後場の投資戦略
米CPI鈍化も過度な楽観は禁物
配信日時:2023/01/13 12:19
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;26143.41;-306.41TOPIX;1905.15;-3.03
[後場の投資戦略]
米12月CPIは前年同月比+6.5%と市場予想に一致し、11月(+7.1%)から大きく鈍化。前月比では−0.1%と減速に転じた。食品・エネルギーを除いたコア指数でも前年同月比+5.7%と市場予想に一致し、11月(+6.0%)から鈍化。一方、前月比では+0.3%と市場予想に一致も、11月(+0.2%)からはやや伸びが加速した。
前月比ベースでは、エネルギーが−4.5%と大きく減速し、11月の−1.6%から下げが加速。食品・エネルギーを除いたコア・財も−0.3%と、11月の−0.5%からは下げが鈍化したが、3カ月連続での減速となった。一方、食品・エネルギーを除いたコア・サービスが+0.5%となり、11月の+0.4%から伸びが加速。家賃など住居費の加速が影響した。食品は+0.3%と11月の+0.5%からは鈍化したものの、加速傾向が続いた。
CPIにおける家賃などの住居費に対して1年から1年半ほど先行する住宅価格指数が昨年4月にピークアウトしていることから、サービス・コア指数のピークアウトもあと数カ月と予想される。一方、中国経済再開への期待から銅先物価格の上昇が続くなど、ここに来て商品・エネルギー市況の下落トレンドに底入れ感が出てきている。商品市況の代表的な指数であるCRB指数も足元で上昇が続いている。
サービス・コアのインフレがピークアウトして減速に転じるまでには年央までかかるとみられ、その間に、商品市況の高騰を通じて再びモノに関するインフレが再燃すると厄介なことになる。インフレ再燃とまではいかなくても、これまでの減速傾向が止むだけでも、今後のCPIの低下スピードが減速することにつながるため、注意が必要だ。
こうした中、スワップ市場では今後2会合での米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ幅が0.5ポイント未満になるとの予想が織り込まれつつあるという。これは、確率としてはかなり低いものの、2月に0.25ポイントでなく0.5ポイントの利上げが行われた場合、そこで打ち止めになる可能性がゼロではないことを示唆している。
ただ、インフレピークアウトは明確であるものの、水準としては依然としてFRBの目標である2%を大幅に上回っており、今後の鈍化ペースも減速していく可能性を踏まえると、やや楽観的な印象を受ける。「モメンタム(伸び)」の減速を重視する市場と、「水準」を重視するFRBとの乖離は依然として大きい。今後の景気後退のスピードが遅く、度合いも浅ければ、市場の楽観がFRB寄りに修正を迫られる可能性があるし、景気後退のスピードが想定以上に速く、かつ深刻なものとなれば、FRBが折れる形で市場の利下げ転換に沿う展開も予想される。
しかし、FRBが年内の利上げは有り得ないとする現在の頑な姿勢を曲げて利下げに転じるというのであれば、それは相当に深刻な景気後退であり、この場合、株式市場は単純にFRBの利下げを歓迎できるわけではなく、深刻な景気後退を織り込む必要性、すなわち一株当たり利益(EPS)の低下を通じた株価下落に直面せざるを得ないといえる。つまり、年内のFRBの利下げ転換がないと分かり、利下げ期待が剥落する場合でも、FRBが折れて利下げに転じる場合でも、どちらにしても、株式市場には厳しい現実が待ち構えている可能性があるといえる。FRBの利下げ転換後には買い場が来ると思われるが、その前にはもう一段の下落に備えておきたい。
なお、今晩は米1月ミシガン大学消費者信頼感指数のほか、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティ・グループの金融大手の決算が控える。米12月ISM非製造業(サービス業)景気指数の予想外の50割れへの急低下によって景気後退懸念が強まっている最中でもあるため、消費者マインドの具合や、金融大手の経営陣による景気の見通しに対する発言に注目したい。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;26143.41;-306.41TOPIX;1905.15;-3.03
