注目トピックス 日本株ニュース一覧
注目トピックス 日本株
昭和産業 Research Memo(7):商品開発力強化に向けた組織再編やグループ効率化を推進
■中長期の成長戦略昭和産業<2004>は、1st Stage「中期経営計画17-19」においてありたい姿の実現に向けた足場固めを経て、2020年4月より2nd Stage「中期経営計画20-22」を進めている。基本方針として「“確立”基盤事業の盤石化と成長事業の育成」、基本コンセプトは「SHOWA New Value Creation ~SHOWAだからできる新たな価値とは~」を掲げている。顧客・社会課題視点による解決提案力の向上やグループ総合力のさらなる深化、さらにイノベーション創出に向けた経営基盤の確立によって、新たな価値を創造し、多様な食シーンに貢献していく。「中期経営計画20-22」の目標数値として、最終年度となる2023年3月期に、売上高2,800億円(2022年3月期実績2,876億円)、経常利益130億円(同65億円)を掲げている。コロナ禍と原料穀物高の影響で当初計画に対しては約2年の遅れをとっているが、最終年度における重点施策にグループ全体で取り組み、目標達成に向けて取り組みを強化していく。(1) サンエイ糖化との取り組み2020年12月にサンエイ糖化が同社グループの「糖質事業」に加わった。サンエイ糖化は、輸液など医薬用にも使用される結晶ぶどう糖では国内トップクラスの企業であり、結晶ぶどう糖の国内生産量シェア70%(同社調べ)となっている。シナジーの最大化を図るために、2021年1月にプロジェクトを立ち上げ、現在、双方のメリットを生かすための具体的な検討を進めている。また、サンエイ糖化がグループ化したことで、生産拠点数は、同社の鹿島工場と敷島スターチ、サンエイ糖化を合わせた3工場体制となり、安定供給、生産効率のさらなる強化を進める。原料・資材調達の面においても、業界トップレベルのスケールメリットを発揮し、共同調達による原料資材のコストダウンを図る。また、仕入先の分散を図る。サンエイ糖化が取り扱う乳酸菌や水あめの一種であるオリゴ糖酸など、少子高齢化、健康志向のニーズに応えた新事業、新製品開発を進め、グループとしての拡大を図る。(2) ボーソー油脂との取り組みボーソー油脂は2020年9月に子会社化した。これにより「こめ油」という新たな油種を取り込み、販売を強化していく。まずは足元の業績改善に向けた、両社の商材と販路を活用したクロスセルや物流・販売コスト削減の取り組みを開始しており、その結果、過去3期連続で赤字が続いていたボーソー油脂の当期純利益は、2021年3月期には4期ぶり黒字に転換した。2022年3月期の営業利益は前期の4,000万円から4億円に拡大した。(3) 焼成パン事業の収益構造改革焼成パン事業は、収益構造改革を引き続き進めていく計画である。これまで焼成パン事業グループ4社(グランソールベーカリー、スウィングベーカリー、ガーデンベーカリー、タワーベーカリー)の人員配置・工程管理改善による生産性改善、商品開発段階からの原価管理の徹底、商品アイテムの見直しによる生産効率の向上といった製造工程の改革を行ってきた。さらに2022年4月からは、焼成パン事業のグループ4社の意思決定体制を一本化し、4社の一体運営と各社のベクトルの統一化を進める。(4) プラントベースフードの開発・販売強化大豆たん白は、健康志向の高まりや環境に配慮した食品として注目されており、2021年3月期の売上高は、19億円と13年度の約1.7倍となったが、22年3月期では21億円に拡大した。業務用新商品「ミーテックスE-1」は、肉用だけでなく、シリアルや製菓用途など幅広く提案し、販売を強化していく。また、「大豆Hi!芽」に続く健康訴求商品の開発強化も進めていく。(5) ソリューション営業部による外食向け提案の強化2021年4月に外食産業にフォーカスした「ソリューション営業部」を立ち上げた。外食顧客へ同社商品を活用し、ソリューション型(顧客課題解決型)のワンストップ提案を行う。製粉、油脂、糖質の知識を習得するために自社教育を重ねながら、顧客へ店舗オペレーション支援や外食企業のメニュー開発担当者へ直接アプローチして、顧客が求めている以上の価値提供を目指していく。今後は全社ベースでの取り組みに拡大していく方針だ。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<EY>
2022/07/01 16:07
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昭和産業 Research Memo(6):2023年3月期業績予想は未定。相場に左右されにくい収益構造を構築
■今後の見通し1. 2023年3月期の業績予想昭和産業<2004>の2023年3月期業績予想について、現時点では業績予想を合理的に算定することは困難だと判断し、配当予想とともに未定としている。算定が可能になり次第、速やかに開示するとしている。同社グループは小麦・大豆・菜種・トウモロコシ等を大量に輸入しており、原料穀物相場や為替相場の影響を受ける。2022年3月期における原料穀物相場は過去に例のない高値圏で推移したが、加えてウクライナ情勢の深刻化も影響し、穀物相場は引き続き高値圏での推移が懸念されている。為替も日米の金利差等から急激な円安ドル高が進行し、加えてエネルギーコストの上昇など、同社グループを取り巻くビジネス環境は引き続き厳しい状況となっている。コロナ禍については、緩和の兆しはあるものの政府の政策に変化が見られ、完全に収束するまでにはもう少し時間を要すると見ている。このような不確定要素の多い経済環境であることから、同社グループは引き続きコスト上昇に見合った販売額の改定を最優先に取り組むとともに、拡販とさらなるコストダウンに努めていく。2. セグメント別重点施策2023年3月期は全事業共通の施策として価格改定の実施が挙げられ、最優先事項として進めて行くことになるだろう。また、世界的にも穀物需要が高まる世界情勢のなかで、原料となる各種穀物を安定的に調達することも重要な課題となる。(1) 製粉事業製粉事業ではグループ力の強化による生産性向上を推進する。同社グループの生産拠点は、鹿島、神戸、船橋の3工場のほか、グループ会社5社の計7工場となっている。グループ各社のそれぞれの特徴と強みを生かしながら、製品開発の連携、生産拠点の集約、物流の効率化を進めていく。そのほか輸出粉については、既存の香港や台湾のほか、中国やシンガポールなどへの販売を強化する。(2) 油脂食品事業油脂食品事業は、販路に応じた販売戦略や顧客の抱える課題を解決する提案型営業の推進により、コロナ禍により減少した物量の回復を目指す。また、機能性油脂やこめ油、オリーブオイル、ひまわり油などのプレミアムオイル、さらには天ぷら粉やホットケーキ等のプレミックス製品の販売を強化する。そうすることで、付加価値の高い商品の販売構成比を高め、相場に左右されにくい収益構造を構築していくねらいだ。さらには、健康志向の高まりや環境に配慮した食品として注目される「大豆たん白」「大豆Hi!芽」などのプラントベースフードへの対応を強化する。なお、「大豆Hi!芽」は大豆胚芽そのものの風味と形状を生かした新しい素材である。イソフラボンやオリゴ糖を豊富に含み、ご飯、パン、菓子、総菜、冷凍食品など様々な用途提案が可能である。(3) 糖質事業糖質事業は、安定収益を目的としてチャネル別販売構成の見直しを進める。粉末水あめや結晶ぶどう糖等の独自商品群の用途開発、新市場の開拓を進める。さらに、敷島スターチやサンエイ糖化を含めたグループの生産拠点の最適化による生産性向上、物流費削減等も引き続き推進し、収益改善を図る計画である。(4) 飼料事業飼料事業は、昭和鶏卵を中心に同社グループならではの市場販売から鶏卵販売など、一気通貫での拡販を目指す。また、高付加価値商品となる「人工乳」や「オリゴ糖飼料」といったブランド畜産物の販売強化を進める。さらには高騰する飼料原料の配合設定を変更することでコスト対策を行い、収益改善に努めていく。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<EY>
2022/07/01 16:06
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昭和産業 Research Memo(5):原料穀物相場の高騰が最大の課題
■事業環境2022年3月期はコロナ禍の影響を受けて引き続き厳しい状況ながら、原料穀物相場の高騰が最大の課題となった。昭和産業<2004>においては、過去をさかのぼっても食用油の年4回の価格改定はほとんど例がないと言う。為替は円安で推移しており、海上運賃も高止まりしている状況だ。海外物流問題による懸念や原油高の高騰も重荷となっている。直近では、菜種の油分低下によるコスト増も重荷となっている。「業務用小麦粉」は2021年6月と12月、2022年6月と合わせて3回の価格改定を実施した。「家庭用小麦粉・プレミックス・パスタ」は2021年7月と2022年1月、7~8月の3回である。「家庭用/業務用油脂製品」については、2021年3月、6月、8月、11月、2022年3月と5度にわたる価格改定を実施してきたが、2022年7月には6度目の価格改定を実施する予定である。そのほか、「業務用大豆たん白」は2021年7月と2022年の4月、「業務用コーンスターチ・糖化製品」は2021年4月と9月、2022年4月に実施し、2022年7月にも価格改定を行うなど、全事業において価格改定を実施している。なお、原料価格は世界的に旺盛な需要による需給のひっ迫等により急騰し、依然として高値で推移している。特に菜種は史上最高値を更新しており、原料価格アップと価格改定のタイムラグとのギャップの影響が残っている。現段階においても急激な原料相場の上昇分を全てカバーするには至っていない状況である。そのため、引き続き適正価格での販売向けた価格改定が行われることになるだろう。また、ロシアが世界最大の肥料輸出国であることから、肥料価格が高騰した。21/22年産の米国大豆は、過去10年間で16/17年産に続く2番目に高い平均単収(ある一定面積当たりの収量)と最高となる生産高が示された。しかし、在庫の減少を補いきれず、前年からはやや需給の引き締まる見通しとなった。なお、21/22年産の期初在庫数は20/21年産に比べて半減した。菜種については、輸出国・輸出シェアで6割近くを占めるカナダの穀倉地帯は、記録的な熱波に見舞われ乾燥した状態が続いた。結果として、カナダの菜種は前期から35%減と大幅減産となった。価格高騰によるレーショニング(値段が高いため需要が減退)が見られたものの、需給は極度にひっ迫した状況に陥った。これにより菜種相場は、2008年につけた史上最高値を13年ぶりに更新した。同社は、多様化の観点から仕入先を豪州にもシフトするなど、仕入先の拡大を進めている。トウモロコシの需要を見るうえで、エタノールの動向も重要となる。エタノールの生産動向は高止まりしており、米国政府がガソリン価格抑制のため、「E15」(エタノール15%の混合ガソリン、もともと混合率は10%までに制限されていた)の夏場販売を解禁したことから、エタノール需要は引き続き堅調に推移すると見られている。世界的に供給不安が高まるなか、米国の新規供給に対して注目が集まるところだ。また、肥料を使わない作物への作付けシフトが顕著になっているようであり、北米ではトウモロコシから大豆へ、菜種から小麦への作付けのシフトが進んでいると言われている。輸入小麦の政府売り渡し価格の推移では、主要5銘柄加重平均で2021年10月には19.0%、2022年4月には17.3%と大幅な麦価引き上げが続いた。しかし、現在の小麦相場を考慮すると、2022年10月の麦価改訂もさらに大幅な引き上げになると同社では予想している。ロシアとウクライナは小麦輸出国だが、ロシアによる海上封鎖でウクライナは小麦の輸出が滞っている。足下の小麦価格の高騰と円安基調が続くようだと、2022年10月の価格改定時に4割以上の値上げの可能性が高いと見られる。海上運賃高騰の影響も重荷となる。海上運賃市況は、コロナ禍からの経済回復で荷動きが活発化するなか、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けて資源や食料供給ルートが代替地域に移り、輸送距離が長くなっていることが挙げられる。また、欧州やインド等がエネルギー資源を求めて石炭輸入を急増させていることも海上運賃の高騰に繋がっている。加えて、EUによるロシア産原油の輸入停止措置やOPECプラスによる大幅増産の見送りなどで高止まりする原油価格も、燃料となるバンカーオイルの高騰に拍車をかけている。なお、OPECプラスは2022年7月、8月の増産幅をそれぞれ日量64万8千バレルとすることを同年6月に合意した。ただし、ロシアのウクライナ侵攻による制裁で落ち込んだロシアの生産減を補うには十分ではないと見られており、原油先物相場は依然として高い価格で推移している。このようにロシア・ウクライナ情勢に起因して、原料穀物相場や海上運賃市況などは非常に混乱した状況だ。また、米国における新穀の生育もまだまだ不透明な状況にある。このため、先々の原料価格を見通すことが非常に困難な状況となっている。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<EY>
2022/07/01 16:05
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昭和産業 Research Memo(4):2022年3月期は2社連結による業績寄与、価格改定で増収も原料相場高騰で減益
