後場の投資戦略ニュース一覧

後場の投資戦略 今一度考えてみる相場上昇要因と今後の見通し [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28208.92;+264.97TOPIX;1967.92;+20.89[後場の投資戦略] 日経平均は先週からの上昇基調が続き、本日は前日に終値で維持できなかった28000円を明確に上回ってきている。日足チャートでは長らく上値抵抗線だった200日移動平均線(27940円)を優に上回ってきた。テクニカルな好転を受けて、売り方が一段と買い戻しを迫られているほか、短期筋の追随買いも入っているとみられる。先週からの日経平均の上昇幅は1400円程にもなるが、短期間でこれだけ上昇している割には、ザラ場中に目立った押しがほとんど見られない。一時乱高下したのは昨日くらいだ。 しかし、何かこの上昇相場を素直に喜べない、気持ちの悪い感覚が付きまとう。この1~2週間に何か目立った材料があっただろうか。あったとすれば、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からの9月以降も0.5ptの利上げを支持するタカ派発言や原油価格の高騰、米長期金利の上昇など、どちらかと言えば相場にとってネガティブな材料ばかり。 それまでの間に、個人投資家も機関投資家もセンチメントがかなり弱気に傾いていたため、株式市場を巡るグローバルな環境が特に好転したわけではなく、過度に傾き過ぎていた弱気ポジションの反動というのが、この上昇相場の主要因と考えるのが自然だろう。 目先の注目イベントは今週末の米5月消費者物価指数(CPI)、そして来週14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。また、来週末には米国市場でもSQが控えている。現状、米国のオプション市場ではプット(売る権利)の建玉が多いため、CPIやFOMCといったイベント前で普通であれば動きにくいと考えられる中ではあるが、短期的には売り方の買い戻しがまだ続く余地がありそうだ。 相場にとってのポジティブシナリオは、CPIで前月に続き前年比での伸びの鈍化が確認されること、そして、FOMCで公表される政策金利見通し(ドットチャート)において、利上げペースが過度にタカ派的でないことが確認されると同時に先行き不透明感が払拭されることだろう。こうしたポジティブシナリオが実現すれば、短期的には更に上値を試す展開が想定される。 しかし、来週末の米国版メジャーSQを通過した後はどうだろうか。先週から既に過度に弱気なセンチメントが修正されてきているなか、仮に上述した注目イベントでポジティブシナリオが実現したとしても、そこからの上値余地は大きくないのではないのだろうか。それまでの間に、SQに向けて売り方の買い戻しが一巡してきていることを考えれば尚更だ。 また、今一度思い出すべきなのはインフレを抑え込むために過度に相場を上昇させたくないと考えているFRBの存在だ。景気後退もインフレも防ぎたいFRBは、株価指数の水準を現状の位置から過度に上にも下にも動かしたくないと考えているはずだ。こうしたFRBの思惑については少し前から指摘されており、S&P500指数でいえば、3800~4300が目安とされている。これまでの高官発言を振り返ると、実際、3800が近くづくタイミングでハト派的な発言(9月の利上げ停止など)が出てきた一方、4200近くまで大きく反発してきた直後には、タカ派的な発言(9月も0.5ptの利上げ支持など)が相次いでいる。 これらを踏まえると、目先のCPIとFOMCでポジティブシナリオが実現し、相場が現状水準から一段と上昇したとしても、そこから先は再びFRBによるけん制発言が相次ぐ可能性が高い。それだけでなく、グローバルな経済状況に大きな変化がないなか、いつまでも相場のリバウンド基調が続くと考えること自体が難しいだろう。 そうなると、時間軸で考えると、株式市場のリバウンド基調は長くても来週末までで、その翌週(6月20日~)からは再び調整局面が想定される。ポジティブに考えても、せいぜいもみ合い相場だろう。今の難しい相場局面であえて投資に挑戦する必要はないと思うが、仮に投資するのであれば、金融政策に関するイベント前後でも潮目が変わりにくい、リオープン(経済活動再開)関連の銘柄などの方が無難だろう。 後場の日経平均は引き続き堅調推移が見込まれる。上述した通り、イベント前で神経質ながらも、来週までは悲観センチメントの修正、米国版SQに向けた買い戻しが続く可能性が高い。短期的には意外なほどまでに底堅い動きが続くとみておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/08 12:10 後場の投資戦略 相場は今年の正念場を迎えようとしている [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28031.15;+115.26TOPIX;1953.41;+14.30[後場の投資戦略] 日経平均は寄り付き後に失速してマイナスに転じた後、切り返して節目の28000円を回復して強い動きを見せたかと思えば、午前中ごろには一時大きく値を崩して28000円を割り込み、その後再び回復するなど、かなり荒い動きを見せた。週末の6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出を前に、上昇が続いてきたが、頃合い的にも株価指数の水準的にも買い戻しが一服してきたようにも見受けられる。心理的な節目の28000円を回復したことで目先の達成感も台頭しやすいため、ここからの上値追いには慎重になった方がよいだろう。一方で、28000円を上回って推移する時間帯が長くなると、売り方の買い戻しに弾みがつき、もう一段の意外高が待っている可能性もある。 前日の米国市場ではナスダックは上昇したものの、先行性の高いSOXは横ばいにとどまった。本日の東京市場でも半導体関連株は総じて弱い動きが目立つ。また、中小型グロース株が軒並み大幅に下落していることからしても、まだ投資家心理が大きく上向いてきたとは言えない状況と言える。 しかしそれでも、前日のナスダックは寄り付き後の2%高から大きく失速したものの、米10年債利回りが1カ月ぶりに3%を突破してきたなかでもプラス圏で終えた。ハイテク・グロース株の底入れ感を期待させる意味でポジティブに捉えられる。前日の米国市場の商いは薄く、こうした金利高のなかでの米グロ−ス株高を素直に受け止めにくい部分はあるが、ナスダックがここ3営業日で下値を切り上げてきていることも含めて考えると、底入れの確度が徐々に増しているようにも見受けられる。 中国当局の規制緩和の動きを好感して本日大きく上昇しているソフトバンクGが、大規模な赤字を計上した5月12日の本決算後、あく抜け感からリバウンド基調を続けている点も注目される。先週、複数のFRB高官から相次いで9月以降の0.5ptの利上げを支持するタカ派発言が相次いだなかでも相場は大きく上昇し、今週もほとんど反動安を見せてない点なども含めて総合的に考慮すると、グロ−バルな株式市場は既に悪材料を全て織り込んだかのような様相だ。 また実体経済に目を向けても、先日、ソニーGは部品不足が改善しつつあるとし、今年のプレイステーション5の生産水準を大幅に増やし、かつてない程の水準にまで強化すると明かした。さらに、フォルクスワーゲン(VW)の最高経営責任者(CEO)は半導体供給が明らかに改善しているとし、同社の年内の世界生産の回復に自信を示したという。 このように、足元は株式市場にしても実体経済についても、先行きに明るい兆しを感じさせる動きが散見されていることは確かだ。こうした中、目先の焦点は今週末10日に発表される米5月消費者物価指数(CPI)で、その次は来週14-15日に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)となる。これらの結果と米国市場の反応次第で、足元のリバウンド基調が本格的なトレンド転換への初動だったのか、単なるあや戻しに過ぎなかったのかが分かることになる。相場は今年の正念場を迎えていると思われ、イベント前の無理な新規ポジションの構築には慎重になりたい。 午後の日経平均は28000円を維持できるかが焦点となる。ここを上回って終えることができれば、上述したように、もう一段の意外高が待っている可能性がある。時間外取引のナスダック100先物が下げ幅を広げてきていることが気がかりだが、前引けまで強い騰勢を維持した流れから、午後も期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/07 12:10 後場の投資戦略 想定以上に底堅い日本株を素直に受け止めてよいか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27844.26;+82.69TOPIX;1935.01;+1.87[後場の投資戦略] 週明けの東京市場は想定以上に底堅い動きとなっている。先週末の米株市場では強い雇用統計の結果を受けてナスダックが大幅反落しており、先週1000円近くも上昇した日経平均は反動安も相まって、週明けから深い調整を強いられると想定していた。しかし、日経平均は寄り付き直後から即座に下げ渋り、ザラ場安値でも27500円すら割っていない。朝方には1ドル=130.80-90円と、5月に付けた131円台を窺う水準まで進んだ円安進行が下支えしている背景もあるだろうが、金融引き締めの影響が大きい、中小型グロース株主体のマザーズ指数もプラス転換しており、かなり底堅い印象。 先週末は、クリーブランド連銀のメスター総裁も、FRBのウォラー理事やブレイナード副議長に続いて、9月以降の0.5ptの大幅利上げへの賛同を示唆し、高官のタカ派発言が相次いだ。雇用統計の結果もあり、先週末3日の米10年債利回りは一時2.98%まで上昇した。 また、石油輸出国機構(OPEC)プラスは原油増産幅の拡大ペース加速で合意したものの、グローバル需要の0.4%を満たすわずかな供給増に過ぎないとも指摘されている。欧州連合(EU)によるロシア産石油の一部禁輸も科されたばかりのなか、焼け石に水としか思われておらず、ニューヨーク原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI7月物)は1バレル=120ドル台を3カ月ぶりに一時突破してきている。 こうした明らかに相場の重石となるような悪材料が相次ぐなかでも、先週から株式市場は強い上昇基調にあり、週明けも先週末の米株安をものともしない動きとなっている。要因として、悪材料は既に相当に織り込み済みという可能性のほか、円安進行や諸外国に比べて遅れてやってきた経済活動の再開機運を背景に、消去法的な側面は否めないものの、相対的に日本株が選好されていることが考えられる。 一方で、今週末に控える6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出を前に、先週からの売り方による買い戻しが続いていることも考えられる。相対的な優位性だけで東京市場だけが下落を免れるという考え方にはやや違和感があり、どちらかといえば、こうした需給面での要因が大きいように見受けられる。 オプション市場では、期先の7月限においてコール(買う権利)の方がプット(売る権利)に比べて、建玉の積み上がり方も規模も遥かに大きい。そういう意味では先行きに強気の投資家も多いのだろう。しかし、明確な好材料がないなか、ここから一段とコールの買い建玉を積み上げるかと問われれば、その可能性は低いのではないだろうか、むしろ、ここからは売りヘッジを目的とした動きに注意を払う必要があると考えられる。 株式市場を巡るグローバルな環境に変化がないなか、日経平均がこのまま28000円を超えるとも考えにくい。仮にオーバーシュート気味に一時的に超えても短命に終わる可能性が高い。株価指数の水準としては現状からのアップサイド余地は乏しく、今後は、買い戻しが一服した後の反動安に注意を払うべき局面だと考える。 後場の日経平均は円安進行や堅調に推移している時間外取引のナスダック100先物、アジア市況などを背景に底堅く推移しそうだ。ただ、為替については朝方から円安進行に一服感が見られつつあることや、時間外取引の米株価指数先物の動きも短期で様変わりするため、日経平均は28000円を手前に上値の重さも意識されやすいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/06 12:11 後場の投資戦略 米株高で27500円回復も危うさ伴う [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27713.23;+299.35TOPIX;1931.67;+5.28[後場の投資戦略] 前日に発表された米5月ADP雇用者数の伸びは12万8千人増と、市場予想の30万人程を大きく下回った。求人需要は依然として極めて高い水準で推移しているものの、労働需要の減速が示唆された。OPECプラスの原油増産幅の拡大も相まって、インフレ懸念の緩和につながり、FRBの積極的な引き締めへの思惑が後退。こうした背景から、前日の米株市場ではハイテク株を中心に大幅に上昇し、これが本日の日経平均の27500円突破に貢献した。 ただ、前日の米株市場での出来高は少なく、商いが薄いなかで上昇率が嵩上げされた印象を拭えない。 ブレイナード副議長は9月の利上げ停止について「(現時点では)その可能性は非常に低い」とし、「インフレを当局目標の2%に戻すためにやるべき仕事がまだ多く残っている」と述べた。5月下旬に市場で一時高まっていたFRBのハト派転換への期待をけん制するかのような発言で、相場にとってはネガティブな材料と思われる。 しかし、前日の米株市場は上述したように大幅高。ブレイナード氏が9月の利上げ停止を否定しても、これ以上6、7月時点でのタカ派サプライズはないと見込み、押し目ではプット(売る権利)の売り・カバードコール(原資産を保有しながら、その原資産のコール(買う権利)売りポジションをとる戦略)の買い戻しなど、デリバティブ市場では手仕舞いの動きが見られるとの指摘が聞かれる。薄商いのなか、こうしたオプション絡みの動きが実体の強さ以上に株価指数の上昇率を大きく見せている可能性は否定できないだろう。 今晩発表される米5月雇用統計で予想通り、平均賃金の伸びや雇用者数の伸びが前月から鈍化すれば、こうした売り方の買い戻しの動きがもう一段進む可能性はあり、短期的には株式市場が上方向にオーバーシュートする可能性はあろう。 ただ、今週に入ってから、ハト派転換を期待する市場を慌ててけん制するかのような発言がFRB高官から相次いでいる。また、前日のOPECプラスでは原油増産幅の拡大で合意したにもかかわらず、原油先物価格はほとんど下落していない。各国の供給体制に制限がつきまとうなか、実際にどこまで増産できるのか市場は疑念を抱いている様子。 こうした懸念要素を無視して足元でリバウンドを続けている相場にはやや危うい印象を抱く。需給要因主導で上昇しているに過ぎないともいえ、今晩の米雇用統計で仮に想定以上に強い結果が出ると、その後の調整(下落)がより深いものになりかねず、警戒が必要だろう。 また、米雇用統計を無難に通過しても、来週10日には米5月消費者物価指数(CPI)が控えている。今週発表されたヨーロッパ圏のCPIの上振れ度合いなどを見ると、エネルギーの生産・輸入状況が異なるとはいえ、米国でのインフレピークアウトにも疑問符が付き、指標発表を前にした神経質な展開が想定される。 今週に入って日経平均は大きく上昇し、上値抵抗線だった25日、75日移動平均線を上放れ、週間でも26週移動平均線を上回って終えそうだ。こうしたチャート形状の改善や、心理的な節目の27500円を回復したことなど自体はポジティブだが、逆に捉えると、28000円を手前にそろそろ売り方の買い戻しが終わる頃とも考えられる。足元の動きをもってして過度に楽観的になるのは危ういと思われ、まだまだ警戒感を持って臨むべき局面と考える。 午後の日経平均はもみ合いか。