後場の投資戦略ニュース一覧

後場の投資戦略 連日の米株安受けて軟調な展開続く [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27221.29;-305.83TOPIX;1937.10;-13.11[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比190円安の27280円。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均は売りが先行。FOMCの結果発表以降に米国株の下げが続いていることは、個人投資家心理の悪化に繋がった。本日の下落により日経平均は75日移動平均線を明確に下回ってきたため、センチメントの悪化を警戒した様子見ムードも強まりやすいとの指摘が一部市場関係者からは聞かれている。 一方、新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、マザーズ指数が軟調もみ合い展開に、東証グロース市場Core指数は下げ幅を縮小した。長期金利の低下自体は株式の支援要因と考えられるが、全面的なリスクオフの地合いとなっており新興株も厳しい地合いが続いている。そのほか、本日東証グロース市場に新規上場したトリドリ<9337>は買い気配が続いている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.94%安、東証グロース市場Core指数が0.21%安。 さて、前週の当欄でも述べたが直近で多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始め、買いのチャンスをうかがっている印象を受ける。具体的には、日経平均株価は米国経済失速懸念で来年前半に調整する場面があるが、その後は好調な内需や業績の回復期待、大統領選挙の前年というところもあり上値を試すと予想している。また、CFRAのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストーバル氏は「リセッションに向かっているが、それは来年の2つの話のうちの半分で後半は株式市場が回復する可能性が高い」と指摘している。 複数の世界最大級ファンドが年内に合わせて最大1000億ドル(約13兆6700億円)相当の株式を売る見通しとも、ブルームバーグで報じられている。株式相場は10-12月(第4四半期)ではプラス圏を維持しているため、他の資産クラスと比べた株式のバリューが高まっており、資産配分ルールに厳密に従う運用者は目標を満たすため株売りを余儀なくされる。つまり、資産配分の長期目標を満たすため、株式を売り債券保有増やす可能性があるようだ。 前述の売り材料には注視しておきたいが、相場はすでに底入れしている可能性も示唆した。ブルームバーグでは、ルーソルド・グループの最高投資ストラテジストであるジム・ポールセン氏が「底入れしており、新たな強気相場が始まりつつあると思う」と発言したことを報じている。行き過ぎた悲観論、はポジティブなサプライズの扉を開くと予想し、米金融政策や利上げの影響に投資家は集中し過ぎており景気は減速していると付け加えたようだ。現在の株式相場は弱い状況にあるが、筆者はこのような回復シナリオも想定して相場を見守っている。 ただ、筆者も多くの市場関係者と同様に、更なる下落シナリオを念頭に置いている。引き続き、雇用統計やインフレ指標、FRB高官の発言、地政学リスクの動向など、警戒する材料は多い。いまだに世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、軟調な展開が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/12/19 12:17 後場の投資戦略 景気減速下での高金利継続シナリオが重荷 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27620.66;-431.04TOPIX;1959.39;-14.51[後場の投資戦略] 日経平均は大幅に下落し、心理的な節目の28000円や25日移動平均線を明確に下放れた。一方、27500円や75日線、26週線、13週線が下値支持帯として意識され、下げ渋る動きも見せている。しかし、米S&P500種株価指数は13日の一時200日超えをピークに、綺麗に再び下落基調にあり、テクニカル面では今後も売りが続く可能性が高い。米国株が下値模索の展開となった場合、日経平均も上記のサポート水準を下抜ける可能性があろう。日経平均27300−27500円のレンジには日足、週足の主要移動平均線が集中しているため、ここを下抜けてしまうと、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが膨らむ可能性があり、注意したい。 15日、欧州中央銀行(ECB)も米連邦準備制度理事会(FRB)に続き、0.5ptへと幅を縮小した上で追加利上げを決定した。ただ、ラガルド総裁はインフレの水準は依然高すぎるとし、沈静化に向けて同様の利上げがしばらく続くと投資家に警告。今回の利上げ幅の縮小を「ECBの政策転換だと考えるのは誤りだ」とタカ派な姿勢を強調した。 一方、米11月小売売上高は前月比−0.6%と市場予想(−0.2%)を大幅に下回り、10月(+1.3%)から大幅に減速。自動車とガソリンを除いた基準でも−0.2%と市場予想(+0.0%)と10月(+0.8%)を大きく下回った。また、米11月鉱工業生産も前月比−0.2%と市場予想(+0.0%)を下振れた。さらに、企業のセンチメントを示すニューヨーク連銀製造業景気指数は−11.2と予想(−1.0)を大幅に下振れ、フィラデルフィア連銀景況指数も−13.8と予想(−10.0)を下振れた。 インフレは既に伸び率ではピークアウトしているものの、水準としては依然として各国中央銀行の目標を大幅に上回っている。世界的な金融引き締めが長期化する公算が大きくなっている一方で、経済指標には減速の兆しが見られはじめていて、今後は来年前半にかけて、景気後退・企業業績悪化を織り込む動きが加速していきそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/16 12:21 後場の投資戦略 FOMCショックはないが時間差でじわじわ来る? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28081.55;-74.66TOPIX;1975.13;-2.29[後場の投資戦略] 前日の米株式市場は上昇推移が続いていたが、総じてタカ派な米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見を受けて、一気に下落に転じた。注目された政策金利見通し(ドットチャート)では、2023年末の政策金利中央値が前回9月時点の4.6%から5.1%へと引き上げられ、24年末の中央値は4.1%とされた。 FOMCの直前にフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込んでいた政策金利水準は来年5月頃をピークに4.8%程度で、23年末では4.3%程度となっていた。来年後半には0.25ptの利下げが2回行われると予想していたと考えられ、今回、FRBが示した見通しと大きな乖離がある。また、ドットチャートが示す23年末の政策金利中央値5.1%は事前の予想を上回っているが、さらに、5.4%以上を望むメンバーが7人もいたことから、FRBのタカ派姿勢の鮮明化は著しいといえる。 パウエル議長の会見内容も全体的にタカ派的だった。今回の0.5ptの利上げにより、政策金利の誘導目標レンジは4.25−4.50%へと引き上げられたにもかかわらず、パウエル議長は「いまだ十分に景気抑制的な政策スタンスではない」としたほか、「インフレを目標の2%に戻すことに強くコミットする」、「インフレが2%に向かうとの確信が持てるまでは利下げは有り得ない」などと発言し、市場の利下げ期待をけん制した。 一方で、今回のFOMCを受けても、FF金利先物市場が織り込む金利水準は前日からほとんど変化していない。前日の米国市場での10年債利回りは一時急上昇した後に戻して、結局むしろ低下した。市場は依然として来年後半に利下げが行われると考えているようだ。 13日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)では、食品・エネルギーを除いたコア指数が前年比+6.0%にまで低下してきた。しかし、パウエル議長が主張するように、FRBがこの先、インフレが2%にまで低下することに自信が持てるまで利下げに転じないとすれば、来年は景気が減速する中での利上げの継続、そして高水準の金利据え置きが行われることになり、必要以上に引き締めすぎるオーバーキルのリスクが高まると考えられる。来年後半の利下げを信じ続けている市場はまだこのリスクを十分に織り込み切れていないだろう。 株価は一株当たり利益(EPS)と株価バリュエーション、市場の期待値ともされる株価収益率(PER)で決まる。来年は予想通りであれば、3月、早ければ2月には利上げが停止となるため、金利上昇を通じた株価バリュエーションへの下押し圧力はなくなるが、景気後退懸念が強まる中、今後はEPSの低下圧力が株価を下押ししていくと考えられる。 すでにアナリストによる米国企業の業績予想は来年4−6月期にかけて下方修正が進んでいるが、S&P500種株価指数を構成する企業から算出される株価バリュエーションのPERは過去の水準からみて依然として割高感が否めないため、さらなる株価下落余地はあると考えられる。 今晩は米国で重要指標が多く発表される。年末商戦での駆け込み需要から米11月小売売上高は堅調が予想されるものの、NY連銀とフィラデルフィア連銀が公表する製造業景気指数など企業のセンチメントを表す指数は低調が予想され、結果次第では、年末にかけて来年の景気後退を織り込む動きが加速するかもしれない。投資対象としては、引き続きディフェンシブセクターやリオープン関連などを選好したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/15 12:15 後場の投資戦略 「FRBに逆らうな」に従うならば・・・ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28141.41;+186.56TOPIX;1974.79;+9.11[後場の投資戦略] 日経平均は徐々に上値を伸ばす展開で、心理的な節目の28000円を優に回復。12月2日に割り込んだ25日移動平均線上への復帰も果たしている。一時75日線割れとなった8日に長い下ヒゲを伸ばしてからは、チャートの形状が大きく改善してきている。 前日に発表された米11月消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除いたコア指数で前年同月比+6.0%と市場予想(+6.1%)を下回り、10月(+6.3%)から減速。モメンタムを示す前月比でも+0.2%となり、市場予想(+0.3%)と10月(+0.3%)から減速した。また、エネルギー価格の下落を要因に、総合では前年同月比+7.1%と10月(+7.7%)から大きく減速、市場予想(+7.3%)も下回った。 インフレ減速期待が高まる中、米金利は全般低下しており、株式市場への影響力の大きい米10年債利回りは3.51%(−0.1pt)まで低下した。一方、日米の株式市場での好反応は控え目となっている。日本時間15日午前4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を直前に、さすがに買い上がる向きは限定的のようだ。 今回のFOMCでは四半期に一度の政策金利見通しや経済成長見通しが公表される予定だが、ブルームバーグ通信などは、見通しは米CPI発表前に既にまとめられている可能性が高いとしている。これまでの各連銀総裁の一連の発言からしても、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は9月時点の4.6%から5%をやや超える水準にまで引き上げられる可能性が高いとみる。 一方、米CPIの2カ月連続での予想以上の減速を受けて、市場でのインフレ・金利引き上げのピークアウト観測はさらに強まっており、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは来年5月前後を目安に4.85%まで低下している。また、来年末の政策金利水準の織り込みは4.17%まで低下してきた。ここから、市場は来年後半に0.25ptの利下げが2回以上行われると予想していると解釈できる。 米CPIの明確な減速傾向は歓迎すべきことではある。しかし、改めて8月のジャクソンホール会合以降のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の主張を振り返ると、ウィリアム・ミラー議長時代の早期利下げ転換によるインフレ再発に対する警戒感を完全には解いていないとみられる。このため、来年2−3回の利下げを織り込んでいる市場はやや先走っている印象が否めない。明日公表される政策金利見通し(ドットチャート)で高水準の金利が長く据え置かれることが示され、さらに、パウエル議長の会見で利下げ転換は時期尚早とのスタンスが再表明された場合のリスクには注意が必要だろう。 株式市場の焦点もすでにインフレや金利動向そのものよりも、高水準の金利が長く据え置かれた場合にもたらされる実体経済へのダメージに移っている。米CPIの明確な減速傾向は確かに明るい材料だが、インフレのモメンタムが減速しても水準は依然としてFRBの目標より非常に高い状況だ。市場が常に先読みして動くことは道理ではあるが、FRBが利上げ幅の縮小からさらにもう一歩踏み込んで利上げ停止の明確な時期を示唆するなどスタンスをもう一段ハト派化しない限りは、株式市場が本格的に戻り基調に復帰するには時期尚早だと考える。筆者が過度に弱気派なだけかもしれないが、今一度、市場の格言として有名な「FRBに逆らうな」の意味を再考したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/14 12:17 後場の投資戦略 引き続き物色の選別が重要 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27946.09;+103.76TOPIX;1967.48;+10.15[後場の投資戦略] 今晩の米11月消費者物価指数(CPI)の発表や、日本時間15日午前4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、東京市場は様子見ムードが広がっている。