後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
苦境での「押し目買いの勝機」は?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27377.44;-395.49TOPIX;1919.17;-19.36[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株安を受けてギャップダウンスタートすると、27000円台前半で軟調もみ合いの展開となっている。日経平均は-1.42%、東証株価指数(TOPIX)は-1.00%で前場を折り返した。前日の当欄でも指摘したが、昨年10月以降の調整局面では27000円台前半から半ばを底に切り返したため、これを意識した押し目買いが入っているものと考えられる。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりで、前日ほどではないがまずまず多い。引き続き押し目買いとリスク削減目的の売りが交錯しているのだろう。 米金融引き締めへの警戒感から半導体関連を中心とした値がさグロース(成長)株の苦境が続くうえ、景気悪化への懸念が強まってきたことで景気敏感株も下落。売買代金上位で買われているのは非鉄金属市況の上昇が材料視された住友鉱くらいだ。国内では新型コロナウイルスの感染拡大が続いているが、欧米では既にピークアウトが指摘されたり、行動規制が緩和されたりしていることから、旅行関連株も前日に続き堅調。ただ、「買えそうな銘柄が限られる」といった事情もありそうだ。業種別騰落率を見ると、景気の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄への資金シフトの動きも窺える。 新興市場ではマザーズ指数が-2.08%と大幅反落。こちらも軟調もみ合いの展開だが、前日同様に800ptを割り込む場面が見られた。売買代金トップのウェルスナビ<7342>は朝方こそ前期業績の上方修正を好感した買いが入ったが、その後売り優勢となっている。メルカリ<4385>など他の主力IT株も総じて軟調だ。 さて、前日の日経平均は後場強含んで300円あまり上昇したが、先物手口を見ると外資系証券はおおむね売り越しという印象だった(日経平均先物はドイツ証券、TOPIX先物はモルガン・スタンレーMUFG証券やゴールドマン・サックス証券が売り越し)。一方、野村證券が日経平均先物を買い越し。日経平均が800円近く下落した19日、ネット証券では日経レバETF<1570>が大幅に買い超だったため、これに絡んだ先物買いもあったとみられる。27000円近辺まで調整が進み、個人投資家が積極的に買い向かっていることが窺える。 次に前日の米市場を見ると、10年物国債利回りが1.80%(-0.06pt)に低下した。しかし、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.33%(-0.07pt)とさらに水準を切り下げている。かねて当欄で予想しているとおり、やはり名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の上昇傾向に変わりはない。朝方押し目買いが入っていたハイテク株が失速したのもうなずけるだろう。主要株価指数は連日で長めの陰線を引き、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は25.59(+1.74)まで上昇しており、市況悪化が鮮明となってきた感がある。運用会社グランサム・マヨ・ヴァン・オッテルロー(GMO)の共同創業者ジェレミー・グランサム氏は、米株が「スーパーバブル」の状態にあると指摘しているという。 日米株とも押し目買いの動きが見られるように、まだ「ここまで下げたのだから切り返すのだろう」という期待が根強く残っているのだろう。しかし、コロナ禍を受けた未曽有の金融緩和のもと投資レバレッジを拡大してきた反動が出てくるのは、むしろこれからだと考えられる。差し当たり来週25~26日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えており、引き続き神経質な相場展開とならざるを得ないだろう。(小林大純)
<AK>
2022/01/21 12:23
後場の投資戦略
忘れつつあった20年の教訓「中銀に逆らうな」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27594.29;+127.06TOPIX;1928.43;+8.71[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方こそ自律反発に期待する向きもあったものの、結果的には上下に振らされてやや方向感に乏しい展開となっている。昨年10月以降の調整局面では27000円台前半から半ばを底に切り返したため、これを意識した押し目買いが入っているのだろう。しかし、前日に800円近く下落したことを踏まえると、戻りの鈍い印象は拭えない。個別ではトヨタ自こそ反発しているものの、鉄鋼株に続き海運株が値を崩したことで、金利上昇局面で買いとみられていた大型バリュー(割安)株にも警戒感が広がっている。米金融引き締め懸念から、半導体関連を中心に値がさグロース(成長)株もさえない。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとまずまず多く、押し目買いとリスク削減目的の売りが交錯していることが窺える。 新興市場ではマザーズ指数が+0.40%と反発。こちらも日経平均と同様、前日終値を挟み一進一退の展開だ。ただ、取引時間中としては2020年5月7日以来、およそ1年8カ月ぶりに800ptを割り込む場面があった。時価総額上位ではビジョナル<4194>が6%超上昇する一方、メルカリ<4385>が3日続落。全体としてトレンド好転の兆しは見出しづらく、メルカリなどは当欄で度々指摘してきたとおり、信用買い残の積み上がりがネックになってきた印象を受ける。 さて、前日の米市場では10年物国債利回りが1.86%(-0.01pt)となったものの、一時1.90%と2020年1月以来2年ぶりの高水準を付けた。原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI2月物)は楽観的な需要見通しや地政学リスクの高まりを背景に続伸したが、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.40%(-0.06pt)に低下。結果的に当欄の見立てどおり、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は一段と上昇している。主要株価指数は揃って軟調となり、ナスダック総合指数が終値で200日移動平均線を下回るなど調整局面入りが意識されつつある。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は23.85(+1.06)となお上昇が続いている。 バイデン米大統領は19日、就任1年を前にした記者会見で、金融当局がインフレ抑制のため必要に応じて政策を「再調整」することが適切だなどと述べたという。「インフレの政治問題化」を裏付ける発言と言えるだろう。金融市場では3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの利上げを予想(あるいはそれが必要だという主張)する向きが増え、英マラソン・アセット・マネジメントのブルース・リチャーズ最高経営責任者(CEO)からはFRBがインフレ抑制のため8回の利上げを行うという予想が出てきている。 半面、前日の当欄でも取り上げられていたBofAの1月グローバルファンドマネジャー調査によると、景気高揚とインフレ鈍化を予想する機関投資家が多く、利上げ予想も3回にとどまった。心理学的に「正常性バイアス」が働いているとも考えられるし、2020年のコロナショック直後、戻り相場で売り負けた記憶がまだ鮮明であることも影響している可能性がある。 しかしその際、著名ファンドマネジャーらが反省の弁のなかで述べていた教訓は「中央銀行に逆らうな」だったはずである。FRBがインフレへの対応で金融引き締め姿勢を強める以上、借り入れコストの増大などを通じて消費・投資行動に大きな影響を及ぼすとみておくべきだろう。例えば東京市場でも信用買い残高がコロナショック前を大きく上回っており、今後、投資レバレッジの縮小なども十分想定される。2020年の教訓を再確認しておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/01/20 12:24
後場の投資戦略
FRBの急激なタカ派シフトへの対応に機関も苦慮?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27744.84;-512.41TOPIX;1942.70;-35.68[後場の投資戦略] 本日の日経平均は急落し、昨年12月3日安値27588.61円に迫る水準にまで下落。共に下向きの75日移動平均線が200日線を上から下抜けるデッドクロス(DC)を示現し、テクニカル的には中長期での下落局面入りとなったもよう。 米連邦準備制度理事会(FRB)の急速なタカ派シフトへの対応に苦慮している投資家は、個人や機関を問わずに多くいる様子。昨年12月のFOMCで、今年に想定される政策金利の引き上げ回数が前回時点の1回から3回へと一気に高まった矢先、年明けにはFOMC議事録の公表を受けて、量的引き締め(QT)まで早期に行われる可能性が高まり、3月FOMCでの利上げはほぼ確実視される状況に。 さらに、投資家に休む間を与えることなく、複数のFRB高官から年3回の利上げどころか、4回の利上げに賛同する声が相次いだ。また、ハト派とされてきたNY連銀総裁のウィリアムズ総裁は年3~5回の利上げの可能性を示唆したほか、ウォラー理事もインフレ動向次第で5回の利上げもあり得ると発言。さらに追い打ちをかけるかのように、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)や、著名投資家のビル・アックマン氏が3月FOMC時の利上げは0.25%ではなく、0.5%になる可能性を警告。12月FOMC直後の市場の利上げに関する予想は今年6月からの0.25%の引き上げ、そして年後半からのQTだった。この目が回るような速さでのFRBの急激なタカ派姿勢への変化に投資家も対応が後追いとならざるをえないだろう。 バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した1月のグローバルファンドマネジャー調査によると、機関投資家の71%が「景気ブーム」を予想し、56%がインフレを「一時的」と回答した。差し引き48%が今後のインフレ鈍化を予想しており、この比率は2009年以降で最も高いという。また、機関投資家の資産配分では、株式の債券に対する相対選好度が2011年2月以降で最も高くなったとのこと。ここから窺えるのは、機関投資家の多くがインフレは次第に鈍化し、結果、FRBが想定ほどには急いで引き締めに動くことはないと予想しているもよう。 しかし、上述したFRBの急激なタカ派シフトから窺うに、11月の中間選挙が近づくなか、もはや政治問題化しているインフレに対して、FRBは早期に沈静化するよう政権から圧力をかけられている様子。仮に、FRBが政治的な忖度から年央からのインフレ鈍化を確認することなく、このまま早期引き締めに着手するとなれば、それは1月調査時点の機関投資家の読みとは異なり、投資家は修正対応を迫られることになる。連休明けの米国市場で株式相場が再び崩れたのにはこうした背景があるのかもしれない。となれば、相場の調整は思ったより長引きそうで、現在のグロース株に厳しい局面は少なくとも25-26日のFOMC結果を確認するまでは続くだろう。 昨日発表された米1月のNY連銀製造業景況指数は-0.7と予想の25を大幅に下回った。サプライチェーンの乱れの影響もあるだろうが、新規受注の指数は32.1ポイント下げて、-0.5、出荷の指数は26.1ポイント低下して1となった。最近は、米国の経済指標の水準低下や予想対比での下振れ傾向がやや多い印象。景気鈍化の中でのインフレ後追い型による金融引き締めともなれば、景気敏感株にも逆風となりそうだ。実際、足元、資源関連株の騰勢もやや一服してきている様子。ハイテク・グロースが買えなければ、景気敏感・バリュー(割安)を買えばいいという単純な話が通用する可能性も高いとはいえず、投資家にとって厳しい局面が続きそうだ。 後場の日経平均は引き続き冴えない展開が続きそうだ。アジア市況はまちまちで、時間外取引の米株価指数先物にも大きな動きが見られないなか、ここから一段と売り込む余地は大きくないと考えられる。一方、今晩以降の米株式市場が下げ止まるかを見極めたいとの思惑も働きやすい。積極的な押し目買いは期待しにくく、日経平均は心理的な節目の28000円を下回った推移が続きそうだ。
<AK>
2022/01/19 12:11
後場の投資戦略
インフレ下で注目集まる日銀会合結果
