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日経平均は小幅反落、需給環境から上値試しやすい、クオリティーグロース株は買い場
日経平均は小幅反落。34.32円安の27955.85円(出来高概算6億1957万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でダウ平均は56.22ドル高(+0.16%)と小幅反発。小売企業の良好な決算や米10月卸売物価指数(PPI)の予想以上の鈍化を受けた利上げ減速期待を背景に買いが先行し、大幅高でスタート。金利の低下で特にハイテク株の買いが活発化した。しかし、取引中盤、ロシア軍のミサイルが北大西洋条約機構(NATO)メンバーであるポーランドに着弾し犠牲者が出たとの報道を受け地政学リスクが台頭すると、ダウ平均は一時下落に転換。その後、国務省のパテル報道官が事実をまだ確認できないとすると買いが再燃し、結局、主要株価指数はプラス圏で終了した。ナスダック総合指数は+1.44%と大幅反発。 米国株高を受けて日経平均は30.32円高の28020.49円からスタート。序盤は地政学リスクの台頭を警戒した持ち高調整の売りが先行し、朝方に一時27743.15円(247.02円安)まで下落した。しかし、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況が小じっかりな中、投資家心理の悪化は限定的で、前引けにかけては買い戻しで急速に下げ幅を縮めた。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>など値がさ株が軟調。米長期金利の低下を受けて東京海上HD<8766>、第一生命HD<8750>の保険が下落。為替の円高・ドル安進行でトヨタ自<7203>、三菱自<7211>、日産自<7201>の自動車関連が軟調。ほか、JAL<9201>、JR西日本<9020>、三越伊勢丹HD<3099>、エアトリ<6191>のインバウンド関連が軒並み下落している。一方、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連や、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>、SHIFT<3697>などのグロース株の上昇が目立っている。ほか、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、三井物産<8031>、三菱商事<8058>など資源関連が大きく上昇している。 セクターでは保険、ゴム製品、精密機器が下落率上位となった一方、鉱業、卸売、情報・通信が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体45%、対して値上がり銘柄は50%となっている。 日経平均は小幅反落し、心理的な節目の28000円も割り込んだが、前引けにかけては急速な下げ渋りで下値の堅さを確認した。 市場環境は地政学リスクを除けば短期的には良好な状況が続くと想定される。前日に発表された米10月卸売物価指数(PPI)は総合で前年比+8.0%と9月(+8.5%)および市場予想(+8.3%)から大きく減速。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+6.7%と9月(+7.2%)からの横ばいを見込んでいた市場予想から大幅に減速した。コア指数は前月比でも+0.0%と市場予想(+0.3%)を大きく下回っており、インフレ鈍化の傾向がより鮮明になったと評価できる。 PPIの改善を受けて、米10月消費者物価指数(CPI)の発表後に4%を大幅に下回っていた米10年債利回りは15日、3.77%と一段と低下した。地政学リスクの報道で一時伸び悩んだものの、金利低下を追い風にナスダック指数も前日は大幅に反発。グロース株を中心に株式市場を取り巻く環境は良好といえよう。商品先物取引委員会(CFTC)の公表しているデータによると、S&P500種株価指数を対象とした先物取引では、投機筋のネットの売り持ち高が依然として新型コロナショック後につけたピークに近い水準にあることが分かる。米国では今週末にデリバティブ取引に係る特別清算指数(SQ)算出を控えており、目先は買い戻しの相場が続きやすいと考えられる。 日本株についても需給環境は悪くない。一時大幅に積み上がり、株価の重石となっていた裁定買い残については解消が進んだ。東京証券取引所が9日に発表した4日時点での裁定取引に係る現物ポジションは、ネットベースで15.77億円の売り越しとなり、ついに買い越しから売り越しに転じた。米国株が戻り基調を続ける限り、日本株も当面は上昇しやすい環境になったといえる。 指数寄与度が大きく、今年は株価の下落基調がきつかった半導体関連株が底入れしてきていることも投資家心理を明るくさせる。先週10日に業績予想の大幅下方修正を発表した東京エレクトロン<8035>は、先週末11日は地合い好転に助けられたところが大きかったが、今週に入ってからも株価の堅調推移が続いており、あく抜け感が強まっている。業績良好なクオリティーグロース株を中心に中小型株の底入れも鮮明になっており、本日はマザーズ指数がついに今年はじめての52週移動平均線超えを果たした。今後、米国経済の景気後退入りが本格化するに伴い、米長期金利が再上昇したとしても上昇余地は限られるだろう。市場の目線が金融政策から業績動向に移ってきていることもあり、そろそろ、クオリティーグロース株の押し目買いを開始してもよい頃合いかもしれない。 今晩の米国市場では、小売企業でロウズ、ターゲットの決算が予定されているほか、半導体関連でエヌビディアの決算も控える。半導体関連の株価底入れが本物かどうかを占う上で、エヌビディアの決算と株価反応を見極めたい。(仲村幸浩)
<NH>
2022/11/16 12:08
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日経平均は小幅反発、ラリーの勢いのなさ気掛かり
日経平均は小幅反発。31.21円高の27994.68円(出来高概算6億4599万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でダウ平均は211.16ドル安(−0.62%)と3日ぶり反落。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事のタカ派発言を受け、金利上昇を警戒した売りが先行。その後、ブレイナードFRB副議長が利上げ減速への移行が間もなく適切になるとの見解を示すと、警戒感も緩和して一時上昇に転換。しかし、長期金利上昇を嫌気した戻り待ちの売り圧力に押され、終盤にかけては再び大きく下落した。ナスダック総合指数も−1.12%と3日ぶり反落。 米国株安を受けて日経平均は23.21円安の27940.26円からスタート。心理的な節目の28000円を下回ったことで序盤は軟調な展開が続き、前場中ごろには一時27903.27円(60.2円安)まで下げた。ただ、時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移していたほか、中国の「ゼロコロナ」政策の緩和期待を背景に香港ハンセン指数が大幅高で推移していたことで、日経平均も前引けにかけては徐々に下げ渋り、プラス圏に浮上した。なお、午前に発表された中国の10月小売売上高は前年比−0.5%と市場予想(+0.8%)に反してマイナスとなったほか、10月鉱工業生産指数は同+5.0%と市場予想(+5.3%)を下回った。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>などが大きく上昇しており、アドバンテスト<6857>、SUMCO<3436>など半導体関連や、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運大手も高い。業績予想の上方修正に加えて増配や自社株買いを発表した三井住友<8316>が大幅高となっていて、三菱UFJ<8306>、T&DHD<8795>も自社株買いが好感された。ほか、業績予想を上方修正したマツキヨココ<3088>、新田ゼラチン<4977>、今期の2ケタ増益見通しが評価されたオープンH<3288>などが大きく上昇している。 一方、決算関連で7−9月期実績が市場予想比で下振れたリクルートHD<6098>と電通グループ<4324>、通期の営業利益予想を下方修正したSMC<6273>が大きく下落。業績予想を下方修正したTOYO TIRE<5105>、通期計画の据え置きが失望されたギフティ<4449>は急落。ほか、ネットプロHD<7383>、ダブルスタンダード<3925>、オーケストラ<6533>などが決算を受けて大幅安となっている。 セクターでは銀行業、医薬品、鉄鋼が上昇率上位となった一方、サービス、機械、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は35%となっている。 本日の東京市場は決算を受けた個別株物色を除けば全般もみ合い、こう着感の強い展開となっている。日経平均は心理的な節目の28000円を割れてはいるものの、75日移動平均線上を優に上回った状態を続けていて、ほぼ横ばいの5日線上をも維持している。前日、米株式市場で主要株価指数が揃って下落した割には底堅く推移している。 前日は、米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長が、利上げペース減速への移行が適切との、これまでの高官と同様の見解を示した一方、利上げ停止の検討は時期尚早との見方も示し、株式市場をけん制する一面も見せた。米10年債利回りは米10月消費者物価指数(CPI)の減速を受けて急低下した後の水準を維持し、依然として4%を大きく下回る水準にある。しかし、こうした中でも、前日の米株式市場でナスダック指数がラリーを続けられずに失速したのは、FRBの一段のタカ派発言を受けた金利の再上昇を恐れてのことなのかもしれない。 今晩の米国市場では米10月卸売物価指数(PPI)の発表がある。食品・エネルギーを除いたコア指数では前年比+7.2%と9月(+7.2%)から横ばいが予想されているものの、ヘッドラインでは前年比+8.3%と9月(+8.5%)と減速が予想されている。ヘッドラインとコア指数がともに減速すれば、株式市場はラリー再開となりそうだが、CPIより先行性の高いPPIの性質を踏まえれば、仮に予想に反して上振れとなると、株式市場は先週のCPI後の浮かれ気分から目を覚まされることになりそうだ。今晩の米国市場でのPPIの結果と反応を見極めたいとの思惑から、後場の東京市場は模様眺めのムードが支配的になりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/15 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は反落、前週末の大幅上昇受けて一旦の利食い売り優勢
日経平均は反落。215.99円安の28047.58円(出来高概算7億5251万株)で前場の取引を終えている。 前週末11日の米株式市場のNYダウは32.49ドル高(+0.10%)と続伸。中国のコロナ規制緩和を好感し寄り付き後、上昇。しかし、11月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想を下回ったことや、暗号資産取引所FTXが国内で破産法適用申請を明らかにし同資産市場が下落したことが警戒され一時下落に転じた。ただ、利上げペース減速の思惑が根強く金利先高観の後退でハイテク株の買いが続き市場を支え、ダウは再び上昇。さらにドル安による企業の収益改善を期待する買いも根強かった。ナスダック総合指数は大幅続伸、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を受けて、日経平均は前週末比14.07円高の28277.64円と小幅ながら続伸でスタート。その後は、マイナス圏に転落して軟調に推移している。 個別では、ソフトバンクG<9984>、オリンパス<7733>、大阪チタ<5726>が急落。ANA<9202>やJAL<9201>などの空運株、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株も軟調に推移している。また、KDDI<9433>やNTT<9432>などの通信株、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの銀行株、任天堂<7974>やトヨタ自<7203>などの大型株も下落。ほか業績予想の下方修正を発表したツバキ・ナカシマ<6464>、ミルボン<4919>、ゲオHD<2681>、スプリックス<7030>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。 一方、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>などの一部の半導体関連株が上昇、ファーストリテ<9983>やキーエンス<6861>、資生堂<4911>、日本電産<6594>などが堅調に推移、ダブル・スコープ<6619>やリクルートHD<6098>などの主力グロース株も上昇した。そのほか、想定以上の7-9月期業績や上方修正を好感されたアシックス<7936>、今期業績見通しはコンセンサス上振れとなったラクス<3923>などが大幅に上昇した。そのほか、平田機工<6258>、スズケン<9987>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは倉庫・運輸関連、情報・通信、石油・石炭製品が下落率上位となった一方、ガラス・土石、化学、陸運が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の31%、対して値下がり銘柄は65%となっている。 本日の日経平均株価は、小幅ながら続伸してスタートした後マイナス圏に転落して軟調な展開が続いている。寄り付き段階では想定よりしっかりだったとはいえ、出資するFTXの破綻影響も警戒されているソフトバンクGなども指数の重石となるなか、下げ幅をやや広げる展開となった。そのほか、中国・香港市況は堅調に推移している一方で、米株先物はやや軟調な展開が続いている。 新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後じりじりと上げ幅を広げている。FRBの利上げペースが鈍化する期待が大きく高まったことで米長期金利が3.8%台まで低下しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって追い風となっている。また、本日東証プライム市場の主力株が冴えない展開となっており、幕間つなぎの物色が新興株に向かっている可能性もある。引き続き個別材料株への物色は旺盛で、前引け時点で東証マザーズ指数が1.83%高、東証グロース市場Core指数が2.59%高となっている。 さて、10日の消費者物価指数(CPI)発表後、米10年債利回りは3.8%台と4%を大幅に下回る水準に低下した。実際に、本日もインフレ減速・金融引き締め懸念後退を好感した動きが継続しており、グロース株優位の展開が続いている。ただ、米10月CPIのコア指数は前年比で+6.3%と高水準で、住居費は前月比+0.8%と9月から加速している。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、中長期では警戒は怠れないとの意見もある。 ブルームバーグでは、「米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は14日、10月米CPIの上昇率が鈍化したことは良いニュースだが、一つのデータポイントに過ぎずFRBが利上げを停止するまでには「まだ道のりは長い」との認識を示している。」と報じられた。12月の連邦公開市場委員会(FOMC)がその後の会合で、政策担当者が利上げ幅を0.5ポイントに減速させることはあり得るとしながらも、利上げの停止に近づいているわけではないと注意を促したという。 さらに、ターミナルレートが5%を上回る可能性があるかとの質問に対し、5%を超えるかどうかはインフレ動向次第だとも述べている。FF金利誘導目標が2023年半ばに4.9%前後でピークに達するとの見通しをある程度織り込んでいるが、仮にターミナルレートが5%を上回る可能性がさらに示唆されると、織り込め切れていない株式市場にいとってはマイナス要因となるだろう。引き続き、FRBの利上げペースの動向には注視せざるを得ない。 今回のCPIの減速確認により短期的には上昇基調が続くと考えられる。中間選挙が実施される11月以降のS&P500指数の株価パフォーマンスは良好というアノマリーも相まって投資家心理が上向く可能性もあろう。ただ、世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。筆者は変わらず、年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、下げ止まるか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/11/14 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反発、短期シナリオと中長期シナリオを再確認すべきタイミング
日経平均は大幅反発。754.65円高の28200.75円(出来高概算9億5138万株)で前場の取引を終えている。 10日の米株式市場でダウ平均は1201.43ドル高(+3.69%)と大幅反発。米10月消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に鈍化したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを減速するとの思惑が強まり、長期金利が大幅低下する中、ハイテク株を中心に買い戻しが加速。ドル安が米企業の収益回復に繋がるとの期待も強まり、相場を一段と押し上げた。ナスダック総合指数は+7.35%と急反発。米国株の急伸劇を受けて日経平均は422.59円高とギャップアップでスタート。売り方の買い戻しを巻き込みながらトレンドフォロー型ファンドの買いで上値を伸ばし、前場中ごろには28329.54円(883.44円高)まで上昇した。ただ、さすがに短期的な過熱感から戻り待ちの売りなども入り、前引けにかけては騰勢一服となった。 個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が+10%と大幅高となったことを追い風に半導体関連が軒並み高となっている。レーザーテック<6920>が+16%と急騰したほか、業績予想を下方修正した東エレク<8035>ですらも地合い好転を背景に+9%と急伸。アドバンテスト<6857>は国内証券によるレーティング格上げも手伝い+9%。ディスコ<6146>は上場来高値を更新している。ほか、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、村田製<6981>の主力ハイテク株や、SHIFT<3697>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>などのグロース株が軒並み急伸している。決算関連では資生堂<4911>、富士フイルム<4901>、マツダ<7261>、オプトラン<6235>などが大幅高となっている。 一方、任天堂<7974>、川崎汽船<9107>、JT<2914>、キヤノン<7751>、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、三菱商事<8058>、NTT<9432>、JAL<9201>、JR東<9020>、INPEX<1605>、OLC<4661>など、純粋シクリカル(景気敏感)系やディフェンシブ、リオープン関連で軟調なものが多くみられる。決算関連ではニコン<7731>、テルモ<4543>、アリアケジャパン<2815>、ロート製薬<4527>、三井E&S<7003>などが急落している。 セクターでは電気機器、サービス、化学が上昇率上位となった一方、空運、水産・農林、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の67%、対して値下がり銘柄は30%となっている。 急反発した米株式市場を好感し、日経平均も本日は値幅を伴った上昇で急伸劇を見せている。取引開始直後から心理的な節目の28000円を軽々超えてくると、騰勢をさらに強め、一時は次なる節目の28500円をも窺う動きを見せた。実需筋の買い戻しに加えて、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの追随買いが相場を押し上げていると推察される。 株式市場の急伸の背景となったのは言わずもがな、米国の10月消費者物価指数(CPI)の結果だ。総合値、いわゆるヘッドラインインフレは前年比+7.7%と予想(+7.9%)および9月(+8.2%)から大きく減速。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+6.3%と予想(+6.5%)および9月(+6.6%)から減速した。コア指数は前月比でも+0.3%と予想(+0.5%)および9月(+0.6%)から減速し、モメンタムの鈍化を示唆した。 サービス分野の項目をみると、医療サービスが前月比−0.6%と9月(+1.0%)から大きく減速し、これがコア指数の押し下げとして働いたことが分かる。ただ、CPIの3割以上と最も大きい構成比を占める住居費は+0.8%と9月(+0.7%)から加速している。むろん、相関性の高いS&Pコア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数などの米住宅価格の代表的な指標は今年4月をピークに減速しているため、1年程遅れて動く遅行性を踏まえれば、住居費の減速も時間の問題だ。しかし、遅行性は過去の推移からすると、1年から1年半のスパンとなっていることが多く、住居費の減速にはまだ時間がかかる見通しだ。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、今回のCPIを受けた株高の賞味期限は長くても次回分が出てくるまでの約1カ月といったところか。 米10年債利回りは4%を大きく下回り、3.8%台前半まで低下しているが、最近の債券市場は流動性が乏しく、売り方の買い戻しの動きがやや過剰に反映されている可能性がある。特に11日の米債券市場はベテランズデーで休場のため、動きが助長された可能性も否定できない。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速が見込まれるとはいえ、つい先日までターミナルレート(政策金利の最終到達点)の5%超えは濃厚という話題で持ちきりだったことを踏まえると、ここからの米長期金利の低下余地は大きくないだろう。このため、金利低下を背景にしたグロース株買いの勢いは長期化しないと思われる。 米CPIの結果を受けて、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは来年5月頃をピークとする形で4.92%程度まで低下してきた。ただ、こちらも上述したのと同様の考え方から、これ以上の低下は想定しにくい。仮に、ターミナルレートや米長期金利がここからさらに低下して株式市場が過度に上昇するようなことがあると、その際には再びFRB高官からけん制発言が出るだろう。 日経平均は短期的には上値を試す展開が想定されるが、今回の約1カ月と想定されるラリーの上値目途としては29000円近辺とみている。前回の7月から8月半ばにかけてのラリーの際にはCTAなどの買いに押し上げられる形で、8月17日に一時29222.77円まで上昇した。今回も、CTAなどのトレンドフォロー型ファンドは損益分岐点と推察される27500円を超えた辺りから買い持ち高を膨らませてきていると思われる。 実需筋のショートカバー(売り持ち高の買い戻し)は長くは続かないだろうが、2−3日程度は続くと思われ、来週前半には28500円を回復する可能性が高い。その先はCTAの買い継続で29000円を目指す展開が予想されるが、前回のラリー時のピークがこの水準だったため、次第に戻り待ちの売りや新規ショートも入ってくると想定される。仮に前回ラリー時とは異なり、29000円台を長く維持する場合には、新規ショートの早期撤退などで29500円タッチもありえそうだ。 実体経済に目を向けると、世界経済は明らかに減速方向にあり、インフレの水準が依然として高いため、景気後退入りしたとしても中央銀行による金融緩和は期待できない。ファンダメンタルズとしては悪化方向にあることに変わりはなく、今後の株式市場については、短期的には上方向も、ある程度の水準訂正を果たした後は再び下値模索の展開になる可能性があろう。いまは短期勝負と割り切って買い参戦するか、相場が楽観に浸りきった頃の売りを待つかのどちらかだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/11 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、ラリーに早くも黄色信号?
