注目トピックス 日本株ニュース一覧
注目トピックス 日本株
前日に動いた銘柄 part1 メンタルヘルスT、ラバブルマーケ、SREHDなど
銘柄名<コード>30日終値⇒前日比日軽金HD<5703> 1448 -6823年3月期業績予想を下方修正。ハニーズHD<2792> 1216 -50第1四半期大幅増益決算も出尽くし感が先行。YE DIGITAL<2354> 397 -16上半期営業利益66%減。第一工業製薬<4461> 1911 -8223年3月期利益予想を下方修正。メンタルヘルスT<9218> 1225 +14325日線が下値支持線として機能。ラバブルマーケ<9254> 2024 +40029日大幅反発の人気継続しストップ高。DCM<3050> 1177 +110増配や自社株買い実施発表を好感。ユニチカ<3103> 298 +730日終値基準で日経平均除外だがあく抜け期待先行。ウェルビー<6556> 785 +51群馬県地盤のハピネスカムズを子会社化。沖電気工業<6703> 718 +13日経平均除外後の買い戻し期待など先行か。SREHD<2980> 3175 +160AI関連の一角にはALBERTの連想も。キユーピー<2809> 2380 +61三菱UFJモルガン・スタンレー証券では投資判断を格上げ。Link−U<4446> 690 +10海外向け配信で集英社作品の取扱を開始。武蔵精密工業<7220> 1556 -111自動車関連株安の流れに押される形に。アシックス<7936> 2300 -276米ナイキが決算嫌気され時間外取引で下落。マツダ<7261> 956 -85米カーマックスの決算受けて自動車株が総じて軟化へ。チェンジ<3962> 1959 -11029日の株価大幅上昇受けて戻り売り優勢。三菱自動車工業<7211> 518 -45自動車株安の中で利食い売り圧力が増す展開にも。ネクステージ<3186> 3140 -185米中古車大手カーマックスが決算受けて急落。SUBARU<7270> 2167 -144.5米カーマックスの急落受け米個人消費の先行き懸念。gumi<3903> 950 -21週末要因による手仕舞い売りも優勢に。M&Aキャピタルパートナーズ<6080> 3710 -230メリルリンチ日本証券では新規で売り推奨。鎌倉新書<6184> 847 -49高値警戒感により利食い売りが優勢に。日産自動車<7201> 460.2 -31.0米国自動車販売の先行きなど懸念視。デンソー<6902> 6586 -429自動車株安の流れが波及する形に。ギフティ<4449> 1998 -116中小型グロース株軟化の流れに押される。日本電波工業<6779> 1427 -74上方修正評価の動きも一巡し当面の材料出尽くしムード。IHI<7013> 3100 -2008月安値割り込んで下値不安も強まる。
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2022/10/01 07:15
注目トピックス 日本株
日本アジア投資---サイクル—プへの戦略投資実行
日本アジア投資<8518>は30日、サイクループに戦略投資を実行したと発表。サイクループは、電動アシスト自転車のサブスクリプションサービス「NORUDE」(ノルーデ)を手掛けている。「NORUDE」は、利用期間が主に1年から3年の月額課金制サービスで、ユーザー自身が自転車を保管する。豊富な車種や、低価格、高い整備力を特徴とする。サイクループは、自社に整備スタッフを抱え、高品質の点検や整備を迅速に行うほか、一定の貸出期間を終えた自転車にフルメンテナンスとバッテリー交換を行い、良質な中古商品として再販する。電動アシスト自転車は、「子供の送迎のため2年間」の様に使用目的と期間が明確な一方で、通常の自転車に比べ高額なため、安価なサブスクリプションサービスや中古品への潜在ニーズが大きいとサイクル—プでは想定している。同社は今後、サイクループの株主として成長性を支援するほか、サイクループの貸し出す電動アシスト自転車にもプロジェクト投資し、サブスクリプションサービスを共同事業として行うことでサイクループの事業拡大を支援するとしている。
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2022/09/30 18:15
注目トピックス 日本株
アイリック Research Memo(10):2022年6月期の配当は前期と同額の12円
■アイリックコーポレーション<7325>の株主還元株主還元の基本方針は、業績の推移・財務状況、今後の事業・投資計画等を総合的に勘案し、財務体質の強化及び将来の事業展開に備えるために必要な内部留保とのバランスを保ちつつ、配当性向30%台程度を目途として、業績への連動性の高い利益配分を継続的に行うこととしている。この基本方針に基づいて、2022年6月期の配当は前期と同額の12円(期末一括)とした。配当性向は40.1%となった。2023年6月期の配当予想は期初時点では未定としているが、業績に応じた配当が期待できると弊社では考えている。■ESG経営・SDGsへの取り組み同社は顧客、保険会社、代理店の「三者利益の共存」の実現を目指し、保険流通を「良循環化」させ、顧客の利益を守るために事業活動を行っている。同時に、事業活動が地球環境や地域社会に影響を与えることを認識し、社会課題の解決につながるサービスを提供し、サステナビリティの実現に向けた取り組みも推進している。SDGsへの取り組み事例としては、保険販売事業を通じた保障の提供、クリニクラウン(臨床道化師)活動の応援、子どもの未来応援基金の支援活動、ITを活用したサービス提供による保険流通の利便性向上、女性従業員が活躍できる働きやすい職場環境・就業環境づくり、直営店舗におけるLED照明導入による省エネ化推進、エコキャップ運動への協力、少年野球教室の開催、地域の清掃運動への参加などがある。なお2020年6月には、女性活躍推進法に基づく取り組みが優良な企業として、厚生労働大臣より「えるぼし」の最高位である「3段階目」を取得した。管理職に占める女性比率は金融業・保険業の平均値を大きく上回り、また福利厚生の充実によって産休育休後の復帰社員は100%を維持している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:10
注目トピックス 日本株
アイリック Research Memo(9):事業環境変化に対応して新たな「3か年計画」を策定
■成長戦略1. 新たな「3か年計画」アイリックコーポレーション<7325>は2020年6月に2021年6月期~2023年6月期の「3年後のあるべき姿」を策定していたが、コロナ禍の長期化による事業環境変化に対応して、2022年6月に2023年6月期~2025年6月期の新たな「3か年計画」を策定した。1年目を「再始動の年」、2年目を「投資継続の年」、3年目を「成長の年」と位置付けて、最終年度となる2025年6月期の目標値に売上高8,495百万円~8,795百万円、営業利益700百万円~1,000百万円を掲げた。2025年6月期における主要KPIとしては、直営店舗数70店舗、FC店舗数255店舗、直営店新規集客数30,000人(さらに既契約6,000人)、ASシリーズID数15,000IDなどを掲げている。重点施策として、保険SHOPの新しいスタイルの確立(デジタル技術活用による最良の顧客サービスの永続的提供)、「保険クリニック」の認知度向上(2025年6月期26%目標)、DXを活用したオンライン相談の拡大、「ASシステム」の大型導入先の開拓と新サービスの提供、「スマートOCR」事業のさらなる拡大と販売力の強化を推進する方針である。「保険クリニック」の認知度向上に向けて、広告宣伝費については2023年6月期計画の673百万円から、2024年6月期に837百万円、2025年6月期に1,055百万円まで拡大する計画である。Fintech企業として成長を目指す2. 業界の枠を超えたFintech企業として成長を目指す成長戦略を推進して、来店型保険ショップ「保険クリニック」店舗事業及び保険分析・販売支援プラットフォーマーとして収益拡大を図るとともに、成長分野と位置付ける「スマートOCR」の拡販も推進し、業界の枠を超えたFintech企業として成長を目指す方針だ。弊社ではFintech企業として中長期的に成長ポテンシャルが大きいと評価している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:09
注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(9):「企業価値向上委員会」による一歩踏み込んだアウトプットに期待(3)
■今後の見通し5. 人財育成と業務・働き方改革の効果顕在化により、生産性は向上傾向にある富士ソフト<9749>は、新卒の大量採用を軸とする人財投資に注力する一方で、「ゆとりとやりがい」の実現に向けて、多様なライフスタイルに合わせた働き方改革・支援を真剣に実践している。具体的には、1990年に導入したコアタイムなしのフレックスであるスーパーフレックス制度を一段と進化させた「ウルトラフレックス制度(スーパーフレックス制度+時間帯を固定することなく30分単位で有給休暇や10分単位のリフレッシュタイムが取得可能)」のもとで、残業削減・有給取得促進や遠隔地勤務の環境整備や全社員を対象とした在宅勤務制度の本格運用に取り組んでおり、2020年には政府による緊急事態宣言発出の2ヶ月前から取り組み、2020年4月より在宅勤務準備金(初期費用としての手当を一時支給)・支援金(電気代・通信費としての手当を月次支給)制度を導入している。こうした結果、1)有給休暇取得率:67.5%(2020年4月から2021年3月、厚生労働省「就労条件総合調査」による2020年の従業員30人以上の民間企業実績は56.3%)、2)「常時在宅+在宅中心」社員の比率:44%(2021年4月から同12月)、3)育児休業取得者:192名(2020年4月から2021年3月)、4)年間平均所定外残業時間:24時間33分(2021年4月から同12月)、など良好な実績を残している。こうした優れた実績が評価され、外部機関からも、次世代育成支援対策推進法に基づく「プラチナくるみん」認定(厚生労働省)、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定(厚生労働省)の最高位を始めとして、テレワーク先駆者百選(総務省)、健康経営優良法人(経済産業省)、神奈川子ども・子育て支援推進事業者(神奈川県)、準なでしこ(女性活躍推進に優れた上場企業、経済産業省)といった認定を獲得している。新卒の大量採用は人的戦力の希薄化だけでなく離職率上昇につながる可能性を持ち、働き方改革の推進は既存社員の稼働時間短縮や先行コストの増加に直結するため、短期的には1人当り営業利益(営業利益/期首期末平均従業員数)等の生産性指標にとっては抑制要因となるケースが多い。同社の場合、働き方改革の成果を出しながら新卒の大量採用を開始した2015年12月期以降、直後の2年間は1人当り営業利益が減少しているものの、2021年12月期には115万円弱(2016年12月期比55.4%増)にまで向上している。より詳しく見ると、単純計算による新卒含有率(単体+上場子会社新卒採用者数/前期末連結従業員数)は、2014年12月期の1.5%から2018年12月期の7.2%まで年を追って上昇、その後ピークアウトするも2021年12月期も5.9%と高止まりしている。加えて、月平均所定外残業時間は2014年度に30時間49分であったが2016年度以降は25時間以内へと大幅に減少、有給休暇取得率も2015年度以降は70%前後の高水準を維持している。こうしたなかで1人当り人件費(連結人件費/期首期末連結従業員数)の上昇(2014年12月期:598万円→2021年12月期:636万円)を伴った労働生産性の向上(1人当り営業利益、2014年12月期:78万円弱→2021年12月期:115万円弱)と離職率のピークアウト(単体ベース、2020年12月期:11.6%→2021年12月期:6.4%)を実現していることは、ICT利活用の実践や勤務形態・労働環境の継続見直しを通じて、業務の仕組みと社員の「ゆとりとやりがい」の向上に真剣に取り組んできた結果と言え、高く評価して良いだろう。また、これまで推進してきた同社の働き方改革は、コロナ禍にあっても大きな混乱なく事業を継続するための強力な武器となった。また、ITソリューションベンダーによるテレワークや在宅勤務の大規模な実践は、典型的なドッグフーディングとも言え、そのメリット(経費削減、業務効率化など)/デメリット(セキュリティ問題、コミュニケーション不足など)を体感したことの意義は大きい。実際、「FAMoffice」の外販や顧客とのDX協業といった形で事業面に活かされている。残業削減や有給休暇取得増加の余地は既に縮小し、今後は業務改革や働き方改革による効率アップも期待できる。2022年12月期は新卒含有率が6.7%まで再上昇し、新中期経営計画で示された2024年12月期における収益性目標は人財投資の加速を前提としている感触がある。しかしながら、従業員1万7,000人超に達した今、新卒含有率が年々高まり続けるはずはない。中長期的観点に立てば労働生産性が向上する蓋然性は高まっているように見え、2025年以降に一段の収益性向上が実現される可能性を指摘しておきたい。6. 人財投資とセットになった不動産投資人財投資を付加価値向上戦略の基礎とする同社は、人財が付加価値を生み出す空間であるオフィス等を生産工場として捉え、自社で所有することを推進してきた。同社は不動産を所有するメリットとして、定性的には「セキュリティ問題やプロジェクト対応等における自由度の高さ」と「信用力・ブランド力・モチベーションの向上」を定量的には「投資に対する高い収益率」と「安定的なコスト抑制効果を通じた企業基盤の安定化」を認識していると思われる。ただ、同社が独自に定義する「投資に対する高い収益率」に対する市場関係者の納得度にはバラツキがあるように思える。そこで、従業員1人当りの有形固定資産や地代家賃価、建物の減価償却費について、売上高2,000億円から5,000億円規模の同業5社と比較する考察を行ってみた。地代家賃等の開示基準が同一ではないため概数で表現すると、1)同社の1人当り有形固定資産は同業5社平均の2倍程度ながら同水準の企業もあった、2)同社の1人当り地代家賃は年間で20万円に達しておらず絶対水準として極めて低い、3)1人当り建物の減価償却費については同社と同業他社の間で有意な差異は認められなかった。なお、同社の1人当り地代家賃は、建物に関わる減価償却費を勘案しても同業他社の数分の一程度と推察される。1/5程度であると仮定した場合、連結従業員数が1万5,000人規模であった同社は年間120億円程度のコストセーブを安定的に実現しているとの試算が成り立つ。つまり現時点においては、ファシリティ事業の貢献(営業利益で9億円強)や保有不動産の含み益(150億円程度)を加えるまでもなく、同社の不動産投資は収益性にとってプラスに働いていると考えられる。当然ながら、自社の収益性が向上するにつれて不動産投資を含む投資判断のハードルは引き上がることになる。また、ウィズ・コロナ時代の到来やメタバースの発展が今後の投資判断に大きな影響を与えることも明らかであろう。同社についても、成長ステージや環境変化に対応する投資ディシプリンの確立を望みたい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:09
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アイリック Research Memo(8):2023年6月期は大規模プロモーションの計画により減益予想も上振れの可能性
