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日産東HD Research Memo(2):総合モビリティ事業のフロントランナー
*15:02JST 日産東HD Research Memo(2):総合モビリティ事業のフロントランナー
■会社概要1. 会社概要日産東京販売ホールディングス<8291>は、日産自動車系の自動車ディーラー(日産東京販売)など連結子会社4社と非連結子会社3社を傘下に持つ持株会社である。主力の日産東京販売は、日本の中心で人口が集中する東京を地盤に、日産及びルノーブランドの自動車を販売する事業を展開しており、全国のディーラーのなかでも最大級の規模である。同社は主に日産自動車とそのグループ会社からEVなど先端的な自動車や部用品を仕入れて販売するほか、中古車の買取・販売や車体整備・車検整備などの事業も行っており、総合モビリティ事業のフロントランナーとして、顧客に対しカーライフに関わるすべてのサービスをワンストップで提供している。同社は、1942年の商工省通牒「自動車および同部分品配給機構整備要綱」に基づき、東京府自動車配給(株)として東京市で発足した。戦後の1946年に東京日産自動車販売(株)に商号を変更した後、徐々に業容を拡大し、1961年に東京証券取引所市場第1部に上場した。1989年に東京日産コンピュータシステムを設立してシステム事業に参入、2002年には(株)車検館を設立し車検整備を強化するなど事業の多角化を図ってきた。2004年に会社分割により持株会社体制に移行して(株)東日カーライフグループへと商号を変更、2008年には日産自動車子会社の日産ネットワークホールディングス(株)に対し第三者割当増資を実施し、日産自動車の持分法適用関連会社となった。2011年には東京を地盤とする東京日産自動車販売、日産プリンス東京販売(株)、日産プリンス西東京販売(株)の3社をグループ化し、東京における日産自動車の販売をほぼ一手に引き受けることになり、商号も現在の日産東京販売ホールディングスへと変更した。グループ化が軌道に乗った2021年7月、さらなる効率化とスケールメリットを目指し、日産系自動車販売会社3社を統合して日産東京販売を設立、名実ともに国内最大級の自動車ディーラーとなった。また、グループ内の経営資源を自動車関連事業に集中させるため、2023年10月に東京日産コンピュータシステムの全株式をキヤノンマーケティングジャパン<8060>に譲渡した。新潮流や全固体電池をテコにEV市場拡大に期待2. 自動車業界の動向コロナ禍やウクライナ情勢などによる生産や流通の混乱が落ち着きを見せても、自動車業界は先端技術化やCO2排出削減など課題は尽きない。こうした状況のなか、「CASE」と「MaaS」という潮流が、自動車業界に100年に1度の大変革をもたらすと注目されている。「CASE」とは、自動車のIoT化(C:Connected)、自動運転(A:Autonomous)、所有から共有へ(S:Shared & Service)、電動化(E:Electric)のことで、自動車業界に大変革を引き起こす一連の技術進化を指す。一方「MaaS(Mobility as a Service)」は、移動自体をサービスとして捉えた「モビリティ」という考え方に基づき、様々な交通手段を最適に組み合わせて検索・予約・決済などをワンストップで提供、個人単位の移動ニーズにまで対応したサービスである。こうした大変革の波に乗ってEVを急速に普及させたのが欧米や中国で、日本では話題が先行するばかりで必ずしも普及しているとは言い難い。EVに本格的に参入している国内メーカーが日産自動車くらいで、国内の新車販売台数に占めるEVの構成比が非常に小さいからだ。このため、業界全体で急速充電器を増やすというモチベーションが働かず、消費者にEV購入の二の足を踏ませているともいえる。こうした環境ではあるが、同社は早い段階からEVやe-POWER※1といった電動車※2の普及に取り組み、電動車と相性が良いと言われるIoTには先端技術で、自動運転にはプロパイロット(ProPILOT:運転支援技術)などの技術進化で対応してきた。他社メーカーのEVでも利用可能な急速充電器を各店舗に設置し、また、リースやレンタカーなどモビリティ事業の強化も行っている。このように同社は、「CASE」や「MaaS」といった潮流に即して事業体制を構築しているため、本来肥沃な市場といえる日本でEV需要が急拡大する際には、先行者メリットを享受することができると思われる。現在、欧米ではEVの普及が頭打ちになっているが、「CASE」や「MaaS」に加え、遠からず予想される全固体電池の実用化や、自動車業界トップのトヨタ自動車<7203>の本格参入などをきっかけに、EV市場が大きく広がる日もそう遠くないことと思われる。※1 e-POWER:日産自動車独自のハイブリッドユニット。発電のみにエンジンを使用するため、EVと同様のドライビングフィールを味わえる。※2 電動車:電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV、PHV)、ハイブリッド車(HEV、HV)、燃料電池車(FCEV、FCV)などの総称。同社の場合はEVとe-POWER、ハイブリッド車を指す。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 15:02
注目トピックス 日本株
日産東HD Research Memo(1):営業減益も中期経営計画を上回る高水準維持
*15:01JST 日産東HD Research Memo(1):営業減益も中期経営計画を上回る高水準維持
■要約1. 新車や中古車の販売、自動車整備などを展開する国内最大級の自動車ディーラー日産東京販売ホールディングス<8291>は、日産自動車<7201>系の自動車販売会社などを傘下に持つ持株会社で、子会社の日産東京販売(株)は日産ブランドとルノーブランドの新車販売や中古車の買取・販売、自動車整備などを行っている。国内最大級の自動車ディーラーで、販売エリアは東京都の人口の約9割をカバーする。同社は総合モビリティ事業※のフロントランナーとして、カーライフに関わるすべてのサービスをワンストップで提供しているほか、個人リースなど日産ブランドに依存しないオリジナルの事業も展開している。※ モビリティ事業:販売や整備だけでなく、自動車による移動や運搬をスムーズに行うためのサービスも含む。2. EV販売のパイオニア、顧客基盤、店舗ネットワークに加え、ベストプラクティスも強み先端技術の発展や環境問題などを背景に、自動車業界は100年に1度の大変革期にあると言われている。こうした環境のなかで同社は、EV販売のパイオニア、顧客基盤35万件のストックビジネス、東京をドミナント化する新車販売店舗101店舗(ルノー店4店舗含む)の店舗ネットワーク、及びノウハウや情報を速やかに共有し水平展開していくベストプラクティスを強みとしている。こうした強みを背景に、新車のみならず中古車や整備も含めた幅広い事業を展開し、総合モビリティ事業のフロントランナーとして優位なポジションを獲得した。他社に先駆けて展開し、早期買い替えや良質な中古車の確保といった面で大きなシナジーの出ている個人リースもベストプラクティスにより急成長した事業である。3. 2026年3月期営業利益は先行費用により減益予想だが、引き続き高水準を維持する見込み2025年3月期の業績は、売上高が141,605百万円(前期比4.9%減)、営業利益が7,412百万円(同14.9%減)となった。中古車販売と整備事業は堅調であったが、新型車が端境期にあったなどの要因から減収となった新車販売をカバーできず、減収・営業減益となった。しかし、営業利益については、前期に次いで過去2番目に高い実績となるなど高水準を維持した。2026年3月期の業績見通しについて、同社は売上高145,000百万円(前期比2.4%増)、営業利益7,000百万円(同5.6%減)を見込んでいる。売上高は、新型車の投入や店舗ネットワーク刷新などにより増収に転じる見込みである。一方で営業利益は、物価上昇に加え採用・教育の整備や支援システムの導入など費用が先行するため減益予想となったが、引き続き中期経営計画を上回る高水準を維持する見込みである。4. 重点施策を着実に実行、営業利益65億円などを目指す中期経営計画は順調に進捗電動化リーダー、安全・運転支援技術、モビリティ事業という重点施策を着実に実行するなど、2027年3月期に営業利益65億円などを目指す中期経営計画の進捗は順調だ。そのなかで唯一売上高だけがビハインドして見えるが、2026年3月期は「リーフ」など新型車2車種、中期経営計画最終年度の2027年3月期には人気の大型ミニバン「エルグランド」を投入する予定であり、最終的に売上高も目標を達成する可能性が高まったといえよう。なお、新車を供給する日産自動車の経営が不安定化していることが懸念されているが、新型車が投入されなかった2025年3月期も一定水準の販売台数を確保していることから、同社の販売競争力が低下していることはないと言える。加えて、新型車の投入スケジュールが予定どおり進めば、2026年3月期~2027年3月期の業績に大きなマイナス影響を与えることはないと考える。■Key Points・国内最大級の自動車ディーラーを運営、顧客基盤や店舗ネットワークなどに強み・2025年3月期は減益とはいえ、ほぼ想定どおりで、営業利益は過去2番目の高水準・2026年3月期は営業減益予想だが、引き続き中期経営計画目標を上回って推移する見通し(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 15:01
注目トピックス 日本株
出来高変化率ランキング(14時台)~インフォメティス、エアトリなどがランクイン
*14:57JST 出来高変化率ランキング(14時台)~インフォメティス、エアトリなどがランクイン
※出来高変化率ランキングでは、直近5日平均の出来高と配信当日の出来高を比較することで、物色の傾向など市場参加者の関心を知ることができます。■出来高変化率上位 [7月2日 14:32 現在](直近5日平均出来高比較)銘柄コード 銘柄名 出来高 5日平均出来高 出来高変化率 株価変化率<281A> インフォメティス 19105500 228426.14 376.89% -0.0067%<4978> リプロセル 15647900 125430.08 321.86% 0.206%<3744> サイオス 1404700 52813.64 303.68% -0.0253%<6191> エアトリ 1700500 92814.4 301.25% 0.0538%<3987> エコモット 822300 26080.98 298.04% -0.0402%<9386> 日コンセプト 692500 177992.4 275.51% 0.1149%<7709> クボテック 1683200 49035.9 275.25% -0.2476%<6915> 千代インテ 139800 38800.06 248.34% 0.0294%<2247> iF500H無 132335 34194.609 200.38% 0.0035%<7965> 象印 3251300 785659.96 197.9% 0.08%<340A> ジグザグ 331900 140208.12 184.91% -0.0692%<5133> テリロジーHD 345800 26362.96 175.79% -0.0512%<8585> オリコ 2923400 643639.8 162.93% 0.0676%<5724> アサカ理研 402800 105851.44 141.27% 0.0087%<2384> SBSHD 323800 317328.7 131.03% 0.0786%<6238> フリュー 306000 94497.72 130.79% 0.0039%<2841> iFナス100H 207279 87792.1 130.77% -0.0029%<3498> 霞ヶ関キャ 962500 3865399.8 127.6% 0.0457%<186A> アストロスケール 7877800 1654494.9 118.63% -0.0074%<6269> 三井海洋 1791500 3633648.8 116.2% 0.043%<1949> 住電設 163300 335586.4 115.54% 0.0544%<3664> モブキャストH 31603400 460009.2 107.63% 0.0681%<6330> 洋エンジ 2862000 779614.64 106.07% 0.0185%<3640> 電算 38600 35233.76 105.37% 0.0307%<5715> 古河機 184900 147702.82 101.91% 0.0631%<5290> ベルテクス 36600 33739.08 101.84% 0.0087%<6620> 宮越HD 456700 189358.92 99.58% 0.062%<1478> iS高配当 90681 128856.273 99.36% 0.0015%<3798> ULS-G 30700 69374 97.25% -0.0064%<4892> サイフューズ 847500 240443.82 89.88% -0.0923%(*)はランキングに新規で入ってきた銘柄20日移動平均売買代金が5000万円以下のものは除外
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2025/07/02 14:57
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TOTO---大幅続伸、社長インタビュー報道を材料視
*14:35JST TOTO---大幅続伸、社長インタビュー報道を材料視
TOTO<5332>は大幅続伸。社長インタビュー報道が伝わっており、買い材料につながっているもようだ。海外売上構成比36%の米国における関税の影響として、メキシコ工場生産品は関税が猶予されている一方、東南アジア生産品には一律関税の10%がかかっており、5月に販売価格を3-4%引き上げているもよう。それでも米国での売れ行きは絶好調とされており、同社製品の競争優位性があらためて認識される状況のようだ。
