ランチタイムコメントニュース一覧

ランチタイムコメント 日経平均は反発、CPI通過後のあく抜け期待は程々に  日経平均は反発。86.45円高の26423.11円(出来高概算4億3051万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でダウ平均は192.51ドル安(-0.61%)と3日続落。新型コロナ感染拡大を受けた中国上海市の都市封鎖入りや消費者物価指数(CPI)の発表を控えた警戒感から売りが優勢だった。飲料メーカーのペプシコなどの好決算で投資家心理が改善し、一時上昇に転じたが、引けにかけてはCPIの悪化を示す偽造のリーク報道を材料に売りが加速し、下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は-0.94%と続落。ただ、ナスダック100先物が堅調に推移していたこともあり、前日に大きく下落していた日経平均は67.13円高からスタート。朝方は買い戻しが先行し、一時26500円を回復したが、今晩に控える米6月CPIの発表を前に上値は重く、その後は戻り待ちの売りから失速した。 個別では、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、キーエンス<6861>、リクルートHD<6098>、信越化<4063>など、前日に大きく下落した主力株が反発。第1四半期好決算及び業績予想の上方修正を発表した竹内製作所<6432>、パルグル−プHD<2726>がそれぞれ急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に並んでいる。第1四半期が好決算だった東宝<9602>や、今期見通しが好感された三協立山<5932>、三光合成<7888>も大幅に上昇。米航空機メーカーのボーイングが6月の納入機数が2019年3月来の高水準になったと発表したことで、ジャムコ<7408>が急伸。上半期業績予想を引き上げたAGC<5201>は堅調ながらも上値の重い展開。 一方、原油先物価格の下落を背景にINPEX<1605>などが売り優勢。日揮HD<1963>、大阪チタ<5726>、住友鉱<5713>などその他資源関連も軟調。米CPIを前にベイカレント<6532>、MonotaRO<3064>、ラクス<3923>、SREHD<2980>などグロース(成長)株が冴えない。 セクターでは空運、パルプ・紙、サービスが上昇率上位となった一方、鉱業、保険、水産・農林が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は30%となっている。 前場の東証プライム市場の出来高は4億株台の前半、売買代金は1兆円をわずかに上回る程度にとどまり、今晩の米6月CPIを前に東京市場は全般模様眺めムードが漂っている。前日の米株式市場では、CPIが前年比で+10.2%になったとの偽造のリーク報道を受けて終盤に下げ幅を広げていたことから、多少の上振れに対する耐性はついているだろう。また、足元のコモディティ価格の下落基調を背景に6月がインフレのピークとの期待も高まっている。 一方で、インフレの背景が供給サイドから需要サイドへと移りつつあることや、CPIの構成比で3割を占める住居費が、遅行性もあってまだ伸びが続くと考えられることから、インフレピークアウトに疑念をもつ向きも多い。また、前日に石油輸出国機構(OPEC)が発表した市場見通しによれば、来年の世界石油需要の伸びは供給の拡大分を日量100万バレル上回る予測となっており、需給逼迫が緩和されることはないもよう。欧州ではロシアとドイツをつなぐ天然ガスの主要パイプラインが定期検査で供給が止まっており、検査終了後も供給停止が続けられる可能性も指摘されている。今後、多方面での原材料のもととなる原油価格が再び急騰する可能性も拭い切れないだろう。 一部の金融機関では、CPIが下振れれば素直に好感、上振れてもインフレ頭打ちへの期待が高まるとの見立てから、いずれにしても発表直後はあく抜けするだろうと予想しているところもあるようだ。しかし、CPIの上振れ度合いや構成項目の内容次第では、ピークアウト期待が再び縮小する可能性もある。あく抜けの確度はそこまで高くないと思われ、今はまだ様子見に徹することが肝要だろう。後場も、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑から、日経平均は前日終値近辺でのもみ合いが続きそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/13 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は4日ぶり大幅反落、CPI前に神経質な展開、あく抜け感は高まりづらいか  日経平均は4日ぶり大幅反落。449.54円安の26362.76円(出来高概算5億2051万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でダウ平均は164.31ドル安(-0.52%)と続落。新型コロナ感染拡大で中国地域の一部が再び都市封鎖入りし、世界経済の後退懸念が再燃。今週発表されるインフレ指標や企業決算シーズンを前に警戒感からの売りも強く、終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-2.25%と6日ぶりに大幅反落。米国株安を引き継いで日経平均は111.30円安からスタート。朝方から売りが先行し、前場中ごろには下げ幅を500円近くにまで広げた。その後は下げ渋ったものの、アジア市況やダウ平均先物が軟調ななか戻りは鈍く、安値圏での底這いが続いた。 個別では、米ハイテク株安を受けてソフトバンクG<9984>のほか、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>などの半導体関連株、村田製<6981>、TDK<6762>の電子部品株が総じて売り優勢。中国経済の減速懸念からキーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>、安川電機<6506>などのFA関連が大きく下落。エムスリー<2413>、ZHD<4689>のグロース(成長)株も軒並み安い。コマツ<6301>、ナブテスコ<6268>、住友鉱<5713>などの景気敏感株も全般下落。決算を発表したところではライク<2462>、リソー教育<4714>、ローツェ<6323>、技研製作所<6289>、東京個別<4745>などが大幅に下落している。 一方、7&IーHD<3382>、NTT<9432>、武田薬<4502>のディフェンシブ銘柄、コナミG<9766>、任天堂<7974>のゲーム関連が堅調。東証プライム市場の値上がり率上位には、第1四半期営業利益が市場予想を上回ったローソン<2651>、前期実績下振れで今期計画が市場予想をやや下振れもあく抜け感が先行したコスモス薬品<3349>、通期計画を上方修正した進和<7607>などがランクインしている。 セクターでは機械、電気機器、非鉄金属を筆頭にほぼ全面安。水産・農林、電気・ガス、保険の3業種のみが上昇となっている。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は7%となっている。 先週5日続伸と負けなしで強い動きを見せたナスダックは、週明けは一転して6日ぶりに大幅反落。東京市場でも、先週まで強いリバウンドを見せていたグロース株の多くが週明けから2日連続で大きく下落している。 米10年債利回りは依然として落ち着いた動きを続けているが、13日に発表が予定されている、40年ぶりに過去最高を更新する見通しの米6月消費者物価指数(CPI)を前にさすがに騰勢一服の展開を強いられている。指標発表前の買い戻しは先週の間に一巡していたようだ。 その米CPIについては、米政府から「高い数値になるだろう」とのコメントが出ている。市場予想ではエネルギー・食料品を含む総合で前年比+8.8%と前月(+8.6%)から加速する見通しで、すでにある程度は織り込まれているだろう。また、米政府は同時に「7月に入りエネルギー価格は顕著に下落し」、「(今後も下落継続が想定されるなか)CPIはもはや現状を反映していない」との認識も示したという。 中国では新型コロナ感染が再拡大するなか、先週頃から国内初のオミクロン株「BA.5」が確認され、更なる感染の拡大および厳しい行動制限の再実施への懸念が強まっている。世界景気の後退懸念が強まるなか、深刻な供給不足が続く原油先物を除けば資源価格の下落基調は続く可能性が高い。こうした背景を踏まえれば、米政府の認識は正しいともいえ、CPIが予想を大幅に上回ることがない限り、市場は高い数字をバックミラーとして捉え、ネガティブな反応は限られるだろう。 また、昨日ニューヨーク連銀が発表した調査によると、1年先期待インフレ率は5月の6.6%から6.8%に上昇した一方、3年先期待インフレ率は3.9%から3.6%へ、5年先期待インフレ率は2.9%から2.8%へとそれぞれ低下した。米連邦準備制度理事会(FRB)は消費者のインフレ期待を制御できなくなることを懸念しており、長期の期待インフレ率が低下したことは安心材料となる。 一方で、FRBのパウエル議長は利上げを緩めるには、エネルギー・食料品を含むCPI、いわゆる「ヘッドラインCPI」の鈍化傾向を確認することが必要だとしており、CPIが2~3カ月連続で減速しない限りは、利上げペースの鈍化を確実視することは難しいだろう。そのため、明日のCPIを通過してもあく抜け感が台頭するかは分からず、市場反応は極めて読みづらい。 既に力強い雇用統計の結果などを受けて、市場では7月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げを完全に織り込んでいる。しかし、アトランタ連銀のボスティック総裁は7月会合での0.75ptの利上げを支持すると同時に、仮にインフレ指標が想定以上に悪化した場合には、1.00ptの利上げも選択肢になると言及したという。投資家は7月:0.75pt、9月:0.5pt、11月以降:0.25ptという利上げペースを想定しているが、仮に7月会合での1.00ptの利上げ観測が高まってしまうと、利上げペースの織り込みも修正を迫られることになる。 また、期待インフレ率については、FRBが6月FOMCで0.75ptの利上げを決めた要因の一つとなったミシガン大学消費者マインド指数の7月分が今週末に発表される予定だ。ここでニューヨーク連銀調査に続いて長期期待インフレ率の低下が確認されないとまだ安心できない背景もある。週末にかけて米中の経済指標の発表が多いこともあり、今週は慎重なスタンスが求められそうだ。 後場の日経平均は軟調が続きそうだ。CPIを前にした警戒感がくすぶるなか、今晩の米株市場も続落となる可能性が想定される。また、景気底入れ期待が高まっていた中国経済の再悪化懸念が高まっており、リセッション(景気後退)懸念も再燃。さらに、国内でも新型コロナ感染が再拡大しており、リオープン(経済再開)への期待が萎んできている。ハイテク・グロース株から景気敏感株、リオープンまでほぼ全面安となるなか、けん引役が不在となっており、イベントも前に積極的な押し目買いは期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/12 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、買い一巡後は上げ幅を縮小する展開  日経平均は続伸。269.81円高の26787.00円(出来高概算5億8665万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場ではNYダウが46.40ドル安と反落。6月雇用統計が労働市場の強さを証明し、7月連邦公開市場委員会(FOMC)で6月に続き2会合連続の0.75%の利上げを織り込む金利上昇を警戒した売りに、寄り付き後、下落。押し目からは景気後退を回避できるとの楽観的な見通しで買い意欲も強く、一時上昇に転じた。しかし、FRBの過剰な引き締めや金利高を警戒した売り圧力に押され、ダウは結局下落で終了。ナスダック総合指数はかろうじてプラス圏を維持した。まちまちとなった米株市場を横目に、日経平均は前週末比375.54円高からスタート。買い一巡後は前場後半にかけて上げ幅を縮小する展開となった。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>などが大幅高。トヨタ自<7203>や日産自<7201>、ホンダ<7267>などの自動車関連株も堅調に推移、KDDI<9433>やNTT<9432>、ソフトバンク<9434>などの通信株も大幅に上昇した。花王<4452>、塩野義製薬<4507>、味の素<2802>、ヤクルト<2267>などディフェンシブ銘柄は総じて高い。通期業績・配当計画を上方修正したマニー<7730>が急伸。ほか、電動化が成長機会になる可能性とし国内証券で買い推奨に格上げされたNOK<7240>が大きく上昇した。 一方、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>など半導体関連株が軟調。SHIFT<3697>、ベイカレント<6532>、JMDC<4483>などグロース(成長)株の一角も大幅安となっている。第1四半期利益水準は想定比低調との見方が優勢となっている安川電機<6506>が大きく下落しているほか、一部メディアで新たな品質不正と報じられた東レ<3402>、8日に第1四半期決算を発表したワキタ<8125>や、メドピア<6095>、MonotaRO<3064>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは精密機器、鉱業、医薬品が上昇率上位となった一方、繊維製品、海運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の84%、対して値下がり銘柄は13%となっている。 本日の日経平均株価は、米6月雇用統計の結果が強く景気後退への懸念が和らいだこと、参院選で自民党が単独過半数を獲得して大勝し政局安定化が期待されたことが投資家心理にポジティブに働き、上昇してスタートした。ただ、中国の一部地域で新型コロナウイルス新規感染の増加が引き続き警戒され、アジア市況が軟調に推移すると、前場後半にかけて上げ幅を縮小した。日足チャートでは、75日移動平均線付近での売り買いが交錯している状況が窺える。 一方で、新興市場は売り優勢の展開となった。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたものの朝方を高値に上げ幅をじりじりと縮小、前場後半にかけて日経平均の連れ安となりマイナス圏に転落した。前週に米長期金利の安定推移でグロース株の見直し機運が高まり大幅に上昇、本日はリバウンドが一服して利食い売り優勢となっているようだ。また、13日には米6月消費者物価指数(CPI)の発表を控えており、積極的に買い進む動きにはなりにくい。時価総額上位銘柄中心に軟調に推移、前引け時点で東証グロース市場Core指数が1.13%安、東証マザーズ指数が0.17%安となった。 さて、米6月雇用統計では雇用者数と平均賃金が揃って予想を上回ったが、8日の米長期金利の上昇は限定的だった。今週は13日の米6月CPIに加えて週末に米国で各種経済指標の発表が控えている。財・モノに関しては6月ISM製造業景気指数、ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数のピークアウト感から、インフレ沈静化の兆しが見られてきている。サービス分野についてはまだインフレ沈静化の兆しが見られておらず油断はならないが、6月CPIが予想の前年同月比8.8%上昇並みにとどまれば、投資家心理が一段と改善しそうだ。そのほか、週末に集中する米中の6月鉱工業生産や小売売上高などの経済指標も注目される。 国内では10日に参議院議員選挙の投開票が実施された。自民党が単独過半数を獲得して大勝し、この先3年間は国政選挙がないため、長期安定政権の誕生に繋がった。参院選後には新たな補正予算の編成なども期待されてもおり、政策期待が内需系銘柄の押し上げに寄与することが見込まれている。今後の政権の動向には注目が集まりそうだ。 後場の日経平均は、アジア市況や時間外で米株先物の動きを横目に上値の重い展開が続くか。引き続きグロース株を手掛けにくい展開が続きそうで、手掛かり材料難のなか個別材料株や新興市場の直近IPO銘柄に向かうか注目しておきたい。 <AK> 2022/07/11 12:10 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続伸、相場一段高に必要なシナリオとは?  日経平均は大幅続伸。379.29円高の26869.82円(出来高概算6億3235万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でダウ平均は346.87ドル高(+1.11%)と続伸。中国が景気対策を検討しているとの報道を受け、世界経済への悲観的見方が後退。韓国の半導体メーカー、サムスン電子の好調な決算を受けてハイテク機器の需要鈍化懸念が後退したことも相場を支援。加えて、連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事やセントルイス連銀のブラード総裁が7月連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75ptの利上げを支持すると同時に経済の強さを強調し、ソフトランディングを基本シナリオと主張したことも投資家心理を改善させた。主要株価指数は引けにかけて一段と上昇し、ナスダック総合指数は+2.28%と大幅に4日続伸した。 米株高を受けて日経平均は133.32円高からスタート。朝方は上場投資信託(ETF)の分配金捻出に伴う売りが意識され、こう着感の強い状態が続いていた。しかし、26600円前後での底堅さが確認されると、需給イベント通過後のあく抜けを意識してか売り方の買い戻しが入ったとみられ、断続的にレンジを切り上げる展開となった。なお、7月限オプション取引に係る特別清算指数(SQ)は概算値で 26659.58円だった。 個別では、商船三井<9104>を筆頭に海運株が急伸。大阪チタ<5726>は急騰。原油価格の反発でINPEX<1605>が大幅に上昇し、住友鉱<5713>は急反発。三菱商事<8058>、日本製鉄<5401>などの商社、鉄鋼も総じて強い。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が+4.48%となったことでアドバンテスト<6857>などの半導体関連のほか、新光電工<6967>、村田製<6981>、TDK<6762>などの電子部品株も高い。上半期上振れ決算や自社株買いが好感された大有機化<4187>は連日で急伸し、東証プライム市場の値上がり率トップとなった。ほか、決算が評価されたところでUSENNEX<9418>が急伸、OSG<6136>が大幅高。デンソー<6902>はレーティング格上げが観測され上伸。ほか、マネーフォワード<3994>やSansan<4443>など中小型グロース(成長)株も高い。 一方、エムスリー<2413>、メドピア<6095>などグロース株の一角が下落。ヤクルト<2267>、第一三共<4568>、花王<4452>、山崎パン<2212>などディフェンシブ系の銘柄が軟調。SHIFT<3697>は計画通りの順調な決算ながらも3-5月期の増益率鈍化が嫌気されたか、利益確定売りが膨らみ急落。第1四半期が低調なスタートと捉えられた4℃ HD<8008>、第1四半期好決算も6月月次動向が嫌気されたオンワードHD<8016>は大幅下落。ほか、キユーピー<2809>、久光製薬<4530>が決算を受けて売られている。 セクターでは海運、非鉄金属、鉱業を筆頭にほぼ全面高。食料品のみが下落となっている。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の86%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 前日の欧米株式市場が大きく上昇し、国内でも需給イベントへの警戒感が後退するなか、買いに弾みがつき、日経平均は午前からレンジを断続的に切り上げる強い展開となった。 今晩の米6月雇用統計を前に様子見ムードも広がりやすいところだが、米10年債利回りの落ち着いた動きやナスダックの4日続伸劇を追い風に、短期的に傾き過ぎた悲観の揺り戻しが起きているようだ。雇用統計については、雇用者数が予想を大幅に下回るようなことがなく、平均賃金の伸びが予想並みにとどまれば、景気後退懸念とインフレ懸念が同時に緩和することとなり、その場合には相場は一段と上値を試すことになりそうだ。 先週末に発表された米6月ISM製造業景気指数では新規受注の50割れがネガティブな事として話題になった。ただ一方で、60台後半で続いていた入荷遅延は57.3までに大きく低下し、価格も依然として高い水準とはいえ、80台半ばでの推移から70台後半にまで低下した。ニューヨーク連銀のサプライチェーン圧力指数にもピークアウト感が見られつつあり、少なくとも財・モノに関するインフレ圧力はかなり後退してきている様子。 モノから移行してきた新たなインフレ主要因されるサービス分野については、まだインフレ沈静化の兆しが見られておらず、油断はならない。しかし、雇用統計で平均賃金の伸びが予想を下回れば、サービス分野でのインフレ抑制の目処も見えてくると捉えられ、足元でリバウンドを強めている相場が一段と上値を試す展開はあり得よう。 いま、市場が期待しているのは上述した話が実現したうえで、7月のFOMCでは最後の0.75ptの利上げが行われ、同時に9月は0.5pt、その後は0.25ptが有力とする利上げ幅のペースの鈍化、そうしたFRBの超タカ派からタカ派への移行シナリオだろう。 すでに高官発言などを受けて上述した利上げペースのシナリオは織り込まれているため、7月のFOMCでこうした道筋が示されれば、相場の底入れはより確実なものになってきそうだ。 ただ、その前にはいくつかの関門が立ちはだかっている。今晩の米6月雇用統計もそうだが、来週13日に発表される米6月消費者物価指数(CPI)が予想を大幅に上回るようなことがあると、上述した期待シナリオは消失してしまう。また、来週からは米国で金融大手を皮切りに4-6月期決算が始まる。今回の企業決算シーズンが景気後退懸念をより強めてしまうのか、それとも大きく後退させてくれるものになるのかという点も大きく相場を左右してこよう。 後場の日経平均はアジア市況がしっかりとした動きのなか、堅調推移が続きそうだ。雇用統計前に持ち高調整が入ることも想定されるが、中国では財政省が地方政府に対して7-12月に1兆5000億元(約30兆円)相当の特別債発行を許可する方針と伝わるなど、景気浮揚策に関する報道が相次いでいる。中国での新型コロナ感染再拡大は懸念材料としてくすぶるものの、同国での景況感回復期待が相場の下支え要因として働くことに期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/08 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は反発、ボラティリティーの高さは投資チャンスと表裏一体  日経平均は反発。