注目トピックス 経済総合ニュース一覧
注目トピックス 経済総合
NYの視点:米11月NY連銀製造業指数が上昇、販売価格や雇用が過去最高
11月のニューヨーク連銀製造業指数は30.9と、10月19.8から予想以上に上昇した。6カ月平均の27.3も上回った。重要項目である新規受注が28.8と、10月の24.3や6カ月平均の25.2を上回り全体指数を押し上げ。力強い需要が雇用も押し上げ、雇用指数は26.0と、10月17.1から大幅に上昇し過去最高を記録した。週平均就業時間も23.1と、10月15.3から上昇した。新型コロナウィルス感染が鎮静化しつつあり、経済活動の再開が一段と進んだことに伴い製造業の需要は強く、回復も一層強まった。同時に価格の上昇も目立つ。仕入れ価格は83.0と10月78.7から4.3ポイント上昇し過去2番目に高い水準となった。企業がコストの上昇を商品に転嫁しており、販売価格も50.8と、10月から7.3ポイント上昇し、過去最高を記録した。第3四半期の経済は新型コロナ変異株の影響で抑制されたが第4四半期の回復は連邦準備制度理事会(FRB)を含め、多くのエコノミスト予想通り、回復ペース加速が見込まれドルを支援する可能性がある。明日16日発表の小売り売上高でさらに回復動向を探る。■ニューヨーク連銀製造業指数景況指数30.9(10月19.8、6カ月平均27.3)仕入れ価格83.0(78.7、78.4)販売価格50.8(43.5、43.5)新規受注28.8(24.3、25.2)出荷28.2(8.9、21.2)入荷遅滞33.2(38.0、30.8)在庫水準9.3(12.0、8.7)受注残12.7(18.5、14.5)雇用者数26.0(17.1、18.2)週平均就業時間23.1(15.3、16.8)6カ月先景況指数36.9(52.0、45.2)仕入れ価格72.0(67.6、66.1)販売価格55.9(50.0、52.1)新規受注34.4(51.0、42.5)出荷32.2(52.3、45.3)入荷遅滞12.7(5.6、4.8)在庫水準11.9(17.6、12.0)受注残5.9(0.9、0.9)雇用者数30.6(37.1、38.7)週平均就業時間10.2(10.2、8.4)
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2021/11/16 07:37
注目トピックス 経済総合
台湾有事をサイバー安全保障の観点から見る(初代陸上自衛隊システム防護隊長 伊東 寛)(第2回)【実業之日本フォーラム】
台湾有事について、サイバー空間における具体的な戦闘様相を考えてみよう。初期の段階では、恫喝を目的とした台湾対岸への軍事力の増強とプロパガンダ、そして、インターネットを利用した台湾国内の情報操作から始まると考えている。以下、段階を追って述べる。グレーゾーンの段階まず、情報操作などを目的としたサイバー攻撃が行われるであろう。具体的に言えば、民間人ハッカー(あるいはそれをよそおった軍人等)によるプロパガンダを目的とするホームページの書き換え等が行われる。これは社会の混乱と国民の不安を助長するためである。また、反戦運動、人種差別抗議など一見、正当に見えるがその意図は違うものがネットを活用して行われる。これは国民の政府への信頼感を毀損し民心を政府から離間するのが目的である。さらにこの段階では、社会不安をあおるために、金融や電気・水道といった重要インフラへのDoS攻撃が行われる可能性も否定できない。戦闘開始前の活動上記の活動と並行して、戦闘に資するための情報収集活動は常続的に実施されている。具体的に言えば、部隊配置、弾薬・兵站状況などの作戦情報や事後のサイバー攻撃に利用する技術情報の窃取である。さらに、修理に見せかけたスリーパー(装置が誤作動を起こすように欠陥を埋め込まれた集積回路などのハードウエアやソフトウエアであって、普段は正常に動作し、指示や時間経過に基づき作動する。)等の埋め込みやファームウエア更新を利用したバックドア(サイバー攻撃用の裏口)の埋め込み、スリーパー等に対する作動開始時間の予令などが発せられるだろう。武力侵攻の時期が迫ってくれば、柔らかいサイバー攻撃と呼ばれる攻撃が行われる可能性もある。これは、相手にサイバー攻撃を受けたと気づかれることなく、システムの効率を低下させるようなタイプのもので、各種の警報システムの感度を下げるなど、目立たない不具合を発生させる。サイバー封鎖「サイバー封鎖」とは、論理的、物理的に、台湾のインターネットを世界から切り離す活動のことである。「論理的に」というのは、インターネットイクスチェンジと呼ばれる要点(プロバイダーやデータセンター、国家間の相互接続をするための仕組み)の機能をサイバー攻撃により妨害するものだ。「物理的に」というのは、電線や光ケーブル、それらに関する設備を切断・破壊することである。台湾のインターネットは海底ケーブルを使用して世界と繋がっており、その海底ケーブル陸揚げ場所は台湾北部の二箇所に集約されている。(Submarine Cable Map ※1)ここが破壊されると台湾のインターネットはほぼ機能を喪失する。インターネットが使用できなくなれば、情報の交換だけではなく、金融や物流といったインターネットに依存する社会インフラに大きな影響を与えるとともに、国際的な孤立を招く。ミャンマーの軍事クーデターにおいて、軍事政権がインターネットを遮断したことは、インターネットによる情報拡散を恐れているためと推定されているが、そのようなものだ。戦闘、初動の動き武力攻撃は、サイバー・電磁攻撃による奇襲から開始される。通信機、GPS、レーダーなどは使用不能又は機能が低下する。さらにFCS(火器管制システム)等、コンピューターやネットワークを利用するその他の電子装備品も利用困難となるであろう。併せて、特殊部隊による政府高官の拉致や情報収集のためのオペレーターの捕虜獲得、通信電子機材、特にシステム、暗号関係の機材の鹵獲も実施されるであろう。このような初期段階のサイバー攻撃の目的は「サイバー優勢」を獲得することであり、今後、このような戦い方が常態化するであろう。センサーや国家から部隊に至る指揮統制機能が失われれば、いかに物理的に優れた兵器を持っていてもそれを有効に活用することはできない。戦闘中中国の積極的なサイバー攻撃により、台湾各所でシステムダウンが発生する。さらに、台湾軍は、上級司令部や味方部隊との連絡が阻害されるとともに、正規の加入者に成りすました命令、報告などで指揮系統が混乱し、効果的な戦闘が実施できなくなる。また、システムダウンが起こらなくても、サイバー攻撃により使用しているシステムへの信頼性は大幅に低下することになるであろう。敵味方識別システムへの侵入やデータの改ざんなどによる友軍相撃が発生することも予想される。このような一連のサイバー攻撃により、台湾軍は、次第にシステムに依存できなくなり、前近代的な戦闘を強いられることとなるであろう。爾後の戦い指揮通信機能を分断された台湾軍は、組織的な抵抗を実施することができなくなり、次第にゲリラ戦の様相を呈してくるであろう。この段階で、中国が奪取し支配しているネットワークを通じ、情報操作により、市民の厭戦気分や中国への迎合気運の盛り上がりが図られる。この際、拉致した台湾政府高官等が利用されるであろう。政府高官のフェイク映像が利用されるということもあるかもしれない。(最新の人工知能技術を用いることで本人そっくりの映像に嘘の発言をさせることができる)この段階が長期間に及ぶかどうかが、中国が軍事侵攻を決断するかどうかの鍵となるであろう。この期間が長期間になればなるほど、国際的批判の的となる上、他国からの干渉の可能性が高くなる。台湾への武力侵攻が中国にとって割に合わないコストとなる可能性が有る。以上、台湾有事の際の戦闘様相を、サイバー攻撃を中心として述べてきた。このような攻撃に対して我が国の防衛体制はどうなっているのであろうか?例えば、日本の海底ケーブル陸揚げ所は警察あるいは自衛隊により適切に警護されているのだろうか?サイバー技術が日進月歩であることにかんがみ、本論で述べたようなサイバー攻撃だけではなく、常に最新技術に注意を払い、ネット上での不具合や銀行システムの不具合がサイバー攻撃の可能性ではないか、その兆候なのではないかというアンテナを高く持っておく必要がある。さらに、重要インフラに関しては、サイバー攻撃への復元力(レジリエンス)に対する配慮も必要であろう。大事なことは、台湾情勢はもはやグレーゾーン状態にあり、情報の窃取を中心としたサイバー戦がすでに行われているという危機感を持つことである。※1:https://www.submarinecablemap.com伊東 寛(工学博士)1980年慶応義塾大学大学院(修士課程)修了。同年陸上自衛隊入隊。技術、情報及びシステム関係の指揮官・幕僚等を歴任。陸自初のサイバー戦部隊であるシステム防護隊の初代隊長を務めた。2007年自衛隊退官後、官民のセキュリティー企業・組織で勤務。2016年から2年間、経済産業省大臣官房サイバー・セキュリティ—・情報化審議官も務めた。主な著書に「第5の戦場」、「サイバー戦の脅威」、「サイバー戦争論」その他、共著多数■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/15 11:49
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.11%高でスタート、経済指標公表前で神経質
15日の上海総合指数は買い先行。前日比0.11%高の3542.90ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時54分現在、0.01%高の3539.36ptで推移している。きょう日本時間11時ごろ10月の各種経済指標が発表される予定となり、慎重ムードが強まっている。一方、米中関係の改善期待が指数をサポートしている。
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2021/11/15 10:58
注目トピックス 経済総合
ネットフリックスを対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(15日10:01時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つSUMCO<3436>コール244回 12月 3,000円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはヤマトホールディングス<9064>コール106回 12月 3,300円、SMC<6273>コール52回 月 93,000円、日経平均コール2150回 月 30,000円、日本製鉄<5401>コール257回 月 2,650円などが見られる。上昇率上位は日本通運<9062>プット32回 12月 6,700円(+29.6%)、ネットフリックスコール85回 12月 700米ドル(+28.9%)、ネットフリックスコール86回 12月 800米ドル(+28.7%)、日本通運プット33回 12月 7,900円(+27.1%)、マツダ<7261>コール115回 12月 1,150円(+26.4%)などとなっている。(カイカ証券)
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2021/11/15 10:21
注目トピックス 経済総合
NYの視点:【今週の注目イベント】米小売売上高、クラリダFRB副議長、住宅着工件数・建設許可件数、欧英日CPI
今週は米国では10月小売売上高や住宅、製造業関連指標に注目が集まる。特に小売売上高で経済の7割を占める消費動向を確認していく。小売売上高は3カ月連続の増加で、伸びは9月から拡大する見込み。サプライチェーン混乱が持続する中、新型コロナウイルスの変異株感染が一段落し、累積需要などに消費の強い回復が期待されている。また、供給不足を警戒し、年末商戦が前倒しで開始されていることが報告されており、ポジティブサプライズの可能性もある。住宅着工件数・建設許可件数は改善が予想されているが、コスト上昇が伸びを抑制しネガティブサプライズの可能性も除外できない。インフレの上昇で、米連邦準備制度理事会(FRB)が資産購入縮小ペースを計画より早め来年6月前に終了、早期利上げを実施すると予想するエコノミストもいる。利上げの行方を探る上で、クラリダFRB副議長などFRB高官の発言にも注目が集まる。一方でミシガン大消費者信頼感指数は10年ぶり低水準に落ち込んだ。米国経済の7割を占める消費鈍化で回復が滞りスタグフレーション懸念も根強く、ドルの上昇を抑制すると見る。ユーロ圏、英国、日本では10月消費者物価指数(CPI)の発表が予定されている。世界的なサプライチェーンの混乱の影響で、ユーロ圏では過去最大の伸びを維持、英国では1992年7月以降29年ぶり最大の伸びを記録する見込み。ユーロ・ドルやポンド・ドルの下落が一段落する可能性がある。一方、日本のCPIは依然低迷する見通しで円売り基調を支援する可能性がある。15日には米中首脳のビデオ会議が開催される。気候問題が主要議題になると見られる。中国主席はバイデン大統領を北京五輪に招待する見込みだと報じられている。■今週の主な注目イベント●米国15日:11月二ューヨーク連銀製造業景気指数、米中首脳のビデオ会議16日:10月小売売上高、10月輸入物価指数、10月鉱工業生産・設備稼働率、9月企業在庫、11月NAHB住宅市場指数、9月対米証券投資、バーキン米リッチモンド連銀総裁、ジョージ米カンザスシティー地区連銀総裁、ボスティック米アトランタ連銀総裁が討論会に参加、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁がフィンテック会議に参加17日:10月住宅着工件数・建設許可件数18日:新規失業保険申請件数、11月フィラデルフィア連銀景況指数、10月景気先行指数19日:クラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁が講演●ユーロ圏16日:GDP、仏、伊CPI17日:ECBが金融安定報告発表、ユーロ圏CPI19日:仏失業率●英国16日:失業率17日:CPI19日:消費者信頼感、小売売上高、BOE、ピル氏が講演●日本15日:GDP17日:貿易収支19日:CPI●中国15日:小売売上高、鉱工業生産
