後場の投資戦略ニュース一覧

後場の投資戦略 200日線挟んだ一進一退で今晩にはECB定例理事会 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27657.53;-22.73TOPIX;1941.00;-5.44[後場の投資戦略] 日経平均は前日の急伸直後とあって伸び悩んでいるが、安値でも27500円を割らず底堅い動きを見せている。日足チャートでは、200日移動平均線を挟んだ水準で一進一退となっている。戻り待ちの売りが根強い一方、同線突破後の一段高を期待する買いも入っているようで、売り買い拮抗といった様相だ。 動画配信サービスのネットフリックスに続いて注目されていた電気自動車メーカーのテスラの決算は、調整後の1株利益が予想を上回った。また、上海での生産拡大を明らかにしたことで、同社株価は時間外取引で上昇した。ただ、バリュエーションの割高感が強く、一時大幅に上昇した後は1%高程度に伸び悩んでいる。 ここまでの米国の主要企業の決算を見る限り、事前の想定よりは良好なものが多い印象だ。来週からはアルファベット、マイクロソフト、アップル、アマゾン・ドットコムなどのいわゆるGAFAMと呼ばれる大型テック企業の決算が予定されており、これらの結果次第ではムードが様変わりする恐れもあるが、事前の警戒感が高かった分、ネガティブショックの可能性は低くなっていそうだ。 日本電産の決算も、外部環境の悪化で利益率は悪化したが、ほとんど想定線で、むしろ、E-Axle(イーアスクル)の出荷台数の引き上げなど好材料があったことがポジティブに捉えられる。株価は前日までに上昇していた反動で売り優勢とはなっているが、2%程度の下落で投資家心理を悪化させるほどでもない。 さて、日経平均はテクニカル面では、下向きの200日線を挟んだ一進一退となっており、このまま下落トレンド脱出の初動を辿るのか、それとも下落トレンドが延長されるのか、短期的な勝負所を迎えているといえる。こうした中、今晩には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が予定されている。もともと今会合では0.25ptの利上げがコンセンサスとして予想されていたが、今週に入ってから急遽、事情に詳しい関係者からの情報として、0.5ptの利上げ実施の可能性が台頭してきた。仮に0.5ptの利上げが実施されるとなるとタカ派サプライズとなり、足元の株式市場のリバウンドに水を差すことになる。今晩のECB定例理事会は今週最大の注目イベントといってもよく、後場の東京市場は様子見ムードが広がりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/21 12:11 後場の投資戦略 悪材料耐性や需給状況から28000円窺う展開か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27599.52;+637.84TOPIX;1939.87;+37.08[後場の投資戦略] 日経平均は久々の大幅高で一気に27500円台を回復してきている。日足チャートでは200日移動平均線が位置する27600円台まで一時戻した格好だ。上げ幅は軽く600円を超えており、非常に強い動きとも言える一方、27500円を回復したことで、水準的には戻り一服感が今まで以上に強まってくる。また、下向きの200日線手前まで上昇したところからも、ここからは一段と戻り待ちの売りが強く出てくることが意識される。この先は、今日から本格化していく日米主要企業の決算次第だろう。 バンク・オブ・アメリカ(BofA)の最新の月次ファンドマネジャー調査によると、ポートフォリオに占める株式比率は2008年10月以来の最低水準となった一方、現金の比率は2001年以来の最高水準になったという。また、景気後退を予想する割合は新型コロナ・パンデミックの発生直後である2020年5月以来の最高水準にまで達したという。 完全に総悲観に傾くなか、需給状況は軽く、わずかな好材料をきっかけに大きく上昇しやすい状況といえる。足元で新たに確認された好材料としては、ロシアが天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州へのガス輸出を21日に再開する見通しと伝わったことのほか、警戒されていた動画配信サービスのネットフリックスの決算が想定程は悪くなく、同社株が時間外取引で大きく上昇していることなどだろう。 ただ、ロシアによる揺さぶりがこれで終わったとは到底考えづらい。また、ネットフリックスの決算では、サブスクリプション会員数が97万人の減少と、予想の200万人の減少より小幅にとどまったことが好感されたわけだが、普通に考えて2四半期連続での会員数減少はグロース株として失格の内容だろう。期待値がすでに低い分、今後出てくる決算に対しても同様の反応が想定されるが、決算内容にポジティブな要素は見出しづらい場面が続きそうだ。 需給状況が軽いことや、来週に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)については1.00ptという最悪のシナリオを既にいったん織り込んだ経緯もあり、日経平均については28000円に向かう展開もあるだろう。ただ、そこからのアップサイドにはさすがに材料不足といえ、現在の株価水準からの上昇幅はせいぜい500円程に限られる可能性が高いことを考えると、上値追いには慎重になりたい。 後場の日経平均は堅調か。ナスダック100先物が堅調で、香港ハンセン指数も大幅に上昇しているなか、高値圏で底堅い展開が想定される。一方、本日の引け後に決算を発表する日本電産<6594>や、今晩の米国市場で決算発表予定の米電気自動車テスラの結果を見極めたいとの思惑から、上値追いは限られるだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/20 12:10 後場の投資戦略 長期期待インフレ率の低下で買い戻しも懸念要素もちらほら [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26977.37;+188.90TOPIX;1901.85;+9.35[後場の投資戦略] 連休明けの日経平均は素直に堅調とは言い難い動きとなっている。度々27000円台に乗せて強さを見せたかと思いきや、乗せた直後には必ず失速してすぐに同水準を割り込む動きを繰り返しており、むしろ、上値の重さが目立つような印象だ。日足チャートでは上値抵抗線だった75日移動平均線を上回ってきており、テクニカル面では需給の好転が意識されやすいものの、6月28日に付けた高値27062.31円には届いておらず、上値切り下げ形状を明確に脱したとは言いにくい。 本日の一部ハイテク・グロース株の堅調さの背景にあるのは、やはり先週末の米7月ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の低下が大きいか。5-10年先期待インフレ率は2.8%と前月の3.1%から1年ぶりの低水準にまで低下した。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った要因の一つがこの期待インフレ率だっただけに、インフレ懸念を和らげる内容で、目先の安心感を誘っていると推察される。 しかし、同調査によると、ガソリン価格の低下を背景に現況指数が57.1へと大きく改善した一方、先行きを示す期待指数は47.3と1980年以来の低水準にまで低下。インフレ・大幅利上げに対する懸念の後退が示唆される一方、景気後退懸念はむしろ強まったと言える内容だった。 また、現況指数の改善に繋がったガソリン価格についても油断はできない。先週末、バイデン米大統領はサウジアラビアでサルマン国王らと会談し、原油の増産を要請した。ただ、今会談では具体的な増産方針は明らかにされておらず、再び原油先物価格が上昇に転じる可能性が残されている。 さらに、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止められているが、この定期検査の期限は21日とされており、供給が再開されるか否かが注目されている。そうした中、ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが欧州の買い手数社に対して不可抗力条項を宣言したと伝わっている。 通常、不可抗力条項は自然災害などの予期せぬ事態が発生した場合に宣言されるもので、不可抗力条項を過去にさかのぼって発動するのは異例だという。今回のガスプロムの行動は、ガス供給の制限を継続するシグナルを送っている可能性があるともされており、早くも警戒感が高まっている。 そのほか、米ゴールドマン・サックスやアップルが採用計画の縮小を発表していることも気掛かり。直近、アルファベットやメタ・プラットフォームズなども採用ペースを減速させているほか、マイクロソフトやテスラに至っては人員削減にも乗り出している。これまで堅調とされてきた米国経済を支えてきた労働市場には引き続き黄色信号が灯っているといえよう。 景気後退懸念が強まる一方、インフレ・大幅利上げへの警戒感が後退しているなか、ハイテク・グロース株が相対的に強い足元の物色動向はある意味で合点がいくが、しかし、こちらもリスク要素はある。今晩は動画配信サービスの米ネットフリックスが決算発表を予定している。同社は前回決算の際に会員数の減少を発表。成長期待のはく落により株価が急落し、投資家心理を大いに冷やした。今回も同様に低調な決算となれば、足元で台頭しているグロース株の復調に冷や水を浴びせることになりかねない。 後場の日経平均は上値の重い展開か。米ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の注目度は高かっただけに、前場はイベン通過によるあく抜け感で買い戻しが優勢になったとみられる。しかし、引き続き27000円を明確に上抜けるには材料不足であるほか、買い戻しが一巡してくれば再び売りが優勢になる可能性がある。明日以降の日米注目企業の決算も前に、積極的な買いは手控えられるだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/19 12:17 後場の投資戦略 インフレピークアウト期待の背景とそのリスク [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26797.47;+154.08TOPIX;1892.77;-0.36[後場の投資戦略] 前日の米株市場は大きく下げて始まった後にFRBのウォラー理事とセントルイス連銀のブラード総裁の1.00ptの利上げは時期尚早との見解を受けて、大幅利上げへの過度な警戒感が後退する形で、急速に下げ渋った。しかし、ウォラー理事はデータ次第で1.00ptの利上げにオープンな姿勢も見せており、今晩発表される米7月ミシガン大学消費者マインド指数の期待インフレ率や、小売売上高などの結果次第では再び1.00ptの利上げ確率が高まる可能性がある。 一昨日から昨日にかけて発表された米国の消費者物価指数(CPI)とPPIはともに市場予想を大幅に上回った。それでも、相場が大きく下落していないのは、今回の発表分である6月分がピークとの期待が根強いからだろう。実際、エネルギー・穀物などの幅広いコモディティ価格が明確な下落基調を辿っている。CPI6月分の上振れの主要因の一つでもある米国のガソリン価格も、原油先物価格の下落や需要鈍化への思惑から足元で小幅ながら低下に転じてきている。 米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景気指数の項目の一つである入荷遅延は一時拡大と縮小の境界値である50を大幅に上回る80近い水準にあったが、6月分では57と大幅に低下してきた。また、物流網の逼迫で高騰していたコンテナ船運賃についても、北米を結ぶ主要8つのコンテナ航路の運賃を示す総合指数「World Container Index」が明確に下落基調にあり、昨年秋に付けた高値から足元では3割以上も下落している。 こうした背景から、インフレピークアウト期待が根強いのも頷けるところがある。一方で、注意しなければならない点もいつくかある。まず、足元でようやく下落してきている原油先物価格だが、再び上昇に転じる可能性は拭い切れない。「脱炭素」などの機運が高まるなか、石油業界ではここ数年、新規の設備投資が抑えられてきた。また、6月に開催された石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国の主要産油国で構成する「OPECプラス」では増産幅の拡大が決定されたが、供給不足を解消するには“焼け石に水”に過ぎない。 さらに、現状、増産はサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の2国に依存しており、他の多くの産油国は生産設備のキャパシティーの問題や政治上の問題から、むしろ、生産計画の未達が目立っている。このため、景気後退による需要鈍化が供給不足を解消するに至らないことがクローズアップされてくれば、原油先物価格が再び上昇する恐れがある。 もう一つは米CPIの構成比で3分の1と最大の割合を占める住居費の動向だ。帰属家賃などで構成されるこの項目は住宅ローン金利や住宅価格に遅れて動く傾向がある。