191.01円高の26298.66円(出来高概算5億9791万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でダウ平均は69.86ドル高(+0.22%)と反発。ISM非製造業景気指数やJOLT求人件数が予想を上回ったことで景気後退懸念が緩和。買いスタート後は一進一退が続いたが、6月連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で労働市場や消費について楽観的な見解が示され、利上げを計画通り継続していく想定内の方針が示されると買いが再開、引けにかけて上げ幅を拡大した。金利が安定して推移するなかハイテクの見直し買いが続き、ナスダック総合指数は+0.34%と3日続伸。米株高を引き継いで日経平均は173.29円高からスタート。ただ、寄り付き直後から失速すると、ダウ平均先物が下げ幅を広げ、アジア市況も軟調な出足となると午前中ごろから上げ幅を縮小、一時前日終値近辺まで値を戻した。しかし、前引けにかけては再び買いが勢いづき、朝方に付けた高値を更新した。 個別では、原油価格の続落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>が大幅続落。大阪チタ<5726>は続急落となり、住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>、大平洋金属<5541>、大紀アルミ<5702>などの資源関連、三井物産<8031>、丸紅<8002>の商社株が軒並み売り優勢。郵船<9101>、川崎汽船<9107>も売られている。国内での新型コロナ感染再拡大を受けて政府が「全国旅行支援」を延期する調整に入ったとの報道を受けてJR東海<9022>、JAL<9201>、OLC<4661>、エアトリ<6191>が下落。T&Gニーズ<4331>、ラウンドワン<4680>は急落し、ほかリオープン(経済再開)関連銘柄が東証プライム市場の値下がり率上位にずらりと並んだ。第1四半期個別売上高が計画を下振れたディスコ<6146>も下落した。 一方、SHIFT<3697>、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>のグロース(成長)株が堅調。キーエンス<6861>、ファナック<6954>、日本電産<6594>は大きく上昇。花王<4452>、塩野義製薬<4507>、味の素<2802>、ヤクルト<2267>などディフェンシブ銘柄は総じて高い。決算が手掛かりとなったイオン<8267>、わらべ日洋<2918>はそれぞれ急伸。EV充電サービス事業などを手掛けるシンガポール企業に出資したと発表したブイキューブ<3681>も急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に入った。 セクターでは鉱業、石油・石炭、陸運が下落率上位となった一方、ゴム製品、食料品、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。 6月のFOMC議事録は、景気をある程度犠牲にしてでもインフレ抑制を優先するという、これまでのパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言などで既に確認済みの内容にとどまった。また、6月FOMC以降、米国で堅調されてきた個人消費を巡る指標が軒並み大きく悪化してきていることから、情報が古いと指摘する声も多く、特別材料視されなかったもよう。タカ派色を強める内容でもなかったことから、前日の米国市場では公表後に安心感から株価がやや上昇した。 米6月ISM非製造業景気指数は55.3と前月の55.9から小幅な低下にとどまり、市場予想の54を上回り、安心材料となった。項目をみると、景況感は56.1と前回の54.5から上昇。一方、雇用が47.4と前回の50.2から低下し、拡大と縮小の境目である50を割った。また、在庫も47.5と前回から低下して50を割り込んだほか、受注残は60.5と前回の52.0から大きく拡大。入荷遅延も小幅ながら前月から上昇し、61.9と高止まりした。 これらのことから、企業は人材確保に難儀していると推察され、こうした状況がリードタイム(発注から納品までにかかる時間)や受注残の増加に繋がっていると推察される。製造業では供給網(サプライチェーン)混乱の影響が緩和されてきたが、非製造業ではまだこうした影響が根強いようだ。財消費と異なり、サービス消費は金融政策の影響が及びにくいため、非製造業分野でのこうした傾向は、インフレ高止まりを示唆する内容ともいえそうだ。 前日の米国市場では金利が上昇したとはいえ、米10年債利回りは依然として3.0%を下回る推移となっており、ハイテク・グロース株の見直し買いが続いた。本日の東京市場でも、前日に大きく買われたSHIFTやベイカレントが続伸している。しかし、一方でマネーフォワード<3994>やSansan<4443>などは下落しており、前日まで3日続伸で相対的な強さを見せていたマザーズ指数も、本日はその他の主要株価指数とは対照的に下落している。明日の米6月雇用統計、来週13日の米6月消費者物価指数(CPI)を前にリバウンドが一服してきているようだ。 また、景気後退懸念が強く、原油をはじめとしたコモディティ価格の下落が続くなか、資源関連の売りも収まる気配がない。ただ、他のコモディティと異なり、原油については深刻な供給不足が解消されてない状態が続いている。一昨日急落したWTI原油先物価格は昨日も下落したものの、NY時間の終盤にかけては押し目買いも入っていたことから、鉱業関連にはそろそろ売りが一巡してくる可能性があるとみている。それでも、原油先物市場での投機マネーの割合は高い分、短期的には需給主導で下げが続く可能性も残されている。個人的には1バレル=90ドル割れが近づいてくる局面では妙味が出てくると考えている。 ほか、本日は国内での新型コロナ感染拡大、「全国旅行支援」の延期調整入りなどの報道を背景にリオープン関連が軒並み売られているが、旅行のように直接的な影響が大きい分野とは異なる、ラウンドワンのような安価なレジャー関連分野も一緒くたに売られている。今の感染状況については重症化率が低く、新型コロナについても、もはや他のウイルスとの特別な違いがなくなってきていることもあり、旅行支援が延期になったとしても、厳しい経済活動の制限が再び実施されるリスクは低いように考えられる。このため、リオープン関連の中では、短期的には見直し余地のある銘柄が多いように見受けられる。日々の相場のボラティリティーが高いのは落ち着かないかもしれないが、その分、市場にノイズ・歪みが発生しやすく、投資チャンスが発生しやすいと前向きに捉えたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/07 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反落、グロース株の復調心強くも割り切り必要  日経平均は3日ぶり大幅反落。333.61円安の26089.86円(出来高概算7億1393万株)で前場の取引を終えている。 5日の米株式市場でダウ平均は129.44ドル安(-0.41%)と反落。深刻な景気後退懸念から欧州株安を引き継いで大幅下落でスタート。5月製造業受注や耐久財受注が予想外に改善したことで売りの勢いは弱まったが、原油価格の急落もあり、ダウ平均は終日軟調に推移。米長期金利が大幅に低下するなか、引けにかけてはハイテクの上昇で下げ幅を縮小した。金利低下を追い風にナスダック総合指数は+1.74%と続伸。欧州株の急落やダウ平均の下落を引き継いで日経平均は233.07円安からスタート。午前中ごろにかけて下げ渋る動きも見られたが、ダウ平均先物が下落に転じたことで再び売りが膨らみ、アジア市況も軟調な中、一時26000円割れを窺う水準まで下落した。 個別では、原油価格の急落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>が急落。コモディティ価格も全般下落しており、住友鉱<5713>、日本製鉄<5401>の市況関連株のほか、三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社株も軒並み大幅安。前日急伸していた大阪チタ<5726>も急反落。三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連も揃って急落。トヨタ自<7203>、マツダ<7261>の自動車関連も総じて売り優勢。米長期金利の大幅低下で三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>も厳しい下げ。連日急伸していた東京電力HD<9501>も利食い売りから急落。3-5月期業績の増益率鈍化などから出尽くし感が先行したエスプール<2471>は急落し、東証プライム市場の値下がり率上位にランクイン。ソニーG<6758>は外資証券のレーティング格下げが観測されている。 一方、レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>が逆行高。米金利低下やナスダック高を追い風にベイカレント<6532>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>などのグロース(成長)株が総じて強い動き。東証プライム市場の値上がり率上位にはラクス<3923>、Sansan<4443>、SREHD<2980>の中小型グロース株が多く入っている。業績予想を上方修正したラクト・ジャパン<3139>が急伸し、値上がり率トップとなった。記念配当の実施を発表したキューブシステム<2335>も急伸。決算が好感されたところではウエルシアHD<3141>、ハニーズHD<2792>が大幅に上昇した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、電気・ガスを筆頭に全般売り優勢。一方、精密機器、医薬品、情報・通信の3業種が上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の74%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 本日の東京市場では景気敏感株を中心に値幅を伴った厳しい下げに見舞われている。米10年債利回りは前日に一時2.7%台を付けるなど、5月下旬以来の水準にまで大幅に低下。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.30%(-0.04pt)と、昨年8月以来、約1年ぶりとなる水準にまで低下。4月21日に付けた3.02%からの下落っぷりが凄まじい。 金利や期待インフレ率の急落ぶりからも窺えるように、景気後退(リセッション)を織り込む動きに歯止めがかからない。鉱業や鉄鋼、商社などのチャートの崩れ方が酷く、自律反発がいつ入ってもおかしくない水準とも言えるが、ここまで来ると、どこまで突っ込むのかを見極めるのはもはや困難。 一方、金利低下を追い風にグロース株の復調が目覚ましい。グロース株の代表格とも言えるJMDC<4483>は本日一時200日移動平均線を回復するところまで上昇した。その他でも、多くのグロース株のチャートで底入れ感が見られるものが多い。実際、日経平均やTOPIX(東証株価指数)が大幅に下落しているなか、マザーズ指数は大幅に上昇している。 こうなってくると、景気敏感株売り・グロース株買いのリセッショントレードの妙味が一段と増してきそうだ。ただ、グロース株がこのままずっと強いかと問われば疑問符が付く。景気後退懸念から金利が大幅低下していることが足元のグロース株の復調の大きな要因だが、忘れてはならないのは金利動向の背景にあるインフレだ。市場は景気後退懸念が加速するにつれ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ打ち止めや利下げ転換の時期が早まると見ているが、筆者としてはこうした考え方はやや危なっかしいと感じる。 米5月消費者物価指数(CPI)の結果を受けて、FRBが6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて一気に0.75ptの利上げに踏み切ったことで、インフレピークアウト期待は一度完全に後退した。ちなみに、米5月CPIは前年比+8.6%だ。FRBが目標とする2%からは著しい乖離である。確かに、足元の個人消費の減退やコモディティ価格の下落を受けてインフレピークアウト期待が再び高まっているのは間違いないし、実際、ピークアウトの確率は高まってきていると考える。しかし、現在の高水準のインフレと当局の目標値との乖離幅を踏まえると、いくら相場が1年以上先を見据えて動くとしても、利下げ期待まで織り込むのはやや時期尚早な気がしてならない。 特に、米国では財消費が大きく減退してきたことでモノに関するインフレは確実に沈静化する方向にあるが、ペントアップデマンド(繰越需要)も背景に、今度はサービス消費がインフレの主要因になってきている。そして、財消費と異なり、サービス消費は利上げなど金融政策による影響が小さく、簡単にはインフレは沈静化しないと考えられる。 スケジュール的にも、今晩には米6月ISM非製造業景気指数、6月FOMC議事録の公表が控えており、また今週末には米6月雇用統計が控えている。雇用統計では平均賃金の伸びなどが注目され、さすがに週末にかけては足元勢いづいているグロース株が小休止してもおかしくない。加えて、来週13日には米6月CPIが控える。パウエルFRB議長はインフレ期待を制御するにあたってはヘッドラインインフレが重要と述べており、CPIが近づくタイミングでは逆に、グロース株には再びヘッジ売りが入る可能性も想定されよう。 日米ともに株式市場が全面安とならずに、グロース株に活況ぶりが見られることは心強い反面、こうした動きに後追いで乗じるには大きなリスクが伴うことを肝に銘じておきたい。 後場の東京市場は引き続き軟調か。前場のTOPIXの下落率が2%未満のため、日銀による上場投資信託(ETF)買いは期待できない。また上述したように、今晩から米国市場では材料が多く控えていることもあり、積極的な押し目買いは入りにくいだろう。日経平均は26000円を維持できるかが焦点となり、短期筋の26000円割れを狙った仕掛け売りなどには注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/06 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、株価水準的にもスケジュール的にも戻りはそろそろ一服?  日経平均は続伸。215.43円高の26369.24円(出来高概算5億1716万株)で前場の取引を終えている。 前日の米株式市場は独立記念日で休場。欧州株式市場では英FTSE100や仏CAC40などが上昇した一方、独DAXは軟調。欧州市場はまちまちだったが、時間外取引のナスダック100先物が大きく上昇していたことを支えに日経平均は232.42円高からスタート。早ければ今週にも、米国が課している中国消費財に対する関税の一部適用除外が発表される可能性があると伝わったことが背景にあるもよう。ただ、日経平均は朝方に26532.51円(378.70円高)まで上昇した後は、節目の26500円を回復した目先の戻り達成感から騰勢一服となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>が自律反発狙いの買いから上昇。東京海上<8766>、第一生命HD<8750>は米金利上昇を受けて反発。原油先物価格の上昇を背景にINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が買い優勢で、大阪チタ<5726>と東邦チタニウム<5727>、大平洋金属<5541>は大幅高。エムスリー<2413>、MonotaRO<3064>、SHIFT<3697>、JMDC<4483>などのグロース(成長)株が全般強い動き。 6月既存店売上がセール前倒し影響を除けば前年比プラスで、客単価の上昇傾向も確認されたファーストリテ<9983>は大きく上昇。上半期決算の上振れと共に通期計画を上方修正したネクステージ<3186>も買い優勢。楽天銀行の上場申請が好感された楽天グループ<4755>も一時大きく上昇した。4-6月期が前年比15%営業増益との観測報道が伝わったオービック<4684>も買われた。決算が買い手掛かりとなったところではハイデイ日高<7611>、アークランドサカモト<9842>がそれぞれ大きく上昇した。 一方、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の大手海運が揃って下落。6月既存店売上が前年比マイナスとなった良品計画<7453>が軟調で、既存店売上がプラスながらも5月からの鈍化が嫌気されたユナイテッドアローズ<7606>、アダストリア<2685>は大きく下落。6月既存店売上が3カ月ぶりにマイナスとなったF&LC<3563>も大幅安。前期実績が会社計画を下振れ、今期見通しが市場予想を下回ったクスリのアオキ<3549>は大きく売られた。 セクターでは保険、鉱業、石油・石炭が上昇率上位となった一方、海運、不動産、電気・ガスが下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の55%、対して値下がり銘柄は39%となっている。 日経平均はナスダック100先物の大幅高を手掛かりに一時26500円を回復するも、その後は上値の重い展開となっている。米国の対中関税の一部適用除外に関する報道が好感されたようだが、まだ最終決定には至っておらず、インフレ抑制への寄与度もあまり期待できるものではないとみられる。また一方で、中国政府の産業補助金に対する新たな調査も明らかにする可能性があるとも伝わっており、総じてポジティブ一色のニュースでもない。 市場の関心がインフレから景気後退へと移ってきているなか、先週末に発表された米6月ISM製造業景気指数は53.0と、前月(56.1)から大幅に低下し、市場予想(54.9)も大きく下回った。構成項目では先行性の高い新規受注が2年ぶりに拡大・縮小の境目である50を下回ったことで、全体の50割れもかなり近づいている印象。 産業分野の中でも先行性の高い半導体を中心とした電子部品の需要減少、在庫調整に関する報道も相次いでおり、今後の生産動向でまだ伸びが期待できるのは自動車くらいだ。ただ、その自動車もグローバルな景気後退懸念から需要鈍化が見込まれており、関連企業の株価も冴えない。 また、きな臭さが漂っているのが中国。欧米諸国がこれから景気後退へと向かう一方、中国は「ゼロコロナ」政策の緩和や景気浮揚策を背景に緩やかながらも回復方向にあることが、世界のマクロ景況感の下支えとして期待されてきた。しかし、同国では再び東部・安徽省などで感染拡大が目立ってきているという。浙江省や上海市でも感染が報告されており、中国経済の重要地域である長江デルタ地域での影響拡大を防ぐために、当局が再びロックダウン(都市封鎖)を強化する懸念も強まっている。 現在、市場の関心事項は第一に「景気後退」、第二に「インフレ」だと思われるが、第一の「景気後退」を巡っては先週末から懸念が緩和されるようなポジティブな報道はほとんどないどころか、ネガティブなニュースの方が目立っている。こうした中でも、日経平均は週明けから2日連続で上昇し、500円程の回復を見せているが、明日から週末にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録、米6月ISM非製造業景気指数、米6月雇用統計、国内上場投資信託(ETF)の配当金支払い集中日などイベントが相次ぐなか、戻りはそろそろ一服する頃合いと見ておいた方がよさそうだ。 一方で、グロース株全般に強い動きが2日続けて確認されていることは明るい材料だ。インフレ懸念と景気後退懸念の綱引きにより、米10年債利回りが今後も落ち着いた動きを続けてくれれば、今後はコモディティや景気敏感株が冴えない中でも、グロース株が代わりにけん引役を担ってくれることで、市場内での資金循環が利くことが期待される。来週13日の米6月消費者物価指数(CPI)が近づいてくる場面では手仕舞い売りに注意したいが、目先はグロース株の続伸劇に期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/05 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は反発、米金利低下で投資家心理改善  日経平均は反発。149.45円高の26085.07円(出来高概算5億5498万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場ではNYダウが321.83ドル高と反発。第3四半期、下半期入りで新たな投資資金流入を期待した買いに寄り付き後、上昇。その後、6月ISM製造業景況指数が予想以上に悪化し2年ぶり低水準に落ち込んだため景気後退懸念が再燃し売りが加速、一時下落に転じた。しかし、同時に、連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げの思惑が後退、金利が低下すると安心感も広がり下げ止まった。連休を控えた買戻しに再び上昇し、引けにかけて上げ幅を拡大。ナスダック総合指数も反発した。米株高を引き継いで日経平均は前週末比151.16円高からスタート。買い一巡後は上げ幅を縮小して前週末終値付近まで値を下げたが、再度上げ幅を拡げたあと上値の重い展開となった。 個別では、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>などが大幅高。電力需給逼迫と原発再稼働に絡む思惑錯綜して東京電力HD<9501>を筆頭に関西電力<9503>や九州電力<9508>などの電力株が大幅に上昇、レノバ<9519>や東京エネシス<1945>などの再生可能エネルギー関連銘柄にも注目が集まっている。また、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も強い動き。上半期決算を発表した象印マホービン<7965>が急反発。ほか、第1四半期は市場想定比上振れで安心感が先行したニトリHD<9843>、22年5月期決算を発表したアスクル<2678>が大きく上昇。 一方、東エレク<8035>やファーストリテ<9983>などが軟調。大規模通信障害を嫌気した売りが流入したKDDI<9433>が売り優勢の展開となっているほか、三越伊勢丹<3099>、H2Oリテイル<8242>、Jフロント<3086>などの百貨店関連銘柄が利食い売り優勢となっている。前週末から売り優勢の展開が続いているダブル・スコープ<6619>が大きく下落。大阪チタ<5726>やビジョン<9416>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは電気・ガス、卸売業、サービス業が上昇率上位となった一方、保険、石油・石炭が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の75%、対して値下がり銘柄は22%となっている。 本日の日経平均株価は上昇してスタートした後、アジア市況が軟調に推移したことを横目に前場中ごろに上げ幅を縮小して前週末終値付近まで値を下げた。その後再度買いが集まり上げ幅を拡げるも上げ幅は限定的、上値の重い展開となった。