会の失態を挽回するために書かれたもののように映る。NATO諸国には「もしトランプが大統領に選ばれたらNATOは消滅する」と脅迫し、米大統領選でバイデンに有利になるために作成された宣言であるという印象を深くした。あと4ヵ月後に、もしトランプが大統領に当選したらウクライナ支援をやめて、アメリカの代理戦争であるウクライナ戦争をすぐさま停戦に持って行くと、トランプは豪語している。NATOがもっと多くの拠出金を分担しなければ、ロシアの好き勝手にさせてNATOを守ることをしないとまでトランプは言っているのだ。事実、トランプ政権時代には戦争は起きなかった。それどころかトランプはまるで「禁じられた恋」のように秘かにプーチンを慕い、北朝鮮の金正恩とも会って和平に向けて動こうとした。しかしバイデン政権になった瞬間からウクライナ戦争、イスラエル戦争と、世界に戦争をばらまく戦争屋ネオコンの本領が再び発揮され始めた。もし、それを信じない方がおられたら、ぜひとも拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の【図表6-2 朝鮮戦争以降にアメリカが起こした戦争】(p.234~p.235)および【図表6-8 「第二のCAI」NEDの活動一覧表】(p.253~p.255)をご覧いただきたい。アメリカは、トランプ政権時代を除いて、第二次世界大戦が終わったあとから、ただひたすら全世界で戦争を巻き起こしてきたのだ。そのためにはルペン氏が言っているように「アメリカは敵を必要としている」。旧ソ連を崩壊させるに当たって、アメリカは「NATOを1インチたりとも東方に拡大させない」と約束しておきながら、ゴルバチョフがそれを信じてワルシャワ機構を解体させソ連が崩壊するのを見届けると、その瞬間から東方拡大を始めたではないか。それでも飽きずに、「戦争の種」を求めて、今度は台湾有事を創り出して、親米的でない国家「中国」を潰そうとしている。その大きな枠組みの中で人類が動かされていることに、日本人は気づこうとしないし、気づきたくないようだ。そして気づいた時には、日本人はアメリカの駒として戦場に送られていることになる。その視点でNATOワシントン宣言を見ると、NATOワシントン宣言は結局のところアメリカの世界一極支配を維持するために「日本を戦争に誘い込むシナリオ」であることが浮かび上がってくる。日本国民の命を守るために、その視点を一人でも多くの日本人と共有したいと切に望む。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/world/europe/hungary-will-not-support-nato-becoming-anti-china-bloc-minister-says-2024-07-11/(※3)https://grici.or.jp/5437(※4)https://www.nytimes.com/2022/04/13/world/europe/le-pen-nato-russia-germany.html(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef <CS> 2024/07/12 16:14 GRICI NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】 *16:12JST NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ(1)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。ワシントンで開かれていたNATOサミットがアメリカ時間7月10日に宣言を出し、その中で中国に関して、ロシアの侵攻に対する「決定的な支援者だ」と批判した。インド太平洋地域は米欧の安全保障に影響するとし、日本や韓国との協力強化も盛り込んだ。これに対して中国は激しく抗議している。両者の言い分を考察すると、日本人がやがてアメリカの駒として戦場で戦わされるシナリオが見えてくる。◆NATOワシントン宣言の対中批難部分アメリカ時間7月10日、NATOサミットは<Washington Summit Declaration(ワシントン・サミット宣言)>(※2)というタイトルの宣言を発表した。その4項目目に「戦略的競争、蔓延する不安定性、そしてくり返されるショックが、われわれのより広範な安全保障環境を特徴づけている」とした上で、中国に対する警告が盛り込まれている。また26項目および27項目にも対中批難が書かれているので、それらの概要をまとめて以下に記す。●野心と威圧的な政策を表明してきた中華人民共和国(以下、中国)は、われわれの利益、安全保障と価値観に引き続き挑戦している。●ロシアと中国の戦略的パートナーシップの深化と、ルールに基づく国際秩序を無効化させ再構築しようとする試みは、深刻な懸念の原因となっている。われわれは、ハイブリッド、サイバー、宇宙、その他の脅威と悪意のある活動にも直面している。●中国は、いわゆる「無制限」のパートナーシップとロシアの防衛産業基盤への大規模な支援を通じて、ロシアのウクライナに対する戦争を決定的に可能にしている。これにより、ロシアが近隣諸国と欧州大西洋の安全保障に及ぼす脅威が増大している。われわれは中国に対し、ロシアの戦争活動に対するすべての物質的および政治的支援を停止するよう求める。●中国は、自国の利益と評判に悪影響を及ぼさずに、ヨーロッパにおける近年最大の戦争を可能にすることはできない。●中国は、欧州大西洋の安全保障に体系的な挑戦を取り続けている。われわれは、中国に起因する偽情報を含む悪意のあるサイバー活動とハイブリッド活動が継続しているのを目にしている。われわれは中国に対し、サイバー空間で責任ある行動をとるという約束を守るよう求める。●われわれは中国の宇宙能力と活動の発展を懸念している。われわれは中国に対し、責任ある宇宙行動を促進するための国際的な取り組みを支持するよう求める。●中国は核弾頭の増加と高度な運搬手段の増加により、核兵器の急速な拡大と多様化を続けている。われわれは中国に対し、戦略的リスク削減の議論に参加し、透明性を通じて安定を促進するよう求める。(概ね以上)◆中国の反論これに対して駐EUの中国使節団の報道官は、7月11日の記者会見で以下のように反論した(※3)。●NATOサミットの宣言は、冷戦のメンタリティと好戦的なレトリックに満ちており、中国関連の内容は、挑発、嘘、扇動、中傷に満ちている。●周知の通り、中国はウクライナ危機の生みの親でもなければ当事者でもない。ウクライナ問題に関する中国の核心的立場は、和平交渉と政治的解決を促進することであり、これは国際社会から広く認識され、高く評価されている。●中国は紛争当事者に殺傷力のある武器を提供したことはなく、民生用ドローンの輸出を含む軍民両用物品を常に厳しく管理してきた。中国とロシアの間の正常な貿易は第三者に向けられたものではなく、外部からの干渉や強制の対象であってはならない。●ウクライナ危機は今のところ長引いているが、誰が火に油を注いでいるのか、誰がこの機会を利用して個人的な利益を求めているのか。国際社会は、このことをはっきりと認識している。われわれはNATOに対し、国際社会の正当な声に注意深く耳を傾け、自らが行っていることを深く反省し、責任を転嫁したり他国を非難したりするのではなく、事態の悪化を緩和し、問題を解決するための具体的な行動をとるよう求める。●アジア太平洋地域は平和的発展の高地であり、地政学的な駆け引きの競技場ではない。NATOは再三再四にわたって「ユーラシア安全保障のつながり」誇大宣伝しているが、その意図は何処(いずこ)にあるや?●われわれはNATOに対し、北大西洋における地域防衛機関としての地位を堅持し、アジア太平洋地域の平和と安定を台無しにしたり、特定の大国の覇権の道具にならないよう要請する。●中国は世界平和の建設者であり、世界の発展に貢献し、国際秩序の擁護者である。われわれはNATOに対し、中国に対する誤った認識を直ちに正し、冷戦のメンタリティとゼロサムゲームを放棄し、いわゆる中国の脅威を声高に叫ぶのをやめ、対立と対抗を扇動するのをやめ、世界の平和と安定のためにより実践的なことを行うことを要求する。(以上)一方、中国の外交部はやはり7月11日の記者会見で(※4)以下のように抗議している。●NATOの「ワシントン首脳宣言」は、アジア太平洋地域の緊張を誇張し、冷戦思考と好戦的な発言に満ちており、中国関連の内容には偏見・中傷・挑発に満ちており、われわれは強烈な不満を抱いており、断固として反対する。●今回のNATOサミットにはNATO創設75周年という背景がある。存続の必要性を示すために、米国とNATOは会合前にNATOの「栄光」と「団結」を誇示し、NATOを「平和維持組織」であるかのように見せかけているが、実は「冷戦の遺物」であることを覆い隠すことはできない。●NATO軍は「人道的災害の回避」を旗印にしながら、かつてユーゴスラビアに対して78日間にわたる爆撃を実施した。NATOの黒い手が伸びるところはどこでも、混乱が現れる。NATOのいわゆる安全保障は、他国の安全保障を犠牲にして成り立っている。NATOが売り込む「安全保障上の不安」の多くは、NATO自身が引き起こしている。NATOが誇るいわゆる「成功」や「力」は世界にとって大きな危険を意味する。「仮想敵国」を設定することで存在を維持し、国境を越えて勢力を拡大するのはNATOの常套手段であり、中国に対する「体制的挑戦」の誤った位置付けに固執し、中国の内政・外交政策の信頼を損なうことはまさにそれを体現している。●ウクライナ問題に関して、NATOが「中国の責任」論を主張するのは荒唐無稽であり、邪悪な意図がある。NATOはいかなる証拠もなく、米国が捏造した虚偽の情報を拡散し続け、公然と中国を中傷し、中国とEUの関係を破壊し中欧協力を潰したいのだ。ウクライナ危機を今日まで延期させ、火に油を注いでいるのが誰であるか、国際社会は知っている。NATOは、危機の根本原因と自らの行動を熟考し、国際社会の公正な声に注意深く耳を傾け、責任を転嫁したり他国を非難するのではなく、状況を緩和するために実際的な行動を取るよう勧告する。●NATOはその範囲をアジア太平洋にまで拡大し、中国の近隣諸国や米国の同盟国との軍事・安全保障上の関係を強化し、「インド太平洋戦略」の実施において米国に協力してきたが、その行為は中国の利益を損ない、アジア太平洋地域の平和と安定を破壊し、すでに地域諸国の疑念と反対を引き起こしている。●中国はNATOに対し、冷戦思考・陣営対立・ゼロサムゲームという時代遅れの概念を放棄し、中国に対する誤った理解を正し、中国の内政干渉をやめ、中国のイメージを汚し、中国とEUの関係に干渉しないよう求める。ヨーロッパを混乱させた後、アジア太平洋を混乱させるのをやめよ。●中国は自国の主権・安全保障・発展利益を断固として守り、自国の発展と対外協力を通して、世界の平和と安定にさらなる安定と前向きなエネルギーを注ぎたい。(以上)外交部のこの回答は7月11日の新華網(※5)が掲載し、中央テレビ局CCTV(※6)も同じ内容で報道した。したがって、外交部の記者会見での回答が中国政府の正式見解であると解釈していいだろう。「(NATOワシントン宣言「中国が侵略の決定的支援者」は日本を戦争に巻き込むシナリオ2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。NATOワシントン首脳会議で会見するバイデン大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm(※3)http://eu.china-mission.gov.cn/stxw/202407/t20240711_11451831.htm(※4)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202407/t20240711_11452358.shtml(※5)http://www.news.cn/world/20240711/9707b00c867b4840bef0f9f4da2e6ac8/c.html(※6)https://tv.cctv.com/2024/07/11/VIDENC0MeGRaeb3gQsqlcFeW240711.shtml(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6c7ff82141848f044f808a47da2869a323564cef <CS> 2024/07/12 16:12 GRICI プーチン訪朝で国境の豆満江開放 中国海警局の船も日本海に!【中国問題グローバル研究所】 *10:38JST プーチン訪朝で国境の豆満江開放 中国海警局の船も日本海に!【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。6月19日、北朝鮮を訪問していたプーチン大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長との間で「包括的戦略パートナーシップ」が締結された。軍事同盟に近い「互いの国が第三国から攻撃された場合には互いに支援する」という項目が盛り込まれたようだが、同時に合意文書には「豆満江(とまんこう)に架かる国境道路橋の建設に関するロシア連邦政府と朝鮮民主主義人民共和国政府間の合意」も謳われている。豆満江は「中露朝」三ヵ国の国境に接する河で、日本海に注ぐ国際河川だ。中国にとっては、旧ソ連以来塞(ふさ)がれていた豆満江の航行が自由化されることになる。それは立ち遅れていた「東北大振興政策」を大きく飛躍させ中国にとっては大きな収穫だが、日本にとっては厳しいダメージをもたらすだろう。なぜなら貨物を運ぶコンテナ船だけでなく、中国海警局の大型船舶も北の豆満江から日本海に直行できるようになるからだ。これらはアメリカによる「中露朝」に対する制裁や包囲網がもたらした結果でもあることを見逃してはならない。◆中露間に横たわっていた豆満江航行閉鎖問題中国の東北部吉林省の東端(地図で見て右端)は、「中国・ロシア・北朝鮮」三ヵ国の国境が接する地区につながっている。そこには豆満江(中国語では図們江)という河が流れており、朝鮮戦争のときに旧ソ連と北朝鮮をつなぐ「ソ朝友誼大橋」が架けられた。1952年のことで、最初は武器やその他の支援物資をソ連から北朝鮮に運ぶための簡易な木製の大橋だったが、1959年に金属製に強化された。問題は橋の高さだ。水面からわずか7メートルほどしかないので、中国領土の吉林省の琿春(こんしゅん)市防川村までしか中国の大型船は航行できず、中国東北部は本来なら豆満江を下れば日本海に出られたのに、それが出来なかった。中国はこれまで何度も何度もロシアに対して大橋を解体して中国の大型船舶が通れるように改善して欲しいと頼んできたのだが、ロシアは、プーチン時代に入ってからも首を縦に振らなかった。それが突如変わったのは、ウクライナ戦争で西側からの厳しい制裁を受ける中、習近平が経済面に関しては徹底してプーチンを支援してきたからだと断言していいだろう。それ以外に思い当たる理由はない。◆中国20年来の「東北大振興政策」がウクライナ戦争により実現中国建国当時、東北部は「旧満州国」が遺した重工業施設が豊富だったので、第一次五ヵ年計画は東北部の重工業を中心として経済建設が推進され、改革開放までは中国経済の花形として、その骨格を成していた。しかし1980年代から自由経済の波が中国全土を覆うにつれ、国営企業を中心とした重工業地帯・東北部は経済発展から取り残され、荒廃の一途をたどっていったので、胡錦涛政権時代に入った2003年に「東北大振興政策」が打ち出された。あれから20年。遅々として進まなかった東北大振興に新しい光をともしたのはロシアのプーチンだ。ウクライナ戦争により西側からの制裁が激しいため、活路を東側に見いだし、中国語で「看東方」と呼ばれる東方重視策に着手した。拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第五章 ウクライナ戦争と「嗤う習近平」】の【三 中国20年来の「東北大振興政策」が初めて実現できた】で書いたように、2023年9月7日に、習近平が黒竜江省ハルビン市で「新時代の東北全面振興を推進する」という座談会を開いた。すると、それに呼応するように数日後の9月11日から13日にかけてウラジオストクで開催した「東方経済フォーラム」で、プーチンは「ロシアは遠東重点戦略に着手する」と宣言。今年5月16日から17日にかけて、プーチンは国賓として訪中し習近平と会談して共同声明を発表した。その中で、「(中露)両国は図們江(豆満江)下流域を航行する中国船舶の問題について朝鮮民主主義人民共和国と建設的な対話を行う」と謳っている。今般のプーチンによる訪朝の目的の一つは、まさにこの「豆満江における中国船舶航行問題」を解決することにある。日本のメディアでは、「露朝の接近に中国ジレンマ」といった傾向の報道が多く、中国が露朝接近を警戒しているのではないかと思っているようだが、実際はまったくその逆だ。◆豆満江を航行できれば、中国海警局の大型船舶も直行で日本海に出航できるこれまで堰(せ)き止められていた豆満江流域の吉林省琿春市防川村から日本海までは、わずか15キロメートルしかない。目の前が日本海だ。ただ露朝間に架けられている友誼大橋の高さは7メートルなので、貿易用のコンテナ船であれ海警局の大型艦艇であれ、せめて水面から30メートルほどの高さがないと安心して通ることはできないだろう。したがって現在の友誼大橋を取り壊して、新しく水上最低30メートルほどはある鉄橋を建設するしかない。建設費用は中国が持つだろうが、ここが「大海」に開放されれば、中国東北部の経済繁栄に大きく寄与するのは確実だ。中国にとって露朝会談は大歓迎なのだが、問題は日本に対する安全保障上のリスクが急激に高まるということである。中国はこれまで北朝鮮を動かそうと思えばできたはずだが、今回習近平は先ずプーチンを説得してから、プーチンに北朝鮮の金正恩を説得させた。それは習近平がウクライナ戦争によりプーチンの足元を見ている証拠なのだが、金正恩は習近平の話よりもプーチンの話の方に、より耳を傾ける傾向にある。北朝鮮の建国の父である金日成(キム・イルソン)はソ連の支援を得て北朝鮮を建国したからだ。一方、中朝は軍事同盟を結んでいるが、露朝は(旧)ソ連崩壊によってそれまでソ朝間で締結されていた軍事同盟は消滅していた。プーチンによる24年ぶりの訪朝は、まさにその軍事同盟に近い同盟関係を露朝間にもたらしたことになる。それも、もとはと言えばバイデン大統領がアメリカによる一極支配を維持したいためにウクライナをそそのかし、NATOを焚きつけてプーチンがウクライナを侵略するしかないところにプーチンを追い込んだことが最も大きな要因と言える(ウクライナを侵略したプーチンは悪いが、戦争中であればウクライナはNATOに加盟できないので、ウクライナをNATO加盟させないために戦争を仕掛けたという側面もあるだろう。アメリカはソ連を崩壊させるときにNATOを1インチたりとも東方に拡大させないと旧ソ連に約束したが、その約束を限りなく破ってきたという経緯がある)。もしトランプ前大統領が第二期目も大統領を務めていたら、ウクライナ戦争は起きていなかったことを考えると、その因果関係は明白だろう。トランプはNATOやウクライナを動かしてプーチンを倒そうとするどころか、「NATOなど要らない」と繰り返し、プーチンとは仲良くしたくてならなかった大統領だった。北朝鮮の金正恩と電撃的な会談を行なって、朝鮮戦争以降の北朝鮮問題を解決しようとさえしたではないか(トランプはキッシンジャーのようにノーベル平和賞をもらいたいと思っていた。だから故安倍総理にノーベル平和賞への推薦状を依頼したほどである)。トランプは、アメリカを軍事産業によって運営していこうとするネオコンではないために、ネオコンによって北朝鮮との雪解けは封じられてしまった。朝鮮半島が平和になるとアメリカの軍事産業が要らなくなるので、ネオコンは困るのだ。こうして世界中に戦争をばらまいた、バイデンに代表されるアメリカの戦争屋たちが、「中露朝」という、非米陣営のブロックを形成させる結果を招いたことを見逃してはならない。日本に脅威をもたらすのは、アメリカであることが見えてくるプーチンの訪朝であったと思う次第だ。なお筆者は1947年から48年にかけて吉林省長春市で中国共産党による食糧封鎖に遭い、餓死体の上で野宿させられた経験を持つ。国共両軍の真空地帯である卡子(チャーズ)を脱出したあとは北朝鮮に接する吉林省延吉市に難民として流れ着いた。その延吉で豆満江を見ながら2年間の歳月を過ごし、1950年には朝鮮戦争を迎えた。したがって筆者にとって豆満江は、「二度と戦争を起こしてはならない」と筆者に決意させる象徴の一つでもある。そのため、誰が戦争を起こさせるのかを生涯かけて追究している。その視点から論考を書いていることを読者の方々にご理解いただきたいと、心から願う。この論考はYahoo(※2)から転載しました。写真: プーチン大統領と金正恩委員長(ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4dd0680ec41df27097d0de1173bac50ce79fd406 <CS> 2024/06/20 10:38 GRICI ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】 *10:55JST ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆中国&ブラジル和平案の「6項目コンセンサス」とは?では、ウクライナ戦争に対する中国とブラジルが共同で提唱する和平案とはどういう内容なのだろうか?今年5月23日、王毅・中共中央政治局委員兼外交部長は、北京でブラジルのアモリン大統領首席補佐官と会談し、「ウクライナ危機の政治的解決のための、中国&ブラジル6項目コンセンサス」に合意した(※2)。以下に、その「6項目コンセンサス」を記す。1.すべての関係者に対し、緊張緩和の「3つの原則」、すなわち、「戦場の拡大禁止、戦闘激化の禁止、戦争を煽ることを禁止」を遵守するよう呼びかける。2.対話と交渉がウクライナ危機から抜け出す唯一の実行可能な方法であると信じる。 当事者は、直接対話を再開するための条件を整備し、全面的な停戦に達するまで緊張緩和を促進すべきである。中国とブラジルは、「ロシアとウクライナ双方が認め、各方面が平等に参加し、すべての和平案について公正な議論を行えるような」国際平和会議を適切な時期に開催することを支持する。3.より大規模な人道危機の発生を未然に防ぐため、関連分野における人道支援を強化すべきである。 民間人や民間施設への攻撃は避けるべきであり、女性、子供、戦争捕虜などの民間人は保護されるべきである。 紛争当事者間の捕虜交換を支援する。4.大量破壊兵器、特に核兵器、化学兵器、生物兵器の使用に反対する。 核拡散を防止し、核危機を回避するために可能な限りの努力をする。5.原子力発電所やその他の平和的な原子力施設への攻撃に反対する。 すべての当事者は、原子力安全条約などの国際法を遵守し、人為的な原子力事故を断固として回避すべきである。6.世界の分断と閉鎖的な政治的または経済的ブロックの形成に反対する。世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を維持するために、エネルギー、通貨、金融、貿易、食料安全保障、石油・ガスパイプライン、光海底ケーブル、電力・エネルギー施設、光ファイバーネットワークなどの重要インフラの安全保障に関する国際協力を強化することを求める。中国とブラジル双方は、上記のコンセンサスに対する国際社会の支持と参加を歓迎し、事態の緊張緩和と和平交渉の促進に共同で建設的な役割を果たす。(以上が中国の外交部ウェブサイトに載っている説明だ。)ここで肝心なのは、「2」にある「ロシアとウクライナ双方が認める」という言葉で、中国&ブラジル案は、「排除の論理」に立っていないことが明らかである。当事者双方が参加し、他のいかなる国や国際組織も平等に自由に参加することを謳っている。また、「4」にあるように、「核兵器の使用を禁じる」という意味では、ロシアに一定の圧力を与えることになる。停戦交渉を行なう時に、戦争をしている当事国を招かないで、片方の国だけが相手国を排除した形で仲間を集めるのでは、停戦に結びつくはずがない。おまけにゼレンスキー和平案はロシア軍が2014年以前までの状態に戻るまで一人残らずウクライナから撤退するというのが絶対条件で、ウクライナの完全勝利以外の結果は絶対に受け付けない。しかし欧州外交問題評議会(ECFR)が今年1月に行った世論調査(※3)では、「わずか10%の欧州人しかウクライナの勝利を信じている人はいない」ことがわかった。この状況でゼレンスキー案が受け入れられる可能性は極めて低いだろう。もちろんロシアがウクライナに軍事侵攻したのが悪い。しかし、そこに追い込んだバイデン政権(副大統領時代からのバイデン個人の動き)を考えると、ロシアだけを一方的に非難することもできない。バイデンは2013年末にウクライナでNED(全米民主主義基金)をフル活用してマイダン革命を仕掛け、ウクライナの親露政権を転覆させ、親米傀儡政権をウクライナに樹立させた。もし仮に日本に激しい反中政権があり、中国共産党が日本で暗躍して日本の反中政権を転覆させ、日本に親中政権を樹立させるようなことがあったとしたら、日本は許すだろうか?あり得ない他国干渉であり、国際秩序を激しく乱すものとして全力で厳しく抗議するだろう。その同じことをアメリカがウクライナでやっているのに、なぜそこはスルーするのか。アメリカなら何をやっても許されるのか。アメリカの都合で(NEDの見えない糸の影響下で)動く日本のメディアは、真相から目をそらさせ、結局のところ日本を戦争へと導いている。そのことを、より多くの日本人が、上記の矛盾からも洞察してくださることを祈らずにはいられない。この論考はYahoo(※4)から転載しました。ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mfa.gov.cn/wjdt_674879/wjbxw_674885/202405/t20240523_11310686.shtml(※3)https://ecfr.eu/publication/wars-and-elections-how-european-leaders-can-maintain-public-support-for-ukraine/(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557 <CS> 2024/06/17 10:55 GRICI ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】 *10:54JST ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(1)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。6月15日から16日にかけてスイスでウクライナ戦争の停戦に関して「ロシアの参加を排除したゼレンスキー案」に基づいたウクライナ平和サミットが開かれている。会議にはロシアを参加させないという条件があるため、中国は参加しないと表明していた。それに対してウクライナのゼレンスキー大統領は6月2日、シンガポールでの「アジア安全保障会議」で「中国がウクライナ平和サミットに参加しないように各国に呼び掛けている」、「中国は戦争支持者だ」と激しく中国を非難した。だというのに、6月13日になるとイタリアG7サミット後のバイデン大統領との共同記者会見で、突如、「習近平は電話会談でロシアに武器を送らないと約束している」と中国擁護に回り、バイデンが慌てて否定する場面があった。ロシアを含めたすべての国が平等に参加すべきとする「中国&ブラジルが提案している和平案」とともに、何が起きたのかを検証する。◆前言を翻(ひるがえ)したゼレンスキー6月2日、シンガポールのシャングリラホテルで開催されていた「アジア安全保障会議」に出席したゼレンスキーは、記者会見で「中国が他国にウクライナ和平サミットに出席しないよう圧力をかけている」(※2)と非難し、また「中国はロシアの手先であり、戦争の支持者だ」(※3)とまで言って中国を激しく罵倒した。そのゼレンスキーは6月13日になると突然、G7サミットでのバイデンとの共同記者会見で「習近平国家主席がゼレンスキーとの電話会談で、中国がロシアに武器を売却しない」(※4)と約束したと言い出した。この電話会談がいつ行われたものかに関しては触れていない。しかしゼレンスキーは「習近平が立派な人物であれば、私に約束した以上、売却しないだろう」と述べたという。すると、共同記者会見に臨んだバイデンは「武器を生産する能力とそれに必要な技術を提供している。つまり、中国は実際にロシアを支援している」と述べ、反論したほどだ。このことは、<中国に対する見方で温度差 対ロ支援巡って―米ウクライナ首脳>(※5)など、日本の少なからぬメディアも報道している。では、6月2日から13日迄の間に、いったい何が起きたのだろうか?◆ウクライナ高官が訪中し、ゼレンスキーはサウジアラビアに飛んでいた2日のゼレンスキーによる激しい対中批難が公表されると、中国外交部の報道官は定例記者会見で直ちに「中国がウクライナ平和サミットに出席しないように他国を説得した事実は皆無だ!」(※6)と反論し、王毅政治局委員兼外相は6月4日に、訪中していたトルコのフィダン外相と北京で共同記者会見をし「中国はスイスが(ウクライナ平和サミットのために)行った作業を非常に尊重し、スイス側に対して建設的な提案を繰り返し行い、スイス側は常にこれを称賛し、感謝してきた」と述べ(※7)、暗にゼレンスキーの発言を否定した。すると、ウクライナの外務省はそのウェブサイトで<王毅発言に対する(肯定的な)コメントを発表>(※8)し、その翌日の6月5日には、あわててウクライナのアンドリー・シビハ第一副外相(第一外務次官)を北京に派遣し(※9)、中国の孫偉東外交部副部長と会談。それは電光石火のような勢いで、アンドリー・シビハ氏は続けて中国政府の李輝・ユーラシア担当特別代表(※10)および中共中央聯絡部の陳州副部長とも会っている。さらに翌6日には上海に飛び、上海全人代常務委員会副主任(※11)と会談し、さらに中国の13社の企業代表(※12)と面談した。中国はウクライナの最大貿易国で、中国はこれまでウクライナとの友好を重んじ、ウクライナに対する人道支援金などもしてきた。その中国を敵に回すのは賢明でないと判断したためだろう。李輝はこれまで何度もウクライナを訪問して、中国の和平案に関して説明し、かつゼレンスキーから称賛を得ている。今般の中国&ブラジル案に関しても事前にウクライナを訪問し了承を取り付けてから公開している。そのことをゼレンスキーは思い出したのかもしれない。さらに決定打的なことがあった。中国がイランとサウジアラビアを和解させてからは、サウジアラビアの中国への接近が激しくなっている。そこでゼレンスキーは6月12日にサウジアラビアを訪問しムハンマド皇太子と会談している(※13)のだ。スイスで開催するウクライナ平和サミットへの参加を呼びかけたが、どうやらムハンマド皇太子は断ったようだ。平和サミットは首脳級が参加することになっているが、ムハンマド皇太子は結局参加せず、義理のように外相を参加させてお茶を濁した。それもそのはず、5月31日には北京で中国・アラブ諸国協力フォーラム第10回閣僚級会議(※14)が開催され、父親の病気で出席できなかったムハンマド皇太子の代わりに外相が出席し、王毅と会談したばかりだ。さらに6月10-11日にロシアで開催されたBRICS外相会議にも二人は揃って出席している。もちろん中国&ブラジル案が提唱している和平案にサウジアラビアは賛同している。したがって、むしろ、ゼレンスキーに、あのような対中批判などすべきではないと説教した可能性さえある。あれだけウクライナをも支援してきた中国を敵に回せば、それこそゼレンスキー自身が世界を二分させる冷戦構造を形成するのに貢献することになる。このような経緯があり、ゼレンスキーは対中批判を引っ込めたものと考えられる。なお、電話会談は2023年4月に行われたもの(※15)を指しているとしか考えられず、「あの時の習近平との約束を忘れたのか」と諭されたのではないかと思うのである。だから今頃になって1年ほど前の習近平との電話会談を持ち出したのではないだろうか。