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NYの視点:米2022年下半期利上げの軌道=パウエル議長証言
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は上院銀行委での証言で最近のオミクロン変異株によりサプライチェーンの混乱がさらに悪化し、労働市場の回復にも影響を与える可能性に言及した。さらに、インフレ見通しの不確実性を高めるとした。同時に、インフレ高進が広範に及び、「リスクが高まった」と言及。持続的なインフレ高進の脅威が拡大しつつあると警告した。また、議員の質問に、「インフレが「一過性」との文言を撤回する時期」と答え、高インフレがもはや一時的ではないと懸念を表明した。11月FOMC以降のデータもインフレの上昇が示されていると説明した。経済は強く、インフレ圧力が強まっており、数カ月早く資産購入縮小を終了することが可能だとの見解で12月のFOMCでテーパー加速の選択肢を協議する計画も明らかにした。インフレ高進の定着を防ぐために手段を用いると表明。■資産購入縮小の速度現行ペース:月‐150億ドル、5月終了月‐200億ドル、4月終了月—300億ドル、2月終了テーパーペースが現行の2倍となった場合は2月に資産購入縮小終了し、3月から5月にかけて利上げの選択肢が広がる。新型コロナの新たな変異株、オミクロンの不透明感が強いが、FRBはQE縮小を来年春にも終了し、2022年下半期に利上げを開始する軌道にあることが確認された。金利先物市場では22年の2回の利上げを織り込んだ。今後もドル支援材料となると考えられる。
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2021/12/01 07:33
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イビデンを対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(30日10:03時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つ東京エレクトロン<8035>プット269回 1月 50,000円を逆張り、三井金属鉱業<5706>コール71回 1月 4,350円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては東京エレクトロンコール322回 1月 65,000円、Inpex<1605>コール228回 1月 950円、JPモルガン・チェースコール66回 1月 170米ドル、エクソン・モービルコール47回 12月 60米ドルなどが見られる。上昇率上位はイビデン<4062>コール111回 12月 8,100円(+69.7%)、日立建機<6305>コール91回 12月 4,200円(+66.7%)、ローム<6963>コール38回 12月 12,500円(+61.5%)、オリンパス<7733>コール42回 12月 2,750円(+59.1%)、日立建機コール90回 12月 3,700円(+58.3%)などとなっている。(カイカ証券)
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2021/11/30 10:35
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ジレンマに立つアメリカ−QUADとロシア−【実業之日本フォーラム】
米中対立が激化する中で、アメリカ、日本、オーストラリア及びインドの4カ国からなるQUADの存在意義が拡大しつつある。2021年9月には従来の閣僚級会合から首脳級会合に格上げされ、対中包囲網と位置付ける報道も多い。しかしながら、インドの立ち位置は、他の3カ国と微妙に異なる。インドは上海協力機構(The Shanghai Cooperation Organization)の構成国でもあり、中央アジアにおけるイスラム過激派への脅威認識は、中国、ロシアと共有している(本フォーラム「インドの立ち位置、上海協力機構とQUAD」2021.01.07参照)。さらに、インドが他の3カ国と大きく異なる点は、冷戦時代から旧ソ連及び現ロシアと軍の装備面で深いつながりがあることである。軍事専門誌SIPRI YEARBOOK 2021によると、2010年から2020年にかけて、ロシアからインドに大量の装備武器が売却されている。陸軍では、主力戦車としてT-90Sが700両以上、海軍では建造途中のキエフ級空母(現ビクラーマーディティヤ)、アクラII級攻撃型原子力潜水艦(現チャクラII:10年間のリース)、艦載機MiG-29SMT66機、空軍は主力戦闘機Su-30MK200機以上となっている。さらには、ロシアのSS-N-26ヤホント対艦ミサイルをベースとした対艦ミサイル、ブラモスの共同開発を行っている。2010年以前にキロ級潜水艦10隻を購入しており、その実績をもとにベトナム海軍が導入したキロ級潜水艦の教育訓練を実施すると伝えられている。このことは、単に装備の導入にとどまらず、その運用法に至るまでロシアの強い影響下にあることを示すものである。これに対しアメリカはインドと、2002年に情報保護協定GSOMIA(General Security of Military Information Agreement)を、2016年に燃料や物品の相互融通を規定するLEMOA(Logistics Exchange Memorandum of agreement)を、そして2018年には相互の通信に係る協定であるCOMCASA(Communications Compatibility and Security Agreement)を締結、軍事協力関係を強化しつつある。しかしながら、米国からの武器輸出が本格化したのは、2015年以降であり、その内容もP-8哨戒機4機、AH-64攻撃ヘリ28機、チヌーク輸送ヘリ15機、対潜ヘリ24機、無人機(プレデター)2機などである。インド軍の主力装備が依然としてロシア製で占められている現状に変化はない。最近、インドのロシア製防空ミサイルS−400の導入に注目が集まっている。インドは、パキスタン及び中国からの弾道ミサイルや航空機の脅威に対処することを目的として、2018年にロシアとS-400を5個セット、54億3千万ドルで購入する契約を結んだ。11月26日のIndian Express紙は、インドへのS-400の導入が開始され、今年度中には実戦配備されるであろうと伝えている。同紙は、米国製パトリオットがキネティク(直接弾道ミサイルに衝突するエネルギー効果を利用して弾道ミサイルを破壊する)弾頭を備えた、弾道ミサイル対処専用ミサイルであるのに対し、S-400はドローン、航空機、巡航ミサイルそして弾道ミサイルと広範囲の目標に対処できることに加え、1個セットの価格がパトリオットの10億USドルに対し、その半額の5億USドルであることがS-400の導入を決めた理由であるとのインド軍関係者の話を伝えている。S-400の導入は、政治的そして軍事的に米印関係に大きな影響を与える。政治的な影響は、アメリカ国内法であるCAATSA(Countering America’s Adversaries Through Sanctions Act )の適用に関する問題である。同法は、2017年7月に制定され、イラン、ロシア及び北朝鮮と取引を行う国に経済制裁を科すというものである。2020年12月には、トルコのS-400配備に対し制裁が発動されている。制裁対象となったのは、トルコ国防産業庁の長官を含む幹部であり、アメリカ管轄区域における資産の凍結などの制裁が科されている。アメリカとトルコはイスラム過激派組織ISIL対応におけるクルド人の取り扱いを巡り対立した経緯がある。アメリカのトルコに対する強硬姿勢は、この対立を背景にしていると指摘されているが、NATOの同盟国であるトルコへの制裁はNATOの結束に悪影響を与えるものである。Indian Express紙によれば、二人の米上院議員がバイデン大統領に、インドに対する制裁を発動しないように要請する書簡を提出したと伝えている。現時点で、バイデン大統領がどのような決断を下すか伝えられていないが、制裁を発動しなかった場合、トルコへの対応との整合性が問われる。一方で、何らかの制裁を加えた場合、中国がこれにつけこみ、QUADの弱体化を図るであろうことは明白である。軍事的な影響としては、インド軍の主要装備がロシア製で占められているということが、米印間の軍事的相互運用性を阻害するということが挙げられる。近代的装備体系では、それぞれの装備がネットワークで結ばれ、情報共有が瞬時に行われる。今回インドが導入する防空ミサイルS-400は、巡航ミサイルや弾道ミサイルへの対処が主任務であり、他の防空レーダーや防空戦闘機との情報共有が不可欠である。そのためにはそれぞれのシステムがネットワークで結ばれていなければならない。それぞれのシステムは開発した国の設計思想に基づきソフトウェアが組まれ、それに適合したハードウェアで構成されている。従って、ロシア製システムをアメリカ製システムと連接するには高いハードルがあり、それぞれのソフトウェアのソースコードが分かっていなければ不可能でさえある。アメリカがトルコに経済制裁を行う1年前の2019年7月の段階で、トルコに対するF-35戦闘機の売却及びサプライチェーンからの排除を決定した背景には、S-400導入に伴い、高度にシステム化したF-35戦闘機のシステム情報がロシア側に漏洩することを恐れたためと指摘されている。インドがS-400導入を見直すという報道はなく、このまま配備が進められるであろう。アメリカとしても、中国対応の観点からQUADの結束を維持する必要があり、CAATSAに基づくインドへの制裁は見送る公算が高い。しかしながら、軍事的観点から見れば、ハイエンドな装備であるインドの防空ミサイルがロシア製であるということは、今後長期にわたって、インド軍の装備武器がロシア製で占められる状況に変化はないと見るべきであろう。今年9月に米英豪の間でAUKUSが締結され、オーストラリアへの原子力潜水艦技術供与を中心に3カ国の安全保障上の強力が強化された。しかしながら、ロシアとインドの間では、すでに原子力潜水艦のリースを始めとした技術協力が進められており、2016年に1番艦が就役したインドのアリハント級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦の建造にはロシアの技術協力が疑われている。11月26日に国際原子力機関(IAEA)理事会で、ロシア代表がAUKUSを核拡散の観点から問題をはらんでいると主張したと伝えられているが、ダブルスタンダードも甚だしいと言えよう。QUADについて、安全保障上の役割を期待する声も大きい。しかしながら、インドに関しては、インド太平洋における「対中」という枠組みは期待し得ても、「対ロ」及び「中央アジアにおけるイスラム過激派対策」といった点については、アメリカと共同歩調をとるとは限らない。状況によっては、アメリカは大きなジレンマを抱えることとなる。日本としても、インドの立ち位置を冷静に評価し、QUADに何を期待するか、個々の情勢に応じて判断しなければならないであろう。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/30 10:22
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NYの視点:12月FOMCでのテーパー加速の思惑後退
新型コロナの新たな変異株、オミクロン株感染拡大を受けて、欧米など渡航制限に踏み切った。デルタ変異株の拡大で欧州のいくつかの諸国はすでにロックダウン入りしている。新たな脅威は世界経済の活動再開を遅らせ、回復にさらなる不透明感に繋がる。米国では労働市場を含め景気回復が想定以上に進む一方で、高インフレの長期化、インフレの上方リスクの上昇で、連邦準備制度理事会(FRB)は12月連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和縮小ペース加速を発表するとの思惑も浮上していた。特にハト派として知られるサンフランシスコ連銀のデイリー総裁も、雇用統計やCPI次第でこの会合でQE縮小加速を支持する可能性を示すと、思惑がさらに強まりドル買いに繋がった。しかし、ここにきて、オミクロン株による回復への影響が懸念され、12月FOMCでの決定は見送られるとの見方が強まりつつある。シナリオとしては3つ挙げられる。まず、1)基本シナリオとしては、FRBが資産購入縮小を現状のペースで進め、夏に利上げを可能にする。2)経済が思ったより強まった場合、最善のシナリオとして、FRBは資産購入縮小ペースを加速、5月の利上げも可能になる。最後に3)最悪のシナリオでは、回復が想定外に滞り、FRBが資産購入縮小を停止することが挙げられる。現状では基本シナリオが主流。米金利先物市場では7割近く織り込まれていた5月の利上げ確率は4割近くまで低下。同時にドル買いも後退している。今週予定されている上下議会証言でのパウエル議長の発言に注目が集まる。●基本シナリオFRBが資産購入縮小を現状のペースで進め、夏に利上げを可能に●最善のシナリオFRBが資産購入縮小ペースを加速、5月の利上げも可能に●最悪のシナリオFRBが資産購入縮小を停止
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2021/11/30 07:41
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軍の支配強まるスーダン、エコノミック・ステイトクラフトと予防外交に活路(2)【実業之日本フォーラム】
