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習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(2)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2025/06/23 10:36
配信元:FISCO
*10:36JST 習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「習近平の奇策か パキスタンを使い「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
◆習近平が「トランプのノーベル和賞候補」の手を使うのは二回目
2月22日の論考<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※2)で書いたように、習近平が「トランプがノーベル平和賞を欲しがっていることを利用して、トランプを落とそうとした」のは、これが初めてではない。
2月12日のウォール・ストリート・ジャーナルはExclusive | China Tries to Play the Role of Peacemaker in Ukraine(中国はウクライナに和平をもたらす役割を果たそうとしている) -WSJ(※3)というタイトルで、タイトルからは推測しにくい内容の報道をした。そこには「習近平はトランプがノーベル平和賞を受賞したがっていることを知っているので、ウクライナ戦争の停戦問題をトランプが前面に出て解決してはどうか」という趣旨の提案を水面下で行なっていた」という趣旨のことが書いてある。
事実、トランプ2.0の国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツは、今年2月21日、「すべてがうまくいくだろう。戦争は終わり、ドナルド・J・トランプの名前の隣にノーベル平和賞が置かれることになる」(※4)と言っている。
また1月23日のダボス会議にオンライン参加したトランプが「私は習近平が大好きだ。ずっと好きだった」と公言している(※5)。従って、習近平は1月20日の就任式までに、すでに水面下での米中間ビッグディールを画策していたのだろうことが、うかがわれる。
実は今般は、6月16日に、駐パキスタンの姜再冬・中国大使が、パキスタンのカマル商務大臣と会談し、二国間の経済・貿易協力の推進について意見交換を行った(※6)。パキスタンのアフザル首相調整官やポール商務省事務次官も出席している。それ以外にも細かな接触があるが、どうも、このあたりで、「習近平の奇策」が話し合われたのではないかと推測される。それが6月18日以降のパキスタン側の行動へとつながったと考えるのが妥当かもしれない。
◆核拡散防止条約も核兵器禁止条約も非合理的だが、イスラエルの横暴は目に余る
そもそも、「アメリカ、フランス、イギリス、中国、ロシア」という核保有5か国だけが核を保有してよく、他の国は核兵器を今後保有してはならないなどという「核拡散防止条約」もナンセンスであるなら、ましてや「核兵器禁止条約」もまた、あまりに核保有国に有利過ぎて、話にならないほど不合理な条約だ。このような不合理な条約に則って、イスラエルがイランに対して「お前は核兵器を製造してはならない」として、ガザに対するのと同じようなジェノサイドを断行しようとすること自体、あまりに非人道的で黙って見ていることが耐えられない。そこにトランプが、自国における選挙のためにユダヤ人ロビーを味方に付けようとしてイラン攻撃に加担するなど、「民主主義制度に基づく選挙」とは何なのかと義憤を感じ得ない。選挙に勝つために他国の無辜の民をゴミのように虐殺する行為と、民主主義制度の精神は一致するのかと、G7の決議にも納得がいかない。
習近平としては、せっかくイランとサウジアラビアの仲を仲介して中東諸国間の「和解雪崩現象」の流れを作ったのに、それを阻害されるのは面白くないだろう。しかし、誰とも敵対せずに、「ノーベル平和賞候補者」という「手」でトランプの戦争への道を防げるのなら、悪くはない選択と思っているかもしれない。
言論弾圧をする国として世界から警戒されている中国ではあるが、トランプ2.0の嵐によって、なにやら相対的に漁夫の利を得ているような感もなくはない。それが功を奏するのか否か、しばらく成り行きを見守りたい。
この論考はYahoo!ニュースエキスパート(※7)より転載しました。
習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/6039
(※3)https://www.wsj.com/world/china-tries-to-play-the-role-of-peacemaker-in-ukraine-6a9175fe
(※4)https://www.nbcnews.com/politics/donald-trump/trumps-hostility-ukraine-creates-conservative-rift-rcna193155
(※5)https://www.youtube.com/watch?v=-R7ax7ZlSdk
(※6)https://www.fmprc.gov.cn/web/zwbd_673032/wshd_673034/202506/t20250619_11653138.shtml
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7f9a19179209d4cb1b57ced9efe7bef140c0ad08
<CS>
◆習近平が「トランプのノーベル和賞候補」の手を使うのは二回目
2月22日の論考<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※2)で書いたように、習近平が「トランプがノーベル平和賞を欲しがっていることを利用して、トランプを落とそうとした」のは、これが初めてではない。
2月12日のウォール・ストリート・ジャーナルはExclusive | China Tries to Play the Role of Peacemaker in Ukraine(中国はウクライナに和平をもたらす役割を果たそうとしている) -WSJ(※3)というタイトルで、タイトルからは推測しにくい内容の報道をした。そこには「習近平はトランプがノーベル平和賞を受賞したがっていることを知っているので、ウクライナ戦争の停戦問題をトランプが前面に出て解決してはどうか」という趣旨の提案を水面下で行なっていた」という趣旨のことが書いてある。
事実、トランプ2.0の国家安全保障担当補佐官マイケル・ウォルツは、今年2月21日、「すべてがうまくいくだろう。戦争は終わり、ドナルド・J・トランプの名前の隣にノーベル平和賞が置かれることになる」(※4)と言っている。
また1月23日のダボス会議にオンライン参加したトランプが「私は習近平が大好きだ。ずっと好きだった」と公言している(※5)。従って、習近平は1月20日の就任式までに、すでに水面下での米中間ビッグディールを画策していたのだろうことが、うかがわれる。
実は今般は、6月16日に、駐パキスタンの姜再冬・中国大使が、パキスタンのカマル商務大臣と会談し、二国間の経済・貿易協力の推進について意見交換を行った(※6)。パキスタンのアフザル首相調整官やポール商務省事務次官も出席している。それ以外にも細かな接触があるが、どうも、このあたりで、「習近平の奇策」が話し合われたのではないかと推測される。それが6月18日以降のパキスタン側の行動へとつながったと考えるのが妥当かもしれない。
◆核拡散防止条約も核兵器禁止条約も非合理的だが、イスラエルの横暴は目に余る
そもそも、「アメリカ、フランス、イギリス、中国、ロシア」という核保有5か国だけが核を保有してよく、他の国は核兵器を今後保有してはならないなどという「核拡散防止条約」もナンセンスであるなら、ましてや「核兵器禁止条約」もまた、あまりに核保有国に有利過ぎて、話にならないほど不合理な条約だ。このような不合理な条約に則って、イスラエルがイランに対して「お前は核兵器を製造してはならない」として、ガザに対するのと同じようなジェノサイドを断行しようとすること自体、あまりに非人道的で黙って見ていることが耐えられない。そこにトランプが、自国における選挙のためにユダヤ人ロビーを味方に付けようとしてイラン攻撃に加担するなど、「民主主義制度に基づく選挙」とは何なのかと義憤を感じ得ない。選挙に勝つために他国の無辜の民をゴミのように虐殺する行為と、民主主義制度の精神は一致するのかと、G7の決議にも納得がいかない。
習近平としては、せっかくイランとサウジアラビアの仲を仲介して中東諸国間の「和解雪崩現象」の流れを作ったのに、それを阻害されるのは面白くないだろう。しかし、誰とも敵対せずに、「ノーベル平和賞候補者」という「手」でトランプの戦争への道を防げるのなら、悪くはない選択と思っているかもしれない。
言論弾圧をする国として世界から警戒されている中国ではあるが、トランプ2.0の嵐によって、なにやら相対的に漁夫の利を得ているような感もなくはない。それが功を奏するのか否か、しばらく成り行きを見守りたい。
この論考はYahoo!ニュースエキスパート(※7)より転載しました。
習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/6039
(※3)https://www.wsj.com/world/china-tries-to-play-the-role-of-peacemaker-in-ukraine-6a9175fe
(※4)https://www.nbcnews.com/politics/donald-trump/trumps-hostility-ukraine-creates-conservative-rift-rcna193155
(※5)https://www.youtube.com/watch?v=-R7ax7ZlSdk
(※6)https://www.fmprc.gov.cn/web/zwbd_673032/wshd_673034/202506/t20250619_11653138.shtml
(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7f9a19179209d4cb1b57ced9efe7bef140c0ad08
