注目トピックス 経済総合ニュース一覧

注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(4)【実業之日本フォーラム】 「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(3) 【実業之日本フォーラム】」の続きである。(4)我が国の状況、特に安全保障分野岸田政権は、コロナ対策も国民からの支持を貰い、支持率が比較的安定している。しかし、今年の見通しが必ずしも明るいわけではない。最大の不安定要因は、Covid-19問題である。この対応如何によっては、支持率も急降下する事もあり得る。そして、前述した様に、我が国は、昨年に続き今年も国政選挙(参議院選挙)が控えている。この選挙結果次第では、何が起こるかわからない。現与党が政権を失うことはあり得ないが、もし、参議院で与党が半数以上の議席を確保できなければ、「ねじれ国会」となり、国会運営がかなり困難になることが考えられる。選挙以外にも、課題は沢山ある。最大の課題は、経済活動の再生である。コロナの為に我が国の経済のみならず、全世界の経済が低迷している。この状態が、既に2年続いているのである。経済は動かないものの、各国とも莫大な負債を抱えながら、コロナ対策に資金を出している。我が国も各国も、経済が疲弊している。これを早急に回復させないといけないが、有効な手段が見つかっていない。次に、外交であるが、今年は「日中国交正常化50周年」の年である。大きな節目である。我が国は北京オリンピック・パラリンピックは外交的ボイコットをするが、経済を復活させる為に中国の市場を活用せざるを得ない。大変難しい舵取りが必要であるが、我が国は是々非々で臨むべきである。尖閣諸島周辺の中国公船への対応やチベット・新疆ウイグル地区での人権問題等には毅然たる態度で臨むべきである。そして、安全保障である。昨年から「国家安全保障戦略(NSS)」の見直し作業が始まっている。今後の我が国の方針を決める大変重要な作業である。昨年岸田政権が発足した際、「経済安全保障大臣」が新設された。最近の経済・技術分野に着目した「経済安全保障」を司る大臣である。昨年末から「経済安全保障」に関係した法律策定の作業も進み、今年の通常国会に当法案が提出される見込みである。大変、素晴らしいことである。今回のこの様な一連の安全保障関連の議論の中心は、矢張り、如何に今後の中国に対応するかである。この中では、「超限戦」等を考えれば、我が国や同盟国やパートナー国に対し、ありとあらゆるアプローチ(攻撃)がある事を想定し、ある特定の部署のみが完璧でも意味がなく、国家として強靭な体質になることを視野に入れた戦略、そして法律、計画になることを願っている。今通常国会では「経済安全保障法制」が成立し、年末までに「NSS」、そして、「防衛計画の大綱」(又は「国家防衛戦略」)、「中期防衛力整備計画」が策定される予定である。それぞれの内容について、今回は言及しないが、昨年から議論されている、「台湾」への態度を明確にすることと、昨今の我が国近隣国が極超音速弾道弾や低高度・不規則飛翔飛行する弾頭の開発・配備している事に鑑み、防御能力には限界があり、「長距離打撃能力」の保有の是非に関する議論を行い、我が国の多くの国民の賛同が得られる「結論」に達することを願って止まない。その「結論」が、我が国の「意志」であり、「決意」である。仮に、我が国に手を出そうとする国があるならば、そのような国に我々の「決意」を伝えるのが「経済安保法制」であり、「NSS」、「大綱」、「中期防」である。危機管理の要諦は「抑止」である。そして、もし、仮に、「抑止」が破れ、事態が起こった場合には、普段から備えた能力を遺憾なく発揮し、「行動(戦う)」する事である。(令和4.2.2)岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:26 注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(3) 【実業之日本フォーラム】 「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(2) 【実業之日本フォーラム】」の続きである。2.令和4(2022)年の展望この様な情勢の中で令和4(2022)年がスタートした。残念ながらコロナ禍での年明けである。今年は、2月から3月にかけて北京で冬季オリンピック・パラリンピックが開催される予定だ。昨年末、米国が「中国の人権問題等」を理由に北京オリンピック・パラリンピックへの外交的ボイコットを宣言した。今年になって追随する国が徐々に多くなりつつある。しかし、習近平主席にとって外交ボイコットなどは、あまり意味のない事である。寧ろ中国を煙たがっている国々の首脳が北京に来ない方が楽であろう。選手さえ送ってくれれば、オリンピック・パラリンピックは計画通り開催できる。習近平主席としては、それで十分なのである。また、今年は、各国の選挙が多い年である。3月には韓国大統領選挙、4月にはフランスの大統領選挙、5月にはフィリピンの大統領選挙、7月には我が国の参議院選挙が行われる。そして、秋には米国の中間選挙である。この様な中で、私が懸念している事(リスク)について以下を述べたい。(1)依然猛威を振るうCovid-19の新種株やはり最大の懸念事項は、今年も残念ながらCovid-19対応である。昨年は、ワクチンの普及により、鎮静化するのではとの希望的観測もあったが、新種の変異株の出現で、再度、全世界がCovid-19の脅威に晒されることになっている。既に2年が経過し、3年目に突入しているにも拘らず、未だにこのウイルスは、猛威を振るっている。既に世界では3億人を越える人が感染しており、500万人を越える方々が亡くなっており、600万人を越す勢いである。世界の全ての国・地域にとって、このCovid-19と如何に戦うか、又は共存するのかが喫緊の最重要課題である。この対応如何では、経済のみならず、各国の政権を揺るがすことも考えられる。(2)米国の中間選挙の行方昨年の回顧で述べたとおりバイデン大統領の評価は、予想を下回るものであった。特に、国内の分断は大変大きな問題である。今年の中間選挙に向け、この傾向が更に加速する可能性がある。この問題は根深く、単純ではない。長年、米国が抱えていた問題が、特にトランプという人物の出現で表面化したのである。簡単には解決できないだろうが、解決への努力は惜しむべきではない。米国内の分断の溝を少しでも埋めないと確りとした外交も安全保障も不可能であり、ましてや世界をリードする事は出来ない。また、「同盟国への回帰」は大変重要な方針である。今年は、バイデン大統領自らが主導し、我が国との関係をより進化させる事、そして特に、トランプ大統領が壊した欧州各国との関係修復に尽力されることを望む。今年は、バイデン大統領、米国にとって大変重要な年である。この様な状況の中で、昨年末からのウクライナ情勢はかなり緊迫度を増している。また、台湾周辺での緊張度も高まってきている。もし習近平主席とプーチン大統領が協力し、同時に事態が起これば(これが最悪の事態)、米国はまた裂き状態となり、いずれにも中途半端な対応にならざるを得ない。地域によって深刻度は異なるものの、我が国でも欧州各国にとっても大変なことである。果して、バイデン大統領は内外に問題を抱えながら、双方に適切な対応がとれるのであろうか。大変、憂慮すべき事態である。もし、中間選挙で上院・下院で負けることがあれば、バイデン政権は更に弱体化し、高齢であることも考えれば、交代する事も考えられる。大変深刻な事態である。バイデン政権は、昨年3月に「暫定国家安全保障戦略」を示し、中国に対する基本認識こそ公表しいているものの、未だに「国家安瀬保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略(NDS)」及び、これらに続く各種安全保障政策を示していない。是非、早期に決定、同盟国にもそれを示し、世界が抱える問題に協力し、また任務分担、相互補完し、対応することを強く望む。(3)中国の不安定と躍進習近平主席にとって、今年はこれまで以上に重要な年である。今年は習近平主席の2期目の終わりであり、3期目のスタートの年である。前述のとおり、習近平が再度、国家主席に就くことは確実であろう。しかし、習近平体制が盤石かと言えば、必ずしもそうとは言えない。私は、不満を持っている側近や共産党幹部も、それなりに多いのでないかとみている。昨年末の「中国人民日報」に、改革開放路線に関する記事が掲載された。最近の中国経済の低迷を心配する内容である。が、真の狙いは別にありそうである。経済成長が鈍っている理由は、単純でなく、いろいろな要因が考えられるものの、この記事が指摘したいのは、最近の習近平主席の経済政策であろう。これまでの中国は、トウ小平主席以来「改革開放政策」を採用し、他国に類を見ない経済成長を遂げてきた。江沢民主席や胡錦涛主席も忠実にこれを実行し、世界2位の経済力を持つに至ったのである。しかし、習近平主席はこの「改革開放政策」を徐々に変更している。時代に合わせた変更かもしれないが、単にトウ小平色を消すためかもしれない。今回の「中国人民日報」の記事は、この様な習近平主席への批判と思われる。中国の機関紙である「人民日報」にこの様な記事が掲載されることは、政権内部にもかなり不満が蓄積されている証左かもしれない。習近平主席の三期目は確実であろうが、決して盤石でないし、順風満帆な状態でもないと考えられる。中国も不安定要因を孕んでいるのである。習近平主席の3期目は本年秋から2027年までである。彼の2つの「夢」の実現には、4期目も必要である。その為には、不満分子をも説得できる成果(手柄)が必要である。北京オリピック・パラリンピックの成功も1つの成果である。ただし、これだけでは十分ではない。習近平主席は、オリ・パラ後、早速、次なる成果に向けた動きを開始する事が考えられる。以前、「中国新聞」に、習近平主席が着任後「六場戦争」なるものが掲載されたことがある。2020年から向こう40年間に予測される戦争の記事である。この40年間で6つの戦争が考えられるとの報道であった。この中の最初の戦争は、習近平主席が、事ある毎に発言している「台湾」である。中国にとって、台湾は中国の核心的利益である。最初の戦争は、2020-2025年で「台湾」を統一する戦争である。この場合、「戦争」と言いても単純に「Hot War」の事だけでなく、あらゆるタイプの戦いを意味している。中国の戦略の基本は、「伐謀」であり、「三戦(心理、世論、法律戦)」である。所謂、孫子が言う「戦わずして勝つ」事が最も善であるとの考え方である。また、1999年に当時空軍の大佐であった喬良、王湘穂の両名が書いた「超限戦」(21世紀の新しい戦争)からも中国の戦い方を理解する事が出来る。この著書の中では、「今後の戦いは総力戦」であり、「(軍事のみならず)あらゆる手段の組み合わせ」を使って勝利する、と記載されている。「あらゆる手段」とは、ある時は相手方の基幹インフラを機能マヒさせ、またある時には経済市場を混乱させ、事前に仕組んだパソコンやネット・ワーク網を機能不全にし、心理戦で相手方を不安に陥れ、ありとあらゆる手段で相手方を混乱させ、最後に軍を投入し、勝利するというものだ。所謂、従来の様な武力による戦闘をしなくても相手方を意のままに操ることが出来れば、犠牲者も少なく、善の善、即ち「最善」な戦い方になる。昨今、台湾に関しては、いろいろな危険性が指摘されている。その多くは、台湾に対する武力侵攻を想定している。私は、敢えて否定はしないが、その確率はかなり低いと考えている。しかし、習近平主席にとって「台湾」を意のままに出来なければ、「夢」が叶わない。かつて馬英九氏(台湾国民党)が台湾総統を務めていた時代があった。彼は、中国との経済関係を重視し、比較的大陸(中国)寄りの政策をとっていた。現在は、蔡英文総統(民進党)が多くの国民の支持を集めているものの、未だに国民党を支持する勢力は健在である。「香港」を見れば、習近平主席がこの勢力を使わない手はない。当然、習陳平主席には、敢えて武力に訴える選択肢もあるが、前述のあらゆる手段を駆使する戦い、即ち、例えば、海・空軍力(空母等の頻繁な航行、戦闘機・爆撃機の周回飛行等)による適度な威嚇・示威行動と、前述の三戦、時に世論戦、心理戦、経済力等を組み合わせ、かつサイバー攻撃等を駆使すれば、戦わずして、台湾への「一国二制度」の適用は可能になるかもしれない。習近平主席にとっては、非常に重要な時期にさしかかっている。失敗は許されない。迂闊に武力を行使すれば、最悪の事態では多くの中国人に犠牲者が出る可能性がある。そうなれば、彼は失脚するしかない。彼は、敢えてそんな危険を冒すのだろうか。我々は、当然武力攻撃も想定しながら、あらゆる攻撃を考えながら中国対応を考えないといけない。今年の中国は、以前にも増して危険な要素を孕んでいる。中国は、いつでも、どこでも「空白」を探している。政治・経済・軍事・宇宙・金融・文化・エネルギー・法律等々、ありとあらゆる分野を監視し、「空白」を見つければ、侵入し、我がものとする。我々は、「対話」は閉ざしてはいけないが、決して油断してはいけない。最大の警戒をもって対応すべきである。「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(4) 【実業之日本フォーラム】」に続く岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:24 注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(2) 【実業之日本フォーラム】 「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(1) 【実業之日本フォーラム】」の続きである。(2)増長する中国中国は、2021年は、習近平政権の2期目の4年目(発足から9年目)であり、2期10年の総仕上げの時期であった。私はこれまでも何度となく指摘してきたように、習近平主席は、ある時から「夢」を抱くようになってきていると思われる。その「夢」とは、「中国の夢(中華民族の偉大な復興)」であり、「習近平個人の夢」でもある。そして、彼の最終的なゴールは、毛沢東・トウ小平を越えることであり、「中華民族の永遠の英雄(皇帝)」になることである。その「夢」を達成する為には、2期10年では短か過ぎる。更に時間が必要である。しかし、国家主席の任期期間は、憲法に2期10年との条文が明記されていた。これは、毛沢東が長期に亘り政権に就き、政治的に混乱したことへの反省や、権力の集中を防ぐ目的で明記されたものである。この規定により、トウ小平、江沢民、胡錦涛元主席は2期10年で退陣した。ところが、習近平主席は、2018年、この憲法の条文を「削除」する改正案を全人代に提出したのである。全人代は当然ながら、抵抗できず、可決・成立となった。これで、習近平主席は、憲法上、彼が希望する限り、国家主席の席に居座ることが可能となった。