後場の投資戦略ニュース一覧

後場の投資戦略 短期的には強含み継続の公算大 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27999.82;-163.01TOPIX;1992.23;-12.08[後場の投資戦略] 日経平均は前引け時点で3日続落。ただ、朝方の売り先行後は前引けにかけて下げ幅を縮める動きを続けており、日足ローソク足は下ヒゲを伴った陽線を形成。上向きの25日移動平均線手前から反発する形となっており、底堅さが感じられる。前引け終値ではやや下回ったものの、心理的な節目の28000円を序盤から即座に回復したあたり、この水準での押し目買い需要は強いようだ。 中国での新型コロナ感染の再拡大と前日にかけての「ゼロコロナ」政策に反対する民衆デモの拡大を受けて、サプライチェーンが再び混乱するのではないかといった同国を巡る先行き不透明感が強まったことが、株式市場の下落につながったとされている。実際、中国河南省の省都、鄭州市にある米アップルの工場で混乱が生じていることを背景に、同社は今年、約600万台の「iPhoneプロ」の生産不足に陥る可能性が高いと報じられている。また、日本企業でも、ホンダが中国武漢市の工場の稼働を停止したと伝わっている。 一方、中国のデモについては、警備隊の派遣を通じてすでに沈静化しているようだ。今後の動向に注意は必要だが、むしろ、今回の一件で、中国政府がゼロコロナ政策の解除に向けてさらに前進する可能性も出てきたともいえる。直近の一連の報道を受けて、中国ゼロコロナ政策の緩和期待はいったん剥落していたため、ゼロコロナ政策緩和に向けた動きが今後再び出てくれば、株式市場にはポジティブに働きやすいだろう。 ほか、前日は米連邦準備制度理事会(FRB)高官からタカ派発言が相次いだ。タカ派筆頭とされているセントルイス連銀・ブラード総裁は、FRBがインフレ抑制のために来年、一段と利上げを行う必要が生じる可能性を金融市場が過小評価していると発言。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も、インフレは依然高過ぎるとし、さらなる引き締めが必要との見解を示した。さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も、利上げ幅の縮小については賛同している一方、「利上げの一時停止が近いとは考えていない」などと発言した。 こうした発言が株式市場の重石として働いたようだが、今週は元々、30日のパウエルFRB議長の講演や、週末の米雇用統計を前に警戒感が高まりやすかった。これを踏まえれば、今回の高官のタカ派発言を受けて、むしろ、後に残るイベントによるネガティブサプライズの可能性が低くなったとも捉えられる。また、一連のタカ派発言があった中でも、前日の米10年債利回りは3.683%と、先週末の3686%からむしろ小幅ながら低下している。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)も、来年5月前後の5%程度をピークとした予想に変化は生じていない。 前日の米国市場から本日の東京市場の動きをみて、改めて足元の株式市場の悪材料に対する底堅さが確認されたといえよう。もっとも、個人的には、来年の景気減速下での高水準の金利据え置きにより、米国経済の景気後退は不可避と考えているため、企業業績の悪化とともに中長期的には株式市場は低迷していくと予想している。ただ、今年前半のように、高官のタカ派発言などに対して大きく一喜一憂するような展開はもう終わったのだと考えている。今後の業績悪化を織り込むにはまだ時間がかかるとみられる中、目先はまだ株式市場の強含み基調が続きやすいと予想する。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/29 12:27 後場の投資戦略 来年にかけて弱気相場再来か? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28107.79;-175.24TOPIX;2002.07;-15.93[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、米ハイテク株安の流れも重しとなりやや売りが先行している。今週の米国では週末の雇用統計など重要な経済指標のほか、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見など重要イベントが相次ぐことから、積極的な売買は手控えられるとの見方が強いことも背景にあるようだ。下落してスタートした後は、マイナス圏での軟調な展開となった。そのほか、中国・香港市況は軟調に推移、米株先物も売り優勢の展開が続いている。 一方、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした。その後は、上げ幅を広げたが、買いが続かず上値の重い展開となっている。米長期金利が3.6%台まで低下していることは、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって引き続き追い風となっている。ただ、日経平均株価が軟調に推移する中、前週末上昇した分の利食い売りが優勢。引き続き、個別材料株に物色が向かっており、前引け時点で東証マザーズ指数が0.28%高、東証グロース市場Core指数が0.49%高となっている。 今週は、米11月雇用統計や米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景気指数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)、中国の購買担当者景気指数(PMI)など注目材料が多くある。また、30日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演が予定されている。米国のインフレ指標の大幅な減速が確認されて以降、米長期金利の低下と株価上昇の流れが続いているが、引き続き経済指標の結果やパウエル議長の発言に神経質に反応する展開に変わりはないため、今週からは再度注意を払っていきたい。 ブルームバーグは28日、「12月2日に公表される最新の米雇用統計では、雇用の伸びは米金融当局が求める下降軌道寄りにあることが示される見通しだ。」と報じている。11月の非農業部門雇用者数は前月比20万人前後の増加が見込まれ、雇用統計では平均時給の伸び鈍化も見込まれているという。ブルームバーグが集計した予想中央値は前年同月比4.6%増で2021年8月以来最小の伸びとなるようだ。失業率は前月と同じ3.7%と予想されている。 さて、10月CPIの減速確認により短期的に上昇基調が続いてきた。ただ、市場関係者の間では弱気相場はさらに続く余地があるとの見方が広がっている。米ゴールドマン・サックスの世界株担当チーフストラテジストであるピーター・オッペンハイマーは、値動きは今後さらに激しくなると予想しているという。また、S&P500種株価指数は来年「最後の」安値をつけたあと、年末には4000ポイントに戻して年初とほぼ同水準で終えるとのシナリオを示している。モルガン・スタンレーのリサ・シャレット氏も、来年は利上げの影響が明らかになるにつれて経済への懸念が強まっていくだろうと警鐘を鳴らしているようだ。 また、世界的に様々なリスクが散見されるなか、国際金融協会(IIF)は来年の世界経済成長率が金融危機後の2009年並みの低水準になると予測している。IIFによると、成長減速は戦争の影響が最も大きい欧州が中心になる見込みで、ユーロ圏は消費者・企業景況感の急激な悪化で2%のマイナス成長になると予想している。 25日のブルームバーグでは、「ドイツ連邦銀行は国内の金融安定状況が今年は悪化に大きく転じたとの判断を踏まえて警鐘を鳴らした」と報じている。ドイツ連銀は年次金融安定報告書で、成長見通し悪化やインフレ高止まり、金利とリスクプレミアム上昇に対する市場の反応を受けて銀行や保険会社、投資ファンドは既に損失を計上していると指摘。「エネルギー危機悪化や急激な景気の落ち込み、市場金利の急上昇でドイツ金融システムは甚大な圧力にさらされる恐れがある」とした上で、「結果として将来的な信用リスクが高まりつつある」と見解を示している。 先週の当欄でも示唆したが、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。多くの市場関係者が来年の株式市場の更なる下落を予想し始めたため、大方の予想に反して12月末から大きな下落が生じる可能性もあるだろう。 やはり、インフレ指標の確認は非常に重要で、12月13日の米消費者物価指数の発表には注意が必要か。下落の要因が何になるかだれも予想はできないが、筆者も引き続き、12月末から来年にかけて株式市場が大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、売り優勢の展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/28 12:20 後場の投資戦略 年末株高の期待は高いが・・・ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28286.94;-96.15TOPIX;2016.23;-2.57[後場の投資戦略] 日経平均は前日終値からほぼ横ばいでの推移でしっかりとした基調を維持。テクニカル面では、日足一目均衡表で三役好転が続いているほか、上向きの25日移動平均線が75日線を下から上抜けるゴールデンクロスを示現するなど良好な形状となっている。 昨日の当欄でも指摘したグローバルマクロ系ファンドによるTOPIX先物買いが前日も観測された。昨日24日はTOPIXが8月17日以来となる高値を記録し、節目の2000ptを回復した。こうした中、24日には、ゴールドマン・サックス証券(GS)がTOPIX先物を7500枚近く大幅に買い越していた。前日23日には3500枚超買い越していたため、二日間で1万1000枚程の買い越しとなる。また、前日はJPモルガン証券(JPM)やドイツ証券も約1700−1900枚、TOPIX先物を買い越していた。 最近の市況解説記事では、世界経済の減速スピードが思った程までには悪くないといった内容のものが散見される。米国の経済指標がまちまちとはいえ、総じて低調なものが多い中、こうした論調にはやや疑問符が付くが、一方で確かに、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ幅縮小の期待が高まる中、FRBのスタンス変化を理由に、グローバルマクロ系ファンドがTOPIX先物の売り持ち高を解消することはそこまで不思議でもないだろう。 しかし、大阪取引所とBloomberg(ブルームバーグ)のデータによると、前日24日の時点での12月限TOPIX先物の建玉をみると、GSは約9500枚の買い持ち高となっており、直近二日間の大幅な買い越しにより、すでに売り持ち高から買い持ち高に転じてきていることが分かる。こうした点から、余程の買い材料でも出てこない限り、GSによるTOPIX先物の買い越しもすでに一服したのではないかと推察する。 日経平均も心理的な節目の28500円を手前に材料待ちの状態。こうした中、これまで日本株の下値を支えていた為替の円安・ドル高には一服感があり、今後はむしろ円高・ドル安への反転にも注意しなければならないところ。また、今晩のブラック・フライデーを皮切りに、米国は年末商戦が本格化するが、状況が明らかになるにつれ、今後徐々に景気悪化がクローズアップされる可能性もあろう。 下値の堅さや良好なテクニカル面、米中間選挙後の株高アノマリー、ハロウィーン効果(10月末に株式を買って翌年4月末に売るとパフォーマンスが良いアノマリー)などの条件を拠り所に、株式市場は年末株高への期待を根強く持っているようだが、危うさも同時に孕んでいることを念頭に置いておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/25 12:15 後場の投資戦略 需給良好も一段の上昇には材料不足か [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28448.58;+332.84TOPIX;2022.04;+27.29[後場の投資戦略] 日経平均は祝日の間の米国株高を好感して大幅続伸。一方、朝方に心理的な節目である28500円を一時超えた後は騰勢一服となっており、上値での戻り待ちの売りの根強さも窺える。ただ、米国市場が感謝祭の祝日を前に閑散ムードが広がっている中、本日の東京市場は前引け段階で東証プライム市場の売買代金が1兆8000億円台とそれなりの規模に達している。短期筋の先物買いが吊り上げているというよりはまとまった現物買いも入っているようだ。 祝日前の22日の東京市場では、午後にグローバルマクロ系のヘッジファンドから買いが入っているとの声が聞かれた。実際、当日の先物市場を振り返ると、日中売買高は日経225先物が3万1898枚だったのに対して、TOPIX先物が5万193枚と、長期目線の投資家が手掛けることの多いTOPIX先物の方が、商いが活発だった。その日の手口では、TOPIX先物でゴールドマン・サックス証券が3500枚超買い越していたほか、モルガン・スタンレー証券が2400枚近く買い越していた。上述のグローバルマクロ系ファンドの買い観測は当たっていた可能性が高いようだ。 前日に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(11月1−2日開催)では、参加者の多くが利上げペースの減速で見解が一致していたことが判明しており、米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派スタンスの軟化が示された。これを受けて23日の米10年債利回りは3.70%と、東京市場の祝日入り前の21日時点での3.83%から大幅に低下した。本日はこうした金利低下を好感して、ハイテク・グロース株で大幅高となっている銘柄が多く見られる。 日経平均は10月3日の安値をボトムにした上昇トレンドに弾みをつけているほか、先週に約1年6カ月ぶりに52週移動平均線を超えたマザーズ指数も足元で上昇を加速させるなど、株式市場を巡る環境はかなり良好になってきている様子。今後、12月FOMCまでに発表される米国の賃金や物価指標でさらなる減速が確認されれば、株式市場は年末株高への勢いを強めることになりそうだ。 一方で、FRBは利上げペースの減速を支持している反面、利上げ停止については多くの高官が時期尚早との見解を示している。現在の市場コンセンサスでは来年3月会合での利上げが最後になる予想だが、一部のFRB高官は来年後半までの利上げを示唆しており、この点が明確化されてこないことは懸念材料だ。