後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
相場の底はどこになるのか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26951.59;-55.37TOPIX;1888.44;-6.97[後場の投資戦略] 本日の日経平均は節目の27000円を手前に、25日移動平均線を挟んだもみ合い展開となっている。10月に入ってから、2度も200日線を上回りながらも、翌日以降には下落トレンドを再開する動きを見せており、8月17日高値を直近ピークとした上値切り下げ型トレンドの様相が強まっている。今週は、週末の米国でのオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)までの間は、ショート(売り持ち高)が積み上がっている米国株を中心に売り方の買い戻しでリバウンドが続きやすいと考えられたが、実際のところは日米ともに冴えない状況が継続。SQを通過した来週以降は米IT大手決算の結果次第でもあるが、需給面では下げやすい環境になってきたことに留意したい。 前日の当欄(「なお残る金利上昇圧力に要警戒」)での主張の繰り返しになるが、米債利回りの上昇が止まらない。前日20日、米10年債利回りは4.23%へと更に続伸し、14年ぶりの高値を連日で更新。前日は、英国でトラス首相が辞任を表明。ハント新財務相が減税策の大半を撤回した時点で、この展開はある程度織り込まれていたとはいえ、市場の波乱を引き起こしたトラス首相とクワーデング前財務相が表舞台の第一線から退いたにもかかわらず、金利の上昇は止まず、前日の米株式市場は前半の上げを帳消しにして下落に転じた。 金利上昇の引き金となったフィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、年内に政策金利を、4%を「大きく」上回る水準にまで引き上げること、そして、現状の緩慢なスピードでのインフレ沈静化という「残念な」状況を踏まえれば、来年の一段の引き締めをも辞さない方針を主張。同氏は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)での議決権を有していないが、連銀総裁から、来年の政策金利5%到達をも匂わす発言が出てきたことには警戒感を抱かざるをえない。19日には、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、コア消費者物価指数(CPI)の減速に進展が見られない場合、政策金利を4.50−4.75%よりも更に引き上げることを厭わないと主張した。 一方、9月のFOMC議事要旨では、数名のメンバーから「不透明な世界経済や金融環境において、経済見通しへの著しい悪影響を軽減することを目的に、今後の利上げペースを調整することが重要」との見解があったもよう。また、年内の残る2会合での利上げ幅については、1.25ptと1.00ptの主張をするメンバーの数が拮抗していたことが判明している。 筆者は、FRBの超積極的ともいえる現在のタカ派スタンスが転換する頃が、株式市場の一つの転換点になると考えている。しかし、現状は、FOMC議事要旨内でそうした兆候が見られつつある一方、公の場での高官発言からは依然としてタカ派な姿勢が続けられている。そろそろ金利を据え置いて政策効果の見極めに転じたい反面、データに基づく政策運営に徹している限り、前回9月の雇用統計およびCPIが強すぎる内容だったこともあり、いまだ手を緩ませることができない、というのがFRBの多くのメンバーが抱いている葛藤ではないだろうか。 ただ、10月4日に米労働省が発表した8月の雇用動態調査では、求人件数が110万人減少し、減少件数は2020年4月以来の大きさだった。CPIについては家賃などから構成される住居費が依然として勢いが強いものの、それ以外では減速の兆しが見られるものが多くなってきている。また、最大の関門ともいえる住居費についても、これに1年程先行する住宅価格は4月頃からすでにピークを打っている。 現在、市場は、11月のFOMCだけでなく、12月会合でも0.75ptの利上げが行われることをメインシナリオとして織り込みにいっている。つまり、9月のFOMC議事要旨内で確認されたFRBのほぼ全てのメンバーが想定している1.00ptもしくは1.25ptの利上げを超える、合計1.50ptの年内の利上げを織り込んできている。 依然として情勢は流動的とはいえ、今後発表される米国の求人件数や雇用統計、CPIの結果で、余程のことがない限りは、FRBは11月、12月のいずれかのFOMCで、将来の利上げ幅縮小ないしは利上げ停止に踏み切るための何らかの理由を挙げると考えられる。このシナリオが実現するのであれば、株式市場はいずれかの時点でいったん底を打つと推察される。ただ、これが大底かと問われれば依然懐疑的である。ウクライナ情勢のほか、来季の備蓄も見据えた世界的なエネルギー消費の動向、世界的なドル高に伴う新興国経済への下押し圧力など、外部環境の不透明感が強いなか、企業業績の悪化もどこまで深いものになるかが現時点では予想しにくい。株式市場は長期調整局面にあることを念頭に今後も相場に臨みたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/21 12:22
後場の投資戦略
日経平均は3日ぶり反落、なお残る金利上昇圧力に要警戒
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26954.15;-303.23TOPIX;1892.98;-12.08[後場の投資戦略] 本日の日経平均は前日に上抜いたばかりの200日移動平均線を再び割り込んで、心理的な節目の27000円も下回った。6日にも大幅高で一度同線を上回ったものの、翌日に下落トレンド再開という形があった。今回も同様の流れになってしまったことで、今後この200日線が強力な上値抵抗線としてより強く意識されることになりそうだ。 前日19日、米10年債利回りは4.14%と2008年7月以来の高水準まで上昇した。英国でハント新財務相が大規模な減税策の大半を撤回し、欧州を中心とした財政不安が和らいできている中にもかかわらず、米国金利がこうして再び高値を更新してきていることは、それだけ金利上昇圧力が強い証左といえ、かなり気掛かりである。 前日の当欄(「年末に向けての株価の意外高も念頭に」)では、フェデラルファンドレート(FF)金利先物市場がすでに来年3−5月時点で政策金利が4.9%を超える水準にまで上昇することを織り込んでいること等を理由に、金利上昇圧力は限られてきたという話をした。ただ、英財政政策を巡る一連の不安について、これまでに発表済みの撤回分だけでは、財政不安を完全に解消するには不十分との指摘があり、欧州発のグローバルな金利上昇圧力はまだ残る。また、前日に発表された英10月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と8月(+9.9%)から加速した。冬季シーズンが本格化するに伴い、エネルギー危機が再台頭した際のインフレ・金利上昇のシナリオも考えられよう。 現在、米国の政策金利と連動性の高い米2年債利回りは4.55%に位置している。ターミナルレート(最終到達点)が、現状、米連邦準備制度理事会(FRB)が想定している4.50−4.75%のままであれば、米2年債利回りをはじめとした米国金利の上昇余地は小さいと考えられる。しかし、上述の欧州発のリスク要因が顕在化するか、もしくは、今後発表される米国のCPIや雇用統計が予想を大きく上振れることがあると、グローバルな金利上昇圧力が強まり、米ターミナルレートも5.0−5.5%程度にまで切り上がる可能性がある。この場合、米2年債利回りは5%前後、米10年債利回りでは4.5%程度までは上昇余地が生まれることになりそうだ。市場の目線はインフレ・金利動向よりも企業業績に移ってきているが、金利上昇を通じた株価下押し圧力が残っていることも留意しておきたい。 ほか、気掛かりなのは自動車関連だ。前日、米自動車ローン大手アライ・ファイナンシャルの7−9月期決算が発表されたが、新規ローンの申請件数が予想を下回り、株価が急落した。9月下旬にも、米中古車販売のカーマックスの決算を受けて自動車関連株が軒並み下落することがあったが、米国の個人消費を巡る環境は急速に悪化している可能性が高まってきた。個人消費の悪化を通じて企業の投資意欲もさらに落ち込んでいる可能性があり、広告需要の一段の悪化も想定される。現時時間で20日午後には米動画写真共有アプリを展開するスナップチャットの決算が予定されているが、広告関連のIT企業決算には注意が必要だろう。(仲村幸浩)
<NH>
2022/10/20 12:22
後場の投資戦略
年末に向けての株価の意外高も念頭に
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27353.87;+197.73TOPIX;1909.46;+8.02[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、前日に上抜いたばかりの25日移動平均線をサポートラインにする形でしっかりと続伸。上値抵抗線だった200日線も上抜いてきている。同線を本日、終値でしっかりと超えてくることができれば、テクニカル面は好転し、すでに一巡していると推察される買い戻しだけでなく、新規買いなども誘発してきそうだ。 米国では先んじて7−9月期決算の発表が始まっているが、今のところ総じて堅調なものが多い印象。金融大手の決算は一巡したが、貸倒引当金の積み増しが過度な景気後退懸念を招くことはなく、不振の投資銀行業務を純金利収入やトレーディング収益で相殺できているところが多かった。また、IT大手の決算で前日に皮切りとなった動画配信サービスのネットフリックスは、7−9月期の会員数が会社計画と市場予想をともに上回り、一株当たり利益(EPS)も予想を上回った。株価は時間外取引で急伸している。10-12月期見通しは売上高とEPSがともに予想を下回るなど完璧な決算とまではいかなかったが、株価の反応を見る限り、市場は胸を撫で下ろしているようだ。 全体的な米国企業の決算の特徴として、事前に悲観的ではあっても、蓋を開けてみると予想よりも良いということが多いが、今回の7−9月期決算も、まだ序盤ではあるが、今のところはそうした経験則通りの結果になっている。今晩の米株式市場では、電気自動車大手のテスラの決算を控えているが、こうした流れに弾みをつけてくれることに期待したい。 足元の株式市場の懸念材料として、インフレは依然くすぶっているが、もっぱら、最大の関心事は米連邦準備制度理事会(FRB)による遅行データに基づく積極的な利上げが過度な引き締めとなり、景気後退・企業業績の悪化を招くのではないかという点に集まっている。そのため、今回の7−9月期決算はこれまで以上に事前の警戒感が強く、足元の株式市場の上値抑制要因にもなっている。 しかし、裏を返せば、年末に向けての株高の地合いが整いつつあるようにも考えられる。まず、金融引き締めについてだが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、すでに来年3−5月時点で政策金利が4.9%を超える水準にまで上昇することを織り込んでいる。多くのFRB高官が政策金利を4.5−4.75%にまで引き上げた後は、インフレが沈静化するまで当該水準で据え置くことを主張していることを踏まえると、金利先物市場はすでに政策金利水準については現時点では十分といえる程に織り込んでいるといえる。 利上げ幅についても、今年の11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)だけでなく、12月会合でも5会合連続で0.75ptの利上げを行うことを6割以上の確率で織り込み済みだ。年明け以降も利上げが続くとしても、金融引き締め効果を見極める必要性があることを考慮すると、利上げ幅は0.5pt以下に低下すると考えられ、利上げモメンタムのピークアウトも視野に入っている。 米10年債利回りなど米国金利への上昇圧力はなお残っていると考えられるものの、利上げペースが明確になり、その織り込みも完了している今、金利上昇による株価バリュエーションであるPER(株価収益率)への低下圧力はかなり和らぎつつある。そして、株価を決めるために残されたもう一つの要因は一株当たり利益(EPS)である。今の株式市場は、想定以上に業績が悪化するのではないか、今後、アナリストの業績予想が一段と引き下げられるのではないかと恐れている。こうした懸念がEPSへの低下圧力として働いて、現在の最大の株価下押し圧力になっていると考えられる。 そのため、上述したように、今のところ順調にきている7−9月期決算が今後も良好なものに終われば、市場の過度な業績後退懸念はいったん緩和されるだろう。年末に向けては極端なショート(売り持ち高)ポジションが築かれている米株式市場を中心に年末株高が実現する可能性があるといえよう。 ただ、残念ながら、現在の株式市場を巡る懸念要素はFRBの金融政策や企業業績だけではない。グローバルな視点から見渡せば、ウクライナ情勢のほか、欧州を中心に抱える世界的なエネルギー危機、「ゼロコロナ」政策の堅持から低迷が続く中国経済、米中摩擦、など多くの問題が重なっている。企業業績も7−9月期実績が良くても、経営陣が先行き不透明感を残すコメントを多く残せば、結局、翌四半期決算に懸念が繰り越されることになる。それでも、現在、先行きに弱気な意見をもつ市場関係者が支配的になっている中、完全に楽観に傾くことはできずとも、年末に向けては株価の意外高が控えている可能性にも留意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/19 12:17
後場の投資戦略
英財政不安後退も米長期金利の4%維持が気掛かり
