注目トピックス 経済総合ニュース一覧

注目トピックス 経済総合 NY金は、1850ドルへ向けて上昇か サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY金についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、今週のNY金について『1850ドルへ向けて上昇か』と述べています。続けて、『NY金は、インフレ懸念とウクライナを巡るロシアと欧米諸国との緊張関係を背景にした地政学リスクがサポート要因となって底堅く推移している。1800ドルを割り込む場面もあったが、下値を追いかけるような展開には至っていない』と伝えています。また、『NY原油は、ウクライナ情勢の緊迫化や有力産油国の追加増産見送り決定が強材料となる中、2014年10月以来約7年4カ月ぶりに90ドル台に上昇した。原油相場は重要な節目の100ドルが意識され、インフレ懸念に拍車が掛かりそうだ。代表的な国際商品指数であるロイター/ジェフリーズCRB指数は260ポイントに接近し、2014年11月以来の高値水準に達した。CRB指数は250ポイントを超えるとインフレが警戒される水準になると言われており、インフレヘッジとして「金」が注目を集めている』と解説しています。次に、『金ETFは、8日時点で1015.96トンと年初から4.1%増加。一方、CFTC建玉ではファンドの20万枚を下回っており、内部要因的には軽い状態で、今後はファンドの買いが蓄積されやすい。米連邦準備制度理事会(FRB)による3月の利上げはほぼ織り込まれているため、現時点では金相場にはあまり弱材料になっていない』と伝えています。こうしたことから、陳さんは、『金相場はインフレや株価動向、ウクライナ情勢等の地政学リスクを背景に底堅く推移しそうだ。NY金は1850ドルを試す展開になろう。JPX金は為替の円安も支援要因になって6800~7000円のゾーンに上昇しよう』と考察しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の2月9日付「NY金は1850ドルへ向けて上昇か」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2022/02/10 17:43 注目トピックス 経済総合 「水素エンジンへの投資」は当て外れ?電力市場で遅れをとる日本企業が打つべき「究極の解決策」とは(2) 本稿は、「「水素エンジンへの投資」は当て外れ?電力市場で遅れをとる日本企業が打つべき「究極の解決策」(1)」の続きである。●「日本で成功してから海外に行く」ではダメ白井:インターネットと通信、携帯電話のパラダイムシフトで大きく世の中が変わった一方、日本は大胆にそこを切り開くことができませんでした。世界へのアクセスがすごく飛躍的に高まったのに、日本国内に固執してしまったため、世界から取り残されたイメージがあります。通信は重要な経済安全保障分野です。ボーダフォンの参入は、なんとなく仲良しグループで守り切ることができました。ところが、いまは携帯電話よりSNSの重要性が高まっています。当初、LINEは韓国企業の手によって開発されました。他のSNSもほとんどがアメリカを始めとする海外のIT企業が提供しています。急速なパラダイムシフトが起こるときには、大きな戦略的な一手を打たないと、すべてを持っていかれる可能性もありそうです。日本が再生可能エネルギー市場に明るい未来を描くには、中国が金融分野でリープフロッグ型発展を遂げたように、日本もこの分野で将来のビジネスモデルをゼロベースで再考し、かつ、育成する必要があるのでしょう。今後、電力の大きなパラダイムシフトのときに、日本の個々の企業も含めて、どういう手を打つべきなのでしょうか。伊原:本当に変わるときには、プレーヤーが変わるものです。通信では、アメリカでは昔はAT&Tが巨人でしたが、いまは送電屋です。自分が大手電力の会社の社長であれば、蓄電池の会社を買うとか、自分のいまのテリトリーではないけれど、未来の延長線上にいる人たちを取り込むのが、本来の打ち手でしょう。再生可能エネルギーのように、グローバルな産業であればあるほど、最初から世界のことを考えてアクションする必要があると思います。これから大きなビジネスを考える場合、日本の国内市場を前提で考えた瞬間にダメでしょう。海外の企業を積極的に買って、まず海外で成功して日本に持ってくるぐらいじゃないといけません。日本で成功してから海外に持っていくというのは、スピード感、規模感からも、難しいでしょう。これは太陽光発電市場にもあてはまると思います。ドイツの企業は専業メーカーですから、逃げるわけにもいきません。ドイツのマーケットだけで満足できるわけはなく、ヨーロッパ全体に行き、最終的には中国、日本まで来たわけです。偏見かもしれませんが、シャープや三洋は、自分たちの技術は良いので、多少高くても、日本の人たちはわかってくれるはずというアプローチで開発を進めたと思います。そうすると日本のマーケットすら維持できなくなるのです。白井:日本人の起業家が日本市場しか対象としないのは、大きな問題ですね。シリコンバレーなどのアメリカのべンチャー企業の投資家説明は、世界のすべての市場を対象としているので、将来の業績は指数関数的に伸びるという説明をします。未上場企業であっても、その事業計画を前提とした企業価値を使って、巨額の資金調達を行うことができます。日本の同業とは資金調達規模が圧倒的に違うため、結局、彼らがその巨額の資金を使い、結果的には世界の市場を独占することになります。加えて、大学や投資ファンド、エンジェルなどの存在がエコシステムを形成し、ベンチャー企業の成長を有機的に支えています。これが、ここ数十年のアメリカと日本との金融面に裏打ちされた事業競争力の違いです。伊原:根本的に金額の桁が違う気がします。ベンチャーキャピタルの性格にもよるのでしょうが、いかに失敗しないかを考えるベンチャーキャピタルでは、大負けするのが怖い、1案件に100億なんか張れないということになり、金額は自ずと小さくなってしまいます。小さくしか張らないと小さいリターンしか返ってきませんので、彼ら自身も大きくなりません。日本全体で小さくなっていってしまいます。日本のように、堅実に、みんなで薄くやっていくというのは、ひとつの選択肢ではあります。ただ、日本の市場が閉じていれば問題ないですが、日本は世界の中に組み込まれていますので、相対的にはどんどん日本の競争力は下がってしまいます。日本の国内だけの論理でやっていっていいという議論ではないのです。日本にはエネルギーも資源も食糧もありませんから。●エネルギーを「使わないほど良いことがある」仕組みも必要白井:日本はIT革命で乗り遅れましたが、エネルギー革命でも同じことになりそうです。エネルギー革命で大きな一手が思いつかないのですが、日本企業が優位なポジションを築ける分野はあるのでしょうか。伊原:それがあったら、みんなやるのでしょうが、そういう戦略的なことを考えるのが日本人は苦手なのかもしれません。ただ、エネルギーを使わない技術には、世界のどの国も飛びつくでしょう。白井:東日本大震災後は、全国民が省エネを心がけていました。伊原:国民の善意に頼るというだけでなく、使わなければ使わないほどいいことがあるという仕組みも同時に用意する必要があります。我慢して使わないのは長続きしないでしょうし、それはあるべき姿ではありません。省エネすれば、新しいエネルギー源をつくったのと効果は一緒です。なんだかんだと言って、再生可能エネルギーだって、設備をつくったりするのに資源を使っています。エネルギーを使わないのであれば、それすら要らないわけです。雇用のことは別にすると、エネルギーの究極のソリューションは使わないことでしょう。白井:トヨタのカイゼンに代表されるように、日本人は、オペレーションの精度を高め、効率化を推進するのが得意です。海外の人は日本の電車の正確性にびっくりしますし、東大阪とか大田区の中小企業の精緻な職人作業は、日本の競争力だと思います。しかし、ビッグデータ解析やAIのようなテクノロジーが発達し、製造業の破壊者である3Dプリンタ技術が進展すると、日本人独特の優位性を全部失ってしまうという恐怖心も拭えません。いまの日本人はダイナミックにビジネスにするのは下手そうです。いい技術やいいアイディアがあったときに、スケールするビジネスモデルに転換することや、巨額の資本調達をするなどが必要です。行政が手を差し伸べるだけでなく、経営者の積極的なマインドが必要ですね。2時間があっという間で、非常に勉強になりました。ありがとうございました。伊原:こちらこそ、ありがとうございました。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2022/02/10 17:29 注目トピックス 経済総合 「水素エンジンへの投資」は当て外れ?電力市場で遅れをとる日本企業が打つべき「究極の解決策」とは(1) 【ゲスト】伊原智人(Green Earth Institute株式会社 代表取締役CEO)1990年に通商産業省(現 経済産業省)に入省し、中小企業、マクロ経済、IT戦略、エネルギー政策等を担当。1996~1998年の米国留学中に知的財産権の重要性を認識し、2001~2003年に官民交流制度を使って、大学の技術を特許化し企業にライセンスをする、株式会社リクルート(以下、「リクルート」という。)のテクノロジーマネジメント開発室に出向。2003年に経済産業省に戻ったものの、リクルートでの仕事が刺激的であったことから、2005年にリクルートに転職。震災後の2011年7月、我が国のエネルギー政策を根本的に見直すという当時の政権の要請でリクルートを退職し、国家戦略室の企画調整官として着任し、原子力、グリーン産業等のエネルギー環境政策をまとめた「革新的エネルギー環境戦略」策定に従事。2012年12月の政権交代を機に内閣官房を辞して、新しいグリーン産業の成長を自ら実現したいと考え、Green Earth Institute株式会社に入社。2013年10月より代表取締役CEO。【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)●「水素エンジン」よりも「電気自動車プラス蓄電」伊原:日本は再生可能エネルギーやスマートグリッドの前哨戦ともいえる太陽電池モジュールの競争に負けました。蓄電池や電気自動車がこれから来るでしょうし、データもプラットフォーマーがコントロールするようになるでしょう。この未来の競争に日本の企業の姿が見えないのは不安です。白井:電気自動車の登場は、自動運転やスマートシティ、再生可能エネルギーの発展を考慮すると、自動車業界の競争優位性から、消費者の車の使い方まで、全て根本から変えてしまうでしょう。新たなパラダイムシフトの中で、中国はかなり戦略的で、かつ、ある程度支配的な地位を獲得したと考えてもよいと思われます。中国は、世界最大の電気自動車市場であるだけではなく、電気自動車関連企業も急速に成長しています。一般的には車両価格の約20%がバッテリー関係のコストですが、ブルームバーグNEFの調査では、リチウムイオン電池に関して、中国が世界の電池生産能力の7割強、部品製造の約6割を占め、サプライチェーンで特に強さを誇っていると指摘されています。水素エンジンを進めているトヨタについては、どのようにお感じでしょうか。伊原:若干無責任な発言と思ってお聞きいただきたいのですが、水素エンジンが今後の主流になるというのは難しいのではないかと思います。内燃機関の技術や生産設備を活用するということと、自動車業界の雇用を考えて、水素エンジンを選んでいるような気がします。国家としての効率的なエネルギー消費を考えたときに、将来に対する大きな投資をどちらにするかというと、水素エンジンに行くのは違う気がしています。既存のインフラや既存の形を残したいがための一手のように見えますが、そういうのに引きずられた結論はうまくいかないのではないでしょうか。白井:トヨタはFCV(燃料電池自動車)も取り組んでいますが、そちらはどのようにご覧になっておられますか。伊原:FCVも水素を使うという意味では、水素エンジンの課題の一部は同じだと思いますので、FCVが主流になるというのは難しいのではないかという気がします。白井:新たな時代に対応するためには、レガシーになりつつある過去の戦略的資産を捨てるべきですが、組織的な抵抗やチャレンジによるリスクを嫌う組織文化に阻まれるということでしょう。伊原さんが対談の冒頭で指摘された太陽電源モジュールでの失敗の原因と同じ話ですね。伊原:海外であれば、新しいものに変わろうとする積極的な姿勢が評価されますが、日本はそうじゃない消極的な選択もそれなりに評価されます。ここでもこれまで使っていたものを止めることの難しさがあります。水素エンジンと聞いたときに、海外の方々はどういう印象を持つのでしょうか。電気自動車プラス蓄電という、新しい社会、新しいパラダイムの中で、車も家も提供していくほうが、エキサイティングではないでしょうか。内燃機関を残したいという思いより、純粋に新しいことで新しい価値観やパラダイムを作りたいというほうが健全な気がします。●ゲームチェンジャーが出てくれば、市場のパラダイムも変わる白井:ちなみにアメリカでは、国内製造業を保護するため、前トランプ政権は2018年1月、結晶シリコン太陽電池の輸入製品に対して4 年間にわたり関税を課すことを決定し、実施しました。発電効率や品質に大幅な差異がない以上、こういった政策措置が図られない限り、日本の太陽光発電メーカーの国内シェアは、将来的に中国企業に消滅させられる可能性があります。現に、太陽電池モジュールに占める海外依存度は非常に大きいです。日本企業の太陽電池モジュールのシェアが低下した要因として、発電効率あたりの価格の高さが挙げられます。日本は世界に比べて高止まりしています。