また、仮に来年前半で利上げが停止されても、利下げへの転換は相当にハードルが高い。来年、景気後退色が強まる中で高水準の金利が据え置かれることによる悪影響を、株式市場が楽観視している感が否めないことも気掛かりだ。 上述したように、グローバルマクロ系ファンドのTOPIX先物買いや、まとまった現物買いも観測されているが、来年の景気後退が不可避と捉えている投資家が多い中、実際、そうした動きが今後どこまで続くのかは不透明だ。こうした動きは、足元で過度に弱気に傾いていた持ち高を調整したものに過ぎないかもしれない。本日、日経平均が28500円手前で見事に伸び悩んでいるのも、こうした懸念が反映されている証のような気がするのは筆者だけだろうか。 日経平均でいえば需給面での要因から29000円程度までの回復余地はあるかもしれないが、そこから先、3万円を回復することについてはどうだろうか。今後の世界経済の動向を踏まえると、3万円回復には決定的に材料が不足しているという気がしてならない。高すぎるアナリストの業績予想が今後引き下げられる可能性を指摘する声もある。 全体の底上げが期待しにくい中、今後は投資家の選別力が重要になってくるだろう。米金利に頭打ち感がある中、外需に左右されにくい内需系グロース株などには妙味がありそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/24 12:14 後場の投資戦略 利上げ停止期待と業績悪化懸念の拮抗がつづこう [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28150.50;+205.71TOPIX;1996.01;+23.44[後場の投資戦略] 日経平均は28000円を回復して堅調推移。前日の米株式市場は反落となったが、明日の国内祝日を前に売り方の買い戻しが入っているもよう。日経平均は上向きの5日移動平均線上で推移しているほか、25日線が上向きの75日線を下から上に抜くゴールデンクロスの示現が目前に迫るなど、テクニカルな形状は良好だ。手掛かり材料難ではあるが、下値も堅い中、根強い年末株高への期待から、今後上放れしそうなチャートになってきた。 前日、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、金融政策の実体経済に及ぼす影響に時間差が伴うタイムラグ効果を踏まえて利上げの行き過ぎに懸念を示した。また、タカ派な発言が目立っていたクリーブランド連銀のメスター総裁からも、次回12月13−14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅縮小について賛同の意が示されるなど、米連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢に軟化の兆しが改めて確認された。 こうした中でも、前日の米株式市場が反落したのは、市場の関心がすでにFRBの金融政策から企業の業績悪化など景気後退に移ってきているからであろう。なお、上述のメスター総裁は一方で、「利上げ停止に近づいているとは考えられない」ともしており、タカ派な姿勢も維持している。FRBが物価指標の中で最も重要視している個人消費支出(PCE)コアデフレータは最新の9月分で前年比+5.1%と、FRBのインフレ目標である+2%を大幅に超過している。 遅行データに頑なに固執した政策運営を疑問視する声も一部で聞かれるが、インフレ動向を見誤り、利上げ着手に遅れたFRBとしては、インフレのぶり返しを絶対に避けたいと考えているため、PCEコアデフレータの明確な減速と2%への収束が確信できるまでは高水準の金利を維持する可能性が高い。現在の市場コンセンサス通り、来年3月で利上げが停止されたところで、来年中の利下げへの転換にはハードルが高いため、景気後退が深まる中での高水準での金利据え置きとなり、企業業績の悪化が懸念されても不思議ではないだろう。 今後は12月に発表される米11月消費者物価指数(CPI)でのインフレ減速確認による株高期待と、来年度の米国企業業績のアナリスト予想の下方修正による株安懸念が拮抗する状態がつづこう。利上げ停止と年末株高への期待から下値は堅い一方、上値も重い状況が長期化するとみておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/22 12:11 後場の投資戦略 上昇スタートもマイナス圏に転落 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27871.09;-28.68TOPIX;1967.16;+0.13[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、米株高の流れを追い風にやや買い先行で取引を開始した。ただ、今週は経済指標などの目立った材料も少なく、日米ともに祝日を挟むことから、週を通じて商いは膨らみづらく様子見ムードも強まりやすいとみられている。前場中ごろにかけて上げ幅を縮小してマイナス圏に転落、その後は軟調もみ合い展開となった。そのほか、中国・香港市況は軟調に推移、米株先物もやや売り優勢の展開が続いている。 新興市場は軟調もみ合い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、前日終値付近まで下げ幅を縮小した。ただ、明確にプラス圏で推移することはできず、軟調もみ合い展開が続いている。FRB高官のタカ派発言を受けて米長期金利が3.8%台まで上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株は積極的には手掛けにくい。引き続き、個別材料株に物色が向かっているが、前引け時点で東証マザーズ指数が0.09%安、東証グロース市場Core指数が0.26%安となっている。 さて、一部のFRB高官からは利上げ停止には程遠いなどとタカ派的な発言が出ている。一連の高官発言を受けて、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)が5%前後になるであろうことも織り込み済みであるほか、来年の世界経済の景気後退懸念を背景に、米長期金利の上昇余地も限られてきたとみられる。 ただ、ブルームバーグでは、「ディストレスト債投資を手掛けるオークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者ハワード・マークス氏は世界金融危機以降で有数の好機が訪れると見込む。」と報じられた。マークス氏は、消費者の志向変化と借り入れコストの上昇で、多くの企業が「深刻な苦境」に陥るだろうとみている。また、米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、FRBが高インフレ抑制に向けた追加利上げの方針から外れないために、米金融市場の一部にある構造的な脆弱性に比較的早期に対応する必要があると述べている。 10月CPIの減速確認により短期的に上昇基調が続いてきた。アナリストの買い推奨は過去最高近辺とのデータも存在しており、12月にかけて堅調な展開が続くことは想定しておきたい。ただ、やはり、インフレ指標の確認は非常に重要で、12月13日の米消費者物価指数の発表には注意が必要だろう。仮にここで、市場予想を上回ってインフレ減速が確認できない場合は、誰も予想できていないため株安要因となるだろう。 いまだに世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。暗号資産価格は、いまだに軟調に推移しておりFTX破綻の影響は長引くと考えられている。筆者は変わらず、12月13日のCPI発表まで上昇基調が継続したとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/21 12:22 後場の投資戦略 上値追いの材料待ち、グロース株は選別が重要 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27978.06;+47.49TOPIX;1972.07;+5.79[後場の投資戦略] 日経平均は小じっかり。前日の米株式市場も軟調ではあったが総じて底堅く推移しており、下値の堅さを連日で確認する格好となっている。一方で、日経平均は28000円前後で何度も往って来いの展開になっているのは気がかり。決算発表も一巡し、新規の手掛かり材料に欠ける中、買い上がる決め手を見出しあぐねている様子だ。 前日はセントルイス連銀のブラード総裁が政策金利を5.00−5.25%へと引き上げることが「最低条件」との見解を示し、米株式市場は一時大きく下落する場面があった。ただ、同氏は米連邦準備制度理事会(FRB)高官内で最もタカ派とも呼べる存在であり、その点は踏まえて言動を捉えるべきであろう。また、そもそも、これまでの高官発言を受けて、すでにターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5%前後になるであろうことはほとんど織り込まれているため、特段のサプライズでもない。実際、米株式市場はその後急速に下げ幅を縮小して終えている。 一方、一昨日はウォラーFRB理事が「政策金利の引き上げは2023年の後半まで続く」などと発言していることもあり、FRBの利上げ停止時期が現在の市場コンセンサスである来年3月時点から延びる可能性は残されている。米国の10月の物価指標の明確な減速から、その可能性は低いとは思われるが、適宜挟まれる高官からのタカ派発言もある中、株式市場はどこまで上値を伸ばしていけるか見物だ。 ほか、前日の米株式市場では引け後に半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズの決算が発表された。一昨日、半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが市況見通しの下方修正を発表していたこともあり、警戒感は高まっていたが、22年11月−23年1月の売上高見通しが市場予想を上回り、同社株は時間外取引で3%程上昇している。一方、前日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1%超反発し、アプライドの無難な決算もある中でも、本日の東京市場では半導体関連株は高安まちまちで上値の重さが残る。前日の当欄でも指摘したが、好調が続いているロジック向けでもネガティブな材料が増えてこない限り、完全な悪材料出尽くしには至らないと考えられる。 ターミナルレートの上限が見えてきて、来年の世界経済の減速も懸念される中、米長期金利の上昇は抑えられ、これはグロース株の追い風になると予想されるが、景気との連動性が高い電気機器、機械などのセクターに属するハイテク系グロース株の上値は当面重いとみておきたい。グロース株の中でも景気連動性の低い内需系グロース株、情報・通信やサービスといったセクターに属する銘柄の方がパフォーマンスは良好とみられ、今後の投資戦略の参考にしていただきたい。 東京証券取引所が16日に発表した11月11日時点での裁定取引に係る現物ポジションは、前週末比178.63億円減(売り越し)とネットベースで194.44億円の売り越しとなった。 9月半ばには1兆2000億円超の買い越しとなっていた時もあり、裁定買い残が大きく解消されたことは需給面での重石が解消されたことになる。一方、売り越し幅がさほど積み上がっていないことから、買い圧力も働きにくい。短期筋による先物主導での動きが反映される裁定残がほぼネットベースで中立水準にある中、短期筋の先物持ち高もほぼ中立に近いのだろう。  米株式市場については、S&P500種株価指数(17日終値は3946)が200日移動平均(4070)を上回ってくれば、上場投資信託(ETF)など指数連動型のパッシブ資金の流入が加速するとの指摘も聞かれている。こうしたテクニカルな要因で何であれ、何か一つでもきっかけとなる材料があれば、東京市場でも短期筋の先物買い持ち高の積み上げが加速するとみられ、株価上昇に弾みがつきそうだ。今はまだきっかけ待ちだが、年末にかけては株高が続きやすいとみている。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/18 12:18 後場の投資戦略 リバウンドの脆さを露呈した半導体関連株? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27915.58;-112.72TOPIX;1966.05;+2.76[後場の投資戦略] 日経平均は反落しているが、上向きの5日移動平均線に沿ったトレンドを大きくは脱しておらず、前日のナスダック指数やフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が大幅安だったことを踏まえれば、かなり健闘している印象を受ける。一方で、28000円を超えると途端に上値が重くなる動きが続いていることは気がかり。米国のナスダック指数も同様だが、物価指標の改善後の長期金利の低下トレンドが続いているにも関わらず、上値の重さが感じられる点は買い上がる向きが少なく、むしろ売り需要の強さを示唆しており、ネガティブに捉えられる。 前日、米半導体メモリ大手のマイクロン・テクノロジーが市場環境に対応するため、DRAMとNANDのウエハーを6−8月期比で約20%減産する方針を明らかにしたと伝わっている。同社は「来年の市場見通しは最近になって弱くなった」と説明しているという。これが前日のSOX指数の急落につながった。先週、業績予想を大幅下方修正したにもかかわらず株価の大幅高が続いていた東京エレクトロン<8035>の動きから、半導体関連株の底入れ感が強まってきた印象があったが、水を差された格好だ。 しかし、ノートパソコンなど民生向け市場の落ち込みで半導体のメモリ市場が急減速していることは既に3カ月ほど前からも分かっていることで、今回の情報に目新しさはない。むしろ、直近の株価上昇率が大きく反動が出やすかったとはいえ、ほとんど既知の情報に対して大きく反応するのは、足元の半導体株のリバウンドの脆さを露呈したといえる。 今後気を付けなければならないのは、ロジック分野の落ち込みだ。半導体各社の見通しが相次いで下方修正されているが、総じてメモリ向けが弱いのに対してロジック向けは依然として好調と強気の姿勢を維持したままの企業が多い。しかし、人工知能(AI)など最先端機能を備えた産業向けに多いロジックの需要は、たしかに民生向け中心のメモリに比べて底堅いとはいえ、新型コロナによる供給網の混乱期に過剰な前倒し発注が行われた可能性は高い。このため、現在メモリから始まっている半導体業界における在庫調整の波が今後ロジックを襲うことは十分に考えられる。