ランチタイムコメントニュース一覧
ランチタイムコメント
日経平均は小幅反落、焦点は再びインフレ・利上げへ、市況関連株に相対的な安心感
日経平均は小幅反落。46.31円安の27411.58円(出来高概算5億7715万株)で前場の取引を終えている。 1日の米株式市場でNYダウは176.89ドル安と続落。市場予想を上回る好決算を発表したセールスフォースが相場を押し上げ、序盤は上昇。しかし、5月ISM製造業景況指数が予想外の上昇となったことで長期金利が上昇、さらに原油価格の上昇を背景に連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な利上げへの警戒感が再び意識されたこともあり、結局下落で終えた。ナスダック総合指数も-0.71%と続落。こうした流れを引き継いで日経平均は117.37円安からスタート。朝方に27251.24円(206.65円安)まで下落したが、ナスダック100先物がプラス圏に転じたことや、1ドル=130円台に再び乗せた円安進行が下支えとなり、その後は切り返す展開。前引けにかけて前日終値近辺まで戻した。 個別では、レーザーテック<6920>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>、任天堂<7974>など主力ハイテク・グロース(成長)株が総じて下落。川崎汽船<9107>など海運株も今日は小休止。INPEX<1605>や住友鉱<5713>など資源関連株の一角も安い。武田薬<4502>やアステラス製薬<4503>など医薬品が軒並み大幅下落。東証プライム市場値下がり率上位にはシグマクシス<6088>、MSOL<7033>、ラクス<3923>、ラクスル<4384>など中小型グロース株が多く並んだ。 一方、アフリカ子会社売却による自社株買い積極化の姿勢が評価された関西ペイント<4613>が急伸。目標株価の引き上げを受けた大阪チタ<5726>も急伸し、東邦チタニウム<5727>は連れ高の展開。フリュー<6238>はカバレッジ開始を受けて大幅に上昇。ダブル・スコープ<6619>はレーティング最上位継続が好感され急伸。レーティング格上げを受けて太陽誘電<6976>とリコー<7752>が大幅高。東証プライム売買代金ではその他、ファーストリテ<9983>、三菱重<7011>、東京電力HD<9501>、ダイキン<6367>が大きく上昇。 セクターでは鉱業、医薬品、精密機器が下落率上位となった一方、電気・ガス、ゴム製品、鉄鋼が上昇率上位に並んだ。東証プライムの値下がり銘柄は全体の67%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 前日の米株市場では主要株価3指数が揃って下落したとはいえ、引けにかけて下げ渋るなど底堅い動きも見られたことで、本日の東京市場でも日経平均は朝方の200円安から大きく下げ渋った。ドル・円の130円台乗せも想定以上に速いペースで達成され、円安進行も日本株の下支え要因として寄与しているようだ。一方、200日移動平均線が近づくなか、リバウンドの一服も意識され、上値もやや重い様子。新規の手掛かり材料難で、節目の27500円を明確に超えてくるには材料不足だろう。 何より気掛かりなのは、前日までの当欄での指摘の繰り返しにはなるが、米長期金利の上昇ペースの速さだ。5月6日の3.14%をピークにしばらく低下基調にあった米10年債利回りは、先週末の2.74%から前日までの僅か2営業日で2.91%まで上昇してきている。 FRBの利上げペースについては、セントルイス連銀のブラード総裁やアトランタ連銀のボスティック総裁の発言を受けて一時楽観的な方向に傾いていたのも、先日のウォラーFRB理事の発言を受けて再び警戒感が高まっている。米10年債利回りはピーク値にはまだ距離があるが、FRBのタカ派姿勢が再認識されている最中、極端な上昇ペースの速さは相場を神経質にさせかねず、要注意だ。 前日、5月ISM製造業景況指数が発表された。指数の総合値は前月(55.4)から低下するとの予想(54.6)に反して56.1へと上昇した。内訳をみると、先行指標とされる新規受注のほか生産の項目が拡大し、米国経済の景況感の強さを示した。一方、入荷遅延と価格の項目は揃って低下し、サプライチェーンの混乱は最悪期を脱したとの見方を示唆する内容ともいえる。ただ、水準としては入荷遅延が65.7、価格が82.2と、拡大と縮小の境界値である50を大きく上回っており、サプライチェーンの根詰まりが依然として根強いことも窺える。 また、雇用の項目が49.6へと低下、昨年8月以来の50割れとなり、製造業における労働者不足の深刻さが改めて確認された。さらに、同日に発表された4月の雇用動態調査(JOLTS)では、引き続き求人件数が採用件数を大幅に上回る状態が確認され、賃金上昇が当面続くことが示唆された。 ISMとJOLTSで確認されたサプライチェーンの根詰まりや労働者不足の根強さが、足元で後退していたFRBの引き締め観測を強めたともいえ、これが金利上昇圧力になったと考えられる。今週末には米5月雇用統計が発表される。雇用者数の伸びは市場予想で32.9万人増とされ、前月の42.8万人からは減少する見込み。ただ、一部ではFRBにとって月30-40万人前後の雇用者数の伸びは強すぎると指摘する向きもいる。5月下旬にかけて高まっていたFRBのハト派への転換を根拠づけるには無理があるとし、雇用者数の伸びは月10万人レベルまで低下する必要があるとしている。 こうした中、雇用統計において平均賃金の伸びが予想を上回る、ないしは雇用者数の伸びが過度に強いと相場の焦点は再びインフレ懸念・FRBの利上げペースに戻り、来週10日に発表を控える米5月消費者物価指数(CPI)に対する警戒感を高めることになりかねない。明日は、週末の雇用統計の発表を前に手仕舞い売りなどが膨らむ可能性に留意したい。 一方で、昨日の米株市場のセクター別騰落率をみると、金利上昇が利ザヤ拡大期待に繋がりやすい金融や銀行が特に大きめに下げており、インフレ抑制を目的としたFRBの積極的な引き締めが将来の景気後退を招くとの懸念も根強いことが窺える。 前日、米銀行大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、5月の投資家向けイベントで米国経済について「大きな暗雲」があるとした表現を訂正し、「ハリケーンはすぐそこまで来ている」と、より警戒感を表す発言をした。さらに、「それが小型なものか、超大型なのかは分からない。身構えた方がいい」とも述べたという。 過度な悲観の修正が進み始めたかと思えば、早々に再び悲観へと揺り戻されるかのような材料が今週に入ってから相次いでおり、依然として投資家は高いボラティリティー(変動率)に備えておいた方がよさそうだ。 こうした中では、リスク許容度が低い投資家はやはりボラティリティーが高いグロ−ス株などは避け、仮に手掛けるのであれば、インフレ耐性のある市況関連株などの方が相対的にましだろう。前日、中国はロックダウン(都市封鎖)で打撃を受けた経済を立て直すべく、国有政策銀行に対し、インフラ計画向けに8000億元(約15兆5700億円)の与信枠を設けるよう指示したと伝わっている。インフレ耐性に加えて、高い配当利回りや今後の中国経済の回復期待の恩恵を受けやすい市況関連株に妙味があると言えそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/02 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は反発、6月のグロ−ス株は大型と中小型で明暗分かれる?
日経平均は反発。192.69円高の27472.49円(出来高概算6億1131万株)で前場の取引を終えている。 連休明け5月31日の米株式市場でNYダウは222.84ドル安と7日ぶりに反落。欧州連合(EU)の対ロ追加制裁に伴う原油高でインフレ懸念が再燃し、下落スタート。前週に大きく上昇していた反動で利益確定売りも重石に。石油輸出国機構(OPEC)加盟国が生産協定からのロシア排除を検討との報道で原油価格が下落すると、上昇に転じる場面もあったが、終日方向感に欠ける展開で結局下落した。ナスダック総合指数も-0.41%と4日ぶりの反落。一方、前日に週明け急伸後の過熱感を冷ましていた日経平均は15.83円高からスタート。為替の円安進行や米長期金利の上昇を支援要因に輸出企業や金融株に買いが入るなか、前引けまで順調に上値を伸ばす展開となった。 個別では、円安進行を手掛かりにトヨタ自<7203>や日産自<7201>、SUBARU<7270>が大幅に上昇。なお、トヨタ自はレーティング格上げも追い風となった。IHI<7013>や三菱重<7011>、川崎重<7012>など機械関連は軒並み急伸。JAL<9201>、JR東海<9022>、パーク24<4666>などのリオープン関連も全般高い。米長期金利の上昇を支援要因に三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>など金融も買い優勢。海運では川崎汽船<9107>が大きく上昇。高水準の自社株買いを発表したACCESS<4813>が東証プライム市場値上がり率トップとなり、第1四半期が大幅増益となった菱洋エレク<8068>やトリケミカル<4369>も上位にランクイン。自社株買いと併せて自社株消却も発表したアンリツ<6754>も大きく上昇した。 一方、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>の半導体関連株が下落。レーティング格下げを受けてイビデン<4062>が急落し、関連企業の新光電工<6967>も連れ安の展開。ほか、ベイカレント<6532>やSHIFT<3697>のグロース(成長)株の一角が大きく下落しており、オリンパス<7733>、テルモ<4543>も軟調。原油先物価格の上昇一服でINPEX<1605>は利益確定売りに押されて大幅に下落している。 セクターでは輸送用機器、水産・農林、保険を筆頭にほぼ全面高となった。一方、鉱業、精密機器、鉄鋼の3業種のみが下落となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の82%、対して値下がり銘柄は16%となっている。 前日の米国株が小幅に下落していた中でも、前場の日経平均は堅調推移。円安進行に加えて、前日に実施されたMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の定期銘柄見直しに伴う指数連動型パッシブファンドの売り需要がなくなったこともあり、あく抜け感も支援要因になったようだ。日経平均は寄り付きから上げ幅を広げ、先週まで上値抵抗線だった25日、75日線からの上方乖離幅を広げている。 一方、気掛かりなのはグロース株の動向。前日のナスダックは4日ぶりに反落したものの、一時プラス圏で推移する時間もあるなど、底堅い動きだった。また、アマゾン・ドット・コムが4%高となるなど、強い動きも散見された。しかし、東京市場では、ベイカレントやSHIFTなどグロース株の代表格が前日に続き大きく下落。週初に10%超も急伸した上昇分をほとんど全て吐き出す格好となっている。 前日に発表されたユーロ圏の5月消費者物価指数(CPI)は前年比+8.1%と予想(+7.8%)を上回り、前月(+7.5%)からは大きく伸びが加速。一昨日に発表されたドイツのCPIに続き、過去最高を記録する形となった。先週末に2.74%まで低下していた米10年債利回りは連休明けの前日には2.85%まで大きく上昇しており、インフレ懸念が再燃しつつある様子。3月にピークを打ったとする米国のインフレ動向についても、疑念を抱く市場関係者が増えているようだ。こうした中、はやくも来週の6月10日に発表を控える米5月CPIに対する警戒感などが高まっていると考えられる。 6月に入り、いよいよ米連邦準備制度理事会(FRB)によるバランスシートの縮小(QT)も始まる。既知のこととはいえ、市場への影響を完全に計り知ることは難しいため、QTに対する警戒感も上値抑制要因として働いている可能性があろう。 また、4月半ばから5月にかけての株式市場の大幅下落を受けて、米国では5月末にかけて年金基金などによるリバランス(資産配分の再調整)に伴う株式買いが入ったとされている。6月に入り、こうした需給面での下支え期待がはく落することも懸念要素だろう。 一方、東京市場については、6月は3月期末配当の再投資といった需給面での下支え要因も指摘されている。直近進んでいた円高も、1ドル=125円台が視野に入るところまでの調整を経て、足元で再び129円台にまで乗せてくるなど円安進行が再び強まっている。配当再投資と円安再進行を背景に、6月も日本株の意外な底堅さが見られる可能性が高まってきたといえそうだ。 こうした中、グロース株の復調シナリオに早くも暗雲が垂れ込めてきたとした前日の当欄「~楽観シナリオ再考を迫る要因も」での指摘が、嫌な形ではあるが更に確度を増してしまったと言えそうだ。期待インフレ率と名目利回りのピークアウト、FRB高官のハト派転換を示唆する発言、などを背景に「バリュー・コモディティ買い」と「グロ−ス売り」の流れの反転、リターン・リバーサルが長めに続くかと見ていたが、その賞味期限はわずか1-2日程度で終わってしまったのかもしれない。 ただ、上述したことは大型ハイテク・グロ−ス株について当てはまる可能性が高い一方、東証グロース市場に属する銘柄(主に旧マザーズ銘柄)については、やや話が異なるかもしれない。というのも、マザーズ指数には6月に上昇しやすいという季節的傾向があることで有名だからだ。 実際、上述したSHIFTやベイカレントといった東証プライム市場に属する代表的なグロ−ス株が冴えないチャートを描いている一方、弁護士ドットコム<6027>、Appier Group<4180>、カオナビ<4435>、メドレー<4480>などの好決算を発表した中小型グロ−ス株のチャートは底堅い基調を描いている。折しも、本日は東証プライム市場への鞍替えを発表したメルカリ<4385>の急伸がマザーズ指数を押し上げており、このような見方を補強してくれているかのようだ。グロ−ス株には引き続き厳しい局面が続きそうだが、一部の中小型株ではリターン・リバーサルの継続が見られる可能性があると期待したい。 後場の日経平均は堅調推移が継続か。時間外取引のNYダウ先物が堅調に推移しているほか、昨日の米株市場の取引終了後に決算を発表したセールスフォース・ドットコムが時間外取引において急伸しており、ナスダック100先物もしっかりとした動きになっている。日経平均は節目の27500円を手前に伸び悩む可能性もあるが、下値の堅い展開が期待できそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/06/01 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、急伸後の反動安こなす強い動き、ただ楽観シナリオ再考を迫る要因も
日経平均は3日続伸。34.71円高の27404.14円(出来高概算5億5946万株)で前場の取引を終えている。 前日の米株式市場はメモリアル・デーの祝日で休場。一方、欧州市場ではドイツDAXやイギリスFTSE100、フランスCAC40など主要株価指数が揃って堅調に推移した。前日に600円近くと大幅に上昇した日経平均は51.34円安と小幅反落でスタート。欧州株高を好感して一時27463.33円(93.90円高)と上昇に転じる場面があったが、時間外取引のNYダウ先物が下落に転じたこともあり失速。欧州の対ロ追加制裁を背景とした原油高による実体経済への影響懸念も重石となり、一時は27250.70円(118.73円安)まで下落。一方でナスダック100先物の堅調推移や為替の円安進行が投資家心理を下支えし、日経平均は下げ渋ると前引けにかけて再びプラス圏に浮上した。 個別では、原油高を追い風にINPEX<1605>が5%高で、三井物産<8031>も高い。東証プライム売買代金上位ではレーザーテック<6920>やダブル・スコープ<6619>が大きく上昇。米長期金利の上昇を受けて東京海上<8766>やMS&AD<8725>も買い優勢。円安進行を手掛かりにSUBARU<7270>が4%高。フジクラ<5803>はカバレッジ開始、ミネベア<6479>はレーティング格上げで大幅高。パイオラックス<5988>は配当計画の大幅引き上げが引き続き好感され、連日で急伸。国民皆歯科検診の導入検討の報道を受けて松風<7979>が東証プライム値上がり率トップとなった。ほか、ニトリHD<9843>や良品計画<7453>、ライオン<4912>、東洋水産<2875>などが高い。 一方、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>など海運株が前日に続き軟調。ベイカレント<6532>やSHIFT<3697>などのグロース(成長)株は前日の急伸の反動で下落。レーティング格下げを受けてDMG森精機<6141>や住友電工<5802>が大きく下落。 セクターでは鉱業、保険、石油・石炭が上昇率上位となった一方、不動産、海運、空運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の46%、対して値下がり銘柄は50%となっている。 前場の日経平均は朝方にプラス転換した矢先に下落したかと思いきや、前引けにかけて再び上昇に転じるなど一進一退の展開。しかし、前日の急伸後を踏まえれば底堅い以上に強いと評価できる。先週末にかけて連日で上昇した米国市場が、連休明けの今晩も上昇基調を維持できるかを見極めたい思惑もあり、模様眺めムードが支配的になるのは致し方のないところ。こうした中、前日の上昇分をしっかりと保持していることは好印象で、今晩の米国市場次第では、短期的には200日移動平均線が位置する28000円近辺に向けた動きも期待できそうだ。 一方で、インフレピークアウト(景気後退懸念も含むが)を背景とした米債券市場での名目金利や期待インフレ率の低下基調、景気に配慮したハト派姿勢への転換を示唆した米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの発言を拠り所としたグロース株の復調期待に水を差しかねない状況が再び台頭してきている。 前日に発表されたドイツの5月の消費者物価指数(CPI)は前年比で+7.9%と予想(+7.6%)を上回った。前月比でも+0.9%と予想(+0.6%)を大きく超過し、過去最高を記録。これを受けて、欧州中央銀行(ECB)による早期の金融引き締め観測が高まり、前日の欧州市場では債券価格が大きく下落(利回りは大幅上昇)した。 また、欧州連合(EU)は30日にロシア産石油の一部禁輸で合意。追加制裁の発動後ただちに3分の2の輸入が止まり、年内には90%以上になるという。これを受けて、原油先物相場は大幅に上昇。北海ブレント原油先物価格(7月限)は30日に1バレル=120ドルを上回り、終値で3月8日以来の高値121.67ドルを付けた。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、7月物)も1バレル=117ドル台後半と、先週末の115ドルから上伸している。 さらに、米国では前日、FRBのウォラー理事が「インフレ率が当局の目標である2%に近づくまでは、0.5ptの利上げは常に選択肢にある」と発言。直近の高官発言からは、今後2会合(6月、7月)での0.5ptの利上げ後については、いったん利上げ幅が0.25ptに縮小するのではといった見方が優勢になってきていたため、今回のウォラー氏の発言はタカ派サプライズ感がある。 米国景気の減速で「金利は上がりにくい」、「株の買い戻し余地がある」といった声が足元では増えていたが、前日にかけて観測されたドイツCPIの上振れ、EUの対ロ追加制裁による原油高、ウォラーFRB理事の発言などを背景に、金利低下基調を背景とした楽観論は早くも修正を強いられそうな状況となってきた。 先週25日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月3-4日分)が公表された直後には、金利先物市場が織り込む6月と7月の両会合での利上げ幅の合計が1pt未満となる動きが一時見られるなど、FRBのタカ派姿勢の後退を予想するような極端な動きも見られていた。金利低下基調の一服感とともに市場の見通しも修正を迫られる余地が大きそうだ。 東京時間の本稿執筆時点での米10年債利回りは2.83%と、先週末の2.74%からは大きく上昇しているものの、5月6日に付けた3.14%にはまだ距離がある。また、薄商いながらも、同時点における時間外取引のナスダック100先物は堅調に推移している。こうした背景から、まだ楽観的な見方が完全に萎んだわけではなさそうだが、前日まで抱いていた程の楽観的な見方を維持することには危うさが伴う。短期的にはグロース株にリバウンド妙味があるとの見方は維持するが、値幅が出たら早い段階で利益を確定するなど細やかなケアは依然として必要そうだ。 後場の日経平均は前日終値を挟んだ一進一退が続きそうだ。手掛かり材料難のなか、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況を睨んだ展開となろうが、どちらも現状は小動きで方向感に乏しい。今晩の米国市場の動きを見極めたい思惑もあり、後場の東京市場は模様眺めムードがより支配的になりそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/31 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続伸、転換点迎えたか?リターン・リバーサルで中小型グロースに期待
