注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(1):攻めの経営姿勢を貫きつつ、さらなる企業価値向上を目指す
配信日時:2022/09/30 17:01
配信元:FISCO
■要約
1. 会社概要と事業内容
富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、現在の同社取締役相談役である野澤宏(のざわひろし)氏が自宅で自身に加え2名の社員とともに開業した(株)富士ソフトウエア研究所であり、設立50周年を超えた今、連結子会社31社、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万7千人規模(2022年6月末現在)のグループにまで発展している。
報告セグメントは、SI事業(システム構築とプロダクト・サービス)、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。
また、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。
2. コアコンピタンスは「技術力と提案力」
同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力などに裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。
3. ポストコロナ時代を見据えて人財投資を再び積極化
同社は顧客の業況感回復とDXニーズの高まりに対応するため、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を受けて抑制していた採用活動を再拡大している。2022年6月末における臨時雇用を含む連結従業員数は17,436名と半年間で2,480名もの増員を実現し、生産力の確保と人財の高度化に注力している。
振り返れば、同社はリーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、柔軟な経営戦略のもと財務体質強化と成長ポテンシャル増強をバランス良く両立した実績を持つ。
今回のコロナ禍にあっても、自己資本比率が2019年12月期末54.1%→2022年12月期上期末54.8%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同7,498百万円→同9,880百万円のキャッシュ超過(実質無借金経営)と同社は財務体質の一段の健全化を実現しており、守りを固めながらも攻めの経営を貫くスタンスに変化はない。
4. 2022年12月期上期の連結業績は、期初予想から上振れて着地
2022年12月期第2四半期累計期間(以下、上期)の連結業績は、売上高が前年同期比6.7%増の141,328百万円、営業利益が同3.0%増の8,995百万円、経常利益が同5.2%増の9,954百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同25.7%増の5,850百万円と上期としては7期連続での増収増益となった。
同社による2022年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.0%増の265,500百万円、営業利益が同2.7%増の17,300百万円、経常利益が同2.9%増の18,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.2%増の9,700百万円、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に9期連続での増収・営業増益を見込んでいる。
配当予想は、2021年12月期実績の年間52円/株(第2四半期末に26円/株、期末に26円/株)から年間109円(第2四半期末に54円/株、期末に55円/株)へと大幅に引き上げられ、8期連続増配となる見通しである。なお、業績予想及び配当予想は本年2月公表の期初予想から据え置かれているが、上期計画に対する達成率や通期計画に対する進捗率から見て、現時点では増額着地となる可能性が大きいと考えている。
5. 新設された企業価値向上委員会、一歩踏み込んだアプトプットの発表に期待したい
同社は新中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につなげるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月の最終報告に向けて活動を加速している。客観的視点を確保するため、「企業価値向上委員会」は取締役会出席者に加え外部アドバイザリーにより構成されており、同委員会で審議する素案づくりを目的に、1)企業統治検証、2)株主投資家対応、3)事業検証、4)企業グループ検証、5)不動産検証、という5つの課題別にワーキンググループ(WG)が設置されている。
先の新中期経営計画で示された各種数値目標(2024年12月期に売上高3,000億円以上、営業利益200億円以上、ROIC8.0%以上、ROE9.0%以上、EBITDAマージン9.0%以上、配当性向35.0%以上)は、過去の中期経営計画に比べ水準的にも内容的にも評価できるものであったわけだが、「企業価値向上委員会」によるアウトプット(最終報告)がさらに一歩踏み込んだものになることを期待したい。
■Key Points
・1970年設立の独立系大手ITソリューションベンダー。積極的な人財投資と補完的M&A戦略が奏功し、売上高2,000億円の壁を大きく突破、2022年6月末の連結従業員数は1万7千人超を擁する
・コアコンピタンスは豊富な実績と企業理念に裏打ちされた「技術力と提案力」。リーマン・ショック後の業績低迷期を経て、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強の両立を実現している
・2022年12月期上期業績は期初公表値を上回り、7期連続での増収増益を実現した。同社による2022年12月期通期予想(3.0%増収、2.7%営業増益)は期初計画が据え置かれたが、現時点では上振れ着地となる可能性大と考える
・2022年8月、投資家との対話で得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につながるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月に公表される最終報告の内容に期待したい
