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ランチタイムコメント
日経平均は反落、来週以降の基調転換を示唆する材料観測
日経平均は反落。238.21円安の28984.56円(出来高概算5億1099万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でダウ平均は171.69ドル安(-0.50%)と6日ぶりに反落。英国のインフレ率が40年ぶりの高水準となったほか、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控えた金利上昇を嫌気し、下落して始まった。米小売ターゲットの決算を受けた株価下落も重石となった。公表されたFOMC議事要旨では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及したことが明らかになり、金利が伸び悩んだことで、主要株価指数は終盤からやや下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は-1.25%と続落。金利高・米株安を受けて日経平均は265.37円安の28957.40円からスタート。朝方は売りが先行し、一時28846.52円(376.25円安)まで下落。ただ、ナスダック100先物の下げが限定的なこともあり、その後は下げ渋り、前引けにかけては29000円を窺う水準まで戻した。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、信越化<4063>など値がさ株のほか、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連株などの下落が大きめ。リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>のグロース(成長)株が崩れており、ラクス<3923>、マネーフォワード<3994>などの中小型株グロース株の下落がきつい。米アナログ・デバイセズの決算を受けたフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅安を嫌気し、アドバンテスト<6857>、スクリン<7735>などの半導体関連も軒並み安。配当権利落ちの西松屋チェ<7545>も大きく売られた。 一方、レーザーテック<6920>、外資証券が目標株価を引き上げた新光電工<6967>が逆行高。郵船<9101>を筆頭に海運がしっかり。任天堂<7974>は大幅高。米エネルギー情報局(EIA)の統計で、原油の週間在庫統計の減少や原油輸出の増加が確認されたことで、INPEX<1605>、ENEOS<5020>のほか、住友鉱<5713>など資源関連が小じっかり。連日でストップ高となっていたアイスタイル<3660>は急伸。エンビプロHD<5698>、光通信<9435>、イリソ電子<6908>などが東証プライム市場の上昇率上位に入った。 セクターでは精密機器、空運、輸送用機器が下落率上位となった一方、鉱業、その他製品、繊維製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体73%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 前日の米国市場で注目すべき点は2つあった。一つは米10年債利回りの動き、2つ目は7月開催分のFOMC議事録の公表とそれを受けた米ハイテク株の動き。一つ目の10年債利回りについては、前日、約1カ月ぶりに一時2.9%台に乗せる場面があった。8月1日の2.57%をボトムにした上昇基調への転換がより鮮明になってきており、実質金利の低下による株価収益率(PER)主導のリバウンド相場については、一服の兆候が強まってきたと思われる。 2つ目については特に印象的だった。前日のナスダック総合指数は1.25%の下落。序盤には一時1.7%以上も下落する場面があり、リバウンド相場が始まった7月半ばからの直近1カ月間では特に弱い動きだった。FOMC議事録では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及していたほか、利上げペースについては、いずれは減速させる必要性があるとの認識で合意していたことが明らかになった。市場ではこれをややハト派寄りと受け止める向きが多かったもよう。これを受け、議事録公表後にナスダックの下落率は0.4%台まで縮める場面があったが、引けにかけて再び大きく下げ幅を広げた。 ここ1カ月の米株式市場では、相場上昇に乗り遅れることを嫌った投資家の押し目買いが強く、下げてもすぐに持ち直すという動きが多かった。引けにかけては強い動きを見せる日が大半だったため、一度持ち直した指数が引けにかけて再び弱く動いたのは印象的で、リバウンドが最終局面にあることを示唆しているのではないかと考えられる。 SOX指数の下落率が2.48%と大きかったことも注目される。米アナログ・デバイセズが発表した5-7月実績及び8-10月見通しは共に市場予想を上回った。ただ、同社の最高経営責任者(CEO)は「経済的な不確実性が受注に影響し始めている」と言及。同社は半導体メーカーの中でも広範な種類の半導体を手掛けているだけに、業界の先行きを占う上で注目されていた。エヌビディアやマイクロン・テクノロジーに続く同社のネガティブなコメントを受け、改めて半導体業界の先行きに対する警戒感が高まった。 米国、中国、欧州の3大経済圏の景気減速が気掛かりな中、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の様相を一段と強める欧州経済を中心とした世界経済の後退も更に心配になってきた。前日に発表された英国の7月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と、6月の+9.4%から一段と伸びが加速し、市場予想の+9.8%も上回った。7月CPIの減速を受けてインフレ懸念がやや後退している米国とは対照的だ。 全体的に資源価格は下落しているが、欧州では天然ガス価格の急騰が続いており、足元では、ロシア軍のウクライナ侵攻後に付けた2月高値も上回る勢いとなっている。欧州の複数の地域では猛烈な熱波が襲っており、冷房需要が急速に高まっている。そのうえ、ドイツでは、発電のために使っている石油を運ぶライン川の水位が低下して石炭を運ぶことができず、天然ガスの需要が一段と高まるという負の連鎖が起きている。 景気回復が期待された中国も想定以上に回復ペースが鈍く、世界経済のけん引役は期待できない。足元でファナック、キーエンス、SMCといったFA関連株が弱含んできていることもその証左と言えそうで、気掛かりだ。 前日の当欄(「売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄」)での繰り返しにはなるが、今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えており、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意した方がよいと考える。来週25日からは経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」も開催される。イベントとしては注目度が高く、これを前に、1カ月にわたって続いてきた需給主導のリバウンド相場が転換し始めてもおかしくはないだろう。 なお、今晩の米国市場では、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数のほか、半導体大手アプライド・マテリアルズの決算が予定されている。どちらも注目度は高く、結果は事前にはやや警戒されている。そのため、後場の東京市場では積極的な押し目買いは期待しにくいとみている。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/18 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は反発で29000円回復、売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄
日経平均は反発。232.42円高の29101.33円(出来高概算5億7926万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でダウ平均は239.57ドル高(+0.70%)と5日続伸。大手小売企業の決算が軒並み予想を上回ったことで、高インフレ下での消費の強さを確認し安心感が台頭。バイデン大統領の署名によりインフレ抑制法案が成立したことも支援材料となり、引けにかけてダウ平均は上げ幅を拡大。一方、金利の上昇でハイテク株は伸び悩み、ナスダック総合指数は-0.19%と3日ぶりの小反落。ダウ平均の上昇を引き継いで日経平均は83.74円高の28952.65円からスタート。寄り付きから買いが先行し、すぐに29000円を超えると序盤の時間帯に29153.05円まで上げ幅を広げた。その後は騰勢一服となったが、円安進行なども支えに高値圏での堅調推移が続いた。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>などの値がさ株が高い。為替の円安進行を追い風にトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、デンソー<6902>などが軒並み上昇。リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、マネーフォワード<3994>、JMDC<4483>のグロース(成長)株も全般大きく上昇している。原子力規制委員会が柏崎刈羽原発6、7号機のテロ対策設置計画を許可したと伝わったことで東京電力HD<9501>が大幅高となった。自社株の消却を発表したシュッピン<3179>も堅調。東証プライム市場の上昇率上位には、リブセンス<6054>、クロスマーケ<3675>、大阪チタ<5726>など直近、好決算を発表した銘柄が散見される。 一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落を受けてレーザーテック<6920>、東エレク<8035>が軟調。ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連株の一角も冴えない。下落率上位にはKeePer技研<6036>、サーバーワークス<4434>、メンバーズ<2130>などが並んでいる。 セクターではその他製品、海運、非鉄金属が上昇率上位となった一方、鉱業、医薬品、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は7カ月ぶりに29000円台を回復している。警戒されていた米小売大手企業の決算では、ウォルマートとホーム・デポが揃って市場予想を上回る内容を発表し、株価が大幅高となったことで安心感が台頭。金利上昇でこれまでけん引役だったナスダック総合指数が小休止する一方、主役交代でダウ平均が相場全体をけん引した。これを好感し、東京市場でも買い戻しの流れに更に弾みが付いた格好だ。 足元では、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの先物買いが相場上昇を演出してきたが、ここにきて個人投資家による買い戻しも加わっているもよう。日経ダブルイン<1357>の買い残は、日経平均が30795円の高値を付けた昨年9月以来の高水準まで大きく積み上がり、買い長になっている。一方で、日経レバETF<1570>は8月に入ってから売り長の状態が続いている。売り目線の個人投資家が増えるなか、相場の上昇が想定以上に続いてきたことで、個人投資家の踏み上げが相場上昇に拍車をかけているようだ。 しかし、ファンダメンタルズを無視した需給主導の上昇にもさすがに過熱感が出てきている印象。米・中・欧の3大経済圏で経済指標の予想以上の悪化が続き、景気後退懸念が強まるなか、企業業績は7-9月期以降の悪化が懸念されている。こうした悪材料はまだアナリストの業績予想などには反映し切れておらず、今後の業績悪化が想定される。一方、米10年債利回りは8月1日に付けた2.57%をボトムに足元では2.8%台まで回復。金利の低下トレンドは一服したとみられ、再度、金利上昇による株価バリュエーションの下押し圧力なども警戒される。こうした中、既に29000円を回復してしまった日経平均にどのような一段の上昇材料があるのか、需給要因以外ではなかなか思いつかない。 頼みの綱の需給要因についても、リバウンドが始まった7月半ばから1カ月が経ち、日柄的にはそろそろ一服してきてもおかしくないだろう。今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えているが、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意し始めた方がよいだろう。日米ともに株価指数が大きく水準を切り上げてきた中でも、半導体関連だけは取り残されているのも気掛かりだ。産業のコメとも呼ばれる半導体は製造業としての先導性が高く、関連株の軟調が続くなかでの需給主体の相場はいずれ転換せざるを得ないと考える。個人投資家の踏み上げについても、日経平均が29000円を回復した現状水準からの一段の上昇を見込む投資家は少なく、実際に買い戻しに転じる向きは限られるのではないだろうか。 後場の日経平均は29000円台でのもみ合いか。昨日は現物株も先物も共に売買高がかなり少なく、直近の指数の値幅程には商いは膨らんでいない。需給要因以外で相場上昇を期待できる材料も見当たらず、積極的な売買は引き続き手控えられるだろう。今晩の米国市場では7月小売売上高、ターゲットなどの小売企業決算、連邦公開市場委員会(7月26-27日開催)議事録の公表などが予定されており、様子見ムードも広がりやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/17 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小反落、悪材料織り込み済みでない株価上昇に不安
日経平均は3日ぶり小反落。10.02円安の28861.76円(出来高概算5億1656万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でダウ平均は151.39ドル高(+0.44%)と4日続伸。8月NY連銀製造業景気指数や8月NAHB住宅市場指数が大きく落ち込んだことで、景気減速懸念から売りが先行。ゼロコロナ政策に伴う中国の低調な経済指標や中国人民銀行による予想外の利下げなども世界経済への懸念を強めた。ただ、取引後半に入ると、金利低下に伴うハイテク株の上昇が相場を支援し、主要株価指数は揃って上昇に転じて終了した。ナスダック総合指数は+0.61%と続伸。 一方、先週末から昨日までの2日間で1000円超も上昇していた日経平均は短期的な過熱感もあり42.25円安からスタート。朝方は売りが先行し、28752.88円(118.9円安)まで下落したが、前日の米株高も支えに持ち直すと、アジア市況が堅調な中、前場中ごろには一時プラスに転換。ただ、上値も重く、その後は前日終値を挟んだ一進一退となった。 個別では、米中経済指標の下振れで景気後退懸念が強まるなか、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の大手海運が揃って大幅安。NY原油先物価格が1バレル=90ドルを割り込んだことでINPEX<1605>、コスモエネHD<5021>が下落。資源価格も全般下落しており、三菱マテリアル<5711>、大紀アルミ<5702>なども安い。ホンダ<7267>、マツダ<7261>、日産自<7201>などの自動車関連のほか、川崎重工業<7012>、IHI<7013>の機械・防衛関連、村田製<6981>、TDK<6762>の電子部品関連の一角も軟調。今期減益見通し及び中計目標の物足りなさが嫌気されたテスHD<5074>が急落したほか、第1四半期が大幅減益となったUMCエレ<6615>も大きく売られ、東証プライム市場の下落率上位に並んだ。 一方、東証プライム市場の売買代金上位ではダブル・スコープ<6619>、レノバ<9519>、エムスリー<2413>、ギフティ<4449>が大幅に上昇。SHIFT<3697>、ラクス<3923>、JMDC<4483>などのグロース(成長)株も全般高い。ほか、バンナムHD<7832>、コナミG<9766>といったゲーム関連も総じて強い動き。前日に決算を発表したレアジョブ<6096>、リブセンス<6054>は揃って急伸し、東証プライム市場の上昇率上位に並んだ。高水準の自社株買いが好感された日機装<6376>、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンス等による株式の大量買い付けで思惑が高まっているジャフコG<8595>なども急伸した。 セクターでは海運、鉱業、石油・石炭が下落率上位となった一方、その他製品、空運、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体51%、対して値上がり銘柄は43%となっている。 本日の日経平均は小休止といった様子。7月15日以降、ちょうど1カ月の間に2000円超も上昇してきただけにさすがに一服感が見られている。4-6月決算も一巡したことで、心理的な節目の29000円を手前に材料難でもあろう。一方、マザーズ指数が大幅高で、8月5日の戻り高値を大きく突破、節目の750を窺う動きとなっている。材料不足のなか、直近好決算を発表したばかりの銘柄を中心に、値動きの軽い中小型株の物色が活発化している。 ただ、全体としてはやはり買い疲れ感が出てきている様子。昨日は日経平均が300円を超す上昇で、29000円を窺う強い動きだったが、東証プライム市場の銘柄では半数以上が下落していた。本日も同様に半数以上が下落している。東証プライム市場の売買代金からも、指数の値幅程には売買が活発していない様子が窺える。8月物オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出が絡んだ先週末12日は3兆円台後半と見かけ上の売買代金は膨らんだ。一方、昨日15日は2兆5000億円台にとどまり、先週末の決算発表が500件近くもあった割には、物色は低調だったように見受けられる。本日も前引け時点で1兆2800億円台とさほど膨らんでいない。 足元の株式市場の上昇に対して懐疑的な見方を持っている機関投資家の多くが夏休みに入っており、売り手不在のなか、個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの機械的な買いで相場上昇が続いているが、ファンダメンタルズなどの実体を伴っていない印象は拭えない。 昨日に発表された8月NY連銀製造業指数は-31.3と、前月の+11.1から大幅に悪化。市場予想の+5も大きく下振れ、2001年以降で2番目に大幅な低下となった。前回7月も3カ月ぶりのプラスだったとはいえ、6カ月先の見通しを示す景況指数はマイナスと内容は悪かった。NY連銀製造業景気指数は結果のブレが大きい特徴があるとも言われているが、ここ4カ月は連続して悪い結果・内容だ。18日に発表予定のフィラデルフィア連銀製造業景気指数も悪い結果が続いている。前回7月までの間、4カ月連続で結果が予想を下振れているほか、その下振れ度合いも拡大傾向にある。また、6月からはこちらもマイナス圏に低下している。 前日に発表された中国の経済指標も株式市場にはほとんど影響を与えなかったが、内容はネガティブで、今後じわりと効いてきそうだ。7月の小売売上高は前年比+2.7%と予想(+4.9%)を大きく下回り、6月(+3.1%)からも悪化した。鉱工業生産も同+3.8%と予想(+4.3%)及び6月(+3.9%)を下振れた。 米国の景気の基調は明らかに下方向であり、その下振れ度合いも予想を超えるものが多くなっている。景気循環が良い意味で欧米など他の先進諸国とずれている中国については、4月をボトムに景気回復に向かい、世界経済のけん引役になってくれることが期待されていたが、その期待も剥落してきている。むしろ、住宅ローン未払い問題など不動産業界の悪化が著しく、世界経済の足枷になる恐れの方が強まっているくらいだ。 こうした中でも、前日の米株式市場では主要株価指数が揃ってプラス転換で終えた。景気後退懸念に伴う金利低下を追い風にハイテク株が下支えしてくれているようだが、これも、インフレ抑制を最優先にし、来年までの利上げ継続を方針としている米連邦準備制度理事会(FRB)とのギャップが大きすぎて、いつまで金利低下を理由にしてハイテク・グロース株買いに付いていけばよいか分からない。 国内の企業業績も、アナリスト予想の平均値は営業利益の伸び率でみて4-6月がボトムという見通しになっているようだが、米・中・欧の世界3大地域の経済が減速しているなか、7-9月期以降の方がむしろ業績の悪化懸念が強いのではないだろうか。一株当たり利益(EPS)の悪化を、金利低下による株価バリュエーション(PER)の拡大で相殺しようにも、金利低下には景気後退を織り込んでもさすがに低下余地が乏しいだろう。日経平均でいえば、29000円を超えてまで買ってくる理由があるのだろうか。9月以降は29000円突破よりも27000円割れなど下方向のリスクの方が高い気がしてならない。 後場の日経平均はもみ合い継続を予想。手掛かり材料難のなか、今晩には米国で7月の住宅着工件数や鉱工業生産のほか、ホームデポ、ウォルマートなどの注目小売企業の決算が予定されており、これらを見極めたいとの思惑から積極的な売買は手控えられやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/16 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、米株高好感して28800円台に到達
日経平均は続伸。283.92円高の28830.90円(出来高概算5億3303万株)で前場の取引を終えている。 前週末12日の米株式市場のNYダウは424.38ドル高(+1.27%)と大幅続伸。インフレ減速を期待した買いに、寄り付き後、上昇。8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想以上に改善し、経済への悲観的見方が後退したため終日堅調に推移した。インフレ抑制法案の成立期待も相場を支援し、引けにかけて上げ幅を拡大した。長期金利の低下でハイテク株も買われてナスダック総合指数は大幅に反発。堅調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前週末比76.80円高からスタート。その後は、上げ幅を拡げる展開となった。 個別では、ADC技術に関する紛争で相手側の主張を全面的に否定する判断が下された第一三共<4568>、前期実績及び今期予想は共に市場予想を上振れたパンパシHD<7532>、上期経常損益が黒字浮上で着地したダブル・スコープ<6619>が大幅高となった。ソフトバンクG<9984>、ダイキン<6367>、信越化<4063>、メルカリ<4385>、任天堂<7974>などが大幅に上昇、ファーストリテ<9983>や東エレク<8035>なども堅調に推移した。キャリアリンク<6070>、ギフティ<4449>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>、日本郵船<9101>などの海運株が軟調。三井松島HD<1518>や楽天グループ<4755>、リクルートHD<6098>が大幅に下落、富士通<6702>やトヨタ自<7203>なども軟調、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も冴えなかった。ほか、22年12月期業績予想を下方修正したスノーピーク<7816>、ダイレクトマーケティングミックス<7354>やネットプロHD<7383>、マーケットエンタープライズ<3135>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは医薬品、ゴム製品、小売が上昇率上位となった一方、海運、鉱業、陸運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の45%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後じりじりと上げ幅を拡げる展開となった。アジア市況や米株先物がもみ合い展開となっているが、日経平均は前週末の米株高を好感する動きに加えて、決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっている。 新興市場は上値の重い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたあとじりじりと上げ幅を縮小した。米国でインフレピークアウト期待が高まり堅調な展開が続くなか、国内の個人投資家もこうした流れを好感する動きが優勢となった。また、新興市場でも決算発表が本格化しており、米株高の流れを引き継いで12日に決算を発表した銘柄など個別材料株もポジティブな反応をみせている。ただ、米長期金利が2.8%台と高水準で推移しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株を積極的に買い進む動きは乏しい様子。前引け時点で東証グロース市場Core指数が0.77%高、東証マザーズ指数が0.71%高となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移、本日は28800円台まで上昇している。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていること、リセッション材料が出尽くしていることなどが挙げられている。物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、やはり順調な持ち直しは長続きしないと感じている投資家も少なくない。米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まっているが、米7月のCPIとPPIの減速要因の大半はエネルギー価格で、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの分野もほとんど減速していない。 ブルームバーグが実施した最新の月間調査でエコノミストらは、インフレ予測を2023年の各四半期で引き上げたという。米金融当局がインフレ目標の基準値としている個人消費支出(PCE)総合価格指数は、来年末に平均で年率2.5%上昇と予想されており、7月時点の予想2.3%上昇から上方修正となるもようだ。インフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。また、FRB高官からけん制発言が相次いでいることは見逃してはならない。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨にはある程度の注目が集まるだろう。 そのほか、マーキー米上院議員(民主党)率いる米議員団が14日、台湾に到着した。2日間の日程で滞在するようだが、ペロシ下院議長による今月初旬の訪台以降高まっている中国との緊張が続く恐れがある。このような米中問題も見逃してはならず、ロシアのウクライナ侵攻など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。筆者も中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に現在のリバウンド基調を見守っている。 さて、後場の日経平均は、上げ幅をさらに広げる展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/15 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反発、諸要素考慮して28500円が目一杯か
日経平均は大幅反発。660.66円高の28479.99円(出来高概算7億9957万株)で前場の取引を終えている。 東京市場が祝日だった間の10、11日の米株式市場では、ダウ平均が535.10ドル高、27.16ドル高と上昇。10日は米7月消費者物価指数(CPI)が予想以上に減速したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース減速への期待が高まり、大幅に上昇。一方、11日は、米7月生産者物価指数(PPI)も予想以上に減速したものの、FRB高官らの発言を受けて長期金利が大きく上昇したことで、買い先行で始まったが大きく失速した。ナスダック総合指数はそれぞれ+2.89%、-0.58%だった。重要インフレ指標を無難に通過した目先の安心感から売り方の買い戻しなども入り、日経平均は432.41円高とギャップアップでスタート。朝方から買いが先行した後はこう着感を強めたが、高値圏での推移が続き、前引け直前には一時28500円を超える場面があった。 なお、8月オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出値は28525.62円だった。 個別では、東エレク<8035>、ファナック<6954>、キーエンス<6861>、信越化<4063>、ダイキン<6367>などのハイテク株や値がさ株が大幅高。アリババ株の一部売却を発表したソフトバンクG<9984>は急伸。村田製<6981>、安川電機<6506>、京セラ<6971>も高い。エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>、JMDC<4483>、メルカリ<4385>のほか、ラクス<3923>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>などグロース(成長)株は全般強い動き。三菱商事<8058>、住友鉱<5713>、ENEOS<5020>など資源関連株も堅調。業績予想を上方修正し、自社株買いも発表したホンダ<7267>や、4-6月期営業利益が市場予想を上回った住友不動産<8830>、SMC<6273>、パーソルHD<2181>が大きく上昇。業績予想を下方修正も、市場予想を上回る水準にとどまったコーセー<4922>はあく抜け感から買われた。 一方、業績予想を、市場予想を下回る水準にまで下方修正したブリヂストン<5108>、資生堂<4911>、7月既存店売上高が冴えない結果となった良品計画<7453>は軟調。業績予想を上方修正した富士フイルム<4901>は買い先行も失速して下落。ガンホー<3765>、ブレインP<3655>、PHCホールディングス<6523>、ディー・エヌ・エー<2432>などが決算を材料に大きく売られ、東証プライム市場の下落率上位に並んでいる。 セクターでは電気機器、精密機器、石油・石炭を筆頭にほぼ全面高。一方、ゴム製品が下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体87%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 祝日明けの日経平均は600円を超える大幅反発で6月9日に付けた28389.75円を超えてきた。日足チャートでは7月20日以降のもみ合いから上放れる形となっており、商品投資顧問(CTA)など短期筋の追随買いを一段と誘い込みやすい状況だ。一方で、28500円を意識した上値の重さも見られている。 米7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)は共に予想を下回り、市場ではインフレピークアウト期待が高まっている。しかし、指標の減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。 一時1バレル=90ドルを割り込んでいたNY原油先物価格は足元で90ドル半ばまで回復している。代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数も7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。また、7月雇用統計では平均賃金の伸びは予想に反してむしろ加速していた。「インフレピークアウト→利下げ減速」までを織り込むのは時期尚早といえよう。 米連邦準備制度理事会(FRB)の高官からもけん制発言が相次いでいる。インフレ指標の発表後、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「インフレとの闘いで勝利を宣言するには非常に程遠い」と指摘。「政策金利は更に引き上げられた後、インフレが2%に低下するまでは維持される」とも発言し、来年の利下げを織り込む市場を強くけん制した。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想にもかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。 ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、前日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は8月に入ってからの上昇基調をやや加速させている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。 市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないとみている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続いている。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、CTAなどの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。来週末に控える米国版SQ(特別清算指数)までは売り方の買い戻しが相場を下支えしそうだ。 一方、4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、行動制限が長期化している中国の景気回復が遅れていることで、7-9月期決算に対する懸念が早くも台頭してきている。こうした状況において、株式の持ち高を「アンダー」から「ニュートラル」に修正することはあっても、「オーバー」にまで引き上げることは考えにくいだろう。今は夏休み入りしている多くの機関投資家が、休暇明けに積極的に株式を買ってくることは想定しにくく、日経平均は今の28500円が上限とも考えられよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/12 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は続落、 機関夏休み入りのなか逆張り個人が下支え?
