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エヌ・シー・エヌ Research Memo(7):事業領域を拡大し「木構造のトータルソリューションカンパニー」へ
配信日時:2025/07/08 16:07
配信元:FISCO
*16:07JST エヌ・シー・エヌ Research Memo(7):事業領域を拡大し「木構造のトータルソリューションカンパニー」へ
■強み
エヌ・シー・エヌ<7057>は、日本の木造建築の耐震性や、木造中古住宅の再販価値といった社会的課題を、全国の工務店・ハウスメーカーと解決していくため、木造建築業者のビジネスプラットフォームを展開している。構造設計を起点とした資材調達・施工までの一貫したサプライチェーンマネジメントによって正確な資材調達を可能にしており、この同社独自のサプライチェーンは最大の強みと言える。
同社は2020年3月期までは約500社の既存登録店の活性化に注力していたが、同社のシステム及び体制が整ってきたことから、耐震性の高い木造住宅のさらなる普及に向けて新規登録店の獲得強化を図っており、2025年3月期末には621社に拡大した。引き続き施工店ネットワークを拡大するとともに、木構造デザイン、翠豊、MAKE HOUSEによる構造計算や大規模木造建築物の施工分野、省エネルギー計算、BIMといったテクノロジー分野、SE住宅ローンサービスによるアセット分野、MUJI HOUSE、YADOKARI、一宮リアライズ、N&S開発によるライフスタイル分野を融合したビジネスプラットフォームをより強固なものにする方針だ。
1. SE構法
SE構法とは、鉄骨造やRC造で主流だったラーメン構法を木造住宅に取り入れた同社独自の建築システムである。圧倒的な強度を持つSE構法は、現在に至るまで同社の強みであり、これまでの施工・建築経験の蓄積により、他社には追随できない知的財産となっている。同構法は、すべての建物に構造計算を行うほか、構造品質の高い集成材を採用し、接合部に独自開発したSE金物を使用することにより、高い耐震性と大空間を同時に実現する。構造計算から部材供給・施工・検査・性能保証まで一括管理できるシステムである。2025年6月からは、2026年4月から施行される建築基準法の改正や、益々ニーズが高まり、かつ多様化している大規模木造建築への強化策として新バージョン「SE構法Ver.3」の販売を開始した。
2. 木構造デザイン
木構造デザインは、2020年2月に木造プレカットCAD開発トップシェア(60%以上)のネットイーグルと、SE構法以外の構法も扱う大規模木造建築(非住宅)分野の構造設計事業について業務提携したことで設立された合弁会社である。「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010年10月に施行され、木造率が低く今後の需要が期待できる公共建築物への木材利用の促進や、地方公共団体や民間事業者にも主体的な取り組みが求められているほか、「建築基準法」では、2025年4月以降、「新3号建築物」以外の木造建築物は、原則建築確認申請において構造計算が必須となることから、木造建築物に関する構造計算のニーズは非常に高まっている。
一方、住宅以外の木造建築物に対応できる構造設計者はまだ少なく、構造設計された図面どおりに正しく製造工場に情報を受け渡すことができないのが現状である。また構造設計の際にコストと施工のコンサルティングが同時にできることは、クライアントにとっては大きなメリットとなる。この点、木構造デザインは、SE構法以外の非住宅木造建築物の構造設計と生産設計を扱っており、成長期待は大きい。構造設計と連動したプレカットデータとして最適な生産設計を提供することで、多種多様な物件に対して、オンリーワンのワンストップサービスを提案できるため、木構造デザインは同社の強みとなっている。
3. BIM事業(MAKE HOUSE)
2021年10月に子会社のMAKE HOUSEは、木造建築分野におけるBIM事業の拡大に向けて、事業開発拠点となるBIM/CADセンター「MAKE HOUSE BIM BASE」を開設した。BIM導入については、米国では2012年の時点で建設会社の約7割が導入、シンガポールでは2015年時点で建築確認申請対象となる建物の約8割で導入されるなど、世界各国で導入義務化への取り組みが推進されている。国内では大手建設会社を中心にBIMの導入は進んでいるが、一方で木造建築分野での導入は進んでいない。2022年12月に国土交通省が実施した「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」では、BIMを導入していないと回答したBIM関係部署が50.4%であった。したがって、同社グループの取り組みは、先行者利益として受注機会創出や業務の質の向上が期待される。