本稿は、「軍の支配強まるスーダン、エコノミック・ステイトクラフトと予防外交に活路(1)【実業之日本フォーラム】」の続きである。3.エコノミック・ステイトクラフト軍の影響力が強い暫定統治とあわせてスーダンで変わっていないことがある。経済の苦境が続いていることだ。1993年に米国のテロ支援国家リストに指定されたことを皮切りに、スーダンには厳しい輸出入禁止措置と金融制裁が課されていた。2016年にスーダン政府と反政府武装勢力との停戦が持続したことから、米国は、オバマ政権の末期に制裁の一部解除を暫定決定した。ただし、その前向きな動きが続くか見極めるため、最終判断はトランプ政権に持ち越された。トランプ政権は2017年10月に制裁を一部解除したが、テロ支援国家リスト指定からの解除は見送った。制裁の一部解除が、ただちに経済発展を意味するわけではない。テロ支援国家リスト指定が続いていたため、企業にとってはスーダンにおける米ドルでの取引にリスクが残っていた。盤石と見られていたバシール政権が2019年に突如倒れたことで、制裁の全面解除が期待された。しかし、軍民共同の暫定統治が始まっても制裁解除はなかなか進展しなかった。トランプ政権は2020年12月になってようやく、約27年も続いてきたテロ支援国家リスト指定からの解除を決定した。背景にあったのは、米国が仲介して進めていたイスラエルとの国交正常化にスーダンが合意したことだった。悲願の制裁解除を達成したスーダンだったが、そのころには新型コロナ感染症が世界を席巻していた。コロナ感染拡大という打撃を受け2020年のインフレ率は111%を記録した(世界銀行)。世界で二番目の異常な高さであった。しかも、長年にわたる経済制裁を経験してきたスーダンのビジネス環境は厳しい。物流インフラや金融インフラにも課題が多い。欧米が制裁をかけていた1990年代、中国がアフリカで最初に石油開発を進めたのはスーダンだった。しかし異常なインフレと厳しいビジネス環境のため、スーダンを去った中国企業も多い。南スーダンに油田を手渡したスーダンが、外貨獲得のため進めてきたのが金の採掘である。輸出品トップは金、原油、ゴマなど農産品、そして羊など家畜である。金は輸出総額の3割を占め、その輸出はアラブ首長国連邦に集中している。金の採掘はダルフールで盛んである。しかし近年は金鉱をめぐって内戦や民間人への襲撃が起きており、政府側の民兵が関与していたという疑念も晴れていない。脆弱な経済構造は変わっていない。2019年にバシールを追い落としたのは経済的な苦境により声を上げた学生や若者だったが、制裁が解除されても、人々の生活はよくならなかった。むしろ、バシール政権の頃のように軍が再び統治し国を安定させるべきと求めるデモも起き始めた。そうした声に勢いづけられ、今年9月には軍の一部によるクーデター未遂事件が起きていた。これに反発する民主化勢力のデモも激しくなり、首都ハルツームは緊張の度合いを強めていた。10月のクーデターは、そうした状況下で起きた。軍が支配を強めるスーダンだが、脆弱な経済が急所であることは変わっていない。米国のバイデン政権は、そこを突いた。10月25日のクーデター直後、アメリカ国務省は拘束された政治家の即時解放、文民主導の暫定政府を完全に回復させることを求め、予定されていた7億ドル(約800億円)の経済支援の凍結をすぐさま発表した。さらに世銀も約20億ドル(約2,300億円)規模で予定していた融資を停止した。これに協調してフランスも、5月に各国が合意した140億ドルの債務救済策を、政治交渉に進展があるまで凍結する方法を検討している。経済を「力の資源」として利用する政策をエコノミック・ステイトクラフトという。その技法のひとつが援助停止である。スーダンに対するエコノミック・ステイトクラフトは、ブルハン議長を含め軍に一定の効果があったようである。バイデン政権は8月にもアフガニスタンにおけるタリバンのカブール制圧に際し、即座に援助停止に踏み切った。タリバンにはあまり響かなかったようだが、バシール政権の顛末を見ていたスーダンの軍は、経済が安定した統治の土台であることをよくわかっていたのだろう。ブルハン議長は「ハムドゥク首相の身の安全に危険があったため安全な場所に保護している、クーデターではない」などと主張し始めた。11月に入るとさらにトーンダウンしていった。4.周辺国や地域機構を巻き込んだ予防外交エコノミック・ステイトクラフトとあわせて米国が展開しているのが、軍や治安部隊の後ろ盾と見られているエジプトやサウジアラビアなどアラブ諸国への働きかけ、そしてエチオピアなど地域大国やAU、IGADなど地域機構との連携だ。ブリンケン国務長官はスーダン情勢に関し、こうした国々や地域機構とたびたび電話会談を実施している。バイデン政権は従来から、スーダンやエチオピア、ソマリアを含むアフリカ東部の「アフリカの角」地域での予防外交を活発化させていた。その中心で活躍しているのが米国「アフリカの角」担当特使のジェフリー・フェルトマンである。フェルトマン米国特使は長年、中東と北アフリカ外交に携わりレバノン大使を経て、オバマ政権で中東担当国務次官補を務めた。その後、国連事務次長として国連政務局(当時)を率いた。国連事務次長の際には、イラク、イエメン、ソマリアなど世界の紛争における和平調停と紛争予防、西アフリカや中央アフリカで頻発していた政変時の危機管理を国連事務局で主導した。フェルトマン米国特使が10月23日にハルツームでブルハン議長とハムドゥク首相と会談し、民政移管プロセスを進めるよう働きかけた直後、クーデターが発生した。フェルトマン特使は、ブルハン議長がスーダンの人々の民主化への願いを「裏切った」と、厳しく非難した。同時にAUやIGAD、エチオピア、現地で活動する国連スーダン統合移行支援ミッション(UNITAMS)とも連携し、巧みな外交を展開していると見られている。AUはスーダンを締め出し、国連安全保障理事会は軍に対し文民主導の暫定政府を回復させるよう求めた。結果的に、主権評議会における軍の支配力は強まったが、ハムドゥク首相は4週間で復職した。スーダンでは2023年に総選挙が予定されており、ハムドゥク首相はそれまで暫定政権を率いる予定である。世界を見渡せば、ミャンマーではクーデター後に軍政がアウン・サン・スー・チーら文民を拘束し続けている。アフガニスタンではタリバンが国民の食料危機に真剣に取り組まず劣悪な統治を続けている。スーダンは、ミャンマーやアフガニスタンとは違う道を歩みつつある。今後、国際社会はスーダンにどう向き合うべきか。大切なことは、スーダンがバシール前政権のような民衆への苛烈な統治と、それに対する欧米の厳しい制裁に逆戻りすることがないよう、エコノミック・ステイトクラフトと予防外交を巧みに組み合わせながら、スーダンの民政移管への歩みを支えることである。それは民主主義や人権を外交の柱に据えているバイデン外交にとっても大きな試金石である。経済制裁、なかでも金融制裁に踏み切ってしまうと、一般市民の痛みも大きい。いまのミャンマーやアフガニスタンでは、エコノミック・ステイトクラフトも、外交も、なかなか成果をあげられていない。スーダンでは、それらが効いている兆しがある。人権や民主主義を外交のスローガンとして掲げるだけでは、自らの命を顧みずデモを続ける若者たちを失望させるだけだ。スーダンの厳しい現状に、希望を見出していきたい。外交は、そのために具体的な役割を果たしていくべきだろう。提供:Sudan Transitional Sovereign Council/AP/アフロ執筆者プロフィール相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員。国連・外務省・IT企業で国際政治や危機管理の実務に携わり、2020年から現職。研究分野は国際公共政策、国際紛争、新型コロナ対策やワクチン外交など健康安全保障、経済安全保障、制裁、サイバー、新興技術。2020年前半の日本のコロナ対応を検証した「コロナ民間臨調」で事務局をつとめ、報告書では国境管理(水際対策)、官邸、治療薬・ワクチンに関する章で共著者。慶應義塾大学法学部卒、東京大学公共政策大学院修了。ツイッター:https://twitter.com/Yoshi_Sagara■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/29 13:03
注目トピックス 経済総合
軍の支配強まるスーダン、エコノミック・ステイトクラフトと予防外交に活路(1)【実業之日本フォーラム】
スーダンで11月21日、軍に拘束されていたハムドゥク首相が解放された。スーダンでは軍民共同の統治機構である主権評議会が首相を任命する。その議長を務めるブルハン将軍は10月25日に非常事態宣言を発令し、主権評議会および文民主導の暫定政権を解散、ハムドゥク首相をはじめ文民の閣僚や政治家を拘束していた。ブルハン将軍は国軍のトップも務めており、これは実質的に軍によるクーデターであった。ハムドゥク首相の軟禁が続く中、クーデターに反対する市民はデモに繰り出した。治安部隊は抗議デモを武力で制圧し、40人以上の市民が命を落とした。4週間の自宅軟禁を解かれたハムドゥク首相は、ブルハン議長との間で11月21日、新たな統治形態に関する政治合意に署名した。その模様はテレビで放送された。署名式においてハムドゥク首相は、デモに参加する若者がこれ以上、血を流し犠牲になるべきでなく、その活力が国の発展のために使われるべきだと訴えた。苦渋の判断を下した様子がうかがえた。しかし民主化勢力はハムドゥク首相がブルハン議長と署名した合意を認めず、デモを続ける意向だ。スーダンでは過去にもクーデターが繰り返され、軍による支配が続いてきた。なかでも、1989年にクーデターで政権奪取したバシール大統領による独裁は30年間近く続いた。経済危機と物価の高騰により苦境にあえぐ国民の声に押され、2019年、バシール政権は崩壊し、軍民共同の暫定政権が発足した。それから2年後に発生したこの4週間の危機をスーダン史上最短のクーデターと評する声もある。しかし、スーダンで起きた今回のクーデターは、これで終わりなのだろうか。そして、なぜ4週間でハムドゥク首相は復職したのだろうか。背景にあるのは2019年まで続いたバシール前大統領の独裁と、長い制裁にさらされてきた脆弱なスーダン経済である。米国のバイデン政権は経済的な圧力、すなわちエコノミック・ステイトクラフトを機動的に活用しつつ、周辺国と地域機構を巻き込んだ予防外交(preventive diplomacy)を展開し、スーダンの民主化をふたたび軌道に乗せようとしている。1.バシール前大統領の独裁と、その崩壊バシール前大統領は、軍とイスラム主義政党を組み合わせた独裁体制を続けた。反政府勢力に対しては、軍や民兵を動員し、牧畜民と農耕民など部族対立を政治化し、空爆もいとわず徹底的に弾圧した。その結果、スーダン全土で深刻な内戦が続き、多くの市民が犠牲になった。20年以上の内戦を経て2011年に南スーダンが分離独立した後も、西のダルフール、南の国境地帯、さらに東部でも内戦を抱えていた。かつてスーダンの政府収入の半分以上、輸出の95%を占めていたのは石油だった。しかし石油の油田は、いまの南スーダンに集中していた。南スーダン独立によりスーダンは政府収入の大半を失い深刻な財政難に陥った。長年の内戦により欧米から厳しい制裁を課されていたスーダン経済は、さらに悪化した。毎年のインフレ率は20%を超えた。外貨が枯渇し、ガソリンの値段も上がる一方だった。2018年12月、政府は人々の主食であるパンの補助金も出せなくなり、パンの値段は3倍に跳ね上がった。燃料や医薬品も手に入りにくくなった。これを機に民衆は立ち上がり、バシール前大統領の退陣を求める抗議デモが全土で巻き起こった。2019年4月、軍はバシールに見切りをつけ、その身柄を拘束した。ここに約30年続いたバシール政権は終焉した。しかし、民衆はデモをやめなかった。軍が暫定軍事評議会(TMC: Transitional Military Council)を設立し、TMCがスーダンを統治すると発表したからだ。これは軍によるクーデターの再来を意味していた。TMCの議長には陸軍のブルハン将軍が、副議長には治安部隊RSF(Rapid Support Forces)のモハメド・ハムダン・ダガロ司令官(通称:ヘメッティ)が就任した。RSFは、ダルフールで村を焼き払い虐殺を繰り返していた民兵組織ジャンジャウィードを母体とした、政府の治安部隊である。市民は、首都ハルツームの軍本部の近くで座り込みの非暴力・不服従デモを続けた。これに対し、軍とRSFは銃と刃物でデモ隊を襲い、120人以上が犠牲になった。それでも市民はあきらめなかった。民主化勢力の「自由と変革勢力」(FFC: Forces for Freedom and Change)はTMCとの間で、アフリカ連合(AU)と東アフリカの地域機構であるIGAD、エチオピア、そして国連事務局の仲介の下、権力分有による統治に向け交渉を続けた。そして2019年8月、FFCとTMCは暫定的な統治機構の設立に関する「政治合意」と「憲法宣言」文書に署名した。スーダンに以前からあった主権評議会(Sovereign Council)は、軍人と文民によるものへ再構成された。スーダンの統治機構は軍のTMCから、軍民合同の主権評議会へ移ることとなった。ただし、主権評議会の議長はTMC議長であったブルハン将軍、副議長もTMC副議長であったヘメッティが横滑りで就任した。2019年9月、主権評議会はFFCが推挙したハムドゥク氏を首相に任命した。軍と民主化勢力が共同で統治する、もろい暫定政府が発足した。2.主権評議会議長の文民への移行を待てなかった軍と治安部門暫定政権は文民のハムドゥク首相が率いることになったが、重要なのは、主権評議会が首相を任命する権限を持ったことだ。主権評議会議長は国家元首も兼ねる。「憲法宣言」では、最初21か月間は軍(ブルハン将軍)が議長を務めたあと、残り18か月間は文民が議長を務め、2023年に総選挙を実施し、計39か月間をかけて民政移管を目指すことになっていた。