米国株の上昇に加えて米長期金利が低下したことが、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いているようだ。日足チャートでは、上下に長い髭を伴うを陰線を形成しており売り買いが交錯している状況が窺える。 新興市場も買い優勢の展開が続いているものの上値は重いか。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.42%高、東証マザーズ指数が1.37%高となっており、日経平均株価よりもやや値幅を伴って上昇している。時価総額上位銘柄中心に物色が向かっているようだ。冴えない動きだった米株市場が上昇に転じたことに加えて米長期金利が2.89%と1カ月ぶりの水準まで大幅に低下しており、バリュエーション面での割高感が気になりやすい東証グロース市場の中小型株には支援要因となっている。 ただ、日経平均株価が上げ幅を縮小している場面では、東証グロース市場の指数も同様に上げ幅を縮小していた。グロース株にとって金利の低下は支援要因にはなるが、7月以降もFRBが0.75ptの大幅利上げを実施する可能性が残るなか、グロース株を積極的に買い進むことは難しい。個人投資家主体の短期資金の逃げ足が速くなり、上値の重い展開となっている可能性がある。 さて、今週は米国で多くの経済指標の結果が発表される。6日には米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表、米6月ISM非製造業景気指数、7日に米6月ADP雇用統計や米5月貿易収支、8日に米6月雇用統計及び米5月消費者信用残高などが発表される。FOMC議事録が新たにサプライズになることはないと考えられているが、米雇用統計など各種経済指標の結果を見極めるまでは積極的に買い進む動きは限定的になりそうだ。 後場の日経平均は上値の重い展開が続くか。中国で新型コロナウイルス感染が再び増加していることを嫌気したアジア株下落に加えて、時間外で米株先物が下落していることが投資家心理を悪化させる要因となりそうだ。また、本日は米国の独立記念日で米株市場が休場、買い手掛かり材料に欠けるなか、東証グロース市場中心に投資家の目線が向かう可能性を想定しておきたい。 <AK> 2022/07/04 12:14 ランチタイムコメント 日経平均は3日続落、需給もファンダも悪化でけん引役不在  日経平均は3日続落。233.51円安の26159.53円(出来高概算6億0973万株)で前場の取引を終えている。 6月30日の米株式市場でダウ平均は253.88ドル安と反落。消費や製造業の減速を示す経済指標を受けて下落スタート。インフレ調整後の5月個人消費支出(PCE)がマイナスに落ち込んだことや、高級家具販売RHの再三にわたる見通し引き下げも景気後退懸念を一段と強めた。一方、PCEコアデフレーターが予想を下回り、金利が大幅に低下したことが下支えし、主要株価指数は引けにかけては下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は-1.33%と4日続落。前日のダウ平均先物の下落を通じて米株安を織り込んでいた日経平均は67.67円高からスタート。しかし、景気後退懸念が強まるなか買いは続かず失速。その後下落に転じてからも売りが止まらず、前引けまで下げ幅を広げる流れとなった。 個別では、原油先物価格の下落を背景にINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大幅安。川崎汽船<9107>や郵船<9101>、住友鉱<5713>など市況関連株も軟調。米半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算が嫌気され東エレク<8035>やレーザーテック<6920>が軒並み下落。新光電工<6967>、太陽誘電<6976>、ローム<6963>などのハイテク株も安い。為替の円安進行の一服感から日産自<7201>、ブリヂストン<5108>の輸出関連も下落が目立つ。景気後退による消費鈍化懸念からエアトリ<6191>、オープンドア<3926>、ラウンドワン<4680>などリオープン(経済再開)関連も軟調。 ロシアのプーチン大統領が、石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、事業主体を新たに設立するロシア企業に変更するよう命じたと伝わったことで、同プロジェクトに出資している三井物産<8031>、三菱商事<8058>が大幅に下落。業績予想の下方修正を発表したダイセキ<9793>、良品計画<7453>は急落し、東証プライム市場の値下がり率上位に並んでいる。 一方、東京電力HD<9501>が大幅に反発。三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連が揃って買い優勢。信越化<4063>、HOYA<7741>、ダイキン<6367>、ファナック<6954>の値がさ株の一角も堅調。東レ<3402>は連日で年初来高値を更新。米長期金利の低下を支援要因にベイカレント<6532>、NRI<4307>などグロース(成長)株の一角もしっかり。第1四半期が好決算となった高島屋<8233>は急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に入り、Jフロント<3086>も好決算を手掛かりに大幅高。今期も2ケタ営業増益見通しとなったウェザーニューズ<4825>も急伸。ブイキューブ<3681>はメタバース関連のリリースで急伸した。 セクターでは鉱業、ゴム製品、電気・ガスが下落率上位となった一方、石油・石炭、保険、銀行が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の68%、対して値上がり銘柄は28%となっている。 前日発表された米5月PCEコアデフレーターは前年比の伸びが3カ月連続で鈍化し、市場予想も下回った。また、前月比の伸びも予想を下回り、インフレ懸念は鈍化した。しかし、投資家の関心は既にインフレから景気後退へと大きく移っており、物価指標の伸び鈍化よりも、個人消費支出がインフレ調整後の実質ベースで今年初となるマイナスに落ち込んだことの方が注目された。インフレ調整後の個人消費支出は前月分も+0.3%と速報値の+0.7%から大幅に下方修正されており、インフレ調整後の可処分所得も前月比-0.1%とマイナスになった。 株式市場で景気後退を織り込む動きは2週間ほど前から強まっているが、アナリストによる企業業績の下方修正が十分に進んでいないなか、こうした動きはまだ序盤ともいえる。7月中旬以降、日米で4-6月期の企業決算の発表が本格化していくが、ここでの業績下方修正などを見据えて、むしろ、こうした動きが更に加速化していくことに注意したい。 米半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算もネガティブな材料だった。コンピューターやスマートフォン向け需要が弱くなっているとし、6-8月期の見通しは売上高および一株当たり利益ともに市場予想を大きく下回った。各半導体メーカーの経営陣コメントから、既にPCやスマホなど民生向けで需要の減少が始まっていることは示唆されていたが、改めて需要の減速が確認された。 半導体業界では後工程において先んじて在庫調整が始まっていたが、今後は前工程でもこうした在庫調整を織り込む動きが一段と強まることが予想される。需要が減速してきている民生向け対して車載向けや産業向けの需要は旺盛とされているが、これまで堅調とされてきたデータセンターのサーバー向けも変調してきている。市場では、景気の先行き不安から米国企業などがサーバーへの設備投資を抑制し始めたとの指摘も聞かれる。 東エレクが連日で年初来安値を更新していることからも、投資家の先行きに対する不安の強さが感じられる。車載向けや産業向けの好調で相対的に強いとされてきたルネサス<6723>も連日の急落で、年初来安値を窺う位置にまで下落してきている。 景気後退懸念が強まるなか、海運株や商社株など、これまでグロース株が弱い局面でも相場をけん引してきた市況関連株も、6月以降は厳しい売られ方だ。また、歴史的な為替の円安進行が支援要因となってきた自動車関連株も最近は弱さが目立つ。今週は6月30日に一時1ドル=137円台に乗せるなど、円安が一段と進んだにも関わらず、株価の好反応は乏しく、むしろ、景気後退に伴うグローバルな自動車需要の鈍化を警戒した売りから株価の下落が続いた。円安進行に一服感も台頭しつつあるなか、今後は円高方向に振れた際の株価下落が気掛かりにもなる。暗号資産(仮想通貨)ビットコインも再び急落しており、相場は債券を除けばほぼ全部売りの様相だ。 年金基金によるリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景とした6月の月末にかけての需給改善期待がはく落し、相場のけん引役も不在な状態なまま7月入りとなった。不安定ななか、今月は8日に国内の主要上場投資信託(ETF)の分配金捻出が集中しているほか、米6月雇用統計が控え、13日には米6月消費者物価指数(CPI)が予定されている。需給改善から需給悪化へと意識が向かうなか、指標の結果次第では、26~27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けた下値模索の展開も想定されよう。 より手前の話で言えば、今晩には米サプライマネジメント協会(ISM)が発表する6月製造業景気指数が発表され、6日には非製造業の景気指数も発表される。インフレよりも景気後退の方に目線が移ってきているなか、むしろこちらの方が注目度は高いともいえる。既に前月からの悪化が想定されているが、予想を下回ると景気敏感株を中心に一段と買い持ち高を縮小する動きに拍車がかかりそうで注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/07/01 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は続落、需給下支えから需給悪を意識する頃合い、オーバーキル懸念も一段と  日経平均は続落。243.55円安の26561.05円(出来高概算5億5440万株)で前場の取引を終えている。 29日の米株式市場ではNYダウが82.32ドル高と3日ぶり反発。個人消費の大幅な引き下げを要因に1-3月期国内総生産(GDP)の確定値が予想外に下方修正されたことで、序盤は景気後退懸念が強まった。ただ、欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムで連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が企業や家計の財務状況の強さを強調すると警戒感が後退。加えて、ドイツの6月消費者物価指数(CPI)の伸びが予想外に鈍化し、米長期金利が低下したことも投資家心理を改善させた。ナスダック総合指数は-0.03%とほぼ横ばい。方向感に欠ける展開だった米株市場を引き継いで、日経平均は51.32円安と小甘くスタート。ただ、ダウ平均先物が軟調に推移するなか下げ幅を広げる動きが続き、前場後半には一時300円近く下落した。 個別では、米半導体大手AMDのレーティング格下げを背景にフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が-2.2%と大幅に下落したことを嫌気し、スクリン<7735>、アドバンテスト<6857>の半導体関連が大幅安。ソニーG<6758>、村田製<6981>、ファナック<6954>、ローム<6963>などのハイテク株も大きく下落。景気後退懸念から川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運のほか、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、日本製鉄<5401>、信越化<4063>なども安い。外資証券によるレーティング格下げを受けてトレンド<4704>も売られた。 一方、ダブル・スコープ<6619>が大幅に続伸し年初来高値を更新。OLC<4661>、JR東<9020>、第一三共<4568>、パンパシHD<7532>などの内需・ディフェンシブ銘柄の一角が高い。主力処では東レ<3402>が大幅高で年初来高値を更新。子会社のアリババグループ会社とのマスターライセンス契約締結が好感されたサンリオ<8136>や、業績予想の上方修正と自社株買いが手掛かりとなったサニーサイド<2180>はそれぞれ急伸し、東証プライム市場値上がり率上位に並んだ。オイシックス・ラ・大地<3182>との業務提携が好感されたシダックス<4837>はストップ高買い気配で終えており、オイシックスも買われた。自社株買いを発表したDeNA<2432>が大きく上昇し、国内証券によるレーティング格上げを受けてPI<4290>が急伸している。 セクターでは鉱業、その他金融、石油・石炭が下落率上位となった一方、繊維製品、陸運、建設が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の60%、対して値上がり銘柄は36%となっている。 日経平均は心理的な節目の26500円を前に下げ渋っているが、27000円前後に並ぶ主要移動平均線に上値を抑えられる形で大きく失速する展開となっている。前日の米株市場は今晩に発表される6月個人消費支出(PCE)コアデフレーターを前に様子見ムードが強かったとはいえ、終日動意に乏しい展開。年金基金によるリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景とした月末にかけての上昇期待も萎んでしまいかねない程の弱さに見えた。国内でも、今日が需給面ではピークとの指摘も聞かれている。 今晩に発表予定の米6月PCEコアデフレーターは前年比での伸びが3カ月連続で鈍化することが予想されている。予想通りとなれば、前日の6月ドイツCPIの結果に続く形で、インフレピークアウト期待が一時的に高まり、短期的には買いに弾みがつく可能性もある。 しかし、月替わりで7月に入れば、需給面での下支えがなくなるうえ、7月8日には国内の株価指数に連動するパッシブ型の上場投資信託(ETF)の配当金支払いが集中している。分配金捻出に伴う換金売りで現物株・先物を併せて1兆円程の売りが出ると想定されている。8日には米6月雇用統計が控えており、ただでさえ神経質になりやすい。この需給悪化のイベントを見据えて来週前半からは早くも売りが強まってくる可能性に注意したい。 前日のECBの年次フォーラムでは、パウエルFRB議長は米経済について家計と企業の財務状況は力強い状態にあり、堅調な労働市場を維持しながらインフレを2%に低下させる経済の軟着陸(ソフトランディング)は可能だとの見解を繰り返した。ただ、一方で同時にその達成はかなり厳しいとも認めた。また、積極的な利上げが経済を過度に減速させるリスクはあるものの、高インフレが持続し、消費者のインフレ期待を制御できなくなるリスクの方が大きいとも指摘しており、景気よりもインフレ抑制を重視する姿勢を改めて示した。 さらに、クリーブランド連銀のメスター総裁も同様の見解を示したうえ、政策金利を年内に3.0~3.5%へ引き上げ、来年には「4%を若干上回る」水準が望ましいとも述べたという。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表された政策金利見通しでは、2023年末の政策金利は3月時点での2.8%から3.8%へと大幅に引き上げられていたが、メスター総裁の言及した4%はこれを更に上回る水準。FRBは積極的な利上げを通じて需要を抑え込み、何がなんでもインフレを抑えたいと考えているようだ。オーバーキルへの懸念はますます強まるばかりで、相場の不安定な状況は長期化しそうだ。 後場の日経平均は冴えない展開か。今晩の米株市場では米6月PCEコアデフレーターに加え、半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算も予定されている。これらの結果の影響力はかなり大きいと想定され、イベント前に押し目買いは入りにくいと推察する。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/30 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は5日ぶり反落、景気後退懸念強まる中での実質金利上昇は嫌な組み合わせ  日経平均は5日ぶり反落。289.48円安の26759.99円(出来高概算6億1319万株)で前場の取引を終えている。 28日の米株式市場ではNYダウが491.27ドル安と大幅続落。中国が新型コロナ規制を緩和したことが好感されて買い先行。NY連銀のウィリアムズ総裁が「経済が強く、景気後退は基本シナリオではない」と発言したことも買いを後押し。しかし、その後発表された6月の消費者信頼感指数が予想以上に悪化し、景気後退懸念が強まると次第に売り圧力が強まり下落転換。引けにかけて売りが加速し、主要株価指数は大幅に下落した。ナスダック総合指数は-2.97%と大幅続落。米株安を引き継いで日経平均は235.24円安からスタート。朝方は売りが先行し、下げ幅は一時350円を超えた。アジア市況が軟調ななか、その後は安値圏でのもみ合いとなった。 個別では、ルネサス<6723>、東エレク<8035>の半導体関連、村田製<6981>、ローム<6963>、日本電産<6594>のハイテクのほか、SHIFT<3697>、メルカリ<4385>のグロース(成長)株が全般大きく下落。川崎汽船<9107>、郵船<9101>、INPEX<1605>、SMC<6273>、ブリヂストン<5108>、AGC<5201>など景気敏感株でも弱いものが目立つ。第1四半期の大幅減益決算が嫌気されたピックルス<2925>は急落し、東証プライム市場の値下がり率トップとなっている。 一方、大阪チタ<5726>が大幅に続伸。三井物産<8031>、三菱商事<8058>の商社のほか、三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連が堅調。JAL<9201>やJR東<9020>、資生堂<4911>、イオン<8267>など内需系がしっかり。しまむら<8227>は好決算を評価する動きが継続。原発再稼働機運の高まりを追い風に東京電力HD<9501>が大幅高、電力スポット価格の恩恵銘柄として電源開発<9513>も高い。6月の月次売上動向が手掛かりとなったアスクル<2678>、自社株買いが好感されたスギHD<7649>が急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位に入った。レーティング格上げが観測されたヤマハ<7951>、ビックカメラ<3048>も上昇。 セクターではゴム製品、ガラス・土石、海運が下落率上位となった一方、電気・ガス、石油・石炭、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 前日の日経平均は後場に盛り返して終値で27000円を回復。日経平均先物については、夜間取引に序盤の米株高を映して一時27220円まで上値を伸ばしていた。しかし、その後の経済指標の悪化を受けた急速な基調転換もあり、本日の日経平均は1%を超える下落率で前場を終えている。 前日も指摘したが、27000円は心理的な節目として目先の戻り達成感が台頭しやすいうえ、この水準には25日、75日、13週、26週の主要移動平均線が集中しており、強力な上値抵抗帯として意識されやすい。前日の27000円回復で懸念が払拭されたかとも思ったが、今日の下落で改めてこうしたネガティブな捉え方が優勢となりそうだ。 前日、コンファレンス・ボード(CB)が発表した6月の米消費者信頼感指数は98.7と、前月から4.5pt低下し、2021年2月以来の低水準となった。インフレ圧力による景気後退懸念が消費者センチメントの重荷になっている。また、今後6カ月の見通しを映す期待指数は66.4と、約10年ぶりの水準にまで低下。さらに、雇用が「十分にある」との回答比率は小幅ながら低下し、今後6カ月の間に所得が減少するとの回答比率は2020年8月以来の高さとなった。米連邦準備制度理事会(FRB)は深刻な景気後退を避けられる理由として労働市場の堅調さを挙げているが、こうした見方に徐々に黄色信号が灯り始めている。 また、気掛かりなのは原油先物価格と米10年債利回りの動き。CB消費者信頼感指数の結果を受けて景気後退懸念が強まった中でも、前日の原油先物価格は深刻な供給不足に対する懸念から上昇、米10年債利回りも低下したとはいえ小幅にとどまり、先週後半の一時3%割れを窺う水準からは大きく上昇した位置にある。一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.48%(-0.07pt)と大きく低下。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は+0.70%と、再びじわり上昇基調にある。 先週は景気後退懸念が強まるなかでも、金利の低下がハイテク・グロース株を押し上げ、全体の底上げに寄与した。しかし、本日は景気後退懸念が再燃するなかでも実質金利が上昇し、景気敏感株だけでなくハイテク・グロース株も弱いという構図になっている。月末にかけては、年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いから上昇に期待する向きも多いが、こうした需給要因が剥落した月替わりの7月以降は、上述した背景から改めて相場の下落に警戒が必要だろう。 後場の日経平均については軟調継続を予想。アジア市況が総じて下落しているうえ、今晩は、欧州中央銀行(ECB)主催の経済フォーラムでパウエルFRB議長やラガルドECB総裁など要人らが討論会で発言する予定。金融政策の動向に加えて、景気やインフレの先行きについての見方が注目され、イベント前に買い戻しは期待しにくいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/29 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は4日ぶり反落、月末リバウンド期待にはや一服感?  日経平均は4日ぶり反落。40.58円安の26830.69円(出来高概算5億8363万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場ではNYダウが62.42ドル安と小幅反落。5月耐久財受注速報値や5月中古住宅販売成約指数の良好な結果を受けて買い先行スタート。ただ、2年債や5年債入札の低調な結果を受けて金利が上昇するとハイテク中心に売られ、主要株価指数は下落に転じた。ナスダック総合指数は-0.71%と3日ぶり反落。米株安を引き継いで日経平均は75.59円安からスタート。時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移するなか、すぐに切り返してプラスに転換すると、その後はじりじりと水準を切り上げ、前場中ごろには一時27000円を回復した。しかし、戻り待ちの売りから失速すると売りが膨らみ、前引けにかけて再び下落に転じた。 個別では、原油先物価格の上昇を背景にINPEX<1605>や石油資源開発<1662>が大幅に上昇。大阪チタ<5726>や東邦チタニウム<5727>、大平洋金属<5541>などの資源関連のほか、三井物産<8031>や双日<2768>の商社株も高い。