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日経平均は小幅続落、FOMC直前で模様眺め、米PPI上振れはポジティブ?
日経平均は小幅続落。23.24円安の28409.40円(出来高概算5億0291万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でNYダウは106.77ドル安(-0.29%)と続落。新型コロナウイルスワクチンや治療薬のオミクロン変異株に対する有効性を示す調査結果を受け、寄り付き後に一時上昇。しかし、11月生産者物価指数(PPI)が予想を上回ると、連邦準備制度理事会(FRB)がよりタカ派に傾斜することが警戒され下落に転じた。その後、世界保健機関(WHO)がオミクロン変異株感染の速さを警告すると更に売りに拍車がかかり、終日軟調に推移した。ハイテク株中心に売られ、ナスダック総合指数は-1.13%と大幅に続落。こうした流れを受け日経平均は74.17円安でスタート。ただ、前日に大きく調整していたこともあり、すぐに切り返すとプラスに転じた。しかし、イベント前に大きく買い戻す動きには乏しく、ジリジリと上げ幅を縮めると、前引けにかけては再びマイナスに転じた。 個別では、前日のバッテリーEV戦略に関する説明会が評価されたトヨタ自<7203>が3%近く買われ、デンソー<6902>は4%超と大幅に上昇、三井ハイテク<6966>も4%近く上昇した。そのほか、ソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、ソニーG<6758>、日本電産<6594>など主力株が堅調。JR東<9020>やJAL<9201>、エイチ・アイ・エス<9603>など旅行関連もしっかり。好決算や中計目標の上方修正が材料視されたジェイ・エス・ビー<3480>は急伸し東証1部の上昇率上位にランクイン。ハイブリッドイベントに対応するサービスの提供を開始したブイキューブ<3681>も急伸。 一方、川崎汽船<9107>を筆頭に大手海運3社が軒並み大幅に下落。東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、SUMCO<3436>などの半導体関連株も売りに押されており、ダイキン<6367>、ファーストリテ<9983>など値がさ株の一角も軟調。今期見通しや中計目標が市場期待を下回った神戸物産<3038>はもみ合いの末に売り優勢に。業績予想の下方修正が嫌気されたエニグモ<3665>は急落し、東証1部の下落率トップにランクイン。最高裁の決定を受けて買収プレミアムへの期待感が剥落した関西スーパー<9919>も急落。そのほか、8-10月期の営業減益が失望感を誘ったヤーマン<6630>も大幅に下落している。 セクターでは海運業、ゴム製品、精密機器などが下落率上位となっている一方、輸送用機器、証券・商品先物取引業、鉄鋼などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の35%、対して値上がり銘柄は57%となっている。 日経平均は下向き転じた5日移動平均線の下方で軟調な動きとなっている。FOMCの公表結果とパウエル議長の記者会見を目前に控え、値がさハイテク株を中心に手仕舞い売りなどが優勢となっているようだ。 11月の米PPIは総合で前年比の伸びが+9.6%と、統計開始以来、過去最大の伸びを記録し、市場予想(+9.2%)を大幅に上回った。前月比でも+0.8%と予想(+0.5%)を大きく上回り、さらに、変動の激しいエネルギー・食品を除いたコアでも前月比+0.7%と予想(+0.4%)を大幅に上回った。量的緩和縮小(テーパリング)の加速はほとんど決定事項のように捉えられていたが、今回の結果を受け、FRBが利上げの前倒しに積極的になるのではとの思惑も高まっているようだ。 ただ、事前にこれだけ警戒感が高まっていれば、ある程度はFRBのタカ派シフトも織り込めたと言えそうだ。そうした意味では、むしろ、FOMCの結果公表直前に警戒レベルが一段上がったことはポジティブかもしれない。油断は禁物だが、年内最後のイベントを無難に通過し、年末株高ラリー、出遅れ感のある日本株のキャッチアップなどに期待したいところだ。 後場の日経平均は軟調もみ合いとなりそうだ。イベント直前に積極的な売買が手控えられるなか、アジア市況などにも大きな動きはなく、一段と方向感は乏しくなろう。模様眺めが強まるなか、大引けにかけては仕掛け的な売りや手仕舞い売りに注意しておきたい。
<AK>
2021/12/15 12:08
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日経平均は反落、「FOMC前に買い手控え」と「個人の売り」
日経平均は反落。136.34円安の28504.15円(出来高概算4億4000万株)で前場の取引を終えている。 週明け13日の米株式市場でNYダウは反落し、320ドル安となった。英国で新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」による初の死者が確認され、感染抑制のための規制強化を懸念する売りが出た。翌日から開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で金融緩和の縮小ペースが加速する可能性も警戒され、終日軟調に推移した。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで85円安からスタート。朝方には押し目買いが入りプラス圏へ浮上する場面も見られたが、FOMCを前に積極的な買いが手控えられる一方、持ち高調整の売りが出て軟調な展開となった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が3%超下落し、日経平均への寄与が大きい東エレク<8035>やファーストリテ<9983>といった値がさ株も軟調。前日の米市場ではフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-2.56%となり、レーザーテックや東エレクはこうした流れを引き継いだ。ソフトバンクG<9984>、川崎船<9107>、リクルートHD<6098>は小安い。また、広済堂HD<7868>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、前日ストップ高の三井ハイテク<6966>が商いを伴って続伸し、生産調整への懸念から前日売られたトヨタ自<7203>は反発。年内にも増資完了予定と発表したH.I.S.<9603>は急反発している。決算発表銘柄では、今期大幅増益見通しの日本ハウスHD<1873>などが急伸。また、Hamee<3134>が東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、空運業、陸運業、鉱業などが下落率上位。一方、保険業、医薬品、輸送用機器などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の61%、対して値上がり銘柄は34%となっている。 今晩からのFOMCを前に、日経平均は軟調な展開となっている。ここまで28500円台を何とかキープしているが、日足チャートでは上値切り下げの形状となっており、5日移動平均線の上昇にも一服感が出ている。前日に反発のけん引役となった値がさ株が一転して売られており、東証1部全体としても値下がり銘柄の方が多い。一方、トヨタ自など時価総額上位の一角は堅調とあって、東証株価指数(TOPIX)は+0.01%と小幅ながらプラスを確保している。業種別では新型コロナ「オミクロン型」への懸念から空運業などが軟調で、上昇率上位にはディフェンシブセクターが多い印象を受ける。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりと低調で、1日を通じても前日(2兆2225億円)並みかやや下回る可能性がありそうだ。 新興市場ではマザーズ指数が-2.37%と大幅に4日続落。取引時間中としては8月18日以来およそ4カ月ぶりに節目の1000ptを下回る場面があった。10日上場のフレクト<4414>が売買代金トップだが、上値追いの買いが一服してマイナス転換。直近で好業績から買いを集める場面があったセルソース<4880>や、11月24日上場で公開価格から大幅高となったサイエンスアーツ<4412>などはきつい下げとなっている。既にFRONTEO<2158>やグローバルW<3936>などの急落で個人投資家の損益は大きく悪化しているようだが、なお値動きの荒い銘柄が多いところを見ると、損益改善は期待しにくいだろう。東証1部のレーザーテックも個人投資家に人気だったことから、こうした損益悪化の影響を受けている可能性がある。 また、これまで度々指摘しているが、今週16日あたりまでブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多い。さらに、明日は東証1部市場にネットプロHD<7383>が新規上場するため、これらに備えるための換金売りも出ているだろう。ネットプロHDは後払い決済サービスの国内最大手で、国内外の類似企業が上場やM&A(企業の合併・買収)に際し高い企業価値を付されていることから、期待が高まっているようだ。既上場銘柄の値動きが不安定だからか、直近上場のフレクトは個人投資家からかなり多い初値買い資金を集めていた。 さて、やはり欧米の新型コロナ「オミクロン型」感染拡大や米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めへの警戒感は拭いづらいようで、米主要株価指数は揃って下落。米金利は長期の年限を中心に低下したが、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-1.39%とやや軟調ぶりが目立った。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は20.31(+1.62)となり、節目の20近辺での一進一退が続いている。 ジョンソン英首相は新型コロナ「オミクロン型」の感染拡大スピードを強調し、感染抑制のための追加措置を導入する可能性も示唆した。今後の感染状況を注視する必要があるだろう。また、今晩からのFOMCについては、大方のエコノミストが来年2回の利上げ見通しが示されるだろうと予想しているという。それだけに、年3回というより踏み込んだ利上げ見通しが示されなければ安心感につながる可能性はある。しかし、既に米国ではマネーサプライ(M2、通貨供給量)や信用取引に係るマージンデット(証拠金債務)の伸び鈍化が見られ、金融緩和の縮小は市場に相応の影響を与えるかもしれない。 時間外取引の米株価指数先物は小反発しているようだが、アジア市場では香港ハンセン指数や上海総合指数が揃って軟調。前述したとおり個人投資家の売りも出やすいとみられ、後場の日経平均は引き続き戻りの鈍い展開になりそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/14 12:17
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日経平均は3日ぶりに反発、FOMCは波乱なしであく抜け上昇?
日経平均は3日ぶりに反発。258.91円高の28696.68円(出来高概算4億3455万株)で前場の取引を終えている。 先週末10日の米株式市場でNYダウは216.30ドル高(+0.60%)と上昇。良好な企業決算を好感し寄り付き後、上昇。11月消費者物価指数(CPI)は39年ぶりの伸びを記録したが、想定内との見方から金利が低下したことで相場は好感。また、疾病管理予防センター(CDC)が初期の調査で、新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」によるワクチン接種完了者に対する影響は緩やかとの結果を発表したことも投資家心理を改善させた。大型ハイテク株に旺盛な買いが入り、ナスダック総合指数は+0.72%と上昇、なお、将来の株価変動率を示す米VIX指数は警戒水準の目安とされる20を割り、18.69まで低下。また、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500指数は史上最高値を更新した。 米CPIを無難通過した安心感や米ハイテク株高を好感し、東京市場でも半導体関連を中心にハイテク株が買われ、日経平均は267.49円高の28705.26円でスタート。前場中頃には一時28793.32円(+355.55円)まで買われた。しかし、200日移動平均線を手前に伸び悩むと、前引けにかけては騰勢を弱め、上げ幅を縮める展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>などの半導体関連株が大幅に上昇。ソフトバンクG<9984>やソニーG<6758>、村田製<6981>、キーエンス<6861>などのハイテク株も総じて買い優勢で、ファーストリテ<9983>やダイキン<6367>などの値がさ株の一角も大幅高。国内証券の投資判断格上げを受けた川崎汽船<9107>を筆頭に郵船<9101>、商船三井<9104>の大手海運株も買われている。そのほか、イビデン<4062>、新光電工<6967>、レノバ<9519>、米国での金融引き締め観測を背景に東京海上<8766>、第一生命HD<8750>なども高い。第3四半期が好決算で今期3度目となる通期計画の上方修正を行った三井ハイテク<6966>は急伸し、東証1部上昇率トップに躍り出ている。 一方、東南アジアからの部品供給不足で国内工場の稼働停止が伝わっているトヨタ自<7203>が大きく下落。リクルートHD<6098>、エイチ・アイ・エス<9603>、日立<6501>、ベイカレント<6532>、神戸物産<3038>などの下落率も大きい。そのほか、決算が失望感を誘ったエイチーム<3662>、トビラシステムズ<4441>、シーイーシー<9692>などが東証1部下落率上位に並んでいる。 セクターでは保険業、海運業、その他金融業などが上昇率上位となっている一方、不動産業、輸送用機器、サービス業などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は54%となっている。 週明けの日経平均は大幅反発。警戒されていた11月の米CPIは前月比での伸びが+0.8%と市場予想の+0.7%を上回ったが、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアでは+0.5%と市場予想と一致。記録的な高い伸びとはなったが、事前に警戒されていたこともあり、想定内との受け止めから、相場はポジティブに反応した。週明けの東京市場でも、半導体関連を中心にハイテク株に買いが先行している。しかし、関連株は先週末に値を崩していたものが多く、下げた分を取り戻したに過ぎず、14日からの米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に投資家のポジションが強気に傾いたわけではないだろう。 前場の日経平均も一時300円超の上げ幅となったが、先週同様に200日移動平均線が位置する28800円手前では伸び悩む展開となっている。依然としてFOMCを確認するまでは相場の方向感は不透明だ。 一方、米国ではアップルが上場来高値を更新したほか、マイクロソフトも大幅高で上場来高値を窺う位置にあるなど、ハイテク株の強さが改めて注目されている。こうしたハイテク株高もあり、S&P500指数にいたっては既に史上最高値を更新している。FOMCを前にしたこの強さに安心感を抱いていいのかどうかは正直難しい。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の誘導目標とするフェデラル・ファンドレート(FFレート)の金利先物市場の動きからは、オミクロン株が出現する前から、FRBの量的緩和縮小(テーパリング)の加速を織り込む形で来年3回の利上げを織り込んでいた。一時、年1~2回に後退していたが、オミクロン株の脅威が後退するとともに再び年3回の利上げを織り込んできている。 米ハイテク株の強さやS&P500の史上最高値更新が、こうしたFRBのタカ派を織り込んだうえでの動きなのか、それとも、金利先物市場ほどにはタカ派になることはないと見込んでいるのかは定かではない。こればかりは蓋を開けてみないと分からないだろう。ただ、FRBのパウエル議長は次期議長の再任が決まった際から、明らかに姿勢が急速にタカ派にシフトしている。こうした変化の背景には、インフレ高止まりを要因に支持率が低迷しているバイデン大統領からの圧力があったのではないかと思わず勘ぐってしまう。そのバイデン大統領は、11月のCPI発表直後には「物価上昇は鈍化しはじめている」とし、インフレ抑制に躍起だ。 このため、今回のFOMCは、ドットチャートも注目だが、タカ派にシフトしたと思われるパウエル議長の記者会見にも注目だろう。さすがに、ドットチャートでいきなり中央値が年3回の利上げになることはないだろうとは思う。また、テーパー・タントラムの再来を防ぐために長い間、粘り強く慎重に市場と対話し続けてきたパウエル議長が、仮にバイデン大統領からの圧力を受けていたとしても、相場にサプライズをもたらすような過度なタカ派発言をするとも思えない。 しかし、もし万が一、米ハイテク株の強さやS&P500の史上最高値がこうした筆者同様の「さすがに~はないだろう」で成り立っているとしたら、先行きは危うい。次期FRB議長の再任が決まった際のように、パウエル議長が想定外のタカ派発言をしないようにと願うばかりだ。 さて、後場の日経平均は引き続き上値が軽いとはいえずとも、堅調な動きが想定される。上海総合指数がしっかりなうえ、香港ハンセン指数は大幅に上昇、時間外の米株価指数先物も軒並み堅調で、外部環境は良好だ。一方、14日からのFOMCが直前なだけに、様子見ムードも強く、大引けにかけては改めて上げ幅を縮める動きも想定される。
<AK>
2021/12/13 12:08
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日経平均は続落、メジャーSQ通過で「米CPI・FOMC睨み」
日経平均は続落。115.63円安の28609.84円(出来高概算6億3000万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは6セント安とほぼ横ばいで終了した。英国が行動規制の強化に踏み切るなど、世界的に新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」への懸念が根強く、売りが出た。その後、週間の失業保険申請件数が52年ぶり低水準を記録し、労働市場の強い回復を受けて上昇に転じたが、翌日の11月消費者物価指数(CPI)の発表を前にハイテク株が下落して相場の重しとなった。本日の東京市場ではこうした米ハイテク株安の流れを引き継いだほか、先物・オプション12月物の特別清算指数(SQ)算出に絡んだ売買もあり、日経平均は182円安からスタート。米CPI発表を前に利益確定売りに押される銘柄が多く、前場中ごろに一時28483.63円(241.84円安)まで下落したが、一段と売り込もうとする動きは限られ軟調もみ合いとなった。 なお、日経平均先物・オプション12月物のSQ値は概算で28523.30円となっている。 個別では、リクルートHD<6098>が4%の下落。凸版印<7911>による同社株の売出し観測が報じられている。子会社による「GoToトラベル」補助金の不正受給の疑いを公表したH.I.S.<9603>は9%超の下落。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>が軟調で、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>は小安い。また、決算発表のグッドコムA<3475>やラクスル<4384>、それにH.I.S.などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、川崎船<9107>、任天堂<7974>、キーエンス<6861>などが堅調で、前日売られた日立<6501>は2%超の上昇。凸版印は投資有価証券売却益の計上を発表して買われ、業績上方修正のアクセル<6730>や印企業への追加出資を発表したGunosy<6047>が東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、サービス業、精密機器、空運業などが下落率上位。一方、鉱業、金属製品、その他製品などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の64%、対して値上がり銘柄は31%となっている。 メジャーSQを通過した本日の日経平均は軟調な展開となっている。日足チャートを見ると、25日移動平均線や75日移動平均線の位置する29000円を前に失速する一方、5日移動平均線の位置する28500円近辺では底堅さを見せている。売買代金上位ではリクルートHDやH.I.S.が個別要因で売られているほかは、高安まちまちといった印象。業種別騰落率も方向感を見出しづらいが、新型コロナ「オミクロン型」への懸念後退とともに買われていた空運株の失速を見ると、英国の規制強化がやや警戒されている面はありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。前日は1日を通じ2兆3166億円(8日は3兆633億円)と急失速したが、本日もメジャーSQだったことを考慮すればかなり低調な印象を受ける。 新興市場でもマザーズ指数が-1.15%と続落。売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>が大幅に7日続伸しているのには舌を巻かざるを得ないが、時価総額トップのメルカリ<4385>などは上値の重さが鮮明になってきた。米CPI発表など来週にかけて重要イベントが相次ぐうえ、前日指摘したとおり足元でブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多いため、換金売りが出やすいところではあるだろう。マザーズ指数は値ごろ感も意識される水準だが、本格的な持ち直しには時間を要するとみておきたい。なお、本日マザーズ市場に新規上場したフレクト<4414>は前引け時点でなお買い気配が続いている。 さて、メジャーSQと前後して株価指数先物等の買い戻しに一服感が漂っていたが、ここまでのところ大きく売り込まれるような流れにはなっておらず、日経平均がSQ値をひとまず上回っていることも安心材料とみる向きがあるだろう。もっとも低調な売買代金を見ると、積極的に買い持ち高を積み上げようとする動きも限られるものと考えられる。 前日の米市場では新型コロナ「オミクロン型」への警戒感から、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.47%(-0.05pt)に低下し、これにつれて10年物国債利回りも1.50%(-0.02pt)に低下した。ただ、短期の金利は上昇。株式市場ではハイテク株が反落し、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は21.58(+1.68)と、再び節目の20に乗せている。 これらの動きを見ると、やはり11月CPIでインフレ圧力の高まりが確認されるとともに、来週14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で金融正常化の加速が示されるとの警戒感が根強いように感じられる。失業保険申請の減少は明るい材料だが、8日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)で企業の求人は旺盛であることが確認され、労働力不足による雇用ひっ迫がインフレ圧力につながるとの見方がある。パウエル連邦準備理事会(FRB)は直近の議会証言でインフレリスクが高まっているなどと述べ、量的緩和の縮小(テーパリング)と利上げを前倒しする可能性を示唆したことから、金融引き締めへの警戒感も拭いづらい。 海外市場を見渡しても香港ハンセン指数や時間外取引のNYダウ先物がやや軟調に推移している。後場の日経平均は重要イベントを前に様子見ムードが広がり、戻りの鈍い展開になりそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/10 12:15
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日経平均は3日ぶり小幅反落、「買い戻し一服感」と「FOMC前のインフレ懸念」
日経平均は3日ぶり小幅反落。42.09円安の28818.53円(出来高概算4億6000万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でNYダウは小幅に3日続伸し、35ドル高となった。製薬大手ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンについて、3回接種で変異株「オミクロン型」にも効力があるとの暫定的な試験結果が発表され、感染拡大への懸念が一段と和らいだ。ただ、前日までの大幅上昇を受けて利益確定の売りも出て伸び悩んだ。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も+0.64%と3日続伸したが、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-0.61%と軟調。日経平均も前日までの2日間で930円あまり上昇しており、本日はやや利益確定売り優勢で33円安からスタートした。寄り付き後は米株などの上昇を支援材料に下値こそ堅かったが、前日終値を挟みもみ合う場面が多かった。 個別では、日立<6501>が3%超の下落。小島啓二社長の取材内容が一部メディアで報じられているが、日立金<5486>の売却手続きの遅れなどが意識されたようだ。その他売買代金上位では商船三井<9104>やソニーG<6758>が軟調で、川崎船<9107>や郵船<9101>は小安い。丹青社<9743>は決算を受けて売り優勢。また、欧州のごみ焼却発電プラントメーカー買収を発表した日立造<7004>は急落し、NCHD<6236>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。一方、売買代金トップのソフトバンクG<9984>や2位のレーザーテック<6920>、それにJAL<9201>やANA<9202>といった空運株が堅調。任天堂<7974>や東エレク<8035>は小高い。業績上方修正の白銅<7637>や決算発表のミライアル<4238>は急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、金属製品、繊維製品、機械などが下落率上位。一方、空運業、ゴム製品、情報・通信業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の64%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 新型コロナ「オミクロン型」に対するワクチンの有効性への期待からNYダウが小幅ながら上昇する一方、本日の日経平均は前場中ごろから小安い水準で推移している。中国・上海株や香港株がまずまず堅調なところを見ると、一層伸び悩んでいる印象が強い。売買代金上位もソフトバンクGやレーザーテック、空運株を除くと全般小安い。業種別騰落率では景気敏感系セクターがやや軟調だ。ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円弱。ここ2日ほど1日を通じて3兆円台に乗せていたが、本日は後場売買が膨らまなければかなり低調となる可能性がある。 新興市場ではマザーズ指数が+0.01%と小幅に3日続伸。こちらも前日終値を挟み一進一退の展開となっている。上値追いが続く11月24日上場のサイエンスアーツ<4412>や、業績上方修正のセルソース<4880>が賑わっているが、時価総額トップのメルカリ<4385>は伸び悩んでいる印象。明日あたりからブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多いため、これに参加するための換金売りが出てくることも想定しておきたい。 さて、米国ではアップルが連日で過去最高値を更新するなど投資意欲の根強さも感じられるが、NYダウなどはさすがにここまで急ピッチのリバウンドだったことから上値が重くなってきた。日本でも株価指数先物の取引状況を見ると、明日10日の特別清算指数算出(メジャーSQ)に向けたロールオーバー(限月乗り換え)がかなり進み、買い戻しの動きは一服しつつあるとみられている。市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は3日申し込み時点で3兆6488億円と高水準にあり、日経平均が節目の29000円近辺まで値を戻す場面では目先の利益を確定する売りが出やすいだろう。本日の売買代金の低調ぶりを見ると、短期的なリバウンドに乗ろうとする動きも減ってきた印象を受ける。 また、米国では来週14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に気になる動きもある。このところ新型コロナ「オミクロン型」への懸念が和らぐとともに低下に歯止めがかかっていた10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI、期待インフレ率の指標)だが、前日は2.52%(+0.05pt)と上昇した。これに伴い金利も長期の年限を中心に上昇。8日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が1103.3万件(前月比43.1万件増)と過去2番目の高水準になり、雇用の伸び鈍化は労働力不足によるものとの見方からインフレ圧力の高まりが意識されたようだ。 度々当欄で述べているとおり、バイデン政権にとって来年の中間選挙を前に「インフレへの不満」が最大のリスクと捉えられている可能性が高い。連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長再任決定と前後し、パウエル氏らがインフレ対応姿勢を強めていることもこれと無縁でないだろう。FOMCを前にインフレ圧力につながる「雇用ひっ迫」が改めて確認され、金融引き締めへの警戒感が再燃することも想定しておく必要がありそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/09 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続伸、懸念材料はすべて織り込み済み?