「ゼレンスキー大統領はなぜ対中批難を引っ込めたのか? ウクライナ戦争和平案を巡り(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo(※16)から転載しました。ウクライナのゼレンスキー大統領 写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://apnews.com/article/ukraine-singapore-shangrila-russia-defense-94ebb72539182a0215c85895725cdd48(※3)https://edition.cnn.com/2024/06/02/europe/zelensky-ukraine-shangrila-address-intl-hnk/index.html(※4)https://jp.reuters.com/world/ukraine/BH666KDFL5IWHCTTLO32WRVUBA-2024-06-13/(※5)https://www.jiji.com/jc/article?k=2024061400319&g=int(※6)https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202406/t20240603_11375826.shtml(※7)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202406/t20240604_11376586.shtml(※8)https://mfa.gov.ua/en/news/komentar-mzs-ukrayini-shchodo-ostannih-zayav-ministra-zakordonnih-sprav-knr(※9)https://mfa.gov.ua/en/news/ukrayina-ta-kitaj-proveli-politkonsultaciyi(※10)https://www.fmprc.gov.cn/web/wjdt_674879/sjxw_674887/202406/t20240606_11377617.shtml(※11)https://mfa.gov.ua/en/news/andrij-sibiga-proviv-zustrich-iz-zastupniceyu-golovi-postijnogo-komitetu-narodnih-zboriv-shanhayu(※12)https://mfa.gov.ua/en/news/andrij-sibiga-proviv-zustrich-z-predstavnikami-dilovih-kil-knr(※13)https://jp.reuters.com/world/ukraine/5WGJXPGG3RIT3BO2673BKD7HUU-2024-06-13/(※14)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202405/t20240531_11366748.shtml(※15)https://www.president.gov.ua/en/news/vidbulasya-telefonna-rozmova-prezidenta-ukrayini-z-golovoyu-82489(※16)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/579e120ba0f51cf3384ad9463fbddb948fa72557 <CS> 2024/06/17 10:54 GRICI 中露蜜月はなぜ堅固なのか? プーチンは習近平にスパイ極秘情報を渡していた【中国問題グローバル研究所】 *10:41JST 中露蜜月はなぜ堅固なのか? プーチンは習近平にスパイ極秘情報を渡していた【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月16日に訪中したプーチン大統領は、習近平と12時間にわたって時間を共にしているが、どうやらその間にプーチンが習近平に極秘スパイ情報を渡していたことがのちにわかった。それは中露両国政府を転覆させようとする外国勢力による中露国内におけるスパイ活動のリストらしい。6月15日から16日にかけてスイスでウクライナ戦争の停戦案に関する会議が開催されるが、ロシアが呼ばれていない上に、中国&ブラジルによる共同の和平案を新たに公開していることなどから習近平も出席しない。その背後には「秘密スパイ情報」によってますます強固になっていく二人の蜜月がある。「外国勢力」とは誰のことを指すのか?世界はその「外国勢力」によって大きく二分されながら重要な転換点を迎えようとしている。◆中露首脳会談とスパイ極秘情報もう1ヵ月ほど前のことになるが、今年5月16日、プーチンは北京を訪問し習近平と会談した(※2)。中露国交樹立75周年記念であることと、習近平が三期目の国家主席に就任した後に最初に訪問したのがロシアであったためその返礼としてプーチンが5度目の大統領に就任したので、最初の訪問国を中国にしたと、双方が言っている。首脳会談では「中露国交樹立75周年に当たっての新時代の全面的パートナーシップに関する共同声明」(※3)を発表したり、16日の夜には中南海で二人だけの会談をしたり(※4)などしたことは、広く知られているところだ。その合計の接触時間は12時間以上であったと、ロシアのタス通信は伝えている(※5)。注目すべきは5月18日にロシアの衛星通信であるスプートニクが爆弾情報を公開したことである。5月18日、<ロシア議会下院:中国とロシアに対する政府転覆活動に関する資料がロシアから中国に渡された>(※6)というスプートニクの情報が中国語に翻訳されて報道された。そこには以下のようなことが書いてある。――ロシア議会下院のロシア内政干渉調査委員会のワシーリー・ピスカレフ委員長は、ロシアと中国の政府を転覆させようと活動している外国組織の情報を、最近ロシアが中国側に渡したと述べた。同委員会のテレグラム・チャンネルは、ピスカレフ氏の発言を引用して「われわれは最近、ロシアと中国に対する外国組織の政府転覆活動に関する資料を中国側に渡した」と報道した。ピスカレフはまた、「新たな挑戦や脅威に直面し、ロシアと中国に対する外圧が日々高まる中、当該委員会は近い将来、ロシアは中国というパートナーとの協力を継続し、外国の干渉に対する主権と立法を保護する最も優れた方法を実施する計画である」と表明した。報道は以上で、非常に短いものだ。◆中国とは事前に調整し合っていたのか?中国の民間ウェブサイト騰訊新聞 (qq.com)は5月20日、この情報に関して<ロシアは機密資料を送った、外国による政府転覆活動、国家安全部(国安部)は集中的に情報発信、西側スパイは大きな問題に直面している>(※7)という見出しで、かなり長文の報道をしている。報道の一部には以下のようなことが書いてある。――外国が中国に対して政府転覆活動を行なっているのは、決して驚くべきことではない。中国の国家安全部は国務院のすべての部局の中で最も「謎」が多く、公式ウェブサイトがない唯一の部局でもある。この部局に関する外部の情報は公安部部長の名前と履歴に限られており、その他は一切知らされていない。しかし、そんな謎の部門が昨年7月末、独自のWeChat公式アカウントを開設し、通報(密告)チャンネルを発布した。もし外国による中国政府転覆活動がますます横行していないのだったら、何のために国家安全部が舞台裏から表舞台に出る必要があるのか?最近、国家安全部はスパイ摘発事件のニュースに関してWeChatの公開アカウントを集中的に更新している。5月17日、国家安全部は、航空宇宙分野における複数のスパイ事件の摘発経過を紹介する文書を発表した。それによれば5月13日、国家安全部は、スパイが外国人教授になりすまして我が国の生態系データを盗んだ事件を明らかにした。また、利益誘導やポルノ誘惑などの手段も使用されているのを確認している。現在、国家安全部は基本的に週に 2 ~ 3 件の特別報告を報道しており、これは、スパイ事件が毎週偵察され看破されていることを意味する。(騰訊新聞からの引用は以上)◆「外国勢力」の正体は「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)いうまでもなく、極秘情報が言うところの「外国勢力」の正体は、基本的に「第二のCIA」と呼ばれているNED(全米民主主義基金)だ。ロシアでは2012年から「外国の代理人」法を設け、予算の20%以上を外国から提供されている団体に対し、いわゆる「外国の代理人」として登録することを義務づけている。2024年には、「団体」を「個人」にまで拡大させた。それは、2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※8)の4回シリーズを通して書いたように、ソ連時代からアメリカは何としてもソ連を倒したいとしてNEDに暗躍させてきた。そのことは2023年10月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartI>(※9)で考察した。特に近年は、コラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※10)の図表2で示したアレクセイ・ナワリヌイのように、NEDの支援金の活動対象が特定の人物に象徴されるようになってきた。だからプーチンは「外国の代理人」を組織団体から個人にまで拡張したものと思われる。習近平の場合も、「反スパイ法」の強化や香港特別行政区の国家安全維持法制定などを断行して、NEDが中国に潜り込んで(あるいはネットを使って)中国政府の転覆を謀ろうとしているのを必死で抑え込もうとしている。◆アメリカは中露を離間させたいが、アメリカにより中露は蜜月化その結果、習近平もプーチンも、互いの国をNEDの政府転覆活動から守ろうと、絆を一層強くさせている。習近平にしてみれば、2014年にNEDが主導したマイダン革命によりウクライナの親露政権が転覆させられたように、万一にもロシアに潜り込んだNEDによってプーチン政権が転覆させられロシアが民主的政権にでもなろうものなら、中国包囲網が強靭化し、ほぼ四面楚歌に至ると懸念しているだろう。それだけは絶対に避けねばならないと習近平は思っているだろうから、何が何でもプーチンを応援する方向に動いている。ただウクライナへの軍事侵攻をしたプーチンの軍事行動を容認すると、中国にいるウイグル族やチベット族などが他国に助けを求めたときに他国が中国に侵攻していいことになってしまうので、それだけは絶対に認めていない。それでいながらプーチン政権には絶対に崩壊してほしくないので、何としてもプーチンとの絆を深めてプーチン政権(あるいは専制主義的政権)の持続を望んでいるだろう。NEDの暗躍による政府転覆のリスクという共通項があれば、なおさら絆は深くなる方向に動く。◆中露が民主化してしまうと、実は困るアメリカしかし、万一にもだが、ロシアに民主的な政権が生まれ、それに伴って中国も民主化してしまった場合、実はアメリカは困るのではないだろうか。NEDを主導するネオコンは、基本的に軍事産業を国家運営の骨格に置いているので、中露という大国が平らかに民主化してしまった時に、「戦争を仕掛けていく暗躍の場」がなくなり、「民主の衣」を着て非親米的政権を倒す場がなくなって、活躍の対象を失う。何と言ってもロシアに民主的政権が生まれて、ロシアが欧州と仲良くなってしまうと、NATOの存在意義がなくなるので、アメリカの軍事産業は行き場を失い、「君臨する相手国(NATO諸国)」が存在しなくなるので、逆にアメリカによる世界の一極支配は衰退する方向に傾いていくと言っても過言ではない。トランプ政権が復活しても、トランプは大統領任期中に何度も「NATO無用論」を唱えてきたし、「アメリカ・ファースト」であって「他国の民主化」などに余計な力を注いで軍事ビジネスで国家運営をしていこうというネオコン系列ではないので、類似の現象は起きるかもしれない。現在、ゼレンスキーが唱えるウクライナ戦争和平案に基づく会議に参加する国の数は約90ヵ国・国際組織で、中国&ブラジルが唱える和平案に賛成する国は101ヵ国・国際組織である。これらの国の一部は重複しているかもしれないが、少なくとも全人類の85%は対露制裁に加わっていないので、残り15%の人類をアメリカ側に引き寄せているに過ぎない現状は、すでにアメリカの劣化を物語っている。中露の絆の強化は、その趨勢の中での分岐点をわれわれに突きつけている。もっとも、それでもなお、習近平がプーチンの足元を見ていることは拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第五章 ウクライナ戦争と「嗤う習近平」】で詳述した。この論考はYahoo(※11)から転載しました。訪中したプーチン大統領と習近平国家主席 写真: 代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240516_11305617.shtml(※3)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240516_11305860.shtml(※4)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202405/t20240517_11305902.shtml(※5)https://tass.com/politics/1789297(※6)https://sputniknews.cn/20240518/1059159252.html(※7)https://new.qq.com/rain/a/20240520A044NL00(※8)https://grici.or.jp/4885(※9)https://grici.or.jp/4683(※10)https://grici.or.jp/4885(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7781d9020315b44953fb4abc6543363ffe7c08f0 <CS> 2024/06/14 10:41 GRICI 禁止令を出しながらTikTokで若者の大統領選人気を競うバイデンとトランプ【中国問題グローバル研究所】 *10:25JST 禁止令を出しながらTikTokで若者の大統領選人気を競うバイデンとトランプ【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国企業バイトダンス(ByteDance)が運営する動画アプリTikTokの米国内でのアプリ配信禁止令法案を超党派で可決しておきながら、バイデン大統領もトランプ前大統領もTikTokのアカウントを持ち、大統領選で若者層を取り込もうと競っている。禁止令に従わなければ米国に売却しろと言われたTikTok側は、禁止令は憲法に違反しているとして差し止めを求める訴えを起こした。大統領選のためなら、どんなに矛盾したことでもするアメリカだが、バイデンは自分自身が選挙活動のためにTikiTokを利用しながら禁止令を出し、トランプは禁止令に反対し最近になってTikTokの公式アカウントを設定し、バイデンのフォロワー数を遥かに超えている。中国との関係において、この現象を考察してみたい。◆バイデンがTikiTokの米国内での配信禁止令を出したわけ2024年3月13日、アメリカ議会下院は安全保障上の懸念があるとして、中国の企業バイトダンス(中国語では「抖音=ドウイン」)が運営するTikTokの米国内でのアプリ配信禁止令法案を超党派で可決した。米国内での事業を180日以内にアメリカに売却しなければ米国内での配信を禁止するというものだ。理由は「敵対国からの安全保障上の脅威」だとしているが、実は米大統領選におけるプロパガンダであるとする見解が、身内のバイデン政権側からも出ている。3月13日、国家情報長官のアヴリル・ヘインズ議員は下院情報委員会の公聴会で「中国はソーシャルメディア・アプリTikTokを使って2024年のアメリカ大統領選挙に影響を与える可能性がある」と語っていると、イギリスメディアのザ・ガーディアン紙が報道している(※2)。4月23日には米議会上院でも賛成79票、反対18票で可決され、4月24日にバイデンが大統領として署名し禁止令は成立した。それによれば、ByteDanceは法案の可決から270日以内にTikTok事業を米国に売却しなければならず、株式保有率は20%未満でなければならない。この計算に基づくと、ByteDanceがTikTokの米国事業を売却する期限は2025年1月19日となる。この期限が、バイデンが米大統領としての現在の任期の最終日であることは注目に値する。最初の「180日以内」から「270日以内」に延期したのは、米国各地で禁止令に反対する抗議デモが若者を中心に展開されたため、大統領選においてバイデンに不利に働くことに気が付いたからだろうが、そもそも禁止令を出したのも、やはり大統領選でバイデンに不利に働くと判断したからと思われる。というのは、前回の大統領選が行われた2020年における若者層(30歳未満の有権者)の支持率は、バイデンが61%だったのに対し、トランプはわずか36%でしかなかった。ところが2024年2月25日から28日にかけてFOXニュースが行った調査では、若者層の51%が今年11月の大統領選ではトランプに投票する予定だと回答したのに対し、バイデンに入れると回答したのは45%に留まったとのこと。だからこそバイデンは、若者が多く使っているTikTokの使用禁止令を出したものと考えることができる。◆禁止令に反対したトランプがTikiTokにアカウントを設け一気に人気上昇その証拠に、最初にバイデンが禁止令を言い出したときに、トランプは間髪を入れずに「禁止令反対」を表明した。トランプは3月11日に、アメリカのニュース専門放送局CNBCの取材を受け、TikTok禁止令に反対したと、CNBCは以下のような形で報道している。――2017年から2021年まで米大統領を務めたドナルド・トランプは月曜日(11日)のCNBC番組「スクワークボックス」のインタビューで、「TikTokがなくなれば、フェイスブックを大きくすることになってしまう。フェイスブックは国民の敵だと私は考えている」と語った。(中略)さらに 「TikTokを気に入っている人はたくさんいる。TikTokがなければ気が狂ってしまうような若い子さえ大勢いる」とトランプ前大統領は語った。事実、アメリカにおけるTikTok利用者の数は1億7000万人に上る。アメリカの総人口は2021年統計で約3億3000万人だ。そのうち赤ちゃんや超高齢者などスマホやiPadなどを使えない人口を考えると、大まかに言って50%以上がTikTokを利用していることになろうか。その内の有権者の数を考えれば無視できない要素となる。そこでトランプは、5月30日に有罪判決が出るとすぐ、6月1日にTikTokの公式アカウントを設定した。するとフォロワー数が1日で300万人を超え、その3日後には400万人を超えた。今年2月にTikTokを利用し始めたバイデン陣営のフォロワー数34万人の10倍越えだ。トランプ自身、大統領在任中は、国家安全保障上の懸念を理由にTikTokの使用を禁じる大統領令に署名しているが、カリフォルニア州の連邦地裁が「言論の自由」への懸念を理由に、同命令を差し止める判断を下している。◆TikTok 中国親会社が「表現の自由を侵害した」として米政府を提訴一方、TikTokは中国の親会社とともに5月8日(米時間7日)、「この法律(禁止令)は憲法に違反している」として差し止めを求める訴えを起こした(※3)。訴状の中でTikTok側は「憲法に違反し、憲法で保障された表現の自由を侵害するものだ」と指摘し、「配信を停止しなければTikTokを米国に売却するという条件は、商業的にも、技術的にも、法的にも不可能だ」と主張している。つまり、絶対に売却しないということだ。TikTok側の「禁止令は表現の自由に反する」という主張が、米国内の若者を中心とした「禁止令抗議デモ」の主張と一致するというのも、なんとも奇妙な話だ。TikTok側では、トランプ政権時代にも、「言論の自由」を理由にTikTok配信禁止令を連邦地裁が取り下げていることを強みとして、勝算は高いと見ているようだ。もし勝てば、米中言論闘争に関して「中国側が自由を勝ち取った」という、実にねじれた社会現象が生まれることになる。◆トランプが「絶対にTikTokを禁止しない!」と強く表明6月7日、トランプは「ターニング・ポイントUSA」の創設者チャーリー・カーク氏との対談で、若い有権者にリーチするためのより大きな戦略について語った際に<「私は絶対にTikTokを禁止しない!」と、非常に強いトーンで誓ったという>(※4)。そしてバイデンを「史上最悪の大統領」と呼んだそうだ。アリゾナ州のタウンホールでトランプをもてなしたカーク氏は、トランプを「TikTok お気に入りの大統領」と呼んで、トランプとのやり取りのTikTok動画にキャプションを付けている。トランプがTikTok支援側に立つようになったのは、自身の選挙運動への大口献金者で、バイトダンスの15%の株を保有するジェフリー・ヤス氏と会ったからだ(※5)と一部に報じられたが、トランプはそれを強く否定している。◆中国はトランプを応援しているのか?この流れから見ると、あたかも中国がトランプを応援していて、それがTikTokに反映され、バイデンに不利になっているように見える。中国政府自身は「他国の選挙干渉」として何も表明しないが、しかし実際上、バイデンが「台湾有事の際には米軍が台湾を応援する」と何度も表明し台湾独立を煽っているのに対して、トランプは台湾有事に関してはノーコメントを貫いている。その意味において、当然中国はトランプに当選してもらった方が「まだマシか」とは思っている可能性が高い。この分析に関しては、別の機会に譲りたい。なお詳細は拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第一章 TikTokと米大統領選と台湾有事】で考察した。この論考はYahoo(※6)から転載しました。写真:ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.theguardian.com/technology/2024/mar/13/china-tiktok-us-election-influence-avril-haines-us-house-of-representatives(※3)http://www.news.cn/world/20240508/2a72b7b61e3340428a44d99fdf2c3527/c.html(※4)https://nypost.com/2024/06/07/us-news/trump-vows-he-will-never-ban-tiktok-in-strongest-statement-yet-on-social-media-giant/(※5)https://nypost.com/2024/03/07/us-news/billionaire-tiktok-investor-bullies-lawmakers-to-stop-sale/(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/58858e2b9af412bdf5b4383254b09e51b1a0fe70 <CS> 2024/06/10 10:25 GRICI アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威【中国問題グローバル研究所】 *10:29JST アメリカがやっと気づいた「中国は戦争をしなくても台湾統一ができる」という脅威【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月13日、アメリカン・エンタープライズ研究所と戦争研究所の共同プロジェクトである台湾連合防衛プロジェクトは、「中国は軍事侵攻ではない形で台湾統一をするつもりで、われわれは長いこと、それを見逃してきた」という趣旨の共同報告書を発表した。同日、アメリカメディアのTHE HILLも「中国は台湾統一をするために(台湾を)侵略する必要はない」というタイトルでこの報告書を報道。これは正に筆者が長年にわたって主張し、警鐘を鳴らし続けてきた分析とほぼ完全に一致しており、アメリカがやっとその事に気が付いてくれたかと、感慨深い。5月23日のコラム<中国の威嚇的兵器ポスターと軍事演習 頼清徳総統就任演説を受け>(※2)で書いた今般の軍事演習も、実はその作戦に沿ったものなのである。軍事演習をしているのに「戦争をしない」などと言えるのかと思われる方もおられるかもしれないが、むしろ、それこそがアメリカを勘違いさせてきたキーポイントだ。拙著『嗤(わら)う習近平の白い牙』の【第三章 習近平は台湾をどうするつもりなのか?】で詳細に分析した「港湾封鎖作戦」により、回答を示した。◆アメリカン・エンタープライズ研究所と戦争研究所の共同報告書5月13日、アメリカのシンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所(American Enterprise Institute=AEI)と戦争研究所(Institute for the Study of War=ISW)の共同プロジェクトである「台湾連合防衛(Coalition Defense of Taiwan)」プロジェクトは、<From Coercion to Capitulation: How China Can Take Taiwan Without a War(威圧から降伏へ:中国はいかにして戦争をせずに台湾を奪取できるか)>(※3)というタイトルの共同報告書(以下、報告書)を発表した。この報告書に関して、アメリカの政治専門紙THE HILL(ザ・ヒル)は同日、<China doesn’t need to invade to achieve Taiwanese unification(中国は台湾統一のために侵略する必要はない)>(※4)という見出しの報道をしている。報告書と報道によれば、結局のところ「アメリカがこんにちまで行ってきたシミュレーションの盲点に気が付いた」と、率直に認めている。その盲点というのは、主として、1.アメリカは台湾の防衛に関し、中国の侵攻を抑止または打ち負かすことにほぼ専ら焦点を当てており、すでに進行中の可能性の高いシナリオである「侵略には程遠い形で台湾を北京の支配下に置く中国の威圧作戦」をほとんど無視してきた。2.中国は、いわゆる武力攻撃によって台湾を統一するのではなく、「台湾周辺における軍事演習を強化し、台湾行きの船舶の立ち入り捜査を通して、台湾を準封鎖状態に置く」などの手段によって統一を成し遂げるだろうことに気が付いた。3.中国はそれにより次の総統選挙である2028年を目標にして、中台和平協定の締結に持ち込むつもりだ。このことに警戒せよ。(報告書と報道のまとめは以上)◆習近平の「港湾封鎖作戦」 台湾のエネルギー資源は2週間しか持たない冒頭で書いた拙著『嗤う習近平の白い牙』の【第三章 習近平は台湾をどうするつもりなのか?】で、徹底して分析したのが「台湾港湾封鎖作戦」で、これは報告書の「2」に合致する。第三章で特に焦点を絞ったのは「台湾のエネルギー資源」の問題である。習近平は台湾の平和統一を第一の目標に置いているが、もし台湾が独立を叫び、どうしても武力によって独立を阻止するしかないところに追い込まれた場合は、「台湾包囲作戦」を考えている。なぜなら「台湾の港湾を封鎖し、エネルギー資源を遮断すれば、台湾は2週間しか持たない」からだ。台湾はエネルギーを自給自足できず、2022年データで97.3%を輸入に頼っている。エネルギー資源は主として液化天然ガス(LNG)と石炭だが、その入り口は港湾だ。貯蓄量は2週間ほど(天然ガスの在庫は11日間、石炭の在庫は39日間)しか持たないため、港湾を封鎖してしまえば、台湾島に武力攻撃をしなくても、台湾を降参に追い込むことができる。台湾は島国なので、天然ガスのパイプラインを敷くことができないから、天然ガスは全て「液化天然ガス」で、港湾から入ってくる。台湾政府の「2022年(民国111年)發電概況」(※5)によると、2022年の発電源の割合は、・石炭:42.0%・液化天然ガス:38.%・原子力発電:8.2%・再生エネルギー:8.3%%・その他:2.6%となっている。つまり発電量の80.9%は石炭と天然ガスとなる。原発はたったの8.2%で、港湾を封鎖されたときに、半導体製造を動かすことは不可能だ。半導体製造には多くの電力を必要とし、2022年ではTSMC一社だけで、台湾の全エネルギー源の7.5%を使う(※6)。原発で市民の基本インフラを保ち、政府の基本機能のネット連絡を保ち、かつ半導体製造を機能させるということは不可能だということが言える。太陽光発電は2022年の再生エネルギーの44.8%を占めているが、8.3%の内の44.8%だから全体の3.7%くらいしか占めておらず、何もできない。民進党は原発絶対反対で、国民党や民衆党は原発推進派だが、現在の立法院でエネルギー資源に関して妥協し改善しなければ、台湾の安全は保障されない。習近平はここに焦点を当て、「港湾封鎖」のための軍事演習をくり返している。港湾を封鎖するだけで、台湾島自体への砲撃は行わないから、台湾の一般市民の命が砲撃により失われることはない。つまり地上戦は行わないということだ。その意味では「台湾武力攻撃」という「戦争」ではない。この手段を採用すれば、習近平が「喉から手が出るほどに欲しい」TSMCなどの最先端半導体産業を傷つけることもないし、統一後に「親族の命を奪われた」として中共を激しく恨む台湾人も出てこない(→統一後に増加しない)ので、中国共産党による一党支配体制が、「怨みによって起きる暴動(あるいはクーデター)」などによって崩壊に追い込まれる危険性も少なくなるだろうという計算だ。◆5月23-24日の軍事演習「聯合利剣―2024A」の位置づけ中国人民解放軍東部戦区が23日から24日にかけて行った軍事演習「聯合利剣―2024A」は東部戦区の「陸軍、海軍、空軍、ロケット軍」などの兵力を総合的に結び付けた軍事演習だが、この「2024A」の「A」に注意しなければならない。今後必ず「B、C、D…」と続き、かつ「2025A…」も2025年になったら始まるものと位置付けた方がいい。それは「2026A…」、「2027A…」と続き、報告書にある通り、「2028年の総統選」の時には、台湾人が「もう嫌気がさして、中台平和協定締結する政党を選ぶ」というところにまで至るだろうというのが、報告書の見立てと一致するところとなる。今般の「聯合利剣-2024A」の特徴は、「海空合同戦闘即応性パトロール」、「戦場総合支配権の合同奪取」などを重点的に訓練し、艦艇や航空機が台湾島周辺に接近した際の「即応性パトロール」や「列島線内外一体化連動」などを実施している点だ。これは報告書の「2」に書いた「船舶の立ち入り検査」の訓練に相当し、実際、中国の中央テレビ局CCTVはその訓練の様子を<海警2304艦隊が台湾島東方海域で総合的な法執行訓練を実施した>(※7)という見出しで報道している。準拠する法は、日本の海上保安庁法(※8)第十七条にもある「疑義がある場合」の「船舶の進行を停止させて立ち入り検査」をする権利と同じで、中華人民共和国海警法(※9)第十六条 や第十八条にある立ち入り検査をする権利に基づくものと思われる。これにより、たとえば台湾に武器やエネルギー資源を輸送する船舶などにターゲットを絞って運行を停止させ、事実上の海上封鎖を行うに等しい行動に出るものと推測される。◆習近平の哲理「兵不血刃(ひょうふ・けつじん)」筆者は昨年『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で習近平の哲理である「兵不血刃」に関して詳述した。これは「刃(やいば)に血塗らずして勝つ」という意味で、毛沢東もこの哲理に基づいて「長春食糧封鎖」を断行し、数十万に及ぶ長春市内の一般庶民を餓死に追いやって、国民党が支配する長春を陥落させた。この長春陥落によって、中国共産党軍は一気に南下して、全中国解放を成し遂げるに至ったのである。この国共内戦における蒋介石率いる国民党の逃れた先が台湾で、筆者にとって台湾は、あの『もう一つのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』の終着点でもある。だから中国共産党がいかにして「チャーズ」の終着駅である台湾問題を解決させるかは、筆者の生涯の強い関心事でもあるのだ。