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注目トピックス 経済総合 FRBはテーパリング決定、金相場への影響は? サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY金についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『米連邦準備制度理事会(FRB)は3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、新型コロナウイルス禍からの景気回復と物価上昇が進む中、テーパリング(購入資産の段階的縮小)を全会一致で決定した。政策金利を0~0.25%とする事実上のゼロ金利政策は維持した』と伝えています。続けて、『FRBは20年6月から米国債800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドルの計1200億ドルを毎月購入しているが、この日の決定では、11月から毎月150億ドル(米国債100億ドル、MBS50億ドル)ずつ購入額を減らし、22年6月に購入量をゼロにする計画。ただ、経済状況が変化した場合は「購入ペースを調整する用意がある」とした。償還期限を迎えた債権は再投資し、FRBの保有資産は現行水準を当面維持する。量的緩和の縮小開始と来年半ばの終了については、市場参加者の想定通り』と解説しています。また、『市場は、現在の高インフレへの警戒から、利上げ時期の前倒しについての示唆があると予想していたが、パウエル議長は記者会見で「今は利上げする時ではない」と繰り返した。雇用最大化の目標を達成していないためで、今回のFOMCでも利上げについては検討しなかったことを認めた』と言及、『予想外にハト派的な会合となり、東京時間の電子取引では、NY金は反発している』と伝えています。一方で、『5日に発表される10月米雇用統計は、強い内容が予想されている。市場予想は非農業部門就業者数が前月比45万人増、失業率が4.7%。ともに前月よりも改善が見込まれており、安全資産としての側面を持つ金には圧迫材料となりそうだ』と述べています。米雇用統計がについて、『予想に沿った良好な数字となれば、市場のタカ派的な見方が強まり、NY金は目先の下値支持線である1750ドルを割り込む可能性もあろう。ただ、その場合でも、インフレ上昇への警戒が支援要因となり、1700ドルは維持されよう』と考察しています。陳さんは、『雇用統計が良好であればドル買いが強まると予想され、JPX金は円安を支援要因に底堅く推移する』と予想しています。こうしたことから、NY金について、『1750ドルを軸としたレンジで推移しよう。JPXは6400~6700円のレンジを想定する』と述べています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の11月4日付「FRBはテーパリング決定、金相場への影響は?」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2021/11/05 17:43 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は0.19%安でスタート、重要会議を前に神経質 5日の上海総合指数は売り先行。前日比0.19%安の3520.20ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時2分現在、0.26%安の3517.86ptで推移している。中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が来週に開かれる予定となり、神経質な展開となっている。また、国内での新型コロナウイルス感染の再拡大に伴う経済回復ペースの鈍化懸念も引き続き警戒されている。 <AN> 2021/11/05 11:07 注目トピックス 経済総合 前日に決算を発表したSUMCOのコール型eワラントが前日比3倍の大幅上昇(5日10:10時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価下落が目立つ日本郵船<9101>コール138回 12月 9,500円を逆張り、旭化成<3407>コール34回 11月 1,150円を逆張り、太陽誘電<6976>コール26回 12月 8,800円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはシャープ<6753>コール183回 11月 1,650円、富士フイルムホールディングス<4901>プット95回 月 8,900円、SUMCO<3436>コール239回 月 2,250円、SUMCOプット172回 月 2,250円などが見られる。上昇率上位はSUMCOコール241回 11月 2,950円(前日比3倍)、SUMCOコール240回 11月 2,600円(前日比3倍)、ソフトバンク<9434>プット44回 11月 1,450円(前日比3倍)、コナミホールディングス<9766>コール67回 11月 6,900円(前日比2.7倍)、テルモ<4543>プット35回 11月 4,600円(前日比2.3倍)などとなっている。(eワラント証券) <FA> 2021/11/05 10:51 注目トピックス 経済総合 NYの視点:米10月雇用統計:順調な回復も労働市場のスラックは存続か、利上げはまだ先 連邦準備制度理事会(FRB)は11月連邦公開市場委員会(FOMC)で経済が一段とFRB目標に近づいたため市場の予想通り、金利を据え置き、同時に11月から量的緩和(QE)縮小開始する計画を発表した。ただ、利上げには労働市場の回復が必要で今はその時期ではないとした。利上げのタイミングを探るためにも今後の労働市場動向に注目。米国の労働省はワシントンで5日に最新10月雇用統計を発表する。エコノミストの平均予想によると、失業率は9月4.8%から4.7%へ低下する見込み。非農業部門雇用者数は45万人増と、8月、9月に予想を大幅に下回ったのち伸びが拡大する公算。先行指標の中で雇用統計と相関関係が最も強いとされる民間の雇用者数を示すADP雇用統計の10月分は前月比+57.1万人と、伸びは9月から予想以上に拡大。6月来で最大となった。また製造業の雇用も引き続き改善基調。ISM非製造業景況指数の雇用は9月から低下したものの拡大と縮小の境目である50は4カ月連続で上回った。週次失業保険申請件数も減少傾向を継続し、パンデミック以前の低水準となるなど、先行指標は順調な雇用の増加を示唆している。一方で、パンデミックの影響がくすぶり、さらに団塊世代の退職の動きが加速し、労働参加者の減少傾向が続いている。求人件数は増加しているものの失業者総数も依然500万人あまりと、労働市場のスラックは存続。利上げの条件であるFRBの最大雇用目標の達成には時間がかかる可能性がある。■10月雇用統計の先行指標・ADP雇用統計:+57.1万人(予想:+40.0万人、8月::+52.3万人←+56.8万人)・ISM製造業景況指数雇用:52.0(9月50.2)・ISM非製造業景況指数雇用:51.6(53.0)・NY連銀製造業景況指数:雇用(現状):+17.1(9月+20.5、6カ月平均+16.2)週平均就業時間:+15.3(+24.3、6カ月平均+16.1)6か月先雇用:+37.1(40.3、6カ月平均39.8)週平均就業時間:+10.2(8.7、6カ月平均+8.6)・フィラデルフィア連銀製造業景況指数雇用(現状):30.7(26.3、6カ月平均28.1)週平均就業時間:27.8(29.3、25.9)6か月先雇用:37.5(15.4、6か月平均22.5)週平均就業時間:27.2(15.4、6か月平均22.5)・消費者信頼感指数(%)雇用十分:55.6(56.5、26.7)不十分:33.8(30.5、53.7)困難:10.6(13.0、19.6)6カ月後増加:25.4(21.3、32.0)減少:18.3(19.9、19.8)不変:56.3(58.8、48.2)所得増加:18.7(16.9、17.5)減少:11.3(11.4、14.2)不変:70.0(71.7、68.3)・失業保険申請件数件数 前週比 4週平均 継続受給者数10/30/21|   269,000|   -14,000|  284,750|   n/a10/23/21|   283,000|    -8,000|  299,750| 2,105,00010/16/21|   291,000|    -5,000|  320,000| 2,239,00010/09/21|   296,000|   -33,000|  335,000| 2,480,00010/02/21|   329,000|   -35,000|  344,750| 2,603,00009/25/21|   364,000|    13,000|  340,500| 2,727,00009/18/21|   351,000|    16,000|  335,750| 2,811,00009/11/21|   335,000|    23,000|  336,500| 2,820,00009/04/21|   312,000|   -33,000|  340,000| 2,715,000■市場エコノミスト予想失業率:4.7%(9月4.8%)非農業部門雇用者数:前月比+45万人(+19.4万人)民間部門雇用者数:前月比+42万人(+31,7万人)平均時給:予想:前月比+0.4%、前年比+4.9%(+0.6%、+4.6%) <FA> 2021/11/05 08:15 注目トピックス 経済総合 ショウ・ザ・フラッグ−中露海上演習が意味するもの(2)【実業之日本フォーラム】 本稿は、「ショウ・ザ・フラッグ−中露海上演習が意味するもの(1)」【実業之日本フォーラム】の続編となる。中露海上連合による日本周回は、我が国が教訓とすべき事項がある。第1は、太平洋方面における防空能力の見直しである。令和3年度防衛白書によれば、防衛省は日本周辺の海空域を常に監視しているとされている。海域の監視には、常続的監視と特別監視の2種類がある。常続的監視は、常に艦艇及び航空機を同じ海域で航行又は飛行させることである。現在、艦艇は南西諸島周辺に、哨戒機は北海道周辺、日本海及び東シナ海において警戒監視を実施している。特別監視は、所要に応じて護衛艦、哨戒機を派遣し監視を行うものである。空域の監視は、全国28か所のレーダーサイトで行い、領空に近づく可能性のある敵味方不明機にはスクランブルで対応している。冷戦の終結、中国軍の近代化及び活動の活発化を受け、南西方面の防衛が重視される傾向があり、沖縄周辺には、常に護衛艦及び哨戒機が監視を行い、航空自衛隊のレーダーサイトも4か所(沖縄島、沖永良部島、久米島及び石垣島)に設けられている。しかしながら、今回中露合同部隊が通過した小笠原諸島には固定式警戒監視レーダーが存在せず、艦艇及び哨戒機による常続的警戒監視も行われていない。硫黄島にある滑走路を利用し、海上自衛隊の哨戒機、空自戦闘機や米海軍艦載機の訓練が行われているが、UH-60J回転翼救難機以外、兵力は常駐していない。太平洋方面海空域の警戒監視及び防空に関し、大きな欠陥があると言えよう。今年5月に、航空自衛隊が小笠原の父島に移動式防空レーダーを設置する計画が明らかにされた。また、今年10月に海上自衛隊「いずも」で米海兵隊のF-35Bが離発着艦し、F-35B運用能力の検証が行われた。広大な海域に島嶼が点在する小笠原列島の地勢を考慮すると、レーダーサイトや航空基地を分散設置するのは効率的ではない。移動式防空レーダー及び艦載機の組み合わせが最適であり、ネットワークを含め、海空の連携を強化する必要がある。次の教訓は警戒監視体制の見直しである。前述した特別監視は、日本周辺海域において中露等の兵力が行動する際に、一定の距離で追尾するものである。その目的は、各種情報収集であるが、忘れてはならないのは、相手の不法行動を牽制する意味合いがあることである。10月18日に10隻の艦艇群が津軽海峡を通過した際に海上自衛隊が派出した兵力は、P-3Cのほかに函館を母港とする掃海艇2隻であった。満載排水量600トンの掃海艇2隻で1万トンを超えるレンハイ級駆逐艦を含む10隻の艦艇の行動を威圧できるであろうか。掃海艇の任務は機雷掃海であり、武器も機雷処分用の20ミリ機銃しか保有していない。特別監視において、相手と同等の兵力である必要はないが、少なくとも一矢を報いるだけの装備を持った兵力の派出が肝要であろう。中露共同部隊の指揮官も、掃海艇を見て、海上自衛隊の兵力や対応能力は大したことがないと判断したことであろう。