日経平均は大幅続伸。527.67円高の27309.35円(出来高概算6億1148万株)で前場の取引を終えている。 先週末27日の米株式市場でNYダウは575.77ドル高と大幅に6日続伸。4月の個人消費支出(PCE)物価指数で物価上昇率の減速が示され、インフレ加速への懸念が後退するなか、寄り付きから上昇。ソフトウエア銘柄の好決算や長期金利の低下もハイテク株のサポート材料となった。3連休前の週末で利益確定売りが出やすい中ではあったが、取引終盤にかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+3.32%と大幅に3日続伸。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+4.03%だった。こうした流れを引き継いで、週明けの日経平均は311.14円高と27000円を超えた水準からスタート。朝方から買いが先行し、香港ハンセン指数も堅調ななか上値を追う展開となり、前引け直前に27324.86円(543.18円高)とこの日の高値を付けた。 個別では、レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>、ダイキン<6367>、ファーストリテ<9983>などの値がさ株が強い動き。ベイカレント<6532>やSHIFT<3697>などグロース株の代表格とも呼べる存在が揃って10%前後と急伸。ソニーG<6758>は先週末にかけて開催された説明会内容が評価されて4%高。東京製鐵<5423>はレーティング格上げを受けて大幅に上昇。東証プライム売買代金上位ではダブル・スコープ<6619>やレノバ<9519>が急伸。JFE<5411>、INPEX<1605>などの資源関連株やトヨタ自<7203>、デンソー<6902>などの輸送用機器も堅調。東証プライム値上がり上位にはSREHD<2980>、MSOL<7033>、ラクス<3923>、マネーフォワード<3994>など中小型グロース(成長)株が多くランクイン。 一方、先週に大きく上昇した郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの大手海運株は利益確定売りで大きく下落。三菱重<7011>、東京電力HD<9501>、東京海上<8766>など高値圏にある銘柄が軟調。公募増資を発表したタツモ<6266>、配当権利落ちに伴う手仕舞い売りが広がったタマホーム<1419>は大きく下落し、東証プライム値下がり率上位に並んだ。ソフトバンク<9434>はレーティング格下げを受けて下落。 セクターではサービス、電気機器、機械を筆頭にほぼ全面高。一方、海運、電気・ガス、保険の3業種のみが下落となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の89%、対して値下がり銘柄は8%となっている。 週明けの東京市場はほぼ全面高で久々に非常に力強い動きを見せている。日経平均は先週何度も押し返されていた心理的な節目の27000円を明確に突破。日足チャートでは上値抵抗線だった25日、75日移動平均線を大きく上抜けた。4月半ばから下向きにあった25日線は上向きに転じてきている。また、昨年12月から約半年も下向きのままである75日線も間もなく上向きに転じようとしている。テクニカル面ではトレンドが転換しようとしていることを示唆している。 実際、相場つきも転換を示唆していると思われる。。直近、2日連続で上昇する日も珍しかったナスダックは先週末にかけて3日続伸したうえ、25日から週末27日までの上昇率は+1.5%、+2.6%、+3.3%と大きく、更に伸びが加速している。売り方の買い戻し(ショートカバー)が主体と思われるが、これまでになかった強い動きといえる。 折しも、米国債利回りに対する社債の上乗せ分、いわゆるクレジットスプレッドの動きなどに注目したうえで、複数の機関がほぼ同じタイミングで、ボラティリティーがピークを迎えたこと及び株式市場の底打ちが近いことを指摘していた。 しかし、依然として相場の先行きについては見方がまだ大きく分かれている。先週末にかけてのナスダックの大幅な3日続伸、NYダウの6日続伸といったこれ程に広範な上昇を受けて、強気派は底入れの特徴として指摘。悪材料が既に十分に織り込まれたことはコンセンサスのようなものだとも言及。一方で懐疑派は、弱気相場においてショートカバーが一時的に優位になり、ほぼ全面的に相場を押し上げることはよくあることだと主張。 ただ、中長期的な時間軸では先行きについて見方が分かれているとはいえ、いずれにしろ、短期的には弱気派も含めて目先はリバウンドによる上昇が優勢との見方で一致しているようだ。 実際、本日の東京市場でもそうした兆候が窺える。これまでナスダックが上昇した日にも軟調な動きが目立ち、グロース株への投資家の不信感が垣間見えた銘柄について、本日は非常に力強い動きが見られる。具体的には先週の当欄で度々取り上げていたリクルートHD<6098>やSHIFT、SREホールディングスなどだ。SHIFTとSREホールディングスについてはそれぞれ10%超の上昇率と、直近見られなかった強さだ。また、ラクス、マネーフォワードなどの中小型グロース株の上昇率も久々の大きさだ。 東証グロース市場で時価総額トップのメルカリ<4385>は、中小型グロース株の中でもとりわけ弱い動きが続いていたが、そのメルカリも大幅な上昇率を見せており、マザーズ指数も4.39%高となっている。 こうした中、27日にはクレディ・スイスとバンク・オブ・アメリカ(BofA)が、バリュー株の投資判断をそれぞれ引き下げたことが伝わっている。期待インフレ率や名目金利の上昇がピークを打ち、経済指標の下振れが続くなか、バリュー株の投資妙味は薄れてたと考えているようだ。 今週末には米5月雇用統計が控えており、週末が近づくタイミングでは再びグロース株に神経質な動きが見られる可能性はある。ただ上述したような背景から、目先はリターン・リバーサルの動きが続くと想定され、業績好調にも関わらず先週までの下落率が厳しかった中小型グロース株などに投資妙味があろう。 後場の日経平均は上値を試す展開か。先週の先物市場は閑散とした様子だったが、手口ではゴールドマン・サックスやBofAなど主な外資系証券が日経平均先物とTOPIX先物の双方で共に買い方に傾いており、売り目線の向きは少ない様子。商品投資顧問(CTA)やマクロ系ヘッジファンドの売り持ち高の平均取得価格は26500円-27000円の間にあるとの指摘もあり、27000円を上回る時間が長くなれば、売り方の買い戻しも期待できそうだ。こうした中、後場の日経平均が一段と上値を追う展開となっても不思議ではないだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/30 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり反発、グロースの軟弱さに悲観も相場転換への期待も
日経平均は4日ぶり反発。168.00円高の26772.84円(出来高概算5億9908万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でNYダウは516.91ドル高と大幅に5日続伸。連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が想定内の内容で連邦準備制度理事会(FRB)の更なるタカ派化リスクが後退したことが引き続き好感された。また、小売企業が相次いで市場予想を上回る好決算を発表したことも個人消費を巡る不安感を払しょくし、相場を押し上げた。ナスダック総合指数は+2.67%と大幅続伸。こうした流れを引き継いで日経平均は342.96円高と大幅に上昇してスタート。しかし、節目の27000円を手前に失速すると、その後は前引けまで上げ幅を縮める動きが続いた。 個別では、前日に大きく上昇したフィラデルフィア半導体株指数(SOX)を受けてレーザーテック<6920>、東エレク<8035>が買われた。アリババ株が決算後に急伸したこともあり、ソフトバンクG<9984>が大幅高。1対3の株式分割と実質的な増配を発表した郵船<9101>は急伸し、株式分割の思惑が強まった川崎汽船<9107>は、レーティングの格上げも追い風に大幅に上昇。東京海上<8766>、SOMPO<8630>の保険株、JAL<9201>、ANA<9202>の空運株、資生堂<4911>、パンパシHD<7532>といった内需関連株なども強い動き。ニコン<7731>は前日の説明会が評価された。 一方、任天堂<7974>、キーエンス<6861>の値がさ株の一角や、NTT<9432>、JT<2914>、アステラス製薬<4503>などのディフェンシブ銘柄が冴えない。エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>などのグロ−ス(成長)株も軟調で、東証プライム値下がり率上位にはMonotaRO<3064>のほか、LTS<6560>、ギフティ<4449>、LITALICO<7366>などの中小型グロース株が散見される。 セクターでは海運、保険、鉱業などが上昇率上位に並んだ一方、電気・ガス、食料品、医薬品などが下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の55%、対して値下がり銘柄は40%となっている。 本日の日経平均は27000円に届かず失速。18、23、24日に続いて27000円台定着に失敗しており、戻り待ちの売りの強さが窺える。先週までは東京市場の海外市場と比べた相対的な強さを指摘する声が聞かれ、先物も日中取引の底堅さなどが目立っていたが、今週に入ってからは朝方の上昇から失速するケースが多く見られ、相対的な強さとやらは過去の話になったようだ。ちょうど米10年債利回りが低下基調を強め、ドル・円が1ドル126円台へと直近ピーク時から5円程も円高・ドル安が進んでいる中でのタイミングであり、先週から一段と強まってきた景気後退入りの懸念が、世界の景気敏感株と称される日本株の重荷になっているようだ。 また、気掛かりなのは相変わらずのグロース株の弱さだ。最近はナスダック総合指数が2日以上続けて上昇する日が少なく、かなり弱い動きが目立っていたが、26日のナスダック総合指数は+2.6%と、前の日の+1.5%に続く大幅続伸となった。さらに、市場予想を下回る売上高見通しを示して前日の時間外取引で大幅に下落していた米エヌビディアは切り返して5%高となるなど、売り込まれてきたハイテク株の底打ちを示唆するような動きも見られた。 それにも関わらず、今日の東京市場では半導体関連株は買われているものの、グロース株が相変わらず弱い。上昇しているならまだしも、下落しているものが多いのが気になる。具体的にはリクルートHDやベイカレントのほか、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>、ラクスル<4384>、JMDC<4483>など。上述した米株市場の動向を踏まえると、しっくりこないというか、あまりの弱さに首を傾げたくなる。グロース株が復調するには、ナスダックの大幅高が2日続いた程度では足らず、まだまだ材料不足ということのようだ。それだけ、今の投資家のグロース株に対するセンチメントは悪化しているのだろう。 しかし、それでも前日の当欄「買い戻し弱ければあく抜け感もない軟弱相場・・・」で紹介した一部外資系金融機関によるテクノロジー株の売り圧力が終了しつつあるとの指摘は、昨日のエヌビディアの動きで確度を伴ってきたと言える。また、一部の調査会社では、米国債利回りに対する社債の上乗せ分、いわゆるクレジットスプレッドがこの1年間でほぼ2倍に拡大した一方、クレジットスプレッドの変動が既にピークを付けていると指摘し、過去のパターンを踏まえると、株式市場の底打ちは近いとみているという。 さらに、モルガン・スタンレーは、ボラティリティー上昇を見込む取引については、既にヘッジコストが高くなり過ぎているため、リスクとリターンが見合わないと指摘。同時に、一部の資産については相場変動がピークに達したとみるべきとも指摘したという。 米VIX指数の動きをみていると、相場の底打ちを示唆するような著しい急騰は見られておらず、やや上述した指摘に違和感も覚えるが、複数の機関が同時にボラティリティーのピークと株式市場の底打ちが近いことを示唆したことは無視できない。まだまだ強気に転じ切ることはできないが、相場の反転が近づいている可能性を頭の片隅に置いておきたい。 後場の日経平均はもみ合いながらも堅調に推移しそうだ。時間外取引の米株価指数先物は小安く推移しているが、アジア市況は堅調で、香港ハンセン指数については2%を優に超える上昇率で大幅高となっている。外部環境が落ち着いたままであれば、日経平均の値崩れはないだろう。なお、今晩の米国市場では4月個人所得・個人消費支出や、FRBが重視している4月PCE(個人消費支出)コアデフレーターが発表予定だ。インフレピークアウトがより裏付けられるような結果を得ることができれば、株式市場、特にグロース株の復調への歩を進めることになるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/27 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小幅反発、買い戻し弱ければあく抜け感もない軟弱相場・・・
日経平均は3日ぶり小幅反発。7.91円高の26685.71円(出来高概算5億5008万株)で前場の取引を終えている。 25日の米株式市場でNYダウは191.66ドル高と4日続伸。連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(5月3-4日)の公表を控え、中盤まで様子見が続いた。大部分の当局者が今後2回の会合で0.5ptの利上げが必要との認識で一致していたことが明らかになり、積極的な引き締め姿勢の継続が確認された一方、一段のタカ派化リスクへの警戒が後退したことで、引けにかけては安心感から上げ幅を拡大した。足元で売りが強まっていた小売やハイテク株にも買いが入り、ナスダック総合指数は+1.51%と反発。こうした流れを引き継いで日経平均は7.22円高からスタートすると、朝方は買いが先行し、一時220円高まで上昇。しかし、時間外取引のナスダック100先物が軟化するのに伴う形で日経平均も次第に弱含む展開に。前場中ごろには一時マイナスに転じる場面があったが、引けにかけては戻した。 個別では、東証プライム売買代金上位で川崎汽船<9107>が大幅高となっているほか、ソフトバンクG<9984>やソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>が上昇。トヨタ自<7203>やSUBARU<7270>など自動車株の一角も高い。三井不動産<8801>は前日に続き、力強い動きで大幅続伸。4月の月次動向が評価された神戸物産<3038>は出来高を伴って急伸。外国人観光客の受け入れが来月から再開される方針と伝わったことでJAL<9201>、JR東<9020>、エアトリ<6191>、ビジョン<9416>などの旅行関連が軒並み高。国内証券がレーティングを引き上げたFPG<7148>は急伸し、東証プライム値上がり率トップに躍り出た。 一方、5-7月期の売上高見通しが市場予想を下回り、時間外取引で急落した米半導体大手エヌビディアの動きを嫌気し、東エレク<8035>やアドバンテスト<6857>などが大幅安。村田製<6981>、イビデン<4062>など関連株のほか、信越化<4063>やHOYA<7741>、ファナック<6954>など値がさ株の一角も下落。新たに品質不適切行為が発覚した三菱電機<6503>は大幅に下落。赤字が続いている医療ICTベンチャーの子会社化を発表したDeNA<2432>は急落し、東証プライム値下がり率トップとなっている。 セクターでは空運、不動産。ガラス・土石などが上昇率上位に並んでいる一方、非鉄金属、石油・石炭、電気機器などが下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の75%、対して値下がり銘柄は23%となっている。 日経平均は午前中ごろから失速し一時マイナスに転じるなど、前日の米国株高の流れに乗り切れていない。チャートでは、集中する25日、75日移動平均線に引き続き上値を抑えられる格好となっており、上値切り下げトレンドを脱する兆候すら見せることができていない。ただ、もともと前日の米国市場でも、FOMC議事要旨を無難通過したにも関わらず、年初来安値圏にあった米主要株価指数の上昇率は1%前後と、かなり物足りないものにとどまっていた。FOMC議事要旨の公表自体がそこまで大きなイベントとして捉えられていなかっただけだとは思うが、今の相場は、イベント前の買い戻しも弱ければ、イベント後のあく抜け感による上昇も見られず、完全に買い手不在の状況といえる。 前日の当欄で指摘したことの繰り返しになるが、連日で大きく下落しているリクルートHD<6098>や三井ハイテック<6966>、SHIFT<3697>などのグロース株代表格とも呼べる銘柄が、本日もかなり弱い動きを続けている。一部の外資系金融機関では前日のナスダックの上昇を受けて、テクノロジー株の売り圧力は終了しつつあるなどとコメントしたという。しかし、一昨日に年初来安値を更新したばかりのナスダックの前日の上昇率は1.5%。一日に4-5%も下落する日が度々あったことを考えると、売り圧力が終了しつつあるとは考え難い。上述したように、今日の東京市場でのグロース株の動きを見てもまだ弱い。本当に売り圧力が終了しつつあると言えるかを判断するにはまだまだ時間をかけた観察が必要だろう。 そうした意味では今晩の米株市場でのエヌビディアの反応は注目される。景気循環の性質とグロース株の性質を併せ持つ半導体株は、景気後退懸念と金融引き締め懸念がくすぶる今年は最悪な環境といえ、実際、かなり厳しく売り込まれており、最もパフォーマンスが悪いと言っても過言でない。そうした銘柄が予想を下回る見通しを示した時、本当にテクノロジー株の売り圧力が終了しつつあるのであれば、あく抜け感から株価はむしろ上昇するか、少なくとも想定程には下がらないといった動きが出るはずだ。エヌビディアは時間外取引で7%近く下落しているが、今晩の米株市場で実際にどれほどに下落するのかに注目したい。 後場の日経平均はもみ合いが続きそうだ。積極的な売買が見られず、商いも盛り上がらないなか、引き続きアジア市況や時間外取引のナスダック100先物など、外部環境に応じた短期筋の動きに左右されやすいだろう。今晩の米国市場では1-3月国内総生産(GDP)改定値のほか、コストコやダラー・ゼネラル、ダラー・ツリーといった小売企業の決算発表が予定されている。先週、ウォルマートやターゲットといった小売大手の決算が相場の急落を招いたことを踏まえると、今晩の米国市場の動きには要注目だ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/26 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は小幅続落、テクノロジー株にはもう一段の調整の覚悟が必要か?