米国では30年物の住宅ローン固定金利が昨年末から今年6月までの間に87%も上昇した。この住宅ローン金利の上昇が効く形で、6月下旬に発表された4月分の指標から、上昇が続いていた米国住宅価格にも減速の兆しが見られはじめた。 しかし、帰属家賃などから構成されるCPIの住居費は住宅価格の指標から約1年程遅れて動く傾向があり、CPIの最大構成項目である住居費が減速するには来年前半まで待つ必要がありそうだ。この間に、ガソリンなどの他の生活必需品の価格が大きく減速をしてくれれば、CPI全体では伸びの鈍化が期待できるが、そうならなければ、遅行性のある住居費の上昇と相まってCPIの高止まりが長期化するリスクがある。 このため、CPIのピークアウト説が実現するには原油先物価格の動向が大きな鍵を握っているといえる。そうした意味では、現在、中東各国を歴訪しているバイデン米大統領のサウジアラビアとの交渉が注目される。また、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止めているが、この定期検査の期限は7月21日とされている。デッドラインを迎える来週のこの日に、仮に供給停止が続けられるとなると、欧州のエネルギー価格の高騰に繋がり、世界的なインフレ懸念の再燃や一層の景気後退懸念に繋がりかねない。 今月26~27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)までは神経質な場面が多数あり、インフレピークアウト期待のもとグロース株の買いなどに転じたい気持ちもあるかもしれないが、今はまだ焦る気持ちを抑える場面だと考える。少なくとも、FOMCを通過し、日米主要企業の4-6月期決算が一巡する8月上旬頃までは様子見に徹するのが肝要だろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/15 12:18 後場の投資戦略 米CPI強い結果も買い優勢の展開に [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26664.20;+185.43TOPIX;1891.92;+3.07[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後下げ幅を縮小して、前場中ごろから買いが広がりプラス圏に浮上した。その後は、アジア市況が軟調に推移したことを横目に、上値の重い展開となった。米6月CPIは強い結果だったが、前日までにある程度織り込んでいたことに加えて、米国株が下落後に値を戻したことで国内の投資家心理の安心材料となった。また、景気後退が意識されて米長期金利が低下し、ナスダックが一時プラス圏に浮上する場面があったこともポジティブに捉えられた可能性がある。テクニカル面では、25日移動平均線付近で売り買いが交錯していることが窺える。 新興市場も前場中ごろから買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数も、下落してスタートしたあとプラス圏に浮上して上げ幅を拡げた。日経平均よりもやや値幅を伴った上昇となっている。こちらもナスダックが一時プラス圏に浮上する場面があったことがグロース(成長)株を中心とする新興市場にとってポジティブに捉えられ、長期金利の低下も追い風となっている。時価総額上位銘柄は強弱まちまちで、個別に材料が出た銘柄に旺盛な物色が向かっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が1.66%高、東証マザーズ指数が1.49%高となった。 さて、前日に発表された米6月CPIは前年同月比で9.1%上昇と市場予想の8.8%上昇を超え、5月の8.6%上昇から加速し、前年同月比で約40年半ぶりの高い伸びとなった。前月比では1.3%上昇と、こちらも市場予想の1.1%上昇を超えた。ガソリン価格は前月比11.2%上昇、電気や天然ガスを含むエネルギーサービスの価格は3.5%上昇で、やはりガソリン価格の高騰が背景となっている。ただ、食品価格は前月比1%上昇で、5月の前月比1.2%上昇からやや鈍化している。 前日の米株式市場や本日の日経平均の動きを見ると、前日の米株式市場でCPIが前年比で+10.2%になったとの偽造のリーク報道を受けて大きく下落していたことから、多少の上振れに対する耐性はついていた。11月に中間選挙を控えるバイデン大統領は6月CPIについて「受け入れ難いほど高水準」とした一方、7月のガソリン価格の下落を考慮すると過去の数値だと述べている。また、足元のコモディティ価格の下落基調を背景に6月がインフレのピークとの期待も高まっている。 ただ、米金融当局はCPIの結果を受けて積極的な政策方針を維持する見通しである。米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は、「7月のFOMCで100ベーシスポイント(bp)の利上げを検討する可能性がある」との見方を示している。市場では7月FOMCでの0.75ptの利上げを完全に織り込んでいたが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。 実際に、株式市場は1.00ptの利上げまでは織り込めていないはずで、買い優勢の展開は長続きしないだろう。また、今週末は7月ミシガン大学消費者マインド指数が発表される予定で、米中の経済指標の発表も多く、これらの結果を見極めるまでは様子見姿勢を強めたほうがよさそうだ。後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に上値の重い展開が続くか。引き続き新興市場を中心とする個別材料株や新興市場の直近IPO銘柄に物色が向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/07/14 12:20 後場の投資戦略 CPI通過後のあく抜け期待は程々に [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26423.11;+86.45TOPIX;1886.87;+3.57[後場の投資戦略] 前場の東証プライム市場の出来高は4億株台の前半、売買代金は1兆円をわずかに上回る程度にとどまり、今晩の米6月CPIを前に東京市場は全般模様眺めムードが漂っている。前日の米株式市場では、CPIが前年比で+10.2%になったとの偽造のリーク報道を受けて終盤に下げ幅を広げていたことから、多少の上振れに対する耐性はついているだろう。また、足元のコモディティ価格の下落基調を背景に6月がインフレのピークとの期待も高まっている。 一方で、インフレの背景が供給サイドから需要サイドへと移りつつあることや、CPIの構成比で3割を占める住居費が、遅行性もあってまだ伸びが続くと考えられることから、インフレピークアウトに疑念をもつ向きも多い。また、前日に石油輸出国機構(OPEC)が発表した市場見通しによれば、来年の世界石油需要の伸びは供給の拡大分を日量100万バレル上回る予測となっており、需給逼迫が緩和されることはないもよう。欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給が止まっており、検査終了後も供給停止が続けられる可能性も指摘されている。今後、多方面での原材料のもととなる原油価格が再び急騰する可能性も拭い切れないだろう。 一部の金融機関では、CPIが下振れれば素直に好感、上振れてもインフレ頭打ちへの期待が高まるとの見立てから、いずれにしても発表直後はあく抜けするだろうと予想しているところもあるようだ。しかし、CPIの上振れ度合いや構成項目の内容次第では、ピークアウト期待が再び縮小する可能性もある。あく抜けの確度はそこまで高くないと思われ、今はまだ様子見に徹することが肝要だろう。後場も、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑から、日経平均は前日終値近辺でのもみ合いが続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/13 12:10 後場の投資戦略 CPI前に神経質な展開、あく抜け感は高まりづらいか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26362.76;-449.54TOPIX;1886.69;-27.97[後場の投資戦略] 先週5日続伸と負けなしで強い動きを見せたナスダックは、週明けは一転して6日ぶりに大幅反落。東京市場でも、先週まで強いリバウンドを見せていたグロース株の多くが週明けから2日連続で大きく下落している。 米10年債利回りは依然として落ち着いた動きを続けているが、13日に発表が予定されている、40年ぶりに過去最高を更新する見通しの米6月消費者物価指数(CPI)を前にさすがに騰勢一服の展開を強いられている。指標発表前の買い戻しは先週の間に一巡していたようだ。 その米CPIについては、米政府から「高い数値になるだろう」とのコメントが出ている。市場予想ではエネルギー・食料品を含む総合で前年比+8.8%と前月(+8.6%)から加速する見通しで、すでにある程度は織り込まれているだろう。また、米政府は同時に「7月に入りエネルギー価格は顕著に下落し」、「(今後も下落継続が想定されるなか)CPIはもはや現状を反映していない」との認識も示したという。 中国では新型コロナ感染が再拡大するなか、先週頃から国内初のオミクロン株「BA.5」が確認され、更なる感染の拡大および厳しい行動制限の再実施への懸念が強まっている。世界景気の後退懸念が強まるなか、深刻な供給不足が続く原油先物を除けば資源価格の下落基調は続く可能性が高い。こうした背景を踏まえれば、米政府の認識は正しいともいえ、CPIが予想を大幅に上回ることがない限り、市場は高い数字をバックミラーとして捉え、ネガティブな反応は限られるだろう。 また、昨日ニューヨーク連銀が発表した調査によると、1年先期待インフレ率は5月の6.6%から6.8%に上昇した一方、3年先期待インフレ率は3.9%から3.6%へ、5年先期待インフレ率は2.9%から2.8%へとそれぞれ低下した。米連邦準備制度理事会(FRB)は消費者のインフレ期待を制御できなくなることを懸念しており、長期の期待インフレ率が低下したことは安心材料となる。 一方で、FRBのパウエル議長は利上げを緩めるには、エネルギー・食料品を含むCPI、いわゆる「ヘッドラインCPI」の鈍化傾向を確認することが必要だとしており、CPIが2~3カ月連続で減速しない限りは、利上げペースの鈍化を確実視することは難しいだろう。そのため、明日のCPIを通過してもあく抜け感が台頭するかは分からず、市場反応は極めて読みづらい。 既に力強い雇用統計の結果などを受けて、市場では7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げを完全に織り込んでいる。しかし、アトランタ連銀のボスティック総裁は7月会合での0.75ptの利上げを支持すると同時に、仮にインフレ指標が想定以上に悪化した場合には、1.00ptの利上げも選択肢になると言及したという。投資家は7月:0.75pt、9月:0.5pt、11月以降:0.25ptという利上げペースを想定しているが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと、利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。 また、期待インフレ率については、FRBが6月FOMCで0.75ptの利上げを決めた要因の一つとなったミシガン大学消費者マインド指数の7月分が今週末に発表される予定だ。ここでニューヨーク連銀調査に続いて長期期待インフレ率の低下が確認されないとまだ安心できない背景もある。週末にかけて米中の経済指標の発表が多いこともあり、今週は慎重なスタンスが求められそうだ。 後場の日経平均は軟調が続きそうだ。CPIを前にした警戒感がくすぶるなか、今晩の米株市場も続落となる可能性が想定される。また、景気底入れ期待が高まっていた中国経済の再悪化懸念が高まっており、リセッション(景気後退)懸念も再燃。さらに、国内でも新型コロナ感染が再拡大しており、リオープン(経済再開)への期待が萎んできている。ハイテク・グロース株から景気敏感株、リオープンまでほぼ全面安となるなか、けん引役が不在となっており、イベントも前に積極的な押し目買いは期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/12 12:10 後場の投資戦略 買い一巡後は上げ幅を縮小する展開 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26787.00;+269.81TOPIX;1907.90;+20.47[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、米6月雇用統計の結果が強く景気後退への懸念が和らいだこと、参院選で自民党が単独過半数を獲得して大勝し政局安定化が期待されたことが投資家心理にポジティブに働き、上昇してスタートした。ただ、中国の一部地域で新型コロナウイルス新規感染の増加が引き続き警戒され、アジア市況が軟調に推移すると、前場後半にかけて上げ幅を縮小した。