いまの半導体関連の株価にロジックの調整は織り込まれていないとみられ、今後の決算においてロジック分野での需要について会社側からのトーンが低くなることには注意しておきたい。 前日は米連邦準備制度理事会(FRB)高官からのタカ派発言も米株式市場の重石となった。ウォラーFRB理事は「政策金利の引き上げはまだまだ続く、2023年の後半まで続く」などと発言したもよう。また、FRBの利上げペース減速を最初に示唆したサンフランシスコ連銀総裁のデーリー総裁も「利上げ停止は議論になっていない」などと発言し、タカ派的な姿勢を見せた。こうした中でも、景気後退懸念を映してか、米10年債利回りは16日、3.69%と一段と低下した。 長期金利が再び大きく上昇してこない限り、株式市場の下値は堅いと思われるが、昨日の米国市場と本日の東京市場をみる限り、本格的な上昇もなかなか期待しにくい。前日の米株式市場では半導体銘柄が大きく下落したが、それ以外でも、電気自動車大手のテスラが大きく下落し、年初来安値の更新を窺う展開となっている。半導体やテスラといった指数へのインパクトが大きい銘柄が弱いと、全体相場もなかなか盛り上がることが難しいだろう。 一方で、こうした中でも、東京市場では業績良好な銘柄で年初来高値を更新しているものも多い。今年上半期のように何でも売られるような局面はすでに終わっていると考えられ、投資家の銘柄選別力が試されるフェーズに入ってきたといえそうだ。 後場の日経平均は引き続き心理的な節目の28000円を挟んだもみ合いが続くと予想される。先週から相場のけん引役となってきた半導体関連株が日米そろって崩れている中、今晩の米国市場では半導体大手アプライド・マテリアルズの決算も予定されており、決算内容と株価反応が注目される。金利が低下基調にある中でもナスダック指数の下落が続くのか、この点についても焦点となってこよう。 全体的に不穏な空気が漂う中、前日、日本政府観光局(JNTO)が発表した10月の訪日外国人旅行者数が前月比で2.4倍に急増したことが判明した。新型コロナ感染拡大前の2019年の同月比では80%減と依然として低水準だが、インバウンド需要の鍵を握る中国が規制緩和の兆候を見せていることもあり、今後の回復期待は高いだろう。本日は関連銘柄も久々に動意づいており、再びリオープン・インバウンド関連銘柄への物色を検討してもよい頃合いかもしれない。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/17 12:23 後場の投資戦略 日経平均は小幅反落、需給環境から上値試しやすい、クオリティーグロース株は買い場 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27955.85;-34.32TOPIX;1962.45;-1.77[後場の投資戦略] 日経平均は小幅反落し、心理的な節目の28000円も割り込んだが、前引けにかけては急速な下げ渋りで下値の堅さを確認した。 市場環境は地政学リスクを除けば短期的には良好な状況が続くと想定される。前日に発表された米10月卸売物価指数(PPI)は総合で前年比+8.0%と9月(+8.5%)および市場予想(+8.3%)から大きく減速。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+6.7%と9月(+7.2%)からの横ばいを見込んでいた市場予想から大幅に減速した。コア指数は前月比でも+0.0%と市場予想(+0.3%)を大きく下回っており、インフレ鈍化の傾向がより鮮明になったと評価できる。 PPIの改善を受けて、米10月消費者物価指数(CPI)の発表後に4%を大幅に下回っていた米10年債利回りは15日、3.77%と一段と低下した。地政学リスクの報道で一時伸び悩んだものの、金利低下を追い風にナスダック指数も前日は大幅に反発。グロース株を中心に株式市場を取り巻く環境は良好といえよう。商品先物取引委員会(CFTC)の公表しているデータによると、S&P500種株価指数を対象とした先物取引では、投機筋のネットの売り持ち高が依然として新型コロナショック後につけたピークに近い水準にあることが分かる。米国では今週末にデリバティブ取引に係る特別清算指数(SQ)算出を控えており、目先は買い戻しの相場が続きやすいと考えられる。 日本株についても需給環境は悪くない。一時大幅に積み上がり、株価の重石となっていた裁定買い残については解消が進んだ。東京証券取引所が9日に発表した4日時点での裁定取引に係る現物ポジションは、ネットベースで15.77億円の売り越しとなり、ついに買い越しから売り越しに転じた。米国株が戻り基調を続ける限り、日本株も当面は上昇しやすい環境になったといえる。 指数寄与度が大きく、今年は株価の下落基調がきつかった半導体関連株が底入れしてきていることも投資家心理を明るくさせる。先週10日に業績予想の大幅下方修正を発表した東京エレクトロン<8035>は、先週末11日は地合い好転に助けられたところが大きかったが、今週に入ってからも株価の堅調推移が続いており、あく抜け感が強まっている。業績良好なクオリティーグロース株を中心に中小型株の底入れも鮮明になっており、本日はマザーズ指数がついに今年はじめての52週移動平均線超えを果たした。今後、米国経済の景気後退入りが本格化するに伴い、米長期金利が再上昇したとしても上昇余地は限られるだろう。市場の目線が金融政策から業績動向に移ってきていることもあり、そろそろ、クオリティーグロース株の押し目買いを開始してもよい頃合いかもしれない。 今晩の米国市場では、小売企業でロウズ、ターゲットの決算が予定されているほか、半導体関連でエヌビディアの決算も控える。半導体関連の株価底入れが本物かどうかを占う上で、エヌビディアの決算と株価反応を見極めたい。(仲村幸浩) <NH> 2022/11/16 12:16 後場の投資戦略 ラリーの勢いのなさ気掛かり [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27994.68;+31.21TOPIX;1963.44;+6.54[後場の投資戦略] 本日の東京市場は決算を受けた個別株物色を除けば全般もみ合い、こう着感の強い展開となっている。日経平均は心理的な節目の28000円を割れてはいるものの、75日移動平均線上を優に上回った状態を続けていて、ほぼ横ばいの5日線上をも維持している。前日、米株式市場で主要株価指数が揃って下落した割には底堅く推移している。 前日は、米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長が、利上げペース減速への移行が適切との、これまでの高官と同様の見解を示した一方、利上げ停止の検討は時期尚早との見方も示し、株式市場をけん制する一面も見せた。米10年債利回りは米10月消費者物価指数(CPI)の減速を受けて急低下した後の水準を維持し、依然として4%を大きく下回る水準にある。しかし、こうした中でも、前日の米株式市場でナスダック指数がラリーを続けられずに失速したのは、FRBの一段のタカ派発言を受けた金利の再上昇を恐れてのことなのかもしれない。 今晩の米国市場では米10月卸売物価指数(PPI)の発表がある。食品・エネルギーを除いたコア指数では前年比+7.2%と9月(+7.2%)から横ばいが予想されているものの、ヘッドラインでは前年比+8.3%と9月(+8.5%)と減速が予想されている。ヘッドラインとコア指数がともに減速すれば、株式市場はラリー再開となりそうだが、CPIより先行性の高いPPIの性質を踏まえれば、仮に予想に反して上振れとなると、株式市場は先週のCPI後の浮かれ気分から目を覚まされることになりそうだ。今晩の米国市場でのPPIの結果と反応を見極めたいとの思惑から、後場の東京市場は模様眺めのムードが支配的になりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/15 12:20 後場の投資戦略 前週末の大幅上昇受けて一旦の利食い売り優勢 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28047.58;-215.99TOPIX;1964.90;-12.86[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、小幅ながら続伸してスタートした後マイナス圏に転落して軟調な展開が続いている。寄り付き段階では想定よりしっかりだったとはいえ、出資するFTXの破綻影響も警戒されているソフトバンクG<9984>なども指数の重石となるなか、下げ幅をやや広げる展開となった。そのほか、中国・香港市況は堅調に推移している一方で、米株先物はやや軟調な展開が続いている。 新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後じりじりと上げ幅を広げている。FRBの利上げペースが鈍化する期待が大きく高まったことで米長期金利が3.8%台まで低下しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって追い風となっている。また、本日東証プライム市場の主力株が冴えない展開となっており、幕間つなぎの物色が新興株に向かっている可能性もある。引き続き個別材料株への物色は旺盛で、前引け時点で東証マザーズ指数が1.83%高、東証グロース市場Core指数が2.59%高となっている。 さて、10日の消費者物価指数(CPI)発表後、米10年債利回りは3.8%台と4%を大幅に下回る水準に低下した。実際に、本日もインフレ減速・金融引き締め懸念後退を好感した動きが継続しており、グロース株優位の展開が続いている。ただ、米10月CPIのコア指数は前年比で+6.3%と高水準で、住居費は前月比+0.8%と9月から加速している。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、中長期では警戒は怠れないとの意見もある。 ブルームバーグでは、「米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は14日、10月米CPIの上昇率が鈍化したことは良いニュースだが、一つのデータポイントに過ぎずFRBが利上げを停止するまでには「まだ道のりは長い」との認識を示している。」と報じられた。12月の連邦公開市場委員会(FOMC)がその後の会合で、政策担当者が利上げ幅を0.5ポイントに減速させることはあり得るとしながらも、利上げの停止に近づいているわけではないと注意を促したという。 さらに、ターミナルレートが5%を上回る可能性があるかとの質問に対し、5%を超えるかどうかはインフレ動向次第だとも述べている。FF金利誘導目標が2023年半ばに4.9%前後でピークに達するとの見通しをある程度織り込んでいるが、仮にターミナルレートが5%を上回る可能性がさらに示唆されると、織り込め切れていない株式市場にいとってはマイナス要因となるだろう。引き続き、FRBの利上げペースの動向には注視せざるを得ない。 今回のCPIの減速確認により短期的には上昇基調が続くと考えられる。中間選挙が実施される11月以降のS&P500指数の株価パフォーマンスは良好というアノマリーも相まって投資家心理が上向く可能性もあろう。ただ、世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。筆者は変わらず、年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、下げ止まるか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/14 12:28 後場の投資戦略 短期シナリオと中長期シナリオを再確認すべきタイミング [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28200.75;+754.65TOPIX;1973.52;+36.86[後場の投資戦略] 急反発した米株式市場を好感し、日経平均も本日は値幅を伴った上昇で急伸劇を見せている。取引開始直後から心理的な節目の28000円を軽々超えてくると、騰勢をさらに強め、一時は次なる節目の28500円をも窺う動きを見せた。実需筋の買い戻しに加えて、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの追随買いが相場を押し上げていると推察される。 株式市場の急伸の背景となったのは言わずもがな、米国の10月消費者物価指数(CPI)の結果だ。総合値、いわゆるヘッドラインインフレは前年比+7.7%と予想(+7.9%)および9月(+8.2%)から大きく減速。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+6.3%と予想(+6.5%)および9月(+6.6%)から減速した。コア指数は前月比でも+0.3%と予想(+0.5%)および9月(+0.6%)から減速し、モメンタムの鈍化を示唆した。 サービス分野の項目をみると、医療サービスが前月比−0.6%と9月(+1.0%)から大きく減速し、これがコア指数の押し下げとして働いたことが分かる。ただ、CPIの3割以上と最も大きい構成比を占める住居費は+0.8%と9月(+0.7%)から加速している。むろん、相関性の高いS&Pコア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数などの米住宅価格の代表的な指標は今年4月をピークに減速しているため、1年程遅れて動く遅行性を踏まえれば、住居費の減速も時間の問題だ。しかし、遅行性は過去の推移からすると、1年から1年半のスパンとなっていることが多く、住居費の減速にはまだ時間がかかる見通しだ。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、今回のCPIを受けた株高の賞味期限は長くても次回分が出てくるまでの約1カ月といったところか。 米10年債利回りは4%を大きく下回り、3.8%台前半まで低下しているが、最近の債券市場は流動性が乏しく、売り方の買い戻しの動きがやや過剰に反映されている可能性がある。特に11日の米債券市場はベテランズデーで休場のため、動きが助長された可能性も否定できない。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速が見込まれるとはいえ、つい先日までターミナルレート(政策金利の最終到達点)の5%超えは濃厚という話題で持ちきりだったことを踏まえると、ここからの米長期金利の低下余地は大きくないだろう。このため、金利低下を背景にしたグロース株買いの勢いは長期化しないと思われる。 米CPIの結果を受けて、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは来年5月頃をピークとする形で4.92%程度まで低下してきた。