また、この他に、中国共産党はこれまで個人崇拝を禁じていたにも拘らず、党規約の中に「習氏思想」を記述し、その普及に努めている。各学校のカリキュラムも全て変更し、子供たちから教育を開始している。既に、習近平主席の神格化が始まっているのである。しかし、憲法上、国家主席の在任期間の制限が無くなったとは言え、習近平主席の任期が自動的に延長されるものでもないだろう。3期、4期と継続する為には、周りを説得できる、それなりの手柄(成果)が必要である。昨年7月は中国共産党創立100周年でもあった。ここで習近平主席は約1時間に及ぶ演説を行い、「中国に対する虐待、抑圧、支配を許さない」と述べている。これは基本的に米国への警告であり、そして、米国へ警告を発することが出来るようになったことを自慢する演説である。習近平が自慢する他の大きな成果の1つは、米国のオバマ大統領が中国を「大国」と発言したことであり、2つ目は、昨年までの約3年間、香港への締め付けを強化し、最終的に「香港」を手中に入れたことである。「香港」は英国からの返還の際、向こう50年(~2047年迄)は「一国2制度」を維持する事が約束されている。まだ、その期間の半ばも経過していない時期に「香港」を北京の言いなりにすることが出来た。「一国2制度」は有名無実化してしまったのである。大きな手柄である。この他にも「南シナ海の埋め立て・軍事化・行政区発令等の権益拡大」、「尖閣列島への海警局公船派遣」、「西太平洋への艦艇・航空機展開」、「台湾への威嚇」等々は彼の成果であろう。この様な事から習近平主席は、第3期目をほぼ確実にしたと言っても過言でない。習近平主席と米国の関係では、米国のトランプ大統領は、予測不能で極めて厄介な大統領であったものの、トランプ大統領の関心事はごく限られており、御しやすい面もあったと思われる。一方、バイデン新大統領はトランプ大統領に比較し紳士であり、予測可能な大統領である。昨年11月16日のオンラインによる米中首脳会談の中で、バイデン大統領が「両国は衝突回避に責任があり、その為のガードレールが必要」との認識を述べたのに対し、習近平主席は「米国との共通認識の下に両国の発展を主導したい、これは国際社会の期待でもある。」と述べた。米国を諭すような発言であり、国際社会をリードするのは米国と中国の2つの大国であるとの認識を示した。私は、この会談を、習近平主席がかなりの余裕を持って対応していた一方、米側にあまり成果がなかったとも感じた。多くの中国国民は、この会談風景を見て、「中国は米国に並ぶ大国になった」と感じた事であろう。習近平主席の大きな成果である。(3)我が国の政情不安定安倍総理の突然の退陣で、一昨年前(令和2年、2020年)の夏から急遽総理に就いた菅首相は、総理就任後も粉骨砕身コロナと戦い続けた。昨年の夏以降は、コロナの新規感染者数も減りはじめ、多くの国民は、菅総理が昨年秋以降も、自民党総裁・総理大臣を継続されると思っていた。ところが、大方の予測を覆し、突然、菅総理は、最後までコロナ対策に専念するため、総裁選への不出馬を表明された。総理大臣を降りるとの宣言である。私は、菅総理が総裁選へ出馬しないと全く考えていなかった。大きな驚きであった。この後の自民党総裁選には、新人候補4名が臨み、見事に勝利されたのが岸田氏である。岸田氏は、安倍政権で長い間、外務大臣として活躍され、諸外国にも名前と顔が知られている極めて温厚で堅実な政治家である。自民党総裁選に次ぎ、衆議院選挙が行われ、自民党は若干議席を失ったものの、予測を遥かに上回る議員数を獲得することになった。多くのメディアや政治評論家によれば、総裁選候補者4名(岸田氏、河野氏、高市氏、野田氏)による議論が功を奏したのではとの分析である。国民の前で忌憚のない討論や意見発表を連日行ったことが、国民へ安心感を与えたのであろう。私自身も、この議論を拝聴し、久々に内容のある、いい議論であったと感じた。昨年10月に発足した岸田政権への支持率は高く、その後のオミクロン株への対応も素早く、また国会では超大型補正予算を決定したこともあり、政権への支持率は上昇傾向にある。岸田総理が就任し、まだ日が浅いことから評価するには時期尚早であるが、岸田政権のスタートダッシュは成功している。「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(3) 【実業之日本フォーラム】」に続く岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:22 注目トピックス 経済総合 令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(1) 【実業之日本フォーラム】 昨年2021年も残念ながらコロナで始まり、結果的にコロナで終わった。今回のコロナ・ウイルスは、令和元年(2019年)11月から12月にかけて、中国武漢市近辺で確認されたことから、当初「武漢ウイルス」と呼ばれていたが、中国の強い抵抗にWHO(世界保健機関)が屈し、Covid-19なる名称となった。2019年に発見されたCoronaVirusとの事がその理由であるらしい。私は、この命名に若干の違和感を感じたが、最近のこの種の味わいのない命名は、時代の流れかなと思いつつ、「スペイン風邪」や「日本脳炎」、「エボラ出血熱」も修正が必要かもしれないと思っているのは私くらいだろうか。我が国では、このCovid-19が武漢市周辺で発見されて間もない翌年(令和2年)の1月下旬、ダイヤモンド・プリンセス号(香港経由で横浜港入港)で最初の感染者が確認された。これ以降、我が国では、これまで拡散・収束の波を繰り返し、昨年までに5波を経験している。昨年の9月末で東京都をはじめとする一部地域で出されていた緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置に係る各種制限が解除された以降、ワクチン効果と相まって新規感染者数及び重症者数も激減し、好ましい方向で推移していたものの、昨年末からの世界各地でのオミクロン株の出現・拡散により、我が国でも厳戒態勢で臨んだものの、徐々に各地で市中感染と思われるオミクロン株による感染者が続出し、再度の蔓延防止等重点措置宣言を発出する地域が増えている。今回のオミクロン株は、前回のデルタ株と異なり、かなり進化した変異株であり、拡散速度がこれまでよりも数倍早く、残念ながら我が国では、感染第6波に突入した。さて、この様な状況であるものの、今回は、令和3(2021)年を振り返り、今年(令和4年/2022年)を展望してみたい。1.令和三年(2021年)の回顧私は、昨年の初めに、令和3(2021)年の懸念事項として5項目を指摘した。(1)「長引くコロナ被害」(2)「不安定な米国」(3)「益々増長する中国」(4)「サイバー・宇宙競争が更に加速」(5)「我が国の政情不安」自己評価としては、満足できるレベルではないものの、世界も、我が国も、残念ながらほぼ予測どおりに推移したのではと考えている。Covid-19に関しては冒頭で述べたとおりであり、それ以上加筆すべきことはない。早くどんな変異株にも有効な特効薬が開発され、収束を願うのみである。また、サイバー・宇宙に関してもほぼ予測どおりに推移し、サイバーによる被害は年々拡大する傾向にあり、宇宙も、その利用に関して年々競争が激化してきている。ここでは、「米国」と「中国」及び「我が国の政情」に関する項目についてコメントしたい。(1) 不安定な米国(バイデン政権)私は、昨年の年初に不安定化する米国への心配を指摘した。一般的には、どこの国や地域でも、国家元首や政権交代時期には、一時的に各種政策・行政が滞り、不安定な期間になることがあり得る。私は、2019~2020年の米国の大統領選挙キャンペーンを見て、バイデン政権に対し、これまで以上に不安を抱えたスタートになるのではとの感覚を覚えた。理由はいろいろあるものの、大きくは2つである。1つは、米国内の分断であり、もう1つは、対中国政策への不安である。この他にも、米国内の経済の疲弊やワクチンの問題、外交・安全保障に関する北朝鮮の核開発や弾道弾対応問題、ロシアのインド太平洋諸国への進出とウクライナ周辺での不穏な活動対応、そして、対イラン対応、トルコ問題等々、問題が山積み状態である。これまでの大統領が受けた試練以上に大きな問題を抱えてのスタートであった。米国内の分断問題も鎮静化するどころか、より先鋭化してしまっている。また、バイデン大統領は長年政治に携わってきているものの、昨年は、各種手続きや案件で議会との連携や調整がうまく機能していなかったのではと思われることが屡々であった。人事に於いては、政府の然るべきポスト以上への配置には議会承認が必要であるものの、議会承認が遅く、未だに配置されていない職も多くあり、体制固めが出来ていない部分も多くある。日本は「最も重要な同盟国」と言いながら、米国大使が約2年間も不在である。昨年12月に漸く議会承認され、もうじき米国大使が東京へ赴任することになるが、異常な事態である。この様な状況で危機管理や事態対処がうまく機能したのか疑問を持たざるを得ない。危機管理は「結果が全て」である。いくら努力しても、期待された結果が出せなければ意味がない。これでは、とても狡猾な中国やロシア、北朝鮮に対し有効な対応がとれていたとは思えない。バイデン大統領は、選挙期間中から「同盟国への回帰」を宣言していた。果して、トランプ大統領時代よりも同盟国とのコミュニケーションがとれていたのであろうか。アフガン撤退問題やAUKUS協定締結、米露及び米中首脳会談等々、成果を挙げることが出来たのだろうか。昨年末、バイデン大統領は、史上初となる「民主主義サミット」を開催した。これは、バイデン大統領が選挙期間中から提唱していたものであり、最近の権威主義的な国の急速な増加に危機感を抱いた事からの提案であった。バイデン大統領は、結果的に109の国・地域を招待した。東南アジアでは、フィリピン、マレーシア、インドネシアの三ヶ国のみの招待であった。シンガポールは招待されていない。また、トルコ・ハンガリーはNATO加盟国であるが除外されていた。米国は、フィリピン、ナイジェリア、パキスタンに対し「重大な人権問題がある」と非難していたにも拘らず、これらの国々を招待した。米国の判断基準が理解できない。私は、この企画は、基本的には素晴らしい考えであると思う反面、危険性も秘めているのではと考えていた。もし実行する場合には、G7やG20等の既存の会議体を使うか、新規の場合には、参集範囲の基準を明確にすべきであった。招待されなかった国々の中には、米国へ反発したり、嫌悪感を持つようになるのではとの懸念があった。私は、偶然にもサミットの直後に、米国から招待を受けなかった数ケ国の在京大使館職員と懇談する機会があった。彼らは、彼ら自身も納得していない口ぶりであったし、彼らが勤務している大使館員(大使も含む)の中には不満を持つ者もいるとの事を漏らしていた。大変残念なことである。より実りある成果を期待するのであれば、米政府内で、より深い検討と綿密な計画及び実行に当たって宣伝が必要であったのではと思えてならない。また、「同盟国への回帰」であれば、各同盟国の考え方を聞いても良かったのではないだろうか。各同盟国は、地域周辺の事情をつぶさに認識しているだろうし、第三者的な中立的な意見を持っているからである。アフガンからの撤退作戦でも同じである。果して、どこまで同盟国と情報共有していたのだろうか疑問である。これでは、トランプ時代とあまり変わっていないのではと思わざるを得ない。この様な事では、世界をリード出来る筈がない。残念な結果である。但し、我が国との関係では、大きな成果を残した事象もある。その1つが、菅総理とバイデン大統領とが対面での懇談を行い、「台湾」の名称を日米の合意文の中に出すことが出来たことであり、また、もう1つが我が国では、あまり大きく報道されていない「CoRe協定(競争と強靭性に関する日米協定)」に調印し、日米で最新技術や先端技術の共同開発をしていく事を約束したことである(出資;日本$20億、米国$25で合意)。これは大変大きな成果で、今後、このCoRe協定を基礎に世界の先端技術を日米でリードしていくべきであり、それが出来る体制が確立されたと言える。そして、昨年の日米間の共同訓練もこれまで以上に進化してきている。また、日米を中心に豪、印、英、仏、独等との協同訓練も拡大しつつあり、対中国・露抑止の観点から、大きく前進した年になったことはプラス成果であった。「令和3(2021)年の回顧と令和4(2022)年の展望(元統合幕僚長の岩崎氏)(2) 【実業之日本フォーラム】」に続く岩崎茂(いわさき・しげる)1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 17:19 注目トピックス 経済総合 「強気なロシア」と「弱気なアメリカ」、ただの地域紛争ではない「ウクライナ問題」をめぐる世界の覇権争いのゆくえ ● ウクライナを巡る米露の「チキンゲーム」別々の車に乗った2人のプレイヤーが、同時に海に向かって走り、先にハンドルを切った方を「チキン(臆病者)」と揶揄するゲームは「チキンゲーム」と称されている。このゲームでは、双方が最後まで「強気」を維持すれば、両者とも海に落ちる結果となる。あるいは、ハンドルを切るタイミングが遅ければ、同じ結果となる。現在ウクライナを巡り繰り広げられている状況は、アメリカを含むNATOとロシアがまさに「チキンゲーム」を繰り広げている状況と言えよう。昨年末「疑心暗鬼の代償−ウクライナ情勢—」の記事を投稿した。その際、プーチン大統領の「強いロシアへのこだわり」という不確定要素はあるものの、ウクライナへの軍事侵攻の可能性は低いと見積もっていた。しかしながら、10万人とされるロシア軍のウクライナ周辺への展開は2か月を超える長期間となっている。このチキンゲームの今後を占ってみたい。https://forum.j-n.co.jp/post_politics/2965ロシアは2014年3月に、住民投票、独立宣言、併合要求決議を経てクリミアをロシアに併合した。その際ロシアがウクライナに対し行った軍事的方法は、「ハイブリット戦争」と呼称されている。ロシアは、正規の軍事力を行使するのではなく、ウクライナ国内の親露派に働きかけ、反政府活動を起こさせるとともに、義勇軍を展開し、影響力を拡大することをつうじて戦争目的を達成した。しかしながら、クリミア併合はアメリカを含む西欧諸国の認めるところではなく、2015年2月に、ウクライナ、ロシア、フランス及びドイツ間で締結された「ミンスク合意」は、単に東部ウクライナにおける停戦を合意したのみであった。● 二度目の「ハイブリット戦争」勃発かロシア大統領府は、2021年7月、プーチン大統領のウクライナに関する論文を公表した。プーチン大統領は、その中で、「ウクライナとロシアは何世紀にもわたり、精神的、文化的に結びついている、ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップがあってこそ維持できる」、と両国の特殊な関係を強調した。また2021年11月以降、約10万人と見られるロシア軍をウクライナ東部国境付近とクリミアに展開し、自らの主張を力で担保する姿勢を明らかにした。