日足チャートでは、75日移動平均線付近での売り買いが交錯している状況が窺える。 一方で、新興市場は売り優勢の展開となった。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたものの朝方を高値に上げ幅をじりじりと縮小、前場後半にかけて日経平均の連れ安となりマイナス圏に転落した。前週に米長期金利の安定推移でグロース株の見直し機運が高まり大幅に上昇、本日はリバウンドが一服して利食い売り優勢となっているようだ。また、13日には米6月消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、積極的に買い進む動きにはなりにくい。時価総額上位銘柄中心に軟調に推移、前引け時点で東証グロース市場Core指数が1.13%安、東証マザーズ指数が0.17%安となった。 さて、米6月雇用統計では雇用者数と平均賃金が揃って予想を上回ったが、8日の米長期金利の上昇は限定的だった。今週は13日の米6月CPIに加えて週末に米国で各種経済指標の発表が控えている。財・モノに関しては6月ISM製造業景気指数、ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数のピークアウト感から、インフレ沈静化の兆しが見られてきている。サービス分野についてはまだインフレ沈静化の兆しが見られておらず油断はならないが、6月CPIが予想の前年同月比8.8%上昇並みにとどまれば、投資家心理が一段と改善しそうだ。そのほか、週末に集中する米中の6月鉱工業生産や小売売上高などの経済指標も注目される。 国内では10日に参議院議員選挙の投開票が実施された。自民党が単独過半数を獲得して大勝し、この先3年間は国政選挙がないため、長期安定政権の誕生に繋がった。参院選後には新たな補正予算の編成なども期待されてもおり、政策期待が内需系銘柄の押し上げに寄与することが見込まれている。今後の政権の動向には注目が集まりそうだ。 後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に上値の重い展開が続くか。引き続きグロース株を手掛けにくい展開が続きそうで、手掛かり材料難のなか個別材料株や新興市場の直近IPO銘柄に向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/07/11 12:16 後場の投資戦略 相場一段高に必要なシナリオとは? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26869.82;+379.29TOPIX;1907.26;+24.93[後場の投資戦略] 前日の欧米株式市場が大きく上昇し、国内でも需給イベントへの警戒感が後退するなか、買いに弾みがつき、日経平均は午前からレンジを断続的に切り上げる強い展開となった。 今晩の米6月雇用統計を前に様子見ムードも広がりやすいところだが、米10年債利回りの落ち着いた動きやナスダックの4日続伸劇を追い風に、短期的に傾き過ぎた悲観の揺り戻しが起きているようだ。雇用統計については、雇用者数が予想を大幅に下回るようなことがなく、平均賃金の伸びが予想並みにとどまれば、景気後退懸念とインフレ懸念が同時に緩和することとなり、その場合には相場は一段と上値を試すことになりそうだ。 先週末に発表された米6月ISM製造業景気指数では新規受注の50割れがネガティブな事として話題になった。ただ一方で、60台後半で続いていた入荷遅延は57.3までに大きく低下し、価格も依然として高い水準とはいえ、80台半ばでの推移から70台後半にまで低下した。ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数にもピークアウト感が見られつつあり、少なくとも財・モノに関するインフレ圧力はかなり後退してきている様子。 モノから移行してきた新たなインフレ主要因されるサービス分野については、まだインフレ沈静化の兆しが見られておらず、油断はならない。しかし、雇用統計で平均賃金の伸びが予想を下回れば、サービス分野でのインフレ抑制の目処も見えてくると捉えられ、足元でリバウンドを強めている相場が一段と上値を試す展開はあり得よう。 いま、市場が期待しているのは上述した話が実現したうえで、7月のFOMCでは最後の0.75ptの利上げが行われ、同時に9月は0.5pt、その後は0.25ptが有力とする利上げ幅のペースの鈍化、そうしたFRBの超タカ派からタカ派への移行シナリオだろう。 すでに高官発言などを受けて上述した利上げペースのシナリオは織り込まれているため、7月のFOMCでこうした道筋が示されれば、相場の底入れはより確実なものになってきそうだ。 ただ、その前にはいくつかの関門が立ちはだかっている。今晩の米6月雇用統計もそうだが、来週13日に発表される米6月消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上回るようなことがあると、上述した期待シナリオは消失してしまう。また、来週からは米国で金融大手を皮切りに4-6月期決算が始まる。今回の企業決算シーズンが景気後退懸念をより強めてしまうのか、それとも大きく後退させてくれるものになるのかという点も大きく相場を左右してこよう。 後場の日経平均はアジア市況がしっかりとした動きのなか、堅調推移が続きそうだ。雇用統計前に持ち高調整が入ることも想定されるが、中国では財政省が地方政府に対して7-12月に1兆5000億元(約30兆円)相当の特別債発行を許可する方針と伝わるなど、景気浮揚策に関する報道が相次いでいる。中国での新型コロナ感染再拡大は懸念材料としてくすぶるものの、同国での景況感回復期待が相場の下支え要因として働くことに期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/08 12:14 後場の投資戦略 ボラティリティーの高さは投資チャンスと表裏一体 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26298.66;+191.01TOPIX;1867.98;+12.01[後場の投資戦略] 6月のFOMC議事録は、景気をある程度犠牲にしてでもインフレ抑制を優先するという、これまでのパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言などで既に確認済みの内容にとどまった。また、6月FOMC以降、米国で堅調されてきた個人消費を巡る指標が軒並み大きく悪化してきていることから、情報が古いと指摘する声も多く、特別材料視されなかったもよう。タカ派色を強める内容でもなかったことから、前日の米国市場では公表後に安心感から株価がやや上昇した。 米6月ISM非製造業景気指数は55.3と前月の55.9から小幅な低下にとどまり、市場予想の54を上回り、安心材料となった。項目をみると、景況感は56.1と前回の54.5から上昇。一方、雇用が47.4と前回の50.2から低下し、拡大と縮小の境目である50を割った。また、在庫も47.5と前回から低下して50を割り込んだほか、受注残は60.5と前回の52.0から大きく拡大。入荷遅延も小幅ながら前月から上昇し、61.9と高止まりした。 これらのことから、企業は人材確保に難儀していると推察され、こうした状況がリードタイム(発注から納品までにかかる時間)や受注残の増加に繋がっていると推察される。製造業では供給網(サプライチェーン)混乱の影響が緩和されてきたが、非製造業ではまだこうした影響が根強いようだ。財消費と異なり、サービス消費は金融政策の影響が及びにくいため、非製造業分野でのこうした傾向は、インフレ高止まりを示唆する内容ともいえそうだ。 前日の米国市場では金利が上昇したとはいえ、米10年債利回りは依然として3.0%を下回る推移となっており、ハイテク・グロース株の見直し買いが続いた。本日の東京市場でも、前日に大きく買われたSHIFTやベイカレントが続伸している。しかし、一方でマネーフォワード<3994>やSansan<4443>などは下落しており、前日まで3日続伸で相対的な強さを見せていたマザーズ指数も、本日はその他の主要株価指数とは対照的に下落している。明日の米6月雇用統計、来週13日の米6月消費者物価指数(CPI)を前にリバウンドが一服してきているようだ。 また、景気後退懸念が強く、原油をはじめとしたコモディティ価格の下落が続くなか、資源関連の売りも収まる気配がない。ただ、他のコモディティと異なり、原油については深刻な供給不足が解消されてない状態が続いている。一昨日急落したWTI原油先物価格は昨日も下落したものの、NY時間の終盤にかけては押し目買いも入っていたことから、鉱業関連にはそろそろ売りが一巡してくる可能性があるとみている。それでも、原油先物市場での投機マネーの割合は高い分、短期的には需給主導で下げが続く可能性も残されている。個人的には1バレル=90ドル割れが近づいてくる局面では妙味が出てくると考えている。 ほか、本日は国内での新型コロナ感染拡大、「全国旅行支援」の延期調整入りなどの報道を背景にリオープン関連が軒並み売られているが、旅行のように直接的な影響が大きい分野とは異なる、ラウンドワンのような安価なレジャー関連分野も一緒くたに売られている。今の感染状況については重症化率が低く、新型コロナについても、もはや他のウイルスとの特別な違いがなくなってきていることもあり、旅行支援が延期になったとしても、厳しい経済活動の制限が再び実施されるリスクは低いように考えられる。このため、リオープン関連の中では、短期的には見直し余地のある銘柄が多いように見受けられる。日々の相場のボラティリティーが高いのは落ち着かないかもしれないが、その分、市場にノイズ・歪みが発生しやすく、投資チャンスが発生しやすいと前向きに捉えたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/07 12:10 後場の投資戦略 グロース株の復調心強くも割り切り必要 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26089.86;-333.61TOPIX;1853.41;-25.71[後場の投資戦略] 本日の東京市場では景気敏感株を中心に値幅を伴った厳しい下げに見舞われている。米10年債利回りは前日に一時2.7%台を付けるなど、5月下旬以来の水準にまで大幅に低下。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.30%(-0.04pt)と、昨年8月以来、約1年ぶりとなる水準にまで低下。4月21日に付けた3.02%からの下落っぷりが凄まじい。 金利や期待インフレ率の急落ぶりからも窺えるように、景気後退(リセッション)を織り込む動きに歯止めがかからない。鉱業や鉄鋼、商社などのチャートの崩れ方が酷く、自律反発がいつ入ってもおかしくない水準とも言えるが、ここまで来ると、どこまで突っ込むのかを見極めるのはもはや困難。 一方、金利低下を追い風にグロース株の復調が目覚ましい。グロース株の代表格とも言えるJMDC<4483>は本日一時200日移動平均線を回復するところまで上昇した。その他でも、多くのグロース株のチャートで底入れ感が見られるものが多い。実際、日経平均やTOPIX(東証株価指数)が大幅に下落しているなか、マザーズ指数は大幅に上昇している。 こうなってくると、景気敏感株売り・グロース株買いのリセッショントレードの妙味が一段と増してきそうだ。ただ、グロース株がこのままずっと強いかと問われば疑問符が付く。景気後退懸念から金利が大幅低下していることが足元のグロース株の復調の大きな要因だが、忘れてはならないのは金利動向の背景にあるインフレだ。市場は景気後退懸念が加速するにつれ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ打ち止めや利下げ転換の時期が早まると見ているが、筆者としてはこうした考え方はやや危なっかしいと感じる。 米5月消費者物価指数(CPI)の結果を受けて、FRBが6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて一気に0.75ptの利上げに踏み切ったことで、インフレピークアウト期待は一度完全に後退した。ちなみに、米5月CPIは前年比+8.6%だ。FRBが目標とする2%からは著しい乖離である。確かに、足元の個人消費の減退やコモディティ価格の下落を受けてインフレピークアウト期待が再び高まっているのは間違いないし、実際、ピークアウトの確率は高まってきていると考える。しかし、現在の高水準のインフレと当局の目標値との乖離幅を踏まえると、いくら相場が1年以上先を見据えて動くとしても、利下げ期待まで織り込むのはやや時期尚早な気がしてならない。 特に、米国では財消費が大きく減退してきたことでモノに関するインフレは確実に沈静化する方向にあるが、ペントアップデマンド(繰越需要)も背景に、今度はサービス消費がインフレの主要因になってきている。そして、財消費と異なり、サービス消費は利上げなど金融政策による影響が小さく、簡単にはインフレは沈静化しないと考えられる。 スケジュール的にも、今晩には米6月ISM非製造業景気指数、6月FOMC議事録の公表が控えており、また今週末には米6月雇用統計が控えている。