後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
期待織り込み決算シーズンへ?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29161.71;-93.84TOPIX;2023.28;-4.39[後場の投資戦略] 米長期金利の上昇やASML下落の影響で半導体関連と中心とした値がさ株に売りが出て、本日の日経平均はやや軟調な展開となっている。日足チャートでは29100円台に下降する25日移動平均線が位置しており、この近辺でのもみ合いといったところ。東エレクなどが日経平均の下押し役となる一方、業種別騰落率では原油などの商品高により市況関連セクターが上昇率上位に並んでいる。ここまでの東証1部売買代金は1兆1000億円程度にとどまっており、1日を通じても2兆円台前半まで減少する可能性がある。一昨日の当欄で指摘したとおり、取引参加者は広がりを欠くのだろう。 新興市場でもマザーズ指数が-1.02%と続落。前日まで活況だったアスタリスク<6522>にかわり、新サービスを発表したグローバルW<3936>に物色の矛先が向いているようだ。もっとも、やはり米長期金利の上昇が重く、BASE<4477>などの主力IT株は軟調。また、エネチェンジ<4169>が急反落しているが、このところ成長期待の高い一部銘柄に短期志向の投資資金が集中していた印象は強く、荒い値動きを強いられる銘柄が増えるかもしれない。成長期待が高いといえど、株価が過熱していないかよく見極めたうえで取り組む必要があるだろう。 さて、米国では良好な決算が続き、NYダウは取引時間中の最高値を更新するところまできた。しかし、ASMLや動画配信のネットフリックスなど決算発表後に売られる銘柄も散見されるようになった。有力ハイテク企業を中心に事前の期待がかなり高まっているとみた方が良いかもしれない。 日本株ではどうか。日本経済新聞社が公表している日経平均のPER(株価収益率)は20日時点で14.24倍、PBR(株価純資産倍率)は1.31倍となっている。PBRは3月決算企業の通期決算発表が一巡した5月半ば以降で最も高い水準だ。なお、EPS(1株当たり利益)やBPS(1株当たり純資産)が足元やや減少しているため、PER・PBRとも9月高値時をやや上回っている。上期決算発表と前後して通期業績予想の上方修正が期待されるが、バリュエーション的には既にある程度織り込んでいるとの見方もできる。 取引状況を見ても、現物株の売買代金が減少してきたほか、株価指数先物についてもここ数日は外資系証券の目立った買い越しが見られなくなってきた。当欄では日経平均の上値めどを足元29000円強としていたが、やはり29500円手前で伸びが鈍った格好だ。国内でも本日はディスコ<6146>、明日は中外薬<4519>の決算発表が予定され、来週からはいよいよ主要企業の発表が相次ぐ。日経平均はある程度期待を織り込みつつ、29000円水準で決算発表シーズンを迎えることになりそうだ。 なお、海外でも注視すべきことは山積みだ。米国では商品高とともにインフレ懸念が根強く残ることが気掛かり。また、本日もインテルやAT&Tなどの決算発表が予定されている。経営危機に陥っている中国恒大集団は本日、9月23日に予定されていた米ドル債の利払いについて猶予期限を迎える。19日期日だった人民元債の利払いは実施したもようで、すぐに事業整理や法的整理に至るわけでないとみられているが、他の不動産会社を含め資金繰り不安が長期化しそうなのはむしろネガティブかもしれない。(小林大純)
<AK>
2021/10/21 12:27
後場の投資戦略
上昇後尻すぼみ、米株高を素直に好感できず
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29261.51;+45.99TOPIX;2029.68;+3.11[後場の投資戦略] 日経平均は上値抵抗線と見られていた25日移動平均線を突破し、チャート形状は一段と改善した。企業決算への警戒感が高まっていたなか、米国企業のこれまでの決算が総じて市場予想を上回る好内容だったことで、投資家心理が改善してきている様子。NYダウやS&P500種株価株価指数のチャート形状もかなり改善し、再び史上最高値を窺う位置にまで回復してきた。 ただ、国内の企業決算が本格化するのは来週後半からで、ちょうど時期が重なる月末の衆院選投開票結果に対する不透明感もあり、一段と上値を追う動きには至っていない。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の大幅上昇を背景に朝方大きく上昇していた東エレク<8035>など半導体関連株も寄り付き後は失速し、上げ幅を縮める動きとなっている。個別株で大きく上昇しているものは多くなく、短期筋による散発的な先物買いで指数だけが先行して上昇していた印象だ。 また、これまでの米国企業の好決算も、日本株にとって過度にポジティブには捉えにくい。これまでの企業決算は大手投資銀行や保険大手、医薬品関連など米国内経済との結びつきが強いものが大半。原油高や供給網混乱などの影響が懸念される製造業を中心とした日本企業の業績に直接示唆を与えるようなものではない。 他方、前日に発表された米消費財メーカーのプロクター&ギャンブル(PG)の決算では、商品価格や輸送費の上昇による通期計画への下押し圧力に言及があり、株価は下落した。日本株にとってはこちらの方が示唆深いだろう。また、日本企業については、資源価格や輸送費の上昇に加え、急速に進展する円安も相まってコスト増に対する懸念が特に強い。東証1部全体の売買高が停滞気味であるところを見ても、7-9月期決算と下期に対する見通しを確かめるまでは、明確に強気に転じることはできそうにない。 また、約5カ月ぶりの高値を記録した米長期金利の上昇も気懸かり。米10年債利回りは19日、1.64%と、1.59%から大きく上昇。一方、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.54%と横ばいで高止まり。インフレ懸念や来年からの米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げなどを織り込む形で、米国債が売られる状況が続いていると思われるが、BEIが高止まりの一方で米長期金利が上昇を続けると、実質金利の上昇を通して株式相場の重しとなりかねない。3月に付けた1.78%水準にはまだ距離があるが、米長期金利の上昇ペースには改めて警戒しておきたい。 むろん、供給網の混乱や商品市況高など供給サイドに基づく金利上昇でなく、企業業績や景気回復を反映した良い金利上昇であれば、長期的には株式市場への影響もポジティブなものとなる。それでも、金利上昇ペースの速さや実質金利上昇の短期的な悪影響には警戒が必要だろう。また、商品市況が高止まりしている中、今の金利上昇が素直に景気回復を映したものと捉えてよいかどうかを判断するには時間がかかろう。 日経平均は、決算シーズンを一巡するまでは当面3万円の大台を回復することは難しいとみられ、29500円手前での一進一退が続きそうだ。しばらくは、上昇したところは売り、下がったら押し目買いの逆張り戦略が奏功しやすい環境が続くとみる。
<AK>
2021/10/20 12:20
後場の投資戦略
市場のエネルギーがまだまだ乏しい
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29213.04;+187.58TOPIX;2024.05;+4.82[後場の投資戦略] 前日の米市場でハイテク株が買われた流れを引き継ぎ、本日の東京市場でも値がさ株主導で日経平均が一時200円を超える上昇となっている。中国の7-9月期GDPが鈍化したことを受け、景気刺激策への期待から香港ハンセン指数が続伸していることも追い風となっているだろう。日経平均の日足チャートを見ると、29200円台に位置する25日移動平均線水準まで上昇。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりとなっており、引き続き減少傾向にある印象を受ける。インターネット証券で人気のあるハイテク株や海運株が賑わっているように見えるが、取引参加者は広がりを欠くのかもしれない。 新興市場でもマザーズ指数が+1.92%と反発。こちらは1120pt台に収束していた25日移動平均線や75日移動平均線を上回ってきた。ハイテク株高を追い風にメルカリ<4385>などが堅調なほか、直近好決算だったアスタリスク<6522>などが賑わっている。東証1部の売買代金上位にベイカレントやレノバがランクインしているのを見ると、物色の矛先が成長期待の高い新興株にもシフトしつつあると考えられる。 さて、前日の米市場では期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.54%(-0.02pt)とやや低下した。注目される原油先物相場が伸び悩んだほか、連邦準備理事会(FRB)スタッフが来年にもインフレ率は2%未満に低下すると予測していることを一部メディアが報じるなど、市場のインフレ・金利上昇観測は行き過ぎとの指摘が政策担当者・市場関係者から聞かれる。また、企業決算や15日発表の9月小売売上高が良好な結果で、景気減速を伴う「悪いインフレ」への懸念が和らいでいる面もあるだろう。 ただ、BEI・原油価格ともまだ高止まりと言っていい状況だ。「ラニーニャ現象」発生による厳冬予測も相まって、エネルギー価格の先高観は根強く残るだろう。また、経営危機に陥っている中国恒大集団は本日、新たに人民元建て社債の利払い期限を迎える。会社側は利払い実施を発表しているが、既に期日を超えたドル建て社債の利払いは未実施とみられ、近日デフォルト(債務不履行)が認定される可能性もある。 日経平均は6日安値27293.62円(取引時間中)から2000円近く値を戻してきたが、8月末から9月にかけての政局相場のような現物株・株価指数先物の売買の膨らみは見られず、高揚感に乏しいと言わざるを得ない。自民党総裁選と前後して先物を大きく売り越していた海外勢の買い戻し、それに取引参加意欲の強い現物株投資家の買いがここまでの戻りを演出したが、多くの投資家は様子見姿勢と考えた方が良いだろう。それは企業決算を見極めたいとの思惑だけでなく、海外の懸念材料を多分に意識してと考えられる。また、やはり日経平均が29000円を超える場面では現物株・先物とも一定の売りが出ていることが各種データから窺える。一段の上昇を狙うには市場のエネルギーがまだまだ乏しいとみておきたい。 最後に、衆院選が本日公示された。選挙戦序盤の情勢が各種メディアから報じられており、目標の「与党で過半数」を達成しつつも、自民党は20~30議席ほど減らすとの予測が多いようだ。今後の推移に注目したい。また、今晩の米国では9月の住宅着工件数やネットフリックスなどの決算が発表される予定となっている。(小林大純)
<AK>
2021/10/19 12:30
後場の投資戦略
米金利上昇が重し、インフレ懸念は強まる一方
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28987.66;-80.97TOPIX;2016.53;-7.40[後場の投資戦略] 米国企業の企業決算が一足先に本格化するなか、日本企業の7-9月期決算が始まるのは来週からとなる。今週は決算シーズンの端境期となり、手掛かり材料難のなか、全体的にも方向感に欠ける動きとなっている。 前週は米国での各種物価指標の発表後、過度なインフレ懸念が後退したとの見方から、米長期金利が低下し、値がさハイテク株などを中心に全体的に大きく上昇した。岸田首相の金融所得課税引き上げについての発言を受けて、政権への過度なネガティブ視が後退するなか、衆議院解散から投開票日までの株高アノマリーを再び意識する向きもいたようで、海外勢の買い戻しも進んだ。 しかし、前週からの繰り返しにはなるが、長期金利の低下は一過性のものと思われる。前週、米長期金利が低下していた中でも、商品市況の上昇は継続しており、期待インフレ率の指標となる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)もむしろ上昇していた。長期金利の低下は、インフレ懸念の後退を映したものではなく、国債入札が好調だったことや物価指標の発表というイベント通過に伴う、債券の売り方の買い戻しが主体だったと考えられる。 実際、前週末には、米長期金利は1.51%から1.57%へと上昇に転じ、再び1.6%台を窺う水準にまできている。そして、目を引くのが米BEIの一段の上昇だ。5月10日付けた2.54%を手前に、一段の期待インフレ率の上昇は考えにくいとの見方も一部であったようだが、実際には、15日に米BEIは2.56%と、5月高値を上回り、8年9カ月ぶりの高値を記録した。NY原油先物価格も期近物で7年ぶりとなる高値を連日のように記録。相場のモメンタムに追随する商品投資顧問(CTA)に倣ったトレンドフォロー型の戦略を採用するファンドでは、一段の金利上昇とドル高に賭けて、米債ショート・ドルロングのポジションを積み増しているとも伝わっている。 世界的な電力不足も未だ解決の目処が立っているとはいえない。電力高騰を背景にロンドン金属取引所(LME)での亜鉛やアルミニウムの先物価格は記録的な上昇基調が続いている。液化天然ガス(LNG)の在庫不足を背景とした代替需要から、原油先物価格の上昇も継続中。ラニーニャ現象により厳冬が想定される冬季シーズンに向け、商品市況の上昇やインフレ懸念再燃による長期金利の上昇には依然として警戒が必要そうだ。今日の東京市場で上昇が目立っているものも、ほとんどが商品市況の上昇の恩恵を受ける非鉄金属など資源関連のセクターだ。市場のインフレを巡る思惑は当面続くと想定される。 さて、後場の日経平均は、中国株や香港株も軟調ななか、時間外の米株価指数先物などの動きに振らされそうで、引き続き29000円台を挟んだ動きとなりそうだ。ただ、午前中に発表された中国の経済指標では、7-9月期国内総生産(GDP)が市場予想並みとなったほか、9月の鉱工業生産が市場予想を下回った一方、小売売上高が市場予想を上回るなど、まちまちながらも波乱のない内容となったことは目先の安心材料となりそうだ。直近下げが大きかった中国売上比率の高い銘柄などには見直し機運が高まる可能性もあろう。
