注目トピックス 日本株
京葉瓦斯 Research Memo(4):2027年12月期に経常利益60億円、ROE4.5%を目指す
配信日時:2025/12/26 12:34
配信元:FISCO
*12:34JST 京葉瓦斯 Research Memo(4):2027年12月期に経常利益60億円、ROE4.5%を目指す
■京葉瓦斯<9539>の中期経営計画
1. 「中期経営計画2025-2027」の概要
カーボンニュートラル実現に向けてGX(Green Transformation)推進法が2023年5月に成立し、カーボンプライシングの仕組み構築など脱炭素への動きが加速している。また、生成AIや5Gなど高速で信頼性の高いデジタルサービスの普及が進んでいる。さらに、記録的な猛暑や地震、頻発する局所的大雨など気候変動や自然災害の激甚化、地政学リスクの高まりや新興国の経済発展に伴うエネルギーの需要増加と価格高騰などもあり、同社の事業環境が激変している。こうした変化に対応するため、同社は2024年に「中期経営計画2025-2027」を策定した。基本方針としては、都市ガスの安定供給・保安確保という社会的使命を担い続けるとともに、新しい価値を広く提供することで、顧客の“期待に応える”存在となることを目指す。
基本方針のなかで、同社は3つの事業領域の成長とそれを支える経営基盤への投資を強化する方針を掲げている。エネルギー領域において、安定供給や無事故はもちろん、着実なガス事業運営に向けて再投資を継続する計画である。加えて、電気事業と再生可能エネルギー事業の強化に向けた投資も行い、ガス事業で着実な利益を創出すると同時に、ガス事業以外の収益拡大も推進する。ライフサービス領域では、様々なサービスを通じて顧客の“くらしのかかりつけ”を担う「くらしサポートサービス」への投資を進める計画である。リアルエステート領域では、「リーフシティ市川」の開発や不動産への投資によって、不動産事業の成長と地域の課題解決に取り組む。経営基盤の強化に向けては、人財やCX(顧客体験)・DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資を強化する方針である。
数値目標として、2027年12月期に経常利益60億円、ROE4.5%の達成を掲げている。「中期経営計画2025-2027」では、2021年12月期〜2023年12月期の平均経常利益19億円から41億円の増益を計画する。
増益の大部分は、ガス及び電気の販売量増加により確保する方針である。電気事業においては、ガス100万件の顧客を取り込んで顧客数を10万件から拡大するとともに、調達の低コスト化を図る。ライフサービス領域では、水回りからリフォーム全体に視野を広げるなど新たな取り組みを進める。リアルエステート領域では、「リーフシティ市川」の本格稼働が見込まれるが、「リーフシティ市川」以外の新たな賃貸事業などを強化する。
さらに、人口がピークアウトする将来を見据えた長期的な営業体制を考慮し、客数が増えているうちにDX推進による業務効率化やローコスト化などガス事業の効率化を進める。
経営基盤も強化、中期経営計画の進捗管理精度を向上
2. 具体的な取り組み
具体的には、エネルギー領域で、ガス事業者としての使命を果たすとともに、環境性能の高いガス・電気の拡大を図り、地域のけん引役としてカーボンニュートラルを推進する。そのため、安全・安心の取り組みの強化に注力する。効果的な投資による導管ネットワークの強靭化、事業者間連携などによる災害対応力の向上、災害に強いガス機器などの普及、地域防災への貢献を通じて、レジリエンス※と災害対策の強化を進める。また、スマート保安のさらなる推進や保安スペシャリストの育成などを通じて、保安体制を強化・拡充する。
※ 困難に対してしなやかに適応し、回復する能力や精神的な力。
低炭素・脱炭素社会への貢献に向け、都市ガス・LPGの普及拡大、オール京葉ガスの接点機会を生かした電気販売の強化、デジタルデータを活用したエネルギー最適化の提案、電気工事の内製化などによるワンストップサービスの提供など、多様なエネルギーの提供とエネルギーの高度利用を進める。そのなかで、自治体や地域と連携し、脱炭素に向けたコンサルティングから削減策の実行支援までを担い、ゼロカーボンシティの実現に貢献する方針である。また、カーボンオフセット都市ガス商材の拡充や、CO2排出が実質ゼロとなる非化石価値付電気料金プランの拡販、バイオガスやe-メタンの調査研究など、カーボンオフセットな都市ガス提供へ向けた動きを強化する。
M&Aやアライアンスも視野に入れており、分散型エネルギーリソースを束ねて制御するVPPアグリゲーター※への挑戦も検討している。
※ 分散型エネルギーリソースを1つの発電所であるかのように統合・制御するVPP(Virtual Power Plant)で、太陽光発電設備や蓄電池などのエネルギーリソースを一括で監視・制御する事業者。
