後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
前週末の米株安受けて売り優勢の展開続く
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27405.37;-48.11TOPIX;1990.16;+1.76[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、米国で大型テック株が総じて軟調な展開だった流れを受けて、東エレク<8035>など指数インパクトの大きい値がさ株が重しとなる形で売りが優勢となっている。ただ、売り一巡後は下げ幅を縮小する動きが優勢、個別に材料が出た銘柄などには旺盛な物色が向かっている。 一方、新興市場は軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、下げ幅を広げた。インフレ長期化への警戒が高まり米国株が大幅に下落したことは国内の個人投資家心理にネガティブに働いている。また、米長期金利は3.94%まで再度上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けにくい。前引け時点での東証マザーズ指数は1.23%安、東証グロース市場Core指数は1.75%安。 さて、前週末に発表された米1月個人消費支出(PCE)コアデフレーターは前月比+0.6%と予想(+0.4%)を上振れ、12月修正値(+0.4%)からも拡大した。前年比でも+4.7%と予想(+4.3%)を大きく上回り、12月修正値(+4.6%)と比較しても伸びが加速した。遅行性のある住居費(家賃などから構成)の影響で高く出やすい消費者物価指数(CPI)と比べて、PCEは家賃の影響を受けにくいにもかかわらず、今回のPCEコアは予想を大きく上振れている。 また、米1月新築住宅販売件数は前月比+7.2%の67万戸と12月修正値(62.5万戸)から予想以上に増加し22年3月来で最高となり、米2月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は67.0と予想外に速報値(66.4)から上方修正されて昨年1月来で最高となった。常々月曜日の当欄で指摘していたインフレの再燃が改めて数字で示され始めており、警戒感が強まっている。米10年債利回りは再び4%に迫る水準にまで上昇しており、金利動向にはしっかりと注目しておきたいところだ。 ブルームバーグが今月実施した調査では、エコノミストらは3月と5月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合でいずれも0.25ポイントの利上げが決まり、ピーク金利が5.25%に達すると予想しているとわかったという。ただ、前週、3月会合で0.5ポイント利上げを支持する可能性を排除しないと米セントルイス連銀のブラード総裁は述べていた。ブラード氏は今年のFOMCで投票権を持たないものの、複数の金融当局者は次回会合での0.50%の利上げを支持している。 複数の米金融当局者は24日、インフレ率は高過ぎで落ち着くまでには時間がかかるとの見解を示していたという。同時に、米政策金利は6.5%に引き上げる必要があるかもしれないとする論文が発表されていたようだ。市場予想でも、インフレ指標の結果発表を受けて3月会合での0.50%利上げ確率は27.7%まで上昇している。いずれにしても、3月会合で0.5%の利上げが実施される可能性は高まっている。 1月の米中古車平均価格が上昇に転じており、米国のインフレ率の前倒し指標とされる銅価格も上昇傾向にあった。これらの影響が3月14日に発表される2月CPIで反映され、想定以上のCPI加速が確認される可能性があると前回から指摘していた。やはり、2月末以降は、引き続きFRB関係者などのコメントやインフレ指標の結果を横目に、更なる下落シナリオを想定して相場を見守っていきたい。さて、後場の日経平均は、マイナス圏での推移が続くか。外部環境の不透明感が強まる中、足元で強まっているバリュー(割安)・高配当利回り株や個別材料株に物色が向かうか注目したい。(山本泰三)
<AK>
2023/02/27 12:18
後場の投資戦略
米金利高一服や日銀イベント無難消化で買い戻し
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27398.78;+294.46TOPIX;1986.43;+11.18[後場の投資戦略] 国内が祝日で休場の間、米株式市場は踏ん張りを見せた。ナスダック総合指数は小幅ながら22、23日と連日で上昇し、200日移動平均線の上方を維持。S&P500種株価指数も75日線の上方を保った。 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(1月31日-2月1日開催)では0.5ポイント(pt)の利上げを好ましいと判断する参加者が数名いたようだが、ほとんど全ての参加者が0.25ptへの利上げ幅縮小に賛同していたことが判明。一方、景気減速のリスクよりも、インフレの上振れリスクを懸念視する声の方が多く、インフレ率が目標の2%に向かって明確に低下するまでは景気抑制的な政策スタンスを維持することが適切との見解が総じて示されたもよう。 また、米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はサービス部門でのインフレ圧力の根強さを指摘し、物価は一部で予想されたほどには急速に下がらない可能性があるとの見解を示した。米セントルイス連銀のブラード総裁も政策金利を5.375%まで引き上げるべきとのタカ派な見解を示した。 総じて米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢の鮮明化が警戒されるものの、これまでの雇用や物価関連の指標の上振れや、FRB高官の一連のタカ派発言などを踏まえれば、概ね織り込み済みの内容で、サプライズには乏しかった。このため、警戒されていた米長期金利の上昇も一服し、21日に3.95%にまで上昇していた米10年債利回りは22、23日と小幅ながら連日で低下し、3.88%まで水準を切り下げた。 米長期金利の上昇一服が安心感を誘う中、半導体大手エヌビディアが好決算を発表し、株価が急伸したことで、投資家心理はさらに改善した。指数寄与度の大きいハイテク株が強い動きを見せており、これが足元の相場の踏ん張りにつながっているようだ。 加えて国内では、注目されていた次期日本銀行総裁候補の植田和男氏への所信聴取の内容も相場のサポート要因となっている。本日午前に衆議院で行われた所信聴取において、植田氏は現在行っている金融政策は適切であり、金融緩和を継続することで企業が賃上げできる環境を整えるべきとの見解を示した。また、政府・日銀が掲げる2%の物価目標については「持続的・安定的に達成するには時間がかかる」とも述べており、総じて安心感のある内容となった。 一方、気掛かりな材料もある。米10-12月の実質国内総生産(GDP)改定値は前期比年率+2.7%と、速報値の+2.9%から下方修正された。特に注目なのは、米GDPの約7割を占める個人消費が+1.4%と速報値の+2.1%から大きく下方修正された点だ。 これまで、米国経済は、マクロの景況感悪化を背景に企業のセンチメントが急速に悪化し、法人向けサービスが落ち込む一方、力強い個人消費を背景に個人向けサービスは需要の堅調さを保ってきた。これが米経済のソフトランディング(軟着陸)やノーランディング(景気減速を伴うことなくインフレも鎮静化)への期待につながっていた。しかし、今回の米GDP改定値の結果を受けて、やや雲行きが怪しくなってきたように見える。今週発表された米小売企業の決算が総じて冴えなかったことも思い出される。 他方、前日に発表された米新規失業保険申請件数は予想外に減少し、3週間ぶりの低水準となった。これにより、引き続きFRBの早期利上げ停止やその先にある利下げ転換は到底期待できる状況にないといえる。法人向け需要が落ち込み、頼みの個人向け需要にも不透明感が強まってきた中、一方で雇用は堅調さを保ち、金融政策による下支えには期待ができない。米経済の先行きは非常に難しくなってきたといえそうだ。 また、米長期金利の上昇が一服し、次期日銀総裁候補の植田氏の所信聴取も無難に通過した割には、本日の東京市場でのグロース株は、半導体を中心とした電子部品関連を除けば強くない。実際、東証グロース市場指数やマザーズ指数は軟調な展開となっている。祝日前に75日線や200日線を下放れた日経平均が再び同水準に戻ってきたことは、海外短期筋の売り転換を防ぐ意味でポジティブに捉えられるものの、足元の個人投資家の物色意欲の低下はやや気掛かりだ。今晩発表される米1月個人消費支出(PCE)コアデフレーターを前に様子見ムードが強まっているだけであればよいが、25日、75日、100日線など主要移動平均線を割り込んできているマザーズ指数の動きに注意したい。 こうした中、3月下旬までは季節性要因なども踏まえ、引き続きバリュー(割安)株や高配当利回り株などの押し目買いに投資を限定するのがよさそうだ。ほか、継続的な需要拡大が見込まれるインバウンド・リオープン関連などに安心感がありそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/24 12:17
後場の投資戦略
日米ともにテクニカル悪化が気掛かり
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27114.17;-358.93TOPIX;1974.68;-22.78[後場の投資戦略] 前日の米国市場では金利上昇を警戒し、リスク資産に売りが広がった。米10年債利回りは3.95%(前営業日比+0.13pt)と大きく上昇。昨年末12月28日に付けた3.89%を明確に上回り、上向きに転じた25日移動平均線は75日線を下から上抜けるタイミングを窺う展開となっている。米長期金利は再び上昇トレンド入りした可能性が高く、4%超えは時間の問題か。昨年10月下旬をピークに低下基調が続いていた米国債の先行き変動リスクを示す指数、MOVE指数も25日線に続き、75日線をも上回った。今後も金利動向を注視する必要があろう。 株式市場もさすがにリスク回避のムードが強まっている。ダウ平均は前日の大幅下落により、25日線に続いて75日線を大きく下回った。同線を下回ったのは昨年10月下旬以来だ。75日線も下向きへの転換が近づいており、25日線とのデッドクロス形成が視野に入っている。ナスダック総合指数も25日線を下回った。まだ75日線、200日線よりは上方を維持しているが、200日線割れが迫っており、同線を下回ると投資家心理は明確に弱気へと転換しそうだ。 27500円水準で膠着感を強めていた日経平均も本日は大きく下落し、一気に27000円を視野に入れる展開となっている。これまでサポートラインとして働いてきた75日線、200日線も下回ってきていて、需給悪化が警戒される。 日本取引所グループが公表する投資部門別売買動向によると、これまで、年金基金の動きを反映する信託銀行と個人投資家が売り越しを見せる一方、海外投資家の先物を中心とした買い越しが日本株の下値を支えてきた。しかし、日経平均の27500円割れ、75日線及び200日線割れにより、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドが売りに転じてくる可能性が高く、今後の展開には注意が必要だろう。 前日の米国市場で長期金利の大幅上昇を引き起こした原因は、S&Pグローバルが発表した米2月サービス業購買担当者景気指数(PMI)が50.5と市場予想(47.3)を大幅に上回り、再び景況感の拡大を示唆する50を超えたことだ。米国では強い雇用統計や物価指標に続き、景気指標でも強い結果が目立ちはじめており、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが想定以上に長期化する可能性が懸念されている。フェデラルファンド(FF)金利先物市場の予想をみると、一時は早ければ3月で打ち止め、遅くとも5月が最後と思われていたFRBの利上げは、いまや6月、7月にも利上げが続く可能性を織り込みはじめている。 ただ、金融引き締めの効果は一般に1年以上のタイムラグをもって顕在化することを踏まえれば、足元の強い経済指標が突如悪化する可能性はある。また、強い指標が続いているとはいえ、すでに政策金利が4.50-4.75%にあることや一度縮小した利上げ幅を再び引き上げる程の材料が揃っているとは思えないため、さすがに今後も利上げ幅は0.25ptで据え置かれると考えている。 とはいえ、一時は大よその終着点が見えていたターミナルレート(政策金利の最終到達点)の議論に再び不透明感が台頭してきた今、株式に強気になるには難しいだろう。今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)を通じて利上げスケジュールが改めて明確化されるまでは相場の神経質な展開が続きそうだ。 こうした中、今晩はFOMC議事録(1月31日-2月1日開催分)が公表される。前回のFOMC後の会見では、パウエル議長が「ディスインフレ」発言を繰り返すなど、FRBの早期利上げ停止期待を高めた経緯があり、議事録の内容はタカ派である可能性は低いか。一方、その後の強い米経済指標を受けて、この議事録はすでに過去のものとしてほとんど重要視されないため、むしろ、想定よりもタカ派である場合のリスクに注意したい。 また、今晩は米半導体のエヌビディアの決算が予定されている。半導体銘柄の中でも特に成長性が高く影響力の大きいエヌビディアの決算であく抜け感が強まれば、指数寄与度の大きい関連銘柄の上昇につながりそうで、相場の下支え役として期待したい。ただ、東京エレクトロン<8035>の株価は52週線に頭を抑えられて失速した後、再び200日線も割り込んできている。エヌビディアの決算と株価反応が期待と反対にネガティブなものとなれば、足元でテクニカルが悪化してきている日米の株式市場が本格的な調整局面入りとなる恐れがあり、注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/22 12:19
後場の投資戦略
