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注目トピックス 日本株
アイナボHD Research Memo(2):主力事業はタイルやサイディングの外壁工事と住設工事
■事業概要1. 事業内容2021年9月期末現在、純粋持株会社であるアイナボホールディングス<7539>の下に連結子会社5社、非連結子会社3社を擁してグループを形成している。事業セグメントは、戸建住宅事業と大型物件事業に分けられており、各セグメントの売上高(2021年9月期)は、戸建住宅事業56,480百万円(売上比率85.4%)、大型物件事業9,641百万円(同14.6%)、また営業利益は、戸建住宅事業2,325百万円、大型物件事業827百万円となっている。ただしこれらのセグメントは受注先(受注金額)の大小によって分けられているだけであって、工事内容はほぼ同じである。前者は主に一般住宅用の工事であり、中小ゼネコンや一般工務店などからの受注であるのに対して、後者は主に大手ゼネコン等からの受注となっている。さらに戸建住宅事業は外壁工事、住設工事、建材販売、住設販売のサブセグメントに、大型物件事業はタイル販売・工事、住設販売・工事のサブセグメントに分けられている。それぞれのサブセグメントの総売上高に対する比率(2021年9月期)は、戸建住宅事業の外壁工事が21.7%、同住設工事が25.9%、同建材販売が19.9%、同住設販売が17.9%、大型物件事業のタイル販売・工事が5.2%、同住設販売・工事が9.4%となっている。2. セグメント及びサブセグメントの概要(1) 戸建住宅事業主に地場の中小ゼネコンや工務店、ハウスメーカーやビルダーから受注する案件※を担っている。施主からの直接受注は少ない。※工事に伴うタイル資材や住設機器の販売高はそれぞれの工事部門に含まれている。a) 外壁工事一般住宅や小型マンション、店舗等の内外壁タイル、床タイル、エクステリア等の工事を行っている。タイルだけでなく、サイディング(外壁材)など様々な素材に対応している。b) 住設工事主にシステムキッチン、バス、トイレ等の水周りや各種リフォーム工事、太陽光発電システムの設置工事等を行っている。基本的には外壁工事とは別受注となるが案件によっては同時受注の場合もある。バスルームの工事件数は年間2万件近くに上り、業界では最大手クラスとなっている。c) 建材販売一般住宅、店舗、中小マンション向けの各種建材の卸売を行っている。タイル建材の販売が比較的多い。主な販売先は工務店や地場のハウスビルダーで、二次卸業者への販売は行っていない。d) 住設販売建材販売と同様に工務店や地場のハウスビルダーなどへ住設機器の販売を行っている。(2) 大型物件事業工事内容は戸建住宅事業とほぼ同じであるが、受注が大手ゼネコンによる大型物件(ビル、マンション等)をこのセグメントに入れている。大林組<1802>、(株)鴻池組、長谷工コーポレーション<1808>からの受注が比較的多い。a) タイル販売・工事内外装タイル、床タイル、石材の販売及び工事などを行っている。b) 住設販売・工事主にビル、マンションに向けて、システムキッチン等の住宅設備や空調設備などの販売及び工事を行っている。3. 主な仕入先と販売先同社の得意先は大手ゼネコンを筆頭に約7,000社に上る。これらの顧客が常に稼働しているわけではなく、また1件当たりの金額も数百万円から1億円以上と様々であるため、売掛金の回収が経営上の重要な要素となる。一方で主な仕入先は、建材や住設機器ではLIXILグループ<5938>が最も多く、そのほかにTOTO<5332>、リンナイ<5947>、クリナップ<7955>、大建工業<7905>からの仕入れが多い。また工事を行う下請け業者は大小合わせて2,000社近くになるが、この中の半数近くは同社専業の下請け業者である。後述する保険制度などの効果もあって同社との信頼関係は厚く、長い付き合いが続いている。4. 競合、特色、強み同社のような外壁工事や建材・住設機器の販売を行っている企業は数多くあり、それぞれの分野で多くの競合会社が存在する。事業全体において競合会社を探すのは簡単ではないが、あえて競合会社を挙げれば、(株)小泉、渡辺パイプ(株)である。ただし外壁工事の分野では、近年は施工会社が減る傾向にあり競合会社は少なくなっている。このような業界のなかで同社は、以下のような特色を生かして同業他社との差別化を図っている。同社の特色の1つは総合技術研修センターを有していることで、ここで多くの下請け会社に対して専門性の高い技術研修を行い、施工をサポートしている。また同社が研修を行うことで様々な工種への対応が可能になっている。さらにこの技術センターで各現場の施工が予定どおりに進捗しているかを半年に1回必ずチェックしており、これによって個人差による工事仕上がりのばらつきを減らしている。自家保険制度を設けていることも同社の特色だ。これは下請け業者から出来高の一部を徴収し、これを協力会にプールして、万が一下請け業者(作業員)が事故等で業務を行えなくなった場合に、1週間分の所得を補償するものだ。この制度によって同社と下請け業者との信頼関係が厚くなると同時に、職人の定着率が高まり、工事仕上がりの精度が高まっている。売上管理、原価管理や工事進捗管理はどの企業でも行っていることだが、同社の場合はこれに加えて請求管理、入金管理、その結果としての未収金管理を徹底している。具体的には各案件において仕入れと売上を少額であっても行単位で管理し、PL上の管理だけでなくBS上の管理(チェック)も行っている。このようなBS上の管理は工事の進捗状況を見ながら見極める能力が重要であり容易なことではない。近年、建材販売を行っている同業他社が工事施工分野に進出するケースは多いが、この未収金管理が複雑で手間が掛かる(非効率な)ため、多くの競合他社は工事事業から徹退している。ある意味でこの未収入金の管理が「見えない参入障壁」になっており、同社の特色であり強みとも言えるだろう。その結果として、同社の2021年9月期末のネットキャッシュ(現金預金から借入金を差し引いた金額)は12,404百万円と豊富であり、バランスシートは強固である。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<EY>
2022/01/06 16:02
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アイナボHD Research Memo(1):中期経営計画の目標は2022年9月期に営業利益率2.8%
■要約アイナボホールディングス<7539>は、傘下に連結子会社5社、非連結子会社3社を抱える純粋持株会社である。主要事業は、タイルやサイディング等の外壁工事、システムキッチンや各種水周り機器等の住設工事及び建材販売、住設機器販売であり、施工と建材・住設機器の卸売を両方行うユニークな企業である。これらの業務を主に中小ゼネコンや工務店向けに行っているが、大手ゼネコンからの工事受注もある。徹底した資金回収管理、工事進捗管理を実行しており、その結果、手元のネットキャッシュ(現金及び預金-借入金)は12,404百万円(2021年9月期末)と豊富でありバランスシートは強固である。1. 2021年9月期業績(実績):売上高は前期比1.2%増、営業利益は同5.9%増2021年9月期の連結業績は、売上高66,121百万円(前期比1.2%増)、営業利益1,903百万円(同5.9%増)、経常利益2,121百万円(同3.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,309百万円(同2.9%減)となった。セグメント別では、戸建住宅事業、大型物件事業ともに増収増益となったが、伸び率はやや低調であった。サブセグメント別では、特に建材販売とタイル販売が低調となり、業績全体の足を引っ張る格好となった。売上総利益率は14.4%(前期14.2%)と前期比0.2ポイント改善し、販管費は前期比2.1%増にとどまったことから営業利益は増益となった。親会社株主に帰属する当期純利益が減益となったのは、前期比で税率がアップしたことによる。2. 2022年9月期業績見通し:16.3%増収、13.0%営業増益を目指す2022年9月期は売上高で76,900百万円(前期比16.3%増)、営業利益で2,150百万円(同13.0%増)、経常利益で2,360百万円(同11.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で1,580百万円(同20.6%増)と予想している。住宅市場の先行きは依然不透明であるが、コロナ禍の影響による最悪期からは回復しつつあり増益を見込んでいる。前期比で2ケタの増収増益を見込んでいるが、これはM&Aによる新規連結子会社の寄与が大きいことによる。既存子会社だけでは4~5%増益程度の予想であり、固めの予想であると思われる。3. 新中期経営計画を発表:2022年9月期に売上高800億円、営業利益率2.8%が目標2022年9月期を最終年度とする中期経営計画では、売上高800億円(M&A含む)、営業利益率2.8%(22.5億円)を目標としている。足元の状況から判断すると売上高の目標達成は容易ではないだろうが、営業利益は達成される可能性があり、現時点においてこの目標値は変えていない。現在、新しい中期経営計画を策定中であり、2022年の秋ごろには発表する予定だ。株主還元については配当性向30%を目途としており、2022年9月期は年間36円配当(配当性向26.4%)を予定しているが、業績次第では増配の可能性も残る。■Key Points・主力事業は外壁工事、住設工事及び建材販売。管理体制の徹底で財務基盤は強固・進行中の2022年9月期は先行き不透明だが営業利益は前期比13.0%増益予想・中期経営計画の目標値(2022年9月期売上高800億円、営業利益率2.8%)は変えず(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<EY>
2022/01/06 16:01
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グリムス Research Memo(8):2022年3月期は、年間14.5円の配当を予想
■株主還元策グリムス<3150>は株主還元策として配当を実施している。そして、事業基盤を強化し企業価値を高めるため内部留保を充実させること、会社業績の動向に応じて株主へ成果を配分していくこと、これらを総合的に勘案したうえで安定的に株主に利益還元することを利益配分に関する基本方針としている。また、同社では、投資単位当たりの金額を引き下げることにより同社株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図ることを目的として株式分割を実施しており、2021年3月期も2020年9月1日付で、1株に付き2株の割合で株式分割をした。また、2018年3月期からは中間配当を実施、継続している。同社では、2017年3月期から2021年3月期まで5期連続の増配を実施した。2021年3月期には、株式分割後ベースで、中間配当5.0円(東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)から東京証券取引所市場第2部への上場変更に伴う記念配当2.5円を含む)、期末配当12.0円(東証1部指定の記念配当2.5円を含む)、合計17.0円とし、配当性向は34.4%に上昇した。2022年3月期には、中間配当5.0円、期末配当9.5円、合計14.5円を計画する。配当性向は15.9%と、同社が目途とする20%に届かない見通しだ。ただ、好調な第2四半期決算を見ると、通期決算も業績予想を上回り、期末配当を増配する可能性もありそうだ。同社では、2022年4月からは「プライム市場」を選択し申請しているが、多くの機関投資家の投資対象となるのにふさわしい時価総額(流動性)、より高いガバナンス水準を備え投資家との建設的な対話の実践、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上への積極的な取り組みなどの、東京証券取引所が定めた上場基準を十分にクリアしていると考える。一方、同社グループでは、CSR(企業の社会的責任、Corporate Social Responsibility)にも積極的に取り組んでいる。常に社会のニーズに応えた商品・サービスを提供し続け、新たな価値創造を行うことで、企業価値を向上させ、社会や環境が抱える問題の解決と、社会の持続的な発展に貢献することを基本方針としている。同社グループの取扱商品・サービスは、地球環境の負荷削減につながるものである。また、同社グループはJリーグに加盟するプロサッカーチームの横浜FCのオフィシャルクラブパートナーとして、同クラブをサポートしている。2020年7月1日には同クラブを応援するための電力料金プラン「横浜FCでんき」を開設し、徴収した電気料金の一部をトレーニング環境の設備に充当することを発表したことも、CSRの一環と言えるだろう。近年、世界的にもESG投資(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視した株式投資)を行う機関投資家が増えており、我が国でもESG投資は急増している。その意味でも、同社株は、注目される銘柄と言えるだろう。(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<SI>
2022/01/06 15:28
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グリムス Research Memo(7):小売電気事業を原動力に成長を続ける一方、新たな成長戦略にも着手(2)
■グリムス<3150>の今後の見通し3. 新たな成長戦略同社グループでは、電力の小売全面自由化による収益機会の増大やFITの買取期間が満了するユーザーの拡大という市場環境をとらえて、小売電気事業の急成長や蓄電池販売の拡大を図っている。また、2020年12月~2021年1月には小売電気事業における電力市場価格高騰の影響から収益が大きく圧迫された教訓を生かし、2021年3月期において6~7割であった市場調達比率を3割程度にまで抑えた。こうしたヘッジ手段の活用によって、調達価格変動リスクの低減を図る方針だ。また、2021年3月期から、新たに事業用自家消費太陽光発電システムの提供にも着手している。工場の屋根などに太陽光発電システムを設置し、工場で作った電気を利用することで電力コストを削減するものだ。同社グループでは、電子ブレーカーやLEDなどの販売先の電力消費量を把握していることから、提案しやすいと見られる。また、中小企業向けの太陽光発電システム販売は、競合先が比較的少ない事業分野であり、業務用エアコンなどの従来商品に比べて利益率が高いようだ。さらに、2022年3月期からは、電力販売契約(PPA:Power Purchase Agreement)に基づく太陽光発電システム販売も開始している。PPAでは、電力の需要家(事業者・個人住宅)がPPA事業者に敷地や屋根などのスペースを提供し、PPA事業者が太陽光発電システムなどの発電設備の無償設置と運用・保守を行う。 また同時に、PPA事業者は発電した電力の自家消費量を検針・請求し、需要家側はその電気料金を支払う仕組みだ。需要家は初期投資が不要なうえ、設置10年後には太陽光発電システムを譲り受ける仕組みとなっている。今後の成長戦略の一環である。同社グループでは、エネルギーコストソリューション事業とスマートハウスプロジェクト事業で安定収益を確保し、小売電気事業の業績を伸ばすことで、今後も増収増益を続ける計画である。上述のように、現状に満足せず、新たな成長機会を求めて、次々に新事業に着手する積極的な経営姿勢は評価すべきであろう。同社では例年、中期経営計画の見直しを行い、新中期経営計画を発表してきたが、2021年3月期からはコロナ禍拡大に伴う先行き不透明感もあって、未発表である。ただ、会社としての経営方針を明確化し、同社の投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社では考える。(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<SI>
2022/01/06 15:27
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グリムス Research Memo(6):小売電気事業を原動力に成長を続ける一方、新たな成長戦略にも着手(1)