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トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:18JST トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信 怒る中国のネット(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆トランプ「イラン爆撃」と「原爆発言」に対する中国ネット民のコメント以下、ロックンロール付きのはしゃいだ動画を見た人がどれくらいいるかは判断できないが、少なくともトランプがイラン地下核施設爆撃をしたことと、それを「広島・長崎」への「原爆投下」と同じだと言ったことに対する、中国のネット民のウェイボー(Weibo)におけるコメントを、いくつか拾いあげてみた。・まさか、原爆投下と比べるなんて、こんな比喩は普通の人には思いつかないよ。・どこまでも、越えてはならないレッドラインを、平気でどんどんぶち壊していく。・トランプは本当にビッグマウスで、何でも言うし、限度もない。結局のところ、ただの傲慢なメンタリティだ。「俺は世界のボスだ、われわれは誰をも恐れない」ってことさ。「他人の気持ちなど、知ったことか」と思っている。・だったら、なんぜイスラエルにも爆撃しないんだ?イスラエルだって核開発やってるのは知ってるはずだろ?・「広島の例も長崎の例も挙げたくない」って言ってるけど、もう全部列挙したんじゃないかい? しかもあなたは、それらを美味しそうに紹介した。・幸いにも石破茂はそこにいなかった(筆者注:いても何も言ってないよ、岩屋外相がいたが、何も言っていない)。・トランプはイランへの軍事行動を広島と長崎への原爆投下に例え、多くのネットユーザーから批判を浴びた。歴史認識の欠如を非難されただけでなく、危険な誤解を招く発言だとも批判された。トランプが言いたかったのは、「自分をレーガン、リンカーン、イエス・キリストと比較したくはないが、私は本質的にそういう人間だ」ということだったのかもしれない。・トランプはイランへの攻撃を日本への原爆投下に例えた!イランへの空爆を原爆に例えるなんて、またしてもトランプは大口をたたいているのか?本当に自分が救世主だと思っているのか!アメリカは至る所で火に油を注いでおり、中東情勢はさらに混沌としている。このような脅迫と威嚇で平和がもたらされるのだろうか?誰も信じないだろう!・トランプは本当に天才だ。この発言は、彼らの爆弾よりも多くの被害をもたらしました。・本日の(日本における)記者会見で、ある記者が、トランプが広島と長崎を米軍によるイランの核施設攻撃にたとえた発言について、日本政府にどう評価するかを尋ねた。すると、日本の林芳正官房長官は、「関連する歴史的出来事については専門家が解説すべきだ」と述べ、質問に直接答えなかった。・イランの核施設への爆撃を広島への原爆投下と比較するというのか? この歴史修正主義は、(事故を起こし続けている)美肌フィルターよりも冷酷だ! 当時、日本は第二次世界大戦末期に核爆弾を投下された。今、イランは核兵器もまだ持ってないのに、「予防的攻撃」を受けたに過ぎない。トランプは「根拠のない」発言をアメリカの得意技にしてしまったようだ。トランプには歴史の授業をもう一度受けてみることをお勧めする。広島では20万人が亡くなったが、イランの核施設では犠牲者は出ていない。これで「爆撃(原爆投下)により、多くの命を救った」と言えるのか?トランプは無理やり「戦時大統領」というドラマを創り上げている。(筆者注:この指摘は鋭い。すなわち、イラン爆撃を広島・長崎への原爆投下になぞらえることによって、今は「緊急事態」なので、米議会を通さなくとも、「大統領令」だけでトランプの独断で動いていいことの「正当性」を求めようとした、という論理になる。)・アメリカが時折、日本人の傷口に塩を塗り込むのは偶然ではない。それは、傷が癒えた後も痛みを忘れないよう、日本人に警告するためだ。たとえば、トランプの最近の発言は、日本に関税の更なる譲歩を促しているが、これは実際には脅しだ!・トランプは、世界平和はすべて自分の功績だと言っているのだから、私たちは彼に感謝すべきだ。・トランプ氏は戦争屋だ! 彼は米国議会の承認なしに主権国家への攻撃を開始し、国際法を著しく侵害した!(中国のネット民のコメントは以上)◆軍事力で問題を解決する恐ろしさ日本でも、多くのネット民がトランプの「原爆発言」に対する怒りと、それを批判しない日本政府の姿勢に、さらなる憤りを表明している。しかし、日本ではメディア自身が強く批判しているのはあまり見かけないし、またトランプがTRUTHでイラン爆撃を軽快なロックのリズムに合わせて動画化している報道を見かけないように思う(見逃していたら、お許しいただきたい)。環球時報は一方で、林官房長官がトランプの「原爆発言」に関して記者会見で聞かれ「そういったことは専門家が考えればいい」と回答を交わしたことを、淡々と、しかし動画付きで紹介している(※2)。他の多くの中国のメディアもトランプの「原爆発言」に対する日本政府の回答に関して報道しており、その行間には一種の「日本政府の姿勢に対する批判」を見出すことができる。そこに共通しているのは、日本政府の「自尊心のなさ」と「過度の対米追従」であるように感ぜられる。アメリカはかつてイラクを攻撃するときも、まるでゲームを楽しむように爆撃機をリモコンで操縦し、逃げ惑う市民を笑いながら殺している動画を何度も見たことがある。今般のイラン攻撃もトランプにとっては「自分がどれだけ素晴らしいかを世界に見せるためのゲーム」に過ぎないのだ。それを日本への原爆投下に喩(たと)えたということは、それもまたトランプにとっては「おもしろいゲームだった」と言ったのに等しい。読者の皆様にお願いしたい。もう一度、トランプがTruthに投稿した「イラン爆撃」をおちょくった動画(※3)をご覧いただきたい。そして日本の敗戦はこのように位置づけられていることを再認識していただきたい。日本人として、戦後80年間、「軍事力」によって世界を支配してきたアメリカの傲慢さを、このまま見逃し続けていいのかを問わなければならないのではないだろうか。そしてこのまま対米追従を続けることが、日本人の平和につながるのか、日本はこれで「独立国家なのか否か」を問わなければならないだろう。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※4)より転載しました。NATO首脳会議 米大統領が会見(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://world.huanqiu.com/article/4NFZ6ElF49t(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114740882500667664(※4)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/545dd454d77832833a664d3ab77949163b42c384
<CS>
2025/06/27 16:18
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トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:16JST トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。アメリカのドナルド・トランプ大統領はイランの地下核施設への爆撃を、日本への原爆投下と比較しながら、「広島の例は使いたくない。長崎の例も使いたくない。しかし、本質的には同じことだ。あれが、あの戦争を終わらせたのだ」と正当化した。6月25日、NATO首脳会議が行われているオランダ・ハーグでの記者会見でのことだ(※2)。日本が戦争を起こしたことはまちがいのない事実ではあるが、広島・長崎に原爆を落とされたことを「非人道的だ」と非難する資格は日本にはないのか。何十万もの無辜の民を、あれだけ残虐な形で殺されたことを、イランの地下核施設爆撃と「同じだ」として正当化されることに対して、「それでいいのか」という思いを抱かない日本人はいないだろう。このことに対して、もし日本政府がトランプの論拠に何も反論しないのだとすれば、「日本は真の独立国家なのか」を日本政府に問いたい。どうやら林芳正官房長官は6月26日の記者会見で、このトランプ発言に関して聞かれ「一般的に歴史的な事象に関する評価は専門家により議論されるべきものだ」と論評を避けたようだ(※3)。広島・長崎に原爆を落とされたのは「一般的に歴史的な事象に関する評価は専門家により議論されるべきものだ」と切り捨てていい対象なのか?これによって日本は降伏したのだとアメリカは断言し、敗戦後はGHQ(事実上アメリカ)によって占領され、戦後80年間、ひたすらアメリカ従属の政府を維持してきたのではないのか?これは「日本国家」の問題だ!日本政府こそが真正面から向き合うべき問題であり、政府こそが回答すべき「国家の基本姿勢」の話だ。「逃げるな!」と言いたい。では、中国ではトランプの「原爆発言」をどううけとめているのだろうか。そう思って中国のネットを調べていた時だ。驚いた。なんと、トランプがNATO首脳会議に参加する前の6月24日に、イラン攻撃を軽快なロックンロールのメロディーに乗せて「爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!」とはしゃいでいるのを発見したのである。◆6月24日、トランプはロックンロールを流しながらイラン爆撃の動画を発信最初にそれを見つけたのは、中国共産党系メディア「環球時報」の報道においてだった。環球時報がトランプの「原爆発言」をどう論じているかで、中国のこの件に関する見解が概ねわかる。そこで発見したのは、なんと、<トランプはB-2爆撃機が爆弾を投下するビデオを、「イラン爆撃」のパロディー音楽とともに公開し、物議を招いている>(※4)という見出しの動画だった。公開時間は6月25日、14:03。製作者は王力氏。ともかく読者の方には、まずこの動画のURLをクリックしていただきたい。このメロディー(動画のBGM)のオリジナルバージョンは「バーバラ・アン」だ。このシングルは元々、アメリカの「リージェンシー・バンド」が1961年にリリースした。1965年にアメリカのロックバンド「ビーチ・ボーイズ」が歌い、アルバムに収録されている。環球時報の解説によれば、1980年の「イライラ戦争(イラン・イラク戦争)」の際に、アメリカのバンド「ヴィンス・ヴァンス・アンド・ザ・ナイツ」がこの曲をパロディー化した「イラン爆撃」が発表されたという。トランプが自分のSNSであるTruthで公開した「Bomb Iran(イラン爆撃)の動画」はこちら(※5)で見ることができる。使われている音楽は、1980年のアレンジバージョンだ。環球時報は以下のように解説している。・「タイムズ・オブ・イスラエル」は、トランプが24日、自身のソーシャルメディアにB-2爆撃機が飛行しながら爆弾を投下する60秒の編集動画を投稿したと報じた。この動画には「イランを爆撃せよ」というパロディーソングが添えられており、ソーシャルメディア上で物議を醸し、不満を招いた。・動画では、B-2爆撃機が空中を飛行し、時折数十発の爆弾を投下していた。