今晩の米小売り決算に注目、円安の下支え余地は小さいか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27519.50;-12.44TOPIX;2001.13;+1.42[後場の投資戦略] 前日の米国市場はワシントン誕生記念日のため休場。手掛かり材料難の中、週末には次期日本銀行総裁候補である植田和男氏の所信聴取や米1月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが予定されていることもあり、本日も相場は膠着感の強い展開となっている。 一方、今晩の米国市場では小売り企業のウォルマートやホーム・デポの決算が予定されており、こちらも注目される。根強いインフレの要因にもなっている米個人消費の堅調さを背景に、ウォルマートはしっかりとした決算が予想される。節約志向の高まりで購買対象が生活必需品へ集中するなか、粗利益率の停滞は続きそうだが、在庫調整の進展などが確認されれば好感されそうだ。 他方、格付け機関のムーディーズによる調査が注目されている。同社によると、クレジットスコアが低い債務者に提供された自動車ローンの30日以上延滞率が2010年以来の水準に上昇しているという。急速な金融引き締めにより、信用力が低い層への消費者信用に悪影響が及び始めたことを表していると、警告シグナルと捉える声も少なくない。 先日の市場予想を大幅に上回った米1月小売売上高の結果を、季節性など複数の要因が重なった結果として捉える向きも多い中、今晩の米小売り決算で消費動向の堅調さが本物かどうかを見極めたい。仮に悪い内容となれば、深刻な景気後退は避けられるとの年始からの楽観論は修正を迫られそうだ。また、反対に強い結果となると、インフレ懸念はさらに強まり、週末の米PCEコアデフレーターへの警戒感が上値抑制要因として働くことが予想される。 ほか、日経平均や東証株価指数(TOPIX)の下値を支えている為替の円安については、週末のイベントを控える中、1ドル=135円の節目を手前に一服となっている。米商品先物取引委員会(CFTC)が公表している投機筋の円ポジションをみても、直近のデータではネットでほぼ中立水準近くまで円の買い戻しが進んでおり、海外勢による金融緩和の修正および円高への思惑は根強いと思われる。米国のインフレ懸念の根強さ、利上げ長期化観測の高まりからドルの底堅さが見られているが、現水準からの一段の円安進行余地は大きくないと考える。 外部環境の不透明感がくすぶる中、当面は3月期末の配当権利取りを狙ったバリュー(割安)株、高配当利回り株の相対優位性が続きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/21 12:15
後場の投資戦略
手掛かり材料難のなかこう着感の強い展開
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27507.33;-5.80TOPIX;1996.78;+4.85[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、米ハイテク株安の流れもあり若干売りが先行する形から始まると、その後はやや下げ幅を広げた。ただ、売り一巡後は下げ幅を縮小する動きが優勢でプラス圏に浮上、その後は前日終値付近でのもみ合い展開となった。なお、20日の米国市場が休場になるため、海外勢のフローも限られるとみられる。 新興市場もこう着感の強い展開となった。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、即座に切り返して下げ幅を縮小した。その後、プラス圏に浮上する場面もあったものの、日経平均と同様にこう着感の強い展開が続いている。 東証グロース市場の売買代金は前週末にかけて2000億円前後の推移が続いており、個人投資家の物色意欲は旺盛な様子。決算発表が一巡して手掛かり材料難のなか、一部の新興株には引き続き物色が向かっている。前引け時点での東証マザーズ指数は0.13%安、東証グロース市場Core指数は0.24%安。 今週22日には、1月31日-2月1日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表される。3月に控える次回会合で利上げ幅の再拡大に支持が広がるかどうか、議事要旨で手掛かりが得られる可能性がある。また、24日には、米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数などが発表される。 ブルームバーグがエコノミストを対象に実施した調査の中央値では、1月PCE価格指数は全体で前月比0.5%上昇と2022年半ば以来の高い伸びが見込まれ、変動の大きい食料品とエネルギーを除くコア指数は同0.4%上昇と予想されているようだ。 さて、市場予想を大幅に上回った米1月雇用統計に続き、米1月CPIとPPIも市場予想からの上振れが目立ち、インフレ鈍化の一服が強く意識されつつある。1月の米中古車平均価格が上昇に転じており、米国のインフレ率の前倒し指標とされる銅価格も上昇傾向にある。 これらの影響が3月14日に発表される2月CPIで反映され、想定以上のCPI加速が確認される可能性があるなか、今後も警戒感がくすぶり株価の上値を抑制しそうだ。また、連銀総裁などのタカ派発言を受けて米10年債利回りが再び4%台乗せに迫っており、期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利の上昇も続いている。 19日のブルームバーグの記事では、ゴールドマン・サックス・グループのポートフォリオ戦略向け資産配分責任者であるクリスチャン・ミュラーグリスマン氏が「市場は金融当局がより長期にわたって景気抑制的な政策を推進する一方で経済成長が持続するノーランディングのシナリオを想定しているが、当社は全くそう思わない。 少し楽観的過ぎる」と述べている。リスク資産について、プットオプション購入や現金をオーバーウエートにするなどのディフェンシブ姿勢を勧めているようで、直近の株式市場の底堅さに警戒するよう指摘している。 やはり、決算発表が一巡した2月末以降は、警戒感を忘れずに引き続き下落シナリオも想定しておきたいところ。さて、後場の日経平均は、もみ合い展開が続くか。本日の米国市場はプレジデントデーの祝日で休場。手がかり材料に欠ける中、個別材料株中心の物色が継続しそうだ。(山本泰三)
<AK>
2023/02/20 12:23
後場の投資戦略
インフレ・利上げ長期化への警戒感さらに高まる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27537.36;-159.08TOPIX;1992.20;-8.89[後場の投資戦略] 前日の米株式市場はインフレ・利上げの長期化に対する懸念が強まり、金利が上昇する中、久々に主要株価3指数そろって大きく下落した。前日に2000ptを超えたばかりの東証株価指数(TOPIX)も再び2000pt割れに押し戻されており、株式市場の上値の重さが意識される。 前日に発表された米1月卸売物価指数(PPI)は、前年比+6.0%と12月(+6.5%)から鈍化したものの、市場予想(+5.4%)を大きく上回った。モメンタムを示す前月比も+0.7%と予想(+0.4%)を大幅に上振れ、12月(-0.2%)から加速に転じた。食品・エネルギーを除くコア指数でも前年比+5.4%と12月(+5.8%)から鈍化したが、予想(+4.9%)は大きく超過。前月比も+0.5%と予想(+0.3%)および12月(+0.3%)を上回った。 また、本年の米連邦公開市場委員会(FOMC)投票権を持たないが、米クリーブランド連銀のメスター総裁が前回会合で0.5ptの利上げを支持していたことを明らかにしたほか、米セントルイス連銀・ブラード総裁は3月会合でも0.5ptの利上げは選択肢にあると言及した。米1月雇用統計の発表以降、強まっていた利上げ長期化懸念は、今週の米1月消費者物価指数(CPI)と米1月PPI、そして連銀総裁のタカ派発言を受け、一段と強まる形となった。また、CPIより先行性の高いPPIの大幅な上振れは特に印象が良くない。決算発表も一巡し、市場エネルギーが後退する中、年始からの株高を創出してきたインフレ鈍化傾向の一服は今後、市場の重しとして長く働きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/17 12:13
後場の投資戦略
相場の力強さ継続もPERと実質金利の乖離が気がかり
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27723.60;+221.74TOPIX;2002.22;+14.48[後場の投資戦略] 前日の米国市場では経済指標がいくつか発表されたが、最も注目されたのは米1月小売売上高だろう。前回12月分までは、2カ月連続で前月比マイナスと減速し、市場予想も下回っていたことで、昨年末にかけては景気後退懸念が強まる経緯があった。しかし、今回の1月分は前月比+3.0%と12月(-1.1%)から大きく回復し、市場予想(+2.0%)も大幅に上回った。暖冬により外出が増加したという要因も指摘されているが、項目別のデパート+17.5%、外食+7.2%、家具+4.4%などの数値をみる限り、一過性要因を除いても非常に強い結果だったと言えそうだ。しかし、経済のソフトランディング(軟着陸)期待が高まる一方、これがポジティブ一辺倒かというと、話はそう簡単なものではない。 今年は年明けから、中国の「ゼロコロナ」政策の緩和、欧州での天然ガス価格の下落などを背景に、すでに景気後退懸念は大きく緩和していた。一方で、2月に入ってから発表された米1月雇用統計が市場予想を大きく上振れたことを背景に、市場が警戒する対象は再び景気からインフレへと移っていた。こうした中、強い労働市場に加えて、需要の旺盛さが確認された今回の米小売売上高の結果は、足元のインフレ懸念を強める形で、むしろネガティブに捉えられる側面もある。前日の米株式市場は売り先行で始まった後にプラス圏に回復し、底堅さを見せたが、今後の展開には注意が必要と考える。 米10年債利回りは15日、3.80%まで上昇、1月18日に付けた3.37%から大きく水準訂正してきた。期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利も1月25日の1.16%から前日には1.46%まで上昇してきた。一方、S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)は昨年末にかけて一時17.3倍程度にまで低下していたが、年始からは大きく反転し、2月2日には約19.7倍にまで上昇した。しかし、足元で実質金利が上昇する中でも、予想PERの調整は限定的で、S&P500種株価指数の予想PERは現在18.8倍程度に位置する。 このように、米債券市場では一足先に楽観ムードの修正が進んでいる一方で、米株式市場ではまだ修正がほとんど進んでいない状態といえる。むろん、米10年債利回りは上昇しているとはいえ、昨年10月に付けた4.3%と比較すればまだ距離があり、過度に警戒する必要はないのかもしれない。しかし、今後発表される米国の雇用や物価に関する指標が改めて強い結果となれば、現在の米実質金利と米PERのギャップが埋められる形で、株価の調整が起きる可能性はある。米主要株価3指数は揃って上向きの25日移動平均線より上方に位置し、金利上昇が続く中でも底堅さを見せ、上昇トレンドを維持しているが、ファンダメンタルズの観点からは目先は調整余地があることを頭の片隅に置いておきたい。 こうした中、今晩は米1月卸売物価指数(PPI)が発表される。一昨日に発表された米1月消費者物価指数(CPI)の結果を受けてインフレ鈍化の一服が意識されつつある中、CPIに対して先行性の高いPPIの結果が強いものとなれば、楽観ムードの修正が起きる可能性は十分にあるだろう。本日の東京市場は為替の円安進行も追い風に強含みで推移しているが、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑から、日経平均は引き続き28000円手前での上値の重い展開が予想される。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/16 12:16
後場の投資戦略
概ね予想通りもあく抜け感高まらない米CPI
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27491.51;-111.26TOPIX;1988.30;-4.79[後場の投資戦略] 前日発表された米1月消費者物価指数(CPI)は総合で前年比+6.4%(12月:+6.5%)と小幅に鈍化も、予想(+6.2%)を上回った。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+5.6%(前月:+5.7%)と僅かに鈍化も、予想(+5.5%)を上振れた。前月比では総合で+0.5%と予想(+0.5%)に一致も12月(+0.1%)からは加速。コア指数も前月比+0.4%と予想(+0.4%)一致にとどまったが、12月(+0.4%)と同様に加速が続き、モメンタムの鈍化は確認されなかった。 家賃などから構成され、CPIの約3分の1と最大の割合を占める住居費が前月比+0.7%(12月:+0.8%)となり、引き続きCPIの加速に寄与した。ただ、住居費より1年程先行する傾向のある米国の住宅価格指数は昨年4月頃にピークを打っているため、住居費の鈍化も時間の問題だろう。 一方、これまでCPI総合の鈍化に寄与してきたエネルギー価格が前月比+2.0%(12月:-3.1%)と3カ月ぶりに加速に転換。食料品も前月比+0.5%(12月:+0.4%)とモメンタムに鈍化の兆しが見られず、インフレ懸念がくすぶる内容となった。サービス分野のインフレも、遅行性のある住居費が鈍化すれば問題解決かというと、そう簡単な話でもなさそうだ。家賃を除いたサービス価格は前月比+0.6%(12月:+0.6%)、また、大幅な減速が続いている医療ケアサービスを除いた場合のサービス価格も前月比+0.8%(12月:+0.7%)と、それぞれ鈍化の兆しが見られていない。 また、警戒されていた中古車価格は今回の1月CPIではむしろ減速となったわけだが、それにもかかわらず指標が全体的に上振れ傾向となったことはネガティブに捉えられる。このため、2月分以降への警戒感はくすぶることになろう。 次回の3月21-22日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)までの間に、米雇用統計と米CPIをそれぞれもう一回分確認することができるため、それまでは神経質な地合いが続くと想定しておいた方がよさそうだ。 他方、今週もまだ重要な予定が控えている。今晩の米国市場では、米1月の小売売上高と鉱工業生産が発表される。ともに前回の12月分は前月比でマイナス、市場予想を下振れたことで昨年末にかけては景気後退懸念が強まる経緯があった。今回はどちらも前月比でプラスへの回帰が予想されているが、年始から過度な景気後退懸念は既に和らいできているため、今回の指標のプラス回帰が景気動向に関して投資家心理に与える影響は小さいだろう。むしろ、景気の底堅さが意識されれば、利上げ長期化の思惑を強める可能性があるため、注意しておきたい。 さらに、16日にはCPIより先行性の高い米卸売物価指数(PPI)の1月分が発表される。PPIの結果を受けて改めてインフレ鈍化一服が意識される展開も想定しておいた方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/15 12:20
