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教師に成績向上のインセンティブがない…見過ごされてきた「日本の教育システムの大問題」(喜田一成氏との対談)(2)
本稿は、「教師に成績向上のインセンティブがない…見過ごされてきた「日本の教育システムの大問題」(喜田一成氏との対談)(1)」の続きである。●「AO入試」は不要?白井:突出した絵を描く才能、工芸をつくる才能の話をお聞きしましたが、大学入試も相当変わりました。我々の時代はペーパーテストで、共通一次で何点とれるかでしたが、今は、高校生の美術展で上位の賞をもらうと、それだけでAO入試でかなり上位の大学に入ることができます。入試のやり方が変わってきたことは、世の中が良い方向に向かっている気がします。コツコツとやってきた人が評価されないのは不公平と言う人もいますが、そういう形で才能を伸ばしたり、一芸に秀でた人を引き上げたりすることもできます。その点はいかがでしょうか。喜田:私は、大学は悪い方向に向かっていると思います。多様性を認めようという努力は理解できますが、手段をはき違えている気がします。さまざまな多様性を認めるというのは、全員大学に受からせることではないのです。大学卒業を新入社員の採用の必須条件とし、プロパー社員を最良とする慣習は早く捨てるべきです。大学はあくまで学問を研究する場であり、社会人を育成する場ではありません。大学は学問研究機関とすれば、一芸に秀でればよいというのは変です。学問を学ぶための基礎知識があるか、あるいは学べるだけの能力があるかを調べる必要がありますので、ペーパーテストでよいと思います。私の在籍した大学でも、AC入試というのがありました。ほかの大学ではAO入試というそうですが、高等学校における成績や小論文、ボランティアなどの課外活動、面接などで一芸に秀でているとされる人物を評価し、入学の可否を判断する選抜制度のことです。私の世代は特にひどくて、卒業したのは入学時の約半数でした。多くが授業についていけず、ドロップアウトしています。友人は結局大学を中退して最終学歴は高卒になってしまいました。留年は2回までしかできませんので最終的に除籍となります。白井:大卒で、かつ新卒で会社に入ることが正しいという固定概念は、根強いものがあります。AO入試は、スポーツで活躍した人を大卒にしてあげて、社会で多少なりとも有利な立場にしてあげようという優しさでしょうし、多様性のある人材を作ろうということでしょう。しかし、そこにひずみが生じ、ねじれが生じてしまう。言っていることは新しいかもしれないけれど、結果がめちゃくちゃという感じかもしれないですね。中央教育審議会のトップには、経団連の部会長などが就任するようですが、このような状況にキャッチアップできていないと思います。●「誰一人取り残さない」は実現不可能な理想白井:ところで、デジタル庁が発足しました。デジタル化といっても、ファックスからメールになるぐらいのデジタル化であったり、判子をデジタル化したりという程度の話が先行していますが、デジタル庁発足をどのように評価していらっしゃいますでしょうか。喜田:縦割り組織で、硬直的なイメージで受け止めています。デジタル分野の組織は有機的、かつ、フレキシブルであるべきです。A、B、Cという分野で少しずつ使えるものが何個か並んでいるもので、縦割りには向かないのですが、それを縦割り的なやり方で進めていこうとしています。発足したばかりですので、今のところは仕方ないと思います。しかし、今後には期待したいところです。デジタル庁は「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を掲げていますが、これは筋がよくありません。すべての人が使えるプラットフォームは、莫大なコストがかかるため、大半の人からすれば不利益を被るということになります。ある程度の合理的な意思決定は必要です。最近の中国のデジタル化をみればよく分かりますが、大半の人に受け入れられつつ、投資のリターンが合うという均衡点を追求しているからこそ、社会の効率性が高まるのです。9割の人にとっては使いやすいプラットフォームだけれど、1割の人は別のプラットフォームを使うという設計思想であればいいのですが、全員を救うという実現不可能な理想を掲げては、コストは莫大になり、結果的には目的を達成することが難しくなるでしょう。たとえば、全員が同じプラットフォームを使うのではなく、9割の人はAというプラットフォームを使い、残りの1割の人がBというプラットフォームを使うことにし、このプラットフォームの開発を民間に競争させるのがよいと思います。行政はAPIを提供し、事業者には助成金などを与えず、申請件数に応じて国からインセンティブが与えられるような自由競争に持ち込むのです。既に利権構造の中にあるベンダーを対象として入札方式で一番安いところに発注するのではなく、行政がAPIだけ用意すれば、小さいベンチャー企業はニッチなところも獲得しようとしてくるので、社会的な弱者向けのプラットフォームも作ってくれるでしょう。自由競争のほうが健全でしょうし、結果的に誰も取り残されないと思います。白井:公共サービスであっても、投資に対してリターンが合っているのかという視点で評価することは非常に大事ですね。また、市場原理を導入して効率性を高める必要もあるでしょう。しかし、日本では、合理的な世論形成や意思決定はあまり見られず、情緒的な空気が支配しているように思います。弱者を切り捨てるのかという主張が幅を利かせていて、全体の効率性を議論すること自体がタブー視される向きもあります。これでは、社会の効率性が高まりません。本来は経済原則に従って、社会のコストを抑えつつ、効率的な社会を構築すべきなのです。そこで、取り残される弱者がいれば、そこで初めて行政がサポートするということのほうが健全でしょう。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<TY>
2021/12/08 18:00
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(中国)上海総合指数は0.22%高でスタート、景気対策強化への期待が高まる
8日の上海総合指数は買い先行。前日比0.22%高の3602.82ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時02分現在、0.09%高の3598.46ptで推移している。景気対策の強化に対する期待が高まっていることが引き続き支援材料。また、前日の米ハイテク株高なども好感されている。一方、米中対立の警戒感が解消されていないことが引き続き警戒されている。
<AN>
2021/12/08 11:12
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三井不動産を対象とするプット型eワラントが上昇率上位にランクイン(8日10:01時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つ任天堂<7974>コール443回 1月 58,000円を順張り、イオン<8267>コール37回 1月 3,000円を順張りで買う動きや、原資産の株価下落が目立つ東急<9005>プット21回 1月 1,600円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 5月 1.0米ドル、アップルコール180回 1月 150米ドル、SBIホールディングス<8473>コール293回 1月 3,450円、みずほフィナンシャルグループ<8411>コール412回 1月 1,550円などが見られる。上昇率上位は三井不動産<8801>プット127回 1月 2,200円(+27.5%)、三井不動産プット128回 1月 2,600円(+27.2%)、三井不動産プット126回 1月 1,800円(+25.8%)、電通<4324>コール94回 1月 5,350円(+22.2%)、エヌビディアコール132回 1月 290米ドル(+21.1%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/12/08 10:52
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ウォール街を知るハッチの独り言 金利が上がると株価は下がるのか?(マネックス証券 岡元 兵八郎)
さて、マネックス証券の「メールマガジン新潮流」が、12月6日に配信されました。そのなかから今回は、同証券のチーフ・外国株コンサルタント、『ハッチ』こと岡元兵八郎氏のコラム「ウォール街を知るハッチの独り言」の内容をご紹介いたします。みなさんは金利が上がると株は下がると思い込んでいませんか?事実は、必ずしもそうではないのです。こちらのデータは昨年と今年、コロナ禍での金利と米国株との関係を比較したものです。金利は米国10年債利回りで、株価は米国を代表する株価指数であるS&P500です。金利の動きと株価※金利変化時の株価パフォーマンス(2019/12/31~2021/11/22)参照2020年に入りコロナ禍、世界中の中央銀行は利下げを行うと同時に金融市場に対しアグレッシブな流動性の供給を行いました。これを受け米国10年債利回りは年初から下落し7月にボトムをつけました。その後の金利の動きを三つのフェイズに分け、株価への反応を調べてみました。最初のフェーズは金利上昇の局面です。10年債利回りが7月に底を付けたあと、翌年2021年3月末までの166日間です。この間10年債利回りは243%上昇することになりますが、S&P500の動きはというと20%上がったのです。S&P500のITセクターはというと17%上げ、銀行セクターは59%上昇しました。S&P500の20%の上げに対し、金利の上昇に弱いと言われるグロース銘柄を含むITセクターは市場のリターンを下回りました。一方、金利上昇時に恩恵を受ける銀行セクターは素直に大きく上がるという展開となりました。二つ目のフェーズは金利下落の局面です。今年の3月31日にピークをつけた10年債利回りは8月3日までの87日間で33%下がりました。この間S&P500は11%上昇したのですが、ITセクターは16%上昇、銀行セクターは2%上昇と教科書通りのパフォーマンスを示したのです。三つ目のフェーズは再度金利上昇の局面です。10年債利回りが79日間で39%上昇した局面でS&P500は6%上昇、ITセクターは10%上昇、銀行セクターも11%上がったのです。いかがでしょう。過去2年間の試験の期間で3つの事が言えると思います。一つ目は、金利が上がっている期間でも株価は上がるということです。金利が上がって株価が下がるのは、一時的な急激な金利の上げを受けてのことなのです。金利が上がる局面でも、長期的に見ると株は上がっているのです。二つ目は、金利が上がる局面で、IT企業に代表される成長株が下がるかということ、そういう事でなく、市場のリターンを下回るだけという事です。三つ目ですが、金利が上昇する局面では、銀行株は素直に買われるという事です。来年は金利が上昇する年となると思いますが、こういった事実を参考にしていただければと思います。マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント 岡元 兵八郎(出所:12/6配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
<FA>
2021/12/08 09:25
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NYの視点:米Q3の労働生産性は74年ぶり低水準に落ち込む