BGMでは「イランを爆撃せよ」というフレーズが繰り返し流れていた。BGMの歌詞には、「サムおじさん(=アメリカ=トランプ:筆者注)はもうかなり怒っている。イランを駐車場に変えてやる時が来た。イランを爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!爆撃せよ!」というフレーズも含まれていた。・イスラエルとイランが停戦合意に達したばかりであることを考えると、この情報が発するシグナルは世界を混乱させている。・この動画はインターネット上で瞬く間に論争を巻き起こし、多くの人々が反発した。あるネットユーザーは「これは真面目な政府ではない。これまでもそうだった。彼らはそれを隠そうともしない」とコメントした。・あるネットユーザーは、「もしかしたら私がただのつまらない人間なのかもしれないけど、こういう投稿は支持できない… 国を爆撃するという投稿がそんなに面白いのか? 爆撃に反対しているわけではないけど、こういうことを冗談にしたり、軽視したりしていいのだろうか? 君ならそうかもしれないけど、私には無理」とコメントした。・あるネットユーザーは、「大統領にしては子供じみている」とコメントした。・あるネットユーザーは、「大統領がこんな投稿をするなんて面白いのか?」とコメントした。・あるネットユーザーは、「平和(の実現)を願うべきだ。戦争は民間人の苦しみを意味する」とコメントした。(環球時報からは以上)中国がアメリカの行動をおもしろく思っていないことは分かっているが、しかし日本では見られないような、「トランプの戦争ゲーム化」に対する批判が、ここまで強烈に表現されている記事も少ないと痛感した。これが日本のメディアでは見られないのはなぜなのか?「トランプ「原爆発言」の前にイラン爆撃を「撃て!撃て!」と軽快なロックに乗せて発信 怒る中国のネット(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※6)より転載しました。NATO首脳会議 米大統領が会見(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.huffpost.com/entry/trump-hiroshima-nagasaki-iran_n_685bf52ee4b024434f988a73(※3)https://news.yahoo.co.jp/articles/8317af9565727bbb0ff34cfde0e7b0d1a608a301(※4)https://world.huanqiu.com/article/4NEf8Cx5L4p(※5)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114740882500667664(※6)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/545dd454d77832833a664d3ab77949163b42c384
<CS>
2025/06/27 16:16
GRICI
習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:33JST 習近平の奇策か 「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。トランプ大統領がイスラエルを支援してイラン攻撃に参加するか否かに関して世界の関心が集まっている。習近平国家主席はプーチン大統領と電話会談をして「外交努力を」と通り一遍のことを言うのがせいぜいのところだろうと思う人が多いだろうが、どうやら、とんでもない「手」を打っているようだ。先のインド・パキスタン戦争で、「トランプが停戦をさせた」ような話が出ていたが、実はインドが使ったフランス製の戦闘機が、パキスタンが使った中国製の戦闘機に惨敗している。ところが習近平はこれを逆手に取って、「インド・パキスタン戦争を中止させたのはトランプだ」として、パキスタンに「トランプにノーベル平和賞を!」という売れ込みで、「ノーベル平和賞受賞候補者」に持ち込んで、トランプによるイラン攻撃を阻止させようと企てているようなのだ。◆パキスタン政府はトランプを「ノーベル平和賞推薦」と発表6月21日、午前5:30、パキスタン政府@GovtofPakistanは、「ドナルド・J・トランプ大統領を2026年のノーベル平和賞に推薦」という見出しのポストを投稿(※2)した。そこには概ね、以下のようなことが書いてある。・パキスタン政府は、最近のインド・パキスタン危機におけるドナルド・J・トランプ大統領の断固たる外交介入と極めて重要なリーダーシップを称え、2026年のノーベル平和賞に正式に推薦することを決定した。・国際社会は、インドによるパキスタンに対する侵略行為を目の当たりにした。これはパキスタンの主権と領土保全に対する重大な侵害であり、女性、子供、高齢者を含む罪のない人々の悲劇的な犠牲をもたらした。パキスタンは自衛の基本的権利を行使し、ブニャナム・マルスース作戦を開始した。これは、抑止力の再構築と領土保全の確保を慎重に行い、民間人の被害を意図的に回避した、慎重かつ断固とした、的確な軍事対応だ。・地域の混乱が激化する中、トランプ大統領は優れた戦略的先見性と卓越した政治手腕を発揮し、急速に悪化する情勢を緩和、最終的に停戦を実現した。この介入は、トランプ大統領が真の平和推進者としての役割を担い、対話による紛争解決に尽力してきたことの証しだ。・2025年のパキスタン・インド危機におけるトランプ大統領のリーダーシップは、実利的な外交と効果的な平和構築という彼の伝統が継承されていることを如実に示している。パキスタンは、ガザで展開されている非人道的な悲劇やイランをめぐる情勢悪化といった中東における継続的な危機において、トランプ大統領の真摯な努力が地域および世界の安定に引き続き貢献することを期待している。 (以上)最後のフレーズ「イランをめぐる情勢悪化といった中東における継続的な危機において、トランプ大統領の真摯な努力が地域および世界の安定に引き続き貢献することを期待している」は、なんとも見事な締めくくりではないか。これに対してトランプ自身も、概ね以下のようなポストを発表(※3)している。・インドとパキスタンの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、セルビアとコソボの戦争を止めたとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろうし、エジプトとエチオピアの平和を維持したとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう。・また、中東でアブラハム合意を行ったとしてもノーベル平和賞を受賞することはないだろう。・いや、ロシア/ウクライナ、イスラエル/イランを含め、私が何をしても、結果がどうであれ、ノーベル平和賞は受賞しないだろうが、国民は知っているし、私にとってそれがすべてだ! (以上)おやおや・・・。トランプにしては少々斜めからの発言だが、「ほかにもこんなに多くのノーベル平和賞に値することをやっているよ」というのを、強調しているようにも読める。つまり、まんざらではないということになろうか。流れとしては、6月18日にトランプがパキスタン陸軍司令官と面会し、イランの件も話しあった。(※4)6月19日にトランプは「2週間以内に決断する」という趣旨のことを発言した。(※5)6月18日以降は、それ以前よりも発言内容が穏やかになっている。という傾向にある。ちなみにインドは「インド・パキスタン紛争の停戦とトランプはいかなる関係もない」的なことを言っているが、インドが使用していたフランスの戦闘機が、パキスタンが使用していた中国の戦闘機に敗けたとも言っていない。◆パキスタン軍が使用した中国製軍用機「殲10ce」が、インド軍が使用したフランス製軍用機「ラファール」などを撃墜少し前のことになるが、今年5月7日、インドがOperation Sindoorを発動してミサイルを使ってパキスタン国内を襲撃(※6)した。さらに大量の戦闘機を使ってパキスタンを攻撃したが、パキスタンが反撃して、中国製の「殲10ce」などを使って、フランス製のラファール(3機)、旧ソ連時代のMiG-29(1機)、ロシアン製のSU-30MKI(1機)を撃墜したと、パキスタン政府側は主張した(有料)(※7)。パキスタン側は、「インドは70機くらい出動させ、パキスタンは28機を出動した。パキスタンはインドの戦闘機10機以上を撃墜できるが、事態を拡大さえたくないために5機のみを撃墜した」と発表した(※8)。インドは1機が2.18億ドルという高い価格でフランスの軍用機「ラファール」を調達しているが、パキスタンは1機4000万ドル程度の低価格で中国の軍用機「殲10ce」を購入していると言われている。これまで世界の評価では、ラファールは4.5世代の戦闘機で、殲10c(輸出用は殲10ce)はそれより遥かに性能が悪い戦闘機とされてきた。ところが、初めての戦闘で、殲10ceは全く傷を受けることなくラファールを3機も撃墜したことが、軍事分野で大きな話題になった。中国は実戦で軍用機を使ったことがないので、中国にとっても初めての実戦経験になったわけだ。もっとも、インドは撃墜されたことを認めず、あくまでもインドが勝利したことと主張し、Operation Sindoorの勝利を10日間祝う活動を今やったほどだ。どうやらフランスの軍事評論家は、ラファールの性能が悪いのではなく、あくまでもインド軍の操縦レベルが低かったのだと主張したようだが、あやふやなまま、戦争は終えた。この論考はYahoo!ニュースエキスパート(※9)より転載しました。「習近平の奇策か パキスタンを使い「トランプをノーベル平和賞候補」に推薦してイラン攻撃を阻止させる?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://x.com/GovtofPakistan/status/1936159807326900577(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114717932061341718(※4)https://www.ndtv.com/world-news/us-president-donald-trump-hosts-pakistan-army-chief-asim-munir-for-lunch-india-iran-israel-attacks-8704673(※5)https://www.bbc.com/japanese/articles/cglz4kz6nxxo(※6)https://www.bbc.com/japanese/articles/c20907gv4lyo(※7)https://www.reuters.com/world/pakistans-chinese-made-jet-brought-down-two-indian-fighter-aircraft-us-officials-2025-05-08/(※8)https://dunyanews.tv/en/Pakistan/882736-pakistan-could-have-shot-down-more-indian-jets-if-paf-given-free-hand(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7f9a19179209d4cb1b57ced9efe7bef140c0ad08
