後場の投資戦略ニュース一覧
後場の投資戦略
パウエル氏講演のタカ派内容受けて投資家心理悪化
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27851.68;-789.70TOPIX;1940.26;-39.33[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、大きく下落してスタートした後じりじりと下げ幅を拡げる展開となった。パウエル議長の発言が想定以上にタカ派的となったことや米株大幅安の流れを受けて国内でも投資家心理が悪化、寄り付きで25日移動平均線を割り込んだ。アジア市況や米株先物が軟調に推移するなか、日経平均株価も軟調な展開が続いた。 新興市場も売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、大きく下落してスタートしたあとマイナス圏で軟調もみ合い展開となった。ハト派寄りの見解が想定されていたジャクソンホール会議でのパウエル氏の講演がタカ派な内容となったことで個人投資家心理が悪化。前引け時点で東証マザーズ指数が2.50%安、東証グロース市場Core指数が4.28%安で時価総額上位銘柄中心に軟調な展開となっていることが窺えた。 さて、ジャクソンホール会議でのパウエル議長は「7月のインフレ指標が低下したことは歓迎すべきこと」だとしつつも、FRBが目指しているものには「程遠い」と話し、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での3会合連続となる0.75ポイント利上げの可能性を示唆した。インフレ抑制のために高金利を維持する方針を示し、早急な金融緩和への転換にはリスクが伴うと指摘。インフレ抑制策が短期的には景気に悪影響を及ぼしても、長期的な経済成長には必要なことだと痛みを受け入れる姿勢も見せている。 ジャクソンホール会議開催前のFRB高官発言にも注目したい。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は25日に高インフレは多くが予想している以上に持続するとの見方を示し、政策金利を年末までに3.75%-4.00%に引き上げたいとの認識を改めて示している。米カンザスシティー連銀のジョージ総裁もFRBは政策金利を景気抑制的な水準まで引き上げておらず、当面は4%を上回る地点にもっていく必要があるかもしれないと語っていた。今週末は米8月雇用統計の発表が控えているが、これらの結果次第では9月FOMCでの利上げ幅拡大への警戒感がより一層高まりそうで、最大の注目が集まるだろう。 また、ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツのグレッグ・ジェンセン共同最高投資責任者(CIO)はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「資産市場の価値は全体として20-25%下落するだろう」と予想している。同氏の予想によれば、量的引き締めと利上げはインフレと経済成長の両方を押し下げるが、インフレのほうがしぶとく、結果的に長期債を中心にあらゆる金利が上昇するとみている。金融経済と実体経済の間には大幅な乖離があると指摘。25%程度の下落は、ナスダック100指数で9600pt付近となっており2020年のコロナショック前の水準、現段階では筆者も今後同水準まで下落する可能性があることを念頭に置いて相場を見守っている。 さて、今週は米国や中国で景気指標や経済指標など、多くの重要な指標が発表される。これらの動向が明らかになるまでは積極的に売買する動きは限られるだろう。金融引き締め長期化で主力グロース株やバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株に向かい風となるなか、インフレ抑制策による景気後退懸念も強まっており景気敏感株も手掛けにくい。後場の日経平均は、下げ幅をさらに広げる展開が続くか。前場に続いてアジア市況や米株先物の動向に注目しつつ日経平均株価の動きを見守っていきたい。
<AK>
2022/08/29 12:23
後場の投資戦略
無風通過がコンセンサスも楽観視できない状況
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28745.42;+266.41TOPIX;1987.17;+10.57[後場の投資戦略] 日経平均は、前日の25日移動平均線をサポートとしたリバウンドから綺麗に続伸し、5日線も上回ってきている。今晩のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による講演の無風通過、その後のあく抜け相場を期待した動きが強まっているようだ。テクニカル面でも強気派を勢いづかせそうな形となっている。 前日の米株式市場では、ハイテク・グロース株を中心に大幅に上昇。8-10月見通しが市場予想を下回り、株価下落が懸念された半導体大手エヌビディアは+4%と想定に反して上昇し、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)も+3.66%となった。エヌビディアは世界景気の減速でパソコンやゲーム向けの需要が低迷する見通しを示したが、モルガン・スタンレー証券では「ゲーム部門は8-10月が業績の底になる」と指摘しているという。こうした見方や、タカ派発言を警戒して上昇してきた米金利が、パウエル議長講演後には低下に転じるとの期待が、前日の株価上昇の背景にあるようだ。 しかし、半導体市場の先行きについては見方が分かれており、クレディ・スイス(CS)などはメモリから始まった在庫調整が今後、現在は好調なロジック分野にも秋口からは波及し始めるとし、最終需要の弱さを前提とした深刻な半導体在庫調整サイクルの見解を維持している。 金利も、ジャクソンホール会議後は再び低下することを見込む向きがいるようだが、果たしてどうだろうか。来週末には米8月雇用統計を控えており、前回7月が予想を大幅に上振れた経緯を踏まえれば、事前の警戒はそれなりに高いだろう。雇用統計前に金利が再びハイテク・グロース株の追い風になる程に大きく低下するとはやや想定しにくいのではないだろうか。 今晩のパウエル議長の講演は無風通過が予想されている。むしろ、当初はタカ派を警戒する声が多かっただけに、イベント通過後はあく抜けで短期的には上昇の可能性が高いとすら考えられている。連日で、複数の米連銀総裁からタカ派発言が相次いでいる中、株式市場はほとんど意に介さず、結局利下げに転じるのではないかという期待を持ったままでいるようだ。ブルームバーグが算出している米国での金融緩和の度合いを示す金融状況指数(US financial conditions)は、利上げが開始された今年の3月よりも緩和的な状況に転じていることが示されている。 こうした中、中央銀行としてのインフレ抑制の決意を示し、市場の楽観を修正するためにパウエル議長がよりタカ派な発言を行う可能性も捨てきれない。仮に無風通過となっても、今後控える米雇用統計をはじめとした経済指標を前に、あく抜け相場の持続性は短いものと想定される。今はまだ買いの攻勢に出る時でないと考える。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/26 12:10
後場の投資戦略
需給面での追い風は止みつつある
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28471.61;+158.14TOPIX;1974.65;+7.47[後場の投資戦略] 日経平均は6日ぶりに反発。25日移動平均線が綺麗にサポートしており、テクニカル的には先行き強気派を勢いづかせそうな形だ。米株式市場の引け後に発表されたエヌビディアとセールスフォースの決算では見通しが市場予想を下回り、両者ともに時間外取引で株価が下落していることを踏まえると、かなり底堅い動きと評価できる。経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」に対する事前の警戒感が高いだけに、イベント通過後にはあく抜け感から一旦は上方向とみている向きも多いようで、そうした思惑が下値を支えているとも推察される。 一方、今後の上値余地は乏しいとも考えられる。前日、東京証券取引所が公表した裁定取引に係わる現物ポジションでは、8月19日時点での買い残から売り残を差し引いたネットの裁定買い残は1兆1895億円と、前週から1338億円増加、2021年9月27日以来の高水準を記録した。買い残のみでは1兆4617億円で、2021年3月22日及び9月20日の水準を上回り、2019年以降では最高水準となる。日経平均は、買い残がピークを付けた上述の昨年3月と9月以降、下落傾向となっており、経験則からすると、これまでのような需給面での押し上げ効果を今後期待することは難しいだろう。日経ダブルイン<1357>の買い残が高水準にあるほか、日経レバETF<1570>の売り長が続いており、下値では個人投資家による買い戻しが支えそうだが、全体的には目線は下方向に傾きつつあると言える。 日経平均は、目先は28500円に上値を抑えられた状況が続きそうだ。現在、時間外取引でナスダック100先物が堅調に推移していることもあり、東京時間では株価が下支えられているが、エヌビディアとセールスフォースの冴えない決算を受けて、今晩の米株式市場がどのような動きになるかは不透明。明日の夜には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がジャクソンホール会議で講演する予定で、模様眺めムードも一段と強まりやすい。あく抜け期待も高いが、翌週末の9月2日には米8月雇用統計の発表も控えており、持続性は疑わしい。いまは静観に徹する場面だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/25 12:10
後場の投資戦略
投資家と実体の間にあるギャップとは
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28359.10;-93.65TOPIX;1969.74;-1.70[後場の投資戦略] 日経平均は前日に続き、本日も冴えない展開で弱い動きが目立つ。前日の米株式市場ではダウ平均が下落したとはいえ、ナスダック総合指数はほぼ横ばい、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)にいたっては+0.74%の上昇だったが、本日の東京市場では、半導体を中心にハイテク・グロース株が全般弱い。一方、日経平均もTOPIX(東証株価指数)も揃って本日の下落で25日移動平均線近くまで調整しており、同線からの大幅な上方乖離率が縮小、テクニカル面での過熱感は解消された。ここで踏みとどまれば、短期的な調整の範囲内ともいえそうで、まだ過度に弱気に傾いたとまでは言えない。 しかし、経済指標を中心に悪いニュースが一向に途絶えない。前日に発表された8月購買担当者指数(PMI、速報値)の総合は、ユーロ圏が49.2と7月の49.9から低下し、米国も45と7月の47.7から大きく低下。ともに活動の拡大・縮小の境界を示す50を連続して割り込んだ。特に、米国ではサービス業PMIが44.1と、上昇予想に反して7月(47.3)から大幅に低下、20年5月来で最低を記録した。明らかに記録的な水準で高止まりするインフレが消費者や企業の活動の下押し圧力として働いていることが窺える。 企業決算でもネガティブなニュースが相次いでいる。米百貨店ノードストロムが通期の売上高・利益見通しを下方修正し、時間外取引で13%超と急落している。6月下旬から需要が大きく減速し、在庫の積み上がりなどが重石になった。経営幹部は低所得の顧客層を中心に需要の鈍化が明確に表れたと述べている。一方で興味深いのが、米高級住宅建設のトール・ブラザーズも四半期受注の急減を理由に売上見通しを下方修正したことだ。年初からの住宅ローン金利の大幅な上昇や住宅価格の記録的な高騰で、住宅需要が急速に鈍化していることは経済指標からすでに判明していることだが、高所得者層を対象とした企業でも影響は免れないということだ。PMIの50割れと相まって、景気後退の可能性は日に日に高まっていると考えるべきだろう。 一方で、日米ともに企業業績については、未だに7-9月期以降は増益と堅調さが見込まれている。しかし、米7月消費者物価指数(CPI)の減速の主要因となったエネルギー・資源価格はその後全体的に下げ止まり、底入れ感を強めている。ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト、期近物)原油先物価格は23日、1バレル=93.74ドル(+3.89%)と大幅に上昇した。イラン核合意の再建協議が妥結して制裁解除後の同国生産量が回復する場合には、サウジアラビアでは生産量を調整する可能性があると、減産が示唆されているようだ。 資源価格が再び上昇基調にあるなか、欧米の景気減速は著しく、中国も一向に回復ペースを速めてこないばかりか、むしろ足を引っ張りそうな勢い。マージン悪化の継続と需要減速が相まってしまえば、自ずと企業業績は悪化の道を辿ることにならざるを得ない。足元では、米連邦準備制度理事会(FRB)と市場の利上げスケジュールを巡るギャップの話が多いが、それはさることながら、市場は企業業績の見通しについても実体からかなりギャップを持っている気がしてならない。 目先はジャクソンホール会合が焦点だが、これを通過したところで、あく抜け感から再び相場が上昇基調に戻るとは考えない方がよいだろう。個人的にはここから先、何をもって株式市場が持続的に上昇していくと考えられるのかが分からない。筆者が悲観的過ぎるのかもしれないが、米国のコアCPIが年内に+3%くらいまで下がってこない限り、持続的な上昇基調を取り戻していくシナリオが現時点ではほとんど描けない(むろん、行き過ぎた楽観の揺り戻しなどから強烈なリバウンドは随所にあるだろうが)。空売りでなく、個別株を買うのであれば、4-6月決算で価格転嫁と需要の底堅さが同時に確認された、安心感のある内需ディフェンシブ銘柄くらいしか今は投資したいと思えない。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/24 12:18
後場の投資戦略
トレンド転換を示唆する金利・VIXの上昇