日経平均は小幅続落。35.06円安の26713.08円(出来高概算5億6111万株)で前場の取引を終えている。 24日の米株式市場でNYダウは48.38ドル高と3日続伸。4月新築住宅販売などの経済指標が悪化し、景気後退入り懸念が再燃。写真・動画共有アプリのスナップがマクロ経済状況の悪化を理由に業績予想を下方修正したことで関連株が軒並み急落したことも投資家心理を悪化させた。一方、公益や生活必需品などのディフェンシブ銘柄に買いが入り、NYダウは引けにかけてプラス転換。ナスダック総合指数は-2.34%の大幅反落だった。前日にナスダック100先物の下落を通じて既に米株安を相当程度織り込んでいた東京市場では、NYダウの上昇を引き継いで日経平均は36.61円安の小安い水準からスタート。朝方は売りが先行し一時170円程下落したが、ナスダック100先物が堅調に推移していたことが支えとなり、その後は前日終値近辺まで戻す展開となった。 個別では、前日に続きリクルートHD<6098>、三井ハイテック<6966>、ZHD<4689>が大幅に下落。ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、楽天グループ<4755>のほか、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株の下落が目立つ。6月の生産計画の下方修正が伝わったトヨタ自<7203>は朝安後に切り返したが、ホンダ<7267>、三菱自<7211>などは大きく下落。一方、レーザーテック<6920>、ルネサス<6723>、HOYA<7741>など半導体関連株が強い動き。郵船<9101>、商船三井<9104>などの海運株は先週末から4日続伸。島根原発2号機の再稼働期待が高まった中国電力<9504>が大きく買われ、その他の電力株も連れ高となっている。ニトリHD<9843>は5月既存店売上高が冴えなかったが、あく抜け感から大きく上昇。東レ<3402>はレーティング格上げを受けて大幅高となっている。 セクターではその他製品、サービス、水産・農林などが下落率上位に並んでいる一方、精密機器、電気・ガス、海運などが上昇率上位に並んでいる。東証プライムの値下がり銘柄は全体の55%、対して値上がり銘柄は41%となっている。 本日の東京市場では、日経平均や東証株価指数(TOPIX)は底堅い動きとなっている。前日のナスダックの大幅反落については、写真・動画共有アプリの米スナップの急落が主因だが、当該情報は昨日の東京時間において伝わっており、既に織り込み済みだったため、影響は限定的だった。 一方、気になるのは本日も大幅に下落しているマザーズ指数や中小型グロース株の動きだ。マザーズ指数は前日も大きく下げていたが、それは、上述したようにスナップの決算を受けた急落を背景に、時間外取引のナスダック100先物が大きく下落していたからだ。しかし、本日はそうした米グロース株安を既に前日時点で織り込み済みにも関わらず、大きめの下落となっている。スナップの株価は前日43%も下落しており、確かに、時間外取引での下落率を大きく上回っているため、完全には織り込めていなかったとも言える。ただ、ナスダックの前日の下落率は2%台で、前日の東京時間におけるナスダック100先物の時間外取引における下落率と大して変わらない。 旧マザーズ銘柄ではメルカリ<4385>が連日で年初来安値を更新しているほか、JTOWER<4485>やBASE<4477>なども連日で大幅に下落。また、旧マザーズ以外の東証プライム銘柄でも、中小型グロース株の代表格であるSHIFT<3697>のほか、SREHD<2980>などが連日で急落している。三井ハイテックや時価総額の大きいリクルートHD<6098>といった主力株でも連日で弱い動きが見られるのも気掛かりだ。今の投資家のハイテク・グロース株に対する見方を表しているかのようだ。 米10年物の国債利回りや期待インフレ率が低下基調にあること、先週末からハト派転換を示唆し始めた米連邦準備制度理事会(FRB)高官らの発言などを背景に、短期的にはグロース株のリバウンド局面が到来すると考えていたが、時期尚早だったようだ。 先週公表されたバンク・オブ・アメリカ(BofA)が実施した5月の機関投資家調査によると、投資家が保有する現金の比率は2001年9月以来の高水準に達したことが判明。また、年始からの株価下落が目立つテクノロジー株のアンダーウエートの度合いは2006年以降で最大になったという。これだけを見ると、グロース株の売りも目先一巡との考えが浮かぶ。 しかし、同調査によると、当該時点での機関投資家のポートフォリオに占める株式比率は平均63%だった。この比率は新型コロナウイルス危機が発生した2020年春(54%)や欧州債務危機の2011年秋(48%)、リーマンショックの2008年秋(39%)などに比べて依然高いことが指摘されており、買い方が完全に降伏する状況には至っていないとも言われている。 むろん、現在の世界経済については確かに景気減速や景気後退りへの懸念が強まっているとはいえ、コロナショックなど過去の大規模な危機が起きた当時とは全く状況が異なり、これらと並べて語るのには違和感があろう。しかし、1970年代のオイルショック以来経験したことがない程の高インフレや、過去に経験したことのない急速なペースで実施される量的緩和策の引き締めなどを同時に迎えつつあるという意味では、今もかなり厳しい状況であることには変わりはない。 そうした観点から考えれば、今の状況から、もう一段のきつい調整が株式市場を待っている可能性はあり、それが実際に起きるのだとすれば、今年最もパフォーマンスの悪いテクノロジー株がもう一段下げる可能性は否定できないだろう。赤字が継続している企業や黒字でもバリュエーションが依然として高すぎるようなハイパーグロース株については論外だが、筆者としては、上述したSHIFTやSREHDなどのような高クオリティかつヒストリカルで見てバリュエーション調整が相当に進んだものについては、長期目線では既に投資妙味が出てきたと考えている。ただ、1年以上も持っていられないような短期目線の投資家については、まだまだこうしたテクノロジー株には手を出すべきタイミングではないと言えそうだ。 午後の日経平均は前日終値を挟んだもみ合いが想定される。今晩の米国市場では5月3-4日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表されるほか、半導体大手エヌビディアの決算などが予定されており、注目イベントが多い。これらを見極めたいとの思惑から、積極的な売買は手控えられると考えられる。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/25 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反落、明るい兆しを示唆する材料もちらほら・・・
日経平均は3日ぶり反落。138.19円安の26863.33円(出来高概算5億5290万株)で前場の取引を終えている。 23日の米株式市場でNYダウは618.34ドル高と大幅続伸。バイデン米大統領が国内での景気後退の可能性を巡り楽観的な見解を示したほか、対中制裁の緩和を示唆したため、景気への悲観的な見通しが緩和。さらに、銀行大手JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)が投資家向け説明会で経済や業績について明るい見解を示したことも好感された。ナスダック総合指数は+1.59%と4日ぶり反発。日経平均は3.91円高からスタートも寄り付きを高値にすぐに失速。前日の東京時間における時間外取引のナスダック100先物の大幅上昇を通じて米株高は既に織り込み済みだったほか、昨日とは対照的に今朝からはナスダック100先物が大きく下落していることが重しとなった。26809.95円(191.57円安)まで下げ幅を広げたが、その後はやや持ち直した。 個別では、レーザーテック<6920>やソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、ZHD<4689>、三井ハイテック<6966>などのハイテク・グロース(成長)株の一角が大きく下落。前日に大幅高となっていたギフティ<4449>やマネーフォワード<3994>などの中小型グロース株も大幅安。5月既存店売上高の結果がネガティブ視された西松屋チェ<7545>、しまむら<8227>は揃って大幅に下落。岸田首相が防衛予算を大幅に増額すると表明したことで三菱重<7011>やIHI<7013>は朝方高く始まったがその後伸び悩んだ。一方、郵船<9101>や商船三井<9104>の海運大手が連日で大幅に上昇。米金融大手の業績上方修正を刺激材料に三菱UFJ<8306>が堅調。三菱商事<8058>や丸紅<8002>、住友鉱<5713>など資源関連株が大きく上昇し、国内証券が目標株価を引き上げたDMG森精機<6141>も大幅高となった。 セクターではサービス、パルプ・紙、陸運などが下落率上位に並んでいる一方、海運、空運、非鉄金属などが上昇率上位に並んでいる。東証プライムの値下がり銘柄は全体の83%、対して値上がり銘柄は14%となっている。 本日の東京市場では時間外取引のナスダック100先物の動きを背景に、前日とは対照的な動きとなっている。前日にナスダック100先物の上昇を通じてある程度は織り込み済みだったとはいえ、昨日、米主要株価3指数が揃って大幅に反発し、金融大手の軒並み高のほか、アップルやキャタピラーといったハイテクから景気敏感の主力株でも強い動きが見られたことを踏まえると、本日の日経平均や東証株価指数(TOPIX)の反落は弱い動きという印象を拭えない。日経平均は27000円台乗せを定着させることができず、一進一退が続いている。 5月に入ってからの株式市場の下落で、米株市場では月末にかけて年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の買いが入るとの観測が出ている。しかし、5月に入ってからの東京市場は米株市場と比較して相対的に底堅く推移してきた分、月末にかけての需給要因主体でのリバウンドも、相対的に弱いものとなる可能性があろう。今日の東京市場の動きなどを見ていると、そうした印象がくすぶる。 物色動向についても昨日とは対照的だ。前日大幅な上昇が目立っていた中小型グロース株の多くが大きく売りに押されている一方、昨日冴えなかった資源関連株が今日は総じて強い。前日も今日も連日で強い動きを見せているのは海運株くらいだ。たった一日という短期間で物色動向に反転が見られるようでは、相場に参加できるのは日計り主体のデイトレーダーや短期目線の小規模ヘッジファンドくらいに限られてしまうだろう。基調が明確になるまでは、方向感に乏しい、高いボラティリティー(変動率)の相場展開が続くことを覚悟しておいた方がよさそうだ。 一方、前日の当欄「再びグロース株が脚光を浴びる時は来るか」で指摘した明るい兆しを補強する材料もまたいくつか散見された。前日述べた通りだが、米連邦準備制度理事会(FRB)によるかつてない程に積極的な金融引き締めが続くなか、まだまだ強気には転じにくいが、米10年物の国債利回りや期待インフレ率が足元で低下基調にあり、実質金利の推移も安定し始めてきたことで、株式相場の安定への期待も微かながら生まれてきていると思われる。 こうした中、先週末20日、タカ派で有名なセントルイス連銀のブラード総裁が、条件付きはとはいえ、2023年以降からの再緩和の可能性に言及したほか、前日には、アトランタ連銀のボスティック総裁が、6、7月に0.5ptずつ政策金利を引き上げた後、9月には利上げをいったん停止する可能性を示唆した。前日の繰り返しにはなるが、これまでタカ派化まっしぐらで再緩和などもっての外といった姿勢を見せていたFRB高官らから、こうしたハト派への転換を示唆するよう発言が出始めてきたことは注目に値する。 記録的なインフレが続くなかで早くもこうした発言が出てくることに対して、中央銀行への信頼度の低下などへと結びつけてネガティブに捉える向きもいるかもしれない。また、追加であと2、3カ月分の経済指標を確認しない限り、インフレや景気に対するコンセンサスも生まれないため、当面は高いボラティリティーが続くだろう。しかし、少なくとも今後の相場転換の一つの兆しとして、上述の高官発言のニュアンスの変化は頭の片隅に置いておくべきだろう。 また、上海市での都市封鎖(ロックダウン)解除方針が伝わったことで景気の底打ち期待が高まってきている中国では、国務院会合での決定事項によると、今後、中国国内企業を対象に約1400億元(約2兆7200億円)の追加減税措置が実施されることが判明しており、中国の景況感回復が一層意識されやすい状況となっている。 未だに底値到達の確度が高まらない弱気な相場が続いているが、上述のように、これまでの懸念材料を緩和してくれるような相場転換のきっかけとして捉えられる材料も出てきている。今はまだ焦って買い参戦する場面ではないが、少しずつ、そうした好機が近づいていると前向きに捉えていきたい。 アジア市況が軟調で、ナスダック100先物が下げ幅を広げてきていることもあり、後場の日経平均も冴えない出足を強いられそうだ。一方、最近は前場に弱くても、午後に持ち直す傾向が見られている。日本の景況感の相対的な堅調さから、消去法的ながらも海外中長期勢の一部がカントリーアロケーション(国別の資産配分)の見直しを打診的に進めているとの指摘が一部で聞かれており、欧州・アジア圏のマクロ系投資家の発注が後場に重なっているのではとの分析がある。こうした見方もあるなか、後場の日経平均の底堅さに期待したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/24 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、再びグロース株が脚光を浴びる時は来るか
日経平均は続伸。132.98円高の26872.01円(出来高概算5億6697万株)で前場の取引を終えている。 先週末20日の米株式市場でNYダウは8.77ドル高とほぼ横ばい。都市封鎖で景気後退が懸念されている中国において、中国人民銀行(中央銀行)が景気下支えを目的とした利下げを実施したことで世界経済の鈍化懸念が緩和。ただ、米国経済が来年にも景気後退入りするとの根強い懸念が上値抑制要因に。一方、オプション取引の満期日に伴うテクニカルな動きも見られ、荒い展開の末に引けにかけてNYダウは再びプラス圏を回復。ナスダック総合指数は-0.29%と3日続落した。ただ、週明けの日経平均は、時間外取引の米株価指数先物が堅調に推移していたことを支援要因に252.39円高からスタートすると、一時27000円を回復。国内大型連休後の新型コロナ新規感染の警戒感後退や6月からの水際対策緩和による経済回復への期待も寄与。ただ、戻り待ちの売りが根強く、前引けにかけては上げ幅を縮めた。 個別では、川崎汽船<9107>や郵船<9101>など海運株が強い。武田薬<4502>、OLC<4661>、資生堂<4911>、花王<4452>など内需関連の一角も買われている。決算や自社株買いが評価された東京海上<8766>、SOMPO<8630>は大幅に上昇。業績・配当予想を上方修正したミタチ産業<3321>、高水準の自社株買いを発表した高周波熱錬<5976>なども急伸。一方、農業機械メーカーの米ディアが決算を受けて急落したことが嫌気され、クボタ<6326>、コマツ<6301>が大幅に下落。JFE<5411>やINPEX<1605>などの市況関連株の一角も軟調。上値追いが続いていた三菱重<7011>やIHI<7013>も利食い売りから大幅安となっている。 セクターでは保険、海運、その他金融などを筆頭に全般買い優勢。鉱業、機械、空運、鉄鋼の4業種のみが下落している。東証プライムの値上がり銘柄は全体の70%、対して値下がり銘柄は26%となっている。 週明けの日経平均は、一時1%を超える上昇率で推移していたナスダック100先物に支えられながら、27000円を回復する場面があった。一方、先週18日に続き、27000円に乗せた後はすぐに再び同水準を割り込んでおり、戻り待ちの売りが依然として根強い印象。25日、75日移動平均線上での動きにはなっているが、前引けにかけて上げ幅を縮め、陰線を形成しているあたり、押し目買いの動きにも力強さが感じられない。 物色動向としては、鉱業や商社株、鉄鋼のほか、上値追いが続いていた三菱重工やIHIといった重厚長大産業の銘柄などで軟調なものが多い一方、ハイテク・グロース(成長)株は全体的に上昇している銘柄が多く、リバーサル(株価の反転)的な動きが確認されている。また、全体的に煮詰まり感が強いなか、値動きの軽い中小型株が物色されているようで、マザーズ指数が他の指数対比で強い動きとなっている。 先週末20日、米10年債利回りは2.78%(-0.06pt)と、およそ1カ月ぶりに2.7%台まで低下。5月6日の3.14%からは大きく水準を切り下げてきた。また、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も同日、2.55%(-0.04pt)とおよそ3カ月ぶりの水準にまで低下、4月21日の3.02%からの低下幅は著しい。従来はインフレ高進を背景とした「期待インフレ率上昇・金利急伸」に対する懸念が強かったことを踏まえれば、これだけ金利と期待インフレ率が低下しているのは株式市場にとっては好都合かと思われるが、実際はそうなっていない。 先週から市場関係者の間でも話題になっているが、相場の関心事は金利を中心とした金融政策の動向から、景気後退懸念など実体経済への方に移ってきているようだ。記録的なインフレがもたらす実体経済への影響が警戒されるなか、株式市場は景気後退懸念を映した金利低下を好感できない様子。同時に連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め懸念もくすぶっていれば、こうした市場の反応も致し方のないことだろう。 一方、微かな希望の光も一部で見えている。20日、タカ派で有名なセントルイス連銀のブラード総裁は、年末までに政策金利を3.5%にすべきとの積極的な利上げを引き続き主張した一方、そうした利上げが奏功すれば、インフレを鈍化させ、2023年ないし24年に利下げに動くこともあり得るとコメントした。 インフレ指標が記録的な高止まりを続けているなか、こうした発言を今の時点では素直にポジティブな材料として捉えることは難しいだろう。しかし、これまでタカ派化への進展まっしぐらで、再緩和への言及などもっての外といった姿勢を見せていたFRB高官の一人から、こうした発言が聞かれるのは大きな材料だと考えられる。 6月から始まる、かつてないペースで進められる量的引き締め(QT)の相場への影響なども分からないなか、まだまだ強気には転じにくいが、期待インフレ率と米長期金利が明確に低下傾向を示し、景気後退懸念も強まるなか、FRB高官から“再緩和”への言及も聞かれたことを考慮すると、この先、再び売り込まれてきたグロース株が注目される可能性がある。今年4月、コロナショック後に初めてプラスに転じた米10年物実質金利が、足元では0.25%前後での推移で落ち着きを見せてきていることも安心感を誘う。 記録的なインフレ高止まりと積極的な金融引き締めにより、長らく続いてきたグロース株優位の相場局面は大きな転換点を迎えたとも言われており、上述のような筆者の主張は時期尚早な面は否めないだろう。ただ、足元では独り勝ちの様相を呈してきたコモディティ関連からも資金が流出し始めているとの指摘も聞かれている。買ったまま(空売りしたまま)放っておけば利益が出るような簡単でない相場状況であるからこそ、コモディティ関連からグロース株に物色が移る局面が短期的にはあったとしても不思議ではないだろう。 午後の日経平均はもみ合いが続きそうだ。米株市場では急落後の反発力が鈍い動きが続いており、まだまだ相場は弱気な状態にある。時間外取引の米株価指数先物は上昇しているが、今晩の米株市場の動きは蓋を開けてみないと分からず、模様眺めムードも漂いやすい。アジア市況も軟調ななか、午後の東京市場では積極的な買いは見られにくいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/23 12:15
ランチタイムコメント
日経平均は反発、未だ「リセッションに半身の構え」
日経平均は反発。309.52円高の26712.36円(出来高概算6億株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でNYダウは続落し、236ドル安となった。5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数や4月の中古住宅販売件数といった経済指標の悪化が続いたうえ、決算発表したネットワーク機器のシスコシステムズが5-7月期の減収見通しを示し株価急落。景気や企業業績の悪化懸念を背景に売りが継続した。ただ、日経平均は前日に500円あまり下落しており、NYダウ先物が時間外で上昇に転じていたこともあって、本日は45円高からスタート。前場中ごろを過ぎると上げ幅を広げ、中国・上海株や香港株の反発スタートも支援材料となって、前引けにかけて26719.92円(317.08円高)まで上昇する場面があった。 個別では、前日売られた川崎船<9107>が急反発し、その他売買代金上位でもレーザーテック<6920>、郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、トヨタ自<7203>などが堅調に推移している。大規模な自社株買い実施を発表したエプソン<6724>や、前日の決算説明会の内容が評価された日製鋼所<5631>などは大幅に上昇。また、非鉄金属市況の上昇を受けて関連銘柄が大きく買われ、大阪チタ<5726>や邦チタニウム<5727>が東証プライム市場の上昇率上位に顔を出している。一方、キーエンス<6861>が2%超下落し、村田製<6981>は小安い。また、前日まで戻りを見せていた日医工<4541>が急反落し、東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、非鉄金属、精密機器などが上昇率上位。一方、電気・ガス業、建設業、パルプ・紙などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。 前日に大きく下落した日経平均だが、本日は反発して300円あまり上昇して前場を折り返した。時間外取引での米株先物、それに上海・香港株の上昇が支援材料となっている。日経平均の日足チャートを見ると、ひとまず26600~26700円あたりに位置する5日移動平均線や25日移動平均線水準まで戻す動き。前引けの日経平均が+1.17%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.72%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆5000億円弱で、前日までとおおむね同水準だ。 個別・業種別では、非鉄金属を中心とした商品市況の上昇を受けて関連セクターの堅調ぶりが目立つ。また、値がさグロース(成長)株も米金利低下が後押ししてかまずまずしっかり。相対的に内需・ディフェンシブセクターはさえないが、燃料高への懸念がくすぶる電気・ガス業を除けば売りがかさんでいるわけでもない。 新興株ではマザーズ指数が+1.50%と反発。米市場では金利低下によりグロース色の強い新興株の一角が買われており、本日の東証グロース市場でもこうした流れを引き継いだ格好だ。ただ、前場中ごろには前日終値近辺まで失速する場面があり、強いとばかりも言い切れない動きとなっている。売買代金上位を見ると、メルカリ<4385>やHENNGE<4475>が上昇する一方、BASE<4477>やJTOWER<4485>が下落するなどまちまちという印象。 さて、経済指標の悪化や企業業績の悪化が相次ぐ米国だが、金融大手の先行きに対する見方はなお割れている。一部報道によれば、ゴールドマン・サックスやJPモルガンのストラテジストらは「リセッション(景気後退)懸念は行き過ぎ」と指摘。もっとも直近、そのゴールドマンのロイド・ブランクファイン上級会長がリセッションに陥るリスクは「極めて高い」などと発言しているし、モルガン・スタンレーはS&P500指数の下げが再開するとの見通しを示している。また、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のファンドマネージャー調査によれば、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)への懸念が広がり、機関投資家の現金比率が2001年9月以来の高水準に達しているという。 BofAの調査結果を「調整一巡は近い」と受け止める市場関係者の声が多く聞かれる。しかし、筆者はむしろBofA自身が指摘しているように、市場はまだ「完全降伏」しておらず、最終的な底は打っていないとの見方が妥当だと考えている。 日本株を巡る動向を見てみたい。日本取引所グループが19日発表した5月第2週(9~13日)の投資主体別売買動向によれば、外国人投資家は現物株を3405億円、日経平均先物を2140億円売り越した。この週の日経平均の騰落率は-2.13%で、12日の取引時間中には25688.11円まで下落する場面があったが、これらは海外勢による現物株や日経平均先物の売りが主導したことがわかる。現物株については前の週までの6週間で1兆6000億円あまり買い越していたため、反動が出やすいかったと考えられるだろう。日経平均先物は短期筋中心の売りと考えられる。 一方、実需筋中心のTOPIX先物については968億円の売り越しにとどまった。4月以降を見ても、散発的な売りこそ出ているものの大きく膨らんでいるわけではないと言える。昨年来、TOPIX先物の売り越しが積み上がっているため、「更なる売りの余地は乏しい」との見方もある。しかし、海外実需筋はなお世界経済の先行きを睨んで様子見姿勢であるとも考えられるだろう。 また、13日申込み時点の市場全体の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は3兆0963億円となっている。昨年11月に3.7兆円規模まで膨らんだのをピークに、世界的な金融引き締めによるレバレッジ縮小の流れから、日本株も信用買い残の減少が続いていた。しかし、4月以降は3兆円前後で推移しており、レバレッジ縮小の動きはいったん足踏みしている格好だ。 これらから、市場は今後のリセッションや相場急落に対し未だ「半身の構え」であることが透けて見える。本日、景気敏感色の強い海運株などが反発しているのも同様に捉えられるだろう。それだけに、このところ米経済指標や企業業績の悪化が見られるのは気掛かり。懸念が確信に変わる場面では「あく抜け」でなく「失望」の動きが出てくる可能性があるとみておいた方がよいだろう。(小林大純)
<AK>
2022/05/20 12:15
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり大幅反落、「インフレ下の消費」に揺れる