米労働省が発表した7-9月期非農業部門労働生産性改定値は前期比年率−5.2%となった。速報値から上方修正予想に反して下方修正され1947年10−12月期以降74年ぶり最低に落ち込んだ。同期単位労働コスト改定値は前期比年率+9.6%。速報値+8.3%から伸びが予想以上に上方修正され昨年10−12月期以来最大の伸びとなった。同指数は連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン前議長が景気動向を判断する上で注目していた指標。賃金などコストの上昇で企業の生産性が落ち込んでいることが明らかになった。パンデミック関連のサプライチェーン混乱が落ち着き、コストが低下した場合、再び生産性が回復する可能性はあるが、混乱が長引いた場合、回復にも懸念が残る。FRBは焦点を高インフレに移した。高インフレが想定以上に長引くことに備え、量的緩和(QE)縮小を加速させ、計画していたよりも数カ月早く縮小を終了する可能性を示唆。パンデミックの状況の改善で、緊急措置として導入されたQEの必要性は後退した。しかし、時期尚早の利上げは回復を損なう可能性が警戒される。
<FA>
2021/12/08 07:41
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危ういバランサー−韓国の立ち位置−【実業之日本フォーラム】
「バランサー論」は2005年2月に、韓国の盧武鉉大統領(当時)が大統領就任2年目の国政演説の中で、同国の外交・安全保障政策の一環として言及したものである。大統領は、経済的相互依存関係が世界的に広がっているにもかかわらず、安全保障領域では冷戦構造が残っており、これが関係国の摩擦を生んでいると認識し、韓国が対立する両陣営の「バランサー」になることで調和を図っていこうと訴えた。この背景には、イラクへの韓国軍派遣の決定が、反米勢力が中心であった廬武鉉大統領の支持者離れを起こした教訓から、アメリカと一定の距離をとることを国内に示す意図や、米軍が持つ米韓連合軍の戦時作戦統制権の韓国軍への移転を進める意図があった。文在寅韓国大統領はかつて盧武鉉大統領の側近として勤務しており、対日強硬、対北融和の姿勢は似通っている。2021年9月21日、文在寅大統領は国連総会の一般討論演説において、休戦状態にある朝鮮戦争の終戦宣言を行うよう提案を行った。その後、韓国外交当局は関係国に積極的な働きかけを行っている。アメリカは、10月26日にサリバン安全保障担当補佐官が、正確な手順やタイミングについて見方が違う、と述べて以降公式には沈黙を保っている。これに対し、鄭義溶韓国外相は、11月11日の韓国国会外交統一委員会で、終戦宣言の形式、内容についてアメリカと緊密に調整を進めているとした上で、合意の最終段階にあると述べている。正確な手順やタイミングとは、終戦宣言を非核化交渉の入り口と考える韓国に対し、あくまでも非核化を優先し、終戦宣言を出口とする米国との主張が異なっていることを意味すると考えられる。アメリカの沈黙は、必ずしも韓国提案に賛成ではないが、あえて否定することにより両国間で波風を立てるのを避けようという意図があると思われる。11月16日付中国解放軍報は、「朝鮮戦争の終戦宣言を単なるシンボルとしてはならない」との中国科学院主任研究官の署名記事を掲載している。解放軍報が掲載する記事は、政府の考え方を反映すると見られており、この内容は政府の意思と推定できる。記事では、朝鮮戦争で甚大な犠牲を払った中国抜きの終戦宣言はあり得ないとした上で、中国、北朝鮮、アメリカ及び韓国の4か国が終戦宣言に署名すべきと主張している。そして、終戦宣言は単なるシンボルとしてはならず、非核化交渉と一体化すべきと主張している。終戦宣言に対する米中のスタンスは、朝鮮半島の非核化交渉と一体化でなければならないという点では一致していると考えられる。これは、とりあえず終戦宣言を出して南北融和という成果を上げたい文在寅大統領の思惑とは乖離している。そもそも終戦宣言の対象である北朝鮮も、金正恩総書記の妹で朝鮮労働党の幹部である金与正が、良い提案としつつも、敵対政策の終了が大前提だとしており、条件なしの終戦宣言には否定的である。北朝鮮が主張する敵対政策には、在韓米軍の存在や米韓連合訓練があると推定され、北朝鮮が交渉のテーブルに着くには大きなハードルがある。このような状況の中、米国と韓国は12月2日ソウルで両国国防大臣が参加する第53回米韓定例安保協議(SCM)を開催した。米国防省が公表した両国防大臣の共同記者会見では、両国が朝鮮半島の非核化、恒久的な平和の確立に向けて協力するとし、2022年に戦時統制権(韓国軍に対する作戦統制権は戦時と平時に区分され、戦時には在韓米軍司令官を兼ねる連合軍司令官が行使)移行に係る評価を実施すること、新たな作戦計画を策定すること等の合意事項が明らかにされている。オースティン米国防長官が、米韓同盟を朝鮮半島だけではなくインド太平洋の平和と安定に重要視した点、北朝鮮に対しては外交を主体としつつも、備えを強化する必要があるとした点が注目される。また、同時に公表された共同コミュニケには、バイデン大統領と文大統領の共同声明で触れられた「台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を認めた」ことが明記されている。一方で、終戦宣言に関する言及は一切なされていない。韓国は同日、徐薫国家安全保障室長を中国に派遣、天津で中国外交トップの楊ケツチ共産党政治局員と会談を行っている。報道によれば、韓国大統領府は楊氏が終戦宣言を支持したと伝えているが、中国外務省ホームページでは、徐氏が北京冬季五輪成功に向けて支持を表明したと伝えており、終戦宣言には言及していない。実際どうであったかは不明であるが、それぞれの発表を批判していないことから、中韓は互いに都合の良い点のみを公表したと考えられる。韓国としては、米韓定例安保協議の内容を中国に伝達することで一定の理解を得ることも視野にあったと見られる。韓国のこのような外交は、廬武鉉大統領の「バランサー論」を彷彿するが、激化する米中対立の中でこのような姿勢が効果を生むことはないであろう。特に、戦時統制権移行に係る評価作業には、2019年以降実施されていない大規模な米韓連合実働訓練が不可欠であり、これは北朝鮮が主張する敵対政策そのものである。文在寅大統領が進める米韓連合軍戦時作戦統制権移行と朝鮮戦争終戦宣言は、バランスできるようなものではなく、韓国に二者択一を迫るものである。米中高官と韓国高官が会談した際、韓国政府は「終戦宣言に理解を示した」と述べているが、これはあくまでも道義的観点に立った発言と解すべきであろう。終戦宣言そのものは、いかなる国であれ反対できない。しかしながら、その方法、内容及び時期等についてはそれぞれの思惑が交錯する。韓国の終戦宣言を巡る外交は、韓国にとって極めて危険な火遊びと言える。岸田政権は10月に行われた日米韓高官協議の場で、終戦宣言に対し「時期尚早」として難色を示したと伝えられている。北朝鮮の核・ミサイルの脅威、日本人拉致問題解決の道筋が全く見えない段階での終戦宣言に反対するのは当然であろう。アメリカが安易に韓国の提案に乗らないように二国間で十分な調整が必要である。一方、終戦宣言を巡る韓国の外交は、今後激化する米中対立の中で、日本外交に大きな示唆を与えるものである。中国の東シナ海や台湾周辺における強引な軍事活動に対する懸念に対し、中国との経済的結びつきを考慮すべし、と述べる評論家は多い。これは、現在終戦宣言を巡り米中間で繰り広げている韓国外交と同じである。安全保障はアメリカと、経済は中国と、といった「いいとこどり」は、双方から不信感を持たれるだけである。経済的結びつきを日本の弱みとするのではなく、逆に梃として、中国に妥協を迫っていくしたたかな安全保障戦略が必要であろう。反面教師であるにせよ、韓国外交から学ぶ点は多い。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:代表撮影/ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/12/07 16:39
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台湾潜水艦建造が日本の安全保障に及ぼす影響【実業之日本フォーラム】
2021年11月29日、ロイターは「As China menaces Taiwan, island’s friends aid its secretive submarine project」という記事を配信した。その内容は、2017年から開始された台湾の潜水艦建造に、アメリカ、イギリスが主たる役割を果たしていることに加え、オーストラリア、韓国、インド、スペイン及びカナダが関わっているとするものである。アメリカは、戦闘システムやソーナー等の核心技術を、イギリスは潜水艦用の部品や関連するソフトウェアを提供し、その他の5カ国は技術者募集に応じたものであると伝えている。それぞれは、台湾海軍及び潜水艦建造を請け負っている台湾国営企業「台湾国際造船」に、政府の許可を得て技術的支援を行っているとしている。韓国大統領府は、この記事に関し政府の関与を否定した上で、個人のレベルで情報を提供しているかどうかは調査中であると述べている。記事では、アメリカの同盟国であり最も進んだ通常型潜水艦を保有する日本の関与について、防衛省関係者の発言として、非公式に検討したものの中国との関係悪化を懸念し、検討を中止したと伝えている。また、日本企業は中国との取引を失うことを懸念し、台湾への関与は消極的であるとの海上自衛隊退職将官の発言を紹介している。台湾海軍は現在4隻の潜水艦を保有している。2隻は第2次世界大戦中に米海軍が建造したグッピー級であり、もう2隻はオランダのスバールトフィス級潜水艦を元に1980年代に建造され、海龍級と呼称されている。当初、海龍級は6隻取得する計画であったが、中国がオランダに圧力をかけ、残り4隻の建造は取りやめられた。グッピー級は言うに及ばず、海龍級も旧式化しており、台湾海軍はその更新を希望していた。しかしながら、潜水艦建造能力を持つ各国は、中国の反発を恐れ台湾の潜水艦取得に協力することには消極的であった。アメリカは、2001年にブッシュ政権が、台湾関係法に基づき通常型潜水艦の提供を決定したが、アメリカ国内には通常型潜水艦建造のノウハウが無く、宙に浮いた形となっていた。これらの状況から、台湾の蔡政権は潜水艦国産化の方針を決定、2017年から建造が開始された。1番艦の就役は2025年に予定されており、8隻が建造される計画である。国産化にあたっては、アメリカを始めとした潜水艦保有国の技術協力が不可欠と見なされていたが、今まで具体的な名前は明らかにされていなかった。現時点で、韓国政府以外の反応は報道されていないが、各国の協力を得て台湾潜水艦建造が進みつつあることが確認できたと言えよう。台湾の潜水艦勢力が充実することは、日本周辺の安全保障環境にも大きな影響を与えるが、軍事的観点から見ると、それにはプラスの側面とマイナスの側面がある。プラスの側面としては、中国の台湾軍事侵攻に対する大きな抑止力となることである。最近、中国は台湾周辺における活動を活発化しつつある。爆撃機がバシー海峡を経由し台湾南東部を飛行することに加え、11月中旬には中国海軍揚陸艦2隻が台湾と与那国島の間を南下し、台湾東部沖で活動したことが確認されている。台湾は南北にわたって3,000m級の山脈が連なっていることから、その攻略には台湾海峡正面からの攻撃では不十分との指摘がある。最近の中国艦艇及び航空機の活動は、台湾海峡方面からの侵攻に加え、太平洋方面からの侵攻能力を検証しているものと推定できる。台湾潜水艦がバシー海峡周辺及び台湾東部海域で行動することにより、これら中国艦艇の台湾東部への進出を抑制することができる。