後場の投資戦略
相場の力強さ継続もPERと実質金利の乖離が気がかり
配信日時:2023/02/16 12:16
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;27723.60;+221.74TOPIX;2002.22;+14.48
[後場の投資戦略]
前日の米国市場では経済指標がいくつか発表されたが、最も注目されたのは米1月小売売上高だろう。前回12月分までは、2カ月連続で前月比マイナスと減速し、市場予想も下回っていたことで、昨年末にかけては景気後退懸念が強まる経緯があった。しかし、今回の1月分は前月比+3.0%と12月(-1.1%)から大きく回復し、市場予想(+2.0%)も大幅に上回った。暖冬により外出が増加したという要因も指摘されているが、項目別のデパート+17.5%、外食+7.2%、家具+4.4%などの数値をみる限り、一過性要因を除いても非常に強い結果だったと言えそうだ。しかし、経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まる一方、これがポジティブ一辺倒かというと、話はそう簡単なものではない。
今年は年明けから、中国の「ゼロコロナ」政策の緩和、欧州での天然ガス価格の下落などを背景に、すでに景気後退懸念は大きく緩和していた。一方で、2月に入ってから発表された米1月雇用統計が市場予想を大きく上振れたことを背景に、市場が警戒する対象は再び景気からインフレへと移っていた。こうした中、強い労働市場に加えて、需要の旺盛さが確認された今回の米小売売上高の結果は、足元のインフレ懸念を強める形で、むしろネガティブに捉えられる側面もある。前日の米株式市場は売り先行で始まった後にプラス圏に回復し、底堅さを見せたが、今後の展開には注意が必要と考える。
米10年債利回りは15日、3.80%まで上昇、1月18日に付けた3.37%から大きく水準訂正してきた。期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利も1月25日の1.16%から前日には1.46%まで上昇してきた。一方、S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)は昨年末にかけて一時17.3倍程度にまで低下していたが、年始からは大きく反転し、2月2日には約19.7倍にまで上昇した。しかし、足元で実質金利が上昇する中でも、予想PERの調整は限定的で、S&P500種株価指数の予想PERは現在18.8倍程度に位置する。
このように、米債券市場では一足先に楽観ムードの修正が進んでいる一方で、米株式市場ではまだ修正がほとんど進んでいない状態といえる。むろん、米10年債利回りは上昇しているとはいえ、昨年10月に付けた4.3%と比較すればまだ距離があり、過度に警戒する必要はないのかもしれない。しかし、今後発表される米国の雇用や物価に関する指標が改めて強い結果となれば、現在の米実質金利と米PERのギャップが埋められる形で、株価の調整が起きる可能性はある。米主要株価3指数は揃って上向きの25日移動平均線より上方に位置し、金利上昇が続く中でも底堅さを見せ、上昇トレンドを維持しているが、ファンダメンタルズの観点からは目先は調整余地があることを頭の片隅に置いておきたい。
こうした中、今晩は米1月卸売物価指数(PPI)が発表される。一昨日に発表された米1月消費者物価指数(CPI)の結果を受けてインフレ鈍化の一服が意識されつつある中、CPIに対して先行性の高いPPIの結果が強いものとなれば、楽観ムードの修正が起きる可能性は十分にあるだろう。本日の東京市場は為替の円安進行も追い風に強含みで推移しているが、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑から、日経平均は引き続き28000円手前での上値の重い展開が予想される。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;27723.60;+221.74TOPIX;2002.22;+14.48
[後場の投資戦略]
前日の米国市場では経済指標がいくつか発表されたが、最も注目されたのは米1月小売売上高だろう。前回12月分までは、2カ月連続で前月比マイナスと減速し、市場予想も下回っていたことで、昨年末にかけては景気後退懸念が強まる経緯があった。しかし、今回の1月分は前月比+3.0%と12月(-1.1%)から大きく回復し、市場予想(+2.0%)も大幅に上回った。暖冬により外出が増加したという要因も指摘されているが、項目別のデパート+17.5%、外食+7.2%、家具+4.4%などの数値をみる限り、一過性要因を除いても非常に強い結果だったと言えそうだ。しかし、経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まる一方、これがポジティブ一辺倒かというと、話はそう簡単なものではない。
今年は年明けから、中国の「ゼロコロナ」政策の緩和、欧州での天然ガス価格の下落などを背景に、すでに景気後退懸念は大きく緩和していた。一方で、2月に入ってから発表された米1月雇用統計が市場予想を大きく上振れたことを背景に、市場が警戒する対象は再び景気からインフレへと移っていた。こうした中、強い労働市場に加えて、需要の旺盛さが確認された今回の米小売売上高の結果は、足元のインフレ懸念を強める形で、むしろネガティブに捉えられる側面もある。前日の米株式市場は売り先行で始まった後にプラス圏に回復し、底堅さを見せたが、今後の展開には注意が必要と考える。
米10年債利回りは15日、3.80%まで上昇、1月18日に付けた3.37%から大きく水準訂正してきた。期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利も1月25日の1.16%から前日には1.46%まで上昇してきた。一方、S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)は昨年末にかけて一時17.3倍程度にまで低下していたが、年始からは大きく反転し、2月2日には約19.7倍にまで上昇した。しかし、足元で実質金利が上昇する中でも、予想PERの調整は限定的で、S&P500種株価指数の予想PERは現在18.8倍程度に位置する。
このように、米債券市場では一足先に楽観ムードの修正が進んでいる一方で、米株式市場ではまだ修正がほとんど進んでいない状態といえる。むろん、米10年債利回りは上昇しているとはいえ、昨年10月に付けた4.3%と比較すればまだ距離があり、過度に警戒する必要はないのかもしれない。しかし、今後発表される米国の雇用や物価に関する指標が改めて強い結果となれば、現在の米実質金利と米PERのギャップが埋められる形で、株価の調整が起きる可能性はある。米主要株価3指数は揃って上向きの25日移動平均線より上方に位置し、金利上昇が続く中でも底堅さを見せ、上昇トレンドを維持しているが、ファンダメンタルズの観点からは目先は調整余地があることを頭の片隅に置いておきたい。
こうした中、今晩は米1月卸売物価指数(PPI)が発表される。一昨日に発表された米1月消費者物価指数(CPI)の結果を受けてインフレ鈍化の一服が意識されつつある中、CPIに対して先行性の高いPPIの結果が強いものとなれば、楽観ムードの修正が起きる可能性は十分にあるだろう。本日の東京市場は為替の円安進行も追い風に強含みで推移しているが、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑から、日経平均は引き続き28000円手前での上値の重い展開が予想される。
(仲村幸浩)
<AK>
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