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28456.92;-337.58TOPIX;1973.41;-19.18[後場の投資戦略] 日経平均は米株安を引き継いで大幅に下落。前日は朝方に安値を付けた後は急速に下げ渋っていたが、本日は買い戻しが鈍く、底這い状態が続いている。25日移動平均線や52週移動平均線などよりもまだ上方での推移となっているが、28500円を下回ってきたことで、28000円近辺までは一両日中に下げてきそうか。 もともと、売り目線の機関投資家が夏休み入りで不在だったなか、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドやVIX指数の低下を背景としたリスクパリティ型ファンドによる機械的な買いで吊り上げられたような相場だったため、下げるのも速そうだ。下げても買いが入る異次元のような強い動きを見せていた米株式市場は、先週末のSQ(特別清算指数)算出を境に極端に弱い動きに変わった。これまでもSQがトレンド転換のきっかになることが多かったが、今回もご多分に漏れずといった形だ。リバウンドが始まってから1カ月以上が過ぎ、S&P500種株価指数が200日線目前まで上昇していたことで、日柄的にも指数の水準的にも戻りは目一杯のところまで来ていたのだろう。 足元では、セントルイス連銀のブラード総裁が7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げ支持に傾いていると表明したほか、リッチモンド連銀のバーキン総裁が「インフレ抑制のためには何でもする」と発言するなど高官のタカ派姿勢が目立っている。25日から開催される経済シンポジウム、ジャクソンホール会合では来年の利下げを期待する投資家とのギャップを埋めるために、パウエル議長からけん制発言で出るとの警戒も強い。 こうした中、米10年債利回りが22日、1カ月ぶりに3%を超えてきた。8月1日に付けた安値2.57%から0.5pt近くも上昇しており、ペースが速い。ちょうど1カ月程前の時点では、機関投資家の中では3%水準では債券を買いたいという声が多く聞かれていたが、今晩以降の米国市場での動きはどうだろうか。ここで金利が低下することなく、一段と上昇するようだと、これまで金利の低位安定を背景に楽観ムードが広がっていた分、神経質な相場展開が予想され、注目したい。 足元で、世界経済の構造変化を背景に、インフレは、投資家が想像する以上に長期化するとの専門家の指摘がいくつか散見されているほか、ヘッジファンドがジャクソンホール会合前後の金利上昇を狙って債券の空売りを増やしているとの指摘が聞かれている。ちなみに、米商品先物取引委員会(CFTC)が週1回発表している投機筋の持ち高情報によると、8月16日時点で、ヘッジファンドは10年債をネットで36万3000枚以上売り越している。直近3年間では、2022年3月29日時点での47万6000枚超が最も高い水準で、まだ売り持ち高を増やす余地はありそうだ。 ほか、CFTC の発表によると、8月16日時点でのVIXを対象としたヘッジファンドの持ち高はネットで10万2000枚超の売り越しだ。前回、ネットの売り越し幅が10万枚を超えたのは2021年11月2日で、この時はその後買い戻しが進み、VIX指数の上昇に繋がった。これまでの株高を支えてきた金利とVIX指数が足元で急速に上昇してきている点はやはりトレンドの転換を示唆していると考えられ、安易な押し目買いは避けた方が無難だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/23 12:15
後場の投資戦略
FRB高官の発言や3カ月債・10年債利回りの動きに注目
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28805.52;-124.81TOPIX;1990.87;-3.65[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後じりじりと下げ幅を縮小する展開となった。米長期金利上昇を受けて半導体関連株が軟化、東京市場でもFRB高官のタカ派発言を受けて大幅利上げを警戒する売りが再燃している。ただ、上海総合指数が売り先行もプラス圏を回復すると、日経平均株価もやや持ち直す動きを見せた。 新興市場は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと下げ幅を縮小する動きは乏しくマイナス圏で軟調推移となった。FRB高官のタカ派発言は国内の個人投資家心理にもネガティブに働き、米長期金利は2.97%台と3%付近まで上昇しておりバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興市場の中小型株にとって向かい風となっている。前週末まで値幅を伴って上昇していた銘柄や短期的な物色が向かっていた個別材料株は利益確定売りに押し込まれる展開。前引け時点で東証マザーズ指数が2.04%安、東証グロース市場Core指数が3.46%安で時価総額上位銘柄中心に軟調な展開となっていることが窺えた。 さて、FRB高官の発言にはやはり注目が集まっている。ブルームバーグでは、セントルイス連銀のブラード総裁が0.75ポイントの追加利上げを主張したのに対し、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は急激な引き締めにはより慎重な姿勢を促している、と報道。米リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「インフレを制御する道はあるが、その過程でリセッションが起きる可能性もある」との認識を示した。ただ、9月会合での利上げ幅の判断については、米経済の力強さとインフレ鈍化の傾向がデータでどう示されるかに左右されると述べた。 25日からは「ジャクソンホール会議」が開かれる。FRBは今後の金融政策の動向は「データ次第」としているため、市場では会議での結果が市場に大きなインパクトは与える可能性は低いとみられている。ロイターでも、パウエル議長は恐らくジャクソンホール会議で政策金利の経路について今よりずっと大きなヒントを市場には提供しないだろう、と報じている。つまり、9月に発表される失業率やインフレ率を見て、それから方針を確定させる可能性が高く、ジャクソンホール会議の影響は軽微となろう。ただ、9月に発表される米経済指標は多くの注目を集めることになるだろう。 そのほか、3カ月債と10年債利回りの差にも注目しておきたい。ブルームバーグでは1986年のキャンベル・ハーベイ教授の論文をもとに、3カ月債利回りが10年債利回りを下から上に突き抜けると非常事態が発生して災難が降りかかるかもしれない、と述べている。 また、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のクオンツアナリストによると、米国株の行方を完璧に予測してきたある指標をもとにすると株価はまだ底値を付けていないという。 完璧な指標とは、S&P500種株価指数の実績PERと米消費者物価指数を組み合わせたもので、1950年代以降のあらゆる相場の谷において同指標は20を割り込んできたようだ。ただ、今年は相場に打撃を与えてきた一連の売り圧力の中でも、まだ27までしか下がっていないという。3カ月債と10年債利回りの差や上記の指標の行方は、筆者を含めて今後再度大きく下落すると想定している投資家にとっては注目しておかなければならないだろう。 さて、後場の日経平均は、下げ幅をさらに縮小する展開が続くか。前場に続いてアジア市況や米株先物の動向に注目しつつ日経平均株価の動きを見守っていきたい。
<AK>
2022/08/22 12:19
後場の投資戦略
今晩の米SQ前に基調転換を示唆するようなミーム株急落
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28967.94;+25.80TOPIX;1995.88;+5.38[後場の投資戦略] 前日の米株式市場では主要株価指数がともに小幅ながら上昇して終了。セントルイス連銀のブラード総裁が9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げ支持に傾くなど、タカ派寄りの発言が相次いだ中でも、米10年債利回りは小幅に低下し、落ち着いた動きだったことで、ハイテク・グロース株も底堅い動きだった。 しかし、前日の当欄(「来週以降の基調転換を示唆する材料観測」)においても述べたが、明らかに株式市場の騰勢は弱まっている。一昨日、前日のナスダック総合指数が特にそうだったが、これまでのように押したら買いが湧いてくるような動きが見られなくなった。日経平均も前日は一度も29000円を上回れなかったうえ、本日も寄り付き直後から早々に29000円を割り込み、寄り天井という、ここ1カ月の間ほとんど見られなかった動きを見せた。7月半ばからのリバウンド局面の特徴として、押しても買いが入り続け、これでもかと言わんばかりの力強い動きが見られていたが、明らかにそれとは対照的な動きに変化してきている。 これもまた当欄でのコメントの繰り返しにはなるが、今晩の米国版SQ(特別清算指数)算出を境にした需給の転換には注意したい。奇しくも前日の米株式市場では、今回のリバウンド局面において再び盛り上がっていたミーム銘柄が軒並み安になるという、まるでリバウンド局面の終了を示唆するかのような出来事が起きた。小売チェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンドの株価は前日20%安と急落。物言う投資家のライアン・コーエン氏率いるRCベンチャーが、保有していた同社株を全て売却したことが明らかになったことで売りが膨らんだ。ミーム銘柄の代表であるAMCエンターテインメント・ホールディングスも10%安となった。 SQを境にした基調の転換とは、あまりに分かりやす過ぎるとも思われるが、リバウンドが始まってからちょうど1カ月が過ぎたタイミングでもあり、日柄的には十分と思われる。また、上述した出来事も、リバウンドをけん引してきた個人投資家の投資余力を左右しかねないという観点から、基調の転換に繋がり得ると考えられる。ここまでの株式市場の上昇ペースがかなり速く、強烈な印象を残した分、そんな簡単に下がるとは考えにくいかもしれないが、今回のリバウンド局面は決算シーズンを挟んでいたにも関わらず、現物・先物ともに売買高が少なかった。つまり、指数の上昇幅から窺える見た目ほどには実体は強くないと考えられ、その分、下げる時も足の速いことが考えられるだろう。 来週はカンザスシティー連銀が主催する年に一度の経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれる。また、半導体大手エヌビディアの決算もある。注目イベントを前に買いの手が限られてくるとも考えられ、ここからの押し目買いは慎重になるべきだろう。後場の日経平均は29000円を回復できるかが焦点となる。このまま回復できないようであれば、来週以降の基調の転換にはより注意した方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/19 12:16
後場の投資戦略
来週以降の基調転換を示唆する材料観測
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28984.56;-238.21TOPIX;1992.50;-14.49[後場の投資戦略] 前日の米国市場で注目すべき点は2つあった。一つは米10年債利回りの動き、2つ目は7月開催分のFOMC議事録の公表とそれを受けた米ハイテク株の動き。一つ目の10年債利回りについては、前日、約1カ月ぶりに一時2.9%台に乗せる場面があった。8月1日の2.57%をボトムにした上昇基調への転換がより鮮明になってきており、実質金利の低下による株価収益率(PER)主導のリバウンド相場については、一服の兆候が強まってきたと思われる。 2つ目については特に印象的だった。前日のナスダック総合指数は1.25%の下落。序盤には一時1.7%以上も下落する場面があり、リバウンド相場が始まった7月半ばからの直近1カ月間では特に弱い動きだった。FOMC議事録では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及していたほか、利上げペースについては、いずれは減速させる必要性があるとの認識で合意していたことが明らかになった。市場ではこれをややハト派寄りと受け止める向きが多かったもよう。これを受け、議事録公表後にナスダックの下落率は0.4%台まで縮める場面があったが、引けにかけて再び大きく下げ幅を広げた。 ここ1カ月の米株式市場では、相場上昇に乗り遅れることを嫌った投資家の押し目買いが強く、下げてもすぐに持ち直すという動きが多かった。引けにかけては強い動きを見せる日が大半だったため、一度持ち直した指数が引けにかけて再び弱く動いたのは印象的で、リバウンドが最終局面にあることを示唆しているのではないかと考えられる。 SOX指数の下落率が2.48%と大きかったことも注目される。米アナログ・デバイセズが発表した5-7月実績及び8-10月見通しは共に市場予想を上回った。ただ、同社の最高経営責任者(CEO)は「経済的な不確実性が受注に影響し始めている」と言及。同社は半導体メーカーの中でも広範な種類の半導体を手掛けているだけに、業界の先行きを占う上で注目されていた。エヌビディアやマイクロン・テクノロジーに続く同社のネガティブなコメントを受け、改めて半導体業界の先行きに対する警戒感が高まった。 米国、中国、欧州の3大経済圏の景気減速が気掛かりな中、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の様相を一段と強める欧州経済を中心とした世界経済の後退も更に心配になってきた。前日に発表された英国の7月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と、6月の+9.4%から一段と伸びが加速し、市場予想の+9.8%も上回った。7月CPIの減速を受けてインフレ懸念がやや後退している米国とは対照的だ。 全体的に資源価格は下落しているが、欧州では天然ガス価格の急騰が続いており、足元では、ロシア軍のウクライナ侵攻後に付けた2月高値も上回る勢いとなっている。欧州の複数の地域では猛烈な熱波が襲っており、冷房需要が急速に高まっている。そのうえ、ドイツでは、発電のために使っている石油を運ぶライン川の水位が低下して石炭を運ぶことができず、天然ガスの需要が一段と高まるという負の連鎖が起きている。 景気回復が期待された中国も想定以上に回復ペースが鈍く、世界経済のけん引役は期待できない。足元でファナック、キーエンス、SMCといったFA関連株が弱含んできていることもその証左と言えそうで、気掛かりだ。 前日の当欄(「売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄」)での繰り返しにはなるが、今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えており、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意した方がよいと考える。来週25日からは経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」も開催される。イベントとしては注目度が高く、これを前に、1カ月にわたって続いてきた需給主導のリバウンド相場が転換し始めてもおかしくはないだろう。 なお、今晩の米国市場では、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数のほか、半導体大手アプライド・マテリアルズの決算が予定されている。どちらも注目度は高く、結果は事前にはやや警戒されている。そのため、後場の東京市場では積極的な押し目買いは期待しにくいとみている。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/18 12:14
後場の投資戦略