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2025/06/23 10:33
GRICI
ハーバード大留学生を速攻で獲得しようと動く中国 全世界の対米留学ビザに規制を拡大する米国【中国問題グローバル研究所】
*15:57JST ハーバード大留学生を速攻で獲得しようと動く中国 全世界の対米留学ビザに規制を拡大する米国【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。5月22日、米政権がハーバード大学にいる留学生や訪問学者を大学から追放し、同大学の留学生および訪問学者の受け入れ資格を取り消すと宣言すると、中国は素早く動いた。香港やマカオの大学にハーバード大学にいる留学生を破格的な好条件で受け入れると宣言させたのだ。すでに数十名のハーバード大留学生からの問い合わせが来ていると香港メディアは伝えている(国籍は不明)。中国のネットでは、「トランプが中国を再び建国させる」という意味の「川建国」(川はトランプ=川普の意味)が再登場し、トランプ政権の留学生追放を大歓迎している有り様だ。一方、5月27日、米メディアのPOLITICOは「マルコ・ルビオ国務長官が署名した電報によると、学生ビザ申請者のための新しい面接を一時停止するように全世界の米国大使館と領事部に命じた」とのこと。「人材奪取に奔走する中国」と「人材を締め出そうとする米国」。このままでは「川建国」が大活躍することになるではないか。◆人材奪取に速攻で動いた中国中国外交部の毛寧報道官は5月23日の定例記者会見(※2)で、「中国と米国の教育協力は互恵的だ。中国は、教育協力の政治化に常に反対してきた。米国側の関連する行動は、米国のイメージと信頼性を損なう。中国は、海外の中国人学生と学者の正当かつ合法的な権利と利益を断固として保護する」と述べた。同日、香港科技大学は<世界的な学問的変化に対応して、ハーバード大学の学生に門戸を開く>(※3)旨の告知をした。また5月24日早朝の「香港文匯網」(※4)は、<米国がハーバード大学留学生受入を禁止 香港の大学が火速(火のような速さ)で「人材収奪」:無条件入学+奨学金特設>(※5)という見出しで、香港の大学全体の対応を詳細に報道している。それによれば、香港科技大学以外に、香港城市大学、嶺南大学、香港中文大学、香港理工大学、香港大学など、ほぼ全ての大学がハーバード大学留学生受け入れに手を挙げ、それぞれ以下のような優遇策を打ち出している。・無条件で編入を受け入れ、学業を継続できる措置を取る。・単位互換などの手続きを含むあらゆる支援をする専門チームを設置。・宿舎や特別奨学金を支給する。・ハーバード大学の指導教官ごと雇用し共同で指導に当たる。・ハーバード大学同窓会窓口を活用する。・・・・などなど、至れり尽くせりの厚遇を揃えて人材誘致に全力を尽くしている。特に拙著『米中新産業WAR』の【第四章 世界シェアの90%をいく中国のドローン】で書いたように、ドローンの王者DJIの創設者・汪滔(おうとう)は香港科技大学の卒業生だ。1980年に浙江省杭州市で生まれ、小さい頃に「赤いヘリコプターの冒険物語」という漫画に惹かれてドローンを造るようになり、中国を世界一のドローン大国に導いている。科学技術を目指す若者で知らない人は少ないほどのイノベーター精神がそこにはある。香港メディアによれば、5月26日時点で数十名のハーバード大学留学生から問い合わせがあったとのことだ。国籍を明かしてないが、おそらく主として中国大陸あるいは香港からハーバード大学に行った留学生ではないかと推測される。中共中央が管轄する中央テレビ局CCTVもまた5月25日に<香港マカオの大学が人材収奪合戦:米国留学生の転校を受け入れ用意>(※6)という見出しで、この現状を報道している。◆中国のネットで活躍する「川建国(トランプが中国を再建国させる)」中国ではトランプをその発音に漢字を当てはめて「特朗普」と書いたり「川普」と書いたりする。庶民の間では「川普」の方が多い。「川」一文字でトランプを表すこともある。冒頭に書いたように「川建国」は「トランプが中国を再建国させる」という意味である。タイトル画像にあるのは、「川建国」のイラストの一つだ。中国のネットには再び「川建国」が現れ始め、たとえば5月27日には<トランプ政権はハーバード大学と戦争状態に! ハーバード大学は共産党と結託しているのか? トランプはハーバード大学の留学生資格を取り消すと脅した。表面上は党派や個人的な恨みの問題だが、実際にはトランプはアメリカ文化のソフトパワーの最強の拠点を直接破壊したのだ! 川建国に感謝!>(※7)という非常に長いタイトルのユーチューブなども現れている。あまりに長いし早口なので、このユーチューバーが言わんとしている概略を抜き出し、中国の現状説明も加えながら要点を列挙したい。・トランプはなぜハーバード大学を攻撃するのか。それはハーバードが民主党の拠点であり、知の殿堂であるからだ。反ユダヤ主義だろうと、反中国共産党だろうと、トランプにとっては、どうでもいいことだ。・トランプはエリートが大嫌いだ。トランプの支持者たちは小学卒かせいぜい中学卒の者が多い。農民であり、労働者であり、その岩盤支持層に歓迎されるには知識人を打倒することが肝心なのだ。知識人は民主党の岩盤支持層でもある。だから、知識人の象徴であるハーバード大学をトランプは狙う。・毛沢東も知識人が大嫌いだった。トランプの「打倒ハーバード」は「文化大革命のアメリカ版」だ。・トランプの行動(奇行)は、すべて中国に有利に働く。やはり「川建国」だ。「川建国万歳!」(以上)中国は毛沢東が農民を中心に革命を起こさせ建国した国なので、革命的闘士とトランプが肩を並べるイラストが流行ったものだ(参照:タイトル画像)。そのトランプの奇行がいつも中国に有利に働くとして、トランプは、毛沢東が中国を建国したように、中国を再建国してくれると中国のネット民は喜んでいる。その意味で中国人はトランプが大好きだ。高関税を中国にかけておきながら、中国が報復関税で抵抗すると、トランプはいきなり115%も対中関税を引き下げた。これは「中国の大勝利だ」と中国人は拍手大喝采している。トランプはこのようにいつも中国に有利なことばかりやってくれるので、「川建国万歳!」なのである。だから<中国と欧州が、ハーバードから追い出される留学生(エリート難民)を頂こうと「人材争奪合戦をしている」>(※8)という論評なども見受けられる。その冒頭には「川建国再出神操作!」(川建国が再び神の操作を始めた!)とある。そしてアメリカから科学者が脱走しようとしているとして、イギリスの科学誌ネイチャーの調査結果を取り上げている。どうやら早くも3月27日に<アメリカの75%もの科学者がアメリカから逃げ出そうと思っている>(※9)(有料)という調査結果をネイチャーが出したようだ。◆ルビオ国務長官が全世界の米大使館に新入生ビザ面接の一時停止を指示そのような中、5月27日のアメリカのメディアの一つであるPOLITICO(ポリティコ)は、<ルビオ国務長官が署名した新たな学生ビザの申請受付を一時停止するよう全世界の米大使館に指示を出した>(※10)という趣旨の報道をしている。これは9月の新学期を迎えるに当たり、「新たに新入生としてビザ申請をする人たちの面接を一時中止せよ」というもので、理由は「審査基準厳格化の拡大」にあるらしい。この電報は、将来のソーシャルメディア審査が何を選ぶのかを直接詳しく説明していないが、テロリストを締め出し、反ユダヤ主義と戦うことを目的とした大統領令をほのめかしているという。だとすれば、中国にとって、またもや「川建国」現象が増えたことになりはしないか。5月28日、中国外交部の毛寧報道官は定例記者会見(※11)で、トランプ政権が留学生のビザ取得のための新規面接予約を一時停止するよう指示したことについて、「正常な教育協力や学術交流が妨害受けるべきではない」と、もっともらしいことを言っているが、本心は違うだろう。本当は「トランプが中国に有利になることを又やってくれた」と喜んでいるのではないだろうか。「川建国」がこれ以上活躍しないことを祈らずにはいられない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※12)より転載しました。イラスト: 中国のネットで流行っている「川建国」(トランプが中国を再び建国させる)のイラスト。革命的青年と共に毛沢東のスローガンの一つであった「社会主義新農村を建設しよう」と書いてある。(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202505/t20250523_11631472.shtml(※3)https://hkust.edu.hk/zh-hant/news/hkust-opens-doors-harvard-students-amid-global-academic-shifts(※4)https://www.wenweipo.com/a/202505/24/AP68310a88e4b0dd619293bf02.html(※5)https://www.wenweipo.com/a/202505/24/AP68310a88e4b0dd619293bf02.html(※6)https://news.cctv.com/2025/05/25/ARTIb4dCLAN2V5xm6rULUqAl250525.shtml(※7)https://www.youtube.com/watch?v=_ITWOOX4yy4(※8)https://baijiahao.baidu.com/s?id=1832959389768198452&wfr=spider&for=pc(※9)https://www.nature.com/articles/d41586-025-00938-y(※10)https://www.politico.com/news/2025/05/27/trump-team-orders-stop-to-new-student-visa-interviews-as-it-weighs-expanding-social-media-vetting-00370501(※11)http://www.news.cn/world/20250528/2837287d05774b74adbd48874b18eccc/c.html(※12)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3db9ab49a7d087abe669d218f30bfde4a9ecad1e