日経平均は5日ぶり大幅反落。672.80円安の26238.40円(出来高概算6億4000万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でNYダウは4日ぶりに大幅反落し、1164ドル安となった。下げ幅は今年最大で、終値としては年初来安値を更新。前の日に決算発表したウォルマートに続き、この日決算発表したターゲットも業績が大きく悪化。小売り大手でさえない決算が相次いだことを受け、インフレによる景気や企業業績の悪化懸念が強まった。S&P500指数は-4.03%、ナスダック総合指数は-4.72%とその他の主要株価指数も大幅に下落。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで475円安からスタートし、朝方に一時26150.09円(761.11円安)まで下落すると、その後も安値圏で軟調に推移した。 個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、トヨタ自<7203>といった売買代金上位が軒並み軟調。愛知県の工業用水の供給が一部止まり、トヨタ系の1工場が稼働停止するなどと伝わっている。郵船<9101>が5%超下落するなど、海運株は特に軟調ぶりが目立つ。また、F&LC<3563>は大幅続落して取引時間中の年初来安値を更新し、DmMiX<7354>などとともに東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。一方、売買代金上位では三菱重<7011>のみプラスとなっており、取引時間中の年初来高値を連日で更新している。任天堂<7974>創業家の資産運用会社が株式公開買付け(TOB)を正式発表した東洋建<1890>は東証プライム市場の上昇率トップ。イオンファン<4343>なども上昇率上位に顔を出している。 セクターでは、全33業種がマイナスとなり、空運業、輸送用機器、電気機器、サービス業、精密機器などが下落率上位だった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の87%、対して値上がり銘柄は11%となっている。 前日の米株が急落した流れを引き継ぎ、本日の日経平均は600円を超える下落で前場を折り返した。日足チャートを見ると、26000円台後半に集中している5日~75日の各移動平均線を一気に下抜け。前日まで4日続伸するなどまずまずしっかりした動きだったが、短期トレンドの悪化も意識されざるを得ないか。前引けの日経平均が-2.50%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-2.03%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆5000億円あまりとまずまず多いが、値幅の割には膨らんでいるように見えない。 個別では東証プライム市場銘柄の9割近くが下落しているが、9日に回転ずし「スシロー」の値上げを発表したF&LCが下落率上位にランクインしているのは注目される。これまで期待が高かっただけに年初来安値更新で損失覚悟の手仕舞い売りが出やすいのだろうが、国内消費の鈍化懸念を示しているようだ。また、業種別では海運業の下落が目立って大きく、投資家のセンチメント悪化と世界経済の先行き懸念を感じさせる。 新興株でもマザーズ指数が-2.48%と大幅反落。既に水準がかなり低いため、日経平均などと比べより大きな下落を強いられているわけではないが、日米株式相場の急落を受けて積極的に買いを入れられる状況にもないだろう。富山大学などとの共同研究を発表したペルセウス<4882>が値を飛ばしているものの、物色は広がりを欠く。メルカリ<4385>が取引時間中の年初来安値を更新するなど、主力IT株は揃って軟調だ。 さて、米株は「インフレ下での消費動向」に大きく揺れた。まず17日発表の4月小売売上高が前月比+0.9%、変動の大きい自動車・同部品を除くベースでも同+0.6%と市場予想(+0.4%)を上回り、「インフレ下でも消費は堅調」と受け止める向きが多かった。ただ、米ブルームバーグが小売売上高はインフレ調整しておらず、「消費者物価高騰の結果である可能性もある」などと指摘していたのは注目すべきだろう。結局、ウォルマートやターゲットといった小売り大手の大幅な業績悪化を受け、消費鈍化が懸念されざるを得なくなった。著名エコノミストのモハメド・エラリアン氏は一時的なスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)が避けられず、「市場は深刻な成長低迷のリスクにまだ注意を払っていない」などと警鐘を鳴らしたという。 また、米金融大手ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEO(最高経営責任者)は「極度に懲罰的な」インフレで経済への課税が生じており、「リセッション(景気後退)の可能性はある」との見方を示したという。 こうした有力者の懸念の声が影響しているのだろうが、下値でヘッジ(あるいは投機)目的のプットオプション(売る権利)の利益確定売りが一定程度出てきているものの、それ以上に新規のプット買いが入っているとの観測が聞かれる。実際、低下傾向にあった米株の変動性指数(VIX)は18日、30.96(+4.86)と反騰しており、ボラティリティー(株価変動率)の高まりを織り込む動きが再び強まっているようだ。ここまで、一昨日の当欄「それでもインフレ・市場急変懸念は拭えない」での予想に沿った動きになっていると考えざるを得ない。 前引けのTOPIX下落率が2%を超え、後場は26営業日ぶり(4月7日以来)となる日銀の上場投資信託(ETF)買い実施観測が相場の下支えとなる可能性もあるだろう。しかし、市場の不安定感から積極的に戻りに乗ろうとする動きは限られそうだ。また、今晩の米国では5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の中古住宅販売件数などが発表される予定で、引き続きインフレ下での経済情勢に注意を払う必要があるだろう。(小林大純)
<AK>
2022/05/19 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は4日続伸、景気後退と金融引き締め巡る懸念はくすぶる
日経平均は4日続伸。191.40円高の26851.15円(出来高概算6億6222万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でNYダウは431.17ドル高と大幅に3日続伸。中国上海市の都市封鎖(ロックダウン)解除への期待に加え、4月小売売上高や鉱工業生産など良好な経済指標を背景に世界経済の成長減速懸念が後退。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演も概ね想定内の内容にとどまり、イベント終了とともに買いが再燃し、引けにかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+2.75%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+5.01%と大幅反発。こうした流れを引き継いで日経平均は167.07円高からスタート。朝方は買いが先行し、一時27053.18円(393.43円高)まで上昇。ただ、時間外取引のナスダック100先物やアジア市況が弱含むなか、次第に失速していき、26741.34円(81.59円高)まで上げ幅を縮める場面もあった。 個別では、SOXの急伸を受けてレーザーテック<6920>や東エレク<8035>が買われ、ルネサス<6723>はパワー半導体の増産報道も追い風に大幅に上昇。中国経済の底入れや米経済指標を受けた景気後退懸念の緩和で信越化<4063>、川崎汽船<9107>、三井住友<8316>などの景気敏感株の一角も堅調。今期の増益・増配計画が引き続き材料視されている三井松島HD<1518>は3日連続での急伸劇。「ビフィズス菌BB536」が中国の「新食品原料」に登録された森永乳業<2264>も大幅高。ほか、富士通<6702>、SMC<6273>、デンソー<6902>などが高い。一方、ファナック<6954>、ファーストリテ<9983>など値がさ株の一角が小安く、原油先物相場の上昇一服でINPEX<1605>やENEOS<5020>など石油関連が軟調。証券会社の目標株価引き下げでサイバー<4751>は大幅に下落。 セクターではその他製品、空運、精密機器などが上昇率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、小売などが下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の51%、対して値下がり銘柄は45%となっている。 朝方400円近くまで上げ幅を広げ、節目の27000円を一時回復した日経平均は早々に伸び悩んで同水準をすぐにまた割り込んだ。日足チャートでは長い上ヒゲを付け、下向きの75日移動平均線を明確に超えられず、戻り待ちの売りが根強い様子が窺える。実際、ここ3カ月の累積売買高をみると、27000円処に最も商いが集中しており、この水準を回復し定着するには、戻り待ちの売りを我慢強くこなしていく必要がありそうだ。 また、物色動向も気がかり。中国上海でのロックダウンが解除される見通しとなったほか、前日に発表された米国4月の小売売上高と鉱工業生産はともに堅調な結果となった。しかし、本日の東京市場ではファナックやコマツ<6301>など一部の景気敏感株で冴えないものが散見される。商社関連株も冴えないものが多い。また、前日の米株市場でナスダックが大幅に反発したにもかかわらず、中小型グロース(成長)株の筆頭格ともいえるSHIFT<3697>は2%近くと大きく下落している。物色動向がちぐはぐな中、東証プライム値上がり率上位には、年初来安値圏にある銘柄が多く並んでおり、自律反発狙いの買いくらいしか入っていないかのようだ。 米主要株価指数は5月12日を安値にリバウンドしてきているものの、まだまだ自律反発の域を出ておらず、弱気相場下での短期的な反発(ベアマーケットラリー)にすぎないとの見方も多いなか、依然として様子見ムードを貫いている投資家が多い様子。米VIX指数が13日以降、危険水域とされる30を割り込み、その後も低下基調にあることで、行き過ぎた弱気のセンチメントの巻き戻しが少しは進んでいるのだろうが、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)は1バレル=112.40ドル(-1.80ドル)と高止まりしており、インフレ懸念もくすぶるなか、買いを積極的に入れる向きは少ないようだ。 景気の先行きについても、米小売売上高などは良好だったが、先週末に発表された5月のミシガン大学消費者マインド指数は現況指数、期待指数がともに悪化し、2011年以来の低水準だった。また、今週初に発表された5月NY連銀景気指数は予想外のマイナス転換で大幅な悪化。そして、前日に発表された5月NAHB住宅市場指数は2020年4月以来の低下幅で、20年6月以来の低水準まで落ち込んだ。どうやら実体ベースではまだ落ち込みは確認されていないようだが、景況感や消費者心理といったセンチメントベースでは相当に悪化が進んでいる様子。こうしたセンチメントの方が先行性は高いと推察され、今後、まだ堅調を保っている実体ベースの指標が悪化してくる可能性はあろう。本日の東京市場で景気敏感株が思いのほか冴えないのはこうした背景を見透かした上でのことかもしれない。 前日、ウォールストリート・ジャーナル主催のイベントで、FRBのパウエル議長は6、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)でも5月と同じ0.5ptの利上げが適切になるだろうと従来通りの見解を強調。一方、明確なインフレ圧力沈静化のために政策金利を、中立金利を超える水準にまで引き上げることに「躊躇しない」とし、インフレ沈静化の兆候が見られない場合には、「もっと積極的な動きを検討しなければならないだろう」とも発言。改めてタカ派色も色濃く感じられた。 前回5月3-4日のFOMC以降の高官発言で、6、7月会合までの利上げ幅についてはコンセンサスがかなり形成されつつある。しかし、昨日のパウエル議長の発言を聞く限り、今後の物価指標の高止まり次第では、それ以降の会合でも0.5ptの大幅利上げが続く可能性が想定され、すでにかなり織り込みが進んでいる利上げペースについても、もう一段階、上方修正を迫られる場面が出てきそうだ。この点は、年央までの物価指標を確認するまでは議論が分かれるところであり、今後も、ボラタイル(変動率の激しい)な相場が続こう。 ただ、今後2会合の利上げ幅や、6月からの量的引き締め(QT)のペースについてはすでにほとんど明確になっているため、目先はボラタイルながらも足元たたき売られてきたハイテク・グロース株に短期的には妙味がありそうだ。 一方、半導体関連株については本日、東エレクなど前工程装置関連の銘柄が総じて堅調な一方、四半期ベースで受注鈍化が確認されているTOWA<6315>など後工程装置の銘柄では軟調なものが散見される。前倒し発注の反動減など負の影響が表れていると推察され、半導体関連も一緒くたに何もかもが好調なわけではない。セクター間での物色動向の違いも大事だが、セクター内での銘柄選別も重要な局面と言えそうだ。 後場の日経平均は前引け水準から動意薄でもみ合いとなりそうだ。材料難のなか、時間外取引のナスダック100先物は小動きで材料視しにくい。一方、アジア市況がやや下げ幅を広げてきていることもあり、弱含む可能性に注意したい。全体的に方向感が掴みにくいなか、下半期の業績上振れの可能性や、前期に続き10%を超える配当利回りが好材料視されやすい郵船<9101>など海運株の買いに妙味がありそうだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/18 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、「それでもインフレ・市場急変懸念は拭えない」
日経平均は3日続伸。53.98円高の26601.03円(出来高概算6億7000万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でNYダウは小幅に続伸し、26ドル高となった。原油先物相場の上昇とともに関連銘柄が買われたほか、景気の影響を受けにくいディフェンシブ株の上昇も相場を下支えした。ただ、長期の年限の金利低下にもかかわらずハイテク株を中心に売りが出て、NYダウは一時300ドルあまり上昇してから失速。S&P500指数は-0.39%、ナスダック総合指数は-1.20%となった。本日の日経平均もNYダウ同様、8円高と小幅に上昇してスタート。朝方は前日終値を挟んだもみ合いとなり、26440.62円(106.43円安)まで下落する場面もあったが、香港株高などを受けて前場中ごろを過ぎ一時26709.26円(162.21円高)まで上昇するなど、やや方向感に乏しい展開だった。 個別では、郵船<9101>や川崎船<9107>の上昇が目立ち、東エレク<8035>もしっかり。リクルートHD<6098>は決算を好感した買いが先行するもやや伸び悩んでいる。INPEX<1605>は原油高を受けて5%近く上昇し、ENEOS<5020>は連日で年初来高値を更新。また、急反発の日医工<4541>や債務超過解消のレオパレス21<8848>が東証プライム市場の上昇率上位に顔を出し、米社との経営統合に向けた株式公開買付け(TOB)実施が発表されたキトー<6409>はストップ高水準での買い気配となっている。一方、レーザーテック<6920>やトヨタ自<7203>が軟調で、ソフトバンクG<9984>も小安い。アサヒ<2502>は決算を受け原材料高への警戒感が強まり、東証プライム市場の下落率トップ。また、その他の決算発表銘柄では電通G<4324>などが大きく売られている。 セクターでは、鉱業、海運業、石油・石炭製品などが上昇率上位。一方、食料品、銀行業、輸送用機器などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の53%、対して値下がり銘柄は43%となっている。 本日の日経平均は前日終値を挟んで上下100円あまりのレンジでもみ合い、結局小高く前場を折り返した。日足チャートを見ると、5日移動平均線が上向きに転じ値動きもまずまず悪くない印象を受けるが、26700円台に位置する25日移動平均線手前で伸び悩み。個別・業種別では米株と同様に原油を中心とした市況関連株が堅調。一方、ディフェンシブ色の強い食料品はアサヒの決算を受けて原材料高への警戒感が強まっているとみられ、長期の年限の米金利低下により銀行株もさえない。東証プライム市場の下落率上位には成長期待の高い中小型株が目立つ印象だ。前引けの日経平均が+0.20%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.14%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆4000億円あまりとなっている。 新興株ではマザーズ指数が-2.20%と3日ぶり大幅反落。日足チャートを見ると、5日移動平均線を一時的に上回っても戻りに弾みが付かず、値動き改善への期待が持ちづらいか。好決算の小型株が買われているとはいえマザーズ指数の押し上げには力不足で、中小型グロース(成長)株安の流れからメルカリ<4385>などの主力IT株は揃って軟調だ。 さて、16日の米市場では10年物国債利回りが2.88%(-0.04pt)に低下。5月上旬に一時3%台に乗せてから足踏みが続いている。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.68%(-0.01pt)。こちらも4月下旬に一時3%台まで上昇してから低下に転じている。11日発表の4月消費者物価指数(CPI)などを受け、インフレピークアウトへの期待が広がっているとの見方もある。 もっとも、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)は1バレル=114.20ドル(+3.71ドル)まで再び上昇してきた。供給増加が緩慢ななかで中国の経済活動再開などにより需要が回復するとみられ、需給ひっ迫が意識されている。米ハイテク株安もインフレ懸念の根強さを感じさせる動きだろう。このところ米著名投資家や識者らが相次ぎインフレを睨んだ資産配分に言及している点にも触れておきたい。 今回の決算発表シーズンでは、アサヒに限らず、日本を代表する企業であるトヨタ自などでコスト高の逆風が強く意識された。日経平均の予想EPS(1株当たり利益、日本経済新聞社が公表するPERから逆算)は4月15日時点の2085.70円に対し、5月16日時点では2009.62円に減少している。PER13.2倍、PBR1.15倍となっているが、こうしたEPS推移を見る限りバリュエーション向上への期待を持ちにくいだろう。 16日発表の5月のニューヨーク連銀製造業景況指数が-11.6(予想+16.5、前月+24.6)となるなど、このところ世界的に経済指標の悪化も目立つ。相対的に日本株が優位になるとの期待の声もあるが、「世界の景気敏感株」としての位置付けが強いだけに、積極的に持ち高を増やそうとするグローバル投資家が出てくるか見通しづらい。TOPIX先物について、日々の取引手口情報や日本取引所グループの公表する投資主体別売買動向を見ても買い越しの動きは限定的だ。 再び米市場に目を向けると、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が27.47(−1.40)とじりじり低下。下方ヘッジ(あるいは投機)目的のプットオプション(売る権利)の持ち高解消の動きが窺えるにもかかわらず、米株式相場の上値が重いのは気掛かりだ。買い持ち(ロング)投資家の戻り売り圧力が強いとみられる。ベア・マーケット・ラリー(弱気相場のなかでの株高)での戻りは限られ、再び売り持ち(ショート)が積み上がる場面では下値不安が高まる可能性がある。 その他、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が0.5ptペースでの利上げに再三言及している点に安心感を覚える向きもあるようだが、FRBが9日に公表した「金融安定性評価」では株式等のバリュエーションが依然として高いなどと評価されているようだ。かねて当欄で指摘しているとおり「FRBは市場にフレンドリーではない」と改めて認識すべきだし、仮にFRBが金融引き締めを緩めるようならインフレ懸念は一段と強まるだろう。同報告書で流動性の悪化により金融市場の急変に警鐘を鳴らしているように、日本株もなお不安定な展開が続くとみておいた方がよさそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/05/17 12:13
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、インフレトレードのリバーサル継続か
日経平均は続伸。64.64円高の26492.29円(出来高概算8億0801万株)で前場の取引を終えている。 先週末13日の米株式市場でNYダウは466.36ドル高と7日ぶり大幅反発。暗号資産市場が持ち直したことで、金融市場に混乱がもたらされるとの脅威が後退し、寄り付き後上昇。ハイテク株も下げ止まったため、主要株価指数は安心感から終日堅調に推移した。ナスダック総合指数は+3.81%と大幅続伸。こうした流れを引き継いで日経平均は先週末比325.72円高からスタートすると、朝方に26836.96円(409.31円高)まで上昇。しかし、先週末に急反発した反動が意識されるなか、時間外取引のナスダック100先物が軟化したことで前場中ごろからは売りに押され失速。前引け間際には一時26438.61円(10.96円高)まで上げ幅を縮める場面があった。 中国経済指標の下振れも投資家心理を悪化させたとみられる。11時頃に発表された中国4月の小売売上高は前年比-11.1%と予想(同-6.1%)を大幅に下振れ、鉱工業生産も同-2.9%と予想(同+0.6%)を大幅に下振れた。 個別では、先週末に急伸したソフトバンクG<9984>やレーザーテック<6920>のほか、ファーストリテ<9983>、OLC<4661>、リクルートHD<6098>などのグロース(成長)株が上昇。第1四半期好スタートだったスノーピーク<7816>や、決算と併せて新中計と自社株買いを発表したKDDI<9433>、市場予想を上回る見通しを公表したSMC<6273>などは東証プライム市場売買代金上位において大幅高となっている。マツダ<7261>は市場予想を上回る営業増益計画や増配などが評価され、自動車株の中では珍しく本決算後に大幅高を見せている。東証プライム値上がり率上位には決算を受けてDmMiX<7354>、上組<9364>、イーレックス<9517>、マツキヨココ<3088>などがランクイン。 一方、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などが小安く、トヨタ自<7203>や任天堂<7974>も軟調。決算後の急伸の反動でオリンパス<7733>が大幅反落。市場予想を大幅に下回るガイダンスを公表したホンダ<7267>が大きく下落し、第1四半期が2ケタ営業減益となったヤマハ発動機<7272>は急落。第1四半期が大幅な赤字となった楽天グループ<4755>、今期2ケタ営業減益計画で市場予想も大きく下回った住友化学<4005>なども売られた。東証プライム値下がり率上位には今期大幅減益のサプライズ計画を受けて先週末にストップ安となったエン・ジャパン<4849>のほか、ギークス<7060>、メルコHD<6676>、朝日インテック<7747>、DOWA<5714>などが並んだ。 セクターでは倉庫運輸、サービス、情報・通信などが上昇率上位となった一方、鉄鋼、非鉄金属、その他金融などが下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の28%、対して値下がり銘柄は70%となっている。 日経平均は朝方高く始まった後は伸び悩んで急失速、25日、75日移動平均線に上値を抑えられる格好となっている。東証株価指数(TOPIX)は寄り付き直後から失速すると前引け間際にマイナスに転換し、やや大きめの陰線を形成。先週末に急反発していたことや時間外取引のナスダック100先物の上昇を背景に13日の米株高をある程度織り込んでいたとはいえ、ナスダックが4%近く上昇していたことを踏まえると、今日の東京市場の動きはやや弱い印象を受ける。 対して先週末に+4.5%と急反発したマザーズ指数は+1%半ばと相対的に強い。東証プライム市場でも、先週末に急伸していたソフトバンクGが続伸しているあたり、直近の下落がきつかったハイテク・グロース株には買いが入っているようだ。一方、商社などは先週から軟調な動きが目立ち始めてきている。先週に米国で一連の物価指標の発表を終え、インフレを巡る話題がやや落ち着きを見せるなか、これまでの“コモディティ買い・グロース株売り”といったインフレを見込んだトレードのリバーサル(株価の反転)的な動きが出てきていると考えられる。 気になるところでは、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストが今年と来年の米国経済の成長率予想を引き下げた。連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めを巡る金融市場の混乱を反映させたようで、2022年の成長率見通しを従来の2.6%から2.4%に小幅に下方修正した一方、23年については従来の2.2%から1.6%へと大幅に引き下げた。 米10年債利回りが5月6日の3.14%をピークに足元、3%を下回る推移が続いていることもあり、市場では景気後退に対する懸念を強めるとともに、インフレのピークアウトを意識した動きが根強い様子。結局は、ピークアウトを確かめるには最低でもこの先2、3カ月分の指標は確認する必要があり、それまでは期待と懸念の交錯が続き、物色も循環的な様相の域を出ないだろう。それでも、上述した動きを踏まえる限り、目先的には“コモディティ買い・グロース株売り”のインフレトレードのリバーサルが続くと想定され、これまでたたき売られてきた中小型グロース株などには押し目買い妙味があると考えられる。 今週17日には、パウエルFRB議長がウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催会議で講演を行う予定だ。パウエル議長は12日、今後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptずつ利上げするのが適切となる公算が大きいと、5月FOMC後の記者会見時と同様の見解を繰り返した。17日のイベントでも再度こうした見通しを強調すれば、政策金利の引き上げペースがより明確になることで、引き締めを巡る懸念も和らぎ、ハイテク・グロース株のリバウンド機運が高まると期待している。 午後の日経平均は方向感に欠ける展開が続きそうだ。米国市場では指数の振れ幅が激しい展開が続いており、東京市場でも米国市場を睨みながらの動きとならざるを得ない。そうしたなか、時間外取引の米株価指数先物の動きに左右される展開が続きそうだ。ただ、中国での市場予想以上に大きく悪化した経済指標を受けてアジア市況が軟化してきていることもあり、午後はマイナス転換となる可能性があろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/16 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反発、株式市場は債券市場を後追い?