新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の2021年のレポートによると、2030年に向けた電源別発電コスト試算結果に基づいても、旧来の電源のコストのほうが再生エネルギーのそれよりも低く、単純にコスト面だけをみると、大手電力会社の既存の化石燃料による発電設備を廃棄するインセンティブは、乏しいと思います。世界と比較して割高な日本の発電コストが収斂するには、「規模の経済効果」が必要と思いますが、このマーケットにおける日本のシェアは次第に減少しているため、規模の経済効果を期待するのは困難です。事業用・住宅用のどちらにおいても発電コストの差、すなわち、価格競争力の差がシェア獲得のひとつの重要成功要因で、日本は国内の市場規模、グローバルな業界構造などからグローバル競争において不利な状況にあります。問題は、日本の企業をある程度温存するといったガラパゴス的な発想にあるようにも思うのですが、日本メーカーのコストを、世界的なレベルに収斂させるためにはどういった方法が考えられるでしょうか。伊原:コストは下がってくると思います。国家戦略室にいたころの数字と比較しても、日本のコストも劇的に下がっています。他の電源と比べて競争できるようになったことを考えると、これからも下がっていくと思いますし、それを前提に考えるべきでしょう。私はインターネットと携帯電話の原体験が強すぎるのかもしれないですが、本当に変わるときには政府が何を言おうが変わりますし、そういうものこそ本当のゲームチェンジャー、パラダイムシフトだと思います。ITの世界ではそれが起こってきましたが、エネルギーの世界でも、いま、起こりつつあります。そのひとつが太陽光発電であり、電気自動車であり、もしかしたら水素エンジンかもしれません。国がどれをやっちゃだめとは言わない、言うべきではないと思います。ゲームチェンジャーが出てくれば、自ずと値段も変わるでしょうし、市場のパラダイムも変わるでしょう。写真:AP/アフロ「「水素エンジンへの投資」は当て外れ?電力市場で遅れをとる日本企業が打つべき「究極の解決策」とは(2)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2022/02/10 17:28 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は0.06%高でスタート、上値の重い展開 10日の上海総合指数は買い先行。前日比0.06%高の3481.91ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時46分現在、0.00%高の3479.98ptで推移している。米ハイテク株高や国内の景気対策期待の高まりが指数をサポート。一方、新型コロナウイルス感染対策の強化に伴う行動制限の継続が引き続き指数の足かせとなっている。 <AN> 2022/02/10 10:52 注目トピックス 経済総合 ヤマトHDを対象とするプット型eワラントが前日比2倍超えの大幅上昇(10日10:00時点のeワラント取引動向) 手仕舞い売りとしては日経平均 プラス5倍トラッカー82回 3月 27,000円、SUMCO<3436>コール252回 3月 2,800円、ホンダ<7267>コール277回 3月 4,300円、ホンダコール275回 3月 3,300円などが見られる。上昇率上位はヤマトホールディングス<9064>プット106回 3月 1,950円(前日比2.2倍)、ヤマトホールディングスプット107回 3月 2,350円(前日比2.1倍)、ホンダコール277回 3月 4,300円(+92.9%)、ホンダコール276回 3月 3,800円(+75.6%)、ヤマトホールディングスプット108回 3月 2,750円(+70.9%)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/10 10:15 注目トピックス 経済総合 「中国の台湾軍事侵攻」に見て見ぬふりはもう出来ない!…今問われる「迫りつつある危機」への日本の対応力 台湾に対する「日米共同訓練の実態」「左警戒、右見張り」という言葉は、旧大日本帝国海軍が海軍軍人の心構えとしたものである。千変万化する海の上で生活する際に、左の障害物だけに気をとられ、右から近づく脅威への警戒を怠り、船を危険な状態に陥らせるなという教えである。この言葉は、一つのことに集中して他のこと、又は全体を見失ってはならないというビジネス上の教訓とも置き換えることができるであろう。2月3日から米海軍が主催している台湾東方における日米共同訓練は、アメリカが「左警戒、右見張り」の精神にのっとり、ウクライナ危機に対処しつつ、台湾へのコミットメントを誇示するために行われた共同訓練であった。日本にとっても、ミサイル発射を継続する北朝鮮と、台湾への軍事的圧力を高めつつある中国への警戒という二正面への対応といった観点があったと考えられる。それでは、台湾に対する日米共同作戦の実態はどのようなものとなるであろうか。2022年2月4日付、米海軍広報誌USNIは、2月3日から米海軍1個空母戦闘群(CSG : Carrier Strike Group)と2個両用戦群(ARG : Amphibious Ready Group)が海上自衛隊と、フィリピン海において共同訓練を実施していることを伝えた。それぞれの両用戦群に所属する海兵遠征部隊(MEU : Marine Expeditionary Unit)は、人員約2,000名、地上部隊に加え、航空戦闘部隊(攻撃ヘリ、輸送ヘリ、固定翼攻撃機等)からなる。エセックスARGには、ハワイを母基地とする11海兵遠征部隊が、アメリカARGには沖縄を母基地とする31海兵遠征部隊が乗艦しており、通常はそれぞれ別の人間が指揮を執る。USNI紙は、2個ARGが合同部隊を編成するのは2018年以来と伝えている。米太平洋軍は今回の訓練(Nobel Fusion:高貴な融合)の目的について「アメリカ、同盟国及び友好国に有利な情勢を作り出すために、「相手の海洋利用拒否」、「重要地域の確保」及び「行動の自由を確保」すること」と伝えている。CSGが空母を含めて6隻、ARGがそれぞれ3隻の強襲揚陸艦、合計12隻、そして海上自衛隊の「こんごう」が本訓練に参加している。また、各種報道によれば、陸上自衛隊水陸機動団の隊員が、沖縄において、米海兵隊と揚陸作戦の訓練を行ったとことが伝えられている。米太平洋軍HPによれば、海上自衛隊「こんごう」は、空母リンカーンの攻撃機FA-18Eによる対艦攻撃訓練に参加している。台湾への軍事的圧力を強める中国中国は台湾に対する軍事的圧力を強めており、2021年11月28日には、バシー海峡を抜け、台湾南東部の空域に爆撃機6機、空中給油機1機を含め合計27機を飛行させている。また、2021年12月19及び20日には、空母遼寧が西太平洋において航空機の離発着艦訓練を実施している。明らかに、東西両面から台湾を攻撃することを想定した行動と言える。今回日米共同訓練が行われた海域は、まさに同じ場所である。同海域を中国が自由に使える海域にしないという米軍の意図が感じられる。そして、台湾を巡る米中の軍事的対峙に、共同訓練の名のもとにすでに日本は参加しているのである。しかしながら、日本国内の反応は鈍い。2021年12月1日、安倍元首相は、台湾が主催するシンポジウムにおいてオンライン講演を行い、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と述べている。それでは、現在の日米安保、同ガイドライン及び日本国内法上、台湾有事はどのように位置づけられるであろうか。2015年9月に制定された平和安全法制では、新たに「存立危機事態」及び「重要影響事態」という概念が導入された。「存立危機事態」は、武力行使の三要件を改正した上で新たな三要件を規定し、我が国以外への攻撃事態にも武力行使が可能とするものである。「重要影響事態」は、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃にいたる恐れのある事態であり、米軍又は外国軍隊への後方支援が可能というものである。台湾を巡り米中が軍事衝突した場合、地理的にも米軍基地がある沖縄が戦場となる可能性は極めて高い。その意味で、「台湾有事は、日本有事」という安倍元首相の認識は正しい。国内法的には「存立危機事態」と認識するべきであろう。台湾を巡り米中が軍事衝突を起こしている事態を「重要影響事態」と整理、後方支援のみ実施するとした場合、日米安保体制は破綻する。「存立危機事態」と認定しても、総理大臣は安全保障会議の助言を得て「対処基本方針」を作成、閣議決定を経て国会審議を得ることとされており、一定の時間が必要である。特に緊急の必要がある場合は、防衛出動の命令を事後承認とすることができるが、台湾有事が我が国以外への攻撃であることを考慮した場合、事の重大性から、事前承認が求められるであろう。指定行政機関や地方公共団体等への指示は国会承認を経なければ正式に示すことはできず、対応が後手に回る可能性が高い。「鈍い」日本国内の反応軍事行動の特性から、事態が急速に進む可能性があり、対処基本方針や地方における対処措置はあらかじめ大枠を定めておかなければ対処できない。2004年に制定された国民保護法は、武力攻撃事態等における各地方行政機関に国民保護に関する措置を実施する事が求められている。しかしながら、万を超える住民の緊急避難等の措置に関しては、種々の制約から実動訓練が難しく、机上の空論となっている可能性が高い。今回の日米共同訓練は、実施海域及び2個MEUが参加しているということを考慮すると、台湾有事を含んだ訓練と言える。最悪の事態に備えるという観点から、日米の軍事組織が台湾有事における連携要領を確認することは当然である。2015年4月に合意した日米防衛協力のための指針において、日本以外の国に対する武力攻撃対処行動として協力できる作戦の例に、「アセットの防護」や「海上作戦」がある。今回の海上自衛隊「こんごう」の役割は、これに該当する。「左警戒、右見張り」は、いかなるリスクにも立ち向かい、安全を確保する心構えを示している。中国による台湾軍事侵攻というリスクは多くの国民が認識している。しかしながら、それによって我が国が負わなければならないリスクへの対応についての関心は低い。国民の多くが見たくない、あると思いたくないリスクへの対応策を推進するのは政治の役割である。今こそ政治家にその勇気が求められている。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:海上自衛隊/EYEPRESS/REX/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/10 10:12 注目トピックス 経済総合 NYの視点:新たなインフレ要因、トラック運転手の抗議デモ、他国にも広がる カナダで新型コロナウイルスワクチン接種義務化に抗議するトラック運転手の抗議デモは、9日で13日目に突入した。北米の越境地点、デトロイトと加オンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダー橋の一部通行遮断は続いていると報じられており、自動車生産に支障が生じているという。この橋は、物流面でも非常に重要な交通拠点と見られており、部品不足などが報告されている。政府の厳しいコロナ規制を抗議する動きは各国でも強まりつつあり、米国やフランスにも広がっている。カナダ中銀のマックレム総裁は「トラック運転手の抗議デモが景気やサプライチェーン問題を一段と深刻化させる可能性がある」と警告。今後、部品、原材料、食品、燃料などの輸送が一段と停滞し、改善し始めたサプライチェーンの混乱が再び深刻化する可能性は警戒される。パウエル議長始め、連邦準備制度理事会(FRB)は年半ばにもサプライチェーンの混乱が鎮静化し、インフレも低下し始めると見ている。ここにきて、再びサプライチェーン混乱が悪化し、物価を押し上げると、インフレだけでなく、景気にも影響する可能性には警戒される。 <FA> 2022/02/10 08:26 注目トピックス 経済総合 メキシコペソ円は、10日のメキシコ中銀会合が注目される サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、メキシコペソ円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、メキシコペソ円について、『10日のメキシコ中銀会合が注目される』と述べています。続けて、『政策金利は、5.5%から6.0%に引き上げられる見込み。ただ、5.75%に留まるとの見方もあり、この場合、ペソには売り要因となろう』と伝えています。また、『22年1月月前半の消費者物価指数(CPI)は、前年同時期比で7.13%の上昇だった。メキシコのインフレ率は22年1月まで11カ月連続でメキシコ中銀の政策目標上限である4.0%を上回っているものの、直近の実質国内総生産(GDP)が悪かったため、大幅利上げは避けたいところだろう。1月31日に発表した21年10~12月期実質国内総生産(GDP)は前四半期比で0.1%減となった。7~9月期の0.4%減に続く2四半期連続のマイナス成長となり、一般的な定義の景気後退局面を迎えたことになる』と分析しています。さらに、『21年通年の成長率は前年比で5.0%増だった。20年は8.5%減とマイナス成長だったため、メキシコ経済はコロナ前の水準にまでは回復していない。多くの金融機関が実質経済成長率の見通しを引き下げている』と解説しています。陳さんは、『メキシコ銀行はインフレを抑制しようと利上げを続けているが、インフレは抑えられていない。10日の金融政策決定会合でも利上げが予想されているが、景気後退局面に入ったことで、オブラドール大統領が、利上げを牽制する可能性もある』と考察しています。