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2021/11/15 07:34
注目トピックス 経済総合
国内外の注目経済指標:日本の7-9月期GDPはマイナス成長の公算
11月15日-19日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。■15日(月)午前8時50分発表予定○(日)7-9月期国内総生産速報値-予想は前期比年率-0.7%半導体不足等による自動車部品などの供給制約が輸出を下押したこと、東京都などの大都市圏などを対象とする4回目の緊急事態宣言の発出などが個人消費を抑制したことから、7-9月期の経済成長率は前期比年率マイナスとなる見込み。輸出減少によって外需寄与度は3四半期連続のマイナスとなる可能性がある。■16日(火)午後10時30分発表予定○(米)10月小売売上高-予想は前月比+1.0%参考となる9月実績は前月比+0.7%で市場予想を上回った。自動車、ガソリン、建設資材、外食を除くコア小売売上高は、+0.8%。衣料品の売上高も増加した。10月については自動車、ガソリン、外食などの売上高が増加する可能性があるため、9月に続いて前月比プラスとなる可能性が高い。■16日(火)午後7時発表予定○(欧)7-9月期域内総生産改定値-予想は前年同期比+3.7%参考となる速報値は前年同期比+3.7%。フランスとイタリアが市場予想を上回る成長を記録した。改定値では個人消費が上方修正される可能性があるが、成長率は速報値と同水準となる可能性が高い。■19日(金)午前8時30分発表予定○(日)10月全国消費者物価コア指数-予想は前年同月比+0.1%参考となる9月実績は前年比+0.1%。原油価格の上昇で灯油やガソリンなどのエネルギー品目が上昇し全体を押し上げた。10月についてはエネルギー品目が9月に続いて上昇すること、宿泊料金の上昇も想定されていることから、消費者物価コア指数は9月に続いて前年同月比プラスとなる見込み。○その他の主な経済指標の発表予定・15日(月):(中)10月小売売上高、(中)10月鉱工業生産、(米)11月NY連銀製造業景気指数・16日(火):(英)7-9月期ILO失業率、(米)10月鉱工業生産・17日(水):(日)10月貿易収支、(英)10月消費者物価コア指数、(米)10月住宅着工件数・18日(木):(米)10月フィラデルフィア連銀製造業景気指数・19日(金):(英)10月小売売上高、(欧)9月ユーロ圏経常収支
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2021/11/13 14:28
注目トピックス 経済総合
NY原油は、高値警戒感から売り優勢へ サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY原油についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、NY原油について、『NY原油は、高値警戒感から売り優勢へ』と述べています。続けて、『バイデン統領の政策の柱である約1兆ドル規模のインフラ投資法案が可決し、経済成長や燃料需要が押し上げられる可能性が高まった。また、米政府がワクチン接種済みを条件に外国人観光客の入国制限を撤廃し、各国でも同様の規制緩和が進行。ジェット燃料需要が世界的に高まるとの観測が高まった』と伝えています。米エネルギー情報局(EIA)が公表した週間原油統計については、『原油在庫は前週比100万バレル増の4億3510万バレルとなったが、増加幅は予想の210万バレルより小さかった。石油製品の供給量も合計で日量70万8000バレル減の1929万バレルだった。このうちガソリンは24万5000バレル、ジェット燃料は9万1000バレル減少しており、需要回復も鈍化している』と解説しています。また、10月米消費者物価指数(CPI)は、『前年同月比6.2%上昇し、31年ぶりの高い伸びとなった。これを受けて米国株が下落したため、同じリスク資産とされる原油にも売りが伝わったようだ』と言及しています。一方で、『バイデン大統領はCPIの上昇を受けて声明を発表。物価高の主因になっているエネルギーコストについて「一段の下落を図る措置の検討を指示した」ことを明らかにした』と伝えています。陳さんは、『在庫統計は強気の内容だったが、バイデン政権が米国民の生活を直撃するガソリン価格の鎮静化を図る可能性は高く、原油市場にも警戒感が高まっているようだ。ファンドの買い越しはやや減少している』と説明しています。また、『原油相場を牽引してきた天然ガス相場が下げ基調となっていることも嫌気されているだろう』と考察しています。こうしたことから陳さんは、NY原油について、『目先の高値を85ドルとして利益確定売りが先行しよう。77~85ドルのレンジ。東京ドバイ原油は、4万7000円~5万3000円のレンジ』と想定しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の11月11日付「NY原油は、高値警戒感から売り優勢へ」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
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2021/11/12 17:55
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.04%高でスタート、上値の重い展開
12日の上海総合指数は買い先行。前日比0.04%高の3534.15ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時21分現在、0.02%安の3532.10ptで推移している。不動産や金属関連の下落が指数の足かせに。不動産業を巡る懸念が払しょくされていないことが引き続き圧迫材料。一方、国内消費の旺盛なども内需関連の物色手掛かりとなっている。
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2021/11/12 11:03
注目トピックス 経済総合
【連載第3回】連載コラム:日本のペイパル・マフィア(第3回)「まだ見ぬ幸せな未来の実現」に向けて【実業之日本フォーラム】
本連載で最初に触れたように、2000年頃の日本では、最優秀層は大企業か官庁に進むのが当たり前でした。一方、アメリカでは2000年の段階で、最優秀層が起業したりベンチャーに入ったりしており、私はそれが現在のGAFAMの台頭につながったと考えています。しかし現在の日本ではベンチャーブームと言ってよい状況にあり、スタートアップを取り巻く環境も変わってきました。数多くのスタートアップ起業家を間近に見てサポートしてきた「千葉道場」の千葉功太郎さんも、ここ5年ほどで環境が激変し、起業家の裾野も大きく広がったと感じているといいます。「これまでは、スタートアップといえば野武士のように強く特殊な人がつくる時代でした。しかし今は、東大生が普通に人生の選択肢として卒業後の起業を選ぶ時代になっています。日本のスタートアップ・エコシステムもこの5年間で急激に立ち上がっており、数字で見ると2020年だけでスタートアップがおよそ4600億円(※1)も資金調達しているんです。アメリカや中国に比べればけた違いに小さいものの、5~6年前はほぼゼロだったと考えれば、著しい成長を遂げているといえます」(千葉さん)千葉さんが初めてエンジェル投資をしたのは2015年、東証一部上場企業であるオンラインゲーム開発・運営会社のコロプラの副社長だったときのことでした。その当時は「エンジェル投資家」という言葉そのものが日本ではまったく知られていなかっただけでなく、日本では上場企業の経営陣は自社の経営に専念すべきだという考え方が「常識」だったといえます。「個人での投資活動に対する理解はまったくなかった」(千葉さん)のです。しかしそれから6年が経った今、経営者がエンジェル投資をすることは日本でも当たり前になっています。このような「常識」の変わりようからも、スタートアップ起業家を取り巻く環境の変化を強く感じ取ることができるでしょう。【日本のペイパル・マフィアに聞く6つの質問】1. 日本にも、米国のようにベンチャーのエコシステムが発展していくと思いますか?はい。遅ればせながら、かつ規模も小さいながらも、着実にこの10年でも激変してきてます。単なる後追いではなく、日本独自の進化もしている実感があります。2. 日本のベンチャー市場の発展にエンジェルが果たしていくべき役割をどう見ていますか?とても大きいです。事業などで成功された個人が、もっとたくさんエンジェル投資家としてスタートアップを支援していき、その裾野がどんどん広がる近未来を期待しています。3. 今後、米国のペイパル・マフィアのような、起業家とエンジェルを横断する勢力は形成されるでしょうか?千葉道場コミュニティ及び千葉道場ファンドが、日本版の一つの形になっていけたらうれしいですね。4. ベンチマーク、もしくは注目している人や組織、団体を複数教えて下さい。イーロンマスク、ヘンク・ブラウアー・ロジャース、ジェイソン・マッケイブ・カラカニス、ユーグレナ社、リバネス社。5. あらためて伺います。エンジェルやベンチャー投資の魅力は?まだ見ぬ幸せな未来の実現。6. 今後の抱負を教えて下さい。「Catch the Star」を千葉道場のミッションとして、それぞれの産業分野でのコロナ禍なDXを促進させ、来るべき未来の幸せを追求していきたいです。※1:https://www.uzabase.com/jp/news/japan-startup-finance-2020-digest-report/【千葉功太郎さんプロフィール】千葉道場ファンド ジェネラル・パートナー/Drone Fund代表パートナー/慶應義塾大学SFC特別招聘教授/航空パイロット1974年5月11日、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。株式会社サイバード、株式会社ケイ・ラボラトリーを経て、2009年株式会社コロプラに参画し同年12月に取締役副社長。2012年東証マザーズIPO、2014年東証一部上場を果たし2016年7月に退任。その後、国内外のインターネットやリアルテック業界でのエンジェル投資家(スタートアップ60社以上、ベンチャーキャピタル40ファンド以上に個人投資)として活動。2017年6月にDRONE FUNDを設立。個人投資先、DRONE FUND投資先の起業家コミュニティ「千葉道場」を運営。2019年4月、慶應義塾大学SFC の特別招聘教授に就任。2018年12月に、堀江貴文氏らと共に国産旅客機「HondaJet Elite」の国内1号機を共同購入。2020年6月1日、自家用操縦士のパイロットライセンス取得を発表。藤野 英人(ふじの・ひでと)レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役 会長兼社長 最高投資責任者(CIO)国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。「ひふみ」シリーズ最高投資責任者(CIO)。投資啓発活動にも注力し、JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授を務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/12 10:58