冷戦が終結し、中国海空軍の活動活発化を受けて、自衛隊は、南西重視の体制にシフトした。さらには、海上自衛隊の兵力は世界各地に展開しており、能力的に伸びきった状況にあると言えよう。少子高齢化社会の日本において隊員を確保することは容易ではない。装備武器の省人化や、更に一歩進んで無人化を図り、対応できる艦艇数を増加させることが喫緊の課題であり、そのためには防衛費の相当程度の増額が不可避であろう。次に法的な側面である。日本は、昭和52年に制定した「領海及び接続水域に関する法律」の付則において、宗谷海峡、津軽海峡、大隅海峡、対馬海峡東及び西水道の5か所を特定海域に指定、海峡内の領海を3海里としている。日本政府が特定海域を制定した背景には、これらの海域が、領海を12海里とすることにより、国連海洋法条約が定める「国際航行に使用される海峡」とされ、海峡全域にわたり、上空飛行や航行の自由を認める「通過通行権」を認めざる得なくなることがある。特定海域とすることで、中央部に公海部分は残るものの、領海への主権は厳格に主張できるという解釈である。この付則には「当分の間」という表現が付けられている。安全保障上の観点から見ると、特定海域という考え方は見直しの時期に来ていると言える。海峡の公海部分を自由に通過されるよりも、「通過通行権」を認める方の利点が多い。沿岸国は「通過通行権」を妨げることはできないが、航行安全を理由に航路帯を指定することができる。今回の中露海上巡航に関し、10月26日の記者会見で岸防衛大臣は「示威行動」という認識は示したものの、中露当局に抗議してはいない。海峡の公海部分を通過したことから、非難する根拠がないというのが実情と考えられる。特定海域を廃止することにより、例えば今回のような10隻もの海軍艦艇の津軽や大隅海峡の通過を、これを通過通行権で禁止する軍事的威嚇として遺憾の意を表明することができるであろう。中国は、最も狭い場所でも約130kmある台湾海峡を米英、最近ではカナダの海軍艦艇が通過した際、台湾海峡の平和と安定を損なう挑発行為と批判している。中露海軍艦艇による津軽、対馬及び大隅海峡の通過は、台湾海峡の通過を超える挑発行為であり、速やかに批判できる体制を整えるべきである。中露共同演習の中国側指揮官バイ少将は、今回の訓練の教訓として、「海軍の艦隊の行動が及ぼす政治的、外交的役割に対する理解が進み、あらゆるレベルの指揮官が戦略的リテラシーを向上させることに役立った」と述べている。中国海軍の活動が活発化していることは幾度となく指摘されているが、その目的が、世界各地において存在感を示す、いわゆる「ショウ・ザ・フラッグ」であることを明確に述べたものと解釈できる。現時点で中露海軍間のインターオペラビィティーは日米にはるかに及ばない。また、歴史的、地理的に相互不信を抱える両国が日米のような強固な同盟関係を構築できるかは不透明である。しかしながら、アメリカと中露の対立が激化するにつれ、「敵の敵は味方」という観点から両国関係が深化する可能性があり、引き続き注意深く見ていく必要がある。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2021/11/04 16:56 注目トピックス 経済総合 ショウ・ザ・フラッグ−中露海上演習が意味するもの(1)【実業之日本フォーラム】 2021年10月18日、防衛省は中国艦艇5隻とロシア艦艇5隻の計10隻が津軽海峡を東航し、日本海から太平洋に抜けたことを公表した。その後、これらの艦艇は太平洋を南下し、小笠原諸島を通過、大隅海峡を経由し東シナ海に入った。10月23日にそれぞれの国のグループに分離、ロシア艦艇は対馬海峡経由ウラジオストックに、中国艦艇のレンハイ級駆逐艦は10月24日に青島(中国北海艦隊基地)に帰投したと中国解放軍報が報じている。津軽海峡から大隅海峡までの距離は概ね1,300海里(約2,400km)ほどであり、平均速力は11ノット(時速約20km)と推定される。途中2回ヘリコプターの発着艦訓練を行ったことが確認されているが、平均速力を見る限り特別な訓練や動きはなかったものと考えられる。中露海軍は10月14日からウラジオストック沖にて海上演習「海上連合2021」を実施しており、今回の合同巡航は同共同訓練の一環と見られる。中国の5隻は、レンハイ級駆逐艦、ルーヤンIII級駆逐艦それぞれ1隻、ジャンカイII級フリゲート2隻そしてフチ級補給艦である。ロシアは、ウダロイI級駆逐艦、ステレグシチー級フリゲートがそれぞれ2隻とマーシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦1隻である。レンハイ級駆逐艦及びステレグシチー級フリゲートが他国との共同訓練に参加するのは初めてであり、中露の合同部隊が揃って津軽及び大隅の両海峡を通過するのも初めであった。合同部隊の艦艇が装備する攻撃武器を見た場合、射程200kmの長射程対空ミサイルや射程500kmを超えると見られる対艦(地)ミサイルを保有する艦艇が含まれており、ウダロイI級の駆逐艦が対潜ミサイル、対潜ヘリコプター等を保有していることから、バランスの取れた編成と言える。保有する長距離ミサイルの射程を生かすためには、衛星通信を含む指揮通信能力や情報共有のためのネットワークの構築が不可欠であり、今回の共同巡航でその能力を検証した可能性がある。今年に入って日本周辺海域では、日米を中心とする海上共同演習が頻繁に行われている。ARC21(日米豪仏)、マラバール2021(日米印豪)、Pacific Crown21(日米英蘭)、そして10月2日、3日の二日間だけではあるが、日米英蘭加新の空母等4隻を含む17隻の大規模海上訓練が実施された。ARC21では日米仏の陸上部隊が、東シナ海に所在する艦艇から九州に上陸する訓練が実施された。さらには、今までは米艦艇のみであった台湾海峡の通過をイギリス及びカナダの艦艇が行っており、中国は不快感を示している。今回の中露海軍艦艇による共同巡航は明らかに日米を中心とする海上連合に対抗するものであったと見られ、津軽海峡と大隅海峡を通峡したことは、台湾海峡通過の意趣返しと考えられる。それでは、今回の共同巡航が与えた影響について、軍事的視点から見てみたい。2021年10月26日付の解放軍報は、本訓練の中国側指揮官のバイ少将のコメントを紹介している。その内容は、本訓練は両国間の戦略的相互信頼の高さと強固な伝統的友好関係を具現化するものとした上で、新型コロナのため、いつも設置される共同司令部や調整所は設けられず、現場の状況に合わせ柔軟に行われた判断及び指示に従うといった実戦的訓練が実施できたと述べている。二国間以上の国が海上共同訓練を実施する場合、最もクリティカルとなるのが通信である。母国から遠く離れた洋上を行動する場合、通信衛星を介した通話やデータの交換が行われる。中国及びロシアはそれぞれ独自の通信衛星を運用している。送受信器や暗号も当然別であろう。このため、洋上における中露艦艇同士の通信は、同一周波数を用いた無線通信を使用せざるを得ない。無線通信も当然暗号をかける必要があるが、暗号は高度な秘密に属し、その共有は信頼関係だけでは実施できない。日米間には「軍事情報保護協定」のみならず各種協定が結ばれており、衛星を含め通信の共有がなされている。アメリカは、それぞれの国と各種協定を結んでおり、多国間訓練の場合は、アメリカの艦艇が中継する形で通信網を構築できる。例えばアメリカはインドと「軍事情報保護協定」、「補給品等の交換協定」に次いで、2018年に通信に関する協定、COMCASA(Communications Compatibility and Security Agreement)を締結している。中ロ間でこのような協定が締結されているか不明であるが、いくつか撮影されている合同部隊のそれぞれの艦艇の距離は、米国を中心とする多国間共同訓練における距離よりも明らかに広い。中国側指揮官が述べているような「実戦的訓練」というよりは、通信が届かない事による衝突等のおそれを避けるために、安全面を重視し、一定の距離をとらざるを得なかったのではないかと推定できる。次に長期間外洋を行動する場合に重要な事は、洋上における燃料の補給である。今回中国の補給艦が同行しており、実戦的訓練であれば当然洋上補給を実施する。日米間では、それこそ頻繁に相手国の補給艦と洋上補給を実施している。11月2日に解放軍報が掲載した共同巡航の写真集では、中国の補給艦と艦艇の洋上補給の様子が掲載されている。しかしながら、最も広報効果が高いと思われる、中国補給艦とロシア艦艇間の洋上補給の写真は含まれていない。中ロ間のインターオペラビィティ(相互運用性)は日米に比べると、はるかに及ばないと言える。最後にヘリコプターの飛行が少ないことが指摘できる。今回10隻中8隻がヘリコプターの搭載が可能である。今回ヘリコプターを何機搭載していたか不明であるが、防衛省が公表したところによれば、わずか2回、延べ3機しか確認されていない。「実戦的訓練」であれば、部隊周辺の警戒監視は必須である。情勢にもよるが、日米共同訓練の場合、潜水艦からの脅威が高いと判断したならば、常時1~2機は警戒監視のために飛行させている。ヘリコプターの運用要領は日米と大きく異なり、必ずしも効果的な運用とは言えないのではないかと推定できる。「ショウ・ザ・フラッグ−中露海上演習が意味するもの(2)【実業之日本フォーラム】」に続くサンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2021/11/04 16:53 注目トピックス 経済総合 台湾有事をサイバー安全保障の観点から見る(第1回)(初代陸上自衛隊システム防護隊長 伊東 寛)【実業之日本フォーラム】 最近、日本周辺がきな臭い。その中でも特に台湾周辺が騒がしい。中国は10月1日の国慶節以降4日間で、延べ149機という例を見ない数の航空機を台湾防空識別圏(ADIZ)に進入させている。デービッドソン前米太平洋軍司令官は、今後6年以内に中国は台湾に軍事侵攻する可能性が高いと警告している。あってはならないことについて考えておくのがインテリジェンスであり、国防というものであろう。しかも、台湾有事の可能性は次第に高まりつつある。今回は、この台湾有事をサイバー安全保障の観点から前編後編の2回にわけ考えてみたい。前編ではその概要を述べ、後編で、より具体的な台湾有事におけるサイバー戦の様相を考えてみることにする。戦い方は常に変化する。最近ではハイブリッド戦と言われる、言わば古くて新しい、明確に国際法違反を問われないギリギリのグレーな戦い方が行われている。これが一般的な理解である。ハイブリッド戦は、これまで別々であった色々なものを混合して戦うということだが、実際には論者により定義に幅がある。我が国では、「いわゆるハイブリッド戦は、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いた手法が、ハイブリッド戦に該当すると考えています。(防衛白書令和2年版より)」とある。つまり、武力で他国の領土を奪い取るのではなく、軍事を含むあらゆる手段を講じて現状を変更してしまう手法がハイブリット戦であり、2014年のロシアによるクリミア半島の編入がその代表例である。中国の台湾侵攻は、一般に論じられているような海空軍を大規模に擁したあたかも第2次世界大戦のような戦闘にはならないのではないかと私は思う。また、中国は孫子の国である。戦わずして勝つことを最上とし、それを追求する。とすれば、中国の台湾侵攻は、非軍事が初期の手段となり、その主たる手段としてサイバー攻撃が利用されるのではないだろうか。もちろん、このような場合でも、最後は武装した兵力が地面に足を下ろさねば、自分のものにはならないので、そこは避けて通れない点である。その意味において、中国の台湾進攻はすでに開始されている。「一つの中国」の原則を振りかざすことによる国際的枠組みから台湾を締め出す試みや、台湾周辺における活発な軍事活動はその一環である。今後、中国は台湾における施政権の行使という最終目的に向けて圧力を強めてくるであろう。その方法として、「ハイブリット戦」を仕掛けてくることは確実である。基本的には武力行使なしに台湾を奪取できれば中国にとって最善であろう。しかしながら、香港の「一国二制度」が、力ずくで有名無実とされた現状を見た台湾の人々が、そう簡単に中国の施政権を認めるとは思えない。武力を行使した場合、台湾軍が激しく抵抗することは確実であり、米軍の介入もあり得る。中国としては、ロシアのクリミア半島奪取のように、米軍に対応のいとまや口実を与えない行動を追求するであろう。実際の武力衝突に至るまでには、各種の段階があり、それぞれ何らかの兆候が考えられる。次回はサイバー安全保障分野におけるそれらの兆候やその影響についてより具体的な話をしたい。