また、『メキシコ中銀の新総裁であるロドリゲス総裁は、大統領の息のかかった人物と見られており、利上げ幅が0.25%に留まれば、忖度したとの印象を市場に与え、中銀の独立性の観点から市場はリラ売りを強める可能性がある』と述べています。こうしたことから、陳さんはメキシコペソ円の今週のレンジについて、『5.50円~5.65円』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の2月8日付「メキシコペソ円今週の予想(2月7日)」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2022/02/09 18:14 注目トピックス 経済総合 AGCを対象とするコール型eワラントが前日比2倍超えの大幅上昇(9日10:00時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つAGC<5201>コール130回 3月 5,500円を順張り、オリンパス<7733>プット49回 3月 2,250円を逆張り、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>コール365回 3月 750円を順張りで買う動きや、原資産の株価下落が目立つバンダイナムコホールディングス<7832>プット89回 3月 7,800円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては日本郵船<9101>コール149回 3月 11,900円などが見られる。上昇率上位はAGCコール132回 3月 7,100円(前日比2.3倍)、AGCコール131回 3月 6,300円(前日比2.2倍)、IHI<7013>コール52回 3月 3,050円(前日比2倍)、IHIコール51回 3月 2,700円(+87.9%)、JFEホールディングス<5411>コール165回 3月 1,900円(+85.1%)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/09 15:41 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は売り先行もプラス圏回復、景気対策への期待が高まる 9日の上海総合指数は売り先行。前日比0.05%安の3450.81ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時45分現在、0.13%高の3457.12ptで推移している。前日の米株高や景気対策への期待などが引き続き支援材料。中国人民銀行(中央銀行)は8日、保障性賃貸住宅(中低所得者向け住宅)向け融資に関し、「制限する対象に含まない」とする声明を発表した。一方、国内外での新型コロナウイルス感染の増加などが引き続き警戒されている。 <AN> 2022/02/09 10:49 注目トピックス 経済総合 コラム【新潮流2.0】:立春に思う(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆) ◆北京五輪の開会式は二十四節気のカウントダウンで始まった。2月4日の立春に合わせた素晴らしい演出だった。雪上、氷上での熱い闘いに喝采を送る日々が始まった。選手たちの熱気がいかにすごくとも、雪や氷が溶けることはないだろう。しかし金融市場では、ある「熱」によって氷解したものがある。マイナス利回りの債券残高という大きな塊である。それを溶かした「熱」とはインフレと欧米中銀の引き締めスタンスだ。◆マイナス利回りの債券残高は世界全体で一時18兆ドルにまで膨らんだが、足元では急速に減少し、いまやピークの3分の1に縮小した。マイナス利回りの代表国、日本とドイツの両国で4日に5年債がマイナス金利を解消、すなわち利回りがプラスに浮上した。まさに「春が立つ」が如くに、である。◆金利のボトムアウトと立春には思い出がある。【新潮流】を毎日書いていた頃、「冬日と立春」(2015/2/4)というコラムで金利の底入れ〜反転上昇の予兆を指摘した。実際、長期金利は1月下旬を底にその後上昇基調を辿り、株式市場では銀行株をはじめバリュー株が買われる展開となった。 今また同じように金利上昇局面を迎えている。ただし、現役世代が経験したことのないインフレが背景にあるという点がまったく違う。2015年前半の金利上昇はわずか半年で終わったが、今回は果たしてどこまで続くだろうか。◆2015年に書いた「冬日と立春」は僕のお気に入りのフレーズで締めくくった。<一年で最も寒い時期に「春が立つ」のは、もうこれ以上寒くならないからである>。寒さのボトムが春の始まりなのだ。これは世の中のすべてに‐人生にも相場にも‐当てはまる。二十四節気の「立春」に始まった北京五輪は「雨水」の頃、閉会式を迎える。 「雨水」は、空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水になるという意味だ。今はまだ落ち着かない株式相場だが、雨水の頃には不安が氷解し、本格的な春へと向かっていくことを願う。マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆(出所:2/7配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋) <FA> 2022/02/09 09:25 注目トピックス 経済総合 NYの視点:ECB高官、過剰な利上げ観測沈静化に努める、仏中銀総裁は市場反応過剰との見解 欧州中央銀行(ECB)のメンバーのフランス中銀のビルロワ・ドガロー総裁は8日の会合で、「インフレは想定以上に高く長期化し国民に疑問を与えた」としたが、「依然、一時的」とのハト派的な考えを繰り返した。今後、数カ月内にインフレが緩やかに鈍化し、目標の2%を割り込む水準に戻るとの考え。また、総裁は「フランス中銀、欧州中央銀行(ECB)は域内、フランスの長期インフレが2%前後に戻るために必要なことを行う」とした。また、ECBのタカ派転換により年内の利上げを織り込む動きが強まり、イタリア債の利回りはパンデミック来の高水準となるなど、欧州債売りが強まっていたが、ECBの政策を受けた市場の反応は強すぎた可能性があると指摘している。昨日の時期尚早な判断を警告し、利上げは資産購入後で、いかなる修正も緩やかなペースになるとしたECBのラガルド総裁の発言に続き、タカ派色を弱め、市場調整をはかっているようにも見える。 <FA> 2022/02/09 07:38 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は0.03%安でスタート、米金利上昇などを警戒 8日の上海総合指数は売り先行。前日比0.03%安の3428.54ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時53分現在、0.28%安の3420.00ptで推移している。米金利上昇が引き続き警戒材料。また、国内での新型コロナウイルス感染の増加に伴う行動制限の強化もマイナス材料となっている。一方、景気対策への期待などが引き続き指数をサポートしている。 <AN> 2022/02/08 11:00 注目トピックス 経済総合 オリンパスを対象とするプット型eワラントが前日比3倍の大幅上昇(8日10:01時点のeワラント取引動向) 手仕舞い売りとしては日経平均 プラス5倍トラッカー82回 3月 27,000円、ダイキン工業<6367>コール175回 3月 30,500円、日本電信電話<9432>コール166回 3月 3,200円などが見られる。上昇率上位はオリンパス<7733>プット46回 2月 2,150円(前日比3倍)、オリエンタルランド<4661>コール176回 2月 22,500円(前日比2.7倍)、メタ・プラットフォームズプット124回 2月 240米ドル(前日比2.2倍)、ニアピン米ドルr2 1331回 2月 117円(+88.4%)、オリエンタルランドコール175回 2月 19,500円(+64.7%)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/08 10:23 注目トピックス 経済総合 NYの視点:ECB利上げ過熱感一服、政策の行方、3月会合待ち 欧州中央銀行(ECB)は先週開催した定例理事会で市場の予想通り政策金利据え置きを決定した。同時にインフレ高進が想定以上に長期化したとし、ラガルド総裁は年内の利上げの可能性を否定しなかった。このため、想定外にタカ派色が強まったとの見方に、金利先物市場はECBの年内の利上げを織り込んだ。市場では9月の利上げ観測が強まったほか、ECB政策メンバーのクノット・オランダ中銀総裁も「早くて10月の利上げもある」と言及。ギリシャ債やイタリア債など、欧州債の利回りは20年4月以降パンデミック後の高水準に達した。しかし、ラガルド総裁は7日、欧州議会での公聴会で、パンデミック抑制規制が年初から成長を損ねているとし、供給やエネルギー不足が短期的に活動を抑制していると指摘。今年後半、経済が強く回復、「インフレ見通しのリスクは上方に傾斜している」と見ており、以前よりインフレを警戒し始めていることは確か。同時に、経済が過熱の兆候を見せておらず、3月の経済予測で状況がより明らかになると指摘。時期尚早の判断を回避する姿勢を示した。また、いかなる政策修正も緩やかなペースで行うと加えた。金融政策はあくまでもデータ次第としたため、年内の利上げへの論議の過熱感もいったん沈静化。欧州債利回りの上昇も一段落した。ECBの年内1回の利上げの可能性は強まったが、3月定例理事会までは様々な思惑にユーロは堅調ながらもみ合いが続く可能性がある」 <FA> 2022/02/08 09:03 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は1.38%高でスタート、連休明け買い意欲が高まる 7日の上海総合指数は買い先行。前日比1.38%高の3407.76ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時15分現在、1.97%高の3427.67ptで推移している。春節(旧正月)連休明けの買い意欲が高まっている。連休中に海外市場の上昇などが支援材料となっているもようだ。また、景気対策への期待なども指数をサポートしている。 <AN> 2022/02/07 11:22 注目トピックス 経済総合 ウクライナ情勢めぐり「武器化する天然ガス」、今後の供給ルートに起こる「劇的な変化」とは【実業之日本フォーラム】 埋まらぬ米露の溝ウクライナ情勢が膠着している。米ロの二国間だけではなく、仏ロ、米EUそして国連安全保障理事会においても会合が行われているが、アメリカとロシアの溝は埋まっていない。先週、主として軍事的側面から「「強気なロシア」と「弱気なアメリカ」」という記事を投稿した。この記事には、ウクライナに対する軍事的圧力を強めつつあるロシアに対し、アメリカやNATOは経済制裁のみを強調、軍事的対応が限定的であることを指摘し、アメリカがロシアの軍事的強硬手段に妥協的姿勢を見せることは、インド太平洋を巡る中国との対立に悪影響を与えると記した。その見方に変化は無いが、ウクライナ情勢の緊迫化による経済的インパクトが情勢に与える影響も無視できない。欧州は天然ガスでロシアに依存特に欧州諸国のロシア産天然ガスへの依存度は高く、2021年6月現在ロシア天然ガス輸出の39.2%が欧州向けとなっている。また、ロシアにとっても回復基調にある経済をけん引しているのは、原油及び天然ガスであり、天然ガスの輸出減少が与える影響は大きい。天然ガスは、石炭や石油と比べると燃焼時に発生する二酸化炭素の量が少なく、地球温暖化対策として注目されるエネルギー源である。ロシアは天然ガスでアメリカに次ぎ世界第2位、原油でアメリカ、サウジアラビアに次ぎ3位の資源大国だ。世界の天然ガスは約7割がパイプラインで、3割が液化天然ガス(LPG)運搬船で輸送されており、ロシアと陸続きである欧州には多くの天然ガスパイプラインが走っている。その一部は、ウクライナやベラルーシを経由しているため、パイプラインが破壊されることによる経済的影響も大きい。ロシアは、天然ガスパイプラインとして、トルコ経由イタリアやオーストリア向けの「トルコストリーム」、バルト海経由ドイツ向けの「ノルトストリーム」及びシベリア方面に向かう「シベリアの力」の3つを中心に天然ガス供給を武器とした影響力拡大を狙っている。このロシアの天然ガスを武器とした戦略に影響を与えているのが、ウクライナを巡る緊張状態と中央アジア諸国を巡る中国との軋轢である。ロシアの天然ガス戦略に影響かノルドストリーム2はすでに完成しており、ドイツ規制当局の認証手続きを経て欧州委員会が審査をする流れとなっている。バイデン政権は、同パイプラインがプーチン大統領の武器として使われる可能性があることから、完成阻止を目的に経済制裁を行う事を検討したが、2021年5月に受け入れ国であるドイツに配慮し、制裁を見送っている。ウクライナ情勢の緊迫化を受けて、今年1月18日にドイツのショルツ首相は、ロシアがウクライナに侵攻すれば、ノルドストリーム2認証手続きを停止することを明らかにし、27日、欧州連合のウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長もノルドストリームの審査を停止する可能性を否定しなかった。また、アメリカとEUは28日、「供給ショックを防ぐため、世界中の多様な供給源からEUへの継続的で十分な天然ガス供給に取り組む」とし、欧州への天然ガス安定供給を維持するため連携するという共同声明を出した。ノルドストリーム2がウクライナへの軍事侵攻を阻止するアメリカの武器となるか、ロシアの人質になるかは、EUへの天然ガス安定供給の目途がつくかどうかにかかっている。