後場の投資戦略ニュース一覧

後場の投資戦略 「総悲観なお遠い」のがリスク? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25143.52;-77.89TOPIX;1784.66;-9.37[後場の投資戦略] 本日の日経平均はおよそ1年4カ月ぶりに25000円を割り込んでスタートするも、その後グロース株を中心に押し目買いが入って下げ渋る展開となっている。ドイツのショルツ首相が欧州のロシアからのエネルギー輸入について「現時点ではほかの方法で確保することができない」と述べるなど、早期の禁輸実施に慎重な姿勢を示し、原油先物相場が反落していることが安心感につながったとみられる。為替市場で動向が注目されるユーロも足元下げ渋り。株式市場ではグロース株が堅調な一方、市況関連株に利益確定売りが出ている。前引けの日経平均が-0.31%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.52%。ここまでの東証1部売買代金は1兆9000億円あまりと引き続き多い。 新興市場ではマザーズ指数が+1.34%と5日ぶりに反発。グロース株高の流れを追い風に、前日割り込んだ700pt水準を維持しようとする動きを見せている。再生細胞薬の国内承認申請を発表したサンバイオ<4592>は朝高後に利益確定売り優勢。メルカリ<4385>は変わらずだが、FRONTEO<2158>やJTOWER<4485>が買い優勢。業績上方修正のアスカネット<2438>は急伸している。 さて、欧州首脳らが禁輸への慎重姿勢を示し、エネルギーの供給不安がやや和らいだ格好だろうが、ロシアはなおウクライナ侵攻の手を緩めておらず、追加制裁への不安は残るだろう。米超党派議員によるロシア産原油の禁輸などを盛り込んだ法案は、早ければ9日にも下院で採決されるという。デリバティブ(金融派生商品)市場では、月内の1バレル=200ドル突破を視野に入れたオプション取引も行われているようだ。 英バークレイズや米JPモルガン・チェースといった金融大手は世界成長見通しを引き下げるとともに、インフレ予想を引き上げ。また、米モルガン・スタンレーやシティグループは株式相場の大きな波乱を予想しているという。商品価格の先高観とスタグフレーション(景気悪化と物価高の併存)への懸念は拭いづらそうだ。 また、インフレの高進に対し「米金融引き締めは不可避」「0.25ptペースの利上げでは不十分」といった市場関係者の声が多く出てきている。金利上昇による米財政への影響を不安視する向きもあるようだ。米連邦準備理事会(FRB)は10日発表の2月消費者物価指数(CPI)を確認したうえで15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)に臨むが、度々指摘しているとおり金融政策の舵取りは難しさを増している。エネルギーの供給不安がくすぶる欧州でも10日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開かれ、注目されるだろう。 こうした局面でも、各国株式市場では個人投資家の押し目買い意欲が根強いようだ。米国でも足元、ハイテク株投資で知られるキャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントの上場投資信託(ETF)に資金流入が見られるという。日本でも個人投資家に人気の高いマザーズ銘柄は信用買い残の整理がさほど進んでおらず(あるいは増えており)、根強い買いが入っていることが窺える。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は7日、36.45(+4.47)に上昇した。ただ、1月下旬に一時40近くまで上昇したのち反落した経緯があり、この水準でも「総悲観」というにはまだ遠いだろう。先行き不透明ななかでの「強気の押し目買い姿勢」は、今後の更なる波乱を暗示しているかもしれない。(小林大純) <AK> 2022/03/08 12:26 後場の投資戦略 下値メドなど当てにならない、既にスタグフレーション入りか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25166.23;-819.24TOPIX;1791.78;-53.16[後場の投資戦略] 日経平均は一気に25000円近辺まで下落。心理的な節目の一歩手前で下げ止まると、前引けにかけてはで下げ渋る動きも見られているが、もはやこうなってくると下値メドなどはあってないようなもの。単純な値ごろ感やPERなどの株価バリュエーション指標は短期的には役に立たないと考え、売りが枯れたと思えるまで需給の改善を待つしかないだろう。 マーケットを巡る環境は混沌としている。ウクライナ情勢については、ロシアのプーチン大統領に手を緩める気配は一向に見られず、ロシア軍は核施設まで制圧対象にしてきているほか、ここにきて民間人までも攻撃対象としている様子で、行動がますます過激化している。こうした事態の深刻化を受けて、欧米諸国はロシア産原油の輸入禁止を検討していると伝わっている。これまで経済への影響を考慮して避けてきたエネルギー産業への制裁強化も避けられないとの見方に転じつつあるようだ。 歴史的な価格高騰を見せているのは原油や石炭価格、液化天然ガス(LNG)などのエネルギーだけでなく、小麦やトウモロコシなど食品価格まで幅広い品目にまで及んでいる。身の回りの生活必需品の価格がこれだけ高騰し、今後もロシアへの経済制裁の継続により高止まりするとなると、企業の仕入コスト増加や個人消費の停滞など、実体経済への影響がいよいよ深刻化する。市場では、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)への警戒感が高まっていると指摘されているが、米ミシガン大学消費者信頼感指数など、センチメントを図る指標はすでに歴史的な低水準にあり、もはやスタグフレーションは始まっていると言っても過言ではないだろう。 こうしたなか、連邦準備制度理事会(FRB)は今月の連邦公開市場委員会(FOMC)から利上げを開始する公算だ。その先にはバランスシートの縮小(QT)も控える。景気後退局面入りでの金融引き締めという、市場が最も恐れていた悲観シナリオがほぼ実現することが決まったとも言える。先週末に発表された2月雇用統計では、雇用者数が力強い伸びを見せ、失業率も改善した一方で、平均賃金の伸びが予想に反して横ばいになるなど、インフレ鈍化の兆しも見られた。しかし、今回のデータだけで、利上げ回数などFRBによる引き締めペースの織り込みが大きく後退するには材料不足だろう。 市場では、企業業績が堅調でバリュエーションの割安感に着目すれば買いだとの声も聞かれるが、足元で進んでいるこれだけハイペースのインフレが今後どれだけ続くかという見通しがつきにくいなか、今後は企業業績の後退懸念もつきまとうだろう。そうなれば、今のバリュエーションは参考指標にはなりにくい。もちろん、資源価格の高騰による業績鈍化を踏まえても、ヒストリカルでみてバリュエーションに割安感があるとの見方もあろうが、地政学リスクや金融政策の動向などマクロ環境にこれだけ強い不透明感がくすぶるなか、リスクプレミアムの上昇を通じてPERなどバリュエーションの調整(低下)が一段と進む可能性もあるだろう。いまはファンダメンタルズよりも売り枯れの兆しなど、需給面のテクニカル要素に着目した方がよいだろう。 後場の日経平均は軟調ながらもやや下げ渋る展開か。日経平均は前場の間に一時25000円割れを見ようかとするところまで一気に急落した分、短期筋の買い戻しが入りやすい。また、前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの思惑も広がりやすい。ただ、先行き不透明感がくすぶるなか、買い戻しが入っても上値は限定的だろう。 <AK> 2022/03/07 12:18 後場の投資戦略 「原発攻撃」に「インフレと金融政策の舵取り」不安も [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26020.60;-556.67TOPIX;1851.93;-29.87[後場の投資戦略] 本日の日経平均は「ロシア軍がウクライナ原発を攻撃」と伝わったことで波乱の展開となっている。前場中ごろには下げ幅を800円あまりに広げ、26000円を割り込む場面もあった。海運など市況関連セクターの一角を除き総じて軟調だが、特にグロース株やロシア・欧州等でのビジネスへの懸念が強い銘柄の下げが大きい。供給ひっ迫による一段の商品市況の上昇や、インフレ圧力の高まりによる金融引き締め懸念が意識されているのは明白だ。 前引けの日経平均が-2.09%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.59%。ここまでの東証1部売買代金は2兆円に達しており、情勢が大きく動いたことでかなり膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が-4.34%と大幅に3日続落。730pt台に位置する25日移動平均線を再び割り込んだ。中小型グロース株に売りが広がっているとあって、マザーズは特に逆風がきつい。ただ、メルカリ<4385>が-2.31%にとどまっているのを見ると、新興株の持ち直しに期待する向きは依然として少なくないのかもしれない。改めてメルカリの信用取引状況を見ると、足元で買い残は一段と増加。 これまでもたびたび指摘しているが、株式市場全体として米金融引き締め観測に伴い買い残の減少が続く一方、新興株の一角で買い残の増加が株価を下支えする構図となっているのは気掛かりだ。 ロシア軍によるウクライナ原発の攻撃を巡っては、ウクライナのクレバ外相が「火災が発生している」としたうえで「爆発すればチェルノブイリ原発事故の10倍の被害が出る」などと述べている。また、一部報道によれば発電ユニット1基が被弾し、発電所の一部が燃えているが、攻撃により消火活動を行えていないという。一時「原発周辺の放射線量の上昇が検知された」などとも報じられたが、国際原子力機関(IAEA)がウクライナ側からの報告として「放射線レベルに変化はない」と公表。 これを受けて日経平均は前引けにかけて下げ渋ったようだ。もっとも現地がかなり混乱していることは容易に想像でき、引き続き警戒感は拭いづらいだろう。 商品市場の動向にも注目しておきたい。イラン核合意の再建協議が近く妥結するとの観測が浮上し、前日のNY原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)は1バレル=107.67ドル(-2.93ドル)と反落した。もっともウクライナ情勢の悪化で需給ひっ迫の思惑も残り、本日の国内外市場では売り買いが交錯しているようだ。しかし、その他商品は小麦などを中心に値上がりが著しい。 前日の米債券市場では10年物国債利回りが1.84%(-0.03pt)に低下する一方、金融政策の影響を受けやすい2年物は1.53%(+0.02pt)に上昇。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進む形となった。原油先物相場の反落が意識されたか、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.69%(-0.02pt)とやや低下したが、商品市況の上昇が続いてインフレ懸念は拭いづらい。 こういった難しい状況下で米連邦準備理事会(FRB)による金融政策の舵取りへの不安もじわり広がっているようだ。ウクライナ情勢に関心が向きがちではあるが、今晩の米国では2月雇用統計の発表が控えている。米金融政策の行方を占ううえで内容を注視しておく必要があるだろう。 前引けのTOPIX下落率は2%に達しておらず、日銀の上場投資信託(ETF)買い入れ実施による下支えは期待しづらい。後場の日経平均も不安定な展開を強いられるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/03/04 12:23 後場の投資戦略 パウエル証言「本当の」市場解釈は? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26608.21;+215.18TOPIX;1883.59;+23.65[後場の投資戦略] 前日の米株が大幅反発した流れを引き継ぎ、本日の東京市場でも買いが先行したが、日経平均は寄り付き直後を高値に伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、26500円台に位置する5日移動平均線水準でもみ合いの様相。ここまで下降する25日移動平均線に上値を抑えられているだけに、値動き良化への期待が高まりづらいのかもしれない。売買代金上位や業種別の騰落状況を見るとかなり堅調な印象を受けるが、値がさ株がさえず日経平均を抑制している。前日の先物手口ではBofA証券などの外資系証券が日経平均先物を売り越ししていたが、本日もそうした流れが続いている可能性はあるだろう。前引けの日経平均が+0.82%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.27%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、前日までと比べ少なくなってきた印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-1.22%と続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、マイナスに転じる展開となっている。一方、このところ米金融引き締め観測の後退とともにマザーズ銘柄のリバウンドに期待する市場関係者の声が聞かれ、下値では押し目買いも入っているようだ。マザーズ売買代金が1日、昨年12月28日以来の2000億円台乗せとなった際はまとまった投資資金が入った印象を受けた。ただ、翌2日は1791億円となり、資金流入が加速しているとは言いづらい。マザーズ指数が740pt台に位置する25日移動平均線を上回ってきたところで、今後の方向感を見極めたいと考える個人投資家が多いものと考えられる。 なお、本日マザーズ市場に新規上場したイメージマジック<7793>は公開価格比+60.9%という堅調な初値を付けた。好需給のIPO(新規株式公開)銘柄にはなお物色の矛先が向きやすいようだ。 さて、直近FRB高官から「3月FOMCで0.5ptの利上げ検討」といった発言が出ていたうえ、前日の米株がハイテク関連を含め大幅反発したこともあり、パウエルFRB議長の議会証言はハト派的だったとする市況解説が散見されたが、実際に金融市場の受け止め方がそうだったかという点には疑問がある。 