■業績動向1. 2022年3月期の業績昭和産業<2004>の2022年3月期の業績は、売上高287,635百万円(前期比12.4%増)、営業利益5,564百万円(同26.7%減)、経常利益6,576百万円(同28.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4,006百万円(同60.4%減)となった。コロナ禍の影響が長期化するなか、消費関連業種の景況感が下振れするなど、期を通じて厳しい状況となった。さらにコロナ禍による影響から停滞していた経済が上向き、荷動きが活発化するなか、ウクライナ情勢の深刻化による供給懸念により原料穀物相場が高値で推移し続け、為替相場での円安ドル高の進行による輸入コスト上昇、天候不順による原料穀物の品質懸念もあり厳しい環境が続いた。同社は2022年3月期第3四半期以降も厳しい環境が続くと判断し、2022年1月24日に業績予想の修正を発表したが、食品事業の価格改定の取り組みが進展したことにより利益が改善し、修正予想値に対しては売上高及び各利益いずれも100%以上での着地となった。売上高については、ボーソー油脂(株)とサンエイ糖化を子会社化したことや価格改定の実施等で増収となったが、各利益については、いずれも原料相場の急激な高騰による原価の大幅上昇が大きく影響し、減益という着地である。なお、同社は2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」等の適用を開始した。売上高は、新基準ベースで前期の概算値と比較すると、前期比20.6%の増収となった。営業利益は、2,030百万円の減益となった。原料穀物相場の急激な高騰、高止まりによる原価上昇の35,900百万円のコスト上昇分を販売額の改定31,800百万円でカバーしきれなかったことが主な要因である。2. セグメント別業績(1) 製粉事業製粉事業の売上高は78,154百万円(前期比5.2%増)、営業利益は3,555百万円(同108.5%増)となった。コロナ禍において外食産業のテイクアウトやデリバリー分野の市場が拡大したほか、近年の健康志向の高まりなどを受けニーズに対応した結果、業務用プレミックスの販売数量が増加した。また、2021年4月に外食産業にフォーカスした部門横断型組織「ソリューション営業部」を創設した。これにより外食向けの提案強化や、コンビニ向け焼成パン事業の収益構造改革などの効果が表れた。(2) 油脂食品事業油脂食品事業の売上高は100,426百万円(前期比13.4%増)、営業利益は1,020百万円(同67.3%減)となった。価格改定を最優先で実施した。全体としては、ボーソー油脂の新規連結や大豆たん白の販売増といったプラス要因があったものの、急激な原料コスト上昇をカバーできず、営業利益ベースで減益となった。業務用では、製粉事業や糖質事業を含めた積極的なアプローチによる事業化シナジーの取り組みや、ベーカリー向け半流動状油脂・長持ち油といった付加価値油脂の開発・販売を推進した。固形油脂は作業効率が悪く、液状油脂はテイクアウトやデリカの売場において揚げ物の油染みが気になるといった両方の課題を解決した、半流動状油脂が高い評価を得ていると言う。また、顧客のコストや作業効率の改善といった課題解決策を具体的に提示する、今までより一歩進んだ提案型の営業を進めた。そのほか、大豆たん白の拡販やボーソー油脂との取り組みも実施した。家庭用については、2022年3月に発売した大豆ミートを使ったパスタソース「たっぷり大豆ミートのボロネーゼソース」を発売した。好評と言う「もう包まない!混ぜ餃子の素」もリニューアル発売するなど、既存商品を含め拡販に努めた。(3) 糖質事業糖質事業の売上高は51,349百万円(前期比40.3%増)、営業利益は550百万円(同67.2%減)となった。長引くコロナ禍の影響や原料穀物相場及びエネルギーコストの高騰によって、事業環境は厳しい状況が続いた。コスト対策として、原料調達チャネルのさらなる多様化を進めたほか、敷島スターチやサンエイ糖化を含めたグループの生産拠点の最適化により生産性向上や物流費削減等を推進し、収益改善を図った。また、他事業と連携して独自商品の粉末水あめや結晶ぶどう糖の拡販に注力した。しかしながら、サンエイ糖化の新規連結効果などはあったものの、急激な原料コスト上昇をカバーできなかった。(4) 飼料事業飼料事業の売上高は52,819百万円(前期比2.3%増)、営業利益は484百万円(同52.4%減)となった。同事業においては、コロナ禍による影響は限定的であった。グループ会社である昭和鶏卵(株)や九州昭和産業(株)との連携や、複数の飼料用原料を取り扱う優位性を生かした提案型営業のほか、畜産物の販売支援による畜産生産者との取り組み強化、高付加価値商材である「人工乳」や「オリゴ糖飼料」の拡販を行った。配合飼料の販売価格については、価格改定により前年を上回ったが、配合飼料価格安定基金の費用負担の増加によって減益となった。鶏卵相場が前期を上回る水準で推移したことから鶏卵の販売価格は前期を上回ったほか、販売数量についても前期を上回った。(5) その他その他の売上高は4,886百万円(前期比0.7%減)、営業利益は1,543百万円(同15.5%減)となった。倉庫業は、コロナ禍の影響による荷動きの停滞により貨物収容スペースが圧迫されるなか、隣接する同社関連サイロ会社との連携を図り、効率的な荷役に努めた。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 16:04
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昭和産業 Research Memo(3):多種多量の穀物をプラットフォームとして、製粉、油脂食品、糖質、飼料事業を展開
■昭和産業<2004>の事業概要1. 製粉事業製粉事業は、パン、ケーキ、麺類などの用途に合わせた各種小麦粉やユーザーのニーズに対応したプレミックス(小麦粉にでん粉や糖類、油脂などを配合したもの)を製造販売している。また、多岐にわたる食材事業で培ったノウハウを生かし、高品質、高機能かつ信頼のおける小麦粉製品の研究開発に積極的に取り組んでいる。2. 油脂食品事業油脂食品事業は、大豆、菜種、トウモロコシなどを原料に、天ぷらやフライ、ドーナツなど、用途に合わせて開発した各種業務用植物油を製造・販売している。また、飼料原料などになる脱脂大豆、食肉加工・水産加工食品に使用される大豆たん白、業務用食材としての天ぷら粉、から揚げ粉、パスタも製造・販売している。原料大豆から油分を取り出した脱脂大豆は、飼料用途だけでなく食品用途にも使われており、高い評価を得ている。また、環境に配慮したバッグインボックスやピロータイプの製品、小型貯油タンクを設置し定期的に油脂を配送するミニタンクシステムなど、メーカーの作業性向上にも力を入れている。家庭用では、大豆、菜種を原材料とするサラダ油やキャノーラ油をはじめ、こめ油など各種植物油を販売している。近年の健康志向に対応し、オリーブオイル以上にオレイン酸を多く含む健康応援ひまわり油「オレインリッチ」なども販売している。小麦粉・プレミックスでは、様々な用途に対応する薄力、中力、強力の各種小麦粉に加えて、「昭和天ぷら粉」「天ぷら粉黄金」の各種天ぷら粉や「お好み焼粉」「から揚げ粉」「ホットケーキミックス」など、利便性とおいしさを兼ね備えたプレミックスを取り扱う。3. 糖質事業糖質事業では、子会社である敷島スターチやサンエイ糖化との連携を図り、トウモロコシを原料としたコーンスターチを始め、コーンスターチを酵素などで分解することで得られるぶどう糖や異性化糖、水あめ、イソマルトオリゴ糖などの糖化製品及び加工でん粉製品の製造・販売を行っている。コーンスターチは汎用性が高く、ビールや練製品などの食品分野から、製紙・段ボールなどの工業品分野まで幅広く利用される。異性化糖は甘味が強く、冷たくなると甘味がさらに増すため、主に清涼飲料・乳性飲料などに使用されている。4. 飼料事業飼料事業では、最新の飼料栄養成分や原料の組み合わせに基づいて、養鶏用(採卵鶏、ブロイラー)、養豚用、乳牛・肉牛用、養魚用などの配合飼料、きのこ菌床栽培用栄養体の製造・販売を行う。機能性飼料であるイソマルトオリゴ糖混合飼料は、腸内の善玉菌であるビフィズス菌などを活性化させ、サルモネラ菌などの悪玉菌の抑制効果を持ち、消化吸収の改善や感染抵抗力を強化する作用がある。5. その他(倉庫業・不動産業・保険代理業・アグリビジネス等)倉庫業では、鹿島・神戸・船橋の3工場を合わせて合計36.5万トンを収容できる大型サイロを備えており、鹿島・神戸の両工場にはパナマックス級大型穀物船が接岸できるバースも完備。いずれも優れた立地条件にあり、各工場で効率の良い輸入穀物の保管・荷役を行う。不動産業では、同社グループが保有する不動産を有効活用し、商業施設の開発や事務所用・商業用ビル、物流用建物、事業用土地の賃貸などを行っている。また、その他のセグメントについては、保険代理業、自動車等リース業、運輸業等のほか、新規事業としてアグリビジネスに参入し、鹿島第二工場エリアに完全人工光型の植物工場「グリーンソリューションファクトリー」を創設した。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 16:03
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昭和産業 Research Memo(2):多種多量の穀物を取り扱う唯一の国内食品メーカー
■会社概要1. 会社概要昭和産業<2004>は、1960年に世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した食品中核企業である。「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」をグループ経営理念とし、「穀物ソリューション・カンパニー」をブランドメッセージとして掲げ、小麦・大豆・菜種・トウモロコシなど多種多量の穀物を国内食品メーカーのなかで唯一取り扱う。これら穀物を小麦粉、プレミックス、植物油、糖化製品、配合飼料などに加工して販売しており、多種多量の穀物を取り扱う独自のビジネスモデルによるシナジーを生み出している。BtoB向けが主体となっており、売上比率は業務用約9割、家庭用約1割となる。さらに、これらコア事業の強化のみならず、加工食品などの川下への拡大や、東南アジアなどの海外への進出も行っている。世界各国から運ばれてくる多種多量の穀物を貯蔵する大型穀物サイロ(原料貯蔵庫)を鹿島・神戸・船橋の3工場で合計36.5万トン分備え、鹿島・神戸の両工場にはパナマックス級(パナマ運河を通航できる最大船型)大型穀物船が接岸できるバース(桟橋)も完備、取り扱う穀物量は食品メーカーの中で日本一(同社調べ)を誇る。穀物原料から各種製品を製造する際に発生する副産物を、主に飼料・肥料・工業用原料として活用しており、食品リサイクル率は2020年実績値で99.9%となる。2. 沿革同社は1936年に「農産報国」を旗印に設立され、1960年には世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した。その他にも小麦粉や植物油、糖化製品などの幅広い食品素材や配合飼料を提供している。グループ経営理念である「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」のもと、「穀物ソリューション・カンパニー」として様々な事業展開を通して日本の食を支えている。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 16:02
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昭和産業 Research Memo(1):2022年3月期は増収減益。原料相場高騰などが重荷。価格改定の取り組みは進展
■要約昭和産業<2004>は、1960年に世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した食品中核企業である。「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」をグループ経営理念とし、小麦・大豆・菜種・トウモロコシなど多種多量の穀物を国内食品メーカーの中で唯一取り扱う企業であり、ブランドメッセージとして「穀物ソリューション・カンパニー」を掲げている。1. 2022年3月期の業績2022年3月期の業績は、売上高287,635百万円(前期比12.4%増)、営業利益5,564百万円(同26.7%減)、経常利益6,576百万円(同28.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4,006百万円(同60.4%減)となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響が長期化するなか、消費関連業種の景況感が下振れするなど、期を通じて厳しい状況となった。さらにコロナ禍による影響から停滞していた経済が上向き、荷動きが活発化するなか、ウクライナ情勢の深刻化による供給懸念により原料穀物相場が高値で推移し続け、為替相場での円安ドル高の進行による輸入コスト上昇、天候不順による原料穀物の品質懸念もあり厳しい環境が続いた。同社は2022年3月期第3四半期以降も厳しい環境が続くと判断し、2022年1月24日に業績予想の修正を発表したが、食品事業の価格改定の取り組みが進展したことにより利益が改善し、修正予想値に対しては売上高及び各利益いずれも100%以上での着地となった。2. 2023年3月期の業績予想2023年3月期業績予想について、現時点では業績予想を合理的に算定することは困難だと判断し、配当予想とともに未定としている。算定が可能になり次第、速やかに開示するとしている。同社グループは小麦・大豆・菜種・トウモロコシ等を大量に輸入しており、原料穀物相場や為替相場の影響を受ける。2022年3月期における原料穀物相場は過去に例のない高値圏で推移したが、加えてウクライナ情勢の深刻化も影響し、穀物相場は引き続き高値圏での推移が懸念されている。そのため2023年3月期は全事業共通の施策として価格改定の実施が挙げられ、最優先事項として進めて行くことになるだろう。また、世界的にも穀物需要が高まる世界情勢のなかで、原料となる各種穀物を安定的に調達することも重要な課題となる。3. 中長期の成長戦略による進捗「中期経営計画20-22」の目標数値として、最終年度となる2023年3月期に、売上高2,800億円(2022年3月期実績2,876億円)、経常利益130億円(同65億円)を掲げている。コロナ禍と原料穀物高の影響で当初計画に対しては厳しい状況であるが、グループ一丸となって目標達成に向けて取り組みを強化していく。■Key Points・外食産業にフォーカスした「ソリューション営業部」を立ち上げ・グループ4社一体化による焼成パン事業の収益構造改革進展・サンエイ糖化(株)との大豆ミートを使った大豆たん白食品は順調・敷島スターチ(株)、サンエイ糖化を含めた、グループ一体となった生産拠点の最適化・プレミアムオイルの販売構成比を高め、相場に左右されにくい収益構造の構築目指す(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 16:01