中央アジア資源をめぐる「中露の綱引き」次に注目されるのが、ロシアと中央アジア諸国との関係である。カザフスタンにはウランと石油が、トルクメニスタンには天然ガスの豊富な埋蔵量が確認されており、中央アジア諸国には将来にわたって石油、天然ガス及びウランの有望な産出国が揃っている。今年1月にカザフスタンで大規模な暴動が生起した。直接の原因は燃料価格の上昇であるが、根本には長年にわたる政府の独裁的な国家運営に対する国民の不満があると言われている。トカエフ大統領は暴動を鎮圧するために、ロシアが主導する旧ソ連圏の軍事同盟である「集団安全保障条約機構(CSTO)」をつうじ、ロシア軍の派遣を要請し、要請を受けたロシアは2,500人の軍隊を送り込み、暴動を鎮圧した。一方で、カザフスタンは、中国が主導する「上海協力機構」の構成国であり、同機構が主催する対テロを主眼とした共同訓練に参加している。また、中国と直接国境を接しており、中国が進める「一帯一路」の重要経路にもなっている。パイプラインを通じて、石油および天然ガスが中国に輸送されており、カザフスタン国家統計局によれば、中国企業数は2015年から2020年で2.2倍に増加している。このような中、カザフスタンのトカエフ大統領が暴動鎮圧にロシアの介入を要請したところに、同大統領の中露を天秤にかけるしたたかさと、ロシアの中央アジアへの関心の高さが感じられる。トカエフ大統領は、国境を接する中国新疆ウイグル自治区に対する中国の強圧的な統治に、イスラム国家として不快感を持ち、中国への過度な傾斜を避けた可能性もある。これに対し中国は、1月25日に中央アジア五カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)首脳と、国交樹立30周年を祝うオンライン会談を主宰し、習近平主席は「中国と中央アジア五カ国は運命共同体である」と関係の強さを強調した。中央アジアの地政学的な位置及び豊富な資源を巡って、中露の綱引きが始まっているということだ。このようにして、ウクライナ情勢の緊迫化でEUへの天然ガス供給ルートの多角化が進み、今後中央アジア天然ガスの地位が相対的に上昇してくるものと考えられる。ウクライナ情勢を経済安全保障の側面から見ると、天然ガスが重要な地位を占めており、武器化しているという事が透けて見えてくる。そんな中、アメリカとEUが、欧州向け天然ガスの多角化を進めているのに対して、プーチン大統領はハンガリー及びイタリアの首相と会談を行い、ロシア産天然ガスの安定供給を約束し、NATO加盟国でもある両国の切り崩しを図っている。天然ガスの武器化は、リスクも大きいしかしながら、天然ガスを武器化することは「諸刃の剣」であることを理解しなければならない。欧州にとって、天然ガスの安定供給が得られないことは経済的大きなダメージとなる一方、ロシアにとっても天然ガス売却益が確保できなければ経済が低迷する。さらに天然ガスが武器化することによる新たな側面として指摘できるのは、天然資源供給ルートのパラダイムシフトの可能性である。天然ガスの最大産出国はアメリカであるが、その主たる輸送ルートはLNG(液化天然ガス)船である。これまでは、液化、港湾インフラそしてLPG船建造に伴うコストがパイプライン輸送よりも割高であったが、2021年、ウクライナ情勢が緊迫化し、欧州へのパイプラインを経由した天然ガスの値段が高騰している。今後、LPG船による輸送ルートがコスト競争力を持った場合、天然ガス供給ルートに大きなパラダイムシフトが起こる可能性があり、ウクライナ情勢緊迫化が長く続けば続くほど、その可能性は大きくなる。また、ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合、アメリカとロシアの対立は決定的となり、アメリカを中心としてロシア産天然ガスに依存しない体制構築が進むであろう。交渉結果に不満を漏らしつつも、ロシアが交渉継続に合意する理由には、決定的な決裂がロシアの天然ガス戦略に与える影響を最小限としたいと考えるロシアの思惑があると考えられる。経済のボーダレス化、産業の国際的水平分業が進むにつれ、天然ガスのようなエネルギー資源、半導体に代表される基幹部品等が安全保障上の武器となる時代となってきたと言えよう。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:picture alliance/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/07 10:51 注目トピックス 経済総合 オリンパスを対象とするプット型eワラントが前日比2倍超えの大幅上昇(7日10:01時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価下落が目立つ日本郵船<9101>コール149回 3月 11,900円を逆張り、日本郵船コール149回 3月 11,900円を逆張り、ダイキン工業<6367>コール175回 3月 30,500円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては丸紅<8002>コール123回 3月 1,150円、任天堂<7974>コール448回 3月 54,000円、ビットコイン2022年2月 プラス5倍トラッカー2回 2月 42,000米ドル、太陽誘電<6976>コール35回 3月 8,800円などが見られる。上昇率上位はオリンパス<7733>プット47回 2月 2,550円(前日比2.6倍)、太陽誘電プット26回 2月 5,700円(前日比2.5倍)、ミネベアミツミ<6479>プット78回 2月 2,650円(前日比2倍)、SUMCO<3436>プット180回 2月 2,100円(+72.9%)、イビデン<4062>プット105回 2月 6,800円(+68.9%)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/07 10:21 注目トピックス 経済総合 NYの視点:【今週の注目イベント】米CPI、ラガルドECB総裁やベイリーBOE総裁の講演 今週は、米金融政策決定において、重要な1月消費者物価指数(CPI)に注目が集まる。また、年内の利上げも除外しない姿勢に転じた欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁やクノット・オランダ中銀総裁、ビルロワ・ドガロー仏銀総裁の講演での発言に注目。今後のECBの引き締め軌道を探る。市場では早くて9月の利上げを織り込みつつありユーロ買いに繋がった。また、先週2回目の利上げに踏み切った英中銀のベイリー総裁やチーフエコノミスト、ピル氏の講演にも注目が集まる。金利先物市場では英中銀が3月会合で50bpの利上げに踏み切ることを織り込み始めた。そのほか、ロシア、ウクライナ緊迫化は引き続きリスク要因となる。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決定する上で鍵となる雇用統計は労働市場のひっ迫を証明。昨年の米インフレは過去40年間で最大の伸びを記録するなど、FRBのタカ派姿勢を正当化する。労働省が発表した1月雇用統計で失業率は4.0%と、予想外に12月3.9%から上昇。労働参加率が62.2%と、予想外に上昇しパンデミック前の水準を回復したことが影響しているためむしろポジティブな内容。不完全雇用率(U6)も7.1%と、12月7.3%から低下しパンデミック前の2020年2月来の水準を回復した。労働市場のスラックも改善傾向にある。非農業部門雇用者数は前月比+46.7万人と、伸びは予想+12.5万人を大幅上回った。過去2カ月の雇用も70.9万人上方修正された。12月は+51万人へ、+19.9万人から上方修正。11月分は64.7万人へ、24.9万人から上方修正された。平均時給は前年比+5.7%と、12月+4.9%から予想以上に伸びが拡大。20年5月来で最大を記録した。賃金の上昇など労働市場のひっ迫で、FRBは3月FOMCで利上げを実施すると見られている。3月の50ベーシスポイントの利上げ、または、各会合での利上げ観測が強まりつつある。同時に、1月雇用統計は修正が押し上げ、必ずしも雇用の増加を示すものではないとの指摘もある。実際、より現状に近いとされる世論調査によると、市場エコノミスト予想通り雇用の減少を示した。50ベーシスポイントの利上げを正当化するには、さらなるデータが必要と見られる。FRBがインフレ指標として注目している指標のひとつで、燃料や食品といった変動の激しい項目を除いたCPIコア指数の1月分は前年比5.9%増と、12月からさらに拡大し1982年10月以降40年ぶり最大の伸びを記録する見通し。FRBの目標の2%も大幅に上回る。原油価格も90ドル台と7年ぶりの高値圏で推移している。サプライチェーン混乱の長期化に加えてロシア、ウクライナ情勢の緊迫化で、エネルギー価格は当面高止まりすると見られ、インフレ高進は簡単には収まりそうもない。CPIが大幅な伸びを示すとFRBの引き締め姿勢を正当化することになり、ドルを支援する。■今週の主な注目イベント●米国8日:12月貿易収支(8日)9日:12月卸売在庫確定値、ボウマンFRB理事講演、メスター・クリーブランド連銀総裁演説10日:1月消費者物価指数(CPI)、週次新規失業保険申請件数、1月月次財政収支11日:2月ミシガン大消費者信頼感指数(11日)、などが予定されている。●中国7日:市場再開、財新サービスPMI●欧州7日:ラガルドECB総裁講演、独鉱工業生産、エストニアCPI8日:ビルロワ・ドガロー仏銀総裁9日:スウェーデン、コロナ抑制規制を撤廃10日:欧州委経済見通し、ラトビアCPI、エストニア失業率ビルロワ・ドガロー仏銀総裁11日:独CPI●英国9日:チーフエコノミスト、ピル氏の講演に注目が集まる。10日:ベイリー英中銀総裁が夕食会で演説11日:GDP、鉱工業生産、貿易収支●日本10日:PPI <FA> 2022/02/07 07:37 注目トピックス 経済総合 注目の海外経済指標:1月米消費者物価コア指数は12月実績を上回る見込み 2月7日-11日週に発表される主要経済指標の見通しについては、以下の通り。■7日(月)午前10時45分発表予定○(中)1月財新サービス業PMI -予想は50.5参考となる12月実績は53.1。供給制約が続いていること、国内における新型コロナウイルスの感染拡大を受けてサービス業の業況はやや悪化。冬季五輪開催の影響は限定的との見方が多いことから、1月の指数は12月実績を下回る可能性がある。■8日(火)午後10時30分発表予定○(米)12月貿易収支-予想は-831億ドル参考となる12月の前渡商品貿易収支は-1010億ドルと赤字幅は拡大している。そのため、12月の貿易赤字幅は11月実績を多少上回る可能性が高いとみられる。■10日(木)午後10時30分発表予定○(米)1月消費者物価コア指数-予想は前年比+5.9%参考となる12月実績は前年比+5.5%。中古自動車、新車、家具類の上昇が目立っており、供給制約の改善は遅れており、高い伸びとなった。1月については、状況が変わっていないため、インフレ率は12月実績をやや上回る可能性がある。■11日(金)日本時間12日午前0時発表予定○(米)2月ミシガン大学消費者信頼感指数-予想は67.5参考となる1月実績は67.2と12月確報値の70.6を下回っており、2011年11月以来の低水準となった。高インフレが所得などに影響を与えており、消費者信頼感は低下。2月については、高インフレが続いていること、地政学的リスクの増大などが懸念されており、1月実績と同水準にとどまる可能性がある。○その他の主な経済指標の発表予定・7日(月):(独)12月鉱工業生産・8日(火):(日)12月経常収支・9日(水):(独)12月貿易収支・10日(木):(日)1月国内企業物価指数・11日(金):(英)10-12月期国内総生産、(英)12月鉱工業生産 <FA> 2022/02/05 15:24 注目トピックス 経済総合 連載コラム:日本のペイパル・マフィア(第5回)村口和孝さん後編【実業之日本フォーラム】 個人型ベンチャーキャピタルの日本の先駆者である村口和孝さんは、20年以上にわたりスタートアップの世界で試行錯誤を重ね、奮闘してきました。その経験からいま、村口さんが取り組んでいるのが「未法(みほう)」領域の問題。この「未法」という言葉は、村口さんがスタートアップの世界に横たわる問題を可視化するために作ったものです。「現在のさまざまな業法は、過去に新しい事業にチャレンジした人たちによってその課題や問題が世の中で認識されることによって、産業界が発展するように整備が進んできました。法律の整備により新時代がより活動しやすいものとなり、人間社会がよりよくなっていくというのが本来あるべき正常なプロセスでしょう。しかし、いったん業法ができあがるとその法律に基づいていわゆる『縦割り』の行政が行われ、いずれ伝統化して既得権益化します。その結果、さらに次の時代が来て現在の業種の概念を超えた新たな業態が立ち上がるとき、古い業法が障壁となるケースが日本ではあとを絶ちません」(村口さん)村口さんがいう「まだ世の中に法律がないフロンティア=未法領域」での事業に挑戦するスタートアップにとって、「古い産業のために整備された法律=既法(きほう)」の枠組みに縛られて事業活動に制約がかかることは重い足かせになり、社会にとって重いコストになります。そしてそれは、世の中全体が新しい時代に対して最適化できない、世界と同じスピードでフロンティアの事業を始められないことを意味します。これまで日本のスタートアップがなかなか勢いを持てなかった理由の1つは、まさにここにあるのでしょう。「未法」という言葉には、行政が「既法」を持ち出してきたときに「それは未法領域です」と指摘することで、当局に「これは新しい産業であり、既法ではなくて、新たな法律ができるべき領域だ」ということを認識させる効果が期待できます。