今晩の米5月雇用統計を前にこれ以上に積極的に買い上がるのには材料不足で、後場はむしろ持ち高調整の売りなどで失速気味になることに留意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/03 12:08 後場の投資戦略 焦点は再びインフレ・利上げへ、市況関連株に相対的な安心感 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27411.58;-46.31TOPIX;1928.12;-10.52[後場の投資戦略] 前日の米株市場では主要株価3指数が揃って下落したとはいえ、引けにかけて下げ渋るなど底堅い動きも見られたことで、本日の東京市場でも日経平均は朝方の200円安から大きく下げ渋った。ドル・円の130円台乗せも想定以上に速いペースで達成され、円安進行も日本株の下支え要因として寄与しているようだ。一方、200日移動平均線が近づくなか、リバウンドの一服も意識され、上値もやや重い様子。新規の手掛かり材料難で、節目の27500円を明確に超えてくるには材料不足だろう。 何より気掛かりなのは、前日までの当欄での指摘の繰り返しにはなるが、米長期金利の上昇ペースの速さだ。5月6日の3.14%をピークにしばらく低下基調にあった米10年債利回りは、先週末の2.74%から前日までの僅か2営業日で2.91%まで上昇してきている。 FRBの利上げペースについては、セントルイス連銀のブラード総裁やアトランタ連銀のボスティック総裁の発言を受けて一時楽観的な方向に傾いていたのも、先日のウォラーFRB理事の発言を受けて再び警戒感が高まっている。米10年債利回りはピーク値にはまだ距離があるが、FRBのタカ派姿勢が再認識されている最中、極端な上昇ペースの速さは相場を神経質にさせかねず、要注意だ。 前日、5月ISM製造業景況指数が発表された。指数の総合値は前月(55.4)から低下するとの予想(54.6)に反して56.1へと上昇した。内訳をみると、先行指標とされる新規受注のほか生産の項目が拡大し、米国経済の景況感の強さを示した。一方、入荷遅延と価格の項目は揃って低下し、サプライチェーンの混乱は最悪期を脱したとの見方を示唆する内容ともいえる。ただ、水準としては入荷遅延が65.7、価格が82.2と、拡大と縮小の境界値である50を大きく上回っており、サプライチェーンの根詰まりが依然として根強いことも窺える。 また、雇用の項目が49.6へと低下、昨年8月以来の50割れとなり、製造業における労働者不足の深刻さが改めて確認された。さらに、同日に発表された4月の雇用動態調査(JOLTS)では、引き続き求人件数が採用件数を大幅に上回る状態が確認され、賃金上昇が当面続くことが示唆された。 ISMとJOLTSで確認されたサプライチェーンの根詰まりや労働者不足の根強さが、足元で後退していたFRBの引き締め観測を強めたともいえ、これが金利上昇圧力になったと考えられる。今週末には米5月雇用統計が発表される。雇用者数の伸びは市場予想で32.9万人増とされ、前月の42.8万人からは減少する見込み。ただ、一部ではFRBにとって月30-40万人前後の雇用者数の伸びは強すぎると指摘する向きもいる。5月下旬にかけて高まっていたFRBのハト派への転換を根拠づけるには無理があるとし、雇用者数の伸びは月10万人レベルまで低下する必要があるとしている。 こうした中、雇用統計において平均賃金の伸びが予想を上回る、ないしは雇用者数の伸びが過度に強いと相場の焦点は再びインフレ懸念・FRBの利上げペースに戻り、来週10日に発表を控える米5月消費者物価指数(CPI)に対する警戒感を高めることになりかねない。明日は、週末の雇用統計の発表を前に手仕舞い売りなどが膨らむ可能性に留意したい。 一方で、昨日の米株市場のセクター別騰落率をみると、金利上昇が利ザヤ拡大期待に繋がりやすい金融や銀行が特に大きめに下げており、インフレ抑制を目的としたFRBの積極的な引き締めが将来の景気後退を招くとの懸念も根強いことが窺える。 前日、米銀行大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、5月の投資家向けイベントで米国経済について「大きな暗雲」があるとした表現を訂正し、「ハリケーンはすぐそこまで来ている」と、より警戒感を表す発言をした。さらに、「それが小型なものか、超大型なのかは分からない。身構えた方がいい」とも述べたという。 過度な悲観の修正が進み始めたかと思えば、早々に再び悲観へと揺り戻されるかのような材料が今週に入ってから相次いでおり、依然として投資家は高いボラティリティー(変動率)に備えておいた方がよさそうだ。 こうした中では、リスク許容度が低い投資家はやはりボラティリティーが高いグロ−ス株などは避け、仮に手掛けるのであれば、インフレ耐性のある市況関連株などの方が相対的にましだろう。前日、中国はロックダウン(都市封鎖)で打撃を受けた経済を立て直すべく、国有政策銀行に対し、インフラ計画向けに8000億元(約15兆5700億円)の与信枠を設けるよう指示したと伝わっている。インフレ耐性に加えて、高い配当利回りや今後の中国経済の回復期待の恩恵を受けやすい市況関連株に妙味があると言えそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/02 12:09 後場の投資戦略 6月のグロ−ス株は大型と中小型で明暗分かれる? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27472.49;+192.69TOPIX;1937.61;+24.94[後場の投資戦略] 前日の米国株が小幅に下落していた中でも、前場の日経平均は堅調推移。円安進行に加えて、前日に実施されたMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の定期銘柄見直しに伴う指数連動型パッシブファンドの売り需要がなくなったこともあり、あく抜け感も支援要因になったようだ。日経平均は寄り付きから上げ幅を広げ、先週まで上値抵抗線だった25日、75日線からの上方乖離幅を広げている。 一方、気掛かりなのはグロース株の動向。前日のナスダックは4日ぶりに反落したものの、一時プラス圏で推移する時間もあるなど、底堅い動きだった。また、アマゾン・ドット・コムが4%高となるなど、強い動きも散見された。しかし、東京市場では、ベイカレントやSHIFTなどグロース株の代表格が前日に続き大きく下落。週初に10%超も急伸した上昇分をほとんど全て吐き出す格好となっている。 前日に発表されたユーロ圏の5月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.1%と予想(+7.8%)を上回り、前月(+7.5%)からは大きく伸びが加速。一昨日に発表されたドイツのCPIに続き、過去最高を記録する形となった。先週末に2.74%まで低下していた米10年債利回りは連休明けの前日には2.85%まで大きく上昇しており、インフレ懸念が再燃しつつある様子。3月にピークを打ったとする米国のインフレ動向についても、疑念を抱く市場関係者が増えているようだ。こうした中、はやくも来週の6月10日に発表を控える米5月CPIに対する警戒感などが高まっていると考えられる。 6月に入り、いよいよ米連邦準備制度理事会(FRB)によるバランスシートの縮小(QT)も始まる。既知のこととはいえ、市場への影響を完全に計り知ることは難しいため、QTに対する警戒感も上値抑制要因として働いている可能性があろう。 また、4月半ばから5月にかけての株式市場の大幅下落を受けて、米国では5月末にかけて年金基金などによるリバランス(資産配分の再調整)に伴う株式買いが入ったとされている。6月に入り、こうした需給面での下支え期待がはく落することも懸念要素だろう。 一方、東京市場については、6月は3月期末配当の再投資といった需給面での下支え要因も指摘されている。直近進んでいた円高も、1ドル=125円台が視野に入るところまでの調整を経て、足元で再び129円台にまで乗せてくるなど円安進行が再び強まっている。配当再投資と円安再進行を背景に、6月も日本株の意外な底堅さが見られる可能性が高まってきたといえそうだ。 こうした中、グロース株の復調シナリオに早くも暗雲が垂れ込めてきたとした前日の当欄「~楽観シナリオ再考を迫る要因も」での指摘が、嫌な形ではあるが更に確度を増してしまったと言えそうだ。期待インフレ率と名目利回りのピークアウト、FRB高官のハト派転換を示唆する発言、などを背景に「バリュー・コモディティ買い」と「グロ−ス売り」の流れの反転、リターン・リバーサルが長めに続くかと見ていたが、その賞味期限はわずか1-2日程度で終わってしまったのかもしれない。 ただ、上述したことは大型ハイテク・グロ−ス株について当てはまる可能性が高い一方、東証グロース市場に属する銘柄(主に旧マザーズ銘柄)については、やや話が異なるかもしれない。というのも、マザーズ指数には6月に上昇しやすいという季節的傾向があることで有名だからだ。 実際、上述したSHIFTやベイカレントといった東証プライム市場に属する代表的なグロ−ス株が冴えないチャートを描いている一方、弁護士ドットコム<6027>、Appier Group<4180>、カオナビ<4435>、メドレー<4480>などの好決算を発表した中小型グロ−ス株のチャートは底堅い基調を描いている。折しも、本日は東証プライム市場への鞍替えを発表したメルカリ<4385>の急伸がマザーズ指数を押し上げており、このような見方を補強してくれているかのようだ。グロ−ス株には引き続き厳しい局面が続きそうだが、一部の中小型株ではリターン・リバーサルの継続が見られる可能性があると期待したい。 後場の日経平均は堅調推移が継続か。時間外取引のNYダウ先物が堅調に推移しているほか、昨日の米株市場の取引終了後に決算を発表したセールスフォース・ドットコムが時間外取引において急伸しており、ナスダック100先物もしっかりとした動きになっている。日経平均は節目の27500円を手前に伸び悩む可能性もあるが、下値の堅い展開が期待できそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/01 12:15 後場の投資戦略 急伸後の反動安こなす強い動き、ただ楽観シナリオ再考を迫る要因も [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27404.14;+34.71TOPIX;1923.55;+1.11[後場の投資戦略] 前場の日経平均は朝方にプラス転換した矢先に下落したかと思いきや、前引けにかけて再び上昇に転じるなど一進一退の展開。しかし、前日の急伸後を踏まえれば底堅い以上に強いと評価できる。先週末にかけて連日で上昇した米国市場が、連休明けの今晩も上昇基調を維持できるかを見極めたい思惑もあり、模様眺めムードが支配的になるのは致し方のないところ。こうした中、前日の上昇分をしっかりと保持していることは好印象で、今晩の米国市場次第では、短期的には200日移動平均線が位置する28000円近辺に向けた動きも期待できそうだ。 一方で、インフレピークアウト(景気後退懸念も含むが)を背景とした米債券市場での名目金利や期待インフレ率の低下基調、景気に配慮したハト派姿勢への転換を示唆した米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの発言を拠り所としたグロース株の復調期待に水を差しかねない状況が再び台頭してきている。 前日に発表されたドイツの5月の消費者物価指数(CPI)は前年比で+7.9%と予想(+7.6%)を上回った。前月比でも+0.9%と予想(+0.6%)を大きく超過し、過去最高を記録。これを受けて、欧州中央銀行(ECB)による早期の金融引き締め観測が高まり、前日の欧州市場では債券価格が大きく下落(利回りは大幅上昇)した。 また、欧州連合(EU)は30日にロシア産石油の一部禁輸で合意。追加制裁の発動後ただちに3分の2の輸入が止まり、年内には90%以上になるという。これを受けて、原油先物相場は大幅に上昇。北海ブレント原油先物価格(7月限)は30日に1バレル=120ドルを上回り、終値で3月8日以来の高値121.67ドルを付けた。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、7月物)も1バレル=117ドル台後半と、先週末の115ドルから上伸している。 さらに、米国では前日、FRBのウォラー理事が「インフレ率が当局の目標である2%に近づくまでは、0.5ptの利上げは常に選択肢にある」と発言。直近の高官発言からは、今後2会合(6月、7月)での0.5ptの利上げ後については、いったん利上げ幅が0.25ptに縮小するのではといった見方が優勢になってきていたため、今回のウォラー氏の発言はタカ派サプライズ感がある。 米国景気の減速で「金利は上がりにくい」、「株の買い戻し余地がある」といった声が足元では増えていたが、前日にかけて観測されたドイツCPIの上振れ、EUの対ロ追加制裁による原油高、ウォラーFRB理事の発言などを背景に、金利低下基調を背景とした楽観論は早くも修正を強いられそうな状況となってきた。 先週25日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月3-4日分)が公表された直後には、金利先物市場が織り込む6月と7月の両会合での利上げ幅の合計が1pt未満となる動きが一時見られるなど、FRBのタカ派姿勢の後退を予想するような極端な動きも見られていた。金利低下基調の一服感とともに市場の見通しも修正を迫られる余地が大きそうだ。 東京時間の本稿執筆時点での米10年債利回りは2.83%と、先週末の2.74%からは大きく上昇しているものの、5月6日に付けた3.14%にはまだ距離がある。また、薄商いながらも、同時点における時間外取引のナスダック100先物は堅調に推移している。こうした背景から、まだ楽観的な見方が完全に萎んだわけではなさそうだが、前日まで抱いていた程の楽観的な見方を維持することには危うさが伴う。短期的にはグロース株にリバウンド妙味があるとの見方は維持するが、値幅が出たら早い段階で利益を確定するなど細やかなケアは依然として必要そうだ。 後場の日経平均は前日終値を挟んだ一進一退が続きそうだ。手掛かり材料難のなか、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況を睨んだ展開となろうが、どちらも現状は小動きで方向感に乏しい。今晩の米国市場の動きを見極めたい思惑もあり、後場の東京市場は模様眺めムードがより支配的になりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/31 12:11 後場の投資戦略 転換点迎えたか?リターン・リバーサルで中小型グロースに期待 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27309.35;+527.67TOPIX;1920.23;+32.93[後場の投資戦略] 週明けの東京市場はほぼ全面高で久々に非常に力強い動きを見せている。日経平均は先週何度も押し返されていた心理的な節目の27000円を明確に突破。日足チャートでは上値抵抗線だった25日、75日移動平均線を大きく上抜けた。4月半ばから下向きにあった25日線は上向きに転じてきている。また、昨年12月から約半年も下向きのままである75日線も間もなく上向きに転じようとしている。テクニカル面ではトレンドが転換しようとしていることを示唆している。 実際、相場つきも転換を示唆していると思われる。。直近、2日連続で上昇する日も珍しかったナスダックは先週末にかけて3日続伸したうえ、25日から週末27日までの上昇率は+1.5%、+2.6%、+3.3%と大きく、更に伸びが加速している。売り方の買い戻し(ショートカバー)が主体と思われるが、これまでになかった強い動きといえる。 折しも、米国債利回りに対する社債の上乗せ分、いわゆるクレジットスプレッドの動きなどに注目したうえで、複数の機関がほぼ同じタイミングで、ボラティリティーがピークを迎えたこと及び株式市場の底打ちが近いことを指摘していた。 しかし、依然として相場の先行きについては見方がまだ大きく分かれている。先週末にかけてのナスダックの大幅な3日続伸、NYダウの6日続伸といったこれ程に広範な上昇を受けて、強気派は底入れの特徴として指摘。悪材料が既に十分に織り込まれたことはコンセンサスのようなものだとも言及。