前日の米株式市場では買い戻しが活発化し、主要株価指数が揃って大幅反発したのに比べて、東京市場は上値の重い展開で、日経平均と東証株価指数(TOPIX)はともに25日移動平均線前後の水準で動意に乏しい。 今晩のCPIが予想を下回れば、インフレ減速期待は強まり、米株式市場ではFOMC前にさらに買い戻しが強まりそうだが、日本株は本日のように膠着感の強い展開が続きそうだ。理由は為替動向だ。CPIの下振れを受けて米長期金利が低下した場合、為替は再び円高・ドル安方向に振れる可能性が高い。日本株の米国株に対する相対パフォーマンスは為替との連動性が高いため、円高が進行した場合、輸出企業の採算改善期待が後退する形で日本株の上値は重くなるだろう。本日は自動車関連の株価などは堅調だが、指数の米国相対比での上値の重さにはこうした背景があるのかもしれない。 また、インフレ減速期待が高まっても、直後のFOMCにおいて利下げ転換には程遠いなどと米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派スタンスが再強調されれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)への警戒感が強まり、来期の業績下振れリスクを織り込む動きが加速する可能性もある。このケースでも、世界の景気敏感株と称される日本株には厳しい展開が予想される。 今回のCPIとFOMC後の株価反応を予想するのは非常に困難だが、事前の織り込み度合いからは、過度に楽観にも悲観にも傾いていない印象だ。イベント通過後のあく抜けに期待する声も聞かれるが、年明け以降の明るいニュースが見えてこない中、株価上昇の持続性にも疑問符が付く。世界が怯える景気後退リスクに加えて為替リスクが加わる日本株の先行きに楽観視は禁物だろう。引き続き景気や為替の動向と連動性の低い、内需系ディフェンシブやリオープン関連、内需系グロースなどのセクター・テーマへの投資に徹するべきと考える。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/13 12:17 後場の投資戦略 今週はインフレ指標の結果やパウエル氏の発言に注目 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27821.12;-79.89TOPIX;1958.91;-2.65[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、マイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ先物にサヤ寄せする格好から、本日の日経平均はやや売りが先行。先週でメジャーSQは通過したものの、13日に発表される米11月CPIへの警戒感も高まるなか、ひとまずは先週末の上昇に対する反動安が意識されやすいところとなっている。 一方、新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、じりじりと下げ幅を縮小する展開となっている。米国でインフレ鎮静化への期待がやや後退したことは、国内の個人投資家心理にもネガティブに働いている。また、13日に米11月消費者物価指数(CPI)、14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見などを控えて、様子見ムードも広がっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.30%安、東証グロース市場Core指数が0.60%安。 さて、11月の米卸売物価指数は前年比、前月比ともに上昇率が市場予想を若干上回った。11月米PPIは前月比0.3%上昇、前年比7.4%上昇で10月の8.1%から鈍化している。サービス価格が前月比0.4%上昇と全体の上昇の大半を占め、財(モノ)の価格は0.1%上昇となり、食品価格が3.3%上昇した一方、エネルギー価格が3.3%下落した。根強いインフレ圧力が再度浮き彫りとなり、投資家心理にネガティブに働いている。 明日13日には米11月消費者物価指数(CPI)が発表される。食品・エネルギーを除いたコアCPIでは前月比+0.3%と10月から横ばいが予想されているが、前年同月比では+6.1%と10月(+6.3%)から減速する見込みだ。総合指数は前年同月比7.3%上昇(前月7.7%上昇)の見込み。前回のように市場予想を下回る伸びとなれば、インフレ減速期待を高めることになり投資家心理を下支えする展開となろう。 ただ、米11月PPIのように予想を上振れると地合いは悪化しそうだ。財のコア・インフレが落ち着きつつある中、注目はサービス分野の価格の伸びに移りつつあるという。住宅分野はいずれ方向を転じると予想されており、インフレの最終的な軌道は賃金が鍵を握るとみられている。これらの分野の数値にもしっかりと注目しておきたい。 14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見なども重要。FOMCは0.5ポイントの利上げを決めると広く予想されているため、投資家はパウエル議長の記者会見での発言に注目している。ブルームバーグでは、「FOMCの米経済見通しと金利予測の変化の有無も焦点。」と報じている。 毎週月曜日の当欄では、来年に大きな下落を想定して相場を見守っていることを都度発信していた。ただ、直近で多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始め、買いのチャンスをうかがっている印象を受ける。株式市場は予想が傾きすぎると、大方の予想に反して動くため、筆者は相場の展望を再考している。前週では「タックスロス・セリング」を例に挙げて、12月中旬から年末にかけて大きな下落を見せる可能性を示唆した。あまり現実的ではないが、このような動きをする可能性も頭の片隅に置いている。 一方で、相場はすでに底入れしている可能性もあるという。ブルームバーグでは、ルーソルド・グループの最高投資ストラテジストであるジム・ポールセン氏が「底入れしており、新たな強気相場が始まりつつあると思う」と発言したことを報じている。行き過ぎた悲観論、はポジティブなサプライズの扉を開くと予想し、米金融政策や利上げの影響に投資家は集中し過ぎており景気は減速していると付け加えたようだ。また、別の記事で「金融引き締め策は新型コロナ禍で膨張した資産バブルの縮小に大きな効果を発揮している。」と報じた上で、「現在の資産デフレは、FRB議長らが求める経済のソフトランディング実現に寄与する可能性がある」と示唆している。このような視点も持って相場を見守っていきたい。 今後の株式市場の動向を予想するうえで、現段階ではやはり米11月CPIやFOMCの結果公表、パウエル議長の記者会見に最大の注目をしておきたい。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、上値の重い展開が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/12/12 12:26 後場の投資戦略 SQ値上回るも本番は今晩から [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27946.21;+371.78TOPIX;1964.30;+22.80[後場の投資戦略] 日経平均は大幅反発し、再び75日移動平均線上に復帰。前日は27500円を割り込む場面もあったが、本日は心理的な節目の28000円を窺う位置にまで戻してきている。SQ値も大きく上回る水準で前場を終えている。直近の売られ過ぎ感から前日の米株式市場でハイテク・グロース株が買い戻されたことが、東京市場にも好影響を及ぼしているようだ。ただ、イベント前のポジション調整的な域を出ていないといえ、今後の動向は今晩からの海外市場睨みとなろう。 今晩は米11月卸売物価指数(PPI)のほか、12月ミシガン大学消費者信頼感指数が発表される。食品・エネルギーを除くコア指数は前月比で+0.2%と10月(+0.0%)から加速する見込みだが、前年比では+5.9%と10月(+6.7%)から大きく減速する見込みとなっている。予想通りとなれば、インフレ減速・利上げペース減速への期待が高まり、相場の支援要因となろう。 12月ミシガン大学消費者信頼感指数での1年先期待インフレ率は4.9%と11月(4.9%)から横ばい、5−10年先長期期待インフレ率も3.0%と11月(3.0%)から横ばいが予想されている。期待インフレ率は、消費者心理への影響が大きいガソリン価格に左右されやすいとされるが、軟調な原油市況を背景にガソリン価格も低水準におさまっているため、期待インフレ率が予想よりも低下すれば、長期金利のさらなる低下を通じて相場を下支えしそうだ。 一方で、前日の当欄での主張の繰り返しになるが、年内最後のビッグイベントとなる13−14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではまだリスクが残る。政策金利見通し(ドットチャート)が公表される予定だが、現在のフェデラルファンド(FF)金利先物市場はターミナルレート(政策金利の最終到達点)として5%を下回る水準までしか織り込んでいないうえに、来年半ば以降の利下げ転換まで予想している。しかし、5%を大きく上回るターミナルレートが示される可能性は十分にある。また、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、これまで明らかにしているように利上げの累積効果を見極めるために利上げペースの減速が適切との見解は繰り返し主張するだろうが、インフレ沈静化のために利上げ停止は時期尚早との主張も同時に再表明する可能性がある。 利下げ転換まで織り込んでいる市場はやや先走り過ぎている印象が否めない。また、今後、米国経済の景気後退が不可避とされ、予想一株当たり利益(EPS)の低下が予想されている中、足元のS&P500種株価指数を構成する企業から成る予想株価収益率(PER)はヒストリカルで見て割安感に乏しく、むしろ割高感すらある。日本株についてはバリュエーションの割高感はないが、3月期本決算企業の上半期決算を終え、輸出企業の想定ドル円レートの平均値が1ドル=138円とされる中、今後の円高リスクも想定すると、割安感だけでは投資妙味に乏しいだろう。 これも日々、当コンテンツ内で繰り返している主張になるが、金利や景気、為替などの動向に不透明感が強い中、これらファクターに左右されやすい企業の投資妙味は乏しいと考えられる。強いて言えば、景気後退懸念で長期金利の上昇圧力が抑えられる中、金利動向に左右されやすいグロース株のうち、内需系セクターの銘柄には投資妙味があるといえる。 その他では、やはり不透明感の強い外部ファクターの影響がもっとも小さいと思われるリオープン関連が望ましいだろう。中国でのコロナ規制がさらに緩和されない限り、インバウンド需要の本格回復は見込みにくいが、中国を除いたインバウンド需要は非常に速いペースで回復している。また、全国旅行支援の延長が決まっている中、国内の旅行需要の旺盛さも続くことが予想される。ホテルや旅行予約サイト、鉄道などの関連株には物色余地がまだあると考えたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/09 12:22 後場の投資戦略 金利低下が支えとならず、FOMCでは一段安の可能性残す [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27480.49;-205.91TOPIX;1935.61;-12.70[後場の投資戦略] 日経平均は続落し、ここ数日の間、下値支持線として機能してきた75日移動平均線をあっさり下回ってきた。また、心理的な節目の27500円をも割り込んだ。一方、日足一目均衡表の雲上限近くでは下げ渋っており、踏ん張る動きも見られている。 前日の米株式市場は引き続き冴えない展開となった。前日はゴールドマン・サックス・グループ主催の投資家会合の2日目が開催されていた。一昨日に続き、米金融大手の経営陣からは景気の先行きに対して悲観的な見通しが相次いで示されたようで、こうした背景が、連日で軟調となっている米株式市場の要因として考えられそうだ。 当該会合において、USバンコープの最高経営責任者(CEO)は「個人消費はなお健全さを維持しつつも、現在は転換点に差し掛かっている」としたほか、「現状は良好だが、現金残高が近いうちになくなり始め、消費の鈍化につながる見通し」などと発言したという。また、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のCEOも11月の同行カード支出の伸びが鈍化し、消費者の預金残高も減少し始めたことを指摘したという。米国の国内総生産(GDP)の7割と最大の割合を占める個人消費が今後落ち込んでいくとすれば、多くの金融グループが予想するように、来年の米国経済の景気後退は不可避となりそうだ。 こうした懸念を反映してか、米10年債利回りは7日、3.42%(−0.11pt)と9月半ば以来の水準にまで大幅に低下した。一方で、気掛かりなのが、これだけ金利が低下している中にもかかわらず、前日の米株式市場でハイテク・グロース株は総じて下落しており、本日の東京市場でも関連株の多くが売られている。まさしく金利低下(=債券買い)と株式売りという、典型的なリセッション(景気後退)トレードの構図となっている。こうした投資家によるリスク回避の動きは続いているようで、ドイツ銀行によると、11月28日−12月2日の週において株式ファンド(投資信託、ETF)からは162億ドルの資金流出が発生したという。これは週間の資金流出額としては過去5カ月で最大だったとされている。 今週末9日には米11月卸売物価指数(PPI)、来週には13日に米11月消費者物価指数(CPI)、そして14日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見が予定されている。これら一連のイベントを消化した後には、米国ではクリスマス休暇入りとなる投資家も多いとされている。現在続いているリセッショントレードがこうした休暇入り・イベント前の最後の持ち高調整に過ぎないという話であれば、いまの株式下落をそこまで悲観的に捉える必要はないだろう。 ただ、年内最後の株式売りがFOMC結果公表後に訪れる可能性はある。