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28574.15;+240.63TOPIX;1997.08;+10.37[後場の投資戦略] 前場の日経平均は欧州株高や新型コロナ感染ピークアウトへの期待などから堅調な展開となった。日足チャートを見ると、28400円台に位置する5日移動平均線を上回り、28600円台に位置する25日移動平均線に迫る動き。14日に一時28000円を割り込んだところからやや値を戻してきており、短期的なトレンド好転を意識した買いが入っている可能性もあるだろう。個別株では、トヨタ自が連日で取引時間中の上場来高値(株式分割考慮)を更新し、初めて時価総額40兆円に達したことが話題となっている。その他景気敏感株の一角もまずまず堅調だが、値がさグロース(成長)株のリバーサル(株価の反転上昇)の様相が強い。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりと、前日の米休場もあってやや低調だ。 新興市場ではマザーズ指数が+2.41%と4日ぶりに大幅反発。ここ3日の下げ幅が70ptあまりとかなり大きく、グロース株のリバーサルの流れに乗って主力IT株はおおむね堅調だ。売買代金上位では、前日ストップ高のEnjin<7370>が大幅続伸し、外資系証券の投資判断引き上げが観測されたビジョナル<4194>は急反発している。 さて、前日の米市場は休場だったが、日本時間18日朝の取引で米10年物国債利回りは一時1.8%台に上昇した。また、米2年物国債利回りは2020年2月末以来の1%台乗せとなった。東京市場のグロース株高を見るとわかりづらいが、引き続き米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが強く意識されているようだ。 こうしたなか、本日まで開催される日銀金融政策決定会合への注目度も高まっている。世界的にインフレ圧力が高まるなか、事前に「日銀がインフレ目標2%を達成する前に利上げ開始できるか議論している」などと報じられたためだ。今回の会合では政策の現状維持が決まるとみられているが、公表文や黒田東彦総裁の会見内容から経済・物価の見通しや金融政策の行方を見極めたいとの思惑が強い。 日米ともリベラル色の強い政権となり、インフレへの不満に目配りする姿勢を示すことで金融政策にも影響が出てくるとの見方がある。実際、11月に中間選挙が控える米国では、パウエル議長の再任指名と前後してFRBが「インフレファイター」へと変貌を遂げた。また、当欄で度々指摘しているとおり、日銀は2023年4月に黒田総裁の任期満了が控えており、市場では「黒田緩和の出口」を意識する向きも出てきている。 本稿執筆時点では確認できないが、後場は日銀決定会合結果を受けて相場展開が大きく変わる可能性もあるだろう。また、海外では1月のドイツZEW(欧州経済研究センター)景況感指数、米NY連銀製造業景気指数、それに米ゴールドマン・サックス決算などが発表される。NY連銀製造業景気指数では足元のサプライチェーン(供給網)混乱の影響が注目されており、引き続き外部環境を注視しておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/01/18 12:15
後場の投資戦略
グロースへの警戒感継続
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28318.54;+194.26TOPIX;1985.98;+8.32[後場の投資戦略] 一時300円超まで上げ幅を広げた日経平均は前引けにかけて大きく失速。下向きの25日移動平均線が上値抵抗線となっており、日足ローソク足で付けた長めの上ヒゲですら同線に遠く及ばない格好となっており、上値の重さが強く印象付けられる。 先週末の米国市場では、13日に1.70%まで低下していた米10年国債利回りが1.79%へと再び大きく上昇している中でもハイテク・グロース株に押し目買い入ったことで、買い戻しも入りやすいかと思われたが、来週25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えるなか、警戒感は依然かなりくすぶっているようだ。個別では、半導体関連の一部に買いが入っている一方で、資源関連株などの景気敏感・バリュー(割安)株への買いの方が本日も目立っており、こうした物色動向からもまだグロースへの懸念は根強い様子。 特に、今日も下落しているマザーズ指数が気掛かりだ。ナスダック総合指数が反発しても下落が止まらないところから深刻さが窺える。プライム市場への変更申請をしたメルカリ<4385>は久々に上昇しているものの、BASE<4477>、JTOWER<4485>、HENNGE<4475>、ビジョナル<4194>、Appier<4180>など時価総額上位銘柄の下落ぶりが依然として目立つ。その他も全般として軟調な銘柄が多く、下落局面でも買い向かっていた個人投資家の含み損益は相当に悪化しているようで、本格的な持ち直しにはかなり時間がかかりそうだ。 後場の日経平均は5日移動平均線が位置する28380円近辺でのもみ合いが続きそうだ。朝方の買い戻しが一巡し、今晩の米国市場がキング牧師誕生記念日で休場となるなか、手掛かり材料難で買い戻しが再度強まる可能性は低そうだ。アジア市況もまちまちで方向感は出にくいだろう。
<AK>
2022/01/17 12:14
後場の投資戦略
「実質金利の更なる上昇」と「FRBに続き日銀も?」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27945.70;-543.43TOPIX;1965.12;-40.46[後場の投資戦略] FRBによる金融引き締めへの警戒感が強まるなか、本日の日経平均は500円超の下落で前場を折り返した。取引時間中に28000円を割り込むのは昨年12月20日以来で、同月6日以来の安値を付けている。日足チャートを見ると、各種移動平均線が集中する28000円台半ばから後半を下放れる格好。引き続き値がさグロース株の下げが大きく、特に中小型は厳しい状況だ。景気敏感株も利益確定売りに押され、前引けの日経平均が-1.91%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-2.02%となっている。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりで、ここ数日と比べかなり膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が-4.19%と大幅続落。900pt割れで持ちこたえていたものが下抜けしてしまい、取引時間中としては2020年5月15日以来の安値を付けている。引き続きマザーズは中小型グロース株への逆風をもろに受ける形で、メルカリ<4385>が6%超下落し、フリー<4478>に至っては10%超の下落だ。重ねて強調するが、株式市場全体として昨年12月は信用買い残が減少したものの、個人投資家に人気のマザーズ銘柄などはむしろ買い残を積み上げてきた。こうした銘柄が損失拡大で売りを迫られるなど、株式需給の一段の悪化も想定しておく必要があるだろう。 さて、米国では13日、12月PPIの下振れを受けて10年物国債利回りが1.70%(-0.04%)に低下した。しかし、インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.43%(-0.05pt)とさらに低下。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は一段と上昇する形になった。また、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が20.31(+2.69)と再び節目の20を上回ってきたことにも注目しておきたい。 ブレイナードFRB理事は公聴会で、インフレが米国人を苦しめているとの認識とともに、早期利上げを示唆したという。これまでFRB高官のタカ派的な発言が相次いでいたものの、ハト派的と目されていたブレイナードのこうした発言は、改めてFRBの「インフレファイター」への変貌ぶりを金融市場に意識させたようだ。米金融大手モルガン・スタンレーなど、実質金利の更なる上昇を予想する声が相次いでいる。 また、日銀もインフレ目標2%を達成する前に利上げ開始できるか議論しているなどと報じられた。昨年末の当欄で述べたが、FRBが金融政策の正常化へと傾くなか、今年は黒田東彦総裁の任期満了(23年4月)まで1年を切る日銀の動向も注目されてくるだろう。既に上場投資信託(ETF)買い入れ頻度などは大きく低下しているが、「黒田緩和」の総括や今後についての議論の行方が気になるところだ。 短期的な急変動を見ると反動を想定したくなるのが心理的な傾向だが、コロナ禍を受けての緩和相場が転換点を迎えた可能性もあるとみておくべきだろう。 その他、国内では13日、新型コロナウイルス新規感染者数がおよそ4カ月ぶりに17000人を超えた。東京都では3124人まで増え、警戒レベルを1段階引き上げている。また、今晩の米国で発表される12月の小売売上高や鉱工業生産も注目されるだろう。前引けのTOPIXが2%超の下落とあって、後場は久々に日銀によるETF買いが実施される可能性があるものの、引き続き不安定な相場展開を想定したうえで慎重に取り組んでいきたい。(小林大純)
<AK>
2022/01/14 12:29
後場の投資戦略
早々にイベント通過の買い戻し一服?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28517.94;-247.72TOPIX;2007.64;-11.72[後場の投資戦略] 米12月CPIの発表を通過し、本日の日経平均は一転して軟調な展開となっている。日足チャートを見ると、28600円台に位置する25日移動平均線を再び下抜け。景気敏感株はまずまず堅調で、商品市況の先高観などから関連銘柄が大きく上昇しているものの、値がさグロース株の反落が日経平均を下押しする格好となっている。前引けの日経平均は-0.86%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.58%。東証1部銘柄の7割あまりが下落し、下落率上位には中小型グロース株が目立つ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、ここ数日と比べるとやや少ない印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-3.04%と4日ぶり大幅反落。900ptを割り込んだところで下げ渋っていたが、前述のとおり中小型グロース株への逆風が再び強まっている。メルカリ<4385>やフリー<4478>、ビジョナル<4194>といった主力IT株は軒並み軟調だ。これまでも指摘しているが、比較的人気の高いマザーズ銘柄は11月後半からの下落局面で信用買い残を積み上げてきており、株価が一段と下押しするようなら影響は大きいだろう。 さて、米国では11日にパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の再任に絡んだ議会上院の公聴会、12日に12月CPI発表という重要イベントを通過し、日米株とも大きく上昇する場面があった。米長期金利が一時低下したこともあり、市況解説では「FRBによる早期金融引き締めへの警戒感が後退」といったものが多かった。 ただ、債券サイドの関係者のコメントなどから、パウエル氏の発言を受けて「引き締め加速」の見方に大きな変化があったようには感じられない。各種報道を見ても、著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏が金融緩和の巻き戻しによるリセッション(景気後退)に警鐘をならし、JPモルガン・アセット・マネジメントの債券運用責任者であるボブ・マイケル氏は10年物国債利回りが年内に最高3%に達する可能性があると示唆している。 実際、12日の米債券市場では10年物国債利回りが一時低下したものの、セントルイス連銀のブラード総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁によるタカ派的な発言が伝わり、結局1.74%(+0.01pt)となった。短期の年限の金利は一段と上昇。一方、インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.48%(-0.06pt)と再び大きく低下した。FRBの「インフレファイター」ぶりがなお意識されていることの証左と言える。一時的な長期金利の低下(債券価格の上昇)やハイテク株の上昇は「警戒されていたイベントを通過したことによる短期的なあく抜け」の様相が強い。しかし、こうした売り方の買い戻し(ショートカバー)の動きも早々に一服したように感じられる。 また、為替相場の変動率(ボラティリティ)が高まってきたのも気掛かりだ。米CPI発表後は1ドル=115.40円近辺から一時114.40円近辺まで急落。大方のドル高期待に反しての動きで、痛手を受けた投機筋が多いものと考えられる。国内では12日、新型コロナ新規感染者数が13244人とおよそ4カ月ぶりに1万人を上回った。もっとも、米金融大手の顧客調査で日本株のアウトフォームに期待する向きが極めて少ないのは、なにもコロナ禍のせいだけではないのかもしれない。 米国では今週後半も卸売物価指数(PPI、13日)、小売売上高や鉱工業生産(14日)といった昨年12月の重要経済指標の発表が続き、国内でも11月締めの決算の発表がピークを迎える。従来どおり相場全体として上下に振らされる場面が続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2022/01/13 12:21