後場の投資戦略
今晩CPI下振れでもラリー再開への過度な期待は禁物か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27579.61;+152.29TOPIX;1989.33;+11.66[後場の投資戦略] 前日の米株式市場は大きく上昇。ニューヨーク連銀による1月消費者調査の結果によると、家計収入の伸び率予想は中央値で1.3ポイント低下して3.3%となった。月間ベースの下げ幅としては、約10年前の統計開始以降で最大という。これが米1月雇用統計以降に高まっていたインフレ懸念を緩和させ、米長期金利の上昇も一服、投資家のセンチメント回復に寄与したようだ。 一方、同調査における1年先の期待インフレ率は5%で、前月から変わらず高止まり。また、先週末に発表された米2月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)では、1年先の期待インフレ率は4.2%へと(前月:3.9%)むしろ上昇していた。今晩に発表される米1月消費者物価指数(CPI)も、ガソリン価格や中古車価格の反発傾向を背景に、前月比+0.5%と(前月:-0.1%、修正値:+0.1%)と加速する予想。また、1月分から米労働省労働統計局(BLS)はCPI内訳項目のウェイト変更を行うため、これがコア指数を0.03ポイント程押し上げる可能性があると指摘されている。米1月CPIはコア指数で前月比+0.4%(前月:+0.3%、修正値:+0.4%)と予想されている。 今晩の米CPI後の短期的な市場反応は正直読めない。米雇用統計以降、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からタカ派発言が相次いだことで、かなり事前の警戒感は高まっているため、余程大きく上振れない限りはネガティブな反応はさほど大きくならない可能性も期待される。しかし、米雇用統計以降に警戒感を高めているのは主に債券市場の方で、株式市場の方はあまり事前に悪材料を織り込めていない印象も否めない。 フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は米雇用統計以降、ようやくFRBのドットチャート(政策金利見通し)が示す中央値にまで引き上げられ、年内に見込んでいた利下げ期待も大分後退してきた。米10年債利回りも2日の3.39%から先週末10日には3.74%まで大きく上昇した。 一方、株式市場はあまり調整していない。日米ともに上昇は一服しているものの、米株式市場にいたっては、主要株価3指数そろって上向きの25日移動平均線に沿った上昇トレンドが継続する形となっている。S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)も19倍程度と、過去の推移と比較して高い水準にとどまっている。 10-12月期決算の発表が一巡したが、法人向けサービスを中心に米企業の景況感は急速に悪化している。FRBの年内の利下げ転換期待が大きく後退してきている中、今後も法人向けサービスの需要は低迷、もしくは一段の落ち込みが予想される。逼迫した労働市場などを背景に個人向けサービスは堅調でも、企業業績が10-12月期をボトムに底入れしたと判断するのは時期尚早だと思われる。 日本企業の決算も、サービス業を中心に内需系企業の業績は堅調も、製造業はハイテクや素材・化学などを中心にかなり厳しい内容のものが多かった。半導体など電子部品関連については、年後半からの市況回復を想定する経営者の声も聞かれ、今回の10-12月期決算をボトムと捉える投資家も多い様子だ。しかし、FRBの利上げ停止と利下げ転換のシナリオが1月時点から大きく後ろ倒しされている中、急速に冷え込んだ最終製品市場の需要が本当にあと半年で回復に転じるかにはやや疑問符が付く。仮に水準としては今がボトムとしても、当面いまのボトム水準が長期化して、回復に転じるのはもっと先ということも考えられる。 こうした中、株価は目先、弱含み、良くても、もみ合いレンジ相場にとどまるとみておきたい。今晩の米CPIが仮に予想並みにとどまったとしても、年始からの株価ラリーが再開するとまでは過度に期待しない方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/14 12:21
後場の投資戦略
14日の米CPI発表控えて売り優勢の展開
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27354.81;-316.17TOPIX;1976.54;-10.42[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、シカゴ先物にサヤ寄せする格好からやや売りが先行。日銀の金融政策修正への観測もくすぶるなか、米国市場はまちまちの状況である他、決算発表が一巡するまではポジションを大きく傾けてくる流れにはなりづらい。短期筋の売買に振らされやすい需給状況になりそうとの指摘も一部市場関係者から聞かれている。 新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、日経平均と同様に朝方から下げ幅を広げてマイナス圏で軟調に推移。米ハイテク株安を嫌気するなか、米長期金利が3.74%まで上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株の重しとなっている。前引け時点での東証マザーズ指数は2.16%安、東証グロース市場Core指数は2.40%安。 さて、14日に発表される米消費者物価指数(CPI)の結果発表に注目が集まっている。1月の総合CPIは、前年同月比で伸びがさらに鈍化する見通しだが前月比ベースでは3カ月ぶりに加速する見込み。具体的に、前月比では+0.5%(12月:+0.1%)、食品・エネルギーを除くコアCPIでは同+0.4%(12月:+0.4%)と加速が予想されている。 市場関係者は前月比での総合CPI加速を予想しているが、実際の伸びが予想よりも大きくなった場合は雇用統計に次ぐサプライズとなり、株式市場へのネガティブ影響は避けられない。ブルームバーグでは、ロックフェラー・グローバル・ファミリー・オフィスのジミー・チャン最高投資責任者(CIO)が「市場の期待ほど急速にインフレが低下することはないという短期的なリスクがある」と話したと報じられている。 仮に、1月CPIが予想並みにとどまったとしても、株式市場全体が上昇する可能性も想定しにくい。週末の「国内株式市場見通し」に詳細が記載されているが、1月の米中古車平均価格が上昇に転じており、米国のインフレ率の前倒し指標とされる銅価格も上昇傾向にある。これらの影響が今回ではなく、3月14日に発表される2月CPIで反映され、想定以上のCPI加速が確認される可能性もあるため、2月以降の警戒感がくすぶり株価の上値を抑制しそうだ。 パウエル議長は先週7日に「力強い労働市場やインフレ加速といった情報が確認された場合は、市場に織り込まれている以上に金利を引き上げ、さらなる措置を講じる必要が生じる可能性は十分にある」と述べていた。FRB高官もタカ派姿勢を示しており、インフレを目標に戻すために長期的な闘いに備えているという。引き続き、今回の1月CPI以降も、雇用統計及び各種インフレ指標には注目し続けなければならない。 月曜日の当欄を担当する筆者は昨年から、今年に大きく下落するシナリオを念頭に相場を見守ってきた。1月後半から再度市場の想定していないインフレ指標が散見し、利上げ長期化が意識され始め、地政学リスクや米中問題など様々なリスクが影響してくると、下落シナリオも想定しておきたいところ。筆者は2020年のコロナショック前の水準であるナスダック100指数で9600pt付近を底値のターゲットとして相場を見守っている。さて、後場の日経平均は、軟調な展開が続くか。14日以降のインフレ指標の発表が警戒されるなか、個別材料株中心の物色が継続しそうだ。(山本泰三)
<AK>
2023/02/13 12:22
後場の投資戦略
一部好決算が支えも米CPIに向けた警戒感が徐々に台頭
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27722.92;+138.57TOPIX;1992.13;+7.13[後場の投資戦略] 強い米雇用統計が発表されて以降、FRB高官からのタカ派発言が連日で続いており、前日はリッチモンド連銀のバーキン総裁も継続的な利上げを主張。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5.15%と前の日から0.02ptほど上昇した。依然として年末にかけての1回の利下げ予想は残っているものの、12月の政策金利水準予想も4.86%へと徐々に切り上がってきた。 前日はブルームバーグ通信が、オプション市場で政策金利が6%に到達することを見込んだ大口ポジションが構築されていることを報じていた。さらに、その後、ブルームバーグ通信は、調査会社のマクロ・ハイブのストラテジストがインフレを完全に制御するには政策金利を約8%に引き上げなくてはならないと主張していることを伝えた。同報道によると、ラッカー前リッチモンド連銀総裁とプロッサー前フィラデルフィア連銀総裁も最近、インフレが現状のままと仮定すると年末までに6.5から8%の金利水準が推奨されることを主張していたという。 先週までターミナルレートは5%未満、年後半には2回の利下げまでを頑なに織り込んでいた市場の予想は大分FRBの主張に寄り始め、両者の乖離は縮小してきた。しかし、来週は14日に米1月消費者物価指数(CPI)が発表される予定で、これが要注意なイベントとなる。米CPIは食品・エネルギーを除くコア指数で前月比+0.3%が予想されているが、米クリーブランド連銀が公表しているCPIナウキャストでは同+0.46%(9日時点)と予想されている。仮に上振れとなると、これまでのインフレ鈍化を好感した動きも一服し、再びインフレ高止まり・利上げ長期化への懸念が高まりかねない。 前日は米2年債利回りが昨年11月以来の4.5%超えを一時見せたが、14日の米CPIが上振れれば、足元で3.67%にまで戻している米10年債利回りが再び4%を意識した上昇基調を強める可能性もある。アナリストの業績予想の下方修正が進む中での年始からの力強い株価上昇の要因はほとんど株価収益率(PER)の上昇で説明がつく。米CPI後に米10年債利回りが上昇基調を強め、実質金利も上昇となれば、年始から上昇した株価バリュエーションは再び調整を余儀なくされるだろう。 力強い動きが続いていた米株式市場も、S&P500種株価指数は前日にかけて2日連続の陰線を形成し、調整局面入りを示唆している。一方、米個人投資家協会(AAII)の週次調査によると、ブルベア・スプレッドはプラス12.5と、前週のマイナス4.7から上昇し、2022年4月以降で初めて強気に転じたという。ただ、こうしたセンチメント指標は逆バリの好機を示唆しているようにも捉えられ、この点からも目先は注意が必要な局面になってきたといえる。短期的には調整相場入りに警戒したい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/10 12:19
後場の投資戦略
FRBハト派化期待は徐々に剥落
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27479.86;-126.60TOPIX;1980.07;-3.90[後場の投資戦略] 一昨日の米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁に続き、前日もFRB高官からタカ派発言が相次いだ。FRBのウォラー理事は「インフレとの戦いは長引きそうで、政策金利は現在の一部の予想よりも一層高い水準に一段と長くとどまる可能性がある」との見解を示した。また、クックFRB理事も「利上げはまだ終わっていない。政策金利を十分に景気抑制的な水準に維持する必要がある」と発言。 特に印象的だったのは米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言で、同氏は「インフレを確実に2%に回帰させるためには、十分に景気抑制的な政策スタンスを数年間維持する必要があるだろう」とコメント。その上で、現在の政策金利の誘導目標レンジ4.50-4.75%については、「かろうじて景気抑制的な」領域に入っているに過ぎないとの考えを示した。これは、あと1-2回の利上げで打ち止めになると考えている市場に対して、暗にその予想を超える利上げ継続があり得ることを示唆していると捉えられる。 一方、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5.13%と、複数の高官のタカ派発言前の時点からほぼ変わっていない。また、今年末の政策金利水準の予想も4.80%とこちらにも変化はない。先週まで0.25ポイントの利下げが2回あると予想していた状況に比べれば、現在の利下げ期待は1回程度にとどまっており、過度な期待は後退してきているもよう。しかし、いまだに年内利下げ期待は残っている。 米株式市場も前日は反落となったものの、年始からの上昇基調を踏まえれば、小幅な調整に過ぎない。しかし、今後、年内の残りの利上げ回数が3回以上になることなどを本気で織り込みにいく展開になれば、株式市場には調整余地が残されているといえる。来週14日に発表される米1月消費者物価指数(CPI)でインフレ鈍化の一服などが示唆されると、そうした動きが強まる恐れがあろう。 S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)も19.4倍と、昨年4月以来の水準にまで上昇してきており、業績予想が切り下がってきている中、これ以上の株価バリュエーションの上昇を通じた株高には持続性に疑問符が付こう。目先は、調整局面入りになる可能性に留意しておきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/09 12:18