2021年4月より改正建築物省エネ法において省エネ性能が説明義務化されたことに加え、2025年4月からは建築基準法の改正により、全新築建物での省エネ基準への適合が義務付けられた。省エネ性能の説明義務化や大半の木造戸建て住宅の構造計算義務化によって、省エネ性能の計算や構造計算に係る申請資料の作成需要が爆発的に増加するため、建築のあらゆる工程の情報の管理や活用が可能なBIMについては、建築物の積算や各種設計、建築確認申請図書といった文書がBIMデータ化され、今後利用が大きく広がることが期待される。
同社は設立当初よりビジョン「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」を掲げ、国策に先駆けて取り組み、成長を続けており、省エネ性能や木造建築物の構造設計の分野では法改正に比べてはるかに早くその技術レベルを進化させている。2022年6月にMAKE HOUSEを完全子会社化したことで、今後の成長に向けた新たなビジネスや投資等への迅速な対応が可能となっており、需要機会を確実に捉えるだろう。
4. 大規模木造建築(翠豊)
翠豊は長年の実績と高い技術力から著名建築家からの信頼も厚く、大手ゼネコンからの受注基盤も確立している。また、同社の登録施工店として、SE構法による木造建築の施工実績も有している。同社グループに翠豊が加わり、大規模木造の施工や特殊加工技術・プレカット加工等のノウハウを内製化したことで、大規模木造建築事業における従来の構造計算及び構造加工品の出荷に加えて事業の幅が広がり、規模の拡大が一層進展すると見られる。
5. ライフスタイル
YADOKARIは、「ミニマルライフ」「タイニーハウス」「多拠点居住」などを通じて暮らし方の選択肢を増やし、「住」の視点から新たな豊かさを定義し発信している。YADOKARIが考案する「タイニーハウス」に関して同社のSE構法を活用した商品開発を行うほか、新たなライフスタイルを提供することで、YADOKARIとの共創が生まれると弊社では考えている。
一宮リアライズは、木造の空き店舗を改修し、通信機能を整えたシェアオフィスを手掛けるなど、新たな生活様式とともに地方創生の観点から注目されている。
MUJI HOUSEは、資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現に貢献するため、SE構法を採用した「無印良品の家」を中心とした建築事業のほか、UR都市機構と組んだリノベーション事業、店舗設計・施工分野を行っている。また、2024年9月には同社が構造及び環境設計し、MUJI HOUSEが設計施工を行う「無印良品」初の床面積2,000平方メートル規模の大規模木造建築2店舗を手掛けており、国内初の大規模木造建築におけるZEB認証を取得している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<HN>
エヌ・シー・エヌ<7057>は、日本の木造建築の耐震性や、木造中古住宅の再販価値といった社会的課題を、全国の工務店・ハウスメーカーと解決していくため、木造建築業者のビジネスプラットフォームを展開している。構造設計を起点とした資材調達・施工までの一貫したサプライチェーンマネジメントによって正確な資材調達を可能にしており、この同社独自のサプライチェーンは最大の強みと言える。
同社は2020年3月期までは約500社の既存登録店の活性化に注力していたが、同社のシステム及び体制が整ってきたことから、耐震性の高い木造住宅のさらなる普及に向けて新規登録店の獲得強化を図っており、2025年3月期末には621社に拡大した。引き続き施工店ネットワークを拡大するとともに、木構造デザイン、翠豊、MAKE HOUSEによる構造計算や大規模木造建築物の施工分野、省エネルギー計算、BIMといったテクノロジー分野、SE住宅ローンサービスによるアセット分野、MUJI HOUSE、YADOKARI、一宮リアライズ、N&S開発によるライフスタイル分野を融合したビジネスプラットフォームをより強固なものにする方針だ。
1. SE構法
SE構法とは、鉄骨造やRC造で主流だったラーメン構法を木造住宅に取り入れた同社独自の建築システムである。圧倒的な強度を持つSE構法は、現在に至るまで同社の強みであり、これまでの施工・建築経験の蓄積により、他社には追随できない知的財産となっている。同構法は、すべての建物に構造計算を行うほか、構造品質の高い集成材を採用し、接合部に独自開発したSE金物を使用することにより、高い耐震性と大空間を同時に実現する。構造計算から部材供給・施工・検査・性能保証まで一括管理できるシステムである。2025年6月からは、2026年4月から施行される建築基準法の改正や、益々ニーズが高まり、かつ多様化している大規模木造建築への強化策として新バージョン「SE構法Ver.3」の販売を開始した。
2. 木構造デザイン