後場の投資戦略
グロース底打ち感や安川電機の上昇でセンチメント改善
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28748.21;+525.73TOPIX;2015.20;+28.38[後場の投資戦略] 日経平均は大幅反発。朝方の買い一巡後は心理的な節目の28500円近辺で伸び悩む場面も見られたが、前場中頃から騰勢を強めると同水準を大きく超え、25日移動平均線を回復してきた。直近の下落がきつかったことを踏まえれば、驚くほどの上昇ではないものの、米12月消費者物価指数(CPI)の発表を控えるなか、戻り待ちの売りから失速することなく、前引けにかけてもう一段の上昇を見せてきたことは強い動きと言える。 10日に一時1.8%を超え、およそ2年ぶりの高値をつけた米10年国債利回りは、11日、1.74%まで低下し、上昇一服感が強まった。10日に一時2%を超える下落率で推移していたナスダックは金利上昇の一服により急速に買い戻され、同日は結局小幅高に転じ、金利低下が鮮明となった11日は大幅に上昇した。下落基調が目立っていたマザーズ指数も、前日は日経平均や東証株価指数(TOPIX)が下落していたなか小幅ながら上昇で終え、本日は大幅に続伸している。金利上昇の一服とともに日米ともにハイテク・グロースに目先の底打ち感が出てきたことはポジティブに捉えたい。 製造業決算の前哨戦とも位置付けられる安川電機が良好な受注動向を映して大幅高に転じてたことも投資家心理を明るくさせる。米国でも今週末から大手金融企業を皮切りに決算発表が始まる。外部環境が落ち着いてきたタイミングで決算シーズンに突入し、日米ともに良好な企業決算が相次げば、相場のムードも再び明るくなりそうだ。 一方、今晩には米12月CPIの発表が予定されており、市場予想では前年比の伸びが+7.0%と、11月の+6.8%を更に上回る見込みだ。さらに、25~26日は今年最初の米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えている。そのため、まだまだ楽観視できる状況でもないだろう。しかし、それでもCPIの伸びは事前に警戒されていることから、多少上回る程度であれば、波乱なく通過しそうだ。また、FOMCも、昨年12月開催分のFOMC議事録の公表以降、FRBの複数の高官から相次いで3月時点での利上げや速やかなバランスシート縮小に賛同する言動が確認されていることから、こちらも相当程度に織り込みが進んでいると考えられる。3月FOMCが近づくタイミングでは再び、金利動向を含め市場が神経質になる展開が予想されるが、目先は戻りを試す局面となることに期待したい。 さて、香港ハンセン指数が大幅高となるなか、米ハイテク株の底打ち感への期待もあり、後場の日経平均は引き続き強い動きが継続しそうだ。後場も失速することなく、高値圏での推移を維持できれば、明日以降の戻りや29000円回復にも期待が持てそうだ。
<AK>
2022/01/12 12:11
後場の投資戦略
米雇用引き締まりを確認してパウエル氏証言へ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28231.31;-247.25TOPIX;1981.22;-14.46[後場の投資戦略] 注目された米12月雇用統計を受けて米株が下落し、連休明けの東京市場も売り優勢の展開となっている。もっとも、米市場では景気敏感株やハイテク株が循環的に買われる場面があり、日経平均はNYダウやナスダック総合指数と比べ一段と弱い印象を受ける。売買代金上位を見ると値がさグロース株の下げがきつく、日経平均を下押ししている感があるものの、東証株価指数(TOPIX)も-0.72%と日経平均(-0.87%)並みに軟調。時価総額上位のトヨタ自は比較的底堅く、金融株などは堅調だが、TOPIXを下支えしきれていない。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりで、ここ数日並みの水準となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-0.63%と反落。こちらは前場中ごろにプラス圏へ浮上する場面もあった。前週の下げがきつかっただけに押し目買いが入ったとみられるが、買いが続かないところに中小型グロース株への警戒感の根強さが窺える。売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>は昨年12月後半のきつい調整から切り返し、大幅に3日続伸。11月に上場したばかりだが、時価総額300億円あまりの小型株で、市場流通株も非常に少ないとみられる。マザーズ市場全体の売買代金は7日、株価不調に伴い1611億円まで減少。短期の値幅取りを狙った物色は少額の買いで株価を押し上げやすい小型株に向かわざるを得ないだろう。 さて、米12月雇用統計は非農業部門就業者数が前月比+19.9万人(11月は+24.9万人、修正後)となり、市場予想(+42万人程度)を下回った。一方、失業率は3.9%(同4.2%)に改善し、平均時給は前年同月比+4.7%と予想(+4.2%)を上回った。高賃金でも人々が労働市場に復帰せず、需給のタイト化が続いている構図だ。これにより米債券市場ではFRBの3月利上げを織り込む動きが一段と強まり、短期の年限を中心に金利が上昇。米金融大手ゴールドマン・サックスなどは今年4回の利上げを予想しているという。ただ、金融引き締めによる景気悪化を懸念する向きもあるようで、10年物国債利回りは1.8%近辺で伸び悩み。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.5%を下回ったところでいったん下げ止まっている格好だ。 こうしたなか、今晩の米国ではパウエルFRB議長の再任を巡り、上院銀行委員会で公聴会が行われる。度々当欄で指摘しているとおり、11月の中間選挙を前に消費者のインフレへの不満が意識されざるを得ない。公聴会ではパウエル氏にインフレ対応への質問が相次ぐだろう。いきおい、発言もタカ派色が強くなりやすいと考えられる。実際、証言草稿では「高インフレが定着するのを防ぐために我々の政策手段を用いる」との認識が示されているようだ。 そもそも市場に身を置いていると誤解しがちだが、中央銀行関係者にとってイレギュラーな金融政策を長期間続けることは不名誉なことである。次の景気悪化局面での政策対応余地も限られてしまう。パウエルFRBが金融政策の正常化を急ぐのは、なにも政治の圧力が強まっているからというわけでもないだろう。 米国ではほかにも12月の消費者物価指数(CPI、12日)、卸売物価指数(PPI、13日)、小売売上高や鉱工業生産(14日)といった重要経済指標の発表が相次ぐ。また、国内でも安川電<6506>や小売大手など11月締めの決算発表が多くある。これらの内容を睨み、相場全体として上下に振らされる場面が続きそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/01/11 12:24
後場の投資戦略
米雇用統計前に実質金利はさらに上昇
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28395.24;-92.63TOPIX;1988.92;-8.09[後場の投資戦略] 本日の東京市場では朝方こそ自律反発期待の買いが先行したが、日経平均は-0.33%、東証株価指数(TOPIX)は-0.41%で前場を折り返した。前日のNYダウが下落したとはいえ、アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が上昇しているのを見ると、相変わらず日本株の軟調ぶりが目立っている。日経平均の日足チャートは、下降する5日移動平均線に上値を抑えられ、連日で長めの陰線を引く形。金融株や市況関連株の一角が上昇しているが、東証1部銘柄の6割強が下落しており、引き続き中小型グロース(成長)株の下げが目立つ。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。米雇用統計の発表や3連休を控えたタイミングながら、日中値幅が大きいだけに前日並みの水準となっている。 新興市場ではマザーズ指数が-1.96%と5日続落。こちらは日経平均に先んじてマイナスへ転じた。連日で取引時間中の昨年来安値を更新しており、前日も述べたとおり2020年5月以来の安値水準となっている。時価総額トップのメルカリ<4385>こそ底堅く推移しているが、その他主力IT株は全般軟調。売買代金上位ではFRONTEO<2158>が5日続落している。個人投資家のセンチメントや資金余力の悪化は鮮明で、日本株の弱さの一因となっているのかもしれない。 他に考えられる要因としては、日本国内における新型コロナウイルス感染者数の増加などといったところか。東京都の新規感染者数の推移は4日151人、5日390人、6日641人となっている。前日の先物手口を見ると、クレディ・スイス証券やJPモルガン証券、BofA証券といった外資系証券が日経平均先物を売り越していた。本日も陸運株や旅行関連株の一角が軟調で、感染拡大への警戒感が窺える。もっとも日本株の評価が高まらない根本的な理由は別にあるかもしれないが、そのあたりの議論は別の機会にしたい。 さて、6日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI2月物)が一時80ドル台まで上昇した。産油国カザフスタンの政情不安などが取り沙汰されたが、このところ原油需要増加への期待が高いことも背景にある。こうした動きの一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.46%(-0.07pt)とさらに低下した。金利は短期の年限を中心に上昇し、10年物国債利回りは1.72%(+0.02pt)。一時1.75%と昨年3月以来の高水準を付けた。 セントルイス連銀のブラード総裁は6日、「早ければ3月のFOMCで政策金利の引き上げを開始することが可能で、その後インフレ対応における次のステップとしてバランスシート縮小に着手することもあり得る」などと述べたという。FOMC議事要旨に続き、ブラード氏の発言がFRBの「インフレファイター」ぶりを意識させたとみられる。 これらを受け、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の上昇が続く形となっている。株式市場では米ハイテク株などの押し目買い意欲の根強さが窺えるものの、逆風が止んだとは言えない。今晩発表される12月雇用統計を受けてこうしたトレンドが続くのか、あるいは転換点となるのか見極めたいところ。なお、市場予想では12月雇用統計について、非農業部門雇用者数が前月比44万人あまりの増加(11月は21万人増)、失業率が4.1%(同4.2%)、平均時給が前月比0.4%増(同0.3%増)になるとみられている。(小林大純)
<AK>
2022/01/07 12:24
後場の投資戦略
やはり「FOMC議事録」からが本番だった
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28721.49;-610.67TOPIX;2010.93;-28.34[後場の投資戦略] 注目されたFOMC議事要旨で米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢が改めて意識され、本日の日経平均は600円を超える下落で前場を折り返した。日足チャートでは、29000円前後に位置する5日移動平均線と75日移動平均線を一気に下抜け。朝方は節目意識の働く29000円近辺で下げ渋る動きも見られたが、支えきれなかった。個別では景気敏感株買い、グロース株売り継続だが、東証1部全体としては8割強の銘柄が下落。挽回生産への期待が持てる自動車株、国内外での新型コロナ感染拡大で供給ひっ迫が続きそうな海運株など、「買える銘柄」は限られるのかもしれない。東証株価指数(TOPIX)は-1.39%。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりとなっている。 新興市場ではマザーズ指数が-4.18%と大幅に4日続落。節目の900ptを割り込み、取引時間中としては昨年5月20日以来の安値を付けている。時価総額上位のメルカリ<4385>など全般軟調。売買代金トップのFRONTEO<2158>は大幅に4日続落しているが、昨年末にかけて信用買い残を大きく積み上げていただけに厳しいところだろう。 当欄では度々、5日のFOMC議事要旨公表からが新年相場の本番と強調してきたが、やはりと言うべきか、日米株とも急反落を強いられる格好となった。FOMC議事要旨は決定内容を踏まえるとさほどサプライズがあるとも思えないが、「実際にかなりタカ派的なイメージの強いものになった(SMBC日興証券)」などと捉えられている。特に利上げ・バランスシート縮小の加速が「既定事実であるような書きぶり」がタカ派姿勢を強く意識させたようだ。それに金融市場がここ数日、景気高揚への期待を高めるとともに、金融引き締めを織り込む動きがやや薄れていた反動も大きいだろう。 