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2025/05/29 15:57
GRICI
トランプ関税はEUを中国に近づけた アメリカなしの世界貿易新秩序形成か?【中国問題グローバル研究所】
*10:36JST トランプ関税はEUを中国に近づけた アメリカなしの世界貿易新秩序形成か?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。習近平国家主席にとってEUとの投資協定である「中欧投資協定」は長いこと悲願だった。しかしバイデン政権の介入や中国の安価なEVの「津波」によって挫折し、EUは2024年10月にEVに関する対中関税を決定。両者の関係は冷え込んでいた。ところが「トランプ関税」がEUにも圧し掛かってきたことによってEUの対中姿勢は一転。EVに対する対中関税を撤廃し、価格協定で折り合う方向に動き始めた。実は2021年にEUがウイグル問題で中国の官員を制裁し、中国がEU官員を報復制裁することで中欧投資協定が凍結されていたのだが、中国はその報復制裁を解除すると言い出したこともあり、習近平宿願の「中欧投資協定」が復活しつつある。トランプ関税は中国と東南アジアの緊密度を強化する役割をしただけでなく、EUに近づけたことになる。その結果、「アメリカなしでの世界貿易新秩序」が形成しつつあるのを見逃してはならない。◆トランプ相互関税直後、欧州委員会委員長が中国の李強首相に電話トランプ大統領が4月2日に発表した相互関税は同盟国を含んだ全ての対米貿易黒字国を相手にしたものなので、当然、EUもその対象になっていた。激怒したEUは一部に関して報復関税をかけると同時に、4月8日にフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が中国の李強首相に電話して会談を行った。中国側の発表は中国の外交部(※2)にあり、EU側の発表はEuropean Commission(※3)に載っている。中国外交部の報道は以下のようなものである。・今年は中国とEUの外交関係樹立50周年になり、二国間関係の発展は重要な機会に直面している。年初、習近平国家主席はアントニオ・コスタ欧州理事会議長と電話会談を行い、中国とEUの関係を深める方向性を示した。・中欧双方は、戦略、経済、貿易、グリーン、デジタルの分野で、新たなハイレベル対話の開催をできるだけ早く推進する必要がある。・李強は「米国が中国と欧州を含むすべての貿易相手国にさまざまな口実で無差別に関税を課すと発表したが、これは一国主義、保護主義、経済的いじめの典型的な行為である」と指摘した。さらに「中国がとった断固たる措置は、自国の主権、安全、発展の利益を守るためだけでなく、国際貿易ルールと国際的な公正と正義を守るためでもある。人類は同じ地球村に住んでいる。保護主義に出口はなく、開放性と協力が世界にとって正しい道だ」と述べた。・フォン・デア・ライエンは「EUは常に中国との関係を非常に重要視してきた。(トランプ関税がある)現在の状況では、中欧関係の継続性と安定性の維持が不可欠だ。EU側は未来に期待し、中欧外交関係樹立50周年を共同で祝うために、適切な時期に新たな中欧首脳会談を開催することを楽しみにしている」と述べた。さらに「EUは中国と協力して、さまざまな分野でのハイレベル対話を促進し、経済と貿易、グリーン経済、気候変動の分野で互恵的な協力を深める用意がある。米国が課した関税は、国際貿易に深刻な影響を及ぼし、欧州、中国、脆弱な国々にも深刻な影響を与えている。中欧は、WTOを中核とする公正で自由な多角的貿易体制を維持し、世界の経済貿易関係の健全で安定的な発展を維持することにコミットしている。これは、中欧双方と世界の共通の利益である」と強調した。(中国外交部報道は以上)一方、EU側の報道は以下のようになっている。・中欧両首脳は、二国間及びグローバルな課題について検討し、建設的な議論を行った。世界経済の安定性と予見可能性が極めて重要であることを強調した。・トランプ関税によって引き起こされた広範な混乱に対応して、フォン・デア・ライエン委員長は「世界最大の市場である欧州と中国が、自由で公正で、公平な競争条件に基づいた強力な改革された貿易システムを支援する責任」を強調した。・中欧間貿易のバランスを取り戻し、欧州の企業、製品、サービスの中国市場へのアクセスを改善するための構造的解決策の緊急性を示唆した。・フォン・デア・ライエン委員長は「ウクライナにおける公正で永続的な平和に対するEUの確固たる支持を再確認し、平和のためのいかなる条件もウクライナによって決定されなければならないこと」を強調した。彼女は中国に対し、和平プロセスに有意義な貢献をするための努力を強化するよう呼びかけた。・フォン・デア・ライエン委員長は、今年7月に開催される中欧首脳協議が外交関係樹立50周年を記念する適切な機会になると指摘した。(EU側報道は以上)中国側とEU側の報道で、一つ異なるのはウクライナ問題だ。どうやらEUでは、トランプが当初、ウクライナなしで停戦交渉に進もうとしていたのを、中国の介入によって阻止させたいという目論見もあったことがうかがわれる。しかし行間には、アメリカ無しの新たな貿易秩序を形成していこうという別の意図が流れているのが読み取れる。◆トランプ関税が中欧を軸に世界貿易新秩序形成を促進4月11日のベルリン発ロイター電は<EUと中国は中国製EVの最低価格設定を検討するとEUが言った>(※4)という見出しの報道をした。それによれば、「EUと中国は昨年10月にEUが中国製EVに関した45.3%の関税に関して撤廃し、その代わりに、中国製EVの最低価格を設定することを検討することに合意した」と、欧州委員会の報道官が述べたとのこと。ロイターは別途<中国とEU、アメリカの懲罰的関税に対抗して貿易を協議>(※5)という見出しでもこの件を扱っている。これに対して中国の商務部でも、<王文濤部長、欧州委員会のシェフチョビッチ欧州委員会貿易・経済安全保障担当委員とテレビ会談>(※6)という見出しで、中欧が関税ではなく価格設定で問題を解決しようという方向の交渉に入ったことが詳細に説明している。これはトランプが導入した「相互関税」に対抗するもので、中欧双方でアメリカなしの世界貿易新秩序を形成していこうというコンセンサスに基づいて行われたものだ。会談の中でシェフチョビッチは「米国が課した関税は国際貿易に深刻な影響を及ぼし、欧州、中国および脆弱な国々に深刻な影響を与えている。米国は世界の物品貿易の13%しか占めておらず、EUは中国を含む他のWTO加盟国と協力して、世界貿易の正常な運営を確保する用意がある。EUは、EUと中国の経済・貿易関係を非常に重視しており、双方向の市場アクセス、投資、産業協力の拡大を促進するために、中国との対話とコミュニケーションを強化する用意がある」と述べている。これら一連の動きに呼応して<中国、EU議員に対する制裁を解除し、貿易交渉を活性化へ>(※7)とアメリカメディアのPolitico(ポリティコ)は4月30日に書いている。そこには「トランプ大統領の貿易戦争は、中国とEUを、その違いにもかかわらず、より緊密に結びつけている」とある。まったくその通りだ。中国の報復制裁に関しては2021年7月15日の論考<習近平最大の痛手は中欧投資協定の凍結――欧州議会は北京冬季五輪ボイコットを決議>(※8)で詳述した。◆中欧首脳会議開催場所に関するEU側の譲歩と配慮実は中欧(中国EU)首脳会議は、中国側代表として、北京で開催する時は国家主席(習近平)が出席し、ブリュッセルで開催する時は首相(李強)が出席する慣例になっている。昨年は北京で開催されたので習近平が出席し、今年(7月)はブリュッセルで開催するので、李強が出席することになっている。ところがEU側が、今年は中欧外交関係樹立50周年記念なので、ブリュッセルで開催する順番ではあるが、是非とも習近平に来てほしいと強く要望した。しかし習近平は滅多なことでは外訪しないので、李強に行かせることで通そうとしたらしい。するとEU側が、なんと、それならブリュッセルで開催せずに北京で開催しようと申し得てきたのだという。4月11日、ドイツ国営の国際放送ドイチェ・ヴェーレ(ドイツの波、 Deutsche Welle)は、<中欧首脳会議は7月に中国で開催>(※9)と伝えている。そこには、「トランプ関税が中欧の友好関係を強化する?」という小見出しのフレーズがある。どの角度から斬り込んでいっても、トランプ関税が中欧関係を緊密にさせたことは事実のようだ。習近平は5月2日の論考<東南アジアは日中どちらを向いているのか? 習近平vs.石破茂?>(※10)に書いたように、中国は完全に東南アジアを押さえにかかっているが、これで欧州も手中にし、さらにアフリカや中東あるいは南米などのグローバルサウスとの親密な関係も背景にあるので、EUが示唆するところの「アメリカ無しの世界貿易新秩序」を形成することに成功するのかもしれない。どれだけトランプに気に入ってもらおうかとする国々は淘汰される危険性もあり、注意が必要ではないだろうか。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※11)より転載しました。訪中した仏大統領と欧州委員長が習近平国家主席と会談(2023年)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202504/t20250408_11590251.shtml(※3)https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/read_25_1004(※4)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/eu-china-start-talks-lifting-eu-tariffs-chinese-electric-vehicles-handelsblatt-2025-04-10/(※5)https://www.reuters.com/markets/china-eu-discuss-trade-resume-ev-talks-2025-04-10/(※6)https://wangwentao.mofcom.gov.cn/zyhd/art/2025/art_8d73de08afad4dffa5e35f0b0a908db5.html(※7)https://www.politico.eu/article/china-sanctions-eu-lawmakers-human-rights-trade-talks/(※8)https://grici.or.jp/2389(※9)https://www.dw.com/zh/%E4%B8%AD%E6%AC%A7%E9%A2%86%E5%AF%BC%E4%BA%BA7%E6%9C%88%E5%9C%A8%E5%8D%8E%E4%B8%BE%E8%A1%8C%E5%B3%B0%E4%BC%9A/a-72215086(※10)https://grici.or.jp/6292(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b439a521fff50439132e977522f66e733cea9c85
