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矢作建 Research Memo(2):東海地域を基盤とした総合建設業。名古屋鉄道との関係も強み
配信日時:2025/07/02 13:42
配信元:FISCO
*13:42JST 矢作建 Research Memo(2):東海地域を基盤とした総合建設業。名古屋鉄道との関係も強み
■会社概要
矢作建設工業<1870>は、1949年5月に戦後の混乱と荒廃のなかで日本の復興を目指した山田勝男(やまだかつお)氏によって、愛知県西加茂郡挙母町(現 愛知県豊田市)にて設立された総合建設会社である。「誠実進取で自ら創造し、常に社会の要請にこたえる事業を行う」という企業理念の下、建築事業・土木事業・不動産事業の3つを主力事業として展開している。創業の地である東海地域を基盤としながら全国へ事業を拡大しており、現在は名古屋市東区に本社を置き、東京・大阪・広島・東北・九州に支店を構えている。
1967年に名古屋鉄道の子会社であった名鉄建設(株)を吸収合併し、これを契機に名古屋鉄道が同社の主要株主となった。現在、同社は名古屋鉄道の持分法適用関連会社である。この合併により、従来の土木中心の事業構成から、建築分野へと事業領域を拡大し、さらに鉄道関連工事、特に軌道工事が同社の柱の1つとして加わった。現在でも、名古屋鉄道からの軌道工事や駅舎の建築・改修などを受注している。発注者や協力会社と連携しながら、鉄道の安全運行に支障をきたさぬよう工事を遂行するなど、地域社会との密接な連携の下、事業活動を行っている。
また、同社は1995年の阪神淡路大震災を契機として耐震分野にも注力しており、バブル崩壊後の建設不況期には「耐震補強工事」で活路を見出し、今日の財務基盤の安定にもつながっている。
分譲マンション事業、ビル・マンション管理事業、緑化事業、舗装事業、耐震補強事業、資材販売、ゴルフ場運営などを手掛ける8つのグループ会社とともに、幅広い事業領域をカバーすることで事業ポートフォリオの安定化と持続的成長を図っている。2023年3月には、京都を地盤とする北和建設(株)を子会社化した。
■事業概要
建築・土木・不動産の3事業がバランス、事業間のシナジーも発揮
同社は、東海エリアを基盤としながらも、リニア中央新幹線の開業を見据えた経済圏の拡張を図っている。特に、地域に根ざした活動を通じて行政や地場企業との密接なネットワークを構築し、用地開発や民間プロジェクトの創出においてほかのゼネコンとの差別化を実現している。設計・施工一体の提案力を生かした高付加価値型の事業展開に加え、産業用地の開発(土木事業)・販売(不動産事業)から、同地における物流施設や工場の建設(建築事業)へと展開するなど、事業間のシナジーを効果的に発揮している点も、同社の大きな強みである。また、名古屋鉄道との資本関係や長年にわたる信頼関係を背景に、鉄道関連の特殊工事にも強みを持っている。
2025年3月期における売上構成は、建築事業が61.5%、土木事業が22.9%、不動産事業が15.6%となった。また売上総利益の構成比では建築事業が24.1%、土木事業が31.7%、不動産事業が44.2%である。このように、3事業はそれぞれ異なる特性を持ちながらも連携し、バランスのとれた収益構造を形成している点が特徴である。
1. 建築事業
建築事業は、同社の中核を担う事業であり、物流施設やマンション、オフィス、商業施設、工場などの多様な建築物の設計・施工を一括で請け負うことを強みとしている。東海地域では、大手設計事務所と比較しても遜色のない設計スタッフを擁し、顧客と密接に連携しながら、ともにプロジェクトを“創り”上げていくスタイルを目指している。こうした取り組みにより、設計施工一括受注の比率は全体の90%を超える水準となっており、同社の高い利益率の源泉となっている。設計士など技術者の採用・育成は重要な経営課題の1つとして捉えており、社会的に注目度の高いプロジェクトや先進的な案件へも積極的に挑戦している。
さらに、連結子会社である北和建設、矢作ビル&ライフ(株)、(株)テクノサポートとの連携により、耐震補強、リニューアル、建設資材の販売などを含むトータルな建築ソリューションを提供している。耐震補強に関しては、建物の構造やニーズに合わせて様々な工法を確立しており、学校や庁舎など公共施設を中心に日本全国で4,400件を超える採用実績を持つ。
2. 土木事業
土木事業では、道路、橋梁、上下水道、造成といったインフラ工事に加え、鉄道軌道や高架化などの鉄道関連工事を展開している。特に、名古屋鉄道向けの鉄道軌道工事は専任で担っており、毎期安定的な受注を確保している。