日経平均は大幅続伸。318.45円高の28774.05円(出来高概算5億9788万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でNYダウは492.40ドル高(+1.39%)と大幅に続伸。英グラクソ・スミスクラインなどが開発中の新型コロナウイルスワクチン候補が複数の変異株に対して有効性を示したとの報道もあり、景気回復期待が再燃し、寄り付き後上昇。また、金利動向の安定でハイテク株の買いも強く、終日堅調に推移。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+3.03%と大幅続伸した。東京市場でも半導体関連などハイテク株を中心に買いが先行し、日経平均は337.29円高の28792.89円でスタート。ただ、寄り付き直後に付けた28835.01円を高値にその後は伸び悩み、一時28621.47円まで押し戻される場面も。それでも、堅調なアジア市況を支援要因に下げ渋ると、その後は28800円を手前にしたもみ合いが続いた。 個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が5%近くと急伸したことを追い風に、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などが大幅に上昇。ソニーG<6758>、任天堂<7974>、ダイキン<6367>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、太陽誘電<6976>、ZHD<4689>などハイテク・グロース株も全般買われている。提携先のロシュ社が「アクテムラ」について欧州医薬品委員会より適応拡大の承認勧告を受領したと発表した中外製薬<4519>は急伸。そのほか、KDDIエボルバとパートナー連携を開始したショーケース<3909>、国内証券が新規に買い推奨でカバレッジ開始した日総工産<6569>なども大幅高となっている。 一方、前日まで人気化していた川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株が大幅に反落。住宅ローン減税見直しの影響を警戒視して住友不動産<8830>、三井不動産<8801>などの不動産セクターが大きく下落。対ドルでの円安進展の一服からトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>なども売り優勢。JT<2914>、ソフトバンク<9434>、武田薬<4502>などのディフェンシブ銘柄も軟調となっている。そのほか、今期業績見通しが市場想定を下回ったくら寿司<2695>が売られている。 セクターでは精密機器、鉱業、その他製品などが上昇率上位となっている一方、海運業、不動産業、倉庫・運輸関連業などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の54%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 本日の日経平均は大きく続伸しているとはいえ、25日、75日、200日移動平均線が集中する28900~29000円を手前に伸び悩む格好となっている。また、前日のNYダウが500ドル近い大幅続伸で、ナスダックやSOX指数が急伸したことを踏まえると、上値の重さが拭えない。 前日の米株市場では、NYダウやS&P500指数が25日線を回復し、米長期金利は上昇、将来の株価変動率を示す米VIX指数は-5.29の21.89と大幅に低下した。市場心理が改善するなかでの典型的なリスクオンムードの様相だ。翌週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした中でもハイテク・グロース株が急伸した動きも踏まえると、市場はオミクロン株の懸念後退を好感するだけでなく、米連邦準備制度理事会(FRB)の早期金融引き締め懸念も相当に織り込んだかのようだ。実際、FRBが金融政策の誘導目標とするフェデラル・ファンド・レート(FFレート)の先物市場での動きによると、市場はすでに来年3回の利上げを織り込んでおり、かなりタカ派寄りとなっている。 オミクロン株の脅威が緩和し、翌週に控えるFOMCのリスクもすでに十分に織り込んでいるのであれば、このまま懸念一層で年末に向けた株高ラリーとなるのだろうか。一方で、米金融大手のゴールドマン・サックス・グループは、株式の安易な押し目買いに対して警鐘を鳴らしている。12月はボラティリティーが突発的に拡大する余地があり、リスク指標はまだ買いシグナルを発していないと指摘したという。 上述したように、先物市場でのFFレートの動きはすでにFRBのタカ派色を相当に織り込んでいるようだ。しかし、株式市場の方は実のところ、織り込んだうえで上昇しているのではなく、FF金利先物市場が想定しているほどのタカ派色になることはないと高を括っているだけではないだろうか。少なくともその可能性がないとは言えないだろう。 昨年の米大統領選などもそうだが、どのような結果になっても相場にはポジティブで、大きな波乱にはならないと言われているような時でも、実際にイベントを迎えるとなると、仕掛け的な動きなども相まって一時的にボラティリティーが大きくなることが多々ある。昨日、今日の動きだけで過度に楽観に傾くのは時期尚早だろう。ポジションを大きく買い持ちに傾けるなど過度なリスクテイクには気を付けたいところだ。 さて、後場の日経平均は引き続き上値が重いながらも堅調な動きが続きそうだ。時間外の米株価指数先物が小じっかりな中、上海総合指数などアジア市況は総じて堅調。特段のニュースフローがなければ、日経平均は現状の水準でのもみ合いが続くとみておきたい。
<AK>
2021/12/08 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反発、それでも米金融引き締め懸念などは残る
日経平均は大幅反発。354.64円高の28282.01円(出来高概算5億3000万株)で前場の取引を終えている。 週明け6日の米株式市場でNYダウは大幅に反発し、646ドル高となった。上げ幅は今年最大。国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」について「重症化の度合いはそれほど高くないようだ」などと発言し、懸念が和らぐとともに景気敏感株などに買いが入った。また、先週末に大きく売られた中国テック株も中国人民銀行(中央銀行)の預金準備率引き下げなどを好感して急反発した。本日の東京市場ではこうした流れを引き継いで投資家心理が改善し、日経平均は211円高からスタート。朝方伸び悩む場面もあったが、前場中ごろから上げ幅を一段と広げ、一時28339.24円(411.87円高)まで上昇した、 個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が7%超の上昇。投資先の中国テック株と同様、前日の大幅下落から一転して急反発している。その他売買代金上位もレーザーテック<6920>、川崎船<9107>、商船三井<9104>、郵船<9101>、東エレク<8035>など全般堅調。丸紅<8002>やCTC<4739>は一部証券会社の投資判断引き上げを受けて買われ、目標株価引き上げ観測の日電波<6779>は急伸。また、前期業績の上方修正などを発表した日本ハウスHD<1873>は東証1部上昇率トップとなっている。一方、日立<6501>やソフトバンク<9434>は小安い。株式の売出し実施を発表したアイホン<6718>や福井コンピ<9790>、投資判断引き下げ観測の日水<1332>は急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、空運業、海運業、陸運業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのは水産・農林業のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の90%、対して値下がり銘柄は7%となっている。 新型コロナ「オミクロン型」に対する警戒感が和らぎ、海外株とともに日経平均も大幅反発する展開となっている。日足チャートを見ると、28000円手前に位置する5日移動平均線を寄り付きで上回り、戻りを試す格好。中国テック株につれて急反発したソフトバンクGが1銘柄で日経平均を約84円押し上げているが、東証1部全体としてもおよそ9割の銘柄が値上がりしている。業種別騰落率では、景気敏感セクターやコロナ禍の影響を受けやすい空運業・陸運業の上昇が目立つ。もっともここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円弱で、1日を通じても前日並みの2兆円台半ば程度となりそうだ。 新興市場でもマザーズ指数が+2.54%と大幅反発。ただ、前日に-3.80%と大幅な下落を強いられており、本日も5日移動平均線水準までの戻りにとどまっているのを見ると、自律反発の域を出ない印象を受ける。メルカリ<4385>などの主力IT株も堅調とはいえ、物色の矛先が向いているのはやはりサイエンスアーツ<4412>やGRCS<9250>といった好需給の直近IPO(新規株式公開)銘柄だ。 マザーズ指数は直近高値(11月17日取引時間中の1189.00pt)から安値(12月6日取引時間中の1003.97pt)まで-15.56%となり、個別では2割以上の大幅下落となった銘柄も多い。追加証拠金(追い証)の発生と前後して損失覚悟の売りを迫られた向きは少なくないと考えられる。また、今週から12月後半のIPOのブックビルディング(需要申告)が本格化してきたことから、これに備えるための換金売りが出てくることも想定される。当面は新興株の需給好転は期待しづらいだろう。 さて、米国では景気敏感株を中心に大きく反発し、ハイテク株も引けにかけて買い戻された。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は27.18(-3.49)に低下し、米金利は長期の年限を中心に上昇した。一見するとリスクオンに傾いてきた印象だが、株価・金利ともまだ波乱を抜け出たとは言いづらい。実際、VIXはなお節目の20を上回っている。 そもそも市場では、新型コロナ「オミクロン型」よりも米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め観測の方が懸念材料と受け止める向きが多い。米金融大手モルガン・スタンレーは「株式のリスクはオミクロン株より米金融当局」などと指摘。また、人気ニュースレターで知られた著名投資家のデニス・ガートマン氏は米金融引き締め開始を念頭に、「弱気相場は避けられない」などと述べたという。来週14~15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えており、積極的に買い持ち高を積み上げづらい状況に変わりはない。 また、日本では日経平均が28000円割れから底堅さを見せており、株価指標面での値ごろ感などから押し目買い需要が強いと指摘されている。ただ、日々の先物手口を見ると、今週末10日の特別清算指数算出(メジャーSQ)を前にロールオーバー(限月乗り換え)の売買が中心。売りにも買いにも傾きづらいことが前述の底堅さにつながっている可能性もあるだろう。個人や外国人といった純投資家主体のマザーズ指数の方が投資家心理を映しているのかもしれない。 さて、アジア市場では香港ハンセン指数が堅調もみ合いとなる一方、上海総合指数は朝高後にマイナス転換。為替相場は1ドル=113.50円近辺で円安一服となっている。日経平均も一段の上値追いの動きは限られ、堅調もみ合いの展開となりそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/07 12:16
ランチタイムコメント
日経平均は反落、今は焦らず好機を待つタイミング
日経平均は反落。162.76円安の27866.81円(出来高概算5億4608万株)で前場の取引を終えている。 前週末3日の米株式市場でNYダウは59.71ドル安(-0.17%)と小幅反落。米議会がつなぎ予算案を可決し政府機関閉鎖が回避されたため安心感に寄り付き後上昇。しかし、米国内でオミクロン変異株感染が拡大、さらに、11月雇用統計で雇用者数が予想の半分の伸びにとどまり失望感から、下落に転じた。一方で連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和縮小の軌道に変わりはないとの見方から更なる売りに繋がった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-1.92%と大幅に反落した。 ただ、NYダウの下げが限定的だったことで景気敏感株の一角には買いが入り、日経平均は40.39円高の28069.96円でスタート。しかし、米ハイテク株安を引き継ぎ、東京市場でもグロース株やハイテク株中心に売りが広がったことで、寄り付き直後には下落に転じ、一時は335.66円安の27693.91円まで下げた。一方で、売り一巡後は押し目買いも入り、前引けにかけては下げ幅を縮小する動きが続いた。 個別では、ソフトバンクG<9984>が、出資先である中国配車サービス大手の滴滴出行の米市場での上場廃止や英アームの米エヌビディアへの売却計画の不透明感、出資先の中国アリババ株の急落など複数の悪材料を背景に7%と急落し、1銘柄で日経平均の下げの半分を生み出している。また、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、日立<6501>、ローム<6963>、SUMCO<3436>、アドバンテスト<6857>などの半導体関連株やハイテク株が大きく下落。ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)相場の下落を嫌気し、マネックスG<8698>が急落。ベイカレント<6532>、ZHD<4689>、エムスリー<2413>、サイバーエージェント<4751>、マネーフォワード<3994>などのグロース株の一角も大きく売りに押されている。また、リスク回避の円高・ドル安を背景に、日産自<7201>やマツダ<7261>なども大幅安に。 一方、外資証券による目標株価の大幅引き上げを材料視した動きが先週から続いている海運株が賑わっており、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>が大幅高。日本製鉄<5401>やJFE<5411>などの鉄鋼も大きく上昇しており、サウジアラビアの原油販売価格の引き上げなどを受けた原油先物価格の上昇から、INPEX<1605>も大幅高。そのほか、日東紡績<3110>、東洋紡<3101>などが買われている。第1四半期の好決算が揃って評価されたファーマフーズ<2929>、内田洋行<8057>が揃って買われたが、ファーマフーズは伸び悩んだ。そのほか、国内証券の投資判断格上げを受けて日本CMK<6958>が急伸し、デンカ<4061>、レンゴー<3941>も大幅に上昇した。 セクターでは情報・通信業、サービス業、医薬品などが下落率上位となっている一方、鉱業、海運業、鉄鋼などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の45%、対して値上がり銘柄は49%となっている。 オミクロン株に関する正確なデータが揃うのを待っている段階で、東京市場は依然として方向感に欠ける動きが続いている。米製薬大手ファイザーは同社製の既存ワクチンがオミクロン株に対しても有効との見解を示し、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、オミクロン株の重症化リスクは、デルタ株ほど高くないことを示唆した。ただ一方で、米バイオ製薬大手モデルナの最高経営責任者(CEO)は既存ワクチンの有効性に懐疑的で、市場もオミクロン株に対する見方を決めかねている様子。今後数週間内にデータが揃う見込みで、結果が判明する頃には注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)も終えていると思われる。そのため、双方の内容次第では、相場が大きく動く可能性が高く、現時点ではどうにも動けないといったところだろう。 こうした中、相場の物色動向もちぐはぐな様相を呈している。前週の米雇用統計の結果公表後も、米国債券市場では、短期金利が上昇する一方で長期金利の低下が進展し、イールドカーブのベアフラットニング化が一段と進んだ。米10年物国債利回りは9月下旬以来となる1.3%台にまで低下している。こうした動きは債券市場が、政策金利引き上げによる金融引き締めが景気後退につながるとの見方を有していることを示唆している。しかし、株式市場では日米ともに、ハイテク株やグロース株が大きく売られる一方、景気敏感株の一角は買われている。金融引き締め懸念が高まっている局面故に、金融緩和が追い風になってきたグロース株を中心に短期的な売りが出るのはおかしな話でもないが、長期的には上述した債券市場の読みとは整合的とはいえない。 今回のFOMCは、パウエルFRB議長をはじめハト派姿勢だったメンバーの多くがタカ派にシフトしてきているため、警戒は必要だが、FOMC後に、再度グロース株が買われる局面は十分に考えられる。もちろん、今までの超緩和的な局面とは異なるため、過度に高いバリュエーションが付いた銘柄や特需などの一過性で短期的に急騰した銘柄などは引き続き厳しいだろう。それでも、直近数年に亘って業績を順調に拡大し続け、ROEなどで高い収益性を維持しているクオリティを伴った銘柄であれば、単にバリュエーションが高いからという理由だけで一方的に売られ続けることはないだろう。 FOMC前後には一時的に相場が大きく動く可能性もあるため、急ぐ必要はないが、いまはFOMCを見据え、仕込みたい銘柄リストを作成するなど、機が熟すのを待つ局面といえるだろう。 さて、後場の日経平均は引き続き前日終値近辺でのもみ合いになりそうだ。香港ハンセン指数が大きく下落するなどアジア市況が軟調な一方、時間外の米株価指数先物は堅調に推移している。外部環境が不透明な中、手掛かり材料難で動きづらい状態が続きそうだ。
<AK>
2021/12/06 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は続落、日本株は大きく下げ小さく上げる?
