注目トピックス 日本株ニュース一覧
注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(2):挑戦と創造の精神を礎に売上高2,000億円の壁を大きく突破
■会社概要富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、1970年当時、コンピュータ専門学校で講師を務めていた現同社取締役相談役である野澤宏氏がコンピュータ産業の将来性に着目し、自身に加え2名の教え子社員とともに自宅で開業した富士ソフトウエア研究所である。設立50周年を超えた今、連結子会社31社(うち4社が上場企業)、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万7千人超のグループにまで発展している。企業規模が飛躍的な発展を遂げるなかでも、『もっと社会に役立つ もっとお客様に喜んでいただける もっと地球に優しい企業グループ そして「ゆとりとやりがい」』という基本方針のもとで事業を通じた社会貢献を目指す創業者の経営哲学は一貫しており、グループ会社憲章や役員・社員心得の制定等を通じて企業理念としての形式知化が図られている。なお、同社は「各企業が相互に独立会社としての尊厳と自主性・主体性を尊重する」とするグループ会社憲章のもとで、親子上場戦略を進め子会社として4社の上場企業を擁している。親子上場戦略が持続的な価値創造・企業価値向上に反することは許されないが、事業会社は資本市場のみに存在するわけではなく、製品・サービス市場や労働市場において厳しい競争にさらされている事実は極めて重要である。各市場におけるメリット・デメリットを総合的に判断すれば、現時点における同社の親子上場戦略には納得できるものがある。報告セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。また、報告セグメントを横断する技術戦略として、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。こうした成長分野で技術を蓄積し磨き上げることは容易ではないものの、「AIS-CRM」領域の単体売上高が2018年12月期の618億円から2021年12月期には959億円と順調に積み上がってきた実績を受けて、同社はこの技術戦略に対する手応え・自信を一段と深めているようである。創業時のコンピュータ・オペレーターの派遣業務事業で基盤を築いた同社は、その後、ソフトウェア開発やシステム構築の事業領域に進出、コンピュータ産業の爆発的拡大を追い風に飛躍的な発展を遂げたわけだが、その成長要因として見逃せないのが、「新たな分野に挑戦し、事業を創造し、企業としての成長・革新を目指す攻めの経営姿勢」を創業来継続していることである。創業者を含む経営トップがコンピュータ社会の到来と発展を確信し、相当程度大きなリスクを負ってでも積極的な人材採用・技術者育成と自社にない技術や顧客基盤を取り込む補完的M&A戦略を推進してきた結果、独立系ながら売上高2,500億円超、連結従業員数17,000人規模の企業グループにまで発展した事実には重みがあると考えられよう。実際、コンピュータ社会が現実化し国内ITサービス市場が6兆円規模に拡大するなかにあっても、売上高1,000億円大台を超える大手ITサービス企業は、メーカー系(富士通<6702>など)やユーザー系(NTTデータ<9613>など)、商社系(SCSK<9719>など)、外資系(日本IBM(株)など)がほぼすべてを占めており、創業来一貫して独立系と呼べる企業は同社を含めて3社に過ぎない。同社は、2002年3月期に売上高1,000億円超グループ入りを実現したわけだが、その際の従業員数は単体で4,002名、連結で見れば6,353名と創業以来の積極的な人材採用・技術者育成に支えられた業容拡大であったことがうかがえる。また、1996年には金融系業務システムに強みを持つ(株)エービーシーと合併、その後も1999年に外資系を源流とするサイバネットシステム<4312>を連結子会社化、2002年には流通系業務システムを主力とする(株)マイカルシステムズ(現 ヴィンクス<3784>)を連結子会社化するなど、組込系/制御系ソフトウェア開発という自社の強みを補完する技術や顧客基盤を取り込むM&A戦略を推進したことも、単に追い風に乗るだけでは成し遂げられない売上高1,000億円の壁を突破するために不可欠な大英断であったと考える。2011年3月期にかけてはリーマン・ショック等による減収局面を余儀なくされるも、2018年12月期に売上高2,000億円の大台乗せを達成、2021年12月期は2,578億円と、コロナ禍でも5期連続での過去最高売上高を更新している。そして、2022年2月に公表した新中期経営計画では、ベンチャー魂と大手IT企業としての矜持を両立するもとで、まずは2024年12月期に売上高3,000億円突破を目指す目標を掲げている。「技術力と提案力」をコアコンピタンスに据え、CSV的なイノベーション企業グループを目指す同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力、顧客に寄り添った拠点網(国内42拠点+グローバルネットワーク)の構築に裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。また同社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の創出とともに、様々な企業活動を通して社会の発展につなげることが重要な使命と考えており、中期方針として「ICTの発展をお客様価値向上へ結びつけるイノベーション企業グループ」を目指している。同社が発信しているメッセージから読み取れるのは、「ICT利活用の有効性・将来性への確信、その推進への使命感」と「顧客本位かつCSV型(Creating Shared Value:事業を通じた社会貢献により企業価値を増大させる企業)の経営方針」だろう。もちろん、企業活動は企業自身が意識しなくても、多かれ少なかれCSV的側面を持つものであるが、同社の場合、創業者の強い思いが「挑戦と創造」という社是のもとで、企業文化にまで落とし込まれてきたことに注目したい。こうした企業文化を礎に2022年2月に公表された新たな中期経営計画においても、同社のCSV型企業としてのユニークな取り組みとして、1990年から継続的に開催し国内最大規模のロボット競技大会に育った「全日本ロボット相撲大会」がある。ロボットづくりを通して、「ものづくりの楽しさを知る場」「技術を研く場」を提供することを目的にスタートしたわけだが、1993年より高校生の部を設けたことで、(公社)全国工業高等学校長協会が運営に参加、文部科学省や経済産業省が後援に名を連ねるなど、ものづくりを通じた人材育成支援の好例として認知されている。なお、コロナ禍にあって2020年と2021年の「全日本ロボット相撲大会」は開催見送りとなったものの、同社は小学生向けプログラミング体験や学生からのインタビューをリモート対応で受入れるといった教育支援を行い、「ものづくりを学ぶ場の提供に尽力すること」を社会貢献活動の柱に据える姿勢を継続していた。そして、2022年は「全日本ロボット相撲大会」を再開することを決定、12月に両国国技館を舞台に予選会・決勝大会が開催される予定である。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:02
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アイリック Research Memo(1):保険分析・販売支援プラットフォーマー。2022年6月期は増収増益
■要約アイリックコーポレーション<7325>は、自社開発のシステム・サービスを活用し、保険分析・販売支援プラットフォーマーとして事業展開するFintech企業である。自社開発した業界唯一のワンストップ型保険分析・検索システム「保険IQシステム(R)」(以下、「保険IQシステム」)を活用して、1999年に日本で初めてオープンした来店型保険ショップ「保険クリニック(R)」(以下、「保険クリニック」)を直営とFCで全国展開している。保険分析・販売支援プラットフォーマーとして金融機関や保険代理店向けのASシリーズ(「ASシステム」「AS-BOX」)の販売も行っている。また、AIを搭載した非定型帳票対応の次世代型光学的文字認識システム「スマートOCR(R)」(以下、「スマートOCR」)関連を成長分野と位置付けている。1. 2022年6月期は増収増益で着地2022年6月期の連結業績は、売上高が前期比12.1%増の5,199百万円、営業利益が同14.3%増の418百万円、経常利益が同15.5%増の432百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.7%増の255百万円となった。新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、「コロナ禍」)の長期化により「保険クリニック」(直営店)への新規来店客数が微増にとどまったため保険販売事業の直営店部門・RM部門が伸び悩み、全体として計画を下回ったが、ストック収益が主力のソリューション事業のAS部門や成長分野と位置付けるシステム事業が順調に拡大して増収増益で着地した。なお、期初時点では「保険クリニック」の大規模プロモーションを計画していたが、コロナ禍の影響で十分な効果が見込めないと判断して取りやめた。2. 2023年6月期は大規模プロモーションの計画により減益予想だが上振れの可能性2023年6月期の連結業績予想は、売上高が前期比17.8%増の6,122百万円、営業利益が27.2%減の304百万円、経常利益が28.1%減の310百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が30.0%減の179百万円としている。各事業とも順調に伸長して2ケタ増収予想も、「保険クリニック」の大規模プロモーション(TVCM等)計画により広告宣伝費が増加し、システム事業の開発費の増加などを考慮して全体で減益予想としている。新規出店に係る先行投資が2022年6月期までに完了した場合、コロナ禍の影響緩和や大規模プロモーション効果による新規来店客数・成約数増加で利益が出やすい収益体質となっていること、ソリューション事業のAS部門やシステム事業が順調に拡大することを勘案すれば、会社予想に上振れの可能性があると弊社は考えている。3. Fintech企業として中長期的に成長ポテンシャル大きい同社はコロナ禍の長期化による事業環境変化に対応して、2023年6月期~2025年6月期の新たな「3か年計画」を策定した。1年目を「再始動の年」、2年目を「投資継続の年」、3年目を「成長の年」と位置付けて、最終年度となる2025年6月期の目標値に売上高8,495百万円~8,795百万円、営業利益700百万円~1,000百万円を掲げた。「保険クリニック」店舗事業及び保険分析・販売支援プラットフォーマーとして収益拡大を図るとともに、成長分野と位置付ける「スマートOCR」の拡販も推進し、業界の枠を超えたFintech企業としての成長を目指す方針だ。弊社ではFintech企業として中長期的に成長ポテンシャルが大きいと評価している。■Key Points・来店型保険ショップ、保険分析・販売ソリューション、スマートOCRを展開・2023年6月期は大規模プロモーションを計画して減益予想だが上振れ余地・Fintech企業として中長期的に成長ポテンシャル大きい(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:01
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富士ソフト Research Memo(1):攻めの経営姿勢を貫きつつ、さらなる企業価値向上を目指す
■要約1. 会社概要と事業内容富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、現在の同社取締役相談役である野澤宏(のざわひろし)氏が自宅で自身に加え2名の社員とともに開業した(株)富士ソフトウエア研究所であり、設立50周年を超えた今、連結子会社31社、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万7千人規模(2022年6月末現在)のグループにまで発展している。報告セグメントは、SI事業(システム構築とプロダクト・サービス)、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。また、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。2. コアコンピタンスは「技術力と提案力」同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力などに裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。3. ポストコロナ時代を見据えて人財投資を再び積極化同社は顧客の業況感回復とDXニーズの高まりに対応するため、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を受けて抑制していた採用活動を再拡大している。2022年6月末における臨時雇用を含む連結従業員数は17,436名と半年間で2,480名もの増員を実現し、生産力の確保と人財の高度化に注力している。振り返れば、同社はリーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、柔軟な経営戦略のもと財務体質強化と成長ポテンシャル増強をバランス良く両立した実績を持つ。今回のコロナ禍にあっても、自己資本比率が2019年12月期末54.1%→2022年12月期上期末54.8%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同7,498百万円→同9,880百万円のキャッシュ超過(実質無借金経営)と同社は財務体質の一段の健全化を実現しており、守りを固めながらも攻めの経営を貫くスタンスに変化はない。4. 