現在、リセッションを反映する形で、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は来年5月頃をピークに4.93%程度となっている。また、金利先物市場は年央からの利下げ転換まで予想しており、来年12月の政策金利水準としては4.45%程度となっている。 しかし、直近の米11月の雇用統計やISM非製造業(サービス業)景気指数の強い結果なども踏まえると、FOMCにて公表される政策金利見通し(ドットチャート)では、来年末の政策金利が5%を優に超えてくることは十分にあり得る話だ。また、24年末までの見通しから、高水準の金利が長く据え置かれることも合わせて示される可能性もあろう。こうしたリスクに対して、今の株式市場が織り込めているかといえば、まだ不十分なようにも見える。 金利低下を背景に株式の投資妙味が高まっていると前向きに考えたいところだが、押し目買いの好機は今ではないのかもしれない。こうした中、金利動向や景気動向に左右されにくい内需系ディフェンシブ銘柄や、さらなるインバウンド需要が見込めるリオープン関連などの銘柄に相対的な妙味があると考える。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/08 12:21 後場の投資戦略 景気後退を織り込む動きが加速 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27756.94;-128.93TOPIX;1952.52;+2.30[後場の投資戦略] 日経平均は反落も、前日と同様、朝安後は切り返して下げ渋る展開となっている。日足チャートでは引き続き75日移動平均線がサポートラインとして機能している形だ。米国株が連日で大きく下落したのに対して下落率が軽微にとどまっているのは、為替の円高進行が一服していることが大きいだろう。先週末には一時1ドル=133円台を付ける場面があったが、本日は137円程度まで戻している。 一方、米国株は厳しい状況が続いている。前日の米株式市場で主要株価指数は寄り付きから取引終盤までじわじわと下げ幅を広げる展開となった。米大手銀行の各CEOから景気の先行きに対して悲観的なコメントが相次いだことなどを背景に、ロングオンリー(買いのみで空売りをしない)の長期目線の投資家による現物株の持ち高削減が粛々と進められたほか、ショートカバー(空売りの買い戻し)をしていたヘッジファンドなども午後は再度売りに転じていたとの指摘が聞かれた。 一昨日にはブルームバーグ通信が匿名条件の関係者の話として、電気自動車大手テスラが需要動向を勘案して、中国・上海工場で減産に踏み切る方針とも報じていた。12月に入って、大手企業から雇用削減や需要鈍化のメッセージが増えてきている点は非常に気掛かりだ。 また、直近の7−9月期決算の際には、SaaS型のクラウドサービスなどを提供する米国のIT企業の多くが、決算説明会にて景況感の悪化を背景とした契約サイクルの長期化を口にしていた。米国で不況の音は確実に近づいているようだ。 5日に大きく反発した米10年債利回りは景気後退懸念が重くのしかかる中、6日は再び低下した。米長期金利が再び急ピッチで上昇してこない限り、株価収益率(PER)の低下を通じた株価下押し圧力は限定的だろう。しかし、企業から景気先行きに対する悲観的なメッセージが止まないと、年明けに控える10−12月期決算への警戒感から、予想一株当たり利益(EPS)の低下を通じた株価の下落が続くことになりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/07 12:10 後場の投資戦略 円高一服が支えも米長期金利の基調転換は要警戒 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27902.11;+81.71TOPIX;1950.72;+2.82[後場の投資戦略] 日経平均は朝方の売り先行後は下げ渋って反発に転じている。下向きの5日移動平均線が25日線を上から下に抜けるデッドクロスが示現しそうな一方、75日線がしっかりと下値支持線として機能していて、前日の米国株が大きく下落していたことを踏まえると、かなり健闘していると言えそうだ。 一方で、大きく下落しているのがマザーズ指数など新興市場の銘柄だ。マザーズ指数は前日に1.5%と大きく下落したが、本日も1%を超える下落率で推移。前日は、ロックアップ解除への警戒感が高まったANYCOLOR<5032>をはじめ、急落する銘柄が散見され、荒い様相となった。今月半ばから本格化する新規株式公開(IPO)ラッシュを前に、換金売り圧力なども新興株には重石として働いているようだ。 また、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に神経質になりやすいタイミングにおいて、これまで低下基調にあった米10年債利回りが反発に転じてきていることも新興株をはじめ、グロース株の上値抑制要因として働いていると考えられる。米長期金利が反発に転じた理由は、言わずもがな、米国で相次いだ強い経済指標だ。 先週末に発表された米11月雇用統計では、雇用者数の伸びが市場予想を大幅に上回っただけでなく、平均賃金の伸びが前月比で予想の2倍となったほか、労働参加率が低下するなど、総じて逼迫した労働市場が続いている様子が示唆された。加えて、前日に発表された米11月ISM非製造業景気指数は56.5と、10月(54.4)からの低下が想定されていた市場予想(53.5)に反して大きく上昇した。先週、ISM製造業景気指数の50割れで景気後退懸念が強まっていたことを踏まえれば、こうした懸念が緩和されたとポジティブに捉えたいところだが、むしろ、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の舵取りやマーケット関係者の先行きの予想を困難にする結果として捉えられ、あまり喜べない。 ISM非製造業景気指数の項目をみると、景況感が64.7と10月(55.7)から大きく上昇。年末商戦による駆け込み需要などが影響した可能性もあるが、やや強すぎる印象だ。加えて、支払価格の項目は70.0と10月(70.7)から僅かに低下したものの、依然として拡大・縮小の境界値である50を大幅に上回る状態で、サービス分野のインフレ圧力のしぶとさが窺える内容となった。 製造業指数で50を割り込み、景気後退懸念が強まる一方、労働市場やサービス分野では需要の過熱感が残っていて、これではFRBは利上げを続けざるを得ないだろう。また、市場の予想通り、来年3月会合で利上げが打ち止めになったとしても、すぐには利下げに転じることは期待しにくい。かえって、非製造業景気指数の方も50を割り込んでくれていた方が、利下げ転換期待が高まって株式市場には好都合だったかもしれない。 米10年債利回りは10月下旬に一時4.3%を超えた後は低下が続き、先週末には3.49%まで低下していた。しかし、前日は3.59%へと反発。週足チャートでみると、ちょうど26週移動平均線の手前から上昇する形となっている。7月にも同線が下値支持線として機能し、そこから10月下旬まで大幅上昇した経緯があり、目先は金利の反発基調が続きそうだと考えられる。 来週に米11月消費者物価指数(CPI)や米FOMCを控えているタイミングでもあることから、グロース株は、今週は小休止となりそうだ。こうした中、緩やかながら、中国での経済活動正常化への動きが期待されていることもあり、今週はリオープン・インバウンド関連などの内需系企業に相対的な妙味が出てきそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/06 12:17 後場の投資戦略 米雇用統計の結果受けてどっちつかずの動きに [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27808.74;+30.84TOPIX;1944.21;-9.77[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、売り買いが交錯して動意の乏しい展開が継続している。今週は週末に12月限の先物オプション特別清算指数算出(メジャーSQ)を控えている他、足元での為替の円高推移が引き続き重荷となる。一方で先週末の大幅な下げに対するリバランスの動きも意識されやすく、積極的な動きは限られるとはいえ、底堅い展開を予想する声が市場からは聞かれている。そのほか、中国・香港市況は堅調に推移している一方、米株先物は軟調な展開が続いている。 一方、新興市場は軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした。その後は、じりじりと下げ幅を拡げてマイナス圏での軟調な展開となっている。米11月雇用統計で非農業部門雇用者数と平均賃金の伸びが大きく市場予想を上回っており、国内の投資家心理が悪化している可能性がある。また、新興市場では12月のIPOラッシュを前にした換金売りも広がっている可能性もある。前引け時点で東証マザーズ指数が1.38%安、東証グロース市場Core指数が0.67%安となっている。 さて、前週末2日に米11月雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数が+26.3万人と市場予想(+20万人)を大きく上振れたほか、平均賃金の伸びは前月比+0.6%と市場予想(+0.3%)より伸び、前年同月比5.1%上昇した。失業率は3.7%で市場予想と同水準、前月比で横ばいだった。雇用統計の結果は金融引き締め懸念を強める内容となり、米連邦準備制度理事会(FRB)による今後の利上げペース減速が十分に正当化されるほど経済が弱くなっているという市場の見方を打ち消す格好となった。 米11月雇用統計の結果に対して市場関係者からは、「市場にとっては悪い統計だと言えそうだ。」「今回の雇用者数の伸びはやや衝撃だった。」「11月の雇用統計はFRBのインフレとの戦いにとって明らかに悪いニュースだ。」などネガティブな声が散見されている。パウエル議長は先週、インフレ抑制には雇用市場の需給の緩みや企業の収益率鈍化が必要になるとの認識を示しており、こうした統計は懸念材料と捉えられている。 また、5日のブルームバーグでも、「米金融当局者の眼前には憂慮すべきインフレデータが十分なほどある。」と述べられている。FRBは今月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.5ポイントの利上げを実施した後、来年の会合でも同じ幅で引き上げる必要が生じるかもしれないことを示唆している。セントルイス連銀のブラード総裁は、FRBは政策金利を「最低」でも5-5.25%に引き上げるべきだと述べているようだ。FRBが政策金利のピーク水準を引き上げ、長期にわたってその状態を維持せざるを得ない可能性があるとの見方が台頭している。  前週の当欄では、多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始めたため、大方の予想に反して12月末から大きな下落が生じる可能性もあると示唆した。あくまで予想にすぎないが、「タックスロス・セリング」にも警戒しておきたい。これは、あえて保有していたポジションを処分して損を確定させ、今までの実現益と相殺することで少しでも納税を軽減させようとする動きである。例年12月中旬から年末にかけて活発になるため、このような動きが相場に影響する可能性も頭の片隅に置いておきたい。 現段階では、米10月CPIや卸売物価指数(PPI)、個人消費支出(PCE)コアデフレータではインフレのピークアウト感が見られており、インフレ減速・利上げペース減速への期待は根強く残ると考えられている。今後は、週末9日の米11月PPI、来週13日の米CPI発表を控えている。景気後退懸念が強まっているなか、インフレ減速・利上げペース減速が再度確認されるか、やはり再度注目が集まるだろう。さて、後場の日経平均は、もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、上値の重い展開が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/12/05 12:26 後場の投資戦略 景気後退の織り込みが想定よりも早かった [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27679.84;-546.24TOPIX;1945.96;-40.50[後場の投資戦略] 日経平均は大幅反落で、大きく28000円を割り込んだほか、下値支持線とみられていた25日移動平均線をも割り込んできている。前日の米株式市場で主要株価指数はまちまちで、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を受けた後の株高の勢いは早々に息切れした。FRBの利上げペース減速期待に加えて低調な経済指標もあり、米10年債利回りは3.50%(−0.1pt)へと大幅に低下したにもかかわらず、ナスダック指数も+0.12%とほぼ横ばいだったことは株式市場の上昇の勢いが衰えてきていることを示唆している。 前日の当欄では、今後の物価指標や13−14日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果次第とはしながらも、基本的には年末までの1カ月間に限っては、インフレ減速・利上げペース減速への期待を背景に株式市場の強含みが続くと予想していたが、こうした期待は早々に崩れる可能性が高まってきた。 景気が減速する中で高水準の金利が据え置かれることで、景気後退は不可避となるため、来年は年前半を中心に相場は低迷とすると予想していたが、そうした懸念を織り込むのは早くても年明けからだと考えていた。しかし、前日は米10月個人消費支出(PCE)コアデフレータが前月比+0.2%と市場予想(+0.3%)を下回り、金利も大幅低下したにもかかわらず、株式は軟調に推移。それよりも、サプライマネジメント協会(ISM)が発表した11月の製造業景気指数が49.0と市場予想(49.7)を下回り、拡大・縮小の境界値である50を割り込んだことを素直に嫌気する形となった。50割れは元々想定されていたため、FRBの利上げペース減速期待がこれを相殺すると考えていたが、ネガティブな反応の方が強まる形となった。 株式市場が景気後退を織り込む局面が想定より早まった印象を受ける中、13−14日のFOMCで公表される四半期に一度の政策金利・経済見通しの重要度は一段と高まったと考える。