その執念に基づいて追いかけてきた台湾問題に関して、筆者が結論に至った「台湾港湾封鎖作戦」が、奇しくもアメリカのシンクタンクの分析と一致したことに、言葉には表せないほどの複雑で深い感慨を覚える。「台湾有事」とはしゃがずに、一人でも多くの日本人が、筆者とアメリカのシンクタンクが一致したこの視点を共有してくれることを望まずにはいられない。そうしてこそ、真の警鐘を鳴らすことができると信じるのである。なお、『嗤う習近平の白い牙』の「白い牙(きば)」は、「兵不血刃」の構えを表しており、「牙を血で紅く染めない(=野心はあるが、自ら積極的に戦争はしない)」の意味である。この論考はYahoo(※10)から転載しました。写真: 習近平国家主席(ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5258(※3)https://www.aei.org/research-products/report/from-coercion-to-capitulation-how-china-can-take-taiwan-without-a-war/(※4)https://thehill.com/opinion/international/4657439-china-doesnt-need-to-invade-to-achieve-taiwanese-unification/(※5)https://www.moeaea.gov.tw/ECW/populace/content/Content.aspx?menu_id=14437(※6)https://ec.ltn.com.tw/article/paper/1592848(※7)https://news.cctv.com/2024/05/24/ARTINDoASE8etSa06Wf1WOJV240524.shtml(※8)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000028(※9)http://legal.people.com.cn/n1/2021/0202/c42510-32019526.html(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/cb76207f7cf4ea0ef222967c9fb398d2b34f728e <CS> 2024/05/27 10:29 GRICI 全人代会期中の「経済・外交・民生」三大主題記者会見はボトムアップ【中国問題グローバル研究所】 *10:27JST 全人代会期中の「経済・外交・民生」三大主題記者会見はボトムアップ【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。11日に閉幕した全人代(全国人民代表大会)を、日本のメディアはこぞって「習近平への権力一極集中が強化された大会だった」と結論付け「より不透明になった」と批判しているが、中国の政治構造の真相を正確に知っていれば、そういう解釈は出てこないはずだ。たしかに全人代閉幕後の国務院総理記者会見は無くなったが、しかし会期中に開催された前代未聞の規模と数にのぼる国務院各中央行政省庁側の内外記者会見は、政府活動報告審議に反映されるという意味でボトムアップだったと言える。中央行政省庁は、「政府活動報告における2024年計画を、実際にいかにして実行するかを明確にして責任を負う側」と位置付けることができ、むしろ政府方針がよりオープンになったと見るべきだ。その証拠に国務院組織法の改正には、「政務の公開を堅持する」という言葉が新たに加わっている。その一方で、同じ改正国務院組織法で党の指導を明確にするなど、憲法に書かれていた党と政府の関係が表面化しているが、これは中国大陸内にもNED(全米民主主義基金)が入り込み、中国政府転覆を狙っているため、第二のゴルバチョフにならないための措置であるとみなすことができよう。◆政府活動報告の冒頭で「外部圧力」強調3月5日の全人代初日で李強国務院総理は政府活動報告を行った(※2)が、開口一番「異常なほどの複雑な国際環境」のもと、「全国の各民族人民は外部圧力に耐え」という言葉を発したのを聞いた時は、ハッとした。これまでの政府活動報告で「外部圧力」というストレートな言葉までが出てきたのは初めてだからだ。事実、2023年の活動報告の冒頭(※3)では「荒れ狂う国際環境」とあるだけで、2022年の政府活動報告の冒頭(※4)では、「複雑かつ厳しい国内外情勢」とあり、2021年の政府活動報告(※5)では、「コロナ」が強調されているだけだ。その意味で今般李強が「複雑な国際環境」に重ねた「外部圧力」という言葉は、中国が如何にアメリカを中心とした西側諸国からの圧力に苦しんでいるかが窺(うかが)われる。日本が半導体産業で世界一になった時、アメリカは「安全保障問題に係わる」として日本の半導体産業を叩き潰した。自動車産業も同じだ。どの国であれ、アメリカを凌駕しそうな国や産業分野が現れると、アメリカは叩き潰さずにはおられない。いま最も集中的に潰さなければならないのは中国なので、中国が少しでもアメリカを抜いて発展しそうな産業分野があると、アメリカは中国に制裁をかけ「安全保障上の問題がある」という理由で叩き潰している。それを李強は「外部圧力」という言葉で表現したのだ。逆に言えば、ある意味、2月27日のコラム<NHKがCIA秘密工作番組報道 「第二のCIA」NEDにも焦点を!>(※6)で書いたNHKの番組が示したように、CIA同様、まず特定の国の印象を極点に悪くすることにNEDは成功していることになる。いま現在、その「特定の国」は中国で、中国はNEDが潜伏しているので反スパイ法を強化し、それによって海外企業が離れていき、アメリアによる対中制裁と相まって、中国経済を苦しくしているという現実を浮き彫りにしているとも言える。◆前代未聞の「経済・外交・民生」三大主題記者会見【経済主題記者会見】まず3月6日に開催された「経済主題記者会見」(※7)を見てみよう。圧巻なのは会見に出席したのが「国家発展改革委員会の鄭柵潔主任、財政部の藍佛安部長、商務部の王文濤部長、中国人民銀行の潘功勝総裁、中国証券監督管理委員会の呉清主席」という面々だということだ。このような経済・商務・財務・金融・証券などに関する中央行政のトップが勢ぞろいした記者会見など、中華人民共和国建国以来、見たことも聞いたこともない。長時間にわたる質疑応答が繰り返され、主として以下のような回答があった。●国家発展改革委員会・今年の経済成長率5%程度という目標は、「第14次5カ年計画」の年間要件に沿っており、基本的に経済成長の潜在力と一致している。・今年は大規模な設備の更新と消費財の下取りを促進する政策を実行する。設備更新は年間5兆元以上の規模を持つ巨大市場になる。・超長期特別国債の発行は、現在と長期の双方にとって有益である。・民間企業が主要な国家工程プロジェクトと短期プロジェクトの建設に参加することを奨励し、最大限支援する。●中国人民銀行・2月までに、中国の国境を越えた決済の30%近くが人民元で決済された。・物価の安定を維持し、物価の緩やかな回復を促進することは、金融政策の重要な検討事項である。●財務部・今年は構造的な税制・手数料引き下げ政策を検討し導入する。・今年の教育・社会保障・雇用予算は4兆元を超える。●商務部今年は自動車や家電製品などの消費財の下取りを促進し、サービス消費を後押しする。●中国証券監督管理委員会・投資家、特に中小規模の投資家の正当な権利と利益を保護する。・制度の抜け穴を更にふさぎ、技術的離婚などの迂回や違法な持ち株の売却を厳しく取り締まる。【外交主題記者会見】3月7日には、「外交主題記者会見」(※8)が行われたが、ここに参加したのは中共中央政治局委員で外交部長でもある王毅一人だった。●中露関係中露は、旧冷戦時代とは全く異なる大国関係の新しい規範を生み出している。●中米関係・もし「中国」という二文字を聞いただけで緊張し焦るなら、アメリカの大国としての自信はどこにあるのか?・もしアメリカがいつまでも言行不一致を続けるなら、大国としての信用はどこにあるのか?・もしアメリカが自国の繁栄だけを維持して、他国の正当な発展を許さないというのなら、国際正義(公理)はどこにあるのか?・もしアメリカがバリューチェーンのハイエンドを独占し、中国を何としてもローエンドに留まらせていきたいと固執するなら、公正な競争はどこにあるのか?●パレスチナ・イスラエル紛争国際社会は、即時停戦と敵対行為の停止を最優先事項としなければならない。●中国・EUの関係中国とEUが互恵のために協力する限り、ブロック対立はあり得ない。●台湾問題「一つの中国」の原則が強ければ強いほど、台湾海峡の平和はより安全になる。台湾地区の選挙は中国の地方選挙に過ぎず、選挙結果は台湾が中国の一部であるという基本的な事実を変えることはできないし、台湾が祖国に戻るという歴史的必然性を変えることもできない。選挙後、180以上の国と国際機関が「一つの中国」原則の堅持を再確認した。「台湾独立」を容認し支持する人々がいまだにいるとすれば、それは中国の主権に対する挑戦である。●ウクライナ危機中国はウクライナ危機を終わらせるための和平交渉への道を開いた。【民生主題記者会見】3月9日、「民生主題記者会見」(※9)が開催された。出席したのは「教育部の懐進鵬部長、人的資源社会保障部の王暁萍部長、住宅城郷(都市農村)建設部の長倪虹部長、国家疾病予防制御局の王賀勝局長」だ。これも錚々たるメンバーで、若者の就職難や不動産バブル崩壊などが問題視されている中、その部局のトップが出てきて質疑応答に当たるということ自体、相当に覚悟がないと出来ないことだ。このテーマの質疑応答を詳細に書きたいが、あまりに問題が深いだけに、略記するのに困難を来たすので、非常に残念ながら省略し、いつかチャンスがあったら、この深い問題点における質疑応答を考察したいと思う。以上が三大主題記者会見の紹介だが、全人代閉幕式の11日に決議された政府活動報告書には、この三大主題記者会見だけでなく、3月6日のコラム<全人代総理記者会見をなくしたのは習近平独裁強化のためか?>(※10)に書いた「部長通道」なども含めた、全人代におけるあらゆる審議の結果が反映されている。全人代閉幕後の総理記者会見ではもう遅く、その前に政府活動報告書の審議修正が終わっているので、その意味で、国政に関して閉鎖的になったのではなく、逆にオープンになったとみなすことができる。◆国務院組織法改正案から見えるものその証拠は冒頭にも書いたように、改正される前の1982年の国務院組織法(※11)には「政務公開」という文言はないが、今般の全人代で改正された国務院組織法(※12)には、「堅持政務公開(政務を公開することを堅持する)」という文言が第十七条に加筆された。それが前述した三大主題記者会見であり部長通道だ。もっとも、中華人民共和国憲法(※13)の序文と第一条にある「全国の各民族人民は中国共産党の指導の下」という思想が、国務院組織法にも反映されるようになったという点では、もともと中華人民共和国建国以来の思想が徹底されたと言うべきなのかもしれない。1980年前後に、「党政分離」の話が出たことがあったが、なんと、その議論には習近平の父・習仲勲が介在していたという皮肉な現実がある。なお、習近平政権になったあとの2017年には新華網に<党政分離と党政分業は違う>(※14)という論考が載っており、習近平政権は早くから「党政分離」は考えていない。これは冒頭に書いたように、アメリカが旧ソ連を崩壊させたように中国を崩壊させようと企んでいることへの自己防衛だとみなしていいだろう。中国共産党の統治を強くして崩壊の余地を少なくさせようという目論見だろうが、それが吉と出るか凶と出るかは、アメリカの大統領選や非米側諸国の動きなどの影響もあり、静かに考察していくしかない。この論考はYahoo(※15)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://tv.cctv.com/2024/03/05/VIDEIh7n0CnlO3ysYhj8SY3w240305.shtml(※3)https://www.gov.cn/premier/2023-03/14/content_5746704.htm(※4)https://www.gov.cn/premier/2022-03/12/content_5678750.htm(※5)https://www.gov.cn/premier/2021-03/12/content_5592671.htm(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3de7c06ef21ccd8115f04681175360add9784205(※7)https://tv.cctv.com/2024/03/06/VIDEQhMQkqom53dVdCPmTnMn240306.shtml(※8)https://tv.cctv.com/2024/03/07/VIDE19aja2r9WthsBpO3MQBP240307.shtml(※9)https://tv.cctv.com/2024/03/09/VIDE8qufe0j1lBYkR9fboIJY240309.shtml(※10)https://grici.or.jp/5107(※11)https://www.gov.cn/gjjg/2005-06/10/content_5548.htm(※12)https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202403/content_6938923.htm(※13)https://www.gov.cn/guoqing/2018-03/22/content_5276318.htm(※14)http://www.xinhuanet.com/politics/2017-04/11/c_1120784896.htm(※15)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1ca6c38d649aa3d9c8e23f92c6fe03f0e4fb19b6 <CS> 2024/03/13 10:27 GRICI 中国の失業率は5.2% ようやく正式な統計が【中国問題グローバル研究所】 *10:25JST 中国の失業率は5.2% ようやく正式な統計が【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。3月5日に開幕する全人代のためだろう。2月29日、中国の国家統計局は<中華人民共和国2023年国民経済と社会発展公報>(※2)(以下、公報)を発布した。それによれば、2023年の年間失業率平均は5.2%だったという。昨年7月に発表された若者失業率算出の時に国家統計局が現役の在学生まで対象に入れたために出てきた20%というデータが世界を驚かせ、その後、国家統計局が計算方法改善のためデータ発表を暫時やめてしまったという事実がある。加えて、中国大陸の一人の大学教員が、専業主婦など就職意欲を持っていない者まで対象に入れて計算した失業率46.5%をネットに上げたため、その情報に一部の日本人が飛びつき「中国失業率46.5%説」が飛び交った。そういった経緯があるので一部の日本人は今般の公報のデータに疑いを持つかもしれない。本稿では、失業率を計算するのが困難な社会主義国家・中国の特殊な経緯と現状を考察したい。◆公報が発表した雇用者数や失業率などに関するデータまず、公報が発表した雇用者数や失業率などに関する現在の詳細なデータを見てみよう。公報には以下のように書いてある。●2023年末時点における国内の雇用者数は7億4,041万人で、このうち都市部での雇用者数は4億7,032万人、全国雇用人口の63.5%を占める。2023年、年間を通して都市部での新規雇用者数は1,244万人で、前年より38万人増加した。●全国都市部調査による年間失業率平均値は5.2%で、2023年末時点での全国都市部調査による失業率は5.1%だった。●全国の農民工の総数は2億9,753万人で、前年比0.6%増だった。その内、外出農民工(沿海部大都市に行く農民工)は1億7,658万人で2.7%増加し、本地農民工(もといた農村付近の小都市で働く地元農民工)は1億2,095万人で2.2%減少した。これが公報に書いてある失業率の基本情報だ(図表を別として)。都市部で働いている農民工は「都市部雇用者数」の範疇に入れているが、もし沿海部の大都市から内陸にある生まれ故郷近くの「中小都市」に戻って再就職先を見つけた場合は、大小の違いはあれ「都市」なので、「都市部調査失業率」の中で「就職者扱い」になるので変化しない。もし沿海部の都市から農村に戻って農業に従事した場合は、「都市部での雇用の減少」に反映される。農村部では畑仕事(土地経営)が多いため、失業率は都市部に比べて非常に低いので、「農村部調査失業率」というカテゴリーが統計上ない。◆現在の「調査制」による失業率計算法は2018年4月17日から中国は社会主義国家だ。改革開放後も教育機関における「国家培養」と「分配制度」は続き、1992年にようやく制度上撤廃して、1994年辺りから社会主義制度における形式から実際上抜け出し始めた。「国家培養」というのは、教育機関での勉学は完全に無料で、国家が人材を育てるという制度を指す。衣食住も国家が保証する。大学・大学院などは基本的に全寮制。「国家培養」は幼稚園から大学院博士課程まで一貫して徹底されていた。その代わりに卒業後は国家が定めた職場で働くことが義務付けられ、個人が職場を選ぶという権利はなかった。これを「分配制度」と称する。国家が就職先を「分配する」という意味だ。したがって中国にはそのころまでは「失業」という概念がなく、市場経済が走り出し国営企業が立ち行かなくなって株式会社化して国有企業になり、無駄な従業員を「一時退職」させたころに、初めて「待業」という概念を生み出した。「待業」というのは「失業」ではなく、「家で待機して次の業務復帰への指示を待ちなさい」という意味で、「待業手当」も支給された。当時の貨幣価値で月200元ほど貰っていたので、悪くない生活は保たれたと思う。従業員にはもともと宿舎が無料であてがわれていたので、住居に関する問題に大きな変化が出て来るまでは、そこそこに待業生活を送ることができていた。実はそのころ筆者は1950年代の天津での幼馴染と再会しており、庶民の生活をリアルで体験しているので実感がある。また中国の中央行政の一つである国家教育部と提携して『中国大学総覧』の編集にも当たっていたので、日本で言う(中国でもその後定義された概念である)「公務員」の劇的な変化にうろたえる日常も、目の前で見てきた。社会は混乱し、国家統計局が全国調査をするのではなく、個人や職場などの申し出によって失業者数や本来の従業員数を把握する「登録制」によって国家は「失業率」を計算していた。しかし、それでは正確なデータが得られず、中国政府の通信社「新華社」や中国共産党機関紙「人民日報」などの数多くの情報で裏打ちされた実態から言うならば、国家統計局が統一的に全国調査するという「調査制」による失業率データが公表されるようになったのは「2018年4月17日」(※3)であるとのこと。この日までは「待業登録」を「失業登録」に改名したり、農民工のような流動人口の就業者をどう計算するかなど、紆余曲折の経緯を経てきた。◆若者失業率計算に大学などの在校生を調査対象にしていた国家統計局そのような経緯がある中、2023年7月28日のコラム<中国の若者の高い失業率は何を物語るのか?>(※4)に書いたように若年層(16~24歳)の失業率が20%に至るという「怪奇」に近い現象が起きた。その原因は調査対象者に大学や専科学校あるいは大学院などの「在校生」を含めるという不適切なことをしていたからである。おまけに7月に出した統計は、まだ卒業してない5月時点での現役在学生を含んでおり、その人たちは「学生」で、「失業者」ではないのに、「(16歳以上の)労働可能な人口」の中に入れていたため、失業率が膨れ上がった。背景には当該コラムの図表1に示した、信じられないほどの大学進学者の急増がある。そこで、国際的に見て、失業者を計算する時には在校生を入れてないことを考慮して国家統計局は計算方法を見直すために暫時データ発表をやめた(※5)。これを以て日本では、「中国は中国経済の惨状を隠すために統計データを公開するのをやめた」との情報が飛び交い、「中国の統計を信じるな」と少なからぬ「中国問題専門家」やメディアがはしゃいだものだ。実際は2022年、中国における16-24歳の都市人口9600万人強のうち、在校生は6500万人強で、この在校生のうち「現在職場で働いていない者、調査時期の3ヵ月前以内に就職先を探そうとしたことがある者、もし就職先を紹介したら2週間以内に(大学を捨てて=退学して)就職する者」を「失業者」扱いするという計算が成されていたのである。そもそもまだ卒業していないのだから職場で働いているはずがないが、それを失業者扱いすること自体、ナンセンスだ。◆国際基準に合わせて改善した国家統計局の失業率計算法とデータそのようなことから、2024年1月17日に再開した国家統計局の失業率計算(※6)では、「在校生は含まない」ことになった。その結果、国家統計局が今年1月17日に発表した年間失業率(※7)では、●16-24歳:14.9%●25-29歳: 6.1%●30-59歳: 3.9%となっている。このようにして計算方法を国際水準に合わせた結果の2023年の年間失業率平均が冒頭にある「5.2%」というデータである。若年層に関しては在校生を除外しても14.9%なので、相変わらず高いと言わねばなるまい。◆専業主婦まで失業者に入れたデータに飛びつく一部の日本人冒頭に書いた「16~24歳の失業率が46.5%」という情報に関しては、昨年7月17日北京大学の張丹丹准教授が個人の見解として発表した文章(※8)によるもので、彼女の場合は「在校生」だけでなく、「躺平(寝そべり族)」や「啃老族(親が富裕なので働くつもりがない「脛(すね)かじり族」)」、さらには「外で働く意思を持っていない専業主婦」まで「失業者」の中に入れているので、論外だと言わねばなるまい。目立とうとして一種の「遊び」を試みたのか、動機は分からないが、戯言(ざれごと)に近い「私見」に飛びついて「これこそが中国の真相」とはしゃぐ「一部の日本人」の判断力の無さには唖然とするばかりだ。さて、3月5日に、本稿で述べた国家統計局が出した新しいデータも踏まえながら発表されるであろう李強国務院総理の政府活動報告がどのようなものになるのか、待ちたい。この論考はYahoo(※9)から転載しました。写真: ロイター/アフロ <CS> 2024/03/04 10:25 GRICI ウクライナ戦争3年目突入 中国は現状をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】 *10:34JST ウクライナ戦争3年目突入 中国は現状をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。本日2月24日でロシアによるウクライナ侵攻は3年目を迎える。中国では決して「ウクライナ戦争」とは呼ばず、あくまでも「ウクライナ危機」とか「露ウ衝突」といった言葉を使う。それだけでもプーチンへの配慮が窺(うかが)われるが、2年経った今、中国はウクライナ危機をどう見ているのか、中国側の第一次情報をご紹介したい。◆環球時報:西側諸国はウクライナ危機を「戦争ビジネス」だとみなしている中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」(の「環球資訊広播」)は2月22日、<露ウ衝突2周年:西側は結局「危機をチャンスに変えた」>(※2)というタイトルでウクライナ危機を総括している。長文なので概略を個条書き的にピックアップしてご紹介したい。●EU(欧州連合)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は最近、EUは近い将来、ロシアの凍結資産から得た収益をウクライナ支援に使用することを承認する計画であると述べた。 同氏は、凍結されたロシア資産収入が「ロシアのものではない」ことを保証するためにEUが関連法的手続きを開始したと説明した。●これは尋常な窃盗ではない。イタリア銀行のパネッタ総裁は、ユーロ圏は自国通貨を世界的な紛争の武器として使用すべきではないと警告した。なぜなら、それは最終的にユーロ自体を弱体化させることになるからだという。●西側諸国にとっては「利益」が最優先なのだ。実際、「ウクライナの戦後復興」は、西側諸国が長い間注目してきた魅力的な「ケーキ」だった。最新の例は、日本が開催したばかりの「日本・ウクライナ経済復興推進会議」だ。●米国の投資大手ブラックロックは昨年、ウクライナに手数料を支払うことなく、ウクライナのエネルギーインフラ、送電網、農業投資、およびすべての国営企業を正式に買収することでウクライナと合意に達した。潜入調査記者が公開したビデオで、ブラックロックの従業員が「ウクライナ紛争はビジネスにとって、すごく良いことだ」と真実を語っている。●戦争自体もビジネスなのだ。西側の政府と企業が共謀してウクライナ危機を引き起こし、「他人の危険」を「自分たちのチャンス」に変えていることは、多国籍の巨大企業が巨額の戦争利益を得ようとしていることからも明らかだ。 ロシアのエネルギーが西側諸国によって禁輸される中、エクソンモービル、シェブロン、シェル、トタルエナジーズなど西側のエネルギー大手はいずれも莫大な利益を上げている。●最も大きな利益を上げているのは間違いなく西側の軍産複合体だ。西側諸国が危機を煽り続ける中、危機はさらにエスカレートしており、世界の武器市場をリードする米国の軍需産業大手5社は言うに及ばず、欧州の中小軍需産業企業もこの「ゴールドラッシュ」を逃してはいない。●ただ、皮肉なことに、バイデン政権の新会計年度のウクライナへの資金提供は、共和党強硬派によって阻止されている。それも米大統領選挙のための政治的交渉の道具に過ぎない。軍産複合体の利益に合致する限り、米国議会がウクライナへの供給を完全に遮断するとは誰も信じていない。●しかし米コロンビア大学のサックス教授は、ロシアメディアとの最近のインタビューで、米国が巨額の戦争利益を得ていることを批判し、「米国は一方では一極支配という覇権を維持するためにNATO拡大を推進し、他方では戦争自体がビジネスになっている」と述べた。(「環球時報」からの引用はここまで)◆新華社フォーラム:2024年、露ウ衝突のゆくえを決める5大要素今年1月15日、中国政府の通信社である新華社は第14回新華網「世界の議論」国際問題シンポジウムを開き、その中で中国政府のシンクタンクである中国社会科学院ロシア・東欧・中央アジア研究所の孫荘志所長が<2024年、この5つの要素が露ウ衝突のゆくえに影響を与える>(※3)という演題で講演をした。冒頭で孫荘志は「米国と西側はウクライナ支援に疲れの兆しを見せているが、露ウ衝突は長引くだろう」、「西側諸国はメリット・ディメリットを天秤にかけ、紛争における自国の利益をどのように守るかを検討している」とした上で、2024年の露ウ紛争には注目すべき5つの要素があるとして、以下の5項目を挙げている。第一:ロシアとアメリカの選挙。露ウ紛争自体、大国間の地政学的な駆け引きと米露の対立の結果によって引き起こされた悲劇であるため、米露の国内政治動向が露ウの展開傾向を決定する。第二:西側諸国の支援。ウクライナは現在、財政支出のほぼ半分を西側が支払っているが、西側からの支援は今後どんどん少なくなるだろう。この場合、ウクライナは自国の造血機能を高める必要があるが、これは無力な選択である。第三:和平交渉を説得し推進すること。しかし、実際上、紛争は和平交渉に適した雰囲気と環境を持っていないことを示している。第四:黒海危機。2024年には黒海地域が露ウ間の争いの焦点となる。ゼレンスキーは、今年のウクライナの主要標的はクリミア半島と黒海だと述べた。第五:対ロシア制裁。対露経済制裁はロシアにどのような打撃を与えることができるのか? 2023年のロシア経済の全体的なパフォーマンスは良好で、2024年も昨年のような比較的良好な成長傾向を維持できれば、ロシアは耐久力を維持できる。西側諸国はロシアを弱体化させ最大限に打撃を与えたいと考えているが、制裁に関する手持ちのカードはますます少なくなっている。(新華網シンポジウムからの抜粋は以上)◆中国大陸のネットに溢れる民間の見解中国では、党と政府が言えることには限りがあるので、案外ネットで削除されずに残っている民間の見解は、「中国の本心」を表していることがあり、疎かにできない。むしろ党や政府が言えないことを一個人の名前で発表させたりする場合さえあるくらいだ。ネットに溢れる情報の中からいくつか拾うと以下のようなものがある。●この衝突はバイデンが仕掛けた。2008年に副大統領になってから息子ハンターに金儲けさせることとロシアをやっつけるという両方の目的に適っているウクライナに目を付け、マイダン革命を起こさせてウクライナを米国の傀儡政権に創り上げた。バイデンの私利私欲のために、なぜ世界がこんなに大きな犠牲を払わなきゃならないんだ?●ノルドストリーム破壊はバイデンの指示であることを疑う者はいない。●バイデンはウクライナ人の最後の一人が死ぬまで戦わせるつもりだ。その意味ではゼレンスキーも同じ。戦場の癒着状態を指摘した、国民に人気の高いザルジニー軍最高司令官を更迭してセルスキー(元陸軍総司令官)に置き換えたが、結局二人とも戦場はゼレンスキーが望む勝利に向けた突撃ができる状態でないと判断。そこでアウディーイウカ撤退をミュンヘン安全保障会議に合わせて決定したのは、これ以上の支援を躊躇する西側諸国に「支援しなかったら、こういうことになる」って脅しをかけたかったからさ。●自国の軍事力では戦えず、他国の支援だけで戦う戦争って、「あり」か?ウクライナは米国の傀儡政権であるだけでなくウクライナ衝突は「米国の傀儡戦争」で、ウクライナはバイデンのための道具に過ぎない。ウクライナが勝つわけ、ないだろ?最初から負けてる。だから「敗登(中国読み:バイデン)」なのさ。●西洋人には本気で、この現実が見えてないのか?●わが中国が中立を守り続けているのは賢明な判断だ。◆習近平の腹づもりウクライナ戦争が始まったと同時に、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』を出版し、「軍冷経熱」(軍事的には冷ややかに距離を置くが、経済的には熱く支援する)というキーワードを軸に習近平の対露戦略を論じたが、その軸は今も変わっていない。変わったのは、ウクライナ戦争によって習近平とプーチンの仲が空前絶後に緊密になったことと、非米側諸国の中露側につく濃度が、予想以上に高まったことくらいだろう。その意味で「得をしているのは中国だ」と言っていいのではないだろうか。昨年の2月24日に習近平が提案したウクライナ戦争に関する停戦案であるところの「和平案」は「停戦ラインを明示していない」ところに特徴がある。一方、ゼレンスキーが提案している停戦案は「領土の完全奪還とロシア兵の完全撤退」という「絶対的な停戦ラインを強く要求したもの」なので、現状でゼレンスキー案が通ることはありそうにない。ここは数千年に及ぶ戦火の歴史が積み上げてきた「中国の知恵」がものを言う。おまけに習近平の「和平案」は2023年2月23日のコラム<プーチンと会った中国外交トップ王毅 こんなビビった顔は見たことがない>(※4)に書いたように、プーチンの納得を得ている。停戦は戦争をしている両国が納得しなければ成立しないし、戦局的にウクライナ劣勢となった今、ゼレンスキー案が受け入れられる可能性は限りなくゼロに近い。もちろんプーチンがウクライナに侵攻したことは肯定しない。しかし「民主の衣」を着て世界中に紛争を撒き散らしてきた(今やバイデンやヌーランドの根城と化している)NED(全米民主主義基金)の罪の重さから目を背けることはできない。その意味では「戦争屋・米国」の罪が「各国の国民」によって裁かれる時代に入ったのではないかと思う。「もしトラ」が「ほぼトラ」に変わりつつある現在、「軍冷経熱」により「中立」を守った習近平に有利に働きそうだ。トランプが、NEDを主導するネオコンでないために、トランプ政権時代に米国は戦争を起こしていないことにも注目すべきだろう。なお、CIAと「第二のCIA」と呼ばれるNEDがダ二次世界大戦後、世界中でどれだけ戦争を起こし続けてきたかは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述した。この論考はYahoo(※5)から転載しました。