注目トピックス 日本株
極東貿易 Research Memo(1):2022年3月期は新会計基準適用。旧会計基準では増収増益
配信日時:2022/09/30 16:51
配信元:FISCO
■要約
極東貿易<8093>は、グループ企業の力を結集して、技術提案、導入・据付、運用・保守まで一貫した技術サポートができるエンジニアリング商社である。取扱商材は産業設備関連※(製鉄所向け機械設備、石油掘削装置、地震計、航空機用機材など)、産業素材関連(樹脂・塗料、炭素繊維・関連素材、食肉加工機など)、そして、機械部品関連(特注品ねじ、特注品ばね)と多岐にわたる。世界を跨いで事業を展開しており、欧米、中国・台湾・東南アジア、さらにインド・メキシコ等の新興国に拠点を設け、日系企業等のグローバルなモノづくりを支援している。
※2022年4月に基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門が発足した。
1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要
2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準(収益認識に関する会計基準)※を適用したためであり、その結果2022年3月期における売上高については、旧会計基準(取引総額)と比較して20,826百万円の減収となったただし、旧会計基準では増収となった。
※「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用、これに伴い、代理人取引と判断される一部の取引について、その売上高計上額をこれまで取引総額であったものから、純額へと変更した。
2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。
2. 新規事業の洋上風力発電関連事業の拡大に期待
新中期経営計画「KBKプラスワン2025」の2期目となる2023年3月期は、掲げた5つの成長分野の中から、新規重点3事業「洋上風力発電関連事業」「自動運転システム関連事業」「バイオプロダクツ」に注力している。特に洋上風力発電関連事業は、2022年1月に新たな子会社である(株)TWD Japanを設立するなど今後拡大が期待される事業であり、2026年3月期売上高20億円(1年前倒しもあり)が見込まれている。
3. 資本効率性と株主還元策を両立した巧みな資本戦略
株主価値・企業価値向上のためには、営業利益1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性を高めることがカギとなる。新中期経営計画では、2026年3月期の経営目標であるROE8%の達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行し、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、当面3年間は当期純利益をすべて配当金に分配(配当性向100%)するという積極的株主還元策を進める。今回、同社の資本コスト(2023年3月期の株主資本コスト 7.7% 加重平均資本コスト(WACC) 5.7%)が開示された。今後は、この資本コストをベースに投資判断や事業ポートフォリオ戦略(選択と集中など)に活用することが望まれる。
4. 今後のM&A戦略と実行に期待
同社は過去7件以上M&Aを実行したが、M&Aの後の収益性はすべての案件が社内平均を上回っている。また、中期経営計画で新規ビジネスのために5年間で50億円の投資枠(M&A)を設定している。現状の低収益の状況下において、投資リスクをとってでも次世代の柱事業を育成する覚悟が見られる。最近では2018年4月プラント・メンテナンス(株)(海外プラント向けの機器の調達、点検メンテナンス)を買収したのが最後であった。その間も戦略スタッフが中心となって、数多くのM&A案件の調査と精査を実施してきた。良いM&A案件が実行されることを期待したい。
5. サステナビリティ経営の推進
現在日本の企業は、サステナビリティ領域(SDGsやESG、社会課題解決など)は避けて通れない状況となっている。同社では、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の事業からは撤退することを決断した。主力事業の1つであった計装システム(年商約60億円ビジネス)も撤退することとなった。同社は岡田社長を中心とした「サステナビリティ委員会」を設置し、全社的活動の旗振りを行っている。また、東京証券取引所(以下、東証)のプライム上場企業として、統合報告書作成を前提としたコーポレートリポートを2022年9月末に発刊し、今後発展的に内容を充実させて統合報告書を作成すると言う。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)も東証プライム上場企業はコーポレートガバナンスコードの開示を要請されている。同社では同年10月にはTCFD全社プロジェクトを立ち上げ、2023年6月末でのTCFD情報開示に備えるとしている。
■Key Points
・会計基準の変更で2022年3月期売上高数値は大幅に減るも、旧会計基準では増収増益
・新規事業の洋上風力発電関連事業は今後の拡大を見込む
・全社を巻き込んだサステナビリティ経営の推進
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<SI>