2022年12月期上期の連結業績は、期初予想から上振れて着地2022年12月期第2四半期累計期間(以下、上期)の連結業績は、売上高が前年同期比6.7%増の141,328百万円、営業利益が同3.0%増の8,995百万円、経常利益が同5.2%増の9,954百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同25.7%増の5,850百万円と上期としては7期連続での増収増益となった。同社による2022年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.0%増の265,500百万円、営業利益が同2.7%増の17,300百万円、経常利益が同2.9%増の18,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.2%増の9,700百万円、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に9期連続での増収・営業増益を見込んでいる。配当予想は、2021年12月期実績の年間52円/株(第2四半期末に26円/株、期末に26円/株)から年間109円(第2四半期末に54円/株、期末に55円/株)へと大幅に引き上げられ、8期連続増配となる見通しである。なお、業績予想及び配当予想は本年2月公表の期初予想から据え置かれているが、上期計画に対する達成率や通期計画に対する進捗率から見て、現時点では増額着地となる可能性が大きいと考えている。5. 新設された企業価値向上委員会、一歩踏み込んだアプトプットの発表に期待したい同社は新中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につなげるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月の最終報告に向けて活動を加速している。客観的視点を確保するため、「企業価値向上委員会」は取締役会出席者に加え外部アドバイザリーにより構成されており、同委員会で審議する素案づくりを目的に、1)企業統治検証、2)株主投資家対応、3)事業検証、4)企業グループ検証、5)不動産検証、という5つの課題別にワーキンググループ(WG)が設置されている。先の新中期経営計画で示された各種数値目標(2024年12月期に売上高3,000億円以上、営業利益200億円以上、ROIC8.0%以上、ROE9.0%以上、EBITDAマージン9.0%以上、配当性向35.0%以上)は、過去の中期経営計画に比べ水準的にも内容的にも評価できるものであったわけだが、「企業価値向上委員会」によるアウトプット(最終報告)がさらに一歩踏み込んだものになることを期待したい。■Key Points・1970年設立の独立系大手ITソリューションベンダー。積極的な人財投資と補完的M&A戦略が奏功し、売上高2,000億円の壁を大きく突破、2022年6月末の連結従業員数は1万7千人超を擁する・コアコンピタンスは豊富な実績と企業理念に裏打ちされた「技術力と提案力」。リーマン・ショック後の業績低迷期を経て、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強の両立を実現している・2022年12月期上期業績は期初公表値を上回り、7期連続での増収増益を実現した。同社による2022年12月期通期予想(3.0%増収、2.7%営業増益)は期初計画が据え置かれたが、現時点では上振れ着地となる可能性大と考える・2022年8月、投資家との対話で得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につながるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月に公表される最終報告の内容に期待したい(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:01
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極東貿易 Research Memo(9):引き続き配当性向100%を維持、積極的株主還元策を推進
■株主還元策極東貿易<8093>の利益分配の基本方針では、「継続的な成果の還元と企業価値の持続的向上を実現のため、適正な資本政策の下、将来の事業展開と財務状況、収益動向などを総合的に勘案した配当を実施する」としている。また、2023年3月期の配当性向100%または株主資本配当率4.0%のいずれか高い方を年間配当金とするとしており、中間配当は1株当たり75円※を計画している。※2022年9月1日付で普通株式1株を2株とする株式分割を実施。2023年3月期の配当金は、株式分割前の株式数記載。引き続き高配当政策(配当性向100%)を進める。当期純利益のすべてを配当金に充てる。株主還元策として評価して良いだろう。2024年3月期までは配当性向100%を計画している。一方で、新中期経営計画では2026年3月期の資本効率目標としてROE8%以上を掲げているが、仮に収益が計画を下回った場合は自己資本を上げずに資本効率を上げていかなければならない。高配当政策の背景には、そういう利益分配上のジレンマもあるように思われる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:59
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極東貿易 Research Memo(8):新規事業の洋上風力発電関連事業の拡大に期待
■中期経営計画と成長戦略(2) 新規ビジネスの開発と育成新中期経営計画の最大の目玉は、新規ビジネス(M&A含む)である。5つの成長分野への取り組みをプロジェクト化し、経営資源投入を強化している。これは就任4年目となる岡田社長の強い思いでもあり、社長直轄プロジェクトとして、戦略的に取り組んでいる。5つの成長分野とは、1)再生可能エネルギー、2)水素・電池、3)環境衛生、4)バイオプロダクツ、5)産業向けDX・IoTである。5つの成長分野についてはこれまで極東貿易<8093>も何らかの形で関わってきており、市場や技術の知見や経験が生かせる分野でもある。同社はそのなかから、複数の事業化を目論んでいる。ここで注目しておきたいポイントは、同社がM&Aの成功のための知見やノウハウを有していることである。2023年3月期は、5つの成長分野のなかから、重点3新規事業「洋上風力発電関連事業」「自動運転システム関連事業」「バイオプロダクツ」に注力している。重点3新規事業の活動状況は逐次、経営企画部へ報告される。社長直轄マターとして、全社的視点で協業・M&Aやリソース配分などを判断し新規事業の舵取りをしている。1) 再生可能エネルギー分野:洋上風力発電関連事業同社はこれまで資源開発関連事業で培ってきた海底探査、掘削の経験と知見を生かし、「洋上風力発電」分野の周辺機器というニッチ市場で事業化を進めてきた。この度、オランダのTWD B.V.(以下、TWD)との戦略的アライアンスを結んだ。TWDは洋上風車等の建設のための特殊大型治具(Pile Gripper、建て起こし機、Lifting Tool、各種架台、JacketのTemplate 等)の設計・製作・メンテナンスを行っている。業界での知名度は高く、国内のマリコン※やゼネコンも積船の機材設計の機会があるとTWDに引き合いがくるようである。この分野ではTWD以外に設計できるところはほとんどなく、オンリーワンの存在となっていると言う。※マリコンはマリンコントラクターの略で、五洋建設<1893>や東亜建設工業<1885>などが有名。2022年1月には、オランダ TWD B.V.の日本代理店である(株)トリオマリンテックと同社にて合弁会社TWD Japan(同社出資比率70%)を設立した。はじめは設計・製作・サプライで商売していくが、将来的には保守・メンテナンスサービスへの事業展開を目論んでいる。同社は、設計・製作段階から運営・メンテナンスまで関われば、洋上風力風車に関する経験・ノウハウが蓄積できると考えている。洋上風力発電関連事業については、2023年3月期の売上高は4~5億円、2026年3月期には20億円を見込んでいる。既に概要設計の複数受注が決まっており、この計画は堅めの数値で計画前倒しの可能性もある。また、同事業は収益性も高い。TWD Japanの商圏は当面、日本・東アジア(台湾)となるが、日本だけでもかなりの引き合いがあり、まずは足元の日本で事業基盤を強化する予定である。そして、洋上風力発電関連事業ではTWD以外にもさまざまな種まきを行っているもようで、第2弾、第3弾の事業シナリオも楽しみである。2) 産業向けDX・IoT分野:自動運転システム関連事業同社は、大手鉄鋼メーカーによる「製鉄所構内で運行する特殊車両を自動運転にできないか」という依頼を機に、製鉄所構内での構内用特殊車両の自動運転システムの商用化に乗り出した。同社はこれまで、工場向けIoT機器や構内自動運転機関車の開発に取り組んできた。その知見を生かし、自動車試験システムのトップサプライヤーである英国AB Dynamics Ltdグループと共同開発することとなった。工場構内を走行する現行特殊車両向け障害物検知機能組込み自動運転システムの開発において、パートナーシップ協定を締結した。現時点では、既存車両を改造した自動運転(無人化)を想定している。同製品の適用分野は国内鉄鋼メーカー、化学プラントなどが挙げられる。構内用特殊車両の自動運転システム事業は、新中期経営計画期間内に売上高10億円を見込んでいる。同社は今後、特殊車両のドライバーの高齢化で自動運転ニーズはますます高まると見ている。同社では産業系自動運転分野の知見やノウハウを深めると同時に、新技術の導入も進め、完全自動化に備える。3) その他の取り組み事業:バイオプロダクツこのテーマは中長期の新規事業テーマと位置付けており、「生分解促進添加剤販売」と「生分解プラスチックの自社ブランド品の開発販売」の2つのテーマがある。「生分解促進添加剤」は米国のベンチャー企業EcoLogic LLCと代理店契約を結び販売をスタートしたところである。「Eco-One」は、FDA(米国食品医薬品局)に準拠した添加剤で、オーガニック100%である。樹脂に「Eco-One」を約1%添加することで、樹脂製品に生分解・海洋分解性機能を付与できる。用途はランニングシューズ、オフィス家具、医療用資材、レジ・ゴミ袋など幅広く、環境価値を重視するユーザーに受け入れられると弊社は見ている。まだスタートしたばかりで事業プランは色々あるようだが、事業化には時間がかかるもようだ。同社は新中期経営計画の期間中には事業化したいという考えである。資本効率性と株主還元策を両立した巧みな資本戦略(3) 株主価値に資する資本政策の実行株主価値・企業価値向上のためには、営業利益を1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性を高めることがカギとなる。新中期経営計画では、2026年3月期の経営目標であるROE8%達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行する一方で、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。事業を推進するうえでの資金の余力があるためである。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、当面3年間は当期純利益をすべて配当金に分配(配当性向100%)するという積極的な株主還元策を進める。同社では、機関投資家向け決算説明会(2022年5月26日開催)に続き第102回定時株主総会(同年6月23日開催)にて、資本コストを開示した。既に会社方針や社長メッセージでも「資本コストを意識した経営」を打ち出し、コーポレートガバナンス報告書でも「資本コストの開示」を通知した。「株主提案」の前から、同社には情報開示の意思があったようである。「2023年3月期の株主資本コスト7.7%、加重平均資本コスト(WACC)5.7%」という情報開示に対して、株主や投資家の反応は、総じて肯定的評価が多いようである。今後は、この資本コストをベースに投資判断や事業ポートフォリオ戦略に活用することが望まれる。なお、配当政策については「株主還元策」の項で述べる。(4) パラダイムシフトのなかで「想像」し「創造」できる人材を育成同社の企業成長を担う社員の育成を着実に進めるべく、中長期的な視野で人材投資を行い、社員が活躍できる環境整備を積極的に進めている。人材育成にあたっては、今後以下の2点を推進するとしている。・コンセプチュアルスキルを強化するための研修プログラムを計画…コンセプチュアルスキルとは、知識や情報を体系的に整理し、複雑な事象や曖昧な状況を概念化する力・社員の「創造性」や「柔軟性」を受け止める社内ルール制定や体制改革を実行…創造性や柔軟性の評価方法、積極的な受入体制や土壌や風土の地盤づくり(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:58
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極東貿易 Research Memo(7):新中期経営計画の最大の目玉は、新規ビジネスの開発と育成
