後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
それでも米金融引き締め懸念などは残る
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28282.01;+354.64TOPIX;1971.44;+23.90[後場の投資戦略] 新型コロナ「オミクロン型」に対する警戒感が和らぎ、海外株とともに日経平均も大幅反発する展開となっている。日足チャートを見ると、28000円手前に位置する5日移動平均線を寄り付きで上回り、戻りを試す格好。中国テック株につれて急反発したソフトバンクGが1銘柄で日経平均を約84円押し上げているが、東証1部全体としてもおよそ9割の銘柄が値上がりしている。業種別騰落率では、景気敏感セクターやコロナ禍の影響を受けやすい空運業・陸運業の上昇が目立つ。もっともここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円弱で、1日を通じても前日並みの2兆円台半ば程度となりそうだ。 新興市場でもマザーズ指数が+2.54%と大幅反発。ただ、前日に-3.80%と大幅な下落を強いられており、本日も5日移動平均線水準までの戻りにとどまっているのを見ると、自律反発の域を出ない印象を受ける。メルカリ<4385>などの主力IT株も堅調とはいえ、物色の矛先が向いているのはやはりサイエンスアーツ<4412>やGRCS<9250>といった好需給の直近IPO(新規株式公開)銘柄だ。 マザーズ指数は直近高値(11月17日取引時間中の1189.00pt)から安値(12月6日取引時間中の1003.97pt)まで-15.56%となり、個別では2割以上の大幅下落となった銘柄も多い。追加証拠金(追い証)の発生と前後して損失覚悟の売りを迫られた向きは少なくないと考えられる。また、今週から12月後半のIPOのブックビルディング(需要申告)が本格化してきたことから、これに備えるための換金売りが出てくることも想定される。当面は新興株の需給好転は期待しづらいだろう。 さて、米国では景気敏感株を中心に大きく反発し、ハイテク株も引けにかけて買い戻された。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は27.18(-3.49)に低下し、米金利は長期の年限を中心に上昇した。一見するとリスクオンに傾いてきた印象だが、株価・金利ともまだ波乱を抜け出たとは言いづらい。実際、VIXはなお節目の20を上回っている。 そもそも市場では、新型コロナ「オミクロン型」よりも米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め観測の方が懸念材料と受け止める向きが多い。米金融大手モルガン・スタンレーは「株式のリスクはオミクロン株より米金融当局」などと指摘。また、人気ニュースレターで知られた著名投資家のデニス・ガートマン氏は米金融引き締め開始を念頭に、「弱気相場は避けられない」などと述べたという。来週14~15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えており、積極的に買い持ち高を積み上げづらい状況に変わりはない。 また、日本では日経平均が28000円割れから底堅さを見せており、株価指標面での値ごろ感などから押し目買い需要が強いと指摘されている。ただ、日々の先物手口を見ると、今週末10日の特別清算指数算出(メジャーSQ)を前にロールオーバー(限月乗り換え)の売買が中心。売りにも買いにも傾きづらいことが前述の底堅さにつながっている可能性もあるだろう。個人や外国人といった純投資家主体のマザーズ指数の方が投資家心理を映しているのかもしれない。 さて、アジア市場では香港ハンセン指数が堅調もみ合いとなる一方、上海総合指数は朝高後にマイナス転換。為替相場は1ドル=113.50円近辺で円安一服となっている。日経平均も一段の上値追いの動きは限られ、堅調もみ合いの展開となりそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/12/07 12:21
後場の投資戦略
今は焦らず好機を待つタイミング
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27866.81;-162.76TOPIX;1948.43;-9.43[後場の投資戦略] オミクロン株に関する正確なデータが揃うのを待っている段階で、東京市場は依然として方向感に欠ける動きが続いている。米製薬大手ファイザーは同社製の既存ワクチンがオミクロン株に対しても有効との見解を示し、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、オミクロン株の重症化リスクは、デルタ株ほど高くないことを示唆した。ただ一方で、米バイオ製薬大手モデルナの最高経営責任者(CEO)は既存ワクチンの有効性に懐疑的で、市場もオミクロン株に対する見方を決めかねている様子。今後数週間内にデータが揃う見込みで、結果が判明する頃には注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)も終えていると思われる。そのため、双方の内容次第では、相場が大きく動く可能性が高く、現時点ではどうにも動けないといったところだろう。 こうした中、相場の物色動向もちぐはぐな様相を呈している。前週の米雇用統計の結果公表後も、米国債券市場では、短期金利が上昇する一方で長期金利の低下が進展し、イールドカーブのベアフラットニング化が一段と進んだ。米10年物国債利回りは9月下旬以来となる1.3%台にまで低下している。こうした動きは債券市場が、政策金利引き上げによる金融引き締めが景気後退につながるとの見方を有していることを示唆している。しかし、株式市場では日米ともに、ハイテク株やグロース株が大きく売られる一方、景気敏感株の一角は買われている。金融引き締め懸念が高まっている局面故に、金融緩和が追い風になってきたグロース株を中心に短期的な売りが出るのはおかしな話でもないが、長期的には上述した債券市場の読みとは整合的とはいえない。 今回のFOMCは、パウエルFRB議長をはじめハト派姿勢だったメンバーの多くがタカ派にシフトしてきているため、警戒は必要だが、FOMC後に、再度グロース株が買われる局面は十分に考えられる。もちろん、今までの超緩和的な局面とは異なるため、過度に高いバリュエーションが付いた銘柄や特需などの一過性で短期的に急騰した銘柄などは引き続き厳しいだろう。それでも、直近数年に亘って業績を順調に拡大し続け、ROEなどで高い収益性を維持しているクオリティを伴った銘柄であれば、単にバリュエーションが高いからという理由だけで一方的に売られ続けることはないだろう。 FOMC前後には一時的に相場が大きく動く可能性もあるため、急ぐ必要はないが、いまはFOMCを見据え、仕込みたい銘柄リストを作成するなど、機が熟すのを待つ局面といえるだろう。 さて、後場の日経平均は引き続き前日終値近辺でのもみ合いになりそうだ。香港ハンセン指数が大きく下落するなどアジア市況が軟調な一方、時間外の米株価指数先物は堅調に推移している。外部環境が不透明な中、手掛かり材料難で動きづらい状態が続きそうだ。
<AK>
2021/12/06 12:20
後場の投資戦略
日本株は大きく下げ小さく上げる?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27692.34;-61.03TOPIX;1937.06;+10.69[後場の投資戦略] 前場の日経平均は下落。前日のNYダウが600ドル超と大きく反発したのに比べるとあまりに弱い。東証1部全体では8割以上の銘柄が上昇しており、TOPIXは+0.55%と上昇しているが、上昇率はやはり相対的に物足りない。そもそも直近下落が続いていたとはいえ、史上最高値圏からまだ調整したに過ぎない米国株に対し、日経平均などは年初来安値圏にあり、立ち位置が異なる。それにも関わらず、下落する時は日本株の方の下落率が大きく、反発するときは日本株の方の上昇率が小さいとは、なんとも悲しい光景だ。オミクロン株が話題に上る前に3万円回復が目標とされていた日経平均はいまや27000円台にあり、28000円の回復すら遠く及ばない水準だ。この日本株の独り負け状態は歯がゆいばかりである。 前日、東京証券取引所が発表した11月第4週(11月22~26日)の投資主体別売買動向によると、海外投資家は現物と先物の合計で4800億円超、うち現物株で2200億円超も売り越していた。週末にオミクロン株の報道があり、相場は急落していたとはいえ、買い戻しが前提の先物だけでなく、現物株でも大きめに売り越していたことは気になる。世界的な株価指数構成銘柄からの日本株の除外や、岸田政権による金融所得課税引き上げなど、色々とあわせて考えると、海外投資家はどんどん日本株から遠ざかっている気がしてならない。 市場関係者の間では、海外投資家の年初来からの大幅な売り越しポジションに着目し、日本株の買い戻し余地は大きいということを投資の論点としてよく挙げる。しかし、思い返してみれば、昨年末や今年初めの時点でも既に、「直近2~3年の海外勢は日本株を大量に売り越しているため、今年は大幅な買い戻しが期待される」といった話が出ていた。 しかし、結果として、海外勢は今年も今のところは大きく売り越しだ。思わず、海外勢はもはや日本株を見放しているのではないだろうか、と勘ぐってしまうほどだ。企業業績の動向などは当たり前だが、それ以外のところで、やはり、もっと大きな枠組みとして、日本経済の具体的な成長戦略を描くなど、国としての成長力をしっかりと示すことなどが必要なのではないだろうか。政治面での大きな動きなど、企業業績以外のところでの変革を、海外投資家は求めているような気がしてならない。 さて、ややテーマが大きすぎる話になってしまったが、後場の日経平均は引き続き冴えない動きが続きそうだ。香港ハンセン指数が下落しているほか、時間外の米株価指数先物も軟調に推移。今晩の米雇用統計を前に様子見ムードが強まりやすいなか、持ち高調整や手仕舞い売りに押されやすいだろう。
<AK>
2021/12/03 12:13
後場の投資戦略
冴えない相場の原因はオミクロン株?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27750.67;-184.95TOPIX;1927.75;-8.99[後場の投資戦略] 日経平均が一時プラス圏に浮上するなど、前場中頃までは、前日の米株市場の下げに比べて東京市場の相対的な安定さが感じられたが、引けにかけては大きく失速するなど、嫌な流れとなった。28000円手前での上値の重さも確認されており、早い段階で同水準を回復できないと、ここが戻りの目処とされ、上値が一層重くなることが懸念される。 また、気掛かりなのはマザーズ指数。前日にかけて6日続落しており、日足チャートでは陰線が連続しており、チャート形状の悪化が著しい。本日は前引けにかけて3%を超える下落率となっている。また、直近非常に強い動きを見せていたFRONTEO<2158>やアスタリスク<6522>、GRCS<9250>などが、ここ数日は軒並み急落するなど嫌な動きも確認されている。個人投資家の含み損益も相当に悪化していると推察されよう。 前日の米株市場は、大幅上昇からの引けにかけての大幅下落で、指数が上下に3~4%も動く非常にボラタイルな相場展開だった。米国で初のオミクロン株感染者が確認されたとの報道が伝わったタイミングから急速に下げ足を速めたとされているが、下落の本質的な要因はそこではないような気がする。 そもそも、感染が伝わる前には、WHOがオミクロン株に対するワクチンの有効性を示唆しており、マーケットはむしろオミクロン株に対する見方が警戒から楽観に傾いていたわけで、感染者の確認が売り材料につながるとは考えにくい。結局、要因としては、やはりFRBの金融引き締めに対する警戒感が大きいのだろう。前日、パウエルFRB議長は上院銀行委員会での証言に続き、下院金融サービス委員会での証言で、テーパリングを当初よりも早期に終了することが適切になる可能性を再表明した。内容は前の日の繰り返しに過ぎないが、マーケットでは、長らくFRB内でハト派とされてきたパウエル議長が、タカ派にシフトしてきたことに対する動揺がまだ収まっていないのだと考えられる。 良く捉えるならば、今回の証言により、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が相場の大きな調整要因になるリスクは小さくなったもといえる。ただ、14日からの今年最後のFOMCでは、ドットチャート(政策金利見通し)なども公表されるため、FRBのタカ派度合いを計るという観点からすれば、依然、イベントとしての注目度は高く、これを消化するまでは、相場はしばらく神経質な展開が続きそうだ。その間には、オミクロン株に関する報道も攪乱要因として動き増幅させる可能性があろう。 さて、後場の日経平均は上値が重いながらも、下値もそれなりに堅く推移しそうだ。香港ハンセン指数などのアジア市況がまずまずしっかりしていることに加え、時間外の米株価指数先物が緩やかながら上げ幅を拡げている。これらを支えに日経平均については、せめて28000円回復の手掛かりはつかんでほしいばかりだ。