更に、同年12月には、アメリカ及びNATOに対し、NATOの東方不拡大や、ウクライナ及び同周辺への軍事力の展開や軍事演習を行わないという具体的なロシアの要求を書面で突き付けた。アメリカに対する要求に含まれている、「中距離ミサイルや核兵器を自国の外に配備しない」という事や、NATOに対する、「欧州での軍事配備はNATO東方拡大前の1997年の状態に戻す」という条件は極めて高いハードルであり、米国やNATOには受け入れがたいものである。そのため、今年に入って行われた「米ロ戦略対話」や、「NATO・ロシア理事会」での進展は見られていない。ロシアは、強硬姿勢を更に強めつつある。ロシアと強い結びつきを持つベラルーシ国防省は、1月下旬から2月上旬にかけて、ベラルーシ国内においてロシア軍と共同演習を行うことを明らかにした。一方のロシア国防省も、同じく1月下旬から2月にかけて、艦艇等140隻、航空機約60機、人員約1万人が参加する大規模海軍演習を行うことを明らかにした。演習海域には地中海が含まれており、ロシア太平洋艦隊及び北洋艦隊の艦艇が黒海に入り、海からウクライナに圧力を加えることも考えられる。また、1月13~14日には、ベラルーシ情報機関につながるハッカー機関によるウクライナ政府機関へのサイバー攻撃が行われたことをウクライナ政府が認め、米国防省は、ウクライナ国境地帯へのロシア特殊部隊の展開、ウクライナにおける親露派政権樹立の動き等を伝えており、2013年のクリミア併合時と同様の「ハイブリット戦争」が行われる可能性が高まっている。● 弱腰のアメリカとNATOロシアの「強気」な姿勢に対し、アメリカ及びNATOの動きは弱いうえに遅い。バイデン大統領は、1月19日、就任1年を迎えたスピーチにおいて、ロシアはウクライナに侵攻するとの見解を示した上で、「深刻で高い代償を払うことになる」との警告を発しているが、昨年12月の段階ではウクライナへの米軍の派遣は明確に否定している。それどころか、1月23日、米国務省は、ウクライナの首都キエフにある米大使館職員家族に退避命令を出したことを明らかにしている。NATOは、1月12日の「NATO・ロシア理事会」終了後、ロシアが求めるNATO東方不拡大の法的保証を拒否したことを伝えているが、次回会合に望みをつなげること以外、具体的方針は示していない。むしろ、アメリカがウクライナへ武器供与を承認したのに対し、ドイツがウクライナからの武器供与の要請を拒否したことが伝えられており、NATO内での不協和音も認められる。1月24日、NATOのストルテンベルグ事務総長は、NATO諸国が東欧の防衛力増強のため部隊の派遣を進めていることを発表し、米国防省も、8,500人規模の部隊に派遣に備えるように指示を出したことを明らかにした。NATO諸国がロシアの強硬姿勢に、遅ればせながら力による対応措置を講じ始めたという事ができる。チキンゲームの観点からは、ウクライナに対するロシアの「強気」に対し、NATOの「強気」の範囲はNATO域内にとどまっている。ロシアのウクライナに対する「強気」を、アメリカを含むNATOが是認する可能性が高くなってきたと言える。ウクライナはNATOへの加盟を希望しているものの、現時点では加盟国ではなく、NATOとしても集団防衛の義務は負ってはいない。また、バイデン大統領は8月のアフガニスタン撤退に関し、国内外から批判を浴びたことから、海外への米軍派遣には消極的と見られている。これらのことから、ロシアのウクライナに対する軍事力行使という「強気」に対し、NATOが軍事力行使という「強気」に出て、両者が直接軍事衝突する可能性は低いと見積もられる。一方で、ロシアが軍事侵攻し、ウクライナ全部を併合すような情勢も想像しづらい。ウクライナ西部にはロシア人が少なく、ウクライナ全土を併合した場合、反露勢力によるテロ等が頻発することになるであろう。ロシアは軍事的圧力を強めつつも、軍事侵攻に至らない程度で落としどころを探っていると考えられる。● 「自由で開かれたインド太平洋」に悪影響?米露高官会談を経て、アメリカはロシアに対する回答を書面で行うと報道されているが、その内容が及ぼす影響は、米露関係にとどまらない。ウクライナに対するロシアの主張を一方的に認めた場合、NATOとアメリカの威信は地に落ちる。特に、台湾に対して圧力を強める中国に、軍事力でアメリカを抑え込むことができるという見方を与え、今後、自由で開かれたインド太平洋に悪影響を与えることが危惧される。また、カブール撤退で傷ついたアメリカへの信頼度が、さらに悪化する可能性もある。ウクライナ問題は、単に東欧における地域的紛争ではなく、中国及びロシアという権威主義的国家と、アメリカを中心とする民主主義国家のどちらが世界秩序を牽引するかという大きな問題をはらんでいる。「強気」に対しては、「強気」で対応することも可能であるが、あえて双方が納得できる妥協点を探るという姿勢を見せなければ、相手の「強気」に押し切られてしまう。ロシアの軍事的圧力に対しては、少なくとも軍事的手段で対応するという姿勢を持つことが肝要であろう。NATO諸国の東欧への兵力展開は、「力には力で対抗する」という姿勢の表れではある。しかしながら、同時にロシアとのはざまにあるウクライナを切り捨てるとの印象を与えかねない。これは、朝鮮半島をアメリカの防衛ラインに含めなかったことが朝鮮戦争の契機となったとされる、1950年の「アチソン・ライン」を彷彿させる。アメリカ及びNATOの真価が問われていると言えよう。(2022年1月27日記)サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 15:50 注目トピックス 経済総合 『日本も「敵基地攻撃能力」を保有すべきと言われ始めたワケ—日米安保責任分担のありかたとは』【実業之日本フォーラム】 ● 中東に生じた米海軍の空白地帯2022年1月18日付「フォーリンアフェアズ」紙は米ジョンホプキンス大学シニアフェロー、ハル・ブランド氏の「The Overstretched Superpower」という所論を紹介している。その趣旨は、「現在米国は欧州におけるロシア、西太平洋における中国そして中東におけるイランから挑戦を受けており、その兵力は伸びきった状態である。歴史的に見て、伸びすぎた超大国は、コミットメントと能力の不一致に悩まされ厳しい選択を余儀なくされてきた。バイデン政権は、同盟国や友好国に安全保障に対し、より多くの責任を求めてくるであろう。」というものである。米海軍広報誌である「USNI」は定期的に米海軍艦艇の展開状況を公表している。1月10日付記事は、強襲揚陸艦3隻からなる米海軍エセックスARG(Amphibious Ready Group:両用戦即応部隊)が中東を離れたことにより、中東に米海軍の空白地帯が生じていることを伝えている。アメリカは中東に空母打撃部隊(CSG : Carrier Strike Group)又はARGを常時配備しており、このことはアメリが中東を重視している証拠であるとされてきた。昨年12月にウィーンで開催されたイランの核合意を巡る協議が物別れに終わったばかりであり、中東における緊張が続く中で、このような空白地帯をつくることは極めて異例である。兵力不足を指摘するブランド氏の主張を裏付ける状況と言えよう。● 米海軍、兵力に余裕なし米海軍の兵力保有状況はどうであろうか。米議会調査局(Congressional Research Service)が2022年1月20日に公表した「中国海軍近代化:米海軍への暗示」によると、かつて世界最大を誇っていた米海軍であるが、2021年時点で、主要艦艇の隻数は、中国海軍348隻に対し296隻と52隻少ない。2005年には、216隻に対し291隻と75隻も上回っていた。トランプ政権は2030年までに355隻の艦艇を整備する目標を掲げていた。昨年米海軍は355隻という数字の代わりに、今後30年間で321から372隻の有人艦艇と77から140隻の無人艦艇からなる512隻海軍の創設を提案している。今後増勢が見積もられる中国海軍に対応するため、数的に中国海軍を上回る隻数を確保することを目標とする提案であるが、現時点で米国防省は正式には承認していない。2022年度に米海軍が要求している主要艦艇の建造数は、原子力潜水艦2隻、駆逐艦1隻及びフリゲート1隻のわずか4隻にしか過ぎない。これに対し巡洋艦7隻の退役が予定されており、実質的には3隻減である。(巡洋艦の退役を遅らせるとの報道もある。)有人艦艇及び無人艦艇合計512隻の建造を、予定している30年後に達成することは困難な状況にある。いくら予算を増額しても、建艦能力自体が急速に向上することはない。米海軍の数的劣勢が近い将来で解消する可能性は極めて低い。少なくとも米海軍は当分の間、兵力に余裕はなく、伸びきった状態が続くと考えられる。● 露呈した「海上自衛隊即応能力の欠陥」「伸びきったゴム」状態であるのは、米海軍に留まらない。海上自衛隊も同じ状況にある。現在海底火山噴火で甚大な被害を負ったトンガ支援のため、航空自衛隊輸送機及び海上自衛隊輸送艦が派遣されている。このような国際緊急援助活動に加え、ソマリア沖海賊対処、中東における情報収集活動、そして「自由で開かれたインド太平洋」を維持するという我が国のコミットメント果たすべく毎年インド太平洋への艦艇派遣と各種任務が目白押しである。海外派遣艦艇数の増加は、我が国周辺における海上自衛隊の活動に大きな影響を与えている。昨年10月、中露海軍艦艇10隻が津軽海峡を通峡した際に、これに対応した海上自衛隊の艦艇は、掃海艇2隻であった。我が国周辺における警戒監視は、情報収集の側面と、「勝手なことは許さない」という、相手に対する威圧の意味がある。中露海軍艦艇には1万トンを超える中国海軍最新鋭の駆逐艦を含め8隻の駆逐艦及びフリゲートが含まれていた。これに、沿岸における機雷掃海を任務とする約500トンの小型艇2隻しか派出できなかったことは、海上自衛隊即応能力の欠陥を露呈するものであろう。海上自衛隊もその課題を十分に認識し、多目的護衛艦(FFM)22隻の建造を2019年度から、更に日本周辺における哨戒を主任務とする哨戒艦12隻の建造を進め、対応兵力の増加に務めている。しかしながら、米海軍同様に、絶対数確保には長期間を要する。2015年に合意された「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」には、日本に対する武力攻撃が発生した場合、それぞれの国の手続きに従って、共同作戦をとるとされており、作戦構想として、日本が主体的に行動、米軍は自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を行う」と規定されている。ここで「補完」とあるのは、相手国に対する戦略的攻撃能力である。いわゆる「矛」と「楯」の内、「矛」の部分を米軍に期待することとされている。しかしながら、西太平洋のみならず、インド洋においても活動を活発化させる中国海軍の行動状況を勘案する限り、日米の役割分担を、従来のとおりとするには、米軍の作戦遂行能力は伸びきったゴムのように柔軟性を失っているのではないかとの危惧が生じる。● 自衛隊が「楯」であればいい時代は過ぎた厳しい安全保障環境の中、我が国の平和と独立そして繁栄を維持するためには、日米安保体制の実効性を維持する必要がある。米軍兵力の状況を鑑みると、少なくとも紛争初期の段階で、米軍に「矛」の役割を期待することができない状況が生じ得る。自衛隊に「矛」の役割を果たし得る装備が必要である。北朝鮮の核及び弾道ミサイルの開発状況から、日本も「敵基地攻撃能力」を保有すべきとの機運が高まっている。岸田総理も昨年12月の所信表明演説で「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」と述べている。岸総理の発言は、北朝鮮を念頭に置いた発言と見られるが、我が国周辺の安全保障環境は、それを超えた範囲を考えなければならない状況を迎えていると言えよう。自衛隊が「楯」であればいい時代は過ぎたという認識が必要である。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:US Navy/SWNS/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/02/03 15:47 注目トピックス 経済総合 電力市場のパラダイムシフトはもうすぐそこに…新たな覇権争いに先んじる中国の「驚くべき秘策」とは(2) 本稿は、「電力市場のパラダイムシフトはもうすぐそこに…新たな覇権争いに先んじる中国の「驚くべき秘策」とは(1)」の続きである。●中国から「日本の技術は要らない」と言われる時がくる白井:CICC(中国国際金融有限公司)の研究レポートをまとめた主席アナリストの劉俊氏は、「今後40年のあいだに、中国のカーボンニュートラルの推進は総額60兆元(約1000兆円)の関連投資を生み出す。そのうち太陽光発電への投資が20兆元(約333兆円)を占める」と予想しています。足元の中国の二酸化炭素排出量とその他諸国(中国と対立する西側諸国やQuadを除く)の排出量は同等額です。中国にとって国内と同規模以上の市場が見込めるということです。中国は一帯一路諸国をはじめ、他国へのエネルギー設備を輸出することによって、自国内の膨大な再生可能エネルギーへの投資を回収でき、かつ、一帯一路諸国は中国への負債を高めることとなり、それらの国への支配的地位を高めることができそうです。一帯一路周辺国の中国からの輸入は再生可能エネルギーだけでなないでしょうから、中国はEUの中のドイツのような立場が狙えるのかもしれません。伊原:私たちの会社は中国に技術をライセンスしています。私たちの事業は、微生物を使って化学品をつくる商用化をゴールとしており、ライセンス形態の場合、先方に微生物を渡さないとビジネスができません。以前から、周りの有識者や中国での経験を積んでいる方には、中国に菌を渡したら盗まれるといって、さまざまな警告を受けました。しかし、我々の場合には、他に選択肢はなく、ライセンス供与に迷う余地はありませんでした。実際に一緒に仕事をしてみると、とても信頼できるパートナー企業でした。知財に関してもだんだん敏感になってきており、彼らのものづくりも相当進んでいます。パートナー企業を見る限り、商用生産のプロセスは日本のメーカーより長けているとも思われました。また、経験のない微生物の遺伝子組み換えは、外部からのノウハウをどんどんと導入するのです。一面だけを捉え、時間的な進展を考慮しないのは、中国の底力を見誤ることになるでしょう。彼らのほうから「日本の技術は要らない」と言われる時期が来る気もします。我々日本人が、どういう生活、どういう生き方がいいと思うのかを考え直さなければいけないような気がします。大量生産で、食べたい物を食べ、多くの物を消費して、やりたいことをやって、できる限り働きたくない、というのがいい生活なのか。それとはまた違う価値観があるのか。20世紀の典型的な成功を求めていくと、中国には勝てない気がします。●中国と日本の差は深刻化していく白井:2013年の日本再興戦略によると、クリーンエネルギー技術の市場規模は、2013年の40兆円から2030年には160兆円になる見通しです。