実際、米国債利回りは5日、短期の年限を中心に大きく上昇。景気の先行きに対する根強い期待もあり、10年物国債利回りは1.70%(+0.05pt)と昨年4月以来の水準に上昇した。一方、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.53%(-0.04pt)に低下。FRBが「インフレファイター」の姿勢を鮮明にしたことが影響しているのだろう。 結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は上昇する方向となり、特にハイテク株にとって逆風となっている。もっとも、景気敏感株も「相対的に安心感がある」だけで、株式全体として実質金利の上昇はポジティブではないだろう。市場では金融引き締めによる景気腰折れを警戒する向きがあるほか、利回り水準重視の債券投資家の買いも想定されることから、長期金利が一段と上昇するかどうかまでは見通しづらい。ただ、長期金利の低下圧力、それにBEIの上昇圧力が強まりそうな材料は乏しいとみられる。 また、日米ともハイテク株の需給状況には厳しいものがありそうだ。市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は昨年12月30日申込み時点で3兆3576億円。12月は一貫して減少が続いていたが、ヒストリカルで見ればなお高水準にある。コロナ禍以降、世界的に個人がレバレッジを効かせた取引を活発化させていたのは昨年末の当欄で指摘したとおり。12月のIPO(新規株式公開)ラッシュと年末の損出し売りを通過すればマザーズ市場の需給状況は改善すると当欄では期待していたが、金利上昇によるハイテク株売りが水を差してしまった格好だ。再び損失覚悟の売りを迫られる個人投資家が多く出てくる可能性がある。 それに、米国ではハイテク株投資で知られるキャシー・ウッド氏の運用会社アーク・インベストメント・マネジメントの苦境も取りざたされている。同氏に賛同する個人投資家らから資金を集め、「破壊的イノベーション」に投資するという手法は一見すると時流に乗るものと感じられる。ただ、資金流出の懸念が常に付きまとう上場投資信託(ETF)で長期的なイノベーションを見越した投資を行うことは本質的に難しいと筆者は考えている。 今晩の米国では11月の貿易収支や12月のサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数、明日7日には12月の雇用統計が発表される。その後も経済指標の発表が続き、25~26日にはFOMCと重要イベントが目白押しとなる。方向感を見出すのは容易でないが、警戒感をもって取り組む必要がありそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/01/06 12:24
後場の投資戦略
バリュー買い・グロース売りの流れはいつまでか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29313.22;+11.43TOPIX;2038.29;+8.07[後場の投資戦略] 東証1部の出来高は久々に前引けの段階で6億株を超え、売買代金も1兆6000億近くにまで上っており、一日を通じて3兆円を超えてきそうな勢い。こうした中、トヨタ自やデンソーなど、日本を代表する企業が年明けから連日で上場来高値を更新してきたところは、日本株全体にとっても明るい材料だろう。 前日の米株市場および本日の東京市場ではバリュー買い・グロース売りの動きが鮮明になっている。今晩は、米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派にシフトした昨年12月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表される。利上げや量的引き締め(QT)に対する見解を見極めたいとの思惑が働きやすいほか、週末には12月米雇用統計も控えていることから、グロース株には持ち高調整の売りが出やすいタイミングだろう。 一方、前日の米債券市場では短期金利が低下した一方で長期金利が上昇していた。金融引き締め懸念よりも、コロナ収束後の景気回復を期待した動きが反映されていたといえそうだ。景気回復期待が強まる中でのバリュー買い・グロース売りとあって、一見、昨年前半のリフレトレードを彷彿とさせるかのような動きだ。 こうした動きが長期化する可能性は低いとみるが、少なくとも今週末の米雇用統計を通過するまでは、同様の物色傾向が続きやすいだろう。年明け後も軟調な展開が続くマザーズ指数は本日も4%近い大幅下落で、昨年12月21日の安値をも下回ってきているが、底打ちは来週以降に持ち越されそうだ。 後場の日経平均は前日終値を挟んだ一進一退が続きそうだ。FOMC議事録の公表などを控え、ハイテク・グロースへの押し目買いが限られるほか、香港ハンセン指数を筆頭にアジア市況の下落が上値抑制要因となりやすい。一方、トヨタ自など割高感に乏しく今年度も成長ストーリーが描きやすい銘柄への買いが全体を下支えしよう。
<AK>
2022/01/05 12:13
後場の投資戦略
一見好発進も「気になる点」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29188.16;+396.45TOPIX;2017.70;+25.37[後場の投資戦略] 名実ともに新年相場入りした本日の日経平均は400円近い上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、上昇する5日移動平均線が下値を支える形となり、昨年12月に上値抵抗線として意識されていた75日移動平均線を上抜け。値動き良化を受けて短期筋の買いが入っている可能性もありそうだ。売買代金上位を見ても、時価総額トップのトヨタ自や昨年の好パフォーマーである半導体関連株、海運株が大きく上昇しており、2022年相場の先行きに期待を持たせる動きとなっている。 もっとも、東証1部の値上がり銘柄数は6割強で、日経平均や東証株価指数(TOPIX、+1.27%)の上げ幅が大きい割にやや少ない印象を受ける。規模別指数を見ると大型株が特に堅調で、個人投資家の物色も半導体関連や海運といった主力大型株に向いている可能性がありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまり。さすがに昨年末より増えているが、さほど大きく膨らんでいるわけでもない。 新興市場ではマザーズ指数が-1.20%と続落。局所的に賑わっている銘柄も限られ、昨年12月に上場したばかりの直近IPO(新規株式公開)銘柄の一角は下げがきつい。こうしたマザーズの動向も「主力大型株先行」という見方を裏付けるものだろう。 このように、日経平均や主力大型株を見ると好調な出足という印象が強いが、マザーズを中心とした中小型株まで見渡すとまちまちといったところか。年末にかけて取引を手控えていた機関投資家の買いが入っている可能性がある一方、個人投資家は中小型株から主力大型株への物色シフトにとどまっている感がある。 やはり年明け好発進となった米株も、重要な経済指標の発表やイベントが相次ぐ本日からが本番かもしれない。特に注目されているのが5日公表される昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録。12月のFOMCでは資産購入の減額(テーパリング)を加速させることが決まったほか、2022年内に3回の利上げを行う見通しが示された。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ対応で急速に金融引き締め姿勢に傾くなか、FOMCでどのような議論がなされたのか注視する必要があるだろう。 また、4日には昨年12月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数や11月の米求人件数(JOLT)、5日には12月のADP社の全米雇用リポートが発表される。本日、中国メディア財新などが発表した12月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.9と前月比1.0pt上昇した。米国でも企業業績への期待が根強い一方、求人件数などの雇用関連統計には注意が必要かもしれない。10月のJOLT求人件数は過去2番目の高水準だったが、それが供給制約による労働需給ひっ迫を意識させ、インフレ観測を強めた経緯がある。もちろん、7日発表の米12月雇用統計もFOMC議事録と並んで注目度が高い。 これらの重要イベントを前に、3日の米債券市場では10年物国債利回りが1.63%(+0.12pt)となるなど、幅広い年限で金利が急上昇した。期待先行で始まった日米株式相場もイベントに対する反応が気になるところだ。(小林大純)
<AK>
2022/01/04 12:16
後場の投資戦略
2021年市場データから得られる示唆は?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28886.09;-20.79TOPIX;2000.05;+1.06[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方こそ300円超下落する場面があったが、前引けにかけて小安い水準でもみ合う展開となっている。ここまでの東証1部売買代金は8000億円あまりと薄商い。4日間の休場を前に個人投資家などから手仕舞い売りが出やすいだろうが、取引参加者が少なく、積極的に売り持ちに傾こうとする向きは限られるだろう。アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が反発しているのも下支えとなりそうだ。2020年末の日経平均は27444.17円で、21年通年ではプラスで終えそうな情勢だ。新興市場ではマザーズ指数が-1.04%と3日ぶりに反落。こちらは個人投資家の手仕舞い売りの影響が出やすいとみられ、物色の矛先も指数組み入れ前の直近IPO(新規株式公開)銘柄に向いているようだ。年明けの新年相場での躍進に期待したい。 さて、年末を前に2022年の注目イベント等が取り沙汰されているが、本日の当欄では21年の市場データを振り返り、今後の相場展望を巡るヒントを得たいと思う。 (1)現物株の投資主体別売買動向 1月4日週から12月13日週までの累計で、主な買い主体は事業法人(1兆6000億円程度)、海外(4000億円あまり)、個人(2000億円あまり)となっている。一方、主な売り主体は信託銀行(2兆2000億円あまり)、投資信託(1兆2000億円あまり)など。信託銀行や投信の売りは株高に伴い資産配分を維持するためのものだろう。年金運用の目安となる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオでは、国内株式の構成割合を25%(かい離許容幅として±8%)としている。セオリーで言えば少子高齢化(受給者比率の上昇)が進むなか、リスク資産の構成割合を一段と引き上げるのは難しいところかもしれない。逆に、株価の支え役となったのは企業による自社株買いだったことも窺える。 (2)海外投資家の株価指数先物の取引状況 1月4日週から12月13日週までの累計で、東証株価指数(TOPIX)先物が4000億円程度の売り越し、日経平均先物が1兆6000億円あまりの売り越しとなっている。まとまった買いが見られたのは菅義偉前首相の去就に絡んだ「政局相場」時で、TOPIX先物は8月23日週から9月21日週まで、日経平均先物は8月23日週から9月13日週までにそれぞれ8000億円あまり買い越していた。当時も本欄で度々述べたが、グローバル投資家が日本に求めているものは「変化」であることが改めてわかる。なお、裁定取引残高は1月4日週が差し引き9000億円程度の売り越しだったのに対し、12月13日週は2000億円弱の買い越しとなっている。 (3)信用取引残高 東名2市場、制度・一般合計で、1月8日申込み時点の買い残が2兆4124億円、売り残が8593億円だった。これが12月24日申込み時点では買い残が3兆4344億円、売り残が7989億円となっている。コロナ禍以降、米中などで証拠金債務(マージンデット)が拡大していることが度々話題となるが、個人の取引が活発化して信用買いの持ち高を膨らませているのは日本も同様だと言える。なお、買い残高のピークは11月26日申込み時点の3兆7401億円だが、増勢が強かったのは夏ごろまでだったように見受けられる。主要中央銀行が金融引き締め姿勢に傾き、国内外で個人投資家のレバレッジをかけた取引にも影響が出てくる可能性はある。 (4)日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ 通常買い入れの実施状況を月ごとに見ると、1月4回(計2004億円)、2月1回(501億円)、3月5回(2705億円)、4月1回(701億円)、5月0回、6月1回(701億円)、7月0回、8月0回、9月1回(701億円)、10月1回(701億円)、11月0回、12月0回(29日まで)となっている。4月以降の回数減少が鮮明だが、従来、前引け時点でTOPIXが0.5%超下落した際に実施していたところを2%超に変更した可能性があるなどと捉えられている。2020年は「売り手にならない」日銀のETF買いが下値を支え、売り方の買い戻しが相場上昇を演出したが、今年下支え役となったのはこれまで見てきたとおり企業の自社株買いと個人投資家の信用買いだろう。節目節目で上値が重かったこともうなずける。 なお、2022年の投資論点としてあまり話題に上がっていないが、日銀の黒田東彦総裁の任期満了(23年4月)まで1年を切り、「黒田緩和」の総括や今後についての議論が活発となる可能性もあるだろう。動向が注目されるのは米連邦準備理事会(FRB)ばかりではなさそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/30 12:16