<AK>
2021/12/02 12:13
後場の投資戦略
大きな転換点迎える、投資妙味はどこに?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28047.62;+225.86TOPIX;1944.12;+15.77[後場の投資戦略] 本日の日経平均は前引けにかけては買いが優勢となり、前日比ではプラス圏で終えている。しかし、前日までの1600円を超える下落幅を考えると、今日の上昇幅は自律反発というにも不十分だ。チャートでは、日足でも週足でも主要な移動平均線をすべて下放れており、中長期の動向を示す75日、200日線は揃って下向きに転換、トレンドは明確に悪化している。 前日の上院銀行委証言での質疑応答におけるパウエルFRB議長の発言は象徴的なものとなった。長らく頑なとも言えるほどに使用してきたインフレに関する「一過性」という表現はやめるときがきたと遂に言及した。また、テーパリングを早期に終了するのを検討することは適切だとの見解を示した。直近の複数のFRB高官の発言から、12月FOMCでのテーパリング加速に関する協議の可能性は十分に示唆されていたが、その時点ではまだオミクロン株は話題に出ていなかった。 FRB内でもハト派寄りとされてきたパウエル議長が、オミクロン株という新たな材料が出てきた中でも、テーパリング加速に前向きな姿勢をみせ、金融引き締めに積極的なスタンスをとったことは、相場にそれなりのインパクトがある。これまでの超緩和的とも呼べる金融相場は完全に転換点を迎えたともいえよう。 一方、こうしたFRBからのメッセージは、短期的にはマーケットにとってネガティブだが、長期的な視点からは実体経済にも相場にもポジティブなものと捉えられる。オミクロン株の発生もあり、新型コロナ感染の長期化が想定され、人々の不安心理もくすぶるなか、同時にインフレ高進が長期化すれば、それは人々の生活を悪化させることになる。ひいては、経済成長に不可欠な個人消費の停滞にもつながりかねないため、インフレ対処に積極的な姿勢を取ることは長期的には必要なことなのだろう。 こうした見方に対し、金融政策は需要サイドに基づくインフレに対しては有効であっても、現在のような供給制約に基づくインフレには効果を持たないとする批判もあるだろう。しかし、米国では住宅価格や賃金など、長期的なインフレにつながりかねないところでも高い物価上昇が続いている。金融引き締めはそうした部分の影響を緩和するほか、人々の期待インフレ率の低下を通じて、インフレ沈静化に寄与する面もあると考えられる。そうした観点からすれば、金融政策によるインフレ沈静化も決して間違った選択肢ではないだろう。 実際、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は11月15日に付けた2.76%を直近高値に、その後は沈静化傾向にあり、30日は前日比-0.04ptの2.50%まで低下、期待インフレ率の低下には足元成功しているようだ。短期的には、タカ派にシフトしたも同然のパウエル議長を巡り、相場は揺れ動くことになりそうだが、そのうち、FRBのインフレに対する姿勢を評価する可能性もあろう。 他方、前日のパウエル議長の発言を受けて、米国債は、2年債や5年債などの短期の金利は一時大きく上昇に転じた一方、10年債など長期の年限の債券利回りの上昇はかなり限定的だった。米10年国債利回りは30日、結局前日比-0.05ptの1.45%とむしろ低下した。 市場は、コロナ長期化の中での金融引き締め加速を背景に、スタグフレーション(景気後退と物価上昇の併存)を織り込みにいっているようだ。こうした動きがこの先も続くとすれば、前日は大きく下落したハイテク株やグロース株については、純粋シクリカル(景気循環)な銘柄に比べれば、相対的には投資妙味が出てくることが考えられる。 また、前日には、世界半導体市場統計(WSTS)が、2022年の半導体市場が前年比9%増の6014億ドルと過去最高になる見通しとし、6月時点の予測(5734億ドル)から上方修正したことが伝わった。本日も、冴えない相場のなか、半導体関連株は底堅く推移している。コロナ長期化に、金融引き締め、これでは何も買えないという印象も強いが、つぶさに見れば、投資妙味のある銘柄が浮かんでくるかもしれない。 さて、前日に大きく下落した香港ハンセン指数が大幅に反発するなど本日のアジア市況は堅調。前場の日経平均も前引けにかけて28000円を回復するなど強含んだ。後場についても、直近の下落を受けた値ごろ感からの買い戻しが続き、堅調に推移する可能性が高そうだ。
<AK>
2021/12/01 12:11
後場の投資戦略
前引け間際の失速で印象悪くも、29000円回復に向けた希望も
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28498.91;+214.99TOPIX;1969.14;+20.66[後場の投資戦略] 日経平均は反発したものの、先週末から前日にかけて1200円程も下落していただけに、自律反発の域を出ていない。前日は、一時プラス圏に浮上するなど想定以上の底堅さを見せた前場から一変、後場には一転してずるずると下げ、結局、467.70円安という後味の悪い引け方をしていた。 本日も反発しているはいるが、チャートでは、75日、200日の両移動平均線より大きく下方に位置しており、週足では、昨年夏場以降、長らく下値支持線として機能してきた52週移動平均線を依然として下回ったままだ。オミクロン株を巡る情勢を含め、テクニカル的にも、状況が著しく好転したとは言えず、油断はできないだろう。 また、やや気掛かりなのは前引けにかけて下落に転じるなど相対的に見劣りしたマザーズ指数。前日は3%近くと特に大きく下落していたため、前日の米ハイテク株高を追い風に、力強い戻りを見せると思われたが、日経平均やTOPIXを大きく下回るパフォーマンスとなっている。SOX指数高を背景に半導体関連株などに物色が向かっていることを考慮すれば、頷ける面もあるが、個人投資家の含み損益が一段と悪化している可能性も推察される。 他方、オミクロン株の話題が上がる前に市場で話題だった米国での金融政策を巡る動きについてだが、前日は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がオミクロン株について初めて見解を示した。パウエル議長は、足元の新型コロナ感染の増加とオミクロン株の発生は雇用と経済活動に下振れリスクとなるとともに、インフレ動向を巡る不確実性の高まりをもたらしたと指摘した。また、ウイルスに関する動向次第では対面での勤務意欲がそがれ、労働市場の前進が遅れることに懸念を示したという。 このほか、インフレ動向に関しては、FRBを含むほとんどの経済予測担当者が、需給不均衡の解消に伴いインフレ率が来年にかけて大幅に鈍化すると引き続き予想していると言及した。一方で、インフレ率を押し上げている一過性と思われる諸要因は、来年まで続く可能性があると示唆したようだ。 種々の発言をみる限り、インフレに対しては依然として「一時的」「一過性要因に基づくもの」との従来姿勢の維持を窺わせた一方、オミクロン株についてはそれなりの警戒感を抱いている様子。あくまで推測だが、こうした発言や見解を踏まえると、12月14日からの米連邦公開市場委員会(FOMC)での量的緩和縮小(テーパリング)加速などに関する早期金融引き締め懸念は後退した可能性が高いとみられる。 むろん、今週末に発表される12月米雇用統計の結果次第では、見方はまた変わるであろうし、12月のFOMCでは、FRBメンバーによる経済見通しやドットチャート(政策金利見通し)が公表されるため、内容次第では、再び金融引き締め懸念が台頭する可能性もあろう。ただ、前日の米国市場でハイテク中心とはいえ株式が大きく反発し、VIX指数が大きく低下するなかでも、米長期金利がほとんど上昇しなかったのには、こうした金融引き締め懸念の後退を強く映しているような印象も抱く。油断は禁物だが、一時揺らいだハイテク株高への期待は案外息の長いものとなるかもしれない。 さて、本日はMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が12日に発表したスタンダード・インデックスの定期入れ替えが行われる。日本株の新規採用は2銘柄、除外は15銘柄で、指数に反映される本日の終値を基準に日本の株式市場から約2200億円の資金が流出すると言われている。ただ、入れ替え実施後はこうした需給面での懸念が後退する。足元、企業の中間配当を受けた機関投資家の再投資と共に日本株のあく抜け上昇につながるとの見方もあり、外部環境次第ではあるが、明日以降、ハイテク株高のけん引役にも期待しつつ、日経平均の29000円回復を期待したい。
<AK>
2021/11/30 12:11
後場の投資戦略
オミクロンショックは早くも織り込み済み?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28746.49;-5.13TOPIX;1977.20;-7.78[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は続落も、想定以上に底堅いとの印象を抱いた投資家が多いだろう。夜間取引の日経平均先物は安値で27510円と、既に急落していた週末日中取引の終値から更に1000円超も下げる急落ぶりを見せていただけに、現物の日経平均の28000円割れは避けられないとの見方が多かったと思われる。 しかし、実際には、週明けの日経平均は28000円よりは大分上の水準で始まり、前週末終値とほぼ同水準まで下げ幅を縮小した。先週末に欧米市場に先んじて急落していただけに、下げが限定的となるのは当然ともいえるが、やはり、インパクトのある夜間取引の動きを踏まえると、安堵感が強い。先週末については、米国市場が感謝祭の祝日で短縮取引となるなか参加者が限られており、動きが誇張されやすかったと思われるほか、米国市場が引けた後の動きが夜間取引の日経平均先物に集中したために、下げが過度に演出されたのかもしれない。いずれにせよ、28000円台を優に維持している点は安心感を誘う。 南アフリカ発症とされる新型コロナ変異株「オミクロン株」については、まだ分かっていないことが多いため、油断はできない。感染力はデルタ株よりも高く、ワクチンの有効性が低下する可能性も指摘されている。しかし、その後、米製薬大手ファイザーと共同開発した独ビオンテックは、新たな変異株に合わせたワクチンを100日以内に出庫できると言及したほか、米バイオのモデルナは、オミクロン株に対応する最初の実験用ワクチンを60~90日で作成し、来年早々には改良したワクチンを提供できる可能性を示した。 さらに、世界保健機関(WHO)によれば感染報告は比較的軽症となりやすい大学生だったようだが、今回の変異株について最初に警告を発した医師を含め南アフリカ共和国の医療専門家らは、オミクロン株に感染した人の症状はこれまでのところ軽いとも報告している。 まだ予断を許さない段階ではあるが、このように変異株に対しては明るい兆しが見られている。また、パンデミック発生当初と異なり、これまでの約2年間で世界はワクチンや治療薬の開発のほか、未知のウイルスとの向き合い方についても心得ている。マーケットは不透明感をもっとも嫌うとされているが、その段階が、変異株が伝わった先週末だとすれば、最悪については既に相当程度織り込んだとも捉えられる。実際、今日の前場までの動きをみる限り、そうした見方が裏付けられたようにもみえる。ニュースフロー次第で、今後も相場は乱高下するだろうが、過度な悲観も楽観も抱くことなく、常に冷静さを保っておきたい。 なお、今晩はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長とニューヨーク連銀総裁がオンラインイベントの冒頭で挨拶をする予定。足元の変異株拡大に対して、パウエル議長がどのような認識を示すのか、発言が注目される。 今週は週末の米雇用統計のほか、経済指標の発表が多い。週明けの米国市場が下げ止まるのかどうかや、パウエル議長の発言なども見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均は前引け水準を挟んだ一進一退になるとみておきたい。
<AK>
2021/11/29 12:15
後場の投資戦略
新型コロナ変異株でリスクオフの矢面に