極東貿易<8093>は、グループ企業の力を結集して、技術提案、導入・据付、運用・保守まで一貫した技術サポートができるエンジニアリング商社である。取扱商材は産業設備関連※(製鉄所向け機械設備、石油掘削装置、地震計、航空機用機材など)、産業素材関連(樹脂・塗料、炭素繊維・関連素材、食肉加工機など)、そして、機械部品関連(特注品ねじ、特注品ばね)と多岐にわたる。世界を跨いで事業を展開しており、欧米、中国・台湾・東南アジア、さらにインド・メキシコ等の新興国に拠点を設け、日系企業等のグローバルなモノづくりを支援している。
※2022年4月に基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門が発足した。
1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要
2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準(収益認識に関する会計基準)※を適用したためであり、その結果2022年3月期における売上高については、旧会計基準(取引総額)と比較して20,826百万円の減収となったただし、旧会計基準では増収となった。
※「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用、これに伴い、代理人取引と判断される一部の取引について、その売上高計上額をこれまで取引総額であったものから、純額へと変更した。
2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。
2. 新規事業の洋上風力発電関連事業の拡大に期待
新中期経営計画「KBKプラスワン2025」の2期目となる2023年3月期は、掲げた5つの成長分野の中から、新規重点3事業「洋上風力発電関連事業」「自動運転システム関連事業」「バイオプロダクツ」に注力している。特に洋上風力発電関連事業は、2022年1月に新たな子会社である(株)TWD Japanを設立するなど今後拡大が期待される事業であり、2026年3月期売上高20億円(1年前倒しもあり)が見込まれている。
3. 資本効率性と株主還元策を両立した巧みな資本戦略
株主価値・企業価値向上のためには、営業利益1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性を高めることがカギとなる。新中期経営計画では、2026年3月期の経営目標であるROE8%の達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行し、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、当面3年間は当期純利益をすべて配当金に分配(配当性向100%)するという積極的株主還元策を進める。今回、同社の資本コスト(2023年3月期の株主資本コスト 7.7% 加重平均資本コスト(WACC) 5.7%)が開示された。今後は、この資本コストをベースに投資判断や事業ポートフォリオ戦略(選択と集中など)に活用することが望まれる。
4. 今後のM&A戦略と実行に期待
同社は過去7件以上M&Aを実行したが、M&Aの後の収益性はすべての案件が社内平均を上回っている。また、中期経営計画で新規ビジネスのために5年間で50億円の投資枠(M&A)を設定している。現状の低収益の状況下において、投資リスクをとってでも次世代の柱事業を育成する覚悟が見られる。最近では2018年4月プラント・メンテナンス(株)(海外プラント向けの機器の調達、点検メンテナンス)を買収したのが最後であった。その間も戦略スタッフが中心となって、数多くのM&A案件の調査と精査を実施してきた。良いM&A案件が実行されることを期待したい。
5. サステナビリティ経営の推進
現在日本の企業は、サステナビリティ領域(SDGsやESG、社会課題解決など)は避けて通れない状況となっている。同社では、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の事業からは撤退することを決断した。主力事業の1つであった計装システム(年商約60億円ビジネス)も撤退することとなった。同社は岡田社長を中心とした「サステナビリティ委員会」を設置し、全社的活動の旗振りを行っている。また、東京証券取引所(以下、東証)のプライム上場企業として、統合報告書作成を前提としたコーポレートリポートを2022年9月末に発刊し、今後発展的に内容を充実させて統合報告書を作成すると言う。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)も東証プライム上場企業はコーポレートガバナンスコードの開示を要請されている。同社では同年10月にはTCFD全社プロジェクトを立ち上げ、2023年6月末でのTCFD情報開示に備えるとしている。
■Key Points
・会計基準の変更で2022年3月期売上高数値は大幅に減るも、旧会計基準では増収増益
・新規事業の洋上風力発電関連事業は今後の拡大を見込む
・全社を巻き込んだサステナビリティ経営の推進
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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