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矢作建 Research Memo(6):2030年度の売上高2,000億円規模の達成に向け、加速度的成長フェーズへ
配信日時:2025/07/02 13:46
配信元:FISCO
*13:46JST 矢作建 Research Memo(6):2030年度の売上高2,000億円規模の達成に向け、加速度的成長フェーズへ
■中長期の成長戦略
1. 2030年に目指す姿
矢作建設工業<1870>は、2030年度の目指す姿として「課題解決&価値創造型企業」を掲げており、売上高2,000億円規模の達成を目標としている。顧客や地域が抱える課題を単に解決するだけでなく、建設エンジニアリングの力によって新たな価値を創造し、社会全体の持続的発展に貢献する企業になる意志が込められている。また、リニア中央新幹線開業を見据えた「リニア経済圏」への事業拡大や、地場密着型ゼネコンとしてのポジションを生かした社会課題解決型ビジネスの展開を通じて、単なる受注者ではなく価値提供者としての立ち位置を確立する方針である。
この長期ビジョンの実現に向け、2030年度までの10年間を「進化」と「拡大」の二段階で戦略的に構築している。前半5年間(2021~2025年度)は、「既存事業の深化・進化」と「新規分野・領域の探索・開拓」を並行して進め、事業規模の拡大と将来に向けた基盤づくりの期間と位置付けている。後半5年間(2026~2030年度)では、前半で築いた基盤を生かし、加速度的な成長を実現するフェーズとしている。次期中期経営計画では、利益の追求と持続的な成長を両立させながら、ROEの改善を通じて企業価値のさらなる向上に取り組む方針である。また、M&Aについても、目的を明確化したうえで、シナジー創出が見込める案件に対して積極的な検討を進める考えである。
現 中期経営計画は達成見込み、成長投資も計画を上回る進捗
2. 中期経営計画と進捗状況
2026年3月期の売上高は、中期経営計画で掲げた目標値130,000百万円を大きく上回る168,000百万円を見込んでいる。営業利益については目標値である10,000百万円の確保を予想している。建築事業・土木事業・不動産事業のいずれも順調に進捗する見込みであり、利益面においてもバランスの取れた事業ポートフォリオを実現する見通しとなっている。
中期経営計画におけるキャッシュ・アロケーションについては、利益創出と財務の健全性を両立させながら有利子負債を活用して、将来への成長投資と株主還元に適切に配分する方針としている。計画期間の5期で、累計300億円以上の成長投資及び120億円以上の株主還元を実施する計画としている。
成長投資の内訳としては、不動産投資・研究開発投資・人財投資・情報化投資・M&Aへの投資を計画していたが、2025年3月期までの4期で既に約350億円を実行しており、大きく計画を上回っている。なかでも、不動産投資は産業用地開発を中心に236億円が投じられた。これにより、累計約300億円の売上高を達成し、今後の不動産事業売上拡大への寄与が見込まれる。産業用地の開発は、土地の造成(土木事業)から設計・施工(建築事業)まで一貫した事業展開が可能であり、投下資金の早期回収に加えて、安定的なキャッシュ・フローを創出する好循環を生み出している。足元では、基盤である東海圏に留まらず、関東や関西地方でも具体的なプロジェクトが進捗しており、現在開発中の用地面積は30万坪を超える規模となっている。また、「対象分野の拡張」の観点で、データセンターや高機能オフィスなどの設計・施工、大口径トンネル工事への進出も視野に入れている。
M&Aは、2023年3月に京都を地盤とする北和建設を子会社化した。北和建設は、マンション工事を中心に、ホテルや福祉施設などの建築工事を手掛けており、京都を中心とした関西圏に強固な営業基盤と施工キャパシティを有している。この買収は、中期経営計画における重点施策「事業エリアの拡大」の一環であり、両社のニーズが合致しシナジーを生み出すことが期待されている。
そのほか、研究開発分野では、RCS構造の改良やPW工法の信頼性向上に向けた技術投資を実施している。情報化分野では、ITインフラ整備や情報セキュリティ強化など、人財分野では、従業員の処遇改善やマネジメント研修などへの投資を積極的に行ってきた。
■株主還元策
「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」を基本とする方針へ転換
同社は、経営基盤の強化と企業価値の向上に向けて、長期的な視点に立って株主資本の充実に努めるとともに、継続的かつ安定的な株主還元を実施することを基本方針としている。
この方針を一層明確にするため、2025年5月に配当方針の見直しを発表した。従来の「配当性向30%以上」という方針から、2026年3月期以降は「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」を基本とする方針へ転換し、利益変動に左右されにくい安定配当の実現を目指す考えである。
2025年3月期の年間配当は1株当たり80円となり、前期比で20円の増配となった。このうち20円は創立75周年を記念した特別配当の位置付けであり、普通配当は60円である。結果として、DOEは5.1%、配当性向は61.0%となった。
2026年3月期の年間配当は90円を予定しており、普通配当ベースで30円の実質増配となる見込みである。これにより、DOEは5.6%、配当性向は58.7%となる見通しであり、株主還元の強化を明確に打ち出した姿勢と言える。また、この方針変更は、資本効率の改善を通じた企業価値向上や株式市場における評価向上を意識したものでもある。