<AK>
2021/10/18 12:13
後場の投資戦略
それでも強弱感は入り交じる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28920.14;+369.21TOPIX;2012.41;+25.44[後場の投資戦略] 前日の米市場で主要株価指数が揃って大きく上昇し、本日の東京市場でも幅広い銘柄が買い優勢の展開となっている。日経平均の日足チャートを見ると、28500円近辺に位置する75日移動平均線を大きく上抜け、早くも次の節目と目される29000円に迫る動き。個別では、さすがに前日大きく上昇していた東エレクやアドバンテス<6857>こそやや落ち着いているが、その他の値がさハイテク株の堅調ぶりが目立つ。収益改善が見られるクリレスHDなどの外食関連株も引き続き急伸している。ただ、ファーストリテや良品計画の期待以下の今期予想には、国内外経済の先行きに対する一抹の不安もあるようだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりと前日並みで、引き続き取引活発とは言いづらい。 新興市場でもハイテク株高の流れを追い風に、マザーズ指数が+2.03%と大幅続伸。こちらは1120pt台に位置する75日移動平均線に迫る動きとなっている。個別では決算発表のオキサイド<6521>などが大幅高。ただ、前日のマザーズ市場では直近IPO(新規株式公開)銘柄がかなり荒い値動きとなり、足の速い投資資金中心の取引となっている可能性がある。 さて、米長期金利は先週末にかけて一時1.6%台まで上昇したのち低下傾向にある。9月PPIが前月比+0.5%(8月+0.7%、市場予想+0.6%)と鈍化した点はインフレ懸念の緩和につながりそうなものだが、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は14日、2.52%(0.00pt)と高止まりだ。NY原油先物相場が1バレル=80ドル台という高水準を維持しており、こうした商品高を背景にインフレ懸念は拭いづらいだろう。 前日の当欄でも述べたが、このところスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)を見越して株式・債券のショート(売り持ち)ポジションを構築していた海外ファンド勢が多かったとみられ、ここ数日の株高・債券高は物価指数発表や国債入札といったイベント通過による売り方の買い戻しが主因だった可能性がある。特に、BEIの高止まりで名目金利とともに実質金利が低下し、ハイテク関連を中心としたグロース(成長)株は買い戻しが誘発されやすい。 もっとも、前述したようにインフレ懸念などの世界経済の先行きを巡る不透明要因は依然として残るため、国内外投資家が積極的な買い持ちへと転じるかよく見極める必要があるだろう。引き続き各国経済指標の発表は多く、今晩の米国では9月小売売上高、10月NY連銀製造業景気指数、10月ミシガン大学消費者マインド指数などがある。また、週明け18日には中国で9月国内総生産(GDP)などの重要指標の発表が予定されており、これらの結果を受けて再び相場の方向感に変化が出てくる可能性はあるだろう。 前日の先物手口を見ると、BofA証券が東証株価指数(TOPIX)先物の買い越しを続ける一方、シティグループ証券が売りに傾いた。また、11~12月物オプションでは、権利行使価格27500~28000円のプット(売る権利)の建玉がかなり膨らんでおり、株価急落に備えたヘッジニーズが強いことを窺わせる。市場には強弱感が入り交じっており、日経平均も目先3万円の大台を回復しに行くような動きとはなりづらいだろう。(小林大純)
<AK>
2021/10/15 12:28
後場の投資戦略
選挙戦を前に国内政治論点にあえて一石
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28425.90;+285.62TOPIX;1979.98;+6.15[後場の投資戦略] 本日の日経平均は300円近い上昇で前場を折り返した。米国での長期金利低下やハイテク株高を支えに、値がさ株が健闘して日経平均を押し上げている。もっとも、売買代金上位では値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が拮抗している印象で、東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多い。個人投資家に人気の海運株やレーザーテックも軟調なのはやや気掛かりだ。前引けの日経平均は+1.01%だが、東証株価指数(TOPIX)は+0.31%にとどまる。日経平均の日足チャートを見ると、28200円台に位置する5日移動平均線が下値を支える一方、29500円台に位置する75日移動平均線が上値を抑える格好。ここまでの東証1部売買代金は1兆3000億円あまりで、1日を通じてはここ2日と同様に2兆円台半ばあたりとなりそうだ。取引活発とは言いづらい。 新興市場でもマザーズ指数が+1.14%と3日ぶり反発。本日は9月上場のレナサイエンス<4889>などが賑わっているが、日替わり物色の様相で、マザーズ指数はこのところ1100pt前後でもみ合う展開が続いている。 さて、注目された米9月CPIは引き続き高い伸びを示したが、おおむね市場予想並みだったことで「過度なインフレ懸念が後退した」との見方がある。しかし、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)はむしろ2.52%(+0.03pt)に上昇しており、やはり「引き続きインフレ圧力は強い」と受け止める向きが多いのだろう。10年物国債利回りの低下(債券価格の上昇)は30年物国債入札が好調だったことなどによる売り方の買い戻しと考えられる。 9月21~22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では「テーパリング(量的緩和の縮小)を11月半ばか12月半ばに開始する」方向であることが再確認されたものの、特段のサプライズではないと受け止められている。ただ、インフレ観測が広がるなかで米連邦準備理事会(FRB)の対応が遅いとして、「政策エラー」を懸念する声が再び聞かれ始めたのは気掛かりだ。 一方、国内では本日、衆議院が解散されて19日公示・31日投開票の日程で選挙戦に突入する。選挙期間の政策期待による株高傾向が意識されてか、自民党総裁選と前後してTOPIX先物を大きく売り越したBofA証券が、先週末あたりからは逆に一貫して買い越している。ただ、国内政治を巡る投資論点で、あえて大勢と異なる見方も示しておきたい。年末にかけての日本株の上昇余地を探るうえで重要となるだろう。 (1)岸田政権の掲げる衆院選の勝敗ライン「与党で過半数」を達成することで政権基盤の強化につながるとみられているが、はたしてそうか。前回2017年の衆院選で大勝した反動に加え、菅前政権以来の逆風下では致し方ない面もあるが、自民党の現有議席276(公明党29とあわせ与党で305、定数465)に対し、勝敗ラインはやや保守的な印象を受ける。仮に勝敗ライン上での攻防なら数十議席減という結果だ。衆院選後に当初5割前後だった政権支持率も低下するようなら、来夏の参院選に向けて再び不安がくすぶることになるかもしれず、実際にこうした懸念の声は一定数聞かれる。 (2)岸田文雄首相の再分配重視の姿勢は非自民層から一定の支持を得ており、保守層も総裁選で「サナエノミクス」を掲げていた高市早苗政調会長による政策とりまとめに期待しているようだ。ただ、従前財務相だった麻生太郎副総裁が自民党内で影響力を強めているとみられ(総裁選で一貫して岸田氏支持を表明していた甘利明幹事長が麻生派)、はたして思い切った経済対策が打てるか。矢野康治財務次官が月刊誌への寄稿で与野党の政策を「バラマキ合戦」と批判したことが話題となったが、この寄稿は事前に麻生氏の了解を得て行われたという。岸田氏や公明党が意欲を見せる現金給付についても、麻生氏は一貫して否定的だ。岸田氏の施政方針演説に「具体性を欠く」との批判が聞かれたが、今後の党内調整の難しさがにじみ出ているのかもしれない。 最後に、本日は日経平均への影響が大きいファーストリテ、海外でも台湾積体電路製造(TSMC)や米金融大手等の決算発表が控えており、後場の取引ではこれらの内容を見極めたいとのムードも出てきそうだ。(小林大純)
<AK>
2021/10/14 12:16
後場の投資戦略
米CPI前に様子見、相場復調へのハードルは高い
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28168.99;-61.62TOPIX;1978.16;-4.52[後場の投資戦略] 日経平均は方向感に欠ける展開ながらも、心理的な節目の28000円を意識した底堅い動きとなっている。インフレや長期金利の動向が気懸かりななか、今晩には9月米消費者物価指数(CPI)や9月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表される。様子見ムードのなか仕掛け的な売りなども警戒されるところではあるが、28000円を割ったところではすかさず押し目買いが入るなど、想定以上にしっかりとした動きとなっている。ただ、明日の米株市場の動き次第では、風向きが変わりやすいため、依然として相場は流動的だ。 また、IMFの最新の世界経済見通しは残念な内容となった。世界的な供給網混乱やインフレ懸念による消費鈍化などを背景に、2021年度は全般の経済成長率が下方修正された。世界経済全体については5.9%と前回7月時点から0.1ptの引き下げにとどまったものの、世界経済の中心にある米国経済については6.0%と、前回から1.0ptも引き下げられた。また、日本も2.4%と0.4ptも引き下げられ、前回に続く下方修正となった。日本については、新型コロナウイルスワクチンの接種率上昇を背景に見通しが引き上げられる可能性も指摘されていただけに、この引き下げ幅はネガティブだ。また、米国も日本も共に2022年度については上方修正されているが、先行き不透明感が強いなか、こちらは積極的にポジティブに捉えることが難しい。 国内外の経済見通しが大きく引き下げられたことで、世界の景気敏感株とも呼ばれる日本株にとっては改めて厳しい状況となった。これでは、各国の経済動向を踏まえて投資戦略を決めるグローバルマクロ系のヘッジファンドなどによる投資などはますます見込みにくくなったといえる。 今年2月半ばまでの上昇相場の際には、「インフレ加速・長期金利上昇」を見込んだリフレトレードの動きが活発化し、世界の景気敏感株である日本株にとっては追い風の環境だった。今再び、インフレや長期金利上昇が話題に上っているが、状況は異なる。前回は、コロナ禍からの回復局面前半で景気回復のモメンタムが加速していた時だった。世界の企業業績も1-3月から4-6月にむけて増益率が大幅に拡大する局面だった。しかし、今は違う。米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する景況指数などは依然高い数字を記録しているものの、中国を中心に世界全体ではモメンタムは完全に鈍化している。企業業績も4-6月期をピークに、増益率は7-9月期からは大幅に鈍化する見込みだ。景気減速が想定されるなかでのインフレ・長期金利上昇は日本株にとっても望ましくないことは明白だ。 7-9月期決算の先駆けとなる、前週に発表された安川電機<6506>の6-8月期決算は決して悪くはなかった。第1四半期に続き通期計画も上方修正された。しかし、市場予想の範囲内に収まったこともあり、その後の株価推移は軟調だ。インフレ懸念、金利先高観、景気・業績モメンタム鈍化、など、先行き不透明感を払しょくするような企業業績が今後相次ぐことが望まれるが、そのハードルはかなり高そうだ。
<AK>
2021/10/13 12:12
後場の投資戦略
米雇用統計・商品高でインフレ懸念一段と