日経平均は大幅続落。325.43円安の27391.00円(出来高概算6億3247万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でダウ平均は646.89ドル安(−1.95%)と4日ぶり大幅反落。中間選挙で下院での共和党勝利の勢いが期待された程ではないことが判明し、先行き不透明感の台頭から売りが先行。10日に発表予定の米10月消費者物価指数(CPI)を警戒した売りのほか、暗号資産取引所の破綻リスク上昇で金融市場への影響を警戒した売りも膨らみ、引けにかけて下げ幅を広げた。ナスダック総合指数も−2.47%と4日ぶり大幅反落。米国株の大幅反落を受けて日経平均は257.35円安と大幅下落で始まった。朝方は売りが先行し、早い段階で27370.62円(345.81円安)まで下げ幅を拡大。その後いったんは下げ渋る動きが見られたが、アジア市況も軟調な中、前引けにかけては再び下げ幅を広げる展開となった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、信越化<4063>、ファナック<6954>などの値がさ株が大きく下落。リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>、メルカリ<4385>などのグロース株や、ディスコ<6146>、ルネサス<6723>の半導体関連、村田製<6981>、TDK<6762>、イビデン<4062>のハイテク株も総じて下落。日本製鉄<5401>、INPEX<1605>、大阪チタ<5726>などの資源関連も安い。業績予想を下方修正した住友ゴム<5110>、ブラザー工業<6448>、クボタ<6326>、ベネッセHD<9783>、カシオ<6952>、神戸製鋼所<5406>、カネカ<4118>などが大幅に下落した。ホンダ<7267>は業績予想を上方修正も、市場予想にとどかず失望感から売られた。 一方、レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>、ソシオネクスト<6526>がハイテク関連の中で逆行高。三菱商事<8058>、伊藤忠<8001>の商社、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運などが堅調。好決算を材料にセグエグループ<3968>、フジクラ<5803>がストップ高となったほか、日清オイリオ<2602>、ライト工業<1926>が大幅に上昇。業績予想を上方修正したホシザキ<6465>も大きく上昇。RSテクノ<3445>は中国子会社の新規上場に関するリリースが好感されてストップ高となった。 セクターでは、ゴム製品、鉱業、輸送用機器が下落率上位となった一方、パルプ・紙、銀行、水産・農林が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は27%となっている。 日経平均は下値支持線に切り替えてきていた75日移動平均線を再び下放れ、心理的な節目の27500円も割り込んできた。前日は終日下げ幅を広げる流れで、一昨日の陽線を打ち消す陰線を形成し、本日はその後のサポート割れとあって印象が悪い。今週に入って大きく好転していたテクニカルだが、昨日と今日とで一気に悪化した格好だ。 それもそのはず、開票作業が進む米中間選挙については、事前に野党・共和党の勝利が高い確率で予想されていた。民主党政権が掲げる増税などのネガティブな政策が成立しにくくなるとの見方から、中間選挙後の株高アノマリーも先取りする形で株式市場は上昇していた。しかし、激戦が繰り広げられている上院だけでなく、下院でも依然として共和党が優勢ながらも、民主党がかなり善戦していることが伝わっており、選挙結果に対する先行き不透明感が急速に高まってきた。 前提が覆されることを嫌って、本日は週明けからの上昇の反動で売りが膨らんでいるようだ。市場のムードが悪化してきたことで、今晩の米10月消費者物価指数(CPI)への警戒感も昨日まで以上に高まる形になっている。今の流れでCPIの結果が市場予想を上回るとなると、相場は下方向に一気に振れそうなため注意が必要だろう。 一方、相場にとってポジティブな材料としては、昨日、米シカゴ連銀のエバンス総裁が金融引き締めの行き過ぎを懸念し、利上げペースを減速させることが妥当とのハト派的な見解を示した。米CPIが予想並みにとどまり、米中間選挙の結果も予想通り少なくとも下院での共和党勝利が実現すれば、相場は再びラリーへの動きに転じる可能性がある。反面、どれか一つでも予想と異なることがあると、短期的には下値模索のリスクが高まる恐れがあろう。 暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXが資金繰りの悪化に直面し、破産法適用の申請が近いとの報道を背景に、暗号資産価格が軒並み急落していることも気掛かりだ。同業のバイナンス・ホールディングスが同社買収の撤回を発表したことで警戒感は急速に高まっている。機関投資家のポートフォリオに占める暗号資産の割合はさほど高くないと思われるが、価格の下落が行き過ぎるとリスク低減を目的に他の資産クラスの売却につながる恐れもあるため、こちらも注意が必要だ。特に個人投資家については影響が大きく、米国では個人もオプションなどのデリバティブ取引に積極的な背景を踏まえると、個人投資家のセンチメント悪化を通じた株式市場への影響も懸念される。 11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)や米10月雇用統計を通過し、日経平均VIや米VIX指数に落ち着きがみられるなど、足元では市場にやや楽観的なムードが漂っていた面が否めない。こうした中、ほぼ同じタイミングで嫌なニュースが重なってきたことには警戒感をもって臨む必要があろう。本日の日経平均が27500円を下回ってからも下げ幅を広げる動きを止めていない点も気掛かりだ。8日に、日経平均が27500円や75日線といったテクニカルな節目を明確に上回ってきたことが、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの買いを誘っていた背景があったが、早々にこうしたテクニカルな節目を再び割り込んできていることで、短期筋の売り転換も懸念される。ラリーへの期待には早くも黄色信号が灯ってきた。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/10 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小反落、ラリー創出の条件が整ってきた?
日経平均は3日ぶり小反落。44.95円安の27827.16円(出来高概算6億4688万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は333.83ドル高(+1.01%)と3日続伸。中間選挙での共和党躍進により、民主党政府の増税政策やインフレを助長するような政策への傾斜が回避できるとの期待が強まり、買いが先行。ドル安や長期金利の低下も買い安心感を誘った。ナスダック総合指数も+0.48%と3日続伸。日経平均は週明けから700円近く上昇していることもあり、本日は12.44円高とほぼ横ばいの水準からスタート。心理的な節目の28000円を手前に新たな買い材料に欠ける中、開票作業が進む米中間選挙の投票結果を見極めたいとの思惑もあり、次第に騰勢を弱める展開に。決算を受けた個別株物色にとどまる中、日経平均はじり安基調が続いた。 個別では、川崎汽船<9107>を筆頭に郵船<9101>、商船三井<9104>の海運大手が大幅高。三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社株も高い。ソフトバンクG<9984>、エムスリー<2413>、村田製<6981>、太陽誘電<6976>のハイテク・グロース株のほか、アドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>の半導体関連も大きく上昇。今期大幅増益見通しを示したBEENOS<3328>、上半期大幅増益が好感されたジェイリース<7187>、堅調な決算に加えて高水準の自社株買いを発表した新日本電工<5563>、同様に最終損益の黒字転換に加えて自社株買いを発表した共同印刷<7914>、などが急伸している。業績予想を上方修正した三菱製鋼<5632>、外資証券の目標株価引き上げが観測されたイビデン<4062>、新光電工<6967>なども大幅高となっている。 一方、ゲーム機「スイッチ」の販売台数引き下げなどが嫌気された任天堂<7974>、業績予想の上方修正が小幅にとどまったダイキン<6367>、同様に業績予想を上方修正もサプライズに乏しく資源価格の下落が重石となったINPEX<1605>が大きく下落。増配を発表も営業利益予想を下方修正した旭ダイヤモンド工業<6140>、業績予想を下方修正した日東紡績<3110>、グローリー<6457>などが急落し、東証プライム市場の値下がり率上位に並んでいる。ほか、JAL<9201>、JR東海<9022>、三越伊勢丹HD<3099>、パンパシHD<7532>、エアトリ<6191>などのリオープン・インバウンド関連が総じて弱い動きとなっている。 セクターでは、その他製品、鉱業、空運が下落率上位となった一方、海運、金属製品、パルプ・紙が上昇率上位となった。。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体40%、対して値上がり銘柄は55%となっている。 米中間選挙の投票結果が進んでいる中、様子見ムードが強く、本日の日経平均は動意に乏しい展開。ただ、2日間で670円以上も上昇した直後ということを踏まえると、かなり底堅く推移しているといえる。10月3日の25621.96円をボトムに、その後は緩やかながら下値と上値を徐々に切り上げていくトレンドを形成しており、足元では10月の間ずっと上値抵抗線として作用してきた75日移動平均線を明確に上回ってきて推移している。テクニカルでは基調は明らかに好転してきている。 今年、相場を大きく動かしてきた米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策も、まだ利上げが続くとはいえ、利上げ幅縮小とターミナルレート(政策金利の最終到達点)のおおよその見込みは立ってきた。また、利上げ停止の時期も恐らく来年3−5月頃ということで市場のコンセンサスも形成されている。今年最大の株価の下落要因であったFRBの「超大幅連続利上げ」劇場の終焉が近づく中、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の世界の株式市場の動きを見ていると、相場はどうしてでも上に行きたがっているような様子だ。 米中間選挙については、事前の報道ですでに少なくとも下院では野党・共和党が過半数議席を獲得する公算が大きいと伝わっている。民主党が掲げる増税などの市場にとってネガティブな政策が成立しにくくなることや、選挙後は株高になりやすいというアノマリーを意識した買いから、株式市場は上昇基調を続けている。 一方、選挙結果が判明した時点では「Buy the rumor, sell the fact.(噂で買って、事実で売る)」の動きから一時的に売りが出そうな恐れもある。しかし、米国では投資信託の節税対策売りなどで季節的に弱い10月を過ぎて上がりやすい時期に入ってきていることに加え、FRBの利上げ工程の全貌もおおよそ明らかになってきている中、株式市場は新たな売り要因を探すのに疲れてきている様子。また、日米ともに長期目線の機関投資家はすでに換金売りが一巡し、新たに大きく売る程の持ち高状況でもないだろう。金利のボラティリティー(変動率)も落ち着いてきている中、10日の米10月消費者物価指数(CPI)でよほどの大幅な上振れがない限り、「中間選挙アノマリー」、「季節性要因」、「身軽なポジション」を拠り所に相場は上値を試しに行く展開となりそうだ。 ただ、その際は、前日の当欄(「短期筋買いで上振れ基調も長期筋は様子見決め込み」)でも指摘した通り、あくまで今の局面で積極的に動いてくるのはトレンドフォロー型ファンドなどの短期筋が主体に限られる。相場が上を試しにいっても、その流れに長期目線の投資家がどこまで付いていくのかには疑問符が付く。当面の上昇相場には常に賞味期限があることを忘れないでおきたい。(仲村幸浩)
<NH>
2022/11/09 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続伸、短期筋買いで上振れ基調も長期筋は様子見決め込み
日経平均は大幅続伸。352.06円高の27879.70円(出来高概算6億4854万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は423.78ドル高(+1.30%)と続伸。中間選挙を控える中、下院で共和党優勢との報道を背景に政策遅滞への連想からインフレ・金利高懸念が後退、さらにイベント通過後の不透明感払しょくによる株価上昇への期待もあり買いが優勢に。ドル高が一段落したことも支援し終日堅調に推移した。ナスダック総合指数は長期金利上昇で朝方は伸び悩んだものの、引けにかけて上げ幅を拡大し、+0.85%と続伸。米国株高を引き継いで日経平均191.2円高からスタート。値がさのハイテク・グロース株を中心に買いが入る中、朝方から断続的に水準を切り上げる形となり、前場中ごろには27943.27円(415.63円高)まで上値を伸ばした。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>など値がさ株を中心に主力のハイテク・グロース株が大幅高。INPEX<1605>、石油資源開発<1662>のほか、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社など景気敏感株も総じて高い。太陽誘電<6976>は業績予想を下方修正も、事前の同業他社の決算で警戒感が高まっていたこともあり、悪材料出尽くし感から切り返して大幅高。業績・配当予想を上方修正した住友精化<4008>、好決算に加えて自社株買いを発表したJCU<4975>、第1四半期が高進捗となったチャームケア<6062>、業績予想を上方修正したヤマハ発<7272>などが2ケタ台の上昇率で急伸。ユニ・チャーム<8113>、日立造船<7004>、日本CMK<6958>、ゴールドウイン<8111>なども好決算が評価された。 一方、7−9月期営業減益となったレノバ<9519>が急落。カルビー<2229>、NTTデータ<9613>なども減益決算が嫌気されて大幅安。業績・配当予想を下方修正した日東工業<6651>、好業績も通期計画を据え置いた日本ケミコン<6997>なども大きく下落した。ほか、目立った材料は見当たらないが、ソシオネクスト<6526>が半導体関連の中では大きく逆行安となっている。 セクターでは保険、海運、不動産を筆頭にほぼ全面高となり、下落したのはその他金融、陸運の2業種のみとなった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の74%、対して値下がり銘柄は22%となっている。 本日の日経平均は大幅続伸で、一時28000円超えが視野に入る水準にまで上昇する場面も見られた。日足チャートでは、75日移動平均線を明確に上抜けてきたほか、上向きの25日線が200日線を下から上に抜こうかと窺う形となっており、テクニカルな好転が鮮明になってきている。一目均衡表でも雲上限を大きく突破したことで三役好転を示現している。 日経平均の午前の推移を分足チャートでみると、断続的に階段状に水準を切り上げていく形となっている。テクニカルな好転と合わせて、これまで上値抵抗帯となっていた心理的な節目の27500円を明確に上放れてきたことが、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの買いを誘っているように見受けられる。 今週は米中間選挙に加えて、米10月消費者物価指数(CPI)と注目イベントが多いが、中間選挙では上院が接戦の一方、下院は野党・共和党が過半数議席を獲得する公算が大きいと伝わっている。実際にこれが実現すると、民主党のバイデン大統領の掲げる政策の難航が予想されるが、財政赤字の拡大に繋がらないことがインフレ低下・金利低下を通じて株価上昇をもたらすと前向きに捉えている市場関係者が多い様子。また、中間選挙後には不透明感が払しょくされること等を背景に、選挙実施月の11月から翌年4月にかけてS&P500指数の株価パフォーマンスが良好というアノマリーも足元の株高に勢いを与えているようだ。 日米ともに機関投資家の株式持ち高比率は低水準にとどまっているため、じり高基調が続けば、次第に持たざるリスクが意識され、買い遅れた向きによる投資が一段高を演出する可能性もありそうだ。 一方、前日にQUICKが発表した月次調査(11月)では、ファンドマネージャーの現在運用しているファンドにおいて、国内株式の組み入れ比率が通常の基準に比して「ニュートラル」と回答した割合が55%と前回(54%)からやや増加。「ややオーバーウェート」と回答した割合が21%と前回(23%)から低下した一方、「ややアンダーウェート」と回答した割合は24%と前回(17%)から大きく上昇した。また、国内株式の組み入れ比率についての当面のスタンスについては、「やや引き上げる」との回答が10%と前回(28%)から大幅に低下した一方、「現状を維持する」との回答が81%と前回(61%)から大幅に増えて圧倒的多数となった。 ほか、先週は先物手口において、BofA(バンク・オブ・アメリカ)証券が東証株価指数(TOPIX)先物で週間11800枚超にも及ぶ大量の売り越しを見せていた。前日は日経平均が27500円を回復した中ではあったが、TOPIX先物で同証券による明確な買い戻しは確認されなかった。 米国ではGAFAMに代表される米IT大手企業をはじめ決算で低調なものが多かった印象だが、日本国内でも、ハイテク企業で意外感のある下方修正が散見され、円安恩恵がある中でも決算シーズン終盤にかけては軟調な内容のものが多く見られている。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見から、今後実際に景気後退が訪れても当面高水準の金利は据え置かれる見込みで、政策による下支えは期待できない。「bad news is good news.(悪いニュースは良いニュース)」という決まり文句が通用しない環境下、景気後退はストレートに企業業績の悪化を通じて株価の下押し圧力として働きそうだ。 こうした中、上述の調査からは、機関投資家はほとんど持ち高を増やす意向がない様子。先週のBofA証券によるTOPIX先物の大量売り越しの動きも、こうした背景に基づく実需筋による売りとも考えられる。 米10月CPI次第ではあるが、イベント通過後にトレンドフォロー型ファンドを中心に短期筋が相場を大きく上方向に引っ張っていっても、その後に付いていく投資家は果たしてどれだけいるのだろうか。持たざるリスクから急いで買いに転じる長期目線の投資家は上述の調査などからは左程多くないようにも見受けられる。年末株高への期待も根強いが、まだまだ株価の行方については慎重なスタンスを維持しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/08 12:12
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日経平均は3日ぶり反発、買い優勢も上値の重い展開
日経平均は3日ぶり反発。328.92円高の27528.66円(出来高概算6億2729万株)で前場の取引を終えている。 前週末4日の米株式市場のNYダウは401.97ドル高(+1.26%)と大幅反発。10月雇用統計では依然健全な労働市場が証明されたものの同時に失業率が上昇、さらに連邦準備制度理事会(FRB)高官の発言を受け利上げ減速観測も再燃し長期金利が一時低下すると一段高となった。ただ、長期金利が再び上昇すると相場は失速。引けにかけて再び大きく上昇する変動の激しい展開となり終了した。ナスダック総合指数も大幅反発、主要株式指数がそろって上昇した米株市場を受けて、日経平均は前週末比207.04円高の27406.78円と3日ぶりの反発でスタート。その後は、上げ幅を拡げるも上値の重い展開となっている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が上昇、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株も堅調に推移している。ソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>などの大型株も上昇。ソニーG<6758>や任天堂<7974>、ベイカレント<6532>などのグロース株の一角、住友商事<8053>や三菱商事<8058>などの商社株の一角も上昇した。ほか業績予想の上方修正を発表したヤマシンフィルタ<6240>、当面の収益2ケタ成長見通しや株式分割を好感されたインソース<6200>が急騰、セレス<3696>、アイスタイル<3660>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、東邦チタニウム<5727>や大阪チタ<5726>などの非鉄金属が下落。ANA<9202>やJAL<9201>などの空運株、エーザイ<4523>やメルカリ<4385>などが軟調に推移、今期営業減益見通しをネガティブ視された山一電機<6941>、通期業績予想を下方修正したリコー<7752>などが大幅に下落した。そのほか、テモナ<3985>、新電元工業<6844>、ケーズホールディングス<8282>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。 セクターでは鉄鋼、海運、金属製品が上昇率上位となった一方、空運、不動産が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の72%、対して値下がり銘柄は25%となっている。 本日の日経平均株価は、3日ぶりの反発でスタートした後上げ幅をじりじり拡げる展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比315円高の27505円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均は買い先行で取引を開始した。ただ、今週は8日に米中間選挙の投開票のほか、10日には10月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えているため、積極的な売買は手控えられやすいとの指摘も聞かれている。そのほか、アジア市況は堅調に推移、米株先物はやや軟調な展開が続いている。 新興市場は冴えない展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後前場中ごろにかけてじりじりと下げ幅を縮小、その後プラス圏に浮上した。米長期金利が依然として4%を超えて推移していることはバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって重しとなっている。東証プライム市場の決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっていることも新興市場の冴えない動きに繋がっている可能性があろう。前引け時点で東証マザーズ指数が0.01%安、東証グロース市場Core指数が0.13%安となっている。 さて、4日には米10月雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数が26.1万人と市場予想を大きく上回り、平均時給は前年同月比で+4.7%と市場予想に一致して前月比では+0.4%と市場予想を上回った。一方で、失業率が3.7%と市場予想を超えて上昇した。10月の雇用統計は結果的にまちまちなものとなった。ブルームバーグ・エコノミクスのリポートでは、「雇用の伸びは力強かった一方で、失業率が大きく上昇した。データのノイズを整理した上での結論は、労働市場はなお非常にタイトで失業率が中立水準付近になるにはまだ大きな調整が必要ということだ」と指摘している。 FOMCでは政策金利の0.75ポイント引き上げを決定、FRBのパウエル議長は記者会見で労働市場の状況について、「明白な」形ではまだ軟化していないと述べていた。金融当局の引き締め策が雇用に重しとなるが、パウエル議長は労働市場への悪影響について明白な失業増加ではなく主に求人件数の減少という形で表れることへの期待を表明しているようだ。 8日には米中間選挙が予定されている。中間選挙では議会多数派の交代が決まる可能性があるため政局の動向にもある程度の注意が必要である。ただ、インフレ率が市場予想を大きく下回るか、やはり10日に発表される米10月CPIの結果に市場の注目が集まっている。10月の総合CPIは前年同月比7.9%上昇と9月の8.2%上昇からわずかな減速にとどまる見込み。コア指数も同6.5%上昇で9月の6.6%上昇に比べて伸びが若干鈍るとみられているが、なお非常に高い水準。FRBは、12月のFOMCで利上げペースを落とす可能性も示唆しているが、最終的な判断は今回の物価見通しが鈍るかどうかが極めて重要である。 常々、毎週月曜日の当欄では年末にかけて一旦の反発が起こる可能性があることを示唆してきた。CPIの結果には注目しているが、中間選挙が実施される11月以降のS&P500指数の株価パフォーマンスは良好という経験則が市場では知られている。こうしたアノマリーが意識される形で、今後も筆者の想定に変化はない。世界的に様々なリスクが散見されるなか年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、堅調な展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。