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2025/07/02 14:35
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アークランズ---大幅続落、第1四半期2ケタ営業減益決算を嫌気
*14:29JST アークランズ---大幅続落、第1四半期2ケタ営業減益決算を嫌気
アークランズ<9842>は大幅続落。前日に第1四半期決算を発表、営業利益は42.1億円で前年同期比14.7%減となり、据え置きの上半期計画100億円、同1.8%減、通期計画193億円、前期比18.9%増に対して低進捗と受けとめられているようだ。月次売上推移から売上高は想定線とみられるが、新規出店費用、人件費単価、水道光熱費の増加などコスト負担増が響いたほか、外食事業においては米価格の高騰で粗利益率も低下しているもよう。
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2025/07/02 14:29
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フォーバル---経営支援サービス「きづなPARK」がCRDビジネスサポート株式会社の提供するMcSSと連携開始
*14:27JST フォーバル---経営支援サービス「きづなPARK」がCRDビジネスサポート株式会社の提供するMcSSと連携開始
フォーバル<8275>は1日、CRDビジネスサポートが提供する「McSS(中小企業経営診断システム)」と、自社が運営する情報分析プラットフォーム「きづなPARK」との連携を開始した。CRDビジネスサポートは、一般社団法人CRD協会の100%出資子会社であり、約300万社の決算情報を保有する中小企業信用リスク情報データベース(CRD)を活用した財務分析サービス「McSS」を展開している。McSSは、信用保証協会の保証料率算定にも活用されている「CRDモデル」を用いて財務診断を行い、全国約100万社のデータと比較して、偏差値や順位により信用力を可視化する。一方、「きづなPARK」は、中小企業の経営情報を収集・蓄積・分析活用できるプラットフォームであり、開発当初より中小企業ユーザーがベンチマークとして活用できるよう、26万社のCRDデータを元にした統計加工データを提供している。今回の連携により、「きづなPARK」と「McSS」がそれぞれの機能を相互に活用できるようになり、双方のユーザーに対して中小企業経営における経営情報の可視化と将来予測、効果測定機能を提供し、企業経営の継続・拡大のさらなる支援を目指す。
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2025/07/02 14:27
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出来高変化率ランキング(13時台)~エアトリ、三井海洋などがランクイン
*14:13JST 出来高変化率ランキング(13時台)~エアトリ、三井海洋などがランクイン
※出来高変化率ランキングでは、直近5日平均の出来高と配信当日の出来高を比較することで、物色の傾向など市場参加者の関心を知ることができます。■出来高変化率上位 [7月2日 13:32 現在](直近5日平均出来高比較)コード⇒銘柄⇒出来高⇒5日平均出来高⇒出来高変化比率⇒株価変化率<281A> インフォメティス 16130500 228426.14 373.19% 0.1144%<6191> エアトリ 1574400 92814.4 295.14% 0.0646%<7709> クボテック 1683200 49035.9 275.25% -0.2476%<9386> 日コンセプト 667900 177992.4 272.10% 0.1149%<6915> 千代インテ 126500 38800.06 237.34% 0.0357%<4978> リプロセル 4106100 125430.08 181.44% 0.0848%<5133> テリロジーHD 332800 26362.96 171.02% -0.0641%<8585> オリコ 2696700 643639.8 152.80% 0.0665%<5724> アサカ理研 344500 105851.44 122.43% 0.041%<2384> SBSHD 299300 317328.7 121.20% 0.082%<6238> フリュー 268100 94497.72 114.65% 0.0177%<3498> 霞ヶ関キャ 815300 3865399.8 106.90% 0.0571%<6269> 三井海洋 1558300 3633648.8 99.46% 0.059%<1949> 住電設 139800 335586.4 96.61% 0.048%<3664> モブキャストH 28568200 460009.2 96.38% 0.1136%<4892> サイフューズ 813200 240443.82 85.17% -0.0874%<5290> ベルテクス 31300 33739.08 83.34% 0.0008%<9612> ラックランド 121100 53253.82 81.35% -0.0317%<6330> 洋エンジ 2322600 779614.64 81.04% -0.0196%<196A> MFS 206000 42018.7 76.82% -0.0219%<5597> ブルーイノベ 571500 486431.72 74.85% -0.0263%<6620> 宮越HD 369400 189358.92 74.63% 0.068%<5715> 古河機 145600 147702.82 73.08% 0.0584%(*)はランキングに新規で入ってきた銘柄20日移動平均売買代金が5000万円以下のものは除外
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2025/07/02 14:13
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澁澤倉庫 Research Memo(9):増配や自己株式の取得を実施し、株主還元を強化
*14:09JST 澁澤倉庫 Research Memo(9):増配や自己株式の取得を実施し、株主還元を強化
■株主還元策澁澤倉庫<9304>は、配当については、財務健全性の維持を前提に成長投資を積極的に行ったうえで、業績及び将来の見通しに配慮しながら実施することを基本とし、第2四半期末日及び期末日を基準とした年2回の配当を実施することを基本方針としている。配当の決定機関については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議による旨を定款に定めている。2025年3月期の1株当たりの年間配当金は、配当性向40.0%を目安に年間配当金100.0円を下限とした累進的配当の方針に従い、前期比40.0円増配の140.0円(第2四半期末60.0円、期末80.0円)とした。2026年3月期の1株当たり年間配当金は、株主還元強化の方針から、配当性向50.0%を基準に年間配当金140.0円を下限とする累積配当へと方針を変更するため、同40.0円増配の180.0円(第2四半期末90.0円、期末90.0円)を予定している。また、自己株式の取得については、市場環境や資本の状況などを総合的に勘案して機動的に実施することとしており、2024年度は5月と11月に実施した。加えて、資本効率の向上に向けて政策保有株式の縮減も実施している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:09
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澁澤倉庫 Research Memo(8):「中期経営計画2026」は順調に推移、初年度の営業利益進捗率39%と余裕含み
*14:08JST 澁澤倉庫 Research Memo(8):「中期経営計画2026」は順調に推移、初年度の営業利益進捗率39%と余裕含み
■中期経営計画3. 「中期経営計画2026」の進捗澁澤倉庫<9304>の「中期経営計画2026」初年度の進捗状況は、業績の進捗率が営業収益で45%、営業利益で39%と順調で、余裕含みのスタートとなった。成長戦略の取り組みとして、収益力の強化では、多品種小ロット商品に対応できるよう、需要変動を吸収可能なロボットと人員を組み合わせたハイブリッドオペレーションモデルを構築した。また、商品特性に合わせた拠点新設においては、自動化オペレーションを導入した千葉北第3倉庫で24時間稼働を実現した。物流ネットワークの拡充では、国内で主に首都圏を中心とする物流センターの増設や、全国3ヶ所の危険品倉庫新設を進めた。これにより2025年3月期は前期比で約60,000平方メートルの倉庫面積を増強した。海外では、アジアにおける自動車部品物流の強化を目的にタイのバンコクに駐在員事務所を開設し、早期の現地法人化を進めることでベトナム、フィリピンとの東南アジアの域内ネットワーク体制を構築する方針である。新規業務の獲得としては、多品種小ロット貨物である化粧品のEC物流、医療器具・キッチン用品・食品などの3PL(外部物流委託)業務を積極的に取り込み、営業収益の拡大につなげた。不動産ポートフォリオの拡充では、所有資産を賃貸する事業モデルだけでなく、私募ファンドスキームへの出資などの収益基盤の多様化を進めるほか、倉庫物件の仲介・転貸、物流不動産事業、賃貸倉庫への人材派遣、建物管理などテナント向け付加サービスなどを進めている。ESGへの取り組み強化では、同社保有賃貸施設で再生可能エネルギー化100%を達成したほか、監査等委員会設置会社へ移行するなどガバナンスの強化を進めた。現時点での主要課題は、新設拠点の早期フル稼働、業域の拡大に向けた新規事業の収益化、DXによる競争優位性の確立である。しかし、新設拠点については、多様な業務にわたる提案営業により着実に稼働率が向上している。業域の拡大においても、商社機能を取り込むことで、同社のコールドチェーンを活用した日本酒や和牛の輸出を推進しているほか、フォークリフトの販売代理店業務や顧客拠点内の荷役請負サービス提供も進展している。DXでは物流荷役機器の作業で蓄積した知財を横展開し、各拠点の機能の底上げを図っている。2026年3月期の減益予想は懸念される点だが、これは保守的な予測を含んでおり、過去と比較して利益水準が高まっていることから、進捗状況は順調と考えて問題ないと判断される。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:08
注目トピックス 日本株
澁澤倉庫 Research Memo(7):2027年3月期に営業利益53億円達成を目指す
*14:07JST 澁澤倉庫 Research Memo(7):2027年3月期に営業利益53億円達成を目指す
■中期経営計画2. 「中期経営計画2026」と成長戦略澁澤倉庫<9304>は、「Shibusawa 2030 ビジョン」実現に向けたセカンドステージとして2024年5月に「中期経営計画2026」(2025年3月期~2027年3月期)を策定した。基本方針として、主力の物流事業の収益力の強化、国内外の物流ネットワークの拡充、物流の枠を超えた業域の拡大、物流事業とのシナジーを発揮できる不動産ポートフォリオの拡充、ESGへの取り組み強化という5つの成長戦略を推進することで持続的価値の創造を目指す。数値目標は、2027年3月期に営業収益850億円、営業利益53億円、経常利益60億円を掲げた。また、「Shibusawa 2030 ビジョン」で設定したROE10.0%以上を達成するため、そのマイルストーンとして「中期経営計画2026」でROE7.0%以上とすることを目指している。(1) 収益力の強化主力の物流事業の収益力の強化では、同社の強みを生かし、物流DXの推進、専門性の追求、倉庫機能の差別化とバリューアップにおいて具体的な施策を実行している。物流DXの推進では、機械化・自動化・情報のデジタル化による作業効率の向上と新たな価値の創造を図っている。専門性の追求では、ロボットとマンパワーによる物流波動に対応できるハイブリッドオペレーションや多品種小ロット物流モデルの開発・全国展開を推進している。倉庫機能の差別化とバリューアップでは、温湿度管理や危険品など特殊貨物に対応する拠点の拡充、流通加工・検品・EC対応といった付加価値の提供など、新たな視点の物流サービスを充実させている。(2) 物流ネットワークの拡充物流ネットワークの拡充では、専門性を発揮できる拠点や商品特性・作業形態に適した拠点など国内の物流拠点の拡充を図っている。また、現在導入している陸運配車システムの機能を強化することで配車効率や運行効率を向上、オープンネットワークにより協力会社車両も含めた運行管理や労務管理をレベルアップし、国内輸送ネットワークを強化している。香港や上海など海外拠点では、冷蔵・冷凍倉庫の増設や保冷輸送ネットワークの強化も進め、保冷車による域内物流を拡充する方針である。フィリピンやベトナムでも、提携先の所有する冷蔵倉庫を足掛かりに、コールドチェーン物流の拡充を進める。海外全域では、拠点の整備や現地企業とのパートナーシップ、ローカルマネージメント層の登用などを通じて、地域に密着した物流ネットワーク基盤の構築を目指す。(3) 業域の拡大業域の拡大では、物流の枠を超えて、付加価値のある新たなサービスを提供している。例えば、商社機能を強化することで、決済代行やマッチング、日本食材の輸出支援など、商流も兼ね備えたサービスに取り組んでいる。また、オペレーションノウハウを生かした物流機器の開発や、販売・メンテナンス請負などの販売代理、生産計画と連動したプラントロジスティクスや人材派遣事業など製造拠点内サービス、不用品の収集・運搬や再販売などリサイクル事業も展開する計画である。