注目トピックス 日本株
新興市場銘柄ダイジェスト:デジプラは大幅に反発、アディッシュがストップ高
<6172> メタップス 557 -35大幅に3日ぶり反落。子会社のメタップスペイメント(東京都港区)が自社システムの脆弱性を起因とした不正アクセスによる顧客のクレジットカード情報の漏えいを発生させたとして、経済産業省から改善命令を受けたと発表している。メタップスペイメントは2月28日、不正アクセスで個人情報を含む情報が外部に流出したとの調査結果を公表していた。22年12月期連結業績に与える影響は精査中という。<7375> リファインバスG 1560 +300ストップ高。豊田通商<8015>に対し、リファインバースグループが独自開発したエアバッグリサイクル技術をベトナムでライセンス供与することで基本合意したと発表している。ナイロン製エアバッグから異物を分離・除去し、ナイロン樹脂としてマテリアルリサイクルする技術。豊田通商グループのベトナム以外の海外製造拠点への展開についても事業化可能性を検討することで合意しているという。<7093> アディッシュ 1320 +300ストップ高。セレス<3696>の子会社でTikTok広告を手掛けるstudio15(東京都渋谷区)と事業連携を開始したと発表している。TikTokでのプロモーションでリスクマネジメント強化を支援する。具体的には、studio15がプロモーションするTikTok動画の監視・モニタリングのほか、誹謗中傷や公序良俗に反するコメントの検知、TikTokプロモーション施策効果の分析を行う。<3691> デジプラ 808 +96大幅に反発。10万株(1.00億円)を上限とする自社株買いを実施すると発表している。発行済株式総数(自社株を除く)に対する割合は2.7%。取得期間は1日から29日まで。資本効率の向上を通じた株主への利益還元、M&Aでの活用や経営環境に応じた機動的な資本政策の遂行が目的。また、株主優待制度を新設した。9月末現在で200株以上を保有する株主に自社サービスのデジタルギフトを贈呈する。<4576> DWTI 208 +6大幅に反発。再生医療製品を研究・開発するアクチュアライズ(京都府京田辺市)が開発中の角膜内皮障害を対象とした再生医療用細胞製品AE-101について、共同開発契約を締結するとともに資本提携すると発表している。日本での開発を共同で進め、収益は一定の割合で分配される。また、アクチュアライズが実施する第三者割当増資3.30億円のうち、1.30億円を引き受ける。発行済株式総数の7.0%を保有することになるとしている。<6181> タメニー 158 -10朝高後、マイナス転換。22年3月期に債務超過を解消し、猶予期間入り銘柄から解除されたと発表している。タメニーは新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言を受けて21年3月期に債務超過となり、東証から上場廃止に係る猶予期間入り銘柄に指定されていた。短期業績回復に向けた取り組みに加え、新株予約権の発行などで財務基盤を強化したことが奏功し、22年3月期末の純資産は2.37億円のプラスとなっていた。
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2022/07/01 16:00
注目トピックス 日本株
E・Jホールディングス---剰余金の配当(増配)を発表
E・Jホールディングス<2153>は29日、2022年5月31日を基準日とする剰余金の配当を発表した。1株当たりの配当金は43円(前期実績35円)、配当金総額は6.91億円。直近の配当予想は40円としていたが、2022年5月期の連結業績、配当性向、連結株主資本配当率(DOE)及び事業環境等を総合的に勘案し、普通配当40円に3円を加え43円となった。
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2022/07/01 16:00
注目トピックス 日本株
ディア・ライフ---東京都杉並区下高井戸にマンション開発用地の取得
ディア・ライフ<3245>は30日、東京都杉並区下高井戸にマンション開発用地の取得を発表。同物件は、杉並区下高井戸に所在し、敷地面積357.72平方メートル。京王線「桜上水」駅、「上北沢」駅徒歩圏に位置し、「新宿」駅、「渋谷」駅へダイレクトアクセスが可能で都心の主要ビジネス・商業エリアへの交通の利便性に優れている。閑静な住宅街として人気があり、商店街、飲食店やスーパーが立ち並ぶことから、高齢者から若者まで多くの人が訪れる、繁華性と住環境が備わっているという。同社は、同物件に専有面積944.82平方メートルの鉄筋コンクリート造、地上8階建、共同住宅28戸の都心接近性・生活利便性を志向する単身者・DINKS層向けマンションを開発する計画となっている。名称は桜上水プロジェクト(仮称)。国内外の投資家・マンション販売会社・一般事業法人等に供給していくとしている。収益見通しについては、2024年9月期の売上の一部を想定している。
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2022/07/01 15:58
注目トピックス 日本株
ディア・ライフ---東京都墨田区吾妻橋にマンション開発用地の取得
ディア・ライフ<3245>は30日、東京都墨田区吾妻橋にマンション開発用地の取得を発表。同物件は、墨田区吾妻橋に所在し、敷地面積574.4平方メートル。都営地下鉄浅草線「本所吾妻橋」駅徒歩1分、東京メトロ銀座線「浅草」駅徒歩8分に位置し、日本橋、銀座、渋谷など都心の主要ビジネス・商業エリアへのアクセスが可能で、交通利便性に優れている。観光名所や新興スポットを有する知名度が高いエリアで、食料品店・飲食店・スーパーマーケット等などの生活施設や、公園も充実しており、繁華性と住環境が備わっているという。同社は、同物件に専有面積2,178.68平方メートルの鉄筋コンクリート造、地上11階建、共同住宅69戸の都心接近性・生活利便性を志向する単身者・DINKS層向けマンションを開発となっている。名称は本所吾妻橋IIプロジェクト(仮称)。国内外の投資家・マンション販売会社・一般事業法人等に供給していくとしている。収益見通しについては、2024年9月期の売上の一部を想定している。
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2022/07/01 15:56
注目トピックス 日本株
ディア・ライフ---東京都新宿区山吹町に収益不動産を取得
ディア・ライフ<3245>は30日、東京都新宿区山吹町に、収益不動産(延床面積約1,215.41平方メートル)を取得したことを発表。物件は、東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅徒歩3分、東京メトロ東西線「神楽坂」駅徒歩9分に位置し、有楽町・大手町・日本橋へのダイレクトアクセスが可能で、交通利便性に優れている。商店街、スーパーマーケット・ドラッグストア・コンビニ等の生活利便施設も整い、繁華性と住環境の調和が取れたエリアが形成されているという。同社は、同物件の取得後、内外装、設備リニューアル等の機能改善やリースアップを推進し、安定的な収益を確保するとしている。
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2022/07/01 15:54
注目トピックス 日本株
ディア・ライフ---東京都港区芝に収益不動産を取得
ディア・ライフ<3245>は30日、東京都港区芝に、収益不動産(延床面積4,058.64平方メートル)を取得したことを発表。物件は、都営地下鉄各線「三田」駅、JR各線「田町」駅、都営大江戸線「赤羽橋」駅などを利用でき、新宿・渋谷・大手町等主要なビジネス・商業エリアへのダイレクトアクセスが可能。物件周辺には大企業本社オフィスや慶応義塾大学、歴史ある寺社、東京タワー等があり、観光地としても人気が高いという「芝エリア」に位置する。同社は、同物件の取得後、リースアップを推進し、安定的な収益を確保するとしている。
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2022/07/01 15:50
注目トピックス 日本株
窪田製薬ホールディングス---「Kubota Glass」の国内販売に向け準備開始
窪田製薬ホールディングス<4596>は1日、同社の100%子会社のクボタビジョン・インク(米国ワシントン州)が開発している「Kubota Glass」の国内販売に向け、日本での取り扱い病院および店舗の募集を開始したことを発表した。日本では、まず、サポート体制を整えた眼科病院および眼鏡店と取り扱い契約を締結し、販売を開始する予定である。同社では、今後も「Kubota Glass」の品質・機能の改良を継続しつつ、取り扱い病院・店舗を増やすことで販路を拡大し、将来的には、個人が直接購入できる仕組みを整えていくとしている。なお、「Kubota Glass」は、FDA(米国食品医薬品局)およびTFDA(台湾衛生福利部)での医療機器登録も既に完了している。
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2022/07/01 15:48
注目トピックス 日本株
NECキャピ Research Memo(9):2023年3月期は前期の配当水準を維持し1株当たり年74円の配当を予定
■株主還元NECキャピタルソリューション<8793>の配当方針は、まず安定配当の維持を基本としており、成長戦略への投資や財務体質の強化等に必要な内部留保を確保しつつ、市場動向や業績変動を勘案し適正な配当水準を検証しながら適宜見直しを行っている。2022年3月期の配当は、前期比14円増配となる1株当たり年74円の配当(うち中間配当32円)を実施。2023年3月期の配当については、前期と同額の1株当たり年74円の配当(うち中間配当37円)を計画している。同社は株主優待制度として、インターネットを活用した「オンラインカタログギフト」を贈呈している。毎年3月末日の最終株主名簿に記録された100株以上の株式を保有している株主を対象に実施しており、保有株式数と保有期間によって「オンラインカタログギフト」の金額が変わる。100株以上500株未満を保有する株主には、保有期間1年未満で2,000円相当、1年以上で3,000円相当が贈呈される。また、500株以上を保有する株主には、保有期間1年未満で10,000円相当、1年以上で15,000円相当の「オンラインカタログギフト」が贈呈される。なお、事前に優待品の辞退を申し出でた場合は、同社より優待品相当額を寄付する。2020年3月期は、(公社)日本ユネスコ協会連盟「東日本大震災子ども支援募金 ユネスコ協会就学支援奨学金」へ寄付している。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:39
注目トピックス 日本株
NECキャピ Research Memo(8):収益向上とCSR向上は車の両輪のように推進することが必要