これまでのFRB高官の発言から、2023年末の政策金利(中央値)は9月FOMCの4.6%から5%程度へと引き上げられることは織り込み済みだ。 ただ、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は11月28日に、2023年末の見通しとしてPCEデフレータの伸び率で3.0−3.5%、失業率で4.5−5.0%との見解を示した。いずれも前回公表での見通し中央値(2.8%、4.4%)より高く、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)的な予想といえる。ISM製造業景気指数の予想下振れに神経質に反応している株式市場が、次回FOMCでこうしたスタグフレーション的な見通しを示された場合にどう反応するかは注意が必要になってきたといえよう。 また、前日のダウ平均が小幅な下落だった中、本日の東京市場が大幅に下落しているのは、やはり急速な為替の円高進行だろう。FRBの利上げペース減速と低調な米経済指標を受けて、10月までの記録的な円安・ドル高トレンドの反転が強まっている。日本の貿易赤字に伴う、実需筋によるドル買い・円売りがドル円の下値をある程度は下支えするとはいえ、投機筋の売買動向に振らされる要素の方が大きいとみられる。トレンド転換を意識した投機筋のドル売り・円買いの動きはしばらく続きそうで、今後も日本株の上値を抑えることになりそうだ。3月期本決算企業の上期決算が11月半ばに終わったばかりだが、想定為替レートを足元の1ドル=135円台に再設定している輸出企業が多かったため、今後の業績下振れリスクにも注意したいところだ。 日本株はバリュエーション面での割安感があるとはいえ、世界経済の景気後退懸念に加えて、拠り所とされていた為替も逆風に変わるのだとすれば輸出企業を中心に景気敏感株を積極的に買うことは難しい。こうした中、やはり、景気や為替の動向に左右されにくい内需系グロース株に投資妙味があると考える。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/02 12:16 後場の投資戦略 年末ラリーに向けたシナリオを考える [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28281.04;+312.05TOPIX;1989.79;+4.22[後場の投資戦略] 前日のナスダック総合指数の上昇率が4%超えだったことも踏まえると、日経平均の上昇率は控え目だが、10月半ば以降のナスダックの相対的に劣後していた株価パフォーマンスを踏まえれば、買い戻し時のパフォーマンスに差が出ることは不思議ではない。 ただ、日本株の上値の重さについては為替動向も理由として挙げられるだろう。前日のパウエルFRB議長の発言を受けて、ドル円は東京時間に1ドル=136円台と、8月下旬以来となる円高・ドル安水準にまで振れている。これまで、記録的な円安・ドル高が米国株の急落した直後の日でも日本株がさほど下落しない底堅さの要因として機能してきたわけだが、円高・ドル安となればロジックは正反対に働くことになる。米国企業にとっては金利低下がもたらす直接的な効果に加えて、これまでのドル高による収益圧迫要因が和らぐことで追い風になるが、日本株にとっては輸出企業の採算悪化を通じて全体としてはマイナスとなる(むろん、日本の貿易赤字が続いていて、実需筋のドル買い・円売り要因は根強いため、一本調子でのドル円の下落は考えにくい)。 一方、昨日の米ハイテク株の急激ともいえる上昇率はやや過剰反応な印象を受ける。前日のパウエルFRB議長の発言については、直近、米長期金利の低下基調が続き、金融緩和的な状況につながっていたことから、市場を諌めるようなタカ派な主張が事前には警戒されていた。しかし、実際には特別タカ派な発言は見られず、むしろ、利上げ幅の縮小を再主張したためにハト派的に捉えられた。 ただ、同時に政策金利が以前の想定よりも高くなるほか、利上げ幅そのものよりも、金利をどこまで引き上げ、いつまで高水準を維持するかの方が重要な議論であり、これらについては依然として流動的な部分があるとの従来の見解も合わせて示した。つまり、総じて事前の想定の域を出ないサプライズのない内容にとどまった。こうした背景にもかかわらず、ナスダックが賑やかなまでに大きく上昇したのは買い戻しが主体とはいえ、市場が上に行きたがっている証だろう。 一方で、昨日は他にも好材料がいくつか確認された。一つは、米国の労働市場の減速を示すデータだ。前日に発表された11月ADP雇用統計の民間雇用者数の伸びは12万7000人と、市場予想の20万人を下回り、転職しなかった雇用者の賃金の伸びは2カ月連続で減速。また、同日に労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS)では、10月の求人件数が前月比35万3000件減少し、失業者1人に対する求人件数は1.7件と前月の約1.9件から減少した。一連のデータは、労働市場に由来する粘着性のあるインフレにトレンド転換のサインが出てきたと捉えられ、今後のFRBの利上げペース減速を裏付けるものといえる。 二つ目に中国の経済動向。前日、中国政府の対コロナ政策を担当する孫副首相が声明を発表しており、「(中国の)新型コロナとの闘いは新たな段階にある」と語った。会合後の発表文によると、ゼロコロナを意味する「動態清零」という言葉が使用されなかったもよう。ゼロコロナ政策の緩和に向けた動きと捉えられ、世界経済の景気後退懸念が和らぐものとして好材料と捉えられる。 さて、12月に入ったが、短期的には年内の株式市場については強含みが予想される。昨日発表された労働市場のデータから、週末に発表を控える雇用統計への警戒感は和らいでいる。市場予想では、雇用者数の伸びと平均賃金の伸びがともに前の月から減速することが見込まれており、予想通りとなれば、FRBの利上げペース減速期待がさらに強まりそうだ。 その前に、今晩には米11月ISM製造業景気指数が控えており、事前には景気の拡大・縮小の境界値である50割れが予想されているが、FRBの利上げペース減速、ひいては来年半ばの利上げ停止への期待が高まる中、さほど悪材料視されることはなさそうだ。また、今晩は米10月PCEコアデフレータも発表されるが、10月の卸売物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)が予想を大きく下振れていたことを踏まえると、市場の予想通り、前年比と前月比で伸びは減速し、株式市場にとってはポジティブな結果となる可能性が高いと考えられる。 来週以降については、9日と13日に、それぞれ米11月のPPIとCPIが発表されるが、前回10月分では、どちらも食品・エネルギーを除いたコア指数で明確な減速が確認されていた。前年の10月辺りから伸びが加速していたことも踏まえると、ベース効果で前年比の伸びは今後抑えられやすいと考えられ、11月分もネガティブサプライズの可能性は低いと予想される。 14日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル議長の記者会見があり、ここでは四半期に一度公表される政策金利見通しが注目される。これまでの高官発言からすると、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5%前後になる見通し。現在、金利先物市場が織り込んでいる水準もこのレベルになっており、大きなブレがなければ、FOMCは無風通過となろう。ここまでのシナリオで、大きなネガティブサプライズがなければ、年末にむけてのラリーが期待できそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/12/01 12:24 後場の投資戦略 調整の範囲内も一段高には材料不足か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27858.16;-169.68TOPIX;1981.59;-11.38[後場の投資戦略] 日経平均は4日続落と冴えない展開が続いている。一方、上向きの25日移動平均線が位置する水準まで下落してきたことで、短期的な過熱感は解消された。セオリー通りであれば、テクニカル的にはここからは押し目買いのチャンスとみられる。 一方で、今週はイベントが多いだけに押し目買いを躊躇せざるを得ない背景もある。今晩の米国市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がブルッキングス研究所主催のイベントで講演する予定で、発言が注目される。前日にかけて既に複数のFRB高官からタカ派発言が出ており、事前の警戒感が高まっている分、ネガティブサプライズの可能性は低いとみられる。ただし、一昨日までの米長期金利の大幅な低下が金融緩和的な状況を生み出していることを踏まえれば、タカ派な発言が出る可能性の方が高く、強気に傾きにくい。 また、想定内の発言にとどまったとしても、翌12月1日の米サプライマネジメント協会(ISM)が公表する11月製造業景気指数のほか、週末2日の米11月雇用統計を目前に控える中、あく抜け感は台頭しにくいだろう。加えて、1日には米雇用動態調査(JOLTS)の発表もあり、求人件数の結果次第では、雇用統計前に緊張感が高まる場面もあり得る。中国での新型コロナ感染再拡大を受けたサプライチェーン(供給網)の混乱を受けて、改めて景気減速への懸念も強まる中、拡大・縮小の境界値である50割れが予想されているISM製造業景気指数の結果を受けた市場反応も注目される。 先週は東証株価指数(TOPIX)の上昇が全体をけん引したが、その背景にあったゴールドマン・サックス証券(GS)によるTOPIX先物買いの勢いも一服してきた。GSは先週1週間だけでTOPIX先物を累計1万2000枚超も買い越しており(日中取引立ち会いに限る)、今週に入ってからも、週初の28日は1700枚超買い越していた。ただ、前日29日は900枚超の買い越しと1000枚を切ってきた。先週24日の約7500枚や22日の約3500枚の買い越しからの騰勢一服感は明らかだ。 FRBの利上げペース減速への期待から10月半ば以降は株価の上昇が続いてきたが、日経平均でいえば、28000円がちょうどフェアバリューとの見方も多く、この水準から一段と上昇するには新規の材料が必要だろう。1日の米10月個人消費支出(PCE)コアデフレータや2日の米11月雇用統計の平均賃金の伸びなどで、明確な減速が確認されるのをまずは待ちたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/30 12:20 後場の投資戦略 短期的には強含み継続の公算大 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27999.82;-163.01TOPIX;1992.23;-12.08[後場の投資戦略] 日経平均は前引け時点で3日続落。ただ、朝方の売り先行後は前引けにかけて下げ幅を縮める動きを続けており、日足ローソク足は下ヒゲを伴った陽線を形成。上向きの25日移動平均線手前から反発する形となっており、底堅さが感じられる。前引け終値ではやや下回ったものの、心理的な節目の28000円を序盤から即座に回復したあたり、この水準での押し目買い需要は強いようだ。 中国での新型コロナ感染の再拡大と前日にかけての「ゼロコロナ」政策に反対する民衆デモの拡大を受けて、サプライチェーンが再び混乱するのではないかといった同国を巡る先行き不透明感が強まったことが、株式市場の下落につながったとされている。実際、中国河南省の省都、鄭州市にある米アップルの工場で混乱が生じていることを背景に、同社は今年、約600万台の「iPhoneプロ」の生産不足に陥る可能性が高いと報じられている。また、日本企業でも、ホンダが中国武漢市の工場の稼働を停止したと伝わっている。 一方、中国のデモについては、警備隊の派遣を通じてすでに沈静化しているようだ。今後の動向に注意は必要だが、むしろ、今回の一件で、中国政府がゼロコロナ政策の解除に向けてさらに前進する可能性も出てきたともいえる。直近の一連の報道を受けて、中国ゼロコロナ政策の緩和期待はいったん剥落していたため、ゼロコロナ政策緩和に向けた動きが今後再び出てくれば、株式市場にはポジティブに働きやすいだろう。 ほか、前日は米連邦準備制度理事会(FRB)高官からタカ派発言が相次いだ。タカ派筆頭とされているセントルイス連銀・ブラード総裁は、FRBがインフレ抑制のために来年、一段と利上げを行う必要が生じる可能性を金融市場が過小評価していると発言。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も、インフレは依然高過ぎるとし、さらなる引き締めが必要との見解を示した。さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も、利上げ幅の縮小については賛同している一方、「利上げの一時停止が近いとは考えていない」などと発言した。 こうした発言が株式市場の重石として働いたようだが、今週は元々、30日のパウエルFRB議長の講演や、週末の米雇用統計を前に警戒感が高まりやすかった。これを踏まえれば、今回の高官のタカ派発言を受けて、むしろ、後に残るイベントによるネガティブサプライズの可能性が低くなったとも捉えられる。また、一連のタカ派発言があった中でも、前日の米10年債利回りは3.683%と、先週末の3686%からむしろ小幅ながら低下している。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)も、来年5月前後の5%程度をピークとした予想に変化は生じていない。 前日の米国市場から本日の東京市場の動きをみて、改めて足元の株式市場の悪材料に対する底堅さが確認されたといえよう。もっとも、個人的には、来年の景気減速下での高水準の金利据え置きにより、米国経済の景気後退は不可避と考えているため、企業業績の悪化とともに中長期的には株式市場は低迷していくと予想している。ただ、今年前半のように、高官のタカ派発言などに対して大きく一喜一憂するような展開はもう終わったのだと考えている。今後の業績悪化を織り込むにはまだ時間がかかるとみられる中、目先はまだ株式市場の強含み基調が続きやすいと予想する。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/29 12:27 後場の投資戦略 来年にかけて弱気相場再来か? