注目トピックス 日本株ニュース一覧
注目トピックス 日本株
高千穂交易 Research Memo(9):技術商社としてサプライチェーンも考慮した持続可能な社会に貢献(2)
■SDGs/ESGへの取り組み2. サービス提供を通じた取り組み(1)「Verkada」による職場や施設の環境配慮の強化高千穂交易<2676>では環境分野への貢献として、国内正規代理店として取り扱う統合型セキュリティソリューション「Verkada」の活用を掲げている。「Verkada」は、職場や施設のセキュリティに加え、環境センサーとハイブリッドクラウド型AIカメラの連携により、「環境配慮に資する情報の可視化」を実現するという。環境センサーによって、温度や湿度はもちろん、PM2.5、ノイズ、AQI(Air Quality Index)、タバコ/ 電子タバコ、TVOC(揮発性有機化合物)、モーションの計測が可能となっている。また、ハイブリッドクラウド型AIカメラとの連携により、リアルタイムでオフィス内の環境変化を監視可能である。さらに非常時におけるアラート機能を搭載しており、ライブ映像で状況を詳細に把握することが可能となっている。幅広いシチュエーションで活用できるのが特長で、オフィスや施設、製造現場における働く環境空間が可視化できる。 サーバー室内の温度や環境変化の検出、 学校など禁煙場所での喫煙の検出等も可能だ。また、大気汚染や騒音、振動、地盤沈下、悪臭といった公害リスクの察知、 環境保全に資する情報の監視・観測機能の強化を通じて、環境リスクを低減することもできる。このように、環境情報を可視化することによって、環境変化の早急な把握と迅速な対応が実現するという。適正な温度・湿度・空気環境をコントロールし、データを通して環境変化の要因が分析できるようになる。以上により、職場・施設環境のセキュリティと健康をトータルサポートすることで、顧客の環境配慮対策へ貢献することにつながっていくとしている。(2)犯罪被害から顧客を守るセキュリティサービス同社では、「安全・安心・快適」を提供するセキュリティサービスにおいて、トータルサポートを通じて社会分野へ貢献するとしている。具体的には、監視カメラシステム・商品監視システム・顔認証システムといったフィジカルセキュリティと、盗難被害情報を共有し、店舗スタッフ間で即時対応することによりロス削減・犯罪撲滅に貢献する防犯対策ソリューションである「EMLINX(エムリンクス)」といったクラウドセキュリティの双方を提供している。なかでも「EMLINX」は同社独自のプラットフォームであり、顧客が抱える防犯課題を解決するとともに、シェアの拡大を図ることで、防犯における情報網の強化(=付加価値向上)につなげていく。以上により、顧客とそのサービスの利用者が安心して生活できる環境創造に貢献するとしている。3. ガバナンス体制について同社では、コーポレート・ガバナンスの強化に向けて、ガバナンス体制の整備にも取り組んでいる。取締役会の構成については、2022年3月末時点で社外取締役の比率が33.3%となっている。各委員会も設置しており、最近の取り組みとしては2021年10月に指名・報酬委員会を設けている。指名・報酬に関する手続きの公正性・透明性・客観性を強化するとともに、コーポレート・ガバナンスの充実を図ることを狙いとしている。直近では、投資委員会の設置も予定している。M&A戦略を含めた投資決定に係る監督/審査機能の強化により、取締役会及び執行役員会の議論の質を向上させることを目的としている。M&A実施後の進捗モニタリング、M&A戦略等の投資案件の妥当性検証の徹底、短中期的に投資基準及びEXIT基準の検討を行う。また、取締役の業績連動報酬の改訂も行った。役員報酬の業績連動報酬、株式報酬割合を増加し、業績連動報酬のKPIを経常利益に加え、資本効率指標(ROE)を新たに採用した。今後の検討課題としては、多様性確保に向けた取り組み強化を目的とした女性取締役の登用、グループ・グローバルでの人事制度、評価・報酬制度の再構築に取り組んでいくとしている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:39
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高千穂交易 Research Memo(8):技術商社としてサプライチェーンも考慮した持続可能な社会に貢献(1)
■SDGs/ESGへの取り組み1. サステナビリティの基本方針高千穂交易<2676>では、環境問題や社会課題、企業統治課題の解決を経営方針の重要事項として捉えている。「創造」の企業理念の下、技術商社として、サプライチェーンも考慮したうえで、豊かな未来、持続可能な社会の実現に貢献していくとして、サステナビリティ基本方針を定めている。同社ならではの特長として、国内正規代理店として取り扱う統合型セキュリティソリューション「Verkada」を活用した取り組みなどが挙げられる。E: 環境分野への貢献(環境配慮型ソリューション)1)気候変動への対策具体的に以下に取り組む。・オフィスのエコ活動(CO2排出量削減)・営業車にエコカーを利用・ペーパーレス推進・適正な廃棄物処理と廃棄量削減・循環型社会への貢献(3R)2)地球環境保護へ貢献具体的に以下に取り組む。・各種環境センサー、商品サービスの提供(「Verkada」による職場や施設の環境配慮の強化)・災害情報サービスの提供・TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応予定S:社会分野への貢献(テクノロジーを通じた安全安心な社会の実現)1)健康で働き甲斐のある職場環境の整備具体的に以下に取り組む。・健康経営の推進(「Verkada」による職場や施設の環境配慮の強化)・安全衛生委員会の設置・社内システムのIT化・テレワーク環境の構築と規程の整備・多様な人材の登用・育児休業・介護休業の設置、有休取得率向上、時間外勤務ゼロ推進2)DX推進による住みよい社会への貢献具体的に以下に取り組む。・AI・IoT・5G・RPAなど最新技術市場への支援・クラウドサービスの提供による顧客の効率化や利便性の支援・防犯による地域社会の安心・安全を支援・オフィス管理の支援3)犯罪防止と防犯具体的に以下に取り組む。・アクセスセキュリティの支援・工業会日本万引防止システム協会、全国万引犯罪防止機構との連携・オフィスや工場の防犯支援・店舗の防犯と犯罪抑止の支援なお、2)と3)については、犯罪被害から顧客を守るため、フィジカルとクラウドの両面でのセキュリティサービスの提供も具体的な取り組みの1つとして挙げられる。4)教育の充実具体的に以下に取り組む。・ITリテラシーの向上・多様な社員教育・OJTの推進・資格取得奨励制度G:企業統治課題の解決●ガバナンスの強化具体的に以下に取り組む。・コーポレートガバナンスコードへの取り組み・CSR憲章、企業行動規範の遵守・各種委員会の設置・ガバナンス教育の充実(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:38
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高千穂交易 Research Memo(7):2025年3月期に経常利益20億円、ROE8%以上を目指す
■新中期経営計画の概要高千穂交易<2676>では、進行中の2023年3月期を初年度、2025年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画を発表した。中期スローガンとして「創造へのチャレンジ~Toward 100th anniversary ニューノーマル時代における新たな価値創造へ~」を掲げ、新たな「資本戦略」「事業戦略」「ガバナンス」を推進することで、株主価値の向上を実現する。(1) 資本戦略資本収益性とバランスシート改善のため、自己資本を積み増さないことを基本方針とし、ROE3期平均8%を達成するまでは配当性向100%を継続する。また資本コスト抑制のために有利子負債の活用も検討する。(2) 事業戦略新たな事業変革に向けた成長戦略として、「ロイヤルカスタマー戦略の推進・深化」「サービスビジネスの成長」「将来のコア事業の創出」を推進していく。さらに経営基盤の強化、3年間で総額30億円の戦略投資枠の設定(主に経営基盤強化に4億円、M&Aを含めて新商品や新サービスの開発に26億円を予定)を行っている。(3) ガバナンス投資委員会を設置し、実行時の監督・審査・モニタリング機能を強化する。指名・報酬委員会を設置し、公正性・客観性・透明性を確保した報酬体系を推進する。役員報酬に資本効率性のKPIを定め、株主目線での経営を推進する。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:37
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高千穂交易 Research Memo(6):2023年3月期は前期比26.9%の営業増益予想
■今後の見通し1. 2023年3月期の業績見通し高千穂交易<2676>の2023年3月期は、売上高22,500百万円(前期比8.3%増)、営業利益1,300百万円(同26.9%増)、経常利益1,300百万円(同4.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益920百万円(同4.7%増)が予想されている。なお2023年3月期から、新中期経営計画に沿って一部セグメント及びサブセグメントの変更および名称変更を行っている。セグメント変更については、前期まで「システム事業」に含まれていたサブセグメント「サービス&サポート」を新たに「クラウドサービス&サポート」セグメントとして切り分けた。これは、「成長性」と「収益性」の観点から同事業を「成長事業」と位置付け、セグメント区分の見直しを実施したことによるものである。加えて前期まで「システム事業」のサブセグメントであった「オフィスソリューション」を「ビジネスソリューション」へ名称変更した。データセンターへの販売実績の増加、また今後幅広い市場に向けて展開していくためである。またデバイス事業のサブセグメントであった「電子」「産機」をそれぞれ「エレクトロニクス」「メカトロニクス」へ名称変更した。エレクトロニクスについては、組織変更に伴う名称変更である。メカトロニクスは合成語であるが、ユニット化やセンサーによる動きを実現する商品開発を目指す事業の方向性に合わせた変更となっている。2. 2023年3月期のセグメント別見通し(1) クラウドサービス&サポート2023年3月期から新たにセグメント分けされたクラウドサービス&サポートの売上高は2,615百万円(同24%増)、営業利益は513百万円(同30%増)と予想されている。ロイヤルカスタマーを中心にクロスセルの実施、ナレッジサイトや新サービス開発による顧客満足度を向上し、市場シェア拡大、サブスクリプションモデルの解約率低下を推進、さらに外注費見直しによる粗利率アップによって増収増益を計画している。このセグメントの重要な指標の1つに累計契約アカウント数があるが、このアカウント数は、サービス開始から継続的に増加している。2022年3月期末も前期比17%増となり、同部門の売上高は順調な増加が見込まれる。(2) システム事業システム事業の売上高は10,465百万円(前期比6%増)、営業利益は231百万円(同71%増)と予想されている。サブセグメントでは、リテールソリューションはロイヤルカスタマー中心にクロスセルの実施(クラウド型無線LANの販売等)、トラフィックカウンター、顔認証システム等のストックビジネスの強化、省人化対策に有効なRFID、AI解析技術を用いたスマートストアソリューションの拡販などを行うことで、売上高は3,960百万円(同5%増)を目指す。ビジネスソリューションは、クラウド型無線LAN、リモートアクセス機器の拡販、データセンター向けの入退室管理システムの拡販などにより売上高3,555百万円(同11%増)を目指す。グローバルは、発電プラント向け防火システム案件の確実な取り込みにより売上高2,950百万円(同1%増)を見込んでいる。(3) デバイス事業デバイス事業の売上高は9,420百万円(同7%増)、営業利益は556百万円(同13%増)と予想されている。サブセグメントでは、エレクトロニクスは強い需給が引き続き見込まれる5G基地局等の通信インフラ市場を中心に産業機器分野、半導体製造装置分野の開拓、アミューズメント市場等の高収益市場への注力、音響・音声、センサー等と融合したソリューションビジネスへの注力を行うことで、売上高は4,680百万円(同5%増)を目指す。メカトロニクスは、ケーブル、パワーサプライ等のデジタル関連の産業機器分野への拡販、米国・中国の住宅設備市場向けに付加価値の高いユニット商品の拡販を行うことで、売上高は4,740百万円(同10%増)を目指す。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:36
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高千穂交易 Research Memo(5):2022年3月期はデバイス事業が牽引し営業利益は15.6%増