■CSV経営の実現を目指すNECキャピタルソリューション<8793>は既存事業であるコア領域と新事業の両輪で、社会・ICTインフラの整備、地球温暖化の防止、高齢社会への対応、地方経済の活性化等に取り組むことで、CSV経営の実現を目指している。以前から、環境に配慮した事業活動を推進してきたが、2013年にグループビジョンを策定して以来、社会と企業双方に共通の価値を生み出すCSV経営という考え方を根底に置き、グループビジョン実現に向けた取り組みを推進。収益向上とCSR向上は車の両輪のように推進することが必要であり、同社では代表取締役社長が議長を務め、全執行役員を構成員とした「PDCA会議」の中で、毎月マテリアリティ施策(収益基盤の拡充、経営基盤の強化、企業風土の変革)の進捗やCSRに関わる重要課題の議論を行っている。これらの取り組みは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現につながるものと認識している。(1) コア領域コア領域の主な取り組みとしては、NECやNECグループ各社と協業し、最適な提案活動を行うことで、公共のインフラ整備等、社会基盤構築につながる取り組みを進めている。文部科学省が先導した小中学校に一人一台の端末を配備するGIGAスクール構想においては、従来からの官公庁自治体に強い顧客基盤を活かし、NECグループ各社と連携しOneNECとして取扱高を増やした。今後は、NECの強みである通信技術の面からも、お客様企業における5G対応についてNECやNECグループ各社との協業が期待される。また、リサ・パートナーズが組成・運営する「リサ・コーポレート・ソリューション・ファンド」は、事業承継や企業再生、成長支援、株式公開支援、MBO支援等のニーズに対してソリューションを提供し、投資先の企業価値向上を目指すプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の取り組みを行っている。(2) 新事業エネルギー、観光、農業、ヘルスケアの4分野で、新たな取り組みを進めている。エネルギーについては、地域新電力会社の設立や再生可能エネルギーへの投融資を推進している。2015年に「エネルギーの地産地消」をコンセプトに、静岡県浜松市に官民連携で新電力会社を設立した。再生可能エネルギーの普及を促進し、環境に配慮した「スマートシティ」実現に向けて同事業の構想段階から参画している。このプロジェクトによって地方自治体との連携事業モデルが加わり、様々なエネルギー領域への取り組みを加速させている。観光については、2017年3月に(株)山形県観光物産会館等が発起人として設立を進めた「おもてなし山形(株)」に資本参加したことをはじめ、複数の地域で取り組みを進めている。資金を提供(出資)するだけでなく、事業に直接参加し、地域の観光資源を活かし観光地としての価値向上を目指して取り組む。最適なサービス提供のために最適なプレイヤーと柔軟にチームを組成して対応できる点が強みとなる。様々な地域が抱える課題の解決に貢献できるものと考えており、「地域まちづくり」の先行事例作りに邁進。農業については、働き手の高齢化・後継者不足や減反政策等による耕作放棄地の増加といった農業を取り巻く社会課題解決の取り組みを実施している。2016年8月、共同出資による農地所有適格法人「(株)みらい共創ファーム秋田」を、秋田県の大潟村に設立した。遊休農地や未利用地を活用したコメ作りを行うほか、農作業の受託や農作物の販売等、6次産業化(農林水産物の生産にとどまらず、それらを原材料とした加工食品の製造や販売等に一体で取り組むこと)を視野に入れた効率的で収益性の高い大規模営農モデルの確立を目指す。ヘルスケアについては、三井住友銀行及びシップヘルスケアホールディングス(株)<3360>と共同でヘルスケアアセットマネジメント(株)を設立。高齢社会に不可欠なヘルスケア領域のインフラづくりの一翼を担うことを目的としている。ヘルスケアアセットマネジメントが運用を委託されているヘルスケア&メディカル投資法人は、2015年3月にJ-REITに上場。ヘルスケアREITに組み込まれる前のヘルスケア施設を一時保有する(ウエアハウジング)等を通じてREITの成長を支援している。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:38
注目トピックス 日本株
NECキャピ Research Memo(7):社会課題の解決は、これまでに蓄積してきたノウハウが大きな力を発揮する
■今後の見通し1. 2023年3月期業績予想NECキャピタルソリューション<8793>の2023年3月期業績予想については、リース事業の持続的な成長と新事業の収益化を図るものの、インベストメント事業における収益計上が一部2022年3月期に前倒しとなったことにより、売上高250,000百万円(前期比0.0%増)、営業利益11,000百万円(同5.3%増)、経常利益11,000百万円(同3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益6,500百万円(同6.3%減)を見込んでいる。コロナ禍は、ビジネスや日常生活の在り方に大きな影響を与え、且つ、今後もその影響は継続していくものと想定されているなか、同社の事業活動においては、新たな社会価値を創出する機会とすることも可能と考えている。非接触、非対面、三密回避など、ウィズコロナ、アフターコロナにおける社会課題の解決には、NECグループの金融サービス会社として同社がこれまでに蓄積してきたノウハウが、大きな力を発揮できるものと考えている。リース事業においてGIGAスクール構想による特需は一巡したものの、経済活動が正常化に向かうなかにおいてもテレワーク需要は引き続き伸びが見込まれると弊社では考えている。また、非接触技術で強みを持つNECとの連携により、ニューノーマルでの社会ニーズを取り込むことが見込まれる。さらに2021年9月1日に創設されたデジタル庁については、デジタル庁発足時から事務方トップのデジタル監を務めていた石倉洋子氏が22年4月に退任するなど、主だった成果よりは様々な問題点が指摘されるなど混乱している状況が窺える。もっとも、日本の成長戦略の柱となる省庁としての位置付けとして体制強化が期待されるほか、政府と民間が共同してデジタルトランスフォーメーション(DX)についても本格的に動き出すと見られ、官公庁向けに強みを持つ同社の活躍の場も出てくることになると弊社では考えている。2. 中期計画同社はグループビジョンとして、「お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー」を掲げている。このグループビジョンは、目の前の変化に対応するだけではなく、中長期的に目指す揺るぎない方向性を定め、全社員が心を一つにして経営を進めていくことが重要であると考え、2013年10月に策定されたものである。10年後の「ありたい姿」を明確に描き、その達成に向け3段階に分けたロードマップを作成した。中期計画を3回積み重ねることで、事業活動そのものが社会価値を創造すると同時に、企業として求めるべき経済価値を創出し、社会と企業双方に共通の価値を生み出すCSV経営を目指すものである。同社は、このCSV経営実現に向けた事業を推進しており、グループビジョンは10年間で3つの中期計画を積み重ねることで実現する。2023年3月期の会社計画は中期計画2020の計画には届かないように見えるが、これは当初2023年3月期に収益計上を計画していたファンドのEXIT等が2022年3月期に前倒し計上されたためであり、3ヶ年の利益水準は、中期計画2020における累計当期純利益計画値の累計(17,000百万円)を上回る17,500百万円となる。「中期計画2014」では「コア領域の基盤再構築」と「仕掛けを構築」、「中期計画2017」では「コア領域の完成」と「新事業立ち上げ」、そして「中期計画2020」では、2つの中期計画で積み重ねてきた取り組みをさらに進化させ、「コア領域の拡充」と「新事業の収益化」を戦略として掲げている。2020年3月期で第2段階である「中期計画2017」が終了し、「中期計画2020」はグループビジョンを実現していくという壮大な流れの中の最終段階と言える。「中期計画2020」では、ウィズコロナ、アフターコロナ時代における新たな社会課題の解決をビジネスチャンスとして確実に捉え、金融とICTで社会の変革を先導する企業を目指す。収益性を重視しながら各種取り組みの推進により、2023年3月期には、営業利益11,000百万円、経常利益11,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,500百万円を目指す。3. 中期計画2020進捗状況「コア領域の拡充」においては、ベンダーとの新たなサービスの確立として、サービス化で先行することが見込まれる米国のNECFS社を買収、北米における新たな事業機会を獲得した。北米拠点を確保することで今後の事業成長に向けた取り組みが期待される。NECグループの連携強化によるGIGAスクール、消防案件の取り組みが大幅に伸長。GIGAスクール案件はピークアウトするも、消防分野においては新規取引の横展開が見込まれる。その他、外資系ICTベンダーと新規取り組み開始による取引を拡充・拡大し、医療向けやICT機器におけるサービスモデル確立に向けた取り組みが進展。さらに、官公庁や自治体向けのサービス案件の取り組みが具体的に進展しているほか、デジタルアセット分野におけるプラットフォーム企業への出資参画。インベストメント事業における高収益の実現として、リサ事業において、IPOを含む大型EXITを複数行ったほか、ベンチャーファンドにおいて、複数のIPOによるEXITを実現し、新たなファンドを組成している。なお、2012年から取り組んできた先のベンチャーファンドは、投資回収フェーズを迎え新たなファンドを設立している。「新事業の収益化」の領域では、ヘルスケア分野で、REITへの物件売却を実行するなど、ウエアハウジング事業が着実に進展しており、収益に貢献している。エネルギー分野では収益化に向けPPAサービスの取り組みを拡大しており、NECプラットフォームズと契約を締結。2022年4月より再生可能エネルギー本部を設置した。「事業戦略を支える経営基盤の強化」としては、全従業員へのテレワーク環境の整備、働き方の見直しを実施。ウィズコロナにおける業務環境のさらなる整備を進めている。また、(株)日本政策投資銀行のDBJ環境格付融資で18年連続最高ランクを獲得。これはDBJが独自に開発したスクリーニングシステムにより企業の非財務情報を評価して優れた企業を選定し融資するものである。また(株)三井住友銀行ESG/SDGs(ポジティブ・インパクト金融原則適合型)評価融資AAAを獲得。これは国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)により策定されたポジティブ・インパクト金融原則に適合した融資商品である。観光について、(一財)民間都市開発推進機構や地域金融機関等と連携して「アセットリノベーションファンド」を組成。奈良県御所市において銭湯事業及び古民家(複数棟)を活用した宿泊事業・飲食事業である「GOSE SENTO HOTELプロジェクト」を運営する(株)御所まちづくりに対する投資をはじめ、複数の投資を実行している。「事業戦略を支える経営基盤の強化」においては、総合マネジメントコンサルティングファームであるアビームコンサルティング(株)が、2022年2月にリース業界全体のビジネス変革を支援する共同利用型ビジネスプラットフォーム「ABeam Cloud Asset & Finance Platform」を発表。本取り組みの最初の導入予定先である同社と協同で開発に着手。2022年4月には経済産業省が定めるDX認定制度における「DX認定事業者」に認定された。DXを推進し、社会課題の解決を図りながら着実な成長を推進させている。また、調達資金全てがグリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトの初期投資またはリファイナンスのみに充当される「サステナビリティボンド」を発行しており、資金調達手段の多様化を進めるとともに、社会・ICTインフラ整備、地域社会・経済の活性化、地球温暖化の防止、高齢化社会への対応等、社会課題の解決に貢献する。また、同社のCSV経営の実現に向けた取り組みの1つに、従業員満足度の向上があり、従業員がイキイキとやりがいを持って働くことのできる環境づくりを推進している。女性活躍推進法に基づく認定制度で、行動計画の策定及び届出、申請をした企業のうち、取り組み状況等が優良な企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」認定について、2017年に2段階目の認定を取得し、2021年10月には5つの基準(「採用」「継続就業」「労働時間」「管理職比率」「多様なキャリアコース」)を満たし、上位認定の3段階目を取得している。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:37
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NECキャピ Research Memo(6):2022年3月期は2ケタ増収増益での着地(2)
■NECキャピタルソリューション<8793>の業績動向ファイナンス事業においては、金利収入等の減少に伴い、売上高は5,219百万円(前期比21.6%減)、売上総利益は4,142百万円(同23.7%減)となった。営業損益は貸倒引当金繰入額の計上等により、前期比3,054百万円減少し655百万円の損失となった。これは主に、個別ファクタリングを中心に債権残高が減少したことや、与信関連費用の計上によるもの。なお、民需における業種別では、個別ファクタリングの多い製造業を中心に減少が目立った。インベストメント事業においては、売上高が16,366百万円(前期比140.6%増)、売上総利益の増加により営業利益は5,395百万円(同635.0%増)だった。大型の営業投資有価証券のEXIT案件等を複数計上したことにより、売上高、営業利益ともに前期を大幅に上回る結果だった。内訳は、アセットビジネスについては、ファンドのEXIT案件を複数計上したことにより、売上高119億円(前期比133.3%増)営業利益36億円(同200.0%増)と大きく伸びた。不動産については、海外案件を含む売却収入や賃料収入が増加したことから、売上高は40億円(同300.0%増)、営業利益20億円(同400%増)と大幅な増収増益で着地。アドバイザリーは、前期に成功報酬が計上された影響もあり、売上高は4億円(42.9%減)、営業利益は1億円の損失(前期は200百万円の黒字)。のれん他は、のれん償却が第1四半期期間において終了している。3. 営業資産残高の状況2022年3月期の営業資産残高は9,434億円となり、前期比で157億円の減少となった。内訳としては、リース事業は6,200億円だった。GIGAスクール案件やテレワーク需要を取り込んだ前期の反動から減少したものの、前期比27億円減と、前期並みを確保した。ファイナンス事業は主にファクタリングが減少したことから前期比196億円減少の2,210億円。インベストメント事業は投資有価証券等の増加に伴い前年比45億円増の835億円だった。その他事業はヘルスケア施設の取得等に伴い21億円増の190億円だった。与信関連費用については、ファイナンス事業において与信コストを計上したことなどから12億円の増加。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:36