一方で懐疑派は、弱気相場においてショートカバーが一時的に優位になり、ほぼ全面的に相場を押し上げることはよくあることだと主張。 ただ、中長期的な時間軸では先行きについて見方が分かれているとはいえ、いずれにしろ、短期的には弱気派も含めて目先はリバウンドによる上昇が優勢との見方で一致しているようだ。 実際、本日の東京市場でもそうした兆候が窺える。これまでナスダックが上昇した日にも軟調な動きが目立ち、グロース株への投資家の不信感が垣間見えた銘柄について、本日は非常に力強い動きが見られる。具体的には先週の当欄で度々取り上げていたリクルートHD<6098>やSHIFT、SREホールディングスなどだ。SHIFTとSREホールディングスについてはそれぞれ10%超の上昇率と、直近見られなかった強さだ。また、ラクス、マネーフォワードなどの中小型グロース株の上昇率も久々の大きさだ。 東証グロース市場で時価総額トップのメルカリ<4385>は、中小型グロース株の中でもとりわけ弱い動きが続いていたが、そのメルカリも大幅な上昇率を見せており、マザーズ指数も4.39%高となっている。 こうした中、27日にはクレディ・スイスとバンク・オブ・アメリカ(BofA)が、バリュー株の投資判断をそれぞれ引き下げたことが伝わっている。期待インフレ率や名目金利の上昇がピークを打ち、経済指標の下振れが続くなか、バリュー株の投資妙味は薄れてたと考えているようだ。 今週末には米5月雇用統計が控えており、週末が近づくタイミングでは再びグロース株に神経質な動きが見られる可能性はある。ただ上述したような背景から、目先はリターン・リバーサルの動きが続くと想定され、業績好調にも関わらず先週までの下落率が厳しかった中小型グロース株などに投資妙味があろう。 後場の日経平均は上値を試す展開か。先週の先物市場は閑散とした様子だったが、手口ではゴールドマン・サックスやBofAなど主な外資系証券が日経平均先物とTOPIX先物の双方で共に買い方に傾いており、売り目線の向きは少ない様子。商品投資顧問(CTA)やマクロ系ヘッジファンドの売り持ち高の平均取得価格は26500円-27000円の間にあるとの指摘もあり、27000円を上回る時間が長くなれば、売り方の買い戻しも期待できそうだ。こうした中、後場の日経平均が一段と上値を追う展開となっても不思議ではないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/30 12:10 後場の投資戦略 グロースの軟弱さに悲観も相場転換への期待も [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26772.84;+168.00TOPIX;1885.23;+7.65[後場の投資戦略] 本日の日経平均は27000円に届かず失速。18、23、24日に続いて27000円台定着に失敗しており、戻り待ちの売りの強さが窺える。先週までは東京市場の海外市場と比べた相対的な強さを指摘する声が聞かれ、先物も日中取引の底堅さなどが目立っていたが、今週に入ってからは朝方の上昇から失速するケースが多く見られ、相対的な強さとやらは過去の話になったようだ。ちょうど米10年債利回りが低下基調を強め、ドル・円が1ドル126円台へと直近ピーク時から5円程も円高・ドル安が進んでいる中でのタイミングであり、先週から一段と強まってきた景気後退入りの懸念が、世界の景気敏感株と称される日本株の重荷になっているようだ。 また、気掛かりなのは相変わらずのグロース株の弱さだ。最近はナスダック総合指数が2日以上続けて上昇する日が少なく、かなり弱い動きが目立っていたが、26日のナスダック総合指数は+2.6%と、前の日の+1.5%に続く大幅続伸となった。さらに、市場予想を下回る売上高見通しを示して前日の時間外取引で大幅に下落していた米エヌビディアは切り返して5%高となるなど、売り込まれてきたハイテク株の底打ちを示唆するような動きも見られた。 それにも関わらず、今日の東京市場では半導体関連株は買われているものの、グロース株が相変わらず弱い。上昇しているならまだしも、下落しているものが多いのが気になる。具体的にはリクルートHDやベイカレントのほか、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>、ラクスル<4384>、JMDC<4483>など。上述した米株市場の動向を踏まえると、しっくりこないというか、あまりの弱さに首を傾げたくなる。グロース株が復調するには、ナスダックの大幅高が2日続いた程度では足らず、まだまだ材料不足ということのようだ。それだけ、今の投資家のグロース株に対するセンチメントは悪化しているのだろう。 しかし、それでも前日の当欄「買い戻し弱ければあく抜け感もない軟弱相場・・・」で紹介した一部外資系金融機関によるテクノロジー株の売り圧力が終了しつつあるとの指摘は、昨日のエヌビディアの動きで確度を伴ってきたと言える。また、一部の調査会社では、米国債利回りに対する社債の上乗せ分、いわゆるクレジットスプレッドがこの1年間でほぼ2倍に拡大した一方、クレジットスプレッドの変動が既にピークを付けていると指摘し、過去のパターンを踏まえると、株式市場の底打ちは近いとみているという。 さらに、モルガン・スタンレーは、ボラティリティー上昇を見込む取引については、既にヘッジコストが高くなり過ぎているため、リスクとリターンが見合わないと指摘。同時に、一部の資産については相場変動がピークに達したとみるべきとも指摘したという。 米VIX指数の動きをみていると、相場の底打ちを示唆するような著しい急騰は見られておらず、やや上述した指摘に違和感も覚えるが、複数の機関が同時にボラティリティーのピークと株式市場の底打ちが近いことを示唆したことは無視できない。まだまだ強気に転じ切ることはできないが、相場の反転が近づいている可能性を頭の片隅に置いておきたい。 後場の日経平均はもみ合いながらも堅調に推移しそうだ。時間外取引の米株価指数先物は小安く推移しているが、アジア市況は堅調で、香港ハンセン指数については2%を優に超える上昇率で大幅高となっている。外部環境が落ち着いたままであれば、日経平均の値崩れはないだろう。なお、今晩の米国市場では4月個人所得・個人消費支出や、FRBが重視している4月PCE(個人消費支出)コアデフレーターが発表予定だ。インフレピークアウトがより裏付けられるような結果を得ることができれば、株式市場、特にグロース株の復調への歩を進めることになるだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/27 12:12 後場の投資戦略 買い戻し弱ければあく抜け感もない軟弱相場・・・ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26685.71;+7.91TOPIX;1882.66;+6.08[後場の投資戦略] 日経平均は午前中ごろから失速し一時マイナスに転じるなど、前日の米国株高の流れに乗り切れていない。チャートでは、集中する25日、75日移動平均線に引き続き上値を抑えられる格好となっており、上値切り下げトレンドを脱する兆候すら見せることができていない。ただ、もともと前日の米国市場でも、FOMC議事要旨を無難通過したにも関わらず、年初来安値圏にあった米主要株価指数の上昇率は1%前後と、かなり物足りないものにとどまっていた。FOMC議事要旨の公表自体がそこまで大きなイベントとして捉えられていなかっただけだとは思うが、今の相場は、イベント前の買い戻しも弱ければ、イベント後のあく抜け感による上昇も見られず、完全に買い手不在の状況といえる。 前日の当欄で指摘したことの繰り返しになるが、連日で大きく下落しているリクルートHD<6098>や三井ハイテック<6966>、SHIFT<3697>などのグロース株代表格とも呼べる銘柄が、本日もかなり弱い動きを続けている。一部の外資系金融機関では前日のナスダックの上昇を受けて、テクノロジー株の売り圧力は終了しつつあるなどとコメントしたという。しかし、一昨日に年初来安値を更新したばかりのナスダックの前日の上昇率は1.5%。一日に4-5%も下落する日が度々あったことを考えると、売り圧力が終了しつつあるとは考え難い。上述したように、今日の東京市場でのグロース株の動きを見てもまだ弱い。本当に売り圧力が終了しつつあると言えるかを判断するにはまだまだ時間をかけた観察が必要だろう。 そうした意味では今晩の米株市場でのエヌビディアの反応は注目される。景気循環の性質とグロース株の性質を併せ持つ半導体株は、景気後退懸念と金融引き締め懸念がくすぶる今年は最悪な環境といえ、実際、かなり厳しく売り込まれており、最もパフォーマンスが悪いと言っても過言でない。そうした銘柄が予想を下回る見通しを示した時、本当にテクノロジー株の売り圧力が終了しつつあるのであれば、あく抜け感から株価はむしろ上昇するか、少なくとも想定程には下がらないといった動きが出るはずだ。エヌビディアは時間外取引で7%近く下落しているが、今晩の米株市場で実際にどれほどに下落するのかに注目したい。 後場の日経平均はもみ合いが続きそうだ。積極的な売買が見られず、商いも盛り上がらないなか、引き続きアジア市況や時間外取引のナスダック100先物など、外部環境に応じた短期筋の動きに左右されやすいだろう。今晩の米国市場では1-3月国内総生産(GDP)改定値のほか、コストコやダラー・ゼネラル、ダラー・ツリーといった小売企業の決算発表が予定されている。先週、ウォルマートやターゲットといった小売大手の決算が相場の急落を招いたことを踏まえると、今晩の米国市場の動きには要注目だ。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/26 12:10 後場の投資戦略 テクノロジー株にはもう一段の調整の覚悟が必要か? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26713.08;-35.06TOPIX;1878.33;+0.07[後場の投資戦略] 本日の東京市場では、日経平均や東証株価指数(TOPIX)は底堅い動きとなっている。前日のナスダックの大幅反落については、写真・動画共有アプリの米スナップの急落が主因だが、当該情報は昨日の東京時間において伝わっており、既に織り込み済みだったため、影響は限定的だった。 一方、気になるのは本日も大幅に下落しているマザーズ指数や中小型グロース株の動きだ。マザーズ指数は前日も大きく下げていたが、それは、上述したようにスナップの決算を受けた急落を背景に、時間外取引のナスダック100先物が大きく下落していたからだ。しかし、本日はそうした米グロース株安を既に前日時点で織り込み済みにも関わらず、大きめの下落となっている。スナップの株価は前日43%も下落しており、確かに、時間外取引での下落率を大きく上回っているため、完全には織り込めていなかったとも言える。ただ、ナスダックの前日の下落率は2%台で、前日の東京時間におけるナスダック100先物の時間外取引における下落率と大して変わらない。 旧マザーズ銘柄ではメルカリ<4385>が連日で年初来安値を更新しているほか、JTOWER<4485>やBASE<4477>なども連日で大幅に下落。また、旧マザーズ以外の東証プライム銘柄でも、中小型グロース株の代表格であるSHIFT<3697>のほか、SREHD<2980>などが連日で急落している。三井ハイテックや時価総額の大きいリクルートHD<6098>といった主力株でも連日で弱い動きが見られるのも気掛かりだ。今の投資家のハイテク・グロース株に対する見方を表しているかのようだ。 米10年物の国債利回りや期待インフレ率が低下基調にあること、先週末からハト派転換を示唆し始めた米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの発言などを背景に、短期的にはグロース株のリバウンド局面が到来すると考えていたが、時期尚早だったようだ。 先週公表されたバンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した5月の機関投資家調査によると、投資家が保有する現金の比率は2001年9月以来の高水準に達したことが判明。また、年始からの株価下落が目立つテクノロジー株のアンダーウエートの度合いは2006年以降で最大になったという。これだけを見ると、グロース株の売りも目先一巡との考えが浮かぶ。 しかし、同調査によると、当該時点での機関投資家のポートフォリオに占める株式比率は平均63%だった。この比率は新型コロナウイルス危機が発生した2020年春(54%)や欧州債務危機の2011年秋(48%)、リーマンショックの2008年秋(39%)などに比べて依然高いことが指摘されており、買い方が完全に降伏する状況には至っていないとも言われている。 むろん、現在の世界経済については確かに景気減速や景気後退りへの懸念が強まっているとはいえ、コロナショックなど過去の大規模な危機が起きた当時とは全く状況が異なり、これらと並べて語るのには違和感があろう。しかし、1970年代のオイルショック以来経験したことがない程の高インフレや、過去に経験したことのない急速なペースで実施される量的緩和策の引き締めなどを同時に迎えつつあるという意味では、今もかなり厳しい状況であることには変わりはない。 そうした観点から考えれば、今の状況から、もう一段のきつい調整が株式市場を待っている可能性はあり、それが実際に起きるのだとすれば、今年最もパフォーマンスの悪いテクノロジー株がもう一段下げる可能性は否定できないだろう。赤字が継続している企業や黒字でもバリュエーションが依然として高すぎるようなハイパーグロース株については論外だが、筆者としては、上述したSHIFTやSREHDなどのような高クオリティかつヒストリカルで見てバリュエーション調整が相当に進んだものについては、長期目線では既に投資妙味が出てきたと考えている。ただ、1年以上も持っていられないような短期目線の投資家については、まだまだこうしたテクノロジー株には手を出すべきタイミングではないと言えそうだ。 午後の日経平均は前日終値を挟んだもみ合いが想定される。今晩の米国市場では5月3-4日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表されるほか、半導体大手エヌビディアの決算などが予定されており、注目イベントが多い。これらを見極めたいとの思惑から、積極的な売買は手控えられると考えられる。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/25 12:12 後場の投資戦略 明るい兆しを示唆する材料もちらほら・・・ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26863.33;-138.19TOPIX;1885.47;-9.10[後場の投資戦略] 本日の東京市場では時間外取引のナスダック100先物の動きを背景に、前日とは対照的な動きとなっている。前日にナスダック100先物の上昇を通じてある程度は織り込み済みだったとはいえ、昨日、米主要株価3指数が揃って大幅に反発し、金融大手の軒並み高のほか、アップルやキャタピラーといったハイテクから景気敏感の主力株でも強い動きが見られたことを踏まえると、本日の日経平均や東証株価指数(TOPIX)の反落は弱い動きという印象を拭えない。日経平均は27000円台乗せを定着させることができず、一進一退が続いている。 5月に入ってからの株式市場の下落で、米株市場では月末にかけて年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の買いが入るとの観測が出ている。しかし、5月に入ってからの東京市場は米株市場と比較して相対的に底堅く推移してきた分、月末にかけての需給要因主体でのリバウンドも、相対的に弱いものとなる可能性があろう。今日の東京市場の動きなどを見ていると、そうした印象がくすぶる。 物色動向についても昨日とは対照的だ。前日大幅な上昇が目立っていた中小型グロース株の多くが大きく売りに押されている一方、昨日冴えなかった資源関連株が今日は総じて強い。前日も今日も連日で強い動きを見せているのは海運株くらいだ。