■今後の見通し1. 2023年6月期連結業績予想の概要アイリックコーポレーション<7325>の2023年6月期の連結業績予想は、売上高が前期比17.8%増の6,122百万円、営業利益が同27.2%減の304百万円、経常利益が同28.1%減の310百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同30.0%減の179百万円としている。各事業とも順調に伸長して2ケタ増収だが、後述するように新たな「3か年計画」(2023年6月期~2025年6月期)の初年度「再始動の年」として、「保険クリニック」の大規模プロモーション(TVCM等)を計画していることから、広告宣伝費が増加(前期比90.1%増の673百万円)し、システム事業の開発費の増加なども考慮して減益予想としている。なお半期別に見ると、上期は大規模プロモーションの実施で営業損失であるが、下期は大規模プロモーションの効果で営業利益が拡大する見込みである。ただし弊社では、新規出店に係る先行投資が2022年6月期までに完了した場合、コロナ禍の影響緩和や大規模プロモーション効果による新規来店客数・成約数増加で利益が出やすい収益体質となっていること、ストック収益が主力のソリューション事業のAS部門や、成長分野と位置付けるシステム事業が順調に拡大することを勘案すれば、会社予想に上振れの可能性があると評価している。2. セグメント別計画と重点施策セグメント別売上高の計画は、保険販売事業が前期比18.0%増の3,476百万円(直営店部門・RM部門が同27.7%増の3,259百万円、法人営業部門が同44.9%減の217百万円)、ソリューション事業が同10.4%増の1,729百万円(AS部門が同12.2%増の1,019百万円、FC部門が同8.0%増の710百万円)、システム事業が同33.4%増の915百万円である。保険販売事業の直営店部門・RM部門は大規模プロモーションの効果で大幅増収を見込んでいる。出店については既に先行して実施済みのため、FC店舗からの転換を除いて新規出店を抑制する。業績の低迷している5店舗については移転を計画している。さらに、営業企画機能・マーケティング機能の強化、質の高いコンサルタントの育成、デジタル技術活用による生産性向上に注力する。営業企画機能・マーケティング機能の強化では、インバウンド専門コールセンターから、アウトバウンドも新たに実施する。法人営業部門は2022年6月期の大型案件の反動減を見込んでいる。ソリューション事業のAS部門は、引き続きASシリーズのID数が順調に増加し、ストック収益が拡大する見込みだ。大手保険会社をはじめとする複数の大型案件の獲得を目指して営業活動を継続する。また企業代理店の職域に向けたロボアドなど新たなソリューションの拡販、アライアンス強化によるOEMサービス提供、新規ソリューションの開発、CS(カスタマーサクセス)機能強化による解約率の改善なども推進する。FC部門は大規模プロモーション実施によるFC店への送客増、FC店舗数の増加などで順調な拡大を見込んでいる。2023年6月期末の店舗数の計画は前期比19店舗増の215店舗で、異業種向け新規リクルート活動の強化、出店候補地獲得の強化、FC店舗買い取り、店舗運営指導要員派遣などを推進する。システム事業は「スマートOCR」の企業や官公庁(入札)からの引き合いが強く、導入数増加で大幅増収を見込んでいる。代理店販売の強化、外部の既存SaaSやソフトウェアとのシステム連携、共同開発による新システムの拡販、プロジェクト開発の強みを生かしたカスタマイズ、営業体制強化のための新卒・中途社員採用及び育成などを推進する。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:08
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富士ソフト Research Memo(8):「企業価値向上委員会」による一歩踏み込んだアウトプットに期待(2)
■今後の見通し4.「人財戦略」の在り方が示す同社特有のビジネスモデル富士ソフト<9749>は、新中期経営計画において「積極採用・拡大」と「多様な人財への成長支援」を核とする人財戦略を前面に打ち出している。加えて、ビジネス上の重点分野を「AIS-CRM」から「DX+AIS-CRM+SD+(5)G2」へとさらに拡大したこともあり、同社の事業戦略は「選択と集中」に逆行しているように見える。「選択と集中」の是非はさておき、ここでは、同社が「バックグラウンドに関わらず“人”の可能性を信じ、誠実に働く人を大切にする、志をもって努力する人に挑戦する機会を与え、多様な人財登用と多様な働き方を実現していく」という人事ポリシーを大切にした人財戦略を推進していることに注目したい。なぜなら、同社の人財戦略を50年超に及ぶ歴史や多種・多様な事業ドメイン等と重ね合わせて見ると、「人の成長と増加に会社が適応することで付加価値創造の場を拡大していく」ことが、同社のビジネスモデルそのものであり、独立系ながら大手の一角にまで成長した同社の真髄であるように感じられるためである。実際、1)大量採用を重ねるなかでも離職率が比較的低位にとどまっていること、2)EXの向上をCXの向上に結びつけた事業展開や低採算ながら顧客の現場に密着したサービス提供が行われていること等から、同社の人事ポリシーが実践されていることがうかがえる。とはいえ、「収益性と効率性」を重要視する視点が企業の持続的成長にとって必須であることは間違いない。「企業価値向上委員会」の最終報告については、これまで築き上げてきた同社固有のビジネスモデルをどの様に進化させるのか、納得性の高い方針が示されることが望まれよう。また、長期的な人財育成に裏打ちされた同社の一連の取り組みは、事業パートナー等からも高く評価されている。事業パートナーによる2019年以来の具体的な実績は以下の通りである。加えて、2022年7月に経済産業省が選定する「DX認定事業」に認定されている。マイクロソフトからは、「Microsoft Japan Partner of the Year 2019」のModern Deviceアワード、「Microsoft Japan Partner of the Year 2021」のMicrosoft Teamsアワードに続き、「Microsoft Japan Partner of the Year 2022」ではMeetings, Calling and Devices for Microsoft TeamsアワードとModern Workplace for Frontline Workersアワードの2つを受賞している。世界最大のITクラウドサービスを運営するAmazon Web Services(AWS)からは2019年に「政府機関コンピテンシー」と「IoTコンピテンシー」、「マネージドサービスプロバイダ」の認定(前者2つは国内初)を取得、2020年には特に優れた実績を残したパートナーだけに与えられる「APNプレミアコンサルティングパートナー」とオンプレミス環境からAWSへ移行するための総合的なスキルと実績が必要な「移行コンピテンシー」、「AWS Well-Architectedパートナープログラム」、「Oracleコンピテンシー」の認定を取得、2021年と2022年にはAWS の卓越した技術力と継続的な情報発信が評価され、同社の技術者が「APN Ambassadors/APN AWS Top Engineers」に選出されている。IT仮想化市場で世界一のシェアを誇るVMwareからは、2020年にデータセンター仮想化、ネットワーク&セキュリティ、デジタルワークスペースという3つのカテゴリー(全5カテゴリー)で最上位認定の「Principal」を取得、VMware 2020パートナーオブザイヤー賞(アジアパシフィック及び日本地域のクラウドプラットフォームトランスフォーメーション部門)、2021 VMware APJ Partner Innovation Award、VMware APJ 2022 Partner Lifecycle Services Awardを相次いで受賞している。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等の企業向けインテリジェントオートメーション分野におけるグローバルリーダーであるSS&C Blue Prismからは、2021年に顧客への導入支援実績と技術の高さが評価され「コーポレートテリトリー ベストパートナー アワード」を受賞、2022年には日本国内の事業者として初となる「Gold Delivery Provider」と「Blue Prism Engage Elite Partner」の認定を取得したほか、社として「サービスインダストリーベストパートナーアワード」を社員として「Blue Prism Japan MVPアワード」と「Blue Prism Japan特別賞」を受賞した。また、2021年にはGPUコンピューティングにおける世界的なリーディングカンパニーである米国NVIDIAの日本法人であるエヌビディア合同会社(以下、NVIDIA)が新たに設立した「NVIDIA DXアクセラレーションプログラム」に国内初のパートナーとして参画し、NVIDIAから「日本トップクラスのAI開発、インテグレーション実績を有する」と高く評されている。なお、「NVIDIA DXアクセラレーションプログラム」はDXやAIに課題を感じている企業に対しNVIDIAとビジネスコンサルタントやAIエキスパート、システムインテグレータ等の同プログラムパートナーが連携し、企業の成長戦略に合致したDX施策の立案から開発や運用までを支援することを目的とするものである。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:08
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アイリック Research Memo(7):「保険クリニック」店舗数は増加基調
■アイリックコーポレーション<7325>の業績動向(1) 主要KPI「保険クリニック」の店舗数(直営、FC)は、2022年6月期末時点で直営58店舗、FC196店舗、合計254店舗となり、前期末比で直営が6店舗増加、FCが1店舗増加し、合計で7店舗増加した。直営店は集客力の高いショッピングモール等から収益性の高い物件を精査・選別して出店し、FCは他業界からの保険代理店業界への参入意欲の高まりを背景として、いずれも増加基調である。2022年6月期の直営店の集客数は前期比2.4%増の12,793人となった。コロナ禍の影響でショッピングモールへの人の流れがコロナ禍以前の水準に戻っていないことや、期初に計画していた大規模マーケティング施策を取りやめたことなどで新規来店数が減少し、全体として小幅増にとどまった。ただしWeb予約からの新規顧客数は増加した。2022年6月期の直営店の成約率は、57.6%で前期比3.6ポイント低下した。新規来客数が伸び悩んだことが影響した。ただし期末の2022年6月には新規来客数が増加して成約手続中の顧客も増加しているため、2023年6月期の成約率は上昇に向かうことが期待されている。複雑化する保険商品に対応するための教育・研修を強化し、コンサルティング能力及び成約率の向上に努めている。直営店の1世帯当たりの成約単価について、2022年6月期は前期比12千円増加して164千円となった。成約単価は保険商品の構成によって変動する傾向が強いが、老後資金に対する関心度が高く、変額保険や外貨建一時払い終身保険の販売件数が前期比60%増加した。また、保障内容の充実を図るケースや、医療保険・がん保険のセット販売も増加し、成約単価が増加した。ASシリーズID数は、2022年6月期末時点の合計は9,995ID(代理店・銀行が5,575ID、保険会社が4,420ID)となり、前期末比合計1,594ID増加(代理店・銀行が同894ID増加、保険会社が同700ID増加)した。乗合代理店での導入が順調に推移し、増加基調を維持した。引き続き大手保険会社をはじめとした大型案件が複数継続しており、さらなる新規導入を推進する。(2) セグメント別の動向1) 保険販売事業保険販売事業は売上高が前期比8.9%増の2,946百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が同8.4%減の450百万円となった。売上高の内訳は、直営店部門・RM部門が同3.4%増の2,552百万円、法人営業部門が同66.2%増の394百万円となった。直営店部門は新規出店による増収効果があったが、コロナ禍の長期化により「保険クリニック」への新規来店客数が微増にとどまったため、売上高が伸び悩んだ。法人営業部門は税制改正の影響が継続したが、大型案件獲得が寄与して大幅増収となった。利益面は「保険クリニック」新規出店の先行投資費用が増加したため減益となった。期末直営店舗数は前期末比6店舗増加して58店舗となった。直営店の新規集客数は同2.4%増となったものの、直営店の成約率は同3.6ポイント低下して57.6%となった。集客数が伸び悩んだ結果、成約率も低下した。直営店の1世帯当たりの成約単価は同12千円増となった。老後資金に対する関心度が高く、変額保険や外貨建一時払い終身保険の販売が同60%増加した。また、保障内容の充実を図るケースや、医療保険・がん保険のセット販売も増加した。2) ソリューション事業ソリューション事業は売上高が前期比13.3%増の1,566百万円で、利益が同57.9%増の594百万円となった。売上高の内訳はAS部門が同14.3%増の908百万円、FC部門が12.0%増の657百万円となった。AS部門はASシリーズのID数が順調に増加し、ストック収益が順調に拡大した。FC部門の店舗数は同1店舗増加して196店舗となった。店舗数は他業種からの保険ショップ参入などによる新規出店が増加したものの、コロナ禍の影響により一部代理店の解約も発生したため全体として小幅な増加にとどまった。3) システム事業システム事業は売上高が前期比24.5%増の686百万円、利益が同4.0%増の37百万円となった。売上高の内訳は「スマートOCR」関連が同76.0%増の532百万円、受託開発等が38.0%減の154百万円となった。売上面は「スマートOCR」関連の新規受注が好調に推移して大幅増収だが、利益面は「スマートOCR」関連の開発費や受注増加に伴うカスタマイズ費などが増加したため小幅増益にとどまった。現状は先行投資ステージのため開発売上が主力でカスタム開発費用も増加するが、今後の導入数拡大に伴って利益拡大も見込まれる。2. 財務の状況財務面で見ると、2022年6月期末の資産合計は4,578百万円で前期末比297百万円増加した。主に現金及び預金が161百万円増加した。負債合計は777百万円で127百万円増加した。主に契約負債が237百万円増加した。純資産合計は3,800百万円で169百万円増加した。主に利益剰余金が157百万円増加したことによる。この結果、自己資本比率は83.0%で1.8ポイント低下した。自己資本比率は若干低下したが依然として高水準である。キャッシュ・フローの状況にも懸念材料は見当たらない。無借金経営であり、弊社では財務の健全性は極めて高いと評価している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<SI>
2022/09/30 17:07
注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(7):「企業価値向上委員会」による一歩踏み込んだアウトプットに期待(1)
■今後の見通し1. 2022年12月期の連結業績予想富士ソフト<9749>による2022年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.0%増の265,500百万円、営業利益が同2.7%増の17,300百万円、経常利益が同2.9%増の18,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.2%増の9,700百万円と、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に9期連続での増収・営業増益を見込んでいる。配当予想は、2021年12月期実績の年間52円/株(第2四半期末に26円/株、期末に26円/株)から年間109円(第2四半期末に54円/株、期末に55円/株)へと大幅に引き上げられ、8年連続増配となる見通しである。業績予想及び配当予想は本年2月公表の期初予想から据え置かれているが、上期計画に対する達成率(親会社株主に帰属する四半期純利益は133.0%)や通期計画に対する進捗率(同60.3%)から見て、現時点では増額着地となる可能性が大きいと考えている。なお、期末配当55円/株については、業績に応じて通期での配当性向が35%以上になるよう見直すとしている。中間配当が期初計画通りの54円/株となり、その配当性向が29.0%(配当)であったことから、比較的大きな見直しになる可能性がある。2. 新中期経営計画では2024年12月期に売上高3,000億円・営業利益200億円の突破を狙う2022年2月、同社は「経営方針」と「各種戦略」、「財務方針」、「数値目標」を柱とする新たな中期経営計画を公表した。そこで掲げられた「経営方針」と「各種戦略」は連綿と続くブレない内容となっている。他方、「財務方針」と「数値目標」(2024年12月期に売上高3,000億円以上、営業利益200億円以上、ROIC8.0%以上、ROE9.0%以上、EBITDAマージン9.0%以上、配当性向35.0%以上)については、過去の中期経営計画に比べ内容的にも水準的にも一歩踏み込んだものとなっている。とはいえ、「数値目標」について物足りなさを感じている市場関係者がいることも事実であろう。しかしながら、ここで注目したいのは新たな中期経営計画を策定する第一段階として、事業戦略や財務戦略の基本となる市場における自社の立ち位置が「理念や文化、スキルやリソース、実績と方向性」等を踏まえてしっかりと明確化されていることである。将来予測が困難なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)時代を生き抜くために、「先ずは己を知り、次に負けない戦略を練る」という経営姿勢が貫かれたうえで今回の数値目標が設定されていることを素直に評価したい。また同社は、「成長を目指さず、効率と利益を重視した縮小均衡型経営」を良しとしない「攻めの経営姿勢」を継続することを強調する一方で、「IT大手企業としてのしっかりとした振舞い」や「プライム市場対応」を明言し、ROEやROICをKPIに取り入れ、配当性向の引き上げにも踏み切っている。こうした点を踏まえると、今回の新中期経営計画には「ベンチャーと大手」や「成長と効率」、「投資と分配」等を二項対立的に捉えるのではなく、二項動態的に捉えることで中長期的な企業価値向上を目指す同社の決意が感じられる。ベンチャー魂と大手IT企業の矜持を両立した成長ストーリーの実現に期待したい。3.「企業価値向上委員会」では5つの経営課題を審議同社は新中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識を活用しステークホルダーに対するさらなる価値向上を推進するために「企業価値向上委員会」を新たに設置した。客観的視点を確保するため、「企業価値向上委員会」は取締役会出席者に加え外部アドバイザリーにより構成されており、同委員会の下には、1)企業統治検証、2)株主投資家対応、3)事業検証、4)企業グループ検証、5)不動産検証、という5つの課題別にワーキンググループ(WG)が設置されている。1)と2)のWGはコーボレートガバナンスの高度化に関わる課題を担当するもので、その他3つのWGは経営財務戦略(事業戦略、長期的ビジョン、資本配分戦略、子会社上場や不動産所持の意義等)に関わる課題を担当する。そして、各WGは担当課題について調査・検証を実施し、同委員会はWGがまとめ上げた素案を審議することになる。現状、WGの構成メンバー等は開示されていないが、ステークホルダーの一翼を担う従業員が組織横断的に集められ、別のステークホルダーが問題視する「同業他社比較で相対的に低いとされる収益性や資本効率」について現状認識と今後の在り方を徹底的に議論する場が設けられているとするならば、大いに注目できる。なお、同社は「企業価値向上委員会」による課題の検証過程や最終報告(2023年2月)を受けた施策の実行状況を継続的に開示するとしており、従業員はじめ顧客や株主等の各ステークホルダーにとっての最適解を志向する一歩踏み込んだアウトプットがなされることに期待したい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:07