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丸井グループを対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(12日10:02時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしてはカシオ計算機<6952>コール27回 12月 2,200円、丸井グループ<8252>コール19回 月 2,750円、野村日経225レバレッジETF プラス5倍トラッカー34回 月 16,000円、エヌビディアプット106回 月 210米ドルなどが見られる。上昇率上位は丸井グループコール19回 12月 2,750円(+74.5%)、丸井グループコール18回 12月 2,450円(+62.6%)、三井不動産<8801>コール157回 12月 3,050円(+48.7%)、三井不動産コール158回 12月 3,450円(+47.6%)、三菱地所<8802>コール223回 12月 2,250円(+45.5%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/11/12 10:42
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NYの視点:ECBや欧州委インフレいずれ弱まるとの見通しも市場は来年のECB利上げ織り込む
欧州中央銀行(ECB)は経済報告の中でインフレが当初の想定以上に長引いているが、来年には弱まるとの見通しを示した。理由として以下を挙げた。第1に、エネルギー価格、特に、石油、ガス、電気代が急激に上昇。9月のエネルギーインフレは全体の半部を占めた、と指摘した。第2に経済活動の再開関連の需要の回復が供給を大幅に上回った。商品価格の上昇はほとんどが供給不足が影響したと言及。また、ドイツのVATの減税措置終了関連のベースイフェクトが引き続き高インフレに繋がったと指摘した。ただ、これら3つの要因は2022年には徐々に弱まると見ていいる。同時に、ほとんどの指標が引き続き上昇していることも認識。一方で、賃金圧力は依然抑制されている。また、欧州委員会は経済見通しでユーロ圏の成長を21年+5%と従来の+4.8%から引き上げた。一方、22年は+4.3%と従来の+4.5%から引き下げ。23年は+2.4%で変わらず。経済の見通しにおいて、供給サイド問題の持続やエネルギー価格の上昇が消費や投資の重しになると指摘した。インフレは第4四半期に3.7%でピークをつけたあと、2022年の上半期高インフレ持続したのち弱まり、2023年までに安定すると見ている。ユーロ圏インフレは2021年が2.4%、2022年2.2%と、それぞれ1.9%、1.4%から引き上げた。ただ、2023年には1.4%に鈍化し、目標を下回ると見ている。ECBのハト派姿勢に反し、米国の予想を上回るCPIの結果を受けて欧州金利市場も来年の織り込んだ。ただ、米国では2回以上の利上げが織り込まれつつあり、金利差はむしろ拡大を見込みユーロ・ドルは下落基調が続くと見られる。
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2021/11/12 07:39
注目トピックス 経済総合
NYプラチナは1200ドル目指す可能性 サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NYプラチナについてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『NYプラチナは1200ドル目指す可能性。世界的な半導体不足を背景に自動車生産が減少しているが、そのためにプラチナの需給が引き締まりつつあるようだ』と述べています。続けて、『新車不足を受けて中古自動車の売買が活発化し、廃車が減少している。そのため、リサイクルからのプラチナ供給の減少につながっている。それは半導体不足に端を発している自動車のプラチナ需要減を部分的に相殺しているという』と解説しています。World Platinum Investment Councilの調査について、『需要があっても新車がないため消費者は車を乗り換えず、廃車が減って自動車触媒装置のリサイクルが減少しているという。そのため、ネットでのプラチナの供給過剰量は、従来の予測した3.6トンとから1.4トンに低下する可能性があるという』とし、『これは総需要の1.0%以下になるため、需給の緩みが解消にむかいつつあるという』と述べています。次に、NYプラチナのCFTC建玉について、『9月14日時点のファンドポジションは−1067枚と2019年2月12日以来の売り越しとなった。2019年当時は翌週から買い越しに転じ、2020年初旬には6万7000枚まで買い越しが拡大し、価格もおよそ25%上昇した』と説明、『今年も翌週の21日には買い越しに転じており、直近の11月2日時点での買い越し幅は1万5000枚を超えた。2019年と同じパターンをたどる可能性が考えられる』と言及しています。こうしたことから、陳さんは、NYプラチナについて、『1100ドルの上値抵抗線をブレイクして、1200ドルを目指す展開になる』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の11月10日付「NYプラチナは1200ドル目指す可能性」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
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2021/11/11 18:10
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コロナ禍で孤立する中国(2)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。◇以下、「コロナ禍で孤立する中国(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。グローバルリーダーとしての資質の問題こうして孤立路線を継続した場合、今後数年間における中国の役割はどのようなものになるのだろうか? ビジネスの世界ではZoomやその他のプラットフォームを用いたバーチャルなやり取りが受け入れられているかもしれないが、社会のあらゆる局面において、人と人とが直接顔を合わせることの恩恵を過小評価してはならない。コロナ後の世界は以前と同じではなく、制限や変化は今後何年も続くであろうが、それでも、人間が社会的な生物であることに変わりはない。同僚間であれ、学生間であれ、政治指導者間であれ、中国社会のあらゆるレベルにおいて、対面によるやり取りが大きく減った状態は今後も続くと思われる。中国はおそらく世界のリーダーの役割を担いたがっており、それを要求する場面も出てくるだろうが、その「リーダー」が動画のリンク先にしか現れないとしたら、いったい何が起こるだろうか? 習近平にとって、ローマでのG20首脳会議と気候サミットCOP26は、国際舞台に登場するのに理想的な場であったが、彼はそうしなかった。他の外交官は現地に移動していたが、海外訪問に慣れているはずの習氏は、国を出ることを拒否したのだ。このことは、何を物語るのだろうか? 国外にいる間に、政敵による陰謀が起きることを恐れているのだろうか? それともCOVID-19の感染を危惧しているのだろうか? あるいは、他国の首脳から、新型コロナウイルスの起源について情報を公開しなかったことを非難されると不安なのだろうか? 誰にも確かなことはわからないが、他国の首脳と顔を合わせなければ、国際社会での自身の評判や影響力をどのように高めればよいかを、知ることは難しくなる。中国経済は、国内のロックダウンが終わった当初は好調であったが、現在は難しい状況に陥っている。 不動産セクターにおける過剰債務の問題は、特に中間層の経済を圧迫しており、国内消費も依然として低迷している。 国内経済のさまざまなセクターで抑制策がとられているとはいえ、海外からの投資機会は引き続き存在する。ただし、中国内外のビジネスパーソンが移動も対面でのミーティングも事実上できないのであれば、機会をフル活用する方法も、機会を部分的にでも開拓する方法も、見つけ出すことは困難である。バーチャルでのつながりには、限界があるのだ。さらに、COVID-19に起因する混乱によって顕わになったサプライチェーンの脆弱性に関しても、ビジネス界からの懸念が寄せられるはずである。 コロナ後の再建活動の一環として、企業はサプライチェーンの混乱から自社を切り離そうとすることが予想され、その結果として、中国は確実に困難を抱えることになると思われる。昨年私はこのコラムで、この前例のない世界的なロックダウンの後で、どのような世界が出現するだろうかと問いかけた。そのロックダウン後の世界に対する注目が徐々に高まっており、現状では、中国のビジネスパーソンや学生や旅行者は国内にとどまり、中国はきわめて熱心な海外からの旅行者以外に対しては閉ざされた国になると予想される。このことからもわかるように、過去30年間の中国との関わりを指標として、今後の中国との関係を予測するのは難しい国外の我々は、中国が国際社会から距離を置き、幻想を肥大させ、敵愾心を募らせ、怒れる孤立へと逆戻りする事態にならないことを祈らなければならない。 気候変動対策に取り組み、将来またパンデミックが発生した時に適切に対応するには、中国の関与は不可欠だからだ。一方で、中国指導部の偏執的な態度を見ていると、当面の間は、そうした関与が進むことはなく、限定的なものにとどまると考えられる。写真:ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/
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2021/11/11 15:47
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コロナ禍で孤立する中国(1)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China”の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信しているフレイザー・ハウイーの考察を2回に渡ってお届けする。「中国を永遠に国際社会の外に置いておくことはできない。孤立が続けば、幻想を肥大させ、敵愾心を募らせ、近隣国の脅威となるからだ。」 リチャード・ニクソン、1967年「怒れる孤立」リチャード・ニクソン大統領がこの言葉を書いた当時、世界情勢は、現在とはまったく異なっていた。米国は、泥沼化したインドシナでの戦争から抜け出せず、米ソ冷戦の影響は世界中に波及しており、中国においては、最終的にその物理的な遺産の多くと数百万人もの国民の命が失われることになる文化大革命が始まっていた。 中国は、人口こそ世界1位であったが、世界経済における存在感は小さく、台北の国民党政府が正統な中国代表権を有する政府と認められていたため、中国の外交官は世界のほとんどの首都から締め出されていた。ニクソン大統領とヘンリー・キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領補佐官は、中国の国民に民主主義と普遍的価値観を拡げるという聖戦的な意図ではなく、ソ連封じ込めのための世界規模の地政学的ゲームの一環として、対中戦略そして中国との関わり方を決めていた。ニクソンは、中国が「怒れる孤立」の状態にあると表現しており、彼とキッシンジャーのやり方には失敗点もあったにせよ、当時の米国の中国に対するアプローチや関わり方は、現在までに多大なメリットをもたらしており、特に中国国民にとっては、近代史上で最も健康で、食料に恵まれ、金銭的に裕福な生活が実現することになった。しかし現在、怒れる孤立は、妥当な表現であり憂慮すべき問題となっている。武漢で珍しい呼吸器感染症の最初期の患者が記録されてから約2年が過ぎ、COVID-19は、最初に感染が始まったこの国を除く世界中で大流行した。感染拡大の初期段階における対応、そしてその後の情報開示や透明性に関連した問題について、中国が大きな批判にさらされるのは当然のことである。 武漢の研究所で実際に何が起きていたのか、答えを知りたいと願っても、おそらく判明することはないだろう。中国共産党の指導部は、ウイルスの起源、そして誰が何をどの時点で知っていたかという疑問に対して、否認とごまかしを強め続けてきた。一方で、翌1月末には、中国はウイルス根絶を目指すことを決め、COVIDゼロ戦略に基づき、わずか1名であっても陽性者が見つかれば、国民に厳格な制限を課した。その後、東アジアのいくつかの国や、よく知られるところではオーストラリアとニュージーランドも同様のアプローチをとった。仮にすべての国がこうした厳しい制限を採用していれば、新型コロナウイルスのパンデミックがたどった経緯は大きく異なるものとなっていただろう。だが、きわめて多様な統治形態や社会規範の国々で構成されるこの世界において、COVIDゼロのアプローチがあらゆる国で成功したはずだと考えることは、現実には不可能である。注目すべきは、中国では、この厳格なロックダウン後に国内での規制が大幅に緩和され、過去18ヵ月間の大半において、人々がCOVID-19関連の制限とは無縁な日常生活を送ってきたという事実である。 自国の「バブル」の中での国民生活は、ほぼかつての日常に戻っているのだ。ただし、新型コロナウイルスの性質や深刻さがほとんどわかっていなかった流行当初であれば意味があったやり方は、今日ではもはや通用しなくなっている。 