三菱重<7011>やIHI<7013>の防衛関連も堅調。第1四半期が2ケタ営業増益の好発進となったしまむら<8227>や、外資証券のレーティング格上げが観測されたベイカレント<6532>はそれぞれ急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位にランクイン。国内証券の買い推奨を受けてクミアイ化学<4996>も大幅高。モデル改良を伴わない値上げを発表したSUBARU<7270>が買われ、三菱自<7211>、日産自<7201>も大きく上昇。 一方、米長期金利の上昇やナスダックの下落を背景に、アドバンテスト<6857>、東エレク<8035>の半導体関連が大きく下落。日本電産<6594>、村田製<6981>、新光電工<6967>のハイテクのほか、エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>のグロース(成長)株が大幅安となっている。第1四半期の減益決算が嫌気された壱番屋<7630>、あさひ<3333>も大きく下落。東証プライム値下がり率上位にはSREHD<2980>、ギフティ<4449>などの中小型グロース株が散見される。 セクターでは精密機器、空運、サービスが下落率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の39%、対して値上がり銘柄は55%となっている。 日経平均は朝安後に切り返して一時27000円を回復するなど、強い動きを見せたかと思いきや、心理的な節目を回復した目先の戻り達成感が台頭したか、その後急失速する展開となった。27000円前後にはちょうど25日、75日、13週、26週など主要な移動平均線が集中しており、戻り待ちの売りが意識されやすい水準ではあった。今日の前場の動きでこうした見方が裏付けられるような形となってしまい、やや印象が悪い。 先週末に非常に強い動きを見せたマザーズ指数も前日は上昇したとはいえ、控えめな動きだったうえ、今日は前引け時点で反落している。株価水準としては75日線が上値抵抗線として意識される位置にあり、6月9日の大幅高の際には同線を超えられずに失速して下落基調に再突入していたことから、リバウンドに乗ってきた投資家もそろそろ手仕舞いに動き出す可能性がある。 本日、午前の相場では大阪チタニウムやレノバ<9519>など、個人投資家人気の高そうな銘柄が一時急伸して賑わいを見せていたが、前引けにかけては大きく失速していた。一見、地合いが改善して物色も旺盛のような印象を受けるが、物色の主体はあくまで短期の値幅取りなど逃げ足の速い資金に限られるのだろう。前日の米耐久財受注速報値の結果を受けて景気後退懸念はやや緩和しているが、こうした懸念が根強くくすぶるなか、長期目線の投資家などは依然として様子見を決め込んでいる向きが多いだろう。 米国市場では月末にかけて年金基金のリバランス(資産配分の再調整)目的の買いを背景に、リバウンド基調の継続に期待する声も聞かれるが、先週後半からの上昇の一部には、こうした動きを先取りしているところもあろう。ここからの上値追いには慎重になった方がよいと考える。 後場の日経平均は軟調か。前場の間に心理的な節目の27000円を回復して目先の達成感が強まっているなか、新規の手掛かり材料難でもあり、再び27000円に向けて上昇していくイメージは持ちづらい。どちらかと言えば、短期的には26500円近辺に向けて調整する可能性に留意しておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/28 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続伸、米株高受け幅広い銘柄に物色向かう  日経平均は大幅続伸。276.80円高の26768.77円(出来高概算5億6717万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場ではNYダウが823.32ドル高と大幅続伸。連邦準備制度理事会(FRB)のストレステストの結果を受けて金融セクターに買戻しが広がり、相場の上昇をけん引した。また、6月ミシガン大消費者信頼感指数確定値の長期期待インフレ率が14年ぶり高水準から下方修正され、インフレがピークに達した兆候が示されたため投資家心理が一段と改善。大幅な利上げが回避されるとの期待も買い材料となり、引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数も+3.34%と大幅続伸となった。米株高を引き継いで日経平均は前週末比249.83円高からスタート。アジア市況の上昇を追い風に買いが続き、前引け直前に26840.66円(348.69円高)まで上昇した。 個別では、信越化<4063>、ファナック<6954>、三菱重工業<7011>が大幅高。郵船<9101>、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>の海運、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>のハイテク株も大きく上昇。エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株も全般強い動き。電力需給逼迫に伴うスポット価格上昇期待で東京電力HD<9501>や関西電力<9503>などの電力株も大幅に上昇。高水準の自社株買いによる需給改善期待の動きが優勢となった第一工業製薬<4461>が急伸。ほか、2024年末に国内で燃料電池の基幹部品をつくる新工場を建設すると報じられた日清紡HD<3105>、26日朝のTBSテレビ系情報番組に取り上げられた第一稀元素化学工業<4082>が大きく上昇。 一方、NTT<9432>、KDDI<9433>など通信株が軟調。ホンダ<7267>、マツダ<7261>など自動車関連も冴えない動きとなっている。24日に急伸したレノバ<9519>は利食い売り優勢から大きく下落。先週末に22年5月期の決算を発表した日本オラクル<4716>は実績値・ガイダンスともにサプライズ限定的で下落したほか、日東電工<6988>はレーティング格下げで売られた。 セクターでは海運、鉱業、パルプ・紙が上昇率上位となった一方、不動産、ゴム製品、陸運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の63%、対して値下がり銘柄は32%となっている。 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後前場中ごろに上げ幅をやや縮小した。ただ、前場中ごろにかけて再度買いが集まり上げ幅を拡げる展開となった。米国株の強い上昇に加えてインフレや利上げに対する過度な懸念はやや緩和していることが、国内の個人投資家心理にもポジティブに働いているようだ。日足チャートでは、75日移動平均線に迫る勢いとなっている。 一転して新興市場はもみ合い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、前週末24日の大引け時点で東証グロース市場Core指数は8.19%高、東証マザーズ指数は5.68%高となっており、直近では一番の上げ幅となった。パウエル議長の会見及び米長期金利が低下したことで投資家心理が改善、バリュエーション面での割高感が意識されやすく直近手掛けにくかった新興株に物色の矛先が向いていた。両指数とも25日移動平均線を上回った。 ただ、本日は米長期金利が再度上昇したことが重しとなっているほか、買い一巡感が台頭しているもよう。また、東証プライム市場の主力株物色が中心となっており、新興市場はやや蚊帳の外状態でもある。ただ、戻り売りが優勢とならず前週末高値付近でのもみ合い展開となっていることはポジティブに捉えられよう。 直近IPO銘柄の動きも好調。本日上場のイーディーピー<7794>の初値は公開価格を64.0%上回る8200円、サンウェルズ<9229>初値は18.6%上回る2300円となった。24日に上場したマイクロ波化学<9227>は初値が公開価格を下回ったものの一転して買い優勢の展開となっている。直近IPO銘柄は指数にはまだ組み入れられていないため、指数のパフォーマンスには寄与しない点には留意したいが、個別に材料が出た銘柄や直近IPO銘柄にまずまずの物色が向かっており、個人投資家の物色意欲は後退していないことが窺える。 さて、ミシガン大学消費者マインド指数確報値では短期・長期の期待インフレ率が揃って速報値から下方修正された。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げに至った理由の一つであっただけに、過度なインフレ懸念が緩和し、先週末の米株高を演出した。ただ、インフレピークアウト期待が剥落したままという大前提を踏まえれば、リバウンドは短期的なものにとどまる可能性があることは頭に入れておきたい。インフレ懸念とリセッション懸念の間を揺れ動く不安定な相場となり、物色動向も定まりにくいため、このまま買い戻しが続いていくことは想定しにくい。 後場の日経平均は上値の重い展開か。75日移動平均線を上抜けられるかに注目したいが、時間外取引のNYダウ先物やナスダック100先物を横目に推移していくだろう。引き続き東証プライム市場中心に投資家の目線が向かいそうで、新興市場を中心とする中小型株への物色は限定的となりそうだ。 <AK> 2022/06/27 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、久々にグロ−ス株急伸も本格復調を期待するには時期尚早  日経平均は続伸。190.99円高の26362.24円(出来高概算6億2905万株)で前場の取引を終えている。 23日の米株式市場ではNYダウが194.23ドル高と反発。下院での議会証言における、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長のインフレ対応を最優先する姿勢が当局の信頼回復に繋がるものとして好感された。一方、インフレ抑制に「無条件」で取り組むとしたタカ派な姿勢や6月製造業PMIの悪化を受けて一段と強まる景気後退懸念が上値を抑えた。ただ、議長が景気後退は必然ではないと言及したほか、金利の低下を受けたハイテク株の買いが相場を支え、主要株価指数は引けにかけて上げ幅を拡大、ナスダック総合指数は+1.62%と大幅反発となった。米株高を引き継いで日経平均は57.17円高からスタート。ナスダック100先物やアジア市況の上昇を追い風に買いが続き、前引け直前に26391.11円(219.86円高)まで上昇した。 個別では、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、日本電産<6594>が大幅高。郵船<9101>、商船三井<9104>の海運や、信越化<4063>やダイキン<6367>の値がさ株も大きく上昇。エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株も全般強い動き。値上げの発表で味の素<2802>も大幅に上昇。神戸物産<3038>、花王<4452>、第一三共<4568>などディフェンシブ銘柄も高い。韓国子会社の上場が承認されたダブル・スコープ<6619>、洋上風力発電の新たな公募ルール案が手掛かりとなったレノバ<9519>はそれぞれ急伸。ほか、自社株買いを発表した塩野義<4507>、MSOL<7033>のほか、業績予想の下方修正が悪材料出尽くしと捉えられたサイボウズ<4776>が大きく上昇。レーティング格上げが観測されたディスコ<6146>も大幅高。 一方、景気後退懸念が強まるなか、三菱重<7011>やIHI<7013>、三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>、住友鉱<5713>、コマツ<6301>、ENEOS<5020>などが大きく下落。為替の円高・ドル安への揺り戻しを受けて三菱自<7211>、マツダ<7261>など自動車関連が軒並み下落。新型EVの販売停止が嫌気され、SUBARU<7270>とトヨタ自<7203>も売られた。3-5月期の大幅減益が嫌気されたオプトエレクトロニクス<6664>は大きく下落。ほか、NTT<9432>、KDDI<9433>など通信株が軟調。みずほFG<8411>はレーティング格下げで売られた。 セクターでは海運、サービス、精密機器が上昇率上位となった一方、空運、保険、石油石炭が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の62%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 前日の米株高を追い風に、本日の東京市場は概ねしっかりの展開。ただ、景気後退懸念を織り込む動きには歯止めがかからず、資源関連株を中心に景気敏感株の軟調が続いている。 前日の下院での議会証言では、パウエルFRB議長がインフレ抑制に「無条件」で取り組むとし、景気を犠牲にしてでもインフレ抑制に最優先で取り組む姿勢を示したことが話題となった。これにより、一段と景気後退(リセッション)は避けられないとの見方が強まり、資源関連株などの売りに繋がった。 リセッションを織り込む動きが加速するなか、将来の景気動向をも映す米10年債利回りは23日に3.08%と、6月14日に付けた高値3.48%から大幅に低下している。また、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も、リセッションに伴うインフレ減速を織り込む動きから、同日に2.50%まで低下し、4月21日の最高値3.02%からの下落率は大きなものとなっている。 こうした中、にわかに動意づいているのが、グロ−ス株だ。前日のナスダックが大きく上昇したのに倣い、本日の東京市場でもマザーズ指数が前引け時点で+4.80%と急伸している。東証プライム市場でもグロ−ス株が久々に強い動きを見せている。これは、リセッションを急速に織り込む傍ら、FRBが想定よりも早い段階で利上げの打ち止め、再緩和を強いられる可能性があると捉える動きを表していると推察される。 ただ、直近の高官発言から、FRBは7月以降も0.75ptの大幅利上げを続ける可能性が高まっている。また、6月から始まった量的引き締め(QT)は9月からは2倍のスピードに加速する。数十年ぶりの大幅利上げの連続実施に加えて、過去にない急速なペースで進めるQTという異例の組み合わせによる引き締め策の進行を踏まえると、グロ−ス株の本格復調を期待するのはまだ気が早いだろう。今日のマザーズ指数の急伸をもってグロ−ス株に強気のスタンスで臨むのは時期尚早と思われ、依然として投資家には慎重な行動を求めたい。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いか。米長期金利の低下などは値がさ株の支援要因とみられ、相場にポジティブだが、日経平均は今週、26500円が近づく場面では度々押し戻されている。前引け時点で既にこの水準に近いところまで上昇してきており、午後は上値が重くなる可能性もあろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/24 12:12 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続落、イベント無難通過も失速、信越化学から窺う景気後退懸念の根深さ  日経平均は小幅続落。2.84円安の26146.71円(出来高概算5億3388万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場ではNYダウが47.12ドル安と小幅反落。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は上院銀行委員会証言でインフレ抑制を強く公約すると同時に景気後退の可能性を否定しなかった。これにより、利上げが想定程には急速に進まないとの思惑から買い戻しが強まる場面があった。バイデン大統領がインフレ対策としてガソリン税免除を議会に提案したことも支援要因となった。しかし、根強い景気後退懸念が上値を抑制し、結局小幅安で終了。ナスダック総合指数も-0.14%と小幅反落。日経平均は14.66円安からスタートも、前日にNYダウ先物の下落を受けて米株安を織り込んでいたこともあり、イベントの無難通過による安心感から上昇転換。朝方には26401.97円(252.42円高)まで上昇した。しかし上値も重く、その後失速すると前引けにかけて再び下落に転じた。 個別では、郵船<9101>や商船三井<9104>の海運株が大きく下落しており、住友鉱<5713>、大阪チタ<5726>、INPEX<1605>など市況関連株が大幅安。三菱商事<8058>や丸紅<8002>など商社株、日本製鉄<5401>、三菱重<7011>、コマツ<6301>、クボタ<6326>などの景気敏感株も軟調。信越化<4063>、キーエンス<6861>など値がさ株の一角も大幅に下落。東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>などの半導体関連や、新光電工<6967>、村田製<6981>などのハイテク株は朝高後に失速して下落転換。新型コロナ治療薬の継続審議が嫌気された塩野義<4507>は大きく下落している。 一方、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>が堅調。東京海上<8766>が大きく上昇しており、中外製薬<4519>やアステラス製薬<4503>などの医薬品、JR西<9021>、JAL<9201>などの旅行関連、花王<4452>や資生堂<4911>などの内需系がしっかりとした動き。非公開化を巡る買収価格に関する報道が材料視された東芝<6502>のほか、中国での合弁会社設立を発表したロート製薬<4527>、今期大幅増益見通しを公表したサツドラホールディングス<3544>がそれぞれ急伸。また、レーティング格上げが観測されたMonotaRO<3064>、カルビー<2229>、鴻池運輸<9025>、ミクニ<7247>なども大幅に上昇。 セクターでは海運、鉱業、非鉄金属が下落率上位となった一方、空運、保険、陸運が上昇率上位となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の34%、対して値上がり銘柄は60%となっている。 本日は、朝方一時250円程上げた日経平均が結局、前場は下落して終えるなど方向感に乏しい展開となっている。前日、NYダウ先物やナスダック100先物が1%以上下げていたことを受けて既に軟化していたため、パウエル議長の議会証言がサプライズ無く終わり、米株市場も軽微な下げにとどまったことから、本日は買い戻しが優勢になると考えていた。 しかし、一昨日と同様、日経平均は一時26500円近くまで上昇した後、大きく失速する展開となっており、この水準ではかなり戻り待ちの売りが強い様子。個別株でも、年初来安値圏にある東エレクなど半導体関連株が朝方の上昇を維持できずに下落に転じているあたり、上値の重さはかなり強い印象を抱く。 また、気掛かりなのは信越化学の動き。高い市場シェアと高収益率を誇り、化学セクターの中では多くの機関投資家がトップピックとしてあげる同社株が、本日4%を超える下落となっており、連日で年初来安値を更新している。日足チャートでは7日連続での陰線形成となり、週足で見ても、チャート形状の悪化が著しい。 財務健全・高収益のクオリティ株として代表的な同社株がこれだけ売られているのは注目に値する。住宅市場との連動性が高い塩ビ樹脂のほか半導体シリコンなどで世界トップシェアを誇る同社の株価急落は、やはり先週から一段と加速している景気後退を織り込む動きを表していると推察される。ファンダメンタルズに基づく長期目線の実需筋によるこうした景気後退を織り込む動きはまだ続く可能性が高く、当面は押し目買いのチャンスと見るべきでなく、しばらくは売りが一巡するのを待つのが賢明だろう。 後場の日経平均はもみ合いか。上値の重さが強く意識される一方、心理的な節目の26000円が近づく場面では買いも入りやすく、26000~26500円を意識したレンジ推移が続きそうだ。また、サプライズはないだろうが、今晩は下院にてパウエル議長の議会証言が予定されている。新味な発言があるとは思われないが、内容を確認したいとの思惑が一層動きを乏しくさせると考えられる。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/23 12:13 ランチタイムコメント 日経平均は小幅続伸、米株高を追い風にできず相場の軟弱さ伝わる  日経平均は小幅続伸。9.64円高の26255.95円(出来高概算5億7216万株)で前場の取引を終えている。 3連休明け21日の米株式市場ではNYダウが641.47ドル高と3日ぶり大幅反発。値ごろ感からの買いや海外市場の流れを受けて、寄り付きから上昇。バイデン大統領が「景気後退は避けられる」との考えを示したことで過度な懸念が緩和したこともあり、終日堅調に推移。ハイテク株には自律反発狙いの買いが強めに入り、ナスダック総合指数は+2.50%と大幅に続伸。米株高を受けて日経平均は195.41円高からスタート。しかし、寄り付きと同時に付けた26462.83円(216.52円高)をこの日の高値に失速すると、時間外取引のナスダック100先物などが軟調ななか、前場中ごろには26157.09円(89.22円安)まで下落。その後持ち直したが、戻りは鈍く、前日終値を挟んだもみ合いとなった。 個別では、東エレク<8035>やルネサス<6723>など半導体関連が全般大きく下落し、三井ハイテック<6966>、新光電工<6967>、太陽誘電<6976>などのハイテク株も売り優勢。豪州での石炭ロイヤリティ率引き上げを受けて収益性悪化への懸念から三菱商事<8058>が急落し、原料炭事業への依存度が大きい双日<2768>も大幅安。川崎汽船<9107>や郵船<9101>、INPEX<1605>、大阪チタ<5726>などの市況関連株も全般安い。6月既存店売上高の動向が嫌気された西松屋チェ<7545>も軟調。 一方、ダブル・スコープ<6619>が上値追い。円安進行を追い風にSUBARU<7270>やマツダ<7261>、三菱自<7211>などの自動車関連が大幅高。ソフトバンクG<9984>やリクルートHD<6098>のほか、キーエンス<6861>、ファナック<6954>などのFA関連など、ハイテク株の一角が逆行高。アステラス製薬<4503>や第一三共<4568>の医薬品も高い。レーティングの格上げ観測でニッパツ<5991>、武蔵精密<7220>、アダストリア<2685>は大きく上昇。今期見通しが好感されたツルハHD<3391>は急伸。三井住友<8316>の出資報道を手掛かりにSBI<8473>も大幅高。 セクターでは医薬品、ゴム製品、輸送用機器が上昇率上位となった一方、鉱業、海運、卸売が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の44%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 前日に大きく上昇した日経平均は、本日はもみ合い、マザーズ指数にいたっては大きく下落している。前日の東京時間に、時間外取引のナスダック100先物などが大きく上昇していたことから、米株高はある程度は織り込み済みと思われたが、日経平均は一時マイナスに転じるなど、想定以上に弱い印象を受ける。 