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2025/05/07 10:36
GRICI
トランプ「報復関税を表明した中国に50%の追加関税」 習近平はどう出るのか?【中国問題グローバル研究所】
*15:59JST トランプ「報復関税を表明した中国に50%の追加関税」 習近平はどう出るのか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。4月6日の論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※2)で、トランプ大統領が4月2日に発表した対中相互関税34%に対して、中国が報復関税34%表明したと書いた。さらにホワイトハウスの大統領令には、別途、「報復関税をした国・地域には、さらに相互関税を増額させる」という趣旨の文言がある。中国はそれを承知で報復関税を宣言したのだろうが、トランプは4月7日、自身のSNS(※3)で「中国が8日までに34%の報復関税を撤回しなければ、9日から50%の追加関税を課す」と書いている。4月2日の「相互関税」発表までは、対米貿易をしている全ての国・地域が対象だったが、中国の報復関税により事態は一気に米中貿易戦に引き上げられた感を呈している。◆50%の追加関税は、すなわち対中関税合計104%を意味するのか?トランプが7日に自分のソーシャル・メディアTruth Social(※4)にある英文を読むと「もし中国が2025年4月8日までに34%の報復関税を撤回しなければ」、 the United States will impose ADDITIONAL Tariffs on China of 50%, effective April 9th.(米国は4月9日から中国に対して50%の追加関税を課すことになる)と書いている。この“ADDITIONAL”が、「新たに50%を追加」なのか、「34%を50%にする」なのか、この英文では判然としない。日本の、たとえば毎日新聞は<トランプ氏、中国に50%の追加関税を示唆 報復関税の撤回要求>(※5)と書いており、本文では「8日までに撤回しない場合、中国に対する50%の追加関税を9日に発動すると表明」と書いている。まさに、トランプの文言からは、こういう翻訳の仕方しかない。しかし、「追加関税」なので、「34%を50%にする」のではなく、「新たに50%を追加する」という意味でのADDITIONAL Tariffs(追加関税)であるならば、冒頭に書いた論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※6)の図表2に示した関税を合計すると20%+34%+50%=104%なので、中国には「104%」の関税を課すということになる。前代未聞だ。◆中国の反応これに対して中国側は直ちに抗議した。4月8日、中国共産党の機関紙「人民日報」は<圧力と脅威は、中国に対処するための正しい方法ではない>(※7)という見出しの報道をした。そこでは主として以下のような主張が書いてある。・アメリカの一方的なやり方に対して、中国は断固として自国の発展と利益を守り、国際的な公正と正義に準じて必要な措置をとってきたし、これからも続けるだろう。・同時に、中国は高水準の開放を揺るぎなく推進し、開発の機会を他国と共有し、相互利益とウィンウィンの結果を達成する。・アメリカの「相互関税」は、本質的には「アメリカの覇権」を追求する権力政治の現れだ。中国は決して、それを恐れない。歴史と現実は、圧力と脅威が中国に対処する正しい方法ではないことを証明している。・自国を発展させることは世界のすべての国の普遍的な権利であり、一部の国を保護するためではない。アメリカは関税を通して、現在の国際経済貿易秩序を転覆させようとしており、国際社会から強い反発を招いている。・アメリカの一方的ないじめ行為に対する中国の断固たる対抗は、真の多国間主義を擁護し、多角的貿易体制を維持するために必要だ。・中国の対外貿易は、これまでもアメリカによる圧力のもと、強い回復力を示している。・中国は完全な産業システムを備えた超大国であり、製造国から製造大国に移行しており、国連統計グループのほぼすべての国と地域の輸出入記録があり、150を超える国と地域の主要な貿易相手国だ。・それに比べてアメリカは貿易赤字を削減し、製造業の復活を促進するという目標を達成するどころか、自国の企業や消費者に損失をもたらした。現在、アメリカは再び大きな関税を振り回している。・中国の発展に対して短期的には一定の負の影響をもたらすだろうが、中国はショックに対処する自信を持っている。中国は(アメリカ以外の)すべての貿易相手国とウィンウィンの協力を揺るぎなく強化しており、これによりすべての貿易相手国の発展を強化するだけでなく、自国の発展の回復力を強化し、課題に対応する能力が十分にある。(人民日報からの抜粋は以上)中国はこのまま、断固戦う方向に動くものと考えられる。この中国の自信は4月6日の論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※8)の図表3に現れているが、もう一つは『米中新産業WAR』に書いた製造業、特に新産業における中国のアメリカに対する圧倒的優位性から来ているものと考えられる。事実、その本の中でも書いたが、中国は「アメリカに制裁されたがゆえに成長した分野」が非常に多い。4月8日、新華網も中国商務部の報道官の発言を報道している(※9)。趣旨は「人民日報」とほぼ同じだが「さらに一歩進んで50%の関税を課す」と表現しているので、結局、中国に対する関税は合計「104%」とみなすべきなのだろう。◆習近平は「台湾統一」以外の外的要素は軽視か習近平にしてみれば、トランプがNED(全米民主主義基金)の活動に反対していてくれるのなら、他はすべて二の次三の次だ。関税に関しては恐れていないだろう。トランプはTruth Socialで「中国が34%の報復関税を撤回しなければ、今後は中国とのいかなる交渉にも応じない」とも書いているが、習近平が「どうか緩和してほしい」と交渉する姿勢には出ない可能性の方が高い。なぜなら、習近平にとって「台湾統一」こそは核心中の最重要核心的使命だからだ。それ以外の問題は、たとえ関税104%であっても、重視しない可能性がある。NEDは長年にわたって台湾独立を支援してきた。そのNEDの財政的支柱であるUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)をトランプは解体しようとしている。習近平にとっては、それだけで十分のはずだ。それさえ保証されていれば、習近平はむしろ報復関税によってアメリカに対抗し、4月6日の論考<トランプ関税は「中国を再び偉大に(Make China Great Again)」 英紙エコノミスト>(※10)の図表3の色を、より赤く染めていく方向に向かうにちがいない。これは、アメリカ無しでも世界貿易が成り立っていくという、「新たな貿易秩序」を形成する強烈なきっかけになると、習近平は逆に野心を燃やしているかもしれない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※11)より転載しました。トランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/6187(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114297331052690348(※4)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/114297331052690348(※5)https://news.yahoo.co.jp/articles/8788e1251607a5d1d17e34fdca91a400b1f5073a(※6)https://grici.or.jp/6187(※7)http://world.people.com.cn/n1/2025/0408/c1002-40455064.html(※8)https://grici.or.jp/6187(※9)http://www.news.cn/fortune/20250408/7cfd5234dee34dcba7d4e442ef130564/c.html(※10)https://grici.or.jp/6187(※11)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e3ec6ddd9de1870259cb1a93b0e1d8d3d0519094
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2025/04/08 15:59
GRICI