注目トピックス 日本株
アイリック Research Memo(6):2022年6月期は増収増益。成長分野と位置付けるシステム事業などが順調
■業績動向1. 2022年6月期連結業績の概要アイリックコーポレーション<7325>の2022年6月期の連結業績(収益認識会計基準等適用も影響軽微、増減率は適用前の前期実績との単純比較で算出)は、売上高が前期比12.1%増の5,199百万円、営業利益が同14.3%増の418百万円、経常利益が同15.5%増の432百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.7%増の255百万円となった。コロナ禍の長期化により「保険クリニック」(直営店)への新規来店客数が微増にとどまったため保険販売事業の直営店部門・RM部門が伸び悩み、全体として売上高・利益とも計画を下回ったが、ストック収益が主力のソリューション事業のAS部門や、成長分野と位置付けるシステム事業が順調に拡大して増収増益で着地した。利益面では「保険クリニック」直営店の新規出店関連の先行投資費用(人件費、賃料、什器備品など)や、「スマートOCR」関連の開発費や受注増加に伴うカスタマイズ費などが増加したが、増収効果で吸収した。売上総利益は同9.7%増加したが、売上総利益率は83.4%で同1.8ポイント低下した。販管費は同9.2%増加したが、販管費比率は75.3%で同2.0ポイント低下した。なお、期初時点では「保険クリニック」の大規模プロモーションを計画していたが、コロナ禍の影響で十分な効果が見込めないと判断して取りやめた。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:06
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富士ソフト Research Memo(6):2022年12月期上期業績は7期連続で増収増益を達成
■業績動向富士ソフト<9749>の2022年12月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比6.7%増の141,328百万円、営業利益が同3.0%増の8,995百万円、経常利益が同5.2%増の9,954百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同25.7%増の5,850百万円と上期としては7期連続での増収増益となった。この実績を、2022年2月公表の期初会社計画と比較すると、上期計画(売上高132,600百万円、営業利益7,600百万円、経常利益8,300百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益4,400百万円)に対する達成率は、売上高が106.6%、営業利益が118.4%、経常利益が119.9%、親会社株主に帰属する四半期純利益が133.0%と、それぞれ前年上期の達成率を上回った。こうしたなかで、同社は顧客の業況感回復とDXニーズの高まりに対応するため、コロナ禍を受けて抑制していた採用活動を再拡大している。2022年6月末における臨時雇用を含む連結従業員数は17,436名と半年間で2,480名もの増員を実現し、生産力の確保と人財の高度化に注力している。振り返れば、同社はリーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、財務体質強化と成長ポテンシャル増強を両立した実績を持つ。具体的には、自己資本比率が2006年3月期末47.3%→2017年12月期末59.9%、流動比率が同96.4%→同184.9%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同21,295百万円→同6,204百万円のキャッシュ超過など、代表的な財務指標の健全化を実現しつつ、2015年12月期以降は新卒中心の大量採用を継続することで成長ポテンシャルを積み上げている。人材面を見ると、連結従業員数は2006年3月期末の9,415人から2022年6月末現在17,436名に拡大、単体ベースの認定技術者比率(同社制度に基づく認定スペシャリストと認定プロジェクトマネージャーの合計数が全従業員数に占める比率)も2014年12月期末22.8%→2021年12月期末32.3%と上昇しており、人的リソースが質・量ともに拡充されていることは明らかである。ここで、財務指標と経営戦略の関係を見ると、大量採用に踏み切った2015年12月期は、自己資本比率が60%台乗せを達成、流動比率も200%目前まで改善していた。そして今回のコロナ禍においても、自己資本比率が2019年12月期末54.1%→2022年12月期上期末54.8%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同7,498百万円→同9,880百万円のキャッシュ超過(実質無借金経営)と同社は財務体質の一段の健全化を実現、再び人財投資を積極化する2022年12月期を前にキャッシュ超過額は11,523百万円(2021年12月期末)にまで積み上がっていた。創業者を含む強いリーダーシップによる迅速な経営判断・実行力が同社の強みと言えるだろうが、躊躇せず「攻めの経営(先行投資の積極化)」に転じられたのも、業績低迷局面において「守りの経営(財務体質の強化)」を推進したからこそであり、事業環境の変化を的確に捉えた同社の冷静沈着な経営判断を高く評価したい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:06
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アイリック Research Memo(5):自社開発システムを活用したワンストップソリューションが強み
■事業概要5. 特徴・強み保険販売(訪問型、来店型)は競合の多い市場だが、コンサルティングから契約まで業界唯一のシステムを自社開発して、ワンストップソリューションで展開していることがアイリックコーポレーション<7325>の強み・競合優位性となっている。また、大手保険ショップで唯一FC展開していることも強みである。「保険IQシステム」をベースとして、「保険IQシステム」を汎用化した「ASシステム」、「保険IQシステム」の簡易版である「AS-BOX」、「スマートOCR」の機能を組み込んだ「証券分析AIアシスト機能」「生命保険証券の自動分析サービス」、保険証券の画像と保障内容を一括管理できるスマートフォンアプリ「保険フォルダ」などを開発・提供し、オンライン保険相談サービスなども行っている。2021年6月には、いつでもどこでも「保険クリニック」DXプロジェクト第4弾として、スマートフォンで保険証券を撮影するだけで、最短30秒で加入している保障の範囲が一目でわかる「お手軽web保険診断」をリリースした。2022年6月には、企業内代理店・地方公共団体向け保険の最適解ツールとして、保険の「職域ロボアドバイザー」をリリースした。なお、生命保険募集人がスマートフォンやタブレット等のカメラで撮影した生命保険証券を「スマートOCR」を活用して自動分析する「生命保険証券の自動分析サービス」は、2021年5月に特許を取得(第6887233号)した。自社開発システムに競合優位性6. リスク要因保険販売事業における一般的なリスク要因としては、競合の激化、保険契約の成約率の低下、保険会社による営業政策の変更や保険手数料率の変更、個人情報保護、税務当局による保険商品の税務取り扱いの見直し、法的規制・自主規制などが挙げられる。市場環境として、保険販売における加入チャネル比率(出所:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」)では、かつては90%前後を占めていた生命保険営業員からの加入比率が2021年には55.9%まで低下した。一方で保険代理店からの加入比率が2021年には15.3%まで上昇した。同社にとって市場環境は良好と言えるだろう。ただし保険販売の市場は競合が多く、来店型保険サービス市場に対しては他業種からの新規参入が増加している。これに対して同社は、自社開発システムやワンストップソリューションによって競合優位性を維持している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:05
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富士ソフト Research Memo(5):顧客の価値向上に資する多彩なICTサービス・プロダクトを提供(3)
■富士ソフト<9749>の事業内容4. 底入れ気配が感じられるアウトソーシングアウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は5.3%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は6.0%(同)、セグメント利益率は7.1%(同)である。2022年12月期上期の売上高は前年同期比10.3%増、営業利益は同7.0%増、セグメント利益率は同0.3ポイント低下、受注高は同9.9%増、期末の受注残高は前年同期末比11.9%減となっている。事業構造改革等により2018年12月期以降のセグメント利益率は全社平均を上回っている。その一方で、売上高については、流通・サービス向け継続案件の減少等模索局面が続いていたわけだが、アフターコロナを視野に入れた海外市場における運用保守案件の需要回復を牽引役に2022年12月期第2四半期にかけて3四半期連続で前年同月比増収に転じている。データセンター事業における他社クラウドサービスとの競争等、構造的な問題を抱えつつも底入れの気配が感じられよう。5. ノンコア領域ながら高収益のファシリティ事業保有するオフィスビルの賃貸を収入とするファシリティ事業の売上高構成比は0.9%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は4.1%(同)で、セグメント利益率は27.9%(同)と極めて高い。2022年12月期上期の実績としては、前年同期比7.0%増収、同8.1%減益、セグメント利益率は同4.6ポイント低下となった。同社は基本的に自社活用目的で不動産を保有しており、ファシリティ事業は空きスペースが有効活用された結果と位置付けてよい。よって、その業績変動に一喜一憂する必要はないわけだが、セグメント利益率は全社平均を大きく上回っており、ノンコア領域ながら利益水準の下支え役を安定的に果たしている。有価証券報告書で確認できるファシリティ事業向け保有不動産は、横浜本社(土地取得年:2000年、土地建物等簿価:11,135百万円)、秋葉原オフィス(同:2005年、同30,594百万円)、錦糸町オフィス(同:2000年、同6,065百万円)、両国オフィス(同:2018年、同1,760百万円)の4棟である。6. その他区分の主軸は上場子会社の富士ソフトサービスビューロ(株)その他の売上高構成比は4.4%(2022年12月期上期)、営業利益構成比は4.4%(同)、区分内の主軸は子会社の富士ソフトサービスビューロ<6188>が手掛けるBPOサービス事業やコンタクトセンター事業である。2022年12月期上期は、地方自治体の外部委託需要(新型コロナ関連で期間限定)の取り込みと年金関連業務の受託が寄与するなかで、案件の採算良化も加わり、売上高は前年同期比33.5%増、営業利益は同916.6%増、セグメント利益率は同5.6ポイント上昇の6.4%となった。7. 区分横断的な技術戦略「AIS-CRM」のさらなる強化を目指す同社は、2017年12月期から区分横断的な技術戦略として「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域を重点技術分野に掲げ、新製品・新事業のシーズ創出や既存事業の付加価値向上に注力している。「AIS-CRM」領域とはAI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。一見、流行り言葉の羅列のようだが、「AIS-CRM」戦略の上位概念には同社のコアコンピタンスが据えられており、同領域の2021年12月期単体売上高は959億円(過去3年の年平均成長率:15.8%増)と単体売上高の55%程度を占める存在となっている。その内訳は、「AI」が開発中心に19億円(過去3年の年平均成長率:16.6%増)、「IoT」が開発中心に31億円(同33.6%増)、「Security」が開発及びライセンスで123億円(同16.9%増)、「Cloud computing」がライセンス及びSI、インフラ関連、ネットビジネス分野等で495億円(同26.6%増)、「Robot」が開発中心及びPALRO、ロボSI等で44億円(同8.8%減)、「Mobile」が開発及びプロダクト等で65億円(同2.7%増)、「AutoMotive」が開発中心で181億円(同5.8%)、となっている。特にクラウド分野の好調が目立つほか、セキュリティ分野における近年の取り組みも成果を実らせつつあるように見える。セキュリティ分野における一連の動きとしては、2020年11月に(株)レッドチーム・テクノロジーズとの協業(販売店契約の締結、2020年11月発表)を受けて、インターネットサービスを提供する金融機関等の企業向けに、クラウドソースペンテストプラットフォーム「Synack」を活用した新しいセキュリティサービス(脆弱性診断)の提供を開始したのに続き、2021年6月にはサイバーセキュリティの国内リーディングカンパニーである(株)FFRIセキュリティとサイバーセキュリティ分野における協業の強化について合意、2021年10月にはサイバー攻撃を可視化するセキュリティ対策ソフトウェアであるオープンXDR(Endpoint Detection and Response)のパイオニア的企業Stellar Cyber社から「2021 1st Half Outstanding Partner Japan」を受賞、等が列挙される。一連の技術戦略が成果を実らせつつあるなかで、同社はビジネス上の重点分野を「AIS-CRM」から「DX+AIS-CRM+SD+(5)G2」へとさらに拡大し、DXソリューションやITバリューチェーンの上流工程(SD:サービスデザイン及びITコンサルティング)、(5)G2(通信の5G技術と事業のグローバル展開)という領域での取り組み強化に踏み出している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:05
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アイリック Research Memo(4):システム事業は「スマートOCR」関連事業を中心に展開