後場の投資戦略
パウエルリスク消化、市場のシナリオにはやや矛盾
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27543.39;-142.08TOPIX;1982.68;-0.72[後場の投資戦略] 前日の米株式市場はパウエル議長のインタビュー発言を無難に消化し、ハイテク株を中心に大幅高。一方、本日の東京市場では、指数寄与度の大きい任天堂やソフトバンクGの決算を嫌気した株価急落のほか、為替の円高進行が重しとなり、日経平均はマイナス圏で推移。東証株価指数(TOPIX)も小幅に下落している。ただ、米SOX指数の大幅反発や米スカイワークス・ソリューションズの好決算などを背景に、半導体関連株の上昇が指数を支えている。一方、米ハイテク株高を好感し、マザーズ先物は上昇しているものの、ナスダック指数の上昇率に比べるとやや物足りない印象がある。 前日のワシントン・エコノミッククラブでのインタビューで、パウエルFRB議長は連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見と同様にディスインフレに言及。大きくタカ派には傾かなかったことで目先の安心感を誘った。しかし、今後も強い雇用データが続けば、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が、最新のドットチャート(政策金利見通し)が示す中央値5.125%を上回る可能性にも言及した。また、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、大幅に上振れた米雇用統計を受けて、利上げの影響がまだ労働市場にほとんど影響を与えていないことに驚きを示すと同時に、ターミナルレートは引き続き5.4%まで引き上げるべきとの見解を示した。 こうした背景もあり、前日の米国市場ではパウエル議長のディスインフレ発言の継続を好感し、ハイテク株を中心に大きく上昇したものの、債券市場では金利の上昇が続き、米10年債利回りは3.67%(前日比+0.03pt)と3日続伸した。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートも、6月前後をピークに5.14%と、前日の5.11%から上昇した。一方、12月時点の政策金利予想は4.80%となっており、こちらも水準はかなり切り上がってきたが、引き続き年後半に利下げを予想する点は変わっていない。 しかし、6日、イエレン米財務長官も「月間50万人増の雇用があり、失業率が約50年ぶりの低水準となっているときに、景気後退は起こらない」と語っている。実際、これまでの米企業決算を振り返ってみても、企業のセンチメントの悪化により、法人向けビジネスの落ち込みは著しいが、底堅い個人消費を背景に個人向けビジネスでは好調の維持が目立っている。米小売売上高は直近2カ月連続で前月比マイナスと減速しており、今後も個人消費の好調が続くかは注視する必要があるが、仮に需給の引き締まった労働市場の長期化を背景に、個人消費の底堅さが続くのであれば、確かに景気後退は軽度ではあっても、深刻な形ではやってこないのかもしれない。 ただ、それは今の株式市場が恐れている深刻な企業業績の悪化を通じた株価下落が回避できるとの期待を高める一方、FRBの年内の利下げの可能性は大きく低下させることになる。今の市場は企業業績のここからの悪化はさほど酷くならないのではないかという希望を持ちつつ、年末にかけてのFRBの利下げも同時に期待している。しかし、景気後退が市場に混乱をもたらす程に深刻なものにならない限り、FRBの年内の利下げは今のところ考えにくい。現状の株式市場のシナリオにはやや矛盾が生じており、この点はどこかで修正が必要なのではないかと考える。 一方、米国の主要株価指数が揃って200日移動平均線を大きく上抜け、明確なトレンド転換を見せ、その後も堅調な推移を見せている状況をみれば、弱気一辺倒でもいられない。足元で米長期金利が反発傾向にあるとはいえ、昨年ほどの金利の急上昇がもはや想定しにくい中、いまの株式市場を揺さぶる景気や為替との連動性が低い、内需系グロース株などは相対的な投資妙味が高いと考える。マネーフォワード<3994>やSansan<4443>のほか、Appier Group<4180>などの高成長企業の株価は上値追い傾向にある。こうした市場の動向に振らされず高成長を続けている銘柄に注目していきたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/08 12:20
後場の投資戦略
業績悪化と円高リスクが懸念材料
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27754.36;+60.71TOPIX;1988.04;+8.82[後場の投資戦略] 米国の雇用統計とISM非製造業景気指数の大幅な上振れによって、先週高まった米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ停止期待は後退しており、2日に3.39%まで低下した米10年債利回りは6日、3.64%まで大きく上昇してきた。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)直後まで4.9%程度にとどまっていた金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)も、6月頃のピークを目途に5.11%程度まで切り上がってきた。 こうした中、今晩はワシントン・エコノミッククラブにおいてパウエルFRB議長のインタビューが予定されている。大幅に上振れた雇用統計後の初めての発言とあって注目度は高い。先週の記者会見でパウエル議長は、(1)「ディスインフレ」に度々言及したことに加え、(2)年始からの金利低下・株高をけん制せず、また、(3)年内の利下げを否定しつつも、市場の利下げ期待を明確に一蹴しなかった、(4)利上げ休止後の利上げ再開を検討していないと発言、などと全体的にハト派に転換したことを示唆したような印象を市場に与えた。 しかし、雇用統計の上振れを受けて、アトランタ連銀のボスティック総裁はターミナルレートが、最新のドットチャート(政策金利見通し)が示す5.125%を超える可能性が高まったことや、場合によっては利上げ幅を0.25ポイントから0.5ポイントへ戻す可能性などに言及した。足元でFRBの再タカ派化を警戒する動きが強まる中、今晩のパウエル議長の発言に注目だ。仮に、先週の記者会見後の内容を大きくタカ派寄りに修正してこなければ、再び利上げ長期化懸念が後退する形で、株式市場の上昇が再開しそうだが、マイナスサイドの振れに警戒しておいた方がよいだろう。 ほか、国内の金融政策動向も気掛かりだ。前日は、政府が日本銀行の次期総裁として雨宮氏に打診する方向で調整と報じられた。雨宮氏は黒田総裁とともに金融政策運営を長期にわたって担ってきたため、他の総裁候補と比較して、金融政策運営の修正が劇的に変化する可能性は低いとみられている。これを受け、前日は国債長期金利の先高期待が一時低下し、米雇用統計後の為替のドル高・円安がもう一段進んだ。株式も前日の東京市場では買いが先行した。しかし、為替の円安は進展したとはいっても、足元のドル円は1ドル=132円台前半と、米雇用統計後と比べてさほど大きな変化はない。また、株価も結局、前日は午後に大きく伸び悩んだ。 本日午前に発表された昨年12月の毎月勤労統計調査(速報)によると、現金給与総額(名目賃金)は前年同月比+4.8%と、1997年1月(同+6.6%)以来、25年11カ月ぶりの高い伸びとなり、市場予想(+2.5%)を大幅に上回った。こうした材料も後押しする形で、結局、日銀の新総裁が誰になっても、国内金融緩和の修正路線は変わらないと考えられていることが、さほどドル高・円安が進まない要因として影響しているのかもしれない。 他方、米アップルが、スマートフォン「iPhone」の最新機種「iPhone14」の上位機種「Pro」を中国で800元(約1万5500円)値引いて販売している実態が伝わっている。今回、「iPhone Pro」で見られている値下げ率7−9%は通常、低価格モデルに適用されるもののようで、また、発売後わずか数カ月での大幅値引きは異例なことであるという。需要の弱さが上位機種にも及んでいることを示唆していると報じられている。 また、モルガン・スタンレー証券はファクトセットなどのデータを基に、S&P500種株価指数を対象とした予想一株当たり利益(EPS)の前年比伸び率が、2000年以降で5度目となるマイナス圏に陥ることを指摘。過去のパターンから、今後、株価の下落が訪れることを警告している。 今後、米企業の業績落ち込みや、日銀新体制後の緩和修正路線への思惑継続により、米株の下落と円高が進めば、日本株も厳しい展開になりそうだ。ただ、目先は今晩のパウエル議長発言とその後の為替動向を見極めたい。なお、今晩はバイデン米大統領の一般教書演説も予定されている。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/07 12:19
後場の投資戦略
円安進行で輸出関連企業に物色向かう
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27801.97;+292.51TOPIX;1982.28;+12.02[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から買い先行で取引を開始。朝方は上げ幅を縮小する動きを見せたが、その後は再度買いが広がっており、高値圏でのもみ合いが継続している。足元の為替市場で円安ドル高が進んでおり、安心感を誘っているようだ。 一方、新興市場では軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は朝方からマイナス圏で推移。売り一巡後は下げ幅をやや縮小している。労働市場の逼迫と景気後退には程遠いサービス分野での強い需要が確認されたことは国内の個人投資家心理にネガティブに働いている。また、米長期金利は一時3.52%まで急上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株に重しとなっているようだ。前引け時点で東証マザーズ指数が0.35%安、東証グロース市場Core指数が0.30%安となっている。 さて、3日に発表された米1月雇用統計を簡単に振り返る。非農業部門雇用者数が前月比51万7000人と前月(+26万人)から大幅に増加し、市場予想(+19万人)を大きく上振れた。また、失業率は3.4%と市場予想(3.6%)に反し、53年ぶりの水準に低下したようだ。ただ、平均時給は前年比+4.4%と前月(+4.8%)から鈍化、前月比でも+0.3%と前月(+0.4%)から鈍化した。 また、米ISM非製造業景気指数は1月に55.2と急回復、市場予想(50.5)を大幅に上回っていた。リセッション予想とは相いれない動きで、FRBに対して利上げ継続を求める圧力が強まった格好。雇用市場の力強さも維持されたため、労働力の需要は引き続き供給を上回り、賃金の強い伸び継続とさらなるインフレ高進につながる恐れも出てきているようだ。 前週2日には、「国際通貨基金(IMF)が、世界の中央銀行は金利をより高く長期にわたり維持しなければならない可能性が高いことを金融市場に明確に示す必要があるとの見解を発表した。」とロイターが報じている。「早すぎる緩和は、経済活動が回復した後にインフレが急上昇し、各国が一段のショックによる影響を受けやすくなり、インフレ期待を抑制できないリスクをもたらす」としている。 パウエル議長はFOMC後の会見で、経済動向が予想通りであれば年内の利下げはないと改めて主張していた。また、インフレ率2%の目標を達成するために、今後も継続的な利上げが必要とし、あと複数回の利上げを行うことが適切であるとの認識を示していた。今後も雇用統計及びインフレ指標の結果には従来通り警戒して相場を見守る必要があろう。再度物価が上昇していった場合のシナリオも想定しておきたいところだ。 このような状況下で、本日6日には「政府が日本銀行の黒田東彦総裁の後任人事について雨宮正佳副総裁に就任を打診した」と日本経済新聞で報じられた。雨宮氏は、黒田総裁の政策を踏襲するとみられており、現副総裁の雨宮正佳氏が選ばれれば円安につながるとの見方が優勢だった。実際、同報道を受けて外国為替市場で円安が進行、一時は132円41銭を付けた。また、金融政策の不透明感が払しょくされたことで、本日の東京市場では自動車や商社、電機といった輸出関連企業を中心に買いが広がっている。 そのほか、民間調査による2022年12月のホテル平均客室単価は新型コロナ流行前の19年同月比で約2割高だったようだ。全国旅行支援や訪日客の急増に加えて人手不足による客室の供給減少が影響した。閑散期にあたる1月に入っても需要が落ちておらず、稼働率も2019年平均(8割強)に近い水準を維持したという。引き続き、インバウンド増加に伴って旅行関連や人流増加に伴う消費が直結する関連企業には注目しておきたい。さて、後場の日経平均は、高値圏でのもみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、東証プライム市場の銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/02/06 12:20