感染力の高いデルタ株への変異が起き、さらに重要な点として、効果的なワクチンが広く接種可能になったことで、パンデミックに対するアプローチをコロナウイルスとの共存へと転換させることも可能になり、現に世界の大半の国ですでにそうした方向転換が見られる。そうした動きがどの国でも一様ということはなく、死亡者数や感染者数をどこまで許容できるかという問題になると、国ごとにかなりの違いがある。シンガポールのウィズコロナ政策は英国のそれと大きく異なるように見えるが、両国とも、前に進むこと、そして、かつての日常に戻る代わりに、国民生活を全面的に左右する要素としてではなく生活の背景の一部としてCOVID-19を扱うやり方に戻ることが必要だと、十分に理解している。ニュージーランドでさえ、ゼロコロナのアプローチはもはや理にかなっていないという認識に至っている。それにも関わらず、中国の指導部には、より共存的な姿勢に移行する兆しは見られず、今後数年間は、共存を目指す可能性は低い。遠のく往来再開の時期中国はこれまでに国内で開発・生産したワクチンの接種を22億回以上完了しており、このこと自体は際立った実績と言えるが、現実としてこうしたワクチンの有効性や感染防護力がどの程度であるかは不確かである。初期の臨床試験データは乏しく、一部では矛盾も見られた。そして、中国国内では意味をなすだけの大規模な感染流行は起きていないため、現在も国民の多くが、COVID-19を経験していない状態である。中国は、新型コロナウイルスワクチンの相互承認を要求しているが、中国国民のワクチン接種状況を理解するためのデータは事実上存在せず、そうしたデータを集めるのも不可能である。したがって中国が海外との往来再開に意欲的でないのは、おそらく驚くにはあたらない。だがこのことは、考慮すべき側面のひとつに過ぎない。他のあらゆる事柄と同様に、何よりも大きいのは政治の問題である。初期段階での失敗の後、中国共産党はゼロコロナの成功を、国民に対する国威発揚の手段として利用してきた。国内において封じ込めがうまくいったのを、他の多くの国の明らかに高い死亡者数や失敗例と対照させながらアピールしてきたのだ。それだけではなく、COVID-19の起源は中国にはなく、中国はパンデミックの犠牲者であるというありえない他国への非難を拡散し続けている。この状況で中国は、現在の成功のイメージを損なうことなく、よりウイルスと共存する社会へと、はたしてどのように移行するのだろうか? 国産ワクチンの有効性は低いか中程度である可能性が高いこの国では、いかなるウィズコロナのアプローチも、感染者数と死亡者数の劇的な増加を招くと思われる。国家が検閲体制をとっていても、携帯電話の普及率の高さを考えると、感染流行を国民の目から隠すことは不可能であろう。国内でのイメージ低下を避けたいと願う一方で、注目される重要なイベントの数々が控えているため、少なくとも党指導部の考えとしては、コロナゼロと海外との往来の厳格な制限の継続は不可欠ということになる。 2022年2月の冬季五輪では、海外からの参加者数が厳しく制限され、到着後も常に監視を受けることになる。さらに重要なイベントが、2022年後半の第20回党大会だ。奇蹟的な出来事でも起きない限り、同大会において、習近平党総書記が5年間の任期の3期目を迎えることが決まるだろう。習氏の権力は、国家元首としての役割ではなく、中国共産党の最高指導者としての役割に起因している。 党大会は何年もかけて準備・計画され、彼にとっては、いかなる出来事(とりわけ新型コロナウイルスの流行)による妨害も許されない政治的日程の頂点なのである。2020年3月の全国人民代表大会がCOVID-19により延期を余儀なくされたことを思い出してほしい。こうした事態は、今回の党大会においてはあってはならないのだ。すなわち、これから少なくとも丸1年は海外との往来が制限されることになる。さらには、万事が計画通りに進むのであれば、そのわずか数ヵ月後の3月には国を挙げての壮大な人民代表大会が開かれる。それならば、少なくともその時期までは待つべきだという考え方になるだろう。この対外孤立のタイムラインについて注目すべきは、中国の政治的な思惑において、それが大きな位置を占めていないという点だ。2023年3月までに中国が世界への扉を開放する準備を整えているのだとすれば、自国に課した孤立が3年間続くことになるが、往来制限がさらに延長される可能性や、また、コロナ禍において多くの国が展開したきわめて厳格な隔離と電子追跡手段が中国国内で何らかの形で持続する可能性がないとは言えない。国内のあらゆる活動をビッグデータで追跡することを理想的だと考える独裁的国家にとって、こうした統制手段を放棄する理由はないのである。広東省は明らかに、入国時の隔離が当面なくならないと考えているようだ。同省では、ホテルを利用した現在の隔離施設から離れた場所に、5,000人を収容できる専用の隔離施設を建設しており、まもなく完成を迎える。また、中国本土との往来の確実な再開を目指しゼロコロナのアプローチをとる香港も、ここしばらくの間に、複数の隔離免除措置を廃止している。 本来は物、金、人が移動するハブであった香港は、難しい立場に置かれており、国際社会における役割の復活と同時に中国との往来再開を希望することはできない状況にある。シンガポールは現在、国際的な往来再開のアプローチをとっているが、香港が希望する中国との往来再開とは正反対のやり方であるため、香港がこれを模倣することはできない。 香港にとって、中国との往来は、国際社会との関係よりも重要なのだろうか? 答えはおそらくイエスだが、この姿勢は、地域のハブと中国本土へのゲートウェイの両方の役割を担う香港にとっては、今後も重荷となり続けるだろう。香港が、容易にアクセスできない場所のままであるならば、地域における役割や国際的な役割を果たすことはできなくなると思われる。今後も中国と同程度に入国が難しいのであれば、香港に行かずに直接中国に拠点を置けばいいのではないかと、海外企業は考えるはずだ。 香港が目指すところは、新型コロナウイルス対策について言えば、ほぼ一国一制度に等しいのだ。コロナ禍で孤立する中国(2)【中国問題グローバル研究所】に続く。写真:ロイター/アフロ(※1)https://grici.or.jp/
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2021/11/11 15:46
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橋本氏対談(2)スマートコントラクトとDeFi:逃れられない「規制」と「バグ」(3)【実業之日本フォーラム】
■失われつつある匿名性白井:世界的な暗号資産交換業者であるバイナンスが各国から非難を浴びており、サービスを縮小しています。一方、コインベースは上場し、空前の利益を出している。非常に対照的です。コインベースはアメリカの規制下、管理下にある一方、バイナンスは不透明な取引にも使われていたとも耳にします。橋本:先ほど、ビットコインはトレースが容易と言いましたが、一方で、頑張れば隠すこともできる送金形態でもあります。ミキシングと言われる手法を使えば、お金の流れを隠そうとしているということはわかっても、一体どこに行ったのか、どう流れて行ったのかは捕捉できない。ビットコインでも、そういったことができるのです。しかし、例えば、米国の一番メジャーな暗号資産交換業者であるコインベースは、そういったお金の流れを隠そうとしてミキシングされたビットコインを受け取らないと決めました。誰もビットコイン自体を止めることはできませんが、使いにくくするという形で外圧がかけられてきています。ビットコインの使う幅が増える一方、本来の意味での使い方が難しくなってきているというのが実情です。バイナンスが世界的な非難を浴びて、これまでのバイナンスでなくなってしまうのは、お金の流れを隠そうとしている人からすると、かなり厳しい流れです。ビットコインは、ミキシングをすればある程度の匿名性はあっても、ミキシングしていること自体は発覚してしまいます。怪しいお金の動きをしていると強く疑われると、コインベースの場合は口座を凍結されてしまいます。本当にミキシングをしたい人は、そういったことを避けるため、ミキシングしたビットコインをコインベースに送るのではなく、まずバイナンスに送り、そこからコインベースに送る。バイナンスの口座は一人でいくつでもつくることができます。1日当たり2BTC(※1)までは、本人確認なしで送金することができました 。一人で複数の口座を作れるのであれば、ある程度のお金持ちでも、さほど面倒なく、自分が持っているミキシング済みのビットコインを完全に匿名を維持したままバイナンスに入れたり出したりすることができます。バイナンスは本当に巨大な暗号資産交換業者で、ほとんどのユーザーが使っていると言っても過言ではありません。バイナンスから送られてくるビットコインは、普通のビットコインなのです。普通の人と同じビットコインを使うことができるのです。お金の流れが追えないだけでなく、追えなくしていることすらも隠すのが本当の匿名性なのですが、バイナンスは匿名性を完全に実現してくれるサービスだったのです。バイナンスのような本人確認の緩さを売りにしている交換業者は、大手を含めて何社かあります。まだそこには矛先が向かっていないようですが、早晩、バイナンスと同じように業務を縮小せざるを得ないのではないでしょうか。白井:アンチマネーロンダリングの視点は大事ですね。日本の暗号資産交換業者も、そのような取引に目を光らせています。ダークなお金が、現実社会や法定通貨の世界に入ってくることを、水際で止めているということですね。しかし、規制が強化されてグレーな部分が絞られていけば、業界に何が引き起こされるのでしょうか。橋本:脱税ではないとしても、自分の細かいお金の流れはやっぱり捕捉されたくないでしょう。どこで車を買ったとか、どんな絵を買ったとか、そんなことまで知られたくありません。これまでは、ビットコインでかなりのことが実現できました。最低限の知識があれば、傍から見たら普通のものと何ら区別のつかないビットコインに替えることができましたが、これが今後、どんどんやりにくくなっていきます。ちょっとでも交換業者を経由しようとすると、捕捉されてしまう世界になってしまいます。われわれのあいだで車を売買するときに、ビットコインのままずっと持っている、交換業者は使わないということであれば、ビットコインは非常に使いやすいのです。しかし、ほとんどの場合は、日本円に替えたい、ドルに替えたい、生活費に使いたいとなるので、捕捉されないお金のやりとりは非常に難しくなります。これは、避けたくても避けられない流れだと思います。白井:大きな金額を瞬時に動かすには、ビットコインは最適ですし、二者間の送金であれば、一見、当局に捕捉されないように見えますが、そのビットコインはどこかで現実社会や法定通貨と繋がっています(払い手のビットコインの購入時や、受け手のビットコインの法定通貨やモノへの交換時)ので、そこで足がつくということですね。当局に捕捉されていないビットコインを持つ人が、ビットコインのまま保持する人に支払うのであれば成立する話ですが、閉じたデジタル空間だけの利用は現実的ではありませんね。新しいサービスの多くは、当初はアングラ利用によって普及し、徐々に整備されつつ市民権を得ていきます。現在のビットコインは、導入期を過ぎて、市場が整備されつつあり、立派な資産として成長している過程に入っていると考えています。多くの既存金融機関が暗号資産への投資を表明していることが、その証左だと思います。橋本:このような動きは、暗号資産の価格形成の点ではポジティブだと思っています。ビットコインが捕捉されるとしても、ポートフォリオを分散させる中でビットコインを持っておくのは問題ないという感覚は、それなりにお金を持っている人でも、ある程度、共通認識ではないでしょうか。ビットコインがツイッターなどで使われる、ETFで投資できるようになるといったニュースを、世の中の人々は何となくポジティブと捉えています。それで買う人が増えれば、短中期的には価格上昇に寄与するでしょう。一方であまり楽しくないような気もします。僕はオタク寄りの人間ですので、アナーキズム的なところ、ビットコインの魅力のようなものが損なわれていくのは面白くありません。面白くないと持っていたいという気持ちも薄れてしまいそうですが、資産価値としては悪くないという感覚です。※1:大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)は、アカウントの引き出し限度額についての見直しを行い、本人確認のレベルが「ベーシック」であるアカウントの一日あたりの引き出し限度額を引き下げることを7月28日に発表。この変更により、これまでは本人確認のレベルがベーシックであっても一日あたり2BTCを引き出すことができたが、今後は一日あたりの引き出し限度額が0.06BTCとなる。この変更は、発表後、新規ユーザーに対しては即時に適用され、既存のユーザーに対しては2021年8月4日〜23日にかけて段階的に適用された。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/11 11:24