「たとえば仮想通貨は未法領域の1つといえるでしょう。仮想通貨業界は2017年ごろに資産が盗難されるなど問題が噴出して一度ズタズタになり世間の評判を落としましたが、ブロックチェーン技術がイノベーティブで新時代到来のカギであることは間違いありません。私はこれでは世界に置いて行かれると、じっとしていられず、2019年末ごろからブロックチェーン技術関連のいわゆるWEB3.0企業に投資をし始めました。このうちスタートアップで応援してきたJPYCという会社は2021年秋、設立2年で5億円の資金調達を実施し、現在は時価総額およそ30億円の企業に成長しています。長いベンチャーキャピタリスト人生を振り返ると、大きく成功したスタートアップの投資先は、多かれ少なかれ未法領域で既法の矛盾に直面し、困難を克服して、未来の新しい時代を切り拓いています。今後とも、こういった『未法』の新領域の発展に挑戦していきたいと思っています」(村口さん)【日本のペイパル・マフィアに聞く6つの質問】1.日本にも、米国のようにベンチャーのエコシステムが発展していくと思いますか?はい。スタートアップにとって重要なのは、パートナーシップの多様性と豊かさにあるというのが私の考えです。パートナーシップの出発点は個人をベースとした家族や部族の群れであり、発展途上国であれ新興国であれ先進国であれ、その多様性と豊かさがあればスタートアップのエコシステムはおのずと発展していく性質のものです。日本人はスタートアップに向かないという人がいますが、日本だから向くとか向かないとかはありえません。あえていうなら日本は歴史的にむしろスタートアップに向いているので、注意すればこれから大発展すると思います。2.日本のベンチャー市場の発展にエンジェルが果たしていくべき役割をどう見ていますか?まさに「パートナーシップ」による過去の多様な先人の経験や資産ストックの再活用です。AさんがXを、BさんがYをという風に多様な組み合わせで、資力のある人が、新たな価値創造に挑戦する人のパートナーになり、出資したり経営のアドバイスをしたりしていく。本来、パートナーシップには多様性があるものですから、組み合わせややり方は一様でなく、いろいろあります。例えばB2BとB2Cのスタートアップの商品を仕上げる仕事のやり方や事業の立ち上げ方は、全く異なり同じ成功経験が通用しません。私もスタートアップに経験のある様々な仲間などを集め、その中で新たなパートナーシップが、それぞれ事業が成功する形で生まれるようサポートしています。エンジェルの多様性が重要なのです。3.今後、米国のペイパル・マフィアのような、起業家とエンジェルを横断する勢力は形成されるでしょうか?日本ではここ30年ほどで「まともな組織基盤=株式会社」という印象が作られてしまったように思います。「マフィア」のようなパートナーシップに対して怪しいというイメージを持つ人が少なくありません。しかし家族であれ部族であれ人類の基盤はそもそもパートナーシップであり、その進化系として規模を拡大したものが株式会社なのです。ペイパル・マフィアのような勢力を形成するには、日本にパートナーシップの重要性についての教育を復活させ、パートナーシップの健全な発展という正しい考え方を日本人みんなで、肯定的に共有できることが必要でしょう。4.ベンチマーク、もしくはウォッチしている人や組織、団体を複数教えて下さい。シリコンバレーでインキュベーションや新しいベンチャーキャピタルができたといった話はウォッチして参考にしています。また、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズやセコイア・キャピタル、アンドレセン・ホロウィッツ、ワイコンビネーター、法律の世界ではウィルソン・ソンシーニ・グッドリッチ&ロサーティなどの動きもチェックしています。まさにスタートアップを生み出すパートナーシップの活動です。5.あらためて伺います。エンジェルやベンチャー投資の魅力は?未来に向かって新しく未知のパートナーシップがまさに生み出されようとする瞬間。それが時間とともに成果を上げ、その結果として全く新しいスタートアップによってサービスや商品が人類の生活を幸せにする。そのような、まるで絵本のようにわかりやすい多様なスタートアップの歴史的発展や、多様な才能によるパートナーシップの誕生に携われることが大きな魅力です。6.今後の抱負を教えて下さい。かつては「年齢を重ねるとベンチャーキャピタルはできなくなる」という仮説を持っていましたが、どうもそうではないようです。やればやるほど、そして時が経てば経つほど、不思議なことにほかのベンチャーキャピタルが気づかない領域を次から次へと発見しています。そして、そういった新しい領域の可能性については私が説得しないとなかなか話が通じず、結局、自分でやる羽目になるという現象が続いています。ですから、これからも私なりの経験と感性で、新しい未来社会の実現に向けて新しいスタートアップ経済を実現するパートナーシップの誕生を、どんどんプロデュースしてリリースし続けたいです。シリコンバレーでは「ベンチャーキャピタリストは死ぬまでやる仕事」と言われますが、投資というのはそういうものなのかもしれません。【村口和孝さんプロフィール】日本テクノロジーベンチャーパートナーズ ジェネラルパートナー、慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師1958年、徳島県生まれ。84年に慶応義塾大学経済学部を卒業後、野村証券傘下のベンチャーキャピタル会社である日本合同ファイナンス(現ジャフコ)に入社。14年勤務した後、98年に独立し、日本初の個人型ベンチャーキャピタルである投資事業有限責任投資事業組合「日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)」を設立。ディー・エヌ・エー、インフォテリア(現アステリア)、ウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターホールディングス)、イメージワン、IPS、ブシロード、JPYCなど多数の企業を支援し、個人投資家ベースの独立系ベンチャーキャピタリストとして日本で類を見ない実績を収めている。ボランティアで「青少年起業体験プログラム」を各大学や高校で実施。2007年から慶應ビジネススクール講師。「ふるさと納税」の提案者としても知られる。レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役 会長兼社長 最高投資責任者(CIO)藤野 英人(ふじの・ひでと)国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。「ひふみ」シリーズ最高投資責任者(CIO)。投資啓発活動にも注力し、JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授を務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2022/02/04 11:08 注目トピックス 経済総合 核の小型化・弾頭化を実現した北朝鮮が恐ろしい!「ぬるま湯に浸かる日本」が招く「最悪の事態」【実業之日本フォーラム】 1月に7回ものミサイル発射2022年1月、北朝鮮は7回にも上るミサイル発射を実施した。その種類は、開発中と見られる「極超音速ミサイル」と称するミサイル、列車発射型短距離ミサイル、巡航ミサイル、米陸軍のATACMS(Army Tactical Missile System)に類似したミサイルと多岐にわたる。そして1月30日に発射したミサイルは、防衛省が公表したところによると、高度約2,000km、約800km飛翔したとされている。北朝鮮労働新聞も、「火星12号」の発射を行ったことを写真付きで報道している。労働新聞は「周辺国の安全を考慮し、高角発射を行った」としており、高度2,000kmとした防衛省の発表と一致している。「火星12号」の発射は、2017年5月14日、8月29日及び9月15日に続く4回目である。2、3回目は日本上空を超え、それぞれ約2,700kmと約3,700km飛翔し、太平洋上に落下している。防衛省は、今回発射されたミサイルを、射程約5,000kmの「中距離弾道ミサイル(IRBM)」だとして、北朝鮮は「核兵器の小型化・弾頭化をすでに実現しているとみられる」と評価している。日本では、「火星12号」の射程と、1月19日に行われた北朝鮮労働党中央委員会第8期第6回政治局会議での「米国の敵対的行為に対抗するため、主動的に講じた信頼構築措置を暫定的に中止し、再稼働させる」との発表から、対米メッセージとする報道が多い。2017年に「火星12号」が日本上空を飛行したことを受けて、J-Alertを始めとした訓練が行われたことと比較すると、日本の危機意識は低い。高軌道(ロフテッド軌道)は、高角を調整すれば日本全土が射程内に入り、弾頭落下時の速度が通常軌道よりも高速なため迎撃が困難となる。他人事のような日本での報道に不安を持つ。「火星12号」が核弾頭を搭載可能であることから、北朝鮮がどのように核兵器を使おうとしているかを考える必要がある。核兵器を抑止手段の一つとすることは核兵器保有国共通であるが、どのような場合に使用するかについては差異がある。米中ロはいつ核を使う?中国は、核兵器の先制使用(first use)を明確に否定している。2019年7月に公表された国防白書「China’s National Defense in the New Era」では、「いかなる時、いかなる環境でも核兵器の先制使用は行わず、核兵器非保有国又は非核化地域において核による恫喝は行わない」、としている。この考え方の背景には、米ロとの核兵器数の圧倒的な差がある。弾道ミサイル等の近代化を進める一方、弾頭数を米ロ並に拡大しようとしないのは、自衛のために最小限の核戦力を保有するという考え方と推定できる。バイデン政権は、「核態勢見直し(Nuclear Posture Review : NPR)」を行っていると伝えられている。トランプ政権が2018年2月に公表した現在のNPRでは、核兵器の使用は「アメリカ及び同盟国の国益に対する、最も深刻な環境下」においてのみ考慮されるとしている。一方で、核兵器の近代化、低威力核兵器の開発という、核兵器使用のハードルを下げる施策を進めることも示されている。核兵器による攻撃への対応以外にも、核兵器を使用することを想定していると言える。アメリカが核の傘を提供している国々からは、アメリカが中国同様に「NO-First-Use:NFU(核の先制不使用)」を宣言した場合、核による先制攻撃を受ける可能性が有り、核の傘の実効性が失われるとアメリカがNFUを導入することに批判的である。2020年6月に公表されたロシアの戦略文書は、ロシア及び同盟国への軍事行動のエスカレーションを防ぐために核を使用するとしている。2015年3月にロシアのテレビ番組のインタビューにおいて、2013年のウクライナ紛争から2014年のクリミア併合に至るまでの間、核兵器使用の準備をしていたかとの問いに、プーチン大統領は「準備はできていた」と回答している。通常戦力の劣勢を補うため、核兵器に依存しており、核兵器使用のハードルは、アメリカに比べ低いことを示している。「戦略核」と「戦術核」北朝鮮は、米中ロのような核戦力に関する文書は公表していない。このため、労働新聞等で伝えられる内容から推測せざるを得ない。2021年1月の労働党大会では、「強力で信頼できる核抑止力」が構築されたとし、「敵対的な核兵器国家からの侵略攻撃を撃退し、報復攻撃を行うために、朝鮮人民軍最高司令官(金正恩)の命令によってのみ使用する」、としている。核兵器国家からの侵略攻撃は、核攻撃に限定されていない。また、倉田秀也日本国際問題研究所客員研究員は、2013年5月21日労働新聞の論評から、北朝鮮が「戦略核」と「戦術核」の効用を区分しており、「戦略核」は「対価値攻撃」を、「戦術核」は「対兵力攻撃」を目的とすると分析している。北朝鮮が短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルに関し、命中率の高さを喧伝するのは、ピンポイントで攻撃する必要がある「対兵力攻撃」を意図しているためと考えられる。北朝鮮が、労働新聞で明らかにした核戦略に基づいて行動しているとすれば、頻繁に発射されている短距離弾道ミサイルは、射距離が最大でも700km以下であることから、主として韓国の米軍基地を対象とする「戦術核」であろう。多様な軌道の選択や軌道変更能力は、米韓の弾道ミサイル対処能力を考慮したものと考えられる。一方、今年1月5日及び7日に実施された「極超音速ミサイル」の実験及び1月30日に実施した「火星12号」の発射は、その射距離から、日本又はグアムを目標とする「戦略核」と推定できる。「対価値攻撃」を企図する可能性がある。「核兵器国家からの侵略攻撃を撃退する」という労働新聞の主張に沿えば、その目標は横須賀、佐世保といった米軍基地がある都市となるものと考えられる。遅すぎる日本の対応軍事的観点から見た場合、弾道ミサイルのような精密兵器は、常にメンテナスしておくとともに、システムの作動状況を確認するための定期的な発射が必須である。米中ロも弾道ミサイルの発射試験を継続している。今回の「火星12号」の発射は、中距離弾道ミサイルとして安定した性能を発揮できることを示すものである。北朝鮮の核使用条件に従えば、核保有国であるアメリカの軍事行動で、自らに脅威が及ぶと金正恩が判断した場合、米軍基地が所在する日本の都市が攻撃目標となる。日本として、日本の都市が北朝鮮核攻撃の対象であるとの危機意識を国民全体で共有しなければならない。北朝鮮の弾道ミサイル試験が継続して行われているのに対し、日本の対応は遅い。弾道ミサイル対応として整備が進められていたイージスアショアは、ミサイルブースターを敷地内に落下させるための改修に時間がかかるという、軍事的不可解さを感じる理由で2020年に撤回された。