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26985.66;+209.87TOPIX;1892.66;+13.10[後場の投資戦略] ナスダックの大幅反発を背景に投資家心理が改善し、本日の東京市場でも買い戻しが先行している。しかし、日経平均は寄り天井の形で大きく失速、200日移動平均線手前で陰線を形成しており、上値の重さを確認した格好だ。寄り付き直後の高値からは一時300円以上も下げた。最近は、心理的な節目の27000円を割り込んでもすぐに回復する底堅さが見られる一方、回復した割には再びあっさりと同水準を割り込むなど、非常に振れ幅の激しいボラタイルな展開が続いている。それでも200日線を超えられない状態が長期化しているあたり、大勢はやはり弱気局面が継続しているといえそうだ。 前日の米国株もハイテク株を中心に大幅反発をしたとはいえ、気掛かりな要素もある。英国のハント新財務相が減税計画の撤回を発表したことで同国の財政不安が後退し、前日の英国債利回りは低下(債券価格は上昇)、通貨ポンドは対ドルで買い戻された。これが波及する形で、前日の米国金利も低下した。しかし、米10年債利回りは低下したとはいえ、結局4%台のままだ。 前日の米国時間、米10年債利回りは一時3.92%まで低下したが、そこから急速に下げ渋って結局4.01%で終えた。米10年債利回りは9月28日に4%に乗せた後、景気後退懸念などを背景に10月上旬に一時3.5%台まで低下。この時、米国金利はピークを打ったとする声も聞かれたが、その後、再び4%を回復。このように、米10年債利回りは4%に乗せては同水準を割り込むといった動きを何度も繰り返している。英国財政を巡る懸念が大きく後退したにもかかわらず、根強く4%台を維持してくるあたり、金利の先高観の強さが窺える。実際、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は来年3月時点で政策金利が4.9%にまで上昇することを織り込んでいる。今後の金利上昇圧力は依然として残っていると推察され、株式市場への影響が懸念される。 また、企業決算も注目される。今晩の米国市場では、金融大手のゴールドマン・サックスのほか、動画配信サービスのネットフリックスなどの決算が予定されている。今のところ、金融大手の決算は堅調で、今後本格化する7-9月期決算に対する警戒感は和らいでいるが、ネットフリックスの決算がどのようなものになるかは注目だ。有料会員数が予想外に大きく減少するといった結果になると、4月のネットフリックスショックの再来となりかねないため、注意が必要だ。一方、予想を上回るものとなれば、今週末の米国でのオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)にかけて、全体相場におけるショートカバー(売り方)が加速しそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/18 12:17
後場の投資戦略
米株安受けて売り優勢の展開、外部要因も注視必要か?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26703.00;-387.76TOPIX;1876.93;-21.26[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、大きく下落してスタートした後軟調もみ合い展開となっている。10月ミシガン大消費者信頼感指数や同指数の期待インフレ率が予想を上回ったことで国内の投資家心理も悪化、売りが先行した。ナスダックの下落率は3%を超えており、東京市場でハイテク株や半導体関連株の重しに、押し目買いも限定的となっている。そのほか、中国・香港市場は軟調に推移、米株先物はやや堅調に推移しているが、東京市場は軟調な展開が続いている。 新興市場でも売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後マイナス圏での軟調もみ合い展開となっている。米長期金利が4%を超えて推移したことからバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株も厳しい展開が続いている。ただ、個別材料株などに幕間つなぎの物色が向かっており、前引け時点で東証マザーズ指数が0.55%安と日経平均株価よりも下げ幅は限定的、東証グロース市場Core指数が1.66%安で時価総額上位銘柄が下落をけん引した。 さて、前週13日に発表された米9月消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.2%上昇と8月からは減速したものの予想の8.1%上昇を上回った。食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比6.6%上昇と8月から大きく加速し、予想の6.5%上昇も上回った。住居費だけでなく、食品や医療の分野でも強い伸びが見られた。また、14日の米10月ミシガン大学消費者信頼感指数における期待インフレ率は1年先が5.1%と9月から大幅に上昇、5−10年先も2.9%と9月から上昇した。依然としてインフレ長期化に対する警戒感から米長期金利の上昇は続いて4%をつけた。 14日のブルームバーグでは、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が経済には冷え込みの兆候が見られるとした上で、景気に抑制的な水準への利上げ継続を「全面的に支持する」と語り、同総裁は政策金利を4.5-5%に引き上げることが「最もあり得る結果」だと示唆した。 一方、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、過度に急速な利上げを行うことには慎重姿勢を示している。急速過ぎる利上げは「最終的に自己破壊を招きかねないやり方で金融市場と経済を混乱させる」可能性があると述べている。また、米セントルイス連銀のブラード総裁は15日に、11、12両月の年内残り2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合について利上げ幅を予想するには時期尚早だとしつつも、両会合で0.75ポイントずつの利上げを決める可能性を残す趣旨の発言を行ったようだ。今後のFRB高官のタカ派発言に警戒しながら、11月・12月のFOMCでの利上げ幅には注目が集まろう。 そのほか、中国では中国共産党第20回党大会が16日に開幕、習近平国家主席が今後の施政方針を示す活動報告を行った。台湾問題に関して、国家統一に向けて「歴史の車輪は前に進んでいる」と主張し、武力行使の放棄は決して約束しないと語っている。ウクライナ情勢では、ロシアが核兵器を使用すればほぼ確実にウクライナの同盟国、およびNATO加盟国の「物理的な対応」が引き起こされるとの見方を北大西洋条約機構(NATO)高官が示した。各国の経済状況を注視するだけでなく、台湾情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクも引き続き注視していく必要がありそうだ。 前週の当欄で筆者は年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えながら来年以降大きく下落する可能性があることを示唆した。ただ、世界的に様々なリスクが散見されるなか、年末にかけて一旦の反発があったとしてもそこまで大きいものでない可能性がありそうだ。また、引き続き、来年以降大きく下落する可能性を念頭に相場を見守っているが、11月・12月のFOMCやそのほかのリスク次第では年末にかけてじりじり下がっていく展開も想定しておきたい。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を注視しつつ、新興株に幕間つなぎの物色が継続して向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/10/17 12:24
後場の投資戦略
需給主導の急伸どこまで続くか、CPIに潜むリスク
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27141.18;+903.76TOPIX;1902.46;+47.85[後場の投資戦略] 前日に発表された米9月CPIは前年同月比+8.2%と8月(+8.3%)からは減速したものの、予想(+8.1%)を上回り、前月比では+0.4%と予想(+0.2%)を大幅に超過。さらに、FRBが重視する食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比+6.6%と8月(+6.3%)から大きく加速し、予想(+6.5%)も上回った。また、前月比の伸びは+0.6%と予想(+0.5%)を超過し、大幅な伸びとなった。CPIの3割と最大の割合を占める住居費(家賃等から構成)だけでなく、食品や医療の分野でも強い伸びが見られた。特に、食品は前月比+0.8%と2カ月連続で高い伸び率となり、前年同月比では+11.2%と著しく高い伸びとなった。 総じてネガティブな結果となったが、数値が高過ぎるが故に皮肉にもコアCPIのピークアウト感が台頭し、株式市場では売り方の買い戻しが主導する形で日米ともに大幅反発となっている。米国では、来週末21日にオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)を迎える。CPIの発表前から株価指数や個別株ともに記録的な水準にまでショート(売り持ち高)が積み上がっていたことを踏まえると、米物価指標イベントを通過したあく抜け感もあり、来週末にかけては、相場は短期的には戻りを試す展開が続きそうだ。 ただ、今晩の米株式市場ではJPモルガン・チェース、モルガンスタンレー、ウェルズ・ファーゴなどの金融大手の決算を控えている。景気後退懸念が強まるなか、貸倒引当金の積み増しなどの動向が注目され、内容次第では今後本格化する7-9月期決算への警戒感が強まりかねず、早ければ週明けから相場のリバウンドは小休止する可能性もあろう。 また、CPIについてはコア指数の方ばかりが注目されているが、石油輸出国機構(OPEC)プラス会合での日量200万バレル規模の減産が決まってから、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)原油先物価格(11月物)の上昇・高止まりが続いている。現在は、1バレル=90ドル前後での推移となっているが、市場では、90ドル台半ばまで上昇すれば、CPIが再び9.0%台に乗せる可能性があるとの指摘も聞かれている。エネルギーインフレは終わったものとされ、コア指数ばかり注目されるが、今後再びCPI総合の方が警戒要素として台頭する可能性があろう。 今後、冬季シーズンを迎えるに伴い、暖房使用などを通じてエネルギー需要は一段と高まってくる。欧州では、今冬を乗り越える分の備蓄は確保できたとされているが、今冬はラニーニャ現象に伴い厳冬になる可能性もあり、予断を許さない。想定以上の厳冬となり、備蓄消費が速く進めば、仮に今冬は乗り切れたとしても、ロシアへの経済制裁が続くなか来季への警戒感が高まり、年明け以降に再びエネルギー危機が到来する可能性もあろう。 日経平均は本日前引け時点で900円を超える大幅反発。10月半ば以降は株式市場が上昇しやすいという季節要因や前述した需給要因もあり、短期的には戻りを試す展開も考えられるが、上述した背景もあり、まだ安心するには早かろう。日経平均は累積売買代金が積み上がっている27500円あたりで戻り待ちの売りが膨らみやすい点などにも注意しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/14 12:20
後場の投資戦略
世界経済が抱える複合的懸念から相場低迷は長期化
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26260.25;-136.58TOPIX;1856.22;-12.78[後場の投資戦略] 前日に発表された米9月PPIは前年比+8.5%と予想(+8.4%)を上回った一方、食品・エネルギーを除いたコア指数は同+7.2%と予想(+7.3%)を下回った。コア指数の下振れを評価する声もあるが、前月比ではコア指数は+0.3%と予想(+0.2%)を上回っている。また、全体の伸びでは前月比は+0.4%と予想(+0.1%)を大幅に超過した。総じてあまり評価できる結果とはいえないだろう。 今晩発表予定の米9月CPIに対する警戒感はかねてから強かったが、上述のPPIの結果は一段とその懸念を強めるものといえる。S&P500指数の前日終値はオプション建玉が積み上がる3500−3600ptの間にあり、米国では最近、個別株のオプション売買も記録的なレベルで活発化しているという。CPIの結果を受けた相場の変動率の上昇には注意が必要だろう。 前日に公表された9月開催分のFOMC議事録では、多くの参加者がインフレ抑制を行い過ぎた場合のリスクに触れつつも、金融引き締めが過小だった場合のリスクの方が大きいとの見解でまとまっていることが判明し、タカ派な内容であったといえる。一方、個人的には総じてタカ派とはいえ、予想よりもハト派寄りの印象を抱いた。 9月に公表された政策金利見通し(ドット・チャート)はFF(フェデラルファンド)金利の中央値が今年末までにあと1.25pt引き上げられることを示唆していたが、この予測をしたのは政策メンバーのうち10人だった。9人は1.00pt以下の予測をしており、内実は拮抗していることが示唆された。これまで、米連邦準備制度理事会(FRB)の多くの高官から、市場の利下げ転換期待を諫めるような非常にタカ派な発言が相次いでいたことを踏まえると、やや想定外の印象を受けた。 しかし、今晩に米CPIの結果公表を控えていることもあるだろうが、前日の米株式市場も本日の東京市場もポジティブな反応はほとんど見せていない。FRBの積極的な利上げが行き過ぎて景気が必要以上に大きく後退してしまう等、政策ミスへの警戒感が足元強まっていた経緯を踏まえると、そうした懸念が緩和される内容だったという点で、相場が少しはポジティブに捉えてもおかしくはないはずと考えたが、実際にはそうなっていない。 つまるところ、市場は金融引き締めだけでない、世界経済が抱える複合的なリスクに警戒感を抱いているのだと考えられる。具体的には、ウクライナ情勢を巡ってのロシアによる核兵器の使用リスクや、一段の経済制裁などを通じたエネルギーインフレの再来、企業業績の想定以上の落ち込み、英国債市場を中心とした金融市場の混乱の連鎖などが挙げられるだろう。こうした、いったん生じると大きな波乱に繋がりかねないような不透明要因が今は同時的・複合的に生じている。これが、上述したように、金融引き締め懸念の後退を素直に好感しきれない一つの背景ともいえそうだ。 となると、今晩、米CPIが仮に予想を下振れて多少ポジティブな結果だったとしても、その先の株式市場の反発基調は依然として短命なものに終わらざるを得ないと考えられる。セリングクライマックス的な総悲観の動きも未だ出ていないことを踏まえれば、積極的な押し目買いに転じる時期はまだ到来していないといえよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/13 12:26
後場の投資戦略
重要指標の発表控えてこう着感の強い展開