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28107.79;-175.24TOPIX;2002.07;-15.93[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、米ハイテク株安の流れも重しとなりやや売りが先行している。今週の米国では週末の雇用統計など重要な経済指標のほか、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見など重要イベントが相次ぐことから、積極的な売買は手控えられるとの見方が強いことも背景にあるようだ。下落してスタートした後は、マイナス圏での軟調な展開となった。そのほか、中国・香港市況は軟調に推移、米株先物も売り優勢の展開が続いている。 一方、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした。その後は、上げ幅を広げたが、買いが続かず上値の重い展開となっている。米長期金利が3.6%台まで低下していることは、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって引き続き追い風となっている。ただ、日経平均株価が軟調に推移する中、前週末上昇した分の利食い売りが優勢。引き続き、個別材料株に物色が向かっており、前引け時点で東証マザーズ指数が0.28%高、東証グロース市場Core指数が0.49%高となっている。 今週は、米11月雇用統計や米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景気指数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、中国の購買担当者景気指数(PMI)など注目材料が多くある。また、30日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演が予定されている。米国のインフレ指標の大幅な減速が確認されて以降、米長期金利の低下と株価上昇の流れが続いているが、引き続き経済指標の結果やパウエル議長の発言に神経質に反応する展開に変わりはないため、今週からは再度注意を払っていきたい。 ブルームバーグは28日、「12月2日に公表される最新の米雇用統計では、雇用の伸びは米金融当局が求める下降軌道寄りにあることが示される見通しだ。」と報じている。11月の非農業部門雇用者数は前月比20万人前後の増加が見込まれ、雇用統計では平均時給の伸び鈍化も見込まれているという。ブルームバーグが集計した予想中央値は前年同月比4.6%増で2021年8月以来最小の伸びとなるようだ。失業率は前月と同じ3.7%と予想されている。 さて、10月CPIの減速確認により短期的に上昇基調が続いてきた。ただ、市場関係者の間では弱気相場はさらに続く余地があるとの見方が広がっている。米ゴールドマン・サックスの世界株担当チーフストラテジストであるピーター・オッペンハイマーは、値動きは今後さらに激しくなると予想しているという。また、S&P500種株価指数は来年「最後の」安値をつけたあと、年末には4000ポイントに戻して年初とほぼ同水準で終えるとのシナリオを示している。モルガン・スタンレーのリサ・シャレット氏も、来年は利上げの影響が明らかになるにつれて経済への懸念が強まっていくだろうと警鐘を鳴らしているようだ。 また、世界的に様々なリスクが散見されるなか、国際金融協会(IIF)は来年の世界経済成長率が金融危機後の2009年並みの低水準になると予測している。IIFによると、成長減速は戦争の影響が最も大きい欧州が中心になる見込みで、ユーロ圏は消費者・企業景況感の急激な悪化で2%のマイナス成長になると予想している。 25日のブルームバーグでは、「ドイツ連邦銀行は国内の金融安定状況が今年は悪化に大きく転じたとの判断を踏まえて警鐘を鳴らした」と報じている。ドイツ連銀は年次金融安定報告書で、成長見通し悪化やインフレ高止まり、金利とリスクプレミアム上昇に対する市場の反応を受けて銀行や保険会社、投資ファンドは既に損失を計上していると指摘。「エネルギー危機悪化や急激な景気の落ち込み、市場金利の急上昇でドイツ金融システムは甚大な圧力にさらされる恐れがある」とした上で、「結果として将来的な信用リスクが高まりつつある」と見解を示している。 先週の当欄でも示唆したが、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始めたため、大方の予想に反して12月末から大きな下落が生じる可能性もあるだろう。 やはり、インフレ指標の確認は非常に重要で、12月13日の米消費者物価指数の発表には注意が必要か。下落の要因が何になるかだれも予想はできないが、筆者も引き続き、12月末から来年にかけて株式市場が大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、売り優勢の展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/28 12:20 後場の投資戦略 年末株高の期待は高いが・・・ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28286.94;-96.15TOPIX;2016.23;-2.57[後場の投資戦略] 日経平均は前日終値からほぼ横ばいでの推移でしっかりとした基調を維持。テクニカル面では、日足一目均衡表で三役好転が続いているほか、上向きの25日移動平均線が75日線を下から上抜けるゴールデンクロスを示現するなど良好な形状となっている。 昨日の当欄でも指摘したグローバルマクロ系ファンドによるTOPIX先物買いが前日も観測された。昨日24日はTOPIXが8月17日以来となる高値を記録し、節目の2000ptを回復した。こうした中、24日には、ゴールドマン・サックス証券(GS)がTOPIX先物を7500枚近く大幅に買い越していた。前日23日には3500枚超買い越していたため、二日間で1万1000枚程の買い越しとなる。また、前日はJPモルガン証券(JPM)やドイツ証券も約1700−1900枚、TOPIX先物を買い越していた。 最近の市況解説記事では、世界経済の減速スピードが思った程までには悪くないといった内容のものが散見される。米国の経済指標がまちまちとはいえ、総じて低調なものが多い中、こうした論調にはやや疑問符が付くが、一方で確かに、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ幅縮小の期待が高まる中、FRBのスタンス変化を理由に、グローバルマクロ系ファンドがTOPIX先物の売り持ち高を解消することはそこまで不思議でもないだろう。 しかし、大阪取引所とBloomberg(ブルームバーグ)のデータによると、前日24日の時点での12月限TOPIX先物の建玉をみると、GSは約9500枚の買い持ち高となっており、直近二日間の大幅な買い越しにより、すでに売り持ち高から買い持ち高に転じてきていることが分かる。こうした点から、余程の買い材料でも出てこない限り、GSによるTOPIX先物の買い越しもすでに一服したのではないかと推察する。 日経平均も心理的な節目の28500円を手前に材料待ちの状態。こうした中、これまで日本株の下値を支えていた為替の円安・ドル高には一服感があり、今後はむしろ円高・ドル安への反転にも注意しなければならないところ。また、今晩のブラック・フライデーを皮切りに、米国は年末商戦が本格化するが、状況が明らかになるにつれ、今後徐々に景気悪化がクローズアップされる可能性もあろう。 下値の堅さや良好なテクニカル面、米中間選挙後の株高アノマリー、ハロウィーン効果(10月末に株式を買って翌年4月末に売るとパフォーマンスが良いアノマリー)などの条件を拠り所に、株式市場は年末株高への期待を根強く持っているようだが、危うさも同時に孕んでいることを念頭に置いておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/25 12:15 後場の投資戦略 需給良好も一段の上昇には材料不足か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28448.58;+332.84TOPIX;2022.04;+27.29[後場の投資戦略] 日経平均は祝日の間の米国株高を好感して大幅続伸。一方、朝方に心理的な節目である28500円を一時超えた後は騰勢一服となっており、上値での戻り待ちの売りの根強さも窺える。ただ、米国市場が感謝祭の祝日を前に閑散ムードが広がっている中、本日の東京市場は前引け段階で東証プライム市場の売買代金が1兆8000億円台とそれなりの規模に達している。短期筋の先物買いが吊り上げているというよりはまとまった現物買いも入っているようだ。 祝日前の22日の東京市場では、午後にグローバルマクロ系のヘッジファンドから買いが入っているとの声が聞かれた。実際、当日の先物市場を振り返ると、日中売買高は日経225先物が3万1898枚だったのに対して、TOPIX先物が5万193枚と、長期目線の投資家が手掛けることの多いTOPIX先物の方が、商いが活発だった。その日の手口では、TOPIX先物でゴールドマン・サックス証券が3500枚超買い越していたほか、モルガン・スタンレー証券が2400枚近く買い越していた。上述のグローバルマクロ系ファンドの買い観測は当たっていた可能性が高いようだ。 前日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(11月1−2日開催)では、参加者の多くが利上げペースの減速で見解が一致していたことが判明しており、米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派スタンスの軟化が示された。これを受けて23日の米10年債利回りは3.70%と、東京市場の祝日入り前の21日時点での3.83%から大幅に低下した。本日はこうした金利低下を好感して、ハイテク・グロース株で大幅高となっている銘柄が多く見られる。 日経平均は10月3日の安値をボトムにした上昇トレンドに弾みをつけているほか、先週に約1年6カ月ぶりに52週移動平均線を超えたマザーズ指数も足元で上昇を加速させるなど、株式市場を巡る環境はかなり良好になってきている様子。今後、12月FOMCまでに発表される米国の賃金や物価指標でさらなる減速が確認されれば、株式市場は年末株高への勢いを強めることになりそうだ。 一方で、FRBは利上げペースの減速を支持している反面、利上げ停止については多くの高官が時期尚早との見解を示している。現在の市場コンセンサスでは来年3月会合での利上げが最後になる予想だが、一部のFRB高官は来年後半までの利上げを示唆しており、この点が明確化されてこないことは懸念材料だ。また、仮に来年前半で利上げが停止されても、利下げへの転換は相当にハードルが高い。来年、景気後退色が強まる中で高水準の金利が据え置かれることによる悪影響を、株式市場が楽観視している感が否めないことも気掛かりだ。 上述したように、グローバルマクロ系ファンドのTOPIX先物買いや、まとまった現物買いも観測されているが、来年の景気後退が不可避と捉えている投資家が多い中、実際、そうした動きが今後どこまで続くのかは不透明だ。こうした動きは、足元で過度に弱気に傾いていた持ち高を調整したものに過ぎないかもしれない。本日、日経平均が28500円手前で見事に伸び悩んでいるのも、こうした懸念が反映されている証のような気がするのは筆者だけだろうか。 日経平均でいえば需給面での要因から29000円程度までの回復余地はあるかもしれないが、そこから先、3万円を回復することについてはどうだろうか。今後の世界経済の動向を踏まえると、3万円回復には決定的に材料が不足しているという気がしてならない。高すぎるアナリストの業績予想が今後引き下げられる可能性を指摘する声もある。 全体の底上げが期待しにくい中、今後は投資家の選別力が重要になってくるだろう。米金利に頭打ち感がある中、外需に左右されにくい内需系グロース株などには妙味がありそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/24 12:14 後場の投資戦略 利上げ停止期待と業績悪化懸念の拮抗がつづこう [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28150.50;+205.71TOPIX;1996.01;+23.44[後場の投資戦略] 日経平均は28000円を回復して堅調推移。前日の米株式市場は反落となったが、明日の国内祝日を前に売り方の買い戻しが入っているもよう。日経平均は上向きの5日移動平均線上で推移しているほか、25日線が上向きの75日線を下から上に抜くゴールデンクロスの示現が目前に迫るなど、テクニカルな形状は良好だ。手掛かり材料難ではあるが、下値も堅い中、根強い年末株高への期待から、今後上放れしそうなチャートになってきた。 前日、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、金融政策の実体経済に及ぼす影響に時間差が伴うタイムラグ効果を踏まえて利上げの行き過ぎに懸念を示した。また、タカ派な発言が目立っていたクリーブランド連銀のメスター総裁からも、次回12月13−14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅縮小について賛同の意が示されるなど、米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢に軟化の兆しが改めて確認された。 こうした中でも、前日の米株式市場が反落したのは、市場の関心がすでにFRBの金融政策から企業の業績悪化など景気後退に移ってきているからであろう。なお、上述のメスター総裁は一方で、「利上げ停止に近づいているとは考えられない」ともしており、タカ派な姿勢も維持している。FRBが物価指標の中で最も重要視している個人消費支出(PCE)コアデフレータは最新の9月分で前年比+5.1%と、FRBのインフレ目標である+2%を大幅に超過している。 遅行データに頑なに固執した政策運営を疑問視する声も一部で聞かれるが、インフレ動向を見誤り、利上げ着手に遅れたFRBとしては、インフレのぶり返しを絶対に避けたいと考えているため、PCEコアデフレータの明確な減速と2%への収束が確信できるまでは高水準の金利を維持する可能性が高い。現在の市場コンセンサス通り、来年3月で利上げが停止されたところで、来年中の利下げへの転換にはハードルが高いため、景気後退が深まる中での高水準での金利据え置きとなり、企業業績の悪化が懸念されても不思議ではないだろう。 