たった一日という短期間で物色動向に反転が見られるようでは、相場に参加できるのは日計り主体のデイトレーダーや短期目線の小規模ヘッジファンドくらいに限られてしまうだろう。基調が明確になるまでは、方向感に乏しい、高いボラティリティー(変動率)の相場展開が続くことを覚悟しておいた方がよさそうだ。 一方、前日の当欄「再びグロース株が脚光を浴びる時は来るか」で指摘した明るい兆しを補強する材料もまたいくつか散見された。前日述べた通りだが、米連邦準備制度理事会(FRB)によるかつてない程に積極的な金融引き締めが続くなか、まだまだ強気には転じにくいが、米10年物の国債利回りや期待インフレ率が足元で低下基調にあり、実質金利の推移も安定し始めてきたことで、株式相場の安定への期待も微かながら生まれてきていると思われる。 こうした中、先週末20日、タカ派で有名なセントルイス連銀のブラード総裁が、条件付きはとはいえ、2023年以降からの再緩和の可能性に言及したほか、前日には、アトランタ連銀のボスティック総裁が、6、7月に0.5ptずつ政策金利を引き上げた後、9月には利上げをいったん停止する可能性を示唆した。前日の繰り返しにはなるが、これまでタカ派化まっしぐらで再緩和などもっての外といった姿勢を見せていたFRB高官らから、こうしたハト派への転換を示唆するよう発言が出始めてきたことは注目に値する。 記録的なインフレが続くなかで早くもこうした発言が出てくることに対して、中央銀行への信頼度の低下などへと結びつけてネガティブに捉える向きもいるかもしれない。また、追加であと2、3カ月分の経済指標を確認しない限り、インフレや景気に対するコンセンサスも生まれないため、当面は高いボラティリティーが続くだろう。しかし、少なくとも今後の相場転換の一つの兆しとして、上述の高官発言のニュアンスの変化は頭の片隅に置いておくべきだろう。 また、上海市での都市封鎖(ロックダウン)解除方針が伝わったことで景気の底打ち期待が高まってきている中国では、国務院会合での決定事項によると、今後、中国国内企業を対象に約1400億元(約2兆7200億円)の追加減税措置が実施されることが判明しており、中国の景況感回復が一層意識されやすい状況となっている。 未だに底値到達の確度が高まらない弱気な相場が続いているが、上述のように、これまでの懸念材料を緩和してくれるような相場転換のきっかけとして捉えられる材料も出てきている。今はまだ焦って買い参戦する場面ではないが、少しずつ、そうした好機が近づいていると前向きに捉えていきたい。 アジア市況が軟調で、ナスダック100先物が下げ幅を広げてきていることもあり、後場の日経平均も冴えない出足を強いられそうだ。一方、最近は前場に弱くても、午後に持ち直す傾向が見られている。日本の景況感の相対的な堅調さから、消去法的ながらも海外中長期勢の一部がカントリーアロケーション(国別の資産配分)の見直しを打診的に進めているとの指摘が一部で聞かれており、欧州・アジア圏のマクロ系投資家の発注が後場に重なっているのではとの分析がある。こうした見方もあるなか、後場の日経平均の底堅さに期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/24 12:10 後場の投資戦略 再びグロース株が脚光を浴びる時は来るか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26872.01;+132.98TOPIX;1888.67;+11.30[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は、一時1%を超える上昇率で推移していたナスダック100先物に支えられながら、27000円を回復する場面があった。一方、先週18日に続き、27000円に乗せた後はすぐに再び同水準を割り込んでおり、戻り待ちの売りが依然として根強い印象。25日、75日移動平均線上での動きにはなっているが、前引けにかけて上げ幅を縮め、陰線を形成しているあたり、押し目買いの動きにも力強さが感じられない。 物色動向としては、鉱業や商社株、鉄鋼のほか、上値追いが続いていた三菱重工やIHIといった重厚長大産業の銘柄などで軟調なものが多い一方、ハイテク・グロース(成長)株は全体的に上昇している銘柄が多く、リバーサル(株価の反転)的な動きが確認されている。また、全体的に煮詰まり感が強いなか、値動きの軽い中小型株が物色されているようで、マザーズ指数が他の指数対比で強い動きとなっている。 先週末20日、米10年債利回りは2.78%(-0.06pt)と、およそ1カ月ぶりに2.7%台まで低下。5月6日の3.14%からは大きく水準を切り下げてきた。また、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も同日、2.55%(-0.04pt)とおよそ3カ月ぶりの水準にまで低下、4月21日の3.02%からの低下幅は著しい。従来はインフレ高進を背景とした「期待インフレ率上昇・金利急伸」に対する懸念が強かったことを踏まえれば、これだけ金利と期待インフレ率が低下しているのは株式市場にとっては好都合かと思われるが、実際はそうなっていない。 先週から市場関係者の間でも話題になっているが、相場の関心事は金利を中心とした金融政策の動向から、景気後退懸念など実体経済への方に移ってきているようだ。記録的なインフレがもたらす実体経済への影響が警戒されるなか、株式市場は景気後退懸念を映した金利低下を好感できない様子。同時に連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念もくすぶっていれば、こうした市場の反応も致し方のないことだろう。 一方、微かな希望の光も一部で見えている。20日、タカ派で有名なセントルイス連銀のブラード総裁は、年末までに政策金利を3.5%にすべきとの積極的な利上げを引き続き主張した一方、そうした利上げが奏功すれば、インフレを鈍化させ、2023年ないし24年に利下げに動くこともあり得るとコメントした。 インフレ指標が記録的な高止まりを続けているなか、こうした発言を今の時点では素直にポジティブな材料として捉えることは難しいだろう。しかし、これまでタカ派化への進展まっしぐらで、再緩和への言及などもっての外といった姿勢を見せていたFRB高官の一人から、こうした発言が聞かれるのは大きな材料だと考えられる。 6月から始まる、かつてないペースで進められる量的引き締め(QT)の相場への影響なども分からないなか、まだまだ強気には転じにくいが、期待インフレ率と米長期金利が明確に低下傾向を示し、景気後退懸念も強まるなか、FRB高官から“再緩和”への言及も聞かれたことを考慮すると、この先、再び売り込まれてきたグロース株が注目される可能性がある。今年4月、コロナショック後に初めてプラスに転じた米10年物実質金利が、足元では0.25%前後での推移で落ち着きを見せてきていることも安心感を誘う。 記録的なインフレ高止まりと積極的な金融引き締めにより、長らく続いてきたグロース株優位の相場局面は大きな転換点を迎えたとも言われており、上述のような筆者の主張は時期尚早な面は否めないだろう。ただ、足元では独り勝ちの様相を呈してきたコモディティ関連からも資金が流出し始めているとの指摘も聞かれている。買ったまま(空売りしたまま)放っておけば利益が出るような簡単でない相場状況であるからこそ、コモディティ関連からグロース株に物色が移る局面が短期的にはあったとしても不思議ではないだろう。 午後の日経平均はもみ合いが続きそうだ。米株市場では急落後の反発力が鈍い動きが続いており、まだまだ相場は弱気な状態にある。時間外取引の米株価指数先物は上昇しているが、今晩の米株市場の動きは蓋を開けてみないと分からず、模様眺めムードも漂いやすい。アジア市況も軟調ななか、午後の東京市場では積極的な買いは見られにくいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/23 12:22 後場の投資戦略 未だ「リセッションに半身の構え」 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26712.36;+309.52TOPIX;1873.54;+13.46[後場の投資戦略] 前日に大きく下落した日経平均だが、本日は反発して300円あまり上昇して前場を折り返した。時間外取引での米株先物、それに上海・香港株の上昇が支援材料となっている。日経平均の日足チャートを見ると、ひとまず26600~26700円あたりに位置する5日移動平均線や25日移動平均線水準まで戻す動き。前引けの日経平均が+1.17%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.72%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆5000億円弱で、前日までとおおむね同水準だ。 個別・業種別では、非鉄金属を中心とした商品市況の上昇を受けて関連セクターの堅調ぶりが目立つ。また、値がさグロース(成長)株も米金利低下が後押ししてかまずまずしっかり。相対的に内需・ディフェンシブセクターはさえないが、燃料高への懸念がくすぶる電気・ガス業を除けば売りがかさんでいるわけでもない。 新興株ではマザーズ指数が+1.50%と反発。米市場では金利低下によりグロース色の強い新興株の一角が買われており、本日の東証グロース市場でもこうした流れを引き継いだ格好だ。ただ、前場中ごろには前日終値近辺まで失速する場面があり、強いとばかりも言い切れない動きとなっている。売買代金上位を見ると、メルカリ<4385>やHENNGE<4475>が上昇する一方、BASE<4477>やJTOWER<4485>が下落するなどまちまちという印象。 さて、経済指標の悪化や企業業績の悪化が相次ぐ米国だが、金融大手の先行きに対する見方はなお割れている。一部報道によれば、ゴールドマン・サックスやJPモルガンのストラテジストらは「リセッション(景気後退)懸念は行き過ぎ」と指摘。もっとも直近、そのゴールドマンのロイド・ブランクファイン上級会長がリセッションに陥るリスクは「極めて高い」などと発言しているし、モルガン・スタンレーはS&P500指数の下げが再開するとの見通しを示している。また、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のファンドマネージャー調査によれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)への懸念が広がり、機関投資家の現金比率が2001年9月以来の高水準に達しているという。 BofAの調査結果を「調整一巡は近い」と受け止める市場関係者の声が多く聞かれる。しかし、筆者はむしろBofA自身が指摘しているように、市場はまだ「完全降伏」しておらず、最終的な底は打っていないとの見方が妥当だと考えている。 日本株を巡る動向を見てみたい。日本取引所グループが19日発表した5月第2週(9~13日)の投資主体別売買動向によれば、外国人投資家は現物株を3405億円、日経平均先物を2140億円売り越した。この週の日経平均の騰落率は-2.13%で、12日の取引時間中には25688.11円まで下落する場面があったが、これらは海外勢による現物株や日経平均先物の売りが主導したことがわかる。現物株については前の週までの6週間で1兆6000億円あまり買い越していたため、反動が出やすいかったと考えられるだろう。日経平均先物は短期筋中心の売りと考えられる。 一方、実需筋中心のTOPIX先物については968億円の売り越しにとどまった。4月以降を見ても、散発的な売りこそ出ているものの大きく膨らんでいるわけではないと言える。昨年来、TOPIX先物の売り越しが積み上がっているため、「更なる売りの余地は乏しい」との見方もある。しかし、海外実需筋はなお世界経済の先行きを睨んで様子見姿勢であるとも考えられるだろう。 また、13日申込み時点の市場全体の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は3兆0963億円となっている。昨年11月に3.7兆円規模まで膨らんだのをピークに、世界的な金融引き締めによるレバレッジ縮小の流れから、日本株も信用買い残の減少が続いていた。しかし、4月以降は3兆円前後で推移しており、レバレッジ縮小の動きはいったん足踏みしている格好だ。 これらから、市場は今後のリセッションや相場急落に対し未だ「半身の構え」であることが透けて見える。本日、景気敏感色の強い海運株などが反発しているのも同様に捉えられるだろう。それだけに、このところ米経済指標や企業業績の悪化が見られるのは気掛かり。懸念が確信に変わる場面では「あく抜け」でなく「失望」の動きが出てくる可能性があるとみておいた方がよいだろう。(小林大純) <AK> 2022/05/20 12:20 後場の投資戦略 「インフレ下の消費」に揺れる [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26238.40;-672.80TOPIX;1846.39;-38.30[後場の投資戦略] 前日の米株が急落した流れを引き継ぎ、本日の日経平均は600円を超える下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、26000円台後半に集中している5日~75日の各移動平均線を一気に下抜け。前日まで4日続伸するなどまずまずしっかりした動きだったが、短期トレンドの悪化も意識されざるを得ないか。前引けの日経平均が-2.50%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-2.03%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆5000億円あまりとまずまず多いが、値幅の割には膨らんでいるように見えない。 個別では東証プライム市場銘柄の9割近くが下落しているが、9日に回転ずし「スシロー」の値上げを発表したF&LCが下落率上位にランクインしているのは注目される。これまで期待が高かっただけに年初来安値更新で損失覚悟の手仕舞い売りが出やすいのだろうが、国内消費の鈍化懸念を示しているようだ。また、業種別では海運業の下落が目立って大きく、投資家のセンチメント悪化と世界経済の先行き懸念を感じさせる。 新興株でもマザーズ指数が-2.48%と大幅反落。既に水準がかなり低いため、日経平均などと比べより大きな下落を強いられているわけではないが、日米株式相場の急落を受けて積極的に買いを入れられる状況にもないだろう。富山大学などとの共同研究を発表したペルセウス<4882>が値を飛ばしているものの、物色は広がりを欠く。メルカリ<4385>が取引時間中の年初来安値を更新するなど、主力IT株は揃って軟調だ。 さて、米株は「インフレ下での消費動向」に大きく揺れた。まず17日発表の4月小売売上高が前月比+0.9%、変動の大きい自動車・同部品を除くベースでも同+0.6%と市場予想(+0.4%)を上回り、「インフレ下でも消費は堅調」と受け止める向きが多かった。ただ、米ブルームバーグが小売売上高はインフレ調整しておらず、「消費者物価高騰の結果である可能性もある」などと指摘していたのは注目すべきだろう。結局、ウォルマートやターゲットといった小売り大手の大幅な業績悪化を受け、消費鈍化が懸念されざるを得なくなった。著名エコノミストのモハメド・エラリアン氏は一時的なスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)が避けられず、「市場は深刻な成長低迷のリスクにまだ注意を払っていない」などと警鐘を鳴らしたという。 また、米金融大手ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEO(最高経営責任者)は「極度に懲罰的な」インフレで経済への課税が生じており、「リセッション(景気後退)の可能性はある」との見方を示したという。 こうした有力者の懸念の声が影響しているのだろうが、下値でヘッジ(あるいは投機)目的のプットオプション(売る権利)の利益確定売りが一定程度出てきているものの、それ以上に新規のプット買いが入っているとの観測が聞かれる。