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フジ日本:精糖を基盤にイヌリンを軸とした機能性素材・フードサイエンス領域へ展開、配当利回り3%超え
配信日時:2025/12/26 12:14
配信元:FISCO
*12:14JST フジ日本:精糖を基盤にイヌリンを軸とした機能性素材・フードサイエンス領域へ展開、配当利回り3%超え
フジ日本<2114>は、精製糖、砂糖関連製品の製造販売を主力に食品添加物や機能性食品素材「イヌリン」の製造販売なども行っている。セグメントは、糖類事業(前期売上構成比率48.9%)、機能性素材事業(同47.8%)、不動産事業(同2.3%)の3つに分類でき、非砂糖セグメントは計51.1%と事業ポートフォリオの再構築を進めている。
糖類事業では、業務用砂糖を主体として国内へ販売展開している。国が需給を管理しているため、安定した事業ではあるが、他社との製品差別化も難しく、市場の成長性も見通しにくい。機能性素材事業では、東南アジアを中心とする海外及び国内で展開する砂糖由来の水溶性食品繊維「イヌリン」の販売が増加している。不動産事業は、賃貸を開始した「東横INN茅場町駅」をはじめ、各物件の堅調な稼働により安定収益を確保している。
競合環境を見ると、糖類事業は国内でDM三井製糖ホールディングスやウェルネオシュガーといった大手が存在し、規模や取扱量では同社を上回る。一方で、精糖業界全体は国による需給管理制度の下で運営されており、価格競争が激化しにくい構造となっている。こうした環境下において、フジ日本は自社で製造設備を抱え込まず、太平洋製糖へのアウトソースを活用することで固定費負担を抑え、需給調整や販売機能に経営資源を集中させている。また、塩水港精糖とのアライアンスを通じて、単独では得にくい規模の経済や物流効率の向上を補完しており、成熟市場における合理的なポジショニングを取っている。一方、機能性素材事業、とりわけイヌリンについては競争環境が大きく異なる。同分野では欧州のチコリ由来イヌリンメーカーがグローバルで高いシェアを有し、国内では伊藤忠商事が欧州産イヌリンの販売を担っている。
また、同社の特徴として、精糖事業と機能性素材事業を完全に切り離すのではなく、「糖」を起点とした技術・知見を横断的に活用している点が挙げられる。精糖事業で培った経験を基に、独自の技術によって世界で初めて砂糖からイヌリンを作り出すことに成功しているが、精糖事業と同様に、長年蓄積した原料調達、品質管理、安定供給のノウハウは、機能性素材事業においても顧客からの信頼獲得に寄与しているとみられる。イヌリンは腸内環境の改善をはじめ、肌や骨、脳機能など身体の様々な健康機能へ効果があるが、同社が製造販売するイヌリンは他の水溶性食物繊維(難消化性デキストリンやポリデキストロース)と比べて100%が腸内細菌のエサになる特徴を持っている。さらに、イヌリンの用途については一般食品に加え、ペットフードなど周辺分野への展開余地もあり、特定用途に依存しない事業展開が可能な点も特徴である。
このように、大手競合は原料や生産規模で優位性を持つ一方、フジ日本は精糖事業で培った糖加工技術を背景に、品質の安定性や用途提案力、顧客への技術サポートを強みとして差別化を図っている。
2026年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が14,180百万円(前年同期比4.2%増)、営業利益1,847百万円(同14.3%増)で着地した。糖類事業では、インバウンド需要による外食関連や土産菓子向けの出荷が好調となり、コスト面では原材料費、物流コストの上昇が続いている中、品質管理の徹底による製品の安定供給に取り組むことで顧客満足度の向上を図った。また、機能性素材では「イヌリン」ならびに子会社であるユニテックフーズ株式会社の食品素材の販売増加が寄与した。通期計画は、売上高29,100百万円(同3.1%増)、営業利益3,100百万円(同4.1%減)を見込んでいる。