■アイリックコーポレーション<7325>の事業概要4. システム事業システム事業は、インフォディオが「スマートOCR」関連事業を中心として、保険分析・販売支援等のシステム開発やソフトウェア受託開発を行っている。「スマートOCR」(2018年4月開発)は、定型・非定型の数千万枚の活字・手書き文書等を認識してデータ化できるエンタープライズ向けシステムである。単に手書き・活字の文字変換を行うだけでなく、マスターデータ連携・自動処理、高いセキュリティ、スマホアプリ等も備えた総合システムとして高い評価を得ており、保険用途にとどまらず幅広く企業・官公庁等のデジタル化・ペーパーレス化に貢献している。「スマートOCR」の収益モデルは、提供先から得られる「初期費用+定額制のサブスクリプション収益または従量課金制のリカーリング収益」となっている。顧客ニーズに合わせて柔軟なカスタマイズを行い、初期費用をできるだけ抑えて導入しやすい料金体系としていることが特徴・強みである。販売は、ソリューション事業のAS部門が金融機関向け、インフォディオが官公庁・一般企業向けを中心に行っている。提供方法は、SaaS型のクラウドサービス・オンプレミス提供、OEM供給、カスタムシステム提供の3種類となっている。クラウドサービス・オンプレミス提供は、定額料金のサブスクリプション収益で既に数百社の顧客に提供している。OEM供給は、販売した先にエンドユーザーがいるため広がりが大きく、処理枚数が増えるほど収益が増加する。導入事例として、みずほ銀行(2021年11月に、みずほ銀行の経理業務効率化支援サービス「みずほデジタルアカウンティング」に「スマートOCR」搭載、フォーマットが異なる様々な紙の請求書をデータ化して振込システムや会計システムへの連携も可能)、KEIRAKU(2022年2月にユニアックス(株)が「スマートOCR」を搭載したAI会計自動仕訳クラウドサービス「KEIRAKU」をリリース、属人的な仕分業務を自動化)がある。カスタムシステム提供は、発注者利用の個別開発案件で開発費用+長期契約でのサブスクリプション収益となる。導入事例として、独立行政法人統計センター(2020年11月に個々を特定できない処理が施された情報を認識処理する「AI技術を用いた文字認識サービスの提供業務」を受託、令和2年国勢調査等の定型帳票の手書き文字の認識に使用)、国税庁個人課税課(2021年4月に国税庁の「確定申告書等作成コーナーの源泉徴収票OCR機能に係る開発及び機器等の提供等」を受託、OCRエンジンだけでなくWEBアプリケーション開発、サーバ構築・運用、画像処理エンジンまで採用)、埼玉県警察(2021年12月に「スマートOCR」を導入、紙文書の取り扱いが多い警察業務においてDXを推進)などがある。このほかの官公庁・一般企業の導入事例として、2020年12月に(株)JTBが「スマートOCR」を組み込んで独自開発した「証憑書類電子保存化システム」が稼働した。JTBグループ全体で年間約570万枚のペーパーレス化、約7億円の経費削減に貢献する。2021年3月には(株)日立ソリューションズが開発したビジネスデータ活用支援「活文」に「スマートOCR」が採用された。同年5月には法務省矯正研修所が行う手書きアンケート情報を認識処理する「効果検証用OCR機器の賃貸借」を受託・運用開始した。金融機関への導入事例としては、同年10月に、はなさく生命保険(日本生命の子会社)が「スマートOCR健康診断書」を導入した。健康診断結果のうち引受査定に利用する項目の大部分(80~90%)の自動入力が可能となる。品ぞろえも強化している。データ抽出の基本パッケージとして既に「請求書」「領収書・レシート」「名刺」「運転免許証」「健康保険証」「決算書」「源泉徴収票」「通帳」「健康診断書」などをリリースした。2021年9月には「注文書革命DX」をリリースした。同年12月には「スマートOCR」で蓄積したAI-OCR技術を活用し、簡単操作で紙帳票を分類・データ化・保管・全文検索できるクラウドサービス「DenHo(デンホー)」をリリースした。2022年1月施行の改正電子帳簿保存法にも対応している。今後も様々な用途のパッケージをリリース予定としている。2021年10月にはDeSCヘルスケア(株)(ディー・エヌ・エー<2432>の子会社)が提供する「kencom×ほけん for おくすりサポート」に「スマートOCR 健康診断書」が搭載された。2022年4月には住友生命保険(相)が「スマートOCR 本人確認書類」を採用した。2021年11月には、(株)アシスト及びUbicomホールディングス<3937>と共同開発した生命保険エコシステム「生命保険給付金支払いプラットフォーム」の提供を開始(チューリッヒ生命保険(株)が業務利用開始)した。給付金支払い判定に必要な「診療明細書」「領収書」「調剤明細書」等を「スマートOCR」によってテキスト化・コード化し、支払い査定業務をデジタル化する。顧客サービス向上と査定業務の自働化・事務効率向上を実現するプラットフォームである。2022年2月にはメディケア生命保険(株)が採用、2022年4月にはアイアル少額保険短期保険(株)が採用し、採用企業数は3社となった。2022年3月には「スマートOCR」とコダックアラリスジャパン(株)のネットワークスキャナーをパッケージしたサービスの提供を開始した。PCを介さずにスキャンした書類をシームレスにOCR処理することが可能になる。2022年5月にはアミフィアブル(株)が開発したテスト工数削減AIアプリ「MELT.II」に「スマートOCR」が搭載された。国内IT市場で6.4兆円規模になると想定されるテスト市場での活用が開始されることになった。2022年8月には(株)flixyの「メルプWEB問診」に「スマートOCR」のオプション機能である「スマートOCRクリエイトフォーム」(2022年7月リリース、かんたんな操作性を実現、特許出願済み)を搭載し、共同で全国の医療機関に展開することで合意した。医療機関への「スマートOCRクリエイトフォーム」を搭載したサービス提供は初となる。またインフォディオが、高機能・高精度なWebカメラアプリ基盤モジュール「スマートパシャリDX」の提供を開始した。スマホのWebアプリで書類をデータ化するニーズの増加に対応した。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:04
注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(4):顧客の価値向上に資する多彩なICTサービス・プロダクトを提供(2)
■事業内容3. 特需剥落影響はあるが、富士ソフト<9749>らしさを発揮し続ける狭義のプロダクト・サービスSI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスが全社に占める構成比は売上高が32.6%(2022年12月期上期)、営業利益が28.3%(同)であった。2022年12月期上期の売上高は前年同期比6.1%減、営業利益は同25.5%減となり、セグメント利益率は前年同期比1.5ポイント低下の5.5%であった。主な減収要因は、前年に売上計上したGIGAスクール関連の大型案件剥落とグループ会社における販売代理店契約終了であり、大幅減益は減収効果にプロダクトミックス悪化影響が重なったことによる。一方、2022年12月期上期における受注高は、他社ライセンスの増加等を受けて前年同期比14.6%増となり、同期末の受注残高は同51.6%増と急拡大している。狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」、SIMフリー向けモバイルルータ「FS030W、FS040W」、仮想空間活用ツールである「FAMシリーズ」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)から成る。特需一巡的な要因により自社プロダクトと物販等は減速気味ながら、ライセンスビジネスについてはWindows7のサポート終了(2020年1月14日)特需のピークアウト後も成長が継続している。この点、ライセンスビジネスのメインプロダクトに育ったMicrosoft365(旧Office)や各種クラウドサービスがサブスクリプションモデル(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)を採用していることが、事業の安定性向上につながっているように見える。結果、2022年12月期上期における区分内売上比率は、自社プロダクトが25%程度、ライセンスビジネスが40%程度、物販等が35%程度と想定される。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上は自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。2021年8月、同社はPCのライフサイクル管理に関するすべての作業(PCの選定・レンタル、キッティング、管理・サポート、更新プログラム適用等)をワンストップで対応する「デスクトップフルサービス」の提供をスタートした。この自社サービスではMicrosoft365の導入/利活用を推奨しており、狭義のプロダクト・サービス全般をグロースし収益性を高める力を持つ。マイクロソフトがサブスクリプションモデルであるWindows365(企業向け仮想デスクトップ=クラウドPC)のサービス提供を2021年8月から、次期OSであるWindows11の提供も同年10月から開始していることもあり、同社の「デスクトップフルサービス」は順調な立ち上がりを見せている。独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、リモート教育関連製品やコミュニケーションロボット、モバイルルータ等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。一例を挙げると、リモートワーク用社内ツールであった仮想オフィス空間「FAMoffice(ファムオフィス)」の外販(2021年6月開始)は、EX(従業員エクスペリエンス)とCX(顧客体験)を融合した典型的なドッグフーディング事例としてだけでなく、メタバース市場への取り組み事例としても大いに注目できよう。「FAMoffice」はバーチャル空間上に再現されたオフィスであり、実際のオフィスに近い臨場感や一体感、利便性を提供する製品である。「FAMoffice」にアバター(バーチャル空間上の自分を表すキャラクター)として出社することで、全体の俯瞰や特定メンバーの状況把握が容易になるだけでなく、他のメンバーとの資料・情報共有やチャット・ビデオ通話を素早く行える等の仕組みによりメンバー同士のコミュニケーション(会議、相談、雑談)が簡単に行えるため、リモートワークのメリット(BCP対策、経費削減、業務効率化、働き方改革等)を高め、デメリット(セキュリティ問題、コミュニケーションロス問題等)を軽減することが可能となる。同社は、2022年4月にバーチャル教育空間である「FAMcampus(ファムキャンパス)」、オンライン商談ルームである「MEMTOM(メントム)」、バーチャルイベント空間である「FAMevent(ファムイベント)」の提供・販売を相次いで開始した。「FAMcampus」と「FAMevent」は、その名の通り「FAMoffice」で培われた技術やコンセプトをベースにしており、前者は学研ホールディングス<9470>のグループ会社である(株)学研塾ホールディングス及び(株)学研メソッドとの共同実証を経て、後者は「厚生労働省予防・健康インセンティブ推進事業」として医療保険者、企業健康増進担当者、自治体、事業主を対象に開催された「データヘルス・予防サービス見本市2021」での先行導入を経て、商業サービスへと磨き上げられている。また、「MEMTOM」は、従来のビデオ会議システムでは難しかった双方向での資料の共有や操作、申込書記入等の契約締結までに至る一連の手続きを可能としたサービスである。いずれのプロダクトも、「ICTの力で社会課題に取り組む事業」かつ「自社のDXを顧客の競争力向上に貢献させる事業」という点で同社らしさが感じられる。また、同社が自身のコアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きと言え、会社側は「投資局面後の収益性については高い水準を求めている」としている。この点、これまで全社水準を下回って推移してきた狭義のプロダクト・サービスのセグメント利益率が、2018年12月期の2.9%から2020年12月期には6.4%と3.5ポイントもの大幅改善を示していた。2022年12月期上期はプロダクトミックス要因等による採算性悪化で5.5%へと低下しているが、依然として2019年12月期の4.5%を上回った水準に踏みとどまっていることは評価に値しよう。狭義のプロダクト・サービス事業は、採算性に幅がある商材のスポット的な売上計上に左右されるため、セグメント利益率の短期的な変動に一喜一憂する必要はないものの、今後の推移については期待を持って見守りたい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:04
注目トピックス 日本株
アイリック Research Memo(3):来店型保険ショップ、保険分析・販売支援、「スマートOCR」を展開
■アイリックコーポレーション<7325>の事業概要1. セグメント区分自社開発した業界唯一のワンストップ型保険分析・検索システム「保険IQシステム」などを活用して、1999年に日本で初めてオープンした来店型保険ショップ「保険クリニック」を直営とFCで全国展開している。保険分析・販売支援プラットフォーマーとして金融機関や保険代理店向けのシステム販売も行っている。またインフォディオは、「スマートOCR」を開発・販売している。セグメント区分は、保険販売事業(「保険クリニック」直営店運営の直営店部門・RM(損害保険)部門、法人向け訪問型保険販売の法人営業部門)、ソリューション事業(ASシリーズ等のシステム販売のAS部門、「保険クリニック」FC展開のFC部門)、及びシステム事業(「スマートOCR」開発・販売及びその他のシステム開発)としている。全売上高のうちストック売上は3割強(2022年6月期)を占める。ストック売上とは、主に、保険販売事業では保険契約からの継続手数料、AS部門ではASシリーズのID利用料、金融機関向け「スマートOCR」のサブスクリプション並びにリカーリング収益、FC部門ではFC月額利用料、システム事業では「スマートOCR」のサブスクリプション並びにリカーリング収益(AS部門計上分以外)である。ソリューション事業のAS部門及びFC部門では既にストック売上が安定収益源となっており、営業利益率も高水準で推移している。保険販売事業は、将来の収益基盤構築に向けて積極的な新規出店を行っているため、人件費等の出店費用が先行しているが、今後は契約継続率の向上などでストック売上比率と営業利益率が向上する可能性がある。システム事業は、現状は先行投資ステージのため開発売上が主力でカスタム開発費用も増加するが、今後の導入数拡大に伴ってストック売上比率と営業利益率の向上が見込まれる。保険販売事業は来店型保険ショップ「保険クリニック」直営店運営と法人営業2. 保険販売事業保険販売事業は直営店部門・RM部門と法人営業部門で構成されている。「保険IQシステム」を活用した独自のサービスで、高い契約継続率と高い顧客満足度を獲得している。収益は、直営店部門・RM部門、法人営業部門とも、代理店業務委託契約を締結している保険会社の保険商品販売に伴って、当該保険会社から得られる「保険手数料」収入である。直営店部門・RM部門は「保険クリニック」の直営店を運営し、2022年6月期末時点で58店舗(前期末比6店舗増加)を全国に展開している。法人営業部門は法人及び富裕層をサポートすべく、保険の有効活用に関する提案や保険販売等を行う訪問型保険販売を行っている。2022年1月には松井証券<8628>と業務提携した。松井証券の「松井FP~将来シミュレーター~」と保険相談サービス(オンライン、来店)を連携することで、顧客のライフプランに適した金融商品の情報収集・把握をサポートする。また、富士フイルムビジネスイノベーション(株)とタイムリープ(株)が、駅ナカ・ビルナカ、街ナカの個室型ワークスペース「CocoDesk」を様々な生活関連サービスのオンライン相談の場として提供する実証実験に、同年4月より、「保険クリニック」の「オンライン保険相談」として参加した。同年6月には未来創造弁護士法人と提携して「保険クリニック」契約者向け無料法律相談サービス「ミラリーガル」を、mederi(株)と提携してオンラインピル診療「mederi Pill」を同様に「保険クリニック」アプリ利用者に特典付きで提供するサービスを開始した。ソリューション事業はAS部門とFC部門3. ソリューション事業ソリューション事業は、自社ASシリーズ等のシステム販売のAS部門と、「保険クリニック」をFC展開するFC部門で構成されている。AS部門は、金融機関や保険代理店等に対して、生命保険の現状把握・検索提案システム「ASシステム」、保険申込ナビゲーションシステム「AS-BOX」を提供している。「ASシステム」は「保険IQシステム」を汎用化したシステムである。「AS-BOX」は「保険IQシステム」または「ASシステム」の機能のうち、既契約の証券分析機能が搭載されていない簡易版のシステムである。収益はASシリーズ導入ID数に基づいたシステム利用料(初期登録料、サブスクリプション方式の月額利用料)や、保険販売コンサルティング売上、金融機関向け「スマートOCR」売上、その他ソリューション売上等である。金融機関等において各種システムの導入が拡大している。直近では、(株)ドコモ・インシュアランス(旧 (株)エヌ・ティ・ティ・イフ)と共同開発した「AI-OCRによる自動車保険見積りサービス」が、2022年1月に楽天損害保険(株)の「“パシャ!っと”楽らく保険見積り」に採用された。同年2月には「保険IQシステム」「ASシステム」「AS-BOX」において、イオン・アリアンツ生命保険(株)とペーパーレス申込書API連携を開始した。また、フコクしんらい生命保険(株)が見積試算対象会社として新規登録した。2022年4月には秋田銀行<8343>が、7月には千葉銀行<8331>が、9月には七十七銀行<8341>が「ASシステム」の取扱を開始した。銀行での導入は32行となる。また、ライフプランシミュレーションサービスの(株)オンアド(野村ホールディングス<8604>、千葉銀行、第四北越銀行、(株)中国銀行の合弁で2022年1月設立)が「ASシステム」を導入した。同年5月には、はなさく生命保険(株)と「保険IQシステム」「ASシステム」「AS-BOX」新規登録に向けた開発着手で合意した。2022年6月には、JFRカード(株)の大丸松坂屋カード会員向けオンライン生命保険診断サービスとして、生命保険分析サービスと生命保険比較サービスの提供を開始した。さらにオリックス生命が「保険IQシステム」「ASシステム」「AS-BOX」とのペーパーレス申込書API連携を開始した。2022年7月時点で、見積試算可能は26社、見積試算API連携は16社、申込書対応は13社(うちペーパーレス申込書API連携は11社)となった。FC部門は、全国の「保険クリニック」FC店に対して「保険IQシステム」を提供している。さらに教育・研修、情報提供、店舗運営ノウハウ、プロモーション等のサポートを行い、直営店と同等のサービスを展開している。FC店舗数は2022年6月期末時点で196店舗(前期末比1店舗増加)となっている。収益はシステムやサポート利用に対する初期登録料・基本料金・店舗料金、ロイヤリティ、共同募集に伴う保険手数料、その他サービスに伴う売上等である。2022年4月には、丸紅<8002>の子会社で携帯電話販売代理店(ショップ運営)大手のMXモバイリング(株)が「保険クリニック」コトエ流山おおたかの森店をオープンした。今後も店舗拡大を視野に入れて協業を進める方針としている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:03