前日の日経平均は後場も一段高となって、16日と17日に空けたマドを早々に埋めたが、その直後から急失速する展開となった。そして、本日は米株高の追い風がありながらも乗り切れないといった嫌な流れになっている。マド埋めを果たしたことで早くもリバウンドに一服感が漂っている。 前日の米株市場の上昇についても、先週までの大幅下落を踏まえれば、自律反発の域を出ず、弱気相場下における一時的な反発に過ぎないと捉えている市場関係者がほとんど。本格的なリバウンドを期待するには、前日くらいの上昇率が3日以上は連続して起こり、より売り方の買い戻しを誘う必要があるだろう。 週明けに10%近く急落した後、前日には4%超反発したINPEXは再び3%超と大幅下落を強いられており、景気後退入りへの懸念も根深い様子。三菱重<7011>や川崎重<7012>などの防衛関連株も割り込んだ25日移動平均線を下回った推移が続き、本日も戻りが鈍い。 インフレ高進・利上げ加速や景気後退に対する懸念という根本的な不安要素がくすぶる中、リバウンドを期待する向きも少なく、日経平均でいえば26500円が近づいてくる水準では戻り待ちの売りが優勢となるのも頷ける。 また、今晩以降、2日間にわたって米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、上下院において議会証言に臨む。米連邦公開市場委員会(FOMC)通過直後のため、サプライズとなる可能性はほとんどないが、インフレ抑制に対してなりふり構わない積極的な姿勢を見せると、投資家心理が弱まっているなか、売り材料視される可能性があり、油断はできないだろう。 パウエル議長の議会証言を見極めたいとの思惑から、後場も日経平均は動意薄で、もみ合いが続きそうだ。前日とは対照的に、時間外取引のNYダウ先物やナスダック100先物が下げ幅を広げてきており、香港ハンセン指数も下落しているなか、東京市場でも売りが優勢となる可能性もあろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/22 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は3日ぶり大幅反発、買い戻し優勢も自律反発の域出ず  日経平均は3日ぶり大幅反発。453.93円高の26225.15円(出来高概算5億2060万株)で前場の取引を終えている。 前日の米株式市場は奴隷解放記念日(ジューンティーンス)の振替休日で休場。一方、欧州市場ではイギリスFTSE100やドイツDAXなどが上昇し全般堅調。前日の欧州株高を受けて日経平均は299.70円高と26000円を回復してスタート。1ドル=135円台に再び乗せた為替の円安進行に加えて、時間外取引の米株価指数先物が全般大きく上昇しているなか、買い戻しが続いた。前場中ごろに一時騰勢が鈍化する場面もあったが、アジア市況が堅調な出足を切ったことで再び買いが強まると、26265.35円(494.13円高)まで買われる場面があった。 個別では、東エレク<8035>やソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>のハイテク株のほか、三菱重<7011>やINPEX<1605>、郵船<9101>、クボタ<6326>などの市況関連株に買い戻しが入っている。エムスリー<2413>、SHIFT<3697>といったグロ−ス(成長)株も全般大きく上昇。ダイフク<6383>はレーティング格上げもあり大幅高。東証プライム市場値上がり率上位には、洋上風力発電に関する一部での特集記事が材料視され、レノバ<9519>やイーレックス<9517>など再生可能エネルギー関連がランクイン。ほか、SREHD<2980>、インソース<6200>、ギフティ<4449>などの中小型グロース株も散見され、個人投資家人気の高いダブル・スコープ<6619>もランクイン。三井松島HD<1518>はドイツ政府の石炭火力発電への回帰が手掛かりとされているもよう。一方、KDDI<9433>、山崎パン<2212>などディフェンシブ系が軟調。 セクターでは鉱業、空運、石油・石炭を筆頭に全面高。東証プライムの値上がり銘柄は全体の90%、対して値下がり銘柄は8%となっている。 前日の米株市場が休場で、手掛かり材料難のなかではあるが、本日は先週からの急落の揺り戻しといった様相で全般買い優勢の展開。市況関連株もハイテク・グロース株もどちらも足元売られすぎてきた銘柄に買い戻しが入っている。ただ、前日までの下落率を考慮すると、自律反発の域を出ていないといえる。 日経平均は短期的には16日と17日に空けたマド埋めに相当する26431.20円までの戻り余地がありそうで、今晩の米国市場が大幅反発でもすれば可能性はあるだろう。ただ、本稿執筆時点(21日午前11時前)において既に時間外取引のナスダック100先物が1.5%超上昇しており、今晩の米国株高はある程度織り込み済みと推察される。日経平均が明日も続伸し、マドを埋めるためには米株市場がより大きく上昇する必要があろう。 投資家の最大の関心事である世界的な利上げペースの加速や景気後退入り懸念は払拭できていない。景気の再減速が懸念される中国では、政府が原材料コスト上昇によって打撃を受けている川下企業を支援するために、新たな「桁外れ」の政策を計画していると、現地メディアが20日伝えた。中国景況感の底入れに期待したいところだが、米国のバーンズ駐中国大使が「中国のゼロコロナ政策は23年に入っても続く公算が大きい」と発言するなど、なお先行きは不透明だ。 また、英イングランド銀行(中央銀行)はインフレを押し上げるポンドの下落を抑制するため、より積極的に金利を引き上げる必要があると、金融政策委員会(MPC)のマン委員は主張したという。政府の景気支援策や力強い雇用、消費者の積み上がった貯蓄などを背景に国内の価格上昇圧力は従来想定よりも強い公算が大きいと指摘している。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も、インフレ抑制に動く姿勢は金融市場の動向に左右されないとし、7、9月の利上げを改めて支持した。 さらに、20日、サマーズ元米財務長官は40年ぶりの高インフレを抑制するには米国で5%を超える失業率が5年間続く必要があると指摘。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)が示した失業率見通しは今年5月の3.6%から24年までに4.1%への上昇となっており、大きな乖離がある。サマーズ氏は、FRBの金融政策の舵取りになお不信感があるとの姿勢だ。 利上げ加速や景気後退、これらに伴う企業業績の悪化、そして業績下方修正による株価バリュエーションの更なる調整といった悲観シナリオを払しょくすることは難しく、当面は弱気相場の延長戦となろう。投資家は自律反発狙いの買いもいいが、小まめな利食い売りを欠かさないようにするべきだろう。 後場の日経平均は高値圏でのもみ合いか。アジア市況や時間外取引の米株価指数先物が上昇しており、外部環境が良好なことが引き続き支援要因となる一方、連休明けの米株市場の動向を見極めたいとの思惑も働き、次第に様子見ムードが広がりそうだ。引けにかけてはもみ合いの様相が強まりそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/21 12:05 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、実需筋は粛々と持ち高調整進める  日経平均は大幅続落。428.32円安の25534.68円(出来高概算6億1328万株)で前場の取引を終えている。 先週末17日の米株式市場でNYダウは38.29ドル安と続落。連日の急落を受けた下げ過ぎ感から買い戻しが先行。ただ、景気後退懸念に伴う原油価格の急落などが警戒され重しとなった。また、株価指数先物、オプション、個別株オプションの3つのデリバティブ取引の決済が重なるトリプルウィッチングに伴うテクニカルな取引を背景に終日上下に振れ、結局NYダウは小幅安で終了。一方でハイテク株には買い戻しが入り相場を下支え、ナスダック総合指数は+1.43%と反発した。週明けの日経平均は193.62円高と26000円を回復してスタート。しかし、寄り付きをこの日の高値に失速すると、間もなくして26000円を再び割り込んだ。朝方大きく上昇していた時間外取引のナスダック100先物が上げ幅を縮めると、その後はじりじりと下げ幅を広げる展開が続き、下げ幅は400円を超えた。 個別では、原油先物価格の下落を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>などが急落。三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連も軒並み急落している。大阪チタ<5726>や三井松島HD<1518>などの中小型の資源関連株も大きく下落。三井物産<8031>、丸紅<8002>などの商社株も大幅安。ほか、東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>など半導体関連、新光電工<6967>や三井ハイテック<6966>などのハイテク株も全般きつい下落率に見舞われている。 一方、ソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、ダイキン<6367>が逆行高で、トヨタ自<7203>などの自動車関連は円安進行を支援要因に上昇。三菱自動車<7211>は値上げ実施も伝わっており、大きく上昇している。ほか、KDDI<9433>、武田薬<4502>などのディフェンシブ銘柄や、原油安でコスト増懸念が和らいだJAL<9201>、ANA<9202>の空運株が買われている。高水準の自社株買いを発表した新光商事<8141>は急伸し、東証プライム市場の値上がり率上位にランクイン。NTT<9432>のテレワークへの取り組みから思惑が向かったブイキューブ<3681>も大幅に上昇している。 セクターでは鉱業、石油・石炭製品、卸売を筆頭に全般売り優勢の展開。一方、空運、医薬品、輸送用機器の3業種が上昇した。東証プライムの値下がり銘柄は全体の85%、対して値上がり銘柄は13%となっている。 週明けの東京市場は自律反発もむなしく、日経平均は寄り付き天井の形で大きく失速。先週末の米株市場ではナスダックが反発したとはいえ、連日の急落を踏まえれば上昇率はあまりに小幅。また、NYダウにいたっては自律反発どころか続落となった。連日の急落後でもほとんど反発が見られないあたり、足元の相場の状況はかなり重症のようだ。 また、東京市場は先週末と同様、これまでけん引役だった資源関連株や防衛関連株に厳しい売りが目立っている。INPEXは昨年9月以来となる13週移動平均線割れとなっており、三菱重<7011>などの防衛関連株も長らく下値支持線となってきた25日線を大幅に割り込んできている。東エレクなどの半導体関連株も連日で急落し、年初来安値の更新が続いている。 先週末からの繰り返しにはなるが、相場はいよいよ世界的な金融引き締めが景気後退を招くオーバーキルを本格的に織り込み始めていると思われる。今晩の米国市場は祝日で休場なため海外勢の資金フローは限られるとの指摘も聞かれるが、東証プライム市場の売買代金は先週末の4兆円超えに続き、本日も前引け時点で1兆円4億円程とそれなりに膨らんでいる。東証グロース市場の新興株の下落率が軽微なのに対して、東証プライム市場の主力大型株の下落率がかなり厳しい点からも、個人投資家が粘っている一方、実需筋が持ち高調整の売りを加速してきている印象を受ける。 先物市場では、先週は東証株価指数(TOPIX)の先物手口において、週を通じてゴールドマン・サックス(GS)証券の大幅な売り越しが目立った。商品投資顧問(CTA)などの短期筋が手掛けることの多い日経平均先物に比べて、TOPIX先物でのGSによる大量売り越しは世界の景気動向をもとに投資戦略を立案するグローバルマクロ系のヘッジファンドが売りに傾いていることを示唆している。中国での都市封鎖(ロックダウン)の再拡大懸念や米国での相次ぐ経済指標の下振れ、景気よりもインフレ抑制を優先する中央銀行の姿勢などを背景に、マクロ系ファンドも本格的に景気後退を織り込み始めたと推察される。 週末にかけては米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が7月会合でも0.75ptの大幅利上げを支持する姿勢を明らかにしたほか、アトランタ連銀のボスティック総裁もインフレ抑制のためには何でもするとの鬼気迫る姿勢を見せた。 世界的な利上げ加速ペースの拡大や景気後退の度合いが計りきれず、株価への織り込みも十分とはいえないという指摘も多く聞かれるなか、当面は粛々と持ち高を調整する動きが続きそうだ。今年に入って最も厳しい売りに見舞われている半導体が代表するハイテクセクターに加えて、これまでけん引役だった資源関連、防衛関連の銘柄も相次いで急落している動きからもそうした様子が窺える。 後場の日経平均は下値模索の展開が続きそうだ。上述した通り、米株市場で自律反発がほとんど見られず、足元の相場はかなり弱気な状態。また、今の下落相場においては短期筋だけでなく実需筋による持ち高調整も出ていると推察される。買い戻す理由が当面見当たらないなか、後場の買い戻しも期待できそうにないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/20 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反落、オーバーキル懸念強まり調整は長期化か  日経平均は大幅反落。572.70円安の25858.50円(出来高概算7億1001万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でNYダウは741.46ドル安と大幅反落。スイス国立銀行(中央銀行)が予想外に2007年以来の利上げに踏み切ったほか、英イングランド銀行(同)も5会合連続での利上げを実施し、世界的な金融引き締めの加速が警戒された。また、米国の住宅着工件数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数が軒並み予想を下回ったことも投資家心理を悪化させた。連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げによる景気後退懸念も強まり、終日軟調に推移。ナスダック総合指数も-4.08%と大幅反落。欧米株の急落を受けて日経平均は443円安と26000円割れからスタート。寄り付き直後に25720.80円(710.40円安)とこの日の安値を付けた後は下げ渋ったが、自律反発はむなしく、その後は安値圏でのもみ合いが続いた。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、リクルートHD<6098>などの主力ハイテク・グロース(成長)株が軒並み急落。ルネサス<6723>やアドバンテスト<6857>、SUMCO<3436>など半導体関連の下落が特に目立つ。為替の円高への揺り戻しに加えて6月の生産計画の下方修正が伝わったトヨタ自<7203>が大きく下落し、日産自<7201>、デンソー<6902>などの自動車関連も大幅安。INPEX<1605>や三井物産<8031>などの資源関連、三菱重<7011>、川崎重<7012>、IHI<7013>の防衛関連、信越化<4063>、日本製鉄<5401>などの景気敏感株も総じて下落。東証プライム市場値下がり率上位にはギフティ<4449>、MSOL<7033>といった中小型グロース株の一角のほか、富士通ゼネラル<6755>、アルバック<6728>、スタンレー電気<6923>、新光電工<6967>、昭和電工<4004>など入った。 一方、東証プライム売買代金上位ではファナック<6954>、ベイカレント<6532>、東レ<3402>、ダブル・スコープ<6619>などが逆行高。レーティング格上げが観測された京王電鉄<9008>やデサント<8114>、eスポーツ事業への参入を発表したソルクシーズ<4284>などが値上がり率上位にランクイン。業績予想を上方修正したエアトリ<6191>も高い。ほか、神戸物産<3038>、山崎パン<2212>、カルビー<2229>などの内需系ディフェンシブ銘柄が堅調。 セクターでは鉄鋼、輸送用機器、鉱業を筆頭に全般売り優勢の展開。一方、繊維製品、食料品の2業種が上昇した。東証プライムの値下がり銘柄は全体の86%、対して値上がり銘柄は12%となっている。 日経平均は海外市場の急落を受けて大幅安を強いられ、5月13日以来となる26000円割れとなっている。寄り付きから急落した後はもみ合い状態で下値模索の展開とはなっていないが、自律反発の動きはほとんど見られず、26000円を割れても下げ達成感が台頭している様子はない。 また、興味深いのは、前日の米株市場ではナスダックの下落率がとりわけ大きかったにもかかわらず、本日の東京市場ではベイカレントやJMDC<4483>といったグロ−ス株の一角が逆行高となっているほか、エムスリー<2413>などのグロ−ス株の下落率があまり大きくない。一方で、今まで全体相場が軟調ななかでも強い動きを続けてきたINPEXや三菱重工、大阪チタ<5726>といった景気敏感株の下落率の方が大きい。こうした点から、今日の下落相場においては、短期筋主導の先物売りも出ているだろうが、実需筋の売りもそれなりに出ていると推察される。実際、前引け時点での東証プライムの売買代金は1兆6000億円あまりと、15日、16日に比べてまずまず膨らんでいる。 世界経済の中心である米国において経済指標の大幅な下振れが相次ぐなか、FRBだけでなく、世界各国の中央銀行がインフレ抑制のために相次いで利上げを急いでいる。それでも、インフレのピークアウトが未だ見通せないなか、今後さらに利上げペースが加速する可能性もあり、投資家はいよいよ当局による積極的な引き締めが景気後退を招くオーバーキルへの警戒感を本格的に織り込み始めたと考えられる。原油先物価格が反発している中でも、INPEXが急落していることや、上値追いが続いていた防衛関連株の急落は、こうした背景に基づく実需筋の売りを表していると考えられる。 短期筋による先物主導の下げであれば、状況次第ですぐに買い戻し、相場の反発なども想定されるが、実需筋が売り始めたとなると、相場の反発は当面期待しにくく、調整局面は長引きそうだ。当面は我慢強く相場の基調転換を待つべき局面とみられ、安易な押し目買いは避けた方がよいだろう。 後場の日経平均は安値圏でのもみ合いが続きそうだ。前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの思惑が下値を支えることも考えられるが、世界的な金融引き締め懸念が重くのしかかる。また、本日午後には日銀金融政策決定会合の結果公表と黒田総裁の記者会見が予定されている。為替動向への影響力が大きいだけに、総裁の発言内容などは注目度が高い。模様眺めムードが広がりやすいなか、積極的な押し目買いは期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/17 12:09 ランチタイムコメント 日経平均は5日ぶり反発、FOMC無難通過も底打ちの確信深まらず 日経平均は5日ぶり反発。367.89円高の26694.05円(出来高概算5億6517万株)で前場の取引を終えている。15日の米株式市場でNYダウは303.70ドル高と6日ぶり反発。イタリア国債利回りの急騰を受けて欧州中央銀行(ECB)が緊急会合を開き、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した債券の償還金再投資に柔軟性を適用する方針を示したことが安心感をもたらした。一方、6月小売売上高やNY連銀製造業景気指数が予想外のマイナスに落ち込んだものの、金利が低下したことでハイテク株の買いに繋がった。その後、連邦準備制度理事会(FRB)が市場の予想通り連邦公開市場委員会(FOMC)で1994年以降最大となる0.75ptの利上げを決定し、インフレ抑制に努める強い姿勢を見せると一段と買いが広がった。また、パウエル議長が0.75ptの利上げが異例であることを強調し金利がさらに低下すると終盤にかけてハイテク株の買いが強まった。ナスダック総合指数は+2.50%と大幅続伸した。欧米株高を受けて、日経平均は389.36円高と大幅上昇でスタート。朝方は買い戻しが先行し、午前中ごろには26947.70円(621.54円高)まで上昇した。しかし、アジア市況の軟調推移や、朝方大きく上昇していた時間外取引のナスダック100先物が上げ幅を縮めるに伴い、日経平均も前引けにかけては騰勢を弱めた。個別では、レーティングの格上げがあったファーストリテ<9983>が大きく上昇し、ソニーG<6758>、キーエンス<6861>、任天堂<7974>など値がさ株の上昇が大きめ。トヨタ自<7203>や三菱自<7211>など自動車株が大幅高で、三菱重工<7011>や川崎重工<7012>の防衛関連、三菱商事<8058>、三井物産<8031>の商社株、日本製鉄<5401>、住友鉱山<5713>など資源関連の一角も高い。中国南方航空が737マックス機のテスト飛行を実施したとの報道を受けて米ボーイングが買われたことで、東レ<3402>が急伸。岸田首相が「県民割」について7月前半から対象の旅行先を全国に広げると表明したことを好感し、エイチ・アイ・エス<9603>、エアトリ<6191>など旅行関連の一角が強い動き。今期見通しが好感されたコーセル<6905>、中計目標を引き上げたキョウデン<6881>もそれぞれ大きく上昇。一方、ソフトバンクG<9984>や東エレク<8035>は高く始まったものの、その後失速し、小幅な上昇にとどまっている。リクルートHD<6098>、信越化学<4063>は朝高後に下落に転換。また、SHIFT<3697>やラクス<3923>、Sansan<4443>などグロ−ス株で寄り天井のものが多い。ほか、川崎汽船<9107>が大きく下落し、郵船<9101>、商船三井<9104>も軟調。メルカリ<4385>も冴えない動きで、レノバ<9519>は大きめに下落。ハイテク株では新光電工<6967>が大幅に下落。MSOL<7033>は決算を受けた前日の急落に続き大幅続落。レーティングの格下げがあったKLab<3656>も大きく下落している。セクターでは水産・農林、輸送用機器、精密機器を筆頭にほぼ全面高の展開。一方、海運のみが下落となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の83%、対して値下がり銘柄は14%となっている。FOMCでは約27年ぶりとなる0.75ptの利上げが決定された。FRBは先週までは6月会合では0.5ptの利上げを行う可能性が高いとし、5月のFOMC時点では0.75ptの利上げについては「積極的に議論していない」としてきたが、今回は事前のアナウンスを破る形で0.75ptの利上げに踏み切った。ウォール・ストリート・ジャーナル紙による事前の報道もあり、市場は0.75ptの利上げを織り込んでいたため、FOMCの結果公表直後の米国市場の反応は一時的に上下に振れたものの大きなものではなかった。ただ、その後、パウエル議長が記者会見で「次の7月会合では0.5ptか0.75ptの利上げに動く可能性が高い」としたうえで、「今回の0.75ptの利上げ幅は異例であり、この幅が普通になるとは見込んでいない」と説明した後から、株式市場は大きく上昇した。