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28779.63;-719.65TOPIX;1987.47;-38.22[後場の投資戦略] 前日の米市場が休場だっただけに、朝方は特段の材料なしとの見方が多かったが、そんなムードを吹き飛ばすリスク回避の売りが東京市場を襲った。ソフトバンクGやファーストリテの軟調ぶりと見ると日経平均先物に売りが出ている印象を受けるが、レーザーテックの大幅下落からは個別株にも売りが広がっているとみた方がいいだろう。前日にANAの新株予約権付社債(転換社債)発行で売られた空運株などは弱り目にたたり目と言わざるを得ない。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまり。前日は1日を通じて2兆1145億円と、8月27日以来の低水準だった。米感謝祭明けの本日も取引参加者は少ないだろうが、それにしても値幅の割に売買は膨らんでいない。積極的な押し目買いが入っていない可能性もあるとみておきたい。 新興市場ではマザーズ指数が-1.20%と3日続落。下落率は日経平均(-2.44%)ほど大きくはないが、こちらも前引けにかけて一段と軟化してきた。前日は日経平均が堅調に推移するなか、朝高後に失速する展開となった。前日の売買代金は東証1部とは対照的に、2663億円と2月16日以来の高水準。積極的に押し目買いを入れた個人投資家が押し返されたようにも見受けられる。 なお、市場全体の信用買い残(東名2市場、制度・一般合計)は19日申し込み時点で3兆5793億円と、前の週に比べ1068億円増えた。一方でQUICK社の算出する信用評価損益率は-8.20%(前の週は-7.89%)と4週連続で悪化。前日からのマザーズの動向を見ていると、一段の損益悪化と個人投資家の資金余力低下も懸念される。 さて、日本時間の早朝に南アの新型コロナ変異株に関するニュースが伝わり、東京市場はリスクオフの矢面に立ってしまった感はある。とはいえ、過剰反応などと楽観視すべきでもないだろう。国内の感染状況が落ち着いているだけにイメージしづらいだろうが、欧州で感染者が過去最多ペースにあるなど、世界的にはむしろ懸念が強まっている状況にある。ひとまず南ア変異株に関する詳細な情報を待ちたいところだ。 また、仮に今回の変異株への懸念が一時的なものにとどまったとしても、前日の当欄で指摘したとおり、改めて米金融政策の正常化加速を巡る思惑が相場に重くのしかかるだろう。米金融大手ゴールドマン・サックスは米パウエル連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小(テーパリング)を加速し、さらに来年は3回の利上げに踏み切るとの予想を示しているようだ。ほかにも利上げ前倒しを見込む声が有力投資家などから挙がっており、やはり次回12月14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで積極的な買いは手掛けられにくくなるかもしれない。(小林大純)
<AK>
2021/11/26 12:23
後場の投資戦略
やはり「FRB人事はインフレ対応含み」?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29500.57;+197.91TOPIX;2025.88;+6.76[後場の投資戦略] 米国では感謝祭の祝日を前に金利の上昇一服とともにハイテク株に買いが入り、本日の東京市場でも日経平均は値がさ株主導で反発する展開となっている。早々に29500円台を回復してきたことに意を強くする向きもあるかもしれないが、前日の下落分の半値戻し程度にとどまっているあたり、自律反発の域を出ないと言わざるを得ない。また、今晩の米国が祝日ということもあり、ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円あまりと低調。前日は日経平均先物に売りが多く出ていたため、本日は薄商いのなか先物の買い戻しでひとまず反発したといったところかもしれない。塩野義の高値更新が目を引くが、ディフェンシブ株へのシフトを示す動きということも想定しておく必要があるだろう。 新興市場ではマザーズ指数が+0.03%と小幅反発。こちらは朝方の買いが一巡すると早々に前日終値近辺まで押し返された。日経平均が先物の買い戻し主導で反発していることを思わせる。こうしたなかで強さを見せているのがIPO(新規株式公開)株で、本日新規上場したスローガン<9253>が公開価格の1.5倍で初値を付けたほか、上場2日目のサイエンスアーツ<4412>が公開価格の約2.7倍で初値を付けたのち、ストップ高水準まで急騰している。18日上場のGRCS<9250>が連日の大幅高となっており、個人投資家のIPO株への買い姿勢が強気に傾いてきた印象だ。もっとも需給主導の感も強く、株価バリュエーションを見ると過熱感があるのはやや気掛かり。 さて、米国では22日、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長の再任が発表され、金利の急上昇とともにハイテク株を中心に荒い値動きとなった。18日の当欄「インフレ不満からFRB人事が重み増しそう」で「次期議長人事はインフレ対応含みだろう」ということを強調したが、まさにそうした思惑が広がった格好だ。改めて確認すると、11月ミシガン大学消費者マインド指数の予想外の悪化、10月小売売上高の予想以上の増加といった強弱まちまちの経済指標は米国の経済的な分断を示している可能性がある。10月消費者物価指数(CPI)が大幅な伸びとなったことを受け、バイデン大統領がすかさず「物価抑制は最優先課題」などとアピールしたのを見ても、政権にとって来年の中間選挙に向けた最大のリスクは「インフレ」と考えられていることが窺える。 これを裏付けるかのように、11月のFOMCではインフレへの警戒感から量的緩和縮小ペースを加速すべきとの意見が複数上がったという。もともと米国では感謝祭を通過すると市場参加者が減るタイミングではあるが、12月14~15日の次回FOMCまで金融引き締めへの思惑から積極的に売買を手掛けづらくなったとみておいた方がいいだろう。 こうした外部環境に振らされる日本株だが、アジア市場では香港ハンセン指数や上海総合指数が小安く推移しており、為替市場では円安が一服。米休場を前に様子見ムードも強まりそうで、後場の日経平均は上値の重い展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/25 12:19
後場の投資戦略
金利上昇受けたハイテク売りは一過性?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29436.73;-337.38TOPIX;2026.71;-16.11[後場の投資戦略] 祝日明けの日経平均は売り優勢で、押し目買い意欲が確認されていた29500円をも割り込んだ。一方、25日移動平均線はまだ割り込んでおらず、目先は同線のサポートが機能するかどうかが注目される。今後の米国市場動向次第ではあるが、この先、同線を下回らずに反発するようであれば、一段と売りは仕掛けづらい展開となりそうだ。 物色面では、ハイテク株やグロース株が広く売られるなか、米長期金利の上昇や円安を追い風に輸出関連株や金融株が全体の下支え役になっている。マザーズ指数は2%を超える下落率で下げがややきつい。7-9月期決算発表が終わり、大型株への物色が一巡したことで、直近、業績好調が確認された中小型株に資金が回帰していたが、米長期金利の上昇をきっかけに、利益確定の売りが広がっている。ただ、連日の急伸劇が話題となっている直近IPOのGRCS<9250>が今日も大幅高となっているほか、今日のような地合い下で真っ先に売り込まれても不思議ではない上場来高値圏にあるアスタリスク<6522>も堅調な動きとなっている。 また、今日久々に見られている「景気敏感株・バリュー株買い、ハイテク株・グロース株売り」のような分かりやすい構図がこの先も続くかと問われればどうだろうか。FRB人事の発表をきっかけに長期金利が上昇したことで物色に変化があったわけだが、直近、「ハイテク株買い、景気敏感株売り」が続いていたことを踏まえれば、利益確定の口実とされたにすぎず、現時点では調整の域を出ていないだろう。 FRB議長人事において、相対的によりハト派色の強いブレイナード氏が選ばれなかったことで、金融引き締めが加速するとの見方が、長期金利上昇やハイテク株売りにつながったわけだが、そもそもパウエル氏はFRB内でかなりハト派寄りだ。また、現任のパウエル氏の続投が決まったことは、むしろ、現行路線の維持が想定され、先行き不透明感の払しょくなどポジティブな面が強いと考えられる。結局、人事前後において特段の大きな変化があったわけでもない。 また、19日に1.55%にあった米10年国債利回りは23日に1.67%まで上昇した一方、先週、2.7%台での推移が続いていた米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、23日に2.62%まで低下した。期待インフレ率の低下を素直に捉えるならば、インフレ対応の進展が長期的にはインフレ加速を抑え、長期金利の上昇も抑えると債券市場が判断していると解釈できる。結果的に、総合的にみて今週に入ってからの速いペースでの金利上昇が続くことは想定しにくい。金利動向には注意を払いつつも、直近好調だったハイテク株やグロース株のトレンドは当面継続するとみておきたい。実際、上場来高値圏での推移が続いていた東エレク<8035>の今日の下落率は軽微で、押し目買い意欲の強さが窺える。 上海総合指数や香港ハンセン指数などアジア市況は小安い一方、時間外の米株価指数先物は下げ渋って大きく動いていない。また、前日のナスダック総合指数は続落も、長い下ヒゲを付け、下げ渋っている。後場の日経平均は弱含み継続も、ハイテク株の押し目買いや29500円回復に向けた底堅さが見られるかどうかに注目したい。
<AK>
2021/11/24 12:12
後場の投資戦略
3万円回復は想定以上に遠い印象
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29677.95;-67.92TOPIX;2037.59;-6.94[後場の投資戦略] 前場の日経平均は朝方の売り一巡後は下げ渋った。チャートでは25日移動平均線をサポートとした動きが続いており、底堅さが窺える一方、依然として3万円回復には遠い印象で、上値も重い様子。 欧州で新型コロナが再流行しており、感染者数が落ち着いている日本でも、冬の本格化に伴い感染第6波を警戒する声が聞かれる。そうした世界景気鈍化の懸念が再び強まっているなか、先週末は、FRBのクラリダ副議長が12月のFOMCでのテーパリング加速についての協議を示唆したしたほか、ウォラーFRB理事もテーパリングを加速し、ゼロ金利政策からの脱却を速める必要があるとの認識を示した。早期利上げ懸念が高まる中でも週末の米長期金利はむしろ低下するなど、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)を示唆するかのような動きもみられた。 現在は、発生当初と異なり、ワクチン接種が進んでいるほか、治療薬の開発も進展していることから、感染が再流行したとしても、重症患者数は抑えられ、医療ひっ迫につながる可能性も低いと思われる。ただ、こうした報道が増えてくると、世界の景気敏感株と位置付けられる日本株には少なくとも短期的には重しとなりかねないだろう。 また、先週には岸田政権の経済対策が、金額としては従来想定よりも大規模になる見込みなどとポジティブな報道もあったが、相場の反応は限定的で、結局、日経平均の3万円手前での足踏みの脱却にはつながらなかった。衆院選での与党勝利後に見られる株高アノマリーなどは一体どこにいったのかという印象だ。各種メディアでも既に報じられているが、政策の中身をみると、給付金などの分配色の強いものがほとんど。将来の成長につながるような政策は乏しいと言わざるを得ない。分配も大事だが、成長しなければいずれ分配する資金源が枯渇するのは避けられない。給付金などの分配政策も、その多くが貯蓄に回る可能性が高く、仮に一部が消費に回っても恒久的な消費支出の増加にはつながらないだろう。 結局、成長シナリオが描けていないからこそ、誰も積極的にそうした国の株を買おうと思わないのだろう。政権に関するニュースフローが出ても一向に3万円を回復しない日経平均、売買高が停滞傾向にある先物市場などの動きをみても、日本株がじり貧にあるような印象が拭えない。割安感だけでは日本株が買われないことは、これまでの動きをみても明らかだろう。日本株の上値の重い展開は想定以上に長くなることも想定しておいた方がよいかもしれない。 さて、後場の日経平均は戻り一服でもみ合いになるとみておきたい。明日は祝日で国内市場が休場となるなか、上海総合指数や香港ハンセン指数が小動きで新規の材料にも乏しい。祝日明け24日には、早期利上げ懸念が強まるなか注目度が高まっていると思われるFOMC議事要旨の公表のほか、FRBが政策判断で重要視するPCEコアデフレータなどの発表もある。さらに、今週中にはFRBの新議長の発表もあるだろう。これらの結果を見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均は動意薄とみておきたい。
<AK>
2021/11/22 12:16
後場の投資戦略