潜水艦が行動しているという情報だけで、その脅威を排除するために行わなければならない作戦の負担や艦艇へのリスクを意識させ、最終的に中国が台湾への軍事侵攻というオプションを選択する可能性を低下させることが期待できる。一方、マイナス面、懸念事項としては次の2点があげられる。潜水艦の最大の特徴は、隠密裏に海中を行動することである。これを捜索するためのセンサーとして、現時点では音波が主流である。音波による捜索は、自ら音を出すアクティブ、相手の音を聞くパッシブともに、潜水艦であるかどうかの類別、そしてそれが潜水艦であった場合の識別(どこの国の潜水艦か)に多大の労力が必要である。バシー海峡から西太平洋にわたる海域では、日米、状況によっては韓国、そして将来的にはオーストラリア潜水艦が活動し、これに台湾海軍潜水艦が加わった場合、潜水艦らしい目標を探知した場合の識別は非常に困難なものとなる。台湾を巡る紛争が生起した場合、台湾海軍潜水艦の存在は、日米艦艇の作戦を阻害する可能性がある。次に、台湾の潜水艦の事故に対する備えが不十分であることが指摘できる。今年4月、インドネシア海軍潜水艦がロンボク海峡付近で沈没した。更には今年10月、米海軍原子力潜水艦が南シナ海において、海山と推定される海中物体と衝突し損傷している。潜水艦を運用する国が増加するにつれ、このような潜水艦の事故が増加すると考えられ、潜水艦を運用する国には捜索救難体制の整備が必須と言えよう。他国との訓練が実施できない台湾は、潜水艦救難のノウハウが十分とは言えない状況にある。インドネシア潜水艦が消息を絶ってから発見されるまで4日間を要したことから分かるように、沈没潜水艦の位置特定には時間を要する。沈没潜水艦の救難は時間との勝負であり、距離的に近い日本はこれに積極的に協力すべきであろう。懸念事項を解消するためには、台湾潜水艦の運用状況に関する日台間の情報共有が不可欠である。潜水艦運用に係る情報の全てを共有する必要はないが、少なくとも、事故の発生の通知や、探知した潜水艦が台湾所属である可能性があるかないかという判断を速やかに下せる程度の情報交換は必要であろう。これは、台湾の対潜戦兵力が日本の潜水艦を探知した場合も同様である。日本の各企業が中国との取引を重視し、台湾の潜水艦建造に消極的であることは、民間企業として当然のリスク管理であろう。しかしながら、実際に台湾潜水艦の絶対数が増加し、活動海域が重複した場合のリスク管理は国の責任である。台湾の国産潜水艦が就役する2025年までに、日本政府としてリスク管理の体制を整えておく必要がある。関係国との調整を考慮すれば、残された期間は長いとは言えない。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:新華社/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
<FA>
2021/12/07 16:23
注目トピックス 経済総合
エヌビディアを対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(7日10:00時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つソフトバンクグループ<9984>コール594回 1月 6,600円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 5月 1.0米ドル、JFEホールディングス<5411>コール157回 1月 1,700円、JFEホールディングスコール159回 1月 2,200円などが見られる。上昇率上位はエヌビディアコール129回 12月 270米ドル(+74.1%)、WTI原油先物リンク債_2022年3月限コール2回 12月 70米ドル(+64.3%)、丸井グループ<8252>コール17回 12月 2,150円(+63.6%)、ビットコイン2022年1月 プラス5倍トラッカー3回 1月 56,000米ドル(+62.1%)、WTI原油先物リンク債_2022年3月限コール1回 12月 65米ドル(+57.4%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/12/07 15:40
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(中国)上海総合指数は0.61%高でスタート、金融緩和の実施を好感
7日の上海総合指数は買い先行。前日比0.61%高の3611.21ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時2分現在、0.39%高の3603.23ptで推移している。金融緩和の実施が支援材料となろう。中国人民銀行(中央銀行)はきのう6日、市中銀行の預金準備率を15日から0.5%引き下げると発表した。また、新型コロナウイルス変異株オミクロンの重症化に対する脅威がやや後退しているも支援材料。一方、きょう7日は11月の貿易収支が発表される予定となり、慎重ムードが強い。
<AN>
2021/12/07 11:09
注目トピックス 経済総合
元統合幕僚長の岩崎氏、経済安全保障だけでなく技術にも焦点を(2)【実業之日本フォーラム】
本稿は、「元統合幕僚長の岩崎氏、経済安全保障だけでなく技術にも焦点を(1)」の続きである。我が国でもこれまで時々、中国の「千人計画」が報道されてきている。これは、中国が将来を制するためには「技術力」が必要との認識の下、中国人のみならず全世界の科学者や技術者等を破格の待遇で中国に迎え、莫大な研究費を与え、最先端の技術開発に取り組んでいる一大プロジェクトである。この計画は2008年頃に始まったとされ、当初は、その名のとおり、「千人」集める計画であったが、既に「一万人」を越えているとの報道もある。当初の計画では、集める科学者の資格は、「55歳以下、博士号取得者」とされていたものの、現在では、各国の企業等を定年で退職した人達も働いているようであり、制限を解除しているとの情報もある。2021年正月の読売新聞には、この計画で働いている日本人の匿名インタビューが出ていた。同紙によれば確認されているだけで44名の日本人がいるとの事。また、別の報道では200~300人の日本人が所属しているとの事である。既に開発されたもので「秘」に指定された技術や装備品について漏らすことは、法律違反であるが、再就職は自由であり、まだ開発されていない分野に挑戦し、新たな装備品を作ることは規制されていない。科学技術者や研究者の多くは、それが軍用に転用される可能性があると認識していても研究者としての探求心に勝てないことを理解できる部分もあるが、中国の巧妙な仕掛けである。この様な弛まぬ努力により、中国は、様々な分野で既に欧米や日本を抜く様な最先端技術と呼ばれる技術を持ち始めている。以前、米国等は「中国は我々の技術を盗む」と警鐘を鳴らしていたが、それは事実であったし、今後も彼らは、私達の技術やノウハウを盗み続けるものと思われる。ただ、更なる先進技術の開発にも力を入れていくものであろう。さて、それでは、我が国は今後どうすべきであろうか。「経済安全保障」に絡む動きは既に始まっているが。私は今回、我が国が行うべき、特に「技術」に焦点を当てた項目を指摘したい。1.「技術」分野に関する我が国の体制(1)予算処置「技術」は、これまでもそうであったように、我が国の生きる道である。次世代の技術を開発することによって、我が国の安全と繁栄が確保される。来年度予算の概算要求は、2021年8月に各省庁から財務省に提出されているが、防衛省の所謂、研究開発費で対前年度から1.5倍に増額されている。額としては、諸外国に比較し大きいと言い難いものの、大変素晴らしい努力の結晶であり、将来に対する危機感の表れである。また、政府は、来年にかけて「国家安全保障戦略」を見直すことを公表している。この戦略見直しは、必然的に「防衛計画の大綱(大綱)」及び「中期防衛力整備計画(中期防)」等が見直されることになろう。防衛省・自衛隊の任務は年々拡大されてきている。防衛費の伸びは前・前回の中期防に比べ、現中期防は対前年度比の伸びこそ大きいものの、物価上昇や任務拡大等を考慮すれば、従来の重要任務への資源配分を削りながらのギリギリの予算となっている。負債を抱えながらの財政であり、財務省の言い分も理解は出来るが、現状の自衛隊装備品の稼働率も年々低くなってきており、既に限界寸前である。破格な防衛費増は望めないとは思いつつ、強靭な足腰がなければ本来の自衛隊としての活動もできなくなる深刻な事態を考慮し、後方分野を再度充実させるとともに、新分野への投資を行う事を願っている。そして、是非とも研究開発費の大幅増額及び将来に対する大型投資を望む。(2)「技術保全」体制の確立これまでも、度々「秘密保全」について言及してきた。我が国は、これまで「秘密保全」に関して少しずつ諸外国を参考にしながら法律化・規則化してきている。しかし、国際標準と比較してまだ十分ではない。米国等が構成する「ファイブ・アイズ」がある。米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの五か国からなる「機密情報共有」の枠組みである。いつ立ち上げられたかは不明であるが、第二次世界大戦のあとからの様で、長い間、存在そのものも秘であったが、最近になって公開された枠組みである。これまでも何度か日本の加盟に関する議論が起こったものの、実現していない。その理由の一つに、我が国の「秘密保全」体制が十分でないとの指摘もある。私は、結論から申し上げれば、誘われたら加入すればいい程度であり、こちらから敢えてアプローチする必要はないと考えている。ただし、我が国も国際標準並みの「秘密保全」体制を早期に確立すべきである。この中には、先程から述べている技術に関する「保全」体制や個人や企業としての所謂、「セキュリテイ・クリアランス」制度の確立も含め、我が国が保有する技術・ノウハウは、我が国の安全保障に直結しているとの認識の下、早急な処置が必要である。2.各国との連携2021年4月に菅総理が渡米し、バイデン大統領との会談終了後の記者会見で、「我が国の防衛力強化」に言及された。また、バイデン大統領は8月にアフガンからの米軍の撤退が完了した直後の記者会見で、「アフガン人自身が戦う意志がない戦争を米国が戦うべきではない」と発言された。極めて当たりまえの事である。自国を守ろうともしない国を米国が守ることはあり得ない。我が国でも同様であろう。同盟国であれば、同盟国として応分の役割分担があろう。それに応じない同盟国を守ることはない。「技術安全保障」を考える時に、我が国のみでは限界がある。特に米国との連携は重要である。菅総理は、訪米時に「CoRe(日米競争力・強靭性)協定」に署名した。先進技術の共同開発の為の協定である。今年、9月、突如として米国、オーストラリア、英国が「AUKUS」を宣言した。三ヶ国による軍事同盟である。我が国では、豪に対する米英の原子力潜水艦の提供が大きく報じられている。ただ、この協定の細部を拝見すれば、軍事同盟でこそあるものの、この原子力潜水艦のみならず、自立型無人潜水艦、長距離攻撃能力、サイバー、宇宙、5G、IT、AI、量子技術等々の技術協力に関する協定となっている。我が国が入っていない事には若干、違和感があるものの、当初の原子力潜水艦の件があり、無用の議論を避ける意味では、寧ろ良かったかもしれない。我が国は、この「AUKUS」との連携も視野に入れつつ、技術開発協力及び保全を行っていくべきと考える。(令和3.11.22)岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:AAP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/12/07 10:24