2021年8月30日にREPORT OCEANが発行したレポートによると、2020年に約762.2億米ドルであった世界の太陽光発電市場は、2021年から2027年には年率20.5%以上の成長が見込まれています。その中で、世界全体で約360万人(2018年)の雇用が創出されていますが、再生エネルギーでは2050年まで雇用が大幅に伸びると予測されています。多くの学者が、第4次産業革命が本格化すると、機械が人の仕事を代替するため雇用の重要性は低くなり、現在の製造業に代表される第2次産業革命時代の資本と労働者の投入で競争優位を築くモデルから、頭脳が生み出すテクノロジーの融合が競争の中心になると主張しています。このような傾向は第3次産業革命時代から観察されており、今後は景気浮揚策としての財政出動も、考え直す時期にきたのかもしれません。中国は、AIなどの第4次産業革命に猛進しているだけでなく、製造業の世界的な需要に応えることで、しっかり稼いでいます。しかし、それらが徐々に減退していくと予想されますが、その代わりとして、再生可能エネルギーや半導体、電気自動車などへの大規模投資を行いつつ、一帯一路諸国の市場へアクセスし、雇用対策や国内景気の維持を企図していると考えています。これらの市場規模は現時点では正確に測ることができませんが、第4次産業革命を追求しつつ、次世代型のケインズを実践するという非常にバランスの取れたスマートなやり方だと思います。驚くとともに、日本の将来が寂しく思えてきます。伊原:太陽光発電の雇用増加は大きなトレンドです。再生可能エネルギーが本格化したとき、いままでの20年間の中国のスタンスと日本のスタンスの差が、これから表面化、深刻化していくでしょう。                         (つづく)■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2022/02/03 10:59 注目トピックス 経済総合 電力市場のパラダイムシフトはもうすぐそこに…新たな覇権争いに先んじる中国の「驚くべき秘策」とは(1) 【ゲスト】伊原智人(Green Earth Institute株式会社 代表取締役CEO)1990年に通商産業省(現 経済産業省)に入省し、中小企業、マクロ経済、IT戦略、エネルギー政策等を担当。1996~1998年の米国留学中に知的財産権の重要性を認識し、2001~2003年に官民交流制度を使って、大学の技術を特許化し企業にライセンスをする、株式会社リクルート(以下、「リクルート」という。)のテクノロジーマネジメント開発室に出向。2003年に経済産業省に戻ったものの、リクルートでの仕事が刺激的であったことから、2005年にリクルートに転職。震災後の2011年7月、我が国のエネルギー政策を根本的に見直すという当時の政権の要請でリクルートを退職し、国家戦略室の企画調整官として着任し、原子力、グリーン産業等のエネルギー環境政策をまとめた「革新的エネルギー環境戦略」策定に従事。2012年12月の政権交代を機に内閣官房を辞して、新しいグリーン産業の成長を自ら実現したいと考え、Green Earth Institute株式会社に入社。2013年10月より代表取締役CEO。【聞き手】白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)●電力もインターネットのように「分散型」になっていく?伊原:私が電力の自由化に取り組んでいた際、電力会社から猛反対を受け、政治を使ってなんとかする必要がありました。しかし、通信業界のように、この業界にも技術的なパラダイムシフトが起これば、政治家を巻き込んで泥沼の戦いをすることなく、競争の土台は自ずと整い、いろいろなプレーヤーが参加して競争が起こるでしょう。だから、電力におけるインターネットや携帯電話にあたるイノベーションを探そうと思いました。2003年に電力市場課に着任した際、いろいろなリサーチをしたところ、無線や宇宙からの配電というアイディアもありましたが、現実味がありませんでした。それに代わるのが、蓄電池とスマートグリッド的な需要調整だったのです。電力会社が握っている中央給電が全ての発電と需要を結びつけていますので、そこを通っている限りは電力会社の枠から外れることはできません。かつて、電話が通信局を通る必要があったのと同じです。ところがインターネットのように分散すれば、そのくびきが外れて新しい競争が起こります。蓄電池とスマートグリッド、スマートメーターでの需要の調整ができれば、競争環境を変えることができるのです。しかし、そのころは、まだ蓄電池の価格も高く、全ての需要をコントロールする方法はありませんでした。ただ、2000年代後半から、アメリカのゴア元副大統領やオバマ元大統領がスマートグリッドや再生可能エネルギーを主張し始めたことから、風向きが少し変わってきました。白井:再生可能エネルギーが主要電源になる時代に向けては、送配電網の再構築が必要ですね。中国では、「中国製造2025」の重点分野ロードマップで、送配電分野の主要な目標設定と大規模な投資計画が発表されました。一方、日本のそれは需給一体型で、再エネレジリエンスの考え方による地産地消の分散型エネルギーシステム(マイクログリッド)と言われています。伊原:最初に携帯電話が急速に普及したのは香港や東南アジアでしたが、特に既存のインフラがあまりない東南アジアでの普及スピードには驚かされました。固定電話の有線がない国のほうが新しいイノベーションを入れやすかったということでしょう。電力も、送配電網が隅々まで行き渡っている状態の国よりも、全く送電インフラがない国のほうから、最初から分散型を前提に太陽光発電と蓄電池を置くようなケースが出てくるように思います。需給一体型は、大きな発電設備と中央給電ありきの、需要と供給を一体で管理するという世界感です。昔はこの方式が効率的でしたが、これからの時代には適切ではありません。原子力発電所が止まったら全部止まるのと同じように、送配電が止まったら全部止まってしまいます。最終的には、インターネットのように複数でカバーしあえる分散型の環境が選ばれていくということがあってもおかしくないでしょう。分散型であれば、隣の地域が足りなければ電力を貸すこともできます。東京と大阪がつながっている必要はありませんし、そのほうが災害にも強いでしょう。●日本は蓄電池そのもので優位性を高めよ白井:電力でもリープフロッグが起こり得るということですね。RE100を中心とした需要家の再生可能エネルギー調達ニーズの高まりもあり、いかに早く分散型電源の普及とスマートグリッドへの転換が行えるかが勝負ですね。国を挙げて取り組むべきことだと思います。蓄電について、日本の技術的な優位性はいかがでしょうか。伊原:太陽電池モジュールと同じリスクがあると思います。蓄電池のシェアは、中国や、テスラを含めたアメリカが多くを握っています。蓄電池のセパレータや膜は日本が強いと言われますが、本当にそこだけを押さえていればいいのでしょうか。蓄電池そのものでも優位性を高めた方がいいように思います。白井:電気自動車が蓄電池の代わりになると言われていますが、バッテリーが中国製であり、かつ中国では電気自動車が相当普及していることを踏まえると、中国は非常に戦略的に動いているように見えます。中国の送電網は田舎にはあまりないでしょうから、リープフロッグしやすいかもしれませんね。伊原:同感です。また、電気自動車の対抗軸には水素がありますが、水素もガスと一緒で、需給一体型、中央配電的です。すなわちパイプを引かなければならないということだと思いますが、これではなかなか難しいような気がします。白井:消費電力をマネジメントするスマートグリッドやスマートメーターの将来は、ITや人工知能の発展を展望すると、非常に重要になるということでしょうか。また、第4次産業革命はデータが中心になると言われていますが、エネルギーの分野においても自国民の電力使用量などのデータが非常に重要だと考えてもよいのでしょうか。伊原:そうですね。ときどき自慢しているのですが、国の文書の中に正式に「デマンドレスポンス」という言葉を入れたのは私が最初だと思います。エネルギーの究極の目標は、できるだけ使わないことです。作るのも重要ですが、その分を使わないほうがいいはずなので、省エネが前提と使い方の賢さがポイントです。それをいかに効率的に安く実現するか。そのためには、スマートIT的に、つまりITで管理して無駄なものは使わず、最低限で抑えて、かつそれを平準化する必要があります。余計な負荷は止めるようなことも可能でしょう。データの重要性はおっしゃるとおりですが、その際のデータは必ずしも発電だけとは限りません。需要側の電気機器1個1個を含めたデータを取り、予測ができれば、その予測に合わせて発電することができます。いまは予測ができないため、できる限り多く蓄電池を揃えなければいけません。そういうさまざまなところにある無駄はITでカバーできるでしょう。白井:2021年9月21日、中国の習近平国家主席は「中国は海外で新たな石炭火力発電所を建設しない」と表明しました。一方、国家能源局の章建華局長によると、中国は再生可能エネルギー関連設備の製造では世界1位で、世界の水力発電所建設の70%を中国企業が請け負っているほか、世界の風力発電設備生産量の50%を中国が占めています。太陽光電池の関連材料・部品供給に占める中国企業の割合は、ポリシリコン58%、シリコンウエハー93%、太陽電池セル75%、太陽電池モジュール73%と、全ての製造工程で50%以上です。近年は特に一帯一路沿線国家への再生可能エネルギー関連投資が伸びており、技術的な支援が必要な国・地域に対して、中国の先進的な技術の普及を行い、クリーンな一帯一路の建設に注力しています。一帯一路加盟国などに、電力のパッケージのようなものを輸出するようです。こうした、再生可能エネルギーを前面に押し出していく狙いは、覇権構築の一環のように思えます。戦略は見え見えですが、割とあけすけなのが印象的です。中国は、他の分野、たとえば金融などでも、割とダイレクトに自分たちの戦略を語る印象があるのですが、電力についてもそのような気がします。電力が最も重要なインフラのひとつであるため、電力網の整備のために全てを中国から供給されると、小国で、かつ中国と地続きの国は、生殺与奪権を握られてしまいかねません。しかもデジタル人民元が普及すると通貨も握られてしまう可能性があります。グーグルなどのITプラットフォーマーは、我々日本人のデータを掌握していますが、中国の戦略はもっと直接的な印象です。伊原:彼らは別に隠しもしないでしょうから、そういうことだと思います。ただ、小さな国にとって、生殺与奪権を握られることはさほど悪いことではないかもしれません。そのことによって、安定した電力が得られ、生活がよくなり、産業が拡大するのであれば、何が問題なのかということかもしれません。国連で中国のために1票投じればいいのでしょう。そのようなやり方がいいかはわかりませんが、中国は他国の民主主義を変えろとか、そういったことは言い出さないと思います。経済を握り、産業を握って、自ずと中国なしでは生きられないようにしていくのでしょう。中国からすると、周りの国のためにいいことをしているという考えではないでしょうか。大きな国は警戒すると思いますが、小さな国にしてみると、自分たちはお金もないし、何がいけないのかと感じるでしょう。「電力市場のパラダイムシフトはもうすぐそこに…新たな覇権争いに先んじる中国の「驚くべき秘策」とは(2)」に続く■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2022/02/03 10:56 注目トピックス 経済総合 メタ・プラットフォームズを対象とするプット型eワラントが前日比124倍超え大幅上昇(3日10:00のeワラント取引動向) 新規買いは、原資産の株価下落が目立つソニーグループ<6758>コール413回 3月 15,000円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては村田製作所<6981>コール227回 3月 10,800円、日立製作所<6501>コール276回 3月 8,500円、Inpex<1605>コール234回 3月 1,000円、カシオ計算機<6952>コール37回 3月 2,000円などが見られる。上昇率上位はメタ・プラットフォームズプット125回 2月 290米ドル(前日比124.3倍)、メタ・プラットフォームズプット127回 3月 240米ドル(前日比36倍)、メタ・プラットフォームズプット124回 2月 240米ドル(前日比16倍)、メタ・プラットフォームズプット128回 3月 290米ドル(前日比9.4倍)、メタ・プラットフォームズプット126回 2月 340米ドル(前日比4.4倍)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/03 10:21 注目トピックス 経済総合 NYの視点:米1月雇用統計:オミクロンの影響によるネガティブサプライズにも備える 米国労働省はワシントンで4日、1月雇用統計を発表する。エコノミストの平均予想で、失業率は12月に続き3.9%とパンデミック以前の低い水準を維持すると見られる。非農業部門雇用者数は15万人増と、12月19万人増から伸びが縮小するとの予想。先行指標の中で雇用統計と相関関係が最も強いとされる民間の雇用者数を示すADP雇用統計の1月分は前月比-30.1万人と、予想外に2020年12月来のマイナスとなった。パンデミックが発生した直後の20年4月来で最低。オミクロン流行拡大で、自身や家族の感染により労働が困難になったり、店舗の営業時間短縮などが雇用の減少につながった可能性が指摘されている。雇用統計の雇用者数の平均予想は依然15万人増とプラスが予想されている。しかし、パンデミックを巡る調整が困難で、エコノミスト予想は大きく乖離。25万人増から40万人減のレンジ。ゴールドマンは25万人の減少を予想している。全米の製造業活動状況を占めすISM製造業景況指数の雇用は54.5と、14カ月連続の50台で活動の拡大を示し、3月来で最高となるなど、製造業での雇用は引き続き堅調。しかし、週次失業保険申請件数も12月初旬に20万件を割り込み1969年4月来で最低となったのちは、再び増加基調にあり、雇用回復の停滞が示唆されている。サプライチェーンの混乱が継続していることも雇用の伸びを抑制する理由になる。しかし、オミクロンはピークをつけた兆候も見られ、たとえ、1月の雇用が大幅減になったとしても、今後、オミクロン収束とともに雇用が回復する。インフレ高進の中、FRBが金融緩和正常化に向けた手を大きく緩める可能性は少ないと見る。ただ、短期的に雇用停滞懸念に過剰な利上げ観測の思惑は緩和し、ドルの上昇ペースも鈍る可能性がある。