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28232.32;-265.88TOPIX;1983.09;-13.49[後場の投資戦略] 本日の日経平均は海外株安を受けて200円超の下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、28500円強に位置する75日移動平均線に押し返された格好。テクニカル的にはこの水準が戻りの節目の1つとの見方が多い。もっとも、28000円近辺に位置する5日移動平均線水準まで下落を強いられることもなく推移。業種別騰落率では市況関連セクターが値上がり上位に並び、インフレ観測の根強さを窺わせる。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円弱で、1日を通じては前日(2兆7085億円)をやや上回る水準か。なお、現物株のみならず先物の売買高も足元やや落ち着きつつあり、まとまった売りや買いが出れば相場全体が上下に振らされやすいかもしれない。 新興市場でもメルカリ<4385>などの主力IT株が軟調で、マザーズ指数は-1.43%と4日ぶり反落。エネチェンジ<4169>やアスタリスク<6522>あたりが賑わい、新興株に逆風となるインフレ懸念がくすぶるなかではまずまず健闘している印象を受けるが、さすがにマザーズ全体としては一段の上昇を試す場面とはなりづらいだろう。 さて、米国では8日、期待インフレ率の指標である10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)が2.50%(+0.04pt)と5月以来の水準まで上昇。10年物国債利回りも同日、1.61%(+0.04pt)に上昇した。9月雇用統計で雇用者数の伸びが市場予想を大幅に下回る一方、平均時給は予想を上回り、労働需給のひっ迫が意識されるだろう。11日の債券市場は休場だったが、原油を中心とした商品市況の上昇が続き、インフレ懸念はなおくすぶりそうだ。 また、雇用統計では労働参加率が前回の61.7%から61.6%に低下したことも注目される。「9月にかけて失業給付の上乗せが順次終了し、労働市場に復帰する人々が増える」とみる市場関係者が多かったが、こうした見方に逆行する動きだ。コロナ禍による短期的な影響のみならず、従前述べたように(1)失業長期化や産業シフトによる技能ギャップ、(2)格差拡大による若年層を中心とした労働意識の変化(いわゆる「ロビンフッダー」の増加に象徴される)といった要因から、労働市場への復帰は大方の期待より緩慢となり、需給ひっ迫によるインフレ圧力は長期化する可能性もあるだろう。 商品市況についても、ファンド勢がスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)を意識して株・債券ショート(売り持ち)と商品ロング(買い持ち)の持ち高構築を進めている可能性がある。こうした状況を踏まえると、インフレ懸念が早期に払しょくされるとの期待は持ちにくい。明日13日は米9月消費者物価指数(CPI)の発表や9月21~22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表が予定されており、これらの内容を見極めたいとの思惑も強まりそうだ。 経営危機に陥っている中国恒大集団を巡っては、新たにドル建て社債の利払い期日が11日に到来したものの、各種報道によればこれまで支払いはなされていないようだ。引き続き米中の懸念材料を抱え、日本株は外部環境睨みの相場展開を強いられそうだ。なお、本日は国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しが発表される予定。これも各国株式相場の方向感に大きな影響を与えるため、内容を注視しておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/10/12 12:17
後場の投資戦略
国内外での上値抑制要因緩和で買い戻し進展
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28488.95;+440.01TOPIX;1989.51;+27.66[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は値幅を伴った上昇で28500円台まで上昇してきた。前週6日に27293.62円まで急落したが、外部環境の不透明感後退なども追い風に、値ごろ感からの買い戻しが進んだ。しかし、前週末の米雇用統計のさえない結果や、米株安の動きも踏まえると、週明けからこれだけの上昇幅が出たのには別の事情もありそうだ。 やはり、多方面でも話題になっているように、岸田首相の金融所得課税への言及が大きいとみられる。「成長」よりも「分配」に重きを置いた政策、「変化」よりも「安定」が重視されたような印象の強い岸田新政権への株式市場での評価は厳しく、これまでネガティブに捉えられていた。特にその代表格として金融所得課税の引き上げが注目されており、企業の四半期開示の原則見直しなどとも相まって、投資家からの批判が高まっていた様子。 それが、週末の民放番組での出演で、金融所得課税引き上げについては「当面考えていない」、「成長なくして分配はない。金融所得課税を考える前にやることはいっぱいある」などと発言。これにより、当面の増税懸念が後退したほか、過度な「分配」先行イメージが払拭され、ネガティブな印象を緩和することに寄与したようだ。 そのほか、中国政府が電力不足の緩和に向け、制限していた国内での石炭の増産に動き出したほか、輸入先の多様化や拡大に努めはじめたことも、サプライチェーン(供給網)の混乱が緩和されるとの見方から、投資家心理の改善につながっているようだ。 これらの動きは、今後の展開次第では、はく落してしまった国政期待の復活や、外部環境の不透明感の緩和につながり、再び株高基調に転換するきっかけにもなり得ると期待したい。 一方で、岸田新政権の政策には依然として具体性が乏しく、経済成長につながるストーリーが明確化されていない印象が残る。今回の金融所得課税引き上げの先送りだけで、大きくはく落してしまった海外投資家からの期待を完全に取り戻せるとは言いにくいだろう。 また、外部環境の不透明感についても、まだ警戒が必要だ。米長期金利が4カ月ぶりに1.6%台へと上昇したほか、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は約5カ月ぶりに2.5まで上昇してきている。インフレ加速や長期金利の更なる上昇など警戒感は残る。今週は、米国で13日に消費者物価指数(CPI)、14日生産者物価指数(PPI)が発表される。インフレを巡る思惑や長期金利の動向には引き続き注意したい。 後場の日経平均は引き続き堅調に推移しそうだ。ただ、28500円を回復した達成感もあり、今週の米物価指標の発表を前に、29000円に向けては一旦上値が重くなる展開も想定しておきたい。
<AK>
2021/10/11 12:18
後場の投資戦略
需給状況も8月以前に逆戻り?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28275.52;+597.31TOPIX;1974.51;+34.89[後場の投資戦略] 本日の日経平均は外部環境を巡る懸念が一段と和らぎ、前場には一時600円を超える上昇となった。米国債の当面のデフォルト回避によるリスクオンの流れから米10年物国債利回りは1.57%(+0.05pt)まで上昇したが、ナスダック総合指数や米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は堅調。東京市場でも値がさグロース(成長)株を中心に買いが入り、日経平均を押し上げている。ネット証券で人気のレーザーテックは、半導体の微細化に寄与する極端紫外線(EUV)を用いた検査装置がDRAMメーカーにも広がっているとの社長インタビューが米メディアに掲載されており、一段と期待を高めているだろう。一方、こうしたハイテク株への投資資金シフトで海運株は軟調。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円弱と前日より膨らんでおり、取引は活発だ。 新興市場でもメルカリ<4385>などが堅調で、マザーズ指数は+1.75%と続伸。ただ、こちらは10時前に付けた1112.82ptがこの日の高値で、その後はやや上値を切り下げるような恰好となっている。 さて、日本取引所グループが7日発表した投資部門別売買動向によると、外国人投資家は9月第5週(9月27日~10月1日)に現物株を4725億円、東証株価指数(TOPIX)先物を7874億円、日経平均先物を1713億円それぞれ売り越していた。日々の先物手口では、9月29日の自民党総裁選と前後してBofA証券がTOPIX先物の売り越しに転じていたため、おおむね想定どおりの内容だ。8月23日週から9月21日週までの5週累計で外国人投資家のTOPIX先物買い越し額は8100億円あまりに膨らんでいたが、9月第5週の1週間でほぼ同程度売り越していたことになる。 一方、日経平均先物については9月21日週には早々に売り越しに転じており、9月第5週を含めた2週累計の売り越し額は5000億円弱。取引主体は短期筋とみられるだけに、政局相場初期の買い出動もその後の売り転換も早かった。しかし、8月23日週から9月13日週までの4週累計の買い越し額は8900億円近くに上っていたことから、むしろTOPIX先物と異なって一段の売り余地があるだろう。実際、前日の先物手口でもJPモルガン証券が日経平均先物を売り越していた。 自民党総裁選以降の海外勢の売りを「投機筋による材料出尽くし的な、あるいは思惑的なもの」と説明する市場関係者が多いように見受けられるが、実需筋中心とみられるTOPIX先物の売りが先行したという事実が見過ごされているような気がしてならない。 もう1つの市場データにも注目しておきたい。1日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆5365億円と前の週に比べ2366億円増えた。政局相場で徐々に信用買い残の解消が進んでいたが、その後の株価急落で結局直近ピーク並みの水準に逆戻り。前日の後場に見られたように、信用買い残の増加は戻り売り圧力につながる。 海外投資家が先物を売り、現物株投資家が押し目で信用買いを膨らませる需給状況は政局相場前の2~8月と同じだ。5日の当欄では構造改革期待のはく落により「世界の景気敏感株に逆戻り」と指摘したが、実は需給状況も逆戻りしているとみておいた方がいいだろう。これを踏まえ、当面の日経平均の予想レンジは8月までと同様に27000円弱~29000円強としておきたい。 香港・上海株は朝高後やや伸び悩んでおり、今晩の米国では9月雇用統計の発表が予定されている。前述のとおり戻り待ちの売りが出やすい点を考慮しても、後場の日経平均は上値の重い展開となる可能性がある。(小林大純)
<AK>
2021/10/08 12:24
後場の投資戦略
エネ価格の反落などひとまず安心も…
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27990.32;+461.45TOPIX;1956.79;+14.88[後場の投資戦略] 本日の日経平均は9日ぶりに大幅反発し、28000円台を回復する場面があった。日経平均の8日続落は2009年7月以来12年ぶりで、この間の下げ幅は2700円あまりに達していた。水準としても8月末から始まった政局相場の上昇分を帳消しにしており、さすがに自律反発が意識された面はあるだろう。また、個別・セクター別の騰落状況を見ると、プーチン氏の発言を受けたエネルギー価格の上昇一服が株式相場全体にかなり好影響を与えているように見える。軟調相場で投資資金を集めていたINPEXなどは急反落を強いられているが、インフレ懸念が和らぐとともに米10年物国債利回りの上昇は一服し、値がさグロース(成長)株が反発。海運株の値上がりを見ると、中国の電力不足への懸念も和らいでいるように思われる。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまり。 新興市場でもマザーズ指数が+2.98%と4日ぶり大幅反発。BASE<4477>が8%の上昇、メルカリ<4385>が3%の上昇などとなっており、やはり米長期金利の上昇一服とともに主力IT株が堅調だ。もっとも、本日マザーズ市場に新規上場したワンキャリア<4377>は公開価格を2割ほど上回る初値を付けたものの、9月後半のIPO(新規株式公開)銘柄と比べると元気のない印象が拭えない。マザーズ銘柄のみならず、ネット証券で人気が続く海運株などが直近急落し、個人投資家のセンチメントや資金余力が悪化した可能性はあるだろう。実際、QUICK社の算出する信用評価損益率は1日申し込み時点で-9.44%と前の週(-7.68%)から悪化している。ワンキャリアは採用DX(デジタルトランスフォーメーション)・プラットフォーム企業として業績を大きく伸ばしており、今後の値動きに期待したい。 さて、不安材料を抱え動向が注目される米株や香港株。米株はNYダウなどの主要株価指数の底割れを懸念する向きが多かっただけに、前日の460ドル近い下落からのプラス転換は安心感につながっただろう。しかし、強気・弱気が入り交じるなかでボラティリティ(株価の変動率)が高まっているとの指摘があり、これはNYダウなどの日足チャートを見ても一目瞭然だ。「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は6日時点で21.00(前日比-0.30)と、節目の20を上回る状態が継続。「相場は脆弱」との指摘が多く、まだまだ不安定な動きが続くとみておいた方がいいだろう。 連邦政府の債務上限問題を巡っては、マコネル氏の提案に当初こそ民主党から反発の声が出ていたが、結局受け入れの方向で進んでいるようだ。目先の債務不履行(デフォルト)リスクは後退するが、年末にかけての与野党の攻防が一段と激しさを増すとの見方もある。また、いったん下落した原油価格についても、先行き1バレル=100ドル超に達する可能性があるとの市場関係者の声が聞かれる。今週末8日には9月雇用統計の発表が控えており、米株相場を揺るがす懸案・イベントがなお山積みだ。 日本株については、衆院選通過後に経済対策への期待などから再上昇するシナリオを描く市場関係者が多いようだ。しかし、こうした向きが直近の株価下落は「政局相場の反動」などと捉えているのに筆者は違和感がある。海外の主要株価指数とのパフォーマンスを比較すると、海外投資家に「日本株固有の買い要因を失った」と受け止められている可能性は高いだろう。海外情勢に振らされる展開が当面続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/10/07 12:26
