ランチタイムコメントニュース一覧

ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、決算一巡近づくなか上値切り下げで印象悪く  日経平均は4日続落。88.46円安の29197.00円(出来高概算5億9222万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは112.24ドル安(-0.30%)と3日ぶりに反落。10月生産者物価指数(PPI)が引き続き高い伸びを示したため、インフレ警戒感に伴う売りから下落スタート。さらに、史上最高値付近からの利益確定売りも強まり、終日軟調に推移した。債券の売り方の買い戻しにより米10年国債利回りは1.4%台前半へと一段と低下したが、ハイテク株も利益確定売りに押され、ナスダック総合指数は12日ぶりに反落、記録的な高値更新劇は途絶えた。なお、電気自動車テスラは、最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏による保有株売却懸念から11%安と急落した。 米株安を受けて、日経平均は76.40円安の29209.06円でスタート。前日までの下落による値ごろ感もあって、朝方に付けた29155.80円(129.66円安)をこの日の安値に下げ渋ると、その後は一時前日比プラス圏に浮上する場面もあったが、戻り待ちの売りも根強く、再び軟調な動きが続いた。 個別では、営業利益予想の上方修正値が市場予想に届かず、下期が上期比で大きく鈍化する見通しとなった東邦亜鉛<5707>が急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。オークネット<3964>は好決算が続いたが、高進捗率ながら通期計画が据え置かれたため急落。新電元工業<6844>も上期好決算も通期計画据え置きで失望売りを誘った。 また、業績予想を下方修正した三井住友建設<1821>やエレコム<6750>のほか、決算関連のリリースをきっかけに、住友ゴム<5110>、ビジョン<9416>、クレディセゾン<8253>、セイコーHD<8050>、シップHD<3360>、三菱マテリアル<5711>、三井金<5706>、キリンHD<2503>などが下落率上位に並んでいる。そのほか、1部売買代金上位では、ソフトバンクG<9984>、レーザーテック<6920>、マネックスG<8698>が急落しており、東エレク<8035>、JFE<5411>、ベイカレント<6532>、レノバ<9519>、ホンダ<7267>なども大幅に下落している。 一方、7-9月期好決算で通期計画を市場予想以上の水準に上方修正した日産自<7201>が急伸、同様に好決算など業績関連のリリースを手掛かりにデジタルハーツHD<3676>、ケイアイスター不動産<3465>、ウィルグループ<6089>、芝浦機械<6104>、ネクソン<3659>、鈴木<6785>などが1部上昇率上位に並んでいる。そのほか、一部メディアの報道を手掛かりに大有機化<4187>が、証券会社によるカバレッジ開始で三井ハイテク<6966>なども大幅に上昇している。1部売買代金上位では、日本郵船<9101>、川崎汽船<9107>などの大手海運株が上昇、そのほか、任天堂<7974>、トヨタ<7203>、エムスリー<2413>、OLC<4661>なども買われており、8日に好決算を発表したTOWA<6315>が改めて本日急伸している。 セクターではゴム製品、空運業、非鉄金属などが下落率上位となっている一方、海運業、鉱業、パルプ・紙などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の49%、対して値上がり銘柄は45%となっている。 前場の日経平均は前日終値水準でのもみ合い。前週末5日から前日までの間に500円超下げており、心理的な節目の29000円も近づいているだけに、さすがに今日は下げ渋っている。ただ、日足チャートでは、前日までに4日連続で陰線を形成しているうえ、今日までを含めると、上値と下値もじりじりと切り下がってきている。7-9月期決算も今週で一巡するが、今後さらに手掛かり材料に欠けると想定されるこのタイミングで、こうした弱い動きが続いている様子を見ると、日本株を取り巻く環境は芳しいとは言えないだろう。 国内外の機関投資家が日本株を積極的に買ってくる動きが見られないなか、国内の個人投資家による保有も多いとみられる米テスラ株の急落が、個人投資家の含み損益の悪化を通じて、日本株の上値抑制要因ともなりそうで、気掛かりだ。 さて、米国のインフレ動向に目を向けると、9日、米10年国債利回りは1.44%(前日比-0.05%)と低下した一方、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は2.63%(同+0.01%)と上昇した。11月に入ってから米長期金利が低下傾向を示す一方、米BEIは上昇を続けている。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下は株式市場には追い風で、実際がこうした背景が、8日までの歴史的な米国株の高値更新劇を演出していたとも考えられる。 しかし、前日に発表された10月米PPIは総合で前月比+0.6%と、9月の+0.5%から伸びが加速。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアでも前月比+0.4%と、9月の+0.2%を上回った。ともに市場予想範囲内に収まっているものの、インフレ沈静化の兆しは未だに見られない。 足元の米金利(短中期~長期)の低下は、直近、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げに慎重な姿勢を示したことや、英イングランド銀行が予想に反して利上げを先延ばしにしたことで、金利上昇を見込んでいた債券の売り方が急速に買い戻していることが大きな要因として考えられる。しかし、4日に一時1バレル=78ドル台まで急落したWTI原油先物価格は9日、再び1バレル=84ドル台にまで急上昇してきている。また、上述したように、金利低下が進むなかでも、米BEIは再び上昇しはじめてきている。足元の金利低下はあくまで需給要因によるもので、市場のインフレ懸念が後退したわけではない。 各国の金融政策関係者は、すでに供給制約に伴うインフレ高進は、来年まで続くとの見方を示しているため、足元の物価指標の結果が市場をかく乱する可能性は低いだろう。しかし、どの時点で、「インフレは一時的」とする政策関係者の考えや、これに基づく市場関係者の見方が修正を迫られるかは不透明だ。 こうした中、今晩は、10月米消費者物価指数(CPI)の発表が控えている。手掛かり材料に欠けるなか、結果を見極めたいとの思惑から、引き続き東京市場では積極的な押し目買いは手控えられそうだ。中国株や香港株も軟調ななか、後場の日経平均は引き続きもみ合い、弱含みでの推移とみておきたい。 <AK> 2021/11/10 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり小幅反発、3万円台回復に向けた買い手は誰?  日経平均は3日ぶり小幅反発。29.12円高の29536.17円(出来高概算5億8000万株)で前場の取引を終えている。 週明け8日の米株式市場でNYダウは続伸し、104ドル高となった。ナスダック総合指数、S&P500指数とともに過去最高値を連日で更新し、ナスダック総合指数は2019年12月以来の11日続伸。週末に議会下院がインフラ投資法案を可決したことが好感され、連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長ら高官発言もおおむねハト派的と受け止められた。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで50円高からスタートすると、大規模な自社株買いを発表したソフトバンクG<9984>の急伸もあって、朝方には一時29750.46円(243.41円高)まで上昇。ただ、引き続き節目の3万円に迫る場面では売りが出て上値が重く、NYダウ先物が時間外取引で下落していることも重しとなって伸び悩んだ。前場中ごろを過ぎるとマイナスに転じる場面もあった。 個別では、前述のソフトバンクGが売買代金トップで10%の上昇。1兆円を上限に自社株買いを実施すると発表している。その他売買代金上位では太陽誘電<6976>が5%超上昇しているほか、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、任天堂<7974>などがしっかり。決算発表銘柄では住友鉱<5713>やヤマハ発<7272>が買われている。また、関西スーパ<9919>は10月29日開催の臨時株主総会を巡る思惑から東証1部上昇率上位にランクイン。MBO(経営陣の参加する買収)実施を発表した片倉<3001>はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、郵船<9101>やファーストリテ<9983>は軟調。決算発表銘柄では飯田GHD<3291>が材料出尽くし感から急落し、業績下方修正の東急建設<1720>は東証1部下落率トップとなっている。 セクターでは、情報・通信業、鉄鋼、鉱業などが上昇率上位。一方、海運業、空運業、ゴム製品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の31%、対して値下がり銘柄は63%となっている。 本日の日経平均は米株高を好感して朝方に一時200円超上昇したが、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、上ひげを付けつつ連日で陰線を形成しており、やはり節目の3万円接近での上値の重さが拭えない。ソフトバンクGが1銘柄で約132円押し上げる一方、ファーストリテなどが押し下げ役となっている。業種別では商品市況の上昇で鉱業などの関連セクターが堅調だが、前日上昇した海運株や空運株は利益確定売り優勢。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、東証株価指数(TOPIX)は-0.08%で前場を折り返した。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、決算発表シーズン中にも関わらずここ数日やや減少傾向なのは気掛かり。株価指数先物の売買に至ってはかなり低調な印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-0.27%と続落。前日は2%超下落し、日経平均などと比べても軟調ぶりが目立った。米テスラでイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の保有株売却懸念が広がるなどして、国内の個人投資家もセンチメントがやや悪化した感がある。本日のマザーズ市場でもこのところ賑わっていた銘柄が相次ぎ急落しており、投資損益の悪化が個人投資家の資金余力に影響してくるか注視したい。なお、今週はマザーズ市場でも決算発表のピークを迎え、10日にJTOWER<4485>、12日にセーフィー<4375>、フリー<4478>、ウェルスナビ<7342>などが予定されている。 さて、前日の米市場では商品市況の上昇とともに、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.62%(+0.08pt)に上昇。10年物国債利回りも1.49%(+0.04pt)と反発したが、「FRBは利上げを急がない」との見方を背景に、依然として株高は崩れていない。ただ、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が17.22(+0.74)とじりじり上昇してきているのは少々気になる。明日10日には10月消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、「インフレは一時的」とのFRBの見解に再び疑念が広がらないか注視する必要もあるだろう。 日本株はというと、かねて当欄で予想していたとおり、米株比でのアンダーパフォームが鮮明となりつつある。国内の市場関係者からは、衆院選通過による安心感と本格検討に入った経済対策への期待で3万円台回復を見込む声も聞かれる。しかし、「3万円台回復に向けた買い手は誰か」という視点に欠ける印象を受ける。これまでたびたび指摘しているが、海外勢の株価指数先物の買いは足元一服しており、現物株投資家の信用取引状況も買い残が高水準となる一方、売り残は低水準となっている。 朝方から円相場がやや強含んでおり、アジア市場では香港ハンセン指数や上海総合指数が日経平均と同様に朝高後伸び悩み。後場の日経平均も上値を試す動きは乏しいとみておいた方が良いだろう。なお、本日は大和ハウス<1925>、バンナムHD<7832>、NTTデータ<9613>など200社前後の決算発表が予定されており、米国では10月の卸売物価指数(PPI)が発表される。(小林大純) <AK> 2021/11/09 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続落、3万円突破には材料不足か  日経平均は小幅続落。21.00円安の29590.57円(出来高概算6億5068万株)で前場の取引を終えている。 前週末5日の米株式市場でのNYダウは203.72ドル高(+0.56%)と反発。10月米雇用統計は雇用者数の伸びが前月比53万人増と、予想(45万人増)を上回る結果となり、労働市場の回復を好感。また、製薬会社のファイザーが開発中の新型コロナウイルス感染症治療の飲み薬について重症化リスクを大きく軽減することを明らかにしたことに加え、専門家が来年の1月までにパンデミックが終了する可能性に言及すると回復期待感が一段と強まり、買いが加速。一方、米10年国債利回りが1.4%台へと低下するなか、ハイテク株も買われた。結局、S&P500指数、ナスダック総合指数と揃って史上最高値を更新した。 米株高が追い風となるなか、前日には米下院が1兆ドル規模のインフラ法案を可決し、バイデン大統領が近く署名すると伝わったこともあり、日経平均は123.88円高の29735.45円でスタート。ただ、始値をこの日の高値にすぐに失速すると、間もなくしてマイナスに転じた。そのまま下げ幅を拡げ、一時は29518.20円まで下落。節目の29500円近辺では押し目買いも入り、下げ渋ったが、戻り待ちの売りも根強く、マイナス圏での推移が続いた。 個別では、業績予想の下方修正がネガティブサプライズとなったミクシィ<2121>が急落、業績予想を上方修正したものの、修正幅が物足りないとの評価につながったJFEHD<5411>と共に東証1部の下落率上位に顔を出している。そのほか、決算や業績予想の下方修正を材料に、ボルテージ<3639>、JMS<7702>、JBR<2453>、タムラ製作所<6768>、ソリトンシステムズ<3040>などが大幅に下落し、値下がり率上位に並んでいる。時価総額が大きめのところでは、ダイフク<6383>、クボタ<6326>、GSユアサ<6674>なども決算を材料に大幅安となっている。なお、子会社の不適切会計の疑いを背景に決算発表を延期したアウトソーシング<2427>は値下がり率トップに。主力株では、任天堂<7974>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、三菱商事<8058>、エムスリー<2413>などが軟調推移。 一方、好決算や業績予想の上方修正を手掛かりにメイコー<6787>が急伸し1部上昇率トップに躍り出たほか、山一電機<6941>、プレス工業<7246>、日本CMK<6958>、ホシデン<6804>などが上昇率上位に並んでいる。ラウンドワン<4680>は業績予想の上方修正を受けて急伸。オープンドア<3926>も7-9月期営業損益が赤字ながら、アフターコロナ関連株高の波に乗り、急伸。 時価総額の大きいところでは、オリンパス<7733>が業績上方修正を、IHI<7013>は業績観測報道を材料に大幅高に。子会社の上場発表が引き続き手掛かりとなったマネックスG<8698>は本日もストップ高まで買われている。主力株では、日本郵船<9101>などの大手海運株のほか、JAL<9201>、JR東海<9022>、エアトリ<6191>、エイチ・アイ・エス<9603>などアフターコロナ関連株が軒並み高に。ほか、東エレク<8035>、日立製<6501>、INPEX<1605>、伊藤忠<8001>なども買われている。 セクターでは鉄鋼、水産・農林業、医薬品などが下落率上位となっている一方、空運業、海運業、鉱業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の49%、対して値上がり銘柄は44%となっている。 本日の日経平均は寄り付きから急失速すると軟調な値動きが続いた。半導体不足や供給網の混乱の影響が大きい輸送用機器セクターの比率が高いこともあり、これまでの日本企業の7-9月期決算は米国企業と比べて見劣りしている。資源価格の高騰や円安による輸入物価高もあり、日本企業を取り巻く環境は相対的に厳しい。 衆院選は、自民党が想定以上に健闘した結果となり、政権運営化に期待する声もあるようだが、そもそも岸田政権が掲げる政策への海外投資家からの事前評判は高くなかった。経済対策の内容も今のところ景気浮揚につながりそうなものは現金給付策くらいしか見えてきていない。また、中長期の目線でみても、株式市場が好感するような政策はそもそもほとんど見られない。世界的に日本株のバリュエーションが割安とはいえ、企業を取り巻く環境が相対的に厳しく、政策評価も大きく変わっていなければ、日本株を積極的に選好する理由は乏しいだろう。日経平均の3万円突破には材料不足の状況といえそうだ。 また、本日は指数寄与度の大きいソフトバンクG<9984>の決算が控えている。当局による規制強化をきっかとした中国株の下落などを背景に、7-9月期のビジョンファンド事業は赤字となった可能性も指摘されているだけに、結果と株価反応を見極めたいとの思惑も強いだろう。すでに年初来安値圏にある同社株だが、一段安となると、信用買い残も積み上がっているだけに個人投資家心理が悪化しそうだ。 米株市場も総じて堅調とはいえ、主要株価3指数が揃って過去最高値圏にあるなか、前週末にはNYダウ、S&P500指数、ナスダック、いずれも長めの上ヒゲを形成している。米連邦準備制度理事会(FOMC)というイベントリスクがなくなり、季節性要因の調整圧力も後退、インフラ法案も署名される見通しとあって、米国株を巡る環境はすこぶる良好だが、騰勢一服も意識されるタイミングだ。ソフトバンクGの決算に加え、今晩の週明けの米株市場の動向を見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均もさえない展開が続きそうだ。 <AK> 2021/11/08 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は反落、やはり「需給的に上値は重い」  日経平均は反落。200.76円安の29593.61円(出来高概算6億6000万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でNYダウは6日ぶりに反落し、33ドル安となった。7-9月期の非農業部門労働生産性(速報値)が40年ぶりの低水準に落ち込んだことなどを受け、景気敏感株を中心に利益確定売りが出た。ただ、長期金利の低下でハイテク株が買われ、ナスダック総合指数は+0.81%と9日続伸し、連日で過去最高値を更新した。本日の東京市場でも米ハイテク株高の流れを引き継いで値がさ株を中心に買いが先行し、日経平均は46円高からスタート。しかし、寄り付きをこの日の高値にマイナス転換すると、前場中ごろを過ぎて29579.57円(214.80円安)まで下落する場面があった。今晩の米10月雇用統計の発表を前に持ち高調整の売りが出たほか、円相場の上昇などが重しとなった。 個別では、決算発表を受けて前日の後場に急落した郵船<9101>、川崎船<9107>といった海運株が本日も大幅続落。郵船は増配を発表したものの、物足りないとの見方が出ている。業績上方修正のダイキン<6367>は市場予想に届かず3%の下落。上期が営業減益となったソフトバンク<9434>は5%の下落となっている。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>やトヨタ自<7203>が軟調。また、武蔵精密<7220>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、米ハイテク株高を受けてレーザーテック<6920>、キーエンス<6861>、東エレク<8035>がしっかり。SUMCO<3436>は好決算で8%上昇している。その他の決算発表銘柄では任天堂<7974>が売り先行もプラス転換し、レノバ<9519>は商いを伴って急伸。また、JALUX<2729>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、鉄鋼、倉庫・運輸関連業などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、金属製品、鉱業、ゴム製品の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の78%、対して値上がり銘柄は19%となっている。 本日の日経平均は200円の下落で前場を折り返した。今週に入ってから前日までの4日間で900円超上昇しており、米雇用統計の発表を控えた週末を前に利益確定売りが出やすいだろう。日足チャートを見ると、本日を含めたここ2日ほど節目の3万円接近で連日の陰線となり、上値の重さを感じさせる。一方、29600円近辺では下げ渋っており、押し目買い意欲も根強いことが窺える。個別・業種別の騰落状況では、米株と同じく景気敏感セクターが軟調ながら、ハイテク株は堅調。海運株は前日後場からの売りが継続している。レノバに見直し買いが入り急伸するなど、決算を手掛かりとした物色も活発だ。ただ、ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりと前日に比べやや少ない。 新興市場ではマザーズ指数が-0.10%と小幅ながら4日ぶり反落。朝方こそハイテク株高を追い風に堅調だったが、こちらも週末を前に利益確定売り優勢だ。決算発表のBASE<4477>は見直しムードに乏しくさえない。また、本日マザーズ市場に新規上場したフォトシンス<4379>は公開価格を下回って推移。スマートロック開発の有力スタートアップとして期待される一方、公募・売出規模が100億円超と大きかった。IPO(新規株式公開)銘柄への投資スタンスが積極的な局面なら公開価格割れを免れたかもしれない。ただ、「ARR(年間経常収益)3割成長でPSR(株価売上高倍率)20倍の株価評価を引き出し、2~3割下回る公開価格設定で需要家を募る」という有力テック企業のIPOにおける「必勝パターン」が簡単には通用しなくなった可能性もある。今後のIPOに注目したい。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.56%(+0.03pt)に上昇する一方、10年物国債利回りは1.52%(-0.08pt)に低下。