主権評議会の軍から文民への移行時期は2021年5月が予定されていた。暫定政府は、国内の和平を最優先課題とした。スーダン西部のダルフールや南スーダンとの国境地帯で続いていた内戦の終結を目指し、対話が進んだ。南スーダン政府が仲介し2020年10月3日にスーダン暫定政府と反政府武装勢力(SRF及びSLM-MM)の間で「ジュバ和平合意」が署名された。より包括的なスーダン政府とすべく、武装勢力が参加した新たな内閣と主権評議会が発足した。しかし、このジュバ和平合意で、憲法宣言が定めていた39か月間の移行期間がリセットされてしまった。主権評議会議長を文民に握らせたくない軍の意向が、この機に乗じて反映されたものと考えられる。その後、民主化勢力は主権評議会の議長を2021年11月に軍から文民へ移行するよう要求していた。結局、ブルハン議長はそれを待たず、10月に主権評議会を解散してしまった。ブルハン議長は11月に主権評議会を改組し、議長は軍が務めることとし、軍主導の統治機構に先祖帰りしてしまった。つまり、10月25日に発生し4週間で終わった今回のクーデターによって、主権評議会の主導権を軍が握り続けることとなり、統治における軍の支配力は高まった。軍と治安部隊の一部は、文民に統治を譲り渡すことで、過去の所業についてジェノサイドや人道に対する罪、戦争犯罪の容疑で訴追されることを恐れている。復職したハムドゥク首相は新たな暫定政権を組閣し、改めて行政を主導すると見られているが、主権評議会ではブルハン議長が引き続き、にらみを利かせる。その構図が、これからも続く。それではスーダンの民政移管への歩みも、これで終わりかと言えば、おそらく違う。ハムドゥク首相が4週間で解放されたという事実は、スーダンの民主化にわずかな希望を残している。「軍の支配強まるスーダン、エコノミック・ステイトクラフトと予防外交に活路(2)」に続く提供:Sudan Transitional Sovereign Council/AP/アフロ執筆者プロフィール相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員。国連・外務省・IT企業で国際政治や危機管理の実務に携わり、2020年から現職。研究分野は国際公共政策、国際紛争、新型コロナ対策やワクチン外交など健康安全保障、経済安全保障、制裁、サイバー、新興技術。2020年前半の日本のコロナ対応を検証した「コロナ民間臨調」で事務局をつとめ、報告書では国境管理(水際対策)、官邸、治療薬・ワクチンに関する章で共著者。慶應義塾大学法学部卒、東京大学公共政策大学院修了。ツイッター:https://twitter.com/Yoshi_Sagara■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/29 13:03
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.99%安でスタート、世界株安の連鎖で
29日の上海総合指数は売り先行。前日比0.99%安の3528.67ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時46分現在、0.35%安の3551.59ptで推移している。世界的な株安の流れや南アフリカで新たな新型コロナウイルス変異株が確認されたことを受け、中国市場にもリスク回避の売りが広がっている。また、あす30日に11月の製造業購買担当者景気指数(PMI、政府版)が発表される予定となり、慎重ムードも強い。
<AN>
2021/11/29 10:52
注目トピックス 経済総合
商船三井を対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(29日10:06時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つ日本郵船<9101>コール142回 1月 9,000円を順張り、任天堂<7974>コール442回 1月 50,000円を順張りで買う動きや、原資産の株価下落が目立つ丸井グループ<8252>プット21回 1月 2,250円を順張り、東海旅客鉄道<9022>プット40回 12月 17,500円を順張り、イオン<8267>プット33回 12月 2,950円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはイーサリアム先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 5月 1.0米ドル、野村日経225ダブルインバースETF プラス5倍トラッカー32回 1月 140円、ビットコイン2021年12月 プラス5倍トラッカー3回 12月 40,000米ドル、イーサリアム2021年12月 プラス5倍トラッカー3回 12月 2,550米ドルなどが見られる。上昇率上位は商船三井<9104>コール117回 12月 8,600円(+50.0%)、東急<9005>プット18回 12月 1,650円(+34.6%)、商船三井コール122回 1月 8,700円(+34.6%)、ビットコイン2022年1月 プラス5倍トラッカー3回 1月 56,000米ドル(+34.2%)、任天堂コール439回 12月 52,000円(+33.3%)などとなっている。(カイカ証券)
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2021/11/29 10:24
注目トピックス 経済総合
新型コロナパンデミック:変異株オミクロンによる最良と最悪のシナリオ 東京慈恵会医科大学 浦島充佳【実業之日本フォーラム】
2021年11月26日(金)、WHOは南アフリカから2日前に報告された新型コロナウイルスの新しい変異株, B.1.1.529を「オミクロン」と名付け、懸念を表明した[1]。今年頭から春にかけてアルファ株、春から夏にデルタ株が世界を席巻してきた。そろそろ新しい変異株が出現しても驚く話ではない。ところが、WHOをはじめ世界が素早く反応したのには訳があった。一番の理由は、感染拡大のスピードの速さである。南アフリカは3つの大きな波を乗り越え11月半ばまでには落ち着きをとりもどしていた。ところが同国ハウテン州で11月12 日から20日までに採取された77検体のウイルスゲノムを解析したところ、100%がオミクロン株に置き換わっていたのだ[2]。オミクロン株が最初に検知されたのは11月9日であった、言い換えると僅か2週間足らずでデルタ株[3]からオミクロン株に置き換わったことになる。デルタ株の感染力は十分強かったが、オミクロン株のそれはデルタを凌駕するということだ。 二番目の理由は、オミクロン株のスパイク蛋白を規定する遺伝子変異数の多さだ。アルファ株、デルタ株でさえキーになる変異は1か所ないし2か所であった。対してオミクロン株では30か所以上の変異が人の細胞に感染する際重要になるスパイク蛋白を規定する遺伝子配列内に見つかったのだ。これだけ変わるとスパイク蛋白の立体構造も大きく変化する。そうなれば、免疫細胞がスパイク蛋白抗原を認識できず、また抗体もウイルスに接着できなくなる。その結果、現行ワクチンや抗体治療薬は効かないかもしれない。更に新型コロナの感染既往があっても再感染する可能性もある。これはゲノム解析から考えられた予想であり、仮説の域を出ない。しかし、実際その可能性を示唆する出来事があった。カナダから香港に帰国し検疫隔離用ホテルに滞在していた人が、南アフリカ経由で香港に入国し同ホテルの向かいの部屋に滞在していた人からオミクロン株をうつされたのである。この人は2回のファイザー製ワクチン接種を済ませていたにもかかわらず感染したのだ[4]。香港衛生署衛生防護中心は、南アフリカからの帰国者がサージカルマスクを着用せずにホテルの部屋のドアを開けた際に感染した可能性があるとしている[5]。その真偽のほどは不明であるが、少なくとも直接接触のない2人の間で感染したとしたら、その感染力は極めて強いと考えるべきだ。さらにデルタ株に最も有効なファイザー製のワクチンでさえも歯が立たないかもしれない。オーストラリアでオミクロン陽性に出た2人もワクチン接種済みであった。三番目の理由は、重症化率が判っていない点だ。11月の南アフリカの新型コロナによる患者数、死亡者数の推移を観ると18日276人であったものが7日後の25日には1,000人になっている。1週間で3.6倍だ。死者数も少し遅れて増え始めている。南アフリカのフルワクチン接種率(アストラゼネカ、ジョンソンエンドジョンソン、ファイザーが主)は11月24日時点で24%と先進国より低かった。しかし、南アフリカは公共の場での常時マスク着用、夜間の外出禁止、飲食店の時短営業、集会の人数制限、酒類の夜間販売停止等の対策でデルタ株による第3波を抑えてきたし、今も継続している[6]。ベータ変異株のように南アフリカだけで終わるというシナリオもないわけではない。また、オミクロン株の感染力がいくら強くてもめったに重症化しなければ、これはただの風邪だから心配には及ばない。これは最良のシナリオだ。一方、デルタ株と同等、あるいはそれ以上の重症化率で、いままで接種してきたワクチンが無効ということになれば、医療はひっ迫し、大勢の命を奪うだろう。せっかく解除された制限が再び強いられる。振出しに戻るわけだから、これは最悪のシナリオだ。それらを占ううえで今後1か月の南アフリカのデータに要注目だ。11月27日(土)、南アフリカとボツワナ、ベルギーと香港でのオミクロン感染事例に加え、イギリス、イタリア、ドイツ、イスラエル、デンマーク、オーストラリアでも複数事例が報告された。いずれも南アフリカからの入国者である。さらにオランダでは南アフリカからの便に少なくとも13人のオミクロン陽性者が搭乗していた。風雲急を告げる動きだ。私はデジャヴを感じた。2020年1月の新型コロナ感染拡大初期、中国武漢からの渡航者に的を絞って新型コロナのPCR検査を実施していた。しかし、そのとき既に自国民の間でも感染は拡大していた。デルタ株は2020年夏、インドに存在していた。しかし、本格的に流行しはじめたのは今年の春である。その感染力はアルファ株より40~60%強く、武漢で発見された当初の倍(=100%)強い[7]。そのためアルファ株や従来株はデルタ株に取って代わられた。世界にデルタ株が浸透したのが夏だとすると最良のシナリオで1年、最悪のシナリオで3か月の猶予しかない。オミクロン株の感染力がデルタよりも強いとすれば、もっと短期間で世界に広がるだろう。危機管理では常に最悪のシナリオを考えておかなくてはならない。ということは、勝負は今冬だ。準備はできているか?また、危機管理においては初期対応が肝心だ。事態が最悪でなければ徐々に緩めればよい。イスラエルは海外からの便を全部止めた。2020年春、水際対策が遅れ感染者が一気に流入したことが第1波の一因であった。アフリカ南部の国々だけの入国制限だけで大丈夫か?逐次導入は良い結果を生まない。浦島充佳1986年東京慈恵会医科大学卒業後、附属病院において骨髄移植を中心とした小児がん医療に献身。93年医学博士。94〜97年ダナファーバー癌研究所留学。2000年ハーバード大学大学院にて公衆衛生修士取得。2013年より東京慈恵会医科大学教授。小児科診療、学生教育に勤しむ傍ら、分子疫学研究室室長として研究にも携わる。専門は小児科、疫学、統計学、がん、感染症。現在はビタミンDの臨床研究にフォーカスしている。またパンデミック、災害医療も含めたグローバル・ヘルスにも注力している。小児科専門医。近著に『新型コロナ データで迫るその姿:エビデンスに基づき理解する』(化学同人)など。[1] Classification of Omicron (B.1.1.529): SARS-CoV-2 Variant of Concern (WHO)https://www.who.int/news/item/26-11-2021-classification-of-omicron-(b.1.1.529)-sars-cov-2-variant-of-concern[2] 南アフリカハウテン州で2021年11月12 日から20日までに採取された77検体すべてがB.1.1.529系統であったHeavily mutated coronavirus variant puts scientists on Alert. Nature. 25 November 2021.https://www.nature.com/articles/d41586-021-03552-w[3] 11月南アフリカでは95%以上がデルタ株であった。[4] Heavily mutated coronavirus variant puts scientists on Alert. Nature. 25 November 2021.https://www.nature.com/articles/d41586-021-03552-w[5] 香港衛生署衛生防護中心 (Centre for Health Protection, CHP). CHP provides update on latest investigations on COVID-19 imported cases 12388 and 1240https://www.info.gov.hk/gia/general/202111/22/P2021112200897.ht[6] SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統について(第1報)https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10790-cepr-b11529-1.html[7] How Dangerous Is the Delta Variant (B.1.617.2)? American Society for Microbiology. https://asm.org/Articles/2021/July/How-Dangerous-is-the-Delta-Variant-B-1-617-2※実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、本文中のグラフも掲載しております。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/29 10:17