前日の米債券市場の動向を見ると、国債利回りが幅広い年限で上昇。10年金利が1.87%(+0.13pt)となったほか、金融政策の影響を受けやすい2年金利も1.51%(+0.17pt)となった。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進行。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.71%(+0.09pt)に上昇した。商品市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=110.60ドル(+7.19ドル)と大幅に3日続伸。こうした金融市場全体の動向が示唆するパウエル氏証言の解釈は「金融引き締め姿勢を再確認したが、それはインフレ進行に追いついていないのでは」というものだろう。 実のところ、スワップ取引で見た3月FOMCでの利上げ織り込みは前の日までに0.25pt弱まで後退していたという。既に「金融引き締め観測の後退を想定する局面」ではなく、「改めて金融引き締めを織り込む余地がある局面」だったということだ。これを踏まえ、一昨日の当欄「中小型グロース株高の構図に持続性は?」で述べたことも再強調しておきたい。 米国では今晩の2月ISM(サプライマネジメント協会)非製造業景況指数や4日の2月雇用統計といった重要経済指標の発表が控えており、ロシアとウクライナの停戦協議の行方も見通しづらい。引き続き方向感の出にくい相場展開となりそうだ。(小林大純) <AK> 2022/03/03 12:30 後場の投資戦略 ウクライナ情勢一段と悪化、パウエル・プットに期待してよいのか? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26341.95;-502.77TOPIX;1863.47;-33.70[後場の投資戦略] WTI原油先物価格は時間外取引で1バレル=108ドルを挟んだ水準で推移。ロシアへの経済制裁による商品市況の逼迫が警戒され、節目の100ドルを突破すると一気に駆け上がってきた。国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網からの排除など、厳しい経済制裁の実施後もロシアの姿勢に変化は見られず、ウクライナの主要都市では砲撃がむしろ強化されているもよう。これを受け、西側諸国は更なる経済制裁の実施も検討していると伝わっている。事態の収束目途はいつなのか、実体経済への悪影響はどれ程のものになるのか、先行き不透明感が一段と強まるなか、株式市場ではリスク回避の動きが再び強まっている。 こうした中、今晩、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は下院金融サービス委員会での証言に臨む予定。足元では、ウクライナ情勢を巡る不透明感に配慮し、FRBが金融引き締めペースを遅らせるのではないかとの期待が高まっている。実際、明日の証言では、パウエル議長からウクライナ情勢に対する懸念などが示される可能性は高い。 しかし、ウクライナ情勢混乱による実体経済への影響が懸念されるなか、景気下振れリスクに配慮してFRBが引き締めペースを遅らせるのではという市場の期待は、そもそもエネルギー純輸出国である米国は、欧州ほどにはロシアへの経済制裁による悪影響がないということを無視していると思えてならない。下方硬直性のある賃金や住宅価格の歴史的な高騰が、地政学リスクで後退するとも考えにくい。 住宅価格の伸びはピークを過ぎたとの指摘もあるが、12月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数の伸びは11月を上回っている。また、FRBによる利上げが予想されるなか、金利上昇前に住宅を購入しておこうとする駆け込み需要が高まってきていることも報告されており、今後はむしろ伸びが再加速していく可能性もある。地政学リスクの高まりも、資源価格の高騰を通じて、むしろFRBの引き締めを加速させる要因となり得る可能性がある。 そうした中でも、市場のFRBによる利上げ織り込みは足元で急速に後退しており、これが新たな市場の波乱要因とならないか心配だ。可能性としては低いが、仮に、明日の議会証言でパウエル議長が想定ほどにはウクライナ情勢に配慮せず、これまでのインフレファイターの姿勢を維持することを示唆した場合、利上げ後退期待で前日までリバウンドしていた株式市場が一段の下げに見舞われる可能性はあり得る。 1日、イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会(MPC)のソンダース委員とキャサリン・マン委員が、インフレ抑制のため中銀の迅速な行動が必要だと主張し、利上げに引き続き積極的な姿勢を示したことも気掛かりだ。ウクライナ情勢が緊迫化する前は、インフレファイターへと変貌したFRBの姿勢を確認した上で、株価の下値を支えるてくれる「パウエル・プット」はもう存在しないことを市場参加者は認識していたはず。それが、ここにきて再びパウエル・プットに期待する声が増えていることが心配だ。筆者の見解が悲観的過ぎるだけであればいいが、明日のパウエル議長の議会証言が期待通りに作用するか見守りたい。 後場の日経平均は引き続き軟調な展開となろう。上述した通り、今晩のパウエル議長の議会証言を控え、積極的な押し目買いは手控えられやすい。また、ウクライナでの戦闘激化など新たなヘッドラインへの懸念もあり、売り方優位の地合いが続きやすいだろう。時間外取引の米株価指数先物の動き次第では、一段と下値模索の展開になる可能性もあろう。 <AK> 2022/03/02 12:13 後場の投資戦略 中小型グロース株高の構図に持続性は? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26916.97;+390.15TOPIX;1904.43;+17.50[後場の投資戦略] 前日のNYダウは世界経済の減速懸念から反落するも下げ渋り、米ハイテク株には金利低下を受けて買いが入った。本日の東京市場でもこうした流れから先行き懸念が和らいだとみられ、日経平均は大幅に3日続伸し、前場に27000円台を回復する場面があった。日足チャートを見ると、26400円台に位置する5日移動平均線を寄り付きから大きく上回り、値動き良化に期待した買いが入っていそうだ。一方、27000円あまりのところに位置する25日移動平均線近辺まで上昇し、目先の利益を確保する売りも出やすいか。前引けの日経平均が+1.47%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.93%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円ほどとまずまず多い。 売買代金上位では株式分割の実施を発表した商船三井を中心に海運株の上昇が目立ち、上昇率上位には中小型グロース(成長)株が多くランクインしている。一方、金融株がやや軟調で、三井物産などロシア事業への懸念がくすぶる銘柄にも売りが続いている。 新興市場ではマザーズ指数が+5.81%と大幅に3日続伸。こちらは先んじて740pt台に位置する25日移動平均線を上回ってきた。前述のとおり中小型グロース株高の追い風が大きい。2月24日安値(648.20pt、取引時間中)から急ピッチのリバウンドを見せており、個人のセンチメントや資金余力の改善につながっているのだろう。振り返ってみると、東証1部でも海運株を中心に個人投資家に人気の銘柄が賑わっている印象を受ける。 さて、前日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が1バレル=95.72ドル(+4.13ドル)と反発。商品市況の先高観から期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.62%(+0.08pt)に上昇した。一方、世界経済の減速懸念とともに金融引き締めを織り込む動きが一段と後退し、金利は幅広い年限で低下。10年物国債利回りは1.82%(-0.14pt)となった。「対ロ制裁の影響は限定的」とか「停戦協議の進展に期待」といった声もあるが、これらの動きはウクライナ危機の長期化を見据えたものだろう。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は低下し、特にこれまできつい調整を強いられてきた中小型グロース株の押し目買いの手掛かりとなっているようだ。 また、2月月間で日経平均は-1.76%(-475.16円)、TOPIXは-0.47%(-9.00pt)と2カ月連続で下落しており、株式相場全体としてリバランス(資産配分の再調整)目的の買い需要に期待する向きもある。 もっとも米金融政策を巡っては、アトランタ連銀のボスティック総裁が「持続的な高インフレが示されれば、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの利上げを検討」する可能性を示唆している。ウクライナ危機の陰であまり注目されなかったが、2月25日に発表された1月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+6.1%と大幅に伸び、商品市況の高止まりからもインフレ懸念は拭いづらいだろう。「金利低下+期待インフレ率上昇=グロース株買い」の構図が持続的なものかよく見極めたうえで取り組む必要があるだろう。 ウクライナ情勢についても、ロシア側が強硬な停戦条件を突き付けていると報じられていることに加え、米国防総省などの戦況分析でロシア軍に攻勢を緩める気配が感じられないのも懸念される。これまでの米政府の発表を見ると、米情報機関は侵攻開始前からロシア軍の動きをかなり正確につかんでいる印象を受ける。危機収束はなお見通しづらく、金融市場も不安定な状況が続くとみておいた方がよさそうだ。(小林大純) <AK> 2022/03/01 12:20 後場の投資戦略 停戦協議に賭けた押し目買いは危うし [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26393.42;-83.08TOPIX;1875.50;-0.74[後場の投資戦略] 週明けの東京市場はウクライナ情勢を巡る不透明感から方向感の定まらない展開。日経平均は朝安後に早々にプラスに切り返したかと思えば、その後再びマイナスになるなど、市場参加者も先行きについて見極めがつかない様子。また、指数がマイナスな一方で、東証1部全体では値上がり銘柄数が7割近くに及び、全体的にちぐはぐな様子。値がさ株の多いハイテクやグロースの下げが相対的に大きいのだろう。 実際、資源価格の高騰や供給網の混乱などが連想される鉱業や海運には強い動きが見られるが、半導体関連株は総じて大きく下げているものが多い。トヨタ自<7203>やデンソー<6902>などの人気EV(電気自動車)関連も冴えないところを見る限り、投資家心理は停滞したままのようだ。マザーズ指数が先週末に続き大きく上昇しているが、東証1部の主力株が手掛けにくいなか、幕間繋ぎの短期物色の域を出ないだろう。 ウクライナ情勢を巡っては日に日に事態が悪化しており、先行き不透明感がくすぶる。ロシアのウクライナへの本格侵攻から、西側諸国によるSWIFTからのロシアの排除制裁など、当初は可能性が低いとされていたことが急速展開で相次いで起こっている。SWIFTからの排除については、世界的な燃料価格の急騰を招かないよう、全ての銀行ではなく大手銀行のみを対象とするなど、ある程度の制約をかけているようだが、既に実施済みの制裁だけでも、実体経済への影響は小さくないうえ、ここまでの経緯を踏まえれば、この先の展開にも油断はできない。 ロシアはこうした対ロ制裁に反発し、けん制の意味も込めて核戦力をちらつかせるなど、かなり威嚇的な動きを見せている。戦争という非合理的ともいえる事態が発生するのは、偶発的な条件が重なることによるものとされている。ロシアと西側諸国がお互いに引くに引けない背景からエスカレートした動きに出れば、事態の一段の混迷化も避けられない。また、現在、ロシア・ウクライナの停戦協議が事態打開のきっかけとして期待されているわけだが、平和的な解決につながるかは不透明。交渉が物別れになった場合の、事態深刻化をむしろリスクとして警戒しておいた方がよいだろう。 さて、後場の日経平均も引き続き26500円前後でのもみ合い展開となりそうだ。関連のヘッドラインには注意が必要だが、アジア市況が総じて軟調で、時間外取引の米株価指数先物も大きく下落しているなか、積極的な買いは期待できないだろう。今週末には米雇用統計が控えているほか、週半ばの3月2~3日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言が予定されている。内容を見極めたいとの思惑から買いが手控えられるなか、売り手優位の地合いが続きそうだ。 <AK> 2022/02/28 12:16 後場の投資戦略 米金融引き締め懸念はやや後退も… [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26353.58;+382.76TOPIX;1870.96;+13.38[後場の投資戦略] 前日はロシアのウクライナ侵攻が報じられて金融市場全体にリスク回避ムードが広がり、ロシアの株価指数RTSが一時50%超下落するなどの混乱が見られた。しかし、NYダウが829ドル安からプラス圏に浮上する動きを見せたことで、本日の東京市場は一転、買い戻し優勢の展開となっている。これまで下げのきつかったグロース株の上昇が目立ち、日経平均を押し上げる格好。ただ、日経平均の値幅の割に値上がり銘柄数は多くない印象も受ける。業種別騰落率を見ると、鉱業・金融セクターの下げが大きい。前引けの日経平均が+1.47%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.72%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとなっており、前日から上下に振らされたことで膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+6.18%と6日ぶりに大幅反発。中小型グロース株の反発の流れに乗って、主力IT株を中心に大きく上昇している。時価総額上位ではメルカリ<4385>が+4.31%、ビジョナル<4194>が+11.97%、フリー<4478>が+8.97%となり、売買代金トップのFRONTEO<2158>も4日ぶりに大幅反発。