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NECキャピ Research Memo(5):2022年3月期は2ケタ増収増益での着地(1)
■業績動向1. 2022年3月期業績NECキャピタルソリューション<8793>の2022年3月期業績は売上高249,907百万円(前期比12.9%増)、営業利益10,447百万円(同75.1%増)、経常利益11,422百万円(同87.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,939百万円(同68.5%増)だった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を背景としたサプライチェーンの混乱に伴う産業界全体への影響のほか、2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、原油や穀物などの商品価格の高騰、さらにインフレ抑制に向けた世界の中央銀行による金融引き締め政策など、グローバルにおける経済状況は不透明感が高まっている。ちなみにリース業界の事業環境については、(公社)リース事業協会の「リース統計」によると、業界全体の2021年度のリース取扱高は、前年度比8.1%減の4兆2,186億円だった。コロナ禍によるサービス業や流通業などリース顧客の設備投資抑制の動きや、前年度GIGAスクール案件の特需剥落など、同統計の数値はこれらの影響を反映している面もあろう。なお、このような状況下において、同社リース事業の契約実行高は前期比10.8%減、成約高は同20.8%減となった。これは前期にコロナ禍におけるGIGAスクール案件特需(政府関連予算は「1人1台端末」の整備費用を中心に4,600億円超)があったことによるものであり、GIGAスクール以外での特筆すべきマイナス要因はなく、期初計画にも織り込み済みの水準であるため、ニュートラルな評価となろう。2. 事業別業績動向セグメント業績においては、ファイナンス事業が前期比減収減益となるものの、リース事業、インベストメント事業を中心に伸長したことから、増収増益での着地だった。リース事業は、営業資産残高の増加に加えて大型資産売却に伴う売上総利益の増加、及び与信関連費用の改善により、売上高は224,200百万円(前期比8.8%増)、売上総利益は16,570百万円(同16.8%増)。営業利益7,120百万円(同59.0%増)だった。契約実行高では2,184億円(同10.8%減)、成約高は2,030億円(同20.8%減)であり、要因としては前述のとおり前年のGIGAスクール案件特需に伴う需要の一巡が影響した格好である。リース事業の業種別契約実行高比率は、官公庁58.5%、民需(サービス業、流通業、製造業、その他)41.5%となり、機種別契約実行高比率においては、情報通信機器(電子計算機及び関連装置、ソフトウェア、通信機器及び関連装置)77.9%、事務用機器・その他22.1%となる。なお、リース事業契約実行高を見てもGIGAスクール案件の特需を考慮した場合、2019年3月期を上回っての順調な着地だったことが窺えるだろう。官公庁はGIGAスクール需要の一巡から前期比9.9%減少し、民需はサービス業が17.9%増と伸長したものの、流通業が22.4%減、製造業が14.9%減少した。民需の業種別成約高では、サービス業が23.7%増と伸長したものの、流通業、製造業の減少に伴い前期比減少。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:35
注目トピックス 日本株
NECキャピ Research Memo(4):NECと戦略的なパートナーシップで連携推進
■強み「NECとの戦略的なパートナーシップ」「ICTに関する豊富な知見」「幅広い金融ソリューション」の3つの強みを融合させたサービスを提供している。NECキャピタルソリューション<8793>はNEC製品の販売金融機能を担う目的で設立されNECと連携しながら成長してきた経緯から、NECとの戦略的なパートナーシップを推進している。同社の顧客基盤の半数は官公庁・自治体にあるが、これもNECと共に成長してきた経緯からであり、同社の特徴の1つとなっている。リース契約実行高の8割程度(2022年3月期実績:機種別契約実行高)をICT機器が占めているように、ICTに関する豊富な知見を有している。そのため、リースにとどまらず、ICT機器の調達・導入、運用管理まで含めた幅広いノウハウを活かしたサービスを展開。技術革新の速いICT機器は、他の設備に比べ最新機種への更新頻度が高くなっており、ライフサイクルマネジメントに対応したサービスのニーズは高まっている。その他、ICT機器のキッティング(パソコンなどの導入時に実施するセットアップ作業)やリース満了品のICT関連機器を販売するキャピテック&リブートテクノロジーサービス(株)を傘下に持ち、ICT製品に関する周辺事業をワンストップで対応している(前述の「PITマネージドサービス」)。また、幅広い金融ソリューションを展開していることも、同社の強みの1つである。メーカー・販売会社が顧客の支払い方法等を含めた形で製品販売を行う手法であるベンダーファイナンス等、メーカー・販売会社の立場に立ったファイナンスプログラムの提供を行っている。その他、金融サービス会社としてサービスメニューを増強しており、企業向け融資、債権流動化に加えファンド組成やエクイティ出資等に取り組む。また、投融資とアドバイザリーのプロフェッショナルであるリサ・パートナーズは、資金面で支援する「投融資」と、金融・不動産等の専門的見地から助言する「アドバイザリー」の両面からソリューションを提供。地域金融機関とのネットワークを有するリサ・パートナーズと官公庁・自治体や事業法人を主力とする同社では異なる顧客基盤を有することから、事業領域の拡大による成長が可能と弊社では考えている。なお、同社では2012年からベンチャー企業を投資対象とするベンチャーファンド事業に取り組んでいる。2012年にテクノロジーに強みを持つベンチャー企業を投資対象とする「イノベーティブ・ベンチャー投資事業有限責任組合」を設立し、2016年、2018年には社会課題解決型のベンチャー企業を投資対象とする「価値共創ベンチャー有限責任事業組合」、「価値共創ベンチャー2号有限責任事業組合」を設立。事業立ち上げから約10年が経過し、投資実行した企業数は50社、運用総額は96億円に上り、複数のIPOやM&AによるEXIT(案件売却)が実現した。ベンチャー投資によって知見や実績を着実に蓄積するなかで、新たにNVC1号ファンドを設立し、ファンドの運営を開始した。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:34
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NECキャピ Research Memo(3):幅広い金融サービスに加え、長年の取扱経験から得たICTの知見を有する
■事業概要NECキャピタルソリューション<8793>のビジネスは、リースから企業向け融資、債権流動化に加えファンド組成やエクイティ出資まで幅広い金融ソリューションを提供する。NEC製品の販売金融機能を担うために創立された経緯から、NECと連携しながら成長してきた。業種別契約実行高(2022年3月期実績ベース)の過半を占める官公庁・自治体向けを例に取ると、NECをはじめとしたベンダーがICTを活用したソリューションを提供し、業務効率化や公共サービスの質の向上に寄与。同社はそうしたソリューションを、官公庁・自治体の単年度予算に合う契約形態で金融面からサポートしてきた。国内に約30ヶ所の拠点を構え、全国約1,800の自治体に指名参加申請登録を行うなど、日本全国の官公庁や自治体に取引実績を持ち、官公庁・自治体は同社の強固な顧客基盤となっている。長年取引を行っている経験から、官公庁や自治体の仕事の進め方や特性などのノウハウを蓄積し、その強みをPFI・PPP(公共サービスの提供に民間が参画する手法)事業にも活かしている。またNECと共に成長してきた経緯からICT機器の取扱に強みを持ち、2022年3月期の機種別契約実行高では、ICT機器が8割近くを占めている。ICT機器の導入から管理運用までをサービス料の支払いで提供する「PITマネージドサービス」等、長年のICT取扱の経験と金融サービスを融合させたサービスを提供するなど、顧客の様々な要望に応える体制を整えている。同社はこれまでの事業領域の拡大を踏まえ、事業の実態をより正確に反映するべく、2022年3月期第1四半期より報告セグメントの変更を行った。「賃貸・割賦事業」は「リース事業」に変更しており、「その他事業」に区分されていたリースに関わる損益項目を集約することで、リース事業の損益を的確に見せる。「リサ事業」はリサ・パートナーズ以外の投資ビジネスを集約し「インベストメント事業」とした。連結経営におけるセグメント損益状況を精緻に把握する狙いだ。なお、売上総利益(2022年3月期実績ベース)による構成比は、リース事業52.2%、ファイナンス事業12.9%、インベストメント事業30.2%、その他の事業4.7%となる。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:33
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NECキャピ Research Memo(2):リース事業に加え、サービス領域を拡大し高付加価値な事業へ転換
■会社概要NECキャピタルソリューション<8793>は、NECの持分法適用会社として、ICT機器を中心としたNEC製品をはじめとする情報通信機器のリースのほか、事務用機器、産業用機械設備、その他各種機器設備等のリース・割賦及びファクタリング、融資、集金代行業務等を展開しており、企業の経営課題の解決に役立つファイナンスメニューを拡充。ICT製品以外の取扱を徐々に増やすとともに、長年強みとして取り組んでいる官公庁・自治体との取引において社会インフラ整備を推進しているほか、投融資やファンド組成等に取り組み、サービス領域を拡大することによって、高付加価値な事業への転換を目指している。「NECとの戦略的な連携」「ICTに関する豊富な知見」「幅広い金融ソリューション」という3つの強みが培われ、これらが三位一体となった価値ある「サービス」の創出・提供に努めることで、「社会価値」の向上と「経済価値」の創出の両方を図りながら持続的な成長を目指すCSV経営の実現に向けて取り組みを進めている。同社の沿革は、NEC製品の販売金融機能を担う会社として1978年に創立したところから始まる。創立以来、ICTをはじめとした各種機器・設備のリースに加え、ファイナンスメニューを提供してきた。2005年に東証2部に上場、2006年に東証1部に指定変更し、2022年4月に新市場区分「プライム市場」に移行した。金融ソリューションの幅を広げ、2008年に社名を「NECキャピタルソリューション株式会社」に変更。2009年には(株)リサ・パートナーズ※と資本業務提携を行うなど、より高付加価値な事業への転換に取り組んでいる。リーマンショックや東日本大震災といった経済の停滞期にも積極的に事業の多角化を推進してきた。※(株)リサ・パートナーズ:2010年12月に同社が完全子会社化した。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:32
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NECキャピ Research Memo(1):NECグループの金融サービス会社として新たな社会価値を創出
■要約NECキャピタルソリューション<8793>は、NEC<6701>の持分法適用会社で、NEC製品を含む情報通信機器、事務用機器、産業用機械設備、その他各種機器設備等のリース・割賦及びファクタリング(売上債権買取)、融資、集金代行業務等を展開する。これまでICT製品以外の取扱を徐々に増やし、サービス領域を拡大。さらに、高付加価値な事業への転換を目指し、投融資やファンド組成といった金融サービスに取り組むなど、多角化を図っている。また、社会課題の解決と企業の利益創出が両立するCSV経営(Creating Shared Value=共通価値創造)を目指しており、社会・ICTインフラの整備、地域社会・経済の活性化、地球温暖化の防止、高齢社会への対応等、社会課題を解決するべく取り組んでいる。1. 2022年3月期業績2022年3月期業績は売上高249,907百万円(前期比12.9%増)、営業利益10,447百万円(同75.1%増)、経常利益11,422百万円(同87.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,939百万円(同68.5%増)だった。セグメント業績においては、ファイナンス事業が前期比減収となるものの、リース事業、インベストメント事業を中心に伸長したことから、増収増益での着地だった。リース事業は営業資産残高の増加に加えて大型資産売却に伴う売上総利益の増加、及び与信関連費用の改善により、売上高は224,200百万円(前期比8.8%増)、売上総利益は16,570百万円(同16.8%増)。営業利益7,120百万円(同59.0%増)だった。2. 2023年3月期業績予想2023年3月期業績予想については、リース事業の持続的な成長と新事業の収益化を図るものの、インベストメント事業における収益計上が一部2022年3月期に前倒しとなったことにより、売上高250,000百万円(前期比0.0%増)、営業利益11,000百万円(同5.3%増)、経常利益11,000百万円(同3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益6,500百万円(同6.3%減)を見込んでいる。ただし、非接触、非対面、三密回避など、ウィズコロナ、アフターコロナにおける社会課題の解決には、NECグループの金融サービス会社として同社がこれまでに蓄積してきたノウハウが、大きな力を発揮できるものと考えている。3. 中期計画2020進捗状況「コア領域の拡充」においては、ベンダーとの新たなサービスの確立として、サービス化で先行することが見込まれる米国のNECFS社を買収、北米における新たな事業機会を獲得した。北米拠点を確保することで今後の事業成長に向けた取り組みが期待される。インベストメント事業における高収益の実現として、リサ事業において、IPOを含む大型EXITを複数行ったほか、ベンチャーファンドにおいて、複数のIPOによるEXITを実現し、新たなファンドを組成している。なお、2012年から取り組んできたベンチャーファンド事業は、投資回収フェーズを迎え新たなファンドを設立している。「新事業の収益化」の領域では、ヘルスケア分野でREITへの物件売却を実行するなど、ウエアハウジング事業が着実に進展しており、収益に貢献している。エネルギー分野ではPPAサービスの取り組みを拡大しており、NECプラットフォームズ(株)と契約を締結。収益化に向け2022年4月より再生可能エネルギー本部を設置した。「事業戦略を支える経営基盤の強化」としては、全従業員へのテレワーク環境の整備、働き方の見直しを実施。ウィズコロナにおける業務環境のさらなる整備を進めている。■Key Points・NECと戦略的なパートナーシップで連携を推進・ヘルスケア分野においては、REITへの物件売却を実行するなど、ウエアハウジング事業が着実に進展・ベンチャーファンド事業は、投資回収フェーズを迎え新たなファンドを設立(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:31