日経平均は3日ぶり反発、経済対策も一段の上昇につながらず?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29718.62;+119.96TOPIX;2037.72;+2.20[後場の投資戦略] 本日の日経平均は3日ぶりに反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。日足チャートでは、29700円台に位置する5日移動平均線を一時上回るも、この水準での攻防といった様相。日経平均の寄与度上位銘柄を見ると、東エレクが1銘柄で約104円押し上げている格好だ。また、NY原油先物相場の反発などから、前日下げの目立った市況関連セクターも堅調。ただ、東証1部銘柄の6割超が下落しており、全体としては利益確定売りが優勢という印象を受ける。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000円弱と前日並み。 新興市場ではマザーズ指数が-1.49%と3日続落。週前半に大きく上昇しただけに、週末を前に利益確定売りが出やすいところか。前日売りのかさんだアスタリスク<6522>などが急反発する一方、主力IT株が総じてさえない。なお、本日マザーズ市場に新規上場したAB&C<9251>は公開価格を6%下回る初値となったが、足元の株価は公開価格をやや上回って推移している。同社は美容室チェーンを全国展開。投資ファンドによる売出規模が大きく、需給懸念が先行したとみられるが、積極出店で業績を伸ばしており、公開価格も上値余地の感じられる水準だった。今後の値動きに期待したい。 さて、前日の日経平均は「経済対策が財政支出ベースで55.7兆円規模に膨らむ見通し」との報道を受けて後場急速に下げ渋り、プラス転換する場面もあった。しかし、買いが続かず終値では続落。本日も前日高値(29715.95円)を大きく上抜くには至っていないのを見ると、今回の経済対策が株価を一段と押し上げるとみる市場参加者はさほど多くないのだろうと考えざるを得ない。実際、中身を精査すると「規模が想定から拡大したわけではなさそう」といった見方が出てきている。 日本取引所グループが18日発表した11月第2週(8~12日)の投資主体別売買動向も確認しておきたい。外国人投資家は現物株を268億円売り越し(前の週は1236億円の買い越し)、東証株価指数(TOPIX)先物を2611億円買い越し(同1492億円の売り越し)、日経平均先物を1104億円買い越し(同264億円の売り越し)していた。海外勢が株価指数先物の買い越しに傾いてきたのは明るい材料と受け止められるだろう。ただ、ここ数日の先物手口を見ると、17日はモルガン・スタンレーMUFG証券がTOPIX先物・日経平均先物とも売り越し。18日はBofA証券がやはりTOPIX先物・日経平均先物とも売り越しとなった。日経平均が節目の3万円に迫る場面では、海外勢の先物買いも鈍くなると考えざるを得ない。 また、東京証券取引所が16日発表した12日申し込み時点の信用買い残高(東名2市場、制度・一般信用合計)は3兆4724億円で、前の週と比べ338億円減った。高値圏で利益確定売りが出たようで、2週連続の減少となっている。かねて指摘しているとおり、高水準の信用買い残が上値の重しとなっていることがわかる。 足元で円相場が1ドル=114.40円近辺まで下落してきており、後場の日経平均はこれを支えに堅調に推移しそうだ。もっとも、香港ハンセン指数が大幅に3日続落しており、外部環境は強弱まちまちか。また、前日の当欄で取り上げたとおり、週内に決定するというFRB議長人事にも注目したところで、やはり積極的に上値を追いづらいだろう。(小林大純)
<NH>
2021/11/19 12:22
後場の投資戦略
日経平均は続落、インフレ不満からFRB人事が重み増しそう
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29451.41;-236.92TOPIX;2027.83;-10.51[後場の投資戦略] 海外株安が重しとなり、本日の日経平均も3ケタの下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、29600円台に位置する5日移動平均線を寄り付きから下回り、29500円近辺でいったん下げ渋ったとはいえ、アジア株安が重しとなってここを割り込んできた格好。原油・海運市況の急落で関連セクターの下げが目を引くが、日経平均への寄与が大きいソフトバンクGやファーストリテの軟調ぶりもやや目立つあたり、日経平均先物にまとまった売りが出ている可能性がある。一方、決算発表後に売られていたリクルートHDを中心に、グロース(成長)株の一角がしっかり。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000円あまりで、29500円近辺での攻防が見られた割にやはり膨らんでいない。 新興市場ではマザーズ指数が-1.02%と続落。今週前半は新興株への物色シフトを背景に強い値動きだったが、本日は日経平均にやや先行する形で前場中ごろを過ぎると軟化してきた。相変わらず大幅高となっている銘柄も散見されるが、一昨日の当欄で取り上げたアスタリスク<6522>は信用取引規制の強化を受けて急落。アスタリスクに限らず回転売買による上値追いが強烈だった銘柄は少なくなく、反動に警戒しておく必要があるだろう。なお、本日マザーズ市場に新規上場したGRCS<9250>は公開価格の1.5倍ちょうどで初値を付けた。上場前株主の売却制限(ロックアップ)解除ラインがメドと受け止められたのだろうが、このところ初値伸び悩みが続いていただけに安心感のある結果。その後もおおむね初値を上回って推移しているが、引けにかけての値動きを注視したい。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.70%(-0.03pt)と続落し、10年物国債利回りも1.58%(-0.05pt)と反落した。前述のとおりNY原油先物相場は急落。米国が中国に対して原油の戦略備蓄の放出を要請したと伝わったほか、欧州で新型コロナ感染状況が悪化するなどして需給緩和が意識されたようだ。もっとも、インフレ高進への懸念が払しょくされたとは言えない。 前日発表の米10月住宅着工件数は年率換算で前月比-0.7%となり、市場の増加予想に反し、減速を示すものとなった。供給制約や住宅価格高騰の影響が響いたとみられている。直近の米経済指標を振り返ると、11月のミシガン大学消費者マインド指数は住宅着工件数と同様に予想外の悪化。一方で10月小売売上高は予想を上回る増加となった。強弱まちまちの経済指標が示しているのは、まさに一昨日の当欄で指摘した「経済的な分断」かもしれない。 10日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)が約30年ぶりの大幅な伸びとなったことを受け、バイデン米大統領はすかさず「物価抑制は最優先課題」などとアピールした。来年の中間選挙を前に、インフレへの不満が政権の懸念材料となっていることが読み取れる。となると、週内にも決定するという米連邦準備理事会(FRB)の次期議長人事が一段と重みを増してきたと考えられる。現在、有力視されているのはパウエル議長の再任かブレイナード理事の昇格。ブレイナード氏はハト派的とみられているが、バイデン政権は次期トップにより踏み込んだインフレ対応を求める可能性がある。 日本でも前日あたりから再び金融所得課税の強化を巡る報道を目にするようになり、株価の重しになっているとみられる。政府・与党は来年度税制改正大綱で重要な「検討事項」に明記する方針という。再三指摘しているとおり、やはり日経平均の3万円台回復は近くて遠そうだ。(小林大純)
<NH>
2021/11/18 12:22
後場の投資戦略
日経平均は5日ぶり反落、“優勝劣敗”鮮明で3万円回復は近くて遠い
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29674.74;-133.38TOPIX;2040.39;-10.44[後場の投資戦略] 前場の日経平均は寄り天井の形で陰線を形成。早々にマイナス転換するとその後も下げ幅を拡げる動きとなった。前日は29960.93円と3万円目前に迫りながらもその後急失速。本日も寄り付きこそ高く始まり3万円に迫るも急失速。上値の重さが強烈に印象付けられる形となった。 一方、主要株価3指数が揃って史上最高値圏での推移を続ける米国では、大手金融グループのゴールドマン・サックスが、S&P500指数が2022年末には5100を付けると予想するなど、強気の見通しも出てきている。米国では年末に向けた株高ラリーの実現を有望視する声が多く聞かれるが、同社の見通しはこうした見方に弾みをつけるようだ。 指数だけをみると、日米で圧倒的なパフォーマンス格差が確認され、なんとも陰鬱な気持ちになるが、個別に目を配れば過度に悲観することもない。レーザーテックや東エレクなど世界でも名を連ねる日本の代表的な半導体製造装置企業の株価は、連日で上場来高値を更新し、自動車の挽回生産が期待される輸送用機器セクターでも、トヨタ自やデンソーがこちらも半導体に負けじと連日で上場来高値を更新している。 結局、日本の場合は成長が期待でき資金が集まる企業が米国に比べて圧倒的に少なく、一部の有望企業に資金が集中する結果、全体の動きを示す指数では目立ったパフォーマンスが出にくいというだけのことなのだろう。個別でみれば、上述のように世界に引けを取らない株価パフォーマンスを見せる銘柄はある。 ただ、こうした日本国内での優勝劣敗の動きはより一層鮮明になっていきそうで、年末に向けた株高ラリーが日本でも起こるとしても、銘柄選別を間違えれば、波に乗り損ねることになりかねない。ちょうど決算発表が一巡したタイミングでもあるため、今一度、直近の決算を確認し、利益率がコロナ前と比較して改善しているかなど、収益力の向上などに着目して、銘柄選別を行うことが、今後の結果を左右しそうだ。 さて、後場の日経平均は引き続き29500円~30000円でのレンジ相場が続きそうだ。今晩は米国で注目の半導体メーカーのエヌビディアの決算が予定されており、明日には同業のアプライド・マテリアルズの決算が予定されている。足元、日本の指数を支えているのは半導体関連株といっても過言ではないため、これらの決算内容と株価反応は非常に注目される。結果を見極めたいとの思惑もあり、後場も前場と同水準でのもみ合いとなることが予想される。
<NH>
2021/11/17 12:24
後場の投資戦略
日経平均は4日続伸、それでも「3万円が遠い」理由
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29841.26;+64.46TOPIX;2056.37;+7.85[後場の投資戦略] 決算発表が一巡し、12月のIPO(新規株式公開)ラッシュを控えたこの時期は新興株に物色の矛先が向きやすい。前日のマザーズ売買代金は2033億円で、3月2日以来の2000億円台乗せとなった。アスタリスクの上値追いなどを見ると、株式需給は良好で、個人投資家の売買回転もうまく利いているのだろう。もっとも、株価指標面で正当化しづらい水準まで急騰している銘柄も少なくなく、米インフレ・金利上昇の逆風を跳ね返し続けられるかも見極めたいところ。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.76%(+0.03pt)へ一段と上昇。いったんは落ち着きつつあった10年物国債利回りも1.61%(+0.05pt)まで上昇した。製造業景況感が改善し、インフラ投資法案が成立したとはいえ、インフレへの懸念がくすぶるうちは素直に好感しづらいかもしれない。足元で複数の前地区連銀総裁から政策金利目標を最終的に3~4%に引き上げることになるとの発言が出てきている。 また、サマーズ元財務長官はインフレ抑制に失敗すればトランプ前大統領の返り咲きをもたらす可能性があるなどと述べた。12日に発表された11月のミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は予想に反して低下し、10年ぶりの低水準だった。製造業の回復や巨大ハイテク企業の成長で恩恵に浴する人々がいる一方、インフレにあえぐ人々が多いのも事実だろう。 25日の感謝祭前後から始まる年末商戦の行方が気掛かりなほか、来年の中間選挙を前に経済的な分断が進む恐れもありそうだ。まずは今晩発表される10月小売売上高を見極めたい。 日本では、引き続き日経平均の3万円台回復に期待する声が根強くある一方、9日の当欄「3万円台回復に向けた買い手は誰?」で述べたように、3万円に向けて上値を買う投資家が少ないとの見方がじわりと広がってきた印象を受ける。米中の緊張緩和を期待材料に挙げる向きもあるが、そもそも足元で投資論点としてそれほど重要視されていただろうか。本日の値動きを見ても買いを入れているのはヘッドラインに反応して機械的に売買するタイプの投資家に限られる印象を受ける。 米金利上昇や円安進行を日本株の追い風と捉える向きもあるが、(1)自動車各社の値動きなどを見るとクオリティ重視が鮮明で、日本株全体に追い風となるバリュー(割安)株シフトは限られる。また(2)原材料高や円安進行による交易条件の悪化も重要な投資論点として浮上しており、素直に円安を好感しづらい。 それに後日改めて取り上げたいと思うが、(3)7-9月期決算発表を通過しても日経平均の予想EPS(1株利益)増額は限定的だった。これらも踏まえ、日経平均の3万円台回復はまだまだ「近くて遠い」とみておきたい。(小林大純)