売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;29101.33;+232.42TOPIX;1997.35;+15.39[後場の投資戦略] 本日の日経平均は7カ月ぶりに29000円台を回復している。警戒されていた米小売大手企業の決算では、ウォルマートとホーム・デポが揃って市場予想を上回る内容を発表し、株価が大幅高となったことで安心感が台頭。金利上昇でこれまでけん引役だったナスダック総合指数が小休止する一方、主役交代でダウ平均が相場全体をけん引した。これを好感し、東京市場でも買い戻しの流れに更に弾みが付いた格好だ。 足元では、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの先物買いが相場上昇を演出してきたが、ここにきて個人投資家による買い戻しも加わっているもよう。日経ダブルイン<1357>の買い残は、日経平均が30795円の高値を付けた昨年9月以来の高水準まで大きく積み上がり、買い長になっている。一方で、日経レバETF<1570>は8月に入ってから売り長の状態が続いている。売り目線の個人投資家が増えるなか、相場の上昇が想定以上に続いてきたことで、個人投資家の踏み上げが相場上昇に拍車をかけているようだ。 しかし、ファンダメンタルズを無視した需給主導の上昇にもさすがに過熱感が出てきている印象。米・中・欧の3大経済圏で経済指標の予想以上の悪化が続き、景気後退懸念が強まるなか、企業業績は7-9月期以降の悪化が懸念されている。こうした悪材料はまだアナリストの業績予想などには反映し切れておらず、今後の業績悪化が想定される。一方、米10年債利回りは8月1日に付けた2.57%をボトムに足元では2.8%台まで回復。金利の低下トレンドは一服したとみられ、再度、金利上昇による株価バリュエーションの下押し圧力なども警戒される。こうした中、既に29000円を回復してしまった日経平均にどのような一段の上昇材料があるのか、需給要因以外ではなかなか思いつかない。 頼みの綱の需給要因についても、リバウンドが始まった7月半ばから1カ月が経ち、日柄的にはそろそろ一服してきてもおかしくないだろう。今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えているが、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意し始めた方がよいだろう。日米ともに株価指数が大きく水準を切り上げてきた中でも、半導体関連だけは取り残されているのも気掛かりだ。産業のコメとも呼ばれる半導体は製造業としての先導性が高く、関連株の軟調が続くなかでの需給主体の相場はいずれ転換せざるを得ないと考える。個人投資家の踏み上げについても、日経平均が29000円を回復した現状水準からの一段の上昇を見込む投資家は少なく、実際に買い戻しに転じる向きは限られるのではないだろうか。 後場の日経平均は29000円台でのもみ合いか。昨日は現物株も先物も共に売買高がかなり少なく、直近の指数の値幅程には商いは膨らんでいない。需給要因以外で相場上昇を期待できる材料も見当たらず、積極的な売買は引き続き手控えられるだろう。今晩の米国市場では7月小売売上高、ターゲットなどの小売企業決算、連邦公開市場委員会(7月26-27日開催)議事録の公表などが予定されており、様子見ムードも広がりやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/17 12:13
後場の投資戦略
悪材料織り込み済みでない株価上昇に不安
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28861.76;-10.02TOPIX;1981.19;-3.77[後場の投資戦略] 本日の日経平均は小休止といった様子。7月15日以降、ちょうど1カ月の間に2000円超も上昇してきただけにさすがに一服感が見られている。4-6月決算も一巡したことで、心理的な節目の29000円を手前に材料難でもあろう。一方、マザーズ指数が大幅高で、8月5日の戻り高値を大きく突破、節目の750を窺う動きとなっている。材料不足のなか、直近好決算を発表したばかりの銘柄を中心に、値動きの軽い中小型株の物色が活発化している。 ただ、全体としてはやはり買い疲れ感が出てきている様子。昨日は日経平均が300円を超す上昇で、29000円を窺う強い動きだったが、東証プライム市場の銘柄では半数以上が下落していた。本日も同様に半数以上が下落している。東証プライム市場の売買代金からも、指数の値幅程には売買が活発していない様子が窺える。8月物オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出が絡んだ先週末12日は3兆円台後半と見かけ上の売買代金は膨らんだ。一方、昨日15日は2兆5000億円台にとどまり、先週末の決算発表が500件近くもあった割には、物色は低調だったように見受けられる。本日も前引け時点で1兆2800億円台とさほど膨らんでいない。 足元の株式市場の上昇に対して懐疑的な見方を持っている機関投資家の多くが夏休みに入っており、売り手不在のなか、個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの機械的な買いで相場上昇が続いているが、ファンダメンタルズなどの実体を伴っていない印象は拭えない。 昨日に発表された8月NY連銀製造業指数は-31.3と、前月の+11.1から大幅に悪化。市場予想の+5も大きく下振れ、2001年以降で2番目に大幅な低下となった。前回7月も3カ月ぶりのプラスだったとはいえ、6カ月先の見通しを示す景況指数はマイナスと内容は悪かった。NY連銀製造業景気指数は結果のブレが大きい特徴があるとも言われているが、ここ4カ月は連続して悪い結果・内容だ。18日に発表予定のフィラデルフィア連銀製造業景気指数も悪い結果が続いている。前回7月までの間、4カ月連続で結果が予想を下振れているほか、その下振れ度合いも拡大傾向にある。また、6月からはこちらもマイナス圏に低下している。 前日に発表された中国の経済指標も株式市場にはほとんど影響を与えなかったが、内容はネガティブで、今後じわりと効いてきそうだ。7月の小売売上高は前年比+2.7%と予想(+4.9%)を大きく下回り、6月(+3.1%)からも悪化した。鉱工業生産も同+3.8%と予想(+4.3%)及び6月(+3.9%)を下振れた。 米国の景気の基調は明らかに下方向であり、その下振れ度合いも予想を超えるものが多くなっている。景気循環が良い意味で欧米など他の先進諸国とずれている中国については、4月をボトムに景気回復に向かい、世界経済のけん引役になってくれることが期待されていたが、その期待も剥落してきている。むしろ、住宅ローン未払い問題など不動産業界の悪化が著しく、世界経済の足枷になる恐れの方が強まっているくらいだ。 こうした中でも、前日の米株式市場では主要株価指数が揃ってプラス転換で終えた。景気後退懸念に伴う金利低下を追い風にハイテク株が下支えしてくれているようだが、これも、インフレ抑制を最優先にし、来年までの利上げ継続を方針としている米連邦準備制度理事会(FRB)とのギャップが大きすぎて、いつまで金利低下を理由にしてハイテク・グロース株買いに付いていけばよいか分からない。 国内の企業業績も、アナリスト予想の平均値は営業利益の伸び率でみて4-6月がボトムという見通しになっているようだが、米・中・欧の世界3大地域の経済が減速しているなか、7-9月期以降の方がむしろ業績の悪化懸念が強いのではないだろうか。一株当たり利益(EPS)の悪化を、金利低下による株価バリュエーション(PER)の拡大で相殺しようにも、金利低下には景気後退を織り込んでもさすがに低下余地が乏しいだろう。日経平均でいえば、29000円を超えてまで買ってくる理由があるのだろうか。9月以降は29000円突破よりも27000円割れなど下方向のリスクの方が高い気がしてならない。 後場の日経平均はもみ合い継続を予想。手掛かり材料難のなか、今晩には米国で7月の住宅着工件数や鉱工業生産のほか、ホームデポ、ウォルマートなどの注目小売企業の決算が予定されており、これらを見極めたいとの思惑から積極的な売買は手控えられやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/16 12:16
後場の投資戦略
米株高好感して28800円台に到達
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28830.90;+283.92TOPIX;1983.22;+10.04[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後じりじりと上げ幅を拡げる展開となった。アジア市況や米株先物がもみ合い展開となっているが、日経平均は前週末の米株高を好感する動きに加えて、決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっている。 新興市場は上値の重い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたあとじりじりと上げ幅を縮小した。米国でインフレピークアウト期待が高まり堅調な展開が続くなか、国内の個人投資家もこうした流れを好感する動きが優勢となった。また、新興市場でも決算発表が本格化しており、米株高の流れを引き継いで12日に決算を発表した銘柄など個別材料株もポジティブな反応をみせている。ただ、米長期金利が2.8%台と高水準で推移しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株を積極的に買い進む動きは乏しい様子。前引け時点で東証グロース市場Core指数が0.77%高、東証マザーズ指数が0.71%高となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移、本日は28800円台まで上昇している。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていること、リセッション材料が出尽くしていることなどが挙げられている。物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、やはり順調な持ち直しは長続きしないと感じている投資家も少なくない。米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まっているが、米7月のCPIとPPIの減速要因の大半はエネルギー価格で、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの分野もほとんど減速していない。 ブルームバーグが実施した最新の月間調査でエコノミストらは、インフレ予測を2023年の各四半期で引き上げたという。米金融当局がインフレ目標の基準値としている個人消費支出(PCE)総合価格指数は、来年末に平均で年率2.5%上昇と予想されており、7月時点の予想2.3%上昇から上方修正となるもようだ。インフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。また、FRB高官からけん制発言が相次いでいることは見逃してはならない。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨にはある程度の注目が集まるだろう。 そのほか、マーキー米上院議員(民主党)率いる米議員団が14日、台湾に到着した。2日間の日程で滞在するようだが、ペロシ下院議長による今月初旬の訪台以降高まっている中国との緊張が続く恐れがある。このような米中問題も見逃してはならず、ロシアのウクライナ侵攻など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。筆者も中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に現在のリバウンド基調を見守っている。 さて、後場の日経平均は、上げ幅をさらに広げる展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/15 12:18
後場の投資戦略
諸要素考慮して28500円が目一杯か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28479.99;+660.66TOPIX;1969.02;+35.37[後場の投資戦略] 祝日明けの日経平均は600円を超える大幅反発で6月9日に付けた28389.75円を超えてきた。日足チャートでは7月20日以降のもみ合いから上放れる形となっており、商品投資顧問(CTA)など短期筋の追随買いを一段と誘い込みやすい状況だ。一方で、28500円を意識した上値の重さも見られている。 米7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)は共に予想を下回り、市場ではインフレピークアウト期待が高まっている。しかし、指標の減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。 一時1バレル=90ドルを割り込んでいたNY原油先物価格は足元で90ドル半ばまで回復している。代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数も7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。また、7月雇用統計では平均賃金の伸びは予想に反してむしろ加速していた。「インフレピークアウト→利下げ減速」までを織り込むのは時期尚早といえよう。 米連邦準備制度理事会(FRB)の高官からもけん制発言が相次いでいる。インフレ指標の発表後、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「インフレとの闘いで勝利を宣言するには非常に程遠い」と指摘。「政策金利は更に引き上げられた後、インフレが2%に低下するまでは維持される」とも発言し、来年の利下げを織り込む市場を強くけん制した。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想にもかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。 ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、前日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は8月に入ってからの上昇基調をやや加速させている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。 市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないとみている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続いている。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、CTAなどの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。来週末に控える米国版SQ(特別清算指数)までは売り方の買い戻しが相場を下支えしそうだ。 一方、4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、行動制限が長期化している中国の景気回復が遅れていることで、7-9月期決算に対する懸念が早くも台頭してきている。こうした状況において、株式の持ち高を「アンダー」から「ニュートラル」に修正することはあっても、「オーバー」にまで引き上げることは考えにくいだろう。今は夏休み入りしている多くの機関投資家が、休暇明けに積極的に株式を買ってくることは想定しにくく、日経平均は今の28500円が上限とも考えられよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/12 12:19
後場の投資戦略