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26364.25;-37.00TOPIX;1870.31;-0.93[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、続落してスタートした後前日終値付近でのもみ合い展開となっている。米株式市場でダウ平均は小幅に上昇したものの、ナスダック総合指数が1%台、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が2%台の下落となったことが東京市場でハイテク株や半導体関連株の重しとなった。自律反発の買いから一時プラス圏に浮上するも、今晩米国で発表される9月の米卸売物価指数(PPI)や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(9月20-21日開催分)、明晩発表予定の9月の米消費者物価指数(CPI)などを見極めたいとして買いは続かなかった。そのほか、アジア市況や米株先物は軟調に推移している。 新興市場でも売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後下げ幅を縮小する動きを見せた。日経平均同様プラス圏に浮上する場面もあったが、米長期金利が3.9%台まで上昇したことが投資家心理を悪化させており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の重しに。重要指標の発表を前に買い進む動きも乏しく前引けにかけて下げ幅を拡げる展開となった。前引け時点で東証マザーズ指数が0.99%安、東証グロース市場Core指数が1.47%安。 さて、米9月雇用統計では結果的に失業率が想定外に大きく低下したことで依然として労働市場の逼迫が継続していることが確認された。本日発表される米9月PPIは市場予想が前年同月比7.3%増、前月比0.2%増となっている。また、多くのFRB高官から利下げ転換期待を打ち消すタカ派な発言が相次いでおり、PPIの結果もさることながらFOMC議事録の内容にも注目が集まる。 翌13日には米9月消費者物価指数(CPI)の結果が発表される。市場予想は、「総合」で前年同月比8.1%上昇と小幅に伸び鈍化を予測、「コア」では同6.5%上昇で前月と比較すると加速が見込まれている。前年同月比での伸びが前月の8.3%上昇を上回ると株式市場にとっては大きな問題になると、JPモルガン・チェースのトレーディングデスクは指摘している。つまり、インフレ率の鈍化が確認されなければ市場にとってはネガティブ材料となる。 景気後退入りリスクも忘れてはいけない。ブルームバーグでは、ドイツの金融サービス会社アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏は「米経済はより良い目的地に向かう浮き沈みの多い旅」の途中だとの認識を示したうえで、「完全に回避できたダメージの大きいリセッション(景気後退)の可能性が非常に高いのではないかと恐れている」と報じている。また、ヘッジファンド運営会社チューダー・インベストメントの創業者でCEOのポール・チューダー・ジョーンズ氏も「米国経済がリセッション(景気後退)入りすると想定している」と語っている。 さらに、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、米経済および世界経済が来年半ばまでにリセッションに陥る可能性が高いとの見方をCNBCとのインタビューで示したという。また、S&P500については「一段の下落余地があるかもしれない」とし、「さらに20%」下げる可能性があると語っているようだ。 来年以降、上述のように景気後退を受けてさらに「20%」下げる可能性があると、ナスダック100指数で8000pt台まで下落する可能性がある。前日の当欄で示唆したように様々なリスクが散見されるなか、現段階で筆者は年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えながら来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いて引き続き相場を注視している。後場の日経平均は、重要イベントを控えて様子見ムードが続くか。米株先物の動向を横目にこう着感が強まる展開を想定しておきたい。
<AK>
2022/10/12 12:18
後場の投資戦略
米雇用統計の結果受けた米株安横目に投資家心理悪化
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26480.97;-635.14TOPIX;1876.29;-30.51[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、続落してスタートした後マイナス圏での軟調もみ合い展開となっている。国内が連休中だった7日、10日の2日間で米主要指数が大幅に下落したことが東京市場の重しとなった。中でも、2日間でナスダック総合指数が4.8%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が9.3%の下げとなり、ハイテク株や半導体関連株の株価を押し下げる要因となった。また、米雇用統計の結果に加えてウクライナ情勢の激化や北朝鮮による頻繁なミサイル発射など地政学リスクの高まりが投資家心理を悪化させた。そのほか、アジア市況はもみ合い、米株先物がやや軟調に推移している。 一方、新興市場でも売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後下げ幅を縮小する動きを見せた。前引けにかけて再度売り優勢の展開となったが日経平均と比較すると相対的に下げ幅は限定的となっている。米9月雇用統計で失業率が想定外に大きく低下したことで金融引き締め懸念が強まっているが、幕間つなぎの物色が値動きの軽い東証グロース市場の中小型株に向かっている可能性がある。前引け時点で東証マザーズ指数が0.96%安、東証グロース市場Core指数が1.28%安。 さて、7日に発表された米9月雇用統計では平均賃金の伸びが前年同月比5.0%増と予想(+5.1%)を下回り、前月から減速するなどポジティブな内容が確認された。ただ、前月比0.3%増で前月からやや伸びが鈍化したが依然として高い伸びを示した。また、雇用者数の伸びが26.3万人と予想(25.5万人)を上回り、失業率は3.5%と予想(3.7%)を下回った。 前週は、米9月雇用統計では弱い数値が出るのではないかという観測が出ていたことから足元での株式の買い戻しに繋がっていた。ただ、結果的に失業率が想定外に大きく低下したことで依然として労働市場の逼迫が継続していることが確認され、FRBによる金融引き締め懸念が強まり、7日以降の米株市場は弱気ムードが続いた。 前週の雇用統計発表前には、FRB高官のタカ派発言が相次ぎ、インフレ抑制のためには景気後退をも厭わないタカ派なスタンスが確認されていた。米シカゴ連銀のエバンス総裁は10日のシカゴでの講演で、利上げが行き過ぎるリスクを低減するために金融当局は安心して休止できる水準まで政策金利を早急に引き上げる必要があるとの認識を示している。直近でFRB高官のタカ派発言が相次いでいることから、明日12日に米9月卸売物価指数(PPI)と9月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表があるがこれらの内容には大きな注目が集まるだろう。もちろん13日の米9月消費者物価指数(CPI)も忘れてはいけない。 前週の楽観ムードから、雇用統計の結果やFRBのタカ派姿勢を受けて株式市場は弱気の見方が増えてきた。また、世界各国の経済状況、北朝鮮のミサイル発射やロシアウクライナの地政学リスクなど、依然として様々なリスクが存在している。前週の当欄で示唆したように、現段階で筆者は年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えながら、来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いて相場を注視している。後場の日経平均は、売り優勢の展開が継続して軟調な展開が続くか。明日の米9月PPIと9月FOMC議事録の公表を前に様子見ムードが強まる展開を想定しておきたい。
<AK>
2022/10/11 12:19
後場の投資戦略
タカ派化を止めないFRB
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27149.76;-161.54TOPIX;1911.03;-11.44[後場の投資戦略] 本日の日経平均は今週に入って初めての下落となり、5日ぶりの反落。前日までの4日続伸で一気に1400円程上昇し、25日、75日、200日など主要な移動平均線が集中する水準まで戻したことからもテクニカル面で戻り一服が意識されやすいところ。今晩に米9月雇用統計の発表も控えていることを踏まえれば当然の反応といえ、ネガティブ視する必要はないだろう。むしろ、朝方300円以上下落して始まったにもかかわらず、寄り付き直後から急速に下げ渋った動きの方が評価され、かなり強い動きといえる。需給面では、これまでに発表済みの投資部門別売買動向や先物手口から、海外投資家による売り方の買い戻しはすでに一巡していると推察され、足元では新たにロング(買い持ち高)の積み上げを意識させるような動きとなっている。 今晩の米雇用統計の市場予想は非農業部門雇用者数が25.5−27.5万人(前月31.5万人)、失業率は3.7%(3.7%)、平均賃金は前年比+5.0%(+5.2%)、前月比+0.3%(+0.3%)となっている。予想並みの結果となれば、短期的なリバウンド相場が目先続く可能性があろう。 しかし、一昨日、米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が利下げ転換について「全くあり得ないと思う」などと言及したのに続き、昨日は、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「政策スタンスを実際に変更するハードルは非常に高い」と発言。さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も「来年の利下げは全く予想していない」と発言したという。特に印象的だったのはカシュカリ総裁のコメントで、同氏は「利上げを継続していくに伴い、世界経済に対してある程度の喪失や不具合が生じるのは十分想定しているが、それは資本主義の本質に過ぎない」とも発言した。改めてFRBはインフレ抑制のためには景気後退をも厭わないタカ派なスタンスが確認されたといえる。 来週は米国の消費者物価指数(CPI)のほか米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(9月20−21日開催)の公表もある。上述の今週に入ってからのFRB高官らの発言も踏まえると、株式市場のリバウンドは目先続くとみられるものの、息の短いものになりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/07 12:18
後場の投資戦略
今後の株式市場に待ち構えるハードル
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27370.37;+249.84TOPIX;1928.08;+15.16[後場の投資戦略] 本日の日経平均は4日続伸で、今週に入ってからの上昇幅は1400円を超える。チャートでは、25日、200日の移動平均線を超え、75日線突破も視野に入っている。一方、日足一目均衡表では、厚い雲の下限を目前に控える状況でここからの上値抑制圧力は強いとみられる。ただ、ナスダック総合指数など米主要株価指数は6月に付けた安値とのダブルボトムの様相を呈しており、米国株の動き次第では、日経平均の雲上限突破への期待もありそうだ。 前日の米株式市場は日中の値幅が大きく乱高下した。米9月ISM非製造業景況指数が56.7と8月(56.9)から低下した一方、予想(56)は上回ったことで、先行き不透明感の強い中でもサービス需要が健全であることが示唆され、今週に入ってから俄かに高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換への期待が後退した。ただ、構成項目を見ると、雇用指数が8月の50.2から53に上昇して6カ月ぶりの高水準となり、労働需給逼迫の緩和が示唆されたほか、価格指数が8月の71.5から68.7へと5カ月連続で低下し、コスト上昇圧力の緩和も示唆された。内容としてはむしろインフレ圧力の減速が窺え、相場にはポジティブと考えられる。実際、次第に押し目買いが活発化し、序盤に2%を超えて下落していたナスダックなどは取引時間中に一時上昇に転じる場面もあった。 他方、今週に入ってからの市場の楽観ムードを冷ましたのは上述のISM非製造業景況指数よりも、前日の米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁によるタカ派発言だろう。同氏は「利上げペースを遅らせる壁は高い」との見解を主張。足元で利下げ転換期待が高まっていることに対しては「全くあり得ないと思う」と言及し、政策金利を景気抑制的な領域まで引き上げ、インフレ率が2%に落ち着くまで金利水準を維持する旨を説明した。市場の楽観論は再び早々に打ち砕かれた格好だ。 振り返ってみれば、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は以前、国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会合」でのパウエルFRB議長の講演を受けた株価下落に対して「満足」、「嬉しく思う」などと言及していた。FRBにとってインフレ抑制は最優先課題であり、いまやインフレ沈静化のためには景気後退も厭わない姿勢を示している。それ故、FRBにとってインフレ抑制の障害になり得る株高を通じた資産効果による消費拡大は避けるべき事態であり、今回のように9月FOMCで利下げ期待を諌めたばかりにも関わらず早々にFRBの主張に反する期待を再び抱きはじめた市場にお灸をすえる発言が出てきたのは自然なことだろう。 今週末の米9月雇用統計については弱い数値が出るのではないかという観測が出ており、これが足元での株式の買い戻しにも寄与していると推察されるが、仮に雇用統計が無風通過であっても、来週には米国の卸売物価指数(PPI)や消費者物価指数(CPI)の発表が控える。コアCPIで根強いインフレ圧力が確認されれば相場の再調整は時間の問題だろう。また、米9月PPIが発表される12日には9月FOMC議事録が公表される。政策金利見通しが大幅に引き上げられたタカ派な内容の会合であったことを踏まえると、議事録内容も警戒すべきであり、今後のスケジュールは株式市場にとって厳しいものになりそうだ。 後場の日経平均は日足一目均衡表の雲下限を手前に上昇一服とみておきたい。週末の雇用統計が近づくなか上昇余地は乏しくなってきていると考えられる。ここから足元で反発を強めているグロース株などに乗るのは危うく、本日は小休止となっている陸運や食料品といった内需系ディフェンシブ銘柄、インバウンド銘柄の押し目買いの方が無難だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/06 12:27
後場の投資戦略