ただ、本日マザーズ市場に新規上場したマーキュリーRI<5025>は公開価格比+6.7%という初値にとどまった。前日上場のBeeX<4270>は株式相場全体に軟調地合いのなかで約2.3倍という初値を付けたが、本日は既存マザーズ銘柄のリバウンドに乗ろうとする動きからマーキュリーRIに関心が向きにくいのかもしれない。物色トレンドは日替わりの様相だ。 さて、米金融引き締め懸念の後退がグロース株高の要因の1つに挙げられている。前日の米市場の動向を見ると、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が一時1バレル=100ドル台に乗せるも、利益確定売りが出て伸び悩み。10年物国債利回りが1.96%(-0.03pt)となるなど幅広い年限で金利は低下したが、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.55%(+0.02pt)と上昇が続いた。これらの動きは金融引き締めを織り込む動きが和らいだことを示唆するとともに、グロース株の反発につながるだろう。 もっとも、ウクライナの混乱で原油が一段高となる可能性は残るといった見方は依然としてくすぶっており、インフレ圧力の高まりから米金融引き締めは回避できないとの声も根強く聞く。実際、FRBのウォラー理事はウクライナ情勢を注視しつつも、インフレ指標の高止まりが続けば3月15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの利上げを議論することに前向きな姿勢を示している。3月FOMCまで米金融引き締めペースを巡り様々な見方が交錯することになりそうだ。 またウクライナ情勢についても、ロシアが首都キエフに進軍し、本日中にも陥落する可能性があるという西側情報当局者の発言が伝わっている。従来「一部侵攻にとどまるのでは」といった市場関係者の声が多かったが、もはやロシアの狙いがゼレンスキー政権の転覆にあることは明白だ。引き続き関連ニュースに金融市場が急変動する可能性もあるとみて取り組んだ方が良いだろう。 誌面の都合で後日また述べたいが、このところの株価調整は海外短期筋による株価指数先物の売りという市況解説にもやや疑問があり、実際には買い持ち削減の動きが続いていることが背景にあるという印象を受ける。そうしたトレンドが本格的に転換するとみるのは時期尚早とも付言しておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/25 12:26 後場の投資戦略 不透明要因の長期化で底入れの兆し見えず [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26161.46;-288.15TOPIX;1867.74;-13.34[後場の投資戦略] 祝日明けの日経平均は下値模索の展開となっている。ロシアへの経済制裁では、米国がインフラ整備や軍需産業の資金調達を担うロシア国営銀行の米国内での取引を禁止したほか、ロシア政府系ファンドなどを金融市場から遮断することを発表。欧州でもロシアを金融市場から遮断したほか、ドイツは、同国とロシアを結ぶガス輸送パイプライン「ノルドストリーム2」の承認を中止し、完全中止も「大いにあり得る」と言及した。 一方、銀行間の国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを排除する制裁はまだ実施されていないほか、ノードストリーム2を除けば、エネルギー関連の制裁はない。また、ロシア国営銀行との取引中止についても、最大手の銀行などは含まれていない。制裁内容が致命的なほどではないとの見方もあり、現状の株価の下落は行き過ぎとの指摘もあるようだ。確かにこれらの案は、世界経済への影響も大きいため、発動がそもそも難しいという背景もあろう。 しかし、ロシアに対する各国の対応が、将来的な中国による台湾への動きを左右しかねない背景も踏まえれば、ロシアの出方次第では、さらなる追加制裁の可能性は拭えない。また、米ロの外相および首脳会談が中止となったことで、外交的解決への希望は薄れている。追加制裁が発動されれば、高止まりしているエネルギーや食料品の価格の一段の上昇が予想され、インフレ高進による個人消費の停滞など実体経済の落ち込みが警戒される。また、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めに対する思惑が強まりかねない。 米国市場ではテスラやエヌビディアといった個人投資家から人気の高い銘柄の下落率がきつくなっており、東京市場でも、レーザーテックをはじめとした半導体関連など、人気度の高い銘柄のチャート形状の悪化が鮮明となっている。コロナ禍相場の中で日米ともに積み上がったレバレッジは依然解消余地が大きいため、含み損益の悪化を通じたレバレッジの一段の解消などが懸念され、地合い悪化時の更なる下落のほか、相場反発時の上値抑制要因として働くことが想定される。 このため、目先のリバウンドを狙った短期勝負と割り切る分にはいいが、安易な底入れ期待に基づく押し目買いには注意が必要だろう。日経平均については、26000円を割り込めば、25000円近辺までの下落余地は優に出てくる。個人投資家には慎重な対応が求められよう。 後場の日経平均は心理的な節目の26000円を意識した正念場となる。足元の下落相場のなか、商品投資顧問(CTA)など短期筋の売り持ち高がかなり積み上がってきたようで、短期的には26000円を手前に買い戻しも考えられる。しかし、ニュースフロー次第では、26000円割れにより、一段と売りに拍車がかかる可能性もある。後場も時間外取引の米株価指数先物の推移などを睨みながら神経質な展開が続きそうだ。 <AK> 2022/02/24 12:14 後場の投資戦略 ロシア強硬姿勢に「あく抜け期待」も続かず? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26327.90;-582.97TOPIX;1877.01;-33.67[後場の投資戦略] ロシアが親ロ派地域の独立承認に踏み切ったことでウクライナ情勢への懸念が一段と強まり、本日の日経平均は600円近い下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、27200円台に位置する25日移動平均線水準を一段と下振れ、ボリンジャーバンドの-2σの下限割れまで突っ込んでいる。個別・業種別では、第一三共がけん引役となっている医薬品、地政学リスクの高まりが原油の先高観につながっている鉱業を除き全般軟調。ただ、リクルートHDなどグロース(成長)株の一角にも買いが入っている。前引けの日経平均が-2.17%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.76%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりとさほど多くない。なお、前日は1日を通じ2兆3068億円と今年最低だった。 新興市場ではマザーズ指数が-1.42%と4日続落。連日で取引時間中の昨年来安値を更新しているが、こちらは朝方プラスに転じる場面があった。前引け時点でもメルカリ<4385>やサンバイオ<4592>が堅調で、FRONTEO<2158>も小幅ながらプラスを確保。本日マザーズ市場に新規上場したCaSy<9215>は公開価格比+48.2%という初値を付けた。ただ、前引けでは初値比-22.6%。前の週に上場したエッジテクノロジ<4268>も初値高の反動がきつい。 一部のグロース銘柄に買いが入っていることについては、地政学リスクの高まりを受けて米金融引き締めを織り込む動きが和らぎ、米長期金利が低下するとの思惑などが背景にあるようだ。また、ウクライナ問題を巡るロシアの狙いがある程度見えてきたとして、あく抜けに期待する声も聞かれる。 しかし、マザーズ市場などは個人・外国人といった純投資家が取引主体のため、市場センチメントの影響を受けやすい面もある。特に個人投資家は過去の市場動向を見ても地政学リスクに敏感であることがわかる。IPO(新規株式公開)銘柄の値動きに象徴されるように、投資資金の逃げ足の速さに注意する必要があるだろう。 また、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を受け、緩衝地帯を設けるために西側諸国との対立も辞さないことが浮き彫りになったと言える。既にロシアのプーチン大統領は今回独立承認した地域への軍派遣を指示したと伝わっているが、ロシアに隣接するウクライナ東部の他地域でも火種がくすぶりそうだ。プーチン大統領には「NATO東方不拡大の約束が反故にされた」との思いがあると指摘されており、対話による解決は容易でないだろう。 香港ハンセン指数、また時間外取引でのNYダウ先物などは揃って大幅に下落。為替市場ではドル・円相場が朝方に一時1ドル=114.50円近辺まで下落してからやや戻したが、足元弱含みで推移している。前引けでのTOPIX下落率が2%に届かず、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施への期待も持てない。やはり金融市場全体にリスク回避的なムードが広がっており、後場の日経平均も軟調な展開になるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/22 12:24 後場の投資戦略 「遠くの戦争は買い」は果たして本当か・・・ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26926.01;-196.06TOPIX;1911.58;-12.73[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は波乱スタート、前場の下げ幅は一時600円近くまでに及んだが、その後、急速に下げ渋った。先週末は取引時間中に米ロ外相会談の報道が伝わったことで買い戻されたが、本日はバイデン米大統領とロシアのプーチン大統領による首脳会談に関する報道が伝わったことで下げ渋った。 ただ、依然としてウクライナ情勢は緊張感に包まれている。今週行われる外相会談に加えて新たに決まった首脳会談により、外交的解決の可能性はゼロではないが、欧米とロシアの主張には依然として大きな隔たりがあり、物別れに終わる可能性もある。また、週明けにかけては、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力を隔てる境界線周辺で停戦合意違反の動きが急増していると伝わるなど、まさしく一触即発の状態が続いている。 前場の東京市場は急速に下げ渋ったとはいえ、積極的な押し目買いが入っているというよりは、先週と同様、短期筋の先物主導での動きによるところが大きそうだ。この先も関連ヘッドラインに反応した短期筋に翻弄されることは濃厚だろう。「遠くの戦争は買い」などという格言もあり、地政学リスクによる株価下落は往々にして買い場になるとの指摘もあるが、少なくとも現時点での押し目買いは危険だろう。上述の米ロによる外相・首脳会談の行方もそうだが、最終的にロシアによるウクライナ侵攻が実行されるかどうか、これが決定的な事項となるまでは、関連報道に一喜一憂する展開が続く。 不謹慎な話だが、仮に実際にウクライナ侵攻が始まれば不透明感後退であく抜け上昇に繋がるなどという声も聞かれるが、今回の場合はそうならない可能性もある。資源大国であるロシアへ経済制裁が科されることになれば、資源価格の一段の高騰を通じて、インフレ高進や米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念を一段と強めかねず、その点でむしろ、先行き不透明感を高めてしまうシナリオも考えられる。いまは安易な押し目買いは避け、様子見に徹した方が無難だろう。 後場の日経平均も引き続き神経質な展開が続きそうだ。ただ、米ロ首脳会談の報道を受けた買い戻しが既に一服していることや、心理的な節目の27000円目前で失速しているところを見ると、後場は上値の重い展開、もしくは、改めて下値模索の展開となる可能性にも留意しておきたい。 <AK> 2022/02/21 12:17 後場の投資戦略 気掛かりはウクライナ情勢だけでない [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27094.16;-138.71TOPIX;1922.99;-8.25[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株安の流れを引き継いで27000円割れからスタートしたが、米ロ外相会談による緊張緩和への期待で下げ渋って前場を折り返した。日足チャートを見ると27000円を下回る場面での底堅さが感じられる一方、上値切り下げの形状となっている。「政局相場」で盛り上がる以前の昨年2~8月に似た動きという印象を受ける。個別では半導体関連を中心とした値がさグロース(成長)株の一角が前日に続きさえない。半面、海運株は輸送需要の増加を意識した買いが続いているようだ。前引けの日経平均が-0.51%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.43%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりで、1日を通じては3兆円前後といったところか。 新興市場ではマザーズ指数が-1.18%と続落。こちらも朝方から売りが先行し、取引時間中としては2020年4月14日以来、およそ1年10か月ぶりに700ptを下回る場面があったが、日経平均とともに下げ渋った。FRONTEO<2158>は新サービス発表を材料視する向きもあって-1.13%に踏みとどまっているが、前日までの大幅下落を踏まえれば戻りの鈍さが意識されざるを得ないか。買いを集めているのは前日上場したばかりのエッジテクノロジ<4268>などで、株式需給重視の物色となっていることが窺える。 さて、金融市場全体としてウクライナ情勢に関するニュースに振らされる展開となっている。米ロ外相による対話の機会が設けられたのは明るい材料だが、米政権から「ロシアが侵攻の口実作りのために偽旗作戦を進めている」「侵攻は目前」などといった発言が相次ぎ出ている点は気掛かり。前日にはロシアメディアがウクライナ軍による砲撃を報じている。懸念が完全に払しょくされるのにはなお時間を要するだろう。 また、前日の米株市場では、失業保険申請件数や住宅着工件数といった経済指標の悪化に加え、セントルイス連銀のブラード総裁が「物価制御のため中立金利以上に政策金利を引き上げる必要もあるかもしれない」と述べるなど、投資家心理を冷やす材料が多かった。