米労働生産性の低下に加え、英イングランド銀行(中央銀行)が事前の利上げ観測に反し政策金利を据え置いたことも金利低下につながった。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は低下方向に動き、株式、特にハイテク株にとって追い風となった。 もっとも、2~3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過したとはいえ(だけに、とも言える)、今晩発表される米雇用統計を受けての波乱を警戒する向きは根強くあるようだ。米株式市場にはまだまだ緩和マネーがあふれ、そう簡単に株高が崩れる印象に乏しいが、かなり楽観ムードが強まっているだけに反動を警戒しておく必要はあるだろう。 一方、日本株はというと、「需給的に米株と比べ上値が重くならざるを得ない」という前日の当欄で指摘したとおりの展開となりつつある。前日は日経平均が273円高となったものの、先物手口を見ると外資系証券が大きく買い越しに傾いた印象に乏しかった。また、前日の後場以来軟調な海運株はまさに信用買い残が大きく膨らんでいた銘柄で、決算内容にかかわらず目先の利益確定売りが出やすかったと考えられる。本日ハイテク株が買われているように根強い循環物色が下値を支えるだろうが、やはり日経平均3万円を前に上値は重いとみておいた方がいいだろう。 足元では円相場の上昇が一服しつつあるが、アジア市場では香港ハンセン指数などが軟調。また、本日はホンダ<7267>、オリンパス<7733>、伊藤忠<8001>、三菱商事<8058>など300社超が決算発表を予定している。これらの業績や米雇用統計の内容を見極めたいとのムードもあり、後場の日経平均は軟調もみ合いが続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2021/11/05 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は反発、「米楽観ムードへの懸念」と「日本株の需給の重さ」  日経平均は反発。271.57円高の29792.47円(出来高概算6億9000万株)で前場の取引を終えている。 3日の東京市場は文化の日の祝日で休場だったが、米株式市場ではNYダウが2日138ドル高、3日104ドル高となった。3日まで開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では予想どおり量的緩和の縮小(テーパリング)開始が決まったが、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長は「インフレは一時的」との見方や利上げへの慎重姿勢を再表明。総じてハト派的な内容と受け止められ、主要株価指数は揃って連日で過去最高値を更新した。東京市場では2日の取引でFOMCを前に持ち高調整の売りが出ていたため、FOMC結果を受けた米株高が安心感につながり、祝日明けの日経平均は338円高からスタート。朝方には一時29880.81円(359.91円高)まで上昇したが、本日発表されるトヨタ自<7203>決算や5日に発表される米10月雇用統計の内容を見極めたいとの思惑もあり、やや上値の重い展開となった 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が6%上昇しているほか、キーエンス<6861>や東エレク<8035>といった値がさハイテク株、それに郵船<9101>や川崎船<9107>といった海運株の上昇が目立つ。2日の決算発表銘柄ではZHD<4689>が6%超上昇し、朝方決算発表した富士フイルム<4901>は5%の上昇。2日にストップ高となったデクセリアルズ<4980>は商いを伴って大幅続伸し、JAL<9201>と双日<2768>の共同出資会社による株式公開買付け(TOB)が発表されたJALUX<2729>はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、ソフトバンクG<9984>が小安く、任天堂<7974>は一部報道を受けて軟調。花王<4452>は決算が嫌気されて4%の下落となり、業績下方修正のコニカミノルタ<4902>やヤマハ<7951>は売りがかさみ急落している。 セクターでは、海運業、繊維製品、電気機器などが上昇率上位。一方、鉱業、その他製品、水産・農林業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の68%、対して値下がり銘柄は28%となっている。 注目されたFOMCの結果を受けて米株の高値更新が続いたことが安心感につながり、祝日明けの日経平均は300円超の上昇からスタートした。もっとも寄り付き直後にこの日の高値を付けると、やや上値の重い展開となっている。売買代金上位は全般堅調だが、特にハイテク株と海運株の上昇が目立つ。インターネット証券を中心に賑わっていることが想定されるほか、半導体関連については米クアルコムが決算を受けて時間外取引で上昇していることも追い風だろう。決算ではZHDや富士フイルムが好反応だが、業績上方修正の日本製鉄<5401>は朝高後に伸び悩み。ヤマハやコニカミノルタの業績下方修正には、半導体不足等の供給制約が少なくない企業で逆風となっていることを再確認させられる。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりで、祝日前だった2日より膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+1.20%と3日続伸。2日の後場は急失速する銘柄が目立ったが、FOMC通過で改めて買いが入っているようだ。ただ、2日に上場来高値を更新したアスタリスク<6522>は、本日大きく値を崩してこそいないが反落となっている。大商いで長めの上ひげを付ける格好となり、株式需給の悪化が意識されているのかもしれない。2日の当欄で示唆したとおり、人気銘柄への投資資金集中による需給かく乱や株価指標面での過熱感は気になるところ。また、今週のマザーズ主力企業の決算発表はさほど多くないが、本日はBASE<4477>、明日5日はマザーズ時価総額2位まで躍進したJMDC<4483>が発表予定となっており、これらの業績動向に注目しておきたい。 さて、米株はFOMCを挟み主要3指数が連日で最高値を更新。この間、市場ではレンタカーのエイビス・バジェット・グループが決算発表後に一時3倍超まで株価急騰したことが話題となった。売り方が買い戻しを迫られたことも大きいが、3日終値ベースで時価総額2兆円超の銘柄がこれだけの急騰劇を演じるのには舌を巻かざるを得ない。米株が堅調な企業業績を背景に世界の投資資金を集めていることが窺える。 ただ、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は3日、15.10(-0.93)まで低下し、楽観的あるいは弛緩的とも言えるムードだ。また、米債券市場では10年物国債利回りが1.60%(+0.05pt)に上昇したが、FRBのインフレコントロールへの不安などが背景にあるようだ。期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.53%(+0.02pt)となり、ここ2日で上昇に転じつつある。米金融大手からは株高の持続性への不安や下方リスクを指摘する声が出始めており、米10月雇用統計の発表などを控え、なお楽観修正の動きに注意する必要があるだろう。 一方の日本株だが、10月29日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆5961億円と前の週に比べ415億円増えた。2週連続の増加で、7月9日申し込み時点(3兆6041億円)以来の高水準となる。一方、信用売り残は6682億円と1040億円減り、ヒストリカルで見て低位にとどまっている。上値で利益確定の売りが出やすい一方、米エイビスの急騰劇を演出した売り方の買い戻しは期待しづらいだろう。また、衆院選直後の1日こそ海外投資家の株価指数先物の買い戻しが観測されたが、2日はFOMC前だったとはいえBofA証券が東証株価指数(TOPIX)先物を売り越すなど、一段と買い持ちに傾こうとする動きはこれまで見られない。 こうした需給状況に加え、企業の決算発表が進行中であることも考慮すると、米株に比べ上値が重いのもやむを得ないだろう。ひとまずこの後発表されるトヨタ自決算が供給制約への懸念を打ち消すものとなるか注視したい。(小林大純) <AK> 2021/11/04 12:23 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反落、FOMC前に気掛かりはある  日経平均は3日ぶり反落。66.59円安の29580.49円(出来高概算5億7000万株)で前場の取引を終えている。 週明け1日の米株式市場でNYダウは3日続伸し、94ドル高となった。S&P500指数、ナスダック総合指数とともに連日で過去最高値を更新。市場予想を上回る企業決算が相次いだことに加え、この日発表された10月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数が市場予想を上回ったことも好感された。ただ、日経平均は前日に衆院選結果を受けて急伸しており、本日は利益確定売りが先行して184円安からスタート。寄り付き直後に一時29458.27円(188.81円安)まで下落してからは好業績銘柄に買いが入り下げ渋ったが、マイナス圏でもみ合う展開が続いた。3日が文化の日の祝日で休場となるうえ、同日の米国で連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表が控えていることから、積極的に戻りを試す動きとはならなかった。 個別では、レーザーテック<6920>、トヨタ自<7203>、日本郵政<6178>などがさえない。第3四半期決算発表とともに今期予想を上方修正したAGC<5201>だが、利益確定売りに押され2%近い下落。KDDI<9433>もやや軟調ぶりが目立つ。日立造<7004>やポーラオルHD<4927>、協和キリン<4151>は決算を受けて急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。一方、業績上方修正のTDK<6762>が10%近く上昇し、京セラ<6971>は5%の上昇。その他売買代金上位ではソフトバンクG<9984>や郵船<9101>が堅調で、ソニーG<6758>や東エレク<8035>は小高い。デクセリアルズ<4980>は大幅な業績上方修正を受けてストップ高を付け、イマジカG<6879>やアドウェイズ<2489>も東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、保険業、不動産業、非鉄金属などが下落率上位。一方、空運業、海運業、卸売業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 日経平均は衆院選結果を受けて前日急伸していただけに、本日はやや利益確定売り優勢となっている。それでも寄り付き直後を除けばおおむね29500円台をキープしており、底堅い推移と言える。個別では決算を受けて値幅が大きく出ている銘柄が多いものの、ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと前日までより少なく、全体としては明日の祝日やFOMCの結果公表を前に様子見ムードが強いと考えられる。業種別では空運業が上昇率トップで、新型コロナウイルスの水際対策緩和を好感した動きだろう。 新興市場ではマザーズ指数が+1.09%と続伸。売買代金トップのアスタリスク<6522>が上値追いの勢いを強めているほか、新サービス開始を発表したエネチェンジ<4169>なども大幅高となっている。強い成長期待が新興株を押し上げているが、本日は主力大型株の様子見ムードから物色の矛先が向いている面もあるだろう。人気銘柄に投資資金が集中し、株価指標面ではやや過熱感のある銘柄が多いのも気になるところ。一方、物色圏外で割安放置ぎみの有力テック株が散見され、中長期的にはこうした銘柄にも投資妙味がありそうだ。実際、株価調整が続いていた弁護士コム<6027>は決算発表後に強いリバウンドを見せている。 さて、米株は主要3指数が連日で最高値更新と強い値動きが続いているが、前週も述べたとおり、楽観ムードのなか「いいとこ取り」をしている印象が拭えない。10月のISM製造業景況感指数についても、株式市場では市場予想上振れが好感される一方、債券・為替市場では前月比での鈍化やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)の兆候を警戒視する声が聞かれた。 なお、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.50%(-0.01pt)、米10年物国債利回りは1.55%(0.00pt)とおおむね横ばい。ただ、既に指摘したようにBEIが先週後半大きく低下したことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が上昇しているのは気掛かり。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は16.41(+0.15)とやや上昇したが、まだ楽観修正の余地の方が大きい水準だろう。こうした難しい局面でFOMCを迎えることから、市場トレンドに大きな変化が出てくるか注視したい。 また、日経平均は前日こそ一時29666.83円まで上昇したが、これはリフレトレード後退後の戻り高値とさほど変わらない水準だ。このことから、衆院選結果が全員参加の買いにつながるかも慎重に見極める必要があるだろう。自民党の議席減は大方の懸念より少なかったが、自民党総裁選で日本の変化に期待していた海外投資家や、コロナ禍中の政権運営に不安を持つ個人投資家の買いを誘うものではないかもしれない。 アジア市場では上海総合指数が続落する一方、香港ハンセン指数は6日ぶりに大幅反発しており、日本株にとっても下支え要因となりそうだ。とはいえ、FOMC前に積極的に買い持ちに傾くとも考えづらく、後場の日経平均は引き続きマイナス圏でもみ合う展開になるとみておきたい。なお、本日は花王<4452>、日本製鉄<5401>、三井物産<8031>などが決算発表を予定(前場には丸紅<8002>が決算発表)。また、3日の米国ではFOMC結果に加え、10月のADP雇用統計やISM非製造業景況感指数が発表される。(小林大純) <AK> 2021/11/02 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続伸、政権運営安定化への期待で買い先行も、中長期勢はまだか  日経平均は大幅続伸。645.46円高の29538.15円(出来高概算6億5095万株)で前場の取引を終えている。 前週末10月29日の米株式市場でのNYダウは89.08ドル高(+0.24%)と続伸し、終値ベースでS&P500指数と揃って史上最高値を更新。9月個人消費支出(PCE)デフレーターなどの上昇でインフレ懸念が重しとなったほか、前の日に決算を発表した米IT大手のアップルやアマゾンが失望感から売られたことが一時全体を押し下げた。しかし、押し目買い意欲も強く、引けにかけて回復すると上げ幅を拡大。電気自動車(EV)のテスラや半導体メーカーのエヌビディアなどハイテク株も買われ、ナスダック総合指数も+0.32%と史上最高値を更新した。 こうした米株高が追い風となるなか、前日に投開票された衆院選において自民党が単独過半数を獲得したことが好感され、大型財政出動への期待も高まり、本日の東京市場では先物主導で買い戻しが入った。指数インパクトの大きい値がさ株やハイテク株を中心に買われるなか、日経平均は437.99円高の29330.68円でスタートすると、上げ幅を拡げ、寄り付き30分以内には29633.33円(740.64円高)まで買われた。ただ、その後は戻り待ちの売りから一時は29500円を割り込む場面も見られた。それでも、失速の勢いはつかず、断続的な買いから高値圏での推移が続いた。 個別では、7-9月期大幅減益も受注拡大を好感した買いが優勢となったレーザーテック<6920>が大幅高となっており、東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>なども大幅に上昇。子会社のセガとマイクロソフトによる戦略的提携に関するリリースが材料視されたセガサミーHD<6460>も大幅高。そのほか、主力株では、ソニーG<6758>が急伸し年初来高値を更新。ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>など指数寄与度の大きい銘柄も大幅に上昇。日本郵船<9101>、トヨタ<7203>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、三菱UFJ<8306>なども買われている。 衆院選の結果を受けて、東証1部値上がり率上位には、岸田政権関連株として再注目されたポピンズHD<7358>のほか、決算や業績上方修正を材料に伯東<7433>、保土谷化<4112>、旭有機材<4216>、クレハ<4023>、マンダム<4917>などが並んでおり、ストライク<6196>はストップ高買い気配となっている。 一方、受注のピークアウトなどが懸念された村田製<6981>が売り優勢で軟調、7-9月期決算や中間配当減配が嫌気された野村<8604>は大幅下落。1部値下がり率上位には、決算や業績下方修正を材料にIRJHD<6035>、アイネス<9742>、双信電機<6938>、GセブンHD<7508>、トランス・コスモス<9715>、日本冶金工業<5480>、アズワン<7476>、アバント<3836>、中国電力<9504>などが並んでいる。通期業績を下方修正したメンバーズ<2130>、H2O傘下入りが決定しTOBプレミアムがはく落した関西スーパ<9919>はストップ安売り気配となっている。 セクターでは精密機器、機械、食料品、電気機器、化学などが上昇率上位となっている一方、証券・商品先物取引業、空運業の2業種が下落となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の80%、対して値下がり銘柄は16%となっている。 本日の日経平均は久々の急伸劇で、9月30日以来となる29500円を回復。朝方の買い一巡後はもみ合いとなったものの、概ね高値圏での堅調推移が続いた。今回の衆院選については、事前に、自民党が単独過半数を獲得できるかの攻防と伝わっていた。そのため、議席数を減らしたとはいえ、自民党が単独過半数獲得に成功しただけでなく、国会の安定運営に必要とされる絶対安定多数をも単独で確保したことにはポジティブサプライズ感が伴い、これを素直に好感した動きが先行しているようだ。 ただ、日経平均と東証株価指数(TOPIX)との上昇率に開きがあり、東証1部売買代金上位をみても指数寄与度の大きい値がさ株中心に上昇しているところを見ると、短期筋による日経平均先物の買い戻しが中心とみられる。日経平均は、朝方の買いが一巡した後はほぼ横ばいで、前場中頃には再び一時29500円を割り込んだ場面も見られており、この水準での戻り待ちの売り圧力も根強い様子。 衆院選を終え、今後の政局安定化が期待されるところだが、政権の真価が問われるのはこれからだ。自民党は、絶対安定多数を獲得できたのであるから、日本の経済成長につながる具体的な政策を今後どんどん推進してもらいたい。海外勢も、いま買ってきているのは短期筋が中心で、中長期目線の投資家による買いにはまだ本腰が入っていないだろう。こうした投資家らは、政権の具体的な政策を注視しており、物足りないとの評価に至れば、日本株を敬遠する動きは解消されないだろう。 一方、立憲民主党が議席を減らしたことで、今回の衆院選では野党共闘の効果が見られず、野党は戦略の見直しが求められる結果となった。しかし、他方で、日本維新の会は議席数を4倍近くに増やしている。国民の中でも政治に対する変革を望むものは多いということだろう。自民党には、来夏の参院選をも意識した緊張感を持ってもらいながら、是非とも国家のための政策を推進していってほしい。 さて、後場の日経平均は引き続き29500円を挟んだもみ合い展開となりそうだ。東京市場は、3日が文化の日の祝日で休場となる。米国では2日から米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、3日にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見がある。量的緩和策の縮小(テーパリング)開始の正式決定などは市場にほとんど織り込み済みであるため、特段の波乱はないと思われるが、祝日やイベントを前にやや様子見ムードが強まりやすいだろう。 <AK> 2021/11/01 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は小幅に3日続落、ソニーGなど好決算でも懸念払しょくには至らず  日経平均は小幅に3日続落。27.56円安の28792.53円(出来高概算7億5000万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でNYダウは反発し、239ドル高となった。メルクやキャタピラーの決算が好感され、NYダウの押し上げ役となった。また、バイデン政権が1.75兆ドル規模の経済対策の枠組みを発表したが、増税規模が想定内にとどまり、安心感が広がった。ハイテク株でもアップルやアマゾン・ドット・コムが決算発表を前に買われ、ナスダック総合指数とS&P500指数は過去最高値を更新。ただ、アップル、アマゾンとも決算を受けて時間外取引で売られ、本日の日経平均は前日終値近辺でスタートした。朝方には上昇する場面もあったが、値がさの半導体関連株を中心に売りが出て、前場中ごろには一時28475.06円(345.03円安)まで下落。その後再び前日終値近辺まで値を戻すなど、やや方向感のつかみづらい展開となった。 個別では、日本郵政<6178>が売買代金トップで2%の下落。政府保有株の売出しで受渡日を迎え、利益確定売りが出ているようだ。決算発表銘柄ではアドバンテス<6857>が3%近い下落。通期予想を上方修正したものの、上期実績が市場予想を下回り売り優勢となっている。ルネサス<6723>は好決算ながら軟調で、その他半導体関連株でもレーザーテック<6920>などがさえない。また、ZOZO<3092>やカプコン<9697>、アンリツ<6754>などが急落し、東証1部下落率上位に顔を出している。一方、ソフトバンクG<9984>、ファナック<6954>、東エレク<8035>はしっかり。業績上方修正のソニーG<6758>は2%の上昇となり、キーエンス<6861>も決算が好感されて4%の上昇。また、富士電機<6504>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、電気・ガス業、証券、小売業などが下落率上位。一方、鉱業、電気機器、鉄鋼などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の57%、対して値上がり銘柄は38%となっている。 