■高千穂交易<2676>の業績動向1. 2022年3月期の業績概要(1) 損益状況2022年3月期は、売上高20,784百万円(前期比0.9%増)、営業利益1,024百万円(同15.6%増)、経常利益1,247百万円(同34.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益878百万円(同60.2%増)となった。リテールソリューションやオフィスソリューションが前期の反動などから減収となり、システム事業は5.3%減収となった。デバイス事業は、電子、産機ともに好調に推移したことから11.0%の増収となった。売上総利益率は前期の23.9%から24.5%へ上昇したが、比較的利益率の高い「サービス&サポート」の売上比率が上がったことや、高収益事業への集中が進んだことなどによる。加えて販管費の抑制に努めたことから、営業利益は前期比で15.6%増となった。営業外収益として外貨建債権の為替評価益191百万円を計上したことから経常利益の伸び率は営業利益を上回った。さらに親会社株主に帰属する当期純利益は前期比60.2%増となり、上場以来最大を記録した。(2) 財務状況2022年3月期末の財務状況は、流動資産は17,390百万円(前期末比873百万円増)となった。主要科目では現金及び預金708百万円増、売掛金が19億48百万円減、契約資産が13億11百万円増、たな卸資産675百万円増であった。固定資産は3,203百万円(同246百万円増)となったが、内訳は有形固定資産が539百万円(同38百万円減)、無形固定資産299百万円(同38百万円減)、投資その他の資産2,364百万円(同322百万円増)となった。有形固定資産と無形固定資産の減少は償却によるもので、投資その他の資産の増加は主に投資有価証券の取得によるものである。以上のような結果から、資産合計は20,593百万円(同1,119百万円増)となった。流動負債は4,807百万円(同259百万円増)となったが、主な変動は支払手形及び買掛金の増加144百万円などであった。固定負債は前期末と変動がなく751百万円であった。純資産は、当期純利益の計上による利益剰余金の増加655百万円などから15,034百万円(同859百万円増)となった。期末で1,238,578株の自己株式を所有している。なお、長年無借金経営を続けており、自己資本比率は14年連続で70%超を維持している。財務基盤は安定していると言えるだろう。(3) キャッシュ・フローの状況2022年3月期のキャッシュ・フローは以下のようであった。営業活動によるキャッシュ・フローは1,184百万円の収入となった。主な収入は税金等調整前当期純利益の計上1,243百万円、減価償却費182百万円、売上債権(電子記録含む)の減少656百万円、仕入債務の増加70百万円等であった。一方で主な支出は、棚卸資産の増加659百万円などであった。投資活動によるキャッシュ・フローは393百万円の支出となったが、主に有形固定資産の取得による支出56百万円、無形固定資産の取得による支出84百万円、投資有価証券の取得による支出250百万円などである。財務活動によるキャッシュ・フローは189百万円の支出となったが、主に配当金の支払いによる支出223百万円、自己株式の処分による収入113百万円などによる。この結果、期中の現金及び現金同等物は708百万円増加し、期末残高は5,608百万円となった。2. 2022年3月期のセグメント別状況セグメント及びサブセグメント別の状況は以下のようであった。(1) システム事業システム事業の売上高は12,011百万円(前期比5.3%減)、営業利益は529百万円(同13.1%減)と減収・減益となった。各サブセグメントの状況は以下のようであった。a) リテールソリューション売上高は3,721百万円(同15.6%減)となった。CCTVや顔認証システムの大型案件などが堅調であったものの、前期に計上した携帯キャリア向け大型案件の反動により、減収となった。b) オフィスソリューションデータセンター向け入退室管理システムが堅調であったものの、前期にコロナ禍の影響により好調だったリモートアクセス商品の販売が減少したことなどにより、売上高は3,246百万円(同9.8%減)となった。c) グローバルグローバル商品類は、前期に大きく減速したタイの高度防火システムの売上が堅調に推移し、売上高は前期比6.8%増の2,926百万円となった。d) サービス&サポートサービス&サポート商品類は、MSPサービスが好調に推移し、売上高は前期比9.0%増の2,115百万円となった。(2) デバイス事業デバイス事業の売上高は8,773百万円(同11.0%増)、営業利益は494百万円(同78.6%増)となった。電子、産機ともに増収であった。a) 電子電子では、5G基地局向けやテレワーク需要増加による家庭用プリンター向け、半導体製造装置向けなどの電子部品の販売が好調に推移し、売上高は前期比12.2%増の4,452百万円となった。b) 産機米国住宅設備向けソフトクローズ部品や産業機器向け通信ケーブルの販売が好調だったことなどにより、売上高は前期比9.8%増の4,320百万円となった。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:35
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高千穂交易 Research Memo(4):システムとデバイスに加え、クラウドサービス&サポートが第3の柱に(2)
■事業概要4. 競合、特色、強み高千穂交易<2676>は非常に多くの商品を取り扱っており、それぞれの分野に競合商品が存在する。しかし、事業全体において同様な事業展開をする企業がないため競合会社を特定することはできない。あえて個別分野での競合会社を挙げれば、商品監視システムでのチェックポイントジャパン(株)、スライドレールでの日本アキュライド(株)(両社とも米国の日本法人)、半導体では規模は異なるが半導体専門商社など。また、オフィスソリューション関連ではシステム会社などと競合する。同社の最大の特色は専門性の高い商材を扱っている点だろう。そのため営業社員であっても技術的に高い専門性・知識を持っており、同社の社員の40%以上が技術系出身者で、ある意味で専門的なプロ集団とも言える。システム事業とデバイス事業を展開する同社は、売上規模は大きくはないが、売上総利益率は25%前後となっており、一般的な半導体や電子部品商社の売上総利益率(約10~15%)と比べて高くなっている。高い専門性を備えた社員が多く、顧客のニーズに基づき最適なソリューションを提供する提案型コンサルティング営業ができるのも同社の特色であり強みだろう。また、知識や技術以外にも個々の従業員が問題・課題に真摯に取り組むため、顧客からの信頼も厚く、そのような専門性・特殊性は売上総利益率に現れている。詳細は後述するものの、2023年3月期から、「新中期経営計画」に沿って一部セグメント及びサブセグメントの変更および名称変更を行っている。セグメント変更については、前期まで「システム事業」に含まれていたサブセグメント「サービス&サポート」を、「成長性」と「収益性」の観点から同事業を「成長事業」と位置付け、新たに「クラウドサービス&サポート」セグメントとして切り分けた。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:34
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高千穂交易 Research Memo(3):システムとデバイスに加え、クラウドサービス&サポートが第3の柱に(1)
■事業概要1. 事業概要高千穂交易<2676>の事業セグメントは、2022年3月期まではシステムとデバイスに分けられており、各セグメントの売上高は、システム事業12,011百万円(2022年3月期売上高比率57.8%)、デバイス事業8,773百万円(同42.2%)となっている。なお、2023年3月期からは、それまでシステム事業に組み込まれていた「サービス&サポート」を切り出して、新たに「クラウドサービス&サポート」セグメントとし、3セグメントで構成される。以下は各セグメント及びサブセグメントの概要である。2. システム事業(1) リテールソリューション(2022年3月期システム事業売上高に占める比率31.0%)商品監視システム・映像監視システム(監視カメラ・監視映像記録装置)・セキュリティタグ等のセキュリティ機器及び入店カウンターなど販売支援や省人化対策を目的とした店舗管理機器のシステム設計・販売、設置、システム全般の運用支援サービスなどを行っており、ショッピングセンターなどの大型店舗からドラッグストアなどの小型店舗に至る小売・流通業全般の幅広い顧客層に販売している。グループ会社のマイティキューブ(株)は、商品監視用自鳴式タグシステムの開発及び販売を行っており、ホームセンターや家電量販店を中心に幅広い顧客層と取引している。(2) オフィスソリューション(同27.0%)入退室管理システムやネットワーク関連機器(クラウド型無線LANシステム等)及び商品監視・映像監視等のセキュリティに関するコンサルティングやシステム設計、物流・在庫管理システム等のRFIDタグ及びその周辺機器、郵送物の封入封緘を行うメールインサーティングシステム(封入封緘機)など、最新エレクトロニクス技術応用システムの機器の設計・構築及び設置・販売等をオフィスビル・データセンター・工場などの企業関連施設に向けて行っている。またグループ会社のマイティキューブは、RFID技術の国内リーディングカンパニーとして、RFIDタグ(非接触ICチップ)及び周辺機器(リーダライタ)のシステム開発、販売等を行う。(3) グローバル(同24.4%)主に高度防火システムの設計・構築及び機器の設置・販売を、発電プラント、天然ガス・石油化学工業プラントなどに向けて行っている。Takachiho Fire,Security & Services(Thailand)Ltd.は、タイにおいて、商品監視、映像監視等のセキュリティに関するコンサルティング、システム設計及び商品監視システム・入退室管理システム・監視カメラ・防火システム等の販売を行う。Guardfire Limited及びGuardfire Singapore Pte.Ltd.は、東南アジア地域において、高度防火システムの設計、販売を行う。(4) サービス&サポート(同17.6%)システムセグメントで取扱う商品の保守サービス、及び「機器・クラウドサービス・運用管理」が一体となったMSP※等のクラウドサービスを行っている。また、トラブルへの迅速な対応によって顧客満足度向上を図るため、24時間365日対応サービスを用意し、全国300ヶ所のサービス拠点より提供している。※Managed Service Provider:クラウド製品の保守運用・死活監視をサブスクリプション型で行う同社独自のサービス3. デバイス事業(1) 電子(デバイス事業売上高に占める比率50.8%)アナログICを中心とする各種半導体や、シリコンマイクなどのセンサー、電子部品に関する販売及びコンサルティング(電子機器設計支援)を行っている。産業用エレクトロニクス機器、IP‐PBX(構内交換機)やスマートフォン等の情報通信機器など、広範な分野に使用されている。TAKACHIHO KOHEKI(H.K.)LIMITED及び提凱貿易(上海)有限公司は、中国、東南アジア地域で、上記の商品を販売している。(2) 産機(同49.2%)スライドレール・ガススプリング・昇降システムなど安全性、利便性、快適性を向上する機構部品の販売及びコンサルティングを行っている。主に金融機関やコンビニエンスストアなどのATM等の開閉・引出・安全機構(スライドレール・ガススプリング・キー)、システムキッチンの引出・昇降機構(スライドレール・昇降システム)、コピー機の給紙機構(スライドレール・ダンパー)などに使用される。TAKACHIHO KOHEKI(H.K.)LIMITED、提凱貿易(上海)有限公司及びTakachiho America,Inc.は、中国、東南アジア地域、米国で、上記の商品を販売。ATM向けのスライドレールでは国内トップシェアを誇る。商社でありながら独自の設計やオリジナルプログラムによるシミュレーション解析などを実施し、顧客の要望に適合した商品開発に取り組んでいる。2015年からは米国法人を通じて、米国住宅設備市場などへ参入するなど、海外市場ではまだ普及期にある日本式ムーブメントソリューションの拡販を推進している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:33
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高千穂交易 Research Memo(2):新中期経営計画を発表、利益成長に加え資本効率改善も進める
■会社概要1. 会社概要高千穂交易<2676>は、リテール、オフィス向けのセキュリティ関連製品やネットワークなどのシステム機器、機構部品、半導体などのデバイス機器を、主として海外メーカーから仕入れて国内のユーザーに提供するBtoBの商社である。「安全・安心・快適」をコンセプトに、商品監視システム(万引防止システム)や機構部品のスライドレールでは国内トップクラスの高いシェアを持っており、近年は海外企業の買収によりセキュリティシステムや防火システムの東南アジア地区での拡販にも力を入れている。商品・サービスの付加価値や顧客満足度の向上のために専門性の高い社員を多く抱え、商社でありながら技術系社員の割合は40%超に達している。また財務面では、自己資本比率が11期連続で70%を超えるなど安定した財務体質を誇り、伝統的に堅実な経営を感じさせる。2. 沿革同社は1952年、土木建設機械の輸入販売を行う商社として設立された。同年には米国バロース社(現ユニシス)と日本総代理店契約を締結、同社製コンピューターの販売を開始した。国内エレクトロニクス商社の草分けとして、その後も日本初となるOCRシステムや商品監視システム、また自動封入封緘システム、入退室管理システム、クラウド型無線LANシステムなどまだ日本には導入されていない画期的な商品を市場投入し、国内有数の技術商社となっている。この間、株式は2000年にJASDAQ市場へ上場し、その後2004年に東京証券取引所2部へ、2005年に同1部へ指定替えされた。現在は東証プライム市場に上場している。近年では、日米の上場企業のグループ企業を買収し、RFIDシステム、東南アジアでの商品監視システム・防火システムなども取り扱っている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:32
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高千穂交易 Research Memo(1):セキュリティ関連製品・半導体などの輸入を中心とするBtoB商社
■要約高千穂交易<2676>は、主に、セキュリティ関連などのシステム機器や機構部品・半導体などのデバイス機器を主として海外メーカーから仕入れて国内のユーザーに提供するBtoBの商社である。特に「安全・安心・快適」を提供する商品監視システムや機構部品のスライドレールでは国内トップクラスの高いシェアを持っており、近年は、クラウドサービス等の高収益事業へ注力し、収益構造の改善が進んでいる。1. 2022年3月期の業績動向2022年3月期は、売上高20,784百万円(前期比0.9%増)、営業利益1,024百万円(同15.6%増)、経常利益1,247百万円(同34.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益878百万円(同60.2%増)となった。リテールソリューションやオフィスソリューションが前期の反動などから減収となり、システム事業は5.3%減収となった。デバイス事業は、電子プロダクト、産機プロダクトともに好調に推移したことから11.0%の増収となり、連結売上高は前期比0.9%増とほぼ横ばいとなった。売上総利益率は商品構成の変化により0.6pt上昇した。これに加えて販管費の抑制に努めたことから営業利益は15.6%増となった。営業外収益で為替差益を191百万円(前期は同67百万円)計上したことから、経常利益の伸び率は営業利益を上回り、親会社株主に帰属する当期純利益は上場以来最大となった。2. 2023年3月期の見通し2023年3月期は、売上高22,500百万円(前期比8.3%増)、営業利益1,300百万円(同26.9%増)、経常利益1,300百万円(同4.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益920百万円(同4.7%増)が予想されている。なお2023年3月期より、それまでシステムセグメントに組み込まれていた「サービス&サポート」を切り出し、新たに「クラウドサービス&サポート」セグメントとした。コロナ禍の影響やウクライナ情勢、上海のロックダウンや為替動向の影響など先行きは不透明であるが、「モノ売りからコト売りへ」の方針を一段と強化することで収益力を高め、全セグメントで増収増益を計画している。弊社では、容易な目標ではないと見ているものの、会社の体質が変わりつつあるなかで、今後の動向に注目したい。3. 新中期経営計画同社では、2025年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画を発表した。中期スローガンとして「創造へのチャレンジ~Toward 100th anniversary ニューノーマル時代における新たな価値創造へ~」を掲げている。新たな「資本戦略」「事業戦略」「ガバナンス」の推進により、株主価値の向上を実現していく方針だ。主な定量的な目標として、2025年3月期に経常利益20億円、親会社株主に帰属する当期純利益14億円、計画中の3期平均ROEは8%を掲げている。単に利益目標だけでなく、資本効率の改善まで踏み込んだ計画を掲げている点は評価できるだろう。今後の動向が大いに注目される。株式については、2022年4月4日の東京証券取引所の市場再編で、東証プライム市場に移行している。■Key Points・システム機器、機構部品、半導体等のBtoB輸入商社であり、専門的技術者が多い・2022年3月期は15.6%営業増益、2023年3月期も26.9%営業増益を目指す・新中期経営計画を発表。2025年3月期に経常利益20億円が目標、資本効率の改善も進める(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:31
