後場の投資戦略ニュース一覧

後場の投資戦略 コロナ後初の実質金利プラス転換、今晩の米株市場の変調を注視 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27139.99;+154.90TOPIX;1909.90;+14.20[後場の投資戦略] 前日の米株市場の大幅高に反して、本日の日経平均は上昇してはいるものの、方向感に欠ける動きで強い動きとまでは言えない。一時25日移動平均線を上抜いたものの、その後の失速で、上ヒゲを残し、同線が上値抵抗線として意識される格好となった。明日の日本電産<6594>を皮切りに3月期企業の本決算シーズンが本格化するのを前に、様子見ムードが強く、積極的に買い上がる雰囲気でない状況に変わりはないのだろう。 前日の米国市場では、ハイテク・グロース株が大幅高だったものの、米10年債利回りは2.94%(+0.08pt)まで大きく上昇。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.93%(+0.01pt)と小幅な上昇にとどまり、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は遂に新型コロナショック後で初めてプラスに転じた。実質金利のプラス転換は時間の問題とは思われたが、一昨日の当欄で指摘してから僅か2日と、想定以上のスピードでの実現となった。 これだけの速いペースでの金利上昇にも関わらず、前日の米株市場ではナスダックが大幅高になるなど、物色動向としてはちぐはぐな印象を受けた。ただ結局、本日の東京市場でハイテク・グロース株の多くが朝高後に失速し、マイナスに転じているのを見る限り、やはり金利に対する警戒感は拭い去ることはできないようだ。実際のところ、前日の米ハイテク株高は、18日の確定申告締切日を通過し、税還付金を手にした短期目線の個人投資家が取引主体だったことが要因として大きいのではないだろうか。上昇率上位の銘柄を見ても、今年に入って大きく売り込まれていたような銘柄が多く、自律反発狙いなど短期目的の買いが中心だった印象だ。中長期目線の投資家が様子見を決め込むなか、最近の取引参加者の多くはこうした短期目線の投資家であると考えられるため、動き方にも整合性がつきそうだ。 そうしたなか、心配なのは今晩。米企業の決算発表も今後本格化していくが、大型テック企業として個人投資家からの人気も高い、動画配信サービスを提供するネットフリックスが前日の米株市場の取引終了後に先んじて決算を発表した。1-3月のストリーミングサービスの会員数は20万人の純減で、2011年以来の会員減少になったという。また、4-6月にはさらに200万人減るとの予想を示した。これを受け、株価は時間外取引で25%急落した。市場の注目度も高い銘柄だけに、投資家心理を悪化させることは避けられないだろう。また、税還付金を手にしてハイテク株に投資した個人投資家が多いとする仮定が正しいとすれば、これら投資家は早々に含み損を抱えることになり、市場の重しにもなりかねない。 本日の東京市場では、グロース銘柄が集まるマザーズ指数が朝高後に急失速し、大幅に5日続落となっている。ローソク足は5日連続の陰線で、水準も切り下げ継続、25日線を明確に下放れる格好となっており、明らかに弱さが目立っている。東京市場では、既にネットフリックスの決算を受けた今晩の米株市場の下落を警戒しているようだ。また、米10年債利回りは東京時間の本稿執筆時点において2.96%まで上昇している。今晩にも3%を軽々突破するとなると、金利上昇の歯止めがかかる水準が分からなくなり、警戒した株式売りなども出そうなため、留意しておきたい。上述した背景から、後場の日経平均は下げ渋ったとしても、前場の高値を抜いていくような展開は期待しにくいだろう。後場は上値の重い展開を想定する。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/20 12:08 後場の投資戦略 焦点は「利上げペース」より… [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26830.82;+31.11TOPIX;1887.07;+6.99[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米半導体株高や円安進行が好感され、押し目買いが先行する形で300円近い上昇からスタートしたが、早々に失速する格好となった。27000円水準での上値の重さが意識されてくる可能性がある。物色動向は米市場と同様で、市況関連株や半導体関連株が買われる一方、サービス・小売などの消費関連株に売り。金融株が思いのほか伸び悩んでいるのは気掛かりだ。前引けの日経平均が+0.12%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.37%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆円あまり。前日は1日を通じ初の2兆円割れとなったが、本日も引き続き売買低調だ。 新興株ではマザーズ指数が-0.98%と4日続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、軟調な展開を強いられている。メルカリ<4385>などの主力株も全般軟調で、値を飛ばす銘柄は限られている。前日の東証グロース市場の売買代金は1176億円で、4月初めが2000億円規模だったのを踏まると、新興株の売買は急失速してきた感がある。 さて、18日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)が1バレル=108.21ドル(+1.26ドル)と4日続伸。金先物相場(ニューヨーク商品取引所、COMEX6月物)も1トロイオンス=1986.4ドル(+11.5ドル)と反発した。10年物国債利回りが2.85%(+0.03pt)に上昇する一方、2年物は横ばいの2.45%となり、利回り曲線(イールドカーブ)は傾斜化(スティープニング)。先週後半に当欄で指摘したとおり、3月の米消費者物価指数(CPI)発表を通過し、短期的なリバーサル(相場の反転)を経て商品市況の反騰、長期の年限の金利上昇が顕著になってきた。 セントルイス連銀のブラード総裁は年内にも政策金利を3.5%前後に早急に引き上げる必要があると述べ、0.75ptの大幅利上げの可能性も示唆した。もっとも2年金利の反応を見る限り、金融市場も急速な利上げは相当程度織り込んでいるとの見方には妥当性があるように思われる。 しかし、焦点が「目先の利上げペース」でなく「インフレの持続性(ひいては将来的な金融政策の再転換の可能性)」に移っていると考えれば、先週後半からの一連の動きも整合的なものに見えてくる。ウクライナ危機による世界的な経済圏の分断がインフレの長期化を招くとの懸念は拭えない。「インフレは一時的」「米経済は堅調を維持」といった見方も根強く残り、株式相場を下支えしているが、金融市場全体の方向感は見誤るべきでないだろう。 また、日本では為替相場の円安進行が輸出企業の採算改善に寄与するとの期待も強いが、筆者としてはコロナ禍とウクライナ危機による新環境下で、従来型の経済・金融政策がインフレや円安を加速させているにも関わらず、その恩恵とコスト負担の不均衡が経済全体を下押ししかねないように思われる。実際、製造業全体として株価好調と言いづらいのはこうした懸念があるからではないだろうか。世界全体でも、世界銀行が18日、2022年の経済成長率見通しを従来の4.1%から3.2%に下方修正しており、先行き懸念は拭えない。 引き続きインフレ下で経済が堅調を維持できるかどうか、見方が定まったようには思われない。株式相場は方向感に乏しい展開とならざるを得ないだろう。(小林大純) <AK> 2022/04/19 12:57 後場の投資戦略 「インフレピークアウト・金利上昇一服」に再考の必要性も [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26596.66;-496.53TOPIX;1866.11;-30.20[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は値幅を伴った下落で、先週もみ合っていた25日移動平均線を大きく下放れた。先週末の欧米市場が休場で目立った材料がないなか、時間外取引の米金利上昇や株価指数先物の下落が重しになっているのだろうが、それだけにしては下落幅が大きい。いまの相場の脆さを表しているようで、投資家も改めて押し目買いの入れにくさを実感していることだろう。 今週は目立ったイベント少ないため、今後も米金利動向などに神経質な展開が続きそうだ。一時1バレル=100ドルを割っていた米原油先物相場では、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)5月限が1バレル=106-108ドル近辺で推移するなど、じわりと上昇基調が続いている。もともと、90ドル台へ下落に転じた際も、期先物は下落していなかったため、再びの上昇は時間の問題とも言われていたが、改めて期近物が100ドルを回復してきたことで警戒感が強まっている。 先週、インフレピークアウトの見方の台頭とともに一時低下に転じていた米金利も、10年債利回りが東京時間で、本稿執筆時点、2.86%まで上昇してきている。5月、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5ptの大幅利上げについては、短期金融市場ですでに9割程にまで織り込みが完了してきているにも関わらず、金利の上昇が一向に落ち着かないのは気掛かり。 11日の本稿「金融引き締めに“織り込み済み”ない?」で述べたことの繰り返しにはなるが、やはり、歴史的なインフレ高進局面での連続大幅利上げと“かつてないペース”での量的引き締め(QT)の同時進行という、異例の金融引き締めプロセスに向かう今年は、今までのような「織り込み済み」は通用しないのではないか。少なくともそうした可能性も考慮しておかなくてはいけない、非常に難しい相場局面にあることを再認識しておく必要がありそうだ。 連邦準備制度理事会(FRB)がインフレファイターとしてインフレ退治に躍起になるなか、10年物ですでに0.1%台にまでマイナス幅が縮小した米実質金利が、今後プラス圏に転じるのはもはや時間の問題だろう。これを踏まえれば、今後、米10年債利回りが3%を超えてくるのも時間の問題とみられ、3%超えも通過点に過ぎないのかもしれない。 その際には、株式益回りと国債利回りの差、いわゆるイールド・スプレッドの観点からも、株式への投資妙味は薄れてくる。インフレヘッジとしての株式投資への需要はあろうが、その際は、商社やエネルギー・非鉄金属などコモディティ関連くらいしか買われない可能性があり、相場全体の底上げには至らない展開も想定される。年始からの「グロース売り・コモディティ買い」はそろそろ一服と思っている投資家も多いかもしれないが、こうした考えには、今一度再考が必要かもしれない。 後場の日経平均は軟調な展開が続きそうだ。手掛かり材料難のなか、引き続き時間外取引の米金利や株価指数先物を睨んだ動きとならざるを得ない。連休明け今晩の米国市場で、実際に金利と株価がどう反応するかも見極めたいとの思惑もあろう。買い手に乏しいなか、更なる下値模索の可能性にも注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/18 12:11 後場の投資戦略 やはり「堅調な米経済」と「先行き不安」で綱引き [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26995.86;-176.14TOPIX;1891.37;-16.68[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株安の流れを引き継ぎ、朝方に一時400円近い下落。その後下げ渋るも、一時プラスに転じたところで戻り一服となった。日足チャートを見ると、27000円割れ局面での底堅さも感じるが、27200円台に位置する75日移動平均線が上値を抑える格好。個別・業種別では、米金利上昇やそれに伴う円安進行を受けて関連銘柄に買いが入っているが、半導体関連などのグロース(成長)株の軟調ぶりが目立つ。東証プライム市場の下落率上位には中小型グロース株が多く顔を出している。前引けの日経平均が-0.65%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.87%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆1000億円あまりで、今晩の米市場が聖金曜日で休場とあって、前日以上に低調だ。 新興株ではマザーズ指数が-2.86%と大幅続落。前日は日経平均の堅調ぶりとは対照的にさえない展開だったが、本日は米金利上昇・ハイテク株安を受けて一段と軟調だ。日足チャートでは、750pt台に位置する25日移動平均線水準で煮詰まり感も。メルカリ<4385>などの主力IT株は全般軟調で、ウォンテッドリー<3991>などの好決算銘柄に買いが向かっている。 さて、14日の米10年物国債利回りは2.82%(+0.12pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物も2.45%(+0.10pt)に上昇した。米原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)は1バレル=106.95ドル(+2.70ドル)と3日続伸。一時107.64ドルと2週間ぶりの高値を付けたという。戦略備蓄の放出を受けて調整していたが、足元で需給ひっ迫の長期化を見越して反騰してきている。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.89%(+0.09pt)と3日ぶりに大きく上昇した。 この日発表された米経済指標では、3月小売売上高が前月比0.5%増と市場予想(0.6%増)を下回る一方、2月分が上方修正された。また、4月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)が市場予想に反し上昇するなど、全般に米経済の底堅さを感じさせる内容だった。3月の消費者物価指数(CPI)を受けてインフレのピークアウトに期待する声も出ていただけに、先行きへの強気な見方を後押しするだろう。 しかし、米著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏や米ペンシルベニア大ウォートン校のジェレミー・シーゲル教授らはインフレの高止まりを予想。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が積極利上げ姿勢を示した。供給制約によるインフレ長期化と急速な金融引き締めが米経済のリセッション(景気後退)をもたらすとの声もなお多く聞かれる。 実際、米消費者心理の改善はガソリン小売価格が下落に転じた影響が大きいとみられているが、原油先物相場の反騰の兆しを見ると先行き警戒せざるを得ないだろう。また、米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が発表した4月8~14日週の30年固定の住宅ローン金利は、10年以上ぶりに5%に達した。ローン支払額の急増も消費に冷や水を浴びせかねない。 結局のところ米連邦準備理事会(FRB)が景気をソフトランディング(軟着陸)に導けるかどうか、株式相場が通例のサイクルどおり「業績相場」に移行できるかどうかといった議論に早々に決着はつきそうになく、「『先行きの見方』は分かれたまま(前日の当欄タイトル)」である。株式相場はイベント睨みの投資家による売買で短期的に上下に振れつつも、大方の投資家は先行きを見定めるまで様子見と思われ、方向感は出にくいだろう。これを裏付けるように、4月第1週(4日~8日)の投資主体別売買動向で外国人投資家は日経平均先物を2219億円買い越す(順張り的な短期筋による散発的な買いが入ったとの観測がある)一方、TOPIX先物については742億円の売り越しにとどまった。