機関の空売りとは?空売り残高の活用方法と銘柄の特徴について紹介

投稿日:2023/02/28 最終更新日:2023/08/15

市場の空売りの規模を示す「空売り残高」や「信用買い残高」は将来の買い需要・売り需要を把握する上で役立つ指標です。それぞれの残高や信用倍率を見て株の値動きを予測しましょう。また時に大口で取引を行う機関投資家の動向にも目を向けてください。時に機関投資家の動きが株価の変動要因となることもあります。

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この記事の監修者

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菅原良介

株式会社Finatext

証券アナリスト

Finatext サービスディレクター・アナリスト。日本テクニカル協会認定テクニカルアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科卒業。Finatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当する傍ら、アナリストとしても活動。グループで展開するコミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターなども務め、国内メディアへの寄稿も行う。

株価の値動きを予測できる空売り残高とは?

空売り残高とは市場全体の空売り(信用売り)の残高です。信用買い残高と合わせて「信用取引残高」と呼ばれます。空売り残高は将来の買い需要、信用買い残高は将来の売り需要につながるため、信用取引残高は市場の今後の動向を予測するうえで役立ちます。  

空売り残高とは?

空売り残高とは、市場全体において、信用売りで空売りされたまま買い戻しがまだ行われていない状態になっている金額のことです。上場された銘柄であれば、証券会社などで各銘柄の残高を見ることができます。  

信用取引残高とは?

空売り残高(もしくは信用売り残高、売り残)とその反対である信用買い残高(買い残)を合わせて「信用取引残高」と言います。信用取引は通常最長で6ヶ月程度で反対売買をして決済しなければならないため、信用買い残高は将来の売り需要に、空売り残高は将来の買い需要につながります

そのため、信用取引残高は、将来の買需要や売需要の強さを図る指標となります。

信用取引残高とは 

信用取引残高とは

信用倍率とは?

信用倍率は「信用買い残高÷空売り残高」で計算する指標です。この数値が高ければ市場に信用買い残高が多く、低ければ空売り残高が多いということになります。また、これらの数値は将来の売り需要・買い需要買需要の高さを示すことから、信用倍率が高い=現在の信用買い残高が多い、ということは将来の売り需要が強いことをも意味するのです。

業種や市況によって倍率の目安は変わってきますが、一般的に1倍台もしくはそれ以下になると、空売りが多いとみなされ、将来の買い需要が強いサインであるとみなされます。逆に数倍にもなっている場合は売り需要が強いと想定されます。  

信用取引残高が株価に及ぼす影響

信用取引は通常、最長6ヶ月以内にポジションを解消しなければなりません。そのため、信用取引残高を踏まえて売買需要は近い将来実際の取引に現れる可能性が高いと考えられます。

すなわち、空売り残高が多く、潜在的な買い需要が強ければ、近いうちに買い戻しが入り株価に上昇圧力がかかるでしょう。逆に信用買い残高が多く、潜在的な売り需要が強ければ、売りが増えて株価が下落しやすくなります。

つまり信用倍率は潜在的な売買需要の強さだけでなく、将来の株価の方向性を予測するうえでの参考にもなるのです。

なお「信用取引は6ヶ月以内に解消しなければならない」と書きましたが、一度ポジションを閉じて新たに同じポジションを構築し直すことはできます。これを繰り返せば実質的に6ヶ月以上ポジションを継続することは可能です。そのため、信用残高に伴う売買需要は必ずしも6ヶ月以内に実現するとは限らない点には注意しましょう。

信用残高と株価の方向性についてはこちらの記事でも詳しく紹介しているので、合わせて読んでみてください。

既存記事:気になる機関投資家の空売り!機関投資家の動きを把握し、取引に活用しよう!

空売り機関とは?

空売り機関とは、空売りを行う機関投資家のことを指します。個人投資家と比較すると大きな規模の取引を高速で行うため、需給面から株価に変動を及ぼすことがあります。現代では機関投資家の大口の取引情報は開示する決まりとなっているため、個人投資家でも大きな空売りの動きは把握可能です。  

機関投資家による空売り

空売り機関とは、空売りを行う機関投資家もしくは機関投資家が行った空売りを意味する言葉です。機関投資家とは、企業や法人として資産運用を行っている組織のことで、銀行、証券会社、保険会社や資産運用会社(アセットマネジメント、ヘッジファンドなど)を指します。
保険会社の中でも生命保険会社などは債券などでの長期運用が主なため、株の空売りを行うケースは多くありませんが、ヘッジファンドをはじめとした資産運用会社は、運用戦略によっては積極的に空売りおよび信用買いを活用して収益の最大化を狙います。

機関投資家は運用残高が個人と比較して莫大なため、取引金額も大きくなる傾向にあります。また、多くの機関投資家はシステムを活用した高速取引を取り入れていて、その時最も有利な価格で瞬時に取引を完了してしまうのも特徴です。

空売りを行う機関投資家についてはこちらの記事でも紹介しているので、合わせて参考にしてください。

既存記事:気になる機関投資家の空売り!機関投資家の動きを把握し、取引に活用しよう!