日経平均は続落。61.03円安の27692.34円(出来高概算5億9038万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でNYダウは617.75ドル高(+1.81%)と大幅反発。連日の下落を受けた値ごろ感からの買いが先行。製薬会社のファイザーが同社の新型コロナワクチンがオミクロン変異株に対しても効果があると楽観的な見通しを示したことも後押しした。また、バイデン大統領が3日に政府機関閉鎖に陥ることは予想していないと発言すると一段高に。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も+0.83%と反発。将来の株価変動率を表す、「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数は-3.17の27.95と低下した。 米株高を支えに日経平均は87.68円高の27841.05円でスタート。ただ、金融政策の判断材料として重要な米雇用統計が今晩発表予定なだけに、金利動向に敏感な半導体関連を中心とした値がさハイテク株には売りが先行し、日経平均も直後にマイナスに転じた。その後は再びプラス圏に浮上したが、改めて売り押されると、一時27588.61円まで下押しした。前引けにかけては下げ渋って前日終値近辺まで戻したが、引け直前にはまたも失速した。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>、スクリン<7735>、SUMCO<3436>などの半導体関連株が大幅に下落。ソフトバンクG<9984>、ファナック<6954>、太陽誘電<6976>、任天堂<7974>なども大きく下落した。11月既存店売上高が4カ月連続で前年割れとなったファーストリテ<9983>や、キーエンス<6861>、アドバンテスト<6857>、エムスリー<2413>、富士フイルム<4901>なども安い。自社株TOB実施に向けたCB発行を発表したコーエーテクモ<3635>は需給懸念から大きく下落。8-10月期も2割超の営業減益が続いたラクーンHD<3031>は急落し東証1部値下がり率トップとなっている。 一方、オミクロン株に対する警戒感後退からJAL<9201>、OLC<4661>、資生堂<4911>、JR東海<9022>、アサヒ<2502>などの旅行・レジャー関連などの銘柄が大幅高。デンソー<6902>、日産自<7201>などの輸送用機器の一角も大きく上昇。そのほか、ダイキン<6367>、リクルートHD<6098>、三井住友<8316>、三菱商事<8058>、日本製鉄<5401>、シマノ<7309>、ZHD<4689>、イビデン<4062>などが高い。第1四半期決算で見直しにつながったアルチザ<6778>は急伸し、国内証券の投資判断格上げが観測された飯田GHD<3291>、11月既存店売上が2カ月連続でプラスになったアダストリア<2685>なども買われた。 セクターでは電気・ガス業、その他製品、電気機器などが下落率上位となっている一方、空運業、海運業、陸運業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の15%、対して値上がり銘柄は82%となっている。 前場の日経平均は下落。前日のNYダウが600ドル超と大きく反発したのに比べるとあまりに弱い。東証1部全体では8割以上の銘柄が上昇しており、TOPIXは+0.55%と上昇しているが、上昇率はやはり相対的に物足りない。そもそも直近下落が続いていたとはいえ、史上最高値圏からまだ調整したに過ぎない米国株に対し、日経平均などは年初来安値圏にあり、立ち位置が異なる。それにも関わらず、下落する時は日本株の方の下落率が大きく、反発するときは日本株の方の上昇率が小さいとは、なんとも悲しい光景だ。オミクロン株が話題に上る前に3万円回復が目標とされていた日経平均はいまや27000円台にあり、28000円の回復すら遠く及ばない水準だ。この日本株の独り負け状態は歯がゆいばかりである。 前日、東京証券取引所が発表した11月第4週(11月22~26日)の投資主体別売買動向によると、海外投資家は現物と先物の合計で4800億円超、うち現物株で2200億円超も売り越していた。週末にオミクロン株の報道があり、相場は急落していたとはいえ、買い戻しが前提の先物だけでなく、現物株でも大きめに売り越していたことは気になる。世界的な株価指数構成銘柄からの日本株の除外や、岸田政権による金融所得課税引き上げなど、色々とあわせて考えると、海外投資家はどんどん日本株から遠ざかっている気がしてならない。 市場関係者の間では、海外投資家の年初来からの大幅な売り越しポジションに着目し、日本株の買い戻し余地は大きいということを投資の論点としてよく挙げる。しかし、思い返してみれば、昨年末や今年初めの時点でも既に、「直近2~3年の海外勢は日本株を大量に売り越しているため、今年は大幅な買い戻しが期待される」といった話が出ていた。 しかし、結果として、海外勢は今年も今のところは大きく売り越しだ。思わず、海外勢はもはや日本株を見放しているのではないだろうか、と勘ぐってしまうほどだ。企業業績の動向などは当たり前だが、それ以外のところで、やはり、もっと大きな枠組みとして、日本経済の具体的な成長戦略を描くなど、国としての成長力をしっかりと示すことなどが必要なのではないだろうか。政治面での大きな動きなど、企業業績以外のところでの変革を、海外投資家は求めているような気がしてならない。 さて、ややテーマが大きすぎる話になってしまったが、後場の日経平均は引き続き冴えない動きが続きそうだ。香港ハンセン指数が下落しているほか、時間外の米株価指数先物も軟調に推移。今晩の米雇用統計を前に様子見ムードが強まりやすいなか、持ち高調整や手仕舞い売りに押されやすいだろう。
<AK>
2021/12/03 12:09
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日経平均は反落、冴えない相場の原因はオミクロン株?
日経平均は反落。184.95円安の27750.67円(出来高概算6億4412万株)で前場の取引を終えている。 12月1日の米株式市場でNYダウは461.68ドル安(-1.33%)と大幅続落。世界保健機関(WHO)の主任科学者が新型コロナのオミクロン変異株について、ワクチンで重症化を防げる公算大との考えを示したため不安が緩和し、寄り付き後上昇、NYダウは一時500ドル超上昇する場面があった。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が量的緩和縮小(テーパリング)を早める可能性を再表明し上げ幅を縮小。引けにかけては、米国内で初のオミクロン変異株感染が確認されたことで、投資家心理が悪化し大きく下落に転じた。ハイテク株にも売りが広がり、一時1.8%程上昇していたナスダック総合指数も結局-1.82%と大幅下落に転じた。株価変動率を示す指標で「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数は+3.93ptの31.12と警戒水準とされる30を上回った。 米株安の流れを引き継ぎ、本日の日経平均は219.42円安の27716.20円でスタート。値ごろ感からの押し目買いが入り、寄り付き直後から下げ渋ると一時はプラス圏に浮上する場面も見られた。しかし、上昇転換したと同時に買い戻し一巡感が出てそこからは一転して売り優勢。寄り付き直後の水準まで戻すと、その後は一進一退の展開が続いたが、前引けにかけては下げ足を速め、一時は27644.96円まで下げた。 個別では、ソフトバンクG<9984>が5%を超える急落となっており、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ソニーG<6758>、村田製<6981>、太陽誘電<6976>、イビデン<4062>、TDK<6762>、HOYA<7741>、エムスリー<2413>など、ハイテク株やグロース株での下げが目立つ。円高・ドル安進展を背景にSUBARU<7270>、日産自<7201>なども売られた。WTI原油先物価格の下落を嫌気し、INPEX<1605>も大幅に下落。そのほか、JR東<9020>、エイチ・アイ・エス<9603>などの旅行関連の銘柄が大きく売られた。決算が評価に繋がらなかった伊藤園<2593>、前日開催の経営方針説明会が物足りないとされた三菱ケミHD<4188>は急落した。 一方、外資証券による業界投資判断「強気」の再強調を受け、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運株が軒並み急伸。三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、東京海上<8766>など金融株が上昇し、任天堂<7974>、リクルートHD<6098>、ダイキン<6367>なども買われた。武田薬<4502>、エーザイ<4523>などのディフェンシブ銘柄の一角も堅調だった。そのほか、大規模な自社株買いを発表したアドウェイズ<2489>が急伸し、商品価格の改定実施を発表した日本ハム<2282>、証券会社の投資判断格上げや目標株価引き上げが材料視された東京ガス<9531>、カシオ<6952>、日本ケミコン<6997>などが大幅に上昇した。 セクターでは鉱業、情報・通信業、その他金融業などが下落率上位となっている一方、海運業、電気・ガス業、倉庫・運輸関連業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の52%、対して値上がり銘柄は43%となっている。 日経平均が一時プラス圏に浮上するなど、前場中頃までは、前日の米株市場の下げに比べて東京市場の相対的な安定さが感じられたが、引けにかけては大きく失速するなど、嫌な流れとなった。28000円手前での上値の重さも確認されており、早い段階で同水準を回復できないと、ここが戻りの目処とされ、上値が一層重くなることが懸念される。 また、気掛かりなのはマザーズ指数。前日にかけて6日続落しており、日足チャートでは陰線が連続しており、チャート形状の悪化が著しい。本日は前引けにかけて3%を超える下落率となっている。また、直近非常に強い動きを見せていたFRONTEO<2158>やアスタリスク<6522>、GRCS<9250>などが、ここ数日は軒並み急落するなど嫌な動きも確認されている。個人投資家の含み損益も相当に悪化していると推察されよう。 前日の米株市場は、大幅上昇からの引けにかけての大幅下落で、指数が上下に3~4%も動く非常にボラタイルな相場展開だった。米国で初のオミクロン株感染者が確認されたとの報道が伝わったタイミングから急速に下げ足を速めたとされているが、下落の本質的な要因はそこではないような気がする。 そもそも、感染が伝わる前には、WHOがオミクロン株に対するワクチンの有効性を示唆しており、マーケットはむしろオミクロン株に対する見方が警戒から楽観に傾いていたわけで、感染者の確認が売り材料につながるとは考えにくい。結局、要因としては、やはりFRBの金融引き締めに対する警戒感が大きいのだろう。前日、パウエルFRB議長は上院銀行委員会での証言に続き、下院金融サービス委員会での証言で、テーパリングを当初よりも早期に終了することが適切になる可能性を再表明した。内容は前の日の繰り返しに過ぎないが、マーケットでは、長らくFRB内でハト派とされてきたパウエル議長が、タカ派にシフトしてきたことに対する動揺がまだ収まっていないのだと考えられる。 良く捉えるならば、今回の証言により、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が相場の大きな調整要因になるリスクは小さくなったもといえる。ただ、14日からの今年最後のFOMCでは、ドットチャート(政策金利見通し)なども公表されるため、FRBのタカ派度合いを計るという観点からすれば、依然、イベントとしての注目度は高く、これを消化するまでは、相場はしばらく神経質な展開が続きそうだ。その間には、オミクロン株に関する報道も攪乱要因として動き増幅させる可能性があろう。 さて、後場の日経平均は上値が重いながらも、下値もそれなりに堅く推移しそうだ。香港ハンセン指数などのアジア市況がまずまずしっかりしていることに加え、時間外の米株価指数先物が緩やかながら上げ幅を拡げている。これらを支えに日経平均については、せめて28000円回復の手掛かりはつかんでほしいばかりだ。
<AK>
2021/12/02 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり反発、大きな転換点迎える、投資妙味はどこに?
日経平均は4日ぶり反発。225.86円高の28047.62円(出来高概算7億3650万株)で前場の取引を終えている。 11月30日の米株式市場でNYダウは652.22ドル安(-1.85%)と大幅反落。11月消費者信頼感指数などが予想以上に悪化したため、寄り付き後下落。その後、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がインフレ高進の持続可能性を警告し、12月連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小(テーパリング)ペース加速の選択肢を協議することが妥当との考えを示したため売りが加速。金融引き締め懸念を背景にハイテク株にも売りが広がり、ナスダック総合指数も-1.55%と大幅に下落した。 ただ、本日の日経平均は44.97円高の27866.73円でスタートすると、寄り付き直後に28069.33円まで上昇。前日の後場にワクチン有効性疑義に関するニュースフローをきっかけに突っ込み気味に大きく下落しており、前週末からの3日間での下落幅は1600円を超えていたことで、自律反発狙いの買いが入りやすかったもよう。また、前日は、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)によるスタンダード・インデックスの定期入れ替えが行われていたことから、需給面でのあく抜け感などもあったようだ。ただ、需給要因絡みで序盤は乱高下する形となり、一時は27594.01円まで下げる場面もあった。その後はもみ合いの末に前引けにかけて強含み、28000円を回復して前場を終えた。 個別では、外資証券の投資判断引き上げを材料にトヨタ自<7203>が大幅に上昇し、円高・ドル安の一服感も手伝い、ホンダ<7267>、デンソー<6902>なども大幅高。また、国内証券の投資判断引き上げを受けファナック<6954>が大きく買われ、キーエンス<6861>、安川電機<6506>など関連株も上昇。また、郵船<9101>や商船三井<9104>などの海運株のほか、任天堂<7974>、ダイキン<6367>、リクルートHD<6098>なども好調。米国での金融引き締め観測の高まりを背景に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>なども堅調に推移している。 一方、早期金融引き締め懸念からソフトバンクG<9984>が大きく下落しており、エムスリー<2413>、イビデン<4062>、ルネサス<6723>、SUMCO<3436>、ZHD<4689>などのハイテク株やグロース(成長)株の一角には売りが優勢となっている。また、新型コロナ変異株オミクロン株を巡る不透明感がくすぶっており、JAL<9201>、OLC<4661>などの旅行・レジャー関連の一角が下落している。 セクターではパルプ・紙、海運業、輸送用機器などが上昇率上位となっている一方、情報・通信業、医薬品、食料品の3業種が下落となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は前引けにかけては買いが優勢となり、前日比ではプラス圏で終えている。しかし、前日までの1600円を超える下落幅を考えると、今日の上昇幅は自律反発というにも不十分だ。チャートでは、日足でも週足でも主要な移動平均線をすべて下放れており、中長期の動向を示す75日、200日線は揃って下向きに転換、トレンドは明確に悪化している。 前日の上院銀行委証言での質疑応答におけるパウエルFRB議長の発言は象徴的なものとなった。長らく頑なとも言えるほどに使用してきたインフレに関する「一過性」という表現はやめるときがきたと遂に言及した。また、テーパリングを早期に終了するのを検討することは適切だとの見解を示した。直近の複数のFRB高官の発言から、12月FOMCでのテーパリング加速に関する協議の可能性は十分に示唆されていたが、その時点ではまだオミクロン株は話題に出ていなかった。 FRB内でもハト派寄りとされてきたパウエル議長が、オミクロン株という新たな材料が出てきた中でも、テーパリング加速に前向きな姿勢をみせ、金融引き締めに積極的なスタンスをとったことは、相場にそれなりのインパクトがある。これまでの超緩和的とも呼べる金融相場は完全に転換点を迎えたともいえよう。 一方、こうしたFRBからのメッセージは、短期的にはマーケットにとってネガティブだが、長期的な視点からは実体経済にも相場にもポジティブなものと捉えられる。オミクロン株の発生もあり、新型コロナ感染の長期化が想定され、人々の不安心理もくすぶるなか、同時にインフレ高進が長期化すれば、それは人々の生活を悪化させることになる。ひいては、経済成長に不可欠な個人消費の停滞にもつながりかねないため、インフレ対処に積極的な姿勢を取ることは長期的には必要なことなのだろう。 こうした見方に対し、金融政策は需要サイドに基づくインフレに対しては有効であっても、現在のような供給制約に基づくインフレには効果を持たないとする批判もあるだろう。しかし、米国では住宅価格や賃金など、長期的なインフレにつながりかねないところでも高い物価上昇が続いている。金融引き締めはそうした部分の影響を緩和するほか、人々の期待インフレ率の低下を通じて、インフレ沈静化に寄与する面もあると考えられる。そうした観点からすれば、金融政策によるインフレ沈静化も決して間違った選択肢ではないだろう。 実際、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は11月15日に付けた2.76%を直近高値に、その後は沈静化傾向にあり、30日は前日比-0.04ptの2.50%まで低下、期待インフレ率の低下には足元成功しているようだ。短期的には、タカ派にシフトしたも同然のパウエル議長を巡り、相場は揺れ動くことになりそうだが、そのうち、FRBのインフレに対する姿勢を評価する可能性もあろう。 他方、前日のパウエル議長の発言を受けて、米国債は、2年債や5年債などの短期の金利は一時大きく上昇に転じた一方、10年債など長期の年限の債券利回りの上昇はかなり限定的だった。米10年国債利回りは30日、結局前日比-0.05ptの1.45%とむしろ低下した。 市場は、コロナ長期化の中での金融引き締め加速を背景に、スタグフレーション(景気後退と物価上昇の併存)を織り込みにいっているようだ。こうした動きがこの先も続くとすれば、前日は大きく下落したハイテク株やグロース株については、純粋シクリカル(景気循環)な銘柄に比べれば、相対的には投資妙味が出てくることが考えられる。 また、前日には、世界半導体市場統計(WSTS)が、2022年の半導体市場が前年比9%増の6014億ドルと過去最高になる見通しとし、6月時点の予測(5734億ドル)から上方修正したことが伝わった。本日も、冴えない相場のなか、半導体関連株は底堅く推移している。コロナ長期化に、金融引き締め、これでは何も買えないという印象も強いが、つぶさに見れば、投資妙味のある銘柄が浮かんでくるかもしれない。 さて、前日に大きく下落した香港ハンセン指数が大幅に反発するなど本日のアジア市況は堅調。前場の日経平均も前引けにかけて28000円を回復するなど強含んだ。後場についても、直近の下落を受けた値ごろ感からの買い戻しが続き、堅調に推移する可能性が高そうだ。
<AK>
2021/12/01 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反発、前引け間際の失速で印象悪くも、29000円回復に向けた希望も
日経平均は3日ぶり反発。214.99円高の28498.91円(出来高概算6億2116万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でNYダウは236.60ドル高(+0.68%)と反発。先週の下げが行き過ぎとの見方から寄り付き後、買戻しが先行。また、バイデン大統領が新型コロナウイルスの新たな変異株、オミクロン株について懸念材料であってもパニックに陥る必要はないと冷静な行動を呼びかけ、経済封鎖の必要性を否定すると、警戒感が後退し、上げ幅を拡大した。一方、米長期金利の上昇は限定的で、特にハイテク株に旺盛な押し目買いが入り、ナスダック総合指数は+1.87%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は+4.08%と大幅に反発した。先週末に+10.04の28.62と急騰していた、株価変動率を表す別名「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数は22.96まで低下した。 オミクロン株を巡る過度な不安心理の後退や米ハイテク株の大幅反発を引き継ぎ、本日の日経平均は327.81円高の28611.73円でスタート。指数寄与度の大きい半導体関連株を中心に買いが入り、寄り付き直後に28718.70円の高値を付けた。ただ、その後は騰勢一服で、100円程の値幅でのもみ合いが継続。前引けにかけては大きく失速し、28500円を割り込んで前場を終えた。 個別では、SOX指数高を追い風にレーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>、SUMCO<3436>などの半導体関連株が大幅高。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>、イビデン<4062>といったハイテク株も大きく上昇し、リクルートHD<6098>、信越化<4063>などグロース(成長)株の一角も堅調。JAL<9201>、JR東<9020>、エアトリ<6191>などの旅行関連株も高い。円高・ドル安の一服感からトヨタ自<7203>やホンダ<7267>も買われている。国内証券による格上げ観測のあった日本電子<6951>は半導体株高の波にも乗り急伸。同様に国内証券の格上げ観測を材料にマネックスG<8698>が急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出している。 一方、前日に大きく買われた任天堂<7974>やエムスリー<2413>が軟調で、自動車の中でも日産自<7201>やマツダ<7261>は下落。そのほか、NTT<9432>やKDDI<9433>、塩野義製薬<4507>といったディフェンシブ系の銘柄が安い。また、景気敏感株の中では日本製鉄<5401>やJFE<5411>などの鉄鋼株が独り負けのような形になっている。東証1部下落率上位には、株式売出などによる需給悪化懸念が台頭したLINK&M<2170>が、新株発行などによる希薄化懸念で売られたギフティ<4449>などと共に並んでいる。 セクターでは陸運業、鉱業、水産・農林業などが上昇率上位となっている一方、医薬品と鉄鋼の2業種のみが下落となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の82%、対して値下がり銘柄は15%となっている。 日経平均は反発したものの、先週末から前日にかけて1200円程も下落していただけに、自律反発の域を出ていない。前日は、一時プラス圏に浮上するなど想定以上の底堅さを見せた前場から一変、後場には一転してずるずると下げ、結局、467.70円安という後味の悪い引け方をしていた。 本日も反発しているはいるが、チャートでは、75日、200日の両移動平均線より大きく下方に位置しており、週足では、昨年夏場以降、長らく下値支持線として機能してきた52週移動平均線を依然として下回ったままだ。オミクロン株を巡る情勢を含め、テクニカル的にも、状況が著しく好転したとは言えず、油断はできないだろう。 また、やや気掛かりなのは前引けにかけて下落に転じるなど相対的に見劣りしたマザーズ指数。前日は3%近くと特に大きく下落していたため、前日の米ハイテク株高を追い風に、力強い戻りを見せると思われたが、日経平均やTOPIXを大きく下回るパフォーマンスとなっている。SOX指数高を背景に半導体関連株などに物色が向かっていることを考慮すれば、頷ける面もあるが、個人投資家の含み損益が一段と悪化している可能性も推察される。 他方、オミクロン株の話題が上がる前に市場で話題だった米国での金融政策を巡る動きについてだが、前日は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がオミクロン株について初めて見解を示した。パウエル議長は、足元の新型コロナ感染の増加とオミクロン株の発生は雇用と経済活動に下振れリスクとなるとともに、インフレ動向を巡る不確実性の高まりをもたらしたと指摘した。また、ウイルスに関する動向次第では対面での勤務意欲がそがれ、労働市場の前進が遅れることに懸念を示したという。 このほか、インフレ動向に関しては、FRBを含むほとんどの経済予測担当者が、需給不均衡の解消に伴いインフレ率が来年にかけて大幅に鈍化すると引き続き予想していると言及した。一方で、インフレ率を押し上げている一過性と思われる諸要因は、来年まで続く可能性があると示唆したようだ。 種々の発言をみる限り、インフレに対しては依然として「一時的」「一過性要因に基づくもの」との従来姿勢の維持を窺わせた一方、オミクロン株についてはそれなりの警戒感を抱いている様子。あくまで推測だが、こうした発言や見解を踏まえると、12月14日からの米連邦公開市場委員会(FOMC)での量的緩和縮小(テーパリング)加速などに関する早期金融引き締め懸念は後退した可能性が高いとみられる。 むろん、今週末に発表される12月米雇用統計の結果次第では、見方はまた変わるであろうし、12月のFOMCでは、FRBメンバーによる経済見通しやドットチャート(政策金利見通し)が公表されるため、内容次第では、再び金融引き締め懸念が台頭する可能性もあろう。ただ、前日の米国市場でハイテク中心とはいえ株式が大きく反発し、VIX指数が大きく低下するなかでも、米長期金利がほとんど上昇しなかったのには、こうした金融引き締め懸念の後退を強く映しているような印象も抱く。油断は禁物だが、一時揺らいだハイテク株高への期待は案外息の長いものとなるかもしれない。 さて、本日はMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が12日に発表したスタンダード・インデックスの定期入れ替えが行われる。日本株の新規採用は2銘柄、除外は15銘柄で、指数に反映される本日の終値を基準に日本の株式市場から約2200億円の資金が流出すると言われている。ただ、入れ替え実施後はこうした需給面での懸念が後退する。足元、企業の中間配当を受けた機関投資家の再投資と共に日本株のあく抜け上昇につながるとの見方もあり、外部環境次第ではあるが、明日以降、ハイテク株高のけん引役にも期待しつつ、日経平均の29000円回復を期待したい。
<AK>
2021/11/30 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続落、オミクロンショックは早くも織り込み済み?