機関夏休み入りのなか逆張り個人が下支え?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27767.07;-232.89TOPIX;1930.22;-6.80[後場の投資戦略] 前日に終値で僅かに28000円を割り込んだ日経平均は、本日も指数寄与度の大きい半導体関連株の下落に押される形で、値幅を伴った下落となっており、28000円回復が遠のく形となっている。半導体業界では、一昨日のエヌビディアの市場予想を大幅に下回る決算に続き、昨日はマイクロン・テクノロジーによる業績見通しの引き下げというネガティブなニュースが続いた。 マイクロンは顧客の在庫削減を理由に、6-8月の売上高見通しを従来の会社予想レンジの下限、ないしそれを下回る可能性があると示した。前回の弱気な見通しを示したのは僅か1カ月前のことだ。また、先んじて需要が減速していた民生向け市場だけでなく、データセンター用や産業用、車載向け用など、これまで堅調とされてきた市場でも調整が広がっており、需要の一段の減少の可能性も示唆された。東エレクも一昨日の決算において、市場見通しを期初に提示した水準から下方修正した。業界の急速な冷え込みがひしひしと伝わっており、一時後退していた景気後退懸念が再び頭をもたげている。 一方、今晩には米7月消費者物価指数(CPI)、明日には米7月生産者物価指数(CPI)と重要インフレ指標の発表を控えている。東京市場は明日が祝日で休場となるため、これら両インフレ指標の結果を受けた2日分の米株式市場の動きを祝日明けに反映することになる。結果を受けた相場のボラティリティの高まりを警戒する投資家が多く、イベント前に持ち高を大きく傾ける向きは限られ、指数の下落率はさほど大きくなっていない。ただ、指標結果がネガティブなものとなれば、一段の下落は否定できないだろう。 また、機関投資家の多くが夏休み入りしている。市場参加者が少なくなっている中、逆張り志向の強い個人投資家の存在感が相対的に増している。これら個人投資家が、昨日からの下落局面において、日経レバETF<1570>の空売りや日経ダブルイン<1357>の買い持ち高を手仕舞っていることも、指数の底堅さに繋がっていると考えられる。ただ、裏を返せば、機関投資家が戻ってくる8月後半から9月以降には相場の波乱が待ち構えているとも言える。 前日の当欄「インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい」において述べた通り、インフレを巡る環境はほとんど改善していないと考えられ、仮に、今夜から明日にかけての米インフレ指標が前月から予想以上に減速したとしても、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換期待を高めるには依然として材料不足であることには変わりはない。利上げペースの減速ですら、期待値を高めるには時期尚早と思われ、指標結果を受けた初動がポジティブなものであったとしても、現在の株価指数の水準を踏まえれば、ここからの上値追いには慎重になった方がよいだろう。 後場の東京市場は軟調もみ合いか。国内の祝日、米重要インフレ指標を前に持ち高を動かしにくく、様子見ムードが支配的となりそうだ。一方、香港ハンセン指数が大きく下げ幅を広げてきており、外部環境の悪化次第では、イベント前に一段と手仕舞い売りが広がる可能性もあるため、注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/10 12:12
後場の投資戦略
インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28009.35;-239.89TOPIX;1937.24;-14.17[後場の投資戦略] 日経平均は指数寄与度の高い主力株の下落に押され、値幅を伴った下げとなっている。ただ、心理的な節目である28000円割れの水準では買い戻しが入って下げ渋っている。前日のナスダックの下落率も0.1%と、エヌビディアの急落があった割には底堅い印象。 10日の米7月消費者物価指数(CPI)と11日の米7月生産者物価指数(PPI)を前に様子見ムードが広がっており、持ち高を大きく動かしたくない向きが多いというのが指数の底堅さの背景だろう。ただ、筆者としては、足元の株式市場は楽観の修正が足りないと考えている。 7月半ばからの株式市場のリバウンドは、米連邦公開市場委員会(FOMC)や主要企業の4-6月期決算を前にした買い戻しから始まった。その後、FOMC後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見を受けて高まった利下げ転換期待や、資源価格の下落を背景にしたインフレピークアウト期待、主要企業の決算が想定程には悪くなかったことなどから買い戻しに拍車がかかった。 しかし、先週末に発表された米7月雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが予想を2倍以上回ったほか、平均賃金の伸びは前年比と前月比のどちらでみても、減速の予想とは対照的に加速した。この強すぎる雇用統計は上述した7月半ばからのリバウンドの根拠とされてきた「インフレピークアウト→FRB利下げ転換」の期待を打ち消すものだ。市場でも、雇用統計を受け、0.5ptの利上げが有力視されていた9月会合での利上げ幅としては急速に0.75ptの確率が高まってきた。 それにも関わらず、週明けの株式市場は日米ともに底堅い。CPIは総合で前年比+8.8%と、6月の+9.1%から減速する見込みで、投資家はインフレピークアウト→利下げ転換への期待をまだ持っているのかもしれない。また、前日に発表されたニューヨーク連銀の調査で、3年先の期待インフレ率が3.2%と、6月の3.6%から大きく低下したことも、こうした期待を支えているのかもしれない。 しかし、CPIは減速したところで依然8%強と歴史的な高水準。また、資源価格の下落傾向には一服感が出てきており、今後の減速ペースはかなり緩やかになるとも考えられる。さらに、FRBが重要視する食品・燃料を除いたコアCPIは前年比+6.1%と6月の+5.9%から拡大する見込み。全体の3分の1を占めるCPIの最大構成項目である住居費は住宅価格から1年程遅れて動く傾向がある。このため、米国で住宅価格は今年4月に伸びとしてはピークを打っているが、CPIの伸びは対照的に今後も加速する公算となる。コアCPIはFRBの目標値である2%を3倍以上上回る状態が今後も続く可能性が高いといえる。 加えて、上述したように労働市場では平均賃金の伸びが加速している。賃金はインフレ項目の中でも下方硬直性があり、FRBのインフレ退治にあたっては特にやっかいな分野。サプライチェーン(供給網)制約の解消などが進んでいるのは確かだが、いま言えることは、それでも、なお需要が供給を上回っているということだ。需要が供給を上回っている限り、価格上昇圧力は消えず、FRBは金融引き締めを止めることはできない。 FRBも市場よりは慎重ながら、今後のデータ次第では0.5ptへと利上げ幅の減速も可能という見方が出ているのは心配だ。昨年8月のジャクソンホール会合で、パウエル議長は、インフレは一過性という主張を繰り返していた。しかし、その僅か3カ月後に同氏は「一過性」という表現を使うべきでないと姿勢を急転換。その後、FRBは自らの過ちを認める形で、急速な金融引き締めへと舵を切った。 僅か1年前に過度な楽観論から大きな過ちを犯したにもかかわらず、ここにきて再び利上げペースの減速もあり得ると市場に期待を抱かせるような楽観的な見方を一部持ち始めているのは非常に危うい。そもそも、これだけインフレが高いにもかかわらず、政策金利が未だに2.25-2.50%という物価指標の伸びを大きく下回る水準にあることに疑問府がつく。個人的には1ptの利上げを連続実施するくらいのショック療法が必要と考える。 いま市場が抱いている楽観論が正しいかどうかの答え合わせは近く行われる。早ければ、今週の米物価指標の発表、そこで行われなければ、来週17日のFOMC議事録公表か、今月25~27日開催予定のジャクソンホール会合までに修正される可能性があるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/09 12:10
後場の投資戦略
不安要素多くリバウンドの長期化は期待薄
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28241.09;+65.22TOPIX;1948.16;+0.99[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後前週末終値付近でのもみ合い展開となった。アジア市況や米株先物が軟調な展開となっているが、日経平均は小幅なレンジでの推移となっている。週末に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの加速が確認されたため売りが先行したが、決算発表を終えた主力株への物色が中心となり下支えをしているようだ。 新興市場は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと朝方に下げ幅を大きく拡げた。新興市場でも週末に発表された米7月雇用統計の結果でインフレの加速が確認されたことは、インフレの減速を予想していた分個人投資家心理にネガティブに働いた。また、米長期金利が2.8%台まで急伸しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株にとっては逆風となっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.35%安、東証マザーズ指数が1.80%安となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていることは前回の当欄で述べている。 ほかにも、米国のリセッション入り確率が急低下してきているとブルームバーグでは述べられている。JPモルガン・チェースのストラテジストが考案したリセッション確率の指標によると、株式市場の視点では米景気下降はますます起こりそうにないという。また、株式とクレジット、金利市場が全体として織り込む米国のリセッション確率は40%と、6月段階の50%から低下したようだ。つまり、昨年11月から今年6月までの長期的な下落はリセッションを織り込むためで、現在はリセッション材料が出尽くしているとも捉えられている。さらに、物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、「株式相場の最近の順調な持ち直しは長続きしない」とゴールドマン・サックス・グループとバーンスタインのストラテジストが警告しているともブルームバーグで述べられている。マクロ経済データの悪化が続き、企業業績見通しが下方修正されていることを理由に挙げられている。4日に発表した1週間の新規失業保険申請件数は前週比6000件増加し、26万件だったことも気がかりである。 また、5日に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの減速予想とは対照的にインフレの加速が確認された。インフレ高進が確認されるとインフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。やはり、10日に発表される米7月消費者物価指数(CPI)の結果、これに伴うFRB高官ら発言には注目が集まろう。 さらに、ロシアのウクライナ侵攻や米中問題など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。これだけ不安材料が重なってくると、現在のリバウンドが長く続くことは筆者も想定していない。中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に株式市場を注視していくことが重要であろう。さて、後場の日経平均は、こう着感の強い展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/08 12:20
後場の投資戦略
ベアマーケットラリー第2弾?いつまで乗車すべきか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;28131.87;+199.67TOPIX;1943.92;+13.19[後場の投資戦略] 本日の日経平均は想定外の強さで、これまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破。前日の米株式市場でハイテク・グロース株が続伸したほか、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1%近く上昇し、国内でも半導体関連で好決算が相次いだこともあり、関連の値がさハイテク株が指数を押し上げている。今晩の米7月雇用統計を前に本日は様子見ムード一色で、動意薄の展開を想定していたため、意外感のある上昇だ。 7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いている。それまで悲観的な見方が多かっただけに、過度な悲観の修正が長期化しているようだ。機関投資家の株式組み入れ比率が歴史的にかなり低い状況にあった中、想定以上に上昇が続いていることを受けて、慌てて買い戻しに転じている投資家が多いのかもしれない。今晩の米7月雇用統計では、雇用者数の伸びと平均賃金の伸びで共に減速が見込まれている。予想通りとなれば「インフレピークアウト・利上げ減速」への期待に拍車がかかり、相場の上昇に一段と弾みがつく可能性がある。そうしたシナリオを想定し、イベント前に急いで買い戻している背景もありそうだ。 ただ、依然として足元の上昇についてはベアマーケットラリーに過ぎないとの見方が多い。ブルームバーグの報道によると、株式相場の最近の順調な持ち直しは長続きしないと、ゴールドマン・サックス・グループとサンフォード・C・バーンスタインのストラテジストが警告したという。また、「世紀の空売り」で有名になった投資家のマイケル・バーリ氏が、市場に「愚かさ」が戻ってきたとツイートしたことも話題になっている。 前日の英国金融政策委員会では、27年ぶりとなる0.5ptの利上げがほぼ満場一致で決定された。イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は、次回9月以降の会合ではあらゆる選択肢を検討するとし、「インフレを2%の目標に回帰させることが引き続き絶対的な優先事項であり、問答無用だ」と強いコメントを発した。さらに驚くべきは、インフレと景気の見通しだ。6月時点で前年比+9.4%と40年ぶりの高い伸びにまで加速している同国の消費者物価指数(CPI)について、中銀は前回6月の政策発表時にはインフレのピークは今年10月頃で、11%強と予想していた。しかし、今回は、ピークが13.3%になる見通しと大幅に引き上げ。また、今年10-12月期には景気後退(リセッション)に入り、来年末まで5四半期連続でリセッションが続くという。 このように欧州では完全にスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)が現実ものとして台頭してきた。米国では7月ISM非製造業景気指数の改善などもあり、足元で景気後退を避けつつインフレ抑制に成功するのではという、ソフトランディング(軟着陸)への期待が俄かに高まっているが、先行き不透明感は依然としてかなり強い。今晩の米雇用統計後には、更なる買い戻し加速によるベアマーケットラリー第2弾が待っているのかもしれないが、いつまでこの上昇相場に乗っているべきか、気をもんでいる投資家は多いだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/05 12:18
後場の投資戦略
7月半ばからの上昇相場いつまで続く?
