後場の投資戦略
不安心理収まらず守りを固める局面か
配信日時:2023/03/14 12:18
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;27302.64;-530.32TOPIX;1954.10;-46.89
[後場の投資戦略]
先週末の米SVBファイナンシャル・グループ株の急落を契機とした市場の混乱が未だに収まらない。その後、米シリコンバレー銀行(SVB)に続き、米シグネチャー銀行も経営破綻となった。こうした事態を受けて、米連邦準備制度と財務省、連邦預金保険公社(FDIC)は緊急融資プログラムを発表し、通常25万ドルまでの上限金額を超えた預金保護を実施するとしている。
こうした当局の迅速な対応もあり、システミックリスクといった連鎖的な金融システムの混乱に繋がる可能性は低いと思われるが、投資家の不安心理が収まっていない。また、イベントを契機に発生したボラティリティ(変動率)を利用してヘッジファンドなど短期筋が投機的な動きを強めていることが米地銀株の急落を招き、市場の不安心理を必要以上にかき立てているともいえそうだ。
米VIX指数は前日、危険水域とされる30を一時超え、日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)も1月中旬以来となる20を超えてきた。日米ともに主要株価指数が次々と心理的な節目やサポートラインを割り込んできていることから、すでに商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが加速しているが、今後は、リスクパリティ戦略(ポートフォリオに占める各資産のリスク割合が均等になるように分散投資することで、リスクを低減させる運用手法)による売りなどもさらに膨らんでくる可能性がある。
一方、一連の事態を受けて、インフレ抑制のための各国中央銀行による金融引き締め懸念は急速に後退した。FEDウォッチによると、3月21-22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ停止を予想する確率は25%程度まで高まった。また、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は再び利下げを織り込みはじめ、年末までに0.25ptの利下げが3回行われることを予想している。
こうした中、今晩は米国で米2月消費者物価指数(CPI)が発表される。米国発の信用不安により、もはや利上げペースの議論は時代遅れのような印象を持たれており、現在の焦点は3月会合で利上げを続けるのか停止するのかに移っている。一方、米SVBの一件の前とはいえ、先週の議会証言でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は利上げペース加速を示唆する発言までしていた。今の状況を踏まえれば、パウエル議長も姿勢を軟化させてくると思われるが、仮に今晩のCPIが強い結果となると、パウエル議長が本当に先週のタカ派な議会証言から態度を一変させてくれるかどうかという点にやや疑念が生じやすくなる。この場合は株式市場で売りがもう一段加速する可能性があり、注意したい。一方、米CPIが想定内のマイルドな結果となれば、市場は一旦落ち着きを取り戻す可能性があろう。
他方、東京市場では米地銀株の急落の影響を受けている銀行株だけでなく、鉄鋼や商社など、これまで強さを見せてきたバリュー(割安)株や高配当利回り株が一転して厳しいに売りに見舞われている。それだけ、これまでの急速な利上げを通じた今後の景気悪化に対する警戒感が高まっている証左だろう。こうした物色動向の変化から、投資家のセンチメントが急変していることが分かり、市場が落ち着くには時間がかかる可能性も高い。今は押し目買い余力を安易に使いきることなく、守りを固めた方がよさそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;27302.64;-530.32TOPIX;1954.10;-46.89
[後場の投資戦略]
先週末の米SVBファイナンシャル・グループ株の急落を契機とした市場の混乱が未だに収まらない。その後、米シリコンバレー銀行(SVB)に続き、米シグネチャー銀行も経営破綻となった。こうした事態を受けて、米連邦準備制度と財務省、連邦預金保険公社(FDIC)は緊急融資プログラムを発表し、通常25万ドルまでの上限金額を超えた預金保護を実施するとしている。
こうした当局の迅速な対応もあり、システミックリスクといった連鎖的な金融システムの混乱に繋がる可能性は低いと思われるが、投資家の不安心理が収まっていない。また、イベントを契機に発生したボラティリティ(変動率)を利用してヘッジファンドなど短期筋が投機的な動きを強めていることが米地銀株の急落を招き、市場の不安心理を必要以上にかき立てているともいえそうだ。
米VIX指数は前日、危険水域とされる30を一時超え、日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)も1月中旬以来となる20を超えてきた。日米ともに主要株価指数が次々と心理的な節目やサポートラインを割り込んできていることから、すでに商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが加速しているが、今後は、リスクパリティ戦略(ポートフォリオに占める各資産のリスク割合が均等になるように分散投資することで、リスクを低減させる運用手法)による売りなどもさらに膨らんでくる可能性がある。
一方、一連の事態を受けて、インフレ抑制のための各国中央銀行による金融引き締め懸念は急速に後退した。FEDウォッチによると、3月21-22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ停止を予想する確率は25%程度まで高まった。また、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は再び利下げを織り込みはじめ、年末までに0.25ptの利下げが3回行われることを予想している。
こうした中、今晩は米国で米2月消費者物価指数(CPI)が発表される。米国発の信用不安により、もはや利上げペースの議論は時代遅れのような印象を持たれており、現在の焦点は3月会合で利上げを続けるのか停止するのかに移っている。一方、米SVBの一件の前とはいえ、先週の議会証言でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は利上げペース加速を示唆する発言までしていた。今の状況を踏まえれば、パウエル議長も姿勢を軟化させてくると思われるが、仮に今晩のCPIが強い結果となると、パウエル議長が本当に先週のタカ派な議会証言から態度を一変させてくれるかどうかという点にやや疑念が生じやすくなる。この場合は株式市場で売りがもう一段加速する可能性があり、注意したい。一方、米CPIが想定内のマイルドな結果となれば、市場は一旦落ち着きを取り戻す可能性があろう。
他方、東京市場では米地銀株の急落の影響を受けている銀行株だけでなく、鉄鋼や商社など、これまで強さを見せてきたバリュー(割安)株や高配当利回り株が一転して厳しいに売りに見舞われている。それだけ、これまでの急速な利上げを通じた今後の景気悪化に対する警戒感が高まっている証左だろう。こうした物色動向の変化から、投資家のセンチメントが急変していることが分かり、市場が落ち着くには時間がかかる可能性も高い。今は押し目買い余力を安易に使いきることなく、守りを固めた方がよさそうだ。
(仲村幸浩)
<AK>
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