ただ、こちらも上述したのと同様の考え方から、これ以上の低下は想定しにくい。仮に、ターミナルレートや米長期金利がここからさらに低下して株式市場が過度に上昇するようなことがあると、その際には再びFRB高官からけん制発言が出るだろう。 日経平均は短期的には上値を試す展開が想定されるが、今回の約1カ月と想定されるラリーの上値目途としては29000円近辺とみている。前回の7月から8月半ばにかけてのラリーの際にはCTAなどの買いに押し上げられる形で、8月17日に一時29222.77円まで上昇した。今回も、CTAなどのトレンドフォロー型ファンドは損益分岐点と推察される27500円を超えた辺りから買い持ち高を膨らませてきていると思われる。 実需筋のショートカバー(売り持ち高の買い戻し)は長くは続かないだろうが、2−3日程度は続くと思われ、来週前半には28500円を回復する可能性が高い。その先はCTAの買い継続で29000円を目指す展開が予想されるが、前回のラリー時のピークがこの水準だったため、次第に戻り待ちの売りや新規ショートも入ってくると想定される。仮に前回ラリー時とは異なり、29000円台を長く維持する場合には、新規ショートの早期撤退などで29500円タッチもありえそうだ。 実体経済に目を向けると、世界経済は明らかに減速方向にあり、インフレの水準が依然として高いため、景気後退入りしたとしても中央銀行による金融緩和は期待できない。ファンダメンタルズとしては悪化方向にあることに変わりはなく、今後の株式市場については、短期的には上方向も、ある程度の水準訂正を果たした後は再び下値模索の展開になる可能性があろう。いまは短期勝負と割り切って買い参戦するか、相場が楽観に浸りきった頃の売りを待つかのどちらかだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/11 12:17 後場の投資戦略 ラリーに早くも黄色信号? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27391.00;-325.43TOPIX;1932.74;-16.75[後場の投資戦略] 日経平均は下値支持線に切り替えてきていた75日移動平均線を再び下放れ、心理的な節目の27500円も割り込んできた。前日は終日下げ幅を広げる流れで、一昨日の陽線を打ち消す陰線を形成し、本日はその後のサポート割れとあって印象が悪い。今週に入って大きく好転していたテクニカルだが、昨日と今日とで一気に悪化した格好だ。 それもそのはず、開票作業が進む米中間選挙については、事前に野党・共和党の勝利が高い確率で予想されていた。民主党政権が掲げる増税などのネガティブな政策が成立しにくくなるとの見方から、中間選挙後の株高アノマリーも先取りする形で株式市場は上昇していた。しかし、激戦が繰り広げられている上院だけでなく、下院でも依然として共和党が優勢ながらも、民主党がかなり善戦していることが伝わっており、選挙結果に対する先行き不透明感が急速に高まってきた。 前提が覆されることを嫌って、本日は週明けからの上昇の反動で売りが膨らんでいるようだ。市場のムードが悪化してきたことで、今晩の米10月消費者物価指数(CPI)への警戒感も昨日まで以上に高まる形になっている。今の流れでCPIの結果が市場予想を上回るとなると、相場は下方向に一気に振れそうなため注意が必要だろう。 一方、相場にとってポジティブな材料としては、昨日、米シカゴ連銀のエバンス総裁が金融引き締めの行き過ぎを懸念し、利上げペースを減速させることが妥当とのハト派的な見解を示した。米CPIが予想並みにとどまり、米中間選挙の結果も予想通り少なくとも下院での共和党勝利が実現すれば、相場は再びラリーへの動きに転じる可能性がある。反面、どれか一つでも予想と異なることがあると、短期的には下値模索のリスクが高まる恐れがあろう。 暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXが資金繰りの悪化に直面し、破産法適用の申請が近いとの報道を背景に、暗号資産価格が軒並み急落していることも気掛かりだ。同業のバイナンス・ホールディングスが同社買収の撤回を発表したことで警戒感は急速に高まっている。機関投資家のポートフォリオに占める暗号資産の割合はさほど高くないと思われるが、価格の下落が行き過ぎるとリスク低減を目的に他の資産クラスの売却につながる恐れもあるため、こちらも注意が必要だ。特に個人投資家については影響が大きく、米国では個人もオプションなどのデリバティブ取引に積極的な背景を踏まえると、個人投資家のセンチメント悪化を通じた株式市場への影響も懸念される。 11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)や米10月雇用統計を通過し、日経平均VIや米VIX指数に落ち着きがみられるなど、足元では市場にやや楽観的なムードが漂っていた面が否めない。こうした中、ほぼ同じタイミングで嫌なニュースが重なってきたことには警戒感をもって臨む必要があろう。本日の日経平均が27500円を下回ってからも下げ幅を広げる動きを止めていない点も気掛かりだ。8日に、日経平均が27500円や75日線といったテクニカルな節目を明確に上回ってきたことが、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの買いを誘っていた背景があったが、早々にこうしたテクニカルな節目を再び割り込んできていることで、短期筋の売り転換も懸念される。ラリーへの期待には早くも黄色信号が灯ってきた。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/10 12:25 後場の投資戦略 日経平均は3日ぶり小反落、ラリー創出の条件が整ってきた? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27827.16;-44.95TOPIX;1954.00;-3.56[後場の投資戦略] 米中間選挙の投票結果が進んでいる中、様子見ムードが強く、本日の日経平均は動意に乏しい展開。ただ、2日間で670円以上も上昇した直後ということを踏まえると、かなり底堅く推移しているといえる。10月3日の25621.96円をボトムに、その後は緩やかながら下値と上値を徐々に切り上げていくトレンドを形成しており、足元では10月の間ずっと上値抵抗線として作用してきた75日移動平均線を明確に上回ってきて推移している。テクニカルでは基調は明らかに好転してきている。 今年、相場を大きく動かしてきた米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策も、まだ利上げが続くとはいえ、利上げ幅縮小とターミナルレート(政策金利の最終到達点)のおおよその見込みは立ってきた。また、利上げ停止の時期も恐らく来年3−5月頃ということで市場のコンセンサスも形成されている。今年最大の株価の下落要因であったFRBの「超大幅連続利上げ」劇場の終焉が近づく中、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の世界の株式市場の動きを見ていると、相場はどうしてでも上に行きたがっているような様子だ。 米中間選挙については、事前の報道ですでに少なくとも下院では野党・共和党が過半数議席を獲得する公算が大きいと伝わっている。民主党が掲げる増税などの市場にとってネガティブな政策が成立しにくくなることや、選挙後は株高になりやすいというアノマリーを意識した買いから、株式市場は上昇基調を続けている。 一方、選挙結果が判明した時点では「Buy the rumor, sell the fact.(噂で買って、事実で売る)」の動きから一時的に売りが出そうな恐れもある。しかし、米国では投資信託の節税対策売りなどで季節的に弱い10月を過ぎて上がりやすい時期に入ってきていることに加え、FRBの利上げ工程の全貌もおおよそ明らかになってきている中、株式市場は新たな売り要因を探すのに疲れてきている様子。また、日米ともに長期目線の機関投資家はすでに換金売りが一巡し、新たに大きく売る程の持ち高状況でもないだろう。金利のボラティリティー(変動率)も落ち着いてきている中、10日の米10月消費者物価指数(CPI)でよほどの大幅な上振れがない限り、「中間選挙アノマリー」、「季節性要因」、「身軽なポジション」を拠り所に相場は上値を試しに行く展開となりそうだ。 ただ、その際は、前日の当欄(「短期筋買いで上振れ基調も長期筋は様子見決め込み」)でも指摘した通り、あくまで今の局面で積極的に動いてくるのはトレンドフォロー型ファンドなどの短期筋が主体に限られる。相場が上を試しにいっても、その流れに長期目線の投資家がどこまで付いていくのかには疑問符が付く。当面の上昇相場には常に賞味期限があることを忘れないでおきたい。(仲村幸浩) <NH> 2022/11/09 12:15 後場の投資戦略 短期筋買いで上振れ基調も長期筋は様子見決め込み [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27879.70;+352.06TOPIX;1954.96;+20.87[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大幅続伸で、一時28000円超えが視野に入る水準にまで上昇する場面も見られた。日足チャートでは、75日移動平均線を明確に上抜けてきたほか、上向きの25日線が200日線を下から上に抜こうかと窺う形となっており、テクニカルな好転が鮮明になってきている。一目均衡表でも雲上限を大きく突破したことで三役好転を示現している。 日経平均の午前の推移を分足チャートでみると、断続的に階段状に水準を切り上げていく形となっている。テクニカルな好転と合わせて、これまで上値抵抗帯となっていた心理的な節目の27500円を明確に上放れてきたことが、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの買いを誘っているように見受けられる。 今週は米中間選挙に加えて、米10月消費者物価指数(CPI)と注目イベントが多いが、中間選挙では上院が接戦の一方、下院は野党・共和党が過半数議席を獲得する公算が大きいと伝わっている。実際にこれが実現すると、民主党のバイデン大統領の掲げる政策の難航が予想されるが、財政赤字の拡大に繋がらないことがインフレ低下・金利低下を通じて株価上昇をもたらすと前向きに捉えている市場関係者が多い様子。また、中間選挙後には不透明感が払しょくされること等を背景に、選挙実施月の11月から翌年4月にかけてS&P500指数の株価パフォーマンスが良好というアノマリーも足元の株高に勢いを与えているようだ。 日米ともに機関投資家の株式持ち高比率は低水準にとどまっているため、じり高基調が続けば、次第に持たざるリスクが意識され、買い遅れた向きによる投資が一段高を演出する可能性もありそうだ。 一方、前日にQUICKが発表した月次調査(11月)では、ファンドマネージャーの現在運用しているファンドにおいて、国内株式の組み入れ比率が通常の基準に比して「ニュートラル」と回答した割合が55%と前回(54%)からやや増加。「ややオーバーウェート」と回答した割合が21%と前回(23%)から低下した一方、「ややアンダーウェート」と回答した割合は24%と前回(17%)から大きく上昇した。また、国内株式の組み入れ比率についての当面のスタンスについては、「やや引き上げる」との回答が10%と前回(28%)から大幅に低下した一方、「現状を維持する」との回答が81%と前回(61%)から大幅に増えて圧倒的多数となった。 ほか、先週は先物手口において、BofA(バンク・オブ・アメリカ)証券が東証株価指数(TOPIX)先物で週間11800枚超にも及ぶ大量の売り越しを見せていた。前日は日経平均が27500円を回復した中ではあったが、TOPIX先物で同証券による明確な買い戻しは確認されなかった。 米国ではGAFAMに代表される米IT大手企業をはじめ決算で低調なものが多かった印象だが、日本国内でも、ハイテク企業で意外感のある下方修正が散見され、円安恩恵がある中でも決算シーズン終盤にかけては軟調な内容のものが多く見られている。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見から、今後実際に景気後退が訪れても当面高水準の金利は据え置かれる見込みで、政策による下支えは期待できない。「bad news is good news.(悪いニュースは良いニュース)」という決まり文句が通用しない環境下、景気後退はストレートに企業業績の悪化を通じて株価の下押し圧力として働きそうだ。 こうした中、上述の調査からは、機関投資家はほとんど持ち高を増やす意向がない様子。先週のBofA証券によるTOPIX先物の大量売り越しの動きも、こうした背景に基づく実需筋による売りとも考えられる。 米10月CPI次第ではあるが、イベント通過後にトレンドフォロー型ファンドを中心に短期筋が相場を大きく上方向に引っ張っていっても、その後に付いていく投資家は果たしてどれだけいるのだろうか。持たざるリスクから急いで買いに転じる長期目線の投資家は上述の調査などからは左程多くないようにも見受けられる。年末株高への期待も根強いが、まだまだ株価の行方については慎重なスタンスを維持しておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/08 12:17 後場の投資戦略 買い優勢も上値の重い展開 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27528.66;+328.92TOPIX;1934.90;+19.50[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、3日ぶりの反発でスタートした後上げ幅をじりじり拡げる展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比315円高の27505円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均は買い先行で取引を開始した。ただ、今週は8日に米中間選挙の投開票のほか、10日には10月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えているため、積極的な売買は手控えられやすいとの指摘も聞かれている。そのほか、アジア市況は堅調に推移、米株先物はやや軟調な展開が続いている。 新興市場は冴えない展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後前場中ごろにかけてじりじりと下げ幅を縮小、その後プラス圏に浮上した。