写真: 代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://world.huanqiu.com/article/4Gh9YAuWDS5(※3)http://www.news.cn/world/20240115/2adcae0ae5f4425eb77cfae789d04ca0/c.html(※4)https://grici.or.jp/4053(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/672498255418fabb1662ff6dab94f5d94f5884c5 <CS> 2024/02/26 10:34 GRICI 「ミュンヘン安全保障2024」の“Lose-Lose”とは? 習近平の論理との対比【中国問題グローバル研究所】 *10:28JST 「ミュンヘン安全保障2024」の“Lose-Lose”とは? 習近平の論理との対比【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。2月12日に公開された「ミュンヘン安全保障指数2024」の表紙には“Lose-Lose?”という文字が大きく書いてある。これは18日に閉幕したミュンヘン安全保障会議2024に秘められている哲学的軸で、「誰もが損をするゼロサム思考の悪循環から抜け出すには、どうすればいいか」というテーマを指す。習近平政権の外交戦略は“Win-Win”を軸とした「人類運命共同体」。時代はゆっくり、しかし大きく動き始めている。それを見極める哲学的視点を持たなければならない。◆“Lose-Lose”とは何か?2月17日のコラム<「ミュンヘン安全保障指数2024」 日本以外の国は「中露は大きな脅威ではない」と回答>(※2)に書いた「ミュンヘン安全保障指数(MSI)2024」(MSI2024)(※3)の表紙に書いてあるタイトルは“Lose-Lose?”である。今さら言うまでもないが、“lose”は「失う」、「利益がない(損をする)」あるいは「負ける」という意味だ。したがって“Lose-Lose”は「双方が損をする」意味で反対語は“Win-Win”(ウィン-ウィン)。MSI2024の表紙に大書してある“Lose-Lose?”は具体的に何を指しているのかを解明することは、今後の世界の趨勢を分析する上で非常に重要なポイントとなる。MSI2024の冒頭には「誰もが損をするゼロサム思考の世界につながる悪循環をどうすれば回避できるのか?」と書いてある。ゼロサムとは、「合計するとゼロになること」で、参加者の得点(利益)と失点(損失)の総計(サム)が0(ゼロ)になり、「一方の利益が他方の損失になること」を指す。MSI2024では、そのリスクを理解するために以下の4つのキーポイントが挙げられている(以下、概略を示す)。キーポイント1:冷戦後の地政学的・経済的な楽観主義は消え去った。その時代に得られた利益が、人類に均等に分配されることはなかった。それは人類の多くに不満を抱かせている。キーポイント2:地政学的な緊張の高まりと経済の不確実性が懸念される中、「西側諸国、強大な独裁国家、そしてグローバル・サウス」は相対的な損得をますます懸念するようになった。キーポイント3:現行の政策は世界全体としての利益を食いつぶす恐れがある。また、各国が相対的な損得を重視することで、ゼロサムの世界がもたらす悪循環を引き起こす危険性もある。キーポイント4:大西洋をまたぐパートナーは、「相対的な利益を求めて競争すること」と、「包括的で人類全体の利益を実現するために協力すること」の間のバランスをとる必要がある。志を同じくする民主主義国家間の信頼に基づく協力を守る必要があるのは確かだが、しかしその一方で、独裁的な挑戦者との競争にガードレールを導入し、競合相手とも互いに協力できる有益な分野を模索し、より包括的な利益を確保することができるような新しいグローバルなパートナーシップを構築することにも努めなければならない。(以上、MSI2024から引用)全体を通して読むと、「米一極を中心とした西側諸国は、西側諸国が独裁国家と定義しているグループやその独裁国家との連携が比較的に強いグローバル・サウスというグループとの互恵的協力関係を模索しないと、どの国も負けて勝者がいないという結果を招く危険性があり、それは人類に破壊をもたらすだけで、繁栄をもたらさない」というイメージになろうか。◆中国のネットでは“Lose-Lose”(双輸)の話題が満載中国語では「負ける」ことを「輸(shu、スー)と書く。したがって“Lose-Lose”は中国語では「双輸」(双方が負ける)と称する。2月12日にMSI2024が公表されるとすぐ、中国のネット空間には「双輸」という単語が溢れた。どの情報を読んでも「双輸」に満ちているので、中国がMSI2024をどう受け止めているかを理解するにはリポートの表紙にある“Lose-Lose?”とは何かを解明する以外にないと思ったほどだ。「双輸」に関する情報はあまりに多いので、どの記事を取り上げてご紹介すればいいか分からないが、とりあえず中国政府の通信社である新華社の論考を見てみたいと思う。2月13日、「新華社ベルリン電」は<ミュンヘン安全保障報告“双輸”論調は欧州の焦りを表している>(※4)という見出しで、MSI2024を考察している。ここではMSI2024を「報告書」という単語で表現しているが、統一を図るためMSI2024に置き換えて記事の内容をご紹介する。記事には概ね、以下のようなことが書いてある。●MSI2024の序文でミュンヘン安全保障会議のクリストフ・ホイスゲン議長は、「双輸」が今年の非公式なテーマとなっていると述べている。●清華大学戦略安全保障研究センターの副所長:MSI2024は、ゼロサム思考ではグローバルな課題に対処できないことを一部の西洋人が理解していることを反映している一方、グローバルな問題を解決するに当たり、選択的に協力することしかできない他の国々と「志を同じくする国」を区別しており、西側の矛盾を反映している。中国は、国際社会において、常に多国間主義を実践し、ウィン-ウィン協力を中心とする新しいタイプの国際関係の構築を推進してきた。●近年、中国が提案している人類運命共同体の構築こそは地球規模の課題に対処するための思考である。●パキスタン発展経済学研究所のイクラム・ハク氏:中国は西側諸国のゼロサムゲームとは全く異なる「和平建設」の哲学を堅持している。 (以上、新華社通信より)◆習近平の提唱する「人類運命共同体」と「ウィン-ウィン」論理2012年11月、習近平は第18回党大会において「人類運命共同体」という概念を発表し(※5)、その後「一帯一路」完遂のためにも外交スローガンとして用いるようになった。事実、2015年3月28日のボアオ会議において習近平は以下のように述べている(※6)。――「ウィン-ウィン」の協力を通してのみ私たちは発展することができる。「あなたが負けて私が勝つ」というゼロサムゲームの古い考え方を捨て、自分の利益を追求する際には相手の利益も考慮するという「ウィン-ウィン」概念に基づかなければ、自分自身の発展をも遂げることができない。(引用以上)この情報が「一帯一路」のウエブサイトに載っていることから、「人類運命共同体」というスローガンが「一帯一路」遂行のためにも使われていることが分かる。同じ2015年の5月7日にはモスクワで開催された反ファシスト勝利記念日に出席するために習近平はメッセージを発表し(※7)、「勝者総取りやゼロサムゲームは人類発展への道ではない。戦争ではなく平和を、対立ではなく協力を、そしてゼロサムではなくウィン-ウィンを求めることこそが、人類社会の平和・進歩・発展の永遠のテーマだ」と述べている。また2022年1月17日にオンライン参加した世界経済フォーラム(※8)で習近平は「国家間に対立や相違がるのは避けられないが、あなたが負けて私が勝つというゼロサムゲームをするのは無駄だ」と述べている。2023年4月6日午後、北京を訪問したフランスのマクロン大統領とともに中仏企業家委員会の閉幕式に出席した習近平は(※9)、「ゼロサムゲームには勝者はなく、ディカップリングによって中国の発展を阻止しようとすることはできない」と、アメリカを中心とする西側諸国への批判を露わにした。この「ゼロサムゲームに勝者はいない」という言葉は、このたびのMSI2024の表紙を飾った“Lose-Lose?”と同じで、ミュンヘン安全保障会議の「隠れテーマ」が習近平の哲理と同じだということは注視すべきだ。そうしないと危ないことになる。◆習近平の哲理「兵不血刃(ひょうふけつじん)」(刃に血塗らずして勝つ)拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で詳述したように、習近平の哲理は「兵不血刃」すなわち「刃(やいば)に血塗らずして勝つ」ことである。これは毛沢東と一致しており、毛沢東は独自に荀子の教えである「兵不血刃」をモットーとしていた。「戦わずして勝つ」のだから「平和を愛するのか」などと思ったら、とんでもない間違いだ。筆者は1947~48年にかけて、長春で毛沢東による食糧封鎖を受け、家族を餓死で亡くしただけでなく、餓死体の上で野宿し、恐怖のあまり記憶喪失になったという経験さえある。数十万の餓死体には流す血さえなかった。それでも、その真相は伝えられない。中国共産党を非難する言動は許されないからだ。特に習近平政権になってからの言論統制は激しく、筆者など北京空港の地に降り立った瞬間、捕まってしまうかもしれないので、習近平政権になってからは一度たりとも中国に行ったことがないくらいだ。NED(全米民主主義基金)が潜伏しているので、そのための対応策だということは分かっていても、捕まる可能性が低くなるわけではない。そのような中国による「人類運命共同体」を軸とする「ゼロサムゲームに勝者はない」という習近平の論理が、ミュンヘン安全保障会議の「隠れテーマ」と同じであるということは、中国の動き方に、少なからぬ国が賛同しているということにつながる。中国と聞いただけで猛批判する連中は日本にいくらでもいるが、「批判」によって中国が損害を被ることはなく、むしろ習近平の論理が「じわりと世界に浸透していること」の方がよっぽど怖いのである。それが見えないと、日本は生き残っていけない。筆者はそのことに警鐘を鳴らし続けている。日本人の心に、この願いが届くことを祈るばかりだ。この論考はYahoo(※10)から転載しました。画像:ミュンヘン安全保障指数2024から筆者作成(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5014(※3)https://securityconference.org/en/munich-security-report-2024/munich-security-index-2024/(※4)http://www.news.cn/world/20240213/7c03cbc8bb4a4f8c9c37bdb2f958a207/c.html(※5)http://cpc.people.com.cn/18/n/2012/1111/c350825-19539441.html(※6)http://2017.beltandroadforum.org/n100/2017/0407/c27-11.html(※7)http://ru.china-embassy.gov.cn/chn/gdxw/201505/t20150507_3069784.htm(※8)https://www.mfa.gov.cn/zyxw/202201/t20220117_10601025.shtml(※9)http://politics.people.com.cn/n1/2023/0407/c1024-32659032.html(※10)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/82202fbe67e35e4287525ec3df29f3129cd35e72 <CS> 2024/02/20 10:28 GRICI 中国は米大統領選「トランプかバイデンか」をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】 *10:27JST 中国は米大統領選「トランプかバイデンか」をどう見ているか?【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国のネットではトランプ(中国語表記:川普)を「川建国」(中国を再建国したトランプ)と呼び、バイデン(中国語表記:拝登)を「拝振華」(中華を振興させたバイデン)と呼んで茶化している。何れも「中国を虐めることによって中国人民の愛国心と団結心を強化してくれた人」という意味だ。中国政府自身は「内政干渉」として米大統領選に関して沈黙しているが、中国政府の思惑をそれとなく示唆するシンガポールの「聯合早報」や大陸の知識層が愛読するウェブサイトなどから、中国にとっての「川建国」と「拝振華」のメリット・デメリットが浮かび上がってくる。◆トランプが当選したら、それは中国にとって良いことか悪いことか?まず、2月1日のシンガポール「聯合早報」に掲載された<トランプが当選したら、それは中国にとって良いことか悪いことか?>(※2)という記事に書いてある分析を見てみよう。「聯合早報」は中国政府としては口にすることができないが「本当はこう思っている」という内容を第三者に書かせるときがある。中国大陸のネットで削除されずに載っている場合は、そういうケースであることが多い。今般ももちろん、中国大陸のネット空間で、むしろ目立っていた。だから、これは中国の本心(に近いもの)なのだろうと受け止めたので、ご紹介する。以下、個条書きのように番号を付けて概略を羅列する。1.1月25日に発表されたロイターの世論調査では、トランプ前大統領が40%の支持を得て、バイデン現大統領を6%リードしている。中国のネットで「川建国」と「拝振華」と呼ばれている2人の政治家が年末に再び対決する可能性がある。2. 感情的でビジネスマン的な性格のトランプが、前政権の時のように北朝鮮に舞い戻ってきたら中国に有利か不利か何とも言えないが、全体としてメリットとデメリットはある。3.前回の米大統領選では、中国のネットはトランプ再選に期待する声に満ちていた。トランプは次から次へと西側同盟から抜けて「アメリカ・ファースト」を重んじたので、どんなにトランプが中国に高関税をかけハイテク産業発展を阻止しても、国際社会におけるアメリカの孤立化が進み中国の活躍の場が増えたからだ。しかしトランプを破ったバイデンは、「アメリカ・ファースト」などトランプ時代の外交政策を一気に放棄し、トランプ政権の4年間で分断された同盟体制をいち早く立て直し、インド太平洋地域で中国をより包括的・組織的に包囲するために小規模な仲良しグループを動員し、東シナ海、台湾海峡、南シナ海における「三海連関」の現状を形成した。4.もしトランプが当選して自分のやり方に戻せば、バイデンが必死になって再構築した軍事同盟体制や仲間を集めた小さなグループも、指導者不在の砂と化し、中国を封じ込めるためのアメリカとその同盟国の結集力は大幅に低下するだろう。これは北京にとって大きなメリットとなる。5.台湾問題では、トランプはビジネスマンの利益追求に基づいて評価し、今年1月20日のFOXニュースのインタビューで、「北京が武力攻撃した場合、台湾を守るかどうか」という質問には答えなかった。トランプは「質問に答えることは交渉で非常に不利な立場に立たされる」と述べ、「台湾がアメリカの半導体事業のすべてを奪った」と付け加えた。トランプが同様の回答をしたのは昨年7月以来2回目で、バイデンが大統領在任中に、「アメリカは台湾防衛のために軍隊を派遣する」と4回も公式に発言したのとは強烈な対照を成している。6.中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は水曜日(1月31日)、トランプが「台湾防衛」を拒否したことに関し、アメリカは常に「アメリカ第一主義」を追求し、台湾はいつでも「(利用できる)駒」から「捨て駒」に変わり得ると述べた。7.ホワイトハウスが来年1月に政権交代した場合、台湾はトランプと取引し、安全保障上の約束と引き換えにアメリカへのハイエンドチップの移転を加速させるために、より高い代償を払わなければならないかもしれない。台湾海峡で何かが起こったときに米軍は高みの見物を決める可能性があり、第二次世界大戦後にアメリカがひたすら築いてきた軍事力は、トランプにとってはそれほど価値が高いものではないので、台湾はホワイトハウスとの取引を試みる必要が出てくるかもしれない。8.昨年から緊張が高まっている南シナ海でも同じことが起きる可能性がある。トランプがホワイトハウスに復帰すれば、フィリピンを堅固に防衛するというバイデン政権のコミットメントが見直され、マルコス・ジュニア政権は中国に対して強硬姿勢をとる自信を失う可能性がある。9.トランプは日韓駐留米軍の予算も削減し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との4回目の会談を再開するかもしれないし、「三海連関」戦略も自滅的だ。10.米主導の同盟体制が弱体化すれば、中国が国際情勢や地域情勢で影響力を行使する余地が広がる。11.しかし、トランプの2度目のホワイトハウス入りは、中国にとって良いことばかりではない。対中タカ派で米中貿易戦争の立案者であるライトハイザーや親台湾派のポンペオなど、国家安全保障と経済の分野でトランプから重要な任務を任される可能性が高い。そうなった場合、中国の最恵国待遇も撤廃され、アメリカに輸出される中国製品に40%以上の関税が課せられ、米中間のデカップリングが加速し、技術戦争と貿易戦争の激しさがさらにエスカレートする可能性がある。12.1月27日、ワシントン・ポストは3人の情報筋の話として、トランプが中国からの輸入品すべてに一律60%の関税を課す可能性について顧問と話し合ったと報じた。これは、米中貿易戦争でトランプが科した懲罰的関税より35%も高く、中国製品を米国市場から追い出すに等しい。13.予測不可能なことをするトランプは、台湾問題に関する中国本土のレッドラインを無視し、北京の忍耐力と決意を試し、両国が誤って軍事衝突を引き起こす可能性も逆にないわけではない。14.昨年11月にサンフランシスコで行われた中米首脳会談以降、米中両国はハイレベルな意思疎通を再開し、あらゆる面で対話を強化し、昨年8月のペロシー米下院議長の台湾訪問後の谷から抜け出すための努力を強めている。バイデンの再選後の米中関係は依然として波乱含みではあるものの、その傾向はより予測可能であるという点においてメリットがある。それに反してトランプは常識に従ってカードを使わず、予測不可能な道筋は北京に誤算をさせる可能性も否定できない。(以上、聯合早報の概要。)◆知識層向けウェブサイトの見方中国大陸内のウェブサイトで、比較的に知識層が集まる「観察者網」では2月5日、<トランプは「もし当選すれば対中貿易戦は行わず関税増強は継続する」と言っている>(※3)と題する論考を公開した。以下、要点だけをピックアップする。●ブルームバーグと香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、現地時間2月4日、トランプはFOXニュースのインタビューを受け、「選挙に勝てばすべての中国製品に少なくとも60%の関税を課す」と脅した。「しかし、これは貿易戦争ではなく、中国とは平和に暮らしたい」とも述べた。トランプは続けて「私は中国を傷つけたくない。 私は中国と平和に暮らしたい。 米中友好は素晴らしいと思う」と付け加えたが、金融関係者はトランプ再選後に起こりうる市場の混乱に備えている。●注目すべきは、バイデンは大統領就任後、前政権(トランプ政権)時代の政策を否定するために「対中関税の引き下げを検討している」とくり返し主張しているものの実現しておらず、米経済界に不満を抱かせている。●2022年7月、米国国際貿易委員会は公聴会を開催し、輸入に依存する製品の米国の輸入業者と製造業者は、関税が既存の貿易の流れを混乱させると主張し、中国への関税の継続に強く反対した。アメリカの原告6000人以上が、対中関税で支払った数十億ドルの賠償金を米政府に要求し、同政策は適切な手続きを経ずに策定されたものであり、侵害にあたると主張している。●昨年3月、米国国際貿易委員会は報告書を発表し、調査の結果、トランプ政権が3000億ドル以上の中国製品に関税を課し、「中国に支払わせる」と脅したが、実際にはその代償を支払ったのはアメリカの輸入業者と消費者であり、それに応じて米企業の輸入価格と米国内における価格が上昇したと指摘した。ブルームバーグによると、これは米国企業が米国の対中関税のほぼ全額を負担することを意味する。(以上、観察者網の概略。)◆一般ネット民の見方中国大陸のネット市民は米大統領選に強い関心を持っており、さまざまな意見が見受けられる。いくつかの例を挙げると以下のようなものがある。●そこまで高い関税なら、デカップリングということだな。●川建国も拝振華も、ともかく中国を封じ込めたいことに変わりはない。選挙に有利なように対中強硬競争をしている。理由は簡単。中国が強くなり、アメリカを凌駕するのを阻止しないと、選挙民の支持が得られないから。●川建国も拝振華も中国を抑圧する方法が違うだけだ。トランプの有権者群はアメリカのブルーカラー労働者が大半を占める。このグループは一般的に教育レベルが高くない。だからトランプは誰にでもわかるような単純な言葉を使うし、誰の目にも見えるような短期間で結果を生む政策を好む。バイデンは熟練された政治家なので「戦略的」で「長期計画」的だ。例えば日本、韓国、インド、フィリピンなどに甘い言葉をかけ対中包囲網を創り上げる。●もし、川建国と拝振華のどちらかを選ばなければならないとしたら、私はむしろトランプを選ぶかな。というのも、拝振華が与える「長期的痛み」は狡猾で目に見えにくいが、川建国が与える「短期間的痛み」は正直で誰の目にも明らかだ。拝振華がエリート層を相手にし、川建国はブルーカラーを相手にしているというのも、何だか奇妙な好感が持てるのだ。●っていうか、民主主義っていいの?前の政権が言ってた政策を全て覆さないと大統領選に勝てないというのをくり返して、国益になるのかね?アメリカ、大統領選のために内戦起きそうじゃない?(ネットの意見はここまで。)最後の意見はおそらく「もっとも、中国のように言論弾圧が強いのもなんだが…」と書きたいところだろうが、書いたら削除されていただろうから、これは暗黙の認識、暗示として誰でも読むのではないかと、興味深く考察した。この論考はYahoo(※4)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.kzaobao.com/mon/keji/20240201/155666.html(※3)https://www.guancha.cn/internation/2024_02_05_724562.shtml(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4959cc3e7a74ef08bf36799bb5eb7849fb858e07 <CS> 2024/02/13 10:27 GRICI 台湾有事は遠のくのか? 立法院長に国民党が当選「民進党を訴える」と「柯文哲の乱」!【中国問題グローバル研究所】 *10:55JST 台湾有事は遠のくのか? 立法院長に国民党が当選「民進党を訴える」と「柯文哲の乱」!【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。2月1日、台湾立法院(国会)の院長(議長=台湾では首相に相当)選挙で、対中融和的な国民党の韓国瑜氏が当選した。5月20日に発足する親米的な民進党の頼清徳政権にとっては「ねじれ国会」の「ねじれ度」がさらに強くなり、国防予算案などを通しにくくなるだろう。一方、韓国瑜が当選したのは新立法院委員(国会議員)の中にいる2名の無党派が国民党側に付いたからだが、今後の立法院運営(国会運営)では柯文哲氏が率いる民衆党委員(議員)8人が民進党の案に賛成するか国民党の案に賛成するかによって予算案の可否が決まる。ところがなんと、その柯文哲が民進党を訴えると怒っていることが2月2日にわかった。となれば、予算案などは対中融和の方向で決まっていく可能性が高い。何が起きているのだろうか?「柯文哲の乱」を紐解こう。◆国民党の韓国瑜が当選した背景1月15日のコラム<どう出る、習近平? 台湾総統選、親米民進党勝利>(※2)に書いたように、総統選では民進党の頼清徳氏が勝ったが、立法院では全議席113のうち、「国民党:52議席、民進党:51議席、民衆党: 8議席、無党派2議席」となり、国民党が第一党となった。そのコラムでは、2月1日に行われる立法院院長・副院長選挙で、ひょっとしたら「緑(民進党)白(民衆党)合作」があり得るかも知れず(頼清徳が示唆)、もし頼清徳の要望に応じたら、民衆党の柯文哲氏は完全に選挙民の信頼を失ってしまうだろうと懸念した。柯文哲は、「藍(国民党)白合作」を破局させながら、民進党からのモーションに応じるというようなことは、さすがにしなかったようだ。結果的に柯文哲はどちらにも付かず「独自路線」を貫いた。結果、2月1日の投票(※3)では民衆党も独自の立候補者を立てて、1回目の投票では以下のようになった。●韓国瑜(国民党):54票(48.2%)●游錫堃(民進党):51票(45.5%)●黄珊珊(民衆党): 7票(6.3%)院長に当選するには過半数(50%以上)を獲得していなければならないので、上位2位の立候補者に関する決選投票に入ることになった。このとき民衆党は退場して参加せず、国民党にも民進党にも投票しないという姿勢を貫いたことになる。となると、民衆党議員を除いた議員による決選投票となり、無党派の2人を国民党が引き寄せるか民進党が取り込むかのどちらかによって結果が逆転するわけだが、無党派の2人は、共に国民党側に付いたので、結果として●韓国瑜(国民党):54票(51.4%)●游錫堃(民進党):51票(48.6%)となり、韓国瑜が勝利したわけだ。無党派の2人は陳超明氏(※4)と高金素梅氏(※5)で、やや国民党寄りの傾向があり、1月13日に行われた立法院選挙においても国民党の支援を得ている。こういう時のために選挙期間中に支援するというのは、相当に周到であったということになろうか。副院長も国民党の江啓臣氏(2020年3月9日~2021年10月5日の期間のみ国民党主席)が当選した。◆「柯文哲の乱」――民衆党の柯文哲氏が民進党を訴えると激怒!ここで問題になるのは、今後、行政院で民衆党がどう動くかだ。そう思って柯文哲の動きを追っていたところ、なんと、2月2日の「09:38」にシンガポールの「聯合報」が、<(柯文哲が)民進党に電話して緑白合作を呼びかけたと報道され、柯文哲は「嘘八百だ!」と怒り、「午後、民進党を訴える」と批判>(※6)と報道しているのを知った。このリンク先には柯文哲が激怒している動画があるので、ぜひリンク先をクリックして動画をご覧いただきたい。これ以上の証拠はなく、文字化されたものも動画の画面に出て来るので、漢字や表情から概ねの内容は想像いただけるものと思う。簡単に書くと、民進党(緑)の報道担当者(中国語では発言人)が、「柯文哲の方から民進党に電話してきて、緑白合作をしようと持ちかけてきた」と言ったとのこと。それを知った柯文哲は激怒し、「何を言ってるんだ!連絡してきたのは民進党の方じゃないか!民進党から連絡があり、民進党関係の医療業界の長老に電話するようにと頼んできたので、長老だから(失礼がないように)言われた通りに返電するという形で連絡したに過ぎない。それを私(柯文哲)の方から緑白合作しようと持ちかけたなどというのは本末転倒!民進党はもう全く信用できん!もう、これ以上は我慢ならない!訴えてやる!」と反論。頼清徳も元医者なら、柯文哲も元医者。そこで頼清徳陣営が医者仲間の老練の大家の名前を出して、柯文哲が返電をしないわけにはいかない所に追い込みながら、柯文哲が自ら積極的に「緑白合作をしよう」と頼清徳陣営に持ちかけてきたのだと民進党が言い始めたのだ。柯文哲は激怒し、「こんな信用のできない、大ウソつきの民進党(特にその報道官と記者)は、今日の午後にも訴えてやる!見てろよ!」と威勢よく激しい。それに対して民進党も「おお!結構!法廷で会おう!」と強気の構えだ。この「事件」に関しては、どうやら台湾の中時新聞網が先に報道しているようで(※7)、時間を見ると2月2日の「04:10」。ただ、中時新聞には動画がないので、聯合報をご覧になる方が、分かりやすいかもしれない。いずれにせよ、立法院で民衆党が民進党の提案に賛成するという可能性は、これで無くなったと言っていいだろう。◆台湾有事は遠のくのか?したがって立法院では、対中融和路線の中で国防予算等の議決がなされるようになるだろうから、たとえばアメリカから大量の兵器を購入するとか、米軍による軍事訓練を増やすといった種類の予算案は否決される傾向に動くだろう。そうでなくとも、1月30日のコラム<米中の力関係が微妙に逆転? ガザ紛争が招いた紅海危機問題で>(※8)で書いたように、ガザ紛争以来イランと対峙しているアメリカは、アメリカ自身が中東戦争に直接参戦することは避けたいという事情もあり、中国にイランを説得するよう動いてほしいために、中国に対して低姿勢だ。当該コラムで書いたように、台湾総統選で民進党の頼清徳氏が勝った時に、バイデン大統領はすかさず「アメリカは台湾の独立を支持しない」(※9)と表明したし、ウクライナだけでなく中東と台湾での三面戦争に関与することができないことから、昨年12月の時点ですでに米国在台湾協会(AIT)は民進党に「アメリカは台湾独立に反対し、一方的に現状を(台湾が)変更することに反対する」と言い渡した。EUも「台湾は一方的に独立を宣言すべきではない」と表明している。そのため12月1日の台湾の中時新聞は<アメリカが釘を刺した 頼清徳は台湾独立を謳った民進党綱領(の是正)を回避できない>(※10)という見出しで、民進党が身動きできない状況を報道している。あらゆる面から見て、アメリカは今では「台湾有事を誘発させるな!」という趣旨のシグナルを民進党に対して発しているのである。となれば台湾の方から中国の武力侵攻を誘発する行動には出ないことになるので、習近平としても武力統一をする理由は皆無となる。そうでなくとも習近平は芳しくない国内の経済事情や恐るべき党内、特に軍部の大規模腐敗に直面し、何とか武力衝突が起きないように必死だ。あれだけ信用して抜擢した秦剛前外相などは、不倫を通して情報漏洩さえしているという恐ろしさ。どんなに厳重に身体検査をしても、怖くてなかなか任命できないという状況に習近平は苦しんでいるはずだ。あらゆる側面から見て、台湾の立法院正副院長の選挙結果からも、「台湾有事は遠のいている」という結論に行きつくのではないだろうか。日本は台湾有事を前提として、むしろ「勇ましくなり」、臨戦態勢に向かって「はしゃいでいる」ように見受けられる。自民党の裏金問題など、長きにわたる日本政治の根本が揺らいでいるのに、そこから目を逸らさせ「外敵創り」によって保身を試みる自民党政権と同調圧力に騙されないように、日本国民は俯瞰的視点を持たなければならない。そうでなければ、日本人は「自ら好んで」戦争に突入し、日本国民の命を奪う道を「自ら選択」する結果を招く。日本が軍事力を強化することには反対しないが、自ら戦争を招く世論形成は避けねばならない。この論考はYahoo(※11)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4943(※3)https://www.cna.com.tw/news/aipl/202402015004.aspx(※4)https://zh.wikipedia.org/zh-hans/%E9%99%B3%E8%B6%85%E6%98%8E(※5)https://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%87%91%E7%B4%A0%E6%A2%85(※6)https://udn.com/news/story/6656/7750029(※7)https://www.chinatimes.com/cn/newspapers/20240202000481-260118?chdtv(※8)https://grici.or.jp/4973(※9)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※10)https://www.chinatimes.com/cn/realtimenews/20231201002359-260407?ctrack=pc_main_alert_p04&chdtv(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/42b9cdf729fc4a002532eced94cf42a20a424644 <CS> 2024/02/05 10:55 GRICI 米中の力関係が微妙に逆転? ガザ紛争が招いた紅海危機問題で【中国問題グローバル研究所】 *10:32JST 米中の力関係が微妙に逆転? ガザ紛争が招いた紅海危機問題で【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。