後場の投資戦略
「掉尾の一振」より手仕舞い売り優勢か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28809.86;-259.30TOPIX;1994.87;-10.15[後場の投資戦略] 前日におよそ一カ月ぶりに29000円を回復した日経平均は、本日は想定以上の下落ぶりで、早々に29000円割れに後戻り。日足チャートでは前日に回復したばかりの200日移動平均線を割り込んだ。また、気になるのは、本日の下落により、その上にある75日線が強烈な上値抵抗線として存在感を強める形になってしまったことだ。12月8、16日と並び、3度も戻り局面で同線を明確に突破することができず、この先も、上昇しても戻り待ちの売りが意識される状況だ。 一方、東証株価指数(TOPIX)の下落率は、0.51%と日経平均の0.89%より軽微にとどまっており、東証1部の値上がり銘柄も全体の60%と過半数を上回っている。売買高も4億株程度と低調なところを見ると、薄商いのなか短期筋が日経平均先物を主体に売っている影響が大きいとみられる。そのため、過度な悲観までは不要だろう。 ただ、前日に大幅増収増益の好決算を発表したマルマエが大きく売られていることは気になる。もともと株価が上場来高値圏にあったほか、前日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が反落していたこともあり、出尽くし感が先行しやすい状況ではあった。しかし、好決算でも年末年始を跨ぎたくない投資家心理も窺え、いまの市場センチメントがそこまで強気でないことを示唆しているようだ。「掉尾の一振」が期待されてはいたが、今年は手仕舞い売りが優勢となりそうで、明日の大納会への望みはやや剥落したか。 後場の日経平均は引き続き軟調な展開となりそうだが、前引け間際にかけては下げ渋る動きが見られた。商いが薄い分、アジア市況や時間外のNYダウ先物による影響が大きいだろうが、28500円が近づく場面ではさすがに押し目買いが入るだろう。
<AK>
2021/12/29 12:16
後場の投資戦略
「実需筋なき年末ラリー」を再強調
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28952.76;+276.30TOPIX;1994.92;+17.02[後場の投資戦略] 連休明けの米株が強い値動きを見せ、本日の日経平均も朝方400円を超える上昇となる場面があったが、その後上げ幅を縮め前場を折り返した。日足チャートを見ると、29000円台に位置する75日移動平均線や16日に付けた直近高値29070.08円を一時的に上回ったものの、上ひげを付ける格好。売買代金上位では半導体関連を中心とした値がさ株の堅調ぶりが目立つものの、東証1部全体としても7割ほどの銘柄が上昇し、東証株価指数(TOPIX)は+0.86%となっている。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまり。海外がクリスマス休暇だった24日、27日と比べると増えているが、年末を前に売買はなお低調だ。株価指数先物の売買高も同様の印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-0.35%と続落。前日終値を挟みもみ合う展開となっており、日足チャートでは連日の陰線形成と、日経平均以上に伸び悩んでいる印象がある。前日上場したアジアクエスト<4261>などの直近IPO(新規株式公開)銘柄やアスタリスク<6522>などの個別材料株の一角が買われているが、メルカリ<4385>やビジョナル<4194>といった時価総額上位の主力株が軟調。前日までリバウンドしていたFRONTEO<2158>も売りに押される展開となっている。 こうした動向を見ると、24日の当欄「『実需筋なき年末ラリー』の賞味期限は?」での見立てに沿った相場展開となっていることが窺える。実需筋を中心とした機関投資家の多くが年末を前に不在のなか、米株上昇を受けた海外短期筋による株価指数先物の買い戻しが日経平均の上昇を演出しているのだろう。現物株、先物とも薄商いとなっているため、こうした買い戻しの影響は強く出やすいと考えられる。 一方、節目の29000円を上回ってきたことで、個人投資家からは利益確定売りが出ているだろう。日経レバETF<1570>のネット証券での取引状況は28500円を超えたあたりから売り超となっていたが、27日時点の純資産総額も4337億円とまずまず高水準にある。また、本日は12月末の権利付き最終売買日となるため、節税目的の損出し売りが出やすいとも考えられる。マザーズの軟調ぶりからもそれがわかる。 もっとも、主要中央銀行の金融引き締め姿勢への傾斜に警戒感を強めるファンドマネジャーらが休暇中、さらに「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は17.68(-0.28)と低下基調にあることを踏まえると、損出し売りが一巡した後は年末にかけて売りが出にくい需給状況となるかもしれない。 とはいえ、個人と中心とした国内投資家は年末年始の4日間の休場中に持ち高を維持するか悩ましいところか。トルコ・リラが不安定とあって、年末年始の為替相場の急変動などが意識される可能性はあるだろう。また、重ねて強調するが、年明け後は1月5日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の内容が注目されており、米主要経済指標の発表や25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と重要イベントが目白押しだ。改めて年末の「実需筋なきラリー」の賞味期限を意識しつつ、投資家それぞれのリスク許容度や時間軸に沿って対応していく必要がありそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/28 12:23
後場の投資戦略
200日線前で伸び悩み、今晩の米株市場に注目
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28711.12;-71.47TOPIX;1980.32;-6.46[後場の投資戦略] 週明けの日経平均はやや手掛かり材料難のなか軟調もみ合い。200日移動平均線を手前に伸び悩んでおり、同線の上値抵抗線としての存在感が強くなってきている。先週末の米株市場が休場だったことで動意に乏しいのは致し方ないが、年内の間に、この水準を突破しておかないと、年明け以降の株高に期待を繋ぎにくくなる。 今週は年内最後の週となり、声高に言うほどでもないが、まだ「掉尾の一振」に期待した投資家もいるだろう。欧米では、既に年始までの長期休暇に入っている投資家もいるだろうが、今週はクリスマス休暇明けで相場に戻ってくる投資家もいるとみられ、新年度に向けた買いも期待されるところ。そうした中、まずはクリスマス休暇前に引け味よく終わった米株市場が、今晩どのような動きを見せてくるかを見極めたい思惑も強いだろう。連休明けの今晩の米株市場が強い動きを見せれば、東京市場でも、「損出し」売りが一巡すると思われる明日28日を境とした年末に向けた株高への期待が高まる。 後場の日経平均は引き続き動意薄の動きが続きそうだ。本日は香港市場が休場のなか、上海総合指数は小幅高で推移しており、時間外取引の米株価指数先物はまちまち。手掛かり材料難のなか、今晩の米株市場を確認したい様子見ムードが一段と強まりそうだ。
<AK>
2021/12/27 12:17
後場の投資戦略
「実需筋なき年末ラリー」の賞味期限は?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28821.35;+22.98TOPIX;1989.19;-0.24[後場の投資戦略] 米市場では新型コロナ「オミクロン型」への懸念後退につながるニュースや良好な経済指標を受け、主要株価指標が揃って3日続伸。S&P500指数は過去最高値を更新し、東京市場もこうした流れを引き継いだ。ただ、日経平均は米株価指標と比べ上値の重さが鮮明で、東証株価指数(TOPIX)に至っては-0.01%で前場を折り返した。ここまでの日経平均の日中値幅は66円ほどにとどまっており、東証1部売買代金は8700億円あまりと前日以上に低調だ。なお、前日の東証1部売買代金は1日を通じ1兆8853億円と、7月6日以来の低水準だった。東証1部の値上がり銘柄数は値下がり銘柄をやや上回る程度で、業種別騰落率では下落しているセクターの方が多い。 前日も触れたが、海外投資家の多くはクリスマス休暇中(欧米アジアの主要株式市場も振替休場となる)。また、年末を前に持ち高を大きく動かす機関投資家は限られる。主な取引参加者は残った個人投資家や機械的に売買するタイプの機関投資家のみとみられ、このことは東証1部売買代金、それに売買代金上位の顔ぶれや値動きを見てもわかるだろう。 前日の日経平均は後場に入り強含み、高値引けとなったが、先物手口を見ると外資系証券各社がTOPIX先物をやや買い越ししていた。香港などのアジア株が堅調だったことを受けた買い戻しとみられる。株価指数先物の取引も低調となっているため、多少の買い戻しでも相場に与える影響が大きいと考えられる。 ここから年末年末にかけて目立ったイベントはなく、年明け1月5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表まで休暇を決め込む米ファンドマネジャーが多いという。S&P500指数の高値更新は短期筋の買いや売り方の買い戻しが演出した「実需筋のいないラリー」なのかもしれない。 日本株はというと、前日もネット証券では日経レバETF<1570>が売り超だった。日経平均が28500円を上回り、個人投資家が利益確定売りのスタンスであることが上値を抑えている要因の1つであると考えられる。もっともS&P500指数が高値更新したくらいであるから、海外勢の先物買い戻しによりもう一段戻りを試す可能性はあるだろう。 ただ、年明け以降はFOMC議事要旨の内容に加え、各種物価統計、1月25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果などを見極めたいとする声が多い。先日取り上げたとおり、米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した調査によれば、多くのファンドマネジャーが最大のリスクとして意識しているのは新型コロナ「オミクロン型」などではなく「タカ派的な中央銀行」である。年末の「実需筋なきラリー」の賞味期限がいかほどか、注意する必要があるだろう。(小林大純)
<AK>
2021/12/24 12:23
後場の投資戦略
年末年始はマザーズに勝機見出す?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28651.46;+89.25TOPIX;1980.24;+8.73[後場の投資戦略] 米株の続伸を受けて本日の東京市場でも買いが先行したが、やや上値の重い展開となっている。日経平均の日足チャートを見ると、28600円台に位置する25日移動平均線を寄り付きで上回ってきたものの、明確に上放れすることはできず。売買代金上位では個人投資家に人気のレーザーテックや海運株の上昇が目立ち、業種別騰落率では景気の影響を受けにくいディフェンシブセクターから市況関連を中心とした景気敏感セクターへの循環的な資金シフトが見られる。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は9000億円あまりと非常に低調で、取引参加者の減少は鮮明だ。 世界的な新型コロナ「オミクロン型」の感染拡大による景気減速懸念が強まっていただけに、前日発表の米経済指標が相次いで予想を上回ったことなどはまずまず安心できる材料だろう。ただ、米消費者信頼感指数を公表しているコンファレンスボードは発表文で、物価上昇や冬季に予想される新型コロナ感染拡大で引き続き逆風に直面するだろうなどと記している。実際、22日の米10年物国債利回りは1.45%(-0.01pt)となり、債券市場では景気の先行きに対する警戒感が根強いことがわかる。今晩の米国では11月の個人所得・個人消費支出(PCE)や耐久財受注、新築住宅販売件数が発表されるため、引き続きこうした経済指標の動向を注視したい。 また、株式市場では前述のとおり取引参加者が減り、買いに弾みが付きにくい。年末を前に持ち高を大きく動かす機関投資家は限られるだろう。また、前日の先物手口では短期筋による買い戻しに一服感が出ていた。さらに、ネット証券での売買動向を見ると日経レバETF<1570>が売り超となり、日経平均が28500円を上回る場面では個人投資家も売りスタンスであることがわかる。20日の28000円割れから戻してきた日経平均だが、ここからの上値は重いとみておいた方がよいだろう。 一方、マザーズ指数は-0.50%と3日ぶりに反落して前場を折り返しているが、年末年始にかけての持ち直しが期待できるかもしれない。今週のIPO(新規株式公開)ラッシュは、有力スタートアップとして注目されたFinatext<4419>(22日上場)やエクサウィザーズ<4259>(本日上場)が公開価格割れスタートとなるなど、全体として厳しい船出を強いられた感はある。ただ、11月後半から人気マザーズ銘柄が相次ぎ急落し、個人投資家の資金余力低下が鮮明となっていただけに、IPOラッシュ進展による市場への資金還流の影響は大きいだろう。実際、前日は日経平均の伸び悩みに反し、マザーズ指数は+3.47%という大幅上昇を見せた。 一昨日の当欄でも指摘したが、先週後半からマザーズ指数先物の建玉が増加している。過去には新興株の持ち直しを見越して海外ヘッジファンド等がマザーズ指数先物の買い建玉を積み上げる場面があり、これがトレンド好転のシグナルとして機能していた。ここ1カ月ほどの株価の大幅下落で値ごろ感の出てきた成長期待株も少なくない。年末年始も積極的に取引参加したい個人投資家にとっては好機となるかもしれない。(小林大純)