雇用統計では平均賃金の伸びなどが注目され、さすがに週末にかけては足元勢いづいているグロース株が小休止してもおかしくない。加えて、来週13日には米6月CPIが控える。パウエルFRB議長はインフレ期待を制御するにあたってはヘッドラインインフレが重要と述べており、CPIが近づくタイミングでは逆に、グロース株には再びヘッジ売りが入る可能性も想定されよう。 日米ともに株式市場が全面安とならずに、グロース株に活況ぶりが見られることは心強い反面、こうした動きに後追いで乗じるには大きなリスクが伴うことを肝に銘じておきたい。 後場の東京市場は引き続き軟調か。前場のTOPIXの下落率が2%未満のため、日銀による上場投資信託(ETF)買いは期待できない。また上述したように、今晩から米国市場では材料が多く控えていることもあり、積極的な押し目買いは入りにくいだろう。日経平均は26000円を維持できるかが焦点となり、短期筋の26000円割れを狙った仕掛け売りなどには注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/06 12:11 後場の投資戦略 株価水準的にもスケジュール的にも戻りはそろそろ一服? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26369.24;+215.43TOPIX;1877.10;+7.39[後場の投資戦略] 日経平均はナスダック100先物の大幅高を手掛かりに一時26500円を回復するも、その後は上値の重い展開となっている。米国の対中関税の一部適用除外に関する報道が好感されたようだが、まだ最終決定には至っておらず、インフレ抑制への寄与度もあまり期待できるものではないとみられる。また一方で、中国政府の産業補助金に対する新たな調査も明らかにする可能性があるとも伝わっており、総じてポジティブ一色のニュースでもない。 市場の関心がインフレから景気後退へと移ってきているなか、先週末に発表された米6月ISM製造業景気指数は53.0と、前月(56.1)から大幅に低下し、市場予想(54.9)も大きく下回った。構成項目では先行性の高い新規受注が2年ぶりに拡大・縮小の境目である50を下回ったことで、全体の50割れもかなり近づいている印象。 産業分野の中でも先行性の高い半導体を中心とした電子部品の需要減少、在庫調整に関する報道も相次いでおり、今後の生産動向でまだ伸びが期待できるのは自動車くらいだ。ただ、その自動車もグローバルな景気後退懸念から需要鈍化が見込まれており、関連企業の株価も冴えない。 また、きな臭さが漂っているのが中国。欧米諸国がこれから景気後退へと向かう一方、中国は「ゼロコロナ」政策の緩和や景気浮揚策を背景に緩やかながらも回復方向にあることが、世界のマクロ景況感の下支えとして期待されてきた。しかし、同国では再び東部・安徽省などで感染拡大が目立ってきているという。浙江省や上海市でも感染が報告されており、中国経済の重要地域である長江デルタ地域での影響拡大を防ぐために、当局が再びロックダウン(都市封鎖)を強化する懸念も強まっている。 現在、市場の関心事項は第一に「景気後退」、第二に「インフレ」だと思われるが、第一の「景気後退」を巡っては先週末から懸念が緩和されるようなポジティブな報道はほとんどないどころか、ネガティブなニュースの方が目立っている。こうした中でも、日経平均は週明けから2日連続で上昇し、500円程の回復を見せているが、明日から週末にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録、米6月ISM非製造業景気指数、米6月雇用統計、国内上場投資信託(ETF)の配当金支払い集中日などイベントが相次ぐなか、戻りはそろそろ一服する頃合いと見ておいた方がよさそうだ。 一方で、グロース株全般に強い動きが2日続けて確認されていることは明るい材料だ。インフレ懸念と景気後退懸念の綱引きにより、米10年債利回りが今後も落ち着いた動きを続けてくれれば、今後はコモディティや景気敏感株が冴えない中でも、グロース株が代わりにけん引役を担ってくれることで、市場内での資金循環が利くことが期待される。来週13日の米6月消費者物価指数(CPI)が近づいてくる場面では手仕舞い売りに注意したいが、目先はグロース株の続伸劇に期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/05 12:11 後場の投資戦略 米金利低下で投資家心理改善 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26085.07;+149.45TOPIX;1863.67;+18.63[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は上昇してスタートした後、アジア市況が軟調に推移したことを横目に前場中ごろに上げ幅を縮小して前週末終値付近まで値を下げた。その後再度買いが集まり上げ幅を拡げるも上げ幅は限定的、上値の重い展開となった。米国株の上昇に加えて米長期金利が低下したことが、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いているようだ。日足チャートでは、上下に長い髭を伴うを陰線を形成しており売り買いが交錯している状況が窺える。 新興市場も買い優勢の展開が続いているものの上値は重いか。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.42%高、東証マザーズ指数が1.37%高となっており、日経平均株価よりもやや値幅を伴って上昇している。時価総額上位銘柄中心に物色が向かっているようだ。冴えない動きだった米株市場が上昇に転じたことに加えて米長期金利が2.89%と1カ月ぶりの水準まで大幅に低下しており、バリュエーション面での割高感が気になりやすい東証グロース市場の中小型株には支援要因となっている。 ただ、日経平均株価が上げ幅を縮小している場面では、東証グロース市場の指数も同様に上げ幅を縮小していた。グロース株にとって金利の低下は支援要因にはなるが、7月以降もFRBが0.75ptの大幅利上げを実施する可能性が残るなか、グロース株を積極的に買い進むことは難しい。個人投資家主体の短期資金の逃げ足が速くなり、上値の重い展開となっている可能性がある。 さて、今週は米国で多くの経済指標の結果が発表される。6日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表、米6月ISM非製造業景気指数、7日に米6月ADP雇用統計や米5月貿易収支、8日に米6月雇用統計及び米5月消費者信用残高などが発表される。FOMC議事録が新たにサプライズになることはないと考えられているが、米雇用統計など各種経済指標の結果を見極めるまでは積極的に買い進む動きは限定的になりそうだ。 後場の日経平均は上値の重い展開が続くか。中国で新型コロナウイルス感染が再び増加していることを嫌気したアジア株下落に加えて、時間外で米株先物が下落していることが投資家心理を悪化させる要因となりそうだ。また、本日は米国の独立記念日で米株市場が休場、買い手掛かり材料に欠けるなか、東証グロース市場中心に投資家の目線が向かう可能性を想定しておきたい。 <AK> 2022/07/04 12:22 後場の投資戦略 需給もファンダも悪化でけん引役不在 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26159.53;-233.51TOPIX;1857.49;-13.33[後場の投資戦略] 前日発表された米5月PCEコアデフレーターは前年比の伸びが3カ月連続で鈍化し、市場予想も下回った。また、前月比の伸びも予想を下回り、インフレ懸念は鈍化した。しかし、投資家の関心は既にインフレから景気後退へと大きく移っており、物価指標の伸び鈍化よりも、個人消費支出がインフレ調整後の実質ベースで今年初となるマイナスに落ち込んだことの方が注目された。インフレ調整後の個人消費支出は前月分も+0.3%と速報値の+0.7%から大幅に下方修正されており、インフレ調整後の可処分所得も前月比-0.1%とマイナスになった。 株式市場で景気後退を織り込む動きは2週間ほど前から強まっているが、アナリストによる企業業績の下方修正が十分に進んでいないなか、こうした動きはまだ序盤ともいえる。7月中旬以降、日米で4-6月期の企業決算の発表が本格化していくが、ここでの業績下方修正などを見据えて、むしろ、こうした動きが更に加速化していくことに注意したい。 米半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算もネガティブな材料だった。コンピューターやスマートフォン向け需要が弱くなっているとし、6-8月期の見通しは売上高および一株当たり利益ともに市場予想を大きく下回った。各半導体メーカーの経営陣コメントから、既にPCやスマホなど民生向けで需要の減少が始まっていることは示唆されていたが、改めて需要の減速が確認された。 半導体業界では後工程において先んじて在庫調整が始まっていたが、今後は前工程でもこうした在庫調整を織り込む動きが一段と強まることが予想される。需要が減速してきている民生向け対して車載向けや産業向けの需要は旺盛とされているが、これまで堅調とされてきたデータセンターのサーバー向けも変調してきている。市場では、景気の先行き不安から米国企業などがサーバーへの設備投資を抑制し始めたとの指摘も聞かれる。 東エレクが連日で年初来安値を更新していることからも、投資家の先行きに対する不安の強さが感じられる。車載向けや産業向けの好調で相対的に強いとされてきたルネサス<6723>も連日の急落で、年初来安値を窺う位置にまで下落してきている。 景気後退懸念が強まるなか、海運株や商社株など、これまでグロース株が弱い局面でも相場をけん引してきた市況関連株も、6月以降は厳しい売られ方だ。また、歴史的な為替の円安進行が支援要因となってきた自動車関連株も最近は弱さが目立つ。今週は6月30日に一時1ドル=137円台に乗せるなど、円安が一段と進んだにも関わらず、株価の好反応は乏しく、むしろ、景気後退に伴うグローバルな自動車需要の鈍化を警戒した売りから株価の下落が続いた。円安進行に一服感も台頭しつつあるなか、今後は円高方向に振れた際の株価下落が気掛かりにもなる。暗号資産(仮想通貨)ビットコインも再び急落しており、相場は債券を除けばほぼ全部売りの様相だ。 年金基金によるリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景とした6月の月末にかけての需給改善期待がはく落し、相場のけん引役も不在な状態なまま7月入りとなった。不安定ななか、今月は8日に国内の主要上場投資信託(ETF)の分配金捻出が集中しているほか、米6月雇用統計が控え、13日には米6月消費者物価指数(CPI)が予定されている。需給改善から需給悪化へと意識が向かうなか、指標の結果次第では、26~27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けた下値模索の展開も想定されよう。 より手前の話で言えば、今晩には米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する6月製造業景気指数が発表され、6日には非製造業の景気指数も発表される。インフレよりも景気後退の方に目線が移ってきているなか、むしろこちらの方が注目度は高いともいえる。既に前月からの悪化が想定されているが、予想を下回ると景気敏感株を中心に一段と買い持ち高を縮小する動きに拍車がかかりそうで注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/01 12:13 後場の投資戦略 需給下支えから需給悪を意識する頃合い、オーバーキル懸念も一段と [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26561.05;-243.55TOPIX;1881.34;-12.23[後場の投資戦略] 日経平均は心理的な節目の26500円を前に下げ渋っているが、27000円前後に並ぶ主要移動平均線に上値を抑えられる形で大きく失速する展開となっている。前日の米株市場は今晩に発表される6月個人消費支出(PCE)コアデフレーターを前に様子見ムードが強かったとはいえ、終日動意に乏しい展開。年金基金によるリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景とした月末にかけての上昇期待も萎んでしまいかねない程の弱さに見えた。国内でも、今日が需給面ではピークとの指摘も聞かれている。 今晩に発表予定の米6月PCEコアデフレーターは前年比での伸びが3カ月連続で鈍化することが予想されている。予想通りとなれば、前日の6月ドイツCPIの結果に続く形で、インフレピークアウト期待が一時的に高まり、短期的には買いに弾みがつく可能性もある。 しかし、月替わりで7月に入れば、需給面での下支えがなくなるうえ、7月8日には国内の株価指数に連動するパッシブ型の上場投資信託(ETF)の配当金支払いが集中している。分配金捻出に伴う換金売りで現物株・先物を併せて1兆円程の売りが出ると想定されている。8日には米6月雇用統計が控えており、ただでさえ神経質になりやすい。この需給悪化のイベントを見据えて来週前半からは早くも売りが強まってくる可能性に注意したい。 