1月26~27日、アメリカのサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と王毅(中央政治局委員、中央外事工作委員会弁公室主任兼)外交部部長(外相)がタイのバンコクで会談した。イエメンの反政府勢力「フーシ派」の紅海における船舶への攻撃をアメリカは阻止しようとしたが効果なく、背後にいるイランがフーシ派への支援をやめるよう「イランを説得してくれ」と、アメリカが中国に頼んでいるからだ。しかし中国は台湾問題への内政干渉をアメリカがやめることが先決問題だとして強気の姿勢を崩していない。バイデン大統領は大統領選があるため台湾の民進党に「独立色を減色せよ」(中国を刺激するな)という趣旨の指示を出す傾向にある。そもそもタイで会談したのは、王毅がタイとの査証相互免除締結など多くの協力協定を結ぶためにタイに行ったからで、サリバンはその王毅に「会ってもらうため」にのみタイまで行った段階で、米中の立場が逆転している。アメリカは大統領選があるので国際的信用を回復するために、暫定的ではあっても、中国に譲歩し、台湾有事が起きない方向に舵取りをする可能性がある。日本は梯子を外されないように気を付けなければならない。◆王毅とサリバンの会談1月26日から27日にかけて、王毅とサリバンがタイのバンコクで会談したと中国の外交部が伝えている(※2)。それによれば米中は昨年サンフランシスコで両首脳が約束した事項に沿って話し合いを緊密に持つとのこと。王毅は「今年は米中国交正常化45周年。双方は対等な立場で話し合うべきで、相手国の核心的利益に決定的な損害を与えるような内政干渉をしてはならない」として台湾問題を最優先事項とする姿勢を崩さず、「他国の発展を阻止するような行動は取ってはならない」とも主張した。その上で、「外交、軍隊、経済、金融、商務、気候変動」あるいは麻薬取締などの領域で協力し合うとしている。二人は中東、ウクライナ、朝鮮半島および南シナ海などの国際問題に関しても話し合ったと、外交部はいたって包括的で無難な報道しかしていない。◆紅海危機でアメリカの矛盾を酷評した「環球時報」社評しかし、実際は12時間にも及ぶ話し合いの内容は熾烈なもので、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は1月26日の社評で<アメリカは紅海に関して中国に頼みごとがあり、まずはキチンと話し合いを>(※3)という見出しで、相当に辛辣なことを書いている。長いので概要を個条書きすると以下のようになろうか。●アメリカは紅海で1ヵ月以上にわたり同盟国の船舶の武装護衛を組織し、半月以上にわたってフーシ派武装勢力を武力攻撃してきたが、効果は見られなかった。紅海で挫折したアメリカは、あたかも背後に中国がいるかのような国際世論誘導を謀って「中国責任論」を展開しながら、一方では中国に「どうか、フーシ派の背後にいるイランを説得してほしい」と懇願してきた。動機が不純だ。●紅海は物品やエネルギーの重要な国際貿易ルートなので、紅海危機以来、中国はあらゆる関係者と緊密な意思疎通を維持し、緊張緩和に積極的に取り組んできた。中国は民間船舶への攻撃の停止を求めており、関係者に対し紅海の緊張を高めることを避け、紅海の水路の安全を共同で維持するよう求めている。●アメリカが紅海危機の平和的解決を共同で促進するために中国の協力を得たいと望むのであれば、下心を排除して虚心坦懐に話し合いをすればいいだけのことだ。中国とイランは経済協力をしているが、中国とイランのいかなる関係もアメリカにとっては好ましくないようだ。●今回のパレスチナ・イスラエル紛争勃発以来、アメリカ当局者らは中国に対し、中国にイランを説得してくれと頼んでいるが、アメリカの同盟国船舶護送が成功しないと、すぐさま「中国責任論」を掲げて中国を非難する。この自己矛盾は、国際舞台における米国の利己主義とダブルスタンダードを最もよく反映している。●多くの西側メディアさえ、軍事攻撃は逆効果でしかないとコメントし、アメリカの 国防総省当局も、フーシ派と戦う軍事計画は「機能しない」と認めた。アメリカが護衛作戦を開始した際に思い描いていた「繁栄の守護者」のリーダー像は消え、紅海での対応に疲れ、ますます受動的になったアメリカの姿だけが残った。●民間船を攻撃しているのは確かにフーシ派だが、危機の根本原因はガザ紛争の波及にあり、すべての当事者は一刻も早くパレスチナとイスラエルの間の停戦を実現し、戦争を終わらせるという基本に立ち返り、実行する必要がある。しかしアメリカはガザ攻撃をするための強烈な武器をイスラエルに提供し続けている。●ウクライナでも成功していないアメリカは、地域危機に対する責任を可能な限り中国に転嫁したいという考えにとりつかれている。これは地域危機に対応できないアメリカの常習犯的な行動でもある。●アメリカは中東に残したいわゆる「力の空白」を中国が埋めることを常に懸念しており、そのため中国と地域諸国との正常な協力を絶えず悪者扱いし、中東における中国の「影響力」を抹殺しようと、あらゆる手段を試みてきた。(引用以上)◆ガザ紛争、直近のキッカケは中国によるイラン・サウジ和解「環球時報」の最後の項目にある「力の空白」とは、アフガニスタン撤退の際にみっともない姿を見せてしまったアメリカが「中東に及ぼす力を無くしてしまった」ことを指しており、2023年3月10日に中国がイランとサウジアラビア(以下、サウジ)を和解させたことをアメリカが妬んでいるということを指す。そのため、2023年10月11日のコラム<ハマスの奇襲 背景には中東和解に動いた習近平へのバイデンの対抗措置>(※4)で指摘したように、バイデンはサウジをイスラエルと仲良くさせことを試み、サウジを甘い言葉で誘惑してイスラエルと国交を樹立させるべく背後で動いていた。イスラエル建国の時には全ての中東諸国が一致団結してアラブ地域を守るべく中東戦争を起こした。しかしその後、アメリカの数多くの謀(はかりごと)により、いくつかのアラブ諸国がイスラエルと国交を樹立し、それによって踏みにじられてきたパレスチナの苦悩が忘れられていくことをパレスチナは怖れた。アラブの盟主であるようなサウジまでがイスラエルと国交を樹立すれば、パレスチナの凄惨な状況を世界が気にしなくなっていくだろうことを怖れて、ハマスの奇襲があったと位置付けることができる。だからハマスの奇襲があった後サウジは直ぐに「イスラエルとは国交を樹立しない」と表明し、中東諸国を団結させ一丸となって、イスラエルのガザ攻撃をやめさせようとしている。◆紅海でのアメリカの無力は、中国に有利に働く2023年10月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartI>(※5)から、飛び飛びだが、2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?ParIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※6)に詳細に書いてきたので、ウクライナ戦争の原因はアメリカ、特にバイデンが創ってきたことは既に明らかだろう。そして最も得をしているのは中国で、実はガザ紛争に関しても、中国には有利に働いている。中国はウクライナ戦争に何らかの形で参画しているわけではないし、ガザ紛争においても「イランとサウジを和解させた」という事実があり、「イランとは経済的に他の国同様に結びついている」というだけで、中国が得をするのはなぜか?それは、中国は「アメリカから制裁を受けている国」としてロシアやイランと同じ立場にあるからだ。アメリカにとってロシアやイランは敵国以外の何ものでもないので話し合いなどできないが、中国となら話ができる。だからウクライナ戦争やガザ紛争でアメリカに不利な要素が出て来ると、中国を通してロシアやイランを説得してもらおうと、アメリカが中国に低姿勢にならざるを得ない状況に来ている。だからサリバンがわざわざ王毅のスケジュールに合わせてタイまで飛んでいくという力関係が米中間に生まれているのだ。ハマスの奇襲もバイデンが原因を創っているので、バイデンが招いた戦争で「習近平が笑う」という構図が生まれつつある。◆アメリカがハシゴを外すかもしれない台湾問題中国はここぞとばかりに、「フーシ派に関してイランに掛け合ってくれなどと頼む前に、台湾問題に関して内政干渉をするな!」と居丈高だ。「台湾問題が先だ!」と一歩も譲らない。だからバイデンは大統領選もあるので、アメリカの弱さを見せるわけにはいかないので、「習近平とは常に意思疎通をしている」という口実を設けて格好をつけ、実は習近平に「頼むから紅海問題でイランを説得してくれ」と腰を低くしているのである。そのため台湾の総統選で民進党の頼清徳氏が勝った時に、バイデンはすかさず「アメリカは台湾の独立を支持しない」(※7)と表明したし、民進党側にそれとなく「独立を叫ぶ方向に動くな」(※8)とクギを刺している。となれば、台湾有事は、よほどの突発的なことでもない限り起きにくいことになる。日本はハシゴを外されないように気を付けた方がいいだろう。この論考はYahoo(※9)から転載しました。写真: 代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mfa.gov.cn/web/wjdt_674879/gjldrhd_674881/202401/t20240127_11234565.shtml(※3)https://opinion.huanqiu.com/article/4GK0vBaqlXw(※4)https://grici.or.jp/4703(※5)https://grici.or.jp/4683(※6)https://grici.or.jp/4885(※7)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※8)https://www.chinatimes.com/cn/realtimenews/20231201002359-260407?ctrack=pc_main_alert_p04&chdtv(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0370de8f701677cded896ce27f6c237fa90b6b20 <CS> 2024/01/31 10:32 GRICI 日本の裏金・派閥と中国の政治構造【中国問題グローバル研究所】 *10:54JST 日本の裏金・派閥と中国の政治構造【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党の裏金・派閥問題が深刻化している。一党支配体制である中国ではどうなのだろうか?民主主義と専制主義における政治体制のメリット・ディメリットを比較考察してみよう。◆日本の自民党の裏金と党内派閥自民党の裏金と派閥問題に関しては日本で十分に情報提供されているので、今ここで改めて説明することはしない。しかし何かお役に立つかもしれないので、私が実際に経験した模様から少しだけ状況をご紹介してみたい。2012年3月に江沢民時代と胡錦涛時代における凄まじい権力闘争を描いた『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』を出版すると、たちまち増刷され日本記者クラブで講演したり、NHKの日曜討論に出演したりするようになった。自民党からも声が掛かり、いわゆる「パーティー」への招待状が来たり、安倍政権時代になると「桜を見る会」の招待状が来たりと賑々しくなったものだ。ここでは「パーティー」だけに話を絞ろう。パーティーには「御招待」と一般参加の別があるようで、私の場合は「御招待」と書いてあるが、それでも「一口二万円」という文字が載っている資料が同封してあったように思う(資料があまりに多いので捨てているか、捨てていなかったとしても探し出すのは困難なので、同封してあった資料の文言などに関しては、多少正確さを欠いている部分もあるかもしれない)。送られてきた書類には事務担当者の連絡先があったので、この「一口二万円」に関して「参加費なのか」を尋ねたところ、「いえいえ、先生は御招待客でいらっしゃいますから、ともかくご参加いただけるか否かのお返事のおハガキだけ返送して下されば、それで十分でございます」という回答があった。パーティーには必ず「招待状」を持参するようにと念を押されたので、パーティー会場受付で「招待状」を見せると、「よくぞいらっしゃってくださいました。さあさあ、どうぞ奥へお進みください」とパーティー会場に案内された。著名な大物自民党議員の派閥のパーティーなので、派閥の長が挨拶をし、満場の拍手で迎えられていた。その後何名かの代表者のスピーチがあって乾杯に入ると、会場はまるで戦場のような熱気に包まれた。大企業の社長は、その派閥が輩出している関係大臣筋などにご挨拶をするために争って前に出ようとする場面もあれば、あまりに人数が多い場合は長い列を作ったりと、あちこちに「熱い塊」ができ上っていた。議員自身も、デンと椅子に座っている派閥の長の前に列を作り、挨拶する際は跪(ひざまず)いて(膝を床に付けて!)神々しき相手に話をする姿勢だ。おお――!何という序列社会――!のちに関係者から聞いたところによれば、派閥の長の「覚え愛でたい」存在でなければ出世は絶対に無理なので、同じ派閥の議員でも派閥の長に直接話をする機会は少ない場合もあるので、この時ぞとばかりに好印象を与えようと必死なのだという。また外部からの民間企業の社長などは、仕事の発注の際に便宜を図ってもらうために少なくとも「十口」くらいは出す人が多く、それらがその派閥の活動資金に使われるのだそうだ。派閥の人数が多くないと、自民党総裁候補の時などに自派から出せないので、ともかく自身の派閥の人数を増やし、その議員が再当選できるように派閥は努力する。それが裏金として還流させる原因を作っているのだろう。派閥では確かにその派閥独自の学習会を開いていて、私はその学習会にも講師として呼ばれ何度も講演を行ったものだ。それらを通して感じたのは、たとえば対中問題などに関して派閥ごとに違いがあるなど、こんなに主義主張が異なるなら、同じ自民党にいないで、共通の理念だけを持つ派閥が離党して他の政党を作ったらどうなのだろうかということだった。しかし分党しないのは、同じ自民党にいるからこそ「政権与党」として大臣にもなれれば、時には総理大臣にもなれるわけだから、他党連合のような強固な派閥が党内にあったとしても、当選と立身出世のためにのみ議員になっている政治家が多いので、「自民党」という枠組みは崩さないようだ。ほとんどの議員は選挙の際の当選と、当選後の出世しか考えておらず、決して「日本国民を幸せにしよう」とか「日本国の国益のために頑張ろう」といった動機があるわけでないことも段々にわかってきた。派閥は新人の教育のためにもあるという言い訳は、タレント議員など、それまで政治と無関係の「人気がありさえすればそれでいい」あるいは「自身の派閥の議員数が増えればそれでいい」といった人数の多寡により党内の力にたよって党が運営されていることが理由の一つにもなっている。統一教会との連携なども、「票数」が増えればそれでいいという「当選」が目的化しているからに他ならない。◆中国の腐敗と派閥では、中国ではどうなのだろうか。1月10日のコラム<習近平に手痛い軍幹部大規模腐敗と中国全土の腐敗の実態>(※2)でも書いたように、中国の腐敗は一種の文化で、特に江沢民時代に軍部の腐敗がピークに達していた。なぜなら江沢民は1989年6月4日の天安門事件で、時の最高権力者であったトウ小平が個人的に指名して中共中央総書記&中央軍事委員会主席になったようなものだから、北京に政治や人脈的地盤がない。そこで「カネ」でつながった利害関係のネットワークを構築したものだから「腐敗文化」に火が付き、このまま放置したら中国は腐敗で滅亡する寸前まで来ていた。特に軍部における腐敗の蔓延は軍事力を弱体化させ、米中覇権競争に踏み込み始めた中国にとっては致命的な弱点となっていた。そのため、2013年に国家主席になった習近平は反腐敗運動を大々的に行って軍部の腐敗の巣窟を徹底して叩き、2015年にはハイテク国家戦略「中国製造2025」と軍事大改革を行ったのである。何度もくり返すが、反腐敗運動は権力闘争などではなく、腐敗の巣窟を叩いて軍事力のハイテク化と中国の製造業や宇宙開発のハイテク化などを推進させるためのものだった。胡錦涛政権時代までは、腐敗系列が形成した派閥が激しく、党内は一枚岩どころか江沢民を中心として「反腐敗運動をさせまいとする」強固な派閥が胡錦涛政権を抑え込んでいたが、習近平政権になってからは激しい反腐敗運動を展開したので、「カネ」でつながる派閥が形成される余地が少なくなっていった。その意味では「習近平独裁」という言葉を使うこともできるが、どちらかというと「中国共産党による専制政治の側面を強化した」という表現も出来る。国務院に与えられていた権限が、中共中央に集中化し、真相を見誤る要素を多分に孕んでいる。これに関して論じ始めるとまた長文になってしまうので、少なくとも「党内に党がある」という危険なまでの派閥というのは無くなったと言っていいだろう。また日本のように個人が政治家になるために「選挙のための不正」をしなければならないという要素も、中国には基本的にない。選挙がないわけではなく、党内選挙は村レベルから中央レベルまであるし、立法機関である全人代(全国人民代表大会)の代表(議員)や諮問機関である全国政治協商会議の代表を選ぶ選挙も全国津々浦々行われている。但し、立候補者を中国共産党が管理する選挙管理委員会がコントロールしているので、西側諸国のような「普通選挙」が行われているわけではない。人材育成に関しては、6歳から入隊できる少年先峰隊(1億1467万人)から始まり、14歳から入隊資格を得る中国共産主義青年団(7358万人)、28歳で入党資格を持つ中国共産党員(9804万人)という訓練と評価を経て中央に駆け上っていく。日本のようにタレント議員などという現象が入り込む余地はない。その意味では国家戦略を練るに当たり、日中では比較の対象にさえなり得ないと言っていいだろう。ただ、14億の人民の心を「中国共産党こそが最高である」という理念でつないでおくことなど出来ようはずもないので、中国には言論の自由がなく、中国共産党は平気で歴史を塗り替え「国家として嘘をつく」。◆「日本式一党支配」を招く自民党の裏金派閥問題そういう国にだけはなって欲しくないが、だからといって日本の政治がこのままでいいことにはつながらない。野党が育たない、いや正確には「野党が育たないようにしていく」という日本の政治構造は、自民党内の派閥や「当選と出世だけが目的」という自民党の実態を、今般の裏金・派閥問題が炙りだしてくれた。その結果、まるで「自民党独裁」の中で、派閥だけが時々交代する「日本式一党支配」を招いているという見方もできる。それは同時に、「日本国民の幸せを中心に考えているのではない政治」の真相を露呈させたということにもなろう。日本の国益を甚だしく損ねている現実を、国民一人一人が自分自身のこととして直視するのに、残念ながら、良い事例なのかもしれない。この論考はYahoo(※3)から転載しました。写真: アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4931(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d40180f7cef863f353c2313e57297c65306dbee2 <CS> 2024/01/25 10:54 GRICI どう出る、習近平? 台湾総統選、親米民進党勝利【中国問題グローバル研究所】 *10:28JST どう出る、習近平? 台湾総統選、親米民進党勝利【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。台湾総統選で親米の民進党・頼清徳氏が勝利した。立法院に関しては国民党が議席を増やしたものの過半数に達せず、1議席しか民進党に勝っていない。「ねじれ国会」は民衆党が国民党側に付くか民進党側に付くかによって方向性が決まる。中国は頼氏の得票率が40%でしかないことを以て、この選挙結果は台湾の主流世論ではないと主張。これまでの姿勢を変えない構えだ。国民党の意外な敗因と今後の中台の動向を考察する。◆総統選での民進党の勝利と立法院における議席1月13日、台湾総統の選挙結果と立法院議員の選挙結果が出た。先ず総統選の開票結果は民進党の頼清徳氏:558万6019票(40.05%)国民党の侯友宜氏:467万1021票(33.49%)民衆党の柯文哲氏:369万 466票(26.46%)で、頼清徳が当選した。蔡英文総統の方針を受け継ぐと宣言し、圧倒的な親米路線を継続することになる。一方、立法院の方は全議席113のうち、国民党:52議席(改選前より15議席増)民進党:51議席(改選前より11議席減)民衆党: 8議席(改選前より3議席増)となり、いわゆる「ねじれ国会」状況となった。国民党がここまで議席数を伸ばすことができたのは、内政に関する民進党に対する不満があるからで、それは2022年11月に行われた、内政が問われる統一地方選挙で国民党が圧勝し、民進党が惨敗したことからも窺(うかが)われる。しかし、対外政策が重視される総統選においては、親米寄りの民進党が勝利した。その背景には言うまでもなくアメリカの力があり、「第二のCIA」と呼ばれるNED(全米民主基金)は台湾にその支部である「台湾民主基金会」を2003年に設立しているほどだ(詳細は拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の【図表6‐8 「第二のCIA」NEDの活動一覧表】など)。その浸透力は大きい。その証拠に、2023年11月20日のコラム<米国在台湾協会は3回も台湾総統候補者を面接試験し、柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている>(※2)に書いたように、民衆党の柯文哲は野党一本化である「藍(国民党)白(民衆党)合作」に署名したことを発表した瞬間に、AIT(米国在台湾協会)から連絡が来て「おまえ、何するつもりだ?」と威嚇され、「藍白合作」は破局した。柯文哲自らが告白しているので間違いはないだろう。もし、「藍白合作」が潰されていなかったら、得票率(頼清徳40.05%、侯友宜33.49%、柯文哲26.46%)から言って、野党連合は59.95%前後の票を獲得していた可能性があり、野党連合が圧勝したはずだ。したがって、この選挙はアメリカと中国大陸との闘いでもあり、アメリカが戦略的に勝利したということもできる。事実、頼清徳は勝利宣言のスピーチ(※3)で、中国大陸の選挙活動介入を「外部勢力の介入」と批判しており、アメリカの介入は台湾に浸透しきっていて「内部勢力」と認識していることになる。◆国民党の敗因は国民党自身に「緑白合作」も?もう一つの国民党の敗因は、国民党自身にある。侯友宜は選挙期間中、「九二コンセンサス」とか「一つの中国」、ましてや「統一」などといった類の言葉を使わないように慎重に言葉を選んでいたのに、選挙直前(1月8日)になって、馬英九元総統が、DW(Deutsche Welle、ドイツの声)の取材に答えて<「九二コンセンサス」を讃えたり、習近平を信じるべきだと言ったり>(※4)などしたからだ。この情報が1月10日に公開された。選挙民は一気に国民党から離れていったのは否めないだろう。そのためもあってか、選挙後、頼清徳は<何なら民衆党と組む可能性もなくはない>(※5)と示唆しているので、「ねじれ国会」が解消される可能性もある。しかし、これで民衆党の柯文哲が今度は緑(民進党)と「緑白合作」という連立内閣を組むようなことをしたら、もう柯文哲の信用はガタ落ちになるのではないだろうか?柯文哲はそもそも「民進党のやり方は絶対に許さない!」と叫んで民衆党の産声を上げたようなものだし、台北市長時代は<「両岸は一つの家族」と中国を讃えていた>(※6)のに、節操がなさ過ぎるだろう。立法委員の任期は2月1日からなので、今年も2月1日に立法院の院長・副院長が選出される(※7)。今回、国民党と民進党はどちらも全議席の過半数に達してないので、民衆党がどちらに付くかによって、立法院の院長が国民党になるか、あるいは民進党になるかが決まる可能性が高い。したがって2月1日になれば、「緑白合作」という、あり得ないような状況の有無が明らかになるものと推測される。◆中国の反応では、今般の選挙結果に関して、中国はどのように反応しているのだろうか?習近平にしてみれば、あまりに衝撃的な結果だったのでしばらく報道が規制されていたくらいだったが、いつまでもそうもいくまい。夜中の22:46になって、最初に公的見解を発表したのは国務院台湾弁公室(※8)だった。その見解は概ね以下のようなものである。●民進党が台湾の主流世論を代表しているわけではない。●台湾は中国の台湾で、今回の選挙が両岸関係の基本的な発展の方向性を変えることは絶対にできない。祖国がいずれ、そして必然的に統一されるという大勢を阻止することはできない。●台湾問題を解決し、祖国統一を成し遂げるという(中国の)姿勢は一貫しており、その意志は磐(いわお)のように揺るぎない。「一つの中国」原則を体現する「九二コンセンサス」を堅持し、「台湾独立」の分離主義行動と外部勢力の干渉に断固として反対し、台湾の関連政党、組織、各界の人民と協力して、両岸関係の平和的発展を促進し、祖国統一の偉大な偉業を前進させる。(以上)頼清徳の得票率が40%であったため、残り60%の民意を合わせたものが「台湾の民意だ」という主張は、台湾内にもあるが、上記見解の冒頭部分は、そのことを指している。同様の内容は13日夜、外務省報道官の意思表明(※9)にもあり、14日の中央テレビ局CCTVのお昼のニュース(※10)でも、ほぼ同じ文面で報道した。いずれも悔しさが滲み出ている。◆習近平はどう出るのか? 腐敗で軍事力は弱ってないのか?バイデン大統領は台湾総統選における民進党の勝利に関し<台湾の独立は支持しない>(※11)と言ってはいる。おまけに「台湾は中国の一部だ」とまで一歩踏み込んで発言したのは珍しい。しかし一方では同報道(※12)で、バイデン政権の高官が「バイデンは民進党政府への支持を示すため、台湾に非公式の代表団を派遣する予定だ」と言っているという。相変わらずの言行不一致だ。非公式であるにせよ、米政界人が訪台したりなどすれば、中国は又もや軍事演習で威嚇するかもしれない。その威嚇は4年後の台湾総統選にプラスに働くとは思わないが、中国が軍事的威嚇をしないという保証はない。いや、するだろう。しかし、1月10日のコラム<習近平に手痛い軍幹部大規模腐敗と中国全土の腐敗の実態>(※13)にも書いたように、ロケット軍を中心にこのような大規模腐敗があるようでは、中国の軍事力も大幅に衰退するのではないかと思うのが普通だろう。そこで関連データに当たってみたところ、当該コラムの図表4および図表5に示したように、案外に衰退していない。タイムラグがあるからかもしれないとも考えたが、同じ疑問を持つ人はシンガポールにもいたようだ。1月9日の聯合早報は<解放軍 組織ぐるみの刑事事件>(※14)という見出しで、「激しい腐敗は解放軍の戦力に影響を与えるのか」というテーマに関して考察している。聯合早報の駐北京記者は「腐敗があるということは投資が普通ではなく多いということで、腐敗があっても、それによって軍が弱体化するところまではいかず、習近平は軍の秩序を掌握している」というニュアンスの分析をしている。筆者が前掲のコラムで示した図表4と図表5の関連データは、聯合早報の分析に近い状況を示しているので、当該コラムでも書いたように、江沢民時代のような腐敗全盛時代は、習近平政権になってからの反腐敗大運動で一定程度は鎮静化しており、それほどの大きな影響は受けないのかもしれない。であるならば、今まで通り、いや、それ以上に軍事演習で威嚇する可能性がある。それでも、台湾が政府として独立を宣言しない限り、武力攻撃するという確率はやはり小さいだろう。中国にとってメリットがないからだ。ちなみに、昨年11月に訪米してサンフランシスコでバイデンに会った時に、習近平は<2027年とか2035年に台湾を武力攻撃するなどという話は聞いたことがない」と言った>(※15)そうだ。拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いたことは正しかったことになろうか。まずは2月1日の立法院の動きを待ちたい。この論考はYahoo(※16)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4822(※3)https://tw.news.yahoo.com/2024%E7%B8%BD%E7%B5%B1%E5%A4%A7%E9%81%B8-%E8%B3%B4%E6%B8%85%E5%BE%B7%E6%89%93%E7%A0%B4-8%E5%B9%B4%E9%AD%94%E5%92%92-%E5%AE%A3%E5%B8%83%E5%8B%9D%E9%81%B8-%E8%87%B4%E8%A9%9E%E5%85%A8%E6%96%87%E6%9B%9D%E5%85%89-132521553.html?guccounter=1(※4)https://www.dw.com/zh/%E9%A6%AC%E8%8B%B1%E4%B9%9D%E5%B0%B1%E5%85%A9%E5%B2%B8%E9%97%9C%E4%BF%82%E8%80%8C%E8%A8%80%E5%BF%85%E9%A0%88%E7%9B%B8%E4%BF%A1%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3/a-67934445(※5)https://www.cna.com.tw/news/aipl/202401140113.aspx(※6)http://hk.crntt.com/doc/1036/9/0/0/103690067_2.html?coluid=93&kindid=2910&docid=103690067&mdate=0331095309(※7)https://www.ly.gov.tw/Pages/List.aspx?nodeid=149(※8)http://www.news.cn/tw/20240113/de4b608e529742d6bb428d5993c66c41/c.html(※9)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202401/t20240113_11223310.shtml(※10)https://tv.cctv.com/2024/01/14/VIDESC7EVTcywZAe3Nrvxgf1240114.shtml?spm=C45305.PqDAXWMng6mR.EIEv9BrzSCjy.35(※11)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※12)https://www.reuters.com/world/biden-us-does-not-support-taiwan-independence-2024-01-13/(※13)https://grici.or.jp/4931(※14)https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20240109-1460955(※15)https://www.voachinese.com/a/xis-denial-of-plan-to-invade-taiwan-caused-a-stir-in-taiwans-presidential-candidates-20231122/7366374.html(※16)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3bbb1e9015f975bfda921548182cdb516cfefb16 <CS> 2024/01/15 10:28 GRICI 習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(2)【中国問題グローバル研究所】 *16:36JST 習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(2)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆毛沢東は何度も台湾の平和統一を提案しているでは、毛沢東がなぜ台湾の平和統一を提唱し、「台湾同胞に告ぐ書」を発表するに至ったのかを考察してみよう。