後場の投資戦略
ハイテク株高の持続性を確かめる米雇用統計に注目
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27518.75;+116.70TOPIX;1969.27;+4.10[後場の投資戦略] 前日の米国市場では長期金利が一段と低下、株式もハイテク株を中心に大きく上昇した。前日に開催された欧州中央銀行(ECB)の定例理事会および、英イングランド銀行(中央銀行)の金融政策委員会においては、それぞれ0.5ポイントの大幅利上げが決定され、利上げ継続の見解も示された。ただ、利上げの停止に近づいていることが示唆されたことがポジティブに捉えられたようだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)後の株高が一日で終わらず、2日連続で続いたことは投資家心理を明るくさせよう。 一方、今晩の米1月雇用統計の発表を前に様子見ムードが強いのか、ナスダック総合指数が3%超も上昇したのに対し、日経平均などの上昇率はかなり小幅で、マザーズ指数に至ってはマイナスに転じている。ただ、取引終了後に発表されたアップル、アルファベット、アマゾン・ドットコムのGAFAM決算が総じて低調に終わり、時間外取引の株価もそれぞれ3−5%程度下落していることを考慮すると、むしろ底堅いとも評価できそうか。 一方、米国市場も株価上昇一辺倒というわけでもなく、ダウ平均はFOMC結果公表の2月1日も、前日2日も冴えない動きが続いている。金利低下がハイテク株をサポートする一方で、景気後退懸念は根強いようで、景気敏感株にはまとまった買いが入っていないようだ。今晩は米供給管理協会(ISM)による1月非製造業(サービス業)景気指数が発表される。12月は49.2(修正値)へと一気に景況感縮小を意味する50割れへと急低下したが、1月は50.5へと回復が予想されている。12月の急低下は大寒波による一時的な影響と指摘されているが、1月分でも50割れとなると、景気後退懸念が一段と強まり、ダウ平均の軟調さが鮮明になりそうだ。 その場合、米長期金利の低下を背景に、ハイテク株にとっては一段の追い風になりそうだが、米雇用統計の結果次第では、ハイテク株の上昇も一服する可能性がある。1月雇用統計では非農業部門雇用者数が18万9000人の増加と、12月(22万3000人増)より伸びがやや鈍化し、失業率は3.6%と12月(3.5%)よりやや悪化する見込み。一方、最大の注目要素である平均時給は前月比では+0.3%と12月(+0.3%)から横ばいも、前年比では+4.3%と12月(+4.6%)からさらに鈍化する予想となっている。予想通りとなれば、賃金インフレのピークアウト期待がさらに高まり、ハイテク株のリバウンドが強まる可能性がある。一方、予想よりも高い伸びとなれば、年明け以降の楽観ムードが小休止する公算が大きくなるため、注目したい。 また、時間外取引で3−5%程度の下落にとどまっているアップル、アルファベット、アマゾン・ドットコムが、今晩のメインマーケットにおいてより大きく売られれば、それも市場の楽観ムードを小休止させるには十分な材料となる可能性があるため、注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/03 12:15
後場の投資戦略
FOMC無難消化も上値追いにはなお慎重に
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27391.85;+44.97TOPIX;1965.85;-6.38[後場の投資戦略] 前日のFOMCの結果自体は予想通りでサプライズはない。一方、注目されたのはパウエル議長の会見とそれを受けた市場の反応だ。パウエル議長はインフレ率2%の目標を達成するために、今後も継続的な利上げが必要とし、あと複数回の利上げを行うことが適切であるとの認識を示した。最新のドット・チャートが示す政策金利の中央値は5.125%であるため、残る3月と5月のFOMCで0.25ptの利上げが合計2回行われるという計算になる。 しかし、金利先物市場が織り込む政策金利の最終到達点(ターミナルレート)は、以前から米連邦準備制度理事会(FRB)が主張する5.1%には遠く及ばず、4.9%程度にとどまっていた。市場は早ければ3月で利上げが最後になるということを期待していたため、今回のパウエル議長の会見は改めてそうした期待は行き過ぎだということを意味したと考えられる。また、市場が期待していた利上げ停止の時期についての言及はほとんどなく、この点でも市場は肩透かしをくらった格好か。 興味深いのは、それにもかかわらず、金利先物市場が織り込むターミナルレートが、FOMCの後も上昇するどころか、むしろ小幅ながらさらに低下したということ、また、パウエル議長が会見で、経済動向が予想通りであれば、年内の利下げはないと改めて主張したにもかかわらず、年内に2回の利下げがあると考える市場の予想にも全く変化がなかった。この点については、パウエル議長が会見で、財・モノに関してディスインフレが起こり始めていると言及したことや、年始からの金利低下・株価上昇をけん制する発言が出てこなかったことなどが、かえって市場の利下げ期待を高めてしまったと考えられる。 株式市場もこの点を都合良く解釈したのか、FOMCの後、金利が大幅に低下する中、ハイテク株を中心に株価は上昇で反応した。結局、利上げ停止の時期や年内の利下げがあるかどうかという点について、FRBと市場との間に存在する大きなギャップは解消されないままに終わってしまった。 昨日は重要な経済指標も発表された。米供給管理協会(ISM)による1月製造業景気指数は47.4と市場予想(48.0)を下回り、5カ月連続で悪化、景況感の拡大・縮小の境界値である50を3カ月連続で下回った。項目別では新規受注が42.5と、前月(45.1)から一段と低下し、景気減速の加速が示唆される内容となった。 一方、米労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS)における昨年12月の求人件数は1101万件と予想に反して前月比で増加(前月修正値は1044万件)、市場予想(1030万件)も上回った。また、失業者1人に対する求人件数は1.9件と過去最高に近い水準にまで上昇した。米1月ADP雇用統計も、雇用者数の伸びは市場予想を下回ったものの、雇用者や転職者の賃金は高い伸びが続き、総じて労働市場の逼迫が長期化していることが示された。 景気の減速が加速しつつある中、サービス分野のインフレにつながる労働市場の逼迫は長期化しており、FRBの金融政策の舵取りは一段と難しくなったといえる。労働市場の逼迫に対する懸念がくすぶる中、今週末の米雇用統計に対する注目度は一段と高まっており、平均時給の伸びがどれだけ鈍化するか、ここを見極めるまでは動きづらいだろう。 さらに、今晩は米国でアップル、アルファベット、アマゾン・ドットコムの決算が予定されている。米IT大手「GAFAM」の決算では、すでにマイクロソフトが発表済みだが、増収率の鈍化と今後の低調な見通しを受けて、直後の株価反応はあまり良くなかった。その後、同社株価が堅調に推移しているのは、地合いに助けられているところが大きいと思われるが、今晩のGAFAMの決算次第では、投資家心理が大きく悪化する可能性は否定できないため、注意したい。 米国では、S&P500種株価指数のほか、SOX指数、中小型株のラッセル2000などの主要株価指数の週足チャートをみると、過去の高値同士を結んだレジスタンスラインを上抜けており、トレンド転換の様相が強まっている。ただ、目立った好材料が確認されていない中での年始からの大幅上昇については懐疑的な声も多い。たしかに「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」との格言もある。しかし、モルガン・スタンレーやJPモルガンなどの大手金融機関の著名ストラテジストは足元の株価上昇に乗るべきでないと注意を促している。また、2008年の金融危機前に住宅市場の崩壊に賭けた「世紀の空売り」で有名になった投資家マイケル・バーリ氏は、1月31日に「Sell.(売れ)」と一言だけツイートしている。こうした市場関係者の忠告は傾聴に値するだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/02 12:20
後場の投資戦略
FOMCは無難消化を想定もあく抜け狙う必要なし
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27376.22;+49.11TOPIX;1978.65;+3.38[後場の投資戦略] FRBが重要視している米10−12月期雇用コスト指数は前四半期比+1.0%と7−9月期(+1.2%)から減速し、市場予想(+1.1%)も下回った。これを受けて、FRBの利上げ長期化観測が後退する形で、前日の米国市場では金利低下と株式買いの反応が強まった。しかし、雇用コスト指数は前年同期比では+5.1%と依然として高い水準にあり、利上げ長期化への可能性はまだ十分に残されている。 日本時間で明朝4時頃に結果公表を控えるFOMCでは、予想通り0.25ポイントへの利上げ幅縮小が決定されるだろう。一方、年始からの金利低下と株高が創出する金融緩和的な状況がインフレを再燃させるリスクに対応するため、FOMC後のパウエル議長の会見は総じてタカ派な内容になると予想される。 ただ、これまでFRB高官が度々ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の5%超えや年内利下げの可能性はないとするタカ派な発言をしても、市場が想定するターミナルレートは依然として5%未満のままであるし、年内に約2回とする利下予想にも変化がない。 つまり、明日のパウエル議長の会見が少々タカ派である程度では、市場とFRBとの間に存在する乖離が解消されることはないだろう。また、先週末から今回のパウエル議長の会見が市場の期待を諫めるようなタカ派なものになるであろうことを警告した解説記事が多く見られている。このため、議長の会見内容がタカ派になることも大方織り込み済みであろう。パウエル議長がこれまでにない程の強気なタカ派な姿勢を見せるか、もしくは、FOMCで予想外の0.5ポイントの利上げでもない限りは、明日のFOMCイベントは波乱なしが予想される。 しかし、週末に米雇用統計や米供給管理協会(ISM)の非製造業(サービス業)景気指数を控えている中、FOMC後の短期的なあく抜けを狙って、あえて本日の段階からリスクを取りにいく必要もないだろう。決算シーズンに入っていることもあり、狙っている銘柄の決算内容をしっかりと精査してからのエントリーでも十分と考え、焦らずに構えたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/02/01 12:13
後場の投資戦略
月替わりで潮目の変化に注意
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27429.59;-3.81TOPIX;1983.19;+0.79[後場の投資戦略] 東京市場の主要株価指数は全般、膠着感の強い展開となっている。日本時間2日午前4時頃に結果判明を控えるFOMCのほか、同日の晩に開催される欧州中央銀行(ECB)定例理事会などの中央銀行イベントに加え、米供給管理協会(ISM)が発表するISM景気指数、週末の米雇用統計など重要イベントが続々と控える中、模様眺めムード極まるといった様相だ。 さて、本日は31日と、1月の最終営業日で、明日からは2月相場入りとなる。月が替わることで潮目の変化に注意したい。振り返ると、1月は多くの市場関係者の予想に反して世界の株式市場は強かった。昨年末までは世界景気の後退が懸念されていたが、中国での「ゼロコロナ政策」の緩和を受けて、年明けは急速に世界景気の底入れを先取りするかのような動きが加速した。 商品市況では、中国景気との連動性の高い鉄鉱石や銅、アルミニウムといった非鉄金属の価格が軒並み急伸し始め、関連銘柄の株価も世界的に大きく上昇した。また、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)や米ナスダック指数など、昨年厳しい売りに見舞われた米ハイテク株も、米12月雇用統計での平均時給の伸び鈍化などを受け、FRBのピボット(転換)期待が高まる中、株価が大きくリバウンドしてきた。 しかし、冷静に考えると、年末特有の節税対策売りが一巡した年明けから、昨年に売られすぎたセクター・銘柄の反発を期待したリバランスが強まったに過ぎないともいえる。実際、上述した中国景気との結びつきの強い銅、アルミニウムなどのコモディティ価格は1月末にかけて騰勢一服となってきている。1月の強かった動きが大方昨年末にかけての下落の反動に過ぎないのだとしたら、2月へと月替わりすることで、こうしたリバランスの動きも一巡すると考えるのが自然ではないだろうか。 この仮説が正しいとすると、需給面でのプラス要因が一巡してきたタイミングで、ハイテク企業やGAFAMといった米大型IT企業の決算のほか、FOMCなどの中銀イベント、ISM景気指数などの重要指標を相次いで迎えることは、相場のムード転換に繋がり得る点から懸念される。今週の一連のイベントをじっくりと消化するまでは、今は様子見に徹することが肝要だと考える。 なお、本日はHOYA<7741>、富士通<6702>、コマツ<6301>、レーザーテック<6920>、味の素<2802>などの決算が予定されている。一方、米国では建機のキャタピラー、自動車のゼネラル・モーターズ、エネルギー大手エクソン・モービル、半導体のAMDなどの決算が予定されている。米半導体企業については、今のところテキサス・インスツルメンツ、ラム・リサーチ、インテル、NXPセミコンダクターズなど、低調な決算を発表する企業が多いため、AMDの決算には特に注目したい。ほか、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを公表する。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/31 12:21