伊東 寛(工学博士)1980年慶応義塾大学大学院(修士課程)修了。同年陸上自衛隊入隊。技術、情報及びシステム関係の指揮官・幕僚等を歴任。陸自初のサイバー戦部隊であるシステム防護隊の初代隊長を務めた。2007年自衛隊退官後、官民のセキュリティー企業・組織で勤務。2016年から2年間、経済産業省大臣官房サイバー・セキュリティ—・情報化審議官も務めた。主な著書に「第5の戦場」、「サイバー戦の脅威」、「サイバー戦争論」その他、共著多数写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2021/11/04 11:24 注目トピックス 経済総合 メキシコペソ円は、上値の重い展開が続きそう サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、メキシコペソ円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、メキシコペソ円について、『今週のメキシコペソ円は、経済回復の遅れと米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリング決定を背景に上値の重い展開が続きそうだ』と述べています。次に、『29日に発表されたメキシコの2021年7~9月期実質国内総生産(GDP)は、前年同期比で4.8%%増だった。2四半期連続でプラス成長だったが、新型コロナウイルスの感染再拡大や自動車生産の縮小により、20年7~9月期の落ち込み(−8.7%)を補うことはできなかった』と伝え、続けて、『世界的な半導体不足の影響でメキシコの7~9月の自動車生産台数は前年同期比27%減となった。メキシコはコロナの感染拡大による落ち込みから回復しつつあったが、21年7~9月期は第3波の到来で再び一時的に経済活動を制限した』と解説しています。また、『3日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、テーパリング(購入資産の段階的縮小)が決定され、年内にも開始される見込み。5日には10月米雇用統計が発表される。前回を大幅に上回る良好な数字が予想されており、ドル買いが進みそうで、メキシコペソは対ドルで上値の重い展開になりそうだ』と考察しています。一方で、『インフレ加速を背景に、メキシコ中銀は11月11日の会合で利上げする可能性が高い。そのため、下値では買いが入るかもしれない』と述べています。こうしたことから、陳さんはメキシコペソ円の今週のレンジについて、『5.40円~5.60円』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の11月2日付「メキシコペソ円今週の予想(11月1日)」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2021/11/04 10:03 注目トピックス 経済総合 NYの視点:FOMCドビッシュテーパー、来年の利上げ観測は根強い 連邦準備制度理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り政策金利(フェデラルファンドFF金利の誘導目標)を0.00-0.25%に据え置くことを決定した。同時に、経済がFRBの責務目標に一段と近づいたためパンデミック対策として実施している資産購入策の規模を11月末から月150億ドル削減すると発表。11月の購入額は米国債を700億ドル、MBS350億ドルに修正する。12月以降も米国債の購入を100億ドル、MBSを50億ドル減らしていく計画で、来年半ばに購入を終了する計画。ただ、声明では、インフレに関して、引き続き一過性の要因が物価を引き上げているとの見解を維持した。供給混乱が緩和すれば、インフレは弱まるとの予想で、来年の第2、3四半期にはインフレは弱まるとの見解。また、利上げを巡り、会合後の会見でパウエル議長は労働市場の回復が必要で、「今は利上げの時期ではない」と指摘。また、利上げに向けて「FRBは辛抱強くなれる」とした。さらに、今回の会合の焦点が、資産購入策の縮小であり、利上げではなかったと強調し、利上げに関しては依然慎重な姿勢が明らかになった。また、資産購入を縮小したとしても、FRBの金融政策が緩和的で引き続き経済に強い支援を供給することになると表明。FRBのハト派的なテーパリングで米金利先物市場での早期利上げ観測が若干後退したものの、2022年の12月までの2回の利上げを織り込んでいる。ドルの上昇も継続か。■FOMC●政策金利:据え置き●QE:11月末から資産購入額を150ドル削減:米国債700億ドル、MBS150億ドル、12月はさらに米国債100億ドル、MBS50億ドル削減へ「テーパリングでも、FRBの金融政策は引き続き経済に強い支援を供給する」「金融緩和姿勢を維持すると予想」●利上げ「利上げに関し、FRBは辛抱強くなれる」「今は利上げの時期ではない。労働市場の回復が必要」「会合の焦点は資産購入の縮小、利上げではない」「経済成長は第4四半期に強まる、今年のGDPは強い成長に」●経済「経済は目標に向けて前進した」「データによると、経済は引き続き強まっている」「経済成長は第4四半期に強まる、今年のGDPは強い成長に」●サプライチェーンの混乱「サプライチェーンの混乱は想定以上に長引いている」●インフレ「インフレは一過性の要因により上昇」「供給混乱が緩和すれば、インフレは弱まると予想」「来年の第2、3四半期にはインフレは弱まるだろう」●リスク「FOMCは引き続きリスクに注意」「見通しリスクは存続」 <FA> 2021/11/04 07:35 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は売り先行もプラス圏回復、買い戻しが優勢 3日の上海総合指数は売り先行。前日比0.13%安の3501.10ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時48分現在、0.07%高の3508.09ptで推移している。上海総合指数が約2カ月ぶりの安値水準を更新しており、値ごろ感から下値を拾う動きが活発になっている。また、米株が高値更新していることも支援材料。一方、新型コロナウイルス感染の再拡大に伴う行動制限の強化が引き続き嫌気されている。 <AN> 2021/11/03 10:52 注目トピックス 経済総合 欧州で火花を散らす中台外交【実業之日本フォーラム】 2021年10月30日、イタリアの首都ローマでG20サミット(主要20カ国首脳会議)が開催され、気候変動対策などについて意見が交わされた。11月1日と2日は、国連の気候変動対策会議「COP26」がイギリスのグラスゴーで開催される。各国首脳が一堂に会する重要会議に先駆け、中国と台湾が東欧、南欧で外交攻勢を繰り広げている。台湾外交部(外務省)は、「呉ジャオ燮(ウー・ジャオシエ)外交部長が10月26日にスロバキアとチェコを、10月28日にはベルギーを訪問する」と発表した。蔡英文政権は、自由と民主主義という共通の価値観を有する欧州諸国との関係強化に力を入れている。10月26日、呉外交部長は、スロバキアの政策研究機関が主催するシンポジウムで「台湾とスロバキアは自由や人権と言った価値観を共有しており、貿易、投資、産業面で協力を強化すべきだ」と演説した。また同日、呉外交部長は、プラハで、昨年訪台したミロシュ・ビストルチル上院議長と会談し、チェコ科学アカデミーにおいて、「民主主義体制は世界中で脅かされており、民主主義国は互いに団結し、助け合わなければならない」と演説した。10月29日、呉外交部長は、英仏やリトアニア、スウェーデンなどの対中強硬派議員の会合に参加し、民主主義陣営に南シナ海での航行の自由作戦の頻繁な実施を要請し、中国の拡張主義けん制の重要性を訴えた。また、呉外交部長はローマで開かれた対中政策に関する列国議会連盟(IPAC:Inter-Parliamentary Alliance on China 、日米英独仏加など自由主義陣営の19カ国の議員が参加)にオンラインで参加し、「台湾は、民主主義を巡る戦いの最前線にいる。台湾の民主主義が破壊されてならない」と主張した。呉外交部長に先立ち、台湾国家発展委員会のキョー明キン(キョー・メイキン)主任委員らの経済視察団が、10月21日からリトアニアと東欧を訪問し、10月25日にはチェコと経済、貿易分野での協力に向けた覚書を締結している。一方、中国外務省は、「王毅国務委員兼外相が10月27日から30日にかけてギリシャ、セルビア、アルバニア、イタリアを訪問する」、と発表した。王毅外相は、10月28日、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領と会談し、台湾問題に関し「内政不干渉」の原則を守ることで一致した。また、同大統領は、「中国は最も頼もしく偉大な友人だ。中国の一帯一路の関連プロジェクトをしっかり実行する」と約束した。王毅外相も「セルビアとは鉄のような友情があり、お互いに内政不干渉の原則を堅持する」と協調した。10月29日、王毅外相は、アルバニアでイリール・メタ大統領と会談し、「アルバニア決議(1971年10月25日、第26回国連総会第2758号決議:国連における中華人民共和国の合法的権利の回復決議)を正義の勝利」と称賛し、メタ大統領も「中国を支持したことを誇に思う」と両国のゆるぎない絆を強調した。また、中国外務省は、同日、「王毅外相がイタリアのローマで、ルイージ・ディ・マイオ外相と会談し、両国は、互いの核心的利益に関する問題において相互理解、相互信頼を増進することを確認した。中国は台湾問題を核心的利益と位置づけている」と発表した。イタリアは、これまで、先進7カ国で唯一「一帯一路構想」への参画を表明し、中国と親密な外交関係を維持している。中国外務省は、10月26日、台湾の一連の欧州での動きに対し、「真の目的は台湾独立の主張をあおりたて、中国と各国との関係を崩すことだ」と非難し、さらに「中国は関係国が台湾独立分子を容認することに断固反対する」、と不快感を露にした。東欧、南欧諸国の多くは、中国の巨大経済圏「一帯一路構想」による投資拡大や経済発展を望んだが、期待した成果が得られず、さらに、中国の香港や新疆ウイグル自治区での人権問題などへの対応で中国と距離を置き、台湾との交流を深める国も出てきている。中国政府は、2021年8月、台湾がリトアニアに事実上の大使館となる代表機関を設置する動きを受けて、リトアニアに対し、駐中国大使召還を要求している。10月30日、中国外務省は、「G20サミットに習氏の特別代表としてローマを訪れた王毅外相が、台湾の未来は大陸との統一実現以外に前途はない、国際法上、台湾は中国の一部分であると述べた」と発表した。欧米各国の台湾支援が強まることをけん制した形だ。習政権は、台湾の欧州における外交攻勢に強い警戒感を抱いており、今後どのような対応をとるのか、どのように圧力をかけてくるか注視する必要があるだろう。サンタフェ総研上席研究員 將司 覚防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2021/11/02 16:12 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は売り先行もプラス圏回復、買い戻しが優勢 2日の上海総合指数は売り先行。前日比0.03%安の3543.38ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時50分現在、0.24%高の3552.97ptで推移している。最近の下落で値ごろ感が強まり、買い戻しが優勢となっている。また、海外株高なども支援材料。ほかに、経済指標の悪化が景気対策への期待を高めている。一方、国内での新型コロナウイルス感染の再拡大などが引き続き不安材料となっている。 <AN> 2021/11/02 11:01 注目トピックス 経済総合 TDKのコール型eワラントが前日比5倍超えの大幅上昇(2日10:02時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つ三井物産<8031>コール199回 12月 3,150円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはAGC<5201>コール120回 12月 6,700円、日経平均 プラス5倍トラッカー79回 月 27,000円、日本郵船<9101>コール138回 月 9,500円、日本郵船コール137回 月 10,300円などが見られる。