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TDCソフト Research Memo(9):2023年3月期は記念配当15円を加え、前期比15円の大幅増配を計画
■株主還元策高収益化を実現しており、営業キャッシュフロー、内部留保ともに潤沢で、増配の余地があると言える。TDCソフト<4687>は経営基盤の充実と財務体質の強化を通じて企業価値の向上を図るとともに、株主に対する積極的な利益還元を行うことを利益配分に関する基本方針としている。この方針のもと、配当性向30%を基本的な目標とし、経営状況、財務や業績等の状況を総合的に勘案しながら、配当を実施する計画である。2023年3月期の配当については、従来の配当性向をもとに算出した1株あたり30円に加え、創業60周年の記念配当15円、合わせて45円の配当を予定。中間配当15円、期末配当30円となる見通しだ。今年10月に創業60周年という節目を迎え、今後も持続的な成長の実現に向けて邁進する。■CSR(企業の社会的責任)への取り組み同社では、CSR(企業の社会的責任)の一環として募金活動や災害に対する支援を行っている。2011年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」では、義捐金及び従業員から募った寄付金を、日本赤十字社を通じて寄付している。加えて、東北の海産物等を購入することによる支援を現在も行っている。2015年9月に発生した「平成27年9月関東・東北豪雨」の被災地に向けた義捐金を、鬼怒川の決壊など、特に被害の大きかった茨城県常総市役所を通じて寄付しているほか、2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」においても、義捐金及び従業員から募った寄付金を、熊本県へ寄付している。その他、「身近で」かつ「誰もが」取り組める社会貢献活動として、(公財)日本盲導犬協会への募金活動を実施している。同社では2009年より募金箱を社内に設置し、全社イベントの際に呼びかけるなどして盲導犬の育成を支援している。また、障害者雇用促進法に基づき、障害者雇用を促進するため2012年11月に「わかばファーム市原」、2020年11月に「わかばファーム柏」を開園している。これまで作成した農作物は、ミニトマト、ナス、キャベツ、水菜、チンゲン菜、きゅうり、枝豆、小松菜、メロン、ほうれん草などであり、栽培された野菜は定期的に本社へ送られ、社員の手元に行きわたる。また、2021年3月4日に経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人「ホワイト500」に認定されている。健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を認定する制度である。社員とその家族の健康活動に対する積極的な支援と、組織的な健康活動を推進することで「働きやすい、やりがいのある社会」づくりに取り組んでいる。社員とその家族が心身の健康を保ち、最高のパフォーマンスを発揮することで、顧客への最適なサービスを提供するとともに、社会とともに発展することを目指している。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:29
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TDCソフト Research Memo(8):重点戦略として推進する高付加価値SIサービスを追求
■今後の見通し1. 2023年3月期の業績見通し2023年3月期の連結業績予想については、売上高33,000百万円(前期比6.7%増)、営業利益3,065百万円(同3.3%増)、経常利益3,135百万円(同1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,100百万円(同1.5%増)を見込む。DX促進に向けた企業のIT投資は前期に引き続き好調に推移する見込みで、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連の案件は堅調に推移する見通しだが、新卒採用者の教育やそれに付随するコストの増加が収益を圧迫するため、前期のような高い伸び率は示現できないというのがTDCソフト<4687>の見方だ。前期はITコンサルティング&サービス分野を筆頭に予想を上回る活況となり、2021年9月、2022年2月と二度にわたる業績の上方修正が行われた。人材リソースの増加が同社の業績拡大に貢献してきた経緯と、前期から積極的なリソースの拡大に取り組んでいることを考えると、今期も上方修正への期待は高まる。まずは、2023年3月期の第1四半期と9月中間期における、各分野の売上高の伸びを確認したいところだ。新たな中期経営計画では、前中期経営計画で掲げたビジョン「次世代型システムインテグレーター」を踏襲する。ニーズに対応した次世代型のSI事業へ進化するため、高付加価値SIサービスを一段と追求する。なお、高付加価値SIサービスは、引き続き同社の成長をけん引する格好になると考えられるものの、将来的にはサービスが広がるとともに、いずれ一般的なサービスとなるものとして、同社は楽観視していない。アジャイルについてはSI各社ともに注力している分野であるため、高付加価値から一般のサービスになる可能性があると見ているようだ。そのため、アジャイルに続く高付加価値サービスを生み出すための投資及び戦略を推進していく方針である。ちなみに、同社は一時的な採用抑制をフォローするため、2021年度は新卒採用を積極的に行った。そのため、2023年3月期の中間期決算では、新卒採用の強化に伴う教育費など諸経費が増え、それによる販売管理費が増加。これによって、売上高こそ前年同期比6.4%増の15,600百万円と増収を維持するものの、営業利益1,340百万円(前年同期比15.6%減)、経常利益1,365百万円(同17.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益915百万円(同18.1%減)と増収減益を予想している。もっとも、2023年3月期通期では増収効果がそれら費用増加をカバーし、増収増益で着地する見通しだ。同社は人材リソースの確保を最重要課題の1つとして掲げ、2022年3月にはそれを目的としたテレビCMを展開した。今後も同様に人材リソースの確保を目的としたブランディング及びマーケティングへの投資を続ける方針である。2. 2023年3月期の重点施策(1) 積極的な投資の推進同社では堅調な経営状況を踏まえ、さらなる成長に向けた足場固めを行うため、積極的な投資を推進。アジャイルやセキュリティなどの重点戦略分野の投資のほか、5G関連のビジネス化に向けた研究、自社製品であるクラウド型ワークフローシステム「Styleflow」の販売促進強化を挙げている。DXの潮流が加速するなか、重点分野の事業の拡大、高収益化を推進するうえで、今後主流になると見込む、要素技術の獲得に向けた成長投資を積極的に行う計画である。また、同社は2022年3月にテレビCMの放映を開始したが、今後も人材リソースの確保を主な目的に、テレビCMやSNS、YouTubeなどを活用したブランディング及びマーケティングにも投資を行っていく計画である。(2) 人材対応コロナ禍において、そもそもSI人材が転職市場に想定よりも流動的でない状況ではあるが、新入社員の採用によって育成・対応していく方向で進める。同社は人材確保における独自の強みを持っていることもあり、人材不足のなかにおいても同業他社と比較して、現状では堅実に確保できているもようだ。ただ、競合他社がDXの加速に向けて人材確保を進めるなか、今後はさらにリソースの獲得が困難になることが予想される。そのため、同社は新卒採用者の育成のほかに、M&Aも視野に入れた人材リソース獲得戦略を検討しているようだ。3. 事業分野別の業績「ITコンサルティング&サービス分野」は、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連案件の需要は継続することにより、拡大基調を維持できるとして、前期比18.6%増の4,600百万円を計画。「金融ITソリューション分野」は既存領域が堅調に推移すると見ており、SoE、Sol領域の拡大に伴い同3.2%増の14,850百万円を見込んでいる。「公共法人ITソリューション分野」は運輸業・製造業向けでの拡大を見込んでおり、同8.6%増の9,550百万円を計画。また、DX需要などを背景とした顧客のIT企画支援などが活況になると見ている。「プラットフォームソリューション分野」は同3.7%増の4,000百万円を計画しており、クラウドニーズの高まりによる事業拡大を見込んでいる。4. 新中期経営計画「Shift to the Smart SI Plus」策定同社が現在掲げている新中期経営計画(2022年4月から2025年3月)は「Shift to the Smart SI Plus」だ。(1)「高付加価値SIサービスの追求」(2)「SIモデル変革の推進」を主要戦略に据え、(3)「事業領域の拡大」としてPlusを加えている。既存のSI事業領域を軸に新たな領域へ事業を拡大し、新たなビジネスモデルに必要なケイパビリティを獲得し、次世代型SI企業を目指す。中期経営計画における業績目標は、2025年3月期売上高40,000百万円(2022年3月期実績30,925百万円)、営業利益率10%を掲げている。SI事業においては、次世代型SI事業の拡大のほか、維持・保守領域などのSI事業におけるマネージドサービスによるビジネスボリュームの拡大。コンサル事業においては、ナレッジの蓄積やメソッド化を図り、次の事業拡大を目指す。既存のDX/ITコンサルやSAFe(R)コンサルのさらなる拡大のほか、技術教育サービスの拡充・拡大を図る。サービス・製品販売事業において、蓄積ナレッジを活用した新たな自社製品の販売事業の拡大のほか、マーケティング機能を強化することで、ユーザーニーズやシーズを捉えた製品やサービスの販売を行う。その他、人材の確保として積極的な人材採用施策を推進するほか、人材育成施策の推進により、早期戦力化や高付加価値領域へ育てる。グループ・M&A戦略推進においては、新たな事業領域の拡大に向けた、未保有の機能・特性の獲得に向けたグループ・M&A戦略を推進する。企業基盤の強化に向けては評価戦略的な意思決定を可能とするデータ活用などのコーポレート機能を強化。事業拡大に向けた投資の強化に関しては、DXの潮流が加速するなか、今後主流になると見込んでいる要素技術の獲得に加えて、事業領域の拡大に向けたケイパビリティを獲得するための投資を推進する計画である。この事業領域の拡大に向けた投資については7つの投資分野を対象としており、「アジャイル」「クラウドネイティブ」「データアナリティクスプラットフォーム」「UXD(ユーザーエクスペリエンスデザイン)」「セキュリティ」に加え、新たに「フロントエンドフレームワーク」「オートメーション・マネージドサービス」を対象としており、新規事業や高付加価値分野のさらなる拡大をねらう。なお、「フロントエンド フレームワーク」に関しては、React、Angular、Vueなどのフロントエンドフレームワーク関連技術に投資を行い、技術者の育成及び当技術を活用したプロダクトの開発を目指す。「オートメーション・マネージドサービス」に関しては、運用や保守機能をサービスとして提供する。クラウドネイティブの活用や自動化などの効率化によるマネージドサービス事業の構築を目指すことを挙げている。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:28
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TDCソフト Research Memo(7):企業のIT投資抑制の解消等を背景として、4分野とも増収増益を達成(2)