<NH>
2021/11/16 12:26
後場の投資戦略
日経平均は3日続伸、依然として3万円突破には決定打に欠ける
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29754.61;+144.64TOPIX;2048.66;+8.06[後場の投資戦略]週明け前場の日経平均は買い先行でスタートするも、依然として節目の3万円手前では売り圧力が強い様子。前週は25日移動平均線や29000円を一度も割らずに推移し、底堅さを示した。本日は好決算を受けて東エレクが上場来高値を更新するなど、支援要因もあったが、今日の動きを見ていると、3万円突破には決定打に欠ける印象。週末には、岸田政権の打ち出す経済対策が財政支出ベースで40兆円超と、従来の30兆円を上回る規模になる見込みと伝わっており、これが日本株の上昇になるとの見方もあったようだが、今日の動きをみる限り、ほとんど追い風にはなっていない。現金支給など、ばらまき色が強いとの批判も多く聞かれ、規模ありきの経済対策では、ほとんど評価にはつながらないようだ。主力企業の7-9月期決算は前週末で一巡し、今後はさらに材料難となる。米株高の上値追いなど外部環境からの支援要因がない限り、独自の株高要因に事欠く日経平均が3万円を突破するのは容易でないだろう。その上場来高値圏での好調な推移を続ける米国では、明日16日に10月小売売上高が発表予定。年末商戦の前倒しの動きから、市場予想では前月比1.3%増が見込まれているが、前週末に発表された10月ミシガン大消費者信頼感指数は10年ぶりの低水準に落ち込むなど、足元のインフレが消費者マインドを悪化させていることも確認されている。小売売上高が予想外にマイナスの結果になるなどネガティブなサプライズが出れば、高値圏で推移する米国株の調整にもつながりかねないため、注意したい。他方、午前に発表された中国の10月小売売上高は前年比4.9%増と、市場予想の3.7%増を上回り、10月鉱工業生産も前年比3.5%増と、市場予想の3.0%増を上回った。かねてから、景気減速懸念が高まっている中国において予想を上回る経済指標が確認されたことは安心材料となろう。ただ、結果発表後も、中国の上海総合指数や香港のハンセン指数は小安い展開で、特段好感する動きは見られていない。今晩は米11月ニューヨーク連銀景気指数、明日は米10月小売売上高・鉱工業生産、週後半の18日には米11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数など、注目度の高い経済指標や景気指標が多く予定されている。手掛かり材料難のなかこれらの指標結果を確認したい思惑も働きやすく、後場の日経平均は引き続きもみ合い展開となりそうだ。
<NH>
2021/11/15 12:22
後場の投資戦略
需給懸念は緩和したが…
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29612.21;+334.35TOPIX;2038.87;+24.57[後場の投資戦略] 本日の日経平均は300円を超える上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、29300円台に位置する5日移動平均線を寄り付きから上回り、上げ幅を拡大した格好。MSCI銘柄見直し発表やオプションSQを通過したことも含め、需給面の重しが取れたと受け止める投資家が多いのだろう。売買代金上位では米ハイテク株高の流れを引き継いで値がさ株の堅調ぶりが目立つが、業種別騰落率からは資産・商品インフレを見越した買いが入っている印象を受ける。中小型株の決算発表がシーズン最終盤に多くあり、好業績銘柄の物色も活発だ。ただ、ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱で、オプションSQ算出日だったことを考慮するとやや盛り上がりに欠ける感はある。前日は1日を通じて2兆4883億円で、減少傾向が続いている。 新興市場でもマザーズ指数が+1.70%と反発。米ハイテク株高が支援材料となっているだけでなく、時価総額上位のGMO−FG<4051>やAppier<4180>が決算を受けて大きく買われているのも好印象だ。なお、本日はマザーズ時価総額上位のフリー<4478>、セーフィー<4375>、ウェルスナビ<7342>、ジャスダック時価総額上位のハーモニック<6324>などが決算発表を予定している。 さて、前日の当欄でも触れたMSCI銘柄見直しは、日本株から採用2銘柄、除外15銘柄という結果になった。5月の見直しでは採用なし、除外29銘柄だったことから、今回も大幅な除外と日本株比率の低下が続くことが懸念されていた。また、このところヘッジ目的(とそれに乗じた投機目的の売買もあったと思われるが)の株価指数先物のオプション建玉が増加していたため、SQにかけての波乱を警戒する向きもあったようだ。こうした事情を背景に、本日は需給懸念が緩和して株価上昇につながったと考えられる。 もっとも、買いを入れているのは短期志向の投資家に限られるのかもしれない。今週も株価指数先物の取引は引き続き低調で、先物手口を見ても日経平均先物を中心に散発的な売買が出ている程度だった。現物株の方でも、東証1部売買代金の減少傾向を見ると取引参加者が増えているとは考えにくい。海外実需筋による東証株価指数(TOPIX)先物の買い戻しや、現物株での幅広い投資家の買い参加がなければ、引き続き日経平均は節目の3万円を前に上値が重くならざるを得ないだろう。 円相場は1ドル=114.20円台まで下落したが、足元やや下げ渋っている。アジア市場では香港ハンセン指数が4日続伸しているものの上値は重く、上海総合指数は小動き。国内では本日、東エレクなど700社近い企業の決算発表が予定され、米国では9月求人件数(JOLT)や11月ミシガン大学消費者態度指数が発表される。前日の米債券市場が休場だっただけに、10日の米10月消費者物価指数(CPI)発表後の金利動向も気になるところ。やはり後場の日経平均は上値の重い展開になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/12 12:26
後場の投資戦略
円安支えだがリスクはなお山積
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29325.75;+218.97TOPIX;2019.34;+11.38[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株安の流れを引き継いでスタートするも、結局200円超の上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、29000円近辺まで上昇してきた25日移動平均線水準まで調整を強いられることなく、29300円台後半に位置する5日移動平均線に迫る動き。売買代金上位を見ると、円安進行を手掛かりとして輸出関連株を中心に押し目買い優勢の展開といったところだろう。トヨタ自などの直近決算を見ると、供給制約の影響を円安がカバーしており、為替動向が株式相場に与える影響が大きくなるのも頷ける。一方、資生堂やパンパシHDを見ると、内需系を中心として先行きに一抹の不安もある。東証1部全体としても値上がり銘柄数は値下がり銘柄数をやや上回る程度にとどまっている。 ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円弱。前日は1日を通じて2兆5202億円となり、一昨日の当欄で指摘した減少傾向が続いている。主要企業の決算発表がかなり進んだとはいえ、シーズン終盤に入り発表企業数が増えていることから、このタイミングでの売買減少には違和感もある。中小型株が売買代金上位に顔を出すようになり、主力大型株の手控えムードも感じる。 新興市場ではマザーズ指数が-0.50%と反落。こちらも朝安後は下げ渋ったが、内需系グロース(成長)株中心だけに円安の恩恵は限られ、米インフレ・金利上昇のマイナス影響をストレートに受けやすいかもしれない。時価総額上位のJTOWER<4485>が決算を受けて急伸しているのは明るい材料だが、逆にEV(電気自動車)関連として賑わっていた日本電解<5759>が急落するなど、引き続き値動きの荒さに懸念もある。 さて、前日の米市場では10月CPIの上昇を受けてインフレ・早期利上げ懸念が再び台頭したようだ。期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.70%(+0.07pt)に、10年物国債利回りは1.55%(+0.11pt)に上昇。バイデン大統領が「インフレの反転が最優先課題」と述べるなど、政府・議会要人が相次ぎインフレ対応に言及した。なお、国債利回りは幅広い年限で大幅に上昇。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は18.73(+0.95)と上昇が続いた。根強い先高期待とインフレ等への懸念が交錯し、楽観的水準にあったVIXはじりじり上昇してきている。 NY原油先物相場は大幅反落したが、中国で早くも寒波が到来するなど、厳冬観測を背景に先高懸念は根強くある。米国では原油の戦略備蓄放出のみならず、禁輸まで踏み込むよう求める声が一部議員らから上がっているようで、エネルギー価格の動向と経済・金融市場に与える影響を注視しておく必要がありそうだ。それに企業の決算発表、連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過してきた米国だが、インフレや供給制約への懸念がくすぶるなか、25日の感謝祭前後から始まる年末商戦の行方にはやや不安がある。 また、中国も寒波のみならず、経営危機にある中国恒大集団の動向が引き続き注目される。結局、10日に猶予期限を迎えたドル建て社債の利払いは実施されたもようだが、昨夜から関連報道が錯綜し、むしろ不安が長引きそうとの懸念が拭えない。 日本株を巡っては、日本時間12日早朝にMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しが予定されている点に注意する必要があるだろう。5月の見直しで日本株は除外29銘柄、採用なしだった。日本株の比率引き下げが続いており、資金流出懸念がくすぶっている。円相場が1ドル=114.10円近辺でやや下げ渋っていることや、アジア市場で香港ハンセン指数が伸び悩んでいることもあり、後場の日経平均は上げ一服になるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/11 12:26
後場の投資戦略
決算一巡近づくなか上値切り下げで印象悪く
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29197.00;-88.46TOPIX;2014.52;-4.25[後場の投資戦略] 前場の日経平均は前日終値水準でのもみ合い。前週末5日から前日までの間に500円超下げており、心理的な節目の29000円も近づいているだけに、さすがに今日は下げ渋っている。ただ、日足チャートでは、前日までに4日連続で陰線を形成しているうえ、今日までを含めると、上値と下値もじりじりと切り下がってきている。7-9月期決算も今週で一巡するが、今後さらに手掛かり材料に欠けると想定されるこのタイミングで、こうした弱い動きが続いている様子を見ると、日本株を取り巻く環境は芳しいとは言えないだろう。 国内外の機関投資家が日本株を積極的に買ってくる動きが見られないなか、国内の個人投資家による保有も多いとみられる米テスラ株の急落が、個人投資家の含み損益の悪化を通じて、日本株の上値抑制要因ともなりそうで、気掛かりだ。 さて、米国のインフレ動向に目を向けると、9日、米10年国債利回りは1.44%(前日比-0.05%)と低下した一方、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は2.63%(同+0.01%)と上昇した。11月に入ってから米長期金利が低下傾向を示す一方、米BEIは上昇を続けている。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下は株式市場には追い風で、実際がこうした背景が、8日までの歴史的な米国株の高値更新劇を演出していたとも考えられる。 しかし、前日に発表された10月米PPIは総合で前月比+0.6%と、9月の+0.5%から伸びが加速。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアでも前月比+0.4%と、9月の+0.2%を上回った。ともに市場予想範囲内に収まっているものの、インフレ沈静化の兆しは未だに見られない。 足元の米金利(短中期~長期)の低下は、直近、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げに慎重な姿勢を示したことや、英イングランド銀行が予想に反して利上げを先延ばしにしたことで、金利上昇を見込んでいた債券の売り方が急速に買い戻していることが大きな要因として考えられる。しかし、4日に一時1バレル=78ドル台まで急落したWTI原油先物価格は9日、再び1バレル=84ドル台にまで急上昇してきている。また、上述したように、金利低下が進むなかでも、米BEIは再び上昇しはじめてきている。足元の金利低下はあくまで需給要因によるもので、市場のインフレ懸念が後退したわけではない。 各国の金融政策関係者は、すでに供給制約に伴うインフレ高進は、来年まで続くとの見方を示しているため、足元の物価指標の結果が市場をかく乱する可能性は低いだろう。しかし、どの時点で、「インフレは一時的」とする政策関係者の考えや、これに基づく市場関係者の見方が修正を迫られるかは不透明だ。 こうした中、今晩は、10月米消費者物価指数(CPI)の発表が控えている。手掛かり材料に欠けるなか、結果を見極めたいとの思惑から、引き続き東京市場では積極的な押し目買いは手控えられそうだ。中国株や香港株も軟調ななか、後場の日経平均は引き続きもみ合い、弱含みでの推移とみておきたい。