日経平均は大幅反発。673.12円高の26421.84円(出来高概算7億8753万株)で前場の取引を終えている。 12日の米株式市場でNYダウは103.81ドル安と6日続落。米国経済が景気後退入りするとの懸念を背景に寄り付き後下落。高インフレや連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めへの警戒感も強く、終日軟調に推移。不透明感が強く荒い展開が続くなか、値ごろ感からハイテク株が買われ、ナスダック総合指数は+0.05%と小幅ながら反発。米株市場はまちまちだったが、前日に500円近く下落していた日経平均は買い戻しが先行するなか170.08円高からスタート。5月限オプション取引に係る特別清算指数(SQ)は25951.24円で、これを早々に上回ったことで買い戻しが強まった。また、米長期金利が低下するなか、値がさのハイテク株の大幅高が押し上げ役となり、寄り付きから値を切り上げる展開が続いた。 個別では、1-3月期税引前損益で2兆円の赤字を計上したソフトバンクG<9984>は、あく抜け感や自社株買い継続への評価もあり、10%を超える急伸。市場予想を上回る今期計画を示した東エレク<8035>は5%高。ファーストリテ<9983>、リクルートHD<6098>、キーエンス<6861>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>などグロース(成長)株も大幅に上昇。オリンパス<7733>は好決算が引き続き評価され8%高。決算が好感されたところでトプコン<7732>、日揮HD<1963>、デジハHD<3676>、フジクラ<5803>などが東証プライム値上がり率上位にランクイン。一方、決算を受けてNTTデータ<9613>、日産自<7201>、トレンド<4704>などが大幅に下落。東証プライム値下がり率上位には前日に決算発表したオイシックス<3182>、KADOKAWA<9468>、メドピア<6095>、カシオ<6952>などが並んだ。 セクターでは精密機器、電気機器、情報・通信などを筆頭にほぼ全面高。一方、電気・ガス、倉庫運輸、鉱業の3業種のみが下落となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の84%、対して値下がり銘柄は14%となっている。 前日に発表された米4月卸売物価指数(PPI)は、総合の伸びが前年比で予想を上回った一方、変動の激しい品目を除いたコアでは予想を下回り、インフレ懸念とインフレピークアウト期待のどちらにも軍配が上がらない結果となった。11日に発表された米4月消費者物価指数(CPI)に続き、インフレ懸念はくすぶる内容だったという印象だ。 しかし一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は12日、2.59%と前日比-0.11ptと大幅に低下。4月21日に付けた最高値3.02%から大きく低下しており、明確な低下トレンドを描いている。 前日、FRBのパウエル議長は公共ラジオ番組で、今後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.5ptずつ利上げするのが適切となる公算が大きいと、5月FOMC後の記者会見時と同様の見解をあらためて示した。株式市場でインフレピークアウト期待が後退している中でのこうした発言は、市場の中央銀行に対する不信感を強めかねないとも思われたが、債券市場では、米10年物BEIと並んで米10年債利回りも2.8%台へと低下するなど、低下基調が続いており、債券市場ではインフレ加速を見込んだトレードの巻き戻しが進められているもよう。 これまでの株式市場を振り返ってみると、3月中旬からの強烈なリバウンド相場時には、債券市場で織り込みが加速するインフレ懸念を無視する形で上昇し続けていたため、後になってしっぺ返しを食らうのではないかとの懸念があったが、4月以降は実際そうなってしまった。今回は、当時とは反対に、インフレ懸念が強まるなかで米主要株価指数が年初来安値を更新し続ける一方、債券市場ではそれまでのインフレ懸念の後退を表すかのような動きが続いている。 今回も株式市場が債券市場を後追いするかのような形が繰り返されるのだとすれば、今後、主要株価指数はリバウンド局面に入る可能性があろう。日本については日経平均やTOPIXのPERはすでにヒトリカルで見て十分に安値圏にあるため言わずもがなだが、米国でもS&P500指数などのPERは大分バリュエーション調整が進んできた。 むろん、今後FRBがバランスシートを縮小するなか、コロナショック前に戻したに過ぎない米株市場のバリュエーションにはまだ訂正余地が残ると思われる。ただ、米長期金利がこのまま安定した基調を保つのであれば、米国でもバリュエーション調整が一旦終わっても不思議ではない。米国では、ヘッジファンドの株式の持ち高比率はすでにかなり低く、一方で空売り比率がかなり高い水準にあるという調査もあり、需給的にも目先はリバウンドが来てもおかしくはないだろう。 上値では戻り待ちの売りをこなしていく必要があるだろうが、少なくとも短期的には下値余地は乏しくなっていると考えられる。たたき売られている中小型グロース株などは、現物で長期目線であればそろそろ打診買いを入れてみても面白いかもしれない。 後場の日経平均は堅調もみ合いを予想する。前場は買い戻しの流れが途絶えることなく、一本調子での上昇となったが、後場には買い戻しが一巡して伸び悩む可能性があろう。米主要株価指数が年初来安値圏を脱していないなか、円安進行も一服していることを踏まえると、東京市場だけがこのまま上昇し続けることは考えにくい。後場の追随買いには慎重になった方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/13 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は反落、インフレピークアウトは期待していいのか?
日経平均は反落。220.96円安の25992.68円(出来高概算7億0213万株)で前場の取引を終えている。 11日の米株式市場でNYダウは326.63ドル安と5日続落。中国での新型コロナ感染状況が改善したとの報道で世界経済の減速懸念が後退し、寄り付き後上昇。しかし、4月消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことで、高インフレが定着し、景気減速にも繋がりかねないとの懸念が広がり、下落に転じた。ハイテク株の売りも加速し、引けにかけて下げ幅を拡大。ナスダック総合指数は-3.18%と大幅反落。主要株価指数が揃って年初来安値を更新するなか、米株安を引き継いで日経平均は268.60円安と26000円割れからスタートすると、そのまま25688.11円(525.53円安)まで一気に下落。突っ込み警戒感から買い戻しが入り、前場中ごろには26000円を回復したが、その後は目先の戻り一服感で同水準を挟んだ一進一退となった。 個別では、レーザーテック<6920>やソフトバンクG<9984>、エムスリー<2413>などのハイテク・グロース(成長)株が大幅安。ファーストリテ<9983>やSHIFT<3697>など値がさ株も大幅に下落。東証プライム値下がり率上位にはマネーフォワード<3994>やSansan<4443>、ネットプロHD<7383>、ギフティ<4449>、ラクスル<4384>などの中小型グロース株がずらりと並んだ。SREHD<2980>は今期利益ガイダンスが市場予想を下回ったことで急落し、値下がり率トップとなっている。ほか、業績見通しの非開示や堺ディスプレイプロダクト買収の発表が嫌気されたシャープ<6753>が急落し、決算を受けて花王<4452>やソフトバンク<9434>なども大きく売られている。 一方、子会社の不適切行為発覚後に急落が続いていた日本製鋼所<5631>は今期増益計画を受けて一時ストップ高を付けるなど大きく買い戻されている。ほか、決算が好感されたところでシュッピン<3179>、Jパワー<9513>、アシックス<7936>、神戸製鋼所<5406>、ラウンドワン<4680>などが急伸し、東証プライム値上がり率上位に入った。 セクターでは情報・通信、サービス、医薬品などが下落率上位に並んだ一方、ゴム製品、石油・石炭製品、保険などが上昇率上位に並んだ。東証プライムの値下がり銘柄は全体の62%、対して値上がり銘柄は33%となっている。 米ハイテク株の急落を受けて日経平均は一時500円を超える下落を見せた。米CPIの上振れを受け、3月CPIの発表後から高まっていたインフレピークアウトの期待が削がれたことが要因だ。 注目された米4月CPIは総合が前年比+8.3%と予想(+8.1%)を上回り、変動の激しい食品・エネルギーなどを除いたコアでも同+6.2%と予想(+6.0%)を超過。前月比でも総合は+0.3%、コアは+0.6%とそれぞれ予想(+0.2%、+0.4%)を上回った。ただ、前年比の伸びは総合もコアもそれぞれ前月の伸び(+8.5%、+6.5%)は下回った。 前年比の伸びが前月を下回るのは8カ月ぶりであり、そうした意味では厳密にはインフレピークアウト期待はまだ残っているのかもしれない。しかし、もはやそうした期待にすがるのには危うさを伴いそうだ。 今回のCPIの内訳をみると、今までインフレをけん引してきたガソリンや中古車の価格が前月比で低下するなどモノ・財に関する価格にピークアウト感が見られる一方、電気や天然ガスを含むエネルギーサービス価格、ホテル滞在費用、航空運賃などサービス分野での価格上昇が目立った。特に、下方硬直性を有し、CPIでの構成比率が高い住居費は3カ月連続で前月比+0.5%と高止まり、帰属家賃については2006年以来の伸びになった。 連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ目標は個人消費支出(PCE)のコアで+2.0%だが、改めて足元のCPI総合の+6.2%という伸び率は大きすぎる。そして、注目すべきはコアでの前月比が予想を大きく上回ったことだ。今までは原油などコモディティ価格がピークアウトし、世界的な供給網の混乱も解消されれば、インフレはピークアウトするとの考え方にある程度の合理性があった。 しかし、上述したように、今回のCPIの結果から窺えるのは、モノ・財ではなくサービス分野でのインフレ加速だ。先月発表された米4月雇用統計での低い失業率や低下する労働参加率などの結果から、すでに労働市場の逼迫による賃金インフレの長期化が懸念されているが、サービス分野でのインフレ加速が止まらなければ、「価格上昇→消費者による賃上げ圧力増大→企業のコスト転嫁による更なる価格上昇」といったインフレスパイラルが起きかねない。 CPIが発表された11日、アトランタ連銀のボスティック総裁は、インフレが高止まりした場合、経済成長を抑制する水準にまで政策金利を引き上げることを支持する考えを示した。直近の高官発言で、今後3会合での0.5ptの利上げはほぼ100%織り込み済みだ。一方、0.75ptの利上げについては、10日のクリーブランド連銀メスター総裁の発言や前日のボスティック総裁の発言を受けて、足元で再び織り込む動きが出てきているが、確率的にはまだほとんど織り込めていない。今後、高官発言などを通して再び0.75ptの利上げについての織り込みが一段と進むとなれば、金融引き締め懸念によるハイテク・グロース株の下落はまだ続く可能性があろう。 午後も日経平均は26000円を挟んだ一進一退となりそうだ。アジア市況がまちまちな一方、時間外取引のナスダック100先物などが堅調に推移していることは安心感を誘うが、米4月CPI確認後のインフレピークアウト期待の高まり、ハイテク・グロース株の買い戻し進展といったシナリオはあっさりと消失してしまった。当面、積極的に株式を買う理由が見つからず、買い手不在で短期筋の売買が中心ななか、日経平均の戻りは鈍いと見ておかざるを得ないだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/12 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反発、米ハイテク株高で安心感も実質金利上昇は気がかり
日経平均は3日ぶり反発。82.73円高の26249.83円(出来高概算6億5575万株)で前場の取引を終えている。 10日の米株式市場でNYダウは84.96ドル安と4日続落。金利低下などを背景に寄り付き後、一時大幅に上昇。しかし、クリーブランド連銀のメスター総裁が0.75ptの利上げも排除しない考えを示すと金融引き締め懸念が強まり、上げ幅を縮小。4月消費者物価指数(CPI)を前にした警戒感も強く、もみ合いの末に下落した。一方、長期金利が低下したことで、ナスダック総合指数は+0.98%と4日ぶり反発。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+2.51%と大幅に反発した。ただ、前日に時間外取引のナスダック100先物の上昇を通じて米株高をある程度織り込んでいた日経平均は121.72円安からスタート。それでもSOXの大幅高などを背景に値がさハイテク株に買いが入るなか、好決算銘柄への買いも下支えし、下げ渋ると、前引けにかけてプラスに転じた。 個別では、SOXの大幅高を追い風にレーザーテック<6920>、東エレク<8035>が大きく上昇。ファーストリテ<9983>、OLC<4661>、ベイカレント<6532>などの値がさグロース株も堅調。郵船<9101>や川崎汽船<9107>など海運株も高い。そのほか主力処では、決算を発表した任天堂<7974>、ソニーG<6758>、日本製鉄<5401>、ダイキン<6367>などが大幅高。任天堂は1対10の株式分割が、日本製鉄はガイダンス非公表も目標値の提示が好感されたもよう。東証プライム値上がり率上位には東邦チタニウム<5727>、レノバ<9519>、デクセリアルズ<4980>、ファイズHD<9325>、丸和運輸<9090>、IHI<7013>などの好決算発表銘柄が並んだ。一方、米長期金利の低下を受けて三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>など金融が軟調。住友鉱<5713>、三菱商事<8058>、伊藤忠<8001>、太陽誘電<6976>などは決算が売りに繋がり、大幅に下落。 セクターでは海運、鉄鋼、精密機器などが上昇率上位に並んだ一方、保険、パルプ・紙、銀行などが下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の35%、対して値下がり銘柄は61%となっている。 前日の米国市場で主要株価指数はまちまちだったが、ナスダックやSOXが反発したことが売り一巡感を意識させ、目先の安心感に繋がっている様子。一方、今晩に米4月CPIの発表を控えていることもあり、東京市場ではそこまで積極的な動きは窺えない。むしろ、MSOL<7033>やギフティ<4449>、ラクスル<4384>などの中小型グロース株で、本日も下落している銘柄が多いことが気がかり。マザーズ指数も下落しており、グロース市場銘柄ではBASE<4477>、メドレー<4480>などが下落している。 10日、米10年債利回りは2.99%(前日比-0.04pt)へと低下し、5月4日以来、再び3%を割り込んだ。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.65%(同-0.10pt)と大きく低下。先週末6日時点では2.86ptであったため、2日間で0.21ptと大幅に低下した格好だ。 今週に入ってから、アトランタ連銀のボスティック総裁やニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁など、複数の連邦準備制度理事会(FRB)高官から今後2~3会合での0.5ptの利上げを支持する発言が出たことや、上述したようにメスター総裁が0.75ptの利上げも排除しない姿勢を見せたことが、こうした期待インフレ率の低下の背景にあると考えられる。5月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエル議長は、今後2会合での0.5ptの利上げに前向きな姿勢を見せた一方、0.75ptの利上げには否定的な見解を示していた。これを受けて、市場ではFRBがインフレ対応に後手に回ることで、後々に大幅な利上げを強いられるのではないかという懸念が生じていた。 ただ、直近のFRB高官らの発言で、改めてFRBのインフレファイターとしての姿勢が確認されたため、期待インフレ率の低下に繋がったのだろう。FOMC後、米元財務長官のサマーズ氏やドイツの金融会社アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏など、著名な有識者らがこぞって、パウエル議長が0.75ptの利上げに否定的な見解を示したことについて「無責任」との厳しい評価を下していた。また、早い段階で選択肢を狭めてしまうのはFRBにとっても後々良くないと思われていたため、今回の一連の高官発言でFRBの信頼が回復したと思われることは一先ず安心感に繋がろう。 一方、米国の名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は、10年物で10日に0.35%まで上昇し、新型コロナウイルス・パンデミック後における高値を更新してきた。実質金利がプラス幅を広げてきていることは、より長い将来収益に基づいて株価が決まるグロース株にとってはネガティブだ。今日の東京市場で中小型グロース株が全般冴えないのは、こうした背景が重しになっているのかもしれない。 今晩の米国市場では注目の米4月CPIが発表される。市場予想は総合が前年同月比+8.1%、変動の激しい食品・エネルギーを除いたコアが+6.0%上昇と、いずれも3月(8.5%上昇、6.5%上昇)に比べて減速する見通し。一部のエコノミストは3月CPIでインフレピークアウトの兆候が表れたと指摘しており、モノに対する過剰な需要が弱まりつつあるなか、コアCPIは年内に一段と鈍化すると予想している。 4月CPIでこうした見方が裏付けられることになれば、ヘッジファンドのハイテク・グロース株の持ち高比率が歴史的にかなり低いところまで低下し、空売り比率も高まっている米国市場を中心に、マーケットは反転のきっかけを掴むことになるかもしれない。ただ、米実質金利がじわり上昇してきていることは気がかりで、CPI後に短期的にあく抜け感が強まっても、実質金利の動向には常に注意を払っておいた方がよさそうだ。 後場の日経平均はもみ合いとなりそうだ。時間外取引のナスダック100先物の上昇やアジア市況の上昇は支援要因になるものの、今晩の米CPIを前に様子見姿勢が強まりやすい。また、取引時間中に決算発表を予定しているトヨタ自<7203>の結果を見極めたいとの思惑もある。トヨタ自の決算と株価反応がポジティブなものとなれば、買い気が強まることも想定されるが、やはり本格的な動きは今晩のCPIを終えてからとなるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/11 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は続落、止まらない米株安受け一時1200円安も短期リバウンド条件が揃い始めた
日経平均は続落。244.81円安の26074.53円(出来高概算6億9401万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でNYダウは653.67ドル安と大幅に3日続落。連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げや都市封鎖(ロックダウン)が続く中国経済の減速などを背景に、景気後退懸念が強まるなか投資家のリスク回避の動きが終日続いた。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-4.29%と大幅に3日続落。ほぼ全面安となった米株市場の流れを引き継いで、日経平均は170.28円安からスタート。米株市場と同様、ハイテク株から景気敏感株まで幅広く売りが膨らみ、寄り付き直後に25773.83円(545.51円安)まで下落。ただ、前日からの2日間だけで1200円超も下落しただけに、突っ込み警戒感も台頭し、前場中ごろからは急速に買い戻しが進展、前引けにかけて26000円を回復した。 個別では、米ハイテク・グロース(成長)株の急落を受けてレーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、OLC<4661>、NTTデータ<9613>などが大幅安。原油先物相場の下落を背景にINPEX<1605>が急落しており、住友鉱<5713>、丸紅<8002>などの資源関連株も軒並み下落。エムスリー<2413>はレーティング格下げもあり下落。JAL<9201>、エアトリ<6191>などは国内大型連休明けの新型コロナ感染再拡大への警戒感から大幅に下落。子会社の不適切行為が発覚した日製鋼<5631>は本日も急落。決算を受けてチャームケア<6062>、冶金工<5480>、アウトソーシング<2427>などが東証プライム値下がり率上位に入っている。 一方、前日に今期見通しと併せて1000億円以上の追加的な株主還元策の検討を発表した川崎汽船<9107>が本日も買い優勢。NTT<9432>やKDDI<9433>などディフェンシブ銘柄の一角が堅調。約2年ぶりの自社株買いを発表したキヤノン<7751>、目標株価引き上げのあった山崎パン<2212>、今期見通しが好感されたワールド<3612>などは大幅に上昇。今期増益・増配見通しに加えて自社株買いも発表したリンナイ<5947>は東証プライム値上がり率トップとなっている。 セクターでは鉱業、海運、石油・石炭製品などが下落率上位に並んだ一方、金属製品、電気・ガス、パルプ・紙などが上昇率上位に並んだ。東証プライムの値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は32%となっている。 前日の米国市場は全面安商状。幅広い年限で債券利回りが低下するなかではあったが、ハイテク・グロース株の売りは止まらず、ナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は再び急落した。これまで相場の下支え役だった石油や建設機械といったコモディティ・景気敏感株も、景気後退懸念が強まるなか大きく売り込まれた。ビットコイン(BTC)など暗号資産(仮想通貨)の価格も足元で厳しい下落トレンドが続いており、今朝には一時1BTC=30000ドルを割り込む場面もあった。ほぼ全ての資産クラスが大幅に下落しており、完全に投げ売りの状態だ。 一方で、こうしたやや乱暴とも言える動きが出てきたことは、短期的にはそろそろ底打ちを期待させてくれる。実際、昨日の米株市場の急落においては、出来高が直近に比してそれなりに大きめの水準まで膨らんでいた。S&P500指数への組み入れ銘柄を対象とした計算では、3月18日以来の出来高水準だった。見境のない投げ売りや出来高を伴った急落により、需給整理が進んだともいえる。 本日の前引け時点での東証プライム市場の売買代金は1兆6000億円超とまずまず大きく膨らんでいる。出来高と値幅を大きく伴った日が先週末6日から3日続いていることで、東京市場でも需給整理が少しは進んだだろう。また、朝方の一時急落により、日経平均は3月16日の高値25824.94円を上端としたマド埋めを完了。昨日からの下落幅も考慮すると、テクニカル的にも値幅的にも短期的には底打ち感が台頭してくるタイミングが近づいていると言えそうだ。明日11日に発表予定の米4月消費者物価指数(CPI)で、3月CPIに続きインフレピークアウトが確認できれば、買い戻しが強まる展開が期待されよう。 一方、ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏らストラテジストチームは、前日、米国株の見通しはあまり明るくないと顧客向けリポートで指摘。「インフレの軌道が明確になるまで、値動きが大きい展開は続く」とし、「金融状況の引き締まりや市場の流動性不足を踏まえれば、3月下旬と同様の規模の短期的な上げ相場が到来すると論じるのは難しい」とコメントしたという。 市場関係者の間でも、相場の先行きについては依然として大きく強気派と弱気派に分かれており、相場の見方がある程度収れんしてこない限りは、まだまだボラティリティー(変動率)の高い相場環境が続かざるを得ないだろう。11日の米4月CPIでインフレピークアウトを確認できれば、インフレ対応で後手に回ったのではないかとの見方から疑念が強まっているFRBに対する信任が少しでも回復する可能性がある。弱気派の過度な悲観も後退し、ボラティリティーの低下に寄与してくれるのではないかと期待したい。 さて、後場の東京市場は戻りを試す展開か。上述したように日経平均は3月16日高値を上端としたマド埋めを完了し、値幅的にも調整一巡感が台頭してくる頃合いだ。実際、朝方540円超下落していた日経平均は、前引けにかけて急速に下げ渋り、割ったばかりの26000円を早々に回復してきている。こうした下げ渋りは前日の急落時には見られなかった動きであり、売り一巡を感じさせてくれる。時間外取引のナスダック100先物が堅調に推移していることで、今晩の米株市場での反発も見込まれる。午後の東京市場では、売り方の買い戻しに期待したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/10 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、各種懸念要素むしろ強まるばかり