上昇率上位はTDK<6762>コール199回 11月 4,833円(前日比5.2倍)、TDKコール198回 11月 4,333円(前日比3.1倍)、京セラ<6971>コール158回 11月 7,800円(前日比2.5倍)、TDKコール202回 12月 5,350円(前日比2倍)、TDKコール201回 12月 4,750円(+90.6%)などとなっている。(eワラント証券) <FA> 2021/11/02 10:27 注目トピックス 経済総合 コラム【アナリスト夜話】総選挙通過で注目したい次のテーマ(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那) 衆議院選挙が終了し、自民党が事前予想よりは強く、絶対安定多数を単独で確保したことで、市場はひとまず好感しそうです。短期的には、補正予算の規模が焦点でしょう。コロナ禍はやや落ち着いているものの、来年の参議院選挙を考えると大規模なものになりそうです。しかし、本当に注目すべきは、中長期的な戦略、特に、やはりグリーンとデジタルだと思います。この二つ、世界から見た日本の立ち位置は大きく異なります。環境分野についてはまだ世界のルールもカオスで、今後日本が一定のイニシャティブを発揮できると思われます。31日、総選挙の裏で、静かに国連の気候変動に関する会議「COP26」が開幕しました。今回は途上国の排出削減支援に関する取り決めが主眼です。一部報道では、岸田首相も出席し、独自案を提示するとされています。一方、デジタルは、日本は先進国比の遅れを取り戻す段階です。例えば、自宅学習にICTを使っている生徒の比率はOECD中でダントツに低い(一人一台PC配布前のデータ)など、やるべきことが満載です。国際舞台での活躍というよりも、国内のリープフロッグ的成長と、それを可能にする変革ができるかどうかが鍵でしょう。しかし、昨日の選挙会場をみると不安もよぎります。今どき、立ったまま用紙に文字を記入させるのは、選挙か役所か銀行の窓口くらいではと思います。因みに、投票用紙が妙に滑らかだと思ったら、実はプラスチック・フィルムだと知りました。今の制度を前提としたイノベーションはすごいと思いますが、そこではなくて、記号式や電子投票で効率性を高められないのかと思います。選挙は数年に一度のことですが、他にも日々効率化・高度化できるタネはたくさんあります。ポジティブに考えれば、遅れがあるだけ伸びしろもある国です。新たな政策のスタートに期待しましょう。マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那(出所:11/1配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋) <FA> 2021/11/02 09:22 注目トピックス 経済総合 NYの視点:米10月ISM製造業:受注16カ月来の低水準、価格は上昇、スタグフレーションリスクを示唆 米供給管理協会(ISM)が発表した10月ISM製造業景況指数は60.8と、9月61.1から低下したものの予想は上回った。活動と縮小の境目となる50は16カ月連続で上回り活動の拡大を示した。しかし、主要項目の新規受注は昨年6月来の60割れと16カ月ぶり低水準に落ち込んだ。一方で、支払い価格は85.7と、9月81.2から予想以上に上昇。7月来の高水準となり、スタグフレーションリスクが示された。入荷遅延が75.6に急伸したことが全体指数を押し上げたが、サプライチェーンの混乱というマイナス材料が要因となっている。製造業の雇用は52.0と、9月50.2に続き2カ月連続で活動の拡大を示す50を上回り7月来の高水準となったことは安心感に繋がる。サプライチェーンの混乱やインフレ懸念から、生産予想は12カ月ぶりの低水準に落ち込み、見通しも暗い。■10月ISM製造業景況指数:60.8(9月61.1)仕入れ価格:85.7(71.2)生産:59.3(59.4)新規受注:59.8(66.7)受注残:63.6(64.8)入荷遅延:75.6(73.4)在庫:57.0(55.6)顧客在庫:31.7(31.7)雇用:52.0(50.2)輸出:54.6(53.4)輸入:49.1(54.9)マークイットが発表した10月製造業PMI改定値は58.4と、速報値59.2から予想外に下方修正され年初来最低となった。企業は引き続き一部のコストを商品価格に反映させている。マークイットのエコノミストはサプライチェーンの混乱が引き続き製造業に影響を与えていると指摘。部品不足で生産の伸びは7月来で最低となった。ほぼ半分の企業が供給不足で生産減を報告している。10分の1は人材不足。さらに、4分の1が需要の鈍化に言及した。需要鈍化の要因として、価格の高騰で注文が差し控えられる、または、他の部品不足で生産が進まないことなどが挙げられている。生産の伸びはパンデミック依然の長期平均を下回った。一方で、需要はまだ、潜在的な水準を上回っている。従って、製品価格の上昇に繋がりインフレ圧力が続き、速やかに弱まるとは考えにくいと、同氏は警告している。 <FA> 2021/11/02 07:44 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は0.48%安でスタート、景況感の悪化を嫌気 1日の上海総合指数は売り先行。前日比0.48%安の3530.39ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時45分現在、0.31%安の3536.18ptで推移している。景況感の悪化が嫌気されている。9月の製造業購買担当者景気指数(PMI、政府版)は49.2となり、前月の49.6と予想の49.7を下回った。また、新型コロナウイルス感染の拡大に伴う一連の行動制限も引き続き足かせとなっている。 <AN> 2021/11/01 10:52 注目トピックス 経済総合 JTを対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(1日10:21時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つAGC<5201>コール120回 11月 6,700円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 12月 1.0米ドル、日経平均 プラス5倍トラッカー78回 月 25,000円、野村日経225レバレッジETF プラス5倍トラッカー31回 月 12,000円、村田製作所<6981>コール214回 月 9,100円などが見られる。上昇率上位はJT<2914>コール198回 11月 2,450円(+89.3%)、野村ホールディングス<8604>プット294回 11月 525円(+83.6%)、野村ホールディングスプット293回 11月 450円(+62.5%)、JTコール202回 12月 2,900円(+59.1%)、JTコール197回 11月 2,150円(+58.9%)などとなっている。(eワラント証券) <FA> 2021/11/01 10:40 注目トピックス 経済総合 NYの視点【来週の注目イベント】:FOMC、BOE、米10月雇用統計、10月ISM製造業・非製造業景況指数、VA州知事選 今週は連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)を開催するほか、英国中銀やオーストラリア準備銀が金融政策を開催する予定で結果に注目が集まる。FRBはこの会合で、政策金利を過去最低水準で維持すると同時に、経済が一段と著しくFRBの目標に近づいたため昨年パンデミック対策として実施した資産購入策の縮小開始を発表する公算でドルを支援する可能性がある。ただ、FRBが資産購入縮小を開始したとしても、市場はほぼ織り込み済みと見られ、テーパータントラムは回避することが可能と見られる。さらに、来年半ばまでは、購入が続く見通し。米国の経済指標では10月雇用統計や全米の製造業やサービス業活動動向を示す10月ISM製造業・非製造業景況指数に注目。雇用統計は8月、9月に予想外に低調な伸びにとどまったのち、増加ペースが加速する見込み。新型コロナウイルスの変異株流行に収束する兆候が見られ、経済活動再開が一段と進み企業は強い需要に対応するため、新規雇用を拡大している。一方で、ワクチン義務化やコロナへの警戒感もくすぶり労働市場参加者が減少していることは米国労働市場にとりマイナス材料になる。FRBの労働市場の見通しも不透明となり、2022年の利上げの可能性を弱める。サプライチェーンの混乱は2022年まで続く公算で、インフレもしばらく高止まりする可能性が出てきた。金利先物市場はFRBが資産購入縮小を終了したのち、速やかに最初の利上げに踏み切ることを織り込みつつある。来年6月の利上げを7割織り込んだ。しかし、政策委員は依然来年の利上げ確率は5割と見ている。11月のFOMCでは最新予測が出されないため、声明やパウエル議長の会見で、来年の利上げの可能性を探る。一方、英中銀は、ベイリー総裁がインフレ抑制に向け行動する必要があると指摘したため利上げ観測が強まった。今回の会合で政策金利を過去最低の0.1%から0.25%まで政策金利を引き上げると見られている。万が一、利上げが見送られた場合はポンド売りに拍車がかかることになる。そのほかG20サミットがイタリアローマで開催されるほか、日本は総選挙が実施される。さらに米国では、ニュージャージー州、バージニア州で知事選、ニューヨーク、ボストン、バッファロー、アトランタ、シアトル、ミネアポリスで市長選が実施予定で、来年の中間選挙に向けた動向を探る上でも結果に注目される。■今週の主な注目イベント●COP2610月31日—11月12日●米国1日:9月建設支出、10月ISM製造業景況指数、10月製造業PMI2日:ニュージャージー州、バージニア州で知事選、ニューヨーク、ボストン、バッファロー、アトランタ、シアトル、ミネアポリスでは市長選が実施FOMC(3日まで)3日:10月ADP雇用統計、10月ISM非製造業景況指数、9月製造業受注、9月耐久財受注、10月サービス業PMI、パウエルFRB議長会見4日:週次新規失業保険申請件数、7-9月期非農業部門労働生産性、9月貿易収支5日:10月雇用統計●英国1日:PMI4日:英中銀金融政策決定会合●欧州1日:ユーロ圏、仏、独PMI3日:ユーロ圏サービスPMI、失業率4日:ECBラガルド総裁あいさつ5日:ユーロ圏小売売上高、仏、独、鉱工業生産●中国1日:財新製造業PMI●豪州2日:オーストラリア準備銀金融政策会合●カナダ5日:失業率 <FA> 2021/11/01 07:36 注目トピックス 経済総合 欧米の注目経済指標:米FOMC会合で量的緩和策縮小を正式決定か 11月1日-5日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。■1日(月)午後11時発表予定○(米)10月ISM製造業景況指数-予想は60.3参考となる9月実績は市場予想を上回る61.1。17業種が活動拡大を報告している。新規受注指数は66.7と、前月と同水準。在庫指数は上昇。10月については、新規受注が高水準を維持する見込みであること、在庫指数も下げ渋る可能性があることら、9月実績と大きな差はないと予想される。■3日(水)午後7時発表予定○(欧)9月ユーロ圏失業率-8月実績は7.5%参考となる8月実績は7.5%。イタリアとポルトガルでは失業者数が減少しており、他のユーロ圏諸国も似たような傾向となっている。失業者数は2019年の水準を下回っており、若年層の失業率は多少改善している。これらの点を考慮すると、9月の失業率は8月実績と同水準か下回る可能性がある。■3日(水)日本時間4日午前3時結果発表○(米)連邦公開市場委員会(FOMC)会合-予想は量的緩和策の段階的縮小を正式決定米連邦準備制度理事会(FRB)が10月13日公表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月開催分)によると、多くの参加者が想定より高いインフレが続くことに懸念を示しており、量的緩和の縮小に着手できるとの考えが示されていた。今回の会合で12月半ばまでに量的緩和の段階的縮小に着手することが正式に決定される可能性がある。完了時期については、現時点で来年半ば頃になると予想される。■5日(金)午後9時30分発表予定○(米)10月雇用統計-予想は非農業部門雇用者数は前月比+40万人、失業率は4.7%非農業部門雇用者数の伸びは2カ月連続で予想を大幅に下回っているが、10月については、9月実績を上回る雇用増となる可能性が高いとみられる。民間部門の雇用者数は9月実績(+31.7万人)をやや上回る増加が見込まれている。製造業部門の雇用者数は9月実績の+2.6万人をやや上回る可能性がある。