(4) 不動産ポートフォリオの拡充不動産事業では、安定した収益・利益を確保することで、ボラティリティの高い物流事業を支える役割を担う。同時に、成長の面で先行する物流事業との差を縮めるよう、成長を目指す。そのため、CRE戦略の推進や環境対応といった施策により、保有物件のバリューアップを進め、収益性の向上を図る。また、物流事業との連携を深めることで、物流施設賃貸業務(不動産)と請負物流業務(物流)を融合した新たな価値創造や、プロパティマネジメント業務※の拡大を目指す。さらに、自社所有物件の再開発に加え、新たな物件を取得し開発していくことも検討しており、中央日本土地建物グループ(株)や清和綜合建物(株)など不動産専業の事業パートナーとの連携も強化する方針である※ 不動産オーナーに代わって動産に関する資産管理を行う業務。(5) ESGへの取り組み強化環境への取り組みでは、GHG(温室効果ガス)排出量40%削減とリサイクル物流の事業化に向け、再生可能エネルギー導入施設の拡大、本牧倉庫をはじめとする環境配慮型施設の建設(CASBEE・ZEB※認証取得)、リサイクル・サーキュラーエコノミー事業の実現、モーダルシフト輸送サービスの強化を進めている。※ CASBEE・ZEB:CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は建築物の環境性能を評価し格付けするシステム。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、快適な室内環境を実現しながら消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物。CASBEEとZEBを組み合わせることで、より環境によい高水準の建築物を実現することができる。社会への取り組みでは、物流事故の削減、イノベーションの活用、人的資本価値の最大化、協力会社との連携強化を通じて、無事故の推進(安全対策強化)、従業員満足度の向上(制度、就業環境の質向上)、人権への配慮の強化(ダイバーシティの推進)、協力会社と連携した環境や安全対策・労働環境の質向上を推進する。ガバナンスへの取り組みでは、経営基盤の強化、中長期的な企業価値向上、リスクマネジメントの深化、コンプライアンスの徹底によって、グローバル化に対応したガバナンスの構築、適切なリスクテイクによる持続的な企業価値の向上、リスク・リターンの関係を最適化するリスクマネジメントの実践、コンプライアンス体制の強化、情報開示の充実を目指している。(6) 成長投資と資本政策企業価値の向上を目指し、成長戦略に伴う投資を計画どおり実行する方針である。「中期経営計画2026」期間中に、営業キャッシュ・フロー250億円のほか、財務健全性を維持しつつ外部負債の活用や資産処分により最大600億円規模のキャッシュインを見込んでいる。これに対して、必須となる更新投資100億円に加え、400億円規模の成長投資と100億円の株主還元を計画している。成長投資は、M&Aや資本提携も含め、国内事業の基盤強化、海外事業の強化・拡大、不動産ポートフォリオの拡充、事業領域の拡大・新規事業開発、DXやIT、ESG経営の強化などに充当する考えである。こうした成長戦略を支えるため、同社は資本コストや株価を意識した経営も推進している。具体的には、1倍割れしているPBRの改善に向け、ROEとPERの向上に取り組む。ROEの向上では、トップライン成長や利益率改善とともに適切な資本政策を推進する。PERの向上では、リスクプレミアムを引き下げて株主資本コストを低減するとともに、成長戦略を着実に実行することで期待利益成長率を高める。また、IR活動を通じて、こうした取り組みを丁寧に発信するとしている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:07
注目トピックス 日本株
澁澤倉庫 Research Memo(6):2031年3月期に営業利益6,500百万円達成を目標に掲げる
*14:06JST 澁澤倉庫 Research Memo(6):2031年3月期に営業利益6,500百万円達成を目標に掲げる
■中期経営計画1. 「Shibusawa 2030 ビジョン」創業者・渋沢栄一の「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という精神は、現在のサステナビリティに通じる考え方である。渋沢栄一の精神を受け継ぐ澁澤倉庫<9304>は、コーポレートスローガンを「永続する使命。」と掲げ、道徳と経済を両立することで社会の持続的成長に貢献し、あらゆるステークホルダーの未来を豊かにし、企業として成長することを目指している。また、「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という精神を共有すべき価値観(Value)と位置付けるとともに、物流を超えた新たな価値創造により持続可能で豊かな社会の実現を支えることを果たすべき社会的使命(Mission)とした。そのうえで、目標とする姿(Vision)として、効率追求から価値創造へと転換することで、顧客の事業活動に新たな価値を生み出すValue Partnerとなることを目指している。同社はVision達成に向け、2021年に「Shibusawa 2030 ビジョン」を策定し、競争力の強化、サービス領域の拡大、持続的な企業価値向上のためのESG経営を進めることで、2031年3月期に営業収益100,000百万円、営業利益6,500百万円、経常利益7,000百万円、ROE10.0%以上を目指している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:06
注目トピックス 日本株
澁澤倉庫 Research Memo(5):2026年3月期は減益予想、新規拠点稼働率を保守的に見込むも利益拡大余地あり
*14:05JST 澁澤倉庫 Research Memo(5):2026年3月期は減益予想、新規拠点稼働率を保守的に見込むも利益拡大余地あり
■業績動向2. 2026年3月期の業績見通し2026年3月期の業績見通しについて、澁澤倉庫<9304>は営業収益79,000百万円(前期比0.5%増)、営業利益4,200百万円(同10.0%減)、経常利益5,100百万円(同8.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5,100百万円(同3.9%増)と見込んでいる。なお、親会社株主に帰属する当期純利益のみ増益となるのは、物流施設の移転に伴う特別利益や政策保有株式売却益を想定しているためである。日本経済は、雇用・所得環境の改善や企業業績の持ち直しを背景に、緩やかな回復基調が続くことが見込まれている。一方で、資源価格の変動や物価の上昇、人手不足などが経済活動を下押しする要因として依然懸念され、米国の保護主義的な通商政策による国際貿易の不透明感や景気鈍化への警戒が高まっている。こうした懸念が輸出入需要やサプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性があり、今後の動向を慎重に注視していく必要が生じている。こうした環境において、同社は引き続き各種施策による営業収益の拡大に加え、業務効率化による採算性の向上を重点施策として展開する方針である。これにより、物流事業では倉庫・陸上運送業務の好調な継続、新規業務の通期寄与、本牧倉庫などの前期に新設した拠点の稼働率向上により、営業収益の増加を見込む。しかし、前期に新設した拠点がフル稼働するまでのタイムラグに加え、システムやDX関連の先行投資費用、人件費や作業費の増加、一部顧客の自営化による契約失注、環境負荷低減を目的とした不動産テナントビルにおけるLED照明切り替えにかかる先行経費などによる減益が見込まれるため、営業利益は2ケタ減益を見込んでいる。セグメント別では、物流事業は微増収減益、不動産事業は減収2ケタ減益と予想している。物流業界では、国内景気後退への懸念、物価上昇による内需の減速、労働力不足などに伴う物流コストの増加など、厳しい環境が続くことが想定されている。こうしたなか、物流事業は2025年3月期に稼働した本牧倉庫や大阪の危険品倉庫、増床した松戸倉庫、医療機器や食品の倉庫業務が通期で寄与するほか、栃木県の危険品倉庫が新たな拠点として寄与するため、増収を見込む。しかし、2025年3月期及び2026年3月期に新設した拠点の稼働率、倉庫業務や陸上運送業務の人件費増に対する価格転嫁をやや保守的に見積もったため、減益を予想している。不動産事業では、オフィスビルを中心に稼働状況は安定的に推移することが見込まれる。しかし、コロナ禍終息後に増加した大型テナントビルの請負工事が一巡したこと、LED化工事のESG経費や一部賃料の改定などが重なり、2ケタ減益を予想している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:05
注目トピックス 日本株
澁澤倉庫 Research Memo(4):2025年3月期は、工場内物流請負業務の通期寄与や拠点拡充などにより増収増益
*14:04JST 澁澤倉庫 Research Memo(4):2025年3月期は、工場内物流請負業務の通期寄与や拠点拡充などにより増収増益
■業績動向1. 2025年3月期の業績動向澁澤倉庫<9304>の2025年3月期の業績は、営業収益が78,620百万円(前期比7.1%増)、営業利益が4,668百万円(同9.3%増)、経常利益が5,583百万円(同9.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が4,908百万円(同31.6%増)と、順調な推移となった。期初計画との比較では、営業収益で620百万円の過達、営業利益で32百万円の未達、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益でそれぞれ283百万円、808百万円の過達となった。日本経済は、世界経済が全体的に緩やかな成長を維持するなか、雇用・所得環境の改善などを背景に、個人消費や企業の設備投資に持ち直しの動きが見られ、緩やかな回復基調で推移した。一方、物価上昇の長期化が消費者マインドの下振れなどを通じて家計に与える影響や、米国の通商政策をめぐる今後の不確実性の高まりなどにより、先行きは依然として不透明な状況が続いている。こうした環境において、同社は倉庫業や運送業の枠に留まらない総合物流機能の展開を本格化させ、飲料物流や多品種小ロット物流の拠点ネットワークを拡充し、取扱量を増やした。一方で、DX推進の取り組みを一層強化し、省人化とオペレーションの効率化を進め、採算性の向上に努めた。この結果、営業収益は、全国配送の飲料業務や工場内物流請負業務の通期寄与、医薬機器関連の新規獲得、飲料物流や多品種小ロット物流における拠点拡充、定温/定湿倉庫や危険品倉庫の開設などにより増加に転じた。利益面では、倉庫作業費や運送費の上昇、ドライバーの給与改定など人件費の増加、拠点新設による減価償却費の増加、DX投資の拡大などによりコスト負担は増したものの、増収効果に加え、原価上昇分の価格転嫁、新設拠点の稼働率向上、先進的な物流機器導入による業務の効率化と採算性の向上、テナントビルの稼働率向上などにより、2ケタ近い営業増益を確保することができた。なお、特別損益で政策保有株式の売却益15億円及び前々期に発生した固定資産処分損の解消により、親会社株主に帰属する当期純利益の伸びが相対的に大きくなった。政策保有株式については、連結純資産比率を5年以内に20%以下にするという縮減方針を掲げ、2024年3月期より年間8億円程度の売却を計画していたが、一部銘柄の株高を受け売却を前倒しする予定で、2026年3月期には18億円の売却額を見込んでいる。。また、当初予想との比較では、営業収益の過達は、新たに開始した医療機器の扱いや国際貨物の下期の輸出が想定以上となったこと、営業利益の未達は、本牧倉庫が下期稼働となったため先行コストの負担や集荷の後ズレがやや大きくなったことが要因である。経常利益の過達は、株式を所有する企業の業績が好調で増配が多かったこと、親会社株主に帰属する当期純利益の過達は、株式売却益の増額が要因である。セグメント別では、物流事業も不動産事業も増収2ケタ増益となった(連結調整前)。物流事業の事業環境は、個人消費の回復が小幅に留まったことから、消費財などの国内貨物の荷動きは横ばいで推移したが、円安効果による生産財の輸出や部品・部材類の輸入などを中心に輸出入は堅調な荷動きとなった。一方、人手不足や物価上昇などにより、引き続き物流コストは増加することとなった。こうした環境において、同社は、飲料物流や多品種小ロット物流の拠点ネットワークを拡充して取扱量の増大を図るとともに、医療機器など新規業務の獲得や適正な運賃・料金の確保に努めた。一方、DX推進を一層強化して省人化とオペレーションの効率化を進めるなど、採算性の向上も進めた。業務別では、倉庫業務や陸上運送業務において、飲料や工場内物流請負業務の通期寄与に加え、医薬品や医療機器、食品など新規事業やEC関連の取り扱いが増加した。また、コスト上昇のなかドライバー確保などのため、適正な運賃や料金の確保に努めた。港湾運送業務は、飲料の荷捌業務が通期寄与したほか、船内荷役業務の取り扱いが増加した。国際輸送業務は、輸入航空貨物の取り扱いは増加したものの、一部アジア域内航路での海上運賃単価の下落に加え、輸出入海上貨物や輸出航空貨物の取り扱いが低調に推移したため、減収となった。不動産事業の事業環境は、都市部のオフィスビル市場は、空室率が引き続き低下傾向を示し、賃料の上昇も見られ、全体的に安定的に推移した。こうしたなか、同社はテナントビルの稼働率向上に加え、猛暑などを背景に空調設備使用料などの不動産付帯収入が増加した。また、大型工事の受注があったビル工事請負業務も好調に推移した。既存施設においては、計画的に保守改良工事を実施することで、現有資産の価値向上を図るとともに適正料金の確保に努め、安定的な収益基盤の確保・強化を推進した。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:04