これらを念頭に置いたうえで相場に取り組んでいきたい。(小林大純) <AK> 2022/04/15 12:22 後場の投資戦略 結局「先行きの見方」は分かれたまま [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27182.50;+339.01TOPIX;1905.70;+15.64[後場の投資戦略] 前日に500円あまり上昇した日経平均だが、本日も米株高で投資家心理が上向き、300円を超える上昇で前場を折り返した。日足チャートでは27000円強に位置する25日移動平均線を上回り、次いで27300円手前に位置する75日移動平均線に迫る動き。米消費者物価指数(CPI)発表前の25日線割れによる短期トレンドの悪化懸念はひとまず和らぎそうだ。主力株も景気敏感系セクターを中心に全般堅調。ただ、米金利低下・ハイテク株高の割に、個人投資家に人気の高い中小型グロース株の軟調ぶりが目立つのはやや気掛かりだ。前引けの日経平均が+1.26%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.83%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆2000億円弱で、やや低調な印象を受ける。 新興株ではマザーズ指数が-0.82%と反落。やはり中小型グロース株安が響き、日経平均の堅調ぶりとはかなり様相が異なる。直近上場のサークレイス<5029>やセカンドサイト<5028>が賑わい、大きく上昇しているが、メルカリ<4385>などの主力株は総じて軟調。東証グロース市場の売買代金は4日から6日にかけて1日2000億円台で推移していたのが、12日1262億円、13日1452億円に減少している。時価総額の大きい主力株を避け、値動きの軽い小型株に物色の矛先が向きやすいだろう。 さて、注目された3月の米CPI・PPI発表を通過し、12日の当欄「世界的な物価高が相次ぎ伝わり米CPI発表へ」で示唆したとおり、ひとまず長期債・株売りの反動が出てきた格好だ。株式市況の反発とともに、「インフレはピークアウトしそう」「米経済は堅調を維持する」といった強気の声も再び聞かれる。こうした強気の声を支えるのは、米雇用市場が足元堅調なことなどに加え、長短金利の逆転(逆イールド)発生から景気後退まで通例として1.5~2年程度かかるということだ。また、前提として「金融相場」から「業績相場」へと続く相場サイクルの通例が念頭にあるのだろう。 一方、前日の当欄で触れられていたバンク・オブ・アメリカ(BofA)のファンドマネジャー調査結果に見られるように、景気悪化を見込む投資家は非常に多い。食料品やエネルギー等の価格が急騰し、金利上昇により住宅ローン支払い額は増大。筆者も日本のいち消費者として、ここ1~2カ月ほどの支出はかなり増えている印象を受ける。米連邦準備理事会(FRB)による今後の急速な金融引き締めが景気を冷え込ませるとの懸念は拭いづらいだろう。今回は相場サイクルが通例より急速に進行しているとの見方も少なからず聞かれる。 結局のところ、3月25日の当欄「経済の先行きで見方分かれる?」以来度々述べているとおり、米国を中心とした世界経済の先行きに対する見方は大きく分かれたままである。これが短期的な株価変動を大きくしている一因でもあると考えられる。 しかし、(1)異例の金融緩和局面で拡大したレバレッジは縮小傾向にあること(戻り売り目線の投資家が多い)、(2)証券各社の調査を見ると、機関投資家は景気の先行きに慎重な見方を示しつつも、持ち高としては中立水準にあるとみられること(大きく売り持ちに振れているわけではなさそう)、(3)日本株について言うと、コロナショック直後は日銀の上場投資信託(ETF)買いが下値を支え、売り方の買い戻しで株価水準を切り上げる展開となったが、日銀のETF買いがほとんど入らなくなった現在は売り方の買い戻しで高値を取りに行くような展開が期待しづらいこと、などの点から、日経平均は中長期的に上値切り下げのトレンドを維持するとの見方に変わりはない。 投資家はこうした環境とともに自身の投資スタイルやターゲットとする期間、リスク許容度などをよく理解したうえで相場に取り組む必要があると改めて強調しておきたい。(小林大純) <AK> 2022/04/14 12:27 後場の投資戦略 インフレピークアウトで買い転換への好機? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26755.05;+420.07TOPIX;1882.48;+18.85[後場の投資戦略] 日経平均は前日の米株安に反して大幅反発。前日まで相対的に弱かった半導体関連株や高バリュエーション株の総じて強い動きを見る限り、米CPI前に持ち高調整で売っていたハイテク・グロ−ス株をイベント通過で買い戻しているといったところか。 しかし、日経平均は本日の大幅反発でも、26900円台に位置する25日移動平均線にはまだ遠く及ばない水準であり、短期的なリバウンドの域を出ていない。また、米CPIを通過したことで一時的にあく抜け感が台頭しているのかもしれないが、今晩には米3月PPIの発表が控えている。川下分野の動向を反映するCPIよりも、川上分野の動きを映すPPIの方が先行性は高いと考えられ、CPIの結果だけを受けてインフレピークアウトを判断するのは気が早いだろう。 12日、FRBのブレイナード理事は利上げとバランスシート縮小の「複合的な効果により、年内には速やかに政策スタンスがより中立的なものになる」と発言。また、リッチモンド連銀のバーキン総裁も、政策金利を、経済を刺激も減速させもしない中立レンジにできるだけ迅速に引き上げるべきだと述べ、さらに、物価圧力が持続する場合にはそれ以上の行動を取る可能性があるとの認識を示したという。 コアCPIの伸びは予想を下回ったとはいえ、前年同月比で+6.5%だ。連邦準備制度理事会(FRB)の目標とする+2%を3倍も超えており、仮にピークアウトしたとしても、高い物価水準はしばらく長く続く可能性が高い。コア指数の前月比の伸びも+0.3%と予想(+0.5%)を下回ったとはいえ、前月比で伸びていることに変わりはない。また、CPIの構成項目の中で、下方硬直性を有し、インフレ動向を見定めるうえでより重要な、家賃などから成る住居費は前年同月比で+5.0%と2月の+4.7%から伸びが加速し、前月比では2カ月連続で+0.5%と伸びが鈍化していない。 こうしたCPIの結果内容と高官らの発言を踏まえると、FRBの金融引き締め懸念という今年最大のリスク要因を巡っては、何も状況が改善していないとも言える。日々相場を見ていれば、一日の動きを巡っていちいち様々な憶測や予想が飛び交うのは致し方ないが、本質的なことは今日と昨日とで何も変わっていないということを認識しておくべきだろう。 バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した4月のファンドマネジャー調査によると、景気悪化を見込む投資家の割合は過去最高となり、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の予想は2008年8月以来の高水準になったという。興味深いのは、投資家の姿勢が極端に悲観に傾くなか、同社の逆張り指標である買いシグナルが点灯したにも関わらず、同社のストラテジストは、この買いシグナルに乗ずるべきではなく、戻り待ちの売りを推奨しているという。また、今年に入ってからの株価下落は「2022年の前菜」にすぎず、メインコースとも言うべき本格的な下げはこれからやって来るとも指摘したという。 前回、同指標が同じくらいに弱気に至ったのは新型コロナパンデミックが発生した直後の2020年3月だった。この時は、それ以降に実施された世界的な超大規模金融緩和策の影響で、実際、株価は記録的な上昇を見せ、結果として、BofAの逆張り指標は有効に機能した。しかし、今はFRBが超大規模緩和策を急速に巻き戻そうとしており、状況が正反対だ。同社ストラテジストの「買いシグナルに乗ずるべきでない」との指摘は的を射ていると考えるのが合理的か。 後場の日経平均は戻り一服か。今晩の米3月PPIを控えて改めて警戒感が強まる可能性もあり、次第に上値が重くなりそうだ。堅調推移が続いたとしても、25日移動平均線に近づく場面では戻り待ちの売りが上値を抑えよう。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/13 12:08 後場の投資戦略 世界的な物価高が相次ぎ伝わり米CPI発表へ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26455.97;-365.55TOPIX;1868.06;-21.58[後場の投資戦略] 本日の日経平均も前日と同様、米国の金利上昇によるハイテク株を中心とした相場下落を受けて、売りが先行する展開となっている。日足チャートを見ると、26800円台に位置する25日移動平均線水準を下抜け。ここ3日ほど25日線水準で踏ん張りを見せていたため「値固め」との解説も散見されたが、一段の下落により短期トレンドの悪化が意識されやすいだろう。前引けの日経平均が-1.36%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.14%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆3000億円弱で、前日並みといったところか。 個別・業種別では海運株に加え、値がさグロース(成長)株やこのところ逃避資金が流入していた(景気の影響を受けにくい)ディフェンシブ株の一角で軟調ぶりが目立つ。ただ、ローツェやSansanの好決算が他の関連銘柄の期待を支え、買い戻しを誘っている印象も受ける。 新興株ではマザーズ指数が-0.76%と続落。前日に-4.01%という大幅下落を強いられた反動から朝方プラスに転じる場面もあったが、買いは続かず失速する格好となっている。時価総額トップのメルカリ<4385>は小安いが、ソニーネットワークコミュニケーションズとNFT(非代替性トークン)事業で共同出資会社を設立したサンアスタリスク<4053>が商いを伴って急伸。材料株物色が手控えられているわけではないようだ。本日、東証グロース市場に新規上場したサークレイス<5029>はここまで買い気配が続いている。 さて、8日の当欄「やはり米金利水準の上昇には懸念」で述べたとおり、その後の日米株式市場では米金利の更なる上昇を受けてグロース株を中心に軟調な展開を強いられている。11日の米市場では10年物国債利回りが2.78%(+0.08pt)に上昇。一時2.79%と2019年1月以来の高水準を付けたという。インフレ・金融引き締め観測に加え、アマゾン・ドット・コムの大型起債という需給要因もあったようだ。金融政策の影響を受けやすい2年物は2.49%(-0.03pt)に低下し、利回り曲線(イールドカーブ)は傾斜化(スティープニング)したが、やはり長期の年限を中心とした金利上昇は将来収益に基づき株価形成されるグロース株に逆風となっている。 また、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.91%(+0.04pt)と足元上昇しているが、金利の上昇ピッチがより速いため、結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利のマイナス幅は縮小傾向にある。 今晩発表される米3月CPIは市場予想のコンセンサスで前年同月比8.4%上昇と、2月(同7.9%上昇)から伸びが加速するとみられている。これに先立ち、世界的な物価高を示すニュースも相次ぐ。国連食糧農業機関(FAO)が8日発表した3月の世界の食料価格指数は159.3と2カ月連続で過去最高値を更新。『前月比』で12.6%の大幅上昇である。また、中国国家統計局が11日発表した3月の卸売物価指数(PPI)は資源高の影響で前年同月比8.3%、前月比1.1%上昇した。これらのニュースに加え、米ホワイトハウスがCPIについて「非常に大きく上昇する」との見方を示しており、発表を前に警戒感が先行するのもやむを得ないだろう。 発表後は短期的に悪材料出尽くし感が意識される可能性もあるが、引き続き各種経済指標や金融当局者を中心とした要人発言を睨み神経質とならざるを得ず、戻りは限定的とみておきたい。 東京市場の動向にも少々触れておくと、3月第5週(3月28日~4月1日)の投資主体別売買動向で外国人投資家はTOPIX先物を8566億円、日経平均先物を2590億円売り越した。それまでの買い越しは配当再投資等を睨んだ一過性のものだったと受け止めざるを得ない。また、1日申込み時点の市場全体の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は2兆9569億円(+66億円)と4週ぶりに増加したが、昨年11月に3.7兆円規模まで膨らんだのをピークに減少傾向が続く。金融引き締め局面でのレバレッジ縮小は当然の動きだろう。 従前に当欄で予想したとおり、日経平均の直近の戻りは昨年9月からの戻り高値を結んだライン上にある28000円台で一服した。戻り売り目線の投資家が減らない限り、中長期的には上値切り下げトレンドにならざるを得ないだろう。(小林大純) <AK> 2022/04/12 12:24 後場の投資戦略 安川電機の決算好感できず、金融引き締めに“織り込み済み”ない? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26793.46;-192.34TOPIX;1885.18;-11.61[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は朝方に下げ幅を一時200円超にまで広げた後、急速に下げ渋ると、先週末に続き、25日移動平均線が下値支持線として機能する形に見えたが、前引けにかけては大きく失速し、同線を割り込んできている。米金利の先高観が警戒されるなか、東証グロースコア指数は4.6%安と大きく下落しており、5日の高値をピークに、その後は本日まで4日連続で陰線を形成し、高値と安値を同時に切り下げてきている。マザーズ指数は再び75日線を割り込んできた。3月半ばからの中小型グロース株のリバウンドは早くも一服し、再び相対的な弱さが目立つ地合いとなっている。 さて、製造業決算の前哨戦として注目される安川電機の本決算は、今期見通しが市場予想を上回り、受注動向の好調さも確認され、総じて良い内容だった。しかし、本日の同社株価は朝方に大幅高で始まった後はマイナスに転じるなど冴えない動き。部品調達難の影響などで前期実績が会社計画を下振れたこともあり、今期見通しに懐疑的な向きも少なくないようだ。また、米金融引き締めやウクライナ情勢に加え、ロックダウン(都市封鎖)に伴う中国経済の動向など、懸念要素が多くくすぶるなか、好決算でも投資家はなかなか積極的にはなれないとも捉えられる。今月下旬からは3月期企業の本決算が始まるが、どうやら先回り買いなどは期待できないようだ。 8日時点での米10年債利回りは2.71%、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.87%となった。これに伴い、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は-0.16%までマイナス幅の縮小が進んだ。新型コロナパンデミック以降、実質金利の大幅なマイナスがグロース株を中心に株式市場全体の押し上げに寄与してきたことを踏まえれば、実質金利のマイナス幅がこれだけ縮小されてくれば、足元の株式市場でグロース株を中心に相場の上値が抑えられるのも仕方のないことだろう。 米国では、明日12日に3月消費者物価指数(CPI)、13日には3月生産者物価指数(PPI)が発表される。CPIは総合で前年比+8.4%と2月の+7.9%から更に伸びが加速し、40年ぶりの最高を更新する見込み。