注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(3):顧客の価値向上に資する多彩なICTサービス・プロダクトを提供(1)
■事業内容富士ソフト<9749>の報告セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業はシステム構築とプロダクト・サービスに大別され、さらにシステム構築は組込系/制御系ソフトウェアと業務系ソフトウェア、プロダクト・サービスは狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに細分化される。また、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。1. 屋台骨である組込系/制御系ソフトウェアSI事業のシステム構築区分に属する組込系/制御系ソフトウェアは、全社売上高の25.8%(2022年12月期上期)、同営業利益の33.5%(同)を占める屋台骨であり、セグメント利益率も全社ベースを上回っている。2022年12月期上期の実績は、売上高が前年同期比10.0%増、営業利益が同35.1%増、セグメント利益率は同1.6ポイント上昇の8.3%であった。大幅増益・利益率向上の主因は、業況感の回復が続くなかで不採算案件を抑制できたことである。四半期ごとの受注獲得状況(前年同期比)を見ると、2022年12月期第2四半期にかけて5四半期連続で増加している。具体的には、2021年12月期第2四半期5.7%増→第3四半期14.4%増→第4四半期に同3.8%増(受注計上方法の見直しによる見掛け上のマイナス影響を含む)→2022年12月期第1四半期8.3%増→第2四半期11.7%増と増勢を維持している。結果、2022年12月期上期末の受注残は従来計上方式ベースで前年同期末比4.4%増の積み増しとなった。組込系/制御系ソフトウェアは、特定の機能を提供するために当該機器に組み込まれたマイクロコンピューター等で動作するソフトウェアであり、同社のテクノロジーは、自動車や携帯電話、TVやエアコンなどの家電製品、プリンター等のOA機器、ロボットや半導体製造装置の生産設備、信号機などのインフラ設備、CTやMRIといった医療機器など、多種多様な製品・機器で活用されている。同社は、同領域で国内トップクラスの実績を蓄積しており、FA(Factory Automation)等の機械制御系や自動車関連に強みを有する。車載向けに限定すれば実質的にすべての国内完成車メーカーに納入しており、国内トップシェアを誇っている。AIやロボットによる生産性革命や自動車産業におけるCASE(Connected:コネクティッド化、Autonomous:自動運転化、Shared/Service:シェア/サービス化、Electric:電動化)の推進、社会インフラ系でのIoT活用、といった大きな潮流に対応する同社の「AIS-CRM」戦略は中長期的な収益機会の獲得につながる公算が大きいと考える。2. 業務系ソフトウェア区分ではシステムインフラ構築を中心に各分野好調が続くSI事業のシステム構築区分に属する業務系ソフトウェアは、全社売上高の31.0%(2022年12月期上期)、同営業利益の23.6%(同)を占める大きな柱である。2022年12月期上期は売上高が前年同期比16.4%増、営業利益は同0.2%減となり、セグメント利益率は4.9%と同0.8ポイント低下した。2ケタ増収ながら減益を余儀なくされたのは不採算案件の影響によるものである。なお、不採算案件の発生は新たな分野に挑戦した結果ではあるものの、同社はプロジェクト・マネージメントの強化が重要課題であることを認識している。四半期受注高の前年同期比は、2020年12月期第2四半期をボトムに7四半期連続で増加、2022年12月期上期においても、第1四半期8.7%増→第2四半期16.6%増と好調な受注獲得ペースを維持している。2022年12月期上期末の受注残高は従来計上方式ベースで前年同期末比7.1%増となった。同領域は、オーガニックな事業拡大に加え、補完的M&A戦略が奏功し、現在では、流通業、金融業、サービス業、製造業、ネットビジネス、社会インフラ、教育、文教、医療、公共機関など幅広い業種に対し、店舗・受発注システムや生産・販売・在庫管理などの基幹システム、勘定系システム、情報システム、ネットサービスといった様々なソリューションを、コンサルティングから開発、システム構築、サポートまでワンストップで提供できる体制を確立している。国内ITサービス市場の主戦場に位置する業務系ソフトウェア領域については、1)オンプレミス(サーバー等のITシステムを自社内の設備で運用すること)からクラウドサービス利用へのシフト、2)「守りのIT(業務の効率化がメイン)」から「攻めのIT(事業の創造がメイン)」への進化、など既存プレイヤーにとって逆風になりかねない市場の構造変化が起こっている。このなかにあって同社は、「変化はチャンスなり」の精神で積極的な人財投資による受託開発強化を明確に打ち出し、実行している。まさに、「挑戦と創造」という社是にふさわしい経営判断であったと弊社は考える。この点、近年の業務系ソフトウェアの好調は、「AIS-CRM」戦略の推進を含めて、流通・サービス分野のeコマース化やデジタルコンテンツ分野の需要拡大、システムインフラ構築を中心とした分野における様々なデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)対応の加速、働き方改革をテーマとしたICT利活用の推進、セキュリティ強化等を目的とする仮想化技術導入の高まり、といった時代の流れや市場構造の変化に応えるサービスを的確に提供した結果だと言える。また、同社は既存プレイヤーにとって「不都合な真実」という一面を持つ「アマゾンエフェクト」(アマゾン・ドット・コムの急成長に伴い、様々な市場で進行している混乱や変革などの現象)を直視した事業戦略を推進、2020年1月には事業部を新設してネットビジネス分野での取り組みを一段と強化している。コロナ禍での巣ごもり消費拡大には一部変調が見られるものの、小売業におけるDXニーズはBtoCとBtoBいずれの分野でも高く、中長期的な成長トレンド持続が期待される。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:03
注目トピックス 日本株
アイリック Research Memo(2):企業テーマ「人と保険の未来をつなぐ~Fintech Inovation~」
■会社概要1. 会社概要アイリックコーポレーション<7325>は企業テーマに「人と保険の未来をつなぐ~Fintech Inovation~」を掲げている。自社開発のシステム・サービスを活用し、保険分析・販売支援プラットフォーマーとして事業展開するFintech企業である。本社所在地は東京都文京区本郷で、事業所は本社のほか、大阪支店(大阪府大阪市中央区)を展開している。2022年6月期時点でグループは同社、連結子会社1社(インフォディオ)で構成され、来店型保険ショップ「保険クリニック」運営(直営とFC)、保険分析・販売支援ソリューション、システム開発の子会社(株)インフォディオが開発したAIを搭載した非定型帳票対応の次世代型光学的文字認識システム「スマートOCR」関連事業などを展開している。2022年6月期末時点の資産合計は4,578百万円、純資産は3,800百万円、資本金は1,325百万円、自己資本比率は83.0%、発行済株式数は8,568,000株(自己株式367株を含む)である。なお2022年8月に、株式の分布状況の改善及び流動性向上を図ることを目的として立会外分売(50,000株)を実施した。2. 沿革同社は1995年7月に東京都新宿区で設立した。その後1999年12月に来店型保険ショップ「保険クリニック」を本格始動した。2004年4月に汎用型IQシステム(現 保険分析・検索システム「保険IQシステム」)が完成し、同年7月に「保険クリニック」のFC事業を開始した。なお、インフォディオ(2002年7月に出資比率50%で設立、2005年3月に完全子会社化)は、2018年4月に「スマートOCR」を開発した。その後、Fintech企業として「保険クリニック」の店舗拡大、生命保険の現状把握分析・検索提案システムASシリーズの各種プロダクトの開発・拡販、「スマートOCR」の拡販を推進している。株式関係では、2018年9月に東京証券取引所マザーズに新規上場し、2022年4月の東京証券取引所の市場再編に伴って東証グロース市場に移行・上場した。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:02
注目トピックス 日本株
富士ソフト Research Memo(2):挑戦と創造の精神を礎に売上高2,000億円の壁を大きく突破
■会社概要富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、1970年当時、コンピュータ専門学校で講師を務めていた現同社取締役相談役である野澤宏氏がコンピュータ産業の将来性に着目し、自身に加え2名の教え子社員とともに自宅で開業した富士ソフトウエア研究所である。設立50周年を超えた今、連結子会社31社(うち4社が上場企業)、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万7千人超のグループにまで発展している。企業規模が飛躍的な発展を遂げるなかでも、『もっと社会に役立つ もっとお客様に喜んでいただける もっと地球に優しい企業グループ そして「ゆとりとやりがい」』という基本方針のもとで事業を通じた社会貢献を目指す創業者の経営哲学は一貫しており、グループ会社憲章や役員・社員心得の制定等を通じて企業理念としての形式知化が図られている。なお、同社は「各企業が相互に独立会社としての尊厳と自主性・主体性を尊重する」とするグループ会社憲章のもとで、親子上場戦略を進め子会社として4社の上場企業を擁している。親子上場戦略が持続的な価値創造・企業価値向上に反することは許されないが、事業会社は資本市場のみに存在するわけではなく、製品・サービス市場や労働市場において厳しい競争にさらされている事実は極めて重要である。各市場におけるメリット・デメリットを総合的に判断すれば、現時点における同社の親子上場戦略には納得できるものがある。報告セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。また、報告セグメントを横断する技術戦略として、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。こうした成長分野で技術を蓄積し磨き上げることは容易ではないものの、「AIS-CRM」領域の単体売上高が2018年12月期の618億円から2021年12月期には959億円と順調に積み上がってきた実績を受けて、同社はこの技術戦略に対する手応え・自信を一段と深めているようである。創業時のコンピュータ・オペレーターの派遣業務事業で基盤を築いた同社は、その後、ソフトウェア開発やシステム構築の事業領域に進出、コンピュータ産業の爆発的拡大を追い風に飛躍的な発展を遂げたわけだが、その成長要因として見逃せないのが、「新たな分野に挑戦し、事業を創造し、企業としての成長・革新を目指す攻めの経営姿勢」を創業来継続していることである。創業者を含む経営トップがコンピュータ社会の到来と発展を確信し、相当程度大きなリスクを負ってでも積極的な人材採用・技術者育成と自社にない技術や顧客基盤を取り込む補完的M&A戦略を推進してきた結果、独立系ながら売上高2,500億円超、連結従業員数17,000人規模の企業グループにまで発展した事実には重みがあると考えられよう。実際、コンピュータ社会が現実化し国内ITサービス市場が6兆円規模に拡大するなかにあっても、売上高1,000億円大台を超える大手ITサービス企業は、メーカー系(富士通<6702>など)やユーザー系(NTTデータ<9613>など)、商社系(SCSK<9719>など)、外資系(日本IBM(株)など)がほぼすべてを占めており、創業来一貫して独立系と呼べる企業は同社を含めて3社に過ぎない。同社は、2002年3月期に売上高1,000億円超グループ入りを実現したわけだが、その際の従業員数は単体で4,002名、連結で見れば6,353名と創業以来の積極的な人材採用・技術者育成に支えられた業容拡大であったことがうかがえる。また、1996年には金融系業務システムに強みを持つ(株)エービーシーと合併、その後も1999年に外資系を源流とするサイバネットシステム<4312>を連結子会社化、2002年には流通系業務システムを主力とする(株)マイカルシステムズ(現 ヴィンクス<3784>)を連結子会社化するなど、組込系/制御系ソフトウェア開発という自社の強みを補完する技術や顧客基盤を取り込むM&A戦略を推進したことも、単に追い風に乗るだけでは成し遂げられない売上高1,000億円の壁を突破するために不可欠な大英断であったと考える。2011年3月期にかけてはリーマン・ショック等による減収局面を余儀なくされるも、2018年12月期に売上高2,000億円の大台乗せを達成、2021年12月期は2,578億円と、コロナ禍でも5期連続での過去最高売上高を更新している。そして、2022年2月に公表した新中期経営計画では、ベンチャー魂と大手IT企業としての矜持を両立するもとで、まずは2024年12月期に売上高3,000億円突破を目指す目標を掲げている。「技術力と提案力」をコアコンピタンスに据え、CSV的なイノベーション企業グループを目指す同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力、顧客に寄り添った拠点網(国内42拠点+グローバルネットワーク)の構築に裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。また同社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の創出とともに、様々な企業活動を通して社会の発展につなげることが重要な使命と考えており、中期方針として「ICTの発展をお客様価値向上へ結びつけるイノベーション企業グループ」を目指している。同社が発信しているメッセージから読み取れるのは、「ICT利活用の有効性・将来性への確信、その推進への使命感」と「顧客本位かつCSV型(Creating Shared Value:事業を通じた社会貢献により企業価値を増大させる企業)の経営方針」だろう。もちろん、企業活動は企業自身が意識しなくても、多かれ少なかれCSV的側面を持つものであるが、同社の場合、創業者の強い思いが「挑戦と創造」という社是のもとで、企業文化にまで落とし込まれてきたことに注目したい。こうした企業文化を礎に2022年2月に公表された新たな中期経営計画においても、同社のCSV型企業としてのユニークな取り組みとして、1990年から継続的に開催し国内最大規模のロボット競技大会に育った「全日本ロボット相撲大会」がある。ロボットづくりを通して、「ものづくりの楽しさを知る場」「技術を研く場」を提供することを目的にスタートしたわけだが、1993年より高校生の部を設けたことで、(公社)全国工業高等学校長協会が運営に参加、文部科学省や経済産業省が後援に名を連ねるなど、ものづくりを通じた人材育成支援の好例として認知されている。なお、コロナ禍にあって2020年と2021年の「全日本ロボット相撲大会」は開催見送りとなったものの、同社は小学生向けプログラミング体験や学生からのインタビューをリモート対応で受入れるといった教育支援を行い、「ものづくりを学ぶ場の提供に尽力すること」を社会貢献活動の柱に据える姿勢を継続していた。そして、2022年は「全日本ロボット相撲大会」を再開することを決定、12月に両国国技館を舞台に予選会・決勝大会が開催される予定である。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:02