日経平均は小幅続落。5.13円安の28746.49円(出来高概算7億0505万株)で前場の取引を終えている。 前週末26日の米国市場は軒並み急落。NYダウは一時1000ドル超下げ、終値では905.04ドル安(-2.52%)。南アフリカで検出された新型コロナウイルス変異株が世界経済の回復を損ねるとの懸念にアジアや欧州市場の流れを継いで、寄り付き後大きく下落。短縮取引で参加者が限られるなか安値を探る展開となった。リスク回避の動きから安全資産の米国債が買われ、米10年国債利回りは1.48%(-0.16pt)と急低下したが、ハイテク株も売られ、ナスダック総合指数は-2.23%の大幅下落。欧州でも英FTSE100、ドイツDAXなど主要株価指数は4%前後の急落となった。大阪取引所の夜間取引の日経平均先物は日中終値比940円安と27850円まで売られていた。 こうした流れを引き継ぎ、週明けの日経平均は413.66円安の28337.96円と大きく下げて始まったものの、寄り付き直後から下げ渋ると、早々に28500円を回復。その後再び下げ幅を拡げるなど一時荒い動きも見られたが、総じて底堅かった。時間外の米株価指数先物の上昇にも支えられ、前引けにかけてじりじりと下げ幅を縮める動きが続いた結果、前週末終値とほぼ変わらない水準まで戻して前場を終えた。 個別では、米長期金利の低下や円高・ドル安を嫌気して三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>の金融株のほか、トヨタ自<7203>や日産自<7201>、ホンダ<7267>などの輸送用機器が大きく下げている。また、経済活動正常化が頓挫するとの見方から、JAL<9201>、JR東<9020>、OLC<4661>などのアフターコロナ関連株が下落したが、いずれも朝安後は下げ渋った。そのほか、日本製鉄<5401>や三菱商事<8058>などの資源関連株の一角が大きく下落し、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、日立<6501>、村田製<6981>などは小安い。 一方、米長期金利の低下が下支え要因として働き、レーザーテック<6920>が大幅反発で、東エレク<8035>、スクリン<7735>、アドバンテスト<6857>などその他の半導体関連株も大幅高。任天堂<7974>やエムスリー<2413>といったグロース(成長)株の一角も大きく上昇。郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の大手海運株は、先週末のバルチック海運指数の大幅高やコロナ変異株拡大が海運市況ひっ迫につながるとの思惑から、景気敏感株が総じて売り優勢のなか逆行高。そのほか、キーエンス<6861>、リクルートHD<6098>、塩野義製薬<4507>、ベイカレント<6532>などが買われている。 セクターではゴム製品、輸送用機器、繊維製品などが下落率上位となっている一方、海運業、その他製品、電気機器などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の66%、対して値上がり銘柄は29%となっている。 週明けの日経平均は続落も、想定以上に底堅いとの印象を抱いた投資家が多いだろう。夜間取引の日経平均先物は安値で27510円と、既に急落していた週末日中取引の終値から更に1000円超も下げる急落ぶりを見せていただけに、現物の日経平均の28000円割れは避けられないとの見方が多かったと思われる。 しかし、実際には、週明けの日経平均は28000円よりは大分上の水準で始まり、前週末終値とほぼ同水準まで下げ幅を縮小した。先週末に欧米市場に先んじて急落していただけに、下げが限定的となるのは当然ともいえるが、やはり、インパクトのある夜間取引の動きを踏まえると、安堵感が強い。先週末については、米国市場が感謝祭の祝日で短縮取引となるなか参加者が限られており、動きが誇張されやすかったと思われるほか、米国市場が引けた後の動きが夜間取引の日経平均先物に集中したために、下げが過度に演出されたのかもしれない。いずれにせよ、28000円台を優に維持している点は安心感を誘う。 南アフリカ発症とされる新型コロナ変異株「オミクロン株」については、まだ分かっていないことが多いため、油断はできない。感染力はデルタ株よりも高く、ワクチンの有効性が低下する可能性も指摘されている。しかし、その後、米製薬大手ファイザーと共同開発した独ビオンテックは、新たな変異株に合わせたワクチンを100日以内に出庫できると言及したほか、米バイオのモデルナは、オミクロン株に対応する最初の実験用ワクチンを60~90日で作成し、来年早々には改良したワクチンを提供できる可能性を示した。 さらに、世界保健機関(WHO)によれば感染報告は比較的軽症となりやすい大学生だったようだが、今回の変異株について最初に警告を発した医師を含め南アフリカ共和国の医療専門家らは、オミクロン株に感染した人の症状はこれまでのところ軽いとも報告している。 まだ予断を許さない段階ではあるが、このように変異株に対しては明るい兆しが見られている。また、パンデミック発生当初と異なり、これまでの約2年間で世界はワクチンや治療薬の開発のほか、未知のウイルスとの向き合い方についても心得ている。マーケットは不透明感をもっとも嫌うとされているが、その段階が、変異株が伝わった先週末だとすれば、最悪については既に相当程度織り込んだとも捉えられる。実際、今日の前場までの動きをみる限り、そうした見方が裏付けられたようにもみえる。ニュースフロー次第で、今後も相場は乱高下するだろうが、過度な悲観も楽観も抱くことなく、常に冷静さを保っておきたい。 なお、今晩はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長とニューヨーク連銀総裁がオンラインイベントの冒頭で挨拶をする予定。足元の変異株拡大に対して、パウエル議長がどのような認識を示すのか、発言が注目される。 今週は週末の米雇用統計のほか、経済指標の発表が多い。週明けの米国市場が下げ止まるのかどうかや、パウエル議長の発言なども見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均は前引け水準を挟んだ一進一退になるとみておきたい。
<AK>
2021/11/29 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、新型コロナ変異株でリスクオフの矢面に
日経平均は大幅反落。719.65円安の28779.63円(出来高概算6億1000万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場は感謝祭の祝日で休場だった。欧州の主要株価指数はおおむねしっかり。しかし、南アフリカの国立伝染病研究所などが25日、新型コロナウイルスの新たな変異株が確認されたと発表。免疫を回避する性質や感染力が高いとして南ア・英国の保健当局などが懸念を示しており、本日の日経平均はリスク回避的な売りが先行して174円安からスタートした。その後も下げ幅を大きく広げる展開となり、前引けにかけて一時28756.05円(743.23円安)まで下落。取引時間中としては10月29日以来およそ1カ月ぶりに29000円を割り込んだ。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が5%超下落しているほか、日経平均への寄与が大きいソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>、空運のANA<9202>やJAL<9201>の下げが目立つ。その他売買代金上位も東エレク<8035>、ソニーG<6758>、トヨタ自<7203>など軒並み軟調。決算が嫌気されたタカショー<7590>は東証1部下落率トップとなり、H.I.S.<9603>などコロナ禍の影響が強い企業も下落率上位に多く顔を出した。一方、売買代金上位ではコスモス薬品<3349>が逆行高。本日は中間配当・株主優待の権利付き最終売買日となっており、権利取りの買いが入っているようだ。大規模な自社株買い実施を発表したシチズン<7762>も買い優勢で、住阪セメ<5232>は自社株買い発表と一部証券会社の投資判断引き上げを受けて東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、全33業種がマイナスとなり、空運業、非鉄金属、鉄鋼、海運業、鉱業などが下落率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は7%となっている。 前日の米市場が休場だっただけに、朝方は特段の材料なしとの見方が多かったが、そんなムードを吹き飛ばすリスク回避の売りが東京市場を襲った。ソフトバンクGやファーストリテの軟調ぶりと見ると日経平均先物に売りが出ている印象を受けるが、レーザーテックの大幅下落からは個別株にも売りが広がっているとみた方がいいだろう。前日にANAの新株予約権付社債(転換社債)発行で売られた空運株などは弱り目にたたり目と言わざるを得ない。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまり。前日は1日を通じて2兆1145億円と、8月27日以来の低水準だった。米感謝祭明けの本日も取引参加者は少ないだろうが、それにしても値幅の割に売買は膨らんでいない。積極的な押し目買いが入っていない可能性もあるとみておきたい。 新興市場ではマザーズ指数が-1.20%と3日続落。下落率は日経平均(-2.44%)ほど大きくはないが、こちらも前引けにかけて一段と軟化してきた。前日は日経平均が堅調に推移するなか、朝高後に失速する展開となった。前日の売買代金は東証1部とは対照的に、2663億円と2月16日以来の高水準。積極的に押し目買いを入れた個人投資家が押し返されたようにも見受けられる。 なお、市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は19日申し込み時点で3兆5793億円と、前の週に比べ1068億円増えた。一方でQUICK社の算出する信用評価損益率は-8.20%(前の週は-7.89%)と4週連続で悪化。前日からのマザーズの動向を見ていると、一段の損益悪化と個人投資家の資金余力低下も懸念される。 さて、日本時間の早朝に南アの新型コロナ変異株に関するニュースが伝わり、東京市場はリスクオフの矢面に立ってしまった感はある。とはいえ、過剰反応などと楽観視すべきでもないだろう。国内の感染状況が落ち着いているだけにイメージしづらいだろうが、欧州で感染者が過去最多ペースにあるなど、世界的にはむしろ懸念が強まっている状況にある。ひとまず南ア変異株に関する詳細な情報を待ちたいところだ。 また、仮に今回の変異株への懸念が一時的なものにとどまったとしても、前日の当欄で指摘したとおり、改めて米金融政策の正常化加速を巡る思惑が相場に重くのしかかるだろう。米金融大手ゴールドマン・サックスは米パウエル連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小(テーパリング)を加速し、さらに来年は3回の利上げに踏み切るとの予想を示しているようだ。ほかにも利上げ前倒しを見込む声が有力投資家などから挙がっており、やはり次回12月14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで積極的な買いは手掛けられにくくなるかもしれない。(小林大純)
<AK>
2021/11/26 12:19
ランチタイムコメント
日経平均は反発、やはり「FRB人事はインフレ対応含み」?
日経平均は反発。197.91円高の29500.57円(出来高概算5億1000万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに小幅反落し、9ドル安となった。週間の失業保険申請件数が52年ぶりの低水準となったほか、10月のPCE(個人消費支出)コアデフレーターが31年ぶりの大幅な伸びとなり、早期の利上げ観測が強まった。また、11月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で数人の参加者が量的緩和縮小ペースの加速を支持したことも明らかになり、軟調に推移する場面が多かった。ただ、引けにかけて感謝祭の祝日を前に買い戻しが入り、NYダウは下げ幅を縮小。金利上昇が一服し、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は上昇に転じた。本日の東京市場でもこうした流れを引き継いで値がさ株を中心に買いが先行し、日経平均は166円高からスタート。前場中ごろに一時29570.42円(267.76円高)まで上昇したが、その後はやや上値の重い展開だった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>などがしっかり。塩野義<4507>は3%超上昇し、取引時間中の上場来高値を更新。レノバ<9519>が商いを伴って6%上昇するなど、再生可能エネルギー関連銘柄の一角が物色されている。11月既存店売上が増収に転じたしまむら<8227>も大きく上昇。また、東洋電<6505>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、レーザーテック<6920>やリクルートHD<6098>が軟調で、トヨタ自<7203>や郵船<9101>は小幅に下落。新株予約権付社債(転換社債)による資金調達を発表したANA<9202>が6%近い下落となり、JAL<9201>にも売りが波及しているようだ。ニトリHD<9843>は11月既存店売上が減収に転じ4%超の下落。また、アルコニックス<3036>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、証券、鉱業、卸売業などが上昇率上位。一方、空運業、パルプ・紙、サービス業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の50%、対して値下がり銘柄は42%となっている。 米国では感謝祭の祝日を前に金利の上昇一服とともにハイテク株に買いが入り、本日の東京市場でも日経平均は値がさ株主導で反発する展開となっている。早々に29500円台を回復してきたことに意を強くする向きもあるかもしれないが、前日の下落分の半値戻し程度にとどまっているあたり、自律反発の域を出ないと言わざるを得ない。また、今晩の米国が祝日ということもあり、ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円あまりと低調。前日は日経平均先物に売りが多く出ていたため、本日は薄商いのなか先物の買い戻しでひとまず反発したといったところかもしれない。塩野義の高値更新が目を引くが、ディフェンシブ株へのシフトを示す動きということも想定しておく必要があるだろう。 新興市場ではマザーズ指数が+0.03%と小幅反発。こちらは朝方の買いが一巡すると早々に前日終値近辺まで押し返された。日経平均が先物の買い戻し主導で反発していることを思わせる。こうしたなかで強さを見せているのがIPO(新規株式公開)株で、本日新規上場したスローガン<9253>が公開価格の1.5倍で初値を付けたほか、上場2日目のサイエンスアーツ<4412>が公開価格の約2.7倍で初値を付けたのち、ストップ高水準まで急騰している。18日上場のGRCS<9250>が連日の大幅高となっており、個人投資家のIPO株への買い姿勢が強気に傾いてきた印象だ。もっとも需給主導の感も強く、株価バリュエーションを見ると過熱感があるのはやや気掛かり。 さて、米国では22日、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長の再任が発表され、金利の急上昇とともにハイテク株を中心に荒い値動きとなった。18日の当欄「インフレ不満からFRB人事が重み増しそう」で「次期議長人事はインフレ対応含みだろう」ということを強調したが、まさにそうした思惑が広がった格好だ。改めて確認すると、11月ミシガン大学消費者マインド指数の予想外の悪化、10月小売売上高の予想以上の増加といった強弱まちまちの経済指標は米国の経済的な分断を示している可能性がある。10月消費者物価指数(CPI)が大幅な伸びとなったことを受け、バイデン大統領がすかさず「物価抑制は最優先課題」などとアピールしたのを見ても、政権にとって来年の中間選挙に向けた最大のリスクは「インフレ」と考えられていることが窺える。 これを裏付けるかのように、11月のFOMCではインフレへの警戒感から量的緩和縮小ペースを加速すべきとの意見が複数上がったという。もともと米国では感謝祭を通過すると市場参加者が減るタイミングではあるが、12月14~15日の次回FOMCまで金融引き締めへの思惑から積極的に売買を手掛けづらくなったとみておいた方がいいだろう。 こうした外部環境に振らされる日本株だが、アジア市場では香港ハンセン指数や上海総合指数が小安く推移しており、為替市場では円安が一服。米休場を前に様子見ムードも強まりそうで、後場の日経平均は上値の重い展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/25 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり大幅反落、金利上昇受けたハイテク売りは一過性?