雇用市場だけでなく、住宅市場の状況もインフレ・金利上昇のもとで注目度が高まっている。今晩の米国では1月の中古住宅販売件数、来週22日には12月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数が発表される。もちろん金融政策の行方にも少なからず影響を与えるだろう。 FRB高官に加え、市場関係者からも引き続き金融引き締め加速を予想したり、その必要性を強調したりする声が多く出ている。JPモルガン・アセット・マネジメントのボブ・マイケル最高投資責任者(CIO)などが0.5%の利上げでインフレ抑制を図ることに期待を示しており、米金融大手モルガン・スタンレーは年内の利上げ回数予想を6回、合計の引き上げ幅を1.5%(従来は1.25%)に上方修正した。 アジア市場では上海総合指数が小幅に下落し、香港ハンセン指数は0.5%程度の下落。ドル・円相場は米ロ外相会談の報道を受けて一時1ドル=115.20円台まで急伸したが、足元伸び悩んでいる。株式市場でも売り方の買い戻しが入る可能性こそあるが、週末を前に積極的に買い持ち高を増やしづらいだろう。引き続きウクライナ情勢関連のニュースや米経済指標を見極めたいところでもあり、後場の日経平均は戻りの鈍い展開になるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/18 12:23 後場の投資戦略 「リスクとれば報われる」への慣れ? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27395.85;-64.55TOPIX;1939.86;-6.77[後場の投資戦略] 本日の日経平均は小安くスタートしたのち、マイナス圏で推移して前場を折り返した。日足チャートを見ると、27300円弱に5日移動平均線、27400円強に25日移動平均線が位置しており、この水準でややこう着感の強い展開。ここまでの上下の値幅は125円弱だ。個別では、米長期金利の高止まりでグロース株が主力から中小型まで全般軟調。一方、1月の海上コンテナ輸送が好調だった海運や、一部証券会社の目標株価引き上げが観測された商社は堅調だ。また、私鉄各社も上昇率上位に複数顔を出している。前引けの日経平均が-0.24%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.35%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、決算発表の一巡や外部環境の不透明感から減少している。 新興市場ではマザーズ指数が-1.81%と反落。こちらも前場中ごろを過ぎて712.71pt(-21.97pt)まで下落する場面があり、取引時間中の昨年来安値を更新した。ひとまず底割れするような動きとはなっておらず、本日新規上場したエッジテクノロジ<4268>が前引け時点でなお買い気配であることなど、引き続き個人投資家の物色意欲の根強さが感じられる部分はある。しかし、主力のメルカリ<4385>が-4.48%となっており、下落トレンドを脱せず。一昨日の当欄で触れたFRONTEO<2158>は連日の大幅下落である。これら銘柄は再三強調しているとおり、個人投資家が信用買いを膨らませてきた銘柄だ。昨年11月から人気のマザーズ銘柄の株価急落が相次ぎ、一段の損益悪化に苦しむ個人投資家は少なくないと考えられる。 こうした状況を見るにつけ、筆者は金融引き締めを「織り込んだかどうか」といった議論に違和感を持たざるを得ない。「織り込んだ」などという見方には、金融引き締めを単なるネガティブイベントとしてしかとらえていないことが透けて見える。 金融緩和は借り入れコストの縮小などを通じて消費や投資を刺激する。実際、金融市場ではコロナ禍を受けた各国中央銀行の緩和策のもと、世界的に証拠金債務(マージンデット)を膨らませてきた。東京株式市場でも信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は2020年1月31日申込み時点の2兆4637億円から、直近ピークだった21年11月26日申込み時点の3兆7401億円まで大きく拡大した。こうした動きは金融市場だけではない。数年前に住宅購入を検討した筆者は年収の10倍前後のローン借入れを勧められた。金利水準が大きく異なるとはいえ、5~7倍程度が妥当という親世代の話を聞いていていただけに驚いたものだが、実際に購入に踏み切った消費者は少なくないだろう。 金融引き締めは借り入れコストの増大などを伴い、こうした消費・投資行動の前提が大きく異なってくるということである。果たして投資家や消費者の行動は緩和的な金融環境からの脱却を睨んで変化してきているだろうか。マザーズ銘柄の取引状況などを見ると、「積極的にリスクテイクすれば報われる」という意識がなかなか抜けづらいような気がしてならない。長い金融緩和の後遺症と言えるだろう。10日の当欄で取り上げた米ユニバーサ・インベストメンツのマーク・スピッツナーゲル最高投資責任者(CIO)の発言「『現在の流動性がいかに金融システムに組み込まれているか』というリスク」とは、こうしたことを示しているのではないだろうか。 なお、2月10日申込み時点の信用買い残高は3兆2874億円。やはり金融引き締め観測とともに減少してきたが、コロナショック前と比べれば依然高水準だ。 FOMC議事録がおおむね市場の想定内とはいえ、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め方向にあることは変わらず。また、ウクライナ情勢を巡る報道も錯綜していて、先行きを見極めづらい。日経平均は目先、上値の重い展開が続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/17 12:25 後場の投資戦略 懸念材料は後退したといえるか・・・ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27428.02;+562.83TOPIX;1944.29;+29.59[後場の投資戦略] 日経平均は前日までの2日間だけで800円超も下げていたこともあり、地政学リスクの緩和を受けた米株高を背景に、本日は大幅反発。ただ、25日移動平均線を手前に伸び悩んでおり、戻り待ちの売りの根強さも窺える。 また、本日の株高の持続性には依然懐疑的とならざるを得ない。ロシアは軍の一部撤収を発表したが、北大西洋条約機構(NATO)やバイデン米大統領はこうした動きについて「確認していない」と述べている。ロシア軍は依然としてウクライナ近辺で常時戦闘に入れる状態を維持しているとも伝わっており、地政学リスクは払しょくされていない。米国務省が言及しているに過ぎず、真偽は定かでないが、16日は当初ロシアがウクライナ侵攻をすると噂されていた日でもあり、依然警戒感は拭えない。 一方、ウクライナ情勢を巡る報道でかき消された感があるが、前日に発表された米1月生産者物価指数(PPI)は市場予想を大幅に上回った。前年同月比で+9.7%(予想の+9.1%)となり、前月比では+1.0%(同+0.5%)と予想比で2倍の伸びとなった。変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアでも前月比+0.8%(同+0.5%)と予想を大きく上回った。もともと、前回の12月分に続き2カ月連続で伸びが鈍化し、インフレ懸念の沈静化につながるとの期待がああったわけだが、完全に予想を覆す形となり、米10年国債利回りも再び2%台にまで上昇している。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めペース加速を一段と正当化しうる材料といえ、このPPIの上振れは、今後、じわじわと影響を与えそうだ。 明日未明には、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月開催分)が公表予定。すでに、市場では今年の全てのFOMCでの利上げを織り込みつつあるほか、4-6月中の量的引き締め(QT)開始も織り込み始めている。そのため、議事録公表がネガティブサプライズに働く可能性は低いと考えられるが、QTに関する言及の仕方次第では、PPIの上振れと合わせて改めて金融引き締め懸念が強まる可能性も捨てきれない。 仮にこれを無難に通過したとしても、3月FOMCまでの間には2月雇用統計など重要指標の発表も控えている。決算シーズンが一巡し、手掛かり材料難ということもあり、相場が上昇基調へ転換するというシナリオは描きにくいだろう。 一方、今晩の米国市場では、FOMC議事録の公表以外に、米1月小売売上高や半導体企業のエヌビディアやアプライド・マテリアルズの決算が予定されている。小売売上高は前月比でマイナスだった12月から一転してプラスが予想されている。FOMC議事録がタカ派色を一段と強める内容でないことに加えて、小売売上高や半導体企業の決算が予想を上回るものとなれば、短期的にはあく抜け感から一段の買い戻しなども想定されよう。 指数が一日に1~3%上下に動く日が珍しくなくなっており、ボラティリティー(変動率)の高い相場が続いている。今は短期的にはどちらに振れてもおかしくない地合いのため、引き続き慎重なリスクコントロールが求められよう。 さて、後場の日経平均は引き続き25日線を手前にしたもみ合いが続くと予想する。上述したように、今晩の米国市場では重要な見極め材料が多く予定されている。これらを確認する前に一段の上値追いは想定しにくく、25日線や心理的な節目の27500円を手前に伸び悩む構図に変化はないと考えられよう。 <AK> 2022/02/16 12:10 後場の投資戦略 外部環境の不透明感は依然拭えず [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27006.66;-72.93TOPIX;1926.21;-4.44[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方こそ押し目買いが先行したものの、その後おおむねマイナス圏で推移して前場を折り返した。日足チャートを見ると27000円近辺で下げ渋る動きだが、連日の陰線形成にムードの悪さは拭えない。前日に5日移動平均線を割り込んだことで値動き良化への期待は後退か。改めて、10日に下降する25日移動平均線を一時上回ったところが戻り売り機会だったという見方もできる。規模別指数では大型が軟調だが、中型や小型はまずまず堅調。前引けの日経平均が-0.27%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.23%。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりで、前日までと比べやや減少している印象だ。 決算発表銘柄ではSMCなど好反応を示すものも少なからずあるとはいえ、比較的評価の高いリクルートHDの急落に売り圧力の強さが感じられる。医療器具の朝日インテック、アウトドア・キャンプ用品のスノーピークなど、業績鈍化・落ち込み懸念を打ち返した企業の方が戻り余地の大きさから買いが入りやすいものと考えられる。 新興市場ではマザーズ指数が-0.04%と続落。前日の米市場でハイテク株の一角に押し目買いが入った流れから、マザーズ指数も朝方の売りが一巡すると前日終値近辺で推移している。東証1部の中小型株と同様、個人投資家の物色意欲は根強いことが窺える。一方、マザーズ指数は前日に-4.54%という大幅下落を強いられており、戻りの鈍い印象も拭えない。また、前日に決算発表したFRONTEO<2158>の動向も注目したい。取引時間中に売買成立する場面もあったが、前引け時点ではストップ安水準での売り気配。同社は個人投資家に人気が高く、信用買い残も相応に高水準となっている。個人投資家の資金余力やセンチメントの更なる悪化が懸念される。 さて、前日の米市場ではウクライナ情勢の緊迫化などから原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)の上昇が続き、1バレル=95.46ドル(+2.36ドル)となった。これが意識されてか、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.48%(+0.05pt)に上昇した。 こうしたインフレ圧力の高まりから金融引き締め観測も強く、米債券市場では短期の年限を中心に金利が上昇。2年1.57%(+0.07pt)、10年1.99%(+0.05%)となった。利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)は一段と進む格好となっている。セントルイス連銀のブラード総裁はインフレ対応が遅れれば米連邦準備理事会(FRB)への「信頼性が損なわれる可能性がある」としたうえで、「計画されている緩和解除を従来よりも前倒しする必要がある」などと発言したという。 市場関係者からは「米長期金利の上昇余地は限られる」といった声も根強く聞かれる。しかし、米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査では欧州投資家が社債を売り、現金の保有比率を高めていることがわかったなどと米メディアが報じている。米金融大手ゴールドマン・サックスは資産配分における社債の投資判断を引き下げ、逆に現金を引き上げた。これまでの金利上昇(債券価格の下落)で債券投資家の多くは損失が出ているものとみられている。債券投資家の現金選好が一段と強まる可能性もあるだろう。 結局のところ株式投資家の押し目買い意欲が根強いといえ、外部環境の不透明感は拭いづらい。また、今週も16日の米連邦公開市場委員会(FOMC、1月25~26日開催)議事録公表を始め、米中の主要経済指標の発表など注目イベントは多い。後場の日経平均も引き続き戻りの鈍い展開になるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/15 12:23 後場の投資戦略 悪材料顕在化で深押し、押し目買いは時期尚早 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26970.34;-725.74TOPIX;1923.00;-39.61[後場の投資戦略] 本日の日経平均は世界的なリスク回避ムードの高まりから免れることはできず、700円超安と、一気に27000円を割り込んできている。先週末に回復したばかりの25日移動平均線を再び大きく下放れた。日足チャートでは目先の下値支持になる目安が見当たらず、週足では一目均衡表の雲下限(26796.62円)が唯一サポートとして期待される位置にある。ここを下回ると、短期的には1月27日に付けた26044.52円を目指す展開が想定される。