後場の投資戦略
今週に注目イベント控えるなか上値の重い展開続く
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27473.75;+91.19TOPIX;1985.42;+2.76[後場の投資戦略] シカゴ日経225先物清算値は大阪比55円高の27415円。本日の日経平均株価は、前週末終値比でほぼ変わらずから取引を開始した。その後、一時マイナスに転じるも切り返し、上げ幅を広げる展開を見せた。ただ、今週に米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催を控えて、徐々に模様眺めムードを強めてくる展開を予想する声が市場からは多く聞かれている。 新興市場でも堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後、朝方に上げ幅を広げた。ただ、前場中ごろからは上値の重い展開となり上げ幅を縮小する動きを見せた。前週末の米国株が堅調に推移したことは国内の個人投資家心理にポジティブに働いている。また、米長期金利は引き続き低水準で推移しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けやすい地合いが継続。前引け時点で東証マザーズ指数が0.69%高、東証グロース市場Core指数が1.37%高となっており、時価総額上位銘柄中心に物色が向かっている。 さて、明日31日から2月1日にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。市場では98%の確率で0.25ptの利上げが織り込まれており、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標は4.5-4.75%となる見通し。予想通りなら利上げ幅は2会合連続で縮小する。米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は20日の講演で「今後は25bpの利上げ幅が適切になるだろう」と述べており、これまでのFRB高官の発言から見ても利上げ幅自体は予想通りとなるだろう。 市場では、パウエル議長の記者会見に注目が集まっている。FRB高官の中で年内の利下げを示唆している者は現時点でいない。パウエル議長は政策金利を当面、高水準に維持して物価上昇圧力が抑制されたと確信するまで金融緩和に転じることはないと表明する公算が大きいとみられている。市場とFRB及びパウエル議長との間の乖離がどのように埋められるかが焦点となろう。 ただ、パウエル議長はリセッション回避とインフレ抑制両方に取り組んでいるがうまくいかない可能性も高い、とブルームバーグでは報じられている。世界2位の経済大国である中国が経済活動を再開させる中で石油価格高騰とインフレが再燃、FRBは政策金利を据え置いた後年内に再び利上げに追い込まれるかもしれないと示唆している。また、引き締めスタンスに固執することでFRBの予想以上に失業率が上昇する可能性もあるという。さらに、ブルームバーグが今月行った調査によれば、エコノミストは1年間に米経済がリセッションに陥る確率を65%とみているようだ。 FOMCの翌日には、欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中銀)が政策金利をいずれも0.5ポイント引き上げる可能性が高い。ブラジル中銀は今週、政策金利を据え置く見通しである。3日には米1月雇用統計、米1月ISMサービス業景気指数の結果発表も控えている。こうした中、企業決算が国内外で本格化する。ハイテク企業や巨大テックGAFAMの決算には非常に注目が集まっており、低調な内容となれば投資家心理の悪化は避けられない。 とにかく、今週は注目すべき材料が多く、上下どちらかに大きく動く可能性があるため、あまりポジションを持たずに相場を見守っておくほうが無難か。他方で、政府は新型コロナウイルスの感染症法上の分類の「5類」への引き下げに合わせて海外からの入国者への水際対策を見直す方針である。引き続き、インバウンド増加に伴って旅行関連や人流増加に伴う消費が直結する関連企業には注目しておきたい。さて、後場の日経平均は、プラス圏での堅調推移が続くか。米株先物の動向を横目に、決算発表を終えた銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/01/30 12:22
後場の投資戦略
景気後退懸念くすぶる材料がちらほら
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27381.18;+18.43TOPIX;1979.85;+1.45[後場の投資戦略] 前日の米株式市場は堅調な推移が続き、ハイテク株を中心に上昇。機関投資家がベンチマークとして使用する代表的なS&P500種株価指数は、日足チャートで5本連続の陽線を形成し、上値抵抗線だった200日移動平均線を超えてから、同線上での推移が4日目となった。過去の高値同士を結んだレジスタンスラインも超え、テクニカル的にはトレンド転換を示唆するかのような強さを見せている。 一方、本日の東京市場は米株高の追い風を素直に反映しきれず、主要株価指数は前日終値近辺でのもみ合いにとどまっている。日経平均が27500円を超えられずに伸び悩んでいるあたり、上値の重さが強く意識される。また、前日は電気自動車テスラが急伸するなど、米ハイテク・グロース株は好調だったが、本日のマザーズ先物も冴えない動き。ここのところの米金利低下や米株高の流れを追い風に、今週は上昇が続いてきたが、米連邦公開市場委員会(FOMC)を来週に控える中、さすがに様子見ムードが強まってきたか。 前日も米国市場では重要な経済指標や企業決算があったが、総じて景気後退懸念を残す内容となった。米国の10−12月期国内総生産(GDP)速報値は前期比年率+2.9%と市場予想(+2.6%)を上回ったものの、GDPの約7割を占める個人消費は同+2.1%と予想(+2.9%)を下回った。また、GDPから変動の大きい純輸出と在庫を除いた実質国内最終需要は、同+0.8%と、前四半期の+1.5%から大きく減速した。 ほか、好調が見込まれていた電子決済処理ネットワークのビザとクレジットカード大手のマスターカードの10−12月決算では、カード決済額が市場予想ほどには伸びず、こちらも個人消費の減速を懸念させる内容となった。 さらに、半導体大手インテルが10−12月期決算は、売上高が前年同期比−32%の大幅減収で、純損益は赤字に転落。PC用チップを扱うクライアントコンピューティング部門の売上高は同−36%だったが、こちらは民生向け市場の落ち込みからある程度は想定線である。ただ、データセンター部門の売上高も3割超える減収となったのはネガティブな印象が否めない。サーバー市場向けなどは年後半からは回復するとの見方を示しているようだが、1−3月期見通しも市場予想を大幅に下回る内容で、全体的に疑念が残る。 来週はFOMCが開催される。年内の利下げはないと主張する米連邦準備制度理事会(FRB)と、年後半の利下げを予想する市場との間の開きは依然として大きく、FOMC後のパウエル議長の会見などが攪乱材料となる可能性もあろう。日経平均の一段の上昇には新規の好材料が必要だろう。なお、本日引け後にはファナック<6954>、ミスミG<9962>、日立建機<6305>などの決算が予定されている。米国では12月個人消費支出(PCE)・個人所得、12月PCEコアデフレータのほか、アメリカン・エキスプレスなどの決算が予定されている。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/27 12:26
後場の投資戦略
雇用削減の波は半導体企業までに広がる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27361.10;-33.91TOPIX;1977.62;-3.07[後場の投資戦略] 前日の米株式市場はまちまちだったとはいえ、寄り付き直後の大幅安をほぼ帳消しにするなど、引け味は悪くなかった。米マイクロソフトの決算はクラウド事業の成長鈍化に加えて今後の慎重な見通しが示されるなど、内容は総じて良くなかっただけに、こうした動きには意外感もあり、地合い自体は悪くないように見受けられる。 しかし、前日の当欄で紹介した半導体企業のテキサス・インスツルメンツや化学・素材メーカーのスリーエムの決算も含め、これまでの米主要企業の決算は低調なものが目立つ。前日発表された半導体企業ラム・リサーチの決算も良くなかった。10−12月期の売上高と一株当たり利益(EPS)は予想を上回ったものの、1−3月期見通しは売上高及びEPSともに予想を大幅に下回った。 同社は全てのセグメントにおける顧客が警鐘を鳴らしているとし、特にメモリー市場が厳しいとの見解を示した。NANDとDRAMの顧客先は設備投資を減らしている最中であり、過剰な在庫をバランスさせるために設備稼働率も落としているという。さらに、中国への半導体輸出規制が更なる向かい風になっていると注意を促した。 一方、同じく前日に決算を発表した極端紫外線(EUV)露光装置で世界シェアを独占する蘭ASMLホールディングは、先端半導体製造装置への強い需要を背景に、市場予想を上回る1−3月期見通しを示した。ただ、同社も中国に対する半導体規制が業界のコスト上昇につながる恐れがあると警告している。 他方、米電気自動車テスラの10−12月期売上高とEPSは揃って市場予想を上回った。競争環境の激化を背景に相次ぐ値引きを強いられており、利益率は大きく低下しているが、マスク最高経営責任者(CEO)は「価格改定により、1月の需要は生産台数の約2倍に及ぶ」と言及、総合的にはある程度の安心感を誘う内容と捉えられているようだ。 しかし、先行き警戒感が依然として拭えない状況は続く。マイクロソフトやアルファベットといった大型IT企業から、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの大手金融まで、多くの米企業が大規模な雇用削減を行っている。それだけ、先行きの景気が危ういと見ている証拠であり、こうした動向を今の株式市場が正確に反映できているとは考えにくい。 前日はIBM も全体の1.5%にあたる約3900人の従業員を削減する方針を示したほか、ラム・リサーチも1−3月期の間に1300人の人員削減を行うと発表した。半導体企業は今年後半からの市況回復を期待する声があり、最近の株価上昇も拠り所にすでに底入れしたと捉える向きもいるようだ。しかし、年後半からの市況回復の確度が高いのだとすれば、1−3月期のタイミングで人員削減を行うラム・リサーチの今回の決定はやや不可解な印象を受ける。半導体市況は市場関係者が抱くほど楽観的な状況でなく、想定以上にさらに深刻なものなのかもしれない。 業界代表の東エレク<8035>の株価チャートをみると、24日の上ヒゲを伴った陰線安値引けを直近ピークに再び下落しており、200日線と52週線に見事なまでに上値を抑えられている。今年の相場テーマは「景気後退」に尽きると思うが、景気後退の度合いが見えてくるまでは、当面、強気派と弱気派の拮抗が続くだろう。相場はレンジ推移が続くと思われ、下手な深追いはせず、下がったところを買い、上がったところを売る、こまめな逆張り戦略に徹することをお薦めしたい。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/26 12:19
後場の投資戦略
悲観修正一巡で決算の見極め重要度増す
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27329.36;+30.17TOPIX;1976.62;+3.70[後場の投資戦略] 日経平均は売り先行後は下げ渋り、前日終値を挟んだ推移となっている。前日の米株式市場で主要3指数がまちまちだったことや、為替の円安進行が一服していることもあり、これらを素直に反映した動きになっている。一方、75日、200日移動平均線が位置する水準までリバウンドしてきたことで、ここから先の方向感は主力企業の10−12月期決算を見極めてからとなろう。 前日の決算では、やはり日本電産の結果が目を引く。10−12月期営業利益は前年同期比36.8%減の280億円と大幅減益となり、市場予想を230億円ほども下回った。精密小型モーターでは、IT全般、特にデータセンター関連での急激な在庫調整が影響。注目の車載は中国ゼロコロナ政策や同政策緩和後の感染拡大による工場稼働率の低下が響いた。家電・商業・産業も家電分野を中心としたコロナ特需の剥落や欧州経済の落ち込みが影響した。通期営業利益計画は2100億円から1100億円へと下方修正されている。 むろん、いくつか差し引いて考慮すべき要因もある。まず、車載の下押し圧力となった中国ゼロコロナ政策はすでに大幅に緩和され、経済再開が急ピッチで進められていることや感染拡大も最悪期を過ぎたとみられることから、先行きは改善が見込まれる。また、通期計画の大幅下方修正のうち7割は構造改革費用として一過性要因である。 ただ、精密小型モーターの調整要因となったデータセンター分野などでの大幅な在庫調整は、今後の半導体企業の決算に対する警戒感を高める。アナリストの投資判断引き上げや市況に関する悪材料はすでに織り込み済みとの見方から、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は前日時点で昨年末から15%も上昇している。しかし、これまでの急速リバウンドにより、過度な悲観の修正は一巡し、決算内容を受けて再び先行き警戒感が高まる可能性が出てきたともいえよう。 半導体分野では、前日はテキサス・インスツルメンツが決算を発表したが、10−12月期の売上高と一株当たり利益(EPS)が市場予想を上回った一方、1−3月期見通しについては、売上高とEPSともに予想を下回る低調な内容となった。最高経営責任者(CEO)は「自動車を除くあらゆる分野で需要が減少している」とコメントした。また、化学・素材メーカーのスリーエム(3M)が発表した10−12月期決算ではEPSが市場予想を下回ったほか、営業利益率が予想を大きく下振れ、今期の通期見通しも予想に届かず、株価は大幅に下落した。 景気敏感株以外では、GAFAMの一角であるマイクロソフトも決算を発表した。10−12月期EPSが市場予想を上回ったことで、株価は時間外取引で一時上昇したものの、売上高は前年同期比2%増と四半期ベースとしては2017年度以来の低い伸びにとどまった。また、成長を支えてきたクラウド事業の増収率も鈍化傾向が続き、説明会での今後の慎重な見通しも嫌気され、時間外取引の株価はその後上昇を帳消しにした。 日米の主力企業決算が総じて低調に終わった中でも、本日の日経平均や東証株価指数(TOPIX)がプラス圏で推移していることは意外感もあり、底堅さを感じさせてくれる。しかし、日本電産の決算に話は戻るが、説明会において永守CEOは「モーターは経済指標だ。我々の業績が落ちたらほかの企業も落ちてくる」などとコメント。今後の決算に対する警戒感はやはり拭えないだろう。 なお、本日の引け後にはサイバー<4751>や富士通ゼネラル<6755>の決算が予定されている。また、米国では電気自動車のテスラや航空機メーカーのボーイング、ITソリューションのIBM、半導体製造装置のラム・リサーチなどの決算が予定されている。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/25 12:16