<AK>
2022/11/07 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、FRBハト派化期待は剥落、イベント盛り沢山で買い戻しは当面見送り
日経平均は大幅続落。560.22円安の27103.17円(出来高概算8億3637万株)で前場の取引を終えている。 国内が祝日だった間、2、3日の米株式市場でダウ平均は505.44ドル安、146.51ドル安と4日続落。連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り4会合連続での0.75ptの利上げが決定された。また、想定通り今後の利上げペース減速を示唆する文章も声明文に盛り込まれた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で「利上げ停止の検討は時期尚早」などとタカ派的なコメントを多く発した。金利の一段の上昇は避けられないとの見方からハイテク株を中心に売りが膨らんだ。ナスダック総合指数も−3.36%、−1.72%と大幅に4日続落。 米国株の大幅続落を嫌気し、祝日明けの日経平均は291.5円安からスタート。祝日の間、「ゼロコロナ」政策の緩和を巡る憶測について中国当局が否定的な見解を示したこともあり、朝方から売りが先行し、前場中ごろには27032.02円(631.37円安)まで下げ幅を広げた。一方、今晩の米10月雇用統計を見極めたいとの思惑もあり、心理的な節目の27000円手前からは買い戻しが入り、その後は下げ渋る展開となった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、任天堂<7974>、村田製<6981>、京セラ<6971>、SMC<6273>、TDK<6762>などハイテク・グロース株が大幅下落。本日決算発表を予定している郵船<9101>のほか、商船三井<9104>の海運大手も大きく下落。東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連も大幅安。決算関連では、7−9月期の2ケタ減益が嫌気されたZHD<4689>やアドウェイズ<2489>、主力のメディカル・プラットフォーム事業の収益成長が物足りないと捉えられたエムスリー<2413>が急落。また、業績予想を下方修正したAGC<5201>、堅調決算も通期計画の据え置きが失望されたアイロムG<2372>、マンダム<4917>なども急落。ほか、ヒロセ電機<6806>、KADOKAWA<9468>なども大幅に下落した。 一方、三菱重<7011>、住友商事<8053>、マツダ<7261>、ソシオネクスト<6526>などが堅調。決算関連では通期計画の大幅上方修正が好感された大阪チタ<5726>と三菱自<7211>が揃って急伸し、東邦チタニウム<5727>は連れ高の展開。ほか、ネットワンシステムズ<7518>、コニカミノルタ<4902>、富士急行<9010>が大幅高。10月既存店売上高が好感されたABCマート<2670>も大きく上昇。JVCKW<6632>、サンゲツ<8130>は直近の好決算や業績上方修正が引き続き買い材料視された。 セクターではガラス・土石、精密機器、水産・農林を筆頭にほほ全面安の展開。一方、空運、銀行、卸売の3業種が上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の75%、対して値上がり銘柄は21%となっている。 祝日明けの日経平均は大幅安で75日移動平均線に続いて一気に200日線まで割り込んできている。FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「利上げ停止の検討は時期尚早」、「前会合以降に入手したデータは政策金利が従来想定以上よりも高くなることを示唆している」などと発言。これを受けて、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は来年5月頃をピークとする形で5.2%弱まで上昇してきている。 債券利回りも幅広い年限で上昇しており、3日の米10年債利回りは4.15%まで再び上昇してきた。ただ、10月下旬に一時上回った4.3%台にまではまだ距離があり、金利の上昇余地は多分に残されていると見受けられる。今晩に発表される米10月雇用統計や、来週に発表予定の米10月消費者物価指数(CPI)など今後の経済データ次第ではあるが、FF金利先物市場が織り込むターミナルレートで5.5%、米10月年債利回りで4.5%程度までは金利上昇余地があると考えておいた方がよいだろう。 米10月雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びは19万人程度の増加と、9月(26.3万人増加)から大きく減速すると予想されている。ほか、失業率が3.6%(9月3.5%)、労働参加率は62.3%(同62.3%)、平均時給は前年比+4.7%(同+5.0%)と予想されている。ブルームバーグ通信によると、エコノミストらは長期的に強過ぎず、弱過ぎでもない雇用の伸びを月間10万人弱の増加とみているもよう。これと比較する限り、10月の雇用者数の伸びの予想値19万人増は依然として労働市場の逼迫を示唆するものと思われるが、予想通り、20万人台を割り込み、賃金の伸びも5%台を割り込んでくれば、先行き警戒感は和らぎ、今回の11月FOMC後の売りは一旦小休止する可能性があろう。 一方、8日には米中間選挙が控えている。上院と下院の双方で野党・共和党が過半数を制すると、再び政府の債務上限引き上げを巡る与野党の攻防劇が想定され、短期的には株式市場はこれを嫌気する可能性がある。10日には米10月CPIも発表予定で、イベントが盛り沢山な分、今晩の米雇用統計を受けて株式市場の売りが止んでも油断はしない方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/04 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、「製造業売り・サービス業買い」の構図は長期化へ
日経平均は3日続伸。7.13円高の27686.05円(出来高概算6億8172万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でダウ平均は79.75ドル安(−0.24%)と続落。中国が「ゼロコロナ」政策を緩和するとの思惑で上昇したアジア、欧州市場の流れを引き継ぎ買いが先行。ただ、10月ISM製造業景況指数やJOLT求人件数などの経済指標が予想を上回ったことで利上げ観測が強まり長期金利が上昇に転じると下落に転じた。ナスダック総合指数も−0.88%と続落。米国株安を引き継いで日経平均は116.62円安からスタート。ただ、ナスダック100先物が堅調に推移していた中、日本時間明日未明3時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に持ち高を傾ける向きは限られ、寄り付き直後から下げ渋ぶる展開に。アジア市況も堅調な中、日経平均は前場中ごろには前日比プラス圏に浮上、そのまま前引けまで堅調推移が続いた。 個別では、業績予想を上方修正したソニーG<6758>、日本製鉄<5401>、ニチレイ<2871>、横河電機<6841>、市場予想を上回る7−9月期営業益となったTDK<6762>が大幅に上昇。直近、好決算が確認されたばかりの三井物産<8031>、双日<2768>、NTN<6472>、東邦チタニウム<5727>、JVCKW<6632>なども大幅高。冶金工<5480>、スミダ<6817>は前日のストップ高に続いて本日も2ケタ上昇率で急伸。一方、花王<4452>が大幅な減益決算を受けて急落。CTC<4739>も減益決算が嫌気されて大幅安。業績予想を下方修正した住友化学<4005>、業績予想を上方修正も市場予想に届かなかった日本酸素HD<4091>も大きく下落。直近の決算を嫌気した売りが続いたLITALICO<7366>、サイバー<4751>なども急落した。 セクターでは鉱業、鉄鋼、石油・石炭が上昇率上位となった一方、化学、精密機器、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体53%、対して値下がり銘柄は42%となっている。 日経平均は前日終値を挟んだ水準で一進一退も、寄り付きから下げ渋る底堅い展開で、前日に超えた75日移動平均線上を維持している。祝日明けの週末には日足一目均衡表の雲上限を突破して上放れが期待できそうな状況だ。 一方、外部環境を巡る不透明感は一向に晴れてこない。米連邦準備制度理事会(FRB)の年内の利上げペース減速に対する期待は根強いものの、前日に発表された米9月労働省雇用動態調査(JOLTS)での求人件数は前月比43.7万件増の1072万件で、減少を予想する市場予想(975万件)に反して増加した。また、労働市場の逼迫緩和を示唆する結果として株式市場で好感された8月分については、1028万件へと速報値(1005.3万件)から上方修正された。失業者1人に対する求人件数は約1.9件と、8月の約1.7件から増加した。 こうした結果を受けて、債券市場ではFRBの利上げペース減速期待がさらに後退。フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、2023年5月には再び政策金利が5%を超えることを織り込んできている。一方、株式市場の方は日米ともに引き続き底堅く、利上げペース減速期待は根強いようだ。 しかし、やはり市場が期待するようなFRBのハト派化への転換はやや後ろ倒しになったと考えられる。今回の9月JOLTSの結果を受けて、今週末の米10月雇用統計に対する注目度は一段と高まった。FRBもこの結果を確認する前に過度に市場に対してハト派的な見解を示すことは考えにくい。12月FOMCに向けて利上げ幅縮小の議論を開始したといった程度の、事前の報道で伝えられている範疇に収まるだろう。 ほか、企業業績の悪化も気掛かり。円安効果もあり、日本企業の業績は相対的に堅調で、株価の反応もまずまずといった印象だが、前日に発表されたトヨタ自<7203>の決算は市場予想を下回った。生産台数の下振れなどの事前報道で目線は切り下がっていたはずだが、原材料費高騰の影響の大きさや先行き不透明感が嫌気され、株価は前日に続き本日も下落している。10月31日に業績予想を下方修正した村田製<6981>も、前日に続き続落しており、あく抜けには至っていない。半導体関連については、市況が急速に調整している一方、アドバンテスト<6857>など堅調な業績を受けて直後の株価が買いで反応しているケースもある。悪材料一辺倒であってくれた方が材料出尽くしであく抜けにも繋がりやすいと思われるが、強弱材料が混在している分、逆に底入れ時期が遠のいているようで素直に喜べない。 加えて、安川電機<6506>やファナック<6954>の業績下方修正もあり、製造業は全体的にパッとしない株価推移のものも多い印象。一方で、リオープンの進展でインバウンド需要の期待が高まっている内需関連の銘柄は、先週こそは利益確定売りで調整したものの、今週は再び強い動きを見せている銘柄が多く見られる。ANA<9202>、JR西<9021>などの代表的な銘柄のチャートはしっかりとした基調を維持している。グローバル経済がこの先も減速傾向にあることが予想される中、今後のFOMCの結果次第でもあるが、次四半期決算シーズン頃までは、現在の「製造業売り・サービス業買い」の物色動向が続く可能性が高いと見ておいた方がよさそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/02 12:18
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、テクニカル好転も強気になりきれない背景
日経平均は続伸。58.88円高の27646.34円(出来高概算6億3187万株)で前場の取引を終えている。 10月31日の米株式市場でダウ平均は128.85ドル安(−0.39%)と7日ぶり反落。連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に控えた警戒感から売りが先行。月末の持ち高調整や利上げ減速期待を背景とした買いでダウ平均は一時プラス圏を回復する場面もあったが、戻り売りに押されて再び下落。長期金利の上昇でハイテク株も軟調で、ナスダック総合指数も−1.02%と反落。日経平均は27.18円高の小幅高でスタート。日本時間で3日未明3時頃に結果公表を控えるFOMCを前に様子見ムードが強い中ではあったが、好決算銘柄を中心に買いが優勢の展開となった。時間外取引のナスダック100先物が上昇していたほか、香港ハンセン指数の大幅高などアジア市況の上昇も追い風に、日経平均も前引けにかけて上げ幅を広げる展開となった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、日立<6501>、ファナック<6954>、リクルートHD<6098>など主力のハイテク・グロース株が大幅に上昇。本日決算発表を予定している三井物産<8031>のほか、伊藤忠<8001>、子会社の業績上方修正があった三菱商事<8058>など商社株が強い動き。日本製鉄<5401>、大阪チタ<5726>、INPEX<1605>など市況関連株も高い。決算が評価に繋がったところでJVCケンウッド<6632>、日本冶金工業<5480>、ファイズHD<9325>、SREHD<2980>、マクニカHD<3132>などが急伸。メルカリ<4385>も決算を材料に大幅高。ほか、旭有機材<4216>、JT<2914>、NTN<6472>、栗田工業<6370>、パナHD<6752>などが決算を受けて大きく上昇。コマツ<6301>も業績上方修正で買い優勢。 セクターでは卸売、食料品、鉄鋼が上昇率上位となった一方、金属製品、海運、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の48%、対して値下がり銘柄は47%となっている。 日経平均は堅調な値動きで続伸し、27500円からの上方乖離を100円超に広げ、上値抵抗線である75日移動平均線も上抜けてきている。日足一目均衡表では、本日は雲の上限と下限が捻じれる変化日に当たるが、ローソク足はちょうどその交差部分をも上抜けようとする位置にまで上昇してきている。テクニカルではFOMC後の保ち合い上放れが期待できそうな形になってきた。 一方、10月21日のウォールストリート・ジャーナル(WJ)の報道およびその後のサンフランシスコ連銀のデーリー総裁などの高官発言を受けて急速に高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速期待には早くも黄色信号が灯っている。 28日に発表された米9月個人消費支出(PCE)コアデフレータや米7−9月期雇用コスト指数の予想並みとはいえ強い結果に加えて、30日には上述のWJ報道の発信者であるニック・ティミラオス記者が、FRBのターミナルレート(政策金利の最終到達点)が、現在想定する水準よりも引き上がる可能性などについて報じた。同報道では、家計の過剰貯蓄を背景に、利上げを通じた失業率の増加とそれに伴う収入・支出の落ち込みという、通常の景気減速原理が機能しなくなっていることなどにも言及しており、FRBの積極的な利上げを肯定するかのような内容となっている。 こうした背景もあり、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは、28日には2023年3−5月時点をピークに4.7%強にまで低下していたが、その後4.9%台後半にまで再上昇している。一方、日米の株式市場はリバウンド後のしっかりとした基調を継続しており、利上げ減速期待は根強い様子。 しかし、今一度念頭に置きたいのは、今話題になっているのはあくまで「利上げ減速」であり、「利上げ停止」でもなければ当然「利下げ転換」でもない。利上げ幅が縮小されたとしても、「利上げ=(金融引き締め)」であることには変わりなく、株式市場にはネガティブな状況のままだ。また、FRBのデータ次第という姿勢は変わっておらず、今週末の米10月雇用統計以降の賃金・物価に関するデータが強いままであれば、来年前半と想定されている利上げ停止すらも覚束ないことになる。 想定通り、来年前半に利上げが停止されたとしても、それにより株価収益率(PER)の低下は止まるだろうが、一株当たり利益(EPS)については景気後退色が強まる中、来年前半時点でも依然として低下傾向にある恐れもある。その場合、金融政策は利下げ転換には至っていないため、PERが横ばいの傍ら、EPSの下向きは維持される構図となる。米株式市場の大底は今年6月だった可能性があるが、今後最安値を更新しなくても、それがそのまま相場の上昇基調への転換を意味することにはならない。株式市場は安値圏でのもみ合いが長期化する可能性が高いと見ておいた方がよいだろう。 また、気掛かりな点では中国経済の低迷も挙げられる。5年に一度の中国共産党大会が22日に閉幕し、習近平国家主席の3期目入りが決まった。3期目入りが確定すれば、それまで頑なに堅持していた「ゼロコロナ」政策も緩和されるだろうと予想していた向きも多かったとみられるが、実際、その後に緩和の兆しは見られていない。むしろ、湖北省の省都・武漢や青海省の省都・西寧など複数の都市ではコロナ規制が強化されている。また、米アップルについては、中国鄭州市にある「iPhone」の主要製造工場において、厳格なコロナ対策が敷かれ、生産状況が混乱しているという。一部のアナリストは今後数週間で状況が改善されない場合、10−12月期のiPhoneプロモデルの出荷が1000万−1200万台不足する可能性があると指摘している。 31日に中国国家統計局が発表した10月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と、9月(50.1)から0.9pt低下し、拡大・縮小の境目である50および市場予想(50.0)を2カ月ぶりに下回った。また、本日午前に発表された民間版の財新中国10月製造業PMIは49.2と9月(48.1)からは改善したが、こちらも分岐点となる50を下回った。安川電機<6506>やファナック、ナブテスコ<6268>の業績予想の下方修正などからも窺えるように、中国経済の低迷長期化は日本企業の業績悪化に繋がる。半導体市況の底入れに時間がかかる中、機械市況の低迷も長引くと、円安という追い風があるとはいえ、日本の製造企業の業績もしばし厳しい状況が続きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/11/01 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反発、FOMCや雇用統計など各種指標に注目
日経平均は大幅反発。424.13円高の27529.33円(出来高概算5億6268万株)で前場の取引を終えている。 前週末28日の米株式市場のNYダウは828.52ドル高(+2.59%)と大幅続伸。米連邦準備制度理事会(FRB)の金利がピークに接近したとの見方が優勢に。銀行株の上昇や石油会社の決算が好調で一段と相場を押し上げた。また、長期金利の上昇が一段落し、大きく下落していたハイテク株にも押し目からの買戻しが見られ、ナスダック総合指数も上昇に転じた。主要株式指数が終日堅調に推移した米株市場を受けて、日経平均は前週末比299.10円高の27404.30円と大幅反発でスタート。その後は、堅調もみ合い展開となった。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が上昇、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株も堅調に推移している。ソフトバンクG<9984>や日立<6501>、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>なども大幅に上昇。ソニーG<6758>やメルカリ<4385>、ダブル・スコープ<6619>などのグロース株の一角、ソシオネクスト<6526>やキヤノン<7751>、武田薬<4502>なども上昇した。ほか業績予想の上方修正を発表したスターティアH<3393>、通期業績予想の上方修正がポジティブサプライズとなったアルプスアルパイン<6770>が急騰、東エレデバ<2760>、エレマテック<2715>、ジェイテクト<6473>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、オリエンタルランド<4661>や三井松島HD<1518>などが下落。ほか、23年3月期業績予想の下方修正及び配当金の無配を発表した大平洋金属<5541>、23年3月期上期の営業利益が前年同期比2.8%減の31.8億円となったG−7ホールディングス<7508>などが大幅に下落した。アンリツ<6754>、ベネフィット・ワン<2412>、テクマトリックス<3762>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。 セクターでは電気機器、機械、その他金融業が上昇率上位となった一方、ガラス・土石、石油・石炭、鉄鋼が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は19%となっている。 本日の日経平均株価は、大幅反発でスタートした後上値の重い展開が続いている。米株高の流れを受けて本日の日経平均は買いが先行。ただ、今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えている他、足元でのロシアの穀物輸出合意停止などもあって、買い一巡後は徐々に手掛けにくさが強まるとの指摘も市場からは聞かれている。そのほか、アジア市況は軟調に推移、米株先物も売り優勢の展開が続いている。 新興市場はもみ合い展開が続いている。マザーズ指数は上昇してスタートした後朝方にかけて急速に上げ幅を縮小、前場中ごろにかけてマイナス圏に転落した。その後プラス圏に浮上するもさえない展開。一方、グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後、日経平均と同様にプラス圏での堅調もみ合い展開となっている。ナスダックが大幅高となっており、米長期金利がピークに接近しているとの見方が広がったことは国内の個人投資家心理の改善に繋がっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.13%高、東証グロース市場Core指数が0.77%高で時価総額上位銘柄が堅調に推移している。 さて、先週は米国の大企業の決算発表が相次いだ。GAFAMはアップルが相対的にましな決算となったが、それ以外は総じて市場の期待値に未達で米ナスダック総合指数の大幅下落に繋がり、国内の投資家心理にもネガティブに働いた。 今週からは、重要なイベントが目白押し。11月2日には連邦公開市場委員会(FOMC)が最新の政策金利決定を発表する。イングランド銀行(英中央銀行)も金融政策委員会(MPC)を今週開催、いずれも75ベーシスポイントの利上げ決定が予想されている。FOMCでは、リセッションリスクの高まりにも関わらず、インフレ抑制に動く積極姿勢を引き続き示す見通しだが、今後の道筋についてヒントを与えるとみられ、積極的な利上げペースを緩和する方針を示唆することもあり得る。 2日後の4日には、10月の米雇用統計が発表される。失業率は前月比0.1ポイント悪化の3.6%、非農業部門就業者数は前月比20.0万人増(9月は26.3万人増)程度と予想されている。雇用ペースがどの程度鈍化しているかを見極める重要な指標となるため、注目が集まっている。8日には中間選挙が実施される。議会多数派の交代が決まる可能性があるため、政局の動向にも注意が必要だろう。 10日には、消費者物価指数(CPI)が発表される。現時点の市場予想は、いまだに8%を超える前年同月比8.1%の上昇。サマーズ元米財務長官は27日のツイートで、「8%のインフレ率を低下させる展望は非常に暗い」、インフレ率低下のコンセンサス予想は過去の実績から著しく逸脱していると述べている。ただ、仮に10日に発表されるインフレ率が市場予想を大きく下回ると株高材料となりそうだ。 毎週月曜日の当欄では、常々年末にかけて一旦の反発が起こる可能性があることを示唆してきた。GAFAM決算は大敗したものの、利上げペース鈍化を想定していることが追い風となっている。ただ、前述の今週の各種イベント後の値動きには注意しておきたい。今後も、筆者の想定に変化はなく、世界的に様々なリスクが散見されるなか年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、堅調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続して向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/10/31 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は続落、 GAFAM決算ほぼ全敗でFOMCの重要性一段と高まる
