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世界で加速する無人機(UAV)活用に注目【実業之日本フォーラム】
2021年9月22日、CNNは、「米国航空機大手ボーイング社は、オーストラリア東部トゥーンバに、米国以外で初めて無人戦闘機の最終組み立て工場の新設計画を発表した。米国の大手航空機製造メーカーは、かつて全ての製品を米国内で製造していた時代もあったが、国外で製品を製造するのは人件費削減、外国への製品の納期の短縮や経費削減を図るためだ」と報じた。豪州は、9月14日に米英と新インド太平洋安全保障同盟「AUKUS(オーカス)」を創設しており、今回の決定は、米英豪関係緊密化の更なる梃となるであろう。ボーイング社は、9月14日に無人給油機MQ-25「スティングレイ」が、米海軍F-35C「ライトニングII」への空中給油に成功したと発表した。これに先駆け6月7日にはF/A-18「スーパーホーネット」に対し、8月19日にはE-2D「ホークアイ」に対し空中給油を成功させている。また、アメリカ空軍研究所は、3月下旬に亜音速自律無人戦闘機XQ-58A「ヴァルキリー」の飛行試験において、機体内部の兵器格納庫から攻撃兵器「ALTIUS-600」の射出成功という攻撃能力や、「gatewayONE」という通信ツールによる第5世代のF-22とF-35戦闘機間のデータ通信などの通信中継機能確立に成功している。その他、米空軍は、2009年段階で120機のMQ-1「プレデター」、2015年には、MQ-9「リーパー」340機を調達し、無人航空戦力の充実を図っている。航空自衛隊は8月24日から3日連続で、中国の無人機に対してスクランブル発進を行った。背景として、沖縄南方海域で行われた英空母「クイーン・エリザベス」を中核とする打撃群と海上自衛隊との共同訓練や、米、印、豪と海上自衛隊による「マラバール21」共同訓練に対する情報収集を行った可能性が指摘されている。ここで特筆すべきは、TB-001とBZK‐005という無人機2機種がY-9情報収集機とともに、初めて宮古海峡を通過し、太平洋側に進出してきたことが確認されたことだ。また、令和2年度防衛白書は、「中国は2019年10月の建国70周年軍事パレードにおいて、攻撃型ステルス無人機とされるGJ-11と呼称される機体や、高高度高速無人偵察機WZ-8と呼称される機体が展示された。中国は小型無人機を多数使用する『スウォーム(群れ)』技術の向上も見積もられている。このような航空戦力の近代化状況などから、中国の、より遠方での戦闘支援可能な能力や情報収集能力の向上を着実に進めている」と指摘している。さらに、2021年9月28日から開催される中国珠海での航空ショウにおいて高高度無人機「無偵WZ-7」が初披露される予定だと報道された。では、世界で加速する無人機(UAV)の状況について概観してみよう。イスラエルは、これまで米国と1、2位を争う無人機大国であった。非常に厳しい戦略環境下で、国民の人口が少ないイスラエルは、兵士の損耗を極減しながら戦闘目的を達成しなければ国家成立要件の一つである国民そのものが枯渇してしまうという状況だったからであろう。イスラエルは1970年代から無人機の開発を開始し、現在では米国や中国と並ぶ世界有数の無人機製造国であり、輸出国である。ストックホルム国際平和研究所の調査によると1985年から2014年までの国別の無人機の輸出割合において、イスラエルは約60%を占め世界1位であった。新聞報道等によると、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争においてイスラエルの無人機IAI(Israel Aerospace Industries)社製「ハーピー」「ハーピーNG」等の徘徊兵器(標的の周辺を長時間飛び回り、設定された条件を満たした目標に特攻する小型の無人兵器をいう:IAI公式サイト)がレーダーサイト等への自爆攻撃により防空網を破壊したと言われている。また、トルコでは「バイラクタルTB2」無人機を製造しているが、ロイターによると、ナゴルノ・カラバフ紛争での「バイラクタルTB2」無人機活躍を受けて、アルバニア、ポーランド、ラトビア等から調達要望が殺到しており、ウクライナ、カタールはすでに入手していると報道された。米国のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「カラシニコフAK-47を彷彿とさせる売れ行きだ」と称賛、また、フランスのル・モンド紙は「トルコ製UAVは飛ぶように売れる。たった数年でトルコは米国、イスラエル、中国に追いつきそうな勢いをみせた」と表現した。トルコの地元メディア、サバ紙によると、「バイラクタルTB2」を製造したバイカル社は、亜音速のジェット無人戦闘機「MIUS」の研究開発を進め、2023年に初飛行を計画しているとのことである。「MIUS」は、空対空ミサイル、空対地巡航ミサイル、精密誘導兵器等を約1.5トンまで搭載でき、スキージャンプ台のような離発着装置を備えた強襲揚陸艦「アナドル」から発着艦可能な兵器となるとのことである。トルコも着々と新型の無人機開発に乗り出している。世界で、様々な機能や兵装を有した無人機(UAV)の開発や運用が進む中、日本では、2021年3月18日、航空自衛隊三沢基地に「臨時偵察航空隊」が新編され、今後調達されるRQ-4「グローバル・ホーク」の運用開始に向け、地上構成品、整備用機材、受入施設などを整え、隊員約70名体制で新たな一歩を踏み出した。防衛省は、31中期防衛力整備計画において「空中での常続的監視が実施できる無人機部隊の新編」を掲げ、すでにFMS(Foreign Military Sales「有償援助」)を通じて米国政府から3機のRQ-4「グローバル・ホーク」無人機及び関連設備等の調達を行い、いよいよわが国での無人機の運用が始まろうとしている状況である。世界の航空戦闘は無人機(UAV)やロボット兵器化へと進んでいる。わが国周辺においても、無人機大国でもある中国の無人機による周辺海域での運用が確認され、今後ますますその頻度が増加することが予想される。わが国は、今後の無人機活用時代に備え、法整備や運用面の手続きなど、不具合のないよう準備しなければならない。自衛隊法84条の「領空侵犯措置」において、無人機への対応は十分なのか、不十分であれば何を補わなければならないのか。また、現場における対応も手順や意思疎通は確立しているだろうか。不具合事案が発生してから右往左往するのではなく、あらゆる事態を想定した万全の体制の構築を期待したい。サンタフェ総研上席研究員 將司 覚防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。写真:USAF/Cover Images/Newscom/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/09/28 16:00
注目トピックス 経済総合
野村総合研究所を対象とするプット型eワラントが上昇率上位にランクイン(28日10:02時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしてはビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 10月 1.0米ドル、イーサリアム2021年11月 プラス5倍トラッカー3回 月 2,900米ドル、JFEホールディングス<5411>コール153回 月 2,050円、ビットコイン2021年11月 プラス5倍トラッカー3回 月 46,000米ドルなどが見られる。上昇率上位は野村総合研究所<4307>プット32回 10月 3,600円(+44.4%)、日本郵船<9101>プット119回 10月 5,400円(+40.0%)、アドバンテスト<6857>プット190回 10月 9,200円(+34.7%)、日本郵船プット122回 11月 7,900円(+29.1%)、アドバンテストプット189回 10月 7,800円(+26.1%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/09/28 10:22
注目トピックス 経済総合
NYの視点:米9月ダラス連銀製造業指数は予想外に悪化、コスト上昇や人手不足が主要な課題
最新の米9月ダラス連銀製造業活動指数は4.6と、8月9.0から上昇予想に反し低下し昨年7月来で最低となった。重要な項目である新規受注が減少。回答者によると、ビジネスがコロナ以前の水準に回復する兆候が見られているという。ただ、材料費の高騰で販売価格引き上げに繋がると指摘。また、需要増加に十分な人員が確保できず、人手不足、材料の不足や価格高騰が依然主要問題となっていると指摘されている。■9月ダラス連銀製造業活動指数:4.6(8月9.0)見通し:-2.8(11.5)生産:24.2(20.8)設備稼働:24.5(21.7)新規受注9.5(15.6)受注伸び率:2.5(10.7)Unfilled orders:14.9(22.6)Shipment:18.7(15.2)Delivery time:21.4(19.5)原材料仕入れ価格:80.4(74.9)販売価格:44(38.1)賃金:42.7(43.4)雇用:26.3(21.9)週労働時間:20.4(24.3)見通し不透明性:23.3(21.1)6カ月先ビジネス活動:11.5(15.1)見通し:12.7(17.6)生産:41.8(44.3)設備稼働:31.9(38.1)新規受注33.4(40.7)受注伸び率:25.9(29)原材料仕入れ価格:55.3(55.7)販売価格:44.6(39.8)賃金:50.4(60.6)雇用:49.8(44.5)週労働時間:18.6(13.9)
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2021/09/28 07:40
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.36%高でスタート、人民銀の資金供給スタンスを好感
27日の上海総合指数は買い先行。前日比0.36%高の3625.96ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時53分現在、0.11%高の3617.16ptで推移している。中国人民銀行(中央銀行)の資金供給スタンスが好感されている。一方、不動産大手の中国恒大集団をめぐる不透明感が解消されていないことが引き続き足かせになっている。
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2021/09/27 11:03
注目トピックス 経済総合
東日本旅客鉄道を対象とするコール型eワラントが上昇率上位にランクイン(27日10:01時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしてはビットコイン先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 月 1.0米ドルなどが見られる。上昇率上位は東日本旅客鉄道<9020>コール144回 10月 8,600円(+50.0%)、東海旅客鉄道<9022>コール36回 10月 19,000円(+50.0%)、東日本旅客鉄道コール143回 10月 7,500円(+45.1%)、東海旅客鉄道コール35回 10月 16,500円(+43.7%)、東日本旅客鉄道コール148回 11月 9,600円(+38.9%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/09/27 10:12
注目トピックス 経済総合
NYの視点:今週の注目:パウエルFRB議長とイエレン財務長官の証言、PCEコア、GDP、債務上限問題、ECB