前日のECBの年次フォーラムでは、パウエルFRB議長は米経済について家計と企業の財務状況は力強い状態にあり、堅調な労働市場を維持しながらインフレを2%に低下させる経済の軟着陸(ソフトランディング)は可能だとの見解を繰り返した。ただ、一方で同時にその達成はかなり厳しいとも認めた。また、積極的な利上げが経済を過度に減速させるリスクはあるものの、高インフレが持続し、消費者のインフレ期待を制御できなくなるリスクの方が大きいとも指摘しており、景気よりもインフレ抑制を重視する姿勢を改めて示した。 さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も同様の見解を示したうえ、政策金利を年内に3.0~3.5%へ引き上げ、来年には「4%を若干上回る」水準が望ましいとも述べたという。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表された政策金利見通しでは、2023年末の政策金利は3月時点での2.8%から3.8%へと大幅に引き上げられていたが、メスター総裁の言及した4%はこれを更に上回る水準。FRBは積極的な利上げを通じて需要を抑え込み、何がなんでもインフレを抑えたいと考えているようだ。オーバーキルへの懸念はますます強まるばかりで、相場の不安定な状況は長期化しそうだ。 後場の日経平均は冴えない展開か。今晩の米株市場では米6月PCEコアデフレーターに加え、半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算も予定されている。これらの結果の影響力はかなり大きいと想定され、イベント前に押し目買いは入りにくいと推察する。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/30 12:11 後場の投資戦略 景気後退懸念強まる中での実質金利上昇は嫌な組み合わせ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26759.99;-289.48TOPIX;1892.74;-14.64[後場の投資戦略] 前日の日経平均は後場に盛り返して終値で27000円を回復。日経平均先物については、夜間取引に序盤の米株高を映して一時27220円まで上値を伸ばしていた。しかし、その後の経済指標の悪化を受けた急速な基調転換もあり、本日の日経平均は1%を超える下落率で前場を終えている。 前日も指摘したが、27000円は心理的な節目として目先の戻り達成感が台頭しやすいうえ、この水準には25日、75日、13週、26週の主要移動平均線が集中しており、強力な上値抵抗帯として意識されやすい。前日の27000円回復で懸念が払拭されたかとも思ったが、今日の下落で改めてこうしたネガティブな捉え方が優勢となりそうだ。 前日、コンファレンス・ボード(CB)が発表した6月の米消費者信頼感指数は98.7と、前月から4.5pt低下し、2021年2月以来の低水準となった。インフレ圧力による景気後退懸念が消費者センチメントの重荷になっている。また、今後6カ月の見通しを映す期待指数は66.4と、約10年ぶりの水準にまで低下。さらに、雇用が「十分にある」との回答比率は小幅ながら低下し、今後6カ月の間に所得が減少するとの回答比率は2020年8月以来の高さとなった。米連邦準備制度理事会(FRB)は深刻な景気後退を避けられる理由として労働市場の堅調さを挙げているが、こうした見方に徐々に黄色信号が灯り始めている。 また、気掛かりなのは原油先物価格と米10年債利回りの動き。CB消費者信頼感指数の結果を受けて景気後退懸念が強まった中でも、前日の原油先物価格は深刻な供給不足に対する懸念から上昇、米10年債利回りも低下したとはいえ小幅にとどまり、先週後半の一時3%割れを窺う水準からは大きく上昇した位置にある。一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.48%(-0.07pt)と大きく低下。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は+0.70%と、再びじわり上昇基調にある。 先週は景気後退懸念が強まるなかでも、金利の低下がハイテク・グロース株を押し上げ、全体の底上げに寄与した。しかし、本日は景気後退懸念が再燃するなかでも実質金利が上昇し、景気敏感株だけでなくハイテク・グロース株も弱いという構図になっている。月末にかけては、年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いから上昇に期待する向きも多いが、こうした需給要因が剥落した月替わりの7月以降は、上述した背景から改めて相場の下落に警戒が必要だろう。 後場の日経平均については軟調継続を予想。アジア市況が総じて下落しているうえ、今晩は、欧州中央銀行(ECB)主催の経済フォーラムでパウエルFRB議長やラガルドECB総裁など要人らが討論会で発言する予定。金融政策の動向に加えて、景気やインフレの先行きについての見方が注目され、イベント前に買い戻しは期待しにくいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/29 12:17 後場の投資戦略 月末リバウンド期待にはや一服感? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26830.69;-40.58TOPIX;1890.75;+3.33[後場の投資戦略] 日経平均は朝安後に切り返して一時27000円を回復するなど、強い動きを見せたかと思いきや、心理的な節目を回復した目先の戻り達成感が台頭したか、その後急失速する展開となった。27000円前後にはちょうど25日、75日、13週、26週など主要な移動平均線が集中しており、戻り待ちの売りが意識されやすい水準ではあった。今日の前場の動きでこうした見方が裏付けられるような形となってしまい、やや印象が悪い。 先週末に非常に強い動きを見せたマザーズ指数も前日は上昇したとはいえ、控えめな動きだったうえ、今日は前引け時点で反落している。株価水準としては75日線が上値抵抗線として意識される位置にあり、6月9日の大幅高の際には同線を超えられずに失速して下落基調に再突入していたことから、リバウンドに乗ってきた投資家もそろそろ手仕舞いに動き出す可能性がある。 本日、午前の相場では大阪チタニウムやレノバ<9519>など、個人投資家人気の高そうな銘柄が一時急伸して賑わいを見せていたが、前引けにかけては大きく失速していた。一見、地合いが改善して物色も旺盛のような印象を受けるが、物色の主体はあくまで短期の値幅取りなど逃げ足の速い資金に限られるのだろう。前日の米耐久財受注速報値の結果を受けて景気後退懸念はやや緩和しているが、こうした懸念が根強くくすぶるなか、長期目線の投資家などは依然として様子見を決め込んでいる向きが多いだろう。 米国市場では月末にかけて年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景に、リバウンド基調の継続に期待する声も聞かれるが、先週後半からの上昇の一部には、こうした動きを先取りしているところもあろう。ここからの上値追いには慎重になった方がよいと考える。 後場の日経平均は軟調か。前場の間に心理的な節目の27000円を回復して目先の達成感が強まっているなか、新規の手掛かり材料難でもあり、再び27000円に向けて上昇していくイメージは持ちづらい。どちらかと言えば、短期的には26500円近辺に向けて調整する可能性に留意しておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/28 12:11 後場の投資戦略 米株高受け幅広い銘柄に物色向かう [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26768.77;+276.80TOPIX;1881.98;+15.26[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後前場中ごろに上げ幅をやや縮小した。ただ、前場中ごろにかけて再度買いが集まり上げ幅を拡げる展開となった。米国株の強い上昇に加えてインフレや利上げに対する過度な懸念はやや緩和していることが、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いているようだ。日足チャートでは、75日移動平均線に迫る勢いとなっている。 一転して新興市場はもみ合い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、前週末24日の大引け時点で東証グロース市場Core指数は8.19%高、東証マザーズ指数は5.68%高となっており、直近では一番の上げ幅となった。パウエル議長の会見及び米長期金利が低下したことで投資家心理が改善、バリュエーション面での割高感が意識されやすく直近手掛けにくかった新興株に物色の矛先が向いていた。両指数とも25日移動平均線を上回った。 ただ、本日は米長期金利が再度上昇したことが重しとなっているほか、買い一巡感が台頭しているもよう。また、東証プライム市場の主力株物色が中心となっており、新興市場はやや蚊帳の外状態でもある。ただ、戻り売りが優勢とならず前週末高値付近でのもみ合い展開となっていることはポジティブに捉えられよう。 直近IPO銘柄の動きも好調。本日上場のイーディーピー<7794>の初値は公開価格を64.0%上回る8200円、サンウェルズ<9229>初値は18.6%上回る2300円となった。24日に上場したマイクロ波化学<9227>は初値が公開価格を下回ったものの一転して買い優勢の展開となっている。直近IPO銘柄は指数にはまだ組み入れられていないため、指数のパフォーマンスには寄与しない点には留意したいが、個別に材料が出た銘柄や直近IPO銘柄にまずまずの物色が向かっており、個人投資家の物色意欲は後退していないことが窺える。 さて、ミシガン大学消費者マインド指数確報値では短期・長期の期待インフレ率が揃って速報値から下方修正された。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った理由の一つであっただけに、過度なインフレ懸念が緩和し、先週末の米株高を演出した。ただ、インフレピークアウト期待が剥落したままという大前提を踏まえれば、リバウンドは短期的なものにとどまる可能性があることは頭に入れておきたい。インフレ懸念とリセッション懸念の間を揺れ動く不安定な相場となり、物色動向も定まりにくいため、このまま買い戻しが続いていくことは想定しにくい。 後場の日経平均は上値の重い展開か。75日移動平均線を上抜けられるかに注目したいが、時間外取引のNYダウ先物やナスダック100先物を横目に推移していくだろう。引き続き東証プライム市場中心に投資家の目線が向かいそうで、新興市場を中心とする中小型株への物色は限定的となりそうだ。 <AK> 2022/06/27 12:19 後場の投資戦略 久々にグロ−ス株急伸も本格復調を期待するには時期尚早 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26362.24;+190.99TOPIX;1857.80;+6.06[後場の投資戦略] 前日の米株高を追い風に、本日の東京市場は概ねしっかりの展開。ただ、景気後退懸念を織り込む動きには歯止めがかからず、資源関連株を中心に景気敏感株の軟調が続いている。 前日の下院での議会証言では、パウエルFRB議長がインフレ抑制に「無条件」で取り組むとし、景気を犠牲にしてでもインフレ抑制に最優先で取り組む姿勢を示したことが話題となった。これにより、一段と景気後退(リセッション)は避けられないとの見方が強まり、資源関連株などの売りに繋がった。 リセッションを織り込む動きが加速するなか、将来の景気動向をも映す米10年債利回りは23日に3.08%と、6月14日に付けた高値3.48%から大幅に低下している。また、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も、リセッションに伴うインフレ減速を織り込む動きから、同日に2.50%まで低下し、4月21日の最高値3.02%からの下落率は大きなものとなっている。 こうした中、にわかに動意づいているのが、グロ−ス株だ。前日のナスダックが大きく上昇したのに倣い、本日の東京市場でもマザーズ指数が前引け時点で+4.80%と急伸している。東証プライム市場でもグロ−ス株が久々に強い動きを見せている。これは、リセッションを急速に織り込む傍ら、FRBが想定よりも早い段階で利上げの打ち止め、再緩和を強いられる可能性があると捉える動きを表していると推察される。 ただ、直近の高官発言から、FRBは7月以降も0.75ptの大幅利上げを続ける可能性が高まっている。また、6月から始まった量的引き締め(QT)は9月からは2倍のスピードに加速する。数十年ぶりの大幅利上げの連続実施に加えて、過去にない急速なペースで進めるQTという異例の組み合わせによる引き締め策の進行を踏まえると、グロ−ス株の本格復調を期待するのはまだ気が早いだろう。今日のマザーズ指数の急伸をもってグロ−ス株に強気のスタンスで臨むのは時期尚早と思われ、依然として投資家には慎重な行動を求めたい。