毛沢東が1949年10月1日に新中国「中華人民共和国」の誕生を宣言したとき、台湾の解放はまだ成されていなかった。「解放」というのは中国共産党の軍隊である中国人民解放軍が国共内戦(=解放戦争=革命戦争)において、その地における国民党による支配を打倒し、勝利した解放軍側の共産党が統治することを言う。国共内戦で大陸において敗北した国民党軍を率いる蒋介石は、1949年12月に中華民国の首都・南京を脱出し台湾に逃れ、台北に遷都した。台湾は海路か空路でないと攻撃できないので、海軍も空軍も弱かった中国人民解放軍は、旧ソ連のスターリンに依頼し、新中国誕生を宣言した後にすぐ、ソ連から海軍や空軍の支援を得て台湾解放を実現させる約束を取り付けていた。ところが北朝鮮の金日成(キム・イルソン)が南北朝鮮を統一するため朝鮮戦争をスターリンと結託して1950年6月に起こしたため、台湾解放のためのソ連の支援は実現されなかった。新中国誕生を宣言したのは、中国大陸を次々に解放していったので、まだ残されている海南島や台湾は宣言後に一気に解放していこうと、毛沢東は計画していた。しかし朝鮮戦争で中国人民志願軍が全力投入してアメリカの北上を食い止めたため消耗していた上に、アメリカが第七艦隊を台湾海峡に付けていたため、海南島などは宣言後に解放しているが、国共内戦をそのまま継続させることが困難になってしまった。そこで毛沢東は「平和統一」を模索し始めたのである。詳細は2009年8月13日の中国新聞網に新華網からの転載として<毛沢東はかつて武力で台湾を解放しようとしていたが、なぜ実現できなかったのか?>(※2)という見出しで書いてある。一方、2021年3月9日の「中国台湾網」は、その昔の新華網の情報として1956年における<毛主席の和平統一思想>(※3)を公開している。それによると、1956年1月、毛沢東は「国共(国民党と共産党)はすでに二回合作している。いま我々は第三回目の合作を準備している」とスピーチし、平和統一の条件などを述べている。・台湾に行ったままの軍人や政治家には、本土(大陸)に残した親戚や友人が多いだろう。自由に行き来して互いに会うといい。如何なる制限も設けず、便宜と支援を提供する。・台湾がアメリカとの関係を断絶しさえすれば、台湾は北京中央で開催している全国人民代表大会や中国人民政治協商会議全国委員会に参加するための代表(議員)を送り込むこともできる。但し、外国軍(米軍)は台湾から撤退しなければならない。(以上、中国台湾網よりの引用)ほかにも多くの文献があるが、1957年以降のことは前掲の中国新聞網の情報がわかりやすい。ただ長文なので、要点だけを拾うと以下のようになろうか。1.1956年7月、毛沢東は「台湾平和解放工作強化に関する中共中央の指示」を発布し、蒋介石の息子・蒋経国と仲が良かった曹聚仁という学者を(香港から)招き和平工作に関して話し合った。そこで第三回国共合作という毛沢東側の意図を、曹聚仁を通して蒋経国に伝えてもらった。しかし台湾側は肯定的な反応を示さなかった。2. 1957年4月、「人民日報」は初めて、毛沢東には第三回国共合作をする用意があることを公表した。3. 新中国誕生後、毛沢東は本来、台湾を解放するに当たり金門と馬祖を解放して、次に台湾解放につなげようとしていたのだが、1958年、金門・馬祖解放を当面は実行しないと表明した。すると、「中華民国」の領土として「大陸奪還」のチャンスを狙っていた台湾の蒋介石は中国大陸の沿岸部を爆撃し始めた。しかも米軍に支援を求めたのだ。そこで同年7月、毛沢東は金門への砲撃準備を指示した。ところが米軍は、最初は強硬姿勢を示していたが、実際は国民党の船団を金門から3海里のみ護衛するに留め、「国共内戦」に巻き込まれることを避けた。アメリカは「大陸と台湾」が一つになることを嫌い、「二つの中国」あるいは「一つの中国と一つの台湾」となること(=台湾が独立すること)を望み、蒋介石に「大陸奪還」を諦めさせようとした。しかし蒋介石は断固として拒否!(筆者注:拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』のp.255前後にも書いたが、実は台湾に逃れた蒋介石は、何としても大陸を奪還しようとして、日中戦争で戦った相手の旧日本軍の岡村寧次大将に依頼し、元日本陸軍参謀から成る「白団」という軍事顧問団を1950年2月、秘密裡に台湾に招聘した。ところがアメリカに気づかれ、アメリカに猛反対されて「白団」は消滅している。それくらいアメリカは蒋介石が「大陸奪還」のために戦うことを阻止した。)4. しかし、毛沢東にとっても蒋介石にとっても「一つの中国」しかあり得ず、革命戦争前の「中華民国」を「毛沢東が取るか、蒋介石が取るか」の二者択一しかなかった。つまり、毛沢東と蒋介石の考え方が一致していて、毛沢東は「蒋介石がアメリカの考え方を拒否している事実」に目を付けたのである。そこで毛沢東は金門攻撃を突如停止させた。金門と馬祖を蒋介石に渡しておく方が、「一つの中国」という、毛沢東(共産党)と蒋介石(国民党)の共通の利益に合致すると判断した。金門と馬祖を蒋介石が領有していれば、蒋介石はそれを足掛かりに「大陸奪還」の夢を捨てないだろうから「一つの中国」という概念が持続するからだ。そのため毛沢東はわざと時々小規模な攻撃を行って、今はまだ国共内戦中で、「一つの中国しかない」という認識を蒋介石と共有した(筆者注:これは現在の大陸による軍事演習に相当する)。5. 1958年10月6日、毛沢東は「台湾同胞に告ぐ書」を発表。「台湾、澎湖島、金門、馬祖は中国の領土の一部であり、世界には“一つの中国”しか存在しない」、「われわれ(共産党と国民党)の共通の敵はアメリカ帝国主義である」とした上で、統一後の台湾の状況に関して「蒋介石は彼の軍隊を維持していい」および「蒋介石には軍隊と政治経済システムと権力構造の保持を認める」と表明した。(筆者注:そのため、現在も台湾平和統一後は、台湾は軍をそのまま維持していいことになっている。)6. 1958年10月25日、毛沢東は「台湾同胞に再び告ぐ書」を発表。アメリカが台湾に内政干渉してくる目的を明らかにし、アメリカは台湾を利用して自らの覇権を維持しようとしているだけなので「アメリカの有毒な計画に注意せよ」と警告した。以上が毛沢東の台湾平和統一構想の経緯と「台湾同胞に告ぐ書」の流れである。なお長男・毛岸英を朝鮮戦争で失った毛沢東は、「台湾は百年かかっても解放する(統一する)」と誓っている。その言葉は、たとえば<毛沢東は晩年、中米関係をどのように処理しようとしていたか>(※4)や、『毛沢東年譜』に書いてある1973年11月17日における<毛沢東とキッシンジャーとの会話>(※5)などにも表れている。◆祖国統一は歴史的必然中国は、毛沢東が「いざとなったら武力的手段によって台湾を解放することを否定はしないが、基本的には何としても政治外交的に(=平和的に=話し合いによって)台湾問題を解決したい」と主張し、「第三次国共合作があってもいい」と言い続けていたことを基本として国家運営をしてきた。それはあくまでも「国共内戦をどういう形で終わらせるか」という中国国内の問題であり、そこにアメリカが内政干渉してくるのはおかしいと主張し続けてきているのだ。これは1950年に朝鮮戦争が起きたために中断された国共内戦の問題なので、「祖国統一は歴史的必然性」であるという位置づけを貫いている。以上より、習近平だけが台湾統一を主張しているのではなく、毛沢東以来の国家的課題であることが明らかになったのではないかと期待する。もちろん、あまりに長い時間が経ちすぎ、国共内戦を知らない世代が多くなり、台湾人としてのアイデンティティも芽生えてきたので、静かに1月13日の台湾総統選の結果を待ちたい。この論考はYahoo(※6)から転載しました。写真: CCTVより(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.chinanews.com.cn/cul/news/2009/08-13/1816313.shtml(※3)http://www.taiwan.cn/xwzx/zxzt/2021zhuanti/__deleted_2021.05.11_11.10.34__jdybzn/ghlc/202103/t20210309_12337043.htm(※4)http://www.charhar.org.cn/newsinfo.aspx?newsid=16440(※5)http://www.zywxpress.com/c/2021-02-25/1350306.shtml(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f61ef11aa9fec3d6e71bd3651629a1c0852d1d6f <CS> 2024/01/09 16:36 GRICI 習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(1)【中国問題グローバル研究所】 *16:34JST 習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(1)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。昨年末に習近平国家主席は、中央テレビ局CCTVを通して「二〇二四年新年の挨拶」を表明した。その中で台湾問題に関して「祖国統一是歴史必然」(祖国統一は歴史的必然である)と述べている。日本のメディアはこれを以て、習近平は野心家なので台湾統一をしようとしているというニュアンスで「台湾有事」を警戒しているが、「台湾統一」は1950年代に毛沢東が「祖国の使命」として強調したもの。新中国(中華人民共和国)誕生以来のスローガンだ。台湾は国共内戦で後回しにされた一部分に過ぎない。1月13日にはその分岐点となる台湾総統選挙もあるので、「歴史的必然性」の経緯を考察してみよう。◆習近平の2024年新年の挨拶習近平は2023年12月31日夕方(北京時間19:28)、「二〇二四年新年賀詞」(※2)を、CCTVやラジオあるいはインターネットを通して発表した。その文字版は、2024年1月1日の中国共産党機関紙「人民日報」(電子版)に掲載された(※3)(リンク先は中国共産党新聞網)。12月31日に翌年の新年の挨拶をする習慣はかなり前からあって、最初は毛沢東がまだ新中国誕生を宣言する前の1949年1月1日の挨拶を、1948年12月31日にラジオを通して放送し、翌日の1949年1月1日の「人民日報」に全文が掲載されたことから始まる。その年の10月1日に新中国「中華人民共和国」の誕生が宣言されるので、毛沢東としては「革命の成功まで、あともう一歩だ!頑張ろう!」と全国人民に呼びかけたかったものと思う。当時はまだ同時放送はラジオしかなく、元旦の人民日報に間に合わせるには、前日の夜に放送するしかなかったことが原因だったが、その後、天安門事件があった1989年の12月31日に江沢民(当時、中共中央総書記&中央軍事委員会主席)がCCTVのインタビューを受けて新年の祝辞を述べ、1990年12月31日に楊尚昆(当時、国家主席)が新年の挨拶をして以来、中国の指導者は毎年12月31日に新年の挨拶を行う慣わしになっている。「二〇二四年新年賀詞」約1600文字のうち9文字の「祖国統一是歴史必然」が西側諸国に注目され、あたかも習近平だけが「台湾統一」を強行しようとしているかのごとく、日本でも報道されている。しかし古くは毛沢東をはじめ、トウ小平や江沢民あるいは胡錦涛も同様の言葉を使っていた。それは党大会や新年の挨拶など、さまざまなケースで常套句化している。特に注目すべきは、毛沢東は1950年代に2回も「台湾の平和統一」を呼びかける「台湾同胞に告ぐ書」を発表し、トウ小平もそれを基本として1979年1月1日に「台湾同胞に告ぐ書」を発表しており、習近平が2019年1月2日に「台湾同胞に告ぐ書」を発表した(※4)のは、あくまでもトウ小平の同書の40周年記念として繰り返したということである。「習近平の新年の挨拶「祖国統一は歴史的必然」は毛沢東時代から(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo(※5)から転載しました。写真: CCTVより(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=5265176553760067645&toc_style_id=feeds_default&track_id=117DA711(※3)http://cpc.people.com.cn/n1/2024/0101/c64094-40150459.html(※4)http://www.xinhuanet.com/politics/leaders/2019-01/02/c_1123937757.htm(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f61ef11aa9fec3d6e71bd3651629a1c0852d1d6f <CS> 2024/01/09 16:34 GRICI 台湾総統選政見放送第二弾 民進党・頼清徳候補の最後の言葉が印象的【中国問題グローバル研究所】 *10:24JST 台湾総統選政見放送第二弾 民進党・頼清徳候補の最後の言葉が印象的【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。12月26日午後2時から、台湾総統選候補者の政見放送第二弾がライブで行われた。民衆党の柯文哲候補、国民党の侯友宜候補、民進党の頼清徳候補の3候補が順番に10分ずつ3回にわたって政権表明をしたが、何よりもインパクトがあったのは頼清徳候補の最後の一言だった。◆台湾総統選政見放送第二弾12月26日の午後2時から台湾総統選立候補者の政見放送(※2)があった。1人1回10分間の制限内で、3回政見を発表できる。2回目以降は1回目における他の2人の意見に対する反論をすることもできる形になっており、公平感があるように見えるが、3回目の最後の候補者の意見に対して反論する機会はないので、3番目に話す人が一番有利だということになる。1月13日の選挙当日における「総統+副総統」ペアに関しては、間違えないように念のため「番号札」のようなものが付いていて、民衆党の「柯文哲ペア」が「1番札」、民進党の「頼清徳ペア」が「2番札」、国民党の「侯友宜ペア」が「3番札」に抽選で当たった。総統候補の政見放送第一弾は12月20日に行われ、副総統候補者の政見放送も12月22日に行われて、総統候補者政見放送の最終回である第3弾は12月28日の午後7時から開催されることになっている。今般の政見放送を最初から最後まで視聴したが、実に理路整然としていて見ごたえがあり、どの候補者も優劣がつけがたいほどに立派だという印象を持った。しかも時間をピタリと合わせて1秒の狂いもなくスピーチを終わらせる辺りは、さすがに東洋文化的で感心してしまった。一度は野党一本化「藍(国民党)白(民衆党)合作」に同意する書面に同意のサインをしておきながら、それを自ら破った柯文哲に関しては「信用がならない」ということから、その後の支持率がひたすら下落し、総統選からは落伍したという印象を与えたが、これがなかなか。いざ、総統への意気込みを込めてスピーチをすると、聡明さが前に出て、悪くない。かなり若者を惹きつけただろうという印象を抱いた。侯友宜も警察官僚なのだから「お固い」というイメージを持つが、どうやら11月26日のコラム<台湾総統選、国民党支持率急上昇の謎が解けた>(※3)に書いた政治評論番組の司会者として人気者の趙少康(国民党の副総統候補)からスピーチの特訓を受けたらしく、堂に入った話しっぷりになっている。頼清徳は与党現役だけあって一番慣れている上に柔和な面持ちでもあるので、結局のところ、3回目の3番目という「その後の反論が存在しない」スピーチに恵まれ、相手を罵倒しっぱなしとも言えなくはない「インパクトのある名言」を最後に残して総統選第二弾政見放送は終わった。◆頼清徳が最後に言った言葉「国民党は蒋経国にすまないと思わないのか!」政見放送は主として、トップバッターの柯文哲が「1回目:教育と体育問題」、「2回目:少子化と人材養成問題」、「3回目:経済問題」を論じたのに対し、2番目に話した侯友宜は「1回目:詐欺撲滅政策(民進党政権は台湾を詐欺の島にした)」、「2回目:農業推進や貿易交流推進(民進党は中台関係の悪化により農水産業者に損害を与えた)」、「3回目:社会における女性の役割の重要性(副総裁に女性を選んでいないのは国民党のみであることに対する批判に対して)」を話し、ラストの頼清徳は「1回目:一般的概念論やバラマキ政策」、「2回目:半導体やAI、太陽光問題」などを話した後、3回目すなわち政見放送の最後に力を込めて「国民党は蒋経国にすまないと思わないのか!」と激しく国民党を批判して締めくくった。どういう意味かというと、台湾が一つの政権を持つようになったのは、もともと台湾をも含めて中国全土を統治していた国民党の蒋介石総統が、日本敗戦後に始まった国共内戦で敗北し、台湾に「中華民国」の拠点を置くことになったからだ。そのため「国共内戦はまだ終わってない」として、蒋介石は「大陸奪還」を目指し、中国共産党の毛沢東が北京で宣言した「中華人民共和国」を認めず、「大陸を含めた中華民国」の正当性を主張してきた。いつかは絶対に叶えると闘志を燃やしていた「大陸奪還」の夢は、アメリカが「中華人民共和国」を「中国を代表する唯一の国家」として「一つの中国」を認め、1972年10月25日に「中華人民共和国」が「中国を代表する唯一の国家」として国連に加盟し、「中華民国」台湾が国連を脱退せざるを得ないところに追い詰められた瞬間に潰(つい)えてしまった。日米などが率先して断交した「中華民国」台湾との国交断絶は全世界に波及し、国連加盟国のほとんどが中華民国と断交する中、蔣介石の息子・蒋経国は「大陸奪還」の夢を捨てて、台湾に根を下ろした十大建設など経済に重きを置き、台湾を復興させていった。「蒋介石と蒋経国が、どれだけ無念の思いで宿敵・中国共産党への復讐を諦め、台湾の台湾化に舵を切ったのかを忘れたのか!」という意味が頼清徳の最後の言葉「蔣経国にすまないと思わないのか!」に込められている。それは「中国共産党こそが最大の政敵であったはずの国民党が、なぜいま親中になっているのか」という非難であり、筆者の胸には他の主張などどうでもいいほどに深く刺さった。◆かつての敵国と親密になる国や政党もし、かつての敵国と親密になるという意味では、日本こそが最大の例として挙げられるだろう。日本の無辜の民に原子爆弾を投下し東京大空襲で無差別爆撃を行った最大の敵「鬼畜米英」に敗けた日本はいま、アメリカと親密になるどころか隷属していると言っても過言ではない。アメリカのCIAによる思想工作を80年近くにわたって受けてきた日本の精神は、完全にアメリカ脳化してしまい、戦争ビジネスで国家運営をしているアメリカを客観視する目さえ持ってはならないところにまで飼いならされてしまった(詳細は『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の【終章 「アメリカ脳」から抜け出さないと日本は戦争に巻き込まれる】)。台湾の場合も、国連脱退に持って行ったアメリカを、蒋介石は全ての魂を込めて「裏切者!」と恨んだが、現在台湾を統治している民進党政権はアメリカの支援と支持に頼り切っている。ならば、現在の台湾の国民党が、仇敵の中国共産党が統治する中国(中華人民共和国)と仲良くしようとしていることくらいは、よくあることと言えるかもしれない。しかし筆者にとっては「国共(国民党・共産党)内戦」の中、筆者が住んでいた長春を中国共産党軍によって食糧封鎖され、家族も次々と餓死し、自分自身は共産党軍の流れ弾で負傷し身障者になっただけでなく餓死体の上で野宿させられ恐怖のあまり記憶喪失になった経験は、今もなお人生の原点になっている。その実体験を書いた『卡子(チャーズ) 出口なき大地』(1984年出版)(その後何度も絶版になり、その都度復刻版を出し、現在は『もう一つのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』)は直ぐに中国語に翻訳したが、中国大陸では出版を許可してくれることはなかった。台湾では国民党軍が無辜の民のために戦ってはくれなかったことからか、やはり出版許可が下りなかったのだが、2014年になって「自分が間で尽力したことが中国大陸に知られるとまずいので口外するな」という条件で、ようやく台湾で中国語版の出版にこぎつけた経緯がある。それくらい、国民党と台湾と中国共産党との関係は紆余曲折を経ながらこんにちに至っている。そのため、民進党の頼清徳の最後の言葉は、他のどの発言よりも深く印象に残ったのだ。しかし中国からすれば、今回の候補者はみな「反中だ」と思っている。◆今回の台湾総統選候補者はみな「反中」今年11月12日のRFI(Radio France Internationale)は台湾の学者の<今回の総統候補は何れも統一反対派(反中)だ>(※4)という発言を載せている。事実、国民党の侯友宜は、中国との経済的融和は唱えるものの、決して「中国との平和統一」に賛成してはいないし、「一国二制度」にも賛成したことは一度もない。独立に反対しているだけである。国民党副総統候補の趙少康などは、かつてアメリカの永住権を持っていたほど、むしろ親米だ。その意味で、頼清徳の最後の「捨て台詞」は当たっていないとも言える。その証拠に国民党の副総統候補である趙少康は、「中国共産党は永遠に国民党の敵だ!」(※5)と激しく言い切っている(発言は12月22日の台湾副総統立候補者による政見放送の時のもの)。「事実、李登輝は“中華民国”国旗を降ろしたことさえあるじゃないか!国民党はただの一度も“中華民国”国旗を降ろしたことがない。”中華民国”のために戦い続けているのは国民党だ!」と趙少康の主張は一歩も退かない勢いだ。趙少康のこの発言は12月26日の台湾総統選政見放送第二弾以前のものだが、趙少康が頼清徳の最後の一言に予め回答していたと言えるのかも知れない。選挙は前日まで、どのようなアクシデントがあるかもしれないので何とも言えないが、それでもなお、全体の支持率趨勢としては、頼清徳が2位に落ちる可能性は今のところ見当たりそうにない。この論考はYahoo(※6)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.youtube.com/watch?v=ThtXqTewoQ4(※3)https://grici.or.jp/4850(※4)https://www.rfi.fr/cn/%E4%B8%93%E6%A0%8F%E6%A3%80%E7%B4%A2/%E8%A6%81%E9%97%BB%E8%A7%A3%E8%AF%B4/20231211-%E5%8F%B0%E5%AD%A6%E8%80%85%E7%8E%8B%E4%BF%A1%E8%B4%A4-%E4%BB%8E%E7%BB%9F%E4%B8%80%E7%9A%84%E8%A7%92%E5%BA%A6%E8%AE%B2%EF%BC%8C%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E8%93%9D%E7%BB%BF%E4%B8%A4%E5%A4%A7%E5%85%9A%E6%9C%AC%E8%B4%A8%E4%B8%8A%E9%83%BD-%E5%8F%8D%E7%BB%9F(※5)https://www.youtube.com/watch?v=B6zhkyc1w0Y(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3b3e4f1356e031befeb6e6771aebc55e11f5fe89 <CS> 2023/12/29 10:24 GRICI 中国も驚く岸田首相の不支持率79%! 70年来の最高記録【中国問題グローバル研究所】 *10:21JST 中国も驚く岸田首相の不支持率79%! 70年来の最高記録【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。岸田首相の不支持率が79%に達したことは、日本人でも「それでもこの内閣を存続させるのか」と思ってしまうが、中国でも驚きを以て報道され、中央テレビ局CCTVや新華社が報じたので、中国のネット空間はそれが次から次へと転載されて騒然としている。中国の腐敗文化は数千年の歴史を持ち、江沢民政権はそれを助長し、胡錦涛政権では江沢民勢力により是正できなかったが、習近平政権になってからは反腐敗運動を展開して、ようやくいくらか下火になってきた。ただ日本と異なるのは、中国は腐敗全盛時代に中国経済が急成長し、習近平政権で反腐敗運動を徹底したのはハイテク国家戦略を推進して軍の近代化を図るのが目的だった。日本の場合は、国家戦略のために裏金が動いているのではなく、自民党内の派閥競争と、「選挙に勝つための裏金作り」という何とも内向きで「自己本位」の目的しかなく、この段階ですでに「共通した国家戦略」などは眼中にないと言える。習近平政権を「権力闘争」と非難し、「さあ、もう滅びるぞ」と嘲嗤(あざわら)っている場合ではないだろう。◆中央テレビ局CCTVと中国政府通信社・新華社の報道2023年12月18日、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVは<日本:世論調査で岸田内閣不支持率が70数年来の最高記録を示す>(※2)というタイトルで、驚きを以て日本政治の裏金問題を報じている。それを文字化したものが中国政府の通信社である新華社通信で<“闇金”スキャンダルはくすぶり続け、岸田内閣の不支持率は過去70年間で最高記録を更新>(※3)とう見出しで報道されている。そこで、その概要を以下に列挙する。●日本の「毎日新聞」が16日と17日に行った世論調査の結果、岸田内閣の支持率は11月中旬からさらに5%低下して16%となり、「危険水域」から「下野水域」に転落した。不支持率は5%上昇して79%に達し、1947年の調査開始以来、最高を記録した。日本の政界では、内閣支持率が30%より低くなると「危険水域」に突入したとみなされるようになっているが、20%を下回った場合は、すでに「下野を余儀なくされる水域」であるとみなされる領域に入る。●日本の「共同通信社」が17日に発表した世論調査によると、岸田内閣の支持率は同社がこれまで調査してきた支持率をさらに6%下回って22.3%に至り、不支持率は8.7%上がって、65.4%に達し、最高を記録しているとのこと。執政党である自民党の支持率も同様に下落の一途を辿っている。●「毎日新聞」の世論調査の中で、自民党支持率は前回調査に比べて7%下落し、17%にまで滑り落ちた。共同通信社の調査では自民党支持率は34.1%から26%にまで下落。これらの結果は自民党が2012年年末に再復権して以来の最低を記録している。●最新の世論調査を行っている最中にも、自民党派閥の“闇金”スキャンダルが次々に発効して新しいスキャンダルが出て来ているので世論調査が追いつかないくらいだが、おおむね80%の調査対象者が、秘密政治資金スキャンダルは日本政界における重大な事件で、岸田(首相)には、この種の事件を処理する指導力に欠けているとみなしている。そして約77%の人が、自民党は自らこの過ちを糺す自浄能力に欠けていると見ており、70%の人が自民党は党内の派閥を解散するしかないだろうとみなしていることがわかった。(報道内容の要約は以上)◆中国のネットは岸田内閣の不支持率の高さと派閥裏金で大賑わいCCTVと新華社が上記のような報道をしたので、中国のネットは大手の全国型ウェブサイトから地方あるいは個人のウェブサイトに至るまで、大喜びで日本の政治スキャンダル記事を転載し、思い思いの視点から批判を浴びせている。12月11日の中国共産党機関紙「人民日報」姉妹版の「環球時報」の<“パーティ券”スキャンダルが岸田内閣に衝撃を与える>(※4)や、同じく12月15日の<パーティ券スキャンダルはますます大きくなり、多くの政府高官が辞任し、日本の政界を揺るがしている>(※5)をはじめ、数多くの論評があるが、あまりに多いので一つ一つリンク先を張らないが、中には「これはロッキード事件やリクルート事件に匹敵するもので、内閣改造などを行ってみたところで根本問題は解決しないはずだ。それで政権が浮上するなら、民主主義って何なんだ」というものなどが見受けられる。日本は中国共産党を一党独裁と酷評しているが(独裁であることは確かだが)、これだけの不正資金が動いていても政権が沈没しないのなら、日本の政党もまた、自民党が実質上、一党独裁を続けているのに等しいのではないだろうかという一般ネット民の声もある。そこには、まだほのかに残っている「民主主義への憧れ」と「巨大なる絶望」がない交ぜになっているものも見受けられ、複雑だ。◆中国の腐敗と日本の政治資金裏金の違い中国の腐敗文化には数千年の歴史があり、それが大地に染みこんでいるとさえ言えるが、少なくとも習近平政権になってからの反腐敗運動を考えた時に、改革開放以来の中国の腐敗と反腐敗運動には、大きな特徴と目標がある。毛沢東時代は、ほんのわずかでも金儲けをしようとする者は「走資派(資本主義に走る者)」として非難の対象となり逮捕されさえしたが、改革開放後は抑えられていた中華民族特有の「商売心」、「金儲けへの魅惑」が堰を切ったように満開となり、特に天安門事件後にトウ小平の一存でトップに立った江沢民時代に入ると腐敗はピークを迎えた。胡錦涛時代にはリーマンショックなどを乗り越えるために不動産バブルで中国は金城国家になったので、胡錦涛時代の2010年には中国のGDPは日本を抜き、中国は世界第二位の経済大国に成長した。その陰では世界の工場を支えた農民工問題が全中国に蔓延し、腐敗は軍部に深く根差して、軍部のハイテク化を阻害した。そこで習近平は反腐敗運動を展開してハイテク国家戦略「中国製造2025」を基に軍のハイテク化をも進めていった。それを見抜けない日本の中国研究者やメディアは、習近平の反腐敗運動を「権力闘争」と位置付けて、NHKまでが「反腐敗の形を借りた権力闘争により、ようやく権力基盤を固めた習近平政権は」と、習近平政権の枕詞のように「反腐敗運動」を「権力闘争」と位置付けて喜んでいたが、その間に日本はアッという間に中国に追い抜かれてしまった。ところが、自国、日本に目を向けてみよう。日本の「自民党内の派閥」を考えると、「中国の権力闘争」どころではなく、日本は「自分個人が選挙に勝つために派閥に属し」、「その派閥が他の派閥を凌駕して、より多くの閣僚を自分の派閥から出すために政治資金のキックバックを利用している」。結局のところは、「自分個人が選挙で当選するため」であり、「その派閥が自民党内で力を持つために」、日夜パーティ券を売りまくることに専念しているにすぎない。そこには「日本国家の戦略」とか「日本国民の幸せ」さえ眼中にない「自己本位」の「自分のための政治活動」しか存在していないのである。日本には、大局的な目的があって内閣がリーダーシップを執っているのではなく、選挙に勝つために派閥の政治資金の不正還流に血眼になっているだけだ。野党が頑張ってくれればいいが、その野党がまた小さなテーマで違いを作っては四分五裂しているので、二大政党を形成して国政を論じるゆとりなどどこにもない。結果、無党派層が多いのだが、この無党派層を惹きつけ牽引する人物も政党も現れないのだから、民主主義が泣く。岸田首相よ、小手先の内閣改造などで逃げるな。派閥など解体して、日本国民のための政治を行ってほしい。口先で「国民のために」などと言っても空々しいだけだ。大局を見る目を持て。そういう傑物は現れてこないのだろうか。暗澹たる思いだ。この論考はYahoo(※6)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://tv.cctv.cn/2023/12/18/VIDExGNH4l2DgaJxcBERpPfh231218.shtml(※3)https://app.xinhuanet.com/news/article.html?articleId=4ff10f2cc74f481e0871041d7dd1a85a(※4)https://opinion.huanqiu.com/article/4Fi1TUUUPTs(※5)https://world.huanqiu.com/article/4FlGq7RUfZS(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2fabd0ee2eabd90092725b2c4bfc5239a0833f7e <CS> 2023/12/19 10:21 GRICI 周庭さんもNED(全米民主主義基金)からの支援【中国問題グローバル研究所】 *10:21JST 周庭さんもNED(全米民主主義基金)からの支援【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。