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米12月CPIは前年同月比+6.5%と市場予想に一致し、11月(+7.1%)から大きく鈍化。前月比では−0.1%と減速に転じた。食品・エネルギーを除いたコア指数でも前年同月比+5.7%と市場予想に一致し、11月(+6.0%)から鈍化。一方、前月比では+0.3%と市場予想に一致も、11月(+0.2%)からはやや伸びが加速した。
前月比ベースでは、エネルギーが−4.5%と大きく減速し、11月の−1.6%から下げが加速。食品・エネルギーを除いたコア・財も−0.3%と、11月の−0.5%からは下げが鈍化したが、3カ月連続での減速となった。一方、食品・エネルギーを除いたコア・サービスが+0.5%となり、11月の+0.4%から伸びが加速。家賃など住居費の加速が影響した。食品は+0.3%と11月の+0.5%からは鈍化したものの、加速傾向が続いた。
CPIにおける家賃などの住居費に対して1年から1年半ほど先行する住宅価格指数が昨年4月にピークアウトしていることから、サービス・コア指数のピークアウトもあと数カ月と予想される。一方、中国経済再開への期待から銅先物価格の上昇が続くなど、ここに来て商品・エネルギー市況の下落トレンドに底入れ感が出てきている。商品市況の代表的な指数であるCRB指数も足元で上昇が続いている。
サービス・コアのインフレがピークアウトして減速に転じるまでには年央までかかるとみられ、その間に、商品市況の高騰を通じて再びモノに関するインフレが再燃すると厄介なことになる。インフレ再燃とまではいかなくても、これまでの減速傾向が止むだけでも、今後のCPIの低下スピードが減速することにつながるため、注意が必要だ。
こうした中、スワップ市場では今後2会合での米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ幅が0.5ポイント未満になるとの予想が織り込まれつつあるという。これは、確率としてはかなり低いものの、2月に0.25ポイントでなく0.5ポイントの利上げが行われた場合、そこで打ち止めになる可能性がゼロではないことを示唆している。
ただ、インフレピークアウトは明確であるものの、水準としては依然としてFRBの目標である2%を大幅に上回っており、今後の鈍化ペースも減速していく可能性を踏まえると、やや楽観的な印象を受ける。「モメンタム(伸び)」の減速を重視する市場と、「水準」を重視するFRBとの乖離は依然として大きい。今後の景気後退のスピードが遅く、度合いも浅ければ、市場の楽観がFRB寄りに修正を迫られる可能性があるし、景気後退のスピードが想定以上に速く、かつ深刻なものとなれば、FRBが折れる形で市場の利下げ転換に沿う展開も予想される。
しかし、FRBが年内の利上げは有り得ないとする現在の頑な姿勢を曲げて利下げに転じるというのであれば、それは相当に深刻な景気後退であり、この場合、株式市場は単純にFRBの利下げを歓迎できるわけではなく、深刻な景気後退を織り込む必要性、すなわち一株当たり利益(EPS)の低下を通じた株価下落に直面せざるを得ないといえる。つまり、年内のFRBの利下げ転換がないと分かり、利下げ期待が剥落する場合でも、FRBが折れて利下げに転じる場合でも、どちらにしても、株式市場には厳しい現実が待ち構えている可能性があるといえる。FRBの利下げ転換後には買い場が来ると思われるが、その前にはもう一段の下落に備えておきたい。
なお、今晩は米1月ミシガン大学消費者信頼感指数のほか、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティ・グループの金融大手の決算が控える。米12月ISM非製造業(サービス業)景気指数の予想外の50割れへの急低下によって景気後退懸念が強まっている最中でもあるため、消費者マインドの具合や、金融大手の経営陣による景気の見通しに対する発言に注目したい。
(仲村幸浩)
<AK>
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