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いか。米長期金利の低下などは値がさ株の支援要因とみられ、相場にポジティブだが、日経平均は今週、26500円が近づく場面では度々押し戻されている。前引け時点で既にこの水準に近いところまで上昇してきており、午後は上値が重くなる可能性もあろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/24 12:18 後場の投資戦略 イベント無難通過も失速、信越化学から窺う景気後退懸念の根深さ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26146.71;-2.84TOPIX;1853.18;+0.53[後場の投資戦略] 本日は、朝方一時250円程上げた日経平均が結局、前場は下落して終えるなど方向感に乏しい展開となっている。前日、NYダウ先物やナスダック100先物が1%以上下げていたことを受けて既に軟化していたため、パウエル議長の議会証言がサプライズ無く終わり、米株市場も軽微な下げにとどまったことから、本日は買い戻しが優勢になると考えていた。 しかし、一昨日と同様、日経平均は一時26500円近くまで上昇した後、大きく失速する展開となっており、この水準ではかなり戻り待ちの売りが強い様子。個別株でも、年初来安値圏にある東エレクなど半導体関連株が朝方の上昇を維持できずに下落に転じているあたり、上値の重さはかなり強い印象を抱く。 また、気掛かりなのは信越化学の動き。高い市場シェアと高収益率を誇り、化学セクターの中では多くの機関投資家がトップピックとしてあげる同社株が、本日4%を超える下落となっており、連日で年初来安値を更新している。日足チャートでは7日連続での陰線形成となり、週足で見ても、チャート形状の悪化が著しい。 財務健全・高収益のクオリティ株として代表的な同社株がこれだけ売られているのは注目に値する。住宅市場との連動性が高い塩ビ樹脂のほか半導体シリコンなどで世界トップシェアを誇る同社の株価急落は、やはり先週から一段と加速している景気後退を織り込む動きを表していると推察される。ファンダメンタルズに基づく長期目線の実需筋によるこうした景気後退を織り込む動きはまだ続く可能性が高く、当面は押し目買いのチャンスと見るべきでなく、しばらくは売りが一巡するのを待つのが賢明だろう。 後場の日経平均はもみ合いか。上値の重さが強く意識される一方、心理的な節目の26000円が近づく場面では買いも入りやすく、26000~26500円を意識したレンジ推移が続きそうだ。また、サプライズはないだろうが、今晩は下院にてパウエル議長の議会証言が予定されている。新味な発言があるとは思われないが、内容を確認したいとの思惑が一層動きを乏しくさせると考えられる。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/23 12:19 後場の投資戦略 米株高を追い風にできず相場の軟弱さ伝わる [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26255.95;+9.64TOPIX;1859.25;+3.05[後場の投資戦略] 前日に大きく上昇した日経平均は、本日はもみ合い、マザーズ指数にいたっては大きく下落している。前日の東京時間に、時間外取引のナスダック100先物などが大きく上昇していたことから、米株高はある程度は織り込み済みと思われたが、日経平均は一時マイナスに転じるなど、想定以上に弱い印象を受ける。 前日の日経平均は後場も一段高となって、16日と17日に空けたマドを早々に埋めたが、その直後から急失速する展開となった。そして、本日は米株高の追い風がありながらも乗り切れないといった嫌な流れになっている。マド埋めを果たしたことで早くもリバウンドに一服感が漂っている。 前日の米株市場の上昇についても、先週までの大幅下落を踏まえれば、自律反発の域を出ず、弱気相場下における一時的な反発に過ぎないと捉えている市場関係者がほとんど。本格的なリバウンドを期待するには、前日くらいの上昇率が3日以上は連続して起こり、より売り方の買い戻しを誘う必要があるだろう。 週明けに10%近く急落した後、前日には4%超反発したINPEXは再び3%超と大幅下落を強いられており、景気後退入りへの懸念も根深い様子。三菱重<7011>や川崎重<7012>などの防衛関連株も割り込んだ25日移動平均線を下回った推移が続き、本日も戻りが鈍い。 インフレ高進・利上げ加速や景気後退に対する懸念という根本的な不安要素がくすぶる中、リバウンドを期待する向きも少なく、日経平均でいえば26500円が近づいてくる水準では戻り待ちの売りが優勢となるのも頷ける。 また、今晩以降、2日間にわたって米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、上下院において議会証言に臨む。米連邦公開市場委員会(FOMC)通過直後のため、サプライズとなる可能性はほとんどないが、インフレ抑制に対してなりふり構わない積極的な姿勢を見せると、投資家心理が弱まっているなか、売り材料視される可能性があり、油断はできないだろう。 パウエル議長の議会証言を見極めたいとの思惑から、後場も日経平均は動意薄で、もみ合いが続きそうだ。前日とは対照的に、時間外取引のNYダウ先物やナスダック100先物が下げ幅を広げてきており、香港ハンセン指数も下落しているなか、東京市場でも売りが優勢となる可能性もあろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/22 12:14 後場の投資戦略 買い戻し優勢も自律反発の域出ず [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26225.15;+453.93TOPIX;1849.27;+30.33[後場の投資戦略] 前日の米株市場が休場で、手掛かり材料難のなかではあるが、本日は先週からの急落の揺り戻しといった様相で全般買い優勢の展開。市況関連株もハイテク・グロース株もどちらも足元売られすぎてきた銘柄に買い戻しが入っている。ただ、前日までの下落率を考慮すると、自律反発の域を出ていないといえる。 日経平均は短期的には16日と17日に空けたマド埋めに相当する26431.20円までの戻り余地がありそうで、今晩の米国市場が大幅反発でもすれば可能性はあるだろう。ただ、本稿執筆時点(21日午前11時前)において既に時間外取引のナスダック100先物が1.5%超上昇しており、今晩の米国株高はある程度織り込み済みと推察される。日経平均が明日も続伸し、マドを埋めるためには米株市場がより大きく上昇する必要があろう。 投資家の最大の関心事である世界的な利上げペースの加速や景気後退入り懸念は払拭できていない。景気の再減速が懸念される中国では、政府が原材料コスト上昇によって打撃を受けている川下企業を支援するために、新たな「桁外れ」の政策を計画していると、現地メディアが20日伝えた。中国景況感の底入れに期待したいところだが、米国のバーンズ駐中国大使が「中国のゼロコロナ政策は23年に入っても続く公算が大きい」と発言するなど、なお先行きは不透明だ。 また、英イングランド銀行(中央銀行)はインフレを押し上げるポンドの下落を抑制するため、より積極的に金利を引き上げる必要があると、金融政策委員会(MPC)のマン委員は主張したという。政府の景気支援策や力強い雇用、消費者の積み上がった貯蓄などを背景に国内の価格上昇圧力は従来想定よりも強い公算が大きいと指摘している。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も、インフレ抑制に動く姿勢は金融市場の動向に左右されないとし、7、9月の利上げを改めて支持した。 さらに、20日、サマーズ元米財務長官は40年ぶりの高インフレを抑制するには米国で5%を超える失業率が5年間続く必要があると指摘。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)が示した失業率見通しは今年5月の3.6%から24年までに4.1%への上昇となっており、大きな乖離がある。サマーズ氏は、FRBの金融政策の舵取りになお不信感があるとの姿勢だ。 利上げ加速や景気後退、これらに伴う企業業績の悪化、そして業績下方修正による株価バリュエーションの更なる調整といった悲観シナリオを払しょくすることは難しく、当面は弱気相場の延長戦となろう。投資家は自律反発狙いの買いもいいが、小まめな利食い売りを欠かさないようにするべきだろう。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いか。アジア市況や時間外取引の米株価指数先物が上昇しており、外部環境が良好なことが引き続き支援要因となる一方、連休明けの米株市場の動向を見極めたいとの思惑も働き、次第に様子見ムードが広がりそうだ。引けにかけてはもみ合いの様相が強まりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/21 12:10 後場の投資戦略 実需筋は粛々と持ち高調整進める [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25534.68;-428.32TOPIX;1809.55;-26.35[後場の投資戦略] 週明けの東京市場は自律反発もむなしく、日経平均は寄り付き天井の形で大きく失速。先週末の米株市場ではナスダックが反発したとはいえ、連日の急落を踏まえれば上昇率はあまりに小幅。また、NYダウにいたっては自律反発どころか続落となった。連日の急落後でもほとんど反発が見られないあたり、足元の相場の状況はかなり重症のようだ。 また、東京市場は先週末と同様、これまでけん引役だった資源関連株や防衛関連株に厳しい売りが目立っている。INPEXは昨年9月以来となる13週移動平均線割れとなっており、三菱重<7011>などの防衛関連株も長らく下値支持線となってきた25日線を大幅に割り込んできている。東エレクなどの半導体関連株も連日で急落し、年初来安値の更新が続いている。 先週末からの繰り返しにはなるが、相場はいよいよ世界的な金融引き締めが景気後退を招くオーバーキルを本格的に織り込み始めていると思われる。今晩の米国市場は祝日で休場なため海外勢の資金フローは限られるとの指摘も聞かれるが、東証プライム市場の売買代金は先週末の4兆円超えに続き、本日も前引け時点で1兆円4億円程とそれなりに膨らんでいる。東証グロース市場の新興株の下落率が軽微なのに対して、東証プライム市場の主力大型株の下落率がかなり厳しい点からも、個人投資家が粘っている一方、実需筋が持ち高調整の売りを加速してきている印象を受ける。 先物市場では、先週は東証株価指数(TOPIX)の先物手口において、週を通じてゴールドマン・サックス(GS)証券の大幅な売り越しが目立った。商品投資顧問(CTA)などの短期筋が手掛けることの多い日経平均先物に比べて、TOPIX先物でのGSによる大量売り越しは世界の景気動向をもとに投資戦略を立案するグローバルマクロ系のヘッジファンドが売りに傾いていることを示唆している。中国での都市封鎖(ロックダウン)の再拡大懸念や米国での相次ぐ経済指標の下振れ、景気よりもインフレ抑制を優先する中央銀行の姿勢などを背景に、マクロ系ファンドも本格的に景気後退を織り込み始めたと推察される。 週末にかけては米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が7月会合でも0.75ptの大幅利上げを支持する姿勢を明らかにしたほか、アトランタ連銀のボスティック総裁もインフレ抑制のためには何でもするとの鬼気迫る姿勢を見せた。 世界的な利上げ加速ペースの拡大や景気後退の度合いが計りきれず、株価への織り込みも十分とはいえないという指摘も多く聞かれるなか、当面は粛々と持ち高を調整する動きが続きそうだ。今年に入って最も厳しい売りに見舞われている半導体が代表するハイテクセクターに加えて、これまでけん引役だった資源関連、防衛関連の銘柄も相次いで急落している動きからもそうした様子が窺える。 後場の日経平均は下値模索の展開が続きそうだ。上述した通り、米株市場で自律反発がほとんど見られず、足元の相場はかなり弱気な状態。また、今の下落相場においては短期筋だけでなく実需筋による持ち高調整も出ていると推察される。買い戻す理由が当面見当たらないなか、後場の買い戻しも期待できそうにないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/20 12:11 後場の投資戦略 オーバーキル懸念強まり調整は長期化か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25858.50;-572.70TOPIX;1829.94;-37.87[後場の投資戦略] 日経平均は海外市場の急落を受けて大幅安を強いられ、5月13日以来となる26000円割れとなっている。寄り付きから急落した後はもみ合い状態で下値模索の展開とはなっていないが、自律反発の動きはほとんど見られず、26000円を割れても下げ達成感が台頭している様子はない。 