短期投機家・投資家の円の売り持ち高は前々週からさらに減少し1カ月ぶり低水準となった。ポンドは再び売り持ちに転じた。英中銀が金融政策決定会合で、速やかな利上げを示唆し投資家のポンドの買戻しが強まった。先週は引き続き、中国恒大のドル建て社債利払いの行方を睨む。また、米国の政府機関閉鎖を回避するつなぎ融資案可決期限を30日に迎える。予算案がまとまらず米国の債務上限が引き上げられなければ、10月にも米国連邦政府は機関閉鎖の危機に直面するため、行方には引き続き注目が集まる。また、パウエルFRB議長とイエレン財務長官が上下院でパンデミック救済策に関する証言を予定しており、注目材料となる。欧州中央銀行(ECB)はフォーラムを開催。ラガルド総裁をはじめ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長、日銀の黒田総裁、英中銀のベイリー総裁が参加予定で、パンデミックを受けた各国の大規模緩和の行方などを探るために発言に注目される。FRBは9月連邦公開市場委員会(FOMC)で大規模緩和維持を決定すると同時に、資産購入縮小の条件が整い速やかに開始、2022年の利上げの可能性を示唆した。11月の会合で資産購入縮小開始が発表されることがほぼ織り込まれつつあり金利の上昇やドル買いにつながっていた。しかし、FRBのパウエル議長は24日に開催した「FED Listens」イベントで、現在進行しているようなサプライチェーンの問題は見たことがなく、「人手不足、スラックが共存した経済は今までなかった」と、不透明性が依然存続することを指摘しており、11月のテーパーは決定事項ではないことも証明された。日本では新型コロナウイルスの変異株流行が収束できずに、回復に引き続き影響を与えると見られ、緩和策の解消開始は先進諸国の中で、最後となる可能性が強く、円売り要因となる可能性がある。さらに、ドイツ総選挙、自民党総裁選投開票が予定されている。ドイツでは16年間首相を務めたメルケル氏の後任が選出される。■今週の主な注目イベント●米国27日:8月耐久財受注、9月ダラス連銀製造業活動指数、ブレイナードFRB理事、エバンス・シカゴ連銀総裁NABEで講演、ウィリアムズ米NY連銀総裁がNYエコノミッククラブで討論会28日:8月前渡商品貿易収支、8月卸売在庫、7月FHFA住宅価格指数、S&P20都市住宅価格指数、9月消費者信頼感指数、9月リッチモンド連銀製造業指数、イエレン財務長官がNABEで講演、エバンス・シカゴ連銀総裁が挨拶、ボスティック米アトランタ連銀総裁が経済見通し討論、ブラード・セントルイス連銀総裁が米経済・金融政策を討論、ボウマンFRB理事が講演パウエルFRB議長と、イエレン財務長官上院銀行委でパンデミック救済策に関し証言29日:8月中古住宅販売仮契約、ボスティック米アトランタ連銀総裁講演パウエル議長がECBのフォーラム参加30日:新規失業保険申請件数、4−6月期GDP確定値、シカゴPMI、FRBのパウエル議長と、イエレン財務長官が下院でパンデミック救済策に関し証言、ウィリアムズ米NY連銀総裁がFRBのパンデミック救済策を討論、ボスティック米アトランタ連銀総裁が講演、エバンス・シカゴ連銀総裁が経済見通しに関し討論、ブラード・セントルイス連銀総裁が開催あいさつ、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁が討論会参加政府機関閉鎖を回避するつなぎ融資案可決期限10月1日:8月PCEコアデフレーター、9月製造業PMI、9月ミシガン大消費者信頼感指数、9月ISM製造業景況指数、ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁が経済見通しを討論、メスター・クリーブランド連銀総裁がインフレや雇用に関し討論●ユーロ圏26日ドイツ総選挙28日:ラガルドECB総裁がECBフォーラムで講演29日:ユーロ圏消費者信頼感30日:ユーロ圏、独、伊失業率、仏、独、伊CPI1日:ユーロ圏CPI、仏、ユーロ圏、独PMI●日本29日:自民党総裁選投開票、黒田日銀総裁が討論会に参加●英国29日:ベイリー英中銀総裁がECBフォーラムで講演30日:GDP1日:製造業PMI●中国30日:財新製造業・非製造業PMI
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2021/09/27 07:37
注目トピックス 経済総合
国内外の注目経済指標:7-9月期日銀短観の改善は期待薄か
9月27日-10月1日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。■27日(月)午後9時30分発表予定○(米)8月耐久財受注-予想は前月比+0.6%参考となる7月実績は前月比-0.1%。民間航空機・同部品の受注減少が主な要因。民間航空機以外の受注は強弱まちまち。8月については、民間航空機の受注増は期待できないこと、自動車・同部品や金属、機械の受注は減少する可能性があるため、全体的には前月比マイナスとなる可能性がある。■28日(火)午後11時発表予定○(米)9月CB消費者信頼感指数-予想は115.0参考となる8月実績は113.8。新型コロナウイルスの感染再拡大が警戒されていること、雇用、インフレ見通しは不透明であることから、信頼感指数の大幅な改善は期待できない。8月実績並みの水準にとどまる見込み。■10月1日(金)午前8時50分発表予定○(日)7-9月期日銀短観概要-予想は大企業製造業DIは13参考となる4-6月期実績は14。米国の景気拡大や世界的なIT需要の増加により、製造業は輸出の増加を起点に景況感が大きく改善した。7-9月期については、外部環境の改善が続いているが、新型コロナウイルスの感染流行は終息していないことから、DIの変化幅は横ばいか、若干マイナスとなる可能性がある。■10月1日(金)午後9時30分発表予定○(米)8月コアPCE価格指数-予想は前年比+3.6%参考となる7月実績は+3.6%。インフレ加速を示唆するデータは増えていないが、一部で供給不足の状態が続いており、前年比では+3%超の水準を維持する見込み。○その他の主な経済指標の発表予定・9月28日(火):(米)7月S&P/コアロジックCS20都市住宅価格指数・9月30日(木):(中)9月製造業PMI、(中)9月非製造業PMI、(欧)8月ユーロ圏失業率、(米)4-6月期国内総生産確定値・10月1日(金):(日)8月失業率、(欧)9月ユーロ圏消費者物価指数、(米)9月ISM製造業景況指数
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2021/09/25 14:34
注目トピックス 経済総合
(中国)上海総合指数は0.12%安でスタート、不動産の不透明感が完全に払しょくできず
24日の上海総合指数は売り先行。前日比0.12%安の3637.87ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時56分現在、0.15%安の3636.92ptで推移している。デベロッパー大手である中国恒大集団をめぐる不透明感が完全に払しょくされていないことが引き続き足かせになっている。一方、中国人民銀行(中央銀行)による流行性の供給や海外株高などが指数を下支えしている。
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2021/09/24 11:02
注目トピックス 経済総合
血の紐帯(2)−AUKUSが安全保障に与える影響−【実業之日本フォーラム】
本稿は「血の紐帯(1)−AUKUSが安全保障に与える影響−【実業之日本フォーラム】」の続編となる。アメリカにとってAUKUSは、対中国包囲網の兵力補完として、イギリスにとってはBREXIT(EU離脱)を経て、「Global Britain」をめざすための太平洋における拠点確保という観点から、メリットが大きい。今回の合意に基づき、原子力潜水艦の設計、製造、訓練、核燃料の保管、使用済み核燃料の処理等の問題の検討を、今後18か月以内に終える計画である。AUKUSが乗り越えなければならない試練は、これら技術上のハードルだけではない。周辺諸国から理解を得ることを忘れてはならない。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、豪モリソン首相に対し、原子力潜水艦のニュージーランド領海への侵入は容認しないと伝えている。ASEANは1997年に発効した「東南アジア非核兵器地帯条約」を締結しており、原子力潜水艦の建造を進めるAUKUSを歓迎するような環境にはない。マレーシア首相は、インド太平洋地域の軍拡と核兵器の拡散を、インドネシア外相は軍拡競争と軍事力の誇示に対する懸念をそれぞれ示している。一方、シンガポールのリー・シェンロン首相は、AUKUSが地域の平和と安定に寄与することを期待するとともに、地域の枠組みを補強する役割を果たすことを望むと述べている。周辺諸国は、AUKUSの枠組みで中国との軍事的対立が激化することを歓迎していないことは明らかである。また、インドネシアが「軍事力の誇示」を懸念するとしているのは、オーストラリアの原子力潜水艦保有は、自国にとって脅威となり得るとの認識を示すものであろう。周辺諸国から懸念を生まないように、一定程度の透明性を持った原子力潜水艦の整備及び運用が望まれる。日本にとってAUKUSの創設には期待と懸念の双方がある。加藤官房長官は9月16日の記者会見で、「インド太平洋地域の平和と安全にとって重要だ」と歓迎している。QUADの一員であるオーストラリアの軍事力が向上することは、QUADの対中抑止力が強化されることにつながる。加藤官房長官が歓迎するとしたのはAUKUSのこの点を評価したものである。一方日本が懸念するは次の三点と考えられる。第一に、米豪と仏の対立が激化した場合、欧州正面におけるNATOの結束が弱まることになり、ロシアの強圧的な外交姿勢への対抗に亀裂が入る。北方領土問題を抱える日本にとって、欧州方面におけるNATOを中心とする対ロ圧力の変化は、日ロ交渉におけるロシアの姿勢に大きく影響する。欧州方面におけるNATOの圧力が減少した場合、ロシアが対日交渉を強気に進めてくる可能性は否定できない。次にインド太平洋方面におけるフランスのコミットメントの低下である。今年5月に日米豪仏4か国による共同訓練「ARC21」が実施された。日本からは、陸海及び空自が参加し、防空戦や着上陸訓練が実施されている。フランスは、太平洋方面に仏領ポリネシアをはじめ多くの域外領土を保有しており、インド太平洋方面に空母シャルル・ド・ゴールを派遣するなど積極的に関与する姿勢を示している。米豪と仏の対立はこの協力の枠組み推進に竿さすものである。QUADの枠組みに、他の国を加える「拡大QUAD」が検討されているが、フランス及びイギリスを加えた拡大QUADについて調整を進め、英仏のインド太平洋へのコミットメントをつなぎ止める必要がある。最後は、韓国の原子力潜水艦建造に与える影響である。2020年8月に韓国国防部が公表した「2021~2025国防中期計画」には、空母に加えて4,000トン級新型(原子力)潜水艦3隻が含まれていた。韓国が原子力潜水艦を建造するためには、米国からの技術供与が不可欠である。2017年9月に行われた米韓首脳会談で、文大統領は、トランプ前大統領に、「北朝鮮に対し圧倒的な軍事力優位を維持する一環として、原子力潜水艦建造に対する協力を求めた」と報道されている。今年9月に潜水艦から弾道ミサイル発射試験を成功させた韓国にとって、原子力潜水艦の保有は悲願と言える。オーストラリアには原子力潜水艦の技術を供与するのに、同じ同盟国である韓国にはしないのかという問いに答えるのは難しい。オーストラリアは特別とした場合、「やはりアングロサクソンという血筋」を大事にするのかとの議論が起こり、韓国内に反米感情や米韓同盟破棄論が起こってくるであろう。日本にとっても、必ずしも意思疎通が十分実施できない韓国の原潜が日本周辺を行動することは、探知した場合の識別に時間がかかるという点も含め、自衛隊の運用に必ずしもいい影響は与えない。さらには、日韓の軍事力バランスが大きく変化し、日韓関係がさらに悪化する可能性も否定できない。今回創設されたAUKUSの対中国牽制上の役割は大きい。アメリカはフランスの反発をある程度は織り込み済みであったと推定できるが、ここまで強烈とは見ていなかった可能性が高い。米軍のアフガニスタン撤退で生まれた、同盟国のアメリカに対する信頼低下を助長させるという点も指摘できる。すでにNATO高官から、今回のAUKUS創設は同盟国軽視、ロシアに対する警戒感不足であるとの見解が示されている。アメリカが今後とも世界のリーダーとして世界秩序をけん引していこうとするのであれば、大使召還というカードまで切ったフランスをいかになだめるかが大きなカギとなるであろう。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:UPI/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/09/24 10:58
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血の紐帯(1)−AUKUSが安全保障に与える影響−【実業之日本フォーラム】