機関投資家の空売りによる影響

機関投資家は個人投資家よりも大きな規模で売買を行うため、一つの取引が株価に大きな影響を与える場合もあります。空売りが大口で入ればその瞬間は株価下落要因となりますし、信用買いは上昇要因に。また機関投資家の信用取引残高がどちらかに偏っていれば、近い将来の株価変動要因となる可能性もあります。

特に空売りについては株価急落の原因となりがちなため、機関投資家の大口の空売りの動向は取引所が公開する「空売り残高に関する情報」で公開されます。具体的には、空売り残高の割合が0.5%以上となったものが取引所HPに公開されるルールです。この情報は、機関投資家を含めた大口の空売りの動向を知る上で有効です。

機関投資家の空売りの影響についてはこちらの記事でも紹介しているので、合わせて参考にしてください。

既存記事:気になる機関投資家の空売り!機関投資家の動きを把握し、取引に活用しよう!

機関投資家の空売りの見分け方と事例

機関投資家が相場変動に影響するほどのロットで空売りを行った場合は、短期的に市場の出来高が急増します。空売りによるポジション構築・解消も市場での出来高として認識されるからです。

以下の日本カーボンの例では2020年の8月と11月に出来高が急増しています。これは8月のタイミングで機関投資家が空売りを仕掛け、11月にそのポジションを解消したと推測できます。

日本カーボンにおける空売りの例

日本カーボンにおける空売りの例

以上の例は空売り後に株価が上昇した、いわば失敗例でしたが、成功する場合もあります。例えば2021年に外資系金融機関にて行われた「システムソフト(7527)の空売りの例です。

同例では2021年8月3日〜4日に合計約69万株をとある機関投資家が空売りしました。その間に同社では決算発表がおこなわれ、期待外れの決算により株価は200円台後半から200円割れまで低下していきました。空売りをしていた投資家は8月17日〜24日にポジションを手仕舞い、短期で数十%のリターンを獲得したと考えられます。

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機関投資家が空売りする銘柄の2つの特徴

機関投資家は短期で価格が高騰した銘柄や返済期限間近で信用倍率が高い銘柄をしばしば空売りのターゲットとします。該当する銘柄を取引する時には、機関投資家の動きを注意深く見ておく必要があります。  

株価が短期間に高騰した銘柄

株価が短期間に高騰した銘柄は空売りのターゲットとなりやすい傾向にあります。株価が急騰する時には買い需要が集まりすぎて割高化するケースが少なくありません。
急騰時には、決算期待などの市場の期待感や、サプライズとなるニュースが公表されたなどのケースが多いです。そのため、決算内容が期待外れだったり、ニュースが充分織り込まれたりすると、今度は割高さを修正するために株価が下落することも少なくありません。
機関投資家はその反落のタイミングを狙って空売りを仕掛ける場合があるのです。  

返済期限間近で信用倍率が高い銘柄

決済期日が近づいているのに信用倍率が高い場合、短期的に多くの信用買いのポジションが解消され、売り需要が膨らむ可能性が高くなります。
そのため、機関投資家によってはこうしたタイミングに空売りを仕掛けて、売り需要に伴う株価下落を捉えようとします。一つの目安として、特に返済期限間近で信用倍率が2倍を超えている銘柄には注意した方がよいでしょう。

機関投資家の空売り残高情報を活用した投資法                

機関投資家の空売り残高の情報を調べることで、自身の資産運用にも活かすことができます。ただし、莫大な投資金額で頻繁に売買している機関投資家と、全く同じ投資を実践することは難しいので、合わせて留意が必要です。  

機関投資家の空売り残高情報の見方

東京証券取引所は業種ごとと全体について日々16:30ごろに空売り残高を公表しています。また、0.5%を超える大口の空売り情報については取引を行った会社なども含めて公表される仕組みです。これらの情報を参考にするのがよいでしょう。

また民間のサイトにはなりますが「空売りネット」というWebサイトではより詳細な空売り情報をまとめています。こちらでも日々の空売りのボリュームなどを確認可能です。

空売り情報の確認方法についてはこちらの記事でも紹介しているので、合わせてご確認ください。
既存記事:空売り残高とは?株価との関係についてわかりやすく解説!

機関投資家が空売りしている銘柄を避ける

機関投資家が空売りしている銘柄は一旦避けるというのが、有効な投資方法の一つと言えます。機関投資家が空売りをしているということは、今後株価が下落する予想を立てていることを意味します。
プロの投資家が建てている予想なので、信頼性は高いと考えた方がよいでしょう。逆らうに足る確信度の高い材料がない場合は、大口の空売りが入っている銘柄への投資は避けるのが得策です。  

機関投資家を味方につける

よりリスクを取った投資方法として、機関投資家の動きを見て、同じようにポジションを建てる方法が考えられます。すなわち大口の空売りが入った時には一緒に、空売りし、また同じようなタイミングで決済するということです。
ただし、機関投資家はビッグデータによる解析や莫大な資金源、豊富な情報を活かして投資を行っています。個人投資家にはこれらのリソースがないことから、機関投資家に常に追随するのは困難です。無闇に真似た結果、失敗してた損失を出すリスクもあるので注意しましょう。

まとめ:空売り残高は投資のサイン

空売り残高や、信用買い残高、そしてこれらによって計算される信用倍率は将来の値動きを予測する上で重要な指標です。自分が投資を考えている銘柄や、実際に保有している銘柄については、こまめに信用残高に関する情報をチェックしておきましょう。
また機関投資家による空売りの動向にも注意を払ってください。時に大口の取引が株価急落や急騰をもたらすこともあります。東証の情報や空売り情報サイトを逐一確認して、大きな動きがないか見ながら投資を行ってください。

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