後場の投資戦略
独歩高から独歩安、インフレ懸念もあるが国政がもはや重しか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27544.06;-278.06TOPIX;1942.30;-5.45[後場の投資戦略] 本日の日経平均は前引け時点でなんと8日続落。前日まで7日続落で、この間の下げ幅は2426.69円にも及ぶ。これだけ下げればさすがに自律反発するのも不思議ではないと思ったが、朝方の反発もむなしく、急失速の展開となり、28000円台の回復は束の間の出来事に終わった。東証1部全体でみれば値上がり数が値下がり数を上回っているが、上昇している銘柄の多くも、朝方から急失速し、上げ幅を半分以上に縮めているものばかりだ。 それもそのはず。前日と今日とで特に何も変わっていない。株価急落を生み出した要因は何も解消されていない。中国での恒大集団をはじめとした不動産業資金繰り問題や深刻な電力不足、米連邦政府の債務上限問題などは依然くすぶる。米国の政治問題については与野党の間のチキンレースに過ぎず、長期的な波乱要因にはならないと考えるが、短期的にはテクニカル的な調整色を強めている米国株の一層の下押し圧力にはなり得る。 そして、中国の問題については長期的な話だ。不動産業の停滞から消費減などを通じて他産業へ影響が及べば、実体経済の後退につながる恐れがある。電力不足問題も、同国の環境規制強化のほか、石炭価格の高騰、世界的な脱炭素への急速シフトに伴う構造的変化など複数の要因が絡み合っており、すぐに解決できる問題とはいえない。 さらに、世界的なインフレ懸念も根強い。石炭価格のほか、天然ガスや原油など世界的にエネルギー価格が高騰している。初期は、コロナ禍からの需要回復や供給体制構築の遅れなど、一時的な需給バランスの乱れによるものと捉えられていた。しかし、世界が同時的に脱炭素へ急速にシフトした結果、再生可能エネルギーなどの新エネルギー分野と、化石燃料などの旧エネルギー分野との間での投資シフトの時間軸での整合性が取れず、需給バランスが構造的な形で崩れているようだ。こうなってくると、自らも懐疑的になってきていると思われる「インフレは一時的」とする米連邦準備制度理事会(FRB)の主張にも一層疑念がもたれる。 9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米10年国債利回りが急速に上昇してきたが、初期は、その上昇要因のうちほとんどが実質金利の上昇で説明できた。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は緩やかに上昇していたはいたが、直近のレンジ内に収まっており、インフレ懸念が過度に強まっていた印象はなかった。 しかし、その米10年物BEIは5日に2.45と、7月29日の2.43を上抜き、直近3カ月程のレンジを上抜けてきた。上昇確度が高くなり、加速度的な上昇となっており、ここにきてインフレ懸念が強まってきた様子。WTI原油先物価格は5日、期近で2014年11月以来およそ7年ぶりの水準まで上昇した。このままエネルギー価格の高騰が続くと、今年前半に見られた「インフレ懸念・長期金利急騰」の再来もありうる。相場が神経質になってきている分、リスク要因として留意したい。 そして、国内に目を向けても懸念要素はある。前日、各メディアが岸田新内閣誕生後の世論調査の結果を発表した。内閣支持率はどこも60%を割っており、高いところでも日本経済新聞社とテレビ東京が共同で行ったもので59%。これでも、同調査によれば、政権発足時としては過去3番目に低かったという。ちなみに、読売新聞社が行った調査では56%、低いところでは朝日新聞社の45%、毎日新聞社の49%などがあった。 菅元首相の退陣で支持率が上がり、衆院選での与党圧勝への期待が高まったことで、9月半ばまでは政局相場による株高基調が生まれていた。しかし、蓋を開けてみれば、支持率に劇的な改善は見られなかった。こうなってくると、株高要因として期待されていた衆院選は今後はリスク要因とみなされかねない。すでに政局相場は終了し、前日までの間に日経平均は8月末以降の上昇分をすべて吐き出しているが、更なる下押しも想定しておいた方がよさそうだ。今日の朝高後に失速した日経平均の動きを見ていても、今後の日本株については前途多難と言わざるを得ない。
<AK>
2021/10/06 12:12
後場の投資戦略
「世界の景気敏感株」に逆戻り
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27658.31;-786.58TOPIX;1939.29;-34.63[後場の投資戦略] 本日の日経平均は大幅に7日続落し、800円近い下落で前場を折り返した。下落が始まる前の9月24日終値(30248.81円)比でここまでの下げ幅は2600円近くに達し、取引時間中としては政局相場が始まる前の8月23日以来の安値を付ける場面もあった。国内「ユニクロ」の苦戦が続くファーストリテが1銘柄で日経平均を約192円押し下げているが、中国の電力不足等でコンテナ船市況が急落していると伝わった海運株も引き続き軟調。グロース(成長)株は米ハイテク株の大幅下落が響き、逃避資金の向かう先はINPEXなどの原油関連株に限られている。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円あまりで、前日までと大きな変化はない。 新興市場でもマザーズ指数が-2.53%と大幅続落。前場中ごろにかけて4%超下落する場面があった。下値での押し目買い意欲は根強そうだが、米国でインフレ懸念と長期金利の上昇圧力が強まっているとなれば、先高期待も持ちづらいところだろう。先週後半に米長期金利の上昇が一服した場面では主力IT株の底堅さを感じたものの、一転して足元軟調となっている。 動向が注目される香港市場では、不動産株の売買停止が相次いでいるほか、インターネット関連株が軒並み軟調になっているという。もっとも、本稿執筆時点で香港ハンセン指数は0.4%程度の下落。前日のNYダウは-0.94%であり、日経平均の軟調ぶりは海外の主要株価指数と比べ際立っている。当欄では自民党新総裁が決定した翌9月30日、海外投資家による株価指数先物の売り転換を捉えて日本株の投資スタンスを「強気」から「当面様子見」に修正した。日本の「変化」に期待して買いを入れていた海外投資家だが、もはやこうした期待が後退しているのは明らかだろう。日経平均は菅義偉前首相が退陣表明して以降の上昇分を全て吐き出し、「世界の景気敏感系バリュー(割安)株」に逆戻りした感がある。 中国では不動産会社の資金繰り問題や電力不足、米国では連邦政府の債務上限問題やスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)懸念がくすぶるなか、「世界の景気敏感株」である日本株のアウトパフォームは期待しづらいだろう。米国では5日にサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数、6日にADP雇用統計、8日に雇用統計と9月分の経済指標の発表が相次ぎ、これらの内容を見極めたいとの思惑も買いの手を鈍らせそうだ。 4日発足した岸田新政権はさっそく、19日公示・31日投開票の衆院選に向けて経済対策の編成に動き出した。債務上限問題に揺れる米国との比較で、積極的な財政支出が期待されることは日本株の下支えになるかもしれない。しかし、経済対策で国内総生産(GDP)を一時的に数%押し上げるのと、(人口動態や産業構造等をあえて度外視するが)構造改革を経て欧米株並みにバリュエーションが向上するのとでは期待値が全く違うとも言える。やはり日本経済の浮上に向けた「変化」が見られると海外投資家に受け止められることが日本株の再上昇に不可欠だろう。(小林大純)
<AK>
2021/10/05 12:25
後場の投資戦略
もはや不透明感だけでは説明できない日本株安
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28497.57;-273.50TOPIX;1974.19;-12.12[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は前週末のNYダウの大幅反発もむなしく、朝高後に急失速の展開となっている。中国での不動産業資金繰り問題や深刻な電力不足、世界的なインフレ懸念、米債務上限問題など、外部環境の不透明感が根強い。今月下旬からは主力企業の7-9月期決算が控えており、今週末にはその前哨戦に当たる安川電機<6506>の決算も控えているだけに、積極的に買える状況にはないことが、売り優勢の状況を生み出しているようだ。 ただ、前週からの日本株の急落の背景は、どうも外部環境の不透明感だけでは説明できない気がする。日経平均が、菅元首相の退陣表明を受けてからの上昇幅のほとんどを吐き出してしまってきていることを踏まえれば、8月末以降の日本株独歩高を生んできた「日本政治への期待」がはく落してしまったことが一つの要因と考えられる。 不人気だった菅元首相が退陣することで、落ち込んでいた自民党支持率が回復し、衆院選での与党大敗という最悪のシナリオが後退すること、加えて、日本政治への“変化”の期待が、海外投資家の日本株の見方を変え、これまでの上昇相場を創出してきた。 しかし、前週の自民党総裁選で、改革色が強く海外投資家から人気の高かった河野氏の劣勢が伝わった段階から、先物主導での売りが膨らんでいた。また、今年前半(2月半ば~8月下旬)の日本株の長い調整局面において、TOPIX先物を長らく売り越していたBofA証券(バンク・オブ・アメリカ)は、9月半ばまでの上昇相場においては大量にTOPIX先物を買い戻していたが、前週の日経平均急落局面では、一転して週を通して大量に売り越していた。 もちろん、同証券の背後には当然複数の顧客がおり、一連の手口が全て同じ筋によるものとはいえない。また、同証券の手口が日本株のすべてを左右するともいえない。しかし、少なくとも、日経平均やTOPIXなど、日本の代表的な株価指数の今年の動きと、同証券の手口の連動性はかなり高い。そのため、河野氏の敗北とBofA証券の手口から察するに、これまでの日本株上昇を生み出してきた大きな要因である、「日本政治への変化の期待」が大きく削がれてしまったと言わざるを得ないのではないだろうか。 各種メディアが、岸田新政権の布陣構成をみて派閥に配慮した論功行賞の人事だと批判を強めているが、こうしたニュースのヘッドラインを見ている海外投資家からすれば、変化への期待がはく落してしまったとしても不思議ではないだろう。今日の日本株の朝高後の急失速も、米国の債務上限問題など海外要因よりは、こうした日本政治に対する海外勢の見方の変化によるものと捉えた方が適切な気がしてならない。 今後、もし組閣後の自民党支持率が、菅元首相の退陣前と大きく変わっていないことなどが判明すると、株高期待の背景となっていた衆院選も、今後は再び上値抑制リスクとならざるを得ない。ここからの日本株の戻りは当面鈍いと想定しておいた方がよさそうだ。 さて、本日の香港ハンセン指数は寄り付き直後から大幅に下げている。時間外の米株価指数先物も軒並み軟調なため、後場の日経平均も戻りは鈍く、軟調な動きが続きそうだ。
<AK>
2021/10/04 12:12
後場の投資戦略