2021年9月15日、米大統領府は、オーストラリアのモリソン首相、イギリスのジョンソン首相及びアメリカのバイデン大統領のAUKUS(Australia, United Kingdom, United States)創設に関するテレビ会議方式による共同会見を放送した。この枠組みは、軍事技術に係る協力を推進することが主体であり、最初の取り組みとして、オーストラリア原子力潜水艦8隻の取得に協力することが挙げられている。他の協力分野として、サイバー、人工知能、量子工学及び海中工学が示されている。米英豪三国首脳の発言として共通するのは、この取り組みが新たな枠組みであることに加え、三国の特殊なつながり(紐帯)を強調していることである。モリソン首相は、三カ国は長い間、同じレンズで世の中を見てきたとし、バイデン大統領は、この三カ国は過去百年以上にわたり、肩を並べて戦ってきたと述べている。米英豪の三カ国は、情報共有の国際的枠組みである「5Eye’s」の加盟国であり、アングロサクソン国家という共通点を持つ。今回のAUKUS設立によって、オーストラリアがフランスの造船会社と締結していた総額700億ドルにも上る「Attack級通常型潜水艦12隻」の契約が解除された。フランス政府は何ら事前交渉のない突然の決定であるとして強く反発、9月17日には駐米豪フランス大使の召還を伝えている。AUKUS設立は、単なる軍事技術協力の枠を超え、米国を中心とする同盟体制を危機に陥れる危険性をはらんでいる。今後の安全保障環境に与える影響について考えてみたい。準軍事的視点から見た場合、原子力潜水艦の能力は、通常型潜水艦の能力をはるかに凌駕する。例えば、オーストラリア南部のアデレードから南シナ海までは、ロンボク海峡を通過すると約4,500海里(約8,300キロメートル)である。燃料補給の必要がない原子力潜水艦は平均20ノット程度で航行可能であり、10日間もかからずに南シナ海に到達できる。一方通常型潜水艦は12ノット程度の巡航速力が精一杯であり、15日間以上を要する。無補給(原子力潜水艦の場合は、主として食糧)行動が30日間程度と考えると、原子力潜水艦は10日間南シナ海における行動が可能となるのに対し、通常型潜水艦は、途中で補給しない限り南シナ海における活動は不可能となる。さらに、通常型潜水艦は定期的にバッテリーを充電する必要があるため、哨戒機等により発見されやすいという脆弱性も指摘できる。従って注目すべき点は、オーストラリアは2016年にフランスの会社と契約を結んだ際、なぜ原子力潜水艦ではなく、通常型潜水艦を選択したのかである。原子力潜水艦は通常型潜水艦よりも高価であり、予算の制約が大きかったことは確かである。しかしながら、最も大きな変化は、原子力に関するオーストラリア政府の方針転換である。オーストラリアはウラン埋蔵量が世界最大と言われているが、国内法で商業用原子力発電所の建設と運転を禁じている。しかしながら、2019年に温室ガス削減の観点から原発の有用性が提唱され、原子力に対するオーストラリア国民の見方もポジティブに変わりつつある。このような原子力に対する国民の見方の変化に加え、中国への対抗、さらには、通常型潜水艦導入に関し、経費の高騰や計画の遅延といったフランス政府への不信感が、今回の決定の裏にある。9月19日、モリソン首相は、フランスの批判に反発、フランスは計画の破棄に気づいていたはずだと述べている。フランスの造船会社による潜水艦建造が遅れていることは、再三にわたり報道されていた。今年6月、フランスのフィガロ紙は、オーストラリア政府が潜水艦に関し、「プランB」(代替計画)を真剣に検討していると伝えている。筆者も個人的には、このままだと、日本製の潜水艦が代替潜水艦として選ばれる可能性があるのではないかと考えていた。米豪に強烈に反発しているフランスではあるが、自国の取り組みやオーストラリアの危機感に対する見通しが甘かったことも反省すべきであろう。AUKUS創設に当たり、安全保障上最も留意しなければならないのは、この枠組みが、アングロサクソンという血の紐帯を彷彿させることである。今回三カ国の首脳が記者会見の発言でそれぞれ歴史に敷衍したことは、その懸念を増幅させる。「5eye’s」という情報共有に加え、最先端技術の共有もアングロサクソンの中で進めるのではないかという疑念が広がった場合、従来米国が進めてきた「共通の価値観を持つ国々との協力」という中に、排他的なグループが形成されるとの見方が広がりかねない。アメリカと同盟又は安全保障上の枠組みを持つ「非アングロサクソン」国家が、いざとなったらアフガニスタンのようにアメリカに見捨てられるかもしれないという危惧を持つことが最も懸念される。フランスの米豪に対する強い反発は、豪・EU自由貿易協定を阻害することや、逆に中・EU自由貿易協定を促進するような動きにつながるということも指摘されている。中国は一帯一路政策の下、欧州における影響力拡大に努めてきたが、最近では、その強引な手法や新疆ウィグル地区における人権問題への懸念から、その勢いに陰りが見え始めている。中国が、今回の米豪とフランスの対立を利用し、欧州における影響力拡大を再度活性化しようとすることは確実である。フランスが、振り上げたこぶしを静かに下すことのできるような情勢を作ることは、対中国を目指すAUKUSの責務であろう。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:UPI/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/09/24 10:56
注目トピックス 経済総合
金リンク債を対象とするプット型eワラントが上昇率上位にランクイン(24日10:10時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしてはイーサリアム2021年11月 マイナス3倍トラッカー2回 11月 4,300米ドル、イーサリアム2021年11月 マイナス3倍トラッカー1回 月 3,700米ドル、エヌビディアコール124回 月 220米ドル、ビットコイン2021年11月 プラス5倍トラッカー3回 月 46,000米ドルなどが見られる。上昇率上位はニアピン米ドルr2 1319回 10月 112円(+91.7%)、金リンク債プット307回 10月 1,700米ドル(+85.2%)、金リンク債プット311回 11月 1,550米ドル(+80.0%)、銀リンク債プット66回 11月 18米ドル(+50.0%)、金リンク債プット312回 11月 1,700米ドル(+46.3%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/09/24 10:36
注目トピックス 経済総合
NYの視点:米新規失業保険申請件数は予想外に2週連続増、パンデミックの影響根強い
労働省が発表した先週分新規失業保険申請件数(9/18)は前週比+1.6万件の35.1万件となった。前週から減少予想に反し増加し、8月来で最大となった。失業保険継続受給者数(9/11)も284.5万人と、前回271.4万人から減少以上に反し増加した。政府の財政支援策が失効したため、失業者支援プログラムの総受給者数は85.6万人減の1125万人。ハリケーンアイダの影響を受けた前週からの調整で、エコノミストは今週分の申請件数が改善が期待されていたが、予想外の2週連続の増加となった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も警告している通り労働市場には依然かなりのスラックが存続していると見られる。また、新型コロナウイルスの変異株流行が一部のセクターでの経済活動再開を抑制している。そのほか、サプライチェーンの混乱で材料不足などから、自動車工場の閉鎖なども目立っており、パンデミックの影響が根強い。ただ、変動の少ない4週平均は33.5万件と、前週から小幅減少した。失業保険継続受給者数の4週平均は280万人と、前週から1.5万人減少。パンデミック以前は173万人だった。今週は9月雇用統計の非農業部門雇用者数に含まれる最終週。いくらか、雇用の伸びが抑制された可能性も出てきた。パウエル議長は9月の雇用統計が妥当な結果となった場合、早くて11月にも資産購入規模の削減も可能だとの考えを示していたが、11月の決定は現状で微妙となる。
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2021/09/24 07:34
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(中国)上海総合指数は0.63%高でスタート、不動産大手のデフォルト不安が後退
23日の上海総合指数は買い先行。前日比0.63%高の3651.27ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時53分現在、0.85%高の3659.15ptで推移している。中国恒大集団のデフォルト不安の後退が引き続き好感されている。また、年内の利下げ期待が根強いことも引き続き支援材料。外部環境では、米金融緩和の継続が外資の流出懸念を緩和させている。なお、連邦準備制度理事会(FRB)は市場の予想通り連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利や資産入策の据え置きを決定した。
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2021/09/23 10:59
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(中国)上海総合指数は1.40%安でスタート、連休中の海外株安を警戒
22日の上海総合指数は売り先行。前日比1.40%安の3563.21ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時59分現在、0.51%安の3595.63ptで推移している。連休中の海外株安が警戒され、中国株にも売り圧力が強まっている。また、鉄鋼や鉄鉱石価格の下落も対象銘柄の圧迫材料。一方、米中関係の一段悪化懸念の後退などが指数をサポートしている。
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2021/09/22 11:04
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伊藤忠商事を対象とするプット型eワラントが上昇率上位にランクイン(22日10:26時点のeワラント取引動向)
手仕舞い売りとしては日経平均プット1825回 10月 25,500円、イーサリアム2021年11月 プラス5倍トラッカー3回 月 2,900米ドル、ビットコイン2021年10月 プラス5倍トラッカー3回 月 39,500米ドル、金リンク債 プラス5倍トラッカー47回 月 1,750米ドルなどが見られる。上昇率上位は伊藤忠商事<8001>プット104回 10月 2,750円(+37.0%)、伊藤忠商事プット105回 10月 3,250円(+35.0%)、銀リンク債 プラス5倍トラッカー29回 11月 23米ドル(+32.6%)、三井不動産<8801>コール151回 10月 3,000円(+27.3%)、日本ガイシ<5333>プット42回 10月 1,750円(+26.9%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/09/22 10:53
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アフガン退避、成否を分けた紛争国の相場観(2)【実業之日本フォーラム】
本稿は、『アフガン退避、成否を分けた紛争国の相場観(1)』の続きである。4.成否を分けた紛争国の「相場観」今回のアフガン退避オペレーションで、NATO加盟国や韓国が自国民のみならずアフガニスタンの協力者も含め退避を実施できた一方で、日本はアフガン人協力者を退避させられなかった。その成否を分けたのは、米欧などNATO加盟国や韓国と比べた時、日本が国家として、アフガニスタンという紛争国の「相場観」を欠いていたためではなかったか。武漢にはチャーター機が派遣できた。南スーダンには自衛隊がPKOとして展開していたし、衝突から数日後には事態が鎮静化し始めた。しかしアフガニスタンでは反政府武装勢力タリバンが首都カブールを瞬く間に制圧し、群衆が国際空港の滑走路まで押し寄せた。ここで日本ができたことは、米英の支援を受けつつ大使館員を一時退避させること、まずはそれが精一杯だった。しかし米国をはじめ各国は、国家として、この危機にほぼ共通した相場観を持って対応したように見える。つまり、8月末の米軍撤退期限は迫っており、タリバンがカブールを制圧し混迷が深まる中、時間が経てば状況はさらに悪化する。しかも混乱に乗じてIS-Kがテロ攻撃を仕掛けてくるのも時間の問題だろう。カブールの土地勘に基づく、そうした相場観があったのではないか。だからこそ、いち早く自国軍の輸送機を展開し、自国民およびアフガン人協力者の退避に動いた。日本も現場では同様の相場観を持っていたのかもしれない。カブール陥落が迫る中、東京では外務省と防衛省が連携を続け、8月14日には自衛隊機派遣も検討されていたという。しかし急転直下、8月15日のカブール陥落という現実を目の当たりにし、その検討は止まってしまった。足かせとなったのは自衛隊機派遣の要件である厳しい法的制約だった。在外邦人等の輸送について定めた自衛隊法84条の4は「輸送を安全に実施することができると認めるとき」でなければ自衛隊機の派遣を認めていない。カブール国際空港では離陸する軍用機につかまって振り落とされる人々まで出ていた。これでは、とても自衛隊法が求める「安全」が確保されているとは言い難い。そう政府内で判断されても仕方ない状況が生じていた。しかも、もし派遣された要員に万が一のことがあれば、政府が国会で追及を受けることは間違いなく、支持率の下落が続いていた菅政権には大きな痛手となっていただろう。政治的にも慎重な判断を余儀なくされた。しかし、「安全」でなければ邦人や現地の協力者を退避させられないという現行法のままでは、将来、台湾や朝鮮半島をめぐり起こり得る有事において、政府はふたたび慎重になり、最悪、立ちすくんでしまうのではないか。これまで自衛隊は内閣官房、外務省などと連携し「在外邦人等保護措置訓練」を実施してきた。派遣に備え待機部隊もあらかじめ指定していた。有事において邦人、そしてかけがえのない仲間である現地の人々を救出するため、自衛隊機を展開する退避オペレーションが、より機動的に実施できるよう、自衛隊法や運用の見直しが必要であろう。5.アフガン人現地職員の退避が外交に及ぼすインパクト日本という平和な島国で、戦争のリアリティを感じることは少ない。