注目トピックス 日本株
澁澤倉庫 Research Memo(3):倉庫業を祖業に物流事業と不動産事業を展開
*14:03JST 澁澤倉庫 Research Memo(3):倉庫業を祖業に物流事業と不動産事業を展開
■事業概要(2) 国際ロジスティクス澁澤倉庫<9304>は、通関・輸出入海貨業務、国際輸送、海上輸送、航空輸送など輸出入フォワーディングサービスや、海外現地法人による総合物流事業を行っている。また、顧客に代わってこうした輸出入手続きを行うBPO(Business Process Outsourcing)サービスも提供している。通関・輸出入海貨業務では、AEO(Authorized Economic Operator)認定通関業者として、専門知識を持つスタッフや通関士を全国の主要な港や空港に配置している。これにより、専門的なノウハウが必要な通関を含め、日用品・アパレル・化学品・食料品・機械類など多岐にわたる商品の通関を行っている。国際輸送サービスでは、中国・香港・ベトナム・フィリピンをはじめ、世界各地にある海外現地法人や提携代理店と連携し、グローバルネットワークを構築し、陸・海・空の輸送モードの最適な組み合わせによる国際輸送サービスを提供している。三国間輸送や非居住者在庫など多様なニーズに対応しており、様々な企業に対し、効率的で最適なDoor to Doorサービスを提供している。海上輸送では、NVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier)※として、コンテナ貨物・混載貨物の海上輸送サービスや、Door to Doorの複合一貫輸送サービスなどを提供している。自動車部品や化学品など、豊富なベース貨物を確保することで、コスト競争力とスケジュールの多様性が同社の強みとなっている。航空輸送では、IATA(国際航空運送協会)の公認代理店として、精密機器から自動車部品、化学品原材料、食品・イベント輸送に至るまで、幅広いサービスを提供している。※ 船舶や航空機を持たない貨物利用運送事業者。海外事業は同社にとって成長分野で、現在、中国、香港、ベトナム、フィリピンに現地法人を置いている。中国では自社車両や自社倉庫を保有し、上海と広州を中心に自動車など機械部品や家電品、化学品、日用品などの貨物を取り扱い、輸出入フォワーディング、流通加工、陸上・海上輸送などの総合物流サービスを提供している。広州では、香港やベトナムと華南を陸路で結ぶクロスボーダー輸送サービスも手掛けている。香港では、輸出入フォワーディングなどに加え、コールドチェーン物流を活用した日本食材のレストランや個人宅向け宅配事業を展開している。ベトナムでは、ホーチミンとハノイの2拠点で輸出入フォワーディング、陸上運送、保税倉庫管理といったサービスを提供している。自動車部品をはじめとするベース貨物の大口取扱数量を強みとした海上運賃のコスト競争力や、急なニーズにも対応できる輸送能力にも定評がある。また、持分法適用関連会社で、内航船による海上輸送を含む、ベトナム全域の物流ネットワークを活用した総合物流サービスを行っている。フィリピンのマニラでは、オペレーション対応力と輸送スケジュール提案力を強みに、日系企業向け輸出入フォワーディングサービスのほか、日本製の食品やワインの輸入一貫サービスを提供している。(3) 情報システム大量かつ複雑な物流を効率的に運用するうえで、高度な情報システムは大きな差別化要因となる。同社は、日付管理や在庫の一元管理などを商品特性ごとに最適化した倉庫管理システム(WMS)、NVOCC・海貨・航空貨物・通関業務の各システムを統合しプラットフォーム化した、輸出入荷捌き・航空貨物システム、全国の配車情報を一括管理して無駄のない効率的な車両運行を行う陸運配車システム、飲料専用WMSの、4つの高度な総合物流システムを保有している。これにより、顧客それぞれに最適な輸送モードや貨物管理を提供し、陸・海・空ワンストップの総合物流サービスを実現している。さらに、高度な要求にも応えられるよう、貨物トレースシステム・GPS機能といった最新機能との連携も進めている。(4) 不動産事業同社は長年にわたり好立地で倉庫業を営んできたため、施設のなかには時代の変化とともに周辺が宅地化・都市化され、不動産としての価値が高まる一方、物流での使用に適さなくなる状況が生じている。不動産事業は、そうした物件を有効利用するため、オフィスビルや物流施設、高付加価値物流施設に再開発し、賃貸することを推進している。現在では多数の賃貸ビルを保有し、安定した収益源となっている。代表的な賃貸オフィスビルには、東京地区に澁澤シティプレイス(茅場町)や澁澤シティプレイス永代、澁澤ビル、澁澤シティプレイス蛎殻町、関西地区にドーミー三宮などがある。今後は、CRE戦略※の加速や環境に対応したバリューアップ投資により収益性を向上させるとともに、物流と融合した新たな価値の創造や不動産専業の事業パートナーとの連携による再開発事業への取り組みも積極的に検討する。※ 企業価値向上の観点からCRE(企業不動産:事務所や店舗、工場など事業用不動産)の見直しを行い、不動産投資の効率性を最大化する戦略。一方、グループ会社の澁澤ファシリティーズ(株)では、各種法令や設備の専門知識を持つスタッフが、工事・ビルマネジメントサービスを提供している。ビルの管理では、設備管理から警備、清掃、環境衛生管理に至るまでのマネジメントサービスを行う。また、同社が運営する施設の診断や補強、更新の際には建設工事や設備工事、内装工事など各種工事も請け負っており、利用者にとって快適で安全・安心な職場環境を提供している。物流の専門性・DXで競争力強化、モーダルシフトにも強み3. 同社の強み物流における強みは、専門性の追求、DX、業域の拡大、モーダルシフトのノウハウにある。こうした強みを積極的に活用することで、競争力の強化、収益機会の多様化、事業の拡大を推進している。専門性の追求では、飲料や日用品など専門特化したノウハウや、アパレル・コスメのような多品種小ロット貨物の効率的運営モデル、医療機器や危険品などの取扱いノウハウを持つ。さらに、東名阪や千葉地区でのドミナント展開により、利便性を追求している。DXでは、自動搬送機や無人搬送フォークリフトを導入し、マンパワーとオートメーション(自動化技術)を組み合わせたハイブリッドオペレーションモデルを構築することで、繁閑の波動を吸収し、業務効率化を実現している。また、車両・配車データのデジタル化により、車両の運行効率を高め、収益性を向上させている。業域の拡大では、顧客のニーズに基づき、流通加工・生産受託、BPO、物流コンサルティング、4PL(包括物流管理)、海外といった物流や物流周辺の事業を積極的に拡大している。なかでも注目されるモーダルシフトへの対応では、フェリー輸送を事業の柱とする日正運輸(株)と鉄道輸送を柱とする大宮通運(株)の子会社2社が、顧客のモーダルシフトへの要請を機動的に受ける体制を敷いている。このような強みを最大限に活用することで、顧客や商材に適した柔軟で機動的な物流サービスをトータルで提供している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:03
注目トピックス 日本株
澁澤倉庫 Research Memo(2):専門性やDX、業域拡大、モーダルシフトのノウハウに強みを持つ総合物流企業
*14:02JST 澁澤倉庫 Research Memo(2):専門性やDX、業域拡大、モーダルシフトのノウハウに強みを持つ総合物流企業
■事業概要1. 会社概要総合物流企業である澁澤倉庫<9304>は、1897年、“日本資本主義の父”と言われる渋沢栄一によって創業された。渋沢栄一は明治から昭和初期にかけて官僚や実業家として活躍し、第一国立銀行や東京株式取引所(現 (株)東京証券取引所)など数多くの企業の設立・経営に携わった明治期の偉人である。なかでも「わが国の商工業を正しく育成するためには、銀行・運送・保険などとともに倉庫業の完全な発達が不可欠」との信念により早くから物流の重要性を指摘し、自ら事業主となって、日本で最も古い近代的倉庫企業の1つと言われる澁澤倉庫部を創業した。同社はその後も事業を拡大し、昭和初期にかけて主要港をはじめとする全国に支店を開設、戦後は子会社設立などによって陸・海・空へと領域を拡大して総合物流の体制を築いていった。その後、顧客のニーズに合わせて海外展開を加速する一方、好立地にある所有不動産を活用して不動産賃貸業も拡充している。ウクライナ情勢などに起因する燃油費高や円安などリスクが増す現在においても、同社は渋沢栄一の精神を基軸に、専門性の強化や機械化、DXによる自動化などにより総合物流企業として進化を続けている。倉庫業を祖業に物流事業と不動産事業を展開2. 事業内容同社は倉庫業を祖業とする総合物流企業であり、現在の事業は物流事業と不動産事業に大別される。物流事業はさらに、国内ロジスティクス(物流拠点運営、陸上運送、港湾運送、そのほかの物流)と国際ロジスティクス(輸出入・フォワーディング、BPO、海外事業)、情報システムに分けられ、同社と国内・世界各地の関連会社が有機的に連携しながらそれぞれの地盤で事業を強化している。取引先は、飲料・日用品を主力に、アパレルから家電まで多岐にわたっている。不動産事業では、保有不動産を生かした不動産開発賃貸、不動産管理などを行っている。例年、物流事業と不動産事業の営業収益構成比は9:1と偏るが、営業利益においては両事業がほぼ同等の比率を占め、近年は物流事業の構成比が高まってきている。(1) 国内ロジスティクス(a) 物流拠点運営物流拠点運営は、国内主要都市をカバーするネットワークを基盤に、倉庫保管、流通加工、輸配送機能と多様な商品の取り扱いノウハウを融合した、顧客に最適な物流サービスを提供している。倉庫保管では、一般貨物向けの常温倉庫に加え、可動式ラック倉庫、定湿・定温倉庫、危険品倉庫など、最適な保管環境を提供するとともに、顧客の商品特性に応じた多様な荷役機器を有し、サプライチェーンマネジメントの戦略拠点として倉庫・配送センター機能を提供している。流通加工では日用品やアパレル、飲料や食品に至るまで、幅広い商品を対象に、検品・詰め替え・ラベル貼付などを行う。また、生産受託では自動車部品など部材の集約や組み立てを行うサービスを提供している。輸配送では、倉庫・配送センターのスケールメリットと全国をカバーする集車ネットワークを活用し、納期・製品・輸送ロットに最適な輸送モードを提供する。特に首都圏でのECや店舗向け配送では、自社軽貨物サービスによる即日配送やリバースロジスティクス、店舗間在庫移動などにも対応している。さらに、自社開発した倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)によるリアルタイムな在庫照会やEDI(電子データ交換)連携のほか、物流データ分析に基づいた調達計画や在庫配置計画の立案などDXとイノベーションを活用した物流ソリューションを提供し、労働力不足への対応やCO2排出削減などの社会課題の解決にも取り組んでいる。(b) 陸上運送陸上運送では、東名阪や千葉地区といったドミナントエリアを基盤に、全国に長距離輸送・地場輸送、共同配送、特殊車両輸送、海上コンテナ輸送、クロスドック輸送などのサービスを提供している。陸上運送サービスの最大の特徴は、トレーラーや大型車など豊富な車両と全国ネットの営業網を生かした大量ラウンド運行※1による「幹線輸送」と、自社開発の輸配送システムなどによる「地域内の地場配送」の連携にある。また、環境問題や2024年問題※2など物流における社会課題の解決策として、様々な商品をカテゴリーごとに物流拠点に集約して同一配送先に届ける共同配送を行っており、配送のローコスト化、配送先の荷受け作業の効率化、積載効率向上によるGHG(温室効果ガス)の排出、待機時間の削減、乗務員不足の解消などに寄与している。さらに、子会社と連携した鉄道輸送やフェリー輸送のモーダルシフト※3もワンストップサービスで提供しており、乗務員の労働環境改善、環境負荷低減や自然災害発生時のBCP(Business Continuity Planning)※4対策に貢献している。※1 ラウンド運行:複数の輸送ルートを組み合わせて空車区間を減らし、効率的に輸送する手法。※2 残業規制により輸送能力が不足すること。※3 トラックなどによる自動車貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶へと転換すること。※4 自然災害やテロ、システム障害など緊急事態時の事業継続計画。(c) 港湾運送船舶代理店として船舶の効率的な入港を多角的に支援している。パイロット(水先案内人)やタグボートの手配、海上保安庁、税関、検疫所など関係省庁への各種手続き、B/L(船荷証券)発行に至るまで、広範囲にわたるサービスを提供している。また、船内荷役やはしけ運送などの港湾運送業務でも多くの実績がある。特に在来船の船内荷役では、主要港での長年にわたる経験やノウハウを生かし、鋼材などの長尺物や穀物、重機、プラントといった大型貨物の積み卸しや積み付け、ラッシング(固縛)などの作業を行っている。(d) その他の物流その他の物流として、文書保管・トランクルームサービスや引越し・家財保管サービスを提供している。文書保管・トランクルームサービスでは、都市部近隣の強固なセキュリティの施設において、顧客のオフィス文書などを保管するほか、集配専用車による輸送サービスや機密文書の廃棄処理などのサービスを提供している。引越し・家財保管サービスでは、オフィスの移転作業や社員の引越し、リフォーム・建替えに伴う家財保管を行っている。海外転勤時などの家財保管サービスにも対応している。同社は国土交通省の「優良トランクルーム」、全日本トラック協会の「引越優良事業者」、EMS国内規格である「エコステージ2」といった認定・認証を受けている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:02
注目トピックス 日本株
澁澤倉庫 Research Memo(1):「中期経営計画2026」の初年度となる2025年3月期は増収増益と順調に推移