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27892.68;+150.78TOPIX;1929.32;-1.45[後場の投資戦略] 前日のハイテク・グロース株を中心とした米株式市場の大幅続伸を好感して日経平均は反発。ただ、ナスダックが上値抵抗線だった100日移動平均線を明確に突破し、7月半ばからの戻り高値を更新し続けているのに対して、日経平均は本日も28000円手前で伸び悩んでおり、相対的な鈍さが意識される。 他方、前日の海外市場を振り返ると、好材料が相次いで相場を後押ししたのは間違いない。米国の7月ISM非製造業景気指数や6月製造業新規受注が予想を大きく上回ったことで景気後退懸念が和らいだ一方、ISMの構成項目である「価格」が72.3と6月の80.1から大幅に低下した。1日に発表されたISM製造業景気指数でも価格の項目は78.5から60.0へと大幅に低下していたため、インフレピークアウト期待が高まった。 また、原油先物価格の大幅下落もこうしたインフレピークアウト期待を更に高めることに寄与した。前日、石油輸出国機構(OPEC)プラスが開かれたが、9月の原油生産量については一日当たり10万バレル増やすことが決定された。7月と8月の増産幅は日量64万8000バレルだったため、今回の増産幅はかなり小幅なものとなった。この結果を受け、需給逼迫が意識される形でWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月限)原油先物価格は米国時間に一時1バレル=96ドル台まで上昇する場面があった。 しかし、米エネルギー情報局(EIA)が発表した在庫統計で、原油在庫の増加のほかガソリン需要の減少が明らかになると、需要減少を意識した価格低下圧力の方が勝り、結局、原油先物価格は3日、1バレル=90.66ドル(前日比-3.98%)と大幅に下落。ISM景気指数の価格項目の低下と原油先物価格の下落を背景に、7月半ばから再び高まっているインフレピークアウト期待と米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待に一段と拍車がかかり、相場を押し上げた格好だ。 一方、7月半ば頃からナスダックを中心に株式市場の力強い上昇が続いているが、ここからの上値追いには慎重になるべきと考える。足元のグロース株を中心とした株価上昇の要因は「行き過ぎた悲観の修正」だったと考えられる。7月は米連邦公開市場委員会(FOMC)やGAFAMをはじめとする主要企業決算など大きなイベントが多かっただけに、これらイベントを前に、機関投資家の間では売りに傾き過ぎた持ち高を修正する動きが強まっていた。FOMCやGAFAM決算を過ぎ、8月に入ってからもこうした基調が続いているが、この背景としては2つ理由が考えられる。 一つは、7月FOMC後のパウエル議長の記者会見を受けて、市場が先走ってFRBの来年からの利下げ転換を織り込みにいっていること。二つ目に、先行きに悲観的な見方が多かったなか、相場が想定外にも上昇を長く続けていることで、決められた期間の中でパフォーマンスを上げることを求められるヘッジファンドなどが、乗り遅れることを嫌って焦って買い戻しを加速させていることが考えられる。しかし、こうした動きは長期化しないだろう。 株価は、一株当たり利益(EPS)と投資家の期待値を表す株価バリュエーションであるPERの掛け算で決まる。これまで発表済みの日米主要企業の決算は想定以上に底堅いものの、外部環境の悪化を背景にアナリストによる今後の業績予想は徐々に切り下がっている。EPSが低下する中でも株価が上昇してきているのは、米国の実質金利の低下を背景としたPERの上昇が要因だ。 ただ、米10年債利回りは8月1日に2.57%と約4カ月ぶりの水準にまで低下した後は複数のFRB高官のタカ派発言もあって下げ止まっている。米10年物の実質金利も、一時再びマイナス圏入りを窺うところまで低下していたが、インフレ抑制を最優先課題とするFRBがこうした緩和的な状況を許容することは考えにくく、今後は、これまでの実質金利低下を背景としたPERの上昇余地も限られるだろう。 来年末の政策金利水準を巡っては、早くも利下げを織り込み始めている市場と、来年も利上げを続ける方針を維持しているFRBとの間でかなり乖離が出てきているため、むしろ、今後は楽観に傾いている市場の期待値がFRB寄りに修正されることを警戒するべきとも言える。今週末の米7月雇用統計での平均賃金の伸びや、来週に控えるアメリカ7月消費者物価指数(CPI)の結果次第では、こうした修正を迫られる可能性があろう。 後場の東京市場はトヨタ自<7203>の決算を睨んだ動きとなりそうだ。デンソー<6902>の業績下方修正などで既に期待値は低下していると思われるが、裾野の広い産業分野だけに、日本株全体へのインパクトも大きく、結果を受けた株価反応が全体のセンチメントを左右しそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/04 12:11
後場の投資戦略
金利急伸もグロース株強く、リバーサル長期化か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27740.97;+146.24TOPIX;1927.50;+2.01[後場の投資戦略] 日経平均は前日に先んじて米中摩擦リスクを織り込んでいたため、本日はしっかりとした動きになっている。昨日サポートとなった200日移動平均線上での推移が続いており、全体的な基調の強さは維持されている様子。 前日は、7月26~27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後に行き過ぎた市場の利下げ期待を修正する高官発言がいくつかあった。まず、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁はインフレ目標の達成には「程遠い」「長い道のりがある」とし、景気の減速を受けてFRBが来年には利下げに転じるとの観測が市場で出ていることについて、自分自身はそのように考えていないと時期尚早との見解を示した。また、シカゴ連銀のエバンス総裁は同日、9月のFOMC会合で決定する利上げ幅について「0.50ptが妥当な判断となり得るまでに十分な時間があると思われるが、0.75ptでも問題ないかもしれない」と述べた。 前日に発表された米6月JOLT求人件数は市場予想を下回り、労働市場の減速が示唆された。しかし、クリーブランド連銀のメスター総裁は、労働市場は依然ひっ迫が続いており、物価安定を目指した利上げを続けるべきとの考えを示した。7月31日にはハト派とされるミネアポリス連銀のカシュカリ総裁でさえも「7月FOMC後の市場の反応に驚いている」と述べており、2%のインフレ率に戻すことを達成するのは「ずっと遠い先」と発言している。 これらの発言を受けて前日の米債券市場では幅広い年限の利回りが急伸。ただ、依然として今年に付けた高値から低水準にあるということもあり、前日の米株式市場では、ハイテク・グロース株への影響は限定的で、むしろ、ナスダックについては底堅さが感じられる程だった。 7月に相場をけん引した米グロース株の力強い動きが8月に入ってからも続いていることは目を見張る。東京市場でもグロース株の強い動きが継続して見られており、本日の東証プライム市場の値上がり率上位もグロース株が多くを占めている。エムスリーの決算後の堅調推移からも、グロース株を巡る環境は相対的に良好のようだ。一方で、資源関連や景気敏感株は軟調なものが多く、今年前半の「資源関連買い・グロース売り」のリバーサル(株価の反転)はしばらく続くことが予想される。 後場の日経平均は堅調もみ合いか。200日移動平均線上での底堅さが継続して見られる一方、28000円を明確に超えられない状況が続いており、材料不足のなか、こうした状況はこの先も続きそうだ。グロース株を中心に投資家心理は改善しつつも、指数については完全に強気になりきれない部分もある。今週末の米雇用統計や来週の米消費者物価指数(CPI)を前に様子見ムードも強まりやすく、当面は足元で株価モメンタムが強い銘柄に乗るような需給メインのトレードが主体となりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/03 12:12
後場の投資戦略
利食い売り材料続出、米中巡るきな臭さ増す
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27549.41;-443.94TOPIX;1924.55;-35.56[後場の投資戦略] 前日の引けにかけて騰勢を強めた日経平均は28000円に届くことなく今日は寄り付きから失速。このところ200日移動平均線上での推移が続いていたが、本日は一時同線を下回る場面が見られた。28000円を手前とした上値の重さが連日で確認されていた矢先の急失速であり、やはり28000円回復には材料不足の様子。多方面で指摘されているように、米国のハイテク・グロース株を中心とした7月の株価上昇はイベントや夏季休暇入り前の機関投資家による買い戻しが主体だったと推察される。 また、テクニカル面で日米ともに主要株価指数がいい水準まで戻してきたタイミングで、利益確定売りの口実とされかねない中国関連のネガティブなニュースも多く見られている。まず、ペロシ下院議長が台湾を訪問する計画と伝わっている。蔡英文総統との会談は3日に予定されているという。会談はいまだ流動的とはいえ、中国側は軍事行動も辞さないと強くけん制しており、米中摩擦悪化への警戒感が急速に高まっている。ウクライナ戦争に端を発したロシアを巡る地政学リスクもまだ沈静化していない中、中国とのリスクも高まるとなると、市場は素直に嫌気するだろう。7月のリバウンドに寄与してきた商品投資顧問(CTA)など足の速い向きが、足元の悪材料に反応して持ち高を転換させる可能性もあろう。 中国の景況感回復のペースが想定以上に緩慢だという懸念も強まりつつある。中国国家統計局が発表した7月の製造業PMIは49.0と、6月の50.2から低下し、予想外に活動拡大・縮小の分かれ目となる50を下回った。財新が発表する民間版の7月製造業PMIも50を上回りはしたが、50.4と前月の51.7から低下し、市場予想の51.5も下回った。新型コロナ感染再拡大に伴う行動規制再実施の影響が長期化し、生産、新規受注、雇用の伸びが鈍化している。欧米諸国がこれから景気後退を迎える一方、中国については、緩やかながらも対照的に景気回復へと向かうことが期待されていたため、このままでは世界経済のけん引役が不在となる。 さらに、中国については、建設活動の停滞を理由とした市民による住宅ローン返済のボイコット問題も深刻化している。英銀HSBCホールディングスは中国の不動産関連エクスポージャー120億ドル(約1兆6000億円)相当の約3分の1が劣化、または不良化していることを明らかにしたと伝わっている。開発業者に金融支援を行う基金の設立などが検討されているものの、銀行による融資縮小で経済活動が一段と停滞するリスクを孕み、こうした中国経済を巡るきな臭さが不透明感として相場の重石になっている。 米国でも市場の動きを中心に不透明感が強い。米10年債利回りは1日、2.57%と約4カ月ぶりの水準にまで低下した。現在、米連邦準備制度理事会(FRB)が誘導目標とする政策金利FFレートは2.25~2.50%に設定されており、長期金利が政策金利とほぼ同水準にまで低下している状況はさすがに行き過ぎている印象がある。市場は景気後退によりFRBが来年には利下げを迫られるとみているわけだが、記録的なインフレが続いている中、FRBは今後の経済データ次第では0.75ptの大幅利上げを続ける方針で、市場の見方との間に大きな開きがある。FRBがインフレを抑制したいと考えているにも関わらず、長期金利が政策金利並みの水準まで急低下していることで、むしろ緩和的な環境が作られるという皮肉な構図となっている。 前日に発表された米7月ISM製造業景気指数の項目をみると、「価格」が60.0と6月の78.5から大幅に低下し、「入荷遅延」も57.3から55.2へと低下傾向が続いた。こうしたところから、モノに関するインフレのピークアウト感はより確度を増したといえそうだ。しかし、いま問題視されているのは下方硬直性を有すサービス分野でのインフレ長期化であり、今回のISM景気指数の結果がインフレ懸念を大きく後退させたとは考えにくい。 となると、やはり政策金利の動向を巡って、市場の見方との乖離が大きくなりつつある現状をFRBが放置しておくとは想定しにくく、近いうちにこうした乖離を埋めるために、FRB高官から乖離修正を狙った発言が出てくると予想される。今晩には早速、セントルイス連銀のブラード総裁などの発言が予定されており、注目されよう。 後場の日経平均は節目の27500円を維持できるかが焦点になる。踏ん張れずにこの水準も下回ってしまうと、CTAなどの売りが加速するリスクがあり、その場合には一気に27000円近くまで戻す展開も想定しておく必要があろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/02 12:17
後場の投資戦略