本日の日経平均は一時300円超下落したが、結局小安い水準で前場を折り返した。日足チャートを見ると、28500円台に位置する75日移動平均線を一時下回ったものの、長めの下ひげを付ける格好。企業の決算発表や31日の衆院選投開票が注目されて話題に上がっていなかったが、月末の株安アノマリーを改めて意識する市場関係者もいるようだ。売買代金上位は個別の決算対応が中心。業種別騰落率では、NY原油先物相場が底堅かったことから、関連セクターが値上がり上位に顔を出している。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円強と前日並みの水準。決算発表の本格化でまずまず取引活発となってきた。 新興市場ではマザーズ指数が-0.76%と反落。制限値幅拡大のINC<7078>が大幅高となるなど、引き続き短期の値幅取りを狙った物色は散見される。ただ、本日決算発表を控えたメルカリ<4385>は軟調。10月中旬まで強い値動きだっただけに、決算発表を前に利益確定売りが出やすいだろう。 さて、米株は堅調な企業業績を背景に強い値動きが続き、歳出・歳入法案を巡っても法人・富裕層増税に対する懸念が和らいだようだ。しかし、今晩の取引ではアップルやアマゾンを中心に反落が見込まれ、東京市場でも米株高を素直に好感しづらいところではある。また、増税懸念が和らいだといえど、歳出案の規模は半減しており、株式市場は楽観ムードのなか「いいとこ取り」をしている印象はある。 なお、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は16.53(-0.45)に低下。各国中央銀行のインフレ対応が意識されるなどして、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.57%(-0.08pt)に低下したが、米10年物国債利回りはむしろ1.58%(+0.04pt)に上昇した。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下がこれまで米株高を後押ししてきた面もあるため、名目金利上昇・BEI低下という前日の動きはやや気になるところだ。 日本企業を巡ってはキヤノン<7751>、ファナックなど電機大手を中心に想定外の業績下方修正が相次いでいただけに、ソニーGなどの好決算には安心感がある。ただ、アップルで主力のスマートフォン「iPhone」の売上高が市場予想を下回ったところを見ると、まだまだ供給制約による影響への懸念は拭いづらいだろう。とりわけ日本では、足元の商品高や円安による交易条件の悪化を懸念する声が増えてきた。 アジア市場では香港ハンセン指数が4日続落し、上海総合指数は小動きで推移。日本では本日、400社近い企業が決算発表を予定しており、人気銘柄として注目されるレーザーテックのほか、JT<2914>、第一三共<4568>、村田製<6981>、KDDI<9433>などがある(前場にはデンソー<6902>が決算発表)。前述のとおり31日には衆院選の投開票日を迎え、後場の取引では企業業績や国内政治の動向を見極めたいとの思惑が強まりそうだ。(小林大純) <AK> 2021/10/29 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は続落、景気敏感株売りと想定外の下方修正  日経平均は続落。272.62円安の28825.62円(出来高概算6億8000万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でNYダウは4日ぶりに反落し、266ドル安となった。決算発表のビザが大幅安となり、NYダウの押し下げ役となったほか、最高値圏とあって景気敏感株を中心に利益確定売りが出た。ただ、長期金利の低下に加え、マイクロソフトやアルファベットが好決算で買われたこともあり、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数はほぼ横ばい。本日の日経平均はNYダウが下落した流れを引き継いで226円安からスタートすると、値がさ株のファナック<6954>やエムスリー<2413>が決算を受けて大きく売られたことも下押し要因となり、朝方には28693.06円(405.18円安)まで下落する場面があった。一方、半導体関連株や信越化<4063>の上昇が下支えする形となり、下げが一服すると軟調もみ合いの展開となった。 個別では、前述のファナックやエムスリー、それに富士通<6702>が決算を受けて大きく下落し、日立<6501>も売り優勢の展開。ファナックは市場の上振れ期待に反して通期営業利益予想を下方修正し、8%を超える下落となっている。その他売買代金上位では、ソフトバンクG<9984>、日本郵政<6178>、郵船<9101>などがさえない。また、大日住薬<4506>も決算がネガティブ視され、東証1部下落率トップとなっている。一方、決算が好感された信越化は3%超上昇しており、SCREEN<7735>は8%を超える上昇。その他売買代金上位では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>、任天堂<7974>が堅調に推移している。決算発表銘柄ではNRI<4307>なども急伸。また、航空電子<6807>が東証1部上昇率トップとなっている。 セクターでは、鉱業、石油・石炭製品、鉄鋼などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、空運業、化学、その他製品など5業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の61%、対して値上がり銘柄は34%となっている。 本日の日経平均は続落し、200円超の下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、売り一巡後は28800円台に位置する25日移動平均線を挟んでの攻防といった様相。ファナックとエムスリーの2銘柄で日経平均を約114円押し下げているほか、米株と同様に市況関連を中心とした景気敏感株の軟調ぶりが目立つ。NY原油先物や非鉄金属市況が下落した影響だろう。一方、東エレクやアドバンテス<6857>、信越化が日経平均の下支え役。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円弱で、決算発表の本格化とともに膨らんできた。 新興市場ではマザーズ指数が+0.51%と反発。こちらは米市場での長期金利低下やハイテク株高が追い風として働いているのだろう。もっとも、明日29日に決算発表予定のメルカリ<4385>は足元やや調整ぎみ。また、週末には衆院選投開票が控えており、買い持ち高を減らしておきたいという個人投資家も少なくないようだ。 さて、米株については先週末の当欄で「やや楽観に傾き過ぎている」と指摘したが、やはり少々修正を迫られる動きとなっているようだ。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は21日に15.01まで低下していたが、前日には16.98とじりじり上昇。これに伴い、連日で過去最高値を更新していたNYダウやS&P500指数はスピード調整の様相となっている。ただ、景気敏感株に売りが出る一方、ハイテク株に買いが入っており、現時点では過度に警戒する必要はないかもしれない。なお、NY原油先物は在庫増加を受けて下落し、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.65%(-0.04pt)に低下。また、各国債券市場に大きな動きが見られ、米10年物国債利回りも1.54%(-0.07pt)に低下している。 日本株はこうした景気敏感株売りの影響を受けるとともに、キヤノン<7751>やファナックなど想定外の業績下方修正が相次いでいる。やはり供給制約の影響は重いと見ておいた方がいいだろう。かねて指摘しているとおり、今年度に入ってからのPBR推移を見ると、日経平均29000円前後は各種懸念を織り込んだ水準とは言いづらい。キヤノンやファナックの株価反応はそれを端的に表しているだろう。 アジア市場では香港ハンセン指数、上海総合指数とも下落。本日は国内でOLC<4661>、武田薬<4502>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、HOYA<7741>など160社あまりの決算発表が予定され、海外では欧州中央銀行(ECB)定例理事会や米7-9月期国内総生産(GDP)速報値の発表などが予定されている。引き続き国内企業の業績動向や海外経済、金融政策の行方が注目され、後場の取引では軟調もみ合いが続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2021/10/28 12:24 ランチタイムコメント 日経平均は反落、指数弱含みも決算反応は良好なもの多い  日経平均は反落。159.40円安の28946.61円(出来高概算5億7649万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でのNYダウは15.73ドル高(+0.04%)と小幅ながら3日続伸し、S&P500指数と揃って連日で史上最高値を更新。良好な企業決算や10月消費者信頼感指数の改善が好感された。ただ、最高値圏での利益確定売りのほか、目標株価引き下げを受けたSNSサイト運営のフェイスブックの下落が全体を押し下げ、上げ幅は限定的となった。一方、フェイスブックのネットワーク再構築計画による恩恵への期待から、半導体メーカーのエヌビディアが急伸し、ナスダック総合指数も+0.05%と小幅ながら続伸。 米株の連日の最高値更新劇を受けながらも、前日の急伸の反動が優勢となり、日経平均は50円安の29056.01円でスタート。早い段階で29000円を割り込むと、上海株・香港株が軟調なこともあり、じりじりと下げ幅を拡げる展開がその後も続き、前場中頃には28870.25(235.76円安)まで下げる場面があった。ただ、前引けにかけては押し目買いも入り、やや下げ渋った。 個別では、ソフトバンクG<9984>や、任天堂<7974>、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、東エレク<8035>などの値がさ株やハイテク株に大きく下落している銘柄が目立ち、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの大手海運株も軒並み急落。7-9月期営業利益及び上方修正後の通期計画値がともに小幅ながら市場予想を下振れた日本電産<6594>は小高く始まった後はすぐに売りに押され、3%超の下落。業績予想の下方修正がネガティブサプライズとなったキヤノン<7751>は急落。 一方、7-9月期の上振れに加え市場予想を大幅に上回る水準にまで通期計画を上方修正した新光電工<6967>が急伸し、東証1部値上がり率トップに。また、新光電工の好決算が刺激材料となったイビデン<4062>も急伸している。2度目となる通期計画の上方修正を発表したシマノ<7309>も大幅高で値上がり率上位に。そのほか、好決算や業績上方修正を材料に日立建機<6305>、日東電工<6988>、松風<7979>、ホシデン<6804>などが大幅上昇で値上がり率上位に並んでいる。 セクターでは海運業、非鉄金属、電気機器などが下落率上位となっている一方、食料品、輸送用機器、保険業などが上昇率上位に並んでいる。東証1部の値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は28%となっている。 日経平均は一時200円超下げ、29000円を割り込んだ。しかし、前日に500円超上昇していたこともあり、反動安は想定内といったところ。決算シーズンが本格化しはじめ、個別株物色が中心となっているため、今後も日経平均は29000円を挟んだ水準での一進一退が続きそうだ。 日本でも決算発表が前日からかなり増えてきたが、これまでの日米の企業決算の内容は総じて良好といえそうだ。米国では金融大手から医薬、消費財メーカーの好決算からはじまったが、その後も電気自動車(EV)のテスラ、動画配信サービスのネットフリックスなどのハイテク株の好決算が相次ぎ、株価も上場来高値を更新する動きが見られている。また、前日の取引終了後には検索グーグルを運営するアルファベットとソフトウェアのマイクロソフトの大型テック企業が決算を発表したが、内容は概ね予想を上回り、マイクロソフトは時間外取引で大きく上昇している。市場への影響力が絶大なGAFAMやテスラなどの決算と株価反応が良好であることは投資家心理の下支えに大きく寄与してくれる。 また、東京市場でも、新光電工、日東電工、日立建機などの電子部品株や景気敏感株で良好な決算が確認されたことは好材料。残念ながら、注目度の高い日本電産については、市場予想をやや下振れたことで株価は下落しているが、こちらも、先行き不透明感がくすぶる中でも通期計画を上方修正してきたこと自体はポジティブに捉えられる。本日は、指数は弱含んでいるものの、決算銘柄だけに限ってみれば、上昇している銘柄が多くみられ、相場全体の雰囲気も見た目程には悪くない様子。日本では決算発表がまだ始まったばかりではあるが、今後の主力株の反応でもポジティブな反応ものが優勢となれば、決算一巡後には日本株を再評価する動きが出てくるかもしれない。 さて、後場の日経平均は引き続き29000円を挟んだ水準での弱含みの推移が続きそうだ。決算前に、本日大きく下落している値がさ株やハイテク株に積極的な押し目買いが入るとは考えにくく、香港ハンセン指数が大きめに下げていることもあって、冴えない動きを強いられよう。なお、本日は信越化<4063>、エムスリー<2413>、ファナック<6954>、富士通<6702>などの決算が予定されている。 <AK> 2021/10/27 12:05 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、需給影響一服だが決算見極めへ  日経平均は大幅反発。500.16円高の29100.57円(出来高概算6億株)で前場の取引を終えている。 週明け25日の米株式市場でNYダウは続伸し、64ドル高となった。S&P500指数とともに過去最高値を更新。良好な企業決算が続いていることに加え、歳出案についてこれまで反対姿勢だった民主党のマンチン上院議員が週中合意の可能性に言及したことも相場を押し上げた。また、電気自動車(EV)のテスラが初めて時価総額1兆ドルに達し、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+0.90%と反発。このところデジタル広告を巡る懸念から軟調だったフェイスブックも決算を受けて時間外取引で上昇した。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで327円高からスタートすると、朝方には29000円台を回復。その後も上げ幅を広げ、前場中ごろにかけて29145.93円(545.52円高)まで上昇する場面があった。 個別では、日本郵政<6178>が売買代金トップで5%近い上昇。政府保有株の売出価格が決まり、買い戻しが入っているようだ。その他売買代金上位もソフトバンクG<9984>、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、郵船<9101>など全般堅調で、日経平均への寄与が大きいファーストリテ<9983>、エナジー社合同取材の内容が伝わったパナソニック<6752>、中期経営計画の見直しを発表したNTT<9432>の上げが目立つ。また、東京機<6335>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、キヤノン<7751>が3%近い下落。キヤノンMJ<8060>を中心に上場子会社の決算で収益鈍化が見られ、売り材料視されているようだ。また、ピーシーエー<9629>も決算を受けて急落し、キヤノンMJなどとともに東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、全33業種がプラスとなり、鉄鋼、情報・通信業、輸送用機器、非鉄金属、ゴム製品などが上昇率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の82%、対して値下がり銘柄は13%となっている。 本日の日経平均は大幅反発し、29000円台を回復して前場を折り返した。日足チャートでは、寄り付きから28900円近辺に位置する5日移動平均線や25日移動平均線を上回り、そのまま上げ幅を拡大する格好。ファーストリテが1銘柄で日経平均を約104円押し上げているが、東証1部全体としても8割強の銘柄が上昇する展開だ。パナソニックやNTTは先行きに期待が持てる好材料と言えるだろう。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円弱で、値幅の割に膨らんでいない。キヤノン子会社で製品の供給制約による影響が見られたのも、決算発表シーズンに入り気掛かりな点ではある。 新興市場ではマザーズ指数が+1.69%と5日ぶり反発。FRONTEO<2158>や日本電解<5759>が賑わっている。ただ、日本電解が早々に伸び悩んでいるほか、先週まで人気だったグローバルW<3936>が連日のストップ安。やはり短期志向の投資家中心の売買で、値動きが荒い印象だ。本日マザーズ市場に新規上場したCINC<4378>は公開価格比+28.2%というしっかりした初値形成だったが、市場予想と比べるとやや伸び悩んだ。IPO(新規株式公開)の初値パフォーマンスは好調と言えない状況が続いており、これが個人投資家のセンチメントを最も表しているのかもしれない。昨今、公開価格決定プロセスの見直しが政府を交え進んでいることも影響している可能性がある。 さて、前日は日経平均への寄与が多いソフトバンクGとファーストリテの軟調ぶりが目立ち(日経平均は204.44円安で、この2銘柄が約145円の押し下げ要因)、先物手口を見ると野村証券が日経平均先物の売り越しトップだった。東証株価指数はクレディ・スイス証券などが買い越し、BofA証券などが売り越しとまちまち。現物株はというと、東証1部売買代金が2兆2792億円と8月27日以来の低水準だった。 先週後半からこうした日系証券の日経平均先物売りが見られたが、日本郵政の大型売出しに絡んだものとの見方が有力だった。日本株が海外株に比べ軟調だった大きな理由として挙げられるだろう。決算発表の本格化を前に現物株の売買がやや低調だったため、先物売りの影響が大きく出やすかったと考えられる。先週の当欄で「(相場が)需給的に大きく振れやすい」と述べたとおりだ。本日は一転してソフトバンクGやファーストリテが堅調なところを見ると、日本郵政の売出価格決定とともに日経平均先物にも買い戻しが入っているのだろう。日本株は需給イベントの影響が一服し、出遅れ分を取り戻そうとする動きにつながった。 しかし、先週の当欄でも指摘したが、日経平均が29000円を上回る局面ではPBR(株価純資産倍率)が1.3倍台に上昇し、3月決算企業の通期決算発表が一巡した5月半ば以降で最も高い水準となる(日経平均算出ルール変更や銘柄入れ替えの影響は考慮していないが)。米企業の好決算を横目に市場の期待はまずまず高まっているとみられ、ひとまずこの水準で実際の決算を見極めたいとのムードが出てくるだろう。 また、31日の衆院選投開票を前に持ち高を減らしたいという声も個人投資家などから聞かれる。一部メディアが選挙戦中盤の情勢を報じており、自民党が当初予測から議席減少幅を縮小しそうだが、24日投開票の参院補欠選挙が「1勝1敗」という結果だったことから、与党苦戦への懸念は拭いづらいだろう。従前TOPIX先物を買い戻していたBofA証券が再び売り越してきたところを見ると、海外投資家にも政治の先行き不透明感が意識されている可能性はある。 現在、香港ハンセン指数は小幅反落で推移。本日は国内で日本電産<6594>やキヤノンの決算発表があり、米国でも9月の新築住宅販売件数や10月の消費者信頼感指数、それにアルファベットやマイクロソフトなどの決算が発表される。後場の取引では徐々に様子見ムードが強まるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2021/10/26 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は反落、インフレリスクや国政不透明感で売り先行  日経平均は反落。284.50円安の28520.35円(出来高概算4億9390万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場でのNYダウは73.94ドル高(+0.2%)と反発。中国恒大のドル建て債利払い実施により目先の安心感が台頭したほか、10月の購買担当者景気指数(PMI)の上昇も後押しした。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が討論会でインフレリスクに言及したことが早期利上げ観測を誘い、下落に転じる場面もあった。それでも、クレジットカードのアメリカン・エキスプレスなど企業の好決算を受けた買いが再燃し、再び上昇して終了。一方、インフレリスクへの警戒感や失望的な決算から急落した半導体大手インテルが重しとなり、ナスダック総合指数は下落した。 インフレ懸念や米ハイテク株安を背景に、週明けの東京市場でもハイテク株を中心に売りが広がり、日経平均は277.72円安の28527.13円でスタート。対ドルでの円高への揺り戻しや、参議院静岡選挙区の補欠選挙で自民党候補が敗れたことが衆院選への警戒感を誘ったこともあり、朝方は先物主導で売りが先行した。ただ、心理的な節目の28500円が意識され、寄り付き直後からは下げ渋った。もみ合いが続いた後、前引けにかけては再び値を崩し、28500円を割り込む場面もあったが、同水準を回復して終えている。 個別では、米ハイテク株安や先物主導での売り先行から値がさ株が大きく崩れており、指数寄与度の高いソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>が4%前後の下落となっているほか、東エレク<8035>やアドバンテス<6857>などの半導体関連株が2%前後の下落。レーザーテック<6920>も4%超の下げとなっている。そのほか、神戸物産<3038>が3%超安、トヨタ<7203>、任天堂<7974>、KDDI<9433>などの下げも相対的に大きく、日本郵政<6178>、三菱UFJ<8306>、武田薬<4502>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>なども軟調。そのほか、上期営業益の低進捗率が嫌気されたKIMOTO<7908>、通期売上高を増額修正も営業益は据え置きとなった栗田工業<6370>なども大きく下落している。 一方、好決算や業績上方修正を材料に東京製鐵<5423>や中外製薬<4519>、ヤマト<1967>がそれぞれ急伸し、東証1部の値上がり率上位に並んでいる。ラウンドワン<4680>が相対で株式を取得し筆頭株主になることが判明したSKジャパン<7608>はストップ高買い気配。