*14:01JST 澁澤倉庫 Research Memo(1):「中期経営計画2026」の初年度となる2025年3月期は増収増益と順調に推移
■要約澁澤倉庫<9304>は、倉庫業を祖業とする総合物流企業で、事業は物流事業と不動産事業に大別される。物流事業は国内ロジスティクスと国際ロジスティクス、情報システム、不動産事業は不動産開発・賃貸及び工事・ビルマネジメントサービスに分けられる。同社は、“現在のサステナビリティ(持続的成長)に通じる精神を持った、日本資本主義の父”と言われる渋沢栄一(しぶさわえいいち)が1897年に創業した。昭和初期にかけ全国に支店を開設し、戦後は陸・海・空へと事業領域を拡大、その後海外展開を加速するなど業容拡大を進めた。同社の強みは、飲料や日用品など消費財物流や多品種小ロット貨物で培った専門性、車両・配車データのデジタル化や自動搬送機の導入などのDX、海外や物流周辺への業域の拡大、そして現在注目を集めるモーダルシフトのノウハウにある。1. 2025年3月期の業績概要2025年3月期の業績は、営業収益が78,620百万円(前期比7.1%増)、営業利益が4,668百万円(同9.3%増)となった。倉庫業や運送業の枠に留まらない総合物流機能の展開を本格化させ、飲料物流や多品種小ロット物流の強みを生かして拠点ネットワークを拡充し取扱量を増加させる一方、DX推進の取り組みを一層強化するなど採算性の向上に努めた。この結果、営業収益は増加に転じた。営業利益は、輸送費や作業費などのコスト増加はあったものの、適切な運賃や料金の確保に努めたことや、先進的な物流機器導入による業務の効率化や採算性向上などにより、2ケタ近い増益を確保することができた。また、政策保有株の連結純資産比率を5年以内に20%以下とする縮減方針により、特別利益に株式売却益15億円を計上した。2. 2026年3月期の業績見通し2026年3月期の業績見通しについて、同社は営業収益79,000百万円(前期比0.5%増)、営業利益4,200百万円(同10.0%減)と見込んでいる。営業収益は、倉庫・陸上運送業務の好調継続、新規業務の通期寄与、前期に稼働した本牧倉庫などの新設拠点により、増収を予想している。営業利益は、新設拠点のフル稼働までのタイムラグ、システムやDX関連の先行投資費用、人件費や作業費の増加、一部顧客の自営化による失注、前期に好調であった不動産事業における大型テナントビル請負工事の一時的な反動減などが想定されることから、減益を見込む。ただし、同社は新設拠点の稼働率や作業人件費の価格転嫁などをやや保守的に見積もっており、今後の利益拡大余地を残しているとの見方を示している。なお、政策保有株式の縮減方針に基づき、2025年3月期を上回る18億円の株式売却を予定している。3. 「中期経営計画2026」の進捗同社は、創業者・渋沢栄一の「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」という精神を基軸に「Shibusawa 2030 ビジョン」を策定した。そのセカンドステージとなる「中期経営計画2026」を2025年3月期に開始し、収益力の強化、物流ネットワークの拡充、業域の拡大、不動産ポートフォリオの拡充、ESGへの取り組み強化という5つの成長戦略を推進し、2027年3月期に営業収益850億円、営業利益53億円、ROE7%以上の達成を目指している。初年度の進捗は順調な推移となった。収益力の強化では繁閑の波動(需要変動)を吸収できるロボットとマンパワーによるハイブリッドオペレーションモデルの構築が進んだ。物流ネットワークの拡充では、2024年3月期比で約60,000平方メートルの倉庫増強を実現した。業績の進捗率も営業収益で45%、営業利益で39%と、計画に対して余裕含みのスタートとなった。■Key Points・2025年3月期は、工場内物流請負業務の通期寄与や拠点拡充などにより増収増益・2026年3月期は減益予想、新規拠点稼働率を保守的に見込むも利益拡大余地あり・「中期経営計画2026」は順調に推移、初年度の営業利益進捗率39%と余裕含み(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2025/07/02 14:01
注目トピックス 日本株
矢作建 Research Memo(6):2030年度の売上高2,000億円規模の達成に向け、加速度的成長フェーズへ
*13:46JST 矢作建 Research Memo(6):2030年度の売上高2,000億円規模の達成に向け、加速度的成長フェーズへ
■中長期の成長戦略1. 2030年に目指す姿矢作建設工業<1870>は、2030年度の目指す姿として「課題解決&価値創造型企業」を掲げており、売上高2,000億円規模の達成を目標としている。顧客や地域が抱える課題を単に解決するだけでなく、建設エンジニアリングの力によって新たな価値を創造し、社会全体の持続的発展に貢献する企業になる意志が込められている。また、リニア中央新幹線開業を見据えた「リニア経済圏」への事業拡大や、地場密着型ゼネコンとしてのポジションを生かした社会課題解決型ビジネスの展開を通じて、単なる受注者ではなく価値提供者としての立ち位置を確立する方針である。この長期ビジョンの実現に向け、2030年度までの10年間を「進化」と「拡大」の二段階で戦略的に構築している。前半5年間(2021~2025年度)は、「既存事業の深化・進化」と「新規分野・領域の探索・開拓」を並行して進め、事業規模の拡大と将来に向けた基盤づくりの期間と位置付けている。後半5年間(2026~2030年度)では、前半で築いた基盤を生かし、加速度的な成長を実現するフェーズとしている。次期中期経営計画では、利益の追求と持続的な成長を両立させながら、ROEの改善を通じて企業価値のさらなる向上に取り組む方針である。また、M&Aについても、目的を明確化したうえで、シナジー創出が見込める案件に対して積極的な検討を進める考えである。現 中期経営計画は達成見込み、成長投資も計画を上回る進捗2. 中期経営計画と進捗状況2026年3月期の売上高は、中期経営計画で掲げた目標値130,000百万円を大きく上回る168,000百万円を見込んでいる。営業利益については目標値である10,000百万円の確保を予想している。建築事業・土木事業・不動産事業のいずれも順調に進捗する見込みであり、利益面においてもバランスの取れた事業ポートフォリオを実現する見通しとなっている。中期経営計画におけるキャッシュ・アロケーションについては、利益創出と財務の健全性を両立させながら有利子負債を活用して、将来への成長投資と株主還元に適切に配分する方針としている。計画期間の5期で、累計300億円以上の成長投資及び120億円以上の株主還元を実施する計画としている。成長投資の内訳としては、不動産投資・研究開発投資・人財投資・情報化投資・M&Aへの投資を計画していたが、2025年3月期までの4期で既に約350億円を実行しており、大きく計画を上回っている。なかでも、不動産投資は産業用地開発を中心に236億円が投じられた。これにより、累計約300億円の売上高を達成し、今後の不動産事業売上拡大への寄与が見込まれる。産業用地の開発は、土地の造成(土木事業)から設計・施工(建築事業)まで一貫した事業展開が可能であり、投下資金の早期回収に加えて、安定的なキャッシュ・フローを創出する好循環を生み出している。足元では、基盤である東海圏に留まらず、関東や関西地方でも具体的なプロジェクトが進捗しており、現在開発中の用地面積は30万坪を超える規模となっている。また、「対象分野の拡張」の観点で、データセンターや高機能オフィスなどの設計・施工、大口径トンネル工事への進出も視野に入れている。M&Aは、2023年3月に京都を地盤とする北和建設を子会社化した。北和建設は、マンション工事を中心に、ホテルや福祉施設などの建築工事を手掛けており、京都を中心とした関西圏に強固な営業基盤と施工キャパシティを有している。この買収は、中期経営計画における重点施策「事業エリアの拡大」の一環であり、両社のニーズが合致しシナジーを生み出すことが期待されている。そのほか、研究開発分野では、RCS構造の改良やPW工法の信頼性向上に向けた技術投資を実施している。情報化分野では、ITインフラ整備や情報セキュリティ強化など、人財分野では、従業員の処遇改善やマネジメント研修などへの投資を積極的に行ってきた。■株主還元策「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」を基本とする方針へ転換同社は、経営基盤の強化と企業価値の向上に向けて、長期的な視点に立って株主資本の充実に努めるとともに、継続的かつ安定的な株主還元を実施することを基本方針としている。この方針を一層明確にするため、2025年5月に配当方針の見直しを発表した。従来の「配当性向30%以上」という方針から、2026年3月期以降は「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」を基本とする方針へ転換し、利益変動に左右されにくい安定配当の実現を目指す考えである。2025年3月期の年間配当は1株当たり80円となり、前期比で20円の増配となった。このうち20円は創立75周年を記念した特別配当の位置付けであり、普通配当は60円である。結果として、DOEは5.1%、配当性向は61.0%となった。2026年3月期の年間配当は90円を予定しており、普通配当ベースで30円の実質増配となる見込みである。これにより、DOEは5.6%、配当性向は58.7%となる見通しであり、株主還元の強化を明確に打ち出した姿勢と言える。また、この方針変更は、資本効率の改善を通じた企業価値向上や株式市場における評価向上を意識したものでもある。同社は株主との丁寧な対話を重視し、株主還元についても誠実かつ積極的に取り組む姿勢を示している。2008年に100万株を取得して以降は、大規模な自己株式取得の実績はないが、今後は時価総額の向上という観点から、その可能性を排除せず、必要に応じて柔軟に対応を検討していく。(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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2025/07/02 13:46
注目トピックス 日本株
矢作建 Research Memo(5):2026年3月期は増収増益、中期経営計画目標達成見込み
*13:45JST 矢作建 Research Memo(5):2026年3月期は増収増益、中期経営計画目標達成見込み
■矢作建設工業<1870>の今後の見通し1. 2026年3月期の業績見通し現 中期経営計画(2021〜2025年度)の最終年度として、2026年3月期は次なる成長ステージへの移行期として重要な期である。連結業績は、売上高168,000百万円(前期比19.4%増)、営業利益10,000百万円(同15.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,600百万円(同16.9%増)を見込んでいる。建築事業・土木事業において、2025年3月期の豊富な次期繰越高を背景として、複数の大型建築工事の成功進捗により、売上高は4期連続で過去最高を更新する見込みである。利益面では、販売及び一般管理費の増加を見込むものの、両事業の増収効果により、各利益で過去最高を更新する見込みである。中期経営計画との対比では、売上高の目標値であった130,000百万円を大幅に上回り、利益面では、計画策定時には想定していなかった資材費や労務費の上昇があったものの、増収効果により、営業利益は目標値である10,000百万円を確保する見込みである。建築・土木事業は高い次期繰越高を背景に増収増益見込み2. 事業別見通し(1) 建築事業建築事業では、次期繰越高119,643百万円(前期末比16.0%増)を保有している。複数の大型建築工事の施工が進捗することによって、2026年3月期の売上高予想111,600百万円を達成する蓋然性は高いと弊社では見ている。また、資材や労務費の上昇分の受注価格への転嫁を進めており、売上高総利益率は7.7%(前期比2.3ポイント上昇)を予想している。増収効果もあり、売上高総利益は8,600百万円(同3,924百万円増)と大幅増益を見込んでいる。(2) 土木事業土木事業では、次期繰越高44,342百万円(前期末比26.7%増)を確保しており、建築事業と同様に2026年3月期の売上高予想38,400百万円を達成する蓋然性は高いと弊社では見ている。売上高総利益率は16.7%(前期比2.5ポイント低下)を予想しているが、増収効果によって売上高総利益は6,400百万円(同241百万円増)を予想している。(3) 不動産事業不動産事業では、産業用地開発において、2025年3月期に引き続き、大府東海開発プロジェクト2号地の販売を見込むものの、プロジェクトの規模は2024年3月期の1号宅地及び2025年3月期の2号宅地に比べると小さく、また、分譲マンション事業において、新規供給戸数の減少から販売戸数が減少し、売上高は18,000百万円(前期比18.2%減)と減収を見込んでいる。マンション開発については、インフレにより金利や販売価格が上昇しているなかで、購買動向にも変化が見られることから、慎重に検討している。立地に合わせて、富裕層向けと実需層向けの企画を柔軟に展開する方針である。売上総利益については、減収見込みであることに加えて、利益率の高い不動産販売の割合が小さくなることから6,500百万円(同24.2%減)を予想している。(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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2025/07/02 13:45
注目トピックス 日本株
矢作建 Research Memo(4):売上債権の増加を有利子負債で調達するも、自己資本比率は47.7%と高水準を維持
*13:44JST 矢作建 Research Memo(4):売上債権の増加を有利子負債で調達するも、自己資本比率は47.7%と高水準を維持