代替装備として検討されている「イージスシステム搭載艦」の建造についても、ゴールが見えない。更には、憲法上は容認されている「敵基地攻撃能力」についても、議論が深まらず、能力に無関係な「名前の変更」で無駄な時間が費やされている。加えて、政府が「火星12号」の発射に対し「烈度が高い」と表現したことに対し、自民党の外交部会・外交調査合同会議で、出席議員から「烈度」を説明する言葉を入れて用いるべきという発言があったとされている。議論するべきは言葉の使い方ではない。日本周辺に寒風が吹きすさぶ中、その厳しい環境に気が付かず、のんびりとぬるま湯につかっているような時間はない。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/04 10:42 注目トピックス 経済総合 アマゾン・ドット・コムを対象とするコール型eワラントが前日比10倍の大幅上昇(4日10:00時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つ電源開発<9513>コール33回 3月 1,900円を順張りで買う動きや、原資産の株価下落が目立つ三井不動産<8801>プット132回 3月 1,600円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはビットコイン2022年2月 プラス5倍トラッカー2回 2月 42,000米ドル、日本郵船<9101>コール149回 3月 11,900円、日本製鉄<5401>コール266回 3月 2,500円、日本郵船コール148回 3月 10,500円などが見られる。上昇率上位はアマゾン・ドット・コムコール174回 2月 3,600米ドル(前日比10倍)、コナミホールディングス<9766>コール77回 2月 7,100円(前日比9.2倍)、コナミホールディングスコール76回 2月 6,200円(前日比3.3倍)、花王<4452>プット81回 2月 5,300円(前日比3倍)、コナミホールディングスコール78回 2月 8,000円(前日比3倍)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/04 10:38 注目トピックス 経済総合 NYの視点:ECB、年内の利上げも選択肢に 欧州中央銀行(ECB)は定例理事会で市場の予想通り政策金利の据え置きを決定した。域内の1月インフレは5.1%と過去最高の伸びを記録した。ラガルド総裁は会合後の会見で、状況は変わったとし、今まで繰り返していた年内の利上げを除外する言及を避けた。政策委員会全体がインフレを懸念していると指摘。インフレ見通しリスクは上向きに傾斜しており、ECBの物価安定目標達成に一段と近づいたと利上げの可能性を示唆。データに基づいて政策を決定していくとした。3月にパンデミック緊急資産購入プログラム(PEPP)を終了、資産購入策(APP)を7-9月に終了し、その後、利上げを見直す軌道になると見られる。また、ECBと米国の金融政策の違いに関して、財政支援策の規模の違いを理由に挙げた。パンデミック対応で比較的緩やかな財政策を実施した欧州の需要はパンデミック前の水準に戻した段階だが、米国の需要は大規模な財政策によりパンデミック前に比べ3割増し。このため、米国の金融引き締めペースはECBよりも速やかになっていると説明した。主要各国中銀は今後、金融政策の正常化に向けた軌道にある。今後の為替相場は各国中銀の引き締めの幅やペースの差に注目していくことになる。 <FA> 2022/02/04 09:39 注目トピックス 経済総合 豪ドルは利上げ見通しを背景に上昇に転じる可能性 サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、豪ドル円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『豪ドルは利上げ見通しを背景に上昇に転じる可能性』と述べています。オーストラリア準備銀行(RBA、豪中銀)について、『1日の理事会で、政策金利を過去最低の0.1%に据え置いた。一方、国債や州債を大量に購入する量的緩和政策の終了を決めた。インフレ率が上昇し雇用環境が改善していることから、金融政策の正常化を進めることにした。』と伝えています。続けて、『RBAは20年3月、新型コロナウイルスによる経済の混乱を受けて量的緩和政策を導入。21年7月に経済見通しが改善しているとして、買い入れ額を週50億豪ドル(約4000億円)から40億豪ドルに減額することを決めた』と解説しています。また、『RBAのロウ総裁は声明で、債券購入プログラムの終了は、近い時期の利上げを意味するものではないと強調。インフレ率が政策目標の2.0~3.0%の範囲内に持続的に収まるようになるまでは利上げしないと語った』と伝えています。一方で、陳さんは、『雇用情勢は改善し、個人消費も回復する中、インフレ率も上昇しているため、市場は早期の利上げを見込み始めている。RBAは早ければ今年8月にも最初の利上げを行うとの見方が出ている』と述べています。さらに、『CFTC建玉では、1月25日時点のファンドの豪ドル買い・ドル売りポジションは、−8万3273枚(前週比+5181枚)。ファンドの売りが、かなり溜まっている状況だが、今後、利上げ見通しが高まるに連れて、買い戻しが活発化することが予想されるため、豪ドルが押し上げられていく可能性が高い』と考察しています。こうしたことから陳さんは、豪ドル円について、『直近高値の84~85円を目指す展開になろう』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の2月2日付「豪ドルは利上げ見通しを背景に上昇に転じる可能性」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2022/02/03 17:42 注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(4)【実業之日本フォーラム】 「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(3) 【実業之日本フォーラム】」の続きである。(4)我が国の状況、特に安全保障分野岸田政権は、コロナ対策も国民からの支持を貰い、支持率が比較的安定している。しかし、今年の見通しが必ずしも明るいわけではない。最大の不安定要因は、Covid-19問題である。この対応如何によっては、支持率も急降下する事もあり得る。そして、前述した様に、我が国は、昨年に続き今年も国政選挙(参議院選挙)が控えている。この選挙結果次第では、何が起こるかわからない。現与党が政権を失うことはあり得ないが、もし、参議院で与党が半数以上の議席を確保できなければ、「ねじれ国会」となり、国会運営がかなり困難になることが考えられる。選挙以外にも、課題は沢山ある。最大の課題は、経済活動の再生である。コロナの為に我が国の経済のみならず、全世界の経済が低迷している。この状態が、既に2年続いているのである。経済は動かないものの、各国とも莫大な負債を抱えながら、コロナ対策に資金を出している。我が国も各国も、経済が疲弊している。これを早急に回復させないといけないが、有効な手段が見つかっていない。次に、外交であるが、今年は「日中国交正常化50周年」の年である。大きな節目である。我が国は北京オリンピック・パラリンピックは外交的ボイコットをするが、経済を復活させる為に中国の市場を活用せざるを得ない。大変難しい舵取りが必要であるが、我が国は是々非々で臨むべきである。尖閣諸島周辺の中国公船への対応やチベット・新疆ウイグル地区での人権問題等には毅然たる態度で臨むべきである。そして、安全保障である。昨年から「国家安全保障戦略(NSS)」の見直し作業が始まっている。今後の我が国の方針を決める大変重要な作業である。昨年岸田政権が発足した際、「経済安全保障大臣」が新設された。最近の経済・技術分野に着目した「経済安全保障」を司る大臣である。昨年末から「経済安全保障」に関係した法律策定の作業も進み、今年の通常国会に当法案が提出される見込みである。大変、素晴らしいことである。今回のこの様な一連の安全保障関連の議論の中心は、矢張り、如何に今後の中国に対応するかである。この中では、「超限戦」等を考えれば、我が国や同盟国やパートナー国に対し、ありとあらゆるアプローチ(攻撃)がある事を想定し、ある特定の部署のみが完璧でも意味がなく、国家として強靭な体質になることを視野に入れた戦略、そして法律、計画になることを願っている。今通常国会では「経済安全保障法制」が成立し、年末までに「NSS」、そして、「防衛計画の大綱」(又は「国家防衛戦略」)、「中期防衛力整備計画」が策定される予定である。それぞれの内容について、今回は言及しないが、昨年から議論されている、「台湾」への態度を明確にすることと、昨今の我が国近隣国が極超音速弾道弾や低高度・不規則飛翔飛行する弾頭の開発・配備している事に鑑み、防御能力には限界があり、「長距離打撃能力」の保有の是非に関する議論を行い、我が国の多くの国民の賛同が得られる「結論」に達することを願って止まない。その「結論」が、我が国の「意志」であり、「決意」である。仮に、我が国に手を出そうとする国があるならば、そのような国に我々の「決意」を伝えるのが「経済安保法制」であり、「NSS」、「大綱」、「中期防」である。危機管理の要諦は「抑止」である。そして、もし、仮に、「抑止」が破れ、事態が起こった場合には、普段から備えた能力を遺憾なく発揮し、「行動(戦う)」する事である。(令和4.2.2)岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:26 注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(3) 【実業之日本フォーラム】 「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(2) 【実業之日本フォーラム】」の続きである。2.令和4(2022)年の展望この様な情勢の中で令和4(2022)年がスタートした。残念ながらコロナ禍での年明けである。今年は、2月から3月にかけて北京で冬季オリンピック・パラリンピックが開催される予定だ。昨年末、米国が「中国の人権問題等」を理由に北京オリンピック・パラリンピックへの外交的ボイコットを宣言した。今年になって追随する国が徐々に多くなりつつある。しかし、習近平主席にとって外交ボイコットなどは、あまり意味のない事である。寧ろ中国を煙たがっている国々の首脳が北京に来ない方が楽であろう。選手さえ送ってくれれば、オリンピック・パラリンピックは計画通り開催できる。習近平主席としては、それで十分なのである。また、今年は、各国の選挙が多い年である。3月には韓国大統領選挙、4月にはフランスの大統領選挙、5月にはフィリピンの大統領選挙、7月には我が国の参議院選挙が行われる。そして、秋には米国の中間選挙である。この様な中で、私が懸念している事(リスク)について以下を述べたい。(1)依然猛威を振るうCovid-19の新種株やはり最大の懸念事項は、今年も残念ながらCovid-19対応である。昨年は、ワクチンの普及により、鎮静化するのではとの希望的観測もあったが、新種の変異株の出現で、再度、全世界がCovid-19の脅威に晒されることになっている。既に2年が経過し、3年目に突入しているにも拘らず、未だにこのウイルスは、猛威を振るっている。既に世界では3億人を越える人が感染しており、500万人を越える方々が亡くなっており、600万人を越す勢いである。世界の全ての国・地域にとって、このCovid-19と如何に戦うか、又は共存するのかが喫緊の最重要課題である。この対応如何では、経済のみならず、各国の政権を揺るがすことも考えられる。(2)米国の中間選挙の行方昨年の回顧で述べたとおりバイデン大統領の評価は、予想を下回るものであった。特に、国内の分断は大変大きな問題である。今年の中間選挙に向け、この傾向が更に加速する可能性がある。この問題は根深く、単純ではない。長年、米国が抱えていた問題が、特にトランプという人物の出現で表面化したのである。簡単には解決できないだろうが、解決への努力は惜しむべきではない。米国内の分断の溝を少しでも埋めないと確りとした外交も安全保障も不可能であり、ましてや世界をリードする事は出来ない。また、「同盟国への回帰」は大変重要な方針である。今年は、バイデン大統領自らが主導し、我が国との関係をより進化させる事、そして特に、トランプ大統領が壊した欧州各国との関係修復に尽力されることを望む。今年は、バイデン大統領、米国にとって大変重要な年である。この様な状況の中で、昨年末からのウクライナ情勢はかなり緊迫度を増している。また、台湾周辺での緊張度も高まってきている。もし習近平主席とプーチン大統領が協力し、同時に事態が起これば(これが最悪の事態)、米国はまた裂き状態となり、いずれにも中途半端な対応にならざるを得ない。地域によって深刻度は異なるものの、我が国でも欧州各国にとっても大変なことである。果して、バイデン大統領は内外に問題を抱えながら、双方に適切な対応がとれるのであろうか。大変、憂慮すべき事態である。もし、中間選挙で上院・下院で負けることがあれば、バイデン政権は更に弱体化し、高齢であることも考えれば、交代する事も考えられる。大変深刻な事態である。バイデン政権は、昨年3月に「暫定国家安全保障戦略」を示し、中国に対する基本認識こそ公表しいているものの、未だに「国家安瀬保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略(NDS)」及び、これらに続く各種安全保障政策を示していない。