主力株では、米アップルが電気自動車(EV)向けバッテリーの調達先として検討と伝わったパナソニック<6752>が大幅に上昇、東京製鐵の好決算や証券会社の目標株価引き上げが刺激材料となった日本製鉄<5401>などの鉄鋼株も大幅高に。そのほか、ソニーG<6758>、日本郵船<9101>、川崎汽船<9107>、リクルートHD<6098>、三菱商事<8058>、日立<6501>、ベイカレント<6532>などが堅調推移。 セクターでは情報・通信業、ゴム製品、食料品などが下落率上位となっている一方、鉄鋼、鉱業、海運業などが上昇率上位に並んでいる。東証1部の値下がり銘柄は全体の50%、対して値上がり銘柄は42%となっている。 前週末のNYダウが史上最高値を更新した一方、週明けの日経平均は300円程の下げ幅での推移となっている。米長期金利の上昇が一服した反面、原油先物価格の上昇傾向は続いており、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も歴史的な高値圏で高止まりとなっている。パウエルFRB議長がインフレリスクに言及したことも金利先高観を強め、ハイテク株を中心に日経平均を押し下げている。 また、月末31日の衆院選を前に、前哨戦ともなる参院静岡、山口両選挙区の補欠選挙が前日に投開票された。山口では自民党候補が勝利した一方、静岡は、立憲民主、国民民主両党が推薦した候補が初当選となった。また、自民党が勝利した山口については、そもそも野党共闘が成立しておらず、実質的な無風選挙だったとの指摘も聞かれた。岸田内閣発足後初の国政選挙であったが、先行き不透明感を強める結果となり、報道のヘッドラインなどに反応したアルゴリズム売買なども下げを加速したとみられる。 他方、今週から7-9月期の決算発表が本格化する。前週一足先に決算を発表したディスコ<6146>は想定以上の好決算で、翌日の株価も素直に反応した。世界的な供給網混乱や電力不足、資源価格の上昇などを背景に、製造業決算に対する警戒感は根強いものの、こうした懸念は事前にある程度織り込まれていると想定される。一方、半導体などは今後も相対的に安心感のある決算が期待される。また、日経平均の28500円水準では心理的な節目が意識されるほか、この水準ではバリュエーション面での割高感も乏しい。こうした背景から、決算イベントを前にここから一段と売り込まれることは考えにくいだろう。 全体としては、上値は重くも、下値不安も大きくないと考えられ、指数は引き続きレンジ推移を続けそうだ。こうした中、決算を受けた選別物色の様相が次第に強まっていくこととなろう。早くも、東京製鐵の決算をきっかけに、しばらく冴えない動きが続いていた鉄鋼株を見直すような動きも見られている。再び日本株と米国株とのパフォーマンス格差が広がるなか、決算をきっかけに日本株を再評価するような動きがもっと出てくることを期待したいばかりだ。 さて、後場の日経平均は引き続き28500円を意識した一進一退となりそうだ。上海株や香港株がもみ合いとなっているなか、時間外の米株価指数先物の動きに反応した短期筋に左右されやすいだろう。しかし、上述した通り、過度な下値不安を抱く必要はないと考えられる。先物主導で下げるなか、本日は値がさハイテク株の下げがきついが、短期的な逆張り戦略が功を奏すると考える。 <AK> 2021/10/25 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は反発、「需給的にも大きく振れやすい」理由  日経平均は反発。183.53円高の28892.11円(出来高概算5億1000万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに小幅反落し、6ドル安となった。ITのIBMが決算を受けて急落し、NYダウを押し下げた。ただ、長期金利が上昇する一方で原油先物相場が下落し、インフレ懸念が和らいだ。電気自動車(EV)のテスラが好決算で買われたこともあり、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+0.62%と反発。S&P500指数は7日続伸し、過去最高値を更新した。本日の日経平均は売りが先行して130円安からスタートしたものの、値がさの半導体関連株を中心に買いが入りプラス転換。また、経営危機に揺れる中国恒大集団が23日に猶予期限が切れる米ドル債の利払いを実施すると中国メディアが報じたことも安心感につながり、日経平均は一時28989.50円(280.92円高)まで上昇した。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>が4%超の上昇。前日の米フィラデルフィア半導体株指数が上昇したほか、ディスコ<6146>の好決算も半導体関連株の反発を後押しした。その他売買代金上位もソフトバンクG<9984>、郵船<9101>、任天堂<7974>、トヨタ自<7203>など全般しっかり。前日ストップ高のサインポスト<3996>が商いを伴って大幅続伸し、業績上方修正の新日科学<2395>が東証1部上昇率トップとなっている。一方、売買代金上位では日本郵政<6178>が軟調。政府保有株の売出しで、週明け25日から価格決定期間に入る。川崎船<9107>や村田製<6981>は小安い。ZHD<4689>は5%超下落しているが、米スナップなどのSNS(交流サイト)関連銘柄が時間外取引で急落したことが波及か。また、決算発表のKOA<6999>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、精密機器、機械、ガラス・土石製品などが上昇率上位。一方、証券、非鉄金属、鉱業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の51%、対して値下がり銘柄は42%となっている。 本日の日経平均は反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。日経平均への寄与が大きい値がさの半導体関連株の反発、中国恒大の目先のデフォルト(債務不履行)回避などが理由に挙げられるが、前日500円を超える大幅下落を強いられた反動も大きいだろう。日足チャートでは、28500円台に位置する75日移動平均線が下値を支え、29000円近辺に位置する5日移動平均線や25日移動平均線に迫るまで値を戻す場面もあった。売買代金上位で半導体関連株の上昇が目立つ一方、業種別騰落率では商品市況の下落により関連セクターが軟調。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円強とさほど膨らんでおらず、サインポストが売買代金上位にランクインしていることからも、主力大型株の売買は引き続きやや低調な印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が+0.32%と3日ぶり反発。ただ、前日は日経平均以上に大幅な下落を強いられており、戻りの鈍い印象は拭えない。アスタリスク<6522>が再びストップ高を付けるなど賑わいを見せているが、物色は広がりを欠く。 さて、前日は本稿執筆後、後場になって日経平均が大きく値を崩した。先物手口ではみずほ証券や野村證券が日経平均先物を大きく売り越しており、日本郵政の大型売出しに絡んだものとの見方が多かった。今回の売出しの規模はおよそ9500億円に上るとみられており、株式需給の悪化が懸念されている。 ただ、それ以前に日本株は「需給的に大きく振れやすい」状況にあったのではないかとも考えられる。これまで当欄で指摘してきたが、先々週末ごろから続いていたBofA証券の東証株価指数(TOPIX)先物買い越しが今週半ばには一巡。9月の自民党総裁選と前後してTOPIX先物を大きく売り越していた海外実需筋の買い戻しが株価の戻りを演出したが、一段の押し上げは期待しづらくなった。 また、現物株でも様子見姿勢の投資家が多く、短期志向の投資家中心の売買となっている印象が強い。このところ東証1部売買代金は2兆円台半ばあたりの日が多く、9月の政局相場時と比べるとだいぶ減少した。また、売買代金上位にはインターネット証券で人気の半導体関連株や海運株が並び、ここ数日はサインポストやアスタリスクといった中小型株まで顔を出すようになってきた。中小型株はともかく、大型の半導体関連株や海運株も日々の値幅はかなり大きく出ており、投資資金の足は速いだろう。 日本株を揺さぶる懸念も依然として残る。米国では原油先物相場が反落したとはいえ、売り一巡後は買い直されて下げ幅を縮めた。期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.64%(+0.07pt)、長期金利は1.70%(+0.05pt)に上昇。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が15.01(-0.48)まで低下し、S&P500指数は最高値を更新したが、やや楽観に傾き過ぎているとの懸念も拭えない。実際、時間外取引でスナップなどのSNS関連銘柄が急落しており、株価変動率(ボラティリティ)が急速に高まる可能性はあるだろう。 中国恒大も目先のデフォルトを回避したに過ぎない。資産売却は難航しているもようで、今後も資金繰りに苦慮する場面が続くだろう。本日も香港・上海株は上値の重い展開を強いられている。さらに、国内では衆院選で自民党が単独過半数を維持できるかが争点に浮上してきた。来週から主要企業の決算発表が本格化するタイミングではあるが、今後も荒い値動きとなる場面が出てくることを視野に入れて取り組みたい。(小林大純) <AK> 2021/10/22 12:16 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反落、期待織り込み決算シーズンへ?  日経平均は3日ぶり反落。93.84円安の29161.71円(出来高概算4億7000万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でNYダウは続伸し、152ドル高となった。通信のベライゾン・コミュニケーションズなど主要企業の決算が好感され、取引時間中の過去最高値を更新する場面もあった。ただ、原油高によるインフレ観測や20年物国債入札の低調な結果から長期金利が上昇し、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-0.05%と小幅反落。半導体製造装置のオランダASMLが決算を受けて売られ、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-0.21%となった。本日の東京市場でも値がさの半導体関連株を中心に売りが先行し、日経平均は102円安からスタート。朝方には29055.02円(200.53円安)まで下落する場面があったが、一段と売り込もうとする動きは限られ、29000円近辺では押し目買いも入って下げ渋った。 個別では、半導体株安の流れからレーザーテック<6920>が4%超下落し、東エレク<8035>は2%超の下落。トヨタ自<7203>も軟調で、郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株は小安い。マツキヨココ<3088>は一部証券会社の投資判断引き下げが売り材料視されているようだ。また、決算発表後に強い値動きを見せていたクリレスHD<3387>が急反落し、ミダックHD<6564>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。一方、ソフトバンクG<9984>や任天堂<7974>、ベイカレント<6532>がしっかり。暗号資産(仮想通貨)ビットコインの高値更新でセレス<3696>などが買われ、ブイキューブ<3681>は投資判断付与観測で急伸。また、無人決済のコンビニエンスストアに関する報道でサインポスト<3996>に思惑買いが入り、ストップ高を付けている。 セクターでは、空運業、食料品、精密機器などが下落率上位。一方、石油・石炭製品、鉱業、非鉄金属などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の49%、対して値上がり銘柄は44%となっている。 米長期金利の上昇やASML下落の影響で半導体関連と中心とした値がさ株に売りが出て、本日の日経平均はやや軟調な展開となっている。日足チャートでは29100円台に下降する25日移動平均線が位置しており、この近辺でのもみ合いといったところ。東エレクなどが日経平均の下押し役となる一方、業種別騰落率では原油などの商品高により市況関連セクターが上昇率上位に並んでいる。ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円程度にとどまっており、1日を通じても2兆円台前半まで減少する可能性がある。一昨日の当欄で指摘したとおり、取引参加者は広がりを欠くのだろう。 新興市場でもマザーズ指数が-1.02%と続落。前日まで活況だったアスタリスク<6522>にかわり、新サービスを発表したグローバルW<3936>に物色の矛先が向いているようだ。もっとも、やはり米長期金利の上昇が重く、BASE<4477>などの主力IT株は軟調。また、エネチェンジ<4169>が急反落しているが、このところ成長期待の高い一部銘柄に短期志向の投資資金が集中していた印象は強く、荒い値動きを強いられる銘柄が増えるかもしれない。成長期待が高いといえど、株価が過熱していないかよく見極めたうえで取り組む必要があるだろう。 さて、米国では良好な決算が続き、NYダウは取引時間中の最高値を更新するところまできた。しかし、ASMLや動画配信のネットフリックスなど決算発表後に売られる銘柄も散見されるようになった。有力ハイテク企業を中心に事前の期待がかなり高まっているとみた方が良いかもしれない。 日本株ではどうか。日本経済新聞社が公表している日経平均のPER(株価収益率)は20日時点で14.24倍、PBR(株価純資産倍率)は1.31倍となっている。PBRは3月決算企業の通期決算発表が一巡した5月半ば以降で最も高い水準だ。なお、EPS(1株当たり利益)やBPS(1株当たり純資産)が足元やや減少しているため、PER・PBRとも9月高値時をやや上回っている。上期決算発表と前後して通期業績予想の上方修正が期待されるが、バリュエーション的には既にある程度織り込んでいるとの見方もできる。 取引状況を見ても、現物株の売買代金が減少してきたほか、株価指数先物についてもここ数日は外資系証券の目立った買い越しが見られなくなってきた。当欄では日経平均の上値めどを足元29000円強としていたが、やはり29500円手前で伸びが鈍った格好だ。国内でも本日はディスコ<6146>、明日は中外薬<4519>の決算発表が予定され、来週からはいよいよ主要企業の発表が相次ぐ。日経平均はある程度期待を織り込みつつ、29000円水準で決算発表シーズンを迎えることになりそうだ。 なお、海外でも注視すべきことは山積みだ。米国では商品高とともにインフレ懸念が根強く残ることが気掛かり。また、本日もインテルやAT&Tなどの決算発表が予定されている。経営危機に陥っている中国恒大集団は本日、9月23日に予定されていた米ドル債の利払いについて猶予期限を迎える。19日期日だった人民元債の利払いは実施したもようで、すぐに事業整理や法的整理に至るわけでないとみられているが、他の不動産会社を含め資金繰り不安が長期化しそうなのはむしろネガティブかもしれない。(小林大純) <AK> 2021/10/21 12:22 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続伸、上昇後尻すぼみ、米株高を素直に好感できず  日経平均は小幅続伸。45.99円高の29261.51円(出来高概算6億0037万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でのNYダウは198.70ドル高(+0.56%)と反発。医薬品のジョンソン・エンド・ジョンソンや保険のトラベラーズなどの好決算が好感されたほか、NY原油先物価格の上昇一服感も手伝い終日堅調に推移。米10年債利回りは1.64%と約5カ月ぶりの高値水準を記録したものの、ハイテク企業への決算期待が相殺し、ナスダック総合指数も0.71%高と5日続伸。米株高を好感し、東京市場でも半導体関連株を中心に買いが入り、日経平均は170.43円高でスタート。香港株の上昇も追い風に、前場中頃には29489.11円(273.59円高)まで上値を伸ばした。しかし、29500円手前では戻り待ちの売りも強く、その後はもみ合いが継続、前引けかけては中国株の失速もあり急速に上げ幅を縮める展開となった。 個別では、傘下ファンドの投資先である米ウィーワークの上場決定の報道を材料にソフトバンクG<9984>が大きく上昇。米長期金利の上昇を受けて三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などのメガバンクも買われている。そのほか、東証1部売買代金上位では、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、武田薬<4502>が堅調、日立<6501>、キヤノン<7751>のほか、JAL<9201>、ANA<9202>、JR東<9020>、JR東海<9022>などのアフターコロナ関連銘柄が大幅高となっている。また、米国初となる暗号資産(仮想通貨)ビットコインに連動した上場投資信託(ETF)の取引開始を刺激材料にマネックスG<8698>が急伸。 新マグネシウム合金圧延材を共同開発した日本金属<5491>は急伸し、1部値上がり率トップに躍り出ている。業績予想の上方修正や増配を発表したソフトクリエ<3371>、大阪ソーダ<4046>などもそれぞれ急伸し、値上がり率上位に並んでいる。そのほか、証券会社のレーティングを材料にコーセー<4922>、ミライトHD<1417>なども上昇。 一方、米当局による車両点検の緊急勧告の可能性が伝わった川崎重<7012>、中国商品取引所での石炭価格の下落が売り材料視された三井松島HD<1518>がそれぞれ急落し、1部値下がり率上位に並んでいる。業績予想を下方修正したリョービ<5851>、証券会社の格下げ観測があったバリューコマース<2491>なども売られている。なお、1部売買代金上位では、任天堂<7974>、川崎汽船<9107>、ベイカレント<6532>、SUMCO<3436>などが大きく下落している。 セクターでは空運業、陸運業、証券・商品先物取引業などが上昇率上位となっている一方、その他製品、海運業、ゴム製品などが下落率上位に並んでいる。東証1部の値上がり銘柄は全体の42%、対して値下がり銘柄は50%となっている。 日経平均は上値抵抗線と見られていた25日移動平均線を突破し、チャート形状は一段と改善した。企業決算への警戒感が高まっていたなか、米国企業のこれまでの決算が総じて市場予想を上回る好内容だったことで、投資家心理が改善してきている様子。NYダウやS&P500種株価株価指数のチャート形状もかなり改善し、再び史上最高値を窺う位置にまで回復してきた。 ただ、国内の企業決算が本格化するのは来週後半からで、ちょうど時期が重なる月末の衆院選投開票結果に対する不透明感もあり、一段と上値を追う動きには至っていない。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の大幅上昇を背景に朝方大きく上昇していた東エレク<8035>など半導体関連株も寄り付き後は失速し、上げ幅を縮める動きとなっている。個別株で大きく上昇しているものは多くなく、短期筋による散発的な先物買いで指数だけが先行して上昇していた印象だ。 また、これまでの米国企業の好決算も、日本株にとって過度にポジティブには捉えにくい。これまでの企業決算は大手投資銀行や保険大手、医薬品関連など米国内経済との結びつきが強いものが大半。原油高や供給網混乱などの影響が懸念される製造業を中心とした日本企業の業績に直接示唆を与えるようなものではない。 他方、前日に発表された米消費財メーカーのプロクター&ギャンブル(PG)の決算では、商品価格や輸送費の上昇による通期計画への下押し圧力に言及があり、株価は下落した。日本株にとってはこちらの方が示唆深いだろう。また、日本企業については、資源価格や輸送費の上昇に加え、急速に進展する円安も相まってコスト増に対する懸念が特に強い。東証1部全体の売買高が停滞気味であるところを見ても、7-9月期決算と下期に対する見通しを確かめるまでは、明確に強気に転じることはできそうにない。 また、約5カ月ぶりの高値を記録した米長期金利の上昇も気懸かり。米10年債利回りは19日、1.64%と、1.59%から大きく上昇。一方、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.54%と横ばいで高止まり。インフレ懸念や来年からの米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げなどを織り込む形で、米国債が売られる状況が続いていると思われるが、BEIが高止まりの一方で米長期金利が上昇を続けると、実質金利の上昇を通して株式相場の重しとなりかねない。3月に付けた1.78%水準にはまだ距離があるが、米長期金利の上昇ペースには改めて警戒しておきたい。 むろん、供給網の混乱や商品市況高など供給サイドに基づく金利上昇でなく、企業業績や景気回復を反映した良い金利上昇であれば、長期的には株式市場への影響もポジティブなものとなる。それでも、金利上昇ペースの速さや実質金利上昇の短期的な悪影響には警戒が必要だろう。また、商品市況が高止まりしている中、今の金利上昇が素直に景気回復を映したものと捉えてよいかどうかを判断するには時間がかかろう。 日経平均は、決算シーズンを一巡するまでは当面3万円の大台を回復することは難しいとみられ、29500円手前での一進一退が続きそうだ。しばらくは、上昇したところは売り、下がったら押し目買いの逆張り戦略が奏功しやすい環境が続くとみる。 <AK> 2021/10/20 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は反発、市場のエネルギーがまだまだ乏しい  日経平均は反発。187.58円高の29213.04円(出来高概算5億1000万株)で前場の取引を終えている。 週明け18日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに小幅反落し、36ドル安となった。中国の7-9月期国内総生産(GDP)などの経済指標が市場予想を下回ったことがネガティブ視されたほか、原油先物相場が一時7年ぶり高値水準まで上昇し、根強いインフレ懸念も相場の重しとなった。一方、ゴールドマン・サックスなど主要企業の堅調な決算が支えとなり、今後発表予定のハイテク株の一角には先回り買いが入った。ナスダック総合指数は4日続伸し、0.84%の上昇。東京市場でも値がさハイテク株を中心に押し目買いが入り、日経平均は91円高からスタートすると、朝方には一時29246.81円(221.35円高)まで上昇した。ただ、国内でも今月下旬から決算発表が本格化するのを前に様子見姿勢の投資家も少なくないようで、買い一巡後は伸び悩む場面があった。 