■1月雇用統計の先行指標・米・1月ADP雇用統計:-30.1万人(予想:+18.0万人、12月:+77.6万人←+80.7万人)・ISM製造業景況指数雇用:54.5(53.9)・NY連銀製造業景況指数:雇用(現状):+16.1(12月21.4、6カ月平均+19)週平均就業時間:+10.3(+12.1、6カ月平均+15.7)6か月先雇用:+29.9(32.6、6カ月平均34.8)週平均就業時間:+13.8(15.7、6カ月平均+10.2)・フィラデルフィア連銀製造業景況指数雇用(現状):26.1(33.9、6カ月平均29.5)週平均就業時間:9.6(30.4、25.4)6か月先雇用:38.4(56.6、6か月平均43.9)週平均就業時間:9.0(6.5、6か月平均14.8)・消費者信頼感指数(%)雇用十分:55.1(55.9、21.0)不十分:33.6(32.4、56.2)困難:11.3(11.7、22.8)6カ月後増加:22.7(24.2、28.8)減少:15.7(14.7、23.3)不変:61.6(61.1、47.9)所得増加:16.7(17.5、14.3)減少:12.4(11.2、15.0)不変:70.9(71.3、70.7)・失業保険申請件数件数 前週比 4週平均 継続受給者数01/22/22|   260,000|   -30,000|  247,000|   n/a01/15/22|   290,000|    59,000|  232,000| 1,675,00001/08/22|   231,000|    24,000|  211,000| 1,624,00001/01/22|   207,000|     7,000|  204,500| 1,555,00012/25/21|   200,000|    -6,000|  199,750| 1,753,00012/18/21|   206,000|     1,000|  206,500| 1,718,00012/11/21|   205,000|    17,000|  203,500| 1,856,00012/04/21|   188,000|   -39,000|  219,750| 1,867,000|■市場エコノミスト予想失業率:3.9%(12月3.9%)非農業部門雇用者数:前月比+15万人(12月+19.9 万人)民間部門雇用者数:前月比+10万人(+21.1万人)平均時給:予想:前月比+0.5%、前年比+5.2%(+0.6%、+4.7%) <FA> 2022/02/03 07:45 注目トピックス 経済総合 トルコリラ円は、もち合い放れとなりそう サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、トルコリラ円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、今週のトルコリラ円について『もち合い放れとなりそうだ』と述べています。続けて、『トルコ中央銀行は20日の会合で、政策金利を14.0%に据え置いた。昨年末に、エルドアン大統領はリラの下落に歯止めをかけるため、リラ建ての定期預金を外貨の値動きに合わせて保護する制度を導入した。慢性的なインフレや経常赤字の体質などを背景にリラの先安観は根強いものの、トルコ政府がリラ安阻止の構えを示していることから売りが手控えられた。リラ円は8円台で膠着している』と伝えています。次に、『今週3日に発表される1月消費者物価指数(CPI)予想は前年比予想+46.4%(前回+36.08%)、コアCPIは前年比予想+36.74%(前回+31.88%)、1月生産者物価指数(PPI)は前年比予想+97.59%(前回+79.89%)と、いずれも大幅に上昇する見込み』とし、『インフレ率が一段と高い伸びを記録することが予想され、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は−24.08%から—32.40%へとさらに深堀されることになる。トルコ中銀は20日の声明で、通貨リラを優先させるよう金融政策の枠組みを包括的に見直す意向を示したものの、インフレ高進が止まらない限り、リラ売りが再燃する可能性は高いだろう』と考察しています。また、『トルコ政府は市民が貯蓄をリラ建てに転換するよう推奨キャンペーンを展開し、自国通貨の下落に歯止めをかける救済計画を新たな段階へと進めている。国営テレビやソーシャルメディアで30日に放映されたビデオ動画では、国民の努力を称えるとともに、リラ建て定期預金に投資するよう呼び掛けた。エルドアン大統領は昨年12月、為替変動からリラ建ての預金を保護する新たな政策を導入すると発表していた』と解説しています。こうしたことから、陳さんは、トルコリラ円の今週のレンジについて、『7.50円~9.50円』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の2月1日付「トルコリラ円今週の予想(1月31日)」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2022/02/02 17:33 注目トピックス 経済総合 アルファベットを対象とするコール型eワラントが前日比6倍超えの大幅上昇(2日10:11時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つキーエンス<6861>コール151回 3月 74,000円を順張り、SUMCO<3436>コール251回 3月 2,450円を順張り、日立製作所<6501>コール276回 3月 8,500円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはソニーグループ<6758>コール413回 3月 15,000円、ローム<6963>コール48回 3月 14,000円、電源開発<9513>コール29回 2月 1,650円、村田製作所<6981>コール228回 3月 12,200円などが見られる。上昇率上位はアルファベットコール177回 2月 3,300米ドル(前日比6.2倍)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズコール85回 2月 170米ドル(前日比6倍)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズコール84回 2月 150米ドル(前日比5倍)、アルファベットコール176回 2月 2,900米ドル(前日比3.3倍)、アルファベットコール178回 2月 3,700米ドル(前日比3倍)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/02 10:34 注目トピックス 経済総合 ウォール街を知るハッチの独り言 米国の家事代行事情とは(マネックス証券 岡元 兵八郎) さて、マネックス証券の「メールマガジン新潮流」が、1月31日に配信されました。そのなかから今回は、同証券のチーフ・外国株コンサルタント、『ハッチ』こと岡元兵八郎氏のコラム「ウォール街を知るハッチの独り言」の内容をご紹介いたします。昨今、日本でも家事代行サービスを使う人が増えているようです。米国では一般家庭でもこの手のサービスは普通に活用され続けてきました。考え方の違いなのでしょうか、米国ではサービスと賃金の交換がシステム化されている社会のような気がします。米国の映画やTV番組を観ていると、昔から夫婦で夜食事に行くので、小さい子供を近所の高校生とかにアルバイトとして、数時間家に来て面倒を見てもらうといった場面に遭遇しますよね。私が1990年から1995年までニューヨークに勤務していた時代も、長男が一歳を迎える頃にベビーシッターに頼み、昼間乳母車に乗せて公園への散歩などをお願いしていたことがあります。当初、小さい赤ん坊の面倒を他人に任せることに違和感はあったのですが、それは周りのアメリカ人家庭では普通に行われていましたし、ベビーシッターはきちんと確立されたある意味プロの職種であることを知り、お願いすることにしました。我が家のベビーシッターは、南米コロンビア出身の女性で、しっかりしていて安心、そして何より信頼できる方でした。それは1992年、日本ではバブルが弾け始めた時代の頃、当時の彼女の時給は確か1時間10ドルでした。当時の為替で1,250円です。現在の東京駅のマクドナルドで募集されているアルバイトの時給が1,100円(夜間は25%割増)であることを考えると、決して安くはなかったのか、いや、事実は今の日本の賃金があまりにも安すぎるのでしょう。私の30年来の友人で、ニューヨークの郊外に住んでいるアイリという女性がいるのですが、彼女の自宅は二階建て、広さ約230平米、4ベッドルームの一軒家です。私は彼女の家の話になるといつも大きい家だよねと言うのですが、彼女は「私の周りの家は平均370平米くらいだから、私の家は小さい方なのよ」と謙遜するのです。 そんな彼女の家には週1回、ハウスクリーニングにコロンビア人の女性が2人やってきます。2人2時間、一人当たりの時給は25ドル、それにチップが20%付くので合計週に120ドルほど払っているそうです。業者が間に入っていない為、このお金は彼女達に直接入って行きます。コロナ前の最低賃金は15ドル、当初アイリは彼女達へ18ドル払っていたのだそうですが、コロナ禍を経て最低賃金が20ドルへと値上がり、現在は25ドル払っているのだそうです。どうやって彼女を見つけたのか聞いてみたところ、なんとFacebookなのだそうです。Facebookで「ハウスキーピングやります」、というサブカテゴリーがあるらしく、そこで見つけたのだそうです。彼女の仕事の履歴に彼女を過去に使ったことのある雇い主のレファレンスがあり、そこに出ていた複数名の過去の雇い主にダイレクトメッセージで彼女の仕事具合を問い合わせ、問題なさそうということで最終的に彼女に仕事をお願いしたとのことでした。 私の知っている世界ですと、この手の仕事はスーパーマーケットなど人の集まる店の掲示板に、「ハウスキーパー、仕事求む、電話番号xxx-xxxx」と言った張り紙をし、手伝ってくれる人を探す、または、ハウスキーパーは仕事を見つける、というのが常識だったのですが、まさに何でもネットの世界で起きる世の中になったのですね。サービスの探し方は時代とともにネットの世界に移行しましたが、アメリカでは昔から日々の生活で自分たちがやらなければならないことを、お金を払って他人に頼む、あるいは受けるサービスに対してはチップのように当然対価を支払うという、割り切りのできる社会だと思います。ある意味、お金が回りやすい社会ともいえるのかもしれません。マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント 岡元 兵八郎(出所:1/31配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋) <FA> 2022/02/02 09:23 注目トピックス 経済総合 NYの視点:米12月JOLT求人件数は予想外に増加、総失業者を460万上回り過去最大、需給の乖離続く 米労働省が発表した12月JOLT求人件数は1092.5万件となった。11月1077.5万件から減少予想に反し増加した。総失業者数を460万件上回り、その差は過去最大を記録。需給の乖離が続いている証拠となった。労働市場の自信をあらわす退職率は前月、過去最高を記録したのち、小幅緩んだ。採用率(Hiring rate)は4.2%。11月4.4%から小幅低下。4カ月ぶりの低下となった。解雇率(Layoffs/discharges rate)は0.8%と、0.9%からさらに低下。前年は1.3%だった。解雇率も大幅低下しており、労働市場ひっ迫の証拠がそろいつつある。連邦準備制度理事会(FRB)の大半のメンバーは3月の利上げを支持する姿勢を見せているが、50ベーシスポイントの利上げに関しては選択肢としてはあるものの、必要性に関しては確信していない。セントルイス連銀のブラード総裁などFRB高官はオミクロンの影響で1月雇用統計の強い結果は予想していない。JOLTが示すように、1月雇用統計も予想外に強かった場合、利上げ観測が強まり、ドル買いに繋がる可能性もある。■雇用たるみダッシュボード◎金融危機前に比べ状態が改善        パンデミック: 金融危機前水準と比較12月求人率(Job openings rate):6.8%(11月6.8% )     4.4%, 3%12月退職率(Quits rate):2.9%(3.0%)          2.3%: 2.1%12月解雇率(Layoffs/discharges rate):0.8%(0.9%,前年1.3%)  1.2%12月雇用者数(Nonfirm payrolls):+21万人(11月+54.6万人) +25.1万人,+16.18万人12月採用率(Hiring rate):4.2%(11月4.4%)      3.8%12月失業率(Unemploynent rate):3.9%(11月4.2%)     3.5%, 5%12月広義の失業率(U-6):7.3%(11月7.7%)         7.0%, 8.8%◎金融危機前に比べ状態悪化12月労働参加率:61.9%(11月61.9%)               63.4%, 66.1%12月長期失業者数(15週以上):45k(11月45k)        19k <FA> 2022/02/02 07:42 注目トピックス 経済総合 電源開発を対象とするコール型eワラントが前日比15倍の大幅上昇(1日10:00時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つ村田製作所<6981>コール228回 3月 12,200円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはTDK<6762>コール211回 3月 6,000円、ファナック<6954>コール251回 3月 25,000円、日本電気<6701>コール187回 3月 6,200円、味の素<2802>コール37回 3月 4,100円などが見られる。上昇率上位は電源開発<9513>コール30回 2月 1,850円(前日比15倍)、電源開発コール29回 2月 1,650円(前日比8.6倍)、TDKコール206回 2月 4,800円(前日比7倍)、日本電気コール183回 2月 5,200円(前日比6.5倍)、日本精工<6471>プット26回 2月 650円(前日比4.1倍)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/02/01 10:38 注目トピックス 経済総合 NYの視点:米3月FOMCでの大幅な利上げ、回復を損なうとの見方に利回り曲線平坦化、ドルも伸び悩みか 今年初めて開催されたFOMCで米連邦準備制度理事会(FRB)は3月の利上げの基盤を発表した。パウエル議長は速やかなインフレを抑制するために各会合での行動や3月の50ベーシスポイントと大幅な利上げの可能性も除外しない考えも示した。金利先物市場ではタカ派姿勢を維持した連邦公開市場委員会(FOMC)受け年5回の利上げを織り込み始めた。