日経平均は続落。232.89円安の27767.07円(出来高概算5億5338万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でダウ平均は58.13ドル安(-0.17%)と3日ぶり小幅反落。消費者物価指数(CPI)の発表を控えた持ち高調整から終日売り優勢。半導体メーカーのエヌビディアに続きマイクロン・テクノロジーも弱い見通しを示したため、同セクターが大きく売られ相場の重しとなった。ナスダック総合指数は-1.19%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-4.57%と揃って3日続落。米株安を受けて日経平均は44.85円安からスタート。半導体関連など値がさ株を中心に朝方は売りが先行し、寄り付き直後に27729.46円(270.5円安)まで下落した。一方、今晩に発表される米7月CPIを前に売り方の買い戻しなども入り、その後は下げ渋った。しかし、戻りは鈍く、前引けにかけては再び弱含みとなった。 個別では、SOXの急落を受けてレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などの半導体関連が大幅下落。ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、SMC<6273>、富士通<6702>などの値がさ株や、エムスリー<2413>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>のグロース(成長)株も総じて軟調。カナミックN<3939>、JMDC<4483>、ペプチドリーム<4587>、アカツキ<3932>、じげん<3679>、やまみ<2820>、藤田観光<9722>などの決算発表銘柄が東証プライム市場の下落率上位に並んだ。 一方、レノバ<9519>が見直し買いで急反発。決算発表銘柄では、住友林業<1911>、マツダ<7261>、三菱マテリアル<5711>、出光興産<5019>が大幅に上昇。ほか、ロート製薬<4527>、セグエグループ<3968>、理研計器<7734>、新日本製薬<4931>、日本マイクロニクス<6871>などが決算を手掛かりに急伸し、東証プライム市場の上昇率上位に並んだ。マクロミル<3978>は好決算を材料にストップ高まで買い進まれた。 セクターではゴム製品、電気機器、精密機器が下落率上位になった一方、石油・石炭、電気・ガス、パルプ・紙が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体55%、対して値上がり銘柄は40%となっている。 前日に終値で僅かに28000円を割り込んだ日経平均は、本日も指数寄与度の大きい半導体関連株の下落に押される形で、値幅を伴った下落となっており、28000円回復が遠のく形となっている。半導体業界では、一昨日のエヌビディアの市場予想を大幅に下回る決算に続き、昨日はマイクロン・テクノロジーによる業績見通しの引き下げというネガティブなニュースが続いた。 マイクロンは顧客の在庫削減を理由に、6-8月の売上高見通しを従来の会社予想レンジの下限、ないしそれを下回る可能性があると示した。前回の弱気な見通しを示したのは僅か1カ月前のことだ。また、先んじて需要が減速していた民生向け市場だけでなく、データセンター用や産業用、車載向け用など、これまで堅調とされてきた市場でも調整が広がっており、需要の一段の減少の可能性も示唆された。東エレクも一昨日の決算において、市場見通しを期初に提示した水準から下方修正した。業界の急速な冷え込みがひしひしと伝わっており、一時後退していた景気後退懸念が再び頭をもたげている。 一方、今晩には米7月消費者物価指数(CPI)、明日には米7月生産者物価指数(CPI)と重要インフレ指標の発表を控えている。東京市場は明日が祝日で休場となるため、これら両インフレ指標の結果を受けた2日分の米株式市場の動きを祝日明けに反映することになる。結果を受けた相場のボラティリティの高まりを警戒する投資家が多く、イベント前に持ち高を大きく傾ける向きは限られ、指数の下落率はさほど大きくなっていない。ただ、指標結果がネガティブなものとなれば、一段の下落は否定できないだろう。 また、機関投資家の多くが夏休み入りしている。市場参加者が少なくなっている中、逆張り志向の強い個人投資家の存在感が相対的に増している。これら個人投資家が、昨日からの下落局面において、日経レバETF<1570>の空売りや日経ダブルイン<1357>の買い持ち高を手仕舞っていることも、指数の底堅さに繋がっていると考えられる。ただ、裏を返せば、機関投資家が戻ってくる8月後半から9月以降には相場の波乱が待ち構えているとも言える。 前日の当欄「インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい」において述べた通り、インフレを巡る環境はほとんど改善していないと考えられ、仮に、今夜から明日にかけての米インフレ指標が前月から予想以上に減速したとしても、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換期待を高めるには依然として材料不足であることには変わりはない。利上げペースの減速ですら、期待値を高めるには時期尚早と思われ、指標結果を受けた初動がポジティブなものであったとしても、現在の株価指数の水準を踏まえれば、ここからの上値追いには慎重になった方がよいだろう。 後場の東京市場は軟調もみ合いか。国内の祝日、米重要インフレ指標を前に持ち高を動かしにくく、様子見ムードが支配的となりそうだ。一方、香港ハンセン指数が大きく下げ幅を広げてきており、外部環境の悪化次第では、イベント前に一段と手仕舞い売りが広がる可能性もあるため、注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/10 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反落、インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい
日経平均は5日ぶり反落。239.89円安の28009.35円(出来高概算5億8451万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は29.07ドル高(+0.08%)と小幅続伸。強い7月雇用統計を受けた景気後退懸念の緩和に伴う買い戻しが続き、買い先行。ただ、今週半ばに発表が予定されている重要インフレ指標を警戒した売りから次第に失速した。上院がインフレ削減法案を可決し成立する見込みとなったことが一部プラス材料となり、ダウ平均はかろうじてプラス圏を維持したが、ナスダック総合指数は、半導体メーカーのエヌビディアの決算を受けた下落に押され、-0.1%と小幅続落。日経平均は12.4円安からスタートすると、低調な決算を発表した東エレク<8035>やソフトバンクG<9984>の急落が重石となる形で徐々に下げ幅を拡大。午前中ごろには28000円を割り込む場面もあったが、引けにかけては下げ渋った。 個別では、予想外に減益決算となった東エレクが8%を超える下落率で急落。4-6月期の最終赤字額としては日本企業で過去最大を記録したソフトバンクGは4%強の下落。流通取引総額の伸び悩みが嫌気されたメルカリ<4385>は9%超と大幅安。東エレクや米エヌビディアの株価急落が波及する形でアドバンテスト<6857>やスクリン<7735>などの半導体関連が総じて軟調。業績予想を下方修正したダイフク<6383>と住友ゴム<5110>は揃って急落。第1四半期が大幅減益となった日製鋼<5631>も大幅安となった。 一方、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、ファーストリテ<9983>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>などのグロース(成長)株の一角が堅調。業績上方修正や増配、高水準の自社株買いを発表したINPEX<1605>は大幅高。三井松島HD<1518>は商いを伴った連日の大幅高で、東証プライム市場売買代金上位に顔を出した。ラウンドワン<4680>も連日で急伸。ほか、デサント<8114>、NISSHA<7915>、チャームケア<6062>、日産化学<4021>、ニチコン<6996>が好決算を手掛かりに大幅高。トレンド<4704>は、アクティビストとして有名な米バリューアクト・キャピタルが大株主に浮上したことで急伸した。 セクターではゴム製品、電気機器、輸送用機器が下落率上位になった一方、鉱業、海運、石油・石炭が上昇率上位になった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 日経平均は指数寄与度の高い主力株の下落に押され、値幅を伴った下げとなっている。ただ、心理的な節目である28000円割れの水準では買い戻しが入って下げ渋っている。前日のナスダックの下落率も0.1%と、エヌビディアの急落があった割には底堅い印象。 10日の米7月消費者物価指数(CPI)と11日の米7月生産者物価指数(PPI)を前に様子見ムードが広がっており、持ち高を大きく動かしたくない向きが多いというのが指数の底堅さの背景だろう。ただ、筆者としては、足元の株式市場は楽観の修正が足りないと考えている。 7月半ばからの株式市場のリバウンドは、米連邦公開市場委員会(FOMC)や主要企業の4-6月期決算を前にした買い戻しから始まった。その後、FOMC後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見を受けて高まった利下げ転換期待や、資源価格の下落を背景にしたインフレピークアウト期待、主要企業の決算が想定程には悪くなかったことなどから買い戻しに拍車がかかった。 しかし、先週末に発表された米7月雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが予想を2倍以上回ったほか、平均賃金の伸びは前年比と前月比のどちらでみても、減速の予想とは対照的に加速した。この強すぎる雇用統計は上述した7月半ばからのリバウンドの根拠とされてきた「インフレピークアウト→FRB利下げ転換」の期待を打ち消すものだ。市場でも、雇用統計を受け、0.5ptの利上げが有力視されていた9月会合での利上げ幅としては急速に0.75ptの確率が高まってきた。 それにも関わらず、週明けの株式市場は日米ともに底堅い。CPIは総合で前年比+8.8%と、6月の+9.1%から減速する見込みで、投資家はインフレピークアウト→利下げ転換への期待をまだ持っているのかもしれない。また、前日に発表されたニューヨーク連銀の調査で、3年先の期待インフレ率が3.2%と、6月の3.6%から大きく低下したことも、こうした期待を支えているのかもしれない。 しかし、CPIは減速したところで依然8%強と歴史的な高水準。また、資源価格の下落傾向には一服感が出てきており、今後の減速ペースはかなり緩やかになるとも考えられる。さらに、FRBが重要視する食品・燃料を除いたコアCPIは前年比+6.1%と6月の+5.9%から拡大する見込み。全体の3分の1を占めるCPIの最大構成項目である住居費は住宅価格から1年程遅れて動く傾向がある。このため、米国で住宅価格は今年4月に伸びとしてはピークを打っているが、CPIの伸びは対照的に今後も加速する公算となる。コアCPIはFRBの目標値である2%を3倍以上上回る状態が今後も続く可能性が高いといえる。 加えて、上述したように労働市場では平均賃金の伸びが加速している。賃金はインフレ項目の中でも下方硬直性があり、FRBのインフレ退治にあたっては特にやっかいな分野。サプライチェーン(供給網)制約の解消などが進んでいるのは確かだが、いま言えることは、それでも、なお需要が供給を上回っているということだ。需要が供給を上回っている限り、価格上昇圧力は消えず、FRBは金融引き締めを止めることはできない。 FRBも市場よりは慎重ながら、今後のデータ次第では0.5ptへと利上げ幅の減速も可能という見方が出ているのは心配だ。昨年8月のジャクソンホール会合で、パウエル議長は、インフレは一過性という主張を繰り返していた。しかし、その僅か3カ月後に同氏は「一過性」という表現を使うべきでないと姿勢を急転換。その後、FRBは自らの過ちを認める形で、急速な金融引き締めへと舵を切った。 僅か1年前に過度な楽観論から大きな過ちを犯したにもかかわらず、ここにきて再び利上げペースの減速もあり得ると市場に期待を抱かせるような楽観的な見方を一部持ち始めているのは非常に危うい。そもそも、これだけインフレが高いにもかかわらず、政策金利が未だに2.25-2.50%という物価指標の伸びを大きく下回る水準にあることに疑問府がつく。個人的には1ptの利上げを連続実施するくらいのショック療法が必要と考える。 いま市場が抱いている楽観論が正しいかどうかの答え合わせは近く行われる。早ければ、今週の米物価指標の発表、そこで行われなければ、来週17日のFOMC議事録公表か、今月25~27日開催予定のジャクソンホール会合までに修正される可能性があるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/09 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、不安要素多くリバウンドの長期化は期待薄
日経平均は続伸。65.22円高の28241.09円(出来高概算5億9463万株)で前場の取引を終えている。 前週末5日の米株式市場のNYダウは76.65ドル高(+0.23%)と反発。7月雇用統計の強い結果を受けて連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ観測が再燃し、金利高を警戒した売りが広がった。ただ、景気後退懸念も緩和したため、徐々に買い戻しが強まり、下げ幅を縮小。ダウは上昇に転じ終了、ナスダック総合指数は下落した。まちまちとなった米株市場を横目に、日経平均は前週末比125.78円安からスタート。その後は、プラス圏に浮上する場面も見られたが前週末終値を挟んでのもみ合い展開となった。 個別では、好調な受注動向を評価されたレーザーテック<6920>、自社株買いの実施を発表したキヤノン<7751>、業績・配当予想上方修正や株式分割を好感されたラウンドワン<4680>が大幅高となった。丸紅<8002>や三井物産<8031>、住友商事<8053>などの商社株が上昇しているほか、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、第一三共<4568>、INPEX<1605>、などが堅調、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの銀行株も上昇した。冶金工<5480>、三井松島HD<1518>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>、日本郵船<9101>などの海運株が軟調。東京海上<8766>や任天堂<7974>、リクルートHD<6098>が大幅に下落、ソニーG<6758>やトヨタ自<7203>、キーエンス<6861>なども下落した。ほか、メディアスHD<3154>やクオールHD<3034>、ソリトンシステムズ<3040>、ジャムコ<7408>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、金属製品が上昇率上位となった一方、保険、パルプ・紙、海運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の42%、対して値下がり銘柄は52%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後前週末終値付近でのもみ合い展開となった。アジア市況や米株先物が軟調な展開となっているが、日経平均は小幅なレンジでの推移となっている。週末に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの加速が確認されたため売りが先行したが、決算発表を終えた主力株への物色が中心となり下支えをしているようだ。 新興市場は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと朝方に下げ幅を大きく拡げた。新興市場でも週末に発表された米7月雇用統計の結果でインフレの加速が確認されたことは、インフレの減速を予想していた分個人投資家心理にネガティブに働いた。また、米長期金利が2.8%台まで急伸しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株にとっては逆風となっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.35%安、東証マザーズ指数が1.80%安となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていることは前回の当欄で述べている。 ほかにも、米国のリセッション入り確率が急低下してきているとブルームバーグでは述べられている。JPモルガン・チェースのストラテジストが考案したリセッション確率の指標によると、株式市場の視点では米景気下降はますます起こりそうにないという。また、株式とクレジット、金利市場が全体として織り込む米国のリセッション確率は40%と、6月段階の50%から低下したようだ。つまり、昨年11月から今年6月までの長期的な下落はリセッションを織り込むためで、現在はリセッション材料が出尽くしているとも捉えられている。さらに、物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、「株式相場の最近の順調な持ち直しは長続きしない」とゴールドマン・サックス・グループとバーンスタインのストラテジストが警告しているともブルームバーグで述べられている。マクロ経済データの悪化が続き、企業業績見通しが下方修正されていることを理由に挙げられている。4日に発表した1週間の新規失業保険申請件数は前週比6000件増加し、26万件だったことも気がかりである。 また、5日に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの減速予想とは対照的にインフレの加速が確認された。インフレ高進が確認されるとインフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。やはり、10日に発表される米7月消費者物価指数(CPI)の結果、これに伴うFRB高官ら発言には注目が集まろう。 さらに、ロシアのウクライナ侵攻や米中問題など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。これだけ不安材料が重なってくると、現在のリバウンドが長く続くことは筆者も想定していない。中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に株式市場を注視していくことが重要であろう。さて、後場の日経平均は、こう着感の強い展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/08 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、ベアマーケットラリー第2弾?いつまで乗車すべきか
日経平均は続伸。199.67円高の28131.87円(出来高概算6億1278万株)で前場の取引を終えている。 4日の米株式市場でダウ平均は85.68ドル安(-0.26%)と反落。週次失業保険申請件数の増加により、雇用減速を警戒した売りが先行。さらに、ペロシ下院議長の台湾訪問を受け、台湾を包囲した中国軍の軍事演習に関する報道で地政学リスクへの警戒感も重石になった。ダウ平均は終日軟調に推移、一方、金利の低下でナスダック総合指数は底堅く推移し、+0.41%と続伸。日経平均は17.14円安からスタートも、寄り付き直後から買い優勢で切り返してプラスに転じると、午前中ごろには28000円を回復。その後も一本調子で上げ幅を広げ、一時28167.04円(234.84円高)まで上昇した。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が大幅続伸。任天堂<7974>が大幅高で、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>など主力の値がさ株が総じて堅調。ベイカレント<6532>やSHIFT<3697>のグロース(成長)株の一角も高い。好決算を手掛かりにSUMCO<3436>、HOYA<7741>が大幅に上昇し、大阪チタ<5726>は急伸、東邦チタニウム<5727>は連れ高に。主力処では日本製鉄<5401>、キッコーマン<2801>、スクエニHD<9684>も良好な決算を受けて急伸。そのほか、UACJ<5741>、アイロムG<2372>、中山製鋼所<5408>、有沢製作所<5208>、加賀電子<8154>などが決算を材料に急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。前場に決算を発表した丸紅<8002>も大幅高に転換した。 一方、原油先物価格や米長期金利の低下を背景にINPEX<1605>、コスモエネHD<5021>、三菱UFJ<8306>が軟調。円高・ドル安進行を受けてホンダ<7267>、SUBARU<7270>などが下落。東証プライム市場の売買代金上位ではダブル・スコープ<6619>、メルカリ<4385>が大きく下落。ほか、IHI<7013>、三菱重<7011>、テルモ<4543>、オリンパス<7733>などが軟調。BEENOS<3328>とシスメックス<6869>は決算が嫌気されて急落。シュッピン<3179>、GMOペパボ<3633>、保土谷化<4112>、コナミグループ<9766>なども決算を受けて大幅に下落した。 セクターでは鉄鋼、その他製品、卸売が上昇率上位になった一方、鉱業、石油・石炭、電気・ガスが下落率上位になった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は想定外の強さで、これまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破。前日の米株式市場でハイテク・グロース株が続伸したほか、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1%近く上昇し、国内でも半導体関連で好決算が相次いだこともあり、関連の値がさハイテク株が指数を押し上げている。今晩の米7月雇用統計を前に本日は様子見ムード一色で、動意薄の展開を想定していたため、意外感のある上昇だ。 7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いている。それまで悲観的な見方が多かっただけに、過度な悲観の修正が長期化しているようだ。機関投資家の株式組み入れ比率が歴史的にかなり低い状況にあった中、想定以上に上昇が続いていることを受けて、慌てて買い戻しに転じている投資家が多いのかもしれない。今晩の米7月雇用統計では、雇用者数の伸びと平均賃金の伸びで共に減速が見込まれている。予想通りとなれば「インフレピークアウト・利上げ減速」への期待に拍車がかかり、相場の上昇に一段と弾みがつく可能性がある。そうしたシナリオを想定し、イベント前に急いで買い戻している背景もありそうだ。 ただ、依然として足元の上昇についてはベアマーケットラリーに過ぎないとの見方が多い。ブルームバーグの報道によると、株式相場の最近の順調な持ち直しは長続きしないと、ゴールドマン・サックス・グループとサンフォード・C・バーンスタインのストラテジストが警告したという。また、「世紀の空売り」で有名になった投資家のマイケル・バーリ氏が、市場に「愚かさ」が戻ってきたとツイートしたことも話題になっている。 前日の英国金融政策委員会では、27年ぶりとなる0.5ptの利上げがほぼ満場一致で決定された。イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は、次回9月以降の会合ではあらゆる選択肢を検討するとし、「インフレを2%の目標に回帰させることが引き続き絶対的な優先事項であり、問答無用だ」と強いコメントを発した。さらに驚くべきは、インフレと景気の見通しだ。6月時点で前年比+9.4%と40年ぶりの高い伸びにまで加速している同国の消費者物価指数(CPI)について、中銀は前回6月の政策発表時にはインフレのピークは今年10月頃で、11%強と予想していた。しかし、今回は、ピークが13.3%になる見通しと大幅に引き上げ。また、今年10-12月期には景気後退(リセッション)に入り、来年末まで5四半期連続でリセッションが続くという。 このように欧州では完全にスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)が現実ものとして台頭してきた。米国では7月ISM非製造業景気指数の改善などもあり、足元で景気後退を避けつつインフレ抑制に成功するのではという、ソフトランディング(軟着陸)への期待が俄かに高まっているが、先行き不透明感は依然としてかなり強い。今晩の米雇用統計後には、更なる買い戻し加速によるベアマーケットラリー第2弾が待っているのかもしれないが、いつまでこの上昇相場に乗っているべきか、気をもんでいる投資家は多いだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/05 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、7月半ばからの上昇相場いつまで続く?