○その他の主な経済指標の発表予定・1日(月):(中)10月財新製造業PMI・2日(火):(豪)豪準備銀行政策金利発表・3日(水):(NZ)7-9月期失業率、(中)10月財新サービス業PMI、(米)10月ADP雇用統計・4日(木):(欧)9月ユーロ圏生産者物価指数、(英)英中央銀行金融政策発表・5日(金)(独)9月鉱工業生産、(欧)9月ユーロ圏小売売上高 <FA> 2021/10/30 14:17 注目トピックス 経済総合 ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(3)【実業之日本フォーラム】 本稿は、「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(2)」の続きである。プライバシーと利便性の交換白井:ダークウェブのサイトで違法薬物などの売買などにビットコインが使われる事例が多発したため、ビットコインのイメージが著しく毀損させられましたが、実際には完全なトレーサビリティを有しており、完全な誤解からくる批判のようです。当時は技術的な知識が普及しておらず、送金や所持の匿名性を利用した犯罪であったことから、反対派の人たちには格好の攻撃のチャンスとなりました。しかし、イギリスの財務省が「現金よりマネーロンダリングのリスクは低い」というレポートを発表している通り、ビットコインを利用した違法売買サイトや犯罪資金のマネーロンダリングは摘発されていることが多いようです。CBDCの送金データや個人資産情報に、テック企業が保有する位置情報やチャットの内容、消費行動などの個人情報や公的機関のデジタルデータと重ね合わせれば、国民一人ひとりの全てをリアルタイムで捕捉することが可能となります。これらは、マネーロンダリングのような不正行為を防ぐ目的を達成できるものの、超監視社会を作ってしまう可能性もあります。また、国民から、これらの監視という権力を保持する大手企業や政府へ、パワーシフトが起こるということでもあります。さらに、悪意を持った組織がコントロールする事態ともなれば、ターゲットになる個人の財産や生活は破壊されることになりかねません。あちこちにカメラがある中国は、監視社会に一直線です。乗車アプリもSNSも、基本的には政府が関与していく。社会的な生活とお金のデータが結びつけば、完全にプライバシーがなくなってしまいます。自分よりも政府のほうが自分を知っているという社会になるかもしれませんし、将来、自分が何をするのかさえも予測されてしまう。中国のような国にCBDCをつくれば、そういう社会になってしまうのは必然ではないでしょうか。橋本:実際にそういう社会になるのかは、政府の運用指針などに依拠するでしょう。中国はそういうモチベーションが強い国ですので、ご指摘の通りかもしれません。日本は少し違う気もします。文化的な違いや、技術をうまく使いこなす能力の違いなどがありますから。ただ、お金の流れがわかることで、あらゆる企業や組織は、そのデータを使って自らの事業をより効率化することはできるでしょう。そういったお金の流れのデータは、ある程度、適切に加工された上で、販売、配付され、ますます有効活用されていくと思います。アンチマネーロンダリングのためにお金の流れを捕捉したいという流れがある一方、プライバシーが大事という流れも並行しています。これは特にユーロ圏で強いです。従来よりもプライバシー性が非常に強いデータをどのように扱っていくかは、そういう世界にもう少し近づいていく過程で、ますます議論されていくでしょう。白井:ユーザー側から見た場合、非公開ブロックチェーンの管理者が信用できるかどうか、仮に信用できなくともそれを超える利便性があるかどうか、この2点が大きいほど普及が加速していく可能性が高いと思います。ブロックチェーンはビットコインでつくられた技術でしたが、そもそものビットコインの構想は、金融緩和が続く法定通貨へのアンチテーゼでした。数十年にわたる、止め処もない金融緩和で、世界のマネーは膨張し続けています。このような状況に対して、一定数の人々は、貨幣が複式簿記誕生以前の施政者の権力維持の道具に戻ってしまったのではないかと懸念しています。ビットコイン黎明期には、完全なトレーサビリティを保持しつつ、管理者不在で発行量が決まっているビットコインの理念は、そのような人々によって「デジタルゴールド」と称され、熱狂的に受け入れられ、自国通貨を信用できない国々での利用を中心に広まりました。金融緩和の道具である法定通貨にブロックチェーンが利用されつつあり、管理社会にも使いやすい技術というのは、非常に皮肉な気もします。当初のビットコイン原理主義者のような人たちは、現状をどのように見ているのでしょうか。橋本:ビットコインの一番重要な点は、価値が備わっている、すなわち十分な時価総額と十分な流動性が備わっているということです。歴史的に見ても、これだけの時価総額、流動性が備わり、いったんその地位を確立してしまうと、簡単には廃れません。金(ゴールド)のようなものに近い意味合いを持っています。ビットコインを持っている人たちは、原理主義者であるかどうかにかかわらず、金(ゴールド)を持っている感覚の人が多いと思います。デジタル人民元、もしくはCBDCが広がった世界でも、金(ゴールド)の価値が損なわれることはないでしょう。同様にビットコインの価値も損なわれないだろうと考える人は非常に多いと思います。これだけの市場ができてしまいましたので、ビットコインの取引が完全に禁止されるという世界は恐らく訪れないでしょう。技術的にも難しいです。そうであれば、お金の流れがほぼ透明化し、ほとんどのお金がデジタルでやりとりされる中で、プライバシーの観点からも安全に取引できる数少ないアセットとしてビットコインが生き残るというのは想像しやすい未来ではないでしょうか。ビットコインはプライバシーが欠如したブロックチェーンです。先ほどお話した通り、お金の流れを追いやすいという性質があります。高いプライバシー性を持つモネロ(XMR)、ジーキャッシュ(ZEC)なども作られましたが、どういうわけか広まらない。結局、価値がついているのは、誰もが知っているビットコインなのです。ある種の自由、ある種のプライバシー、相当程度の自由が保証されたというビットコインの性質を、多くの人が気に入り、盛り上げてきました。ツイッター、PayPalでも使っていこうといったように、ユースケースもますます増えています。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2021/10/29 16:41 注目トピックス 経済総合 ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(2)【実業之日本フォーラム】 本稿は、「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(1)」の続きである。「電子マネー」と「デジタルマネー」の違い白井:ビットコインなどの非中央集権型のコインは「パブリック型」ブロックチェーンと呼ばれ、不特定多数の参加者によって管理されている一方、デジタル人民元などのCBDCは、「コンソーシアム型」のブロックチェーンという分類になり、システムはある程度分散されているものの、政府が決めた特定の参加者によって管理されている中央集権的であるところが、これらの大きな違いになりますね。つまるところ、コンソーシアム型は利用者が管理者を信用できるかどうかにかかっています。また、LINE Payのような現在の電子マネーとデジタル人民元のようなブロックチェーンによるデジタルマネーを比較いただきましたが、ユーザーの立場からすると、スマホの中での送金や管理といった部分では使い勝手はほとんど変わらないように思います。技術以外の部分では、何が違うのでしょうか。橋本:まず、法律的な区分が違います。電子マネー、例えばLINE Payであれば、LINE社が、帳簿上で日本円を預かり、それを担保、保証とすることで、デジタル円、LINE Payというお金を実現しています。LINE Payで使われているお金の裏側には、日本政府が発行した円が存在しています。政府は国債を発行したり、日本円を刷ったりして、紙の紙幣や銀行の残高が増えるような、法定通貨の流通量をコントロールするオペレーションをしています。それは、日銀ネットや全銀ネットの上にある、ある種の電子的なお金です。仮に、これがブロックチェーンを使ったデジタル円になったとしても、ユーザー体験としては、LINE Payと変わらない感覚でしょう。政府のオフィシャルなアプリケーションがスマホに入っており、それで友達に送ったり、支払いに使ったりすることができる。ユーザー体験としては何も変わりません。ただ、それはLINE Payのように同等の金額の円が担保されて発行されているわけではなく、政府の信用そのものによって直接的にデジタルマネーが発行されているというだけです。一般ユーザーには、LINE Payとの違いを感じることができないでしょう。白井:LINE Payなどのサーバで管理していたような今までの電子的な貨幣は、専用のアプリやウォレットでなければやり取りできません。しかし、ブロックチェーンによるトークン形式では、ウォレットの仕様を開放すれば、それに基づいて無数の参加者がアプリを開発することができるため、世界のあらゆるところで貨幣の受け取りができるようになります。橋本:そうですね。スマートフォンに円が入っている場合、例えば、LINE Payであれば、LINE社のサーバ上に、誰々のアカウントに幾ら分のLINE Payの円が入っているという形で管理されます。一方、ブロックチェーンでデジタル円を実現した場合、政府のサーバ上に私の残高が直接保管されているわけではなく、スマートフォンの中に私しか知らない秘密鍵があり、その秘密鍵を使うことでその円を動かすことができます。秘密鍵で署名をした人が、その秘密鍵をベースにした個人のアドレス、ビットコインのアドレスに近いものですが、そのアドレスに送ることができます。受け取るだけであれば、単純にその会社のアドレスを書いておけば、アプリから誰でも簡単にそこに送ることができます。アドレスを提示するだけでいいのです。アプリケーションを作る側としては、日本政府のサーバの規格に合わせる必要はなく、暗号学的な規格に合わせて実装すればほとんどのアプリケーションに入れることが可能です。残高を管理する方法が、どこかのサーバ上にある帳簿ではなく、鍵を持っているということがその資産の証明になることで、サードパーティー(第三者)のアプリケーションを増やすことも簡単です。その反面、どこかに私の資産が記帳されているのであれば、銀行送金で間違えた場合にも返ってくる。振り込み詐欺だったら返ってこないかもしれませんが。管理されているのであれば、犯罪目的の利用は抑えることもできる。しかし、秘密鍵で管理するのであれば、全て自己責任となります。鍵を持っていることが私の資産であるという証明ですので、裏を返すと、この鍵をほかの人に渡してしまえば、私の資産は全部なくなってしまう。バックアップを取らずにこのスマートフォンをなくしたら、私の資産はなくなってしまいます。LINE Payであれば、メールアドレスとパスワードさえ覚えていれば、あるいはパスワードを忘れてしまった場合でも、別のスマートフォンやパソコンにLINEのアプリを再ダウンロードすれば、私の資産を再現することができます。しかし、秘密鍵の世界では、いったんなくしてしまったらどうしようもありません。これが基本的な性質です。監視社会は到来するのか白井:1960、1970年代ぐらいから始まった第3次産業革命時代の中央集権型であるマネーの電子化と、これから始まる第4次産業革命でのブロックチェーンによって創られるデジタル金融の世界とは、大きく変わるように思います。デジタル人民元のブロックチェーン化は、マネーの世界にどのような影響を与えるのでしょうか。橋本:第一に、お金の流れが大きく変わります。従来であれば、給料でもらった円は銀行に預けられ、銀行はそれをいろいろなビジネスに貸し出し、それで世の中が回っていく。そのお金もさらにまた銀行に預けられ、貸し出されていく。経済学の教科書に載っている言葉で言えば信用創造です。例えば100兆円のお金が出回っていたとすると、それが貸し出されたり、預けられたりと繰り返され、500兆円、1000兆円といった規模に拡大してお金が回っていく。これが銀行を中心とした従来の金融の仕組みにおけるお金の流れで、現在の経済学の教科書に書かれていることです。しかし、仮に、個人が銀行ではなく、自分のスマートフォン上のウォレットでお金を管理することになると、これまで想定されていた循環が果たして継続するのかわかりません。デジタル化だけではなく、お金を通じた総合的なつながりが変わることが、長期的に経済にどのような影響を与えるのかは未知数です。