ライフサービス領域では、「ハウスクリーニング」「まるごとサポート」「クラシモ」など多様な「くらしサポートサービス」を提供する“くらしのかかりつけ”を目指す。具体的には、顧客のライフステージに合わせて対面接点とデジタル接点を最適に組み合わせることで、顧客接点の拡大と強化を図る。高品質のサービスを提供することに加え、提案力・施工力・対応力を向上することで、「クラシモ」を顧客や地域から信頼されるリフォームブランドへと強化する。また、業務用サービスも強化し、顧客の事業成長を支援するサービスを提供するとともに、地域振興向けにデジタル技術の活用を図り、プロモーション強化やデータ活用によるターゲティングを進める。また、M&Aやアライアンスなどを活用した新サービスの創出を通じ、「くらしサポートサービス」全体を強化する。
リアルエステート領域では、「リーフシティ市川」の開発や不動産事業の展開を通じて、地域・社会の活性化に貢献する方針である。「リーフシティ市川」では、開発完了後のエリアマネジメントによって、地域の活性化と防災に資するまちづくりを進めるため、持続可能な事業運営体制を構築する。さらに、千葉県北西部を中心にM&Aやアライアンスを視野に不動産事業の多角化と機能強化を図り、新たな不動産へ投資するとともに賃貸住宅・高齢者施設などの賃貸不動産の取得も推進する。
経営基盤の強化では、従業員の働きがいを高め行動の変容を促すことで、中期経営計画の達成と持続的な企業成長を目指す。そのため、CX向上とDX推進を一体として取り組む方針である。具体的には、エンゲージメントの把握・向上、個の能力の最大化、自律的なキャリア形成、人財確保、DE&I(多様性・公平性・包括性)など人的資本経営を推進する。そのうえで、DX人財の育成へ向け、人事体系に基づく階層別教育や仕事の進め方に対する意識改革を進める。CX向上では、顧客の期待と評価のギャップを把握し改善アクションを実施することで、顧客の体験価値向上を目指す。さらに、開発の柔軟性と低コストを併せ持つ新基幹システムを構築し、約1,000の業務でデジタル化や廃止・簡略化を検討することで、生産性の向上やCX改善につなげる方針である。
なお、同社は2025年12月期より報告セグメントを変更したが、ステークホルダーに対する情報開示の透明性を高めるとともに、「中期経営計画2025-2027」の進捗管理の精度向上を図ることが目的である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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1. 「中期経営計画2025-2027」の概要
カーボンニュートラル実現に向けてGX(Green Transformation)推進法が2023年5月に成立し、カーボンプライシングの仕組み構築など脱炭素への動きが加速している。また、生成AIや5Gなど高速で信頼性の高いデジタルサービスの普及が進んでいる。さらに、記録的な猛暑や地震、頻発する局所的大雨など気候変動や自然災害の激甚化、地政学リスクの高まりや新興国の経済発展に伴うエネルギーの需要増加と価格高騰などもあり、同社の事業環境が激変している。こうした変化に対応するため、同社は2024年に「中期経営計画2025-2027」を策定した。基本方針としては、都市ガスの安定供給・保安確保という社会的使命を担い続けるとともに、新しい価値を広く提供することで、顧客の“期待に応える”存在となることを目指す。
基本方針のなかで、同社は3つの事業領域の成長とそれを支える経営基盤への投資を強化する方針を掲げている。エネルギー領域において、安定供給や無事故はもちろん、着実なガス事業運営に向けて再投資を継続する計画である。加えて、電気事業と再生可能エネルギー事業の強化に向けた投資も行い、ガス事業で着実な利益を創出すると同時に、ガス事業以外の収益拡大も推進する。ライフサービス領域では、様々なサービスを通じて顧客の“くらしのかかりつけ”を担う「くらしサポートサービス」への投資を進める計画である。リアルエステート領域では、「リーフシティ市川」の開発や不動産への投資によって、不動産事業の成長と地域の課題解決に取り組む。経営基盤の強化に向けては、人財やCX(顧客体験)・DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資を強化する方針である。
数値目標として、2027年12月期に経常利益60億円、ROE4.5%の達成を掲げている。「中期経営計画2025-2027」では、2021年12月期〜2023年12月期の平均経常利益19億円から41億円の増益を計画する。