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テリロジー Research Memo(10):2023年3月期業績予想は必達目標
■今後の見通し1. 2023年3月期業績予想における営業利益率の前提は保守的に見えるテリロジー<3356>は、2023年3月期の連結業績予想について、売上高を前期比18.7%増の6,200百万円、営業利益を同16.2%減の370百万円、経常利益を同15.8%減の370百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同8.6%減の250百万円とする期初計画を公表した。この数値は、2021年5月に公表された新中計における2ヵ年目の数値目標と一致している。同社はドル建て価格で仕入れ、円建て価格で販売する輸入商材を多く取り扱っているため、円安局面では粗利率低下影響が先行するわけだが、ロシアによるウクライナ侵攻により国際情勢が緊迫化するなかにあっても新中計で掲げた数値目標は最低限達成するとの同社の思いが読み取れよう。期初計画における増収率18.7%増は過去の増収率(2019年3月期13.6%増→2020年3月期10.7%増→2021年3月期16.1%増→2022年3月期11.1%増)に比べて高めに見える。しかしながら、1)2023年3月期は収益認識会計基準等の適用による名目上のマイナス影響(2022年3月期は516百万円減)がなくなる、2)売上高予想に際し、各事業会社は想定すべき不透明要因をすべて織り込んでいる、3)2022年3月期は減収となったネットワーク部門で増収確度が高いプロダクトが存在する、4)円安を受けた輸入商材の価格改定(値上げ)が増収要因として働く可能性がある、といった点から同社による売上高予想には相当程度の妥当性があると判断している。ネットワーク部門で増収確度が高いプロダクトは、1) IPアドレス管理サーバー「Infoblox」製品と「Radware」製品である。前者は、国内で500台程度納入済みの現行モデルからセキュリティ機能を備え付加価値が高められた新モデルへの更新需要が国内大手製造業中心に継続中(受注ベースで見た案件数は2021年3月期:69件/221台→2022年3月期:68件/89台)であり、2023年3月期においても更新需要の取り込みと付加価値向上によるアップセル効果が十分に期待できる。後者の「Radware」製品については、2021年3月期から販売を開始した前代理店からの顧客巻き取りが堅調に推移している。同社が取り扱う「Radware」の主力プロダクトは、1)「サービス停止攻撃」とも呼ばれるDoS/DDoS攻撃を自律的に防御するDDoS対策機器・サービス、2)日本市場で多くの実績を誇るロードバランサー(サーバーへの負荷を分散し安定的に稼働させる製品)、3)回線負荷分散のデファクトスタンダードとされるマルチホーミング機器、4)業界最高のWebアプリケーションセキュリティを実現するクラウドWAFサービス、5)自動化された脅威(Bot)からWebアプリケーション、モバイルアプリケーション、APIといったすべてのチャネルを保護するBotマネージャー、6)クラウド資産を包括的に保護するCloud Workload Protectionサービスであり、2)と3)がネットワーク関連、残りがセキュリティ関連となる。同社は2020年3月のディストリビューター契約締結で日本における「Radware」製品の1次代理店となったわけだが、従前そのポジションにあった企業からは円満な形でバトンタッチされたもようであり、順調な顧客巻き取りによって保守契約込みで年間6億円程度の売上を同社が近年中に獲得できる蓋然性は高い。加えて、前代理店ではネットワーク関連の取り扱いが中心であったため、セキュリティ関連において既存プロダクトとの棲み分けが可能である同社においてはクロスセルやアップセルを通じて一回り大きな事業規模への発展が期待される。実際、2022年3月期における「Radware」関連の受注額は166百万円(2021年3月期は217百万円)、保守売上については278百万円(同55百万円)と順調に推移している。保守売上がストック型ビジネスであることを勘案すれば、2023年3月期においても増収に貢献する蓋然性は高いと判断する。一方、期初計画における2023年3月期の営業利益率は6.0%と2022年3月期実績の8.5%から2.5ポイント低下することを見込んでいるが、以下の点から弊社では保守的な前提であると判断している。2023年3月期に想定される利益率低下要因としては、1)IGLOOOとクレシードによる先行投資、2)持株会社体制移行に伴うコスト増、3)ロシアによるウクライナ侵攻を契機に急速に進んだ円安影響(輸入商材の仕入価格上昇)等が考えられるわけだが、1)については両社とも利益率が改善する可能性があり、2)の影響は大きくないように思われる。3)について同社は10円/米ドルの変動で1億円の影響があるとしており、受注済・提案済の案件については一定の影響は免れない。しかしながら、4月末時点での価格表は130円/米ドル前提に改定されており、円安影響のマイナス面のみが顕在化する可能性は限定的に見える。なお、2023年3月期の期末配当は1株当たり5円配当(普通配当のみ)を予定しており、配当性向は32.4%となる。2. 持株会社体制への移行で期待される「グループ全体最適化力の強化」と「強みの磨き上げ」2022年4月、同社は取締役会において持株会社体制へ移行することを決議した。この決疑は、同社グループの事業展開の加速化及びガバナンスの強化を通した企業価値向上の実現を目的としている。6月の定時株主総会での承認及び関係当局による認可等を経て、2022年11月1日に設立登記されるテリロジーホールディングスに同社株式を移転し、同日にテリロジーホールディングスが東証スタンダード市場に新規上場(テクニカル上場、実質的に同社株式が上場維持されるかたち)する予定である。現体制では、親会社である同社(単体)がトータルセキュリティソリューションサービス事業を営みつつ、子会社の管理を行っているが、新体制では、持株会社がグループ経営機能、投資機能及び新規事業開発機能に特化する一方で、各事業会社は担当事業領域において独自に成長戦略を描き環境変化に応じて迅速かつ柔軟に意思決定・事業推進を行っていくことになる。つまり、同社の強みである「目利き力と市場対応力」のうち、一段高い視座に立った「目利き力」を持株会社が、より顧客に寄り添った「市場対応力」を各事業会社が権限と責任をもって磨き上げ、発揮することを目指した体制への移行と言える。また、M&A戦略等により多角化や事業領域拡大を目指すなかでグループ全体の最適化はこれまで以上に重要性が増すことになり、今回の持株会社体制への移行は中長期的な企業価値向上に資するものと評価したい。3. 売上高100億円実現に向けての道筋を示す新中期経営計画2021年5月に公表された同社の新中計(2022年3月期を初年度とする3ヵ年計画)には「オーガニック成長の数値目標」「目標達成に向けての基本戦略・重点施策」「M&A・事業アライアンス戦略実行に関する基本的な考え方」が掲げられている。まず、最終年度(2024年3月期)の数値目標(売上高74億円、営業利益5.6億円)からは、オーガニックベースで「売上高成長率20%と営業利益率8%の実現」を目指していることが読み取れる。加えて、M&A戦略では約10~20億円規模の投資枠をイメージしつつ、1案件の投資予算規模(3~5億円)と獲得年商規模(5~10億円)が明確に示されており、新中計の内容は売上高100億円実現に向けての道筋を示す意欲的なものと評価して良い。また、「目標達成に向けての基本戦略・重点施策」におけるキーメッセージは、1)ストック型事業モデルの強化、2)ダイナミックなグループ事業の拡大、3)グローバルな事業展開である。いずれの項目も、M&Aを含むアライアンス戦略が鍵を握るだけに、持株会社に投資及び新規事業開発機能を集中することはポジティブに受け止められる。また、各事業会社が責任と権限を持って迅速かつ柔軟に意思決定・事業推進を行っていく体制への移行は、新中計で示されている「グループ会社ごとの目標達成に向けたアクションプラン」を後押しすることになると言えるだろう。今後は、各社のプラン遂行状況にも注目していきたい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:30
注目トピックス 日本株
テリロジー Research Memo(9):2022年3月期の利益水準は従来予想から大きく上振れ(2)
■テリロジー<3356>の業績動向2. 株主還元やM&Aによるキャッシュアウトを吸収して財務体質は健全性を保っている財務体質についても、健全性を維持している。2022年3月期末の自己資本比率は40.2%(前期末は46.6%)、流動比率は148.9%(同169.9%)と低下したが、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は0.11倍(同0.13倍)、ネットキャッシュ(現金及び預金−有利子負債)は1,901百万円(同2,070百万円)と前期末水準を保っている。また、通常の配当原資となる単体ベースの利益剰余金は2022年3月期末で498百万円(同502百万円)となっており、仮に1株当たり7円の配当を継続したとしても4年分強の配当原資を確保していることになる。なお、同社は2020年3月期末に14期振りとなる復配を実施(以降、年間5円/株の普通配当を継続、加えて2022年3月期には年間2円/株の特別配当を実施)、2021年3月期にはM&Aで223百万円、2022年3月期には自己株式の取得で249百万円のキャッシュアウトを行っている。こうした株主還元や成長戦略の活発化は、自己資本比率が2018期3月期末の24.4%から2020年3月期末には53.9%へと大幅に上昇し、流動比率も2018年3月期末の99.0%から2020年3月期末には209.4%と十分な支払余力を示す200%超えを達成したことを受けたものと考えられ、財務面に配慮した規律ある企業価値向上戦略が推進されている。2022年3月期末における資産合計は前期末比365百万円増の5,991百万円、純資産合計は同203百万円減の2,439百万円となった。前期末比増減の内訳を見ると、資産では前渡金の754百万円増が目立ち、純資産の減少は自己株式の増加(234百万円)が主因となっている。また、財務体質の健全化は営業外損益の改善にもつながっている。輸入商材を主力プロダクトとして取り扱う同社の場合、為替差損益が営業外収益に与える影響を完全に排除することはできないものの、2022年3月期の支払利息は前期比44.0%減となり、有利子負債の圧縮効果が継続している。2022年3月期末における現金及び現金同等物の残高は1,867百万円となった。各キャッシュ・フローの状況を見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益が411百万円となったことを主因に414百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは有形・無形固定資産や投資有価証券の取得による支出を受けて243百万円の支出となった。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出89百万円、配当金の支払額82百万円、自己株式の取得による支出249百万円等が積み上がり、全体として428百万円の支出となった。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:29
注目トピックス 日本株
テリロジー Research Memo(8):2022年3月期の利益水準は従来予想から大きく上振れ(1)
■業績動向1. 2022年3月期業績は実質的に良好な内容テリロジー<3356>の2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比11.1%増の5,223百万円、営業利益が同18.3%減の441百万円となった。また、営業利益率は8.5%と前期比3.0ポイント低下、期中受注高が6,058百万円と前期比11.1%増、期末受注残高は前期末比79.1%増の1,890百万円へと積み上がった。2022年3月期から収益認識会計基準等を適用したことによる収益押し下げ影響は、売上高が516百万円減、営業利益が139百万円減であった。こうしたなかで、営業利益については従来予想(期初予想170百万円→上期決算発表時予想250百万円)から大きく上振れて着地しており、実質的には順調な業容拡大を示す決算内容であったと考える。営業利益率の低下が目立つわけだが、2021年3月期が出来過ぎの感があったところに、収益認識会計基準等の適用やIGLOOO及びクレシードの新規連結にかかる影響が重なったためであり、オーガニックベースで見れば特に問題視する必要はない。2022年3月期における事業部門別売上高は、ネットワーク部門の売上高が前期比13.4%減、セキュリティ部門が同6.0%増、モニタリング部門が同25.6%減、ソリューションサービス部門が同82.7%増であった。ネットワーク部門の減収は、2021年3月期下期のハードルが高かったことに収益認識会計基準等の適用というテクニカルな要因が重なったことによる。買い替え期を迎えた米国Infoblox製のDHCP/DNSアプライアンス(IPアドレス管理サーバー「Infoblox」)製品と2021年3月期から販売を開始した「Radware」製品の受注は堅調に推移し、セキュアなクラウド型無線LAN「Extreme Networks」製品の受注活動は概ね予定通りとなった。セキュリティ部門については、東京オリンピック・パラリンピックの開催やコロナ禍における社会生活や経済活動でのインターネット依存度の高まりを受けてサイバー攻撃の脅威が増大するなかで順調に推移した。具体的には、1)OT/IoTの普及で喚起された電力系などの重要インフラや工場及びビル管理といった産業制御システムにおけるセキュリティ対策需要に対応する「Nozomi Networks」製品、2)日々高度化・複雑化するサイバー攻撃や不正アクセスといった脅威に対抗するネットワーク不正侵入防御セキュリティや標的型攻撃対策クラウドサービス、3)サイバー犯罪・テロ等に関する情報を収集・分析する「KELA」CTIサービスや、サプライチェーンのリスクを可視化するサイバーリスク自動評価サービス「BitSight」、などが好調であった。また、SNSをAIで分析し犯罪グループ間の隠れた関係や裏アカウントなどを特定するサービスが官公庁からの受注を獲得したほか、次の大きなテーマとして取り組んでいるソフトウェアサプライチェーンリスクのサービスも大手通信事業者への導入を実現している。