日経平均は続落。97.04円安の27248.20円(出来高概算5億8779万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でダウ平均は194.17ドル高(+0.60%)と5日続伸。7-9月期国内総生産(GDP)速報値が3四半期ぶりプラス成長に回復したことを好感し買いが先行。一部企業の好決算を好感した買いや長期金利の低下も相場を支援し、ダウ平均は終日堅調に推移。一方、メタ・プラットフォームズの低調な決算を受けた株価下落が重石となり、ナスダック総合指数は−1.62%と大幅続落。ナスダックの下落や引け後に発表されたアマゾン・ドットコムの決算が失望的だったことを背景に、日経平均は247.86円安と大幅下落でスタート。ただ、時間外取引のナスダック100先物の下落率が小幅だったことや、日銀金融政策決定会合の結果と黒田総裁の記者会見を控える中、持ち高を傾ける向きは限られ、その後は、前引けまで下げ幅を縮める動きが続いた。 個別では、ファーストリテ<9983>のほか、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運が大幅安。日立<6501>、SMC<6273>、エムスリー<2413>、TDK<6762>、オムロン<6645>なども大きく下落。ほか、INPEX<1605>、三井物産<8031>のエネルギー関連、東エレク<8035>、ディスコ<6146>の半導体関連が軟調。ファナック<6954>が業績予想の下方修正で急落しており、HOYA<7741>は前日の後場の取引時間中に発表した決算が引き続き売り材料視されている。NRI<4307>は市場予想を下回る決算で大きく下落。鉱区延長に関してネガティブなニュースが伝わっている三井松島HD<1518>は急落となっている。 一方、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、メルカリ<4385>、コマツ<6301>、東京海上HD<8766>、SHIFT<3697>などが高い。決算関連ではイビデン<4062>、新光電工<6967>が急伸し、アドバンテスト<6857>、東邦チタニウム<5727>、OLC<4661>、富士電機<6504>、富士通<6702>なども高い。業績予想を上方修正した信越化<4063>も上昇率は限定的ながらも買い優勢となっている。東証プライム市場の値上がり率トップは決算が好感されたシンプレクスHD<4373>となった。 セクターでは海運、精密機器、鉱業が下落率上位となった一方、陸運、保険、輸送用機器が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の43%、対して値上がり銘柄は52%となっている。 27日の米株式市場の引け後に発表されたアマゾン・ドットコムの決算は失望的なものとなった。7−9月期実績としては、売上高は市場予想並みとなったが、10−12月期見通しは市場の期待値を大きく下回った。株価も時間外取引で急落している。収益化見通しの立っていない分野に膨大な投資をかけているメタ・プラットフォームズとは異なるが、5四半期連続で営業経費の伸びが増収率を上回るなどコストの増加傾向が投資家の不安を誘っている。 10−12月期はホリデーシーズンだが、記録的なインフレ環境下で、今年は例年よりもセールが前倒しされている。また、昨年のような世界的な供給網混乱を警戒して調達を進めた結果、ウォルマートやターゲットのように過剰な在庫を抱えている小売企業が多く、競争も激しくなっている。このため、次回の10−12月期決算も冴えないものに終わる可能性がありそうだ。 一方、アップルは7−9月期の売上高が市場予想を上回った一方、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の売上高やサービス事業の売上高が市場予想に届かなかった。時間外取引の株価は一時乱高下したが、ほぼ立ち会い市場での終値と同水準に落ち着いている。 改めて振り返ってみると、GAFAM決算はほぼ全敗に終わった。アップルこそ株価は急落しなかったものの、これは事前に新型スマホの販売動向の不振が複数の報道を通して織り込まれていたからに過ぎない。そのため、実質的には全敗だろう。今回のGAFAM決算の結果が意味することは大きい。高いブランド力と包括的なサービス提供力から、GAFAMのような大型企業であれば景気減速の影響を免れることが可能との期待もあった中、今回の結果はそうした結果を一蹴したといえる。特に、アルファベットの決算で、時勢に乗るYouTube広告の四半期売上高が前年同期比で減収となったことなどは、個人的にはかなりのインパクトがあった。 他方、クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレスやビザなどの決算は総じて良好だった。また、前日に発表された米7−9月期国内総生産(GDP)の結果などからも、米国での個人消費は力強い基調が確認された。しかし、マクロの景況感については、GAFAMのような大型企業でも苦戦するほどに確実に悪化方向にあることを軽視してはならないだろう。 こうした中、一段と重要性を帯びてきたのが来週に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。先週末のウォールストリート・ジャーナル紙の報道に加えて、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁やセントルイス連銀のブラード総裁らの発言の変化を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策スタンスの転換が期待されている。11月会合での0.75ptの利上げはほぼ確実だが、12月会合の利上げ幅縮小に向けてどのようなメッセージが出されるか非常に注目される。景気後退懸念が強まる中では本来、マクロ経済政策の下支えが期待されるが、インフレ抑制が最優先とされている今は逆に引き締めが行われている。緩和とまではいかずとも、利上げ減速に向けた地ならしをどのようなメッセージと共に進めるのか、相場にとってビッグイベントとなろう。 午後の日経平均は神経質な展開が予想される。本稿執筆時点では日銀金融政策決定会合の結果がまだ発表されていないが、恐らく現状維持だろう。注目は黒田総裁の会見であり、足元の国内の物価動向やイールドカーブ・コントロールなどの現状の政策枠組みについて、どのような見解を示すかで為替が乱高下しそうだ。日経平均は為替要因で攪乱されやすく注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/28 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり小反落、全体冴えないなか新興株の復活機運高まる
日経平均は4日ぶり小反落。52.44円安の27379.40円(出来高概算5億4992万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でダウ平均は2.37ドル高(+0.00%)とほぼ横ばい。新築住宅販売件数の減少などを背景にした景気減速懸念から売りが先行。一方、カナダ中央銀行が予想より小幅な利上げを発表したことで、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ減速見通しが強まり、長期金利の低下を背景にダウ平均は上昇に転じた。他方、アルファベットやマイクロソフトの決算に失望した売りから、ナスダック総合指数は−2.03%と4日ぶり大幅反落。日経平均は24.61円安とほぼ横ばいからスタート。前日の米国の主要株価指数や米主要企業の決算がまちまちだったことで、手掛かり材料に欠ける中、日経平均はその後も前日終値近辺での一進一退が続いた。時間外取引のダウ平均先物や中国・香港株の上昇が支援要因になった一方、米メタ・プラットフォームズの決算を受けた株価急落が重石になった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連のほか、キーエンス<6861>、SMC<6273>、日本電産<6594>、安川電機<6506>、イビデン<4062>、新光電工<6967>などが高い。マネーフォワード<3994>、Sansan<4443>など中小型グロースの一角も強い動き。原油市況の上昇を受けてINPEX<1605>、出光興産<5019>が買い優勢。九電工<1959>、カプコン<9697>、日立建機<6305>、航空電子<6807>、富士通ゼネラル<6755>、オムロン<6645>などは決算が好感されて大きく上昇した。 一方、円高・ドル安を受けてトヨタ自<7203>、マツダ<7261>、SUBARU<7270>など自動車関連が軒並み下落。郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運は大幅続落。米長期金利の低下を背景に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の金融も大きく下落。ほか、アサヒ<2502>、セイコーエプソン<6724>、大阪チタ<5726>などの下落が目立つ。決算を発表したところでは日東電工<6988>、キヤノン<7751>、サイバー<4751>などが売られた。 セクターでは銀行、繊維製品、海運が下落率上位となった一方、鉱業、電気・ガス、石油・石炭が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の70%、対して値上がり銘柄は26%となっている。 26日の米株式市場の引け後に発表されたメタ・プラットフォームズの決算は失望的なものとなった。第3四半期(7−9月)は2四半期連続での減収となったほか、第4四半期の見通しも市場予想に届かなかった。また、収益化の目処が立っていないメタバース関連の損失が今後さらに拡大するとの見通しが示された。 メタの決算は過去の経緯やスナップの決算から想定線とはいえ、同社株価は26日の立ち会いで6%近く下落したうえ、決算を受けて時間外取引でさらに20%近くも急落した。一昨日のマイクロソフトとアルファベットも冴えない決算で、前日はそれぞれ7%、9%とそれぞれ大幅に下落している。GAFAM決算は今のところ3戦3敗と全敗だ。今晩27日の米株式市場では、残るアップルとアマゾン・ドットコムの決算が予定されている。アップルについては、すでに新型スマートフォンの販売動向が不振と伝わっているが、メタの売られ方を見る限り、ある程度想定線とはいえ、予想を少しでも下回れば容赦なく売られそうなため注意が必要だろう。 GAFAMではないが、電気自動車大手のテスラも先んじて決算を発表しているが、納入車数が市場の期待値に届かないなど内容はいまいちで、その後は中国での競争激化を受けた値下げも発表しており、株価も冴えない。米国の主要株価指数はGAFAMやテスラといった時価総額上位の銘柄で吊り上げられている部分が大きいため、残るアップルとアマゾンでも決算が冴えないものとなると、米国株は厳しい展開になりそうだ。 一方、こうした中、東京市場では中小型グロース株の相対的な強さが続いており、本日はマザーズ指数が他の指数が下落しているなか逆行高を見せている。マザーズ指数の日足チャートをみると、今週に入って長期の200日移動平均線を明確に上放れてきており、一目均衡表でも雲上限を突破し、テクニカルな好転が際立っている。 マザーズ指数については、米国での金融引き締めを背景に、今年前半(1−6月)は徹底的に売り込まれたが、その分、すでに金利上昇などの悪材料は織り込み済みと思われる。年内の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速も視野に入るなか、今は銘柄固有の高い成長ポテンシャルを見込んだ買いが入りやすくなっているのだろう。また、取引の主体が個人投資家中心で、海外投資家や国内機関投資家による持ち高削減の影響を受けにくいほか、世界景気の減速など外部環境からの悪影響も受けにくいことも背景として考えられる。 時価総額上位銘柄が冴えず、ナスダックやS&P500株価指数、日経平均、TOPIXなどの上値が重いなか、高い成長率を誇り、外部環境の影響も受けにくい中小型グロース株の相対的な強さは今後も続くと思われる。いっときは指数連動型のインデックス投信にさえ投資していれば、あとは勝手に利益が増えていくとされ、アクティブ投信はもはや終わったなどと言われていた。しかし、歴史的なインフレを契機とした大規模金融緩和相場の終焉をきっかけに、個別銘柄の分析・選別がようやくものを言う局面に入ってきたとも言える。時間軸などの制約を受けずに長期目線で投資できる個人投資家にとっては腕の見せ所だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/27 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、強い動きと裏腹に米IT大手の冴えない決算
日経平均は3日続伸。326.87円高の27577.15円(出来高概算5億3120万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でダウ平均は337.12ドル高(+1.07%)と3日続伸。予想を下回った住宅関連指標を受けて景気後退懸念が強まるなか売りが先行。一方、10月消費者信頼感指数の悪化を背景に長期金利が大きく低下すると買いが優勢となり上昇に転じた。ドル高の一服も支援した。ナスダック総合指数は+2.25%と3日続伸。金利低下と米株高を好感し、日経平均は160.36円高からスタート。朝方の買い先行後はもみ合いが続いていたが、中国・香港株が大幅高となると、前場中ごろからは日経平均も騰勢をさらに強める動きとなり、前引け直前に27578.05円(327.77円高)とこの日の高値を付けた。 個別では、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>などのハイテク・グロース株が大幅高。エーザイ<4523>、中外製薬<4519>、第一三共<4568>の医薬品、ニトリHD<9843>、神戸物産<3038>、資生堂<4911>のディフェンシブも高い。業績予想を上方修正したリョーサン<8140>やNOK<7240>、サイボウズ<4776>、セプテーニHD<4293>との資本提携締結を発表したandfac<7035>が急伸して東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。セメント事業からの撤退を発表したデンカ<4061>は構造改革として評価する動きが優勢となった。 一方、国内証券によるレーティング格下げの動きを受けて、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運大手3社が揃って大幅に下落。ダブル・スコープ<6619>のほか、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>、ローム<6963>の半導体・ハイテク関連、三菱商事<8058>、日本製鉄<5401>、三菱重工<7011>などの市況関連株が下落。JR東日本<9020>、JR東海<9022>の陸運も軟調。ほか、7−9月期営業益が市場予想を下回った山パン<2212>、好決算も出尽くし感に繋がったKOA<6999>などが急落。キヤノンMJ<8060>も業績予想を上方修正したが売られている。 セクターでは医薬品、サービス、精密機器が上昇率上位となった一方、海運、鉄鋼、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体75%、対して値下がり銘柄は21%となっている。 本日の日経平均は大きく3日続伸し、節目の27500円を回復、75日移動平均線も超えてきた。10月3日をボトムに下値と上値を切り上げる形となっており、短期的には75日線突破からの上昇に勢いが付きやすい状況となってきた。 一方、本日の上昇は短期的なものに過ぎないとも言えそうだ。25日の米株式市場の取引終了後に決算を発表したマイクロソフトとアルファベットは共に市場の期待値を下回るものとなり、両者の株価は時間外取引で大きく下落している。マクロ景況感の悪化で企業の広告需要が落ち込むなか、アルファベットの決算がそれなりに冴えないものになることは想定されていた。しかし、広告企業の中でも、検索エンジン型の同社の広告収入は、ソーシャルネットワークサービス(SNS)企業に比べれば堅調と想定されていただけに、市場予想を10億ドル程下回った売上高などはネガティブな印象が強い。 GAFAMの中でも相対的に好調な決算が見込まれていたマイクロソフトも印象が良くない。パソコンメーカー向け基本ソフト「Windows(ウィンドウズ)」の販売が7−9月期は前年同期比で15%減と大きく減速した。また、好調が続いていたクラウドサービス事業の「Azure(アジュール)」の増収率もドル高の影響もあって35%と、前四半期(4−6月)の40%、その前(1−3月)の46%からの減速傾向が鮮明になってきている。 さらに、半導体大手テキサス・インスツルメンツの決算もネガティブなものだった。10−12月期の売上高見通しが市場予想を下回ったほか、「産業機械メーカーの一部が発注を遅らせている」と言及しており、先んじて急速な調整を強いられているパソコンやスマートフォンなどの民生向け市場だけでない分野でも、半導体調整の波が押し寄せていることが確認された。 今晩26日の米株式市場では、メタ・プラットフォームズが決算発表を予定している。先週のスナップの決算を受けてすでに警戒感が高まっているが、堅調が期待されていたマイクロソフトとアルファベットが予想を下振れて株価下落しているあたり、メタの決算には改めて注意が必要だ。 一方で、本日の東京市場は時間外取引のナスダック100先物の大幅下落を無視する形で買い優勢の展開になっている。先週末、ウォールストリート・ジャーナル紙(WJ)が米連邦準備制度理事会(FRB)の年内の利上げ幅縮小を示唆する記事を報じていたが、そうした中でも、米10年債利回りは一昨日24日に2008年7月以来の高水準を記録していた。金利の高止まりにより、WJの報道を素直に好感し切れていなかったところ、前日25日の米国市場で金利がようやく大きく低下したことが安心感を誘ったとみられる。こうした背景が、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした売り方の買い戻しを誘っているとみられ、これが米IT大手の冴えない決算と株価反応との間にギャップを生んでいるものと考えられる。 実際、本日の東京市場での上昇率上位の銘柄をみると、マネーフォワード<3994>やJMDC<4483>、ネットプロHD<7383>、インフォマート<2492>などの安値圏にある銘柄が多く入っており、ショートカバー(売り方の買い戻し)が主体の動きといえる。米国でも、前日はベッド・バス・アンド・ビヨンドやゲームストップなどのいわゆるミーム銘柄が急伸していた。相場が強気に転じるにはなお時期尚早といえそうだ。(仲村幸浩)
<NH>
2022/10/26 12:15
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、株価続伸も警戒感を解かない債券市場