<AK>
2021/11/10 12:16
後場の投資戦略
3万円台回復に向けた買い手は誰?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29536.17;+29.12TOPIX;2033.58;-1.64[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株高を好感して朝方に一時200円超上昇したが、その後伸び悩む展開となっている。日足チャートを見ると、上ひげを付けつつ連日で陰線を形成しており、やはり節目の3万円接近での上値の重さが拭えない。ソフトバンクGが1銘柄で約132円押し上げる一方、ファーストリテなどが押し下げ役となっている。業種別では商品市況の上昇で鉱業などの関連セクターが堅調だが、前日上昇した海運株や空運株は利益確定売り優勢。東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、東証株価指数(TOPIX)は-0.08%で前場を折り返した。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、決算発表シーズン中にも関わらずここ数日やや減少傾向なのは気掛かり。株価指数先物の売買に至ってはかなり低調な印象を受ける。 新興市場ではマザーズ指数が-0.27%と続落。前日は2%超下落し、日経平均などと比べても軟調ぶりが目立った。米テスラでイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の保有株売却懸念が広がるなどして、国内の個人投資家もセンチメントがやや悪化した感がある。本日のマザーズ市場でもこのところ賑わっていた銘柄が相次ぎ急落しており、投資損益の悪化が個人投資家の資金余力に影響してくるか注視したい。なお、今週はマザーズ市場でも決算発表のピークを迎え、10日にJTOWER<4485>、12日にセーフィー<4375>、フリー<4478>、ウェルスナビ<7342>などが予定されている。 さて、前日の米市場では商品市況の上昇とともに、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.62%(+0.08pt)に上昇。10年物国債利回りも1.49%(+0.04pt)と反発したが、「FRBは利上げを急がない」との見方を背景に、依然として株高は崩れていない。ただ、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が17.22(+0.74)とじりじり上昇してきているのは少々気になる。明日10日には10月消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、「インフレは一時的」とのFRBの見解に再び疑念が広がらないか注視する必要もあるだろう。 日本株はというと、かねて当欄で予想していたとおり、米株比でのアンダーパフォームが鮮明となりつつある。国内の市場関係者からは、衆院選通過による安心感と本格検討に入った経済対策への期待で3万円台回復を見込む声も聞かれる。しかし、「3万円台回復に向けた買い手は誰か」という視点に欠ける印象を受ける。これまでたびたび指摘しているが、海外勢の株価指数先物の買いは足元一服しており、現物株投資家の信用取引状況も買い残が高水準となる一方、売り残は低水準となっている。 朝方から円相場がやや強含んでおり、アジア市場では香港ハンセン指数や上海総合指数が日経平均と同様に朝高後伸び悩み。後場の日経平均も上値を試す動きは乏しいとみておいた方が良いだろう。なお、本日は大和ハウス<1925>、バンナムHD<7832>、NTTデータ<9613>など200社前後の決算発表が予定されており、米国では10月の卸売物価指数(PPI)が発表される。(小林大純)
<AK>
2021/11/09 12:21
後場の投資戦略
3万円突破には材料不足か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29590.57;-21.00TOPIX;2041.48;+0.06[後場の投資戦略] 本日の日経平均は寄り付きから急失速すると軟調な値動きが続いた。半導体不足や供給網の混乱の影響が大きい輸送用機器セクターの比率が高いこともあり、これまでの日本企業の7-9月期決算は米国企業と比べて見劣りしている。資源価格の高騰や円安による輸入物価高もあり、日本企業を取り巻く環境は相対的に厳しい。 衆院選は、自民党が想定以上に健闘した結果となり、政権運営化に期待する声もあるようだが、そもそも岸田政権が掲げる政策への海外投資家からの事前評判は高くなかった。経済対策の内容も今のところ景気浮揚につながりそうなものは現金給付策くらいしか見えてきていない。また、中長期の目線でみても、株式市場が好感するような政策はそもそもほとんど見られない。世界的に日本株のバリュエーションが割安とはいえ、企業を取り巻く環境が相対的に厳しく、政策評価も大きく変わっていなければ、日本株を積極的に選好する理由は乏しいだろう。日経平均の3万円突破には材料不足の状況といえそうだ。 また、本日は指数寄与度の大きいソフトバンクG<9984>の決算が控えている。当局による規制強化をきっかとした中国株の下落などを背景に、7-9月期のビジョンファンド事業は赤字となった可能性も指摘されているだけに、結果と株価反応を見極めたいとの思惑も強いだろう。すでに年初来安値圏にある同社株だが、一段安となると、信用買い残も積み上がっているだけに個人投資家心理が悪化しそうだ。 米株市場も総じて堅調とはいえ、主要株価3指数が揃って過去最高値圏にあるなか、前週末にはNYダウ、S&P500指数、ナスダック、いずれも長めの上ヒゲを形成している。米連邦準備制度理事会(FOMC)というイベントリスクがなくなり、季節性要因の調整圧力も後退、インフラ法案も署名される見通しとあって、米国株を巡る環境はすこぶる良好だが、騰勢一服も意識されるタイミングだ。ソフトバンクGの決算に加え、今晩の週明けの米株市場の動向を見極めたいとの思惑もあり、後場の日経平均もさえない展開が続きそうだ。
<AK>
2021/11/08 12:16
後場の投資戦略
やはり「需給的に上値は重い」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29593.61;-200.76TOPIX;2038.29;-17.27[後場の投資戦略] 本日の日経平均は200円の下落で前場を折り返した。今週に入ってから前日までの4日間で900円超上昇しており、米雇用統計の発表を控えた週末を前に利益確定売りが出やすいだろう。日足チャートを見ると、本日を含めたここ2日ほど節目の3万円接近で連日の陰線となり、上値の重さを感じさせる。一方、29600円近辺では下げ渋っており、押し目買い意欲も根強いことが窺える。個別・業種別の騰落状況では、米株と同じく景気敏感セクターが軟調ながら、ハイテク株は堅調。海運株は前日後場からの売りが継続している。レノバに見直し買いが入り急伸するなど、決算を手掛かりとした物色も活発だ。ただ、ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりと前日に比べやや少ない。 新興市場ではマザーズ指数が-0.10%と小幅ながら4日ぶり反落。朝方こそハイテク株高を追い風に堅調だったが、こちらも週末を前に利益確定売り優勢だ。決算発表のBASE<4477>は見直しムードに乏しくさえない。また、本日マザーズ市場に新規上場したフォトシンス<4379>は公開価格を下回って推移。スマートロック開発の有力スタートアップとして期待される一方、公募・売出規模が100億円超と大きかった。IPO(新規株式公開)銘柄への投資スタンスが積極的な局面なら公開価格割れを免れたかもしれない。ただ、「ARR(年間経常収益)3割成長でPSR(株価売上高倍率)20倍の株価評価を引き出し、2~3割下回る公開価格設定で需要家を募る」という有力テック企業のIPOにおける「必勝パターン」が簡単には通用しなくなった可能性もある。今後のIPOに注目したい。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.56%(+0.03pt)に上昇する一方、10年物国債利回りは1.52%(-0.08pt)に低下。米労働生産性の低下に加え、英イングランド銀行(中央銀行)が事前の利上げ観測に反し政策金利を据え置いたことも金利低下につながった。結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は低下方向に動き、株式、特にハイテク株にとって追い風となった。 もっとも、2~3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過したとはいえ(だけに、とも言える)、今晩発表される米雇用統計を受けての波乱を警戒する向きは根強くあるようだ。米株式市場にはまだまだ緩和マネーがあふれ、そう簡単に株高が崩れる印象に乏しいが、かなり楽観ムードが強まっているだけに反動を警戒しておく必要はあるだろう。 一方、日本株はというと、「需給的に米株と比べ上値が重くならざるを得ない」という前日の当欄で指摘したとおりの展開となりつつある。前日は日経平均が273円高となったものの、先物手口を見ると外資系証券が大きく買い越しに傾いた印象に乏しかった。また、前日の後場以来軟調な海運株はまさに信用買い残が大きく膨らんでいた銘柄で、決算内容にかかわらず目先の利益確定売りが出やすかったと考えられる。本日ハイテク株が買われているように根強い循環物色が下値を支えるだろうが、やはり日経平均3万円を前に上値は重いとみておいた方がいいだろう。 足元では円相場の上昇が一服しつつあるが、アジア市場では香港ハンセン指数などが軟調。また、本日はホンダ<7267>、オリンパス<7733>、伊藤忠<8001>、三菱商事<8058>など300社超が決算発表を予定している。これらの業績や米雇用統計の内容を見極めたいとのムードもあり、後場の日経平均は軟調もみ合いが続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/11/05 12:17
後場の投資戦略