モニタリング部門は、電力系インターネットサービスプロバイダや国内金融機関からパケットキャプチャ製品「momentum」の受注を獲得したものの、「momentum」の新モデルへの切り替えに伴う販売体制の立ち上げに時間を要したことで減収となった。運用監視クラウドサービス「CloudTriage」は既存主要顧客向けを軸に据えた需要掘り起こし活動に注力しており、同部門の下期売上高は上期に比べ増加している。「momentum」と「CloudTriage」は高い採算性が期待できる自社製品/サービスであるだけに、今後の行方に注目しておきたい。ソリューションサービス部門の大幅増収はクレシードの新規連結によるところが大きいわけだが、オーガニックベースでも2桁増収を実現した模様である。コロナ禍が続くなかで、1)同部門の既存主力プロダクトである「みえる通訳」(手話を含む多言語リアルタイム映像通訳サービス)への評価が高まり、在留外国人や聴覚障害者とのコミュニケーション手段としてワクチン接種会場等での需要が拡大した、2)「Web会議サービス」が当たり前となりつつあるなかで、従来のライセンス及びウェビナー契約に加えて映像・音響機器等の付帯商材の需要も拡大、「かんたん接続クラウドマネージドVPNサービス」がその簡便性と値頃感によりクラウドPBXや理美容サロンをはじめとする小売流通や中堅企業等からの引合いを集めたことなどがオーガニック成長に貢献した。なお、自社開発のRPAツール「EzAvater」は販売代理店網の拡大とブランドの知名度向上のマーケティング活動に注力しており、IGLOOOとクレシードの受注活動は想定線で推移している。2022年3月期の売上原価率は60.5%と前期比1.9ポイントの上昇、販管費率は31.0%と同1.1ポイントの上昇となった。いずれも、収益認識会計基準等の適用や先行投資局面にあるIGLOOO及びクレシードの新規連結が直接的な要因として指摘できる。結果、2022年3月期の営業利益率は8.5%と2021年 3月期の11.5%から3.0ポイントの低下となった。ただ弊社では、利益率が低いハードウェア販売を伴う同社のビジネスモデルを勘案すると現時点における同社の実力値を営業利益率7%程度と考えており、2021年3月期の利益率水準は出来過ぎ、2022年3月期は良好な水準との印象を持っている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:28
注目トピックス 日本株
テリロジー Research Memo(7):企業理念に裏打ちされたビジネスモデルを構築(2)
■特色と強み4. 「事業パートナー」から評価される「市場対応力」ではなぜ、海外の新興企業がテリロジー<3356>を日本における事業パートナーとして選択するのか。その理由が、顧客のニーズや満足度を重視する企業理念に裏打ちされた経営戦略を実践することで創業来磨き上げてきた「市場対応力」の高さである。同社の「市場対応力」の源泉は、1)輸入技術と独自技術を組み合わせ、顧客満足度が高いソリューションへと発展させる力、2)アライアンスやM&A戦略を駆使することでミッシングパーツを充足させる力にある。一般的に、ベンチャー企業はせっかく良い技術や良い製品を生み出しても、バリューチェーンのうち、保守や販売の部分で大手企業に見劣りすることが多いわけだが、同社の場合、創業2年後の1991年には東芝ITサービス(株)(旧東芝エンジニアリング(株))と保守委託契約を締結、販売においてはアライアンス等による間接販売網の整備にとどまらず、業務資本提携やM&Aによるタッチポイント獲得を含む直販力強化にも取り組んできたことが特徴的である。同社は、商材開発(輸入技術と独自技術の組み合わせ)から保守(自社による問題の切り分けと業務委託によるメンテナンス作業)や販売(直販と代理店網の併用)に至るバリューチェーン全体でパートナリング戦略を積極活用することで、有力な顧客に評価され、優れた顧客基盤(単体ベースで大手企業中心に300社以上、ほぼ9割の顧客と直接取引)を効率的に構築することを実現している。そして、こうして形成された「日本における優れたディストリビューション能力(豊富な顧客情報、24時間365日の保守体制、直販と間接販売を組み合わせた充実した顧客接点)」が、海外の新興企業が日本におけるパートナーとして同社を選ぶ決め手となっているわけである。2020年3月、同社はネットワーク仮想環境やサイバーセキュリティソリューション等の領域でグローバルリーダーの一角を占め米国NASDAQ市場において株式を公開しているイスラエルRadwareとディストリビューター契約を締結した。日本ラドウェア(株)が発表したプレスリリースには、『テリロジーは数多くの海外の最先端技術を日本市場に提供し、日本市場を創造した実績があります。日本市場に実績がない技術、製品においても安定した稼働と運用を実現し、長年にわたり日本のお客様企業から厚い信頼を得ています。Radwareは、テリロジーが提供する高いソリューション提案力及びサポート力と、Radwareが業界のリーダーと評価される技術力とのシナジー効果が期待され、日本のお客様企業に主力製品である「クラウドWAFサービス」「Botマネージャー」「クラウドワークロードプロテクション」を含む統合的なセキュリティソリューションを提供できると判断し、今回のディストリビューター契約締結を行うことといたしました。』と記されている。同社の「目利き力と市場対応力」が海外のテクノロジー企業から高く評価されている証左として受け止めたい。5. 同社の「強み」が企業業績面でも顕在化しつつある同社が「目利き力と市場対応力」を武器としながら、パートナリング戦略によるバリューチェーンの強化を実現し、優れた顧客基盤を獲得していることは高く評価できよう。とはいえ、同社のパートナリング戦略には、一般的に収益性が低くなりがちな商社機能をビジネスモデルに組み入れるという側面もあり、2017年3月期まで同社の営業利益率(代表的な収益性指標であり、企業競争力の優劣を映す)は低迷していた。しかしながら、2018年3月期以降は改善傾向に転じ、これまで見てきた同社の強みが企業業績面でも顕在化してきたように感じられる。同社の2018年3月期から2022年3月期までの営業利益率の推移を連結と単独、計算上の子会社合計値のそれぞれで見ると、連結ベースが5.1%→6.6%→6.5%→11.5%→8.5%、単独ベースが4.0%→3.0%→2.8%→10.5%→7.4%、子会社合計値が19.7%→22.3%→26.0%→16.6%→10.1%となっている。2022年3月期については、収益認識会計基準等の適用とM&Aによる新規連結影響(先行投資局面にある企業の子会社化は営業利益率押下げ要因となる)を受けて前期の水準を下回ったが、傾向としては、1)低迷していた単独営業利益率が一気に向上し同業他社比で見ても遜色ない水準に達している、2)M&Aにより子会社化した企業を含む子会社群の営業利益率は単独を上回るだけでなく絶対水準としても高い、といったことが読み取れる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:27
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テリロジー Research Memo(6):企業理念に裏打ちされたビジネスモデルを構築(1)
■特色と強み1. 「顧客重視」の企業理念を実践するために必要な事業バリューチェーンを構築テリロジー<3356>のビジネスモデルには「常にお客様のニーズに対応し、お客様の満足を実現する」という企業理念を事業として実践するための工夫が読み取れる。すなわち、「常にお客様のニーズに対応」するためのプロセス(技術・製品の調査/発掘等)と「お客様の満足を実現」するためのプロセス(複数製品を組み合わせたソリューションの提案や保守体制の整備等)を核に据えた事業バリューチェーンの構築であり、バリューチェーンの各プロセスでパートナリング戦略を活用していることである。企業理念に裏打ちされたビジネスモデル/バリューチェーンを構築するためには、まずは企業理念をベースに自社のミッション(使命)とビジョン(将来像)を定め、次にそれらを実現するためのアクションプラン(手段・計画)に落とし込む必要がある。同社(単体)では、自社のミッションを「デジタル社会において、独自の価値あるセキュリティテクノロジーを提供し、あらゆるビジネスシーンでの安心・安全を実現」、ビジョンを「お客様の課題を価値ある技術の組み合わせにより、独自の最適解決を提案・実現するテクノロジーソリューションオーガナイザーになる」と定め、事業バリューチェーンのプロセスにフィットする形のアクションプランに落とし込んでいる。具体的なアクションプランは、「シリコンバレーやイスラエルの先進・先端技術動向に関する継続的な調査・発掘活動」「発掘した技術と日本市場及び顧客が抱える課題との適合性の継続的な調査・照会・検証活動」「市場導入のための複数技術の組み合わせや適合化開発アレンジによるソリューションへの発展、デリバリー・サポート体制の構築、価値ある提案営業教育、新市場の創造活動」となっており、まさに「常にお客様のニーズに対応し、お客様の満足を実現する」という企業理念に沿った内容と言える。2. 「目利き力と市場対応力」がすべての強みのベース同社は、自社の強みとして、1)目利き力と市場対応力~先進・先端技術を発掘する目利き力とそれを市場化し顧客に提供するカルチャライズ力、2)ソリューションラインナップ~ネットワーク基盤からエンドポイントまであらゆる利用シーンをカバーする多様なセキュリティ&セーフティ・ソリューションラインナップ、3)サービス提供の多様性~先進技術製品取り扱い、保守、自社開発ソフトウェア商材、サービス化までプロダクトミックス対応による柔軟な商品提供形態、4)実績に裏打ちされた技術力~創業来(30年超)長年にわたる顧客本位をベースにした安定した実績ある技術力、5)グローバル対応力~成長著しいアジア新興市場にも展開するグローバル市場対応力を列挙している。いずれも、実績に裏打ちされたものだろうが、とりわけ「目利き力と市場対応力」がすべての強みのベースとなるコアコンピタンスだと見て良いだろう。3. 「顧客ニーズ」を満たすために磨かれてきた「目利き力」同社の「目利き力」とは、「時代の流れを的確に捉え、事業領域を絞り込んだうえで、海外新興企業の最新技術を発掘し、代理店契約等に結び付ける力」であり、海外新興企業の最新技術を発掘してきた実績には事欠かない。ここでは、ブロードバンド領域における米国Wellfleetと米国Infoblox、セキュリティ分野における米国TippingPoint(2010年に米国ヒューレット・パッカードが買収、2015年にはトレンドマイクロ<4704>が買収)、ベルギーOneSpan、米国Lastline(2020年に米国VMwareが買収)の事例を紹介する。同社の企業向けIPネットワーク事業は、1990年に米国Wellfleetと代理店契約を締結し、IPネットワーク構築における主力製品の1つであるルータ(2つ以上の異なるネットワーク間を中継する通信機器)の提供を開始したことに始まる。Wellfleetは今でこそ存在しないものの、1984年創業で世界最大のコンピュータネットワーク機器会社である米国Cisco Systemsに対抗するため、業界2番手のNortel(カナダ)が1998年に買収に踏み切った企業であり、1990年時点でWellfleetを見出したことは同社の「目利き力」を示す好例と言えるだろう。なお、同社は現在、Cisco製ルータを取り扱うことで供給者責任を果たしている。ブロードバンド領域では、1999年にADSL接続ソフトウェアの提供を開始、その後1,000万超のユーザーに展開するヒット製品に育ち、大手通信会社向けビジネスの橋頭堡となった。また、1999年には米国Redback Networksとの代理店契約も締結、ブロードバンドアクセスサーバー等の導入を通じ、電力各社のFTTH網構築にも貢献した。また、モバイル関連としては、米国Infoblox製のDNS/DHCPアプライアンス(必要に応じてIPアドレスを発行する機器)やネットワークをモニタリングする自社開発ソリューションがスマートフォン普及に伴って主要プロダクトに成長している。なお、1999年創業のInfobloxと同社は2003年に日本初の代理店契約を締結したわけだが、現在においてInfoblox製のDNS/DHCPアプライアンスは国内で多くのIT企業が取り扱うデファクトスタンダード(事実上の標準)の地位を占めており、これもまた、同社が持つ「先見の明」を示す一例として評価できるだろう。セキュリティ分野への取り組みは、2004年の当時独立系であった米国TippingPointとの日本国内総販売代理店契約締結を皮切りに、2007年にはOneSpan(旧Vasco Data Security、ベルギー)、2012年に米国Lastline、2015年に米国RedSeal、2016年に米国Tempered NetworksとイスラエルKELA、2018年に米国Nozomi Networksと販売代理店契約(Tempered Networksとは国内独占販売契約)を締結し、幅広いソリューションの提供を実現している。TippingPointは2015年にトレンドマイクロが約3億ドルを投じて買収したIPS(不正侵入防止システム)を得意とするサイバーセキュリティ企業だが、同社は買収の11年前(2004年)にTippingPointと日本国内総販売代理店契約を結び、実績を積み上げてきたことから、トレンドマイクロからも頼りにされる存在であり続けている。また、同社が2007年に日本で初めて取り扱ったOneSpanのワンタイムパスワード技術は、今では日本のメガバンクにそろって採用され、インターネットバンキングに不可欠な存在となっている。さらに、同社は2012年に米国Lastlineの標的型攻撃対策クラウドサービスの販売を開始したわけだが、警察庁が把握している標的型メール攻撃の件数推移(2014年:1,723件→2015年:3,828件→2016年:4,046件→2017年:6,027件→2018年:6,740件→2019年:5,301件→2020年:4,119件、その後公表なし)から明らかなとおり、マルウェア等による標的型攻撃が大きな脅威として認識されたのは近年のことである。なお、標的型メール攻撃の件数は2018年以降ピークアウトしているものの、同庁に公表しているサイバー犯罪の検挙件数は2018年:9,040件→2019年:9,519件→2020年:9,875件→2021年:12,209件と増加傾向に拍車が掛かり、企業に対するサイバー攻撃の脅威はむしろ増大している。こうした事例は、同社が事業領域を的確に絞り込むことで注目すべき技術トレンド・最先端技術を明確に捉え、「先見の明」を持って「目利き力」を発揮してきたことを端的に示すものだろう。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:26
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テリロジー Research Memo(5):ネットワーク、セキュリティサービス等の4部門で事業を展開(2)