足元、原油先物相場をはじめエネルギー・非鉄金属価格の上昇が一服していることもあり、高い伸びが出ても、過去の時点を映したに過ぎないバックミラーとして捉え、むしろインフレのピークアウトを織り込みにいく可能性が指摘されている。 しかし、相場の関心事が再び金融引き締めに移ってきているなか、予想比の上振れ次第ではマイナスに反応するリスクは高い。実際、連邦準備制度理事(FRB)のブレイナード理事のタカ派発言や連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公表以降も、ナスダック総合指数やフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下げは止まっておらず、あく抜け感は強まっていない。 米10年債利回りも急ピッチでの上昇が続いており、これまで、株式市場よりは早く織り込みが進んできたと言われてきた債券市場でも、FRBのタカ派スタンスの織り込みはまだ完了していない様子。また、米10年BEIは8日に2.87%と、7日の2.82%からむしろ上昇した。市場はまだインフレのピークアウトを信じ切れていないか、FRBの一段のタカ派化リスクを恐れている様子。 実際、短期金融市場は5月、6月FOMCでの利上げ幅として0.5ptをそれぞれ8割程にまで織り込んできているが、セントルイス連銀のブラード総裁は今下半期の間に政策金利を3.00-3.25%まで引き上げるべきとも発言しており、FRBの一段のタカ派化は確かに否めない。FRBのスタンスが刻々とタカ派し続けるなか、今年は金融政策について「織り込み済み(だから相場は上昇)」と判断することは難しく、今後も高官発言や金利動向に神経質な動きが予想されよう。インフレ退治に躍起になっているFRBの姿勢を踏まえれば、実質金利が今後プラスに向かっていくことは時間の問題とみられ、金利の一段の上昇に対しては警戒しておいた方がよいだろう。 後場の日経平均は前場の安値を割り込んでくる可能性がある。中国上海総合指数や香港ハンセン指数が大幅下落でスタートした後も下げ止まっていない。また、時間外取引で米10年債利回りが2.76%まで上昇してきており、これに伴い、時間外取引のナスダック100先物などが下げ幅を広げてきている。海外市場の動向次第では、短期筋の仕掛け売りなどにも注意が必要だろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/11 12:11 後場の投資戦略 やはり米金利水準の上昇には懸念 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26820.37;-68.20TOPIX;1887.07;-5.83[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方に一時300円近く上昇したが続かず、一転して3ケタの下落となる場面もあった。ここ2日でおよそ900円下落した後の反発としては弱く、上値の重さが改めて意識されざるを得ないだろう。日足チャートでも連日で陰線を引いており、目下25日移動平均線水準での攻防といった様相。SQ値に対しては朝方に上回る場面もあったが、その後下回っての推移が続いている。 業種別ではITなどのハイテクセクターの堅調ぶりが目立つが、一部企業の好決算や証券各社の強気の投資判断が支援材料となっているのだろう。一方、京阪HDやH.I.S.<9603>の下げが大きく、前日と同様に新型コロナウイルス感染再拡大への警戒感が窺える。前引けの日経平均が-0.25%なのに対し、TOPIXは-0.31%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆5000億円あまりで、オプションSQの影響を除けばここ数日とさほど変わらない水準だろう。 新興株ではマザーズ指数が+0.03%と3日ぶりに小幅反発。こちらはかろうじてプラス圏をキープしているが、やはり朝方の買いが一巡すると伸び悩んでいる。時価総額上位や売買代金上位は高安まちまちだが、今週上場したばかりのセカンドサイト<5028>や今週半ばまで戻り歩調だったウェルスナビ<7342>の下げ幅の大きさを見ると、投資資金の逃げ足の速さを感じざるを得ない。 さて、米国ではセントルイス連銀のブラード総裁がインフレ抑制のため「政策金利は下期に3.5%に達する必要がある」などと講演で述べたことが話題となった。年内残り6回全ての連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの大幅利上げを行うべきと主張しているようなものだ。ブラード氏はタカ派として知られる点を考慮する必要はある。ただ、前日の当欄「『米金融引き締め』と『コロナ禍』懸念」で3月FOMC議事要旨を確認しても更なる引き締め加速への懸念は拭いづらいと述べたが、ブラード氏の発言はそうした見方を裏付けるものだろう。 もっとも、米国債利回りは7日、10年物が2.46%(-0.01pt)に低下する一方、10年物が2.66%(+0.06pt)に上昇した。3月FOMC議事要旨の公表前に中期債売り・長期債買いが強まっただけに、その巻き戻しが生じているもよう。利回り曲線(イールドカーブ)の傾斜化(スティープニング)に失業保険申請の減少も加わり、経済の先行きへの懸念が和らいだことが米株を支えたとみられている。 しかし、金利水準の上昇は実体経済や金融市場に大きな影響を与えるだろう。米不動産仲介業者レッドフィンによると、ここ1カ月に米国で販売中の不動産の12%が値下げしたという。金利急騰でローン支払額が大幅に増加し、買い控えにつながっているようだ。米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が発表する30年固定の住宅ローン金利は3月末に平均4.67%まで上昇している。数十年という長い期間で見れば決して高水準ではないとの指摘もあるが、問題は「消費者が低金利に慣れ切ってしまっていた」ことだろう。これは緩和的な環境下でレバレッジを拡大させてきた金融市場も同様と考えられる。 金融引き締め観測が一段と強まるとともにコロナ禍やウクライナ危機の長期化懸念も浮上し、先行きへの楽観的な見方は後退せざるを得ないだろう。目先の株価トレンドは悪化方向に傾くとみておきたい。なお、本日は国内で安川電<6506>の決算発表が控えており、製造業の皮切り役として注目される。(小林大純) <AK> 2022/04/08 12:26 後場の投資戦略 「米金融引き締め」と「コロナ禍」懸念 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26803.34;-546.96TOPIX;1884.41;-38.50[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大幅続落し、500円を超える下落で前場を折り返した。朝方下げ幅を広げると26800円台での軟調もみ合いが続き、押し目買いの動きが乏しい印象を与えるだろう。日足チャートでは、前日に27400円近辺に位置する75日移動平均線を割り込むと、本日の大幅続落で26700円台に位置する25日移動平均線近くまで調整。売買代金上位では半導体関連などの値がさグロース(成長)株、業種別騰落率では市況関連セクターを中心に軟調ぶりが目立つ。グロース株、景気敏感株ともに手掛けづらく、逃避資金がディフェンシブ色の強い(景気の影響を受けにくい)医薬品株に向いた格好だろう。前引けの日経平均が-2.00%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)も-2.00%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆3000億円あまりで、ここ2日とおおむね同水準となっている。 新興株ではマザーズ指数が-3.66%と大幅続落。こちらも節目の800ptや同水準に位置する75日移動平均線を割り込んできた。前日の後場には押し目買いが入り下げ渋る動きを見せたが、本日はここまで弱含みの展開となっている。時価総額トップのメルカリ<4385>が-3.96%、売買代金トップのJTOWER<4485>が-8.62%となるなど全般軟調で、物色の矛先が向いている銘柄は限られる印象だ。 さて、3月FOMC議事要旨では量的引き締め(QT)について月950億ドルを上限として資産縮小していくことや、0.5ptの利上げについて年内1回以上の実施が正当化されるとの見方が示された。ただ、金融市場ではQTについて月1000億ドル規模、利上げについても複数会合で0.5ptとなることが見込まれていたうえ、直前にはブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事らからタカ派的な発言が出ていたため、想定内と言えば想定内の内容と言えるだろう。実際、米国債市場では6日、10年物国債利回りが2.60%(+0.06pt)に上昇する一方で、金融政策の影響を受けやすい2年物については2.47%(-0.04pt)に低下。10年金利も一時2.66%まで上昇してからは伸び悩んだ。 もっとも、急ピッチの金融引き締めが想定されているのに変わりはない。また、「QTに上限を設けるべきでない」との意見も出てきており、更なる引き締め加速への懸念も拭いづらいだろう。なにより、急ピッチの金融引き締めをかなり織り込んでいた債券市場と比べ、株式市場では直近、新興グロース株が賑わうなどやや楽観に傾いていた面もある(5日の当欄「米『ミーム株』と日本の新興株」などを参照頂きたい)。「長短金利の逆転より、スティープニング(傾斜化)しつつも長期金利が切り上がる方が米株にはネガティブでは」といった声が聞かれたが、将来収益に基づき株価形成される新興グロース株の賑わいに水を差すという点では頷ける指摘である。 このタイミングで新型コロナ感染再拡大に警戒せざるを得ない報道が相次いで出ているのも、短期の株価トレンドを悪化させそうだ。前日開催された厚生労働省の専門家会合では新規感染者数の増加に伴い「療養者数も増加傾向に転じている」との分析が示された。一部専門家は「第7波が既に開始している」とも指摘しているという。また、英国で確認された新変異株「オミクロンXE」は強い感染力を持つとされており、ロックダウンを強いられている中国でも新たな亜型が見つかったもようだ。しかし、コロナ禍による経済減速懸念が広がっても、FRBの姿勢を踏まえると金融引き締めの緩和期待は持ちにくいだろう。財需要や供給制約が持続し、インフレ圧力を強めるとの懸念が拭えない。 前引けのTOPIX下落率が2%に達し、後場は日銀による上場投資信託(ETF)買い実施観測が相場の下支えとなるだろう。それでも世界経済の先行き懸念は拭えず、戻りは限定的とみておきたい。なお、本日は小売企業を中心に決算発表が多くあるため、これらの内容も注視しておく必要があるだろう。(小林大純) <AK> 2022/04/07 12:28 後場の投資戦略 金利急伸で株式売り膨らむ、相場は下がりたがっている? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27262.05;-525.93TOPIX;1922.35;-26.77[後場の投資戦略] 前日の米株市場ではナスダック総合指数が久々に2%を超える大幅下落となった。FBRの中でもハト派とされるブレイナード氏からのタカ派発言とあって、影響が大きくなった面もあろうが、市場は敏感に大きく反応した。米10年債利回りは5日、2.55%(+0.15pt)へと急伸し、3年ぶりの高値を記録(なお、米10年債利回りは時間外取引において、本稿執筆時点で2.60%まで上昇してきている)。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)はほぼ横ばいで2.80%。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は−0.25%までマイナス幅を縮小した。 3月上旬には実質金利のマイナス幅は1%を超えていたため、縮小ペースは急速だ。2020年の新型コロナウイルス・パンデミック以降、長らく資産価格の上昇を後押ししてきた実質金利のマイナスが解消されようとしていることを背景に、デュレーション(投資回収期間)の長いグロース(成長)株が大きく売られたことは道理だろう。 しかし、ブレイナード氏の発言内容には既知の内容が多く、目新しい内容は少なかった。それにも関わらず、これだけ過剰な反応が見られたのは、相場が下げたがっているような印象を与える。相場のリバウンドが一服し、手掛かり材料難だったなか、これまで買い手の中心だった短期筋が、目の前に現れた格好の売り材料に対して素直に売りで反応したということだろう。改めて、足元の相場の脆さが立証されたといえる。 ブレイナード氏は前日の講演で、インフレ圧力を低下させる取り組みが「最優先」だと強調。また、「インフレは高過ぎる状況で、上振れリスクにさらされている」と指摘し、更なるインフレ高進が確認されれば「一段と強力な行動をとる用意がある」とも言及した。そのほか、ブレイナード氏は、QTは過去の回復局面よりも「かなり急速なペースで」行うこと、2017-19年と比較して縮小額の上限は「かなり大きくなる」ことなども示した。 一方、そうしたなか、中国では新型コロナ新規感染者数に歯止めがかかっておらず、現在上海市などで実施中のロックダウン(都市封鎖)の延長が決定された。ロシアへの制裁に加えて、中国でのロックダウンも相まって、インフレ要因の一つである物流網の混乱がさらに長期化するリスクが高まっている。パウエル議長は3月の議会証言にて、QTについて「3年程度かけて行う」などと発言していたが、インフレ高進の長期化リスクを背景に、縮小ペースを加速化する可能性もあろう。上述のブレイナード氏の発言を踏まえると、市場はFRBの一段のタカ派化リスクを織り込んでいく必要性に迫られることを覚悟しておいた方がよいだろう。 後場の日経平均は引き続き軟調な展開となろう。今晩の米国市場で発表されるFOMC議事録(3月15-16日開催分)の内容に対しての警戒感は一段と高まったといえ、内容を見極めたいとの思惑から押し目買いは入りにくい。日経平均はこれまで下値支持線になってきた75日移動平均線をも割り込んできているため、売り方優勢の地合いが継続しやすい。安易な押し目買いは避ける場面だろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/06 12:10 後場の投資戦略 米「ミーム株」と日本の新興株 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27708.30;-28.17TOPIX;1946.80;-6.83[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株高の流れを引き継いで200円あまり上昇して始まったが、結局前日終値を挟みもみ合う展開となっている。日足チャートを見ると、27400円台に位置する75日移動平均線を明確に割り込むことなく底堅い印象だが、本日陰線を引く格好となって28000円前後での上値の重さも拭いづらいだろう。 物色傾向としては米株と同様に値がさグロース(成長)株や消費関連株に買い。一方で海運株や金融株に売り。東証プライム市場全体としては値上がり銘柄の方が多いが、業種別では値下がりセクターの方が多い。規模別では大型が軟調で、小型が堅調。前引けの日経平均が-0.10%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.35%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆3000億円ほどで、旧東証1部市場と単純比較できないが、前日からやや低調な印象を受ける。 新興株ではマザーズ指数が+1.94%と6日続伸。前日にはおよそ2カ月ぶりに800pt台を回復し、同水準に位置する75日移動平均線を上回ってきたが、本日も買いが先行する展開となっている。ただ、ここ数日陽線を付けていたのに対し、本日は上値で利益確定売りも出ているようだ。個別では時価総額トップのメルカリ<4385>などが堅調で、ウェルスナビ<7342>は大幅高。