長期的にはロシアの侵攻や米中問題も警戒必要か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27933.27;+131.63TOPIX;1951.81;+11.50[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、小幅に上昇してスタートした後前週末終値付近でのもみ合い展開となった。その後は、アジア市況が軟調な展開、米株先物は冴えない展開となったことを横目にじりじりと上げ幅を広げ、プラス圏での推移となった。GAFAM決算を終えて米株高が継続していることは個人投資家心理にポジティブに働いている。そのほか、国内でも決算発表が増加してきており、決算発表を終えた個別株物色が中心となっている。 新興市場も本日は買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと朝方にプラス圏に浮上、その後はじりじりと上げ幅を拡げた。新興市場でもGAFAM決算を終えて米株高が継続、長期金利低下・グロース買いの流れが続いていることが個人投資家心理にポジティブに働いている。ただ、グロース株優位の状況ではあるものの、新興市場でも既に決算を発表している銘柄など個別材料株中心の物色となっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が0.67%高、東証マザーズ指数が0.63%高となった。 さて、4-6月期国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となったが、FRBの大幅利上げを回避できるとの期待から米株式市場は上昇を継続している。また、大型テック企業の決算では、アルファベットとマイクロソフトの決算が想定程に悪くなかったこと、アマゾンやアップルの決算で純利益が減少したものの売上高が増加したこと、などが好感されているようだ。大型イベントを無難に通過したことで個人投資家心理がポジティブに傾いていることは明確となっている。 ただ、株高が継続していくかは市場でも疑問視する声が多い。ブラックロックでシステマチックマルチ戦略シニアポートフォリオマネジャーを務めるジェフリー・ローゼンバーグ氏はブルームバーグで、「市場は利上げペースの鈍化にすがっており、株価が上昇すればするほどその後の継続が難しくなると言うことをよく考えていない」と話している。また、一部のFRBウオッチャーは、「パウエル議長の記者会見についての市場の解釈は狭過ぎる。」とも発言。フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の予測分布図では年内に3.4%前後、23年には3.8%ヘの利上げ見通しが示されており、利上げはまだ続きそうで過度な楽観論は危険としている。 また、長期的にはロシアのウクライナ侵攻や米中問題も見逃してはならない。ニューズウィークでは、将来のNATO加盟国への攻撃に備えて戦力と空中火力を温存している可能性があるというNATO国防大学の最新のリポートが発表されたと報じられている。ウクライナのゼレンスキー大統領は6月に「来年は、ウクライナだけでなく、他にも数カ国が攻撃されるかもしれない。そしてそれはNATO加盟国かもしれない」と警告。NATOのリポートはゼレンスキー氏の主張を反映し、ロシア軍のこれまでの弱さに騙されてはいけないと警告している。ロシアがウクライナ以外のNATO加盟国へ攻撃を開始する可能性があることは頭の片隅に置いておきたい。 米中問題に目を移すと、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は28日に電話会談を行い、台湾問題について長時間にわたり意見を交わしたという。ただ、ペロシ米下院議長の台湾訪問の可能性が浮上したことで中国が警告を発する事態となっているようだ。中国の国営通信によると、習氏はバイデン氏に「世論に反してはならない、火遊びをすればやけどをする。米国側がこのことを明確に理解することを望む」と述べたという。各国のインフレ及び金融政策の動向などに注目がいきがちだが、来年にかけてのロシアの侵攻や米中問題にもある程度のアンテナを張っておきたいところだ。 さて、後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目にじりじりと上げ幅を拡げる展開が続くか。前場に続いて個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。テクニカル面では、終値で節目の28000円超えとなるか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/01 12:21
後場の投資戦略
景気後退・円高が重荷、利上げ減速期待を裏切りそうな材料も
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27944.55;+129.07TOPIX;1949.23;+0.38[後場の投資戦略] 本日も日経平均は心理的な節目の28000円を手前に上値の重い展開。米連邦公開市場委員会(FOMC)直後に上昇しても翌日以降に失速することが多かった米株式市場は、今回は2日目の前日もしっかりと続伸した。また、GAFAM決算で最後に残っていたアップルとアマゾンが共に予想を上回る決算を発表したことで、時間外取引のナスダック100先物も大きく上昇している。そうした追い風がある中でも、日経平均が28000円を明確に超えられないのは気になる動きだ。 また、気掛かりな要素は他にもある。米4-6月期GDPは2四半期連続でマイナス成長となった。欧州や米国での経済指標の下振れが相次いでおり、悪化ペースも速い。一段と景気後退懸念が強まっていることで、米10年債利回りの低下基調も続いている。グローバル景気敏感株とも称される日本株が、これだけ景気後退懸念が強まるなか、そしてこれから欧米諸国が景気後退を迎えようとする中、買われづらくなるのは当然なのかもしれない。 日本株の底上げに繋がってきた為替も、一時1ドル=139円まで進んだドル・円は足元で134円台にまで下落してきている。貿易赤字を通じた実需筋による円売り・ドル買いもあるため、大幅な円高・ドル安は想定しにくいが、投機筋による売買も多いため、ポジション調整が続けば、節目の130円くらいまでは下落余地があると考えられる。少なくとも、これまで独自の日本株高の背景として挙げられてきた円安・ドル高に明確なピークアウト感が見られていることは懸念材料で、欧米対比での日本株の底堅さが見られることはなくなっていく可能性が高いだろう。 力強い動きが続いている米国株も、主要株価3指数は前日時点で遂に100日移動平均線近辺まで戻してきた。今年前半のリバウンド局面ではいずれもこの100日線が戻り一服の目処になってきたことで、そろそろ売り方の買い戻しも一巡してくる頃合いと考えられる。FOMC結果公表があった当日には買い戻しだけでなく、軽い新規買いも入っていたとの声も聞かれたが、当日の株式取引量は過去3回のFOMC当日の取引量と比較して25~35%程少なかった。決算発表が本格化する中でのFOMCとしてはかなり少ないといえる。株式市場は上に行きたがっている様子が窺えるものの、そのエネルギーは余力に乏しそうだ。 企業決算もテクノロジー株が底堅い一方、日本株全体との連動性が高い景気敏感株については軟調なものが多い印象。特に上値の重いのが半導体を中心とした電子部品周り。米インテルの4-6月期決算は市場予想を大きく下回り、通期計画も下方修正された。東京市場でも、ルネサスが好調な決算ながらも需要ピークアウトへの警戒感から本日、株価が急落している。鉱工業生産の動向から代わりに自動車の挽回生産なども期待されるが、指数インパクトの大きい銘柄は電気機器セクターに多いため、こうした点も、日本株全体の重荷になる。 また、気掛かりなのはやはり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速への期待感を高めつつある市場の動向だ。パウエルFRB議長が今後の利上げ幅は「経済データ次第」としたことで、市場は足元の景気指標の下振れを利上げペース減速の根拠として捉えているが、経済データは景気指標だけでない。むしろ、FRBは依然としてインフレ抑制を最優先事項として掲げているわけであるから、物価指標の影響の方が大きいだろう。 その物価指標では、今晩、米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータが発表される。投資家の物価指標の注目は既に7月分に移っているため、波乱材料にはならないだろう。しかし、一方でその次回7月分を巡っては懸念要素が出てきている。前日に発表されたドイツの7月消費者物価指数(CPI)は欧州連合(EU)基準で前年同月比+8.5%となり、前月(+8.2%)から加速、低下を見込んでいた市場予想(+8.1%)に反して大幅に上昇した。 欧州ではロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働問題などを背景に天然ガスの価格が急騰していることもあるが、米国でも猛暑に伴う冷房需要を背景に天然ガスの価格は大幅に上昇している。さらに、強気派が挙げていた資源価格の下落も、その後ほとんど進んでいない。むしろ、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月物)原油先物価格は14日に一時1バレル=88ドルまで下落した後は、足元で再び100ドルを窺う水準まで戻している。さらに、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、4月21日高値3.02%から7月6日安値2.29%まで大幅に低下した後、実は足元では2.48%へと大きく上昇に転じてきている。 こうしたところから、インフレピークアウトを先取りしすぎた動きには危うさが伴い、米国の7月CPIが近づく場面では、警戒が必要だろう。一方で底入れ感が強まっているマザーズ指数の構成銘柄では、メドレー<4480>やクラウドワークス<3900>など年初来高値を更新している個別株も多い。こうした銘柄群は、今後再び相場が調整した際でも、底堅さが意識され、次回のリバウンド局面では真っ先に高値を更新することが期待される。先行き慎重ながらも個別株の選別を極めていくことが重要なタイミングと言えそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/29 12:20
後場の投資戦略
パウエル会見と市場反応のギャップから感じること
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27804.21;+88.46TOPIX;1946.82;+1.07[後場の投資戦略] 本日の日経平均は朝方28000円突破後に失速して一時マイナス転換。ここ最近の朝安後に切り返す底堅い動きとは対照的な動きとなっている。直近の株価上昇は、決算シーズン前の買い戻しに加えて、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型の短期筋による追随買いが演出したわけだが、日経平均で28000円を超えてまで買い上がる向きは少ないようだ。本日の動きを見る限り、CTAなどは既に買い余力をほとんど残しておらず、むしろ28000円達成を機に利益確定売りに転じている様子。 一方、前場の日経平均はその後プラス圏に再浮上し、依然200日移動平均線上での推移になっているほか、一応上値と下値を切り上げているため、まだ基調が大きく崩れたわけではない。しかし、前日のナスダックを中心とした米ハイテク・グロース株の大幅高に素直に乗り切れないあたり、相場の脆弱性を再認識する形になった。 米株市場も、前日は非常に大幅な上昇となったが、この勢いがこのまま続くとは言い切れない。実際、今年はFOMC直後に上昇しても、翌日以降に下落基調に転じることが度々あったため、市場関係者の間でも、昨晩の米株高を素直に受け止めているものは少ない。 昨日の米国株の上昇自体もいいとこ取りの気がしてならない。パウエルFRB議長は会見で、足元の米経済状況の軟化を認め、利上げペースが鈍化する可能性を示唆した。相場はこれを受けてポジティブに反応したわけだが、パウエル議長は今後のデータ次第では0.75ptの大幅利上げが続くともはっきりと言っている。 また、パウエル議長はインフレ圧力の抑制が最優先課題と強調している。目標の達成を妨げ得るようなリスクが出現した場合には政策を調整するとも言及(利上げ幅拡大?)。そして、米経済が景気後退に陥っているとは考えていないとし、「非常に力強い労働市場」をその証拠に挙げたほか、「需要はなお力強く、経済は年内成長を続ける軌道に依然としてある」とも述べた。 つまり、今後の消費者物価指数(CPI)や雇用統計での平均賃金の伸びなど、データ次第では、下手をしたら先日の欧州中央銀行(ECB)のように利上げ幅拡大のタカ派サプライズが待ち構えている可能性もあるわけだ。次回の9月会合の利上げ幅としては0.25~1.00ptまで幅広く可能性があり、政策動向を巡る不確実性は解消されていないといえる。市場の「景気後退に伴う利上げ鈍化・年内利上げ停止・来年利下げ」というシナリオはあまりに楽観的な印象を拭えず、パウエル議長の会見内容とはギャップを感じる。 ネガティブな要素を無視した足元の株価上昇に持続性があるとは考えにくく、8月に入ってから出てくるCPIや雇用統計のデータ発表が近づくタイミングでは、再び売りが強まってくる可能性に留意したい。 後場の東京市場はもみ合いか。FOMC直後の米株高が持続的なものなのかを見極めたいとの思惑は強く、今晩以降の米国市場を確認するまでは動きづらい展開が続く。また、今晩の米国市場ではアップルとアマゾン・ドット・コムの注目決算も控えている。後場は様子見ムードが広がりやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/28 12:14
後場の投資戦略
FOMC結果とその後の株価動向を推察
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27692.89;+37.68TOPIX;1944.09;+0.92[後場の投資戦略] 前日の米株式市場の取引時間中、夜間取引の日経平均先物は一時27400円まで下げる場面があったが、本日の日経平均は27600円台と前日終値とほぼ変わらない水準で引き続き底堅い推移。200日移動平均線も依然として割り込んでおらず、同線上での動きは20日以降で6日目となる。同線を下値支持線に変えてきているあたり、テクニカル面では良い兆しを感じさせてくれる動きだ。 注目されたGAFAM決算の第一陣であるアルファベットとマイクロソフトの決算は、売上高と一株当たり利益が揃って市場予想を下回ったものの、下振れ幅が限定的だったため、過度な警戒感が後退する形で、株価は時間外取引で大きく上昇した。これに伴い、ナスダック100先物が堅調に推移していることが東京市場の底堅さの背景になっている。マザーズ先物も心理的な節目の700を超えた状態での推移となり、FOMC前にしてはかなり堅調な印象。 ただ、指数は日経平均だけでなく、東証株価指数(TOPIX)、マザーズ指数まで揃って前日終値とほぼ同水準にある。明日午前3時に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、売り方も買い方もどちらも持ち高を大きく動かしたくないのだろう。明日の結果次第では、様相は一変する可能性もあり、今の底堅さをそのまま素直に受け取るのは難しい。 今回のFOMCでは0.75ptの利上げが8割程の確率でほぼ織り込まれており、事前の高官発言からしても、この予想通りの結果になるだろう。焦点は次の9月会合以降の利上げ幅に対する言及だ。米国での企業の景況感、個人消費者センチメントを巡る経済指標の相次ぐ下振れを受けて、投資家は9月からの利上げ幅の鈍化、来年からの利下げ、早いところでは12月の利上げ打ち止めまでを織り込む動きとなっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が記者会見で、市場の期待通り、利上げ幅の鈍化を示唆すれば、相場はポジティブな反応を示すとみられ、日経平均でいえば、短期的には28500円くらいまでのオーバーシュートはあり得そうだ。一方、足元で資源価格が下落していてインフレピークアウト期待が根強いとはいえ、消費者物価指数(CPI)などの指標結果はピークアウトどころかまだ加速中だ。インフレ対応にあたってかなり後手に回り、一時、政策運営の信頼を失いかけた経緯を踏まえると、FRBは慎重な対応を取ると推察される。 