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元統合幕僚長の岩崎氏、経済安全保障だけでなく技術にも焦点を(1)【実業之日本フォーラム】
最近、「経済安全保障」が脚光を浴びてきている。昨今の情勢からすれば当然の成り行きとは思うものの、この用語に違和感を覚えることがある。そもそも「安全保障」とは、総合的なものであり、国家やその組織の全ての力(総合力)を駆使し、国民のあるいはその組織に所属する人達の安全や利益・権限を守ることである。一昔前までは、「安全保障」と言えば、軍事的な分野に限られて使われていたが、国際交流が活発化する中で、軍事のみならず、外交力が必要とか、資源やエネルギーの確保等が議論されるようになり、「外交・安全保障」や「総合安全保障」などと言われるようになった。また時には、人権・貧困、感染症対策等も含め「人間安全保障」ということようにも使われている。そして、最近では、「経済」に着目した「経済安全保障」が議論されるようになってきた。「安全保障」が「経済」に焦点をあてて議論されるに至った状況には、いろいろな事が考えられるが、最も大きな要因は、国際的な相互依存関係の深まりであろう。もともと資源的に恵まれない国は、資源が豊富な国に依存していた。ただ、最近では、自国で賄うことが出来ても国外で生産した方が安価な場合、又は自国よりも高い技術力を有する国での生産の方が結果的に効率的である場合についても、他国へ依存する体制へと移行してきている。一部の国ではこの状況に危機感を持ち、再度自国での生産に切り替えを模索している国もある。米国が石油の自国での採掘に再び方向転換したのは、その典型である。また、もう一つの大きな要因が、中国の「経済力」を使った露骨な利権獲得行為が世界各地で横行するようになってきたためである。むしろ、こちらの方が問題であろう。中国による、インド洋の要衝であるスリランカのハンバントタ港の利権獲得はそのいい例である。中国は、スリランカに対して格安の融資を行い、いつの間にか債務過多にさせ、挙句の果てにスリランカ南部のハンバントタ港(インド洋の要衝)を向こう99年間貸与することを約束させた。99年はどこかで聞いたことがある期間である。また、我が国や欧米諸国が海賊対応等の為、自衛隊や各国の軍が駐留しているアフリカのジプチに莫大な投資を行い、スエズ運河から紅海を経てインド洋に出る場所に所在するジプチに中国が中国海軍専用の軍港を建設した。この軍港は空母の寄港も可能な大きな軍港であり、中国の「一帯一路(OBOR)」の拠点となる軍港である。中国が主導して2014年10月に設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)への加入は当初57ヶ国だったが、最近100ヶ国・地域に達している。中国の経済力の影響が世界各地に広がっており、この力で、世界各地で利権を得ているのである。OBOR構想は、2013年に習近平国家主席が提唱した「シルクロード経済圏構想」に基づく構想である。これはシルクロードを模した「陸地版シルクロード経済圏(一帯)」と、インド洋経由の「海上版シルクロード経済圏(一路)」の構想であり、陸には鉄道や道路等のインフラを構築し、インド洋沿岸の各地には港湾整備を行う構想となる。この様な事例は、南太平洋諸国でも枚挙に暇がないほど頻発している。我が国も中国から経済制裁的な嫌がらせを受けた経験がある。2009年9月7日、尖閣諸島付近で任務中(警戒監視や違法操業の漁船都市締まり)であった我が国の海上保安庁(海保)の巡視船に中国漁船が故意に衝突をした事案が発生した。海保はその場で中国漁船の船長以下を逮捕したが、この直後、中国で日本製品のボイコットや不買運動が起こり、携帯電話等の製造に欠かせないレア・アース(希少土)を日本へ輸出しないことを中国が宣告してきた。我が国は、中国の脅しに屈することなく、その後すぐに希少土に代わる代替製品を調達できた(この後、中国は我が国に対するレア・アースを解禁)。ただ、多くの開発途上国は、中国の資金に頼ると債務地獄に陥る可能性がある事は重々承知していても、中国の潤沢な資金や投資を自国の経済発展に不可欠と考えがちであり、ついつい深みに嵌ってしまうのである。この様な経緯から、「経済安保」が叫ばれ、我が国が諸外国に先駆け、「経済安全保障大臣」を新設した。当然の成り行きであり、素晴らしいことである。ただ、「経済安保相」の所掌する範囲や権限等の細部が明確でなく、既存の省庁(経産省や防衛省、外務省)等との関係も明らかにされておらず、この「経済安全保障相」を置くだけで十分であろうか。私は、特に「技術」に関する分野に十分な配慮がなされるか不安を持っている。岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。「元統合幕僚長の岩崎氏、経済安全保障だけでなく技術にも焦点を(2)」に続く写真:AAP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/12/07 10:24
注目トピックス 経済総合
バイデン大統領と習近平主席の初米中首脳会談でガード・レールは構築できず(元統合幕僚長の岩崎氏)【実業之日本フォーラム】
2021年11月16日、米国のバイデン大統領と中国の習近平主席とのオンラインでの会談が行われた。バイデン氏が米国大統領になって以降、米国と中国の首脳による「初会談」であった。当初は、お互いに笑顔で手を振りあい約10分間ずつのスピーチを行った。習近平主席は「古くからの友人に会えて嬉しい」との言葉で始まった。一般的な中国人要人が良く使う言葉であり、「こんにちは」とほぼ変わらない。バイデン大統領は「Thank you」と返したのみであった。今回の米中首脳会談の成果はどうであったのだろうか。これは一概に評価しにくい面がある。夫々の国の会談へ寄せる目的にもよるが、結論から申し上げれば、私は、中国の習近平主席に分があったのではと考えている。バイデン大統領の今回の目的は、「米中が衝突しないようにガード・レールを構築する事」と、報じられている。即ち、バイデン大統領としては、中国の習近平主席と忌憚ない意見交換を行い、最近叫ばれている様な米中の経済摩擦問題や台湾危機・南シナ海問題等で、米中の衝突を回避するためのガード・レールを構築したい意向である。バイデン大統領は、所期の目的は達することが出来たのだろうか。私の見立ては、「否」である。即ち、これまでと全く同じような問題がそのまま存在し、所謂、ガード・レールは構築出来なかったと考えている。一方の習主席の目的は、どことあったのだろうか。公表されていないので推測するしかないが、私は、「国内と国際社会へのアピールと、米国への警告」であったのではと考えている。最近の中国経済に陰りが見え始めていた矢先、昨年からのコロナで中国経済が打撃を受け、所望の経済成長率が達成できていない。国内では、低迷する経済に不満が積み重なっているのである。国内へのアピールという点においては、今回のバイデン大統領と対等に話すことで中国が如何に大国なったかを誇示できたのではと考える。また、中国の経済成長がこれまでよりも穏やかになったとはいえ、欧米や日本の様な先進国に比較し、まだまだ高い成長率を維持している。国際社会に対しては、この会談を全世界に流すことにより、中国が米国と並ぶ大国になったことをアピールする絶好のチャンスにある。そして実際に、会談における両首脳の対等な関係を放送することが出来た。また、米国への警告という点では、再度、新疆ウイグル問題や台湾問題が中国の内政であり、これに口出しは許さないと強い口調で警告を発することが出来た。これが、私の今回の会談の評価である。では、会談での両首脳のそれぞれの発言を見てみよう。1.米中関係バイデン大統領が「両国の競争が衝突に至らぬようにガード・レール」が必要との発言に対し、習主席は「正しくお付き合いする道を見つける必要がある。」と相手方を諭し、「相互に尊重しあい、平和共存を堅持すべき」とし、何か子供に教育しているような言い方であったように感じた。習主席としては、もともとの米中経済戦争は、米国(トランプ大統領の鉄鋼製品への25%課税)が勝手に仕掛けた争いであり、先ずは、米国が対中国輸出入を見直し、元通りのお付き合いをすべきでは?との認識を要求したものである。そして、「共存の堅持」とは、お互いの存在と繁栄を認め合い、この状態を維持していきましょうとの呼びかけである。そして、中国は、中国の現存する権益を譲るつもりはないとの意思表明である。2.国際秩序バイデン大統領が「自由や民主主義等の価値観を共有する同盟国と、力による現状変更や国際秩序を乱す勢力に立ち向かう」と述べたことに対し、習近平主席は「国際的陣営分割やグループによる対抗は、世界に災いを齎す」として、米国の同盟国との連携を非難し、暗に米国の行動そのもの及び同盟国との行動について、国際社会を分断し、国際社会を乱し、災いを齎している、と指摘した。3.台湾問題バイデン大統領が台湾海峡の両岸の平和的解決を願い「力による現状変更や平和と安定を損ねる一方的な試みに強く反対」するのに対し、習主席は「平和統一に努力するが「台湾独立」に対するいかなる動きには断固措置をする」ことを明言した。中国としては現在のところ、台湾を必ずしも統一出来ていないものの、もともと中国の一部であり、台湾国内であろうが外国勢力であろうが、台湾独立に動く勢力があれば、全力で対応することを断言した。これは、予てから、「台湾は中国の核心的利益」であり、中国にとっては国内問題であり、国外がとやかく言うべきことでなく、もし国内問題に手を入れるなら、断固として対抗する旨を述べ、米国や台湾の際英文総統に強い警告を発したものである。4.人権・民主主義等バイデン大統領が「新疆ウイグル・チベット及び香港地区での人権侵害等に懸念をしている。中国はより民主化すべき」との旨を述べた。一方の習近平主席は「民主化とは、国民が決めるべき事。人権は国内問題であり、外国が口を出すべきことではない」との反論を行った。この件も「中国の核心的利益」そのものであるとの主張である。以上が米中首脳会談の主たる部分であるが、会談中の表情や話しぶり等で、習近平主席に余裕が感じられた。結果として、これまでの米中の溝は、全くこれまでと同じであり、埋まっていない。今回の会談は、米国も中国も、大きな国内問題を抱えながらの会談であった。バイデン大統領は、大統領選以降、米国が分断される中であり、かつアフガン撤退でいろいろな問題が巻き起こり、最近のバージニアでの選挙で民主党が敗北する等、国内問題を抱えていた。習近平主席も国内的な経済低迷もあり、国民の不満がたまった状態であり、万全の体制で臨んだわけではない。双方とも大変な状態での会談であったが、マイナスは習近平側が少なかった様に感じられた。今後のスケジュールにおいては、北京五輪が目前に迫っている。米国は、参加そのものを見送る可能性に言及し始めた。モスクワ五輪へのボイコットと同じである。でも、この際には、ボイコットした米国や我が国に対し、国際社会からオリンピックを政治利用したとの批判もあった。台湾問題等も北京五輪が終わるまでは大きな動きはないものと考えているが、五輪終了後に習近平主席の三期目が開始され、四期目に向けた動きが出てくると思われる。引き続き警戒監視を怠らない事、隙を見せない事である。(令和3.11.24)岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:AP/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/12/07 10:17
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NYの視点:FRBの焦点は高インフレへ移行
