注目トピックス 日本株
マイクロアド Research Memo(5):生産性向上施策により大幅増益、新規事業への投資・拡大も進む
配信日時:2025/12/26 11:05
配信元:FISCO
*11:05JST マイクロアド Research Memo(5):生産性向上施策により大幅増益、新規事業への投資・拡大も進む
■業績動向
1. 2025年9月期の業績概要
マイクロアド<9553>の2025年9月期の連結業績は、売上高が前期比14.3%増の15,670百万円、のれん償却費と株式報酬費を考慮した調整後営業利益が同109.0%増の784百万円、営業利益が同99.4%増の613百万円、経常利益が同80.2%増の531百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同31.0%減の195百万円となった。
生産性向上施策に注力したことで、ベース売上の拡大と利益率の改善が進展した。利益の算定においては、繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額が反映されており、これが一過性要因として最終利益を押し上げている。また、生産性向上施策の一環として将来の減損リスクを回避する目的で特別損失や各種費用を計上しており、この点は短期的には利益を圧迫するものの、長期的な財務健全性の確保に寄与する構造である。さらに、人的投資として2025年9月には決算賞与を実施しており、組織運営面でも重要な投資が行われた期であった。これらの一過性の要因を考慮した実質的な純利益水準は約4.2億円まで拡大した。
主力事業である「UNIVERSE」及びコンサルティング事業のいずれにおいても売上総利益が増加しており、データプロダクト事業の売上総利益は2,605百万円(前期比15.8%増)、コンサルティング事業の売上総利益も2,202百万円(同20.3%増)と両事業ともに順調な推移を見せた。生産性向上施策による構造改革で利益創出基盤を整備したと同時に、新規事業への投資・拡大にも注力した。また、2025年8月に新設した北海道支社は、既に一定の顧客基盤を持っていたこともあり順調に立ち上がっている。
2025年9月期は生産性向上施策が想定を上回る効果を発揮し、期中に2回の上方修正を実施する結果に至った。特に、各段階利益は当初の計画を大幅に上回る水準まで拡大しており、施策の進捗状況と効果が業績に確実に反映された期であったと弊社では高く評価している。
(1) データプロダクト
データプロダクトの売上高は前期比2.3%増の6,991百万円、売上総利益は同15.8%増の2,605百万円となり、第1四半期に非連結となったMADSのデジタルサイネージ事業を除いた「UNIVERSE」単独の売上高は前期比15.9%増の69.14億円、売上総利益は同24.6%増の25.95億円となった。データプロダクト全体ではMADSの非連結化による減少影響が存在したものの、そのマイナスを吸収して余りある水準まで粗利が拡大している。生産性の底上げにより事業の収益構造が強化され、売上総利益も大きく改善した。
データプロダクト「UNIVERSE」は、前期に採用した人員が本格的に戦力化したことで売上増加に寄与しており、同時に生産性が改善したことで利益率も高い伸びを示した。事業の成長を支える製品として、中小顧客を中心に需要を獲得しているBtoB向けの「シラレル」や、人材領域で展開する「MARBLE」などの業種特化型サービスがあり、これらが安定的な売上創出に寄与している。また、「UNIVERSE」では複数の業種に対して製品展開を進めており、特定業種や特定企業に依存しない事業構造を形成している点が強みとなっている。
顧客属性別の動向に着目すると、安定的な成長が期待できる「中小顧客」に重点を置いた戦略が展開されている。新人社員の配属や営業拠点の拡大といったリソースの重点投下により、この領域の強化が進められた。
大手顧客の代理店領域では前年同四半期比(2024年9月期第4四半期比、以下同)71%増、前四半期比(2025年9月期第3四半期比、以下同)でも13%増と大幅な伸びを記録しており、単価が高く大規模な案件が多いことから、景況感や季節性の影響を受けやすくボラティリティは高いものの、新商品であるUNIVERSEのデータを活用した他社プラットフォームへの広告配信サービスの開始により前年比で拡大した動きが見られた。一方で大手顧客の直販領域では前年同四半期比60%減、前四半期比15%減と減少しており、一部の大手顧客における予算縮小が影響している。ただし景況感の影響を受けづらい特性を持つため将来的なポテンシャルは大きく、アカウント数の増加による回復を目指す方針である。中小顧客の代理店領域は前年同四半期比23%増、前四半期比23%増と成長を維持している。新人社員の活動が本格化した影響が大きく、さらに2025年8月に新設された北海道支社がこの領域の拡大に寄与するなど、基盤強化が順調に進んでいる。