東証新市場「グロース」でのIPO(新規株式公開)第1号となったセカンドサイト<5028>は上場2日目の本日、公開価格比+129.5%という高い初値を付け、前引けではストップ高水準での買い気配となっている。足元の新興株高を追い風にIPO銘柄への物色意欲も高まっているようだ。 さて、前日の米主要株価指数の動向を見ると、NYダウ+0.29%、S&P500指数+0.80%、ナスダック総合指数+1.90%だった。ハイテク株の堅調ぶりが目を引くが、とりわけ電気自動車(EV)のテスラが+5.61%、ゲーム専門店のゲームストップが+3.47%などと、いわゆる「ミーム株(はやりの株)」がけん引役となっている印象を受ける。昨年1月にゲームストップ株の乱高下が話題となったとおり、これらミーム株はコロナショック後の緩和相場で個人投資家の投資マネーが流入した。とりわけ米個人はオプションの取引も活発化させ、株価変動を大きくしているとの指摘がある。 昨年末ごろから米インフレとそれに伴う金融引き締め観測が強まり、さらに年が明けてウクライナ危機が深刻化するなど弱気材料が相次いだことで、これらミーム株はプットオプション(売る権利)の買いが活発になったという。しかし、1日の当欄「経済の先行き懸念も『過度に悲観』か疑問」で触れたとおり、直近の米個人投資家向け調査では「弱気」との意見が後退しており、ミーム株は売り持ちの解消を巻き込んで大きくリバウンドしているものと考えられる。上述したような懸念材料は払しょくされていないが、新規の弱気材料が出てきているわけでなく、先行きに強気の見方が少なからずあることも個人投資家のセンチメントを支えている可能性がある。 もっとも、先の米個人投資家向け調査(全米個人投資家教会(AAII)の週間調査)についてもう一点付け加えると、「中立」との意見が2020年1月以来の水準に上昇し、「弱気」との意見が21年11月以来の水準に低下したが、「強気」との意見はほぼ横ばい(若干の低下)にとどまっている。金融引き締め観測が足元むしろ強まっているだけに、米個人投資家のミーム株物色は短期と割り切ってのものかもしれない。 日本の新興株も主力大型株の様子見ムードやミーム株物色に刺激されて投資資金が流入しているが、個人投資家の信用取引が中心とみられ、昨年末以来の値動きを見てもミーム株同様に株価変動は大きい。5月には次の米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えており、注意して取り組む必要があるだろう。(小林大純) <AK> 2022/04/05 12:24 後場の投資戦略 活発化する中小型グロース株物色の賞味期限は? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27626.77;-39.21TOPIX;1945.51;+1.24[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は先週の流れを引き継いで軟調な展開が継続。新年度相場入りに伴う新規資金の流入や、4月は海外投資家が買い越す傾向にあるというアノマリーなども期待されているが、3月半ばからの急速リバウンドで日経平均の上げ幅は一時3000円も超えていただけに、上昇一服感が強い。 配当落ち日を過ぎて高配当利回り株の物色も一巡するなか、今月末からは3月期決算企業の本決算シーズンが始まる。外部環境の不透明感が強いなか、業績見通しが市場予想比で弱いものになるガイダンスリスクなどが懸念されているため、今は、主力大型株は積極的に手掛けにくい。本日の東証全体の売買代金上位にはHENNGE<4475>やJTOWER<4485>など新興市場の中小型株が大型株と並んで上位にランクインしている。手掛かり材料難のなか、個人投資家を中心に値動き重視の売買が主体となっている様相が窺える。今週末には製造業決算の前哨戦と位置付けられる安川電機<6506>の決算なども控えているため、こうした主力大型株よりは新興中小型株が主体の相場展開が続きそうだ。 一方、先週末にかけて相対的に強い動きが続いている新興市場も、今週は6日には連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表予定のことを踏まえると、近いうちに上昇一服も想定される。市場は既に5月、6月会合での0.5ptの利上げをも大方織り込んでいるため、無難通過の確率が高い。ただ、バランスシートの縮小、いわゆる「量的引き締め(QT)」が早ければ5月にも開始されると予想されるなか、QTに関する内容への注目度は高く、相場の動きに変化をもたらすきっかけにもなり得る。 足元、ウクライナ情勢を巡る不透明感やインフレ高進、連邦準備制度理事会(FRB)による急激な利上げ観測などを背景に景気後退懸念が高まっていることで、米10年債利回りの上昇は一服。先週末からは再び10年債利回りが2年債利回りを下回る「逆イールド」も発生している。こうした長期金利の低下は、2023、24年まで利上げを続けるとするFRBの計画に反して、市場は来年半ばにはFRBは早くも利下げに転じざるを得ない状況に追い込まれると予想していることが背景にある。足元の中小型株を中心としたグロース株の大幅なリバウンドは、年始からの下落を受けた自律反発に過ぎないとも言える一方、こうした将来の利下げを早くも織り込みにいっている可能性がある。 しかし、大幅な利上げを行いつつ、QTもかつてない速いペースで行うという今回の引き締めプロセスは異例なもので、相場への影響は計り知れない。足元の中小型グロース株のリバウンドがいつまでも続くとは想定しにくいだろう。相場が急速リバウンドしていた3月半ば以降、この間、米10年債利回りから期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は急速にそのマイナス幅を縮小していた。グロース株はこの実質金利の上昇を無視してテクニカル要因主体で大きく上昇していたため、リバウンド余地はほぼ解消したとも言えそうだ。 本年のFOMCで投票権を有するカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁は、QTを速やかに行えば利回り曲線がスティープニング化すると主張している。FOMC議事録内でQTの議論が一段と進んでいることが確認されれば、米国債需給の実質的な悪化が懸念され、足元、落ち着いている長期金利が再び2.5%突破を窺う可能性もあろう。その際には一段と実質金利のマイナス幅が縮小することが予想され、グロース株の調整要因に繋がる可能性がある。グロース株が相対的に強い足元の物色動向は速ければ、6日の議事録公表をきっかに賞味期限が切れる可能性に留意したい。 後場の日経平均は引き続き冴えない動きが予想される。手掛かり材料難のなか、時間外取引のNYダウ先物が軟調に推移しているほか、米長期金利もやや上昇しており、週明けの米国市場の動きが気になるところ。また、ウクライナ情勢を巡っては、民間人がロシア軍に殺害されたとの報告を受け、ロシアへの追加制裁懸念がくすぶっている。全体的に模様眺めムードが支配的となるなか、短期筋の売り仕掛けなどに注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/04 12:11 後場の投資戦略 経済の先行き懸念も「過度に悲観」か疑問 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27618.27;-203.16TOPIX;1940.83;-5.57[後場の投資戦略] 名実ともに新年度相場入りした本日の東京株式市場だが、日経平均は連日で200円あまりの下落となっている。なお、東証の現市場区分における最後の売買でもあり、週明け4日から新市場区分がスタートする。日経平均の日足チャートを見ると、27400円台に位置する75日移動平均線水準で下げ渋る一方、5日移動平均線が下降に転じ上値の重さも拭いづらい。業種別では海運業などの市況関連セクターが下落率上位に並び、東証1部下落率上位にシチズンHD<7762>が顔を出しているあたり、上海市西部でロックダウン(都市封鎖)が始まったことにより中国経済への懸念が強そうだ。前引けの日経平均が-0.73%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.29%。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりと前日よりやや多い程度だ。 新興市場ではマザーズ指数が-0.12%と4日ぶり小幅反落。下値で押し目買いが入り下げ渋るのは前日と同様で、期末配当絡みの需給イベントを通過し、個人投資家の物色が小型株にシフトしている印象を受ける。米金融引き締め観測で大きく株価調整した中小型グロース(成長)株は手掛けやすいということもあるのだろう。もっとも、プラス圏で積極的に上値を追う動きは見られない。個別では売買代金トップのJTOWER<4485>が反発し、時価総額トップのメルカリ<4385>は小じっかり。 さて、前日の米株の下落は月末や四半期末特有の売りによるものという面もあるだろうが、金融市場を見渡すとインフレ高進やそれに伴う金融引き締め、中国や欧州の景気悪化などへの懸念が感じられた。10年物国債利回りが2.34%(-0.01pt)に低下する一方、金融政策の影響を受けやすい2年物は2.33%(+0.02pt)に上昇し、景気後退のサインとされる「逆イールド」が再び発生する場面もあったという。石油備蓄の放出が発表されて原油先物相場が急反落する一方、金相場は安全逃避的な買いで続伸した。米金融大手ゴールドマン・サックスのストラテジストなど「米株がさらに大きく反発することはない」との市場関係者の見解が相次ぎ出ていた。 一方、「過度に悲観に傾き過ぎている」として先行きに強気な声も少なからず聞くが、こうした見方には疑問がある。全米個人投資家教会(AAII)が実施している個人投資家のセンチメントに関する週間調査では、「株に中立」との意見が2020年1月以来の水準に上昇すると同時に、「弱気」との意見が21年11月以来の水準に低下したという。個人投資家の悲観が後退してきているのは、マザーズ銘柄に根強い押し目買いが入る日本でも同様と考えられる。この点はかねて当欄で「今後の経済・株式相場の見方は大きく割れている」と指摘しているとおりだ。株式相場は上にも下にも振れうる位置とみておいた方がよいだろう。 2月の米個人消費支出は物価変動の影響を除く実質ベースで減少し、物価の伸びは一段と加速。3月の日銀短観では大企業・製造業の業況判断が市場予想ほどではなかったにしろ悪化に転じた。こうした流れを受け、今晩の米国で発表される3月の雇用統計やサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数も注目を集めるだろう。また前日の当欄で触れたが、日経平均構成銘柄の入れ替え(4日付で新生銀<8303>からオリックス<8591>に変更)に伴い、本日の引けで既存の構成銘柄にリバランスによる売り需要が発生するとみられている。足元で円相場が下落しており、これに伴い日経平均は後場下げ渋る可能性もあるが、重要経済指標の発表や需給イベントを前に戻りは鈍いとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/04/01 12:22 後場の投資戦略 配当絡みの需給イベント通過後は? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27977.98;-49.27TOPIX;1963.20;-4.40[後場の投資戦略] 前日の米株安を引き継いで本日の日経平均は200円超の下落でスタートすると、その後下げ渋る形で前場を折り返した。日足チャートを見ると、28000円割れ局面での押し目買いが根強いと感じられそうだが、一方で上昇一服した5日移動平均線が上値を抑える格好となっている。ロシアとウクライナの停戦交渉への期待後退、中国の企業景況感の悪化などがネガティブな材料だが、米国の石油備蓄放出による需給緩和への期待が下支え材料だろう。 前引けの日経平均が-0.18%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.22%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりとやや低調な印象だ。 個別・業種別の騰落状況を見ると物色の方向感はややつかみづらいが、米ハイテク株安の流れからグロース(成長)株がやや軟調。前日に配当落ちで大きく下落した海運株が押し目買い優勢といったところか。前日の取引時間中には伝わっているが、自動車を巡ってはトヨタ自の2月の世界生産台数が前年同月比10.9%増の74万台となり、2カ月ぶりに前年実績を上回ったという。一方、半導体を巡っては受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が家電製品の需要減速を示唆したようだ。 新興市場ではマザーズ指数が-1.60%と3日ぶり反落。前日は配当落ちと円相場の急伸で日経平均が軟調ななか、制限値幅拡大のJTOWER<4485>を軸に新興株物色が盛り上がった印象だった。しかし、マザーズ指数は3月上旬と同様に800pt手前で伸び悩む格好となり、米金融引き締め観測から上値追いに慎重なムードも感じられる。本日はJTOWERが急反落し、メルカリ<4385>などの主力IT株も総じて軟調だ。 さて、前日の先物手口を見ると、バークレイズ証券やBofA証券がTOPIX先物の売り越し上位に顔を出した。BofAは3月期末の権利付き最終売買日だった29日に続いての大幅な売り越し。11日の3月物の特別清算指数(SQ)算出を通過すると買い越す日が目立っていたが、配当再投資のプレポジション構築だったとの見方がある。29日、30日と続けて野村證券などの買い越しが観測されたが、BofAなどの売り越しが相殺してしまった格好だろう。24日の当欄「需給良化はある程度先取り?」などで指摘してきたとおりの動きと言える。 年度末の配当に絡んだイベントを通過して需給良化への期待は後退気味のようだ。また、4月4日には新生銀<8303>からオリックス<8591>へ日経平均構成銘柄の入れ替えが予定されており、明日1日の引けでリバランス需要が発生する見込み。時価総額の差がかなり大きいため、既存の構成銘柄の売り需要は大きくなるとの観測がある。短期的ながら、日経平均は週末にかけて一転して需給的に下押し圧力がかかる可能性もありそうだ。 米株でも買い戻しの一巡感や買い疲れ感が指摘されると同時に、今後の経済・株式相場の見方が大きく割れている印象。これも25日の当欄「経済の先行きで見方分かれる?」で述べたとおり。直近では金融大手JPモルガンが株式上昇は継続するとの見方を強調する一方、モルガン・スタンレーなどはリスクの高まりから波乱を予想し、BofAは上昇局面での売却を探るよう推奨しているという。実際、昨日からの各国経済指標を見ても、米雇用が堅調な一方で中国の企業景況感は悪化と、強弱入り交じっている感がある。 結果的に買い戻しが一巡すると売り買いが交錯、また長期志向の投資家は様子見となっていることが日米市場の動向から感じられる。差し当たり、今晩の米国では2月の個人所得・個人消費支出(PCE)が発表される。また、明日は日本で日銀短観、米国で3月の雇用統計やサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が発表される予定とあって、これらを見極めたいとの思惑が強まるだろう。また、4月に入り新年度の企業業績見通しへの関心も高まり、手掛けづらさが意識されてくる可能性もある。(小林大純) <AK> 2022/03/31 12:26 後場の投資戦略 配当落ち埋めどころか実質でもマイナス、その背景とは? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27893.92;-358.50TOPIX;1960.86;-30.80[後場の投資戦略] 前日、ロシアとウクライナの停戦協議で大きな進展があった。