銃声を聞くことはもちろん、街中で銃を見ることは、まずない。紛争地を経験した人も少ない。難民も少ない。紛争国の現地職員や通訳の重要性や、ひとたび政府が崩壊すれば彼らが命の危険にさらされる現実について、今回をきっかけに知った人も多いのではないか。カブール陥落前に、邦人はともかく、何としてでも日本に関わりのあるアフガン人も救出しなければという思いを持つ人は限られていた。現行の自衛隊法では、退避を希望する日本人が一人もいない場合、現地の協力者等のみを退避させることはできない。しかし、危機時に現地職員など協力者を退避させられないことは人道的に問題があるのみならず、国益を損なう。現地職員にすれば、日本政府は有事に助けてくれないのではないか、見捨てられるのではないかとの不安を持つからである。紛争国で現地職員の協力が得られなければ、日本の活動は大きく制約される。G7のうち日本以外の6か国、そしてトルコや湾岸諸国が大使館の現地職員など多くのアフガン人を退避させ、日本が後手に回ったことは、これからのアフガニスタンをめぐる外交にもボディブローのように効いてくるだろう。9月6日、米国のブリンケン国務長官はオースティン国防長官とともにカタールを訪問し、退避オペレーションへの協力に謝意を示した。さらに9月8日、ブリンケン国務長官はドイツのラムシュタイン米空軍基地を訪れ、マース独外相とともに、アフガン情勢をめぐるオンライン閣僚会合を共催した。22か国の外相とEU外務・安全保障上級代表、NATO事務総長、国連事務次長が出席した。トランプ政権はドイツの駐留米軍を大幅に削減する方針を示していたが、その時から一転、アフガン退避を機に、米独外相が共催したこの会合は、米独関係の深まりを象徴する出来事となった。さらに、この会合はアフガンからの出国を希望する人々が安全に移動できるよう、タリバン、そしてアフガンに残された人々に対してもメッセージを発信する機会となった。振り返れば2001年11月、当時のタリバン政権が崩壊したあと、ドイツは和平会議を誘致した。これを米国や隣国など周辺国が支持し、アフガン国内の北部連合や亡命アフガン人組織も巻き込んで、ドイツ政府はボン和平会議を開催した。ドイツは「議論の場を主催する力(convening power)」を発揮した。最近のアフガン情勢をめぐるドイツを見ると、当時の動きが思い出される。このようにアフガニスタンをめぐる外交は活発に動いている。また、アフガン内政やタリバンの動向、IS-Kによるタリバンを狙った攻撃などに関する情報収集と分析も大切である。アフガンから欧米や湾岸諸国へ退避した各国の現地職員は、引き続き情報分析や外交を支えているのだろう。また、すでにジャーナリストや国連職員が、一時退避先からカブールに戻り始めている。国連の幹部も次々とカブールを訪問している。アフガニスタンをめぐる外交や人道支援、メディアの動きが活発だ。日本大使館も、いまは臨時事務所をドーハに構えているが、そのうちカブールに戻ることになるだろう。カブールには、危険を承知でアフガニスタンに残り、日本のために引き続き働きたいというアフガン人職員もいるだろう。一方で、一刻も早く退避したい、あるいは家族だけでも退避させてほしいと願う人も多いはずだ。そうした現地職員の声に応えることができなければ、日本政府が築いてきた信頼も失われてしまう。カブールでは商用機のフライトが再開しつつあるものの、多くのアフガン人の出国が、いまだ認められていない。日本政府のみならずオールジャパンで、退避が実現できるよう、地道な努力を続けていく必要がある。6.今こそ検証を米国ではカブール陥落直後から、記者や議会がバイデン政権に対して見通しの甘さを追及してきた。そのたびに政府高官が言及していたのが、検証の必要性である。サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は ”hot wash”、ミリー統合参謀本部議長は ”after action review” を実施する方針だと繰り返し述べた。いずれもアフター・アクション・レビュー、つまり検証を意味する。早速、米議会ではアフガニスタンからの米軍撤退について検証が始まった。下院は9月13日に5時間超、上院は9月14日に3時間半超、ブリンケン国務長官を招いて公聴会を開いた。日本では防衛省・自衛隊が今回の任務について検証すると公表している。また茂木外務大臣も9月3日の記者会見で、アフガン人の退避支援とともに、検証の必要性に言及している。しかし有事のNEOは、政府一丸となって取り組むべき危機対応である。官邸、外務省、防衛省・自衛隊、内閣官房など関係省庁も参加する、包括的な検証が必要であろう。検証で重要なことは、決して責任追及の場にしないことである。善玉・悪玉の構図を描くのではなく、クリティカル・レビューを行う。退避オペレーションに関与した当事者の声をできるだけ網羅的に集める。あくまで証拠に基づき、実証主義の精神に徹する。検証で一般的に問われる項目は、大きく以下の4つである。(1)事前に、何が起こると予想されていたか(2)実際に起こったことは何か(3)うまくいったことは何か、それはなぜか(好事例)(4)何が、どのように改善されるべきか(教訓、提言)「喉元過ぎれば熱さを忘れる」では、現場が奮闘した経験はすぐに風化していく。国家として紛争国や有事の相場観を養うこともできない。アフガン退避をめぐる意思決定の背景を丁寧に紐解き、建設的な検証を行うことは、我が国の危機管理のためにも大切である。写真:AP/アフロ【参考文献】紀谷昌彦『南スーダンに平和をつくる』ちくま新書、2019年。「武漢からの邦人救出と水際対策強化」『新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)会調査・検証報告書』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年。室岡鉄夫「韓国軍の国際平和協力活動—湾岸戦争から国連PKO参加法の成立まで」『防衛研究所紀要』第13巻第2号(2011年1月)。【執筆者プロフィール】相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員。国連・外務省・IT企業で国際政治や危機管理の実務に携わり、2020年から現職。研究分野は国際公共政策、国際紛争、新型コロナ対策やワクチン外交など健康安全保障、経済安全保障、制裁、サイバー、新興技術。2020年前半の日本のコロナ対応を検証した「コロナ民間臨調」で事務局をつとめ、報告書では国境管理(水際対策)、官邸、治療薬・ワクチンに関する章で共著者。慶應義塾大学法学部卒、東京大学公共政策大学院修了。ツイッター:https://twitter.com/Yoshi_Sagara実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )
<RS>
2021/09/22 10:14
注目トピックス 経済総合
アフガン退避、成否を分けた紛争国の相場観(1)【実業之日本フォーラム】
カブール陥落後、日本に関わりを持つ多くのアフガニスタン人が現地に取り残された。他方で、米国や英国などNATO加盟国、そして韓国も、多くの自国民とアフガン人協力者を退避させた。この成否を分けたものは何だったのだろうか。また将来、台湾や朝鮮半島をめぐる有事でも予想される邦人や現地協力者の退避に備え、今回の退避オペレーションから、何を、どう学ぶべきだろうか。1.アフガン退避オペレーション世界でカブールほど危険な首都はない。2020年後半は毎週のように市内で自爆テロや爆発があり、多くの民間人が犠牲になった。アフガン政府要人や外国人が市内を移動する際は、常にこうした攻撃に遭遇するリスクにさらされていた。また車で移動する際には爆発物が仕掛けられていないか、ガレージを出た途端に攻撃を受けないか警戒する必要もあった。カブールで勤務する外交官や国際機関職員は、長年、こうした極めて厳しい環境で勤務してきた。そうしたなか8月15日にカブールが陥落した。日本政府は米国との覚書により、米軍機に余裕があれば大使館職員を同乗させ退避させられることになっていた。米軍ヘリの上空からの護衛(エアカバー)を受け、大使館の日本人職員12名をなんとか空港に向かわせることができた。しかし空港の敷地内には入れたものの、そこから米軍機が離発着する地点までが遠かった。滑走路には群衆が押し寄せていた。結局、大使館員は空港内に宿泊し、待機することになる。NHKの報道によれば、その時イスタンブールにいた岡田隆・駐アフガニスタン大使が英国のローリー・ブリストウ駐アフガニスタン大使に要請し、英国軍の輸送機により大使館員12名をドバイに退避させることができた。タリバンがカブールに入域し情勢が混沌とする中、日本人職員に被害を出さず、タリバンの人質として拘束されることもなく、事前に準備していた米軍機での退避の代わりに、英国と連携し英国軍機で退避させたこと自体は、一定の評価がなされるべきであろう。しかし、日本と関わりを持ち国外退避を希望する多くのアフガニスタンの人々が残っていた。日本の大使館や国際協力機構(JICA)事務所で現地職員として勤務し、退避を希望するアフガニスタン人は数十名、その家族を含めると数百名規模と見られている。さらに日本の大学院に留学後、アフガニスタン共和国政府の政府幹部や行政官、大学教授など、アフガニスタンの復興と発展のため活躍されていた方々は1,000人を超える。日本政府はそのうち約500人を自衛隊機で輸送させようと試みた。8月23日、C-2輸送機とC-130H輸送機の派遣を決定し隣国パキスタンへ派遣した。8月26日には、退避を希望する邦人2名とアフガニスタン人約500名のためバス27台を用意し、カブール国際空港へ向かう準備を整えていた。しかし不運なことに、その直後、空港付近でIS-K(イスラム国ホラーサーン州)の自爆テロ攻撃が発生する。バスに乗った邦人とアフガン人は、自衛隊機までたどり着けなかった。このテロ事件後、タリバンはアフガニスタン人を出国させない方針に転換した。タリバンは、対外的には一緒にアフガニスタンを再建してほしいと述べていたが、その本心はIS-Kの関係者が逃亡することを阻止したかったのかもしれない。いずれにせよ、これで日本に関わりがあるアフガン人も退避することができなくなってしまった。自衛隊機での退避を希望した邦人1名と、空港内で活動するためカブールに戻ってきていた日本大使館員や防衛省・自衛隊の職員を乗せ、C-130はパキスタンへと向かった。日本政府の活動を現場で支え、国外退避を希望するアフガニスタン人が今回、多く取り残された。この現状に一番無念さを感じているのは、退避できた大使館員やJICA事務所の日本人職員だろう。どの国の大使館や国連、開発・人道支援機関も、通訳、現地の事情に通じたローカルスタッフ、運転手、警護など、現地職員の協力がなければ仕事はできない。さらにカブールなど治安の悪い地域ではオフィスの隣に宿舎や食堂などを併設し、高い壁で周囲を囲ったコンパウンドといわれる敷地内で生活することになる。ここでは食堂の調理人、清掃員なども現地職員である。ともに断食し、日没後の食事「イフタール」に招かれることもある。みな、仲間なのだ。タリバンは、アフガニスタンから「占領者」たる駐留外国軍の撤退、そして米国の傀儡(かいらい)と見ていたアフガニスタン共和国の歴代政権の打倒を目指し、外国人や政府要人をターゲットに残虐なテロを続けてきた。市民を巻き添えにすることにも、ためらいはなかった。タリバンがカブールに迫る中、日本政府の活動を支えてきたアフガン人は身の危険を感じ、怯えていた。そうした声は東京のJICA本部や外務省にも伝わっていた。だからこそ、日本政府は8月初頭から日本人やアフガン人現地職員や家族の退避と大使館撤収の計画を整え、8月18日までには退避する計画を立てていた。ただし、そこで手段として想定されていたのは自衛隊機ではない。チャーター機であった。2.武漢と南スーダンの退避オペレーションチャーター機でも邦人退避オペレーションは遂行できる。2020年1月、日本政府は武漢に取り残された邦人等を退避させるべくチャーター機を飛ばした。武漢で新型コロナ感染症が拡大し、ロックダウンにより邦人やその家族は身動きが取れなくなった。それまで日本政府は厚労省の感染症に関する情報や、JETRO武漢事務所や現地の日本商工会の情報に基づき、外務省主導で対応を進めていた。しかし武漢が封鎖されると、官邸で安倍晋三首相(当時)のもと総理連絡会議が開催され、沖田芳樹内閣危機管理監を中心に邦人保護チームが編成された。そして政府は全日空(ANA)のチャーター機を派遣し、邦人を退避させた。日本のチャーター機第一便は、米国と並んで最も早いタイミングで武漢空港に着陸できた救援機となった。さらに、武漢へのチャーター機派遣を試みていた30か国近い国々のうち、その後3日連続でチャーター機を飛ばすことができたのは日本だけだった。さらに、自衛隊機を派遣して邦人および外国人を退避させた事例もある。2016年7月7日、南スーダン首都のジュバで政府軍と反主流派要員が衝突した。日本政府はここでも退避オペレーションを実施した。衝突の発生直後から、大使館は外務本省やJICA事務所と連携しながらフライトを調整した。7月11日の晩に政府軍と反主流派の間で敵対行為の停止が合意され、事態が沈静化し始めた。7月13日午前、現地の日本大使館は南スーダン政府軍の警護を得つつ、ジュバ市内各所から空港まで邦人等を陸送した。