後場の投資戦略
前提覆り買い場探しは当面先か
配信日時:2022/06/14 12:12
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;26446.82;-540.62TOPIX;1871.52;-29.54
[後場の投資戦略]
前日の米株式市場は急落し、大幅に3日続落。ナスダックは先週9日から3営業日連続で大幅な下落率が続いている。主要株価3指数は揃って3営業日連続で引けにかけて下げ幅を広げる動きとなっており、売り圧力は相当強いと窺える。
米5月消費者物価指数(CPI)の発表直前まで、インフレピークアウト論を唱える強気派が多かったことを踏まえると、前提が覆されたことによる見直しが1、2日程度で終わるとは考えづらく、調整は長引くと想定しておいた方がよさそうだ。
これまで、今晩から開催される6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5ptの利上げが100%の確率で予測されていたが、米5月CPIの上振れに加えて、昨日のウォールストリートジャーナル紙の報道も手伝い、足元では急速に0.75ptの利上げを織り込む動きが強まっている(90%の確率まで織り込み進展)。大手金融機関も相次いで6月利上げ幅の予測を0.5ptから0.75ptに引き上げている。さらに、思い切って1.0ptの利上げを一気に実施するべきなどという極端な見解も出てきているようだ。
ただ、市場にサプライズをもたらすことを避けたいと考えるパウエルFRB議長は、これまで事前に市場への織り込みを進め、実際のFOMCでは予想通りの結果をもたらすという方法を長らく採用してきた。そのため、実際問題として現時点で0.75ptの利上げが必要であったとしても、FRBがこれまでアナウンスしてきた0.5ptの利上げを上回る利上げ幅を突如として行うことは躊躇するはず。そうでなければ、FRBの市場とのコミュニケーションに対する信頼性がなくなり、今後のFRBによるアナウンスメント効果は大幅に低下することになる。
そういう意味では、今の市場の利上げを巡る織り込みは急激すぎるといえ、6月FOMCの公表結果が市場予想を超えてタカ派になる可能性は低いと考えられる。しかし、それではFOMC前後が買い場になるのかと問われれば、それは別問題であり、個人的にはそれに対する回答は「No」だと考える。
6月FOMCで0.75ptの利上げがなくても、インフレピークアウト期待が消失した今、今後の7、9月会合での0.75ptの利上げ確率は十分に高いだろう。何より、今まで3月でピークアウトしたと思っていたインフレが実際にはピークアウトしておらず、前提が覆ってしまっている。そして、いつピークアウトするのかはもはや誰にも分からない状態だ。この大いなる不透明感がくすぶる限り、FRBの政策方針を巡っても不透明感は根強く残り、市場の思惑は絶えず続くだろう。こうしたコンセンサスが形成されえない状況そのものが相場にとって非常にネガティブなのであり、こうした中ではFOMCイベント通過後もあく抜け感は高まりづらいだろう。
そもそも、足元の米国のインフレ率は前年比で+8.6%、変動の激しい品目を除いたコア指数でも+6.0%という歴史的な高水準だ。これが当面続くか、もしくは再加速する可能性もあるなか、足元の政策金利はわずか1.00%。6月に0.5pt~0.75ptの利上げを実施したとしても、2%未満であり、インフレ率を大幅に下回った状態が続く。この状態でインフレがピークアウトすると考えること自体がナンセンスともいえ、現時点で値ごろ感だけで「そろそろ買いだろう」と判断することは非常に危うい。
米10年債利回りは前日に3.37%まで急上昇し、約11年ぶりの高水準を記録した。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
は2.74%(前日比-0.02pt)とむしろ低下。4月21日に付けた3.02%を依然として大きく下回っている。期待インフレ率が急騰していないことは、市場はまだFRBが完全にインフレを制御できなくなるという最悪のシナリオを織り込んでいない証左といえる。
そういう意味では、中央銀行の信任がまだかろうじて維持されているともいえる。
しかし、名目金利が大きく上昇する一方で期待インフレ率が伸びていないことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利(10年物)は13日時点で0.63%と急激に上昇する形となっている。実質金利の大幅上昇が株式のバリュエーション面での重石になることは明らかで、FRBの利上げペース加速を織り込む動きが当面続くとなると、実質金利の一段の上昇を通じた株式のバリュエーション調整による深押しが警戒されよう。
後場の日経平均は安値圏でのもみ合いが続きそうだ。ナスダック100先物が堅調推移を続けていることで、今晩の米株市場での自律反発期待もあろうが、アジア市況は総じて軟調。時間外取引のナスダック100先物の動きもあまり当てにならない。今晩には米5月卸売物価指数(PPI)の発表を控えていることもあり、積極的な買い戻しは期待できないだろう。