中期経営計画「CHANGE-2028」では、経常利益36億円を目標に掲げており、その達成に向けた最大のドライバーは機能性素材事業の成長と海外展開の位置付けが明確である。精糖事業は安定収益源として維持しつつ、成長領域へ経営資源をシフトする方針で、投融資枠180億円を設定してM&A、海外投資、設備投資を通じた成長加速を視野に入れている。また、塩水港精糖とのアライアンスについては、足元では製造・物流・情報面での効率化といった基盤強化が中心であるが、中長期的には機能性素材やフードサイエンス領域でのシナジー創出も期待される。長期経営目標は、経常利益は100億円、海外比率は40%以上、ROEは12%以上としている。食を通じた社会課題解決への貢献を掲げており、人手不足対応や食品ロス削減といったテーマに沿った商品・サービス展開を進める考え。2024年11月、タイとの大手食品会社との戦略的協業に合意し、新規事業としてキャッサバでん粉製造販売事業及び周辺事業への参入も開始した。今後はでん粉製造工場2か所の稼働により、キャッサバでん粉の拡販を進めつつ、新たな付加価値を持つ商品を開発していく。日・タイの製造拠点から海外展開を目指す。
12月18日には、タイ国イヌリン工場の製造能力を 1.5 倍に拡大することを発表した。イヌリンの販売数量は国内外で年々増加しており、特に海外では大手ユーザーへの納入が好調に推移。成長するグローバル市場を見据え、製造能力を拡大し、安定供給を実現するため、工場増設に着手する。稼働開始時期は2027年7月予定となっている。
株主還元については、安定配当を基本方針とし、業績動向を踏まえた配当水準の維持・向上を志向、DOE3.5%以上も見据えている。また、自社製品が届く株主優待も導入している。成長投資を優先しつつも、継続的な株主還元を行う姿勢を示しており、個人投資家にとっては中長期保有を意識しやすい点といえる。今後は、収益基盤の強化に伴い、還元余地が徐々に拡大していく可能性もあろう。
総じて、フジ日本は精糖メーカーからフードサイエンスカンパニーを目指すため、攻めへの転換を進めている企業である。機能性素材事業を成長ドライバーとして海外展開をはかり、新規領域への開拓進捗が焦点となる。安定した製糖事業という基盤と成長余地を併せ持つ点を踏まえ、配当利回り3%で推移するなか、同社の中長期的な業績動向に引き続き注目していきたい。
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糖類事業では、業務用砂糖を主体として国内へ販売展開している。国が需給を管理しているため、安定した事業ではあるが、他社との製品差別化も難しく、市場の成長性も見通しにくい。機能性素材事業では、東南アジアを中心とする海外及び国内で展開する砂糖由来の水溶性食品繊維「イヌリン」の販売が増加している。不動産事業は、賃貸を開始した「東横INN茅場町駅」をはじめ、各物件の堅調な稼働により安定収益を確保している。
競合環境を見ると、糖類事業は国内でDM三井製糖ホールディングスやウェルネオシュガーといった大手が存在し、規模や取扱量では同社を上回る。一方で、精糖業界全体は国による需給管理制度の下で運営されており、価格競争が激化しにくい構造となっている。こうした環境下において、フジ日本は自社で製造設備を抱え込まず、太平洋製糖へのアウトソースを活用することで固定費負担を抑え、需給調整や販売機能に経営資源を集中させている。また、塩水港精糖とのアライアンスを通じて、単独では得にくい規模の経済や物流効率の向上を補完しており、成熟市場における合理的なポジショニングを取っている。一方、機能性素材事業、とりわけイヌリンについては競争環境が大きく異なる。同分野では欧州のチコリ由来イヌリンメーカーがグローバルで高いシェアを有し、国内では伊藤忠商事が欧州産イヌリンの販売を担っている。