日経平均は続伸。150.78円高の27892.68円(出来高概算6億5214万株)で前場の取引を終えている。 3日の米株式市場でダウ平均は416.33ドル高(+1.28%)と3日ぶり大幅反発。セントルイス連銀のブラード総裁が米経済は景気後退に陥ってはいないとしたため、懸念緩和に伴う買い戻しが先行。さらに、7月ISM非製造業景気指数が予想外に改善し4月以来の高水準となったことも後押し。金利動向も安定し、ハイテク株の買いが続いたことも相場をけん引した。ナスダック総合指数は+2.58%と3日ぶり大幅反発。米株高を引き継いで日経平均は189.04円高からスタート。ただ、朝方に一時28000円を超えた後は失速し、前引けまでじりじりと水準を切り下げる展開となった。 個別では、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>、ディスコ<6146>の半導体関連が大幅高。ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、日本電産<6594>、リクルートHD<6098>のハイテク・グロース(成長)株も総じて高い。川崎汽船<9107>が大幅に反発し、郵船<9101>、商船三井<9104>も上昇。ほか、サイバー<4751>、ベイカレント<6532>、マネーフォワード<3994>、TDK<6762>、イビデン<4062>、SUMCO<3436>などが強い動き。日東紡績<3110>、静岡ガス<9543>、BIPROGY<8056>は決算を手掛かりに急伸。マネックスG<8698>、カシオ<6952>、住友電工<5802>、寿スピリッツ<2222>も決算が好感され大幅高。タツモ<6266>は業績予想を上方修正して物色を集めた。 一方、原油先物価格の下落を受けてINPEX<1605>、ENEOS<5020>が下落、コマツ<6301>、三井物産<8031>の資源関連や東京電力HD<9501>、レノバ<9519>の電気・ガスセクターなどが安い。米金利低下により三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>など金融も総じて軟調。決算を発表したZHD<4689>が急落しているほか、太陽誘電<6976>、クボタ<6326>、オリックス<8591>、JFE<5411>なども決算を材料に大きく下落している。 セクターでは海運、非鉄金属、倉庫・運輸が上昇率上位になった一方、鉱業、その他金融、保険が下落率上位になった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体46%、対して値下がり銘柄は49%となっている。 前日のハイテク・グロース株を中心とした米株式市場の大幅続伸を好感して日経平均は反発。ただ、ナスダックが上値抵抗線だった100日移動平均線を明確に突破し、7月半ばからの戻り高値を更新し続けているのに対して、日経平均は本日も28000円手前で伸び悩んでおり、相対的な鈍さが意識される。 他方、前日の海外市場を振り返ると、好材料が相次いで相場を後押ししたのは間違いない。米国の7月ISM非製造業景気指数や6月製造業新規受注が予想を大きく上回ったことで景気後退懸念が和らいだ一方、ISMの構成項目である「価格」が72.3と6月の80.1から大幅に低下した。1日に発表されたISM製造業景気指数でも価格の項目は78.5から60.0へと大幅に低下していたため、インフレピークアウト期待が高まった。 また、原油先物価格の大幅下落もこうしたインフレピークアウト期待を更に高めることに寄与した。前日、石油輸出国機構(OPEC)プラスが開かれたが、9月の原油生産量については一日当たり10万バレル増やすことが決定された。7月と8月の増産幅は日量64万8000バレルだったため、今回の増産幅はかなり小幅なものとなった。この結果を受け、需給逼迫が意識される形でWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月限)原油先物価格は米国時間に一時1バレル=96ドル台まで上昇する場面があった。 しかし、米エネルギー情報局(EIA)が発表した在庫統計で、原油在庫の増加のほかガソリン需要の減少が明らかになると、需要減少を意識した価格低下圧力の方が勝り、結局、原油先物価格は3日、1バレル=90.66ドル(前日比-3.98%)と大幅に下落。ISM景気指数の価格項目の低下と原油先物価格の下落を背景に、7月半ばから再び高まっているインフレピークアウト期待と米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待に一段と拍車がかかり、相場を押し上げた格好だ。 一方、7月半ば頃からナスダックを中心に株式市場の力強い上昇が続いているが、ここからの上値追いには慎重になるべきと考える。足元のグロース株を中心とした株価上昇の要因は「行き過ぎた悲観の修正」だったと考えられる。7月は米連邦公開市場委員会(FOMC)やGAFAMをはじめとする主要企業決算など大きなイベントが多かっただけに、これらイベントを前に、機関投資家の間では売りに傾き過ぎた持ち高を修正する動きが強まっていた。FOMCやGAFAM決算を過ぎ、8月に入ってからもこうした基調が続いているが、この背景としては2つ理由が考えられる。 一つは、7月FOMC後のパウエル議長の記者会見を受けて、市場が先走ってFRBの来年からの利下げ転換を織り込みにいっていること。二つ目に、先行きに悲観的な見方が多かったなか、相場が想定外にも上昇を長く続けていることで、決められた期間の中でパフォーマンスを上げることを求められるヘッジファンドなどが、乗り遅れることを嫌って焦って買い戻しを加速させていることが考えられる。しかし、こうした動きは長期化しないだろう。 株価は、一株当たり利益(EPS)と投資家の期待値を表す株価バリュエーションであるPERの掛け算で決まる。これまで発表済みの日米主要企業の決算は想定以上に底堅いものの、外部環境の悪化を背景にアナリストによる今後の業績予想は徐々に切り下がっている。EPSが低下する中でも株価が上昇してきているのは、米国の実質金利の低下を背景としたPERの上昇が要因だ。 ただ、米10年債利回りは8月1日に2.57%と約4カ月ぶりの水準にまで低下した後は複数のFRB高官のタカ派発言もあって下げ止まっている。米10年物の実質金利も、一時再びマイナス圏入りを窺うところまで低下していたが、インフレ抑制を最優先課題とするFRBがこうした緩和的な状況を許容することは考えにくく、今後は、これまでの実質金利低下を背景としたPERの上昇余地も限られるだろう。 来年末の政策金利水準を巡っては、早くも利下げを織り込み始めている市場と、来年も利上げを続ける方針を維持しているFRBとの間でかなり乖離が出てきているため、むしろ、今後は楽観に傾いている市場の期待値がFRB寄りに修正されることを警戒するべきとも言える。今週末の米7月雇用統計での平均賃金の伸びや、来週に控えるアメリカ7月消費者物価指数(CPI)の結果次第では、こうした修正を迫られる可能性があろう。 後場の東京市場はトヨタ自<7203>の決算を睨んだ動きとなりそうだ。デンソー<6902>の業績下方修正などで既に期待値は低下していると思われるが、裾野の広い産業分野だけに、日本株全体へのインパクトも大きく、結果を受けた株価反応が全体のセンチメントを左右しそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/04 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は反発、金利急伸もグロース株強く、リバーサル長期化か
日経平均は反発。146.24円高の27740.97円(出来高概算6億1279万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でダウ平均は402.23ドル安(-1.22%)と大幅続落。ペロシ下院議長の台湾訪問を巡る中国の警告を受け、米中摩擦リスクを警戒した売りが先行。また、数名の連邦準備制度理事会(FRB)高官が米経済は景気後退には陥っておらず、高インフレの抑制が依然必要とし、9月の0.75ptの利上げも除外しなかったことで金利が急伸したことも重石になった。ナスダック総合指数は-0.16%と小幅続落。米中摩擦を意識した売りで前日に先んじて大きく下げていた日経平均は、78.27円高から反発スタート。一時1ドル=130円台まで進んでいた円高・ドル安が一服し、133円台まで戻していたことも支援要因に堅調推移が続き、朝方に一時250円近くまで上げ幅を広げた。その後に一時急速に上げ幅を縮める動きも見られたが、すぐに切り返してその後は堅調もみ合いが続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、日本電産<6594>など主力ハイテク株が総じて堅調。エムスリー<2413>、ZHD<4689>、SHIFT<3697>、Sansan<4443>などのグロース(成長)株が全般高い。本日決算を控える川崎汽船<9107>、郵船<9101>の海運株のほか、前日に好決算を発表した三菱商事<8058>も強い。ファーストリテ<9983>は堅調な7月既存店売上高も支援要因に大幅に上昇。ダイキン<6367>、JR西<9021>、イビデン<4062>は決算を手掛かりに大幅高。イリソ電子<6908>、イマジカG<6879>、サンリオ<8136>も決算リリースを受けてそれぞれ急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。 一方、任天堂<7974>、三菱UFJ<8306>、OLC<4661>、リクルートHD<6098>、信越化<4063>が軟調。AGC<5201>は通期計画を上方修正も出尽くし感から大幅安。東京電力HD<9501>は第1四半期経常損益の赤字転落が嫌気され下落。F&LC<3563>は冴えない月次動向が失望されて急落。ユー・エス・エス<4732>、ケーズHD<8282>、ダイヘン<6622>、NOK<7240>などは決算を受けて急落し、東証プライム市場の値下がり率上位に並んだ。 セクターでは精密機器、海運、機械が上昇率上位になった一方、電気・ガス、不動産、建設が下落率上位になった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体32%、対して値下がり銘柄は63%となっている。 日経平均は前日に先んじて米中摩擦リスクを織り込んでいたため、本日はしっかりとした動きになっている。昨日サポートとなった200日移動平均線上での推移が続いており、全体的な基調の強さは維持されている様子。 前日は、7月26~27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後に行き過ぎた市場の利下げ期待を修正する高官発言がいくつかあった。まず、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁はインフレ目標の達成には「程遠い」「長い道のりがある」とし、景気の減速を受けてFRBが来年には利下げに転じるとの観測が市場で出ていることについて、自分自身はそのように考えていないと時期尚早との見解を示した。また、シカゴ連銀のエバンス総裁は同日、9月のFOMC会合で決定する利上げ幅について「0.50ptが妥当な判断となり得るまでに十分な時間があると思われるが、0.75ptでも問題ないかもしれない」と述べた。 前日に発表された米6月JOLT求人件数は市場予想を下回り、労働市場の減速が示唆された。しかし、クリーブランド連銀のメスター総裁は、労働市場は依然ひっ迫が続いており、物価安定を目指した利上げを続けるべきとの考えを示した。7月31日にはハト派とされるミネアポリス連銀のカシュカリ総裁でさえも「7月FOMC後の市場の反応に驚いている」と述べており、2%のインフレ率に戻すことを達成するのは「ずっと遠い先」と発言している。 これらの発言を受けて前日の米債券市場では幅広い年限の利回りが急伸。ただ、依然として今年に付けた高値から低水準にあるということもあり、前日の米株式市場では、ハイテク・グロース株への影響は限定的で、むしろ、ナスダックについては底堅さが感じられる程だった。 7月に相場をけん引した米グロース株の力強い動きが8月に入ってからも続いていることは目を見張る。東京市場でもグロース株の強い動きが継続して見られており、本日の東証プライム市場の値上がり率上位もグロース株が多くを占めている。エムスリーの決算後の堅調推移からも、グロース株を巡る環境は相対的に良好のようだ。一方で、資源関連や景気敏感株は軟調なものが多く、今年前半の「資源関連買い・グロース売り」のリバーサル(株価の反転)はしばらく続くことが予想される。 後場の日経平均は堅調もみ合いか。200日移動平均線上での底堅さが継続して見られる一方、28000円を明確に超えられない状況が続いており、材料不足のなか、こうした状況はこの先も続きそうだ。グロース株を中心に投資家心理は改善しつつも、指数については完全に強気になりきれない部分もある。今週末の米雇用統計や来週の米消費者物価指数(CPI)を前に様子見ムードも強まりやすく、当面は足元で株価モメンタムが強い銘柄に乗るような需給メインのトレードが主体となりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/03 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、利食い売り材料続出、米中巡るきな臭さ増す
日経平均は大幅反落。443.94円安の27549.41円(出来高概算5億9650万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でダウ平均は46.73ドル安(-0.14%)と4日ぶりに小幅反落。予想を下回った中国7月の財新製造業購買担当者景気指数(PMI)やペロシ下院議長の台湾訪問計画報道を受けた地政学的リスクへの警戒感から売りが先行。月初で売り買いが交錯するなか、7月製造業PMI改定値が予想外に下方修正されたほか、7月ISM製造業景気指数が小幅ながら2年ぶりの水準にまで低下したため、景気後退懸念も上値を抑制した。ナスダック総合指数も-0.17%と4日ぶり小反落。前日に28000円目前まで上昇していた日経平均は米株安を受けて180.87円安からスタート。米中摩擦の悪化が警戒されて円高・ドル安が急速に進んだほか、中国上海総合指数や香港ハンセン指数も大幅に下落し、リスク回避の売りが広がるなか、日経平均は前引け直前には27530.60円(462.75円安)まで下落した。 個別では、ダイキン<6367>や信越化<4063>、任天堂<7974>、ファナック<6954>、SMC<6273>、キーエンス<6861>などの値がさグロース(成長)株、FA関連株が大きく下落。東エレク<8035>やルネサス<6723>の半導体関連も弱い。景気後退懸念による原油先物価格の大幅下落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大幅安で、三井物産<8031>や住友商事<8053>の商社株も大きく下落。円高・ドル安進行を背景にトヨタ自<7203>、デンソー<6902>の輸送用機器も軟調。決算を発表したJSR<4185>は一時ストップ安になるなど急落し、東証プライム市場の値下がり率トップとなっている。丸和運輸<9090>も決算を受けて急落。ほか、エノモト<6928>、ファイズHD<9325>、三越伊勢丹<3099>が決算リリースを手掛かりに大きく下落。 一方、全面安商状のなか商船三井<9104>、ファーストリテ<9983>、東京電力HD<9501>、ZHD<4689>、ベイカレント<6532>、ニトリHD<9843>が逆行高。また、決算が好感されたTDK<6762>と大塚商会<4768>はそれぞれ急伸し、住友化学<4005>、京セラ<6971>、ANA<9202>も決算を受けて買い優勢となった。 セクターでは医薬品、精密機器、機械を筆頭にほぼ全面安。一方、海運のみが上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体91%、対して値上がり銘柄は8%となっている。 前日の引けにかけて騰勢を強めた日経平均は28000円に届くことなく今日は寄り付きから失速。このところ200日移動平均線上での推移が続いていたが、本日は一時同線を下回る場面が見られた。28000円を手前とした上値の重さが連日で確認されていた矢先の急失速であり、やはり28000円回復には材料不足の様子。多方面で指摘されているように、米国のハイテク・グロース株を中心とした7月の株価上昇はイベントや夏季休暇入り前の機関投資家による買い戻しが主体だったと推察される。 また、テクニカル面で日米ともに主要株価指数がいい水準まで戻してきたタイミングで、利益確定売りの口実とされかねない中国関連のネガティブなニュースも多く見られている。まず、ペロシ下院議長が台湾を訪問する計画と伝わっている。蔡英文総統との会談は3日に予定されているという。会談はいまだ流動的とはいえ、中国側は軍事行動も辞さないと強くけん制しており、米中摩擦悪化への警戒感が急速に高まっている。ウクライナ戦争に端を発したロシアを巡る地政学リスクもまだ沈静化していない中、中国とのリスクも高まるとなると、市場は素直に嫌気するだろう。7月のリバウンドに寄与してきた商品投資顧問(CTA)など足の速い向きが、足元の悪材料に反応して持ち高を転換させる可能性もあろう。 中国の景況感回復のペースが想定以上に緩慢だという懸念も強まりつつある。中国国家統計局が発表した7月の製造業PMIは49.0と、6月の50.2から低下し、予想外に活動拡大・縮小の分かれ目となる50を下回った。財新が発表する民間版の7月製造業PMIも50を上回りはしたが、50.4と前月の51.7から低下し、市場予想の51.5も下回った。新型コロナ感染再拡大に伴う行動規制再実施の影響が長期化し、生産、新規受注、雇用の伸びが鈍化している。欧米諸国がこれから景気後退を迎える一方、中国については、緩やかながらも対照的に景気回復へと向かうことが期待されていたため、このままでは世界経済のけん引役が不在となる。 さらに、中国については、建設活動の停滞を理由とした市民による住宅ローン返済のボイコット問題も深刻化している。英銀HSBCホールディングスは中国の不動産関連エクスポージャー120億ドル(約1兆6000億円)相当の約3分の1が劣化、または不良化していることを明らかにしたと伝わっている。開発業者に金融支援を行う基金の設立などが検討されているものの、銀行による融資縮小で経済活動が一段と停滞するリスクを孕み、こうした中国経済を巡るきな臭さが不透明感として相場の重石になっている。 米国でも市場の動きを中心に不透明感が強い。米10年債利回りは1日、2.57%と約4カ月ぶりの水準にまで低下した。現在、米連邦準備制度理事会(FRB)が誘導目標とする政策金利FFレートは2.25~2.50%に設定されており、長期金利が政策金利とほぼ同水準にまで低下している状況はさすがに行き過ぎている印象がある。市場は景気後退によりFRBが来年には利下げを迫られるとみているわけだが、記録的なインフレが続いている中、FRBは今後の経済データ次第では0.75ptの大幅利上げを続ける方針で、市場の見方との間に大きな開きがある。FRBがインフレを抑制したいと考えているにも関わらず、長期金利が政策金利並みの水準まで急低下していることで、むしろ緩和的な環境が作られるという皮肉な構図となっている。 前日に発表された米7月ISM製造業景気指数の項目をみると、「価格」が60.0と6月の78.5から大幅に低下し、「入荷遅延」も57.3から55.2へと低下傾向が続いた。こうしたところから、モノに関するインフレのピークアウト感はより確度を増したといえそうだ。しかし、いま問題視されているのは下方硬直性を有すサービス分野でのインフレ長期化であり、今回のISM景気指数の結果がインフレ懸念を大きく後退させたとは考えにくい。 となると、やはり政策金利の動向を巡って、市場の見方との乖離が大きくなりつつある現状をFRBが放置しておくとは想定しにくく、近いうちにこうした乖離を埋めるために、FRB高官から乖離修正を狙った発言が出てくると予想される。今晩には早速、セントルイス連銀のブラード総裁などの発言が予定されており、注目されよう。 後場の日経平均は節目の27500円を維持できるかが焦点になる。踏ん張れずにこの水準も下回ってしまうと、CTAなどの売りが加速するリスクがあり、その場合には一気に27000円近くまで戻す展開も想定しておく必要があろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/02 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は反発、長期的にはロシアの侵攻や米中問題も警戒必要か