■グリムス<3150>の今後の見通し2. 事業別の戦略セグメント別には、エネルギーコストソリューション事業では、中小企業規模事業者など低圧需要家や、オフィスビル・大規模工場などの高圧電力需要家向けに運用・設備・調達改善のトータルソリューションを提供する。すなわち、運用改善では、電気の使用方法や契約内容を見直すことで、電力基本料金の削減を図る。具体的には、センサーにより電力消費量を可視化して遠隔監視する「IoT機器」や、機械設備の安定稼働と電力コストの削減を可能にする「電子ブレーカー」などを販売する。また、設備改善では、既存の設備をより省エネ効果の高い設備に変更することで、電力使用料金の削減を図る。具体的には、消費電力を抑え、製品寿命が蛍光灯の約4倍の「LED照明」や、前期より取り扱いを開始し、工場の屋根などに太陽光発電システムを設置して作った電気を利用することで電力コストを削減する「事業用自家消費太陽光発電システム」の他、業務用エアコン、トランス、各種省エネ設備などを販売する。さらに、調達改善では、電力の調達元を見直すことで、電気そのものを安価に調達することを可能にする。すなわち、複数の小売電気事業者から最適な電力を提案し電力を取次ぐ「電力取次」を行う。このように、電力基本料金削減コンサルティングやLED照明等の省エネ設備の販売により新規顧客を開拓し、顧客基盤を拡大することにより、リプレイス販売や電力取次手数料、電子ブレーカーのレンタル収入といったストック収益の拡大、業務用エアコンやトランス、コンプレッサーなどの各種省エネ設備のクロスセルにつなげている。エネルギーコストソリューション事業については、電力コスト削減に対する底堅い需要があることから、引き続き各種省エネ設備の販売を推進するとともに、事業用自家消費太陽光発電システムの販売を拡大する。2021年3月期第4四半期において、小売電気事業の損失をカバーするため受注から売上計上までのリードタイムを一時的に短縮したが、2022年3月期計画においては通常のリードタイムを前提とした保守的な見通しとしている。すなわち、運用・設備・調達改善の全ての商材で減収減益を予想している。以上から、2022年3月期の売上高4,565百万円(前期比16.6%減)、売上総利益3,129百万円(同12.8%減)、営業利益1,817百万円(同13.4%減)を予想する。コスト削減商品に対するニーズは景気動向にかかわらず大きく、顧客と個別にアポイントをとり訪問する営業形態ということもあり、同事業におけるコロナ禍の影響は軽微にとどまっている。実際、第2四半期累計では、売上高2,597百万円(前年同期比10.9%増)、売上総利益1,779百万円(同19.5%増)、営業利益1,150百万円(同45.3%増)と、計画を上回るペースで順調に推移している。小売電気事業は、同社が卸電力取引所や一般電気事業者から調達した電気を割安な価格で顧客に販売し、顧客から受け取る電気料金が収益源となる事業である。同事業では、エネルギーコストソリューション事業で構築した負荷率(最大契約電力に対する平均使用電力の比率)の低い低圧電力需要家の顧客基盤を活用して、割安な電気の販売を推進することで収益(ストック収益)を拡大し、今後のグループ全体の成長の原動力とする計画である。同社グループでは、電力コスト削減のコンサルティングにより、実際に電力コストの削減を体感している顧客を対象とするため非常に成約率が高い。また、負荷率が低い事業者を対象とすることで、他の小売電気事業者に対し収益性の面で差別化を図っている。さらに、低圧から高圧まですべての電力需要家に対して電力小売を拡大することで、収益機会の拡大を計画している。小売電気事業では、電子ブレーカーを中心とした2021年3月期の顧客基盤およそ52,000件へのクロスセルを行っており、これが他社との差別化につながっている。工場などでは機械で使う電力と電灯では電圧が異なるため、顧客数の2倍である104,000契約口がターゲットとなる。また、他の電力会社から同社への乗り換え率は78%に達する一方、月平均解約率は0.4%の低水準にとどまっている。また、負荷率が低い需要家が多い(2021年3月期実績は9.5%で、他社の30%~40%に比べて低い)という顧客基盤が、夏場や冬場などの季節要因による電力の市場調達価格高騰時にも採算確保につながり、高い収益性の維持を可能にしている。すなわち、負荷率が低い顧客層では、電力消費量が大きくならず、電力売上のうち基本料金の割合が高いことから、電力市場価格変動の影響は限定的である。ただ同事業では、2021年3月期第4四半期に、電力市場価格高騰の影響を大きく受けた。すなわち、LNG在庫減少による火力発電の供給減少、寒波の影響による電力需要増を背景に電力需給が逼迫し、2020年12月から2021年1月にかけて、JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場において高値買いが誘発され、スポット価格とインバランス価格のスパイラル的な高騰が発生した。スポット市場において売り入札の減少により売り切れの状態が継続的に発生し、約定できないコマが多数発生したことで、インバランス料金(計画と実績の同時同量が達成できずに電力の供給過不足が生じた場合に、調整の対価として支払う料金。買えない発電量が発生した場合に、ペナルティ的な意味で、通常より高額な電気料金を設定)の精算が約20億円発生し、小売電気事業の売上原価が大きく増加したことで、小売電気事業は赤字を計上した。その後、各種情報開示やインバランス料金の上限設定などの対応策がとられるようになったことで、今後は前期のような電力市場価格高騰は避けられると見られる。さらに、同社グループでは固定価格である相対電源(電力取引所を介さない、発電事業者との直接取引)の比率を引き上げ、価格変動リスクを負う割合を2021年3月期の6~7割から3割まで引き下げることで、電力調達価格の変動に対応する方針である。同事業では、2022年3月期は契約口数53,498口(前期比26.8%増)、売上高10,844百万円(同17.2%増)、売上総利益2,028百万円(前期は196百万円の損失)、営業利益1,485百万円(前期は486百万円の損失)を計画する。ただ、第2四半期末では、契約口数は47,118口と計画を上回るペースで増加しており、第2四半期累計では売上高5,633百万円(前年同期比33.2%増)、売上総利益1,109百万円(同6.2%減)、営業利益860百万円(同13.8%減)と、増収減益ながら売上高・利益ともに計画を上回って推移している。スマートハウスプロジェクト事業では、住宅用太陽光発電システムと蓄電池のセット販売や蓄電池の単体販売を推進するとともに、各種取引先を通じた業務提携によるエネルギー関連商品の提携販売を推進していく。同社では、催事販売・提携販売の活用を推進し、蓄電池の販売を強化する計画だ。太陽光発電をめぐる市場環境としては、固定価格(余剰電力)買取制度(FIT制度)等の適用期間の終了に伴い(卒FIT案件)、家庭用蓄電システム導入の動きが加速する見通しだ。すなわち、FITの期間満了により、ユーザーは太陽光発電により発電した電力をこれまでのような高い価格で売電できなくなり、自家消費のメリットが高まることから、蓄電池の需要が増加する見通しだ。そして、ユーザーは自らの電力需要の形態に応じて自家消費と売電の最適な組み合わせを行うことで、最大のメリットを享受できることになる。同社では、蓄電池販売を拡大するとともに、今後はユーザーからの余剰電力の買取という新たなビジネスチャンスに結び付けたい考えだ。経済産業省によれば、家庭用(新築住宅及び既築住宅)向け蓄電システム導入台数は、2019年実績の年間11万台規模から、2020年には13万台(累計約49万台)、2025年には27万台(累計約158万台)、2030年には35万台(累計約314万台)規模に拡大する見通しである。また、太陽光発電に占める蓄電システム導入量(ともに累計)の割合は、2025年で44%、2030年で77%程度になると見込んでいる。同社では、2022年3月期には、再生可能エネルギーに対する需要、卒FIT案件の増加に伴い、引き続き蓄電池の販売を推進する計画だ。エネルギーコストソリューション事業と同様に、同事業でも2021年3月期第4四半期には売上計上までのリードタイムを一時的に短縮したが、2022年3月期計画においては通常のリードタイムを前提とした保守的な見通しとしている。スマートハウスプロジェクト事業の2022年3月期業績予想では、蓄電池と太陽光発電システムが引き続き堅調であり、売上高4,615百万円(前期比0.7%増)、売上総利益1,891百万円(同2.6%減)と概ね横ばいを予想するが、営業利益は550百万円(同26.2%減)と大幅減益を見込んでいる。ただ、第2四半期累計決算では、売上高2,172百万円(前年同期比24.3%増)、売上総利益912百万円(同25.8%増)、営業利益264百万円(同56.7%増)で推移している。第2四半期累計決算では蓄電池が好調で、売上高、売上総利益は概ね計画どおりながら、営業利益については計画を大きく上回って推移している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<SI>
2022/01/06 15:26
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グリムス Research Memo(5):2022年3月期は増収増益を予想、小売電気事業の業績回復が大きく貢献
■今後の見通し1. 2022年3月期の業績予想グリムス<3150>では、2022年3月期第2四半期累計では計画を上回る好決算であったが、2022年3月期業績予想については、2021年5月に発表した2021年3月期決算発表時の予想を維持している。すなわち、同社グループを取り巻く環境については、電力コスト削減や省エネ設備については景気の動向にかかわらず底堅い需要があり、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの活用が求められていることから、太陽光発電システムや蓄電池への需要が高まっている。一方で、燃料価格の高騰などを背景とした電力調達価格の上昇の影響を鑑み、第2四半期累計は上方修正となったが、通期業績予想は変えていない。エネルギーコストソリューション事業については、経済的メリット及び再生可能エネルギーに対する需要から、引き続き事業用自家消費太陽光発電システムの販売を拡大する。スマートハウスプロジェクト事業については、再生可能エネルギーに対する需要、卒FIT案件の増加に伴い、引き続き蓄電池の販売を推進する。小売電気事業については、新規契約の獲得が好調に推移していることから、 当期も人的リソースを投入することで、新規契約獲得を前期の約8,000口から約11,500口へと一層の増加を計画する。また、2020年12月~2021年1月に発生したような大幅な電力市場価格の高騰は、需給曲線の常時公開や電力・ガス取引監視等委員会による市場監視等の対策により、発生の可能性は低いと考えるが、2021年3月期において6~7割であった価格変動リスクを負う割合を、相対電源比率の引き上げ等により3割まで低減している。そして引き続き負荷率(最大電力に対する年平均消費電力の比率)の低い顧客を開拓することでも、調達価格変動リスクを低減する。以上の前提に基づき、2022年3月期の業績予想については、売上高20,025百万円(前期比3.7%増)、営業利益3,100百万円(同87.8%増)、経常利益3,155百万円(同80.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,073百万円(同85.1%増)と、大幅な増収増益決算を予想している。前期に苦戦した小売電気事業の業績回復が、全体の大幅増益予想の主因である。ただ、上記のとおり、期初の業績予想は保守的な前提に基づく予想である。実際、第2四半期累計決算では、各段階の利益は通期業績予想の6割を超えていることから、弊社では通期決算も最終的には期初予想を上回る可能性が高いと考える。また、同社の連結営業利益の内訳を見ると、電力小売の拡大に伴い、ストック利益の割合(フロー利益であるダイレクトセールス以外の利益)が、2018年3月期の59.0%から、2020年3月期には98.4%にまで上昇した。2021年3月期には電力市場価格高騰に伴う電力小売の損失に伴い20.5%に低下したが、2022年3月期には政府による電力市場価格の安定化対策や、同社による相対電源比率の引き上げ策などによって、再び69.6%にまで戻る見通しである。安定的な利益の割合が上昇することは、計画に対する業績の下振れリスクが小さいことを意味していると言えるだろう。(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<SI>
2022/01/06 15:25
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グリムス Research Memo(4):2022年3月期第2四半期は、期初予想を上回る大幅な増収増益決算
■グリムス<3150>の業績動向1. 2022年3月期第2四半期の業績概要2022年3月期第2四半期累計期間における我が国の経済は、コロナ禍の拡大により経済活動が抑制されるなど、厳しい状況で推移した。ワクチン接種の普及が進み、緊急事態宣言が解除されるなど持ち直しの動きが見られるが、半導体の供給不足や燃料価格の高騰などによる下振れリスクがあり、先行きは不透明な状況である。このような経済状況下、同社グループはコスト削減や省エネルギーを促進する商品・サービスを取り扱っていることから、景気の変動にかかわらず需要は安定している。また、再生可能エネルギーの利用促進・脱炭素といった、環境にやさしく社会の潮流に合った商品・サービスの提案をすることで、事業者向け・一般消費者向けのいずれも受注は好調に推移した。すなわち、エネルギーコストソリューション事業では、事業用自家消費太陽光発電システムとIoT機器の販売が拡大した。また、スマートハウスプロジェクト事業は、蓄電池の販売が順調に拡大した。小売電気事業は、契約口数の増加により売上高は順調に拡大したが、コロナ禍の影響により電力調達価格が低下した前年同期に比べ、利益率が低下したことにより減益となった。しかし、3事業とも業績は期初計画を上回って推移した。以上の結果、2022年3月期第2四半期累計期間の連結業績は、売上高10,402百万円(前年同期比25.0%増)、営業利益1,918百万円(同18.9%増)、経常利益1,948百万円(同18.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,324百万円(同17.8%増)の、大幅な増収増益決算となった。2021年3月期決算発表時の期初予想に比べ、売上高は1割強、各段階の利益は3割前後も上回って着地した。売上高営業利益率は前期の19.4%から18.4%に低下したものの、厳しい経済環境下でも安定的に高い利益率を確保している。セグメント別で見ると、エネルギーコストソリューション事業では、事業者のコスト削減や省エネルギー化のため、電力基本料金削減コンサルティング、各種省エネ設備の販売を推進し、顧客に電力の運用改善・設備改善などの提案をしてきた。また、前期から販売を開始した事業用自家消費太陽光発電システムと、IoT機器が好調に販売を拡大した。こうした結果、売上高は2,597百万円(前年同期比10.9%増)、営業利益(全社費用控除前、以下同)は1,150百万円(同45.3%増)となり、営業利益率は前年同期の33.8%から44.3%に上昇した。期初の計画を売上高は10.8%上回り、営業利益も17.8%上回った。営業利益は、各種省エネ設備の販売、電力取次手数料が前年同期より減少したものの、事業用自家消費太陽光発電システム、IoT機器の販売や各種販管費の減少によって大幅な増益となり、会社全体の増益に貢献した。スマートハウスプロジェクト事業では、再生可能エネルギーへの関心の高まりや、太陽光発電の10年間の固定価格買取制度の適用が終わる卒FIT案件の増加といった市場環境によって底堅い需要がある蓄電池の販売を積極的に推進し、好調に販売を拡大した。また、コロナ禍の拡大により緊急事態宣言の発出もあったが、前年同期に比べて催事販売への影響は軽微にとどまった。その結果、売上高は2,172百万円(前年同期比24.3%増)、営業利益は264百万円(同56.7%増)となり、営業利益率は前年同期の9.6%から12.2%に上昇した。前年同期にコロナ禍の影響で業績が落ち込んだことの反動もあって、当期は大幅な増益になった。営業利益は、蓄電池の販売が大きく貢献し増益となり、会社全体の増益に貢献した。結果、同事業では期初の計画を売上高は1.3%上回り、営業利益も24.4%上回った。小売電気事業では、電力の調達改善を顧客に提案することにより、順調に受注を伸ばしているものの、前年同期にはコロナ禍の影響により電力需要が減少したことに伴い電力調達価格が低下したが、当期は電力調達価格が安定したことで、結果的に利益率は低下した。その結果、売上高は5,633百万円(前年同期比33.2%増)、営業利益は860百万円(同13.8%減)となり、営業利益率は前年同期の23.6%から15.3%に低下した。しかし、契約口数(累計)は47,118口に達し、計画の46,921口を上回った。期初の計画より売上高は15.1%上回り、営業利益も23.4%上回っており、順調に進捗している。高い収益性とともに健全性を確保2. 財務状況及びキャッシュ・フローの状況2022年3月期第2四半期末の財務状況は、売掛金が増加したものの、現金及び預金、未収還付法人税等が減少したことなどから、流動資産は前期末比595百万円減少した。また投資有価証券が増加したことなどから、固定資産は同337百万円増加した。以上から資産合計は同258百万円減の12,661百万円となった。負債では買掛金の減少などから、流動負債が同1,254百万円減少した。また、長期借入金の減少により、固定負債は同230百万円減少した。この結果、負債合計は同1,485百万円減の5,416百万円になった。純資産合計は同1,227百万円増の7,244百万円であった。これは親会社株主に係る四半期包括利益が増加したことが主因である。以上から、2022年3月期第2四半期末の自己資本比率は前期の46.5%から57.0%に上昇し、財務の健全性は極めて高い。2021年3月期末は、小売電気事業の損失に対応して銀行借入を増やしたことから、一時的に自己資本比率が低下したが、今期に入り借入を返済したことで、自己資本比率は元の水準に戻った。また、2021年3月期のROEは20.1%であり、収益性も高い。実際、日本取引所グループ<8697>の上場会社連結決算短信集計に基づく2021年3月決算の市場1部上場会社(全産業)の自己資本比率30.1%、ROE7.51%を、同社の数字は大きく上回っている。2022年3月期第2四半期末の現金及び現金同等物の四半期末残高は、7,281百万円となり、前年同期比2,400百万円増加した。2022年3月期第2四半期のキャッシュ・フローを見ると、営業活動により得られた資金は93百万円(前年同期は925百万円の収入)となった。税金等調整前四半期純利益1,942百万円が増加要因となった一方、仕入債務の減少額1,303百万円、未払金の減少額286百万円、法人税等の支払額331百万円などが減少要因となった。投資活動により支出した資金は448百万円(前期は175百万円の収入)になった。投資有価証券の売却による収入113百万円があったものの、投資有価証券の取得による支出600百万円が資金減少の主因である。財務活動により支出した資金は569百万円(前期は396百万円の支出)となった。これは、長期借入金の返済による支出297百万円と配当金の支払額272百万円などによる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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2022/01/06 15:24