ロシア軍は首都キエフと北部チェルニヒフ周辺での軍事作戦を縮小すると発表したほか、ウクライナの欧州連合(EU)への加盟も反対しない姿勢を示したという。これを受け、前日、ロシアと地域的にも経済的にも結び付きの強い欧州の株式市場は大幅に上昇。米国市場も主要株価指数は揃って上昇した。 しかし、そもそも、撤退を発表した地域はそもそもロシア軍がかなり苦戦し、近いうちに撤退が予想されていた地域だ。ロシア交渉官も、「軍事作戦の縮小は停戦を意味するものではない」ともくぎを刺している。米国側も「ロシアが言うことと行うことは別であり、行動を注視する」と慎重な発言をし、「実際に(ロシアが)真剣になっている兆しは見られていない」とも指摘したという。 前日の米株市場では気になった動きもあった。主要株価指数は、ウクライナ情勢を巡る懸念後退で寄り付きは高く始まったものの、すぐに失速し、序盤は低調な動きが長い時間見られた。もともと、欧州ほどにはロシアリスクが大きくないため、相場への影響も限られた、もしくは、最近のロシア軍の動きからある程度織り込み済みだったという見方もできるが、既にロシア軍のウクライナ侵攻前の水準以上に大きく回復した直近の急速リバウンドにより、買い戻しの余地が乏しくなってきたとも言えそうだ。 また、話題にもなったが、米債券市場で10年債利回りが2年債利回りを下回る「逆イールド」が、一時2019年来で初めて発生したことも投資家心理を悪化させ、相場の上値を抑えたといえよう。一方、景気後退入りのサインとして他に有力とされる10年債利回りと3カ月物財務省短期証券(Tビル)の利回り格差はまだプラス圏を維持していることもあり、市場の見方は分かれている様子。また、仮に逆イールドの発生から景気後退入りに繋がるとしても、実際の発生までには1-2年程の時間差があると考えられているのが一般的な見方。そのため、目先の相場への影響はまだ限定的と予想される。 しかし、過去のほとんどの景気後退局面では、その前に2年債と10年債利回り格差の逆イールドが発生しているため、少なくとも今回の一件は投資家心理をかなり悪化させそうだ。相場全体としてリバウンド一服感が見られはじめ、月末にかけての年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いなど需給面での下支えも間もなく消失しようというタイミングで、こうした懸念要素が出てきたことには留意しておきたい。 そのほか、前日はウクライナ情勢を巡るヘッドラインであまり話題にならなかったが、もう一つ注目すべきは、米住宅価格指標の結果だ。前日に発表された1月S&PコアロジックCS20都市住宅価格指数は前年比+19.1%と、12月分(+18.58%)および予想(+18.6%)を大幅に上回り、12月分から再び上向きとなっていたモメンタムを更に加速させた。また、米連邦住宅金融局(FHFA)が発表した1月FHFA住宅価格指数は前月比+1.6%と、こちらの伸びも12月分(+1.3%)及び予想(+1.2%)を大きく上振れた。 家賃などから成る、米消費者物価指数(CPI)の構成項目である住居費などもV字基調の強い伸びが続いており、一度上がったら下がりにくい下方硬直性を持つ分野でインフレ高進が続いていることは懸念すべき事項だ。この先の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5ptの大幅利上げを正当化する一つの材料になり得よう。市場はすでに5月、6月会合での0.5ptの利上げをそれぞれ7割ほど織り込んでいるが、完全には織り込めていないため、注意すべき点といえる。 また、一昨日の当欄で述べた、BofA(バンク・オブ・アメリカ)証券を中心とした海外勢による先物の買い越し傾向が先週末までの間に一巡してきたという点も、改めて懸念要素として浮かび上がってきた。28日の先物手口では、日中立会のTOPIX先物において、一足先に売り越しに転じはじめていたGS(ゴールドマン・サックス)証券と並び、BofA証券も1000枚超の売り越しに転じていた。そして、昨日29日は両者が共にTOPIX先物で4700枚前後の大幅な売り越しを見せた。長らく大幅な買い越しを見せていたBofA証券をはじめ、海外勢が明確に売り越しの動きを見せてきたことは基調の転換を示唆するという意味で注目すべき点だろう。 実際、今日の日経平均は前引けの時点で28000円割れ、配当落ち分を除いた実質ベースでもマイナスとなっている。ウクライナ情勢の進展を受けた欧米株高を受けて、本日の東京市場は早々に配当落ち分を埋めてくるだろうという強気の予想も多かっただけに、この弱さは気掛かりといえよう。そして、こうした背景には、上述した、これまでの急速リバウンドをけん引してきた海外勢の買い戻し余力が既に乏しくなってきているという点が大きいのではないだろうか。 後場の日経平均も軟調が続くと予想する。香港ハンセン指数などアジア市況は堅調な一方、時間外取引の米株価指数先物はやや軟調に推移。また、これまで日経平均の上昇をけん引してきた要因との解説も多くなされる円安・ドル高も、足元では1ドル=121円台と上昇一服感が鮮明になってきている。海外勢の買い戻し余地の縮小と、円安・ドル高の一服を背景に、日経平均の28000円回復のハードルは高まったと言えそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/03/30 12:12 後場の投資戦略 金融政策や株式需給を巡り考察 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28110.73;+166.84TOPIX;1984.65;+11.28[後場の投資戦略] 本日の日経平均は3ケタの上昇で前場を折り返した。円安・米株高が支援材料となり、配当取りの動きや配当再投資への期待も相場を押し上げているが、一方で利益確定の売りが上値を抑えている。日足チャートを見ると、28000円台まで浮上してきた5日移動平均線をやや上回る水準で推移。売買代金上位では値がさグロース(成長)株や高配当銘柄を中心に全般堅調だが、市況関連銘柄や経済活動の再開に絡んだ銘柄に売りが出ているようだ。前引けの日経平均が+0.60%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.57%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱とさほど膨らんでいない。 新興市場ではマザーズ指数が+3.73%と3日ぶり大幅反発。前日は-3.76%と大きく下落しており、米金利やハイテク株の動向を睨んでやや値動きが荒くなっている。本日はグロース株高の流れからメルカリ<4385>などの主力IT株が堅調。エッジテクノロジ<4268>は連日で賑わいを見せている。 さて、日銀が初の「連続指し値オペ」実施で金利抑制姿勢を示し、インフレ対応に傾く米国との金利差拡大観測から円相場が一時1ドル=125円台まで下落した。輸出企業の採算改善に期待する声がある一方、インフレや金利の上昇、それに円安圧力が強まるなかで金融政策の舵取りが一段と難しさを増すとの指摘もある。黒田東彦総裁の任期も残すところ1年ほどだが、日銀は緩和堅持の姿勢のようだ。海外投資家がこの点どのように評価するか注視したいところ。 米市場では28日、10年物国債利回りが2.46%(-0.02pt)に低下した。原油先物相場の反落を受けてインフレ懸念がやや後退したようだ。ただ、金融政策の影響を受けやすい2年物は2.33%(+0.06pt)に上昇。このところ市場では連邦準備理事会(FRB)が今後複数の会合で0.5ptの利上げを行うとの見方が多く出ており、金融引き締め観測は一段と強まっているとみた方がいいだろう。 国内外の金融政策とともに、年度末から新年度にかけての株式市場の需給状況も注目される。需給良化による一段の株高期待が根強い一方、以前に少々触れたとおり、ここまで海外投資家による株価指数先物の買い戻しが急速に進んだとみられるのは気掛かり。日本取引所グループが発表した投資主体別売買動向を見ると、外国人投資家は3月第2~3週(7~18日)にTOPIX先物を9200億円近く買い越した。先週も日々の先物手口を見ると外資系証券のTOPIX先物買い越しが多く見られたため、この3週で1兆円あまり買い越した可能性もあるだろう。この間、日経平均は9日安値24681.74円(取引時間中)から25日高値28338.81円(同)まで値幅にして3600円超の大幅上昇となった。相応に外国人投資家の買い戻しが進んでいることに違和感はない。 次回5月3日~4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて米金融政策を巡る思惑が続くほか、企業の事業環境が大きく変化し、新年度の業績見通しを見極めたいとのムードも出てくるだろう。新年度相場の行方を慎重に見極めたい。差し当たり、本日は米国で3月消費者信頼感指数や1月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、2月求人件数(JOLT)、それに半導体マイクロン・テクノロジーの決算などが発表される。米経済が堅調維持できるか注目されそうだ。(小林大純) <AK> 2022/03/29 12:23 後場の投資戦略 需給改善による上昇は早くも一服? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27987.20;-162.64TOPIX;1974.73;-6.74[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は28000円を割り込む軟調な出足となった。先週末にかけて9連騰、この間の上げ幅は3000円ほどにも及び、歴史的にみても相当に速いペースでの戻りだっただけに、短期的な調整が警戒されてもおかしくない頃合い。そうしたなか、先週末、ハト派とされるニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、直近の連邦準備制度理事会(FRB)高官らと同様、0.5ptの大幅利上げを否定しない姿勢を見せたことで、米10年債利回りが2019年5月以来となる2.5%超えを一時示現。金利急伸という分かりやすい警戒材料が出たことで東京市場でも売りが先行した。 一方、日経平均は前引けにかけては一時28000円台を再び回復するなど、底堅い動きも見られる。月末にかけての年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いや指数連動型パッシブファンドの配当再投資に伴う先物買い、これらを見越した先回り買いなどを背景とした需給改善が引き続き相場を下支えしていると推察される。 ただ、3月第2、3週(7-11日、14-18日)の投資主体別売買動向を見ると、海外勢はTOPIX先物で既に9000億円超も買い越しており、225先物についてはミニを除けば既に14-18日の週に1600億円超の売り越しに転じてきている。 また、3月第4週(22-25日)までの間に見られていた海外勢によるTOPIX先物の買い越し傾向についても、先週後半からは騰勢一服感が見られてきた。ゴールドマン・サックス(GS)証券などは24日から売り越しに転じてきている。また、3月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出に当たる11日前後から、TOPIX先物を1日当たり2000-5000億円レンジで大量に買い越しを続けてきたBofA(バンク・オブ・アメリカ)証券も、先週末25日には500億円未満の買い越しと騰勢一服の兆しを見せた。 月末にかけての需給改善を見越した売り方の買い戻しは相当に済んだとみられ、これまでに先回り買いも入っていたことを考慮すると、再び調整リスクが高まってきていることに留意したい。4月以降は、新年度入りに伴うニューマネー入りなども期待されるが、投資主体別売買動向を見る限り、海外勢は現物株に至っては売り越しを続けており、本格的な買い目線に転じることは容易ではないだろう。今週は米国で雇用統計をはじめとした重要な経済指標のほか、米国債入札も実施される予定のため、これらの結果を受けた金利動向やハイテク・グロース株の動向を注視したい。 後場の日経平均は28000円を挟んだもみ合いが続きそうだ。、先週末、米金利が大幅に上昇するなかでもナスダック総合指数が底堅い動きを見せたことは安心感を誘うものの、金利の速い上昇ペースは気掛かり。週明け今晩の米株市場でハイテク・グロース株の堅調さが引き続き見られるか見極めたいとの思惑も働きやすい。時間外取引のNYダウ先物が軟調ななか、日経平均の10続伸へのハードルは高まったといえそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/03/28 12:14 後場の投資戦略 経済の先行きで見方分かれる? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28062.18;-48.21TOPIX;1979.22;-2.34[後場の投資戦略] 本日の日経平均は寄り付き、前場中ごろ過ぎと2度にわたり28300円台まで上昇する場面があったが続かず、前日終値近辺まで押し返される格好となっている。ただ、ひとまず28000円台を維持している点は一段の上昇期待をつなぐかもしれない。業種別騰落率を見ると、市況関連セクターが上昇率上位に多い。一方、東証1部下落率上位には中小型グロース(成長)株が多い印象を受ける。SOXが5%の上昇となったにもかかわらず、半導体関連株は上値の重い印象が拭えない。前引けの日経平均が-0.17%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.12%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円強とまずまず多い。 新興市場ではマザーズ指数が-0.77%と3日ぶり反落。時価総額上位ではメルカリ<4385>が小安く、ビジョナル<4194>は軟調だ。開発薬の試験結果を受けて前日ストップ高となったリボミック<4591>が売買代金トップと賑わいを見せており、改めて値動き重視の小型材料株物色の様相だと指摘しておきたい。 さて、前日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)が1バレル=112.34ドル(-2.59ドル)と反落。ただ、東京市場ではINPEX<1605>が朝安後に切り返しており、商品市況の先高観は根強いように感じられる。金先物はインフレヘッジ目的の買いや安全志向の買いにより続伸している。 米国債は長期の年限を中心に金利が上昇し、10年物が2.37%(+0.08pt)、2年物が2.14%(+0.04pt)となった。失業保険申請の減少で労働需給のひっ迫が意識されたとみられている。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.92%(-0.02pt)とやや低下したが、依然として高水準だ。 個別企業の動向としてはエヌビディアの事業拡大に向けた投資や、アップルのサブスクリプション(定額制)サービス検討といったニュースが注目された。米株の上昇や長期金利の上昇には堅調な経済への期待が感じられるが、隅々まで観察するとインフレへの根強い懸念や投資家の安全志向も見て取れるだろう。 結局のところ「経済がウクライナ危機やそれに伴う商品高、さらに金融引き締めなどに揺れつつも、力強さを維持できるか」という点で投資家の見方は割れているのだろう。これは東京市場でも同様だと考えられる。現物株では売買ボリュームこそ減っていないが、日経平均の上値は徐々に重くなってきた。但し日中値幅はまずまず出ていて、本日は急変動も見られる。前日の先物手口を見ると、モルガン・スタンレーMUFG証券やBofA証券がTOPIX先物を買い越す一方、ゴールドマン・サックス証券が売り越しに転じてきた。 前日の当欄「需給良化はある程度先取り?」で述べたように、年度末に向けてリバランス(資産配分の再調整)目的の買いや配当再投資目的の買いといった需給面の押し上げが期待される一方、ここまでの急ピッチのリバウンドで売り方の買い戻し余地はかなり少なくなってきた印象を受ける。