連邦準備制度理事会(FRB)はインフレがもはや「一過性」の要因に留まる可能性が少なく、2022年まで続く可能性があり、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で資産購入縮小ペース加速を協議すると見られている。焦点を高インフレに移行した。今後の焦点は、1)資産購入策の解消ペース、2)利上げのタイミング、3)利上げの幅となる。今週は、消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、注目が集まる。第1四半期に縮小を終了すると、インフレが弱まらなかった場合の利上げの余地が広がる。バイデン米大統領の首席医療顧問の国立アレルギー感染症研究所ファウチ所長が週末のインタビューで、時期尚早としながらも、新型コロナのオミクロン変異株の重症度を巡り楽観的な見解を示したため、回復を損傷するとの懸念が和らいだ。ゴールドマンサックスはオミクロン感染拡大による回復への影響を織り込み2022年の国内総生産(GDP)成長見通しを従来の3.3%から2.9%へ引き下げた。顧客向けレポートで明らかになった。オミクロン変異株による消費への影響は微量だが、供給不足やオミクロン株による一部国境閉鎖が世界のサプライチェーンのさらなる混乱に繋がる可能性を指摘。高インフレをさらに長期化する要因にもなり得る。FRBの速やかな緩和縮小方針を正当化することになる。
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2021/12/07 07:39
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.22%高でスタート、預金準備率の引き下げ観測を好感
6日の上海総合指数は買い先行。前日比0.22%高の3615.23ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時49分現在、0.20%高の3614.79ptで推移している。預金準備率の引き下げ観測が好感されている。李克強・首相は3日、市中銀行の預金準備率について、「適時に引き下げる」と述べた。また、これに先立つ11月30日、劉鶴・副首相は「来年の中国経済にも、充分な信頼感を抱いている」と強調している。一方、新型コロナウイルス変異株「オミクロン」の世界拡散が引き続き警戒されている。
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2021/12/06 10:56
注目トピックス 経済総合
ソフトバンクグループを対象とするプット型eワラントが上昇率上位にランクイン(6日10:07時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価下落が目立つソフトバンクグループ<9984>プット462回 12月 5,700円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはイーサリアム2022年1月 マイナス3倍トラッカー2回 1月 5,600米ドル、ビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 5月 1.0米ドル、アップルコール180回 1月 150米ドル、イーサリアム2022年1月 プラス5倍トラッカー3回 1月 3,400米ドルなどが見られる。上昇率上位はニアピン米ドルr2 1324回 12月 112円(+52.5%)、ソフトバンクグループプット462回 12月 5,700円(+44.2%)、イーサリアム2022年1月 マイナス3倍トラッカー1回 1月 4,900米ドル(+41.7%)、イーサリアム2021年12月 マイナス3倍トラッカー3回 12月 5,000米ドル(+36.0%)、ソフトバンクグループプット463回 12月 6,700円(+33.5%)などとなっている。(カイカ証券)
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2021/12/06 10:35
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NYの視点:【今週の注目イベント】米CPI、JOLT、豪準備銀、加中銀
今週は豪州準備銀行やカナダ中銀が金融政策決定会合を予定しており政策に注目が集まる。さらに、米国ではJOLT求人件数や重要なインフレ指標、消費者物価指数(CPI)、消費動向を判断する上で重要な最新12月ミシガン大消費者信頼感指数速報の発表が予定されており注目となる。カナダ中銀や豪州準備銀は政策金利を据え置く見通し。カナダ中銀は他国に比べて緩和縮小を速やかに開始したが、カナダの強い雇用の伸びを受けて利上げは時間の問題との見方が強まりつつあり、カナダドル買いを支える。一方、豪州は新型コロナによる経済封鎖が影響し回復が停滞するため、当面金融緩和策が必要となる見込みで豪ドルドルは伸び悩みが予想される。米連邦準備制度理事会(FRB)は経済が強く、インフレ圧力が強まっており、12月連邦公開市場委員会(FOMC)で資産購入縮小ペース加速を協議する方針を、パウエル議長がすでに表明済み。FRBがインフレ指標として注目している変動の激しい燃料や食料を除いたコアCPI指数は前年比で4.9%増と1991年6月以降30年ぶり最大の伸びを記録する見通し。サプライチェーンの混乱や輸送ボトルネック問題が想定以上に長引き同時に、強い需要や高賃金が最近の物価上昇に繋がっている。また、米労働省が発表するJOLT求人件数で労働市場のスラックを確認していく。11月雇用統計で失業率は4.2%と、10月4.6%から予想以上に低下し、パンデミックで経済が封鎖する前の昨年2月来で最低に改善した。しかし、非農業部門雇用者数は前月比+21万人と、伸びは予想外に10月+54.6万人から縮小。年初来で最小に留まった。ただ、過去2カ月分は8.2万人上方修正され、3カ月平均も+37.8万人。また、労働参加率は61.8%と、10月61.6%から予想以上に上昇。やはりパンデミックで経済封鎖した昨年3月来の高水準に回復した。別の世帯世論調査では100万人近くの雇用が戻っているとの結果もあり労働市場はひっ迫しているとの見方が根強い。CPIとともにJOLT求人件数の結果がスラックの改善を示すと、FRBの資産購入縮小加速の軌道が確認される。ドルも底堅い展開が継続か。ドイツでは8日にショルツ新首相の就任式が行われる。早速、オミクロン変異株、インフラ投資やエネルギー問題と難題に直面することになる。■今週の主な注目イベント●米国7日:7-9月期非農業部門労働生産性確定値、10月貿易収支8日:10月JOLT求人9日:新規失業保険申請件数、10月卸売売上高10日:11月消費者物価指数(CPI)、12月ミシガン大消費者信頼感指数速報●英国6日:ブロードベント英中銀副総裁、成長見通しや金融政策に関し講演10日:GDP●欧州6日:独製造業受注7日:ユーロ圏GDP、独ZEW期待指数、鉱工業生産8日:独首相交代、ラガルドECB総裁講演10日:独CPI●豪州7日:豪州準備銀が金融政策決定会合●カナダ8日:カナダ中銀が金融政策決定会合●中国7日:貿易収支8日:CPI、PPI●日本10日:PPI●G7外相会議10-12日、リバプールで開催
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2021/12/06 07:33
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国内外の注目経済指標:米国の11月消費者物価コア指数は10月実績を上回る可能性
12月6日-10日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。■7日(火)午後10時30分発表予定○(米)10月貿易収支-予想は-667億ドル参考となる9月実績は-809億ドルで赤字額は過去最大となった。財の輸入額は増加したが、産業用資材や原油の輸出額が減少したことが要因。10月については、輸入額の反動減が予想されていること、産業用資材の輸出額が増える可能性があるため、貿易収支は改善する見込み。■8日(水)午前8時50分発表予定○(日)7-9月期国内総生産改定値-予想は前期比年率-3.2%参考となる一次速報値は前期比年率-3.0%。個人消費、輸出が低迷した。改定値については、7-9月期法人企業統計調査で設備投資の落ち込みがやや小さくなると想定されているが、公共投資は下方修正されるとみられており、改定値は速報値-3.0%から下方修正される可能性がある。■9日(木)午前10時30分発表予定○(中)11月消費者物価指数-予想は前年比+2.5%参考となる10月実績は、前年比+1.5%。10月の生産者物価指数は前年比+13.5%と極めて高い伸びを記録した。最終消費者への価格転嫁の動きが広がる可能性があることから、11月消費者物価指数は10月実績を上回る見込み。■10日(金)午後10時30分発表予定○(米)11月消費者物価コア指数-予想は前年比+4.9%参考となる10月実績は+4.6%。最新の米地区連銀経済報告によると、支払い価格の上昇は全産業に広がっており、サプライチェーン問題はインフレの著しい要因となっている。11月時点でこの状況は改善されていないことから、コアの物価上昇率は10月実績を上回る可能性がある。○その他の主な経済指標の発表予定・7日(火):(中)11月貿易収支、(豪)豪準備銀行政策金利発表、(欧)ユーロ圏7-9月期域内総生産確定値・8日(水):(日)10月経常収支・9日(木):(独)10月経常収支・10日(金):(日)11月国内企業物価指数、(英)10月国内総生産、(米)12月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値
<FA>
2021/12/04 15:00
注目トピックス 経済総合
日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(3)
本稿は、「日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(2)」の続きである。●「クリエイターエコノミー」には2種類のマーケットがある白井 クリエイターエコノミーが、さまざまな分野で生まれています。マーケットとして成立するのは、どれぐらいの規模と考えれば良いでしょうか。喜田 ウェブやクリエイターエコノミーのビジネスタイプは2つです。少人数高単価の厚利少売ビジネスか、大人数低価格の薄利多売ビジネスかのどちらかです。スケブのように厚利少売ビジネスだと、ファンが300人いれば成立します。その中の1人が30万円を出せば成立するというマーケットです。スケブの場合、「石油王」の存在も大きいです。実際の石油王ではありませんが、ポンといきなり現れて、ポンと30万円を支払って、ポンと消えていくという謎のお金持ち。少額しか支払わない人が1万人いるよりも、石油王がたった1人いてくれるだけで成立するのがクリエイターエコノミーです。また厚利少売ビジネスの方が、一般的に取引のトラブルの発生率が少ない傾向にあります。一方、大人数低価格のビジネスであれば、潜在的な顧客、ファンが1万人いれば成立するでしょう。これはだいたい、サブスクリプションサービスに加入します。YouTubeの有料チャンネル、あるいは海外ではPatreon、国内だとPixiv FANBOXやFantiaと呼ばれるサービスです。ファンクラブのようなもので、月額500円程度のものが多いです。課金することで毎月限定コンテンツを使用できるというクリエイターエコノミーです。白井 少人数で成立するクリエイターエコノミーは、ロングテールの世界ならではですね。英語圏、中華圏ではもっと大きいでしょうし、もっとマニアックなものでも成立しやすいのではないでしょうか。喜田 世界的には日本は第3位ぐらいでしょう。