■テリロジー<3356>の事業内容5. ソリューションサービス部門2022年3月期におけるソリューションサービス部門の売上高は、1,710百万円と全社売上の32.7%を占めている。主な取扱プロダクト・サービスは、1) 自社開発ソフトウェアRPAツール(EzAvater、RPA:Robotic Process Automation)、2) 多言語リアルタイム映像通訳サービス(みえる通訳)、3) クラウド管理型マネージドVNPサービス(MORA VPN Zero-Con)、4) 法人向けインターネット接続サービス(MORA光)、5) 高速モバイルデータ通信サービス(MORAモバイル)、6) Web会議ツール(MVC、Zoom)、7) 人工知能(AI)と拡張現実(AR)を活用した映像による非接触型のリモートサポートサービス(TechSee)、8) 孫会社(株)IGLOOOによる「旅マエ・旅ナカ・旅アト」関連事業、9)連結子会社クレシード(株)による情報システム業務支援・代行事業である。「EzAvater」は働き方改革や業務効率化の実現に向けて注目されるRPAツールであり、究極的にカンタン(誰にでもロボット=定型業務自動化のシナリオが作成できる直感的な操作性)、止まりづらい(システムのスピードに合わせてロボットが作動、例外処理をテンプレート化し安定稼働を実現)、アプリを問わない(画像認識技術を採用することでWindows上の動作であればアプリを問わず自動化可能)、スモールスタート可能(PC1台から導入可能)、といった特長を持っている。これらの特長により「EzAvater」は、IT専門部署でなければロボットの作成が困難で導入コストやメンテナンスの負担も大きいという多くのRPAツールが持つ弱点を克服し、各部署において現場のニーズに沿ってロボットを作成し、日々の運営を行うといった活用方法を可能にしたソフトウェアである。実際、「EzAvater」はアイティクラウド(株)が運営する法人向けIT製品・クラウドサービスのリアルユーザーが集まる国内最大級のレビューサイト「ITreview」で高評価を多く集め、「ITreview Grid Award 2021 Winter」において「High Performer」を受賞している。また、「EzAvater」の販売に関しては、幅広いユーザー層に浸透させたいとのねらいからパートナリング戦略を積極活用(ゴールドパートナー制を導入)しており、2019年中に(株)ネクス・ソリューションズ、パナソニックソリューションテクノロジー(株)、(株)レゾナゲート、(株)山崎文栄堂、(株)ネクステージ、ウチダエスコ(株)、2020年以降も(株)日立システムズ、シーイーシー<9692>、ペブルコーポレーション(株)、(株)キャリアプランニング、(株)ラスティックシステムと販売代理店契約を締結し、販売チャネルの拡大を図っている。同社によると、他社製RPAツールから「EzAvater」に取り扱い商材をスイッチする販売代理店も散見されるとのことであり、「EzAvater」の魅力度を示す証左と捉えられる。「みえる通訳」はタブレット・スマートフォンを利用した映像通訳サービスで、いつでもどこでもワンタッチで、通話オペレーターが接客等をサポートするもので、英語、中国語、韓国語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、フランス語、タガログ語、インドネシア語、ネパール語、ヒンディー語、日本手話の通訳に対応している。利用料は定額制(9時−21時対応のライトプランが15千円/月、24時間対応のスタンダードプランが25千円/月)で医療通訳プラン(英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語のみ、35千円/月)も用意している。元来、「みえる通訳」はインバウンド対応をターゲットとして立ち上げられたサービスだが、医療現場や災害時の避難所及び行政窓口における在留外国人向け対応や、通訳を必要とするWeb会議のほか教育現場(GIGAスクールタブレットを活用)等で活用可能なサービスへと進化している。2022年5月時点における「みえる通訳」の導入先は、ワクチン接種会場:埼玉県、熊本県など132件、官公庁/自治体:農林水産省、宮城県、千葉県、品川区、足立区、杉並区など34件、医療機関:横浜市立市民病院、川崎市立多摩病院など7件、その他:東京動物園協会、横須賀市観光協会、Zoff、近鉄百貨店など12件となっている。なお、「みえる通訳」は(株)テリロジーサービスウェア(以下、TSW)が展開するサービスである。TSWは同社が2017年12月に買収したノジマ<7419>グループのアイ・ティー・エックス(株)の法人向けICTサービス事業を商号変更した連結子会社であり、同社はこのM&A戦略で新たな事業ドメインと従来手薄であった中堅・中小規模のエンタープライズ顧客基盤や全国に店舗展開しているチェーン店、業務店等のリテール顧客基盤を獲得(大企業を含むTSWの現在の顧客数は1,000社超)している。TSWは、2020年5月にインバウンドメディア事業を運営するIGLOOOを子会社化した。IGLOOOは、欧米豪向け訪日旅行インターネットメディア「VOYAPON(ヴォやポン)」の運営を核に海外向けコンテンツ制作及びプロモーション事業という「旅マエ・旅アト」型サービスを手掛ける企業であり、これまで主に訪日外国人観光客を対象にした「旅ナカ」領域で多言語リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」を提供し業界最大手のポジションを確立してきた同社との補完性・相乗性は高い。ウィズコロナ時代においても「観光立国日本」を目指した国策が何らかの形で再起動されることは間違いないと思われるだけに、厳しい局面において逆張り的に攻めの一手を打った同社の決断は評価に値する。同社グループ入り後、IGLOOOは、1)(株)ミキ・ツーリスト/(株)ITPと共同で欧米豪を中心としたオンライン旅行博出展支援サービス「海外旅行博オンライン出展サポートパッケージプラン」の提供を開始(2020年8月)、2)欧米豪向けインバウンドメディア「VOYAPON(ヴォやポン)」のリニューアル(同年8月)、3)“外国人目線”に立ったストーリーテリング型越境ECサイト「VOYAPON STORE(ヴォやポンストア)」の開設(同年9月)、4)中国向けデジタルマーケティング事業の(株)unbotと中国市場における欧米豪向け観光プロモーションの独占パートナーとして業務提携(同年11月)、5)沖縄県読谷村と連携し初の欧米豪向け越境ECプロジェクトを始動(2021年4月)、6)中東向けに山梨県のPR動画を作成、プロモーションを実施(同年5月)、7)全世界17億以上のデジタルIDを保有する米国ADARAと訪日観光分野におけるデジタルマーケティング支援強化で業務提携(同年6月)、8)海外に向けて「音楽の街」浜松市のPR動画を制作(2022年4月)、と事業推進を加速しており、将来的にソリューションサービス部門の一翼を担う存在に育つ可能性を秘めている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:25
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テリロジー Research Memo(4):ネットワーク、セキュリティサービス等の4部門で事業を展開(1)
■事業内容1. 製品・サービス別に4部門で事業を展開テリロジー<3356>は、セグメント情報を開示していないが、製品・サービス別に「ネットワーク」「セキュリティ」「モニタリング」「ソリューションサービス」の4部門で事業活動を展開している。2. ネットワーク部門2022年3月期におけるネットワーク部門の売上高は、1,399百万円と全社売上の26.8%を占めている。主な取扱プロダクト・サービスは、1)ネットワーク製品(ルータ、スイッチ、無線LAN、DNS/DHCP)、2)企業内情報通信システムやインフラの設計・構築、3)テレビ会議システム等、広範囲なネットワーク関連製品の販売及びプロフェッショナルサービスの提供であり、創業来30年超に及ぶ実績の積み重ねにより、顧客のニーズに最も適したソリューションの提供が可能だと自負している。加えて、同部門が提供するネットワーク及び付帯機器の保守業務に24時間365日体制で対応している。3. セキュリティ部門2022年3月期におけるセキュリティ部門の売上高は、1,726百万円と全社売上の33.1%を占める同社の大黒柱である。主な取扱プロダクト・サービスは、1)CTI(Cyber Threat Intelligence、サイバー脅威情報)サービス、2)ネットワークセキュリティ製品(ファイアウォール、侵入検知・防御、情報漏えい対策等)、3)セキュリティ認証基盤(ネットワーク上のサービス利用者を識別すること)、4)不正取引対策(ワンタイムパスワード製品)等のセキュリティシステムである。加えて、同部門が提供するセキュリティ機器及びソフトウェア製品の保守業務に24時間365日体制で対応している。同社(単体)が総合的にセキュリティ領域の事業を展開するなかで、連結子会社(株)テリロジーワークス(以下、TWX)はCTI領域をメインに事業展開している。同社グループは、CTI領域において、2021年に警察庁の大型案件を獲得した実績を持つが、防衛省向けの案件についてはパートナー経由で実績があるものの、コンサルティングサービスが中心であった。この点、2022年3月にTWXが資本・業務提携を締結し第三者割当増資を引き受けた(株)日本サイバーディフェンスは元自衛隊幹部をはじめ、国家防衛分野に精通したメンバーが参画している企業であるため、両社の強みを生かした新しい付加価値の高い製品が提供できることで、案件の獲得に向けて大きな展開が期待できる。4. モニタリング部門2022年3月期におけるモニタリング部門の売上高は、387百万円と全社売上の7.4%にとどまるも、自社ブランド商材がメインに育っていることが特徴である。主な取扱プロダクト・サービスは、1)自社開発製品(momentum)によるパケット分析、2)クラウド性能監視サービス(CloudTriage)、3)ネットワーク運用・管理・監視機器である。加えて、同部門が提供する自社開発製品(momentum)、ネットワーク運用・管理・監視機器及びソフトウェア製品の保守業務に24時間365日体制で対応している。自社ブランドとしては、モニタリング部門の核となる「momentum」(完全自社開発のネットワークパケットキャプチャ製品)や月額課金モデルを導入しサポート事業部門の一部を成す「CloudTriage」(自社ブランド運用のITシステム運用監視クラウドサービス)がある。「momentum」はネットワーク上でやり取りされたデータ(パケット)を記憶装置(ストレージ)に収集し、分析・可視化することで、サービス品質の検証と不具合場所の特定、対策の支援を行う、言わばネットワーク上のドライブレコーダーのようなソリューションであり、大手携帯通信事業者など重要顧客の獲得に成功してきた。現在はネットワーク監視やセキュリティ対策、トラブルシューティング対応など、新たな利用シーンの開拓に取り組んでいる。また、「CloudTriage」はITシステムの運用状況をユーザー視点で測定し、リモートアクセスの遅延といったパフォーマンス低下が発生した場合、その原因を特定するソリューションであり、月額課金のクラウドサービスとすることで安価に提供している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:24
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テリロジー Research Memo(3):「顧客重視」の企業理念を追求するなかで事業領域を拡大
■会社概要1. 時代のニーズに応え続けるITソリューションプロバイダーテリロジー<3356>は、1989年7月の創業以来、IPネットワーク関連製品やネットワークセキュリティ分野の最先端製品及びソリューションの提供を行ってきたIT企業である。2004年12月にジャスダック証券取引所に上場し、現在は東証スタンダード市場へ移行している。企業理念は「常にお客様のニーズに対応し、お客様の満足を実現する」であり、平成時代には「In collaboration with customer」というスローガンの下で、インターネット社会の構築・発展に資するべく事業領域を拡大し、令和時代を迎えた今、「No.1 in Quality」を新たなスローガンに掲げ、生産性向上や働き方改革、インバウンド関連、ウィズコロナ下での新しい生活様式、DX、SDGsといった時代のニーズに対応したソリューション提供にも取り組んでいる。2. 企業向けIPネットワーク事業を原点にブロードバンド、モバイル、セキュリティへと事業領域を拡大同社の企業沿革からは、企業向けIPネットワーク事業を原点に、1)電話回線やISDN回線を利用したインターネット通信からADSLやFTTH等のブロードバンド回線を利用した高速インターネット通信への急速なシフト、2)スマートフォンの普及を背景とするモバイル時代の到来、3)インターネット社会において高まるサイバーセキュリティの重要性、といった技術トレンドにいち早く気付き、事業領域を拡大してきた姿が読み取れる。※本レポート内の表記において、上場企業は初出は企業名+<証券番号>、2回目以降は証券番号を省略、非上場企業は初出は(株)ありの企業名、2回目以降は(株)は省略とする。ただし、沿革表などは表内で初出の場合のみ証券番号もしくは(株)をつける。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:23
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テリロジー Research Memo(2):1989年創業のITソリューションプロバイダー(2)
■要約5. 2023年3月期業績予想は必達目標テリロジー<3356>は2023年3月期の連結業績予想について、売上高が前期比18.7%増の6,200百万円、営業利益が同16.2%減の370百万円とする期初計画を公表した。この数値は、2021年5月に公表された「3ヵ年中期経営計画」(以下、新中計)における2ヵ年目の数値目標と一致している。同社はドル建て価格で仕入れ、円建て価格で販売する輸入商材を多く取り扱っているため、円安局面では粗利率低下影響が先行するわけだが、ロシアによるウクライナ侵攻により国際情勢が緊迫化するなかにあっても新中計で掲げた数値目標は最低限達成するとの同社の思いが読み取れよう。6. 持株会社体制への移行で「グループ全体の最適化」と「強みの磨き上げ」を目指す2022年4月、同社は取締役会において持株会社体制へ移行することを決議した。6月の定時株主総会での承認及び関係当局による認可等を経て、2022年11月1日に設立登記される(株)テリロジーホールディングスに同社株式を移転し、同日にテリロジーホールディングスが東証スタンダード市場に新規上場(テクニカル上場、実質的に同社株式が上場維持されるかたち)する予定である。新体制では、持株会社がグループ経営機能、投資機能及び新規事業開発機能に特化する一方で、各事業会社は担当事業領域において独自に成長戦略を描き環境変化に応じて迅速かつ柔軟に意思決定・事業推進を行っていくことになる。つまり、同社の強みである「目利き力と市場対応力」のうち、前者を持株会社が、後者を各事業会社が責任と権限を持って磨き上げ、発揮することを目指した体制への移行と言え、同社グループの全体最適と企業価値向上に資するものと考えられる。持株会社体制への移行は、2022年3月期を初年度とする新中計が折り返すタイミングでなされるわけだが、新中計で掲げられている「グループ会社ごとの目標達成に向けたアクションプラン」を後押しすることになると言えるだろう。今後は、各社のプラン遂行状況にも注目していきたい。■Key Points・同社は、創業来30年超にわたり実績を積み重ねるITソリューション企業。現在は連結子会社4社(孫会社含む)と持分法非適用の関連会社1社を傘下に持つ企業グループを形成・企業沿革からは、時代のトレンドを的確に捉え、事業戦略のフォーカスエリアを巧みに変遷させてきた実績が読み取れ、現在は「ネットワーク」「セキュリティ」「モニタリング」「ソリューションサービス」の4部門で事業活動を展開・「顧客重視」の企業理念に裏打ちされたビジネスモデルを構築。「目利き力と市場対応力」をコアコンピタンスとする同社の強みは企業業績面でも顕在化・2022年3月期業績は実質的に好調な内容、増収減益を見込む2023年3月期業績予想は必達目標・持株会社体制への移行で「グループ全体の最適化力の強化」と「強みの磨き上げ」を目指す(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:22