また、同社の特徴として、精糖事業と機能性素材事業を完全に切り離すのではなく、「糖」を起点とした技術・知見を横断的に活用している点が挙げられる。精糖事業で培った経験を基に、独自の技術によって世界で初めて砂糖からイヌリンを作り出すことに成功しているが、精糖事業と同様に、長年蓄積した原料調達、品質管理、安定供給のノウハウは、機能性素材事業においても顧客からの信頼獲得に寄与しているとみられる。イヌリンは腸内環境の改善をはじめ、肌や骨、脳機能など身体の様々な健康機能へ効果があるが、同社が製造販売するイヌリンは他の水溶性食物繊維(難消化性デキストリンやポリデキストロース)と比べて100%が腸内細菌のエサになる特徴を持っている。さらに、イヌリンの用途については一般食品に加え、ペットフードなど周辺分野への展開余地もあり、特定用途に依存しない事業展開が可能な点も特徴である。
このように、大手競合は原料や生産規模で優位性を持つ一方、フジ日本は精糖事業で培った糖加工技術を背景に、品質の安定性や用途提案力、顧客への技術サポートを強みとして差別化を図っている。
2026年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が14,180百万円(前年同期比4.2%増)、営業利益1,847百万円(同14.3%増)で着地した。糖類事業では、インバウンド需要による外食関連や土産菓子向けの出荷が好調となり、コスト面では原材料費、物流コストの上昇が続いている中、品質管理の徹底による製品の安定供給に取り組むことで顧客満足度の向上を図った。また、機能性素材では「イヌリン」ならびに子会社であるユニテックフーズ株式会社の食品素材の販売増加が寄与した。通期計画は、売上高29,100百万円(同3.1%増)、営業利益3,100百万円(同4.1%減)を見込んでいる。
中期経営計画「CHANGE-2028」では、経常利益36億円を目標に掲げており、その達成に向けた最大のドライバーは機能性素材事業の成長と海外展開の位置付けが明確である。精糖事業は安定収益源として維持しつつ、成長領域へ経営資源をシフトする方針で、投融資枠180億円を設定してM&A、海外投資、設備投資を通じた成長加速を視野に入れている。また、塩水港精糖とのアライアンスについては、足元では製造・物流・情報面での効率化といった基盤強化が中心であるが、中長期的には機能性素材やフードサイエンス領域でのシナジー創出も期待される。長期経営目標は、経常利益は100億円、海外比率は40%以上、ROEは12%以上としている。食を通じた社会課題解決への貢献を掲げており、人手不足対応や食品ロス削減といったテーマに沿った商品・サービス展開を進める考え。2024年11月、タイとの大手食品会社との戦略的協業に合意し、新規事業としてキャッサバでん粉製造販売事業及び周辺事業への参入も開始した。今後はでん粉製造工場2か所の稼働により、キャッサバでん粉の拡販を進めつつ、新たな付加価値を持つ商品を開発していく。日・タイの製造拠点から海外展開を目指す。
12月18日には、タイ国イヌリン工場の製造能力を 1.5 倍に拡大することを発表した。イヌリンの販売数量は国内外で年々増加しており、特に海外では大手ユーザーへの納入が好調に推移。成長するグローバル市場を見据え、製造能力を拡大し、安定供給を実現するため、工場増設に着手する。稼働開始時期は2027年7月予定となっている。
株主還元については、安定配当を基本方針とし、業績動向を踏まえた配当水準の維持・向上を志向、DOE3.5%以上も見据えている。また、自社製品が届く株主優待も導入している。成長投資を優先しつつも、継続的な株主還元を行う姿勢を示しており、個人投資家にとっては中長期保有を意識しやすい点といえる。今後は、収益基盤の強化に伴い、還元余地が徐々に拡大していく可能性もあろう。
総じて、フジ日本は精糖メーカーからフードサイエンスカンパニーを目指すため、攻めへの転換を進めている企業である。機能性素材事業を成長ドライバーとして海外展開をはかり、新規領域への開拓進捗が焦点となる。安定した製糖事業という基盤と成長余地を併せ持つ点を踏まえ、配当利回り3%で推移するなか、同社の中長期的な業績動向に引き続き注目していきたい。
<NH>
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