アトランタ連銀のボスティック総裁は自分の望む政策ではないとしながらも、3月FOMCでの50BP利上げも選択肢になると述べた。同総裁は今年3回の利上げを予想しているが、今後のデータ次第との見解を示している。22年のFOMC投票権を有するカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁はバランスシートの縮小を積極的に実施することで利上げの回数を減らすことができると指摘。同時に3月の大幅利上げの思惑に、利回り曲線は平坦化基調にある。過剰なFRBの対応により回復が弱まるとの見方が強まりつつある。このため、ドルも高値から反落。不透明感から当面伸び悩む可能性もある。 <FA> 2022/02/01 08:07 注目トピックス 経済総合 SDGsの流行で「感情が経済を動かす時代」が到来する…!「きれいごと」では片付けられないと言える本当のワケ ●なぜ急激にSDGsが流行している?環境や人権問題などの解決を目指すSDGs(持続可能な開発目標)が企業の間で急速に広まっている。トヨタ自動車は電気自動車(EV)の強化を打ち出した。ENEOSホールディングスも、再生可能エネルギー新興企業を2000億円で買収した。2050年に温暖化ガス排出量の実質ゼロを目指す「脱炭素」は多くの企業が取り組んでいる。スーツの胸元にカラフルなSDGsのバッジを付けているビジネスパーソンもよく見かけるようになった。SDGsはなぜ急に広まったのか。なぜ激変が起きているのか。あまりのスピードの激しさに戸惑う企業経営者も多い。当たり前だが、地球環境が悪化していることは、最近になって「発見」されたことではない。生物学者のレイチェル・カーソンが『沈黙の春』を刊行したのは60年前の1962年だ。国際団体のローマ・クラブが環境の汚染や資源の枯渇などに警鐘を鳴らし、「成長の限界」を唱えたのは1972年。日本でも、1960〜1970年代前後は、公害が社会問題となっている。私たちは50年以上前から「環境問題」に気付いている。●地球温暖化は「金融リスク」だでは、当時と現代では何が違うのか。もはやSDGsが‘’きれいごと”ではなくなった。ポイントは三つある。一点目は、科学的議論が社会に浸透してきたことがあげられよう。2021年8月に公表された国連機構変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書では、人間活動のせいで温暖化が起きていることは「疑う余地がない」と断言された。地球の気温は既に1.1度上昇。台風や豪雨などの異常気象は世界各地で観測されている。この数十年で温暖化懐疑派は減ってきた。二点目は金融の変化だ。英イングランド銀行元総裁のカーニー氏をはじめ、地球温暖化を「金融リスク」であると公言する金融のプロがどんどん出てきた。仮に、異常気象によって企業の生産拠点の工場の稼働が止まれば、ビジネスの痛手となる。脱炭素が進めば、化石燃料関連の会社の資産は劣化し、投融資の回収が難しくなる。SDGsへの対応ができない企業のビジネスは古びる。まさに金融リスクだ。金融側から企業側に「変化せよ」というプレッシャーがかけられている。金融が変われば、社会は変わる。三点目は、経済成長と環境保護が両立するというロジックが浸透してきたことだ。かつて環境問題を解決するためには、成長を諦めないといけないという議論が根強かった。いまは電気自動車をはじめ、経済的イノベーションこそが環境問題を解決するという考え方が広まっている。気候変動の解決をめざす「クライメートテック」と呼ばれる新しいスタートアップは、新しい経済的価値を追求しながら環境問題にコミットする。脱炭素など環境問題に取り組まないと、ビジネスが回らないという状況にもなっている。経済と環境が手を結んだことは大きい。以上の「3つのシフト」を見るだけでも、SDGsは”きれいごと”ではないのは明らかであろう。●「一つの投稿」が株価に影響を与えるそれに加えてもう一つの大きな動きがある。「ラディカル・トランスペランシー( radical transparency) 」だ。この言葉は、英紙「フィナンシャルタイムズ」US版のエディター・アット・ラージのジリアン・テット氏と話しているときに教えられた。「圧倒的な透明性」という意味だろう。私たちは、「きれいごと」を抜きにビジネスを語ることができない時代を生きている。ある会社のビジネスが環境に悪いものだとしたら、不買運動が起こる。経営者がジェンダー平等に反する発言をしたらインターネットで批判される。サプライチェーンの工場で違法な児童労働が行われていたらマーケットから閉め出される。表向きはSDGsに取り組んでいるように見えても、会社の中でパワハラが行われたり、ジェンダー差別があったり、環境汚染を見て見ぬふりをしていたら、匿名の従業員がSNSに投稿するだろう。すべてが透明になり、オープンになり、データ化され、ネットで広がっていく。慶應義塾大学の田中辰雄氏の研究によると、ネット炎上などによる株価への影響はマイナス0.7%だという。中にはおよそ5%程度の下落も見られた例もある。(※1)「ラディカル・トランペランシー」の時代とは、個人の感情が経済の「内」にどんどん浸食してくる時代を意味する。企業への怒り、経営者への不信感、環境問題を解決したいという熱情。そして、働いている人の哲学。Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSの利用者は、何億人もいる。日本国内で使われるLINEの利用者は8900万人だ。誰かが発信した1本の「思い」がSNS投稿を通して拡散し、企業の株価に影響を与える。企業自身も「SNSマーケティング」と称して、自社の商品やサービスについて多数の個人がどのような感想をSNS上でつぶやいているかを絶えずチェックしている。個人の感情に寄り添い、それらに左右され、ビジネスが動いていく。かつてのモノ言う株主たちの姿勢も変わってきた。これまでは企業の業績や株価の配当に関して声を上げていた株主たちが、個人の価値観に基づく要求をするようになった。日本でも2020年に三菱UFJフィナンシャル・グループの株主総会に、環境問題に関心を持つ大学生が参加した。これからも株主総会で、環境やジェンダー平等に関する要求をする株主たちが増えていくことだろう。個人の価値観に応えることで、企業の評判が下がるリスクを避けることができ、さらに企業の株価が上がったり、商品が売れたり、優秀な人材が転職して来てくれたりすることもある。●到来するクリエイターエコノミーの時代SDGsは確かにきれいごとだ。しかしそれは当たり前のことだ。なぜなら、これまで経済が軽んじてきた、個人の価値観や倫理観など「感情」の力が増しているからだ。感情が重んじられるほど、ますます経済は倫理へとシフトする。これから3年以内に、クリエイターエコノミーと呼ばれる時代が到来する。音楽や漫画など個人の趣味に基づいた発信をすることで、少数のファンがお金を払い、生計が立てられるようになる。ベンチャーキャピタル「Signal Fire」の統計によると、世界にはすでに5000万人のクリエーターがいるという。これからは「モノ言う個人」ではなく、「モノを作る個人」が出てくる。個人はまるで一つの会社のような存在になり、「個人(消費者)の企業化=Enterprization of Consumer」が進む。企業は、ビジネスは、マーケットは、「新たなSDGs個人」とどう向き合うのか。そして経営者は「人権」や「環境保護」などの理念をめぐる「グレート・ディベート」にどう向き合うのか。それがSDGs時代の本質的な問いである。竹下隆一郎朝日新聞経済部記者、スタンフォード大学客員研究員、ハフポスト日本版編集長を経て、就任。アメリカのニューメキシコ州やコネチカット州で育った。世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)メディアリーダー。英語名はRyan(ライアン)。2008年5月に4ヶ月の育児休業を取得。2021年9月、『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書)を刊行した。※1:https://ies.keio.ac.jp/upload/pdf/jp/DP2017-003.pdf■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2022/01/31 11:18 注目トピックス 経済総合 アルプスアルパインを対象とするコール型eワラントが前日比5倍超えの大幅上昇(31日10:00時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価下落が目立つ住友金属鉱山<5713>コール288回 3月 4,400円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはアルプスアルパイン<6770>コール75回 2月 1,250円、エヌビディアコール136回 3月 300米ドル、セイコーエプソン<6724>プット90回 2月 1,650円、セイコーエプソンコール97回 2月 1,950円などが見られる。上昇率上位はアルプスアルパインコール76回 2月 1,400円(前日比5.8倍)、アルプスアルパインコール75回 2月 1,250円(前日比5.6倍)、アルプスアルパインコール74回 2月 1,100円(前日比3.6倍)、アルプスアルパインコール79回 3月 1,450円(前日比2.9倍)、アルプスアルパインコール78回 3月 1,300円(前日比2.7倍)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/01/31 10:20 注目トピックス 経済総合 NY原油は90~95ドルを目指すか サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY原油についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、『NY原油は90~95ドルを目指すか』と述べています。NY原油について、『ウクライナを巡るロシアと欧米諸国との対立激化が懸念され、地政学リスクの高まりから、26日には一時87.95ドルまで買われた。終値は87.35ドル(+1.75)。2014年10月上旬以来、約7年4カ月ぶりの高値となった』と伝えています。続けて、『ロシア軍がウクライナ国境に軍を結集させているが、米国はロシアが近く侵攻に踏み切る可能性があると危機感を訴えている。ロシアは攻撃の意図は否定するが、軍の撤退は拒否。侵攻への懸念が高まっている』と解説しています。また、『バイデン大統領は25日、ウクライナにロシアが侵攻した場合、プーチン大統領個人への制裁を検討する意向を示唆した。事態が深刻化すれば、有力産油国であるロシアのエネルギー供給に混乱が生じ、世界的な供給逼迫状態をさらに悪化させるとの見方が浮上している。市場ではロシアの軍事侵攻に伴い、同国から欧州へのガス供給が停止されるとの懸念が高まっている』と言及しています。一方で、『中東は、アラブ首長連邦(UAE)が弾道ミサイル2発を迎撃したことを明らかにした。イエメンに拠点を置く親イラン武装組織フーシ派は、UAEを標的にしたと主張。「作戦を拡大する用意がある」と警告しており、同地域の緊張が高まっている』と述べています。原油相場について、『年初来で10%超上昇。供給不足や、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟産油国でつくる「OPECプラス」が足元で毎月日量40万バレルを増産する目標を達成できずにいることへの懸念が背景にある』とし、『ウクライナや中東における地政学リスクがいつまで続くのかどのような形で終息するのかは予断を許さず、緊張関係が続く限りは、エネルギー供給への不安を高めていくだろう』と考察しています。また、『北半球では冬季需要がこれからピークを迎えるため、需要の低下は期待しにくい。株式相場の下落によりマイナス面はあるが、CFTC建玉のファンドの買い越しはまだ38万枚足らずで買い余力は残っている』と述べています。こうしたことから、陳さんは、NY原油について『市場の先高観が強いことから、NY原油は90~95ドルのレンジに浮上していく可能性は高いだろう。東京ドバイ原油は円安の支援もあり、5万5000円を超えていく』と述べています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の1月27日付「NY原油は90~95ドルを目指すか」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2022/01/31 09:55 注目トピックス 経済総合 NYの視点:【今週の注目イベント】ECB、BOE、豪準備銀、米雇用統計・ISMなど 今週は、連邦公開市場委員会(FOMC)通過後、欧州中央銀行(ECB)定例理事会、英中銀の金融政策決定会合に市場の焦点が移行する。豪準備銀も金融政策決定会合を予定しており、注目材料となる。英国中銀は12月のサプライズとなったインフレ高進で、この会合で利上げを実施すると予想されている。エコノミストは中銀が25ベーシスポイントの利上げに動くと見ており、ポンド高に繋がる。ECBは政策金利の据え置きが見込まれるが、ラガルド総裁が利上げの見通しガイダンスを供給。総裁は引き続き年内の利上げの可能性は少ないと慎重な方針を強調する可能性があるが、市場は12月の利上げを織り込みつつありユーロの下支えとなる。米国では利上げ軌道を確認するために重要となる雇用統計が発表される。オミクロン変異株流行が労働市場にどのように影響したかを判断する。同時に、FOMCは賃金インフレの上昇で12月会合でタカ派に転じたが、統計で平均賃金動向にも注目が集まる。パウエル議長は労働市場が非常に強く、雇用に影響せずに利上のかなりの余地があるとの考えを示している。そのほか、1月MNIシカゴPMIやISM製造業景況指数で製造業動向を探る。また、第4四半期非農業部門労働生産性で、経済の動向を見極める。JPモルガンは年内5回利上げ、バンク・オブ・アメリカは7回の利上げを予想している。確かに、FF金利はPCEを上回る必要があり、かなり利上げの余地がある。しかし、アトランタ連銀の1-3月期国内総生産(GDP)見通しはゼロ成長予想。景気が停滞し、市場が予想しているほど、利上げが進まない可能性も残る。ドル高基調が崩れる可能性は少ないないが、ペースは限定的なものになる可能性がある。パウエル議長はソフトランディングを目指すが、唯一懸念はインフレが鈍化しないことになる。