日経平均は反発。131.63円高の27933.27円(出来高概算6億3690万株)で前場の取引を終えている。 前週末7月29日の米株式市場のNYダウは315.50ドル高(+0.97%)と続伸。前日引けに発表されたオンライン小売りのアマゾンや携帯端末アップルの好決算を受けてハイテクセクターが強く、相場全体を押し上げ終日堅調に推移した。金利の低下も支援し、ナスダック総合指数も大幅続伸、主要株価指数がそろって上昇した米株市場を受けて、日経平均は前週末比12.18円高からスタート。その後は、じりじりと上げ幅を拡げる展開となった。 個別では、配当引き上げによる利回り妙味の一段の上昇評価が続く商船三井<9104>を筆頭に川崎汽船<9107>や日本郵船<9101>などの海運株が大幅高となっている。ほか、キーエンス<6861>、OLC<4661>、デンソー<6902>、信越化<4063>、メルカリ<4385>などが堅調、業績上方修正や自己株消却を発表したエンプラス<6961>がストップ高買い気配、第1四半期業績が市場想定を上振れて着地したZOZO<3092>なども大きく上昇した。伯東<7433>、日本化薬<4272>、ミスミG<9962>が値上がり率上位に顔を出した。 一方、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、日立<6501>などが軟調。ゲーム事業下振れによる通期営業益下方修正を嫌気されたソニーG<6758>や第1四半期が想定以上の低調スタートとなった富士通<6702>などが大きく下落した。ほか、コムチュア<3844>や、アルプスアルパイン<6770>、沖縄電力<9511>、リオン<6823>、が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは海運、輸送用機器、空運が上昇率上位となった一方、電気・ガス、金属製品、医薬品が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の71%、対して値下がり銘柄は25%となっている。 本日の日経平均株価は、小幅に上昇してスタートした後前週末終値付近でのもみ合い展開となった。その後は、アジア市況が軟調な展開、米株先物は冴えない展開となったことを横目にじりじりと上げ幅を広げ、プラス圏での推移となった。GAFAM決算を終えて米株高が継続していることは個人投資家心理にポジティブに働いている。そのほか、国内でも決算発表が増加してきており、決算発表を終えた個別株物色が中心となっている。 新興市場も本日は買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと朝方にプラス圏に浮上、その後はじりじりと上げ幅を拡げた。新興市場でもGAFAM決算を終えて米株高が継続、長期金利低下・グロース買いの流れが続いていることが個人投資家心理にポジティブに働いている。ただ、グロース株優位の状況ではあるものの、新興市場でも既に決算を発表している銘柄など個別材料株中心の物色となっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が0.67%高、東証マザーズ指数が0.63%高となった。 さて、4-6月期国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となったが、FRBの大幅利上げを回避できるとの期待から米株式市場は上昇を継続している。また、大型テック企業の決算では、アルファベットとマイクロソフトの決算が想定程に悪くなかったこと、アマゾンやアップルの決算で純利益が減少したものの売上高が増加したこと、などが好感されているようだ。大型イベントを無難に通過したことで個人投資家心理がポジティブに傾いていることは明確となっている。 ただ、株高が継続していくかは市場でも疑問視する声が多い。ブラックロックでシステマチックマルチ戦略シニアポートフォリオマネジャーを務めるジェフリー・ローゼンバーグ氏はブルームバーグで、「市場は利上げペースの鈍化にすがっており、株価が上昇すればするほどその後の継続が難しくなると言うことをよく考えていない」と話している。また、一部のFRBウオッチャーは、「パウエル議長の記者会見についての市場の解釈は狭過ぎる。」とも発言。フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の予測分布図では年内に3.4%前後、23年には3.8%ヘの利上げ見通しが示されており、利上げはまだ続きそうで過度な楽観論は危険としている。 また、長期的にはロシアのウクライナ侵攻や米中問題も見逃してはならない。ニューズウィークでは、将来のNATO加盟国への攻撃に備えて戦力と空中火力を温存している可能性があるというNATO国防大学の最新のリポートが発表されたと報じられている。ウクライナのゼレンスキー大統領は6月に「来年は、ウクライナだけでなく、他にも数カ国が攻撃されるかもしれない。そしてそれはNATO加盟国かもしれない」と警告。NATOのリポートはゼレンスキー氏の主張を反映し、ロシア軍のこれまでの弱さに騙されてはいけないと警告している。ロシアがウクライナ以外のNATO加盟国へ攻撃を開始する可能性があることは頭の片隅に置いておきたい。 米中問題に目を移すと、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は28日に電話会談を行い、台湾問題について長時間にわたり意見を交わしたという。ただ、ペロシ米下院議長の台湾訪問の可能性が浮上したことで中国が警告を発する事態となっているようだ。中国の国営通信によると、習氏はバイデン氏に「世論に反してはならない、火遊びをすればやけどをする。米国側がこのことを明確に理解することを望む」と述べたという。各国のインフレ及び金融政策の動向などに注目がいきがちだが、来年にかけてのロシアの侵攻や米中問題にもある程度のアンテナを張っておきたいところだ。 さて、後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目にじりじりと上げ幅を拡げる展開が続くか。前場に続いて個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。テクニカル面では、終値で節目の28000円超えとなるか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/01 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、景気後退・円高が重荷、利上げ減速期待を裏切りそうな材料も
日経平均は3日続伸。129.07円高の27944.55円(出来高概算5億6644万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場でダウ平均は332.04ドル高(+1.03%)と大幅続伸。4-6月期国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となったことで景気後退を警戒した売りが先行したが、大幅な利上げを回避できるとの期待から買い戻しも目立ち、上昇に転じた。下院が半導体業界支援法案を可決したほか、政府の環境問題支援策を巡る進展なども好感され、引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+1.08%と続伸。米国株の続伸を受けて日経平均は99.74円高からスタート。しかし、前日同様、寄り付き直後に28001.80円まで上昇した後は戻り待ちの売りから失速し、28000円割れ。ただ、決算を発表したアップルとアマゾン・ドット・コムが揃って良好な内容から時間外取引で株価が大幅に上昇していたこともあり、日経平均は下落に転じることはなく、その後はもみ合いとなった。 個別では、通期計画を上方修正したアドバンテスト<6857>が大幅に上昇し、レーザーテック<6920>なども上昇。エムスリー<2413>は前日の急伸に続いて大幅高。ファーストリテ<9983>、ファナック<6954>、ダイキン<6367>、リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>など値がさ株、グロース(成長)株が総じて高い。アンリツ<6754>は決算を手掛かりに急伸、OLC<4661>も決算が安心感に繋がって上昇。一方、決算を発表したところで、ルネサス<6723>が急落し、村田製<6981>やキーエンス<6861>も下落。東邦チタニウム<5727>は上半期計画を上方修正も出尽くし感から急落、大阪チタ<5726>も連れ安へ。ほか、日産自<7201>も決算を材料に大幅安で、円高・ドル安が進むなかマツダ<7261>、SUBARU<7270>なども安い。 セクターではサービス、鉱業、石油・石炭が上昇率上位となった一方、医薬品、食料品、ゴム製品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体40%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 本日も日経平均は心理的な節目の28000円を手前に上値の重い展開。米連邦公開市場委員会(FOMC)直後に上昇しても翌日以降に失速することが多かった米株式市場は、今回は2日目の前日もしっかりと続伸した。また、GAFAM決算で最後に残っていたアップルとアマゾンが共に予想を上回る決算を発表したことで、時間外取引のナスダック100先物も大きく上昇している。そうした追い風がある中でも、日経平均が28000円を明確に超えられないのは気になる動きだ。 また、気掛かりな要素は他にもある。米4-6月期GDPは2四半期連続でマイナス成長となった。欧州や米国での経済指標の下振れが相次いでおり、悪化ペースも速い。一段と景気後退懸念が強まっていることで、米10年債利回りの低下基調も続いている。グローバル景気敏感株とも称される日本株が、これだけ景気後退懸念が強まるなか、そしてこれから欧米諸国が景気後退を迎えようとする中、買われづらくなるのは当然なのかもしれない。 日本株の底上げに繋がってきた為替も、一時1ドル=139円まで進んだドル・円は足元で134円台にまで下落してきている。貿易赤字を通じた実需筋による円売り・ドル買いもあるため、大幅な円高・ドル安は想定しにくいが、投機筋による売買も多いため、ポジション調整が続けば、節目の130円くらいまでは下落余地があると考えられる。少なくとも、これまで独自の日本株高の背景として挙げられてきた円安・ドル高に明確なピークアウト感が見られていることは懸念材料で、欧米対比での日本株の底堅さが見られることはなくなっていく可能性が高いだろう。 力強い動きが続いている米国株も、主要株価3指数は前日時点で遂に100日移動平均線近辺まで戻してきた。今年前半のリバウンド局面ではいずれもこの100日線が戻り一服の目処になってきたことで、そろそろ売り方の買い戻しも一巡してくる頃合いと考えられる。FOMC結果公表があった当日には買い戻しだけでなく、軽い新規買いも入っていたとの声も聞かれたが、当日の株式取引量は過去3回のFOMC当日の取引量と比較して25~35%程少なかった。決算発表が本格化する中でのFOMCとしてはかなり少ないといえる。株式市場は上に行きたがっている様子が窺えるものの、そのエネルギーは余力に乏しそうだ。 企業決算もテクノロジー株が底堅い一方、日本株全体との連動性が高い景気敏感株については軟調なものが多い印象。特に上値の重いのが半導体を中心とした電子部品周り。米インテルの4-6月期決算は市場予想を大きく下回り、通期計画も下方修正された。東京市場でも、ルネサスが好調な決算ながらも需要ピークアウトへの警戒感から本日、株価が急落している。鉱工業生産の動向から代わりに自動車の挽回生産なども期待されるが、指数インパクトの大きい銘柄は電気機器セクターに多いため、こうした点も、日本株全体の重荷になる。 また、気掛かりなのはやはり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速への期待感を高めつつある市場の動向だ。パウエルFRB議長が今後の利上げ幅は「経済データ次第」としたことで、市場は足元の景気指標の下振れを利上げペース減速の根拠として捉えているが、経済データは景気指標だけでない。むしろ、FRBは依然としてインフレ抑制を最優先事項として掲げているわけであるから、物価指標の影響の方が大きいだろう。 その物価指標では、今晩、米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータが発表される。投資家の物価指標の注目は既に7月分に移っているため、波乱材料にはならないだろう。しかし、一方でその次回7月分を巡っては懸念要素が出てきている。前日に発表されたドイツの7月消費者物価指数(CPI)は欧州連合(EU)基準で前年同月比+8.5%となり、前月(+8.2%)から加速、低下を見込んでいた市場予想(+8.1%)に反して大幅に上昇した。 欧州ではロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働問題などを背景に天然ガスの価格が急騰していることもあるが、米国でも猛暑に伴う冷房需要を背景に天然ガスの価格は大幅に上昇している。さらに、強気派が挙げていた資源価格の下落も、その後ほとんど進んでいない。むしろ、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト、9月物)原油先物価格は14日に一時1バレル=88ドルまで下落した後は、足元で再び100ドルを窺う水準まで戻している。さらに、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、4月21日高値3.02%から7月6日安値2.29%まで大幅に低下した後、実は足元では2.48%へと大きく上昇に転じてきている。 こうしたところから、インフレピークアウトを先取りしすぎた動きには危うさが伴い、米国の7月CPIが近づく場面では、警戒が必要だろう。一方で底入れ感が強まっているマザーズ指数の構成銘柄では、メドレー<4480>やクラウドワークス<3900>など年初来高値を更新している個別株も多い。こうした銘柄群は、今後再び相場が調整した際でも、底堅さが意識され、次回のリバウンド局面では真っ先に高値を更新することが期待される。先行き慎重ながらも個別株の選別を極めていくことが重要なタイミングと言えそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/29 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、パウエル会見と市場反応のギャップから感じること
日経平均は続伸。88.46円高の27804.21円(出来高概算5億8787万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でダウ平均は436.05ドル高(+1.37%)と大幅反発。主要ハイテク企業の決算が警戒された程には悪化せず、投資家心理が改善し、上昇して始まった。議会上院が半導体産業支援法案を可決したことも寄与。その後、連邦公開市場委員会(FOMC)では予想通り0.75ptの利上げが決定。あく抜け感が台頭したほか、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が消費や雇用の減速を認識し、今後の利上げペースについて慎重な姿勢を示したため、引けにかけて買い戻しに拍車がかかった。ナスダック総合指数は+4.06%だった。日経平均は193.40円高からスタートし、寄り付き直後に28015.68円まで上昇。しかし、そこからはすぐに伸び悩み失速。前場中ごろにはマイナスに転換し、一時27651.99円(63.76円安)まで下げた。ただ、前引けにかけては下げ渋って再びプラスに転じた。 個別では、決算が好感された信越化<4063>とファナック<6954>が買われ、三菱自<7211>とエムスリー<2413>、ビーグリー<3981>はそれぞれ急伸し、揃って東証プライム市場の値上がり率上位に並んだ。中部電力<9502>も好決算を手掛かりに急伸し、東京電力HD<9501>、レノバ<9519>、イーレックス<9517>など電気・ガスセクターが連れ高。原油先物相場の上昇を背景にINPEX<1605>も上昇。ほか、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>、メルカリ<4385>などグロース(成長)株が高い。Sansan<4443>はレーティング格上げ観測で大幅に上昇。 一方、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、アドバンテスト<6857>、新光電工<6967>、三井ハイテック<6966>などが米ハイテク・グロース株高に乗り切れず下落。Vコマース<2491>、小糸製作所<7276>、サイバー<4751>は決算を受けて急落。ほか、太平洋工業<7250>、カゴメ<2811>、JCRファーマ<4552>なども決算が売り材料視された。 セクターでは電気・ガス、鉱業、サービスが上昇率上位となった一方、保険、医薬品、建設が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体38%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 本日の日経平均は朝方28000円突破後に失速して一時マイナス転換。ここ最近の朝安後に切り返す底堅い動きとは対照的な動きとなっている。直近の株価上昇は、決算シーズン前の買い戻しに加えて、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型の短期筋による追随買いが演出したわけだが、日経平均で28000円を超えてまで買い上がる向きは少ないようだ。本日の動きを見る限り、CTAなどは既に買い余力をほとんど残しておらず、むしろ28000円達成を機に利益確定売りに転じている様子。 一方、前場の日経平均はその後プラス圏に再浮上し、依然200日移動平均線上での推移になっているほか、一応上値と下値を切り上げているため、まだ基調が大きく崩れたわけではない。しかし、前日のナスダックを中心とした米ハイテク・グロース株の大幅高に素直に乗り切れないあたり、相場の脆弱性を再認識する形になった。 米株市場も、前日は非常に大幅な上昇となったが、この勢いがこのまま続くとは言い切れない。実際、今年はFOMC直後に上昇しても、翌日以降に下落基調に転じることが度々あったため、市場関係者の間でも、昨晩の米株高を素直に受け止めているものは少ない。 昨日の米国株の上昇自体もいいとこ取りの気がしてならない。パウエルFRB議長は会見で、足元の米経済状況の軟化を認め、利上げペースが鈍化する可能性を示唆した。相場はこれを受けてポジティブに反応したわけだが、パウエル議長は今後のデータ次第では0.75ptの大幅利上げが続くともはっきりと言っている。 また、パウエル議長はインフレ圧力の抑制が最優先課題と強調している。目標の達成を妨げ得るようなリスクが出現した場合には政策を調整するとも言及(利上げ幅拡大?)。そして、米経済が景気後退に陥っているとは考えていないとし、「非常に力強い労働市場」をその証拠に挙げたほか、「需要はなお力強く、経済は年内成長を続ける軌道に依然としてある」とも述べた。 つまり、今後の消費者物価指数(CPI)や雇用統計での平均賃金の伸びなど、データ次第では、下手をしたら先日の欧州中央銀行(ECB)のように利上げ幅拡大のタカ派サプライズが待ち構えている可能性もあるわけだ。次回の9月会合の利上げ幅としては0.25~1.00ptまで幅広く可能性があり、政策動向を巡る不確実性は解消されていないといえる。市場の「景気後退に伴う利上げ鈍化・年内利上げ停止・来年利下げ」というシナリオはあまりに楽観的な印象を拭えず、パウエル議長の会見内容とはギャップを感じる。 ネガティブな要素を無視した足元の株価上昇に持続性があるとは考えにくく、8月に入ってから出てくるCPIや雇用統計のデータ発表が近づくタイミングでは、再び売りが強まってくる可能性に留意したい。 後場の東京市場はもみ合いか。FOMC直後の米株高が持続的なものなのかを見極めたいとの思惑は強く、今晩以降の米国市場を確認するまでは動きづらい展開が続く。また、今晩の米国市場ではアップルとアマゾン・ドット・コムの注目決算も控えている。後場は様子見ムードが広がりやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/28 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小幅反発、FOMC結果とその後の株価動向を推察
日経平均は3日ぶり小幅反発。37.68円高の27692.89円(出来高概算4億3521万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でダウ平均は228.50ドル安(-0.71%)と反落。小売のウォルマートによる業績下方修正を受けて小売セクターが大きく売られ、寄り付き後下落。国際通貨基金(IMF)が成長率見通しを引き下げたことに加え、7月消費者信頼感指数や6月新築住宅販売件数が軒並み予想を下回ったため、成長減速懸念が更なる売り圧力となり、終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-1.86%と3日続落。米株安を受けて日経平均は80.05円安からスタート。一時27525.09円まで下げたが、アルファベットとマイクロソフトの決算が想定程に悪くなかったことで、ナスダック100先物が大きく上昇している中、序盤に切り返すと前場後半にはプラスに転じる展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>の半導体関連株が大幅高。村田製<6981>、TDK<6762>、SMC<6273>などハイテク株も堅調で、三井ハイテック<6966>、新光電工<6967>は大きく上昇。商船三井<9104>、郵船<9101>もしっかり。業績予想を上方修正したタムロン<7740>が急伸し、決算が手掛かりとなった栄研化学<4549>、信越ポリマー<7970>が大幅高。ファイズHD<9325>はアマゾンジャパンの配送拠点増設を手掛かりに急伸し、東証プライム市場の値上がり率トップとなった。一方、韓国子会社の上場延期に関する思惑が一部で広がり、ダブル・スコープ<6619>が急落。決算発表銘柄ではマキタ<6586>、トプコン<7732>、シマノ<7309>が大きく売られ、東証プライム市場の値下がり率上位に並んだ。ほか、キヤノン<7751>、日東電工<6988>、オムロン<6645>なども決算を受けて売り優勢。 セクターでは陸運、医薬品、海運が上昇率上位となった一方、水産・農林、輸送用機器、パルプ・紙が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体34%、対して値下がり銘柄は60%となっている。 前日の米株式市場の取引時間中、夜間取引の日経平均先物は一時27400円まで下げる場面があったが、本日の日経平均は27600円台と前日終値とほぼ変わらない水準で引き続き底堅い推移。200日移動平均線も依然として割り込んでおらず、同線上での動きは20日以降で6日目となる。同線を下値支持線に変えてきているあたり、テクニカル面では良い兆しを感じさせてくれる動きだ。 注目されたGAFAM決算の第一陣であるアルファベットとマイクロソフトの決算は、売上高と一株当たり利益が揃って市場予想を下回ったものの、下振れ幅が限定的だったため、過度な警戒感が後退する形で、株価は時間外取引で大きく上昇した。これに伴い、ナスダック100先物が堅調に推移していることが東京市場の底堅さの背景になっている。マザーズ先物も心理的な節目の700を超えた状態での推移となり、FOMC前にしてはかなり堅調な印象。 ただ、指数は日経平均だけでなく、東証株価指数(TOPIX)、マザーズ指数まで揃って前日終値とほぼ同水準にある。明日午前3時に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、売り方も買い方もどちらも持ち高を大きく動かしたくないのだろう。明日の結果次第では、様相は一変する可能性もあり、今の底堅さをそのまま素直に受け取るのは難しい。 今回のFOMCでは0.75ptの利上げが8割程の確率でほぼ織り込まれており、事前の高官発言からしても、この予想通りの結果になるだろう。焦点は次の9月会合以降の利上げ幅に対する言及だ。米国での企業の景況感、個人消費者センチメントを巡る経済指標の相次ぐ下振れを受けて、投資家は9月からの利上げ幅の鈍化、来年からの利下げ、早いところでは12月の利上げ打ち止めまでを織り込む動きとなっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が記者会見で、市場の期待通り、利上げ幅の鈍化を示唆すれば、相場はポジティブな反応を示すとみられ、日経平均でいえば、短期的には28500円くらいまでのオーバーシュートはあり得そうだ。一方、足元で資源価格が下落していてインフレピークアウト期待が根強いとはいえ、消費者物価指数(CPI)などの指標結果はピークアウトどころかまだ加速中だ。インフレ対応にあたってかなり後手に回り、一時、政策運営の信頼を失いかけた経緯を踏まえると、FRBは慎重な対応を取ると推察される。 つまるところ、「データ次第で利上げ幅は変化しうる」といったどうにでも解釈できる当たり障りのない言及にとどまると考えている。ただでさえ、後手に回ったインフレ抑制にあたって、早々に利上げ幅の鈍化・打ち止めを示唆したうえ、最終的にやはりインフレ抑制に失敗したなどという最悪の事態は、FRBとしては絶対に避けたいはずだ。そうした背景を踏まえると、自ら政策運営のフリーハンドを無くすような、手枷足枷をはめるような発言をするとは考えにくい。そのため、市場が期待しているような利上げ幅の鈍化といったメッセージを明確に送ることは考えにくいだろう。 となると、今後の相場動向を占う上では現在本格化してきている企業決算ということになる。特に米国では事前の警戒感がかなり高まっていたこともあり、日米ともにこれまでに発表済みの決算については無難なものが多い印象。米国については「想定より底堅い」、日本については「そこまで悪くない、まずまず」といったところか。 しかし、仮に今後もこうした無難な決算が大半を占めた場合に、相場は今のリバウンド基調を維持し続けるだろうか。先日紹介したバンク・オブ・アメリカ(BofA)の最新の月次ファンドマネージャー調査によると、歴史的にみて機関投資家の現金比率は非常に高い一方、株式の組み入れ比率は非常に低い水準にあることが分かった。しかし、これから欧米諸国が景気後退を迎えようとするなか、思ったほどには悪くない程度の決算を確認したところで、果たして機関投資家が「よし、やっと買える」となるだろうか。せっせと現金化してきたキャッシュをそんな早々に再び買いに投じるだろうか。 国内企業の決算反応をみても、安川電機<6506>、日本電産<6594>、日東電工あたりの反応を見ていると、内容は悪くないものの、株価の反応は冴えない。日東電工については4-6月期実績および上方修正後の通期計画はともに市場予想を上回ったが、本日の株価は下落している。上振れ要因のほとんどが為替の円安だが、円安については既に周知の事実といったところで、むしろ為替効果を除いた実質ベースで伸びていないと評価されないようだ。 このように、今後の株式市場の動向については、足元で強気な見方が徐々に増えてきてはいるが、依然として軟調継続を想定するに値する根拠も多くあるように見受けられる。こうした中、今晩の米国市場ではFOMCの結果だけでなく、スナップチャットやツイッターの決算を受けて警戒感が高まっているメタ・プラットフォームズの決算などもある。足元の日経平均の日足チャートは非常に堅調な形だが、明確に強気に転じるには依然として材料不足ということを認識しておきたい。 後場の東京市場は引き続きもみ合いだろう。今晩のイベントを前に完全に様子見ムードといったところで、持ち高を大きく動かす向きは限られるとみる。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/27 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続落、インフレと金融政策巡る論争、どちらに分があるか