注目トピックス 日本株
新興市場銘柄ダイジェスト:nmsは大幅に3日ぶり反落、太洋物産が大幅に5日続伸
<8256> プロルート 150 +12大幅に反発。21年12月27日に発行した新株予約権のうち2万9400個(発行総数の84.73%)が権利行使されたと発表している。交付株数は294万株。未行使の新株予約権は5300個となっている。大量行使で将来の株式価値の希薄化懸念が後退したとの見方から、投資資金が流入しているようだ。また、プロルート丸光株は5日に昨年来安値を記録しており、押し目買いも入っているとみられる。<2162> nms 246 -37大幅に3日ぶり反落。前日に急伸した反動で利益確定売りが出ている。グループのTKR(東京都大田区)が開発・製造する歯科用3Dプリンター「SPACE ART MS-125M」が新聞社主催の「十大新製品賞」で「モノづくり賞」を受賞したことなどを手掛かりに、nmsホールディングス株は5日に買いが入った。ただ、前日比で20%超も値を上げたことから、値幅取りを狙った短期筋を中心に売りが出ているようだ。<3042> セキュアヴェ 296 +11大幅に4日ぶり反発。子会社でセキュリティ運用プラットフォーマーのLogStare(東京都中央区)がエムオーテックス(大阪市)と技術提携したと発表している。技術提携によって、エムオーテックスの統合型エンドポイントマネジメント「LANSCOPE」が収集したクライアントPCの操作ログをLogStareのセキュリティ・プラットフォームで分析し、企業のITシステムを横断した高度なログ分析などが可能になったという。<4572> カルナバイオ 1089 +84日ぶり反発。提携先である中国のバイオノバ社がBTK阻害剤AS-1763の新薬臨床試験開始の申請を中国国家薬品監督管理局に提出したと発表している。AS-1763はカルナバイオサイエンスからライセンス導入した経口投与可能な化合物。申請は中国での慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫、B細胞性非ホジキンリンパ腫の患者を対象とした臨床試験の実施を目的としている。<9941> 太洋物産 1690 +291大幅に5日続伸。株主の敷島ファーム(栃木県那須町)が臨時株主総会の招集を請求したと発表している。目的は取締役5名の選任。太洋物産は21年12月28日の定時株主総会で会社側と敷島ファームがそれぞれ提案した取締役選任案がいずれも否決され、取締役が不在の状況。太洋物産は「請求の内容を慎重に検討の上、決定次第開示する」としている。臨時総会に向け、議決権を持つ株主の利益が重視されるとの期待から買われているようだ。<2479> ジェイテック 204 +3大幅に反発。新規事業として「まなクル事業」を開始すると発表している。独自の人材育成カリキュラムやAI、IoT、クラウド含む最新技術に関するノウハウを基軸とし、法人から個人までを対象にした教育・就職支援サービス。スタート時の事業拠点は全国6店舗で、順次新規店舗を展開する。各店舗では地域のニーズに合わせた独自メニューのほか、スマートフォンやタブレットの使い方、アプリの使い方、経理を学べる講座などを設ける。
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2022/01/06 15:23
注目トピックス 日本株
ノムラシステム Research Memo(3):配当金は安定的に実施
■株主還元無借金経営であること及び事業規模に照らすと、キャッシュリッチな企業と見ることができる。2021年12月期第3四半期累計決算時点の自己資本比率は91.8%と極めて高い。2021年12月期は年間5.5円の配当金を見込んでいる。ノムラシステムコーポレーション<3940>では、安定配当を継続的に行う考えを明らかにしている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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2022/01/06 15:23
注目トピックス 日本株
グリムス Research Memo(3):エネルギーに関する商品・サービスを軸とした事業を展開
■グリムス<3150>の事業概要同社グループは、エネルギーに関する商品・サービスを軸とした事業を展開してきた。電力の運用改善・設備改善・調達改善を低圧から高圧まですべての領域で提供する、希少な総合エネルギーソリューションカンパニーである。傘下に、GRコンサルティング、グリムスパワー、グリムスソーラーの3社を有するが、事業セグメントについては、販売対象(事業者、一般消費者)、販売物(物販、電力)によって事業を区分している。すなわち、エネルギーコストソリューション事業は、GRコンサルティングの事業者向け電子ブレーカー、LED照明及び各種省エネ設備の販売や、グリムスパワーの高圧電力需要家(6,600V~)向け電力取次、IoT機器、LED照明及び各種省エネ設備の販売などを含む。スマートハウスプロジェクト事業は、グリムスソーラーの行う住宅用太陽光発電システム、蓄電池、オール電化の販売、再生可能エネルギー開発などである。また、小売電気事業は、グリムスパワーの行う低圧電力需要家(200V・100V)及び高圧電力需要家(6,600V~)向け電力の小売を手掛ける。2022年3月期第2四半期累計のセグメント別業績では、電力コスト削減コンサルティングを行うエネルギーコストソリューション事業が売上高2,597百万円(構成比25.0%)、営業利益1,150百万円(同50.6%)、蓄電池や住宅用太陽光発電システムの販売を行うスマートハウスプロジェクト事業が売上高2,172百万円(同20.9%)、営業利益264百万円(同11.6%)、電力の小売を行う小売電気事業が売上高5,633百万円(同54.1%)、営業利益860百万円(同37.8%)であった。小売電気事業は、2018年3月期より独立部門として分離された事業である。当期は前年同期比で増収減益に終わったが、既に会社全体の売上高の5割以上、営業利益の4割弱を占める重要な事業に成長している。1. エネルギーコストソリューション事業同事業は、事業者に対してエネルギーコスト削減の提案を行うもので、主に子会社のGRコンサルティングとグリムスパワーの2社が行っている。GRコンサルティングでは、中小企業規模事業者など低圧電力需要家向けに電力コスト削減のコンサルティングを行っている。低圧電力需要家向けの電力コスト削減は、電力契約の種類変更と電子ブレーカーの導入提案により、電力供給を確保しつつ毎月固定で課金される電力基本料金の低減による運用改善を実現している。電子ブレーカーはリースやクレジットを利用して販売し、リース期間満了後にまたリプレイス販売を行う。レンタル希望の顧客にはレンタルも行っている。また、設備改善として、LED照明や業務用エアコン、冷凍機といった各種省エネ設備の販売に加え、事業者向けの太陽光発電システムの販売を行っている。東京・大阪・名古屋にある事業所を拠点に全国的に営業を展開している。一方、グリムスパワーでは、オフィスビルや大規模工場などの高圧電力需要家向けに電力コスト削減のコンサルティングを行っている。すなわち、電気の調達先を見直し、調達改善することで電力料金の削減を実現する電力の取次を行っている。また、運用改善として、電力の使用状況の監視のためにエネルギーマネジメントシステム(EMS)を販売している。加えて、設備改善として、LED照明や業務用エアコン、トランス、コンデンサーといった各種省エネ設備のクロス販売や、事業者向けの太陽光発電システムの販売を行っている。2. スマートハウスプロジェクト事業同事業は、住宅用太陽光発電システムや蓄電池等のエネルギー関連商品の販売による設備改善や、再生可能エネルギーの開発を行うもので、子会社のグリムスソーラーが一般消費者向けに各種商品の販売を行っている。住宅用太陽光発電システムや蓄電池は、長州産業(株)・京セラ<6971>・パナソニック<6752>・オムロン<6645>などの製品を取り扱っており、1台当たりの販売単価は200万円程度である。販売は、ファミリー層が集まるイオンモール<8905>などの大型商業施設における催事場で販売するほか、業務提携しているハウスメーカー等からの紹介による販売も行っている。また、太陽光発電システムの設置に伴って屋根塗装など外注工事の受託も行う。再生可能エネルギー開発事業については、群馬県と静岡県にて保有するメガソーラーを主体とする太陽光発電所による売電収入をストック収益源としている。3. 小売電気事業同事業は、2016年11月にグリムスパワーが小売電気事業者として登録を受け、2016年12月より事業を開始した。電力の小売は、仲介業者に委託して一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)が運営する卸電力取引所から調達した電気や発電事業者から相対で調達した電気を低圧及び高圧電力需要家に販売し、顧客から毎月受け取る電気料金を収益とする事業である。顧客は調達改善として、一般電気事業者から電気を購入するよりも割安な価格で電気を購入することができる。なお、当初は一般家庭向けの低圧電灯需要家や、町工場等の低圧電力需要家のみに販売していたが、2018年5月より販売対象を工場、スーパー、ビル等の高圧電力需要家まで拡大している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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2022/01/06 15:23
注目トピックス 日本株
ノムラシステム Research Memo(2):後継製品にリプレイスする2027年までを飛躍の期間に
■当面の事業展開現在の主力である「SAP ERP 6.0」は2025年にメンテナンス終了予定となっており、ノムラシステムコーポレーション<3940>では、「SAP S/4HANA」へ完全切替えとなる2027年までを大きく成長する6年として位置付けている。その時点で、「SAP S/4HANA」を土台に、SAP ERPとビッグデータ分析、AI、IoT、クラウドの組み合わせによる競合優位を確立する。そのためには、レベルの高い人材育成及び採用が課題となりそうだ。同社は、成長戦略を進めるため人材投資を積極的に行い、新卒社員を育てて戦力化し、着実にビジネスを遂行していく方針である。次世代戦略室によりRPA事業を推進さらに、デジタルテクノロジーを活用したサービスを展開していくため次世代戦略室の活動に力を注いでいる。持続的成長と企業価値向上の実現を加速させることを目指し、RPAサービス推進を展開中である。次世代戦略室単独での引き合いが活性化しているもようで、今後は、ストックビジネスで、受注拡大につなげていく。そこでの注目点は受注先の企業規模だ。1件当たりの受注単価が大きい巨大企業からの受注が増える傾向にある。ビッグユーザーの増加は、それ自体が収益力をアップさせることになるため、今後も大企業からの受注獲得を目指す考えだ。離職率の低下で人材育成力がアップ人材の流動化が激しいイメージがあるIT業界の中で、同社は離職率が徐々に低下。2017年には7.1%だったのが、2021年9月末現在で2.2%まで低下した。同社は先述したように、新卒採用者を時間をかけて育成し、戦力化させる方針を採っているため、離職率が低下して社員の定着率が高まれば、それだけ人材育成力がアップし、長い目で見れば収益アップ要因になる。その意味でこの指標の低下は注目に値する。同社では今後も、会社の方針と本人のやりたいことがマッチするような人材を採用し、低い離職率を維持するようにするという。今後は離職率2%以下を目指していく。新たに著作権ソリューションシステム開発・導入を受注他方、足下の受注も順調だ。「日本最大の放送局グループ企業」での大規模プロジェクト(新基幹システム SAPS/4HANA 導入プロジェクト)で、新たに著作権ソリューションシステム開発・導入を受注し、2021 年 12 月よりプロジェクトを開始。本プロジェクトでは、様々な分野のテレビ番組や独自コンテンツを制作し、それらを軸にして、映像コンテンツ流通・イベント・キャラクター権利等のビジネスを展開する当該企業様に対して、多岐に渡る著作権を管理するためのソリューションシステムの開発・導入を支援する。2022年3月期の業績に貢献しそうだ。新市場区分の上場維持基準の適合に向けて2022年4月に予定される株式会社東京証券取引所の市場区分の見直しに関して、昨年末にプライム市場を選択する申請書を提出した。同社は、移行基準日時点(2021年6月30日)において、当該市場の上場維持基準を充たしていないことから、新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書を作成した。基準となる各項目のうち、株主数、流通株主数、流通株式比率、1日平均の売買平均は、クリアしているものの、現状で不足しているのが流通株式時価総額。基準は100億円のところ、現状は25億円でこれを引き上げる必要がある。流通株式時価総額の拡大を目指すために、業績の拡大、有効な資本政策の実行、株主還元策の強化などの定量的アプローチに加えて、IR・PRの強化、サステナビリティ経営の推進といった定性的アプローチを試みることにより、企業価値(時価総額)アップ、利益成⾧率向上によるPERアップ、流通株式時価総額基準の充足を図っていく。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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2022/01/06 15:22
注目トピックス 日本株
グリムス Research Memo(2):低圧から高圧まで全領域を提供する、総合エネルギーソリューションカンパニー
■会社概要1. 会社概要グリムス<3150>は、「創エネ・省エネ・蓄エネ」を事業領域とし、電力の運用・設備・調達改善を通じて顧客にエネルギーソリューションを提供して成長を続けてきた。現在、エネルギーコストソリューション事業、スマートハウスプロジェクト事業、小売電気事業を行っている。同社は持株会社として、グループ経営戦略の策定・推進と事業会社の経営監督を行い、傘下に、事業者向けに電力コスト削減のコンサルティングを提供する(株)GRコンサルティング、電力の小売・取次及びIoT機器の販売を行う(株)グリムスパワー、太陽光発電システムや蓄電池等のエネルギー関連商品の販売及び再生可能エネルギーの開発を行う(株)グリムスソーラーの3事業会社を有する。電力小売の全面自由化により、電力市場は長期的に拡大が見込まれる。同社グループは、一般家庭や町工場等が対象の低圧電力市場(契約電力50kW未満)から、工場、スーパー、ビル等が対象の高圧電力市場(同50kW以上)までのあらゆる領域に対応可能なエネルギーに関する幅広い商品・サービスを提供している。同社の社名は、かつて同社が運営していた「ブログで苗木を育てるブログパーツ型環境貢献サービス」に由来し、またロゴマークは木の葉を象ったデザインを採用し、地球上のすべての生き物の活力である太陽、すべての生き物の源である水、そして太陽と水がもたらす息吹の象徴である木々そのものをグラデーションによる多彩な色の組合せによって表現している。また、同社グループでは、「すべての人に感動と喜びを」を企業理念に掲げ、変化する環境のなかで常に感謝、応援され永続的に社会と共存する企業群を目指し、情報格差をなくし高い価値の普及に尽力し、豊かで安心して暮らせる社会の構築に寄与する意向である。2. グループの強み同社グループの強みは、「豊富な顧客基盤に基づく営業展開力」、「他社との差別化による収益力の強さ」、「市場環境と成長機会」である。まず、「豊富な顧客基盤に基づく営業展開力」では、同社グループは、2021年3月期実績で低圧電力需要家(電子ブレーカー)約52,000件という豊富な顧客基盤を有する。設備改善・調達改善の提案によるクロスセルを行うことで、小売提案を行う際の他の電力会社から同社グループへの乗り換え率は約78%に達している。今後も他社との差別化を図り、顧客数の増加を目指している。次に、「他社との差別化による収益力の強さ」では、同社グループは中小の工場など、負荷率(最大契約電力に対する平均使用電力の比率)が低い需要家への電力小売が多いため、夏場や冬場の季節要因による電力調達価格の高騰時でも安定した収益を維持することができる。すなわち、負荷率が低いとは、契約電力量に対して消費電力量が低い状況であり、負荷率の低い業種・業態が顧客に多いことで、電力調達価格の高騰時でも電力調達量は抑制的となり採算を確保しやすい。実際、2021年3月期の負荷率は9.5%と他社の30%~40%に比べて低い。今後も負荷率の低い需要家への供給を継続し、高い営業利益率の継続を目指す。また2021年3月期に発生したような大幅な電力市場価格の高騰に対応するため、相対電源比率の引き上げ等の、調達価格の変動リスク低減策を講じている。さらに、「市場環境と成長機会」では、電力の小売全面自由化による収益機会の増大、FIT(太陽光発電など再生可能エネルギーの電気を、電力会社が固定価格で買い取ることを義務付ける制度)の買取期間が満了するユーザーの拡大という市場環境をとらえて、小売電気事業の急成長や蓄電池販売の拡大を図る計画である。3. 沿革同社は、現代表取締役社長の田中政臣(たなかまさおみ)氏らによって2005年7月4日に設立された。当初は電子ブレーカーの販売からスタートしたが、2010年4月に住宅用太陽光発電システム等の店舗販売を開始、2012年12月にはLED照明の販売を開始、2013年12月に電力の取次及びエネルギーマネジメントシステムの販売開始、2014年3月に太陽光発電所の運営を開始、2016年12月には電力の小売開始など、エネルギーに関する分野を中核に据え、年々事業領域を拡大している。事業拡大に伴い、2011年4月より持株会社制に移行し、現在の会社名に商号を変更した。2009年3月よりジャスダック証券取引所(現 東京証券取引所JASDAQスタンダード)に上場していたが、2020年6月には東証2部への上場市場変更を果たし、早くも同年11月には東証1部への昇格を果たした。2022年4月からの東証の新市場区分では、「プライム市場」を選択し申請している。2021年3月31日現在、連結従業員数は348名である。(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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2022/01/06 15:22