日経平均は大幅反落。593.26円安の26410.30円(出来高概算6億4836万株)で前場の取引を終えている。 先週末6日の米株式市場でNYダウは98.60ドル安と続落。4月雇用統計で雇用者数の伸びが予想を上回った一方、労働参加率が低下したことで、労働市場の逼迫が再確認され、連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めへの警戒感から寄り付き後、下落。金利動向に左右される形で一時上昇に転じる場面もあったが、戻り売り圧力が強く、終日軟調に推移した。米10年債利回りが2018年11月以来の高水準を記録するなか、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-1.40%と大幅続落。こうした流れを引き継いで日経平均は298.24円安からスタート。中国経済の減速懸念も根強く、ハイテク株のほか景気敏感株も広く売られ、朝方に26343.29円(660.27円安)まで下落。その後、下げ渋ったが、戻りは弱く、前引けにかけては再びこの日の安値圏まで下げ幅を広げた。 個別では、ナスダックの下落や出資先の米セレブラルが規制物質法に違反した疑いで調査を受けていることが判明したソフトバンクG<9984>が大幅に下落。ソニーG<6758>、任天堂<7974>、OLC<4661>、東エレク<8035>などの値がさ株が総じて軟調。4月既存店売上高がプラス転換も同業他社比で相対的な弱さが目立ったファーストリテ<9983>は6%安。ガイダンス非公表による不透明感が嫌気されたJFE<5411>が急落し、他の鉄鋼株も連れ安。丸紅<8002>、三菱商事<8058>などの商社株も大きく下落。川崎汽船<9107>など海運株も冴えない。子会社である日本製鋼所M&Eが生産した鉄鋼部材で検査不正があったことが明らかになった日本製鋼所<5631>はストップ安売り気配で終えている。 一方、証券会社の目標株価引き上げを受けてレーザーテック<6920>とブイキューブ<3681>が逆行高。本日13時からNTT<9432>と会見を行うと発表し、思惑が強まっているNTTデータ<9613>は14%高と急伸。高水準の自社株買い実施がポジティブサプライズとなったヤマダHD<9831>はストップ高。大幅営業増益や増配が好感されたノジマ<7419>、ヒロセ電機<6806>なども大幅に上昇。 セクターでは鉄鋼、非鉄金属、卸売などが下落率上位に並んだ一方、電気・ガス、石油・石炭製品の2業種のみが上昇となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の82%、対して値上がり銘柄は15%となっている。 雇用統計の平均賃金の伸びは前月比+0.3%と、3月の同+0.5%から鈍化した。しかし、労働参加率が低下したことで、逼迫する労働市場と今後も賃金上昇圧力がくすぶることが窺える内容となり、米10年債利回りは一時3.14%と3年半ぶりの高水準を記録。これを嫌気し、5日に5%も下落したばかりのナスダックだったが、自律反発も空しく、6日も-1.4%と大幅続落となった。 先週末の東京市場は、円安進行や商品市況の上昇を背景に景気敏感株の買いがけん引する形で上昇に転じるなど、想定以上に底堅い動きを見せた。しかし、不安定さが続く米国株の動きや、3%を超えても上昇一服感が見られない米10年債利回りを前にさすがに警戒感は拭えず、本日は一時660円を超える下落となり、その後の戻りも鈍い。先週末に下支え役となった景気敏感株も、中国経済の悪化懸念がくすぶり、本日は総じて厳しい売りに押されている。 ネットフリックスやアマゾンなどの米大型テック株の下落基調が続くなか、東京市場でも中小型グロース株のきつい下落が続いており、マザーズ指数は本日、2月24日安値の648.20を窺う位置まで下落してきている。金利先高観が拭えず、FOMC通過後に期待された短期的なあく抜け感も裏切られた形となり、個人投資家の見切り売りが続いているようだ。 FOMC後の会見で、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は0.75ptの利上げには否定的な見解を示していたが、その後、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、0.75ptの利上げも除外しないべきとの考えを示した。また、債券市場で権威を持つ有識者のモハメド・エラリアン氏は「FRBの信用は失墜した」とも言及しており、厳しい評価を下している。さらに、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、ウクライナ戦争や中国での都市封鎖(ロックダウン)を背景とした供給網の混乱が長期化した場合、米労働市場に一定の減速が生じたとしても一段の引き締めが必要との考えを示した。 FOMCの通過後もむしろ金融引き締め懸念が強まるなか、一方で、米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏は、こうした世界的に進む積極的な金融引き締めが世界景気の減速を招くとし、「大いに気がかりだ」と言及。普段、米経済に対して強気な発言が多い、JPモルガン・チェースの最高経営責任者(CEO)ジェイミー・ダイモン氏も最近は世界経済の減速を懸念した見方を示しており、市場関係者だけでなく、多方面での著名実業家からもこうした弱気な発言が増えてきているのは気がかりだ。 2日の当欄「イベント通過後はあく抜け? 期待の裏に不安要素も」において記述したが、米株式から大量の資金流出を誘発する「臨界点」とも指摘されている、S&P500指数の4000割れが徐々に近づいているのも懸念要素。今週の11日には米4月消費者物価指数(CPI)が発表予定だ。それまでの間、同水準をどうにかキープし、CPIでのインフレピークアウト確認後に買い戻しが強まる展開に期待したいばかりだ。 午後の日経平均は軟調もみ合いとなりそうだ。CPI確認後はあく抜け感が強まることを予想する向きが多いが、発表直前まではヘッジ売りが膨らむ可能性もあり、今晩以降の米株市場の動向が注目される。前場にすでに大きく下落している東京市場だが、時間外取引のNYダウ先物が軟調ななか、押し目買いは期待しにくい。(仲村幸浩)12:10作成
<AK>
2022/05/09 14:11
ランチタイムコメント
日経平均は小幅反発、FOMC通過でも大きな変化なし
日経平均は小幅反発。32.00円高の26850.53円(出来高概算6億8000万株)で前場の取引を終えている。 日本の連休中、米株式市場では3~4日の連邦公開市場委員会(FOMC)後にNYダウが乱高下した。4日のNYダウは大幅に3日続伸し、932ドル高と今年最大の上げ幅を記録。パウエル連邦準備理事会(FRB)議長がFOMC後の記者会見で今後数会合での0.5pt利上げを示唆し、0.75ptの大幅利上げを織り込む動きが後退した。しかし、5日のNYダウは1063ドル安と急反落。産油国会合「OPECプラス」の結果を受けて原油先物相場が上昇したほか、1-3月期の非農業部門労働生産性が大幅低下したことでインフレ懸念が強まった。英イングランド銀行(中央銀行)が2ケタ台のインフレ率や英経済のマイナス成長見通しを示したことも投資家心理を冷やした。 連休明けの東京市場ではこうした流れを引き継ぎ、日経平均は34円安からスタート。米金利上昇を受けてグロース(成長)株を中心に売りが出て、日経平均は朝方に26543.29円(275.24円安)まで下落する場面があった。一方、米金利や商品市況の上昇、為替相場の円安推移から関連銘柄には買いが入り、日経平均は前引けにかけてプラス圏に浮上した。 個別では、郵船<9101>、トヨタ自<7203>、商船三井<9104>などが堅調。岸田文雄首相が原子力の活用に言及したことで東京電力HD<9501>などが急伸し、原油高につれてINPEX<1605>も大きく上昇している。三井物産<8031>やコマツ<6301>は連休前に発表した決算を好感した買いが続いているようだ。また、やはり好決算のADWAYS<2489>やTOA<6809>が東証プライム市場の上昇率上位に顔を出している。 一方、売買代金トップのレーザーテック<6920>が5%超の下落。ほかにもソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、東エレク<8035>、ソニーG<6758>といった値がさ株が軟調だ。エーザイ<4523>はアルツハイマー病治療薬関連の損失計上を受けて売られ、資生堂<4911>などの化粧品関連株は米エスティローダーの業績下方修正を受けて軒並み急落。また、キーパー技研<6036>などが東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。 セクターでは、鉱業、電気・ガス業、石油・石炭製品などが上昇率上位。一方、サービス業、情報・通信業、その他製品などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は36%となっている。 連休明けの日経平均は朝方に一時200円超下落したが、その後切り返し小高い水準で前場を折り返した。米金利上昇を受けた値がさグロース株の下落が日経平均を下押しする一方、金融や自動車、市況関連を中心としたバリュー(割安)株には買いが入っており、東証プライム市場全体としても値上がり銘柄の方が多い。前引けの日経平均が+0.12%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.55%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆6000億円あまりとまずまず膨らんでいる。 新興株ではマザーズ指数が-2.53%と大幅に4日続落。日足チャートでは足元じりじりと下落を強いられており、取引時間中としては3月16日以来の安値を付けている。グロース株安の流れが逆風となり、メルカリ<4385>などの主力IT株は総じて軟調だ。 さて、パウエルFRB議長が0.75ptの大幅利上げに消極的な姿勢を示し、4日の米市場は金利低下・株高で反応したものの、翌5日にはそれ以上の幅で金利上昇・株価下落する格好となった。5日の米10年物国債利回りは3.04%(+0.11pt)に上昇。一時3.10%と2018年11月以来の高水準を付けた。米主要株価指数はNYダウ-3.12%、S&P500指数-3.56%、ナスダック総合指数-4.99%と軒並み大幅に下落。原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)は1バレル=108.26ドル(+0.45ドル)と続伸した。 「OPECプラス」の緩慢な増産、労働生産性の低下や労働コストの上昇を示す米経済指標などからインフレ懸念は拭えない。英中銀は10~12月期にも消費者物価指数(CPI)上昇率が「10%をやや上回る」とし、2023年の経済成長見通しをマイナスに下方修正したこともインパクトのあるニュースだった。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)はFOMCと前後して低下する場面もあったが、5日には再び31.20(+5.78)と30台に乗せている。VIXの高止まりは4月28日の当欄「『決算序盤の情勢』と『米市場にくすぶる懸念』」でも懸念材料として触れたが、FOMC後のV字上昇を見ると、やはり下方リスクに警戒する動きは後退しづらいものと考えざるを得ない。 ただ、円安を支えに底堅さを見せる日経平均もさることながら、NYダウも2月24日の取引時間中に付けた安値(32272.64ドル)を割り込んでおらず、「インフレのピークアウト」や「米経済の堅調維持」への期待が根強いことを感じさせる。 結局、パウエル氏の発言で足元の投資論争に決着を見たわけではないと考えると、FOMCを通過して金融市場に大きな変化があったわけでもないだろう。今晩の米国では4月の雇用統計の発表が控えており、来週11日には消費者物価指数(CPI)、翌12日には卸売物価指数(PPI)と重要指標の発表が相次ぐ。引き続き経済指標や要人発言を睨み不安定な相場展開が続くとみておいた方がよいだろう。(小林大純)
<AK>
2022/05/06 12:16
ランチタイムコメント
日経平均は反落、イベント通過後はあく抜け? 期待の裏に不安要素も
日経平均は反落。143.30円安の26704.60円(出来高概算6億1861万株)で前場の取引を終えている。 東京市場が連休中の4月28、29日の米株式市場でNYダウは614.46ドル高、939.18ドル安と乱高下の展開。28日は1-3月期国内総生産(GDP)が予想外のマイナス成長に落ち込んだ一方、個人消費の強さやメタ・プラットフォームズの決算を受けた株高が相場を下支え。ただ、29日は連邦公開市場委員会(FOMC)を控えた警戒感や決算発表したアマゾンの株価急落が重しとなり、ハイテク株主導で大幅反落。ナスダック総合指数は+3.06%、-4.17%と乱高下の末に大きく下落。 FOMC前の連休の谷間で投資家が方向感を見定めかねるなか、週明けの東京市場も方向感に欠ける出足となり、日経平均は3.20円高とほぼ変わらずでスタート。先週末に1ドル=130円を突破し、20年ぶりの円安水準を付けたことが輸出企業の追い風となるなか、好決算銘柄への買いも寄与し、日経平均は取引開始直後に26964.59円(116.69円高)まで上昇する場面があった。ただ、イベント結果を見極めたいとの思惑もあり、間もなく失速すると、マイナス圏に転じ、その後はもみ合いとなった。 個別では、今期見通しが嫌気されたZHD<4689>、アンリツ<6754>、日本M&A<2127>が急落。先週末の米ハイテク株の下落を背景に東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ファナック<6954>、ダイキン<6367>などハイテク・グロース(成長)株が大幅安。「ニンテンドースイッチ」の販売計画の報道を嫌気し任天堂<7974>も下落。一方、ガイダンスリスク解消や高配当利回りが再評価された商船三井<9104>を筆頭に郵船<9101>など海運大手が大幅に上昇。決算や自社株買いが好感された村田製<6981>、富士通<6702>、日立<6501>なども大幅高。好調な受注高が確認されたレーザーテック<6920>も逆行高。今期見通しが市場予想を大幅に上回ったアルプスアルパイン<6770>、日本特殊陶業<5334>はそれぞれ急伸。 セクターではその他製品、建設、精密機器などが下落率上位に並んだ一方、海運、空運、ガラス・土石製品などが上昇率上位となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の63%、対して値上がり銘柄は33%となっている。 連休明けの日経平均は朝方に100円超上昇する場面があった。先週末に4%超と大幅に下落したナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の動きに比べてしっかりのスタートを切ったが、75日移動平均線近くで伸び悩むと、下向きの同線に上値を抑えられる形で失速。戻り待ちの売りの根強さを示唆する形となった。前引け時点での売買代金は1超5000億円強と、直近の水準に比べてやや膨らんでいる様子。連休の谷間とはいえ、イベント前の持ち高調整などもあり、取引参加者が限られているわけではないようだ。 東京市場が連休中に発表された注目の海外指標の結果はまちまちだった。米1-3月期GDP速報値が前期比年率換算で+1.4%と予想(+1.0%)に反してマイナス成長となったことには驚きを持って受け止める関係者が多かったようだが、マイナス計算する輸入項目が+17.7%だった影響が大きく、個人消費は+2.7%、設備投資も+9.2%と国内経済の状態を示す部門はいずれも堅調だった。歴史的な高インフレ下においても米GDPの約7割を占める個人消費に力強さが窺えたことは景気減速懸念を和らげ、安心材料だろう。 一方、連邦準備制度理事会(FRB)が注目している1-3月期の雇用コスト指数は前期比+1.4%と、予想(+1.1%)を上回り、四半期の伸びとしては統計上最大だったという。下方硬直性があり、一度上昇すると低下傾向に転じるのに時間がかかる賃金項目で根強いインフレ圧力が確認されたことは、今後のFRBの引き締めスタンスを強めかねず、警戒材料となる。 しかし、中長期的には上値切り下げトレンドの継続が予想されるものの、短期的には3-4日のFOMC通過後にはあく抜け感で相場は反発する可能性が高そうだ。年明けからの米金融政策の動向を振り返ってみると、FRBの市場との対話方法には規則性があるように見受けられる。今となっては根強いインフレ圧力を抑えるために、多少の資産価格の下落は致し方ないとも思っていそうだが、それでもFRBが株価急落など極端な動きに繋がるようなネガティブサプライズを引き起こすことは避けたいと考えていることに変わりはないだろう。 そうした考えを持つFRBは、これまでFOMCイベントがネガティブサプライズにならないよう、事前の高官発言などを通して市場に引き締め加速を織り込ませる一方、FOMC直前には会合結果がほとんど分かり切った状態を作り、実際にFOMCでは既知の内容以外の目新しい内容をあまり発表しないという方法を採用してきた。そして、イベント通過後から、また次回会合に向けた織り込みを、高官発言を通して行っていくという過程を繰り返してきている。今回もこれまでのパターンに倣えば、イベント通過後は短期的にはあく抜け感が台頭しそうだ。 上記を踏まえれば、イベント前の東京市場での最後の取引日にあたる今日は、短期的には買い場になると考えられる。しかし、今回は別の視点で気を付けるべきことがある。先週末の米株市場の急落を受けて、ナスダックは今年に入ってからの安値を更新。多くの機関投資家が運用指標とする代表的な株価指数S&P500も、終値ベースでは今年最安値を記録し、2月24日にザラ場で付けた最安値4114.65を窺う水準にまで下落してきている。 こうしたなか、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらが株式市場からの資金の大量流出を警告している。同行ストラテジストチームによると、株式ファンドには2021年の初めから1兆1000億ドル(143兆円)の巨額資金が流入したが、エントリーポイントは平均で4274だったという。そのうえで、S&P500の4000割れは、米株式から大量の資金流出を誘発する「臨界点」になる可能性があると指摘した。 先週末にかけての米株価指数の乱高下の動きから窺えるように、足元の相場はオプション取引に係る需給要因などでボラティリティー(変動率)が非常に高い状態だ。何らかのきっかけでS&P500がこの臨界点とされる4000を割り込むようなことがあると、売りが売りを呼ぶような非合理的な連鎖反応が起こる可能性もある。今回は、際どい水準にある株価指数が、イベント通過後の短期的なあく抜けといったこれまでのセオリーを覆す余地があることに留意したい。 他方、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイが4月30日に開催した株主総会では、同社が1-3月期に、四半期ベースでこれまでに例がないほどに大量に株式を購入したことが判明。バリュー投資を徹底する同社のこうした動きは、足元の株式市場がファンダメンタルズに照らして割安であることを示唆しており、心強くもある。ただ、同社が買い増したのは石油大手のシェブロンや石油・天然ガス会社のオキシデンタル・ペトロリアムなどエネルギー関連が大半だ。足元の不安定な相場においても買えるものはあるが、買えるものはかなり限られているようだ。(仲村幸浩)
<AK>
2022/05/02 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は反発、「決算序盤の情勢」と「米市場にくすぶる懸念」
日経平均は反発。162.19円高の26548.82円(出来高概算5億9000万株)で前場の取引を終えている。 27日の米株式市場でNYダウは反発し、61ドル高となった。中国経済の減速懸念が和らいだことなどを背景に値ごろ感から買いが入った。ただ、米金融引き締めや景気の先行きへの警戒感も根強く、前の日に809ドル安となった後としては戻りが鈍かった。決算を受けた反応もまちまちで、ビザやマイクロソフトが買われる一方、ボーイングは売られた。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-0.01%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-0.49%となったが、時間外取引でメタ・プラットフォームズやクアルコムが上昇。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで43円高からスタートすると、朝方は前日終値を挟んでもみ合う展開だった。その後、3連休を前に売り方の買い戻しが入ったとみられ、前引けにかけて26568.79円(182.16円高)まで上昇する場面があった。 個別では、決算発表のキーエンス<6861>やルネサス<6723>、アドバンテス<6857>が5%超の上昇。キーエンスは順調な業績拡大が続き、アドバンテスも堅調な今期予想が好感されている。ルネサスは決算とともに大株主の売却意向を受けた自社株買い実施を発表した。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>がしっかり。また、フューチャー<4722>などが東証プライム市場の上昇率上位に顔を出している。一方、OLC<4661>が商いを伴って11%の下落。今期業績予想や新たに発表された中期経営計画が市場予想を大きく下回った。エムスリー<2413>も決算で成長鈍化と受け止められて5%近い下落。その他売買代金上位では郵船<9101>が小安い。また、ZOZO<3092>が急落し、ピーシーエー<9629>などとともに東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。 セクターでは、鉄鋼、ガラス・土石製品、その他金融業などが上昇率上位で、その他も全般堅調。一方、サービス業、陸運業、その他製品など4業種が下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の69%、対して値下がり銘柄は29%となっている。 本日の日経平均は反発し、3ケタの上昇で前場を折り返した。日足チャートを見ると、前日にやや長めの下ひげを付けたこともあって底堅さが感じられる動き。ひとまず前日の下落分の半分は取り戻したが、26600円台に位置する5日移動平均線には届いていない。業種別騰落率を見ると、ここ数日下落の大きかった市況関連セクターなどが堅調で、やはり3連休を前に売り方の買い戻しが相場全体を押し上げている可能性がある。前引けの日経平均が+0.61%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+1.00%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆4000億円あまりとやや膨らんではいるが、決算を受けた個別物色が増えてきた割にはさほど賑わっていない印象だ。 新興株ではマザーズ指数が-1.33%と続落。前日の安値(686.13pt)こそ割り込んでいないが、700pt台を維持できず、じり安基調にムードの悪さを感じざるを得ない。本日、東証グロース市場に新規上場したクリアル<2998>は公開価格比+72.0%という堅調な初値を付け、ペットゴー<7140>は買い気配が続いている。また、前日上場したモイ<5031>は公開価格比+91.9%という初値を付け、その後の株価も大きく上昇。こうしたIPO(新規株式公開)銘柄を中心に、個人投資家による短期の値幅取りを狙った物色は足元でも散見される。ただ、株価指標をあまり意識しない買いには不安もある。主力IT株の軟調ぶりからグロース(成長株)色の強い新興株にはなお厳しい環境と考えざるを得ない。 さて、日経平均の値上がり寄与度上位にはアドバンテスや信越化<4063>がランクインしており、値がさハイテク株の好決算が日経平均を押し上げていることがわかる。電子化進展で関連製品の需要が増えることへの期待を支えそうだ。また、前場の取引時間中に決算発表したデンソー<6902>も急伸しており、自動車生産の正常化や円安効果に期待がかかる。 ただ、全体として決算内容は強弱まちまちといった感もあり、OLCの値幅や出来高の膨らみ方を見るとサプライズの大きさが窺える。入園者数上限、客単価とも物足りないとの声が聞かれたが、このところ経済活動の正常化への期待が高まっていただけに失望されやすかったとも考えらえる。感染抑制の取り組みが長期化しているというだけでなく、インフレ等により消費の先行きに不安がくすぶるかもしれない。また、そうした消費者の置かれた状況を背景に、求める顧客体験のハードルが高まっている可能性もあるだろう。製造業でも原材料や物流のひっ迫といった供給制約の影響が大きい企業が少なからず見られる。 決算発表シーズン序盤のこうした情勢を見ると、今回の決算内容が株式相場全体のトレンドを明確に上向かせるとまでは期待しづらそうだ。 前日の米市場動向も確認しておこう。債券市場では10年物国債利回りが2.83%(+0.11pt)、金融政策の影響を受けやすい2年物が2.59%(+0.07pt)に上昇した。利回り妙味や安全志向の買いで先週末から長期金利はやや低下していたが、連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測を背景に先高観は根強いようだ。5年物国債入札が「やや低調」だったこともこうした見方を裏付けるだろう。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.88%(+0.03pt)と4日ぶりに上昇。商品では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)が1バレル=102.02ドル(+0.32ドル)と小幅続伸した。やはりインフレ観測も根強い。 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が31.60(-1.92)と高止まりしている点も気掛かりだ。このところ株式相場が反発する局面でもVIXの低下が鈍く、ボラティリティー(株価変動率)の高まりを織り込む動きが容易に後退しないことが窺える。先行きへの根強い警戒感を背景に、日本株でも積極的に買い持ちを増やす動きは限られるだろう。(小林大純)
<AK>
2022/04/28 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反落、金利低下でもグロース株買いは控えるべき?