<AK>
2021/12/23 12:13
後場の投資戦略
28500円維持に安堵感、マザーズ指数は底打ち感強まる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28548.80;+31.21TOPIX;1969.78;-0.01[後場の投資戦略] 前日の東京市場は、米株安の中でも大幅反発するなど底堅さを見せたものの、本日は対照的に、米株の大幅高を追い風にできない冴えない展開となっている。日経平均は、25日移動平均線に上値を抑えられる形となっており、12月16日の高値からみると上値切り下げの形となっている。日本や欧米の株式市場では底打ち感の兆しも見られてはいるが、海外勢がクリスマス休暇入りで取引参加者が少ないなか、依然として明確な方向感が定まっていない。本日も、前場の東証1部の売買代金は1超円を割り込んでおり低調。週内は、商いが限られるなか引き続き需給主導でボラティリティーの高い相場続きそうだ。 一方、日経平均は前場に一時心理的な節目の28500円を割り込み、前日比でマイナスに転じる場面もあったが、そこから値を崩さず、再びプラスに転じて同水準を回復してきたことには先行きに対する明るさも感じさせる。これまでの流れからあまり期待できそうにもないが、クリスマス休暇明け、新年入りに向けて海外勢が新たに仕込んでくるような動きが出てくれば、「掉尾の一振」の可能性もありそうだ。 他方、東証1部の主力株が冴えないなか、久々にマザーズ指数が3%近い上昇率で強い動きをみせている。本日はマザーズ市場に新規株式公開(IPO)した銘柄が6銘柄もあったが、公開価格を割り込むなど軟調な出足の銘柄が多かった。IPOに備えて換金売りしていた個人投資家の含み損益が改善しなければ、マザーズ市場全体の機運にも影響しかねないため、やや懸念したが、既存の主力株に買いが入り、全体としては堅調な動きとなった。マザーズ先物の日中売買高の推移をみても、IPO参加に伴う海外投資家の先物を使ったヘッジ売りも一巡してきたとみられ、年末に向けてはマザーズ指数の底打ち感がより鮮明になってくる可能性があり、期待したい。 さて、後場の日経平均は引き続きもみ合いとなりそうだ。香港ハンセン指数が大きく上昇している一方で、時間外取引の米株価指数先物は軟調で、外部環境はまちまち。目先、目立った材料もなく、心理的な節目の28500円を維持できるかが焦点となろう。
<AK>
2021/12/22 12:13
後場の投資戦略
ひとまず自律反発も「慎重姿勢広がる」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28496.83;+559.02TOPIX;1974.19;+32.86[後場の投資戦略] NYダウなどの海外株価指数が下げ一服となったことを受け、本日の日経平均も大幅反発する展開となっている。ここ2日の下げ幅の半分ほどを取り戻し、日足チャート上では28500円近辺に位置する5日移動平均線水準を回復する場面もあった。塩野義の飲み薬の有効性が確認され、新型コロナ「オミクロン型」感染拡大への懸念が和らいだとの見方があるほか、前日に中国の景気減速懸念から大きく売られた香港株がひとまず反発していることも安心感につながった可能性がある。東証1部銘柄の9割近くが上昇し、業種別でも全33セクターが上昇する全面高の展開。ただ、ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円あまりにとどまっている。年末年始を前に取引参加者は少なくなっているようだ。 新興市場でもマザーズ指数が+1.80%と3日ぶり反発。時価総額トップのメルカリ<4385>などが上昇し、売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>も急反発している。ただ、前日上場したヒュウガプライマ<7133>とグローバルセキュ<4417>は揃って大きく下落。前の週の新規上場銘柄が振るわず、今週からのIPO(新規株式公開)ラッシュに不安もあったが、ヒュウガプライマやグローバルセキュは公開価格を4割ほど上回る堅調な初値を付けた。もっとも、これら2銘柄が本日大きく下落しているのを見ると、IPOラッシュ中とあって投資資金の足は速そうだ。 なお、本日東証2部に新規上場した湖北工業<6524>は公開価格比+32.5%という初値を付け、マザーズ上場のラバブルマーケ<9254>はまだ買い気配が続いている。一方、東証2部上場のライフドリンクC<2585>とマザーズJDR(外国株信託受益証券)上場のYCP<9257>は公開価格割れスタートとなり、初値買い人気が二極化している印象を受ける。明日22日はFinatext<4419>やリニューアブル<9522>など6社が新規上場し、これらIPO銘柄の動向がより注目されそうだ。また、11月後半から大幅下落を強いられてきたマザーズ指数だが、最近のマザーズ指数先物の売買高の増加を見ると、IPOラッシュ通過後の持ち直しを期待できるかもしれない。 さて、直近の大幅下落による値ごろ感などから国内外の株式相場はひとまず反発した。ただ、海外では新型コロナ「オミクロン型」感染拡大が続き、たのみの米歳出案も米民主党マンチン上院議員の反対で早期成立が見通しづらくなった。米金融大手ゴールドマン・サックスはこれを踏まえ、来年の米GDP(質国内総生産)成長率予想を下方修正。来年11月の米中間選挙に向けて、与野党対立どころか米民主党内の足並みの乱れが露呈したことも注意しておく必要があるだろう。 また、主要中央銀行のタカ派姿勢への傾斜も引き続き懸念材料だ。米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)などは、量的緩和時代は終えんに向かうとして弱気の投資スタンスを示している。実際、実需筋が多いとされるBofA証券の東証株価指数(TOPIX)先物の取引手口を見ると、ここ数日売り越しに傾いてきた。 こうしたグローバルな投資家・市場関係者の慎重姿勢を見ると、本日の日経平均は薄商いのなか短期筋主導で自律反発しているに過ぎないと考えざるを得ない。アジア市場では香港ハンセン指数が既に失速気味で、後場の日経平均も節目意識の働きやすい5日移動平均線水準で一進一退の展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/12/21 12:23
後場の投資戦略
緩和縮小に変異株懸念、シナリオ再考迫られる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28055.28;-490.40TOPIX;1952.48;-31.99[後場の投資戦略] 週明けの東京市場は総じて冴えない展開。日経平均は25日、75日、200日の各移動平均線が上値抵抗線となっており、9月14日の高値を直近ピークにした上値切り下げトレンドが継続。東証株価指数(TOPIX)も200日線まで下がってきている。 セクター別では、資源関連株など景気敏感業種を中心にほぼ全面安。先週末に大きく下落していたハイテク・グロース株の下落は限られているが、押し目買いも入りにくいとみられ、好決算をきっかけに連騰が続いていた三井ハイテク<6966>などは本日も下げがきつい展開となっている。 大台の1000ptを既に大きく割り込んでいるマザーズ指数も前場中頃からマイナスに転じるなど冴えないが、今週から新規株式公開(IPO)ラッシュとなることを踏まえれば致し方ない。本日、マザーズ市場にIPOした3銘柄のうちJDSC<4418>は公開価格とほぼ同水準での初値形成となったがその後は値幅制限いっぱいまで買い進まれた。また、HYUGA PRIMARY CARE<7133>も公開価格を大幅に上回る水準で初値を付けた後、ストップ高まで買われた。マザーズ市場での個人投資家の評価損益率は事前に相当に悪化していたため、今後のIPOラッシュの中でも良い初値形成とセカンダリーが続けば、損益改善した投資家のマザーズ既存銘柄への回帰とともに、マザーズ指数の底打ち感にもつながるかもしれない。 他方、全体相場は暗雲垂れ込むかのような状況だ。先週、米連邦公開市場委員会(FOMC)の公表結果とパウエル議長の記者会見を受けて、直後の米株市場がハイテク株を中心に大幅高となったことで、懸念要素も払しょくされ、いよいよ年末株高ラリーかと期待する投資家も多かったと思われる。 しかし、期待空しく、英国中央銀行が予想外の利上げに踏み切ったことや、日銀がコロナ禍での資金繰り支援策の縮小を決めたことで、世界的な金融緩和縮小が改めてフォーカスされるなか、週末は一転して前の日の上昇分を打ち消す展開。ハイテク・グロース株中心に急伸・急落したことから、消去法的に景気敏感株が頼みの綱になるかと思いきや、欧米でのオミクロン株感染の急拡大が待ったをかけた。 オミクロン株については重症化率が低いことや既存ワクチンがある程度有効という報道を受けて懸念が大きく後退していたが、感染拡大のスピードは想定以上とみられ、医療機関の逼迫が警戒されている。オランダでは既にロックダウン(都市封鎖)が決まった。また、英国では新規感染者数が18、19日と連日で1万人を超え、ロックダウンには至っていないものの、検討せざるを得ないと伝わっている。景気回復が鮮明だった米国でも劇場街ブロードウェーでの休演などイベントの延期が相次いでいるという。 さらに、米国ではバイデン大統領の経済施策を盛り込んだ2兆ドル規模の税制・支出法案について、マンチン議員が不支持の立場を明確にするなど、寝耳に水のような事態が起こっている。オミクロン株の感染動向に加え、米経済対策の先行きにも不透明感がくすぶるなか、景気敏感株にも強気一辺倒になれない。 米長期金利が停滞するなか、米ハイテク株は先週末に押し目買いも見られたが、こちらも不透明感が強い。NY連銀のウィリアムズ総裁は、利上げが経済にとり「ポジティブなサイン」としたほか、連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は3月FOMCでは利上げも選択肢となると発言。政策金利見通し(ドットチャート)で来年3回の利上げが示されていたとはいえ、3月となると、テーパリングの終了と同時になる。あまりにFRBのタカ派への姿勢転換が鮮明で、インフレはFRBにとってそこまで想定外の事態になっているのかと疑念をもたらす。FRBが先手で動く分には相場は好感しそうだが、後手に回った対応の印象が強いと、利上げはストレートに相場のマイナス材料として捉えられそうで、懸念が高まる。 さて、後場の日経平均は下値模索の展開が続きそうだ。上海総合指数や香港ハンセン指数などのアジア市況のほか、時間外の米株価指数先物は総じて軟調。前引けにかけては急速に下げ幅を広げており、投資家心理は悪化している。心理的な節目の28000円をかろうじて維持して前場は終えたが、後場、この水準を下回るような場面があると、仕掛け的な売りも膨らみそうで注意したい。
<AK>
2021/12/20 12:16
後場の投資戦略