利下げ転換思惑先走るも修正は時間の問題か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27085.97;+93.76TOPIX;1912.56;+5.67[後場の投資戦略] 本日の日経平均は27000円を回復してのスタートで3日続伸となっているものの、寄り付き直後を高値にその後は失速。チャートでは、26週移動平均線をはじめ、200日、75日、25日など主要移動平均線が集中する27200~27400円レンジ手前で失速しており、セオリー通りの綺麗上昇一服となっている。日足ベースの一目均衡表では、厚い雲のレンジ下限の手前でもあり、この水準は強力な上値抵抗帯として作用しそうだ。 前日は、豪中央銀行が0.25ptと、予想(0.5pt)に反して利上げ幅を縮小させたほか、米8月求人件数(JOLTS)の想定以上の減少もあり、俄かに再び台頭してきた米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げへの思惑がより強まる形となった。しかし、今週に入ってからも、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁などのFRB高官らは引き続きインフレ抑制のためにやり残していることが多くあること、今後も粘り強く金融引き締めを続けていく必要性などを主張している。ブレイナードFRB副議長が、金融引き締めが与えるリスクとして国境を超えた脆弱性の波及などに言及していることを、ハト派色と捉える向きもいるようだが、同氏は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以前から同様のことを既に発言しており、目新しさはない。 前日の当欄での指摘の繰り返しにはなるが、FRBはインフレ抑制のために景気減速を引き起こすと公言しており、それは9月FOMCで公表された経済成長見通しからも明らかだ。そこでは、今年だけでなく、来年も潜在成長率を大きく下回る成長を想定していることが分かっている。それ故、一昨日の米9月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数の低下などがFRBの利下げ転換への期待を高めるなどというロジックは冷静に考えれば非合理的である。むしろ、FRBはこうした景気減速を望んですらいるだろう。 7月半ばからの約1カ月に亘るベアマーケットラリー(弱気相場下での一時的な株価上昇)の際もそうだったが、市場が勝手にFRBの利下げ転換を期待したことが株価反発の背景であった。今回も同様で、市場の思惑が先走っているに過ぎない。同様の期待を抱いているのは、前回ラリー時と同じ層と思われ、多くの投資家は今回も一時的なラリーに過ぎないと考えているだろう。 たしかに、国際連合(UN)による各国中銀への利上げ停止要請や、物価指標だけでなく雇用指標でも軟化を示唆するデータが確認されたこと、また豪中銀による利上げ幅縮小などがあることは、前回ラリー時とは異なる点として挙げられる。しかし、これがFRBの利下げ転換に繋がるかと考えれば、やはり市場が勝手に先走っている感が否めない。むろん、投資家には様々な時間軸や目的を持った投資家がいるわけで、したがって、実際に利下げ転換に繋がるか否かは関係なく、一時的にこうした思惑に基づいた投資家の動きが市場を左右することは否定できない。しかし、長い目でみれば歪みはいつか是正される。今回も、今週末の米9月雇用統計、もしくは来週の米9月物価指数やFOMC議事録の公表あたりで修正を迫られる可能性が高いのではないだろうか。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/05 12:17
後場の投資戦略
偶発的な好材料重複で急伸も持続性に疑問符
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26840.75;+624.96TOPIX;1894.86;+47.28[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大幅続伸で一気に節目の27000円を窺うかのような展開となっている。5日移動平均線が上向きに転じ、短期的には直近の急落の反動が継続する公算が大きい。一方、25日、75日、200日線が集中する27400円前後にはまだ距離があるほか、下向きの25日線が75日線を上から下抜くデッドクロスが目前となっている。まだ下落トレンド延長の構図は続いており、短期リバウンド後には再び戻り待ちの売りが待ち構えていそうだ。 10月に入ってからの株高についても、月替わりで9月末にかけての資金フローが反転したに過ぎないとの指摘が聞かれ、本格的な反発よりは自律反発と捉えている投資家の方が多い様子。それでも、日経平均が前日、6月20日安値25520.23円よりも上の位置からリバウンドした点は下値を切り上げている点からポジティブに捉えられる。 前日は、英国政府が最高所得税率引き下げを撤回したことで欧州の財政不安が和らぎ、グローバルに金利が低下。さらに、前日に発表された米9月サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が50.9と、8月(52.8)及び市場予想(52.0)を下回り、好不況の境界値である50割れを窺う水準にまで低下。なかでも新規受注の項目が大幅に低下し、47.1と50を下回り景気後退懸念が強まったこともあり、9月下旬に一時4.0%を超えた米10年債利回りは3.63%にまで低下した。こうした悪い経済指標が米連邦準備制度理事会(FRB)の政策方針を転換させるのではとの俄かな期待も後押し材料になったようだ。 しかし、前日の株高は資金フローによるところが大きいとの見方が多いほか、FRBの政策転換については、先日の9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での公表結果で剥落したはず。直近も、複数のFRB高官から、時期尚早の利下げ転換を戒める発言が相次いでいる。そもそも、FRBはインフレ抑制のために景気を減速させると公言しているわけで、ISM製造業景況指数が50を下回ったところで本来政策転換への期待を高めるのはナンセンス。前日は、調査会社ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏やバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストであるマイケル・ハーネット氏らによる11月利上げ打ち止めに関する指摘が重なったこともあり、こうした利下げ転換期待が再び個人投資家を中心に高まったようであるが、これはやはり時期尚早な面を否めない。 他にも、国際連合(UN)の補助機関である国連貿易開発会議(UNCTAD)が、FRBや他国の中央銀行に利上げ停止を要請していると伝わっている。UNCTADはFRBをはじめとした各国の中央銀行が利上げを続ければ、世界経済が景気後退に陥り、その後長期停滞に追い込むリスクがあると警告しているという。こうした発言も政策転換期待を高めているのかもしれないが、実際にこれが政策転換に繋がる可能性は低いだろう。仮に、こうした事態を受けてFRBが政策スタンスの転換を臭わせるようなことがあれば、確かに株式市場は底打ちしたとの見方は強まるが、これまでの政策主張との整合性の観点から中央銀行としての信頼性に傷がつきそうで、市場が動揺する可能性もあろう。その場合、インフレ懸念が再燃する可能性もある。 月初の資金フロー変化に加えて、株価反発を誘う材料が重なっただけで、やはり本質的には株価下落トレンドの構図は変わっていないと考えられる。株高の持続性を確認するうえで今晩以降の米国市場の動きは重要であり、様子見ムードから後場は買いが一巡してこう着感の強い展開となりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/10/04 12:19
後場の投資戦略
一旦の押し目買い優勢でプラス圏で推移
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26111.54;+174.33TOPIX;1840.71;+4.77[後場の投資戦略] 本日の日経平均は売りが先行、朝方にはマイナス圏での推移が続いた。ただ、前場中ごろにかけて下げ幅を大きく縮小してプラス圏に浮上したあとは堅調な展開となった。米株先物の下げ渋りもあって押し目買いや買い戻しが広がり持ち直したようだ。そのほか、香港株式市場は軟調な展開に、ナスダック100指数もマイナス圏での推移が続いている。 新興市場でも売り先行でスタート。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、日経平均株価に連れて下げ幅を縮小する展開となった。長期金利が再度上昇しており、バリュエーション面での割高感が警戒される新興市場のグロース(成長)株にとっては厳しい地合いが続いている。ただ、前週までに大きく下落していた分、本日は押し目買いが優勢となっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.36%高、東証グロース市場Core指数が1.01%高。 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は9月29日、CNBCのインタビューで利上げにより高インフレを抑制するというFRBの動きを変更するような米金融市場の機能不全は見られないと述べた。他にも、FRBの高官は利上げ姿勢を崩さないタカ派的な発言を継続している。30日に発表された8月の米個人消費支出(PCE)統計では、インフレ指標が市場予想を上回る伸びとなった。PCE総合価格指数は前年同月比6.2%上昇で市場予想の6%上昇を上回り、PCEコア価格指数は前年同月比4.9%上昇で市場予想4.7%上昇を上回った。コア価格指数は前月比、前年比共に7月に比べて伸びが加速した。 ブルームバーグのエコノミストは「容認できないほど高いインフレ指標を踏まえると、米金融当局は連続利上げを確実に進める可能性が高い。経済を減速させることになってもだ」と指摘しており、30日の米国株もこれを嫌気して下落した。ただ、インフレ調整前の個人所得は前月に続き0.3%増、賃金・給与の伸びは0.3%増に減速しており、賃金上昇ペースの鈍化は明るい兆候となった。 さて、今週は米雇用統計の発表が控えている。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値によると、9月の雇用者数は前月比で約25万人増、失業率は3.7%で前月と同水準になる可能性があるという。予想通りとなれば、大幅利上げによる雇用市場への影響は今のところ限定的と示唆されることになる。持続的な労働需要は賃金の伸びを高止まりさせて物価上昇に影響をもたらす可能性があるため、今週の米雇用統計の発表には大きな注目が集まろう。 一方、世界の株式に対するセンチメントが悪化したため、サンフォード・C・バーンスタインが開発した指標が買いのシグナルを発したという。マーク・ダイバー、サラ・マッカーシー両氏らストラテジストはリポートによると、バーンスタインの総合センチメント指標を成す5項目のうち4つは極端に否定的な水準にあるようだ。過去22年の集計によれば、このような買いシグナル後の4週間は70%の確実でリターンがプラスになったという。同氏らは「弱気相場の中の次の反発は大いにあり得る」と指摘している。 連邦準備制度の大幅利上げを背景に株式市場に極端な弱気の見方が増えるなか、世界各国の経済状況、米中リスクやロシアウクライナの地政学リスクなど、依然として様々なリスクが存在している。前週の当欄で示唆したように、現段階で筆者は引き続きナスダック100指数で9600pt付近、さらには8000pt台まで下落する可能性があることを念頭に置いて相場を注視している。ただ、前述のようにセンチメントの急悪化及び、雇用統計やインフレ指標の推移次第で、年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えている。さて、後場の日経平均は、押し目買いが継続してプラス圏での堅調な展開が続くか。個人投資家を中心に、主力株につれて値動きの軽い新興株にも物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/10/03 12:25
後場の投資戦略
欧州・米国・日本それぞれに気掛かり要素
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25979.75;-442.30TOPIX;1841.66;-27.14[後場の投資戦略] 本日の日経平均は再び値幅を伴った下落となり、急下降中の5日移動平均線を下放れる形となっている。日足一目均衡表では三役逆転が継続し、売り手優位の状況が強まっている。東エレクやソニーGといったハイテクだけでなく、トヨタ自やマツダといった自動車関連、三菱UFJなどの大手銀行などを含めて主力株のチャートが軒並み崩れているのが非常に気掛かりで、リスクオフムードの様相がいかに強いかを物語っている。 前日は、英イングランド銀行による長期国債の無制限買入れという緊急措置によって金融不安が一時後退し、グローバルな金利上昇圧力の緩和を背景にいったんは株式市場に安堵感が生まれていたが、安息日は僅か1日で終わった。英ポンドや欧ユーロについてはその後売り圧力が和らぎ、対ドルでの買い戻しが続いているが、債券利回りについては欧米ともに低下したのは英中銀の緊急対策後の僅か1日で、前日は再び上昇している。 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されたドットチャートでの政策金利見通しの大幅引き上げで、米国の金利動向については大分織り込まれたとは思われるが、財政不安を通じた欧州発の金利高圧力はまだ止んでいない様子。英中銀が国債買入れの期限としている10月14日のデッドライン前後での不安再燃を懸念しているかのようだ。前日には、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのレーン・フィンランド中央銀行総裁が「ユーロ圏の3分の1以上の国で長期債務の持続可能性が深刻な危機にある」と言及した。欧州を巡るきな臭さはしばらく残ることになりそうだ。 その懸案の欧州ではスタグフレーションの様相が一段と強まっている。欧州経済の要とされるドイツで前日発表された9月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.0%(欧州連合(EU)基準では+10.9%)と8月の+7.9%(同+8.8%)から大きく加速し、予想も大幅に上回った。燃料価格の割引など価格抑制策が終了したことが大きいが、ユーロ導入後で初めての2ケタ台乗せということでインパクトのある数字だ。また、ドイツの4大経済研究所によると、エネルギー価格の高騰などを背景に同国経済の来年の成長率は−0.4%になるとし、4月時点の+3.1%成長見通しから大幅に下方修正した。 一方で、米国も対岸の火事とはいえない。前日は主要企業の決算発表があったが、いずれも冴えないものだった。半導体大手マイクロン・テクノロジーが示した9-11月期売上高見通しは42.5億ドルと市場予想(60億ドル程)を大幅に下回った。また、設備投資額は2023会計年度に30%減少するという。半導体需要の減速はかねてから明らかになっていたため、驚きはないが、下振れ幅や設備投資額の減少幅は想定よりも大きい印象。米スポーツ用品メーカー大手ナイキの決算も北米での需要の堅調さは確認されたものの、在庫調整が懸案事項として残った。 そして、インパクトがあったのは中古車販売の米カーマックスの決算。6-8月期業績は多くの項目で市場予想を大きく下振れた。会社側は金利上昇と先行き不透明感が消費者の購入能力を引き下げていると説明。これまで、部材不足で新車納入が遅れるなか中古車販売は活況で、米国では中古車価格がピークアウトしたとはいえ高止まりしていた。そのため、依然として中古車業界は需要が堅調だと思われていたが、そうした見通しが変化してきていることが今回の決算で示唆された。民間消費はまだ堅調とされていた米国も、住宅市場を起点として既に消費は減速し始めており、それがいよいよ住宅以外の耐久財にも及んできたということだろう。米国の景気動向にも一段と注意が必要になってきた。 視点は変わるが、東京市場でも気になることはいくつかある。オプション市場では今週に入ってからプット(売る権利)の売買が活発化している。特に日経225オプションの権利行使価格25000円以下での取引が活発で、24500円、24000円あたりが活況。24500円には今週に入って建玉が5000枚以上積み上がり、11500枚まで増えている。一段の下値に備える投資家が増えているという点で見逃せない材料だ。 先物手口では、日本株の個別調査部門を持たないバークレイズ証券の動きが気になる。足元、日経225先物及びTOPIX(東証株価指数)先物で大幅な売り越しが観測されている。日経225先物では28、29日にそれぞれ2400枚、3400枚程の売り越し、TOPIX先物では27日から29日まで3000枚、2700枚、7100枚と売り越した。商品投資顧問(CTA)といったトレンドフォロー型ファンドのほか、米VIX指数や日経平均VIといったボラティリティー指数の上昇に伴うリスクパリティ戦略ファンドによる売りと推察される。なお、バークレイズの建玉状況については29日時点で、日経225先物で約11200枚の買い超、TOPIX先物で約53500枚の買い超となっている。9月半ばから大きく買い建玉を減らしてきてはいるが、依然として削減余地があるといえ、株価指数の一段の下値模索の展開にも注意が必要だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/30 12:19