■業績動向4. 財務状況と経営指標矢作建設工業<1870>の2025年3月期末の総資産は18,220百万円増加し、144,220百万円となった。主な増加要因は完成工事未収入金等(受取手形、電子記録債権含む)が18,560万円増加したことによる。そのほかの資産の増減は現金及び預金が4,318百万円減少、販売用不動産が962百万円増加、有形固定資産が2,010百万円減少した。負債は合計15,923百万円増加したが、主な増加要因は有利子負債が長短合計で16,200百万円増加したことである。そのほか、工事未払金が3,441百万円増加、未成工事受入金が1,495百万円増加、未払法人税等が4,298百万円減少した。純資産合計は68,835百万円(前期末比2,297百万円増)となった。完成工事未収入金が大幅増加した要因は、期末にかけて、大府東海開発プロジェクトを中心とした大型の建設工事が進捗したことによるものである。一方、コロナ禍以降積み増していた手元資金の保有水準の見直しや、工事の施工進捗に伴う協力業者への支払いなどによって、現金及び預金が減少し、有利子負債が増加した。なお、同社は、D/Eレシオは1.0倍以内、自己資本比率は40%以上を意識したうえで、有利子負債を活用する方針としているが、D/Eレシオは0.56倍に留まり、自己資本比率は47.7%と高水準を維持した。また、流動比率も195.0%と健全な水準を維持した。5. キャッシュ・フローの状況2025年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは、17,191百万円の支出となった。主な収入は、税金等調整前当期純利益8,163百万円、減価償却費1,050百万円、仕入債務の増加3,440百万円、未成工事受入金の増加1,495百万円であった。一方、主な支出は、売上債権の増加18,559百万円、棚卸資産の増加728百万円、未払消費税の減少5,475百万円、法人税等の支払額5,853百万円であった。投資活動によるキャッシュ・フローは255百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは13,149百万円の収入であった。主な増減要因は長短借入金の増加が16,200百万円、配当金の支払が3,038百万円となった。この結果、2025年3月期末の現金及び現金同等物は4,298百万円減少し、同期末残高は15,619百万円となった。(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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2025/07/02 13:44
注目トピックス 日本株
矢作建 Research Memo(3):2025年3月期は増収となるも、前期の産業用地売却益の反動減で減益
*13:43JST 矢作建 Research Memo(3):2025年3月期は増収となるも、前期の産業用地売却益の反動減で減益
■業績動向1. 2025年3月期の業績概要矢作建設工業<1870>の2025年3月期の業績は、売上高140,699百万円(前期比17.4%増)、営業利益8,654百万円(同9.0%減)、経常利益8,616百万円(同10.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5,643百万円(同12.7%減)となり、増収減益の決算となった。売上高は、建築事業を中心に施工の進捗が順調に進んだことを主な要因として、過去最高を更新した。一方、利益面では、前期に計上された産業用地売却益の反動減や、人件費の上昇といったコスト増加が影響し減益となった。主力の建築事業は好調、売上総利益率も上昇に転じる2. 事業別動向(1) 建築事業建築事業は、売上高86,529百万円(前期比32.2%増)、売上総利益4,676百万円(同40.0%増)となった。コロナ禍を経て、民間建築需要や設備投資の回復を背景に、大型物流施設等のプロジェクトが順調に進捗したことにより増収となり、同事業として過去最高の売上高を更新した。用途別では、一般建築工事が68,566百万円(同40.4%増)、マンション工事が17,963百万円(同8.1%増)であった。利益面では、増収効果に加えて売上総利益率が5.4%(同0.3ポイント上昇)に改善したことが寄与して増益となった。2024年3月期は、建築資材高騰の影響により受注時と仕入時の価格の乖離が収益を圧迫していたが、インフレを反映した価格転嫁が進んだこと、さらに顧客とともに価値を創出するプロジェクト推進の成果が奏功した。(2) 土木事業土木事業は、売上高32,172百万円(前期比4.6%増)、売上総利益6,159百万円(同1.4%減)となった。宅地造成工事や鉄道高架化工事などの民間工事が伸長し増収となった。用途別では、官庁工事が12,361百万円(同0.9%増)、民間工事が16,031百万円(同7.9%増)、PW工事が3,778百万円(同3.2%増)といずれも堅調に推移した。利益面では、2024年3月期において一部大型工事で大幅な変更増額による利益の獲得があった反動もあり、売上総利益率は19.1%(同1.2ポイント低下)と若干低下して、減益となった。ただし、依然として良好な利益水準を維持している。(3) 不動産事業不動産事業では、売上高が21,997百万円(前期比6.8%減)、売上総利益は8,580百万円(同16.0%減)となった。前期の大府東海開発プロジェクト1号宅地売却に伴う売上・利益の反動により、減収減益となった。ただし、同プロジェクト2号地の売却もあり、2023年3月以前との比較では、引き続き高水準を維持した。売上高の内訳は、分譲マンション事業が7,583百万円(同4.5%増)、不動産販売が9,931百万円(同16.8%減)、その他が4,483百万円(同1.8%増)であった。分譲マンション事業では、2025年3月期に完成引渡しを迎えた物件の販売が順調に推移し、183戸(同23戸増)を販売した。なお、大府東海開発プロジェクトは同社にとって過去最大規模の開発プロジェクトである。愛知県大府市と東海市にまたがる23万平方メートルの工業団地開発として、同社は2017年3月期から土地の取りまとめを開始した。2024年3月期には造成工事と1号宅地の販売を完了した。同年度から建築工事が始まり、2号宅地の販売も進めている。既に売却を完了した1号宅地と2号宅地における収益は、完成工事高・不動産事業等売上高の合計で約1,000億円を見込む。受注環境は良好、受注高・次期繰越高とも4期連続で過去最高を更新3. 受注の状況同社が所属する土木・建築業界では、コロナ禍を経た民間設備投資の回復が続いており、特に建築分野では底堅い需要が見られる。土木分野においても、国土強靭化計画に関連した公共工事が各地で進められており、堅調な受注環境が続いている。一方、慢性的な施工キャパシティ不足が続いており、需要と供給のミスマッチが生じている。こうした環境は、施工能力を確保している企業にとっては大きな機会となっており、同社にとっても追い風となっている。(1) 受注高2025年3月期の受注高は、建築事業・土木事業とも複数の大型工事を受注し、146,182百万円(前期比8.3%増)と4期連続で過去最高を更新した。事業別では、建築事業は民間工事がほぼ100%を占めており、内訳はマンション工事が14.7%、一般建設工事が85.3%となった。一般建設工事は前期比若干の減少(0.9%減)となったものの、中部圏に加えて、首都圏でも大型建築案件を受注し、依然として高い水準を維持した。土木事業では、過去より官民拮抗した受注高を確保しているが、民間(PW工事含む)が25,889百万円(同67.8%増)と大幅に伸ばした。なおPW工事の受注も底堅く推移している。(2) 次期繰越高2026年3月期以降の売上高に寄与する次期繰越高は、2025年3月期末の時点で163,985百万円(前期比18.7%増)と、受注高と同じく4期連続で過去最高を更新した。内訳は官庁が14.1%、民間が85.9%である。事業別では、建築事業は民間がほぼ100%、土木事業は官民おおむね半々となっている。なお、受注から完成工事までの期間は、プロジェクトの規模や建物の構造等によるものの、建築事業・土木事業ともに1.5〜3年が平均となっている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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2025/07/02 13:43
注目トピックス 日本株
矢作建 Research Memo(2):東海地域を基盤とした総合建設業。名古屋鉄道との関係も強み
*13:42JST 矢作建 Research Memo(2):東海地域を基盤とした総合建設業。名古屋鉄道との関係も強み
■会社概要矢作建設工業<1870>は、1949年5月に戦後の混乱と荒廃のなかで日本の復興を目指した山田勝男(やまだかつお)氏によって、愛知県西加茂郡挙母町(現 愛知県豊田市)にて設立された総合建設会社である。「誠実進取で自ら創造し、常に社会の要請にこたえる事業を行う」という企業理念の下、建築事業・土木事業・不動産事業の3つを主力事業として展開している。創業の地である東海地域を基盤としながら全国へ事業を拡大しており、現在は名古屋市東区に本社を置き、東京・大阪・広島・東北・九州に支店を構えている。1967年に名古屋鉄道の子会社であった名鉄建設(株)を吸収合併し、これを契機に名古屋鉄道が同社の主要株主となった。現在、同社は名古屋鉄道の持分法適用関連会社である。この合併により、従来の土木中心の事業構成から、建築分野へと事業領域を拡大し、さらに鉄道関連工事、特に軌道工事が同社の柱の1つとして加わった。現在でも、名古屋鉄道からの軌道工事や駅舎の建築・改修などを受注している。発注者や協力会社と連携しながら、鉄道の安全運行に支障をきたさぬよう工事を遂行するなど、地域社会との密接な連携の下、事業活動を行っている。また、同社は1995年の阪神淡路大震災を契機として耐震分野にも注力しており、バブル崩壊後の建設不況期には「耐震補強工事」で活路を見出し、今日の財務基盤の安定にもつながっている。分譲マンション事業、ビル・マンション管理事業、緑化事業、舗装事業、耐震補強事業、資材販売、ゴルフ場運営などを手掛ける8つのグループ会社とともに、幅広い事業領域をカバーすることで事業ポートフォリオの安定化と持続的成長を図っている。2023年3月には、京都を地盤とする北和建設(株)を子会社化した。■事業概要建築・土木・不動産の3事業がバランス、事業間のシナジーも発揮同社は、東海エリアを基盤としながらも、リニア中央新幹線の開業を見据えた経済圏の拡張を図っている。特に、地域に根ざした活動を通じて行政や地場企業との密接なネットワークを構築し、用地開発や民間プロジェクトの創出においてほかのゼネコンとの差別化を実現している。設計・施工一体の提案力を生かした高付加価値型の事業展開に加え、産業用地の開発(土木事業)・販売(不動産事業)から、同地における物流施設や工場の建設(建築事業)へと展開するなど、事業間のシナジーを効果的に発揮している点も、同社の大きな強みである。また、名古屋鉄道との資本関係や長年にわたる信頼関係を背景に、鉄道関連の特殊工事にも強みを持っている。2025年3月期における売上構成は、建築事業が61.5%、土木事業が22.9%、不動産事業が15.6%となった。また売上総利益の構成比では建築事業が24.1%、土木事業が31.7%、不動産事業が44.2%である。このように、3事業はそれぞれ異なる特性を持ちながらも連携し、バランスのとれた収益構造を形成している点が特徴である。1. 建築事業建築事業は、同社の中核を担う事業であり、物流施設やマンション、オフィス、商業施設、工場などの多様な建築物の設計・施工を一括で請け負うことを強みとしている。東海地域では、大手設計事務所と比較しても遜色のない設計スタッフを擁し、顧客と密接に連携しながら、ともにプロジェクトを“創り”上げていくスタイルを目指している。こうした取り組みにより、設計施工一括受注の比率は全体の90%を超える水準となっており、同社の高い利益率の源泉となっている。設計士など技術者の採用・育成は重要な経営課題の1つとして捉えており、社会的に注目度の高いプロジェクトや先進的な案件へも積極的に挑戦している。さらに、連結子会社である北和建設、矢作ビル&ライフ(株)、(株)テクノサポートとの連携により、耐震補強、リニューアル、建設資材の販売などを含むトータルな建築ソリューションを提供している。耐震補強に関しては、建物の構造やニーズに合わせて様々な工法を確立しており、学校や庁舎など公共施設を中心に日本全国で4,400件を超える採用実績を持つ。2. 土木事業土木事業では、道路、橋梁、上下水道、造成といったインフラ工事に加え、鉄道軌道や高架化などの鉄道関連工事を展開している。特に、名古屋鉄道向けの鉄道軌道工事は専任で担っており、毎期安定的な受注を確保している。また、不動産事業における産業用地開発に付随する造成工事をはじめとして、民間案件も多く受注している。そのため、官民半々の比率となっている点も特徴的で、経済環境に左右されにくい体質と言える。さらに、同社独自の「パンウォール(PW)工法」は、用地の制約がある現場でも施工性と安全性を両立させる技術として、中日本高速道路(株)(NEXCO中日本)や防衛省などでも採用実績がある。施工主にとっては用地買収が少なく済むメリットもあり、高い評価を得ている。連結子会社であるヤハギ道路(株)は舗装工事を、ヤハギ緑化(株)は緑化・環境整備工事を手掛けており、土木分野におけるグループの施工能力の底上げに寄与している。3. 不動産事業不動産事業では、産業用地の開発・販売、分譲マンション事業、賃貸管理事業を展開している。産業用地開発においては、行政との強固な関係性に加えて、製造業の集積地という地域特性を生かせる点が競争優位性となっている。BCP(事業継続計画)※や災害意識の高まりを背景に、行政とも連携し、郊外や内陸への移転を進める企業の需要を的確に捉えている点も追い風となっている。大府東海工業団地プロジェクトでは、1号宅地は2024年3月期に販売完了済で2026年3月期にかけて建築工事を進めている。2号宅地も一部が2025年3月期に販売完了済で、残りは2026年3月期中の販売完了が見込まれている。販売後の建築工事も予定されており、不動産販売と建築工事の双方で業績に貢献している。※ 自然災害・大規模火災・テロ攻撃といった緊急事態に際し、企業が事業資産の損害を最小限に抑え、中核事業の継続または早期復旧を図るため、平時の準備と緊急時の方法を定めた計画。同社子会社において手掛ける分譲マンション事業は、主に東海圏においてファミリー層を中心とした開発・販売を行っており、地元密着型の事業展開を通じて安定した需要を確保している。立地や市場動向に応じて柔軟にターゲット層を調整しており、たとえば都心部では単身及び共働きで世帯収入が比較的高い層向け、郊外エリアではファミリー層向けなど、需要に即した商品企画に強みを持つ。加えて、設計・施工を自社で一括して担うことにより、品質管理や工期調整、住戸プランにも柔軟に対応可能である。分譲マンションの開発は、不動産事業の収益源であると同時に、建築事業とのシナジーを発揮する重要なドライバーであり、グループの総合力が発揮される領域である。連結子会社である矢作地所(株)がマンション分譲や不動産賃貸及び不動産開発を行い、矢作ビル&ライフがビル・マンションの管理、不動産賃貸及び分譲マンションのカスタマーサービス事業を行っている。(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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2025/07/02 13:42