日本株再浮上への「試練」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28861.83;-590.83TOPIX;1989.01;-41.15[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方下げ渋ったのち大きく値を崩し、取引時間中としては9月3日以来およそ1カ月ぶりに29000円を割り込んだ。東証1部銘柄の9割近くが下落する全面安の展開で、物色の矛先が向いているのは個別材料株の一角に限られる。米10年物国債利回りが1.5%割れまで下落し、朝方には新興株が買われる場面もあったが、結局マザーズ指数は伸び悩んでほぼ横ばい。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円ほどで、値幅が大きく出たとあって前日よりやや膨らんでいる。 さて、前日の当欄で日本株の投資スタンスを「強気」から「当面様子見」に修正した筆者だが、早々にこれほど値を崩すとまではさすがに想定していなかった。四半期末、それに日経平均の銘柄入れ替えという需給イベントを通過し、岸田文雄新総裁のもとでの自民党執行部の陣容も伝わっていたことから、むしろ本日は日経平均の29200~29300円あたりでの底堅さ発揮に期待する向きが多かったように見える。こうした期待はあっけなく裏切られてしまった。 米国ではひとまず暫定予算案が可決されたものの、なお債務上限問題が残っている。また、エネルギー価格高騰に伴いインフレへの警戒感がくすぶっており、サマーズ元財務長官などスタグフレーション(不況と物価高の同時進行)に陥ることを懸念する声も上がる。不動産会社の資金繰り不安や電力不足に揺れる中国も景気減速懸念が拭えず、景気敏感色の強い日本株にとっては逆風となるのはやむを得ない。 但し、日本株にとっての「試練」はそれだけでないだろう。前日の当欄では、投資判断引き下げの理由として9月28日以降観測されているBofA証券の東証株価指数(TOPIX)先物売りを挙げた。30日の先物手口を見ると、BofA証券のみならずUBS証券、ゴールドマン・サックス証券といった多くの外資系証券でTOPIX先物売りが観測された。 政局が流動的になってから自民党総裁選までの間、海外情勢に多少の不安があっても、出遅れていた日本株のアウトパフォーム期待から海外勢の先物買いは根強く入っていた。それを踏まえると、足元でも経済正常化・政策期待で根強く買いを入れている現物株投資家と異なり、グローバルマクロ系を中心とした海外ファンド勢はやはり日本株のエクスポージャー(投資残高)を高める機運が後退してしまったように感じられる。これらは前日述べた日本の政治に「安定」より「変化」を求めた海外投資家だろう。 もちろん、日本株が再浮上の糸口をつかめるかどうかは岸田新政権の手腕次第となる。再配分重視を強調する点に眉をひそめる市場関係者もあるが、米国でバイデン民主党政権が誕生したように世界的な趨勢であり、米株の推移を見ても再配分施策そのものが決定的に株安要因となることはないだろう。ちなみに、これは競争政策重視の傾向が見られた菅政権と大きくスタンスが異なる点であり、前日に子育て・介護などの関連銘柄が大きく値を上げたのもうなずける。積極的な買い姿勢を維持している現物株投資家にとっては有望な投資機会となり得るだろう。 しかし、日本株全体として再び高値を目指していくためには、やはり日本経済の浮上に向けた「変化」が見られると海外投資家に受け止められる必要があるだろう。そうした背景から「当面様子見」の投資スタンスとしたい。 なお、本日から中国が国慶節休みに入り、中国本土市場や香港市場が休場となっている。今晩の米国では9月のサプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が発表される予定。米株の動向を注視したいとの思惑から、後場の日経平均も戻りの鈍い展開となる可能性がある。(小林大純)
<AK>
2021/10/01 12:24
後場の投資戦略
海外勢が期待したのは「安定」か「変化」か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29439.37;-104.92TOPIX;2030.04;-8.25[後場の投資戦略] 本日の日経平均は4日続落し、3ケタの下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日同様に29300円台で下げ渋る動きを見せているものの、前引け時点で29400円台後半に位置する25日移動平均線をやや下回っている。個別では引き続き海運株や半導体関連株の調整がきつい。ネット証券売買代金ランキングを見ると、これらは個人投資家の物色人気が高かったため、資金余力に影響が出てくるかもしれない。比較的強い値動きだったトヨタ自が長めの陰線を付けて下落しているのも気になるところだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまり。 新興市場ではマザーズ指数が+0.14%と4日ぶり小幅反発。積極的に戻りを試す動きとはなりづらいようだが、前日も1100pt近辺で下げ渋り、600円超下落した日経平均と比べると底堅い印象を受けた。監視カメラシステムの有力スタートアップ企業として知られ、29日上場したセーフィー<4375>はここまで良好な値動き。やはりテック企業への期待は根強い。本日新規上場したアスタリスク<6522>は公開価格を74.5%上回る初値を付けた。 さて、岸田文雄氏が自民党新総裁に選出された。メディアでは国内外の市場関係者の声として「安定的な政権運営」に期待する声が多く出ている印象だ。ただ、筆者は菅義偉首相の退陣表明から「強気」としていた日本株への投資スタンスを「当面様子見」に修正したい。 注目したのは、28~29日と続けてBofA証券から東証株価指数(TOPIX)先物のまとまった売りが出ている点だ。ちょうど総裁選最終盤の情勢が伝わったタイミングだろう。もちろん米中を中心に海外情勢の不透明感が強まってきたことが影響している可能性もあるが、むしろ9月第3週(13~17日)まではBofA証券の積極的な買い越しが観測されていたため、海外実需筋の日本株に対する投資スタンスの変化を感じざるを得ない。 以前当欄で述べたとおり、外国人投資家は日経平均が2月高値を付けた2月15日週から8月23日週までの日経平均先物(短期筋が取引主体とみられる)の売り越し分を早々に買い戻していたが、TOPIX先物(実需筋が取引主体とみられる)についてはなお買い戻し余地が大きくあった。日経平均の株価純資産倍率(PBR)は足元1.2倍台半ばであり、2~4月には1.3倍を超える局面があったことから、水準訂正の一巡が意識されるタイミングでもないだろう。 菅首相の退陣表明からこれまでを振り返ると、後継レース序盤に河野太郎行政改革担当相が世論調査で先行すると、夜間取引中の先物にまとまった買いが入って相場上昇に弾みが付く場面があった。小泉政権誕生時の反応を見ても、海外投資家はとかく「改革派イメージの強いトップ」に期待する傾向がある。歯に衣着せぬ物言いで改革推進を訴え、世論支持率の高い河野氏に期待した海外投資家の買いは少なからず入っていただろう。短期的に失望売りが出ることは十分想定される。 もちろん、党内でのあつれきが多かったとみられる河野氏より、ベテラン議員を中心に支持を集めた岸田氏の方が安定的な政権運営が期待できるとの見方は妥当だし、足元の新型コロナ感染減による経済活動の正常化や衆院解散・総選挙に向けた経済対策にも期待できる。ただ、改めて強調するが日本株のトレンドはグローバルマクロ系を中心とした海外ファンド勢の先物売買に影響を受けやすい。これら海外投資家が「安定」と「変化」のどちらを期待したのか見極める必要があるだろう。差し当たり政権運営を支える当初支持率、それにリベラル色の強い宏池会(岸田派)出身の岸田氏がどのような政策を打ち出してくるか注目されそうだ。 なお、本日は引けにかけて日経平均の銘柄入れ替えに伴う売り需要(市場推計で5000億円程度)が発生するとみられている点にも注意しておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/09/30 12:22
後場の投資戦略
米株急落で連れ安も過度な悲観は不要
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29442.14;-741.82TOPIX;2031.74;-50.03[後場の投資戦略] 本日の日経平均は配当権利落ちに米株大幅安が加わり、急落している。午後からは自民党総裁選の投開票が控えていることもあり、様子見ムードが強く、積極的な押し目買いもみられない。 前日は、上院銀行委員会証言において、イエレン財務長官が、連邦債務が10月18日に上限に達する公算大だと指摘し、債務上限が引き上げられなければ金融危機やリセッションに直面する可能性を警告。加えて、米10年国債利回りが1.56%と6月中旬以来となる水準にまで上昇したこともあり、悪材料が重なった結果、ここ最近みられていた投資家心理の悪化に拍車がかかり、売りが膨らんだようだ。 そこに、配当権利落ちや明日に控える日経平均銘柄入れ替えに伴う売り需要という需給イベントへの警戒のほか、自民党総裁選の投開票という日本特有のイベントも重なり、本日の下落っぷりが演出されていると思われる。 ただ、過度な悲観は不要と考える。米連邦政府の債務上限引き上げ問題については、過去にも何度も表面化し、その度にマーケットに短期的な波乱をもたらしているが、政府機関のデフォルトなど国民を犠牲にするような最悪の事態を招くとは合理的には考えにくく、最終的には何らかの形で落ち着くことが想定される。長引くと更なる相場下押し圧力になりかねないが、中期的にはこの問題を要因にもたらされる下落は一過性のものにすぎないと思われる。 また、米長期金利の上昇については、上昇ペースが速いために警戒されるのは致し方ないが、水準としては3月に付けた1.78%にはまだ距離がある。 金利上昇の背景には、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利見通し引き上げなど、公表結果を受けた後の投資家の持ち高修正が続いているとの見方のほか、インフレ懸念の再燃が挙げられている。インフレ懸念については最近のイベントや要人発言によるところが大きい。米連邦準備制度理事会(FRB)は今までインフレは「一時的」としていたが、9月FOMCでは当局者のインフレ見通しが引き上げられたほか、28日の米上院議会証言では、パウエルFRB議長が「インフレは予想以上に大きく、長く続いている」と発言。さらに、様々な要因による需給ひっ迫からもたされた最近の欧州でのガス・電力価格の高騰や原油先物価格の高騰などが加わり、インフレ懸念が台頭しているという構図だ。 しかし、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率は、米長期金利が急ピッチで上昇している間ほぼ横ばいで、市場のインフレ懸念がここ数日で一段と強まったとは言えなさそうだ。また、米長期金利の上昇についても、中長期的には更なる上昇は避けられないだろうが、短期的にはそろそろ一巡感が出てくる可能性がある。 3月につけたピーク以降の金利低下の背景としては、日本国内の機関投資家による債券買いが寄与したところが大きかったようだが、今回も国内機関投資家による買いが金利上昇を抑制する可能性がある。東京証券取引所が発表する投資主体別売買動向によれば、年金基金などの機関投資家の動向を表すとされる信託銀行は、9月第2週(9月6~9月10日)に2100億円程、第3週(9月13~9月17日)に3700億円程それぞれ株式を現物で売り越している。政局流動化をきっかけに日経平均が急騰していたなか、リバランス売りを行っていたようだ。ここで、換金した余力分が、再び投資妙味を増してきた米国債に向かう可能性があり、そうなれば、金利上昇に一旦の歯止めがかかることが考えられる。 むろん、中国では不動産業の資金繰り問題や電力不足など問題が山積みだ。米国政治も短期的には更なる波乱もありうる。しかし、それでも、上述したように、米国の債務上限引き上げ問題や長期金利上昇を背景とした株価の急落が長く続くことは想定しにくい。 さて、午後の日経平均は自民党総裁選の投開票を控えて、引き続き本日の安値圏でのもみ合いとなりそうだ。決選投票になる可能性は高く、その場合は取引時間中に結果は確定しない。様子見ムードが強まるなか、仕掛け的な売りなども警戒されるが、慌てず対処していきたい。
<AK>
2021/09/29 12:21
後場の投資戦略
国内外・市場内外でイベントや懸案多い
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30139.65;-100.41TOPIX;2077.77;-9.97[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方に下げ幅を200円超に広げる場面もあったが、そこから底堅さを発揮して3万円台を維持している。米長期金利の上昇による値がさグロース(成長)株の下落はある程度想定されただろうが、高配当利回りの海運株が権利落ちを前に大きく売られたのには意外感があるかもしれない。ただ、以前当欄でも述べたが、信用買い残の増加やネット証券での売買動向などを見ると、短期志向の個人投資家の買いもかなり入っている印象を受けた。荒い値動きとなる場面が出てくるのもやむを得ないだろう。一方、指数寄与の大きいファーストリテやソフトバンクG、それに時価総額上位銘柄の堅調ぶりには日本株の先高観の根強さが感じられる。トヨタ自は連日で取引時間中の上場来高値更新だ。ここまでの東証1部売買代金は1兆7000億円強で、前日までと変わらぬペース。 新興市場ではマザーズ指数が-2.54%と大幅続落。やはり新興株でも米長期金利の上昇が重しとなっているが、直近安値を割り込む展開とはなっていない。本日は9月後半のIPO(新規株式公開)でもピークとなる4社が新規上場。ロボペイ<4374>はなお買い気配が続いているが、その他3社は公開価格を3割強上回る初値を付けた。いずれも小型のマザーズIPOだったものの、複数同時上場による投資資金の分散が初値を抑制したようだ。このところ「初値トレード」はまずまず活発だが、初値後軟調な銘柄も多かった。しかし、キャッシュレス決済システムのジィ・シィ企画<4073>は前引け時点でストップ高。明日は監視カメラシステムの有力スタートアップ企業として知られるセーフィー<4375>など2社が新規上場し、IPO銘柄の動向が一段と注目されそうだ。 ちなみにセーフィーは公募・売出し規模が252億円とマザーズIPOとしてはかなり大きかったが、同社指定の海外ファンドへの販売分を含め、公開株の68.4%が海外販売分となった。ブックビルディングでは海外投資家の需要が旺盛だったもよう。短期的に金利上昇などの上値抑え要因があるとはいえ、日本のテック企業に対する海外からの評価の高さは捨てたものではない。 さて、金融市場全体としては中国恒大集団に続く中国不動産会社の資金繰り問題の表面化、米国では長期金利の急ピッチの上昇に連邦政府の債務上限問題と、海外情勢に不透明感が残る。また、国内では明日29日に自民党総裁選の投開票が予定され、株式市場でも9月末の配当再投資需要の発生(市場推計で8000億円程度)、日経平均の銘柄入れ替えに伴う売り需要の発生(同5000億円程度)と需給イベントが相次ぐ。日本株は根強い先高観に支えられつつも、短期的に上下に振らされる場面が多く出てくるだろう。 このうち、米長期金利の動向を巡っては、今晩の米国でパウエル連邦準備理事会(FRB)議長やイエレン財務長官の議会証言、それに7年物国債の入札などが予定されているため、トレンドに変化が出てくるか注視したい。21~22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の内容がタカ派的と受け止められて金利水準の訂正が急速に進んでいるが、米国内外で懸念がくすぶるなか景気拡大期待が高まっているとも言えず、前日に一時上回った1.5%が目先の上限と予想する向きは多い。 中国不動産会社の債務問題を巡っては、中国人民銀行が「不動産市場の健全な発展を守る」と表明したことが安心感につながったようで、本日の香港ハンセン指数は大幅続伸している。後場の東京市場は香港株高を支えとしつつも、国内外の重要イベントを前に様子見ムードが強まる可能性がある。(小林大純)