後場の投資戦略
英中銀サプライズで下げ止まりもなお不安くすぶる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26238.32;+64.34TOPIX;1853.63;-1.52[後場の投資戦略] 本日の日経平均は地合いの好転を追い風に反発。ただ、前引けにかけて急速に失速しているほか、下向きの5日移動平均線には届いておらず、まだ自律反発の域を出ていないと言わざるを得ない。 前日の米株式市場は久々の値幅を伴った反発となり、ようやく下げ止まり感が出てきた。発端は英イングランド銀行によるポジティブサプライズともいえる動きだった。英中央銀行は長期国債の無制限購入のほか、10月3日に予定されていた保有国債の売却、いわゆる量的引き締め(QT)の開始を同月31日まで遅らせることを明らかにした。これを受けて、英国債利回りの急伸が止み、一昨日まで4%近辺で推移していた米10年債利回りも3.7%台前半まで急低下。直近、株式市場の下落に繋がっていたグローバルな金利上昇に歯止めがかかり、金利低下を好感する形で株式の買い戻しにつながった。 しかし、市場の疑心暗鬼は止んでいない。英国債利回りの急伸が止み、英通貨ポンド売りも一旦は止んだが、ポンド通貨の持続的な買戻しには至っていない。対ドルで1ポンド=1ドルのパリティ(等価)が近づくまでに下落していたポンドは、前日、1.09ドルまで一時上昇したが、足元では1.07ドル台にまで再び下落してきている。 実際、いったんは通貨安・債券安の動きに歯止めをかけた今回の緊急対応策は手放しで評価できるものではない。英中央銀行がインフレ抑制のために利上げを行う傍ら、トラス新政権が財源の裏付けに乏しい大規模な財政政策を打ち出したことはインフレに拍車をかけかねない政策であり、マクロ経済政策として整合性に欠いている。今回、英中央銀行は長期国債の購入とQTの延長により財政政策へ合わせる動きを取ったが、利上げ継続の方針に変わりはない。長期国債買い入れはあくまで一時的な措置であり、QTも中止されたわけではなく、1カ月程延長されただけ。長期国債の買い入れもマーケットへの資金供給を通じて最終的にはインフレ促進に繋がりかねず、依然としてマクロ経済政策の不整合性を解消できていない。再び、ポンド売りが強まり危機的様相を帯びる可能性もゼロではないと言える。 仮にグローバルな金利上昇を通じた株価バリュエーションであるPERへの低下圧力が前日をピークに止んだとしても、企業業績悪化懸念は拭えておらず、一株当たり利益(EPS)の低下圧力を通じた株価の下押し圧力は残る。先日の米物流大手フェデックスの業績下方修正に続き、前日の米アップルの最新スマートフォンの増産計画撤回を背景に大手優良企業でも景気後退を避けることはできないとの懸念が強まっている。7-9月期決算の発表が始まる10月下旬までは、これまでのような企業業績に関するネガティブな報道が相次ぐ可能性があり、EPSへの低下圧力はまだ止んでいないと考えるべきだろう。 一方、27日に発表されたS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(主要20都市)で住宅価格のピークアウト観測が強まっており、コア消費者物価指数(CPI)の減速が視野に入りつつある。こうした中、需給面では、米株式市場を中心に直近の下落で全体ではショート(売り持ち高)に傾いている分、ちょっとした好材料をきっかけに買い戻しが加速して上昇転換する可能性も否定できない。しかし、それでも後追いでインフレ抑制に躍起になっている米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ転換を示唆するまでは、景気減速下での利上げ進行という負の構図に変化はなく、株式市場にはEPSの低下を通じた株価下落圧力が残る点には留意しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/29 12:20
後場の投資戦略
米アップル増産断念で業績悪化懸念高まる、CTAはショート構築開始か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25984.51;-587.36TOPIX;1840.78;-32.23[後場の投資戦略] 本日の日経平均は値幅を伴った反落で、7月4日以来の26000円割れとなっている。急下降中の5日移動平均線からの下方乖離が大きくなっており、短期的な突っ込み感が強い。一時的には自律反発狙いの買いが入ってもおかしくないところだが、下げ渋る雰囲気的がほとんど感じられない。 前日の米国市場では一昨日と同様、寄り付き直後は買い先行で高く始まったものの、序盤から急失速して下落転換する展開。ダウ平均は6日続落し、ナスダックはかろうじて6日ぶりに反発したが、こちらも実感としては6日続落のような内容。本日の日経平均も寄り付き直後からずるずると一本調子で下げるような動きで、配当・優待権利付き最終売買日にもかかわらず、ほとんど押し目買いが入っていないような様子だ。 英国やイタリアといった欧州を中心にグローバルに為替・金利のボラティリティー(変動率)が非常に高まっており、こうした外部環境の不透明感が相場の重石になっているようだ。しかし、それだけでなく、米アップルに関する報道もかなり影響していそうだ。アップルは、下期に予定していたスマートフォン最新機種「iPhone(アイフォーン)14」の増産計画を断念すると伝わっている。景気減速により販売が低調なようだ。企業業績悪化への懸念が高まる中でも、アップルへの信頼は高かっただけに、今回の報道が持つインパクトは大きそうだ。先日の物流大手米フェデックスの業績下方修正に続く今回の一件で、今後の業績絡みのニュースフローへの警戒感が株式の売りを急がせている可能性がありそうだ。 さて、前日の当欄(「懸念要素多く燻るも短期反発を窺うタイミングか」)では、商品投資顧問(CTA)については、日経平均26500円水準でロング(買い持ち高)の整理が一巡している可能性があると指摘した。しかし、昨日の先物手口を見ると、CTAの動きと連動性の高いクレディ・スイスやドイツ証券が売り越しを続けていた。 そして、本日は日経平均が一時600円超の下げ幅をもって一気に26000円割れとなっている。明日の中間配当の落ち分が考慮されている12月限の日経225先物では既に25700円台まで下落してきている。こうなると、CTAはロングの手仕舞いだけではなく、新たにショート(売り持ち高)を構築しつつある可能性が高まってきた。日米ともに株価指数の日足チャートは大きく崩れており、短期的な突っ込み警戒感から一時的なリバウンドが想定されるものの、10月に発表される米9月雇用統計あたりまでは下値模索の展開が続く可能性がありそうだ。 一方、明るいニュースも入ってきた。前日に発表されたS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(主要20都市)は前年同月比+16.1%と市場予想(+17.4%)を大きく下回り、6月(+18.7%)から大幅に伸びが鈍化。今年4月に付けた+21.3%を境にしたピークアウト感が強まってきた。米国の消費者物価コア指数(CPI)の3割と最大の割合を占める住居費は住宅価格から約1年遅行する傾向があるため、コアCPIのピークアウトにはまだタイムラグの関係で時間がかかると考えられるが、コアCPIのピークアウトは着実に近づいてきているといえる。 後場の日経平均は引き続き軟調な推移が続きそうだ。季節性要因から、10月に入ってからの株価上昇転換への期待もあるが、外部環境の不透明感が高まっているなか、中央銀行による下支えも期待できず、当面は疑心暗鬼の状況が続きやすく、下値模索の展開が続きやすいだろう。CTAなどの短期筋の売りが一巡してくるのもしばらく待ちたいところだ。今は押し目買いをぐっとこらえて、もう数日だけでも様子見に徹するのが無難だろう。エントリーするのであれば、有力な個別株をロングするのと同時に指数をショートするなどのヘッジ付きの戦略が望ましいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/28 12:18
後場の投資戦略
懸念要素多く燻るも短期反発を窺うタイミングか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26651.60;+220.05TOPIX;1882.09;+17.81[後場の投資戦略] 本日の日経平均は上昇しているものの、前日の700円安に比べると反発力の乏しさが否めない。日足一目均衡表では雲下限を大きく下放れて三役逆転の状態。急下降中の5日移動平均線に続いて、25日線、75日線も下向きに転じ、テクニカル形状の悪化が著しい。 米主要株価3指数は揃って5日続落と売りが止まらない。5日間の下げ幅としてはかなり大きく、いつ押し目買いが入ってもおかしくない水準まで調整しているにもかかわらず、前日も上昇後に下落に転じるなど冴えない動きだった。足元では米国のマネーマーケット・ミューチュアル・ファンド(MMMF)への資金流入が加速しており、投資家の多くは現金化を急いでいるもよう。 前日、米10年債利回りは3.9%まで急伸した。英国ではトラス新政権による財政出動を受けて英国債利回りが急伸してきているほか、イタリアでもポピュリズム(大衆迎合主義)色の濃い右派政権が誕生する見通しとなり、バラマキ策による財政悪化への懸念からイタリア国債利回りが大幅に上昇している。各国での債券利回りの上昇ペースがあまりに速く、ボラティリティー(変動率)の高さが投資家の株式への買いを見送らせている。また、利回りは上昇ペースが速いだけでなく、水準としても既に記録的な高水準で、満期まで持つ前提であれば投資妙味は非常に高いところまできている。これでは株式投資のリスクリワードが合わないと言わざるを得ない。 東京市場では直近、東エレク<8035>、ソニーG<6758>などの主力株の年初来安値の更新が続いている。ソニーGは本日小幅ながらも反発しているものの上昇率は小さく、東エレクについては前日の急落直後であるにもかかわらず本日も続落している。こうしたところからも機関投資家の様子見ムードの強さが窺え、目先の底入れタイミングを計るのが難しい。 前日の先物手口を見ると、日経225先物ではクレディ・スイスやドイツ証券など商品投資顧問(CTA)の動きと連動性の高い証券会社で売り越しが見られた。また、TOPIX(東証株価指数)先物でもUBS、JPモルガン、BofA(バンク・オブ・アメリカ)など外資証券の売り手口が目立った。 米国ではCTAが先々週頃からショート(売り持ち高)を積み上げてきているほか、先日の米8月消費者物価指数(CPI)の上振れ以降は、マクロ系ヘッジファンドも売り持ち高を構築し始めたとの指摘が聞かれている。一方、日本でもCTAの売りが上述のように観測されているものの、一部調査では、CTAがロング(買い持ち高)を積み上げ始めた7月中旬頃の日経平均は26500~26750円だったことから、現状の水準で既にロングの手仕舞いは大方済んでいるのではとの指摘が聞かれている。また、金利の上昇スピードや景況感の方向性の観点からみると、欧米に比して日本株を巡るファンダメンタルズは相対的に良好で、ここからの売り転換も想定しにくいと考えられている。 国内では明日は権利付き最終売買日で、権利取りを狙った買いが最終局面を迎えることが想定されるほか、28、29日にかけては配当再投資に絡んだ買い需要が現物・先物の合算で1兆円前後(TOPIX8000億円強、日経平均1500億円強)見込まれている。日経平均採用銘柄の入れ替えに伴うリバランスで売り需要の懸念もあるが、相対感では日本株の下値余地は欧米株と比べると限定的と言えそうだ。 また、海外の金利の急伸ぶりは懸念材料だが、ユダヤ教の祭日絡みで参加者が限られるなか、低い流動性が過度な上昇を生んでいる可能性もある。景気後退懸念の強まりも想定すると、今後、米10年債利回りは節目の4%を手前に上昇一服となる公算も大きく、金利のボラティリティーが低下すれば、ようやく株式に押し目買いが入る可能性もあろう。目先は弱い季節性で知られている9月から、季節性要因で強いと知られる10月への反転相場のチャンスを窺いたい頃合いか。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/27 12:20
後場の投資戦略
FRB発言受けて長期的に失業率とコアインフレ率の推移に注目