注目トピックス 日本株
アイリック Research Memo(1):保険分析・販売支援プラットフォーマー。2022年6月期は増収増益
■要約アイリックコーポレーション<7325>は、自社開発のシステム・サービスを活用し、保険分析・販売支援プラットフォーマーとして事業展開するFintech企業である。自社開発した業界唯一のワンストップ型保険分析・検索システム「保険IQシステム(R)」(以下、「保険IQシステム」)を活用して、1999年に日本で初めてオープンした来店型保険ショップ「保険クリニック(R)」(以下、「保険クリニック」)を直営とFCで全国展開している。保険分析・販売支援プラットフォーマーとして金融機関や保険代理店向けのASシリーズ(「ASシステム」「AS-BOX」)の販売も行っている。また、AIを搭載した非定型帳票対応の次世代型光学的文字認識システム「スマートOCR(R)」(以下、「スマートOCR」)関連を成長分野と位置付けている。1. 2022年6月期は増収増益で着地2022年6月期の連結業績は、売上高が前期比12.1%増の5,199百万円、営業利益が同14.3%増の418百万円、経常利益が同15.5%増の432百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.7%増の255百万円となった。新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、「コロナ禍」)の長期化により「保険クリニック」(直営店)への新規来店客数が微増にとどまったため保険販売事業の直営店部門・RM部門が伸び悩み、全体として計画を下回ったが、ストック収益が主力のソリューション事業のAS部門や成長分野と位置付けるシステム事業が順調に拡大して増収増益で着地した。なお、期初時点では「保険クリニック」の大規模プロモーションを計画していたが、コロナ禍の影響で十分な効果が見込めないと判断して取りやめた。2. 2023年6月期は大規模プロモーションの計画により減益予想だが上振れの可能性2023年6月期の連結業績予想は、売上高が前期比17.8%増の6,122百万円、営業利益が27.2%減の304百万円、経常利益が28.1%減の310百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が30.0%減の179百万円としている。各事業とも順調に伸長して2ケタ増収予想も、「保険クリニック」の大規模プロモーション(TVCM等)計画により広告宣伝費が増加し、システム事業の開発費の増加などを考慮して全体で減益予想としている。新規出店に係る先行投資が2022年6月期までに完了した場合、コロナ禍の影響緩和や大規模プロモーション効果による新規来店客数・成約数増加で利益が出やすい収益体質となっていること、ソリューション事業のAS部門やシステム事業が順調に拡大することを勘案すれば、会社予想に上振れの可能性があると弊社は考えている。3. Fintech企業として中長期的に成長ポテンシャル大きい同社はコロナ禍の長期化による事業環境変化に対応して、2023年6月期~2025年6月期の新たな「3か年計画」を策定した。1年目を「再始動の年」、2年目を「投資継続の年」、3年目を「成長の年」と位置付けて、最終年度となる2025年6月期の目標値に売上高8,495百万円~8,795百万円、営業利益700百万円~1,000百万円を掲げた。「保険クリニック」店舗事業及び保険分析・販売支援プラットフォーマーとして収益拡大を図るとともに、成長分野と位置付ける「スマートOCR」の拡販も推進し、業界の枠を超えたFintech企業としての成長を目指す方針だ。弊社ではFintech企業として中長期的に成長ポテンシャルが大きいと評価している。■Key Points・来店型保険ショップ、保険分析・販売ソリューション、スマートOCRを展開・2023年6月期は大規模プロモーションを計画して減益予想だが上振れ余地・Fintech企業として中長期的に成長ポテンシャル大きい(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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2022/09/30 17:01
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富士ソフト Research Memo(1):攻めの経営姿勢を貫きつつ、さらなる企業価値向上を目指す
■要約1. 会社概要と事業内容富士ソフト<9749>は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。そのルーツは、現在の同社取締役相談役である野澤宏(のざわひろし)氏が自宅で自身に加え2名の社員とともに開業した(株)富士ソフトウエア研究所であり、設立50周年を超えた今、連結子会社31社、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万7千人規模(2022年6月末現在)のグループにまで発展している。報告セグメントは、SI事業(システム構築とプロダクト・サービス)、ファシリティ事業、その他の3つから成る。主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。また、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。2. コアコンピタンスは「技術力と提案力」同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力などに裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。3. ポストコロナ時代を見据えて人財投資を再び積極化同社は顧客の業況感回復とDXニーズの高まりに対応するため、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を受けて抑制していた採用活動を再拡大している。2022年6月末における臨時雇用を含む連結従業員数は17,436名と半年間で2,480名もの増員を実現し、生産力の確保と人財の高度化に注力している。振り返れば、同社はリーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、柔軟な経営戦略のもと財務体質強化と成長ポテンシャル増強をバランス良く両立した実績を持つ。今回のコロナ禍にあっても、自己資本比率が2019年12月期末54.1%→2022年12月期上期末54.8%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同7,498百万円→同9,880百万円のキャッシュ超過(実質無借金経営)と同社は財務体質の一段の健全化を実現しており、守りを固めながらも攻めの経営を貫くスタンスに変化はない。4. 2022年12月期上期の連結業績は、期初予想から上振れて着地2022年12月期第2四半期累計期間(以下、上期)の連結業績は、売上高が前年同期比6.7%増の141,328百万円、営業利益が同3.0%増の8,995百万円、経常利益が同5.2%増の9,954百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同25.7%増の5,850百万円と上期としては7期連続での増収増益となった。同社による2022年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.0%増の265,500百万円、営業利益が同2.7%増の17,300百万円、経常利益が同2.9%増の18,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.2%増の9,700百万円、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に9期連続での増収・営業増益を見込んでいる。配当予想は、2021年12月期実績の年間52円/株(第2四半期末に26円/株、期末に26円/株)から年間109円(第2四半期末に54円/株、期末に55円/株)へと大幅に引き上げられ、8期連続増配となる見通しである。なお、業績予想及び配当予想は本年2月公表の期初予想から据え置かれているが、上期計画に対する達成率や通期計画に対する進捗率から見て、現時点では増額着地となる可能性が大きいと考えている。5. 新設された企業価値向上委員会、一歩踏み込んだアプトプットの発表に期待したい同社は新中期経営計画を2022年2月に公表して以降、多くの投資家と建設的な対話を行ってきた。そして2022年8月、そこで得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につなげるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月の最終報告に向けて活動を加速している。客観的視点を確保するため、「企業価値向上委員会」は取締役会出席者に加え外部アドバイザリーにより構成されており、同委員会で審議する素案づくりを目的に、1)企業統治検証、2)株主投資家対応、3)事業検証、4)企業グループ検証、5)不動産検証、という5つの課題別にワーキンググループ(WG)が設置されている。先の新中期経営計画で示された各種数値目標(2024年12月期に売上高3,000億円以上、営業利益200億円以上、ROIC8.0%以上、ROE9.0%以上、EBITDAマージン9.0%以上、配当性向35.0%以上)は、過去の中期経営計画に比べ水準的にも内容的にも評価できるものであったわけだが、「企業価値向上委員会」によるアウトプット(最終報告)がさらに一歩踏み込んだものになることを期待したい。■Key Points・1970年設立の独立系大手ITソリューションベンダー。積極的な人財投資と補完的M&A戦略が奏功し、売上高2,000億円の壁を大きく突破、2022年6月末の連結従業員数は1万7千人超を擁する・コアコンピタンスは豊富な実績と企業理念に裏打ちされた「技術力と提案力」。リーマン・ショック後の業績低迷期を経て、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強の両立を実現している・2022年12月期上期業績は期初公表値を上回り、7期連続での増収増益を実現した。同社による2022年12月期通期予想(3.0%増収、2.7%営業増益)は期初計画が据え置かれたが、現時点では上振れ着地となる可能性大と考える・2022年8月、投資家との対話で得られた多角的な見識をさらなる企業価値向上につながるべく「企業価値向上委員会」を新たに設置、2023年2月に公表される最終報告の内容に期待したい(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/09/30 17:01
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極東貿易 Research Memo(9):引き続き配当性向100%を維持、積極的株主還元策を推進
■株主還元策極東貿易<8093>の利益分配の基本方針では、「継続的な成果の還元と企業価値の持続的向上を実現のため、適正な資本政策の下、将来の事業展開と財務状況、収益動向などを総合的に勘案した配当を実施する」としている。また、2023年3月期の配当性向100%または株主資本配当率4.0%のいずれか高い方を年間配当金とするとしており、中間配当は1株当たり75円※を計画している。※2022年9月1日付で普通株式1株を2株とする株式分割を実施。2023年3月期の配当金は、株式分割前の株式数記載。引き続き高配当政策(配当性向100%)を進める。当期純利益のすべてを配当金に充てる。株主還元策として評価して良いだろう。2024年3月期までは配当性向100%を計画している。一方で、新中期経営計画では2026年3月期の資本効率目標としてROE8%以上を掲げているが、仮に収益が計画を下回った場合は自己資本を上げずに資本効率を上げていかなければならない。高配当政策の背景には、そういう利益分配上のジレンマもあるように思われる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:59
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極東貿易 Research Memo(8):新規事業の洋上風力発電関連事業の拡大に期待
■中期経営計画と成長戦略(2) 新規ビジネスの開発と育成新中期経営計画の最大の目玉は、新規ビジネス(M&A含む)である。5つの成長分野への取り組みをプロジェクト化し、経営資源投入を強化している。これは就任4年目となる岡田社長の強い思いでもあり、社長直轄プロジェクトとして、戦略的に取り組んでいる。5つの成長分野とは、1)再生可能エネルギー、2)水素・電池、3)環境衛生、4)バイオプロダクツ、5)産業向けDX・IoTである。5つの成長分野についてはこれまで極東貿易<8093>も何らかの形で関わってきており、市場や技術の知見や経験が生かせる分野でもある。同社はそのなかから、複数の事業化を目論んでいる。ここで注目しておきたいポイントは、同社がM&Aの成功のための知見やノウハウを有していることである。2023年3月期は、5つの成長分野のなかから、重点3新規事業「洋上風力発電関連事業」「自動運転システム関連事業」「バイオプロダクツ」に注力している。重点3新規事業の活動状況は逐次、経営企画部へ報告される。社長直轄マターとして、全社的視点で協業・M&Aやリソース配分などを判断し新規事業の舵取りをしている。1) 再生可能エネルギー分野:洋上風力発電関連事業同社はこれまで資源開発関連事業で培ってきた海底探査、掘削の経験と知見を生かし、「洋上風力発電」分野の周辺機器というニッチ市場で事業化を進めてきた。この度、オランダのTWD B.V.(以下、TWD)との戦略的アライアンスを結んだ。TWDは洋上風車等の建設のための特殊大型治具(Pile Gripper、建て起こし機、Lifting Tool、各種架台、JacketのTemplate 等)の設計・製作・メンテナンスを行っている。業界での知名度は高く、国内のマリコン※やゼネコンも積船の機材設計の機会があるとTWDに引き合いがくるようである。この分野ではTWD以外に設計できるところはほとんどなく、オンリーワンの存在となっていると言う。※マリコンはマリンコントラクターの略で、五洋建設<1893>や東亜建設工業<1885>などが有名。2022年1月には、オランダ TWD B.V.の日本代理店である(株)トリオマリンテックと同社にて合弁会社TWD Japan(同社出資比率70%)を設立した。はじめは設計・製作・サプライで商売していくが、将来的には保守・メンテナンスサービスへの事業展開を目論んでいる。同社は、設計・製作段階から運営・メンテナンスまで関われば、洋上風力風車に関する経験・ノウハウが蓄積できると考えている。洋上風力発電関連事業については、2023年3月期の売上高は4~5億円、2026年3月期には20億円を見込んでいる。既に概要設計の複数受注が決まっており、この計画は堅めの数値で計画前倒しの可能性もある。また、同事業は収益性も高い。TWD Japanの商圏は当面、日本・東アジア(台湾)となるが、日本だけでもかなりの引き合いがあり、まずは足元の日本で事業基盤を強化する予定である。そして、洋上風力発電関連事業ではTWD以外にもさまざまな種まきを行っているもようで、第2弾、第3弾の事業シナリオも楽しみである。2) 産業向けDX・IoT分野:自動運転システム関連事業同社は、大手鉄鋼メーカーによる「製鉄所構内で運行する特殊車両を自動運転にできないか」という依頼を機に、製鉄所構内での構内用特殊車両の自動運転システムの商用化に乗り出した。同社はこれまで、工場向けIoT機器や構内自動運転機関車の開発に取り組んできた。その知見を生かし、自動車試験システムのトップサプライヤーである英国AB Dynamics Ltdグループと共同開発することとなった。工場構内を走行する現行特殊車両向け障害物検知機能組込み自動運転システムの開発において、パートナーシップ協定を締結した。現時点では、既存車両を改造した自動運転(無人化)を想定している。同製品の適用分野は国内鉄鋼メーカー、化学プラントなどが挙げられる。構内用特殊車両の自動運転システム事業は、新中期経営計画期間内に売上高10億円を見込んでいる。同社は今後、特殊車両のドライバーの高齢化で自動運転ニーズはますます高まると見ている。同社では産業系自動運転分野の知見やノウハウを深めると同時に、新技術の導入も進め、完全自動化に備える。3) その他の取り組み事業:バイオプロダクツこのテーマは中長期の新規事業テーマと位置付けており、「生分解促進添加剤販売」と「生分解プラスチックの自社ブランド品の開発販売」の2つのテーマがある。「生分解促進添加剤」は米国のベンチャー企業EcoLogic LLCと代理店契約を結び販売をスタートしたところである。「Eco-One」は、FDA(米国食品医薬品局)に準拠した添加剤で、オーガニック100%である。樹脂に「Eco-One」を約1%添加することで、樹脂製品に生分解・海洋分解性機能を付与できる。