■極東貿易<8093>の中期経営計画と成長戦略2. 新中期経営計画2期目の進捗中期経営計画2期目となる2023年3月期も以下の3つの重点施策を継続し強化していく。・サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資実行2022年1月に洋上風力に関わる事業会社であるTWD Japanを設立したことで、脱炭素・気候変動への取り組みに関わる事業の新たな収益源泉を創出する。・株主価値に資する資本政策の実行2023年3月期においても計画どおり積極的な株主還元を実行することで株主価値を高める。・パラダイムシフトのなかで「想像」し「創造」できる人材の育成中長期的な視野で人材投資を行い、社員が活躍できる環境整備を積極的に行っていく。(1) サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資実行1) 事業ポートフォリオ戦略の構築へ同社は2022年4月付で営業組織を統合した。基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門の5つの営業部を統合して、「産業インフラソリューショングループ」へ、産業素材関連部門の3つの営業部を「マテリアルソリューショングループ」へと、2つの営業グループに統合した。もともと各営業組織は規模が小さく慢性的な人手不足であり、新たな戦略的な営業活動ができず機会損失も生じていたと言う。今回の営業組織の統合を行った狙いは3つある。第1に、事業特性や営業特性に適した事業戦略とその実行組織の再編である。2つの営業グループ(産業インフラソリューション、マテリアルソリューション)は、設備エンジニアリング系ビジネスと素材(“流れモノ”)サプライヤー系ビジネスと定義され、売り方やビジネスのやり方が異なる。今後は、それぞれの営業組織で事業戦略と営業戦略を策定し実行する。第2に、2つの営業組織にしたことにより、将来的には顧客のニーズに応じて、プロジェクトチームで動けるよう柔軟な営業体制を組めるようにする。第3に、顧客情報や専門的知見やノウハウを組織で共有することで、営業人材の育成強化につなげる。今回の営業組織改革は、合理化や人員削減などの守りの組織改革ではなく、戦略的意味を持った、攻めの組織改革であることを付け加えておく。2) 事業ポートフォリオの再編と強化同社では、今回の営業組織改革を機に、事業セグメントの再編も同時に行った。2023年3月期より、報告セグメントを従来の4事業セグメントから3事業セグメントへ変更した。「基幹産業関連部門」と「電子・制御システム関連部門」を統合して「産業設備関連部門」を新設し、従来の「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」で3事業セグメント体制とした。その背景には、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の製品はすべて撤退すると決断したこと、電子・制御システム関連部門では主力事業であった「計装システム(火力発電所向け制御装置)」を失ったことで事業規模が圧倒的に小さくなり、単独で事業セグメントを組む必要がなくなったことがある。そのため実質的には基幹産業関連部門に電子・制御システム関連部門を吸収した形となった。今回の会計基準変更により、売上高・売上総利益のトップは基幹産業関連部門セグメントから機械部品関連部門セグメントへ交代となった。中長期の事業ポートフォリオで見ると、機械部品関連部門(特にねじ事業)を将来のコア事業に育てるべく、集中的リソース配分を検討する時期に来ているのかもしれない。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:57
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極東貿易 Research Memo(6):事業ポートフォリオ戦略の最適化と大型新規事業の開発を目指す
■中期経営計画と成長戦略極東貿易<8093>は2021年3月期の業績を受けて、2020年3月期を初年度とする前中期経営計画「KBKブレイクスルー2023」の見直しを余儀なくされることとなった。グローバルな事業環境の変化はコロナ禍の影響のみならず、カーボンニュートラルに向けた各界のパラダイムシフト、DXを活用した未来化対応並びに環境破壊への対応が産業界の大きな改革意識をもたらしたことなどを踏まえ、同社では前中期経営計画を改訂し、2年間延長した。そしてより現実に即した同社の中長期的な発展に資する取り組み計画として、2022年3月期が初年度となる新たな中期経営計画「KBKプラスワン2025」を策定した。新中期経営計画では、引き続き事業ポートフォリオの最適化を実行し、注力すべき事業領域を選別して収益力の強化を目指す。また、サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資を実行することで、新たな収益の源泉を創出するとしている。1. 新中期経営計画「KBKプラスワン2025」の概要・環境・社会・ガバナンス体制(ESG)サステナブルな社会を実現していくために、同社が培ってきた技術や顧客資産を生かした多様なESGビジネスを展開し、企業価値を高める。・事業戦略(事業ポートフォリオ戦略)新規事業創出のために3つの事業部門を横断したプロジェクトチームを設置した。また、5年間で総額50億円の投資枠(M&A)を設定した。5年~10年展望で種まきと新しい事業の柱を同時並行で複数育成する。・ 財務・資本戦略ROE8%以上の水準を目指し資本効率性の向上を図る。自己資本を3年間積み増さず、資本効率性も考慮に入れながら、積極的な株主還元(前半の3年間は配当性向100%)にも取り組んでいく。・ 株主価値/企業価値の向上資本コストを上回るリターンの確保とともに、東証プライム市場(流通株式時価総額100億円以上)の上場条件を満たす。資本効率性の経営目標(2026年3月期ROE8%以上)はストレッチした目標ではないが、現在のROEは3.5%(2022年3月期)と厳しい状況である。現在は屈伸した状態にあるが、この後に小さなジャンプ(“Change & Growth”)をするつもりでROE8%の達成を目指すとしている。2026年3月期の主な経営目標は以下のとおりとなる。・連結経常利益…25億円・ROE…8%以上・配当性向…変革期である前半3年間(2022年3月期~2024年3月期)は100%を維持・自社株買い…状況に応じて機動的に実施(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:56
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極東貿易 Research Memo(5):新しい事業ポートフォリオで新たな成長戦略を実行
■今後の見通し1. 2023年3月期の業績見通し極東貿易<8093>の2023年3月期の連結業績は厳しい事業環境が予想されるが、下記の重点施策を着実に実行することで、売上高は42,000百万円、営業利益900百万円、経常利益1,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を見込んでいる。なお、売上高(期初予想)は2022年3月期から適用される新会計基準に準じて算定されたものである。2. 事業セグメント別見通し2022年4月より、報告セグメントを従来の4事業セグメントから「産業設備関連部門」「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」の3事業セグメントへ変更した。(1) 産業設備関連部門売上高は13,400百万円(前年同期比6.8%増)、売上総利益3,400百万円(同15.1%増)と全体で好調に推移する見込みである。ウクライナ情勢の影響により、モスクワEVバス向けのリチウムイオン電池事業は取引停止状態となっている。また、2022年3月期に好調だった海外プラント向け設備関連事業も2023年3月期は一服感がある。コロナ禍の影響で遅延していた国内プラント向けや資源探査関連の大型設備は2023年3月期に納入予定となっており、国内向け設備事業は全体的に好調に推移する見通し。また、自動車用試験システム事業もコロナ禍の影響から回復する見込みである。(2) 産業素材関連部門売上高は11,800百万円(前年同期比8.5%増)、売上総利益1,900百万円(同5.8%増)と、おおむね堅調に推移する見込みである。自動車業界全体は、半導体不足などの影響から不透明な状態が続き、中国向けの塗料事業はコロナ禍の影響を受け上期は伸び悩むとしている。炭素繊維関連事業は、下期から航空機業界向けの復調が徐々に見込まれ堅調に推移することが見込まれる。(3) 機械部品関連部門売上高は16,800百万円(前年同期比3.2%増)、売上総利益3,600百万円(同4.3%増)としている。同社によるとさらに上振れの可能性もあるようだ。ねじ関連事業は、コロナ禍で2年ほど苦戦したが、コロナ禍前の水準にまで回復してきた。そして、2023年3月期も引き続き好調が続く見込みである。一方、ばねやぜんまいに関連した事業は、2022年3月期は車載備品用定荷重ばねの量産受注が好調であったが、2023年3月期は前期のようには伸びない見通しを立てている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:55
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極東貿易 Research Memo(4):海外向け重電事業、ねじ関連事業が好調
■業績動向1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要極東貿易<8093>の2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準を適用したためであり、2022年3月期における売上高については、旧会計基準と比較して20,826百万円の減収となった。ただし旧会計基準では、実質増収である。顕著な事業部門としては、重電設備が約1/3の売上規模となった。これらの事業では大手メーカーの商材・エンジニアリングサービスの代理店業務が売上高では大きな部分が“代理”と見なされているためである。新会計基準での売上高は減少したが、旧会計基準では60,500百万円と、前期比3,100百万円の増収となった。基幹産業関連部門の海外プラント向け重電事業が好調に推移したことに加え、機械部品関連部門のねじ関連事業が新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)前の水準に復調し全体としても回復基調となった。親会社株主に帰属する当期純利益の増益要因としては、事業ポートフォリオ最適化を伴う構造改革の一環として実施のブラジル現地法人撤退による関係会社出資金評価損等の特別損失が発生したことなどによる。同社ではビジネス領域が幅広く、不透明かつ不確実な事業環境(コロナ禍の影響継続、ウクライナ情勢、世界的インフレなど)のなか、同社のビジネスにも大きな影響があったようだ。具体的には、ウクライナ情勢の影響によりロシア向けビジネス(モスクワのEVバス向け車載リチウムイオン電池)は取引停止状態となり、消失した。また、航空機関連ビジネス(炭素繊維材料の輸入販売)がコロナ禍前の業績から回復していない。2023年3月期下期より徐々に復調すると見込んでおり、以降は堅調に推移するとしている。2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。2. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期のセグメント別業績(1) 産業設備関連部門(旧 基幹産業関連部門及び旧 電子・制御システム関連部門)2022年3月期の基幹産業関連部門の売上高は8,718百万円となり、売上総利益は1,965百万円(前年同期は1,920百万円)となった。コロナ禍の影響で鉄鋼関連事業及び資源開発機器事業において大型案件の翌期への納期遅延が発生したことに加え、検査装置事業は低調に推移したものの、海外プラント向け重電事業が新興国を中心に好調に推移した。2022年3月期の電子・制御システム関連部門の売上高は3,829百万円となり、売上総利益は989百万円(前年同期は1,129百万円)となった。事業承継により2023年3月期より連結子会社で生産を開始した地震計に関連した事業が好調に推移したものの、計装システム事業は既に同事業における販売代理業務を終了したため受注済み案件の計上にとどまったほか、電子機器事業が低調に推移した。2023年3月期より基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門となった。2023年3月期第1四半期の売上高は2,135百万円(前期比25.2%減)となり、セグメント損失は208百万円(前年同期は191百万円の損失)となった。海外プラント向け重電事業が好調に推移したものの、ロシアEVバス向けリチウムイオン電池事業がウクライナ情勢の影響を受けて大きく落ち込んだこと、自動車業界向け検査装置事業の受注が伸び悩んだことにより減収・損失拡大となった。(2) 産業素材関連部門2022年3月期の売上高は10,875百万円となり、売上総利益は1,796百万円(前年同期は1,820百万円)となった。米国向け及び中国自動車業界向け樹脂・塗料が好調に推移したものの、メキシコ向けは、半導体不足に伴う部品供給制限による自動車メーカーの操業制限の影響を受けて落ち込み、また、コロナ禍の影響を受け食品関連事業が大きく落ち込んだ。2023年3月期第1四半期の売上高は2,989百万円(前年同期比28.2%増)となり、セグメント利益は44百万円(同120.0%増)となった。前年同期に国内外ともに大きく落ち込んだ自動車業界向け樹脂・塗料事業は、北米及び国内向けにおいて持ち直しが見られた。(3) 機械部品関連部門2022年3月期の売上高は16,281百万円、売上総利益は3,453百万円(前年同期は2,710百万円)となり、大幅な増収増益となった。ねじ関連事業は、コロナ禍により2年ほど苦戦したが、コロナ禍前の水準にまで回復した。ばね関連事業は、車載備品用定荷重ばねの量産受注が好調に推移し増益となった。ねじやばねについては、素材提供(“流れモノ”)型ビジネスであり、「収益基準変更」の影響は受けなかった。2023年3月期第1四半期の売上高は4,250百万円(前年同期比7.2%)となり、セグメント利益は161百万円(同12.0%減)となった。ねじ関連事業は引き続き好調のようだ。特に、住宅設備向け、建設機械向け、産業機械向けが好調に推移し増益傾向が見られた。ばね関連事業の落ち込みに加え、コロナ禍で停滞していた営業活動を再開し、積極的に展開したことから販売費及び一般管理費が増加した。3. 財務状況2022年3月期末の資産合計は、前期末に比べ6,277百万円減少し、45,513百万円となった。その主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末は受取手形及び売掛金)が4,691百万円減少、前渡金が1,419百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、同6,642百万円減少し、22,889百万円となった。その主な要因は、支払手形及び買掛金が5,232百万円減少、契約負債(前連結会計年度末は前受金)が2,135百万円減少したことなどによるものである。純資産合計は、同365百万円増加し、22,623百万円となった。これは主として為替換算調整勘定が623百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が198百万円減少したことによるものである。2023年3月期第1四半期末における資産合計は、前期末に比べ782百万円減少し、44,731百万円となった。その主な要因は、前渡金が373百万円増加、投資有価証券が118百万円増加した一方、受取手形、売掛金及び契約資産が1,355百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、前期末に比べ1,217百万円減少し、21,671百万円となった。その主な要因は、契約負債が256百万円増加、その他流動負債が467百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が623百万円減少、電子記録債務が546百万円減少したことなどによるものである。純資産は、前期末に比べ435百万円増加し、23,059百万円となった。その主な要因は、前期末に比べ為替換算調整勘定560百万円の増加及び、親会社株主に帰属する四半期純利益147百万円を計上した一方、配当金の支払い338百万円を実施したことによるものである。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:54