また、不動産事業における産業用地開発に付随する造成工事をはじめとして、民間案件も多く受注している。そのため、官民半々の比率となっている点も特徴的で、経済環境に左右されにくい体質と言える。さらに、同社独自の「パンウォール(PW)工法」は、用地の制約がある現場でも施工性と安全性を両立させる技術として、中日本高速道路(株)(NEXCO中日本)や防衛省などでも採用実績がある。施工主にとっては用地買収が少なく済むメリットもあり、高い評価を得ている。連結子会社であるヤハギ道路(株)は舗装工事を、ヤハギ緑化(株)は緑化・環境整備工事を手掛けており、土木分野におけるグループの施工能力の底上げに寄与している。
3. 不動産事業
不動産事業では、産業用地の開発・販売、分譲マンション事業、賃貸管理事業を展開している。産業用地開発においては、行政との強固な関係性に加えて、製造業の集積地という地域特性を生かせる点が競争優位性となっている。BCP(事業継続計画)※や災害意識の高まりを背景に、行政とも連携し、郊外や内陸への移転を進める企業の需要を的確に捉えている点も追い風となっている。大府東海工業団地プロジェクトでは、1号宅地は2024年3月期に販売完了済で2026年3月期にかけて建築工事を進めている。2号宅地も一部が2025年3月期に販売完了済で、残りは2026年3月期中の販売完了が見込まれている。販売後の建築工事も予定されており、不動産販売と建築工事の双方で業績に貢献している。
※ 自然災害・大規模火災・テロ攻撃といった緊急事態に際し、企業が事業資産の損害を最小限に抑え、中核事業の継続または早期復旧を図るため、平時の準備と緊急時の方法を定めた計画。
同社子会社において手掛ける分譲マンション事業は、主に東海圏においてファミリー層を中心とした開発・販売を行っており、地元密着型の事業展開を通じて安定した需要を確保している。立地や市場動向に応じて柔軟にターゲット層を調整しており、たとえば都心部では単身及び共働きで世帯収入が比較的高い層向け、郊外エリアではファミリー層向けなど、需要に即した商品企画に強みを持つ。加えて、設計・施工を自社で一括して担うことにより、品質管理や工期調整、住戸プランにも柔軟に対応可能である。分譲マンションの開発は、不動産事業の収益源であると同時に、建築事業とのシナジーを発揮する重要なドライバーであり、グループの総合力が発揮される領域である。
連結子会社である矢作地所(株)がマンション分譲や不動産賃貸及び不動産開発を行い、矢作ビル&ライフがビル・マンションの管理、不動産賃貸及び分譲マンションのカスタマーサービス事業を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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矢作建設工業<1870>は、1949年5月に戦後の混乱と荒廃のなかで日本の復興を目指した山田勝男(やまだかつお)氏によって、愛知県西加茂郡挙母町(現 愛知県豊田市)にて設立された総合建設会社である。「誠実進取で自ら創造し、常に社会の要請にこたえる事業を行う」という企業理念の下、建築事業・土木事業・不動産事業の3つを主力事業として展開している。創業の地である東海地域を基盤としながら全国へ事業を拡大しており、現在は名古屋市東区に本社を置き、東京・大阪・広島・東北・九州に支店を構えている。
1967年に名古屋鉄道の子会社であった名鉄建設(株)を吸収合併し、これを契機に名古屋鉄道が同社の主要株主となった。現在、同社は名古屋鉄道の持分法適用関連会社である。この合併により、従来の土木中心の事業構成から、建築分野へと事業領域を拡大し、さらに鉄道関連工事、特に軌道工事が同社の柱の1つとして加わった。現在でも、名古屋鉄道からの軌道工事や駅舎の建築・改修などを受注している。発注者や協力会社と連携しながら、鉄道の安全運行に支障をきたさぬよう工事を遂行するなど、地域社会との密接な連携の下、事業活動を行っている。
また、同社は1995年の阪神淡路大震災を契機として耐震分野にも注力しており、バブル崩壊後の建設不況期には「耐震補強工事」で活路を見出し、今日の財務基盤の安定にもつながっている。
分譲マンション事業、ビル・マンション管理事業、緑化事業、舗装事業、耐震補強事業、資材販売、ゴルフ場運営などを手掛ける8つのグループ会社とともに、幅広い事業領域をカバーすることで事業ポートフォリオの安定化と持続的成長を図っている。2023年3月には、京都を地盤とする北和建設(株)を子会社化した。
■事業概要
建築・土木・不動産の3事業がバランス、事業間のシナジーも発揮
同社は、東海エリアを基盤としながらも、リニア中央新幹線の開業を見据えた経済圏の拡張を図っている。特に、地域に根ざした活動を通じて行政や地場企業との密接なネットワークを構築し、用地開発や民間プロジェクトの創出においてほかのゼネコンとの差別化を実現している。設計・施工一体の提案力を生かした高付加価値型の事業展開に加え、産業用地の開発(土木事業)・販売(不動産事業)から、同地における物流施設や工場の建設(建築事業)へと展開するなど、事業間のシナジーを効果的に発揮している点も、同社の大きな強みである。また、名古屋鉄道との資本関係や長年にわたる信頼関係を背景に、鉄道関連の特殊工事にも強みを持っている。