米長期金利が依然として4%を超えて推移していることはバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって重しとなっている。東証プライム市場の決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっていることも新興市場の冴えない動きに繋がっている可能性があろう。前引け時点で東証マザーズ指数が0.01%安、東証グロース市場Core指数が0.13%安となっている。 さて、4日には米10月雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数が26.1万人と市場予想を大きく上回り、平均時給は前年同月比で+4.7%と市場予想に一致して前月比では+0.4%と市場予想を上回った。一方で、失業率が3.7%と市場予想を超えて上昇した。10月の雇用統計は結果的にまちまちなものとなった。ブルームバーグ・エコノミクスのリポートでは、「雇用の伸びは力強かった一方で、失業率が大きく上昇した。データのノイズを整理した上での結論は、労働市場はなお非常にタイトで失業率が中立水準付近になるにはまだ大きな調整が必要ということだ」と指摘している。 FOMCでは政策金利の0.75ポイント引き上げを決定、FRBのパウエル議長は記者会見で労働市場の状況について、「明白な」形ではまだ軟化していないと述べていた。金融当局の引き締め策が雇用に重しとなるが、パウエル議長は労働市場への悪影響について明白な失業増加ではなく主に求人件数の減少という形で表れることへの期待を表明しているようだ。 8日には米中間選挙が予定されている。中間選挙では議会多数派の交代が決まる可能性があるため政局の動向にもある程度の注意が必要である。ただ、インフレ率が市場予想を大きく下回るか、やはり10日に発表される米10月CPIの結果に市場の注目が集まっている。10月の総合CPIは前年同月比7.9%上昇と9月の8.2%上昇からわずかな減速にとどまる見込み。コア指数も同6.5%上昇で9月の6.6%上昇に比べて伸びが若干鈍るとみられているが、なお非常に高い水準。FRBは、12月のFOMCで利上げペースを落とす可能性も示唆しているが、最終的な判断は今回の物価見通しが鈍るかどうかが極めて重要である。 常々、毎週月曜日の当欄では年末にかけて一旦の反発が起こる可能性があることを示唆してきた。CPIの結果には注目しているが、中間選挙が実施される11月以降のS&P500指数の株価パフォーマンスは良好という経験則が市場では知られている。こうしたアノマリーが意識される形で、今後も筆者の想定に変化はない。世界的に様々なリスクが散見されるなか年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、堅調な展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。 <AK> 2022/11/07 12:19 後場の投資戦略 FRBハト派化期待は剥落、イベント盛り沢山で買い戻しは当面見送り [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27103.17;-560.22TOPIX;1913.15;-27.31[後場の投資戦略] 祝日明けの日経平均は大幅安で75日移動平均線に続いて一気に200日線まで割り込んできている。FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「利上げ停止の検討は時期尚早」、「前会合以降に入手したデータは政策金利が従来想定以上よりも高くなることを示唆している」などと発言。これを受けて、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレート(政策金利の最終到達点)は来年5月頃をピークとする形で5.2%弱まで上昇してきている。 債券利回りも幅広い年限で上昇しており、3日の米10年債利回りは4.15%まで再び上昇してきた。ただ、10月下旬に一時上回った4.3%台にまではまだ距離があり、金利の上昇余地は多分に残されていると見受けられる。今晩に発表される米10月雇用統計や、来週に発表予定の米10月消費者物価指数(CPI)など今後の経済データ次第ではあるが、FF金利先物市場が織り込むターミナルレートで5.5%、米10月年債利回りで4.5%程度までは金利上昇余地があると考えておいた方がよいだろう。 米10月雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びは19万人程度の増加と、9月(26.3万人増加)から大きく減速すると予想されている。ほか、失業率が3.6%(9月3.5%)、労働参加率は62.3%(同62.3%)、平均時給は前年比+4.7%(同+5.0%)と予想されている。ブルームバーグ通信によると、エコノミストらは長期的に強過ぎず、弱過ぎでもない雇用の伸びを月間10万人弱の増加とみているもよう。これと比較する限り、10月の雇用者数の伸びの予想値19万人増は依然として労働市場の逼迫を示唆するものと思われるが、予想通り、20万人台を割り込み、賃金の伸びも5%台を割り込んでくれば、先行き警戒感は和らぎ、今回の11月FOMC後の売りは一旦小休止する可能性があろう。 一方、8日には米中間選挙が控えている。上院と下院の双方で野党・共和党が過半数を制すると、再び政府の債務上限引き上げを巡る与野党の攻防劇が想定され、短期的には株式市場はこれを嫌気する可能性がある。10日には米10月CPIも発表予定で、イベントが盛り沢山な分、今晩の米雇用統計を受けて株式市場の売りが止んでも油断はしない方がよいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/04 12:14 後場の投資戦略 「製造業売り・サービス業買い」の構図は長期化へ [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27686.05;+7.13TOPIX;1943.23;+4.73[後場の投資戦略] 日経平均は前日終値を挟んだ水準で一進一退も、寄り付きから下げ渋る底堅い展開で、前日に超えた75日移動平均線上を維持している。祝日明けの週末には日足一目均衡表の雲上限を突破して上放れが期待できそうな状況だ。 一方、外部環境を巡る不透明感は一向に晴れてこない。米連邦準備制度理事会(FRB)の年内の利上げペース減速に対する期待は根強いものの、前日に発表された米9月労働省雇用動態調査(JOLTS)での求人件数は前月比43.7万件増の1072万件で、減少を予想する市場予想(975万件)に反して増加した。また、労働市場の逼迫緩和を示唆する結果として株式市場で好感された8月分については、1028万件へと速報値(1005.3万件)から上方修正された。失業者1人に対する求人件数は約1.9件と、8月の約1.7件から増加した。 こうした結果を受けて、債券市場ではFRBの利上げペース減速期待がさらに後退。フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、2023年5月には再び政策金利が5%を超えることを織り込んできている。一方、株式市場の方は日米ともに引き続き底堅く、利上げペース減速期待は根強いようだ。 しかし、やはり市場が期待するようなFRBのハト派化への転換はやや後ろ倒しになったと考えられる。今回の9月JOLTSの結果を受けて、今週末の米10月雇用統計に対する注目度は一段と高まった。FRBもこの結果を確認する前に過度に市場に対してハト派的な見解を示すことは考えにくい。12月FOMCに向けて利上げ幅縮小の議論を開始したといった程度の、事前の報道で伝えられている範疇に収まるだろう。 ほか、企業業績の悪化も気掛かり。円安効果もあり、日本企業の業績は相対的に堅調で、株価の反応もまずまずといった印象だが、前日に発表されたトヨタ自<7203>の決算は市場予想を下回った。生産台数の下振れなどの事前報道で目線は切り下がっていたはずだが、原材料費高騰の影響の大きさや先行き不透明感が嫌気され、株価は前日に続き本日も下落している。10月31日に業績予想を下方修正した村田製<6981>も、前日に続き続落しており、あく抜けには至っていない。半導体関連については、市況が急速に調整している一方、アドバンテスト<6857>など堅調な業績を受けて直後の株価が買いで反応しているケースもある。悪材料一辺倒であってくれた方が材料出尽くしであく抜けにも繋がりやすいと思われるが、強弱材料が混在している分、逆に底入れ時期が遠のいているようで素直に喜べない。 加えて、安川電機<6506>やファナック<6954>の業績下方修正もあり、製造業は全体的にパッとしない株価推移のものも多い印象。一方で、リオープンの進展でインバウンド需要の期待が高まっている内需関連の銘柄は、先週こそは利益確定売りで調整したものの、今週は再び強い動きを見せている銘柄が多く見られる。ANA<9202>、JR西<9021>などの代表的な銘柄のチャートはしっかりとした基調を維持している。グローバル経済がこの先も減速傾向にあることが予想される中、今後のFOMCの結果次第でもあるが、次四半期決算シーズン頃までは、現在の「製造業売り・サービス業買い」の物色動向が続く可能性が高いと見ておいた方がよさそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/02 12:24 後場の投資戦略 テクニカル好転も強気になりきれない背景 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27646.34;+58.88TOPIX;1937.76;+8.33[後場の投資戦略] 日経平均は堅調な値動きで続伸し、27500円からの上方乖離を100円超に広げ、上値抵抗線である75日移動平均線も上抜けてきている。日足一目均衡表では、本日は雲の上限と下限が捻じれる変化日に当たるが、ローソク足はちょうどその交差部分をも上抜けようとする位置にまで上昇してきている。テクニカルではFOMC後の保ち合い上放れが期待できそうな形になってきた。 一方、10月21日のウォールストリート・ジャーナル(WJ)の報道およびその後のサンフランシスコ連銀のデーリー総裁などの高官発言を受けて急速に高まっていた米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速期待には早くも黄色信号が灯っている。 28日に発表された米9月個人消費支出(PCE)コアデフレータや米7−9月期雇用コスト指数の予想並みとはいえ強い結果に加えて、30日には上述のWJ報道の発信者であるニック・ティミラオス記者が、FRBのターミナルレート(政策金利の最終到達点)が、現在想定する水準よりも引き上がる可能性などについて報じた。同報道では、家計の過剰貯蓄を背景に、利上げを通じた失業率の増加とそれに伴う収入・支出の落ち込みという、通常の景気減速原理が機能しなくなっていることなどにも言及しており、FRBの積極的な利上げを肯定するかのような内容となっている。 こうした背景もあり、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むターミナルレートは、28日には2023年3−5月時点をピークに4.7%強にまで低下していたが、その後4.9%台後半にまで再上昇している。一方、日米の株式市場はリバウンド後のしっかりとした基調を継続しており、利上げ減速期待は根強い様子。 しかし、今一度念頭に置きたいのは、今話題になっているのはあくまで「利上げ減速」であり、「利上げ停止」でもなければ当然「利下げ転換」でもない。利上げ幅が縮小されたとしても、「利上げ=(金融引き締め)」であることには変わりなく、株式市場にはネガティブな状況のままだ。また、FRBのデータ次第という姿勢は変わっておらず、今週末の米10月雇用統計以降の賃金・物価に関するデータが強いままであれば、来年前半と想定されている利上げ停止すらも覚束ないことになる。 想定通り、来年前半に利上げが停止されたとしても、それにより株価収益率(PER)の低下は止まるだろうが、一株当たり利益(EPS)については景気後退色が強まる中、来年前半時点でも依然として低下傾向にある恐れもある。その場合、金融政策は利下げ転換には至っていないため、PERが横ばいの傍ら、EPSの下向きは維持される構図となる。米株式市場の大底は今年6月だった可能性があるが、今後最安値を更新しなくても、それがそのまま相場の上昇基調への転換を意味することにはならない。株式市場は安値圏でのもみ合いが長期化する可能性が高いと見ておいた方がよいだろう。 また、気掛かりな点では中国経済の低迷も挙げられる。5年に一度の中国共産党大会が22日に閉幕し、習近平国家主席の3期目入りが決まった。3期目入りが確定すれば、それまで頑なに堅持していた「ゼロコロナ」政策も緩和されるだろうと予想していた向きも多かったとみられるが、実際、その後に緩和の兆しは見られていない。むしろ、湖北省の省都・武漢や青海省の省都・西寧など複数の都市ではコロナ規制が強化されている。また、米アップルについては、中国鄭州市にある「iPhone」の主要製造工場において、厳格なコロナ対策が敷かれ、生産状況が混乱しているという。一部のアナリストは今後数週間で状況が改善されない場合、10−12月期のiPhoneプロモデルの出荷が1000万−1200万台不足する可能性があると指摘している。 31日に中国国家統計局が発表した10月製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と、9月(50.1)から0.9pt低下し、拡大・縮小の境目である50および市場予想(50.0)を2カ月ぶりに下回った。また、本日午前に発表された民間版の財新中国10月製造業PMIは49.2と9月(48.1)からは改善したが、こちらも分岐点となる50を下回った。安川電機<6506>やファナック、ナブテスコ<6268>の業績予想の下方修正などからも窺えるように、中国経済の低迷長期化は日本企業の業績悪化に繋がる。半導体市況の底入れに時間がかかる中、機械市況の低迷も長引くと、円安という追い風があるとはいえ、日本の製造企業の業績もしばし厳しい状況が続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/11/01 12:27 後場の投資戦略 FOMCや雇用統計など各種指標に注目 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27529.33;+424.13TOPIX;1922.71;+23.66[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、大幅反発でスタートした後上値の重い展開が続いている。