そして同日午後、JICAが手配したチャーター便で在留邦人40名及び日本の支援事業に携わる外国人、合わせて約90名がナイロビに退避した。同じころ東京では邦人退避を支援するため航空自衛隊のC-130H輸送機の派遣が決定されていた。7月14日、前日の邦人等退避オペレーションを支援した大使館員4名が、日本から派遣されたC-130H輸送機でジブチに退避した。当時は自衛隊がPKOの国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)へ派遣されていた時期である。邦人等の退避を見届けた大使および数名の大使館員はジュバに留まり、UNMISS日本隊宿営地に移動し、現地で情報収集や調整業務に従事した。一週間ほど経ち、ジュバの状況が相当沈静化したことを確認したうえで、館員は大使館事務所・宿舎に帰還し、通常業務を再開した。3.NATO加盟国や韓国と、日本一般的に、こうした退避オペレーションはNEO (Non-combatant Evacuation Operation)と呼ばれる。今回のアフガニスタンからのNEOはバイデン大統領が述べたとおり「史上最大規模かつ最も困難な空輸」となった。武漢と違って、反政府武装勢力であるタリバンが首都に進攻してガニ政権が崩壊し、とても安全が確保されているとは言えない状況でのオペレーションだった。また南スーダンと違ってカブールはタリバンに制圧されており、アフガン政府軍や治安部隊による警護も期待できなかった。それでも、米軍は機動的にカブール国際空港と航空管制をおさえ、退避を開始した。そして米欧などNATO加盟国は自国民及びアフガニスタン人協力者など数千人から数万人規模の退避を実現させた。NATO加盟国だけではない。韓国もC-130J 輸送機を派遣し、8月25日までに在アフガニスタン韓国大使館の現地職員ら390名を退避させることができた。日本も翌26日、退避を希望する邦人とアフガニスタン人をバスに乗せ空港に向かわせようとしたが、IS-Kのテロが発生し、退避は実現させられなかった。ここで韓国と日本との「1日の差」が悔やまれるわけだが、実は韓国には日本と異なる点がひとつあった。韓国はアフガニスタンに2001年から部隊を派遣し、カブールからの空輸を担当していた。9.11の直後、2001年10月7日、米国主導でアルカイダ及びタリバン政権をターゲットにした「不朽の自由作戦」が始まった。これに先立ち当時の金大中政権は空・海の輸送支援や医療支援団の派遣により支援することを決めた。韓国空軍輸送支援団は2001年12月28日から2003年の年末まで、韓国、シンガポール、インド洋の英領ディエゴガルシア島を結ぶ定期便を運航した。C-130輸送機を2機、76名を投入し、米太平洋軍(当時)の作戦区域内で米軍物資310トン、兵員600名を輸送した。米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、豪州、トルコ、そして韓国は、アフガニスタン国内に部隊派遣を行ってきた。こうした国々の軍はアフガニスタンやカブールに土地勘があった。日本もインド洋における給油など補給支援活動で「不朽の自由作戦」を支援した。洋上の困難なオペレーションであり、日本の安全保障政策において大きなマイルストーンとなる出来事だった。ただし南スーダンのような規模でアフガン国内に自衛隊の部隊を派遣していたわけではない。自衛隊の国際平和協力活動として世界中から高い評価を受けてきたのは、施設部隊によるインフラ整備や建設などである。そうした日本の比較優位がアフガン国内で発揮されることはなかった。これまで日本政府のアフガニスタン国内での活動は、大使館員やJICA職員などシビリアン(文民)による人道・復興支援が中心だった。そうしたシビリアンの安全は自衛隊ではなく、警備会社に委ねられていた。アフガン退避、成否を分けた紛争国の相場観(2)へ続く写真:AP/アフロ【参考文献】紀谷昌彦『南スーダンに平和をつくる』ちくま新書、2019年。「武漢からの邦人救出と水際対策強化」『新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)会調査・検証報告書』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年。室岡鉄夫「韓国軍の国際平和協力活動—湾岸戦争から国連PKO参加法の成立まで」『防衛研究所紀要』第13巻第2号(2011年1月)。【執筆者プロフィール】相良祥之一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)主任研究員。国連・外務省・IT企業で国際政治や危機管理の実務に携わり、2020年から現職。研究分野は国際公共政策、国際紛争、新型コロナ対策やワクチン外交など健康安全保障、経済安全保障、制裁、サイバー、新興技術。2020年前半の日本のコロナ対応を検証した「コロナ民間臨調」で事務局をつとめ、報告書では国境管理(水際対策)、官邸、治療薬・ワクチンに関する章で共著者。慶應義塾大学法学部卒、東京大学公共政策大学院修了。ツイッター:https://twitter.com/Yoshi_Sagara実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )
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2021/09/22 10:13
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コラム【新潮流2.0】:宇宙旅行とWe are 99%(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)
◆イーロン・マスク率いるSpaceXが打ち上げたCrew Dragonが3日間地球を周回した後、フロリダ州ケネディ宇宙センター沖に無事着水した。Inspiration4と名付けられたこの宇宙旅行は、民間人だけによる有人宇宙飛行としては世界初。スポンサーは起業家で大富豪のジャレド・アイザックマンだ。 これに先立ってアマゾン創業者のジェフ・ベゾス、ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソンらも宇宙旅行に成功している。新時代の幕開けとの声があがる一方で、結局、宇宙に行けるのは大金持ちだけ、という現実もある。◆宇宙旅行から帰還したべゾスのコメントが批判を呼んだ。「Amazonのすべての従業員と、Amazonのすべての顧客にも感謝したい。なぜなら君たちがこのすべての代金を支払ったのだから」。 米ABCニュースは、かつては人類の卓越した技量とアメリカの創意工夫の頂点として敬愛されていた宇宙飛行が、「超大富豪の数ある遊び場のひとつに過ぎず、足元の地球で連綿と続く根強い不公正を思い出させる存在」に成り下がってしまった、と報じた。「億万長者は地球にも宇宙にも存在すべきでない。べゾスは地球に帰ってくるな」とのネガティブ・キャンペーン・サイトには約20万もの署名が集まった。◆Inspiration4のミッションのひとつは、小児がん治療で有名なセント・ジュード小児研究病院への寄付金集めであり、アイザックマン自身、1億ドルの寄付を行っている。ジェフ・べゾスは日本円に換算して年間1兆円を超える額の寄付を行っている。それでも批判はやまない。 折しも、Crew Dragonが地球に戻った18日の前日、9月17日は「ウォール街を占拠せよ」の運動からちょうど10年の節目。2011年9月、ニューヨーク証券取引所からほど近いズコッティ公園に数百人のデモ隊が集結し格差是正などを求めて約2ヶ月間占拠した。 それから10年が経ったが、当時のスローガン「We are 99%」「99%vs1%」は現在でも格差社会を象徴する標語として使われている。格差は是正されていない。是正されるどころかさらに拡大しているのだ。一向に改善しない状況に多くのひとが失望し、特に若者の間で資本主義に対する懐疑的な見方が増えている。まさに資本主義の危機である。◆資本主義とは「差異」を利潤に変えるシステムだ。大昔は地理的差異が利潤の源泉であり、遠隔地との貿易が富を生んだ。やがて「情報」の格差が利潤の源泉となる。ところがいまやグローバル化と通信網の発達で、この地球上で「差異」を生むものはなくなってしまった。残されているのはサイバー空間と宇宙だけだろう。 成功した起業家の大富豪、つまり資本主義の勝者たちが我先にと宇宙に向かうのは資本主義の当然の帰結だ。しかし、彼らと地上に残された者との距離はますます遠くなる。いつか再び格差是正の抗議運動が起きる時、そのスローガンは「99%vs1%」では足りず、天文学的数字が必要となるかもしれない。マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆(出所:9/21配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)
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2021/09/22 09:29
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NYの視点:FOMC、テーパー発表は11月に先送り=市場予想
米連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)を21日から22日に開催する。FRBはこの会合で政策金利を据え置く見通し。インフレ急伸が一段落したほか、新型コロナウイルスのデルタ変異株流行が消費を抑制している兆候が見られ、今会合で緩和縮小計画が発表される可能性は低いと見られている。CNBCが32人の市場関係者に行った調査によると、FRBが毎月の資産購入額を150億ドル縮小する計画を12月から開始することを、11月の会合で発表すると見ていることが分かった。最初の利上げは2022年12月。インフレの高進が一段落しているほか、新型コロナ変異株流行が消費や回復を抑制し、利上げ見通しは弱まりつつある。4月時点の調査によると、2022年中0.25%の利上げを2回織り込んでいた。今回の調査では1回。2021年の成長見通しも5.7%に7月からほぼ1%ポイント近く引き下げられた。デルタ株による影響で0.65%引き下げた。ほとんどの回答者がインフレが一時的と見ていることも分かった。ただ、インフレの脅威に対処するため資産購入策を削減すべきだと見ている。●CNBC調査テーパー発表:11月開始:12月縮小金額:150億ドル利上げ開始:2022年12月成長見通し2021年:5.7%(7月6.35%)2022年:3.7%(7月3.4%)FOMCでは声明とともに、スタッフ予測やパウエル議長会見に注目が集まる。特に予測では2024年分が新たに明らかになるため特に注目される。一部の市場関係者は声明がほぼ前回から修正ないと見ている。もし、テーパーに言及がない場合はハト派として市場はとらえる。例え、パウエル議長が会見でテーパー開始に言及したとしても、量的緩和(QE)縮小と利上げとの金融政策の違いに言及し、テーパー開始後も金融政策はかなり緩和的であることを強調すると見られ、ドルの上昇は限定的となる可能性が強い。
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2021/09/22 07:42
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日経平均を対象とするマイナス3倍トラッカーが上昇率上位にランクイン(21日10:12時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価下落が目立つ日立建機<6305>プット82回 11月 3,100円を順張り、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>プット304回 10月 575円を順張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはビットコイン2021年11月 マイナス3倍トラッカー3回 10月 84,000米ドル、日経平均 マイナス3倍トラッカー75回 月 33,000円、日経平均 マイナス3倍トラッカー74回 月 29,500円、イーサリアム先物インデックスリンク債_2024年 トラッカー1回 月 1.0米ドルなどが見られる。上昇率上位は日経平均 マイナス3倍トラッカー74回 11月 29,500円(+75.9%)、イーサリアム2021年11月 マイナス3倍トラッカー1回 11月 3,700米ドル(+60.9%)、イーサリアム2021年10月 マイナス3倍トラッカー3回 10月 3,850米ドル(+50.9%)、ビットコイン2021年10月 マイナス3倍トラッカー2回 10月 45,000米ドル(+45.0%)、イーサリアム2021年11月 マイナス3倍トラッカー2回 11月 4,300米ドル(+37.3%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/09/21 15:45