注目トピックス 経済総合
NYの視点:【今週の注目イベント】パウエルFRB議長とイエレン財務長官の上下議会証言、米雇用統計、ISM
今週は引き続き南ア変異株の動向に注目が集まる。欧州の一部では新型コロナの拡大ですでに行動規制が強化されており、回復の遅れに警戒されている。ただ、パンデミック発生時とは、状況が大きく異なりワクチンや治療薬も使用が可能。さらに、先進国ではワクチン接種が進んでおり、効力が薄まるといえども、まったくないわけではない。欧州中銀(ECB)のデギンドス副総裁は「新たな変異株の経済への損傷は、パンデミック発生時に比べ少ない」としているほか、米連邦準備制度理事会(FRB)関係者もパンデミックによる影響が徐々に縮小しているとしており、リスクとしては低下しつつある。また、米国が再び行動規制に踏み切る可能性は少なく、回復はペースは鈍化も、引き続き継続すると考えられる。また、再任された米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長と、イエレン財務長官のCARES ACT Relief(コロナ危機対応策)に関する上下議会証言に注目。2022年の早期利上げ観測が根強く、12月連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和縮小加速を決定する可能性も指摘される中、特に11月雇用統計にも注目が集まる。ハト派として知られるサンフランシスコ連銀のデイリー総裁でさえも、雇用統計やCPI動向次第では、12月のQE縮小ペースの加速を支持する可能性もあるとの考えを示した。雇用統計以外でも、全米の製造業活動動向を示す11月ISM製造業景況指数や消費動向を見極めるためにISM非製造業景況指数や11月消費者信頼感指数など重要指標の発表が目白押しで注目される。さらに、FRBは12月1日に地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表予定。この結果は、12月開催のFOMCでの金融政策決定において参考となるため注目となる。特に、インフレ期待の上昇が見られた場合、市場の利上げ見通しが再び強まり、ドル買いが再燃する可能性もある。南ア変異株により利上げ確率は低下したものの金利先物市場は依然2022年の2回の利上げを織り込んでおり、ドルの上昇基調は変わらずか。■今週の主な注目イベント●米国29日:10月中古住宅販売仮契約、11月ダラス連銀製造業活動、パウエルFRB議長、ウイリアムズNY連銀総裁あいさつ、ボウマンFRB理事討論会参加、30日:9月FHFA住宅価格指数、9月S&P住宅価格指数、11月シカゴPMI、11月消費者信頼感指数、パウエルFRB議長、イエレン財務長官と上院銀行委で証言CARES ACTReliefコロナ危機対応策に関する、ウイリアムズNY連銀総裁がイベントで発言、クラリダFRB副議長がFRBの独立性に関し討論会に参加12月1日:11月ADP雇用統計、11月製造業PMI速報値、10月建設支出、11月ISM製造業景況指数、地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表予定、パウエルFRB議長、イエレン財務長官と下院金融サービス委でCARES ACT Reliefコロナ危機対応策に関する2日:新規失業保険申請件数、ボスティック住宅価格に関する討論会参加、クォールズFRB理事が退任におけるあいさつ、デイリー、バーキンが講演3日:11月雇用統計、ISM非製造業景況指数、10月製造業受注、10月耐久財受注ブラードが講演●OPEC12月2日:会合、増産の行方に注目●日本29日:日銀黒田総裁が講演、日本小売り●中国30日:非製造業、製造業PMI12月1日:財新製造業PMI●ユーロ圏29日:消費者信頼感、独、スペインCPI30日:ビルロワ・ドガロー仏銀総裁が講演、仏、伊GDP、ユーロ圏、仏、伊CPI12月1日:ユーロ圏、仏、独製造業PMI2日:ユーロ圏、伊、スペイン失業率、、ユーロ圏PPI3日:ユーロ圏小売り、サービスPMI●英国30日:英中銀、マン委員が講演12月1日:ベイリー中銀総裁が講演、製造業PMI
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2021/11/29 07:35
注目トピックス 経済総合
注目の海外経済指標:11月米失業率はさらに低下する可能性
11月29日-12月3日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。■11月30日(火)午前10時発表予定○(中)11月製造業PMI-予想は49.8参考となる10月実績は49.2。外部環境改善が遅れていること、電力不足の影響は残されていることから、多少の改善は予想されるものの、11月も好不調の節目である50を下回る可能性が高い。■11月30日(火)日本時間1日午前0時発表予定○(米)11月CB消費者信頼感指数-予想は110.0参考となる10月実績は113.8で予想を上回った。労働市場の見通しが改善したことが上昇の要因とみられる。11月については、インフレ進行の影響がさらに強まることから、消費者信頼感はやや悪化する可能性がある。■12月1日(水)日本時間2日午前0時発表予定○(米)11月ISM製造業景況指数-予想は61.0参考となる10月実績は60.8。全ての業種で原材料調達にかかる時間が過去最長となった。11月については、若干の改善が予想されるものの、供給制約が引き続き経済活動の重しになっていることから、小幅な改善にとどまる見込み。■12月3日(金)午後10時30分発表予定○(米)11月雇用統計-予想は非農業部門雇用者数は前月比+50.0万人、失業率は4.5%11月上中旬における新規失業保険申請件数は27万件程度と前月同時期との比較で2万人程度減少。雇用情勢は改善を続けているが、労働力不足は解消されていないため、非農業部門雇用者数の増加幅は10月実績を下回る可能性がある。失業率は、労働力不足を反映してさらに低下する可能性がある。○その他の主な経済指標の発表予定・11月29日(月):(独)11月消費者物価指数・11月30日(火):(日)10月失業率、(日)10月鉱工業生産、(豪)7-9月期経常収支、(独)11月失業率、(欧)11月ユーロ圏消費者物価コア指数、(米)11月シカゴ購買部協会景気指数・12月1日(水):(豪)7-9月期国内総生産、(中)11月財新製造PMI、(米)11月ADP雇用統計・12月2日(木):(豪)10月貿易収支、(欧)10月ユーロ圏失業率・12月3日(金):(中)11月財新サービス業PMI、(欧)10月ユーロ圏小売売上高、(米)11月ISM非製造業景況指数
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2021/11/27 14:17
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NY原油は弱材料出尽くしで反発へ サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY原油についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、NY原油について、『弱材料出尽くしで反発へ』と述べています。続けて、『バイデン大統領は23日、原油やガソリン価格の高騰に対応するため、日本や中国、インドなどの主要消費国と共に石油備蓄を放出すると正式発表した。米国として過去最大の5000万バレルを放出すると明らかにした。追加放出も排除していない。主要国が原油高対策として石油備蓄を協調放出するのは史上初。米感謝祭祝日の今月25日からクリスマス休暇にかけて帰省や観光のガソリン需要が高まることを見越し、石油備蓄の協調放出を発表して原油高の沈静化を図った』と伝えています。しかし、『需給緩和効果は限定的との見方が強く、NY原油は78ドル台に反発した。世界的にエネルギー需要が増加する中、放出規模は少なく、数年続いている開発投資の減少傾向や、世界的に景気がコロナ禍から力強く回復している状況を受けて、短期的な価格への影響しかないとの見方が優勢となった』と述べています。また、『米金融大手ゴールドマン・サックスは、協調的な戦略石油備蓄(SPR)の放出は、供給不足を補う短期的な解決策にしかならず、2022年の原油予想の上振れリスクになる可能性があると指摘した』と言及しています。一方で、『市場の焦点は、石油輸出国機構(OPEC)にロシアなど非加盟産油国を加えた「OPECプラス」が備蓄の協調放出にどのような反応を示すかに移っている。現時点では増産の停止は議論されていないもようで、日量40万バレルの増産を継続する見込み。米英中印日韓が備蓄を放出することから、増産停止を求める声も出ている。29日にOPEC共同技術委員会、30日にOPEC共同閣僚監視委員会、そして12月2日にOPECプラス の会合が開催される』と解説しています。こうしたことから陳さんは、『国家備蓄放出は75ドルまでの下落で材料的に吸収されてしまったようだ。OPECプラス が現状の増産に留まれば、弱材料出尽くしから原油相場は上昇に向かう可能性が高いだろう。NY原油は80ドルに上昇する可能性が高い』と想定しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の11月25日付「NY原油は弱材料出尽くしで反発へ」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。
<FA>
2021/11/26 17:33
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(中国)上海総合指数は0.23%安でスタート、旅行関連セクターが下げ主導
26日の上海総合指数は売り先行。前日比0.23%安の3576.11ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時00分現在、0.36%安の3571.29ptで推移している。宿泊や航空など旅行関連セクターの下落が指数の足かせに。国内での新型コロナウイルス対策の強化が引き続き不安材料となっているもようだ。一方、景気対策への期待などが指数をサポートしている。
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2021/11/26 11:08
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日東電工を対象とするプット型eワラントが上昇率上位にランクイン(26日10:00時点のeワラント取引動向)
新規買いは、原資産の株価下落が目立つミネベアミツミ<6479>プット73回 12月 3,000円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては、アドバンスト・マイクロ・デバイセズコール82回 1月 140米ドル、キャタピラーコール84回 1月 200米ドル、ゴールドマン・サックス・グループコール44回 1月 410米ドル、ネットフリックスコール87回 1月 650米ドルなどが見られる。上昇率上位は、日東電工<6988>プット152回 12月 6,800円(+41.7%)、日東電工プット153回 12月 8,000円(+41.4%)、ミネベアミツミプット72回 12月 2,550円(+41.2%)、日立建機<6305>プット85回 12月 3,200円(+39.5%)、コマツ<6301>プット195回 12月 2,700円(+37.3%)などとなっている。(カイカ証券)
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2021/11/26 10:25
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拡大する日本のプレゼンス−海上自衛隊インド太平洋方面派遣の意義−【実業之日本フォーラム】