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橋本氏対談(2)スマートコントラクトとDeFi:逃れられない「規制」と「バグ」(2)【実業之日本フォーラム】
■メリットの裏に潜む避けられないバグ白井:従来の金融技術をスマートコントラクトで作り変えると、具体的にはどのようなユーザー体験になるのでしょうか?橋本:白井さんがご指摘のように、理論上、カウンターパーティーリスクはなくなりますので、これは非常に大きなイノベーションです。ブロックチェーンの世界は、鍵を持っていることが全てであり、それ以上でもそれ以下でもありません。社会的な知名度や銀行口座に幾らお金があるかは関係ありません。金融機関で何らかの金融取引を行う際には、社会的な地位が高い人であればその信用が考慮され、担保の差し入れは恐らく少なくて済むでしょう。しかし、ブロックチェーンの世界では、私という人格は、私がブロックチェーン上で持っている資産が全てです。ブロックチェーンの世界は、一切、そういうものを参照することができません。そのため、デリバティブ取引をしようとしたときには、多くの担保の預け入れが求められることになります。ビル・ゲイツがブロックチェーン上で1億円持っているのと、私がブロックチェーン上で1億円持っているのとは、対等に扱われます。人件費もかかりませんので、証券会社に払う手数料のようなものは、当然、安くなるでしょう。白井:サービスの受け手とサービスの供給側との中間のコストがなくなり、人件費が無くなり手数料などのコストが下がるというのは、大きな利点だと思います。また、カウンターパーティーリスクがない点も非常に魅力的です。中国は、2020年7月にデジタル人民元にスマートコントラクトを実装することを発表しました。また、これに加えて「ブロックチェーンサービスネットワーク(BSN)」というブロックチェーンのプラットフォームを作っており、デジタル人民元やスマートコントラクトとの融合を考えているのではと想像しております。BSNは、2020年4月25日に国内の商業利用向けにローンチされ、8月10日に世界的にローンチが行われたと報じられています。ホワイトペーパーによると2020年末には世界全体で200ノードに増えることが見込まれており、運用コストは従来のブロックチェーンサービスの20%程度、チェーンを形成して運用を開始するには年間わずか150~200ドルで済むと言われています。私は技術者ではないため、その詳細についてわからないところも多いのですが、簡単に、しかも安くアプリケーションを開発できるようですので、ブロックチェーンのアプリケーションを開発する上では非常に便利な仕組みのようです。これで作られるアプリケーションにデジタル人民元が使われ、スマートコントラクトが活用されることになる。これは、決済などの人々の営み、現実社会の経済活動が、一体として機械仕掛けで動くという高効率な社会だと思いますが、いかがでしょうか。橋本:ブロックチェーン上にスマートコントラクトがあるというのは、究極的にはプラットフォームとして完結できる概念です。これまで全銀ネットでやりとりされている円を使って個々のユーザーに何かサービスを提供しようと考えると、別のシステムを作り、資金を集め、大規模な開発を行うことが必要でした。一体としてつながってはいないものの中で、電子的なお金が依拠しているというのが現状です。デジタル人民元の例では、そこがひとつの共通基盤でカバーされることになる。これは非常に便利ですね。プライバシーの議論などをさておけば、ですけれど。ただ、ひとつ忘れてはいけないのは、スマートコントラクトはバグがあったら大変という点です。イーサリアム上のさまざまなスマートコントラクト、DeFiでは、誰もが頑張ってバグがないように設計しているのですが、実際に多くのケースで、具体的には2件に1件ぐらいはバグがあります。バグがあると、そこに預けられているお金は全部ハッカーに持っていかれてしまいかねません。ハッカーにある程度のノウハウがあれば、いまのところ警察に捕捉されることなく、ドル紙幣や金(ゴールド)などに換金することができます。スマートコントラクトはバグがあると本当に大変なのです。白井: えっ、バグはそんなに多いのですか?橋本:世界で最初のスマートコントラクトのバグの事件として有名なのがThe DAO事件です。このときにはハッカーに数百億円ものお金が取られました。あまりにも被害の規模が大きかったため、「ブロックチェーンを少し巻き戻したほうがいいのではないか」という議論がなされました。そして、イーサリアムは巻き戻すことを選択しました。しかし、いまの世界で、巻き戻していてはきりがない。あまりにもいろいろなところでバグによって何億円、何十億円単位での資金が流出しています。かつてイーサリアムが巻き戻しを選択できたのは、ユーザーが一部のオタクだけであったからで、ここまで広がっていなかったから選択肢になったわけです。ただ、デジタル人民元の世界になってしまえば、絶対に巻き戻しはできません。絶対に巻き戻すことができない中で、スマートコントラクトを使ったサービスをどんどん作っていくのは、相当にチャレンジングなことです。概念的にそこで閉じることができても、そこから抜け出すことができないということでもあります。慎重な開発のもとでもバグが避けられない中で、いろいろなサービスを普及させていくには、それなりに高いハードルが存在します。ハッキングした犯人を見つけ出すことは、できる場合とできない場合があります。原理的にはできないのですが、見つかるケースは、結構、古典的な手法で見つかります。攻撃には最低限の資金、数万円程度をブロックチェーン上で用意する必要があるのですが、これをどうやって安全に入手するかというのは課題です。たとえばビットフライヤーで買ったイーサリアムを自分のウォレットに送ってハッキングの原資に使うことを考えた場合、まず必要なのはビットフライヤーの口座です。仮に本人確認に自分のパスポートを使っていたならば、捕捉されてしまいます。最初のビットコインの入手は意外と難しいのです。仮に他人から買ったパスポートで登録したとすると、私とは関係がない人の名前のパスポートを使うことになるわけですが、接続時のIPアドレスが発覚の糸口になるケースもあります。IPアドレスを隠す技術はVPNなどいくらでもあるのですが、たまにVPNの接続が切れていたりして、意図せず本当のIPアドレスで接続していたりするケースもあるのです。そういうところがきっかけとなり、古典的なIPアドレスの捜査から捕まる場合もあったりします。「橋本氏対談(2)スマートコントラクトとDeFi:逃れられない「規制」と「バグ」(3)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/11 11:23
注目トピックス 経済総合
橋本氏対談(2)スマートコントラクトとDeFi:逃れられない「規制」と「バグ」(1)【実業之日本フォーラム】
■自由な分散型金融に立ちはだかる規制白井:ブロックチェーン上で、契約と決済を自動的かつカウンターパーティーリスク(取引の相手方が破綻するなどして、契約が履行されずに損失を被るリスク)なしに行う仕組みがスマートコントラクトです。スマートコントラクトは金融、経済をより効率化させると同時に、従来の国家の形にも影響を与えるのではないかと想像しています。国の枠組みを超えて経済のグローバル化が進んでいますが、国内法のみならず国際法や多国間の合意により権利が守られているからこそ、経済面でのグローバルな成長が可能となっています。一方、経済や金融に関わる法律は、実は単純なプロトコル的側面を多く有していますが、法の遵守を強制する社会的なコストは非常に大きくなっています。しかし、ブロックチェーンとスマートコントラクトの出現で、経済、金融に関連するプロトコル的な分野については、相当な部分を代替することが可能となります。理論的には、スマートコントラクトによって、契約行為、その履行、エージェンシーコスト(依頼人と代理人との利益相反により発生するコスト)やカウンターパーティーリスクの監視、紛争解決、刑事罰など、経済や金融にかかるあらゆるコストが不要になります。立法、司法、行政が果たす役割は将来的には次第に小さくなり、自律的かつ公正な高効率のデジタル金融市場がそれらを代替することになっていくでしょう。市場の番人は、国からプログラムされたプロトコルへ、国家の役割は、市場の法整備とその強制から、マネーロンダリング防止といったような監視の仕組み作りにシフトすると見ています。この変化を好機として捉える国家は成長するでしょうし、変化に抗う国家は長期的に凋落すると考えています。橋本:ビットコインは、ビットコインを送金することに特化した仕組みで、小難しい条件付きでの送金や特殊な金融取引には全く不向きでした。それに対して、2014年、15年ぐらいに出てきたのがイーサリアムです。ビットコインを知っている人であれば、イーサリアムの名前も聞いたことがあるでしょう。これは送金形態の多様性を実現してくれるブロックチェーンであり、ほとんどのビジネスロジックがイーサリアム上で実現できます。イーサリアムのスマートコントラクトと呼ばれる機能を使えば、特殊なトークンの貸し借り、トークンの売買、条件付きの売買、例えば1カ月以内に価格がどうなっていたら送るといったようなデリバティブ契約に近いものも、実現することできます。いま、この世界に興味を持って手を出してみようと思う人は、かなりの確率でスマートコントラクトの世界に入ってくることになるでしょう。DeFi(ディファイ=Decentralized Finance)と呼ばれるジャンルがあります。イーサリアムのスマートコントラクトを使って、複雑な商取引、金融取引をブロックチェーン上で実現しようという取り組みの総称がDeFiと呼ばれているものです。2018年頃からさまざまなサービスが出てきました。最初、ブロックチェーン上でステーブルコイン、円にペッグしたようなトークンが登場しました。また、日本であればビットフライヤーやコインチェックのような取引所の機能そのものをブロックチェーン上で実現するものも登場しました。この流れは加速し、2020年の中ごろからDeFiの世界は一段と多様性が広がりました。取引だけではなく、貸し借りのサービスなども登場し、ユーザーがどんどん増えました。いま、少し勉強して、暗号資産の世界に触れてみたいと思った人の多くがDeFiに投資することになると思います。たとえば、ビットフライヤー、コインチェックでイーサリアムを買い、このイーサリアムを自分のウォレットに送り、自分のウォレットからさまざまなサービスにアクセスして、DeFiを体験するという感じです。少し興味深い最近のトレンドは、あるサービスを利用するとそこが発行したトークンがもらえるというものです。サービス普及のために、初期の頃からアーリーアダプターとして使ってくれた人にサービスの名前を冠したトークンをあげるというのが、2020年中ごろから主流になっています。人々は、そのトークンをもらうためにDeFiの世界にどんどん飛び込んできて、それなりにリスクを冒しつつも、そのトークンをいかに集めるかを競っています。トークンには往々にして値段がつきますので、それを売却することもできます。DeFiの世界に100万円持ち込み、1カ月投資したら120万円になったというように、それなりの利率でどんどんトークンがもらえてしまう。こういった動きが最近のDeFiでは流行っています。白井:いまは遊びのような感じであったとしても、将来的には、皆が興味を持ち、プログラムを開発し、お金を投資していく。スマートコントラクト、DeFiは、そのうち現在の銀行や証券、保険などの業務を代替するための知能集積になるように思います。橋本:実際にそのような流れがあります。2018年からレバレッジ取引に加えて、オプション取引、プットオプション、コールオプションのようなサービスを、完全分散型としてブロックチェーン上で実現するプロジェクトが雨後の筍のように出てきています。一方、デリバティブのやり取りについては、どの国でも規制があります。日本でデリバティブの事業を運営しようとしたらこの免許が必要、アメリカであれば何が必要といったように、多くの国がその国の居住者にデリバティブを提供するということに何らかの規制を課しています。ブロックチェーン上のスマートコントラクトでデリバティブをやり取りするサービスを実現することがどのように法律に抵触するかは、開発している人たちにとっては大きな懸念です。規制側もずっと議論を続けています。白井:ローンや保険、ファンド的なDeFiもすでに出てきていますよね。規制側と開発側のせめぎ合いについて、もう少し詳しくお聞かせください。橋本:興味深い事例をご紹介しましょう。世の中ではビットコインにレバレッジがかかったトークンやオプションのトークンが流通しているのですが、これがUniswap(以下、ユニスワップ)という分散型取引所で取引されていました。プログラムコードを書いた人は技術的に誰でもデプロイすること(=アプリケーションを利用可能な状態にすること)ができるし、デプロイされたものは、未来永劫、みんなが使うことができます。しかし、いったんデプロイされたものは勝手に使われるだけで、デプロイした人がデリバティブの事業を運営している訳でもありませんので、多くの人が、DeFiはどこの法律にも抵触しないのだろうと思っていました。しかし、少し前に、ユニスワップのフロントエンド、つまりアクセスしやすくユーザーフレンドリーなインターフェースでつなぐユニスワップのウェブサイト上に、このデリバティブのトークンが表示されなくなる、という出来事がありました。ただ、コントラクト自体は引き続きブロックチェーン上にあるのです。つまり、ブロックチェーンにデプロイすることはどこの法律にも抵触しなくても、多くのユーザーがアクセスしやすい形のサービスを提供することはどこかの法律に抵触したのかもしれません。ユニスワップが米国の法律の規制を受けるのであれば、米国でデリバティブを提供するために必要なライセンスの取得が必要なのかもしれません。そういう圧力が働いた可能性が考えられます。古典的な金融の世界と一線を画したところでデリバティブなどさまざまなものを実現できると思いきや、技術的にはできたとしても、それを使いやすくするための周辺サービスのようなところに対する規制から逃れることができない。ここをどのように乗り越え、もともとDeFiが目指していたような自由な分散型金融サービスをどう実現していくのかが大きな論点です。「橋本氏対談(2)スマートコントラクトとDeFi:逃れられない「規制」と「バグ」(2)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/11 11:21