実際、低下傾向にあった米株の変動性指数(VIX)は18日、30.96(+4.86)と反騰しており、ボラティリティー(株価変動率)の高まりを織り込む動きが再び強まっているようだ。ここまで、一昨日の当欄「それでもインフレ・市場急変懸念は拭えない」での予想に沿った動きになっていると考えざるを得ない。 前引けのTOPIX下落率が2%を超え、後場は26営業日ぶり(4月7日以来)となる日銀の上場投資信託(ETF)買い実施観測が相場の下支えとなる可能性もあるだろう。しかし、市場の不安定感から積極的に戻りに乗ろうとする動きは限られそうだ。また、今晩の米国では5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の中古住宅販売件数などが発表される予定で、引き続きインフレ下での経済情勢に注意を払う必要があるだろう。(小林大純) <AK> 2022/05/19 12:18 後場の投資戦略 景気後退と金融引き締め巡る懸念はくすぶる [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26851.15;+191.40TOPIX;1880.29;+13.58[後場の投資戦略] 朝方400円近くまで上げ幅を広げ、節目の27000円を一時回復した日経平均は早々に伸び悩んで同水準をすぐにまた割り込んだ。日足チャートでは長い上ヒゲを付け、下向きの75日移動平均線を明確に超えられず、戻り待ちの売りが根強い様子が窺える。実際、ここ3カ月の累積売買高をみると、27000円処に最も商いが集中しており、この水準を回復し定着するには、戻り待ちの売りを我慢強くこなしていく必要がありそうだ。 また、物色動向も気がかり。中国上海でのロックダウンが解除される見通しとなったほか、前日に発表された米国4月の小売売上高と鉱工業生産はともに堅調な結果となった。しかし、本日の東京市場ではファナックやコマツ<6301>など一部の景気敏感株で冴えないものが散見される。商社関連株も冴えないものが多い。また、前日の米株市場でナスダックが大幅に反発したにもかかわらず、中小型グロース(成長)株の筆頭格ともいえるSHIFT<3697>は2%近くと大きく下落している。物色動向がちぐはぐな中、東証プライム値上がり率上位には、年初来安値圏にある銘柄が多く並んでおり、自律反発狙いの買いくらいしか入っていないかのようだ。 米主要株価指数は5月12日を安値にリバウンドしてきているものの、まだまだ自律反発の域を出ておらず、弱気相場下での短期的な反発(ベアマーケットラリー)にすぎないとの見方も多いなか、依然として様子見ムードを貫いている投資家が多い様子。米VIX指数が13日以降、危険水域とされる30を割り込み、その後も低下基調にあることで、行き過ぎた弱気のセンチメントの巻き戻しが少しは進んでいるのだろうが、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)は1バレル=112.40ドル(-1.80ドル)と高止まりしており、インフレ懸念もくすぶるなか、買いを積極的に入れる向きは少ないようだ。 景気の先行きについても、米小売売上高などは良好だったが、先週末に発表された5月のミシガン大学消費者マインド指数は現況指数、期待指数がともに悪化し、2011年以来の低水準だった。また、今週初に発表された5月NY連銀景気指数は予想外のマイナス転換で大幅な悪化。そして、前日に発表された5月NAHB住宅市場指数は2020年4月以来の低下幅で、20年6月以来の低水準まで落ち込んだ。どうやら実体ベースではまだ落ち込みは確認されていないようだが、景況感や消費者心理といったセンチメントベースでは相当に悪化が進んでいる様子。こうしたセンチメントの方が先行性は高いと推察され、今後、まだ堅調を保っている実体ベースの指標が悪化してくる可能性はあろう。本日の東京市場で景気敏感株が思いのほか冴えないのはこうした背景を見透かした上でのことかもしれない。 前日、ウォールストリート・ジャーナル主催のイベントで、FRBのパウエル議長は6、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)でも5月と同じ0.5ptの利上げが適切になるだろうと従来通りの見解を強調。一方、明確なインフレ圧力沈静化のために政策金利を、中立金利を超える水準にまで引き上げることに「躊躇しない」とし、インフレ沈静化の兆候が見られない場合には、「もっと積極的な動きを検討しなければならないだろう」とも発言。改めてタカ派色も色濃く感じられた。 前回5月3-4日のFOMC以降の高官発言で、6、7月会合までの利上げ幅についてはコンセンサスがかなり形成されつつある。しかし、昨日のパウエル議長の発言を聞く限り、今後の物価指標の高止まり次第では、それ以降の会合でも0.5ptの大幅利上げが続く可能性が想定され、すでにかなり織り込みが進んでいる利上げペースについても、もう一段階、上方修正を迫られる場面が出てきそうだ。この点は、年央までの物価指標を確認するまでは議論が分かれるところであり、今後も、ボラタイル(変動率の激しい)な相場が続こう。 ただ、今後2会合の利上げ幅や、6月からの量的引き締め(QT)のペースについてはすでにほとんど明確になっているため、目先はボラタイルながらも足元たたき売られてきたハイテク・グロース株に短期的には妙味がありそうだ。 一方、半導体関連株については本日、東エレクなど前工程装置関連の銘柄が総じて堅調な一方、四半期ベースで受注鈍化が確認されているTOWA<6315>など後工程装置の銘柄では軟調なものが散見される。前倒し発注の反動減など負の影響が表れていると推察され、半導体関連も一緒くたに何もかもが好調なわけではない。セクター間での物色動向の違いも大事だが、セクター内での銘柄選別も重要な局面と言えそうだ。 後場の日経平均は前引け水準から動意薄でもみ合いとなりそうだ。材料難のなか、時間外取引のナスダック100先物は小動きで材料視しにくい。一方、アジア市況がやや下げ幅を広げてきていることもあり、弱含む可能性に注意したい。全体的に方向感が掴みにくいなか、下半期の業績上振れの可能性や、前期に続き10%を超える配当利回りが好材料視されやすい郵船<9101>など海運株の買いに妙味がありそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/18 12:16 後場の投資戦略 「それでもインフレ・市場急変懸念は拭えない」 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26601.03;+53.98TOPIX;1865.88;+2.62[後場の投資戦略] 本日の日経平均は前日終値を挟んで上下100円あまりのレンジでもみ合い、結局小高く前場を折り返した。日足チャートを見ると、5日移動平均線が上向きに転じ値動きもまずまず悪くない印象を受けるが、26700円台に位置する25日移動平均線手前で伸び悩み。個別・業種別では米株と同様に原油を中心とした市況関連株が堅調。一方、ディフェンシブ色の強い食料品はアサヒの決算を受けて原材料高への警戒感が強まっているとみられ、長期の年限の米金利低下により銀行株もさえない。東証プライム市場の下落率上位には成長期待の高い中小型株が目立つ印象だ。前引けの日経平均が+0.20%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.14%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆4000億円あまりとなっている。 新興株ではマザーズ指数が-2.20%と3日ぶり大幅反落。日足チャートを見ると、5日移動平均線を一時的に上回っても戻りに弾みが付かず、値動き改善への期待が持ちづらいか。好決算の小型株が買われているとはいえマザーズ指数の押し上げには力不足で、中小型グロース(成長)株安の流れからメルカリ<4385>などの主力IT株は揃って軟調だ。 さて、16日の米市場では10年物国債利回りが2.88%(-0.04pt)に低下。5月上旬に一時3%台に乗せてから足踏みが続いている。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.68%(-0.01pt)。こちらも4月下旬に一時3%台まで上昇してから低下に転じている。11日発表の4月消費者物価指数(CPI)などを受け、インフレピークアウトへの期待が広がっているとの見方もある。 もっとも、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)は1バレル=114.20ドル(+3.71ドル)まで再び上昇してきた。供給増加が緩慢ななかで中国の経済活動再開などにより需要が回復するとみられ、需給ひっ迫が意識されている。米ハイテク株安もインフレ懸念の根強さを感じさせる動きだろう。このところ米著名投資家や識者らが相次ぎインフレを睨んだ資産配分に言及している点にも触れておきたい。 今回の決算発表シーズンでは、アサヒに限らず、日本を代表する企業であるトヨタ自などでコスト高の逆風が強く意識された。日経平均の予想EPS(1株当たり利益、日本経済新聞社が公表するPERから逆算)は4月15日時点の2085.70円に対し、5月16日時点では2009.62円に減少している。PER13.2倍、PBR1.15倍となっているが、こうしたEPS推移を見る限りバリュエーション向上への期待を持ちにくいだろう。 16日発表の5月のニューヨーク連銀製造業景況指数が-11.6(予想+16.5、前月+24.6)となるなど、このところ世界的に経済指標の悪化も目立つ。相対的に日本株が優位になるとの期待の声もあるが、「世界の景気敏感株」としての位置付けが強いだけに、積極的に持ち高を増やそうとするグローバル投資家が出てくるか見通しづらい。TOPIX先物について、日々の取引手口情報や日本取引所グループの公表する投資主体別売買動向を見ても買い越しの動きは限定的だ。 再び米市場に目を向けると、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が27.47(-1.40)とじりじり低下。下方ヘッジ(あるいは投機)目的のプットオプション(売る権利)の持ち高解消の動きが窺えるにもかかわらず、米株式相場の上値が重いのは気掛かりだ。買い持ち(ロング)投資家の戻り売り圧力が強いとみられる。ベア・マーケット・ラリー(弱気相場のなかでの株高)での戻りは限られ、再び売り持ち(ショート)が積み上がる場面では下値不安が高まる可能性がある。 その他、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が0.5ptペースでの利上げに再三言及している点に安心感を覚える向きもあるようだが、FRBが9日に公表した「金融安定性評価」では株式等のバリュエーションが依然として高いなどと評価されているようだ。かねて当欄で指摘しているとおり「FRBは市場にフレンドリーではない」と改めて認識すべきだし、仮にFRBが金融引き締めを緩めるようならインフレ懸念は一段と強まるだろう。同報告書で流動性の悪化により金融市場の急変に警鐘を鳴らしているように、日本株もなお不安定な展開が続くとみておいた方がよさそうだ。(小林大純) <AK> 2022/05/17 12:19 後場の投資戦略 インフレトレードのリバーサル継続か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26492.29;+64.64TOPIX;1861.64;-2.56[後場の投資戦略] 日経平均は朝方高く始まった後は伸び悩んで急失速、25日、75日移動平均線に上値を抑えられる格好となっている。東証株価指数(TOPIX)は寄り付き直後から失速すると前引け間際にマイナスに転換し、やや大きめの陰線を形成。先週末に急反発していたことや時間外取引のナスダック100先物の上昇を背景に13日の米株高をある程度織り込んでいたとはいえ、ナスダックが4%近く上昇していたことを踏まえると、今日の東京市場の動きはやや弱い印象を受ける。 対して先週末に+4.5%と急反発したマザーズ指数は+1%半ばと相対的に強い。東証プライム市場でも、先週末に急伸していたソフトバンクGが続伸しているあたり、直近の下落がきつかったハイテク・グロース株には買いが入っているようだ。一方、商社などは先週から軟調な動きが目立ち始めてきている。先週に米国で一連の物価指標の発表を終え、インフレを巡る話題がやや落ち着きを見せるなか、これまでの“コモディティ買い・グロース株売り”といったインフレを見込んだトレードのリバーサル(株価の反転)的な動きが出てきていると考えられる。 気になるところでは、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストが今年と来年の米国経済の成長率予想を引き下げた。連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めを巡る金融市場の混乱を反映させたようで、2022年の成長率見通しを従来の2.6%から2.4%に小幅に下方修正した一方、23年については従来の2.2%から1.6%へと大幅に引き下げた。 米10年債利回りが5月6日の3.14%をピークに足元、3%を下回る推移が続いていることもあり、市場では景気後退に対する懸念を強めるとともに、インフレのピークアウトを意識した動きが根強い様子。結局は、ピークアウトを確かめるには最低でもこの先2、3カ月分の指標は確認する必要があり、それまでは期待と懸念の交錯が続き、物色も循環的な様相の域を出ないだろう。それでも、上述した動きを踏まえる限り、目先的には“コモディティ買い・グロース株売り”のインフレトレードのリバーサルが続くと想定され、これまでたたき売られてきた中小型グロース株などには押し目買い妙味があると考えられる。 今週17日には、パウエルFRB議長がウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催会議で講演を行う予定だ。パウエル議長は12日、今後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptずつ利上げするのが適切となる公算が大きいと、5月FOMC後の記者会見時と同様の見解を繰り返した。17日のイベントでも再度こうした見通しを強調すれば、政策金利の引き上げペースがより明確になることで、引き締めを巡る懸念も和らぎ、ハイテク・グロース株のリバウンド機運が高まると期待している。 午後の日経平均は方向感に欠ける展開が続きそうだ。米国市場では指数の振れ幅が激しい展開が続いており、東京市場でも米国市場を睨みながらの動きとならざるを得ない。そうしたなか、時間外取引の米株価指数先物の動きに左右される展開が続きそうだ。ただ、中国での市場予想以上に大きく悪化した経済指標を受けてアジア市況が軟化してきていることもあり、午後はマイナス転換となる可能性があろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/16 12:19 後場の投資戦略 株式市場は債券市場を後追い? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26421.84;+673.12TOPIX;1864.61;+35.43[後場の投資戦略] 前日に発表された米4月卸売物価指数(PPI)は、総合の伸びが前年比で予想を上回った一方、変動の激しい品目を除いたコアでは予想を下回り、インフレ懸念とインフレピークアウト期待のどちらにも軍配が上がらない結果となった。11日に発表された米4月消費者物価指数(CPI)に続き、インフレ懸念はくすぶる内容だったという印象だ。 しかし一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は12日、2.59%と前日比-0.11ptと大幅に低下。4月21日に付けた最高値3.02%から大きく低下しており、明確な低下トレンドを描いている。 前日、FRBのパウエル議長は公共ラジオ番組で、今後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.5ptずつ利上げするのが適切となる公算が大きいと、5月FOMC後の記者会見時と同様の見解をあらためて示した。