是非、早期に決定、同盟国にもそれを示し、世界が抱える問題に協力し、また任務分担、相互補完し、対応することを強く望む。(3)中国の不安定と躍進習近平主席にとって、今年はこれまで以上に重要な年である。今年は習近平主席の2期目の終わりであり、3期目のスタートの年である。前述のとおり、習近平が再度、国家主席に就くことは確実であろう。しかし、習近平体制が盤石かと言えば、必ずしもそうとは言えない。私は、不満を持っている側近や共産党幹部も、それなりに多いのでないかとみている。昨年末の「中国人民日報」に、改革開放路線に関する記事が掲載された。最近の中国経済の低迷を心配する内容である。が、真の狙いは別にありそうである。経済成長が鈍っている理由は、単純でなく、いろいろな要因が考えられるものの、この記事が指摘したいのは、最近の習近平主席の経済政策であろう。これまでの中国は、トウ小平主席以来「改革開放政策」を採用し、他国に類を見ない経済成長を遂げてきた。江沢民主席や胡錦涛主席も忠実にこれを実行し、世界2位の経済力を持つに至ったのである。しかし、習近平主席はこの「改革開放政策」を徐々に変更している。時代に合わせた変更かもしれないが、単にトウ小平色を消すためかもしれない。今回の「中国人民日報」の記事は、この様な習近平主席への批判と思われる。中国の機関紙である「人民日報」にこの様な記事が掲載されることは、政権内部にもかなり不満が蓄積されている証左かもしれない。習近平主席の三期目は確実であろうが、決して盤石でないし、順風満帆な状態でもないと考えられる。中国も不安定要因を孕んでいるのである。習近平主席の3期目は本年秋から2027年までである。彼の2つの「夢」の実現には、4期目も必要である。その為には、不満分子をも説得できる成果(手柄)が必要である。北京オリピック・パラリンピックの成功も1つの成果である。ただし、これだけでは十分ではない。習近平主席は、オリ・パラ後、早速、次なる成果に向けた動きを開始する事が考えられる。以前、「中国新聞」に、習近平主席が着任後「六場戦争」なるものが掲載されたことがある。2020年から向こう40年間に予測される戦争の記事である。この40年間で6つの戦争が考えられるとの報道であった。この中の最初の戦争は、習近平主席が、事ある毎に発言している「台湾」である。中国にとって、台湾は中国の核心的利益である。最初の戦争は、2020-2025年で「台湾」を統一する戦争である。この場合、「戦争」と言いても単純に「Hot War」の事だけでなく、あらゆるタイプの戦いを意味している。中国の戦略の基本は、「伐謀」であり、「三戦(心理、世論、法律戦)」である。所謂、孫子が言う「戦わずして勝つ」事が最も善であるとの考え方である。また、1999年に当時空軍の大佐であった喬良、王湘穂の両名が書いた「超限戦」(21世紀の新しい戦争)からも中国の戦い方を理解する事が出来る。この著書の中では、「今後の戦いは総力戦」であり、「(軍事のみならず)あらゆる手段の組み合わせ」を使って勝利する、と記載されている。「あらゆる手段」とは、ある時は相手方の基幹インフラを機能マヒさせ、またある時には経済市場を混乱させ、事前に仕組んだパソコンやネット・ワーク網を機能不全にし、心理戦で相手方を不安に陥れ、ありとあらゆる手段で相手方を混乱させ、最後に軍を投入し、勝利するというものだ。所謂、従来の様な武力による戦闘をしなくても相手方を意のままに操ることが出来れば、犠牲者も少なく、善の善、即ち「最善」な戦い方になる。昨今、台湾に関しては、いろいろな危険性が指摘されている。その多くは、台湾に対する武力侵攻を想定している。私は、敢えて否定はしないが、その確率はかなり低いと考えている。しかし、習近平主席にとって「台湾」を意のままに出来なければ、「夢」が叶わない。かつて馬英九氏(台湾国民党)が台湾総統を務めていた時代があった。彼は、中国との経済関係を重視し、比較的大陸(中国)寄りの政策をとっていた。現在は、蔡英文総統(民進党)が多くの国民の支持を集めているものの、未だに国民党を支持する勢力は健在である。「香港」を見れば、習近平主席がこの勢力を使わない手はない。当然、習陳平主席には、敢えて武力に訴える選択肢もあるが、前述のあらゆる手段を駆使する戦い、即ち、例えば、海・空軍力(空母等の頻繁な航行、戦闘機・爆撃機の周回飛行等)による適度な威嚇・示威行動と、前述の三戦、時に世論戦、心理戦、経済力等を組み合わせ、かつサイバー攻撃等を駆使すれば、戦わずして、台湾への「一国二制度」の適用は可能になるかもしれない。習近平主席にとっては、非常に重要な時期にさしかかっている。失敗は許されない。迂闊に武力を行使すれば、最悪の事態では多くの中国人に犠牲者が出る可能性がある。そうなれば、彼は失脚するしかない。彼は、敢えてそんな危険を冒すのだろうか。我々は、当然武力攻撃も想定しながら、あらゆる攻撃を考えながら中国対応を考えないといけない。今年の中国は、以前にも増して危険な要素を孕んでいる。中国は、いつでも、どこでも「空白」を探している。政治・経済・軍事・宇宙・金融・文化・エネルギー・法律等々、ありとあらゆる分野を監視し、「空白」を見つければ、侵入し、我がものとする。我々は、「対話」は閉ざしてはいけないが、決して油断してはいけない。最大の警戒をもって対応すべきである。「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(4) 【実業之日本フォーラム】」に続く岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:24 注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(2) 【実業之日本フォーラム】 「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(1) 【実業之日本フォーラム】」の続きである。(2)増長する中国中国は、2021年は、習近平政権の2期目の4年目(発足から9年目)であり、2期10年の総仕上げの時期であった。私はこれまでも何度となく指摘してきたように、習近平主席は、ある時から「夢」を抱くようになってきていると思われる。その「夢」とは、「中国の夢(中華民族の偉大な復興)」であり、「習近平個人の夢」でもある。そして、彼の最終的なゴールは、毛沢東・トウ小平を越えることであり、「中華民族の永遠の英雄(皇帝)」になることである。その「夢」を達成する為には、2期10年では短か過ぎる。更に時間が必要である。しかし、国家主席の任期期間は、憲法に2期10年との条文が明記されていた。これは、毛沢東が長期に亘り政権に就き、政治的に混乱したことへの反省や、権力の集中を防ぐ目的で明記されたものである。この規定により、トウ小平、江沢民、胡錦涛元主席は2期10年で退陣した。ところが、習近平主席は、2018年、この憲法の条文を「削除」する改正案を全人代に提出したのである。全人代は当然ながら、抵抗できず、可決・成立となった。これで、習近平主席は、憲法上、彼が希望する限り、国家主席の席に居座ることが可能となった。また、この他に、中国共産党はこれまで個人崇拝を禁じていたにも拘らず、党規約の中に「習氏思想」を記述し、その普及に努めている。各学校のカリキュラムも全て変更し、子供たちから教育を開始している。既に、習近平主席の神格化が始まっているのである。しかし、憲法上、国家主席の在任期間の制限が無くなったとは言え、習近平主席の任期が自動的に延長されるものでもないだろう。3期、4期と継続する為には、周りを説得できる、それなりの手柄(成果)が必要である。昨年7月は中国共産党創立100周年でもあった。ここで習近平主席は約1時間に及ぶ演説を行い、「中国に対する虐待、抑圧、支配を許さない」と述べている。これは基本的に米国への警告であり、そして、米国へ警告を発することが出来るようになったことを自慢する演説である。習近平が自慢する他の大きな成果の1つは、米国のオバマ大統領が中国を「大国」と発言したことであり、2つ目は、昨年までの約3年間、香港への締め付けを強化し、最終的に「香港」を手中に入れたことである。「香港」は英国からの返還の際、向こう50年(~2047年迄)は「一国2制度」を維持する事が約束されている。まだ、その期間の半ばも経過していない時期に「香港」を北京の言いなりにすることが出来た。「一国2制度」は有名無実化してしまったのである。大きな手柄である。この他にも「南シナ海の埋め立て・軍事化・行政区発令等の権益拡大」、「尖閣列島への海警局公船派遣」、「西太平洋への艦艇・航空機展開」、「台湾への威嚇」等々は彼の成果であろう。この様な事から習近平主席は、第3期目をほぼ確実にしたと言っても過言でない。習近平主席と米国の関係では、米国のトランプ大統領は、予測不能で極めて厄介な大統領であったものの、トランプ大統領の関心事はごく限られており、御しやすい面もあったと思われる。一方、バイデン新大統領はトランプ大統領に比較し紳士であり、予測可能な大統領である。昨年11月16日のオンラインによる米中首脳会談の中で、バイデン大統領が「両国は衝突回避に責任があり、その為のガードレールが必要」との認識を述べたのに対し、習近平主席は「米国との共通認識の下に両国の発展を主導したい、これは国際社会の期待でもある。」と述べた。米国を諭すような発言であり、国際社会をリードするのは米国と中国の2つの大国であるとの認識を示した。私は、この会談を、習近平主席がかなりの余裕を持って対応していた一方、米側にあまり成果がなかったとも感じた。多くの中国国民は、この会談風景を見て、「中国は米国に並ぶ大国になった」と感じた事であろう。習近平主席の大きな成果である。(3)我が国の政情不安定安倍総理の突然の退陣で、一昨年前(令和2年、2020年)の夏から急遽総理に就いた菅首相は、総理就任後も粉骨砕身コロナと戦い続けた。昨年の夏以降は、コロナの新規感染者数も減りはじめ、多くの国民は、菅総理が昨年秋以降も、自民党総裁・総理大臣を継続されると思っていた。ところが、大方の予測を覆し、突然、菅総理は、最後までコロナ対策に専念するため、総裁選への不出馬を表明された。総理大臣を降りるとの宣言である。私は、菅総理が総裁選へ出馬しないと全く考えていなかった。大きな驚きであった。この後の自民党総裁選には、新人候補4名が臨み、見事に勝利されたのが岸田氏である。岸田氏は、安倍政権で長い間、外務大臣として活躍され、諸外国にも名前と顔が知られている極めて温厚で堅実な政治家である。自民党総裁選に次ぎ、衆議院選挙が行われ、自民党は若干議席を失ったものの、予測を遥かに上回る議員数を獲得することになった。多くのメディアや政治評論家によれば、総裁選候補者4名(岸田氏、河野氏、高市氏、野田氏)による議論が功を奏したのではとの分析である。国民の前で忌憚のない討論や意見発表を連日行ったことが、国民へ安心感を与えたのであろう。私自身も、この議論を拝聴し、久々に内容のある、いい議論であったと感じた。昨年10月に発足した岸田政権への支持率は高く、その後のオミクロン株への対応も素早く、また国会では超大型補正予算を決定したこともあり、政権への支持率は上昇傾向にある。岸田総理が就任し、まだ日が浅いことから評価するには時期尚早であるが、岸田政権のスタートダッシュは成功している。「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(3) 【実業之日本フォーラム】」に続く岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:22 注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(1) 【実業之日本フォーラム】 昨年2021年も残念ながらコロナで始まり、結果的にコロナで終わった。今回のコロナ・ウイルスは、令和元年(2019年)11月から12月にかけて、中国武漢市近辺で確認されたことから、当初「武漢ウイルス」と呼ばれていたが、中国の強い抵抗にWHO(世界保健機関)が屈し、Covid-19なる名称となった。2019年に発見されたCoronaVirusとの事がその理由であるらしい。私は、この命名に若干の違和感を感じたが、最近のこの種の味わいのない命名は、時代の流れかなと思いつつ、「スペイン風邪」や「日本脳炎」、「エボラ出血熱」も修正が必要かもしれないと思っているのは私くらいだろうか。我が国では、このCovid-19が武漢市周辺で発見されて間もない翌年(令和2年)の1月下旬、ダイヤモンド・プリンセス号(香港経由で横浜港入港)で最初の感染者が確認された。これ以降、我が国では、これまで拡散・収束の波を繰り返し、昨年までに5波を経験している。昨年の9月末で東京都をはじめとする一部地域で出されていた緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置に係る各種制限が解除された以降、ワクチン効果と相まって新規感染者数及び重症者数も激減し、好ましい方向で推移していたものの、昨年末からの世界各地でのオミクロン株の出現・拡散により、我が国でも厳戒態勢で臨んだものの、徐々に各地で市中感染と思われるオミクロン株による感染者が続出し、再度の蔓延防止等重点措置宣言を発出する地域が増えている。今回のオミクロン株は、前回のデルタ株と異なり、かなり進化した変異株であり、拡散速度がこれまでよりも数倍早く、残念ながら我が国では、感染第6波に突入した。さて、この様な状況であるものの、今回は、令和3(2021)年を振り返り、今年(令和4年/2022年)を展望してみたい。1.令和三年(2021年)の回顧私は、昨年の初めに、令和3(2021)年の懸念事項として5項目を指摘した。(1)「長引くコロナ被害」(2)「不安定な米国」(3)「益々増長する中国」(4)「サイバー・宇宙競争が更に加速」(5)「我が国の政情不安」自己評価としては、満足できるレベルではないものの、世界も、我が国も、残念ながらほぼ予測どおりに推移したのではと考えている。