つまるところ、「データ次第で利上げ幅は変化しうる」といったどうにでも解釈できる当たり障りのない言及にとどまると考えている。ただでさえ、後手に回ったインフレ抑制にあたって、早々に利上げ幅の鈍化・打ち止めを示唆したうえ、最終的にやはりインフレ抑制に失敗したなどという最悪の事態は、FRBとしては絶対に避けたいはずだ。そうした背景を踏まえると、自ら政策運営のフリーハンドを無くすような、手枷足枷をはめるような発言をするとは考えにくい。そのため、市場が期待しているような利上げ幅の鈍化といったメッセージを明確に送ることは考えにくいだろう。 となると、今後の相場動向を占う上では現在本格化してきている企業決算ということになる。特に米国では事前の警戒感がかなり高まっていたこともあり、日米ともにこれまでに発表済みの決算については無難なものが多い印象。米国については「想定より底堅い」、日本については「そこまで悪くない、まずまず」といったところか。 しかし、仮に今後もこうした無難な決算が大半を占めた場合に、相場は今のリバウンド基調を維持し続けるだろうか。先日紹介したバンク・オブ・アメリカ(BofA)の最新の月次ファンドマネージャー調査によると、歴史的にみて機関投資家の現金比率は非常に高い一方、株式の組み入れ比率は非常に低い水準にあることが分かった。しかし、これから欧米諸国が景気後退を迎えようとするなか、思ったほどには悪くない程度の決算を確認したところで、果たして機関投資家が「よし、やっと買える」となるだろうか。せっせと現金化してきたキャッシュをそんな早々に再び買いに投じるだろうか。 国内企業の決算反応をみても、安川電機<6506>、日本電産<6594>、日東電工あたりの反応を見ていると、内容は悪くないものの、株価の反応は冴えない。日東電工については4-6月期実績および上方修正後の通期計画はともに市場予想を上回ったが、本日の株価は下落している。上振れ要因のほとんどが為替の円安だが、円安については既に周知の事実といったところで、むしろ為替効果を除いた実質ベースで伸びていないと評価されないようだ。 このように、今後の株式市場の動向については、足元で強気な見方が徐々に増えてきてはいるが、依然として軟調継続を想定するに値する根拠も多くあるように見受けられる。こうした中、今晩の米国市場ではFOMCの結果だけでなく、スナップチャットやツイッターの決算を受けて警戒感が高まっているメタ・プラットフォームズの決算などもある。足元の日経平均の日足チャートは非常に堅調な形だが、明確に強気に転じるには依然として材料不足ということを認識しておきたい。 後場の東京市場は引き続きもみ合いだろう。今晩のイベントを前に完全に様子見ムードといったところで、持ち高を大きく動かす向きは限られるとみる。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/27 12:13
後場の投資戦略
インフレと金融政策巡る論争、どちらに分があるか
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27681.73;-17.52TOPIX;1945.38;+2.17[後場の投資戦略] ウォルマートの業績下方修正を背景としたダウ平均先物の軟化を受けて、前場の日経平均は一時150円超下落したが、その後は前日終値近くまで戻し、200日移動平均線線上での底堅い動きを維持している。先週までの短期間での上昇幅や飛び込んできたウォルマートのネガティブな報道から、神経質に反応することを想定していたため、個人的にはかなり底堅い印象を抱く。 一方、28日未明に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表に加え、今晩のアルファベットとマイクロソフトを皮切りに始まるGAFAMの大型テック決算など、今週に集中する注目イベントを前に持ち高を大きく動かしたくない表れとも捉えられる。 実際、日経平均は13日から先週末まで7日続伸し、この間の上げ幅は1500円を超えたが、東証プライム市場の売買代金は一度も3兆円を超える日がなく、2兆円台半ば前後にとどまっていた。前日にいたっては、かろうじて2兆円台に乗せる程度で商いはかなり薄く、本日も前引け時点での売買代金は1兆1000億円程度だ。溜まっているエネルギーが各種イベント通過後に大きく動きだす可能性を考慮すると、今週後半の相場のボラティリティーは大きくなりそうだ。 一方、気掛かりなのは米国の景況感の悪化ペースだ。2~3カ月程前から経済指標の下振れが目立ち始めたが、足元では悪化ペースが加速している。直近の指標を確認すると、まず7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は-12.3と予想(+1.5)を大幅に下回った。下振れは4カ月連続で下振れ幅も拡大傾向にある。6月、7月分にいたっては2カ月連続で予想のプラスに反してのマイナスだった。その前に発表されていた7月NY連銀製造業景気指数は+11.1と予想(-2)を上回ったが、6カ月先の景況指数は前月から20pt余りも低下し、-6.2と急低下した。 さらに、米国の製造業・サービス業合わせた7月総合購買担当者指数(PMI)速報値は前月比4.8pt低下の47.5だった。拡大と縮小の境界値である50を約2年ぶりに下回り、新型コロナパンデミックの発生直後である2020年5月以来の低水準となった。前日に発表された6月シカゴ連銀全米活動指数、7月ダラス連銀製造業活動指数も予想を下回って2カ月連続のマイナスに落ち込んでおり、経済指標の悪化ペースや下振れ傾向が強まっている印象が否めない。 こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースを巡っての市場関係者の見方が分かれている。モルガン・スタンレーのストラテジストは景気後退懸念が強まるなかでも、FRBが金融引き締めをやめると想定するのは時期尚早だと指摘している一方、JPモルガン・チェースのストラテジストはインフレがピークに達したとの見方から、FRBは政策転換に踏み切り、株式市場の状況も今年後半には改善すると分析している。 さらに、市場では、早ければ今年12月には利上げが打ち止められるとの期待まで織り込まれつつあるようだ。しかし、筆者としては、JPモルガンの今年後半における市場環境の改善には一部賛同しつつも、12月の利上げ打ち止めはさすがに時期尚早で、個人的にはモルガン・スタンレー側の見方に近い考えだ。 今週末に発表される米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータは前年比+4.7%が予想されているが、これはFRBの目標である+2.0%を依然として大幅に上回っている。仮に目標値を3%に引き上げたとしても、乖離幅はやはり大きい。物価指標の伸びはピークアウトしつつあるとはいえ、FRBが、インフレが目標値を上回っているなか利上げ停止を示唆するとは考えにくい。 雇用統計での平均賃金の伸びは最新6月分時点でもまだ前年比+5.1%と高い水準にある。12月時点で利上げ打ち止めに踏み切れるほどに、ここから大幅な物価指標の伸びの減速が期待できるとは考えにくく、FRBの目標値までインフレが低下するにはかなり時間がかかると推察される。 足元では日米ともに株価指数の底入れ期待が強まりつつ。実際、今週の大型イベントをすべて無難に通過できるのであれば、こうした見方はより一層強まるのだろう。しかし、インフレとFRBの金融政策を巡るやや楽観に傾いた見方は、来月の物価指標が発表されるタイミングなど、どこかで再び修正を迫られる可能性があると意識しておきたい。 後場の日経平均は前日終値を挟んだもみ合いが続きそうだ。アジア市況は堅調だが、ウォルマートの業績下方修正を受けた今晩の米株市場の反応を確認したいほか、スナップチャットやツイッターの決算を機に警戒感が高まっている、明日未明に発表予定のアルファベットの決算を見極めたいとの思惑が強く、積極的な売買は手控えられよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/26 12:14
後場の投資戦略
イベント前に利食い売り及びリスク回避の売り広がる
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27710.72;-203.94TOPIX;1943.10;-12.87[後場の投資戦略] 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後朝方に下げ幅を縮小した。その後は、アジア市況が冴えない展開となったことを横目に軟調もみ合い展開に、前引けにかけては下げ幅をやや広げた。前週末に米ハイテク株安となったことが個人投資家心理にネガティブに働き、東京市場では前週に大幅に上昇した分の利食い売りが優勢となっている。ただ、テクニカル面では、200日移動平均線付近より上方に位置しており、調整の範囲内として捉えられよう。 新興市場も本日は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数も、下落してスタートしたあと軟調もみ合い展開となっている。日経平均よりもやや値幅を伴った下落となっている。新興市場でも前週に大幅に上昇した分の利食い売りが優勢。また、26~27日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。大型イベントを控えるなかバリュエーション面での割高感が意識されやすい東証グロース市場の中小型株はリスク回避の売りも重なっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.11%安、東証マザーズ指数が1.88%安となった。 さて、米国では26~27日にFOMCが開催、26日にマイクロソフト、アルファベット、27日にメタ・プラットフォームズ、28日にアップル、アマゾンなど大型テック企業の決算を控えている。先週決算を発表したネットフリックスやテスラは市場予想を上回る決算で株価は大きく上昇している。FOMCを無難に通過し、GAFAMの決算が堅調に推移していることが確認されると、個人投資家心理にポジティブに働くだろう。 CME FedWatch Toolでは、FF金利を1.00%利上げするとの見方が21.3%まで減少している。市場では0.75ptの利上げが完全に織り込まれており、米6月消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上振れたことで一時1.00ptという超大幅な利上げが警戒されたことから、今回のFOMCでは大きなサプライズは起こりにくいと想定している投資家が多いだろう。 ブルームバーグでは、パウエル議長率いる金融当局はFOMCで2会合連続の0.75ポイント利上げを決めた後、金利引き上げのペースを落とす公算が大きいとみているようだ。ブルームバーグがエコノミスト44人を対象に15−20日に実施した最新調査で、9月20、21両日の会合では利上げ幅を0.5ポイントとし、11月1、2両日および12月13、14両日の年内残りの2会合はいずれも0.25ポイントずつ利上げすると見込まれている。 ただ、今回のパウエル議長の会見などで次回9月会合でも0.75pt以上の利上げに含みを残すような見解が示されると、足元で利上げに対してやや楽観的に傾いてきている分、売りが膨らみそうだ。ひとまず、7月FOMCの動向及びパウエル議長の発言に注視する必要がある。 さて、後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に軟調な展開が続くか。また、大型イベントを控えるなか、リスク回避の売りも重なることを想定しておきたい。テクニカル面では、200日線上方での推移を維持できるか注目しておきたい。
<AK>
2022/07/25 12:13
後場の投資戦略
上昇基調一段と強まるが、来週は最大の山場
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27870.33;+67.33TOPIX;1951.98;+1.39[後場の投資戦略] 日経平均は先週から負けなしの7日続伸で、本日は節目の28000円も視野に入るような動きも見られた。今週は総じて強い動きが続いているが、今日も寄り付き直後から切り返すとほぼ一本調子で上げ幅を広げてきている。日足チャートでは、20日の窓アケを伴った急伸から3本連続で陽線を引き、上値と下値を同時に切り上げる「赤三兵」を示現。200日移動平均線上での推移も3日目となり、基調の転換を窺わせるかのようなチャートに見える。 また、特筆すべきは昨日の海外市場からの動き。ECB定例理事会では事前の予想を上回る0.5ptの大幅利上げに踏み切り、タカ派サプライズとなった。足元のグロース(成長)株のリバウンドに水を差すかと思いきや、欧州でも米国でもネガティブな反応は限られ、米国に至ってはナスダックが大幅に3日続伸するなど逆に強い動きを見せた。 来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)やアップル、アマゾン・ドット・コムなどのGAFAMの注目決算などイベントが目白押しだが、これらを直前にしてもなお強い動きを見せているのには目を見張るものがある。むろん、これまで過度に悲観に傾きすぎていたため、決算発表が本格化する前にポジションを中立に戻しておきたいとする機関投資家による買い戻しに過ぎないといった見方も強い。実際、東証プライム市場の売買代金の推移をみると、日経平均が700円以上も上昇した20日ですら売買代金は3兆円に届いていない。その他の上昇している日もほとんどが2兆円台半ばにとどまっており、7日続伸劇、この間の上昇幅などと比して活況とは言い難い。 しかし、本日は写真・動画共有アプリの米スナップチャットが市場予想を下回る失望的な決算を発表し、ソーシャルメディア関連株が時間外取引で軒並み大幅に下落するという事態が発生していた。時間外取引のナスダック100先物も軟調だったにもかかわらず、そうした中でも、今日の東京市場が全般しっかりしているというのは、単なる買い戻しだけではないのかと疑いたくもなる。 来週、GAFAMの決算で同様の失望的な決算が出ると、さすがにムードが一変しかねないが、無難に通過することができた場合には、相場の底打ち感がより強まったという見方が優勢になってきそうだ。 後場の日経平均は堅調もみ合いか。売り方の買い戻しはいつ止んでもおかしくないが、今日前場までの動きを見る限り、到底後場に崩れるとは考えにくい。香港ハンセン指数なども堅調に推移しており、後場は一段高となる可能性もあろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/22 12:12
後場の投資戦略
200日線挟んだ一進一退で今晩にはECB定例理事会