また、「UNIVERSE」の稼働アカウント数は非需要期にあたる第3四半期で例年どおり一時的に減少する傾向を示したが、第4四半期には回復し前年同四半期比28%とアカウント数は再び拡大している。これは、前期に採用した新人の営業活動が本格化したことや生産性向上により顧客提案件数が1.5倍まで増加したことによる成果であり、人材投資や営業効率化が順調に成果へと結びついていることを示している。顧客単価については中小顧客の比率が増加しているため若干の減少が見られるが、これは構造的な顧客構成の変化に伴う自然な推移であると言える。
収穫逓増・高収益である「データプロダクト」が売上高に占める割合は、2021年9月期の32%から2025年9月期には44.6%まで高まった。今後も同社は「データプロダクト」に注力する方針であり、より一層収益性が高まるものと弊社は予想している。
(2) コンサルティング
コンサルティングの売上高は前期比26.1%増の8,679百万円、売上総利益は同20.3%増の2,202百万円となった。メディア向けコンサルティングサービスが順調に推移したことに加え、海外コンサルティングサービスで新規事業として展開するIPmixerの収益が増加したことで、前期比で大幅な増収増益となった。
国内のメディア向けコンサルティングサービスにおいては、インターネットメディアの広告収益最大化を支援するサービスを提供しており、契約メディア数や広告枠数が着実に積み上がったことで高い成長を記録した。
海外コンサルティングサービスでは第4四半期に、IPとのコラボ商品としてIPmixerの物販売上を計上しており、売上高・粗利の双方を押し上げた。国内外双方で新規事業が寄与し、総じて成長の裾野が広がっている状況である。
(3) オルタナティブデータ事業の進捗
オルタナティブデータ事業では、「UNIVERSE」に蓄積されたデータを活用し、自己資金による株式投資を行っている。2025年9月期は年利換算で-4.84%となった。同事業では新旧2つのモデルを並列運用していたが、7月に旧モデルを停止し、新モデルへの完全切り替えを実施済みである。新モデルのみを対象とした1月〜9月の実績は1,652万円のプラス、年利換算5.99%となっており、今後は新モデルでの集中運用を進める方針である。加えて、新たな分析モデルを継続的に試行しており、今後も随時アップデートを行いながらパフォーマンス向上を目指す方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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1. 2025年9月期の業績概要
マイクロアド<9553>の2025年9月期の連結業績は、売上高が前期比14.3%増の15,670百万円、のれん償却費と株式報酬費を考慮した調整後営業利益が同109.0%増の784百万円、営業利益が同99.4%増の613百万円、経常利益が同80.2%増の531百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同31.0%減の195百万円となった。
生産性向上施策に注力したことで、ベース売上の拡大と利益率の改善が進展した。利益の算定においては、繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額が反映されており、これが一過性要因として最終利益を押し上げている。また、生産性向上施策の一環として将来の減損リスクを回避する目的で特別損失や各種費用を計上しており、この点は短期的には利益を圧迫するものの、長期的な財務健全性の確保に寄与する構造である。さらに、人的投資として2025年9月には決算賞与を実施しており、組織運営面でも重要な投資が行われた期であった。これらの一過性の要因を考慮した実質的な純利益水準は約4.2億円まで拡大した。
主力事業である「UNIVERSE」及びコンサルティング事業のいずれにおいても売上総利益が増加しており、データプロダクト事業の売上総利益は2,605百万円(前期比15.8%増)、コンサルティング事業の売上総利益も2,202百万円(同20.3%増)と両事業ともに順調な推移を見せた。生産性向上施策による構造改革で利益創出基盤を整備したと同時に、新規事業への投資・拡大にも注力した。また、2025年8月に新設した北海道支社は、既に一定の顧客基盤を持っていたこともあり順調に立ち上がっている。
2025年9月期は生産性向上施策が想定を上回る効果を発揮し、期中に2回の上方修正を実施する結果に至った。特に、各段階利益は当初の計画を大幅に上回る水準まで拡大しており、施策の進捗状況と効果が業績に確実に反映された期であったと弊社では高く評価している。
(1) データプロダクト