先週末に、ザラ場ベースとはいえ、1月5日の29388.16円から1月27日の26044.52円までの下げ幅の半値戻しを達成したばかりだっただけに、チャート形状の再悪化は下落トレンド長期化を想起させるようで、印象が悪い。 相場急落のきっかけは従来から懸念されていた悪材料の顕在化、すなわち、米国をはじめとした主要各国中央銀行による金融引き締めとウクライナ情勢を巡る地政学リスクだ。先週、米1月CPIが予想を上回り、40年ぶりとなる最大の伸びを記録したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め加速化を正当化させるとの思惑から、幅広い年限で米国債利回りが急上昇し、米長期金利は10日に2%を超えた。週末11日には、ウクライナ情勢を巡る地政学リスクの強まりを受けて、安全資産である債券に買いが入ったことで、2%を割り込んだが、金利先高観は根強い。 ロシアのウクライナ侵攻が実際に行わることがあれば、短期的には相場は一段と深押しするだろうし、仮に侵攻が行われず、地政学リスクが後退したとしても、今度は再び金利先高観が相場の頭を抑えるだろう。FRBだけでなく、利上げに消極的だった欧州中央銀行(ECB)までもが利上げを検討するなか、市場では米長期金利の2%超えは通過点に過ぎず、年内に2.5~3.0%まで上昇するとの予想も多くなっている。 サマーズ元米財務長官は、FRBは臨時会合を即時開催し、インフレ抑制への決意を強調するべきだと主張しているほか、米民主党のマンチン上院議員は、FRBがインフレとの闘いで「煮え切らない態度をやめ」、「真正面から取り組む」必要があると言及していることが伝わっている。FRBへのプレッシャーは日に日に増している。こうしたプレッシャーに耐え切れず、FRBが引き締めペースを加速させれば、それ程にまでFRBは追い詰められているのかと、市場に動揺を与えかねない。一方で、そうした後手に回っている感を与えないために、引き締めを漸進的に進めることに固執すれば、インフレ高進が続いた場合、将来払う代償は大きくなる。FRBは非常に苦しい立場に置かれており、投資家は、「FRBはこの難局を切り抜けられる」、「実際に利上げすればあく抜けで上昇」などと、高を括らない方がよいだろう。 16日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月開催分)が公表される。市場では利上げについての織り込みは急速に進んでいるものの、量的引き締め(QT)に対しては依然として不透明な部分が多く、織り込みが十分に進んでいるとは考えにくい。FRBの金融引き締めを反映する短中期の金利が急上昇するなか、将来の景気減速も反映しつつある長期金利は相対的に上昇ペースが鈍く、長短金利差が縮まってきている。逆イールドの発生は景気後退のシグナルとされ、FRBにはこれを避けたいとの考えがあるだろう。イールドカーブの一段のフラット化を避けるために、市場では、FRBが長期の年限の債券を売却するのではないかとみる向きもいる。FRBは償還のきた債券の再投資をしない自然減でのバランスシート縮小を検討しており、売却の可能性は低いだろうが、市場の思惑はくすぶる。 米国では15日に米1月生産者物価指数(PPI)が発表予定で、こちらは伸びの鈍化が予想されている。予想通りとなれば、相場は、一旦は落ち着きを取り戻すかもしれないが、16日のFOMC議事録を確認するまでは神経質な展開が想定され、積極的な押し目買いは期待しにくいだろう。 前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀の上場投資信託(ETF)買いが見込まれる。こうした思惑から、後場の日経平均はやや下げ渋ることも想定されるが、週明けの米株市場が下げ止まるか見極めたいとの思惑もあり、積極的な押し目買いには期待しづらいだろう。心理的な節目の27000円を回復できるかが短期的な焦点となろう。 <AK> 2022/02/14 12:16 後場の投資戦略 米株高は今後のリスクの大きさ映す? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27598.11;+18.24TOPIX;1953.19;+0.97[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方に上げ幅を300円まで広げる場面があったものの、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、27600円台に位置する25日移動平均線を上回って始まったが、同線をやや下回るところまで押し返されて陰線を引く格好。ひとまずSQ値を上回る場面こそあったものの、下降中の25日線を上回って売りというセオリーどおりで、値動き良化で買いを入れていた短期投資家の期待はややしぼまざるを得ないか。価格帯別の出来高を見ると、昨年10月や12月に下げ渋る動きを見せた27800円前後が膨らんでおり、戻り売り圧力が強そうなことも窺える。前引けの日経平均が+0.07%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.05%。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりだが、オプションSQの影響を除くとここ数日とおおむね同水準だろう。 SUMCOやルネサスといった半導体関連、それに自動車のホンダなどが決算を受けて大きく買われているのは明るい材料だが、朝方からトヨタ自の軟調ぶりが目立った点には不安もあった。また、半導体関連でも失速したレーザーテックを見ると、個人投資家のセンチメントはさほど改善していない印象を受ける。ヤマトHDや博報堂DYが急落するなど、決算発表銘柄も好調なものばかりでない。 新興市場ではマザーズ指数が+1.27%と続伸。メルカリ<4385>などの主力IT株は全般堅調だ。前日上場したばかりのライトワークス<4267>が連日でストップ高を付けており、値幅の大きさを狙った新興株物色も窺える。ただ、マザーズ指数も朝方の買いが一巡すると上値が重く、2日高値808.64ptを抜けられないあたり、本格的にトレンド好転した印象はなお薄い。 さて、米国では経済活動の正常化への期待に10年物国債利回りの低下も加わり、主要株価指数が揃って続伸した。ボスティック氏の発言だけでなく、一部から「1月CPIが予想を下回る」との話も伝わってきたことで、インフレを巡る警戒感が和らいだとみられる。もっとも、2年物国債利回りは1.35%(+0.01pt)と横ばいを維持。引き続き金融引き締めペースの加速を示唆する発言があり、3月の0.5%利上げ観測もくすぶっているようだ。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は19.96(-1.48)と、節目の20を下回るまで低下した。これまで金融引き締め観測とともに売り持ち高が積み上がっていたところ、VIXの低下などから買い戻しを迫られる向きが多かったのが米株の堅調ぶりにつながっていると考えられる。ただ、一部メディアでVIXが株価の先行きを示す指標として機能しづらくなっていると指摘しているのが注目される。また、ブラックスワン・ファンドを運用する米ユニバーサ・インベストメンツのマーク・スピッツナーゲル最高投資責任者(CIO)は米メディアのインタビューで「現在の流動性がいかに金融システムに組み込まれているか」というリスクについて、市場は「理解が極めて不足している」などと述べたという。 実際、筆者も強気の投資家・市場関係者は金融緩和下での流動性を前提にシナリオを描いている印象を受けている。金利上昇下での米株高は市場リスクの大きさも映しているのかもしれない。 差し当たり今晩発表の米1月CPIだが、予想値やその後の市場反応についての見方がかなりばらついている印象。3連休を挟んで国内企業の決算発表もラストスパートとなり、後場の取引は様子見ムードが強まってくるとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/10 12:26 後場の投資戦略 金利上昇下での米ハイテク株高を好感 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27530.82;+246.30TOPIX;1952.01;+17.95[後場の投資戦略] 本日の日経平均は3桁の上昇で心理的な節目の27500円を超えてきている。上値抵抗線とみられる25日移動平均線に近づいており、上昇一服も意識されるところだが、東証株価指数(TOPIX)はすでに25日線を超えてきている。TOPIXが先んじて上値抵抗線だった同線を超えてきたことはトレンド転換に期待を持たせてくれる。また、朝方の上昇後に一時失速した日経平均だが、そのまま軟調が続けば、27500円での上値の重さが改めて印象付けられてしまい、嫌な流れになるところだったが、すぐに切り返して再び同水準を上回ってきたことは強い動きを印象として与える。 前日の米国市場では米10年国債利回りが一時1.97%と2019年11月以来の高水準にまで上昇した。注目点は、そうした中でも、ナスダックやSOXが大幅に上昇したことだ。これは、株式市場が金融引き締めを相当程度織り込んできた証左とも考えられ、ポジティブに捉えられる。実際、米金利先物市場は年内の利上げ回数として5回以上をほぼ完全に織り込んでいるうえ、6回以上の織り込みも進んできている。他方で、米連邦準備制度理事会(FRB)では、複数の高官から、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅として0.5%は考えていないなどと、ややハト派に修正するような発言が出はじめている。市場が想定している以上にタカ派的な引き締め確率が下がっているのだとすれば、株式市場の足元での買いも無謀なものではなく合理的といえる。 しかし、10日に発表予定の米1月消費者物価指数(CPI)を確認するまではまだ楽観できない。既に記録的な伸びは予想されているため、市場予想並みにとどまれば無難に通過することが見込まれるが、仮に大幅に上振れると再び楽観の揺り戻しが起きかねない。また、来週には1月FOMCの議事要旨が発表予定だ。1月5日の議事要旨(昨年12月開催分)公表を受けて相場が急落したことを踏まえれば、注目度は高く、これを見極めたいとの思惑もくすぶるだろう。足元の相場は悲観的になり過ぎで、絶好の買い場と指摘する大手金融機関もある。ただ、年始からの急落相場のなかで醸成された過度な悲観を徐々に修正することは必要だろうが、依然過度な楽観に傾くことには慎重になった方がよいだろう。 さて、後場の日経平均は27500円を上回ったまま推移できるかが焦点となる。そうした中、後場中頃には注目のトヨタの決算が予定されており、内容次第では全体の流れを左右しそうだ。トヨタの決算がポジティブなものとなり、日経平均が一段高となって27500円を優に上回った状態で本日を終えることができれば、市場のムードも好転してきそうだ。 <AK> 2022/02/09 12:12 後場の投資戦略 「強弱感交錯」から「様子見」へ? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27365.46;+116.59TOPIX;1936.03;+10.04[後場の投資戦略] 前場の日経平均は一時200円あまり上昇したものの、その後やや伸び悩む展開となった。日足チャートを見ると、1月27日取引時間中の安値26044.52円から2月2日取引時間中の高値27564.62円まで急ピッチのリバウンドを見せたのち、ここ数日は27000円台前半でのもみ合いが続いている。本日は27300円台に位置する5日移動平均線水準を維持しようとする動き。売買代金上位では高配当の海運株、米金利上昇が材料視される金融株の買いが続き、その他全般に小じっかりという印象だ。値がさグロース株は反発しつつも、上値の重い印象が拭えない。前引けの日経平均が+0.43%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.52%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱と先週に比べやや減っている。 新興市場ではマザーズ指数が-0.89%と4日続落。日経平均の反発につれて前場中ごろまで上昇する場面もあったが、米金利の高止まりで新興グロース株の先行きに対する個人投資家の警戒感はなお強いのだろう。新興市場銘柄では本日、マザーズのJTOWER<4485>やジャスダックのハーモニック<6324>が決算発表を予定している。また、IPO(新規株式公開)では明日9日、ライトワークス<4267>が新規上場する。ここまでリカバリー<9214>、セイファート<9213>と2社続けて公開価格割れスタートを強いられており、個人投資家のセンチメントをはかるうえでもライトワークスの株価動向を注視したい。 さて、日経平均はここまで1日の当欄「早々に戻り売り目線?」での「目先26000~27000円台でもみ合う展開」という予想に沿った値動きと言えるだろう。値動き的には一段高への期待を残す格好となっており、1月25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)にかけて積み上がった売り持ち高の買い戻し、それに新型コロナ感染減少や堅調な企業決算も支えとなる。一方、引き続き主要中央銀行による金融引き締めへの懸念も強く、グロース株の買い意欲が高まりづらい。それに全体として戻り売り目線の投資家も多いだろう。 日経平均と同様、米国でもNYダウが戻り一服後、35000ドル近辺でもみ合う展開となっている。個別株では決算を受けた動きがあるとはいえ、日米とも株価指数の方向感に乏しくなり、市場参加者からは「どうにもやりようがない」などといった嘆き節も聞かれる。現物株、先物とも徐々に売買が落ち着きつつあるのは、市場のムードが「強弱感交錯」から「様子見」へ変わってきたことを映しているのかもしれない。 前日の米市場で原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)は1バレル=91.32ドル(-0.99ドル)と7日ぶりに反落したが、米金融大手ゴールドマン・サックスは商品市況について「何もかも欠乏して」おり、「今のような市場は見たことがない」などと指摘したと海外メディアが報じている。コストプッシュによるインフレへの懸念も拭えず、10日発表の米1月CPIへの注目度が一段と高まりそうだ。 また、国内でも本日はソフトバンクG、明日はトヨタ自と注目企業の決算発表が相次ぎ、これらの内容を見極めたいとの思惑も出てくるだろう。アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が反落していることもあり、後場の日経平均は上値の重い展開が続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/08 12:22 後場の投資戦略 米金利高など嫌気、米CPI後のポジティブシナリオの実現性は? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27203.66;-236.33TOPIX;1922.39;-8.17[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は売り先行でスタート後はやや下げ渋ったものの、3桁の下落幅で前場を終えた。25日移動平均線の回復が依然遠いなか再び5日線を割り込む展開となっている。 米1月雇用統計での非農業部門雇用者数は前月比46万7000人増と市場予想の12万5000人増を大幅に上回った。また、平均賃金の伸びは前月比で0.7%増、前年同月比5.7%増とともに市場予想を上回った。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」の影響が想定されていたにも関わらず、非常に力強い労働市場の回復が示され、個人消費の高まりなど景気支援要因が期待される一方、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念が一段と強まる形になった。 さらにWTI原油先物価格は1バレル=92ドルと7年ぶりの高値を付けており、雇用統計の結果と合わせて踏まえるとインフレ高進への警戒感は一段と高まったといえよう。実際、先週低下に転じていた米長期金利は再び1.9%台まで大幅に上昇している。一方、こうしたなかでも、先週末の米国市場でアマゾンの好決算などを背景にナスダックが大幅高となったことはポジティブに捉えられる。これまでの相場動向を踏まえれば、企業の好決算よりも、金融引き締め懸念が強まる内容となった雇用統計をネガティブに捉える動きの方が強めに出てもおかしくなかったはずだ。 この動きを楽観的に捉えるなら、年始からの目まぐるしいハイ・ボラティリティー(変動率)相場変遷を受けて、市場は金融政策の不透明感に伴う相場調整を一気に織り込み、企業業績などファンダメンタルズを反映しやすい状況になってきたと考えられる。 今週10日には注目度の高い米1月消費者物価指数(CPI)が予定されている。総合のCPIは前年同月比7.3%上昇と、前年比での伸びが1982年前半以来の大きさになったと見込まれている。現時点で既にある程度CPIの結果は織り込まれているだろうが、実際に結果を受けた直後の相場反応が、今後の相場展開を占ううえで注目される。 年始からの動向を踏まえれば普通に考えて、CPIが記録的な伸びでかつ市場予想も上振れた場合、相場は再びFRBの金融引き締めへの警戒感から深押しするだろう。しかし、予想を上振れた場合でも相場が大きく下げないようなことがあれば、雇用統計後のナスダック大幅高の動きが正当化される。つまり、上述した1月ハイボラ相場の間に市場は金融引き締めの不透明感を相当に織り込んだという仮説の説得力がより強まることになる。この場合、好決算だったにもかかわらず買いが続かなかったハイテク・グロース株などには押し目買いが効いてくる可能性があろう。 しかし、週明けの東京市場をみても、市場の金融引き締めを巡る疑心暗鬼は依然根強い。上述のCPI後のポジティブシナリオも、週末の雇用統計を踏まえた上でのあくまでの一仮設に過ぎず、蓋然性は高くはない。また雇用統計後のナスダック高につても、今晩の米国市場でナスダックが大きく下げれば、先週末の株高はあや戻しに過ぎなかったということになり、シナリオの前提も崩れる。今晩の米国市場が底堅く推移した場合には、ポジティブシナリオの可能性が存続するため、その時は頭の片隅でも置いておいてほしい。 他方、上記のシナリオは短期的な話。中長期では、やはり長年の超金融緩和策の反転、緩和マネーの縮小や、積み上がったレバレッジの解消といった、これまでの相場支援要因の巻き戻しを想定せざるを得ず、長期トレンドは下方向を維持しておいた方がよいと考えている。 さて、後場の日経平均はもみ合いになると予想する。アジア市況では春節明けの中国株式市場が上昇しているが、これは休場中だった先週一週間の世界の株式市場の回復を遅れて反映しているに過ぎない。他方、香港ハンセン指数や時間外取引の米株価指数先物はやや軟調な展開となっている。手掛かり材料難のなか、日経平均は27000~27500円を意識したレンジ相場が続きそうだ。 <AK> 2022/02/07 12:19 後場の投資戦略 随所に見られる「強弱感交錯」 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27233.83;-7.48TOPIX;1917.33;-2.59[後場の投資戦略] 本日の日経平均は方向感に乏しい展開となっており、小安い水準で前場を折り返した。日足チャートを見ると、27200円台に位置する5日移動平均線を割り込んでスタートしたのち、同線水準を取り戻そうと陽線を引く格好。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりと前日並みに多く、強弱感が交錯している印象を受ける。個別株を見ても、海運株が前日から決算を受けて荒い値動きだ。前引けの日経平均が-0.03%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.13%。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、業種別騰落状況も同様となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-1.98%と続落。第2四半期決算が赤字転換したメルカリ<4385>は売買代金トップで9%の下落となり、指数を押し下げている。一方、売買代金2位のFRONTEO<2158>は株価持ち直しに期待した買いが優勢となっており、ここでも強弱感の交錯が窺える。なお、本日はセイファート<9213>がジャスダック市場に新規上場し、公開価格比-8.0%という初値を付けた。前日上場した2022年IPO(新規株式公開)第1号のリカバリー<9214>に続き厳しい滑り出しである。リカバリーは公募・売出金額が20億円弱あったが、セイファートは10億円弱だ。この規模でも取引開始当初の換金売りを吸収するだけの買いが入らないところに、個人投資家のセンチメントの弱さが透けて見える。 さて、英BOEは政策金利を0.25%引き上げて0.5%としたほか、保有資産の縮小を開始。また、金融政策委員会(MPC)メンバー9人のうち4人は0.5%の利上げを主張し、金融市場では英利上げ加速を織り込む動きが強まった。ECBでも年内利上げの可能性が浮上。このところ米連邦準備理事会(FRB)要人らが3月の0.5%利上げに消極的な姿勢を見せ、主要中銀による金融引き締めへの懸念は和らぎつつあったが、こうしたBOEやECBの動向を受けて再浮上してきた格好だ。 米債券市場では10年物国債利回りが1.83%(+0.06%)となるなど、幅広い年限で金利が上昇した。また、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)が7年4カ月ぶりに90ドル台に乗せる一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.38%(-0.03pt)に低下。グロース(成長)株にとって逆風となるだろう。 また、米ハイテク大手の決算と時間外取引での株価動向が連日話題となっている。前の日に急落を強いられたメタに反し、アマゾンが時間外取引で急伸。昨年10-12月期の1株利益が市場予想を大きく上回ったことが好感されたようだ。もっともこれは11月に上場したリヴィアン・オートモーティブの株式評価益が押し上げたもので、1-3月期の売上高見通しは市場予想に届かず、実態として良好とは言えないとの見方もある。今晩の米市場での株価動向を見極めたいところだろう。 それに本日は米1月雇用統計も発表される。前哨戦のADP雇用統計では非農業部門雇用者数が予想外に減少し、新型コロナウイルス感染拡大による雇用悪化はある程度想定されているだろう。それ以上に注目されそうなのが賃金の伸びである。サービス部門の雇用者数が落ち込んでいることで平均賃金が予想以上に伸び、インフレ懸念を強めるのではないかといった見方も出てきている。 こうした状況を踏まえれば、強弱感が交錯するのもうなずけるだろう。後場の日経平均も方向感に乏しい展開が続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/02/04 12:23 後場の投資戦略 個人の更なるセンチメント悪化に不安 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27227.94;-305.66TOPIX;1923.66;-12.90[後場の投資戦略] メタを中心とした米ハイテク株の時間外取引での急落に加え、国内でもソニーGやエムスリーなどの値がさ株に決算を受けた売りが出たことで、本日の日経平均は300円あまりの下落で前場を折り返した。もっとも売り一辺倒ということでもなく、日足チャートを見ると27100円近辺に位置する5日移動平均線水準で下げ渋っている。値動き良化への期待は何とか保てている状況だろう。日経平均への寄与が大きいところでは、ファーストリテが約94円、東エレクが約59円、エムスリーが約36円の押し下げ要因となっている。これら値がさ株に加え海運株なども軟調ぶりが目立つが、一方で自動車関連に見直しの動きがある。前引けの日経平均が-1.11%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.67%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとなっている。 新興市場ではマザーズ指数が-4.74%と5日ぶりに大幅反落。東証1部市場でもIT・ネット系の中小型グロース株が下落率上位に多く顔を出しているが、マザーズ市場はそうした傾向が色濃く出ている。引け後に決算発表を控えたメルカリ<4385>は7%近い下落。度々指摘しているとおり、昨年11月からの下落局面で信用買い残が増えており、決算発表前に手仕舞いしようという個人投資家が多いことが窺える。また、本日はリカバリー<9214>がマザーズ市場に新規上場した。2022年最初のIPO(新規株式公開)だったが、初値は公開価格比-13.7%となった。ここまで新興株が大幅下落してきた経緯から、IPO時の価格設定も難しくなってきた。また、さほど大型でない案件でも上場中止となるものが出てきており、IPOを巡る環境の悪化が懸念される。 さて、注目を集めているメタの決算は昨年10-12月期の1株利益やユーザー数の伸び、それに1-3月期の売上高見通しなどが市場予想に届かず、時間外取引で約20%も急落したという。同社は経済環境の悪化による広告主の予算制約の影響などと説明しているもようで、他のSNS関連銘柄にも売りが波及した。一方で、20%も急落するような決算内容なのかと疑問を呈する声も少なからずある。 コール(買う権利)オプションの買い観測などが聞かれた電気自動車(EV)のテスラのように、仮想空間「メタバース」への期待が高かったメタもハイテク株の戻りに乗じて買い持ちを増やす動きがあった可能性がある。今回の「メタ・ショック」が強気の買いを入れていた投資家のセンチメントに冷や水を浴びせてしまったのは明らかだろう。本日の東京市場を見ても、個人投資家に人気のレーザーテック、海運株、マザーズ銘柄の下落が大きい。逆張り志向が強く、下落局面で買い支え役となる個人投資家の一段のセンチメント悪化は今後の不安材料となりそうだ。(小林大純) <AK> 2022/02/03 12:27 後場の投資戦略 想定超のリバウンドも間もなく一服か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27497.60;+419.12TOPIX;1930.62;+34.56[後場の投資戦略] 本日の日経平均は前引けにかけて失速したものの、前場の間にあっさりと27500円を回復すると、同水準上で長く推移する時間帯があった。昨日は、午前の大幅高の後に急失速し、結局下落に転じたこともあり、先週末からの戻りは一服したものかと思われた。 昨日の米国市場では、一昨日の月末最終営業日と同様、主要株価指数が揃って引けにかけて上げ幅を広げるなど引け味の良い形で終わった。一昨日の大幅高については、年金基金等のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いが指摘されており、昨日はその反動安も懸念されるところだったが、良い意味で裏切ってくれたことで、足元の投資家心理が一段と改善したようだ。また、引け後に決算を発表したGAFAM銘柄の一角であるアルファベットや半導体企業AMDが時間外取引で急伸していたことも、値がさハイテク・グロース株の買い戻しに弾みをつけたと考えられる。こうした好材料が重なったことが、本日の日経平均の27500円回復の要因の一つだろう。 また、昨日までの米連邦準備制度理事会(FRB)高官らによる発言の影響も大きいと思われる。1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長の会見は金融政策の先行き不透明感をむしろ強めてしまう最悪も同然の内容で、その後も、米アトランタ連銀のボスティック総裁が3月FOMCでの0.5%の利上げを示唆などと報じられ、悪材料が続いた。しかし、昨日にかけて、まずボスティック総裁が、上述の一部で報じられた3月の0.5%の利上げは本意でない発言したことが伝わったほか、他の複数の高官からも、緩和縮小にあたっては実体経済へ混乱を及ぼさないよう慎重に進めることが肝要との発言が相次いだ。また前日には、米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が経済データ次第としながらも基本的には3月の利上げ幅として0.5%は望ましくないと発言。 こうした一連の高官発言などが米金融政策の先行きに対する過度な警戒感を緩和し、売り方の買い戻しに弾みをつけたのだろう。また、相場が大きく戻るなか商品投資顧問(CTA)などの短期筋も買いに乗じた可能性があり、こうした動きが本日までの大幅なリバウンド基調の背景と考えられよう。 しかし、米金融政策の先行き不透明感が払しょくされたわけではない。