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27657.53;-22.73TOPIX;1941.00;-5.44[後場の投資戦略] 日経平均は前日の急伸直後とあって伸び悩んでいるが、安値でも27500円を割らず底堅い動きを見せている。日足チャートでは、200日移動平均線を挟んだ水準で一進一退となっている。戻り待ちの売りが根強い一方、同線突破後の一段高を期待する買いも入っているようで、売り買い拮抗といった様相だ。 動画配信サービスのネットフリックスに続いて注目されていた電気自動車メーカーのテスラの決算は、調整後の1株利益が予想を上回った。また、上海での生産拡大を明らかにしたことで、同社株価は時間外取引で上昇した。ただ、バリュエーションの割高感が強く、一時大幅に上昇した後は1%高程度に伸び悩んでいる。 ここまでの米国の主要企業の決算を見る限り、事前の想定よりは良好なものが多い印象だ。来週からはアルファベット、マイクロソフト、アップル、アマゾン・ドットコムなどのいわゆるGAFAMと呼ばれる大型テック企業の決算が予定されており、これらの結果次第ではムードが様変わりする恐れもあるが、事前の警戒感が高かった分、ネガティブショックの可能性は低くなっていそうだ。 日本電産の決算も、外部環境の悪化で利益率は悪化したが、ほとんど想定線で、むしろ、E-Axle(イーアスクル)の出荷台数の引き上げなど好材料があったことがポジティブに捉えられる。株価は前日までに上昇していた反動で売り優勢とはなっているが、2%程度の下落で投資家心理を悪化させるほどでもない。 さて、日経平均はテクニカル面では、下向きの200日線を挟んだ一進一退となっており、このまま下落トレンド脱出の初動を辿るのか、それとも下落トレンドが延長されるのか、短期的な勝負所を迎えているといえる。こうした中、今晩には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が予定されている。もともと今会合では0.25ptの利上げがコンセンサスとして予想されていたが、今週に入ってから急遽、事情に詳しい関係者からの情報として、0.5ptの利上げ実施の可能性が台頭してきた。仮に0.5ptの利上げが実施されるとなるとタカ派サプライズとなり、足元の株式市場のリバウンドに水を差すことになる。今晩のECB定例理事会は今週最大の注目イベントといってもよく、後場の東京市場は様子見ムードが広がりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/21 12:11
後場の投資戦略
悪材料耐性や需給状況から28000円窺う展開か
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;27599.52;+637.84TOPIX;1939.87;+37.08[後場の投資戦略] 日経平均は久々の大幅高で一気に27500円台を回復してきている。日足チャートでは200日移動平均線が位置する27600円台まで一時戻した格好だ。上げ幅は軽く600円を超えており、非常に強い動きとも言える一方、27500円を回復したことで、水準的には戻り一服感が今まで以上に強まってくる。また、下向きの200日線手前まで上昇したところからも、ここからは一段と戻り待ちの売りが強く出てくることが意識される。この先は、今日から本格化していく日米主要企業の決算次第だろう。 バンク・オブ・アメリカ(BofA)の最新の月次ファンドマネジャー調査によると、ポートフォリオに占める株式比率は2008年10月以来の最低水準となった一方、現金の比率は2001年以来の最高水準になったという。また、景気後退を予想する割合は新型コロナ・パンデミックの発生直後である2020年5月以来の最高水準にまで達したという。 完全に総悲観に傾くなか、需給状況は軽く、わずかな好材料をきっかけに大きく上昇しやすい状況といえる。足元で新たに確認された好材料としては、ロシアが天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州へのガス輸出を21日に再開する見通しと伝わったことのほか、警戒されていた動画配信サービスのネットフリックスの決算が想定程は悪くなく、同社株が時間外取引で大きく上昇していることなどだろう。 ただ、ロシアによる揺さぶりがこれで終わったとは到底考えづらい。また、ネットフリックスの決算では、サブスクリプション会員数が97万人の減少と、予想の200万人の減少より小幅にとどまったことが好感されたわけだが、普通に考えて2四半期連続での会員数減少はグロース株として失格の内容だろう。期待値がすでに低い分、今後出てくる決算に対しても同様の反応が想定されるが、決算内容にポジティブな要素は見出しづらい場面が続きそうだ。 需給状況が軽いことや、来週に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)については1.00ptという最悪のシナリオを既にいったん織り込んだ経緯もあり、日経平均については28000円に向かう展開もあるだろう。ただ、そこからのアップサイドにはさすがに材料不足といえ、現在の株価水準からの上昇幅はせいぜい500円程に限られる可能性が高いことを考えると、上値追いには慎重になりたい。 後場の日経平均は堅調か。ナスダック100先物が堅調で、香港ハンセン指数も大幅に上昇しているなか、高値圏で底堅い展開が想定される。一方、本日の引け後に決算を発表する日本電産<6594>や、今晩の米国市場で決算発表予定の米電気自動車テスラの結果を見極めたいとの思惑から、上値追いは限られるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/20 12:10
後場の投資戦略
長期期待インフレ率の低下で買い戻しも懸念要素もちらほら
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26977.37;+188.90TOPIX;1901.85;+9.35[後場の投資戦略] 連休明けの日経平均は素直に堅調とは言い難い動きとなっている。度々27000円台に乗せて強さを見せたかと思いきや、乗せた直後には必ず失速してすぐに同水準を割り込む動きを繰り返しており、むしろ、上値の重さが目立つような印象だ。日足チャートでは上値抵抗線だった75日移動平均線を上回ってきており、テクニカル面では需給の好転が意識されやすいものの、6月28日に付けた高値27062.31円には届いておらず、上値切り下げ形状を明確に脱したとは言いにくい。 本日の一部ハイテク・グロース株の堅調さの背景にあるのは、やはり先週末の米7月ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の低下が大きいか。5-10年先期待インフレ率は2.8%と前月の3.1%から1年ぶりの低水準にまで低下した。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った要因の一つがこの期待インフレ率だっただけに、インフレ懸念を和らげる内容で、目先の安心感を誘っていると推察される。 しかし、同調査によると、ガソリン価格の低下を背景に現況指数が57.1へと大きく改善した一方、先行きを示す期待指数は47.3と1980年以来の低水準にまで低下。インフレ・大幅利上げに対する懸念の後退が示唆される一方、景気後退懸念はむしろ強まったと言える内容だった。 また、現況指数の改善に繋がったガソリン価格についても油断はできない。先週末、バイデン米大統領はサウジアラビアでサルマン国王らと会談し、原油の増産を要請した。ただ、今会談では具体的な増産方針は明らかにされておらず、再び原油先物価格が上昇に転じる可能性が残されている。 さらに、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止められているが、この定期検査の期限は21日とされており、供給が再開されるか否かが注目されている。そうした中、ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが欧州の買い手数社に対して不可抗力条項を宣言したと伝わっている。 通常、不可抗力条項は自然災害などの予期せぬ事態が発生した場合に宣言されるもので、不可抗力条項を過去にさかのぼって発動するのは異例だという。今回のガスプロムの行動は、ガス供給の制限を継続するシグナルを送っている可能性があるともされており、早くも警戒感が高まっている。 そのほか、米ゴールドマン・サックスやアップルが採用計画の縮小を発表していることも気掛かり。直近、アルファベットやメタ・プラットフォームズなども採用ペースを減速させているほか、マイクロソフトやテスラに至っては人員削減にも乗り出している。これまで堅調とされてきた米国経済を支えてきた労働市場には引き続き黄色信号が灯っているといえよう。 景気後退懸念が強まる一方、インフレ・大幅利上げへの警戒感が後退しているなか、ハイテク・グロース株が相対的に強い足元の物色動向はある意味で合点がいくが、しかし、こちらもリスク要素はある。今晩は動画配信サービスの米ネットフリックスが決算発表を予定している。同社は前回決算の際に会員数の減少を発表。成長期待のはく落により株価が急落し、投資家心理を大いに冷やした。今回も同様に低調な決算となれば、足元で台頭しているグロース株の復調に冷や水を浴びせることになりかねない。 後場の日経平均は上値の重い展開か。米ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の注目度は高かっただけに、前場はイベン通過によるあく抜け感で買い戻しが優勢になったとみられる。しかし、引き続き27000円を明確に上抜けるには材料不足であるほか、買い戻しが一巡してくれば再び売りが優勢になる可能性がある。明日以降の日米注目企業の決算も前に、積極的な買いは手控えられるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/19 12:17
後場の投資戦略
インフレピークアウト期待の背景とそのリスク
[日経平均株価・TOPIX(表)]日経平均;26797.47;+154.08TOPIX;1892.77;-0.36[後場の投資戦略] 前日の米株市場は大きく下げて始まった後にFRBのウォラー理事とセントルイス連銀のブラード総裁の1.00ptの利上げは時期尚早との見解を受けて、大幅利上げへの過度な警戒感が後退する形で、急速に下げ渋った。しかし、ウォラー理事はデータ次第で1.00ptの利上げにオープンな姿勢も見せており、今晩発表される米7月ミシガン大学消費者マインド指数の期待インフレ率や、小売売上高などの結果次第では再び1.00ptの利上げ確率が高まる可能性がある。 一昨日から昨日にかけて発表された米国の消費者物価指数(CPI)とPPIはともに市場予想を大幅に上回った。それでも、相場が大きく下落していないのは、今回の発表分である6月分がピークとの期待が根強いからだろう。実際、エネルギー・穀物などの幅広いコモディティ価格が明確な下落基調を辿っている。CPI6月分の上振れの主要因の一つでもある米国のガソリン価格も、原油先物価格の下落や需要鈍化への思惑から足元で小幅ながら低下に転じてきている。 米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景気指数の項目の一つである入荷遅延は一時拡大と縮小の境界値である50を大幅に上回る80近い水準にあったが、6月分では57と大幅に低下してきた。また、物流網の逼迫で高騰していたコンテナ船運賃についても、北米を結ぶ主要8つのコンテナ航路の運賃を示す総合指数「World Container Index」が明確に下落基調にあり、昨年秋に付けた高値から足元では3割以上も下落している。 こうした背景から、インフレピークアウト期待が根強いのも頷けるところがある。一方で、注意しなければならない点もいつくかある。まず、足元でようやく下落してきている原油先物価格だが、再び上昇に転じる可能性は拭い切れない。「脱炭素」などの機運が高まるなか、石油業界ではここ数年、新規の設備投資が抑えられてきた。また、6月に開催された石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国の主要産油国で構成する「OPECプラス」では増産幅の拡大が決定されたが、供給不足を解消するには“焼け石に水”に過ぎない。 さらに、現状、増産はサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の2国に依存しており、他の多くの産油国は生産設備のキャパシティーの問題や政治上の問題から、むしろ、生産計画の未達が目立っている。このため、景気後退による需要鈍化が供給不足を解消するに至らないことがクローズアップされてくれば、原油先物価格が再び上昇する恐れがある。 もう一つは米CPIの構成比で3分の1と最大の割合を占める住居費の動向だ。帰属家賃などで構成されるこの項目は住宅ローン金利や住宅価格に遅れて動く傾向がある。米国では30年物の住宅ローン固定金利が昨年末から今年6月までの間に87%も上昇した。この住宅ローン金利の上昇が効く形で、6月下旬に発表された4月分の指標から、上昇が続いていた米国住宅価格にも減速の兆しが見られはじめた。 しかし、帰属家賃などから構成されるCPIの住居費は住宅価格の指標から約1年程遅れて動く傾向があり、CPIの最大構成項目である住居費が減速するには来年前半まで待つ必要がありそうだ。この間に、ガソリンなどの他の生活必需品の価格が大きく減速をしてくれれば、CPI全体では伸びの鈍化が期待できるが、そうならなければ、遅行性のある住居費の上昇と相まってCPIの高止まりが長期化するリスクがある。 このため、CPIのピークアウト説が実現するには原油先物価格の動向が大きな鍵を握っているといえる。そうした意味では、現在、中東各国を歴訪しているバイデン米大統領のサウジアラビアとの交渉が注目される。また、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止めているが、この定期検査の期限は7月21日とされている。デッドラインを迎える来週のこの日に、仮に供給停止が続けられるとなると、欧州のエネルギー価格の高騰に繋がり、世界的なインフレ懸念の再燃や一層の景気後退懸念に繋がりかねない。 今月26~27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)までは神経質な場面が多数あり、インフレピークアウト期待のもとグロース株の買いなどに転じたい気持ちもあるかもしれないが、今はまだ焦る気持ちを抑える場面だと考える。少なくとも、FOMCを通過し、日米主要企業の4-6月期決算が一巡する8月上旬頃までは様子見に徹するのが肝要だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/15 12:18