日経平均は3日ぶり大幅反落。337.38円安の29436.73円(出来高概算6億3630万株)で前場の取引を終えている。 週明け22日から国内が祝日だった23日までの米株式市場は、NYダウが17.27ドル高(+0.05%)、194.55ドル高(+0.54%)と続伸。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の再任が決まったことに伴う先行き不透明感の払しょくが相場を後押しした。22日は、ナスダック総合指数が日中取引で一時史上最高値を更新する場面があった。ただ、パウエル議長や副議長に指名されたブレイナード理事が物価対応を優先する姿勢を示すと、早期の利上げ観測が重しとなり、全般引けにかけて急失速。23日は米長期金利の上昇が続くなか、景気敏感株買い・ハイテク株売りの動きが続いた。この間、ナスダック総合指数は-1.26%、-0.50%安と続落。 米国での長期金利上昇やハイテク株安の流れを受け、祝日明けの日経平均は110.66円安の29663.45円でスタート。寄り付き直後は下げ渋って29700円台でもみ合っていたが、間もなくして失速すると、29500円台まで下げ幅を拡げた。その後は節目の29500円を意識した底堅さが見られていたが、踏ん張り切れずに前引けにかけて同水準を割り込むと、売りが加速し、下げ幅は300円を超えた。 個別では、米長期金利の大幅上昇を背景にレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などの半導体関連株から、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、ソフトバンクG<9984>などのハイテク株、ベイカレント<6532>、エムスリー<2413>、ZHD<4689>などのグロース(成長)株まで、株価バリュエーションの高い銘柄に広く売りが広がっている。東証1部の下落率上位には、Sansan<4443>やSHIFT<3697>、ラクス<3923>など高値圏にあるグロース銘柄が並んだ。 一方、約5年ぶりに1ドル=115円台まで進んだ円安・ドル高を追い風にトヨタ自<7203>、日産自<7201>、三菱自<7211>などの輸送用機器が大幅高。米長期金利の上昇を受けて三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>、東京海上<8766>などの金融株も上昇。バイデン米政権が日本や中国などと協調した石油備蓄放出を発表したものの、規模が大方の予想を下回ったことなどからWTI原油先物価格が大幅反発、これを受けINPEX<1605>が急伸、三井物産<8031>、丸紅<8002>、住友鉱<5713>など資源関連株も大幅高となっている。そのほか、安川電機<6506>がハイテク株安のなか逆行高となっており、キリンHD<2503>、マネックスG<8698>が大きく上昇している。 セクターではサービス業、情報・通信業、精密機器などが下落率上位となっている一方、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガス業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の61%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 祝日明けの日経平均は売り優勢で、押し目買い意欲が確認されていた29500円をも割り込んだ。一方、25日移動平均線はまだ割り込んでおらず、目先は同線のサポートが機能するかどうかが注目される。今後の米国市場動向次第ではあるが、この先、同線を下回らずに反発するようであれば、一段と売りは仕掛けづらい展開となりそうだ。 物色面では、ハイテク株やグロース株が広く売られるなか、米長期金利の上昇や円安を追い風に輸出関連株や金融株が全体の下支え役になっている。マザーズ指数は2%を超える下落率で下げがややきつい。7-9月期決算発表が終わり、大型株への物色が一巡したことで、直近、業績好調が確認された中小型株に資金が回帰していたが、米長期金利の上昇をきっかけに、利益確定の売りが広がっている。ただ、連日の急伸劇が話題となっている直近IPOのGRCS<9250>が今日も大幅高となっているほか、今日のような地合い下で真っ先に売り込まれても不思議ではない上場来高値圏にあるアスタリスク<6522>も堅調な動きとなっている。 また、今日久々に見られている「景気敏感株・バリュー株買い、ハイテク株・グロース株売り」のような分かりやすい構図がこの先も続くかと問われればどうだろうか。FRB人事の発表をきっかけに長期金利が上昇したことで物色に変化があったわけだが、直近、「ハイテク株買い、景気敏感株売り」が続いていたことを踏まえれば、利益確定の口実とされたにすぎず、現時点では調整の域を出ていないだろう。 FRB議長人事において、相対的によりハト派色の強いブレイナード氏が選ばれなかったことで、金融引き締めが加速するとの見方が、長期金利上昇やハイテク株売りにつながったわけだが、そもそもパウエル氏はFRB内でかなりハト派寄りだ。また、現任のパウエル氏の続投が決まったことは、むしろ、現行路線の維持が想定され、先行き不透明感の払しょくなどポジティブな面が強いと考えられる。結局、人事前後において特段の大きな変化があったわけでもない。 また、19日に1.55%にあった米10年国債利回りは23日に1.67%まで上昇した一方、先週、2.7%台での推移が続いていた米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、23日に2.62%まで低下した。期待インフレ率の低下を素直に捉えるならば、インフレ対応の進展が長期的にはインフレ加速を抑え、長期金利の上昇も抑えると債券市場が判断していると解釈できる。結果的に、総合的にみて今週に入ってからの速いペースでの金利上昇が続くことは想定しにくい。金利動向には注意を払いつつも、直近好調だったハイテク株やグロース株のトレンドは当面継続するとみておきたい。実際、上場来高値圏での推移が続いていた東エレク<8035>の今日の下落率は軽微で、押し目買い意欲の強さが窺える。 上海総合指数や香港ハンセン指数などアジア市況は小安い一方、時間外の米株価指数先物は下げ渋って大きく動いていない。また、前日のナスダック総合指数は続落も、長い下ヒゲを付け、下げ渋っている。後場の日経平均は弱含み継続も、ハイテク株の押し目買いや29500円回復に向けた底堅さが見られるかどうかに注目したい。
<AK>
2021/11/24 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は反落、3万円回復は想定以上に遠い印象
日経平均は反落。67.92円安の29677.95円(出来高概算5億4403万株)で前場の取引を終えている。 前週末19日の米株式市場でNYダウは268.97ドル安(-0.74%)と3日続落。オーストリアが再び全土ロックダウン入りするなど欧州で新型コロナウイルスが再流行、米国でも一部地域で感染件数の増加が見られ世界経済の回復を遅らせるとの懸念が根強く、寄り付き後下落。さらに、連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長が12月連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小(テーパリング)の加速についての協議が適切との認識を示唆したことも重しとなった。一方、長期金利の低下を背景にハイテク株は好調で、ナスダック総合指数、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は連日で史上最高値を更新した。 新型コロナ再流行による世界景気への懸念やNYダウの下落を受けて週明けの日経平均は127.32円安の29618.55円でスタートすると、安値圏でもみ合った後一時29542.29円まで下げ幅を拡げた。ただ、国内ではまだ新型コロナの感染動向が落ち着いていることや、ハイテク株には買いが入ったこともあり、日経平均は売り一巡後に下げ渋ると、その後は前引けまで下げ幅を縮める動きが続いた。 個別では、円高・ドル安を受けトヨタ自<7203>や日産自<7201>、デンソー<6902>などが大きく下落。米長期金利の低下による利ザヤ縮小懸念から三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>も売り優勢。新型コロナ再流行を嫌気し、JAL<9201>、エイチ・アイ・エス<9603>、JR東海<9022>、エアトリ<6191>などのアフターコロナ関連株が軒並み大幅下落。WTI原油先物価格の軟調を背景にINPEX<1605>が急落し、山崎製パン<2212>は投資判断の格下げを受けて下落。そのほか、株式売出実施を発表した国際紙パルプ商事<9274>、第三者割当による新株予約権発行を発表したディア・ライフ<3245>がそれぞれ急落し、東証1部下落率上位に並んでいる。また、東証2部では、東京商工リサーチとの業務提携解消を発表したリスクモンスター<3768>が急落し、下落率上位となっている。 一方、先週下落が目立った郵船<9101>や商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運株が大幅に上昇。レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、SUMCO<3436>などの半導体関連株、太陽誘電<6976>、日立製<6501>、ZHD<4689>、チェンジ<3962>、エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>、OLC<4661>、マネックスG<8698>などのハイテク株、グロース(成長)株の一部も買われている。また、先週末の取引時間中に業績及び配当予想の上方修正を発表した東京海上<8766>も上昇している。そのほか、OKK<6205>、GameWith<6552>、アグレ都市デザイン<3467>、JUKI<6440>、イソライト<5358>などが1部上昇率上位に並んでいる。 セクターでは鉱業、空運業、輸送用機器などが下落率上位となっている一方、海運業、証券・商品先物取引業、保険業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の55%、対して値上がり銘柄は39%となっている。 前場の日経平均は朝方の売り一巡後は下げ渋った。チャートでは25日移動平均線をサポートとした動きが続いており、底堅さが窺える一方、依然として3万円回復には遠い印象で、上値も重い様子。 欧州で新型コロナが再流行しており、感染者数が落ち着いている日本でも、冬の本格化に伴い感染第6波を警戒する声が聞かれる。そうした世界景気鈍化の懸念が再び強まっているなか、先週末は、FRBのクラリダ副議長が12月のFOMCでのテーパリング加速についての協議を示唆したしたほか、ウォラーFRB理事もテーパリングを加速し、ゼロ金利政策からの脱却を速める必要があるとの認識を示した。早期利上げ懸念が高まる中でも週末の米長期金利はむしろ低下するなど、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)を示唆するかのような動きもみられた。 現在は、発生当初と異なり、ワクチン接種が進んでいるほか、治療薬の開発も進展していることから、感染が再流行したとしても、重症患者数は抑えられ、医療ひっ迫につながる可能性も低いと思われる。ただ、こうした報道が増えてくると、世界の景気敏感株と位置付けられる日本株には少なくとも短期的には重しとなりかねないだろう。 また、先週には岸田政権の経済対策が、金額としては従来想定よりも大規模になる見込みなどとポジティブな報道もあったが、相場の反応は限定的で、結局、日経平均の3万円手前での足踏みの脱却にはつながらなかった。衆院選での与党勝利後に見られる株高アノマリーなどは一体どこにいったのかという印象だ。各種メディアでも既に報じられているが、政策の中身をみると、給付金などの分配色の強いものがほとんど。将来の成長につながるような政策は乏しいと言わざるを得ない。分配も大事だが、成長しなければいずれ分配する資金源が枯渇するのは避けられない。給付金などの分配政策も、その多くが貯蓄に回る可能性が高く、仮に一部が消費に回っても恒久的な消費支出の増加にはつながらないだろう。 結局、成長シナリオが描けていないからこそ、誰も積極的にそうした国の株を買おうと思わないのだろう。政権に関するニュースフローが出ても一向に3万円を回復しない日経平均、売買高が停滞傾向にある先物市場などの動きをみても、日本株がじり貧にあるような印象が拭えない。割安感だけでは日本株が買われないことは、これまでの動きをみても明らかだろう。日本株の上値の重い展開は想定以上に長くなることも想定しておいた方がよいかもしれない。 さて、後場の日経平均は戻り一服でもみ合いになるとみておきたい。明日は祝日で国内市場が休場となるなか、上海総合指数や香港ハンセン指数が小動きで新規の材料にも乏しい。祝日明け24日には、早期利上げ懸念が強まるなか注目度が高まっていると思われるFOMC議事要旨の公表のほか、FRBが政策判断で重要視するPCEコアデフレータなどの発表もある。さらに、今週中にはFRBの新議長の発表もあるだろう。これらの結果を見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均は動意薄とみておきたい。
<AK>
2021/11/22 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反発、経済対策も一段の上昇につながらず?
日経平均は3日ぶり反発。119.96円高の29718.62円(出来高概算5億7000万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でNYダウは続落し、60ドル安となった。決算が嫌気されたシスコシステムズの下落がNYダウを押し下げたほか、世界的な新型コロナウイルスの再流行や連邦準備理事(FRB)の議長人事を巡る不透明も重しとなった。ただ、小売企業の堅調な決算を好感した買いも散見され、引けにかけて下げ幅を縮小。また、好決算のエヌビディアがけん引役となって半導体関連株が上昇し、ナスダック総合指数は+0.45%で過去最高値を更新した。本日の東京市場でもこうした流れを引き継いで値がさの半導体関連株に買いが先行し、日経平均は42円高からスタート。朝方の買いが一巡すると小高い水準でもみ合う場面が続いたが、前場中ごろを過ぎて強含み、一時29755.92円(157.26円高)まで上昇した。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が堅調なほか、東エレク<8035>やルネサス<6723>が4~5%前後上昇するなど、半導体関連株が買われている。レーザーテックと東エレクは取引時間中の上場来高値を更新。その他では郵船<9101>などの海運株が反発し、任天堂<7974>は続伸。ソニーG<6758>は小高い。インドのトラクターメーカー買収を発表したクボタ<6326>は大幅続伸。また、マーケットE<3135>がストップ高を付け、東証1部上昇率トップとなっている。一方、中国アリババ集団の株価急落が売り材料視されたソフトバンクG<9984>は軟調で、トヨタ自<7203>もさえない。エーザイ<4523>やOLC<4661>はやや下げが目立つ。また、エイチーム<3662>が大幅に3日続落し、連日で東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、鉱業、卸売業、精密機器などが上昇率上位。一方、パルプ・紙、空運業、証券などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の32%、対して値下がり銘柄は62%となっている。 本日の日経平均は3日ぶりに反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。日足チャートでは、29700円台に位置する5日移動平均線を一時上回るも、この水準での攻防といった様相。日経平均の寄与度上位銘柄を見ると、東エレクが1銘柄で約104円押し上げている格好だ。また、NY原油先物相場の反発などから、前日下げの目立った市況関連セクターも堅調。ただ、東証1部銘柄の6割超が下落しており、全体としては利益確定売りが優勢という印象を受ける。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000円弱と前日並み。 新興市場ではマザーズ指数が-1.49%と3日続落。週前半に大きく上昇しただけに、週末を前に利益確定売りが出やすいところか。前日売りのかさんだアスタリスク<6522>などが急反発する一方、主力IT株が総じてさえない。なお、本日マザーズ市場に新規上場したAB&C<9251>は公開価格を6%下回る初値となったが、足元の株価は公開価格をやや上回って推移している。同社は美容室チェーンを全国展開。投資ファンドによる売出規模が大きく、需給懸念が先行したとみられるが、積極出店で業績を伸ばしており、公開価格も上値余地の感じられる水準だった。今後の値動きに期待したい。 さて、前日の日経平均は「経済対策が財政支出ベースで55.7兆円規模に膨らむ見通し」との報道を受けて後場急速に下げ渋り、プラス転換する場面もあった。しかし、買いが続かず終値では続落。本日も前日高値(29715.95円)を大きく上抜くには至っていないのを見ると、今回の経済対策が株価を一段と押し上げるとみる市場参加者はさほど多くないのだろうと考えざるを得ない。実際、中身を精査すると「規模が想定から拡大したわけではなさそう」といった見方が出てきている。 日本取引所グループが18日発表した11月第2週(8~12日)の投資主体別売買動向も確認しておきたい。外国人投資家は現物株を268億円売り越し(前の週は1236億円の買い越し)、東証株価指数(TOPIX)先物を2611億円買い越し(同1492億円の売り越し)、日経平均先物を1104億円買い越し(同264億円の売り越し)していた。海外勢が株価指数先物の買い越しに傾いてきたのは明るい材料と受け止められるだろう。ただ、ここ数日の先物手口を見ると、17日はモルガン・スタンレーMUFG証券がTOPIX先物・日経平均先物とも売り越し。18日はBofA証券がやはりTOPIX先物・日経平均先物とも売り越しとなった。日経平均が節目の3万円に迫る場面では、海外勢の先物買いも鈍くなると考えざるを得ない。 また、東京証券取引所が16日発表した12日申し込み時点の信用買い残高(東名2市場、制度・一般信用合計)は3兆4724億円で、前の週と比べ338億円減った。高値圏で利益確定売りが出たようで、2週連続の減少となっている。かねて指摘しているとおり、高水準の信用買い残が上値の重しとなっていることがわかる。 足元で円相場が1ドル=114.40円近辺まで下落してきており、後場の日経平均はこれを支えに堅調に推移しそうだ。もっとも、香港ハンセン指数が大幅に3日続落しており、外部環境は強弱まちまちか。また、前日の当欄で取り上げたとおり、週内に決定するというFRB議長人事にも注目したところで、やはり積極的に上値を追いづらいだろう。(小林大純)
<NH>
2021/11/19 12:18
ランチタイムコメント
日経平均は続落、インフレ不満からFRB人事が重み増しそう
