後場の投資戦略
「米金融引き締め」と「コロナ禍」懸念
配信日時:2022/04/07 12:28
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;26803.34;-546.96TOPIX;1884.41;-38.50
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は大幅続落し、500円を超える下落で前場を折り返した。朝方下げ幅を広げると26800円台での軟調もみ合いが続き、押し目買いの動きが乏しい印象を与えるだろう。日足チャートでは、前日に27400円近辺に位置する75日移動平均線を割り込むと、本日の大幅続落で26700円台に位置する25日移動平均線近くまで調整。売買代金上位では半導体関連などの値がさグロース(成長)株、業種別騰落率では市況関連セクターを中心に軟調ぶりが目立つ。グロース株、景気敏感株ともに手掛けづらく、逃避資金がディフェンシブ色の強い(景気の影響を受けにくい)医薬品株に向いた格好だろう。前引けの日経平均が-2.00%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)も-2.00%。
ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆3000億円あまりで、ここ2日とおおむね同水準となっている。
新興株ではマザーズ指数が-3.66%と大幅続落。こちらも節目の800ptや同水準に位置する75日移動平均線を割り込んできた。前日の後場には押し目買いが入り下げ渋る動きを見せたが、本日はここまで弱含みの展開となっている。時価総額トップのメルカリ<4385>が-3.96%、売買代金トップのJTOWER<4485>が-8.62%となるなど全般軟調で、物色の矛先が向いている銘柄は限られる印象だ。
さて、3月FOMC議事要旨では量的引き締め(QT)について月950億ドルを上限として資産縮小していくことや、0.5ptの利上げについて年内1回以上の実施が正当化されるとの見方が示された。ただ、金融市場ではQTについて月1000億ドル規模、利上げについても複数会合で0.5ptとなることが見込まれていたうえ、直前にはブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事らからタカ派的な発言が出ていたため、想定内と言えば想定内の内容と言えるだろう。実際、米国債市場では6日、10年物国債利回りが2.60%(+0.06pt)に上昇する一方で、金融政策の影響を受けやすい2年物については2.47%(-0.04pt)に低下。10年金利も一時2.66%まで上昇してからは伸び悩んだ。
もっとも、急ピッチの金融引き締めが想定されているのに変わりはない。また、「QTに上限を設けるべきでない」との意見も出てきており、更なる引き締め加速への懸念も拭いづらいだろう。なにより、急ピッチの金融引き締めをかなり織り込んでいた債券市場と比べ、株式市場では直近、新興グロース株が賑わうなどやや楽観に傾いていた面もある(5日の当欄「米『ミーム株』と日本の新興株」などを参照頂きたい)。
「長短金利の逆転より、スティープニング(傾斜化)しつつも長期金利が切り上がる方が米株にはネガティブでは」といった声が聞かれたが、将来収益に基づき株価形成される新興グロース株の賑わいに水を差すという点では頷ける指摘である。
このタイミングで新型コロナ感染再拡大に警戒せざるを得ない報道が相次いで出ているのも、短期の株価トレンドを悪化させそうだ。前日開催された厚生労働省の専門家会合では新規感染者数の増加に伴い「療養者数も増加傾向に転じている」との分析が示された。一部専門家は「第7波が既に開始している」とも指摘しているという。また、英国で確認された新変異株「オミクロンXE」は強い感染力を持つとされており、ロックダウンを強いられている中国でも新たな亜型が見つかったもようだ。しかし、コロナ禍による経済減速懸念が広がっても、FRBの姿勢を踏まえると金融引き締めの緩和期待は持ちにくいだろう。財需要や供給制約が持続し、インフレ圧力を強めるとの懸念が拭えない。
前引けのTOPIX下落率が2%に達し、後場は日銀による上場投資信託(ETF)買い実施観測が相場の下支えとなるだろう。それでも世界経済の先行き懸念は拭えず、戻りは限定的とみておきたい。なお、本日は小売企業を中心に決算発表が多くあるため、これらの内容も注視しておく必要があるだろう。