日経平均は続伸。226.47円高の27201.37円(出来高概算5億1614万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でダウ平均は417.06ドル高(+1.34%)と続伸。英国でスナク元財務相が次期首相に就任する見通しとなり、同国の財政を巡る不安が後退したことに加え、今週控えている主要ハイテク企業決算を前にした持ち高調整などを背景に終日堅調に推移。連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速期待も根強く、引けにかけては上げ幅を一段と拡大した。ナスダック総合指数も+0.85%と続伸。欧米株の上昇を引き継いで日経平均は138.3円高と27000円を回復してスタート。前日に大幅安となった中国・香港株が続落するなか、一時的に上げ幅を縮小する場面も見られたが、大きく値崩れすることはなく、この日の高値圏での推移が続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>の主力ハイテク・グロース、値がさ株が総じて上昇。村田製<6981>、新光電工<6967>のハイテク、郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運、NTT<9432>、KDDI<9433>の通信、武田薬<4502>、エーザイ<4523>の医薬品が高い。ほか、INPEX<1605>、出光興産<5019>、三井物産<8031>、コマツ<6301>の市況関連株、ホンダ<7267>、ブリヂストン<5108>、デンソー<6902>の自動車関連も強い動き。しまむら<8227>、ニトリHD<9843>は10月既存店売上高が好感された。円谷フィHD<2767>、野村マイクロ<6254>、東リ<7971>は業績予想の上方修正を受けてそれぞれ急伸。日本電産<6594>は上半期上振れ着地や車載事業の回復が評価された。 一方、ダブル・スコープ<6619>、任天堂<7974>、エムスリー<2413>、ファナック<6954>、ダイキン<6367>、ソシオネクスト<6526>、日本製鉄<5401>などが軟調。東証プライム市場の値下がり率上位には業績予想を下方修正したトランコム<9058>のほか、ギフティ<4449>、ソースネクスト<4344>、インソース<6200>、ラウンドワン<4680>などが入った。中外製薬<4519>は決算が冴えず、医薬品セクターの中で逆行安となっている。 セクターでは石油・石炭、海運、ゴム製品を筆頭に全面高。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の76%、対して値下がり銘柄は21%となっている。 本日の日経平均は欧米株高を支援要因に続伸。引き続き200日移動平均線が上値抵抗線として作用している一方、25日線が下値支持線として機能するような形になっており、200日線を超えることができれば、レンジ上放れが期待できそうな位置につけている。 前日、英国では、米金融大手ゴールドマン・サックスでの勤務経験も持つスナク元財務相が次期首相に就任する見通しとなり、同国の財政を巡る不安が後退したことで、英国債利回りは大きく低下した。先週末のウォールストリート・ジャーナル(WS)紙による米連邦準備制度理事会(FRB)の年内の利上げペース減速に関する報道もあり、グローバルな金利上昇を巡る不安感は後退しているようにもみられる。 しかし、米国債券に目を向けると、前日の米10年債利回りは4.25%と、終値ベースではむしろ0.02pt上昇している。WS紙の報道前に一時政策金利の5%超えを織り込んでいたフェデラルファンド(FF)金利先物市場も、足元ではターミナルレート(政策金利の最終到達点)の織り込みが4.9%まで後退したが、依然として高水準を維持している。利上げのピークが見えてきた一方、依然として今後のデータ次第による流動的なところが大きく、米債券市場は一連のイベントを受けても警戒感を解いていない様子。足元の米株式市場の上昇は、予想より悪くない企業決算を好感した買いもあるだろうが、IT大手の決算前における持ち高調整に伴う買い戻しなどが主体と推察される。 また、そもそも、市場の目線は利上げ動向そのものよりも、企業業績の方に移ってきている。そうした中、前日に発表された米国の製造業・サービス業を合わせた10月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は前月から2.2pt低下して47.3と4カ月連続で縮小し、拡大・縮小の境界値である50を大きく下回った。製造業が49.9と9月の52.0から大きく低下し、市場予想の51.0に対して予想外の50割れとなったほか、サービス業も46.6と9月の49.3から大きく低下、市場予想の49.5からも大きく下振れた。現在、始まっている米国7−9月期決算については、アナリストの業績予想の下方修正が進んだ結果、ネガティブサプライズの数は少ないが、来年度以降の下方修正については余地が残されている中、速報性の高いPMIが一段と低下傾向を強めていることの持つ意味は大きいだろう。 企業決算も今のところ順調とはいえ、これからが本番だ。今晩はGAFAM決算の皮切りとしてアルファベットとマイクロソフトの決算が予定されているほか、明日はスナップの決算と株価急落もあって警戒感が高まっているメタ・プラットフォームズの決算もある。まだまだ上値追いになるには慎重でありたいところだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/25 12:17
ランチタイムコメント
日経平均は反発、利上げ減速期待が台頭するも外部環境の不透明感は拭えない
日経平均は反発。266.37円高の27156.95円(出来高概算5億4985万株)で前場の取引を終えている。 前週末21日の米株式市場のNYダウは748.97ドル高(+2.47%)と大幅反発。連邦準備制度理事会(FRB)が11月連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%利上げ後に利上げペース減速を協議する可能性があると報じられたため、12月FOMCでの小幅利上げの思惑が強まった。また、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁の「より小幅な利上げを計画し始めるべき」との発言も手伝い上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数も大幅反発、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を受けて、日経平均は前週末比342.42円高の27233.00円と大幅反発でスタート。その後は、堅調もみ合い展開となっている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が上昇、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株も大幅に上昇している。ソフトバンクG<9984>やトヨタ自<7203>などの大型株も堅調に推移。ソニーG<6758>やリクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>などのグロース株の一角、日本電産<6594>や信越化<4063>、東京海上<8766>、キーエンス<6861>なども大幅に上昇した。ほか米金融引き締め緩和期待で中小型グロースの代表格として物色が向かったラクス<3923>が急騰、メック<4971>、タツモ<6266>、トレックス・セミコンダクター<6616>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 一方、ファーストリテ<9983>が下落。JR東<9020>やJR東海<9022>などの陸運、ANA<9202>やエーザイ<4523>なども軟調に推移した。ほか、10月既存店売上高が回復も想定内との見方が先行した西松屋チェ<7545>、上半期上方修正も小幅にとどまり出尽くし感が優勢となった大東建託<1878>などが大幅に下落した。YTL<1773>、ギフティ<4449>、京急<9006>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。 セクターでは海運、非鉄金属、機械が上昇率上位となった一方、不動産、小売、陸運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 本日の日経平均株価は、大幅反発でスタートした後プラス圏で売り買いが交錯する展開となっている。12月FOMCでの利上げ幅縮小に向けてFRBが議論する見込みと報じられたことは、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いた。また、個別材料株中心の物色が主体となっている。そのほか、アジア市況は軟調に推移、米株先物は堅調に推移している。 新興市場でも買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後プラス圏での堅調もみ合い展開となっている。利上げ減速期待が台頭して米長期金利がやや低下したことが新興株の追い風となっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.75%高と日経平均株価よりも上げ幅は限定的、東証グロース市場Core指数が1.35%高で時価総額上位銘柄が上昇をけん引した。 さて、前週末の米株市場はウォールストリート・ジャーナル紙が12月FOMCでの利上げ幅縮小に向けてFRBが議論する見込みと報じたことでポジティブサプライズとなった。米国株が上昇したことで東京市場でも買い優勢の展開が続いている。 一方、前週20日のブルームバーグでは、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)を務めるリサ・シャレット氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「弱気相場の中での上昇が定期的に起こり、どこにも行き着かないローラーコースターにわれわれは乗り続けることになるだろう」と指摘。「投資家は痛みに耐える力がないらしく、追い風が吹き始めたかもしれないという兆候が少しでもあれば2、3日は相場が上昇する」と続けていた。現に、「GAFAM」と呼ばれる米IT大手の企業決算のほか国内企業の決算発表が本格化する前に、少しの追い風が吹き始めたことで上昇している。 21日には米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁がFRBの利上げはまだ終わっていないと述べ、FF金利の誘導目標は年内に4%を大きく超える水準に引き上げられるとの見方を示していた。一方、FRBが一歩引き下がり利上げサイクルが経済に及ぼした影響を確認できる時期が近づいているとも指摘。「来年のある時点で利上げは一旦停止される」とした。株式市場では一旦主力企業の決算発表が注目されるだろうが、引き続き今後のFRB高官のタカ派発言に警戒しながら11月・12月のFOMCでの利上げ幅に注目せざるおえない。 そのほか、依然として外部環境の不透明感も強い。かつて米金融危機を予測した米経済学者のヌリエル・ルービニ氏は第3次世界大戦がすでに勃発しており、米国と中国がすでに冷戦を開始しているとの見解を示した。今後10年以内に大規模な倒産ラッシュと金融危機が起こる可能性があると警告。また、ドル円相場は32年ぶりに1ドル=150円を割り込んだ。アジアの代表通貨とされる円が人民元と共に下落を続け、「第2のアジア金融危機」の到来に対する不安も高まっているとの報道もある。やはり、各国の経済状況を注視するだけでなく、地政学リスクなども引き続き注視していく必要がある。 現時点では、追い風が吹き始めたことで年末にかけて一旦の反発が起こる可能性が高まってきた。ただ、前週の当欄で筆者が示唆したように、世界的に様々なリスクが散見されるなか、年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている点に変化はない。さて、後場の日経平均は、堅調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、幅広い銘柄に物色が継続して向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/10/24 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は続落、相場の底はどこになるのか
日経平均は続落。55.37円安の26951.59円(出来高概算5億661万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でダウ平均は90.22ドル安(−0.29%)と続落。週次失業保険申請件数が低水準にとどまり、9月中古住宅販売件数もほぼ予想に一致したことを受けて景気減速懸念が後退し、買いが先行。企業の好決算を好感した買いも手伝い一段高に。しかし、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁のタカ派発言を受けて利上げ観測がさらに強まると、長期金利の上昇を嫌気した売りに押され、下落に転じた。ナスダック総合指数も−0.61%と続落。 米国株安を受けて日経平均は103.46円安と27000円割れからスタート。米動画写真共有アプリのスナップが決算を受けて時間外取引で急落、ナスダック100先物が軟調に推移する中、日経平均も冴えない動きに。ただ、寄り付き直後に130円程下げた後は下げ渋り、その後は一進一退の展開となった。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、任天堂<7974>、ダイキン<6367>、HOYA<7741>の値がさ株が軟調。JAL<9201>、JR東海<9022>、エアトリ<6191>、三越伊勢丹<3099>のリオープン・インバウンド関連が軒並み下落。第一三共<4568>、塩野義<4507>、武田薬<4502>の医薬品も総じて安い。 1ドル=150円台の歴史的な円安進行下ではあるが、マツダ<7261>、SUBARU<7270>、スズキ<7269>など自動車関連が全般冴えない。クレディセゾン<8253>、コーセー<4922>、エイチ・アイ・エス<9603>はレーティング格下げを受けて大きく下落。インド同業大手の決算が嫌気された関西ペイント<4613>は急落している。 一方、ディスコ<6146>の決算を好感して同社のほか、東エレク<8035>、レーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、スクリン<7735>など半導体関連が軒並み高。ローム<6963>、三井ハイテック<6966>なども高い。フランスでの工場建設計画を発表したダブル・スコープ<6619>は急伸。良品計画<7453>、F&LC<3563>、ニトリHD<9843>のディフェンシブ系の一角が大幅高。レオパレス21<8848>は、「数字工作」報道に対する否定コメントを発表して急反発している。 セクターでは陸運、倉庫・運輸、空運などが下落率上位となった一方、石油・石炭製品、電気機器、水産・農林などが上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の66%、対して値上がり銘柄は29%となっている。 本日の日経平均は節目の27000円を手前に、25日移動平均線を挟んだもみ合い展開となっている。10月に入ってから、2度も200日線を上回りながらも、翌日以降には下落トレンドを再開する動きを見せており、8月17日高値を直近ピークとした上値切り下げ型トレンドの様相が強まっている。 今週は、週末の米国でのオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)までの間は、ショート(売り持ち高)が積み上がっている米国株を中心に売り方の買い戻しでリバウンドが続きやすいと考えられたが、実際のところは日米ともに冴えない状況が継続。SQを通過した来週以降は米IT大手決算の結果次第でもあるが、需給面では下げやすい環境になってきたことに留意したい。 前日の当欄(「なお残る金利上昇圧力に要警戒」)での主張の繰り返しになるが、米債利回りの上昇が止まらない。前日20日、米10年債利回りは4.23%へと更に続伸し、14年ぶりの高値を連日で更新。前日は、英国でトラス首相が辞任を表明。 ハント新財務相が減税策の大半を撤回した時点で、この展開はある程度織り込まれていたとはいえ、市場の波乱を引き起こしたトラス首相とクワーデング前財務相が表舞台の第一線から退いたにもかかわらず、金利の上昇は止まず、前日の米株式市場は前半の上げを帳消しにして下落に転じた。 金利上昇の引き金となったフィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、年内に政策金利を、4%を「大きく」上回る水準にまで引き上げること、そして、現状の緩慢なスピードでのインフレ沈静化という「残念な」状況を踏まえれば、来年の一段の引き締めをも辞さない方針を主張。 同氏は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)での議決権を有していないが、連銀総裁から、来年の政策金利5%到達をも匂わす発言が出てきたことには警戒感を抱かざるをえない。19日には、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、コア消費者物価指数(CPI)の減速に進展が見られない場合、政策金利を4.50−4.75%よりも更に引き上げることを厭わないと主張した。 一方、9月のFOMC議事要旨では、数名のメンバーから「不透明な世界経済や金融環境において、経済見通しへの著しい悪影響を軽減することを目的に、今後の利上げペースを調整することが重要」との見解があったもよう。また、年内の残る2会合での利上げ幅については、1.25ptと1.00ptの主張をするメンバーの数が拮抗していたことが判明している。 筆者は、FRBの超積極的ともいえる現在のタカ派スタンスが転換する頃が、株式市場の一つの転換点になると考えている。しかし、現状は、FOMC議事要旨内でそうした兆候が見られつつある一方、公の場での高官発言からは依然としてタカ派な姿勢が続けられている。 そろそろ金利を据え置いて政策効果の見極めに転じたい反面、データに基づく政策運営に徹している限り、前回9月の雇用統計およびCPIが強すぎる内容だったこともあり、いまだ手を緩ませることができない、というのがFRBの多くのメンバーが抱いている葛藤ではないだろうか。 ただ、10月4日に米労働省が発表した8月の雇用動態調査では、求人件数が110万人減少し、減少件数は2020年4月以来の大きさだった。CPIについては家賃などから構成される住居費が依然として勢いが強いものの、それ以外では減速の兆しが見られるものが多くなってきている。また、最大の関門ともいえる住居費についても、これに1年程先行する住宅価格は4月頃からすでにピークを打っている。 現在、市場は、11月のFOMCだけでなく、12月会合でも0.75ptの利上げが行われることをメインシナリオとして織り込みにいっている。つまり、9月のFOMC議事要旨内で確認されたFRBのほぼ全てのメンバーが想定している1.00ptもしくは1.25ptの利上げを超える、合計1.50ptの年内の利上げを織り込んできている。 依然として情勢は流動的とはいえ、今後発表される米国の求人件数や雇用統計、CPIの結果で、余程のことがない限りは、FRBは11月、12月のいずれかのFOMCで、将来の利上げ幅縮小ないしは利上げ停止に踏み切るための何らかの理由を挙げると考えられる。このシナリオが実現するのであれば、株式市場はいずれかの時点でいったん底を打つと推察される。 ただ、これが大底かと問われれば依然懐疑的である。ウクライナ情勢のほか、来季の備蓄も見据えた世界的なエネルギー消費の動向、世界的なドル高に伴う新興国経済への下押し圧力など、外部環境の不透明感が強いなか、企業業績の悪化もどこまで深いものになるかが現時点では予想しにくい。株式市場は長期調整局面にあることを念頭に今後も相場に臨みたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/21 12:14
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日経平均は3日ぶり反落、なお残る金利上昇圧力に要警戒
日経平均は3日ぶり反落。303.23円安の26954.15円(出来高概算4億7266万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でダウ平均は99.99ドル安(−0.32%)と反落。企業決算を好感した買いが先行したが、長期金利の上昇で警戒感が再燃して下落に転じた。引けにかけて金利が一段と上昇すると一段安となり終了、ナスダック総合指数も−0.85%と反落。日経平均は275.63円安と27000円を割り込んでスタート。寄り付きから売りが先行し、ナスダック100先物が下げ幅を広げる中、連れ安の展開に。香港ハンセン指数の大幅安も嫌気され、下げ幅を広げる動きが続いた。前引けにかけてやや持ち直したが、27000円回復には至っていない。 個別では、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>の主力ハイテク株のほか、東エレク<8035>、ルネサス<6723>、アドバンテスト<6857>の半導体関連、信越化学<4063>、HOYA<7741>、SMC<6273>の値がさ株が大きく下落。中小型グロース株は底堅い一方、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などの値がさグロース株が大幅安。外資証券による新規の売り推奨が観測されたGMOPG<3769>が大きく下落。ソースネクスト<4344>、オープンドア<3926>などインバウンド関連の中でも中小型株の一角が大幅安。出資先企業が子会社の上場申請取り下げを発表したことが嫌気され、BEENOS<3328>が急落した。 一方、蘭ASMLの好決算を手掛かりにレーザーテック<6920>が半導体関連の中で逆行高。関連株の中ではソシオネクスト<6526>も上昇している。米10年債利回りの14年ぶりの高値更新を背景に三井住友<8316>、第一生命HD<8750>の金融が堅調。NTT<9432>、マツキヨココカラ<3088>などディフェンシブ系の一角もしっかり。良品計画<7453>は国内証券の目標株価引き上げを好感して大幅高。業績予想の上方修正を発表したイントラスト<7191>、日本光電<6849>、イワキポンプ<6237>も大きく上昇した。 セクターでは精密機器、ガラス・土石、金属製品が下落率上位となった一方、鉱業、銀行、保険が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体72%、対して値上がり銘柄は22%となっている。 本日の日経平均は前日に上抜いたばかりの200日移動平均線を再び割り込んで、心理的な節目の27000円も下回った。6日にも大幅高で一度同線を上回ったものの、翌日に下落トレンド再開という形があった。今回も同様の流れになってしまったことで、今後この200日線が強力な上値抵抗線としてより強く意識されることになりそうだ。 前日19日、米10年債利回りは4.14%と2008年7月以来の高水準まで上昇した。英国でハント新財務相が大規模な減税策の大半を撤回し、欧州を中心とした財政不安が和らいできている中にもかかわらず、米国金利がこうして再び高値を更新してきていることは、それだけ金利上昇圧力が強い証左といえ、かなり気掛かりである。 前日の当欄(「年末に向けての株価の意外高も念頭に」)では、フェデラルファンドレート(FF)金利先物市場がすでに来年3−5月時点で政策金利が4.9%を超える水準にまで上昇することを織り込んでいること等を理由に、金利上昇圧力は限られてきたという話をした。ただ、英財政政策を巡る一連の不安について、これまでに発表済みの撤回分だけでは、財政不安を完全に解消するには不十分との指摘があり、欧州発のグローバルな金利上昇圧力はまだ残る。また、前日に発表された英10月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と8月(+9.9%)から加速した。冬季シーズンが本格化するに伴い、エネルギー危機が再台頭した際のインフレ・金利上昇のシナリオも考えられよう。 現在、米国の政策金利と連動性の高い米2年債利回りは4.55%に位置している。ターミナルレート(最終到達点)が、現状、米連邦準備制度理事会(FRB)が想定している4.50−4.75%のままであれば、米2年債利回りをはじめとした米国金利の上昇余地は小さいと考えられる。しかし、上述の欧州発のリスク要因が顕在化するか、もしくは、今後発表される米国のCPIや雇用統計が予想を大きく上振れることがあると、グローバルな金利上昇圧力が強まり、米ターミナルレートも5.0−5.5%程度にまで切り上がる可能性がある。この場合、米2年債利回りは5%前後、米10年債利回りでは4.5%程度までは上昇余地が生まれることになりそうだ。市場の目線はインフレ・金利動向よりも企業業績に移ってきているが、金利上昇を通じた株価下押し圧力が残っていることも留意しておきたい。 ほか、気掛かりなのは自動車関連だ。前日、米自動車ローン大手アライ・ファイナンシャルの7−9月期決算が発表されたが、新規ローンの申請件数が予想を下回り、株価が急落した。9月下旬にも、米中古車販売のカーマックスの決算を受けて自動車関連株が軒並み下落することがあったが、米国の個人消費を巡る環境は急速に悪化している可能性が高まってきた。個人消費の悪化を通じて企業の投資意欲もさらに落ち込んでいる可能性があり、広告需要の一段の悪化も想定される。現時時間で20日午後には米動画写真共有アプリを展開するスナップチャットの決算が予定されているが、広告関連のIT企業決算には注意が必要だろう。(仲村幸浩)