日経平均は続落。236.92円安の29451.41円(出来高概算5億7000万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でNYダウは反落し、211ドル安となった。過去最高値に迫り利益確定の売りが出たほか、クレジットカードのビザが大きく下落してNYダウを押し下げた。また、引き続き世界のインフレ高進や新型コロナウイルス再流行への懸念もくすぶり、ナスダック総合指数など主要株価指数は揃って反落。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで90円安からスタートすると、29500円近辺では押し目買いも入り、前場中ごろまで軟調もみ合いが続いた。しかし、香港ハンセン指数や上海総合指数の軟調な出足を受けて一段と弱含み、前引けにかけて29402.57円(285.76円安)まで下落する場面があった。 個別では、バルチック海運指数やNY原油先物相場の大幅下落を受け、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株やINPEX<1605>が大幅安。認知症治療薬に対する欧州当局の否定的見解が嫌気されたエーザイ<4523>は9%近い下落となっている。レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>も軟調。 また、エイチーム<3662>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、リクルートHD<6098>が堅調で、キーエンス<6861>や任天堂<7974>は小じっかり。サイバー<4751>は6%超の上昇。また、特別利益計上と自社株買い実施を発表したメガチップス<6875>や、オーケーが株式公開買付け(TOB)再提案の可能性を示唆した関西スーパ<9919>は東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、鉱業、海運業、石油・石炭製品などが下落率上位。一方、サービス業、精密機器、機械などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の70%、対して値上がり銘柄は25%となっている。 海外株安が重しとなり、本日の日経平均も3ケタの下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、29600円台に位置する5日移動平均線を寄り付きから下回り、29500円近辺でいったん下げ渋ったとはいえ、アジア株安が重しとなってここを割り込んできた格好。原油・海運市況の急落で関連セクターの下げが目を引くが、日経平均への寄与が大きいソフトバンクGやファーストリテの軟調ぶりもやや目立つあたり、日経平均先物にまとまった売りが出ている可能性がある。 一方、決算発表後に売られていたリクルートHDを中心に、グロース(成長)株の一角がしっかり。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000円あまりで、29500円近辺での攻防が見られた割にやはり膨らんでいない。 新興市場ではマザーズ指数が-1.02%と続落。今週前半は新興株への物色シフトを背景に強い値動きだったが、本日は日経平均にやや先行する形で前場中ごろを過ぎると軟化してきた。相変わらず大幅高となっている銘柄も散見されるが、一昨日の当欄で取り上げたアスタリスク<6522>は信用取引規制の強化を受けて急落。アスタリスクに限らず回転売買による上値追いが強烈だった銘柄は少なくなく、反動に警戒しておく必要があるだろう。なお、本日マザーズ市場に新規上場したGRCS<9250>は公開価格の1.5倍ちょうどで初値を付けた。上場前株主の売却制限(ロックアップ)解除ラインがメドと受け止められたのだろうが、このところ初値伸び悩みが続いていただけに安心感のある結果。その後もおおむね初値を上回って推移しているが、引けにかけての値動きを注視したい。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.70%(-0.03pt)と続落し、10年物国債利回りも1.58%(-0.05pt)と反落した。前述のとおりNY原油先物相場は急落。米国が中国に対して原油の戦略備蓄の放出を要請したと伝わったほか、欧州で新型コロナ感染状況が悪化するなどして需給緩和が意識されたようだ。もっとも、インフレ高進への懸念が払しょくされたとは言えない。 前日発表の米10月住宅着工件数は年率換算で前月比-0.7%となり、市場の増加予想に反し、減速を示すものとなった。供給制約や住宅価格高騰の影響が響いたとみられている。直近の米経済指標を振り返ると、11月のミシガン大学消費者マインド指数は住宅着工件数と同様に予想外の悪化。一方で10月小売売上高は予想を上回る増加となった。強弱まちまちの経済指標が示しているのは、まさに一昨日の当欄で指摘した「経済的な分断」かもしれない。 10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)が約30年ぶりの大幅な伸びとなったことを受け、バイデン米大統領はすかさず「物価抑制は最優先課題」などとアピールした。来年の中間選挙を前に、インフレへの不満が政権の懸念材料となっていることが読み取れる。となると、週内にも決定するという米連邦準備理事会(FRB)の次期議長人事が一段と重みを増してきたと考えられる。現在、有力視されているのはパウエル議長の再任かブレイナード理事の昇格。ブレイナード氏はハト派的とみられているが、バイデン政権は次期トップにより踏み込んだインフレ対応を求める可能性がある。 日本でも前日あたりから再び金融所得課税の強化を巡る報道を目にするようになり、株価の重しになっているとみられる。政府・与党は来年度税制改正大綱で重要な「検討事項」に明記する方針という。再三指摘しているとおり、やはり日経平均の3万円台回復は近くて遠そうだ。(小林大純)
<NH>
2021/11/18 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反落、“優勝劣敗”鮮明で3万円回復は近くて遠い
日経平均は5日ぶり反落。133.38円安の29674.74円(出来高概算5億9028万株)で前場の取引を終えている。16日の米株式市場でNYダウは54.77ドル高(+0.15%)と小幅反発。ホームセンターのホーム・デポなどの好決算を好感し、寄り付き後上昇。また、11月の小売売上高をはじめNAHB住宅市場指数、10月製造業指数などが予想を上回ったため景気回復期待も手伝い終日堅調に推移した。マイクロソフトが上場来高値を更新するなどハイテク株への買いも入り、ナスダック総合指数は+0.75%、フィラデルフィア半導体株(SOX指数)は+1.73%となった。こうした流れを引き継ぎ、東京市場でも半導体を中心としたハイテク株に買いが先行するなか、日経平均は98.56円高の29906.68円でスタート。しかし、依然として3万円手前での戻り待ちの売りが根強く、寄り付き直後の29909.97円を本日の高値に失速すると、早々に前日比マイナスに転じた。その後も下げ幅を拡げる動きが続き、前場中頃には一時29623.79円(184.33円安)まで下落する場面があった。前引けにかけてはやや下げ渋ったが、戻りは鈍く、下げ幅を3桁のまま前場を終えている。個別では、SOX指数高を背景にレーザーテック<6920>が大幅高となり、連日で上場来高値を更新。東エレク<8035>も上場来高値を更新し、スクリン<7735>やアドバンテスト<6857>などの他の半導体製造装置銘柄に加え、HOYA<7741>、SUMCO<3436>など半導体材料銘柄でも大きく上昇しているものが目立つ。傘下の投資ファンドが国内ゴルフ場最大手のアコーディア・ゴルフ・グループを買収すると伝わったソフトバンクG<9984>は、米ハイテク株高も支援要因に上昇。対ドルでの円安進行を追い風にトヨタ自<7203>、SUBARU<7270>などの輸送用機器も買われており、トヨタ自はデンソー<6902>と共に連日で上場来高値を更新。そのほか、INPEX<1605>、SMC<6273>、太陽誘電<6976>も大幅に上昇。東証1部上昇率上位には直近好決算などを発表した銘柄が多く見られ、TOREX<6616>、芝浦機械<6104>、チェンジ<3962>、メック<4971>などが並んでいる。一方、リクルートHD<6098>が短期的な出尽くし感から本日も大幅に下落。連騰劇を繰り広げていたスノーピーク<7816>も騰勢一服で売り優勢。ソニーG<6758>、任天堂<7974>、川崎汽船<9107>、三菱UFJ<8306>、キーエンス<6861>、武田薬<4502>なども軟調で、日立製<6501>、ファーストリテ<9983>、ダイキン<6367>、JAL<9201>は大きく下落。1部下落率上位ではアフターコロナ関連株のオープンドア<3926>やエアトリ<6191>のほか、太平洋金属<5541>、トリドールHD<3397>、ワコム<6727>、東邦チタニウム<5727>、ファイバーG<9450>などが並んでいる。セクターでは空運業、サービス業、ガラス・土石製品などが下落率上位となっている一方、鉱業、精密機器、金属製品などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の69%、対して値上がり銘柄は24%となっている。前場の日経平均は寄り天井の形で陰線を形成。早々にマイナス転換するとその後も下げ幅を拡げる動きとなった。前日は29960.93円と3万円目前に迫りながらもその後急失速。本日も寄り付きこそ高く始まり3万円に迫るも急失速。上値の重さが強烈に印象付けられる形となった。一方、主要株価3指数が揃って史上最高値圏での推移を続ける米国では、大手金融グループのゴールドマン・サックスが、S&P500指数が2022年末には5100を付けると予想するなど、強気の見通しも出てきている。米国では年末に向けた株高ラリーの実現を有望視する声が多く聞かれるが、同社の見通しはこうした見方に弾みをつけるようだ。指数だけをみると、日米で圧倒的なパフォーマンス格差が確認され、なんとも陰鬱な気持ちになるが、個別に目を配れば過度に悲観することもない。レーザーテックや東エレクなど世界でも名を連ねる日本の代表的な半導体製造装置企業の株価は、連日で上場来高値を更新し、自動車の挽回生産が期待される輸送用機器セクターでも、トヨタ自やデンソーがこちらも半導体に負けじと連日で上場来高値を更新している。結局、日本の場合は成長が期待でき資金が集まる企業が米国に比べて圧倒的に少なく、一部の有望企業に資金が集中する結果、全体の動きを示す指数では目立ったパフォーマンスが出にくいというだけのことなのだろう。個別でみれば、上述のように世界に引けを取らない株価パフォーマンスを見せる銘柄はある。ただ、こうした日本国内での優勝劣敗の動きはより一層鮮明になっていきそうで、年末に向けた株高ラリーが日本でも起こるとしても、銘柄選別を間違えれば、波に乗り損ねることになりかねない。ちょうど決算発表が一巡したタイミングでもあるため、今一度、直近の決算を確認し、利益率がコロナ前と比較して改善しているかなど、収益力の向上などに着目して、銘柄選別を行うことが、今後の結果を左右しそうだ。さて、後場の日経平均は引き続き29500円~30000円でのレンジ相場が続きそうだ。今晩は米国で注目の半導体メーカーのエヌビディアの決算が予定されており、明日には同業のアプライド・マテリアルズの決算が予定されている。足元、日本の指数を支えているのは半導体関連株といっても過言ではないため、これらの決算内容と株価反応は非常に注目される。結果を見極めたいとの思惑もあり、後場も前場と同水準でのもみ合いとなることが予想される。
<NH>
2021/11/17 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は4日続伸、それでも「3万円が遠い」理由
日経平均は4日続伸。64.46円高の29841.26円(出来高概算6億株)で前場の取引を終えている。 週明け12日の米株式市場でNYダウは小幅に反落し、12ドル安となった。11月のNY連銀製造業景気指数が市場予想以上に上昇したことが好感され、航空機のボーイングが5%を超える上昇となったこともNYダウを押し上げた。ただ、インフラ投資法案の成立が更なるインフレ上昇につながるとの見方から、国債利回りが長期の年限を中心に上昇し、NYダウは引けにかけて下落に転じた。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで27円安からスタート。朝方に一時29681.25円(95.55円安)まで下落すると、前日終値近辺での小動きとなったが、米中首脳協議の内容が伝わると緊張緩和に向けた期待から29960.93円(184.13円高)まで急伸する場面があった。もっとも買いは続かず、前引けにかけて伸び悩んだ。 個別では、レーザーテック<6920>やトヨタ自<7203>が2%超上昇し、ソフトバンクG<9984>も堅調。中期経営計画が評価された村田製<6981>は3%の上昇となっている。前日ストップ高のスノーピーク<7816>は商いを伴って大幅続伸。また、決算発表銘柄ではトレックスセミ<6616>やテスHD<5074>が急伸し、チェンジ<3962>が東証1部上昇率トップとなっている。一方、決算発表のリクルートHD<6098>が3%近い下落。決算そのものは評価の声が多かったものの、材料出尽くし感や米金利上昇を受けて売りが出たようだ。郵船<9101>や川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株も軟調ぶりが目立つ。また。ヤーマン<6630>は上期業績を上方修正したが市場の期待に届かなかったとみられ、東証1部下落率トップとなっている。 セクターでは、保険業、鉱業、輸送用機器などが上昇率上位。一方、海運業、サービス業、陸運業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 前日の米主要株価指数が揃って小幅反落し、本日の日経平均もこうした流れを引き継いてスタートしたが、米中首脳協議に関する報道を受けて3万円近辺まで急伸する場面があった。売買代金上位ではレーザーテックやトヨタ自が上場来高値(株式分割考慮)を更新。レーザーテックは米金利上昇をものともしない動きだ。一方、高配当利回りで従前賑わっていた海運株がさえない。上場来高値圏にあったリクルートHDは好決算ながら反動安となっている。商品価格と同様に市況関連セクターはまちまち。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円弱で、商いはさほど膨らんでいない。決算発表がおおむね一巡したことに加え、米10月小売売上高などを見極めたいという思惑もあるだろう。 新興市場ではマザーズ指数が+1.06%と3日続伸。メルカリ<4385>やフリー<4478>が下落しているとはいえ、その他の主力IT株はおおむね堅調だ。しかし、それ以上に小型成長株・材料株の賑わいが顕著となっている。売買代金トップのアスタリスク<6522>は大幅に4日続伸し、連日で上場来高値を更新。9月30日に新規上場したばかりだが、現値24460円は公開価格3300円の約7.4倍、初値5760円の約4.2倍だ。2022年8月期会社予想ベースのPER(株価収益率)は約160倍となっている。 決算発表が一巡し、12月のIPO(新規株式公開)ラッシュを控えたこの時期は新興株に物色の矛先が向きやすい。前日のマザーズ売買代金は2033億円で、3月2日以来の2000億円台乗せとなった。アスタリスクの上値追いなどを見ると、株式需給は良好で、個人投資家の売買回転もうまく利いているのだろう。もっとも、株価指標面で正当化しづらい水準まで急騰している銘柄も少なくなく、米インフレ・金利上昇の逆風を跳ね返し続けられるかも見極めたいところ。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.76%(+0.03pt)へ一段と上昇。いったんは落ち着きつつあった10年物国債利回りも1.61%(+0.05pt)まで上昇した。製造業景況感が改善し、インフラ投資法案が成立したとはいえ、インフレへの懸念がくすぶるうちは素直に好感しづらいかもしれない。足元で複数の前地区連銀総裁から政策金利目標を最終的に3~4%に引き上げることになるとの発言が出てきている。 また、サマーズ元財務長官はインフレ抑制に失敗すればトランプ前大統領の返り咲きをもたらす可能性があるなどと述べた。12日に発表された11月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は予想に反して低下し、10年ぶりの低水準だった。製造業の回復や巨大ハイテク企業の成長で恩恵に浴する人々がいる一方、インフレにあえぐ人々が多いのも事実だろう。25日の感謝祭前後から始まる年末商戦の行方が気掛かりなほか、来年の中間選挙を前に経済的な分断が進む恐れもありそうだ。まずは今晩発表される10月小売売上高を見極めたい。 日本では、引き続き日経平均の3万円台回復に期待する声が根強くある一方、9日の当欄「3万円台回復に向けた買い手は誰?」で述べたように、3万円に向けて上値を買う投資家が少ないとの見方がじわりと広がってきた印象を受ける。米中の緊張緩和を期待材料に挙げる向きもあるが、そもそも足元で投資論点としてそれほど重要視されていただろうか。本日の値動きを見ても買いを入れているのはヘッドラインに反応して機械的に売買するタイプの投資家に限られる印象を受ける。 米金利上昇や円安進行を日本株の追い風と捉える向きもあるが、(1)自動車各社の値動きなどを見るとクオリティ重視が鮮明で、日本株全体に追い風となるバリュー(割安)株シフトは限られる。また(2)原材料高や円安進行による交易条件の悪化も重要な投資論点として浮上しており、素直に円安を好感しづらい。それに後日改めて取り上げたいと思うが、(3)7-9月期決算発表を通過しても日経平均の予想EPS(1株利益)増額は限定的だった。これらも踏まえ、日経平均の3万円台回復はまだまだ「近くて遠い」とみておきたい。(小林大純)
<NH>
2021/11/16 12:19
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、依然として3万円突破には決定打に欠ける
日経平均は3日続伸。144.64円高の29754.61円(出来高概算6億1192万株)で前場の取引を終えている。前週末12日の米株式市場でNYダウは179.08ドル高(+0.49%)と4日ぶりに反発。10月ミシガン大消費者信頼感指数が10年ぶりの低水準に落ち込んだことが一時下押し圧力として働いたものの、根強いハイテク株の買いや年末商戦への期待感が相場を押し上げた。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+0.99%と上昇した。こうした流れを引き継ぎ、東京市場でも半導体関連などハイテク株を中心に買いが先行し、日経平均は197.40円高の29807.37円でスタートすると、直後に29861.88円と本日の高値を記録。ただ、引き続き3万円手前での戻り待ちの売り圧力は根強く、朝高後は失速し、その後はじりじりと前引けまで上げ幅を縮小する展開となった。取引開始前に発表された7~9月期国内総生産(GDP)速報値が、物価変動の影響を除く実質で前期比0.8%減と市場予想の0.2%減を下回ったことも、相場への下押し圧力となったようだ。個別では、7-9月期の好決算に加え通期計画の上方修正や増配を発表した東エレク<8035>が買い先行で上昇し、上場来高値圏を更新、これを刺激材料にレーザーテック<6920>も5%近くの大幅高となっている。主力株ではソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>、村田製<6981>なども堅調。そのほか、好決算など業績関連のリリースを手掛かりに、ガンホー<3765>、ダブルスタンダード<3925>、恵和<4251>、エムアップHD<3661>、スプリックス<7030>、スノーピーク<7816>、日本トムソン<6480>、アステリア<3853>などが急伸し、東証1部上昇率上位に並んでいる。一方、決算が売り材料視されたテモナ<3985>、エフオン<9514>、ミルボン<4919>、サニックス<4651>、NCホールディングス<6236>、井関農機<6310>、リンクアンドモチベーション<2170>、タツモ<6266>などが1部下落率上位に並んでいる。そのほか、1部売買代金上位では、日本郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の大手海運株が大幅に下落し、JFEHD<5411>などの鉄鋼株も大きく下落。任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>、ベイカレント<6532>なども軟調となっている。セクターではパルプ・紙、サービス業、金属製品などが上昇率上位となっている一方、海運業、鉄鋼、空運業などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の47%、対して値下がり銘柄は46%となっている。週明け前場の日経平均は買い先行でスタートするも、依然として節目の3万円手前では売り圧力が強い様子。前週は25日移動平均線や29000円を一度も割らずに推移し、底堅さを示した。本日は好決算を受けて東エレクが上場来高値を更新するなど、支援要因もあったが、今日の動きを見ていると、3万円突破には決定打に欠ける印象。週末には、岸田政権の打ち出す経済対策が財政支出ベースで40兆円超と、従来の30兆円を上回る規模になる見込みと伝わっており、これが日本株の上昇になるとの見方もあったようだが、今日の動きをみる限り、ほとんど追い風にはなっていない。現金支給など、ばらまき色が強いとの批判も多く聞かれ、規模ありきの経済対策では、ほとんど評価にはつながらないようだ。主力企業の7-9月期決算は前週末で一巡し、今後はさらに材料難となる。米株高の上値追いなど外部環境からの支援要因がない限り、独自の株高要因に事欠く日経平均が3万円を突破するのは容易でないだろう。その上場来高値圏での好調な推移を続ける米国では、明日16日に10月小売売上高が発表予定。年末商戦の前倒しの動きから、市場予想では前月比1.3%増が見込まれているが、前週末に発表された10月ミシガン大消費者信頼感指数は10年ぶりの低水準に落ち込むなど、足元のインフレが消費者マインドを悪化させていることも確認されている。小売売上高が予想外にマイナスの結果になるなどネガティブなサプライズが出れば、高値圏で推移する米国株の調整にもつながりかねないため、注意したい。他方、午前に発表された中国の10月小売売上高は前年比4.9%増と、市場予想の3.7%増を上回り、10月鉱工業生産も前年比3.5%増と、市場予想の3.0%増を上回った。かねてから、景気減速懸念が高まっている中国において予想を上回る経済指標が確認されたことは安心材料となろう。ただ、結果発表後も、中国の上海総合指数や香港のハンセン指数は小安い展開で、特段好感する動きは見られていない。今晩は米11月ニューヨーク連銀景気指数、明日は米10月小売売上高・鉱工業生産、週後半の18日には米11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数など、注目度の高い経済指標や景気指標が多く予定されている。手掛かり材料難のなかこれらの指標結果を確認したい思惑も働きやすく、後場の日経平均は引き続きもみ合い展開となりそうだ。