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テリロジー Research Memo(1):1989年創業のITソリューションプロバイダー(1)
■要約1. 1989年創業のITソリューションプロバイダーテリロジー<3356>は、1989年7月の創業以来、IPネットワーク関連製品やネットワークセキュリティ分野の最先端製品及びソリューションの提供を行ってきたIT企業であり、現在は連結子会社4社(孫会社含む)、持分法非適用の関連会社1社を傘下に持つ企業グループを形成している(2022年11月に持株会社体制へ移行する予定)。企業理念は「常にお客様のニーズに対応し、お客様の満足を実現する」であり、平成時代には「In collaboration with customer」というスローガンの下で、インターネット社会の構築・発展に資するべく事業領域を拡大し、令和時代を迎えた今、「No.1 in Quality」を新たなスローガンに掲げ、生産性向上や働き方改革、インバウンド関連、ウィズコロナ下での新しい生活様式、DX(デジタルトランスフォーメーション)、SDGsといった時代のニーズに対応したソリューション提供にも取り組んでいる。同社の企業沿革からは、企業向けIPネットワーク、ブロードバンド、モバイル、サイバーセキュリティといった技術トレンドにいち早く気付き、事業領域を拡大してきた姿が読み取れる。2. 4部門体制で顧客ニーズに応える事業活動を展開同社は「ネットワーク」「セキュリティ」「モニタリング」「ソリューションサービス」という4部門で事業活動を展開している。顧客ニーズを満たすために必要な数多くの製品・サービスを揃えていることや24時間365日の保守体制、直販と間接販売を組み合わせた優れたディストリビューション機能を整備していることが特徴となっている。3. コアコンピタンスは「目利き力と市場対応力」同社のビジネスモデルには「顧客重視」の企業理念を事業として実践するための工夫が読み取れる。すなわち、「常にお客様のニーズに対応」するためのプロセス(技術・製品の調査/発掘等)と「お客様の満足を実現」するためのプロセス(複数製品を組み合わせたソリューションの提案や保守体制の整備等)を核に据えた事業バリューチェーンの構築である。同社は自社の強みを、1)目利き力と市場対応力、2)ソリューションラインナップ、3)サービス提供の多様性、4)実績に裏打ちされた技術力、5)グローバル対応力としている。とりわけ「目利き力と市場対応力」はバリューチェーンの各プロセスで生かされており、すべての強みのベースとなるコアコンピタンスだと考えられる。4. 2022年3月期の営業利益は従来予想から大きく上振れて着地2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比11.1%増の5,223百万円、営業利益が同18.3%減の441百万円となり、営業利益については従来予想(期初予想170百万円→上期決算発表時予想250百万円)から大きく上振れて着地した。また、営業利益率は8.5%と前期比3.0ポイント低下、期中受注高が6,058百万円と前期比11.1%増、期末受注残高は前期末比79.1%増の1,890百万円へと積み上がった。2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、収益認識会計基準等)を適用したため名目的には減益となったものの、実質的には順調な業容拡大を示す決算内容であったと考える。財務体質についても、健全性を維持している。2022年3月期末の自己資本比率は40.2%(前期末は46.6%)、流動比率は148.9%(同169.9%)と低下したものの、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は0.11倍(同0.13倍)、ネットキャッシュ(現金及び預金−有利子負債)は1,901百万円(同2,070百万円)と前期末水準を維持、通常の配当原資となる単体ベースの利益剰余金についても498百万円(同502百万円)と十分な余力を確保している。また、同社は2021年5月から6月にかけて発行済株式総数の2.74%にあたる自己株式を取得したのに続き、2022年3月期末の年間配当金を当初計画の5円/株から7円/株(普通配当5円/株、特別配当2円/株)に引き上げている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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2022/06/28 15:21
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セルム Research Memo(7):M&A・配当・自己株式取得の3つの観点で成長と株主還元を実現
■株主還元策セルム<7367>は新たな株主還元の枠組みとキャピタルアロケーションの考え方について、2022年5月13日に発表した。成長と株主還元については、M&A、配当、自己株式取得の3つの観点で実現していく。新しい事業の創造を実現するM&Aの実行により、新事業・新市場の創造を通じて持続的な利益成長や企業価値の向上を図る。このために必要な内部留保を確保しつつ、安定的な配当、市場環境を踏まえた機動的な自己株式取得を行っていく。具体的には、配当性向 30%程度及びROE10%程度を基準とした安定的かつ継続的な配当方針を掲げている。2022年3月期は過去最高の売上高を達成したことを踏まえ、1株当たり18.0円の配当を実施する。また、2022年6月14日には、株式流動性の向上と投資家層の拡大を目的として投資単位当たりの金額を下げ、1株につき2株の割合による株式分割の実施を発表した。これに伴い、2023年3月期の配当予想についても修正を発表しており、中間配当6.0円、期末配当6.0円の合計12.0円としている。2022年5月13日付で開示された、年間配当予想の23.0円に対して表面上は減額しているが、株式分割前換算では24.0円と実質増額修正である。弊社では、流動性向上と投資家層の高まりにより株価向上に資するものであると考える。また、同社では長期にわたり留保された余剰資金については、自己株式取得の実施の是非について機動的に検討するとしている。実際に、直近では2022年5月27日に自己株式取得の実施を公表しており、自己株式取得総額の上限を7億円としている。増配とともに、自己株式取得についても既存株主に対して大きく寄与するものであると弊社では見ている。足元の業績や中期経営計画の上方修正に照らせば、今後も業績は拡大傾向で推移することが予想され、優先度が高いとしているM&Aに加え、配当や自己株式取得が今後も実施される可能性は高いと弊社は予想している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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2022/06/28 15:17
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セルム Research Memo(6):既存市場と新市場における顧客基盤拡充と新事業開発で過去最高益の実現へ
■中期経営計画1. 中期経営計画の概要セルム<7367>を取り巻く事業環境としては、コロナ禍による新たな組織・人材開発ニーズが急速に顕在化している。DXの急進による、DXを軸とした人材開発や組織開発、価値観・働き方の多様化、副業の社会的な浸透など、コロナ禍により社会的な価値観が大きく変化しつつあるなかで、新たな事業や顧客価値の創出に向けた組織・人材開発が求められるようになってきている。また、足元ではアフターコロナを見据えた投資が活発化している。このような背景を踏まえて、同社では2022年5月13日に中期経営計画の上方修正を発表した。2023年3月期から2025年3月期にかけて、現在の事業環境や戦略の手応えを勘案し、さらなる増収増益を前提とした計画目標の見直しを行った。大きく分けて既存事業の開発と新事業の開発の2本柱で新たな成長基盤の開発を目指す。計画最終期の2025年3月期の業績目標は売上高を8,615百万円、EBITDAを1,362百万円、営業利益を1,156百万円としている。2. 成長戦略2022年3月期は、コロナ禍からの回復基調以上の成長を達成しており、2023年3月期以降もさらなる事業成長を計画している。上方修正後の中期経営計画では、売上高以上のペースで各段階利益の増益率にフォーカスし、利益率の向上を加速させる。そのための成長戦略として、1)大手人事部門とのさらなる取引拡大、2)他機能及び事業部門における取引基盤の開発、3)特定市場にフォーカスした大手顧客ポートフォリオの開発、4)準大手顧客の開発、5)M&Aを軸とした事業開発の推進の5つのテーマを軸とした、既存事業の開発と新事業の開発の2本柱で新たな成長基盤の開発を行っていく。また、現在約100名在籍する連結営業人員を、トップラインと同様に毎年約10%ペースで純増させる想定である。優秀人材の確保に向けて、既存の人事部と並走し、外部の業務委託による採用プロフェッショナルを活用し、ダイレクトリクルーティング等を行う。また、採用エージェント向けの説明会等を通じて関係性を強化していく。(1) 既存事業の開発a) 大手人事部門とのさらなる取引拡大経営塾を基盤とした顧客の経営リーダーに対し、「オンライン環境、デジタルツール、人材開発データ」の活用による同社サービスのDX推進・1on1メンタリングと、DX人材育成サービスの拡充による新たな成長力の獲得に注力する。経営塾からミドル革新、ミドル革新から組織開発、若手育成へと取引拡大をよりスムーズにすることで、大手人事部門とのさらなる取引拡大を図る。b) 特定市場にフォーカスした大手顧客ポートフォリオの開発アフターコロナを見据え、金融・IT・通信・物流・総合商社にフォーカスした継続的なアプローチによる新たな顧客基盤の開発を行っていく。(2) 新事業の開発a) 他機能及び事業部門における取引基盤の開発経営塾を基盤とした経営リーダーに対し、経営塾参加者への個別アプローチや1on1メンタリングを軸とした経営リーダーへのアプローチ強化、経営リーダー限定のデータベース構築を通じた経営リーダー向けマーケティング施策拡充にフォーカスする。経営リーダーとの長期リレーション構築を図ることで、他機能及び事業部門における取引基盤の開発を行っていく。大企業においては人事部の役割が限定的になっているケースもあり、人事部以外の事業部門や企業内における戦略人事機能である「HRビジネスパートナー」にアクセスすることで事業に求められる人材像をより的確に抽出する。2022年3月期の「人事部以外の事業部門との取引数」は99部門(前期比209.4%増)と急増しており、今後も取引基盤の拡大を見込む。b) 準大手顧客の開発大手顧客での実績と、コーポレートガバナンスを起点とした成功モデルの展開により、中長期取引基盤の構築を図っていく。c) M&Aを軸とした事業開発の推進既存事業における顧客基盤の拡充に加え、M&Aによる積極的な資本展開により事業機会を創出する。具体的には非人事部向けのチャネル開拓、スタートアップや中小企業へのアクセス、既存事業のプラットフォーム化を実現するテクノロジーの獲得など、単独では実現できない成長機会をM&Aにより実現する。M&Aを検討する規模感として、2ケタ億円規模の投資も検討しており、必要資金については、利益創出により詰み上がった自己資金と借入等での調達を基本としている。(3) KPI中期経営計画期間の成長ドライバーとして、「上位150社の1社当たり平均年間売上高」「経営塾の実施社数」「人事部以外の事業部門への展開」「準大手顧客数」という4つのKPIを掲げている。これらの項目については、2022年3月期の事業拡大を大きく牽引しており、今後も継続して高い成長を目指していく。2023年3月期における新市場開発の進捗に関するKPIについては、上位150社の1社当たり平均年間売上高を33百万円(前期比5.1%増)、経営塾の実施社数を97社(同7社増)、人事部以外の事業部門への展開を107部門(同8部門増)、準大手顧客数を77社(同10社増)とした。(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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2022/06/28 15:16
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セルム Research Memo(5):大企業を取り巻く事業環境は複雑に変化。投資ニーズの活発化により増収増益を見込む
■2023年3月期の見通しセルム<7367>は中期経営計画の上方修正を2022年5月13日に発表した。これに伴い、2023年3月期は売上高が6,993百万円(前期比8.0%増)、EBITDAが1,045百万円(同10.5%増)、営業利益が838百万円(同14.9%増)、経常利益が835百万円(同19.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が491百万円(同31.4%増)、1株当たり当期純利益が73.25円(同27.9%増)となる見込みである。各段階利益の増益率に焦点を当て利益率のさらなる向上を図る。テレワーク普及に伴う働き方の変化や事業環境の複雑化に伴う組織課題の解決の必要性は強く、顧客ニーズは想定以上に高まっている。事業環境の変化に伴う組織内部の課題はトップ・ミドル・ボトムすべての従業員層に関連するものであり、自社内で完結して解決するハードルは高いことから、今後も同社の受注は順調に積み上がっていくと弊社は予想する。足元では、第1四半期を繁忙期とするファーストキャリア領域が好調に推移している。同領域は今後1,000百万円以上の売上基盤構築を目指す位置付けにあり、第2の事業の柱となるべく高まりを見せている。なお、経営層・ミドル領域の季節性を踏まえ、全体の業績は下期偏重で推移することを想定している。外部環境ではウクライナ情勢や為替相場による影響等は軽微であり、懸念事項は特段見当たらない。(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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2022/06/28 15:15