第1位がアメリカ、第2位が中国です。日本のクリエイターが中国のビリビリ(bilibili(※1))動画で活動しているようなケースも散見されます。日本で流行りにくい理由は、人口が少ないこともありますが、資金移動に非常に強力な法規制がかけられているからでしょう。ただ、日本のクリエイターエコノミーは、将来的には、ビッグ・テック(Alphabet、Apple、Meta、Amazon、Microsoft)が構築するプラットフォームに吸収されたり、イーロン・マスクのNeuralinkが提唱する、脳に電極を直接埋め込むBMI(Brain Machine Interface)技術のようなものに取って代わられたりすることになると思います。国産プラットフォームが世界を席巻することはないと思います。実際に、グーグルは、2021年8月、日本の送金アプリ「pring(プリン)」という個人間送金サービスを買収しました。巨大な資本力と高度な技術力を持ち、すでに海外で圧倒的なシェアを持っているグーグルのような企業のほうが、日本の企業よりも上手くいく可能性が高いでしょう。国内ベンチャーあるいは国内の動きの遅い大企業がクリエイターエコノミーに参入した頃には、すでに海外の企業が日本に上陸して、乗っ取ってしまっているのではないでしょうか。一方、300人という議論はウェブサービスにも当てはまります。300人しかマーケットがない、ビッグ・テックが注目するには小さ過ぎる市場を、日本のベンチャー企業が細々と取っていくという未来は起こり得るでしょう。白井 藤野英人さんとの対談での議論と似た未来予想ですね。●「質」「量」ではなく、「速度」で評価される喜田 私はポリゴンテーラーというVRのSNS上の服を販売するプラットフォームの開発を進めていますが、この事業にも、スケブの未来にも、私が圧倒的な自信を持っているのは、おそらくビッグ・テックが参入してこないからです。白井 しかし、数十年後の世界では、「国民1人1アバター時代」が実現しているかもしれません。喜田 そのときは私がビッグ・テックの傘下に入っている、バイアウトして資本的には外国企業の傘下になっているということですね(笑)。白井 日本が、クリエイターエコノミーを戦略的に進めていくには、世界のマーケットを見据えて、どのようなコンテンツが求められているかというのも重要な論点です。また、クリエイターもその点を念頭に置いて活動する必要があるでしょう。世界における日本のクリエイターの強みは、クオリティの高さとクリエイター人口の厚みにあると思います。一方、韓国のデジタルコミックのウェブトゥーンは、日本の漫画のような精緻さはなく、非常に粗っぽい仕上がりで、ストーリーも単純ではありますが、スマートフォンで読めるため現代のライフスタイルにマッチしており、世界的に大流行しています。日本の漫画も、マーケットや技術の変化に敏感に対応していかなければ、技術力があっても駆逐されかねないと思います。日本には高いクオリティのクリエイターが大勢いるけれど、それを活かせる戦略的思考を持った人が育っていないのかもしれません。どうしたら、日本は勝てるのでしょうか。喜田 いままでの評価軸は「質」か「量」かでしたが、いまは「質」でも「量」でもなく、「速度」です。一つのコンテンツの消費活動にかける時間は年々減っています。「小説家になろう」というサイトが流行っているのは、毎日、通勤時間に、通学時間に、パッと見ることができるからです。3,000文字ぐらいのものが毎日、365日欠かさず更新され、YouTubeの短尺の動画が毎日流されています。毎日投稿されているチャンネルほど伸びるのです。高品質なものが2年の歳月をかけて完成されるのではなく、雑でもいい、量も少なくていいから、とにかく速度が重要です。毎日コンスタントに更新されることが必要なのです。むしろ量は少ないほうがよく、毎日1分で終わるもの、ツイッターの4ページ漫画や漫画サイトの単話販売が好まれます。少なくともティーン層のコンテンツの消費は速度の世界であり、ウェブトーンはそれにフィットしています。白井 ピッコマを展開するカカオジャパンの金在龍社長は「ウェブトゥーンの作品は歴史には絶対残らない」と断言しています。しかし、そこで親しんで、普通の漫画に流入していくことで、漫画文化が生き残っていく力になるはずだというのが彼の話でした。ただ、誰が儲けるかというと、日本の漫画ではなくて、大量消費を前提に組み立てられ、AIが描くような作品なのかもしれません。大量消費時代に入っているのであれば、精緻な漫画の芸術的な美しさよりも、サササッと読めるというものが求められている。この辺の競争優位の組み立てについても、日本自身が考えていかなければならないのでしょう。※1:bilibili(ビリビリ)は、中華人民共和国の動画共有サイトおよびビデオ、生放送、ゲーム、写真、ブログ、漫画などのエンターテイメント・コンテンツ企業■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/12/03 16:29
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日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(2)
本稿は、「日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(1)」の続きである。●世の中は「コト消費」から「ヒト消費」へ喜田 スケブは、国内外から日本のクリエイターに対してイラストや音声データを有償でリクエストできる「投げ銭付きお題募集サイト」です。2018年12月に公開し、2021年11月末時点でユーザー総登録者数160万人超、クリエイター登録者数約8万人超、月間取引高約3.5億円の規模に成長しました。これまでクリエイターエコノミーは、モノ消費とコト消費が支えてきました。「機能的に便利だから、アイフォンを買う」というのがモノ消費で、「オーガニック料理を食べる、スキューバダイビングをする」といった体験の消費がコト消費です。いまは第3の消費方法であるヒト消費が拡大しており、これがクリエイターエコノミーの中核となっています。スケブもその一つと考えて良いでしょう。ヒト消費は別に新しいものではありません。教祖に依存するという新興宗教やアイドルもその一つです。偶像崇拝全般がヒト消費で、それが大衆化したものがクリエイターエコノミーです。例えば、YouTubeの投げ銭機能であるSuper Chatですが、この投げ銭機能を使って、大好きなYouTuberを気軽に応援することができます。2020年のYouTube年間Super Chatランキングの世界1位は、日本のバーチャルYouTuberの桐生ココさんでした。先日、引退されたのですが、2020年の投げ銭総額は1億5,000万円超でした。世界ランキングは10位まで公開されているのですが、その多くは日本のバーチャルYouTuberや日本のインフルエンサーです。デジタル化が進むと、ひとりで製品やサービス、コンテンツを作れるようになる一方、生産者の顔も見えやすくなります。パソコンの性能がよくなり、すばらしいツールで簡単にリッチなコンテンツを作れるような人を応援したくなるのです。白井 ソフトウェアの能力が高くなり、容易にデジタル上の商品を作れるようになりました。便利なツールがいっぱい登場してきたからこそ、カスタマーとカスタマー、消費者同士がつながって商売ができるようになってきたのでしょうね。喜田 ゲームがうまくなりたい人のためのコーチングビジネスも流行っています。先日、私も20歳の男の子にレッスン料として10万円を支払い、自分がゲームしているところの録画を見てもらい、指導してもらいました。プールの先生、ジムの先生のような感じです。●クリエイターの「自身のなさ」が値下がりの原因に白井 品質が高くなれば価格が上がるのが世の常ですが、デジタル空間の財やサービスには、当てはまらない場合もあるように思います。喜田 そうですね。特に若年層が多いクリエイター業界は、財やサービスの価格が低く放置されています。この価格の下押し圧力の原因は、「クリエイターの自信のなさ」であり、クリエイター自身に「自分の商品なんて」と考えがちな傾向があります。例えば、高度な技術とセンスを持った人が、「自分の作品なんて大したことないから」と思い、すごく価値ある作品を3,000円で売れば、他のクリエイターが追随せざるを得ず、結果的には価格崩壊を引き起こすのです。特にデジタルデータの場合は、いくらでも複製できますので、製作者は販売価格がゼロ円でも原価割れにはなりません。他方、同じ品質や性能であれば購入者は安いものを選びます。これらの構造が価格の下押し圧力を生み、エンドユーザーの手には安価で高品質な商品が届くという市場が形成されているのが、現在の状態であり、ほとんどの人が食べていけない状況、焼け野原になっています。白井 クリエイターの「自信のなさ」に起因する価格の下げ競争ですね。デジタルデータであれば、コピーもされやすく、価格を引き下げる力が働きやすいのでしょうね。一方で、先ほどゲームのコーチング代金として1レッスン10万円とお聞きしました。この価格差は何によるものでしょうか。喜田 これはゲームの持つ性質によるところが大きいです。ゲームの世界にはプレイヤーランキングがあり、ダイヤ、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズのようにランクが分かれています。ランクマッチのようなもので、強い人は強い人と当たる。プロリーグ、アマチュアリーグなどが構造化されており、自分がいまどの位置なのか、どのヒエラルキーにいるのかが客観的に分かります。自分が一番上のランクだと「自分はどうもゲームがうまいらしい。みんなが褒めてくれる」といった成功体験をすることができます。しかし、クリエイティブの世界では、それがわかりづらい。クリエイティブの世界は、ゲーム業界のようにはヒエラルキーが可視化されないため、プライシングが機能しにくいのです。●クリエイターは、「成功体験」を得ることが大事スケブによるクリエイターへの還元の最たるものは、売上ではなく成功体験だと思っています。スケブは30秒ぐらいで募集開始できますし、営業活動をしなくても、勝手にリクエストが届くような仕組みを目指しています。みんなやっているから、とりあえず始めてみると、意外にもリクエストがきた。納品したら、めちゃくちゃ褒められた。「ああ、自分の絵ってお金になるんだ」、という体験に最も価値があるのです。成功体験があれば、次のステップに進むことができます。「幾らのイラストを描くことができるのか」と、自身の価値を金額で認識するようになります。それは自分が価格を決めて、勝手に値下げしていく値段ではなく、客観的に市場でつけられた数値です。5万円も出してくれる人がいることを実感し、ある日突然、30万円もらえたという体験でさらに自信がつく。「自分はこれで食っていけるかもしれない」という成功体験が一番大事です。白井 美術の世界にも権威付けを行う仕組みがあり、ヒエラルキーが作られています。まだ生まれてまもないイラストの市場や、生まれたてのVRのアイテムの市場でも、今後マーケットが大きくなるとともに、権威付けする仕組みが普及すれば、マーケットが正常に機能していくようになるのでしょうか。喜田 将来的には、そのようになっていくとは思いますが、いまからそのような未来を展望して、あらゆる市場参加者が努力する必要があると思います。現状では、クリエイター自身に価格設定を任せると、無闇に価格を下げてしまいかねません。スケブの場合は、機械学習によってシステムが決定したやや高めの金額が標準設定となっている他、クライアントによってクリエイターが設定した金額以上に支払う仕組みが存在しています。リクエストが来ない期間が続くと価格は徐々に下がっていきます。これはクリエイターが価格を一気に下げることを防ぐためです。また、価格表の掲載を禁じています。こうした設計から、スケブ側が一方的に決めた金額がほぼ流通しているような状態です。スケブが、クリエイター市場の価格決定メカニズムを適正に誘導していると言えるのです。「日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(3)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/12/03 16:28