同社は株主との丁寧な対話を重視し、株主還元についても誠実かつ積極的に取り組む姿勢を示している。2008年に100万株を取得して以降は、大規模な自己株式取得の実績はないが、今後は時価総額の向上という観点から、その可能性を排除せず、必要に応じて柔軟に対応を検討していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
<HN>
1. 2030年に目指す姿
矢作建設工業<1870>は、2030年度の目指す姿として「課題解決&価値創造型企業」を掲げており、売上高2,000億円規模の達成を目標としている。顧客や地域が抱える課題を単に解決するだけでなく、建設エンジニアリングの力によって新たな価値を創造し、社会全体の持続的発展に貢献する企業になる意志が込められている。また、リニア中央新幹線開業を見据えた「リニア経済圏」への事業拡大や、地場密着型ゼネコンとしてのポジションを生かした社会課題解決型ビジネスの展開を通じて、単なる受注者ではなく価値提供者としての立ち位置を確立する方針である。
この長期ビジョンの実現に向け、2030年度までの10年間を「進化」と「拡大」の二段階で戦略的に構築している。前半5年間(2021~2025年度)は、「既存事業の深化・進化」と「新規分野・領域の探索・開拓」を並行して進め、事業規模の拡大と将来に向けた基盤づくりの期間と位置付けている。後半5年間(2026~2030年度)では、前半で築いた基盤を生かし、加速度的な成長を実現するフェーズとしている。次期中期経営計画では、利益の追求と持続的な成長を両立させながら、ROEの改善を通じて企業価値のさらなる向上に取り組む方針である。また、M&Aについても、目的を明確化したうえで、シナジー創出が見込める案件に対して積極的な検討を進める考えである。
現 中期経営計画は達成見込み、成長投資も計画を上回る進捗
2. 中期経営計画と進捗状況
2026年3月期の売上高は、中期経営計画で掲げた目標値130,000百万円を大きく上回る168,000百万円を見込んでいる。営業利益については目標値である10,000百万円の確保を予想している。建築事業・土木事業・不動産事業のいずれも順調に進捗する見込みであり、利益面においてもバランスの取れた事業ポートフォリオを実現する見通しとなっている。
中期経営計画におけるキャッシュ・アロケーションについては、利益創出と財務の健全性を両立させながら有利子負債を活用して、将来への成長投資と株主還元に適切に配分する方針としている。計画期間の5期で、累計300億円以上の成長投資及び120億円以上の株主還元を実施する計画としている。
成長投資の内訳としては、不動産投資・研究開発投資・人財投資・情報化投資・M&Aへの投資を計画していたが、2025年3月期までの4期で既に約350億円を実行しており、大きく計画を上回っている。なかでも、不動産投資は産業用地開発を中心に236億円が投じられた。これにより、累計約300億円の売上高を達成し、今後の不動産事業売上拡大への寄与が見込まれる。産業用地の開発は、土地の造成(土木事業)から設計・施工(建築事業)まで一貫した事業展開が可能であり、投下資金の早期回収に加えて、安定的なキャッシュ・フローを創出する好循環を生み出している。足元では、基盤である東海圏に留まらず、関東や関西地方でも具体的なプロジェクトが進捗しており、現在開発中の用地面積は30万坪を超える規模となっている。また、「対象分野の拡張」の観点で、データセンターや高機能オフィスなどの設計・施工、大口径トンネル工事への進出も視野に入れている。
M&Aは、2023年3月に京都を地盤とする北和建設を子会社化した。北和建設は、マンション工事を中心に、ホテルや福祉施設などの建築工事を手掛けており、京都を中心とした関西圏に強固な営業基盤と施工キャパシティを有している。この買収は、中期経営計画における重点施策「事業エリアの拡大」の一環であり、両社のニーズが合致しシナジーを生み出すことが期待されている。
そのほか、研究開発分野では、RCS構造の改良やPW工法の信頼性向上に向けた技術投資を実施している。情報化分野では、ITインフラ整備や情報セキュリティ強化など、人財分野では、従業員の処遇改善やマネジメント研修などへの投資を積極的に行ってきた。
■株主還元策
「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」を基本とする方針へ転換
同社は、経営基盤の強化と企業価値の向上に向けて、長期的な視点に立って株主資本の充実に努めるとともに、継続的かつ安定的な株主還元を実施することを基本方針としている。
この方針を一層明確にするため、2025年5月に配当方針の見直しを発表した。従来の「配当性向30%以上」という方針から、2026年3月期以降は「自己資本配当率(DOE)5%以上かつ累進配当」を基本とする方針へ転換し、利益変動に左右されにくい安定配当の実現を目指す考えである。
2025年3月期の年間配当は1株当たり80円となり、前期比で20円の増配となった。このうち20円は創立75周年を記念した特別配当の位置付けであり、普通配当は60円である。結果として、DOEは5.1%、配当性向は61.0%となった。
2026年3月期の年間配当は90円を予定しており、普通配当ベースで30円の実質増配となる見込みである。これにより、DOEは5.6%、配当性向は58.7%となる見通しであり、株主還元の強化を明確に打ち出した姿勢と言える。また、この方針変更は、資本効率の改善を通じた企業価値向上や株式市場における評価向上を意識したものでもある。
同社は株主との丁寧な対話を重視し、株主還元についても誠実かつ積極的に取り組む姿勢を示している。2008年に100万株を取得して以降は、大規模な自己株式取得の実績はないが、今後は時価総額の向上という観点から、その可能性を排除せず、必要に応じて柔軟に対応を検討していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉俊輔)
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