米株高の流れを受けて本日の日経平均は買いが先行。ただ、今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えている他、足元でのロシアの穀物輸出合意停止などもあって、買い一巡後は徐々に手掛けにくさが強まるとの指摘も市場からは聞かれている。そのほか、アジア市況は軟調に推移、米株先物も売り優勢の展開が続いている。 新興市場はもみ合い展開が続いている。マザーズ指数は上昇してスタートした後朝方にかけて急速に上げ幅を縮小、前場中ごろにかけてマイナス圏に転落した。その後プラス圏に浮上するもさえない展開。一方、グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後、日経平均と同様にプラス圏での堅調もみ合い展開となっている。ナスダックが大幅高となっており、米長期金利がピークに接近しているとの見方が広がったことは国内の個人投資家心理の改善に繋がっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.13%高、東証グロース市場Core指数が0.77%高で時価総額上位銘柄が堅調に推移している。 さて、先週は米国の大企業の決算発表が相次いだ。GAFAMはアップルが相対的にましな決算となったが、それ以外は総じて市場の期待値に未達で米ナスダック総合指数の大幅下落に繋がり、国内の投資家心理にもネガティブに働いた。 今週からは、重要なイベントが目白押し。11月2日には連邦公開市場委員会(FOMC)が最新の政策金利決定を発表する。イングランド銀行(英中央銀行)も金融政策委員会(MPC)を今週開催、いずれも75ベーシスポイントの利上げ決定が予想されている。FOMCでは、リセッションリスクの高まりにも関わらず、インフレ抑制に動く積極姿勢を引き続き示す見通しだが、今後の道筋についてヒントを与えるとみられ、積極的な利上げペースを緩和する方針を示唆することもあり得る。 2日後の4日には、10月の米雇用統計が発表される。失業率は前月比0.1ポイント悪化の3.6%、非農業部門就業者数は前月比20.0万人増(9月は26.3万人増)程度と予想されている。雇用ペースがどの程度鈍化しているかを見極める重要な指標となるため、注目が集まっている。8日には中間選挙が実施される。議会多数派の交代が決まる可能性があるため、政局の動向にも注意が必要だろう。 10日には、消費者物価指数(CPI)が発表される。現時点の市場予想は、いまだに8%を超える前年同月比8.1%の上昇。サマーズ元米財務長官は27日のツイートで、「8%のインフレ率を低下させる展望は非常に暗い」、インフレ率低下のコンセンサス予想は過去の実績から著しく逸脱していると述べている。ただ、仮に10日に発表されるインフレ率が市場予想を大きく下回ると株高材料となりそうだ。 毎週月曜日の当欄では、常々年末にかけて一旦の反発が起こる可能性があることを示唆してきた。GAFAM決算は大敗したものの、利上げペース鈍化を想定していることが追い風となっている。ただ、前述の今週の各種イベント後の値動きには注意しておきたい。今後も、筆者の想定に変化はなく、世界的に様々なリスクが散見されるなか年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、堅調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続して向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/10/31 12:27 後場の投資戦略 GAFAM決算ほぼ全敗でFOMCの重要性一段と高まる [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27248.20;-97.04TOPIX;1908.16;+2.60[後場の投資戦略] 27日の米株式市場の引け後に発表されたアマゾン・ドットコムの決算は失望的なものとなった。7−9月期実績としては、売上高は市場予想並みとなったが、10−12月期見通しは市場の期待値を大きく下回った。株価も時間外取引で急落している。収益化見通しの立っていない分野に膨大な投資をかけているメタ・プラットフォームズとは異なるが、5四半期連続で営業経費の伸びが増収率を上回るなどコストの増加傾向が投資家の不安を誘っている。 10−12月期はホリデーシーズンだが、記録的なインフレ環境下で、今年は例年よりもセールが前倒しされている。また、昨年のような世界的な供給網混乱を警戒して調達を進めた結果、ウォルマートやターゲットのように過剰な在庫を抱えている小売企業が多く、競争も激しくなっている。このため、次回の10−12月期決算も冴えないものに終わる可能性がありそうだ。 一方、アップルは7−9月期の売上高が市場予想を上回った一方、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の売上高やサービス事業の売上高が市場予想に届かなかった。時間外取引の株価は一時乱高下したが、ほぼ立ち会い市場での終値と同水準に落ち着いている。 改めて振り返ってみると、GAFAM決算はほぼ全敗に終わった。アップルこそ株価は急落しなかったものの、これは事前に新型スマホの販売動向の不振が複数の報道を通して織り込まれていたからに過ぎない。そのため、実質的には全敗だろう。今回のGAFAM決算の結果が意味することは大きい。高いブランド力と包括的なサービス提供力から、GAFAMのような大型企業であれば景気減速の影響を免れることが可能との期待もあった中、今回の結果はそうした結果を一蹴したといえる。特に、アルファベットの決算で、時勢に乗るYouTube広告の四半期売上高が前年同期比で減収となったことなどは、個人的にはかなりのインパクトがあった。 他方、クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレスやビザなどの決算は総じて良好だった。また、前日に発表された米7−9月期国内総生産(GDP)の結果などからも、米国での個人消費は力強い基調が確認された。しかし、マクロの景況感については、GAFAMのような大型企業でも苦戦するほどに確実に悪化方向にあることを軽視してはならないだろう。 こうした中、一段と重要性を帯びてきたのが来週に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。先週末のウォールストリート・ジャーナル紙の報道に加えて、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁やセントルイス連銀のブラード総裁らの発言の変化を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策スタンスの転換が期待されている。11月会合での0.75ptの利上げはほぼ確実だが、12月会合の利上げ幅縮小に向けてどのようなメッセージが出されるか非常に注目される。景気後退懸念が強まる中では本来、マクロ経済政策の下支えが期待されるが、インフレ抑制が最優先とされている今は逆に引き締めが行われている。緩和とまではいかずとも、利上げ減速に向けた地ならしをどのようなメッセージと共に進めるのか、相場にとってビッグイベントとなろう。 午後の日経平均は神経質な展開が予想される。本稿執筆時点では日銀金融政策決定会合の結果がまだ発表されていないが、恐らく現状維持だろう。注目は黒田総裁の会見であり、足元の国内の物価動向やイールドカーブ・コントロールなどの現状の政策枠組みについて、どのような見解を示すかで為替が乱高下しそうだ。日経平均は為替要因で攪乱されやすく注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/10/28 12:12 後場の投資戦略 全体冴えないなか新興株の復活機運高まる [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27379.40;-52.44TOPIX;1908.31;-9.90[後場の投資戦略] 26日の米株式市場の引け後に発表されたメタ・プラットフォームズの決算は失望的なものとなった。第3四半期(7−9月)は2四半期連続での減収となったほか、第4四半期の見通しも市場予想に届かなかった。また、収益化の目処が立っていないメタバース関連の損失が今後さらに拡大するとの見通しが示された。 メタの決算は過去の経緯やスナップの決算から想定線とはいえ、同社株価は26日の立ち会いで6%近く下落したうえ、決算を受けて時間外取引でさらに20%近くも急落した。一昨日のマイクロソフトとアルファベットも冴えない決算で、前日はそれぞれ7%、9%とそれぞれ大幅に下落している。GAFAM決算は今のところ3戦3敗と全敗だ。今晩27日の米株式市場では、残るアップルとアマゾン・ドットコムの決算が予定されている。アップルについては、すでに新型スマートフォンの販売動向が不振と伝わっているが、メタの売られ方を見る限り、ある程度想定線とはいえ、予想を少しでも下回れば容赦なく売られそうなため注意が必要だろう。 GAFAMではないが、電気自動車大手のテスラも先んじて決算を発表しているが、納入車数が市場の期待値に届かないなど内容はいまいちで、その後は中国での競争激化を受けた値下げも発表しており、株価も冴えない。米国の主要株価指数はGAFAMやテスラといった時価総額上位の銘柄で吊り上げられている部分が大きいため、残るアップルとアマゾンでも決算が冴えないものとなると、米国株は厳しい展開になりそうだ。 一方、こうした中、東京市場では中小型グロース株の相対的な強さが続いており、本日はマザーズ指数が他の指数が下落しているなか逆行高を見せている。マザーズ指数の日足チャートをみると、今週に入って長期の200日移動平均線を明確に上放れてきており、一目均衡表でも雲上限を突破し、テクニカルな好転が際立っている。 マザーズ指数については、米国での金融引き締めを背景に、今年前半(1−6月)は徹底的に売り込まれたが、その分、すでに金利上昇などの悪材料は織り込み済みと思われる。年内の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速も視野に入るなか、今は銘柄固有の高い成長ポテンシャルを見込んだ買いが入りやすくなっているのだろう。また、取引の主体が個人投資家中心で、海外投資家や国内機関投資家による持ち高削減の影響を受けにくいほか、世界景気の減速など外部環境からの悪影響も受けにくいことも背景として考えられる。 時価総額上位銘柄が冴えず、ナスダックやS&P500株価指数、日経平均、TOPIXなどの上値が重いなか、高い成長率を誇り、外部環境の影響も受けにくい中小型グロース株の相対的な強さは今後も続くと思われる。いっときは指数連動型のインデックス投信にさえ投資していれば、あとは勝手に利益が増えていくとされ、アクティブ投信はもはや終わったなどと言われていた。しかし、歴史的なインフレを契機とした大規模金融緩和相場の終焉をきっかけに、個別銘柄の分析・選別がようやくものを言う局面に入ってきたとも言える。時間軸などの制約を受けずに長期目線で投資できる個人投資家にとっては腕の見せ所だろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/10/27 12:21 後場の投資戦略 日経平均は3日続伸、強い動きと裏腹に米IT大手の冴えない決算 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27577.15;+326.87TOPIX;1925.27;+18.13[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大きく3日続伸し、節目の27500円を回復、75日移動平均線も超えてきた。10月3日をボトムに下値と上値を切り上げる形となっており、短期的には75日線突破からの上昇に勢いが付きやすい状況となってきた。 一方、本日の上昇は短期的なものに過ぎないとも言えそうだ。25日の米株式市場の取引終了後に決算を発表したマイクロソフトとアルファベットは共に市場の期待値を下回るものとなり、両者の株価は時間外取引で大きく下落している。マクロ景況感の悪化で企業の広告需要が落ち込むなか、アルファベットの決算がそれなりに冴えないものになることは想定されていた。しかし、広告企業の中でも、検索エンジン型の同社の広告収入は、ソーシャルネットワークサービス(SNS)企業に比べれば堅調と想定されていただけに、市場予想を10億ドル程下回った売上高などはネガティブな印象が強い。 GAFAMの中でも相対的に好調な決算が見込まれていたマイクロソフトも印象が良くない。パソコンメーカー向け基本ソフト「Windows(ウィンドウズ)」の販売が7−9月期は前年同期比で15%減と大きく減速した。また、好調が続いていたクラウドサービス事業の「Azure(アジュール)」の増収率もドル高の影響もあって35%と、前四半期(4−6月)の40%、その前(1−3月)の46%からの減速傾向が鮮明になってきている。 さらに、半導体大手テキサス・インスツルメンツの決算もネガティブなものだった。10−12月期の売上高見通しが市場予想を下回ったほか、「産業機械メーカーの一部が発注を遅らせている」と言及しており、先んじて急速な調整を強いられているパソコンやスマートフォンなどの民生向け市場だけでない分野でも、半導体調整の波が押し寄せていることが確認された。 今晩26日の米株式市場では、メタ・プラットフォームズが決算発表を予定している。先週のスナップの決算を受けてすでに警戒感が高まっているが、堅調が期待されていたマイクロソフトとアルファベットが予想を下振れて株価下落しているあたり、メタの決算には改めて注意が必要だ。 一方で、本日の東京市場は時間外取引のナスダック100先物の大幅下落を無視する形で買い優勢の展開になっている。先週末、ウォールストリート・ジャーナル紙(WJ)が米連邦準備制度理事会(FRB)の年内の利上げ幅縮小を示唆する記事を報じていたが、そうした中でも、米10年債利回りは一昨日24日に2008年7月以来の高水準を記録していた。金利の高止まりにより、WJの報道を素直に好感し切れていなかったところ、前日25日の米国市場で金利がようやく大きく低下したことが安心感を誘ったとみられる。こうした背景が、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした売り方の買い戻しを誘っているとみられ、これが米IT大手の冴えない決算と株価反応との間にギャップを生んでいるものと考えられる。 