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26619.53;-534.30TOPIX;1878.14;-37.98[後場の投資戦略] 本日の日経平均はシカゴ先物にサヤ寄せする格好からギャップダウンからのスタート。その後はマイナス圏での軟調な展開が続いている。長期金利の上昇や景気後退懸念などに加えて、ロシアのプーチン政権が予備役の動員に踏み切ったことに伴う一段の地政学リスクへの警戒感も相場の重しとなっている。そのほか、香港株式市場や中国株式市場は売り先行後もみ合い展開に、ナスダック100指数は軟調な展開が続いている。 新興市場でも軟調な展開が続いているが、マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後下げ幅をやや縮小している。米国株大幅安を受けて個人投資家心理が悪化、世界的な金利先高観と米国での実質金利の上昇基調はバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとってネガティブに働いている。ただ、前週に大きく下落していたこともあってか、日経平均と比較すると売り一巡後に一定の買いが見られている。前引け時点で東証マザーズ指数が1.11%安、東証グロース市場Core指数が0.81%安となっている。 さて、FOMCで大幅に引き上げられた政策金利見通しは金利先高観を強める内容でネガティブ視され、英国を筆頭にグローバルな金利上昇も気掛かりな状況となっている。FOMCで政策金利は3会合連続で0.75pt引き上げられ、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標は3.00~3.25%に。政策金利見通しでは2022年末に政策金利が4.4%(中央値)まで引き上げられた後、来年23年末には4.6%(同)まで引き上げられることが示された。 8月29日の当欄では、金融経済と実体経済の間には大幅な乖離があると指摘され、同時点から25%程度の下落する可能性があると示唆した。これを受け、ナスダック100指数で9600pt付近、2020年のコロナショック前の水準まで下落する可能性があることを念頭に置いて相場を見守ってきた。現在、テクニカル面では、11000ptのラインで節目を迎えており、ここを上抜けるか下抜けるか注目が集まっている。 FRBは今回のFOMCの結果発表の際、失業率に注目している旨を示した。今回の利上げによって、現在3.7%の失業率が来四半期は3.8%、2023年には4.4%まで上昇すると予想している。仮に、来年以降の失業率が4.4%を超えて5%を超えると、FRBの想定しない失業率がスタグフレーションを想定させることになりさらなる下落となる可能性がある。また、PCEコアインフレ率の見通しで来年に4.5%まで落ちる予想を示している。現状6.3%だが、2023年にコアインフレ率が本当に4.5%まで落ちるのか、つまり、失業率とコアインフレ率の推移はまだまだ長期的に注目が必要となりそうだ。 そのほか、米中間選挙の行方、世界各国の経済状況、米中リスクやロシアウクライナの地政学リスクなど、様々なリスクが存在している。引き続き来年にかけて株式相場は軟調に推移していく可能性があり、現段階で筆者は引き続きナスダック100指数で9600pt付近、さらには8000pt台まで下落する可能性があることを念頭に置いて相場を注視している。さて、後場の日経平均は、主力大型株からグロース株、など多くの銘柄が売りに押される中、軟調な展開が続くか。個人投資家を中心に値動きの軽い新興株の動きも注目したい。
<AK>
2022/09/26 12:21
後場の投資戦略
FRBのタカ派化再確認、株式市場に待ち控えるダブルパンチ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27047.37;-265.76TOPIX;1908.55;-12.25[後場の投資戦略] 本日の日経平均はギャップダウンでのスタート。前日に割り込んだ75日、200日移動平均線を大きく下放れ、テクニカルな形状は悪化した。日足一目均衡表では、7月19日以来となる雲下限割れとなっている。 FOMC結果公表後の米株式市場は大幅続落。公表直後は下落した後に再度上昇する場面も見られたが買いは続かなかった。事前に警戒感が高まっていたうえ、株式市場は直近高値から調整していたこともあり、あく抜け期待もあったが厳しい結果となった。 下落の要因はやはり来年以降の政策金利水準を巡るFRBと市場の間のギャップだったと推察される。政策金利見通し(ドットチャート)では2022年末に政策金利が4.4%まで引き上げられた後、来年23年末には4.6%まで引き上げられることが示された。今年については、残る11、12月のFOMCでそれぞれ0.75pt、0.5ptの利上げが実施される可能性が高まった。 重要なのは来年末の政策金利水準だ。FOMCの結果公表前、金利先物市場は来年3月をピークに政策金利が4.5%近くまで上昇した後は利上げが停止され、来年末時点では4.0%程度の水準を予想していた。つまり、年後半に0.5pt程度の利下げを織り込んでいた。しかし、FRBが示したターミナルレート(政策金利の最終到達点)は4.6%とピーク時点での予想を上回ったうえ、年末時点では0.6ptもの乖離があった。FRBのドットチャートは年末一時点の予想値しか示さないため、単純な比較はできないが、やはり来年からの利下げ期待を持ち続けてきた市場と、来年の利下げは時期尚早としたFRBとの乖離が大きかったといえよう。 特にパウエルFRB議長の記者会見が印象的だった。パウエル氏は会見で「今の政策金利水準は抑制的な領域においては一番低いところ」だと言及。つまり、景気を犠牲にしてでもインフレ抑制を最優先にすることを繰り返し主張しているFRBの姿勢を踏まえれば、今後もまだまだ利上げを続けるという積極的タカ派スタンスが示されたと解釈できる。 そうしたスタンスは更新された最新の経済成長見通しからも窺える。2022年の米国経済成長率は6月時点の1.7%から0.2%へと大幅に下方修正され、23年も1.7%から1.2%へと引き下げられた。潜在成長率が1.8%とされていることから、来年もインフレ沈静化のために景気を大きく抑制することが示唆されている。 米2年債利回りが4.0%台と2007年来の高水準に、米10年債利回りも3.5%と2011年来の高水準にまで上昇している。ここから更なる金利上昇が待ち控え、景気後退に陥ってもすぐには利下げに転じず、高水準の金利を維持するというかなり厳しい見通しが表明された。金利先高観と景気後退・企業業績の悪化に対する懸念、まさに株式市場にとってはダブルパンチだ。これならば、満期まで持っていればほぼノーリスクで高利回りを享受できる米国債に投資した方が無難で、あえて株式に投資する妙味が乏しいと言わざるを得ない。いま株式市場に突き付けられている現実はまさしくこういう事なのだ。 後場の東京市場は上値の重い展開が続きそうだ。国内は明日から3連休となる。今晩以降の米株式市場に一段と下げる余地が残されている中、連休中の空白リスクも相まって積極的な押し目買いは限られるだろう。日経平均は心理的な節目の27000円を維持して終えられるかが焦点となる。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/22 12:10
後場の投資戦略
FOMC通過後あく抜け期待も環境悪化が進展
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27308.66;-379.76TOPIX;1922.27;-25.00[後場の投資戦略] 本日の日経平均は寄り付きから27500円及び75日移動平均線を割り込んで始まった。前場中ごろからは更に売りが膨らみ、200日線も下回った。前回200日線を割り込んだのは9月7日で、この際は、米長期金利の上昇一服感により翌日からは大きく切り返して同線上への復帰を果たした。今回も、明日のFOMC通過後のあく抜け感による上昇で再び切り返せるかが注目される。仮にここを明日明確に下放れると、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの売りが加速する可能性が高いため、注意が必要だ。 8月25日付の日本経済新聞社朝刊の中の「意外にもろい日本株需給 欧州系2社の『ドテン』警戒」の記事においては、7月以降の株価上昇のけん引役とみられるCTAの手口として、バークレイズとソシエテ・ジェネラルの2社が取り上げられていた。前日20日の先物手口では、その両社が日経225先物の売り方上位1位、2位を占めていた。また、先週は、クレディ・スイスと並んでCTAの動きと整合性の高いドイツ証券が日経225先物の売り方で週間累計のトップとなっていた。トレンドフォロー型ファンドは既に徐々に売り目線に転じてきている可能性が高そうだ。 改めて整理すると、日経平均が7月20日から8月17日まで急上昇した期間、海外投資家は日経225先物を1兆3500億円ほど買い越していた(日経225ミニを除く)。8月第4週(8月22日~26日)~9月第1週(9月5日~9日)の3週間累計では一転して売り越しに回っていたが、この間の売り越し額は5200億円程にとどまっている。そのため、買い持ち高の解消余地はまだ残っていると考えられる。上述したように、CTAの一段の売りには注意しておきたい。 FOMCについては、既に0.75ptの利上げを完全に織り込み、1.00pt利上げも20%程の確率で織り込んでいる。さらに、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)についても4.5%までは織り込み済みだ。このように事前にかなり警戒感が高まっているほか、株式市場も直近高値から調整してきていることもあり、公表結果を反映する明日については、あく抜けでいったん相場が持ち直す可能性もある。 ただ、ターミナルレートに達した後の政策金利の推移については、まだ市場とFRBとの間に乖離がある。現在、FF(フェデラル・ファンド)金利先物市場は来年3月をピークに政策金利が4.5%近くまで上昇することを予想し、その後は利上げ停止を想定、来年末時点では4.0%程度の水準を予想している。つまり、年後半に0.5pt程度の利下げを織り込んでいる。 しかし、繰り返しになるが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はジャクソンホール会議で、家計や企業に痛みが伴ってでもインフレ沈静化を最優先にすることを主張。1970年台後半のウィリアム・ミラー議長時代の政策運営を例に挙げ、景気悪化に応じてすぐに利下げに転じた結果、インフレをぶり返してしまった過ちと、それを再び繰り返すことの危険性を指摘し、早期の利下げに転換しないことを既に表明している。 明日公表される政策金利見通し(ドットチャート)において、4.5%を超えるターミナルレートや、年末までの金利据え置きの方針が示されれば、想定よりもタカ派と捉えられ、市場がネガティブに反応する可能性は残されているだろう。 ほか、前日の当欄でも触れたが、個人投資家からの人気が高く東証プライム市場売買代金上位の常連となっていたダブル・スコープ<6619>が本日も場中値付かずのストップ安売り気配となっている。先週末のストップ安から始まり、今週は連休明けから値が付かない状態で、信用買い残も相当に膨れ上がっていた中、個人投資家の含み損益の急速悪化が懸念される。 また、米10年債利回りが3.5%を超え、2011年来の高値更新を続けるなか、名目金利から期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利は前日1.16%と2018年10月来の高値を更新し、終値ベースでは直近10年内で最高水準まで上昇してきた。個人投資家の含み損益悪化と実質金利の上昇というネガティブな要素が重なるなか、マザーズ指数は連日で大幅に下落。マザーズ先物にいたっては700ptを割ってきている。 このように市場環境はファンダメンタルズとテクニカルの双方の観点からかなり悪化している。目先はイベント通過後のあく抜けに期待したいところだが、安易なエントリーは避け、イベント通過後の市場の動きをしばらく注視した方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/21 12:16
後場の投資戦略
個人投資家の物色意欲に気掛かりな変化
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27684.35;+116.70TOPIX;1946.97;+8.41[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方の大幅高後に急失速の展開。米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果を22日に控えるなか、一時28000円を窺う水準まで戻した動きから、早くもFOMC通過後のあく抜けを期待した買いが入っているのかと思われたが、その後の急失速で地合いの悪さが再確認された。日経平均は下向きの5日移動平均線まで上昇した後に失速しており、テクニカル面では嫌な形。25日線が下向きに転じてきているのも気掛かりで、FOMC後にあく抜けで上昇する期待がある一方、すぐ下に位置する75日、200日線の下放れリスクも意識される。 また、本日は新興株の下落が目立っており、マザーズ指数が一時2%近い下落率となる場面が見られた。先週後半までは新興株の相対的な堅調さが際立っており、米国の消費者物価指数(CPI)が上振れてインフレ懸念が再燃する場面でもそうした動きは見られていた。しかし、米10年債利回りが6月来の高水準に近づいた先週末は大きく下落。週明け、米10年債利回りが一時3.52%と2011年来の高水準まで上昇したこともあり、本日も厳しい動きが先行した。 このように、これまで相場を下支えてきた個人投資家の物色意欲に騰勢一服感が見られてきているのは気掛かりだ。背景としては米長期金利の高値更新もあるだろうが、もう一つ、個人投資家からの人気の高い銘柄の下落が考えられる。特に足元目立つのは、しばらく東証プライム市場の売買代金上位の常連にもなっていたダブル・スコープの株価急落だ。同社は新興株ではないが、会社側の相次ぐリリースや電気自動車(EV)というテーマ性を背景に個人投資家の間で次第に人気化してきた背景がある。 しかし、先週末、韓国子会社の上場に関してブックビルディングが不調との一部報道をきっかけに売りが殺到。今朝、子会社上場に関する詳細が正式に発表され、ほぼ報道通りの内容であることが判明したが、売り注文の殺到が止まない。SNSなどで度々話題に上り人気化していく過程で、投資リテラシーがあまり高くない初心者の個人投資家も巻き込む形で、これまで大量に信用買い残が積み上がってきていた。需給主導で急伸してきた分、下落時も過剰な動きとなっている。 ほか、同様に個人投資家からの人気が高く、信用買い残が大きく積み上がっている銘柄で東証スタンダード市場の主力株であるフェローテク<6890>も先週末から急落している。ダブル・スコープやフェローテックといった人気の高い銘柄が急落したことで、個人投資家の含み損益が悪化。それが他の中小型株や主力株にまでも波及したことが、マザーズ指数の大幅下落や日経平均の急失速に繋がっているのかもしれない。 これまで中長期の投資家の多くが様子見に徹するなか、短期目線の個人投資家による売買が中心的な役割を担ってきたこともあり、こうした動きの変化は注目に値する。逆バリ志向の個人投資家らが相場を下支えてきた背景は少なからずあると考えられ、個人投資家の含み損益が急激に悪化しているのだとしたら、下支え役が欠けることになり、注意を払う必要があろう。 ほか、16日には政府・与党が、2023年度予算編成にあたっての防衛費増額の財源として、法人税を軸に金融所得課税、たばこ税の増税を検討することが明らかになった。あまり話題に上がっていないが、海外投資家が日本株を敬遠する一つの要因にもなりかねず、今後の動向が気掛かりだ。 FOMCを受けた市場の反応を予想するのは困難で、22日までは上値の重い展開が続きやすいだろう。先週のフェデックスの一件で景気後退懸念も強まっており、イベント通過後に株高となったとしても、持続性には疑問符がつく。当面はディフェンシブ銘柄や業績回復シナリオを描きやすいインバウンド関連銘柄の間での循環物色が続きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/20 12:23
後場の投資戦略
景気後退懸念一段と強まる、EPSとPERには低下圧力継続