Covid-19に関しては冒頭で述べたとおりであり、それ以上加筆すべきことはない。早くどんな変異株にも有効な特効薬が開発され、収束を願うのみである。また、サイバー・宇宙に関してもほぼ予測どおりに推移し、サイバーによる被害は年々拡大する傾向にあり、宇宙も、その利用に関して年々競争が激化してきている。ここでは、「米国」と「中国」及び「我が国の政情」に関する項目についてコメントしたい。(1) 不安定な米国(バイデン政権)私は、昨年の年初に不安定化する米国への心配を指摘した。一般的には、どこの国や地域でも、国家元首や政権交代時期には、一時的に各種政策・行政が滞り、不安定な期間になることがあり得る。私は、2019~2020年の米国の大統領選挙キャンペーンを見て、バイデン政権に対し、これまで以上に不安を抱えたスタートになるのではとの感覚を覚えた。理由はいろいろあるものの、大きくは2つである。1つは、米国内の分断であり、もう1つは、対中国政策への不安である。この他にも、米国内の経済の疲弊やワクチンの問題、外交・安全保障に関する北朝鮮の核開発や弾道弾対応問題、ロシアのインド太平洋諸国への進出とウクライナ周辺での不穏な活動対応、そして、対イラン対応、トルコ問題等々、問題が山積み状態である。これまでの大統領が受けた試練以上に大きな問題を抱えてのスタートであった。米国内の分断問題も鎮静化するどころか、より先鋭化してしまっている。また、バイデン大統領は長年政治に携わってきているものの、昨年は、各種手続きや案件で議会との連携や調整がうまく機能していなかったのではと思われることが屡々であった。人事に於いては、政府の然るべきポスト以上への配置には議会承認が必要であるものの、議会承認が遅く、未だに配置されていない職も多くあり、体制固めが出来ていない部分も多くある。日本は「最も重要な同盟国」と言いながら、米国大使が約2年間も不在である。昨年12月に漸く議会承認され、もうじき米国大使が東京へ赴任することになるが、異常な事態である。この様な状況で危機管理や事態対処がうまく機能したのか疑問を持たざるを得ない。危機管理は「結果が全て」である。いくら努力しても、期待された結果が出せなければ意味がない。これでは、とても狡猾な中国やロシア、北朝鮮に対し有効な対応がとれていたとは思えない。バイデン大統領は、選挙期間中から「同盟国への回帰」を宣言していた。果して、トランプ大統領時代よりも同盟国とのコミュニケーションがとれていたのであろうか。アフガン撤退問題やAUKUS協定締結、米露及び米中首脳会談等々、成果を挙げることが出来たのだろうか。昨年末、バイデン大統領は、史上初となる「民主主義サミット」を開催した。これは、バイデン大統領が選挙期間中から提唱していたものであり、最近の権威主義的な国の急速な増加に危機感を抱いた事からの提案であった。バイデン大統領は、結果的に109の国・地域を招待した。東南アジアでは、フィリピン、マレーシア、インドネシアの三ヶ国のみの招待であった。シンガポールは招待されていない。また、トルコ・ハンガリーはNATO加盟国であるが除外されていた。米国は、フィリピン、ナイジェリア、パキスタンに対し「重大な人権問題がある」と非難していたにも拘らず、これらの国々を招待した。米国の判断基準が理解できない。私は、この企画は、基本的には素晴らしい考えであると思う反面、危険性も秘めているのではと考えていた。もし実行する場合には、G7やG20等の既存の会議体を使うか、新規の場合には、参集範囲の基準を明確にすべきであった。招待されなかった国々の中には、米国へ反発したり、嫌悪感を持つようになるのではとの懸念があった。私は、偶然にもサミットの直後に、米国から招待を受けなかった数ケ国の在京大使館職員と懇談する機会があった。彼らは、彼ら自身も納得していない口ぶりであったし、彼らが勤務している大使館員(大使も含む)の中には不満を持つ者もいるとの事を漏らしていた。大変残念なことである。より実りある成果を期待するのであれば、米政府内で、より深い検討と綿密な計画及び実行に当たって宣伝が必要であったのではと思えてならない。また、「同盟国への回帰」であれば、各同盟国の考え方を聞いても良かったのではないだろうか。各同盟国は、地域周辺の事情をつぶさに認識しているだろうし、第三者的な中立的な意見を持っているからである。アフガンからの撤退作戦でも同じである。果して、どこまで同盟国と情報共有していたのだろうか疑問である。これでは、トランプ時代とあまり変わっていないのではと思わざるを得ない。この様な事では、世界をリード出来る筈がない。残念な結果である。但し、我が国との関係では、大きな成果を残した事象もある。その1つが、菅総理とバイデン大統領とが対面での懇談を行い、「台湾」の名称を日米の合意文の中に出すことが出来たことであり、また、もう1つが我が国では、あまり大きく報道されていない「CoRe協定(競争と強靭性に関する日米協定)」に調印し、日米で最新技術や先端技術の共同開発をしていく事を約束したことである(出資;日本$20億、米国$25で合意)。これは大変大きな成果で、今後、このCoRe協定を基礎に世界の先端技術を日米でリードしていくべきであり、それが出来る体制が確立されたと言える。そして、昨年の日米間の共同訓練もこれまで以上に進化してきている。また、日米を中心に豪、印、英、仏、独等との協同訓練も拡大しつつあり、対中国・露抑止の観点から、大きく前進した年になったことはプラス成果であった。「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(2) 【実業之日本フォーラム】」に続く岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:19 注目トピックス 経済総合 「強気なロシア」と「弱気なアメリカ」、ただの地域紛争ではない「ウクライナ問題」をめぐる世界の覇権争いのゆくえ ● ウクライナを巡る米露の「チキンゲーム」別々の車に乗った2人のプレイヤーが、同時に海に向かって走り、先にハンドルを切った方を「チキン(臆病者)」と揶揄するゲームは「チキンゲーム」と称されている。このゲームでは、双方が最後まで「強気」を維持すれば、両者とも海に落ちる結果となる。あるいは、ハンドルを切るタイミングが遅ければ、同じ結果となる。現在ウクライナを巡り繰り広げられている状況は、アメリカを含むNATOとロシアがまさに「チキンゲーム」を繰り広げている状況と言えよう。昨年末「疑心暗鬼の代償−ウクライナ情勢—」の記事を投稿した。その際、プーチン大統領の「強いロシアへのこだわり」という不確定要素はあるものの、ウクライナへの軍事侵攻の可能性は低いと見積もっていた。しかしながら、10万人とされるロシア軍のウクライナ周辺への展開は2か月を超える長期間となっている。このチキンゲームの今後を占ってみたい。https://forum.j-n.co.jp/post_politics/2965ロシアは2014年3月に、住民投票、独立宣言、併合要求決議を経てクリミアをロシアに併合した。その際ロシアがウクライナに対し行った軍事的方法は、「ハイブリット戦争」と呼称されている。ロシアは、正規の軍事力を行使するのではなく、ウクライナ国内の親露派に働きかけ、反政府活動を起こさせるとともに、義勇軍を展開し、影響力を拡大することをつうじて戦争目的を達成した。しかしながら、クリミア併合はアメリカを含む西欧諸国の認めるところではなく、2015年2月に、ウクライナ、ロシア、フランス及びドイツ間で締結された「ミンスク合意」は、単に東部ウクライナにおける停戦を合意したのみであった。● 二度目の「ハイブリット戦争」勃発かロシア大統領府は、2021年7月、プーチン大統領のウクライナに関する論文を公表した。プーチン大統領は、その中で、「ウクライナとロシアは何世紀にもわたり、精神的、文化的に結びついている、ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップがあってこそ維持できる」、と両国の特殊な関係を強調した。また2021年11月以降、約10万人と見られるロシア軍をウクライナ東部国境付近とクリミアに展開し、自らの主張を力で担保する姿勢を明らかにした。更に、同年12月には、アメリカ及びNATOに対し、NATOの東方不拡大や、ウクライナ及び同周辺への軍事力の展開や軍事演習を行わないという具体的なロシアの要求を書面で突き付けた。アメリカに対する要求に含まれている、「中距離ミサイルや核兵器を自国の外に配備しない」という事や、NATOに対する、「欧州での軍事配備はNATO東方拡大前の1997年の状態に戻す」という条件は極めて高いハードルであり、米国やNATOには受け入れがたいものである。そのため、今年に入って行われた「米ロ戦略対話」や、「NATO・ロシア理事会」での進展は見られていない。ロシアは、強硬姿勢を更に強めつつある。ロシアと強い結びつきを持つベラルーシ国防省は、1月下旬から2月上旬にかけて、ベラルーシ国内においてロシア軍と共同演習を行うことを明らかにした。一方のロシア国防省も、同じく1月下旬から2月にかけて、艦艇等140隻、航空機約60機、人員約1万人が参加する大規模海軍演習を行うことを明らかにした。演習海域には地中海が含まれており、ロシア太平洋艦隊及び北洋艦隊の艦艇が黒海に入り、海からウクライナに圧力を加えることも考えられる。また、1月13~14日には、ベラルーシ情報機関につながるハッカー機関によるウクライナ政府機関へのサイバー攻撃が行われたことをウクライナ政府が認め、米国防省は、ウクライナ国境地帯へのロシア特殊部隊の展開、ウクライナにおける親露派政権樹立の動き等を伝えており、2013年のクリミア併合時と同様の「ハイブリット戦争」が行われる可能性が高まっている。● 弱腰のアメリカとNATOロシアの「強気」な姿勢に対し、アメリカ及びNATOの動きは弱いうえに遅い。バイデン大統領は、1月19日、就任1年を迎えたスピーチにおいて、ロシアはウクライナに侵攻するとの見解を示した上で、「深刻で高い代償を払うことになる」との警告を発しているが、昨年12月の段階ではウクライナへの米軍の派遣は明確に否定している。それどころか、1月23日、米国務省は、ウクライナの首都キエフにある米大使館職員家族に退避命令を出したことを明らかにしている。NATOは、1月12日の「NATO・ロシア理事会」終了後、ロシアが求めるNATO東方不拡大の法的保証を拒否したことを伝えているが、次回会合に望みをつなげること以外、具体的方針は示していない。むしろ、アメリカがウクライナへ武器供与を承認したのに対し、ドイツがウクライナからの武器供与の要請を拒否したことが伝えられており、NATO内での不協和音も認められる。1月24日、NATOのストルテンベルグ事務総長は、NATO諸国が東欧の防衛力増強のため部隊の派遣を進めていることを発表し、米国防省も、8,500人規模の部隊に派遣に備えるように指示を出したことを明らかにした。NATO諸国がロシアの強硬姿勢に、遅ればせながら力による対応措置を講じ始めたという事ができる。チキンゲームの観点からは、ウクライナに対するロシアの「強気」に対し、NATOの「強気」の範囲はNATO域内にとどまっている。ロシアのウクライナに対する「強気」を、アメリカを含むNATOが是認する可能性が高くなってきたと言える。ウクライナはNATOへの加盟を希望しているものの、現時点では加盟国ではなく、NATOとしても集団防衛の義務は負ってはいない。また、バイデン大統領は8月のアフガニスタン撤退に関し、国内外から批判を浴びたことから、海外への米軍派遣には消極的と見られている。これらのことから、ロシアのウクライナに対する軍事力行使という「強気」に対し、NATOが軍事力行使という「強気」に出て、両者が直接軍事衝突する可能性は低いと見積もられる。一方で、ロシアが軍事侵攻し、ウクライナ全部を併合すような情勢も想像しづらい。ウクライナ西部にはロシア人が少なく、ウクライナ全土を併合した場合、反露勢力によるテロ等が頻発することになるであろう。ロシアは軍事的圧力を強めつつも、軍事侵攻に至らない程度で落としどころを探っていると考えられる。● 「自由で開かれたインド太平洋」に悪影響?米露高官会談を経て、アメリカはロシアに対する回答を書面で行うと報道されているが、その内容が及ぼす影響は、米露関係にとどまらない。ウクライナに対するロシアの主張を一方的に認めた場合、NATOとアメリカの威信は地に落ちる。特に、台湾に対して圧力を強める中国に、軍事力でアメリカを抑え込むことができるという見方を与え、今後、自由で開かれたインド太平洋に悪影響を与えることが危惧される。また、カブール撤退で傷ついたアメリカへの信頼度が、さらに悪化する可能性もある。ウクライナ問題は、単に東欧における地域的紛争ではなく、中国及びロシアという権威主義的国家と、アメリカを中心とする民主主義国家のどちらが世界秩序を牽引するかという大きな問題をはらんでいる。「強気」に対しては、「強気」で対応することも可能であるが、あえて双方が納得できる妥協点を探るという姿勢を見せなければ、相手の「強気」に押し切られてしまう。ロシアの軍事的圧力に対しては、少なくとも軍事的手段で対応するという姿勢を持つことが肝要であろう。NATO諸国の東欧への兵力展開は、「力には力で対抗する」という姿勢の表れではある。しかしながら、同時にロシアとのはざまにあるウクライナを切り捨てるとの印象を与えかねない。これは、朝鮮半島をアメリカの防衛ラインに含めなかったことが朝鮮戦争の契機となったとされる、1950年の「アチソン・ライン」を彷彿させる。アメリカ及びNATOの真価が問われていると言えよう。(2022年1月27日記)サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 15:50

ニュースカテゴリ