市場は7月以降も0.75ptの利上げが行われる可能性が高いと警戒していたため、0.75ptの利上げは異例としたパウエル議長の説明を想定程にはタカ派でないと捉え、売り方の買い戻しが進んだようだ。今会合では四半期に一度の政策金利・経済見通しが公表された。政策金利見通しの中央値は2022年末が3.4%と3月時点の1.9%から大幅に引き上げられ、23年末も2.8から3.8%へと大きく引き上げられた。一方、22年の経済成長率は3月時点の2.8%からトレンドとされる1.8%をも下回る1.7%にまで大きく下方修正され、23年の成長率も2.2%から1.7%へと引き下げられた。ただ、22年比で横ばいであるほか、一部では1.5%まで下方修正されて、景気後退を伴うハードランディングが示唆されるのではないかという懸念もあったため、やや安心感を誘ったようだ。しかし、景気をある程度犠牲にしてでもインフレ抑制を優先する姿勢が示唆されたという意味で、内容的にはタカ派色が濃い。それでも市場はFRBのインフレ抑制への決意を評価したとみられるが、結局、インフレのピークアウトが見通せないなか、今後の物価指標次第では再び利上げペースの引き上げの可能性があるわけで、不透明感が払しょくされたわけではない。株式市場も売り方の買い戻し以上に買いが入るとは考えづらく、相場が底を打ったと判断するには時期早々だろう。実際、本日の東京市場ではハイテク・グロース株で朝高後に失速しているものが多く見受けられ、投資家の疑念は根強い様子。また、FOMCに隠れてあまり話題になっていないが、前日に発表された米5月小売売上高は前月比-0.3%と予想(+0.3%)に反して5カ月ぶりにマイナスとなったほか、前回、市場予想を大幅に下回った6月NY連銀製造業景気指数も前月からは改善したとはいえ、-1.2と市場予想(+2.3)を下回った。FRBの経済見通しと合わせて考慮すれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)のリスクは更に高まったと考えられる。市場の見方はまだ覚束ないところがあり、先行きについては不安定さが伴う。また、今年はFOMC直後に上昇してもその後に安値を更新する展開が多いため、今回も同様な展開にならないか注視する必要がある。投資家はイベント通過後の上昇に油断することなく慎重な対応が引き続き求められよう。午後の日経平均は外部環境が不透明ななか、今晩の米国市場の動向を見極めたいとの思惑もあり、前引けにかけて失速した流れが続きそうだ。今晩には英国で金融政策委員会が予定されているほか、明日には黒田日銀総裁の記者会見もある。総裁から円安をけん制するような発言が出るか注目され、イベント前に上値も重くならざるを得ないだろう。(仲村幸浩) <NH> 2022/06/16 12:15 ランチタイムコメント 日経平均は4日続落、“異例”の掛け合わせが実施される中あく抜け感への期待は危うい  日経平均は4日続落。194.85円安の26435.01円(出来高概算5億8058万株)で前場の取引を終えている。 14日の米株式市場でNYダウは151.91ドル安と5日続落。ソフトウエアメーカーのオラクルの好決算で投資家心理が改善し、寄り付き後上昇。しかし、5月卸売物価指数(PPI)が予想を僅かに下回ったものの、引き続き大幅な伸びとなったことで、連邦準備制度理事会(FRB)の急速な金融引き締めを織り込む形で金利が上昇すると、売りが強まった。NYダウは終日軟調に推移した一方、引けにかけてハイテク株が持ち直したため、ナスダック総合指数は+0.17%と小幅反発で終了した。まちまちな米株市場の動きを引き継いだ日経平均は4.18円安とほぼ横ばいからスタート。取引開始直後に一時プラス転換する場面があったが、すぐに失速すると、前場中ごろには26406.27円(223.59円安)まで下落。その後は方向感に欠ける動きが続いた。 なお、午前に中国で発表された5月小売売上高は前年比-6.7%と予想(-7.0%)及び4月(-11.1%)を上回った。また、5月鉱工業生産は同+0.7%と予想(-1.1%)及び4月(-2.9%)を上回り、プラスに転じた。 個別では、レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>、三井ハイテック<6966>などのハイテク株、リクルートHD<6098>、ベイカレント<6532>などのグロース(成長)株に下落が目立つ。天然ガス価格の急落を背景にINPEX<1605>が大きく下落し、石油資源開発<1662>、三井物産<8031>、大阪チタ<5726>などの資源関連が軒並み下落。三菱重<7011>、IHI<7013>の防衛関連も軟調。2-4月期の大幅減益がネガティブ視されたMSOL<7033>が急落し、東証プライム市場値下がり率トップとなっている。ほか、サプライズに乏しい上期決算や株主優待の中止が嫌気されたパーク24<4666>、業績予想を下方修正したプロレド<7034>などが値下がり率上位に並んでいる。 一方、米株市場に上場するアリババなど中国株の大幅高を支援要因にソフトバンクG<9984>が買い戻され反発。郵船<9101>、川崎汽船<9107>の大手海運株のほか、米長期金利の上昇を背景に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>など金融株が堅調。円安進行を手掛かりにホンダ<7267>、日産自<7201>もしっかり。高水準の自社株買いを発表した関西ペイント<4613>や、今期の大幅増益見通しに加えて中期投資計画も公表したヤーマン<6630>がそれぞれ急伸し、東証プライム値上がり率上位にランクイン。 セクターでは鉱業、石油・石炭、精密機器が下落率上位に並んだ一方、パルプ・紙、証券・商品先物取引、海運が上昇率上位となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の70%、対して値上がり銘柄は26%となっている。 日本時間の明朝に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエルFRB議長の記者会見を控え、米株市場と同様、東京市場でも模様眺めムードが広がっており、日経平均は前場中ごろにかけて下げ幅を広げた後は動意に乏しい展開となっている。 一方、東証グロース市場では一昨日に好決算を発表して前日に大きく買われたビジョナル<4194>やスマレジ<4431>が大幅に続伸しているほか、先週に新規上場したばかりで前日に今期の大幅増益見通しを発表したANYCOLOR<5032>が急伸している。売買代金上位に位置する銘柄では強い動きが目立っており、米5月消費者物価指数(CPI)を受けてインフレピークアウト期待が消失した後も、個人投資家心理は大きく悪化していない様子。 明日に結果公表を控えるFOMCについて、市場は9割以上の確率で0.75ptの利上げを織り込んでいる。こうした中、これまでのアナウンス通り、FRBが0.5ptの利上げにとどめれば、当局がインフレを制御することに失敗するとの懸念から株式市場は嫌気する一方、1.00ptの利上げを行えばインフレ制御への期待から相場は好感するといった見立てが出ている。 今回のFOMCについては、結果も市場の反応もかなり読みにくく、そもそもこのようなイベント自体の短期結果について予測することは憶測の域を出ないが、上述したような議論はやや楽観的な印象を受ける。米CPIやPPIが前年比+8~11%という記録的な高止まりを続けるなか、仮に1.00ptの利上げを実施したとしても、政策金利はまだ2.00%だ。経済データに対して柔軟に機敏に対処する当局の姿勢は好感されるかもしれないが、これでインフレを制御できるとの考えに傾くにはあまりに時期尚早というか、短絡的すぎる印象が拭えない。 そもそも、通常の一回の利上げ幅は0.25pであり、0.5ptの利上げ幅は過去に経験したことが少ない。ましてや一回で1.00ptの利上げ幅など言わずもがなであり、かつ、今後も0.5~0.75ptの大幅利上げが続くことを踏まえれば、今回の金融引き締めが経済や株式市場に与える影響は計り知れない。そのうえ、過去にない異例なペースで進める量的引き締め(QT)との同時進行だ。“異例”の利上げ幅と“異例”のQTの掛け合わせ効果など誰も正確に予測できないだろう。 イベント通過後に短期的にあく抜け感が生じ、相場が反発する可能性は否定しないが、それは短命に終わる可能性が高いと考えられるし、そうした希望的観測に賭けて無理に投資する局面でもないだろう。イベント通過後の市場の反応をじっくり見極めてからの投資が無難であり、投資家には慎重な対応が求められよう。 中国の経済指標が予想を上回り、アジア市況が堅調に推移していることは投資家心理を下支えする一方、今週最大の注目イベントを目前に控えるなか、模様眺めムードが広がりやすく、後場も東京市場は動意薄の展開となるだろう。なお、今晩の米国市場では5月小売売上高や6月ニューヨーク連銀製造業景気指数など重要指標も発表される。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/15 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は大幅に3日続落、前提覆り買い場探しは当面先か  日経平均は大幅に3日続落。540.62円安の26446.82円(出来高概算6億0736万株)で前場の取引を終えている。 13日の米株式市場でNYダウは876.05ドル安と大幅に4日続落。インフレ高進・連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース加速を警戒する動きが止まらず大幅下落でスタート。中国での新型コロナ流行再燃が懸念されたほか、暗号資産市場の急落が金融不安につながり、売りが加速した。ナスダック総合指数は-4.68%と大幅に4日続落し、主要株価指数は揃って年初来安値を更新。米国株安を引き継いで日経平均は431.69円安と大幅に下落してスタート。寄り付き直後に550円超下げた後は、時間外取引のナスダック100先物が上昇していたことで、短期筋が買い戻しを入れ、一時26635.44円まで下げ幅を縮めた。しかし、流れが続かずに再び失速すると、前場中ごろには26357.90円(629.54円安)まで下落した。 個別では、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>が前日に続き大幅に下落。トヨタ自<7203>やデンソー<6902>も続落。これまで強い動きが続いてきた三菱重<7011>、川崎重<7012>などの防衛関連株のほか、INPEX<1605>や大阪チタ<5726>、三菱商事<8058>などの資源関連株も大きく下落。JAL<9201>、JR東海<9022>、オープンドア<3926>といった旅行関連も売り優勢。東証プライム市場値下がり率上位にはMSOL<7033>、ラクスル<4384>、スノーピーク<7816>などの中小型グロース(成長)株が多くランクイン。神戸物産<3038>やエイチ・アイ・エス<9603>、Hamee<3134>らは決算発表を受けて売られた。東和薬品<4553>、日産化学<4021>はレーティング格下げが嫌気されて大幅安。 一方、郵船<9101>や川崎汽船<9107>など大手海運株が小じっかり。米長期金利の上昇が景気後退懸念を一部相殺できる三井住友<8316>、第一生命HD<8750>の金融株が堅調。上半期の上振れ着地がポジティブサプライズとなったグッドコムアセット<3475>は大幅に上昇し、東証プライム値上がり率トップにランクイン。ほか、国内証券によるレーティング最上位でのカバレッジ開始を受けてIDOM<7599>が買われた。 セクターでは空運、精密機器、不動産を筆頭に全般売り優勢の展開。一方、銀行、海運、保険の3業種が上昇となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の84%、対して値上がり銘柄は13%となっている。 前日の米株式市場は急落し、大幅に3日続落。ナスダックは先週9日から3営業日連続で大幅な下落率が続いている。主要株価3指数は揃って3営業日連続で引けにかけて下げ幅を広げる動きとなっており、売り圧力は相当強いと窺える。 米5月消費者物価指数(CPI)の発表直前まで、インフレピークアウト論を唱える強気派が多かったことを踏まえると、前提が覆されたことによる見直しが1、2日程度で終わるとは考えづらく、調整は長引くと想定しておいた方がよさそうだ。 これまで、今晩から開催される6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5ptの利上げが100%の確率で予測されていたが、米5月CPIの上振れに加えて、昨日のウォールストリートジャーナル紙の報道も手伝い、足元では急速に0.75ptの利上げを織り込む動きが強まっている(90%の確率まで織り込み進展)。大手金融機関も相次いで6月利上げ幅の予測を0.5ptから0.75ptに引き上げている。さらに、思い切って1.0ptの利上げを一気に実施するべきなどという極端な見解も出てきているようだ。 ただ、市場にサプライズをもたらすことを避けたいと考えるパウエルFRB議長は、これまで事前に市場への織り込みを進め、実際のFOMCでは予想通りの結果をもたらすという方法を長らく採用してきた。そのため、実際問題として現時点で0.75ptの利上げが必要であったとしても、FRBがこれまでアナウンスしてきた0.5ptの利上げを上回る利上げ幅を突如として行うことは躊躇するはず。そうでなければ、FRBの市場とのコミュニケーションに対する信頼性がなくなり、今後のFRBによるアナウンスメント効果は大幅に低下することになる。 そういう意味では、今の市場の利上げを巡る織り込みは急激すぎるといえ、6月FOMCの公表結果が市場予想を超えてタカ派になる可能性は低いと考えられる。しかし、それではFOMC前後が買い場になるのかと問われれば、それは別問題であり、個人的にはそれに対する回答は「No」だと考える。 6月FOMCで0.75ptの利上げがなくても、インフレピークアウト期待が消失した今、今後の7、9月会合での0.75ptの利上げ確率は十分に高いだろう。何より、今まで3月でピークアウトしたと思っていたインフレが実際にはピークアウトしておらず、前提が覆ってしまっている。そして、いつピークアウトするのかはもはや誰にも分からない状態だ。この大いなる不透明感がくすぶる限り、FRBの政策方針を巡っても不透明感は根強く残り、市場の思惑は絶えず続くだろう。こうしたコンセンサスが形成されえない状況そのものが相場にとって非常にネガティブなのであり、こうした中ではFOMCイベント通過後もあく抜け感は高まりづらいだろう。 そもそも、足元の米国のインフレ率は前年比で+8.6%、変動の激しい品目を除いたコア指数でも+6.0%という歴史的な高水準だ。これが当面続くか、もしくは再加速する可能性もあるなか、足元の政策金利はわずか1.00%。6月に0.5pt~0.75ptの利上げを実施したとしても、2%未満であり、インフレ率を大幅に下回った状態が続く。この状態でインフレがピークアウトすると考えること自体がナンセンスともいえ、現時点で値ごろ感だけで「そろそろ買いだろう」と判断することは非常に危うい。 米10年債利回りは前日に3.37%まで急上昇し、約11年ぶりの高水準を記録した。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.74%(前日比-0.02pt)とむしろ低下。4月21日に付けた3.02%を依然として大きく下回っている。期待インフレ率が急騰していないことは、市場はまだFRBが完全にインフレを制御できなくなるという最悪のシナリオを織り込んでいない証左といえる。そういう意味では、中央銀行の信任がまだかろうじて維持されているともいえる。 しかし、名目金利が大きく上昇する一方で期待インフレ率が伸びていないことで、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利(10年物)は13日時点で0.63%と急激に上昇する形となっている。実質金利の大幅上昇が株式のバリュエーション面での重石になることは明らかで、FRBの利上げペース加速を織り込む動きが当面続くとなると、実質金利の一段の上昇を通じた株式のバリュエーション調整による深押しが警戒されよう。 後場の日経平均は安値圏でのもみ合いが続きそうだ。ナスダック100先物が堅調推移を続けていることで、今晩の米株市場での自律反発期待もあろうが、アジア市況は総じて軟調。時間外取引のナスダック100先物の動きもあまり当てにならない。今晩には米5月卸売物価指数(PPI)の発表を控えていることもあり、積極的な買い戻しは期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/14 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は大幅続落、基調転換はさらに鮮明に、一段の調整に要注意  日経平均は大幅続落。735.43円安の27088.86円(出来高概算6億1384万株)で前場の取引を終えている。 先週末10日の米株式市場でNYダウは880ドル安と大幅に3日続落。5月消費者物価指数(CPI)が予想を上回り、40年ぶりの高い伸びとなったため、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース加速が警戒された。最新6月のミシガン大消費者マインド指数が過去最低に落ち込んだことで成長鈍化懸念から一段と売りに拍車がかかった。米10年債利回りが上昇するなかナスダック総合指数も-3.52%と大幅に3日続落。米国株の急落を受けて、週明けの日経平均は454.63円安とギャップダウンでスタート。時間外取引のナスダック100先物が大きく下落していることが投資家心理を一段と悪化させ、その後も軟調推移。午前中ごろには27008.49円(815.80円安)まで下落した。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>、日本電産<6594>、メルカリ<4385>など主力ハイテク・グロース(成長)株が軒並み大幅に下落。キーエンス<6861>、信越化<4063>、SMC<6273>、ダイキン<6367>の値がさ株も大幅安。郵船<9101>や三菱商事<8058>、INPEX<1605>、日本製鉄<5401>など市況関連株も総じて下落。上値追いが続いていた大阪チタ<5726>も寄り付き後に失速。東証プライム市場値下がり率トップは売上高予想を下方修正したラクスル<4384>。ほか、ラクス<3923>、Sansan<4443>、SHIFT<3697>など中小型グロース株が上位に多くランクイン。第1四半期が好スタートとなった三井ハイテック<6966>は高く始まったものの、地合いに押されて急落に転じた。 一方、ダブル・スコープ<6619>が一時逆行高となるなど底堅い展開。JT<2914>などディフェンシブ銘柄の一角が小じっかり。今期見通しや自社株買いが好感されたラクーンHD<3031>が急伸し、東証プライム値上がり率トップに顔を出している。ほか、第1四半期好決算や業績上方修正がポジティブサプライズとなったトーホー<8142>、増配を発表したクミアイ化<4996>などが上位にランクイン。美浜原発3号機の運転再開の前倒しを発表した関西電力<9503>も大きく上昇している。 セクターでは機械、サービス、電気機器を筆頭に全般売り優勢の展開。一方、電気・ガス、食料品、水産・農林の3業種が上昇となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の81%、対して値上がり銘柄は17%となっている。 注目された米5月CPIは前年比+8.6%と予想(+8.3%)及び4月(+8.3%)を大幅に上回った。前月比でも+1.0%と予想(+0.6%)を大きく超過し、4月(+0.3%)からは伸びが3倍以上に加速。さらに、変動の激しい品目を除いたコア指数でも前年比+6.0%と予想(+5.9%)を上回った。4月の+6.2%からは伸びが鈍化したが、前月比では+0.6%と予想(+0.4%)を上回ったうえ、4月(+0.6%)からは横ばい。少数点第2位までで見れば、伸びが鈍化どころか加速する形となった。 コア指数での前月比横ばいが持つ意味合いは大きく、3月で米国のインフレはピークを打ったとする期待は完全に消失したといえる。これまで株式市場はインフレピークアウト期待に基づいてリバウンド基調を辿ってきたため、完全にネガティブサプライズであり、インフレ高進・金融引き締めの加速懸念が再び強まるなか、目先はリスク回避の動きが続きそうだ。 CPIの結果を受けて、市場は6、7月だけでなく、9月までの0.5ptの利上げを完全に織り込んだ。しかし、もはや0.5ptの利上げではインフレ沈静化は困難であり、市場の目線は再び0.75ptの利上げへと移っている。市場はすでに7月での0.75ptの利上げを5割程の確率で織り込んできている。 14~15日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利見通し(ドットチャート)が公表され、FRBの利上げペースが注目される。相当にタカ派な結果が予想され、実際、市場も急速にタカ派への警戒を高めている。しかし、インフレのピークアウトが見通せないなか、先行き不透明感は相当強く、イベント通過後もあく抜け感は高まりづらいだろう。予想よりもタカ派であれば、素直に引き締め加速による金利上昇や景気後退懸念の強まりから、ネガティブに反応するだろうし、仮にハト派であれば、FRBはインフレを制御できないとの警戒感が強まり、政策不信感から結局ネガティブに受け止められる可能性が高い。 6月ミシガン大学消費者マインド指数も大幅に悪化し、過去最低を更新するトレンドが続いている。さらに同調査によると、個人消費者らの1年先および5~10年先の期待インフレ率は揃って上昇した。スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)リスクは一段と様相を強めたと言えそうだ。 欧州中央銀行(ECB)による定例理事会での政策決定やインフレ・経済成長率見通しの修正をきっかけに、相場の雰囲気が暗転しはじめたような印象があったが、米CPIやミシガン大学消費者マインド指数の結果を受けて、こうした基調の転換が一層強まったようだ。東京市場については、先週末が6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出日で、ちょうど需給イベントの通過日だったこともあり、なお一層需給の転換が意識されやすい。 しかし、これだけ相場のきな臭さが増しているにもかかわらず、米VIX指数は先週末の時点で27.75(前日比+1.66pt、+6.36%)と上昇幅が限定的で、危険水域とされる30には程遠い状況。債券市場に比べて株式市場の警戒感は十分に高まっていないとも考えられ、一段の調整には警戒が必要だろう。14日の夜には米5月卸売物価指数(PPI)が公表される。こちらも上振れが警戒され、FOMC前にさらにヘッジ売りなどが膨らむ可能性には警戒しておきたい。 時間外取引のナスダック100先物のほか、香港ハンセン指数なども大幅に下落しており、外部環境の悪化が鮮明ななか、午後も日経平均は軟調推移が続きそうだ。