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ノムラシステム Research Memo(1):2021年12月期の営業利益は横ばいを想定
■業績動向ノムラシステムコーポレーション<3940>は、1986年2月に設立され、企業のオープン化コンサルティング業務、それに関連するソリューション提供業務などを展開し、発展を遂げてきた。ITが急速に進化する時代の流れにうまく乗り、ソフトウェア設計・制作請負中心の事業構造から、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹系統合システム)パッケージ導入におけるコンサルティング業務に経営資源をシフトしている。同社の次世代戦略室では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。民間調査機関が試算した国内ERP市場は、年平均成長率が8%。さらに、クラウド市場やビッグデータ市場も拡大が見込まれており、コンサルティング企業として同社の成長余地は大きいと言えるだろう。同社の事業内容はSAP導入コンサルティング、SAP保守サポートセンター運営、Webシステム開発コンサルティング、情報サイトコンサルティングなどによって構成されているが、2001年にSAPとサービスパートナー契約を結んだことが飛躍するきっかけになった。2009年にはSAPのチャネル・パートナーとなり、SAP ERPのスペシャリスト集団として収益を伸ばし、2016年9月に東京証券取引所JASDAQ市場への上場を果たし、2018年3月には同第2部市場に上場。2018年6月には早くも1部市場に指定替えとなり、信頼度の高まりから受注が拡大している。2021年12月期第3四半期(1月−9月)決算は、売上高が1,989百万円(前年同期比1.9%増)、営業利益が303百万円(同0.1%減)、経常利益が321百万円(同0.1%減)、四半期純利益が223百万円(同0.5%増)となった。プライム※案件にシフトする一方、既存のFIS(Function Implement Service)が減少する傾向が続いている。FIS案件は外注コストがかかるため、売上高全体は劇的な伸びにはならなかったものの、近年では利益率が改善傾向にある。全体の売上高に占めるプライム比率は35%前後だったものが、直近では約40%に上昇しているが、これがさらに高まれば、一段の利益率向上が期待できそうだ。※クライアントから直接受注し、全工程を同社のコンサルタントが担当する。一方、次世代戦略室のRPA(Robotic Process Automation)事業への先行投資に力を注いでいるが、RPA事業への前向きな投資分によるコストアップについては、今後の成長につながるため不安材料とはならない。直近の利益伸び悩みも、その主要因は将来の成長を見越し、投資を活発化させているためだ。今後も、利益率改善を図るために、プライム案件、準プライム案件の比重を高めていく方針。従来型のFIS案件のように、プライムベンダーから依頼を受け、支援する形で部分的に対応することと比べて、売上総利益率に10ポイントほどの差が生じることになることから、当面はプライム案件の受注確保が業績向上のポイントだ。さらに、次世代戦略室では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。2021年12月期の通期見通しについては、売上高2,700百万円(前期比6.3%増)、営業利益371百万円(同0.6%減)、経常利益371百万円(同5.0%減)、当期純利益253百万円(同6.1%減)の期初予想を変えていない。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の終息が見込めず、先行きの環境は不透明ながらも、受注は順調だ。大手テレビ局グループからのSAP/HANA導入プロジェクトを受注したほか、直近でも三大重工業の一角からDXの実行に向けた、RPAライセンス契約を、トップ電力グループからDXの実現に向けたコンサルティングプロジェクトを、そして航空機輸送事業を中心とする日本最大手の子会社から、業務効率化を実現するデジタイゼーション(自動化)プロジェクトをそれぞれ受注。保守的に計画を立てているため、上振れの余地がありそうだ。プライム案件も着実に積み上がる見込みにあり、今後も「高付加価値ソリューションの提供」を目指し、1)「SAP S/4HANA」のリプレイス需要を取り込むため、SAP認定コンサルタントの資格取得を推進し技術力を強化、2)「SAP Success Factors」拡販のためのクラウドソリューション強化、の2つを重点施策とする。また、既存のシステムについてクラウドを導入していない企業が多いため、クラウドへの置き換えを進めるといったビジネスチャンスが広がりそうだ。コロナ禍の影響、リーマンショック時と様相異なるコロナ禍は産業界に大きなダメージを与えたが、同社へのコロナ禍の影響は、リーマンショックの時とは様相が異なっていると言う。リーマンショック時には40%の業績落ち込みを記録したものの、今回はむしろIT関係に積極的に先行投資を行う企業が多い。金融緩和でもたらされた余剰資金がシステム投資に向けられていると会社側では感じており、受注を順調に確保している。世間では、「コロナ禍は、テレワークの推進化などでIT業界全体に追い風となっている」と言われているが、同社もそのような状況にあると言えそうだ。(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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2022/01/06 15:21
注目トピックス 日本株
グリムス Research Memo(1):エネルギーソリューションカンパニーとして持続的な成長を目指す
■要約1. エネルギーソリューションカンパニー株式会社グリムス<3150>は、東証1部に上場し、一般家庭から工場、オフィス等の幅広い顧客を対象に、高圧から低圧まですべての電力種別の領域で、エネルギーに関する幅広い商品・サービスを提供している。創業以来、エネルギーに関する豊富な提案能力を有する営業社員により、顧客のニーズに合った的確なコンサルティングを続けてきたことによる、「豊富な顧客基盤に基づく営業展開力」、「他社との差別化による収益力の強さ」、「市場環境と成長機会」が同社グループの強みである。これまで、エネルギーコストソリューション事業、スマートハウスプロジェクト事業による着実な収益と小売電気事業の成長により増収増益決算を続けてきたが、今後も小売電気事業を原動力にさらに業績を伸ばす見通しだ。2022年4月からの東証新市場区分では、「プライム市場」を選択申請している。2. 2022年3月期第2四半期は増収増益決算、3事業とも計画を上回る2022年3月期第2四半期累計の連結業績は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ禍)の拡大により経済活動が抑制されるなど厳しい事業環境の中、売上高10,402百万円(前年同期比25.0%増)、営業利益1,918百万円(同18.9%増)の大幅な増収増益決算であった。期初予想比では、売上高は10.9%上回り、営業利益も26.9%上回る好決算であった。エネルギーコストソリューション事業は、事業用自家消費太陽光発電システムとIoT機器の販売拡大により利益率が向上し、営業利益は前年同期比45.3%増であった。スマートハウスプロジェクト事業は、蓄電池の販売が順調に拡大し、営業利益は同56.7%増であった。一方、小売電気事業は、当期は電力調達価格が安定したことで、前年同期と比べると利益率が低下しているため、営業利益は同13.8%減となったものの、計画を上回って推移している。自己資本比率は57.0%と前期末比10.5ポイント改善し、引き続き良好な財務基盤を維持している。また、ROEも高く、収益性も高い。中間配当は前年同期と同額の5.0円とした。3. 2022年3月期は小売電気事業の業績回復を主因に大幅増益を予想、新事業にも着手同社では、2022年3月期の業績予想については期初の計画を維持し、売上高20,025百万円(前期比3.7%増)、営業利益3,100百万円(同87.8%増)と、増収増益決算を予想している。エネルギーコストソリューション事業では、引き続き各種省エネ設備の販売を推進するとともに、事業用自家消費太陽光発電システムの販売を拡大するが、減益を見込む。スマートハウスプロジェクト事業でも、再生可能エネルギーに対する需要、卒FIT案件の増加に伴い、引き続き蓄電池の販売を推進するが、小幅の減益を予想する。また、小売電気事業については、電力・ガス取引監視等委員会による市場監視等の対策により2020年12月~2021年1月に発生したような大幅な電力市場価格の高騰はないとの前提で、黒字転換を見込んでいる。小売電気事業の業績回復が、全体の大幅増益予想の主因である。ただ、例年、期初の業績予想は保守的な予想であり、第2四半期決算累計の営業利益は通期予想の61.9%に達していることから、弊社では通期業績も最終的には期初予想を上回る可能性が高いと考える。同社は、2022年3月期には中間配当5.0円、期末配当9.5円、合計14.5円の配当を計画する。前期の17.0円からは減配であるが、前期は中間配当に東証JASDAQ(スタンダード)から東証2部への市場変更記念配当2.5円を、期末配当にも東証1部指定記念配当2.5円を含んでいる。今期も期初の業績予想を上回る決算となれば、計画を上回る配当の可能性も期待できそうだ。同社では、今後もスマートハウスプロジェクト事業とエネルギーコストソリューション事業で安定的な利益を確保しながら、潜在成長性の大きい小売電気事業の推進により、増収増益を続ける計画である。また、事業者用自家消費太陽光発電システムの販売など、新たな事業にも着手している。加えて、同社では、CSR(企業の社会的責任)にも注力しており、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資銘柄としても注目されそうだ。■Key Points・エネルギーに関する幅広い商品・サービスを提供し、エネルギーコストソリューション事業、スマートハウスプロジェクト事業、小売電気事業を展開・2022年3月期第2四半期は、増収増益決算。エネルギーコストソリューション事業、スマートハウスプロジェクト事業が好調で、小売電気事業も計画を上回る。財務の健全性が高く、収益性も高い・2022年3月期は、期初計画を維持し、大幅な増益を予想。第2四半期の営業利益は通期予想の61.9%に達する好決算。前期の記念配当5.0円がなく、今期は14.5円の年間配当を計画するが、予想を上回る好決算になれば、計画を上回る配当の可能性も。CSRにも注力、東証「プライム市場」を選択申請(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<SI>
2022/01/06 15:21
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アライドアーキ Research Memo(10):成長フェーズにあることから、しばらくは無配が継続する見通し
■株主還元策アライドアーキテクツ<6081>は配当方針として、「業績の推移を見据え、将来の事業の発展と経営基盤の強化のための内部留保に意を用いつつ、経営成績や配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を維持する」ことを掲げているが、現在は成長過程にあり、内部留保の充実を優先させていることから、創業以来無配を継続している。弊社でも、新たな分野であるマーケティングDXの実現に向けた需要の取り込みに加え、成長性が期待できる「海外SaaS事業」や「中国進出支援事業」など、将来に向けた事業機会は豊富に存在することから、成長投資を優先することが株主利益の最大化につながるものと見ている。したがって、しばらくは配当という形での株主還元は見送られる可能性が高い。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
2022/01/06 15:20
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アライドアーキ Research Memo(9):国内におけるマーケティング支援は着実に成長
■過去の業績推移これまでを振り返ると、連結売上高は2016年12月期をピークとして減収傾向をたどってきた。これは、利益率が低く業績の変動要因となりやすい海外SNS広告事業の縮小(及び撤退)によるものである。また、ここ数年、売上高は連結・単体ともに伸び悩んでいるが、アライドアーキテクツ<6081>が重視する粗利売上で見ると、粗利率の高い自社開発SaaSツールにより伸びてきたことは評価すべきポイントである。特に、導入事例が増えてきた「Letro」や「echoes」の伸びやソリューションを増やしてきたことが粗利売上の伸びに貢献している。一方、損益面に目を向けると、連結決算を開始した2014年12月期の連結営業利益率は10.2%であったが、2015年12月期は海外事業等への先行費用に加えて、Facebookのポリシー変更に伴う影響により利益率の高いSNSマーケティング支援が落ち込んだことから営業損失に陥った。また、2017年12月期以降、3期連続で連結営業損失を計上したが、単体営業利益は一定水準を維持していたことから、海外事業(クリエイティブ・プラットフォーム)への先行費用等が重荷となっていたことを示している。もっとも、2020年12月期には、マーケティングDXの流れが加速するなかで、粗利売上の伸びにより単体営業利益が底上げされたことや、海外事業の黒字化(四半期ベース)により大幅な増益を実現し、連結営業利益も7.1%の水準に戻った。財務面では、2013年11月の東証マザーズ上場により自己資本比率は80%程度まで上昇し、将来の成長に向けた財務基盤の強化を図った。そもそも資産を必要としない事業モデルではあるが、2016年12月期末の自己資本比率が低下しているのは、長期借入金により積極的な事業投資や今後の事業展開に向けた手元流動性を確保したことが要因である。ただ、2017年12月期には新株予約権の発行及びその権利行使により自己資本比率が54.3%に改善すると、2020年12月期には海外子会社Creaditsの第三者割当増資により50%を超える水準を確保している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
2022/01/06 15:19
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アライドアーキ Research Memo(8):SaaSツール・デジタル人材を通じて持続可能な社会実現への貢献を目指す