後場の投資戦略
テクニカル好転も慎重維持も求められる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27339.61;+433.57TOPIX;1971.55;+26.17[後場の投資戦略] 日経平均は半導体を中心とした米ハイテク株高と為替の円安進行という良好な外部環境に支えられ、大幅に続伸。マド空けを伴った上昇により、一気に上値抵抗線として集中する75日、200日の移動平均線を上抜いてきている。週足でも13週、52週線を超え、26週線も視野に捉える展開となっている。一方、日足一目均衡表では厚い雲に突入したばかりの形で、そろそろ戻り一服も意識されやすい頃合いか。 実際、前日の米SOX指数の急伸の背景にはアナリストの投資判断引き上げという支援材料があったほか、日本株については、先週の日本銀行の金融政策決定会合を無難に消化したばかりという短期的な安心感、さらには足元の円安進行に助けられているところが大きそうだ。 しかし、今週から日米の主力企業の10−12月期決算の発表が本格化していく中、ここからの一段の上値追いには慎重にならざるを得ない。今晩は米国でGAFAMの一角であるマイクロソフトのほか、ゼネラル・エレクトリック、スリーエム、テキサス・インスツルメンツななどの注目決算が予定されている。 マイクロソフトの10−12月期売上高は前年同期比で2%の増加と、四半期ベースとしては2017年度以来の低い伸びにとどまると予想されている。足元では米IT企業の大規模な雇用削減の動きが相次いでおり、急速に景況感が悪化している中、対照的な株式市場のリバウンドの強まりはやや違和感もある。 これまでの一連の米インフレ指標の大幅鈍化に加えて、先週末にかけては、米フィラデルフィア連銀・ハーカー総裁やウォラーFRB理事などが、米ボストン連銀・コリンズ総裁や米アトランタ連銀・ボスティック総裁などに続き、次回会合での0.25ポイントへの利上げ幅縮小を支持した。もちろん、こうした米国でのインフレ&金利のピークアウト期待の高まり、次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での不透明感後退も株高の背景にはあるのだろう。 しかし、決算本格化と実際のFOMCの開催を前にしたこれまでのリバウンドにより、株式市場は楽観シナリオの多くの部分をすでに織り込んでしまったともいえる。今晩以降の決算シーズンの本格化と2月1日に結果公表を控えるFOMC後も、今の勢いを維持できるかについては慎重になった方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/24 12:19
後場の投資戦略
今週から日米主力企業決算本格化で注目集まる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26852.85;+299.32TOPIX;1944.05;+17.18[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、上昇スタート後に高値圏でのもみ合い展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比385円高の26915円。本日の日経平均は、シカゴ先物にサヤ寄せする格好からギャップアップから取引を開始。18日の高値を奪還しており、節目の27000円を意識した動きに繋がるかに注目が集まっている。 新興市場でも堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタート。その後は、上げ幅をじりじりと広げる展開となった。日銀金融政策決定会合を無難に消化して米長期金利も低位安定しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けやすい地合いが続いている。前引け時点で東証マザーズ指数が2.06%高、東証グロース市場Core指数が3.78%高となっており、時価総額上位銘柄中心に物色が向かっていることが窺える。 さて、今週からは日米主力企業の決算発表が本格化してくる。市場の焦点が金融政策から企業業績や景気全体へと移りつつあるなか、まずは米マイクロソフトが24日、米テスラが25日に決算を発表する。2月1日にはメタ、2月2日はアマゾンやアップルなどが控えており、各企業の経営陣がどのような先行きを示すかに注目が集まっている。また、マイクロソフトやアマゾンは人員削減に着手しており、グーグルの親会社アルファベットも従業員の削減を計画している。雇用統計などの指標に影響する各企業の人員削減計画にも注目が集まろう。 ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによれば、テクノロジー業界はS&P500種構成企業の昨年10-12月(第4四半期)利益の最も大きな重しになると予想されているようだ。BIのマイケル・キャスパー氏は、S&P500種全体で見られる業績リセッションの多くはハイテク企業に原因があるとした上で、「その多くが織り込み済みであるものの、リセッションの状況次第では同セクターには依然として確実に幾分ネガティブな修正のリスクがある」と指摘した。また、アナリストの予想は楽観的過ぎる可能性があると指摘しており、大企業の決算発表で市場の想定よりも大幅な下方修正が発表されるとネガティブな反応が大きくなりそうだ。 また、本日のブルームバーグでは、ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのテクニカル戦略責任者であるマーク・ニュートン氏が「S&P500種が10月半ばに底入れする公算が大きい」と予想していると報じられている。売り込まれたテクノロジー株を完全に償却するのは時期尚早だと述べており、やはり今週から始まるテクノロジー企業の決算発表に注目しているようだ。 そのほか、インフレが鈍化しつつあり、米長期金利が低水準で推移していることも追い風となり暗号資産ビットコインは16日から22日にかけて260万円台から300万円まで大きく上昇した。暗号資産全体の時価総額も昨年11月以降と比較して回復傾向にあり、リスク資産に資金が戻り始めている。Genesis Global Capitalの破産申請などがあく抜け感につながり急騰、アルトコインも大きく値上がりする銘柄が散見されてきている。 ただ、暗号資産及び米国株がともに好調に推移しているが、暗号資産業界で起きたFTXショック同様に、楽観的な動きが垣間見えるほど突発的なネガティブニュースが流れることもある。引き続き、企業決算や経営陣の発言、FRB高官の発言、地政学リスクの動向などには注目を続けざるを得ないだろう。筆者は前年と変わらず、今年に再度大きく下落する可能性があることを念頭に置いて相場を見守っている。さて、後場の日経平均は、本日高値圏でのもみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/01/23 12:26
後場の投資戦略
今後の決算への警戒感くすぶる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26411.94;+6.71TOPIX;1918.17;+2.55[後場の投資戦略] 本日の東京市場では、前日の米国株安の影響をさほど受けず、主要株価指数が揃って上昇。ただ、上昇率は全体的に控えめ。来週から本格化していく日米主力企業の10−12月期決算の発表や1月31日−2月1日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に全体的にやや手掛かり材料難のようだ。 前日は米国市場でいくつか決算発表があった。動画配信のネットフリックスは取引終了後に四半期決算を発表し、内容は予想を下回ったものも、新規契約者数が予想を上回ったほか、自社株買いの再開計画が好感され、時間外取引で株価は大きく上昇している。 一方、日用品大手のプロクター&ギャンブルは10−12月期の販売量が前年同期比6%の減少と、市場予想(2.6%減)を大幅に下回った。同社が扱う商品の大半は生活必需品ではあるが、景況感の悪化やくすぶるインフレを背景に消費者の支出動向がより慎重になっていることが窺える。 また、アルミニウム生産大手のアルコアの決算では、需要減退によるアルミ価格の下落と出荷量の減少、インフレによるコスト増加というネガティブな組み合わせにより、冴えない内容となった。2023年のアルミ出荷量見通しも市場予想に届かなかった。電気代の高騰などを背景に欧州企業がアルミ生産を削減しているほか、ウクライナ侵攻に伴い、世界2位の生産国であるロシアからの購入手控えが起こっており、構造的な供給不足が懸念されている中での低調な出荷見通しとあって、需要減退の深刻度が伝わってくる。 S&P500種株価指数全体を対象とした予想1株当たり利益(EPS)は10−12月期に前年同期比2.7%の減少が見込まれており、今年の1−3月期から4−6月期にかけては1.5−2.7%程度の減少が予想されている。このように、すでにある程度の景気後退と減益決算は織り込まれているものの、今のところの米企業決算と株価の反応は金融大手も含めてまちまちだ。事前に大きく悲観に傾き、実際に蓋を空けてみれば想定程には悪くないことで株価はあく抜け上昇するというのが、米企業決算シーズンにおけるよくあるパターンだが、今回はどうだろうか。 すでに米企業については全体として減益決算が予想されているが、依然としてアナリスト予想は高いとの指摘もあり、低調な実績と悲観的な見通しが示されれば、今後の目線がさらに切り下がる可能性があるため、注意が必要だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/20 12:13
後場の投資戦略
インフレ沈静化と景気後退懸念の強弱材料が混在
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26468.62;-322.50TOPIX;1920.22;-14.71[後場の投資戦略] 前日の米国市場では強弱材料が混在した。12月卸売物価指数(PPI)は前年比+6.2%と市場予想(+6.8%)を大幅に下回り、前月(+7.3%)から一段と鈍化。前月比では−0.5%と市場予想(−0.1%)を大幅に上回る減速となった。ただ、エネルギー価格の下落が寄与したところが大きく、中国経済の再開を背景に原油や鉄鋼、ニッケル、アルミニウムが足元大きく反発傾向にあることは考慮しておく必要があろう。それでも、エネルギー・食品を除いたコアでも前年比+5.5%、前月比+0.1%とそれぞれ前月(+6.2%、+0.2%)から大きく鈍化したことは評価できる。 また、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の決定に関して参考にする地区連銀経済報告(ベージュブック)では、「多くの地区で、販売価格の上昇ペースが最近の報告期間から減速した」、「全ての地区において調査対象企業は今後1年に物価の伸びがさらに減速するとの見通しを示した」と記載された。米12月雇用統計での平均時給の伸び鈍化や米12月消費者物価指数(CPI)の結果に続き、インフレ沈静化期待が日に日に高まっていることは株式市場の支援要因となろう。 一方で、景気減速懸念が強まっていることは気がかりだ。前日に発表された米12月小売売上高(速報値)は前月比−1.1%と市場予想(−0.9%)を上回る減速となり、11月速報値は−0.6%から−1.0%へ下方修正された。自動車・ガソリンを除くベースでも前月比−0.7%と市場予想(+0.0%)を大幅に下回り、11月速報値は−0.2%から−0.5%へと下方修正された。米国の国内総生産(GDP)の約7割と最大構成比を占める個人消費の動向を示す指標として小売売上高の重要度は高い。大寒波の影響などもあるだろうが、2カ月連続での大幅減速は先行きの警戒感を強める。 また、米12月鉱工業生産も前月比−0.7%と市場予想(−0.1%)を上回る減速となり、11月速報値は−0.2%から−0.6%へと下方修正された。小売売上高と並んで2カ月連続での前月比マイナスとなり、17日に発表された1月ニューヨーク連銀製造業景気指数が2020年5月以来の低水準にまで落ち込んだことと合わせて考えると、個人消費だけでなく、企業活動の低迷もかなり速いペースで進んでいるようだ。 経済指標の落ち込みに加えて、先んじて発表された米金融大手の決算では、貸倒引当金の積み増しが顕著に確認された。全体的に景気後退懸念が強まる中、来週から本格化していく日米の主力企業の決算での10−12月期実績と見通しに対する警戒感は強まっている。 日本については、為替の円高リスクも意識される。前日の日銀金融政策決定会合では緩和縮小が見送られたが、先延ばしにされただけで、政策の追加修正は時間の問題と見ている投資家が海外投資家を中心に多い。2月に入ってからは、日銀新体制の人事も明らかになる予定で、今後も日銀の政策修正を見込んだ投機筋によるトレードは続くとみられる。このため、トレンドとしては為替の円高基調が続きやすいと考えられる。日本の製造業の想定為替レートは1ドル=135円前後のところが多いため、日本の輸出企業の業績下振れリスクへの警戒感はくすぶる。 一方で、景気後退懸念を反映して、米国債利回りが幅広い年限で大きく低下しており、米10年債利回りは18日、3.37%と終値ベースでは昨年12月7日安値を更新、9月半ば以来の水準にまで低下した。 前日は米セントルイス連銀・ブラード総裁が次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5ポイントの利上げを支持したほか、クリーブランド連銀・メスター総裁もブラード総裁と同様にターミナルレート(政策金利の最終到達点)を、5%を優に上回る水準にまで引き上げるべきとタカ派な発言が相次いだことで、米ナスダック総合指数は8日ぶりに反落した。しかし、安値更新で米長期金利の低下基調が強まる中、景気敏感株に対する内需系グロ−ス株の相対優位性は増してきたと考えられる。 実際、本日の東京市場では、日経平均と東証株価指数(TOPIX)が下落している中、マザーズ指数は朝方の売りから上昇に転じて底堅さを見せている。2月1日に結果公表を控えるFOMCが近づく場面では注意が必要だろうが、日銀金融政策決定会合を無難通過した直後ということもあり、景気や為替の動向との連動性の低い中小型の内需系グロース株には目先投資妙味が高いと判断する。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/19 12:20