「米楽観ムードへの懸念」と「日本株の需給の重さ」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29792.47;+271.57TOPIX;2049.31;+17.64[後場の投資戦略] 注目されたFOMCの結果を受けて米株の高値更新が続いたことが安心感につながり、祝日明けの日経平均は300円超の上昇からスタートした。もっとも寄り付き直後にこの日の高値を付けると、やや上値の重い展開となっている。売買代金上位は全般堅調だが、特にハイテク株と海運株の上昇が目立つ。インターネット証券を中心に賑わっていることが想定されるほか、半導体関連については米クアルコムが決算を受けて時間外取引で上昇していることも追い風だろう。決算ではZHDや富士フイルムが好反応だが、業績上方修正の日本製鉄<5401>は朝高後に伸び悩み。ヤマハやコニカミノルタの業績下方修正には、半導体不足等の供給制約が少なくない企業で逆風となっていることを再確認させられる。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円あまりで、祝日前だった2日より膨らんでいる。 新興市場ではマザーズ指数が+1.20%と3日続伸。2日の後場は急失速する銘柄が目立ったが、FOMC通過で改めて買いが入っているようだ。ただ、2日に上場来高値を更新したアスタリスク<6522>は、本日大きく値を崩してこそいないが反落となっている。大商いで長めの上ひげを付ける格好となり、株式需給の悪化が意識されているのかもしれない。2日の当欄で示唆したとおり、人気銘柄への投資資金集中による需給かく乱や株価指標面での過熱感は気になるところ。また、今週のマザーズ主力企業の決算発表はさほど多くないが、本日はBASE<4477>、明日5日はマザーズ時価総額2位まで躍進したJMDC<4483>が発表予定となっており、これらの業績動向に注目しておきたい。 さて、米株はFOMCを挟み主要3指数が連日で最高値を更新。この間、市場ではレンタカーのエイビス・バジェット・グループが決算発表後に一時3倍超まで株価急騰したことが話題となった。売り方が買い戻しを迫られたことも大きいが、3日終値ベースで時価総額2兆円超の銘柄がこれだけの急騰劇を演じるのには舌を巻かざるを得ない。米株が堅調な企業業績を背景に世界の投資資金を集めていることが窺える。 ただ、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は3日、15.10(-0.93)まで低下し、楽観的あるいは弛緩的とも言えるムードだ。また、米債券市場では10年物国債利回りが1.60%(+0.05pt)に上昇したが、FRBのインフレコントロールへの不安などが背景にあるようだ。期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.53%(+0.02pt)となり、ここ2日で上昇に転じつつある。米金融大手からは株高の持続性への不安や下方リスクを指摘する声が出始めており、米10月雇用統計の発表などを控え、なお楽観修正の動きに注意する必要があるだろう。 一方の日本株だが、10月29日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆5961億円と前の週に比べ415億円増えた。2週連続の増加で、7月9日申し込み時点(3兆6041億円)以来の高水準となる。一方、信用売り残は6682億円と1040億円減り、ヒストリカルで見て低位にとどまっている。上値で利益確定の売りが出やすい一方、米エイビスの急騰劇を演出した売り方の買い戻しは期待しづらいだろう。また、衆院選直後の1日こそ海外投資家の株価指数先物の買い戻しが観測されたが、2日はFOMC前だったとはいえBofA証券が東証株価指数(TOPIX)先物を売り越すなど、一段と買い持ちに傾こうとする動きはこれまで見られない。 こうした需給状況に加え、企業の決算発表が進行中であることも考慮すると、米株に比べ上値が重いのもやむを得ないだろう。ひとまずこの後発表されるトヨタ自決算が供給制約への懸念を打ち消すものとなるか注視したい。(小林大純)
<AK>
2021/11/04 12:28
後場の投資戦略
FOMC前に気掛かりはある
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29580.49;-66.59TOPIX;2035.68;-9.04[後場の投資戦略] 日経平均は衆院選結果を受けて前日急伸していただけに、本日はやや利益確定売り優勢となっている。それでも寄り付き直後を除けばおおむね29500円台をキープしており、底堅い推移と言える。個別では決算を受けて値幅が大きく出ている銘柄が多いものの、ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと前日までより少なく、全体としては明日の祝日やFOMCの結果公表を前に様子見ムードが強いと考えられる。業種別では空運業が上昇率トップで、新型コロナウイルスの水際対策緩和を好感した動きだろう。 新興市場ではマザーズ指数が+1.09%と続伸。売買代金トップのアスタリスク<6522>が上値追いの勢いを強めているほか、新サービス開始を発表したエネチェンジ<4169>なども大幅高となっている。強い成長期待が新興株を押し上げているが、本日は主力大型株の様子見ムードから物色の矛先が向いている面もあるだろう。人気銘柄に投資資金が集中し、株価指標面ではやや過熱感のある銘柄が多いのも気になるところ。一方、物色圏外で割安放置ぎみの有力テック株が散見され、中長期的にはこうした銘柄にも投資妙味がありそうだ。実際、株価調整が続いていた弁護士コム<6027>は決算発表後に強いリバウンドを見せている。 さて、米株は主要3指数が連日で最高値更新と強い値動きが続いているが、前週も述べたとおり、楽観ムードのなか「いいとこ取り」をしている印象が拭えない。10月のISM製造業景況感指数についても、株式市場では市場予想上振れが好感される一方、債券・為替市場では前月比での鈍化やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)の兆候を警戒視する声が聞かれた。 なお、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.50%(-0.01pt)、米10年物国債利回りは1.55%(0.00pt)とおおむね横ばい。ただ、既に指摘したようにBEIが先週後半大きく低下したことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利が上昇しているのは気掛かり。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は16.41(+0.15)とやや上昇したが、まだ楽観修正の余地の方が大きい水準だろう。こうした難しい局面でFOMCを迎えることから、市場トレンドに大きな変化が出てくるか注視したい。 また、日経平均は前日こそ一時29666.83円まで上昇したが、これはリフレトレード後退後の戻り高値とさほど変わらない水準だ。このことから、衆院選結果が全員参加の買いにつながるかも慎重に見極める必要があるだろう。自民党の議席減は大方の懸念より少なかったが、自民党総裁選で日本の変化に期待していた海外投資家や、コロナ禍中の政権運営に不安を持つ個人投資家の買いを誘うものではないかもしれない。 アジア市場では上海総合指数が続落する一方、香港ハンセン指数は6日ぶりに大幅反発しており、日本株にとっても下支え要因となりそうだ。とはいえ、FOMC前に積極的に買い持ちに傾くとも考えづらく、後場の日経平均は引き続きマイナス圏でもみ合う展開になるとみておきたい。なお、本日は花王<4452>、日本製鉄<5401>、三井物産<8031>などが決算発表を予定(前場には丸紅<8002>が決算発表)。また、3日の米国ではFOMC結果に加え、10月のADP雇用統計やISM非製造業景況感指数が発表される。(小林大純)
<AK>
2021/11/02 12:22
後場の投資戦略
政権運営安定化への期待で買い先行も、中長期勢はまだか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29538.15;+645.46TOPIX;2032.45;+31.27[後場の投資戦略] 本日の日経平均は久々の急伸劇で、9月30日以来となる29500円を回復。朝方の買い一巡後はもみ合いとなったものの、概ね高値圏での堅調推移が続いた。今回の衆院選については、事前に、自民党が単独過半数を獲得できるかの攻防と伝わっていた。そのため、議席数を減らしたとはいえ、自民党が単独過半数獲得に成功しただけでなく、国会の安定運営に必要とされる絶対安定多数をも単独で確保したことにはポジティブサプライズ感が伴い、これを素直に好感した動きが先行しているようだ。 ただ、日経平均と東証株価指数(TOPIX)との上昇率に開きがあり、東証1部売買代金上位をみても指数寄与度の大きい値がさ株中心に上昇しているところを見ると、短期筋による日経平均先物の買い戻しが中心とみられる。日経平均は、朝方の買いが一巡した後はほぼ横ばいで、前場中頃には再び一時29500円を割り込んだ場面も見られており、この水準での戻り待ちの売り圧力も根強い様子。 衆院選を終え、今後の政局安定化が期待されるところだが、政権の真価が問われるのはこれからだ。自民党は、絶対安定多数を獲得できたのであるから、日本の経済成長につながる具体的な政策を今後どんどん推進してもらいたい。海外勢も、いま買ってきているのは短期筋が中心で、中長期目線の投資家による買いにはまだ本腰が入っていないだろう。こうした投資家らは、政権の具体的な政策を注視しており、物足りないとの評価に至れば、日本株を敬遠する動きは解消されないだろう。 一方、立憲民主党が議席を減らしたことで、今回の衆院選では野党共闘の効果が見られず、野党は戦略の見直しが求められる結果となった。しかし、他方で、日本維新の会は議席数を4倍近くに増やしている。国民の中でも政治に対する変革を望むものは多いということだろう。自民党には、来夏の参院選をも意識した緊張感を持ってもらいながら、是非とも国家のための政策を推進していってほしい。 さて、後場の日経平均は引き続き29500円を挟んだもみ合い展開となりそうだ。東京市場は、3日が文化の日の祝日で休場となる。米国では2日から米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、3日にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見がある。量的緩和策の縮小(テーパリング)開始の正式決定などは市場にほとんど織り込み済みであるため、特段の波乱はないと思われるが、祝日やイベントを前にやや様子見ムードが強まりやすいだろう。
<AK>
2021/11/01 12:24
後場の投資戦略
ソニーGなど好決算でも懸念払しょくには至らず
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28792.53;-27.56TOPIX;1955.46;-4.20[後場の投資戦略] 本日の日経平均は一時300円超下落したが、結局小安い水準で前場を折り返した。日足チャートを見ると、28500円台に位置する75日移動平均線を一時下回ったものの、長めの下ひげを付ける格好。企業の決算発表や31日の衆院選投開票が注目されて話題に上がっていなかったが、月末の株安アノマリーを改めて意識する市場関係者もいるようだ。売買代金上位は個別の決算対応が中心。業種別騰落率では、NY原油先物相場が底堅かったことから、関連セクターが値上がり上位に顔を出している。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円強と前日並みの水準。決算発表の本格化でまずまず取引活発となってきた。 新興市場ではマザーズ指数が-0.76%と反落。制限値幅拡大のINC<7078>が大幅高となるなど、引き続き短期の値幅取りを狙った物色は散見される。ただ、本日決算発表を控えたメルカリ<4385>は軟調。10月中旬まで強い値動きだっただけに、決算発表を前に利益確定売りが出やすいだろう。 さて、米株は堅調な企業業績を背景に強い値動きが続き、歳出・歳入法案を巡っても法人・富裕層増税に対する懸念が和らいだようだ。しかし、今晩の取引ではアップルやアマゾンを中心に反落が見込まれ、東京市場でも米株高を素直に好感しづらいところではある。また、増税懸念が和らいだといえど、歳出案の規模は半減しており、株式市場は楽観ムードのなか「いいとこ取り」をしている印象はある。 なお、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は16.53(-0.45)に低下。各国中央銀行のインフレ対応が意識されるなどして、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.57%(-0.08pt)に低下したが、米10年物国債利回りはむしろ1.58%(+0.04pt)に上昇した。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下がこれまで米株高を後押ししてきた面もあるため、名目金利上昇・BEI低下という前日の動きはやや気になるところだ。 日本企業を巡ってはキヤノン<7751>、ファナックなど電機大手を中心に想定外の業績下方修正が相次いでいただけに、ソニーGなどの好決算には安心感がある。ただ、アップルで主力のスマートフォン「iPhone」の売上高が市場予想を下回ったところを見ると、まだまだ供給制約による影響への懸念は拭いづらいだろう。とりわけ日本では、足元の商品高や円安による交易条件の悪化を懸念する声が増えてきた。 アジア市場では香港ハンセン指数が4日続落し、上海総合指数は小動きで推移。日本では本日、400社近い企業が決算発表を予定しており、人気銘柄として注目されるレーザーテックのほか、JT<2914>、第一三共<4568>、村田製<6981>、KDDI<9433>などがある(前場にはデンソー<6902>が決算発表)。前述のとおり31日には衆院選の投開票日を迎え、後場の取引では企業業績や国内政治の動向を見極めたいとの思惑が強まりそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/10/29 12:26
後場の投資戦略
景気敏感株売りと想定外の下方修正