<NH>
2022/10/20 12:15
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日経平均は続伸、年末に向けての株価の意外高も念頭に
日経平均は続伸。197.73円高の27353.87円(出来高概算4億6972万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でダウ平均は337.98ドル高(+1.11%)と続伸。9月鉱工業生産の予想以上の改善を受けて景気減速懸念が後退。また、銀行大手の好決算に加え、長期金利の上昇も一服したためハイテク株も買われて相場を後押し。主要株価指数は終日堅調に推移した。ナスダック総合指数も+0.90%と続伸。日経平均は69.03円高からスタートすると、米ネットフリックスの決算を好感したナスダック100先物の大幅高を追い風に強含みの展開。前場中ごろに27371.38円(215.24円高)とこの日の高値を付け、前引けまで堅調推移が続いた。一方、心理的な節目の27500円手前にした上値の重さも見られた。 個別では、ソフトバンクG<9984>が大幅高となったほか、SMC<6273>、ファナック<6954>、三菱重<7011>、IHI<7013>の機械・防衛関連、オリンパス<7733>、テルモ<4543>の医療系精密機器、信越化<4063>、ダイキン<6367>の値がさ株などが高い。ファーストリテ<9983>はレーティング格上げで大きく上昇。玄海原発の再稼働前倒しが判明した九州電力<9508>が大幅高となり、中国電力<9504>、東北電力<9506>のほか、イーレックス<9517>、レノバ<9519>など電気・ガス関連が軒並み高。エムスリー<2413>、ラクス<3923>などグロース株の一角で上昇しているものが散見される。フューチャー<4722>は新規に買い推奨が観測され大きく上昇した。 一方、商船三井<9104>のほか、メルカリ<4385>、Sansan<4443>のグロースの一角が軟調。村田製<6981>は中国スマホの下振れに言及する社長インタビューが一部で報じられて軟調。TDK<6762>、イビデン<4062>などハイテクの一角も連れ安となっている。クレディセゾン<8253>はシティインデックスイレブンスの保有比率の低下が判明し、大幅に下落している。 セクターでは電気・ガス、繊維製品、機械を筆頭に全般買い優勢の展開となり、下落したのは鉱業と医薬品の2業種に限られた。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の63%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 本日の日経平均は、前日に上抜いたばかりの25日移動平均線をサポートラインにする形でしっかりと続伸。上値抵抗線だった200日線も上抜いてきている。同線を本日、終値でしっかりと超えてくることができれば、テクニカル面は好転し、すでに一巡していると推察される買い戻しだけでなく、新規買いなども誘発してきそうだ。 米国では先んじて7−9月期決算の発表が始まっているが、今のところ総じて堅調なものが多い印象。金融大手の決算は一巡したが、貸倒引当金の積み増しが過度な景気後退懸念を招くことはなく、不振の投資銀行業務を純金利収入やトレーディング収益で相殺できているところが多かった。また、IT大手の決算で前日に皮切りとなった動画配信サービスのネットフリックスは、7−9月期の会員数が会社計画と市場予想をともに上回り、一株当たり利益(EPS)も予想を上回った。株価は時間外取引で急伸している。10-12月期見通しは売上高とEPSがともに予想を下回るなど完璧な決算とまではいかなかったが、株価の反応を見る限り、市場は胸を撫で下ろしているようだ。 全体的な米国企業の決算の特徴として、事前に悲観的ではあっても、蓋を開けてみると予想よりも良いということが多いが、今回の7−9月期決算も、まだ序盤ではあるが、今のところはそうした経験則通りの結果になっている。今晩の米株式市場では、電気自動車大手のテスラの決算を控えているが、こうした流れに弾みをつけてくれることに期待したい。 足元の株式市場の懸念材料として、インフレは依然くすぶっているが、もっぱら、最大の関心事は米連邦準備制度理事会(FRB)による遅行データに基づく積極的な利上げが過度な引き締めとなり、景気後退・企業業績の悪化を招くのではないかという点に集まっている。そのため、今回の7−9月期決算はこれまで以上に事前の警戒感が強く、足元の株式市場の上値抑制要因にもなっている。 しかし、裏を返せば、年末に向けての株高の地合いが整いつつあるようにも考えられる。まず、金融引き締めについてだが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、すでに来年3−5月時点で政策金利が4.9%を超える水準にまで上昇することを織り込んでいる。多くのFRB高官が政策金利を4.5−4.75%にまで引き上げた後は、インフレが沈静化するまで当該水準で据え置くことを主張していることを踏まえると、金利先物市場はすでに政策金利水準については現時点では十分といえる程に織り込んでいるといえる。 利上げ幅についても、今年の11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)だけでなく、12月会合でも5会合連続で0.75ptの利上げを行うことを6割以上の確率で織り込み済みだ。年明け以降も利上げが続くとしても、金融引き締め効果を見極める必要性があることを考慮すると、利上げ幅は0.5pt以下に低下すると考えられ、利上げモメンタムのピークアウトも視野に入っている。 米10年債利回りなど米国金利への上昇圧力はなお残っていると考えられるものの、利上げペースが明確になり、その織り込みも完了している今、金利上昇による株価バリュエーションであるPER(株価収益率)への低下圧力はかなり和らぎつつある。そして、株価を決めるために残されたもう一つの要因は一株当たり利益(EPS)である。今の株式市場は、想定以上に業績が悪化するのではないか、今後、アナリストの業績予想が一段と引き下げられるのではないかと恐れている。こうした懸念がEPSへの低下圧力として働いて、現在の最大の株価下押し圧力になっていると考えられる。 そのため、上述したように、今のところ順調にきている7−9月期決算が今後も良好なものに終われば、市場の過度な業績後退懸念はいったん緩和されるだろう。年末に向けては極端なショート(売り持ち高)ポジションが築かれている米株式市場を中心に年末株高が実現する可能性があるといえよう。 ただ、残念ながら、現在の株式市場を巡る懸念要素はFRBの金融政策や企業業績だけではない。グローバルな視点から見渡せば、ウクライナ情勢のほか、欧州を中心に抱える世界的なエネルギー危機、「ゼロコロナ」政策の堅持から低迷が続く中国経済、米中摩擦、など多くの問題が重なっている。企業業績も7−9月期実績が良くても、経営陣が先行き不透明感を残すコメントを多く残せば、結局、翌四半期決算に懸念が繰り越されることになる。それでも、現在、先行きに弱気な意見をもつ市場関係者が支配的になっている中、完全に楽観に傾くことはできずとも、年末に向けては株価の意外高が控えている可能性にも留意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/19 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は反発、英財政不安後退も米長期金利の4%維持が気掛かり
日経平均は反発。209.87円高の26985.66円(出来高概算5億3395万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でダウ平均は550.99ドル高(+1.85%)と大幅反発。英政府の減税策の撤回で同国の財政悪化を契機とした世界金融市場の混乱への警戒感が緩和。また、大手銀行の予想を上回る決算も安心感を誘い、終日堅調に推移した。ナスダック総合指数も+3.43%と大幅反発。米国株の反発を受けて日経平均は391.94円高と27000円を回復してスタート。ただ、買い戻しの息は短く、寄り付き直後に27229.88円(454.09円高)の高値を付けると、戻り待ちの売りから失速。しばらく上げ幅を縮める動きが続き、前場中ごろには26910.10円(134.31円高)まで縮小した。一方、ナスダック100先物が上昇率1%を超えて推移する中、前引けにかけては下げ渋る展開となった。 個別では、JR東<9020>、JR西<9021>の陸運、JAL<9201>、ANA<9202>の空運、三越伊勢丹<3099>、高島屋<8233>の百貨店など、リオープン・インバウンド関連が総じて高い。コナミG<9766>、コーエーテクモ<3635>、セガサミーHD<6460>のゲームセクター、第一三共<4568>、エーザイ<4523>の医薬品も大きく上昇。自社株買いを発表したリクルートHD<6098>は大幅高となり、米ハイテク株高に加えて月次動向も追い風になったラクス<3923>が急伸。マネーフォワード<3994>は決算があく抜け感につながり急騰。Sansan<4443>、サイボウズ<4776>、ラクスル<4384>など中小型グロース株が全般大きく上昇している。通期計画を大幅に引き上げたSANKYO<6417>も大幅高となった。 一方、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>のハイテクの一角が下落。富士石油<5017>、INPEX<1605>、日本製鉄<5401>、東京製鐵<5423>などの市況関連株も全般軟調。前日大きく上昇した商船三井<9104>、川崎汽船<9107>の海運は反落。日本国土開発<1887>は第1四半期の大幅減益決算を受けて大きく下落した。 セクターでは精密機器、陸運、サービスが上昇率上位になった一方、鉱業、海運、鉄鋼が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の83%、対して値下がり銘柄は14%となっている。 ナスダックの大幅反発を背景に投資家心理が改善し、本日の東京市場でも買い戻しが先行している。しかし、日経平均は寄り天井の形で大きく失速、200日移動平均線手前で陰線を形成しており、上値の重さを確認した格好だ。寄り付き直後の高値からは一時300円以上も下げた。最近は、心理的な節目の27000円を割り込んでもすぐに回復する底堅さが見られる一方、回復した割には再びあっさりと同水準を割り込むなど、非常に振れ幅の激しいボラタイルな展開が続いている。それでも200日線を超えられない状態が長期化しているあたり、大勢はやはり弱気局面が継続しているといえそうだ。 前日の米国株もハイテク株を中心に大幅反発をしたとはいえ、気掛かりな要素もある。英国のハント新財務相が減税計画の撤回を発表したことで同国の財政不安が後退し、前日の英国債利回りは低下(債券価格は上昇)、通貨ポンドは対ドルで買い戻された。これが波及する形で、前日の米国金利も低下した。しかし、米10年債利回りは低下したとはいえ、結局4%台のままだ。 前日の米国時間、米10年債利回りは一時3.92%まで低下したが、そこから急速に下げ渋って結局4.01%で終えた。米10年債利回りは9月28日に4%に乗せた後、景気後退懸念などを背景に10月上旬に一時3.5%台まで低下。この時、米国金利はピークを打ったとする声も聞かれたが、その後、再び4%を回復。このように、米10年債利回りは4%に乗せては同水準を割り込むといった動きを何度も繰り返している。英国財政を巡る懸念が大きく後退したにもかかわらず、根強く4%台を維持してくるあたり、金利の先高観の強さが窺える。実際、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は来年3月時点で政策金利が4.9%にまで上昇することを織り込んでいる。今後の金利上昇圧力は依然として残っていると推察され、株式市場への影響が懸念される。 また、企業決算も注目される。今晩の米国市場では、金融大手のゴールドマン・サックスのほか、動画配信サービスのネットフリックスなどの決算が予定されている。今のところ、金融大手の決算は堅調で、今後本格化する7-9月期決算に対する警戒感は和らいでいるが、ネットフリックスの決算がどのようなものになるかは注目だ。有料会員数が予想外に大きく減少するといった結果になると、4月のネットフリックスショックの再来となりかねないため、注意が必要だ。一方、予想を上回るものとなれば、今週末の米国でのオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)にかけて、全体相場におけるショートカバー(売り方)が加速しそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/18 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、米株安受けて売り優勢の展開、外部要因も注視必要か?
日経平均は大幅反落。387.76円安の26703.00円(出来高概算5億4463万株)で前場の取引を終えている。 前週末14日の米株式市場のNYダウは403.89ドル安(-1.34%)と大幅反落。10月ミシガン大消費者信頼感指数や同指数の期待インフレ率が予想を上回ると連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ観測がさらに強まった。長期金利上昇とともに売りが再燃、週末でポジションを手仕舞う売りも散見され、引けにかけ下げ幅を拡大した。ナスダックも3.08%安と大幅に反落、主要株価指数がそろって下落した米株市場を受けて、日経平均は前週末比305.74円安の26785.02円と大幅反落でスタート。その後は、軟調もみ合い展開となっている。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの一部の半導体関連株が下落、トヨタ自<7203>やファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>などの大型株も軟調に推移。ソニーG<6758>やメルカリ<4385>、任天堂<7974>などのグロース株、日本電産<6594>やベイカレント<6532>、キーエンス<6861>、SHIFT<3697>なども大幅に下落した。ほか、6-8月期の収益失速をネガティブ視されたクリレスHD<3387>、第1四半期大幅減益決算をマイナス視されたパソナグループ<2168>などが急落、サーバーワークス<4434>、Sansan<4443>、ジンズホールディングス<3046>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 一方、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株は大幅に上昇。引き続き水際対策の緩和を好感されてANA<9202>やJAL<9201>などの空運株が堅調に推移、JR東<9020>やJR東海<9022>などの陸運、ソシオネクスト<6526>や三菱UFJ<8306>も上昇した。ほか、上半期営業益下振れも通期予想は上方修正した北の達人<2930>、23年2月期業績予想の上方修正を発表したテラスカイ<3915>などが大幅に上昇した。セラク<6199>、RPAホールディングス<6572>、サインポスト<3996>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、医薬品、卸売が下落率上位となった一方、海運、空運、電気・ガスが上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の19%、対して値下がり銘柄は78%となっている。 本日の日経平均株価は、大きく下落してスタートした後軟調もみ合い展開となっている。10月ミシガン大消費者信頼感指数や同指数の期待インフレ率が予想を上回ったことで国内の投資家心理も悪化、売りが先行した。ナスダックの下落率は3%を超えており、東京市場でハイテク株や半導体関連株の重しに、押し目買いも限定的となっている。そのほか、中国・香港市場は軟調に推移、米株先物はやや堅調に推移しているが、東京市場は軟調な展開が続いている。 新興市場でも売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後マイナス圏での軟調もみ合い展開となっている。米長期金利が4%を超えて推移したことからバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株も厳しい展開が続いている。ただ、個別材料株などに幕間つなぎの物色が向かっており、前引け時点で東証マザーズ指数が0.55%安と日経平均株価よりも下げ幅は限定的、東証グロース市場Core指数が1.66%安で時価総額上位銘柄が下落をけん引した。 さて、前週13日に発表された米9月消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.2%上昇と8月からは減速したものの予想の8.1%上昇を上回った。食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比6.6%上昇と8月から大きく加速し、予想の6.5%上昇も上回った。住居費だけでなく、食品や医療の分野でも強い伸びが見られた。また、14日の米10月ミシガン大学消費者信頼感指数における期待インフレ率は1年先が5.1%と9月から大幅に上昇、5−10年先も2.9%と9月から上昇した。依然としてインフレ長期化に対する警戒感から米長期金利の上昇は続いて4%をつけた。 14日のブルームバーグでは、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が経済には冷え込みの兆候が見られるとした上で、景気に抑制的な水準への利上げ継続を「全面的に支持する」と語り、同総裁は政策金利を4.5-5%に引き上げることが「最もあり得る結果」だと示唆した。 一方、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、過度に急速な利上げを行うことには慎重姿勢を示している。急速過ぎる利上げは「最終的に自己破壊を招きかねないやり方で金融市場と経済を混乱させる」可能性があると述べている。また、米セントルイス連銀のブラード総裁は15日に、11、12両月の年内残り2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合について利上げ幅を予想するには時期尚早だとしつつも、両会合で0.75ポイントずつの利上げを決める可能性を残す趣旨の発言を行ったようだ。今後のFRB高官のタカ派発言に警戒しながら、11月・12月のFOMCでの利上げ幅には注目が集まろう。 そのほか、中国では中国共産党第20回党大会が16日に開幕、習近平国家主席が今後の施政方針を示す活動報告を行った。台湾問題に関して、国家統一に向けて「歴史の車輪は前に進んでいる」と主張し、武力行使の放棄は決して約束しないと語っている。ウクライナ情勢では、ロシアが核兵器を使用すればほぼ確実にウクライナの同盟国、およびNATO加盟国の「物理的な対応」が引き起こされるとの見方を北大西洋条約機構(NATO)高官が示した。各国の経済状況を注視するだけでなく、台湾情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクも引き続き注視していく必要がありそうだ。 前週の当欄で筆者は年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えながら来年以降大きく下落する可能性があることを示唆した。ただ、世界的に様々なリスクが散見されるなか、年末にかけて一旦の反発があったとしてもそこまで大きいものでない可能性がありそうだ。また、引き続き、来年以降大きく下落する可能性を念頭に相場を見守っているが、11月・12月のFOMCやそのほかのリスク次第では年末にかけてじりじり下がっていく展開も想定しておきたい。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を注視しつつ、新興株に幕間つなぎの物色が継続して向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/10/17 12:19
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり大幅反発、需給主導の急伸どこまで続くか、CPIに潜むリスク