■SDGsへの取り組みアライドアーキテクツ<6081>では、「SaaSツール」及び「デジタル人材」を通じた「持続可能な社会」実現への貢献に向けて、マテリアリティ(重点分野)を特定している。同社グループまたは同社サービスが貢献しうるSDGs目標と、同社サービスを通じて顧客企業が実現しうるSDGs目標に区分し、社会課題の解決を自社の成長に結び付ける方向性を描いている。1. 同社グループまたは同社サービスが貢献しうるSDGs【SDGs目標1】貧困をなくそう途上国を含む、世界中にいる広告制作者へクラウド上で就労機会を提供(SaaSツール)【SDGs目標5】ジェンダー平等を実現しよう平等・公平な評価・採用により外国籍比35%、女性管理職比42%を実現(SaaSツール/デジタル人材)【SDGs目標4】質の高い教育をみんなにデジタル人材候補に対する働く機会と学ぶ環境の提供(デジタル人材)2. 同社サービスを通じて顧客企業が実現しうるSDGs【SDGs目標9】産業と技術革新の基盤をつくろうSaaSツールの活用による労働生産性向上への貢献(SaaSツール)【SDGs目標8】働きがいも経済成長もSaaSツールや人材シェアリングにより、誰でも働きやすく、収入を得られる就労機会を提供(SaaSツール/デジタル人材)【SDGs目標17】パートナーシップで目標を達成しよう企業とファンが結びつくことによる新たな価値の創出を支援(デジタル人材)(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
2022/01/06 15:18
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アライドアーキ Research Memo(7):「マーケティングDX支援企業」として圧倒的ポジションの確立を目指す
■今後の方向性1. 中期テーマの設定コロナ禍による環境変化によりデジタルシフトが加速するなかで、マーケティング領域においてもデジタル化やデジタル人材の確保が課題となっている。アライドアーキテクツ<6081>では、マーケティング領域におけるDXを「デジタル技術・デジタル人材によって業務プロセスや手法を変革し、人と企業の関係性を高めること」と定義するとともに、これまで培ってきたSNSマーケティング支援ノウハウをはじめ、独自に開発してきたSaaSツールやソリューション提供の基盤となるデジタル人材の強みを生かし、「マーケティングDX支援企業」として圧倒的なポジションを確立することを新たな中期テーマとして掲げた。2. 各事業の活動方針2021年12月期を中期テーマ達成の第1ステージと位置付け、「SaaSの強化とデジタル人材の拡充」に取り組む方針である。また、各事業における活動方針は以下のとおりである。(1) SaaS事業新サービスの開発及び既存サービスの機能拡充により、顧客層の拡大を目指すとともに、アップセル・クロスセルによる顧客単価の引き上げを目指す。(2) 海外SaaS事業引き続き新規顧客の開拓に加え、新サービス(Huddle、Tune)の提供開始によりアップセルを目指す。また、3D動画の供給能力の向上に取り組み、顧客単価の引き上げを狙う方針である。(3) ソリューション事業引き続きデジタル人材の拡充に取り組むほか、2021年4月にはネクストバッターズサークルの設立により、デジタルマーケティング人材のシェアリング事業を開始した。また、グループ会社との連携強化など既存顧客へのアプローチを強め、顧客単価引き上げを目指す。(4) 中国進出支援事業需要が拡大するなかで新規顧客の開拓を強化するとともに、在日中国人女性コミュニティ「BoJapan」の会員数増加や投稿コンテンツの質向上、Vstar Japan提携インフルエンサーの中国SNSでの影響力向上・提携人数の増加等にも取り組む。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
2022/01/06 15:17
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アライドアーキ Research Memo(6):通期業績予想を2度にわたって上方修正、大幅な増収増益を見込む
■業績見通し1. 2021年12月期の業績予想2021年12月期の連結業績についてアライドアーキテクツ<6081>は、上期業績が想定を上回るスピードで拡大していることを踏まえ、期初予想から2度目の上方修正を公表した(2021年8月10日付)。修正後の業績予想については、売上高を前期比31.2%増の5,500百万円、営業利益を同100.9%増の600百万円とし、大幅な増収増益を見込んでいる。第3四半期においては、再度の上方修正はないものの、修正後の業績予想に対してハイペースで進捗しており、第4四半期についても、ここまで流れを引き継ぎ、「SaaS事業」及び「ソリューション事業」を中心に各事業が伸長する想定のようだ。さらに、第3四半期においては「海外SaaS」事業の成長が著しく、今後の収益貢献が期待される。2度にわたって上方修正を実施したのは、マーケティングDXの需要拡大を受けて、第1四半期及び第2四半期ともに想定を上回るペースで事業が拡大していることが主因である。加えて、利益面では、想定為替レートの見直しによる為替差益の変動及び持分法投資利益の変更を加味したことも、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益のプラス要因となっている。第3四半期においては、再度の上方修正はないものの、修正後の業績予想に対してハイペースで進捗しており、第4四半期についても、ここまでの流れを引き継ぎ、「SaaS事業」及び「ソリューション事業」を中心に各事業が伸長する想定のようだ。損益面でも、新サービスの開発や既存サービスの機能拡充、デジタル人材の拡充など、将来に向けた先行費用を増やすものの、増収による収益の底上げにより大幅な増益を実現し、営業利益率も10.9%(前期は7.1%)に大きく改善する見通しである。なお、通期業績予想の達成のためには、第4四半期に売上高964百万円(前年同期比24.1%減)、営業利益24百万円(同85.5%減)を超過する必要があるが、第3四半期実績(売上高1,429百万円、営業利益176百万円)と比較すると明らかに保守的な水準となっている。コロナ禍の長期化等に伴う経済情勢の不確実性を慎重に見ていることや、成長加速に向けた先行費用を積極投入していく方針を反映したものである。2. 弊社の見方及び2022年12月期業績の考え方弊社でも、第3四半期実績や好調な外部環境を勘案すれば、同社の業績予想は明らかに保守的な水準であるとの見方をしている。とりわけ売上高予想については、「SaaSツール」による顧客基盤の積み上げや「デジタル人材」の提供等を通じた顧客単価の向上を勘案すれば、さらなる上振れの可能性にも注意が必要であろう。一方、利益予想については、先行費用のかけ方次第と言えるが、少なくとも現時点の利益予想は最低限達成すべき水準として捉えている。弊社では、この好機を逃さず将来に向けた先行費用を積極投入し、他社に先駆けて圧倒的ポジションを目指す同社の方向性は、本格的な成長フェーズを迎えるにあたって理にかなった戦略であると評価している。注目すべきは、トップラインの伸びやその中身はもちろん、先行費用の投入によって、いかに今後の事業拡大や価値提供に向けて支援体制を整えていくのかにある。特に、「SaaSツール」の機能強化や「デジタル人材」の拡充のほか、それに伴う顧客層の拡大や顧客単価の向上の動きなどは、今後の成長性を評価するうえで重要な判断材料になると捉えている。これらの取り組みが順調に進捗し、好調な外部環境が継続すれば、2022年12月期も2021年12月期を上回るようなトップラインの伸びを実現するポテンシャルは十分に期待できよう。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
2022/01/06 15:16
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アライドアーキ Research Memo(5):新たなマーケティングニーズに対する支援体制を強化
■アライドアーキテクツ<6081>の主な活動実績1. 新会社の設立2021年4月に、マーケティングDXの実現に必要不可欠なデジタルマーケティング人材を育成し、顧客企業との人材シェリングを行うネクストバッターズサークルを設立した。ソーシャルメディアの普及とともに企業と生活者が直接つながるようになり、コミュニケーションのあり方が大きく変化してきたことに加え、コロナ禍の影響により営業機会が減少した企業や施設、店舗などのマーケティングにおいて、生活者と直接つながることができるSNS活用への注目は高まり続けている。このような環境を踏まえ、SNS活用ノウハウをはじめとするデジタルマーケティングスキルを持つ人材の育成と、業務委託契約の形式により顧客企業との間でシェアリングを行う事業を開始することにより、新規顧客との接点作りからファンとの関係強化までを一気通貫で支援する体制をさらに強化するところに狙いがある。顧客企業にとっては新しい人材との出会い、働く人材にとっても新たな働き方や就労機会、学ぶ環境を得られる点などで双方にメリットの大きな仕組みと言える。2. 新サービスの開始(1) 海外SaaS事業海外子会社Creaditsは、「Craft」による広告クリエイティブの提供に加え、制作に関わるデザイナーの生産性改善を支援する2つの新サービスを開発した。具体的には、2021年5月にクリエイティブ制作のプロジェクト管理ツール「Huddle(ハドル)」、7月には動画クリエイティブの自動編集ツール「Tune(チューン)」をリリースしており、主力サービス「Craft」とのアップセルにより単価向上を目指していく。(2) ソリューション事業グループ会社であるファンベースカンパニーとの共同開発により、2つの新サービスを開発した。2021年5月に開始した「ファンベース診断lite(ライト)」は、アンケート調査を通じて「ファン度」や「ファンの声」を簡単に集計・分析でき、自社のファンを手軽に知ることができる定額制のサービスとなっている。また、6月に開始した「ファン道(ファンドウ)」は、ファンと企業の絆を深めるWebサービスであり、ファンベースカンパニーが創業以来100社以上の企業のファンベースプロジェクトに伴走してきたなかで発見した“ファン度が上がっていくのに必要な3つの要素”(企業やブランドのより深い知識を得る/社員とファンが交流する/ファンと企業が特別な体験を共有する)をすべて備え、ワンストップで提供することが可能となっている。3. 主な導入実績(1) 「LetroStudio」導入事例の増加マーケティングDXの進展に加え、展示会・イベントや営業活動などのデジタル化が急速に進んだことで動画コンテンツへの需要が急増する一方、企業における制作費(外注費)や専門人材については制約があるため、その課題解決に向けて「LetroStudio」を導入する事例が増加している。具体的には、SNS公式アカウントなどにおいて「LetroStudio」で自社制作した動画コンテンツを発信し、新規フォロワーを獲得する一方、動画制作に係る外注費を削減することにより投資効果を最大化することが可能となる。最近の実績では、(株)ベルタ(美容健康食品、化粧品)、(株)アイダ設計(不動産業や建設業等)、(株)常陽銀行(地方銀行)、(株)Gaba(マンツーマン専門英会話スクール)、(株)ポプラ社(出版)など、幅広い業種で導入する事例が見られ、この流れはさらに加速していくことが期待される。(2) ドラッグストアでのサンプリング支援ドラッグストアでのサンプリングをワンストップで支援するサービス「echoes Couponドラッグストアサンプリング」を2021年1月に開始して以来、導入する大手ドラッグストアが増加している。本サービスは、同社が提供するSNSキャンペーンソリューションと「echoes Coupon」を活用し、SNSサンプリングキャンペーンの実施からドラッグストアでのサンプル配布までをワンストップで支援するものである。メーカー企業は、ドラッグストアで商品を無料引き換えまたは割引購入可能なデジタルクーポンを活用したSNSサンプリングキャンペーンを実施することにより、生活者を店頭誘導することができるため、配送費をかけることなく購買増加に直結するサンプリングキャンペーンを実施することが可能となる。(株)コクミン、サツドラホールディングス<3544>、ココカラファイン、ツルハホールディングス<3391>、(株)キリン堂ホールディングスなどで相次いで導入を進めており、今後の事業拡大に向けて体制が整ってきた。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
2022/01/06 15:15
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アライドアーキ Research Memo(4):「SaaS事業」「ソリューション事業」が順調に拡大
■決算概要1. 2021年12月期第3四半期累計の業績アライドアーキテクツ<6081>の2021年12月期第3四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比55.2%増の4,535百万円、営業利益が同4.4倍の575百万円、経常利益が同7.7倍の647百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同4.5倍の577百万円と、想定を上回る大幅な増収増益となった。同社が重視する粗利売上についても同34.2%増の2,277百万円と順調に伸びている。特にコロナ禍による影響についてはマーケティングDXへの流れを加速するうえで追い風となっており、今後も良好な事業環境が続く見通しである。粗利売上は、「SaaS事業」「海外SaaS事業」「ソリューション事業」「中国進出支援事業」の全事業で伸長した。コロナ禍をきっかけとしたマーケティングDXの需要拡大等により、「SaaS事業」及び「ソリューション事業」が想定を上回るペースで拡大している。また「海外SaaS事業」については、ゲーム会社からの3D動画制作ニーズの取り込みが着実に成果を出し、売上高が力強く成長し始めている。一方、「中国進出支援事業」はコロナ禍の影響によりインバウンド需要が低迷しているものの、越境EC需要でカバーし堅調に推移した。損益面でも、顧客獲得・維持コストや将来に向けた開発コストが若干増加したものの、増収に伴う収益の底上げや管理コストの削減により大幅な営業増益を実現し、営業利益率は12.7%(前年同期は4.5%)に大きく改善した。これまで先行費用のフェーズにあった「海外SaaS事業」についても黒字体質が定着し、着実に利益が積み上がっている。また、円安による為替差益(29百万円)の発生や投資有価証券売却益(173百万円)の計上なども親会社株主に帰属する四半期純利益のプラス要因となった。財政状態については、「現金及び預金」の増加などにより総資産は前期末比12.5%増の3,599百万円に増加した。一方、大幅な増益に伴う内部留保の積み増しにより、自己資本も同31.9%増の2,287百万円に大きく拡大したことから、自己資本比率は63.6%(前期末は54.2%)に改善した。各事業における実績は以下のとおりである。(1) SaaS事業粗利売上は前年同期比18.8%増の904百万円となった。コロナ禍の下、EC化加速等に伴うマーケティングDXの需要が拡大するなかで、「LetroStudio」(動画制作)、「Letro」(UGC活用によるEC強化)、「echoes」(デジタル販促)の3つの主力サービスが大きく伸びている。顧客企業数は727社とほぼ横ばいながら、その内訳を見ると単価の高い主力サービスへのシフトが顕著である。特に、月額課金型の「LetroStudio」及び「Letro」の伸びが収益の底上げに大きく寄与したほか、複数ツールの利用によりさらに高い効果を発揮する事例※も増えており、顧客単価の向上が業績の伸びをけん引していると言える。※「LetroStudio」で作成した動画を「echoes」によるキャンペーンページに活用するとか、創業来サービスである「モニプラ」(ファンブログ)で生成したUGCを「Letro」により自動抽出し、顧客のHPに掲載するなど、組み合わせによりさらに効果を高める事例が増えてきた。(2) 海外SaaS事業粗利売上は前年同期比45.7%増の465百万円となった。引き続き欧米をターゲットとするゲーム会社から高単価の3D動画制作の受注が拡大しており、業績の伸びをけん引している。また、スポット取引から月額課金の継続取引への転換が安定的な収益の積み上げに貢献し、黒字体質が定着してきた。(3) ソリューション事業粗利売上は前年同期比56.6%増の770百万円となった。コロナ禍で加速した消費者志向の変化に対応する「ファン×SNSマーケティング」のニーズが向上し、想定を上回るペースで順調に拡大した。第1四半期については一時的要因も大きかったものの、第2四半期以降も順調に需要が積み上がっており、外部環境が追い風となっているなかで、この傾向は今後も継続するものと見られる。活動面でも、デジタル人材のシェアリングを行うネクストバッターズサークルを2021年4月に設立したほか、ファンベースカンパニーとの連携により、ファン創出やファンとの関係強化に向けた新サービスを共同開発するなど、新たなマーケティングニーズに対する支援体制の充実にも取り組んだ(詳細は後述)。(4) 中国進出支援事業粗利売上は前年同期比10.7%増の136百万円となった。コロナ禍の下、海外からの人の往来が制限されていることから、インバウンド支援の需要が縮小する一方、越境EC進出支援の需要拡大を取り込み、事業全体では堅調に推移した。特に中国SNSアカウント運用(Weibo、Wechat等)とインフルエンサー(Vstar Japan提携インフルエンサー、在日中国人コミュニティ「BoJapan」との連携)による拡散を合わせたビジネスモデルを強化したことにより、安定的に収益を確保することができた。2. 四半期業績推移四半期業績の推移を見ると、マーケティングDXへの流れが加速するなかで、季節要因(年度末の予算消化)や一時的な増加要因(ソリューション事業における大型キャンペーン)なども相まって第1四半期の粗利売上は大きく拡大し、過去最高(四半期ベース)を更新した。さらに、季節要因や一時的要因が剥落した第2四半期においても、高い業績水準を維持しており、実態としては業績の伸びが継続しているとの見方ができる。また、連結営業利益についても粗利売上とおよそ連動する形で大きく底上げされている。これまで先行投資フェーズにあった海外子会社Credits(海外SaaS事業)についても、2020年12月期第4四半期に営業黒字化を実現すると、着実に利益が積み上がってきた。3. 2021年12月第3四半期累計の総括2021年12月期第3四半期累計を総括すると、想定を上回る業績の伸びを実現したところはもちろん、活動面でも、新サービスの開発や既存サービスの機能強化、デジタル人材の拡充など、今後の事業拡大に向けた基盤強化に取り組み、一定の成果を残したところは高く評価できる。また、コロナ禍をきっかけとしたマーケティングDXの需要拡大は一過性の特需ではなく、趨勢的な構造変化のスピードが早まったものと捉えるべきであり、他社に先駆けて実績やノウハウを積み上げてきた同社にとっては、本格的な成長フェーズに入る転機となる可能性があると言える。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