<NH>
2021/11/15 12:13
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日経平均は大幅続伸、需給懸念は緩和したが…
日経平均は大幅続伸。334.35円高の29612.21円(出来高概算6億9000万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でNYダウは3日続落し、158ドル安となった。ベテランズデーの祝日で、債券市場も休場だったが、引き続きインフレ・早期利上げへの警戒感がくすぶった。また、ウォルト・ディズニー(DIS)が決算を受けて大きく下落したこともNYダウを押し下げた。一方、半導体関連株では買い戻しの動きが目立ち、ナスダック総合指数は+0.52%と3日ぶりに反発。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+1.94%となった。本日の東京市場では米ハイテク株高の流れが追い風となったほか、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しの発表やオプション11月物の特別清算指数(SQ)算出といったイベントを通過したこともあり、日経平均は103円高からスタート。朝方には29661.22円(383.36円高)まで上昇する場面があった。 なお、MSCI銘柄見直しでは日本株からベネ・ワン<2412>とオープンハウス<3288>の2銘柄が新規採用される一方、15銘柄が除外された。また、日経平均オプション11月物のSQ値は概算で29388.47円となっている。 個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>と同2位のレーザーテック<6920>が揃って3%前後の上昇。トヨタ自<7203>、郵船<9101>、東エレク<8035>などその他売買代金上位も堅調に推移している。決算発表銘柄ではPD<4587>、シチズン<7762>、ホトニクス<6965>、パーソルHD<2181>、丸井G<8252>などが大幅高。また、メドピア<6095>がストップ高を付け、大真空<6962>なども東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、売買代金上位では商船三井<9104>が逆行安。決算発表銘柄ではスズキ<7269>が売り優勢となっている。日医工<4541>は業績下方修正や無配が嫌気されて大きく下落。また、前期がのれんの減損計上などから赤字となったLIFULL<2120>、上期が減収減益となったアルヒ<7198>は東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、全33業種がプラスとなり、不動産業、鉱業、精密機器、情報・通信業、卸売業などが上昇率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は18%となっている。 本日の日経平均は300円を超える上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、29300円台に位置する5日移動平均線を寄り付きから上回り、上げ幅を拡大した格好。MSCI銘柄見直し発表やオプションSQを通過したことも含め、需給面の重しが取れたと受け止める投資家が多いのだろう。売買代金上位では米ハイテク株高の流れを引き継いで値がさ株の堅調ぶりが目立つが、業種別騰落率からは資産・商品インフレを見越した買いが入っている印象を受ける。中小型株の決算発表がシーズン最終盤に多くあり、好業績銘柄の物色も活発だ。ただ、ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱で、オプションSQ算出日だったことを考慮するとやや盛り上がりに欠ける感はある。前日は1日を通じて2兆4883億円で、減少傾向が続いている。 新興市場でもマザーズ指数が+1.70%と反発。米ハイテク株高が支援材料となっているだけでなく、時価総額上位のGMO−FG<4051>やAppier<4180>が決算を受けて大きく買われているのも好印象だ。なお、本日はマザーズ時価総額上位のフリー<4478>、セーフィー<4375>、ウェルスナビ<7342>、ジャスダック時価総額上位のハーモニック<6324>などが決算発表を予定している。 さて、前日の当欄でも触れたMSCI銘柄見直しは、日本株から採用2銘柄、除外15銘柄という結果になった。5月の見直しでは採用なし、除外29銘柄だったことから、今回も大幅な除外と日本株比率の低下が続くことが懸念されていた。また、このところヘッジ目的(とそれに乗じた投機目的の売買もあったと思われるが)の株価指数先物のオプション建玉が増加していたため、SQにかけての波乱を警戒する向きもあったようだ。こうした事情を背景に、本日は需給懸念が緩和して株価上昇につながったと考えられる。 もっとも、買いを入れているのは短期志向の投資家に限られるのかもしれない。今週も株価指数先物の取引は引き続き低調で、先物手口を見ても日経平均先物を中心に散発的な売買が出ている程度だった。現物株の方でも、東証1部売買代金の減少傾向を見ると取引参加者が増えているとは考えにくい。海外実需筋による東証株価指数(TOPIX)先物の買い戻しや、現物株での幅広い投資家の買い参加がなければ、引き続き日経平均は節目の3万円を前に上値が重くならざるを得ないだろう。 円相場は1ドル=114.20円台まで下落したが、足元やや下げ渋っている。アジア市場では香港ハンセン指数が4日続伸しているものの上値は重く、上海総合指数は小動き。国内では本日、東エレクなど700社近い企業の決算発表が予定され、米国では9月求人件数(JOLT)や11月ミシガン大学消費者態度指数が発表される。前日の米債券市場が休場だっただけに、10日の米10月消費者物価指数(CPI)発表後の金利動向も気になるところ。やはり後場の日経平均は上値の重い展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/12 12:22
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反発、円安支えだがリスクはなお山積
日経平均は5日ぶり反発。218.97円高の29325.75円(出来高概算6億2000万株)で前場の取引を終えている。 10日の米株式市場でNYダウは続落し、240ドル安となった。10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比+6.2%と市場予想を上回る伸びを見せ、インフレや早期利上げへの懸念が再燃。国債利回りが幅広い年限で大幅に上昇し、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-1.66%と続落。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)はDRAMの過剰供給などが指摘されるなかで-2.83%となった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで60円安からスタートしたが、寄り付き直後を安値にプラス転換。前日までの4日続落で700円近く下落しており、節目の29000円近辺では押し目買いが入ったほか、米金利上昇に伴い円相場が1ドル=114円近辺まで急落したことも輸出関連株の下支えとなった。前場中ごろを過ぎると上げ幅を大きく広げ、29336.03円(229.25円高)まで上昇する場面があった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が2%超の上昇。円安進行でトヨタ自<7203>が堅調なほか、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、郵船<9101>もしっかり。決算発表銘柄では昭電工<4004>が大きく買われている。また、中小型の材料株に物色が向かい、電子署名法の認定取得を発表した日本通信<9424>や業績上方修正のケイアイスター<3465>が商いを伴って急伸。それに、日シス技術<4323>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、資生堂<4911>は7-9月期の大幅営業減益が嫌気されて4%超の下落となり、アサヒ<2502>も決算を受けて2%超の下落。パンパシHD<7532>が業績下振れ懸念から急落しているほか、セレス<3696>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、非鉄金属、倉庫・運輸関連業、精密機器などが上昇率上位。一方、鉱業、建設業、不動産業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の48%、対して値下がり銘柄は46%となっている。 本日の日経平均は米株安の流れを引き継いでスタートするも、結局200円超の上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、29000円近辺まで上昇してきた25日移動平均線水準まで調整を強いられることなく、29300円台後半に位置する5日移動平均線に迫る動き。売買代金上位を見ると、円安進行を手掛かりとして輸出関連株を中心に押し目買い優勢の展開といったところだろう。トヨタ自などの直近決算を見ると、供給制約の影響を円安がカバーしており、為替動向が株式相場に与える影響が大きくなるのも頷ける。一方、資生堂やパンパシHDを見ると、内需系を中心として先行きに一抹の不安もある。東証1部全体としても値上がり銘柄数は値下がり銘柄数をやや上回る程度にとどまっている。 ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円弱。前日は1日を通じて2兆5202億円となり、一昨日の当欄で指摘した減少傾向が続いている。主要企業の決算発表がかなり進んだとはいえ、シーズン終盤に入り発表企業数が増えていることから、このタイミングでの売買減少には違和感もある。中小型株が売買代金上位に顔を出すようになり、主力大型株の手控えムードも感じる。 新興市場ではマザーズ指数が-0.50%と反落。こちらも朝安後は下げ渋ったが、内需系グロース(成長)株中心だけに円安の恩恵は限られ、米インフレ・金利上昇のマイナス影響をストレートに受けやすいかもしれない。時価総額上位のJTOWER<4485>が決算を受けて急伸しているのは明るい材料だが、逆にEV(電気自動車)関連として賑わっていた日本電解<5759>が急落するなど、引き続き値動きの荒さに懸念もある。 さて、前日の米市場では10月CPIの上昇を受けてインフレ・早期利上げ懸念が再び台頭したようだ。期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.70%(+0.07pt)に、10年物国債利回りは1.55%(+0.11pt)に上昇。バイデン大統領が「インフレの反転が最優先課題」と述べるなど、政府・議会要人が相次ぎインフレ対応に言及した。なお、国債利回りは幅広い年限で大幅に上昇。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は18.73(+0.95)と上昇が続いた。根強い先高期待とインフレ等への懸念が交錯し、楽観的水準にあったVIXはじりじり上昇してきている。 NY原油先物相場は大幅反落したが、中国で早くも寒波が到来するなど、厳冬観測を背景に先高懸念は根強くある。米国では原油の戦略備蓄放出のみならず、禁輸まで踏み込むよう求める声が一部議員らから上がっているようで、エネルギー価格の動向と経済・金融市場に与える影響を注視しておく必要がありそうだ。それに企業の決算発表、連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過してきた米国だが、インフレや供給制約への懸念がくすぶるなか、25日の感謝祭前後から始まる年末商戦の行方にはやや不安がある。 また、中国も寒波のみならず、経営危機にある中国恒大集団の動向が引き続き注目される。結局、10日に猶予期限を迎えたドル建て社債の利払いは実施されたもようだが、昨夜から関連報道が錯綜し、むしろ不安が長引きそうとの懸念が拭えない。 日本株を巡っては、日本時間12日早朝にMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しが予定されている点に注意する必要があるだろう。5月の見直しで日本株は除外29銘柄、採用なしだった。日本株の比率引き下げが続いており、資金流出懸念がくすぶっている。円相場が1ドル=114.10円近辺でやや下げ渋っていることや、アジア市場で香港ハンセン指数が伸び悩んでいることもあり、後場の日経平均は上げ一服になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/11 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は4日続落、決算一巡近づくなか上値切り下げで印象悪く
日経平均は4日続落。88.46円安の29197.00円(出来高概算5億9222万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは112.24ドル安(-0.30%)と3日ぶりに反落。10月生産者物価指数(PPI)が引き続き高い伸びを示したため、インフレ警戒感に伴う売りから下落スタート。さらに、史上最高値付近からの利益確定売りも強まり、終日軟調に推移した。債券の売り方の買い戻しにより米10年国債利回りは1.4%台前半へと一段と低下したが、ハイテク株も利益確定売りに押され、ナスダック総合指数は12日ぶりに反落、記録的な高値更新劇は途絶えた。なお、電気自動車テスラは、最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏による保有株売却懸念から11%安と急落した。 米株安を受けて、日経平均は76.40円安の29209.06円でスタート。前日までの下落による値ごろ感もあって、朝方に付けた29155.80円(129.66円安)をこの日の安値に下げ渋ると、その後は一時前日比プラス圏に浮上する場面もあったが、戻り待ちの売りも根強く、再び軟調な動きが続いた。 個別では、営業利益予想の上方修正値が市場予想に届かず、下期が上期比で大きく鈍化する見通しとなった東邦亜鉛<5707>が急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。オークネット<3964>は好決算が続いたが、高進捗率ながら通期計画が据え置かれたため急落。新電元工業<6844>も上期好決算も通期計画据え置きで失望売りを誘った。 また、業績予想を下方修正した三井住友建設<1821>やエレコム<6750>のほか、決算関連のリリースをきっかけに、住友ゴム<5110>、ビジョン<9416>、クレディセゾン<8253>、セイコーHD<8050>、シップHD<3360>、三菱マテリアル<5711>、三井金<5706>、キリンHD<2503>などが下落率上位に並んでいる。そのほか、1部売買代金上位では、ソフトバンクG<9984>、レーザーテック<6920>、マネックスG<8698>が急落しており、東エレク<8035>、JFE<5411>、ベイカレント<6532>、レノバ<9519>、ホンダ<7267>なども大幅に下落している。 一方、7-9月期好決算で通期計画を市場予想以上の水準に上方修正した日産自<7201>が急伸、同様に好決算など業績関連のリリースを手掛かりにデジタルハーツHD<3676>、ケイアイスター不動産<3465>、ウィルグループ<6089>、芝浦機械<6104>、ネクソン<3659>、鈴木<6785>などが1部上昇率上位に並んでいる。そのほか、一部メディアの報道を手掛かりに大有機化<4187>が、証券会社によるカバレッジ開始で三井ハイテク<6966>なども大幅に上昇している。1部売買代金上位では、日本郵船<9101>、川崎汽船<9107>などの大手海運株が上昇、そのほか、任天堂<7974>、トヨタ<7203>、エムスリー<2413>、OLC<4661>なども買われており、8日に好決算を発表したTOWA<6315>が改めて本日急伸している。 セクターではゴム製品、空運業、非鉄金属などが下落率上位となっている一方、海運業、鉱業、パルプ・紙などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の49%、対して値上がり銘柄は45%となっている。 前場の日経平均は前日終値水準でのもみ合い。前週末5日から前日までの間に500円超下げており、心理的な節目の29000円も近づいているだけに、さすがに今日は下げ渋っている。ただ、日足チャートでは、前日までに4日連続で陰線を形成しているうえ、今日までを含めると、上値と下値もじりじりと切り下がってきている。7-9月期決算も今週で一巡するが、今後さらに手掛かり材料に欠けると想定されるこのタイミングで、こうした弱い動きが続いている様子を見ると、日本株を取り巻く環境は芳しいとは言えないだろう。 国内外の機関投資家が日本株を積極的に買ってくる動きが見られないなか、国内の個人投資家による保有も多いとみられる米テスラ株の急落が、個人投資家の含み損益の悪化を通じて、日本株の上値抑制要因ともなりそうで、気掛かりだ。 さて、米国のインフレ動向に目を向けると、9日、米10年国債利回りは1.44%(前日比-0.05%)と低下した一方、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は2.63%(同+0.01%)と上昇した。11月に入ってから米長期金利が低下傾向を示す一方、米BEIは上昇を続けている。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下は株式市場には追い風で、実際がこうした背景が、8日までの歴史的な米国株の高値更新劇を演出していたとも考えられる。 しかし、前日に発表された10月米PPIは総合で前月比+0.6%と、9月の+0.5%から伸びが加速。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアでも前月比+0.4%と、9月の+0.2%を上回った。ともに市場予想範囲内に収まっているものの、インフレ沈静化の兆しは未だに見られない。 足元の米金利(短中期~長期)の低下は、直近、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げに慎重な姿勢を示したことや、英イングランド銀行が予想に反して利上げを先延ばしにしたことで、金利上昇を見込んでいた債券の売り方が急速に買い戻していることが大きな要因として考えられる。しかし、4日に一時1バレル=78ドル台まで急落したWTI原油先物価格は9日、再び1バレル=84ドル台にまで急上昇してきている。また、上述したように、金利低下が進むなかでも、米BEIは再び上昇しはじめてきている。足元の金利低下はあくまで需給要因によるもので、市場のインフレ懸念が後退したわけではない。 各国の金融政策関係者は、すでに供給制約に伴うインフレ高進は、来年まで続くとの見方を示しているため、足元の物価指標の結果が市場をかく乱する可能性は低いだろう。しかし、どの時点で、「インフレは一時的」とする政策関係者の考えや、これに基づく市場関係者の見方が修正を迫られるかは不透明だ。 こうした中、今晩は、10月米消費者物価指数(CPI)の発表が控えている。手掛かり材料に欠けるなか、結果を見極めたいとの思惑から、引き続き東京市場では積極的な押し目買いは手控えられそうだ。中国株や香港株も軟調ななか、後場の日経平均は引き続きもみ合い、弱含みでの推移とみておきたい。
<AK>
2021/11/10 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小幅反発、3万円台回復に向けた買い手は誰?
