後場の投資戦略
FOMCショックはないが時間差でじわじわ来る?
配信日時:2022/12/15 12:15
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;28081.55;-74.66TOPIX;1975.13;-2.29
[後場の投資戦略]
前日の米株式市場は上昇推移が続いていたが、総じてタカ派な米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見を受けて、一気に下落に転じた。注目された政策金利見通し(ドットチャート)では、2023年末の政策金利中央値が前回9月時点の4.6%から5.1%へと引き上げられ、24年末の中央値は4.1%とされた。
FOMCの直前にフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込んでいた政策金利水準は来年5月頃をピークに4.8%程度で、23年末では4.3%程度となっていた。来年後半には0.25ptの利下げが2回行われると予想していたと考えられ、今回、FRBが示した見通しと大きな乖離がある。また、ドットチャートが示す23年末の政策金利中央値5.1%
は事前の予想を上回っているが、さらに、5.4%以上を望むメンバーが7人もいたことから、FRBのタカ派姿勢の鮮明化は著しいといえる。
パウエル議長の会見内容も全体的にタカ派的だった。今回の0.5ptの利上げにより、政策金利の誘導目標レンジは4.25−4.50%へと引き上げられたにもかかわらず、パウエル議長は「いまだ十分に景気抑制的な政策スタンスではない」としたほか、「インフレを目標の2%に戻すことに強くコミットする」、「インフレが2%に向かうとの確信が持てるまでは利下げは有り得ない」などと発言し、市場の利下げ期待をけん制した。
一方で、今回のFOMCを受けても、FF金利先物市場が織り込む金利水準は前日からほとんど変化していない。前日の米国市場での10年債利回りは一時急上昇した後に戻して、結局むしろ低下した。市場は依然として来年後半に利下げが行われると考えているようだ。
13日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)では、食品・エネルギーを除いたコア指数が前年比+6.0%にまで低下してきた。しかし、パウエル議長が主張するように、FRBがこの先、インフレが2%にまで低下することに自信が持てるまで利下げに転じないとすれば、来年は景気が減速する中での利上げの継続、そして高水準の金利据え置きが行われることになり、必要以上に引き締めすぎるオーバーキルのリスクが高まると考えられる。来年後半の利下げを信じ続けている市場はまだこのリスクを十分に織り込み切れていないだろう。
株価は一株当たり利益(EPS)と株価バリュエーション、市場の期待値ともされる株価収益率(PER)で決まる。来年は予想通りであれば、3月、早ければ2月には利上げが停止となるため、金利上昇を通じた株価バリュエーションへの下押し圧力はなくなるが、景気後退懸念が強まる中、今後はEPSの低下圧力が株価を下押ししていくと考えられる。
すでにアナリストによる米国企業の業績予想は来年4−6月期にかけて下方修正が進んでいるが、S&P500種株価指数を構成する企業から算出される株価バリュエーションのPERは過去の水準からみて依然として割高感が否めないため、さらなる株価下落余地はあると考えられる。
今晩は米国で重要指標が多く発表される。年末商戦での駆け込み需要から米11月小売売上高は堅調が予想されるものの、NY連銀とフィラデルフィア連銀が公表する製造業景気指数など企業のセンチメントを表す指数は低調が予想され、結果次第では、年末にかけて来年の景気後退を織り込む動きが加速するかもしれない。投資対象としては、引き続きディフェンシブセクターやリオープン関連などを選好したい。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;28081.55;-74.66TOPIX;1975.13;-2.29
[後場の投資戦略]
前日の米株式市場は上昇推移が続いていたが、総じてタカ派な米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見を受けて、一気に下落に転じた。注目された政策金利見通し(ドットチャート)では、2023年末の政策金利中央値が前回9月時点の4.6%から5.1%へと引き上げられ、24年末の中央値は4.1%とされた。
FOMCの直前にフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込んでいた政策金利水準は来年5月頃をピークに4.8%程度で、23年末では4.3%程度となっていた。来年後半には0.25ptの利下げが2回行われると予想していたと考えられ、今回、FRBが示した見通しと大きな乖離がある。また、ドットチャートが示す23年末の政策金利中央値5.1%
は事前の予想を上回っているが、さらに、5.4%以上を望むメンバーが7人もいたことから、FRBのタカ派姿勢の鮮明化は著しいといえる。
パウエル議長の会見内容も全体的にタカ派的だった。今回の0.5ptの利上げにより、政策金利の誘導目標レンジは4.25−4.50%へと引き上げられたにもかかわらず、パウエル議長は「いまだ十分に景気抑制的な政策スタンスではない」としたほか、「インフレを目標の2%に戻すことに強くコミットする」、「インフレが2%に向かうとの確信が持てるまでは利下げは有り得ない」などと発言し、市場の利下げ期待をけん制した。
一方で、今回のFOMCを受けても、FF金利先物市場が織り込む金利水準は前日からほとんど変化していない。前日の米国市場での10年債利回りは一時急上昇した後に戻して、結局むしろ低下した。市場は依然として来年後半に利下げが行われると考えているようだ。
13日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)では、食品・エネルギーを除いたコア指数が前年比+6.0%にまで低下してきた。しかし、パウエル議長が主張するように、FRBがこの先、インフレが2%にまで低下することに自信が持てるまで利下げに転じないとすれば、来年は景気が減速する中での利上げの継続、そして高水準の金利据え置きが行われることになり、必要以上に引き締めすぎるオーバーキルのリスクが高まると考えられる。来年後半の利下げを信じ続けている市場はまだこのリスクを十分に織り込み切れていないだろう。
株価は一株当たり利益(EPS)と株価バリュエーション、市場の期待値ともされる株価収益率(PER)で決まる。来年は予想通りであれば、3月、早ければ2月には利上げが停止となるため、金利上昇を通じた株価バリュエーションへの下押し圧力はなくなるが、景気後退懸念が強まる中、今後はEPSの低下圧力が株価を下押ししていくと考えられる。
すでにアナリストによる米国企業の業績予想は来年4−6月期にかけて下方修正が進んでいるが、S&P500種株価指数を構成する企業から算出される株価バリュエーションのPERは過去の水準からみて依然として割高感が否めないため、さらなる株価下落余地はあると考えられる。
今晩は米国で重要指標が多く発表される。年末商戦での駆け込み需要から米11月小売売上高は堅調が予想されるものの、NY連銀とフィラデルフィア連銀が公表する製造業景気指数など企業のセンチメントを表す指数は低調が予想され、結果次第では、年末にかけて来年の景気後退を織り込む動きが加速するかもしれない。投資対象としては、引き続きディフェンシブセクターやリオープン関連などを選好したい。
(仲村幸浩)
<AK>
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