個別では、レーザーテック<6920>が4%超の上昇となっているほか、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、任天堂<7974>といった値がさ株も堅調。郵船<9101>や川崎船<9107>といった海運株はレーザーテック同様に上昇が目立っている。前日ストップ安のベイカレント<6532>は商いを伴って急反発し、政策期待の根強いレノバ<9519>もリリースを手掛かりに大幅高。また、業績修正を発表したクオールHD<3034>が東証1部上昇率トップとなっている。一方、村田製<6981>やトヨタ自<7203>が軟調。NY原油先物相場が高値後に伸び悩んだことから、INPEX<1605>が3%超下落するなど関連銘柄の下げが目立つ。また、前日ストップ安比例配分のEduLab<4427>が大幅続落し、東証1部下落率トップとなっている。 セクターでは、海運業、精密機器、その他製品などが上昇率上位。一方、鉱業、空運業、石油・石炭製品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の44%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 前日の米市場でハイテク株が買われた流れを引き継ぎ、本日の東京市場でも値がさ株主導で日経平均が一時200円を超える上昇となっている。中国の7-9月期GDPが鈍化したことを受け、景気刺激策への期待から香港ハンセン指数が続伸していることも追い風となっているだろう。日経平均の日足チャートを見ると、29200円台に位置する25日移動平均線水準まで上昇。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりとなっており、引き続き減少傾向にある印象を受ける。インターネット証券で人気のあるハイテク株や海運株が賑わっているように見えるが、取引参加者は広がりを欠くのかもしれない。 新興市場でもマザーズ指数が+1.92%と反発。こちらは1120pt台に収束していた25日移動平均線や75日移動平均線を上回ってきた。ハイテク株高を追い風にメルカリ<4385>などが堅調なほか、直近好決算だったアスタリスク<6522>などが賑わっている。東証1部の売買代金上位にベイカレントやレノバがランクインしているのを見ると、物色の矛先が成長期待の高い新興株にもシフトしつつあると考えられる。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.54%(-0.02pt)とやや低下した。注目される原油先物相場が伸び悩んだほか、連邦準備理事会(FRB)スタッフが来年にもインフレ率は2%未満に低下すると予測していることを一部メディアが報じるなど、市場のインフレ・金利上昇観測は行き過ぎとの指摘が政策担当者・市場関係者から聞かれる。また、企業決算や15日発表の9月小売売上高が良好な結果で、景気減速を伴う「悪いインフレ」への懸念が和らいでいる面もあるだろう。 ただ、BEI・原油価格ともまだ高止まりと言っていい状況だ。「ラニーニャ現象」発生による厳冬予測も相まって、エネルギー価格の先高観は根強く残るだろう。また、経営危機に陥っている中国恒大集団は本日、新たに人民元建て社債の利払い期限を迎える。会社側は利払い実施を発表しているが、既に期日を超えたドル建て社債の利払いは未実施とみられ、近日デフォルト(債務不履行)が認定される可能性もある。 日経平均は6日安値27293.62円(取引時間中)から2000円近く値を戻してきたが、8月末から9月にかけての政局相場のような現物株・株価指数先物の売買の膨らみは見られず、高揚感に乏しいと言わざるを得ない。自民党総裁選と前後して先物を大きく売り越していた海外勢の買い戻し、それに取引参加意欲の強い現物株投資家の買いがここまでの戻りを演出したが、多くの投資家は様子見姿勢と考えた方が良いだろう。それは企業決算を見極めたいとの思惑だけでなく、海外の懸念材料を多分に意識してと考えられる。また、やはり日経平均が29000円を超える場面では現物株・先物とも一定の売りが出ていることが各種データから窺える。一段の上昇を狙うには市場のエネルギーがまだまだ乏しいとみておきたい。 最後に、衆院選が本日公示された。選挙戦序盤の情勢が各種メディアから報じられており、目標の「与党で過半数」を達成しつつも、自民党は20~30議席ほど減らすとの予測が多いようだ。今後の推移に注目したい。また、今晩の米国では9月の住宅着工件数やネットフリックスなどの決算が発表される予定となっている。(小林大純) <AK> 2021/10/19 12:22 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反落、米金利上昇が重し、インフレ懸念は強まる一方  日経平均は3日ぶり反落。80.97円安の28987.66円(出来高概算5億5888万株)で前場の取引を終えている。 前週末15日の米株式市場でのNYダウは382.20ドル高(+1.09%)と大幅続伸。9月の小売売上高が前月比0.7%増と、予想(-0.2%)に反して2カ月連続で増加したことから景気回復期待が強まった。また、米金融大手ゴールドマン・サックスなどの好調な企業決算も投資家心理を向上させ、上げ幅を拡大。一方、米10年債利回りが再び上昇に転じたこともあり、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.49%高と上昇率が限定的となった。 週明けの日経平均は米株高を好感し25.19円高の29093.82円でスタート。ただ、商品市況の上昇や米長期金利の上昇が重しとなったほか、前週の大幅上昇の反動もあり、寄り付き直後から失速するとマイナスに転換。その後、下げ渋って上昇に転じる場面もあったが、29144.33(75.70円高)を高値に再び失速すると、前場中頃には29000円を割り込んだ。手掛かり材料難のなか方向感に欠ける動きが続き、前引けにかけては29000円を挟んだ一進一退となった。 個別では、業績及び配当予想の上方修正を発表したミタチ産業<3321>、業績予想を上方修正した住石HD<1514>がそれぞれ急伸し、東証1部値上がり率上位に並んだ。電力不足を背景とした非鉄金属市況の上昇を刺激材料に東邦亜鉛<5707>も急伸。そのほか、INPEX<1605>、JFE<5411>、住友鉱<5713>、三井金<5706>、大紀アルミ<5702>など資源関連株が大幅に上昇。1ドル=114円台にまで進展した円安を追い風に三菱自<7211>、SUBARU<7270>、スズキ<7269>、デンソー<6902>なども大幅高、11月生産計画の下方修正の発表があったものの、トヨタ<7203>も大幅に上昇している。 一方、米長期金利の上昇が重しとなり、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、エムスリー<2413>などのグロース(成長)株が軟調。第3四半期の営業損益が赤字に転落したマネーフォワード<3994>、上半期好決算も通期計画据え置きで出尽くし感につながったベイカレント<6532>がそれぞれ急落。業績予想の下方修正で一転減益見通しとなったRPA<6572>も大きく売り込まれている。 セクターでは医薬品、水産・農林業、食料品などが下落率上位となっている一方、鉱業、石油・石炭製品、輸送用機器などが上昇率上位に並んでいる。東証1部の値下がり銘柄は全体の54%、対して値上がり銘柄は40%となっている。 米国企業の企業決算が一足先に本格化するなか、日本企業の7-9月期決算が始まるのは来週からとなる。今週は決算シーズンの端境期となり、手掛かり材料難のなか、全体的にも方向感に欠ける動きとなっている。 前週は米国での各種物価指標の発表後、過度なインフレ懸念が後退したとの見方から、米長期金利が低下し、値がさハイテク株などを中心に全体的に大きく上昇した。岸田首相の金融所得課税引き上げについての発言を受けて、政権への過度なネガティブ視が後退するなか、衆議院解散から投開票日までの株高アノマリーを再び意識する向きもいたようで、海外勢の買い戻しも進んだ。 しかし、前週からの繰り返しにはなるが、長期金利の低下は一過性のものと思われる。前週、米長期金利が低下していた中でも、商品市況の上昇は継続しており、期待インフレ率の指標となる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)もむしろ上昇していた。長期金利の低下は、インフレ懸念の後退を映したものではなく、国債入札が好調だったことや物価指標の発表というイベント通過に伴う、債券の売り方の買い戻しが主体だったと考えられる。 実際、前週末には、米長期金利は1.51%から1.57%へと上昇に転じ、再び1.6%台を窺う水準にまできている。そして、目を引くのが米BEIの一段の上昇だ。5月10日付けた2.54%を手前に、一段の期待インフレ率の上昇は考えにくいとの見方も一部であったようだが、実際には、15日に米BEIは2.56%と、5月高値を上回り、8年9カ月ぶりの高値を記録した。NY原油先物価格も期近物で7年ぶりとなる高値を連日のように記録。相場のモメンタムに追随する商品投資顧問(CTA)に倣ったトレンドフォロー型の戦略を採用するファンドでは、一段の金利上昇とドル高に賭けて、米債ショート・ドルロングのポジションを積み増しているとも伝わっている。 世界的な電力不足も未だ解決の目処が立っているとはいえない。電力高騰を背景にロンドン金属取引所(LME)での亜鉛やアルミニウムの先物価格は記録的な上昇基調が続いている。液化天然ガス(LNG)の在庫不足を背景とした代替需要から、原油先物価格の上昇も継続中。ラニーニャ現象により厳冬が想定される冬季シーズンに向け、商品市況の上昇やインフレ懸念再燃による長期金利の上昇には依然として警戒が必要そうだ。今日の東京市場で上昇が目立っているものも、ほとんどが商品市況の上昇の恩恵を受ける非鉄金属など資源関連のセクターだ。市場のインフレを巡る思惑は当面続くと想定される。 さて、後場の日経平均は、中国株や香港株も軟調ななか、時間外の米株価指数先物などの動きに振らされそうで、引き続き29000円台を挟んだ動きとなりそうだ。ただ、午前中に発表された中国の経済指標では、7-9月期国内総生産(GDP)が市場予想並みとなったほか、9月の鉱工業生産が市場予想を下回った一方、小売売上高が市場予想を上回るなど、まちまちながらも波乱のない内容となったことは目先の安心材料となりそうだ。直近下げが大きかった中国売上比率の高い銘柄などには見直し機運が高まる可能性もあろう。 <AK> 2021/10/18 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続伸、それでも強弱感は入り交じる  日経平均は大幅続伸。369.21円高の28920.14円(出来高概算5億3000万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに大幅反発し、534ドル高となった。週間の新規失業保険申請件数や9月卸売物価指数(PPI)上昇率が市場予想を下回ったほか、主要企業の堅調な決算も好感された。長期金利の低下でハイテク株比率の高いナスダック総合指数は1.73%の上昇。台湾積体電路製造(TSMC)の好決算を受けてフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3.08%の上昇となった。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで236円高からスタート。朝方は28800円を挟んでもみ合う展開が続いたが、前引けにかけて強含み、28953.04円(402.11円高)まで上昇する場面があった。 個別では、レーザーテック<6920>が6%超の上昇となるなど、値がさハイテク株で上げが目立つ。郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、川崎船<9107>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>も堅調。決算発表銘柄ではクリレスHD<3387>などが急伸し、PRTIMES<3922>や東京ベース<3415>は東証1部上昇率上位にランクイン。イオン<8267>による株式公開買付け(TOB)が発表されたキャンドゥ<2698>はストップ高水準での買い気配が続いている。一方、今期業績見通しが市場予想を下回ったファーストリテ<9983>や良品計画<7453>は軟調で、新型「ニンテンドースイッチ」の販売状況が伝わった任天堂<7974>は小幅に下落。高島屋<8233>は業績下方修正で売りがかさみ、IDOM<7599>は堅調な決算ながら東京機<6335>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、機械、電気機器、金属製品などが上昇率上位で、その他も全般堅調。空運業と水産・農林業の2業種のみ下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の86%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 前日の米市場で主要株価指数が揃って大きく上昇し、本日の東京市場でも幅広い銘柄が買い優勢の展開となっている。日経平均の日足チャートを見ると、28500円近辺に位置する75日移動平均線を大きく上抜け、早くも次の節目と目される29000円に迫る動き。個別では、さすがに前日大きく上昇していた東エレクやアドバンテス<6857>こそやや落ち着いているが、その他の値がさハイテク株の堅調ぶりが目立つ。収益改善が見られるクリレスHDなどの外食関連株も引き続き急伸している。ただ、ファーストリテや良品計画の期待以下の今期予想には、国内外経済の先行きに対する一抹の不安もあるようだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと前日並みで、引き続き取引活発とは言いづらい。 新興市場でもハイテク株高の流れを追い風に、マザーズ指数が+2.03%と大幅続伸。こちらは1120pt台に位置する75日移動平均線に迫る動きとなっている。個別では決算発表のオキサイド<6521>などが大幅高。ただ、前日のマザーズ市場では直近IPO(新規株式公開)銘柄がかなり荒い値動きとなり、足の速い投資資金中心の取引となっている可能性がある。 さて、米長期金利は先週末にかけて一時1.6%台まで上昇したのち低下傾向にある。9月PPIが前月比+0.5%(8月+0.7%、市場予想+0.6%)と鈍化した点はインフレ懸念の緩和につながりそうなものだが、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は14日、2.52%(0.00pt)と高止まりだ。NY原油先物相場が1バレル=80ドル台という高水準を維持しており、こうした商品高を背景にインフレ懸念は拭いづらいだろう。 前日の当欄でも述べたが、このところスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)を見越して株式・債券のショート(売り持ち)ポジションを構築していた海外ファンド勢が多かったとみられ、ここ数日の株高・債券高は物価指数発表や国債入札といったイベント通過による売り方の買い戻しが主因だった可能性がある。特に、BEIの高止まりで名目金利とともに実質金利が低下し、ハイテク関連を中心としたグロース(成長)株は買い戻しが誘発されやすい。 もっとも、前述したようにインフレ懸念などの世界経済の先行きを巡る不透明要因は依然として残るため、国内外投資家が積極的な買い持ちへと転じるかよく見極める必要があるだろう。引き続き各国経済指標の発表は多く、今晩の米国では9月小売売上高、10月NY連銀製造業景気指数、10月ミシガン大学消費者マインド指数などがある。また、週明け18日には中国で9月国内総生産(GDP)などの重要指標の発表が予定されており、これらの結果を受けて再び相場の方向感に変化が出てくる可能性はあるだろう。 前日の先物手口を見ると、BofA証券が東証株価指数(TOPIX)先物の買い越しを続ける一方、シティグループ証券が売りに傾いた。また、11~12月物オプションでは、権利行使価格27500~28000円のプット(売る権利)の建玉がかなり膨らんでおり、株価急落に備えたヘッジニーズが強いことを窺わせる。市場には強弱感が入り交じっており、日経平均も目先3万円の大台を回復しに行くような動きとはなりづらいだろう。(小林大純) <AK> 2021/10/15 12:23 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり反発、選挙戦を前に国内政治論点にあえて一石  日経平均は3日ぶり反発。285.62円高の28425.90円(出来高概算6億1000万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でNYダウは小幅ながら4日続落し、0.53ドル安となった。9月の消費者物価指数(CPI)が総合で前年同月比+5.4%、前月比+0.4%と市場予想を上回る伸びを見せ、インフレ懸念がくすぶった。決算発表のJPモルガン・チェース、新型「iPhone」の生産目標引き下げが報じられたアップルが下落したことも相場を押し下げた。ただ、CPIコア指数が市場予想並みだったことや30年物国債入札が好調だったことから長期金利が低下し、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.7%の上昇。本日の東京市場でも値がさ株に買いが入り、日経平均は124円高からスタートすると、朝方には一時28502.74円(362.46円高)まで上昇した。一方、引き続き28500円近辺では戻り待ちの売りも出やすく、朝方の高値後は28400円前後でもみ合う展開となった。 個別では、東エレク<8035>が4%超、アドバンテス<6857>が3%超の上昇となるなど、半導体関連株の一角で上げが目立つ。任天堂<7974>やファーストリテ<9983>も堅調で、ソフトバンクG<9984>は小じっかり。サイゼリヤ<7581>や吉野家HD<9861>、コシダカHD<2157>といった外食・サービス企業は決算が好感され、東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株が大きく下落しており、公募増資の受渡日を迎えたヒューリック<3003>も2%超の下落。レーザーテック<6920>はさえない。また、前期業績修正のセラク<6199>、決算発表のベル24HD<6183>やトレファク<3093>、前沢工<6489>などが東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、その他製品、精密機器、化学などが上昇率上位。一方、海運業、石油・石炭製品、保険業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は55%となっている。 本日の日経平均は300円近い上昇で前場を折り返した。米国での長期金利低下やハイテク株高を支えに、値がさ株が健闘して日経平均を押し上げている。もっとも、売買代金上位では値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が拮抗している印象で、東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多い。個人投資家に人気の海運株やレーザーテックも軟調なのはやや気掛かりだ。前引けの日経平均は+1.01%だが、東証株価指数(TOPIX)は+0.31%にとどまる。日経平均の日足チャートを見ると、28200円台に位置する5日移動平均線が下値を支える一方、29500円台に位置する75日移動平均線が上値を抑える格好。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、1日を通じてはここ2日と同様に2兆円台半ばあたりとなりそうだ。取引活発とは言いづらい。 新興市場でもマザーズ指数が+1.14%と3日ぶり反発。本日は9月上場のレナサイエンス<4889>などが賑わっているが、日替わり物色の様相で、マザーズ指数はこのところ1100pt前後でもみ合う展開が続いている。 さて、注目された米9月CPIは引き続き高い伸びを示したが、おおむね市場予想並みだったことで「過度なインフレ懸念が後退した」との見方がある。しかし、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)はむしろ2.52%(+0.03pt)に上昇しており、やはり「引き続きインフレ圧力は強い」と受け止める向きが多いのだろう。10年物国債利回りの低下(債券価格の上昇)は30年物国債入札が好調だったことなどによる売り方の買い戻しと考えられる。 9月21~22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では「テーパリング(量的緩和の縮小)を11月半ばか12月半ばに開始する」方向であることが再確認されたものの、特段のサプライズではないと受け止められている。ただ、インフレ観測が広がるなかで米連邦準備理事会(FRB)の対応が遅いとして、「政策エラー」を懸念する声が再び聞かれ始めたのは気掛かりだ。 一方、国内では本日、衆議院が解散されて19日公示・31日投開票の日程で選挙戦に突入する。選挙期間の政策期待による株高傾向が意識されてか、自民党総裁選と前後してTOPIX先物を大きく売り越したBofA証券が、先週末あたりからは逆に一貫して買い越している。ただ、国内政治を巡る投資論点で、あえて大勢と異なる見方も示しておきたい。年末にかけての日本株の上昇余地を探るうえで重要となるだろう。 (1)岸田政権の掲げる衆院選の勝敗ライン「与党で過半数」を達成することで政権基盤の強化につながるとみられているが、はたしてそうか。前回2017年の衆院選で大勝した反動に加え、菅前政権以来の逆風下では致し方ない面もあるが、自民党の現有議席276(公明党29とあわせ与党で305、定数465)に対し、勝敗ラインはやや保守的な印象を受ける。仮に勝敗ライン上での攻防なら数十議席減という結果だ。衆院選後に当初5割前後だった政権支持率も低下するようなら、来夏の参院選に向けて再び不安がくすぶることになるかもしれず、実際にこうした懸念の声は一定数聞かれる。 (2)岸田文雄首相の再分配重視の姿勢は非自民層から一定の支持を得ており、保守層も総裁選で「サナエノミクス」を掲げていた高市早苗政調会長による政策とりまとめに期待しているようだ。ただ、従前財務相だった麻生太郎副総裁が自民党内で影響力を強めているとみられ(総裁選で一貫して岸田氏支持を表明していた甘利明幹事長が麻生派)、はたして思い切った経済対策が打てるか。矢野康治財務次官が月刊誌への寄稿で与野党の政策を「バラマキ合戦」と批判したことが話題となったが、この寄稿は事前に麻生氏の了解を得て行われたという。岸田氏や公明党が意欲を見せる現金給付についても、麻生氏は一貫して否定的だ。岸田氏の施政方針演説に「具体性を欠く」との批判が聞かれたが、今後の党内調整の難しさがにじみ出ているのかもしれない。 