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極東貿易 Research Memo(3):経営危機をバネに、経営の舵取りと企業構造を大きく転換(2)
■会社概要3. 特長と強み(1) 理系出身の営業職・技術営業職は7割以上を占める通常、商社の営業現場では文系出身者が多いとされているが、極東貿易<8093>では営業マンの7割以上は大学の理系出身者が占める。同社は人事政策上、理系出身者の採用を重視してきた。その背景には、技術営業を行うことのほか、導入・据付、運用・保守までエンジニアリング全般を、同社営業マンが仕入れ先の海外メーカーに頼らず、顧客に対して自主的に技術サポートできるようにしてきたためである。顧客へ納入した装置が原因不明の停止や故障になる度に海外メーカーに問い合わせるのでは時間がかかることから、同社の営業マンは顧客から絶大なる信頼を得ていると言う。さらに、同社では点検・保守メンテナンスを適時的確に対応すべく、保守・メンテナンスの専門子会社(日本システム工業(株))を設立して運用している。同社には資源掘削関連部門があり、大学の地質工学や自然エネルギー資源の研究をしてきた学生を積極的に採用している。同関連部門の担当者は海外の採掘メーカーの技術者とともに海洋資源探査船に約3ヶ月間乗り込み、採掘装置の動作試験や立会試験まで関わっている。(2) 顧客に大手企業が多く、信頼関係とロイヤリティを得ている同社はこれまで日本の基幹産業(建設、鉱山、製鉄所、化学プラント、電力、繊維、エレクトロニクス、自動車部品等)に深く関わってきたため大手企業との取引が多い。同社創業以来の取引が継続している企業もあり、信頼関係とロイヤリティを得ている。一方、欧米、アジア等の海外市場でも米国自動車Big3や独自動車メーカーとも取引がある。これは同業技術商社と比較しても優良な顧客構造になっている。その根拠として、中堅商社の課題である「貸し倒れ」が、同社ではほとんど発生していないことが挙げられる。また、国内主力製鉄所にはすべて出張所(室蘭、君津、千葉、知多、広畑、水島、小倉、大分)を配置して、細やかな営業サービスで差別化を図ってきた。製鋼の特定プロセス分野の装置を含めたプロセスソリューションの役割を同社が担っていると言える。(3) 「誠実さ」と「粘り強さ」で取引先から高い評価大手企業から厚い信頼を得ている背景には、誠実さと真面目さが挙げられる。顧客との交渉シーンでも顧客から「この価格でお宅は商売になるの」と言われることもあるようだ。また、粘り強い人が多いとも言われるようだ。そのため、新商材・新規事業において、困難があっても粘り強さを発揮するようだ。その好例が「軽量ケーブル」である。2007年ごろに航空電子営業部門が海外から持ち帰り、国内小型航空機向けに粘り強く提案とフォローを繰り返してきた。同時に2012年からラグジュアリーカー用軽量ケーブル向けに提案営業を繰り返し、2016年にやっと採用までこぎ着けた。そのような営業人材が多いことが技術商社にとって最大の強みである。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:53
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極東貿易 Research Memo(2):経営危機をバネに、経営の舵取りと企業構造を大きく転換(1)
■会社概要1. 沿革極東貿易<8093>は2022年11月に設立75周年を迎える。第2次世界大戦の終戦後、三井物産<8031>は財閥解体となったが、機械部門(営業課及び貿易課)が主体となり独立して同社が設立された。その後、海外の最先端の建設・鉱山機械や製造装置等を国内の基幹産業(建設、製鉄、化学プラント、電力、繊維、エレクトロニクス)へ輸入販売して日本の経済復興に貢献し、日本の高度経済成長とともに成長してきた。同社は、国内の大手企業から厚い信頼とロイヤリティを得ながら、基幹産業界のなかで一定の地位を確保してきた。その後、航空・防衛産業向け電子機器や自動車産業向け樹脂・塗料等、事業領域の幅が広がった。特に航空・防衛関連事業は、同社の事業の大きな柱となっていった。1987年に東証に上場した頃は、産業用機械(製鉄所、電力等)、産業素材、航空・防衛関連が中核事業であった。2000年頃には年商2千億円を突破し、順調に拡大した。光通信用半導体も取り扱ったが市場が不透明でありボラティリティ(市場価格が1/100まで下落)が大きく、事業マネジメントが難しい局面もあった。そのような難局も乗り越え、同社は小粒でありながらも多種多様な事業を展開して、現在の総合商社のような事業構造の原型をつくり上げてきた。ところが、2008年1月に同社を揺るがす大事件が起きた。防衛省への過大請求事案である。当時の新聞で取り扱われ、この事案解決までに約2年間を要した。これにより輸入元の米国メーカーとの契約取消・解除などが重なり、業績は大きく悪化した。結果として、航空・防衛関連は壊滅的状態となり、中核事業の一角を失った。また、当時は会計制度(売上計上法の変更)見直しの影響もあり、同社の単体売上高2千億円超は1/4以下にまで縮小した。そこで、同社では「企業変革と再成長」に取り組み、手持ち資金の取り崩しやコストカット等あらゆるリストラを断行したことで、“最悪の事態”を回避した。この経営危機を機に大きく経営の舵を切った。中核事業の一角(航空・防衛関連)を失った事業構造を立て直すべく、新たな事業をM&Aで取り込んだ。幸い、不祥事対策やリストラ対策等に手持ち資金を一部充当したが、M&Aを実行する資金は手元にあった。2011年1月の(株)ゼットアールシー・ジャパンを皮切りに、2018年までの7年間で立て続けに7案件以上のM&Aを実施した。結果的にはすべて成功(いずれの案件も売上総利益率は全社平均売上総利益率を上回る)した。最も成功したM&Aは2015年9月に完全子会社化したヱトー(株)である。ヱトーは自動車部品、建設機械、産業機械、住宅設備等の特注品ねじ等を取り扱っており、2022年3月期の連結売上総利益8,194百万円のうち3,453百万円(構成比42.1%)を稼ぐ儲頭事業となった。それ以外でも、サンコースプリング(株)は他社が真似できない「定荷重ばね」を開発して、世界トップクラスのシェア製品やオンリーワン製品を数多く生み出し、高付加価値・高収益(売上総利益率35.9%)で貢献している。また、2018年4月には輸出商社のプラント・メンテナンスを完全子会社化し、同社の重電設備事業とのシナジーにより国内外での拡販を強化した。同社は、エンジニアリング商社として、1)経営理念:「ニーズとシーズの橋になる」、2)社是:「人と技術と信頼と」を掲げ、「顧客からどんな高度な要求をされても、それに応えられる商社でありたい。そのためには、単にモノを提供するだけでなく、技術サポートを行い、ベストな商品を企業に提供する」ことを重視している。2. 事業概要大手商社に比べると企業体力で劣る中堅商社は、得意分野に絞り込み専門商社として事業展開するケースが一般的である。同社は設立75年の歴史のなかで、基幹産業からインフラ、そして、炭素繊維やメタンハイドレート等の先端分野まで幅広い業種を対象としてきた。事業ポートフォリオの観点から見ても、同社の事業構造は景気に左右されにくい収益構造である。高い成長性は見込めないが安定受注・収益に寄与する重電、鉄鋼、化学プラント向け基幹産業事業や、特定車種に採用が決まれば、3~5年間安定的に受注できる自動車関連事業(樹脂・塗料等)などを事業展開しており、個々の事業での需給変動や価格変動等の各種ビジネスリスクを吸収して事業の好不調を補い合える、安定的かつバランスの取れた事業運営となっている。またエネルギー市場関連ビジネスに関しては、昨今のESG動向に鑑みて火力発電所向け計装システム事業を縮小し、今後は成長分野である洋上風力発電関連事業へシフトする意図が窺える。多種多彩な事業のなかでも、ねじ関連事業(2022年3月期売上高15,275百万円、売上総利益3,091百万円、売上総利益率20.2%)、自動車分野を中心とした樹脂・塗料事業(同8,801百万円、同1,318百万円、同15.0% )、重電設備事業(同6,131百万円、同1,330百万円、同21.7%)は“中核事業”として、安定事業基盤を支えている。地域的には、世界各国へ現地法人や支店を13拠点配置している。また、2016年3月期に同社の子会社となったヱトーの現地法人、駐在員出張所10拠点を合わせると23拠点のグローバルネットワークとなり、世界各地に散らばるサプライヤー及びカスタマーに適時的確に質の高いビジネス情報を提供できるようになった。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:52
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極東貿易 Research Memo(1):2022年3月期は新会計基準適用。旧会計基準では増収増益
■要約極東貿易<8093>は、グループ企業の力を結集して、技術提案、導入・据付、運用・保守まで一貫した技術サポートができるエンジニアリング商社である。取扱商材は産業設備関連※(製鉄所向け機械設備、石油掘削装置、地震計、航空機用機材など)、産業素材関連(樹脂・塗料、炭素繊維・関連素材、食肉加工機など)、そして、機械部品関連(特注品ねじ、特注品ばね)と多岐にわたる。世界を跨いで事業を展開しており、欧米、中国・台湾・東南アジア、さらにインド・メキシコ等の新興国に拠点を設け、日系企業等のグローバルなモノづくりを支援している。※2022年4月に基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門が発足した。1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準(収益認識に関する会計基準)※を適用したためであり、その結果2022年3月期における売上高については、旧会計基準(取引総額)と比較して20,826百万円の減収となったただし、旧会計基準では増収となった。※「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用、これに伴い、代理人取引と判断される一部の取引について、その売上高計上額をこれまで取引総額であったものから、純額へと変更した。2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。2. 新規事業の洋上風力発電関連事業の拡大に期待新中期経営計画「KBKプラスワン2025」の2期目となる2023年3月期は、掲げた5つの成長分野の中から、新規重点3事業「洋上風力発電関連事業」「自動運転システム関連事業」「バイオプロダクツ」に注力している。特に洋上風力発電関連事業は、2022年1月に新たな子会社である(株)TWD Japanを設立するなど今後拡大が期待される事業であり、2026年3月期売上高20億円(1年前倒しもあり)が見込まれている。3. 資本効率性と株主還元策を両立した巧みな資本戦略株主価値・企業価値向上のためには、営業利益1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性を高めることがカギとなる。新中期経営計画では、2026年3月期の経営目標であるROE8%の達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行し、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、当面3年間は当期純利益をすべて配当金に分配(配当性向100%)するという積極的株主還元策を進める。今回、同社の資本コスト(2023年3月期の株主資本コスト 7.7% 加重平均資本コスト(WACC) 5.7%)が開示された。今後は、この資本コストをベースに投資判断や事業ポートフォリオ戦略(選択と集中など)に活用することが望まれる。4. 今後のM&A戦略と実行に期待同社は過去7件以上M&Aを実行したが、M&Aの後の収益性はすべての案件が社内平均を上回っている。また、中期経営計画で新規ビジネスのために5年間で50億円の投資枠(M&A)を設定している。現状の低収益の状況下において、投資リスクをとってでも次世代の柱事業を育成する覚悟が見られる。最近では2018年4月プラント・メンテナンス(株)(海外プラント向けの機器の調達、点検メンテナンス)を買収したのが最後であった。その間も戦略スタッフが中心となって、数多くのM&A案件の調査と精査を実施してきた。良いM&A案件が実行されることを期待したい。5. サステナビリティ経営の推進現在日本の企業は、サステナビリティ領域(SDGsやESG、社会課題解決など)は避けて通れない状況となっている。同社では、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の事業からは撤退することを決断した。主力事業の1つであった計装システム(年商約60億円ビジネス)も撤退することとなった。同社は岡田社長を中心とした「サステナビリティ委員会」を設置し、全社的活動の旗振りを行っている。また、東京証券取引所(以下、東証)のプライム上場企業として、統合報告書作成を前提としたコーポレートリポートを2022年9月末に発刊し、今後発展的に内容を充実させて統合報告書を作成すると言う。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)も東証プライム上場企業はコーポレートガバナンスコードの開示を要請されている。同社では同年10月にはTCFD全社プロジェクトを立ち上げ、2023年6月末でのTCFD情報開示に備えるとしている。■Key Points・会計基準の変更で2022年3月期売上高数値は大幅に減るも、旧会計基準では増収増益・新規事業の洋上風力発電関連事業は今後の拡大を見込む・全社を巻き込んだサステナビリティ経営の推進(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:51