実際、本日の東京市場での上昇率上位の銘柄をみると、マネーフォワード<3994>やJMDC<4483>、ネットプロHD<7383>、インフォマート<2492>などの安値圏にある銘柄が多く入っており、ショートカバー(売り方の買い戻し)が主体の動きといえる。米国でも、前日はベッド・バス・アンド・ビヨンドやゲームストップなどのいわゆるミーム銘柄が急伸していた。相場が強気に転じるにはなお時期尚早といえそうだ。(仲村幸浩) <NH> 2022/10/26 12:20 後場の投資戦略 株価続伸も警戒感を解かない債券市場 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27201.37;+226.47TOPIX;1903.54;+16.35[後場の投資戦略] 本日の日経平均は欧米株高を支援要因に続伸。引き続き200日移動平均線が上値抵抗線として作用している一方、25日線が下値支持線として機能するような形になっており、200日線を超えることができれば、レンジ上放れが期待できそうな位置につけている。 前日、英国では、米金融大手ゴールドマン・サックスでの勤務経験も持つスナク元財務相が次期首相に就任する見通しとなり、同国の財政を巡る不安が後退したことで、英国債利回りは大きく低下した。先週末のウォールストリート・ジャーナル(WS)紙による米連邦準備制度理事会(FRB)の年内の利上げペース減速に関する報道もあり、グローバルな金利上昇を巡る不安感は後退しているようにもみられる。 しかし、米国債券に目を向けると、前日の米10年債利回りは4.25%と、終値ベースではむしろ0.02pt上昇している。WS紙の報道前に一時政策金利の5%超えを織り込んでいたフェデラルファンド(FF)金利先物市場も、足元ではターミナルレート(政策金利の最終到達点)の織り込みが4.9%まで後退したが、依然として高水準を維持している。利上げのピークが見えてきた一方、依然として今後のデータ次第による流動的なところが大きく、米債券市場は一連のイベントを受けても警戒感を解いていない様子。足元の米株式市場の上昇は、予想より悪くない企業決算を好感した買いもあるだろうが、IT大手の決算前における持ち高調整に伴う買い戻しなどが主体と推察される。 また、そもそも、市場の目線は利上げ動向そのものよりも、企業業績の方に移ってきている。そうした中、前日に発表された米国の製造業・サービス業を合わせた10月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は前月から2.2pt低下して47.3と4カ月連続で縮小し、拡大・縮小の境界値である50を大きく下回った。製造業が49.9と9月の52.0から大きく低下し、市場予想の51.0に対して予想外の50割れとなったほか、サービス業も46.6と9月の49.3から大きく低下、市場予想の49.5からも大きく下振れた。現在、始まっている米国7−9月期決算については、アナリストの業績予想の下方修正が進んだ結果、ネガティブサプライズの数は少ないが、来年度以降の下方修正については余地が残されている中、速報性の高いPMIが一段と低下傾向を強めていることの持つ意味は大きいだろう。 企業決算も今のところ順調とはいえ、これからが本番だ。今晩はGAFAM決算の皮切りとしてアルファベットとマイクロソフトの決算が予定されているほか、明日はスナップの決算と株価急落もあって警戒感が高まっているメタ・プラットフォームズの決算もある。まだまだ上値追いになるには慎重でありたいところだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/10/25 12:26 後場の投資戦略 利上げ減速期待が台頭するも外部環境の不透明感は拭えない [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27156.95;+266.37TOPIX;1897.70;+15.72[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、大幅反発でスタートした後プラス圏で売り買いが交錯する展開となっている。12月FOMCでの利上げ幅縮小に向けてFRBが議論する見込みと報じられたことは、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いた。また、個別材料株中心の物色が主体となっている。そのほか、アジア市況は軟調に推移、米株先物は堅調に推移している。 新興市場でも買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタートした後プラス圏での堅調もみ合い展開となっている。利上げ減速期待が台頭して米長期金利がやや低下したことが新興株の追い風となっている。前引け時点で東証マザーズ指数が0.75%高と日経平均株価よりも上げ幅は限定的、東証グロース市場Core指数が1.35%高で時価総額上位銘柄が上昇をけん引した。 さて、前週末の米株市場はウォールストリート・ジャーナル紙が12月FOMCでの利上げ幅縮小に向けてFRBが議論する見込みと報じたことでポジティブサプライズとなった。米国株が上昇したことで東京市場でも買い優勢の展開が続いている。 一方、前週20日のブルームバーグでは、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)を務めるリサ・シャレット氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「弱気相場の中での上昇が定期的に起こり、どこにも行き着かないローラーコースターにわれわれは乗り続けることになるだろう」と指摘。「投資家は痛みに耐える力がないらしく、追い風が吹き始めたかもしれないという兆候が少しでもあれば2、3日は相場が上昇する」と続けていた。現に、「GAFAM」と呼ばれる米IT大手の企業決算のほか国内企業の決算発表が本格化する前に、少しの追い風が吹き始めたことで上昇している。 21日には米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁がFRBの利上げはまだ終わっていないと述べ、FF金利の誘導目標は年内に4%を大きく超える水準に引き上げられるとの見方を示していた。一方、FRBが一歩引き下がり利上げサイクルが経済に及ぼした影響を確認できる時期が近づいているとも指摘。「来年のある時点で利上げは一旦停止される」とした。株式市場では一旦主力企業の決算発表が注目されるだろうが、引き続き今後のFRB高官のタカ派発言に警戒しながら11月・12月のFOMCでの利上げ幅に注目せざるおえない。 そのほか、依然として外部環境の不透明感も強い。かつて米金融危機を予測した米経済学者のヌリエル・ルービニ氏は第3次世界大戦がすでに勃発しており、米国と中国がすでに冷戦を開始しているとの見解を示した。今後10年以内に大規模な倒産ラッシュと金融危機が起こる可能性があると警告。また、ドル円相場は32年ぶりに1ドル=150円を割り込んだ。アジアの代表通貨とされる円が人民元と共に下落を続け、「第2のアジア金融危機」の到来に対する不安も高まっているとの報道もある。やはり、各国の経済状況を注視するだけでなく、地政学リスクなども引き続き注視していく必要がある。 現時点では、追い風が吹き始めたことで年末にかけて一旦の反発が起こる可能性が高まってきた。ただ、前週の当欄で筆者が示唆したように、世界的に様々なリスクが散見されるなか、年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている点に変化はない。さて、後場の日経平均は、堅調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、幅広い銘柄に物色が継続して向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/10/24 12:26 後場の投資戦略 相場の底はどこになるのか [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26951.59;-55.37TOPIX;1888.44;-6.97[後場の投資戦略] 本日の日経平均は節目の27000円を手前に、25日移動平均線を挟んだもみ合い展開となっている。10月に入ってから、2度も200日線を上回りながらも、翌日以降には下落トレンドを再開する動きを見せており、8月17日高値を直近ピークとした上値切り下げ型トレンドの様相が強まっている。今週は、週末の米国でのオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)までの間は、ショート(売り持ち高)が積み上がっている米国株を中心に売り方の買い戻しでリバウンドが続きやすいと考えられたが、実際のところは日米ともに冴えない状況が継続。SQを通過した来週以降は米IT大手決算の結果次第でもあるが、需給面では下げやすい環境になってきたことに留意したい。 前日の当欄(「なお残る金利上昇圧力に要警戒」)での主張の繰り返しになるが、米債利回りの上昇が止まらない。前日20日、米10年債利回りは4.23%へと更に続伸し、14年ぶりの高値を連日で更新。前日は、英国でトラス首相が辞任を表明。ハント新財務相が減税策の大半を撤回した時点で、この展開はある程度織り込まれていたとはいえ、市場の波乱を引き起こしたトラス首相とクワーデング前財務相が表舞台の第一線から退いたにもかかわらず、金利の上昇は止まず、前日の米株式市場は前半の上げを帳消しにして下落に転じた。 金利上昇の引き金となったフィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、年内に政策金利を、4%を「大きく」上回る水準にまで引き上げること、そして、現状の緩慢なスピードでのインフレ沈静化という「残念な」状況を踏まえれば、来年の一段の引き締めをも辞さない方針を主張。同氏は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)での議決権を有していないが、連銀総裁から、来年の政策金利5%到達をも匂わす発言が出てきたことには警戒感を抱かざるをえない。19日には、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、コア消費者物価指数(CPI)の減速に進展が見られない場合、政策金利を4.50−4.75%よりも更に引き上げることを厭わないと主張した。 一方、9月のFOMC議事要旨では、数名のメンバーから「不透明な世界経済や金融環境において、経済見通しへの著しい悪影響を軽減することを目的に、今後の利上げペースを調整することが重要」との見解があったもよう。また、年内の残る2会合での利上げ幅については、1.25ptと1.00ptの主張をするメンバーの数が拮抗していたことが判明している。 筆者は、FRBの超積極的ともいえる現在のタカ派スタンスが転換する頃が、株式市場の一つの転換点になると考えている。しかし、現状は、FOMC議事要旨内でそうした兆候が見られつつある一方、公の場での高官発言からは依然としてタカ派な姿勢が続けられている。そろそろ金利を据え置いて政策効果の見極めに転じたい反面、データに基づく政策運営に徹している限り、前回9月の雇用統計およびCPIが強すぎる内容だったこともあり、いまだ手を緩ませることができない、というのがFRBの多くのメンバーが抱いている葛藤ではないだろうか。 ただ、10月4日に米労働省が発表した8月の雇用動態調査では、求人件数が110万人減少し、減少件数は2020年4月以来の大きさだった。CPIについては家賃などから構成される住居費が依然として勢いが強いものの、それ以外では減速の兆しが見られるものが多くなってきている。また、最大の関門ともいえる住居費についても、これに1年程先行する住宅価格は4月頃からすでにピークを打っている。 現在、市場は、11月のFOMCだけでなく、12月会合でも0.75ptの利上げが行われることをメインシナリオとして織り込みにいっている。つまり、9月のFOMC議事要旨内で確認されたFRBのほぼ全てのメンバーが想定している1.00ptもしくは1.25ptの利上げを超える、合計1.50ptの年内の利上げを織り込んできている。 依然として情勢は流動的とはいえ、今後発表される米国の求人件数や雇用統計、CPIの結果で、余程のことがない限りは、FRBは11月、12月のいずれかのFOMCで、将来の利上げ幅縮小ないしは利上げ停止に踏み切るための何らかの理由を挙げると考えられる。このシナリオが実現するのであれば、株式市場はいずれかの時点でいったん底を打つと推察される。ただ、これが大底かと問われれば依然懐疑的である。ウクライナ情勢のほか、来季の備蓄も見据えた世界的なエネルギー消費の動向、世界的なドル高に伴う新興国経済への下押し圧力など、外部環境の不透明感が強いなか、企業業績の悪化もどこまで深いものになるかが現時点では予想しにくい。株式市場は長期調整局面にあることを念頭に今後も相場に臨みたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/10/21 12:22 後場の投資戦略 日経平均は3日ぶり反落、なお残る金利上昇圧力に要警戒 [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26954.15;-303.23TOPIX;1892.98;-12.08[後場の投資戦略] 本日の日経平均は前日に上抜いたばかりの200日移動平均線を再び割り込んで、心理的な節目の27000円も下回った。6日にも大幅高で一度同線を上回ったものの、翌日に下落トレンド再開という形があった。今回も同様の流れになってしまったことで、今後この200日線が強力な上値抵抗線としてより強く意識されることになりそうだ。 前日19日、米10年債利回りは4.14%と2008年7月以来の高水準まで上昇した。英国でハント新財務相が大規模な減税策の大半を撤回し、欧州を中心とした財政不安が和らいできている中にもかかわらず、米国金利がこうして再び高値を更新してきていることは、それだけ金利上昇圧力が強い証左といえ、かなり気掛かりである。 前日の当欄(「年末に向けての株価の意外高も念頭に」)では、フェデラルファンドレート(FF)金利先物市場がすでに来年3−5月時点で政策金利が4.9%を超える水準にまで上昇することを織り込んでいること等を理由に、金利上昇圧力は限られてきたという話をした。ただ、英財政政策を巡る一連の不安について、これまでに発表済みの撤回分だけでは、財政不安を完全に解消するには不十分との指摘があり、欧州発のグローバルな金利上昇圧力はまだ残る。また、前日に発表された英10月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と8月(+9.9%)から加速した。