前場の東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えたことで、日銀によるETF買いが期待されるものの、今週はFOMCを筆頭に金融政策イベントが多く、先行き不透明感も強いなか、買い戻しの進展は期待できないだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/13 12:08 ランチタイムコメント 日経平均は6日ぶり大幅反落、「幻のSQ」と同時観測の悪材料で基調転換に注意  日経平均は6日ぶり大幅反落。397.74円安の27848.79円(出来高概算7億1622万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは638.11ドル安と大幅続落。欧州中央銀行(ECB)が7月からの利上げ及び9月の0.5ptの大幅利上げの可能性を示唆したことで、金融引き締め懸念が再燃。中国上海市の一部区域で都市封鎖が再開されたことも相まって、世界経済の成長鈍化懸念が強まったことも重石に。引けにかけては5月消費者物価指数(CPI)の発表を控えた警戒感から売りが加速した。ナスダック総合指数は-2.74%と大幅続落。米株安を引き継いで日経平均は250.18円安と28000円割れからスタート。朝方から売りが先行し、前場中ごろには27805.45円(441.08円安)まで下落。香港ハンセン指数の大幅安も影響し、前引けまで軟調推移が続いた。 個別では、米ハイテク・グロース(成長)株安を受けてレーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、アドバンテスト<6857>、リクルートHD<6098>などが大幅に下落。景気後退懸念も強まるなかファナック<6954>、日本製鉄<5401>、クボタ<6326>なども大幅安。INPEX<1605>、コスモエネHD<5021>、住友鉱<5713>など資源関連株も安い。東証プライム市場値下がり率上位にはIRJHD<6035>、Bガレジ<3180>、レーティングの格下げが観測されたTOWA<6315>のほか、JMDC<4483>、ZOZO<3092>、ラクーンHD<3031>などグロース株が多く並んだ。 一方、KDDI<9433>やNTT<9432>などディフェンシブの一角が小じっかり。三菱地所<8802>はレーティング格上げに支えられ堅調。円安進行を支援要因に三菱自<7211>も買い優勢。第1四半期決算が市場予想を上回った積水ハウス<1928>は大幅に上昇。石炭価格サーチャージ制の導入を発表した太平洋セメント<5233>が東証プライム値上がり率上位に躍り出ている。入国者数上限を現行の2万人からさらに引き上げる方向で検討と伝わるなか、藤田観光<9722>、ラウンドワン<4680>などリオープン(経済再開)関連の一角も値上がり率上位に入っている。IDOM<7599>はレーティング格上げを受けて大きく上昇。 セクターでは鉄鋼、石油・石炭、医薬品を筆頭に全般売り優勢の展開。一方、保険、海運、建設の3業種が上昇となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の82%、対して値上がり銘柄は14%となっている。 先週から想定以上に力強い上昇を見せてきた日経平均は6日ぶりに反落。28000円を大きく下回り、回復したばかりの200日移動平均線も割り込んできている。 前日日中取引の日経平均先物が28400円と、節目の28500円近くまで上昇した後、終盤にかけて急失速していたことから、リバウンド基調の一服は示唆されていた。6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出日に当たる今日が、ちょうど需給の転換点として警戒されていたが、今日の大幅下落により、こうした傾向がより鮮明になってしまった。 6月SQ概算値が28122.81円の一方、本日の日経平均の高値は28044.45円。SQ値を大きく下回った状態での推移が続き、完全に「幻のSQ」となってしまった。今晩の米5月CPIの結果と米国市場の反応次第ではあるが、来週以降の相場の調整局面入りに注意した方がよさそうだ。 前日のECB定例理事会での利上げペースの決定は、大きなサプライズとまでは言えないものの、7月に続き9月も0.25ptの利上げにとどまる可能性も残されていたなか、9月の0.5ptの利上げ示唆がタカ派的に捉えられたようだ。また、インフレ見通しについて、2022年末は5.1%→6.8%へ、23年末は2.1%→3.5%へと3月時点から大幅に引き上げられたことで、スタグフレーション(インフレと景気後退の併存)リスクが強まったことも投資家心理に悪影響を与えたようだ。 相場が再び神経質になるなか、今晩は注目の米5月CPIが発表される。変動の激しい食品・エネルギーを除くコア指数は前年比+5.9%(前月+6.2%)、前月比+0.4%(同+0.6%)と5月からの鈍化が予想されているが、一方で、総合指数では前年比+8.3%(同+8.3%)と高止まりが予想されており、前月比では+0.6%(同+0.3%)と加速する見込みだ。 また、欧州連合(EU)によるロシア産石油の一部禁輸などもあり、足元で原油先物価格などは再び上値を試す展開となっており、来月発表される6月分CPIについては再加速も懸念される。実際、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストなどを務め、市場関係者として著名なモハメド・エラリアン氏は、「インフレはピークに達していない」と警告し、6月分CPIの再加速の可能性を指摘。インフレは3月でピークアウトしたとする多くの市場関係者については「再考を迫られる可能性がある」としている。 さらに、元米連邦準備制度理事会(FRB)副議長のアラン・ブラインダー氏は、FRBが今後3回もしくは4回の会合で0.5ptずつの利上げを行う必要があり、インフレ率を目標の2%に戻すためにはリセッション(景気後退)に耐えなくてはならないだろうとも指摘したという。 メジャーSQの日に日経平均がSQ値と心理的な節目の28000円を下回ったことで、基調転換が警戒されるなか、こうした警戒材料が多く確認されていることも嫌な流れを感じさせる。投資家は再び慎重なスタンスが求められよう。 米5月CPIを前にした警戒感から押し目買いが入りにくいなか、後場の日経平均は引き続き軟調な展開が予想される。来週14~15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)も控えていることから、神経質な展開に注意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/10 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は5日続伸、需給イベント終了に伴う基調転換に注意  日経平均は5日続伸。44.16円高の28278.45円(出来高概算6億2079万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でNYダウは269.24ドル安と3日ぶり反落。経済協力開発機構(OECD)が世界経済の見通しを大幅に引き下げたことを背景に、景気後退を警戒した売りが先行。10年債利回りが再び3%台に達し、金利の上昇も重石となった。また、天然ガス、原油価格の上昇でインフレ高進への警戒も強まり、主要株価指数は下げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は-0.73%と3日ぶり反落。米株安を受けて日経平均は44.94円安からスタート。1ドル=134円台に乗せた円安進行を支援要因に上昇に転じると、朝方28322.38円(88.09円高)まで上げ幅を広げる場面があった。時間外取引のNYダウ先物の軟調推移が重石となり、上げ幅を縮める動きも見られたが、前引けにかけては持ち直した。 個別では、米国市場での中国株の急伸を受けてソフトバンクG<9984>が大幅に上昇。ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、任天堂<7974>など値がさグロ−ス(成長)株の一角が堅調。原油価格の高騰を通じてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が大きく上伸。米長期金利の上昇で三菱UFJ<8306>が買い優勢。円安進行を背景にSUBARU<7270>、日産自<7201>が大幅高。ほか、ダブル・スコープ<6619>、ベイカレント<6532>、メルカリ<4385>、SHIFT<3697>などが高い。東証プライム市場値上がり率上位には連日でストップ安となっていたIRJHD<6035>や今期見通しが評価されたビューティガレージ<3180>のほか、SREHD<2980>、ソースネクスト<4344>などがランクイン。 一方、バルチック海運指数の下落や世界の海運関連株の急落を受けて郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>が軒並み急落。米半導体大手インテルの最高財務責任者(CFO)がマクロ環境の見通しについてネガティブな見解を示したことで、前日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は大幅に下落、これが嫌気され、東エレク<8035>、ルネサス<6723>、アドバンテスト<6857>など半導体関連株が全般大きく下げた。シャープ<6753>、くら寿司<2695>、アイモバイル<6535>、丹青社<9743>などは決算が売りに繋がった。 セクターでは鉱業、銀行、繊維製品が上昇率上位となった一方、海運、電気・ガス、鉄鋼が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の50%、対して値下がり銘柄は46%となっている。 20年ぶりの円安水準の記録更新が続くなか、日経平均は5日続伸と強い動きが継続。前日に上回った200日移動平均線を下回ることなく、日足ローソク足は陽線を描き、下値と上値をともに切り上げている。 また、前日の米国市場では10年債利回りが3%台に乗せ、ナスダックが下落、現在も時間外取引でナスダック100先物が下落している中にもかかわらず、本日の東証プライム市場値上がり率上位にはラクス<3923>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>など中小型グロース株が多く入っている。マザーズ指数も本日は2%近い上昇率で大幅高。連日の日経平均の続伸劇を背景に連れ高している可能性もある。 しかし、特段目立った材料が見当たらないなか、ファーストリテ、キーエンス、任天堂などの値がさ株の上昇率が大きいことから、先物主導での上昇と考えられる。実際、今回の力強い上昇基調は先週から始まっているが、前日に公表された6月3日時点の裁定残高を見ると、ネットベースで8829.31億円の買い越しとなり、前週の5323.15億円の買い越しから大幅に増加。今週に入ってからの上昇も先物主導の上昇による裁定買いの様相が強そうだ。 海外勢は今年序盤から日本株を先物で大幅に売り越していたことから、足元では米金融政策に絡むイベントを前に、明日の6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出に向けて、売り方の買い戻しが続いているのだろう。しかし、明日にメジャーSQを通過したその晩には米5月消費者物価指数(CPI)が発表され、来週14~15日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催が目前に迫る。タイミングとしてはそろそろ買い戻しも一服する頃合いと考えられよう。 株価指数の水準としても、日経平均は本日、3月25日に付けた高値28338.81円を手前に失速しており、心理的な節目となる28500円にはまだ距離があるところ。明日、SQ値を下回って推移するようなことになると、需給イベント終了に伴い、改めて下落基調に転じる可能性があろう。 一方、米国市場では、最近、ナスダックの乱高下がほとんど見られなくなり、ボラティリティー(変動率)がかなり落ち着いてきている。また、先行性の高い小型株で構成されるラッセル2000が、各時点での高値を結んで形成される右肩下がりのトレンドラインをブレイクしてからも概ね堅調に推移するなど、相場の底堅さを見せる明るい材料もいくつか確認される。 このように、強弱材料が混在する中ではあるが、上述したように、目先は明日のメジャーSQを起点としたトレンド転換に注意しておきたい。 後場の日経平均は円安進行を背景に底堅い推移が見込まれるものの、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況の軟調が重石となり、同時に上値も重い展開が想定される。明日の米5月CPIを前に模様眺めムードも台頭しやすいだろう。指数はもみ合いになるとみておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/09 12:07 ランチタイムコメント 日経平均は4日続伸、今一度考えてみる相場上昇要因と今後の見通し  日経平均は4日続伸。264.97円高の28208.92円(出来高概算6億6821万株)で前場の取引を終えている。 7日の米株式市場でNYダウは264.36ドル高と続伸。小売大手のターゲットが業績予想を下方修正したことで小売銘柄を中心にネガティブな動きが波及したが、中盤に持ち直すと引けにかけて緩やかに上げ幅を拡大した。長期金利が低下したことでハイテク株を中心に買い戻され、ナスダック総合指数は+0.94%と続伸。米株高を引き継いで日経平均は156.31円高からスタート。1ドル=133円台に乗せた円安進行や香港ハンセン指数の上昇を背景に、その後も順調に上値を伸ばし、前場終盤には一時28225.73円(281.78円高)まで上昇した。 個別では、ナスダックの上昇やアリババ株の急伸を追い風にソフトバンクG<9984>が大幅高となり、レーザーテック<6920>、日本電産<6594>、ダイキン<6367>など主力株が全般強い動き。米大手金融機関による原油相場見通しの上方修正などを背景にINPEX<1605>、石油資源開発<1662>が急伸。川崎重<7012>、IHI<7013>、三菱重<7011>の防衛関連が上伸。目標株価引き上げを受けて日揮HD<1963>も急伸。ほか、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>、富士フイルム<4901>、三井不動産<8801>、神戸物産<3038>などが大幅に上昇。レーティング格上げが観測されたマクセル<6810>も大幅高。東証プライム市場値上がり率上位には業績予想を上方修正したクミアイ化<4996>、第3四半期の好決算が好感されたシルバーライフ<9262>などがランクイン。 一方、郵船<9101>、商船三井<9104>など海運株が軟調。米長期金利の低下により三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>などメガバンク株も冴えない。チタンの国内価格交渉の行方が大筋決まったとの報道で急伸劇が続いていた大阪チタ<5726>、東邦チタニウム<5727>は利益確定売りで下落。JR東海<9022>、KDDI<9433>、OLC<4661>などディフェンシブ系も軟調。気掛かりなところでは、アドバンテスト<6857>など半導体関連が前日の大幅安に続き、総じて相対的に弱い動きが目立つ。 セクターでは鉱業、不動産、卸売を筆頭に全般買い優勢。一方、海運、銀行、保険、鉄鋼の4業種が下落した。東証プライムの値上がり銘柄は全体の80%、対して値下がり銘柄は17%となっている。 日経平均は先週からの上昇基調が続き、本日は前日に終値で維持できなかった28000円を明確に上回ってきている。日足チャートでは長らく上値抵抗線だった200日移動平均線(27940円)を優に上回ってきた。テクニカルな好転を受けて、売り方が一段と買い戻しを迫られているほか、短期筋の追随買いも入っているとみられる。先週からの日経平均の上昇幅は1400円程にもなるが、短期間でこれだけ上昇している割には、ザラ場中に目立った押しがほとんど見られない。一時乱高下したのは昨日くらいだ。 しかし、何かこの上昇相場を素直に喜べない、気持ちの悪い感覚が付きまとう。この1~2週間に何か目立った材料があっただろうか。あったとすれば、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からの9月以降も0.5ptの利上げを支持するタカ派発言や原油価格の高騰、米長期金利の上昇など、どちらかと言えば相場にとってネガティブな材料ばかり。 それまでの間に、個人投資家も機関投資家もセンチメントがかなり弱気に傾いていたため、株式市場を巡るグローバルな環境が特に好転したわけではなく、過度に傾き過ぎていた弱気ポジションの反動というのが、この上昇相場の主要因と考えるのが自然だろう。 目先の注目イベントは今週末の米5月消費者物価指数(CPI)、そして来週14~15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。また、来週末には米国市場でもSQが控えている。現状、米国のオプション市場ではプット(売る権利)の建玉が多いため、CPIやFOMCといったイベント前で普通であれば動きにくいと考えられる中ではあるが、短期的には売り方の買い戻しがまだ続く余地がありそうだ。 相場にとってのポジティブシナリオは、CPIで前月に続き前年比での伸びの鈍化が確認されること、そして、FOMCで公表される政策金利見通し(ドットチャート)において、利上げペースが過度にタカ派的でないことが確認されると同時に先行き不透明感が払拭されることだろう。こうしたポジティブシナリオが実現すれば、短期的には更に上値を試す展開が想定される。 しかし、来週末の米国版メジャーSQを通過した後はどうだろうか。先週から既に過度に弱気なセンチメントが修正されてきているなか、仮に上述した注目イベントでポジティブシナリオが実現したとしても、そこからの上値余地は大きくないのではないのだろうか。それまでの間に、SQに向けて売り方の買い戻しが一巡してきていることを考えれば尚更だ。 また、今一度思い出すべきなのはインフレを抑え込むために過度に相場を上昇させたくないと考えているFRBの存在だ。景気後退もインフレも防ぎたいFRBは、株価指数の水準を現状の位置から過度に上にも下にも動かしたくないと考えているはずだ。こうしたFRBの思惑については少し前から指摘されており、S&P500指数でいえば、3800~4300が目安とされている。これまでの高官発言を振り返ると、実際、3800が近くづくタイミングでハト派的な発言(9月の利上げ停止など)が出てきた一方、4200近くまで大きく反発してきた直後には、タカ派的な発言(9月も0.5ptの利上げ支持など)が相次いでいる。 これらを踏まえると、目先のCPIとFOMCでポジティブシナリオが実現し、相場が現状水準から一段と上昇したとしても、そこから先は再びFRBによるけん制発言が相次ぐ可能性が高い。それだけでなく、グローバルな経済状況に大きな変化がないなか、いつまでも相場のリバウンド基調が続くと考えること自体が難しいだろう。 そうなると、時間軸で考えると、株式市場のリバウンド基調は長くても来週末までで、その翌週(6月20日~)からは再び調整局面が想定される。ポジティブに考えても、せいぜいもみ合い相場だろう。今の難しい相場局面であえて投資に挑戦する必要はないと思うが、仮に投資するのであれば、金融政策に関するイベント前後でも潮目が変わりにくい、リオープン(経済活動再開)関連の銘柄などの方が無難だろう。 後場の日経平均は引き続き堅調推移が見込まれる。上述した通り、イベント前で神経質ながらも、来週までは悲観センチメントの修正、米国版SQに向けた買い戻しが続く可能性が高い。短期的には意外なほどまでに底堅い動きが続くとみておきたい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/08 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は3日続伸、相場は今年の正念場を迎えようとしている  日経平均は3日続伸。115.26円高の28031.15円(出来高概算5億8690万株)で前場の取引を終えている。 6日の米株式市場でNYダウは16.08ドル高とほぼ横ばい。中国北京市で新型コロナウイルス流行に伴う規制が緩和されたことで経済正常化への期待が広がったほか、中国当局が配車アプリの滴滴グローバルの調査を終了するとの報道で投資家心理が改善。ただ、インフレや連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めペースへの不透明感は根強く、買い一巡後は伸び悩んだ。10年債利回りは再び3%を上回ったが、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+0.40%と反発。米株高を引き継いで日経平均は68.90円高からスタート。寄り付き後は失速して一時下落に転じたが、1ドル=132円台まで進んだ20年ぶりの円安・ドル高進行を追い風に切り返すと、午前中ごろには3月31日以来となる28000円を回復。その後は同水準を挟んだ一進一退となった。 個別では、出資先の株価上昇を好感してソフトバンクG<9984>が大幅に上昇。米長期金利の上昇や円安進行を追い風に三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>の金融株や、SUBARU<7270>、マツダ<7261>などの輸送用機器が大幅高。大阪チタ<5726>や東邦チタニウム<5727>のほか、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>、三菱重<7011>、川崎重<7012>などが上値追いの展開。個人投資家の間で人気化しているダブル・スコープ<6619>も急伸劇が続いている。三菱商事<8058>や丸紅<8002>など商社株も強い動き。太陽誘電<6976>やキーエンス<6861>、TDK<6762>などハイテク株の一角も買い優勢。川崎汽船<9107>や郵船<9101>など海運株は前引けにかけてプラス転換。高水準の自社株買いを発表した極東開<7226>やジョイフル本田<3191>、レーティング格上げが観測されたJパワー<9513>などは急伸。 一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の冴えない動きを受けて、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>などが大きく下落。ほか、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株の大幅安が目立つ。東証プライム市場値下がり率上位にはSansan<4443>、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>、JMDC<4483>などの中小型グロース株が多く並んでいる。 セクターでは鉱業、輸送用機器、銀行を筆頭に全般買い優勢。一方、不動産、陸運、空運、医薬品の4業種が下落した。東証プライムの値上がり銘柄は全体の70%、対して値下がり銘柄は26%となっている。 日経平均は寄り付き後に失速してマイナスに転じた後、切り返して節目の28000円を回復して強い動きを見せたかと思えば、午前中ごろには一時大きく値を崩して28000円を割り込み、その後再び回復するなど、かなり荒い動きを見せた。