日銀の検討レポートにもそういった懸念、問題意識が見て取れます。第二に、お金の流れが一元的に管理される世界になります。いま、お金の流れをトレースしようとしても、お店で支払った紙幣がどう流れていくのか、誰も捕捉することはできません。だからこそ、いわゆるマネーロンダリングはアタッシェケースに入った大量の一万円札で行われるのでしょう。しかし、全てのお金のやりとりがウォレットを通じた電子的なやりとりで一元化されると、お金の流れは相当程度クリアになります。実装次第ではありますが、その世界では不透明なお金の流れが非常に発生しづらくなるでしょうし、発生したとしても、たどっていけばある程度捕捉することができます。現金にあったプライバシー、匿名性は、どんどん失われることになるでしょう。まさにこれは、デジタル人民元が意図していることのひとつでしょう。中国政府の課題として、国民のお金が海外のよくわからない口座に流れ、海外に現金で、あるいは金(ゴールド)で持ち出されてしまうことがあります。金(ゴールド)にして持ち出すのは避けられないとしても、これまで捕捉できなかったお金の流れは全て一元的に把握することができます。政府の体制が管理社会に近いものであれば、デジタル化やCBDCはまさに好都合でしょう。白井:特定のものを除けば、ビットコインのような非中央集権型のパブリック型ブロックチェーンはソースコードが公開されており、基本的に丸見えでしょう。自然発生的にさまざまなアプリケーションが開発されて、利便性が飛躍的に高まると同時に、世界中の人々が安心して自由に取引ができます。他方、ソースコードは公開せずにウォレットの仕様だけを公開するというパターンであれば、特定の管理者のみがシステムを管理しながら、コインの普及を進めることができるため、中央集権的な組織が発行する場合は親和性が高いでしょう。しかし、このような非公開のブロックチェーンは、外部から中身を判断できないというデメリットがあるため、「何かが仕込まれている可能性」が否定できません。自分の端末に入れて動作させることは敬遠されやすい面があります。将来的に各国政府がつくるCBDCやブロックチェーンは、システムの柔軟性保持、セキュリティ上の観点からも、ソースコードは公開されないようにも思います。全世界の政府の力がかなり強くなり、監視社会に進んでいくというイメージなのでしょうか。橋本:根底にあるイメージはそのようなものです。実は、ビットコインのトレースはほぼ可能です。1回でもビットコインを送ったことがある相手がビットコインを使えば、何時何分何秒に、どこにどれだけ送ったというお金の流れは、概ね見えてしまいます。ビットコイン的なブロックチェーンをそのまま使うという発想は、あまりにもプライバシーが欠如した世界です。他方、アンチマネーロンダリングのために、お金の流れをある程度捕捉したいという流れがあります。その塩梅を取ろうとすると、政府で特殊な権限を持っている人だけがすべてのお金の流れを捕捉することができるという実装が、基本的な流れではないでしょうか。「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(3)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2021/10/29 16:39 注目トピックス 経済総合 ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(1)【実業之日本フォーラム】 ゲスト橋本欣典(チューリンガム株式会社 COO)東京大学大学院経済学研究科金融システム専攻。日本取引所グループでは日本証券クリアリング機構にてクオンツとしてIRS、CDS、上場デリバティブ、現物株の証拠金アルゴリズムの高度化に従事。その後bitFlyerの経営戦略部にて、デリバティブ商品設計、仮想通貨AML 体制構築などに関わったのち、BUIDLにてリサーチャーとして交換業向けコンサルティング、アドレストラッキングツールのアルゴリズムを開発。また、Scaling Bitcoin 2019 にて論文を発表。聞き手白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)白井:暗号資産やブロックチェーンに興味をお持ちの方であれば、橋本欣典さんのお名前は知らなくても、「カナゴールド」というハンドルネームは皆さんよくご存じでしょう。ブロックチェーン企業「チューリンガム」の創業者のひとりで、COOをつとめている橋本さんは、ブロックチェーン界隈ではつとに有名な論客です。2014年に東京大学大学院経済学研究科金融システム専攻を修了後、大学院を出られたあと新卒として株式会社日本証券クリアリング機構に入社され、1年目にして金利スワップ取引のモデリングを構築されたそうです。その後、暗号資産交換業大手のビットフライヤーを経て、ブロックチェーン企業のチューリンガムを創業されています。金融工学とプログラミング、ブロックチェーンに深い知識をお持ちのうえ、金融市場の獰猛さを熟知されている稀有な存在です。趣味は数学とポーカーに加えて、社員やブロックチェーンエンジニアとサバイバルゲームで汗を流すことだそうです。橋本:ご紹介ありがとうございます。きょうは対談ということで、改めてどうぞよろしくお願いします。ブロックチェーン技術を応用したデジタルマネーの出現白井:インターネットの普及によって、情報やコンテンツの限界費用がゼロになり、情報産業の破壊的創造をもたらしたのが「情報革命」ですが、ブロックチェーンの出現で引き起こされる破壊的創造は「価値革命」ではないかと考えています。ブロックチェーンによって作り出されるトークン、たとえばビットコインが価値を持つことで、理論的には、極小の価値を世界のどこへでもほぼゼロコストで瞬時に移転できるようになりました。また、ブロックチェーンによるスマートコントラクトは、予め決められた契約の自動執行であり、トークンを使うことで相手の信用(カウンターパーティーリスク)にかかわらず価値の交換を可能にしています。第4次産業革命によって達成されるサイバーフィジカルシステム(現実社会のあらゆる情報を取得し、人工知能がそれを解析し、現実社会を操作することで社会の最適化を図る枠組み)においても、スマートコントラクトが活用されると考えられています。中国政府が進めるデジタル人民元もスマートコントラクトの実装を2021年7月に発表しました。スマートコントラクトは、人間社会での価値の移転が高効率化されるだけでなく、管理者不在で分散管理された自律的なプログラム集合体組織をつくることが理論的には可能となります。実際に、数年前からDeFi(ディファイ=Decentralized Finance:分散型金融)と呼ばれるものが数多く誕生しており、すべてのソースコードがオープンであるため、手数料課金をはじめ、あらゆるトランザクションがステークホルダー全員に対して公正に運用されています。このブロックチェーン技術によって、現在の不透明なプライシングの金融業界や金融商品を代替することが期待されます。現在、このような社会実装を見据えた試みが全世界的に進行しており、ブロックチェーン時代の幕開けと言っても過言ではありません。ブロックチェーンによるデジタル金融は、第4次産業革命に対応する金融市場と捉えることができます。金融市場の高度化による資本の有効活用で、過去の産業革命が推進してきた構図に近くなると思われます。世界中で稼働している「中央集権」的な思想で構築されているシステムは、ブロックチェーンによって大きく変わりつつあります。ブロックチェーンは「P2P(ピア・トゥ・ピア、サーバを介さずに、端末同士で直接データファイルを共有することができる通信技術)で取引ができ、中央の管理者がいない通貨を支える台帳(分散型台帳)」として発表されました。すなわち、ネットワークに参加する世界中のコンピューターに過去データを記録し、相互に検証させることで正確性を保っている分散された台帳システムです。これまでの中央集権的な思想によるシステムは、特定のサーバに存在する「台帳」にデータが管理されており、システム管理者がシステム全体を運営しているという集中管理方式でした。リスク回避のため、物理的距離が離れた複数のサーバにデータの複製をしたり、二重のシステムを構築したりするなど、莫大な費用をかけてデータの安全性が保持されてきました。これと対極にある思想が「ブロックチェーン」です。こちらはオープンソースであり、商用、非商用の目的を問わずソースコード(プログラム)を利用、修正、頒布することが許容されています。データの保存や変更は世界中に分散化、分権化されているため、改竄耐性、高可用性、透明性、正確性、恒久性、低コストが特徴です。大量の取引処理が苦手で取引の処理スピードも遅いという問題も、技術的進化で改善してきました。橋本:2008年にナカモトサトシと名乗る人物が論文を発表し、2009年から動き始めたビットコインが、ブロックチェーン、暗号資産などの流れの発端です。すぐに着目されたわけではありませんでしたが、いわゆる中央管理者がいない形でデジタルマネーを実現するという試みは非常に斬新でした。そのアイデアの革新性に惹かれた人たちがどんどん集まり、世の中に広がっていきました。それと並行して、その流れを見たビジネスサイドの人たちは、単なる暗号資産、単なるビットコインではなく、ブロックチェーンと呼ばれる技術を応用することでさまざまなビジネスユースケースがあると想像しました。それを受けて、2016年から2017年にかけて、実際にいろいろなユースケースが考案されました。昨今の潮流は、ブロックチェーンの技術そのものの応用のみならず、オリジナルのビットコインそのものをより広範に使っていこうというものです。ブロックチェーン技術の応用という流れが、昨今注目されているデジタル人民元につながっています。デジタル人民元がビットコインと似ているのは、ブロックチェーン技術を使ってデジタルマネーを実現しようという点です。ビットコインのブロックチェーンは特定の管理者がいない形でデジタルマネーを実現していますが、デジタル人民元は名前に「元」とついているように、実態としては、中国政府が管理します。しかし、技術的には、LINE Payや、PayPayのように、中国政府の特定の場所に1台のサーバがあり、1カ所でデータが管理されているわけではありません。複数の、いわゆるノードと呼ばれるアプリケーションがいろいろな場所に散らばっており、これらがお互いに同期しあって、同じ残高の帳簿をシェアしあう。ある種の分散型データベースのようなものです。このデジタル人民元は、ビットコイン的な要素も兼ね備えた形で、半ば中央集権的に、半ば分散的に実現される。これが昨今のCBDC(中央銀行デジタル通貨)の流れです。いわゆる法定通貨をブロックチェーン的に、オフィシャルな電子マネーとして扱っているのです。一方、オリジナルのビットコインの普及、例えばビットコインを使った決済サービスなどもますます広がっています。少し前にPayPalがビットコインの取扱いを始めましたし、もっと最近ではツイッター社がビットコインを使ったサービスを始めました。「ビットコインとデジタル法定通貨の関係:アンチマネーロンダリングとプライバシーの狭間で(2)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2021/10/29 16:37 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は0.03%高でスタート、行動制限の強化を警戒 29日の上海総合指数は買い先行。前日比0.03%高の3519.33ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時3分現在、0.29%安の3508.04ptで推移している。新型コロナウイルス感染拡大が引き続き懸念材料。各地での行動制限が強化されているなか、景気回復ペースの遅れ観測が強まっている。また、不動産業をめぐる不透明感が解消されていないことも引き続き警戒されている。 <AN> 2021/10/29 11:09 注目トピックス 経済総合 パナソニックのコール型eワラントが前日比2倍超えの大幅上昇(29日10:03時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つキーエンス<6861>コール139回 11月 66,000円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては村田製作所<6981>コール218回 12月 11,000円、野村日経225レバレッジETF プラス5倍トラッカー31回 月 12,000円、ビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 月 1.0米ドル、キーエンスコール139回 月 66,000円などが見られる。