■TDCソフト<4687>の業績動向また、各企業のパブリッククラウドの活用が進むなかで、クラウド設定のミスや理解不十分な構築によるセキュリティホールの存在など、攻撃者の格好の的になりやすい状況において、各企業が抱えるクラウドに対するセキュリティの不安を診断により可視化することで、安心・安全な運用を支援するクラウドサービス(Amazon Web Services:AWS)を開始。さらに、MicrosoftのAzure上でも診断できるサービスを拡充する取り組みを進めている。診断基準には、世界的なベストプラクティスがまとまったCISベンチマーク※を利用し、自動的に診断を行うツールを開発、可視化、診断レポートを提供する。ただし、セキュリティ診断サービスは2022年1月にスタートしたばかりであり、前期の業績にはほぼ反映されていない。その点で、今後の業績にどの程度寄与するのかを見極める必要がある。※CISベンチマークを利用し、クラウド上の各種サービス(AWS Identity and Access Management(IAM)、Amazon EC2、AWS CloudTrail…etc.)の設定について、OK(成功)、WARN(警告)、FAIL(失敗)の三段階で評価。全体の評価をまとめたレポートを提供することで可視化し、日次、週次など任意の間隔で診断(定期実行)する。その他、2021年8月にはネットワークを中心としたコンサルティング事業と企業のインキュベートを主たるビジネスとして展開する(株)インターネット総合研究所(IRI)と、サイバーセキュリティ分野において、アライアンス契約を締結した。システムのオープン化・クラウド化が進み、利便性の高いサービスが構築され運用されている一方で、悪意を持つ第三者によるサービスの停止、情報の漏洩などのサイバー攻撃に対するリスクがかつて無いほど高まっている。企業のセキュリティに対する不安が増している状況のなか、同社とIRIはセキュリティに対する不安を解消するために新しいビジネスモデルを含めたサービスを共同検討し、新たなサービスとして付加価値を加え、顧客の要望に応えビジネスリスク低減を図る。さらに、資本・業務提携を結んだclosip(旧LTE-X)のほか、運輸会社と連携し、ローカル5Gにつながる要素技術の獲得を目的としたPoC(Proof of Concept:本格的にプロジェクトを開始する前に検証すること)案件を実施している。ローカル5Gの本格普及に先駆けてサービス開発を継続し、実証を積み重ねることにより、将来的に需要が見込まれると考えられるローカル5G向けサービスにおいて、先行者メリットを獲得することになると弊社では考えている。ただし、現状はようやく5Gが企業や個人に浸透してきた段階であり、将来的に普及期が訪れる局面においては、先行者メリットを享受することになるだろう。近い将来には企業のオフィスや工場などといった限られた範囲の中で、ローカル5Gを利用して手軽に専用網を構築できる動きが期待されている。東京など首都圏集中によって地方の医療現場は人手不足で窮地に陥っているなか、ローカル5Gを活用した遠隔診療の実証などが総務省や自治体主導で実施されている。また、最近では国内の大規模病院の3ヶ所がハッカーに侵入されたといった報道もあった。医療のデジタル化が進む一方で医療機関へのサイバー対策が求められており、同社が重点戦略として挙げている高付加価値SIサービスのサービス拡充とともに引き続き事業拡大が期待される分野であると弊社では見ている。「SIモデル変革の推進」においては、オープンイノベーション活動を通じたSI事業の高付加価値化や、新サービスに向けた取り組みを進めている。米国Scaled Agile, Inc.とのパートナーシップによるアジャイル関連事業、closip(旧LTE-X)とのセキュリティ事業、エールビジネスコンサルティング(株)とのソリューション事業など、グループシナジーの創出に向けた取り組みを推進。インターネット総合研究所ともサイバーセキュリティ分野においてアライアンス契約を締結しており、顧客企業のビジネスリスクを低減させるための、新たなサービスの提供の動向についても注目したい。また、サービス品質水準の向上として、ハイスキル人材のシェアリングを推進するなどサービス品質水準の向上に取り組む。プライスコントロールとして、プライスリストを活用し、標準価格からの差異に着目した管理・取り組みを推進。トラブルプロジェクトの撲滅として、プロジェクトパフォーマンス評価制度の導入などのトラブルプロジェクトの撲滅を図っている。これらの施策により、2022年3月期において計画よりも利益率が低下したプロジェクト数は前期比30%以上低減した。なお、同社は2021年2月に、経済産業省が認定する「DX認定」を受けた、情報サービス産業界初の企業となった。DX認定制度とは、2020年5月15日に施行された「情報処理の促進に関する法律」に基づく認定制度である。国が策定した「情報処理システムの運用及び管理に関する指針」を踏まえ、優良な取り組みを行う事業者を申請に基づいて認定する。ビジョンの策定や戦略・体制の整備などをすでに行い、DX推進の準備が整っている事業者の「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX Readyの状態)」を経済産業省が認定する。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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2022/07/01 15:27
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TDCソフト Research Memo(6):企業のIT投資抑制の解消等を背景として、4分野とも増収増益を達成(1)
■TDCソフト<4687>の業績動向4. 主要施策の状況同社グループは「次世代型システムインテグレーター」を目指し、市場の潜在ニーズを捉え、デジタル技術の新たな潮流に対応した次世代型のシステムインテグレーション(SI)事業へと進化することをビジョンに掲げ、2019年4月から2022年3月における中期経営計画「Shift to the Smart SI」を推進してきた。また、新たに2023年3月期を起点とする新たな中期経営計画を策定。今後3年間はその中期経営計画に基づいた経営を推し進める方針だ。主要戦略としては「高付加価値SIサービスの追求」と「SIモデル変革の推進」を掲げてきた。「高付加価値SIサービスの追求」においては、重点分野の事業の拡大、高収益化を推進するうえで、アジャイル関連事業とセキュリティ関連事業を重点戦略分野としている。また、「SIモデル変革の推進」においては2020年2月にM&Aを行った、SAPシステムのコンサルティング及びシステム開発に強みを持つエールビジネスコンサルティング(株)によるソリューション事業の強化、米国Scaled Agile, Inc.やセキュアで高速大容量通信のプライベートLTEサービスを提供するclosip(旧LTE-X)とのアライアンスを推進させ、差別化を図っている。そのほか、顧客のビジネスのイノベーション支援等を通じた営業活動を推進するビジネスイノベーション本部や、顧客のDX推進に向けて先端技術を駆使し、スピーディーかつ効率的な課題解決をアカウント事業部門と連携。それを実現するデジタルテクノロジー本部を創設した。高付加価値SIサービスでは、高付加価値を実現するために常に最新の技術を追い求める必要がある。いわゆる最新の流行を追いかけることになるが、流行は時間の経過とともに一般化する傾向がある。そうなると、他企業との競争が激化し、同社の収益水準が下がってしまう可能性がある。そこで、同社は現在の技術がどのような問題を抱えているかについてアップデートを心がけ、常に新しい技術の流行をキャッチできるよう留意。そのためには継続した投資を行っていく方針だ。その一方で、廃れていく技術に関しては大胆にカットし、事業や技術の新陳代謝を高めていくことが今後の課題の1つとなろう。また、上述の施策を実現するためには、人材リソースの確保が必須である。DX化が加速するなか、高付加価値SIを実現できる技術者のニーズがますます高まっており、そうした技術者の給与水準の引き上げが顕著になっている問題がある。同社は新卒採用者の早期育成に強みを持っているが、今後は人材リソースの確保を目的としてM&Aも活用していく方針だ。今後も、技術者の確保・育成を最重要課題の1つとして取り組んでいく見通しである。そうなると、人件費の増加が収益の重石となる可能性が浮上する。実際、2023年3月期の9月中間期時点では、新卒採用者の拡大による人件費の増加に伴い、わずかではあるが前年同期比で微減益の予想となっている。ただ、新中期経営計画のもと、人材への投資は新たな成長ステージに向けた種蒔きの段階と捉えられる。新中期経営計画や今後の業績において、人件費の増加はやや重しとなる可能性がある点ではあるものの、企業のIT投資の増加を見据えた将来への投資と前向きに考えたい。実際、2022年3月期の業績において、増収増益のおよそ3分の1は高付加価値化、次世代SIを推し進めた効果によるもので、残りの3分の2はパートナー企業との協業も含め、人材リソースを拡大させたことが要因であることは押さえておきたい。2022年3月期における次世代型システムインテグレーターに向けた取り組みとしては、次世代型SI事業は順調に拡大しており、売上高に占める構成比は17.4%と前期(12.3%)から5.1%増加し、売上高は前期比60.3%増の5,390百万円に拡大。会社計画比12.0%増の成長。また、次世代型SI事業の拡大に伴い、売上総利益率は前期比1.0%増の20.8%となった。加えて、重点戦略分野であるアジャイル関連事業においては米国Scaled Agile, Inc.とのゴールドパートナー契約によるアライアンスの強化に基づき、SAFe(R)を用いた企業の迅速な経営判断、システム開発に資するコンサルティングサービス、教育サービスの提供を行っている。さらに、リックソフトと業務提携契約を締結し、SAFe(R)を導入したビジネス変革に向けたベストプラクティスなサービス開発を推進。顧客のDX需要の拡大によってアジャイル関連事業は着実に成長しており、アジャイル関連事業の売上高については、2019年3月期の330百万円から、2022年3月期においては1,523百万円に増額し、4ヶ年で約5倍に拡大した。アジャイル開発分野においては、アジャイル開発サービスの拡大に向け、デファクトスタンダードであるScrum認定技術者の拡大等に取り組んでおり、Scrum認定技術者、アジャイル開発PJ経験者、SAFe(R)認定コンサルタントは順調に増加。2019年3月期の50名から2020年3月期は102名、2021年3月期は194名、2022年3月期は261名と大幅に増員している。2022年3月期第2四半期においては、新型コロナウイルス感染症の影響から新卒採用を53名に抑制したものの、認定技術者の増員によって、高度な技術が必要とされるプロジェクトの需要を取り込むことができると見られることから、2023年3月期第2四半期では、積極採用を再開。人材の早期育成を強みとする同社だけに、こうした新卒採用の増加は高付加価値化を一段と加速させる要因になると弊社では考えている。もう1つの重点戦略分野であるセキュリティ関連事業においては、新サービスの追加などの高付加価値化に向けた取り組みを強化した。2020年8月には社会的なリモートワークソリューションなどWithコロナの需要を取り込む新サービスとして、「LTE over IP(R)」※技術を活用したセキュアアクセスを実現するサービス「Tegata」の提供を開始。利用者は、ソフトSIMを端末にインストールして接続を行うため、紛失リスクがなく、パスワードレスでネットワークへ接続を行うことができる。また、クラウド型サービスのため、急な増減にも対応が可能となる。TegataはVPN以上のセキュリティを確保し、VPNで必要となる専用装置が不要なクラウド型アクセスサービスであり、リモートワークユーザーの増大などに柔軟に対応できる。今後もTegataの提供機能を拡充し、システムインテグレーション事業をコアに2022年度末の累計販売10万ライセンスを見込む。※「LTE over IP(R)」とは、closip(旧LTE-X)が開発に成功した技術であり、プライベートLTEの構築に際し、ライセンスバンド(無線局免許を必要とする周波数帯)の取得の必要がなく、通常のインターネット(IPネットワーク)上でプライベートLTEの構築が可能な技術のこと。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<SI>
2022/07/01 15:26
注目トピックス 日本株
TDCソフト Research Memo(5):2022年3月期は次世代SI事業など重点戦略分野を中心に拡大