予想外の英利上げや米経済指標下振れ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28799.60;-266.72TOPIX;1998.96;-14.12[後場の投資戦略] 本日の日経平均はFOMC通過後の大幅上昇から一転、軟調な展開となっている。日足チャートでは、前日に29100円近辺に位置する75日移動平均線に迫る動きを見せたものの、本日は28800円台に位置する25日移動平均線を挟んでのもみ合い。売買代金上位では米ハイテク株安を受けて値がさ株の軟調ぶりが目立つ。一方、原油などの商品高を受けて市況関連株は堅調。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりで、前日よりやや少ない。 新興市場ではマザーズ指数が-2.27%と3日ぶり大幅反落。前日も日経平均と比べると伸び悩みが鮮明で、本日再び取引時間中の年初来安値を更新してきた。売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>は好需給を背景に物色人気が続くが、相対的に時価総額の大きい銘柄の軟調ぶりを見ると、損失拡大に苦しむ個人投資家がなお少なくないと考えざるを得ない。東証1部のネットプロHDに見られるように、来週のIPOラッシュに備えるための換金売りも出ているのだろう。 さて、足元で新型コロナ新規感染者数が過去最多を更新している英国は、中銀が予想外の利上げに踏み切った。ジョンソン首相が感染抑制に向けた一段の規制強化も示唆するなかでの利上げは、各国中銀がインフレへの懸念を強めていることを印象付けそうだ。 FOMC直後こそ大幅に上昇した米ハイテク株も急失速。もっとも米国では今晩、先物取引と株価指数オプション取引、個別株オプション取引の取引期限が重なる「トリプルウィッチング」を迎えるため、需給要因によるものとの見方もある。しかし、ナスダック総合指数は長めの陰線を付ける格好となり、S&P500指数も11月22日に付けた取引時間中の最高値に届かず下げたことから、ムードの悪さを感じざるを得ない。 前日指摘したとおり、そもそも多くのファンドマネジャーにとって「タカ派的な中央銀行」はリスク要因として捉えられている。また、11月の小売売上高に続き、12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)やフィラデルフィア連銀製造業景況指数などの米経済指標が市場予想を下回ったのも気になるところ。外部環境をよく見極めたうえで取り組む必要があるだろう。(小林大純)
<AK>
2021/12/17 12:20
後場の投資戦略
FOMC通過が「短期的なあく抜け」にとどまりそうな理由
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28904.25;+444.53TOPIX;2008.31;+24.21[後場の投資戦略] FOMC通過後の東京市場では、米株高の流れを引き継いで買いが先行した。朝方には早々に29000円台を回復する場面があったが、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートでは、寄り付きで28800円台に位置する25日移動平均線水準を回復する一方、29000円台に位置する75日移動平均線に上値を抑えられる格好。売買代金上位や業種別騰落率は全般堅調な印象を受けるが、日経平均が400円を超える上昇となっている割に、東証1部全体としては2割近い銘柄が下落している。前引け時点で日経平均が+1.56%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.22%。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、FOMC前の手控えムードの反動が出ているにしてはさほど膨らんでいる感がない。株価指数先物主導の上昇という可能性もあるだろう。 新興市場ではマザーズ指数が+0.50%と続伸。こちらは日経平均以上に伸び悩みが鮮明となっている。また、前日は後払い決済サービスの国内最大手として注目されたネットプロHD<7383>(東証1部上場)が公開価格割れスタートを強いられたが、本日マザーズ市場に新規上場したブロードエンター<4415>やTrueData<4416>も公募・売出規模20~30億円クラスながら伸び悩む展開となっている。 これまで当欄で度々指摘しているが、従前人気だったマザーズ銘柄の相次ぐ急落で個人投資家の損益は大きく悪化しているもよう。さらに、12月後半のIPO(新規株式公開)のブックビルディング(需要申告)こそおおむね一巡したが、購入申込みに伴う資金拘束が発生しているとみられ、個人投資家の資金回転が改善したとは考えにくい。 さて、米国では14日発表の11月卸売物価指数(PPI)がかなり強い内容だったこともあり、FOMC前に連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めに対する警戒感はかなり強まっていたのだろう。来年3回の利上げ見通しという内容にも関わらず、ハイテク関連を中心に米株は大きく上昇した。米金利は10年物国債で1.46%(+0.02pt)と長期の年限を中心にやや上昇したが、比較的落ち着いている印象。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)もこれまで低下が続いていただけに、2.39%(+0.02pt)とやや上昇した。 ここまでの市場反応を踏まえ、FOMC通過による一段の株高に期待する向きもあるが、果たしてそうか。米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した12月のファンドマネジャー調査によれば、投資配分のうち現金の占める比率が2020年5月以来の高い水準になっているという。一方、株式への配分は20年10月以来の水準に縮小。国別に見ると、米国とともに日本への配分比率も大きく低下している印象を受ける。「タカ派的な中央銀行」が最大のテールリスクとみられているもよう。 もっとも景気の先行きについて悲観する向きは限られ、現金比率の上昇は「押し目買い機会につながる」との見方もあるようだ。ただ、今回のFOMCではファンドマネジャーらのリスクシナリオに沿って金融引き締めの方向が示され、持ち高修正の動きが本格化するだろうか。前述したとおり、本日の東京市場での売買動向を見ても、単にFOMC通過によるあく抜けを期待した短期筋中心の取引にとどまっている印象は拭えない。 また、日本でも本日から日銀金融政策決定会合が開かれているが、来年は日銀の動向がより注目されてくる可能性がありそうだ。ここまで長くなったので、このあたりの話はまた次回以降述べたい。(小林大純)
<AK>
2021/12/16 12:23
後場の投資戦略
FOMC直前で模様眺め、米PPI上振れはポジティブ?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28409.40;-23.24TOPIX;1981.21;+7.40[後場の投資戦略] 日経平均は下向き転じた5日移動平均線の下方で軟調な動きとなっている。FOMCの公表結果とパウエル議長の記者会見を目前に控え、値がさハイテク株を中心に手仕舞い売りなどが優勢となっているようだ。 11月の米PPIは総合で前年比の伸びが+9.6%と、統計開始以来、過去最大の伸びを記録し、市場予想(+9.2%)を大幅に上回った。前月比でも+0.8%と予想(+0.5%)を大きく上回り、さらに、変動の激しいエネルギー・食品を除いたコアでも前月比+0.7%と予想(+0.4%)を大幅に上回った。量的緩和縮小(テーパリング)の加速はほとんど決定事項のように捉えられていたが、今回の結果を受け、FRBが利上げの前倒しに積極的になるのではとの思惑も高まっているようだ。 ただ、事前にこれだけ警戒感が高まっていれば、ある程度はFRBのタカ派シフトも織り込めたと言えそうだ。そうした意味では、むしろ、FOMCの結果公表直前に警戒レベルが一段上がったことはポジティブかもしれない。油断は禁物だが、年内最後のイベントを無難に通過し、年末株高ラリー、出遅れ感のある日本株のキャッチアップなどに期待したいところだ。 後場の日経平均は軟調もみ合いとなりそうだ。イベント直前に積極的な売買が手控えられるなか、アジア市況などにも大きな動きはなく、一段と方向感は乏しくなろう。模様眺めが強まるなか、大引けにかけては仕掛け的な売りや手仕舞い売りに注意しておきたい。
<AK>
2021/12/15 12:12
後場の投資戦略
「FOMC前に買い手控え」と「個人の売り」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28504.15;-136.34TOPIX;1978.33;+0.20[後場の投資戦略] 今晩からのFOMCを前に、日経平均は軟調な展開となっている。ここまで28500円台を何とかキープしているが、日足チャートでは上値切り下げの形状となっており、5日移動平均線の上昇にも一服感が出ている。前日に反発のけん引役となった値がさ株が一転して売られており、東証1部全体としても値下がり銘柄の方が多い。一方、トヨタ自など時価総額上位の一角は堅調とあって、東証株価指数(TOPIX)は+0.01%と小幅ながらプラスを確保している。業種別では新型コロナ「オミクロン型」への懸念から空運業などが軟調で、上昇率上位にはディフェンシブセクターが多い印象を受ける。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりと低調で、1日を通じても前日(2兆2225億円)並みかやや下回る可能性がありそうだ。 新興市場ではマザーズ指数が-2.37%と大幅に4日続落。取引時間中としては8月18日以来およそ4カ月ぶりに節目の1000ptを下回る場面があった。10日上場のフレクト<4414>が売買代金トップだが、上値追いの買いが一服してマイナス転換。直近で好業績から買いを集める場面があったセルソース<4880>や、11月24日上場で公開価格から大幅高となったサイエンスアーツ<4412>などはきつい下げとなっている。既にFRONTEO<2158>やグローバルW<3936>などの急落で個人投資家の損益は大きく悪化しているようだが、なお値動きの荒い銘柄が多いところを見ると、損益改善は期待しにくいだろう。東証1部のレーザーテックも個人投資家に人気だったことから、こうした損益悪化の影響を受けている可能性がある。 また、これまで度々指摘しているが、今週16日あたりまでブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多い。さらに、明日は東証1部市場にネットプロHD<7383>が新規上場するため、これらに備えるための換金売りも出ているだろう。ネットプロHDは後払い決済サービスの国内最大手で、国内外の類似企業が上場やM&A(企業の合併・買収)に際し高い企業価値を付されていることから、期待が高まっているようだ。既上場銘柄の値動きが不安定だからか、直近上場のフレクトは個人投資家からかなり多い初値買い資金を集めていた。 さて、やはり欧米の新型コロナ「オミクロン型」感染拡大や米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めへの警戒感は拭いづらいようで、米主要株価指数は揃って下落。米金利は長期の年限を中心に低下したが、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-1.39%とやや軟調ぶりが目立った。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は20.31(+1.62)となり、節目の20近辺での一進一退が続いている。 ジョンソン英首相は新型コロナ「オミクロン型」の感染拡大スピードを強調し、感染抑制のための追加措置を導入する可能性も示唆した。今後の感染状況を注視する必要があるだろう。また、今晩からのFOMCについては、大方のエコノミストが来年2回の利上げ見通しが示されるだろうと予想しているという。それだけに、年3回というより踏み込んだ利上げ見通しが示されなければ安心感につながる可能性はある。しかし、既に米国ではマネーサプライ(M2、通貨供給量)や信用取引に係るマージンデット(証拠金債務)の伸び鈍化が見られ、金融緩和の縮小は市場に相応の影響を与えるかもしれない。 時間外取引の米株価指数先物は小反発しているようだが、アジア市場では香港ハンセン指数や上海総合指数が揃って軟調。前述したとおり個人投資家の売りも出やすいとみられ、後場の日経平均は引き続き戻りの鈍い展開になりそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/14 12:23
後場の投資戦略