日経平均は5日ぶり大幅反発。903.76円高の27141.18円(出来高概算6億6585万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でダウ平均は827.87ドル高(+2.83%)と大幅反発。9月消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことで、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース加速観測が強まり大幅安でスタート。ただ、コアCPIのピークアウト感が広がり長期金利が低下に転じたほか、ドル高も一段落したため買い戻しが加速して大きく上昇に転じた。ナスダック総合指数は+2.22%と大幅反発。米国株高を受けて日経平均は361.9円高で始まった。ダウ平均先物が堅調な中、寄り付きから買い戻しが先行。上海総合指数や香港ハンセン指数も大幅に上昇するなか、断続的な買い戻しが入り、前引けまで一本調子で上げ幅を広げる展開となった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>の主力ハイテク株のほか、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>のグロース株が大幅高。伊藤忠<8001>、丸紅<8002>の商社株も高い。ほか、HOYA<7741>、エーザイ<4523>、日立<6501>、TDK<6762>、オリンパス<7733>、NTTデータ<9613>、三菱自<7211>、大阪チタ<5726>の上昇率が特に高い。東名<4439>、いちご<2337>は決算を受けて急伸。グッドコムアセット<3475>は増配を発表してこちらも急伸。ファーストリテ<9983>は今期見通し等が好感されて大幅高となり、日経平均をけん引。良品計画<7453>も前期上振れ着地などが好材料視された。竹内製作所<6432>は業績上方修正で買われた。一方、業績予想を下方修正した大黒天物産<2791>が急落。ビーウィズ<9216>、ホギメディカル<3593>、S FOODS<2292>は決算を材料に大きく売られた。 セクターでは精密機器、卸売、電気機器を筆頭に全面高。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の98%、対して値下がり銘柄は2%となっている。 前日に発表された米9月CPIは前年同月比+8.2%と8月(+8.3%)からは減速したものの、予想(+8.1%)を上回り、前月比では+0.4%と予想(+0.2%)を大幅に超過。さらに、FRBが重視する食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比+6.6%と8月(+6.3%)から大きく加速し、予想(+6.5%)も上回った。また、前月比の伸びは+0.6%と予想(+0.5%)を超過し、大幅な伸びとなった。CPIの3割と最大の割合を占める住居費(家賃等から構成)だけでなく、食品や医療の分野でも強い伸びが見られた。特に、食品は前月比+0.8%と2カ月連続で高い伸び率となり、前年同月比では+11.2%と著しく高い伸びとなった。 総じてネガティブな結果となったが、数値が高過ぎるが故に皮肉にもコアCPIのピークアウト感が台頭し、株式市場では売り方の買い戻しが主導する形で日米ともに大幅反発となっている。米国では、来週末21日にオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)を迎える。CPIの発表前から株価指数や個別株ともに記録的な水準にまでショート(売り持ち高)が積み上がっていたことを踏まえると、米物価指標イベントを通過したあく抜け感もあり、来週末にかけては、相場は短期的には戻りを試す展開が続きそうだ。 ただ、今晩の米株式市場ではJPモルガン・チェース、モルガンスタンレー、ウェルズ・ファーゴなどの金融大手の決算を控えている。景気後退懸念が強まるなか、貸倒引当金の積み増しなどの動向が注目され、内容次第では今後本格化する7-9月期決算への警戒感が強まりかねず、早ければ週明けから相場のリバウンドは小休止する可能性もあろう。 また、CPIについてはコア指数の方ばかりが注目されているが、石油輸出国機構(OPEC)プラス会合での日量200万バレル規模の減産が決まってから、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格(11月物)の上昇・高止まりが続いている。現在は、1バレル=90ドル前後での推移となっているが、市場では、90ドル台半ばまで上昇すれば、CPIが再び9.0%台に乗せる可能性があるとの指摘も聞かれている。エネルギーインフレは終わったものとされ、コア指数ばかり注目されるが、今後再びCPI総合の方が警戒要素として台頭する可能性があろう。 今後、冬季シーズンを迎えるに伴い、暖房使用などを通じてエネルギー需要は一段と高まってくる。欧州では、今冬を乗り越える分の備蓄は確保できたとされているが、今冬はラニーニャ現象に伴い厳冬になる可能性もあり、予断を許さない。想定以上の厳冬となり、備蓄消費が速く進めば、仮に今冬は乗り切れたとしても、ロシアへの経済制裁が続くなか来季への警戒感が高まり、年明け以降に再びエネルギー危機が到来する可能性もあろう。 日経平均は本日前引け時点で900円を超える大幅反発。10月半ば以降は株式市場が上昇しやすいという季節要因や前述した需給要因もあり、短期的には戻りを試す展開も考えられるが、上述した背景もあり、まだ安心するには早かろう。日経平均は累積売買代金が積み上がっている27500円当たりで戻り待ちの売りが膨らみやすい点などにも注意しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/14 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は4日続落、世界経済が抱える複合的懸念から相場低迷は長期化
日経平均は4日続落。136.58円安の26260.25円(出来高概算5億1170万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は28.34ドル安(−0.09%)と小反落。9月卸売物価指数(PPI)が予想を上回ったことで売りが先行も、債券相場が値ごろ感から反発して長期金利が低下に転じると安心感から買い戻しが強まり前日比プラス圏で推移する時間帯も見られた。ただ、9月開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨がタカ派な内容だったことや、9月消費者物価指数(CPI)の発表を控えた警戒感もあり、引けにかけて主要株価指数は再び下落した。ナスダック総合指数は−0.08%と6日続落。 方向感に欠ける動きだった米株式市場の動きを受けて日経平均は1.46円高と前日終値とほぼ同水準からスタート。その後、米CPIを前にした様子見ムードから積極的な売買が手控えられるなか、早々にマイナス圏に転じると、ダウ平均先物が上げ幅を縮めるのに伴い、前引けにかけて下げ幅を広げる展開となった。 個別では、JAL<9201>、ANA<9202>、JR東海<9022>、JR西<9021>、OLC<4661>、エイチ・アイ・エス<9603>、高島屋<8233>などのリオープン・インバウンド関連が軒並み下落。ソニーG<6758>、HOYA<7741>、ダイキン<6367>、SMC<6273>の値がさ株、三菱重<7011>、IHI<7013>、ダイフク<6383>の機械株、東京電力HD<9501>、東北電力<9506>などの電気・ガス関連なども総じて軟調。決算発表銘柄ではパルグループHD<2726>、ヒトコムHD<4433>、チヨダ<8185>が急落し、ビックカメラ<3048>も大幅安。 一方、東エレク<8035>、アドバンテ<6857>、ディスコ<6146>などの半導体関連が反発。三菱自<7211>、スズキ<7269>の自動車関連、7&I−HD<3382>、資生堂<4911>などディフェンシブ系の一角も堅調。決算が好感されたトレジャー・ファクトリー<3093>、ウイングアーク1st<4432>、コシダカHD<2157>、久光製薬<4530>は急伸となった。 セクターでは空運、サービス、電気・ガスが下落率上位となった一方、鉱業、水産・農林、ゴム製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体77%、対して値上がり銘柄は21%となっている。 前日に発表された米9月PPIは前年比+8.5%と予想(+8.4%)を上回った一方、食品・エネルギーを除いたコア指数は同+7.2%と予想(+7.3%)を下回った。コア指数の下振れを評価する声もあるが、前月比ではコア指数は+0.3%と予想(+0.2%)を上回っている。また、全体の伸びでは前月比は+0.4%と予想(+0.1%)を大幅に超過した。総じてあまり評価できる結果とはいえないだろう。 今晩発表予定の米9月CPIに対する警戒感はかねてから強かったが、上述のPPIの結果は一段とその懸念を強めるものといえる。S&P500指数の前日終値はオプション建玉が積み上がる3500−3600ptの間にあり、米国では最近、個別株のオプション売買も記録的なレベルで活発化しているという。CPIの結果を受けた相場の変動率の上昇には注意が必要だろう。 前日に公表された9月開催分のFOMC議事録では、多くの参加者がインフレ抑制を行い過ぎた場合のリスクに触れつつも、金融引き締めが過小だった場合のリスクの方が大きいとの見解でまとまっていることが判明し、タカ派な内容であったといえる。一方、個人的には総じてタカ派とはいえ、予想よりもハト派寄りの印象を抱いた。 9月に公表された政策金利見通し(ドット・チャート)はFF(フェデラルファンド)金利の中央値が今年末までにあと1.25pt引き上げられることを示唆していたが、この予測をしたのは政策メンバーのうち10人だった。9人は1.00pt以下の予測をしており、内実は拮抗していることが示唆された。これまで、米連邦準備制度理事会(FRB)の多くの高官から、市場の利下げ転換期待を諫めるような非常にタカ派な発言が相次いでいたことを踏まえると、やや想定外の印象を受けた。 しかし、今晩に米CPIの結果公表を控えていることもあるだろうが、前日の米株式市場も本日の東京市場もポジティブな反応はほとんど見せていない。FRBの積極的な利上げが行き過ぎて景気が必要以上に大きく後退してしまう等、政策ミスへの警戒感が足元強まっていた経緯を踏まえると、そうした懸念が緩和される内容だったという点で、相場が少しはポジティブに捉えてもおかしくはないはずと考えたが、実際にはそうなっていない。 つまるところ、市場は金融引き締めだけでない、世界経済が抱える複合的なリスクに警戒感を抱いているのだと考えられる。具体的には、ウクライナ情勢を巡ってのロシアによる核兵器の使用リスクや、一段の経済制裁などを通じたエネルギーインフレの再来、企業業績の想定以上の落ち込み、英国債市場を中心とした金融市場の混乱の連鎖などが挙げられるだろう。こうした、いったん生じると大きな波乱に繋がりかねないような不透明要因が今は同時的・複合的に生じている。これが、上述したように、金融引き締め懸念の後退を素直に好感しきれない一つの背景ともいえそうだ。 となると、今晩、米CPIが仮に予想を下振れて多少ポジティブな結果だったとしても、その先の株式市場の反発基調は依然として短命なものに終わらざるを得ないと考えられる。セリングクライマックス的な総悲観の動きも未だ出ていないことを踏まえれば、積極的な押し目買いに転じる時期はまだ到来していないといえよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/13 12:21
ランチタイムコメント
日経平均は続落、重要指標の発表控えてこう着感の強い展開
日経平均は続落。37.00円安の26364.25円(出来高概算5億7431万株)で前場の取引を終えている。 前日11日の米株式市場のNYダウは36.31ドル高(+0.12%)と反発。長期金利が高水準付近に近づき警戒感から売りが先行。その後、NY連銀の9月1年期待インフレ率の低下で大幅利上げ観測が緩和した。ただ、英中銀のベイリー総裁が市場機能回復のために実施していた緊急国債購入を計画通り今週で終了することを表明すると金融市場混乱への警戒感に伴う売りが再燃した。ナスダックは大幅に続落、引けにかけて売りが強まった米株市場を受けて、日経平均は前日比48.03円安の26353.22円と続落してスタート。その後は、前日終値付近でのもみ合い展開となった。 個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの一部の半導体関連株が大幅下落、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株も軟調に推移。ソニーG<6758>やメルカリ<4385>、任天堂<7974>などのグロース株、レノバ<9519>やHOYA<7741>なども下落した。ほか、業績予想の下方修正を発表したライフコーポレーション<8194>、上期業績予想の上方修正発表も材料出尽くし感から売られたコーエーテクモ<3635>などが急落、進和<7607>、リズム<7769>、リソー教育<4714>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 一方、引き続き水際対策の緩和を好感されてANA<9202>やJAL<9201>などの空運株が堅調に推移、JR東<9020>やJR東海<9022>なども上昇した。トヨタ自<7203>やファーストリテ<9983>などの大型株の一角も上昇。ほか、全国旅行支援やイベント割が好感されたオリエンタルランド<4661>、今期2ケタ増益・増配見通しを好感されたマニー<7730>、収益・配当予想上方修正で利回り妙味強まったディア・ライフ<3245>などが大幅に上昇した。オーバル<7727>、ネクシィーズグループ<4346>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、電気・ガスが下落率上位となった一方、空運、陸運、小売が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 本日の日経平均株価は、続落してスタートした後前日終値付近でのもみ合い展開となっている。米株式市場でダウ平均は小幅に上昇したものの、ナスダック総合指数が1%台、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が2%台の下落となったことが東京市場でハイテク株や半導体関連株の重しとなった。自律反発の買いから一時プラス圏に浮上するも、今晩米国で発表される9月の米卸売物価指数(PPI)や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月20-21日開催分)、明晩発表予定の9月の米消費者物価指数(CPI)などを見極めたいとして買いは続かなかった。そのほか、アジア市況や米株先物は軟調に推移している。 新興市場でも売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後下げ幅を縮小する動きを見せた。日経平均同様プラス圏に浮上する場面もあったが、米長期金利が3.9%台まで上昇したことが投資家心理を悪化させており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の重しに。重要指標の発表を前に買い進む動きも乏しく前引けにかけて下げ幅を拡げる展開となった。前引け時点で東証マザーズ指数が0.99%安、東証グロース市場Core指数が1.47%安。 さて、米9月雇用統計では結果的に失業率が想定外に大きく低下したことで依然として労働市場の逼迫が継続していることが確認された。本日発表される米9月PPIは市場予想が前年同月比7.3%増、前月比0.2%増となっている。また、多くのFRB高官から利下げ転換期待を打ち消すタカ派な発言が相次いでおり、PPIの結果もさることながらFOMC議事録の内容にも注目が集まる。 翌13日には米9月消費者物価指数(CPI)の結果が発表される。市場予想は、「総合」で前年同月比8.1%上昇と小幅に伸び鈍化を予測、「コア」では同6.5%上昇で前月と比較すると加速が見込まれている。前年同月比での伸びが前月の8.3%上昇を上回ると株式市場にとっては大きな問題になると、JPモルガン・チェースのトレーディングデスクは指摘している。つまり、インフレ率の鈍化が確認されなければ市場にとってはネガティブ材料となる。 景気後退入りリスクも忘れてはいけない。ブルームバーグでは、ドイツの金融サービス会社アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏は「米経済はより良い目的地に向かう浮き沈みの多い旅」の途中だとの認識を示したうえで、「完全に回避できたダメージの大きいリセッション(景気後退)の可能性が非常に高いのではないかと恐れている」と報じている。また、ヘッジファンド運営会社チューダー・インベストメントの創業者でCEOのポール・チューダー・ジョーンズ氏も「米国経済がリセッション(景気後退)入りすると想定している」と語っている。 さらに、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、米経済および世界経済が来年半ばまでにリセッションに陥る可能性が高いとの見方をCNBCとのインタビューで示したという。また、S&P500については「一段の下落余地があるかもしれない」とし、「さらに20%」下げる可能性があると語っているようだ。 来年以降、上述のように景気後退を受けてさらに「20%」下げる可能性があると、ナスダック100指数で8000pt台まで下落する可能性がある。前日の当欄で示唆したように様々なリスクが散見されるなか、現段階で筆者は年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えながら来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いて引き続き相場を注視している。後場の日経平均は、重要イベントを控えて様子見ムードが続くか。米株先物の動向を横目にこう着感が強まる展開を想定しておきたい。
<AK>
2022/10/12 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、米雇用統計の結果受けた米株安横目に投資家心理悪化
日経平均は大幅続落。635.14円安の26480.97円(出来高概算6億7611万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場のNYダウは630.15ドル安、10日は93.91ドル安と売り優勢の展開となった。9月雇用統計の強い結果が連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ継続を正当化するとの見方から金利が上昇したため売りが先行。10日はFRB高官のタカ派発言や主要企業の低調な四半期企業決算を嫌気して続落した。ナスダック総合指数も大幅に下落、連日の米株安を受けて、日経平均は前週末比358.99円安の26757.12円と続落してスタート。その後は、マイナス圏での軟調もみ合い展開となった。 個別では、東エレク<8035>やアドバンテ<6857>、SUMCO<3436>などの一部の半導体関連株の一角が大幅下落、SMC<6273>やファーストリテ<9983>などの大型株も軟調に推移。ソニーG<6758>やメルカリ<4385>、ダブル・スコープ<6619>などのグロース株も大幅安、キーエンス<6861>やHOYA<7741>、ローム<6963>なども下落した。ほか、今期大幅減益・減配見通しをネガティブ視されたマルマエ<6264>、6-8月期営業減益転換や通期最終益下方修正をマイナス視されたわらべやHD<2918>、第1四半期大幅減益決算を嫌気されたサカタのタネ<1377>などが急落、大有機化<4187>、大阪ソーダ<4046>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。 一方、半導体関連株ではレーザーテック<6920>が逆行高、水際対策の緩和を好感されてANA<9202>やJAL<9201>が堅調に推移、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株、JR東<9020>やJR西<9021>なども上昇した。期末配当予想の修正を発表したコジマ<7513>、2022年9月度月次情報を発表したシュッピン<3179>などが大幅に上昇した。日本瓦斯<8174>、ハイマックス<4299>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは水産・農林、電気機器、機械が下落率上位となった一方、海運、空運、鉄鋼が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の12%、対して値下がり銘柄は85%となっている。 本日の日経平均株価は、続落してスタートした後マイナス圏での軟調もみ合い展開となっている。国内が連休中だった7日、10日の2日間で米主要指数が大幅に下落したことが東京市場の重しとなった。中でも、2日間でナスダック総合指数が4.8%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が9.3%の下げとなり、ハイテク株や半導体関連株の株価を押し下げる要因となった。また、米雇用統計の結果に加えてウクライナ情勢の激化や北朝鮮による頻繁なミサイル発射など地政学リスクの高まりが投資家心理を悪化させた。そのほか、アジア市況はもみ合い、米株先物がやや軟調に推移している。 一方、新興市場でも売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後下げ幅を縮小する動きを見せた。前引けにかけて再度売り優勢の展開となったが日経平均と比較すると相対的に下げ幅は限定的となっている。米9月雇用統計で失業率が想定外に大きく低下したことで金融引き締め懸念が強まっているが、幕間つなぎの物色が値動きの軽い東証グロース市場の中小型株に向かっている可能性がある。前引け時点で東証マザーズ指数が0.96%安、東証グロース市場Core指数が1.28%安。 さて、7日に発表された米9月雇用統計では平均賃金の伸びが前年同月比5.0%増と予想(+5.1%)を下回り、前月から減速するなどポジティブな内容が確認された。ただ、前月比0.3%増で前月からやや伸びが鈍化したが依然として高い伸びを示した。また、雇用者数の伸びが26.3万人と予想(25.5万人)を上回り、失業率は3.5%と予想(3.7%)を下回った。 前週は、米9月雇用統計では弱い数値が出るのではないかという観測が出ていたことから足元での株式の買い戻しに繋がっていた。ただ、結果的に失業率が想定外に大きく低下したことで依然として労働市場の逼迫が継続していることが確認され、FRBによる金融引き締め懸念が強まり、7日以降の米株市場は弱気ムードが続いた。 前週の雇用統計発表前には、FRB高官のタカ派発言が相次ぎ、インフレ抑制のためには景気後退をも厭わないタカ派なスタンスが確認されていた。米シカゴ連銀のエバンス総裁は10日のシカゴでの講演で、利上げが行き過ぎるリスクを低減するために金融当局は安心して休止できる水準まで政策金利を早急に引き上げる必要があるとの認識を示している。直近でFRB高官のタカ派発言が相次いでいることから、明日12日に米9月卸売物価指数(PPI)と9月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表があるがこれらの内容には大きな注目が集まるだろう。もちろん13日の米9月消費者物価指数(CPI)も忘れてはいけない。 前週の楽観ムードから、雇用統計の結果やFRBのタカ派姿勢を受けて株式市場は弱気の見方が増えてきた。また、世界各国の経済状況、北朝鮮のミサイル発射やロシアウクライナの地政学リスクなど、依然として様々なリスクが存在している。前週の当欄で示唆したように、現段階で筆者は年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えながら、来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いて相場を注視している。後場の日経平均は、売り優勢の展開が継続して軟調な展開が続くか。明日の米9月PPIと9月FOMC議事録の公表を前に様子見ムードが強まる展開を想定しておきたい。
<AK>
2022/10/11 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反落、タカ派化を止めないFRB