また、日経平均オプションの建玉状況を見ると、相場下落局面だった3月上旬ごろまでと比べプット(売る権利)が減少する一方、コール(買う権利)が増加している印象を受け、需給の改善傾向が一転するリスクをはらんでいるように感じざるを得ない。 テクニカル的には日経平均の昨年9月高値から今年3月安値の3分の2戻し水準である28600円~28700円あたりが節目として意識されているようだが、先行き警戒感から戻り売り目線の投資家がなお多いことを踏まえると、昨年9月以降の戻り高値を結んだライン上にあるこの水準はやはり転換点となる可能性があるだろう。経済の先行きに明るさを見出せるかどうかが今後の焦点と考えられる。(小林大純) <AK> 2022/03/25 12:27 後場の投資戦略 需給良化はある程度先取り? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27727.76;-312.40TOPIX;1959.14;-19.56[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株安の流れを引き継いで8日ぶりに反落し、下げ幅を400円あまりに広げる場面もあった。ただ、日足チャートを見ると27400円台に位置する75日移動平均線を上回って推移しており、底堅さも感じる。前日までの上昇ピッチが急だっただけに、スピード調整の範囲内と受け止める向きは少なくないだろう。個別・業種別では商品市況の上昇に伴い鉱業や非鉄金属といった関連セクターの一角が堅調だが、個人投資家にも人気の高い海運株やレーザーテックの下げが目立つ。東証1部全体としても8割超の銘柄が下落している。前引けの日経平均が-1.11%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.99%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-0.98%と反落。こちらは朝方にプラスへ転じる場面もあったが続かず、やはり軟調もみ合いの展開となっている。メルカリ<4385>などの主力株はやや軟調で、売買代金トップのグローバルW<3936>が大幅高。値動き重視の小型株物色の様相だ。 さて、前日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)が1バレル=114.93ドル(+5.66ドル)に上昇。需給ひっ迫観測が強まったうえ、米在庫の減少も価格を押し上げたという。パイプライン障害による輸出減少を巡っては、折も折だけに政治的意図を疑う向きもあるようだ。一方、10年物国債利回りは2.29%(-0.09pt)に低下した。景気減速懸念に直近の売られ過ぎ感もあって買いが入ったとみられる。また、20年物国債入札の結果が好調だったことも影響しただろう。金融政策の影響を受けやすい2年物の利回りは2.10%(-0.05pt)に低下。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.94%(+0.03pt)に上昇した。 15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)通過後、金利の急上昇にも関わらず米株は需給主導で大きくリバウンドしたが、やはり商品市況の先高観やインフレ、景気悪化、金融引き締めへの懸念が拭いづらいところだろう。金融政策を巡っては、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が経済データ次第ながら5月FOMCでの0.5ptの利上げやバランスシート縮小決定を示唆。また、米国では新築住宅販売の減少が続き、英国も今年の経済成長率予想を従来の6%から3.8%に下方修正した。実需筋でも売り持ちの解消を迫られている可能性はあるが、かといって積極的に買い持ちに傾くとまでは考えづらい。 国内株式市場の動向も見ておきたい。ここ数日の先物手口を見ると、BofA証券などの外資系証券による買い越しが目立っていた。日経レバETF<1570>の純資産総額が5500億円規模まで膨らんでいるのも気になるところ。ただ、ネット証券の取引状況を見ると日経レバETFはここ数日一貫して売り超となっている。また、18日申込み時点の市場全体の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は3兆400億円(-1667億円)と2週連続で大きく減少した。昨年3月以来およそ1年ぶりの低水準となっている。 新年度に向けてリバランス(資産配分の再調整)目的の買いや配当再投資目的の買いといった需給面の押し上げが期待される点はこれまで度々述べた。ただ、株価指数先物の買い戻しが進んだことと、短期リバウンドを見越したものとみられる日経レバETFなどの持ち高の増加により、需給良化はある程度先取りしてしまった感が拭えない。また、緩和相場下で拡大した信用買い残はリバウンド局面を捉え整理が続いていると言える。来週29日の権利付き最終売買日の前後までに一段の上昇もあるかもしれないが、こうした市場動向を踏まえればその余地はかなり減ってきたとも考えられる。 後場の日経平均もまずまず底堅く推移しそうだが、今晩開催される北大西洋条約機構(NATO)や主要7カ国(G7)の首脳会議、それに各国経済指標などを注視しておきたい。(小林大純) <AK> 2022/03/24 12:24 後場の投資戦略 米金融政策への信頼感低下するなか上昇基調維持できるか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27947.26;+723.15TOPIX;1972.91;+39.17[後場の投資戦略] 日経平均は本日も大幅高。寄り付きから75日移動平均線を上抜くと、日足一目均衡表の雲下限・上限を一気に突破。週足でも、13週線を大きく超えてきた。チャート形状は一段と改善しており、先週からの売り方の買い戻しに弾みがついているようだ。前日の米株市場で、長期金利が一段と上値を追うなかでも、ナスダックに代表されるグロース株の多くが力強い動きを見せたことも支援要因になっているようだ。前日は軟調だったマザーズ指数も本日は4%高と大幅に反発している。 一方、日経平均が28000円を目前に捉えるなか、9日からの上昇幅は3000円を超える。急ピッチでの戻りから、短期的な過熱感や目先の達成感なども警戒される頃合い。月末にかけては、四半期末及び年度末に向けた年金基金のリバランス(投資配分の調整)目的の買いのほか、配当権利取りを狙った買いや、指数連動型パッシブファンドの配当再投資に伴う先物買いなどが想定される。今後もこうした需給要因の下支えが期待されるが、買い戻しの一服感にもそろそろ留意しておきたい。 先週末から週明けにかけては、複数のFRB高官から、0.5ptの大幅利上げなどを支持するタカ派発言が相次いでいる。15-16日のFOMCにおいて、FRBは景気に対して緩和的でも引き締め的でもない中立金利の水準を2.5%から2.4%へと引き下げた。一方で、FRBは2023年末までに計10-11回の利上げを行い、23年末の政策金利を2.75%までに引き上げる方針を示し、来年については、景気を犠牲にしてでもインフレ抑制を優先する姿勢を示した。 しかし、その後は、セントルイス連銀のブラード総裁が年内に政策金利を3%超に引き上げることを支持したほか、前日は、クリーブランド連銀のメスター総裁が、年末までに政策金利を2.5%程度にまで引き上げることが適切との認識を示した。タカ派のブラード総裁だけでなく、他の総裁からも年内に中立金利を上回る水準にまで政策金利を引き上げる姿勢が示されたのはサプライズ感がある。来年どころか、今年の間にも景気よりインフレ抑制を優先する方針が示されたということであり、インフレ圧力が年末まで予想されるなか、一段とスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)リスクを高める内容と解釈される。今後はこれまで以上に景気指標の動向に注目する必要があろう。 また、興味深いのは、これだけFRBがインフレ沈静化のためにタカ派姿勢を示しているにもかかわらず、米国の期待インフレ率の指標とされるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が高止まりしていることだ。米10年物BEIは3月11日に2.94%と過去最高を記録してから高止まりしており、FRBのタカ派発言が相次いだ先週末18日から週明けにかけては、2.86%(18日)から2.91%(22日)へとむしろ上昇している。市場はFRBの金融政策を信頼できていないようだ。政策への疑心暗鬼が続く限り、相場の上昇基調が続くとは期待しにくい。 さらに、上値追いを続ける米10年物国債利回りは、2年10カ月ぶりとなる高値水準を更新し続けているが、こちらは、先週末18日の2.15%から前日22日には2.38%まで急伸した。本稿執筆中のいまも、時間外取引で2.41%まで上昇してきている。これに伴い、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利のマイナス幅は再び大きく低下してきており、需給要因主導で足元大きく上昇してきているグロース株の騰勢がどこまで維持されるかが気掛かりだ。 24日には北大西洋条約機構(NATO)緊急首脳会議、欧州連合(EU)首脳会議が予定されている。米国とその同盟国は、EU首脳会議でロシアに対する追加制裁を発表すると伝わっている。欧州のロシア産原油の輸入禁止については、影響が大きいだけに、その可能性についてはドイツなどが依然として否定的な見解を示している。しかし、ロシア軍の動き次第では、世論が傾き、経済合理性よりも倫理観などを重視せざるを得ない可能性もある。仮に、欧州もロシア産原油の禁輸に踏み切れば、経済や株式市場への影響は甚大なものとなる。他にも、ロシアが欧米諸国のインフラ施設にサイバー攻撃を仕掛けるリスクなども話題となっている。「有事に織り込み済み」はないとの考えから、投資家にはなお緊張感を持った対応が求められよう。 後場の日経平均は引き続き堅調推移が見込まれる。心理的な節目の28000円を手前に上値が重くなることも予想されるが、相場の上昇要因と考えられる需給環境の改善が続くなか、外部環境の急変がない限り、下値は堅そうだ。香港ハンセン指数の連日の大幅高も投資家心理の向上に寄与しよう。(仲村幸浩) <AK> 2022/03/23 12:14 後場の投資戦略 「円安は買い」「ハイテク買い」の持続性は? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27242.88;+415.45TOPIX;1932.93;+23.66[後場の投資戦略] NYダウは18日、21日と合わせて70ドルあまりの上昇にとどまったが、連休明けの日経平均は大幅に6日続伸し、400円を超える上昇で前場を折り返した。27000円台を回復し、取引時間中としては2月17日以来の高値を付けている。日足チャートを見ると、先週後半に25日移動平均線を上抜けてからも騰勢は衰えず、27000円台半ばに位置する75日移動平均線に迫りつつある。 個別・業種別では金融株や市況関連株の上昇が目立つが、米金利上昇にも関わらず値がさグロース(成長)株もまずまずしっかりといった印象。しかし、中小型グロース株は軟調で、東証1部下落率上位に多くランクインしている。東証1部全体としては値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が拮抗しており、主力大型株が株価指数を押し上げていることがわかる。前引けの日経平均が+1.55%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.24%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円超で、先週末18日と比べるとやや膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が-1.40%と4日ぶり反落。中小型グロース株安の流れから、メルカリ<4385>などの主力IT株が軟調だ。もっとも値動きの軽い小型株が買いを集め、エッジテクノロジ<4268>やサイエンスアーツ<4412>が大幅高。マザーズ指数も売り一巡後は下げ渋る場面が見られる。 さて、一時1ドル=120円台まで円安が進むとともに、日経平均やTOPIXは主力大型株主導で大きく上昇する格好となっている。パウエルFRB議長がインフレ抑制のため大幅な利上げも辞さない姿勢を示す一方、黒田東彦日銀総裁は18日の金融政策決定会合後の記者会見で「金融を引き締める必要もないし適切でもない」などと述べ、緩和を続ける方針を強調。金融政策の方向性の違いが改めて鮮明となり、円安に拍車がかかったのも頷けるだろう。 もっとも、18日に発表された2月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数で前年同月比0.6%上昇と、日本でもインフレ圧力が強まってきている。原油価格も再び上昇してきており、「交易条件の悪化」懸念が広がるなかで「円安は買い」がいつまで続くだろうか。 また米株についても、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数が18日+2.05%、21日-0.40%と引き続き堅調に推移している点に目が行きがちだが、米金利の上昇基調が続いていることを見逃してはならない。21日の10年物国債利回りは2.29%(前週末比+0.14pt)に上昇し、一時2.32%と2年10カ月ぶりの高水準を付けた。金融政策の影響を受けやすい2年物も2.11%(同+0.17pt)に上昇した。 好環境とは言いづらいなかでハイテク株の騰勢がなかなか衰えないのは、積み上がっていた売り持ちの解消が続いているためとの見方が多い。米金融大手モルガン・スタンレーのストラテジストがこうした米株の反発を「たちの悪いあや戻し」などと述べ、売りを推奨していると海外メディアが報じているが、確かに金利上昇の逆風を考慮すれば騰勢一服後に警戒せざるを得ない。 日本株も「円安を好感」という以上に、「目先の売り圧力の低下」や「新年度に向けた資金流入」といった株式需給の改善が相場を押し上げている可能性があるというのは度々当欄で述べているとおりだ。投資家それぞれの投資スタンスや期間、リスク許容度に応じて取り組む必要があるということを再度強調しておきたい。(小林大純) <AK> 2022/03/22 12:22 後場の投資戦略 「需給改善」と「払しょくされない懸念」 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26724.06;+71.17TOPIX;1902.11;+3.10[後場の投資戦略] 本日の日経平均は連日の米株高が好感されつつも度々マイナスに転じる場面があり、上値の重い展開となっている。もっとも、前日までの4日続伸で1500円近く上昇しており、3連休前という点も考慮するとまずまずしっかりした値動きと受け止めることもできるだろう。米ハイテク株高の流れを引き継いで値がさグロース(成長)株の一角が堅調なほか、原油を中心とした商品市況の上昇で関連銘柄にも買い。一方、自動車株の軟調ぶりが目立つ。トヨタ自が生産計画を下方修正し、供給制約の長期化が意識されるところだろう。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、連休を前に利益確定売りが出ている印象だ。前引けの日経平均が+0.27%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.16%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円超だが、前日と比べると少なくなっている。 新興市場ではマザーズ指数が+2.61%と3日続伸。こちらは前日に続きグロース株高の追い風を受け、堅調に推移している。