<AK>
2021/09/28 12:28
後場の投資戦略
リスク要因くすぶるも株高に乗らざるを得ない投資家心理
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30358.62;+109.81TOPIX;2098.42;+7.67[後場の投資戦略] 週明けの日経平均はまずまずしっかりの展開となっている。中国恒大集団は23日期限到来のドル建て社債の利払いをまだ終えていないうえ、次のまとまった支払い期限は30日に来る予定ということで、今後も警戒感はくすぶる。 しかし、それでも、恒大集団の問題は世界の金融経済に影響を及ぼすようなシステミックなリスクには至らないという見方が依然として支配的。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)も無難に通過したことで目先の米中にまつわる不透明感は一時後退、再び国内へ視線が向きやすいなか、自民党総裁選の投開票が29日に迫り、大胆な経済対策など次期政権への期待が一層強まりやすい様子。加えて、10月からの国内での行動制限緩和が視野に入り、衆院選に向けた株高アノマリーに対する思惑なども踏まえると、ひとまずは相場上昇に賭けるしかないといったところが投資家の本音か。少なくとも、前週末にかけての日米株式相場の力強い反発を目の当たりにしてしまった以上、乗り遅れまいとする動きが強まってきていても不思議ではない。 一方、恒大集団に関する今後の展開のほか、債務上限の引き上げなど米国政治の行方など外部環境の不透明感は残る。また、足元では、経済活動再開に伴うエネルギー需要の高まりに加え、異常気象による工場生産の停止、サプライチェーン(供給網)の乱れなどが相まって、欧州でガスや卸電力価格が急騰しているほか、中国でも電力需給がひっ迫していることで新たな供給サイドのリスクが世界的に台頭してきている。場合によっては来月下旬から始まる7-9月期決算などへの影響も懸念される。相場は神経質ながらも目先は上目線でいるべきだろうが、リスク要因も日に日に増えてきている印象で、過度なレバレッジは取らずに常にリスクヘッジにも気を配った投資戦略が求められそうだ。 さて、本日は香港ハンセン指数などアジア市場も堅調に推移している。午後に緊急事態宣言解除に関するポジティブな報道などがあれば、日経平均は大引けにかけてもう一段騰勢を強める可能性があろう。
<AK>
2021/09/27 12:18
後場の投資戦略
ひとまず不安後退も払しょくまでには至らず
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30200.89;+561.49TOPIX;2084.78;+41.23[後場の投資戦略] 本日の日経平均は祝日の間の海外株高を受けて大幅なギャップアップスタートとなり、3万円台を回復した。日足チャートでは30100円手前に位置する5日移動平均線を上回り、同線が下値をサポートする一方、日中上値追いというムードでもなく堅調もみ合いの様相。上下の値幅は140円弱となっている。個別、業種別騰落状況とも全面高の展開で、規模別指数にもさほど偏りは見られないが、米長期金利の上昇で海運業を中心とした景気敏感系のバリュー(割安)株が特に強い印象。ここまでの東証1部売買代金は1兆8000億円弱とまずまず膨らんでおり、現物株に戻り待ちの売りが出ていることが窺える。 新興市場ではマザーズ指数が+2.63%と3日ぶり大幅反発。祝日前は株式相場全体の流れから軟調だったが、1120pt台に位置する25日移動平均線水準で粘り腰を見せ、出遅れていた個人投資家の押し目買い需要が強いことが再確認できた。また、22日から9月後半のIPO(新規株式公開)がスタートしており、本日マザーズ市場に上場したレナサイエンス<4889>は公開価格を46%上回る初値を付けた。シンプレクスHDが初日ストップ高を付けたことで、「初値トレード」が刺激されているのだろう。もっとも、初値後の値動きを見ると短期の値幅取りを狙った投資資金中心という印象は拭えず、初値に過熱感はないかなど慎重に見極めて取引参加する必要がありそうだ。 さて、注目のFOMCでは11月にもテーパリング開始を決定することが示唆され、参加者の政策金利見通し(ドットチャート)は2022年の利上げ予想が前回の7人から9人へ増加した。内容としてはタカ派的と受け止められたが、事前に早期緩和縮小への警戒感から米株式相場は大きく下落していたため、むしろヘッジ目的の売り解消を伴って急反発したようだ。また、株高・長期金利上昇(債券価格は下落)の一方で、期待インフレ率の指標である米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.3%近辺で落ち着いているところを見ると、インフレ過熱懸念に適切に対応していると前向きに評価する市場参加者が多いのかもしれない。 また、中国恒大問題では当局がドル建て社債を含めたデフォルト回避を指示し、当局もハードランディング(強行着陸)を望んでいないと受け止められているのだろう。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は「中国特有の問題」であり、「米国は直接の投融資が多くない」ため、影響は限られるとの見方を示した。ただ、本稿執筆時点ではなお23日分の利払いがなされていないと報じられており、懸念払しょくまでには至らなさそうだ。本日の香港市場では不動産株が軒並み下落しており、不動産バブル抑制のため当局による締め付けが続くことへの警戒感も根強いようだ。 ここ数日の先物手口を見ると、海外短期筋のものとみられる日経平均先物の売りが出ていた。地理的な近さから日本株も中国不安の影響を免れづらい。新政権への期待を背景とした根強い先高観に支えられつつも、改めて上値を試す展開となるには今しばらく時間がかかるかもしれない。(小林大純)
<AK>
2021/09/24 12:24
後場の投資戦略
独歩高の展開から一転、安易な押し目買いは避けたい
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29665.42;-174.29TOPIX;2049.99;-14.56[後場の投資戦略] 前日の660円安に続き、日経平均は本日も一時は3桁の値幅を伴った下落となっている。急速にクローズアップされてきた米中の不透明要因の存在が大きいのだろう。 中国恒大集団を巡る問題については、一部で中国版リーマンショックになるのではとの警戒する声がある一方、中国政府が何らかの形で手を差し伸べるとの見立てから、波乱には至らないとの見方が現状は支配的だ。しかし、中国恒大集団は、主力債権銀行少なくとも2行に対して20日期限の利払いを行わなかった。また、次に注目される支払い期限は23日とされており、前日に当たる今日この段階に至っても、まだ中国政府からはアクションがない。最終的には政府がどうにかしてくれるという楽観論に傾きすぎている市場の支配的なムードも含め、中国政府のだんまりにはやや不気味さを感じる。 最近、習近平政権は中国経済をけん引してきたテクノロジー企業などへの締め付けを強めているが、こうした背景には“共同富裕”という習政権が強く掲げている大きな目標がある。そして、この共同富裕を達成するにあたっては、格差拡大の大きな要因とされている不動産価格の上昇、これを是正することが喫緊の課題となっており、こうした動きが、今回の中国恒大集団の資金繰り悪化につながったとも指摘されている。 だとすれば、格差拡大の元凶の象徴のような存在にも見做されかねない中国恒大集団を果たして中国政府は救済してくれるのだろうか。もちろん、世界経済が混乱してショックが大きくならないよう、万が一の際には何かしらの形では出てくるかもしれないが、市場が思っている程までにそこまで優しく手を差し伸べてはくれないかもしれない。現状は、マーケットに大きなショックがもたらされる可能性は低いとみているが、中国政府が具体的に言動に出るなど、問題収束の兆しや全貌が見えてくるまでは、警戒感を強めておくに越したことはないだろう。 また、中国のことばかりがクローズアップされているが、米国にも注目すべき材料が目先豊富だ。まずは明日に結果公表を控えるFOMC。最新の米8月雇用統計の数値が予想外に悪かったこともあり、今回のFOMCでの量的緩和縮小(テーパリング)決定の可能性は一段と遠のいた。このため、波乱はないとの見方が主流だが、今回は政策金利見通し(ドットチャート)が公表されるため注目度は決して低くない。前回6月は参加者18人のうち7人が2022年中に利上げがあると見込み、3月時点の4人からかなり増えた。今回、22年の利上げを想定するメンバーが7人からどれだけ増えるかが注目されている。 サプライチェーン(供給網)の乱れなどを背景に世界的なインフレ懸念が根強くくすぶる一方、新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の拡大を受けて足元では世界的な景気不透明感が強まっている。こうしたなか、22年内の利上げを支持するメンバーが想定以上に増えるとなると、景気減速懸念が一層強まり、インフレと景気減速が併存するスタグフレーションへの警戒感が高まりかねない。市場が神経質になっている最中、波乱要因となりかねないため、一時的な相場下押しに用心しておきたい。 テーパリング決定に加えて、22年内の利上げ支持者が増える可能性も低いとみている向きが多いようだが、その根拠とされている米消費者物価指数(CPI)の伸び鈍化の一方で、一部の乱高下した品目を除いて計算したクリーブランド連銀公表の「刈り込み平均」指数についてはまだ明確な鈍化の兆しが見られていない。“一時的”ではなく“恒常的”なインフレにつながりかねない住宅価格や帰属家賃の上昇も鈍化していない。米バイデン政権はガソリン価格や食品価格の高騰を受けて、価格を不正につり上げていないか各業界への監視を強める動きなどもみせている。こうした政権への配慮などから、22年内の利上げ支持者が予想以上に増える可能性などもテールリスクとして注意しておきたい。 さらに、米国の債務上限引き上げを巡る問題。財務省はデフォルト(債務不履行)を回避するための特例措置が10月中に尽きる可能性を警告しており、債務上限の凍結は急務となっている。しかし、与野党の交渉はこう着状態にあり、解決の目途はたっていない。デフォルトなど誰にとっても最悪の事態でしかないため、過去の経験からみても最終的には解決するとは思われるが、こう着状態が無駄に長引くと、相場の売り口実とされかねないため、注意が必要だ。 8月30日以降、日経平均は目を見張る上昇っぷりを見せてきた。業績による裏付け、米国対比でのバリュエーション割安感など株高を根拠づける要因は多く、次期政権への期待に基づく先高観も依然根強い。中長期では良い買いだと私自身個人的にも思っている。ただ、上述した背景から、短期的には一段の下押しも想定されるため、米中の各種不透明要素に解消の兆しがみられるまでは、安易な押し目買いは控えた方がよいだろう。
<AK>
2021/09/22 12:18
後場の投資戦略
中国恒大巡る欧米の楽観修正はやむを得ない
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29898.57;-601.48TOPIX;2064.83;-35.34[後場の投資戦略] 本日の日経平均は連休中の海外株安を受けて大幅なギャップダウンスタートを余儀なくされた。20日も中国恒大の株価急落が続き、香港株安が欧米市場にも伝播する格好となった。日本を含むアジア株は中国恒大問題が各種メディアでクローズアップされるようになった先週後半から不安定な値動きを示しつつあったが、欧米では地理的な遠さもあってか先週まで「当局がソフトランディングに導くべく救済に乗り出すのでは」「金融市場への影響は限られるだろう」という楽観的な見方が多く、市場反応もアジアほど見られなかった。しかし、負債3000億ドル(約33兆円)以上と言われる中国恒大の経営危機は中国内外の経済や金融市場に相応の影響があるとみられ、欧米投資家は楽観的過ぎた感がある。 本日の香港ハンセン指数は朝方の売りが一巡すると下げ渋っている。ひとまずリスクオフ的な動きに歯止めはかかるだろうが、中国恒大問題の行方を見極めるまで積極的に買いづらいとのムードは残るだろう。ここにきて事業面で中国の影響が大きい日本株への慎重論もやや増えてきた。実際、TOTOなどは先週後半からの下げがかなりきつい。日経平均が下値模索にまでは至らずも、戻りの鈍い展開となっていることはこうしたムードを如実に表しているだろう。 さらに、今週は23日も秋分の日の祝日となり、21~22日には日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)という重要イベントがある。自民党総裁選を前にした日本株の先高期待は根強く、中国恒大問題が浮上した先週後半も海外実需筋の東証株価指数(TOPIX)先物の買い戻しや出遅れていた個人投資家の押し目買いが入っていた。総裁選後も当面は新首相による政策期待が高まると考えれば、日本株の相対的な好パフォーマンスが続くと予想するが、短期的に不安定な相場展開となることにも十分備えておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/09/21 12:24