習近平・プーチン・トランプの相互関係(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:44JST 習近平・プーチン・トランプの相互関係(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。●ハーバード大学教授:トランプは対中強硬派か?一方、ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院ダグラス・ディロン行政学のグラハム・アリソン教授は、2月5日にワシントン・ポストに<トランプは対中強硬派か? トランプはニクソンのように中国とどのように協力関係を築くことができるのか>(※2)という見出しの論考を書いている。その要旨だけを拾い上げると、以下のようになる。●共和党の80%が嫌中の中、ドナルド・トランプは以下のように言っている。「私は中国を尊敬している」「私は習近平国家主席を非常に尊敬している」「習近平国家主席は素晴らしい。私が習近平国家主席を素晴らしいと言うとマスコミは嫌がるが、まあ、彼は素晴らしい人だ」「私は中国が素晴らしいことを成し遂げてほしい。そう願っている」「私は中国を愛している」●大統領選の勝利直後、トランプは習近平を就任式の特別ゲストとして招待しただけでなく、国際的なゲストの中で習近平が第一の地位を占めると保証した。●12月7日、ノートルダム大聖堂の再開に際し、ウクライナのゼレンスキー大統領とフランスのマクロン大統領と三者会談した後、トランプ大統領は会話を要約した投稿を(Truth Social)にしているが、そこには奇妙な一文が含まれていた。ウクライナ和平の見通しについて、トランプ大統領は「China can help(中国が助けてくれる)」と書いたのだ。これは興味深い。国連でも、NATOでも、ローマ法王でもなく、中国だ。トランプ大統領と習近平主席、そして習近平主席とプーチン大統領との最近の電話会談に関する公式報告書の行間を読むと、トランプ大統領はウクライナ戦争を終わらせるための停戦交渉または停戦の実施に習近平主席をパートナーとして関与させようとしているように私には思える。(以上)その通りである。さすがに、鋭い勘だ。トランプの投稿はTruth Social(※3)にあるが、そこにはI know Vladimir well. This is his time to act. China can help. The World is waiting! (私はウラジミールを良く知っている。今こそ彼が動くべき時だ。中国が助けてくれる。世界は待っている!)と書いてある。このウラジミールは言うまでもなくウラジミール・プーチンのことだ。二人はファーストネームで呼び合う。世界の誰も気にしていないChina can helpの3つの単語に、よくぞ注目したものだと、ハーバード大学のグラハム・アリソン教授に敬意を払わずにはいられない。もし彼が拙稿<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※4)を読んでくれたら、きっと、すべてのジグゾーパズルが綺麗に填め込まれるのを発見することができるのではないかと期待する。結論を言えば、トランプがウクライナ問題解決を急ぐのは、決して対中強硬策に集中したいからではない。トランプはむしろ、ウクライナ問題を習近平の水面下での協力を得ながら、プーチンに接近し解決しようとしていると言っていいのではないだろうか。ノーベル平和賞を貰いたがっているトランプの心理を、習近平とプーチンが思う存分「活用」していると表現してもいいのかもしれない。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。アメリカ、中国、ロシアの国旗(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.washingtonpost.com/opinions/2025/02/05/trump-china-ukraine-xi-hawks-doves/(※3)https://truthsocial.com/@realDonaldTrump/posts/113615912452824634(※4)https://grici.or.jp/6039(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/737efab8fb220c22273772e21c782616057928bb
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2025/02/27 10:44
GRICI
習近平・プーチン・トランプの相互関係(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:38JST 習近平・プーチン・トランプの相互関係(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。2月24日、プーチン大統領が習近平国家主席に電話をし、中露の緊密さは永遠に変わらないことを誓い合った。トランプ大統領がどんなに対露接近をしても、トランプ政権が終われば、また民主党のNED(全米民主主義基金)を駆使した「民主を掲げながら親米的でない国家や政府を倒す方針」に戻ることが考えられるからだ。したがって中露の緊密度が変わることはない。一方のトランプは「習近平が大好きだ」と公言している。大統領就任式にも習近平を招待したほどだ。実現はしなかったが大統領選挙中に主張した「対中一律60%関税」は無期延期に近い措置を連邦政府に指示した。加えてトランプは「ウクライナ問題の解決には中国の協力が必要だ」とさえ言っている。このような中、「トランプがプーチンに急接近しているのは、ウクライナ問題を解決した後、対中攻撃に集中するためだ」という言説がまかり通っているが、それは正しいのだろうか?ハーバード大学教授の見解も引用しながら考察する。◆ウクライナ侵攻3周年の日にプーチンが習近平に電話プーチンによるウクライナ侵攻3周年に当たる2月24日午後、プーチンが習近平に電話をして会談を行った。中国外交部の報道(※2)によれば、主として以下のようなことを話し合ったとのこと。●習近平:中露両国は、中国人民抗日戦争勝利80周年と世界反ファシズム戦争勝利80周年を記念する活動の実施を含め、各分野での協力を着実に進めている。歴史と現実は、中露は決して引き離すことのできない良き隣国であり、苦楽を共にし、支え合い、共通の発展を目指す真の友人であることを示している。●習近平:中露関係は独自の戦略的価値を有しており、いかなる第三者に向けられたものではなく、いかなる第三者からも影響を受けるものではない。●習近平:国際情勢がどのように変化しても、中露関係は冷静に前進し、互いの発展と活性化に貢献し、国際関係に安定とプラスのエネルギーを注入するだろう。●プーチン:「ロシアは中国との関係を非常に重視している」、「中国との関係発展は、ロシアが長期的視点から行った戦略的選択であり、決して一時的な措置ではなく、一時的な出来事によって左右されることも、外部要因によって妨げられることもない。現在の状況下で、ロシアと中国が緊密な意思疎通を維持することは、新時代の両国の包括的戦略的協調パートナーシップの精神に合致しており、ロシアと中国が国際情勢において安定的な役割を果たしていることを示す前向きなシグナルを送ることにもなる。●プーチン:米露接触に関する最新状況とウクライナ危機に関するロシアの原則的な立場について説明し、「ロシアはウクライナ紛争の根本原因を排除し、持続可能で長期的な和平計画に到達することに尽力している」と述べた。●習近平:昨年9月、中国、ブラジル、南半球のいくつかの国は、ウクライナ危機の政治的解決を促進するための雰囲気を醸成し、条件を蓄積するために、共同でウクライナ危機に関する「平和の友人」グループを設立した。中国は、危機解決に向けてロシアとその他の関係国が行った積極的な努力を歓迎する。●中露双方:今後もさまざまな手段を通じて意思疎通と調整を維持していくことで合意した。(以上)これらから読み取る限り、中露双方とも、「(米露接近など)いかなる国際情勢の変化があろうとも、中露関係は永遠に不滅である」ことを強調しているように見える。現実問題として中国は石油や天然ガスなどを大量にロシアから輸入し、ロシアは広範囲にわたる製品を中国から輸入している。この日常生活における相互依存は、ちょっとやそっとの外圧によって崩れるものではないだろう。中露首脳電話会談に関してロシア側の発表(※3)もあるが、そこには「習近平の5月9日の訪露」や「プーチンの9月3日の訪中」そして「上海協力機構サミット(今年は中国が主催国)のスケジュールを再確認」などの具体的な日程の記述があり、プーチンが習近平に、最近の米露接触に関する報告をしたとも書いてある。そして習近平が「米露間で対話が開始されたことを支持し、ウクライナ紛争の平和的解決に向けた道筋を見出すために中国には協力する用意がある」ことを表明したとある。最後に「中露両首脳は、中露の政治的つながりは世界情勢を安定させる上で不可欠な要素であると強調した。この関係は戦略的な性質を持ち、政治的偏見に左右されず、誰かを標的にするものでもない」と強調されている。ロシア側からの視点を見ても、米露接触による中露関係はさらなる高みへと進展していくことを強調している。「米露接近」という言葉を使わず、「米露接触」という言葉に徹しているのも見どころか。トランプ政権のときのみ、トランプがプーチンに接近しているのであって、その期間は非常に短く、すぐにロシアを最大の敵とみなしてきた民主党政権に変わるのは分かっているので、プーチンが安全弁として習近平を手放すはずはないだろう。◆トランプは対中攻撃を用意しているのだろうか?トランプ側からしても、トランプの「習近平愛」と「プーチン愛」は尋常ではない。何度も書いて申し訳ないが、トランプは就任直後の1月23日に開催されたダボス会議にオンライン参加し(※4)、●But I like President Xi very much.(しかし私は習主席が大好きだ)●I’ve always liked him.(私はずーっと彼が好きだった)●We always had a very good relationship.(私たちの関係はいつも素晴らしかった)と言っている。それはホワイトハウスのウェブサイトに書いてあるので、間違いがないだろう。彼の肉声を確認したい方は、こちらのリンク先(※5)を、ぜひともクリックしてご覧いただきたい。まぎれもない事実だ。なぜトランプがこのようなことを、就任3日後の1月23日に言ったのかに関しては、2月22日のコラム<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※6)が理由の一つとして考えられる。ウォールストリート・ジャーナルの報道から推測すると、トランプの大統領当選がわかった11月5日以降辺りから習近平は「深い深い水面下で」、「ウクライナを外したプーチンとトランプだけの和平交渉を進めてはいかがですか?」という「甘い言葉」をトランプ側に投げかけていたことになる。トランプとしては、もともとからバイデンによるNEDを使った他国干渉を非難し、「民主」を掲げて非親米政府を転覆させては紛争を巻き起こし戦争ビジネスで国家運営をしていく米政府のやり方に不満を抱いていた。だからNEDの資金支援をしているUSAIDを解体しようと動いているのである。2月12日のコラム<習近平驚喜か? トランプ&マスクによるUSAID解体は中国の大敵NED瓦解に等しい>(※7)に書いたように、USAID解体はNEDの活動を抑え込むので、習近平としてはありがたくてならない。現にトランプが対中強硬でない証拠に、フェンタニルに関する「中国10%、カナダ・メキシコ25%」関税に関しては断行しているが、選挙中に叫んでいた「対中輸入品一律60%」に関しては、トランプ1.0の時の「第一段階合意」(2020年)の実績検証をするよう連邦政府機関に指示しただけだ。実績検証など「まだ検証中です」と言えば、いくらでも延期できる。60%は無期延期したに等しい。したがって、<史上最大のディール! ウクライナ停戦「米露交渉」案は習近平の「トランプへのビッグプレゼント」か?>(※8)に描いた相関図(図表2)には、それなりの信ぴょう性があると考えていいのではないだろうか。その他さまざまなトランプの「習近平愛」現象は、拙著『米中新産業WAR』の【終章 習近平とトランプとイーロン・マスクと】で詳述した。