(小林大純)
<AK>
日経平均;26803.34;-546.96TOPIX;1884.41;-38.50
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は大幅続落し、500円を超える下落で前場を折り返した。朝方下げ幅を広げると26800円台での軟調もみ合いが続き、押し目買いの動きが乏しい印象を与えるだろう。日足チャートでは、前日に27400円近辺に位置する75日移動平均線を割り込むと、本日の大幅続落で26700円台に位置する25日移動平均線近くまで調整。売買代金上位では半導体関連などの値がさグロース(成長)株、業種別騰落率では市況関連セクターを中心に軟調ぶりが目立つ。グロース株、景気敏感株ともに手掛けづらく、逃避資金がディフェンシブ色の強い(景気の影響を受けにくい)医薬品株に向いた格好だろう。前引けの日経平均が-2.00%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)も-2.00%。
ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆3000億円あまりで、ここ2日とおおむね同水準となっている。
新興株ではマザーズ指数が-3.66%と大幅続落。こちらも節目の800ptや同水準に位置する75日移動平均線を割り込んできた。前日の後場には押し目買いが入り下げ渋る動きを見せたが、本日はここまで弱含みの展開となっている。時価総額トップのメルカリ<4385>が-3.96%、売買代金トップのJTOWER<4485>が-8.62%となるなど全般軟調で、物色の矛先が向いている銘柄は限られる印象だ。
さて、3月FOMC議事要旨では量的引き締め(QT)について月950億ドルを上限として資産縮小していくことや、0.5ptの利上げについて年内1回以上の実施が正当化されるとの見方が示された。ただ、金融市場ではQTについて月1000億ドル規模、利上げについても複数会合で0.5ptとなることが見込まれていたうえ、直前にはブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事らからタカ派的な発言が出ていたため、想定内と言えば想定内の内容と言えるだろう。実際、米国債市場では6日、10年物国債利回りが2.60%(+0.06pt)に上昇する一方で、金融政策の影響を受けやすい2年物については2.47%(-0.04pt)に低下。10年金利も一時2.66%まで上昇してからは伸び悩んだ。
もっとも、急ピッチの金融引き締めが想定されているのに変わりはない。また、「QTに上限を設けるべきでない」との意見も出てきており、更なる引き締め加速への懸念も拭いづらいだろう。なにより、急ピッチの金融引き締めをかなり織り込んでいた債券市場と比べ、株式市場では直近、新興グロース株が賑わうなどやや楽観に傾いていた面もある(5日の当欄「米『ミーム株』と日本の新興株」などを参照頂きたい)。
「長短金利の逆転より、スティープニング(傾斜化)しつつも長期金利が切り上がる方が米株にはネガティブでは」といった声が聞かれたが、将来収益に基づき株価形成される新興グロース株の賑わいに水を差すという点では頷ける指摘である。
このタイミングで新型コロナ感染再拡大に警戒せざるを得ない報道が相次いで出ているのも、短期の株価トレンドを悪化させそうだ。前日開催された厚生労働省の専門家会合では新規感染者数の増加に伴い「療養者数も増加傾向に転じている」との分析が示された。一部専門家は「第7波が既に開始している」とも指摘しているという。また、英国で確認された新変異株「オミクロンXE」は強い感染力を持つとされており、ロックダウンを強いられている中国でも新たな亜型が見つかったもようだ。しかし、コロナ禍による経済減速懸念が広がっても、FRBの姿勢を踏まえると金融引き締めの緩和期待は持ちにくいだろう。財需要や供給制約が持続し、インフレ圧力を強めるとの懸念が拭えない。
前引けのTOPIX下落率が2%に達し、後場は日銀による上場投資信託(ETF)買い実施観測が相場の下支えとなるだろう。それでも世界経済の先行き懸念は拭えず、戻りは限定的とみておきたい。なお、本日は小売企業を中心に決算発表が多くあるため、これらの内容も注視しておく必要があるだろう。
(小林大純)
<AK>
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