日経平均は小幅続落。17.52円安の27681.73円(出来高概算4億4605万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でダウ平均は90.75ドル高(+0.28%)と反発。6月シカゴ連銀全米活動指数や7月ダラス連銀製造業活動指数が予想を下回り2カ月連続のマイナスに落ち込んだことで、景気後退懸念が強まるなか寄り付き後下落。連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を28日午前3時頃と直前に控えるなか、終日持ち高調整の売り買いが交錯。方向感に欠けるなかダウ平均はプラス圏を維持したが、ハイテク株は主要企業決算の発表を控えた警戒感から売られ、ナスダック総合指数は-0.43%と続落。ダウ平均先物が軟調な中、日経平均は17.05円安からスタート。小売の米ウォルマートが業績予想の下方修正を発表し、時間外取引で売られていたことが影響した。前半は売り優勢が続き、朝方に一時27538.39円まで下げた。ただ、心理的な節目を手前に下げ渋ると、前引けかけては前日終値近くまで戻した。 個別では、郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>が大きく下落。任天堂<7974>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>のグロース(成長)株も冴えない。ほか、オムロン<6645>、テルモ<4543>、ニトリHD<9843>が軟調。日本電産<6594>は決算発表後に4日続落。米国民事訴訟での和解金として特別損失の計上を発表した日本ケミコン<6997>、第1四半期経常利益が2ケタ減となったコーエーテクモ<3635>は大きく下落。 一方、中国アリババグループが香港取引所でのプライマリー上場を申請すると発表したことを受けてソフトバンクG<9984>が大幅高。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインの稼働率が低下したことなどを背景に原油先物相場が上昇したことで、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大きく上昇し、大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>、大平洋金属<5541>など資源関連が全般強い動き。米長期金利の上昇を背景に第一生命HD<8750>、三菱UFJ<8306>など金融が堅調で、月次販売動向を手掛かりに神戸物産<3038>が大幅に上昇。好決算や業績予想の上方修正を発表したKOA<6999>、ダブル・スコープ<6619>、インソース<6200>が急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んでいる。 セクターでは海運、その他製品、精密機器が下落率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、保険が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体34%、対して値上がり銘柄は60%となっている。 ウォルマートの業績下方修正を背景としたダウ平均先物の軟化を受けて、前場の日経平均は一時150円超下落したが、その後は前日終値近くまで戻し、200日移動平均線線上での底堅い動きを維持している。先週までの短期間での上昇幅や飛び込んできたウォルマートのネガティブな報道から、神経質に反応することを想定していたため、個人的にはかなり底堅い印象を抱く。 一方、28日未明に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表に加え、今晩のアルファベットとマイクロソフトを皮切りに始まるGAFAMの大型テック決算など、今週に集中する注目イベントを前に持ち高を大きく動かしたくない表れとも捉えられる。 実際、日経平均は13日から先週末まで7日続伸し、この間の上げ幅は1500円を超えたが、東証プライム市場の売買代金は一度も3兆円を超える日がなく、2兆円台半ば前後にとどまっていた。前日にいたっては、かろうじて2兆円台に乗せる程度で商いはかなり薄く、本日も前引け時点での売買代金は1兆1000億円程度だ。溜まっているエネルギーが各種イベント通過後に大きく動きだす可能性を考慮すると、今週後半の相場のボラティリティーは大きくなりそうだ。 一方、気掛かりなのは米国の景況感の悪化ペースだ。2~3カ月程前から経済指標の下振れが目立ち始めたが、足元では悪化ペースが加速している。直近の指標を確認すると、まず7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は-12.3と予想(+1.5)を大幅に下回った。下振れは4カ月連続で下振れ幅も拡大傾向にある。6月、7月分にいたっては2カ月連続で予想のプラスに反してのマイナスだった。その前に発表されていた7月NY連銀製造業景気指数は+11.1と予想(-2)を上回ったが、6カ月先の景況指数は前月から20pt余りも低下し、-6.2と急低下した。 さらに、米国の製造業・サービス業合わせた7月総合購買担当者指数(PMI)速報値は前月比4.8pt低下の47.5だった。拡大と縮小の境界値である50を約2年ぶりに下回り、新型コロナパンデミックの発生直後である2020年5月以来の低水準となった。前日に発表された6月シカゴ連銀全米活動指数、7月ダラス連銀製造業活動指数も予想を下回って2カ月連続のマイナスに落ち込んでおり、経済指標の悪化ペースや下振れ傾向が強まっている印象が否めない。 こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースを巡っての市場関係者の見方が分かれている。モルガン・スタンレーのストラテジストは景気後退懸念が強まるなかでも、FRBが金融引き締めをやめると想定するのは時期尚早だと指摘している一方、JPモルガン・チェースのストラテジストはインフレがピークに達したとの見方から、FRBは政策転換に踏み切り、株式市場の状況も今年後半には改善すると分析している。 さらに、市場では、早ければ今年12月には利上げが打ち止められるとの期待まで織り込まれつつあるようだ。しかし、筆者としては、JPモルガンの今年後半における市場環境の改善には一部賛同しつつも、12月の利上げ打ち止めはさすがに時期尚早で、個人的にはモルガン・スタンレー側の見方に近い考えだ。 今週末に発表される米6月個人消費支出(PCE)コアデフレータは前年比+4.7%が予想されているが、これはFRBの目標である+2.0%を依然として大幅に上回っている。仮に目標値を3%に引き上げたとしても、乖離幅はやはり大きい。物価指標の伸びはピークアウトしつつあるとはいえ、FRBが、インフレが目標値を上回っているなか利上げ停止を示唆するとは考えにくい。 雇用統計での平均賃金の伸びは最新6月分時点でもまだ前年比+5.1%と高い水準にある。12月時点で利上げ打ち止めに踏み切れるほどに、ここから大幅な物価指標の伸びの減速が期待できるとは考えにくく、FRBの目標値までインフレが低下するにはかなり時間がかかると推察される。 足元では日米ともに株価指数の底入れ期待が強まりつつ。実際、今週の大型イベントをすべて無難に通過できるのであれば、こうした見方はより一層強まるのだろう。しかし、インフレとFRBの金融政策を巡るやや楽観に傾いた見方は、来月の物価指標が発表されるタイミングなど、どこかで再び修正を迫られる可能性があると意識しておきたい。 後場の日経平均は前日終値を挟んだもみ合いが続きそうだ。アジア市況は堅調だが、ウォルマートの業績下方修正を受けた今晩の米株市場の反応を確認したいほか、スナップチャットやツイッターの決算を機に警戒感が高まっている、明日未明に発表予定のアルファベットの決算を見極めたいとの思惑が強く、積極的な売買は手控えられよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/26 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は8日ぶり反落、イベント前に利食い売り及びリスク回避の売り広がる
日経平均は8日ぶり反落。203.94円安の27710.72円(出来高概算4億4018万株)で前場の取引を終えている。 前週末22日の米株式市場のNYダウは137.61ドル安(-0.43%)と反落。主要ハイテク企業の先陣をきって写真・動画共有アプリのスナップ(SNAP)が発表した四半期決算がデジタル広告需要の低迷で売上高が予想を下回る低調な結果となったためハイテクセクターが売られ相場全体を押し下げ、下落に転じた。さらに、7月製造業・サービス業総合のPMI速報値が予想外に2年ぶり活動縮小を示し景気後退懸念がさらなる売り圧力となり、主要株式指数は下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は大幅反落、軟調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前日比216.89円安からスタート。その後は、軟調もみ合い展開となった。 個別では、エーザイ<4523>、信越化<4063>、リクルートHD<6098>、日本電産<6594>などが軟調。トヨタ自<7203>やキーエンス<6861>なども下落、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などのハイテク株も冴えない動きが続いている。前週末大幅に上昇していたサーバーワークス<4434>が利食い売り優勢から値下がり率トップに、材料価格低下で上方修正も出尽くし感が優勢となっている東製鉄<5423>が大幅に下落、ギフティ<4449>なども大きく下落している。ほか、ラクーンHD<3031>や、イオンファンタジー<4343>、イーソル<4420>が値下がり率上位に顔を出した。 一方、レノバ<9519>が大幅高、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株が上昇している。引き続き豪州アントンパール社の株式大量取得を手掛かりとしてオーバル<7727>が大きく上昇、2024年から国内で初めて中古EVの電池査定を開始すると報じられたオークネット<3964>、サル痘予防に天然痘ワクチン活用へとの報道を材料視された明治HD<2269>なども上昇した。ほか、トレファク<3093>、ソラスト<6197>、ジェイリース<7187>が値上がり率上位に顔を出した。 セクターでは電気機器、機械、鉄鋼が下落率上位となった一方、陸運、電気・ガス、食料品が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の29%、対して値下がり銘柄は66%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後朝方に下げ幅を縮小した。その後は、アジア市況が冴えない展開となったことを横目に軟調もみ合い展開に、前引けにかけては下げ幅をやや広げた。前週末に米ハイテク株安となったことが個人投資家心理にネガティブに働き、東京市場では前週に大幅に上昇した分の利食い売りが優勢となっている。ただ、テクニカル面では、200日移動平均線付近より上方に位置しており、調整の範囲内として捉えられよう。 新興市場も本日は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数も、下落してスタートしたあと軟調もみ合い展開となっている。日経平均よりもやや値幅を伴った下落となっている。新興市場でも前週に大幅に上昇した分の利食い売りが優勢。また、26~27日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。大型イベントを控えるなかバリュエーション面での割高感が意識されやすい東証グロース市場の中小型株はリスク回避の売りも重なっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.11%安、東証マザーズ指数が1.88%安となった。 さて、米国では26~27日にFOMCが開催、26日にマイクロソフト、アルファベット、27日にメタ・プラットフォームズ、28日にアップル、アマゾンなど大型テック企業の決算を控えている。先週決算を発表したネットフリックスやテスラは市場予想を上回る決算で株価は大きく上昇している。FOMCを無難に通過し、GAFAMの決算が堅調に推移していることが確認されると、個人投資家心理にポジティブに働くだろう。 CME FedWatch Toolでは、FF金利を1.00%利上げするとの見方が21.3%まで減少している。市場では0.75ptの利上げが完全に織り込まれており、米6月消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上振れたことで一時1.00ptという超大幅な利上げが警戒されたことから、今回のFOMCでは大きなサプライズは起こりにくいと想定している投資家が多いだろう。 ブルームバーグでは、パウエル議長率いる金融当局はFOMCで2会合連続の0.75ポイント利上げを決めた後、金利引き上げのペースを落とす公算が大きいとみているようだ。ブルームバーグがエコノミスト44人を対象に15−20日に実施した最新調査で、9月20、21両日の会合では利上げ幅を0.5ポイントとし、11月1、2両日および12月13、14両日の年内残りの2会合はいずれも0.25ポイントずつ利上げすると見込まれている。 ただ、今回のパウエル議長の会見などで次回9月会合でも0.75pt以上の利上げに含みを残すような見解が示されると、足元で利上げに対してやや楽観的に傾いてきている分、売りが膨らみそうだ。ひとまず、7月FOMCの動向及びパウエル議長の発言に注視する必要がある。 さて、後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に軟調な展開が続くか。また、大型イベントを控えるなか、リスク回避の売りも重なることを想定しておきたい。テクニカル面では、200日線上方での推移を維持できるか注目しておきたい。
<AK>
2022/07/25 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は7日続伸、上昇基調一段と強まるが、来週は最大の山場
日経平均は7日続伸。67.33円高の27870.33円(出来高概算4億6068万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でダウ平均は162.06ドル高(+0.50%)と3日続伸。7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数などが予想外に悪化したため、景気減速を懸念した売りが先行。バイデン大統領が新型コロナ検査で陽性症状との報道も一時売りに拍車をかけた。ただ、報道官が会見で大統領の病状が深刻化するリスクは低いと表明したことで安心感が台頭。欧州中央銀行(ECB)は予想外に0.5ptの大幅利上げを行ったものの、これに対する反応も限定的で、予想を上回る企業決算やハイテク株の買い戻しを背景に引けにかけて主要株価指数は上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+1.36%と3日続伸。日経平均は連日の上昇の反動で29.86円安からスタートしたが、すぐに切り返してプラス転換。その後も堅調に上値を伸ばす展開が続き、午前中ごろには27900円を回復。 個別では、キーエンス<6861>が大きく上昇し、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>、富士通<6702>、ルネサス<6723>、SMC<6273>などが高い。カプコン<9697>、バンナムHD<7832>、スクエニHD<9684>などゲーム関連も総じて強い。原油先物価格が下落するなかニトリHD<9843>が大幅高。業績予想を揃って大幅に上方修正した郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>は急伸。事前の観測報道を上回る決算となったオービック<4684>、堅調な決算と合わせて中間配当の増配を発表したディスコ<6146>も買われている。 一方、日本電産<6594>が前日に続き大きく下落。電気代が燃料費転嫁の制度上限に達するとの報道を警戒し、東京電力HD<9501>が大幅安となっており、レノバ<9519>など他の電気・ガスセクターの銘柄も連れ安している。資源価格や米長期金利の下落を受けて、石油資源開発<1662>、大阪チタ<5726>、住友鉱<5713>などの資源関連や、東京海上<8766>、第一生命HD<8750>の保険株が軟調。国内の新型コロナ感染再拡大により、JR東<9020>、JAL<9201>などの旅行関連も安い。OBC<4733>は決算を受けて大きく売られている。 セクターでは海運、その他製品、サービスが上昇率上位となった一方、電気・ガス、空運、保険が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体48%、対して値下がり銘柄は45%となっている。 日経平均は先週から負けなしの7日続伸で、本日は節目の28000円も視野に入るような動きも見られた。今週は総じて強い動きが続いているが、今日も寄り付き直後から切り返すとほぼ一本調子で上げ幅を広げてきている。日足チャートでは、20日の窓アケを伴った急伸から3本連続で陽線を引き、上値と下値を同時に切り上げる「赤三兵」を示現。200日移動平均線上での推移も3日目となり、基調の転換を窺わせるかのようなチャートに見える。 また、特筆すべきは昨日の海外市場からの動き。ECB定例理事会では事前の予想を上回る0.5ptの大幅利上げに踏み切り、タカ派サプライズとなった。足元のグロース(成長)株のリバウンドに水を差すかと思いきや、欧州でも米国でもネガティブな反応は限られ、米国に至ってはナスダックが大幅に3日続伸するなど逆に強い動きを見せた。 来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)やアップル、アマゾン・ドット・コムなどのGAFAMの注目決算などイベントが目白押しだが、これらを直前にしてもなお強い動きを見せているのには目を見張るものがある。むろん、これまで過度に悲観に傾きすぎていたため、決算発表が本格化する前にポジションを中立に戻しておきたいとする機関投資家による買い戻しに過ぎないといった見方も強い。実際、東証プライム市場の売買代金の推移をみると、日経平均が700円以上も上昇した20日ですら売買代金は3兆円に届いていない。その他の上昇している日もほとんどが2兆円台半ばにとどまっており、7日続伸劇、この間の上昇幅などと比して活況とは言い難い。 しかし、本日は写真・動画共有アプリの米スナップチャットが市場予想を下回る失望的な決算を発表し、ソーシャルメディア関連株が時間外取引で軒並み大幅に下落するという事態が発生していた。時間外取引のナスダック100先物も軟調だったにもかかわらず、そうした中でも、今日の東京市場が全般しっかりしているというのは、単なる買い戻しだけではないのかと疑いたくもなる。 来週、GAFAMの決算で同様の失望的な決算が出ると、さすがにムードが一変しかねないが、無難に通過することができた場合には、相場の底打ち感がより強まったという見方が優勢になってきそうだ。 後場の日経平均は堅調もみ合いか。売り方の買い戻しはいつ止んでもおかしくないが、今日前場までの動きを見る限り、到底後場に崩れるとは考えにくい。香港ハンセン指数なども堅調に推移しており、後場は一段高となる可能性もあろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/22 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は小幅反落、200日線挟んだ一進一退で今晩にはECB定例理事会