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27574.58;-301.33TOPIX;1937.68;-12.75[後場の投資戦略] 本日の日経平均は前日の米株式市場の下落が嫌気されているほか、3連休前の手仕舞い売りなども膨らんでいるようで、値幅を伴った下落となっている。株価は75日、200日移動平均線を手前に踏みとどまっている一方、週足では52週、13週線を割り込んできており、テクニカル面ではトレンドの悪化が想起される。直近、相対的に底堅さが目立っていたマザーズ指数も本日は一変して最も大きく下落しており、短期目線の多い個人投資家が中心の相場の変わり身のはやさが窺える。 今晩の米国市場はトリプルウィッチング(株式先物取引・オプション取引、個別株オプション取引の3つの取引期限満了日が重なる日のこと)だ。需給面で荒い動きが想定されるなか、嫌なニュースが飛び込んできた。米大手物流サービス企業のフェデックスが発表した6-8月期の暫定決算は、調整後1株当たり利益が3.44ドルと、市場予想の5.10ドル程度を大幅に下回った。米国内外で景況感が大幅に悪化しており、世界的に取扱量が減少したという。また、9-11月期は更に悪化する見通しとのこと。同社株価は時間外取引で16%超と急落した。 各国中央銀行による過剰な金融引き締めが景気後退を招くのではとのオーバーキルへの懸念が強まっていた矢先、物流大手企業の業績悪化が伝わり、世界経済悪化への警戒感が一段と強まる形となった。これが時間外取引の米株価指数先物の下落の背景と思われ、東京市場の売りにも拍車をかけているようだ。 前日は米国で重要な経済指標が多く発表された。結果はまちまちながらも、やはり景況感の悪化を印象付けるような内容だった。9月ニューヨーク連銀製造業景況指数は-1.5とマイナス圏が続いたものの、予想(-12.9)を上回り、8月(-31.3)からは大きく改善した。一方、フィラデルフィア連銀製造業景況指数は-9.9と予想(+2.8)に反してマイナス値となり、8月(+6.2)から再びマイナス圏に転換。マイナスとなったのは直近4カ月のうち3カ月となる。 また、米8月小売売上高速報は前月比+0.3%と予想(-0.1%)に反して増加したものの、7月分は+0.0%から-0.4%へと大幅に下方修正された。8月分も自動車を除いたベースでみると同-0.3%と予想(+0.0%)を大きく下振れてマイナスとなっており、強い結果とは言い切れない。 来週は20日から米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されるほか、英国金融政策委員会や日銀金融政策決定会合も開催されるため、目先は金融政策イベントが注目点にはなるだろう。ただ、これらを過ぎた後は、確実に近づきつつある景気後退がマーケットの焦点となってきそうだ。例年、9月は株式市場が下落しやすい一方、10月は対照的に上昇しやすい季節性があり、FOMC通過後はあく抜け感に加えて、こうしたアノマリーも意識され、いったんマーケットは上に行く可能性もある。しかし、経済指標の下振れが続くなか、徐々に7-9月決算への警戒感は高まっており、業績悪化による1株当たり利益(EPS)の低下を通じた株価下落の警戒感が重石になってこよう。 並行して株価バリュエーションであるPER(株価収益率)の低下に繋がる実質金利の上昇が続いていることも頭の片隅に置いておきたい。15日、米10年債利回りは3.45%(+0.04pt)と6月半ばに付けた高値更新を窺う水準にまで上昇してきた。一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は低下しており、名目金利から期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利は前日1.02%(+0.07pt)に上昇、2019年以降の最高値を更新している。 いまは株価を決めるPERとEPSに共に低下圧力がかかっている段階で、まだこれらの調整は十分でないと考えられる。この状況に変化がない限り、株価指数の上値の重い展開は続きやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/16 12:22
後場の投資戦略
PPIも根強いインフレ示唆、今晩の米景気指標にも要注意
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27946.20;+127.58TOPIX;1954.38;+6.92[後場の投資戦略] 米8月PPIは総合で前年比+8.7%と予想(+8.8%)を下回り、前月比では-0.1%と予想(-0.1%)に一致。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が重要視する食品・エネルギーを除くコア指数では前年比+7.3%と予想(+7.0%)を大幅に超過。前月比でも+0.4%と予想(+0.3%)を上回った。米8月消費者物価指数(CPI)程にはサプライズはなかったものの、コア指数がどちらも全て予想を上回っている点でネガティブであり、インフレ懸念がくすぶる結果となった。 米主要株価3指数も前日は揃って反発したものの、一昨日の急落直後にしては、上昇率はかなり小幅なものにとどまった。上昇したのも引け間際にまとまった買いが入ったからに過ぎず、終盤にかけてはマイナス圏で推移する時間もあり、動きとしては弱さの方が目立つ形だった。本日の日経平均も動意薄でほぼ横ばい、一時はマイナスに転換する場面も見られている。 一方、こうした中でも、相次ぐ水際対策の緩和、経済正常化に向けた報道を支援要因にリオープン(経済再開)関連、インバウンド関連銘柄は連日で上昇。個人投資家の物色意欲も衰えず、前日同様にマザーズ指数の相対的な強さが際立っている。しかし、大型グロース株や景気敏感株の上値が重い限り、日経平均やTOPIX(東証株価指数)の上値は重いままだろう。 個人投資家の旺盛な物色意欲を背景に、足元では中小型のグロース株を中心にしっかりとしたチャートを描いている銘柄も多いが、積極的に売買している個人投資家も中長期目線よりは短期目線の向きが多い様子。市場の動向次第では変わり身もはやいと思われ、長期投資と割り切らない限りは迂闊に手を出しにくいだろう。 米国では物価指標の発表は一巡したが、今晩は8月小売売上高、8月鉱工業生産、9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、9月ニューヨーク連銀景気指数と重要指標の発表が相次ぐ。金融引き締め懸念が再燃しているなか、これらの指標で下振れが多いと、過剰な引き締めが必要以上に景気後退を招くオーバーキルへの懸念が一段と高まる恐れがある。インフレ沈静化のために短期的な痛みを伴ってでも需要を押し下げる覚悟のFRBからすればむしろ狙っていることかもしれない。しかし、実際にそうなれば、10月下旬から始まる主要企業の7-9月決算を前に、企業業績の悪化懸念が今後は株価の新たな重石になりかねないだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/15 12:14
後場の投資戦略
米CPIショックも織り込みはまだ不十分?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27991.82;-622.81TOPIX;1954.44;-32.13[後場の投資戦略] 米CPIの上振れによるネガティブサプライズで日経平均は再び心理的な節目である28000円及び25日移動平均線を割り込んだ。一方、直近の相次ぐ水際対策緩和に関する報道を支援要因に、インバウンド関連銘柄には引き続き買いが入っているほか、再び1ドル=145円を窺う水準まで急速に進んだ円安・ドル高進行を背景に自動車関連の一角は買われるなど、押し目買い意欲も見られている。日経平均は急落後に一時28000円まで買い戻される場面もあった。米国株の急落時でも相対的に日本株の底堅い動きが続いていることは評価できる。 しかし、米国株が落ち着かない限り、日本株も良くてせいぜいレンジ相場を維持することくらいしかできないだろう。米8月CPIは前年比+8.3%と予想(+8.0%)を大きく上振れ、前月比でも+0.1%と減速の予想(-0.1%)に対して上振れた。米国でガソリン価格の下落傾向が続いていたことで、事前にはむしろ予想を下回って7%台の伸びまでの減速もあり得るのではないかという声もあった。それだけに、上振れはネガティブササプライズである。 また、より深刻なのはFRBが重要視するコア指数の上振れ度合いだ。変動の激しい食品・エネルギーを除いたコア指数は前年比+6.3%と7月(+5.9%)から大きく加速し、予想(+6.1%)も大幅に上振れた。前月比では+0.6%と7月(+0.3%)及び予想(+0.3%)から2倍の上振れとなった。単月の上振れ(下振れ)では基調の判断は難しく、過剰反応するべきではないかもしれないが、足元の株式市場では、インフレ減速期待やFRBの金融政策の織り込み進展を理由に楽観的なムードが広がっていたため、頭を冷やすには十分すぎるインパクトがあった。 市場では20日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75pt利上げは完全に織り込まれ、一部では1.00ptの利上げも指摘しており、確率としても3割程にまで上昇した。実際のところ、1.00ptへの緊急利上げ幅拡大に踏み切れば、FRBの動揺が市場に伝播しかねないため、確率は低いだろう。それよりは、0.5ptへの利上げ幅縮小が見込まれていた11月会合での4回連続での0.75pt利上げ確率がかなり高まってきたといえる。11月の0.75pt利上げ確率は足元で5割程にまで上昇してきている。 金利先物市場の動きを見ると、市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は4.3%台後半にまで大きく上がってきた。ただ、依然として時期としては来年3月頃からの政策金利の横ばい、その後の緩やかな利下げを予想している。金利水準としては目線が切り上がったものの、FRBの積極的な金融引き締めが景気後退を招き、来年半ばには利下げ転換を迫られるとの見方は変えていないようだ。 しかし、FRBは人々にインフレ心理が根付くのを一番恐れており、これを防ぐために速やかに需要が供給を下回る水準にまで低下する手段として利上げを続けるとしている。今後も高インフレが続くのであれば、FRBは高いインフレ期待の定着を阻止するために粘り強く高金利を維持するとみられ、簡単には利下げに転じることはないだろう。 パウエルFRB議長も家計や企業に痛みが伴ってでもインフレ沈静化を最優先にすることを主張しており、年明け以降に景気が悪化したとしても早々に利下げに転じることはないのではないだろうか。実際、ジャクソンホール会議では、1970年台後半のウィリアム・ミラー議長時代を例に挙げ、景気悪化に応じて利下げに転じた結果、インフレをぶり返してしまった過ちと、それを再び繰り返すことの危険性を指摘している。 まだ今晩の米8月卸売物価指数(PPI)の発表が残っているうえ、重要なのは来週に控えるFOMCではあるが、現時点で筆者としては、市場はまだFRBのタカ派スタンスを完全には織り込みきれていない気がしてならない。 後場の日経平均は28000円を挟んだ一進一退が続きそうだ。前場の急落した局面では国内機関投資家による押し目買いが入っていたとの声が聞かれており、日本株の現状水準は割安との見方を裏付ける動きとして歓迎される。一方、今晩以降の米株式市場の動向が気掛かりで積極的に押し目買いを入れられる状況でもなかろう。強気派と弱気派の拮抗は続き、指数は心理的な節目を意識したもみ合いが続きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/14 12:23
後場の投資戦略
米実質金利の上昇継続から株高に懐疑的見方も
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28589.11;+47.00TOPIX;1984.97;+4.75[後場の投資戦略] 前日に心理的な節目である28500円と25日移動平均線を回復した日経平均は本日も米国株高を追い風に堅調推移が継続。7日の75日線、200日線割れからの25日線回復とあって、テクニカル的には一段と底入れ感が強まった形で、強気派を勢いづかせそうだ。 前日、米国の主要株価3指数は揃って4日続伸となった。いずれも50日線及び100日線上に回復し、50日線は100日線を下から上抜くゴールデンクロスを示現。テクニカル面ではこちらも底入れ感が強まっている。 20日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75pt利上げがほぼ完全に織り込まれ、ジャクソンホール会議以降の米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの一連の発言で、来年以降の政策動向も大方織り込まれたのではとの見方が足元の株高の背景とされている。先週7日、6月FOMCの開催直前に0.75pt利上げのリーク報道役を担ったウォールストリート・ジャーナル紙のニック・ティミラオス記者が9月FOMCでの0.75pt利上げの可能性を報じた直後に米金利が低下に転じたことがこうした見方を生んだ。 しかし、一方で、米10年債利回りは12日、3.36%まで上昇し、6月半ばに付けた3.5%来の高水準を記録。対して期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)の低下傾向は継続しており、名目金利から期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利は12日、0.94%まで上昇。新型コロナパンデミック後の最高値を記録し、2018年12月来の高水準となっている。 このように、株高の根拠とされる背景と債券市場の動きには大きな乖離があり、素直に株高を喜ぶことができない。米国では今週末がトリプルウィッチング(株価指数先物、株価指数オプション、個別株オプションの3つのデリバティブ取引の決済が重なる日)であり、足元の株高は積み上がったショート(空売り)の買い戻しという需給要因に過ぎないとの指摘も聞かれる。 米国では、これまでウィッチングが相場の転換点になってくることが多かった。今回も、足元でウィッチングに向けてショートカバーが進んでいるようだが、ウィッチング通過後の来週からの動向は再び軟化する可能性もあるだろう。先行きに対する強気派と弱気派の意見を根本的に転換させるような材料が出てこない限り、当面、株価はレンジ相場続きそうだ。日経平均でいえば、27000円台前半は買い、29000円が近くづく場面では戻り売りのスタンスが有効だろう。 今晩に発表される米8月CPIではインフレ減速が一段と裏付けられる可能性が高く、週末に向けては株高の勢いがつきやすいとみられている。ただ、ガソリン価格の低下などを背景とした財・モノにおけるインフレ減速は想定線であり、重要なのは粘着質のあるサービス分野のインフレ動向だ。この点の懸念については今回のCPIだけで払拭されるとは考えにくく、株高一辺倒に傾すぎるのは、上述のウィッチング後の需給変化の可能性も踏まえて慎重になるべきだろう。株高の波に乗るのであれば週末までなど期間限定の短期勝負と割り切ることが大事となる。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/13 12:11
後場の投資戦略
米株高の流れを好感して買い優勢の展開