日経平均は5日ぶり反落。161.54円安の27149.76円(出来高概算5億3999万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は346.93ドル安(-1.14%)と続落。連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げを懸念する売りが続き下落スタート。低調な雇用関連指標を受けて長期金利が低下すると一時上昇に転じたが、FRBの3人の高官が揃って利上げ継続の必要性を再主張すると警戒感から売りに押され再び下落。長期金利も上昇し、引けにかけて主要株価指数は下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数も-0.67%と続落。米国株安を受けて日経平均は連日の上昇の反動もあり335.38円安と27000円割れからスタート。ただ、時間外取引のナスダック100先物などが堅調に推移するなか、日経平均は寄り付き直後から下げ渋る展開となり、その後は緩やかに値戻しが進む展開、前場終盤には27198.91円(112.39円安)まで下げ幅を縮めた。 個別では、米AMDの業績下方修正や韓国サムスン電子の減益決算を受けてアドバンテスト<6857>やスクリン<7735>などの半導体関連が下落。ディスコ<6146>は速報値での出荷額がネガティブ視されたことも加わり大幅安。ハイテクではTDK<6762>、イビデン<4062>、新光電工<6967>が大きく下落。三菱重<7011>、IHI<7013>、住友鉱<5713>、日本製鉄<5401>などの市況関連株や、マツダ<7261>、日産自<7201>、三菱自<7211>の自動車関連なども総じて安い。7&I−HD<3382>は業績予想を上方修正も事前の観測報道から出尽くし感に繋がり大きく下落。住友化学<4005>は営業利益の下方修正で売り優勢。C&R<4763>は6-8月の営業減益が嫌気されて急落。 一方、前日にレーティング格上げがあったレーザーテック<6920>が大きく逆行高。メルカリ<4385>、サイボウズ<4776>、Sansan<4443>などグロース株には上昇しているものが散見される。ダブル・スコープ<6619>は連日の大幅高。JR東<9020>、JR東海<9022>の陸運やJAL<9201>、ANA<9202>の空運のほか、エイチ・アイ・エス<9603>、エアトリ<6191>、オープンドア<3926>などインバウンド関連が総じて高い。ローム<6963>は業績予想を上方修正し大幅に上昇。レーティング最上位でのカバレッジが観測されたエノモト<6928>、上半期決算が堅調だった乃村工藝社<9716>はそれぞれ急伸となった。 セクターでは保険、機械、電気・ガスを筆頭に全般売り優勢となり、上昇したのは空運、陸運の2業種に限られた。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の62%、対して値上がり銘柄は33%となっている。 本日の日経平均は今週に入って初めての下落となり、5日ぶりの反落。前日までの4日続伸で一気に1400円程上昇し、25日、75日、200日など主要な移動平均線が集中する水準まで戻したことからもテクニカル面で戻り一服が意識されやすいところ。今晩に米9月雇用統計の発表も控えていることを踏まえれば当然の反応といえ、ネガティブ視する必要はないだろう。むしろ、朝方300円以上下落して始まったにもかかわらず、寄り付き直後から急速に下げ渋った動きの方が評価され、かなり強い動きといえる。需給面では、これまでに発表済みの投資部門別売買動向や先物手口から、海外投資家による売り方の買い戻しはすでに一巡していると推察され、足元では新たにロング(買い持ち高)の積み上げを意識させるような動きとなっている。 今晩の米雇用統計の市場予想は非農業部門雇用者数が25.5−27.5万人(前月31.5万人)、失業率は3.7%(3.7%)、平均賃金は前年比+5.0%(+5.2%)、前月比+0.3%(+0.3%)となっている。予想並みの結果となれば、短期的なリバウンド相場が目先続く可能性があろう。 しかし、一昨日、米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が利下げ転換について「全くあり得ないと思う」などと言及したのに続き、昨日は、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「政策スタンスを実際に変更するハードルは非常に高い」と発言。さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も「来年の利下げは全く予想していない」と発言したという。特に印象的だったのはカシュカリ総裁のコメントで、同氏は「利上げを継続していくに伴い、世界経済に対してある程度の喪失や不具合が生じるのは十分想定しているが、それは資本主義の本質に過ぎない」とも発言した。改めてFRBはインフレ抑制のためには景気後退をも厭わないタカ派なスタンスが確認されたといえる。 来週は米国の消費者物価指数(CPI)のほか米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(9月20−21日開催)の公表もある。上述の今週に入ってからのFRB高官らの発言も踏まえると、株式市場のリバウンドは目先続くとみられるものの、息の短いものになりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/07 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は4日続伸、今後の株式市場に待ち構えるハードル
日経平均は4日続伸。249.84円高の27370.37円(出来高概算5億5227万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は42.45ドル安(-0.14%)と小反落。9月サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数が予想を上回ったことで大幅利上げ観測が再燃し、長期金利の上昇に伴い売りが先行。序盤はハイテクを中心に大幅下落となったが押し目買いから下げ渋ると一時上昇に転じる場面があった。ただ、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁の発言を受けて来年の利下げ期待が低下すると再び下落に転じ終了した。ナスダック総合指数も-0.24%と反落。前日に先物取引を通じて米国株の軟化を先取りしていたこともあり、日経平均は17.45円高と上昇スタート。寄り付き直後から買いが先行すると前場中ごろには27391.69円(271.16円高)まで上昇した。時間外取引のダウ平均先物が上昇するなか、その後も堅調推移が続き、この日の高値圏で前場を終えている。 個別では、東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>の半導体関連が買われ、レーザーテック<6920>はレーティング格上げも寄与。ソニーG<6758>、TDK<6762>、村田製<6981>、イビデン<4062>、ローム<6963>などハイテクも強い。石油輸出国機構(OPEC)プラス会合での予想以上の減産決定に伴う原油市況の上昇を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>の鉱業ほか、三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社も上昇。メルカリ<4385>、ラクス<3923>、マネーフォワード<3994>などのグロース株は大幅高。材料関連では、みずほ<8411>による楽天証券への出資報道を受けて楽天グループ<4755>が大きく上昇。薬王堂HD<7679>は決算が好感されて急伸、サンエー<2659>も決算を手掛かりに大幅高。パーク24<4666>とUアローズ<7606>はレーティング格上げを受けて大きく上昇となった。 一方、郵船<9101>、川崎汽船<9107>の海運、KDDI<9433>、ソフトバンク<9434>の通信、花王<4452>、資生堂<4911>、しまむら<8227>など内需系が軟調。第1四半期決算の低調な出足が嫌気されたウェザーニューズ<4825>は急落。同様に決算を材料にイオン<8267>、イオンファンタジー<4343>が大きく下落した。ほか、イーレックス<9517>、レノバ<9519>、東北電力<9506>など電気・ガス関連株で弱い動きがみられる。 セクターでは鉱業、電気機器、その他製品を筆頭に全般買い優勢となり、下落したのは電気・ガス、海運、食料品の3業種に限られた。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の83%、対して値下がり銘柄は14%となっている。 本日の日経平均は4日続伸で、今週に入ってからの上昇幅は1400円を超える。チャートでは、25日、200日の移動平均線を超え、75日線突破も視野に入っている。一方、日足一目均衡表では、厚い雲の下限を目前に控える状況でここからの上値抑制圧力は強いとみられる。ただ、ナスダック総合指数など米主要株価指数は6月に付けた安値とのダブルボトムの様相を呈しており、米国株の動き次第では、日経平均の雲上限突破への期待もありそうだ。 前日の米株式市場は日中の値幅が大きく乱高下した。米9月ISM非製造業景況指数が56.7と8月(56.9)から低下した一方、予想(56)は上回ったことで、先行き不透明感の強い中でもサービス需要が健全であることが示唆され、今週に入ってから俄かに高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換への期待が後退した。ただ、構成項目を見ると、雇用指数が8月の50.2から53に上昇して6カ月ぶりの高水準となり、労働需給逼迫の緩和が示唆されたほか、価格指数が8月の71.5から68.7へと5カ月連続で低下し、コスト上昇圧力の緩和も示唆された。内容としてはむしろインフレ圧力の減速が窺え、相場にはポジティブと考えられる。実際、次第に押し目買いが活発化し、序盤に2%を超えて下落していたナスダックなどは取引時間中に一時上昇に転じる場面もあった。 他方、今週に入ってからの市場の楽観ムードを冷ましたのは上述のISM非製造業景況指数よりも、前日の米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁によるタカ派発言だろう。同氏は「利上げペースを遅らせる壁は高い」との見解を主張。足元で利下げ転換期待が高まっていることに対しては「全くあり得ないと思う」と言及し、政策金利を景気抑制的な領域まで引き上げ、インフレ率が2%に落ち着くまで金利水準を維持する旨を説明した。市場の楽観論は再び早々に打ち砕かれた格好だ。 振り返ってみれば、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は以前、国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会合」でのパウエルFRB議長の講演を受けた株価下落に対して「満足」、「嬉しく思う」などと言及していた。FRBにとってインフレ抑制は最優先課題であり、いまやインフレ沈静化のためには景気後退も厭わない姿勢を示している。それ故、FRBにとってインフレ抑制の障害になり得る株高を通じた資産効果による消費拡大は避けるべき事態であり、今回のように9月FOMCで利下げ期待を諌めたばかりにも関わらず早々にFRBの主張に反する期待を再び抱きはじめた市場にお灸をすえる発言が出てきたのは自然なことだろう。 今週末の米9月雇用統計については弱い数値が出るのではないかという観測が出ており、これが足元での株式の買い戻しにも寄与していると推察されるが、仮に雇用統計が無風通過であっても、来週には米国の卸売物価指数(PPI)や消費者物価指数(CPI)の発表が控える。コアCPIで根強いインフレ圧力が確認されれば相場の再調整は時間の問題だろう。また、米9月PPIが発表される12日には9月FOMC議事録が公表される。政策金利見通しが大幅に引き上げられたタカ派な内容の会合であったことを踏まえると、議事録内容も警戒すべきであり、今後のスケジュールは株式市場にとって厳しいものになりそうだ。 後場の日経平均は日足一目均衡表の雲下限を手前に上昇一服とみておきたい。週末の雇用統計が近づくなか上昇余地は乏しくなってきていると考えられる。ここから足元で反発を強めているグロース株などに乗るのは危うく、本日は小休止となっている陸運や食料品といった内需系ディフェンシブ銘柄、インバウンド銘柄の押し目買いの方が無難だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/06 12:19
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、利下げ転換思惑先走るも修正は時間の問題か
日経平均は3日続伸。93.76円高の27085.97円(出来高概算6億1084万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でダウ平均は825.43ドル高(+2.79%)と大幅続伸。債務健全性への懐疑的見方から売られていた金融のクレディスイス株が持ち直したことで市場混乱の警戒感が後退。欧州からの流れを引き継いだ買いが先行して米株市場も上昇スタート。また、8月求人件数(JOLTS)の予想以上の大幅減少を受けて大幅利上げ継続観測が緩和。長期金利の軟化も手伝い、さらなる上昇に繋がった。ナスダック総合指数も+3.33%と大幅に続伸。日経平均は219.11円高と27000円を回復してスタート。ただ、連日の急伸の反動のほか、時間外取引のダウ平均先物が軟化したこともあり、寄り付き直後を高値に失速。その後は心理的な節目をサポートに底堅さも見られたが、こう着感の強い展開が続いた。 個別では、ソフトバンクG<9984>、信越化学<4063>、キーエンス<6861>、SMC<6273>、HOYA<7741>など主に値がさ株の上昇が目立った。ファーストリテ<9983>は9月既存店売上の堅調さも好感されたようだ。村田製<6981>、TDK<6762>、新光電工<6967>のハイテクが全般堅調。材料処では、旧村上ファンド系による大量保有が判明したアークランズ<9842>が急伸。9月既存店売上の好調が評価されたABCマート<2670>も大幅に上昇。目立った動きではないが、上半期決算の堅調さが確認されたウエルシアHD<3141>、半導体装置新工場の建設報道が伝わったキヤノン<7751>も買い優勢。 一方、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、スクリン<7735>、三井ハイテック<6966>などの半導体関連の一角が軟調。為替が対ドルでやや円高方向に振れていることでトヨタ自<7203>、三菱自<7211>なども弱含み。エスプール<2471>は6-8月期の営業減益が嫌気されて急落。イオンモール<8905>も決算が売り材料視された。良品計画<7453>は既存店売上の軟調継続を受けて下落した。 セクターでは精密機器、保険、繊維製品が上昇率上位となった一方、食料品、陸運、医薬品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の57%、対して値下がり銘柄は38%となっている。 本日の日経平均は27000円を回復してのスタートで3日続伸となっているものの、寄り付き直後を高値にその後は失速。チャートでは、26週移動平均線をはじめ、200日、75日、25日など主要移動平均線が集中する27200~27400円レンジ手前で失速しており、セオリー通りの綺麗上昇一服となっている。日足ベースの一目均衡表では、厚い雲のレンジ下限の手前でもあり、この水準は強力な上値抵抗帯として作用しそうだ。 前日は、豪中央銀行が0.25ptと、予想(0.5pt)に反して利上げ幅を縮小させたほか、上述の米8月求人件数(JOLTS)の想定上の減少もあり、俄かに再び台頭してきた米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げへの思惑がより強まる形となった。しかし、今週に入ってからも、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁などのFRB高官らは引き続きインフレ抑制のためにやり残していることが多くあること、今後も粘り強く金融引き締めを続けていく必要性などを主張している。ブレイナードFRB副議長が、金融引き締めが与えるリスクとして国境を超えた脆弱性の波及などに言及していることを、ハト派色と捉える向きもいるようだが、同氏は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以前から同様のことを既に発言しており、目新しさはない。 前日の当欄での指摘の繰り返しにはなるが、FRBはインフレ抑制のために景気減速を引き起こすと公言しており、それは9月FOMCで公表された経済成長見通しからも明らかだ。そこでは、今年だけでなく、来年も潜在成長率を大きく下回る成長を想定していることが分かっている。それ故、一昨日の米9月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数の低下などがFRBの利下げ転換への期待を高めるなどというロジックは冷静に考えれば非合理的である。むしろ、FRBはこうした景気減速を望んですらいるだろう。 7月半ばからの約1カ月に亘るベアマーケットラリー(弱気相場下での一時的な株価上昇)の際もそうだったが、市場が勝手にFRBの利下げ転換を期待したことが株価反発の背景であった。今回も同様で、市場の思惑が先走っているに過ぎない。同様の期待を抱いているのは、前回ラリー時と同じ層と思われ、多くの投資家は今回も一時的なラリーに過ぎないと考えているだろう。 たしかに、国際連合(UN)による各国中銀への利上げ停止要請や、物価指標だけでなく雇用指標でも軟化を示唆するデータが確認されたこと、また豪中銀による利上げ幅縮小などがあることは、前回ラリー時とは異なる点として挙げられる。しかし、これがFRBの利下げ転換に繋がるかと考えれば、やはり市場が勝手に先走っている感が否めない。むろん、投資家には様々な時間軸や目的を持った投資家がいるわけで、したがって、実際に利下げ転換に繋がるか否かは関係なく、一時的にこうした思惑に基づいた投資家の動きが市場を左右することは否定できない。しかし、長い目でみれば歪みはいつか是正される。今回も、今週末の米9月雇用統計、もしくは来週の米9月物価指数やFOMC議事録の公表あたりで修正を迫られる可能性が高いのではないだろうか。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/05 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続伸、偶発的な好材料重複で急伸も持続性に疑問符
日経平均は大幅続伸。624.96円高の26840.75円(出来高概算6億6429万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でダウ平均は765.38ドル高(+2.66%)と大幅反発。英国のトラス政権が最高所得税率の引き下げを撤回したため金融市場混乱の不安が緩和し買い戻しが先行。9月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数や8月建設支出が予想を下回ったことで連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース加速懸念が後退すると、長期金利低下に伴う買いが強まり一段高となった。ナスダック総合指数は+2.26%と大幅反発。米株高を引き継いで日経平均は437.7円高からスタート。時間外取引のナスダック100先物が1%を超えて推移するなか、前日からの買い戻しが続き寄り付きからじりじりと上値を伸ばす展開となり、11時前には26935.95円(720.16円高)まで上値を伸ばした。その後一時騰勢を弱める場面もあったが、前引けにかけては再び上げ幅を広げた。 個別では、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>の主力ハイテク株のほか、ファーストリテ<9983>、ダイキン<6367>、SMC<6273>の値がさ株が大幅続伸。原油など資源価格の高騰を受けてINPEX<1605>のほか、三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社株が軒並み高。伊藤忠<8001>は取引開始直前に業績・配当予想の増額修正及び自社株買いを発表しており急伸。日本製鉄<5401>、IHI<7013>、コマツ<6301>の市況関連株も高い。トヨタ自<7203>、SUBARU<7270>など自動車関連も上昇。メルカリ<4385>、ラクス<3923>などのグロ−ス株も強い。材料どころでは、第1四半期が好スタートとなったクスリのアオキ<3549>、国内証券による新規買い推奨が確認された円谷フィールズ<2767>が急伸。 一方、東証プライム市場の売買代金上位では川崎汽船<9107>とエーザイ<4523>が下落。第3四半期好決算も材料出尽くしに繋がったネクステージ<3186>は急落し、同業のIDOM<7599>も連れて大幅安。ダイセキS<1712>は第1四半期に続く業績下方修正が嫌気されて大幅安。しまむら<8227>は上期好決算で一時上昇も伸び悩む展開となった。 セクターでは卸売、鉱業、石油・石炭製品を筆頭に全面高。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の96%、対して値下がり銘柄は3%となっている。 本日の日経平均は大幅続伸で一気に節目の27000円を窺うかのような展開となっている。5日移動平均線が上向きに転じ、短期的には直近の急落の反動が継続する公算が大きい。一方、25日、75日、200日線が集中する27400円前後にはまだ距離があるほか、下向きの25日線が75日線を上から下抜くデッドクロスが目前となっている。まだ下落トレンド延長の構図は続いており、短期リバウンド後には再び戻り待ちの売りが待ち構えていそうだ。 10月に入ってからの株高についても、月替わりで9月末にかけての資金フローが反転したに過ぎないとの指摘が聞かれ、本格的な反発よりは自律反発と捉えている投資家の方が多い様子。それでも、日経平均が前日、6月20日安値25520.23円よりも上の位置からリバウンドした点は下値を切り上げている点からポジティブに捉えられる。 前日は、英国政府が最高所得税率引き下げを撤回したことで欧州の財政不安が和らぎ、グローバルに金利が低下。さらに、前日に発表された米9月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が50.9と、8月(52.8)及び市場予想(52.0)を下回り、好不況の境界値である50割れを窺う水準にまで低下。なかでも新規受注の項目が大幅に低下し、47.1と50を下回り景気後退懸念が強まったこともあり、9月下旬に一時4.0%を超えた米10年債利回りは3.63%にまで低下した。こうした悪い経済指標が米連邦準備制度理事会(FRB)の政策方針を転換させるのではとの俄かな期待も後押し材料になったようだ。 しかし、前日の株高は資金フローによるところが大きいとの見方が多いほか、FRBの政策転換については、先日の9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での公表結果で剥落したはず。直近も、複数のFRB高官から、時期尚早の利下げ転換を戒める発言が相次いでいる。そもそも、FRBはインフレ抑制のために景気を減速させると公言しているわけで、ISM製造業景況指数が50を下回ったところで本来政策転換への期待を高めるのはナンセンス。前日は、調査会社ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏やバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストであるマイケル・ハーネット氏らによる11月利上げ打ち止めに関する指摘が重なったこともあり、こうした利下げ転換期待が再び個人投資家を中心に高まったようであるが、これはやはり時期尚早な面を否めない。 他にも、国際連合(UN)の補助機関である国連貿易開発会議(UNCTAD)が、FRBや他国の中央銀行に利上げ停止を要請していると伝わっている。UNCTADはFRBをはじめとした各国の中央銀行が利上げを続ければ、世界経済が景気後退に陥り、その後長期停滞に追い込むリスクがあると警告しているという。こうした発言も政策転換期待を高めているのかもしれないが、実際にこれが政策転換に繋がる可能性は低いだろう。仮に、こうした事態を受けてFRBが政策スタンスの転換を臭わせるようなことがあれば、確かに株式市場は底打ちしたとの見方は強まるが、これまでの政策主張との整合性の観点から中央銀行としての信頼性に傷がつきそうで、市場が動揺する可能性もあろう。その場合、インフレ懸念が再燃する可能性もある。 月初の資金フロー変化に加えて、株価反発を誘う材料が重なっただけで、やはり本質的には株価下落トレンドの構図は変わっていないと考えられる。株高の持続性を確認するうえで今晩以降の米国市場の動きは重要であり、様子見ムードから後場は買いが一巡してこう着感の強い展開となりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/04 12:13