(仲村幸浩)
<AK>
日経平均;26446.82;-540.62TOPIX;1871.52;-29.54
[後場の投資戦略]
前日の米株式市場は急落し、大幅に3日続落。ナスダックは先週9日から3営業日連続で大幅な下落率が続いている。主要株価3指数は揃って3営業日連続で引けにかけて下げ幅を広げる動きとなっており、売り圧力は相当強いと窺える。
米5月消費者物価指数(CPI)の発表直前まで、インフレピークアウト論を唱える強気派が多かったことを踏まえると、前提が覆されたことによる見直しが1、2日程度で終わるとは考えづらく、調整は長引くと想定しておいた方がよさそうだ。
これまで、今晩から開催される6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5ptの利上げが100%の確率で予測されていたが、米5月CPIの上振れに加えて、昨日のウォールストリートジャーナル紙の報道も手伝い、足元では急速に0.75ptの利上げを織り込む動きが強まっている(90%の確率まで織り込み進展)。大手金融機関も相次いで6月利上げ幅の予測を0.5ptから0.75ptに引き上げている。さらに、思い切って1.0ptの利上げを一気に実施するべきなどという極端な見解も出てきているようだ。
ただ、市場にサプライズをもたらすことを避けたいと考えるパウエルFRB議長は、これまで事前に市場への織り込みを進め、実際のFOMCでは予想通りの結果をもたらすという方法を長らく採用してきた。そのため、実際問題として現時点で0.75ptの利上げが必要であったとしても、FRBがこれまでアナウンスしてきた0.5ptの利上げを上回る利上げ幅を突如として行うことは躊躇するはず。そうでなければ、FRBの市場とのコミュニケーションに対する信頼性がなくなり、今後のFRBによるアナウンスメント効果は大幅に低下することになる。
そういう意味では、今の市場の利上げを巡る織り込みは急激すぎるといえ、6月FOMCの公表結果が市場予想を超えてタカ派になる可能性は低いと考えられる。しかし、それではFOMC前後が買い場になるのかと問われれば、それは別問題であり、個人的にはそれに対する回答は「No」だと考える。
6月FOMCで0.75ptの利上げがなくても、インフレピークアウト期待が消失した今、今後の7、9月会合での0.75ptの利上げ確率は十分に高いだろう。何より、今まで3月でピークアウトしたと思っていたインフレが実際にはピークアウトしておらず、前提が覆ってしまっている。そして、いつピークアウトするのかはもはや誰にも分からない状態だ。この大いなる不透明感がくすぶる限り、FRBの政策方針を巡っても不透明感は根強く残り、市場の思惑は絶えず続くだろう。こうしたコンセンサスが形成されえない状況そのものが相場にとって非常にネガティブなのであり、こうした中ではFOMCイベント通過後もあく抜け感は高まりづらいだろう。
そもそも、足元の米国のインフレ率は前年比で+8.6%、変動の激しい品目を除いたコア指数でも+6.0%という歴史的な高水準だ。これが当面続くか、もしくは再加速する可能性もあるなか、足元の政策金利はわずか1.00%。6月に0.5pt~0.75ptの利上げを実施したとしても、2%未満であり、インフレ率を大幅に下回った状態が続く。この状態でインフレがピークアウトすると考えること自体がナンセンスともいえ、現時点で値ごろ感だけで「そろそろ買いだろう」と判断することは非常に危うい。
米10年債利回りは前日に3.37%まで急上昇し、約11年ぶりの高水準を記録した。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
は2.74%(前日比-0.02pt)とむしろ低下。4月21日に付けた3.02%を依然として大きく下回っている。期待インフレ率が急騰していないことは、市場はまだFRBが完全にインフレを制御できなくなるという最悪のシナリオを織り込んでいない証左といえる。
そういう意味では、中央銀行の信任がまだかろうじて維持されているともいえる。
しかし、名目金利が大きく上昇する一方で期待インフレ率が伸びていないことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利(10年物)は13日時点で0.63%と急激に上昇する形となっている。実質金利の大幅上昇が株式のバリュエーション面での重石になることは明らかで、FRBの利上げペース加速を織り込む動きが当面続くとなると、実質金利の一段の上昇を通じた株式のバリュエーション調整による深押しが警戒されよう。
後場の日経平均は安値圏でのもみ合いが続きそうだ。ナスダック100先物が堅調推移を続けていることで、今晩の米株市場での自律反発期待もあろうが、アジア市況は総じて軟調。時間外取引のナスダック100先物の動きもあまり当てにならない。今晩には米5月卸売物価指数(PPI)の発表を控えていることもあり、積極的な買い戻しは期待できないだろう。
(仲村幸浩)
<AK>
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