■今週の主な注目イベント●米国31日:1月MNIシカゴPMI、1月ダラス連銀製造業活動2月1日:1月製造業PMI、ISM製造業景況指数、12月JOLT求人2日:1月ADP雇用統計3日:第4四半期非農業部門労働生産性、1月サービス業PMI、1月非製造業景況指数4日:1月雇用統計●中国30日:製造業PMI、非製造業PMI、財新製造業PMI●欧州31日:独、スペインCPI、ユーロ圏、伊GDP2月1日:仏CPI、ユーロ圏、仏、独製造業PMI、ユーロ圏、独、伊失業率2日:ユーロ圏、伊CPI3日:ECB定例理事会、ラガルド総裁会見、4日:ユーロ圏小売売上高、仏鉱工業生産●英国2月1日:製造業PMI3日:英中銀金融政策決定会合●日本31日:小売売上高、消費者態度指数2月1日:失業率●豪州2月1日:豪州準備銀、金融政策決定会合、製造業PMI、小売売上高、消費者信頼感 <FA> 2022/01/31 07:30 注目トピックス 経済総合 注目の欧米経済指標:1月米雇用統計で雇用者数は小幅な増加にとどまる可能性 1月31日-2月4日週に発表される主要経済指標の見通しについては、以下の通り。■2月1日(火)日本時間2日午前0時発表予定○(米)1月IMS製造業景況指数-予想は58.0参考となる12月実績は58.8。供給制約が続いていることや、国内における新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて企業投資はある程度抑制されている。支払い価格は低下しつつあることを考慮すると、全体の景況指数は12月実績をやや下回る可能性がある。■2月3日(木)午後9時結果発表○(英)英中央銀行金融政策発表数-予想は0.25ポイントの利上げ英中央銀行は12月16日、物価圧力が一段と持続的となっている兆候が見られるとの見方を表明している。新型コロナウイルスの感染再拡大は短期的な経済活動を圧迫する可能性はあるものの、インフレ率は今年前半にかけてさらに上昇する可能性があることから、小幅な追加利上げで対応するとみられる。■2月3日(木)午後9時45分結果発表○(欧)欧州中央銀行理事会-予想は金融政策の現状維持欧州中央銀行(ECB)は前回開催の理事会で「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」を通じた資産購入を2022年3月末に終了することを決めている。ただし、保有する債券・国債の償還後の再投資期間は2024年末まで延長される。また、ECBのラガルド総裁は金利引き上げを急がない姿勢を表明しており、今回の理事会でも一定レベルの金融緩和を維持するとの認識が共有されるとみられる。■2月4日(金)午後10時30分発表予定○(米)1月雇用統計-予想は非農業部門雇用者数は前月比+17.8万人、失業率は3.9%参考となる12月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比+19.9万人にとどまったが、失業率は3.9%まで低下した。労働力の供給は制限されており、1月も雇用者数の大幅な増加は期待できない。ただし、失業率は労働力不足によって低水準を維持する見込み。平均時給の上昇率は12月実績を上回り、前年比5%超となる可能性がある。○その他の主な経済指標の発表予定・1月31日(月):(日)12月鉱工業生産速報、(欧)10-12月期域内総生産速報値・2月1日(火):(日)12月失業率、(豪)豪準備銀行政策金利発表、(独)1月失業率・2月2日(水):(欧)1月ユーロ圏消費者物価コア指数、(米)1月ADP雇用統計・2月3日(木):(米)1月ISM非製造業景況指数・2月4日(金):(加)1月失業率 <FA> 2022/01/29 15:10 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は買い先行もマイナス圏転落、成長鈍化懸念などが足かせ 28日の上海総合指数は買い先行。前日比0.39%高の3407.59ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時53分現在、0.38%安の3381.46ptで推移している。成長鈍化懸念や米国が大幅な利上げに踏み切るとの観測が引き続き足かせ。また、翌週31日から春節(旧正月)の大型連休に入るため、積極的な買いも手控えられている。一方、景気対策への期待などが引き続き指数をサポートしている。 <AN> 2022/01/28 11:01 注目トピックス 経済総合 信越化学工業を対象とするコール型eワラントが前日比3倍の大幅上昇(28日10:01時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価上昇が目立つ住友金属鉱山<5713>コール288回 3月 4,400円を順張り、コナミホールディングス<9766>コール76回 2月 6,200円を順張り、アドバンテスト<6857>コール217回 3月 11,500円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはサイバーエージェント<4751>コール194回 3月 1,950円、キヤノン<7751>コール243回 2月 3,050円、富士通<6702>コール237回 2月 20,000円、アドバンテストプット200回 2月 7,000円などが見られる。上昇率上位は信越化学工業<4063>コール204回 2月 23,000円(前日比3倍)、信越化学工業コール203回 2月 20,000円(前日比2.5倍)、富士通プット211回 2月 14,000円(前日比2.3倍)、富士通プット212回 2月 17,000円(+85.1%)、信越化学工業コール207回 3月 23,500円(+77.5%)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/01/28 10:21 注目トピックス 経済総合 NYの視点:米成長ペースピークとなる可能性も、エネルギー価格の上昇止まず 米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果や米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の会見を受けて、米金利先物市場は3月の利上げを100%織り込んだ。年内4回目の利上げは12月から11月に前倒し。5回目の利上げも織り込み始めた。パンデミックに起因したサプライチェーン混乱の長期化がインフレの一因となり、いずれ緩和する可能性もあるが、インフレを押し上げている主因はエネルギー価格で、目先弱まる様相はない。バイデン政権が推進している再生エネルギー政策を推し進めるため、トランプ前大統領が再開したパイプラインを閉鎖、掘削関連の投資も停止させており、米国は石油輸出国から再び輸入国となり、供給のひっ迫に寄与。政策が転換しない限り、エネルギー価格の上昇は止まず。FRBの政策にも限りがあり、高インフレは長期化する可能性がある。同時に、エネルギー価格の上昇は世帯の財政にひびき、景気の停滞要因にもつながりかねない。原油価格は100ドル超に上昇する可能性もある。原油高と、FOMCの利上げを織り込みドル・円はさらなる上昇が予想される。FOMCは金利に関し、長期に維持していたフォワードガイダンスを撤廃。今後の景気やインフレ動向次第で、行動に柔軟性が加わる。米国第4四半期国内総生産(GDP)は前期比年率6.9%成長と、予想を上回る伸びとなった。成長に重要な消費は前期から伸びが拡大したものの予想を下回っており、オミクロン変異株の流行で在庫が積み上がったことが指数を押し上げており、内容は必ずしも楽観視できない。GDP価格指数は+6.9%と1981年3月以降40年ぶりの大幅な伸びで、実質成長率は横ばいになる。米国債相場ではFRBの利上げにより景気が弱まるとの見方も強まりつつあり利回り曲線が平坦化しつつある。2年債と10年債の利回り曲線は2020年11月来で最小。5年債と30年債の利回り格差はパンデミック発生した2020年3月来で最小となった。成長がピークをつけ、FRBが金利先物市場が織り込んでいるほど、利上げが進まない可能性もあることは今後、ドルの上昇ペースの抑制に繋がる。■米国第4四半期GDP:前期比年率+6.9%GDP価格指数:+6.9% <FA> 2022/01/28 07:32 注目トピックス 経済総合 トルコリラ円は、もち合いとなりそう サンワード貿易の陳氏(花田浩菜) 皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、トルコリラ円についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、今週のトルコリラ円について『もち合いとなりそう』と述べています。続けて、『トルコ中央銀行は20日の会合で、政策金利を14.0%に据え置いた。利下げサイクルが転機を迎えたとの見方が強まり、リラ売りが止まったようだ。トルコのインフレ率は昨年12月に前年同月比で36.1%と、約19年ぶりの高い伸びを記録した。名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は、−24.08%と大幅なマイナスとなった』と伝えています。次に、『昨年末に、エルドアン大統領はリラの下落に歯止めをかけるため、リラ建ての定期預金を外貨の値動きに合わせて保護する制度を導入したため、パニック的な売りは出なかった。トルコ中銀が1月の会合で利下げしないと述べていたこともリラ売りを躊躇させたようだ。トルコ中銀は20日の声明で、通貨リラを優先させるよう金融政策の枠組みを包括的に見直す意向を示した』と解説しています。一方で、『トルコ中銀はインフレ対策の定石である利上げには消極的』とし、『トルコ中銀の今後の金融政策については、年内の金利据え置き派と利上げ派に分かれている。預金保護制度に加え、インフレ率を引き下げない限り、リラ売りが再燃する可能性は残っている』と考察しています。こうしたことから、陳さんは、トルコリラ円の今週のレンジについて、『7.50円~9.50円』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の1月25日付「トルコリラ円今週の予想(1月24日)」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜 <FA> 2022/01/27 17:49 注目トピックス 経済総合 (中国)上海総合指数は買い先行もマイナス圏転落、米国債利回りの急上昇を警戒 27日の上海総合指数は買い先行。前日比0.01%高の3456.10ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時51分現在、0.26%安の3446.84ptで推移している。米国債利回りの急上昇が警戒されている。また、翌週31日から春節(旧正月)の大型連休に突入するため、積極的な買いは手控えられている。一方、景気対策への期待が指数をサポート。財政部の許宏才・副部長は25日の記者会見で、2022年も引き続き減税拡大と手数料削減を進めていくなどと述べた。 <AN> 2022/01/27 10:58 注目トピックス 経済総合 中国がトップ5社を独占…「太陽電池モジュール市場」で日本が中国に完全敗北した理由【実業之日本フォーラム】 ゲスト伊原智人(Green Earth Institute株式会社 代表取締役CEO)1990年に通商産業省(現 経済産業省)に入省し、中小企業、マクロ経済、IT戦略、エネルギー政策等を担当。1996~1998年の米国留学中に知的財産権の重要性を認識し、2001~2003年に官民交流制度を使って、大学の技術を特許化し企業にライセンスをする、株式会社リクルート(以下、「リクルート」という。)のテクノロジーマネジメント開発室に出向。2003年に経済産業省に戻ったものの、リクルートでの仕事が刺激的であったことから、2005年にリクルートに転職。震災後の2011年7月、我が国のエネルギー政策を根本的に見直すという当時の政権の要請でリクルートを退職し、国家戦略室の企画調整官として着任し、原子力、グリーン産業等のエネルギー環境政策をまとめた「革新的エネルギー環境戦略」策定に従事。2012年12月の政権交代を機に内閣官房を辞して、新しいグリーン産業の成長を自ら実現したいと考え、Green Earth Institute株式会社に入社。2013年10月より代表取締役CEO。聞き手白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)●「太陽電池モジュール市場」日本の一発逆転は困難白井:アライド・マーケット・リサーチ社によれば、世界の太陽電池モジュール市場は2018年の約520億ドルから2026年には2200億ドルに成長し、毎年20%強の成長が見込まれています。太陽電池モジュールは、2000年代前半にはシャープが世界シェア1位で、他にも京セラ、パナソニック、三菱電機といった企業が上位5社に入っていましたが、2010年前後に中国企業が当時急拡大していた欧州市場向けに商機を見出し、大幅な設備投資を行ったことで、現在は中国企業がグローバルトップ5社を独占することになりました。太陽電池モジュール市場は、寡占市場で参入障壁が極めて高い化石燃料プラントや原子力発電プラントとは異なり、各社の世界シェアが2桁に満たず、毎年順位が変動する厳しい競争市場です。こうした競争環境で、太陽光発電システム全体に占める太陽電池モジュールの価格は年々低下しています。太陽電池モジュールの事業者にとっては、規模の経済性によるコスト優位が一番の大きなポイントなのでしょうか。また、太陽電池モジュールは、他のメーカーへの入れ替えが容易であり、製品の質的な面で差別化できないコモディティ的な要素が強いのでしょうか。それとも、一度導入してしまえば、なかなか他のものに交換できないといったスイッチングコストが高いものなのでしょうか。伊原:太陽電池モジュールは、いまや規模の経済性の事業であり、また、コモディティ的要素が強く、他のメーカーへの入れ替えは容易だと思います。ただ、中国メーカーをはじめここまで競合の商品価格が下がってくると、技術力に勝る日本の企業であっても、規模の経済性では完全に劣っているため、一発逆転は難しいでしょう。白井:なるほど。規模の経済性を享受している中国製とドイツ製とのあいだでは、スイッチングコストがなく、入れ替えが可能なのですね。米中対立が激化すれば、その製品選択に影響を与えそうです。確かに、年間のシェアランキングをみても、入れ替わりが激しい印象があります。しかし、日本企業が再び上位争いに加わるのは難しいわけですね。「産業のコメ」とも言われる半導体は、産業競争力の源泉と言われ、経済安全保障の中心的テーマになっています。同じように、太陽電池モジュールの中国依存が高い場合、大きな問題になるでしょうか。あるいは、中国が生産しているマスクなどの医療品と同様の戦略的なコモディティのようなものと考えるべきでしょうか。パンデミックになる前は、マスクは中国から輸入すればよいというのが常識であったのに、新型コロナウイルスの蔓延後は戦略物資という位置づけに変わりました。伊原:太陽電池モジュールは、半導体のように経済安全保障上の戦略物資的なものというよりは、コモディティに近づいているイメージです。ただ、マスクとは違って、明日、明後日に必要ということはないでしょうから、自動車のようなものかもしれませんね。