2021年11月16日、海上自衛隊は、南シナ海において日米共同対潜訓練を実施したと公表した。南シナ海では、海上自衛隊のみによる対潜訓練の実績はあるが、日米共同の対潜訓練は初めてであった。今回の訓練は、中国が主権を主張する南シナ海で行われたということに加え、令和3年度インド太平洋派遣訓練に参加中の海自艦艇が実施したことに大きな意味がある。海上自衛隊は、「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿う形で、2017年から艦艇をインド太平洋方面に派遣している。艦艇の海外派遣は、新任幹部の海への習熟や国際感覚育成のための遠洋練習航海、ソマリア沖における海賊対処活動、中東地域における情報収集活動等多岐にわたる。それらの海外派遣活動と、今回のインド太平洋派遣は根本的に異なる。海自が公表した派遣目的は、各国海軍との共同訓練をつうじた戦術技量の向上と周辺諸国との相互理解の増進及び信頼関係の強化と、極めて漠然としたものである。派遣期間中に国際観艦式やマラバール等の共同訓練に参加することもあるが、これらはあくまでも展開期間に行われるイベントの一つにしか過ぎない。インド太平洋において行動するというのが最大の目的であり、展開期間中、情勢に応じていかなる任務にも対応するというのが大きな特徴である。これは、米海軍原子力空母の展開、Deploymentに近い運用形態である。米海軍は現在11隻保有する原子力空母を修理、訓練及び展開の3ローテーションで運用している。展開期間は国際情勢に応じ変化するが、5~8か月が普通である。世界各地で紛争が生起した際、大統領は、空母はどこにいるかを真っ先に確認すると言われている。展開期間中の空母は、空爆等の実作戦を実施するだけではなく、関係国との共同訓練や、親善訪問等を行う。空母が所在する場所がアメリカの国益上重要と考えている地域であることを示すものである。例えば、中東海域に米空母が不在となる時期はほとんどない。米空母の展開(Deployment)と比較すると、海上自衛隊艦艇のインド太平洋派遣行動の戦略的影響力は限定的である。自衛隊の装備構想には、米空母が保有する兵力投射能力(空爆等)は含まれておらず、必然的に相手に対する威圧が決定的に欠けている。一方で、海自最大の護衛艦(海外ではヘリ搭載空母と言われている)が姿を見せる、いわゆるプレゼンス効果は高い。日本政府が「自由で開かれたインド太平洋」を強調している中で、QUAD4か国の海上共同訓練(マラバール)をインド洋、ベンガル湾及び西太平洋で行うことは国際的にも注目を集めている。また、展開期間は米空母展開期間よりも短く2~3か月である。これは、護衛艦「いずも」と「かが」の2隻のうち1隻を交互に派遣するという運用状況からやむを得ないものである。短い展開期間ではあるが、この展開期間中、補給及び親善を兼ねて5~6か所に寄港している。この寄港地の選択も、日本の国家意思をアピールする手段である。過去5回のインド太平洋派遣訓練で、4回以上寄港した国は、ベトナム、シンガポール、スリランカ及びフィリピンの4か国であり、インドが3回とこれに続く。これらの国の港に海上自衛隊艦艇が日本の国旗を翻し入港することで、それぞれの国との強い協力関係をアピールすることができる。最後に、展開期間中実施される共同訓練の国際的影響力も無視できない。外国艦艇との共同訓練は準備段階から細かな調整が必要である。このため、対面方式またはテレビ会議をつうじ、会議等を積み上げ、合意事項を紙に落とし込んで双方が確認するといった手順がとられる。しかしながら、洋上行動中は対面形式の会議はおろか通信状況によってはテレビ会議すら十分実施できない。このような環境下で、米国を始めとする各国との共同訓練を実施したということは、それぞれの国との運用に係る共通の基盤、いわゆる相互運用性(インターオペラビィティ)が確立しており、最小限のやり取りで共同訓練が実施可能であることを意味する。これまで、それぞれの国との共同訓練を積み上げてきた成果と言える。今回実施された南シナ海における対潜訓練は、米国だけではなく、豪印英仏加等のいわゆる西側諸国とも同様の作戦が実施可能であることを示す。活動を活発化させる中国海軍が、ロシア海軍以外に共同作戦を実施する相手がいないのと対照的である。いっぽう、海上自衛隊艦艇のインド太平洋方面派遣行動は、海上自衛隊、防衛省にいくつかの課題を提供している。第一に、本行動の法的根拠をどこに置くかという点である。ソマリア沖海賊対処行動や、すでに終了しているが、インド洋における給油支援活動は、それぞれ特別措置法に基づき実施されている。しかしながら、インド太平洋派遣はあくまでも通常の訓練等の延長線上にあり、平時において自衛隊に認められている権限に基づき行動する。海上自衛隊が、いままでにないDeploymentという新たな行動を開始したにもかかわらず、派遣艦艇が、何らかの紛争に遭遇しても、できることは限られている。プレゼンスを示しながら、いざとなったら何もできないということが露呈した場合、我が国に対する信用は地に落ちる。行動海域周辺情勢の把握や不測事態生起時の対応についての十分な準備と、情勢変化に柔軟に対応できる展開部隊と国内司令部との連携確立が不可欠である。次に、兵力不足がより明確となったことである。今回の派遣部隊のヘリコプター搭載機数は、護衛艦3隻でわずか4機に過ぎない。ヘリコプター14機を搭載することのできる護衛艦「かが」には2機しか搭載されていない。防衛白書の資料によると、2021年3月31日現在海上自衛隊が保有するヘリコプター(SH-60J及びK)は83機である。海上自衛隊は5か所の陸上航空基地に加え、30隻以上のヘリコプター搭載護衛艦を保有しており、10機以上搭載できる護衛艦も4隻ある。83機という数は、日本周辺海域における行動を想定し、必要に応じ陸上航空基地からの追加派遣を考慮した機数と考えられる。しかしながら、多数機搭載を前提とする、「いずも」及び「かが」を長期間展開させる運用を一般化するのであれば、ヘリコプター保有機数の抜本的見直しが必要であろう。少子高齢化が進む日本では、隊員の確保は至難の業である。無人機の開発が必要不可欠であり、研究開発を加速しなければならない。派遣の中心となる護衛艦「いずも」と「かが」は基準排水量1万9,950トンであり、旧帝国海軍の正式空母「蒼龍(そうりゅう)」の1万8,800トンに匹敵する大きさである。艦艇の性能をその大きさではかることは不適当であるが、やはり大型艦のプレゼンスは無視できない。海上自衛隊はそのプレゼンスを拡大しつつあるが、その大きさに似合うハード及び運用支援体制というソフトをさらに充実させる必要がある。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:HIROYUKI OZAWA/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/26 10:11
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NY金は1800ドル割れで押し目形成へ サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY金についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『NY金は1800ドル割れで押し目形成へ』と述べています。次に、『週明け22日、バイデン大統領が、来年2月で任期の切れるパウエルFRB議長の続投を表明したことを受けてドル高が進行し、金相場は売り込まれ1806ドルで終えた。よりハト派色の強いブレイナード理事の議長就任を見込んでいた一部の期待が剥落し、売りが拡大した』と伝え、『バイデン大統領は、来年の中間選挙をにらんで国民生活を圧迫しているインフレに対して断固として対処すると言明している。パウエル議長もインフレ対策で金融政策正常化を早めるとの見方が強まり、23日も米長期金利の上昇とドル高を受けて、節目の1800ドルを下回って引けた。金相場は先週5カ月ぶり高値の1876.90ドルを付けて以来、100ドル近く下落している』と解説、『バイデン・ショックともいうべき下落となったが、短期的に行き過ぎとの見方も台頭している。FRBのテーパリング(量的緩和縮小)や、来年の利上げ開始観測は金市場でも一定程度の織り込みは進んでいる』と見解を述べています。一方で、『ただ、利上げしても景気の腰折れを防ぐために、早くも金利の上限に対するコメントがFRB高官から出ている。セントルイス連銀のブラード総裁は、FRBの利上げについて、新型コロナウイルス感染拡大前の政策金利水準で十分との見解を示した。コロナ前、FRBの政策金利は1.5~1.75%だった。 ブラード氏は、「3~4%」への大幅利上げの必要性を否定した』と言及しています。また、『この下落の過程で、金ETFは23日時点で991.11トンと年初最小の975.41トン(11月4日)よりは1.6%増加している。先物相場が下落している一方で、現物投資が増加しているのは興味深い。1800ドル割れを待っていたようだ。金ETFが1000トンを超えてくると、市場の金相場への関心が高まるだろう。現物需要と先物市場の買い増加が両輪となって、金相場を押し上げていく可能性は高いだろう』と考察しています。こうしたことから、NY金について、『NY金は1800ドル割れで押し目を形成しよう。安値の目安は1750ドルか。JPX金は円安もあり6500円レベルで下げ止まる』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の11月24日付「NY金は1800ドル割れで押し目形成へ」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
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2021/11/25 18:11
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暗号資産後進国、日本:重要なのは頭脳、インナーサークルと気概(橋本欣典氏との対談)(3)【実業之日本フォーラム】
【編集後記】対談を終えて白井一成今回は、暗号資産やブロックチェーン界隈では「カナゴールド」として有名である橋本さんにお話をお聞きしました。私は、数年前に橋本さんにお目にかかった際、橋本さんの能力に惹かれ、すぐに仕事をご一緒させていただきました。橋本さんは会社のスタッフと一緒に、2021年10月に日本からシンガポールへ移住されました。対談でお話されていた、日本の暗号資産業界の経営環境と税制がその理由とのことです。ちょうど、ノーベル賞候補にも名前があがる藤嶋昭氏がチームごと中国に引き抜かれ、ノーベル賞の真鍋俊郎氏も日本に戻らないという発言が世間を賑わせました。藤嶋昭氏は研究環境、真鍋俊郎氏は研究環境と日本の組織文化面が原因だと思われますが、このお二人に限ったことではなく、多くの日本の優秀な方々が海外に流出しており、また海外の優秀な方々も、日本よりアメリカやシンガポールなどの国を選択することが多いように思います。第四次産業革命時代を見据えると、日本の未来の稼ぎ頭を失っているという事実であり、解決すべき喫緊の課題でしょう。橋本さんが対談で日本の金融行政について指摘していますが、これは行政に限ったことではなく、企業を含めた日本の組織全体で見られる傾向であり、マックス・ウェーバーの官僚制組織の弊害[o1] そのものに陥っているのではないかと考えております。そもそも、官僚制組織を採用する意義は、組織が目的を達成するために、合理的に意思決定と行動が制定されたルールを遵守することが有効であると考えられるためですが、ロバート・キング・マートンが指摘しているように、行き過ぎた官僚制は組織の目的そのものを変える必要があるなどといった想定外の問題の対処には、逆に機能してしまいます。日本は、世界トップクラスの貿易立国ですが、巨額の貿易黒字を稼いでいた以前の状況から、基幹産業の優位性を減退させながら莫大な外貨を保有した成熟債権国へとシフトしており、他方では、第四次産業革命による急速なパラダイムシフトに直面しています。藤野英人さんとの対談でも議論しましたが、成長産業の育成と富の形成は表裏一体です。成長分野を見極めつつ需要を喚起し、そこへ投資を促すことで産業を発展させる必要があり、国家としてはそのような環境整備が必要です。シリコンバレーのテック企業の躍進はまさに、それを地でいく好例だと思います。今後の国家の舵取りいかんによっては、国富や国民の資産形成が大きく減退することも考えられるため、新たな時代の変化に対応したダイナミックな資産形成戦略を考え、行動に移す必要があります。世界の人々に先んじて果敢に投資し、海外からの資本を積極的に受け入れるべきであり、そのためにも日本の組織のあり方を考え直すべきでしょう。そもそも富というのは相対的なものであり、日本円などの法定通貨であっても、他のあらゆる資産と比べて評価すべきです。資産運用は、資産ポートフォリオによる安定運用が一般的ですが、大きなパラダイムシフトが起きている場合は、そこへ傾斜配分を行うことが資産増加の鍵となることが多いでしょう。フェイスブックやテスラなどのテック企業大手の創業メンバーや投資家、数年前からビットコインに投資している人などは、数年間でその資産が数十倍、数百倍に膨れ上がっているはずですが、その方々の投資資産を基準にすると、法定通貨や物価が急落しているように見えるはずです。大きなパラダイムシフトであっても、一日一日の変化はごく僅かであり、変化そのものに気づかないのです。世の中の変化に気づいたときには既に乗り遅れているという場合が多く、資産形成においてもそれらの変化と軌を一にしています。すなわち、変化を止めた瞬間に富は相対的に減少し、新興勢力にあっという間に追い抜かれることになるのです。藤野さんとの対談でのアメリカのテック企業と日本企業との時価総額比較や、井上智洋さんとの対談の編集後記で示した日米の家計資産の推移がそれを端的に物語っています。変化を拒み、急速に富を築いた人や産業を批判するのではなく、大局観をもって能動的に変化を起こし、富の増大を図っていく必要があります。また、対談で橋本さんが指摘しているように、投資対象の時価総額が高くなってから、その上値を追って投資することは、取得単価が低い人の単価を引き上げることとなり、彼らに高値での売却の機会を与えることになります。本来は、単価が安いアーリーステージで投資して、その資産を他人に高値で買ってもらうことが肝要です。藤野さんとの対談の編集後記では、アメリカの株式市場への投資資金の流入が、アメリカの富の増加を促していることを記しました。井上先生との対談の編集後記では、2018年の日本の対内直接投資のGDP比は、諸外国のそれと比べてあまりにも低いということを述べさせていただいておりますが、日本には、まだ投資を受け入れる余地が十分にあるということなのか、それとも投資妙味に欠けるのかは分かりません。しかし、今後の日本を考えれば、イノベーションを起こす産業を育成しつつ、海外からの日本への投資を促し、富を増大しつつ経済を刺激する必要があります。話題は変わりますが、橋本さんは対談の中でスマートコントラクトのバグの発生確率が2分の1と言及されていました。