日経平均は大幅反落。501.32円安の26198.79円(出来高概算5億7243万株)で前場の取引を終えている。 26日の米株式市場でNYダウは809.28ドル安と大幅反落。都市封鎖(ロックダウン)が強化されている中国経済を中心とした景気後退懸念で投資家心理が悪化。また、ロシア外相が核戦争のリスクに言及したほか、ロシアがポーランドへの天然ガスの供給停止を予告したとの報道も売り材料となった。リスク回避の動きが強まるなか、ナスダック総合指数は-3.95%と大幅反落。こうした流れを引き継いで、日経平均は386.97円安でスタートすると、一時26051.04円(649.07円安)まで下落。節目の26000円手前で下げ止まったが、戻りは鈍く、その後は一進一退の展開となった。 個別では、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>などの半導体関連、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>などの日経平均寄与度の高い銘柄が大きく下落。今期見通しが市場予想を下回ったファナック<6954>は7%安。日東電<6988>はライフサイエンス事業の見通しが嫌気され5%安。シマノ<7309>は第1四半期が市場予想を下回ったことなどから急落し、東証プライム値下がり率上位に入っている。ほか、Sansan<4443>やラクス<3923>などの中小型グロース(成長)株が上位にランクイン。一方、郵船<9101>、住友鉱<5713>、INPEX<1605>など市況関連株の一角が上昇。投資判断の格上げ観測で三菱重<7011>が大幅高。今期見通しが好感されたアマノ<6436>は値上がり率トップ。業績予想を上方修正した三越伊勢丹<3099>、10月からのビール類値上げを発表したアサヒ<2502>も大きく上昇。 セクターでは精密機器、証券・商品先物取引、サービスなどが下落率上位に並んだ一方、海運、鉱業、電気・ガスなどが上昇率上位となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の86%、対して値上がり銘柄は12%となっている。 日経平均は値幅を伴った下落で、日足のローソク足では窓アケを形成。下向きの5日移動平均線からは大きく下放れた。日足一目均衡表でも雲下限を下放れてきている。売買代金は1超4000億円程と、前日までに比べてやや膨らんでいるが、値幅の割にはさほど大きくない。値がさのハイテク・グロース(成長)株の下落が指数の下げを主導しているようだ。 前日のナスダックやフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅下落を受けて、東京市場でも半導体関連などのハイテク株の下落が目立つ。一方、ナブテスコ<6268>が6%安と急落するなど、中国関連株の一角の下落が厳しく、景気減速懸念も根強い様子。本日買われているのは前日に下落率が大きかった海運や鉱業といった市況関連株くらい。これらは、前日の下落を受けて押し目買いが入りやすいところに、ロシアによる天然ガス供給を巡る報道が伝わったことで、改めて需給逼迫の思惑の強まりが追い風となったようだ。 前日の米国市場では、安全資産である国債が買われ、金利が幅広い年限で大幅に低下するなか、株式には広く売りが広がり、典型的なリスクオフムードの様相となった。「恐怖指数」の呼び名を持ち、将来の株価変動率を表すVIX指数は33.52(+6.50、+24.05%)と急騰し、警戒水準とされる30を大幅に上回った。 金利が低下するなかでも、ナスダックやSOXの下落率は4%前後と、NYダウの2.3%を大きく上回り、両指数ともに今年に入ってからの安値を更新した。景気減速懸念が強まるなかでも、先週のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演での発言から、金融引き締めペースの後退や再緩和への転換は当面期待しにくいとの見方に変わりつつあることが、こうしたハイテク・グロース株の急落の背景にありそうだ。 実際、インフレ懸念はむしろ強まっている。前日は、ロシア産の天然ガス供給を巡る報道で商品市況の需給逼迫への警戒感が再び高まると同時に、住宅価格指標の上振れが目立った。米連邦住宅金融局(FHFA)が発表した2月FHFA住宅価格指数は前月比+2.1%と、1月の+1.6%からの鈍化予想に反して拡大し、過去最大を記録。同時刻に発表された2月S&PコアロジックCS20都市住宅価格指数は前年比+20.20%と、1月の+18.94%から予想以上に拡大し、こちらも過去最大となった。ロシアが今後、欧州などに対しても天然ガスの供給停止を再び迫るのか不透明感がくすぶり、商品市況の一段の先高観は拭えない。同時に下方硬直性のある住宅分野での価格指標の上振れも相まって、FRBはますますインフレを抑え込むことに躍起となりそうだ。 むろん、今回発表された住宅価格の指標は1月分でやや情報が古い。足元では米国で住宅ローン金利が大幅に上昇してきており、住宅販売価格も沈静化する兆候が見られている。しかし、それでも、パウエル議長は先週、「インフレはピークアウトした可能性があるが、それは当てにできない」とし、不確かな見通しよりも実績のデータに基づいて政策運営する姿勢を見せた。そのため、今回の住宅価格指標の上振れを軽視することはできない。この先も引き締め懸念は根強くつきまとうだろう。「金利低下故のハイテク・グロース株買い」という安易な投資戦略は危うさを伴いそうだ。 米国市場の取引終了後、注目のマイクロソフトとアルファベットが決算を発表した。結果と株価反応はまちまちで、投資家心理の改善には繋がりにくい形となった。今晩には2月に“メタショック”を引き起こした、Facebookなどソーシャルネットワークサービスを運営するメタ・プラットフォームズの決算が控えている。ネットフリックスのような急落劇を再び引き起こすようなことがあると、ゴールデンウイークの連休入り前、最後の取引となる明日の東京市場では一段と売りが広がりかねない。 急落した直後の今晩の米国市場の動向も含めて、結果を見極めたいの思惑が広がりやすく、後場の日経平均は下げ渋っても、戻りは鈍く、時間外取引の米株価指数先物やアジア市況の動き次第では、再び26000円に向けた下押しが警戒されよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/04/27 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反発、景気懸念による期待インフレ低下は痛しかゆし?
日経平均は3日ぶり反発。135.87円高の26726.65円(出来高概算4億8000万株)で前場の取引を終えている。 週明け25日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反発し、238ドル高となった。中国の新型コロナウイルス感染拡大に伴う都市封鎖(ロックダウン)が世界経済の減速につながるとの懸念が広がり、中国株式相場の大幅下落もあって売りが先行。ただ、原油先物相場の下落や長期金利の低下を受け、決算期待の根強いハイテク株を中心に買いが入った。ナスダック総合指数は+1.28%と4日ぶりに反発。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで152円高からスタートした。朝方に前日終値近辺まで失速すると、香港・上海株の反発スタートを受けて前場中ごろを過ぎ26778.43円(187.65円高)まで上昇する場面があった。しかし、上海総合指数が早々にマイナスへ転じたことで日経平均も伸び悩んだ。 個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が4%上昇し、1銘柄で日経平均を約44円押し上げている。米半導体株高の流れから東エレク<8035>も堅調。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>やファーストリテ<9983>が小高い。前期業績の上方修正と増配を発表した塩野義<4507>は2%の上昇となり、第1四半期決算が好感されたキヤノンMJ<8060>は急伸。また、上期業績を上方修正したインソース<6200>は東証プライム市場の上昇率トップとなっている。一方、郵船<9101>や任天堂<7974>が軟調で、INPEX<1605>は3%超の下落。インドネシアのニッケル製錬所建設中止を発表した住友鉱<5713>や、第1四半期決算が市場予想に届かなかった中外薬<4519>は急落し、キヤノン電子<7739>などとともに東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。 セクターでは、ゴム製品、陸運業、サービス業などが上昇率上位。一方、非鉄金属、鉱業、海運業などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 本日の日経平均は海外市場の動向睨みで上下に振らされつつも、ひとまず3ケタの上昇で前場を折り返した。もっともここ2日で960円あまり下落していただけに、自律反発としても物足りない印象は拭えない。個別・業種別では、中国株の先行き懸念から前日大きく下落したソフトバンクGが買われているほか、中小型を中心としたグロース(成長)株が堅調。一方で原油などの商品相場が下落し、市況関連株に売り。前引けの日経平均が+0.51%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.19%。値がさ株がけん引役とあってTOPIXの伸びは鈍い。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆2000億円あまりで、ここ数日と同様にさほど膨らんでいない。 新興株ではマザーズ指数が+1.61%と9日ぶりに反発している。こちらも朝方伸び悩む場面があったが、中小型グロース株への買いが追い風となってまずまず堅調だ。日足チャートを見ると、700pt割れからすかさず切り返してきた点には安心できるものの、下降する5日移動平均線(710pt近辺)を明確に上抜けできてはいない。なお、明日27日はストレージ王<2997>とモイ<5031>、翌28日はクリアル<2998>とペットゴー<7140>が東証グロース市場に新規上場する。モイはライブ配信サービス「ツイキャス」で知られる。これらの後は5月末までIPO(新規株式公開)がないため、個人投資家の関心を集めそうだ。 さて、25日の米市場動向を見ると、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)が1バレル=98.54ドル(-3.53ドル)と続落。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.91%(-0.07pt)に、10年物国債利回りは2.82%(-0.08pt)にそれぞれ低下した。 米10年BEIは先週、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締め観測が強まるなかで一時3%台まで上昇し、「FRBはインフレを退治できない(著名投資家デービッド・アインホーン氏率いる米ヘッジファンド、グリーンライト・キャピタル)」との見方も出ていた。それだけに原油価格の下落とBEI低下は安心材料と受け止められるかもしれないが、その背景がロックダウン拡大による中国経済の減速懸念とあれば素直に喜べないだろう。本日の上海総合指数は前日ほど弱くないものの、一進一退の展開でコロナ禍への懸念に揺れる投資家心理を映しているようだ。 また、世界中の投資家から投資資金を集めていた中国テック株の下落を不安視する向きもある。足元下げ渋っているのに安心感を覚える投資家が多いのはソフトバンクGの反発からも窺えるが、海外メディアの記事では中国ハイテク株の下落による「痛みはこれから(DZバンクのアナリスト、マヌエル・ミュール氏)」との指摘が見られる。 前日の当欄で触れられていたが、日米とも6月限のプットオプション(売る権利)の建玉が増えているようで、「5月に売れ(セル・イン・メイ)」への警戒感が強いことがわかる。また、前日のように相場が大きく動く局面では、カウンターパートとなっている金融機関などからヘッジ目的の先物売りが出やすいだろう。5月3~4日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えていることもあり、当面落ち着かない展開とみておいた方がいいだろう。 本日も国内ではファナック<6954>、キヤノン<7751>などが決算発表を予定しており、米国でも企業決算とともに経済指標の発表が多い。特に2月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数などはインフレの行方を占ううえで注目されそうだ。(小林大純)
<AK>
2022/04/26 12:16
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、イベント前のヘッジ売りによる一段安に注意
日経平均は大幅続落。526.56円安の26578.70円(出来高概算4億9817万株)で前場の取引を終えている。 22日の米株式市場でNYダウは981.36ドル安と大幅続落。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が大幅利上げを示唆したことを受けた投資家心理の悪化で、寄り付き後下落。終日、年内の利上げペース加速を警戒した売りが続き、引けにかけて下げ幅を拡大した。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は-2.54%と大幅に3日続落。先週末の米株大幅続落劇が投資家心理を悪化させるなか、週明けの日経平均は412.78円安でスタートすると、一時26487.84円(617.42円安)まで下落した。自律反発狙いの買いから下げ渋る場面も見られたが、中国での都市封鎖(ロックダウン)の再強化も嫌気されるなか、時間外取引のNYダウ先物が下げ幅を広げたことも重しとなり、軟調な展開が続いた。 個別では、ソフトバンクG<9984>、日本電産<6594>が6%超の下落で、ファーストリテ<9983>は4%安。レーザーテック<6920>、キーエンス<6861>、ダイキン<6367>なども大幅安で、値がさのハイテク・グロース(成長)株の下落が目立つ。郵船<9101>やINPEX<1605>、住友鉱<5713>などの市況関連株も総じて軟調。業績予想を下方修正したANA<9202>、仏ルノーによる保有株売却が警戒された日産自<7201>は共に4%近い下落。1-3月期の収益伸び悩みが嫌気されたジャフコG<8595>、業績予想を下方修正した東急建設<1720>は揃って東証プライム値下がり率上位に並んだ。一方、東エレク<8035>が小幅ながら逆行高。日立物流<9086>、SHIFT<3697>も大きく上昇。本決算が好感された東京製鐵<5423>やエレマテック<2715>は値上がり率上位に顔を出した。東京製鐵は自社株買いも発表している。 セクターでは鉱業、空運、海運などを筆頭にほぼ全面安。一方、水産・農林のみが小幅ながら上昇。東証プライムの値下がり銘柄は全体の87%、対して値上がり銘柄は11%となっている。 週明けの日経平均はマド空けを伴った下落で大幅続落。25日移動平均線に続き、5日線を下回り、上昇傾向にあった25日線は下向きに転換した。テクニカルの悪化が意識される形で、買いが入りづらい状況だろう。 先週末の米株市場は終日軟調な展開。国際通貨基金(IMF)主催の討論会で、パウエル議長が利上げに積極的な姿勢を示したことを嫌気した売りが続いた。パウエル氏は「インフレは3月にピークがあった可能性があるが、それは当てにならない」、「適切な場合は政策を厳しくするつもりである」などと発言。米国での3月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)の結果公表後、インフレはピークを打ったとの見方が強まり、市場では一部で、年央からはFRBの引き締め姿勢が緩和されるのではないかといった期待があった。しかし、先週のパウエル氏の発言でこうした見方は修正を迫られる格好となった。 短期金融市場はすでに5、6月に続いて、7月までの0.5ptの利上げをほぼ織り込み、6月にいたっては0.75ptの利上げまで織り込みつつある。5月FOMCではさすがに0.75ptの利上げの可能性は限りなくゼロに近く、0.5ptの利上げがほぼ確実であり、足元の市場の織り込みペースは急速だ。3月半ばから株式相場がリバウンド基調を強めるなか、特に米国市場を中心に先行きに楽観的な見方が広がっていた背景もあったため、今回の織り込みと、先週末にかけての株式市場の調整をもって楽観の修正もある程度進んだといえる。 一方、日本国内のオプション市場の動向をみると、先週末にかけては、5月限ではプットとコールともに目立った動きはなかったが、6月限では、権利行使価格26000円のプットの建玉が大きく積み上がる動きが見られた。ゴールデンウイーク(GW)前、連休中のFOMCイベントに備えた下方リスクをヘッジする動きが出てきていると考えられる。 ここ数週間は先物手口で海外勢の目立った動きが少なく、方向感も定まっていない様子が窺えた。そうした意味では、直近までの海外勢の持ち高は中立水準にあったとみられ、この先、イベントに備えた売り持ち高の積み上がりが強まる可能性がある。今週、プット買いが更に進むようだと、カウンターパートであるディーラーによる先物を使ったヘッジ売りが膨らむ可能性があるため、注意が必要だろう。 後場の日経平均は軟調もみ合いが継続しそうだ。今週は日米で市場への影響力が大きい主要企業の決算が相次ぐ。これらの結果次第では相場の方向性が決まりかねないため、見極めたいとの思惑から積極的な押し目買いは限られるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/04/25 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は4日ぶり大幅反落、やはり「FRBは市場にフレンドリーでなかった」
日経平均は4日ぶり大幅反落。519.73円安の27033.33円(出来高概算4億9000万株)で前場の取引を終えている。 21日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、368ドル安となった。良好な経済指標や企業決算を受けて朝方300ドル超上昇する場面もあったが、金融当局の要人から利上げに積極的な発言が相次ぎ出て、幅広い年限で金利が上昇。パウエル連邦準備理事会(FRB)議長も国際通貨基金(IMF)主催の討論会で5月の0.5pt利上げなど金融引き締め加速を示唆し、ハイテク株を中心に幅広い銘柄で売りが広がった。ナスダック総合指数は-2.06%と続落し、終値で3月15日以来の安値を付けた。本日の東京市場もこうした流れを引き継ぎ、日経平均は355円安からスタートすると、朝方には一時26904.38円(648.68円安)まで下落。その後は27000円を挟んで軟調もみ合いとなった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が5%超の下落。米金利上昇がグロース(成長)株の重しとなり、前日の米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-2.66%と大きく下落した。その他売買代金上位でも郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>、川崎船<9107>など全般に軟調ぶりが目立つ。また、テスHD<5074>が東証プライム市場の下落率トップで、中小型グロース株が上位に多く顔を出している。一方、決算が注目された日本電産<6594>は2%超の上昇。市場予想下振れを嫌気した売りが出る場面もあったが、あく抜け感が意識されているようだ。同じく決算発表のディスコ<6146>、再編提案の募集を発表した東芝<6502>は3~4%の上昇。また、米ファンドKKRによる買収が報じられた日立物流<9086>はストップ高水準での買い気配となっている。 セクターでは、非鉄金属、鉱業、サービス業などが下落率上位で、その他も全般軟調。保険業と空運業の2業種のみ上昇した。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の88%、対して値上がり銘柄は10%となっている。 前日の米株がパウエルFRB議長ら金融当局の要人によるタカ派的な発言で下落した流れを引き継ぎ、本日の日経平均は朝方に600円超下落する場面があった。その後は27000円水準で踏みとどまろうとする動きも見られるが、戻りの鈍い印象は拭えない。日足チャートを見ると、ここ数日は上昇する5日移動平均線に沿って水準を切り上げていただけに強気の向きがやや増えていた。しかし、本日の下落で同線を割り込んできており、トレンド好転への期待も好転せざるを得ないか。前引けの日経平均が-1.89%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.32%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆2000億円あまりで、値幅の割に膨らんでいる印象はない。 業種別騰落率を見ると、非鉄金属や鉱業といった市況関連株が下落率上位で、これは米株と同様の動きだ。原油先物相場が上昇するなど商品市況は大きく下落したわけではないが、ファンドの清算などに伴い関連銘柄に売りが出たのではないかといった見方があった。一方、空運株が逆行高となっているが、米市場ではユナイテッド航空ホールディングスが決算を受けて大きく買われた。直近では米運用大手PIMCOのファンドマネージャー、エリン・ブラウン氏がこれから有望な投資分野の1つとして「娯楽・ホスピタリティ」を挙げているとも伝わっている。 新興株ではマザーズ指数が-2.59%、大幅に7日続落している。こちらも一時700ptを割り込むと同水準で踏みとどまろうとする動きを見せているが、トレンドの悪さが意識されざるを得ないだろう。売買代金上位ではメルカリ<4385>やBASE<4477>の軟調ぶりが目立つ。メルカリは下落基調が続き、2020年4月以来の安値水準だ。前日の当欄でも触れたが、日米でハイグロース(高成長)銘柄の苦境が続いている。 さて、前日の当欄「パウエル氏発言や企業決算を注視」で示唆したとおり、パウエル氏ら米金融当局の要人の発言を受けて株式・債券相場は大きく振れる格好となった。パウエル氏の発言として「5月の0.5pt利上げを検討」などといったものが伝わったが、米債券市場が今後数会合での0.5pt利上げを明確に織り込んでいるだけに、「特段の目新しさはない」といった声も聞かれた。 しかし、このところ当欄で述べていたように、目先の利上げペース以上に焦点となっているのは「インフレの持続性」や「目先の利上げ後の金融政策」だろう。この点について、パウエル氏は「インフレは3月にピークに達した可能性もあるがわからない」と述べたうえで、経済のソフトランディング(軟着陸)に向けて善処しつつも物価の安定回復を優先させるような印象を与えた。 討論会前の20日は米長期金利が低下し、21日の東京市場ではハイテク株や景気敏感色の強い銘柄の上昇が目立ったが、これらはパウエル氏が「経済データに目配りして柔軟に対応する姿勢を示すのでは」といった思惑による持ち高調整の動きだったのかもしれない。前日の当欄で述べたとおり、パウエル氏発言の注目点として「目先の利上げ後について『データ次第』との姿勢が示されるか」などといったことが市場関係者から挙げられていた。結果的にあくまでインフレ対応を重視する姿勢が示されたことで、一部にあった再緩和への期待もさらに後退せざるを得なくなったのだろう。「FRBは市場にフレンドリーでなくなった」ことを再確認したとも言える。 もっとも「インフレは一時的」との見方も根強く残り、引き続き相場が一方向に振れるとまでは言えないだろう。ただ、FRBの積極的な金融引き締め姿勢を受けてリセッション(景気後退)を懸念する声も聞かれ、日米の空運株の上昇などには難しい環境下で買える銘柄を模索する投資家の姿が透けて見える。(小林大純)