後場の投資戦略
やはり海外勢の買い余地はなお大きい
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30485.11;+161.77TOPIX;2096.61;+6.45[後場の投資戦略] 本日の日経平均は反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。前日の米国株が底堅く、香港ハンセン指数なども小幅反発していることから、中国恒大問題への不安が幾分和らいだのだろう。市場では中国当局がソフトランディングに導くべく救済に乗り出すのでは、などと期待する声が聞かれた。もっとも、前日の下落分を完全に埋めきれないあたり、やはり警戒感はくすぶっているものと考えられる。産業界の引き締めを強める中国当局が民間企業の救済に乗り出すのでは示しがつかないし、負債3000億ドル(約33兆円)以上ともなれば中国内外の経済や金融市場に相応の影響があるだろう。特に日本は週明け20日が敬老の日で祝日となるため、この間の海外リスクを考えると買いの手が出にくい投資家も多そうだ。 売買代金上位は海運株や値がさグロース(成長)株の一角を中心に堅調な印象を受けるが、東証1部全体としては値下がり銘柄の方がやや多い。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円弱。新興市場ではマザーズ指数も+0.85%と3日ぶりに反発しているが、前日に-3.65%と大きく下落したことを踏まえれば、戻りは限定的と言わざるを得ない。 さて、日本取引所グループが16日発表した9月第2週(6日~10日)の投資主体別売買動向では、外国人投資家が現物株を2745億円、東証株価指数(TOPIX)先物を3642億円、日経平均先物を4520億円それぞれ買い越していた。3日の菅義偉首相の退陣表明をきっかけに、海外勢が次期政権への期待から日本株の積極投資に転じてきたことが改めて確認された。9月第1週(8月30日~9月3日)との合計では現物株が6400億円程度、TOPIX先物が4700億円程度、日経平均先物が6000億円弱の買い越しだ。 ただ、前日当欄で指摘したとおり、日経平均が2月高値を付けた2月15日週から8月23日週までに外国人投資家はTOPIX先物を1兆円強、日経平均先物を7000億円強売り越していた。短期筋中心とみられる日経平均先物の買い戻しは早々に進んだが、実需筋中心とみられるTOPIX先物はなお買い戻しの余地が大きいことがわかる。実際、ここ2日の相場下落局面でもBofA証券など外資系証券の一角が買い越しを継続していた。 また、前日からのマザーズ銘柄の値動きやネット証券での売買動向などを見ると、海外勢のみならず、急ピッチの相場上昇に乗り遅れた個人投資家らの押し目買い需要も根強いことが窺えた。中国恒大問題がくすぶることに加え、来週は日銀金融政策決定会合(21~22日)、米連邦公開市場委員会(FOMC、21~22日)といった重要イベントがある一方、20日と23日(秋分の日)が祝日で取引日が少ないことを念頭に置く必要があるものの、日本株の先高期待はなお強く、相場を下支えするだろう。(小林大純)
<AK>
2021/09/17 12:22
後場の投資戦略
中国恒大問題は気掛かりだが…
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30332.64;-179.07TOPIX;2085.95;-10.44[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株高の流れを引き継いで反発スタートしたが、その後上値が重く、前場中ごろからは値を崩す格好となった。中国恒大の債務問題を巡っては、20日期限の利払いを行わない見込みと当局が銀行に伝えたと報じられている。中国では中秋節と国慶節の休暇(それぞれ9月19~21日、10月1~7日)が控えていることも、破綻処理への思惑を強めているもよう。負債は3000億ドル(約33兆円)以上に上るとされており、中国経済への影響が懸念されるばかりでなく、中国恒大株・債券を保有する海外投資家も多い。 マザーズ指数については1180pt近辺に位置する200日移動平均線水準まで急上昇してきたため、目先の利益確定の売りが出やすかったとの指摘もあるが、なかなかそれだけでは説明しづらい下げ方だろう。日本でも来週は20日(月)が敬老の日、23日(木)が春分の日で祝日となるため、この間の海外リスクを嫌った個人投資家に利益確定の売りが広がったと考えられる。ここまで大きく上昇してきた中小型株ほど本日の下げ幅は大きい。 中国恒大は債務整理や政府・銀行による救済、さもなくば倒産が不可避とみられており、中国内外の経済や金融市場にどのような影響を与えるか注視する必要があるだろう。もっとも、前場のネット証券売買代金ランキングを見ると、レーザーテックや郵船などが買い超となっている。やはり出遅れていた個人投資家の押し目買い需要は強いようだ。また、海外でも8月末以来の強い値動きに日本株への関心が広がっているという。前日は日経平均が反落したが、先物手口を見ると海外短期筋の利益確定とみられる売りが観測される一方、UBS証券、BofA証券、JPモルガン証券などが日経平均先物や東証株価指数(TOPIX)先物を買い越していた。 日経平均が2月高値を付けた2月15日週から8月23日週までの投資主体別売買動向を見ると、外国人投資家は現物株を2000億円弱、TOPIX先物を1兆円強、日経平均先物を7000億円強それぞれ売り越していた。グローバルマクロ系を中心とした海外ファンドが売り目線だったことが日本株伸び悩みの背景だったという当欄の見立てと整合的で、さらに言えばここからの買いの余地が大きいことがわかる。 また、10日申し込み時点の信用買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆2596億円と3週連続で減少し、約3カ月ぶりの低水準になったという。やはり2月高値以降の調整局面で積み上がっていた買い持ちの解消も順調に進んでいる。 今晩の米国では8月小売売上高の発表が予定されており、中国恒大問題も含め海外情勢に大きく左右される場面は出てきそうだ。ただ、明日17日には自民党総裁選が告示され、新政権への期待を支えに日本株への強気ムードは続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/09/16 12:30
後場の投資戦略
週末にかけ短期警戒も過度な不安視は不要か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30510.05;-160.05TOPIX;2097.56;-21.31[後場の投資戦略] 本日の日経平均は久々に値幅の伴った下落となっている。ただ、前日までの上げ幅を踏まえれば、スピード調整はあっても当然のことで、想定内だろう。全体が売り優勢の中でも東エレクやアドバンテス<6857>などの半導体関連株やエムスリーなどのグロース株の一角では上昇しているものもある。商船三井などの大手海運も未だに右肩上がりのチャートが崩れていない。 ただ、やや気掛かりなのが、前週あたりから軟調に推移している米株式市場で、きな臭さがその濃厚さを増している。前週末に8月生産者物価指数(PPI)が発表された際には、インフレ懸念が改めて高まり、米国株はやや下落した。このため、今週の8月米消費者物価指数(CPI)の結果次第では、インフレ懸念がさらに強まり、長期金利の上昇などをきっかけに米国株の調整色がさらに強まる可能性なども想定された。 しかし、実際には前日に発表されたCPIの結果は杞憂に終わった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数の前年同月比での伸びは市場予想及び前回7月分を下回り、前月比でも7月からは伸びが鈍化した。 これを受けて、インフレ懸念が収まることで相場はポジティブに反応するとも思われたが、実際は、米10年国債利回りが大幅に低下したこともあり、景気敏感株を中心に大きく下げた。また、金融緩和長期化が意識されやすい流れであったとも思うが、ハイテク株も軟調で、ナスダック総合指数は5日続落した。NYダウもナスダックも日足チャートでの頭打ち感が見られ、調整色が強まっている印象を受ける。 ただし、こうした軟調な米株市場について過度に不安視することは不要かもしれない。東京市場では前週末に先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)を終えているが、米株市場では今週末にSQを控えている。SQにかけては、オプション取引が活発化することに加え、ディーラーのヘッジ目的の先物売りなどが嵩みやすいため、相場が崩れやすいことがこれまでにも確認されている。足元の米国株の軟調さの背景にはこうした需給特有の要因もあると考えられ、そうであれば、一過性の話に過ぎない。 しかし、いずれにせよ、ここまで急ピッチで上昇してきた日本株についても、短期的には今週末にかけては警戒しておいた方がよいだろう。上述したように、スピード調整が入りやすいタイミングで米国版SQが今週末に控えているほか、来週の国内市場は祝日の関係で立会が3営業日に限られる。連休前を口実にした利益確定売りなども出やすいため、短期的には下に振れそうだ。ただし、SQを通過すれば米国株も再び持ち直すことが想定されるほか、政局流動化をきっかけにした日本株の見直し機運は始まったばかりでもあるため、押したところは良い買い場になりそうだ。
<AK>
2021/09/15 12:12
後場の投資戦略
新興株などにも見える「海外投資家の旺盛な買い意欲」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30562.42;+115.05TOPIX;2106.24;+8.53[後場の投資戦略] 本日の日経平均は米株高の流れを引き継いで続伸スタートすると、取引時間中の年初来高値を更新した。その後上げ幅を急速に縮めたが、さすがに目先の達成感や過熱感が意識され、海外短期筋などから株価指数先物の売りが出たのかもしれない。先物の日々の売買高は徐々に落ち着いた水準となってきており、まとまった売買が出れば相場全体が大きく振らされやすい状況だろう。アジア市場で香港ハンセン指数や上海総合指数が朝方軟調だったほか、今晩の米国では8月の消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、短期的な持ち高調整の動きがある可能性も考えられる。米CPIではインフレ圧力の強さが再確認されるか気になるところではある。 売買代金上位や業種別の騰落状況を見ると、市況関連を中心とした景気敏感株が堅調だが、決算や自社株買い、証券各社の投資判断を手掛かりにした個別物色が中心という印象も受ける。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりで、日経平均の高値更新に伴い現物株でも売り買いが交錯したと考えられる。新興市場ではマザーズ指数が-0.05%と3日ぶりに小幅反落。朝方の買いが一巡すると、利益確定の売りに上値を抑えられる格好となっている。ただ、今期3割超の増収見通しを示したビジョナル<4194>は大幅高だ。 さて、注目の自民党総裁選を巡っては、河野太郎規制改革相が石破茂元幹事長に協力を求め、石破は出馬見送りの意向を固めたなどと報じられている。日本経済新聞社とテレビ東京が9~11日に実施した世論調査では、自民党総裁に「ふさわしい人」で河野氏が27%、石破氏が17%、岸田文雄前政調会長が14%、高市早苗前総務相が7%という回答結果だった。自民党支持層では河野氏31%、石破氏13%、岸田氏17%、高市氏12%となっている。石破氏の支持を得られれば党員票では河野氏が抜け出る格好となりそうだが、岸田氏はベテラン議員ら、高市氏は保守系議員らを中心に支持を集めているもよう。今週17日の告示、また29日の投開票に向けて引き続き情勢を見極めたい。 もっとも、白熱する総裁選の行方をよそに日本株への関心は高まる一方のようだ。一部海外メディアは海外勢による日本株買いがアベノミクスへの期待が高まった2013年以来の高水準に達しそうだなどと報じているが、実際に証券各社では海外投資家から日本企業へのミーティング依頼がかなり増えているようだ。 筆者が主に調査を手掛ける新興株でも、HENNGE<4475>やBASE<4477>などに見られたように、このところ時価総額300~1000億円クラスのSaaS(クラウドサービス)・プラットフォーマー企業を中心に証券各社の調査開始や海外機関投資家の買いが多く観測されているように感じられる。また、IPO(新規株式公開)では22日東証1部上場のシンプレクス・HDが公開株の65%を海外売出しに充て、29日マザーズ上場のセーフィーも公開株の海外ファンドへの販売を予定している。新興IT株にも海外投資家の関心のすそ野が広がっていることがわかる。 今後も短期的に振らされる場面は出てくるかもしれないが、こうした海外投資家の旺盛な買い意欲を背景に、日本株はまだまだ強い値動きが続くとみておきたい。(小林大純)