注目トピックス 日本株
ウィルコホールディングス---障がい者雇用の拡充へ職場環境整備を推進
ウイルコホールディングス<7831>は、9月29日、「令和4年度障害者雇用優良事業所等石川県知事表彰」を受賞したと発表。同社は、2013年から障がい者雇用に関する積極的な取組みをスタートさせており、2015年9月「(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞」の受賞に続き、今回の障害者雇用優良事業所等石川県知事表彰受賞となった。障がい者の雇用と、活躍の幅拡大に向けた職場環境整備への取り組みや、障害特性についての社内研修の実施、外部セミナーの受講の促進などを積極的に進めたことで、社員の障害者雇用への理解が進み、障害者と一緒に働く同僚同士で信頼関係を築く職場風土が醸成につながっているとしている。引き続き、障がい者が働きがいを持てるような工夫や仕組み作りなどの体制整備を進め、多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮し、自分らしく活躍できる社会を実現するための取り組みを続けていくとしている。
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2022/09/30 16:30
注目トピックス 日本株
日経平均寄与度ランキング(大引け)~日経平均は大幅反落、ファーストリテと東エレクが2銘柄で約144円分押し下げ
30日大引け時点の日経平均構成銘柄の騰落数は、値上がり35銘柄、値下がり190銘柄、変わらず0銘柄となった。日経平均は大幅反落。29日の米株式市場でダウ平均は458ドル安と大幅反落。週次新規失業保険申請件数が予想外に減少したことなどを背景に大幅利上げを織り込む形で長期金利が上昇し、これを嫌気して売りが先行。また、複数企業の冴えない決算が景気後退懸念を強め終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-2.84%と3日ぶり大幅反落。欧米株安を受けて日経平均は182.05円安からスタート。そこからはアジア市況の軟調さなども嫌気され、断続的な売りが続き、後場中ごろまでほぼ一本調子で下げ続ける展開。易々と26000円を割り込むと安値では25805.59円円(616.46円安)まで下げた。引けにかけては下げ渋ったが、26000円割れのまま週を終えた。大引けの日経平均は前日比484.84円安の25937.21円となった。東証プライム市場の売買高は15億2029万株、売買代金は3兆8586億円だった。セクターでは輸送用機器、ゴム製品、電気機器を筆頭にほぼ全面安となり、不動産、医薬品のみが上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の85%、対して値上がり銘柄は13%だった。値下がり寄与トップはファーストリテ<9983>となり1銘柄で日経平均を約99円押し下げた。同2位は東エレク<8035>となり、ソフトバンクG<9984>、アドバンテ<6857>、デンソー<6902>、トヨタ自<7203>、ファナック<6954>などがつづいた。一方、値上がり寄与トップはトレンド<4704>となり1銘柄で日経平均を約2円押し上げた。同2位はKDDI<9433>となり、アステラス薬<4503>、エーザイ<4523>、協和キリン<4151>、第一三共<4568>、住友不<8830>などがつづいた。*15:00現在日経平均株価 25937.21(-484.84)値上がり銘柄数 35(寄与度+18.18)値下がり銘柄数 190(寄与度-503.02)変わらず銘柄数 0○値上がり上位銘柄コード 銘柄 直近価格 前日比 寄与度<4704> トレンド 7820 80 +2.79<9433> KDDI 4243 12 +2.51<4503> アステラス薬 1917 12 +2.09<4523> エーザイ 7749 45 +1.57<4151> 協和キリン 3315 45 +1.57<4568> 第一三共 4042 12 +1.25<8830> 住友不 3288 32 +1.12<5713> 住友鉱 4160 55 +0.96<2002> 日清粉G 1468 26 +0.91<8802> 三菱地所 1896.5 14 +0.49<8801> 三井不 2754.5 13 +0.45<5714> DOWA 5190 50 +0.35<8804> 東建物 2058 17 +0.30<6841> 横河電 2275 8 +0.28<8628> 松井証 780 5 +0.17<8267> イオン 2703.5 5 +0.17<1928> 積水ハウス 2401 4.5 +0.16<2269> 明治HD 6430 20 +0.14<9064> ヤマトHD 2177 4 +0.14<5541> 大平洋金 2187 33 +0.12○値下がり上位銘柄コード 銘柄 直近価格 前日比 寄与度<9983> ファーストリテ 76710 -2850 -99.34<8035> 東エレク 35700 -1300 -45.31<9984> ソフトバンクG 4900 -131 -27.40<6857> アドバンテス 6700 -220 -15.34<6902> デンソー 6586 -429 -14.95<7203> トヨタ自 1876 -82.5 -14.38<6954> ファナック 20260 -395 -13.77<6594> 日本電産 8130 -478 -13.33<6367> ダイキン工 22295 -370 -12.90<6971> 京セラ 7300 -183 -12.76<6758> ソニーG 9286 -303 -10.56<2413> エムスリー 4051 -117 -9.79<9766> コナミG 6680 -280 -9.76<6762> TDK 4455 -90 -9.41<4063> 信越化 14330 -265 -9.24<7267> ホンダ 3137 -129 -8.99<7974> 任天堂 5854 -189 -6.59<5108> ブリヂス 4669 -169 -5.89<7269> スズキ 4481 -151 -5.26<8058> 三菱商事 3968 -147 -5.12
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2022/09/30 16:18
注目トピックス 日本株
新興市場銘柄ダイジェスト:プログリットは大幅安、HOUSEIが一時ストップ高
<5126> ポーターズ 3100上場2日目で公開価格(1570円)の2.1倍となる3275円で初値を付けた。会社設立は01年8月29日。人材業界向けクラウドサービス「PORTERS」を提供する。22年12月期の営業利益予想は前期比46.0%増の3.24億円。PORTERSの月額利用料が順調に伸びていることに加え、労務費の減少で売上原価が低下することも増益に寄与すると見込んでいる。第2四半期累計の実績は1.67億円だった。<2998> クリアル 1125 +27大幅に続伸。販売用不動産として東京都大田区の共同住宅2件を取得すると発表している。不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」でクラウドファンディングによる商品提供のパイプラインとすることが目的。取得価格は非開示だが、22年3月期の純資産(10.45億円)の30%相当額以上という。引き渡し日は10月31日の予定で、販売予定時期は24年3月期以降を計画している。<9560> プログリット 770 -129大幅安。上場初日の29日に公開価格(730円)を61.6%上回る1180円で初値を付けたが、同日に1182円まで小幅上昇した後は利益確定売りが続いている。プログリットは英語コーチングサービスなどを手掛けており、22年8月期の営業損益予想は2.90億円の黒字(前期実績は0.45億円の赤字)と好業績を見込んでいる。ただ、10月は新規株式公開(IPO)が相次ぐことから、投資資金を確保するための売りに押されているようだ。<4192> スパイダープラス 727 +20大幅に続伸。伊藤謙自代表取締役社長がYouTubeの株式投資専門チャンネルに出演したと発表している。伊藤社長は22年12月期第2四半期決算を振り返った上で、直近で取得した施工体制作業指示とBIM・建築図面連携は「相当大きな特許」と高く評価、他社の参入障壁が高くなるとした。チェンジ<3962>との協業については「自治体向けの市民参加型ポータルサイトを一緒につくる。これは大きなビジネスになる」などと述べた。<3906> ALBERT 4845 +700ストップ高。コンサルティング大手のアクセンチュア(東京都港区)が株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表している。TOB価格は1株につき9180円(29日終値は4145円)で、TOB期間は30日から11月14日まで。完全子会社化を企図しており、ALBERT株を上場廃止とする前提。ALBERTに在籍するデータサイエンティストを抱えることで、AI実装支援事業での受注効率や採算性向上などを図る。ALBERTは賛同の意見を表明している。<5035> HOUSEI 835 +131一時ストップ高。連結子会社で越境EC事業を手掛ける24ABC(東京都新宿区)が中国向け越境EC事業の個人宛貨物発送に特化した新たなクラウドサービスの提供を始めると発表している。中国個人宛の航空貨物の国際発送時に必要な輸出申告書や中国側の通関書類などをクラウドサービス上で管理・作成でき、中国の大手国際物流プロバイダーの貨物追跡サービスと連携できるという。
<ST>
2022/09/30 15:47
注目トピックス 日本株
クリーク・アンド・リバー社---Digital Entertainment Assetへ追加出資
クリーク・アンド・リバー社<4763>は29日、Digital Entertainment Asset(以下DEA)へ追加出資をすると発表。2021年4月同社はDEAへの出資を発表し、DEAのGameFiプラットフォーム「PlayMining」に対して人気漫画「ブラックジャックによろしく」や「カイジ」の主人公をNFTカード化して提供してきたほか、2023年春リリースに向けてNFTゲーム「HERO SPIRAL」の共同開発を進めてきた。今回の追加出資により、ゲーム開発のコンテンツ提供だけでなく、メタバース関連コンテンツの共同開発やNFT活用領域の拡大、新規事業開発などを通じて、同社の事業ミッションであるクリエイターをはじめとしたプロフェッショナルの生涯価値の向上を目指していくとしている。
<SI>
2022/09/30 15:23
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サカタインクス Research Memo(10):連結配当性向20%前後から30%前後を目安、株主優待制度も実施
■サカタインクス<4633>の株主還元利益配分については、財務体質と経営基盤の強化を図るとともに、株主に対する利益配当を含めた利益還元が経営の重要施策と位置付けている。配当については、安定的な利益還元を行うことを基本方針としつつ、連結配当性向20%前後から30%前後の範囲を目安として実施していきたいとしている。この基本方針に基づいて、2022年12月期の配当予想は2021年12月期と同額の1株当たり年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。予想配当性向は34.0%となる。また株主優待制度は、毎年6月30日及び12月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有期間に応じてQUOカードを贈呈している。■ESG経営・SDGsへの取り組み長期ビジョンで社会課題解決への強化を示し、様々な取り組みを推進長期ビジョンでは、環境制約・社会課題への対応(長期的なサステナビリティ配慮、SDGsに向けた取り組みの重要性の高まり、資源制約・原料価格高騰リスクの高まり、ESG投資の影響力増大)の重要性を認識し、ESG経営やSDGsへの取り組みを強化する方針を掲げている。強みを持つ環境配慮型製品では、環境にやさしい包材が求められているなかで、インキ固形成分中に10%以上の植物由来成分を含有する独自の「ボタニカルインキ」シリーズが、既に様々な紙パッケージに採用されている。さらにボタニカル度(植物由来成分含有率)の向上に向けて研究開発を推進する方針だ。食品ロス問題では、食品の保存期間の長期化に貢献する製品として、酸化を防止するガスバリア剤の展開に取り組んでいる。また、食料と競合しない非可食バイオマス原料を用いた新規素材の開発にも取り組んでいる。なお、2019年1月には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用したESG投資のための株式指数「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」の構成銘柄に選定された。2022年8月にはグローバルインデックスプロバイダーであるFTSE Russelの「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定された。本インデックスはGPIFのESG投資指数の1つとして採用されており、GPIFが採用する国内株式を対象としたESG指数のうち「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」に続いての採用となる。また経済産業省が2019年1月に設立したクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンスにも参画している。2020年11月には使用済みプラスチック再資源化技術の開発・実用化を推進する共同出資会社(株)アールプラスジャパン(2020年6月事業開始)に資本参加した。2021年3月には(株)三菱UFJ銀行とESG評価型の無担保私募債の発行に関する引受契約(発行額10億円)を締結して「ESG経営支援私募債」を発行した。2021年6月には食品パッケージのサプライチェーンパートナー企業であるHAVI The HAVI Group,LP(以下、HAVI)と持続可能な社会の実現に向けた取り組みを世界で強化することで合意した。ボタニカルインキシリーズの「Eco Plate」と米国で展開する「INXhrc(TM)インキ」がHAVIのサプライチェーンにおける環境に配慮した製品に指定された。サステナビリティ活動については、環境・社会・ガバナンスにおいてそれぞれの課題や目標を掲げ、これらの目標達成に向けて複数の変革プロジェクトを立ち上げて取り組んでいる。今後の進捗についてはWebサイトや報告書などを通じて行うとともに、ステークホルダーとの対話の機会を増やして経営へのフィードバックを行う方針としている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<YM>