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NYの視点:中国の不動産大手の流動性危機、リーマン金融危機とは異なる
中国の不動産開発で国内第2位の中国恒大が3000億ドルの債務不履行危機に直面している。負債規模は同国国内総生産(GDP)の2%にあたり、破たんは、秩序のあるものであっても、経済への影響は免れないと警戒されている。ただ、エコノミストは、中国不動産大手の流動性危機が2008年のリーマン危機のような世界的な金融危機に波及する可能性は少ないと見ている。リーマン危機ではなく、1980年代の日本の住宅バブル崩壊、または、1998年のヘッジファンドLTCM破たん危機に類似しているとの指摘が多い。LTCM危機では、連邦準備制度理事会(FRB)や主要金融機関の対応により、短期解決している。中国恒大の破たんは、「too big to fail」で、破たんするには規模が大き過ぎるため、経済を保護するため、最終的には中国政府による救済や再編などが進められることになり、中国経済や世界経済への影響は限定的になると見る。また、同業の不動産会社が救済する可能性も報じられている。中国市場が22日に再開したときの地元投資家の動きや中国人民銀行による流動性供給などの行方が市場参加者の今後の注目となっている。
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2021/09/21 07:40
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個人投資家・有限亭玉介:強いチャートと強いテーマが吉!注目中の銘柄群【FISCOソーシャルレポーター】
以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人投資家「有限亭玉介」氏(ブログ:儲かる株情報「猫旦那のお株は天井知らず」)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。-----------※2021年9月13日14時に執筆菅総理の総裁選見送りの報道から株式市場はガラリと様相が変わりました。日経平均も3万円台に乗ると、コロナに振り回されていた相場からは一転して「買いが買いを呼ぶ」なんていう強気のムードが市場から伝わって来ますねぇ。改めまして株&猫ブログ「儲かる株情報『猫旦那のお株は天井知らず』」を執筆しております、有限亭玉介と申します。過去30年の衆議院解散総選挙10回分のデータを見ると、解散日から総選挙までの間で日経平均は過去10回上昇しているとの事です。これは機関投資家が強気になるのも頷けます。多くの投資家は解散をしても変わらず自民党が政権を握ると確信しているでしょうし、選挙というイベントは海外投資家からの買いも流入しやすいのがアノマリーになりつつもあります。これまでの相場は半導体や海運株が底堅く推移しておりましたが、新政権が誕生する際に大胆な政策が出るとの思惑から脱炭素やクリーンエネルギー関連まで再び資金が流入しているようです。このタイミングで新型コロナの新規感染者数は減少傾向であり、まさに投資家にとっては勝負所と言えるでしょう。DX関連やコロナ関連の医療分野も目が離せません。前述の通り日経平均が好調なのはもちろん、個別の銘柄でも右肩上がりのチャートが散見されますな。企業の業績もコロナから復調して上向きに転じた事も、この勢いを支える要因となるはずです。さて、今回は力強いチャートを描いている銘柄を中心にピックアップしてみました。8月下旬から下値を切り上げて直近で年初来高値を更新したLAホールディングス<2986>は、中古マンションの改装・販売や不動産管理が主力です。業績も好調でPERも割安水準ではありますが、年初来高値を更新して右肩上がりのチャートを作っています。半導体用金型クリーニング材やセラミック基板など幅広い分野を手掛ける日本カーバイド工業<4064>も下値を切り上げております。上期の経常利益を上方修正するなど、車載用電子部品や5G関連なども需要が拡大している模様で、チャートも保ち合いを上抜いてきております。8月18日の取引終了後に21年8月期の下方修正を発表したジースリーHD<3647>は嫌気されるも、その後は悪材料出尽くしと見られて反発しました。25日線付近で底堅く推移しており、主力の再生可能エネルギー事業はここ最近の脱炭素のテーマ性から物色されるか…保ち合いの上放れに期待したいところです。こちらも再生可能エネルギー関連として買いが入っておりますテスHD<5074>は、22年6月期も過去最高益を更新するとの予想で業績も好調です。9月2日から連騰した株価は一気に年初来高値を更新しましたねぇ。この勢いはどこまで続くか監視を強めていきたいです。軽量で曲げられるペロブスカイト太陽電池向けALD(原子層堆積)装置を手掛けるサムコ<6387>は、9月10日に21年7月期の増益決算を発表すると22年7月期も増益予想を発表しております。窒化ガリウムを使ったパワー半導体関連としての思惑もあり、8月20日の安値2742円を底に切り返してきています。2番底をつけにいくかと監視中です。最後は、8月23日にデジタルハリウッドとの業務提携を発表が好感されているサーキュレーション<7379>です。7月にIPOしたばかりの同社はプロの知見を企業にシェアする「プロシェアリング事業」を展開しております。チャート(日足)は直近で調整をしていますが、ユニークな業態に加えてSaaSやDX関連としても市場評価は高い模様です。さて、ちょっとお話が長くなりましたが、あたくしのブログではそんな「今強含んでいる個別株・テーマ株」を紹介しています。お暇があれば覗いてみてやってください。愛猫「なつ」と共にお待ち申し上げております。----執筆者名:有限亭玉介ブログ名:猫旦那のお株は天井知らず
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2021/09/19 10:00
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国内外の注目経済イベント:米FOMC会合でテーパリングに関する具体的なプランが提示される可能性も
9月20日-24日週に発表される主要経済指標の見通しについては以下の通り。■22日(水)決定会合の終了予定時刻は未定○(日)日本銀行金融政策決定会合-予想は金融政策の現状維持日本銀行の黒田総裁は9月15日に行われたオンラインのセミナーで「新型コロナウイルスの感染拡大による供給網の寸断や工場の操業停止による生産への影響が懸念されるものの、堅調な企業業績が設備投資を後押しする」との見解を示した。ただし、2%の物価目標については2023年末までの達成は厳しい状況であり、今回の金融政策決定会合でも現行の金融緩和策を長期間維持することが改めて確認される見込み。■22日(水)日本時間23日午前3時結果判明○(米)連邦公開市場委員会(FOMC)会合-予想は金融政策の現状維持米国のインフレが加速する可能性は、ほぼなくなったとの見方が広がっているが、2%超のインフレ率はしばらく続くと予想されており、今回の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で量的緩和策縮小(テーパリング)に関する具体的なプランが提示される可能性がある。■23日(木)午後5時発表予定○(欧)9月ユーロ圏マークイット製造業PMI -予想は60.3参考となる8月実績は、61.4。ユーロ圏における新型コロナウイルスの感染流行は終息していないものの、多くの企業は一定水準の活動を維持している。雇用情勢の改善が期待されていることから、9月は8月実績に近い水準となる可能性がある。■23日(木)午後10時45分発表予定○(米)9月マークイットサービス業PMI -予想は55.0参考となる8月実績は55.1。各地区連銀の景気指数はまちまち。新型コロナウイルスの感染流行は続いており、雇用や個人消費をやや圧迫していることから、9月は8月実績をやや下回る可能性がある。○その他の主な経済指標の発表予定・21日(火):(米)8月住宅着工件数・22日(水):(米)8月中古住宅販売件数・23日(木):(欧)9月ユーロ圏マークイット総合PMI、(英)英中央銀行MPC政策金利発表、(米)9月マークイットサービス業PMI・24日(金):(独)9月IFO企業景況感指数、(米)8月新築住宅販売件数
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2021/09/18 14:38
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個人投資家・有限亭玉介:日経平均は3万6000円も視野?DX関連が堅調!【FISCOソーシャルレポーター】
以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人投資家「有限亭玉介」氏(ブログ:儲かる株情報「猫旦那のお株は天井知らず」)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。-----------※2021年9月13日10時に執筆9月3日、菅総理は自民党総裁選には出馬しない意向を表明しました。コロナ対策に尽力した後に任期満了で退陣する方針が伝わると、2ヶ月ぶりに日経平均は終値29000円台まで伸長し、次期総理が誰になるのか…市場はその話題で持ちきりですねぇ。改めまして株&猫ブログ「儲かる株情報『猫旦那のお株は天井知らず』」を執筆しております、有限亭玉介と申します。菅総理の不出馬による株価上昇を受けて、強気のスタンスを取る投資家も多いようです。9月3日から上昇した日経平均は同月8日には大台である3万円を突破しました。3万円台は5ヶ月ぶりという事で、株式市場にはふつふつと過熱感が漂い始めましたねぇ。年末には日経平均3万6000円台もあり得ると予想するアナリストもいらっしゃるようですし、様々な思惑が交錯する総裁選ですが、是非ともこの勢いを止めずに新しい総理大臣が決まった後も勢いに乗って欲しいというのは全投資家の願いでしょうな。その為にはコロナの感染状況を悪化させる訳にはいきません。ほぼコロナ対策が原因で支持率が低下し失脚したと思われる菅総理の様子を見ると、次のバトンを託された総理大臣は相当な覚悟が必要でしょう。現状では日本での新規感染者数は減少傾向となっていますが、夏休み明けで学校が始まり…今冬を無事に乗り切れるのかと、いささかの不安もありますが…。ただ市場は菅総理の功績であるデジタル庁発足のお陰で、依然としてDX関連の物色が盛んとなっています。官公庁だけでなく医療や金融DXまでチェックして参りたいですな。公的個人認証サービスの総務大臣認定事業者となっているパイプドHD <3919>は、9月に入り年初来高値を更新しました。入退社手続きや従業員名簿などを一元管理するSaaS型プラットフォーム「SPIRAL HRクラウド」のリリースが好感されており、9月30日の決算発表付近でも下値を切り上げるか注視しているところです。こちらも9月で年初来高値を更新したパワーソリューションズ<4450>です。金融DX関連として引き合いを増やしている同社は、コンサルタント人材を積極的に育成・採用してDXやRPAに関するサービスを提供しております。業績も好調でDXの波に乗るか…。21年6月期は減益着地となったブロードバンドセキュリティ<4398>ですが、22年6月期の業績予想が過去最高益を更新する予想を発表すると動意しました。同社はSBI系で、クレジットカードの情報漏えい事故調査など「緊急対応サービス」に強みを持っており、金融DXとしての思惑は十分にありますな。オープンシステム基盤事業を主力とするサイオス<3744>は、自社製品の「LifeKeeper」がコロナ禍で売上を伸長させた模様です。業績も好調で上方修正した21年12月期は5期ぶりに過去最高益を更新する予想で、AI関連としても注視しておりますよ。中小企業向け経営支援プラットフォーム「Big Advance」を提供するココペリ<4167>は、DXの潮流を受けて順調に顧客を獲得しております。チャート(日足)は25日線付近まで調整しますが、地銀も取引先に持つ同社の成長性は強みですな。同じく中小企業を中心にDX支援をするナレッジスイート<3999>も思惑から急動意すると、年初来高値を更新しました。22年9月期の業績が伴えば、トレンド転換もあるか…。さて、ちょっとお話が長くなりましたが、あたくしのブログではそんな「今強含んでいる個別株・テーマ株」を紹介しています。お暇があれば覗いてみてやってください。愛猫「なつ」と共にお待ち申し上げております。----執筆者名:有限亭玉介ブログ名:猫旦那のお株は天井知らず
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2021/09/18 10:00
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NY原油は75ドルブレイクか? サンワード貿易の陳氏(花田浩菜)