データプロダクトの売上高は前期比2.3%増の6,991百万円、売上総利益は同15.8%増の2,605百万円となり、第1四半期に非連結となったMADSのデジタルサイネージ事業を除いた「UNIVERSE」単独の売上高は前期比15.9%増の69.14億円、売上総利益は同24.6%増の25.95億円となった。データプロダクト全体ではMADSの非連結化による減少影響が存在したものの、そのマイナスを吸収して余りある水準まで粗利が拡大している。生産性の底上げにより事業の収益構造が強化され、売上総利益も大きく改善した。
データプロダクト「UNIVERSE」は、前期に採用した人員が本格的に戦力化したことで売上増加に寄与しており、同時に生産性が改善したことで利益率も高い伸びを示した。事業の成長を支える製品として、中小顧客を中心に需要を獲得しているBtoB向けの「シラレル」や、人材領域で展開する「MARBLE」などの業種特化型サービスがあり、これらが安定的な売上創出に寄与している。また、「UNIVERSE」では複数の業種に対して製品展開を進めており、特定業種や特定企業に依存しない事業構造を形成している点が強みとなっている。
顧客属性別の動向に着目すると、安定的な成長が期待できる「中小顧客」に重点を置いた戦略が展開されている。新人社員の配属や営業拠点の拡大といったリソースの重点投下により、この領域の強化が進められた。
大手顧客の代理店領域では前年同四半期比(2024年9月期第4四半期比、以下同)71%増、前四半期比(2025年9月期第3四半期比、以下同)でも13%増と大幅な伸びを記録しており、単価が高く大規模な案件が多いことから、景況感や季節性の影響を受けやすくボラティリティは高いものの、新商品であるUNIVERSEのデータを活用した他社プラットフォームへの広告配信サービスの開始により前年比で拡大した動きが見られた。一方で大手顧客の直販領域では前年同四半期比60%減、前四半期比15%減と減少しており、一部の大手顧客における予算縮小が影響している。ただし景況感の影響を受けづらい特性を持つため将来的なポテンシャルは大きく、アカウント数の増加による回復を目指す方針である。中小顧客の代理店領域は前年同四半期比23%増、前四半期比23%増と成長を維持している。新人社員の活動が本格化した影響が大きく、さらに2025年8月に新設された北海道支社がこの領域の拡大に寄与するなど、基盤強化が順調に進んでいる。
また、「UNIVERSE」の稼働アカウント数は非需要期にあたる第3四半期で例年どおり一時的に減少する傾向を示したが、第4四半期には回復し前年同四半期比28%とアカウント数は再び拡大している。これは、前期に採用した新人の営業活動が本格化したことや生産性向上により顧客提案件数が1.5倍まで増加したことによる成果であり、人材投資や営業効率化が順調に成果へと結びついていることを示している。顧客単価については中小顧客の比率が増加しているため若干の減少が見られるが、これは構造的な顧客構成の変化に伴う自然な推移であると言える。
収穫逓増・高収益である「データプロダクト」が売上高に占める割合は、2021年9月期の32%から2025年9月期には44.6%まで高まった。今後も同社は「データプロダクト」に注力する方針であり、より一層収益性が高まるものと弊社は予想している。
(2) コンサルティング
コンサルティングの売上高は前期比26.1%増の8,679百万円、売上総利益は同20.3%増の2,202百万円となった。メディア向けコンサルティングサービスが順調に推移したことに加え、海外コンサルティングサービスで新規事業として展開するIPmixerの収益が増加したことで、前期比で大幅な増収増益となった。
国内のメディア向けコンサルティングサービスにおいては、インターネットメディアの広告収益最大化を支援するサービスを提供しており、契約メディア数や広告枠数が着実に積み上がったことで高い成長を記録した。
海外コンサルティングサービスでは第4四半期に、IPとのコラボ商品としてIPmixerの物販売上を計上しており、売上高・粗利の双方を押し上げた。国内外双方で新規事業が寄与し、総じて成長の裾野が広がっている状況である。
(3) オルタナティブデータ事業の進捗
オルタナティブデータ事業では、「UNIVERSE」に蓄積されたデータを活用し、自己資金による株式投資を行っている。2025年9月期は年利換算で-4.84%となった。同事業では新旧2つのモデルを並列運用していたが、7月に旧モデルを停止し、新モデルへの完全切り替えを実施済みである。新モデルのみを対象とした1月〜9月の実績は1,652万円のプラス、年利換算5.99%となっており、今後は新モデルでの集中運用を進める方針である。加えて、新たな分析モデルを継続的に試行しており、今後も随時アップデートを行いながらパフォーマンス向上を目指す方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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