注目トピックス 経済総合
日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(1)
【ゲスト】喜田一成株式会社スケブ 代表取締役社長外神田商事株式会社 代表取締役株式会社シーズメン CMO(Chief Metaverse Officer)【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)●Meta(旧Facebook)がメタバースに「年1兆円の投資」白井 2021年10月に、Facebookがメタバースへの事業シフトとともに、「メタ・プラットフォームズ」への社名変更と年間1兆円の投資を表明し、世間の耳目を集めました。デジタル空間において、いま足元で何が起こっているのか、それは今後の未来を示唆しているのか。また、経済のあり方や労働、ひいては国益にどのような影響があるのか。これらをしっかりと検証する必要があると考えています。メタバースとは、メタ(超)とユニバース(宇宙)をかけ合わせた造語であり、3Dの仮想空間です。さまざまな解釈が存在しますが、私が理解しているメタバースの定義とは、1.現実世界と仮想空間をリアルタイムにつなげるライブ性があり、2.無制限の参加者を受け入れ、3.異なるプラットフォームやワールド(空間)でデータやアイテムを連携(相互運用性)させることができ、4.プラットフォーム内や周辺サービスでデジタルアイテムの買い物をすることが可能であり、5.個人や企業に多様な体験を提供している、となります。現在、メタバースと呼べるもので最大のものは、VRChatという3D上のSNSであり、アバターに扮して、さまざまなワールド(空間)を体験し、他の参加者と会話することができます。VR(Virtual Reality)は、日本語では仮想現実と訳され、コンピューターで作り出された環境を、あたかも現実であるかのように知覚させる技術です。ヘッドマウントディスプレーを被ることで、高い没入感を得ることができ、SNSやゲームだけでなく、作業現場や教育など色々な分野に使われています。2021年11月のモルガン・スタンレーのレポートによると、時期の言及はないですが、メタバースの獲得可能な市場規模は8兆ドル(910兆円)と想定しており、また、アメリカの市場調査会社であるEmergen Researchによると、メタバースの市場規模は2028年には8,989.5億ドルに達し、それまでの年平均成長率は43.3%と予想しています。今回は、クリエイターエコノミーやメタバース空間での第一人者であるSkeb(以下、スケブ)の社長「なるがみ」(インターネット上のハンドルネーム)さんこと、喜田一成さんをお招きしております。実は、間もなく創業125年を迎える老舗出版社の実業之日本社が、2021年2月、スケブのすべての発行済株式を、スケブの経営者兼オーナーであった喜田さんから取得し、連結子会社化いたしましたが、喜田さんにはスケブの社長を引き続きお願いしております。●世界で人気が加速「VRChat」とは喜田 実業之日本社が、スケブのクリエイターエコノミーへの支援に対して強く共感してくださったことから、スケブの株式取得に踏み切っていただいたと理解しています。私のスケブの売却理由としては、従業員の雇用や、スケブの経済圏で生活されている方への責任を果たすためには、大きな企業の傘下に入ったほうが良いと判断したからです。また、メタバース領域への投資資金確保という側面もあります。私は2年で4,500時間以上VRChatに滞在しており、さまざまな問題や可能性を理解することができました。VRChatとは、バーチャル空間上でほかのプレイヤーとコミュニケーションを楽しめるサービスで、2021年現在、世界で最も接続者の多いVR仮想空間として人気を集めています。運営しているのはアメリカ企業のVRChat社です。白井 私の場合は、スケブ株式取得を機に喜田さんとお会いする機会が多くなり、VRの可能性をお聞きしたり、喜田さんの自宅でVRChatをプレイさせていただいたりして、最近メタバースへの興味が湧いてきいたというのが実情です。そこにFacebookのニュースが飛び込んできたわけですが、私としては、インターネットのような巨大な地殻変動であり、未来を全く変えてしまうモノであると感じています。このような大きな流れのなかで、労働に対する変化も感じることができます。一つは、井上智洋先生との対談でも話題に上ったテクノロジーの進化による失業(技術的失業)であり、もう一つがクリエイターエコノミーです。インターネットが登場するまでは、一定数出荷しないと多様なコストを吸収できないため、均一な製品を大量生産し、マス広告を投入して販売してきました。しかし、インターネットの登場で、情報の流通コストがほとんどゼロになりました。商材がデジタルデータであれば、カスタマイズも容易です。また、中央集権型の1対nのコミュニケーションから、分散型のn対nというコミュニケーションの時代となったため、小さなコミュニティに対してでもビジネスが可能となったように思います。これは「ロングテールによる就業」とも言えるでしょう。スケブ事業もその好例だと思っています。「日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(2)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/12/03 16:27
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.07%高でスタート、過度な景気減速懸念が後退
3日の上海総合指数は買い先行。前日比0.07%高の3576.45ptで寄り付いた後は、日本時間午前11時5分現在、0.15%高の3579.31ptで推移している。過度な景気減速懸念が後退していることが支援材料。中古住宅や新車の販売が回復しつつある——と伝わった。また、前日の米株高なども好感されている。一方、新型コロナウイルス変異株オミクロン株の世界拡散などが引き続き指数の上値を抑えている。
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2021/12/03 11:11
注目トピックス 経済総合
電通を対象とするコール型eワラントが前日比3倍の大幅上昇(3日10:05時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つ東急<9005>コール22回 12月 1,650円を順張り、オリエンタルランド<4661>コール172回 1月 18,000円を順張り、三井住友フィナンシャルグループ<8316>コール344回 1月 3,900円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては三菱ケミカルホールディングス<4188>コール53回 1月 950円、銀リンク債コール72回 12月 22米ドル、三井住友フィナンシャルグループコール344回 1月 3,900円などが見られる。上昇率上位は電通<4324>コール89回 12月 4,350円(前日比3倍)、丸井グループ<8252>コール18回 12月 2,450円(前日比2倍)、SOMPO ホールディングス<8630>コール33回 12月 5,750円(前日比2倍)、東急コール22回 12月 1,650円(+75.0%)、電通コール94回 1月 5,350円(+57.1%)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/12/03 10:54
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NYの視点:FRB、QE早期終了で利上げ前倒しに備える軌道か
アトランタ連銀のボスティック総裁は、雇用や国内総生産(GDP)のパンデミックからの力強い回復を指摘し、経済にはかなりの勢いがあると強気の見解を示した。FRBが実施していた国債購入もその目的を果たしたとし、継続する理由がなくなったと指摘。パウエルFRB議長の見解を支持し、量的緩和縮小を想定よりも速く、来年の1−3月期で終了し、万が一、インフレが来年も4%超で推移した場合に利上げの前倒しに備えることができるとの考えを示した。持続的なインフレ高進が利上げ前倒しの論拠に繋がると説明した。さらに、ハト派として知られ、2021年FOMC投票権を有するサンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、、供給問題や労働市場のひっ迫が持続するとは予想しないとしたがらも、資産購入縮小を想定以上に速く進める必要性にも言及。今月末に退任するクオールズ米連邦準備理事会(FRB)副議長は過去2年間の財政支援が需要をパンデミック前の水準をさらに上回る水準へ押し上げる可能性を指摘。もはやボトルネック問題ではなく、経済の過熱を抑制するために利上げが必要になるとの考えを示した。ただ、QEを早期に終了したとしても、利上げに関しては依然、ハードルが高いと考えられる。来年は中間選挙。インフレが来年後半も鈍化せずに高止まり、無秩序な状況となった場合を除き、11月前の利上げを控える可能性も残り過剰に利上げを織り込むのも危険だと考えられる。
<FA>
2021/12/03 08:23
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NY金は、上値重い サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY金についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、今週のNY金について『上値重い』と述べています。次に、『30日は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言を受けた早期の米利上げ観測の強まりなどを背景に続落した。1776.50ドル(−8.70)。11月は月間で7.40ドル(0.41%)下落した』と伝えています。続けて、『パウエルFRB議長は上院銀行委員会の証言で、インフレ高進が新型コロナウイルス危機に関連した「一時的要因」によるものというFRBの見解について、「撤回する良い時期だ」と言及。「物価上昇がより幅広い項目にわたっている」と警戒感を示したことで、米国の利上げ前倒し観測が強まった』と示唆しています。また、『パウエルFRB議長は、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大は「リスク」と警戒感を示した。ただ景気への影響は、ロックダウン(都市封鎖)などが導入された昨年3月のコロナ危機時に「匹敵するとは考えていない」と述べた。そして、12月14、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、議物価高抑制のため、量的緩和の縮小ペースを加速し、終了時期を前倒しする方針について議論すると明らかにした』と伝えています。陳さんは、『新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」に対する警戒感から金買いが期待されたが、パウエル議長の「タカ派」発言をきっかけに流れが反転した』と言及しています。こうしたことから、NY金について、『利上げへの見通しが開けたことで金相場は上値の重い展開を余儀なくされそうだ。一方で、「オミクロン株」がもたらす世界経済への不透明感や今後、世界的に景気が回復したときに生じるインフレ懸念を背景に下値もサポートされよう』と考察しています。今週のレンジについては、『1700~1800ドル』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の12月1日付「NY金は上値重い」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