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28528.90;+314.15TOPIX;1978.15;+12.62[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後プラス圏での堅調もみ合い展開となった。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利上げが継続することを織り込むなか米株高の流れを好感して本日の日経平均は買いが先行。ただ、今週は米国市場でCPIのほか、小売売上高やミシガン大学消費者態度指数などの発表、翌週に9月FOMCを控えていることもあり、様子見ムードが広がり売り買いが交錯している。そのほか、香港株式市場は中秋節翌日のため休場、ナスダック100指数も上値の重い展開が続いている。 新興市場でも買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートした後堅調もみ合い展開となった。連日の米株高で個人投資家心理が改善、主力大型株への積極的な売買が手控えられるなか幕間つなぎの物色が新興市場の中小型株中心に集まっており、日経平均よりもやや値幅を伴って上昇した。前引け時点で東証マザーズ指数が1.67%高、東証グロース市場Core指数が1.92%高となっている。 さて、市場では9月20~21日に開催されるFOMCでの0.75pt利上げがほぼ織り込まれている。ゴールドマン・サックス・グループは、9月会合での利上げ幅予想を0.75pt(従来0.5pt)、11月会合では0.5pt(同0.25pt)にそれぞれ引き上げた。ロイターでも、パウエル議長が大幅利上げの可能性に否定的な姿勢を示さなかったことから0.75ptの利上げはほぼ確定と報道されている。13日に控える米8月CPIに対する警戒感も薄れており、CPIが予想よりも低下していれば更なる上昇が期待されている。ただ、CPIが予想よりも高い数字となると大きく下がる可能性があることも頭の片隅に置いておきたい。 9月にはFRBがQT(量的引き締め)のペースを月950億ドルに倍増させている。一部メディアでは、QTを機に株式市場への資金流入が減っていくようなら好調が続いてきた米国株も1割程度の下落が想定されると報じられている。ただ、米国株に連動しやすい日本株も連れ安にならないと想定。日経平均株価が割安な水準に放置されており大きく下がるほど上がっていない点に加えて、円安によって円を調達するコストが下がっていることから外国人投資家が日本株や不動産を買う可能性があるようだ。米株安となるタイミングでもこれらの要因を受けた日本株の動向に注視したい。 欧州中央銀行(ECB)が8日に政策金利を0.75pt引き上げると発表した後、ロイターでは、ヨーロッパで年末にかけて景気が大幅に減速すると予想すると報じられている。高インフレが支出や生産を抑制、経済再開に伴うサービス分野の力強い需要回復が今後数カ月で勢いを失うと予想。また、主要国の多くが金融引き締めを実施する中での世界的な需要減退、不確実性がなお高く、信頼感が急低下していることが挙げられている。ブルームバーグでも欧州経済はエネルギー危機で「完全に停止」するリスクがあると述べられている。 そのほか、従来と同様に米中間選挙を控えて株価は上昇する可能性があるとの憶測が広がっている。ただ、仮に米中間選挙まで株価が上昇したとしても、世界各国で今までにない利上げが実施されている点に加えて、欧州経済のリスクなどの懸念から12月以降から来年にかけて株式相場は直近の上昇とは全く異なる状況になる可能性があることを想定しておきたい。 さて、後場の日経平均は、明日13日に米8月消費者物価指数(CPI)、翌週にFOMCを控えるなか、主力大型株への積極的な売買は手控えられるか。個人投資家を中心に景気連動性が低く値動きの軽い新興株への物色が活発化するか注目したい。
<AK>
2022/09/12 12:20
後場の投資戦略
市場の関心は金融政策よりも実体経済へ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28219.70;+154.42TOPIX;1964.69;+7.07[後場の投資戦略] 日経平均は続伸するも伸び悩み。一時は25日移動平均線を超える場面があったが、結局、同線が上値抵抗線として作用する形となっている。小幅ではあるがSQ値を下回った推移の時間が続いていることもあり、今後の株価はやや冴えない展開が想起されやすいか。 一方、米国を含め、株式市場においては下値では押し目買い意欲も見られており、ずるずると下げ続けるような展開にはなっていない。前日はECBが0.75ptの過去最大の利上げに踏み切り、今後も0.75ptの利上げの可能性が示唆されたことで、グローバルに金利が上昇した。米10年債利回りも8日、3.32%(+0.06pt)と再び上昇に転じた。また、パウエルFRB議長の討論会での発言は新味に欠けるものではあったが、ジャクソンホール会議でのタカ派的な主張を改めて強調するものだった。そうした中でも、前日の米株式市場は主要株価3指数が揃って続伸し、方向感に欠ける動きながらも堅調さを見せた。 20日から開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)については、0.75ptの利上げがほぼ完全に織り込まれた。これにより、来週13日に発表される米8月消費者物価指数(CPI)での警戒感もやや薄れてきた様子。大幅に上振れでもしない限り、市場の反応は乏しいものに終わりそうだ。9月FOMCについては、政策金利見通し(ドットチャート)でターミナルレート(利上げの最終到達点)が4%超えの水準にまで引き上げられるのかが、もう一つの注目点になる。金利先物市場を見る限り、2023年3月~5月頃の3.9%台が政策金利の最高水準とされており、ターミナルレートについてはまだ織り込み不足とみられる点は一つ気掛かりではある。 しかし、総じて金融政策そのものが市場に与える影響力は小さくなってきている印象を受ける。市場はもはや各国中央銀行による政策動向そのものよりも、今後も当面続くだろう金融引き締めが実体経済、企業業績にどの程度影響を与えるのかという点に移ってきているようだ。この点は、7-9月期決算が発表される11月中旬頃までは明確になってこない。それまでは他の条件を所与のものと捉えるならば株式市場はレンジ相場が続きそうか。 むろん、その頃までに、欧州のエネルギー問題の一段の悪化などを通じて市場に動揺が走る可能性はある。また、米10年債利回りが6月に付けた高値を超えてくれば、株式の売り圧力は強まるだろう。他にも、足元の米国の実質金利の上昇ペースに対して、米国企業の予想PER(株価収益率)の下落ペースが追い付いておらず、バリュエーション調整が不十分な点も気掛かりで、こうした不整合がどこかで一気に修正される可能性もある。 しかし、それでも、良い意味で言えば底堅い株式市場の動きを見ていると、やはり、まだまだ大規模緩和相場時代に生まれた溢れたマネーが溜まっているのかと考えざるを得ない。量的引き締め(QT)が今月から倍速では行われているが、効果が表れるには時間がかかるだろう。当面はボラタイルながらも、カネ余り相場の余韻に支えられるような時期を過ごすことになりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/09 12:16
後場の投資戦略
一転しての急反発も安心には至らず
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27992.25;+561.95TOPIX;1953.00;+37.35[後場の投資戦略] 日経平均は前日の下落が嘘かのような一転しての大幅反発で一時28000円台にも乗せた。結果として、チャートでは75日、200日移動平均線が下値支持線として機能した形になり、底堅さを見せた。一方、上方に位置する25日線との乖離はまだあり、短期的なリバウンドに過ぎないとも言える。目先はイベントスケジュール的にも振れ幅が激しい展開が続きそうだ。 米国では、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドやヘッジファンドのポジションが極端にショート(売り)に傾いており、需給面では買い戻しが入りやすい局面で、前日の戻りもそうした動きとの指摘が多い。一方、日本株については、これまでの海外投資家の7月20日以降の先物買いのボリュームや裁定残の推移からは、むしろロング(買い)の解消余地の方がありそうな状況で、やや状況は異なる。ただ、東京証券取引所が発表する空売り比率が7日時点で合計47.7と高水準に達していたため、ある程度の買い戻し余地はあったと推察される。 しかし、日経平均で600円近くもの上昇幅を説明するには買い戻しだけではやや説明不足な印象を受ける。買い戻しに加えて、原油先物価格の急落や米長期金利の上昇一服を背景にしたインフレ懸念の緩和が投資家心理を改善させていることが、もう一つ相場の押し上げ要因として働いていそうだ。 前日、原油先物価格は景気後退による需要減少への懸念や在庫増加を受けて急落。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト、期近物)は1バレル=81ドル台と、今年1月来の安値水準まで下落した。これが、インフレ懸念の緩和に大きく寄与したと思われる。 また、前日は米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長の発言があった。FOMC前に下手に投資家に期待を持たせるようなことはないとの考えから、タカ派な発言内容を想定していたが、相対的にはややハト派寄りのような内容だった。ブレイナード氏は金融引き締めの必要性を主張しながらも、同時に引き締め過ぎるリスクにも言及。また、ドル高がインフレ沈静化に影響する可能性などに触れていた。 さらに、前日は、6月FOMCの直前に0.75pt利上げのリーク報道役を担ったウォールストリート・ジャーナル紙のニック・ティミラオス記者が9月20~21日に開催されるFOMCでの0.75pt利上げの可能性を報じた。こうした報道があったにもかかわらず、米長期金利が低下に転じたことで、大幅利上げは相当に織り込まれ、目先の金利上昇はピークアウトしたとの見方が優勢になったことも安心感をもたらしたと考えられる。 ただ、今晩には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会やパウエルFRB議長の討論会での発言が控えるほか、来週には米8月消費者物価指数(CPI)など重要イベントを多く迎える。また、モルガン・スタンレーのほか、ゴールドマン・サックス、ジェフリーズなどのストラテジストが今後の米国株について悲観的な見方を示していることも気掛かり。連日の激しいアップダウンに個人投資家も付いていけているとは考えられず、取引主体は依然として短期筋が中心だろう。日経平均も横ばいの25日線を超えるまでは強気に転じることは難しく、当面は慎重なスタンスが求められよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/09/08 12:18
後場の投資戦略
レイバーデー明けもムード変わらず、CTAの反転に注意
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27362.83;-263.68TOPIX;1911.79;-14.79[後場の投資戦略] 日経平均は値幅を伴った下げで、7月19日来の安値水準まで下落。心理的な節目としてこれまでサポートしてきた27500円を大きく割り込み、下値支持線として見られてきた200日、75日、13週の主要移動平均線をも一気に割り込んできた。節目とサポートラインを同時に割り込んできたことで、日経平均を8月半ばに29000円台まで押し上げてきた商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドによる売り持ち高の積み上げが警戒されてくる。 レイバーデー明け、海外投資家の多くが夏休みから戻ってくるという観点から注目された前日の米国市場は、長期金利が急伸し、主要株価指数は揃って下落となるなど、連休前と同様の嫌なムードを引きずる形となった。米8月ISM非製造業景況指数が予想(55.3)に反して7月(56.7)から改善して56.9となったことで、底堅さを見せた米景気がFRBによる金融引き締め強化をさらに警戒させる形となった。 レイバーデー明けは起債シーズンで、マクドナルド、ウォルマートなどの大手企業が相次いで資金調達に動いたことも金利上昇の要因だろうが、いずれにせよ、米10年債利回りが6月14日付けた3.5%水準を突破していくとなると、株式市場には一段の重石となる。名目金利から期待インフレ率の指標である10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は6日、0.87%と、既に6月14日に付けた新型コロナパンデミック後の高値である0.88%に並ぶ水準まで上昇してきている。今後、名目金利が6月高値を超えてくるとなると、実質金利の一段の上昇を通じた株価下落にも注意が必要だ。 ISM非製造業景況指数を項目別にみると、支払価格が低下したことでインフレ沈静化への明るい兆しと捉える向きもいるようだが、支払価格の項目は71.5と7月(72.3)から小幅に低下したにすぎない。6月(80.1)から7月までの低下に比べると低下幅は大きく縮小した。拡大と縮小の境界値である50を大幅に上回ったままであることも問題だろう。 日経平均が718円高と急伸し、急速リバウンドへの起点となった7月20日を含む週から8月第4週(8/22~26)までの間、海外投資家は日経平均先物(ミニを除く)を1兆2200億円買い越していた。先週までの下落分だけではまだ買い持ち高の解消は十分でなかったため、レイバーデー明けで戻ってきた海外投資家が売りに傾いていることも、本日の日経平均の27500円割れの背景にはあるのかもしれない。 日本株を巡る需給の悪化傾向、米国での金利先高観・株式先安観、欧州でのエネルギー危機問題、中国でのロックダウン(都市封鎖)延長など世界のマーケットを巡る環境はかなり厳しいものになっている。こうした中、今月は20~21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、そしてその手前16日には米国版メジャーSQとも呼ばれるトリプルウィッチング(株式先物取引、株価指数オプション取引、個別株オプション取引の3つの取引期限満了日が重なる日)が控えている。これだけでも既に波乱の予感しかないが、今週はFOMC前のブラックアウト期間入りを直前に、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からの発言も相次ぐ。今晩はFRBブレイナード副議長、クリーブランド連銀のメスター総裁などの発言が予定されている。FOMC前に市場にとって甘い言葉を発する可能性は低く、タカ派発言が警戒されよう。 さらに、今晩は米地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表予定のほか、明日は欧州中央銀行(ECB)定例理事会、パウエルFRB議長の発言が予定されている。重要イベントを前に後場の東京市場も引き続き軟調な展開が予想される。(仲村幸浩)
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2022/09/07 12:14