冬季シーズンが本格化するに伴い、エネルギー危機が再台頭した際のインフレ・金利上昇のシナリオも考えられよう。 現在、米国の政策金利と連動性の高い米2年債利回りは4.55%に位置している。ターミナルレート(最終到達点)が、現状、米連邦準備制度理事会(FRB)が想定している4.50−4.75%のままであれば、米2年債利回りをはじめとした米国金利の上昇余地は小さいと考えられる。しかし、上述の欧州発のリスク要因が顕在化するか、もしくは、今後発表される米国のCPIや雇用統計が予想を大きく上振れることがあると、グローバルな金利上昇圧力が強まり、米ターミナルレートも5.0−5.5%程度にまで切り上がる可能性がある。この場合、米2年債利回りは5%前後、米10年債利回りでは4.5%程度までは上昇余地が生まれることになりそうだ。市場の目線はインフレ・金利動向よりも企業業績に移ってきているが、金利上昇を通じた株価下押し圧力が残っていることも留意しておきたい。 ほか、気掛かりなのは自動車関連だ。前日、米自動車ローン大手アライ・ファイナンシャルの7−9月期決算が発表されたが、新規ローンの申請件数が予想を下回り、株価が急落した。9月下旬にも、米中古車販売のカーマックスの決算を受けて自動車関連株が軒並み下落することがあったが、米国の個人消費を巡る環境は急速に悪化している可能性が高まってきた。個人消費の悪化を通じて企業の投資意欲もさらに落ち込んでいる可能性があり、広告需要の一段の悪化も想定される。現時時間で20日午後には米動画写真共有アプリを展開するスナップチャットの決算が予定されているが、広告関連のIT企業決算には注意が必要だろう。(仲村幸浩) <NH> 2022/10/20 12:22 後場の投資戦略 年末に向けての株価の意外高も念頭に [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27353.87;+197.73TOPIX;1909.46;+8.02[後場の投資戦略] 本日の日経平均は、前日に上抜いたばかりの25日移動平均線をサポートラインにする形でしっかりと続伸。上値抵抗線だった200日線も上抜いてきている。同線を本日、終値でしっかりと超えてくることができれば、テクニカル面は好転し、すでに一巡していると推察される買い戻しだけでなく、新規買いなども誘発してきそうだ。 米国では先んじて7−9月期決算の発表が始まっているが、今のところ総じて堅調なものが多い印象。金融大手の決算は一巡したが、貸倒引当金の積み増しが過度な景気後退懸念を招くことはなく、不振の投資銀行業務を純金利収入やトレーディング収益で相殺できているところが多かった。また、IT大手の決算で前日に皮切りとなった動画配信サービスのネットフリックスは、7−9月期の会員数が会社計画と市場予想をともに上回り、一株当たり利益(EPS)も予想を上回った。株価は時間外取引で急伸している。10-12月期見通しは売上高とEPSがともに予想を下回るなど完璧な決算とまではいかなかったが、株価の反応を見る限り、市場は胸を撫で下ろしているようだ。 全体的な米国企業の決算の特徴として、事前に悲観的ではあっても、蓋を開けてみると予想よりも良いということが多いが、今回の7−9月期決算も、まだ序盤ではあるが、今のところはそうした経験則通りの結果になっている。今晩の米株式市場では、電気自動車大手のテスラの決算を控えているが、こうした流れに弾みをつけてくれることに期待したい。 足元の株式市場の懸念材料として、インフレは依然くすぶっているが、もっぱら、最大の関心事は米連邦準備制度理事会(FRB)による遅行データに基づく積極的な利上げが過度な引き締めとなり、景気後退・企業業績の悪化を招くのではないかという点に集まっている。そのため、今回の7−9月期決算はこれまで以上に事前の警戒感が強く、足元の株式市場の上値抑制要因にもなっている。 しかし、裏を返せば、年末に向けての株高の地合いが整いつつあるようにも考えられる。まず、金融引き締めについてだが、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、すでに来年3−5月時点で政策金利が4.9%を超える水準にまで上昇することを織り込んでいる。多くのFRB高官が政策金利を4.5−4.75%にまで引き上げた後は、インフレが沈静化するまで当該水準で据え置くことを主張していることを踏まえると、金利先物市場はすでに政策金利水準については現時点では十分といえる程に織り込んでいるといえる。 利上げ幅についても、今年の11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)だけでなく、12月会合でも5会合連続で0.75ptの利上げを行うことを6割以上の確率で織り込み済みだ。年明け以降も利上げが続くとしても、金融引き締め効果を見極める必要性があることを考慮すると、利上げ幅は0.5pt以下に低下すると考えられ、利上げモメンタムのピークアウトも視野に入っている。 米10年債利回りなど米国金利への上昇圧力はなお残っていると考えられるものの、利上げペースが明確になり、その織り込みも完了している今、金利上昇による株価バリュエーションであるPER(株価収益率)への低下圧力はかなり和らぎつつある。そして、株価を決めるために残されたもう一つの要因は一株当たり利益(EPS)である。今の株式市場は、想定以上に業績が悪化するのではないか、今後、アナリストの業績予想が一段と引き下げられるのではないかと恐れている。こうした懸念がEPSへの低下圧力として働いて、現在の最大の株価下押し圧力になっていると考えられる。 そのため、上述したように、今のところ順調にきている7−9月期決算が今後も良好なものに終われば、市場の過度な業績後退懸念はいったん緩和されるだろう。年末に向けては極端なショート(売り持ち高)ポジションが築かれている米株式市場を中心に年末株高が実現する可能性があるといえよう。 ただ、残念ながら、現在の株式市場を巡る懸念要素はFRBの金融政策や企業業績だけではない。グローバルな視点から見渡せば、ウクライナ情勢のほか、欧州を中心に抱える世界的なエネルギー危機、「ゼロコロナ」政策の堅持から低迷が続く中国経済、米中摩擦、など多くの問題が重なっている。企業業績も7−9月期実績が良くても、経営陣が先行き不透明感を残すコメントを多く残せば、結局、翌四半期決算に懸念が繰り越されることになる。それでも、現在、先行きに弱気な意見をもつ市場関係者が支配的になっている中、完全に楽観に傾くことはできずとも、年末に向けては株価の意外高が控えている可能性にも留意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/10/19 12:17 後場の投資戦略 英財政不安後退も米長期金利の4%維持が気掛かり [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26985.66;+209.87TOPIX;1892.66;+13.10[後場の投資戦略] ナスダックの大幅反発を背景に投資家心理が改善し、本日の東京市場でも買い戻しが先行している。しかし、日経平均は寄り天井の形で大きく失速、200日移動平均線手前で陰線を形成しており、上値の重さを確認した格好だ。寄り付き直後の高値からは一時300円以上も下げた。最近は、心理的な節目の27000円を割り込んでもすぐに回復する底堅さが見られる一方、回復した割には再びあっさりと同水準を割り込むなど、非常に振れ幅の激しいボラタイルな展開が続いている。それでも200日線を超えられない状態が長期化しているあたり、大勢はやはり弱気局面が継続しているといえそうだ。 前日の米国株もハイテク株を中心に大幅反発をしたとはいえ、気掛かりな要素もある。英国のハント新財務相が減税計画の撤回を発表したことで同国の財政不安が後退し、前日の英国債利回りは低下(債券価格は上昇)、通貨ポンドは対ドルで買い戻された。これが波及する形で、前日の米国金利も低下した。しかし、米10年債利回りは低下したとはいえ、結局4%台のままだ。 前日の米国時間、米10年債利回りは一時3.92%まで低下したが、そこから急速に下げ渋って結局4.01%で終えた。米10年債利回りは9月28日に4%に乗せた後、景気後退懸念などを背景に10月上旬に一時3.5%台まで低下。この時、米国金利はピークを打ったとする声も聞かれたが、その後、再び4%を回復。このように、米10年債利回りは4%に乗せては同水準を割り込むといった動きを何度も繰り返している。英国財政を巡る懸念が大きく後退したにもかかわらず、根強く4%台を維持してくるあたり、金利の先高観の強さが窺える。実際、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は来年3月時点で政策金利が4.9%にまで上昇することを織り込んでいる。今後の金利上昇圧力は依然として残っていると推察され、株式市場への影響が懸念される。 また、企業決算も注目される。今晩の米国市場では、金融大手のゴールドマン・サックスのほか、動画配信サービスのネットフリックスなどの決算が予定されている。今のところ、金融大手の決算は堅調で、今後本格化する7-9月期決算に対する警戒感は和らいでいるが、ネットフリックスの決算がどのようなものになるかは注目だ。有料会員数が予想外に大きく減少するといった結果になると、4月のネットフリックスショックの再来となりかねないため、注意が必要だ。一方、予想を上回るものとなれば、今週末の米国でのオプション取引に係る特別清算指数算出(SQ)にかけて、全体相場におけるショートカバー(売り方)が加速しそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/10/18 12:17 後場の投資戦略 米株安受けて売り優勢の展開、外部要因も注視必要か? [日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26703.00;-387.76TOPIX;1876.93;-21.26[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、大きく下落してスタートした後軟調もみ合い展開となっている。10月ミシガン大消費者信頼感指数や同指数の期待インフレ率が予想を上回ったことで国内の投資家心理も悪化、売りが先行した。ナスダックの下落率は3%を超えており、東京市場でハイテク株や半導体関連株の重しに、押し目買いも限定的となっている。そのほか、中国・香港市場は軟調に推移、米株先物はやや堅調に推移しているが、東京市場は軟調な展開が続いている。 新興市場でも売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後マイナス圏での軟調もみ合い展開となっている。米長期金利が4%を超えて推移したことからバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株も厳しい展開が続いている。ただ、個別材料株などに幕間つなぎの物色が向かっており、前引け時点で東証マザーズ指数が0.55%安と日経平均株価よりも下げ幅は限定的、東証グロース市場Core指数が1.66%安で時価総額上位銘柄が下落をけん引した。 さて、前週13日に発表された米9月消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.2%上昇と8月からは減速したものの予想の8.1%上昇を上回った。食品・エネルギーを除いたコア指数は前年同月比6.6%上昇と8月から大きく加速し、予想の6.5%上昇も上回った。住居費だけでなく、食品や医療の分野でも強い伸びが見られた。また、14日の米10月ミシガン大学消費者信頼感指数における期待インフレ率は1年先が5.1%と9月から大幅に上昇、5−10年先も2.9%と9月から上昇した。依然としてインフレ長期化に対する警戒感から米長期金利の上昇は続いて4%をつけた。 14日のブルームバーグでは、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が経済には冷え込みの兆候が見られるとした上で、景気に抑制的な水準への利上げ継続を「全面的に支持する」と語り、同総裁は政策金利を4.5-5%に引き上げることが「最もあり得る結果」だと示唆した。 一方、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、過度に急速な利上げを行うことには慎重姿勢を示している。急速過ぎる利上げは「最終的に自己破壊を招きかねないやり方で金融市場と経済を混乱させる」可能性があると述べている。また、米セントルイス連銀のブラード総裁は15日に、11、12両月の年内残り2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合について利上げ幅を予想するには時期尚早だとしつつも、両会合で0.75ポイントずつの利上げを決める可能性を残す趣旨の発言を行ったようだ。今後のFRB高官のタカ派発言に警戒しながら、11月・12月のFOMCでの利上げ幅には注目が集まろう。 そのほか、中国では中国共産党第20回党大会が16日に開幕、習近平国家主席が今後の施政方針を示す活動報告を行った。台湾問題に関して、国家統一に向けて「歴史の車輪は前に進んでいる」と主張し、武力行使の放棄は決して約束しないと語っている。ウクライナ情勢では、ロシアが核兵器を使用すればほぼ確実にウクライナの同盟国、およびNATO加盟国の「物理的な対応」が引き起こされるとの見方を北大西洋条約機構(NATO)高官が示した。各国の経済状況を注視するだけでなく、台湾情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクも引き続き注視していく必要がありそうだ。 前週の当欄で筆者は年末にかけて一旦の反発が起こる可能性も考えながら来年以降大きく下落する可能性があることを示唆した。ただ、世界的に様々なリスクが散見されるなか、年末にかけて一旦の反発があったとしてもそこまで大きいものでない可能性がありそうだ。また、引き続き、来年以降大きく下落する可能性を念頭に相場を見守っているが、11月・12月のFOMCやそのほかのリスク次第では年末にかけてじりじり下がっていく展開も想定しておきたい。さて、後場の日経平均は、軟調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を注視しつつ、新興株に幕間つなぎの物色が継続して向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/10/17 12:24

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