■業績動向1. 2022年3月期通期の業績概要情報サービス産業を取り巻く環境は、テレワーク環境の整備・強化に向けた需要が一巡した。一方で、クラウドコンピューティング、AI、IoT、RPA、ブロックチェーン、マイクロサービス等の技術革新によるDXの潮流が、企業の競争力強化に向けた戦略的な投資需要を高め、IT投資抑制の流れをストップさせた。足元では顧客企業のIT投資の意欲が高まっており、今後もIT投資は増加基調で推移していくことが見込まれている。また、コロナ禍において、TDCソフト<4687>にも金融ITソリューション分野で一部案件の延伸・中断のほか、対面営業の制限といった形で受注活動への影響が発生していたが、2022年3月期通期においては、上期の時点でこれらの影響は解消された。企業のIT投資が活性化している一例として、以前は数億円程度のIT投資にとどまっていたが、ここ数年の間に数百億円の大規模投資に踏み切る顧客が増えているという。これも、2022年3月期の業績拡大の要因の1つになっている。2. 2022年3月期通期の業績2022年3月期通期の売上高は、30,925百万円(前期比13.3%増)、営業利益2,967百万円(同25.8%増)、経常利益3,082百万円(同20.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,069百万円(同20.9%増)となった。コロナ禍によって2021年度に発生した一部案件の延伸または一時中断の影響については、感染症対策の徹底やリモートワークの積極的な活用によって悪影響は軽微で済んだ。それに加え、2022年4月以降は取引先企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への意識が高まったことでIT投資が回復。それによって、前期に引き続きITコンサルティング&サービス分野の急成長が続いたほか、公共法人ITソリューション分野も好調に推移した。高付加価値SIサービスは、同社の計画を上回る進捗で高収益化を実現できている。企業側においてもDXの推進をこれ以上止める訳にはいかず、経済活動正常化の動きが進むなか、銀行や保険など金融セクターではシステム投資の動きが再開されたほか、その他のセクターでもDXに向けたIT投資加速の動きが表面化しつつあると弊社では考えている。同社は前中期経営計画の3ヶ年において、主要戦略の1つである「高付加価値SIの追求」と「次世代型SI」を推進した。この分野の売上高は、前中期経営計画の策定以前は6、7億円程度にとどまっていたが、前中期経営計画では売上高50億円を目標に掲げ、高付加価値SIを推進させるという明確な意思のもと拡大に注力。これによって、計画の最終年度である2022年3月期には売上高53.9億円まで成長させることに成功し、売上高構成比は前期比5.1%増の17.4%まで拡大した。高付加価値SIを実現させるための必須条件である技術者の確保や人材育成への投資を行ってきた結果、中期経営計画を若干上回る売上高を達成できたことについては評価したい。3. 事業分野別の業績(1) ITコンサルティング&サービス顧客のDX推進に向けたIT戦略やシステム化構想の立案、技術コンサルティング、最新の技術や開発手法の教育サービスの提供や、自社開発のクラウドアプリケーションサービスの提供、BI/DWH、ERP/CRMに関連するソリューションサービスの提供を行っている。2022年3月期通期においては、顧客企業のDX推進に向けたIT需要の高まりを背景に、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連の案件が好調に推移。売上高は前期比57.7%増の3,877百万円となった。ITコンサルティング部門は上期に引き続き下期もアジャイルの活況が続いたほか、ソリューション部門ではセールスコンサルティングやマネージド管理、IT危機管理などを中心に伸びが顕著となった。今後も意欲的な企業のIT投資を背景に、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連などが同社の成長をけん引する格好になると弊社では考えている。(2) 金融ITソリューション金融業向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っており、2022年3月期においては、コロナ禍で中断していたプロジェクトの影響が解消した。保険やクレジット関連のシステム開発案件などが堅調に推移したことにより、売上高は前期比8.4%増の14,393百万円だった。金融業のIT投資再開によってアプリケーションなどの需要が復活したことから、DXの加速とともに需要が拡大に向かうと弊社では考えており、先行きに対しても強気の見方を持っている。(3) 公共法人ITソリューション流通業、製造業、サービス業や公共向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っており、2022年3月期においては運輸業や通信業のほか、エネルギー業向けの開発案件等が堅調に推移。売上高は前期比10.7%増収の8,795百万円と、ITコンサルティング&サービスに次いで業績拡大に寄与した。なお、運輸業はDX向けの上流案件が増加していることから、今後も拡大が期待されている。(4) プラットフォームソリューションITインフラの環境設計、構築、運用支援、ネットワーク製品開発、ネットワークインテグレーション等の提供を行っている。2022年3月期は、クラウド関連のインフラ構築案件が堅調に推移しており、売上高は前期比6.8%増の3,858百万円だった。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<SI>
2022/07/01 15:25
注目トピックス 日本株
TDCソフト Research Memo(4):アジャイル開発等での米国Scaled Agileとのパートナーシップ
■強み1. 金融向けに強固な顧客基盤TDCソフト<4687>は、金融・法人の部門で顧客との付き合いが長い。同社の基本姿勢として、顧客のビジネスをどこまでも深く理解し、あるべき姿をともに考え、プロジェクトを成功に導く新しいアイデアを出す、というスタンスで臨んでいる。これにより顧客の信頼を得て、関係が長くなるため、顧客の業務にも精通する。仕事によっては同社がサブ・コントラクタ(2次請け)として受注する場合もあるが、その際も開発のなかで徐々にプロジェクトの中核を担う存在となり、顧客の信頼も厚くなることから替えがきかない存在となることも多い。結果として事業規模は拡大しており、現在では年間で250社に対し、650のプロジェクトが稼働しており、そこからさらにノウハウ・信頼が蓄積していくといった好循環を作り出すことに成功している。2022年3月期通期においては、昨年度発生したコロナ禍を受けた企業側による案件の中断・延伸などの影響は解消しており、さらに顧客のDX推進を背景としたIT投資の増加により、全ての事業において、いい意味で期待を裏切る活況ぶりを見せている。2. アジャイル開発における米国Scaled Agile, Inc.とのパートナーシップ同社は情報サービス産業の黎明期よりシステム開発事業を行っており、現在では業務アプリケーションからITインフラ、ネットワーク基盤構築やクラウドサービス等も手掛けており、着実に成長してきた。また社内認定制度で認められたトップスキル技術者や、高度情報処理技術者など、技術力の高い社員を擁している。昨今では顧客のビジネス環境変化に合わせ柔軟かつ迅速なシステム開発を行うために、アジャイル開発技術者の育成に注力。アジャイル開発技術者の数は、2019年3月期から2022年3月期の4年間の間に、50人から261名まで5倍以上に増えている。技術動向を捉えて最新の技術を常に追い求め、ビジネスに活用することが同社の強みだ。アジャイルの取り組みでは、顧客のビジネススピードを加速させるためのサービスを提供する。「アジャイル」と言うとソフトウェア開発だけにフォーカスが当たりがちだが、DXの推進や、ビジネススピードを加速させるためには、組織のマインド、仕組みを戦略・企画立案段階から変えていくことが大事な要素として考えられている。アジャイル型へ組織・プロセスを変えていくために、大規模なアジャイル開発フレームワークである「SAFe(R)」を提供する米国Scaled Agile, Inc.とパートナーシップを組み、顧客の組織・プロセスをアジャイル型に変革していくためのコンサルティングサービスである「アジャイル型組織/プロセス変革サービス」及び顧客とともに企画・検討から実装・運用までをトータルサポートする「アジャイル開発支援サービス」等を提供する。ウォーターフォール型では、企画→要件定義→設計→開発→テスト→リリース運用といった流れとなり、結果確認まで時間がかかるほか、外れた時の投資の無駄が大きく、後戻りしにくい(捨てにくい)ことがネックとなり、企画段階と運用段階でニーズが変わっていることが多い。DXの流れが加速するなかにおいて、IT技術は日々進歩していることから、新たな対応が後手に回りやすいと同社では考えている。一方、アジャイル型では同じ時間軸で、企画→実装→結果確認→振返り→企画→実装→結果確認→振返り→企画→実装→結果確認といった形で進められるため、結果確認までの時間が短いほか、外れた時の投資の無駄が少ない。さらに後戻りしやすい(捨てることが可能)ため、アジャイル型サービスの需要は高まりやすいだろう。顧客のDX需要拡大によってアジャイル関連事業の成長が加速しており、アジャイル関連の2022年3月期通期の売上高は前期比で21.2%増と着実に拡大している。3. プロジェクトマネジメント総合力目まぐるしく変わり不透明感の増す現代において、ITプロジェクトの重要性やリスクは高まりつつある。そのようななかで、同社はプロジェクトマネジメント力が重要だと考えている。システム開発において収益力が低下する要因の多くは、開発プロジェクトの収益性の低下であるが、同社はプロジェクトの収益性低下を個人の力と組織の力の両面からカバーしている。個人レベルではPMP(R)※を技術社員の半数以上に取得させることや、ナレッジの共有などにより対処している。組織レベルでは、ソリューション事業部がCMMI成熟度レベル4の認定を受けており、定量的な品質管理や、会社でのチェック制度、フォロー体制などが整備されている。同社はこれらを「個人のPM力」と「組織のPM力」を掛け合わせた「PM総合力」と定義し、再現性の高いシステム開発の源となっている。※PMP(R):Project Management Professionalの略。プロジェクトマネジメントに関する国際資格。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<SI>
2022/07/01 15:24
注目トピックス 日本株
TDCソフト Research Memo(3):ITコンサルティング&サービス分野など4つの事業を展開
■TDCソフト<4687>の事業概要同社グループは、2021年3月期第1四半期より今後の事業の方向性を踏まえて事業の区分を見直し、ITコンサルティング&サービス分野、金融ITソリューション分野、公共法人ITソリューション分野、プラットフォームソリューション分野の4つの事業を展開している。売上規模での主力事業は金融ITソリューション分野で、売上高の46.6%(2022年3月期実績)を占めている。ただし、顧客企業のDX推進に向けたIT需要の高まりにより、ITコンサルティング&サービス分野の成長が著しい。1. ITコンサルティング&サービス分野ITコンサルティング&サービス分野では、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けたIT戦略やシステム化構想の立案、技術コンサルティング、最新の技術や開発手法のサービス提供、自社開発のクラウドアプリケーションサービスの提供、BI※1/DWH※2、ERP※3/CRM※4に関連するソリューションサービスの提供を行っている。※1 BI:Business Intelligenceの略。社内の情報を分析し、経営に生かす手法。※2 DWH:Data Ware Houseの略。データ分析や意思決定のために、基幹系など複数のシステムから必要なデータを収集し、目的別に再構成して時系列に蓄積した統合データベースのこと。※3 ERP:Enterprise Resources Planningの略。基幹系情報システムのこと。※4 CRM:Customer Relationship Managementの略。顧客管理システムのこと。2. 金融ITソリューション分野金融ITソリューション分野では、銀行、クレジット、保険などの金融業向けにシステム構想や設計、開発、保守といった統合的なITソリューションを提供しており、同社の売上高の46.6%(2022年3月期時点)を占める主力事業である。銀行向けには、勘定系業務から情報系、インフラ/基盤の運用維持までサポートが豊富な業務ノウハウと、最新技術のシナジー効果により高品質なバンキングシステムを提供している。クレジット向けとしては、大規模かつ複雑化するクレジット業務システムにおいて、蓄積した豊富な業務ノウハウ・先端技術により、クレジット業務サイクル全般にわたるコンサルティングから運用保守まで一貫したサポートと、最適なソリューションを提供している。また保険向けでは、長年、損保・生保システムに携わってきた実績から、戦略的なビジネス展開を可能とする業務システムと即時性・拡張性・利便性に優れたシステムを提供しており、特に損保業務システムの実績は豊富で、多種目にわたる業務ノウハウを保有している。3. 公共法人ITソリューション分野公共法人ITソリューション分野では、流通業、製造業、サービス業、エネルギー業や公共向けにITソリューションの提供を行う。流通業・製造業では、営業支援から販売、物流まで基幹業務を幅広くサポートしており、システム化における各種課題の解決に応える。顧客の多様なシステム化要望に対して、設計、開発、試験、運用・保守に至るまで、ワンストップでサービスを提供。また、エネルギー業向けにおいては、基幹系・情報系のシステム構築に関して、幅広くSIサービスを提供。その他、情報サービス業向けでは、認証基盤システムなどのアプリケーション基盤の開発から維持・管理、インフラ構築、運用・保守に至るまで、多様化するニーズに応える。4. プラットフォームソリューション分野プラットフォームソリューション分野では、ITインフラの環境設計、構築、運用支援、ネットワーク製品の開発、ネットワークインテグレーション等の提供を行っている。クラウドサービスや仮想化技術によるグリーンITの実現や、レガシー資産の活用など、変わり続けるビジネスが求める最新のIT インフラソリューションをベンダーやキャリアを問わず提供している。ITインフラ構築については、上流工程から維持・管理、運用・保守までワンストップで対応可能であり、各種OS、DB(データベース)をはじめ、多くのプロダクトで対応実績が豊富である。(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<SI>
2022/07/01 15:23