日足チャートでは710pt近辺に位置する25日移動平均線を上抜けたが、今月3日の取引時間中に付けた高値784.81ptはまだ遠い。時価総額上位ではフリー<4478>が8%を超える上昇。ただ、グローバルW<3936>が売買代金トップで14%超上昇しており、値動きの軽い小型株物色の様相だ。 さて、前日の当欄「リバウンド期待にちらつく懸念のサイン」で触れた米国債の「逆イールド」発生など、景気後退の予兆が随所に見られるなかで米株が連日の大幅高となっていることに首をかしげる市場関係者も少なくないようだ。前日の相場上昇についてはロシアのドル建て債利払い実施などを要因に挙げる解説が多いが、実際のところ「オプションのプット(売る権利)の建玉解消による影響が大きい」との一部関係者の指摘が的を射ているように思う。主要中央銀行の金融引き締め観測に始まり、ウクライナ紛争、商品市況の高騰など経済・金融市場の先行き不透明感を増すリスクが次々と顕在化するなか、下方リスクのヘッジ需要は大きかっただろう。目先はプット解消が米株を押し上げる構図が続く可能性もある。 日本でも日経平均オプションの建玉の推移を見ると、積み上がっていたプットが減少する一方、コール(買う権利)の増加が見られる。新年度に向けた需給改善期待から、短期志向の投資家を中心に株式の買い持ちを増やす動きもあると考えられる。 ただ、流動的なウクライナ情勢、根強いインフレ観測、米連邦準備理事会(FRB)を中心とした各国中銀の金融引き締めの影響など、懸念が払しょくされたわけではない。長期志向の投資家などは「戻り売り目線」であることに変わりないようにも感じる。例えば11日申込み時点の市場全体の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は3兆2067億円(-1454億円)と前の週に比べ大きく減少した。10日の日経平均が1000円近い大幅上昇となっており、持ち高解消の売りが出たものと考えられている。 金融市場の不安を裏付けるかのように、ロシアはウクライナとの交渉進展を否定し、米国が中国のロシア支援を依然として警戒していることも伝わっている。今晩、米中首脳が電話会談を行うもようで、その内容に注目しておきたい。落ち着きを見せつつあった原油先物相場が急反発している点も見逃せない。また、本日の日銀金融政策決定会合では市場想定どおり政策の現状維持が決まったが、今朝発表された2月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数で前年同月比0.6%上昇。為替市場では1ドル=118円台後半まで円安が進んでおり、黒田東彦日銀総裁が会見でこれらの点についてどういった認識を示すかも注目されるだろう。 アジア市場では中国・上海総合指数が小動きで、ハンセン指数は反落。3連休を前にした一段の買いの手掛かりは乏しいとみられ、後場の日経平均は様子見ムードからややこう着感を強めるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/03/18 12:27 後場の投資戦略 リバウンド期待にちらつく懸念のサイン [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26529.89;+767.88TOPIX;1890.03;+36.78[後場の投資戦略] 米金融引き締め懸念から注目されたFOMCを通過したことに加え、ロ・ウクライナ停戦協議の進展期待、中国を巡る懸念後退なども重なり、本日の日経平均は700円を超える上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、26300円近辺に位置する25日移動平均線を一気に上抜け。前日からの急ピッチの上昇により目先の利益を確定する売りや戻り待ちの売りが出そうな一方、これまで上値を抑えてきた25日移動平均線を抜けたことでトレンド好転に期待する向きもあるだろう。前引けの日経平均が+2.98%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.98%。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりとここ数日より膨らんでいる。 前日の米市場でハイテク株の上げ幅が大きかっただけに、東京市場でも値がさグロース(成長)株が大きく上昇。半面、海運など市況関連株の一角が軟調なほか、経済活動再開に絡んだセクターも利益確定売り優勢だ。 新興市場ではマザーズ指数が+4.03%と大幅続伸。グロース株高の流れに乗り、メルカリ<4385>が9%の上昇となるなど主力IT株が総じて大幅高だ。中小型・新興株は個人投資家のセンチメント改善の影響も大きいだろう。但し、マザーズ指数は710pt近辺に位置する25日移動平均線を明確に上抜けてはいない。 さて、FOMCでは金融市場が織り込んでいたとおり年内7回(今回含む)の利上げ見通しが示されるなど、ウクライナ紛争による不透明感が拭えないなかで思いのほかタカ派的な姿勢が示されたように感じられた。もっとも、金融政策を巡る不透明感が後退したと受け止められ、一昨日の当欄「原油下げるも『中国』『引き締め』懸念」で述べたようにリバーサル(株価の反転上昇)の動きが出てくる余地はあっただろう。金融引き締め観測からここまで大きく調整してきたグロース株ほどリバウンドへの期待は高まりやすいと考えられる。加えて株価を大きく押し下げてきたウクライナ紛争、中国への懸念の後退もこうした動きを後押しするだろう。 それとやはり一昨日の当欄で触れたが、ここから新年度に向けて配当再投資の動き(市場推計で1兆円超)や機関投資家の買い、10兆円規模の「大学ファンド」運用開始などが需給面で日本株を支援すると期待する声もある。 ただ、前日の米市場動向を見渡すと不安材料もある。FRBの利上げ見通しを受けて10年物国債利回りは2.19%(+0.05pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物も1.94%(+0.09pt)に上昇。一方でFRBのインフレ抑制姿勢から原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=95.04ドル(-1.40ドル)と3日続落し、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.80%(-0.04pt)に低下した。 インフレ懸念の後退は安心材料かもしれないが、結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇しており、株式(特にグロース株)にとって本質的には好環境と言えないだろう。また、5年債の利回りが一時10年債を上回ったことも注目されている。こうした「逆イールド」発生は「景気後退の予兆」と言われるだけに、市場関係者からは先行きを警戒する声が依然として少なくない。 「目先のリバウンド継続」の可能性は低くないだろうが、これに乗るかどうかは取引参加者それぞれの投資目的や期間、リスク許容度に応じて冷静に判断していきたい。(小林大純) <AK> 2022/03/17 12:26 後場の投資戦略 インフレ鈍化・FOMCあく抜けへの期待過剰は禁物 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25784.71;+438.23TOPIX;1854.77;+28.14[後場の投資戦略] 日経平均は値幅を伴った上昇で大幅高となっているが、東証1部の出来高は6億弱と、前日同様、先週までに比べると少ない。値幅の割に出来高がそこまで多くないことを踏まえると、売り方による先物主体での買い戻しの様相が強そうだ。 明日のFOMC公表結果における政策金利見通しや経済見通しに加え、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見が目先の大きな手掛かり材料となるが、結果を受けた株価反応は読みにくい。仮に想定よりハト派寄りの内容となっても、ウクライナ情勢を巡る不透明感が根強いなか、相場がポジティブに反応するかは定かでない。また、ポジティブに反応したとしても、短命で終わる可能性が高いだろう。 米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が過去最高値圏で高止まりしていることは市場のインフレ懸念を表しているといえ、そうした中で、FRBのハト派寄りの姿勢が確認されたとしても、むしろ、ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)への警戒感を高めてしまうだろう。無難に想定通りの結果に終わっても、先日の議会証言でパウエル議長は「(金融政策の動向は)データ次第」と含みを持たせているため、5月FOMCでの大幅利上げへの警戒感はくすぶり、あく抜け感も高まりづらいだろう。 昨日の米株市場では、PPIの伸びが前月比で鈍化したことでインフレピークアウト感が示唆されたなどという市況解説が散見されたが、こうした期待はあまりに時期尚早だろう。前年同月比では+10%増という驚異的な伸びで、前の月からは横ばいで鈍化していない。食品・エネルギーを除いたコアでも前年同月比+8.4%と、予想(+8.7%)を下回ったとはいえ、前の月の+8.3%から拡大している。 また、ウクライナでのロシア軍の戦闘はまったく止んでいないし、仮に停戦に至ったとしても、経済制裁が直ちに解除されるわけではないため、制裁の影響は残る。先週、アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)加盟国に増産を働きかけたことや、米国がベネズエラ産の原油確保に動いているなどという報道もあり、原油相場は足元下落している。しかし、イランがイスラエル戦略拠点を攻撃したことなどから、一時高まっていたイランによる増産期待は足元で後退。また、ロシア産原油の代替調達先候補のベネズエラからの輸入再開についても、米議会の一部与野党議員からは反対の声が上がっており、難航しそうだ。このため、資源価格の上昇が一服しても、高止まりする可能性が高く、今後インフレ懸念を払しょくするような物価指標の大幅な鈍化が見られるとは期待しにくい。 さらに、中国では再び新型コロナウイルス感染が拡大し、複数の都市でロックダウン(都市封鎖)が実施されている。これを受け、トヨタ自<7203>や台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は工場稼働を一時停止している。サプライチェーン(供給網)の混乱がさらに長引くことが懸念され、こうした背景も、インフレ鈍化を妨げかねない。 ウクライナ情勢を巡っても、ロシアのプーチン大統領が停戦交渉に懐疑的な姿勢を示したなどと伝わっており、事態はなお混迷としている。ウクライナの主要都市の制圧に想定以上に時間がかかり、軍の士気的にも経済的にも追い込まれつつあるロシアが、形勢逆転を狙って戦術核を使う可能性があるなどという恐ろしい観測も上がっている。最悪の事態はまだ織り込めていないとみられ、まだ相場の底入れを確信できる段階ではなかろう。投資家には引き続き慎重な姿勢を求めたい。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いとなりそうだ。中国での新型コロナ感染拡大や、当局によるハイテク企業の締め付けなどを背景に、前日にかけて上海総合指数や香港のハンセン指数は大幅な下落に見舞われた。本日は底堅く推移していることもあり、投資家心理の下支えとなろう。一方、売り方の買い戻しは午前の間に一巡している可能性もあり、午後は上値は限られるとみておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/03/16 12:12 後場の投資戦略 原油下げるも「中国」「引き締め」懸念 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25385.11;+77.26TOPIX;1828.26;+15.98[後場の投資戦略] 本日の日経平均は続伸して前場を折り返したが、ここまで方向感に乏しい展開となっている。日足チャートを見ると、上向きに転じた5日移動平均線が下値を支え、寄り付き直後を安値に陽線を引く格好だ。個別・業種別では市況関連株が大きく下落する一方、金融株や自動車株に買い。米金利上昇や円相場の弱含みが意識されているとみられる。売買代金上位の値がさグロース(成長)株はやや方向感がつかみづらい。前引けの日経平均が+0.31%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.88%。なお、ここ2日ほどBofA証券のTOPIX先物買い越しが目立っていた。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりで、株価指数先物・オプション3月物の特別清算指数(SQ)算出日だった先週末11日の後場あたりからやや低調となっている印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-1.06%と3日続落。こちらは朝方に一時653.27pt(-16.78pt)まで上昇すると、その後プラス圏に浮上する場面もあったが、買いは続かず失速している。このところ下値で押し目買いが入るものの、米インフレ・金利上昇でグロース色の強い新興株にとってはなお厳しい環境だろう。時価総額トップのメルカリ<4385>など主力IT株は総じて軟調。短期の値幅取りを狙った物色はサイエンスアーツ<4412>のように小型で値動きの軽い銘柄に向かざるを得ない。なお、本日はビジョナル<4194>が決算発表を予定しており、力強い成長が続いているか注視したい。 さて、商品市況の高騰と円安進行で「交易条件の悪化」懸念が広がっていた日本株にとって原油価格の反落は安心材料だが、その理由が中国経済の鈍化懸念となると素直に買いづらいところではあるだろう。また、各種中国株指数や香港ハンセン指数の連日の急落を見ると、単なるロックダウンの影響を意識した売りとは考えづらい。ウクライナ紛争で中国がロシアを援助する意思を示したと一部メディアが報じており、西側諸国の経済制裁が中国にも及ぶことが懸念されているようだ。 また、前日の米市場では金利の上昇も目を引いた。10年物国債利回りは2.13%(+0.14pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物は1.86%(+0.11pt)となった。短期金融市場では一時、年内7回のFOMC全てで0.25ptの利上げが行われることを完全に織り込んだという。 ウクライナ紛争により世界経済の先行き不透明感が増すなか、今回のFOMCで参加者らの政策金利見通し(ドットチャート)が市場想定ほど利上げ加速に傾かなければ、短期的なリバーサル(株価の反転)につながる可能性はある。新年度に向けた配当再投資の動き(市場推計で1兆円超)や機関投資家の買い観測も日本株のリバウンドを後押しするかもしれない。 もっとも、供給不安を背景に商品高・インフレ観測は根強いようだ。実際、前日の米市場では原油先物相場が急反落したにもかかわらず、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.93%(-0.01pt)と高水準を維持している。インフレ懸念がくすぶる限り、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速シナリオも残り続けるだろう。また、1ドル=118円台前半まで円安が進み、17~18日に金融政策決定会合が控える日銀でもいわゆる「為替防衛ライン」が話題となってきそうだ。 中国・上海総合指数や香港ハンセン指数が朝方の売り一巡後に下げ渋っているのはやや安心できる材料だが、本日からのFOMCを前に積極的な売買は手掛けづらいところか。