皆さん、こんにちは。フィスコリサーチレポーター花田浩菜の気になるレポートです。今回は、NY原油についてのレポートを紹介します。陳さんはまず、NY原油について、『NY原油は75ドルブレイクか?』と述べています。続けて、『熱帯低気圧「ニコラス」の影響で、テキサス州が豪雨や停電に見舞われたものの、エネルギー関連のインフラが受けた被害は、ハリケーン「アイダ」により今月上旬にもたらされた規模を下回ったという。メキシコ湾岸の石油各社は、ハリケーン「ニコラス」通過に伴い、電力とパイプラインが早期再開となった。数週間前に発生したハリケーン「アイダ」からの復旧が進むとみられる。ただ、ガソリンや他の精製品の在庫は5年ぶりの低水準にあり、市場は非常に逼迫しているという。15日時点でメキシコ湾の原油は約30%、天然ガスは約39%の生産が停止』と伝えています。米国エネルギー情報局(EIA)が15日に発表した週間在庫統計について、『先週末の米原油在庫は350万バレル減少予想を上回る前週比642万バレル減少で、6週連続減少。ガソリン在庫は、200万バレル減少の予想に対し前週比186万バレル減少。中間留分在庫は、160万バレル減少予想に対し前週比169万バレル減少。受け渡し地クッシングの原油在庫も前週比3.0%減で4週振りの減少』と解説しています。また、『例年であれば、この時期はガソリン需要がピークを過ぎて暖房油需要まで時間があることから、需給の端境期となって価格が伸び悩むが、今年はハリケーンによる被害に加え、冬場をにらんだ天然ガス需要の増加を背景に原油相場も押し上げられている。ロシアからの欧州へのパイプラインが完成しても供給不安が払拭されず欧州市場で天然ガス価格の高騰が続き、アジアの相場もお押し上げている』と伝え、『経済回復と異常気象が重なり世界的に需要も旺盛だ。暖房需要が伸びる冬場に向けて一段と高騰する可能性から、暖房油需要増加が原油相場をサポートしている格好だ』と述べています。こうしたことから陳さんは、NY原油について、上値抵抗線の75ドルを越えて、75~80ドルのレンジに上昇する可能性がある』と予想しています。参考にしてみてくださいね。上記の詳細コメントは、ブログ「テクニカルマイスター」の9月16日付「NY原油は75ドルブレイクか?」にまとめられていますので、ご興味があればご覧ください。フィスコリサーチレポーター 花田浩菜
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2021/09/17 17:38
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正しく恐れる−北朝鮮長距離巡航ミサイルの脅威−【実業之日本フォーラム】
9月12日付北朝鮮労働新聞は、9月11日と12日に長距離巡航ミサイルの発射試験を実施したことを伝えた。報道内容の要約は次のとおりである。「発射された巡航ミサイルは、我が国の領土と領空の上空に設定された楕円及び8の字型の飛行軌道に沿って7,580秒(126分)飛行し、1,500km先の標的に命中した。(中略)ミサイルの飛行操縦性、複合誘導結合方式による末期誘導命中の正確さなど、設計上の要求をすべて満足させた。」各種報道では、ミサイル発射を探知できなかった可能性が有ること、射程がほぼ日本全土をカバーすること等から新たな脅威と喧伝する向きが多い。しかしながら、このような新装備の試験は、「世論戦」の一環として、その性能を過大に宣伝する場合があり、軍事的合理性に従って冷静な分析が必要である。限られた情報ではあるが、北朝鮮の報道及び公開された写真から分析を進めてみる。発射時の写真から判別できるのは、5連装のチューブを装備したTEL(Transporter-Elector-Launcher)を使用していること及び飛翔中のミサイルの形状が米国トマホークに酷似していることである。北朝鮮は中長距離弾道ミサイルもTELから発射している。移動が容易なTELを使用した発射は発射場所を予め特定することができず、防護側にとって対応が難しくなる。また、北朝鮮の報道によれば、「新しく開発したタービン送風式エンジン」を使用したとされている。米軍が保有するトマホークは、発射直後は個体ロケットブースターで加速され、巡航時はターボファンエンジンを使用している。今回の発射では、TELからの発射時のブラスト(炎等)の状況及び巡航時にほとんど噴煙を生じていないことから、トマホークと同様の形態で発射及び巡航するものと推定できる。飛翔した時間と距離から、当該巡航ミサイルの速度はマッハ0.6程度と推定され、亜音速ミサイルに分類される。米軍のトマホークがマッハ0.7であることから、やや低速と言える。F-15やSu-30の最高速度がマッハ2.3とされており、戦闘機より低速である。従って、探知さえすれば、防空ミサイルだけでなく、戦闘機でも対処可能と考えられる。米国をはじめ、ロシアや中国がマッハ5以上の極超音速巡航ミサイルの開発にしのぎを削っているのは、巡航ミサイルの「低速」という脆弱性を補うことを目的としている。ミサイルの誘導に関し、複合誘導結合方式を使用したとしている。楕円及び8の字飛行は、トマホークミサイル等同様の地形照合能力の検証であった可能性は否定できない。しかしながら、飛翔経路の大部分となる敵地での地形照合は、相手の地形を熟知していることが前提である。偵察衛星で多くの地形情報を入手できる米国に対し、市販レベルの地形情報しか保有しない北朝鮮では、その能力差は歴然としており、北朝鮮の巡航ミサイルが地形照合を使用した誘導方式である可能性は低い。測位衛星による位置情報及び予め設定したプログラムによる誘導である可能性が高いものと考える。労働新聞は「末期誘導命中の正確さという要求を満足させた」としているが、弾着精度は地形照合でより正確な位置が把握できるトマホークよりも悪いと見る方が自然であろう。長距離巡航ミサイルの最大の特徴は、数十から数百mという低高度を飛翔することにある。報道で、ミサイルの発射を探知できなかったのではないかとの指摘がある。発射後大気圏外という高高度を飛翔する弾道ミサイルと違い、低高度を飛翔する巡航ミサイルを探知することは、レーダーの見通し線という制限を受ける。その距離は、電波の屈折を考慮する場合、以下の数式で概算できる。D(見通し距離:km)=4.12(目標高度の平方根:m+レーダー高の平方根:m)高度100mを飛翔する巡航ミサイルを、山頂の高度900mに所在するレーダーで捜索する場合、見通し距離は約164kmとなり、最大射程が1,500kmであれば計算上は、ほぼ90%がレーダーの探知圏外となる。しかしながら、このことは巡航ミサイル全般に言えることであり、今回の北朝鮮長距離巡航ミサイル特有の問題ではない。弾道ミサイルを含め、ミサイルの多様化、UAV等無人機による脅威の増大という環境変化を受け、防衛省は、防空能力の強化を図りつつある。現在の中期防衛力整備計画においては「総合ミサイル防空能力」の強化がうたわれている。これは、各種脅威に対して単一の対処法では限界があることから、各種手段を重層的に組み合わせる取り組みをさらに発展させるものである。新たに調達されるE-2D早期警戒機や就役したばかりの海自イージス護衛艦「まや」及び「はぐろ」は、CEC(Cooperated Engagement Capability:共同交戦能力)を保有している。これは、E-2Dが探知した目標に対し、レーダー見通し圏外に存在する艦艇がミサイル攻撃を行う能力である。高速のデータ交換と、アクティブシーカーを装備するミサイル(SM-6)により、巡航ミサイルを早期に撃破しようとするものである。更に、現中期防には「スタンド・オフ攻撃能力」の整備も含まれている。防衛省は、スタンド・オフ攻撃能力として整備を進める長距離ミサイルを島嶼防衛用と説明している。しかしながら、当該ミサイルは、射程範囲内であれば策源地攻撃用としても使用できる。策源地攻撃の是非に関する国民的議論は、必ずしも十分とは言えないが、「総合ミサイル防空能力」では、ミサイルの発射後だけではなく、発射前に対処することも当然検討すべきであろう。いわゆる「Left Of Launch(発射の左側:ミサイル攻撃の流れを発射から弾着まで並べた場合、発射前は、発射の左側となることから命名された言葉)」攻撃能力が必要である。レトリックで曖昧とせず、正面からの議論をしなければならない時期にきている。軍事的観点から見た場合、北朝鮮の弾道ミサイルを含む各種ミサイルは現存する脅威であり、今回長距離巡航ミサイルが加わったことにより新たな脅威が出現したとは言えない。安全保障環境の変化に対応して、すでに防衛省が進めている「総合防空能力」向上で対応すべき脅威に含まれている。しかしながら現時点では、整備途中であり、長距離巡航ミサイルへの対処に一部欠落が生じているのは確かである。中国及びロシアに加えて、北朝鮮も当該能力を保有した、あるいは少なくとも保有しようとしていることは事実であり、「総合防空能力」整備を早急に進めるとともに、今までおざなりにしていた「策源地攻撃」に関する議論を詰める必要がある。限られた資源の中、脅威の本質を見極め、真に必要な機能を見極め、優先順位を定めて整備することが今ほど求められている時代はないであろう。(追記)本稿を執筆した後の9月15日に、北朝鮮は2発の弾道ミサイルを発射、日本のEEZ内に弾着したと報道されている。現時点(9月16日)で当該ミサイルは、今年3月に確認された短距離弾道ミサイルのバージョンアップ版と見られている。更に9月16日付労働新聞は、当該ミサイルが列車から発射される様子を掲載している。TELの代わりに列車を使用することにどの程度の利点があるか今後の分析を待つ必要があるが、軍事的合理性から考えれば、多種多様な装備があればあるほど、その維持整備は複雑になり、実運用を大きく阻害する。新しい装備の出現にとらわれ、いたずらに脅威をあおることのないように、冷静な分析が必要なことに変わりはない。サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。写真:KCNA/UPI/アフロ■実業之日本フォーラムの3大特色実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える3)「ほめる」メディア・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする
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2021/09/17 15:48
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(中国)上海総合指数は売り先行もプラス圏回復、買い戻しが優勢
17日の上海総合指数は売り先行。前日比0.33%安の3595.27ptで寄り付いた後は、日本時間午前10時50分現在、0.25%高の3616.06ptで推移している。連日の下落で値ごろ感が強まり、買い戻しが優勢。また、政策期待の高まりも支援材料となっている。一方、中秋節連休で週明けの20日(月)と21日(火)の株式市場が休場となり、積極的な買いは手控えられている。
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2021/09/17 10:54
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銀リンク債を対象とするコール型eワラントが前日比2倍の大幅上昇(17日10:19時点のeワラント取引動向)
新規買いは原資産の株価上昇が目立つ日本郵船<9101>コール135回 11月 7,900円を順張り、アドバンテスト<6857>コール205回 11月 9,100円を順張り、商船三井<9104>コール114回 11月 7,200円を順張りで買う動きや、原資産の株価下落が目立つ日本製鉄<5401>コール254回 11月 2,600円を逆張り、日本製鉄プット227回 11月 2,000円を順張り、JFEホールディングス<5411>コール153回 11月 2,050円を逆張りで買う動きなどが見られる。手仕舞い売りとしてはイーサリアム2021年11月 プラス5倍トラッカー2回 11月 2,300米ドル、WTI原油先物リンク債_2021年12月限コール11回 月 55米ドル、明治ホールディングス<2269>コール56回 月 6,900円、鹿島建設<1812>コール62回 月 1,400円などが見られる。上昇率上位は銀リンク債コール63回 10月 28米ドル(前日比2倍)、銀リンク債 プラス5倍トラッカー27回 10月 24米ドル(+60.9%)、銀リンク債コール62回 10月 25米ドル(+28.6%)、銀リンク債 プラス5倍トラッカー29回 11月 23米ドル(+27.7%)、金リンク債コール353回 11月 2,050米ドル(+25.0%)などとなっている。(eワラント証券)
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2021/09/17 10:39
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『日米中の軛』日米中の罠:日本が避けるべきもの(船橋洋一編集顧問との対談)(1)【実業之日本フォーラム】