株式市場でインフレピークアウト期待が後退している中でのこうした発言は、市場の中央銀行に対する不信感を強めかねないとも思われたが、債券市場では、米10年物BEIと並んで米10年債利回りも2.8%台へと低下するなど、低下基調が続いており、債券市場ではインフレ加速を見込んだトレードの巻き戻しが進められているもよう。 これまでの株式市場を振り返ってみると、3月中旬からの強烈なリバウンド相場時には、債券市場で織り込みが加速するインフレ懸念を無視する形で上昇し続けていたため、後になってしっぺ返しを食らうのではないかとの懸念があったが、4月以降は実際そうなってしまった。今回は、当時とは反対に、インフレ懸念が強まるなかで米主要株価指数が年初来安値を更新し続ける一方、債券市場ではそれまでのインフレ懸念の後退を表すかのような動きが続いている。 今回も株式市場が債券市場を後追いするかのような形が繰り返されるのだとすれば、今後、主要株価指数はリバウンド局面に入る可能性があろう。日本については日経平均やTOPIXのPERはすでにヒトリカルで見て十分に安値圏にあるため言わずもがなだが、米国でもS&P500指数などのPERは大分バリュエーション調整が進んできた。 むろん、今後FRBがバランスシートを縮小するなか、コロナショック前に戻したに過ぎない米株市場のバリュエーションにはまだ訂正余地が残ると思われる。ただ、米長期金利がこのまま安定した基調を保つのであれば、米国でもバリュエーション調整が一旦終わっても不思議ではない。米国では、ヘッジファンドの株式の持ち高比率はすでにかなり低く、一方で空売り比率がかなり高い水準にあるという調査もあり、需給的にも目先はリバウンドが来てもおかしくはないだろう。 上値では戻り待ちの売りをこなしていく必要があるだろうが、少なくとも短期的には下値余地は乏しくなっていると考えられる。たたき売られている中小型グロース株などは、現物で長期目線であればそろそろ打診買いを入れてみても面白いかもしれない。 後場の日経平均は堅調もみ合いを予想する。前場は買い戻しの流れが途絶えることなく、一本調子での上昇となったが、後場には買い戻しが一巡して伸び悩む可能性があろう。米主要株価指数が年初来安値圏を脱していないなか、円安進行も一服していることを踏まえると、東京市場だけがこのまま上昇し続けることは考えにくい。後場の追随買いには慎重になった方がよいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/13 12:14 後場の投資戦略 インフレピークアウトは期待していいのか? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25992.68;-220.96TOPIX;1846.05;-5.10[後場の投資戦略] 米ハイテク株の急落を受けて日経平均は一時500円を超える下落を見せた。米CPIの上振れを受け、3月CPIの発表後から高まっていたインフレピークアウトの期待が削がれたことが要因だ。 注目された米4月CPIは総合が前年比+8.3%と予想(+8.1%)を上回り、変動の激しい食品・エネルギーなどを除いたコアでも同+6.2%と予想(+6.0%)を超過。前月比でも総合は+0.3%、コアは+0.6%とそれぞれ予想(+0.2%、+0.4%)を上回った。ただ、前年比の伸びは総合もコアもそれぞれ前月の伸び(+8.5%、+6.5%)は下回った。 前年比の伸びが前月を下回るのは8カ月ぶりであり、そうした意味では厳密にはインフレピークアウト期待はまだ残っているのかもしれない。しかし、もはやそうした期待にすがるのには危うさを伴いそうだ。 今回のCPIの内訳をみると、今までインフレをけん引してきたガソリンや中古車の価格が前月比で低下するなどモノ・財に関する価格にピークアウト感が見られる一方、電気や天然ガスを含むエネルギーサービス価格、ホテル滞在費用、航空運賃などサービス分野での価格上昇が目立った。特に、下方硬直性を有し、CPIでの構成比率が高い住居費は3カ月連続で前月比+0.5%と高止まり、帰属家賃については2006年以来の伸びになった。 連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ目標は個人消費支出(PCE)のコアで+2.0%だが、改めて足元のCPI総合の+6.2%という伸び率は大きすぎる。そして、注目すべきはコアでの前月比が予想を大きく上回ったことだ。今までは原油などコモディティ価格がピークアウトし、世界的な供給網の混乱も解消されれば、インフレはピークアウトするとの考え方にある程度の合理性があった。 しかし、上述したように、今回のCPIの結果から窺えるのは、モノ・財ではなくサービス分野でのインフレ加速だ。先月発表された米4月雇用統計での低い失業率や低下する労働参加率などの結果から、すでに労働市場の逼迫による賃金インフレの長期化が懸念されているが、サービス分野でのインフレ加速が止まらなければ、「価格上昇→消費者による賃上げ圧力増大→企業のコスト転嫁による更なる価格上昇」といったインフレスパイラルが起きかねない。 CPIが発表された11日、アトランタ連銀のボスティック総裁は、インフレが高止まりした場合、経済成長を抑制する水準にまで政策金利を引き上げることを支持する考えを示した。直近の高官発言で、今後3会合での0.5ptの利上げはほぼ100%織り込み済みだ。一方、0.75ptの利上げについては、10日のクリーブランド連銀メスター総裁の発言や前日のボスティック総裁の発言を受けて、足元で再び織り込む動きが出てきているが、確率的にはまだほとんど織り込めていない。今後、高官発言などを通して再び0.75ptの利上げについての織り込みが一段と進むとなれば、金融引き締め懸念によるハイテク・グロース株の下落はまだ続く可能性があろう。 午後も日経平均は26000円を挟んだ一進一退となりそうだ。アジア市況がまちまちな一方、時間外取引のナスダック100先物などが堅調に推移していることは安心感を誘うが、米4月CPI確認後のインフレピークアウト期待の高まり、ハイテク・グロース株の買い戻し進展といったシナリオはあっさりと消失してしまった。当面、積極的に株式を買う理由が見つからず、買い手不在で短期筋の売買が中心ななか、日経平均の戻りは鈍いと見ておかざるを得ないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/12 12:10 後場の投資戦略 米ハイテク株高で安心感も実質金利上昇は気がかり [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26249.83;+82.73TOPIX;1857.35;-5.03[後場の投資戦略] 前日の米国市場で主要株価指数はまちまちだったが、ナスダックやSOXが反発したことが売り一巡感を意識させ、目先の安心感に繋がっている様子。一方、今晩に米4月CPIの発表を控えていることもあり、東京市場ではそこまで積極的な動きは窺えない。むしろ、MSOL<7033>やギフティ<4449>、ラクスル<4384>などの中小型グロース株で、本日も下落している銘柄が多いことが気がかり。マザーズ指数も下落しており、グロース市場銘柄ではBASE<4477>、メドレー<4480>などが下落している。 10日、米10年債利回りは2.99%(前日比-0.04pt)へと低下し、5月4日以来、再び3%を割り込んだ。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.65%(同-0.10pt)と大きく低下。先週末6日時点では2.86ptであったため、2日間で0.21ptと大幅に低下した格好だ。 今週に入ってから、アトランタ連銀のボスティック総裁やニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁など、複数の連邦準備制度理事会(FRB)高官から今後2~3会合での0.5ptの利上げを支持する発言が出たことや、上述したようにメスター総裁が0.75ptの利上げも排除しない姿勢を見せたことが、こうした期待インフレ率の低下の背景にあると考えられる。5月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエル議長は、今後2会合での0.5ptの利上げに前向きな姿勢を見せた一方、0.75ptの利上げには否定的な見解を示していた。これを受けて、市場ではFRBがインフレ対応に後手に回ることで、後々に大幅な利上げを強いられるのではないかという懸念が生じていた。 ただ、直近のFRB高官らの発言で、改めてFRBのインフレファイターとしての姿勢が確認されたため、期待インフレ率の低下に繋がったのだろう。FOMC後、米元財務長官のサマーズ氏やドイツの金融会社アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏など、著名な有識者らがこぞって、パウエル議長が0.75ptの利上げに否定的な見解を示したことについて「無責任」との厳しい評価を下していた。また、早い段階で選択肢を狭めてしまうのはFRBにとっても後々良くないと思われていたため、今回の一連の高官発言でFRBの信頼が回復したと思われることは一先ず安心感に繋がろう。 一方、米国の名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は、10年物で10日に0.35%まで上昇し、新型コロナウイルス・パンデミック後における高値を更新してきた。実質金利がプラス幅を広げてきていることは、より長い将来収益に基づいて株価が決まるグロース株にとってはネガティブだ。今日の東京市場で中小型グロース株が全般冴えないのは、こうした背景が重しになっているのかもしれない。 今晩の米国市場では注目の米4月CPIが発表される。市場予想は総合が前年同月比+8.1%、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアが+6.0%上昇と、いずれも3月(8.5%上昇、6.5%上昇)に比べて減速する見通し。一部のエコノミストは3月CPIでインフレピークアウトの兆候が表れたと指摘しており、モノに対する過剰な需要が弱まりつつあるなか、コアCPIは年内に一段と鈍化すると予想している。 4月CPIでこうした見方が裏付けられることになれば、ヘッジファンドのハイテク・グロース株の持ち高比率が歴史的にかなり低いところまで低下し、空売り比率も高まっている米国市場を中心に、マーケットは反転のきっかけを掴むことになるかもしれない。ただ、米実質金利がじわり上昇してきていることは気がかりで、CPI後に短期的にあく抜け感が強まっても、実質金利の動向には常に注意を払っておいた方がよさそうだ。 後場の日経平均はもみ合いとなりそうだ。時間外取引のナスダック100先物の上昇やアジア市況の上昇は支援要因になるものの、今晩の米CPIを前に様子見姿勢が強まりやすい。また、取引時間中に決算発表を予定しているトヨタ自<7203>の結果を見極めたいとの思惑もある。トヨタ自の決算と株価反応がポジティブなものとなれば、買い気が強まることも想定されるが、やはり本格的な動きは今晩のCPIを終えてからとなるだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/11 12:08 後場の投資戦略 止まらない米株安受け一時1200円安も短期リバウンド条件が揃い始めた [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26074.53;-244.81TOPIX;1860.71;-17.68[後場の投資戦略] 前日の米国市場は全面安商状。幅広い年限で債券利回りが低下するなかではあったが、ハイテク・グロース株の売りは止まらず、ナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は再び急落した。これまで相場の下支え役だった石油や建設機械といったコモディティ・景気敏感株も、景気後退懸念が強まるなか大きく売り込まれた。ビットコイン(BTC)など暗号資産(仮想通貨)の価格も足元で厳しい下落トレンドが続いており、今朝には一時1BTC=30000ドルを割り込む場面もあった。ほぼ全ての資産クラスが大幅に下落しており、完全に投げ売りの状態だ。 一方で、こうしたやや乱暴とも言える動きが出てきたことは、短期的にはそろそろ底打ちを期待させてくれる。実際、昨日の米株市場の急落においては、出来高が直近に比してそれなりに大きめの水準まで膨らんでいた。S&P500指数への組み入れ銘柄を対象とした計算では、3月18日以来の出来高水準だった。見境のない投げ売りや出来高を伴った急落により、需給整理が進んだともいえる。 本日の前引け時点での東証プライム市場の売買代金は1兆6000億円超とまずまず大きく膨らんでいる。出来高と値幅を大きく伴った日が先週末6日から3日続いていることで、東京市場でも需給整理が少しは進んだだろう。また、朝方の一時急落により、日経平均は3月16日の高値25824.94円を上端としたマド埋めを完了。昨日からの下落幅も考慮すると、テクニカル的にも値幅的にも短期的には底打ち感が台頭してくるタイミングが近づいていると言えそうだ。明日11日に発表予定の米4月消費者物価指数(CPI)で、3月CPIに続きインフレピークアウトが確認できれば、買い戻しが強まる展開が期待されよう。 一方、ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏らストラテジストチームは、前日、米国株の見通しはあまり明るくないと顧客向けリポートで指摘。「インフレの軌道が明確になるまで、値動きが大きい展開は続く」とし、「金融状況の引き締まりや市場の流動性不足を踏まえれば、3月下旬と同様の規模の短期的な上げ相場が到来すると論じるのは難しい」とコメントしたという。 市場関係者の間でも、相場の先行きについては依然として大きく強気派と弱気派に分かれており、相場の見方がある程度収れんしてこない限りは、まだまだボラティリティー(変動率)の高い相場環境が続かざるを得ないだろう。11日の米4月CPIでインフレピークアウトを確認できれば、インフレ対応で後手に回ったのではないかとの見方から疑念が強まっているFRBに対する信任が少しでも回復する可能性がある。弱気派の過度な悲観も後退し、ボラティリティーの低下に寄与してくれるのではないかと期待したい。 さて、後場の東京市場は戻りを試す展開か。上述したように日経平均は3月16日高値を上端としたマド埋めを完了し、値幅的にも調整一巡感が台頭してくる頃合いだ。実際、朝方540円超下落していた日経平均は、前引けにかけて急速に下げ渋り、割ったばかりの26000円を早々に回復してきている。こうした下げ渋りは前日の急落時には見られなかった動きであり、売り一巡を感じさせてくれる。時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移していることで、今晩の米株市場での反発も見込まれる。午後の東京市場では、売り方の買い戻しに期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/10 12:14 後場の投資戦略 各種懸念要素むしろ強まるばかり [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26410.30;-593.26TOPIX;1883.52;-32.39[後場の投資戦略] 雇用統計の平均賃金の伸びは前月比+0.3%と、3月の同+0.5%から鈍化した。しかし、労働参加率が低下したことで、逼迫する労働市場と今後も賃金上昇圧力がくすぶることが窺える内容となり、米10年債利回りは一時3.14%と3年半ぶりの高水準を記録。これを嫌気し、5日に5%も下落したばかりのナスダックだったが、自律反発も空しく、6日も-1.4%と大幅続落となった。 先週末の東京市場は、円安進行や商品市況の上昇を背景に景気敏感株の買いがけん引する形で上昇に転じるなど、想定以上に底堅い動きを見せた。