上昇率上位はパナソニック<6752>プット224回 11月 1,250円(前日比2.1倍)、パナソニックプット223回 11月 1,050円(前日比2倍)、キーエンスコール141回 11月 86,000円(+66.7%)、キーエンスコール140回 11月 76,000円(+65.2%)、アルプスアルパイン<6770>プット56回 11月 1,100円(+55.7%)などとなっている。(eワラント証券) <FA> 2021/10/29 10:25 注目トピックス 経済総合 NYの視点:主要各国中銀の緩和解除方針が分かれる、ECBはマイナス金利維持VS商品通貨国中銀はタカ派色強める 主要各国のパンデミックを受けた金融緩和策の解除方針に違いが見られる。供給不足で商品価格の上昇が見込まれる中、商品価格動向が景気動向を大きく左右する傾向があるカナダや豪州などの中銀は特に、回復ペースの加速を鑑み、速やかな金融緩和の解除姿勢を強めつつある。カナダ中銀は27日に開催した金融政策決定会合で、市場の利上げ観測を否定しなかったばかりか、来年の4回の利上げ観測をさらに強めるタカ派方針を示した。中銀の利上げ条件達成の時期を年後半から早くて、4月に前倒し。一方で欧州中央銀行(ECB)は市場の利上げ観測がガイダンスに一致しないとし、速やかな利上げの可能性を否定。マイナス金利を当面維持する方針を再表明した。また、日銀も黒田総裁が「日本のインフレ高進するリスクは極めて限定的」としており、当面金融緩和を継続すると見られる。米連邦準備制度理事会(FRB)や英国中銀は来週、FOMCや金融政策決定会合を予定している。FRBはパンデミック対処の緊急対策として実施している資産購入策の縮小を開始する見込み。ただ、労働市場の最大雇用はまだ先で、2022年の利上げは50/50と金融政策者は見ている。英国中銀は年内の利上げが金利先物市場で100%織り込まれた。 <FA> 2021/10/29 07:41 注目トピックス 経済総合 NY金は1800ドルを軸にしたレンジへ浮上 サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY金についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『NY金は1800ドルを軸にしたレンジへ浮上』と述べています。先週のNY金については、『米長期金利の上昇が重石になっていたが、週後半からドル安とインフレ懸念が支援要因となって、週末22日には一時1815.50ドルに上昇した。週明け25日には、原油相場の一段高に連れて、 9月中旬以来約1カ月半ぶりに終値は1800ドルの節目を回復した。1806.80ドル(+10.50)』と伝えています。続けて、『パウエルFRB議長は来年には高インフレが弱まる見通しを維持しているが、市場はインフレ高進を懸念しており、インフレヘッジとして金が注目されている。国際商品の代表的な指数であるロイター/ジェフリーCRB指数は240ポイント台に上昇し、7年ぶりの高値水準に上昇した』と言及しています。28日に発表される米7~9月期国内総生産(GDP、速報値)については、『夏場に感染が急拡大した新型コロナウイルスのデルタ型が影を落とし、実質GDP成長率は前期の年率6.7%増から大幅に減速し、年率3.0%増と予想されている。予想通りの結果であればドル売りが強まり、金相場を押し上げそうだ』と述べています。また、『金ETFの保有高は、25日時点で978トンと年初から17.7%減少。投資資金が金市場から流出しているわけだが、CFTC建玉を見ると先物市場では、ファンドの買いは19万3000枚に増加。強気見通しに傾いてきたようだ』と考察しています。こうしたことから、NY金について、『1800ドルを軸としたレンジでの値固めになりそうだ』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の10月27日付「NY金は1800ドルを軸にしたレンジへ浮上」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2021/10/28 17:43 注目トピックス 経済総合 デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(1)【実業之日本フォーラム】 【ゲスト】須賀千鶴(前・世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)2003年に経済産業省に入省。2016年より「経産省次官・若手プロジェクト」に参画し、150万DLを記録した「不安な個人、立ちすくむ国家」を発表。2017年より商務・サービスグループ政策企画委員として、提言にあわせて新設された部局にて教育改革等に携わる。2018年7月より、デジタル時代のイノベーションと法、社会のあり方を検討し、グローバルなルールメイキングに貢献するため、世界経済フォーラム、経済産業省、アジア・パシフィック・イニシアティブによるJV組織の初代センター長に就任。国際機関のネットワークを活用しながら、データガバナンス、ヘルスケア、スマートシティ、モビリティ、アジャイルガバナンスなど多様な国際プロジェクトを率いる。2021年7月より経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長。【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)白井:いままでのお話を伺い、スマートシティの知見をいち早く学び、自分たちの文化に合った形で仕組みづくりをおこない、素早く実践に移さないと、国際的なデジタル社会のリセットには取り残されてしまうということがよく理解できました。今後の日本人及び日本に不足しているものは何だと考えておられるでしょうか。須賀:日本人として、もう少し頑張ってもらいたい、頑張らなければならないと思うのは、試行錯誤を恐れてはいけないという点です。発展途上での段階で試行錯誤をしていることそのものが大事です。世界もうまくいったことを自慢してもらうことを期待しているわけではありません。「こうやってみたけどダメだった」、「ここで落とし穴に気づかなかった」というようなことを含めて、その知的貢献というものを大いに多とする人たちがイノベーションの先端にいます。その人たちが、一番先端でルール作りをしているのです。日本にはそこに入るようなメンタリティを持つ人が非常に少なく、どうしても、そのグループに入ることができません。とりあえず、アーリーアダプターがやっているのを眺めて、失敗したところは、「ああいうところで失敗する」というふうにメモって、なるべく失敗しないように後からついていくという行動をしてしまうのです。そうすると、時代が進み、イノベーションが同時多発的に大量に起こり、ものすごい規模でリセットが起きているときに、一番面白い先頭集団にいることはできません。私たちの第四次産業革命センターは、各国のセンターの中で2番目に設立されました。スピードにこだわって急いで設立した背景には、常に、生煮えかもしれない、あるいは甘いかもしれないが、アイディアのイノベーション、知的なイノベーションが起きているところに身を置いておこう、首をそこへ出していこうと考えたものです。日頃のセンターの運営も、そのことを念頭に置いています。白井:いま、須賀さんが指摘された日本人の感覚、失敗を恐れるという感覚が問題であるということは、多くの人も同じように指摘されています。答えにくいかもしれませんが、須賀さんはどのあたりに原因があると考えていますか。須賀:私は、他国センターの人たちと話をし、立ち居振る舞いをみて思ったことが二つあります。その一つは、日本人はアンビギュイテイ・マネージメントが苦手な人が多いということです。アンビギュイティというのは不確実性ですので、足元が定まらないような状態で、不安になり過ぎない、失敗するかもしれないがそこに立ってみようというようなメンタリティというか、そのような状態でも精神的に不安定になり過ぎないという力が欠けているように思います。私たちのセンターには、各企業だとか役所から非常に優秀な若い人達がフェローとして来ていただいています。来ていただいているフェローさん達は、周りから、あのセンターは、何をやろうとしているのか、あまり方針が明確ではないが大丈夫なのかと言われるそうです。このアンビギュイティ、周りも不安、その不安が自分に投げかけられてくるという状況をマネージできるようになりましょう、これがイノベーションの近道ですということを、ずっとフェローさんとも認識を共有するようにしていました。それから、日本人の特徴のもう一つは、アンビギュイティと並んで多様性を持つ集団のマネージメントが苦手であるということです。日本は同じような環境にいた人たちの集団のマネージメントしかできない人が多いので、女性を含めて、人とは違う、同じロジックや阿吽の呼吸では動いてくれない人のマネージメントがすごく苦手ではないかと思います。私たちのセンターでは、意識して、留学生ですとか、外国人ですとか、そういう人をチームに入れています。そのような人たちとのコミュニケーションをつうじて、グループをマネージメントする能力をつけていかないと、イノベーションの最先端領域にはいられないと思っています。白井:日本人が、須賀さんが言われるような、不確実性と多様性を受け入れることができるようにするためには、どのような方法があると思われますか。須賀:言葉にすると、とても陳腐になってしまいますが、「不確実性も、多様性も当たり前」という感覚を持つことでしょうか。やってみると相当難しいと思います。たとえば、「オープンイノベーション」という言葉があります。「オープンイノベーションをやりましょうと」言われて、これに反対する人はほとんどいません。でも、この「オープンイノベーション」というのは相当面倒くさい作業です。自分たちの組織であれば「あれをやっておいて」で通じるものが、世の中がこうなっていて、私たちはこうこうこういうふうにする人だから、こういうときにこういうふうにやってほしい、それを私たちは「あれ」と呼んでいるというふうに、いちいち定義して説明していかなければなりません。それを少しでも間違えたり、誤解が生じていたりすると全く違う方向に行ってしまいます。このように、自分の組織の中のロジックが通じない相手とコラボレーションして成果を出していこうとすると、自分でやったほうが早いというふうに誰もが思います。そのときに、でも、なぜ私たちはマルチステイクホルダーのコラボレーションをやりましょう、それが正解ですというふうに自信を持って申し上げているかというと、クオリティにちゃんとこだわると、自分たちで全部内製化できるものなどデジタル時代には一つもないということなんです。このことを虚心坦懐に受け入れないと、縮小均衡するばかりで、自分たちだけにしか通用しない製品を作り上げ、結果として国際市場で負けてしまうということです。従って、オープンイノベーションのスキルを、日本の組織が組織として持つ、それは楽でもなければ楽しいことでもない、苦行であるということを覚悟し、やろうとすることが必要かなと思います。「デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(2)【実業之日本フォーラム】」へ続く(本文敬称略)■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <RS> 2021/10/28 13:00 注目トピックス 経済総合 デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(2)【実業之日本フォーラム】 【ゲスト】須賀千鶴(前・世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長)2003年に経済産業省に入省。2016年より「経産省次官・若手プロジェクト」に参画し、150万DLを記録した「不安な個人、立ちすくむ国家」を発表。2017年より商務・サービスグループ政策企画委員として、提言にあわせて新設された部局にて教育改革等に携わる。2018年7月より、デジタル時代のイノベーションと法、社会のあり方を検討し、グローバルなルールメイキングに貢献するため、世界経済フォーラム、経済産業省、アジア・パシフィック・イニシアティブによるJV組織の初代センター長に就任。国際機関のネットワークを活用しながら、データガバナンス、ヘルスケア、スマートシティ、モビリティ、アジャイルガバナンスなど多様な国際プロジェクトを率いる。