また、興味深いのは、前日の米株市場ではナスダックの下落率がとりわけ大きかったにもかかわらず、本日の東京市場ではベイカレントやJMDC<4483>といったグロ−ス株の一角が逆行高となっているほか、エムスリー<2413>などのグロ−ス株の下落率があまり大きくない。一方で、今まで全体相場が軟調ななかでも強い動きを続けてきたINPEXや三菱重工、大阪チタ<5726>といった景気敏感株の下落率の方が大きい。こうした点から、今日の下落相場においては、短期筋主導の先物売りも出ているだろうが、実需筋の売りもそれなりに出ていると推察される。実際、前引け時点での東証プライムの売買代金は1兆6000億円あまりと、15日、16日に比べてまずまず膨らんでいる。 世界経済の中心である米国において経済指標の大幅な下振れが相次ぐなか、FRBだけでなく、世界各国の中央銀行がインフレ抑制のために相次いで利上げを急いでいる。それでも、インフレのピークアウトが未だ見通せないなか、今後さらに利上げペースが加速する可能性もあり、投資家はいよいよ当局による積極的な引き締めが景気後退を招くオーバーキルへの警戒感を本格的に織り込み始めたと考えられる。原油先物価格が反発している中でも、INPEXが急落していることや、上値追いが続いていた防衛関連株の急落は、こうした背景に基づく実需筋の売りを表していると考えられる。 短期筋による先物主導の下げであれば、状況次第ですぐに買い戻し、相場の反発なども想定されるが、実需筋が売り始めたとなると、相場の反発は当面期待しにくく、調整局面は長引きそうだ。当面は我慢強く相場の基調転換を待つべき局面とみられ、安易な押し目買いは避けた方がよいだろう。 後場の日経平均は安値圏でのもみ合いが続きそうだ。前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの思惑が下値を支えることも考えられるが、世界的な金融引き締め懸念が重くのしかかる。また、本日午後には日銀金融政策決定会合の結果公表と黒田総裁の記者会見が予定されている。為替動向への影響力が大きいだけに、総裁の発言内容などは注目度が高い。模様眺めムードが広がりやすいなか、積極的な押し目買いは期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/17 12:13 後場の投資戦略 日経平均は5日ぶり反発、FOMC無難通過も底打ちの確信深まらず [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26694.05;+367.89TOPIX;1879.29;+23.36[後場の投資戦略] FOMCでは約27年ぶりとなる0.75ptの利上げが決定された。FRBは先週までは6月会合では0.5ptの利上げを行う可能性が高いとし、5月のFOMC時点では0.75ptの利上げについては「積極的に議論していない」としてきたが、今回は事前のアナウンスを破る形で0.75ptの利上げに踏み切った。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙による事前の報道もあり、市場は0.75ptの利上げを織り込んでいたため、FOMCの結果公表直後の米国市場の反応は一時的に上下に振れたものの大きなものではなかった。ただ、その後、パウエル議長が記者会見で「次の7月会合では0.5ptか0.75ptの利上げに動く可能性が高い」としたうえで、「今回の0.75ptの利上げ幅は異例であり、この幅が普通になるとは見込んでいない」と説明した後から、株式市場は大きく上昇した。 市場は7月以降も0.75ptの利上げが行われる可能性が高いと警戒していたため、0.75ptの利上げは異例としたパウエル議長の説明を想定程にはタカ派でないと捉え、売り方の買い戻しが進んだようだ。 今会合では四半期に一度の政策金利・経済見通しが公表された。政策金利見通しの中央値は2022年末が3.4%と3月時点の1.9%から大幅に引き上げられ、23年末も2.8から3.8%へと大きく引き上げられた。一方、22年の経済成長率は3月時点の2.8%からトレンドとされる1.8%をも下回る1.7%にまで大きく下方修正され、23年の成長率も2.2%から1.7%へと引き下げられた。 ただ、22年比で横ばいであるほか、一部では1.5%まで下方修正されて、景気後退を伴うハードランディングが示唆されるのではないかという懸念もあったため、やや安心感を誘ったようだ。しかし、景気をある程度犠牲にしてでもインフレ抑制を優先する姿勢が示唆されたという意味で、内容的にはタカ派色が濃い。 それでも市場はFRBのインフレ抑制への決意を評価したとみられるが、結局、インフレのピークアウトが見通せないなか、今後の物価指標次第では再び利上げペースの引き上げの可能性があるわけで、不透明感が払しょくされたわけではない。株式市場も売り方の買い戻し以上に買いが入るとは考えづらく、相場が底を打ったと判断するには時期早々だろう。実際、本日の東京市場ではハイテク・グロース株で朝高後に失速しているものが多く見受けられ、投資家の疑念は根強い様子。 また、FOMCに隠れてあまり話題になっていないが、前日に発表された米5月小売売上高は前月比-0.3%と予想(+0.3%)に反して5カ月ぶりにマイナスとなったほか、前回、市場予想を大幅に下回った6月NY連銀製造業景気指数も前月からは改善したとはいえ、-1.2と市場予想(+2.3)を下回った。FRBの経済見通しと合わせて考慮すれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)のリスクは更に高まったと考えられる。 市場の見方はまだ覚束ないところがあり、先行きについては不安定さが伴う。また、今年はFOMC直後に上昇してもその後に安値を更新する展開が多いため、今回も同様な展開にならないか注視する必要がある。投資家はイベント通過後の上昇に油断することなく慎重な対応が引き続き求められよう。 午後の日経平均は外部環境が不透明ななか、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑もあり、前引けにかけて失速した流れが続きそうだ。今晩には英国で金融政策委員会が予定されているほか、明日には黒田日銀総裁の記者会見もある。総裁から円安をけん制するような発言が出るか注目され、イベント前に上値も重くならざるを得ないだろう。(仲村幸浩) <NH> 2022/06/16 12:19 後場の投資戦略 “異例”の掛け合わせが実施される中あく抜け感への期待は危うい [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26435.01;-194.85TOPIX;1865.00;-13.45[後場の投資戦略] 日本時間の明朝に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエルFRB議長の記者会見を控え、米株市場と同様、東京市場でも模様眺めムードが広がっており、日経平均は前場中ごろにかけて下げ幅を広げた後は動意に乏しい展開となっている。 一方、東証グロース市場では一昨日に好決算を発表して前日に大きく買われたビジョナル<4194>やスマレジ<4431>が大幅に続伸しているほか、先週に新規上場したばかりで前日に今期の大幅増益見通しを発表したANYCOLOR<5032>が急伸している。売買代金上位に位置する銘柄では強い動きが目立っており、米5月消費者物価指数(CPI)を受けてインフレピークアウト期待が消失した後も、個人投資家心理は大きく悪化していない様子。 明日に結果公表を控えるFOMCについて、市場は9割以上の確率で0.75ptの利上げを織り込んでいる。こうした中、これまでのアナウンス通り、FRBが0.5ptの利上げにとどめれば、当局がインフレを制御することに失敗するとの懸念から株式市場は嫌気する一方、1.00ptの利上げを行えばインフレ制御への期待から相場は好感するといった見立てが出ている。 今回のFOMCについては、結果も市場の反応もかなり読みにくく、そもそもこのようなイベント自体の短期結果について予測することは憶測の域を出ないが、上述したような議論はやや楽観的な印象を受ける。米CPIやPPIが前年比+8~11%という記録的な高止まりを続けるなか、仮に1.00ptの利上げを実施したとしても、政策金利はまだ2.00%だ。経済データに対して柔軟に機敏に対処する当局の姿勢は好感されるかもしれないが、これでインフレを制御できるとの考えに傾くにはあまりに時期尚早というか、短絡的すぎる印象が拭えない。 そもそも、通常の一回の利上げ幅は0.25pであり、0.5ptの利上げ幅は過去に経験したことが少ない。ましてや一回で1.00ptの利上げ幅など言わずもがなであり、かつ、今後も0.5~0.75ptの大幅利上げが続くことを踏まえれば、今回の金融引き締めが経済や株式市場に与える影響は計り知れない。そのうえ、過去にない異例なペースで進める量的引き締め(QT)との同時進行だ。“異例”の利上げ幅と“異例”のQTの掛け合わせ効果など誰も正確に予測できないだろう。 イベント通過後に短期的にあく抜け感が生じ、相場が反発する可能性は否定しないが、それは短命に終わる可能性が高いと考えられるし、そうした希望的観測に賭けて無理に投資する局面でもないだろう。イベント通過後の市場の反応をじっくり見極めてからの投資が無難であり、投資家には慎重な対応が求められよう。 中国の経済指標が予想を上回り、アジア市況が堅調に推移していることは投資家心理を下支えする一方、今週最大の注目イベントを目前に控えるなか、模様眺めムードが広がりやすく、後場も東京市場は動意薄の展開となるだろう。なお、今晩の米国市場では5月小売売上高や6月ニューヨーク連銀製造業景気指数など重要指標も発表される。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/15 12:10 後場の投資戦略 前提覆り買い場探しは当面先か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26446.82;-540.62TOPIX;1871.52;-29.54[後場の投資戦略] 前日の米株式市場は急落し、大幅に3日続落。ナスダックは先週9日から3営業日連続で大幅な下落率が続いている。主要株価3指数は揃って3営業日連続で引けにかけて下げ幅を広げる動きとなっており、売り圧力は相当強いと窺える。 米5月消費者物価指数(CPI)の発表直前まで、インフレピークアウト論を唱える強気派が多かったことを踏まえると、前提が覆されたことによる見直しが1、2日程度で終わるとは考えづらく、調整は長引くと想定しておいた方がよさそうだ。 これまで、今晩から開催される6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5ptの利上げが100%の確率で予測されていたが、米5月CPIの上振れに加えて、昨日のウォールストリートジャーナル紙の報道も手伝い、足元では急速に0.75ptの利上げを織り込む動きが強まっている(90%の確率まで織り込み進展)。大手金融機関も相次いで6月利上げ幅の予測を0.5ptから0.75ptに引き上げている。さらに、思い切って1.0ptの利上げを一気に実施するべきなどという極端な見解も出てきているようだ。 ただ、市場にサプライズをもたらすことを避けたいと考えるパウエルFRB議長は、これまで事前に市場への織り込みを進め、実際のFOMCでは予想通りの結果をもたらすという方法を長らく採用してきた。そのため、実際問題として現時点で0.75ptの利上げが必要であったとしても、FRBがこれまでアナウンスしてきた0.5ptの利上げを上回る利上げ幅を突如として行うことは躊躇するはず。そうでなければ、FRBの市場とのコミュニケーションに対する信頼性がなくなり、今後のFRBによるアナウンスメント効果は大幅に低下することになる。 そういう意味では、今の市場の利上げを巡る織り込みは急激すぎるといえ、6月FOMCの公表結果が市場予想を超えてタカ派になる可能性は低いと考えられる。しかし、それではFOMC前後が買い場になるのかと問われれば、それは別問題であり、個人的にはそれに対する回答は「No」だと考える。 6月FOMCで0.75ptの利上げがなくても、インフレピークアウト期待が消失した今、今後の7、9月会合での0.75ptの利上げ確率は十分に高いだろう。何より、今まで3月でピークアウトしたと思っていたインフレが実際にはピークアウトしておらず、前提が覆ってしまっている。そして、いつピークアウトするのかはもはや誰にも分からない状態だ。この大いなる不透明感がくすぶる限り、FRBの政策方針を巡っても不透明感は根強く残り、市場の思惑は絶えず続くだろう。こうしたコンセンサスが形成されえない状況そのものが相場にとって非常にネガティブなのであり、こうした中ではFOMCイベント通過後もあく抜け感は高まりづらいだろう。 そもそも、足元の米国のインフレ率は前年比で+8.6%、変動の激しい品目を除いたコア指数でも+6.0%という歴史的な高水準だ。これが当面続くか、もしくは再加速する可能性もあるなか、足元の政策金利はわずか1.00%。6月に0.5pt~0.75ptの利上げを実施したとしても、2%未満であり、インフレ率を大幅に下回った状態が続く。この状態でインフレがピークアウトすると考えること自体がナンセンスともいえ、現時点で値ごろ感だけで「そろそろ買いだろう」と判断することは非常に危うい。 