用途はランニングシューズ、オフィス家具、医療用資材、レジ・ゴミ袋など幅広く、環境価値を重視するユーザーに受け入れられると弊社は見ている。まだスタートしたばかりで事業プランは色々あるようだが、事業化には時間がかかるもようだ。同社は新中期経営計画の期間中には事業化したいという考えである。資本効率性と株主還元策を両立した巧みな資本戦略(3) 株主価値に資する資本政策の実行株主価値・企業価値向上のためには、営業利益を1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性を高めることがカギとなる。新中期経営計画では、2026年3月期の経営目標であるROE8%達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行する一方で、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。事業を推進するうえでの資金の余力があるためである。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、当面3年間は当期純利益をすべて配当金に分配(配当性向100%)するという積極的な株主還元策を進める。同社では、機関投資家向け決算説明会(2022年5月26日開催)に続き第102回定時株主総会(同年6月23日開催)にて、資本コストを開示した。既に会社方針や社長メッセージでも「資本コストを意識した経営」を打ち出し、コーポレートガバナンス報告書でも「資本コストの開示」を通知した。「株主提案」の前から、同社には情報開示の意思があったようである。「2023年3月期の株主資本コスト7.7%、加重平均資本コスト(WACC)5.7%」という情報開示に対して、株主や投資家の反応は、総じて肯定的評価が多いようである。今後は、この資本コストをベースに投資判断や事業ポートフォリオ戦略に活用することが望まれる。なお、配当政策については「株主還元策」の項で述べる。(4) パラダイムシフトのなかで「想像」し「創造」できる人材を育成同社の企業成長を担う社員の育成を着実に進めるべく、中長期的な視野で人材投資を行い、社員が活躍できる環境整備を積極的に進めている。人材育成にあたっては、今後以下の2点を推進するとしている。・コンセプチュアルスキルを強化するための研修プログラムを計画…コンセプチュアルスキルとは、知識や情報を体系的に整理し、複雑な事象や曖昧な状況を概念化する力・社員の「創造性」や「柔軟性」を受け止める社内ルール制定や体制改革を実行…創造性や柔軟性の評価方法、積極的な受入体制や土壌や風土の地盤づくり(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:58
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極東貿易 Research Memo(7):新中期経営計画の最大の目玉は、新規ビジネスの開発と育成
■極東貿易<8093>の中期経営計画と成長戦略2. 新中期経営計画2期目の進捗中期経営計画2期目となる2023年3月期も以下の3つの重点施策を継続し強化していく。・サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資実行2022年1月に洋上風力に関わる事業会社であるTWD Japanを設立したことで、脱炭素・気候変動への取り組みに関わる事業の新たな収益源泉を創出する。・株主価値に資する資本政策の実行2023年3月期においても計画どおり積極的な株主還元を実行することで株主価値を高める。・パラダイムシフトのなかで「想像」し「創造」できる人材の育成中長期的な視野で人材投資を行い、社員が活躍できる環境整備を積極的に行っていく。(1) サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資実行1) 事業ポートフォリオ戦略の構築へ同社は2022年4月付で営業組織を統合した。基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門の5つの営業部を統合して、「産業インフラソリューショングループ」へ、産業素材関連部門の3つの営業部を「マテリアルソリューショングループ」へと、2つの営業グループに統合した。もともと各営業組織は規模が小さく慢性的な人手不足であり、新たな戦略的な営業活動ができず機会損失も生じていたと言う。今回の営業組織の統合を行った狙いは3つある。第1に、事業特性や営業特性に適した事業戦略とその実行組織の再編である。2つの営業グループ(産業インフラソリューション、マテリアルソリューション)は、設備エンジニアリング系ビジネスと素材(“流れモノ”)サプライヤー系ビジネスと定義され、売り方やビジネスのやり方が異なる。今後は、それぞれの営業組織で事業戦略と営業戦略を策定し実行する。第2に、2つの営業組織にしたことにより、将来的には顧客のニーズに応じて、プロジェクトチームで動けるよう柔軟な営業体制を組めるようにする。第3に、顧客情報や専門的知見やノウハウを組織で共有することで、営業人材の育成強化につなげる。今回の営業組織改革は、合理化や人員削減などの守りの組織改革ではなく、戦略的意味を持った、攻めの組織改革であることを付け加えておく。2) 事業ポートフォリオの再編と強化同社では、今回の営業組織改革を機に、事業セグメントの再編も同時に行った。2023年3月期より、報告セグメントを従来の4事業セグメントから3事業セグメントへ変更した。「基幹産業関連部門」と「電子・制御システム関連部門」を統合して「産業設備関連部門」を新設し、従来の「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」で3事業セグメント体制とした。その背景には、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の製品はすべて撤退すると決断したこと、電子・制御システム関連部門では主力事業であった「計装システム(火力発電所向け制御装置)」を失ったことで事業規模が圧倒的に小さくなり、単独で事業セグメントを組む必要がなくなったことがある。そのため実質的には基幹産業関連部門に電子・制御システム関連部門を吸収した形となった。今回の会計基準変更により、売上高・売上総利益のトップは基幹産業関連部門セグメントから機械部品関連部門セグメントへ交代となった。中長期の事業ポートフォリオで見ると、機械部品関連部門(特にねじ事業)を将来のコア事業に育てるべく、集中的リソース配分を検討する時期に来ているのかもしれない。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:57
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極東貿易 Research Memo(6):事業ポートフォリオ戦略の最適化と大型新規事業の開発を目指す
■中期経営計画と成長戦略極東貿易<8093>は2021年3月期の業績を受けて、2020年3月期を初年度とする前中期経営計画「KBKブレイクスルー2023」の見直しを余儀なくされることとなった。グローバルな事業環境の変化はコロナ禍の影響のみならず、カーボンニュートラルに向けた各界のパラダイムシフト、DXを活用した未来化対応並びに環境破壊への対応が産業界の大きな改革意識をもたらしたことなどを踏まえ、同社では前中期経営計画を改訂し、2年間延長した。そしてより現実に即した同社の中長期的な発展に資する取り組み計画として、2022年3月期が初年度となる新たな中期経営計画「KBKプラスワン2025」を策定した。新中期経営計画では、引き続き事業ポートフォリオの最適化を実行し、注力すべき事業領域を選別して収益力の強化を目指す。また、サステナブルな社会を実現するための新分野における事業展開と投資を実行することで、新たな収益の源泉を創出するとしている。1. 新中期経営計画「KBKプラスワン2025」の概要・環境・社会・ガバナンス体制(ESG)サステナブルな社会を実現していくために、同社が培ってきた技術や顧客資産を生かした多様なESGビジネスを展開し、企業価値を高める。・事業戦略(事業ポートフォリオ戦略)新規事業創出のために3つの事業部門を横断したプロジェクトチームを設置した。また、5年間で総額50億円の投資枠(M&A)を設定した。5年~10年展望で種まきと新しい事業の柱を同時並行で複数育成する。・ 財務・資本戦略ROE8%以上の水準を目指し資本効率性の向上を図る。自己資本を3年間積み増さず、資本効率性も考慮に入れながら、積極的な株主還元(前半の3年間は配当性向100%)にも取り組んでいく。・ 株主価値/企業価値の向上資本コストを上回るリターンの確保とともに、東証プライム市場(流通株式時価総額100億円以上)の上場条件を満たす。資本効率性の経営目標(2026年3月期ROE8%以上)はストレッチした目標ではないが、現在のROEは3.5%(2022年3月期)と厳しい状況である。現在は屈伸した状態にあるが、この後に小さなジャンプ(“Change & Growth”)をするつもりでROE8%の達成を目指すとしている。2026年3月期の主な経営目標は以下のとおりとなる。・連結経常利益…25億円・ROE…8%以上・配当性向…変革期である前半3年間(2022年3月期~2024年3月期)は100%を維持・自社株買い…状況に応じて機動的に実施(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:56
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極東貿易 Research Memo(5):新しい事業ポートフォリオで新たな成長戦略を実行
■今後の見通し1. 2023年3月期の業績見通し極東貿易<8093>の2023年3月期の連結業績は厳しい事業環境が予想されるが、下記の重点施策を着実に実行することで、売上高は42,000百万円、営業利益900百万円、経常利益1,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を見込んでいる。なお、売上高(期初予想)は2022年3月期から適用される新会計基準に準じて算定されたものである。2. 事業セグメント別見通し2022年4月より、報告セグメントを従来の4事業セグメントから「産業設備関連部門」「産業素材関連部門」「機械部品関連部門」の3事業セグメントへ変更した。(1) 産業設備関連部門売上高は13,400百万円(前年同期比6.8%増)、売上総利益3,400百万円(同15.1%増)と全体で好調に推移する見込みである。ウクライナ情勢の影響により、モスクワEVバス向けのリチウムイオン電池事業は取引停止状態となっている。また、2022年3月期に好調だった海外プラント向け設備関連事業も2023年3月期は一服感がある。コロナ禍の影響で遅延していた国内プラント向けや資源探査関連の大型設備は2023年3月期に納入予定となっており、国内向け設備事業は全体的に好調に推移する見通し。また、自動車用試験システム事業もコロナ禍の影響から回復する見込みである。(2) 産業素材関連部門売上高は11,800百万円(前年同期比8.5%増)、売上総利益1,900百万円(同5.8%増)と、おおむね堅調に推移する見込みである。自動車業界全体は、半導体不足などの影響から不透明な状態が続き、中国向けの塗料事業はコロナ禍の影響を受け上期は伸び悩むとしている。炭素繊維関連事業は、下期から航空機業界向けの復調が徐々に見込まれ堅調に推移することが見込まれる。(3) 機械部品関連部門売上高は16,800百万円(前年同期比3.2%増)、売上総利益3,600百万円(同4.3%増)としている。同社によるとさらに上振れの可能性もあるようだ。ねじ関連事業は、コロナ禍で2年ほど苦戦したが、コロナ禍前の水準にまで回復してきた。そして、2023年3月期も引き続き好調が続く見込みである。一方、ばねやぜんまいに関連した事業は、2022年3月期は車載備品用定荷重ばねの量産受注が好調であったが、2023年3月期は前期のようには伸びない見通しを立てている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:55
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極東貿易 Research Memo(4):海外向け重電事業、ねじ関連事業が好調
■業績動向1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要極東貿易<8093>の2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準を適用したためであり、2022年3月期における売上高については、旧会計基準と比較して20,826百万円の減収となった。ただし旧会計基準では、実質増収である。顕著な事業部門としては、重電設備が約1/3の売上規模となった。これらの事業では大手メーカーの商材・エンジニアリングサービスの代理店業務が売上高では大きな部分が“代理”と見なされているためである。新会計基準での売上高は減少したが、旧会計基準では60,500百万円と、前期比3,100百万円の増収となった。基幹産業関連部門の海外プラント向け重電事業が好調に推移したことに加え、機械部品関連部門のねじ関連事業が新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)前の水準に復調し全体としても回復基調となった。親会社株主に帰属する当期純利益の増益要因としては、事業ポートフォリオ最適化を伴う構造改革の一環として実施のブラジル現地法人撤退による関係会社出資金評価損等の特別損失が発生したことなどによる。同社ではビジネス領域が幅広く、不透明かつ不確実な事業環境(コロナ禍の影響継続、ウクライナ情勢、世界的インフレなど)のなか、同社のビジネスにも大きな影響があったようだ。具体的には、ウクライナ情勢の影響によりロシア向けビジネス(モスクワのEVバス向け車載リチウムイオン電池)は取引停止状態となり、消失した。また、航空機関連ビジネス(炭素繊維材料の輸入販売)がコロナ禍前の業績から回復していない。2023年3月期下期より徐々に復調すると見込んでおり、以降は堅調に推移するとしている。2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。2. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期のセグメント別業績(1) 産業設備関連部門(旧 基幹産業関連部門及び旧 電子・制御システム関連部門)2022年3月期の基幹産業関連部門の売上高は8,718百万円となり、売上総利益は1,965百万円(前年同期は1,920百万円)となった。コロナ禍の影響で鉄鋼関連事業及び資源開発機器事業において大型案件の翌期への納期遅延が発生したことに加え、検査装置事業は低調に推移したものの、海外プラント向け重電事業が新興国を中心に好調に推移した。2022年3月期の電子・制御システム関連部門の売上高は3,829百万円となり、売上総利益は989百万円(前年同期は1,129百万円)となった。事業承継により2023年3月期より連結子会社で生産を開始した地震計に関連した事業が好調に推移したものの、計装システム事業は既に同事業における販売代理業務を終了したため受注済み案件の計上にとどまったほか、電子機器事業が低調に推移した。2023年3月期より基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門となった。2023年3月期第1四半期の売上高は2,135百万円(前期比25.2%減)となり、セグメント損失は208百万円(前年同期は191百万円の損失)となった。海外プラント向け重電事業が好調に推移したものの、ロシアEVバス向けリチウムイオン電池事業がウクライナ情勢の影響を受けて大きく落ち込んだこと、自動車業界向け検査装置事業の受注が伸び悩んだことにより減収・損失拡大となった。(2) 産業素材関連部門2022年3月期の売上高は10,875百万円となり、売上総利益は1,796百万円(前年同期は1,820百万円)となった。米国向け及び中国自動車業界向け樹脂・塗料が好調に推移したものの、メキシコ向けは、半導体不足に伴う部品供給制限による自動車メーカーの操業制限の影響を受けて落ち込み、また、コロナ禍の影響を受け食品関連事業が大きく落ち込んだ。2023年3月期第1四半期の売上高は2,989百万円(前年同期比28.2%増)となり、セグメント利益は44百万円(同120.0%増)となった。前年同期に国内外ともに大きく落ち込んだ自動車業界向け樹脂・塗料事業は、北米及び国内向けにおいて持ち直しが見られた。(3) 機械部品関連部門2022年3月期の売上高は16,281百万円、売上総利益は3,453百万円(前年同期は2,710百万円)となり、大幅な増収増益となった。ねじ関連事業は、コロナ禍により2年ほど苦戦したが、コロナ禍前の水準にまで回復した。ばね関連事業は、車載備品用定荷重ばねの量産受注が好調に推移し増益となった。ねじやばねについては、素材提供(“流れモノ”)型ビジネスであり、「収益基準変更」の影響は受けなかった。2023年3月期第1四半期の売上高は4,250百万円(前年同期比7.2%)となり、セグメント利益は161百万円(同12.0%減)となった。ねじ関連事業は引き続き好調のようだ。特に、住宅設備向け、建設機械向け、産業機械向けが好調に推移し増益傾向が見られた。ばね関連事業の落ち込みに加え、コロナ禍で停滞していた営業活動を再開し、積極的に展開したことから販売費及び一般管理費が増加した。3. 財務状況2022年3月期末の資産合計は、前期末に比べ6,277百万円減少し、45,513百万円となった。その主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度末は受取手形及び売掛金)が4,691百万円減少、前渡金が1,419百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、同6,642百万円減少し、22,889百万円となった。その主な要因は、支払手形及び買掛金が5,232百万円減少、契約負債(前連結会計年度末は前受金)が2,135百万円減少したことなどによるものである。純資産合計は、同365百万円増加し、22,623百万円となった。これは主として為替換算調整勘定が623百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が198百万円減少したことによるものである。2023年3月期第1四半期末における資産合計は、前期末に比べ782百万円減少し、44,731百万円となった。その主な要因は、前渡金が373百万円増加、投資有価証券が118百万円増加した一方、受取手形、売掛金及び契約資産が1,355百万円減少したことなどによるものである。負債合計は、前期末に比べ1,217百万円減少し、21,671百万円となった。その主な要因は、契約負債が256百万円増加、その他流動負債が467百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が623百万円減少、電子記録債務が546百万円減少したことなどによるものである。純資産は、前期末に比べ435百万円増加し、23,059百万円となった。その主な要因は、前期末に比べ為替換算調整勘定560百万円の増加及び、親会社株主に帰属する四半期純利益147百万円を計上した一方、配当金の支払い338百万円を実施したことによるものである。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:54