<AK>
2022/04/22 12:16
ランチタイムコメント
日経平均は3日続伸、パウエル氏発言や企業決算を注視
日経平均は3日続伸。329.39円高の27547.24円(出来高概算4億8000万株)で前場の取引を終えている。 20日の米株式市場でNYダウは続伸し、249ドル高となった。IT大手のIBMや日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が好決算を受けて急伸し、NYダウを押し上げた。また、インフレのピークアウト期待が根強いうえ、20年物国債の入札結果が好調だったことから、金利が幅広い年限で低下したことも買いを誘ったようだ。ただ、動画配信のネットフリックスの株価急落でハイテク株に売りが広がり、ナスダック総合指数は-1.22%となった。本日の日経平均は米国でのNYダウ上昇や金利低下を好感して41円高からスタートすると、寄り付き後も上げ幅を拡大。前日下落していた半導体関連などの値がさ株を中心に買いが入り、日経平均は前引けにかけて27571.12円(353.27円高)まで上昇する場面があった。 個別では、売買代金トップのレーザーテック<6920>が6%近く上昇し、東エレク<8035>も3%超の上昇。米金利低下で買い安心感が広がったほか、半導体製造装置のオランダASMLホールディングの決算が受注堅調と受け止められたようだ。花王<4452>もP&Gの好決算が意識されているようで3%超上昇している。その他売買代金上位ではファーストリテ<9983>やソニーG<6758>が堅調。一部住宅建材の値上げ実施を発表したLIXILG<5938>が急伸し、新サービスを発表したマイネット<3928>はストップ高を付けている。一方、郵船<9101>、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、任天堂<7974>は小安い。業績観測が報じられたキヤノン<7751>は2%超の下落。また、BEENOS<3328>やグリー<3632>が東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。 セクターでは、金属製品、パルプ・紙、精密機器などが上昇率上位。一方、鉱業、保険業、石油・石炭製品などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は35%となっている。 本日の日経平均は300円超上昇し、27500円台を回復して前場を折り返した。日足チャートを見ると、5日や25日といった短期の移動平均線の上昇に沿った形で、緩やかに下降する75日移動平均線を上抜け。値動きの好転が意識されやすいかもしれない。個別では、米金利低下や海外企業の好決算を受けて半導体・トイレタリー関連を中心に買われているが、値がさ株が多いだけに日経平均の押し上げに寄与している。ただ、ネットフリックスの急落が意識されてか、東証プライム市場の下落率上位にはIT・インターネット関連株が多い。前引けの日経平均が+1.21%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.61%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆2000億円ほどで、さほど膨らんでいる印象はない。 新興株ではマザーズ指数が-0.89%と6日続落。ここ数日と同様に朝方買い優勢となる場面もあったが続かず、日経平均とは対照的に軟調な展開だ。主力株は高安まちまちといったところだが、やはりIT・ネット関連株全般に売り優勢となっているようだ。なお、東証スタンダード市場では新規上場したフルハシEPO<9221>が公開価格比+52.0%という初値を付けた(名証メイン市場にも上場)。木質系廃材のリサイクル・チップ販売等を手掛け、本日の相場全体の地合いではテック系より買いやすかったのかもしれない。また、名証ネクスト市場にはASNOVA<9223>が新規上場した。 さて、20日の米主要株価指数はNYダウ+0.71%、S&P500指数-0.06%、ナスダック総合指数-1.22%とまちまちだった。NYダウは35000ドルを上回り、3月後半の直近戻り高値(35372.26ドル、取引時間中)に迫る動きを見せている。ただ、ナスダック総合指数は高寄り後に失速。納税期限通過で個人投資家に人気のハイグロース(高成長)銘柄が再び買われ、ナスダック総合指数もここ数日のもみ合いから上放れすると期待する向きがあった。「ネットフリックスショック」がこうした期待を腰折れさせてしまった影響は小さくないだろう。世界中の投資家から資金を集めていたネットフリックスは1日で7兆円近い時価総額が消失した。 急ピッチの米金利上昇はひとまず一服し、20日の10年物国債利回りは2.83%(-0.10pt)で終了。節目の3%を前に低下へ転じた格好だ。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.92%(-0.01pt)にやや低下したが、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は再びマイナスとなった。商品では、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)が1バレル=102.75ドル(+0.19ドル)と反発、金先物相場(ニューヨーク商品取引所、COMEX6月物)が1トロイオンス=1955.6ドル(-3.4ドル)と続落し、まちまちだった。 一昨日の当欄「焦点は『利上げペース』より…」で指摘したとおり、先週後半から「インフレ長期化(ひいては金融政策の将来的な再緩和への期待後退)を織り込む動きが強まっていたが、なお金融大手を中心に「インフレは一時的」「債券市場は利上げを過度に織り込み過ぎ」との指摘が根強く聞かれることから、相場は一方向に進みづらいだろう。 そして本日はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の討論会参加が予定されており、金融政策の先行きを巡って相場が大きく変動する可能性がある。市場関係者からは(1)目先の利上げ後について「データ次第」との姿勢が示されるか、(2)量的引き締め(QT)について先の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で示された「月950億ドル上限」から増額の余地が示されるか、などに注目したいといった声が聞かれる。 また、国内でも本日から日本電産<6594>などを皮切りに3月期決算発表が本格化するため、企業業績の動向を注視したいところだろう。後場の取引では徐々に様子見ムードが強まる可能性がある。(小林大純)
<AK>
2022/04/21 12:20
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、コロナ後初の実質金利プラス転換、今晩の米株市場の変調を注視
日経平均は続伸。154.90円高の27139.99円(出来高概算5億8471万株)で前場の取引を終えている。 19日の米株式市場でNYダウは499.51ドル高と3日ぶり大幅反発。経済指標の上振れなどを背景に上昇スタート。公共交通機関でのマスク着用義務が撤回されたことで経済活動再開への期待が一段と高まったことも支援。2021年分の確定申告の締切を通過し、税還付金による新規投資なども追い風になったとみられ、金利上昇のなかでも個人投資家人気の高いハイテク株も買われ、ナスダック総合指数は+2.15%と大幅反発。米株高に加えて1ドル=129円台まで進んだ円安を追い風に輸出関連企業に買いが先行し、日経平均は225.70円高でスタート。朝方は円安が追い風になる自動車関連のほかグロース(成長)株にも買いが入り、日経平均の上げ幅は一時400円を超えた。一方、急速に進む米金利の上昇などが警戒され、急失速。27000円手前で下げ止まったが、その後はこう着感の強い展開が続いた。 個別では、円安進行を追い風にトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、日産自<7201>が軒並み大幅に上昇。航空会社のユナイテッドやクルーズ運営のカーニバルが買われた米株市場の動向を映し、JAL<9201>やエアトリ<6191>、OLC<4661>などのレジャー関連も上昇。米金利上昇を支援要因に第一生命HD<8750>、三菱UFJ<8306>も堅調。東証プライム値上がり率上位にはシティインデックスイレブンスの大量保有が明らかになった住阪セメ<5232>、業績予想を上方修正したイーレックス<9517>、業績・配当予想の上方修正や中計発表が好感されたジャックス<8584>などがランクイン。一方、レーザーテック<6920>や三井ハイテック<6966>、ルネサス<6723>、キーエンス<6861>、ベイカレント<6532>などのハイテク・グロース株が軟調。INPEX<1605>や住友鉱<5713>など資源関連も本日は一服感。 セクターでは輸送用機器、精密機器、ゴム製品などが上昇率上位に並んだ一方、不動産、鉱業、非鉄金属などが下落率上位に並んだ。東証プライムの値上がり銘柄は全体の67%、対して値下がり銘柄は29%となっている。 前日の米株市場の大幅高に反して、本日の日経平均は上昇してはいるものの、方向感に欠ける動きで強い動きとまでは言えない。一時25日移動平均線を上抜いたものの、その後の失速で、上ヒゲを残し、同線が上値抵抗線として意識される格好となった。明日の日本電産<6594>を皮切りに3月期企業の本決算シーズンが本格化するのを前に、様子見ムードが強く、積極的に買い上がる雰囲気でない状況に変わりはないのだろう。 前日の米国市場では、ハイテク・グロース株が大幅高だったものの、米10年債利回りは2.94%(+0.08pt)まで大きく上昇。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.93%(+0.01pt)と小幅な上昇にとどまり、名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は遂に新型コロナショック後で初めてプラスに転じた。実質金利のプラス転換は時間の問題とは思われたが、一昨日の当欄で指摘してから僅か2日と、想定以上のスピードでの実現となった。 これだけの速いペースでの金利上昇にも関わらず、前日の米株市場ではナスダックが大幅高になるなど、物色動向としてはちぐはぐな印象を受けた。ただ結局、本日の東京市場でハイテク・グロース株の多くが朝高後に失速し、マイナスに転じているのを見る限り、やはり金利に対する警戒感は拭い去ることはできないようだ。実際のところ、前日の米ハイテク株高は、18日の確定申告締切日を通過し、税還付金を手にした短期目線の個人投資家が取引主体だったことが要因として大きいのではないだろうか。上昇率上位の銘柄を見ても、今年に入って大きく売り込まれていたような銘柄が多く、自律反発狙いなど短期目的の買いが中心だった印象だ。中長期目線の投資家が様子見を決め込むなか、最近の取引参加者の多くはこうした短期目線の投資家であると考えられるため、動き方にも整合性がつきそうだ。 そうしたなか、心配なのは今晩。米企業の決算発表も今後本格化していくが、大型テック企業として個人投資家からの人気も高い、動画配信サービスを提供するネットフリックスが前日の米株市場の取引終了後に先んじて決算を発表した。1-3月のストリーミングサービスの会員数は20万人の純減で、2011年以来の会員減少になったという。また、4-6月にはさらに200万人減るとの予想を示した。これを受け、株価は時間外取引で25%急落した。市場の注目度も高い銘柄だけに、投資家心理を悪化させることは避けられないだろう。また、税還付金を手にしてハイテク株に投資した個人投資家が多いとする仮定が正しいとすれば、これら投資家は早々に含み損を抱えることになり、市場の重しにもなりかねない。 本日の東京市場では、グロース銘柄が集まるマザーズ指数が朝高後に急失速し、大幅に5日続落となっている。ローソク足は5日連続の陰線で、水準も切り下げ継続、25日線を明確に下放れる格好となっており、明らかに弱さが目立っている。東京市場では、既にネットフリックスの決算を受けた今晩の米株市場の下落を警戒しているようだ。また、米10年債利回りは東京時間の本稿執筆時点において2.96%まで上昇している。今晩にも3%を軽々突破するとなると、金利上昇の歯止めがかかる水準が分からなくなり、警戒した株式売りなども出そうなため、留意しておきたい。上述した背景から、後場の日経平均は下げ渋ったとしても、前場の高値を抜いていくような展開は期待しにくいだろう。後場は上値の重い展開を想定する。(仲村幸浩)
<AK>
2022/04/20 12:05
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり反発、焦点は「利上げペース」より…
日経平均は3日ぶり小幅反発。31.11円高の26830.82円(出来高概算4億1000万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でNYダウは小幅に続落し、39ドル安となった。ウクライナ危機による需給ひっ迫の長期化観測に加え、リビアの政治デモによる産油停止の影響もあり、原油先物相場が4日続伸。セントルイス連銀のブラード総裁がインフレ抑制のため大幅な利上げが必要との見方を示し、長期金利も上昇が続いた。こうした動きが株式相場の重しとなる一方、金融株や半導体関連株などに買いが入り、主要株価指数は方向感に欠ける展開だった。本日の東京市場でもこれら銘柄に買いが先行したほか、円相場が1ドル=127円台まで下落したことも輸出関連株の買いを後押しし、日経平均は296円高からスタート。ただ、経済の先行きへの懸念も根強く、寄り付き直後をこの日の高値に失速すると、前場中ごろにはマイナスへ転じる場面もあった。 個別では、米半導体株高の流れを引き継いでレーザーテック<6920>が4%超の上昇。電気自動車(EV)分野などでの期待が根強い三井ハイテク<6966>はリバウンドを意識した買いが入ったとみられ、やはり4%超上昇している。その他売買代金上位では郵船<9101>、東エレク<8035>、川崎船<9107>などが堅調で、トヨタ自<7203>は小じっかり。自社株買いやアルペン<3028>による株式取得が材料視されたTSI HD<3608>は急伸し、RPA<6572>などが東証プライム市場の上昇率上位に顔を出している。 一方、ソフトバンクG<9984>とファーストリテ<9983>が揃って2%超の下落。中国配車アプリの滴滴出行(ディディ)が米上場廃止へ臨時株主総会を開くと発表し、中国ハイテク株の下落がソフトバンクGの重しとなっているようだ。また、ネットプロHD<7383>などが東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。 セクターでは、海運業、鉱業、非鉄金属などが上昇率上位。一方、サービス業、小売業、医薬品などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は34%となっている。 本日の日経平均は米半導体株高や円安進行が好感され、押し目買いが先行する形で300円近い上昇からスタートしたが、早々に失速する格好となった。27000円水準での上値の重さが意識されてくる可能性がある。物色動向は米市場と同様で、市況関連株や半導体関連株が買われる一方、サービス・小売などの消費関連株に売り。金融株が思いのほか伸び悩んでいるのは気掛かりだ。前引けの日経平均が+0.12%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.37%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆円あまり。前日は1日を通じ初の2兆円割れとなったが、本日も引き続き売買低調だ。 新興株ではマザーズ指数が-0.98%と4日続落。こちらも朝方買いが先行したが続かず、軟調な展開を強いられている。メルカリ<4385>などの主力株も全般軟調で、値を飛ばす銘柄は限られている。前日の東証グロース市場の売買代金は1176億円で、4月初めが2000億円規模だったのを踏まると、新興株の売買は急失速してきた感がある。 さて、18日の米市場では原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI5月物)が1バレル=108.21ドル(+1.26ドル)と4日続伸。金先物相場(ニューヨーク商品取引所、COMEX6月物)も1トロイオンス=1986.4ドル(+11.5ドル)と反発した。10年物国債利回りが2.85%(+0.03pt)に上昇する一方、2年物は横ばいの2.45%となり、利回り曲線(イールドカーブ)は傾斜化(スティープニング)。先週後半に当欄で指摘したとおり、3月の米消費者物価指数(CPI)発表を通過し、短期的なリバーサル(相場の反転)を経て商品市況の反騰、長期の年限の金利上昇が顕著になってきた。 セントルイス連銀のブラード総裁は年内にも政策金利を3.5%前後に早急に引き上げる必要があると述べ、0.75ptの大幅利上げの可能性も示唆した。もっとも2年金利の反応を見る限り、金融市場も急速な利上げは相当程度織り込んでいるとの見方には妥当性があるように思われる。 しかし、焦点が「目先の利上げペース」でなく「インフレの持続性(ひいては将来的な金融政策の再転換の可能性)」に移っていると考えれば、先週後半からの一連の動きも整合的なものに見えてくる。ウクライナ危機による世界的な経済圏の分断がインフレの長期化を招くとの懸念は拭えない。「インフレは一時的」「米経済は堅調を維持」といった見方も根強く残り、株式相場を下支えしているが、金融市場全体の方向感は見誤るべきでないだろう。 また、日本では為替相場の円安進行が輸出企業の採算改善に寄与するとの期待も強いが、筆者としてはコロナ禍とウクライナ危機による新環境下で、従来型の経済・金融政策がインフレや円安を加速させているにも関わらず、その恩恵とコスト負担の不均衡が経済全体を下押ししかねないように思われる。実際、製造業全体として株価好調と言いづらいのはこうした懸念があるからではないだろうか。世界全体でも、世界銀行が18日、2022年の経済成長率見通しを従来の4.1%から3.2%に下方修正しており、先行き懸念は拭えない。 引き続きインフレ下で経済が堅調を維持できるかどうか、見方が定まったようには思われない。株式相場は方向感に乏しい展開とならざるを得ないだろう。(小林大純)
<AK>
2022/04/19 12:53
ランチタイムコメント
日経平均は大幅続落、「インフレピークアウト・金利上昇一服」に再考の必要性も
日経平均は大幅続落。496.53円安の26596.66円(出来高概算4億3125万株)で前場の取引を終えている。 先週末15日の米株式市場はイースター休暇に伴い休場。ただ、時間外取引の米10年債利回りが上昇し、ナスダック100先物が軟調ななか週明けの日経平均は261.74円安でスタート。午前中ごろに発表された中国1-3月期国内総生産(GDP)などの主要経済指標の結果は概ね予想並みかそれを上回る結果となったが、同国での都市封鎖(ロックダウン)が続いているなか反応は限定的だった。中国株も軟調ななか日経平均は前引けまで軟調な展開が続き、下げ幅は一時500円を超えた。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、リクルートHD<6098>、キーエンス<6861>、信越化<4063>、SHIFT<3697>などのハイテク・グロース(成長)株が総じて大きく下落。武田薬<4502>、味の素<2802>、KDDI<9433>などのディフェンシブ系も軟調。三井物産<8031>や日本製鉄<5401>など資源関連でも弱いものが散見される。ほか、業績予想を下方修正したJAL<9201>が下落。中古車価格の下落報道が嫌気され、関連株のIDOM<7599>が東証プライム値下がり率上位に入っている。一方、郵船<9101>や川崎汽船<9107>のほか、原油先物価格の上昇を背景にINPEX<1605>が上昇。業績予想の上方修正と自社株買いを発表したマルマエ<6264>は大幅高。旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンスによる株式保有が判明したクレディセゾン<8253>が急伸し、値上がり率トップに躍り出た。 セクターではサービス、食料品、機械を筆頭にほぼ全面安。一方、鉱業と海運の2業種のみが上昇した。東証プライムの値下がり銘柄は全体の90%、対して値上がり銘柄は8%となっている。 週明けの日経平均は値幅を伴った下落で、先週もみ合っていた25日移動平均線を大きく下放れた。先週末の欧米市場が休場で目立った材料がないなか、時間外取引の米金利上昇や株価指数先物の下落が重しになっているのだろうが、それだけにしては下落幅が大きい。いまの相場の脆さを表しているようで、投資家も改めて押し目買いの入れにくさを実感していることだろう。 今週は目立ったイベント少ないため、今後も米金利動向などに神経質な展開が続きそうだ。一時1バレル=100ドルを割っていた米原油先物相場では、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)5月限が1バレル=106-108ドル近辺で推移するなど、じわりと上昇基調が続いている。もともと、90ドル台へ下落に転じた際も、期先物は下落していなかったため、再びの上昇は時間の問題とも言われていたが、改めて期近物が100ドルを回復してきたことで警戒感が強まっている。 先週、インフレピークアウトの見方の台頭とともに一時低下に転じていた米金利も、10年債利回りが東京時間で、本稿執筆時点、2.86%まで上昇してきている。5月、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5ptの大幅利上げについては、短期金融市場ですでに9割程にまで織り込みが完了してきているにも関わらず、金利の上昇が一向に落ち着かないのは気掛かり。 11日の本稿「金融引き締めに“織り込み済み”ない?」で述べたことの繰り返しにはなるが、やはり、歴史的なインフレ高進局面での連続大幅利上げと“かつてないペース”での量的引き締め(QT)の同時進行という、異例の金融引き締めプロセスに向かう今年は、今までのような「織り込み済み」は通用しないのではないか。少なくともそうした可能性も考慮しておかなくてはいけない、非常に難しい相場局面にあることを再認識しておく必要がありそうだ。 連邦準備制度理事会(FRB)がインフレファイターとしてインフレ退治に躍起になるなか、10年物ですでに0.1%台にまでマイナス幅が縮小した米実質金利が、今後プラス圏に転じるのはもはや時間の問題だろう。これを踏まえれば、今後、米10年債利回りが3%を超えてくるのも時間の問題とみられ、3%超えも通過点に過ぎないのかもしれない。 その際には、株式益回りと国債利回りの差、いわゆるイールド・スプレッドの観点からも、株式への投資妙味は薄れてくる。インフレヘッジとしての株式投資への需要はあろうが、その際は、商社やエネルギー・非鉄金属などコモディティ関連くらいしか買われない可能性があり、相場全体の底上げには至らない展開も想定される。年始からの「グロース売り・コモディティ買い」はそろそろ一服と思っている投資家も多いかもしれないが、こうした考えには、今一度再考が必要かもしれない。 後場の日経平均は軟調な展開が続きそうだ。手掛かり材料難のなか、引き続き時間外取引の米金利や株価指数先物を睨んだ動きとならざるを得ない。連休明け今晩の米国市場で、実際に金利と株価がどう反応するかも見極めたいとの思惑もあろう。買い手に乏しいなか、更なる下値模索の可能性にも注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/04/18 12:08