注目トピックス 日本株
矢作建 Research Memo(1):2026年3月期は売上高・各利益とも最高業績を見込む。中期経営計画も達成へ
*13:41JST 矢作建 Research Memo(1):2026年3月期は売上高・各利益とも最高業績を見込む。中期経営計画も達成へ
■要約矢作建設工業<1870>は、1949年に設立された総合建設会社である。主に建築・土木・不動産事業の3つを柱とし、設計・施工一体の高付加価値の事業を展開している。また、名古屋鉄道<9048>との資本関係を生かした鉄道工事にも強みを持っている。建築事業は、物流施設やマンション、オフィス、商業施設、工場など幅広い分野において、設計施工を一貫して手掛けている。土木事業では、道路やトンネル、鉄道関連のインフラ工事に対応し、官民半々の比率が特徴である。不動産事業では、産業用地開発・販売や分譲マンション事業を行う。産業用地開発については、造成(土木事業)・販売(不動産事業)から同地における物流施設や工場の建設(建築事業)へと展開するなど、事業間のシナジーを効果的に発揮している点も、同社の大きな強みである。1. 2025年3月期の業績概要2025年3月期の連結業績は、売上高140,699百万円(前期比17.4%増)、営業利益8,654百万円(同9.0%減)、経常利益8,616百万円(同10.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5,643百万円(同12.7%減)と、増収減益の決算となった。売上高は、建築事業を中心に施工が順調に進んだことを主な要因として、過去最高を更新した。一方、利益面では、前期に計上した産業用地売却利益の反動減や、人件費の上昇といったコスト増加が影響し減益となった。受注高は堅調に推移し、146,182百万円(同8.3%増)と4期連続で過去最高を更新した。また2026年3月期以降の売上高に寄与する次期繰越高も163,985百万円(同18.7%増)と同じく4期連続過去最高を更新した。2. 2026年3月期業績見通し2026年3月期の連結業績は、売上高168,000百万円(前期比19.4%増)、営業利益10,000百万円(同15.5%増)、経常利益9,900百万円(同14.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,600百万円(同16.9%増)を予想している。不動産事業で分譲マンションの供給減に伴う減収となる見込みながら、建築事業・土木事業において豊富な次期繰越高を背景に全体として増収を見込んでいる。利益面では、増収効果に加えて、資材価格上昇分の価格転嫁を進めることによって増益を見込んでいる。なお、売上高・各利益ともに、過去最高を見込んでいる。3. 中期経営計画の状況2026年3月期を最終年度とする5ヶ年の中期経営計画では、売上高目標を130,000百万円としていたが、着地見込みは168,000百万円(目標比29.2%増)と大幅に上回る見通しである。また営業利益は目標値である10,000百万円を確保する見込みとなっている。2030年度に目指す「課題解決&価値創造型企業」に向け、2027年3月期から始まる次期中期経営計画における加速度的な成長フェーズへの移行に弾みをつけた。4. 株主還元同社は、株主還元に関する基本方針として、経営基盤の強化と企業価値の向上に向けて長期的な視点に立って株主資本の充実に努めるとともに、継続的かつ安定的な株主還元を実施することを掲げている。配当方針については、「配当性向30%以上」としていたが、利益変動に左右されにくい安定配当を実現するため、2026年3月期以降は「自己資本配当率(DOE)5%以上、かつ累進配当」を基本とする方針に変更した。これに伴い2026年3月期の年間配当は90円に増配(2025年3月期は普通配当60円及び記念配当20円の合計80円)する予定であり、DOEは5.6%の見通しである。株主との丁寧な対話を重視し、株主還元について誠実かつ積極的に取り組む姿勢を示している。■Key Points・2025年3月期は増収減益も、受注高・次期繰越高は4期連続で過去最高を更新・2026年3月期は売上高・各利益とも最高業績を見込む。中期経営計画も達成へ・株主還元の配当方針を「自己資本配当率(DOE)5%以上、かつ累進配当を採用」へ変更、2026年3月期は年間90円に増配予定(DOE5.6%)(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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2025/07/02 13:41
注目トピックス 日本株
ジェイリース---エイエフビイの株式取得(子会社化)
*13:14JST ジェイリース---エイエフビイの株式取得(子会社化)
ジェイリース<7187>は1日、エイエフビイ(AFB)(本社:大分県大分市)の全株式を取得し、完全子会社化することを決議した。AFBは大分県大分市に本社を置く総合広告代理店で、1971年9月1日に設立され、資本金は1,600万円。テレビ・ラジオ・新聞・屋外広告の定例媒体やスポット広告、イベント運営、グラフィック・Web・映像制作など幅広い広告サービスを提供している。ジェイリースは、AFBの蓄積されたノウハウとメディアネットワークを取り込むことで、同社グループのマーケティングやプロモーション機能の強化を図る。株式取得価額は600万円で、アドバイザリー費用等を含めた総額は700万円。取得株式数は32,000株で、議決権所有割合は100.0%となる。株式譲渡契約締結日は2025年7月1日、株式譲渡決済日は同年7月25日を予定している。
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2025/07/02 13:14
注目トピックス 日本株
ノイルイミューン・バイオテック---やまぐち再生医療等実用化・産業化推進補助金の事業採択
*13:12JST ノイルイミューン・バイオテック---やまぐち再生医療等実用化・産業化推進補助金の事業採択
ノイルイミューン・バイオテック<4893>は1日、2025年度やまぐち再生医療等実用化・産業化推進補助金事業において、同社が申請した「次世代型免疫強化技術を搭載したCAR-T細胞療法による世界初固形腫瘍治療の社会実装及び研究開発広域連携拠点の形成」が採択されたと発表した。本事業は、山口大学発の免疫強化技術「PRIME技術」を基盤とし、同技術を搭載した次世代型PRIME CAR-T細胞を用いて、治療効果が限定的である固形がんに対する新たな治療法の実用化を目指し、CAR-T細胞療法の臨床開発及び商用製造に向けた次世代製造法の開発を実施するものである。また、山口県を中心としたCAR-T細胞療法の広域的な研究開発の連携拠点の形成を目指す。補助事業の期間は最長3年間(2027年度まで)で、補助上限は年額0.30億円とされている。
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2025/07/02 13:12
注目トピックス 日本株
共立メンテ---大幅反発、ホテル業界への強気の見方を反映して米系証券では格上げ
*13:09JST 共立メンテ---大幅反発、ホテル業界への強気の見方を反映して米系証券では格上げ
共立メンテ<9616>は大幅反発。モルガン・スタンレーMUFG証券では投資判断を「イコールウェイト」から「オーバーウェイト」に格上げ。目標株価も3530円から4640円に引き上げている。新規供給量の抑制やインバウンド需要増加の恩恵を受けるとして、ホテル業界に対する強気の見方を再確認。とりわけ、同社はホテル事業の専業度が高く、株価バリュエーションの割安感も強いと指摘しているようだ。
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2025/07/02 13:09
注目トピックス 日本株
ユニリタ Research Memo(8):2015年4月にビーコンITと経営統合、「ユニリタ」として新たなスタート
*13:08JST ユニリタ Research Memo(8):2015年4月にビーコンITと経営統合、「ユニリタ」として新たなスタート
■沿革と業績推移1. 沿革ユニリタ<3800>の前身であるスリービー(株)は、1982年に人材開発及び組織開発のためのプログラムを提供するビジネスコンサルタントの子会社として東京都中央区に設立された。ビジネスコンサルタントを起源とする(株)ソフトウェア・エージー・オブ・ファーイースト(1996年8月、(株)ビーコン インフォメーション テクノロジーに商号変更)が国内で販売していた「A-AUTO」を米国市場で販売することが目的であった。その後、1987年に(株)ビーエスピーへ商号を変更した。同社の転機は、1993年にソフトウェア・エージー・オブ・ファーイーストのシステム運用関連の事業を継承し、システム運用管理パッケージソフトウェアの専門会社として本格的な活動を開始したことである。その後、ITシステム投資の拡大を追い風として順調に事業基盤の強化を図りながら、金融機関や大手企業を含め、基幹業務システム(メインフレーム)を中心に実績を積み上げてきた。2001年にはビーエスピーソリューションズを設立し、コンサルティングとソリューション事業を本格的に開始した。2006年にジャスダック証券取引所に上場を果たした(2022年4月からの東京証券取引所市場再編に伴い、スタンダード市場へ移行。2014年1月には、(株)ビーコンIT(登記社名:ビーコン インフォメーション テクノロジー)を連結化することで、データ活用などの成長分野を取り込むとともに事業構造の変革に着手した。2015年4月には連結子会社であるビーコンITを吸収合併するとともに、社名を(株)ユニリタに変更した。新社名には、価値創造のために「ユニークな発想」で「利他の精神」を持って顧客と社会の発展に貢献する企業を目指すという想いが込められている。2. 過去の業績推移同社の業績を振り返ると、売上高は2012年3月期から2014年3月期にかけて、オープン系システムへのシフトが進むなか、「システム運用事業(現 プロダクトサービスの一部)」の伸びが同社の成長をけん引した。ただ、2015年3月期にビーコンITの連結化により業容が大きく拡大した後は、事業構造変革に取り組むなかで売上高はしばらく伸び悩んできたと言える。もっとも、2019年3月期に「システムインテグレーション事業(現 プロフェッショナルサービスの一部)」を展開する無限の買収が業容拡大に寄与すると、2020年3月期以降は注力する「クラウド事業(現 クラウドサービス)」が着実に伸びてきた。損益面では、依然として「メインフレーム事業(現 プロダクトサービスの一部)」への収益依存度が高いものの、「プロダクト事業(現 プロダクトサービス)」の損益改善が進展するに伴って営業利益率は上昇傾向をたどり、2014年3月期は28.1%と高い水準に到達した。2015年3月期以降は、事業構造変革に伴う先行投資などにより営業利益率は低下しているが、それでも20%前後の水準を維持してきた。ただ、2019年3月期以降は、成長分野である「クラウド事業」や新規事業など、将来を見据えた先行投資の影響により営業利益率は従前と比べて低い水準にある。今後は、「クラウドサービス」の損益改善や「プロフェッショナルサービス」の付加価値向上などにより、「メインフレーム事業」の縮小に伴う影響をいかにカバーしていくのかが最大の注目点と言えるだろう。財務面では、財務基盤の安定性を示す自己資本比率は、2014年3月期にビーコンIT連結化により一度低下したものの、2016年3月期はビーコンITの吸収合併(親会社の持分変動)に伴い80.1%に上昇した。また、短期的な支払能力を示す流動比率も潤沢な「現金及び預金」の残高を反映して高い水準(2024年3月期末で305.8%)で推移しており、財務基盤の安定性は非常に優れている。それが今後の成長に向けた先行投資を支えている。一方、資本効率を示すROEも2ケタの水準で推移してきたが、事業ポートフォリオの変化と先行投資の影響により、2018年3月期以降は10%を下回っている。■株主還元2026年3月期は前期比2.0円増配の年間72.0円を予想同社の配当方針は、株主資本配当率(DOE)を基準としている。先行投資などによる期間損益に変動されず、安定かつ持続的な増配を目指すことが理由である。また、自己株式取得についても機動的に実施し、取得済み分は適宜消却などを実施する方針としている。2025年3月期の配当については、前期比2.0円増配の年間70.0円(中間35.0円、期末35.0円)に決定した。また、2026年3月期についても同2.0円増配となる年間72.0円(中間36.0円、期末36.0円)を予定している。今後も利益成長に伴う増配基調が継続する見通しである。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2025/07/02 13:08