●なぜ日本は負けてしまった?白井:20年前は太陽電池モジュールのシェアのほとんどを、日本企業が独占していたというご指摘ですが、なぜ日本企業は勝つことができず、世界にチャレンジできなかったのでしょうか。伊原:2009年に産業革新機構(現・産業革新投資機構)ができる直前、「機構のあり方」について意見を求められましたが、そのときに出た議論は、太陽電池モジュール業界での失敗を繰り返さないということでした。その際の仮説は、勝ち残った中国やドイツの企業は太陽光発電の専業メーカーであったということが成功要因であり、日本は総合電機メーカーであるから負けたということでした。中国の会社やドイツのQセルズの投資額は、日本のそれと比べて圧倒的に大きかったということが重要です。大きな投資というリスクをとっても、それを上回るリターンが見込めるから中国やドイツ企業は投資したわけですが、本来的には日本の各社にも同じ計算はできたはずです。しかしながら、日本の太陽電池モジュール事業は、京セラ、シャープ、三菱など、総合電機の一部門であるため、会社全体の予算の中からどの程度をどの部門に割り当てるかという、部門間との比較になってしまい、特定の分野のみに何百億円を投じるという判断ができなかったのだと思います。生産規模の小ささが、原材料であるシリコンの調達などといったコスト競争力に跳ね返り、結果的に負けたという構図でした。総合電機の経営陣が「いまは太陽電池に投資するときであり、他の部門をゼロにしてでも1000億円を投じるべきだ」と決めることができれば、結果は違ったかもしれません。翻ってみると半導体も似ています。昔の東芝、富士通、NEⅭは、米国と半導体協定を結んでいたぐらい強かったのですが、競争に負けていきました。当時は、いずれも専業メーカーではなかったのです。産業革新機構の一つの狙いは、専業メーカーがつくれない分野で「国がこれだけまず金を張るから、ここに集まれ。それで一強を作ろう」という仕掛けだったと思います。その片鱗がルネサスやジャパンディスプレイでしょうが、これらが成功か失敗かはいろいろな議論があると思います。しかし、過去の事例を見る限り、日本の国家としてのサポートする体制が十分じゃなかったというのは事実ですし、それを改善するひとつの手が産業革新機構だったと思います。●日本全体のポートフォリオを持つべき白井:本来は国がきちんとサポートすべきというご主張ですね。それに加えて、専業メーカーではなくグループのポートフォリオの一部だったから意思決定が曖昧で、覇権を取ることができなかった。本来は、経営者がリーダーシップを発揮して、太陽光電池事業に巨額の投資をすればよかったということですね。投資意思決定メカニズム、リーダーシップなどが大きな問題です。太陽電池事業だけを切り出して、事業のリスク・リターンをシンプルにすることで、ある程度解決が可能ということでしょうか。伊原:はい。ただ同時に、どの事業が成長して、どの事業が失敗するかは、事前にはわかりませんし、ある事業部門が万が一失敗しても、他の部門でサポートするというポートフォリオを組む重要性は理解しないといけません。また、雇用の流動性という問題が出てくるかもしれませんが、できるだけ専業の会社を増やしていき、日本全体でポートフォリオを持つという考えもあります。しかし、総合電機メーカーは彼らの中の論理だけで意思決定していました。日本の企業は、これの事業は切るべきだとか、ここを強くするためにどこかと一緒になろうという戦略的なことを、自ら判断するのが苦手に見えます。ライバル企業と一緒にという話は特に難しいと思いますので、あえて産業革新機構をつくる意味があったのだと思います。白井:国全体でポートフォリオが組まれていて、リスクが分散されているというのは、金融市場的にも効率的ですね。日本の効率化が推進しなかった理由は、日本の資本市場の改革が遅れていた、あるいは資本市場からのプレッシャーが小さかったからというのも理由かもしれません。また、経営者も合理的な判断ができなかったというのも隠れた要因なのでしょうか。伊原:そもそも、日本は、市場から経営者にプレッシャーがかかっていないような気がします。経営者の判断が間違っていても、すぐには露呈せず、シェアがだんだん落ちていくという形で意思決定の失敗が明らかになっていきます。専門家であればあるほど、大きな変革を見誤って、対応できないということが起こり得ます。そしていったん、変化し始めてしまうと、専門家が予測できないスピードで変わっていくのです。こんなエピソードがあります。通産省にいた時代、1995年から電子政策課でITに取り組みました。ちょうどインターネットと携帯電話が少しずつ普及しつつあった頃です。当時の課長が、これからこの2つがどうなるかを専門家に聞こうということになり、そのころ通信の世界ではトップクラスだった、NTTの技術のトップに来ていただきました。いまでも覚えていますが、「インターネットのセキュリティは全然甘い。個人が遊びに使うのはいいけれど、ビジネスの世界ではなかなか使われない。また、携帯電話は、自動車電話のような特殊な環境は別として、日本人はああいう音質の悪いのはなかなか使わない」というお話でした。しかし、留学に行って戻ってきてみたら、日本も含め、世界は一変していました。通信の世界も変革の時期でした。1991年、1992年にそれぞれNTT子会社としてNTTドコモとNTTファシリティーズができたのですが、NTTの中での評価は、ドコモは左遷、ファシリティーズは安定している人が行くところという感じだったそうです。そして、結果的にドコモには外部の人がどんどん入ってくることになりました。その後、NTTの分割の議論があり、東西は競争をさせると言い、政治を巻き込んだ大議論をやっていたのですが、2000年になってみると、もう誰も東西の競争を気にしておらず、かつては人気のなかったはずのドコモとどう対抗するかという議論になりました。■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。(1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う(2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える(3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <TY> 2022/01/27 10:58 注目トピックス 経済総合 ユニ・チャームを対象とするプット型eワラントが前日比2倍超えの大幅上昇(27日10:03時点のeワラント取引動向) 新規買いは原資産の株価下落が目立つリクルートホールディングス<6098>プット95回 2月 5,100円を順張り、富士通<6702>コール237回 2月 20,000円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしては日本電産<6594>コール204回 2月 13,000円、イーサリアム2022年2月 プラス5倍トラッカー2回 2月 2,900米ドルなどが見られる。上昇率上位はユニ・チャーム<8113>プット86回 2月 3,400円(前日比2.1倍)、サイバーエージェント<4751>プット119回 2月 1,550円(前日比2.1倍)、ユニ・チャームプット87回 2月 4,150円(前日比2倍)、ファナック<6954>コール249回 2月 27,000円(前日比2倍)、日東電工<6988>プット158回 2月 7,400円(+79.2%)などとなっている。(カイカ証券) <FA> 2022/01/27 10:24 注目トピックス 経済総合 トンガ支援に中国が存在感…習近平が企む「影響力拡大工作」に注目すべきワケ【実業之日本フォーラム】 ● 24日、海上自衛隊もトンガへ出港2022年1月15日に発生した南太平洋の島国トンガ海底での火山噴火。これに対して、20日、岸防衛大臣は会見で、外務大臣から「トンガ王国における国際緊急援助活動の実施について協議があり、これを受けて部隊に対し、国際緊急援助活動の実施を命じた」と発表し、「防衛省として一丸となって被災したトンガ王国の人々のために全力で取り組んでいきたい」と強調した。同日、航空自衛隊C-130H輸送機2機が緊急支援物資として飲料水などを搭載し、航空自衛隊小牧基地を離陸し、1月22日現地に到着。今回の国際緊急援助活動の第1陣として同機が到着したことで、日本はオーストラリア、ニュージーランドに次いで3カ国目に現地入りした支援国となった。さらに、1月23日、航空自衛隊はC-2輸送機2機も追加派遣している。また、24日に、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」は、隊員約300名、火山灰を除去するための高圧洗浄機、飲料・食料、毛布のほか、陸上自衛隊のCH-47大型ヘリコプター2機を搭載し、呉港を出航した。● 「国際緊急援助」とは?外務省は、被災国政府または国際機関等の要請を受け派遣の必要性を認めた場合、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律(1987年9月16日施行、2006年12月22日最終改訂)」に基づき、緊急援助隊の派遣につき協力を求めるため関係行政機関と協議を行うことになっており、外務大臣の命令に基づき、国際協力機構(JICA:Japan International Cooperation Agency)が国際緊急援助隊の派遣に係る業務を行う。国際緊急援助には、(1)国際緊急援助隊の派遣、(2)緊急援助物資の供与、(3)緊急無償資金協力という区分があり、災害規模や被災国等からの要請内容に応じて、いずれか、または複数を組み合わせて支援しているのだ。さらに、国際緊急援助隊は、(1)救助チーム、(2)医療チーム、(3)感染症対策チーム、(4)専門家チーム、(5)自衛隊部隊で構成されており、国際緊急援助隊には、1987年の制度創設以降、合計160回に及ぶ派遣実績がある。(救助チーム:20回、医療チーム:59回、感染症対策チーム:6回、専門家チーム:53回、自衛隊部隊:22回、2022年1月1日現在JICA資料)。● 習近平国家主席、ツポウ6世トンガ国王に電話新聞報道等によると国際支援も着々と現地に届きつつあり、日・豪・ニュージーランドの救援物資輸送部隊の到着および救援活動開始とともに、世界銀行、アジア開発銀行、ユニセフや各国赤十字などに加え、日・米・豪・中各国政府等から支援金の拠出も表明されている。これまで交流が深い日本や英国のほか、中国が存在感を示し、影響力を拡大しようとしている。19日の報道では、習近平国家主席が、ツポウ6世トンガ国王にできる限りの支援を行うとメッセージを送り、救援物資の追加輸送の準備を進めていることが発表された。2018年4月、ロイターは、「南太平洋のバヌアツに中国の軍事基地建設の可能性、米国や同盟国に警鐘」という見出しの記事を掲載しており、2019年9月には、ソロモン諸島が台湾との外交関係を解消し、中国との国交を樹立している。米国やその同盟国は、南太平洋で台湾との断交ドミノが拡散する事態を警戒しており、米政府は、グアムに近い南太平洋に中国の軍事拠点が建設されるようなことがあれば、地域の軍事バランスが崩れ、米国の優位性が損なわれる可能性があると考えるだろう。災害への支援を行いつつ、つぶさに中国の影響力拡大工作にも注目しておく必要があるのかもしれない。● 日本に最も貢献してくれた国トンガ王国は人口約10万人、GDPは5.1億ドルの小国であるが、ラグビー等を通じた人的交流が盛んであり、東日本大震災の際には、義援金の金額をGDP比で換算すると日本に最も貢献してくれた親日国である。発電装置、海水淡水化装置、高圧洗浄機など、災害時に現地で役立つ救援物資の援助を行い、また、トンガ王国の早期の復興と安定的発展に寄与するための支援活動の実施が望まれる。東洋学園大学客員教授である織田邦男元空将は、「政治が決断すれば、自衛隊は早く動ける」、と主張している。今回の国際緊急援助隊の派遣と根拠法規や意思決定プロセスは異なるものの、昨年8月の、アフガニスタンの首都カブールからの「在外邦人等の輸送」の際の不手際を繰り返すことのないよう、迅速かつ有益な対応ができることを期待したい。サンタフェ総研上席研究員 將司 覚防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。写真:Joint Staff Office of the Defense Ministry of Japan/ロイター/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする <FA> 2022/01/27 10:21 注目トピックス 経済総合 NYの視点:FOMC3月の利上げ準備、利上げにかなりの余地とパウエルFRB議長 米連邦準備制度理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り政策金利の据え置きを決定した。声明では利上げが間もなく適切になると言及。同時に、経済の軌道はパンデミック次第、経済見通しリスクは存続するとしたほか、新型コロナの急増が経済に影響するなど慎重な姿勢を維持する中立的な内容となった。しかし、パウエル議長は会見でオミクロン変異株による最近の消費や製造業の停滞も速やかに回復するとの考えを示し、高インフレを定着させないために手段を利用するとした。経済や労働市場は非常に強く、雇用を損ねず利上げのかなりの余地があるとタカ派姿勢を強調。市場への伝達も機能していると市場の金利予想も適切との考えを示唆した。利上げ軌道において、通常はPCEを上回る水準にFF金利を引き上げる。このため、経済が許せばかなりの引き上げが必要となる。米金利先物市場は3月の利上げを100%織り込んだほか、4回目の利上げはFOMC前の12月から11月に前倒し。5回目の利上げも織り込み始めた。バイデン大統領は先週の会見で、エネルギー価格の上昇に歯止めがかからず高インフレへの対処において、インフレ制御をFRBに任せるとしており、議長は物価抑制の重責を担う。■パウエルFRB議長会見〇金融政策「3月の利上げの可能性も」「各FOMCでの利上げの可能性も除外しない」「利上げのペースなど、まだ、明確な軌道は決定していない」「雇用を損なわずに利上げするかなりの余地」「FRBは高インフレの定着を防ぐため手段を利用する」「指標や見通しを基準にする」「利上げのペースなど、具体的な決定はしていない」〇経済「非常に強い」〇労働市場「労働市場はかなり強い」「労働市場は顕著な回復、需要は歴史的に強い」〇インフレ「インフレはFRBの目標2%を大幅に上回る」「インフレは年内に鈍化を予想」「インフレリスクは依然上向き」〇バランスシート「バランスシートの具体的な重要点はまだ、協議していない」「バランスシートを巡る計画は適切な時期に供給」「バランスシートの縮小はおそらく、前回よりも速やかなペースで行われる可能性」「バランスシート縮小は利上げ後に開始へ」 <FA> 2022/01/27 08:37

ニュースカテゴリ