今後は12月に発表される米11月消費者物価指数(CPI)でのインフレ減速確認による株高期待と、来年度の米国企業業績のアナリスト予想の下方修正による株安懸念が拮抗する状態がつづこう。利上げ停止と年末株高への期待から下値は堅い一方、上値も重い状況が長期化するとみておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/22 12:11 後場の投資戦略 上昇スタートもマイナス圏に転落 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27871.09;-28.68TOPIX;1967.16;+0.13[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、米株高の流れを追い風にやや買い先行で取引を開始した。ただ、今週は経済指標などの目立った材料も少なく、日米ともに祝日を挟むことから、週を通じて商いは膨らみづらく様子見ムードも強まりやすいとみられている。前場中ごろにかけて上げ幅を縮小してマイナス圏に転落、その後は軟調もみ合い展開となった。そのほか、中国・香港市況は軟調に推移、米株先物もやや売り優勢の展開が続いている。 新興市場は軟調もみ合い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、前日終値付近まで下げ幅を縮小した。ただ、明確にプラス圏で推移することはできず、軟調もみ合い展開が続いている。FRB高官のタカ派発言を受けて米長期金利が3.8%台まで上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株は積極的には手掛けにくい。引き続き、個別材料株に物色が向かっているが、前引け時点で東証マザーズ指数が0.09%安、東証グロース市場Core指数が0.26%安となっている。 さて、一部のFRB高官からは利上げ停止には程遠いなどとタカ派的な発言が出ている。一連の高官発言を受けて、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が5%前後になるであろうことも織り込み済みであるほか、来年の世界経済の景気後退懸念を背景に、米長期金利の上昇余地も限られてきたとみられる。 ただ、ブルームバーグでは、「ディストレスト債投資を手掛けるオークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者ハワード・マークス氏は世界金融危機以降で有数の好機が訪れると見込む。」と報じられた。マークス氏は、消費者の志向変化と借り入れコストの上昇で、多くの企業が「深刻な苦境」に陥るだろうとみている。また、米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、FRBが高インフレ抑制に向けた追加利上げの方針から外れないために、米金融市場の一部にある構造的な脆弱性に比較的早期に対応する必要があると述べている。 10月CPIの減速確認により短期的に上昇基調が続いてきた。アナリストの買い推奨は過去最高近辺とのデータも存在しており、12月にかけて堅調な展開が続くことは想定しておきたい。ただ、やはり、インフレ指標の確認は非常に重要で、12月13日の米消費者物価指数の発表には注意が必要だろう。仮にここで、市場予想を上回ってインフレ減速が確認できない場合は、誰も予想できていないため株安要因となるだろう。 いまだに世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。暗号資産価格は、いまだに軟調に推移しておりFTX破綻の影響は長引くと考えられている。筆者は変わらず、12月13日のCPI発表まで上昇基調が継続したとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/21 12:22 後場の投資戦略 上値追いの材料待ち、グロース株は選別が重要 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27978.06;+47.49TOPIX;1972.07;+5.79[後場の投資戦略] 日経平均は小じっかり。前日の米株式市場も軟調ではあったが総じて底堅く推移しており、下値の堅さを連日で確認する格好となっている。一方で、日経平均は28000円前後で何度も往って来いの展開になっているのは気がかり。決算発表も一巡し、新規の手掛かり材料に欠ける中、買い上がる決め手を見出しあぐねている様子だ。 前日はセントルイス連銀のブラード総裁が政策金利を5.00−5.25%へと引き上げることが「最低条件」との見解を示し、米株式市場は一時大きく下落する場面があった。ただ、同氏は米連邦準備制度理事会(FRB)高官内で最もタカ派とも呼べる存在であり、その点は踏まえて言動を捉えるべきであろう。また、そもそも、これまでの高官発言を受けて、すでにターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5%前後になるであろうことはほとんど織り込まれているため、特段のサプライズでもない。実際、米株式市場はその後急速に下げ幅を縮小して終えている。 一方、一昨日はウォラーFRB理事が「政策金利の引き上げは2023年の後半まで続く」などと発言していることもあり、FRBの利上げ停止時期が現在の市場コンセンサスである来年3月時点から延びる可能性は残されている。米国の10月の物価指標の明確な減速から、その可能性は低いとは思われるが、適宜挟まれる高官からのタカ派発言もある中、株式市場はどこまで上値を伸ばしていけるか見物だ。 ほか、前日の米株式市場では引け後に半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズの決算が発表された。一昨日、半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが市況見通しの下方修正を発表していたこともあり、警戒感は高まっていたが、22年11月−23年1月の売上高見通しが市場予想を上回り、同社株は時間外取引で3%程上昇している。一方、前日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1%超反発し、アプライドの無難な決算もある中でも、本日の東京市場では半導体関連株は高安まちまちで上値の重さが残る。前日の当欄でも指摘したが、好調が続いているロジック向けでもネガティブな材料が増えてこない限り、完全な悪材料出尽くしには至らないと考えられる。 ターミナルレートの上限が見えてきて、来年の世界経済の減速も懸念される中、米長期金利の上昇は抑えられ、これはグロース株の追い風になると予想されるが、景気との連動性が高い電気機器、機械などのセクターに属するハイテク系グロース株の上値は当面重いとみておきたい。グロース株の中でも景気連動性の低い内需系グロース株、情報・通信やサービスといったセクターに属する銘柄の方がパフォーマンスは良好とみられ、今後の投資戦略の参考にしていただきたい。 東京証券取引所が16日に発表した11月11日時点での裁定取引に係る現物ポジションは、前週末比178.63億円減(売り越し)とネットベースで194.44億円の売り越しとなった。 9月半ばには1兆2000億円超の買い越しとなっていた時もあり、裁定買い残が大きく解消されたことは需給面での重石が解消されたことになる。一方、売り越し幅がさほど積み上がっていないことから、買い圧力も働きにくい。短期筋による先物主導での動きが反映される裁定残がほぼネットベースで中立水準にある中、短期筋の先物持ち高もほぼ中立に近いのだろう。  米株式市場については、S&P500種株価指数(17日終値は3946)が200日移動平均(4070)を上回ってくれば、上場投資信託(ETF)など指数連動型のパッシブ資金の流入が加速するとの指摘も聞かれている。こうしたテクニカルな要因で何であれ、何か一つでもきっかけとなる材料があれば、東京市場でも短期筋の先物買い持ち高の積み上げが加速するとみられ、株価上昇に弾みがつきそうだ。今はまだきっかけ待ちだが、年末にかけては株高が続きやすいとみている。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/18 12:18 後場の投資戦略 リバウンドの脆さを露呈した半導体関連株? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27915.58;-112.72TOPIX;1966.05;+2.76[後場の投資戦略] 日経平均は反落しているが、上向きの5日移動平均線に沿ったトレンドを大きくは脱しておらず、前日のナスダック指数やフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅安だったことを踏まえれば、かなり健闘している印象を受ける。一方で、28000円を超えると途端に上値が重くなる動きが続いていることは気がかり。米国のナスダック指数も同様だが、物価指標の改善後の長期金利の低下トレンドが続いているにも関わらず、上値の重さが感じられる点は買い上がる向きが少なく、むしろ売り需要の強さを示唆しており、ネガティブに捉えられる。 前日、米半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが市場環境に対応するため、DRAMとNANDのウエハーを6−8月期比で約20%減産する方針を明らかにしたと伝わっている。同社は「来年の市場見通しは最近になって弱くなった」と説明しているという。これが前日のSOX指数の急落につながった。先週、業績予想を大幅下方修正したにもかかわらず株価の大幅高が続いていた東京エレクトロン<8035>の動きから、半導体関連株の底入れ感が強まってきた印象があったが、水を差された格好だ。 しかし、ノートパソコンなど民生向け市場の落ち込みで半導体のメモリ市場が急減速していることは既に3カ月ほど前からも分かっていることで、今回の情報に目新しさはない。むしろ、直近の株価上昇率が大きく反動が出やすかったとはいえ、ほとんど既知の情報に対して大きく反応するのは、足元の半導体株のリバウンドの脆さを露呈したといえる。 今後気を付けなければならないのは、ロジック分野の落ち込みだ。半導体各社の見通しが相次いで下方修正されているが、総じてメモリ向けが弱いのに対してロジック向けは依然として好調と強気の姿勢を維持したままの企業が多い。しかし、人工知能(AI)など最先端機能を備えた産業向けに多いロジックの需要は、たしかに民生向け中心のメモリに比べて底堅いとはいえ、新型コロナによる供給網の混乱期に過剰な前倒し発注が行われた可能性は高い。このため、現在メモリから始まっている半導体業界における在庫調整の波が今後ロジックを襲うことは十分に考えられる。いまの半導体関連の株価にロジックの調整は織り込まれていないとみられ、今後の決算においてロジック分野での需要について会社側からのトーンが低くなることには注意しておきたい。 前日は米連邦準備制度理事会(FRB)高官からのタカ派発言も米株式市場の重石となった。ウォラーFRB理事は「政策金利の引き上げはまだまだ続く、2023年の後半まで続く」などと発言したもよう。また、FRBの利上げペース減速を最初に示唆したサンフランシスコ連銀総裁のデーリー総裁も「利上げ停止は議論になっていない」などと発言し、タカ派的な姿勢を見せた。こうした中でも、景気後退懸念を映してか、米10年債利回りは16日、3.69%と一段と低下した。 長期金利が再び大きく上昇してこない限り、株式市場の下値は堅いと思われるが、昨日の米国市場と本日の東京市場をみる限り、本格的な上昇もなかなか期待しにくい。前日の米株式市場では半導体銘柄が大きく下落したが、それ以外でも、電気自動車大手のテスラが大きく下落し、年初来安値の更新を窺う展開となっている。半導体やテスラといった指数へのインパクトが大きい銘柄が弱いと、全体相場もなかなか盛り上がることが難しいだろう。 一方で、こうした中でも、東京市場では業績良好な銘柄で年初来高値を更新しているものも多い。今年上半期のように何でも売られるような局面はすでに終わっていると考えられ、投資家の銘柄選別力が試されるフェーズに入ってきたといえそうだ。 後場の日経平均は引き続き心理的な節目の28000円を挟んだもみ合いが続くと予想される。先週から相場のけん引役となってきた半導体関連株が日米そろって崩れている中、今晩の米国市場では半導体大手アプライド・マテリアルズの決算も予定されており、決算内容と株価反応が注目される。金利が低下基調にある中でもナスダック指数の下落が続くのか、この点についても焦点となってこよう。 全体的に不穏な空気が漂う中、前日、日本政府観光局(JNTO)が発表した10月の訪日外国人旅行者数が前月比で2.4倍に急増したことが判明した。新型コロナ感染拡大前の2019年の同月比では80%減と依然として低水準だが、インバウンド需要の鍵を握る中国が規制緩和の兆候を見せていることもあり、今後の回復期待は高いだろう。本日は関連銘柄も久々に動意づいており、再びリオープン・インバウンド関連銘柄への物色を検討してもよい頃合いかもしれない。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/17 12:23 後場の投資戦略 日経平均は小幅反落、需給環境から上値試しやすい、クオリティーグロース株は買い場 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27955.85;-34.32TOPIX;1962.45;-1.77[後場の投資戦略] 日経平均は小幅反落し、心理的な節目の28000円も割り込んだが、前引けにかけては急速な下げ渋りで下値の堅さを確認した。 市場環境は地政学リスクを除けば短期的には良好な状況が続くと想定される。前日に発表された米10月卸売物価指数(PPI)は総合で前年比+8.0%と9月(+8.5%)および市場予想(+8.3%)から大きく減速。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+6.7%と9月(+7.2%)からの横ばいを見込んでいた市場予想から大幅に減速した。コア指数は前月比でも+0.0%と市場予想(+0.3%)を大きく下回っており、インフレ鈍化の傾向がより鮮明になったと評価できる。 PPIの改善を受けて、米10月消費者物価指数(CPI)の発表後に4%を大幅に下回っていた米10年債利回りは15日、3.77%と一段と低下した。