注目トピックス 日本株
ユニリタ Research Memo(7):中期経営計画を減額修正。売上高132.5億円、営業利益11.5億円を目指す
*13:07JST ユニリタ Research Memo(7):中期経営計画を減額修正。売上高132.5億円、営業利益11.5億円を目指す
■中期経営計画の方向性1. 中期経営計画の方向性中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)がスタートして初年度を経過した。ユニリタ<3800>は、「クラウドサービス」における進捗の遅れや原価率上昇などを勘案し、数値目標を引き下げた。ただ、今後の方向性に大きな変更はない。「Re.Connect 2026」※という基本方針の下、「サービス提供型事業の拡大」「新たな価値提供モデルの確立」「事業プロセスの変革」の3つの事業戦略をさらに推進する方針である。また、グループ理念を軸とした持続的な経営と価値創造の実現に向け、人的資本投資の加速を含む、サステナビリティ基盤の強化にも取り組む考えだ。※ 様々なステークホルダーとの接点やつながり方を抜本的に見直し「再度、より良い形でつながり直す」という意味が込められている。(1) 3つの事業戦略のポイントと今後の重点施策1) サービス提供型事業の拡大引き続き、クラウド成長領域への投資の拡大や顧客の最適なモダナイゼーションの実現、製品・サービスの一部効率化と新規領域への参入検討などを進める。2026年3月期は、クラウドサービスの投資対効果の最大化に向けた開発・販売・サポート体制面の強化とコスト構造の改善に取り組む。また、需要が拡大しているマイグレーション対応については、リソースを補完するパートナーとの協業モデルを構築し提案力をさらに高める考えだ。2) 新たな価値提供モデルの確立これまでブラッシュアップしてきた「サービスマネジメント」及び「データマネジメント」をコアコンピタンスに再定義したうえで、グループ横断、エコシステムによる顧客提供価値の高度化、社会課題事業への継続的投資とアライアンス強化などに取り組む。2026年3月期は、新たな独自の価値提供モデル※の確立と具体的な提案を推進する。また、地域交通課題の解決を図る事業の成長に向けた協業パートナーとの拡大を図る。※ サービス及びデータマネジメントにおける強みやグループ連携により、顧客の成功を支援するユニリタグループDXソリューション「UCDI」(UNIRITA Group Customer success Data Integration)の創出に取り組む。3) 事業プロセスの変革サービスシフトを支える品質マネジメントの強化、プロセス標準化による実装、運用体制の構築、顧客起点での全社的カスタマーサクセス推進体制の確立を目指す。2026年3月期も引き続きサービス提供機能の連携と品質改善による顧客満足度の向上、及び事業収益性改善に取り組む。(2) 財務目標中期経営計画の初年度である2025年3月期での「クラウドサービス」の進捗遅れや原価率上昇の状況等を勘案し、数値目標を減額修正した。最終年度の2027年3月期の目標として、売上高132.5億円、営業利益11.5億円(営業利益率8.7%)、ROE7.4%に減額修正した。一方、研究開発費、設備投資などの投資計画に見直しはないようだ。また、利益成長に伴う増配にも引き続き意欲的である。計画には入っていないものの、M&Aの検討も継続する方針であり、データマネジメント人材の獲得やサービスラインの強化につながるような対象先を候補に考えているようだ。2. 中長期的な注目点今回、中期経営計画の財務目標を引き下げたものの、今後に向けた方向性に大きな変更はなく、弊社においても理にかなったものと評価している。すなわち、DXの動きが社会全体で本格化する一方、IT人材不足が顕在化するなかで、これまでのIT課題だけでなく、事業課題や社会課題にまで領域を広げるとともに、コンサルティングを起点としたバリューチェーンの最適化により、需要の拡大を取り込む戦略は、持続的な成長を実現していくうえでも説得力がある。これまでの取り組みや明らかになった課題を踏まえ、形になりつつある事業モデルをさらにブラッシュアップし、具体的な収穫に結び付けられるかがポイントになるだろう。最大の注目点は、1) 「クラウドサービス」の事業拡大に向けた道筋、2) 新たな価値提供モデルの確立の2点である。特に1) については、パートナー各社との協業の形が見えてきた事業推進クラウドのブレークスルーが期待される。そのためには、サービス&データマネジメント基盤における強みを訴求し、各方面から有力パートナーを呼び込むとともに、販売チャネルの獲得までを含めた戦略がカギを握るであろう。成功事案が増えれば、さらに新たなパートナーの獲得にもつながるといった好循環も考えられる。一方、ソーシャルクラウドにおいては、データを集めるところにこそ将来の優位性や参入障壁が確立されるビジネスモデルであるため、本格的な収益化には時間を要するものの、足元では具体的な動きが出始めており、軌道に乗れば計画の上振れ要因となる可能性もある。2) についても、サービス&データマネジメント領域でのコンサルティングを生かした一気通貫型の価値提供モデルが形となってきたが、事業間及びグループ間の連携によるバリューアップの余地はまだありそうだ。2024年4月に実施した組織体制の強化がどのように機能していくのか、その効果をフォローしていきたい。M&Aの動きも気になるところである。M&Aの実現によっては成長スピードや価値提供モデルの確立が一気に加速する可能性もあるだろう。いずれにしても、安定した収益源であるメインフレーム事業がキャッシュカウとなっている間に、次の収益の柱を育て上げ、強固な収益基盤の維持・向上を図ることが中長期の最大のテーマであることは明らかであり、そういった視点から、今後の動向に注目する必要がある。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2025/07/02 13:07
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フューチャー---大幅反発、業績拡大フェーズ入りとして国内証券が格上げ
*13:06JST フューチャー---大幅反発、業績拡大フェーズ入りとして国内証券が格上げ
フューチャー<4722>は大幅反発。大和証券では投資判断を「2」から「1」に格上げ、目標株価も2050円から3000円にまで引き上げている。既存案件が続々と稼働を開始、次期案件の高採算な上流工程が増加することで、ミックス改善や業績成長が期待できることを評価引き上げの背景としている。25年12月期は2ケタ営業増益に回帰し、26年12月期は業績拡大期に入るとみている。26年12月期営業利益は前期比18.7%増の193.5億円を予想。
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2025/07/02 13:06
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ユニリタ Research Memo(6):新たにグループパーパスを制定。地域交通課題解決の取り組み前進
*13:06JST ユニリタ Research Memo(6):新たにグループパーパスを制定。地域交通課題解決の取り組み前進
■ユニリタ<3800>の主な活動実績1. グループパーパスの策定社名変更から10年という節目を迎え、同社グループのパーパス(存在意義)を改めて見直すとともに、ミッション、ビジョン、バリューといった理念体系を整理した。2025年6月に公表したパーパス「利他で紡ぐ経済をつくる」には、「ITという見えない糸」によって利他の連鎖を起こし、価値を紡ぎ、その価値が社会全体へと広がり、すべてのステークホルダーに恩恵をもたらす、「三方ともに良し」の経済へとつなげていくという想いが込められている。パーパスの実現に向け、ミッション「Create Your Business Value 〜ITの力で、一歩先の未来を創造する〜」、ビジョン「共感をカタチにし、ユニークを創造するユニリタグループへ」、バリュー「ユニーク&利他」を行動指針とするパーパスストーリーを歩んでいく考えだ。2. 地域交通課題の解決に向けた取り組み2025年3月に、同社グループのユニ・トランドが、国土交通省による「交通空白」解消を目的とする『「交通空白」解消・官民連携プラットフォーム』に参画したことを公表した。これは国土交通省が主導する官民連携の取り組みで、バスや鉄道の縮小により移動手段が限られる地域における「交通空白」の課題解決を目指すものである。ユニ・トランドは、「交通×DX」の視点から、データの収集・可視化・分析を通じ、これまでの実績と知見を生かした「ソリューションの提供」「パイロットプロジェクトの協働」「ナレッジの共有」により持続可能な交通手段の構築を支援しており、これまでも福島県三春町(定額会員制タクシーとバスロケーションシステムの導入)、香川県坂出市(地域住民向けキャッシュレス決済によるバス運賃割引の導入)、山形県長井市(デジタル技術による公共交通の利便性向上と運行最適化)、北海道岩内町(キャッシュレス決済とデータ活用による持続可能な地域交通の実現)などで実績を挙げてきた。なかでも香川県坂出市や北海道岩内町などに導入している交通DXアプリケーションサービス「Community MaaS」は、複数の公共交通機関に加え、移動先の商業施設・地域施設・自治体などが提供する「移動の目的を促すサービス」を最適に組み合わせて連携させることができるため、決済業務の効率化にとどまらず、共創型まちづくりを支えるものとして各自治体や交通事業者の注目を集めている。■業績見通し2026年3月期は戦略的パートナーとの連携を強化し、増収増益を見込む1. 2026年3月期の業績予想2026年3月期の業績予想について同社は、売上高を前期比7.0%増の12,500百万円、営業利益を同24.9%増の1,050百万円、経常利益を同19.8%増の1,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同18.6%増の850百万円と増収増益を見込んでいる。売上高は、引き続き「プロダクトサービス」が好調に推移するとともに、2025年3月期に伸び悩んだ「クラウドサービス」のテコ入れに取り組む。特に戦略的パートナーとの協業やグループ連携を強化し、事業拡大に向けたボトルネック(課題)を解消する考えだ。また「プロフェッショナルサービス」についても、良好な受注環境を背景にコンサルティングやアウトソーシングが好調を維持するほか、主要パートナーからの受注が縮小したSI事業においては高付加価値領域へのシフトを進める考えだ。損益面では、戦略的投資を継続しながらも、利益率の高い「プロダクトサービス」の伸びや「クラウドサービス」の黒字化、「プロフェッショナルサービス」の付加価値向上により大幅な増益を目指す。2. 弊社の見方不透明な経済情勢やエネルギー価格を含む物価高の影響には注意が必要であるものの、良好な受注環境が継続していることから、同社の業績予想は十分に達成可能と見られる。今後、特に注目されるのは、成長ドライバーと位置付けられる「クラウドサービス」の強化策である。単に業績面での実績を追うだけでなく、戦略的パートナーとの協業やグループ連携に向けた具体的な動きなど、前期の停滞感を打ち破るような展開が期待される。ある程度時間を要すると見込んでいたソーシャルクラウド(地域交通の課題解決)についても、具体的な案件が形になってきており、今後どのように業績へ寄与してくるのかを見定める必要がある。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2025/07/02 13:06
注目トピックス 日本株
ユニリタ Research Memo(5):2025年3月期はクラウドサービスの新規獲得が伸び悩み、減収減益(2)
*13:05JST ユニリタ Research Memo(5):2025年3月期はクラウドサービスの新規獲得が伸び悩み、減収減益(2)
■決算動向2. 2025年3月期の総括ユニリタ<3800>の中期経営計画「Re.Connect 2026」の初年度であった2025年3月期は、各方面で将来を見据えた取り組みを進めたものの、業績面では計画を下回る結果となった。業績数値の増減で見ると、SI事業における大口パートナーからの受注縮小によるマイナス影響が大きいが、その点は高付加価値領域へのシフトを進めるきっかけとして前向きに捉えたい。問題は、本来伸ばすべきクラウドサービスの新規獲得に遅れが生じたところである。需要が拡大し、同社サービスの機能も優れており、導入先からの評価が高いことを踏まえれば、売り方(製品認知や販売チャネルを含む、クロージングまでの受注プロセス)にボトルネックとなる原因があると考えられる。特にミドルウェアという製品特性を踏まえた提案力の強化を図る必要があるだろう。もちろん同社では課題の解決に向け、既にサービス提供体制の整備をはじめ、パートナーとの協業やグループ連携による価値提供モデルの創出に取り組んでおり、本格的に軌道に乗ってくれば十分にブレークするポテンシャルを秘めている。いずれにしても、メインフレームにおける残存者利益や地域交通の課題解決に向けた取り組みなど、各方面でポジティブな材料が広がっており、いかに業績の伸びに結び付けていくのか、今後の展開が注目される。(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2025/07/02 13:05