最後に、本日は日経平均への影響が大きいファーストリテ、海外でも台湾積体電路製造(TSMC)や米金融大手等の決算発表が控えており、後場の取引ではこれらの内容を見極めたいとのムードも出てきそうだ。(小林大純) <AK> 2021/10/14 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は続落、米CPI前に様子見、相場復調へのハードルは高い  日経平均は続落。61.62円安の28168.99円(出来高概算5億8421万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でのNYダウは117.72ドル安(-0.34%)と3日続落。8月JOLT求人件数が年初来初めて減少したことで雇用回復への懸念が強まった。また、インフレ指標発表を前に様子見ムードが広がるなか、連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長やボスティック米アトランタ連銀総裁がインフレリスクに言及したことが嫌気された。さらに、国際通貨基金(IMF)が経済成長率見通しを引き下げたことも景気敏感株の売りを誘った。金利先高観がくすぶる中、ナスダック総合指数も0.13%安と3日続落した。 米株安の流れを引き継いだ日経平均は145.17円安の28085.44円でスタートすると、そのまま27993.46円まで下げた。ただ、1ドル=113円台後半まで進んだ円安が輸出株の下支え役となったほか、全体も押し目買いから下げ渋ると、下値の堅さが買い戻しを誘い、日経平均は間もなくして上昇に転じた。上げ幅は一時134.38円高(28364.99円)までに拡大。しかし、伸び悩んで再びマイナスに転じると、その後は前日終値近辺でこう着感を強めた。 個別では、日本郵船<9101>などの大手海運3社が大幅に下落。金利先高観に加え、来年のDRAM価格の下落観測などを受けて大幅下落となったフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の影響もあり、東エレク<8035>やアドバンテス<6857>が大幅安。公募増資による新株発行に係る価格が決まったSUMCO<3436>は商いを伴いながらやや下落となっている。米アップルが、半導体不足を理由にiPhoneの生産計画を下方修正したことが嫌気され、村田製<6981>、太陽誘電<6976>、イビデン<4062>なども大きく売られている。 また、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>などが軟調。そのほか、業績下方修正を発表した日ペHD<4612>、第1四半期減益決算が嫌気された三光合成<7888>、第1四半期大幅増益も出尽くし感が先行したタマホーム<1419>などが急落し、東証1部値下がり率上位に並んでいる。 一方、上期事業利益が会社計画を上回ったJフロント<3086>、前期上振れ着地に加え今期も大幅増益見通しとしたSHIFT<3697>がそれぞれ急伸、第3四半期営業利益が通期計画を上回ったフィルカンパニー<3267>、監理銘柄からの指定解除を発表したOKK<6205>などと共に東証1部値上がり率上位に並んだ。1部売買代金上位では、レーザーテック<6920>、ファーストリテ<9983>、ソフトバンク<9434>、JT<2914>などが堅調で、円安を好感した三菱自<7211>が大幅高、そのほか、ヒューリック<3003>、富士フイルム<4901>、レノバ<9519>などが買われている。 セクターでは海運業、銀行業、鉄鋼などが下落率上位となっている一方、不動産業、金属製品、建設業などが上昇率上位に並んでいる。東証1部の値下がり銘柄は全体の62%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 日経平均は方向感に欠ける展開ながらも、心理的な節目の28000円を意識した底堅い動きとなっている。インフレや長期金利の動向が気懸かりななか、今晩には9月米消費者物価指数(CPI)や9月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表される。様子見ムードのなか仕掛け的な売りなども警戒されるところではあるが、28000円を割ったところではすかさず押し目買いが入るなど、想定以上にしっかりとした動きとなっている。ただ、明日の米株市場の動き次第では、風向きが変わりやすいため、依然として相場は流動的だ。 また、IMFの最新の世界経済見通しは残念な内容となった。世界的な供給網混乱やインフレ懸念による消費鈍化などを背景に、2021年度は全般の経済成長率が下方修正された。世界経済全体については5.9%と前回7月時点から0.1ptの引き下げにとどまったものの、世界経済の中心にある米国経済については6.0%と、前回から1.0ptも引き下げられた。また、日本も2.4%と0.4ptも引き下げられ、前回に続く下方修正となった。日本については、新型コロナウイルスワクチンの接種率上昇を背景に見通しが引き上げられる可能性も指摘されていただけに、この引き下げ幅はネガティブだ。また、米国も日本も共に2022年度については上方修正されているが、先行き不透明感が強いなか、こちらは積極的にポジティブに捉えることが難しい。 国内外の経済見通しが大きく引き下げられたことで、世界の景気敏感株とも呼ばれる日本株にとっては改めて厳しい状況となった。これでは、各国の経済動向を踏まえて投資戦略を決めるグローバルマクロ系のヘッジファンドなどによる投資などはますます見込みにくくなったといえる。 今年2月半ばまでの上昇相場の際には、「インフレ加速・長期金利上昇」を見込んだリフレトレードの動きが活発化し、世界の景気敏感株である日本株にとっては追い風の環境だった。今再び、インフレや長期金利上昇が話題に上っているが、状況は異なる。前回は、コロナ禍からの回復局面前半で景気回復のモメンタムが加速していた時だった。世界の企業業績も1-3月から4-6月にむけて増益率が大幅に拡大する局面だった。しかし、今は違う。米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する景況指数などは依然高い数字を記録しているものの、中国を中心に世界全体ではモメンタムは完全に鈍化している。企業業績も4-6月期をピークに、増益率は7-9月期からは大幅に鈍化する見込みだ。景気減速が想定されるなかでのインフレ・長期金利上昇は日本株にとっても望ましくないことは明白だ。 7-9月期決算の先駆けとなる、前週に発表された安川電機<6506>の6-8月期決算は決して悪くはなかった。第1四半期に続き通期計画も上方修正された。しかし、市場予想の範囲内に収まったこともあり、その後の株価推移は軟調だ。インフレ懸念、金利先高観、景気・業績モメンタム鈍化、など、先行き不透明感を払しょくするような企業業績が今後相次ぐことが望まれるが、そのハードルはかなり高そうだ。 <AK> 2021/10/13 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は4日ぶり反落、米雇用統計・商品高でインフレ懸念一段と  日経平均は4日ぶり反落。265.88円安の28232.32円(出来高概算6億株)で前場の取引を終えている。 週明け11日の米株式市場でNYダウは続落し、250ドル安となった。原油先物相場が一時1バレル=82ドル台に乗せるなど商品市況の上昇が続き、インフレ懸念がくすぶった。また、金融大手ゴールドマン・サックスが2021~22年度の経済成長見通しを引き下げるなど、経済や企業業績の先行きに慎重な見方が広がった。なお、コロンバス・デーの祝日で為替・債券市場は休場だった。本日の日経平均は米株安の流れを引き継いで39円安からスタートすると、寄り付き後も下げ幅を拡大。日経平均への寄与が大きい値がさ株を中心に売りが出たほか、中国・上海株や香港株が軟調な出足だったこともあり、前場中ごろを過ぎると28166.38円(331.82円安)まで下落する場面があった。 個別では、ソフトバンクG<9984>とファーストリテ<9983>が揃って3%近く下落し、2銘柄で日経平均を約113円押し下げた。レーザーテック<6920>や東エレク<8035>といった半導体関連株もさえない。業績上方修正のコーエーテクモ<3635>は伸び悩んでマイナス転換。また、新株発行による資金調達を発表したシーアールイー<3458>、決算発表のライク<2462>やコスモス薬品<3349>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株は堅調。円安進行を支えにトヨタ自<7203>は小高く、非鉄金属市況の上昇で住友鉱<5713>などの上げが目立つ。また、業績・配当予想の大幅上方修正が好感されたローツェ<6323>はストップ高を付け、東証1部上昇率トップとなっている セクターでは、電気・ガス業、小売業、情報・通信業などが下落率上位。一方、非鉄金属、海運業、鉄鋼などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の78%、対して値上がり銘柄は18%となっている。 本日の日経平均は海外株安を受けて200円超の下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、28500円強に位置する75日移動平均線に押し返された格好。テクニカル的にはこの水準が戻りの節目の1つとの見方が多い。もっとも、28000円近辺に位置する5日移動平均線水準まで下落を強いられることもなく推移。業種別騰落率では市況関連セクターが値上がり上位に並び、インフレ観測の根強さを窺わせる。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円弱で、1日を通じては前日(2兆7085億円)をやや上回る水準か。なお、現物株のみならず先物の売買高も足元やや落ち着きつつあり、まとまった売りや買いが出れば相場全体が上下に振らされやすいかもしれない。 新興市場でもメルカリ<4385>などの主力IT株が軟調で、マザーズ指数は-1.43%と4日ぶり反落。エネチェンジ<4169>やアスタリスク<6522>あたりが賑わい、新興株に逆風となるインフレ懸念がくすぶるなかではまずまず健闘している印象を受けるが、さすがにマザーズ全体としては一段の上昇を試す場面とはなりづらいだろう。 さて、米国では8日、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.50%(+0.04pt)と5月以来の水準まで上昇。10年物国債利回りも同日、1.61%(+0.04pt)に上昇した。9月雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を大幅に下回る一方、平均時給は予想を上回り、労働需給のひっ迫が意識されるだろう。11日の債券市場は休場だったが、原油を中心とした商品市況の上昇が続き、インフレ懸念はなおくすぶりそうだ。 また、雇用統計では労働参加率が前回の61.7%から61.6%に低下したことも注目される。「9月にかけて失業給付の上乗せが順次終了し、労働市場に復帰する人々が増える」とみる市場関係者が多かったが、こうした見方に逆行する動きだ。コロナ禍による短期的な影響のみならず、従前述べたように(1)失業長期化や産業シフトによる技能ギャップ、(2)格差拡大による若年層を中心とした労働意識の変化(いわゆる「ロビンフッダー」の増加に象徴される)といった要因から、労働市場への復帰は大方の期待より緩慢となり、需給ひっ迫によるインフレ圧力は長期化する可能性もあるだろう。 商品市況についても、ファンド勢がスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)を意識して株・債券ショート(売り持ち)と商品ロング(買い持ち)の持ち高構築を進めている可能性がある。こうした状況を踏まえると、インフレ懸念が早期に払しょくされるとの期待は持ちにくい。明日13日は米9月消費者物価指数(CPI)の発表や9月21~22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表が予定されており、これらの内容を見極めたいとの思惑も強まりそうだ。 経営危機に陥っている中国恒大集団を巡っては、新たにドル建て社債の利払い期日が11日に到来したものの、各種報道によればこれまで支払いはなされていないようだ。引き続き米中の懸念材料を抱え、日本株は外部環境睨みの相場展開を強いられそうだ。なお、本日は国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しが発表される予定。これも各国株式相場の方向感に大きな影響を与えるため、内容を注視しておきたい。(小林大純) <AK> 2021/10/12 12:11 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、国内外での上値抑制要因緩和で買い戻し進展  日経平均は3日続伸。440.01円高の28488.95円(出来高概算6億4963万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でのNYダウは8.69ドル安(-0.02%)と小幅反落。9月雇用統計での雇用者数の伸びが19.4万人増と市場予想(50万人増)を大きく下回ったことで、労働市場の回復鈍化が懸念された。一方、平均賃金の伸びは前月比0.6%増と4月以来の伸びとなり、市場予想も上回った。インフレ加速が懸念されるなか、米10年国債利回りが4カ月ぶりに1.6%台にまで上昇したこともあり、ナスダック総合指数も0.5%安と反落した。 金利高や米株安の流れを受け、週明けの日経平均は71.37円安の27977.57円でスタート。ただ、1ドル112円台まで進んだ円安や、週末の岸田首相の「(金融所得課税引き上げについては)当面触ることは考えていない」とした発言が投資家心理の改善につながり、売りが一巡すると、急速に値戻しが進んだ。プラス転換してからは一気に上げ幅を拡げ、その後も断続的な買い戻しが進み、前場中頃には28500円を回復した。 個別では、安川電機<6506>が想定以上の受注動向など良好な上期決算を発表し、同時に今期2度目となる通期計画の上方修正を発表したが、6-8月期営業利益が市場予想を下回ったほか、通期計画も市場予想並みにとどまったこともあり、売りが優勢となった。マルマエ<6264>も今期大幅増益見通しを示したものの、期待値も高かったようで、朝高の買い先行後は売りに押された。第3四半期の収益水準低下が嫌気されたファーストブラザーズ<3454>は大幅に下落し、ビジョン<9416>、フリービット<3843>などと共に東証1部の値下がり率上位に並んでいる。そのほか、米長期金利の上昇がグロース(成長)株の重しとなり、レーザーテック<6920>やレノバ<9519>が大きく下落。 一方、文部科学省が実施する委託事業を落札したと発表したEduLab<4427>、決算は想定線も1対4の株式分割実施が好感されたSansan<4443>などがそれぞれ急伸し、東証1部値上がり率上位に入った。連結子会社の固定資産の譲渡を発表した明治海運<9115>、前期業績上振れ着地に加え今期も想定以上の増益見通しとしたカーブスHD<7085>なども値上がり率上位に並んだ。そのほか、TSMC(台湾積体電路製造)との半導体新工場の共同建設が報道されたソニーG<6758>が大幅高。東証1部売買代金上位では、日本郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、三菱UFJ<8306>、キーエンス<6861>、ファーストリテ<9983>、トヨタ<7203>、ベイカレント<6532>、信越化<4063>、リクルートHD<6098>、三菱商事<8058>などが大幅高となっている。 セクターでは空運業、鉱業、輸送用機器などが上昇率上位となっている一方、電気・ガス業、パルプ・紙の2業種のみが下落している。東証1部の値上がり銘柄は全体の76%、対して値下がり銘柄は19%となっている。 週明けの日経平均は値幅を伴った上昇で28500円台まで上昇してきた。前週6日に27293.62円まで急落したが、外部環境の不透明感後退なども追い風に、値ごろ感からの買い戻しが進んだ。しかし、前週末の米雇用統計のさえない結果や、米株安の動きも踏まえると、週明けからこれだけの上昇幅が出たのには別の事情もありそうだ。 やはり、多方面でも話題になっているように、岸田首相の金融所得課税への言及が大きいとみられる。「成長」よりも「分配」に重きを置いた政策、「変化」よりも「安定」が重視されたような印象の強い岸田新政権への株式市場での評価は厳しく、これまでネガティブに捉えられていた。特にその代表格として金融所得課税の引き上げが注目されており、企業の四半期開示の原則見直しなどとも相まって、投資家からの批判が高まっていた様子。 それが、週末の民放番組での出演で、金融所得課税引き上げについては「当面考えていない」、「成長なくして分配はない。金融所得課税を考える前にやることはいっぱいある」などと発言。これにより、当面の増税懸念が後退したほか、過度な「分配」先行イメージが払拭され、ネガティブな印象を緩和することに寄与したようだ。 そのほか、中国政府が電力不足の緩和に向け、制限していた国内での石炭の増産に動き出したほか、輸入先の多様化や拡大に努めはじめたことも、サプライチェーン(供給網)の混乱が緩和されるとの見方から、投資家心理の改善につながっているようだ。 これらの動きは、今後の展開次第では、はく落してしまった国政期待の復活や、外部環境の不透明感の緩和につながり、再び株高基調に転換するきっかけにもなり得ると期待したい。 一方で、岸田新政権の政策には依然として具体性が乏しく、経済成長につながるストーリーが明確化されていない印象が残る。今回の金融所得課税引き上げの先送りだけで、大きくはく落してしまった海外投資家からの期待を完全に取り戻せるとは言いにくいだろう。 また、外部環境の不透明感についても、まだ警戒が必要だ。米長期金利が4カ月ぶりに1.6%台へと上昇したほか、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は約5カ月ぶりに2.5まで上昇してきている。インフレ加速や長期金利の更なる上昇など警戒感は残る。今週は、米国で13日に消費者物価指数(CPI)、14日生産者物価指数(PPI)が発表される。インフレを巡る思惑や長期金利の動向には引き続き注意したい。 後場の日経平均は引き続き堅調に推移しそうだ。ただ、28500円を回復した達成感もあり、今週の米物価指標の発表を前に、29000円に向けては一旦上値が重くなる展開も想定しておきたい。 <AK> 2021/10/11 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続伸、需給状況も8月以前に逆戻り?  日経平均は大幅続伸。597.31円高の28275.52円(出来高概算7億5000万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でNYダウは3日続伸し、337ドル高となった。民主党のシューマー上院院内総務が連邦政府の債務上限を12月まで暫定的に引き上げることで合意したと明らかにし、債務不履行(デフォルト)は当面回避されるとの安心感が広がった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数も+1.05%と3日続伸し、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は19.54(-1.46)と節目の20を下回った。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで353円高からスタートすると、寄り付き後も上げ幅を大きく拡大。国慶節(建国記念日)の連休明けで取引再開された中国・上海株が上昇し、香港株も続伸していることから投資家心理が一段と上向き、日経平均は前場中ごろを過ぎると一時28321.35円(643.14円高)まで上昇した。 個別では、ソフトバンクG<9984>、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>といった値がさ株の堅調ぶりが目立つ。トヨタ自<7203>も4%近い上昇。決算発表銘柄では竹内製作<6432>やわらべやHD<2918>が急伸し、大真空<6962>や東製鉄<5423>のように証券各社の投資判断を手掛かりとした物色も見られる。また、東京機<6335>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株が揃って2~3%の下落。前日売られた武田薬<4502>も小幅ながら6日続落している。決算発表銘柄ではローソン<2651>が小安い。また、業績下方修正のオンワードHD<8016>は東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、鉱業、輸送用機器、非鉄金属などが上昇率上位で、その他も全般堅調。下落したのは海運業のみだった。東証1部の値上がり銘柄は全体の89%、対して値下がり銘柄は9%となっている。 本日の日経平均は外部環境を巡る懸念が一段と和らぎ、前場には一時600円を超える上昇となった。米国債の当面のデフォルト回避によるリスクオンの流れから米10年物国債利回りは1.57%(+0.05pt)まで上昇したが、ナスダック総合指数や米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は堅調。東京市場でも値がさグロース(成長)株を中心に買いが入り、日経平均を押し上げている。ネット証券で人気のレーザーテックは、半導体の微細化に寄与する極端紫外線(EUV)を用いた検査装置がDRAMメーカーにも広がっているとの社長インタビューが米メディアに掲載されており、一段と期待を高めているだろう。一方、こうしたハイテク株への投資資金シフトで海運株は軟調。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円弱と前日より膨らんでおり、取引は活発だ。 新興市場でもメルカリ<4385>などが堅調で、マザーズ指数は+1.75%と続伸。ただ、こちらは10時前に付けた1112.82ptがこの日の高値で、その後はやや上値を切り下げるような恰好となっている。 さて、日本取引所グループが7日発表した投資部門別売買動向によると、外国人投資家は9月第5週(9月27日~10月1日)に現物株を4725億円、東証株価指数(TOPIX)先物を7874億円、日経平均先物を1713億円それぞれ売り越していた。日々の先物手口では、9月29日の自民党総裁選と前後してBofA証券がTOPIX先物の売り越しに転じていたため、おおむね想定どおりの内容だ。8月23日週から9月21日週までの5週累計で外国人投資家のTOPIX先物買い越し額は8100億円あまりに膨らんでいたが、9月第5週の1週間でほぼ同程度売り越していたことになる。 一方、日経平均先物については9月21日週には早々に売り越しに転じており、9月第5週を含めた2週累計の売り越し額は5000億円弱。取引主体は短期筋とみられるだけに、政局相場初期の買い出動もその後の売り転換も早かった。