増益の大部分は、ガス及び電気の販売量増加により確保する方針である。電気事業においては、ガス100万件の顧客を取り込んで顧客数を10万件から拡大するとともに、調達の低コスト化を図る。ライフサービス領域では、水回りからリフォーム全体に視野を広げるなど新たな取り組みを進める。リアルエステート領域では、「リーフシティ市川」の本格稼働が見込まれるが、「リーフシティ市川」以外の新たな賃貸事業などを強化する。
さらに、人口がピークアウトする将来を見据えた長期的な営業体制を考慮し、客数が増えているうちにDX推進による業務効率化やローコスト化などガス事業の効率化を進める。
経営基盤も強化、中期経営計画の進捗管理精度を向上
2. 具体的な取り組み
具体的には、エネルギー領域で、ガス事業者としての使命を果たすとともに、環境性能の高いガス・電気の拡大を図り、地域のけん引役としてカーボンニュートラルを推進する。そのため、安全・安心の取り組みの強化に注力する。効果的な投資による導管ネットワークの強靭化、事業者間連携などによる災害対応力の向上、災害に強いガス機器などの普及、地域防災への貢献を通じて、レジリエンス※と災害対策の強化を進める。また、スマート保安のさらなる推進や保安スペシャリストの育成などを通じて、保安体制を強化・拡充する。
※ 困難に対してしなやかに適応し、回復する能力や精神的な力。
低炭素・脱炭素社会への貢献に向け、都市ガス・LPGの普及拡大、オール京葉ガスの接点機会を生かした電気販売の強化、デジタルデータを活用したエネルギー最適化の提案、電気工事の内製化などによるワンストップサービスの提供など、多様なエネルギーの提供とエネルギーの高度利用を進める。そのなかで、自治体や地域と連携し、脱炭素に向けたコンサルティングから削減策の実行支援までを担い、ゼロカーボンシティの実現に貢献する方針である。また、カーボンオフセット都市ガス商材の拡充や、CO2排出が実質ゼロとなる非化石価値付電気料金プランの拡販、バイオガスやe-メタンの調査研究など、カーボンオフセットな都市ガス提供へ向けた動きを強化する。
M&Aやアライアンスも視野に入れており、分散型エネルギーリソースを束ねて制御するVPPアグリゲーター※への挑戦も検討している。
※ 分散型エネルギーリソースを1つの発電所であるかのように統合・制御するVPP(Virtual Power Plant)で、太陽光発電設備や蓄電池などのエネルギーリソースを一括で監視・制御する事業者。
ライフサービス領域では、「ハウスクリーニング」「まるごとサポート」「クラシモ」など多様な「くらしサポートサービス」を提供する“くらしのかかりつけ”を目指す。具体的には、顧客のライフステージに合わせて対面接点とデジタル接点を最適に組み合わせることで、顧客接点の拡大と強化を図る。高品質のサービスを提供することに加え、提案力・施工力・対応力を向上することで、「クラシモ」を顧客や地域から信頼されるリフォームブランドへと強化する。また、業務用サービスも強化し、顧客の事業成長を支援するサービスを提供するとともに、地域振興向けにデジタル技術の活用を図り、プロモーション強化やデータ活用によるターゲティングを進める。また、M&Aやアライアンスなどを活用した新サービスの創出を通じ、「くらしサポートサービス」全体を強化する。
リアルエステート領域では、「リーフシティ市川」の開発や不動産事業の展開を通じて、地域・社会の活性化に貢献する方針である。「リーフシティ市川」では、開発完了後のエリアマネジメントによって、地域の活性化と防災に資するまちづくりを進めるため、持続可能な事業運営体制を構築する。さらに、千葉県北西部を中心にM&Aやアライアンスを視野に不動産事業の多角化と機能強化を図り、新たな不動産へ投資するとともに賃貸住宅・高齢者施設などの賃貸不動産の取得も推進する。
経営基盤の強化では、従業員の働きがいを高め行動の変容を促すことで、中期経営計画の達成と持続的な企業成長を目指す。そのため、CX向上とDX推進を一体として取り組む方針である。具体的には、エンゲージメントの把握・向上、個の能力の最大化、自律的なキャリア形成、人財確保、DE&I(多様性・公平性・包括性)など人的資本経営を推進する。そのうえで、DX人財の育成へ向け、人事体系に基づく階層別教育や仕事の進め方に対する意識改革を進める。CX向上では、顧客の期待と評価のギャップを把握し改善アクションを実施することで、顧客の体験価値向上を目指す。さらに、開発の柔軟性と低コストを併せ持つ新基幹システムを構築し、約1,000の業務でデジタル化や廃止・簡略化を検討することで、生産性の向上やCX改善につなげる方針である。
なお、同社は2025年12月期より報告セグメントを変更したが、ステークホルダーに対する情報開示の透明性を高めるとともに、「中期経営計画2025-2027」の進捗管理の精度向上を図ることが目的である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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