香港の民主活動家だった周庭(アグネス・チョウ)さんがカナダに亡命し、二度と香港に戻らないことを表明したが、彼女もまたNED(全米民主主義基金)の支援の下でデモ活動をしていたのかと思うと、何とも複雑だ。◆周庭さんは香港衆志(デモシスト)の創立者の一人香港の政党の一つに香港衆志というのがある。2016年4月に創立されたもので、英語ではDemosistō、日本語では「デモシスト」と呼んでいる(以下、デモシスト)。デモシスト創設者の3人の名前を書くと、以下のようになっている。主席(党首):羅冠聡(Nathan Law、ネイサン・ロー)秘書長:黄之鋒(Joshua Wong、ジョシュア・ウォン)副・ 秘 書 長:周庭(Agnes Chow Ting、アグネス・チョウ)つまり周庭さんはれっきとしたデモシスト創設者の一人なのである。2016年には第6回香港立法会議員選挙で党首の羅冠聡が5万票以上の票を獲得し、史上最年少での当選を果たし、1議席を獲得したが、後に議員資格を剥奪され、議席を失った。2017年8月17日には、雨傘運動を扇動した罪で、羅冠聡、黄之鋒および周永康(アレックス・チョウ)らが禁錮刑を言い渡された。2019年には逃亡犯条例改正案に反対する運動を行い、香港政府が撤回に追い込まれる一翼を担った。しかし2020年5月に全人大常務委員会で香港国家安全法制定方針が採択され、6月30日に中華人民共和国香港特別区安全維持法が可決・成立すると、黄之鋒や周庭らはデモシストから脱退し、デモシストは事実上解散した。◆NEDはデモシストを支援し続けた香港における民主化支援運動をNEDが始めたのは1994年で、拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の図表6⁻8に示したように、香港には2002年に、NEDの下部組織の一つである「全米民主国際研究所(NDI)」の香港事務所が設立されている。NEDは「第二のCIA」と呼ばれており、書名ではNEDと書いても日本人にはあまり馴染みがないと思って、「CIA」という単語を用いている。香港の民主化運動は、すべてNEDかその下部組織であるNDIが組織しているので、まとめてNEDが指導組織していると断言していいだろ。NEDはデモシスト創立前から創立すること自体を支援し、デモシスト創立後も頻繁に羅冠聡を呼んでイベントを開き、羅冠聡は毎回「黄之鋒や周庭と共にデモシストを創立した」と紹介している。NEDのウェブサイトに載っている情報の内のいくつかを以下にご紹介する。1.2019年5月14日の<NEW THREATS TO CIVIL SOCIETY AND THE RULEOF LAW IN HONG KONG>(市民社会への新たな脅威と香港における法の支配)(※2)では、デモシストの党首・羅冠聡(文中ではNathan Law)がNEDの招きによって講演をしている様子が動画でも見ることができる。2. 2021年9月21日に開催された<CARL GERSHMAN DEMOCRACY SYMPOSIUM: THE FIGHT FOR A DEMOCRATIC FUTURE(カール・ガーシュマン 民主主義シンポジウム:民主主義的な未来への闘い)>(※3)では、カール・ガーシュマンNED会長の冒頭演説と共に、羅冠聡(文中ではNathan Law)が同じようにスピーチしている様子を観ることができる。3. 2021年12月8日には<REBUILDING DEMOCRATIC MOMENTUM(民主化のモメンタムの再構築)>(※4)に、同じく羅冠聡(文中ではNathan Law)の名前を見い出すことができる。4. 2021年12月14日の<FREEDOM: HOW WE LOSE IT AND HOW WE FIGHT BACK(自由:どのように失い、どのように奪い返すか)>(※5)は、NEDが、すでにロンドンに亡命した羅冠聡(文中ではNathan Law)が出版した本『Freedom: How we Lose it and How we Fight Back』の販売を支援している様子を紹介している。販売会では、亡命先での民主化活動のあり方や、中国共産党に対する世界的な弾圧に対抗する方法について対談した。(デモシストに関する列挙は以上)このようにNEDはデモシストを支援し続けただけでなく、3人の創設者および若干の主要な活動人物に関しては、デモシスト解散後も亡命先で支援をし続けているのである。周庭さんは、3人の創設者の中の一人で、支援を受けているのはデモシストという活動家集団だったので、周庭さん自身も当然のことながらNEDの支援を受けていたということになろう。少し古いが、2017年6月30日の<MARTIN LEE ON THE 20TH ANNIVERSARY OF CHINESE RULE IN HONG KONG(マーティン・リー、香港統治20周年を語る>(※6)では周庭(Agnes Chow)に関しても触れられている。そういった事例は非常に多いので、列挙はこの辺にしておく。◆物心ついた時にはNEDが深く浸透もちろん香港には、小さいころから民主の心を持って正義感に満ち溢れる少年少女たちは多かっただろうが、なにせNEDは1994年から香港入りしているので、周庭さんのように、1996年に生まれた人などは、物心つき成人したころには既にNEDが浸透しきっていて、その影響から民主化運動的な気持ちを持つに至っている要素もあるだろう。そのための教育訓練センターや啓蒙組織などを、NEDは1990年代から立ち上げており、支援金も溢れるほど惜しみなく注いでいる。1989年6月4日の天安門事件の後もそうだったが、主要人物はハーバード大学やオックスフォード大学などに迎え入れ、社会人となったあとにNEDの活動に協力して「再生産」をくり返している事実を、見たくはないだろうが、直視した方が良いだろう。1940年代における国共内戦で中国共産党の食糧封鎖によって家族を餓死によって失っただけでなく餓死体の上で野宿させられた筆者としては、中国共産党の言論弾圧を受け容れることはできない。しかし、その上でなお、香港の民主化デモは、結局のところ中国共産党とNEDとの闘いであったことを見逃してはならない。日本が戦争に巻き込まれないようにするためには、それが必要なのだ。◆次のターゲットは台湾民主化するのは悪いことではないにせよ、ウクライナのように、「ロシアを潰すために利用された例」も少なくないのだから、次のターゲットは台湾になることは目に見えているので、日本人に直接関係してくる。その相関性に関しては、10月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か? 露ウに民主化運動を仕掛け続けた全米民主主義基金NED PartI>(※7)から始まり、最終回として書いた12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?ParIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※8)などの「ウクライナ危機を生んだのは誰か?」シリーズをお目通し頂ければ、ご理解いただけるものと信じる。台湾有事を起こすか否かは、中国共産党とアメリカのNEDとの闘いであって、来年1月の台湾総統選に、台湾人自身の民意が、どのような「判決」を下すかで、日本の運命も決まる。そのことを考えれば、周庭さんの真相も、見たくはないだろうが、感情に流されずに冷静に直視した方がいいのではないかと思うのである。この論考はYahoo(※9)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.ned.org/events/new-threats-to-civil-society-and-the-rule-of-law-in-hong-kong/(※3)https://www.ned.org/events/carl-gershman-democracy-symposium-the-fight-for-a-democratic-future/(※4)https://www.ned.org/events/rebuilding-democratic-momentum/(※5)https://www.ned.org/events/freedom-how-we-lose-it-and-how-we-fight-back/(※6)https://www.ned.org/democracy-story/interview-with-martin-lee-democracy-activist/(※7)https://grici.or.jp/4683(※8)https://grici.or.jp/4885(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/99fad3d9632878f09100341df04b26d86f08575a <CS> 2023/12/11 10:21 GRICI アメリカの国内法は合法的で中国の国内法は非合法なのか? 台湾と尖閣諸島に関して【中国問題グローバル研究所】 *10:28JST アメリカの国内法は合法的で中国の国内法は非合法なのか? 台湾と尖閣諸島に関して【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。アメリカは中華民国と国交を断絶した1979年に、同時に「台湾関係法」という国内法を制定して、台湾への武器売却を大々的に継続している。それどころか、2022年9月に米議会は、台湾政策法案を賛成多数で可決し、同年末に国防権限法の中に盛り込んだ。米国による台湾への軍事支援を大幅に強化する内容のほか、中国が台湾に対し敵対行動に出た場合の対中制裁に関する文言も盛り込まれている。日本はこれを合法として非難することはない。中国は1992年に「領海法」という国内法を制定した。北京在住の日本メディアの記者が日本の外務省に「大変だ!」と通報したが「まあ、法の整備でもしているのでしょう」として取り合わなかったという。日本の内閣も江沢民の訪日や、天皇陛下訪中の是非を巡る議論やらに沸き立ち、中国が、「日本の領土領海である尖閣諸島」を中国の領土領海として規定した「中国の領海法」に無関心だった。今頃になって「法の支配を無視する中国」と非難して回っているが、なぜ領海法が制定された1992年には黙認したのか?そして今もなお、ここには目をつぶり、「中国の国内法」を「国際法を乱す悪魔」のごとく日夜喧伝して戦闘態勢に入ろうとするのだろうか?◆アメリカの国内法は是認されて国際法扱いされている12月1日のコラム<キッシンジャー「一つの中国」で国際秩序形成 今はそれを崩そうとするアメリカ>(※2)で、アメリカが1979年に入るとすぐ(1月1日)に「中華民国」台湾と国交を断絶したことを書いたが、その3ヵ月後の4月10日にアメリカは、国内法として「台湾関係法」を制定した。これは「中華民国」との国交断絶に伴い、それまで結ばれていた「米華相互防衛条約」が破棄されたので、それを補完するものとして制定された安全保障上の法律だ。1月1日にさかのぼって施行された。怒ったのは中国だ。これではまるで騙し討ちではないかと、中国は強烈な抗議を表明した。しかしアメリカはお構いなく台湾関係法に基づき「あくまでも台湾防衛用のみに限り、米国製武器を台湾に提供」し続ける姿勢を崩していない。それどころか、バイデン政権になってからは台湾政策法を制定し、2022年12月には国防権限法の中に位置づけた。これは米議会上院外交委員長が本会議に提出していた「台湾強靭(きょうじん)性促進法案」を加味したものである。台湾の安全保障能力を高めるために5年間で最大100億ドルの支援を行うことなどが含まれている。一方では同年8月にペロシ米下院議長が台湾を訪問し議会で演説などしたために、中国はアメリカへの抗議表明のために、台湾を包囲する形で、これまでで最も激しい形で軍事演習を行なった。もちろん西側諸国によって非難されたのは中国で、アメリカは国内法が国際社会でも通じるという基本姿勢を貫いている。◆中国の国内法を非合法として扱いながら、「領海法」を黙認した日本アメリカは中国に対して「力による一方的な現状変更は許さない」と言っている対象には、台湾だけでなく南シナ海もある。日本もアメリカの言い分を呪文のように唱えて、「力による一方的な現状変更は許さない」を常套句のように使っている。しかし、中国の立法機関である全人代(全国人民代表大会)常務委員会が1992年2月25日に、「中華人民共和国領海及び接続水域法」(以下、「領海法」)を採決し制定したとき、日本はいかなる反応もしていない。冒頭で書いたように「中国も法整備をしているんじゃないですか」と日本の外務省はすげない回答を日本メディアの記者にしたし、日本の内閣もスルーした。同年4月に江沢民総書記の訪日があり、江沢民は天皇陛下の訪中を何としても実現したいと主張していたからというのも、原因の一つだろう。しかし、領海法の第二条には以下の文言がある。第二条  中華人民共和国の領海は、中華人民共和国の陸地領土と内海に隣接する一帯の海域とする。中華人民共和国の陸地領土は、中華人民共和国の大陸とその沿海島嶼、台湾および釣魚島を含む付属の各東、澎湖諸島、東沙群島、西沙群島、中沙群島、南沙群島、および中華人民共和国に属する他のすべての島々を含むものとする。中華人民共和国の領海基線から陸側の水域は中華人民共和国の内水である。(引用はここまで)ここで言う「釣魚島」とは「尖閣諸島」のことで、れっきとした「日本の領土領海である尖閣諸島」に関して、中国が「それは中国の領土領海である」という領海法を制定したというのに、日本はいかなる抗議もしていないのだ。自国の領土が、他国の領土として法制定されているというのに、それに抗議をしない国というのがある得るだろうか?あってはならないことだ!しかし、これまで何度も指摘してきたように、日本は天安門事件に対する対中経済制裁を解除することに必死で、日本のその甘さを見て取った江沢民は、1992年4月に来日して病院にいる田中角栄に会い、「天皇陛下訪中を実現すれば、二度と再び日中戦争時の日本の侵略行為に対する批判はしない」と約束して、1992年10月の天皇陛下訪中を実現させてしまった。おまけに天皇陛下の訪中が終わると、掌(てのひら)を返したように、1994年から江沢民は愛国主義教育を開始し、激しい反日教育を断行し始めたではないか。日本は見くびられ、甘く見られているのだ。こうして中国は中国領海法に基づいて、尖閣諸島領海に侵入するし、南シナ海の九段線と呼ばれる島嶼である「東沙群島、西沙群島、中沙群島、南沙群島」などを、中国の領土として、中国が使いたい方法で使っているだけになってしまったのである。「法の支配を守るべき」などと、今さら言ったところで、1992年の中国の「領海法」制定に関して如何なる抗議もしなかった日本には、その資格はない。これも、これまで何度も書いてきたが、1989年6月4日の天安門事件に対する経済制裁を解除させようとした時期から1992年10月までの天皇陛下訪中までの日本の総理大臣は、以下のようになっている。1989年6月 3日~1989年8月10日:宇野宗佑1989年8月10日~1990年2月28日:海部俊樹1990年2月28日~1991年11月 5日:海部俊樹1991年11月 5日~1993年 8月 9日:宮澤喜一回転ドアと国際社会で比喩された、目が回るような総理大臣の回転だったが、この間に中国に対する日本の相対的な力関係は決まってしまった。今さら、アメリカの真似をして、突然のように南シナ海や台湾問題に関し「中国が力による一方的な現状変更をしようとしているのは絶対に許せない!」などと叫ぶのを見ると、滑稽でさえある。それなら1992年の「領海法」に対する日本の姿勢の弁明を、日本政府にはしっかりして頂きたいと強く思う。論理なきアメリカ追従というのは、実に恐ろしいものだ。なお、詳細は拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の第五章に書いた。この論考はYahoo(※3)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4878(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3e00b3d7620ddc8e8a4c82c467b8a356092b7945 <CS> 2023/12/04 10:28 GRICI キッシンジャー「一つの中国」で国際秩序形成 今はそれを崩そうとするアメリカ【中国問題グローバル研究所】 *10:13JST キッシンジャー「一つの中国」で国際秩序形成 今はそれを崩そうとするアメリカ【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。29日、ヘンリー・キッシンジャー氏が逝去した。中国にとっては「一つの中国」を国際社会に浸透させ国連加盟を成し遂げさせてくれた人物として絶賛されてきた。キッシンジャーは対中投資を望む米企業のコンサルタントで財を成し、習近平の卒業大学である清華大学にある顧問委員会の基礎を作った。北京とウォール街は顧問委員会で繋がっている。だから中国経済はなかなか崩壊しない。現在ではバイデン政権は対中投資に規制をかけ、台湾問題で「一つの中国」を崩そうとしており、アメリカが自ら作った国際秩序を破壊しようとしている。一方キッシンジャーには、アメリカが介入して拡大させたベトナム戦争を終わらせたとしてノーベル平和賞を受賞するという矛盾した過去がある。ベトナム戦争を終わらせると、アメリカに有り余った武器のはけ口が無くなるためにキッシンジャーが大統領補佐官を務めていたニクソン政権はCIAを遣わせて秘密裡にラオスに史上最大規模の無差別絨毯爆撃をした。国際社会が長年にわたりその事実をスルーさせたのは、CIAおよび「第二のCIA」と呼ばれるNED【全米民主主義基金】の情報操作による。アメリカ脳化された日本人には、その「情報操作」さえ自覚できないので、平気で台湾有事へと誘導されていく。そのことは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で警鐘を鳴らした。◆「一つの中国」を認めながら、今では台湾独立をそそのかすアメリカ1971年7月、ニクソン政権のキッシンジャー大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ニクソン大統領の密使として北京を秘密裡に訪問し、周恩来と機密会談を行い「一つの中国」を認めた上で、同年10月25日に「中華人民共和国」を「中国を代表する唯一の国家」として認め、国連加盟へと持って行った。「中華民国」台湾は同時に国連を脱退。主たる目的は米ソ対立の中、何としてもソ連を弱体化させるためだった。当時、毛沢東率いる中国はソ連との間で中ソ紛争を起こしており、中国にとっても渡りに船で、米中接近により全世界は大きく変化し、日本をはじめ多くの西側諸国が中国との国交正常化を争って成し遂げ、新たな国政秩序が出来上がっていった。実際に米中の国交正常化が正式に成立したのは1979年に入ってからで、同時にアメリカは中華民国と国交を断絶し、中国に対して圧倒的に有利な状況を創り出した。ところが中国経済が成長し、2010年には中国のGDPが日本を抜いてアメリカに迫ってくると、アメリカは何としても中国の成長を阻止しようと、今度は台湾を応援し始め、世界に新たな紛争を起こそうとしている。◆北京とウォール街を結び付けたキッシンジャーフォード政権で国務長官を務めたキッシンジャーは、1977年のフォード政権退陣とともに政界を退いて、1982年には国際コンサルティング会社「キッシンジャー・アソシエーツ」を設立した。キッシンジャーが招いた米中友好の流れにより中国の巨大市場に魅せられた多くの米大手企業に対して、対中ビジネスに関するコンサルタント業務を始めたのだ。これが大成功を収めてキッシンジャーは巨万の富を手にしただけでなく、中国側では米大手企業の中国におけるビジネスの成果を蓄積結集させて、2000年に清華大学経済管理学院に顧問委員会を設置した。中国側の当時の朱鎔基・国務院総理の思いつきで、委員は主としてウォール街の大財閥によって構成され、中にはかつてゴールドマン・サックスのCEOで、のちにブッシュ政権の財務長官を務めたこともあるヘンリー・ポールソンも入っている。顧問委員会委員の多くはキッシンジャー・アソシエーツを経由している米大企業経営者で、中でもブラックストーンのCEOであるシュテファン・シュワルツマンは蘇世民という中国名も持っていて、「蘇世民書院」というトップクラスの国際人材育成センターを設立して、中国経済の基礎を固めている。キッシンジャーも顧問の一人として、北京とウォール街を直結させる強力な役割を果たしてきた。米中覇権競争がどんなに苛烈を極め、バイデン政権がどんなに対中制裁を強めたところで、実は米中は清華大学の顧問委員会でつながっており、この「北京―ウォール街」連携は崩れそうにない。毎年10月辺りに年次総会を開催するが、今年も10月20日に第24回目の年次総会を開催した(※2)。今年はアップルのCEOティム・クックが(Tim Cook)が主催したようだ。先般、台湾総統選に立候補し11月24日に立候補を取り消したホンハイの創設者・郭台銘氏も委員の一人で、バッチリ習近平側に付いている。テスラモーターズの創設者イーロン・マスク氏も例外ではなく、習近平とは昵懇の仲だ。複雑なのは、ウォール街の金融業者にはユダヤ財閥が多いということで、キッシンジャーもユダヤ人である。そういった関係もあり、中国は1992年にイスラエルと国交を樹立しており、2017年にはネタニヤフ首相が訪中し、習近平と仲良く握手している(※3)。◆キッシンジャーが手を染めた汚い戦争冒頭で書いたように、キッシンジャーはパリ協定によりベトナム戦争を終わらせたとして1973年にノーベル平和賞を受賞しているが、同時に受賞するはずだった北ベトナムの政治家で革命家だったレ・ドゥク・ト氏は「ベトナム戦争はまだ終わっていない」として受賞を辞退している。潔く正しかったのはレ・ドゥク・トの方だ。実際ベトナム戦争が最終的に終わったのは1975年で、キッシンジャーが忍者外交をして北京に潜り込んだ1971年には、実はニクソン政権は秘密裡にラオスを無差別大規模絨毯爆撃する作戦を始めている。拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』のp.232からp.240にかけてニクソンとキッシンジャーのラオス爆撃に関する詳細を書いた。ラオス爆撃はCIAの秘密作戦として実行されたため、その実態さえ長いこと機密扱いされて、世界はその真相を知ることが出来なかった。しかしのちに機密解除されて実態が公開されるようになり、多くのジャーナリストや研究者が考察し、その結果を発表している。その中の一つに『マニュファクチャリング・コンセント』(トランスビュー、2007年)がある。これに関しては今年7月14日のコラム<NATO東京事務所設立案 岸田首相は日本国民を戦争に巻き込みたいのか?>(※4)にも書いたが、世界中の反戦運動が高まり、ベトナム戦争をやめなければならなくなった時に、アメリカはラオスに史上空前の激しい空爆を始め、そのとき当時のニクソン大統領とキッシンジャー補佐官は、「アメリカの爆撃機を稼働させずに放置するわけにはいかなかったのだ」と言っているのだ。『マニュファクチャリング・コンセント』によれば、アメリカ軍によるラオスに対する空爆は58万回にも及び、ラオス人1人当たり1トンの爆撃を受けていたという。人類史上最大の爆撃回数と密度であった。それくらい、アメリカは常にどこかに戦争を仕掛けてはアメリカの軍事産業を繁盛させてきた。アメリカが朝鮮戦争以降に仕掛けた戦争のリストは『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』の図表6-2(p.234~p.235)に掲載した。同書のp.253から255にかけて掲載した図表6-8は、「第二のCIA」と呼ばれているNEDの暗躍リストを列挙したが、今はキッシンジャーが唱えた「一つの中国」をアメリカに有利な方向に転換すべく、台湾の親米政党である民進党を「支援」して、中国に抵抗し、独立傾向を強めて、何とか中国に台湾を武力攻撃させるべく世論誘導を図っている。もちろん中国も激しい世論誘導をしているが、中国による平和統一を阻止するために台湾有事を引き起こす方が日本人にとって良いのか否かを考える必要があるだろう。キッシンジャー氏は100歳の寿命を全うし、最後まで知性が尋常でなく冴えていた。そのことには強い敬意を抱いているが、しかし「一つの中国」による世界秩序形成と、それを壊そうとしているアメリカの現状には複雑な思いを禁じ得ない。言論弾圧をする中国を受け容れることはできないものの、戦争ビジネスにより世界の一極支配を維持しようとするアメリカにも賛同できないのが、良識的な日本人に共通する思いなのではないかと思う。この論考はYahoo(※5)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.tsinghua.edu.cn/info/1177/107415.htm(※3)https://news.cri.cn/20170323/e440a25a-f1b3-a87a-7a14-679aab7bd0e8.html(※4)https://grici.or.jp/4444(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e57f423cf469b268979b726581ff6ebb4f325446 <CS> 2023/12/04 10:13 GRICI なぜ国民党の朱立倫党首が総統選に立候補しなかったのか?【中国問題グローバル研究所】 *10:14JST なぜ国民党の朱立倫党首が総統選に立候補しなかったのか?【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。本来なら政党の党首が総統選に立候補するはずだ。しかし朱立倫党首が立候補せず、新北市市長ではあるものの国民党の一党員で党幹部ではない侯友宜氏が立候補したのはなぜなのか?その疑問を解くと、国民党が最初から「藍白合作」を狙っていたことが浮かび上がってくる。◆朱立倫党首は「外省人」まず最大の理由は、朱立倫氏が「外省人」だということだ。外省人とは1949年、国共内戦で敗北し台湾に移ってきた蒋介石率いる国民党やその家族およびその子孫たちのことである。1945年8月の日本敗戦により、台湾が「中華民国」に返還された後に、「中華民国」の大陸から台湾に入って来た人々も含める。もともと台湾に住んでいた人々およびその子孫を「本省人」と呼んで区別している。国民党は李登輝が現れるまでは、1949年に国会議員(立法院委員)だった人たちが、選挙を経ることもなく議員でい続けるという「万年国会」を存続させてきた。もちろん、全て「外省人」だ。しかし蒋介石の息子・蒋経国総統が1987年に戒厳令を解除し、李登輝が蔣経国の遺言を受け継いで総統に就任した1988年から静かに民主化が始まり「万年国会」に終止符が打たれた。1996年に李登輝が初の総統直接選挙に当選して、最終的には国民党から脱退すると(2000年)、国民党内は、外省人か本省人かで大紛争が起きるようになった。それは馬英九(外省人)が総統に当選した2008年から少し落ち着きを見せたものの、2016年に民進党の蔡英文総統(本省人)の登場によって再び怪しくなってきた。◆侯友宜は「本省人」で「緑(民進党)」と「藍(国民党)」の両色を持つそこで、今般の総統選候補者指名において、朱立倫にするか新北市の侯友宜市長にするかに関して国民党内で激しい論議が展開された。侯友宜は1957 年に台湾の嘉義で生まれた「本省人」だ。父親は台湾で生まれ育ち、日本統治時代に中学校を卒業した後、飛行機修理のために日本に徴兵され、日本軍の技術兵士として日本で働いていた。日本敗戦後にGHQの勧告により李登輝らとともに台湾に帰国。同じ頃、外省人が台湾入りして、蒋介石率いる「中華民国」の国民党軍が徴兵制を開始したため、国民党軍の海軍に徴兵され、中国大陸の東北海軍青島陸軍士官学校に訓練兵として送られた。国共内戦後に台湾に戻ったので、純粋な「本省人」に当たる。むしろ、戦前の日本に所縁(ゆかり)のある人物だ。侯友宜は長じて刑事法を学び博士の学位を取得して行政院内政部警政署署長(日本語で言うなら警察庁長官に相当)に就任したり、中央警察大学校長など警察官僚の要職を経て、朱立倫が新北市の市長を務めていた時に副市長に任命された。「藍」色で政界に少しだけ足を踏み入れた。しかし2006年に侯友宜を警察庁長官に抜擢したのは民進党の陳水扁総統だった。侯友宜は先ず「緑」色に染まっていたのだ。2008年の馬英九政権のときに警察大学校校長に任命されているので、この辺からは「藍」色になり始め、2018年末に朱立倫の二選任期満了に伴い後継候補として市長選挙に出馬し、当選した。ここで完全に「藍」陣営の政治家になった。◆総統選立候補者は、なぜ党首ではなく侯友宜になったのか?今では国民党内には「外省藍」と「本省(本土)藍」の二種類があり、選挙民にどちらが受けるかということが問題になる。当然、「外省」が嫌われる。もっとも、2022年11月における台湾統一地方選挙では民進党が惨敗している。国民党の圧勝だった。本来ならその勢いで2024年総統選の立候補者指名に出ればよかったのに、国民党の指名は遅々として進まず、民進党が早々に頼清徳・民進党主席(党首)を指名して総統選が民進党に有利に動いていった。その原因の一つは「外省藍」と「本省藍」の間の調整にあり、かつ侯友宜が新北市の市長に再選されたばかりなので、それを捨てて総統選に出るようなことはしたくないと逡巡(しゅんじゅん)していたからだ。なぜ素直に国民党の党首で朱立倫にしなかったかと言うと、実は統一地方選挙で圧勝したことが逆に足かせとなったようだ。なぜ民進党が惨敗したのか、台湾の大学の教授になっている昔の教え子に電話してみた。すると「若者が民進党を見限ったのですよ」という、思いもかけない回答が戻ってきた。蔡英文に期待し、民進党を押し上げてきたのは若者だったが、その蔡英文政権は二期目に入ると汚職がはびこり、若者の声を聴かなくなったので、若者が見限ったというのである。ならば国民党に期待しているのかと言うと、必ずしもそうではない。第三政党が活躍してくれるのを期待して、民進党に投票するという、投票行動自身を放棄したのだという。その電話は昨年末のことだった。今年の3月に入って、民進党の頼清徳が早々に2024年総統選に立候補すると名乗りを上げたが、その少し前に国民党関係の仕事をしている昔の教え子に電話して聞いてみた。すると案の定、「藍白合作を模索している」と言うではないか。朱立倫では選挙民に嫌われる。なぜなら彼は「外省藍」だからだ。そこで、少し「緑」色がかった要素もある「本省藍」の侯友宜なら、「藍白合作」が不可能ではないということになる。その後、さらに何度も教え子に連絡したのだが、「朱立倫は2016年の総統選に立候補していたが、大差で民進党の蔡英文氏に敗けた過去がある。そうでなくとも出遅れている国民党で朱立倫が立候補したら、又もや惨敗するだろうという意見が多く、逡巡する新北市の市長である侯友宜に立候補してもらうことになった」と教えてくれた。◆「藍白合作」は2020年からあった実は「藍白合作」という戦略は2020年からあり、柯文哲氏が創立させた台湾民衆党が「野党大連盟」を結成しようではないかという形で言い出したものだ(※2)。民衆党の提案である「野党大連盟」を国民党は肯定的に受け止め、少数野党の時代力量は「国民党とは党是が異なる」と言って拒否したので、「藍白合作」となった。台湾民衆党は2019年8月に結成されたばかりなので、どこかの野党と連携しないと、おぼつかないと思ったのかもしれない。その後、民衆党の柯文哲党首の人気が若者の間で上昇してきたことから、今度は国民党の方が「藍白合作」を柯文哲に求めるようになったと考えるのが妥当だろう。朱立倫は、24日の締め切り日の最後の1秒まで、いや半秒(0.5秒)まで、まだ可能性はあると悲痛な声を上げている。野党連携をしなければ、確実に与党民進党の頼清徳氏が総統に当選する。