日経平均は小幅反落。22.73円安の27657.53円(出来高概算4億7287万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でダウ平均は47.79ドル高(+0.15%)と小幅続伸。先週分の住宅ローン需要が22年ぶりの低水準に落ち込んだほか、6月中古住宅販売件数が2年ぶりの低水準となり、景気減速を警戒した売りから寄り付き後下落。イタリアのドラギ首相率いる政権の崩壊リスクが高まったとの報道も投資家心理を悪化させた。一方で旅行関連株の買いやハイテク株の買い戻し継続が支援要因となり、主要株価指数はプラス圏で終了。ナスダック総合指数は+1.57%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は+2.49%と続伸。一方、前日に700円高と急伸していた日経平均は52.38円安からスタート。一時上昇に転じる場面もあったが、短期的な過熱感を冷ます売りが優勢で、もみ合いが継続。それでも、27500円より上での底堅い動きが続いた。 個別では、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>が前日の急伸の反動で下落。任天堂<7974>も安い。三井物産<8031>や伊藤忠<8001>の商社や、野村<8604>、SOMPO<8630>の金融、ホンダ<7267>、日産自<7201>の自動車なども軟調。1対3の株式分割を発表した東京海上<8766>も失速して下落。日本製鉄<5401>やJFE<5411>はレーティング格下げで大きく売られた。日本電産<6594>は市場予想並みの決算だったが、前日にかけて上昇していたこともあり利益確定売りが優勢。塩野義製薬<4507>は新型コロナ治療薬の承認が見送られ、継続審議となったことで失望感から急落。ほか、ベイカレント<6532>が大幅に反落。 一方、川崎汽船<9107>商船三井<9104>など海運が底堅い動き。ダイキン<6367>、ファナック<6954>、TDK<6762>、富士通<6702>などが堅調。メルカリ<4385>、マネーフォワード<3994>、Sansan<4443>などグロース(成長)株が総じて強く、ラクスル<4384>、ギフティ<4449>、メドピア<6095>、サイボウズ<4776>などが東証プライム市場の値上がり率上位に入っている。業績予想を上方修正したフィックスターズ<3687>、インフォマート<2492>は急伸し、値上がり率上位に並んだ。 セクターでは鉄鋼、証券・商品先物、保険が下落率上位となった一方、パルプ・紙、金属製品、精密機器が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体42%、対して値上がり銘柄は52%となっている。 日経平均は前日の急伸直後とあって伸び悩んでいるが、安値でも27500円を割らず底堅い動きを見せている。日足チャートでは、200日移動平均線を挟んだ水準で一進一退となっている。戻り待ちの売りが根強い一方、同線突破後の一段高を期待する買いも入っているようで、売り買い拮抗といった様相だ。 動画配信サービスのネットフリックスに続いて注目されていた電気自動車メーカーのテスラの決算は、調整後の1株利益が予想を上回った。また、上海での生産拡大を明らかにしたことで、同社株価は時間外取引で上昇した。ただ、バリュエーションの割高感が強く、一時大幅に上昇した後は1%高程度に伸び悩んでいる。 ここまでの米国の主要企業の決算を見る限り、事前の想定よりは良好なものが多い印象だ。来週からはアルファベット、マイクロソフト、アップル、アマゾン・ドットコムなどのいわゆるGAFAMと呼ばれる大型テック企業の決算が予定されており、これらの結果次第ではムードが様変わりする恐れもあるが、事前の警戒感が高かった分、ネガティブショックの可能性は低くなっていそうだ。 日本電産の決算も、外部環境の悪化で利益率は悪化したが、ほとんど想定線で、むしろ、E-Axle(イーアスクル)の出荷台数の引き上げなど好材料があったことがポジティブに捉えられる。株価は前日までに上昇していた反動で売り優勢とはなっているが、2%程度の下落で投資家心理を悪化させるほどでもない。 さて、日経平均はテクニカル面では、下向きの200日線を挟んだ一進一退となっており、このまま下落トレンド脱出の初動を辿るのか、それとも下落トレンドが延長されるのか、短期的な勝負所を迎えているといえる。こうした中、今晩には欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が予定されている。もともと今会合では0.25ptの利上げがコンセンサスとして予想されていたが、今週に入ってから急遽、事情に詳しい関係者からの情報として、0.5ptの利上げ実施の可能性が台頭してきた。仮に0.5ptの利上げが実施されるとなるとタカ派サプライズとなり、足元の株式市場のリバウンドに水を差すことになる。今晩のECB定例理事会は今週最大の注目イベントといってもよく、後場の東京市場は様子見ムードが広がりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/21 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は大幅に5日続伸、悪材料耐性や需給状況から28000円窺う展開か
日経平均は大幅に5日続伸。637.84円高の27599.52円(出来高概算5億3287万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でダウ平均は754.44ドル高(+2.42%)と大幅反発。各企業の予想を上回る好決算を背景に買いが先行。ロシア国営ガス会社がパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州への天然ガスの輸出を再開するとの報道で世界経済への悲観的な見方も後退し、相場の上昇をさらに支援、引けにかけて主要株価指数は一段高となった。ナスダック総合指数は+3.10%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+4.61%となった。米国株高を受けて日経平均は334.27円高からスタート。その後も順調に上値を伸ばす展開が続き、前引け間際に27604.27円(642.59円高)まで上げ幅を広げた。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が軒並み急伸。ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、SMC<6273>、信越化<4063>など値がさ株も全般強い動き。ベイカレント<6532>、リクルートHD<6098>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株も総じて強い。レーティングを材料にジェイリース<7187>が急伸し、東証プライム市場の値上がり率トップに躍り出ている。日立パワーソリューションズと国内陸上風力発電設備の解体工事において解体特許技術の実施許諾契約を締結したベステラ<1433>も急伸し、値上がり率上位にランクイン。ほか、北の達人<2930>、マネックスG<8698>、寿スピリッツ<2222>などが上位に並んでいる。 一方、外資証券のレーティング格下げを受けて7&I-HD<3382>、IHI<7013>が売り優勢。ほか、ダブル・スコープ<6619>、レノバ<9519>などが下落している。 セクターでは精密機器、電気機器、サービスを筆頭に全面高。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の93%、対して値下がり銘柄は5%となっている。 日経平均は久々の大幅高で一気に27500円台を回復してきている。日足チャートでは200日移動平均線が位置する27600円台まで一時戻した格好だ。上げ幅は軽く600円を超えており、非常に強い動きとも言える一方、27500円を回復したことで、水準的には戻り一服感が今まで以上に強まってくる。また、下向きの200日線手前まで上昇したところからも、ここからは一段と戻り待ちの売りが強く出てくることが意識される。この先は、今日から本格化していく日米主要企業の決算次第だろう。 バンク・オブ・アメリカ(BofA)の最新の月次ファンドマネジャー調査によると、ポートフォリオに占める株式比率は2008年10月以来の最低水準となった一方、現金の比率は2001年以来の最高水準になったという。また、景気後退を予想する割合は新型コロナ・パンデミックの発生直後である2020年5月以来の最高水準にまで達したという。 完全に総悲観に傾くなか、需給状況は軽く、わずかな好材料をきっかけに大きく上昇しやすい状況といえる。足元で新たに確認された好材料としては、ロシアが天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」を通じた欧州へのガス輸出を21日に再開する見通しと伝わったことのほか、警戒されていた動画配信サービスのネットフリックスの決算が想定程は悪くなく、同社株が時間外取引で大きく上昇していることなどだろう。 ただ、ロシアによる揺さぶりがこれで終わったとは到底考えづらい。また、ネットフリックスの決算では、サブスクリプション会員数が97万人の減少と、予想の200万人の減少より小幅にとどまったことが好感されたわけだが、普通に考えて2四半期連続での会員数減少はグロース株として失格の内容だろう。期待値がすでに低い分、今後出てくる決算に対しても同様の反応が想定されるが、決算内容にポジティブな要素は見出しづらい場面が続きそうだ。 需給状況が軽いことや、来週に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)については1.00ptという最悪のシナリオを既にいったん織り込んだ経緯もあり、日経平均については28000円に向かう展開もあるだろう。ただ、そこからのアップサイドにはさすがに材料不足といえ、現在の株価水準からの上昇幅はせいぜい500円程に限られる可能性が高いことを考えると、上値追いには慎重になりたい。 後場の日経平均は堅調か。ナスダック100先物が堅調で、香港ハンセン指数も大幅に上昇しているなか、高値圏で底堅い展開が想定される。一方、本日の引け後に決算を発表する日本電産<6594>や、今晩の米国市場で決算発表予定の米電気自動車テスラの結果を見極めたいとの思惑から、上値追いは限られるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/20 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は4日続伸、長期期待インフレ率の低下で買い戻しも懸念要素もちらほら
日経平均は4日続伸。188.90円高の26977.37円(出来高概算4億9691万株)で前場の取引を終えている。 15、18日の米株式市場でダウ平均は658.09ドル高(+2.15%)、215.65ドル安(-0.68%)、ナスダック総合指数は+1.79%、-0.80%だった。15日は銀行のシティグループや管理医療会社のユナイテッドヘルスの好決算のほか、6月小売売上高のプラス転換が寄与。7月ミシガン大消費者信頼感指数の長期期待インフレ率が1年ぶりの低水準となったことで、7月における1.00ptの超大幅利上げ観測が後退したことも投資家心理を改善させた。18日は金融のゴールドマン・サックスや銀行のバンク・オブ・アメリカの好決算を受けて買い先行となったが、7月NAHB住宅市場指数の予想以上の悪化や、スマホ・IT大手アップルの一部新規採用縮小・支出減速が報じられ、引けにかけて売りに転じた。 連休明けの日経平均は215.36円高で27000円を回復してスタートすると、寄り付き直後に失速し、一時先週末終値近くまで水準を切り下げた。ただ、半導体などの一部値がさハイテク・グロース(成長)株に買いが入るなか切り返すと、再び27000円を回復。しかし、その後は再び戻り待ちの売りから同水準を割り込む動きとなり、方向感に欠ける展開となった。 個別では、郵船<9101>や川崎汽船<9107>の海運、INPEX<1605>や石油資源開発<1662>の鉱業関連が大きく上昇。住友鉱<5713>、三井物産<8031>、日本製鉄<5401>など資源関連・市況関連株が全般強い。一方、レーザーテック<6920>やアドバンテスト<6857>の半導体関連、JMDC<4483>、SHIFT<3697>のグロース株も堅調。ファーストリテ<9983>は引き続き好決算を評価する動きで続伸。電気自動車(EV)向け省電力センサーの開発報道を手掛かりにソニーG<6758>が買われた。北の達人<2930>、ベクトル<6058>は決算が好感されて急伸。日本国土開発<1887>は高水準の自社株買いと中期経営計画の発表を手掛かりに大幅上昇。Gunosy<6047>は減益決算ながらもあく抜け感で一時急伸するなど買い優勢。 一方、レノバ<9519>、東京電力HD<9501>など電気・ガス関連が全般軟調。米シージェンの特許有効性審査を巡る不透明感から第一三共<4568>が大きく下落。武田薬<4502>、中外製薬<4519>なども安い。ほか、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>など中小型グロース株の一角が弱い動き。テモナ<3985>、日置電機<6866>、三益半導<8155>、サーバーワークス<4434>、RPAホールディングス<6572>は決算を材料に大幅に下落。サインポスト<3996>は、NTTグループが無人店舗システムの提供を開始すると伝わったことで競争激化が懸念され、急落。 セクターでは鉱業、海運業、非鉄金属が上昇率上位となった一方、医薬品、電気・ガス、その他製品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の57%、対して値下がり銘柄は39%となっている。 連休明けの日経平均は素直に堅調とは言い難い動きとなっている。度々27000円台に乗せて強さを見せたかと思いきや、乗せた直後には必ず失速してすぐに同水準を割り込む動きを繰り返しており、むしろ、上値の重さが目立つような印象だ。日足チャートでは上値抵抗線だった75日移動平均線を上回ってきており、テクニカル面では需給の好転が意識されやすいものの、6月28日に付けた高値27062.31円には届いておらず、上値切り下げ形状を明確に脱したとは言いにくい。 本日の一部ハイテク・グロース株の堅調さの背景にあるのは、やはり先週末の米7月ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の低下が大きいか。5-10年先期待インフレ率は2.8%と前月の3.1%から1年ぶりの低水準にまで低下した。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った要因の一つがこの期待インフレ率だっただけに、インフレ懸念を和らげる内容で、目先の安心感を誘っていると推察される。 しかし、同調査によると、ガソリン価格の低下を背景に現況指数が57.1へと大きく改善した一方、先行きを示す期待指数は47.3と1980年以来の低水準にまで低下。インフレ・大幅利上げに対する懸念の後退が示唆される一方、景気後退懸念はむしろ強まったと言える内容だった。 また、現況指数の改善に繋がったガソリン価格についても油断はできない。先週末、バイデン米大統領はサウジアラビアでサルマン国王らと会談し、原油の増産を要請した。ただ、今会談では具体的な増産方針は明らかにされておらず、再び原油先物価格が上昇に転じる可能性が残されている。 さらに、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止められているが、この定期検査の期限は21日とされており、供給が再開されるか否かが注目されている。そうした中、ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが欧州の買い手数社に対して不可抗力条項を宣言したと伝わっている。 通常、不可抗力条項は自然災害などの予期せぬ事態が発生した場合に宣言されるもので、不可抗力条項を過去にさかのぼって発動するのは異例だという。今回のガスプロムの行動は、ガス供給の制限を継続するシグナルを送っている可能性があるともされており、早くも警戒感が高まっている。 そのほか、米ゴールドマン・サックスやアップルが採用計画の縮小を発表していることも気掛かり。直近、アルファベットやメタ・プラットフォームズなども採用ペースを減速させているほか、マイクロソフトやテスラに至っては人員削減にも乗り出している。これまで堅調とされてきた米国経済を支えてきた労働市場には引き続き黄色信号が灯っているといえよう。 景気後退懸念が強まる一方、インフレ・大幅利上げへの警戒感が後退しているなか、ハイテク・グロース株が相対的に強い足元の物色動向はある意味で合点がいくが、しかし、こちらもリスク要素はある。今晩は動画配信サービスの米ネットフリックスが決算発表を予定している。同社は前回決算の際に会員数の減少を発表。成長期待のはく落により株価が急落し、投資家心理を大いに冷やした。今回も同様に低調な決算となれば、足元で台頭しているグロース株の復調に冷や水を浴びせることになりかねない。 後場の日経平均は上値の重い展開か。米ミシガン大学消費者マインド指数での長期期待インフレ率の注目度は高かっただけに、前場はイベン通過によるあく抜け感で買い戻しが優勢になったとみられる。しかし、引き続き27000円を明確に上抜けるには材料不足であるほか、買い戻しが一巡してくれば再び売りが優勢になる可能性がある。明日以降の日米注目企業の決算も前に、積極的な買いは手控えられるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/19 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、インフレピークアウト期待の背景とそのリスク
日経平均は3日続伸。154.08円高の26797.47円(出来高概算5億6905万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でダウ平均は142.62ドル安(-0.46%)と5日続落。銀行決算が低調で失望感が広がったほか、6月生産者物価指数(PPI)が予想を上回ったことで7月の1.00ptの利上げ確率が上昇し、警戒感から売りが先行した。また、JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)が複数の深刻な問題があると警告したことも売り材料となった。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が市場の1.00ptの利上げ観測は時期尚早との見解を示したことで警戒感が後退し、取引後半はハイテク中心に買戻しが広がった。ナスダック総合指数は+0.03%と小幅ながら4日ぶりの反発。 底堅い米株市場の動きが好感されたほか、好決算を受けて大幅高となったファーストリテ<9983>の上昇にけん引される形で日経平均は92.69円高からスタート。一方、大幅利上げへの警戒感も残るなか、買いは続かず失速すると前場中ごろはマイナス圏で推移。その後前引けにかけては再び上昇に転じ上げ幅を広げるなど方向感に欠ける展開となった。 個別では、SHIFT<3697>やラクス<3923>などグロース(成長)株の一角が大きく上昇。任天堂<7974>、武田薬<4502>、レノバ<9519>など景気に左右されにくい銘柄が堅調。業績予想を上方修正し、増配も発表したファーストリテは急伸し年初来高値を更新。コロナ飲み薬で「BA.5」への効果が確認された塩野義製薬<4507>が買われ、岸田首相による原発再稼働の表明を受けて関西電力<9503>などが買い優勢。Sansan<4443>はサプライズに乏しい見通しながらもガイダンスリスクを通過した安心感から急騰。日本電産<6594>は、4月にCEOに復帰した永守会長の後継者への経営引き継ぎを巡る報道が手掛かりとなり、買われた。シスメックス<6869>は目標株価引き上げを受けて大幅に上昇。 一方、東エレク<8035>など半導体関連株が朝高後に失速し上値の重い展開。台湾積体電路製造(TSMC)は好決算を発表したが、設備投資計画を実質的に下方修正しており、これがネガティブに捉えられているもよう。第1四半期が堅調な決算だったIDOM<7599>は同業の好決算を背景に期待が高まっていたとみられ、通期計画の据え置きで出尽くし感が先行し大きく下落。業績予想を下方修正したセラク<6199>も急落し、揃って東証プライム市場の値下がり率上位に並んでいる。ほか、JMDC<4483>やスノーピーク<7816>などグロース株の一角が大きく下落している。 セクターではその他製品、精密機器、電気・ガスが上昇率上位となった一方、保険、銀行、鉱業が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の40%、対して値下がり銘柄は56%となっている。 前日の米株市場は大きく下げて始まった後にFRBのウォラー理事とセントルイス連銀のブラード総裁の1.00ptの利上げは時期尚早との見解を受けて、大幅利上げへの過度な警戒感が後退する形で、急速に下げ渋った。しかし、ウォラー理事はデータ次第で1.00ptの利上げにオープンな姿勢も見せており、今晩発表される米7月ミシガン大学消費者マインド指数の期待インフレ率や、小売売上高などの結果次第では再び1.00ptの利上げ確率が高まる可能性がある。 一昨日から昨日にかけて発表された米国の消費者物価指数(CPI)とPPIはともに市場予想を大幅に上回った。それでも、相場が大きく下落していないのは、今回の発表分である6月分がピークとの期待が根強いからだろう。実際、エネルギー・穀物などの幅広いコモディティ価格が明確な下落基調を辿っている。CPI6月分の上振れの主要因の一つでもある米国のガソリン価格も、原油先物価格の下落や需要鈍化への思惑から足元で小幅ながら低下に転じてきている。 米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する製造業景気指数の項目の一つである入荷遅延は一時拡大と縮小の境界値である50を大幅に上回る80近い水準にあったが、6月分では57と大幅に低下してきた。また、物流網の逼迫で高騰していたコンテナ船運賃についても、北米を結ぶ主要8つのコンテナ航路の運賃を示す総合指数「World Container Index」が明確に下落基調にあり、昨年秋に付けた高値から足元では3割以上も下落している。 こうした背景から、インフレピークアウト期待が根強いのも頷けるところがある。一方で、注意しなければならない点もいつくかある。まず、足元でようやく下落してきている原油先物価格だが、再び上昇に転じる可能性は拭い切れない。「脱炭素」などの機運が高まるなか、石油業界ではここ数年、新規の設備投資が抑えられてきた。また、6月に開催された石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国の主要産油国で構成する「OPECプラス」では増産幅の拡大が決定されたが、供給不足を解消するには“焼け石に水”に過ぎない。 さらに、現状、増産はサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の2国に依存しており、他の多くの産油国は生産設備のキャパシティーの問題や政治上の問題から、むしろ、生産計画の未達が目立っている。このため、景気後退による需要鈍化が供給不足を解消するに至らないことがクローズアップされてくれば、原油先物価格が再び上昇する恐れがある。 もう一つは米CPIの構成比で3分の1と最大の割合を占める住居費の動向だ。帰属家賃などで構成されるこの項目は住宅ローン金利や住宅価格に遅れて動く傾向がある。米国では30年物の住宅ローン固定金利が昨年末から今年6月までの間に87%も上昇した。この住宅ローン金利の上昇が効く形で、6月下旬に発表された4月分の指標から、上昇が続いていた米国住宅価格にも減速の兆しが見られはじめた。 しかし、帰属家賃などから構成されるCPIの住居費は住宅価格の指標から約1年程遅れて動く傾向があり、CPIの最大構成項目である住居費が減速するには来年前半まで待つ必要がありそうだ。この間に、ガソリンなどの他の生活必需品の価格が大きく減速をしてくれれば、CPI全体では伸びの鈍化が期待できるが、そうならなければ、遅行性のある住居費の上昇と相まってCPIの高止まりが長期化するリスクがある。 このため、CPIのピークアウト説が実現するには原油先物価格の動向が大きな鍵を握っているといえる。そうした意味では、現在、中東各国を歴訪しているバイデン米大統領のサウジアラビアとの交渉が注目される。また、欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給を止めているが、この定期検査の期限は7月21日とされている。デッドラインを迎える来週のこの日に、仮に供給停止が続けられるとなると、欧州のエネルギー価格の高騰に繋がり、世界的なインフレ懸念の再燃や一層の景気後退懸念に繋がりかねない。 今月26~27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)までは神経質な場面が多数あり、インフレピークアウト期待のもとグロース株の買いなどに転じたい気持ちもあるかもしれないが、今はまだ焦る気持ちを抑える場面だと考える。少なくとも、FOMCを通過し、日米主要企業の4-6月期決算が一巡する8月上旬頃までは様子見に徹するのが肝要だろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/15 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、米CPI強い結果も買い優勢の展開に