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は売り先行もプラス圏回復、金融統計の上振れを好感
11日の上海総合指数は売り先行。前日比0.17%安の3486.45ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時3分現在、0.69%高の3516.50ptで推移している。金融統計の上振れが好感されている。一方、世界的なインフレ加速懸念が指数の足かせに。前日公表された10月の中国物価統計は、生産者物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)がそれぞれ予想以上に前月から伸びが加速。なかでもPPIはプラス13.5%に達し、26年ぶりの高い水準を記録している。
<AN>
2021/11/11 11:10
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銀リンク債を対象とするマイナス3倍トラッカーが上昇率上位にランクイン(11日10:06時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価下落が目立つソフトバンクグループ<9984>プット462回 12月 5,700円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはWTI原油先物リンク債_2022年3月限コール3回 12月 75米ドル、Inpex<1605>コール225回 月 900円、マツダ<7261>プット54回 月 850円、マツダコール115回 月 1,150円などが見られる。上昇率上位は銀リンク債 マイナス3倍トラッカー30回 12月 24米ドル(+85.3%)、プラチナリンク債 マイナス3倍トラッカー35回 12月 1,050米ドル(+42.6%)、金リンク債 マイナス3倍トラッカー44回 12月 1,825米ドル(+41.7%)、資生堂<4911>プット50回 12月 6,400円(+41.2%)、資生堂プット49回 12月 5,300円(+37.9%)などとなっている。(カイカ証券)
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2021/11/11 10:35
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NYの視点:米物価上昇が賃金の伸びを相殺、消費や回復が損なわれる危険も
米労働省が発表した10月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.9%となった。伸びは9月+0.4%から予想以上に拡大し6月来で最大。前年比では+6.2%。伸びはやはり9月+5.4%から拡大し1990年以降31年ぶり最大を記録した。また、変動の激しいエネルギーや食品を除いたコアCPIは前月比+0.6%。伸びは9月+0.2%から予想以上に拡大し6月来で最大。前年比では+4.6%。伸びは9月+4.0%から予想以上に拡大し1991年以降30年ぶり最大を記録した。ガソリン、ヘルスケアから食料品や賃貸など生活コストが広範に上昇。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として注視しているコアCPIも30年ぶり最大の伸びで、FRBの目標2%の2倍以上に達した。CPI指数の59.1%を原油価格の上昇(+12.3%)が占めた。エネルギー全般で+4.8%で、12カ月間では+30%。一時落ち着いていた中古車価格も再び上昇に転じた。前月比+1.4%、前年比+9.8%。食品価格は+0.9%、+5.3%だった。CPIの3分の1を占める住居コストは+0.5%、+3.5%。10月CPI原油:+12.3%エネルギー全般:前月比+4.8%、12カ月間+30%中古車価格:+1.4%、+9.8%。食品価格:+0.9%、+5.3%肉、鶏肉、魚、卵:+1.7%、+11.9%住居コスト:+0.5%、+3.5%。生活コストの大幅上昇が賃金の伸びを相殺する。インフレ調整後の実質賃金の伸びは前月比-0.5%。平均時給の伸びは+0.4%で、CPIの伸びをほぼ相殺する。特に、賃貸など住居コストの上昇は長引く兆候があるため、高インフレが一過性に留まらない可能性は懸念となる。FRBは今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小開始を発表したが、労働市場のスラックが存続するため利上げはまだ先との考えを示した。市場ではインフレの予想以上の上昇でFRBの金融政策が立ち遅れるとの警戒感も強まり、米金利先物市場では2022年の利上げを2回織り込んだ。ただ、物価上昇が今後、消費に影響を与え景気回復が損なわれる可能性も考えられ、スタグフレーション懸念も根強い。
<FA>
2021/11/11 07:52
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トルコリラ円は、インフレの加速を背景に戻り売りが優勢となろう サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、トルコリラ円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、今週のトルコリラ円について『インフレの加速を背景に戻り売りが優勢となろう』と述べています。続けて、『3日に発表された10月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比19.89%で、市場予想の20.4%は下回ったものの、2019年初め以来の高水準だった。前月比では2.39%上昇で、予想の2.76%を下回った。年間のインフレ率は過去13カ月中で12カ月上昇している』と伝えています。次に、『トルコ中央銀行は政策金利を16%に引き下げており、実質金利のマイナス幅が一段と拡大した。実質金利=名目金利−インフレ率=16.00−19.89=−3.89%。』と述べています。また、『生産者物価指数(PPI)は前月比5.24%上昇、前年比46.31%上昇だった。トルコ中銀はインフレが加速しているにもかかわらず9月の会合で利下げを断行し、市場の失望感を強めた。そして、国内では企業や国民がトルコリラをドルに変えようとする動きが強まっているという』と伝えています。陳さんは、『先週は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを急がない姿勢を見せたことで、トルコリラが買い戻されたが、一時的だろう。来週18日のトルコ中銀会合で利下げとなれば、トルコリラは最安値更新の可能性が高まろう』と考察しています。さらに、『米トルコ関係の緊張もトルコリラにはネガティブ要因だろう。バイデン大統領とエルドアン大統領は10月31日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれているローマで会談した。バイデン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるトルコがロシアのS400地対空ミサイルシステムを保有していることに懸念を示した。民主主義や人権を守ることの重要性についても強調したという。ただ、防衛面での協力の重要性は再確認した』と解説しています。こうしたことから、陳さんは、トルコリラ円の今週のレンジについては、『11.30円~12.30円』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の11月9日付「トルコリラ円今週の予想(11月8日)」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
<FA>
2021/11/10 17:53
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(中国)上海総合指数は0.23%安でスタート、米中関係の悪化懸念が圧迫材料
10日の上海総合指数は売り先行。前日比0.23%安の3498.94ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時59分現在、0.78%安の3479.80ptで推移している。米中関係の悪化懸念が圧迫材料となっている。また、8日に開幕した中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が11日まで開催されており、見極めるムードも強い。一方、経済活動の正常化期待などが引き続き指数をサポートしている。
<AN>
2021/11/10 11:05
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大国は小国に勝てない−戦略のパラドクス−【実業之日本フォーラム】
米戦略問題研究所(CSIS)の上級顧問であるエドワード・ルトワック氏は、著書『ラストエンペラー 習近平』の中で「大国は小国に勝てない」と主張している。この論理の重要な点は、「1対1では戦わない」という点である。1対1では大国が勝利するのは当然であろう。片方が大国の場合、周辺諸国は、次は自分かも知れないと恐怖を感じ小国に肩入れするであろうことから、大国が目的を達することが難しくなるという理屈である。理屈としては理解しても、実際の国際情勢ではどうだろうかという疑問があったが、まさにその通りの状況が展開されている。それはリトアニアと中国の関係である。リトアニアと中国の関係が急速に悪化したのは、2021年7月にリトアニアが「台湾」の名称で台湾当局の代表処を設置することを認めた以降である。中国外交部はこれを強く批判、駐リトアニア大使を召還する決定を行っている。(「小国の安全保障−リトアニアの決断−」2021.8.24参照(※1))リトアニアは、同年8月23日に国防省の調査報告として国内の5G関連移動通信体(モバイルデバイス)のサイバーセキュリティ上の評価を公表している。その中で、中国企業であるHuawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)及びOnePlus(ワンプラス)について、併せて10のサイバーセキュリティ上のリスクがあるとし、その内4つは製造時に実装されたものであると結論付けている。リスクの内容は、個人情報の流出や表現の自由を阻害するものであった。30ページを超える報告書は、セキュリティリスクの細部まで示しており、マルギリス国防次官は、中国製端末を使わないことがリスク軽減の最善策だと述べている。中国製システムについては、スパイウェアやバックドアが設置されているという噂が蔓延しているが、その細部を具体的に指摘するものは少ない。今回は、リトアニア国防省という政府機関が公表したものであり、その影響力は大きい。報告書では、これら3社がヨーロッパ市場において強い存在感を示しているとしており、今回の調査結果の影響はリトアニア一国にとどまらない可能性も否定できない。2021年9月16日、EUは「インド太平洋戦略」を公表した。経済の相互依存状況、地球規模の課題解決等を考えると、EUとインド太平洋の未来は密接に結びついているとし、中国の軍事力増強が南シナ海や台湾海峡を緊張状態にしているとの認識のもと、EUが積極的にインド太平洋地域に係るという方針を示している。その戦略として、「同じ志を持つパートナー」との協力を強化するとしている。戦略文書では、「同じ志を持つパートナー」として、日本、インド、オーストラリア、米国、韓国と並んで台湾を挙げている。