これは驚くべき数字で、ブロックチェーンの社会実装が時期尚早であり、人類のナレッジの積み上げにはもう少し時間がかかることを示しているのかもしれません。しかしながら、2021年7月にスマートコントラクトを実装することを発表したデジタル人民元を軽視すべきではなく、中国の戦略を仔細に分析する必要があります。中国が進めるブロックチェーンサービスネットワーク(BSN)は、簡単かつ安価にブロックチェーンアプリケーションをつくることができるプラットフォームであり、多くの参加者によって自然発生的にさまざまなシステムが構築されることが期待され、最終的にはデジタル人民元とデジタル経済がブロックチェーンによってシームレスに統合運用されることが予想されます。中国政府が金融と経済のプラットフォームを用意することによって、民間のイノベーションの活力を生かしつつ、中国政府の統制の効くデジタル社会への移行が可能となります。2021年7月、中国人民銀行は2019年から開始したデジタル人民元の実証実験が11都市、省に拡大し、2000万人以上がウォレットを開設し、取引額が345億円に達したと発表しています。2021年9月、中国銀行が17種類の外貨をデジタル人民元に交換できるATMを発表し、北京冬季オリンピックで利用可能になると発表しました。このように中国国内ではデジタル人民元の社会実装が着実に進んでおり、近い将来、中国国内と関わりを持つ人や企業はデジタル人民元ウォレットを持ち、経済活動で中国のブロックチェーンアプリケーションを利用することになり、中国のブロックチェーン経済圏に組み込まれていく未来が想定されます。中国は、CBDC(中央銀行デジタル通貨)のクロスボーダー決済においても先行しています。BIS(国際決済銀行)と香港金融管理局、タイ銀行によって始められたInthanon-LionRockプロジェクトでは、2021年9月に終了した第2フェーズから中国人民銀行も参加しており、現在のクロスボーダー決済の3日から5日かかる時間を2分から10分に短縮することを実現しています。また、現行のクロスボーダー決済でも、2015年にCIPS(Cross-border Interbank Payment System)を導入しています。アメリカが実質的に支配しているドル建ての国際送金を担うSWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication 国際銀行間通信協会)を回避し、人民元圏を形成することを企図しています。このように中国は、現状のシステムと次世代の技術であるCBDCの両方で金融覇権の獲得を進めていますが、一帯一路やテクノロジーの動向などの経済政策、軍事面も含めて中国の戦略を検討するべきでしょう。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/25 14:49
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暗号資産後進国、日本:重要なのは頭脳、インナーサークルと気概(橋本欣典氏との対談)(2)【実業之日本フォーラム】
■「インナーサークル」の重要性白井:日本の制度によって、暗号資産などの資本やブロックチェーン技術者が流出しているのですね。シンガポールなどの海外での横のつながりを、もう少し詳しくお聞かせください。橋本:分散型の暗号資産交換所に自分がつくったトークンを上場させることは、すぐにできるのです。ただ、そのトークンに買い手がつかないと価格は上がらないし、そもそも売れない。イグジットができないのです。価格を上げること自体がイグジットではなく、買われて初めてイグジットなのです。そこで大事なのはマーケティングです。海外の有名な取引所で上場の根回しができるというのもマーケティングの1つでしょうし、他の有名なプロジェクトと手を組んでビジネスをやっていくのも一案です。その有名なプロジェクトのファンも、こちらのファンになってくれるかもしれません。1つの頭脳集団が腕一本で勝てるという側面はありますが、投資家マーケティングなどをワークさせるためにも、業界の横のつながりはとても大事です。例えば、DeFi業界にも幾つかの系統があります。シリコンバレー系のグループもあれば、チャイニーズ系のグループもあります。横のつながりでどこに属しているのかということが大事になります。だから、ビジネスとして成功するためには、「バグがなくコードを書ける」という手元の技術力だけではなく、技術力以外の面での人的なつながりも重要なのです。白井:無味乾燥で経済原理だけで動いているデジタル領域で、横の人的なつながりが大事というのは意外です。ブロックチェーン以前の状況と比較すると、それは薄れてきているのでしょうか。それともインナーサークルのようなものは、今後もあり続けるのでしょうか。橋本:人間は群れる生き物ですから、インナーサークルのようなものは今後も続くと思います。インナーサークルは、そこまで大きなサークルではありません。プロジェクトごとにせいぜい10人から20人程度です。必ずしも同じ会社に物理的に集まって働いているわけでもありません。自分たちの趣味、仕事をシェアできる人たちというのは、いろいろなところにいてくれたほうが楽しい。一緒に仲良くしていると、自然とインナーサークルのような感じになってくる。それが、結果的に、今のところはシリコンバレー系、チャイニーズ系、コリア系に分かれているのです。幾つかのインナーサークルのどれに入っているかで取引所の上場のしやすさも変わるというのは、今もそうですし、今後も変わらないでしょう。白井:日本系のインナ—サークルはないのでしょうか。橋本:残念ながら日本系はありませんね。まず、日本の暗号資産交換所は、ほとんど新しいものは取り扱えませんので、土俵として不適切なのです。また、税制も問題が大きいです。日本人がブロックチェーンビジネスをする場合にも、基本的に日本は避けたほうがいいとなっています。身近なところだとシンガポールはベストな環境と言えます。シンガポールコミュニティはシリコンバレー系と概ね同一ですし、税制も優遇されています。日本で日本のコミュニティがあったとしても、そこにはアドバンテージはないと思います。だから海外に出て行かないといけない。塀の中にとどまる理由はありませんから。白井:2016年当時は仮想通貨先進国と言われたこともありましたが、もはや既に後進国のような感じですね。橋本:後進国ですね。新規のトークンがこれだけ扱えないのであれば、頭脳集団も国内で事業をする意味がなく、産業として伸びないでしょうね。富の移転競争下における国家戦略白井:いまの状況は、既存の金融システムから次世代の金融システムへ移行する大きなパラダイムシフトの渦中だと捉えています。日本の市場環境は極めて厳しいとしても、敢えて日本に未来を見出すのであれば、どこに勝機がありそうでしょうか。橋本:トークンビジネスについては、今の体制を変えようという気概を持って動くことが大事です。JVCEA(一般社団法人 日本暗号資産取引業協会)や金融庁は、もう少しバランスの取れた体制、顧客保護とイノベーションのバランスを取ったような体制に変えていくことが、最初の出発点ではないでしょうか。こういう作業は、地味で泥臭い。見返りもなく、苦労やリスクだけが伴う。なぜ自分がやらなきゃいけないのかと思うかもしれません。しかし、よりよい未来にしていこうという気概を持って取り組めれば、可能性は自ずと開けると思います。頭脳集団や資本は、素直に海外に出て行く方がシンプルに稼げますが。白井:いままでは、企業の成長段階に従って、それぞれのステージに応じた投資家が存在し、それぞれが役割に応じたリターンを得ていました。創業時はエンジェル投資家、その後は何段階にも亘って複数のベンチャーキャピタル、上場後すぐは小型の資産運用会社、大企業になれば大型の資産運用会社によって、段階的に一株あたりの単価が切り上がっていき、投資が行われます。単価を切り上げることは、それ以前の低い単価で投資していた投資家の資産価値を引き上げることになります。このように株式投資の世界では、投資家同士がリスクとリターンを分け合って共存しているという食物連鎖のような生態系が存在しています。しかし、ブロックチェーンによるデジタル金融市場では、創業からすぐに、大きな時価総額がつき、二次流通市場でトークンが流通します。このため成長段階に投資家が介在する余地が少なく、創業のメンバーに巨額のリターンが偏ることになります。技術に疎く優良なプロジェクトにコネクションがない投資家は、時価総額が大きくなった後でしか投資ができず、リターンよりリスクが高くなる傾向があるように思います。投資家の競争優位が資本サイズから頭脳レベルやネットワークにシフトしていると考えています。橋本:高い単価での投資が、既存の低い単価の投資の資産価値を引き上げるという構造は普遍的なものでありますが、これらの仕組みは、普通の人たちには感覚的にわかりづらいところです。今後は、できるだけ早く安い単価で投資することが競争の本質になってきますが、併せて、より賢い人たちがより儲かるという形に、シフトしていきます。日本の個人投資家でも、海外の暗号資産交換所にアクセスして、優れたプロジェクトのトークンを早い段階から投資を行うことで、大きく資産形成を行っている人もいれば、国内の交換所で高くなったあとの海外トークンを買っている人もいます。日本の上場審査は非常に遅いため、もともと非常に性質の良い海外銘柄でも、割高のタイミングで買わされてしまうことになり、これは、今までの海外のトークン保有者へ富を移転させている構造と言えます。規制当局は、価格はランダムウォークであり、顧客保護の対象ではないと割り切っているのかもしれません。しかし、実際の金融市場は、経済学の教科書で書かれている合理的な市場ではありません。ましてやトークンの世界は、誰が作り、最初に誰が買い、最後に誰が買うのか、またルールが統一されていないという、非常に原始的な、証券が電子化される前の野蛮だった頃に近いのです。今の形の顧客保護は完全に逆効果だと思います。あまり形式的なところにこだわらず、もう少し視野を広げて、どうしたら国民のためになるかを考えないといけない時代だと痛感します。白井:国内製トークンを日本人同士が売買しているのであれば、富が日本人の中を移動していることになりますが、海外トークンの場合は、うまく投資しないと海外の人に富が移転することになりますね。日本人は、そもそも金融的、戦略的な思考が苦手なのですが、世界の国々や企業などは、あらゆる活動を通じて富の移転競争をしているという視点が必要です。トークンによるデジタル金融時代は、いままで以上の投資と技術のリテラシーが必要になってきます。日本は、国を挙げて海外への資本流失と富の移転を防ぐ必要がありますが、同時に大きな国富を形成できるチャンスと捉え、戦略的に行動することも大事でしょう。「暗号資産後進国、日本:重要なのは頭脳、インナーサークルと気概(橋本欣典氏との対談)(3)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/25 14:46
注目トピックス 経済総合
暗号資産後進国、日本:重要なのは頭脳、インナーサークルと気概(橋本欣典氏との対談)(1)【実業之日本フォーラム】
【ゲスト】橋本欣典(チューリンガム株式会社 COO)東京大学大学院経済学研究科金融システム専攻。日本取引所グループでは日本証券クリアリング機構にてクオンツとしてIRS、CDS、上場デリバティブ、現物株の証拠金アルゴリズムの高度化に従事。その後bitFlyerの経営戦略部にて、デリバティブ商品設計、仮想通貨AML 体制構築などに関わったのち、BUIDLにてリサーチャーとして交換業向けコンサルティング、アドレストラッキングツールのアルゴリズムを開発。また、Scaling Bitcoin 2019 にて論文を発表。【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)■資本と頭脳の流出白井:2021年8月のブルームバーグでの中島金融庁長官のインタビューでは、2018年のコインチェックなどのハッキングを受けて日本における暗号資産業界への規制が強化され、現状では多数の投資機会があるアメリカに比べ、日本は大きな制限があると説明されています。暗号資産の送金に対する潜在的なメリットには理解を示されていますが、暗号資産投資に対しては慎重な姿勢を崩していません。このようなことから、多くの日本の暗号資産交換業者の経営状態は、かなり厳しいという認識を示しております。私は、顧客保護やマネーロンダリング対策は非常に重要であると考えていますが、同時に海外と同様の投資機会を日本でもつくるべきだと思っています。1960年代、1970年代あたりまでは、国際的な金融資本移動は規制されていました。規制という塀を立てて、お金という水が流れていくことを制限していたのです。しかし、現在では国際的な金融資本移動は解禁されており、さらに資本移動が非常に簡単なトークンの世界に今後なっていくとすれば、国内の資本は海外にある有利で興味深い投資へ流れていくのではないでしょうか。橋本:このままだと日本の資本は逃げるだけだと思います。多くの暗号資産投資家が言う通り、日本の暗号資産交換業者に顧客保護のための規制を幾ら強いたとしても、その結果として、交換業の規制対応コストが増え、1回当たりの取引で相当な手数料を取らないと交換業を経営していけないビジネス環境になっています。あるいは、投資家保護と銘打って変なトークンを買わせないように上場審査のプロセスを厳しくし、国内の暗号資産交換所でトークンの多様性を実現できなくしてしまうと、結果的に海外の暗号資産交換所に国内の資本は逃げていってしまいます。過保護な親から子供が逃げるのと同じです。守るべき対象はどんどん海外に出て行ってしまうのです。昔だったら塀を建てることもできたでしょうが、このご時勢ではそれも難しいでしょう。特に暗号資産の世界では塀を作りようがありません。