日経平均は続伸。185.43円高の26664.20円(出来高概算4億9572万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場ではNYダウが208.54ドル安と続落。6月消費者物価指数(CPI)が前年比で41年ぶりの高水準に加速したため7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で1.0%利上げ観測も浮上したため売りが先行し、寄り付き後、下落。金利高が重しとなり、終日軟調推移となったが、景気後退観測が強まると、同時に引き締めも想定された程進まないとの見方も広がり長期金利が低下に転じると売り圧力も後退した。ナスダック総合指数も続落、下落スタートも下げ幅を縮小した米株市場を受けて、日経平均は前日比121.45円安からスタート。その後は、買い優勢の展開となりプラス圏に浮上する展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、スクリン<7735>などのハイテク株が大幅高。川崎汽船<9107>や日本郵船<9101>、商船三井<9104>などの海運株も堅調に推移、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>なども上昇した。第1四半期は想定以上の大幅増益決算となったウイングアーク<4432>が急伸。ほか、22年5月期決算を発表して今期も増益見通しとなったサカタのタネ<1377>、23年2月期業績予想を上方修正したトレファク<3093>が大きく上昇した。 一方、東京電力HD<9501>を筆頭に関西電力<9503>や中部電力<9502>など電力株が軟調。三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの金融株、東京海上<8766>やMS&AD<8725>なども下落している。大幅な業績下方修正や期末無配転落を嫌気されたJINSHD<3046>、先行投資負担による赤字決算をマイナス視されたマネーフォワード<3994>が大きく下落している。ほか、第3四半期決算サプライズ限定的で出尽くし感が優勢のコシダカHD<2157>や、TSI HD<3608>、アステナHD<8095>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは水産・農林、海運、電気機器が上昇率上位となった一方、電気・ガス、保険、銀行が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の47%、対して値下がり銘柄は46%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後下げ幅を縮小して、前場中ごろから買いが広がりプラス圏に浮上した。その後は、アジア市況が軟調に推移したことを横目に、上値の重い展開となった。米6月CPIは強い結果だったが、前日までにある程度織り込んでいたことに加えて、米国株が下落後に値を戻したことで国内の投資家心理の安心材料となった。また、景気後退が意識されて米長期金利が低下し、ナスダックが一時プラス圏に浮上する場面があったこともポジティブに捉えられた可能性がある。テクニカル面では、25日移動平均線付近で売り買いが交錯していることが窺える。 新興市場も前場中ごろから買い優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数も、下落してスタートしたあとプラス圏に浮上して上げ幅を拡げた。日経平均よりもやや値幅を伴った上昇となっている。こちらもナスダックが一時プラス圏に浮上する場面があったことがグロース(成長)株を中心とする新興市場にとってポジティブに捉えられ、長期金利の低下も追い風となっている。時価総額上位銘柄は強弱まちまちで、個別に材料が出た銘柄に旺盛な物色が向かっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が1.66%高、東証マザーズ指数が1.49%高となった。 さて、前日に発表された米6月CPIは前年同月比で9.1%上昇と市場予想の8.8%上昇を超え、5月の8.6%上昇から加速し、前年同月比で約40年半ぶりの高い伸びとなった。前月比では1.3%上昇と、こちらも市場予想の1.1%上昇を超えた。ガソリン価格は前月比11.2%上昇、電気や天然ガスを含むエネルギーサービスの価格は3.5%上昇で、やはりガソリン価格の高騰が背景となっている。ただ、食品価格は前月比1%上昇で、5月の前月比1.2%上昇からやや鈍化している。 前日の米株式市場や本日の日経平均の動きを見ると、前日の米株式市場でCPIが前年比で+10.2%になったとの偽造のリーク報道を受けて大きく下落していたことから、多少の上振れに対する耐性はついていた。11月に中間選挙を控えるバイデン大統領は6月CPIについて「受け入れ難いほど高水準」とした一方、7月のガソリン価格の下落を考慮すると過去の数値だと述べている。また、足元のコモディティ価格の下落基調を背景に6月がインフレのピークとの期待も高まっている。 ただ、米金融当局はCPIの結果を受けて積極的な政策方針を維持する見通しである。米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は、「7月のFOMCで100ベーシスポイント(bp)の利上げを検討する可能性がある」との見方を示している。市場では7月FOMCでの0.75ptの利上げを完全に織り込んでいたが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。 実際に、株式市場は1.00ptの利上げまでは織り込めていないはずで、買い優勢の展開は長続きしないだろう。また、今週末は7月ミシガン大学消費者マインド指数が発表される予定で、米中の経済指標の発表も多く、これらの結果を見極めるまでは様子見姿勢を強めたほうがよさそうだ。後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に上値の重い展開が続くか。引き続き新興市場を中心とする個別材料株や新興市場の直近IPO銘柄に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/07/14 12:14
ランチタイムコメント
日経平均は反発、CPI通過後のあく抜け期待は程々に
日経平均は反発。86.45円高の26423.11円(出来高概算4億3051万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は192.51ドル安(-0.61%)と3日続落。新型コロナ感染拡大を受けた中国上海市の都市封鎖入りや消費者物価指数(CPI)の発表を控えた警戒感から売りが優勢だった。飲料メーカーのペプシコなどの好決算で投資家心理が改善し、一時上昇に転じたが、引けにかけてはCPIの悪化を示す偽造のリーク報道を材料に売りが加速し、下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は-0.94%と続落。ただ、ナスダック100先物が堅調に推移していたこともあり、前日に大きく下落していた日経平均は67.13円高からスタート。朝方は買い戻しが先行し、一時26500円を回復したが、今晩に控える米6月CPIの発表を前に上値は重く、その後は戻り待ちの売りから失速した。 個別では、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、キーエンス<6861>、リクルートHD<6098>、信越化<4063>など、前日に大きく下落した主力株が反発。第1四半期好決算及び業績予想の上方修正を発表した竹内製作所<6432>、パルグル−プHD<2726>がそれぞれ急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んでいる。第1四半期が好決算だった東宝<9602>や、今期見通しが好感された三協立山<5932>、三光合成<7888>も大幅に上昇。米航空機メーカーのボーイングが6月の納入機数が2019年3月来の高水準になったと発表したことで、ジャムコ<7408>が急伸。上半期業績予想を引き上げたAGC<5201>は堅調ながらも上値の重い展開。 一方、原油先物価格の下落を背景にINPEX<1605>などが売り優勢。日揮HD<1963>、大阪チタ<5726>、住友鉱<5713>などその他資源関連も軟調。米CPIを前にベイカレント<6532>、MonotaRO<3064>、ラクス<3923>、SREHD<2980>などグロース(成長)株が冴えない。 セクターでは空運、パルプ・紙、サービスが上昇率上位となった一方、鉱業、保険、水産・農林が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は30%となっている。 前場の東証プライム市場の出来高は4億株台の前半、売買代金は1兆円をわずかに上回る程度にとどまり、今晩の米6月CPIを前に東京市場は全般模様眺めムードが漂っている。前日の米株式市場では、CPIが前年比で+10.2%になったとの偽造のリーク報道を受けて終盤に下げ幅を広げていたことから、多少の上振れに対する耐性はついているだろう。また、足元のコモディティ価格の下落基調を背景に6月がインフレのピークとの期待も高まっている。 一方で、インフレの背景が供給サイドから需要サイドへと移りつつあることや、CPIの構成比で3割を占める住居費が、遅行性もあってまだ伸びが続くと考えられることから、インフレピークアウトに疑念をもつ向きも多い。また、前日に石油輸出国機構(OPEC)が発表した市場見通しによれば、来年の世界石油需要の伸びは供給の拡大分を日量100万バレル上回る予測となっており、需給逼迫が緩和されることはないもよう。欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給が止まっており、検査終了後も供給停止が続けられる可能性も指摘されている。今後、多方面での原材料のもととなる原油価格が再び急騰する可能性も拭い切れないだろう。 一部の金融機関では、CPIが下振れれば素直に好感、上振れてもインフレ頭打ちへの期待が高まるとの見立てから、いずれにしても発表直後はあく抜けするだろうと予想しているところもあるようだ。しかし、CPIの上振れ度合いや構成項目の内容次第では、ピークアウト期待が再び縮小する可能性もある。あく抜けの確度はそこまで高くないと思われ、今はまだ様子見に徹することが肝要だろう。後場も、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑から、日経平均は前日終値近辺でのもみ合いが続きそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/13 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり大幅反落、CPI前に神経質な展開、あく抜け感は高まりづらいか
日経平均は4日ぶり大幅反落。449.54円安の26362.76円(出来高概算5億2051万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でダウ平均は164.31ドル安(-0.52%)と続落。新型コロナ感染拡大で中国地域の一部が再び都市封鎖入りし、世界経済の後退懸念が再燃。今週発表されるインフレ指標や企業決算シーズンを前に警戒感からの売りも強く、終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-2.25%と6日ぶりに大幅反落。米国株安を引き継いで日経平均は111.30円安からスタート。朝方から売りが先行し、前場中ごろには下げ幅を500円近くにまで広げた。その後は下げ渋ったものの、アジア市況やダウ平均先物が軟調ななか戻りは鈍く、安値圏での底這いが続いた。 個別では、米ハイテク株安を受けてソフトバンクG<9984>のほか、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>などの半導体関連株、村田製<6981>、TDK<6762>の電子部品株が総じて売り優勢。中国経済の減速懸念からキーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>、安川電機<6506>などのFA関連が大きく下落。エムスリー<2413>、ZHD<4689>のグロース(成長)株も軒並み安い。コマツ<6301>、ナブテスコ<6268>、住友鉱<5713>などの景気敏感株も全般下落。決算を発表したところではライク<2462>、リソー教育<4714>、ローツェ<6323>、技研製作所<6289>、東京個別<4745>などが大幅に下落している。 一方、7&IーHD<3382>、NTT<9432>、武田薬<4502>のディフェンシブ銘柄、コナミG<9766>、任天堂<7974>のゲーム関連が堅調。東証プライム市場の値上がり率上位には、第1四半期営業利益が市場予想を上回ったローソン<2651>、前期実績下振れで今期計画が市場予想をやや下振れもあく抜け感が先行したコスモス薬品<3349>、通期計画を上方修正した進和<7607>などがランクインしている。 セクターでは機械、電気機器、非鉄金属を筆頭にほぼ全面安。水産・農林、電気・ガス、保険の3業種のみが上昇となっている。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は7%となっている。 先週5日続伸と負けなしで強い動きを見せたナスダックは、週明けは一転して6日ぶりに大幅反落。東京市場でも、先週まで強いリバウンドを見せていたグロース株の多くが週明けから2日連続で大きく下落している。 米10年債利回りは依然として落ち着いた動きを続けているが、13日に発表が予定されている、40年ぶりに過去最高を更新する見通しの米6月消費者物価指数(CPI)を前にさすがに騰勢一服の展開を強いられている。指標発表前の買い戻しは先週の間に一巡していたようだ。 その米CPIについては、米政府から「高い数値になるだろう」とのコメントが出ている。市場予想ではエネルギー・食料品を含む総合で前年比+8.8%と前月(+8.6%)から加速する見通しで、すでにある程度は織り込まれているだろう。また、米政府は同時に「7月に入りエネルギー価格は顕著に下落し」、「(今後も下落継続が想定されるなか)CPIはもはや現状を反映していない」との認識も示したという。 中国では新型コロナ感染が再拡大するなか、先週頃から国内初のオミクロン株「BA.5」が確認され、更なる感染の拡大および厳しい行動制限の再実施への懸念が強まっている。世界景気の後退懸念が強まるなか、深刻な供給不足が続く原油先物を除けば資源価格の下落基調は続く可能性が高い。こうした背景を踏まえれば、米政府の認識は正しいともいえ、CPIが予想を大幅に上回ることがない限り、市場は高い数字をバックミラーとして捉え、ネガティブな反応は限られるだろう。 また、昨日ニューヨーク連銀が発表した調査によると、1年先期待インフレ率は5月の6.6%から6.8%に上昇した一方、3年先期待インフレ率は3.9%から3.6%へ、5年先期待インフレ率は2.9%から2.8%へとそれぞれ低下した。米連邦準備制度理事会(FRB)は消費者のインフレ期待を制御できなくなることを懸念しており、長期の期待インフレ率が低下したことは安心材料となる。 一方で、FRBのパウエル議長は利上げを緩めるには、エネルギー・食料品を含むCPI、いわゆる「ヘッドラインCPI」の鈍化傾向を確認することが必要だとしており、CPIが2~3カ月連続で減速しない限りは、利上げペースの鈍化を確実視することは難しいだろう。そのため、明日のCPIを通過してもあく抜け感が台頭するかは分からず、市場反応は極めて読みづらい。 既に力強い雇用統計の結果などを受けて、市場では7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げを完全に織り込んでいる。しかし、アトランタ連銀のボスティック総裁は7月会合での0.75ptの利上げを支持すると同時に、仮にインフレ指標が想定以上に悪化した場合には、1.00ptの利上げも選択肢になると言及したという。投資家は7月:0.75pt、9月:0.5pt、11月以降:0.25ptという利上げペースを想定しているが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと、利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。 また、期待インフレ率については、FRBが6月FOMCで0.75ptの利上げを決めた要因の一つとなったミシガン大学消費者マインド指数の7月分が今週末に発表される予定だ。ここでニューヨーク連銀調査に続いて長期期待インフレ率の低下が確認されないとまだ安心できない背景もある。週末にかけて米中の経済指標の発表が多いこともあり、今週は慎重なスタンスが求められそうだ。 後場の日経平均は軟調が続きそうだ。CPIを前にした警戒感がくすぶるなか、今晩の米株市場も続落となる可能性が想定される。また、景気底入れ期待が高まっていた中国経済の再悪化懸念が高まっており、リセッション(景気後退)懸念も再燃。さらに、国内でも新型コロナ感染が再拡大しており、リオープン(経済再開)への期待が萎んできている。ハイテク・グロース株から景気敏感株、リオープンまでほぼ全面安となるなか、けん引役が不在となっており、イベントも前に積極的な押し目買いは期待できないだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/12 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、買い一巡後は上げ幅を縮小する展開
日経平均は続伸。269.81円高の26787.00円(出来高概算5億8665万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場ではNYダウが46.40ドル安と反落。6月雇用統計が労働市場の強さを証明し、7月連邦公開市場委員会(FOMC)で6月に続き2会合連続の0.75%の利上げを織り込む金利上昇を警戒した売りに、寄り付き後、下落。押し目からは景気後退を回避できるとの楽観的な見通しで買い意欲も強く、一時上昇に転じた。しかし、FRBの過剰な引き締めや金利高を警戒した売り圧力に押され、ダウは結局下落で終了。ナスダック総合指数はかろうじてプラス圏を維持した。まちまちとなった米株市場を横目に、日経平均は前週末比375.54円高からスタート。買い一巡後は前場後半にかけて上げ幅を縮小する展開となった。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>などが大幅高。トヨタ自<7203>や日産自<7201>、ホンダ<7267>などの自動車関連株も堅調に推移、KDDI<9433>やNTT<9432>、ソフトバンク<9434>などの通信株も大幅に上昇した。花王<4452>、塩野義製薬<4507>、味の素<2802>、ヤクルト<2267>などディフェンシブ銘柄は総じて高い。通期業績・配当計画を上方修正したマニー<7730>が急伸。ほか、電動化が成長機会になる可能性とし国内証券で買い推奨に格上げされたNOK<7240>が大きく上昇した。 一方、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>など半導体関連株が軟調。SHIFT<3697>、ベイカレント<6532>、JMDC<4483>などグロース(成長)株の一角も大幅安となっている。第1四半期利益水準は想定比低調との見方が優勢となっている安川電機<6506>が大きく下落しているほか、一部メディアで新たな品質不正と報じられた東レ<3402>、8日に第1四半期決算を発表したワキタ<8125>や、メドピア<6095>、MonotaRO<3064>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは精密機器、鉱業、医薬品が上昇率上位となった一方、繊維製品、海運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の84%、対して値下がり銘柄は13%となっている。 本日の日経平均株価は、米6月雇用統計の結果が強く景気後退への懸念が和らいだこと、参院選で自民党が単独過半数を獲得して大勝し政局安定化が期待されたことが投資家心理にポジティブに働き、上昇してスタートした。ただ、中国の一部地域で新型コロナウイルス新規感染の増加が引き続き警戒され、アジア市況が軟調に推移すると、前場後半にかけて上げ幅を縮小した。日足チャートでは、75日移動平均線付近での売り買いが交錯している状況が窺える。 一方で、新興市場は売り優勢の展開となった。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたものの朝方を高値に上げ幅をじりじりと縮小、前場後半にかけて日経平均の連れ安となりマイナス圏に転落した。前週に米長期金利の安定推移でグロース株の見直し機運が高まり大幅に上昇、本日はリバウンドが一服して利食い売り優勢となっているようだ。また、13日には米6月消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、積極的に買い進む動きにはなりにくい。時価総額上位銘柄中心に軟調に推移、前引け時点で東証グロース市場Core指数が1.13%安、東証マザーズ指数が0.17%安となった。 さて、米6月雇用統計では雇用者数と平均賃金が揃って予想を上回ったが、8日の米長期金利の上昇は限定的だった。今週は13日の米6月CPIに加えて週末に米国で各種経済指標の発表が控えている。財・モノに関しては6月ISM製造業景気指数、ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数のピークアウト感から、インフレ沈静化の兆しが見られてきている。サービス分野についてはまだインフレ沈静化の兆しが見られておらず油断はならないが、6月CPIが予想の前年同月比8.8%上昇並みにとどまれば、投資家心理が一段と改善しそうだ。そのほか、週末に集中する米中の6月鉱工業生産や小売売上高などの経済指標も注目される。 国内では10日に参議院議員選挙の投開票が実施された。自民党が単独過半数を獲得して大勝し、この先3年間は国政選挙がないため、長期安定政権の誕生に繋がった。参院選後には新たな補正予算の編成なども期待されてもおり、政策期待が内需系銘柄の押し上げに寄与することが見込まれている。今後の政権の動向には注目が集まりそうだ。 後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に上値の重い展開が続くか。引き続きグロース株を手掛けにくい展開が続きそうで、手掛かり材料難のなか個別材料株や新興市場の直近IPO銘柄に向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/07/11 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続伸、相場一段高に必要なシナリオとは?