2022/01/06 15:14
注目トピックス 日本株
アライドアーキ Research Memo(3):独自SaaSツールの提供等によりマーケティングDXを包括的に支援(2)
■会社概要2. 企業特長(1) 成長モデルアライドアーキテクツ<6081>の売上高は、顧客企業数と顧客単価の掛け算方式で積み上げられる(ストック型ビジネス)。すなわち、「SaaSツール」により顧客企業数を積み上げるとともに、比較的マーケティング予算のある大手企業に対しては、顧客ニーズに合わせた様々な「デジタル人材」を組み合わせた総合提案により顧客単価の向上を目指す成長モデルと言える。(2) 収益構造同社の売上原価は、SNSなどへの広告出稿費用のほか、プロジェクトにかかる外注費、人件費とSaaS運営費(サーバー費用)を中心に構成される。そのうち、取引の基盤となるSaaSツールについては、積み上げ型の月額または従量課金モデルであるうえ、追加的な費用負担の少ないプラットフォームビジネスであるため、売上高が増えるほど収益性が高くなるところに特徴がある。特に、国内・海外のSaaS事業は原価率が著しく低いため、損益分岐点売上達成後の利益成長が期待できる。なお、同社では、グループの収益性を図る重要な経営指標(KPI)として、売上高ではなく「粗利売上」※を重視している。これは、コア事業に付随して発生する広告売上(広告運用代行)については、売上高に対するインパクトが大きくなる一方、粗利益率が極端に低いことから、広告売上の構成比(セールスミックス)次第で、売上高の増減や粗利益率に大きな影響を及ぼし、業績の時系列比較が実態とかけ離れてしまうことが理由である。この点については、2022年度から収益認識基準が適用されることにより、広告原価が売上高から控除されるため、今後の「売上高」は「粗利売上」と近い概念となることが想定される。※粗利売上=(同社単体:売上高−直接原価)+(連結子会社:売上総利益)により算定したもの。直接原価のほとんどは、広告売上に係る原価(広告出稿費用)であるため、その影響を排除したものとして捉えることができる。(3) 同社の優位性a) 新たなマーケティング領域における知見やノウハウ同社の優位性は、企業を取り巻く環境が大きく変化するなかで、他社に先駆けてSNSマーケティング支援を展開し、そのためのツールとしてのSaaSやソリューションの提供により、独自のポジションを確立したところにある。特に、コロナ禍によりマーケティング領域におけるDXへの流れが加速するなかで、6,000社を超える企業への支援実績を通じて知見やノウハウを蓄積してきた同社には、大きなアドバンテージがあると期待できる。b) 自社開発による多様なSaaSツールの提供創業以来、数々の実効性の高い独自SaaSツールの提供により、少ない広告予算や人員でもマーケティングDX効果を促進できることや、各種SNSを幅広く網羅していることが顧客層拡大における強みとなっており、複数ツールによる相乗効果も発揮されている。また、海外子会社Creaditsの展開するクリエイティブ・プラットフォームについても、事業モデルの革新性が顧客企業からも一定の評価を受けている。本社及びベトナム・ハノイに加え、ホーチミンに第3の開発拠点を新設しており、さらなる開発体制の強化にも取り組んでいる。c) マーケティングDXの実現に向けた支援体制やデジタル人材また、他社(及び第一人者)との連携や独自SaaSツールの提供などにより、顧客企業のマーケティングDXの実現に向けて、戦略立案から実行・運用まで包括的に支援できるグループ体制を構築したところや、グループ社員数189名のうち、外国籍比率35%以上(国籍数10以上)、エンジニア比率25%以上で構成されるデジタル人材もソリューション提供の基盤となっている。d) 成長加速に向けた事業ポートフォリオの確立堅調に推移している国内事業と成長性が期待できる海外事業によるバランスの良い事業ポートフォリオも強みと言える。フェーズとして発展途上にあることは否めないものの、国内市場が成熟化しつつあるなかで、国内事業で稼いだ資金を成長性の高い海外事業へ投資し成長を加速する戦略には合理性があり、将来へのポテンシャルも高いと評価できる。3. 沿革同社は2005年、インターネットを活用したマーケティング支援を目的として、現 代表取締役社長CEOの中村壮秀(なかむらまさひで)氏によって設立された。中村氏は、住友商事<8053>を退職後、インターネットビジネスの可能性を信じて、ゴルフダイジェスト・オンライン<3319>の創業に参画し、東証マザーズ上場に貢献した。そこでクチコミの重要性を実感するとともに、社会的意義や市場の大きさを確信したことが、人と企業のエンゲージメントの創出を使命とする同社を設立した経緯となる。2006年に、ホームページ制作事業の立ち上げと各分野のエキスパートによるクチコミサイトをスタートさせた。当初はプロやブロガー等のセミプロ向けのコミュニティサイトを運営していたが、2008年に一般ユーザーを対象としたファンサイトモールをスタートさせ、現在の事業モデルが立ち上がった。事業拡大の転機となったのは、2011年からFacebook向けにサービスを開始したことである。これが会員ユーザーの獲得に拍車をかけ、同社の成長を支えてきた。その後もTwitter(2012年)やInstagram及びLINE(両社ともに2015年)との連携も開始している。なお、2013年11月に東証マザーズに上場しており、2014年3月にはシンガポールに子会社を設立し、SNS広告クリエイティブ制作事業を立ち上げた(現在は広告クリエイティブ・プラットフォーム「Craft」の運営を行う)。また、2016年4月には中国最大規模のSNS「Weibo」の公式マーケティング会社IMSと提携し、「Weibo」の公認サービス「WEIQ」の日本における独占販売契約を締結すると、2020年7月にはラオックスとの事業提携により、中国最大級の小売企業である蘇寧グループの中国販売ネットワークを活用した「中国向け販売パッケージ」の提供を開始するなど、越境プロモーション事業(中国進出支援事業)の拡大に向けても足掛かりを築いている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2022/01/06 15:13
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泉州電業 Research Memo(2):独立系では業界トップクラスの電線総合商社。オリジナル商品で差別化を図る
■会社概要1. 会社概要泉州電業<9824>は電線の総合専門商社で、独立系では業界トップクラスである。その歴史は古く、創業は1947年に遡る。仕入先は約250社となっており、大手は言うに及ばず、国内の電線メーカーの半分以上と取引がある。在庫商品アイテム数は約5万点と、国内における商品の調達力は抜きん出ている。2. 沿革同社の歴史は古く、1947年に西村電気商会として創業された後、全国及びアジア諸国へと、業容を拡大してきた。2021年10月末時点のグループ全体での従業員数712名、国内連結子会社5社、海外連結子会社6社(タイ1社、中国1社、台湾1社、フィリピン1社、ベトナム1社、アメリカ1社)、国内拠点17ヶ所を擁する。株式については、1991年6月に大阪証券取引所市場第2部(特別指定銘柄)へ上場した。その後2002年11月に東京証券取引所市場第2部へ上場し、さらに2017年11月には同市場第1部へ指定替えとなった。3. 事業内容(1) 仕入先と販売体制同社は電線の総合専門商社で、独立系では業界トップクラスである。仕入先は約250社となっており、国内の電線メーカーが中小企業を含めて約400社あるなかで、同社は半分以上のメーカーから仕入れていることになる。在庫商品アイテム数で約5万点と、国内における商品の調達力は抜きん出ている。主な仕入先は昭和電線ホールディングス<5805>、住電HSTケーブル(株)となっている。販売体制については、国内で支店・営業所併せて17ヶ所を有し、各支店・営業所に物流センターを併設し、営業社員200名体制で全国展開している。また、加工品の工場(外注工場を含む)を納入先の近隣に設けるなど、「必要な商品を、必要な分だけ、必要なときに届ける」というジャスト・イン・タイムのデリバリー体制及び在庫管理能力を強みとしている。在庫水準に関しては「0.8ヶ月以内」と厳しい社内規定を設けて、銅相場の変動に対応できるよう適正在庫水準を常に維持している。顧客は電材販売業者及びメーカー、電気工事会社など約3,500社に上り、最大の顧客先の売上構成比は約3%、上位10社合計でも約15%程度と、特定の顧客に対する依存度が低く、幅広い顧客と取引を行っているのが特徴である。(2) 商品別構成比同社の商品別の売上高構成比(2021年10月期、単体ベース)は、電力用ケーブルが35.7%と最も大きく、次いで機器用・通信用電線が33.8%、汎用被覆線10.2%、その他電線5.2%、非電線15.1%となっている。同社の商品別構成比を業界全体の構成比と比較すると、機器用・通信用電線及び電力用ケーブルの比率が高い。これは業界合計では比率の高い輸送用電線(主に自動車用ワイヤーハーネス)を同社では手掛けていないことによる。輸送用電線を除いた業界合計の構成比は機器用・通信用電線で約20%、電力用ケーブルで約33%となっており、電力用ケーブルは同社とほぼ同じ数値となっている一方、機器用・通信用電線は同社の構成比が高くなっており、この点が同社の特徴と言える。(3) 業界シェア日本電線工業会の統計データから同社の業界シェアを推計すると、電線総出荷額ベースでは4%程度と推計されるが、同社の関わる需要部門である「建設・電販部門」だけで見ると約14%(同社推定)になる。同業はメーカー系の商社が多く、独立系の上場企業は同社のみとなっている。電線業界では現状、電力ケーブル分野における価格競争が続いており、同分野を手掛けている独立系商社にとっては厳しい状況が続いている。経営体力がなく、差別化できる商材を持っていない電線商社は、大手メーカー系商社の傘下に吸収・統合されるといった傾向が続いているようである。(4) 特色、強み前述のように同社は多くの種類の機器用・通信用電線を手掛けているが、なかでも自動車業界及びエレクトロニクス業界における工場の生産ラインで用いられる電線を主力としており、これは同社の特色だろう。それらはFA機器及び工作機械をつなぐケーブル、これら機器内に組み込まれる電線などである。このため同社の業績は、国内における自動車・エレクトロニクス業界を中心とした製造業の設備投資動向と相関性が高くなっている。また同社は、この機器用・通信用電線において他社との差別化を図っている。具体的には、営業が集めてきた顧客ニーズをもとにオリジナル商品を独自で、またはメーカーと共同で開発し、単なる仕入販売商社ではない付加価値商品の販売を行っている。前述のとおり、同社は加工品の拠点を顧客の近隣に展開しているが、このロケーション戦略によって顧客との接触を密にし、新製品及び生産ラインの設計段階からの情報を入手して商品開発に生かしている。こうしたオリジナル商品の特徴は、「耐久性、耐環境性(温度変化、防油、防水等)、ノイズ対策」など、顧客の多様なニーズに応えられる点である。一方でオリジナル商品に関しては在庫リスクを同社が抱えるため、粗利益率も高く設定されている。機器用・通信用電線の中でこうしたオリジナル商品の売上構成比は約3分の1程度を占めており、これも同社の特色であり強みと言えるだろう。こうしたなかで、同社はオリジナル商品の開発で顧客との強い関係を築き上げているほか、多品種少量受注にも対応できるデリバリー体制を構築していること、及び商品ラインナップにおいて中小メーカーの特殊ケーブルなどもそろえることができるといったメーカー系列にはない強みを持っていることなどにより、今後も独立系商社のトップ企業として成長を続けていくことは十分に可能であると弊社では見ている。(5) 銅価格の影響同社の業績に影響を与える大きな要素として「銅価格」が挙げられる。同社が扱っている電線類の主原材料は銅であるため、電線価格(仕入・販売)は国際商品市場での銅価格にスライドする。そのため、銅価格の動きによって売上高は大きく変動するが、仕入価格も販売価格と同様に変動していくためマージンは変わらない。ただし、同社は在庫評価方法に「移動平均法」を採用していることから、銅価格が上昇する局面ではそれまでの低い原価が計上されるため利益が先に出る傾向があり、反対に下降局面ではそれまでの高い原価が計上されるため利益が少なくなる傾向がある。長期的に見ればこれらは平均化されるので、銅価格の利益への影響は微少であると言える。一方で販売価格に関しては、銅価格の影響だけでなく競争による影響もある。特に電力用ケーブルでその傾向が強く、電力用ケーブルの粗利益率は同社商品の中でも低い水準である。ただし、電力用ケーブルに関しては顧客となる電材販売業者約1,100社が扱っており、品ぞろえとして欠かせない商品であることも事実である。また、もう1つの柱である機器用・通信用電線は設備投資動向への依存度が大きく、好不調の波が激しいこともあって、経営の安定性(リスク分散)という意味でも電力用ケーブルは同社にとって不可欠の商材となっている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/01/06 15:12
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アライドアーキ Research Memo(2):独自SaaSツールの提供等によりマーケティングDXを包括的に支援(1)
■会社概要1. 事業概要アライドアーキテクツ<6081>は、「世界中の人と企業をつなぐ」というミッションのもと、「ファン」「ソーシャル」「テクノロジー」「クリエイティビティ」「グローバル」の5つの要素を基礎として、「SaaSツール」と「デジタル人材」の両輪から、顧客企業のマーケティングDXを支援する事業を国内・海外で展開している。創業以来、市場が拡大しているSNS領域に特化し、SNSマーケティング支援ノウハウを蓄積してきたことに加え、FacebookやTwitter、Instagram、LINEなどSNSを効果的にマーケティング活用するために独自に開発した「SaaSツール」、SNSの運用や広告の運用、さらにファンをベースとしたマーケティング戦略の立案から実行までをサポートするなど、顧客企業のマーケティングDX戦略を包括的に支援する「デジタル人材」に強みがあり、これまでに6,000社を超える企業への支援実績がある。また、中国を中心とする越境ECへの進出やインバウンド市場に向けたSNSプロモーション支援のほか、海外子会社が運営する世界中の広告クリエイターが質の高い広告クリエイティブ(広告素材)を短時間かつ安価で提供するグローバルプラットフォーム「Craft(クラフト)」※にも注力しており、国内のみならず海外のマーケティング市場もターゲットにしていることも特徴の1つと言えよう。※「CREADITS®(クレディッツ)」よりサービス名を変更。コロナ禍による環境変化によりデジタルシフトが加速するなかで、「マーケティングDX支援企業」として圧倒的ポジションを確立することを新たな中期テーマに掲げ、「SaaS事業」「海外SaaS事業」「ソリューション事業」「中国進出支援事業」の4つの事業を展開している。各事業の概要は以下のとおりである。(1) SaaS事業自社開発のマーケティングSaaSツール提供のほか、SaaSで補いきれないマーケティングDX施策の提供を合わせて提案することによって、顧客企業のマーケティングDX推進に貢献することに加え、マーケティング人材の質的・量的な不足を補い、少ない広告予算でもより効果的な成果を上げるための支援を行っている。特に、マーケティングDXにおいて需要の高い制作(動画)、EC(UGC※の活用)、デジタル販促(SNSプロモーション)の3領域に特化したサービスを展開する。主要SaaSツールには、創業以来の主力となっている「モニプラ」(SNS活用/UGC制作支援)のほか、導入事例が増えてきた「LetroStudio(レトロスタジオ)」(豊富なテンプレと操作性の高い編集機能で簡単に動画を制作できるツール)や「Letro(レトロ)」(Instagramやブログに投稿されたUGCを収集、ECサイトなどに反映できるツール)、「echoes(エコーズ)」(TwitterやInstagram上で簡単にキャンペーンを開催できるツール)などがある。とりわけ需要が拡大している「LetroStudio」「Letro」「echoes」の主力3サービスに注力している。※Webサイトのユーザーによって生成・制作されたコンテンツ(User Generated Content)の総称。