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セルム Research Memo(4):アフターコロナに向けた戦略投資ニーズが伸長、業績は堅調。過去最高の売上高を達成
■セルム<7367>の業績動向1. 2022年3月期業績の概要2022年3月期業績は、売上高が6,471百万円(前期比40.6%増)、EBITDAが945百万円(同73.0%増)、営業利益が729百万円(同121.5%増)、経常利益が697百万円(同102.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が373百万円(同152.0%)となった。市場全体としてアフターコロナに向けた戦略投資ニーズが伸長、同社グループ業績に対する大きな追い風となった。2021年3月期に実施が見送られた階層別研修やミドルマネジメントの早期取り込み、アフターコロナを見据えた顧客側の様々な戦略投資ニーズに対し、テーラーメード型の企画・実行支援の構築が可能な同社の強みが合致し、売上高及び各段階利益は前期を大幅に上回る着地となった。加えて、案件のオンライン化により新たな成長機会が生まれている。若手を対象とした新たなカフェテリア研修(選択型の必須研修)の増加、役職者手前までの中堅層(階層別研修の狭間層)を対象とした研修の増加、この領域における新規事業である越境型リーダーシップ研修であるTEXの増加などが業績伸長に大きく寄与した。販管費については、2023年3月期以降の成長を見据えて人材採用体制と営業DXを強化した。営業DXの強化では、CRM、ナレッジシェア等を見直すことで、全体の最適化と一層の効率化を実施した。各サービスの2022年3月期末における累計業績については以下のとおりである。なお、業績について同社では担当企業ごとに経営塾・経営メンタリング、ミドルマネジメント革新、組織人材開発コンサルティングを「セルム」、ファーストキャリア開発を「ファーストキャリア」で分類している。2. 人材開発・組織開発事業「セルム」では、経営塾及びミドル革新を目的としたコンサルティング案件の増加があり、売上高は前期比44.6%増の5,471百万円となった。コロナ禍が拡大するなかで、集合研修のオンライン比率は高水準で推移した。KPIである「上位150社の1社当たり平均年間売上高」「経営塾の実施社数」もともに好調に推移。準大手市場では、コーポレートガバナンス・コードの改訂を起点とした経営人材育成やHRトランスフォーメーションの支援が拡大し、売上高・取引企業数ともに拡大傾向にある。同社を取り巻く事業環境としては、独立社外取締役比率の増加傾向に伴う人材投資需要が追い風となっている。独立社外取締役比率増加の背景には、大企業の市場に対する説明責任として、「次世代の経営人材育成」「継続的に付加価値を創出する組織の構築」がより一層求められていることがある。コーポレートガバナンス上の説明責任の中核は、透明性の高い経営人材の育成計画を整備することであり、独立社外取締役は取締役会でのモニタリングの担い手として重要な役割を果たす。このような背景から、次世代経営幹部育成に関するアカウンタビリティーとして、経営人材育成の投資予算を拡大させる傾向が強まっている。コーポレートガバナンス・コードでの上場企業の意識変化が、人材投資を積極化する企業と同社との結び付きを強固にしていくものと弊社でも見ている。3. ファーストキャリア事業「ファーストキャリア」は、新たな公募・選択型研修ニーズの取り込み、SDGsや越境型リーダーシップの開発を目的とした、企業・学生・地域のそれぞれのリーダーたちがチームを組んで難易度の高い地域の課題解決に取り組む新プログラムである、TEXの実績拡大により売上高は過去最高値を更新し、前期比25.7%増の948百万円となった。4. 財務状況とキャッシュ・フロー2022年3月期末の資産合計は、前期末比2,060百万円増加の6,004百万円となった。流動資産は2,145百万円増加し3,616百万円となった。主な要因は、現金及び現金同等物が2,005百万円、売掛金が133百万円増加したことによる。固定資産は85百万円減少し、2,388百万円となった。主な要因は、繰延税金資産が66百万円増加した一方で、のれんが188百万円減少したことによる。現金及び現金同等物や売掛金の増加は、売上高の増加に伴うものである。同社は、所要運転資金が比較的少ないビジネスモデルであるのに加えて、MBOによるのれん償却により売上高に比例して手元資金が潤沢となる傾向にある。負債合計は同91百万円減少の2,069百万円となった。流動負債は142百万円増加し1,706百万円となった。主な要因は、未払金が185百万円、未払法人税が214百万円、その他の流動負債が162百万円増加した一方で、短期借入金が490百万円減少したことによる。固定負債は233百万円減少し362百万円となった。主な要因は、長期借入金の流動負債への振替により242百万円減少したことによる。長期借入金はMBOの実行時に調達したものが主である。純資産合計は同2,151百万円増加の3,935百万円となった。主な要因は、東証スタンダード市場への上場に伴う公募増資により1,395百万円、第三者割当増資により324百万円の資金調達を行い、資本金及び資本剰余金が増加したこと、親会社株主に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が373百万円増加したことによる。2022年3月期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比2,005百万円増の2,933百万円となった。営業活動によるキャッシュ・フローが1,106百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは、20百万円の支出であった。財務活動によるキャッシュ・フローは、908百万円の支出であった。これは主に、株式の発行による収入が1,710百万円あった一方、短期借入金及び長期借入金の返済による支出(ネット)が838百万円あったことによる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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2022/06/28 15:14
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セルム Research Memo(3):プロフェッショナルタレントの活用によりテーラーメード型のサービスを提供
■会社概要3. 事業概要セルム<7367>の事業は、主に1)経営塾・経営メンタリング、2)ミドルマネジメント革新、3)組織人材開発コンサルティング、4)ファーストキャリア開発、5)現日系現地法人を対象とした人材開発・組織開発となっている。2022年3月期通期における主要サービス別の売上高構成比は、経営塾・経営メンタリングが21%、ミドルマネジメント革新が46%、組織人材開発コンサルティングが13%、ファーストキャリア開発が16%、日系現地法人を対象とした人材開発・組織開発が3%となっている。同社の特長・強みは、パートナーシップを結んでいるプロフェッショナルタレントの質の高さである。プロフェッショナルタレントとは、大手企業の元経営幹部や部門幹部、実績のある経営者、戦略コンサルティングファーム出身者、大学・ビジネススクール教授など、圧倒的な専門性や経営経験を有する企業の課題解決に秀でた人物のことであり、2022年3月末現在で1,400名超のタレントネットワークを有している。(1) 事業概要a) 経営塾・経営メンタリング顧客企業の各部門、グループ企業、グローバル拠点等からの選出された次期経営幹部人材に対し、経営リーダーとしての「軸」の開発を通じた経営幹部育成を目的とした中長期のトレーニングプログラムである。内容は、同社が選任するプロフェッショナルタレントとの対話や議論を通じた個々人の経営人材としての資質の見極め、強みと弱みの把握、その後の困難な課題や役割の付与をトータルで支援するものとなっている。また、同様の層に向けてプロフェッショナルタレントとの対話を繰り返し、経営リーダーとしての意識・言葉・行動について、プロフェッショナルタレントが対象者へ実践的な指導と助言を行うメンタリングも行っている。b) ミドルマネジメント革新経営幹部人材層と現場をつなぐミドルマネジメント層に対し、集合研修とオンラインのグループで行うコーチング、アセスメント等を組み合わせたテーラーメード型の育成体系プログラムである。内容は、経営の一員として高い視座をもって職務にあたる意識の改革、組織能力向上のためのリーダーシップ強化、働く価値観やキャリア観の多様化に対応するピープルマネジメント力の育成等であり、ミドルマネジメント層の育成目標を各社固有の課題に合わせて行っている。c) 組織人材開発コンサルティング主に人事部門や経営戦略部門に対し、顧客企業の経営理念と戦略に同期した戦略実行を担う人材を、継続的に開発していくための人材開発体系の構築を行っている。同社の組織人材開発コンサルタントが、顧客企業の中長期的な経営シナリオや事業環境の変化に鑑みて人材の要件を定義し開発目標を定め、各種育成施策と投資計画に反映させていくコンサルティングである。また、同様の層に向けて組織の一体感や求心力、健全性を高め顧客企業の経営理念・ビジョン・行動指針の浸透支援も行っている。d) ファーストキャリア開発主に入社前の内定者から入社後5年目までの若手社員、入社後の一定期間に指導役となるメンターに対し、入社後の早期離職といった課題や一括採用の見直しなどの新卒採用と新人育成の問題解決のため、また、ファーストキャリア期(入社前の内定から入社後5年目)に社会人としての基本スタンスを身につけさせるための各種コンサルティングを提供している。具体的には、人材開発体系の構築支援、各種研修プログラムの企画・開発・実行支援、若手層育成に関する支援を行う。e) 日系現地法人を対象とした人材開発・組織開発日本企業のなかでASEAN・中国に籍を置く経営幹部人材に対し、人材・顧客企業の現地での事業成長と組織発展のためのサポートを行っている。人材開発においては幹部候補になり得る人材を発掘、戦略策定力やリーダーシップ力を開発するプログラムの提供や国・地域ごとのリーダー人材の把握、アサインメント、評価、育成など、一貫した仕組みづくりを支援している。組織開発においては、自社の経営理念や行動指針の浸透と、チームワークによる問題解決の組織風土づくりを支援している。(2) 同社の特徴と強み同社は上記サービスにおいて1)プロフェッショナルタレントによるテーラーメード型の支援、2)リカーリング性の高い長期的な取引構造という強みを有しており、競合企業との差別化を図っている。a) プロフェッショナルタレントによるテーラーメード型の支援同社では提供するサービスを、基本的に潜在課題の壁打ち→課題共有と要件定義→個社固有の「解」の創出→企画提案及び実行の伴走という流れで進めている。このなかで同社の特徴・強みとなってくる部分が、プロフェッショナルタレントに関する部分である。プロフェッショナルタレントの質の高さはもちろん、案件にアサインしなければ報酬が発生しない変動的立ち位置であるため、固定的な報酬で業績を圧迫することがない仕組みを構築している。同社では顧客企業の課題に合わせ、ヒアリング→課題仮説設定→仮説議論を経て、最適なプロフェッショナルタレントの提供を行っている。この特徴により、一般的な研修会社やコンサルティングファームが自社コンテンツや自社の得意分野を軸としたカスタマイズ型であるのに対し、同社では課題と個社の特徴に応じてプロフェッショナルタレントをカスタマイズできる、テーラーメード型のサービス提供を可能にしている。またコンサルティング中において見えてきた課題など新ニーズに対しても、一般的な研修会社やコンサルティングファームが、都度、新コンテンツの開発を必要とするのに対し、同社では新たなプロフェッショナルタレントの活用によってスピーディーに対応することが可能となっている点が強みである。同社のフィッティング力が高く、かつ新ニーズ対応のスピードに優れたビジネスモデルは、コロナ禍によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の急進や価値観・働き方の多様化、副業の社会的な浸透、ESG・SDGsを軸とした組織・人材開発ニーズなど、新たなニーズが急速に顕在化している昨今において、変化し続ける個社固有の経営課題に併走可能であることから、大きな強みであるものと弊社では評価している。b) リカーリング性の高い長期的な取引構造同社の顧客は、複数の事業法人と多くの従業員を国内外拠点に展開する売上高5,000億円から1兆円規模の大手企業、売上高2,000億円以上5,000億円未満の規模を中心とした準大手企業であり、そのなかでも主要取引先は大手企業である。顧客とは経営塾を軸とした経営層の育成、ミドルマネジメント革新やファーストキャリア開発など複数の顧客チャネルからの取引があり、前述の方法によって顧客企業の中長期的な課題解決に向けた関係性が構築できていることから、5年以上の継続的取引顧客による売上が約6割を占めている。顧客企業と親密な関係を築くために、同社では、営業担当者は1人につき平均4〜5社を担当する体制とし、顧客企業との密着度を高めている。これらにより同社は継続的取引の基盤を作り、顧客との取引を拡大させていくことで業績向上を図っている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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2022/06/28 15:13
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セルム Research Memo(2):人と企業の可能性を広げ、世界を豊かにする
■会社概要1. 会社概要セルム<7367>は「人と企業の可能性を広げ、世界を豊かにする」をビジョンに、人材開発と企業経営に関わる多様な事業を展開している。これらをとおして、同社グループは企業価値向上支援パートナーとして、企業価値向上に「人」の視点からアプローチし、永続的な成長に向けて企業において不可欠となる「リーダー開発」、そしてリーダー開発を通じ、勝ち残っていく「企業風土の醸成」を支援している。近年ますますグローバル化が進むなかで、各企業においては、競争優位性を確立して持続的に成長するために不可欠な「人材・組織基盤の強化」と「優れたリーダーの輩出」のニーズが高まっていると、同社は認識している。こうしたニーズに対して、同社ではプロフェッショナルタレントと連携して、1)経営塾・経営メンタリング、2)ミドルマネジメント革新、3)組織人材開発コンサルティング、4)ファーストキャリア開発、5)日系現地法人を対象とした人材開発・組織開発の5つのサービスで構成された「人材開発・ 組織開発事業」を展開している。2. 沿革同社は、2016年8月に同社の実質的な存続会社である(株)セルムグループ・ホールディングス(以下、セルムグループHD)及び旧セルムの経営陣によるMBOの受け皿会社として、CELM Group and Partners(株)の商号で設立された。2016年9 月30日にセルムグループHDの既存株主から発行済株式の100%を取得することで完全子会社化した後、2016年11月1日 にセルムグループHD及び旧セルムを吸収合併し、同日に商号をCELM Group and Partnersから(株)セルムに変更している。この株式取得や吸収合併は、同社の代表取締役社長の加島禎二(かしまていじ)氏が第二創業と位置付けて経営を行っていくことで経営判断のスピードを速め、さらなる事業拡大につなげることを目的としたものである。(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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2022/06/28 15:12