2021年7月より経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長。【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)本稿は、「デジタル社会に不可欠なリセット:今後の日本人及び日本に望まれるもの(1)【実業之日本フォーラム】」の続きとなる。白井:須賀さんは2021年7月には出向元の経済産業省に戻られるとお聞きしています。いまお教えいただいた形で、民間の方は組織としてオープンイノベーションのマインドを作り上げるように努力するということとなると思いますが、行政側として、どういう形でイノベーションの萌芽を拾い上げて育てていくのか、どういう形でアジャイルガバナンスを実践するのか、どういう形でデジタル社会に向き合ったら良いのかというような点についてお伺いできるでしょうか。須賀:国家に勤務する人間は、特別視され、なかなかフラットにプレーヤーとして受け入れられないという側面が、日本に限らずどの国でもあります。他方国家のほうも、自分達だけはなぜか特別で、ルールは作るが、それを守るべき一員とは考えていないという面があります。たとえばデータ・ガバナンスのルールとか、コーポレートガバナンスのデータ版みたいなものを考えたとき、それを企業に「こういうガイドラインを守ってください」と簡単に言いますが、それを自分たちも守ることにした場合、そのような体制を組めるのか、組めているのかというようなことを考えてもいない。常に、規制とかルールといったものは、自分たち以外の誰かに投げかけるものというように、無意識に思っているところがあります。これはよくも悪くもルールメイキングを、過去、国家が独占してきたことの帰結だと思います。今後のデジタル社会で一番面白いところは、国家であろうが、企業であろうが、自治体や個人であっても、それぞれ一つのノードにしか過ぎないという点にあります。もちろん、それぞれが出来ることの違いはあります。政府は、ルールを作るだけではなく、コンプライアンスも求められます。たとえば、データ漏洩の防止に関しては、企業が行うことばかり議論していますが、国民のDNA情報を、お金が足りなくて売ってしまった国が実際に存在します。これは当然やってはいけないことですが、国家を縛るルールがないためやってしまった。しかしながら、今後デジタル社会では、国家も企業も同様に、同じ基準で法令を遵守する必要があります。同等の主体同士であるという感覚が必要です。私はこのセンターでそのような感覚を教えていただいたと思っていますので、政府に戻ってもそれを実践したいと考えています。白井:アメリカの競争力の源泉は、政府と民間とのリボルビングドア(回転ドア)にあると言われています。新たに設置された日本のデジタル庁も民間からの登用が多いと聞きます。そう考えますと須賀さんは、経済産業省から第四次産業革命センターに出向され、世界を相手に活躍され、そして経済産業省に戻るという、まさにその先駆けであったように思います。昔は、天下りはありましたが、その逆はほとんどありませんでした。デジタル時代の日本の回転ドアについて、その理想論、ビジョンというものをお聞かせ願えるでしょうか。須賀:現在デジタル庁、平井大臣が情報漏洩で大変な状況となっていますが、あれも個人の問題ではなく、日本政府全体として、民間の人に中に入っていただき、一緒のチームとしてコラボレーションすることが具体的にはどういこうことなのかについて整理が不十分であったことに起因しているように思います。たとえば、利益相反を含めて、どういったルールが最低限必要なのかというような、インフラが整わないままに、時間を優先して先頭を走っていただいている結果、起きた問題ではないかと思います。これは、個人に帰着する問題ではなく、日本政府がこれまであまりにも、国家公務員試験に合格して公務員となった人間は、当然秘密は守る、当然利益誘導はしないと思い込んでいることに問題があると思います。非常に同質性の高い集団であることを前提に運営しているルールや文化を転換する、書き換えていくという作業が、まさに起きていると思います。デジタル庁に関しては、長い目で、温かい目で見ていく必要があると思います。将来的には、リボルビングドアがいいのかどうかということではなくて、そのときに最善の、最高品質の政策を作り、よりベストな意思決定をしていくためにはどのような布陣でなければならないのかということが優先されると思います。その結果として、霞が関の中の人ではできないということで役所の中で納得が得られれば、外部の人をお願いするといったプロセスがこれから起こるのかなと思っています。白井:非常に楽しく、かつ有益なお話を聞かせて頂きました。ありがとうございました。須賀:どうもありがとうございました。(本文敬称略)■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <RS> 2021/10/28 13:00 注目トピックス 経済総合 軍拡競争を繰り広げる朝鮮半島【実業之日本フォーラム】 2021年10月21日、韓国は初の国産ロケット「ヌリ」号を打ち上げた。打ち上げを視察した文在寅大統領は「目標を完璧に達することはできなかったが、最初の打ち上げで非常に立派な成果を収めた」、と高く評価した。ロケット開発は、ICBM開発と共通点が多く、ロケット打ち上げ成功は、ICBM保有能力の獲得と同等に語られる。北朝鮮の度重なる弾道ミサイルや巡航ミサイルの発射に加え、韓国も弾道ミサイル開発を積極的に進めており、朝鮮半島は、まさに軍拡競争の渦中にある。文在寅大統領は、「国防改革2.0」を推進中であり、2022年までに61.8万人の兵力を50万人に削減する計画である。韓国統計庁による韓国の特殊出生率は2020年0.84であり、3年連続1を下回り、OECD加盟国の中で最も低い。少子高齢化が進む日本でも2020年の出生率は1.34であり、韓国の少子化は日本より深刻と言える。韓国の総人口は約5,130万人と、日本の半分以下であり、日本の自衛隊約24.7万人の倍以上の常備兵力を維持することは、徴兵制度下とは言え継続困難であろう。「国防改革2.0」に示される軍事構造分野の改革は、兵力削減に伴う抑止力の低下をいかに補うかが焦点となっている。その中で、前政権から継続されている、北朝鮮の核及びミサイルを無力化する「3軸体系戦力」の構築は踏襲されている。2021年5月の米韓首脳会談で、文大統領が、韓国のミサイル開発を制限していた米韓ミサイル指針からの離脱を宣言したことは、韓国の対北抑止力強化への強い意志を感じさせるものであった。9月15日に実施した韓国初の潜水艦搭載弾道ミサイル(SLBM)の発射試験は、3軸体系の一つである「大量反撃報復」の具現化を目指すものである。韓国は、この他に射程80kmとされる弾道ミサイル玄II及びIVの発射試験を行っている。韓国の一連の弾道ミサイル等の発射試験に加え、国産ロケットの打ち上げは、北朝鮮にとっては脅威の増大としか見えないであろう。2021年10月に、米軍情報局(DIA : Defense Intelligence Agency)は北朝鮮軍事力に関する報告書を公開している。報告書によると、北朝鮮はGDPの20~30%を軍に投資しており、その額は70~110億ドル(8,000億~1兆2,000億円)と推定されている。約150万人とされる兵力にしては少ない予算であり、頻繁に行われれるミサイルの発射実験から、その多くが核及びミサイル開発に使用されていると推定できる。DIAは、北朝鮮の国家戦略を「政権の生き残り」と「朝鮮半島の統一」と見積もっている。金正日政権時は「先軍政治」を掲げ、軍の非対称戦能力の向上として、特殊部隊、生物化学兵器、長距離砲撃能力及び核能力が重視された。金正恩は軍に過度に依存する体制から、経済と軍事の「両輪戦略」に転換し、核、ミサイルに加え、空軍力を中心に通常戦力の強化を図っていると分析している。そして、北朝鮮はもはや1950年代のように朝鮮半島を席巻するような地上戦力を保有していないが、核からゲリラ戦に至るまで、広い範囲で非対称戦力を向上させ、抑止力を強化し、いかなる紛争にも対応できる体制をとっていると結論付けている。2021年10月11に開催された「国防発展展覧会2021」における金正恩の記念演説にはDIAの分析に関連し注目点すべき点が確認できる。それは、韓国が弾道ミサイルを含む先端技術の開発、導入を北朝鮮に対する抑止力強化の名目で行っていることを強く非難、北朝鮮の自衛的権利まで損なおうとした場合、これを容認せず、強力な行動を持って立ち上がるとしている点である。自国の核、ミサイル開発はあくまでも韓国、米国の圧力に対抗するものであり、これを放棄する意思が無いことを明確に示すものである。9月21日、文在寅大統領は国連総会の一般討論演説で、関係国が朝鮮戦争の終戦宣言を行うことを提案した。文大統領は「平壌共同宣言合意書」に署名しており、南北融和は政権のレガシーとしてさらに進めたい事業である。一方で、9月15日に実施した韓国のSLBM発射に際しては、「韓国のミサイル戦力を増強してこそ、北朝鮮の挑発に対する確実な抑止力になる」と発言し、金正恩の妹である金与正から「愚か極まりない」と非難されている。南北融和を目指し対話を求める発言と北朝鮮抑止のためミサイル戦力の増強を進めるという発言を、日を置かずに行ったという事は、文大統領がこれらに何の矛盾も感じていないことを意味する。微妙な舵取りが必要な北朝鮮問題を考えると、韓国がどの方向を目指そうとしているのか国際的理解を求めるのは難しい。文政権は、中・長期的戦略に基づいて、外交・安全保障政策を推進しているのか疑わしいと言わざるを得ない。一方、この文在寅大統領の姿勢は、思わぬ効果を果たす可能性がある。それは、朝鮮半島の軍拡競争が、北朝鮮経済を疲弊させ、政権崩壊の道を歩む可能性である。旧ソ連崩壊の一因に、アメリカとの軍拡競争に旧ソ連経済が耐えられなかったことが挙げられている。10月11日の演説で、金正恩は「周囲の脅威に応じて北朝鮮の軍事力を絶えず強化することは朝鮮革命の時代の要請である」と述べている。それを実践するかのように、韓国のSLBM発射試験の同日に北朝鮮は列車に搭載した短距離弾道ミサイルの発射を行い、1か月後にSLBM試験を行っている。今回の韓国のロケット発射に対し、北朝鮮がロケット発射を試みる可能性もある。国防発展展覧会において、「米韓に対し強力な抑止力を持つ」と言っている以上、韓国が新たな装備の試験や導入を進めるたびに、それと同等またはそれ以上の能力を持つ装備の開発をしていることを国民に見せる必要に迫られる。韓国の半分以下の軍事費の北朝鮮が、新装備の開発を進めることは、必然的に軍の他の予算を圧迫するであろうし、ひいては経済制裁を受けて疲弊した国内経済に大きなインパクトを与えるであろう。このことは金正恩が進める「両輪戦略」の破綻を意味する。韓国の国防力整備に関しては、いかなる脅威を想定し、いかなる軍事戦略の下で運用することを考えているのか分からないものが多い。海軍の装備で言えば、空母やSLBMそして原子力潜水艦がその代表例である。それらの多くは、戦略上よりも、国家としての威信を示す所要のほうが大きい。しかしながら、北朝鮮を軍拡競争に誘い込み、自壊を促す効果があるという側面があることも否定できない。1991年冬、世界の超大国の一国であったソ連が崩壊した。当時ソ連の崩壊を正確に予測した人間はほとんど存在しなかった。北朝鮮の崩壊は、核及びミサイルに対するコントロール、大量に発生すると見られる難民対策等日本の安全保障に大きな影響を与える。北朝鮮問題は核・ミサイルだけではないことを認識し、各種対応策について、少なくとも頭の体操はしておく必要がある。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2021/10/28 11:03 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は0.38%安でスタート、新型コロナ感染の再拡大を警戒 28日の上海総合指数は売り先行。前日比0.38%安の3548.70ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時45分現在、0.46%安の3546.07ptで推移している。国内での新型コロナウイルス感染の再拡大が引き続き警戒されている。また、不動産業をめぐる不透明感が払しょくされていないことも足かせに。一方、企業業績への期待などが引き続き指数をサポートしている。 <AN> 2021/10/28 10:54

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