2025年3月期における売上構成は、建築事業が61.5%、土木事業が22.9%、不動産事業が15.6%となった。また売上総利益の構成比では建築事業が24.1%、土木事業が31.7%、不動産事業が44.2%である。このように、3事業はそれぞれ異なる特性を持ちながらも連携し、バランスのとれた収益構造を形成している点が特徴である。
1. 建築事業
建築事業は、同社の中核を担う事業であり、物流施設やマンション、オフィス、商業施設、工場などの多様な建築物の設計・施工を一括で請け負うことを強みとしている。東海地域では、大手設計事務所と比較しても遜色のない設計スタッフを擁し、顧客と密接に連携しながら、ともにプロジェクトを“創り”上げていくスタイルを目指している。こうした取り組みにより、設計施工一括受注の比率は全体の90%を超える水準となっており、同社の高い利益率の源泉となっている。設計士など技術者の採用・育成は重要な経営課題の1つとして捉えており、社会的に注目度の高いプロジェクトや先進的な案件へも積極的に挑戦している。
さらに、連結子会社である北和建設、矢作ビル&ライフ(株)、(株)テクノサポートとの連携により、耐震補強、リニューアル、建設資材の販売などを含むトータルな建築ソリューションを提供している。耐震補強に関しては、建物の構造やニーズに合わせて様々な工法を確立しており、学校や庁舎など公共施設を中心に日本全国で4,400件を超える採用実績を持つ。
2. 土木事業
土木事業では、道路、橋梁、上下水道、造成といったインフラ工事に加え、鉄道軌道や高架化などの鉄道関連工事を展開している。特に、名古屋鉄道向けの鉄道軌道工事は専任で担っており、毎期安定的な受注を確保している。
また、不動産事業における産業用地開発に付随する造成工事をはじめとして、民間案件も多く受注している。そのため、官民半々の比率となっている点も特徴的で、経済環境に左右されにくい体質と言える。さらに、同社独自の「パンウォール(PW)工法」は、用地の制約がある現場でも施工性と安全性を両立させる技術として、中日本高速道路(株)(NEXCO中日本)や防衛省などでも採用実績がある。施工主にとっては用地買収が少なく済むメリットもあり、高い評価を得ている。連結子会社であるヤハギ道路(株)は舗装工事を、ヤハギ緑化(株)は緑化・環境整備工事を手掛けており、土木分野におけるグループの施工能力の底上げに寄与している。
3. 不動産事業
不動産事業では、産業用地の開発・販売、分譲マンション事業、賃貸管理事業を展開している。産業用地開発においては、行政との強固な関係性に加えて、製造業の集積地という地域特性を生かせる点が競争優位性となっている。BCP(事業継続計画)※や災害意識の高まりを背景に、行政とも連携し、郊外や内陸への移転を進める企業の需要を的確に捉えている点も追い風となっている。大府東海工業団地プロジェクトでは、1号宅地は2024年3月期に販売完了済で2026年3月期にかけて建築工事を進めている。2号宅地も一部が2025年3月期に販売完了済で、残りは2026年3月期中の販売完了が見込まれている。販売後の建築工事も予定されており、不動産販売と建築工事の双方で業績に貢献している。
※ 自然災害・大規模火災・テロ攻撃といった緊急事態に際し、企業が事業資産の損害を最小限に抑え、中核事業の継続または早期復旧を図るため、平時の準備と緊急時の方法を定めた計画。
同社子会社において手掛ける分譲マンション事業は、主に東海圏においてファミリー層を中心とした開発・販売を行っており、地元密着型の事業展開を通じて安定した需要を確保している。立地や市場動向に応じて柔軟にターゲット層を調整しており、たとえば都心部では単身及び共働きで世帯収入が比較的高い層向け、郊外エリアではファミリー層向けなど、需要に即した商品企画に強みを持つ。加えて、設計・施工を自社で一括して担うことにより、品質管理や工期調整、住戸プランにも柔軟に対応可能である。分譲マンションの開発は、不動産事業の収益源であると同時に、建築事業とのシナジーを発揮する重要なドライバーであり、グループの総合力が発揮される領域である。
連結子会社である矢作地所(株)がマンション分譲や不動産賃貸及び不動産開発を行い、矢作ビル&ライフがビル・マンションの管理、不動産賃貸及び分譲マンションのカスタマーサービス事業を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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