しかし、8月23日週から9月13日週までの4週累計の買い越し額は8900億円近くに上っていたことから、むしろTOPIX先物と異なって一段の売り余地があるだろう。実際、前日の先物手口でもJPモルガン証券が日経平均先物を売り越していた。 自民党総裁選以降の海外勢の売りを「投機筋による材料出尽くし的な、あるいは思惑的なもの」と説明する市場関係者が多いように見受けられるが、実需筋中心とみられるTOPIX先物の売りが先行したという事実が見過ごされているような気がしてならない。 もう1つの市場データにも注目しておきたい。1日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆5365億円と前の週に比べ2366億円増えた。政局相場で徐々に信用買い残の解消が進んでいたが、その後の株価急落で結局直近ピーク並みの水準に逆戻り。前日の後場に見られたように、信用買い残の増加は戻り売り圧力につながる。 海外投資家が先物を売り、現物株投資家が押し目で信用買いを膨らませる需給状況は政局相場前の2~8月と同じだ。5日の当欄では構造改革期待のはく落により「世界の景気敏感株に逆戻り」と指摘したが、実は需給状況も逆戻りしているとみておいた方がいいだろう。これを踏まえ、当面の日経平均の予想レンジは8月までと同様に27000円弱~29000円強としておきたい。 香港・上海株は朝高後やや伸び悩んでおり、今晩の米国では9月雇用統計の発表が予定されている。前述のとおり戻り待ちの売りが出やすい点を考慮しても、後場の日経平均は上値の重い展開となる可能性がある。(小林大純) <AK> 2021/10/08 12:19 ランチタイムコメント 日経平均は9日ぶり大幅反発、エネ価格の反落などひとまず安心も…  日経平均は9日ぶり大幅反発。461.45円高の27990.32円(出来高概算7億1000万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でNYダウは続伸し、102ドル高となった。売りが先行して下げ幅を460ドル近くに広げる場面もあったが、共和党上院トップのマコネル院内総務が連邦政府の債務上限を12月まで一時的に拡大する案を示し、この問題を巡る警戒感が和らいだ。また、ロシアのプーチン大統領が天然ガスの供給増加を示唆したことで天然ガスや原油等のエネルギー価格が低下し、これに伴い長期金利の上昇が一服したことも安心感につながった。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで137円高からスタート。前日までの8日続落で2700円あまり下落していたことから自律反発に期待した買いも入り、寄り付き後の日経平均は上げ幅を広げる展開となった。動向が注目される香港株も大幅反発し、日経平均は前引けにかけて一時28015.11円(486.24円高)まで上昇した。 個別では、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株やレーザーテック<6920>の上昇が目立つ。ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、東エレク<8035>、ファーストリテ<9983>も堅調だ。ウエルシアHD<3141>は上期決算が減益となったが、市場予想を上回ったことで急反発。また、前日ストップ高比例配分のカワタ<6292>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、武田薬<4502>は経口オレキシン作動薬の試験中断がネガティブ視されて4%の下落。イオン<8267>は決算を受けた売りが出て、業績下方修正のイオンファン<4343>は大幅続落している。また、原油相場の反落でINPEX<1605>は8%超の下落。それに三井松島<1518>や石油資源<1662>といった関連銘柄が東証1部下落率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、情報・通信業、機械などが上昇率上位。一方、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガス業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 本日の日経平均は9日ぶりに大幅反発し、28000円台を回復する場面があった。日経平均の8日続落は2009年7月以来12年ぶりで、この間の下げ幅は2700円あまりに達していた。水準としても8月末から始まった政局相場の上昇分を帳消しにしており、さすがに自律反発が意識された面はあるだろう。また、個別・セクター別の騰落状況を見ると、プーチン氏の発言を受けたエネルギー価格の上昇一服が株式相場全体にかなり好影響を与えているように見える。軟調相場で投資資金を集めていたINPEXなどは急反落を強いられているが、インフレ懸念が和らぐとともに米10年物国債利回りの上昇は一服し、値がさグロース(成長)株が反発。海運株の値上がりを見ると、中国の電力不足への懸念も和らいでいるように思われる。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。 新興市場でもマザーズ指数が+2.98%と4日ぶり大幅反発。BASE<4477>が8%の上昇、メルカリ<4385>が3%の上昇などとなっており、やはり米長期金利の上昇一服とともに主力IT株が堅調だ。もっとも、本日マザーズ市場に新規上場したワンキャリア<4377>は公開価格を2割ほど上回る初値を付けたものの、9月後半のIPO(新規株式公開)銘柄と比べると元気のない印象が拭えない。マザーズ銘柄のみならず、ネット証券で人気が続く海運株などが直近急落し、個人投資家のセンチメントや資金余力が悪化した可能性はあるだろう。実際、QUICK社の算出する信用評価損益率は1日申し込み時点で-9.44%と前の週(-7.68%)から悪化している。ワンキャリアは採用DX(デジタルトランスフォーメーション)・プラットフォーム企業として業績を大きく伸ばしており、今後の値動きに期待したい。 さて、不安材料を抱え動向が注目される米株や香港株。米株はNYダウなどの主要株価指数の底割れを懸念する向きが多かっただけに、前日の460ドル近い下落からのプラス転換は安心感につながっただろう。しかし、強気・弱気が入り交じるなかでボラティリティ(株価の変動率)が高まっているとの指摘があり、これはNYダウなどの日足チャートを見ても一目瞭然だ。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は6日時点で21.00(前日比-0.30)と、節目の20を上回る状態が継続。「相場は脆弱」との指摘が多く、まだまだ不安定な動きが続くとみておいた方がいいだろう。 連邦政府の債務上限問題を巡っては、マコネル氏の提案に当初こそ民主党から反発の声が出ていたが、結局受け入れの方向で進んでいるようだ。目先の債務不履行(デフォルト)リスクは後退するが、年末にかけての与野党の攻防が一段と激しさを増すとの見方もある。また、いったん下落した原油価格についても、先行き1バレル=100ドル超に達する可能性があるとの市場関係者の声が聞かれる。今週末8日には9月雇用統計の発表が控えており、米株相場を揺るがす懸案・イベントがなお山積みだ。 日本株については、衆院選通過後に経済対策への期待などから再上昇するシナリオを描く市場関係者が多いようだ。しかし、こうした向きが直近の株価下落は「政局相場の反動」などと捉えているのに筆者は違和感がある。海外の主要株価指数とのパフォーマンスを比較すると、海外投資家に「日本株固有の買い要因を失った」と受け止められている可能性は高いだろう。海外情勢に振らされる展開が当面続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2021/10/07 12:22 ランチタイムコメント 日経平均は8日続落、独歩高から独歩安、インフレ懸念もあるが国政がもはや重しか  日経平均は8日続落。278.06円安の27544.06円(出来高概算8億3640万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でのNYダウは311.75ドル高(+0.91%)と反発。9月のISM非製造業景況指数が61.9と市場予想(59.9)を上回ったことで景気回復期待が再燃。また、与党民主党内で交渉が続いている税制・支出法案を巡り、反対姿勢を示していた穏健派のマンチン上院議員が規模で妥協する姿勢を示したことも好感され、上げ幅を拡大。米長期金利が1.5%台半ばまで上昇していた中ではあったが、ハイテク株も押し目買いが優勢となり、ナスダック総合指数は1.25%高と大幅に反発した。 米株高を引き継いだ日経平均は211.79円高の28033.91円でスタートすると、そのまま28209.82円(387.70円高)まで上げ幅を拡大。しかし、その後に伸び悩むと急失速の展開となった。前場中頃にはマイナス圏に転じると、ずるずると下げ幅を拡げ、一時は27475.88円(346.24円安)まで下げた。前引けかけては下げ渋ったが、本日の安値圏で前場を終えている。 個別では、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>など大手海運株が大幅下落。朝方上昇していた東エレク<8035>やアドバンテス<6857>などの半導体関連も下落に転じている。ソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>も軟調で、トヨタ<7203>は大幅に下落。そのほか、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、村田製<6981>なども冴えない。リオープン(経済活動再開)銘柄への物色も一段落で、JAL<9201>、JR東海<9022>、エイチ・アイ・エス<9603>、エアトリ<6191>、ラウンドワン<4680>なども総じて大きく売りに押されている。 一方、セメント出荷価格の引き上げを発表した太平洋セメント<5233>が急伸し、住友大阪セメント<5232>などと共に値上がり率上位に入った。また、好決算や業績上方修正を手掛かりにTSI HD<3608>や日金銭<6418>が大幅高。証券会社によるレーティング格上げなどを背景に日本電気硝子<5214>、ダイセキS<1712>、ZHD<4689>なども買われている。そのほか、東証1部売買代金上位では任天堂<7974>、キーエンス<6861>、三菱UFJ<8306>、信越化<4063>、ダイキン<6367>、INPEX<1605>、ルネサス<6723>、東京電力HD<9501>などが上昇となっている。 セクターでは空運業、海運業、輸送用機器などが下落率上位となっている一方、鉱業、石油・石炭製品、パルプ・紙などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の30%、対して値上がり銘柄は65%となっている。 本日の日経平均は前引け時点でなんと8日続落。前日まで7日続落で、この間の下げ幅は2426.69円にも及ぶ。これだけ下げればさすがに自律反発するのも不思議ではないと思ったが、朝方の反発もむなしく、急失速の展開となり、28000円台の回復は束の間の出来事に終わった。東証1部全体でみれば値上がり数が値下がり数を上回っているが、上昇している銘柄の多くも、朝方から急失速し、上げ幅を半分以上に縮めているものばかりだ。 それもそのはず。前日と今日とで特に何も変わっていない。株価急落を生み出した要因は何も解消されていない。中国での恒大集団をはじめとした不動産業資金繰り問題や深刻な電力不足、米連邦政府の債務上限問題などは依然くすぶる。米国の政治問題については与野党の間のチキンレースに過ぎず、長期的な波乱要因にはならないと考えるが、短期的にはテクニカル的な調整色を強めている米国株の一層の下押し圧力にはなり得る。 そして、中国の問題については長期的な話だ。不動産業の停滞から消費減などを通じて他産業へ影響が及べば、実体経済の後退につながる恐れがある。電力不足問題も、同国の環境規制強化のほか、石炭価格の高騰、世界的な脱炭素への急速シフトに伴う構造的変化など複数の要因が絡み合っており、すぐに解決できる問題とはいえない。 さらに、世界的なインフレ懸念も根強い。石炭価格のほか、天然ガスや原油など世界的にエネルギー価格が高騰している。初期は、コロナ禍からの需要回復や供給体制構築の遅れなど、一時的な需給バランスの乱れによるものと捉えられていた。しかし、世界が同時的に脱炭素へ急速にシフトした結果、再生可能エネルギーなどの新エネルギー分野と、化石燃料などの旧エネルギー分野との間での投資シフトの時間軸での整合性が取れず、需給バランスが構造的な形で崩れているようだ。こうなってくると、自らも懐疑的になってきていると思われる「インフレは一時的」とする米連邦準備制度理事会(FRB)の主張にも一層疑念がもたれる。 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米10年国債利回りが急速に上昇してきたが、初期は、その上昇要因のうちほとんどが実質金利の上昇で説明できた。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は緩やかに上昇していたはいたが、直近のレンジ内に収まっており、インフレ懸念が過度に強まっていた印象はなかった。 しかし、その米10年物BEIは5日に2.45と、7月29日の2.43を上抜き、直近3カ月程のレンジを上抜けてきた。上昇確度が高くなり、加速度的な上昇となっており、ここにきてインフレ懸念が強まってきた様子。WTI原油先物価格は5日、期近で2014年11月以来およそ7年ぶりの水準まで上昇した。このままエネルギー価格の高騰が続くと、今年前半に見られた「インフレ懸念・長期金利急騰」の再来もありうる。相場が神経質になってきている分、リスク要因として留意したい。 そして、国内に目を向けても懸念要素はある。前日、各メディアが岸田新内閣誕生後の世論調査の結果を発表した。内閣支持率はどこも60%を割っており、高いところでも日本経済新聞社とテレビ東京が共同で行ったもので59%。これでも、同調査によれば、政権発足時としては過去3番目に低かったという。ちなみに、読売新聞社が行った調査では56%、低いところでは朝日新聞社の45%、毎日新聞社の49%などがあった。 菅元首相の退陣で支持率が上がり、衆院選での与党圧勝への期待が高まったことで、9月半ばまでは政局相場による株高基調が生まれていた。しかし、蓋を開けてみれば、支持率に劇的な改善は見られなかった。こうなってくると、株高要因として期待されていた衆院選は今後はリスク要因とみなされかねない。すでに政局相場は終了し、前日までの間に日経平均は8月末以降の上昇分をすべて吐き出しているが、更なる下押しも想定しておいた方がよさそうだ。今日の朝高後に失速した日経平均の動きを見ていても、今後の日本株については前途多難と言わざるを得ない。 <AK> 2021/10/06 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に7日続落、「世界の景気敏感株」に逆戻り  日経平均は大幅に7日続落。786.58円安の27658.31円(出来高概算7億8000万株)で前場の取引を終えている。 週明け4日の米株式市場でNYダウは反落し、323ドル安となった。香港市場で中国恒大集団株が売買停止になったとの報道が嫌気された。また、産油国の「OPECプラス」会合で大幅増産が回避され、NY原油先物が7年ぶり高値を付けたほか、セントルイス連銀のブラード総裁も高インフレが2022年まで続く可能性を示唆。インフレへの警戒感が強まったうえ、バイデン大統領が連邦政府の債務上限突破のリスクを警告したことも投資家心理を悪化させた。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで394円安からスタートすると、その後も下げ幅を大きく拡大。国内では岸田文雄首相が金融所得課税の見直しを検討すると明言したことなども売りを誘い、日経平均は前場中ごろを過ぎると27460.29円(984.60円安)まで下落する場面があった。 個別では、ファーストリテ<9983>が7%近い下落。9月の国内「ユニクロ」既存店売上が前年同月比19%減となり、嫌気した売りが出ている。その他売買代金上位も郵船<9101>、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、商船三井<9104>、川崎船<9107>など軒並み軟調。好決算のキユーピー<2809>やネクステージ<3186>、不二越<6474>も売りに押され、国際紙パルプ商事<9274>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、原油高に伴いINPEX<1605>が4%超の上昇。リソー教育<4714>は決算を好感した買いが優勢で、アジュバンHD<4929>などとともに東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、精密機器、機械、電気機器などが下落率上位で、その他も全般軟調。一方、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガス業の3業種が上昇した。東証1部の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は10%となっている。 本日の日経平均は大幅に7日続落し、800円近い下落で前場を折り返した。下落が始まる前の9月24日終値(30248.81円)比でここまでの下げ幅は2600円近くに達し、取引時間中としては政局相場が始まる前の8月23日以来の安値を付ける場面もあった。国内「ユニクロ」の苦戦が続くファーストリテが1銘柄で日経平均を約192円押し下げているが、中国の電力不足等でコンテナ船市況が急落していると伝わった海運株も引き続き軟調。グロース(成長)株は米ハイテク株の大幅下落が響き、逃避資金の向かう先はINPEXなどの原油関連株に限られている。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりで、前日までと大きな変化はない。 新興市場でもマザーズ指数が-2.53%と大幅続落。前場中ごろにかけて4%超下落する場面があった。下値での押し目買い意欲は根強そうだが、米国でインフレ懸念と長期金利の上昇圧力が強まっているとなれば、先高期待も持ちづらいところだろう。先週後半に米長期金利の上昇が一服した場面では主力IT株の底堅さを感じたものの、一転して足元軟調となっている。 動向が注目される香港市場では、不動産株の売買停止が相次いでいるほか、インターネット関連株が軒並み軟調になっているという。もっとも、本稿執筆時点で香港ハンセン指数は0.4%程度の下落。前日のNYダウは-0.94%であり、日経平均の軟調ぶりは海外の主要株価指数と比べ際立っている。当欄では自民党新総裁が決定した翌9月30日、海外投資家による株価指数先物の売り転換を捉えて日本株の投資スタンスを「強気」から「当面様子見」に修正した。日本の「変化」に期待して買いを入れていた海外投資家だが、もはやこうした期待が後退しているのは明らかだろう。日経平均は菅義偉前首相が退陣表明して以降の上昇分を全て吐き出し、「世界の景気敏感系バリュー(割安)株」に逆戻りした感がある。 中国では不動産会社の資金繰り問題や電力不足、米国では連邦政府の債務上限問題やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)懸念がくすぶるなか、「世界の景気敏感株」である日本株のアウトパフォームは期待しづらいだろう。米国では5日にサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数、6日にADP雇用統計、8日に雇用統計と9月分の経済指標の発表が相次ぎ、これらの内容を見極めたいとの思惑も買いの手を鈍らせそうだ。 4日発足した岸田新政権はさっそく、19日公示・31日投開票の衆院選に向けて経済対策の編成に動き出した。債務上限問題に揺れる米国との比較で、積極的な財政支出が期待されることは日本株の下支えになるかもしれない。しかし、経済対策で国内総生産(GDP)を一時的に数%押し上げるのと、(人口動態や産業構造等をあえて度外視するが)構造改革を経て欧米株並みにバリュエーションが向上するのとでは期待値が全く違うとも言える。やはり日本経済の浮上に向けた「変化」が見られると海外投資家に受け止められることが日本株の再上昇に不可欠だろう。(小林大純) <AK> 2021/10/05 12:20 ランチタイムコメント 日経平均は6日続落、もはや不透明感だけでは説明できない日本株安  日経平均は6日続落。273.50円安の28497.57円(出来高概算7億0659万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でのNYダウは482.54ドル高(+1.43%)と大幅反発。9月ISM製造業景況指数が予想外に改善を示したことに加え、新型コロナウイルス感染の沈静化や製薬大手メルクが開発中の新たな治療薬などへの期待から景気循環株に押し目買いが向かった。長期金利の低下を受けてハイテク株も下げ止まり、ナスダック総合指数は0.82%高と反発。米株の反発を受けて週明けの日経平均も273.40円高の29044.47円でスタートしたが、寄り付きを高値に失速し始めると、間もなくマイナスに転じ、その後もずるずると下げ幅を拡大。前場後半には一時395.81円安の28375.26円まで下げた。前引けにかけてはやや下げ渋ったが、28500円を割った水準で終えている。 個別では、前週下落がきつかった日本郵船<9101>や商船三井<9104>などの大手海運株が本日も急落し、値下がり率上位に入っている。そのほか、第3四半期は順調ながらもサプライズなく出尽くし感につながった大有機化<4187>、6-8月期の収益鈍化が嫌気された象印マホービン<7965>、東京エレクトロンデバイス<2760>、KeePer技研<6036>などが値下がり率上位に並んでいる。主力株では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連株が大幅に下落。ソフトバンクG<9984>、村田製<6981>、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、日本電産<6594>なども大きく売られており、これまで値持ちの良かった富士フイルム<4901>やAGC<5201>も大きく下落している。 一方、株主優待制度の新設を発表した一家HD<7127>が急伸し値上がり率トップとなっている。また、直近IPOのシンプレクスHD<4373>のほか、フルキャスト<4848>、経営統合直後で前週末に22年3月期の業績見通しを新たに公表したマツキヨココカラ<3088>などが値上がり率上位に並んでいる。そのほか、10月に入って緊急事態宣言が解除され、旅行予約数などが急増していることを受けて、JAL<9201>やANA<9202>、OLC<4661>、JR東<9020>、JR西<9021>、資生堂<4911>、アサヒ<2502>などのリオープン(経済活動再開)銘柄が軒並み高となっている。 