上述の高官らの発言も、経済データ次第では想定以上にタカ派に振れる可能性を残している。こうした中、今週末には米1月雇用統計が控えており、平均賃金の伸び次第では、週明けからは再び金融引き締め懸念が高まる可能性もある。日経平均が次の節目の28000円を回復するにはまだ材料不足と思われ、さすがに今日までの強いリバウンド基調も間もなく一服するだろう。リバウンドを楽しめる賞味期限は楽観的にみても今週いっぱいと捉えておいた方がよさそうだ。 中国市場や香港市場が休場のなか、後場の日経平均は27500円を挟んだ一進一退が続くとみられる。ただ、上述した通り、リバウンド基調が間もなく一服することを考えれば、後場はやや騰勢一服感が強まると考えられ、失速には注意したい。逆に、27500円を優に上回って終えることができれば、明日以降のリバウンドの短期継続も考えられよう。 <AK> 2022/02/02 12:10 後場の投資戦略 早々に戻り売り目線? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27194.66;+192.68TOPIX;1908.05;+12.12[後場の投資戦略] 引き続き米株の戻りや良好な企業決算が相場を押し上げ、本日の日経平均は一時400円あまり上昇したが、その後失速して前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日の上昇で26800円台に位置する5日移動平均線を上抜けたが、本日は27000円台半ばに迫り上ひげを付けた格好。米ハイテク株高を受けて買いが先行した東エレクなどは寄り付き直後を高値に長めの陰線を引いており、上値の重い印象が拭えない。レーザーテックの失速は半導体関連企業の決算ハードルの高さを窺わせる。1月の下落局面で信用買い残を積み上げてきたこともネックだろう。 半面、前日はアルプスアル<6770>、本日はTDKが決算を受けて急伸しており、電子部品株に見直しの動きがある。Jパワーは前期、電力市場価格の高騰を受けて業績予想を取り下げた(価格高騰のマイナス影響がネガティブサプライズだった)経緯があるだけに、今回上方修正されたことは安心感につながるだろう。加えて、海運株も同様だが配当利回りの高さが注目されている面もありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりに膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+3.83%と大幅に3日続伸。引き続き米ハイテク株高を追い風に主力IT株が買われ、戻りを試している。一時800pt台を回復する場面もあったが、そこからは日経平均と同様にやや上値が重い。3日に決算発表を控えるメルカリ<4385>の動向が目先の焦点となりそうだ。 さて、1月の騰落率は日経平均が-6.22%、NYダウが-3.32%などとなり、年金等のリバランス買いの規模はかなり大きいとの観測が伝わっている。実際、ここ2日ほど東証株価指数(TOPIX)先物に海外勢の買い戻しの動きが見られるものの、現物株の賑わいの方が目を引く。 また、米国ではアトランタ連銀のボスティック総裁が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%利上げする可能性を示唆しつつ、「自分の望む政策ではない」などと述べたことで金利が伸び悩み、ハイテク株買いを後押しした。金融大手の投資判断引き上げが観測された電気自動車(EV)のテスラは10%を超える上昇となった。同社を巡っては、著名投資家キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベスト・マネジメントの買い増しが伝わるとともに、コール(買う権利)オプションの買いが再び活発化しているとの指摘もある。 ただ、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め姿勢に転じ、流動性相場の終えんが意識されつつあるなか、米個人投資家のこうした行動には危うさを感じざるを得ない。日本でも市場全体の信用買い残高がなお高水準であり、同様のことが言えるだろう。 米金融大手のストラテジストが米株の一段安リスクを指摘するなど、引き続き先行き警戒感は根強い。また、先週の株価急落局面で積極的に買い向かった日本の個人投資家だが、ここ2日のネット証券の取引状況を見ると、日経レバETF<1570>が早々に売り超に転じてきている。戻り売りの目線は日経平均で27000円近辺まで引き下がっているのだろう。決算発表シーズン中は堅調な企業業績が下支えとして機能しそうだが、それでも日経平均は目先26000~27000円台でもみ合う展開になるとみておきたい。 なお、本日は日本でキーエンス<6861>、村田製<6981>、HOYA<7741>、ANA<9202>などが、米国ではアルファベット、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、ゼネラル・モーターズ(GM)などが決算発表を予定している。また、1月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数や12月の米求人件数(JOLT)も発表される。(小林大純) <AK> 2022/02/01 12:29 後場の投資戦略 グロース大幅反発も短期リバーサルの範囲内 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26981.89;+264.55TOPIX;1893.26;+16.37[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝安後に切り返すと上げ幅を300円近くにまで広げ、心理的な節目の27000円を窺う位置まで回復した。先週末に時間外取引の米国株の動きを織り込んでいたこともあり、28日の米国市場でナスダックなどが大幅高となるなか夜間取引の日経平均先物は軟調だった。そのため、週明けも反動安などが懸念されたものの、しっかりと続伸してきたことは評価できる。恐怖指数とも呼ばれる変動性指数の米VIXが30台から20台へと低下してきたこともあり、市場心理の改善が買い戻しを促しているようだ。日経平均は27000円を早々に回復できれば、再び同水準を下値支持帯とした展開にも期待がもてそうだ。 本日は、直近まで相対的に強かった三菱商事<8058>などの商社や、住友鉱<5713>などの商品市況関連の銘柄の動きが鈍い一方で、下値模索の展開を続けていたマザーズ指数が4%を超える大幅反発となっている。東証1部でもSHIFT<3697>、JMDC<4483>、ラクス<3923>など下落のきつかったグロース株の多くが大幅に反発しており、年始からの物色のリバーサル的な動きが見られている。 ただ、こうした動きが継続性する可能性は高くない。年始からの下落率の大きさを踏まえれば、先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を通過し、これから決算を迎えるというタイミングで一旦これまでの動きの反動が出てきても不思議ではない。しかし、先週のマザーズ銘柄の弁護士ドットコム<6027>の動きなどを見ている限り、決算ハードルはかなり高く、決算後も買いが続くとは考えにくい。また、決算が一巡してくる2月半ばにもなれば、再び3月のFOMCに向けた思惑が台頭してくるだろう。さらに、今週末には金融政策の決定に重要な米1月雇用統計の発表が控えており、これを前にグロース株の反発基調が長く続くことも考えづらい。本日の動きはあくまで短期的なリバーサルと捉えておいた方がよいだろう。 さて、後場の日経平均の動きには注目だ。前場に一気に27000円回復を窺うところまで切り返してきたが、結局、同水準の完全回復にはまだ至っていない。本日の間にこの水準を回復し、終値でも維持できれば、投資家心理は一段と改善し、今後の好決算銘柄に対しても素直に評価する動きが出やすくなるだろう。週明け早々に東京市場は目先の正念場を迎えた。 <AK> 2022/01/31 12:13 後場の投資戦略 それでも不安定な展開が続きそう [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26720.06;+549.76TOPIX;1877.20;+34.76[後場の投資戦略] 前日の大幅下落の反動、それに良好な企業決算もあり、本日の日経平均は500円を超える上昇で前場を折り返した。日本でも10-12月期の決算発表が本格化し、富士通のように部材不足や原材料高の影響を受ける企業が散見される一方、信越化や新光電、富士電のように良好な内容のものが多く見られる。直近の株価下落がきつかったためだろうが、本日のところは好決算に割と素直に反応している点も安心できる材料だろうか。もっとも、これら銘柄や日経平均は朝方伸び悩む場面もあり、戻り待ちの売りの根強さも感じられた。業種別騰落率は景気敏感セクターを中心に全般堅調だが、鉄鋼が下に振らされる格好。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりで、FOMC通過直後の前日並みに膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+0.44%と反発。ただ、ここまで前日終値を挟みもみ合う展開を強いられている。前日は6%を超える下落となり、終値で2020年4月22日以来の安値を付けただけに、戻りの鈍い印象は拭えない。前日の決算発表前にストップ安水準まで売り込まれた弁護士コム<6027>は、注目される電子契約サービスの伸びがまずまず好印象だったように思う。しかし、本日は寄り付き直後を高値に失速。ジャスダックでも業績上方修正の東映アニメ<4816>が売りに押される展開となっている。ここまでの新興株安による個人投資家のダメージの大きさ、それに中小型グロース(成長)株に対する先行き警戒感の根強さが窺える。 伸び悩みが鮮明なマザーズ指数や日経ジャスダック平均はともかく、500円を超える上昇となっている日経平均もここ3日間の下落幅(1418.07円安)の半値戻し、あるいは日足チャートで26900円近辺に位置する5日移動平均線に達しておらず、自律反発の域を出ないだろう。前日の日経レバETF<1570>の押し目買いに絡み後場一段と強含む可能性はあり、26000~26500円あたりを目先の下値メドとみていた向きは意を強くしそうだが、先行きに十分警戒しつつ取り組む必要があるのには変わりない。 かくいう筆者も昨年末、1株指標の増額とPBR(株価純資産倍率)のレンジ推移を想定したうえで、2022年の日経平均の下値メドを26500円としていた。21年の日経平均のPBR推移を見ると8月に1.17~1.18倍あたりまで低下したところが底だったが、昨日再び1.2倍を割り込むところまで低下している。しかし、米国の金融引き締めにより景気減速懸念が浮上するなか、従来のバリュエーションレンジが有効かどうか改めて検討する必要はある。昨年9-11月期の決算発表を挟んだここ1カ月は1株指標がやや減額傾向にあったが、今回の10-12月期決算発表を受けて増勢に復帰できるかという点にも注目したい。 いつものとおり米市場の動向にも目を向けると、10年物国債利回りが1.80%(-0.06pt)に低下する一方、2年物については1.19%(+0.04pt)に上昇。FRBによる利上げとそれに伴う景気抑制が意識され、利回り曲線(イールドカーブ)の平たん化(フラットニング)が一段と進む格好となった。NYダウの伸び悩みやナスダック総合指数の反落を見ても、金融引き締めへの懸念の根強さがわかる。 金融政策を巡る不透明感だけでなく、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が30.49(-1.47)と高止まりしている点も気掛かり。月末から月初にかけて、VIX上昇に伴いリスク削減の売りが出てくることが想定される。目先は不安定な相場展開が続くとみておいた方がよいだろう。なお、本日は国内でOLC<4661>やKDDI<9433>の決算、米国で12月個人所得・個人支出(PCE)やキャタピラーなどの決算が発表される。(小林大純) <AK> 2022/01/28 12:28 後場の投資戦略 米金融引き締め懸念はむしろ強まった [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26321.33;-690.00TOPIX;1854.38;-37.47[後場の投資戦略] FOMC通過後の日経平均はあく抜け期待に反し、大幅な下落を強いられる展開となっている。取引時間中としては2020年11月26日以来の安値を付ける場面もあった。米金利上昇を受けて値がさグロース株の下げがきつく、東証1部下落率上位には中小型グロース株が多くランクインしている。米金融引き締めによる景気悪化が懸念されているのだろうが、景気敏感株もグロース株ほどではないにしろ軟調。日経平均の-2.55%に対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.98%となっている。日本電産の大幅下落やファナックの伸び悩みを見ると、今後の企業決算に対する株価反応にも警戒せざるを得ないか。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりと、値幅の大きさに伴いかなり膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が-5.78%と大幅反落。こちらも取引時間中としてはコロナショック直後の2020年4月24日以来の安値を付けている。東証1部市場と同様、中小型グロース株への逆風が一段と強まり、メルカリ<4385>を中心に主力IT株は軒並み軟調。前日にマクアケ<4479>が決算を受けてストップ安まで売り込まれたのが意識されてか、本日決算発表が控えている弁護士コム<6027>は一時ストップ安を付けている。従前指摘していたとおり、メルカリなど人気のマザーズ銘柄では信用買いを膨らませて押し目を拾う動きが見られていた。そうした銘柄もここにきて一段安を強いられ、個人投資家のダメージはかなり大きいとみておいた方がよいだろう。 さて、FOMC後のパウエルFRB議長の会見は、3月以降全ての会合での利上げを否定しなかった、また利上げ実施後の量的引き締め(QT)の方針が示された、などの点で想定よりタカ派的と受け止める市場関係者が多かったようだ。また、明確な言質も与えなかったことで金融政策の不確実性が高まったとの指摘があり、更なる引き締め加速への懸念はむしろ強まった感がある。 