トランプの「プーチン愛」もまた尋常ではない。トランプは初めての大統領選を戦おうとしていた時に、2016年5月に、キッシンジャー(元国務長官)に師事して外交戦略を学んだ。キッシンジャーは2016年2月3日に、プーチンの招待でモスクワを訪問し、5月18日にトランプを自宅に招いたのである。このときトランプにとっては「キッシンジャーがベトナム戦争終結に貢献したとして、1973年に平和賞を授与された」ことが何より印象的だったのだと、トランプ1.0の時の元側近から聞いている。筆者はその元側近と、日々メールを交換したり国際電話をかけたりなどして、非常に仲良くしていた。2016年11月に大統領に当選したトランプは、プーチンと電話会談をし、盛んに「プーチンはいい奴だ」と言うようになった。中国では「トランプとプーチンが口づけしているイラスト」がネットに出回ったほどだ。しかしトランプのその「熱い思い」はロシアゲート疑惑によって裂かれてしまった。トランプ2.0では、トランプは「憎きバイデンが起こしたウクライナ戦争」と位置づけ、プーチンとトランプを再度近づけさせたという流れだ。「習近平・プーチン・トランプの相互関係 トランプはウクライナ問題解決後、対中攻撃を考えているのか?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。アメリカ、中国、ロシアの国旗(写真:イメージマート)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202502/t20250224_11561364.shtml(※3)http://en.kremlin.ru/events/president/news/76325(※4)https://www.whitehouse.gov/remarks/2025/01/remarks-by-president-trump-at-the-world-economic-forum/?utm_source=substack&utm_medium=email(※5)https://www.youtube.com/watch?v=-R7ax7ZlSdk(※6)https://grici.or.jp/6039(※7)https://grici.or.jp/6005(※8)https://grici.or.jp/6039(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/737efab8fb220c22273772e21c782616057928bb
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2025/02/27 10:38
GRICI
米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(2)【【中国問題グローバル研究所】
*11:00JST 米『中国軍事力報告書』の「汚職摘発で中国軍事力向上」指摘は国防費獲得のため(2)【【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆憤慨する中国中国のネットには、米・国防総省が予算獲得のために「中国の脅威」を手段として使うことに対する憤慨が数多く見られる。特に、上記の「1」や「4」にあるように、アメリカは、習近平が2027年までに台湾を武力攻撃するというデマを拡散させて国防予算を獲得しようとしたり、日本を煽って日本の国防費を増額させようと画策したりしてきた。このことは2023年2月15日のコラム<「習近平は2027年までに台湾を武力攻撃する」というアメリカの主張の根拠は?>(※2)にも書いた通りだ。すなわち、中国では2020年10月26日から29日まで北京で第19回党大会の五中全会(第五回中央委員会全体会議)が開催され、10月29日に<第19回党大会五中全会公報>(※3)が中国共産党網で発布された。公報の全文は約6800文字あるが、その中の「確保二〇二七年実現建軍百年奮闘目標」という、わずか「17文字」が、「建軍百年に向けた奮闘目標を確保しよう」と書いてあるだけだ。国のトップが、「建軍百周年記念に向かって頑張ろう!」と兵士に向かって激励するのは、どの国でも自然のことだろうが、アメリカは「しめた!」とばかりに、この「17文字」に飛びついた。すると、日本政府も日本の中国論者たちもまた、まるで「鬼の首でも取った」かのように、アメリカのこの「ご高説」に飛びつき、台湾武力攻撃説を喧伝しまくったのである。バカバカしいだけでなく、日本人の命を戦火の中に巻き込む危険な「フェイク」なので、筆者はいたる所で、その虚偽性と扇動性に関して書いてきたが、日本人は「好戦的な論説」の方を好むという、愚かな選択をしている。中国の嫌日感情の主たる源泉は、ここにあると言っても過言ではないだろう。中国のネットには、あまりに多くの「報告書」に対する批判と抗議と冷笑があるので、どれか一つを取り上げて解説するのは困難だが、それでも一応、まずは中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」の論説を見てみよう。2月20日の環球時報は<米国は「中国軍事力報告書」を発表して中国人民解放軍を中傷 中国は「事実を無視し、偏見に満ち、“中国脅威論”を広めていると反駁>(※4)している。目新しい内容としては、環球時報が軍事専門家の意見として「今年の報告書には、認知戦闘能力や、西太平洋で軍事紛争が発生した場合に中国がエネルギー供給能力を確保する上で直面する課題など、いくつかの新しい内容が追加されている。これは、将来、西太平洋で軍事紛争が発生した場合、米国が軍事介入し、中国のエネルギー供給ラインに悪の手を伸ばし、中国のエネルギー供給を遮断することを示している。これは中国が非常に警戒すべきことだ」と報道していることだ。中国はむしろ「報告書」を分析して、アメリカが何を狙っているかという分析を深めていることが興味深い。12月19日には、比較的に知識人が集まる観察者網が<米・国防総省は中国の核拡大を誇大宣伝しており、2030年には1,000発の核爆弾を保有するとしている>(※5)という見出しで「報告書」を分析している。この分析で「報告書」に関して注目している興味深い話題を挙げると、以下のようなものがある。●「報告書」によると、軍艦、海上兵器、電子システムの生産において、中国の防衛産業は「ほぼすべての造船ニーズを満たすことができる」という。報告書は、中国海軍が世界最大の海軍であり、140隻以上の主要な水上艦を含む370隻以上の艦艇と潜水艦を保有し、米国海軍の290隻を上回っていると評価しており、中国はさまざまな建造段階にある新しい駆逐艦や強襲揚陸艦も多数保有していると評価している。●アメリカのメディアは、アメリカの国防予算が依然として世界最高であり、アメリカは実戦に投入できる核弾頭を約1550発も保有していると言及している。●昨年、米国が発表した年次報告書(『中国軍事力報告書』)について、中国外交部の毛寧報道官は、「米国こそが世界で最大かつ最先端の核兵器を保有している国であり、核兵器の先制使用を主張し、核戦力の増強に多額の投資を続け、同盟国に対する“拡大抑止”を強化している」と指摘した。◆ビリビリ動画:米・国防部は予算の20%しか武器装備費に使ってない一方、中国の人気動画であるビリビリ動画が12月9日に<米軍(の予算)9000億ドルは、いったい何に使っているんだい?なんで(9000億ドルもあるのに)足りないんだ? :米軍2025年装備購入分析>(※6)というタイトルの分析を賑々しく公開している。その分析は、今年3月11日に発表された米国の<2025年の国防総省予算要求>(※7)に基づいて行われており、要点は以下のようなものである。●米軍の2025年の軍事予算は9000億ドルと巨額であるものの、実際に装備品調達に使われる部分は比較的少なく、約1675億ドルで、全体のわずか20%にも満たない。●中国の軍事予算は約3000億ドルと言われているけれど(ストックホルム国際平和研究所が推測した中国の2023年の軍事費)、その30%~40%は装備品調達に使われているようなので、米軍の装備品調達費は中国やロシアよりも低いか、トントンくらいだ。●予算要求では、戦闘機や装甲車、軽火器など、米軍のさまざまな装備品の具体的な購入額が詳しく紹介されているが、国防産業部門の単価の高さには驚く。これは今後数年間で米軍の軍事力が徐々に縮小していくだろうことを示唆している。(動画の概要は以上)となると、まさにイーロン・マスクが指摘した通り、米国の国防総省の予算は「無駄が多く、非効率的だ」ということになる。国防総省はそれを知っているので、イーロン・マスクがどのように言うかを見届けてから発表しようとして、今年は「報告書」の発表を遅らせたのではないだろうか。ご参考までに書くと、この年次報告(『中国軍事力報告書』)はここのところ、「2020年9月1日/2021年11月3日/2022年11月29日/2023年10月19日/2024年12月18日」という日時で発表されている。例年に比べると、今年はいやに遅い。きっとイーロン・マスクが「政府効率化省」で何をするかを見届けたかったために遅れたのにちがいない。なお、「報告書」が指摘する「汚職摘発で中国の軍事力が向上している可能性」は薄く、中国の腐敗は「底なしか」と筆者は思っている。それに関しては、機会があれば別途考察を試みたい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※8)より転載しました。写真: 米・国防総省が発表した年次報告2024『中国軍事力報告書』のカバー(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/4015(※3)https://www.12371.cn/2020/10/29/ARTI1603964233795881.shtml(※4)https://mil.huanqiu.com/article/4Kj5IuAVPuh(※5)https://www.guancha.cn/internation/2024_12_19_759324.shtml(※6)https://www.bilibili.com/video/BV15CqNYzErK/(※7)https://comptroller.defense.gov/Budget-Materials/Budget2025/(※8)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/937e0f78070679355f75b0cfea4625e69c145fc8
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2024/12/25 11:00
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