後場の投資戦略

景気後退・円高が重荷、利上げ減速期待を裏切りそうな材料も

配信日時:2022/07/29 12:20 配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;27944.55;+129.07TOPIX;1949.23;+0.38


[後場の投資戦略]

 本日も日経平均は心理的な節目の28000円を手前に上値の重い展開。米連邦公開市場委員会(FOMC)直後に上昇しても翌日以降に失速することが多かった米株式市場は、今回は2日目の前日もしっかりと続伸した。また、GAFAM決算で最後に残っていたアップルとアマゾンが共に予想を上回る決算を発表したことで、時間外取引のナスダック100先物も大きく上昇している。そうした追い風がある中でも、日経平均が28000円を明確に超えられないのは気になる動きだ。

 また、気掛かりな要素は他にもある。米4-6月期GDPは2四半期連続でマイナス成長となった。欧州や米国での経済指標の下振れが相次いでおり、悪化ペースも速い。一段と景気後退懸念が強まっていることで、米10年債利回りの低下基調も続いている。グローバル景気敏感株とも称される日本株が、これだけ景気後退懸念が強まるなか、そしてこれから欧米諸国が景気後退を迎えようとする中、買われづらくなるのは当然なのかもしれない。

 日本株の底上げに繋がってきた為替も、一時1ドル=139円まで進んだドル・円は足元で134円台にまで下落してきている。貿易赤字を通じた実需筋による円売り・ドル買いもあるため、大幅な円高・ドル安は想定しにくいが、投機筋による売買も多いため、ポジション調整が続けば、節目の130円くらいまでは下落余地があると考えられる。少なくとも、これまで独自の日本株高の背景として挙げられてきた円安・ドル高に明確なピークアウト感が見られていることは懸念材料で、欧米対比での日本株の底堅さが見られることはなくなっていく可能性が高いだろう。

 力強い動きが続いている米国株も、主要株価3指数は前日時点で遂に100日移動平均線近辺まで戻してきた。今年前半のリバウンド局面ではいずれもこの100日線が戻り一服の目処になってきたことで、そろそろ売り方の買い戻しも一巡してくる頃合いと考えられる。FOMC結果公表があった当日には買い戻しだけでなく、軽い新規買いも入っていたとの声も聞かれたが、当日の株式取引量は過去3回のFOMC当日の取引量と比較して25~35%程少なかった。決算発表が本格化する中でのFOMCとしてはかなり少ないといえる。株式市場は上に行きたがっている様子が窺えるものの、そのエネルギーは余力に乏しそうだ。

 企業決算もテクノロジー株が底堅い一方、日本株全体との連動性が高い景気敏感株については軟調なものが多い印象。特に上値の重いのが半導体を中心とした電子部品周り。米インテルの4-6月期決算は市場予想を大きく下回り、通期計画も下方修正された。東京市場でも、ルネサスが好調な決算ながらも需要ピークアウトへの警戒感から本日、株価が急落している。鉱工業生産の動向から代わりに自動車の挽回生産なども期待されるが、指数インパクトの大きい銘柄は電気機器セクターに多いため、こうした点も、日本株全体の重荷になる。

 また、気掛かりなのはやはり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速への期待感を高めつつある市場の動向だ。パウエルFRB議長が今後の利上げ幅は「経済データ次第」としたことで、市場は足元の景気指標の下振れを利上げペース減速の根拠として捉えているが、経済データは景気指標だけでない。むしろ、FRBは依然としてインフレ抑制を最優先事項として掲げているわけであるから、物価指標の影響の方が大きいだろう。

 その物価指標では、今晩、米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータが発表される。投資家の物価指標の注目は既に7月分に移っているため、波乱材料にはならないだろう。しかし、一方でその次回7月分を巡っては懸念要素が出てきている。前日に発表されたドイツの7月消費者物価指数(CPI)は欧州連合(EU)基準で前年同月比+8.5%
となり、前月(+8.2%)から加速、低下を見込んでいた市場予想(+8.1%)に反して大幅に上昇した。

 欧州ではロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働問題などを背景に天然ガスの価格が急騰していることもあるが、米国でも猛暑に伴う冷房需要を背景に天然ガスの価格は大幅に上昇している。さらに、強気派が挙げていた資源価格の下落も、その後ほとんど進んでいない。むしろ、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月物)原油先物価格は14日に一時1バレル=88ドルまで下落した後は、足元で再び100ドルを窺う水準まで戻している。さらに、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、4月21日高値3.02%から7月6日安値2.29%まで大幅に低下した後、実は足元では2.48%へと大きく上昇に転じてきている。

 こうしたところから、インフレピークアウトを先取りしすぎた動きには危うさが伴い、米国の7月CPIが近づく場面では、警戒が必要だろう。一方で底入れ感が強まっているマザーズ指数の構成銘柄では、メドレー<4480>やクラウドワークス<3900>など年初来高値を更新している個別株も多い。こうした銘柄群は、今後再び相場が調整した際でも、底堅さが意識され、次回のリバウンド局面では真っ先に高値を更新することが期待される。先行き慎重ながらも個別株の選別を極めていくことが重要なタイミングと言えそうだ。
(仲村幸浩)
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