しかし、不安定さが続く米国株の動きや、3%を超えても上昇一服感が見られない米10年債利回りを前にさすがに警戒感は拭えず、本日は一時660円を超える下落となり、その後の戻りも鈍い。先週末に下支え役となった景気敏感株も、中国経済の悪化懸念がくすぶり、本日は総じて厳しい売りに押されている。 ネットフリックスやアマゾンなどの米大型テック株の下落基調が続くなか、東京市場でも中小型グロース株のきつい下落が続いており、マザーズ指数は本日、2月24日安値の648.20を窺う位置まで下落してきている。金利先高観が拭えず、FOMC通過後に期待された短期的なあく抜け感も裏切られた形となり、個人投資家の見切り売りが続いているようだ。 FOMC後の会見で、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は0.75ptの利上げには否定的な見解を示していたが、その後、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、0.75ptの利上げも除外しないべきとの考えを示した。また、債券市場で権威を持つ有識者のモハメド・エラリアン氏は「FRBの信用は失墜した」とも言及しており、厳しい評価を下している。さらに、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、ウクライナ戦争や中国での都市封鎖(ロックダウン)を背景とした供給網の混乱が長期化した場合、米労働市場に一定の減速が生じたとしても一段の引き締めが必要との考えを示した。 FOMCの通過後もむしろ金融引き締め懸念が強まるなか、一方で、米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏は、こうした世界的に進む積極的な金融引き締めが世界景気の減速を招くとし、「大いに気がかりだ」と言及。普段、米経済に対して強気な発言が多い、JPモルガン・チェースの最高経営責任者(CEO)ジェイミー・ダイモン氏も最近は世界経済の減速を懸念した見方を示しており、市場関係者だけでなく、多方面での著名実業家からもこうした弱気な発言が増えてきているのは気がかりだ。 2日の当欄「イベント通過後はあく抜け? 期待の裏に不安要素も」において記述したが、米株式から大量の資金流出を誘発する「臨界点」とも指摘されている、S&P500指数の4000割れが徐々に近づいているのも懸念要素。今週の11日には米4月消費者物価指数(CPI)が発表予定だ。それまでの間、同水準をどうにかキープし、CPIでのインフレピークアウト確認後に買い戻しが強まる展開に期待したいばかりだ。 午後の日経平均は軟調もみ合いとなりそうだ。CPI確認後はあく抜け感が強まることを予想する向きが多いが、発表直前まではヘッジ売りが膨らむ可能性もあり、今晩以降の米株市場の動向が注目される。前場にすでに大きく下落している東京市場だが、時間外取引のNYダウ先物が軟調ななか、押し目買いは期待しにくい。(仲村幸浩)12:10作成 <AK> 2022/05/09 14:16 後場の投資戦略 FOMC通過でも大きな変化なし [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26850.53;+32.00TOPIX;1908.74;+10.39[後場の投資戦略] 連休明けの日経平均は朝方に一時200円超下落したが、その後切り返し小高い水準で前場を折り返した。米金利上昇を受けた値がさグロース株の下落が日経平均を下押しする一方、金融や自動車、市況関連を中心としたバリュー(割安)株には買いが入っており、東証プライム市場全体としても値上がり銘柄の方が多い。前引けの日経平均が+0.12%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.55%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆6000億円あまりとまずまず膨らんでいる。 新興株ではマザーズ指数が-2.53%と大幅に4日続落。日足チャートでは足元じりじりと下落を強いられており、取引時間中としては3月16日以来の安値を付けている。グロース株安の流れが逆風となり、メルカリ<4385>などの主力IT株は総じて軟調だ。 さて、パウエルFRB議長が0.75ptの大幅利上げに消極的な姿勢を示し、4日の米市場は金利低下・株高で反応したものの、翌5日にはそれ以上の幅で金利上昇・株価下落する格好となった。5日の米10年物国債利回りは3.04%(+0.11pt)に上昇。一時3.10%と2018年11月以来の高水準を付けた。米主要株価指数はNYダウ-3.12%、S&P500指数-3.56%、ナスダック総合指数-4.99%と軒並み大幅に下落。原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)は1バレル=108.26ドル(+0.45ドル)と続伸した。 「OPECプラス」の緩慢な増産、労働生産性の低下や労働コストの上昇を示す米経済指標などからインフレ懸念は拭えない。英中銀は10~12月期にも消費者物価指数(CPI)上昇率が「10%をやや上回る」とし、2023年の経済成長見通しをマイナスに下方修正したこともインパクトのあるニュースだった。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)はFOMCと前後して低下する場面もあったが、5日には再び31.20(+5.78)と30台に乗せている。VIXの高止まりは4月28日の当欄「『決算序盤の情勢』と『米市場にくすぶる懸念』」でも懸念材料として触れたが、FOMC後のV字上昇を見ると、やはり下方リスクに警戒する動きは後退しづらいものと考えざるを得ない。 ただ、円安を支えに底堅さを見せる日経平均もさることながら、NYダウも2月24日の取引時間中に付けた安値(32272.64ドル)を割り込んでおらず、「インフレのピークアウト」や「米経済の堅調維持」への期待が根強いことを感じさせる。 結局、パウエル氏の発言で足元の投資論争に決着を見たわけではないと考えると、FOMCを通過して金融市場に大きな変化があったわけでもないだろう。今晩の米国では4月の雇用統計の発表が控えており、来週11日には消費者物価指数(CPI)、翌12日には卸売物価指数(PPI)と重要指標の発表が相次ぐ。引き続き経済指標や要人発言を睨み不安定な相場展開が続くとみておいた方がよいだろう。(小林大純) <AK> 2022/05/06 12:20 後場の投資戦略 イベント通過後はあく抜け? 期待の裏に不安要素も [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26704.60;-143.30TOPIX;1890.50;-9.12[後場の投資戦略] 連休明けの日経平均は朝方に100円超上昇する場面があった。先週末に4%超と大幅に下落したナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の動きに比べてしっかりのスタートを切ったが、75日移動平均線近くで伸び悩むと、下向きの同線に上値を抑えられる形で失速。戻り待ちの売りの根強さを示唆する形となった。前引け時点での売買代金は1超5000億円強と、直近の水準に比べてやや膨らんでいる様子。連休の谷間とはいえ、イベント前の持ち高調整などもあり、取引参加者が限られているわけではないようだ。 東京市場が連休中に発表された注目の海外指標の結果はまちまちだった。米1-3月期GDP速報値が前期比年率換算で+1.4%と予想(+1.0%)に反してマイナス成長となったことには驚きを持って受け止める関係者が多かったようだが、マイナス計算する輸入項目が+17.7%だった影響が大きく、個人消費は+2.7%、設備投資も+9.2%と国内経済の状態を示す部門はいずれも堅調だった。歴史的な高インフレ下においても米GDPの約7割を占める個人消費に力強さが窺えたことは景気減速懸念を和らげ、安心材料だろう。 一方、連邦準備制度理事会(FRB)が注目している1-3月期の雇用コスト指数は前期比+1.4%と、予想(+1.1%)を上回り、四半期の伸びとしては統計上最大だったという。下方硬直性があり、一度上昇すると低下傾向に転じるのに時間がかかる賃金項目で根強いインフレ圧力が確認されたことは、今後のFRBの引き締めスタンスを強めかねず、警戒材料となる。 しかし、中長期的には上値切り下げトレンドの継続が予想されるものの、短期的には3-4日のFOMC通過後にはあく抜け感で相場は反発する可能性が高そうだ。年明けからの米金融政策の動向を振り返ってみると、FRBの市場との対話方法には規則性があるように見受けられる。今となっては根強いインフレ圧力を抑えるために、多少の資産価格の下落は致し方ないとも思っていそうだが、それでもFRBが株価急落など極端な動きに繋がるようなネガティブサプライズを引き起こすことは避けたいと考えていることに変わりはないだろう。 そうした考えを持つFRBは、これまでFOMCイベントがネガティブサプライズにならないよう、事前の高官発言などを通して市場に引き締め加速を織り込ませる一方、FOMC直前には会合結果がほとんど分かり切った状態を作り、実際にFOMCでは既知の内容以外の目新しい内容をあまり発表しないという方法を採用してきた。そして、イベント通過後から、また次回会合に向けた織り込みを、高官発言を通して行っていくという過程を繰り返してきている。今回もこれまでのパターンに倣えば、イベント通過後は短期的にはあく抜け感が台頭しそうだ。 上記を踏まえれば、イベント前の東京市場での最後の取引日にあたる今日は、短期的には買い場になると考えられる。しかし、今回は別の視点で気を付けるべきことがある。先週末の米株市場の急落を受けて、ナスダックは今年に入ってからの安値を更新。多くの機関投資家が運用指標とする代表的な株価指数S&P500も、終値ベースでは今年最安値を記録し、2月24日にザラ場で付けた最安値4114.65を窺う水準にまで下落してきている。 こうしたなか、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらが株式市場からの資金の大量流出を警告している。同行ストラテジストチームによると、株式ファンドには2021年の初めから1兆1000億ドル(143兆円)の巨額資金が流入したが、エントリーポイントは平均で4274だったという。そのうえで、S&P500の4000割れは、米株式から大量の資金流出を誘発する「臨界点」になる可能性があると指摘した。 先週末にかけての米株価指数の乱高下の動きから窺えるように、足元の相場はオプション取引に係る需給要因などでボラティリティー(変動率)が非常に高い状態だ。何らかのきっかけでS&P500がこの臨界点とされる4000を割り込むようなことがあると、売りが売りを呼ぶような非合理的な連鎖反応が起こる可能性もある。今回は、際どい水準にある株価指数が、イベント通過後の短期的なあく抜けといったこれまでのセオリーを覆す余地があることに留意したい。 他方、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイが4月30日に開催した株主総会では、同社が1-3月期に、四半期ベースでこれまでに例がないほどに大量に株式を購入したことが判明。バリュー投資を徹底する同社のこうした動きは、足元の株式市場がファンダメンタルズに照らして割安であることを示唆しており、心強くもある。ただ、同社が買い増したのは石油大手のシェブロンや石油・天然ガス会社のオキシデンタル・ペトロリアムなどエネルギー関連が大半だ。足元の不安定な相場においても買えるものはあるが、買えるものはかなり限られているようだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/05/02 12:12 後場の投資戦略 「決算序盤の情勢」と「米市場にくすぶる懸念」 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26548.82;+162.19TOPIX;1879.30;+18.54[後場の投資戦略] 本日の日経平均は反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日にやや長めの下ひげを付けたこともあって底堅さが感じられる動き。ひとまず前日の下落分の半分は取り戻したが、26600円台に位置する5日移動平均線には届いていない。業種別騰落率を見ると、ここ数日下落の大きかった市況関連セクターなどが堅調で、やはり3連休を前に売り方の買い戻しが相場全体を押し上げている可能性がある。前引けの日経平均が+0.61%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.00%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆4000億円あまりとやや膨らんではいるが、決算を受けた個別物色が増えてきた割にはさほど賑わっていない印象だ。 新興株ではマザーズ指数が-1.33%と続落。前日の安値(686.13pt)こそ割り込んでいないが、700pt台を維持できず、じり安基調にムードの悪さを感じざるを得ない。本日、東証グロース市場に新規上場したクリアル<2998>は公開価格比+72.0%という堅調な初値を付け、ペットゴー<7140>は買い気配が続いている。また、前日上場したモイ<5031>は公開価格比+91.9%という初値を付け、その後の株価も大きく上昇。こうしたIPO(新規株式公開)銘柄を中心に、個人投資家による短期の値幅取りを狙った物色は足元でも散見される。ただ、株価指標をあまり意識しない買いには不安もある。主力IT株の軟調ぶりからグロース(成長株)色の強い新興株にはなお厳しい環境と考えざるを得ない。 さて、日経平均の値上がり寄与度上位にはアドバンテスや信越化<4063>がランクインしており、値がさハイテク株の好決算が日経平均を押し上げていることがわかる。電子化進展で関連製品の需要が増えることへの期待を支えそうだ。また、前場の取引時間中に決算発表したデンソー<6902>も急伸しており、自動車生産の正常化や円安効果に期待がかかる。 ただ、全体として決算内容は強弱まちまちといった感もあり、OLCの値幅や出来高の膨らみ方を見るとサプライズの大きさが窺える。入園者数上限、客単価とも物足りないとの声が聞かれたが、このところ経済活動の正常化への期待が高まっていただけに失望されやすかったとも考えらえる。感染抑制の取り組みが長期化しているというだけでなく、インフレ等により消費の先行きに不安がくすぶるかもしれない。また、そうした消費者の置かれた状況を背景に、求める顧客体験のハードルが高まっている可能性もあるだろう。製造業でも原材料や物流のひっ迫といった供給制約の影響が大きい企業が少なからず見られる。 決算発表シーズン序盤のこうした情勢を見ると、今回の決算内容が株式相場全体のトレンドを明確に上向かせるとまでは期待しづらそうだ。 前日の米市場動向も確認しておこう。債券市場では10年物国債利回りが2.83%(+0.11pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物が2.59%(+0.07pt)に上昇した。利回り妙味や安全志向の買いで先週末から長期金利はやや低下していたが、連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測を背景に先高観は根強いようだ。5年物国債入札が「やや低調」だったこともこうした見方を裏付けるだろう。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.88%(+0.03pt)と4日ぶりに上昇。商品では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)が1バレル=102.02ドル(+0.32ドル)と小幅続伸した。やはりインフレ観測も根強い。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が31.60(-1.92)と高止まりしている点も気掛かりだ。