<FA>
2021/12/02 17:38
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は売り先行もプラス圏回復、景気回復への期待感が高まる
2日の上海総合指数は売り先行。前日比0.10%安の3573.24ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時55分現在、0.13%高の3581.52ptで推移している。景気回復に対する期待感が高まっていることが支援材料。劉鶴・副首相は「来年の中国経済にも、充分な信頼感を抱いている」と述べた。一方、世界的な新型コロナウイルス感染の拡大が引き続き不安材料となっている。
<AN>
2021/12/02 10:59
注目トピックス 経済総合
三菱ケミカルHDを対象とするプット型eワラントが前日比3倍超えの大幅上昇(2日10:00時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしてはイビデン<4062>コール113回 1月 7,000円、アドバンスト・マイクロ・デバイセズコール83回 1月 160米ドル、メタ・プラットフォームズプット123回 12月 340米ドルなどが見られる。上昇率上位は三菱ケミカルホールディングス<4188>プット49回 12月 700円(前日比3.6倍)、三菱ケミカルホールディングスプット50回 12月 850円(前日比3.3倍)、商船三井<9104>コール117回 12月 8,600円(前日比2倍)、ネットフリックスプット78回 12月 500米ドル(前日比2倍)、カシオ計算機<6952>コール26回 12月 1,900円(前日比2倍)などとなっている。(カイカ証券)
<FA>
2021/12/02 10:21
注目トピックス 経済総合
NYの視点:米11月雇用統計で12月FOMCテーパー加速を確認
米国の労働省はワシントンで3日、最新11月雇用統計を発表する。エコノミストの平均予想によると、失業率は10月の4.6%から4.5%へ低下する見込み。非農業部門雇用者数は54.5万人増と、10月から一段と伸びが拡大する公算となっている。先行指標の中で雇用統計と相関関係が最も強いとされる民間の雇用者数を示すADP雇用統計の11月分は前月比+53.4万人と、10月+57万人から伸びが鈍化したものの予想を上回った。また、新規失業保険申請件数も減少基調が続き、季節的調整も影響したものの最新のデーダでは1969年以来の低水準を記録し、労働市場の強さがあらためて表明された。全米の製造業を示すISM製造業景況指数の雇用も53.3と、3カ月連続で上昇し4月来で最高となるなど、サプライチェーン混乱などで回復が抑制されると懸念されていた製造業の雇用も需要の強さに支えられた。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はすでに経済が強くインフレ圧力が強まっているため、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、11月に決定した軌道よりも早いペースでの資産購入縮小を進める選択肢を協議することが妥当だと方針を発表。雇用統計が良好な結果となった場合は、この軌道をより確実にする。ドルも底堅い推移を継続すると見られる。■11月雇用統計の先行指標・ADP雇用統計:+53.4万人(予想:+52.5万人、10月:+57万人←+57.1万人)・ISM製造業景況指数雇用:53.3(52)・NY連銀製造業景況指数:雇用(現状):+26.0(+17.1、6カ月平均+18.2)週平均就業時間:+23.1(+15.3、6カ月平均+16.8)6か月先雇用:+30.6(37.1、6カ月平均38.7)週平均就業時間:+10.2(10.2、6カ月平均+8.4)・フィラデルフィア連銀製造業景況指数雇用(現状):27.2(30.6、6カ月平均29.5)週平均就業時間:30.6(27.8、25.1)6か月先雇用:49.3(37.5、6か月平均46.5)週平均就業時間:9.7(27.2、6か月平均20.3)・消費者信頼感指数(%)雇用十分:58.0(54.8、26.3)不十分:30.9(34.2、54.3)困難:11.1(11.0、19.4)6カ月後増加:22.1(24.4、25.0)減少:18.9(18.7、21.6)不変:59.0(56.9、53.4)所得増加:17.9(18.4、16.0)減少:12.0(11.2、14.5)不変:70.1(70.4、69.5)・失業保険申請件数件数 前週比 4週平均 継続受給者数11/20/21| 199,000| -71,000| 252,250| n/a |n/a11/13/21| 270,000| 1,000| 273,250| 2,049,00011/06/21| 269,000| -2,000| 278,500| 2,109,00010/30/21| 271,000| -12,000| 285,250| 2,209,00010/23/21| 283,000| -8,000| 299,750| 2,101,00010/16/21| 291,000| -5,000| 320,000| 2,239,00010/09/21| 296,000| -33,000| 335,000| 2,480,00010/02/21| 329,000| -35,000| 344,750| 2,603,000■市場エコノミスト予想失業率:4.5%(10月4.6%)非農業部門雇用者数:前月比+54.5万人(+53.1 万人)民間部門雇用者数:前月比+52.5万人(+60.4万人)平均時給:予想:前月比+0.4%、前年比+5.0%(+0.4%、+4.9%)
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2021/12/02 08:12
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(中国)上海総合指数は0.06%安でスタート、経済指標の改善を引き続き好感
1日の上海総合指数は売り先行。前日比0.06%安の3561.88ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時48分現在、0.01%高の3564.09ptで推移している。経済指標の改善が引き続き好感されている。11月の製造業購買担当者景気指数(PMI、政府版)は50.1となり、景況判断の分かれ目となる50を3カ月ぶりに回復した。一方、前日の米株安や米テーパリング(資産購入規模の縮小)が加速されるとの懸念が指数の足かせとなっている。
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2021/12/01 10:53
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王子ホールディングスのコール型eワラントが前日比3倍の大幅上昇(1日10:17時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価下落が目立つソフトバンクグループ<9984>コール591回 12月 6,700円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはイーサリアム2022年1月 プラス5倍トラッカー3回 1月 3,400米ドル、金リンク債コール361回 1月 1,700米ドルなどが見られる。上昇率上位は金リンク債プット317回 12月 1,700米ドル(前日比3倍)、セイコーエプソン<6724>コール91回 12月 2,300円(前日比3倍)、王子ホールディングス<3861>コール47回 12月 650円(前日比3倍)、王子ホールディングスコール46回 12月 575円(前日比2.1倍)、太平洋セメント<5233>コール109回 12月 2,700円(前日比2倍)などとなっている。(カイカ証券)
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2021/12/01 10:49
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コラム【新潮流2.0】:運と実力(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)
◆「親ガチャ」という言葉が流行っている。こどもは親を選べない。どんな親のもとに生まれるか、すべては運次第。それをカプセルのおもちゃのくじ引きである「ガチャガチャ」(最近はゲーム内アイテムのルーレットも「ガチャ」という)に喩えた言葉だ。嫌な言葉だが真実だから流行るのだろう。これをもっと洗練された言葉で述べたのが、「白熱教室」で有名なマイケル・サンデル教授の新刊の邦題『実力も運のうち』(「実力も運のうち 能力主義は正義か?」早川書房)だ。◆アメリカで成功を収めた人の多くは、自分自身が勤勉で努力したから成功したと思っている。しかし、そんなことは幻想だ。アメリカの名門大学に入学する学生の大半が裕福な家庭の子女だという事実がそれを裏付ける。裕福な家に生まれ育ったために良い教育を受けることができた。言ってみれば「親ガチャ」に当たったからエリートコースに乗れたのだ。◆僕が教壇に立つ大学院の講義でこの話をしたら、ある女子学生がこう言った。「私と同年代で酷い境遇の人が大勢います。なのに私は親や恩師のおかげでこうして大学院に通うことができています。自分は何もしていないのに、運が良かったというだけでこんなに幸せな暮らしができることに罪悪感を感じてしまいます」。◆おい、おい、ちょっと待ちなさい。今の自分があるのは、すべて自分の力だと思うのは間違いで、生まれ育った環境という「運」によるところが大きいのは確かだが、だからと言ってあなたが「何もしてこなかった」というのは違うでしょう。自分の努力をもっと認めてもいい。◆結局、この世は「運」と「実力」で成り立っている。サンデル教授の言う通り「実力も運のうち」だが、一般には「運も実力のうち」だ。実力があるから運をつかめる。実力のあるものは用意周到、常に準備しているから巡ってきたチャンスを逃さない。逆に言えば「用意していない牡丹餅は棚から落ちてこない」のだ。「努力の量が、運の量を左右する」(サミュエル・ゴールドウィン)という言葉を信じたい。さて、投資の成果はどうだろう。 市場分析に費やした努力の量に成果が結びつくだろうか。事実は別として、そう信じて今日も明日も頑張るしかないのである。事実は別として。マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆(出所:11/29配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)
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2021/12/01 09:31