同戦略には、インド太平洋における海洋安全保障のため、EU諸国が同地域に海洋プレゼンスを示すことに加え、「デジタルパートナーシップ」の作成にも言及されている。EUはインフラ接続に関し、中国の「一帯一路イニシアチブ」の代案となる「グローバルゲートウェイ」を公表している。デジタルガバナンスに関し、インド太平洋方面の諸国と連携を深め、これを足掛かりに、すでにガバナンスが定着しているオーストラリア、韓国、米国、カナダ等との連携を強化することを目指している。海洋プレゼンスの強化に関しては、英仏の空母機動部隊やドイツ海軍艦艇のインド太平洋方面行動は、EUの戦略文書を先取りした行動であった。11月5日に、ドイツ海軍艦艇が約20年ぶりに日本に寄港したが、ドイツ外務省報道官によれば、ドイツ政府が申し入れていた同艦の上海寄港は中国が受け入れを拒否したとしている。中国が、ドイツ海軍艦艇のインド太平洋展開を自国に対する圧力と認識し、不快感を示したものであろう。10月21日に、EU議会でEUと台湾の関係を強化すべきという法案が580対26という大差で可決された背景には、EUのインド太平洋戦略の影響がある。10月30日、中国外務省報道官は、リトアニアとEUに対中関係を悪化させるべきではないと警告を発している。中国がリトアニアとEUの動きを結託したものとみている証左である。それにもかかわらず、11月3日、EU議会の代表者は台湾を訪問、蔡英文総統と会談し「あなた方は孤立無援ではない」とのメッセージを伝えたと報道されている。小国リトアニアと大国中国の対立はEU対中国の対立に変化した。中国外務省の副報道局長は、「強烈な不満と断固とした反対」を表明するとともに、欧州側に抗議したと明らかにした。しかしながら、11月8日の時点では具体的な対抗措置はとっていない。11月3日付のGlobal Times紙(中国環球時報英語版)は、台湾を訪問した代表団は一部の反中国派議員であり、騒ぎ立てることにより自らの存在感を示そうとしているだけであり、相手にするのは時間と資源の無駄であるとの論評を掲載している。同紙は、中国政府の方針を代弁することが多く、中国としては、EUとの対立を、ローキィで扱うことにより沈静化を図っていく方針であることを示すものであろう。小国リトアニアに、台湾という名前を冠した連絡事務所を設置させないという中国の目的は果たすことができず、結果的には中国は勝つことができなかったという見方もできる。リトアニアが中国からの圧力に屈しなかった理由は、EUがリトアニア側についたという事が大きいが、中国への経済依存度も低く、距離的にも中国から遠いという背景があることも事実である。しかしながら、日本が中国と対峙する場合、教訓とすべき事項も多い。その一つは、「同じ志を持つパートナーとの連携」強化である。もちろん日米同盟が基軸であることは確かであるが、EUがインド太平洋戦略において日本を各分野におけるパートナーと位置付けていることを重視すべきである。19世紀の英国首相パーマストンは、「英国は永遠の友人も持たないし、永遠の敵も持たない。英国が持つのは永遠の国益である」、と述べたとされる。アフガニスタンからの米軍の撤退に見られるように、最終的な価値基準は国益である。日米同盟のみに依存する安全保障は心もとない。価値観を共有する国々との関係を強化することはもちろんのこと、軍事だけではなく、経済、外交、科学技術あらゆる分野で安全保障を担保する方策を講じる必要がある。岸田総理大臣が経済安全保障担当大臣のポストを新設したのは、その観点から重要な一歩と言える。今後、経済関係省庁の垣根を超え、さらに外交、防衛各大臣とどのような連携を図って我が国の安全保障を支えていくかが注目される。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:代表撮影/ロイター/アフロ(※1)https://forum.j-n.co.jp/post_politics/2463■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
2021/11/10 10:41
注目トピックス 経済総合
日産自動車を対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(10日10:06時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしてはイーサリアム先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 12月 1.0米ドル、WTI原油先物リンク債_2022年3月限コール5回 月 85米ドル、IHI<7013>プット39回 月 2,400円、三井金属鉱業<5706>コール68回 月 4,250円などが見られる。上昇率上位は日産自動車<7201>コール293回 12月 725円(+86.7%)、日産自動車コール292回 12月 650円(+74.7%)、エヌ・ティ・ティ・データ<9613>コール91回 12月 2,750円(+63.2%)、エヌビディアプット106回 12月 210米ドル(+57.1%)、エヌ・ティ・ティ・データコール90回 12月 2,450円(+53.0%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/11/10 10:22
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ウォール街を知るハッチの独り言 カツオくんとワカメちゃんの学費を米国株投資で貯めるとしたら
さて、マネックス証券の「メールマガジン新潮流」が、11月8日に配信されました。そのなかから今回は、同証券のチーフ・外国株コンサルタント、『ハッチ』こと岡元兵八郎氏のコラム「ウォール街を知るハッチの独り言」の内容をご紹介いたします。最近日曜の夕方、国民的お茶の間番組と言われるサザエさんを観ながら一つ余計なことを考えたのです。それは、磯野家のカツオくんや、ワカメちゃんの大学の授業料はちゃんと準備されているのか。父親である磯野波平さんは、子供たちの将来を考え、教育費はきちんと貯めているのか。ネット上の推測によると、サザエさんの家は世田谷区桜新町にあり、4LDKの庭付き一戸建てで、2.7億円程度の資産価値があると言われています。もしも、本当に2.7億円という価値があったとしても、その家を担保して銀行からお金を借りない限り、自宅はキャッシュを生むことはありません。カツオくんとワカメちゃんの授業料は波平さんがなんとかしなければなりません。フジテレビのHPによると、一家の主である波平さんは54歳、カツオくんは小学5年生の11歳で、ワカメちゃんは2歳年下で小学3年の9歳となっています。さて、皆さんもご存知の通りカツオくんは勉強が苦手のようです。そのカツオくんが中高で猛勉強、晴れて東京の私立大学へ入学しました。すると、入学金や授業料だけで140万円、2年から4年までは授業料だけで年間100万円かかるとします。つまり4年間で440万円かかる計算です。お小遣いは別に要りますが、そこは是非ともカツオくんにアルバイトを頑張ってもらいましょう。真面目な波平さんのことですから、子供たちの教育資金のことは考えているのではないかと思うのですが、万が一です、万が一まだそこまで考えてなかった場合、私が彼の友人であれば、今直ぐに投資を始めるべきだとアドバイスをするでしょう。もしも、必要な授業料全額をアメリカ株(S&P500指数連動)の投資信託に投資をしたとすれば毎月いくら投資に回せば良いのかと考えてみました。サザエさんの番組スポンサーには米国企業のAmazonが連ねているので、磯野家の運用も勿論、米国株です。では、早速、波平さんにご提案してみましょう。先ず初めに長男カツオくんです。11歳のカツオくんの為に大学4年間で必要な学費440万円を18歳の3月末までに貯めるとします。1990年から2020年末までのS&P500の円建ての実際の平均年間リターンは11.4%でした。波平さんがカツオくんの為にこれから毎年3月末にS&P500指数連動型の投信に投資をし、そのリターンは毎年7%と控えめに仮定すると7年間毎年508,434円を投資に回さなければなりません。月額にすると42,370円となります。この間株価の上昇分で増える分を合計すると840,962円という結果です。では続いて長女ワカメちゃん、現在9歳の彼女が同じく東京の4年制の大学へ進学するとすれば、投資期間9年間で440万円貯める必要があります。カツオくんと同じく米国株投信に投資をし、平均7%のリターンが得られるとすれば、必要なのは年間367,340円となり、月額にすると30,612円を積み立てる必要があります。この間の株価の上昇分を合計すると1,093,940円にもなります。そうすると波平さんは、今から毎年875,775円、または毎月合計72,981円を彼らの大学学費の為、投資に回さなければなりません。ひょっとすると波平さんは焼き鳥屋やおでんやさんへの寄り道を減らす必要があるかもしれません。波平さんの給料は分かりませんのでなんとも言えませんが。いずれにしても、ワカメちゃんが大学に入学する時には波平さんは今の会社を退職するであろう63歳です。授業料のための投資は早めに始めた方が良いですね。一方、24歳のサザエさんのご主人のマスオさんはまだ28歳、一人息子のタラオちゃんはというとまだ3歳です。今マスオさんと話す機会があれば、今すぐにタラオちゃんの教育資金を貯め始めるよう勧めるつもりです。カツオくんとワカメちゃんと同じ様に学費に440万円かかるとすれば、今から始めれば年間175,096円、月額にすると14,591円で済むのですから。さて、改めて先週サザエさんを観ました。磯野家の電話はダイヤル式、テレビはブラウン管でした。ということは、生憎この時代には、米国の株価指数に積み立て投資ができる投資信託など存在していなかった時代であることを確認しました。ただ、どのような時代であったにせよ、我々にとっての教訓は、早く投資を開始すればするほど、キャピタルゲインだけでなく、配当金の複利効果で得られるリターンもトータルのパフォーマンスに貢献してくれるということです。長期に渡って成長が見込める米国株、皆さんも今すぐ御自分のため、そして、お子さんの為に長期投資を始めてみるのはいかがでしょうか。マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント 岡元 兵八郎(出所:11/8配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
<FA>
2021/11/10 09:23
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NYの視点:インフレ上昇一服、ブレイナードFRB理事の議長指名説に金利低下
ゴールドマンサックスは先週末、インフレは弱まる前に一段と強まると警告した。連邦準備制度理事会(FRB)は今月から資産購入規模を月150億ドル減らしていく計画だが、シティグループのエコノミストはFRBが資産購入の削減額を225億ドルに増やしペースの加速を迫られ、2022年4月にも購入を終了するとの見通しを示した。早めの利上げ開始の必要性に迫られる可能性を警告した。こういったインフレ上昇への警戒感が強まる中、米労働省が発表した10月生産者物価指数(PPI)は前月比+0.6%となった。伸びは、9月+0.5%から拡大も予想に一致。前年比では+8.6%。伸びは予想通り9月に続き過去最大の伸び。ガソリンや自動車価格の上昇が引き続き全体指数を押し上げ、変動の激しい食品、エネルギーを除いたコアPPIは前月比+0.4%と、伸びは9月+0.2%から拡大も予想は下回った。前年比では+6.8%と、やはり9月に続き2カ月連続で、過去最大を記録した。商品価格(goods)が+1.2%となった一方でサービス価格の伸びは+0.2%にと留まった。建設価格は+6.6%。商品価格の上昇の3分の1はガソリン価格の(+6.7%)上昇が占める。サービスでは80%が自動車価格(+8.9%)の上昇が占めた。ただ、PPIは記録更新とはならず。想定内にとどまったほか、コアPPIは前月比での伸びが予想を下回るなど、急速なペースでの物価上昇が一段落し始めた兆候ともとれる。パウエル議長を始め、FRB高官はサプライチェーン混乱の改善に連れ、来年の第2、第3四半期にインフレが鈍化すると見ている。バイデン大統領が民主党でハト派のブレイナード米連邦準備制度理事会(FRB)理事を次期FRB議長に指名するとの見方も手伝い米国債相場は上昇。ワシントンで10日に発表予定の10月消費者物価指数(CPI)でさらにインフレ動向を確認していく。
<FA>
2021/11/10 07:38
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.24%高でスタート、経済活動の正常化期待などで
9日の上海総合指数は買い先行。前日比0.24%高の3507.10ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時52分現在、0.17%高の3504.66ptで推移している。経済活動の正常化期待が指数をサポートしている。また、昨夜の米株高や米市場にADR上場する中国教育株の大幅上昇も好感されている。一方、中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)がきのう8日に開幕しており、見極めムードが強まっている。