木構造デザインは、2020年2月に木造プレカットCAD開発トップシェア(60%以上)のネットイーグルと、SE構法以外の構法も扱う大規模木造建築(非住宅)分野の構造設計事業について業務提携したことで設立された合弁会社である。「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010年10月に施行され、木造率が低く今後の需要が期待できる公共建築物への木材利用の促進や、地方公共団体や民間事業者にも主体的な取り組みが求められているほか、「建築基準法」では、2025年4月以降、「新3号建築物」以外の木造建築物は、原則建築確認申請において構造計算が必須となることから、木造建築物に関する構造計算のニーズは非常に高まっている。
一方、住宅以外の木造建築物に対応できる構造設計者はまだ少なく、構造設計された図面どおりに正しく製造工場に情報を受け渡すことができないのが現状である。また構造設計の際にコストと施工のコンサルティングが同時にできることは、クライアントにとっては大きなメリットとなる。この点、木構造デザインは、SE構法以外の非住宅木造建築物の構造設計と生産設計を扱っており、成長期待は大きい。構造設計と連動したプレカットデータとして最適な生産設計を提供することで、多種多様な物件に対して、オンリーワンのワンストップサービスを提案できるため、木構造デザインは同社の強みとなっている。
3. BIM事業(MAKE HOUSE)
2021年10月に子会社のMAKE HOUSEは、木造建築分野におけるBIM事業の拡大に向けて、事業開発拠点となるBIM/CADセンター「MAKE HOUSE BIM BASE」を開設した。BIM導入については、米国では2012年の時点で建設会社の約7割が導入、シンガポールでは2015年時点で建築確認申請対象となる建物の約8割で導入されるなど、世界各国で導入義務化への取り組みが推進されている。国内では大手建設会社を中心にBIMの導入は進んでいるが、一方で木造建築分野での導入は進んでいない。2022年12月に国土交通省が実施した「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」では、BIMを導入していないと回答したBIM関係部署が50.4%であった。したがって、同社グループの取り組みは、先行者利益として受注機会創出や業務の質の向上が期待される。
2021年4月より改正建築物省エネ法において省エネ性能が説明義務化されたことに加え、2025年4月からは建築基準法の改正により、全新築建物での省エネ基準への適合が義務付けられた。省エネ性能の説明義務化や大半の木造戸建て住宅の構造計算義務化によって、省エネ性能の計算や構造計算に係る申請資料の作成需要が爆発的に増加するため、建築のあらゆる工程の情報の管理や活用が可能なBIMについては、建築物の積算や各種設計、建築確認申請図書といった文書がBIMデータ化され、今後利用が大きく広がることが期待される。
同社は設立当初よりビジョン「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」を掲げ、国策に先駆けて取り組み、成長を続けており、省エネ性能や木造建築物の構造設計の分野では法改正に比べてはるかに早くその技術レベルを進化させている。2022年6月にMAKE HOUSEを完全子会社化したことで、今後の成長に向けた新たなビジネスや投資等への迅速な対応が可能となっており、需要機会を確実に捉えるだろう。
4. 大規模木造建築(翠豊)
翠豊は長年の実績と高い技術力から著名建築家からの信頼も厚く、大手ゼネコンからの受注基盤も確立している。また、同社の登録施工店として、SE構法による木造建築の施工実績も有している。同社グループに翠豊が加わり、大規模木造の施工や特殊加工技術・プレカット加工等のノウハウを内製化したことで、大規模木造建築事業における従来の構造計算及び構造加工品の出荷に加えて事業の幅が広がり、規模の拡大が一層進展すると見られる。
5. ライフスタイル
YADOKARIは、「ミニマルライフ」「タイニーハウス」「多拠点居住」などを通じて暮らし方の選択肢を増やし、「住」の視点から新たな豊かさを定義し発信している。YADOKARIが考案する「タイニーハウス」に関して同社のSE構法を活用した商品開発を行うほか、新たなライフスタイルを提供することで、YADOKARIとの共創が生まれると弊社では考えている。
一宮リアライズは、木造の空き店舗を改修し、通信機能を整えたシェアオフィスを手掛けるなど、新たな生活様式とともに地方創生の観点から注目されている。
MUJI HOUSEは、資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現に貢献するため、SE構法を採用した「無印良品の家」を中心とした建築事業のほか、UR都市機構と組んだリノベーション事業、店舗設計・施工分野を行っている。また、2024年9月には同社が構造及び環境設計し、MUJI HOUSEが設計施工を行う「無印良品」初の床面積2,000平方メートル規模の大規模木造建築2店舗を手掛けており、国内初の大規模木造建築におけるZEB認証を取得している。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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