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セルム Research Memo(1):2022年3月期は人材開発・組織開発事業が堅調に推移、過去最高の売上高を達成
■要約セルム<7367>は、経営幹部層及び経営幹部候補層向けの「経営塾」サービスを柱とする人材開発・組織開発支援を手掛ける企業である。「人と企業の可能性を広げ、世界を豊かにする」をビジョンに、企業価値向上支援パートナーとして、主に1)経営塾・経営メンタリング、2)ミドルマネジメント革新、3)組織人材開発コンサルティング、4)ファーストキャリア開発、5)日系現地法人を対象とした人材開発・組織開発の5つのサービスを展開している。強みは、顧客との対話を通じて課題や企業カルチャーに応じたテーラーメード型の最適な支援を実現する「フィッティング力」と、新たなニーズに対して、高度なスキルを持つ人材であるプロフェッショナルタレントを活用することでスピード感を持って対応できる「新ニーズ対応力」とを掛け合わせたシナジーとなっている。同社及び連結子会社6社の計7社で構成されている。1. 2022年3月期の連結業績概要2022年3月期連結業績は、売上高が6,471百万円(前期比40.6%増)、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)が945百万円(同73.0%増)、営業利益が729百万円(同121.5%増)、経常利益が697百万円(同102.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が373百万円(同152.0%増)となった。市場全体として新型コロナウイルス感染症拡大収束後(以下、アフターコロナ)に向けた戦略投資ニーズが伸長し、同社グループの業績に対する大きな追い風となった。2021年3月期に実施が見送られた階層別研修やミドルマネジメントの早期取り込み、アフターコロナを見据えた顧客側の様々な戦略投資ニーズに対し、テーラーメード型の企画・実行支援の構築が可能な同社の強みが合致し、売上高及び各段階利益は前期を大幅に上回る着地となった。加えて、案件のオンライン化により新たな成長機会が生まれている。若手を対象とした新たなカフェテリア研修(選択型の必須研修)の増加、役職者手前までの中堅層(階層別研修の狭間層)を対象とした研修の増加、この領域における新規事業である越境型リーダーシップ研修であるTEX(True Experience)の増加などが業績伸長に大きく寄与した。2. 2023年3月期の業績見通し2023年3月期の売上高は6,993百万円(前期比8.0%増)、EBITDAが1,045百万円(同10.5%増)、営業利益が838百万円(同14.9%増)、経常利益が835百万円(同19.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が491百万円(同31.4%増)、1株当たり当期純利益が73.25円(同27.9%増)としている。2022年3月期は、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)からの回復基調以上の成長により、中期経営計画の最終年度である2024年3月期の目標値を早期達成した。後述する中期経営計画の上方修正により、各段階利益の増益率に焦点を当て利益率のさらなる向上を図る。なお、経営層・ミドル領域の季節性を踏まえ、業績は下期偏重で推移することを想定している。3. 中期経営計画同社は、中期経営計画の上方修正を2022年5月13日に発表した。複雑な経営・社会環境の変化を背景にアフターコロナを見据えた投資が活発化している。これを受け2023年3月期から2025年3月期にかけ、現在の事業環境や戦略の手応えを勘案し、さらなる増収増益を前提とした計画目標の見直しを行った。計画最終期の2025年3月期の業績目標は売上高を8,615百万円、EBITDAを1,362百万円、営業利益を1,156百万円としている。同社では1)大手人事部門とのさらなる取引拡大、2)他機能及び事業部門における取引基盤の開発、3)特定市場にフォーカスした大手顧客ポートフォリオの開発、4)準大手顧客の開発、5)M&Aを軸とした事業開発、という5つのポイントを中心に取り組んでいる。2023年3月期の業績見通しが引き続き好調であることや、高まる投資ニーズと潜在的市場規模を勘案すれば、計画を達成する蓋然性は高いと弊社では見ている。■Key Points・テーラーメード型の最適な支援の実現と、プロフェッショナルタレントを活用した「フィッティング力」×「新ニーズ対応力」に強み・2022年3月期業績は、顧客ニーズの高まりにより過去最高売上高を達成・2023年3月期は増収増益見込み、利益率のさらなる向上を図る・中期経営計画の上方修正を発表、市場の投資ニーズや潜在的な規模から達成の蓋然性は高い(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)
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2022/06/28 15:11
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萩原電気HD Research Memo(10):2023年3月期は年間90.0円配当(配当性向30.6%)を予定
■株主還元策萩原電気ホールディングス<7467>は株主還元策として配当を実施している。配当の基本方針としては、配当性向30%を目途としている。2020年3月期は、普通配当で年間105.0円(配当性向34.2%)、2021年3月期は年間80.0円(同30.6%)、2022年3月期は年間100.0円(同30.8%)を行った。2023年3月期は90.0円配当(予想配当性向30.6%)の見込みだが、今後の業績によっては増配の可能性もありそうだ。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:10
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萩原電気HD Research Memo(9):2024年3月期に売上高1,700億円、営業利益50億円を目指す(2)
■萩原電気ホールディングス<7467>の中長期の成長戦略3. 数値目標数値目標としては、最終年度である2024年3月期に売上高1,700億円、営業利益50億円、ROE8.0%を掲げている。売上高に対しては、成長基調を継続するとともにコア事業での着実な伸長を目指す。営業利益に対しては、新高付加価値事業創出などにより営業利益率の確保を目指す。ROEに対しては、コア事業の利益率を向上させるとともに新高付加価値事業創出への投資を行う。また、業務効率の改善にも取り組む方針だ。これらの数値目標を達成した場合、2021年3月期から2024年3月期の成長率は、売上高で33.0%、営業利益で44.2%となり、営業利益は過去最高を更新する。一方で営業利益率については、2024年3月期の予想は2.9%となり、コロナ禍の影響を受けた2021年3月期は上回っているものの、2020年3月期(3.3%)、2019年3月期(3.6%)を下回ることになる。この点について同社は、「中期経営計画の大きな目的の1つは『稼ぐ力を蓄える』ことであり、多少の利益率の低下があっても、まずはトップライン(売上高)の確保(成長)を目指す。その次のステップとして利益率の改善を進め、最終的に強い体質(高い収益力)の企業を目指す」としている。このような成長過程は、人間の成長期と似ているかもしれない。まず身長が伸びるが、その間に体重はそれほど増えない。しかしその後、体力をつけることで体重も増加し、筋肉質な大人へと成長していく。今後同社が、どのように本来の高収益企業へ成長していくか、大いに注目したい。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:09
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萩原電気HD Research Memo(8):2024年3月期に売上高1,700億円、営業利益50億円を目指す(1)
■中長期の成長戦略萩原電気ホールディングス<7467>は、2022年3月期から2024年3月期を対象とする中期経営計画「Make New Value 2023」を発表している。重点戦略としては「コア事業拡大」「新高付加価値事業創出」「事業基盤強化」「企業価値向上」を掲げ、イノベーションによる価値創造と経営基盤強化により、企業価値を最大化させる。加えて、SDGs/ESG経営の社内浸透を図り、中期経営計画に定める重点施策の推進を通じて持続可能な社会の実現に貢献する。なお、数値目標としては、2024年3月期に売上高1,700億円、営業利益50億円、ROE8.0%としている。1. 経営ビジョン同社は、経営理念として「創造と挑戦」を掲げている。このうち、「創造」は全従業員が変化に適応し、新たな価値を創造し続けること、「挑戦」は全従業員が現状に満足することなく、さらなる成長に挑戦し続けることとしている。また、中期経営計画では「先進エレクトロニクスで未来を創造するソリューションデザインカンパニー」を新しい経営ビジョンに掲げている。2. 中期経営計画の重点戦略と進捗状況経営方針としては、「SDGs/ESG経営を推進、企業価値を向上させる」ことを掲げ、重点戦略として「コア事業拡大」「新高付加価値事業の創出」「事業基盤強化」「企業価値の向上」の4つを挙げている。(1) コア事業拡大デバイス事業では、SoCビジネスとソフトウェア・エンジニアリング・サービスによる価値提供に注力することで、モビリティ社会の発展に貢献するエレクトロニクスカンパニーを目指す。ソリューション事業では、DXファクトリー統合サービス市場での価値提供に注力することで、ものづくりを支えるエンジニアリングパートナーを目指す。また、両事業共通で、「グローバルビジネス拡大」を目指す。a) デバイス事業車載SoC事業の拡大及びソフトウェア・エンジニアリングの確立に向け、機能別組織体制を構築し業務品質の向上及び効率化に取り組んでいる。PoC開発支援としては、PoC開発受託専門チームを活発化し、顧客の開発を支援する自社製品販売及び開発を行っている。AUTOSAR関連・MBD関連では、AUTOSAR Classic、AUTOSAR Adaptive、AUTOSAR OS用ドライバのほか、デバイス技術とMBD技術を活用し、SoCソフトウェア開発領域でのMBD、仮想環境シミュレーション環境活用を支援している。このほかのトピックスとしては、Vehicle OSに対する取り組みを開始した。SoCを軸とした開発環境構築の支援活動を行っており、Vehicle OSに関連したソフトウェアビジネスを開始した。グローバルビジネス拡大においては、2021年10月に米国スタートアップ企業のSheeva.AIに出資した。Sheeva.AIは、MaaS(Mobility as a Service)に活用できる高精度位置情報を算出する技術を持っており、位置情報を高精度にするソフトウェア販売やMaaSのためのクラウド環境を同社が提供している。今後は同ソフトウェアのECU組込みを提案するほか、将来的には駐車予約や決済など高精度位置情報を活用した新サービスを開発し、MaaS関連市場への参入を狙う。b) ソリューション事業DXファクトリー統合サービス市場での価値提供としては、製造業の顧客のDX実現課題の発見から解決支援までを一貫してサポートするサービス提案を推進している。具体的には、IT/OT関連部門を対象とした業務棚卸し「工場アセスメントサービス」や、アセスメント結果からデジタル化の恩恵を最大化するための「DX化ロードマップ作成支援」などを提供している。また、顧客製品の付加価値を高めるサービス提案として、自社製品を用いてサービス提供を行うことを支援する「コト作り支援サービス」を提供している。(2) 新高付加価値事業創出企業変革に向け、ビジネスイノベーションによる収益性の高い事業ポートフォリオの創出を目指す。具体的には、「ビジネスイノベーション企画推進活動」と「エンジニアリングビジネス強化」を挙げている。ビジネスイノベーション企画推進グループを組織化し、グループ会社横断で探索を開始する。「ものづくりの高度化」を横軸に、「クルマの高機能化」を縦軸に推進し、最終的には「ものづくりのスマート化」を目指す。新高付加価値事業のトピックとしては、建機、産業車両向けのオリジナルソリューション提供がある。高精度AIカメラシステムを活用し、建設機械やフォークリフトの「人」と「モノ」を高速検知することで、接触事故の防止に貢献している。(3) 事業基盤強化成長戦略を確実に進めるために事業基盤の強化を図っていく。具体的には、全社プロジェクト活動によるDX推進、サプライチェーンマネジメント改革、プロフェッショナル人材育成、従業員エンゲージメント向上、グループ運営の最適化追求などを推進している。(4) 企業価値向上「企業価値向上を目指した取り組み」として同社は、SDGs(持続可能な開発目標)/ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進を挙げている。具体的には、2021年9月に同社ホームページにサステナビリティサイトを開設し、マテリアリティを公表しているほか、同サイトにてTCFD提言に沿った情報開示を予定している。また、健康経営優良法人認定取得に向けた計画も進行している。このほか、社会課題の解決に貢献する活動をより一層推進しながら、ステークホルダーの信頼向上と企業価値向上に努める方針。資本政策・財務戦略強化も推進していく。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:08
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萩原電気HD Research Memo(7):先行き不透明な状況が続くと予想されることから、前期比1.3%営業減益予想
■今後の見通し● 2023年3月期の業績見通し萩原電気ホールディングス<7467>の2023年3月期の連結業績は、売上高で187,000百万円(前期比18.0%増)、営業利益で4,300百万円(同1.3%減)、経常利益で4,250百万円(同2.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益で2,600百万円(同9.6%減)と予想されている。依然として続くコロナ禍の影響に加え、原材料価格の高騰、世界的な半導体不足など不透明要因が多いことから慎重な予想となっている。ただし、売上高は同18%増を見込んでおり、これを達成できれば利益は予想を上回る可能性が高いと思われる。(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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2022/06/28 15:07