セクターでは海運業、電気機器、ガラス・土石製品などが下落率上位となっている一方、空運業、鉱業、不動産業などが上昇率上位となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の53%、対して値上がり銘柄は42%となっている。 週明けの日経平均は前週末のNYダウの大幅反発もむなしく、朝高後に急失速の展開となっている。中国での不動産業資金繰り問題や深刻な電力不足、世界的なインフレ懸念、米債務上限問題など、外部環境の不透明感が根強い。今月下旬からは主力企業の7-9月期決算が控えており、今週末にはその前哨戦に当たる安川電機<6506>の決算も控えているだけに、積極的に買える状況にはないことが、売り優勢の状況を生み出しているようだ。 ただ、前週からの日本株の急落の背景は、どうも外部環境の不透明感だけでは説明できない気がする。日経平均が、菅元首相の退陣表明を受けてからの上昇幅のほとんどを吐き出してしまってきていることを踏まえれば、8月末以降の日本株独歩高を生んできた「日本政治への期待」がはく落してしまったことが一つの要因と考えられる。 不人気だった菅元首相が退陣することで、落ち込んでいた自民党支持率が回復し、衆院選での与党大敗という最悪のシナリオが後退すること、加えて、日本政治への“変化”の期待が、海外投資家の日本株の見方を変え、これまでの上昇相場を創出してきた。 しかし、前週の自民党総裁選で、改革色が強く海外投資家から人気の高かった河野氏の劣勢が伝わった段階から、先物主導での売りが膨らんでいた。また、今年前半(2月半ば~8月下旬)の日本株の長い調整局面において、TOPIX先物を長らく売り越していたBofA証券(バンク・オブ・アメリカ)は、9月半ばまでの上昇相場においては大量にTOPIX先物を買い戻していたが、前週の日経平均急落局面では、一転して週を通して大量に売り越していた。 もちろん、同証券の背後には当然複数の顧客がおり、一連の手口が全て同じ筋によるものとはいえない。また、同証券の手口が日本株のすべてを左右するともいえない。しかし、少なくとも、日経平均やTOPIXなど、日本の代表的な株価指数の今年の動きと、同証券の手口の連動性はかなり高い。そのため、河野氏の敗北とBofA証券の手口から察するに、これまでの日本株上昇を生み出してきた大きな要因である、「日本政治への変化の期待」が大きく削がれてしまったと言わざるを得ないのではないだろうか。 各種メディアが、岸田新政権の布陣構成をみて派閥に配慮した論功行賞の人事だと批判を強めているが、こうしたニュースのヘッドラインを見ている海外投資家からすれば、変化への期待がはく落してしまったとしても不思議ではないだろう。今日の日本株の朝高後の急失速も、米国の債務上限問題など海外要因よりは、こうした日本政治に対する海外勢の見方の変化によるものと捉えた方が適切な気がしてならない。 今後、もし組閣後の自民党支持率が、菅元首相の退陣前と大きく変わっていないことなどが判明すると、株高期待の背景となっていた衆院選も、今後は再び上値抑制リスクとならざるを得ない。ここからの日本株の戻りは当面鈍いと想定しておいた方がよさそうだ。 さて、本日の香港ハンセン指数は寄り付き直後から大幅に下げている。時間外の米株価指数先物も軒並み軟調なため、後場の日経平均も戻りは鈍く、軟調な動きが続きそうだ。 <AK> 2021/10/04 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は5日続落、日本株再浮上への「試練」  日経平均は5日続落。590.83円安の28861.83円(出来高概算6億9000万株)で前場の取引を終えている。 9月30日の米株式市場でNYダウは大幅反落し、546ドル安となった。週間の失業保険申請件数が予想外に増加したほか、与野党が連邦債務の上限引き上げで合意できず、イエレン財務長官やパウエル連邦準備理事会(FRB)議長が深刻な事態をもたらすと再度警告したこともあって投資家心理が悪化。引けにかけて上下院が暫定予算案を可決して政府機関閉鎖が回避されたが、月末・四半期末の売りで一段安となった。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで217円安からスタート。日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では大企業・製造業の業況判断指数が市場予想を上回ったこともあり、朝方下げ渋る場面があったが、時間外取引でのNYダウ先物の下落とともに下げ幅を拡大し、一時28837.09円(615.57円安)まで下落した。 個別では、前日の引けにかけて日経平均採用に伴う買いが入った任天堂<7974>や村田製<6981>、それに川崎船<9107>やファーストリテ<9983>の下げが目立つ。公募増資実施を発表したSUMCO<3436>は4%近く下落し、その他売買代金上位も郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>など全般軟調。また、前日に経済活動の正常化や政策期待で買われた銘柄が急反落し、ポピンズHD<7358>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、売買代金上位ではレーザーテック<6920>と商船三井<9104>が逆行高。楽天グループ<4755>は楽天銀行の上場準備を発表し、東芝<6502>は米ファンドの保有株買い増しが報じられて買われている。また、大規模な自社株買い実施を発表したグリー<3632>はストップ高水準での買い気配が続いている。 セクターでは、その他製品、金属製品、卸売業などが下落率上位で、その他も全般軟調。上昇したのは鉱業のみだった。東証1部の値下がり銘柄は全体の89%、対して値上がり銘柄は8%となっている。 本日の日経平均は朝方下げ渋ったのち大きく値を崩し、取引時間中としては9月3日以来およそ1カ月ぶりに29000円を割り込んだ。東証1部銘柄の9割近くが下落する全面安の展開で、物色の矛先が向いているのは個別材料株の一角に限られる。米10年物国債利回りが1.5%割れまで下落し、朝方には新興株が買われる場面もあったが、結局マザーズ指数は伸び悩んでほぼ横ばい。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円ほどで、値幅が大きく出たとあって前日よりやや膨らんでいる。 さて、前日の当欄で日本株の投資スタンスを「強気」から「当面様子見」に修正した筆者だが、早々にこれほど値を崩すとまではさすがに想定していなかった。四半期末、それに日経平均の銘柄入れ替えという需給イベントを通過し、岸田文雄新総裁のもとでの自民党執行部の陣容も伝わっていたことから、むしろ本日は日経平均の29200~29300円あたりでの底堅さ発揮に期待する向きが多かったように見える。こうした期待はあっけなく裏切られてしまった。 米国ではひとまず暫定予算案が可決されたものの、なお債務上限問題が残っている。また、エネルギー価格高騰に伴いインフレへの警戒感がくすぶっており、サマーズ元財務長官などスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)に陥ることを懸念する声も上がる。不動産会社の資金繰り不安や電力不足に揺れる中国も景気減速懸念が拭えず、景気敏感色の強い日本株にとっては逆風となるのはやむを得ない。 但し、日本株にとっての「試練」はそれだけでないだろう。前日の当欄では、投資判断引き下げの理由として9月28日以降観測されているBofA証券の東証株価指数(TOPIX)先物売りを挙げた。30日の先物手口を見ると、BofA証券のみならずUBS証券、ゴールドマン・サックス証券といった多くの外資系証券でTOPIX先物売りが観測された。 政局が流動的になってから自民党総裁選までの間、海外情勢に多少の不安があっても、出遅れていた日本株のアウトパフォーム期待から海外勢の先物買いは根強く入っていた。それを踏まえると、足元でも経済正常化・政策期待で根強く買いを入れている現物株投資家と異なり、グローバルマクロ系を中心とした海外ファンド勢はやはり日本株のエクスポージャー(投資残高)を高める機運が後退してしまったように感じられる。これらは前日述べた日本の政治に「安定」より「変化」を求めた海外投資家だろう。 もちろん、日本株が再浮上の糸口をつかめるかどうかは岸田新政権の手腕次第となる。再配分重視を強調する点に眉をひそめる市場関係者もあるが、米国でバイデン民主党政権が誕生したように世界的な趨勢であり、米株の推移を見ても再配分施策そのものが決定的に株安要因となることはないだろう。ちなみに、これは競争政策重視の傾向が見られた菅政権と大きくスタンスが異なる点であり、前日に子育て・介護などの関連銘柄が大きく値を上げたのもうなずける。積極的な買い姿勢を維持している現物株投資家にとっては有望な投資機会となり得るだろう。 しかし、日本株全体として再び高値を目指していくためには、やはり日本経済の浮上に向けた「変化」が見られると海外投資家に受け止められる必要があるだろう。そうした背景から「当面様子見」の投資スタンスとしたい。 なお、本日から中国が国慶節休みに入り、中国本土市場や香港市場が休場となっている。今晩の米国では9月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が発表される予定。米株の動向を注視したいとの思惑から、後場の日経平均も戻りの鈍い展開となる可能性がある。(小林大純) <AK> 2021/10/01 12:18 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、海外勢が期待したのは「安定」か「変化」か  日経平均は4日続落。104.92円安の29439.37円(出来高概算6億4000万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場でNYダウは反発し、90ドル高となった。長期金利の上昇がひとまず一服し、8月の中古住宅販売成約指数が予想以上に伸びたことも好感された。ただ、連邦政府の債務上限問題がくすぶるなか、引けにかけて上げ幅を縮小。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.2%の下落となり、マイクロン・テクノロジーの決算を受けてフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は1.5%の下落となった。米株がまちまちとなったことを受け、本日の日経平均は24円高と小高くスタート。しかし、半導体関連などの値がさ株や海運株を中心に売りが出て前場中ごろから弱含みの展開となり、香港株の反落スタートも重しとなって一時29311.34円(232.95円安)まで下落した。 個別では、郵船<9101>や商船三井<9104>といった海運株が揃って大幅安で、川崎船<9107>は10%の下落となっている。値がさ株ではレーザーテック<6920>が3%超下落し、日経平均への寄与が大きいソフトバンクG<9984>や東エレク<8035>も軟調ぶりが目立つ。系列販売会社での車検不正が判明したトヨタ自<7203>は3%近い下落。東京電力HD<9501>は柏崎刈羽原発を巡る報道を受けて売りがかさみ、グローブライ<7990>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、ファーストリテ<9983>が3%近く上昇し、新型コロナウイルスの治療用飲み薬について年内の承認申請を目指すと伝わった塩野義<4507>は5%超の上昇。キーエンス<6861>もしっかり。また、緊急事態宣言等が30日で終了することから、エアトリ<6191>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、輸送用機器、非鉄金属などが下落率上位。一方、陸運業、医薬品、空運業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の52%、対して値上がり銘柄は44%となっている。 本日の日経平均は4日続落し、3ケタの下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日同様に29300円台で下げ渋る動きを見せているものの、前引け時点で29400円台後半に位置する25日移動平均線をやや下回っている。個別では引き続き海運株や半導体関連株の調整がきつい。ネット証券売買代金ランキングを見ると、これらは個人投資家の物色人気が高かったため、資金余力に影響が出てくるかもしれない。比較的強い値動きだったトヨタ自が長めの陰線を付けて下落しているのも気になるところだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまり。 新興市場ではマザーズ指数が+0.14%と4日ぶり小幅反発。積極的に戻りを試す動きとはなりづらいようだが、前日も1100pt近辺で下げ渋り、600円超下落した日経平均と比べると底堅い印象を受けた。監視カメラシステムの有力スタートアップ企業として知られ、29日上場したセーフィー<4375>はここまで良好な値動き。やはりテック企業への期待は根強い。本日新規上場したアスタリスク<6522>は公開価格を74.5%上回る初値を付けた。 さて、岸田文雄氏が自民党新総裁に選出された。メディアでは国内外の市場関係者の声として「安定的な政権運営」に期待する声が多く出ている印象だ。ただ、筆者は菅義偉首相の退陣表明から「強気」としていた日本株への投資スタンスを「当面様子見」に修正したい。 注目したのは、28~29日と続けてBofA証券から東証株価指数(TOPIX)先物のまとまった売りが出ている点だ。ちょうど総裁選最終盤の情勢が伝わったタイミングだろう。もちろん米中を中心に海外情勢の不透明感が強まってきたことが影響している可能性もあるが、むしろ9月第3週(13~17日)まではBofA証券の積極的な買い越しが観測されていたため、海外実需筋の日本株に対する投資スタンスの変化を感じざるを得ない。 以前当欄で述べたとおり、外国人投資家は日経平均が2月高値を付けた2月15日週から8月23日週までの日経平均先物(短期筋が取引主体とみられる)の売り越し分を早々に買い戻していたが、TOPIX先物(実需筋が取引主体とみられる)についてはなお買い戻し余地が大きくあった。日経平均の株価純資産倍率(PBR)は足元1.2倍台半ばであり、2~4月には1.3倍を超える局面があったことから、水準訂正の一巡が意識されるタイミングでもないだろう。 菅首相の退陣表明からこれまでを振り返ると、後継レース序盤に河野太郎行政改革担当相が世論調査で先行すると、夜間取引中の先物にまとまった買いが入って相場上昇に弾みが付く場面があった。小泉政権誕生時の反応を見ても、海外投資家はとかく「改革派イメージの強いトップ」に期待する傾向がある。歯に衣着せぬ物言いで改革推進を訴え、世論支持率の高い河野氏に期待した海外投資家の買いは少なからず入っていただろう。短期的に失望売りが出ることは十分想定される。 もちろん、党内でのあつれきが多かったとみられる河野氏より、ベテラン議員を中心に支持を集めた岸田氏の方が安定的な政権運営が期待できるとの見方は妥当だし、足元の新型コロナ感染減による経済活動の正常化や衆院解散・総選挙に向けた経済対策にも期待できる。ただ、改めて強調するが日本株のトレンドはグローバルマクロ系を中心とした海外ファンド勢の先物売買に影響を受けやすい。これら海外投資家が「安定」と「変化」のどちらを期待したのか見極める必要があるだろう。差し当たり政権運営を支える当初支持率、それにリベラル色の強い宏池会(岸田派)出身の岸田氏がどのような政策を打ち出してくるか注目されそうだ。 なお、本日は引けにかけて日経平均の銘柄入れ替えに伴う売り需要(市場推計で5000億円程度)が発生するとみられている点にも注意しておきたい。(小林大純) <AK> 2021/09/30 12:17 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に3日続落、米株急落で連れ安も過度な悲観は不要  日経平均は大幅に3日続落。741.82円安の29442.14円(出来高概算7億4613万株)で前場の取引を終えている。 28日の米国市場でのNYダウは569.38ドル安(-1.63%)と大幅反落。9月消費者信頼感指数が予想外に悪化したことに加え、イエレン財務長官が政府機関閉鎖などのリスクを警告したことで投資家心理が悪化。米長期金利が6月中旬以来となる水準まで上昇したこともあり、ハイテク株を中心に売られ、景気敏感株もエネルギーや金融以外は大きく売られた。急ピッチでの金利上昇が嫌気されたナスダック総合指数は2.82%安、米フィラデルフィア半導体(SOX指数)は3.80%安と特に下げがきつかった。 本日の日経平均は、ほぼ全面安となった米国市場の流れを引き継いだほか、9月末の配当権利落ちで180円程の下げも加わり、572.04円安の29611.92円とギャップダウンでスタート。寄り付き直後は29600円前後でのもみ合いが続いていたが、前場中頃からは下げ幅を拡げはじめ、前引け近くには一時825.70円安の29358.26円まで下げる場面があった。 個別では、米ハイテク株安の急落を背景に東エレク<8035>、アドバンテス<6857>などの半導体関連株のほか、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>、キーエンス<6861>などの値がさ株を中心に急落しており、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、武田薬<4502>、日立<6501>、リクルートHD<6098>、村田製<6981>、ファナック<6954>など主力株も軒並み大幅に下落している。米長期金利が上昇している中ではあるが、三菱UFJ<8306>などの大手金融株も大幅安に。そのほか、政府が保有する株式の第3次売却を年内実施する方針と伝わった日本郵政<6178>、第1四半期が大幅減益決算となったハニーズHD<2792>などが大幅安となり、今期の成長鈍化見通しや減配計画が嫌気されたヒマラヤ<7514>は下落率2桁台の急落で、公募増資の実施を発表したヒューリック<3003>と共に値下がり率上位に並んだ。 一方、9月末での緊急事態宣言の全面解除が決まり、10月からの行動制限緩和の期待を背景に、エイチ・アイ・エス<9603>やエアトリ<6191>などの旅行関連が大幅高、ANA<9202>などの大手空運株も上昇し、JR東<9020>などの陸運大手、OLC<4661>などのレジャー関連も堅調。前日までの急落が目立っていた海運大手については、日本郵船<9101>が底堅く、川崎汽船<9107>は大幅な上昇となっている。 セクターでは精密機器、電気機器、保険業などが下落率上位となっている一方、空運業、海運業の2業種のみが上昇となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の87%、対して値上がり銘柄は9%となっている。 本日の日経平均は配当権利落ちに米株大幅安が加わり、急落している。午後からは自民党総裁選の投開票が控えていることもあり、様子見ムードが強く、積極的な押し目買いもみられない。 前日は、上院銀行委員会証言において、イエレン財務長官が、連邦債務が10月18日に上限に達する公算大だと指摘し、債務上限が引き上げられなければ金融危機やリセッションに直面する可能性を警告。加えて、米10年国債利回りが1.56%と6月中旬以来となる水準にまで上昇したこともあり、悪材料が重なった結果、ここ最近みられていた投資家心理の悪化に拍車がかかり、売りが膨らんだようだ。 そこに、配当権利落ちや明日に控える日経平均銘柄入れ替えに伴う売り需要という需給イベントへの警戒のほか、自民党総裁選の投開票という日本特有のイベントも重なり、本日の下落っぷりが演出されていると思われる。 ただ、過度な悲観は不要と考える。米連邦政府の債務上限引き上げ問題については、過去にも何度も表面化し、その度にマーケットに短期的な波乱をもたらしているが、政府機関のデフォルトなど国民を犠牲にするような最悪の事態を招くとは合理的には考えにくく、最終的には何らかの形で落ち着くことが想定される。長引くと更なる相場下押し圧力になりかねないが、中期的にはこの問題を要因にもたらされる下落は一過性のものにすぎないと思われる。 また、米長期金利の上昇については、上昇ペースが速いために警戒されるのは致し方ないが、水準としては3月に付けた1.78%にはまだ距離がある。 金利上昇の背景には、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利見通し引き上げなど、公表結果を受けた後の投資家の持ち高修正が続いているとの見方のほか、インフレ懸念の再燃が挙げられている。インフレ懸念については最近のイベントや要人発言によるところが大きい。米連邦準備制度理事会(FRB)は今までインフレは「一時的」としていたが、9月FOMCでは当局者のインフレ見通しが引き上げられたほか、28日の米上院議会証言では、パウエルFRB議長が「インフレは予想以上に大きく、長く続いている」と発言。さらに、様々な要因による需給ひっ迫からもたされた最近の欧州でのガス・電力価格の高騰や原油先物価格の高騰などが加わり、インフレ懸念が台頭しているという構図だ。 しかし、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は、米長期金利が急ピッチで上昇している間ほぼ横ばいで、市場のインフレ懸念がここ数日で一段と強まったとは言えなさそうだ。また、米長期金利の上昇についても、中長期的には更なる上昇は避けられないだろうが、短期的にはそろそろ一巡感が出てくる可能性がある。 3月につけたピーク以降の金利低下の背景としては、日本国内の機関投資家による債券買いが寄与したところが大きかったようだが、今回も国内機関投資家による買いが金利上昇を抑制する可能性がある。東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向によれば、年金基金などの機関投資家の動向を表すとされる信託銀行は、9月第2週(9月6~9月10日)に2100億円程、第3週(9月13~9月17日)に3700億円程それぞれ株式を現物で売り越している。政局流動化をきっかけに日経平均が急騰していたなか、リバランス売りを行っていたようだ。ここで、換金した余力分が、再び投資妙味を増してきた米国債に向かう可能性があり、そうなれば、金利上昇に一旦の歯止めがかかることが考えられる。 むろん、中国では不動産業の資金繰り問題や電力不足など問題が山積みだ。米国政治も短期的には更なる波乱もありうる。しかし、それでも、上述したように、米国の債務上限引き上げ問題や長期金利上昇を背景とした株価の急落が長く続くことは想定しにくい。 さて、午後の日経平均は自民党総裁選の投開票を控えて、引き続き本日の安値圏でのもみ合いとなりそうだ。決選投票になる可能性は高く、その場合は取引時間中に結果は確定しない。様子見ムードが強まるなか、仕掛け的な売りなども警戒されるが、慌てず対処していきたい。 <AK> 2021/09/29 12:15

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