やはりと言うべきか、米債券市場では3月FOMCでの0.25pt以上の利上げを織り込む動きが強まり、2年物国債利回りが1.15%(+0.13pt)に急上昇。10年物も1.86%(+0.09pt)に上昇した。原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI3月物)は地政学リスクの高まりから1バレル=87.35ドル(+1.75ドル)に上昇したが、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.38%(-0.03pt)に低下している。 その割にNYダウは129ドル安にとどまり、「事前に持ち高削減の売りはかなり出た」との見方を強める市場参加者もいたようだが、むしろ戻りが鈍かったと受け止めるべきだろう。実際、NYダウ先物は時間外取引で下落している。直近では景気減速懸念から景気敏感株にも売り持ちを増やす動きが見られたが、FOMC直前のウクライナ情勢を巡る相場乱高下の際にこれらの買い戻しを先食いしてしまった感がある。 これらの結果、金融引き締めを意識してグロース株を中心に持ち高縮小の動きが続くだろう。もちろん日本株もそれと無縁ではいられない。前引けのTOPIX下落率がぎりぎり2%に届かず、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施が見込みづらいことから、後場の日経平均も不安定な展開になるとみておきたい。なお、本日は日本で信越化<4063>、キヤノン<7751>、富士通<6702>などの決算、米国で昨年10-12月期国内総生産(GDP)や12月耐久財受注、アップルなどの決算が発表される。企業業績や米経済指標も注視しておく必要があるだろう。(小林大純) <AK> 2022/01/27 12:22 後場の投資戦略 明日のFOMCは無風通過か? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27024.08;-107.26TOPIX;1894.63;-1.99[後場の投資戦略] 本日の東京市場では主要株価指数がまちまち。イベント前に大型株を手掛けにくいなか日経平均や東証株価指数(TOPIX)は軟調だが、幕間つなぎの物色でJASDAQ平均とマザーズ指数は小幅ながら上昇している。東証1部全体では値上がり数と値下がり数の割合はほぼ拮抗しており、FOMC前の模様眺めの雰囲気が伝わってくる。前場、日経平均は一時26858.68円まで下げる場面があり、売り仕掛けのような動きも見られたが、前引けにかけては再び27000円を回復するなど、心理的な節目を意識した底堅さも見られた。 さて、明日はいよいよFOMCの結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見の内容を織り込むこととなる。市場ではすでに年4回の利上げと年央からの量的引き締め(QT)はほぼ織り込み済みだ。焦点は3月の利上げ幅が0.25%と0.5%のどちらなのか、量的緩和縮小(テーパリング)のペースを一段と加速した上でQTの前倒しがあるのかといった点だろう。 足元、米国では経済指標の下振れが目立つ。12月の小売売上高が前月比1.9%減と市場予想を大きく下振れたほか、18日に発表されたNY連銀製造業景気指数は予想の25.0を大幅に下回る−0.7だった。また、24日に英IHSマークイットが発表した1月の購買担当者景気指数(PMI)の総合は50.8と前月から6.2ポイントも低下し、1年半ぶりの低水準となった。さらに、前日に発表された1月リッチモンド連銀製造業指数は8と前月から半減し、予想の14も大きく下振れた。 前日には国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表し、世界経済全体の実質成長率は4.4%と昨年10月時点の予測から0.5pt引き下げられた。特に際立たったのが、1.2pt引き下げられた米国と0.8pt引き下げられた中国だ。米国では長期化するインフレやバイデン政権が進める大型歳出・歳入法案の遅れ、金融政策の引き締めなどが反映され、中国は感染封じ込めのための厳しい「ゼロコロナ」政策による内需停滞が要因だ。22年の米国の成長率は4.0%と21年の5.6%から大きく後退し、中国は4.8%と21年の8.1%から大幅に低下する。 米国をはじめとした各国の経済指標の下振れ傾向に加え、世界経済大国のツートップである米中の景気見通しの大幅下方修正は景気減速懸念を一層高めるような内容だ。米10年国債利回りは19日に一時1.9%を付けた後は足元1.7%台半ばで安定している。また、ドル円は1ドル=116台の高値を付けた後は失速し、足元では113円台後半だ。米長期金利やドル円の上昇一服は、景気減速の兆候が見られるなかでのFRBによる金融引き締めが景気後退を招くのではないかとの不安を表していると考えられる。 一方、昨日に発表された米11月S&Pコアロジック・ケース・シラー・住宅価格指数は前年同月比+18.3%と引き続き高い伸びではあったが、10月の同+18.5%からは伸びが鈍化し、伸びが減速したのは4カ月連続となった。 インフレ指標への反映に遅行性のある平均賃金や住宅価格の伸びがインフレ長期化の懸念を強めているわけだが、後者の住宅価格については若干ながらもこのように鈍化の兆候が見られている。ベース効果などの影響もあり、市場では年央からのインフレ鈍化というシナリオも根強い。こうした背景もあり、足元の経済・物価指標を見る限りでは、さすがのFRBも景気やマーケットに配慮し明日のFOMC結果公表において、市場予想を上回るような過度な引き締め策を発表することはないのではと考えている。その通りとなれば目先のあく抜け感から相場の反発も短期的には期待できそうだ。しかし、昨年12月からのFRBの急速なタカ派転換は目覚ましく、都合のよい予想が裏切られるリスクもあろう。投資家には慎重な対応を求めたい。 後場の日経平均は引き続き27000円を意識した一進一退となりそうだ。アジア市況が小高いなか、時間外取引の米株価指数先物も本日は今のところ落ち着いている。材料難のなかイベント直前に持ち高を大きく動かす向きは少ないとみられ、後場は落ち着いた展開が想定される。 <AK> 2022/01/26 12:12 後場の投資戦略 値幅ほどの悲観は不要か? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27027.23;-561.14TOPIX;1890.77;-39.10[後場の投資戦略] 本日の日経平均は想定以上の大幅安となっている。前日の米国市場はNYダウが一時1100ドルも急落した後に急速に下げ渋ってプラスに転じるという、なかなかしびれる展開だった。一時急落していたナスダックとフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も揃って反発に転じ、SOXに至っては+1.31%と大幅反発にまで至った。 前日の日経平均は朝安後に切り返してプラス圏に浮上する強い動きを見せていた。背景として、時間外取引のナスダック100先物などの大幅高があったことから、昨晩の米株市場の上昇はすでに織り込み済みだったとも解釈できるが、さすがに、NYダウの1100ドルの下げからのプラス転換を織り込んでいたとは考えにくい。あれだけの急落から切り返してプラスに転じたのだから、むしろ、本日も米株の売り一巡感を好感して多少なりとも上昇してもよかったくらいではとも思う。 そういう意味では今日の東京市場の動きには正直落胆せざるを得ない。しかし、前引け時点での東証1部の売買代金は1兆5000億円台と、まずまず活況ながらも値幅の割には商いが膨らんでいない印象。また、前日の先物手口でも、日中の指数の乱高下にも関わらず目立った手口は少なかった。一方で本日のネット証券の売買代金ランキング上位では日経レバETF<1570>がなかなかの活況ぶり。つまるところ、地政学リスクという分かりやすい悪材料が浮上してきたのに加え、前日の米株市場の値幅の大きさなど高いボラティリティーを目の当たりにした個人投資家が日経レバの売買を通して指数の変動幅を大きく見せている可能性がある。その一方で機関投資家はそこまで大きく動いていないのかもしれない。 他方、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は前日、一時38.94(+10.09、+34.97%)まで急伸する場面があった。ただ、その後は株価の戻りに歩調を合わせるように低下していき、終値では29.90(+1.05、+3.63%)と前営業日からほぼ変わらずで終えた。VIX指数がピークを付けてから低下基調を辿るのは市場の底入れサインとして捉えられることが多く、前日のVIXの急低下と株価指数の急速な戻りは、今週25日からのFOMCを前にして続いていた厳しい売りにもようやく一巡感が出てきたことを示唆しているともいえる。 昨日の米株の急速な下げ渋りから売り方もそこそこの利益を取って買い戻したともみられる。機関投資家のFOMCを前にした持ち高調整は大方済んでいて、今日の東京市場の大幅な下げが上述の通り、仮に個人主体の売買によるところが大きいのだしたら、本日の指数の下落率以上に過度な悲観に陥る必要はないかもしれない。市場ではすでにFRBによる年4回の利上げ、年央からのバランスシート縮小(QT)くらいの内容は織り込んでいる。3月利上げ幅が0.25%でなく0.5%、QTの市場予想よりも早い時期への前倒しなど、相当なサプライズがない限りは、年始からの下落率もあり、相場はあく抜け感から短期的には戻りを試す展開となりそうだ。 むろん、VIX指数は依然高水準にあり、FRBによる金融引き締め懸念が1月FOMC通過後に完全に払しょくされるわけでもないだろう。そのため、相場が反発したとしても、あや戻しに終わる可能性もあるため、その点は留意しておきたい。 さて、後場の日経平均は下げ渋りが予想される。前場は売り一辺倒といった様相だったが、日経平均は心理的な節目の27000円ギリギリのところでは度々踏ん張る動きを見せ、ある程度の底堅さや、ここが下値と思わせるような意識を持たせてくれた。また、東証株価指数(TOPIX)の前場の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの期待も高まりやすい。アジア市況や時間外取引の米株価指数先物の動き次第でもあるが、後場は下げ幅を縮める展開に期待したい。一方、仮に日銀のETF買いが観測されず、日経平均が27000円を割り込むようだと、下値模索となり、週足一目均衡表の雲下限に相当する26600円近辺まで突っ込む可能性があろう。 <AK> 2022/01/25 12:18 後場の投資戦略 FOMC通過でのあく抜け期待もあるが… [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27371.11;-151.15TOPIX;1916.76;-10.42[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は引き続き下値での押し目買いに支えられつつも、3ケタの下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、先週後半から米株安を受けて売りが先行しつつも、日中下げ渋る形で陽線を形成している。27000円台前半での底堅さが意識されそうだが、上値切り下げの形状となっている点にも注意する必要があるだろう。個別では今週決算発表を予定している日本電産が軟調だが、米ネットフリックスの急落を見ると、業績期待の高いグロース(成長)株にも警戒せざるを得ないのかもしれない。また、東証1部下落率上位には中小型のグロース株が目立つ。一方、海運株はコロナ禍で需給ひっ迫が続くとみられているのだろう。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと先週に比べ少なく、25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)や今後本格化する企業決算の発表を前に、やや様子見ムードが広がっているものと考えられる。 新興市場ではマザーズ指数が-2.20%と大幅続落。先週後半は800ptを割り込んだところで下げ渋っていたが、本日は前場中ごろに一時784.54pt(-28.22pt)まで下落した。ビジョナル<4194>は高評価を支えに戻りを試しているものの、メルカリ<4385>など主力IT株は総じて軟調だ。メルカリは14日、東証新市場「プライム」への変更申請を発表したこともあり、先週+1.78%となった。その他、従前人気だったマザーズ銘柄にも下げ渋る動きが見られたが、信用買い残を一段と積み上げた銘柄も少なからずあり、一段安となれば影響は大きいだろう。 さて、先週末の米市場では期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.34%(+0.01pt)とほぼ横ばいで、10年物国債利回りは1.76%(-0.04pt)に低下した。このため、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の上昇にはいったん歯止めがかかったが、結局ハイテク株はネットフリックスの急落などが重しとなって軟調だった。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は28.85(+3.26)まで上昇している。オプションの満期日とあって需給的に荒い値動きになったとの見方がある一方、連日で引けにかけて弱い値動きとなり、機関投資家によるリスク削減目的の売りが出ているとの指摘もあった。 もっとも、金融市場では既に更なるテーパリング(量的緩和の縮小)前倒しや3月FOMCでの0.5%利上げといったシナリオも取りざたされているため、25~26日のFOMCを通過すれば短期的にあく抜け感が意識される可能性はある。東京市場でも先週末、クレディ・スイス証券や野村證券が日経平均先物を(さほど大きくはないが)買い越していた。27000円近辺まで調整が進んだことで個人投資家が積極的に日経レバETF<1570>を買っているほか、海外短期筋がFOMC通過によるあく抜けを先取りする形で買いを入れているとも考えられる。 しかし、連邦準備理事会(FRB)による急激な金融引き締めへの警戒感は簡単には拭いづらいだろう。リスク削減の動きが続くことも十分想定して取り組む必要がある。差し当たり後場もFOMCや決算発表を前にした様子見ムード、それに香港ハンセン指数の下落もあって軟調もみ合いが続くとみておきたい。(小林大純) <AK> 2022/01/24 12:29

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