取引所から買ったビットコインを外に出させない、自分のウォレットにも出すことができないようにしてしまえば塀はできますが、そうすると一体何を取引しているのかわかりません。暗号資産のサービスを全面的に禁止しているのと同じです。そこまでやらない限り、海外に国内の資本は出て行ってしまうでしょう。国内の暗号資産交換所にとどまっている顧客が守られるとしても、海外に出て行く人が増えてしまうのであれば、結果は逆効果です。今の規制はその点を考慮しているとは思うのですが、「海外に出て行く人は対象ではない(から関係がない)」というポリシーでいるから、こういった事態になっているのではないのでしょうか。白井:香港でもシンガポールでも海外からの資本と頭脳を集めて国を盛り上げています。輸出立国で製造業中心というのが高度経済成長時の日本のあり方でしたが、バブル崩壊後の失われた数十年を経て、日本は次世代の産業を育てられずにいます。成熟債権国から溜め込んだ外貨を吐き出していくという債権取崩国への転落の可能性を想定するのであれば、世界からお金を集めていくことを考える必要があると思います。しかし現状の日本では、自ら資本流出を後押ししているように思えてなりません。昨今の香港を踏まえ、日本が金融立国を目指す取り組みも議論されています。しかし、様々なしがらみがある既存の金融よりも、デジタルでの金融立国を目指した方が早いかもしれません。海外から頭脳とデジタルマネーの投資を呼び込むためにはどうすればよいでしょうか。橋本:金融庁は顧客保護を目的として、国内にとどまる人を守るという使命感から、さまざまな規制を敷いています。マクロ的な視点がすごく弱い、というか、白井さんが指摘された資本の移動という視点を持ち込まない形で方針を考えているのでしょう。マクロ的な発想を持たないタイプの人、マインドセットのない方々が多いのかもしれません。これでは幾ら優秀な人材を規制当局に配置しても変わらないのではないでしょうか。すごく悲観的です。もし、マクロ的視座を持ったうえで、下手をうっているのだとしたら、考えて直して、再度実行するという学習ループが働く土俵はあるということであり、白井さんがおっしゃるようなことが実現できるかもしれません。こうした事業環境を受けてか、日本のブロックチェーン領域に立脚する企業は、その数が限られています。私が率いている会社(チューリンガム株式会社)、日本円のステーブルコインを発行している会社、LayerXのようにブロックチェーンで何らかのビジネスを展開する会社などを入れても5社とか6社。もっと広げてもせいぜい10社ぐらいでしょう。一方、自分で立ち上げるケースではなく、どこかに属すのであれば、地理的な要因が影響します。福岡にブロックチェーンのすぐれた会社がありますが、そこで働くには福岡に行く必要があります。東京の人は行かないとなると、それだけで候補が3分の2になってしまいます。その他の要因としては、主要な人物のキャラクターなど、まさにインフルエンサー的な要素でしょうか。カリスマ性かはわかりませんが、そういうところを基準に選ぶ。それなりに各社、毛色が違います。どこも合わないのであれば、自分で会社を作ることになるのでしょう。また、大学を中退して起業するパターンも多くなってきていますし、それが普通になってきているようにも思います。学業に時間を使うくらいなら、好きな人と好きな仕事をしたほうが楽しいからです。同じ方向を見ていそうな人が集まったところから、何となくプロジェクトが始まっていくのが、ブロックチェーン業界でのよくあるパターンではないでしょうか。しかし、日本の暗号資産に対する税制は非常に問題があります。暗号資産の期末の時価評価やICOで集めた暗号資産の売上計上は、ベンチャー企業にとっての大きな資金負担となり、暗号資産の利益が雑所得として課税は、個人投資家の投資意欲を減退させます。このため、日本の多くのブロックチェーン技術者が海外に移住していますし、実は私達もシンガポールに会社を移転させました。シンガポールでは多くのブロックチェーン企業や技術者がおり、横の継がりがビジネスの助けになります。日本ではビジネスにならないという感覚になっています。しかし、すべてのハイテクベンチャーや頭脳が流出しているわけではありません。たとえば、AI分野では日本での環境は悪くないと思います。パークシャテクノロジーやプリファードネットワークスなどは、世界で通用する会社です。セクターごとにみる必要がありますし、制度設計する人はそれぞれの分野に土地勘持っていたほうがいいと思います。それによって、多少は頭脳流出を防げますし、もしかしたら海外からの流入も期待できますが、成熟した資本市場やファンドなどのエコシステムが脆弱なのは弱点ですね。「暗号資産後進国、日本:重要なのは頭脳、インナーサークルと気概(橋本欣典氏との対談)(2)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/25 14:45
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「第3の歴史決議」にみる習近平政権の狙い(学習院大学法学部教授 江藤名保子)【実業之日本フォーラム】
11月8日から11日に、中国共産党の幹部による中央委員会第6回全体会議(以下、六中全会)が開催された。既に広く報じられたように、この会議では3つ目となる「歴史決議」を採択し、閉会5日後の16日にその全文が公開された。「中国共産党の100年の奮闘の重大な成就と歴史的経験に関する決議」という正式名称が示す通り、同文書は建党以来の歴史を共産党が中国人民を幸福にしてきた成功物語として描き、党は一貫して社会主義国家建設の道を辿って発展してきたと強調した。また習近平が総書記に就いた中国共産党第 18 回全国代表大会(第18回党大会、他の党大会も同様に表記)以降を「新時代」と位置付けて、「習近平同志を核心とする党中央」が中国に「歴史的な変革を生じさせた」と高く評価した。なお、1つ目の「歴史決議」は1945年に毛沢東が、2つ目は1981年にトウ小平が中心となって作成しており、いずれも政治路線の対立に決着をつけて両者の抜きんでた権威を確定した文書として知られる。公平を期すために確認しておくならば、歴史とはおしなべて書き手/語り手の主観レンズを通して語られるナラティブ(物語、語り)である。そのため程度の差こそあれ、どのような歴史叙述であっても「過去の事実」ではない可能性はある。また時の権力者が自己正当化のために歴史を書き換えることも様々な場面で行われてきた。その意味ではこの「歴史決議」もまた、単なる歴史の叙述というよりも、権力者のもとで選択的に史実を集めて描いたある種の「歴史物語」だと理解できる。その結果として、「意図的に選択されない史実」もあった。それは例えば天安門事件など民衆が共産党と対立した過去、あるいは1980年代に胡耀邦や趙紫陽などの政治リーダーのもとで現れた「民主化」の疑似体験の歴史である。また全般に共産党の主観が強く反映され、客観性を欠いた記述が散見される。例えば香港について「内外の様々なファクターが影響して一時的に『反中的で香港を混乱させる(反中乱港)』活動が横行した」とする表現、台湾に対しては「2016年(筆者注:蔡英文政権の成立)以来、台湾当局が『台湾独立』の分裂活動を強化してきた」とする主張などである。いずれも国際社会の認識とは異なり、香港や台湾に住む人々の理解とも一致しないだろう。一方、この「歴史決議」には取り立てて目新しい記述はない。なぜならばこの文書は習近平政権が段階的に形成してきた歴史ナラティブの、いわば総集編だからである。また習近平は2021年7月の共産党成立100周年において他の指導者達よりも一段高い権威を見せつけており、既に十分な権力を掌握しているとも考えられる。なぜ「歴史決議」をまとめる必要があったのだろうか。「第3の歴史決議」における習近平の狙いは、さらなる権威の獲得というよりも、習近平時代は長期化するという方針の表明と、公の歴史に自らの評価を書き込むことにあったのではないか。中国における「歴史」は支配者の正統性を支える政治的ツールであり、ナショナリズムの基盤としても重要である。後世で習近平時代がどのように評価されるかを考えるのは、政治家としてむしろ当然であろう。またタイミングとしてはやはり、2022年の第20回党大会に向けての布石と考えるのが自然である。もし習政権が長期化して歴史に大きく名前を刻むのであれば、自らの手で「歴史物語」を描いた方が有益である。すなわち、習近平を別格の指導者として評価する歴史を公的に描くことが主たる目的だったと考えられる。筆者はそれに加えて「第3の歴史決議を創る」というプロセスにも重要性があったと考えている。中国政治では、圧倒的な権威者に対して周囲の人々は抗うよりも従い、その権威を利用しようと考える。すなわち毛沢東やトウ小平の権力構造の基盤は、他の政治指導者たちがその権力を容認したことにあった。こうした観点に立てば、六中全会で党幹部が一斉に挙手をして習近平を称える「歴史決議」を採択した光景は極めて象徴的であった。さらに、このような承認プロセスを繰り返すことで政治的潮目が変わることを防ぎ、習近平に服従する集団心理を維持することが可能になる。すなわち習近平は「歴史決議」への賛同を得ることで、党幹部の彼に対する従属を再確認したのだろう。因みに筆者は、この数カ月に実施された各種の規制強化にも「行動様式を変えることで認識に影響を与える」という狙いがあったのではないかと考えている。学習塾、学校教育、オンラインゲーム、家庭でのしつけなど、一般の人々(特に若年層)の生活様式に手を加えるような規制が相次いだ。これはやり過ぎではないか、共産党は何がしたいのか、強引な手法がかえって人々の反発を招くのではないかと訝る向きもあっただろう。実は、日常生活のなかで自ら設定した行動を——それが本人の意思に反している場合は特に——強制的に繰り返し変更させることで、対象者が共産党に従うことを違和感なく受け入れるようになり、徐々に逆らえない心理状況に陥る効果が見込まれる。これまでの共産党の政治キャンペーンにも、人々に動員をかけて強制的に行動を起こさせることで集団心理を利用し、党に従わせる社会コントロールの手法が採られたことはあった。その極端な例が文化大革命の熱狂であった。しかし、それらはおそらく民意を誘導するノウハウを経験的に識っていたにすぎない。市民生活に直結する分野で重層的に規制をかけるという習近平政権のアプローチはむしろ、行動科学や脳科学などの知見に基づいた巧妙な手法のように見える。習近平政権の集権化が続く背後では、深刻な格差問題のみならず中国経済の減速も見込まれており、「人々の生活を豊かにする」ことで共産党の求心力を高めた時代が過ぎ去ろうとしている。トウ小平時代のメッセージは「自分も稼ぎたい」という人々の自然な欲求に合致していたが、大国になること、強国になること、共同富裕の実現など、習時代のメッセージは果たして人々の心を掴むだろうか。ポストトウ小平路線を模索する習近平の評価が本当に決まるのは、これからである。江藤 名保子学習院大学法学部教授。専門は現代中国政治、日中関係、東アジア国際政治。スタンフォード大学国際政治研究科修士課程および慶應義塾大学法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)。日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター副主任研究員、シンガポール国立大学東アジア研究所客員研究員、北京大学国際関係学院客員研究員などを経て現職。写真:新華社/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/25 13:23
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プラチナを対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(25日10:00時点のeワラント取引動向)
新規買いは、原資産の株価上昇が目立つSBIホールディングス<8473>コール292回 1月 3,000円を順張り、三井物産<8031>コール197回 12月 2,450円を順張り、ソニーグループ<6758>コール404回 12月 12,500円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはWTI原油先物リンク債_2022年3月限プット7回 1月 70米ドル、日経平均 マイナス3倍トラッカー77回 1月 34,500円、日産自動車<7201>プット245回 1月 575円、ネットフリックスプット82回 1月 650米ドルなどが見られる。上昇率上位はプラチナリンク債 プラス5倍トラッカー38回 1月 1,025米ドル(+72.8%)、ヤマハ発動機<7272>コール17回 12月 3,700円(+66.7%)、旭化成<3407>コール38回 12月 1,400円(+60.0%)、テルモ<4543>コール40回 12月 6,900円(+50.0%)、クボタ<6326>コール45回 12月 3,150円(+50.0%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/11/25 10:23
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日本の小型衛星による観測網構築を急げ【実業之日本フォーラム】