日経平均は大幅続伸。379.29円高の26869.82円(出来高概算6億3235万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は346.87ドル高(+1.11%)と続伸。中国が景気対策を検討しているとの報道を受け、世界経済への悲観的見方が後退。韓国の半導体メーカー、サムスン電子の好調な決算を受けてハイテク機器の需要鈍化懸念が後退したことも相場を支援。加えて、連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事やセントルイス連銀のブラード総裁が7月連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75ptの利上げを支持すると同時に経済の強さを強調し、ソフトランディングを基本シナリオと主張したことも投資家心理を改善させた。主要株価指数は引けにかけて一段と上昇し、ナスダック総合指数は+2.28%と大幅に4日続伸した。 米株高を受けて日経平均は133.32円高からスタート。朝方は上場投資信託(ETF)の分配金捻出に伴う売りが意識され、こう着感の強い状態が続いていた。しかし、26600円前後での底堅さが確認されると、需給イベント通過後のあく抜けを意識してか売り方の買い戻しが入ったとみられ、断続的にレンジを切り上げる展開となった。なお、7月限オプション取引に係る特別清算指数(SQ)は概算値で 26659.58円だった。 個別では、商船三井<9104>を筆頭に海運株が急伸。大阪チタ<5726>は急騰。原油価格の反発でINPEX<1605>が大幅に上昇し、住友鉱<5713>は急反発。三菱商事<8058>、日本製鉄<5401>などの商社、鉄鋼も総じて強い。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が+4.48%となったことでアドバンテスト<6857>などの半導体関連のほか、新光電工<6967>、村田製<6981>、TDK<6762>などの電子部品株も高い。上半期上振れ決算や自社株買いが好感された大有機化<4187>は連日で急伸し、東証プライム市場の値上がり率トップとなった。ほか、決算が評価されたところでUSENNEX<9418>が急伸、OSG<6136>が大幅高。デンソー<6902>はレーティング格上げが観測され上伸。ほか、マネーフォワード<3994>やSansan<4443>など中小型グロース(成長)株も高い。 一方、エムスリー<2413>、メドピア<6095>などグロース株の一角が下落。ヤクルト<2267>、第一三共<4568>、花王<4452>、山崎パン<2212>などディフェンシブ系の銘柄が軟調。SHIFT<3697>は計画通りの順調な決算ながらも3-5月期の増益率鈍化が嫌気されたか、利益確定売りが膨らみ急落。第1四半期が低調なスタートと捉えられた4℃ HD<8008>、第1四半期好決算も6月月次動向が嫌気されたオンワードHD<8016>は大幅下落。ほか、キユーピー<2809>、久光製薬<4530>が決算を受けて売られている。 セクターでは海運、非鉄金属、鉱業を筆頭にほぼ全面高。食料品のみが下落となっている。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の86%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 前日の欧米株式市場が大きく上昇し、国内でも需給イベントへの警戒感が後退するなか、買いに弾みがつき、日経平均は午前からレンジを断続的に切り上げる強い展開となった。 今晩の米6月雇用統計を前に様子見ムードも広がりやすいところだが、米10年債利回りの落ち着いた動きやナスダックの4日続伸劇を追い風に、短期的に傾き過ぎた悲観の揺り戻しが起きているようだ。雇用統計については、雇用者数が予想を大幅に下回るようなことがなく、平均賃金の伸びが予想並みにとどまれば、景気後退懸念とインフレ懸念が同時に緩和することとなり、その場合には相場は一段と上値を試すことになりそうだ。 先週末に発表された米6月ISM製造業景気指数では新規受注の50割れがネガティブな事として話題になった。ただ一方で、60台後半で続いていた入荷遅延は57.3までに大きく低下し、価格も依然として高い水準とはいえ、80台半ばでの推移から70台後半にまで低下した。ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数にもピークアウト感が見られつつあり、少なくとも財・モノに関するインフレ圧力はかなり後退してきている様子。 モノから移行してきた新たなインフレ主要因されるサービス分野については、まだインフレ沈静化の兆しが見られておらず、油断はならない。しかし、雇用統計で平均賃金の伸びが予想を下回れば、サービス分野でのインフレ抑制の目処も見えてくると捉えられ、足元でリバウンドを強めている相場が一段と上値を試す展開はあり得よう。 いま、市場が期待しているのは上述した話が実現したうえで、7月のFOMCでは最後の0.75ptの利上げが行われ、同時に9月は0.5pt、その後は0.25ptが有力とする利上げ幅のペースの鈍化、そうしたFRBの超タカ派からタカ派への移行シナリオだろう。 すでに高官発言などを受けて上述した利上げペースのシナリオは織り込まれているため、7月のFOMCでこうした道筋が示されれば、相場の底入れはより確実なものになってきそうだ。 ただ、その前にはいくつかの関門が立ちはだかっている。今晩の米6月雇用統計もそうだが、来週13日に発表される米6月消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上回るようなことがあると、上述した期待シナリオは消失してしまう。また、来週からは米国で金融大手を皮切りに4-6月期決算が始まる。今回の企業決算シーズンが景気後退懸念をより強めてしまうのか、それとも大きく後退させてくれるものになるのかという点も大きく相場を左右してこよう。 後場の日経平均はアジア市況がしっかりとした動きのなか、堅調推移が続きそうだ。雇用統計前に持ち高調整が入ることも想定されるが、中国では財政省が地方政府に対して7-12月に1兆5000億元(約30兆円)相当の特別債発行を許可する方針と伝わるなど、景気浮揚策に関する報道が相次いでいる。中国での新型コロナ感染再拡大は懸念材料としてくすぶるものの、同国での景況感回復期待が相場の下支え要因として働くことに期待したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/08 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は反発、ボラティリティーの高さは投資チャンスと表裏一体
日経平均は反発。191.01円高の26298.66円(出来高概算5億9791万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は69.86ドル高(+0.22%)と反発。ISM非製造業景気指数やJOLT求人件数が予想を上回ったことで景気後退懸念が緩和。買いスタート後は一進一退が続いたが、6月連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で労働市場や消費について楽観的な見解が示され、利上げを計画通り継続していく想定内の方針が示されると買いが再開、引けにかけて上げ幅を拡大した。金利が安定して推移するなかハイテクの見直し買いが続き、ナスダック総合指数は+0.34%と3日続伸。米株高を引き継いで日経平均は173.29円高からスタート。ただ、寄り付き直後から失速すると、ダウ平均先物が下げ幅を広げ、アジア市況も軟調な出足となると午前中ごろから上げ幅を縮小、一時前日終値近辺まで値を戻した。しかし、前引けにかけては再び買いが勢いづき、朝方に付けた高値を更新した。 個別では、原油価格の続落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>が大幅続落。大阪チタ<5726>は続急落となり、住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>、大平洋金属<5541>、大紀アルミ<5702>などの資源関連、三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社株が軒並み売り優勢。郵船<9101>、川崎汽船<9107>も売られている。国内での新型コロナ感染再拡大を受けて政府が「全国旅行支援」を延期する調整に入ったとの報道を受けてJR東海<9022>、JAL<9201>、OLC<4661>、エアトリ<6191>が下落。T&Gニーズ<4331>、ラウンドワン<4680>は急落し、ほかリオープン(経済再開)関連銘柄が東証プライム市場の値下がり率上位にずらりと並んだ。第1四半期個別売上高が計画を下振れたディスコ<6146>も下落した。 一方、SHIFT<3697>、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>のグロース(成長)株が堅調。キーエンス<6861>、ファナック<6954>、日本電産<6594>は大きく上昇。花王<4452>、塩野義製薬<4507>、味の素<2802>、ヤクルト<2267>などディフェンシブ銘柄は総じて高い。決算が手掛かりとなったイオン<8267>、わらべ日洋<2918>はそれぞれ急伸。EV充電サービス事業などを手掛けるシンガポール企業に出資したと発表したブイキューブ<3681>も急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に入った。 セクターでは鉱業、石油・石炭、陸運が下落率上位となった一方、ゴム製品、食料品、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。 6月のFOMC議事録は、景気をある程度犠牲にしてでもインフレ抑制を優先するという、これまでのパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言などで既に確認済みの内容にとどまった。また、6月FOMC以降、米国で堅調されてきた個人消費を巡る指標が軒並み大きく悪化してきていることから、情報が古いと指摘する声も多く、特別材料視されなかったもよう。タカ派色を強める内容でもなかったことから、前日の米国市場では公表後に安心感から株価がやや上昇した。 米6月ISM非製造業景気指数は55.3と前月の55.9から小幅な低下にとどまり、市場予想の54を上回り、安心材料となった。項目をみると、景況感は56.1と前回の54.5から上昇。一方、雇用が47.4と前回の50.2から低下し、拡大と縮小の境目である50を割った。また、在庫も47.5と前回から低下して50を割り込んだほか、受注残は60.5と前回の52.0から大きく拡大。入荷遅延も小幅ながら前月から上昇し、61.9と高止まりした。 これらのことから、企業は人材確保に難儀していると推察され、こうした状況がリードタイム(発注から納品までにかかる時間)や受注残の増加に繋がっていると推察される。製造業では供給網(サプライチェーン)混乱の影響が緩和されてきたが、非製造業ではまだこうした影響が根強いようだ。財消費と異なり、サービス消費は金融政策の影響が及びにくいため、非製造業分野でのこうした傾向は、インフレ高止まりを示唆する内容ともいえそうだ。 前日の米国市場では金利が上昇したとはいえ、米10年債利回りは依然として3.0%を下回る推移となっており、ハイテク・グロース株の見直し買いが続いた。本日の東京市場でも、前日に大きく買われたSHIFTやベイカレントが続伸している。しかし、一方でマネーフォワード<3994>やSansan<4443>などは下落しており、前日まで3日続伸で相対的な強さを見せていたマザーズ指数も、本日はその他の主要株価指数とは対照的に下落している。明日の米6月雇用統計、来週13日の米6月消費者物価指数(CPI)を前にリバウンドが一服してきているようだ。 また、景気後退懸念が強く、原油をはじめとしたコモディティ価格の下落が続くなか、資源関連の売りも収まる気配がない。ただ、他のコモディティと異なり、原油については深刻な供給不足が解消されてない状態が続いている。一昨日急落したWTI原油先物価格は昨日も下落したものの、NY時間の終盤にかけては押し目買いも入っていたことから、鉱業関連にはそろそろ売りが一巡してくる可能性があるとみている。それでも、原油先物市場での投機マネーの割合は高い分、短期的には需給主導で下げが続く可能性も残されている。個人的には1バレル=90ドル割れが近づいてくる局面では妙味が出てくると考えている。 ほか、本日は国内での新型コロナ感染拡大、「全国旅行支援」の延期調整入りなどの報道を背景にリオープン関連が軒並み売られているが、旅行のように直接的な影響が大きい分野とは異なる、ラウンドワンのような安価なレジャー関連分野も一緒くたに売られている。今の感染状況については重症化率が低く、新型コロナについても、もはや他のウイルスとの特別な違いがなくなってきていることもあり、旅行支援が延期になったとしても、厳しい経済活動の制限が再び実施されるリスクは低いように考えられる。このため、リオープン関連の中では、短期的には見直し余地のある銘柄が多いように見受けられる。日々の相場のボラティリティーが高いのは落ち着かないかもしれないが、その分、市場にノイズ・歪みが発生しやすく、投資チャンスが発生しやすいと前向きに捉えたい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/07/07 12:06
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり大幅反落、グロース株の復調心強くも割り切り必要
日経平均は3日ぶり大幅反落。333.61円安の26089.86円(出来高概算7億1393万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は129.44ドル安(-0.41%)と反落。深刻な景気後退懸念から欧州株安を引き継いで大幅下落でスタート。5月製造業受注や耐久財受注が予想外に改善したことで売りの勢いは弱まったが、原油価格の急落もあり、ダウ平均は終日軟調に推移。米長期金利が大幅に低下するなか、引けにかけてはハイテクの上昇で下げ幅を縮小した。金利低下を追い風にナスダック総合指数は+1.74%と続伸。欧州株の急落やダウ平均の下落を引き継いで日経平均は233.07円安からスタート。午前中ごろにかけて下げ渋る動きも見られたが、ダウ平均先物が下落に転じたことで再び売りが膨らみ、アジア市況も軟調な中、一時26000円割れを窺う水準まで下落した。 個別では、原油価格の急落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>が急落。コモディティ価格も全般下落しており、住友鉱<5713>、日本製鉄<5401>の市況関連株のほか、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社株も軒並み大幅安。前日急伸していた大阪チタ<5726>も急反落。三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連も揃って急落。トヨタ自<7203>、マツダ<7261>の自動車関連も総じて売り優勢。米長期金利の大幅低下で三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>も厳しい下げ。連日急伸していた東京電力HD<9501>も利食い売りから急落。3-5月期業績の増益率鈍化などから出尽くし感が先行したエスプール<2471>は急落し、東証プライム市場の値下がり率上位にランクイン。ソニーG<6758>は外資証券のレーティング格下げが観測されている。 一方、レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>が逆行高。米金利低下やナスダック高を追い風にベイカレント<6532>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>などのグロース(成長)株が総じて強い動き。東証プライム市場の値上がり率上位にはラクス<3923>、Sansan<4443>、SREHD<2980>の中小型グロース株が多く入っている。業績予想を上方修正したラクト・ジャパン<3139>が急伸し、値上がり率トップとなった。記念配当の実施を発表したキューブシステム<2335>も急伸。決算が好感されたところではウエルシアHD<3141>、ハニーズHD<2792>が大幅に上昇した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、電気・ガスを筆頭に全般売り優勢。一方、精密機器、医薬品、情報・通信の3業種が上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の74%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 本日の東京市場では景気敏感株を中心に値幅を伴った厳しい下げに見舞われている。米10年債利回りは前日に一時2.7%台を付けるなど、5月下旬以来の水準にまで大幅に低下。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.30%(-0.04pt)と、昨年8月以来、約1年ぶりとなる水準にまで低下。4月21日に付けた3.02%からの下落っぷりが凄まじい。 金利や期待インフレ率の急落ぶりからも窺えるように、景気後退(リセッション)を織り込む動きに歯止めがかからない。鉱業や鉄鋼、商社などのチャートの崩れ方が酷く、自律反発がいつ入ってもおかしくない水準とも言えるが、ここまで来ると、どこまで突っ込むのかを見極めるのはもはや困難。 一方、金利低下を追い風にグロース株の復調が目覚ましい。グロース株の代表格とも言えるJMDC<4483>は本日一時200日移動平均線を回復するところまで上昇した。その他でも、多くのグロース株のチャートで底入れ感が見られるものが多い。実際、日経平均やTOPIX(東証株価指数)が大幅に下落しているなか、マザーズ指数は大幅に上昇している。 こうなってくると、景気敏感株売り・グロース株買いのリセッショントレードの妙味が一段と増してきそうだ。ただ、グロース株がこのままずっと強いかと問われば疑問符が付く。景気後退懸念から金利が大幅低下していることが足元のグロース株の復調の大きな要因だが、忘れてはならないのは金利動向の背景にあるインフレだ。市場は景気後退懸念が加速するにつれ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ打ち止めや利下げ転換の時期が早まると見ているが、筆者としてはこうした考え方はやや危なっかしいと感じる。 米5月消費者物価指数(CPI)の結果を受けて、FRBが6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて一気に0.75ptの利上げに踏み切ったことで、インフレピークアウト期待は一度完全に後退した。ちなみに、米5月CPIは前年比+8.6%だ。FRBが目標とする2%からは著しい乖離である。確かに、足元の個人消費の減退やコモディティ価格の下落を受けてインフレピークアウト期待が再び高まっているのは間違いないし、実際、ピークアウトの確率は高まってきていると考える。しかし、現在の高水準のインフレと当局の目標値との乖離幅を踏まえると、いくら相場が1年以上先を見据えて動くとしても、利下げ期待まで織り込むのはやや時期尚早な気がしてならない。 特に、米国では財消費が大きく減退してきたことでモノに関するインフレは確実に沈静化する方向にあるが、ペントアップデマンド(繰越需要)も背景に、今度はサービス消費がインフレの主要因になってきている。そして、財消費と異なり、サービス消費は利上げなど金融政策による影響が小さく、簡単にはインフレは沈静化しないと考えられる。 スケジュール的にも、今晩には米6月ISM非製造業景気指数、6月FOMC議事録の公表が控えており、また今週末には米6月雇用統計が控えている。雇用統計では平均賃金の伸びなどが注目され、さすがに週末にかけては足元勢いづいているグロース株が小休止してもおかしくない。加えて、来週13日には米6月CPIが控える。パウエルFRB議長はインフレ期待を制御するにあたってはヘッドラインインフレが重要と述べており、CPIが近づくタイミングでは逆に、グロース株には再びヘッジ売りが入る可能性も想定されよう。 日米ともに株式市場が全面安とならずに、グロース株に活況ぶりが見られることは心強い反面、こうした動きに後追いで乗じるには大きなリスクが伴うことを肝に銘じておきたい。 後場の東京市場は引き続き軟調か。前場のTOPIXの下落率が2%未満のため、日銀による上場投資信託(ETF)買いは期待できない。また上述したように、今晩から米国市場では材料が多く控えていることもあり、積極的な押し目買いは入りにくいだろう。日経平均は26000円を維持できるかが焦点となり、短期筋の26000円割れを狙った仕掛け売りなどには注意したい。(仲村幸浩)
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2022/07/06 12:07