後場の投資戦略
金融政策決定会合後は円安・株高か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26301.86;+163.18TOPIX;1909.87;+6.98[後場の投資戦略] 東京市場では主要株価指数が揃って上昇。日銀金融政策決定会合の結果を昼頃に控えてはいるが、現状維持の公算が大きいとの見方に傾きつつある中、前日に続き買い戻しが優勢となっているようだ。 JPモルガン証券のクオンツストラテジストの分析によると、足元で、モメンタムに沿った順張り戦略を主体とする商品投資顧問(CTA)のショート(売り持ち)は大幅に積み上がっている可能性が高いとのこと。CTAの既存持ち高の損益分岐点は26550円と試算されており、金融政策決定会合後に日経平均が26500円台を回復すれば、CTAによる買い戻しが誘発され、27000円まで上値を伸ばす展開があると予想している。一方、ネガティブサプライズがあれば、CTAの既存持ち高から推察される短期ターゲットである25220円までの下落があると予想している。 金利スワップの1種であるOIS(Overnight Index Swap)フォワード金利によると、今年4月には日銀がマイナス金利を解除することが織り込まれている。今会合では現状維持が大方の予想だが、仮に2会合連続での政策修正があったとしても、まずはイールドカーブコントロール(YCC)における長期金利上限の引き上げか、もしくはYCCの撤廃にとどまると予想される。マイナス金利の解除についても、円OISが示唆するように新体制に切り替わってすぐの4月に即座に実施されるとは想定しにくい。 市場は日銀の政策修正について前のめりで織り込み過ぎていると考えられる。このため、今会合で予想通り現状維持となれば為替の円安と株高が実現する可能性が高いことはもちろん、仮に政策修正があったとしても想定内にとどまり、目先の材料出尽くし感から短期的にはやはり円安と株高で反応するのではないかと考えられる。もしくは、黒田日銀総裁の会見を見極めたいとの思惑から、午後も方向感が定まらない展開なども考えられる。 ただ、いずれにせよ、今後日米の決算シーズンが本格化する中、あえてこのタイミングで大きなリスクを取りにいく必要はないだろう。前日に発表された1月ニューヨーク連銀製造業景気指数は−32.9と前月から22ポイント低下、市場予想(−8.6)を大幅に下回り、新型コロナパンデミックに伴い経済封鎖が行われた2020年5月来で最低に落ち込んだ。景気後退懸念が強まる中、今後の決算内容に対する警戒感は根強い。決算シーズンを終えて業績精査が終わってからでも投資は十分に間に合うだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/18 12:05
後場の投資戦略
銀行株も崩れ買えるものはゼロ?ではない
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26140.51;+318.19TOPIX;1900.95;+14.64[後場の投資戦略] 前日の米国市場が休場だったことに加えて、日本銀行の金融政策決定会合や黒田日銀総裁の記者会見を明日に控える中、本日は手掛かり材料難と見られたが、東京市場では買いが優勢で、日経平均は1%を超える上昇率となっている。 為替の円高進行が一服していることで、短期筋の買い戻しが進んでいると推察されるほか、中国の経済指標が予想よりも遥かに良好だったことが安心感を誘っているようだ。中国ではゼロコロナ政策の緩和後の感染爆発の影響から、12月の指標に対しては警戒感が高かったため、今回の結果はポジティブサプライズであり、今後の同国の経済再開に伴う景気回復への期待が高まったといえよう。 先週の読売新聞の報道をきっかけに、日銀による2会合連続での政策修正への警戒感がにわかに高まった株式市場ではあるが、明日に結果を控える今会合に限っては現状維持を予想する市場関係者が多いもよう。今回、市場は急速に政策修正を織り込みはじめ、一時はマイナス金利の解除までを織り込む形となった。こうした中、中身はどうであれ、2会合連続での政策修正で応えてしまえば、市場に誤ったメッセージを発することになり、催促相場の様相を強めてしまう恐れがある可能性などが指摘されている。 また、日銀の金融市場局市場企画課が3月1日に公表する債券市場サーベイが2月に実施される。日銀は昨年12月会合での政策修正の要因として、債券市場の健全な機能の回復を挙げていた。12月の政策対応を受けて市場参加者の考えにどのような変化があったのか、こうした点を2月のサーベイ調査で確認するまでは直ちに追加の政策修正を決定することは考えにくい、ということも理由として挙げられている。 以上の観点から、明日の日銀金融政策決定会合は現状維持で終わる公算が大きそうだ。しかし、4月に日銀新体制を控える中、思惑は当面くすぶり続けることになるだろう。世界経済の景気後退入りや為替の円高進行が懸念要素となる自動車関連株などはしばらく上値の重い展開が続くと考えておいた方がよいだろう。金利上昇による債務負担増が意識されやすい不動産セクターもしかりだ。 一方、日銀の追加政策修正を本当に株式市場が嫌がっているのかについては、やや見方を変えるべき点もあると考える。それはグロース株の動向だ。前回の12月会合の政策修正の際には、為替との連動性が小さい中小型の内需系グロース株も大きく売られ、マザーズ指数が特に大きな下落を強いられた。サプライズ的な出来事だったため、流動性リスクの大きい中小型株が売られやすかったという背景もあるだろうが、国内の金利上昇への警戒感も要因として大きかったと思われる。 しかし、先週の読売新聞の報道を契機に追加政策修正への警戒感が高まった今局面はやや様相が異なる。真っ先に自動車関連株や不動産株が売られ、銀行株が買われた初動反応は似たようなものだったが、内需系グロース株はさほど売られていない。Sansan<4443>やマネーフォワード<3994>のように決算に対する反応が良好なものも多い印象だ。これらグロース株に関しては、日銀金融政策決定会合に対する懸念よりも、米国での雇用統計や消費者物価指数を受けたインフレピークアウト期待を好感する動きの方が勝っているのかもしれない。 株式市場では、日銀リスクが台頭してきたことで、製造業関連株が買えず、また唯一買い安心感のあった銀行・保険株も早々に利益確定売りに押されはじめたことで、買うものが何もないといった声も聞かれる。しかし、目を凝らすと、上述の内需系グロース株のように、意外と下値を固めてリバウンド基調を強めているものも多い。今後、決算シーズンが本格化していくため、あえて今のタイミングから積極的に買い攻勢で臨む必要もないだろうが、買えるものは存在していると前向きに捉えていきたい。 なお、今晩の米国市場では1月ニューヨーク連銀製造業景気指数のほか、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの金融大手や航空大手ユナイテッド・エアラインズの決算が予定されている。金融決算では先行きの景気後退懸念を強めるものとなるかが注目される。一方、ユナイテッドの決算では旅行需要の回復が改めて確認されれば、東京市場の航空関連株にもポジティブな波及が期待される。(仲村幸浩)
<AK>
2023/01/17 12:18
後場の投資戦略
市場の注目は日銀の金融政策決定会合に
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;25855.38;-264.14TOPIX;1892.33;-10.75[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、下落スタート後にマイナス圏での軟調もみ合い展開が続いている。シカゴ日経225先物は大阪比290円安の25790円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均は売りが先行。17-18日に控えている日銀金融政策決定会合で追加の政策修正が決定される可能性について報道があり、本日も国内金利上昇への警戒感から利益確定売りが広がっている。香港市場や中国市場の指数はプラス圏で推移、ナスダック100先物は上値の重い展開が続いている。 新興市場でも軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタート。その後は、下げ幅を縮小する動きを見せるもマイナス圏で推移した。ただ、日経平均よりも下落率は小さく、為替の円高影響が小さい新興株に幕間つなぎの物色が向かっている可能性がある。また、インフレピークアウト期待は引き続き新興株のサポート要因として機能している。そのほか、新興市場でも決算発表を行った個別材料株中心に物色が向かっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.78%安、東証グロース市場Core指数が0.44%安。 さて、前週末に発表された米1月ミシガン大学消費者信頼感指数の1年先期待インフレ率は4.0%と市場予想4.3%を大幅に下回り、昨年12月の4.4%から大きく低下した。2021年4月以来の低水準となり、米消費者が今後1年で物価上昇圧力が大幅に緩和するという確信を強めている様子が浮き彫りとなった。米10年債利回りは3.49%と昨年12月以降のレンジ下限まで低下、インフレピークアウト期待は個人投資家心理にポジティブに働こう。 ただ、米国のインフレピークアウトに楽観的な意見が見られてきたなか、今週は日銀の金融政策決定会合が17-18日に開催される。追加の政策修正が決定される可能性について一部メディアが報じており、市場参加者の注目度が急速に高まっている。ブルームバーグ調査によると、ほぼすべてのエコノミストが今回の政策据え置きを予想。ただ、日銀が長期金利の許容変動幅を上下0.25%から同0.5%に拡大した理由である市場機能について、変更後も改善はみられず、市場は早くも変動幅の再拡大やYCC撤廃の可能性を想定し始めている。 年明けの段階では、12月会合の際に決めたYCC運用見直しの影響と効果を見極めるため、さらなる修正は急がない意向とも伝えられていた。2会合連続での政策修正があれば、ネガティブサプライズになろう。同会合が終了するまでは、日経平均は上値の重い展開が続きそうだ。 そのほか、株式デリバティブトレーダーは昨年市場を駆け巡った混乱が中断すると想定しているという。今後数カ月間の価格変動の激しさの予想を示すいわゆるボラティリティ・カーブは、どの点でも1年前より低下。カーソン・グループのチーフ市場ストラテジストであるライアン・デトリック氏は「昨年がどれだけひどい1年だったかを考えれば、市場には すでに多くの悪いニュースが織り込まれている可能性が高い」と述べた、とブルームバーグで報じられている。 また、ネッド・デービス・リサーチによる米商品先物取引委員会(CFTC)のデータ分析によれば、機関投資家は過去数週間、株式のショートポジションをカバーし、今月初めにはネットロングポジションを2022年5月以来の水準に高めたという。ネッド・デービスの米国担当チーフストラテジストは「良好なインフレデータが続き、企業業績がかなり良ければ、ヘッジファンドがショートポジションのカバーを続け、それが相場上昇を持続させるかなり良い材料になると言えるだろう」とブルームバーグに語ったようだ。 インフレが鈍化しつつあり、米金融当局が利上げペースを緩めるとの楽観的観測を受けて暗号資産ビットコインも連日大きく上昇している。暗号資産全体の時価総額も昨年11月以降と比較して回復傾向にあり、リスク資産に資金が戻り始めている。トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズの創業者のマイケル・パーブス氏は、短期的に強気の値動きを意味していると分析したようだ。ただ、暗号資産、米国株が好調に推移してはいるが、引き続きインフレ指標やFRB高官の発言、地政学リスクの動向などには注目を続けたい。さて、後場の日経平均は軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、日経平均が下げ幅を縮小する動きを見せるか注目しておきたい。(山本泰三)
<AK>
2023/01/16 12:21