地政学リスクの報道で一時伸び悩んだものの、金利低下を追い風にナスダック指数も前日は大幅に反発。グロース株を中心に株式市場を取り巻く環境は良好といえよう。商品先物取引委員会(CFTC)の公表しているデータによると、S&P500種株価指数を対象とした先物取引では、投機筋のネットの売り持ち高が依然として新型コロナショック後につけたピークに近い水準にあることが分かる。米国では今週末にデリバティブ取引に係る特別清算指数(SQ)算出を控えており、目先は買い戻しの相場が続きやすいと考えられる。 日本株についても需給環境は悪くない。一時大幅に積み上がり、株価の重石となっていた裁定買い残については解消が進んだ。東京証券取引所が9日に発表した4日時点での裁定取引に係る現物ポジションは、ネットベースで15.77億円の売り越しとなり、ついに買い越しから売り越しに転じた。米国株が戻り基調を続ける限り、日本株も当面は上昇しやすい環境になったといえる。 指数寄与度が大きく、今年は株価の下落基調がきつかった半導体関連株が底入れしてきていることも投資家心理を明るくさせる。先週10日に業績予想の大幅下方修正を発表した東京エレクトロン<8035>は、先週末11日は地合い好転に助けられたところが大きかったが、今週に入ってからも株価の堅調推移が続いており、あく抜け感が強まっている。業績良好なクオリティーグロース株を中心に中小型株の底入れも鮮明になっており、本日はマザーズ指数がついに今年はじめての52週移動平均線超えを果たした。今後、米国経済の景気後退入りが本格化するに伴い、米長期金利が再上昇したとしても上昇余地は限られるだろう。市場の目線が金融政策から業績動向に移ってきていることもあり、そろそろ、クオリティーグロース株の押し目買いを開始してもよい頃合いかもしれない。 今晩の米国市場では、小売企業でロウズ、ターゲットの決算が予定されているほか、半導体関連でエヌビディアの決算も控える。半導体関連の株価底入れが本物かどうかを占う上で、エヌビディアの決算と株価反応を見極めたい。(仲村幸浩) <NH> 2022/11/16 12:16 後場の投資戦略 ラリーの勢いのなさ気掛かり [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27994.68;+31.21TOPIX;1963.44;+6.54[後場の投資戦略] 本日の東京市場は決算を受けた個別株物色を除けば全般もみ合い、こう着感の強い展開となっている。日経平均は心理的な節目の28000円を割れてはいるものの、75日移動平均線上を優に上回った状態を続けていて、ほぼ横ばいの5日線上をも維持している。前日、米株式市場で主要株価指数が揃って下落した割には底堅く推移している。 前日は、米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長が、利上げペース減速への移行が適切との、これまでの高官と同様の見解を示した一方、利上げ停止の検討は時期尚早との見方も示し、株式市場をけん制する一面も見せた。米10年債利回りは米10月消費者物価指数(CPI)の減速を受けて急低下した後の水準を維持し、依然として4%を大きく下回る水準にある。しかし、こうした中でも、前日の米株式市場でナスダック指数がラリーを続けられずに失速したのは、FRBの一段のタカ派発言を受けた金利の再上昇を恐れてのことなのかもしれない。 今晩の米国市場では米10月卸売物価指数(PPI)の発表がある。食品・エネルギーを除いたコア指数では前年比+7.2%と9月(+7.2%)から横ばいが予想されているものの、ヘッドラインでは前年比+8.3%と9月(+8.5%)と減速が予想されている。ヘッドラインとコア指数がともに減速すれば、株式市場はラリー再開となりそうだが、CPIより先行性の高いPPIの性質を踏まえれば、仮に予想に反して上振れとなると、株式市場は先週のCPI後の浮かれ気分から目を覚まされることになりそうだ。今晩の米国市場でのPPIの結果と反応を見極めたいとの思惑から、後場の東京市場は模様眺めのムードが支配的になりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/15 12:20 後場の投資戦略 前週末の大幅上昇受けて一旦の利食い売り優勢 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28047.58;-215.99TOPIX;1964.90;-12.86[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、小幅ながら続伸してスタートした後マイナス圏に転落して軟調な展開が続いている。寄り付き段階では想定よりしっかりだったとはいえ、出資するFTXの破綻影響も警戒されているソフトバンクG<9984>なども指数の重石となるなか、下げ幅をやや広げる展開となった。そのほか、中国・香港市況は堅調に推移している一方で、米株先物はやや軟調な展開が続いている。 新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後じりじりと上げ幅を広げている。FRBの利上げペースが鈍化する期待が大きく高まったことで米長期金利が3.8%台まで低下しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって追い風となっている。また、本日東証プライム市場の主力株が冴えない展開となっており、幕間つなぎの物色が新興株に向かっている可能性もある。引き続き個別材料株への物色は旺盛で、前引け時点で東証マザーズ指数が1.83%高、東証グロース市場Core指数が2.59%高となっている。 さて、10日の消費者物価指数(CPI)発表後、米10年債利回りは3.8%台と4%を大幅に下回る水準に低下した。実際に、本日もインフレ減速・金融引き締め懸念後退を好感した動きが継続しており、グロース株優位の展開が続いている。ただ、米10月CPIのコア指数は前年比で+6.3%と高水準で、住居費は前月比+0.8%と9月から加速している。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、中長期では警戒は怠れないとの意見もある。 ブルームバーグでは、「米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は14日、10月米CPIの上昇率が鈍化したことは良いニュースだが、一つのデータポイントに過ぎずFRBが利上げを停止するまでには「まだ道のりは長い」との認識を示している。」と報じられた。12月の連邦公開市場委員会(FOMC)がその後の会合で、政策担当者が利上げ幅を0.5ポイントに減速させることはあり得るとしながらも、利上げの停止に近づいているわけではないと注意を促したという。 さらに、ターミナルレートが5%を上回る可能性があるかとの質問に対し、5%を超えるかどうかはインフレ動向次第だとも述べている。FF金利誘導目標が2023年半ばに4.9%前後でピークに達するとの見通しをある程度織り込んでいるが、仮にターミナルレートが5%を上回る可能性がさらに示唆されると、織り込め切れていない株式市場にいとってはマイナス要因となるだろう。引き続き、FRBの利上げペースの動向には注視せざるを得ない。 今回のCPIの減速確認により短期的には上昇基調が続くと考えられる。中間選挙が実施される11月以降のS&P500指数の株価パフォーマンスは良好というアノマリーも相まって投資家心理が上向く可能性もあろう。ただ、世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。筆者は変わらず、年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、下げ止まるか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/14 12:28 後場の投資戦略 短期シナリオと中長期シナリオを再確認すべきタイミング [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28200.75;+754.65TOPIX;1973.52;+36.86[後場の投資戦略] 急反発した米株式市場を好感し、日経平均も本日は値幅を伴った上昇で急伸劇を見せている。取引開始直後から心理的な節目の28000円を軽々超えてくると、騰勢をさらに強め、一時は次なる節目の28500円をも窺う動きを見せた。実需筋の買い戻しに加えて、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの追随買いが相場を押し上げていると推察される。 株式市場の急伸の背景となったのは言わずもがな、米国の10月消費者物価指数(CPI)の結果だ。総合値、いわゆるヘッドラインインフレは前年比+7.7%と予想(+7.9%)および9月(+8.2%)から大きく減速。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+6.3%と予想(+6.5%)および9月(+6.6%)から減速した。コア指数は前月比でも+0.3%と予想(+0.5%)および9月(+0.6%)から減速し、モメンタムの鈍化を示唆した。 サービス分野の項目をみると、医療サービスが前月比−0.6%と9月(+1.0%)から大きく減速し、これがコア指数の押し下げとして働いたことが分かる。ただ、CPIの3割以上と最も大きい構成比を占める住居費は+0.8%と9月(+0.7%)から加速している。むろん、相関性の高いS&Pコア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数などの米住宅価格の代表的な指標は今年4月をピークに減速しているため、1年程遅れて動く遅行性を踏まえれば、住居費の減速も時間の問題だ。しかし、遅行性は過去の推移からすると、1年から1年半のスパンとなっていることが多く、住居費の減速にはまだ時間がかかる見通しだ。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、今回のCPIを受けた株高の賞味期限は長くても次回分が出てくるまでの約1カ月といったところか。 米10年債利回りは4%を大きく下回り、3.8%台前半まで低下しているが、最近の債券市場は流動性が乏しく、売り方の買い戻しの動きがやや過剰に反映されている可能性がある。特に11日の米債券市場はベテランズデーで休場のため、動きが助長された可能性も否定できない。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速が見込まれるとはいえ、つい先日までターミナルレート(政策金利の最終到達点)の5%超えは濃厚という話題で持ちきりだったことを踏まえると、ここからの米長期金利の低下余地は大きくないだろう。このため、金利低下を背景にしたグロース株買いの勢いは長期化しないと思われる。 米CPIの結果を受けて、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは来年5月頃をピークとする形で4.92%程度まで低下してきた。ただ、こちらも上述したのと同様の考え方から、これ以上の低下は想定しにくい。仮に、ターミナルレートや米長期金利がここからさらに低下して株式市場が過度に上昇するようなことがあると、その際には再びFRB高官からけん制発言が出るだろう。 日経平均は短期的には上値を試す展開が想定されるが、今回の約1カ月と想定されるラリーの上値目途としては29000円近辺とみている。前回の7月から8月半ばにかけてのラリーの際にはCTAなどの買いに押し上げられる形で、8月17日に一時29222.77円まで上昇した。今回も、CTAなどのトレンドフォロー型ファンドは損益分岐点と推察される27500円を超えた辺りから買い持ち高を膨らませてきていると思われる。 実需筋のショートカバー(売り持ち高の買い戻し)は長くは続かないだろうが、2−3日程度は続くと思われ、来週前半には28500円を回復する可能性が高い。その先はCTAの買い継続で29000円を目指す展開が予想されるが、前回のラリー時のピークがこの水準だったため、次第に戻り待ちの売りや新規ショートも入ってくると想定される。仮に前回ラリー時とは異なり、29000円台を長く維持する場合には、新規ショートの早期撤退などで29500円タッチもありえそうだ。 実体経済に目を向けると、世界経済は明らかに減速方向にあり、インフレの水準が依然として高いため、景気後退入りしたとしても中央銀行による金融緩和は期待できない。ファンダメンタルズとしては悪化方向にあることに変わりはなく、今後の株式市場については、短期的には上方向も、ある程度の水準訂正を果たした後は再び下値模索の展開になる可能性があろう。いまは短期勝負と割り切って買い参戦するか、相場が楽観に浸りきった頃の売りを待つかのどちらかだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/11 12:17 後場の投資戦略 ラリーに早くも黄色信号? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27391.00;-325.43TOPIX;1932.74;-16.75[後場の投資戦略] 日経平均は下値支持線に切り替えてきていた75日移動平均線を再び下放れ、心理的な節目の27500円も割り込んできた。前日は終日下げ幅を広げる流れで、一昨日の陽線を打ち消す陰線を形成し、本日はその後のサポート割れとあって印象が悪い。今週に入って大きく好転していたテクニカルだが、昨日と今日とで一気に悪化した格好だ。 それもそのはず、開票作業が進む米中間選挙については、事前に野党・共和党の勝利が高い確率で予想されていた。民主党政権が掲げる増税などのネガティブな政策が成立しにくくなるとの見方から、中間選挙後の株高アノマリーも先取りする形で株式市場は上昇していた。しかし、激戦が繰り広げられている上院だけでなく、下院でも依然として共和党が優勢ながらも、民主党がかなり善戦していることが伝わっており、選挙結果に対する先行き不透明感が急速に高まってきた。 前提が覆されることを嫌って、本日は週明けからの上昇の反動で売りが膨らんでいるようだ。市場のムードが悪化してきたことで、今晩の米10月消費者物価指数(CPI)への警戒感も昨日まで以上に高まる形になっている。今の流れでCPIの結果が市場予想を上回るとなると、相場は下方向に一気に振れそうなため注意が必要だろう。 