米10年債利回りは前日に3.37%まで急上昇し、約11年ぶりの高水準を記録した。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.74%(前日比-0.02pt)とむしろ低下。4月21日に付けた3.02%を依然として大きく下回っている。期待インフレ率が急騰していないことは、市場はまだFRBが完全にインフレを制御できなくなるという最悪のシナリオを織り込んでいない証左といえる。そういう意味では、中央銀行の信任がまだかろうじて維持されているともいえる。 しかし、名目金利が大きく上昇する一方で期待インフレ率が伸びていないことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利(10年物)は13日時点で0.63%と急激に上昇する形となっている。実質金利の大幅上昇が株式のバリュエーション面での重石になることは明らかで、FRBの利上げペース加速を織り込む動きが当面続くとなると、実質金利の一段の上昇を通じた株式のバリュエーション調整による深押しが警戒されよう。 後場の日経平均は安値圏でのもみ合いが続きそうだ。ナスダック100先物が堅調推移を続けていることで、今晩の米株市場での自律反発期待もあろうが、アジア市況は総じて軟調。時間外取引のナスダック100先物の動きもあまり当てにならない。今晩には米5月卸売物価指数(PPI)の発表を控えていることもあり、積極的な買い戻しは期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/14 12:12 後場の投資戦略 基調転換はさらに鮮明に、一段の調整に要注意 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27088.86;-735.43TOPIX;1904.05;-39.04[後場の投資戦略] 注目された米5月CPIは前年比+8.6%と予想(+8.3%)及び4月(+8.3%)を大幅に上回った。前月比でも+1.0%と予想(+0.6%)を大きく超過し、4月(+0.3%)からは伸びが3倍以上に加速。さらに、変動の激しい品目を除いたコア指数でも前年比+6.0%と予想(+5.9%)を上回った。4月の+6.2%からは伸びが鈍化したが、前月比では+0.6%と予想(+0.4%)を上回ったうえ、4月(+0.6%)からは横ばい。少数点第2位までで見れば、伸びが鈍化どころか加速する形となった。 コア指数での前月比横ばいが持つ意味合いは大きく、3月で米国のインフレはピークを打ったとする期待は完全に消失したといえる。これまで株式市場はインフレピークアウト期待に基づいてリバウンド基調を辿ってきたため、完全にネガティブサプライズであり、インフレ高進・金融引き締めの加速懸念が再び強まるなか、目先はリスク回避の動きが続きそうだ。 CPIの結果を受けて、市場は6、7月だけでなく、9月までの0.5ptの利上げを完全に織り込んだ。しかし、もはや0.5ptの利上げではインフレ沈静化は困難であり、市場の目線は再び0.75ptの利上げへと移っている。市場はすでに7月での0.75ptの利上げを5割程の確率で織り込んできている。 14~15日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利見通し(ドットチャート)が公表され、FRBの利上げペースが注目される。相当にタカ派な結果が予想され、実際、市場も急速にタカ派への警戒を高めている。しかし、インフレのピークアウトが見通せないなか、先行き不透明感は相当強く、イベント通過後もあく抜け感は高まりづらいだろう。予想よりもタカ派であれば、素直に引き締め加速による金利上昇や景気後退懸念の強まりから、ネガティブに反応するだろうし、仮にハト派であれば、FRBはインフレを制御できないとの警戒感が強まり、政策不信感から結局ネガティブに受け止められる可能性が高い。 6月ミシガン大学消費者マインド指数も大幅に悪化し、過去最低を更新するトレンドが続いている。さらに同調査によると、個人消費者らの1年先および5~10年先の期待インフレ率は揃って上昇した。スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)リスクは一段と様相を強めたと言えそうだ。 欧州中央銀行(ECB)による定例理事会での政策決定やインフレ・経済成長率見通しの修正をきっかけに、相場の雰囲気が暗転しはじめたような印象があったが、米CPIやミシガン大学消費者マインド指数の結果を受けて、こうした基調の転換が一層強まったようだ。東京市場については、先週末が6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出日で、ちょうど需給イベントの通過日だったこともあり、なお一層需給の転換が意識されやすい。 しかし、これだけ相場のきな臭さが増しているにもかかわらず、米VIX指数は先週末の時点で27.75(前日比+1.66pt、+6.36%)と上昇幅が限定的で、危険水域とされる30には程遠い状況。債券市場に比べて株式市場の警戒感は十分に高まっていないとも考えられ、一段の調整には警戒が必要だろう。14日の夜には米5月卸売物価指数(PPI)が公表される。こちらも上振れが警戒され、FOMC前にさらにヘッジ売りなどが膨らむ可能性には警戒しておきたい。 時間外取引のナスダック100先物のほか、香港ハンセン指数なども大幅に下落しており、外部環境の悪化が鮮明ななか、午後も日経平均は軟調推移が続きそうだ。前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀によるETF買いが期待されるものの、今週はFOMCを筆頭に金融政策イベントが多く、先行き不透明感も強いなか、買い戻しの進展は期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/13 12:10 後場の投資戦略 「幻のSQ」と同時観測の悪材料で基調転換に注意 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27848.79;-397.74TOPIX;1949.84;-19.21[後場の投資戦略] 先週から想定以上に力強い上昇を見せてきた日経平均は6日ぶりに反落。28000円を大きく下回り、回復したばかりの200日移動平均線も割り込んできている。 前日日中取引の日経平均先物が28400円と、節目の28500円近くまで上昇した後、終盤にかけて急失速していたことから、リバウンド基調の一服は示唆されていた。6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出日に当たる今日が、ちょうど需給の転換点として警戒されていたが、今日の大幅下落により、こうした傾向がより鮮明になってしまった。 6月SQ概算値が28122.81円の一方、本日の日経平均の高値は28044.45円。SQ値を大きく下回った状態での推移が続き、完全に「幻のSQ」となってしまった。今晩の米5月CPIの結果と米国市場の反応次第ではあるが、来週以降の相場の調整局面入りに注意した方がよさそうだ。 前日のECB定例理事会での利上げペースの決定は、大きなサプライズとまでは言えないものの、7月に続き9月も0.25ptの利上げにとどまる可能性も残されていたなか、9月の0.5ptの利上げ示唆がタカ派的に捉えられたようだ。また、インフレ見通しについて、2022年末は5.1%→6.8%へ、23年末は2.1%→3.5%へと3月時点から大幅に引き上げられたことで、スタグフレーション(インフレと景気後退の併存)リスクが強まったことも投資家心理に悪影響を与えたようだ。 相場が再び神経質になるなか、今晩は注目の米5月CPIが発表される。変動の激しい食品・エネルギーを除くコア指数は前年比+5.9%(前月+6.2%)、前月比+0.4%(同+0.6%)と5月からの鈍化が予想されているが、一方で、総合指数では前年比+8.3%(同+8.3%)と高止まりが予想されており、前月比では+0.6%(同+0.3%)と加速する見込みだ。 また、欧州連合(EU)によるロシア産石油の一部禁輸などもあり、足元で原油先物価格などは再び上値を試す展開となっており、来月発表される6月分CPIについては再加速も懸念される。実際、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストなどを務め、市場関係者として著名なモハメド・エラリアン氏は、「インフレはピークに達していない」と警告し、6月分CPIの再加速の可能性を指摘。インフレは3月でピークアウトしたとする多くの市場関係者については「再考を迫られる可能性がある」としている。 さらに、元米連邦準備制度理事会(FRB)副議長のアラン・ブラインダー氏は、FRBが今後3回もしくは4回の会合で0.5ptずつの利上げを行う必要があり、インフレ率を目標の2%に戻すためにはリセッション(景気後退)に耐えなくてはならないだろうとも指摘したという。 メジャーSQの日に日経平均がSQ値と心理的な節目の28000円を下回ったことで、基調転換が警戒されるなか、こうした警戒材料が多く確認されていることも嫌な流れを感じさせる。投資家は再び慎重なスタンスが求められよう。 米5月CPIを前にした警戒感から押し目買いが入りにくいなか、後場の日経平均は引き続き軟調な展開が予想される。来週14~15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)も控えていることから、神経質な展開に注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/10 12:13 後場の投資戦略 需給イベント終了に伴う基調転換に注意 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28278.45;+44.16TOPIX;1972.84;+2.86[後場の投資戦略] 20年ぶりの円安水準の記録更新が続くなか、日経平均は5日続伸と強い動きが継続。前日に上回った200日移動平均線を下回ることなく、日足ローソク足は陽線を描き、下値と上値をともに切り上げている。 また、前日の米国市場では10年債利回りが3%台に乗せ、ナスダックが下落、現在も時間外取引でナスダック100先物が下落している中にもかかわらず、本日の東証プライム市場値上がり率上位にはラクス<3923>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>など中小型グロース株が多く入っている。マザーズ指数も本日は2%近い上昇率で大幅高。連日の日経平均の続伸劇を背景に連れ高している可能性もある。 しかし、特段目立った材料が見当たらないなか、ファーストリテ、キーエンス、任天堂などの値がさ株の上昇率が大きいことから、先物主導での上昇と考えられる。実際、今回の力強い上昇基調は先週から始まっているが、前日に公表された6月3日時点の裁定残高を見ると、ネットベースで8829.31億円の買い越しとなり、前週の5323.15億円の買い越しから大幅に増加。今週に入ってからの上昇も先物主導の上昇による裁定買いの様相が強そうだ。 海外勢は今年序盤から日本株を先物で大幅に売り越していたことから、足元では米金融政策に絡むイベントを前に、明日の6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出に向けて、売り方の買い戻しが続いているのだろう。しかし、明日にメジャーSQを通過したその晩には米5月消費者物価指数(CPI)が発表され、来週14~15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催が目前に迫る。タイミングとしてはそろそろ買い戻しも一服する頃合いと考えられよう。 株価指数の水準としても、日経平均は本日、3月25日に付けた高値28338.81円を手前に失速しており、心理的な節目となる28500円にはまだ距離があるところ。明日、SQ値を下回って推移するようなことになると、需給イベント終了に伴い、改めて下落基調に転じる可能性があろう。 一方、米国市場では、最近、ナスダックの乱高下がほとんど見られなくなり、ボラティリティー(変動率)がかなり落ち着いてきている。また、先行性の高い小型株で構成されるラッセル2000が、各時点での高値を結んで形成される右肩下がりのトレンドラインをブレイクしてからも概ね堅調に推移するなど、相場の底堅さを見せる明るい材料もいくつか確認される。 このように、強弱材料が混在する中ではあるが、上述したように、目先は明日のメジャーSQを起点としたトレンド転換に注意しておきたい。 後場の日経平均は円安進行を背景に底堅い推移が見込まれるものの、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況の軟調が重石となり、同時に上値も重い展開が想定される。明日の米5月CPIを前に模様眺めムードも台頭しやすいだろう。指数はもみ合いになるとみておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/09 12:13

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