2021年11月22日、「日本政府は、小型衛星による観測網構築のため、2020年代半ばまでに衛星3基を打ち上げ、実証実験を行う方針を固めた」と各紙が報じた。令和3年版防衛白書は、「近年、米国などを中心に多数の小型人工衛星が一体となって様々な機能を担う、『衛星コンステレーション計画』が進められており、宇宙からの情報収集能力の強化や人工衛星に被害が生じた際の機能維持への寄与が期待されている」としている。さらに、「一部の国において、低空を高速かつ変則的な軌道で飛翔するHGV(Hypersonic Glide Vehicle:極超音速滑空兵器)の開発が指摘されていることから、米国との連携も念頭に置きつつHGV探知・追尾システムの概念検討や先進的な赤外線センサーの研究を行う」と表明している。新聞報道によると、「小型衛星は、1基の重量が100~500キログラム程度で、高度400キロメートル前後の低高度周回軌道に投入され、センサーやカメラなどを搭載し、地上や海上の情報を収集する」とのことである。米国防総省のNDSA(National Defense Space Architecture:国家防衛宇宙体系)構想では、「米国は、2022年に実証機20基を打ち上げ、実証実験を行い、将来的には1000基程度を配備する計画だ」とされている。通常、衛星1基当たり数百億かかる費用を、小型衛星は5億円程度に抑え、総額は1兆円以内に抑えることを目指しているという。わが国の内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、小型衛星コンステレーションを活用した「極超音速ミサイル防衛」のほかに、「世界をカバーするブロードバンド通信網の構築」や多数の衛星の配備による「常続的な被害状況把握やインフラ管理」に活用する構想を打ち出している。2021年11月21日、英フィナンシャル・タイムズ紙は、「中国が7月に行った極超音速兵器の実験で、極超音速兵器から別のミサイルが発射されていたことが分かった」と報じた。HGVから発射された別のミサイルが、囮(おとり)なのか他のもう一つの打撃力となるのかは現時点で分かっていないが、米国防省の関係者は、「中国の極超音速兵器開発が米国より進んでいる」と述べている。さらに、ロシアはすでにAvangard及びZirconという極超音速ミサイルの実戦配備を開始していると見られており、北朝鮮も今年9月に極超音速ミサイルの試験を実施したとみられている。このように、わが国を取り巻くミサイル開発に関わる軍事情勢は厳しさを増している。にもかかわらず、2020年6月、河野太郎防衛大臣(当時)は、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画の中止を発表し、6月25日の安全保障会議において配備断念が正式に決定された。その年の12月18日、国家安全保障会議および閣議において「イージス・アショア」に替えて「イージス・システム搭載艦」2隻の整備と抑止力強化およびスタンド・オフ防衛能力強化のためのミサイル開発を決定した。安倍政権が、2017年末、「我が国を1年365日、切れ目なく弾道ミサイルから守るためBMD(Ballistic Missile Defense :弾道ミサイル防衛)能力の向上を図る」として導入を決定した防衛システムが3年でとん挫し、計画的な防衛力の整備がもたついたとの印象は否めない。切れ目のないミサイル防衛態勢を構築するためには、発射の兆候や弾道を監視する眼とそれを防護する楯が必要である。低軌道コンステレーションを活用した抗たん性(航空基地やレーダーサイトなどの軍事施設が、敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力。抗堪力)、早期探知能力および広域追尾能力に優れたミサイル防衛システムの導入はその眼を保有するものであり、整備は急務であろう。もはや、BMDでの失態を繰り返す猶予はない。米国NDSAへの参加や友好国との情報共有体制の構築など、我が国における小型衛星観測網の早期構築を期待したい。サンタフェ総研上席研究員 將司 覚防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。写真:Britt Griswold/NASA/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/11/25 10:21
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NYの視点:米12月FOMCでQE縮小加速の思惑強まる
米国のバイデン大統領が再任した米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は再任会見において、物価上昇への対処を優先とする方針を示したことに加えて、同じくインフレが「一時的」としてきたイエレン財務長官もインフレリスクに言及した。FRBがインフレ指標として重要視している変動の激しい燃料や食品を除いたコア個人消費支出(PCE)価格指数は前年比+4.1%と9月+3.7%から予想以上に伸びが拡大し1990年11月来で最大を記録した。FRBのインフレ目標である2%の2倍超。FRBが公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(11月2-3日会合分)の中では、高官らは2022年の力強い成長を予想していることが明らかになった。また、物価上昇が緩和するまで長期間要する可能性があると判断。資産購入縮小ペースの加速を支持するメンバーもいた。インフレ見通しが不透明で、金融政策には柔軟性が必要で、もし、高インフレが持続したら、テーパーの加速や利上げを想定よりはやめることも可能だと指摘している。今まで、最近の高インフレが一過性で、いずれ鈍化するとの見通しを示しハト派姿勢を維持してきたサンフランシスコ連銀のデイリー総裁も、今後の雇用や消費者信頼感指数(CPI)の結果次第では、12月のFOMC会合で資産購入縮小ペース加速を決定することを支持する可能性も示唆。同氏は2021年の投票権を有する。多くの金融当局者がインフレが一時的との考えを後退させつつあり、2022年度の利上げ観測をさらに強めている。一段のドル買い材料となると見る。
<FA>
2021/11/25 07:39
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(中国)上海総合指数は0.03%高でスタート、方向感の乏しい展開
24日の上海総合指数は買い先行。前日比0.03%高の3590.01ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時00分現在、0.00%安の3588.99ptで推移している。欧州での新型コロナウイルス感染の拡大が再び警戒されている。また、政府が「データ税」を導入するとの観測もハイテク関連の圧迫材料。一方、景気対策への期待や原油など商品市況高などが支援材料となっている。
<AN>
2021/11/24 11:02
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銀を対象とするプット型eワラントが前日比4倍の大幅上昇(24日10:01時点のeワラント取引動向)
新規買いは、原資産の株価下落が目立つイビデン<4062>コール113回 1月 7,000円を逆張り、太陽誘電<6976>コール28回 1月 6,400円を逆張りで買う動きなどが見られる。上昇率上位は銀リンク債プット73回 12月 22米ドル(前日比4倍)、金リンク債プット317回 12月 1,700米ドル(前日比2.3倍)、銀リンク債プット74回 12月 24米ドル(前日比2倍)、銀リンク債プット78回 1月 23米ドル(+72.7%)、銀リンク債プット77回 1月 20米ドル(+60.0%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/11/24 10:21
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コラム【アナリスト夜話】「スーパー補正予算」はどこまで成長を促せるのか(マネックス証券 大槻奈那)
岸田政権の補正予算案が閣議決定されました。財政支出は55.7兆円と、コロナ真っ只中の昨年を上回り、リーマンショック時の2倍。過去最大規模で、「スーパー補正予算」と言っていいでしょう。今回の経済対策はどの程度の効果が期待できるのでしょうか。お金を遣えばその分その年のGDPは増えますから、少なくとも一時的にはプラスです。民間の予想するGDP押し上げ効果は1〜3%の間とされています。しかし、中長期的にどこまで国力を高め生活を豊かにできるのかは全く不明です。先週発表された9月の第三次産業活動指数によれば、全体の3分の2の項目はコロナ前に戻っていませんが、大きく伸びている項目もいくつかあります。19年末比で伸びが大きい順に並べると、トップ7位までの全てが、金融や競艇・競馬といった、「お金を増やしたい」という願望の受け皿です。この間、個人預金も約50兆円(+10%)増えています。将来不安などで、入ってきたお金を素直に消費できないマインドが表れていると思われます。もちろん、回復途上の今、困っている人々に速やかにお金を届けることは重要でしょう。ただ、財源は主に借金です。国がこれでデフォルトするとは思いませんが、今借金を増やせば、将来はその余力が少なくなり、未来の政策を制約します。従って、配られた資金は、技能習得や子育て支援、安全・安心の強化、有効な設備投資促進など、日本の将来価値向上に使われる必要があります。他の先進諸国のコロナ対策が出口を模索する中で、財政的には最も厳しい日本はアクセルを踏みます。これは大きな賭けです。成果が上がれば世界的にも注目され、株式市場等を通じた資産効果がプラスαの経済効果となるでしょう。一方、人々の不安が増すなら、前回以上にお金が貯めこまれるでしょう。これから明らかになるスーパー補正予算の細目とその執行に注目です。マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那(出所:11/22配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
<FA>
2021/11/24 09:34
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NYの視点:米ビジネス活動は年初に比べ鈍化、サプライチェーン混乱解決で生産加速に期待
民間マークイットが発表した米国の11月製造業PMI速報値は59.1と、10月58.4から上昇した。一方で、11月サービス業PMI速報値は57と、10月58.7から予想外に低下。11月総合PMI速報値も56.5と、10月57.6から低下した。高インフレや供給不足、人手不足が引き続き響いた。仕入れ価格は過去最高を記録し、企業はコストを販売価格に反映せざるを得なくなっている。販売価格も過去最高水準で推移した。IHSマークイットのチーフエコノミストは、全般的なビジネス活動は鈍化した一方、成長は依然パンデミック前の長期平均を上回った水準で、企業は需要の増加に見合うよう稼働率を上げることに焦点をあてていると言及。製造業の製品在庫は昨年5月来で最低に落ちこんだ。在庫が限定的な中、需要を満たすべく、サプライチェーン混乱が緩和したら生産は加速すると期待されている。
<FA>
2021/11/24 07:39
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(中国)上海総合指数は売り先行もプラス圏回復、景気対策への期待が高まる
23日の上海総合指数は売り先行。前日比0.04%安の3580.51ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時17分現在、0.25%高の3590.96ptで推移している。景気対策への期待が高まっていることが支援材料。「金融当局が一部の銀行に不動産事業向け融資の拡大を指示した」と報じられている。一方、米金利高や欧州での新型コロナウイルス感染の再拡大などが警戒されている。
<AN>
2021/11/23 11:20
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(中国)上海総合指数は0.07%高でスタート、景気対策への期待が高まる
22日の上海総合指数は買い先行。前日比0.07%高の3562.76ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時42分現在、0.44%高の3576.18ptで推移している。景気対策への期待が高まっていることが指数をサポート。一方、中国経済は下振れリスクが高まっているとの国際通貨基金(IMF)の指摘が指数の足かせになっている。
<AN>
2021/11/22 10:45
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金を対象とするプット型eワラントが上昇率上位にランクイン(22日10:00時点のeワラント取引動向)
新規買いは、原資産の株価下落が目立つデンソー<6902>コール72回 1月 9,000円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはInpex<1605>プット185回 12月 900円、エヌ・ティ・ティ・データ<9613>コール93回 月 2,550円、日本ガイシ<5333>コール51回 月 1,900円、みずほフィナンシャルグループ<8411>プット364回 月 1,550円などが見られる。上昇率上位は金リンク債 マイナス3倍トラッカー44回 12月 1,825米ドル(+42.2%)、金リンク債プット318回 12月 1,850米ドル(+21.8%)、プラチナリンク債 マイナス3倍トラッカー35回 12月 1,050米ドル(+20.7%)、金リンク債 マイナス3倍トラッカー46回 1月 1,875米ドル(+18.0%)、日産自動車<7201>プット242回 12月 575円(+17.1%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/11/22 10:14