ゲスト船橋洋一(実業之日本フォーラム編集顧問、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長、元朝日新聞社主筆)聞き手白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)■日露戦争が変えたアメリカの対日観白井:日米中は、世界第一位から三位までの経済大国であり、三か国の関係が世界政治に多大な影響を及ぼすといっても過言ではないでしょう。一方で、その関係はさまざまです。日本にとって、アメリカは同盟国であり、中国は最大の貿易相手国です。日本にとって、両国とも戦争の相手であり、侵略した相手でもあります。米中関係が複雑化する中で、日本はどういう立ち位置で、どういう考えをもって動くべきか。今まさに日本にとって外交、安全保障、経済の最も難しい局面が来ている気がしますが、日本の動き方を考えるためには、日本の対米観、対中観を、まず認識しておく必要があろうかと思います。先生のお考えはいかがでしょうか。船橋:これも少し歴史的に振り返る必要があります。インド太平洋、少し前のアジア太平洋において、日本が地政学的に非常に難しい軛を感じたのは、日露戦争のあとでしょう。セオドア・ルーズベルトが仲裁役となり、1905年9月にポーツマス条約が成立し、曲がりなりにも日本は戦勝国となりました。しかしその瞬間から、アメリカの対日観は冷えていくわけです。中国への進出をはかろうとしていたアメリカは、ロシアがアジア太平洋の一強国家になっては困るという判断から、それまで日本を応援していました。しかし、日露戦争で日本が勝利すると、今度は日本が太平洋の一強になっては困ると考えるようになりました。日本は中国におけるアメリカの権益を脅かすから、むしろ中国をもり立てて日本に対抗させろというように変わってくるわけです。日本は、1907年の帝国国防方針で、ロシアとアメリカを主要な仮想敵国としました。アメリカも、1906年に非公式調査に着手し、1908年にハワイに海軍基地を置くことを決めました。その後、1924年に正式採用された「オレンジ計画」で、日本を仮想敵国に措定しました。日露戦争後、期せずして日米が、それぞれを仮想敵国とみなし始めたわけです。その文脈で、日本を押さえ込むには中国と握っていこうというベクトルが、日露戦争後、生まれ始めたのですね。白井:アメリカの日本に対する脅威認識は日露戦争直後からだったのですね。アメリカの中には、日米で一緒に満州の開発に取り組もうとするハリマン財閥のような動きもあったと思います。ロシアを抑え込み、中国でともに繁栄するパートナーとして位置づけることもできたと思うのですが、日本をより大きな脅威だと認識した理由は何でしょうか。船橋:日本がシーパワーだったからです。アメリカは、1898年の米西戦争から、キューバ、グアム、フィリピンといったスペインの領地だったところをすべて獲得し、ハワイも併合し、西太平洋、南太平洋まで一気に版図を拡大しました。こうして太平洋を西に突き進むアメリカの前に、朝鮮半島から中国に権益を拡大しつつあった日本が立ちはだかってきたとアメリカは見たのです。1853年にペリー率いるアメリカ合衆国東インド艦隊が来航し、開国させた日本が、半世紀ほどの間に勢力を拡大し、西太平洋から南シナ海へと勢力圏を広げようとしている。ルーズベルト大統領は、フィリピンの領有は「米国のアキレス腱」だと感じ始めていました。フィリピンは、日本とは直線距離で3,000キロメートルほどしか離れていません。フィリピンが日本に併合される危険性が生じたことで、アメリカは日本に対する安全保障上の脅威を感じるようになりました。1930年代に満州事変、そして日中戦争が起こると、日米の対立関係はさらに深まり、米国は日本と正面から衝突するようになります。これは1949年の中国革命まで続きます。日本敗戦の1945年までは、アメリカと中国は連合国として同盟国でした。ですから、米中は20年近い間、同盟あるいは準同盟という関係であったわけです。■アメリカの地政学的DNA白井:そういったことを鑑みると、一般に考えられている以上に、米中というのは非常に深い同盟関係を持っていたことになりますね。日本という敵国に対して一緒に戦った、そういう経験もあるということですね。これは、現在の日米中の関係を前提としたとき、日本にはなかなか見えにくいところではないでしょうか。船橋:戦後の米中関係についても、米中のこのいわば “1930年代システム”の記憶と音律の伏流水のようなものを感じたことがあります。例えば、1972年のニクソンによる頭越し訪中ですね。その年2月にニクソンが、北京で毛沢東や周恩来と会談します。そのときに中国を説得するために使われたロジックが2つあるのですが、そのうち1つは、「日本は危ない国である」という論理です。ニクソンは周恩来にこう言っています。「日本は、国民として、膨張主義の衝動と歴史を持っています。もし彼らが経済的には巨人だが軍事的には小人のまま放り出されたら、軍国主義者の要求にやすやすと従うような結果になるのはさけられないと私は思います。他方で、アメリカにいる我々が彼らと密接な関係を保ち、彼らの防衛を引き受けてやっていたらーーかれらは核防衛ができませんからーー経済的膨張の次に軍事的膨張がくるという道を、日本にたどらせないことができるのではないでしょうか。しかし、それは彼らと密接な関係があってのことです。もし密接な関係がなくなれば、彼らは我々に関心をはらわなくなるでしょう」。(毛利和子・毛利興三郎『ニクソン訪中機密会談録』、名古屋大学出版会、2001、p103)要するに、「中国が誰よりも知っているように、日本は危ない国である。経済が回復して経済大国になったが、いずれ軍事大国になる。そうなると中国は困るのではないか。しかし、アメリカがしっかり日本に勝手な真似はさせないから安心してほしい。日米同盟はそのためのものでもあるのだから、念のため」ということを言おうとしているのですね。典型的な「瓶の蓋」論です。ニクソンのもう1つのロジックは、「ソ連は危ない国である」という論理です。ニクソンは周恩来に次のように言っています。「アメリカは日本の水域を出ていくことはできますが、そうすれば他のものがそこで魚を取り始めるでしょう。またアメリカと中国はともに日本軍国主義の過酷な経験をしました。過去において日本の政府を性格づけてきた軍国主義からは今は状況が永遠に変わったのだと我々も望みます。しかし、一方でアメリカが日本を裸のままにしてでていったとき、中国にとって不都合なことが起こりかねないと感じますし、そうならないと言う保証はしかねます。日本人は、あの巨大な生産的な経済、大きな自然の衝動、敗北した戦争の記憶などから、アメリカの保障がはずれたなら、自分自身の防衛体制を築く方向に向かうことが大いにありえます。(原文、以下5行略)他方で、日本は中国に向かうかソ連に向かうかの選択肢を持ちます」。アメリカの軍隊が日本から去れば、日本は独自の防衛力増強に向かうか、中国に向かうか、あるいは日本がソ連に寄って行くか」という3つの可能性に触れ、中国に日米同盟がまだしもましだと思わせようとするのです。ニクソンの話を聞いた中国の指導者からすると、アメリカは日本をそんなに信用していないのか、と驚いたのではないでしょうか。「瓶の蓋」論は、多分に戦術的な便法だったにしても、アメリカが中国に対してそういったロジックを使ったこと、そして、アメリカがアジア太平洋にまみえるとき、この地域に覇権国をつくらせないため合従連衡を厭わないこと——そうした地政学的リアリズムとアメリカの地政学的DNAを我々は心のどこかにとどめておかなければなりません。船橋洋一(実業之日本フォーラム編集顧問、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長、元朝日新聞社主筆)『日米中の軛』日米中の罠:日本が避けるべきもの(船橋洋一編集顧問との対談)(2)【実業之日本フォーラム】へ続く
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2021/09/17 10:30
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『日米中の軛』日米中の罠:日本が避けるべきもの(船橋洋一編集顧問との対談)(3)【実業之日本フォーラム】
本稿は、『日米中の軛』日米中の罠:日本が避けるべきもの(船橋洋一編集顧問との対談)(2)【実業之日本フォーラム】の続きである。■中国に対する静かな抑止力をつくるのが得策白井:同盟関係にある日米の間でも、慎重に対応しなければならない問題があるのですね。安保条約の適用対象であることを単に確認するだけではなく、どのような状況でもアメリカがともに戦ってくれるような信頼関係を築くことが重要だと、改めて思いました。そのために日本がやるべきことは、まだまだ多いように感じます。尖閣を巡って直接対立している中国に対しても、日本がやらなければならないことは多いのではないでしょうか。日中関係で気を付けるべきことは何でしょうか。船橋:「日米中の罠」の三角関係でも、日中関係は最も危ない部分であり、最も恐ろしい罠が潜んでいるところだと思います。2009年に鳩山内閣ができたとき、鳩山由紀夫首相は「東アジア共同体」という構想を作りました。2009年7月に公表した民主党マニフェストには、「東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する」とされています。アメリカを除外したアジアの国々だけで地域的アーキテクチャを作るという構想です。これを鳩山首相は、胡錦濤中国国家主席や、ベトナム、オーストラリア、シンガポール、それぞれの首脳に持ちかけました。アメリカは、鳩山首相による沖縄の普天間基地の県外移設や、「トラスト・ミー」発言に猛烈な不信感を抱きましたが、実は一番不信を抱いたのは、このアメリカ抜きの「東アジア共同体」構想を最初に中国に相談したことだったのです。先に触れたジェフリー・ベーダーの回想録にもブッシュ政権が本構想に疑いを持っていることが記載されています。「これだけは許さない」と書かれています。日本に裏切られたという気持ちをアメリカが抱いた。人間社会もそうですが、国際関係でも、とりわけ同盟関係において「裏切り」の感情を相手国に抱かせるほど破壊的なことはありません。アメリカを除外したアジア・オンリーの構想をことによって日本から発せられることにアメリカが衝撃を受け、徹底的な不信感を募らせた。アメリカだけではありません。2009年10月に鳩山首相と首脳会談に臨んだシンガポールのリー・シェンロン首相は、東アジア共同体構想に対し、「地域のバランスの観点からは米国の関与が重要である」と釘を刺しています。かたや、中国にとっては、日米間にくさびを打ち込むというまたとないチャンスが到来です。長年の夢である日米同盟の中和化ができます。日米同盟だけではなく、アメリカの西太平洋における同盟システムを一気に弱体化できます。実際、その後の尖閣諸島問題で、日米関係はきしみました。ただし、それ以上に日中関係がすさまじく軋み、破綻しかけてしまった。ところが、トランプ政権が登場し、米中関係が激しく緊張すると、中国は日本に秋波を送るようになります。中国証券監督管理委員会が2019年3月に、野村證券の中国の合弁証券子会社に51%の出資比率を認めたことなどがその典型でしょう。秋波を送られたら、それを活用してこちらも微笑む度量は必要ですが、中国の秋波外交は、あくまで戦術的、一時的なパンダ外交であることを知っておく必要があります。白井:日本は、中国からの戦略的秋波を敏感にキャッチし、それに乗ってはならないということですね。バイデン政権が誕生してからも戦略的秋波の状況が変わらないということは、裏返せば、中国は、TPPやRCEPに対するアメリカの政策がそれほど変化しないと見ているのでしょう。そういった点でも三か国の関係を観察することは有益です。それぞれの二か国の関係がもう1つの国に与える刺激、リスク、誤解といった影響が日米中の罠だと理解しましたが、罠を避けるために日本が注意すべきことは何でしょうか。船橋:どの二国間関係の管理も他の二国関係の管理からの影響を受け、横波を被るため、まず、「日米中の罠」がどこにあるか、それをわきまえることです。その罠にはまらないようにする。これが第一です。現在、日本にとっての最大の罠は、米中対決が決定的になってしまうことです。日本の動きが、それを促してしまうことだと私は思っています。そうさせないように対米、対中関係を安定させるよう環境づくりをすることです。そのための対中抑止力とバランス・オブ・パワーを維持することが大切です。自分の国を自分で守る自立の覚悟と同盟を維持する責任の双方が必要です。そして、アジア太平洋の、自由で、開かれ、持続的な秩序形成を他のアジア諸国とともに先頭に立って推進できる国(a pivot state)としてルール・シェイパー役を果たすことです。中国に対する抑止力構築も、アジア太平洋での自由で、開かれ、持続的な国際秩序も、敵味方を明確にしない、バランシング・アクトを心掛けるべきです。抑止力も明瞭ではあるが静かな抑止力をつくるのが得策です。中国共産党が国民のナショナリズムを煽らないようにすること、そして、国民のナショナリズムが中国共産党の外交の選択肢を狭くしないようにすることも、重要です。そして最後に、日本の国力と国富の再創出と自由主義と民主主義の進展が望まれます。船橋洋一(実業之日本フォーラム編集顧問、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長、元朝日新聞社主筆)
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2021/09/17 10:17