後場の日経平均ももみ合いが続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/03/15 12:27 後場の投資戦略 円安支援で上昇も失速、ウクライナ情勢や各国金融政策を見極めへ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25337.39;+174.61TOPIX;1816.03;+16.49[後場の投資戦略] ウクライナ情勢の先行きが読めないなか、週明けの東京市場は方向感に欠ける動きとなっている。ロシア軍によるウクライナ首都キエフへの総攻撃が懸念されるほか、米政府などはロシア軍による化学兵器の使用の可能性などを警告しており、事態の一層の深刻化が警戒されている。一方で、ロシアとウクライナの間では継続的にオンラインでの協議が続いているもよう。ウクライナのゼレンスキー大統領は、12日、ロシア側との交渉がこれまでより中身のある内容になってきた兆候があるとも述べたと伝わっており、停戦に向けた期待も残る。 また、サリバン米大統領補佐官は、中国の外交を統括する楊共産党政治局員と14日に会談する予定。ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから初となる米中高官の対面会談となる。米国側は引き続きロシアに対する影響力をもつ中国に停戦に向けた協力を求めていく方針。ロシアとウクライナの双方と近しい関係をもつ中国にとって仲裁役は非常に難しい立場であり、あまり期待はできないが、中国が仲裁に向けた何らかのアクションを示唆するような可能性を考慮すると、売り方も今の水準から積極的に仕掛けるのは難しいだろう。 15-16日には今週最大のイベントであるFOMCも控えている。参加メンバーらが示す政策金利見通し(ドットチャート)などが注目される。金利先物市場は既に年6-7回の利上げを織り込んでいるが、一部の調査機関によると、エコノミストの多くは年内の利上げ回数を約4回と予想していることが分かっている。4-5回程度が示されれば市場には安心感がもたらされ、短期的には相場の反発要因となりそうだ。 一方、パウエル議長は経済データ次第では0.5ptの利上げの可能性を否定していない。また、独アリアンツの首席経済顧問モハメド・エラリアン氏は13日、ロシアのウクライナ侵攻に伴う影響により、米国のインフレ率は一段と上昇する可能性が高く、2月に前年同月比+7.9%と40年ぶりの高水準を記録した米消費者物価指数(CPI)はピーク時には「10%に極めて近い水準もしくはそれを超える」水準になると指摘。米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレに対する対応の遅さを改めて批判した。サマーズ元米財務長官も、ウクライナ侵攻以降、商品相場が急伸していることを踏まえると、インフレ率は今後数カ月は高止まりすると予想している。こうした背景もあり、FOMC通過後もインフレ及び大幅利上げの懸念はくすぶり、一時的に株価が上昇することはあっても、短命に終わりそうだ。 本日も、朝方大幅高で始まった東エレク<8035>など主力ハイテク株は大きく上げ幅を縮める展開となっている。こうした動きからも、投資家の先行き警戒感が窺える。いまはニュースのヘッドライン次第で短期的には上下に振れやすいものの、基調としてはインフレと景気減速、そして金融引き締めに対する懸念から、下落トレンドが続いている局面なのだということを再認識する必要がある。基調の本格的な転換には、ウクライナ情勢の混乱解消のほか、インフレの明確なピークアウトや、それを受けた金融当局による引き締めペースの緩和などを確認する必要があると考えられるが、それらを確認するのには年後半まで待つ必要があろう。 後場の日経平均は引けにかけて騰勢を弱めた前場の流れを引き継いで、冴えない展開が予想される。香港ハンセン指数が大幅に下落しているなか、投資家マインドは上向きにくい。15日以降にFOMCや、英国、日本での金融政策決定会合を控えるなか、結果を見極めたいとの思惑から模様眺めムードが漂いやすいだろう。 <AK> 2022/03/14 12:14 後場の投資戦略 焦点は「景気悪化」にシフト [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25064.74;-625.66TOPIX;1793.69;-36.34[後場の投資戦略] メジャーSQを通過した本日の日経平均は大幅反落し、600円超の下落で前場を折り返した。既に前日の上昇幅の3分の2近くを失い、日足チャートでは25100円近辺に位置する5日移動平均線を再び割り込んでいる。SQ値も下回って推移しており、心理的な重しになっていることが窺える。 個別・業種別ではグロース(成長)株を中心に総じて軟調で、原油など市況関連株の一角や銀行株のみ堅調。優良大型株やグロース株は前日大きく買われただけに、取引参加者のダメージは小さくないだろう。前引けの日経平均が-2.44%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.99%。ここまでの東証1部売買代金は1兆9000億円弱。メジャーSQだったことを踏まえると、前日から売買が大きく膨らんでいる印象は薄い。 新興市場ではマザーズ指数が-4.64%と大幅反落。時価総額トップのメルカリ<4385>は12%を超える下落となっている。特段の悪材料は観測されていないが、グロース株への売り圧力が改めて強まったことに加え、節目の3000円を明確に割り込んだことで損失覚悟の売りが広がったとみられる。これまで度々指摘してきたが、メルカリは昨年12月から株価下落局面が続くなかでも信用買い残を積み上げてきた。株式需給は良好とは言いづらい。 ここまでの動きを見る限り、前日の当欄「『あや戻し』か『収束期待』か」で懸念していたとおりの展開と言わざるを得ないだろう。メジャーSQ後の需給好転に期待する向きもあったが、前日の大幅上昇で先食いしてしまった感がある。むしろ外部環境の不透明感から改めて下方リスクのヘッジニーズが高まることが想定された。 また、前日の米市場動向を見渡すと、金融市場の懸念するシナリオも窺える。注目の原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=106.02ドル(-2.68ドル)と続落。投機的資金の流入一服とともに、価格高騰が需要鈍化につながるとの見方もあったようだ。とはいえ石油のシェブロン株が+2.74%となったのを見ると、価格高止まりが意識されているのがわかる。実際、本日の東京市場ではアラブ首長国連邦(UAE)が独自増産を否定したことを受け、原油先物相場は朝方上昇する場面があった。金先物はインフレヘッジ目的の買いにより国内外市場で上昇している。 米国債市場では10年物を中心に幅広い年限で金利が上昇。10年物国債利回りは1.99%(+0.04pt)となった。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.86%(+0.02pt)に上昇。為替市場では欧州中央銀行(ECB)理事会結果を受けて一時ユーロが買われたが、上値の重さが拭えない。ECB理事会では量的緩和の縮小を加速する方針が発表されたものの、ラガルド総裁は記者会見で景気の下振れリスクに言及したという。 これらの動向が示唆するのは、「目先の商品高の行方」から「インフレ高止まりによる景気悪化」に金融市場の焦点が移ってきているということだろう。特に日本株は交易条件の悪化懸念がくすぶるだけに、グローバル投資家から買いの手が出にくいかもしれない。それと今晩の米国で発表される3月のミシガン大学消費者態度指数の注目度が一段と増してきそうだ。2月の同指数は62.8と10年4カ月ぶりの低水準だったが、インフレ観測が消費者心理を一段と冷やす恐れがあるだろう。 前引けのTOPIX下落率がぎりぎり2%に届かず、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施への期待も持ちにくいか。後場の日経平均も軟調な展開になるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/03/11 12:25 後場の投資戦略 「あや戻し」か「収束期待」か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25667.85;+950.32TOPIX;1821.83;+62.94[後場の投資戦略] 本日の日経平均はウクライナ危機や商品高への懸念が和らいだことを背景に急反発し、900円を超える上昇で前場を折り返した。前日までの下落幅の半値戻しを達成。日足チャートでは25200円台に位置している5日移動平均線を一気に上抜けてきたことで、復調に期待する投資家が少なからずいるだろう。鉱業などを除き全面高の展開だが、前日の米ナスダック総合指数の上げ幅が大きかっただけに、グロース株の上昇が目立つ。米アマゾン・ドット・コムが株式分割や自社株買いを発表して時間外取引で急伸しており、今晩の米市場でのハイテク株高を先取りする動きもありそうだ。前引けの日経平均が+3.84%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+3.58%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりと前日並みだが、7~8日ほどは多くない印象だ。 新興市場ではマザーズ指数が+3.97%と7日ぶり大幅反発。メルカリ<4385>などの主力IT株を中心に全般堅調だ。ただ、上げ幅を広げる展開となっている日経平均に対し、マザーズ指数のここまでの高値は9時36分に付けた704.59ptとなっている。売買代金が大きく膨らんでいるわけではないところを見ると、700ptを上回る場面では上値追いに慎重な個人投資家が多いのかもしれない。 そもそも中小型グロース株は投資家心理の改善による影響こそ大きいだろうが、前日の米市場では10年物国債利回りが1.95%(+0.10pt)に上昇する一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.69%(-0.06pt)に低下。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇しており、グロース株にとって好環境とまでは言いづらいか。 さて、日米株とも反発の値幅の大きさが目を引く。ただ、それが直ちに「投資家心理の改善度合い」を示すかどうかについては慎重に見極める必要があるだろう。ウクライナ危機や商品市況の高騰で経済・金融市場の先行き不透明感が強まっていることで、日経平均オプション取引では明日SQ(特別清算指数)算出日を迎える3月物、次の4月物とも権利行使価格24000~25000円のプット(売る権利)の建玉がかなり多い。SQ前のリバウンドとあってこうしたプットの建玉解消の動きが出ている可能性があるほか、最近の市場動向を見ていると、カウンターパートとなっている金融機関によるヘッジ目的の株価指数先物の売買が相場に与える影響も大きくなっている印象を受ける。 また、ロシアとウクライナの外交交渉による事態収束などといった「一定の楽観があるのは間違いない(米メディアの為替市場関係者のコメント)」だろう。東京株式市場でも、4日申込み時点の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)が3兆3522億円(+1142億円)と7週ぶりに増加した。昨年12月から減少する週の方が多いものの、相場下落時などに大きく増加するため、残高の水準はさほど大きく低下していない。 もっとも、スイス金融大手クレディ・スイスが原油の一段の値上がりと株価下落のリスクについて警鐘を鳴らすなど、先行きに慎重な市場関係者は依然として多いようだ。米債券市場の動きに現れているように、そもそもインフレ抑制に向けた各国中央銀行の金融引き締めが株式にとって逆風であることに変わりないといった見方もある。一部で聞かれるとおり「あや戻し」に過ぎないか、危機収束を視野に戻りを試すか慎重に見極めたいところだ。差し当たり本日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会や米2月消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、金融政策の方向性が注目されそうだ。(小林大純) <AK> 2022/03/10 12:25 後場の投資戦略 ウクライナ情勢に配慮した金融政策は長期不安材料? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;24973.73;+182.78TOPIX;1777.40;+17.54[後場の投資戦略] 本日の日経平均は反発。米国がロシア産原油禁輸計画を発表した一方、ドイツなど欧州は慎重な姿勢を示していることで、ロシアへの経済制裁を巡る目先の悪材料は一先ず出尽くしたとの見方が強まったもよう。また、ウクライナがNATOへの加盟を断念する可能性を示唆したことで、停戦期待が高まったことも支援要因となった。 しかし、ウクライナでの戦闘は止んでいない。停戦のためには、ロシアのプーチン大統領はウクライナに「中立化」とは別に「非軍事化」も必要と求めているが、これが満たされる可能性は低い。ロシアと西側諸国の間の隔たりは依然大きく、予断は許さない。WTI原油先物価格も1バレル=125ドル台と高止まりしており、市場は先行き警戒感を解いていない様子。日経平均も25000円回復を維持できず、反発よりも上値の重さが印象付けられる。このまま戻りが鈍いと、逆に戻り待ちの売りを誘いやすくなろう。 期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は8日、2.90%と前の日から0.13ptと大幅に上昇し、連日で過去最高を記録した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は3月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ptの利上げを支持している。しかし、市場はウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁の長期化や、世界経済のブロック化によるグローバル化の逆戻り、これらに伴うインフレ高進の長期化などを警戒しているようだ。 また、3月FOMCでの0.25ptの利上げでは足元のインフレ沈静化には焼け石に水とみているもよう。ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)に陥ったFRBが将来、大幅な利上げを強いられる可能性などを懸念しているようだ。本日の東京市場でも、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が一段と低下しているが、マザーズ指数は続落しており、東証1部の主力グロース株も軟調なものが散見される。 明日10日には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開催される。今年に入ってから、利上げに消極的だったECBが年内の利上げの可能性を排除しない姿勢へと大きく転換してきたが、ウクライナ情勢を受けた景気減速懸念が強まるなか、そうした姿勢に変化があるのかが注目される。足元でスタグフレーション(景気後退と物価高の併存)リスクが高まっているなか、仮に再び利上げなど金融引き締めに慎重な姿勢が示されれば、短期的には株式市場に安堵感をもたらす可能性がある。しかし、上述したFRBのようにビハインド・ザ・カ−ブに陥るリスクもあり、長期的な視点からみれば、手放しで喜べることでもないだろう。 後場の日経平均は25000円手前に上値の重い展開となりそうだ。ウクライナ情勢を巡る不透明感がくすぶるなか、明日10日には上述のECB定例理事会のほか、米2月消費者物価指数(CPI)が発表予定。3月FOMC前の最後の物価関連指標ということもあり、注目度も高い。積極的な買いに転じる材料がほとんど見当たらないなか、戻り待ちでじりじりと値を下げる展開が想定されよう。 <AK> 2022/03/09 12:10

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