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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1. 会社概要と事業内容
富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、現在の同社取締役相談役である野澤宏(のざわひろし)氏が自宅で自身に加え2名の社員とともに開業した(株)富士ソフトウエア研究所であり、設立50周年を超えた今、連結子会社31社、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万7千人規模(2022年6月末現在)のグループにまで発展している。
報告セグメントは、SI事業(システム構築とプロダクト・サービス)、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。
また、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。
2. コアコンピタンスは「技術力と提案力」
同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力などに裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。
3. ポストコロナ時代を見据えて人財投資を再び積極化
同社は顧客の業況感回復とDXニーズの高まりに対応するため、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を受けて抑制していた採用活動を再拡大している。2022年6月末における臨時雇用を含む連結従業員数は17,436名と半年間で2,480名もの増員を実現し、生産力の確保と人財の高度化に注力している。
振り返れば、同社はリーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、柔軟な経営戦略のもと財務体質強化と成長ポテンシャル増強をバランス良く両立した実績を持つ。
今回のコロナ禍にあっても、自己資本比率が2019年12月期末54.1%→2022年12月期上期末54.8%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同7,498百万円→同9,880百万円のキャッシュ超過(実質無借金経営)と同社は財務体質の一段の健全化を実現しており、守りを固めながらも攻めの経営を貫くスタンスに変化はない。
4. 2022年12月期上期の連結業績は、期初予想から上振れて着地
2022年12月期第2四半期累計期間(以下、上期)の連結業績は、売上高が前年同期比6.7%増の141,328百万円、営業利益が同3.0%増の8,995百万円、経常利益が同5.2%増の9,954百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同25.7%増の5,850百万円と上期としては7期連続での増収増益となった。
同社による2022年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.0%増の265,500百万円、営業利益が同2.7%増の17,300百万円、経常利益が同2.9%増の18,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.2%増の9,700百万円、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に9期連続での増収・営業増益を見込んでいる。
配当予想は、2021年12月期実績の年間52円/株(第2四半期末に26円/株、期末に26円/株)から年間109円(第2四半期末に54円/株、期末に55円/株)へと大幅に引き上げられ、8期連続増配となる見通しである。なお、業績予想及び配当予想は本年2月公表の期初予想から据え置かれているが、上期計画に対する達成率や通期計画に対する進捗率から見て、現時点では増額着地となる可能性が大きいと考えている。
5. 新設された企業価値向上委員会、一歩踏み込んだアプトプットの発表に期待したい
同社は新中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につなげるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月の最終報告に向けて活動を加速している。客観的視点を確保するため、「企業価値向上委員会」は取締役会出席者に加え外部アドバイザリーにより構成されており、同委員会で審議する素案づくりを目的に、1)企業統治検証、2)株主投資家対応、3)事業検証、4)企業グループ検証、5)不動産検証、という5つの課題別にワーキンググループ(WG)が設置されている。
先の新中期経営計画で示された各種数値目標(2024年12月期に売上高3,000億円以上、営業利益200億円以上、ROIC8.0%以上、ROE9.0%以上、EBITDAマージン9.0%以上、配当性向35.0%以上)は、過去の中期経営計画に比べ水準的にも内容的にも評価できるものであったわけだが、「企業価値向上委員会」によるアウトプット(最終報告)がさらに一歩踏み込んだものになることを期待したい。
■Key Points
・1970年設立の独立系大手ITソリューションベンダー。積極的な人財投資と補完的M&A戦略が奏功し、売上高2,000億円の壁を大きく突破、2022年6月末の連結従業員数は1万7千人超を擁する
・コアコンピタンスは豊富な実績と企業理念に裏打ちされた「技術力と提案力」。リーマン・ショック後の業績低迷期を経て、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強の両立を実現している
・2022年12月期上期業績は期初公表値を上回り、7期連続での増収増益を実現した。同社による2022年12月期通期予想(3.0%増収、2.7%営業増益)は期初計画が据え置かれたが、現時点では上振れ着地となる可能性大と考える
・2022年8月、投資家との対話で得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につながるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月に公表される最終報告の内容に期待したい
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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