<AN>
2021/11/09 10:58
注目トピックス 経済総合
アドバンスト・マイクロ・デバイセズのコール型eワラント前日比3倍超えの大幅上昇(9日10:27時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つミネベアミツミ<6479>コール81回 12月 3,000円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはユニ・チャーム<8113>コール102回 11月 4,900円、ヤマハ発動機<7272>コール17回 月 3,700円、日本製鉄<5401>コール257回 月 2,650円、ヤマハ発動機プット17回 月 2,700円などが見られる。上昇率上位はアドバンスト・マイクロ・デバイセズコール77回 11月 150米ドル(前日比3.7倍)、ソフトバンクグループ<9984>コール589回 11月 7,100円(前日比3.6倍)、ソフトバンクグループコール588回 11月 6,200円(前日比2.7倍)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズコール76回 11月 130米ドル(+94.6%)、東レ<3402>プット144回 11月 750円(+82.5%)などとなっている。(eワラント証券)
<FA>
2021/11/09 10:43
注目トピックス 経済総合
コロナ時代の「日本のガバナンス」(第2回)ASEANで進む日本のワクチン外交と健康危機管理対策【実業之日本フォーラム】
毎年、秋が深まる頃になるとASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議が開催される。あわせて日本、中国、韓国、米国、豪州などの首脳を招いた関連会合も開かれるのが恒例となってきた。新型コロナの感染拡大により昨年に続き今年もオンライン形式で、10月26日にASEAN首脳会議、27日には日ASEAN首脳会議、ASEAN+3(日中韓)首脳会議、さらにバイデン米国大統領も参加する東アジアサミット(EAS)が開催された。1.ASEANという戦略的パートナー岸田文雄総理は首脳会議にオンラインで出席し、ASEANと連携して「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取組を力強く推進すると述べた。さらに、台湾海峡の平和と安定の重要性や、東シナ海、南シナ海をめぐる情勢を踏まえ、経済的威圧にも強く反対すると述べた。政府の報道発表では名指しされていないが中国が念頭にあることは想像に難くない。また東アジアサミットに出席したバイデン大統領は、インド太平洋地域が開かれ、繁栄し、安定していることの重要性を指摘した。ただしホワイトハウスの報道発表にはFOIPそのままの文言は見られない。ASEANは、中国が警戒するFOIPをそのまま受け入れることに抵抗がある。そうしたASEANの事情への、米国の配慮が垣間見える。ASEANは、日米豪印など民主主諸国との首脳会談のみならず、10月26日には中国・ASEAN首脳会議も開催した。ここで中国とASEANは「包括的戦略パートナーシップ」を設立することで合意した。これまでの「戦略的パートナーシップ」から格上げされた関係となる。インド太平洋のど真ん中に位置する東南アジアは、米中対立の主戦場の一つとなっている。ただし東南アジア諸国も、地域機構であるASEANも、米国か中国か、どちらか一方だけ選ぶということはできない。政治、経済、社会、文化のすべての領域で、米中の両方と緊密な関係を続けてきたからだ。だからこそASEANは、日米のみならずG7も明示的に平和と安定を求めている台湾情勢について、表立った立場を示すことは避けている。米英豪3か国間の安全保障パートナーシップAUKUSについても東南アジア諸国で賛否がわかれており、マレーシアは「軍拡競争を招きかねない」と批判している。FOIPについては今年前半の日米首脳会談やG7首脳会談でも、その重要性への言及があった。他方でASEANは中国が警戒するFOIPの代わりに、2019年以降、独自に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」という構想を掲げてきた。日本にとってASEANは、自由で開かれ、ルールに基づくインド太平洋地域を実現していくために価値観を共有する「戦略的パートナー」である。日本は東南アジアに米国か中国かという踏み絵を踏ませるようなことはせず、慎重な外交を続けてきた。岸田総理は今回の日ASEAN首脳会談や東アジアサミットでも、開放性、透明性、包摂性、法の支配といったAOIPが掲げる価値は、FOIPと本質的な原則を共有しており、具体的な協力をさらに進めていくと述べた。日本のみならず、日米豪印のクアッドもAOIPを強く支持している。日本が米国など民主主義諸国とともに、毎年この時期、ASEAN諸国と首脳レベルの会談を続けていることは極めて重要なことである。同時に、米中対立が深まる中、東南アジアから日本への期待も高まっている。米国や中国にできない、日本ならではの協力によって東南アジアで存在感を示していくことが、より一層、重要になっている。2.新型コロナ対策支援日本が今年のASEAN関連首脳会合で目玉として強調したのが、新型コロナ対策支援だった。その柱は、ワクチン現物供与、コールドチェーン整備支援、財政支援円借款、そしてASEAN 感染症対策センターの運営支援である。日本を含め東南アジアは欧米に比べ、ワクチン接種の開始が遅れた。こうした中、日本は菅政権でファイザー社及びモデルナ社のワクチン接種を急速に進めるとともに、国内で製造したアストラゼネカ社ワクチンを東南アジアへ供与した。インドネシアに約415 万回分、ベトナムに約 408 万回分、フィリピンに約 308 万回分など、ASEAN全体で合計1,600 万回分以上のワクチンを供与してきた。これに加え日本は台湾にもこれまで6度、約420万回分のワクチンを供与してきた。これらを合計すると、日本はこれまでに20か国・地域へ3,000万回分以上のワクチン現物供与を行ってきている。これは米国、中国、インドに次ぐ規模である。日本はメイド・イン・ジャパンのアストラゼネカ社ワクチンを活用し、いまやワクチン供与大国となりつつあるのだ。さらに日本が得意とするのが、ワクチンを超低温のまま冷凍・冷蔵・保管・輸送するコールドチェーンである。国際空港から接種現場の人々の腕までワクチンを届けきるコールドチェーン整備の「ラスト・ワン・マイル支援」として、日本はASEANに25億円以上の無償資金協力を実施してきた。魚など生鮮食品を日本中、地方や離島から首都圏まで届ける高品質な小口保冷配送は、いまや日本が世界に誇るお家芸となっている。その先駆者となったのが「クール宅急便」で知られるヤマト運輸だ。同社は日本政府とともに、小口保冷輸送の国際標準化を目指した。そして2020年、国際標準化機構(ISO)において、日本政府が主導する形で、小口保冷配送サービスはISO23412として国際規格となった。その背景には、中国でクール宅急便に類似のサービスが広がりはじめ、それが、多少の品質劣化に目をつぶった保冷配送の世界標準になってしまうかもしれない、という危機感があった(「物流のガラパコス化を乗り越えるために。ヤマトが主導するフィジカルインターネットと国際標準化の取り組み」ハフポスト、2021年9月10日)(※1)。小口保冷配送サービスの国際標準化は、ASEANという大きな市場を見すえた取組でもあった。こうした官民一体のルールメイキングと、日本の保冷配送技術が、ワクチン接種の加速化という、ASEAN諸国の健康危機管理に貢献している。ワクチン現物供与とコールドチェーン整備支援は、日本のワクチン外交の二枚看板だ。こうした日本の協力が、東南アジア諸国でワクチン接種の加速化に果たした役割は少なくない。世界各国のワクチン接種回数を比較すると、中国、インド、米国、ブラジルに次いで第5位がインドネシア(1.93億回)、第6位が日本(1.89億回)となっている(Our World in Data、2021年10月31日時点)。さらに日本はFOIPを推進していくため東南アジア諸国の経済回復も下支えしている。これまで累計約1,950億円の無利子に近い財政支援円借款を実施してきた。そして、新型コロナが収束したとしても、近い将来ふたたび新興・再興感染症のアウトブレイクが日本そして東アジア全域に襲い掛かるものとして備えておかねばならない。日本は昨年、約55億円を拠出してASEAN感染症対策センターの設立を支援した。これは東南アジアのみならず、日本の健康危機管理のためにも重要な感染症対策の拠点である。病原体をすばやく検出し、初動から機動的に対応するため、東南アジア諸国との平時からの連携がますます重要となる。現地の邦人保護も課題だ。また、東南アジア諸国で流行してきたデング熱、ジカ熱、マラリアなど熱帯病が、気候変動により日本国内で流行する可能性も十分にある。さらに、次のアウトブレイクではワクチンや治療薬がすばやく使用できるよう、日本と同じくモンゴロイドの人々が多い東南アジア諸国とが連携し、今からでも国際共同治験ができるよう体制を整備しておくことも大切である。ASEAN感染症対策センターにおいて、日本は各国の公衆衛生担当者向けの研修を始めた。東南アジアは、地理的、社会的、経済的、そして歴史的にも、日本と密接な関係にある。日本がASEANでワクチン供与とともにコールドチェーン整備を支援し、さらに将来の感染症をはじめ健康危機への対応能力を高めることで、戦略的パートナーとしての協力はさらに深化していくことだろう。執筆者プロフィール相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員。国連・外務省・IT企業で国際政治や危機管理の実務に携わり、2020年から現職。研究分野は国際公共政策、国際紛争、新型コロナ対策やワクチン外交など健康安全保障、経済安全保障、制裁、サイバー、新興技術。2020年前半の日本のコロナ対応を検証した「コロナ民間臨調」で事務局をつとめ、報告書では国境管理(水際対策)、官邸、治療薬・ワクチンに関する章で共著者。慶應義塾大学法学部卒、東京大学公共政策大学院修了。ツイッター:https://twitter.com/Yoshi_Sagara※1:https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_613ac579e4b09519c502a523提供:Brunei ASEAN Summit/AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/09 10:40
注目トピックス 経済総合
NYの視点:米インフレ指標に注目、FRB高官は引き続き利上げを急がず
今週は10月生産者物価指数(PPI)や10月消費者物価指数(CPI)など重要インフレ指標の発表が予定されている。サプライチェーンの混乱や供給ひっ迫によるエネルギー価格上昇が世界的な物価上昇に繋がっている。10月消費者物価指数(CPI)は前年比で1990年以降31年ぶりの大幅な伸びが予想されている。FRBがインフレ指標として注視しているエネルギーや食品を除いたコアCPIも伸びが拡大する見込み。NY連銀の10月分1年期待インフレは0.4%ポイント上昇し5.7%と、統計を開始した2013年6月以降で最高を記録した。ただ、3年期待インフレは4.2%と、前回と同水準。パウエル議長はサプライチェーン混乱が想定以上に長期化する可能性やインフレリスクの上昇を認識しながらも、インフレがいずれ鈍化するとの見解や、中長期のインフレ期待が抑制されており、利上げは急ぐ必要はないとの姿勢を維持している。ただ、上昇した場合は対処の準備があるとした。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は8日の講演で、引き続き物価圧力が緩和することが、基本的な見解で、供給混乱が解決すれば、インフレは鈍化すると見ていることを明らかにした。ハト派として知られるシカゴ連銀のエバンス総裁も8日の講演で「最近のインフレの上昇の多くは一過性」と表明すると同時に、需給状況の正常化、インフレ鈍化に要する時間にはかなりの不透明感があると加え、昨年夏に比べ、インフレ見通しリスクは大きいことも認めた。しかし、長期インフレ期待は予想に一致または、2%を下回るとしており、利上げは2023年まで適切になるとは考えていない。■NY連銀10月1年期待インフレ:5.7%(過去最高)3年期待インフレ:4.2%(前回4.2%)賃金の伸び:+3.3%(+3.0%)
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2021/11/09 07:53
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