一方、相場にとってポジティブな材料としては、昨日、米シカゴ連銀のエバンス総裁が金融引き締めの行き過ぎを懸念し、利上げペースを減速させることが妥当とのハト派的な見解を示した。米CPIが予想並みにとどまり、米中間選挙の結果も予想通り少なくとも下院での共和党勝利が実現すれば、相場は再びラリーへの動きに転じる可能性がある。反面、どれか一つでも予想と異なることがあると、短期的には下値模索のリスクが高まる恐れがあろう。 暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXが資金繰りの悪化に直面し、破産法適用の申請が近いとの報道を背景に、暗号資産価格が軒並み急落していることも気掛かりだ。同業のバイナンス・ホールディングスが同社買収の撤回を発表したことで警戒感は急速に高まっている。機関投資家のポートフォリオに占める暗号資産の割合はさほど高くないと思われるが、価格の下落が行き過ぎるとリスク低減を目的に他の資産クラスの売却につながる恐れもあるため、こちらも注意が必要だ。特に個人投資家については影響が大きく、米国では個人もオプションなどのデリバティブ取引に積極的な背景を踏まえると、個人投資家のセンチメント悪化を通じた株式市場への影響も懸念される。 11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)や米10月雇用統計を通過し、日経平均VIや米VIX指数に落ち着きがみられるなど、足元では市場にやや楽観的なムードが漂っていた面が否めない。こうした中、ほぼ同じタイミングで嫌なニュースが重なってきたことには警戒感をもって臨む必要があろう。本日の日経平均が27500円を下回ってからも下げ幅を広げる動きを止めていない点も気掛かりだ。8日に、日経平均が27500円や75日線といったテクニカルな節目を明確に上回ってきたことが、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの買いを誘っていた背景があったが、早々にこうしたテクニカルな節目を再び割り込んできていることで、短期筋の売り転換も懸念される。ラリーへの期待には早くも黄色信号が灯ってきた。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/10 12:25 後場の投資戦略 日経平均は3日ぶり小反落、ラリー創出の条件が整ってきた? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27827.16;-44.95TOPIX;1954.00;-3.56[後場の投資戦略] 米中間選挙の投票結果が進んでいる中、様子見ムードが強く、本日の日経平均は動意に乏しい展開。ただ、2日間で670円以上も上昇した直後ということを踏まえると、かなり底堅く推移しているといえる。10月3日の25621.96円をボトムに、その後は緩やかながら下値と上値を徐々に切り上げていくトレンドを形成しており、足元では10月の間ずっと上値抵抗線として作用してきた75日移動平均線を明確に上回ってきて推移している。テクニカルでは基調は明らかに好転してきている。 今年、相場を大きく動かしてきた米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策も、まだ利上げが続くとはいえ、利上げ幅縮小とターミナルレート(政策金利の最終到達点)のおおよその見込みは立ってきた。また、利上げ停止の時期も恐らく来年3−5月頃ということで市場のコンセンサスも形成されている。今年最大の株価の下落要因であったFRBの「超大幅連続利上げ」劇場の終焉が近づく中、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の世界の株式市場の動きを見ていると、相場はどうしてでも上に行きたがっているような様子だ。 米中間選挙については、事前の報道ですでに少なくとも下院では野党・共和党が過半数議席を獲得する公算が大きいと伝わっている。民主党が掲げる増税などの市場にとってネガティブな政策が成立しにくくなることや、選挙後は株高になりやすいというアノマリーを意識した買いから、株式市場は上昇基調を続けている。 一方、選挙結果が判明した時点では「Buy the rumor, sell the fact.(噂で買って、事実で売る)」の動きから一時的に売りが出そうな恐れもある。しかし、米国では投資信託の節税対策売りなどで季節的に弱い10月を過ぎて上がりやすい時期に入ってきていることに加え、FRBの利上げ工程の全貌もおおよそ明らかになってきている中、株式市場は新たな売り要因を探すのに疲れてきている様子。また、日米ともに長期目線の機関投資家はすでに換金売りが一巡し、新たに大きく売る程の持ち高状況でもないだろう。金利のボラティリティー(変動率)も落ち着いてきている中、10日の米10月消費者物価指数(CPI)でよほどの大幅な上振れがない限り、「中間選挙アノマリー」、「季節性要因」、「身軽なポジション」を拠り所に相場は上値を試しに行く展開となりそうだ。 ただ、その際は、前日の当欄(「短期筋買いで上振れ基調も長期筋は様子見決め込み」)でも指摘した通り、あくまで今の局面で積極的に動いてくるのはトレンドフォロー型ファンドなどの短期筋が主体に限られる。相場が上を試しにいっても、その流れに長期目線の投資家がどこまで付いていくのかには疑問符が付く。当面の上昇相場には常に賞味期限があることを忘れないでおきたい。(仲村幸浩) <NH> 2022/11/09 12:15 後場の投資戦略 短期筋買いで上振れ基調も長期筋は様子見決め込み [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27879.70;+352.06TOPIX;1954.96;+20.87[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大幅続伸で、一時28000円超えが視野に入る水準にまで上昇する場面も見られた。日足チャートでは、75日移動平均線を明確に上抜けてきたほか、上向きの25日線が200日線を下から上に抜こうかと窺う形となっており、テクニカルな好転が鮮明になってきている。一目均衡表でも雲上限を大きく突破したことで三役好転を示現している。 日経平均の午前の推移を分足チャートでみると、断続的に階段状に水準を切り上げていく形となっている。テクニカルな好転と合わせて、これまで上値抵抗帯となっていた心理的な節目の27500円を明確に上放れてきたことが、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの買いを誘っているように見受けられる。 今週は米中間選挙に加えて、米10月消費者物価指数(CPI)と注目イベントが多いが、中間選挙では上院が接戦の一方、下院は野党・共和党が過半数議席を獲得する公算が大きいと伝わっている。実際にこれが実現すると、民主党のバイデン大統領の掲げる政策の難航が予想されるが、財政赤字の拡大に繋がらないことがインフレ低下・金利低下を通じて株価上昇をもたらすと前向きに捉えている市場関係者が多い様子。また、中間選挙後には不透明感が払しょくされること等を背景に、選挙実施月の11月から翌年4月にかけてS&P500指数の株価パフォーマンスが良好というアノマリーも足元の株高に勢いを与えているようだ。 日米ともに機関投資家の株式持ち高比率は低水準にとどまっているため、じり高基調が続けば、次第に持たざるリスクが意識され、買い遅れた向きによる投資が一段高を演出する可能性もありそうだ。 一方、前日にQUICKが発表した月次調査(11月)では、ファンドマネージャーの現在運用しているファンドにおいて、国内株式の組み入れ比率が通常の基準に比して「ニュートラル」と回答した割合が55%と前回(54%)からやや増加。「ややオーバーウェート」と回答した割合が21%と前回(23%)から低下した一方、「ややアンダーウェート」と回答した割合は24%と前回(17%)から大きく上昇した。また、国内株式の組み入れ比率についての当面のスタンスについては、「やや引き上げる」との回答が10%と前回(28%)から大幅に低下した一方、「現状を維持する」との回答が81%と前回(61%)から大幅に増えて圧倒的多数となった。 ほか、先週は先物手口において、BofA(バンク・オブ・アメリカ)証券が東証株価指数(TOPIX)先物で週間11800枚超にも及ぶ大量の売り越しを見せていた。前日は日経平均が27500円を回復した中ではあったが、TOPIX先物で同証券による明確な買い戻しは確認されなかった。 米国ではGAFAMに代表される米IT大手企業をはじめ決算で低調なものが多かった印象だが、日本国内でも、ハイテク企業で意外感のある下方修正が散見され、円安恩恵がある中でも決算シーズン終盤にかけては軟調な内容のものが多く見られている。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見から、今後実際に景気後退が訪れても当面高水準の金利は据え置かれる見込みで、政策による下支えは期待できない。「bad news is good news.(悪いニュースは良いニュース)」という決まり文句が通用しない環境下、景気後退はストレートに企業業績の悪化を通じて株価の下押し圧力として働きそうだ。 こうした中、上述の調査からは、機関投資家はほとんど持ち高を増やす意向がない様子。先週のBofA証券によるTOPIX先物の大量売り越しの動きも、こうした背景に基づく実需筋による売りとも考えられる。 米10月CPI次第ではあるが、イベント通過後にトレンドフォロー型ファンドを中心に短期筋が相場を大きく上方向に引っ張っていっても、その後に付いていく投資家は果たしてどれだけいるのだろうか。持たざるリスクから急いで買いに転じる長期目線の投資家は上述の調査などからは左程多くないようにも見受けられる。年末株高への期待も根強いが、まだまだ株価の行方については慎重なスタンスを維持しておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/08 12:17 後場の投資戦略 買い優勢も上値の重い展開 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27528.66;+328.92TOPIX;1934.90;+19.50[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、3日ぶりの反発でスタートした後上げ幅をじりじり拡げる展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比315円高の27505円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均は買い先行で取引を開始した。ただ、今週は8日に米中間選挙の投開票のほか、10日には10月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えているため、積極的な売買は手控えられやすいとの指摘も聞かれている。そのほか、アジア市況は堅調に推移、米株先物はやや軟調な展開が続いている。 新興市場は冴えない展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後前場中ごろにかけてじりじりと下げ幅を縮小、その後プラス圏に浮上した。米長期金利が依然として4%を超えて推移していることはバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって重しとなっている。東証プライム市場の決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっていることも新興市場の冴えない動きに繋がっている可能性があろう。前引け時点で東証マザーズ指数が0.01%安、東証グロース市場Core指数が0.13%安となっている。 さて、4日には米10月雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数が26.1万人と市場予想を大きく上回り、平均時給は前年同月比で+4.7%と市場予想に一致して前月比では+0.4%と市場予想を上回った。一方で、失業率が3.7%と市場予想を超えて上昇した。10月の雇用統計は結果的にまちまちなものとなった。ブルームバーグ・エコノミクスのリポートでは、「雇用の伸びは力強かった一方で、失業率が大きく上昇した。データのノイズを整理した上での結論は、労働市場はなお非常にタイトで失業率が中立水準付近になるにはまだ大きな調整が必要ということだ」と指摘している。 FOMCでは政策金利の0.75ポイント引き上げを決定、FRBのパウエル議長は記者会見で労働市場の状況について、「明白な」形ではまだ軟化していないと述べていた。金融当局の引き締め策が雇用に重しとなるが、パウエル議長は労働市場への悪影響について明白な失業増加ではなく主に求人件数の減少という形で表れることへの期待を表明しているようだ。 8日には米中間選挙が予定されている。中間選挙では議会多数派の交代が決まる可能性があるため政局の動向にもある程度の注意が必要である。ただ、インフレ率が市場予想を大きく下回るか、やはり10日に発表される米10月CPIの結果に市場の注目が集まっている。10月の総合CPIは前年同月比7.9%上昇と9月の8.2%上昇からわずかな減速にとどまる見込み。コア指数も同6.5%上昇で9月の6.6%上昇に比べて伸びが若干鈍るとみられているが、なお非常に高い水準。FRBは、12月のFOMCで利上げペースを落とす可能性も示唆しているが、最終的な判断は今回の物価見通しが鈍るかどうかが極めて重要である。 常々、毎週月曜日の当欄では年末にかけて一旦の反発が起こる可能性があることを示唆してきた。CPIの結果には注目しているが、中間選挙が実施される11月以降のS&P500指数の株価パフォーマンスは良好という経験則が市場では知られている。こうしたアノマリーが意識される形で、今後も筆者の想定に変化はない。世界的に様々なリスクが散見されるなか年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、堅調な展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/07 12:19

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