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極東貿易 Research Memo(3):経営危機をバネに、経営の舵取りと企業構造を大きく転換(2)
■会社概要3. 特長と強み(1) 理系出身の営業職・技術営業職は7割以上を占める通常、商社の営業現場では文系出身者が多いとされているが、極東貿易<8093>では営業マンの7割以上は大学の理系出身者が占める。同社は人事政策上、理系出身者の採用を重視してきた。その背景には、技術営業を行うことのほか、導入・据付、運用・保守までエンジニアリング全般を、同社営業マンが仕入れ先の海外メーカーに頼らず、顧客に対して自主的に技術サポートできるようにしてきたためである。顧客へ納入した装置が原因不明の停止や故障になる度に海外メーカーに問い合わせるのでは時間がかかることから、同社の営業マンは顧客から絶大なる信頼を得ていると言う。さらに、同社では点検・保守メンテナンスを適時的確に対応すべく、保守・メンテナンスの専門子会社(日本システム工業(株))を設立して運用している。同社には資源掘削関連部門があり、大学の地質工学や自然エネルギー資源の研究をしてきた学生を積極的に採用している。同関連部門の担当者は海外の採掘メーカーの技術者とともに海洋資源探査船に約3ヶ月間乗り込み、採掘装置の動作試験や立会試験まで関わっている。(2) 顧客に大手企業が多く、信頼関係とロイヤリティを得ている同社はこれまで日本の基幹産業(建設、鉱山、製鉄所、化学プラント、電力、繊維、エレクトロニクス、自動車部品等)に深く関わってきたため大手企業との取引が多い。同社創業以来の取引が継続している企業もあり、信頼関係とロイヤリティを得ている。一方、欧米、アジア等の海外市場でも米国自動車Big3や独自動車メーカーとも取引がある。これは同業技術商社と比較しても優良な顧客構造になっている。その根拠として、中堅商社の課題である「貸し倒れ」が、同社ではほとんど発生していないことが挙げられる。また、国内主力製鉄所にはすべて出張所(室蘭、君津、千葉、知多、広畑、水島、小倉、大分)を配置して、細やかな営業サービスで差別化を図ってきた。製鋼の特定プロセス分野の装置を含めたプロセスソリューションの役割を同社が担っていると言える。(3) 「誠実さ」と「粘り強さ」で取引先から高い評価大手企業から厚い信頼を得ている背景には、誠実さと真面目さが挙げられる。顧客との交渉シーンでも顧客から「この価格でお宅は商売になるの」と言われることもあるようだ。また、粘り強い人が多いとも言われるようだ。そのため、新商材・新規事業において、困難があっても粘り強さを発揮するようだ。その好例が「軽量ケーブル」である。2007年ごろに航空電子営業部門が海外から持ち帰り、国内小型航空機向けに粘り強く提案とフォローを繰り返してきた。同時に2012年からラグジュアリーカー用軽量ケーブル向けに提案営業を繰り返し、2016年にやっと採用までこぎ着けた。そのような営業人材が多いことが技術商社にとって最大の強みである。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:53
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極東貿易 Research Memo(2):経営危機をバネに、経営の舵取りと企業構造を大きく転換(1)
■会社概要1. 沿革極東貿易<8093>は2022年11月に設立75周年を迎える。第2次世界大戦の終戦後、三井物産<8031>は財閥解体となったが、機械部門(営業課及び貿易課)が主体となり独立して同社が設立された。その後、海外の最先端の建設・鉱山機械や製造装置等を国内の基幹産業(建設、製鉄、化学プラント、電力、繊維、エレクトロニクス)へ輸入販売して日本の経済復興に貢献し、日本の高度経済成長とともに成長してきた。同社は、国内の大手企業から厚い信頼とロイヤリティを得ながら、基幹産業界のなかで一定の地位を確保してきた。その後、航空・防衛産業向け電子機器や自動車産業向け樹脂・塗料等、事業領域の幅が広がった。特に航空・防衛関連事業は、同社の事業の大きな柱となっていった。1987年に東証に上場した頃は、産業用機械(製鉄所、電力等)、産業素材、航空・防衛関連が中核事業であった。2000年頃には年商2千億円を突破し、順調に拡大した。光通信用半導体も取り扱ったが市場が不透明でありボラティリティ(市場価格が1/100まで下落)が大きく、事業マネジメントが難しい局面もあった。そのような難局も乗り越え、同社は小粒でありながらも多種多様な事業を展開して、現在の総合商社のような事業構造の原型をつくり上げてきた。ところが、2008年1月に同社を揺るがす大事件が起きた。防衛省への過大請求事案である。当時の新聞で取り扱われ、この事案解決までに約2年間を要した。これにより輸入元の米国メーカーとの契約取消・解除などが重なり、業績は大きく悪化した。結果として、航空・防衛関連は壊滅的状態となり、中核事業の一角を失った。また、当時は会計制度(売上計上法の変更)見直しの影響もあり、同社の単体売上高2千億円超は1/4以下にまで縮小した。そこで、同社では「企業変革と再成長」に取り組み、手持ち資金の取り崩しやコストカット等あらゆるリストラを断行したことで、“最悪の事態”を回避した。この経営危機を機に大きく経営の舵を切った。中核事業の一角(航空・防衛関連)を失った事業構造を立て直すべく、新たな事業をM&Aで取り込んだ。幸い、不祥事対策やリストラ対策等に手持ち資金を一部充当したが、M&Aを実行する資金は手元にあった。2011年1月の(株)ゼットアールシー・ジャパンを皮切りに、2018年までの7年間で立て続けに7案件以上のM&Aを実施した。結果的にはすべて成功(いずれの案件も売上総利益率は全社平均売上総利益率を上回る)した。最も成功したM&Aは2015年9月に完全子会社化したヱトー(株)である。ヱトーは自動車部品、建設機械、産業機械、住宅設備等の特注品ねじ等を取り扱っており、2022年3月期の連結売上総利益8,194百万円のうち3,453百万円(構成比42.1%)を稼ぐ儲頭事業となった。それ以外でも、サンコースプリング(株)は他社が真似できない「定荷重ばね」を開発して、世界トップクラスのシェア製品やオンリーワン製品を数多く生み出し、高付加価値・高収益(売上総利益率35.9%)で貢献している。また、2018年4月には輸出商社のプラント・メンテナンスを完全子会社化し、同社の重電設備事業とのシナジーにより国内外での拡販を強化した。同社は、エンジニアリング商社として、1)経営理念:「ニーズとシーズの橋になる」、2)社是:「人と技術と信頼と」を掲げ、「顧客からどんな高度な要求をされても、それに応えられる商社でありたい。そのためには、単にモノを提供するだけでなく、技術サポートを行い、ベストな商品を企業に提供する」ことを重視している。2. 事業概要大手商社に比べると企業体力で劣る中堅商社は、得意分野に絞り込み専門商社として事業展開するケースが一般的である。同社は設立75年の歴史のなかで、基幹産業からインフラ、そして、炭素繊維やメタンハイドレート等の先端分野まで幅広い業種を対象としてきた。事業ポートフォリオの観点から見ても、同社の事業構造は景気に左右されにくい収益構造である。高い成長性は見込めないが安定受注・収益に寄与する重電、鉄鋼、化学プラント向け基幹産業事業や、特定車種に採用が決まれば、3~5年間安定的に受注できる自動車関連事業(樹脂・塗料等)などを事業展開しており、個々の事業での需給変動や価格変動等の各種ビジネスリスクを吸収して事業の好不調を補い合える、安定的かつバランスの取れた事業運営となっている。またエネルギー市場関連ビジネスに関しては、昨今のESG動向に鑑みて火力発電所向け計装システム事業を縮小し、今後は成長分野である洋上風力発電関連事業へシフトする意図が窺える。多種多彩な事業のなかでも、ねじ関連事業(2022年3月期売上高15,275百万円、売上総利益3,091百万円、売上総利益率20.2%)、自動車分野を中心とした樹脂・塗料事業(同8,801百万円、同1,318百万円、同15.0% )、重電設備事業(同6,131百万円、同1,330百万円、同21.7%)は“中核事業”として、安定事業基盤を支えている。地域的には、世界各国へ現地法人や支店を13拠点配置している。また、2016年3月期に同社の子会社となったヱトーの現地法人、駐在員出張所10拠点を合わせると23拠点のグローバルネットワークとなり、世界各地に散らばるサプライヤー及びカスタマーに適時的確に質の高いビジネス情報を提供できるようになった。(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:52
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極東貿易 Research Memo(1):2022年3月期は新会計基準適用。旧会計基準では増収増益
■要約極東貿易<8093>は、グループ企業の力を結集して、技術提案、導入・据付、運用・保守まで一貫した技術サポートができるエンジニアリング商社である。取扱商材は産業設備関連※(製鉄所向け機械設備、石油掘削装置、地震計、航空機用機材など)、産業素材関連(樹脂・塗料、炭素繊維・関連素材、食肉加工機など)、そして、機械部品関連(特注品ねじ、特注品ばね)と多岐にわたる。世界を跨いで事業を展開しており、欧米、中国・台湾・東南アジア、さらにインド・メキシコ等の新興国に拠点を設け、日系企業等のグローバルなモノづくりを支援している。※2022年4月に基幹産業関連部門と電子・制御システム関連部門が統合され、産業設備関連部門が発足した。1. 2022年3月期及び2023年3月期第1四半期の業績概要2022年3月期の連結業績は、売上高39,705百万円(前期比17,700百万円減少)、営業利益759百万円(同397百万円増加)、経常利益1,296百万円(同562百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益781百万円(同502百万円増加)と減収増益となった。売上高が大幅減収となったのは、2022年3月期決算より新会計基準(収益認識に関する会計基準)※を適用したためであり、その結果2022年3月期における売上高については、旧会計基準(取引総額)と比較して20,826百万円の減収となったただし、旧会計基準では増収となった。※「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用、これに伴い、代理人取引と判断される一部の取引について、その売上高計上額をこれまで取引総額であったものから、純額へと変更した。2023年3月期第1四半期の連結業績は、売上高9,375百万円(前期比2.4%減)、営業損失2百万円(前年同期は11百万円の利益)、経常利益258百万円(前期比19.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益147百万円(同30.4%増)となった。売上高は順調に推移したが、機械部品関連部門以外の部門群は回復スピードに鈍さがあったようである。特に、同社では産業素材関連部門への業績回復を期待していたようだが、業績の回復が遅れた。自動車や半導体産業の低調、中国経済(ロックダウン)などの要因で思ったほど伸びが少なかったとしている。2. 新規事業の洋上風力発電関連事業の拡大に期待新中期経営計画「KBKプラスワン2025」の2期目となる2023年3月期は、掲げた5つの成長分野の中から、新規重点3事業「洋上風力発電関連事業」「自動運転システム関連事業」「バイオプロダクツ」に注力している。特に洋上風力発電関連事業は、2022年1月に新たな子会社である(株)TWD Japanを設立するなど今後拡大が期待される事業であり、2026年3月期売上高20億円(1年前倒しもあり)が見込まれている。3. 資本効率性と株主還元策を両立した巧みな資本戦略株主価値・企業価値向上のためには、営業利益1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性を高めることがカギとなる。新中期経営計画では、2026年3月期の経営目標であるROE8%の達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行し、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、当面3年間は当期純利益をすべて配当金に分配(配当性向100%)するという積極的株主還元策を進める。今回、同社の資本コスト(2023年3月期の株主資本コスト 7.7% 加重平均資本コスト(WACC) 5.7%)が開示された。今後は、この資本コストをベースに投資判断や事業ポートフォリオ戦略(選択と集中など)に活用することが望まれる。4. 今後のM&A戦略と実行に期待同社は過去7件以上M&Aを実行したが、M&Aの後の収益性はすべての案件が社内平均を上回っている。また、中期経営計画で新規ビジネスのために5年間で50億円の投資枠(M&A)を設定している。現状の低収益の状況下において、投資リスクをとってでも次世代の柱事業を育成する覚悟が見られる。最近では2018年4月プラント・メンテナンス(株)(海外プラント向けの機器の調達、点検メンテナンス)を買収したのが最後であった。その間も戦略スタッフが中心となって、数多くのM&A案件の調査と精査を実施してきた。良いM&A案件が実行されることを期待したい。5. サステナビリティ経営の推進現在日本の企業は、サステナビリティ領域(SDGsやESG、社会課題解決など)は避けて通れない状況となっている。同社では、カーボンニュートラル(脱炭素)の潮流を見据え、同社の火力発電所関連の事業からは撤退することを決断した。主力事業の1つであった計装システム(年商約60億円ビジネス)も撤退することとなった。同社は岡田社長を中心とした「サステナビリティ委員会」を設置し、全社的活動の旗振りを行っている。また、東京証券取引所(以下、東証)のプライム上場企業として、統合報告書作成を前提としたコーポレートリポートを2022年9月末に発刊し、今後発展的に内容を充実させて統合報告書を作成すると言う。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)も東証プライム上場企業はコーポレートガバナンスコードの開示を要請されている。同社では同年10月にはTCFD全社プロジェクトを立ち上げ、2023年6月末でのTCFD情報開示に備えるとしている。■Key Points・会計基準の変更で2022年3月期売上高数値は大幅に減るも、旧会計基準では増収増益・新規事業の洋上風力発電関連事業は今後の拡大を見込む・全社を巻き込んだサステナビリティ経営の推進(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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2022/09/30 16:51