週末の6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出を前に、上昇が続いてきたが、頃合い的にも株価指数の水準的にも買い戻しが一服してきたようにも見受けられる。心理的な節目の28000円を回復したことで目先の達成感も台頭しやすいため、ここからの上値追いには慎重になった方がよいだろう。一方で、28000円を上回って推移する時間帯が長くなると、売り方の買い戻しに弾みがつき、もう一段の意外高が待っている可能性もある。 前日の米国市場ではナスダックは上昇したものの、先行性の高いSOXは横ばいにとどまった。本日の東京市場でも半導体関連株は総じて弱い動きが目立つ。また、中小型グロース株が軒並み大幅に下落していることからしても、まだ投資家心理が大きく上向いてきたとは言えない状況と言える。 しかしそれでも、前日のナスダックは寄り付き後の2%高から大きく失速したものの、米10年債利回りが1カ月ぶりに3%を突破してきたなかでもプラス圏で終えた。ハイテク・グロース株の底入れ感を期待させる意味でポジティブに捉えられる。前日の米国市場の商いは薄く、こうした金利高のなかでの米グロ−ス株高を素直に受け止めにくい部分はあるが、ナスダックがここ3営業日で下値を切り上げてきていることも含めて考えると、底入れの確度が徐々に増しているようにも見受けられる。 中国当局の規制緩和の動きを好感して本日大きく上昇しているソフトバンクGが、大規模な赤字を計上した5月12日の本決算後、あく抜け感からリバウンド基調を続けている点も注目される。先週、複数のFRB高官から相次いで9月以降の0.5ptの利上げを支持するタカ派発言が相次いだなかでも相場は大きく上昇し、今週もほとんど反動安を見せてない点なども含めて総合的に考慮すると、グロ−バルな株式市場は既に悪材料を全て織り込んだかのような様相だ。 また実体経済に目を向けても、先日、ソニーGは部品不足が改善しつつあるとし、今年のプレイステーション5の生産水準を大幅に増やし、かつてない程の水準にまで強化すると明かした。さらに、フォルクスワーゲン(VW)の最高経営責任者(CEO)は半導体供給が明らかに改善しているとし、同社の年内の世界生産の回復に自信を示したという。 このように、足元は株式市場にしても実体経済についても、先行きに明るい兆しを感じさせる動きが散見されていることは確かだ。こうした中、目先の焦点は今週末10日に発表される米5月消費者物価指数(CPI)で、その次は来週14-15日に控える米連邦公開市場委員会(FOMC)となる。これらの結果と米国市場の反応次第で、足元のリバウンド基調が本格的なトレンド転換への初動だったのか、単なるあや戻しに過ぎなかったのかが分かることになる。相場は今年の正念場を迎えていると思われ、イベント前の無理な新規ポジションの構築には慎重になりたい。 午後の日経平均は28000円を維持できるかが焦点となる。ここを上回って終えることができれば、上述したように、もう一段の意外高が待っている可能性がある。時間外取引のナスダック100先物が下げ幅を広げてきていることが気がかりだが、前引けまで強い騰勢を維持した流れから、午後も期待したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/07 12:05 ランチタイムコメント 日経平均は続伸、想定以上に底堅い日本株を素直に受け止めてよいか  日経平均は続伸。82.69円高の27844.26円(出来高概算5億0237万株)で前場の取引を終えている。 先週末3日の米株式市場でNYダウは348.58ドル安と反落。5月雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが39万人の増加と、市場予想(31万人増)を上回ったことで連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な利上げが警戒された。長期金利が上昇し、割高感が意識されやすいハイテク株を中心に売りが加速。主要株価指数は終日軟調に推移した。ナスダック総合指数は-2.46%と大幅反落。米株安を引き継いで日経平均は211.93円安からスタート。しかし、寄り付きと同時に付けた27523.95円(237.62円安)を安値にすぐに切り返すと、ナスダック100先物の上げ幅拡大が安心感を誘ったか、前場中ごろにはプラス転換。一時27855.96円(94.39円高)まで上昇した。 個別では、観光需要喚起策である「GoTo」の再開案が浮上してきたことでJR東<9020>、JR西<9021>、エイチ・アイ・エス<9603>、JAL<9201>などのほか、エアトリ<6191>、オープンドア<3926>などの旅行関連株が全般強い動き。原油先物相場の続伸を受けてINPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>が大幅に上昇。レーティング格上げを手掛かりに大阪チタ<5726>が上値追い、東邦チタニウム<5727>も同様の流れとなっている。エムスリー<2413>、マネーフォワード<3994>などグロース(成長)株の一角でも堅調なものが散見される。決算が評価されたアインHD<9627>や日本駐車場開発<2353>がそれぞれ急伸し、東証プライム市場値上がり率上位に並んだ。 一方、東証プライム売買代金上位では川崎汽船<9107>が大きく下落し、郵船<9101>と商船三井<9104>は小安い。ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、東京電力HD<9501>、ベイカレント<6532>なども下落しており、リクルートHD<6098>、レノバ<9519>、ZHD<4689>などが大幅安。決算が嫌気されたファーマフーズ<2929>は商いを伴って大きく下落したが、寄り付きからはかなり下げ渋った。ほか、業績予想を下方修正した日本ハウスHD<1873>が大きく下落。東証プライム値下がり率上位には元役員に関する強制調査に関する報道が嫌気されたIRJHD<6035>などがランクイン。 セクターでは石油・石炭、空運、陸運が上昇率上位となった一方、サービス、海運、金属製品が下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の49%、対して値下がり銘柄は46%となっている。 週明けの東京市場は想定以上に底堅い動きとなっている。先週末の米株市場では強い雇用統計の結果を受けてナスダックが大幅反落しており、先週1000円近くも上昇した日経平均は反動安も相まって、週明けから深い調整を強いられると想定していた。しかし、日経平均は寄り付き直後から即座に下げ渋り、ザラ場安値でも27500円すら割っていない。朝方には1ドル=130.80-90円と、5月に付けた131円台を窺う水準まで進んだ円安進行が下支えしている背景もあるだろうが、金融引き締めの影響が大きい、中小型グロース株主体のマザーズ指数もプラス転換しており、かなり底堅い印象。 先週末は、クリーブランド連銀のメスター総裁も、FRBのウォラー理事やブレイナード副議長に続いて、9月以降の0.5ptの大幅利上げへの賛同を示唆し、高官のタカ派発言が相次いだ。雇用統計の結果もあり、先週末3日の米10年債利回りは一時2.98%まで上昇した。 また、石油輸出国機構(OPEC)プラスは原油増産幅の拡大ペース加速で合意したものの、グローバル需要の0.4%を満たすわずかな供給増に過ぎないとも指摘されている。欧州連合(EU)によるロシア産石油の一部禁輸も科されたばかりのなか、焼け石に水としか思われておらず、ニューヨーク原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI7月物)は1バレル=120ドル台を3カ月ぶりに一時突破してきている。 こうした明らかに相場の重石となるような悪材料が相次ぐなかでも、先週から株式市場は強い上昇基調にあり、週明けも先週末の米株安をものともしない動きとなっている。要因として、悪材料は既に相当に織り込み済みという可能性のほか、円安進行や諸外国に比べて遅れてやってきた経済活動の再開機運を背景に、消去法的な側面は否めないものの、相対的に日本株が選好されていることが考えられる。 一方で、今週末に控える6月限先物・オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出を前に、先週からの売り方による買い戻しが続いていることも考えられる。相対的な優位性だけで東京市場だけが下落を免れるという考え方にはやや違和感があり、どちらかといえば、こうした需給面での要因が大きいように見受けられる。 オプション市場では、期先の7月限においてコール(買う権利)の方がプット(売る権利)に比べて、建玉の積み上がり方も規模も遥かに大きい。そういう意味では先行きに強気の投資家も多いのだろう。しかし、明確な好材料がないなか、ここから一段とコールの買い建玉を積み上げるかと問われれば、その可能性は低いのではないだろうか、むしろ、ここからは売りヘッジを目的とした動きに注意を払う必要があると考えられる。 株式市場を巡るグローバルな環境に変化がないなか、日経平均がこのまま28000円を超えるとも考えにくい。仮にオーバーシュート気味に一時的に超えても短命に終わる可能性が高い。株価指数の水準としては現状からのアップサイド余地は乏しく、今後は、買い戻しが一服した後の反動安に注意を払うべき局面だと考える。 後場の日経平均は円安進行や堅調に推移している時間外取引のナスダック100先物、アジア市況などを背景に底堅く推移しそうだ。ただ、為替については朝方から円安進行に一服感が見られつつあることや、時間外取引の米株価指数先物の動きも短期で様変わりするため、日経平均は28000円を手前に上値の重さも意識されやすいだろう。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/06 12:06 ランチタイムコメント 日経平均は大幅反発、米株高で27500円回復も危うさ伴う  日経平均は大幅反発。299.35円高の27713.23円(出来高概算5億6673万株)で前場の取引を終えている。 2日の米株式市場でNYダウは435.05ドル高と3日ぶり反発。マイクロソフトがドル高の影響を加味して4-6月業績予想を引き下げたことが一時重石に。連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長のタカ派発言が伝わると一時売りが強まったが、その後上昇に転じて終日堅調に推移。石油輸出国機構(OPEC)プラスが増産幅の拡大で合意したことや、長期金利の上昇が一服したこともあり、ハイテク株に買いが入り、ナスダック総合指数は+2.68%と3日ぶりの大幅反発。こうした流れを引き継いで、日経平均は246.74円高でスタート。朝方に27776.33円(362.45円高)まで上昇したが、今晩に米5月雇用統計を控えていることもあり、その後は伸び悩んだ。ただ、前引けにかけては再び強含み、朝方の高値に迫っていく動きとなった。 個別では、良好な月次動向が確認されたファーストリテ<9983>や良品計画<7453>が大幅に上昇。前日急伸したダブル・スコープ<6619>のほか、大阪チタ<5726>や東邦チタニウム<5727>は上値追いの展開。米ナスダックの大幅高を受けてソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>も大きく上昇。原油先物価格の高止まりでINPEX<1605>には押し目買いが向かい、住友鉱<5713>や大平洋金属<5541>などのニッケル関連株も買われている。東証プライム市場値上がり率上位には前日に急落したラクス<3923>やSREHD<2980>などの中小型グロース(成長)株が多くランクイン。 一方、期待されていたタイトルの発売時期の発表が失望感を誘ったスクエニHD<9684>、新作ゲームの発売時期の発表が材料出尽くし感につながったカプコン<9697>などゲーム関連の一角が大きく下落。レーティング格下げのあった東ソー<4042>も大幅安。ほか、東証スタンダード市場では、決算が嫌気されたアルチザ<6778>が急落し、同市場での値下がり率トップとなっている。 セクターでは鉱業、精密機器、非鉄金属が上昇率上位となった一方、保険、空運、輸送用機器が下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の56%、対して値下がり銘柄は40%となっている。 前日に発表された米5月ADP雇用者数の伸びは12万8千人増と、市場予想の30万人程を大きく下回った。求人需要は依然として極めて高い水準で推移しているものの、労働需要の減速が示唆された。OPECプラスの原油増産幅の拡大も相まって、インフレ懸念の緩和につながり、FRBの積極的な引き締めへの思惑が後退。こうした背景から、前日の米株市場ではハイテク株を中心に大幅に上昇し、これが本日の日経平均の27500円突破に貢献した。 ただ、前日の米株市場での出来高は少なく、商いが薄いなかで上昇率が嵩上げされた印象を拭えない。 ブレイナード副議長は9月の利上げ停止について「(現時点では)その可能性は非常に低い」とし、「インフレを当局目標の2%に戻すためにやるべき仕事がまだ多く残っている」と述べた。5月下旬に市場で一時高まっていたFRBのハト派転換への期待をけん制するかのような発言で、相場にとってはネガティブな材料と思われる。 しかし、前日の米株市場は上述したように大幅高。ブレイナード氏が9月の利上げ停止を否定しても、これ以上6、7月時点でのタカ派サプライズはないと見込み、押し目ではプット(売る権利)の売り・カバードコール(原資産を保有しながら、その原資産のコール(買う権利)売りポジションをとる戦略)の買い戻しなど、デリバティブ市場では手仕舞いの動きが見られるとの指摘が聞かれる。薄商いのなか、こうしたオプション絡みの動きが実体の強さ以上に株価指数の上昇率を大きく見せている可能性は否定できないだろう。 今晩発表される米5月雇用統計で予想通り、平均賃金の伸びや雇用者数の伸びが前月から鈍化すれば、こうした売り方の買い戻しの動きがもう一段進む可能性はあり、短期的には株式市場が上方向にオーバーシュートする可能性はあろう。 ただ、今週に入ってから、ハト派転換を期待する市場を慌ててけん制するかのような発言がFRB高官から相次いでいる。また、前日のOPECプラスでは原油増産幅の拡大で合意したにもかかわらず、原油先物価格はほとんど下落していない。各国の供給体制に制限がつきまとうなか、実際にどこまで増産できるのか市場は疑念を抱いている様子。 こうした懸念要素を無視して足元でリバウンドを続けている相場にはやや危うい印象を抱く。需給要因主導で上昇しているに過ぎないともいえ、今晩の米雇用統計で仮に想定以上に強い結果が出ると、その後の調整(下落)がより深いものになりかねず、警戒が必要だろう。 また、米雇用統計を無難に通過しても、来週10日には米5月消費者物価指数(CPI)が控えている。今週発表されたヨーロッパ圏のCPIの上振れ度合いなどを見ると、エネルギーの生産・輸入状況が異なるとはいえ、米国でのインフレピークアウトにも疑問符が付き、指標発表を前にした神経質な展開が想定される。 今週に入って日経平均は大きく上昇し、上値抵抗線だった25日、75日移動平均線を上放れ、週間でも26週移動平均線を上回って終えそうだ。こうしたチャート形状の改善や、心理的な節目の27500円を回復したことなど自体はポジティブだが、逆に捉えると、28000円を手前にそろそろ売り方の買い戻しが終わる頃とも考えられる。足元の動きをもってして過度に楽観的になるのは危ういと思われ、まだまだ警戒感を持って臨むべき局面と考える。 午後の日経平均はもみ合いか。今晩の米5月雇用統計を前にこれ以上に積極的に買い上がるのには材料不足で、後場はむしろ持ち高調整の売りなどで失速気味になることに留意したい。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/03 12:05 ランチタイムコメント 日経平均は小幅反落、焦点は再びインフレ・利上げへ、市況関連株に相対的な安心感  日経平均は小幅反落。46.31円安の27411.58円(出来高概算5億7715万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でNYダウは176.89ドル安と続落。市場予想を上回る好決算を発表したセールスフォースが相場を押し上げ、序盤は上昇。しかし、5月ISM製造業景況指数が予想外の上昇となったことで長期金利が上昇、さらに原油価格の上昇を背景に連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な利上げへの警戒感が再び意識されたこともあり、結局下落で終えた。ナスダック総合指数も-0.71%と続落。こうした流れを引き継いで日経平均は117.37円安からスタート。朝方に27251.24円(206.65円安)まで下落したが、ナスダック100先物がプラス圏に転じたことや、1ドル=130円台に再び乗せた円安進行が下支えとなり、その後は切り返す展開。前引けにかけて前日終値近辺まで戻した。 個別では、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>、任天堂<7974>など主力ハイテク・グロース(成長)株が総じて下落。川崎汽船<9107>など海運株も今日は小休止。INPEX<1605>や住友鉱<5713>など資源関連株の一角も安い。武田薬<4502>やアステラス製薬<4503>など医薬品が軒並み大幅下落。東証プライム市場値下がり率上位にはシグマクシス<6088>、MSOL<7033>、ラクス<3923>、ラクスル<4384>など中小型グロース株が多く並んだ。 一方、アフリカ子会社売却による自社株買い積極化の姿勢が評価された関西ペイント<4613>が急伸。目標株価の引き上げを受けた大阪チタ<5726>も急伸し、東邦チタニウム<5727>は連れ高の展開。フリュー<6238>はカバレッジ開始を受けて大幅に上昇。ダブル・スコープ<6619>はレーティング最上位継続が好感され急伸。レーティング格上げを受けて太陽誘電<6976>とリコー<7752>が大幅高。東証プライム売買代金ではその他、ファーストリテ<9983>、三菱重<7011>、東京電力HD<9501>、ダイキン<6367>が大きく上昇。 セクターでは鉱業、医薬品、精密機器が下落率上位となった一方、電気・ガス、ゴム製品、鉄鋼が上昇率上位に並んだ。東証プライムの値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 前日の米株市場では主要株価3指数が揃って下落したとはいえ、引けにかけて下げ渋るなど底堅い動きも見られたことで、本日の東京市場でも日経平均は朝方の200円安から大きく下げ渋った。ドル・円の130円台乗せも想定以上に速いペースで達成され、円安進行も日本株の下支え要因として寄与しているようだ。一方、200日移動平均線が近づくなか、リバウンドの一服も意識され、上値もやや重い様子。新規の手掛かり材料難で、節目の27500円を明確に超えてくるには材料不足だろう。 何より気掛かりなのは、前日までの当欄での指摘の繰り返しにはなるが、米長期金利の上昇ペースの速さだ。5月6日の3.14%をピークにしばらく低下基調にあった米10年債利回りは、先週末の2.74%から前日までの僅か2営業日で2.91%まで上昇してきている。 FRBの利上げペースについては、セントルイス連銀のブラード総裁やアトランタ連銀のボスティック総裁の発言を受けて一時楽観的な方向に傾いていたのも、先日のウォラーFRB理事の発言を受けて再び警戒感が高まっている。米10年債利回りはピーク値にはまだ距離があるが、FRBのタカ派姿勢が再認識されている最中、極端な上昇ペースの速さは相場を神経質にさせかねず、要注意だ。 前日、5月ISM製造業景況指数が発表された。指数の総合値は前月(55.4)から低下するとの予想(54.6)に反して56.1へと上昇した。内訳をみると、先行指標とされる新規受注のほか生産の項目が拡大し、米国経済の景況感の強さを示した。一方、入荷遅延と価格の項目は揃って低下し、サプライチェーンの混乱は最悪期を脱したとの見方を示唆する内容ともいえる。ただ、水準としては入荷遅延が65.7、価格が82.2と、拡大と縮小の境界値である50を大きく上回っており、サプライチェーンの根詰まりが依然として根強いことも窺える。 また、雇用の項目が49.6へと低下、昨年8月以来の50割れとなり、製造業における労働者不足の深刻さが改めて確認された。さらに、同日に発表された4月の雇用動態調査(JOLTS)では、引き続き求人件数が採用件数を大幅に上回る状態が確認され、賃金上昇が当面続くことが示唆された。 ISMとJOLTSで確認されたサプライチェーンの根詰まりや労働者不足の根強さが、足元で後退していたFRBの引き締め観測を強めたともいえ、これが金利上昇圧力になったと考えられる。今週末には米5月雇用統計が発表される。雇用者数の伸びは市場予想で32.9万人増とされ、前月の42.8万人からは減少する見込み。ただ、一部ではFRBにとって月30-40万人前後の雇用者数の伸びは強すぎると指摘する向きもいる。5月下旬にかけて高まっていたFRBのハト派への転換を根拠づけるには無理があるとし、雇用者数の伸びは月10万人レベルまで低下する必要があるとしている。 こうした中、雇用統計において平均賃金の伸びが予想を上回る、ないしは雇用者数の伸びが過度に強いと相場の焦点は再びインフレ懸念・FRBの利上げペースに戻り、来週10日に発表を控える米5月消費者物価指数(CPI)に対する警戒感を高めることになりかねない。明日は、週末の雇用統計の発表を前に手仕舞い売りなどが膨らむ可能性に留意したい。 一方で、昨日の米株市場のセクター別騰落率をみると、金利上昇が利ザヤ拡大期待に繋がりやすい金融や銀行が特に大きめに下げており、インフレ抑制を目的としたFRBの積極的な引き締めが将来の景気後退を招くとの懸念も根強いことが窺える。 前日、米銀行大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、5月の投資家向けイベントで米国経済について「大きな暗雲」があるとした表現を訂正し、「ハリケーンはすぐそこまで来ている」と、より警戒感を表す発言をした。さらに、「それが小型なものか、超大型なのかは分からない。身構えた方がいい」とも述べたという。 過度な悲観の修正が進み始めたかと思えば、早々に再び悲観へと揺り戻されるかのような材料が今週に入ってから相次いでおり、依然として投資家は高いボラティリティー(変動率)に備えておいた方がよさそうだ。 こうした中では、リスク許容度が低い投資家はやはりボラティリティーが高いグロ−ス株などは避け、仮に手掛けるのであれば、インフレ耐性のある市況関連株などの方が相対的にましだろう。前日、中国はロックダウン(都市封鎖)で打撃を受けた経済を立て直すべく、国有政策銀行に対し、インフラ計画向けに8000億元(約15兆5700億円)の与信枠を設けるよう指示したと伝わっている。インフレ耐性に加えて、高い配当利回りや今後の中国経済の回復期待の恩恵を受けやすい市況関連株に妙味があると言えそうだ。(仲村幸浩) <AK> 2022/06/02 12:07

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