2022/09/30 15:10
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サカタインクス Research Memo(9):中期経営計画2023は長期ビジョン達成に向けた基盤構築ステージ
■サカタインクス<4633>の成長戦略3. 中期経営計画2023(CCC-I)中期経営計画2023(CCC-I)では、長期ビジョン「SAKATA INX VISION 2030」の達成に向けた基盤構築のステージ(第1ステージ)と位置付けて、目標値に2023年12月期売上高1,950億円、営業利益115億円、経常利益130億円、ROE10%以上を掲げている。セグメント別の計画は、印刷インキ・機材(日本)が売上高518億円で営業利益18億円、印刷インキ(アジア)が売上高450億円で営業利益29億円、印刷インキ(米州)が売上高535億円で営業利益30億円、印刷インキ(欧州)が売上高175億円で営業利益2億円、機能性材料事業が売上高172億円で営業利益23億円、その他が売上高171億円で営業利益6億円としている。なお2022年12月期の連結業績予想では、売上高は2023年12月期目標を前倒しで達成する見込みとなったが、原材料価格や人件費・物流費・ユーティリティコストの高騰の影響により、営業利益と経常利益は目標値に対してややマイナス乖離の形となっている。この点について同社は、現時点で中期経営計画の見直しを行っていない。投資計画は3年累計で総額300億円(設備投資150億円、成長を加速させるための戦略的投資枠150億円)としている。設備投資の地域別内訳は日本49億円、アジア56億円、米州38億円、欧州7億円の計画である。そして2021年12月期の実績は日本22億円、アジア30億円、米州15億円、欧州1億円で、2022年12月期の計画は日本20億円、アジア37億円、米州18億円、欧州5億円としている。主要な設備投資計画は以下のとおりとなっている。主なプロジェクトとして、日本では大阪工場リニューアルや基幹システム更新、アジアでは中国・上海の工場第2期工事、中国・広東省茂名のオフセットインキ第2工場建設、インドネシア及びベトナムのパッケージ用インキ設備増強、フィリピンのパッケージ用インキ新工場建設、米州では米国オハイオ州のパッケージ用インキ設備増強、米国ニューヨーク州の缶用インキ設備増強、ブラジルのパッケージ用インキ新工場建設、欧州ではスペインのUVインキ設備増強などを推進している。原材料価格高騰などの影響が落ち着くと、新たな成長ステージに向かう可能性4. 中長期的に成長ステージへ地球環境問題やSDGsへの関心の高まりを背景として、印刷インキ市場においても世界的に環境配慮型製品へシフトする流れを強めている。このため環境配慮型製品の市場拡大・開拓余地は大きく、環境配慮型製品の開発力・品ぞろえを強みとして高い市場シェアを獲得している同社にとって事業環境は良好と言えるだろう。このような市場動向に対応して同社は、環境配慮型製品の開発・市場投入や新規領域への展開を一段と積極推進する方針としている。2022年12月期は原材料価格や人件費・物流費・ユーティリティコストの高騰の影響を受ける形になったが、この影響が落ち着けば中長期的に新たな成長ステージに向かう可能性が高いと弊社は見ている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:09
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サカタインクス Research Memo(8):長期ビジョン達成に向けて新事業領域、サステナブル経営、DXを推進
■成長戦略1. ビジネステーマサカタインクス<4633>は企業理念として、ビジネステーマに「ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造」、存在意義に「人々の暮らしを快適にする情報文化の創造」を掲げ、2021年12月期に長期ビジョン「SAKATA INX VISION 2030」及び中期経営計画2023(CCC-I)を策定した。そして「あなたと、つくる、価値ある、あした」をキャッチフレーズに、「新たな領域への挑戦によって“イノベーション”を生み出し、“地球”にやさしい技術で、“人生”を快適かつ豊かに彩り、世界中に笑顔があふれる未来を創る企業」を目指していくとしている。2. 長期ビジョン「SAKATA INX VISION 2030」事業環境変化の認識としては、国内・海外での市場・競争環境の変化(デジタル化によるインキ需要の低迷、新興国市場における競争激化、脱プラスチック等環境対応ニーズの高まり)、デジタル化によるバリューチェーンの変化(デジタル媒体の大幅な増加、印刷の多様化・カスタマイズ化)、環境制約・社会課題への対応(長期的なサステナビリティ配慮、SDGsに向けた取り組みの重要性の高まり、資源制約・原料価格高騰リスクの高まり、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の影響力増大)を掲げている。こうした事業環境変化に対応するため、長期ビジョン「SAKATA INX VISION 2030」では、戦略の方向性を「地球環境と地域社会を重視したESG・サステナビリティの取り組み強化」「印刷インキ・機能性材料事業の拡大」「新しい事業領域への挑戦」として、3つの変革プロジェクト「グローバル連結経営のさらなる強化」「ステークホルダーとの関係強化」「人材育成の強化・組織風土の改革」も立ち上げた。こうしたDXの推進及び資本コストを意識した経営に取り組む方針だ。また目指す姿として2030年12月期の売上高3,000億円規模、営業利益率8%を掲げている。印刷インキ事業では、主力のパッケージ印刷分野を中心に、環境経営の推進、バリューチェーン全体の強化、グローバルパートナーとの関係強化、高付加価値製品の開発と展開、国・事業を跨いだ最適経営の強化、成長市場・新規市場への経営資源の投入に取り組む。機能性材料事業では、社会トレンドを捉えた高付加価値製品のグローバル展開、グローバルでのさらなる連携強化、各市場での販売・収益力強化、ブランド力の向上に取り組む。新規事業では、コアコンピタンスの活用によって社会的課題に対応することを目指し、戦略キーワードを「安全安心、便利快適、健康維持、低炭素社会、サステナビリティ」とした。そして4つのケミカル分野(環境・バイオケミカル、エレクトロニクスケミカル、エナジーケミカル、オプトケミカル)を注力分野としている。環境・バイオケミカル分野ではボタニカル材料、環境にやさしい新しい印刷乾燥方式、小ロット対応デジタル印刷方式、モノマテリアル化やリサイクル推進のための材料などの開発・事業化を目指す。エレクトロニクスケミカル分野では導電/絶縁性材料・接着剤、耐基盤保護剤、新センシング技術などの開発・事業化を目指す。エナジーケミカル分野では熱増感電池、ペロブスカイトPV、二次電池用新素材、燃焼効率を上げる新たな技術などの開発・事業化を目指す。オプトケミカルでは高屈折/低屈折光学材料、次世代表示光学材料などの開発・事業化を目指し、企業・大学との連携も強化してオープンイノベーションを推進する。新規事業への取り組みの事例として、環境・バイオケミカル分野では社会に貢献するサステナブルな製品開発を目指して、食料と競合しない非可食バイオマス原料を用いた新規素材の開発に取り組んでいる。またエレクトロニクスケミカル分野では、持分法適用関連会社のシークスとの2社コラボレーションにより、プリンテッドエレクトロニクス素材・プロセスの開発を推進している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:08
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サカタインクス Research Memo(7):2022年12月期通期の利益予想を下方修正も、上期がボトムとなる可能性
■今後の見通しサカタインクス<4633>の2022年12月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比21.8%増の221,000百万円、営業利益が同32.6%減の5,000百万円、経常利益が同31.8%減の5,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.7%減の4,700百万円としている。2022年8月10日付で売上高を上方修正、各利益を下方修正した※。上期と同様に、インキ販売数量の増加、機能性材料の拡販、販売価格の改定、為替の円安効果などで大幅増収を予想しているものの、想定以上の原材料価格高騰や米州及び欧州における人件費・物流費・ユーティリティコストの上昇の影響で大幅減益予想としている。想定為替レートは下期が1USドル=138.00円、通期が1USドル=130.00円(2021年12月期通期は1USドル=109.80円)としている。また、修正後の通期セグメント別の売上高と営業利益の計画は以下のとおりである。※前回予想(2022年5月13日付)で、東洋インキSCホールディングスとの資本提携解消に伴って持分法投資利益が減少するため経常利益を100百万円下方修正、投資有価証券売却益を計上するため親会社株主に帰属する当期純利益を900百万円上方修正した。これにより売上高198,000百万円、営業利益7,000百万円、経常利益8,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,600百万円であった前回予想より、売上高を23,000百万円上方修正し、営業利益を2,000百万円、経常利益を2,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を1,900百万円それぞれ下方修正した。コスト上昇と販売価格改定の営業利益への影響額については、上期が原材料コスト上昇で86億円減、販売価格改定で65億円増とするが、下期(想定)は原材料コスト上昇により59億円減、販売価格改定により68億円増、通期(想定)は原材料コスト上昇により145億円減、販売価格改定により132億円増としている。下期は原材料コスト上昇に対する販売価格改定のマイナスのスプレッドが縮小する見込みとしている。半期別の売上高と営業利益を見ると、上期は売上高が前年同期比16.8%増の103,533百万円で営業利益が同59.8%減の2,028百万円、下期予想は売上高が同26.6%増の117,467百万円で営業利益が同25.5%増の2,972百万円としている。上期は原材料価格高騰や米州及び欧州における人件費・物流費・ユーティリティコストの上昇に販売価格改定が追いつかなかったが、下期は原材料コスト上昇に対する販売価格改定のマイナスのスプレッドが縮小して前年同期比、上期比ともに増益に転じる見込みとしている。通期ベースでは減益予想だが、下期は販売数量の増加や販売価格改定の進展によってコスト高騰の影響が和らぎ、営業利益は上期がボトムとなって回復に向かう可能性があると弊社では見ている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:07
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サカタインクス Research Memo(6):財務の健全性は良好
■サカタインクス<4633>の業績動向3. 財務の状況2022年12月期第2四半期末の資産合計は前期末比16,231百万円増加して183,130百万円となった。売上増加や為替換算の影響で、受取手形及び売掛金が5,600百万円増加、商品及び製品が3,542百万円増加、原材料及び貯蔵品が4,256百万円増加、無形固定資産が1,039百万円増加した。負債合計は同13,462百万円増加して87,896百万円となった。借入金(長短合計)が11,027百万円増加して27,051百万円となった。純資産は同2,768百万円増加して95,233百万円となった。利益剰余金が6,642百万円減少したが、為替換算調整勘定が9,766百万円増加した。この結果、自己資本比率は48.4%で同3.4ポイント低下した。自己株式取得や棚卸資産の増加に伴う借入金の増加、自己資本比率の低下、営業キャッシュ・フローの減少により財務内容が悪化した形だが、これは一時的要因によるものであり、特に懸念材料となる水準ではなく財務の健全性は引き続き良好であると弊社は見ている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<YM>
2022/09/30 15:06
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サカタインクス Research Memo(5):2022年12月期第2四半期は原材料価格高騰で大幅減益も、全事業で増収
