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令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(4)【実業之日本フォーラム】
配信日時:2022/02/03 17:26
配信元:FISCO
「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(3) 【実業之日本フォーラム】」の続きである。
(4)我が国の状況、特に安全保障分野
岸田政権は、コロナ対策も国民からの支持を貰い、支持率が比較的安定している。しかし、今年の見通しが必ずしも明るいわけではない。最大の不安定要因は、Covid-19問題である。この対応如何によっては、支持率も急降下する事もあり得る。そして、前述した様に、我が国は、昨年に続き今年も国政選挙(参議院選挙)が控えている。この選挙結果次第では、何が起こるかわからない。現与党が政権を失うことはあり得ないが、もし、参議院で与党が半数以上の議席を確保できなければ、「ねじれ国会」となり、国会運営がかなり困難になることが考えられる。
選挙以外にも、課題は沢山ある。最大の課題は、経済活動の再生である。コロナの為に我が国の経済のみならず、全世界の経済が低迷している。この状態が、既に2年続いているのである。経済は動かないものの、各国とも莫大な負債を抱えながら、コロナ対策に資金を出している。我が国も各国も、経済が疲弊している。これを早急に回復させないといけないが、有効な手段が見つかっていない。
次に、外交であるが、今年は「日中国交正常化50周年」の年である。大きな節目である。我が国は北京オリンピック・パラリンピックは外交的ボイコットをするが、経済を復活させる為に中国の市場を活用せざるを得ない。大変難しい舵取りが必要であるが、我が国は是々非々で臨むべきである。尖閣諸島周辺の中国公船への対応やチベット・新疆ウイグル地区での人権問題等には毅然たる態度で臨むべきである。
そして、安全保障である。昨年から「国家安全保障戦略(NSS)」の見直し作業が始まっている。今後の我が国の方針を決める大変重要な作業である。昨年岸田政権が発足した際、「経済安全保障大臣」が新設された。最近の経済・技術分野に着目した「経済安全保障」を司る大臣である。昨年末から「経済安全保障」に関係した法律策定の作業も進み、今年の通常国会に当法案が提出される見込みである。
大変、素晴らしいことである。今回のこの様な一連の安全保障関連の議論の中心は、矢張り、如何に今後の中国に対応するかである。この中では、「超限戦」等を考えれば、我が国や同盟国やパートナー国に対し、ありとあらゆるアプローチ(攻撃)がある事を想定し、ある特定の部署のみが完璧でも意味がなく、国家として強靭な体質になることを視野に入れた戦略、そして法律、計画になることを願っている。
今通常国会では「経済安全保障法制」が成立し、年末までに「NSS」、そして、「防衛計画の大綱」(又は「国家防衛戦略」)、「中期防衛力整備計画」が策定される予定である。
それぞれの内容について、今回は言及しないが、昨年から議論されている、「台湾」への態度を明確にすることと、昨今の我が国近隣国が極超音速弾道弾や低高度・不規則飛翔飛行する弾頭の開発・配備している事に鑑み、防御能力には限界があり、「長距離打撃能力」の保有の是非に関する議論を行い、我が国の多くの国民の賛同が得られる「結論」に達することを願って止まない。
その「結論」が、我が国の「意志」であり、「決意」である。仮に、我が国に手を出そうとする国があるならば、そのような国に我々の「決意」を伝えるのが「経済安保法制」であり、「NSS」、「大綱」、「中期防」である。
危機管理の要諦は「抑止」である。そして、もし、仮に、「抑止」が破れ、事態が起こった場合には、普段から備えた能力を遺憾なく発揮し、「行動(戦う)」する事である。(令和4.2.2)
岩崎茂(いわさき・しげる)
1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。
写真:ロイター/アフロ
■実業之日本フォーラムの3大特色
実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。
1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
(4)我が国の状況、特に安全保障分野
岸田政権は、コロナ対策も国民からの支持を貰い、支持率が比較的安定している。しかし、今年の見通しが必ずしも明るいわけではない。最大の不安定要因は、Covid-19問題である。この対応如何によっては、支持率も急降下する事もあり得る。そして、前述した様に、我が国は、昨年に続き今年も国政選挙(参議院選挙)が控えている。この選挙結果次第では、何が起こるかわからない。現与党が政権を失うことはあり得ないが、もし、参議院で与党が半数以上の議席を確保できなければ、「ねじれ国会」となり、国会運営がかなり困難になることが考えられる。
選挙以外にも、課題は沢山ある。最大の課題は、経済活動の再生である。コロナの為に我が国の経済のみならず、全世界の経済が低迷している。この状態が、既に2年続いているのである。経済は動かないものの、各国とも莫大な負債を抱えながら、コロナ対策に資金を出している。我が国も各国も、経済が疲弊している。これを早急に回復させないといけないが、有効な手段が見つかっていない。
次に、外交であるが、今年は「日中国交正常化50周年」の年である。大きな節目である。我が国は北京オリンピック・パラリンピックは外交的ボイコットをするが、経済を復活させる為に中国の市場を活用せざるを得ない。大変難しい舵取りが必要であるが、我が国は是々非々で臨むべきである。尖閣諸島周辺の中国公船への対応やチベット・新疆ウイグル地区での人権問題等には毅然たる態度で臨むべきである。
そして、安全保障である。昨年から「国家安全保障戦略(NSS)」の見直し作業が始まっている。今後の我が国の方針を決める大変重要な作業である。昨年岸田政権が発足した際、「経済安全保障大臣」が新設された。最近の経済・技術分野に着目した「経済安全保障」を司る大臣である。昨年末から「経済安全保障」に関係した法律策定の作業も進み、今年の通常国会に当法案が提出される見込みである。
大変、素晴らしいことである。今回のこの様な一連の安全保障関連の議論の中心は、矢張り、如何に今後の中国に対応するかである。この中では、「超限戦」等を考えれば、我が国や同盟国やパートナー国に対し、ありとあらゆるアプローチ(攻撃)がある事を想定し、ある特定の部署のみが完璧でも意味がなく、国家として強靭な体質になることを視野に入れた戦略、そして法律、計画になることを願っている。
今通常国会では「経済安全保障法制」が成立し、年末までに「NSS」、そして、「防衛計画の大綱」(又は「国家防衛戦略」)、「中期防衛力整備計画」が策定される予定である。
それぞれの内容について、今回は言及しないが、昨年から議論されている、「台湾」への態度を明確にすることと、昨今の我が国近隣国が極超音速弾道弾や低高度・不規則飛翔飛行する弾頭の開発・配備している事に鑑み、防御能力には限界があり、「長距離打撃能力」の保有の是非に関する議論を行い、我が国の多くの国民の賛同が得られる「結論」に達することを願って止まない。
その「結論」が、我が国の「意志」であり、「決意」である。仮に、我が国に手を出そうとする国があるならば、そのような国に我々の「決意」を伝えるのが「経済安保法制」であり、「NSS」、「大綱」、「中期防」である。
危機管理の要諦は「抑止」である。そして、もし、仮に、「抑止」が破れ、事態が起こった場合には、普段から備えた能力を遺憾なく発揮し、「行動(戦う)」する事である。(令和4.2.2)
岩崎茂(いわさき・しげる)
1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。
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1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム
・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する
・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う
2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア
・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く
・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える
3)「ほめる」メディア
・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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