(2) 海外SaaS事業シンガポールの連結子会社Creadits Pte.Ltd.(以下、Creadits)により、広告クリエイティブ制作に特化したグローバルプラットフォーム「Craft」を提供している。「Craft」は、契約プランに応じて付与される購入権チケットと引き換えに、世界中の広告クリエイター(100ヶ国1万人超)が提供する質の高い広告クリエイティブを短時間かつ安価に利用できるシェアリングエコノミー型のプラットフォームである。欧米を中心としたグローバル市場において、デジタル広告制作を低コストで効率的に行いたい企業と、スキルの高い世界中のデザイナーをマッチングするところに特徴がある。また、自社開発の人工知能(AI)を活用することにより、より効果的な広告クリエイティブの提供をサポートする機能が組み込まれている。GoogleやFacebookなどのプラットフォームにとってはメディア収益の最大化、広告主にとっては広告効果の最大化、広告クリエイターにとっては生産性の最大化(及びビジネス機会の獲得)を実現することから、すべてのプレーヤーにとってメリットが大きい。サービス提供を開始して以来、より完成度を高めるための先行投資や試行錯誤を繰り返してきたが、2020年12月期第4四半期に営業黒字化(四半期ベース)を達成し、利益を稼げる体質になってきた。(3) ソリューション事業ファンの存在をマーケティングに活用し、ビジネスの成長を目指す概念が浸透しつつあるなかで、「SNS活用」や「ファン育成支援」をキーワードに、顧客企業のマーケティングDX戦略を企画立案から施策の実行まで包括的に支援する事業を行っている。情報過多かつ市場自体の縮小が見込まれる日本において、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客(ファン)との中長期的な関係構築の重要性が高まってきた一方で、企業にはファンベースマーケティングを実行するためのノウハウや人材、仕組みがない。同社では、豊富な支援実績やノウハウを持った専門人材によるサポートに加え、グループ会社のAiCON TOKYO(株)※1や(株)ファンベースカンパニー※2との連携により、グループ全体で推進する体制を構築している。また、2021年4月には(株)ネクストバッターズサークルの設立により、マーケティング人材のシェアリング事業も開始した(詳細は後述)。※1 2018年9月に、クリエイティブ・ディレクターの石渡晃一(いしわたこういち)氏との共同出資会社として設立された(連結子会社)。実績豊富な石渡氏を中心にクリエイティブ人材を発掘し、顧客企業にインソースすることにより、マーケティングのスピードや質を進化させる支援などを行っている。※2 2019年5月に、ファンベースを提唱するコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之(さとうなおゆき)氏と、豊富な経営者・経営層ネットワークを持つ野村ホールディングス<8604>の三者により、ファンベースを基盤としたマーケティング支援事業を担う合弁会社として設立された(持分法適用関連会社)。自社の商品やサービスを支持してくれるファンを大切にし、ファンをベースにして売上や企業価値を中長期的に向上させていく考え方を基盤としたマーケティング事業を展開する。佐藤尚之氏がChief Planning Officerに就任し、ファンベース事業の企画統括を担っている。(4) 中国進出支援事業近年急速に市場が拡大している越境ECへの出店により中国進出をしたい日本企業や、インバウンド市場において訪日外国人をターゲットに商品やサービスを提供したい企業に対して、日本の商品に愛着のある在日中国人や中華圏で人気のある日本人インフルエンサーの発信力を活用したプロモーション等の支援を行っている。具体的には、同社が運営する在日中国人コミュニティの「BoJapan」(在日中国人による口コミの生成・拡散)※1、連結子会社であるVstar Japan(株)が支援するインフルエンサーによる広告動画等の制作・投稿と、中国最大規模のSNS「Weibo」グループの公式マーケティング会社北京天下秀科技有限公司(以下、IMS)との組み合わせ※2によるインフルエンサー施策に加え、新たに開始した「Taobaoライブ(淘宝直播)」※3との組み合わせによるライブコマース施策などを通じて、同社ならではの実効性の高いサービスを提供している。また、2020年7月にはラオックスとの事業提携により、中国最大級の小売企業である蘇寧グループ※4の中国販売ネットワークを活用した「中国向け販売パッケージ」の提供を開始した。国内市場が成熟化に向かうなかで、ソーシャルメディアの活用によるグローバル展開はあらゆる企業(特に、化粧品や健康食品、日用品等の消費財メーカー等)で重要な課題の1つとなっており、今後の成長分野として位置付けられる。※1 2020年5月に、日本最大級の在日中国人女性コミュニティ「BoJapan」との連携強化に伴って、サービス名も従来の「chinatouch(チャイナタッチ)」から「BoJapan」に変更となった。※2 Weibo公式のインフルエンサーキャスティングサービス「WEIQ」(同社に独占販売権)の活用など。※3 アリババグループが手掛けるライブ配信プラットフォーム。※4 蘇寧グループは、ラオックスの主要株主となっている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2022/01/06 15:12
注目トピックス 日本株
泉州電業 Research Memo(1):堅実経営で着実な成長続く。財務内容は堅固で株主還元にも前向き
■要約泉州電業<9824>は、独立系では国内トップの電線の総合専門商社である。仕入先は約250社、在庫商品アイテム数は約5万点に上り、「必要な商品を、必要な分だけ、必要なときに届ける」というデリバリー体制が強みである。自社開発のオリジナル商品で差別化を図っている。1. 2021年10月期の連結業績(実績)2021年10月期の連結業績は、売上高92,463百万円(前期比24.5%増)、営業利益4,743百万円(同51.8%増)、経常利益5,004百万円(同47.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,583百万円(同52.4%増)となり、売上高と親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を更新した。増収の最大の要因は銅価格の上昇(前期比48.8%増)であるが、実需も半導体製造装置向けの好調に加えて、工作機械向けや自動車業界向けが回復したことから堅調に推移した。また子会社も好調であり連結業績に寄与した。銅価格の上昇により売上総利益率は低下したが、増収により売上総利益は前期比15.3%増となり、販管費の伸びが2.5%にとどまったことから営業利益は大幅増益となった。これに伴い、年間配当を90円(当初予定は80円)に増配した。2. 2022年10月期の連結業績(予想)2022年10月期通期の連結業績※は、売上高97,000百万円(前期比4.9%増)、営業利益4,800百万円(同1.2%増)、経常利益5,100百万円(同1.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,600百万円(同0.5%増)と予想されている。平均銅価格は、1,050千円/t(前期比3.8%増)と見ている。半導体製造装置向け、自動車や工作機械向けなどの需要は堅調に推移すると予想されるが、前期(2021年10月期)の業績が高水準であったことから、慎重な予想となっている。そのため、この予想が達成される可能性は高く、今後の各需要先の動向によっては上方修正の可能性もあるだろう。※2022年10月期から「収益認識に関する会計基準」を適用。前期数値は未適用のため前期比増減は参考値。以下同様。3. 中期経営計画:目標数値を上方修正、最終年度(2024年10月期)に経常利益63億円目標同社は、2024年10月期に売上高1,000億円、経常利益50億円、ROE8.0%以上を目指す中期経営計画を発表していたが、経常利益については既に達成されたことや日本電線工業会の2025年度出荷数量予測に基づいて、この目標数値を売上高1,050億円、経常利益63億円へ上方修正した。銅価格は現在の水準が続くとの前提だが、「脱炭素」「AI・IoT・5G」「万博・IR」等のビジネス機会を背景にこれらの目標達成を目指す。4. 株主還元、資本効率改善にも前向き同社の財務体質は良好であり、加えて「今後は資本効率を改善し、まずはROE8.0%以上を目指す」と述べている。実現のための具体策として、配当を継続的に増配している。2021年10月期の年間配当は当初は80円の予定であったが、最終的には年間90円に増配した。さらに進行中の2022年10月期も年間100円の配当(予想配当性向25.1%)を行う予定で、これにより9年連続の増配となる見込みだ。加えて同社は、自社株買いも積極的に行っている。2016年10月期に271,700株、2018年10月期に150,000株、2019年10月期に300,000株、2020年10月期に315,700株の自社株買いを行った。2021年10月期も268,600株の自社株買いを行った。さらに進行中の2022年10月期も100,000株(500百万円)の自社株買いおよび300,000株の消却を行うことを発表している。このような積極的な株主還元、資本効率の向上に向けた同社の姿勢は大いに評価されるべきだろう。■Key Points・独立系では業界トップクラスの電線総合商社。オリジナル商品で差別化を図る・2022年10月期は前期比、1.2%の営業増益予想だが上振れの可能性も・中期経営計画は、数値目標を2024年10月期に経常利益63億円へ上方修正(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/01/06 15:11
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アライドアーキ Research Memo(1):2021年12月期第3四半期まで想定を上回る大幅な増収増益を実現
■要約1. 事業概要アライドアーキテクツ<6081>は、創業以来、自社開発のマーケティングSaaSツール※やSNS活用を中心としたソリューション提供により、『顧客企業と人々をつなぐ』BtoBビジネスを展開している。※SaaSとは、ソフトウェアをネットワーク経由で必要な分だけ提供するサービス形態のこと。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による環境変化がデジタルシフトを加速するなかで、これまで培ってきたSNSマーケティング支援ノウハウを生かし、「マーケティングDX支援企業」※1として圧倒的ポジションを確立することを新たな中期テーマに掲げるとともに、「マーケティングDX支援」の単一セグメントのもと、「SaaS事業」(マーケティングDX支援ツール)、「海外SaaS事業」(広告クリエイティブ制作のプラットフォーム)、「ソリューション事業」(デジタル人材※2によるマーケティングDX戦略支援)、「中国進出支援事業」(中国向けプロモーション支援)の4つの事業を手掛けている。マーケティングDXへの流れを追い風とする国内事業の成長加速や、投資回収期に入った海外事業の収益貢献により、同社グループは新たな成長ステージに入ってきた。※1 同社では、マーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)を「デジタル技術・デジタル人材によって業務プロセスや手法を変革し、人と企業の関係性を高めること」と定義している。※2 同社では、SaaSやSNSなどのデジタル技術・手法に詳しく、それらを生かした施策やサービスを実行できる人材(SNS広告の運用人材、SNSのアカウント運用人材)のことを「デジタル人材」と定義している。エンジニア、WEBデザイナー、クリエイティブ・ディレクター等を含む。2. 2021年12月期第3四半期累計の業績2021年12月期第3四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比55.2%増の4,535百万円、営業利益が同4.4倍の575百万円と想定を上回る大幅な増収増益となった。コロナ禍をきっかけとしたマーケティングDXの需要拡大等により、「SaaS事業」及び「ソリューション事業」が拡大した。さらに「海外SaaS事業」についても、ゲーム会社からの3D動画制作ニーズの取り込みなどにより、売上高の大きな成長を見せた。「中国進出支援事業」は、コロナ禍の影響によりインバウンド需要が低迷しているものの、越境EC需要でカバーし堅調に推移している。損益面でも、顧客獲得・維持コスト(広告宣伝費や人員増など)や将来に向けた開発コスト(既存プロダクトの強化や新サービスの開発など)が若干増加したものの、増収に伴う収益の底上げや管理コストの削減により大幅な営業増益を実現し、営業利益率は12.7%(前年同期は4.5%)に大きく改善した。活動面でも、新サービスの開発やデジタル人材の拡充などに取り組み、一定の成果を残すことができた。3. 2021年12月期の業績予想2021年12月期の連結業績について同社は、上期業績が想定を上回るスピードで拡大していることを踏まえ、期初予想から2度目の上方修正を公表した(2021年8月10日付)。修正後の業績予想については、売上高を前期比31.2%増の5,500百万円、営業利益を同100.9%増の600百万円とし、大幅な増収増益を見込んでいる。第3四半期においては、再度の上方修正はないものの、修正後の業績予想に対してハイペースで進捗しており、第4四半期についても、ここまでの流れを引き継ぎ、「SaaS事業」及び「ソリューション事業」を中心に各事業が伸長する想定のようだ。さらに、第3四半期においては「海外SaaS」事業の成長が著しく、今後の収益貢献が期待される。損益面でも、将来に向けた先行費用を増やすものの、増収による収益の底上げにより大幅な増益を実現し、営業利益率も10.9%(前期は7.1%)に大きく改善する見通しである。なお、第3四半期実績との比較で見ると明らかに保守的な予想水準となっているのは、コロナ禍の長期化等に伴う経済情勢の不確実性を慎重に見ていることや、成長加速のための先行費用を積極投入していく方針を反映したものである。4. 今後の方向性マーケティング領域におけるDXへの流れが加速するなかで、「SaaSツール」(自社開発のマーケティングSaaSツールの提供)と「デジタル人材」(SNS運用等のマーケティング施策の実行ができる人材の提供)の両輪から、顧客企業のマーケティング効率を格段に向上させるDX支援を提供し、「マーケティングDX支援企業」として圧倒的ポジションを目指す方向性である。特に、「SaaSツール」については、多様なサービスラインナップの強みを生かして、より盤石な顧客基盤を構築するとともに、アップセル、クロスセルにより顧客単価の引き上げにも取り組む。また、「デジタル人材」については、顧客企業のマーケティングDX戦略を包括的に支援する質の高い人材を拡充していく方針である。■Key Points・2021年12月期第3四半期累計はマーケティングDXの需要拡大を受け、想定を上回る増収増益を実現・活動面においても、新サービスの開発や既存サービスの機能強化、デジタル人材の拡充などに取り組み、一定の成果を残す・2021年12月期の業績予想を2度にわたって上方修正。第3四半期同様、通期業績も大幅な増収増益を見込む・「マーケティングDX支援企業」として圧倒的ポジショニングの確立を新たな中期テーマに掲げ、SaaS強化とデジタル人材の拡充に取り組む(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2022/01/06 15:11
注目トピックス 日本株
アクシージア Research Memo(5):当面は内部留保確保が最優先となるが、中期的には配当の導入も期待
■株主還元策アクシージア<4936>は、収益力を強化し、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としているものの、成長過程にあり、将来の事業の拡大及び財務基盤の充実のため、内部留保の確保を最優先に創業以来無配としてきた。上場により獲得した資金に関しては、短期的にはM&Aによる工場設備の取得に活用され、2022年7月期も配当は行わない予定としている。なお、当面の間は内部留保を充実させることを最優先にするが、将来的には業績及び財務状況を勘案しながら株主への継続的な利益還元を図っていく方針だ。潜在力のあるアジア市場において急成長していることから、当面の投資スタンスはキャピタルゲインが主目的になるものの、中期的には配当の導入もあると弊社では期待している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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2022/01/06 15:05
注目トピックス 日本株
アクシージア Research Memo(4):中長期計画では3年後に売上高112億円、5年後に200億円を目指す