■業績動向1. 2022年12月期第2四半期の連結業績サカタインクス<4633>の2022年12月期第2四半期の連結業績(収益認識会計基準適用も、損益への影響は軽微)は、売上高が前年同期比16.8%増の103,533百万円、営業利益が同59.8%減の2,028百万円、経常利益が同57.2%減の2,503百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同40.6%減の2,400百万円となった。売上面では、インキ販売数量の増加、機能性材料の拡販、販売価格の改定、為替の円安効果などにより2ケタ増収となった。利益面では、想定以上の原材料価格高騰や米州及び欧州における人件費・物流費・ユーティリティコストの上昇に販売価格改定が追いつかず、各利益は大幅減益となった。売上総利益は前年同期比3.4%減となり、売上総利益率は18.4%となり同3.9ポイント低下した。販管費は同16.0%増加したが、販管費比率は16.5%となり同0.1ポイント低下した。営業外収益では持分法投資利益が211百万円減少し、東洋インキSCホールディングスとの資本提携解消に伴い、特別利益として投資有価証券売却益1,442百万円を計上した。売上高及び営業利益の要因別増減額は以下のとおりである。営業利益(前年同期比30.2億円減益)の要因別増減を見ると、増益要因はインキ単価で64.7億円、インキ数量で10.2億円、機材で0.6億円、為替で1.6億円、減益要因はインキコストで104.3億円、機能性材料で1.0億円、その他で0.4億円、調整額で1.6億円となった。販売価格改定を進めたが、コスト上昇に追いつかなかった。なお、期中平均為替レートは1USドル=122.89円(前年同期は1USドル=107.69円)で、為替換算影響排除後ベースでは売上高は8.1%増収、営業利益が62.9%減益、経常利益が59.5%減益、親会社株主に帰属する四半期純利益が42.5%減益となった。また、前回予想(2022年5月13日付で親会社株主に帰属する四半期純利益を1,000百万円上方修正して、売上高96,800百万円、営業利益2,700百万円、経常利益3,350百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益3,200百万円)との比較で見れば、売上高は7.0%上回ったものの、営業利益は24.9%、経常利益は25.3%、親会社株主に帰属する四半期純利益は25.0%それぞれ下回った。四半期別に見ると、第1四半期は売上高が49,008百万円で営業利益が1,495百万円、第2四半期は売上高が54,525百万円で営業利益が533百万円となった。経済活動活発化に伴う需要増と拡販、価格改定に加えて、為替の円安進行(第1四半期は1USドル=116.20円、第2四半期は1USドル=129.57円)も寄与して売上高は増加基調だが、原材料価格や諸経費(物流費・人件費など)のさらなる上昇により、営業利益は第2四半期に大きく落ち込む形となった。2. セグメント別動向(1) 印刷インキ・機材(日本)印刷インキ・機材(日本)は売上高が前年同期比2.0%増の24,918百万円、営業利益が80.0%減の164百万円となった。売上面は、広告需要低迷やデジタル化進展などで新聞・オフセットインキが減少し、印刷製版用材料・機械販売も低調となったが、内食需要拡大やコンビニ需要回復などで軟包材用グラビアインキが増加、加工食品や青果物の需要拡大で段ボール用フレキソインキが増加、紙袋の需要回復で紙袋用フレキソインキが増加し、販売価格改定も寄与して増収となった。利益面は、新聞・オフセットインキの減少や原材料価格高騰の影響で減益となった。(2) 印刷インキ(アジア)印刷インキ(アジア)は売上高が前年同期比22.6%増の22,241百万円、営業利益が同58.8%減の502百万円となった。売上面は、中国が上海ロックダウンの影響で減少したが、インドネシアやベトナムなどで主力のパッケージ関連グラビアインキの拡販が進み、インドにおける印刷情報関連もコロナ禍による落ち込みからの回復が続いた。全体として販売数量増加、販売価格改定効果、円安効果などで大幅増収となった。利益面は、原材料価格高騰に販売価格改定が追いつかず大幅減益となった。(3) 印刷インキ(米州)印刷インキ(米州)は売上高が前年同期比34.7%増の35,490百万円、営業利益が同59.9%減の659百万円となった。売上面は、旺盛な需要も背景として、環境配慮型製品を中心とするパッケージ関連(フィルム用フレキソ・グラビアインキ、紙器用途UVオフセットインキ)や、環境負荷軽減などを背景とするアルミ缶需要の高まりで缶用メタルインキの拡販が進展した。全体として販売数量増加、販売価格改定効果、円安効果などで大幅増収となった。利益面は、原材料価格高騰、さらに人件費・物流費の上昇に販売価格改定が追いつかず大幅減益となった。(4) 印刷インキ(欧州)印刷インキ(欧州)は売上高が前年同期比17.1%増の9,372百万円、営業利益が347百万円の損失(前年同期は47百万円の利益)となった。売上面は、環境配慮型製品を中心とするパッケージ関連(フィルム用フレキソ・グラビアインキ、紙器用途UVオフセットインキ)や、環境負荷軽減などを背景とするアルミ缶需要の高まりで缶用メタルインキの拡販が進展した。全体として販売数量増加、販売価格改定効果、円安効果などにより大幅増収となった。利益面は、原材料価格高騰、さらに人件費・物流費・ユーティリティコストの上昇に販売価格改定が追いつかず大幅減益となった。(5) 機能性材料機能性材料は売上高が15.0%増の前年同期比7,768百万円、営業利益が同8.6%減の847百万円となった。カラーフィルター用顔料分散液がパネルディスプレイの需要減の影響で減少したが、コロナ禍からの広告需要・オフィス需要の回復でインクジェットインキやトナーの販売数量が増加した。トナーは欧米での拡販も寄与した。さらに販売価格改定効果や円安効果も寄与して大幅増収となった。利益面は、原材料価格高騰の影響で減益となった。ただし高付加価値製品の拡販効果などで、減益幅が他のセグメントに比べて小幅にとどまった。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:05
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サカタインクス Research Memo(4):原材料価格高騰に対して価格改定やグループシナジーの取り組みを強化
■サカタインクス<4633>の事業概要4. リスク要因と対策収益に影響を与える主要なリスク要因としては、原材料価格の高騰、景気低迷やデジタル化による需要減少、環境制約・社会課題への対応、競合激化、グローバル展開に伴う為替換算影響などがある。特に原材料価格の高騰に関しては、原材料価格の高騰時期と販売価格への反映のタイムラグが業績に影響を及ぼす可能性がある。主要原材料の顔料は世界の生産の多くを占める中国の影響を受ける。また、樹脂や溶剤は原油・ナフサ価格の影響を受ける。原材料価格の動向を見ると、顔料の価格に関しては2017年以降、中国における環境規制強化やエネルギー政策転換等の影響で中国メーカーの供給量が低下したため、高止まりの状況が続いている。石油由来材料の価格に関しては、2020年にはコロナ禍の影響で原油価格が下落したため一時的に下落傾向となったが、その後はコロナ禍の影響緩和、さらにロシアへの経済制裁に伴って原油価格が高騰していることから、今後の動向に注意が必要となる。なお原材料価格の影響は、地域によってタイムラグが発生する傾向(例えば、日本は他の地域に比べて半年程度遅れる傾向)がある。このような原材料価格変動に対して、販売価格改定による適正化を進めるとともに、グループシナジーによる原材料コストの削減(原材料のグローバル調達など)や生産性向上によって、原材料価格上昇の影響を軽減する取り組みを強化している。環境制約・社会課題への対応に関しては、地球環境問題への取り組み強化の流れを背景に主要国が環境規制の動きを強めているが、それは環境配慮型製品の市場拡大余地が大きいことを意味する。環境配慮型製品の開発力・品ぞろえを強みとして高い市場シェアを獲得している同社にとって事業環境は良好と弊社では評価している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:04
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サカタインクス Research Memo(3):パッケージ印刷用インキが主力の印刷インキ事業、及び機能性材料を展開
■事業概要1. 事業内容サカタインクス<4633>は、パッケージ印刷用インキ及び情報メディア向けインキを製造・販売する印刷インキ事業、印刷関連機材事業、機能性材料事業、その他事業を展開している。印刷インキ事業は、日本・アジア・米州及び欧州の各市場向けのパッケージ印刷用インキ(段ボール・紙袋・紙器など紙パッケージ印刷用インキ、食品・化粧品・トイレタリー製品・日用品などフィルムパッケージ印刷用インキ、飲料缶など金属缶印刷用インキなど)を主力としている。また、情報メディア向けインキ(新聞印刷用の新聞インキ、書籍・雑誌・カタログ・ポスター・チラシ・伝票など各種商業印刷用のオフセットインキ)も展開しているが、デジタル化の進展による需要減少により、売上構成比が低下して全体の業績に与える影響が小さくなりつつある。機能性材料事業は、日本・アジア・米州及び欧州の各市場向けに、デジタル印刷材料(大型出力物やテキスタイルなどに使用される産業用プリンタ向けインクジェットインキ、レーザープリンターや複合機に使用されるトナー)や、液晶パネルの画像表示材料(カラーフィルター用顔料分散液)、及び機能性コーティング剤を製造・販売している。印刷関連機材事業は、主として日本市場向けに印刷製版用材料や印刷関連機器を仕入・販売している。その他事業は主として日本市場向けに、化成品等販売事業(阪田産業(株))、ディスプレイ関連事業(サカタラボステーション(株))などを行っている。グローバル展開で米州とアジアが利益柱2. セグメント別構成比セグメント区分は印刷インキ・機材(日本)、印刷インキ(アジア)、印刷インキ(米州)、印刷インキ(欧州)、機能性材料、その他としている。営業利益構成比(連結調整前)で見ると、早くからグローバル展開を進めてきた結果、市場開拓余地の大きいアジアと米州が早い時期から合計で5割以上を占めて利益柱となっている。なお、2022年12月期第2四半期累計の営業利益構成比は、印刷インキ・機材(日本)が8.1%、印刷インキ(アジア)が24.9%、印刷インキ(米州)が32.7%、印刷インキ(欧州)が-17.2%、機能性材料が42.1%、その他が9.3%となった。2022年12月期第2四半期累計は全般的に原材料価格高騰の影響を受けて減益となった。日本では新聞・オフセットインキ減少、アジアでは中国・上海のロックダウン影響、米州では物流費・人件費上昇、欧州ではユーティリティコスト上昇の影響も受けた。機能性材料も原材料価格高騰の影響を受けたが、広告需要やオフィス需要のコロナ禍影響からの回復や高付加価値製品の拡販効果で、減益幅が他のセグメントに比べて小幅にとどまった。環境配慮型製品に強み、高い市場シェア3. 特徴・強み1896年の創業以来120年以上の歴史のなかで培われた環境配慮型高機能・高付加価値製品の開発力・品ぞろえ、及び製品の高い信頼性・品質力を強みとしている。環境配慮型高機能・高付加価値製品の品ぞろえは豊富である。植物由来成分をインキ固形分中に10%以上含有するボタニカルインキをはじめ、鉱物油を各種植物油(大豆油など)に置き換えた植物油インキ、構成成分中の高沸点石油系溶剤を1%未満に抑えたノンVOCインキ、有機溶剤のトルエン及びMEK(メチルエチルケトン)を使用しないノントルエン・ノンMEKインキ、水性でありながら高い性能を有する水性フレキソインキなどがある。特に、植物由来成分を含む同社オリジナルブランドの「ボタニカルインキ」は2016年末から展開を始め、大手コンビニエンスストアや食品メーカーのパッケージに採用されている。さらに「ボタニカルインキ」シリーズとして、紙袋用途向け水性フレキソインキ「エコプラータ」や、紙器カートン用途向け水性グラビアインキ「エコピーノ」などラインナップ拡充を進めている。なお「ボタニカルインキ」が使用された印刷物には、同社が商標登録した独自のロゴマークを印刷することができる。情報メディア向けインキにおいては環境配慮型製品の比率が95%以上に達している。新聞インキでは高発色性インキ「ニュースウェブマスター エコピュア」(エコマーク認定)や、カラー紙面の高品質化に対応して色に関する管理を行うカラーマネジメントシステムなどが、新聞社からの大きな信頼を得ている。オフセットインキについても、業界に先駆けて環境配慮型製品の市場導入を図り、近年普及が進む高感度UV印刷機に対応した紫外線硬化型UVインキ「ドリームキュア」シリーズの展開を進めている。国内・海外とも、ミドルレンジ以上の環境配慮型高機能・高付加価値製品を主力として展開している。そして環境配慮型製品によって高い市場シェアを獲得している。パッケージ印刷用インキ分野における市場シェア(同社推定)は、業界に先駆けて開発を進めた段ボール用途のフレキソインキが国内1位、食品・日用品などのフィルムパッケージ用途のグラビアインキが国内2位、飲料缶など缶用インキが世界1位である。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:03
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サカタインクス Research Memo(2):環境配慮型製品を強みとして世界を跨ぐ大手印刷インキメーカー