<AK>
2021/09/14 12:28
後場の投資戦略
想定以上の底堅さみせる、短期警戒も上昇ポテンシャル大きい
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30292.84;-89.00TOPIX;2087.67;-3.98[後場の投資戦略] 週明けの日経平均は想定以上に底堅い展開。米国株や米国経済の見通しを引き下げる専門家が増え、前週末までの間にNYダウが5日続落するなど、足元の米株式市場は調整色を強めてきている。こうした中、急伸の反動から週明けの東京市場でも売りが優勢となる可能性が想定されたが、良い意味で予想を裏切ってくれている。自民党総裁選の告示が17日に迫るなか、各候補者のメディア露出も増えてきており、政局流動化という国内特有の政治要因が投資家心理を下支えている。 しかし、次期政権への期待感という漠然としたものだけが日本の株高を生んでいるわけではないだろう。もともと、多くの企業が業績好調な中、日本株だけが国内の様々な不透明要因を理由に投資対象から外されてきた。それが、新型コロナウイルスの感染ピークアウトとほぼ同時期の菅首相の自民党総裁選不出馬をきっかけに一気に解消された。不透明要素が拭われた結果、これまで見過ごされてきた好要因を素直に評価できる地合いになってきたということで、単なる期待感だけで上昇してきたわけではなく、ようやく正当な評価をされる環境になったということだろう。そうした意味で、足元の株高は、確かにペースは速かったが、ファンダメンタルズの裏付けのあるものといえ、危うさには乏しい。 また、9月第1週(8月30日~9月3日)の投資主体別売買動向を見ると、海外投資家は現物株を3636億円、日経平均先物で1434億円、東証株価指数(TOPIX)先物で1082億円と目立った買い越しの動きを見せていたが、値幅の割には小額な印象で、まだまだ買い余力はあるだろう。海外投資家は今年前半に先物を2兆円以上も売り越しており、先物の買い戻し余地だけでも大きく、現物株の新規買いなども合わせればポテンシャルは大きい。 先週末の日経平均およびTOPIXのPERはそれぞれ14.0倍、16.5倍と、米S&P500種株価指数の22.8倍と比べるとまだ割安感が強い。マスク着用を嫌う層の一定数の存在などもあり、ワクチン接種が先行していた米国では、デルタ株流行によって新型コロナ新規感染者数が再び増加してきている。対して、協調性を重要視する国民性もあり、日本でのワクチン接種率は今後、8割以上と欧米を大きく上回る水準にまで上昇する見込み。米国株のバリュエーションの割高感を指摘する声などが増えてきている状況も踏まえると、今後は、米国株から日本株への資金シフトも想定される。日本株の持たざるリスクが大きくなる中、日本株の先高観はより確かなものとなっていきそうだ。 ただし、不安要素が全くないわけではない。先日に続くトヨタの減産報道はかなりネガティブな印象が強い。前回は後半の挽回生産により通期生産計画は維持したままだったが、今回は通期計画も900万台と3%下方修正している。サプライチェーンの中枢を担う東南アジアでのコロナ感染拡大やワクチン接種の遅れは今後も警戒が必要だ。 また、米国株の調整がマイルドであれば、日本株の先高観は変わらないだろうが、仮に米国株の下げが大幅なものになると、さすがに、投資家のポジション調整の影響を免れないだろう。米国株の下げが健全なものにとどまるかどうかという点も一つ焦点となってきそうだ。9月は米国株が下げやすい季節性要因もあるだけに、注意したい。 さて、香港ハンセン指数が大きく下落しているなか新規材料難ということもあり、後場の日経平均は引き続きもみ合いにとどまりそうだ。国内では、ワクチン接種を2回済ませた人の割合が遂に5割を超えたとのことで、財務健全でファイナンスリスクの小さい外食やサービスといった出遅れ経済活動再開銘柄を仕込んでおきたいところだ。
<AK>
2021/09/13 12:12
後場の投資戦略
市場データに見る「先高観」と「需給良化」
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30347.41;+339.22TOPIX;2087.08;+22.15[後場の投資戦略] 本日の日経平均はSQ通過で伸び悩みを予想する声が多かったのに反し、前場中ごろを過ぎて急伸する展開となった。SQ推計値を大きく上回り、取引時間中としては3月18日以来の高値を付けている。東証1部の値上がり銘柄は全体の7割強あるが、特に値がさの半導体関連株の上昇が日経平均の押し上げに寄与。東エレクの12連騰は圧巻と言わざるを得ない。再生可能エネルギー発電のレノバなど、政策期待での物色も引き続き活発だ。ここまでの東証1部売買代金はSQ算出に絡んだ売買もあって2兆2000億円あまりに膨らんでいる。 新興市場でもマザーズ指数が+1.47%と反発。投資判断の新規付与が観測されたBASE<4477>、海外勢の買い観測で前日取り上げたHENNGE<4475>などが賑わっている。足元で9月IPO(新規株式公開)のブックビルディング(需要申告)が進行しているが、その需要状況からは日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する海外からの期待の根強さが窺える。 さて、本日は河野太郎規制改革相が午後4時から記者会見で自民党総裁選への出馬を表明する予定となっている。各種報道によれば、前日には所属する麻生派会長の麻生太郎副総理・財務相から出馬への了承を取り付けたもようだ。既に出馬表明した岸田文雄前政調会長や高市早苗前総務相とともに、党内での支持集めや政策論争といった動きが本格化してきそうだ。 市場関係者からはここまでの急ピッチの株価上昇に警戒する声も多いが、次期政権への期待を背景とした先高感の高さや買い方優位での需給良化は市場データからも窺える。日経平均オプション10月物の建玉を見ると、行使価格3万円超のコール(買う権利)が大きく積み上がっているのに対し、プット(売る権利)の積み上がりは鈍い。特に行使価格3万円に次いで30500円のコールの建玉が膨らんでおり、このあたりまでの上昇を視野に入れている市場参加者は多いのだろう。 また、買い持ちに傾いていた投資家の利益確定も順調に進んでいるとみられる。菅義偉首相が退陣表明した3日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆2766億円と2週連続の減少。ネット証券売買代金ランキングでは、日経平均の上昇に連動する形で日経レバETF<1570>が売り超となり、今月初めまで4000億円規模で推移していた純資産総額は9日時点で3016億円まで減少した。 9月第1週(8月30日~9月3日)の投資主体別売買動向を見ると、やはり外国人投資家が現物株で3636億円、日経平均先物で1434億円、東証株価指数(TOPIX)先物で1082億円と目立った買い越しの動きを見せてきた。しかし、マクロ系ファンドを中心とした海外勢の株価指数先物のポジションはなお買い持ちの余地が大きいとの指摘もある。こうした市場データを見ても、まだまだ日本株への強気のスタンスを維持できると考えてよいだろう。(小林大純)
<AK>
2021/09/10 12:23
後場の投資戦略
スピード調整も次期政権睨みの先高観変わらず
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30041.33;-139.88TOPIX;2069.58;-10.03[後場の投資戦略] 本日の日経平均は9日ぶりに反落し、3ケタの下落で前場を折り返した。ただ、寄り付きがこの日の安値で、日足チャートでは連日の陽線。また、前引けでは3万円台を維持しており、前日までの上昇幅の大きさを踏まえれば調整らしい調整とはなっていない。個別ではソフトバンクGやレーザーテックに利益確定売りが出ているものの、東京電力HDやレノバの賑わいからは、引き続き自民党総裁選の有力候補と目される河野氏の動向が物色を刺激していることがわかる。東京など19都道府県の緊急事態宣言が30日まで延長される見通しとなり、JAL<9201>で劣後ローンでの資金調達観測が報じられる一方、酒類提供などの制限緩和への期待も根強く、経済活動再開に絡んだ銘柄は強弱まちまち。ここまでの東証1部売買代金は1兆4000億円あまりで、前日までと比べやや落ち着いてきた感はある。 新興市場ではマザーズ指数が-0.35%と4日ぶり反落。やはりここまで上昇ピッチが急だった銘柄を中心に利益確定売りが出ているが、売買代金トップのHENNGE<4475>などは堅調で、マザーズ指数はプラス圏に浮上する場面もあった。HENNGEはこのところ海外運用会社から大量保有報告書が相次ぎ出ており、新興IT株への海外勢の買いも期待されるところだろう。 さて、買い持ちに傾いていた現物株投資家の利益確定売りや年金基金等からの株価急伸に伴うリバランス(資産配分の再調整)目的の売り、それに株価指数先物の売り持ちを膨らませていたマクロ系ファンド等の海外勢の買い戻し一服もあって、日経平均の3万円近辺でのスピード調整はやむを得ないだろう。また、ECB理事会を前に欧州株の下げが目立ったように、主要中央銀行による資産購入の縮小やマネーサプライ(通貨供給量)の伸び鈍化が意識され、米国では景気減速やインフレが懸念されるなど、グローバルなリスク要因もある。 ただ、一昨日の当欄で述べたとおり、自民党総裁選の有力候補と目される「河野氏による規制改革」というストーリーのもと、海外勢の日本株買いが相場を押し上げるとの見方は変わらない。実際、ゴールドマン・サックス証券はどの候補が勝利しても日本株の一段高を見込むものの、「河野太郎氏が最もマーケットから好感される可能性が高い」と指摘。SMBC日興証券も「自民党支持層を中心に支持率が高い河野太郎・規制改革相にやや分があると言え」、「改革イメージの強さが海外からの資金流入の呼び水になるだろう」などと指摘している。 もちろん、河野氏は正式な出馬表明前(10日にも出馬表明との観測)であり、既に出馬表明した岸田文雄前政調会長や高市早苗前総務相を含む各候補が支持集めに奔走するなか、断定的な判断は避けるべきだろう。しかし、株式市場は早々に「有力候補による次期政権」を織り込んでいく。(小林大純)
<AK>
2021/09/09 12:24
後場の投資戦略
買い戻し主体から全員参加型の買い相場へ
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;30161.85;+245.71TOPIX;2076.99;+13.61[後場の投資戦略] 前日に一時3万円に乗せたものの、その後に上値の重さも見られた日経平均は、本日はしっかりと3万円に乗せてきている。これまでの短期間での上げ幅や前日の一服感で、今週末の先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)を前にした海外勢による買い戻しは一巡し、スピード調整が入りそうとの声も多く聞かれたが、買いの意欲はまだまだ旺盛のようだ。 8月30日以降の上昇相場の前半は、先物主導での上昇だったことから、年前半に2兆円以上も先物で売り越しを積み上げてきた海外勢による買い戻しが主体だったと思われる。しかし、ここにきて、現物株市場での日経平均が先物の価格を一時上回る動きを見せてきていることから、実需筋の買いも入ってきているようだ。こうなってくると、売りは一層仕掛けづらく、買い手優位の相場が色濃くなってきた。 さらに、ここに、個人投資家の踏み上げが加わっているようだ。8月27日からの動向をみると、日経レバETF<1570>の信用買い残が大きく減少するなか売り残が急速に積み上がっている。また、日経ダブルインバETF<1357>では売り残が大きく減少するなか、買い残が2倍以上に膨れ上がっている。日経平均が急伸するなかで逆バリ目線の個人が日経平均の下げに賭けたポジションを取ってきたことで、足元の上昇により踏み上げられてしまっているようだ。 上昇初期はグローバルマクロ系のヘッジファンドの買いが商品投資顧問(CTA)の買いを呼ぶ海外勢主体の展開だったが、ここにきて実需筋の買いが入ってきはじめた。そして、そこに更に個人の踏み上げも加わり、株価上昇に拍車がかかってきている。売り方に回っていた個人が今後買いに回ってくるとなれば、全員参加型の買い相場となり、日経平均の一段の上昇も想定される。 物色動向では、米長期金利がじわり上昇するなか対ドルでの円安が進展し、自動車や電気機器などの輸出関連の大型株が特に強い様子。一方、国内での新型コロナウイルス新規感染者数の減少傾向や、一部で伝わっている政府によるワクチン接種進展に合わせた、10月以降の段階的な行動制限緩和を睨んだ動きから、再び旅行関連をはじめとしたアフターコロナ関連銘柄も強い動きとなっている。これまで、欧米対比での割安感が長らく放置されてきたが、日本株の追い上げ相場に今後も期待したい。 短期的な過熱感もくすぶるところだが、買い遅れた投資家も多く、押しても小幅なものになりそうだ。後場の日経平均は3万円台を固める動きに期待したい。
<AK>
2021/09/08 12:20