このところ株式相場が反発する局面でもVIXの低下が鈍く、ボラティリティー(株価変動率)の高まりを織り込む動きが容易に後退しないことが窺える。先行きへの根強い警戒感を背景に、日本株でも積極的に買い持ちを増やす動きは限られるだろう。(小林大純) <AK> 2022/04/28 12:25 後場の投資戦略 金利低下でもグロース株買いは控えるべき? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26198.79;-501.32TOPIX;1853.36;-25.15[後場の投資戦略] 日経平均は値幅を伴った下落で、日足のローソク足では窓アケを形成。下向きの5日移動平均線からは大きく下放れた。日足一目均衡表でも雲下限を下放れてきている。売買代金は1超4000億円程と、前日までに比べてやや膨らんでいるが、値幅の割にはさほど大きくない。値がさのハイテク・グロース(成長)株の下落が指数の下げを主導しているようだ。 前日のナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅下落を受けて、東京市場でも半導体関連などのハイテク株の下落が目立つ。一方、ナブテスコ<6268>が6%安と急落するなど、中国関連株の一角の下落が厳しく、景気減速懸念も根強い様子。本日買われているのは前日に下落率が大きかった海運や鉱業といった市況関連株くらい。これらは、前日の下落を受けて押し目買いが入りやすいところに、ロシアによる天然ガス供給を巡る報道が伝わったことで、改めて需給逼迫の思惑の強まりが追い風となったようだ。 前日の米国市場では、安全資産である国債が買われ、金利が幅広い年限で大幅に低下するなか、株式には広く売りが広がり、典型的なリスクオフムードの様相となった。「恐怖指数」の呼び名を持ち、将来の株価変動率を表すVIX指数は33.52(+6.50、+24.05%)と急騰し、警戒水準とされる30を大幅に上回った。 金利が低下するなかでも、ナスダックやSOXの下落率は4%前後と、NYダウの2.3%を大きく上回り、両指数ともに今年に入ってからの安値を更新した。景気減速懸念が強まるなかでも、先週のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演での発言から、金融引き締めペースの後退や再緩和への転換は当面期待しにくいとの見方に変わりつつあることが、こうしたハイテク・グロース株の急落の背景にありそうだ。 実際、インフレ懸念はむしろ強まっている。前日は、ロシア産の天然ガス供給を巡る報道で商品市況の需給逼迫への警戒感が再び高まると同時に、住宅価格指標の上振れが目立った。米連邦住宅金融局(FHFA)が発表した2月FHFA住宅価格指数は前月比+2.1%と、1月の+1.6%からの鈍化予想に反して拡大し、過去最大を記録。同時刻に発表された2月S&PコアロジックCS20都市住宅価格指数は前年比+20.20%と、1月の+18.94%から予想以上に拡大し、こちらも過去最大となった。ロシアが今後、欧州などに対しても天然ガスの供給停止を再び迫るのか不透明感がくすぶり、商品市況の一段の先高観は拭えない。同時に下方硬直性のある住宅分野での価格指標の上振れも相まって、FRBはますますインフレを抑え込むことに躍起となりそうだ。 むろん、今回発表された住宅価格の指標は1月分でやや情報が古い。足元では米国で住宅ローン金利が大幅に上昇してきており、住宅販売価格も沈静化する兆候が見られている。しかし、それでも、パウエル議長は先週、「インフレはピークアウトした可能性があるが、それは当てにできない」とし、不確かな見通しよりも実績のデータに基づいて政策運営する姿勢を見せた。そのため、今回の住宅価格指標の上振れを軽視することはできない。この先も引き締め懸念は根強くつきまとうだろう。「金利低下故のハイテク・グロース株買い」という安易な投資戦略は危うさを伴いそうだ。 米国市場の取引終了後、注目のマイクロソフトとアルファベットが決算を発表した。結果と株価反応はまちまちで、投資家心理の改善には繋がりにくい形となった。今晩には2月に“メタショック”を引き起こした、Facebookなどソーシャルネットワークサービスを運営するメタ・プラットフォームズの決算が控えている。ネットフリックスのような急落劇を再び引き起こすようなことがあると、ゴールデンウイークの連休入り前、最後の取引となる明日の東京市場では一段と売りが広がりかねない。 急落した直後の今晩の米国市場の動向も含めて、結果を見極めたいの思惑が広がりやすく、後場の日経平均は下げ渋っても、戻りは鈍く、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況の動き次第では、再び26000円に向けた下押しが警戒されよう。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/27 12:08 後場の投資戦略 景気懸念による期待インフレ低下は痛しかゆし? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26726.65;+135.87TOPIX;1880.00;+3.48[後場の投資戦略] 本日の日経平均は海外市場の動向睨みで上下に振らされつつも、ひとまず3ケタの上昇で前場を折り返した。もっともここ2日で960円あまり下落していただけに、自律反発としても物足りない印象は拭えない。個別・業種別では、中国株の先行き懸念から前日大きく下落したソフトバンクGが買われているほか、中小型を中心としたグロース(成長)株が堅調。一方で原油などの商品相場が下落し、市況関連株に売り。前引けの日経平均が+0.51%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.19%。値がさ株がけん引役とあってTOPIXの伸びは鈍い。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆2000億円あまりで、ここ数日と同様にさほど膨らんでいない。 新興株ではマザーズ指数が+1.61%と9日ぶりに反発している。こちらも朝方伸び悩む場面があったが、中小型グロース株への買いが追い風となってまずまず堅調だ。日足チャートを見ると、700pt割れからすかさず切り返してきた点には安心できるものの、下降する5日移動平均線(710pt近辺)を明確に上抜けできてはいない。なお、明日27日はストレージ王<2997>とモイ<5031>、翌28日はクリアル<2998>とペットゴー<7140>が東証グロース市場に新規上場する。モイはライブ配信サービス「ツイキャス」で知られる。これらの後は5月末までIPO(新規株式公開)がないため、個人投資家の関心を集めそうだ。 さて、25日の米市場動向を見ると、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)が1バレル=98.54ドル(-3.53ドル)と続落。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.91%(-0.07pt)に、10年物国債利回りは2.82%(-0.08pt)にそれぞれ低下した。 米10年BEIは先週、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締め観測が強まるなかで一時3%台まで上昇し、「FRBはインフレを退治できない(著名投資家デービッド・アインホーン氏率いる米ヘッジファンド、グリーンライト・キャピタル)」との見方も出ていた。それだけに原油価格の下落とBEI低下は安心材料と受け止められるかもしれないが、その背景がロックダウン拡大による中国経済の減速懸念とあれば素直に喜べないだろう。本日の上海総合指数は前日ほど弱くないものの、一進一退の展開でコロナ禍への懸念に揺れる投資家心理を映しているようだ。 また、世界中の投資家から投資資金を集めていた中国テック株の下落を不安視する向きもある。足元下げ渋っているのに安心感を覚える投資家が多いのはソフトバンクGの反発からも窺えるが、海外メディアの記事では中国ハイテク株の下落による「痛みはこれから(DZバンクのアナリスト、マヌエル・ミュール氏)」との指摘が見られる。 前日の当欄で触れられていたが、日米とも6月限のプットオプション(売る権利)の建玉が増えているようで、「5月に売れ(セル・イン・メイ)」への警戒感が強いことがわかる。また、前日のように相場が大きく動く局面では、カウンターパートとなっている金融機関などからヘッジ目的の先物売りが出やすいだろう。5月3~4日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えていることもあり、当面落ち着かない展開とみておいた方がいいだろう。 本日も国内ではファナック<6954>、キヤノン<7751>などが決算発表を予定しており、米国でも企業決算とともに経済指標の発表が多い。特に2月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数などはインフレの行方を占ううえで注目されそうだ。(小林大純) <AK> 2022/04/26 12:22 後場の投資戦略 イベント前のヘッジ売りによる一段安に注意 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26578.70;-526.56TOPIX;1875.13;-30.02[後場の投資戦略] 週明けの日経平均はマド空けを伴った下落で大幅続落。25日移動平均線に続き、5日線を下回り、上昇傾向にあった25日線は下向きに転換した。テクニカルの悪化が意識される形で、買いが入りづらい状況だろう。 先週末の米株市場は終日軟調な展開。国際通貨基金(IMF)主催の討論会で、パウエル議長が利上げに積極的な姿勢を示したことを嫌気した売りが続いた。パウエル氏は「インフレは3月にピークがあった可能性があるが、それは当てにならない」、「適切な場合は政策を厳しくするつもりである」などと発言。米国での3月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)の結果公表後、インフレはピークを打ったとの見方が強まり、市場では一部で、年央からはFRBの引き締め姿勢が緩和されるのではないかといった期待があった。しかし、先週のパウエル氏の発言でこうした見方は修正を迫られる格好となった。 短期金融市場はすでに5、6月に続いて、7月までの0.5ptの利上げをほぼ織り込み、6月にいたっては0.75ptの利上げまで織り込みつつある。5月FOMCではさすがに0.75ptの利上げの可能性は限りなくゼロに近く、0.5ptの利上げがほぼ確実であり、足元の市場の織り込みペースは急速だ。3月半ばから株式相場がリバウンド基調を強めるなか、特に米国市場を中心に先行きに楽観的な見方が広がっていた背景もあったため、今回の織り込みと、先週末にかけての株式市場の調整をもって楽観の修正もある程度進んだといえる。 一方、日本国内のオプション市場の動向をみると、先週末にかけては、5月限ではプットとコールともに目立った動きはなかったが、6月限では、権利行使価格26000円のプットの建玉が大きく積み上がる動きが見られた。ゴールデンウイーク(GW)前、連休中のFOMCイベントに備えた下方リスクをヘッジする動きが出てきていると考えられる。 ここ数週間は先物手口で海外勢の目立った動きが少なく、方向感も定まっていない様子が窺えた。そうした意味では、直近までの海外勢の持ち高は中立水準にあったとみられ、この先、イベントに備えた売り持ち高の積み上がりが強まる可能性がある。今週、プット買いが更に進むようだと、カウンターパートであるディーラーによる先物を使ったヘッジ売りが膨らむ可能性があるため、注意が必要だろう。 後場の日経平均は軟調もみ合いが継続しそうだ。今週は日米で市場への影響力が大きい主要企業の決算が相次ぐ。これらの結果次第では相場の方向性が決まりかねないため、見極めたいとの思惑から積極的な押し目買いは限られるだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/04/25 12:11 後場の投資戦略 やはり「FRBは市場にフレンドリーでなかった」 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27033.33;-519.73TOPIX;1902.60;-25.40[後場の投資戦略] 前日の米株がパウエルFRB議長ら金融当局の要人によるタカ派的な発言で下落した流れを引き継ぎ、本日の日経平均は朝方に600円超下落する場面があった。その後は27000円水準で踏みとどまろうとする動きも見られるが、戻りの鈍い印象は拭えない。日足チャートを見ると、ここ数日は上昇する5日移動平均線に沿って水準を切り上げていただけに強気の向きがやや増えていた。しかし、本日の下落で同線を割り込んできており、トレンド好転への期待も好転せざるを得ないか。前引けの日経平均が-1.89%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.32%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆2000億円あまりで、値幅の割に膨らんでいる印象はない。 業種別騰落率を見ると、非鉄金属や鉱業といった市況関連株が下落率上位で、これは米株と同様の動きだ。原油先物相場が上昇するなど商品市況は大きく下落したわけではないが、ファンドの清算などに伴い関連銘柄に売りが出たのではないかといった見方があった。一方、空運株が逆行高となっているが、米市場ではユナイテッド航空ホールディングスが決算を受けて大きく買われた。直近では米運用大手PIMCOのファンドマネージャー、エリン・ブラウン氏がこれから有望な投資分野の1つとして「娯楽・ホスピタリティ」を挙げているとも伝わっている。 新興株ではマザーズ指数が-2.59%、大幅に7日続落している。こちらも一時700ptを割り込むと同水準で踏みとどまろうとする動きを見せているが、トレンドの悪さが意識されざるを得ないだろう。売買代金上位ではメルカリ<4385>やBASE<4477>の軟調ぶりが目立つ。メルカリは下落基調が続き、2020年4月以来の安値水準だ。前日の当欄でも触れたが、日米でハイグロース(高成長)銘柄の苦境が続いている。 さて、前日の当欄「パウエル氏発言や企業決算を注視」で示唆したとおり、パウエル氏ら米金融当局の要人の発言を受けて株式・債券相場は大きく振れる格好となった。パウエル氏の発言として「5月の0.5pt利上げを検討」などといったものが伝わったが、米債券市場が今後数会合での0.5pt利上げを明確に織り込んでいるだけに、「特段の目新しさはない」といった声も聞かれた。 しかし、このところ当欄で述べていたように、目先の利上げペース以上に焦点となっているのは「インフレの持続性」や「目先の利上げ後の金融政策」だろう。この点について、パウエル氏は「インフレは3月にピークに達した可能性もあるがわからない」と述べたうえで、経済のソフトランディング(軟着陸)に向けて善処しつつも物価の安定回復を優先させるような印象を与えた。 討論会前の20日は米長期金利が低下し、21日の東京市場ではハイテク株や景気敏感色の強い銘柄の上昇が目立ったが、これらはパウエル氏が「経済データに目配りして柔軟に対応する姿勢を示すのでは」といった思惑による持ち高調整の動きだったのかもしれない。前日の当欄で述べたとおり、パウエル氏発言の注目点として「目先の利上げ後について『データ次第』との姿勢が示されるか」などといったことが市場関係者から挙げられていた。結果的にあくまでインフレ対応を重視する姿勢が示されたことで、一部にあった再緩和への期待もさらに後退せざるを得なくなったのだろう。「FRBは市場にフレンドリーでなくなった」ことを再確認したとも言える。 もっとも「インフレは一時的」との見方も根強く残り、引き続き相場が一方向に振れるとまでは言えないだろう。ただ、FRBの積極的な金融引き締め姿勢を受けてリセッション(景気後退)を懸念する声も聞かれ、日米の空運株の上昇などには難しい環境下で買える銘柄を模索する投資家の姿が透けて見える。(小林大純) <AK> 2022/04/22 12:21

ニュースカテゴリ