■会社概要1. 会社概要サカタインクス<4633>は1896年創業以来126年の歴史を誇り、環境配慮型製品に強みを持つ世界3位の大手印刷インキメーカーである。ビジネステーマに「ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造」を掲げ、新事業領域への展開で新たな成長ステージを迎えている。本社所在地は大阪本社(大阪市西区)及び東京本社(東京都文京区)で、国内生産拠点は東京工場(千葉県野田市)、大阪工場(兵庫県伊丹市)、滋賀工場(滋賀県米原市)、羽生工場(埼玉県羽生市)に展開している。海外は1960年に海外駐在所をフィリピン・マニラ市に開設したのを皮切りに、以降は海外主要拠点に現地法人を設立している。グループ(2022年12月期第2四半期末時点)は同社、連結子会社26社、持分法適用関連会社4社で構成され、日本・アジア・米州・欧州の20を超える国・地域に印刷用インキ製造・販売拠点を展開している。また1992年に同社から分離独立したシークス<7613>は持分法適用関連会社である。2022年12月期第2四半期末時点の資産合計は183,130百万円、純資産は95,233百万円、資本金は7,472百万円、自己資本比率は48.4%、発行済株式総数は54,172,361株(自己株式4,143,284株含む)である。なお資本業務提携して同社の第1位株主となっていた東洋インキSCホールディングス<4634>との資本提携を2022年5月に解消した。資本提携解消に伴って東洋インキSCホールディングスが保有していた同社株式8,428,800株を2022年5月16日に自己株式として取得した後、2022年5月31日付で消却した。また同時に、同社が保有していた東洋インキSCホールディングス株式2,335,200株を売却した。資本提携を解消したが、物流分野や製造委託・緊急時の生産補完などの業務提携は継続する。2. 沿革同社は1896年、個人商店の阪田インキ製造所として大阪市で創業し、新聞インキの製造・販売を開始した。1920年に株式会社組織に改組し、1961年に大阪証券取引所市場第2部に上場、1962年に同市場第1部に指定替えした。1987年には商号をサカタインクス株式会社に改称し、1988年に東京証券取引所市場第1部に上場した。その後、M&Aも活用してアジア・米州・欧州へのグローバル展開を加速している。なお2022年4月の東京証券取引所の市場再編に伴って東証プライム市場に移行・上場した。3. TPM活動同社が20年以上継続して取り組んでいるTPM(Total Productive Maintenance=全員参加の生産保全)活動では、2017年1月に国内主要4工場(東京、大阪、滋賀、羽生)においてTPMアドバンスト特別賞を受賞した。TPMとは、(公社)日本プラントメンテナンス協会によって提唱されたもので、同社の革新的生産方式の構築と海外への展開などが高く評価された。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:02
注目トピックス 日本株
サカタインクス Research Memo(1):2022年12月期第2四半期は2ケタ増収も原材料価格高騰の影響で減益
■要約サカタインクス<4633>は1896年創業以来126年の歴史を誇り、環境配慮型製品に強みを持つ世界3位の大手印刷インキメーカーである。ビジネステーマに「ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造」を掲げ、新規領域への展開で新たな成長ステージを迎えている。同社は、グローバル展開と環境配慮型高機能・高付加価値製品を特徴・強みとしている。積極的にグローバル展開を進め、現在は日本・アジア・米州・欧州等の20を超える国・地域に製造・販売拠点を展開している。そして市場開拓余地の大きい米州及びアジアが利益柱となっている。環境配慮型高機能・高付加価値製品では、植物由来成分を含む同社オリジナルブランド「ボタニカルインキ」シリーズなど、創業以来126年の歴史のなかで培われた開発力・品ぞろえ、及び製品の高い信頼性・品質力を強みとして高い市場シェアを獲得している。環境配慮型製品は市場拡大余地が大きく、環境配慮型製品に強みを持つ同社にとって事業環境は良好と弊社では考えている。1. 2022年12月期第2四半期の業績概要2022年12月期第2四半期の連結業績(収益認識会計基準適用も、損益への影響は軽微)は、売上高が前年同期比16.8%増の103,533百万円、営業利益が同59.8%減の2,028百万円、経常利益が同57.2%減の2,503百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同40.6%減の2,400百万円となった。売上面では、インキ販売数量の増加、機能性材料の拡販、販売価格の改定、為替の円安効果などにより2ケタ増収となった。利益面では、想定以上の原材料価格高騰や米州及び欧州における人件費・物流費・ユーティリティコストの上昇に販売価格改定が追いつかず、各利益は大幅減益となった。なお東洋インキSCホールディングスとの資本提携解消に伴い、特別利益として投資有価証券売却益1,442百万円を計上した。2. 2022年12月期通期の連結業績予想2022年12月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比21.8%増の221,000百万円、営業利益が同32.6%減の5,000百万円、経常利益が同31.8%減の5,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.7%減の4,700百万円としている。2022年8月10日付で売上高を上方修正、各利益を下方修正した。上期と同様に、インキ販売数量の増加、機能性材料の拡販、販売価格の改定、為替の円安効果などで大幅増収を予想しているものの、想定以上の原材料価格高騰や米州及び欧州における人件費・物流費・ユーティリティコストの上昇の影響により大幅減益予想としている。半期別の売上高と営業利益を見ると、上期は売上高が前年同期比16.8%増の103,533百万円で営業利益が同59.8%減の2,028百万円、下期予想は売上高が同26.6%増の117,467百万円で営業利益が同25.5%増の2,972百万円となる。下期は原材料コスト上昇に対する販売価格改定のマイナスのスプレッドが縮小して前年同期比、上期比とも増益に転じる見込みとしている。通期ベースでは減益予想だが、下期は販売価格改定の進展によってコスト高騰の影響が和らぎ、営業利益は上期がボトムとなって回復に向かう可能性があると弊社では見ている。3. 長期ビジョン及び中期経営計画長期ビジョン「SAKATA INX VISION 2030」では、戦略の方向性を「地球環境と地域社会を重視したESG・サステナビリティの取り組み強化」「印刷インキ・機能性材料事業の拡大」「新しい事業領域への挑戦」としている。そして中期経営計画2023 CCC-Iでは、長期ビジョン達成に向けた基盤構築のステージ(第1ステージ)と位置付けて、4つのケミカル分野(環境・バイオケミカル、エレクトロニクスケミカル、エナジーケミカル、オプトケミカル)を注力分野とする新規領域の事業化にも取り組んでいる。地球環境問題やSDGsへの関心の高まりを背景として、印刷インキ市場においても世界的に環境配慮型製品へシフトする流れを強めているため、同社が強みを持つ環境配慮型製品の市場拡大・開拓余地は大きい。このような市場動向に対応して同社は、環境配慮型製品の開発・市場投入や新規領域への展開を一段と積極推進する方針としている。2022年12月期は原材料価格や人件費・物流費・ユーティリティコストの高騰の影響を受ける形になったが、この影響が落ち着けば中長期的に新たな成長ステージに向かう可能性が高いと弊社では考えている。■Key Points・パッケージ印刷用インキと機能性材料が主力の大手印刷インキメーカー・グローバル展開と環境配慮型製品が特徴・強み・2022年12月期は原材料価格高騰の影響で減益予想だが上期がボトムの可能性・環境配慮型製品の強みや新規領域への積極展開で新たな成長ステージへ(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 15:01
注目トピックス 日本株
かっこ---SBIネオファイナンシャルサービシーズと業務提携
かっこ<4166>は29日、SBIネオファイナンシャルサービシーズ(以下SBINFS)と業務提携すると発表。SBINFSが提供する中小企業のDX化を推進する「SBI DXデータベース」に参画する。コロナ禍の影響から店舗販売からネット通販へのシフトが進み、2020年の通販販売売上は調査開始以来初となる前年比20%以上の伸び率となった。その一方で、クレジットカード不正や悪質転売などのネット通販における不正被害も急増しており、経済産業省から安全・安心なクレジットカード決済環境の進展を目指す「クレジット・セキュリティ対策ビジョン2025」が発表されるなど、不正注文対策への社会的要請はますます高まっている。今回、同社はSBINFSとの業務提携により、中小企業のDX化を推進する「SBI DXデータベース」を通じて、不正注文検知サービス「O-PLUX」及び評判検索ツール「うわさ発見」の提供を開始した。全国の地域企業が不正対策を行える環境を整備し、中小企業のDXの推進とともに安全なネット通販のインフラ作りに貢献するとしている。
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2022/09/30 14:59
注目トピックス 日本株
GMOアドパートナーズ---「GMOメタバース for Shop」をリリース
GMOアドパートナーズ<4784>は29日、連結会社のGMO NIKKOが、メタバース関連ビジネスをサポートする「GMOメタバース ラボ」において、「GMOメタバース for Shop」を提供開始したと発表。「GMOメタバース for Shop」は「GMOメタバース ラボ」における、実店舗/ECサイト向けやイベント施設を対象とした3D空間を企画、デザイン、開発、運用、保守をトータルで提供するバーチャル店舗出店サポート・運営サービス。同サービスを活用することで、距離や時間の制約があり直接店舗に行けない顧客や、オンラインにのみ展開するサービスの顧客を、3D空間上の店舗に集客・おもてなしをすることが可能となる。昨今、国内外においてメタバース空間上での商取引やNFTの活用が加速しており、次世代の顧客接点や販売手法としてメタバース・NFT活用に注目が集まっている。メタバース全世界市場は2028年には98兆円規模になるとの予測が出ており、今後のさらなる普及が見込まれている。
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2022/09/30 14:57
注目トピックス 日本株
出来高変化率ランキング(13時台)~エーザイ、ミンカブなどがランクイン
※出来高変化率ランキングでは、直近5日平均の出来高と配信当日の出来高を比較することで、物色の傾向など市場参加者の関心を知ることができます。■出来高変化率上位 [9月30日 13:36 現在](直近5日平均出来高比較)コード⇒銘柄⇒出来高⇒5日平均出来高⇒出来高変化比率⇒株価変化率<4523> エーザイ 12525800 647120 1835.62% -0.08%<5035> HOUSEI 4334800 496740 772.65% 18.61%<4436> ミンカブ 1741500 212960 717.76% -5.04%<4446> Link−U 451500 56920 693.22% 0.88%<8079> 正栄食 227900 39420 478.13% -0.95%<3050> DCM 2376800 457440 419.59% 10.5%<2910> ロックフィルド 356100 84940 319.24% -1.69%<9218> メンタルヘルスT 793500 198860 299.02% 12.75%<7421> カッパクリエ 1228100 308720 297.80% -3.49%<6556> ウェルビー 467600 154240 203.16% 5.18%<8699>* HSHD 144600 48360 199.01% -1.07%<4442> バルテス 144600 50220 187.93% 4.3%<9281> タカラレーベン 19008 7621.6 149.40% 0%<7610> テイツー 3530300 1425440 147.66% 1.77%<3739> コムシード 384000 156480 145.40% -6.9%<3186> ネクステージ 877800 376060 133.42% -6.17%<7711> 助川電気 293200 129040 127.22% 2.75%<7379> サーキュ 36500 16080 126.99% 5.67%<3103>* ユニチカ 2319500 1067220 117.34% 1.72%<9271>* 和心 120500 57900 108.12% 16.95%<1929>* 日特建 225800 111080 103.28% -6.65%<1398> SMAM 100020 53890 85.60% -1.36%<7367>* セルム 213700 116580 83.31% 5.56%<6273>* SMC 609400 334300 82.29% -2.86%<3733>* ソフトウェアS 20600 11920 72.82% 4.63%<2760> 東エレデバ 86400 51640 67.31% -0.38%<3475> グッドコムA 131800 79620 65.54% 3.83%<2792> ハニーズHD 140300 85760 63.60% -4.11%(*)はランキングに新規で入ってきた銘柄20日移動平均売買代金が5000万円以下のものは除外
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2022/09/30 14:54
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三洋化成工業---富士フイルム三洋化成ヘルスケアが10月より体外診断用医薬品の製造を開始
三洋化成工業<4471>は29日、富士フイルムと設立した富士フイルム三洋化成ヘルスケアにて、10月3日より体外診断用医薬品の製造を開始することを発表した。富士フイルム三洋化成ヘルスケアが製造する医薬品は、富士フイルム和光純薬の自動化学発光酵素免疫分析装置「Accuraseed(R)(アキュラシード)」の専用試薬。同社と富士フイルムは、「Accuraseed(R)」専用試薬の生産基盤のさらなる強化を図るため、富士フイルム三洋化成ヘルスケアを2022年6月に設立。これまでの富士フイルム和光純薬と三洋化成両社分担による製造体制から、富士フイルム三洋化成ヘルスケアに製造を集約する体制に変更する。同社と富士フイルム和光純薬の有する設備・人材・製造ノウハウを組み合わせて、高い生産性を実現し、一体となった組織運営の下、意思決定のさらなるスピードアップを図り、タイムリーに経営資源を投入していくことで、伸長する体外診断用医薬品の需要に対応していく。同社と富士フイルムは、今後も医療現場のニーズに応えるさまざまな製品・サービスの提供を通じて、ヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していくとしている。
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2022/09/30 14:51