連携しなければ野党候補は誰も当選しないのだ。すなわち「自分が総統になるんだ」という主張をすれば、必ず落選する。それが分かっていながら、まだ討議している「藍」と「白」。あと一日。明日には結果が出る。それにより、台湾有事が起きる可能性が高くなるか低くなるかという未来をも同時に引き連れてくるので、日本人にとっても他人(ひと)ごとではない。明日が待たれる。この論考はYahoo(※3)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.cna.com.tw/news/aipl/202001130071.aspx(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/78411952ace76780bad57a0f73490305b29a06da <CS> 2023/11/24 10:14 GRICI 柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(2)【中国問題グローバル研究所】 *10:33JST 柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(2)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「米国在台湾協会は3回も台湾総統候補者を面接試験し、柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆アメリカVOAの報道も「面接試験」と表現2023年10月20日、アメリカの国営放送VOA(Voice of America)は、<アメリカは台湾の総統選を高度に重視 両岸政策の最重要事項>(※2)という見出しで、AIT理事長の台湾訪問を伝えている。報道では、「これは半年間で3度目の台湾訪問で、何よりも野党候補者が連携するのではないかという懸念があるため、総統立候補者を【面接試験する旅】であった」と位置付けている。何と言っても10月14日には「藍白合作」に関する話し合いが国民党と民衆党の間で行われたばかりで、その成り行きを確認するのが重要な目的だ。10月18日には国民党の侯友宜と民衆党の柯文哲が同じフォーラムに出席したが、できるだけ目を合わさないようにするほど、「私たちは藍白合作をするつもりはありません」という印象をAIT理事長に与えようと涙ぐましい努力をしていた。(以上VOAから引用)どの報道を見ても、アメリカが何としても「藍白合作」野党連携を阻止しようと躍起になっていることがうかがわれる。◆台湾は誰のものか?2023年7月29日の「聯合早報」は<自らアメリカへ赴いて面接試験を受ける 台湾総統選の奇怪な景色>(※3)という見出しで、今般の総統立候補者が全員が自ら積極的にアメリカに赴いて「面接試験」を受けに行ったと、「怪奇現象」として、以下のように報じている。――陳水扁と馬英九は、それぞれ2000年と2008年に総統に当選し二期務めたが、総統に立候補した段階で、それぞれアメリカに「ご挨拶」に行き「面接試験を受ける」ような怪奇現象は起きなかった。それは「必要条件」ではなかった。でも、今は違う。立候補者は誰もアメリカの影響力を無視する勇気はなく、アメリカの顔色をうかがい、少なくとも渡米して「保険」を購入しようとする。(引用以上)台湾はアメリカの植民地ではない。なぜそこまでアメリカの顔色をうかがいながらでないと行動できないのか?そもそも1943年のカイロ宣言で台湾は日本から「中華民国」に返還されると宣言され、事実、1945年の日本敗戦により日本が統治していた台湾は「中華民国」に返還された。日本敗戦後、中国(中華民国)国内では政権を握る国民党(蒋介石)と、その政権を倒そうと革命を起こしていた共産党(毛沢東)との間で国共内戦(=解放戦争=革命戦争)が起こり、1949年に国民党が敗北して台湾に根拠地を置いただけである。今はまだ、その内戦過程にある。台湾を含めた中国全土を統一する前に毛沢東は「中華人民共和国」の誕生を宣言した。旧ソ連のスターリンが「(中華民国の一地域である)台湾解放のために空軍や海軍を出して支援する」と約束したからだ。しかし北朝鮮の金日成(キム・イルソン)の甘言に乗り、スターリンは「台湾解放という中国統一」よりも、ウラジオストックに近い朝鮮半島の利害を優先したので、「台湾解放」が後回しになってしまった。金日成とスターリンの策略により、朝鮮戦争に強引に参戦させられた毛沢東は、自分の息子を北朝鮮の戦地で失い、「100年かけても台湾は解放する!」と台湾統一を誓ったものだ。筆者はこの言葉を、天津にあった小学校の担任の馬(マー)老師から聞いた。台湾に立てこもった「中華民国」の蒋介石総統は、しばらくの間、毛沢東が統治する中国大陸全体を含めて「中華民国の領土」として、大陸奪還を試みていた。しかしアメリカが旧ソ連を倒すために旧ソ連と対立していた共産中国「中華人民共和国」の国連加盟に向けて積極的に動き、「中華民国」台湾を国連から追放してしまった(1971年)。共産中国は「中国を代表する国」として「中華人民共和国」しかないという「一つの中国」を相手国が認めることを国交樹立の絶対条件にした。したがってアメリカは「一つの中国」を認めて共産中国「中華人民共和国」と国交を樹立し、「中華民国」台湾と国交を断絶したのだ。この時点で「中国」は「台湾を含めて中国の領土」と定める正当性を「政治外交的手段」で獲得したことになる。「平和統一」であるなら「台湾を統一することは合法的である」と国連が決議したに等しい。しかし2010年に中国のGDPが日本を超え、アメリカに近づき始めた。ひょっとすると近い将来にアメリカを超えるかもしれない。そのようなことになったらアメリカの一極支配が終わる。それだけはさせてはならないとばかりに、アメリカは、今度は台湾を駒に中国政府崩壊にチャレンジし始めたのだ。だから『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』に詳述したように、「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)が台湾に浸透し、「台湾有事」を創り出そうとしている。その強烈な浸透力のもと、このたびの次期総統立候補者はワシントン詣でをしているのである。そのため、台湾の政権野党からの立候補者はビクビクしていて勢いがない。政権与党の民進党の方が信念が揺らいでいないので、堂々としていて頼もしくさえ見える。野党が分立したままなら、圧倒的に民進党が勝利するだろう。しかし民進党が勝てばNEDやAITの活動は一層強化され、台湾の独立傾向が強まり、結果として中国の台湾武力攻撃を誘うことになり、中国が台湾を武力攻撃すればアメリカが勝つ可能性が高い。そうすれば中国は崩壊してくれる。ただ、そのとき日本が再び戦火に巻き込まれるのは覚悟しなければならない。日本人は「独立国家」として、どちらを選ぶのか。台湾総統選は、日本人にも覚悟の選択を迫っている。追記:但し台湾の政界人と台湾庶民は全く違う。筆者にも多くの台湾の友人がおり、何度かの台湾滞在中に感じ取ったのは台湾人の逞しさと忍耐強さだった。日本人よりも確かな判断眼を持っていて、しかも寛容だ。長年にわたる日本による統治に忍耐強く耐えてきた台湾人の強さと寛容さ。特に柔軟性が逞しさを生んでいることに深い感動を覚えたものだ。その台湾を利用して次の戦争を起こそうと準備しているアメリカに対して警鐘を鳴らしているだけである。台湾人が可哀想ではないか。台湾人への、人間としての尊厳を尊重しなければならないと思う。この論考はYahoo(※4)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.voachinese.com/a/ait-chairwoman-s-third-visit-to-taiwan-20231020/7319081.html(※3)https://www.zaobao.com.sg/wencui/political/story20230729-1418552(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a97eb2bf45b9a22c03a2af1ae593cc6c532f2820 <CS> 2023/11/21 10:33 GRICI 柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(1)【中国問題グローバル研究所】 *10:28JST 柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(1)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。台湾総統選における野党連携「藍白合作」(藍は国民党、白は台湾民衆党)を発表した翌日の11月16日、台湾の国営通信社である中央通信社(中央社)は、柯文哲候補(台湾民衆党)が「今年2月以来、AIT(米国在台湾協会)から常に選挙に関する現状報告をするように要求されてきた」と語ったと報道している。その1ヵ月前の10月17日にはシンガポールの「聯合早報」がAITの理事長(バイデン米国大統領の側近)が10月15日から台湾を訪問し3人の総統選立候補者を「面接試験した」と報じた。ここ半年間で3回目の「面接試験」であるという。10月20日のアメリカの国営放送VOAも、今回の台湾訪問は「3回目の面接試験を行うためだ」と説明している。台湾の選挙はアメリカの管轄下にあり、総統選候補者はアメリカの顔色をうかがいながらでないと行動できない状況にあるようだ。立候補者は先ず訪米し「面接試験」に「合格」しなければならない。「一つの中国」は国連で議決されたのではなかったのか?台湾は誰のものか――?◆柯文哲氏は2月から常に状況を報告せよとAITに要求されている2023年11月16日、台湾の国営通信社である中央社は、台湾民衆党の次期総統選候補者である柯文哲氏に関して<柯文哲:米国は台湾の重要な同盟国だ AITが藍白合作に関して聞いてくるのは正常なことだ>(※2)という見出しで柯文哲がAITから状況報告を要求されてきたことを報道している(リンク先はその転載)。それによれば、柯文哲は以下のように述べているという。・民衆党は今年2月以来、毎週AITと連絡を取っており、AITの立場を考えると、AITが藍白問題を懸念して電話して来るのは当然のことだと思う。なぜならアメリカは台湾の重要な同盟(国)であり、台湾と良好な関係を維持する必要があるからだ。コミュニケーションを図り、誤解を避けなければならない。・藍白の政党は昨日、馬英九・元総統の立会いのもとで交渉し合意に達したが、外界の一部は藍白合作に関して中国共産党が介入しているのではないかと疑問視している。・藍白合作を決定したと発表するとすぐ、AITが私に電話してきて、中国が藍白合作に関与したか否かを説明するように要求してきた。・今年2月から現在に至るまで、われわれ民衆党は毎週AITと連絡を取り、党事務局の局長、副局長、政治チームのレベル全て、ずーっと常にAITに選挙運動に関する報告をしている。私自身もAITのサンドラ・オウドカーク処長に「台米関係においてはノーサプライズを維持する」と保証し、訪米したときにも米政府高官にこの原則を維持し決して突然奇妙な動き(=中国と接近するようなこと)はしないことを誓った。・私はこれまで、AITに対し、「どんな問題でも疑問があればいつでも電話して質問していい」と保証したことがあるし、「民衆党は何か新しい変化があったら、必ずAITに報告する」と誓ったこともある。したがって昨日、「藍白合作」決定を発表したわけだから、AITが「お前、何をやっているんだ!?」と聞いてくるのは正常なことだと思う。なぜなら私はAITに「何か変化があったら報告する」と誓っていたからだ(=それに違反したことになる)。◆AIT理事長は総統候補者に面接試験2023年10月17日、シンガポールの「聯合早報」は<米国在台湾協会(AIT)理事長が藍・緑・白の総統選立候補者に“面接試験”>(※3)という見出しで、台湾総統選立候補者の「面接試験」を報道している(緑は民進党のシンボルカラー)。以下、「聯合早報」の温偉中・台北特派員が書いた記事の冒頭部分だけを和訳して転載する。――米国在台湾協会(AIT)のローラ・ローゼンバーガー理事長は、5日間の日程で台湾を訪問し、藍・緑・白三大政党の総統選立候補者と面談する。これは台湾の将来の総統候補に対する「面接試験」とみなされている。学者らによると、「アメリカは現場の一次情報を直接得ることによって、選挙情勢を評価分析しようとしている」とのこと。ローラ・ローゼンバーガーは日曜日(10月15日)に台湾に到着したが、これは彼女が3月20日に就任して以来の3度目の台湾訪問となる。彼女はすでに月曜日(10月16日)に台湾の蔡英文総統と会談しているが、より注目されるのは、藍(国民党)、緑(民進党)、白(民衆党)三党の総統候補者との会談だ。ローゼンバーガーはブリンケン米国務長官の補佐官を務め、バイデン米大統領の側近ともみなされている。台湾では3ヵ月以内に、すなわち2024年1月13日に総統選挙と立法院委員選挙が行われることになっている。中東でイスラエルとハマスの戦争が激化し、台湾の選挙戦が燃え上がっている時期に彼女が台湾を訪問したことは、アメリカが台湾問題と選挙情勢をいかに重要視しているかの何よりの証拠である。(「聯合早報」からの引用は以上)「米国在台湾協会は3回も台湾総統候補者を面接試験し、柯文哲は常に選挙状況を報告するよう要求されている(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo(※4)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://money.udn.com/money/story/7307/7578194(※3)https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20231017-1443681(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a97eb2bf45b9a22c03a2af1ae593cc6c532f2820 <CS> 2023/11/21 10:28 GRICI 「台湾有事」が消えるか? 台湾総統選で野党連携「藍白合作」が決定【中国問題グローバル研究所】 *10:45JST 「台湾有事」が消えるか? 台湾総統選で野党連携「藍白合作」が決定【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。11月15日、台湾の総統選に関して、野党の国民党と台湾民衆党が連携することが決まった。国民党のシンボルカラー「藍」と台湾民衆党のシンボルカラー「白」を取って、これを「藍白合作」と称する。今年2月1日のコラム<「自由貿易は死んだ!」と嘆いた台湾TSMC創始者・張忠謀と習近平の仲が示唆する世界の趨勢>(※2)や2月12日のコラム<習近平「台湾懐柔」のための「統一戦線」が本格稼働>(※3)で、「藍白合作」があり得るという趣旨のことを書いた時、在日の台湾人ジャーナリストを中心として「そんなことなど絶対にあり得な――い!」と激しく批判していて驚いた記憶がある。しかし実際には「藍白合作」が実現したのだから、批判していた人たちの主張は正しくなかったことになる。今となっては「藍白合作」に関して数多くの情報が中国語のネット空間に出回っているが、その中の一つであるアメリカのメディアRFA(Radio Free Asia)中文は<台湾の野党勢力は統合に成功し、世論調査で総統と副総統の選出が決まる>(※4)というタイトルで、11月15日に決定内容の詳細を報道している。それによれば、台湾の野党勢力である国民党と台湾民衆党は、馬英九前総統の仲介と調整の下、「藍白合作」を宣言した上で、「世論調査によって、連立野党の総統と副総統の候補者を選ぶことに合意した」とのこと。非常に合理的な決定だ。立候補者は国民党の侯友宜氏と台湾民衆党の柯文哲氏だが、どちらが総統として立候補し、どちらが副総統になるかに関しては、内部で取り決めるのではなく、世論調査で決めるという。それなら内部でのもめ事がなく、決めやすいのかもしれない。調査結果は、11月7日から11月17日にかけて調査専門家によって検討・評価され、18日(土)の朝、馬英九基金会が結果を発表することになっているという。侯友宜氏は「結果がどうなろうとも、藍白が協力して台湾と人民を統一し、同時に人民の意思に合致し、政党の交代を実現し、腐敗した無能な民進党(民主進歩党)を排除し、台湾海峡の両岸が平和になり、台湾海峡が安定し、人民が安心できるようになることを願っている」と述べた。柯文哲氏は「水曜日(15日)にはアメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席がサンフランシスコで会談するが、最も重要な議題は台湾問題だということは分かっている。だから今日は非常に機嫌が悪いんだ。台湾は世界で最も戦争が起こりやすい場所とされていて、その結果、ウクライナとイスラエルでさえ最も深刻な場所とは見なされなくなり、台湾は世界で最も危険性の高い場所になろうとしている」という趣旨のことを述べているが、過去に何度も「民進党が大っ嫌いだ!なぜなら民進党だと戦争が起きるからだ!」と述べたことがある。台湾の一部では、「藍白合作」は中国側の要望であり、世論調査によって総統と副総統を決めるというアイディアも、中国が出したものだという批判もあるようだが、野党が複数分立していたら、当然、政権与党・民進党の頼清徳候補には勝てないことになるのは、誰の目にも明らかな論理だろう。それは、選挙のある国なら、どの国でも同じだ。現在の総統選立候補者の支持率は、概ね以下のようになっている。概ねというのは、台湾には「民意調査機関(民間の小さな団体もある)」が非常に多く、どの機関・団体が調査したかによって、相当に違いが出て来るからだ。従って、それら多くの調査機関・団体の平均値を見るしかなく、「概ね」という幅のある値になる。以下に示すのは11月10日前後の平均値だ。●民進党の頼清徳:約32.9%●国民党の侯友宜:約23.9%●民衆党の柯文哲:約23.1%●無党派の郭台銘:約 5.0%民進党のシンボルカラーは「緑」だが、頼清徳と「非緑陣営」を分けて調査したデータもある。それは必ずしも上記の合計と一致するわけではなく、●緑の頼清徳:約35%●非緑陣営:約50.5%となっている。また頼清徳と「侯友宜+柯文哲」とに分けた場合の調査もあり、その場合は平均として●頼清徳:約39%●侯友宜+柯文哲:約47.4%という感じで、頼清徳氏はなかなかに強い。侯友宜と柯文哲を比較すると、何れもわずかに侯友宜が高いので、侯友宜が総統候補、柯文哲が副総統候補として立候補することになる可能性もある。18日の午前中にはどうなるかがはっきりするようだ。郭台銘氏も必要な推薦人29万人を遥かに上回る100万人以上の推薦人を得ているので、郭台銘にも立候補資格がある。ただ支持率が低いので、ひょっとしたら、たとえば「侯友宜が総統、柯文哲が副総統、郭台銘が首相(行政院長)」といった内閣が出来上がる可能性もなくはない。どうなるかに関しては、18日および届け出の締め切り日24日の結果を見て、さらに分析を深めたい。さまざまな角度から見た民意の情況や「藍白合作」に関しては、拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いた。台湾で起きている批判の通り、「非緑陣営」が連盟を結べば結ぶほど、中国には有利になる。親米ではなく、中立ではあるものの親中に傾いており、独立を叫ばないという点で一致しているからだ。独立さえ叫ばなければ戦争は起きない。すなわち「台湾有事」という事態にはなりにくい。「第二のCIA」と呼ばれているNED(全米民主主義基金)の活躍もしにくくなる。そうなると、「日本有事」も起こらなくなるわけだが、日本人はどちらを望むのか。真相を見極める複眼的視点が、日本人にも要求されている。追記:1971年10月25日に、「中華民国」台湾はアメリカがリードして国連から追い出された。アメリカは「中国」を代表する国家は「中華人民共和国」(共産中国)一国しかないとして「一つの中国」を認め、「中華人民共和国」が国連に加盟する方向に強引に持って行った。その瞬間、中国が「台湾は中国の不可分の領土」とすることを、国連が認めたことになる。もしこれを覆したいのなら国連で再議決するしかない。平和裏になら統一することもアメリカは認めている。国連で再議決する以外に台湾統一を阻止する方法は、唯一、中国が武力を行使したときである。したがって今となっては統一させたくないアメリカは、何としても台湾有事を創り出したいと考えている。1946年から1948年にかけて戦われた国共内戦(国民党と中国共産党の内戦)で共産党軍により食糧封鎖され家族を餓死で亡くし、餓死体の上で野宿させられて恐怖のあまり記憶喪失になった筆者としては、どんなことがあっても、再び中国共産党と、当時の国民党が逃げた先である台湾との間に戦争が起きることだけは阻止したい。だから台湾が戦争をしない道を選ぶことを望んでいる。平和統一実現を望んでいるのではない。台湾の民意は「統一は反対だけど、戦争も反対」というのが主流だ。この状況で習近平は絶対に統一はできない。しかし戦争が起きないことは重要だ。その意図をご理解いただきたい。この論考はYahoo(※5)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/3966(※3)https://grici.or.jp/4006(※4)https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/gangtai/hcm-11152023090134.html(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/be6279c2b24d677ac554efbc37ad992f7fcad91c <CS> 2023/11/17 10:45 GRICI 米中首脳会談に合わせて、台湾総統選で野党連携を表明【中国問題グローバル研究所】 *10:28JST 米中首脳会談に合わせて、台湾総統選で野党連携を表明【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。日本時間16日早朝、サンフランシスコで米中首脳会談が行われた。習近平国家主席がバイデン大統領に何と言ったのかが「人民日報」電子版「人民網」に詳細に書いてある。それを着実に読み取り、習近平が何を考えているかを考察する。米中首脳会談にピタリと合わせて、台湾では野党が連携を組むことを発表した。これにより米国はこれまでのように「台湾有事」を煽ることができなくなる。習近平には圧倒的に有利な形勢が生まれつつある。◆習近平の発言から中国の対米姿勢の本音を読み取る11月16日7時28分、中国共産党の機関紙「人民日報」の電子版「人民網」は、<習近平国家主席とジョー・バイデン米大統領が米中首脳会談を開催>(※2)という見出しで、習近平の発言を詳細に伝えている。これを通して習近平が米中関係をどうしたいと思っているかが鮮明に浮かび上がってくるので、先ずは、習近平の発言を忠実にそのままご紹介する。最後まで一気に翻訳だけを書くと、途中でイライラする個所が出て来るようにも思われるので、( )の中で筆者注として解釈を加筆することにした。「筆者注」と明記してない場合も、わかりやすいように筆者が( )内に加筆した場合もある。以下は習近平の発言である。・世界は100年に一度の大変革を遂げており、中米には2つの選択肢がある。一つは、団結と協力を強化し、地球規模の課題に協力して対処し、世界の安全と繁栄を促進する選択である。もう一つは、ゼロサム精神を信奉し、陣営対立を煽り、世界を混乱と分裂に導く選択だ。二つの選択は、人類と地球の未来を左右する二つの方向性を代表している。・世界で最も重要な二国間関係として、中米関係はこのような大きな背景の下で検討し計画されるべきである。中米がお互いに話し合わないのは良くないことであり、互いを変えたいと思うのは非現実的で、紛争と対立の結果には誰も耐えられない。 大国間競争は、中米そして世界が直面している問題を解決しない。 この地球は、中米二つの国を同時に受け入れることができる(筆者注:中国と米国という二つの国が地球上で対等に並存するということが可能だ、の意。すなわち米国に対して「米一極支配をやめれば、中国の台頭を潰そうとしなくて済むはずで、そうなれば世界は平和になる」という意味)。中米の成功は、お互いにとってのチャンスとなり得る。・中国式現代化の本質的な特徴とその含意的な意義、および中国の発展見通しと戦略的意図を深く掘り下げて説明したい。中国の発展には独自の論理と法則があり、中国は中国式現代化により中華民族の偉大なる復興を全面的に推進しているのであり、中国は植民地的略奪のような過去の(筆者注:欧米がやったような)歪んだやり方はしないし、強国になれば覇権を握るようなこともしない。またイデオロギーの輸出もしなければ、またいかなる国ともイデオロギーによる対抗もしない。(筆者注:米国は全米民主主義基金NEDにより「民主主義の輸出」すなわちカラー革命を試みて世界中で対米従属的ではない国家の政府転覆をしてきたし、今もし続けているが、中国は「共産主義の輸出」は試みない。ただ単に中華民族がかつて帝国主義列強によって植民地化された状態から抜け出して中華民族の復興に向けて努力するというのが「中国式現代化」の精神であるということを言っている)。何よりも、中国はアメリカを凌駕しようとしたり、アメリカに取って代わろうという計画もないので、アメリカも中国を抑圧し封じ込める意図を持つ必要はない。・相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力は、50年にわたる中米関係から練り出された経験であるだけでなく、歴史上、大国間の対立がもたらした啓発であり、中米がともに努力すべき方向性であるべきだ。そうすれば、両国は違いを乗り越え、二大国が友好的に共存する正しい道を見つけることができる。昨年のバリ会談で、米側は「中国の体制を変えようとせず、新冷戦を求めず、(日本やオーストラリアなどの)同盟国との関係強化を通じて中国に対抗しようとせず、『台湾独立』を支持せず、中国と衝突する意図はない」と述べたではないか。今回のサンフランシスコ会談で、中国と米国は新たなビジョンを持ち、中米関係の5つの柱を共同で構築すべきである。一、正しい理解を共同で確立する。中国は常に、安定的で健全かつ持続可能な中米関係の構築に努力してきた。同時に、中国には守らなければならない利益、守らなければならない原則、そして守らなければならないボトムラインがある。両国がパートナーとなり、互いを尊重し、平和的に共存することが望まれる(筆者注:中国が成長してきたので「けしからん」として、中国を潰そうとするようなことをするな、という意味)。二、ともに違いを効果的に管理するために協力する。意見の相違を利用して両国間の溝を煽るようなことをしてはならず、両国の間に橋を架けるために努力すべきだ。 双方は互いの根本原則を理解し、(制裁などを科して)虐めたり、挑発したり、一線を越えたりせず、もっとコミュニケーションを取り、もっと対話し、もっと相談し、違いや(偶発的)事故(や衝突)に冷静に対処すべきだ。(筆者注:この後半に関しては「お前が言うのか」という感想を抱く読者が多いだろうと思う。三期目の習近平政権が最初に国防部長とオースティン米国防長官との対話を阻んだのは、国防部長に敢えて米国が個人的制裁を加えている人物を選び皮肉を込めていたのだが、その国防部長を腐敗容疑で更迭してしまったので、新たな「皮肉」が生まれている。今は身体検査に時間がかかっている。)三、互恵的な協力を推進すること。 中米は、経済・貿易、農業などの伝統的な分野から、気候変動や人工知能などの新興分野まで、多くの分野で幅広い共通の利益を共有している。 双方は、外交、経済、金融、通商、農業の各分野で回復または確立されたメカニズムを最大限活用し、麻薬対策、司法法執行、人工知能、科学技術の分野で協力を実施すべきだ。四、大国としての責任を共同で負わなければならない。 人類社会が抱える課題の解決は、大国の協力と切っても切れない関係にある。 中米は模範を示し、国際的・地域的課題の協調と協力を強化し、より多くの公共財を世界に提供すべきだ。 双方が提唱するイニシアチブは、互いに開放されているべきで、相乗効果を形成するために調整し、力を合わせることさえできる。五、人的交流を共同で推進する。 両国間の直行便を増やし、観光協力を促進し、地域交流を拡大し、教育協力を強化し、両国間のより多くの交流を奨励し、支援する必要がある(筆者注:渡米したい中国人留学生を制限していることなどに関する意見)。・台湾問題に関する原則的な立場を明らかにしたい。台湾問題は常に中米関係において最も重要かつデリケートな問題である。中国は、バリ会談中に米国が行った関連する前向きな発言を非常に重視している。 米国は「台湾独立」を支持しないという言葉を具体的な行動で体現し、台湾を武装化させることをやめ、中国の平和統一を支持すべきだ。中国は、いずれは必ず統一されるのだし、必然的に統一されなければならない。(筆者注:1971年に国連で「一つの中国」を認め、「中国」を代表する国としては「中華人民共和国」=共産中国しかないという強い意思決定の下、共産中国を国連に加盟させ、「中華民国」台湾を国連から追い出したのは、ほかならぬアメリカだ。そのことを指している。)・米国が輸出管理や投資審査あるいは一方的な制裁などの措置を中国に対して継続的に講じており、中国の正当な利益を著しく損なっている。中国の科学技術を抑圧することは、中国の質の高い発展を抑制し、中国人民の発展権を奪うことに等しい。中国の発展と成長には内発的な論理があり、外的要因によって止めることはできない。米国が中国の懸念を真摯に受け止め、一方的な制裁を解除し、中国企業に公正、無差別の環境を提供するための行動をとることを期待する。習近平の発言に関しては以上おそらく習近平が言いたかったのは最後の二つだろう。◆合意の中に制裁緩和はない話し合いの結果、「中米両軍の対話」、「中米の国防実務会議」、「中米の海上軍事安保協議メカニズム対話」などを再開し、米中軍事関連指導者間の電話会談を行うことに合意した。また「来年初めに、フライトの大幅な増加」、「教育、留学生、青少年、文化、スポーツ、ビジネス等における交流の拡大」に関しても合意した。気候変動対策に関しても両首脳とも前向きなようだ。しかし最後の対中制裁に関しては、緩和したという兆しは見られない。その割に習近平が必ずしも厳しい表情になったわけではないのは、おそらく最後の二つの内の一つ「台湾問題」に関して大きな進展があったからではないかと推測される。(以上、中国側の発表なので、ここまでは「米中」ではなく、「中米」とした。以下は「米中」と表現する。)◆米中首脳会談に合わせ、台湾総統選での野党連携を発表!なんと、米中首脳会談に合わせ、台湾の野党側は、台湾の総統選に関して野党連携である「藍白合作」を発表した。「藍」は国民党で、「白」は「台湾民衆党」である。筆者は『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出しているのはCIAだ!』で、台湾総統選に関して、最終的には野党側が「藍白合作」をして民進党を敗北に追いやるだろうと予測した。その予測が的中した!ということは、今後バイデンは「台湾有事」を煽って、習近平に誓った言葉と裏腹の行動はできなくなる。正に習近平の狙い通りの展開になる可能性が高い。台湾総統選の野党連携に関しては、11月18日あるいは24日までに郭台銘(テリー・ゴウ)候補を含めた最終結果が出ると思われるので、その時を待って別途考察することにしたい。この論考はYahoo(※3)から転載しました。写真: ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/(※2)http://politics.people.com.cn/n1/2023/1116/c1024-40119157.html(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f92aefb2b67ce633f40f6fabf1291831d36f175c <CS> 2023/11/17 10:28

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