日経平均は3日ぶり小幅反発。29.12円高の29536.17円(出来高概算5億8000万株)で前場の取引を終えている。 週明け8日の米株式市場でNYダウは続伸し、104ドル高となった。ナスダック総合指数、S&P500指数とともに過去最高値を連日で更新し、ナスダック総合指数は2019年12月以来の11日続伸。週末に議会下院がインフラ投資法案を可決したことが好感され、連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長ら高官発言もおおむねハト派的と受け止められた。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで50円高からスタートすると、大規模な自社株買いを発表したソフトバンクG<9984>の急伸もあって、朝方には一時29750.46円(243.41円高)まで上昇。ただ、引き続き節目の3万円に迫る場面では売りが出て上値が重く、NYダウ先物が時間外取引で下落していることも重しとなって伸び悩んだ。前場中ごろを過ぎるとマイナスに転じる場面もあった。 個別では、前述のソフトバンクGが売買代金トップで10%の上昇。1兆円を上限に自社株買いを実施すると発表している。その他売買代金上位では太陽誘電<6976>が5%超上昇しているほか、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、任天堂<7974>などがしっかり。決算発表銘柄では住友鉱<5713>やヤマハ発<7272>が買われている。また、関西スーパ<9919>は10月29日開催の臨時株主総会を巡る思惑から東証1部上昇率上位にランクイン。MBO(経営陣の参加する買収)実施を発表した片倉<3001>はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、郵船<9101>やファーストリテ<9983>は軟調。決算発表銘柄では飯田GHD<3291>が材料出尽くし感から急落し、業績下方修正の東急建設<1720>は東証1部下落率トップとなっている。 セクターでは、情報・通信業、鉄鋼、鉱業などが上昇率上位。一方、海運業、空運業、ゴム製品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の31%、対して値下がり銘柄は63%となっている。 本日の日経平均は米株高を好感して朝方に一時200円超上昇したが、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、上ひげを付けつつ連日で陰線を形成しており、やはり節目の3万円接近での上値の重さが拭えない。ソフトバンクGが1銘柄で約132円押し上げる一方、ファーストリテなどが押し下げ役となっている。業種別では商品市況の上昇で鉱業などの関連セクターが堅調だが、前日上昇した海運株や空運株は利益確定売り優勢。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、東証株価指数(TOPIX)は-0.08%で前場を折り返した。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、決算発表シーズン中にも関わらずここ数日やや減少傾向なのは気掛かり。株価指数先物の売買に至ってはかなり低調な印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-0.27%と続落。前日は2%超下落し、日経平均などと比べても軟調ぶりが目立った。米テスラでイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の保有株売却懸念が広がるなどして、国内の個人投資家もセンチメントがやや悪化した感がある。本日のマザーズ市場でもこのところ賑わっていた銘柄が相次ぎ急落しており、投資損益の悪化が個人投資家の資金余力に影響してくるか注視したい。なお、今週はマザーズ市場でも決算発表のピークを迎え、10日にJTOWER<4485>、12日にセーフィー<4375>、フリー<4478>、ウェルスナビ<7342>などが予定されている。 さて、前日の米市場では商品市況の上昇とともに、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.62%(+0.08pt)に上昇。10年物国債利回りも1.49%(+0.04pt)と反発したが、「FRBは利上げを急がない」との見方を背景に、依然として株高は崩れていない。ただ、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が17.22(+0.74)とじりじり上昇してきているのは少々気になる。明日10日には10月消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、「インフレは一時的」とのFRBの見解に再び疑念が広がらないか注視する必要もあるだろう。 日本株はというと、かねて当欄で予想していたとおり、米株比でのアンダーパフォームが鮮明となりつつある。国内の市場関係者からは、衆院選通過による安心感と本格検討に入った経済対策への期待で3万円台回復を見込む声も聞かれる。しかし、「3万円台回復に向けた買い手は誰か」という視点に欠ける印象を受ける。これまでたびたび指摘しているが、海外勢の株価指数先物の買いは足元一服しており、現物株投資家の信用取引状況も買い残が高水準となる一方、売り残は低水準となっている。 朝方から円相場がやや強含んでおり、アジア市場では香港ハンセン指数や上海総合指数が日経平均と同様に朝高後伸び悩み。後場の日経平均も上値を試す動きは乏しいとみておいた方が良いだろう。なお、本日は大和ハウス<1925>、バンナムHD<7832>、NTTデータ<9613>など200社前後の決算発表が予定されており、米国では10月の卸売物価指数(PPI)が発表される。(小林大純)
<AK>
2021/11/09 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続落、3万円突破には材料不足か
日経平均は小幅続落。21.00円安の29590.57円(出来高概算6億5068万株)で前場の取引を終えている。 前週末5日の米株式市場でのNYダウは203.72ドル高(+0.56%)と反発。10月米雇用統計は雇用者数の伸びが前月比53万人増と、予想(45万人増)を上回る結果となり、労働市場の回復を好感。また、製薬会社のファイザーが開発中の新型コロナウイルス感染症治療の飲み薬について重症化リスクを大きく軽減することを明らかにしたことに加え、専門家が来年の1月までにパンデミックが終了する可能性に言及すると回復期待感が一段と強まり、買いが加速。一方、米10年国債利回りが1.4%台へと低下するなか、ハイテク株も買われた。結局、S&P500指数、ナスダック総合指数と揃って史上最高値を更新した。 米株高が追い風となるなか、前日には米下院が1兆ドル規模のインフラ法案を可決し、バイデン大統領が近く署名すると伝わったこともあり、日経平均は123.88円高の29735.45円でスタート。ただ、始値をこの日の高値にすぐに失速すると、間もなくしてマイナスに転じた。そのまま下げ幅を拡げ、一時は29518.20円まで下落。節目の29500円近辺では押し目買いも入り、下げ渋ったが、戻り待ちの売りも根強く、マイナス圏での推移が続いた。 個別では、業績予想の下方修正がネガティブサプライズとなったミクシィ<2121>が急落、業績予想を上方修正したものの、修正幅が物足りないとの評価につながったJFEHD<5411>と共に東証1部の下落率上位に顔を出している。そのほか、決算や業績予想の下方修正を材料に、ボルテージ<3639>、JMS<7702>、JBR<2453>、タムラ製作所<6768>、ソリトンシステムズ<3040>などが大幅に下落し、値下がり率上位に並んでいる。時価総額が大きめのところでは、ダイフク<6383>、クボタ<6326>、GSユアサ<6674>なども決算を材料に大幅安となっている。なお、子会社の不適切会計の疑いを背景に決算発表を延期したアウトソーシング<2427>は値下がり率トップに。主力株では、任天堂<7974>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、三菱商事<8058>、エムスリー<2413>などが軟調推移。 一方、好決算や業績予想の上方修正を手掛かりにメイコー<6787>が急伸し1部上昇率トップに躍り出たほか、山一電機<6941>、プレス工業<7246>、日本CMK<6958>、ホシデン<6804>などが上昇率上位に並んでいる。ラウンドワン<4680>は業績予想の上方修正を受けて急伸。オープンドア<3926>も7-9月期営業損益が赤字ながら、アフターコロナ関連株高の波に乗り、急伸。 時価総額の大きいところでは、オリンパス<7733>が業績上方修正を、IHI<7013>は業績観測報道を材料に大幅高に。子会社の上場発表が引き続き手掛かりとなったマネックスG<8698>は本日もストップ高まで買われている。主力株では、日本郵船<9101>などの大手海運株のほか、JAL<9201>、JR東海<9022>、エアトリ<6191>、エイチ・アイ・エス<9603>などアフターコロナ関連株が軒並み高に。ほか、東エレク<8035>、日立製<6501>、INPEX<1605>、伊藤忠<8001>なども買われている。 セクターでは鉄鋼、水産・農林業、医薬品などが下落率上位となっている一方、空運業、海運業、鉱業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の49%、対して値上がり銘柄は44%となっている。 本日の日経平均は寄り付きから急失速すると軟調な値動きが続いた。半導体不足や供給網の混乱の影響が大きい輸送用機器セクターの比率が高いこともあり、これまでの日本企業の7-9月期決算は米国企業と比べて見劣りしている。資源価格の高騰や円安による輸入物価高もあり、日本企業を取り巻く環境は相対的に厳しい。 衆院選は、自民党が想定以上に健闘した結果となり、政権運営化に期待する声もあるようだが、そもそも岸田政権が掲げる政策への海外投資家からの事前評判は高くなかった。経済対策の内容も今のところ景気浮揚につながりそうなものは現金給付策くらいしか見えてきていない。また、中長期の目線でみても、株式市場が好感するような政策はそもそもほとんど見られない。世界的に日本株のバリュエーションが割安とはいえ、企業を取り巻く環境が相対的に厳しく、政策評価も大きく変わっていなければ、日本株を積極的に選好する理由は乏しいだろう。日経平均の3万円突破には材料不足の状況といえそうだ。 また、本日は指数寄与度の大きいソフトバンクG<9984>の決算が控えている。当局による規制強化をきっかとした中国株の下落などを背景に、7-9月期のビジョンファンド事業は赤字となった可能性も指摘されているだけに、結果と株価反応を見極めたいとの思惑も強いだろう。すでに年初来安値圏にある同社株だが、一段安となると、信用買い残も積み上がっているだけに個人投資家心理が悪化しそうだ。 米株市場も総じて堅調とはいえ、主要株価3指数が揃って過去最高値圏にあるなか、前週末にはNYダウ、S&P500指数、ナスダック、いずれも長めの上ヒゲを形成している。米連邦準備制度理事会(FOMC)というイベントリスクがなくなり、季節性要因の調整圧力も後退、インフラ法案も署名される見通しとあって、米国株を巡る環境はすこぶる良好だが、騰勢一服も意識されるタイミングだ。ソフトバンクGの決算に加え、今晩の週明けの米株市場の動向を見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均もさえない展開が続きそうだ。
<AK>
2021/11/08 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は反落、やはり「需給的に上値は重い」
日経平均は反落。200.76円安の29593.61円(出来高概算6億6000万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でNYダウは6日ぶりに反落し、33ドル安となった。7-9月期の非農業部門労働生産性(速報値)が40年ぶりの低水準に落ち込んだことなどを受け、景気敏感株を中心に利益確定売りが出た。ただ、長期金利の低下でハイテク株が買われ、ナスダック総合指数は+0.81%と9日続伸し、連日で過去最高値を更新した。本日の東京市場でも米ハイテク株高の流れを引き継いで値がさ株を中心に買いが先行し、日経平均は46円高からスタート。しかし、寄り付きをこの日の高値にマイナス転換すると、前場中ごろを過ぎて29579.57円(214.80円安)まで下落する場面があった。今晩の米10月雇用統計の発表を前に持ち高調整の売りが出たほか、円相場の上昇などが重しとなった。 個別では、決算発表を受けて前日の後場に急落した郵船<9101>、川崎船<9107>といった海運株が本日も大幅続落。郵船は増配を発表したものの、物足りないとの見方が出ている。業績上方修正のダイキン<6367>は市場予想に届かず3%の下落。上期が営業減益となったソフトバンク<9434>は5%の下落となっている。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>やトヨタ自<7203>が軟調。また、武蔵精密<7220>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、米ハイテク株高を受けてレーザーテック<6920>、キーエンス<6861>、東エレク<8035>がしっかり。SUMCO<3436>は好決算で8%上昇している。その他の決算発表銘柄では任天堂<7974>が売り先行もプラス転換し、レノバ<9519>は商いを伴って急伸。また、JALUX<2729>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、鉄鋼、倉庫・運輸関連業などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、金属製品、鉱業、ゴム製品の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の78%、対して値上がり銘柄は19%となっている。 本日の日経平均は200円の下落で前場を折り返した。今週に入ってから前日までの4日間で900円超上昇しており、米雇用統計の発表を控えた週末を前に利益確定売りが出やすいだろう。日足チャートを見ると、本日を含めたここ2日ほど節目の3万円接近で連日の陰線となり、上値の重さを感じさせる。一方、29600円近辺では下げ渋っており、押し目買い意欲も根強いことが窺える。個別・業種別の騰落状況では、米株と同じく景気敏感セクターが軟調ながら、ハイテク株は堅調。海運株は前日後場からの売りが継続している。レノバに見直し買いが入り急伸するなど、決算を手掛かりとした物色も活発だ。ただ、ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりと前日に比べやや少ない。 新興市場ではマザーズ指数が-0.10%と小幅ながら4日ぶり反落。朝方こそハイテク株高を追い風に堅調だったが、こちらも週末を前に利益確定売り優勢だ。決算発表のBASE<4477>は見直しムードに乏しくさえない。また、本日マザーズ市場に新規上場したフォトシンス<4379>は公開価格を下回って推移。スマートロック開発の有力スタートアップとして期待される一方、公募・売出規模が100億円超と大きかった。IPO(新規株式公開)銘柄への投資スタンスが積極的な局面なら公開価格割れを免れたかもしれない。ただ、「ARR(年間経常収益)3割成長でPSR(株価売上高倍率)20倍の株価評価を引き出し、2~3割下回る公開価格設定で需要家を募る」という有力テック企業のIPOにおける「必勝パターン」が簡単には通用しなくなった可能性もある。今後のIPOに注目したい。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.56%(+0.03pt)に上昇する一方、10年物国債利回りは1.52%(-0.08pt)に低下。米労働生産性の低下に加え、英イングランド銀行(中央銀行)が事前の利上げ観測に反し政策金利を据え置いたことも金利低下につながった。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は低下方向に動き、株式、特にハイテク株にとって追い風となった。 もっとも、2~3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過したとはいえ(だけに、とも言える)、今晩発表される米雇用統計を受けての波乱を警戒する向きは根強くあるようだ。米株式市場にはまだまだ緩和マネーがあふれ、そう簡単に株高が崩れる印象に乏しいが、かなり楽観ムードが強まっているだけに反動を警戒しておく必要はあるだろう。 一方、日本株はというと、「需給的に米株と比べ上値が重くならざるを得ない」という前日の当欄で指摘したとおりの展開となりつつある。前日は日経平均が273円高となったものの、先物手口を見ると外資系証券が大きく買い越しに傾いた印象に乏しかった。また、前日の後場以来軟調な海運株はまさに信用買い残が大きく膨らんでいた銘柄で、決算内容にかかわらず目先の利益確定売りが出やすかったと考えられる。本日ハイテク株が買われているように根強い循環物色が下値を支えるだろうが、やはり日経平均3万円を前に上値は重いとみておいた方がいいだろう。 足元では円相場の上昇が一服しつつあるが、アジア市場では香港ハンセン指数などが軟調。また、本日はホンダ<7267>、オリンパス<7733>、伊藤忠<8001>、三菱商事<8058>など300社超が決算発表を予定している。これらの業績や米雇用統計の内容を見極めたいとのムードもあり、後場の日経平均は軟調もみ合いが続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/05 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は反発、「米楽観ムードへの懸念」と「日本株の需給の重さ」
日経平均は反発。271.57円高の29792.47円(出来高概算6億9000万株)で前場の取引を終えている。 3日の東京市場は文化の日の祝日で休場だったが、米株式市場ではNYダウが2日138ドル高、3日104ドル高となった。3日まで開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では予想どおり量的緩和の縮小(テーパリング)開始が決まったが、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長は「インフレは一時的」との見方や利上げへの慎重姿勢を再表明。総じてハト派的な内容と受け止められ、主要株価指数は揃って連日で過去最高値を更新した。東京市場では2日の取引でFOMCを前に持ち高調整の売りが出ていたため、FOMC結果を受けた米株高が安心感につながり、祝日明けの日経平均は338円高からスタート。朝方には一時29880.81円(359.91円高)まで上昇したが、本日発表されるトヨタ自<7203>決算や5日に発表される米10月雇用統計の内容を見極めたいとの思惑もあり、やや上値の重い展開となった 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が6%上昇しているほか、キーエンス<6861>や東エレク<8035>といった値がさハイテク株、それに郵船<9101>や川崎船<9107>といった海運株の上昇が目立つ。2日の決算発表銘柄ではZHD<4689>が6%超上昇し、朝方決算発表した富士フイルム<4901>は5%の上昇。2日にストップ高となったデクセリアルズ<4980>は商いを伴って大幅続伸し、JAL<9201>と双日<2768>の共同出資会社による株式公開買付け(TOB)が発表されたJALUX<2729>はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、ソフトバンクG<9984>が小安く、任天堂<7974>は一部報道を受けて軟調。花王<4452>は決算が嫌気されて4%の下落となり、業績下方修正のコニカミノルタ<4902>やヤマハ<7951>は売りがかさみ急落している。 セクターでは、海運業、繊維製品、電気機器などが上昇率上位。一方、鉱業、その他製品、水産・農林業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の68%、対して値下がり銘柄は28%となっている。 注目されたFOMCの結果を受けて米株の高値更新が続いたことが安心感につながり、祝日明けの日経平均は300円超の上昇からスタートした。もっとも寄り付き直後にこの日の高値を付けると、やや上値の重い展開となっている。売買代金上位は全般堅調だが、特にハイテク株と海運株の上昇が目立つ。インターネット証券を中心に賑わっていることが想定されるほか、半導体関連については米クアルコムが決算を受けて時間外取引で上昇していることも追い風だろう。決算ではZHDや富士フイルムが好反応だが、業績上方修正の日本製鉄<5401>は朝高後に伸び悩み。ヤマハやコニカミノルタの業績下方修正には、半導体不足等の供給制約が少なくない企業で逆風となっていることを再確認させられる。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりで、祝日前だった2日より膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+1.20%と3日続伸。2日の後場は急失速する銘柄が目立ったが、FOMC通過で改めて買いが入っているようだ。ただ、2日に上場来高値を更新したアスタリスク<6522>は、本日大きく値を崩してこそいないが反落となっている。大商いで長めの上ひげを付ける格好となり、株式需給の悪化が意識されているのかもしれない。2日の当欄で示唆したとおり、人気銘柄への投資資金集中による需給かく乱や株価指標面での過熱感は気になるところ。また、今週のマザーズ主力企業の決算発表はさほど多くないが、本日はBASE<4477>、明日5日はマザーズ時価総額2位まで躍進したJMDC<4483>が発表予定となっており、これらの業績動向に注目しておきたい。 さて、米株はFOMCを挟み主要3指数が連日で最高値を更新。この間、市場ではレンタカーのエイビス・バジェット・グループが決算発表後に一時3倍超まで株価急騰したことが話題となった。売り方が買い戻しを迫られたことも大きいが、3日終値ベースで時価総額2兆円超の銘柄がこれだけの急騰劇を演じるのには舌を巻かざるを得ない。米株が堅調な企業業績を背景に世界の投資資金を集めていることが窺える。 ただ、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は3日、15.10(-0.93)まで低下し、楽観的あるいは弛緩的とも言えるムードだ。また、米債券市場では10年物国債利回りが1.60%(+0.05pt)に上昇したが、FRBのインフレコントロールへの不安などが背景にあるようだ。期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.53%(+0.02pt)となり、ここ2日で上昇に転じつつある。米金融大手からは株高の持続性への不安や下方リスクを指摘する声が出始めており、米10月雇用統計の発表などを控え、なお楽観修正の動きに注意する必要があるだろう。 一方の日本株だが、10月29日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆5961億円と前の週に比べ415億円増えた。2週連続の増加で、7月9日申し込み時点(3兆6041億円)以来の高水準となる。一方、信用売り残は6682億円と1040億円減り、ヒストリカルで見て低位にとどまっている。上値で利益確定の売りが出やすい一方、米エイビスの急騰劇を演出した売り方の買い戻しは期待しづらいだろう。また、衆院選直後の1日こそ海外投資家の株価指数先物の買い戻しが観測されたが、2日はFOMC前だったとはいえBofA証券が東証株価指数(TOPIX)先物を売り越すなど、一段と買い持ちに傾こうとする動きはこれまで見られない。 こうした需給状況に加え、企業の決算発表が進行中であることも考慮すると、米株に比べ上値が重いのもやむを得ないだろう。ひとまずこの後発表されるトヨタ自決算が供給制約への懸念を打ち消すものとなるか注視したい。(小林大純)
<AK>
2021/11/04 12:23
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反落、FOMC前に気掛かりはある
日経平均は3日ぶり反落。66.59円安の29580.49円(出来高概算5億7000万株)で前場の取引を終えている。 週明け1日の米株式市場でNYダウは3日続伸し、94ドル高となった。S&P500指数、ナスダック総合指数とともに連日で過去最高値を更新。市場予想を上回る企業決算が相次いだことに加え、この日発表された10月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が市場予想を上回ったことも好感された。ただ、日経平均は前日に衆院選結果を受けて急伸しており、本日は利益確定売りが先行して184円安からスタート。寄り付き直後に一時29458.27円(188.81円安)まで下落してからは好業績銘柄に買いが入り下げ渋ったが、マイナス圏でもみ合う展開が続いた。3日が文化の日の祝日で休場となるうえ、同日の米国で連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表が控えていることから、積極的に戻りを試す動きとはならなかった。 個別では、レーザーテック<6920>、トヨタ自<7203>、日本郵政<6178>などがさえない。第3四半期決算発表とともに今期予想を上方修正したAGC<5201>だが、利益確定売りに押され2%近い下落。KDDI<9433>もやや軟調ぶりが目立つ。日立造<7004>やポーラオルHD<4927>、協和キリン<4151>は決算を受けて急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。一方、業績上方修正のTDK<6762>が10%近く上昇し、京セラ<6971>は5%の上昇。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>や郵船<9101>が堅調で、ソニーG<6758>や東エレク<8035>は小高い。デクセリアルズ<4980>は大幅な業績上方修正を受けてストップ高を付け、イマジカG<6879>やアドウェイズ<2489>も東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、保険業、不動産業、非鉄金属などが下落率上位。一方、空運業、海運業、卸売業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 日経平均は衆院選結果を受けて前日急伸していただけに、本日はやや利益確定売り優勢となっている。それでも寄り付き直後を除けばおおむね29500円台をキープしており、底堅い推移と言える。個別では決算を受けて値幅が大きく出ている銘柄が多いものの、ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと前日までより少なく、全体としては明日の祝日やFOMCの結果公表を前に様子見ムードが強いと考えられる。業種別では空運業が上昇率トップで、新型コロナウイルスの水際対策緩和を好感した動きだろう。 新興市場ではマザーズ指数が+1.09%と続伸。売買代金トップのアスタリスク<6522>が上値追いの勢いを強めているほか、新サービス開始を発表したエネチェンジ<4169>なども大幅高となっている。強い成長期待が新興株を押し上げているが、本日は主力大型株の様子見ムードから物色の矛先が向いている面もあるだろう。人気銘柄に投資資金が集中し、株価指標面ではやや過熱感のある銘柄が多いのも気になるところ。一方、物色圏外で割安放置ぎみの有力テック株が散見され、中長期的にはこうした銘柄にも投資妙味がありそうだ。実際、株価調整が続いていた弁護士コム<6027>は決算発表後に強いリバウンドを見せている。 さて、米株は主要3指数が連日で最高値更新と強い値動きが続いているが、前週も述べたとおり、楽観ムードのなか「いいとこ取り」をしている印象が拭えない。10月のISM製造業景況感指数についても、株式市場では市場予想上振れが好感される一方、債券・為替市場では前月比での鈍化やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)の兆候を警戒視する声が聞かれた。 なお、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.50%(-0.01pt)、米10年物国債利回りは1.55%(0.00pt)とおおむね横ばい。ただ、既に指摘したようにBEIが先週後半大きく低下したことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が上昇しているのは気掛かり。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は16.41(+0.15)とやや上昇したが、まだ楽観修正の余地の方が大きい水準だろう。こうした難しい局面でFOMCを迎えることから、市場トレンドに大きな変化が出てくるか注視したい。 また、日経平均は前日こそ一時29666.83円まで上昇したが、これはリフレトレード後退後の戻り高値とさほど変わらない水準だ。このことから、衆院選結果が全員参加の買いにつながるかも慎重に見極める必要があるだろう。自民党の議席減は大方の懸念より少なかったが、自民党総裁選で日本の変化に期待していた海外投資家や、コロナ禍中の政権運営に不安を持つ個人投資家の買いを誘うものではないかもしれない。 アジア市場では上海総合指数が続落する一方、香港ハンセン指数は6日ぶりに大幅反発しており、日本株にとっても下支え要因となりそうだ。とはいえ、FOMC前に積極的に買い持ちに傾くとも考えづらく、後場の日経平均は引き続きマイナス圏でもみ合う展開になるとみておきたい。なお、本日は花王<4452>、日本製鉄<5401>、三井物産<8031>などが決算発表を予定(前場には丸紅<8002>が決算発表)。また、3日の米国ではFOMC結果に加え、10月のADP雇用統計やISM非製造業景況感指数が発表される。(小林大純)
<AK>
2021/11/02 12:18