FOMCは波乱なしであく抜け上昇?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28696.68;+258.91TOPIX;1982.83;+7.35[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は大幅反発。警戒されていた11月の米CPIは前月比での伸びが+0.8%と市場予想の+0.7%を上回ったが、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアでは+0.5%と市場予想と一致。記録的な高い伸びとはなったが、事前に警戒されていたこともあり、想定内との受け止めから、相場はポジティブに反応した。週明けの東京市場でも、半導体関連を中心にハイテク株に買いが先行している。しかし、関連株は先週末に値を崩していたものが多く、下げた分を取り戻したに過ぎず、14日からの米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に投資家のポジションが強気に傾いたわけではないだろう。 前場の日経平均も一時300円超の上げ幅となったが、先週同様に200日移動平均線が位置する28800円手前では伸び悩む展開となっている。依然としてFOMCを確認するまでは相場の方向感は不透明だ。 一方、米国ではアップルが上場来高値を更新したほか、マイクロソフトも大幅高で上場来高値を窺う位置にあるなど、ハイテク株の強さが改めて注目されている。こうしたハイテク株高もあり、S&P500指数にいたっては既に史上最高値を更新している。FOMCを前にしたこの強さに安心感を抱いていいのかどうかは正直難しい。米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の誘導目標とするフェデラル・ファンドレート(FFレート)の金利先物市場の動きからは、オミクロン株が出現する前から、FRBの量的緩和縮小(テーパリング)の加速を織り込む形で来年3回の利上げを織り込んでいた。一時、年1~2回に後退していたが、オミクロン株の脅威が後退するとともに再び年3回の利上げを織り込んできている。 米ハイテク株の強さやS&P500の史上最高値更新が、こうしたFRBのタカ派を織り込んだうえでの動きなのか、それとも、金利先物市場ほどにはタカ派になることはないと見込んでいるのかは定かではない。こればかりは蓋を開けてみないと分からないだろう。ただ、FRBのパウエル議長は次期議長の再任が決まった際から、明らかに姿勢が急速にタカ派にシフトしている。こうした変化の背景には、インフレ高止まりを要因に支持率が低迷しているバイデン大統領からの圧力があったのではないかと思わず勘ぐってしまう。そのバイデン大統領は、11月のCPI発表直後には「物価上昇は鈍化しはじめている」とし、インフレ抑制に躍起だ。 このため、今回のFOMCは、ドットチャートも注目だが、タカ派にシフトしたと思われるパウエル議長の記者会見にも注目だろう。さすがに、ドットチャートでいきなり中央値が年3回の利上げになることはないだろうとは思う。また、テーパー・タントラムの再来を防ぐために長い間、粘り強く慎重に市場と対話し続けてきたパウエル議長が、仮にバイデン大統領からの圧力を受けていたとしても、相場にサプライズをもたらすような過度なタカ派発言をするとも思えない。 しかし、もし万が一、米ハイテク株の強さやS&P500の史上最高値がこうした筆者同様の「さすがに~はないだろう」で成り立っているとしたら、先行きは危うい。次期FRB議長の再任が決まった際のように、パウエル議長が想定外のタカ派発言をしないようにと願うばかりだ。 さて、後場の日経平均は引き続き上値が軽いとはいえずとも、堅調な動きが想定される。上海総合指数がしっかりなうえ、香港ハンセン指数は大幅に上昇、時間外の米株価指数先物も軒並み堅調で、外部環境は良好だ。一方、14日からのFOMCが直前なだけに、様子見ムードも強く、大引けにかけては改めて上げ幅を縮める動きも想定される。
<AK>
2021/12/13 12:11
後場の投資戦略
メジャーSQ通過で「米CPI・FOMC睨み」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28609.84;-115.63TOPIX;1985.47;-5.32[後場の投資戦略] メジャーSQを通過した本日の日経平均は軟調な展開となっている。日足チャートを見ると、25日移動平均線や75日移動平均線の位置する29000円を前に失速する一方、5日移動平均線の位置する28500円近辺では底堅さを見せている。売買代金上位ではリクルートHDやH.I.S.が個別要因で売られているほかは、高安まちまちといった印象。業種別騰落率も方向感を見出しづらいが、新型コロナ「オミクロン型」への懸念後退とともに買われていた空運株の失速を見ると、英国の規制強化がやや警戒されている面はありそうだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。前日は1日を通じ2兆3166億円(8日は3兆633億円)と急失速したが、本日もメジャーSQだったことを考慮すればかなり低調な印象を受ける。 新興市場でもマザーズ指数が-1.15%と続落。売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>が大幅に7日続伸しているのには舌を巻かざるを得ないが、時価総額トップのメルカリ<4385>などは上値の重さが鮮明になってきた。米CPI発表など来週にかけて重要イベントが相次ぐうえ、前日指摘したとおり足元でブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多いため、換金売りが出やすいところではあるだろう。マザーズ指数は値ごろ感も意識される水準だが、本格的な持ち直しには時間を要するとみておきたい。なお、本日マザーズ市場に新規上場したフレクト<4414>は前引け時点でなお買い気配が続いている。 さて、メジャーSQと前後して株価指数先物等の買い戻しに一服感が漂っていたが、ここまでのところ大きく売り込まれるような流れにはなっておらず、日経平均がSQ値をひとまず上回っていることも安心材料とみる向きがあるだろう。もっとも低調な売買代金を見ると、積極的に買い持ち高を積み上げようとする動きも限られるものと考えられる。 前日の米市場では新型コロナ「オミクロン型」への警戒感から、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.47%(-0.05pt)に低下し、これにつれて10年物国債利回りも1.50%(-0.02pt)に低下した。ただ、短期の金利は上昇。株式市場ではハイテク株が反落し、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は21.58(+1.68)と、再び節目の20に乗せている。 これらの動きを見ると、やはり11月CPIでインフレ圧力の高まりが確認されるとともに、来週14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で金融正常化の加速が示されるとの警戒感が根強いように感じられる。失業保険申請の減少は明るい材料だが、8日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)で企業の求人は旺盛であることが確認され、労働力不足による雇用ひっ迫がインフレ圧力につながるとの見方がある。パウエル連邦準備理事会(FRB)は直近の議会証言でインフレリスクが高まっているなどと述べ、量的緩和の縮小(テーパリング)と利上げを前倒しする可能性を示唆したことから、金融引き締めへの警戒感も拭いづらい。 海外市場を見渡しても香港ハンセン指数や時間外取引のNYダウ先物がやや軟調に推移している。後場の日経平均は重要イベントを前に様子見ムードが広がり、戻りの鈍い展開になりそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/10 12:21
後場の投資戦略
「買い戻し一服感」と「FOMC前のインフレ懸念」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28818.53;-42.09TOPIX;1995.59;-6.65[後場の投資戦略] 新型コロナ「オミクロン型」に対するワクチンの有効性への期待からNYダウが小幅ながら上昇する一方、本日の日経平均は前場中ごろから小安い水準で推移している。中国・上海株や香港株がまずまず堅調なところを見ると、一層伸び悩んでいる印象が強い。売買代金上位もソフトバンクGやレーザーテック、空運株を除くと全般小安い。業種別騰落率では景気敏感系セクターがやや軟調だ。ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円弱。ここ2日ほど1日を通じて3兆円台に乗せていたが、本日は後場売買が膨らまなければかなり低調となる可能性がある。 新興市場ではマザーズ指数が+0.01%と小幅に3日続伸。こちらも前日終値を挟み一進一退の展開となっている。上値追いが続く11月24日上場のサイエンスアーツ<4412>や、業績上方修正のセルソース<4880>が賑わっているが、時価総額トップのメルカリ<4385>は伸び悩んでいる印象。明日あたりからブックビルディング(需要申告)の期限を迎える12月後半のIPO(新規株式公開)が多いため、これに参加するための換金売りが出てくることも想定しておきたい。 さて、米国ではアップルが連日で過去最高値を更新するなど投資意欲の根強さも感じられるが、NYダウなどはさすがにここまで急ピッチのリバウンドだったことから上値が重くなってきた。日本でも株価指数先物の取引状況を見ると、明日10日の特別清算指数算出(メジャーSQ)に向けたロールオーバー(限月乗り換え)がかなり進み、買い戻しの動きは一服しつつあるとみられている。市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は3日申し込み時点で3兆6488億円と高水準にあり、日経平均が節目の29000円近辺まで値を戻す場面では目先の利益を確定する売りが出やすいだろう。本日の売買代金の低調ぶりを見ると、短期的なリバウンドに乗ろうとする動きも減ってきた印象を受ける。 また、米国では来週14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に気になる動きもある。このところ新型コロナ「オミクロン型」への懸念が和らぐとともに低下に歯止めがかかっていた10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI、期待インフレ率の指標)だが、前日は2.52%(+0.05pt)と上昇した。これに伴い金利も長期の年限を中心に上昇。8日に発表された10月の雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が1103.3万件(前月比43.1万件増)と過去2番目の高水準になり、雇用の伸び鈍化は労働力不足によるものとの見方からインフレ圧力の高まりが意識されたようだ。 度々当欄で述べているとおり、バイデン政権にとって来年の中間選挙を前に「インフレへの不満」が最大のリスクと捉えられている可能性が高い。連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長再任決定と前後し、パウエル氏らがインフレ対応姿勢を強めていることもこれと無縁でないだろう。FOMCを前にインフレ圧力につながる「雇用ひっ迫」が改めて確認され、金融引き締めへの警戒感が再燃することも想定しておく必要がありそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/09 12:22
後場の投資戦略
懸念材料はすべて織り込み済み?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28774.05;+318.45TOPIX;2002.40;+12.55[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大きく続伸しているとはいえ、25日、75日、200日移動平均線が集中する28900~29000円を手前に伸び悩む格好となっている。また、前日のNYダウが500ドル近い大幅続伸で、ナスダックやSOX指数が急伸したことを踏まえると、上値の重さが拭えない。 前日の米株市場では、NYダウやS&P500指数が25日線を回復し、米長期金利は上昇、将来の株価変動率を示す米VIX指数は-5.29の21.89と大幅に低下した。市場心理が改善するなかでの典型的なリスクオンムードの様相だ。翌週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした中でもハイテク・グロース株が急伸した動きも踏まえると、市場はオミクロン株の懸念後退を好感するだけでなく、米連邦準備制度理事会(FRB)の早期金融引き締め懸念も相当に織り込んだかのようだ。実際、FRBが金融政策の誘導目標とするフェデラル・ファンド・レート(FFレート)の先物市場での動きによると、市場はすでに来年3回の利上げを織り込んでおり、かなりタカ派寄りとなっている。 オミクロン株の脅威が緩和し、翌週に控えるFOMCのリスクもすでに十分に織り込んでいるのであれば、このまま懸念一層で年末に向けた株高ラリーとなるのだろうか。一方で、米金融大手のゴールドマン・サックス・グループは、株式の安易な押し目買いに対して警鐘を鳴らしている。12月はボラティリティーが突発的に拡大する余地があり、リスク指標はまだ買いシグナルを発していないと指摘したという。 上述したように、先物市場でのFFレートの動きはすでにFRBのタカ派色を相当に織り込んでいるようだ。しかし、株式市場の方は実のところ、織り込んだうえで上昇しているのではなく、FF金利先物市場が想定しているほどのタカ派色になることはないと高を括っているだけではないだろうか。少なくともその可能性がないとは言えないだろう。 昨年の米大統領選などもそうだが、どのような結果になっても相場にはポジティブで、大きな波乱にはならないと言われているような時でも、実際にイベントを迎えるとなると、仕掛け的な動きなども相まって一時的にボラティリティーが大きくなることが多々ある。昨日、今日の動きだけで過度に楽観に傾くのは時期尚早だろう。ポジションを大きく買い持ちに傾けるなど過度なリスクテイクには気を付けたいところだ。 さて、後場の日経平均は引き続き上値が重いながらも堅調な動きが続きそうだ。時間外の米株価指数先物が小じっかりな中、上海総合指数などアジア市況は総じて堅調。特段のニュースフローがなければ、日経平均は現状の水準でのもみ合いが続くとみておきたい。
<AK>
2021/12/08 12:13