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28825.62;-272.62TOPIX;1999.86;-13.95[後場の投資戦略] 本日の日経平均は続落し、200円超の下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、売り一巡後は28800円台に位置する25日移動平均線を挟んでの攻防といった様相。ファナックとエムスリーの2銘柄で日経平均を約114円押し下げているほか、米株と同様に市況関連を中心とした景気敏感株の軟調ぶりが目立つ。NY原油先物や非鉄金属市況が下落した影響だろう。一方、東エレクやアドバンテス<6857>、信越化が日経平均の下支え役。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円弱で、決算発表の本格化とともに膨らんできた。 新興市場ではマザーズ指数が+0.51%と反発。こちらは米市場での長期金利低下やハイテク株高が追い風として働いているのだろう。もっとも、明日29日に決算発表予定のメルカリ<4385>は足元やや調整ぎみ。また、週末には衆院選投開票が控えており、買い持ち高を減らしておきたいという個人投資家も少なくないようだ。 さて、米株については先週末の当欄で「やや楽観に傾き過ぎている」と指摘したが、やはり少々修正を迫られる動きとなっているようだ。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は21日に15.01まで低下していたが、前日には16.98とじりじり上昇。これに伴い、連日で過去最高値を更新していたNYダウやS&P500指数はスピード調整の様相となっている。ただ、景気敏感株に売りが出る一方、ハイテク株に買いが入っており、現時点では過度に警戒する必要はないかもしれない。なお、NY原油先物は在庫増加を受けて下落し、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.65%(-0.04pt)に低下。また、各国債券市場に大きな動きが見られ、米10年物国債利回りも1.54%(-0.07pt)に低下している。 日本株はこうした景気敏感株売りの影響を受けるとともに、キヤノン<7751>やファナックなど想定外の業績下方修正が相次いでいる。やはり供給制約の影響は重いと見ておいた方がいいだろう。かねて指摘しているとおり、今年度に入ってからのPBR推移を見ると、日経平均29000円前後は各種懸念を織り込んだ水準とは言いづらい。キヤノンやファナックの株価反応はそれを端的に表しているだろう。 アジア市場では香港ハンセン指数、上海総合指数とも下落。本日は国内でOLC<4661>、武田薬<4502>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、HOYA<7741>など160社あまりの決算発表が予定され、海外では欧州中央銀行(ECB)定例理事会や米7-9月期国内総生産(GDP)速報値の発表などが予定されている。引き続き国内企業の業績動向や海外経済、金融政策の行方が注目され、後場の取引では軟調もみ合いが続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/10/28 12:28
後場の投資戦略
指数弱含みも決算反応は良好なもの多い
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28946.61;-159.40TOPIX;2009.84;-8.56[後場の投資戦略] 日経平均は一時200円超下げ、29000円を割り込んだ。しかし、前日に500円超上昇していたこともあり、反動安は想定内といったところ。決算シーズンが本格化しはじめ、個別株物色が中心となっているため、今後も日経平均は29000円を挟んだ水準での一進一退が続きそうだ。 日本でも決算発表が前日からかなり増えてきたが、これまでの日米の企業決算の内容は総じて良好といえそうだ。米国では金融大手から医薬、消費財メーカーの好決算からはじまったが、その後も電気自動車(EV)のテスラ、動画配信サービスのネットフリックスなどのハイテク株の好決算が相次ぎ、株価も上場来高値を更新する動きが見られている。また、前日の取引終了後には検索グーグルを運営するアルファベットとソフトウェアのマイクロソフトの大型テック企業が決算を発表したが、内容は概ね予想を上回り、マイクロソフトは時間外取引で大きく上昇している。市場への影響力が絶大なGAFAMやテスラなどの決算と株価反応が良好であることは投資家心理の下支えに大きく寄与してくれる。 また、東京市場でも、新光電工、日東電工、日立建機などの電子部品株や景気敏感株で良好な決算が確認されたことは好材料。残念ながら、注目度の高い日本電産については、市場予想をやや下振れたことで株価は下落しているが、こちらも、先行き不透明感がくすぶる中でも通期計画を上方修正してきたこと自体はポジティブに捉えられる。本日は、指数は弱含んでいるものの、決算銘柄だけに限ってみれば、上昇している銘柄が多くみられ、相場全体の雰囲気も見た目程には悪くない様子。日本では決算発表がまだ始まったばかりではあるが、今後の主力株の反応でもポジティブな反応ものが優勢となれば、決算一巡後には日本株を再評価する動きが出てくるかもしれない。 さて、後場の日経平均は引き続き29000円を挟んだ水準での弱含みの推移が続きそうだ。決算前に、本日大きく下落している値がさ株やハイテク株に積極的な押し目買いが入るとは考えにくく、香港ハンセン指数が大きめに下げていることもあって、冴えない動きを強いられよう。なお、本日は信越化<4063>、エムスリー<2413>、ファナック<6954>、富士通<6702>などの決算が予定されている。
<AK>
2021/10/27 12:10
後場の投資戦略
需給影響一服だが決算見極めへ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29100.57;+500.16TOPIX;2019.30;+23.88[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大幅反発し、29000円台を回復して前場を折り返した。日足チャートでは、寄り付きから28900円近辺に位置する5日移動平均線や25日移動平均線を上回り、そのまま上げ幅を拡大する格好。ファーストリテが1銘柄で日経平均を約104円押し上げているが、東証1部全体としても8割強の銘柄が上昇する展開だ。パナソニックやNTTは先行きに期待が持てる好材料と言えるだろう。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円弱で、値幅の割に膨らんでいない。キヤノン子会社で製品の供給制約による影響が見られたのも、決算発表シーズンに入り気掛かりな点ではある。 新興市場ではマザーズ指数が+1.69%と5日ぶり反発。FRONTEO<2158>や日本電解<5759>が賑わっている。ただ、日本電解が早々に伸び悩んでいるほか、先週まで人気だったグローバルW<3936>が連日のストップ安。やはり短期志向の投資家中心の売買で、値動きが荒い印象だ。本日マザーズ市場に新規上場したCINC<4378>は公開価格比+28.2%というしっかりした初値形成だったが、市場予想と比べるとやや伸び悩んだ。IPO(新規株式公開)の初値パフォーマンスは好調と言えない状況が続いており、これが個人投資家のセンチメントを最も表しているのかもしれない。昨今、公開価格決定プロセスの見直しが政府を交え進んでいることも影響している可能性がある。 さて、前日は日経平均への寄与が多いソフトバンクGとファーストリテの軟調ぶりが目立ち(日経平均は204.44円安で、この2銘柄が約145円の押し下げ要因)、先物手口を見ると野村証券が日経平均先物の売り越しトップだった。東証株価指数はクレディ・スイス証券などが買い越し、BofA証券などが売り越しとまちまち。現物株はというと、東証1部売買代金が2兆2792億円と8月27日以来の低水準だった。 先週後半からこうした日系証券の日経平均先物売りが見られたが、日本郵政の大型売出しに絡んだものとの見方が有力だった。日本株が海外株に比べ軟調だった大きな理由として挙げられるだろう。決算発表の本格化を前に現物株の売買がやや低調だったため、先物売りの影響が大きく出やすかったと考えられる。先週の当欄で「(相場が)需給的に大きく振れやすい」と述べたとおりだ。本日は一転してソフトバンクGやファーストリテが堅調なところを見ると、日本郵政の売出価格決定とともに日経平均先物にも買い戻しが入っているのだろう。日本株は需給イベントの影響が一服し、出遅れ分を取り戻そうとする動きにつながった。 しかし、先週の当欄でも指摘したが、日経平均が29000円を上回る局面ではPBR(株価純資産倍率)が1.3倍台に上昇し、3月決算企業の通期決算発表が一巡した5月半ば以降で最も高い水準となる(日経平均算出ルール変更や銘柄入れ替えの影響は考慮していないが)。米企業の好決算を横目に市場の期待はまずまず高まっているとみられ、ひとまずこの水準で実際の決算を見極めたいとのムードが出てくるだろう。 また、31日の衆院選投開票を前に持ち高を減らしたいという声も個人投資家などから聞かれる。一部メディアが選挙戦中盤の情勢を報じており、自民党が当初予測から議席減少幅を縮小しそうだが、24日投開票の参院補欠選挙が「1勝1敗」という結果だったことから、与党苦戦への懸念は拭いづらいだろう。従前TOPIX先物を買い戻していたBofA証券が再び売り越してきたところを見ると、海外投資家にも政治の先行き不透明感が意識されている可能性はある。 現在、香港ハンセン指数は小幅反落で推移。本日は国内で日本電産<6594>やキヤノンの決算発表があり、米国でも9月の新築住宅販売件数や10月の消費者信頼感指数、それにアルファベットやマイクロソフトなどの決算が発表される。後場の取引では徐々に様子見ムードが強まるとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/10/26 12:18
後場の投資戦略
インフレリスクや国政不透明感で売り先行
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28520.35;-284.50TOPIX;1997.13;-5.10[後場の投資戦略] 前週末のNYダウが史上最高値を更新した一方、週明けの日経平均は300円程の下げ幅での推移となっている。米長期金利の上昇が一服した反面、原油先物価格の上昇傾向は続いており、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も歴史的な高値圏で高止まりとなっている。パウエルFRB議長がインフレリスクに言及したことも金利先高観を強め、ハイテク株を中心に日経平均を押し下げている。 また、月末31日の衆院選を前に、前哨戦ともなる参院静岡、山口両選挙区の補欠選挙が前日に投開票された。山口では自民党候補が勝利した一方、静岡は、立憲民主、国民民主両党が推薦した候補が初当選となった。また、自民党が勝利した山口については、そもそも野党共闘が成立しておらず、実質的な無風選挙だったとの指摘も聞かれた。岸田内閣発足後初の国政選挙であったが、先行き不透明感を強める結果となり、報道のヘッドラインなどに反応したアルゴリズム売買なども下げを加速したとみられる。 他方、今週から7-9月期の決算発表が本格化する。前週一足先に決算を発表したディスコ<6146>は想定以上の好決算で、翌日の株価も素直に反応した。世界的な供給網混乱や電力不足、資源価格の上昇などを背景に、製造業決算に対する警戒感は根強いものの、こうした懸念は事前にある程度織り込まれていると想定される。一方、半導体などは今後も相対的に安心感のある決算が期待される。また、日経平均の28500円水準では心理的な節目が意識されるほか、この水準ではバリュエーション面での割高感も乏しい。こうした背景から、決算イベントを前にここから一段と売り込まれることは考えにくいだろう。 全体としては、上値は重くも、下値不安も大きくないと考えられ、指数は引き続きレンジ推移を続けそうだ。こうした中、決算を受けた選別物色の様相が次第に強まっていくこととなろう。早くも、東京製鐵の決算をきっかけに、しばらく冴えない動きが続いていた鉄鋼株を見直すような動きも見られている。再び日本株と米国株とのパフォーマンス格差が広がるなか、決算をきっかけに日本株を再評価するような動きがもっと出てくることを期待したいばかりだ。 さて、後場の日経平均は引き続き28500円を意識した一進一退となりそうだ。上海株や香港株がもみ合いとなっているなか、時間外の米株価指数先物の動きに反応した短期筋に左右されやすいだろう。しかし、上述した通り、過度な下値不安を抱く必要はないと考えられる。先物主導で下げるなか、本日は値がさハイテク株の下げがきついが、短期的な逆張り戦略が功を奏すると考える。
<AK>
2021/10/25 12:18