■成長戦略1. 中長期計画アクシージア<4936>は、2021年12月に中長期計画を発表した。3ヶ年の中期経営計画の数値目標としては、最終年度の2024年7月期に売上高11,200百万円(年平均成長率24.6%増)、営業利益2,800百万円(同26.5%増)、営業利益率25.0%を掲げた。高い目標ではあるが、過去3年間の平均増収率が38.1%であることからすれば十分達成可能と弊社では見ている。加えて、重要経営指標として売上高広告宣伝比率を20%前後とした。これは2021年7月期の13.7%を上回る水準であり、積極的な広告宣伝投資により認知度を高め、成長を加速する方針であることがわかる。基本戦略は引き続き「ブランド力を維持しつつ成長・拡大し、増収効果に伴う利益増を、コストコントロールにより担保する。」を継続し、(1) ブランド戦略(主力製品の拡大と既存ブランド内の製品育成)、(2) マーケティング戦略(中国市場の深耕と販売チャネルの多角化)、(3) ビジネスアライアンス/M&A(製品開発力強化、国内市場強化)を実行していく。なお、5年後(2026年7月期)の目標としては、売上高で200億円、営業利益率で20%以上を掲げている。2. 成長戦略同社は中国EC事業において、「トップダウンマーケティング」と「ボトムアップマーケティング」のそれぞれに属する複数の主要プラットフォームを使い分けながら、双方向マーケティングの相乗効果によって、広告宣伝費をコントロールして売上拡大に成功してきた。「トップダウンマーケティング」では「Tmall」を主に活用し、有名女優などを起用した広告を掲載することで、ブランド醸成や認知度拡大を狙う。なお、同社の取り組みが「Tmall」からも評価され、2020年には戦略的提携を締結している。これにより、「Tmall」のビッグデータを活用したニーズの把握や販促施策が実施できるようになった。一方、「ボトムアップマーケティング」では「Taobao」や「RED」といった口コミサイト・CtoCサイトにおいて、インフルエンサー・KOLのネットワークが構築されている。「Taobao」では600人を超えるインフルエンサー・KOLまたは店舗とのネットワークがあり、各人各店舗が数万から100万人のエンドユーザーを抱えている。早くからインフルエンサー・KOLの価値に着目し育ててきたことが現在の同社のブランド認知につながっていると言える。さらに、2022年7月期第2四半期には「TikTok」及び「JD.com」に旗艦店を出店し、新たなプラットフォームの開拓を開始した。「TikTok」は若年層中心に販売チャネルとしての存在感が増しており、口コミやブランド認知向上に加え、ライブ配信機能による販売も期待できる。「JD.com」は家電製品のECを主体として成長してきたが、最近は化粧品やサプリメントの販売も増えていることから参入を決めた。中国ECプラットフォームはアリババグループを中心に発展してきたが、直近は多様化が進行しており、チャネルの変化に機敏に対応した格好となり、2023年7月期以降のオムニチャネル展開の布石となるだろう。(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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2022/01/06 15:04
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アクシージア Research Memo(3):売上高・各利益ともに高成長を実現し、過去最高を達成。主力の中国市場が好調
■業績動向1. 2021年7月期の業績概要アクシージア<4936>の2021年7月期の売上高は5,787百万円(前期比34.9%増)、営業利益1,383百万円(同28.5%増)、経常利益1,370百万円(同33.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益868百万円(同21.1%増)となった。売上高・各利益ともに高い成長を実現し、いずれも過去最高を達成した。売上高について、地域別では全体の9割を占める中国市場が前期比41.6%増と好調に推移した。チャネル別では、中国ECが同41.3%増、日本ECが同166.9%増と伸長した。またブランド別では、主力の「AXXZIA」が同1,583百万円増と成長をけん引した。営業利益については、ブランド知名度向上・販売基盤拡大のための先行投資により販管費が増加したものの、増収による売上総利益の増加が上回った。2022年7月期第1四半期業績は、積極的な広告宣伝投資を実施しながらも計画値を超過し、好調に推移2. 2022年7月期第1四半期の業績概要2022年7月期第1四半期の売上高は1,788百万円(前年同期比46.0%増)、営業利益321百万円(同5.4%増)、経常利益333百万円(同7.7%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益218百万円(同4.5%増)と、大幅増収及び増益を達成した。また、計画比では、売上高で13.9%、営業利益で32.5%、経常利益で38.2%、親会社株主に帰属する四半期純利益で39.4%上振れて着地した。売上高について、ブランド別では主力の「AXXZIA」が前年同期比398百万円増と成長をけん引、「AGtheory」も同106百万円増と順調に推移した。動画プラットフォーム「TikTok」の中国本土版「抖音(Douyin)」及びECプラットフォーム「JD.com」に旗艦店を出店したことも購入者の拡大に寄与しており、積極的な広告宣伝投資により成長を目指す戦略が奏功している。営業利益については、広告宣伝費の倍増(同217百万円増)や支払手数料の増加(同80百万円増、ECプラットフォーム利用料等)により販管費が増加したものの、増収による売上総利益の増加が上回り、各利益は増加基調である。例年、第1四半期は主要なECイベントがないため、通期業績に対する第1四半期の比重は四半期で最小となることから下期偏重型となるものの、2022年7月期第1四半期は好調に推移した。現金及び預金は58億円と潤沢、M&Aによる工場設備の取得を計画3. 財務状況2022年7月期第1四半期末の資産合計は前期末比50百万円減の8,217百万円となった。このうち流動資産は売掛金の減少(81百万円)等により同30百万円減の7,659百万円、固定資産は有形固定資産の減少(44百万円)等により同20百万円減の557百万円となった。負債合計は前期末比272百万円減の801百万円となった。このうち流動負債は未払法人税等の減少(292百万円)等により同243百万円減の714百万円、固定負債は同29百万円減の86百万円となった。有利子負債は134百万円と現金及び預金5,853百万円と比較して少なく、実質無借金に近い。純資産合計は同222百万円増の7,415百万円となった。経営指標では、2022年7月期第1四半期の流動比率は1071.7%、自己資本比率は90.2%と、短期及び中長期の安全性が高い。同社ではM&Aによる工場設備の取得を計画しているが、そのための資金は潤沢である。2022年7月期業績は前期比23.0%増収、営業利益率20.6%の予想4. 2022年7月期の業績見通し2022年7月期の売上高は7,117百万円(前期比23.0%増)、営業利益1,466百万円(同6.1%増)、経常利益1,424百万円(同3.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益930百万円(同7.1%増)とする期初計画を据え置いた。売上高については、コロナ禍の影響から早期に脱却した中国市場を中心に成長を図る。1,329百万円の増収のうち約97%が中国市場の売上で、このうち997百万円は中国ECの売上となる。既存のECプラットフォームの深耕に加え、横展開(「TikTok」や「JD.com」への進出)により売上高の上積みを狙う。なお、日本国内市場に関しては、コロナ禍の長期化によるリテール(店舗小売り)の落ち込みを想定し、定期便モデルを切り口としたECを軸に販売基盤の構築と販促強化を推進していく。営業利益については、中国及び日本市場でのブランド知名度向上・販売基盤拡大のため、引き続き広告宣伝活動に先行投資する方針で、宣伝広告費の予算は前期比628百万円増の1,421百万円としている。販管費は増えるものの、増収効果により増益を目指す。通期予想に対する進捗率については、売上高で25.1%(前年同期は21.2%)、営業利益で22.0%(同22.1%)と順調に進捗している。中国最大のECイベント「W11」開催期間中における同社のGMV(流通取引総量)は前年比61%増と大きな成果を上げた。なお、「W11」の収益は第2四半期に寄与する予定となっている。弊社では、中国経済の部分的な混乱や中国ECプラットフォームの勢力地図の変化などが発生しているものの、これらは同社が対象とする化粧品EC市場の成長を脅かすものではなく、マルチプラットフォームに展開している同社にとってリスクは低いと考えている。2022年7月期第1四半期業績や足元の好調な状況を考慮すれば、通期業績は上振れて着地する公算が高いと言えよう。(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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2022/01/06 15:03
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アクシージア Research Memo(2):総合的なビューティーソリューション企業を目指す
■会社概要1. 会社概要と沿革アクシージア<4936>は、Made In Japanの高・中価格帯の化粧品・サプリメントの企画・製造を行い、主に中国市場でのECで販売する成長性の高い化粧品会社である。社名のAXXZIA(アクシージア)とは、『女性の染色体「XX」』を美の象徴とし、『アジア(ASIA⇒AZIA)の美』を日本から世界へ発信するとの想いを社名に込めている。美を創造し、顧客の思いや実情に合わせ、提案を可能にする総合的なビューティーソリューション企業を目指している。創業から同社を率いるのは、段卓(だたく)代表取締役社長である。中国の名門厦門大学卒業、琉球大学大学院修了後、上場企業でのシステムエンジニアを経て2003年に起業した。その後、エステサロン経営、美容機器輸出入などを経て2011年に美容施設(以下、サロン)向け化粧品開発・製造を展開するオリエンティナ化粧品(株)を設立し、2012年に社名を(株)アクシージアに改めた。転機となったのは2016年である。BtoC向け美容サプリメント「AGドリンク」及び目元ケア商品「エッセンスシート」を発売したところ、中国EC市場の成長もあり、ヒーロープロダクツ化に成功した。その後、ヒット商品を中核に巧みなブランドマネジメントを展開し、4ブランド・80以上のアイテムを揃える企業に成長した。また2020年には、中国最大のECプラットフォーム「Tmall」で「2020年度新鋭企業賞」を受賞している。なお、創業10年目にあたる2021年2月に東証マザーズ市場に上場した。グループ全体の社員数115名、そのうち女性が73名(63.5%)、管理職の女性比率が48.8%、外国籍社員比率が46.1%と、ダイバーシティを実践する活力ある会社である。2. 主要ブランドと商品「AXXZIA」は目元製品を中心としたリテール向け主力ブランドで、エッセンスシートのヒーロープロダクツ化に成功した。「目元」に必要な美容成分をマルチに配合した美容液で湿布することで、集中した目元ケアができる。中国市場でヒット商品となり、2021年7月期のエッセンスシート売上高は2,343百万円(全社売上高の40%)であった。「AGtheory」は、AGドリンクをコアに化粧品と融合させた第2のリテール向け主力ブランドとなる。ヒーロープロダクツ化に成功したAGドリンク愛用者へ、同一コンセプトでの化粧品と融合させブランド化した。“抗糖化”を訴求してヒット商品となったAGドリンクは安定的に月1万本を出荷し、ARPU(1顧客当たりの平均売上金額)が高いことが特長である。「AXXZIA」と「AGtheory(AGドリンク含む)」の2ブランド合計の2021年7月期売上構成は83%に達する。一方、美容サプリメント「ホワイトアミノズ」と化粧品「サンスクリーン」を育成分野と位置付け、第3の主力ブランド化を目指している。以上のブランドは中国市場及び日本市場で中・高価格帯(平均売価5,000円以上)でBtoCブランドとして販売される。これに対し、サロン専売ブランド(プロフェッショナル分野)として「Le Ciel de L’aube (ル シエル ド ローブ)」のほか、「アイテール」シリーズや「The B(ザ ビー)」などがある。サロン専売ブランドは創業以来の同社の強みかつ特長分野であり、高価格帯(平均単価10,000円以上)で販売される。中国市場において同社商品は、Made In Japanブランドとして日本の化粧品企業と認知されている。中国化粧品市場の約4分の1を占めるこのカテゴリーは、資生堂<4911>やコーセー<4922>、ファンケル<4921>などが長年基盤を構築しており、特にスキンケア分野などで機能性が評価されている。同社は4位以下のグループで、ポーラ・オルビスホールディングス<4927>などが競合となる。中国市場においては、日系及び欧米系企業ブランドは中・高価格帯、韓国系企業ブランドは中価格帯、中国系企業ブランドは低価格帯と、ポジショニングに違いがある。中・高価格帯カテゴリーは百貨店を中心としたリテールに依存する企業が多いなか、同社はECを中心に展開しており、差別化できている。3. 地域別・チャネル別の売上構成同社の成長の原動力は中国市場での成功、特に中国ECの成長である。2021年7月期の地域別・チャネル別売上構成は、中国ECが70.8%(4,095百万円)であった。中国ECの内訳としては、BtoCサイト「Tmall Global」(アリババグループ)旗艦店での販売と、CtoCサイト「淘宝網(Taobao)」(アリババグループ)や口コミサイト「小紅書(RED)」(以下、RED)などによるインフルエンサーマーケティング販売があり、どちらも成長性が高い。次に売上構成が高いのが中国サロン向け18.1%(1,046百万円)となる。顧客であるエステサロンは600店舗以上あり、コロナ禍の影響はあるものの販売は安定しており堅調に成長している。一方日本市場は、コロナ禍の影響を受け特にリテール販売が落ち込んだことにより、売上構成は6.6%(384百万円)であった。なお、その他としてカナダ、ロシア、ドイツ、オーストラリアなどでの販売実績があるが、コロナ禍による渡航制限などから積極的な展開は控えている。4. ビジネスモデル同社のビジネスプロセスは、(1) 製品開発、(2) 製造、(3) 販売、(4) アフターサポートの4段階に分かれており、それぞれのプロセスで特長がある。(1) 製品開発については、「Tmall」との戦略的連携や「Taobao」等でのテストマーケティング(KOL:key opinion leaderや現地サロン経由)などにより、消費者のニーズをタイムリーに入手できる。同社では、これらのニーズの中から年間200に及ぶコンセプトを立案し、試作や品質チェックを繰り返しながら20前後のアイテムを量産化する。ECチャネルでは市場での評価を早期に確認でき、商品改廃のタイミングも早い。このようなハイペースのリリースサイクルは、同社がヒット商品を継続して生み出し、育てることができる要因と言えよう。一例を挙げると、主力商品の1つであるAGドリンクは2016年の発売以来5回リニューアルをしており、顧客の声を反映するサイクルの速さがわかる。また、処方開発や容器開発、許認可確認や薬事など、化粧品開発に必要な機能をすべて内製している点も同社の強みとなっている。(2) 製造については、中国で高く支持されているMade in Japanブランドを重視し、日本企業に製造を委託し、自社工場生産レベルの高い品質管理基準を徹底している。(3) 販売については、オンラインとオフライン(サロン向け高額品が主体)を並行して進め、ブランドの維持に寄与している。販売チャネルや販売促進においては、「Tmall」を中心としたトップダウン型と「Taobao」や「RED」などを活用したボトムアップ型の両面でのプロモーションにノウハウが蓄積されている。(4) アフターサポートにおいては、充実したカスタマーサービスが各チャネルで評価されている。中国市場では模造品、横流し、不当廉価販売の対策が求められるが、同社ではブランド維持の取り組みとして、全製品にQRコードのセキュリティラベルの貼り付け及びナンバリングを行うことで購入者が正規品を確認でき、流通時の問題に即時に対応できる体制を整備している。5. 強み同社の強みは、中国市場を主なターゲットとし、中国人の嗜好性を取り入れた製品開発を行い、中・高価格帯商品もECで販売できるという中国の特性を踏まえて、各チャネルを複合的に活用して販促支援及び販売を行っている点にある。同社は中国に特化することによって、日系企業に対して優位性を築いてきたと言える。このほか、中国独自の承認制度に対しても強みを発揮している。中国市場はNMPA(National Medical Products Administration。中国国家食品薬品監督管理局。米国FDAによるPMA認証に相当)の認証など独自の承認制度があり、これが参入障壁になっていると言われる。これに対して、同社ではNMPA認可成分・処方を重視した商品設計をしている。この結果、中国向け展開製品におけるNMPA登録比率は86%(2021年11月末現在)、直近2年間の承認比率100%(一般には20~30%)、平均申請期間3ヶ月(一般的には6ヶ月)と、スムーズに承認を取得している。なお、NMPA承認がない商品を中国市場で販売することは可能ではあるが、広告宣伝に制約があることから、EC店舗では取り扱いにくい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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2022/01/06 15:02