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ダイナミクマップ Research Memo(5):プロジェクト型は収益変動、ライセンス型で収益性向上を図る
配信日時:2025/12/30 11:35
配信元:FISCO
*11:35JST ダイナミクマップ Research Memo(5):プロジェクト型は収益変動、ライセンス型で収益性向上を図る
■ダイナミックマッププラットフォーム<336A>の事業概要
3. 収益構造
同社の収益モデルは、大きくプロジェクト型とライセンス型の2つに分かれ、それぞれにオートモーティブビジネスと3Dデータビジネスがまたがる。プロジェクト型は、HDマップや3次元地図データの作成・更新を受託する業務や官公庁向け研究開発による収益で、主に自動車メーカーや官公庁を対象とする。たとえば、自動運転支援に必要な道路データを1から整備する業務や、既存地図の決まった範囲を定期的に更新する業務などが該当する。これらは原価に一定の利益を上乗せする契約形態で、作業量に応じて売上が増減するため、コストも人件費や走行計測などの変動費が中心である。
一方で、ライセンス型は既に整備済みの地図データやシステムを継続的に提供することで得られる収益であり、ストック型に近い特徴を持つ。オートモーティブ領域では、量販車にHDマップが搭載される際、販売台数に応じて自動車メーカーから地図の利用料を受け取る。また、法人向けに整備済みデータを提供する際のライセンスフィーや、開発で地図を利用するための利用料も含まれる。3Dデータビジネスでは、ViewerやGuidanceなどのサービス利用料、企業が地図データを閲覧・活用するための契約料がライセンス収入の中心である。これらは販売量により売上は変動するものの、コストはデータ更新やシステム運用といった固定費が大半であり、規模の経済が働きやすい構造を持つ。
2026年3月期中間期の収益モデル別売上構成比は、プロジェクト型が61.4%、ライセンス型が38.5%であり、ライセンス型は前年同期比15.2ポイント上昇した。プロジェクト型は自動運転やADAS向けの高精度3次元地図データ(HDマップ)の構築や更新など整備案件が中心で、顧客企業の開発計画に応じて収益が変動しやすい。一方で、ライセンス型は整備済みのHDマップや3Dデータを複数の用途・顧客に横展開するモデルであり、データ更新料やサブスクリプション収益が積み上がるため、収益の安定性が高い。同社はプロジェクト型によって高精度かつ広域の地図資産を継続的に拡充し、ライセンス型でその資産を自動運転・物流・インフラ管理などへ多面的に活用することで、持続的な成長と収益性の向上が両立する収益構造を確立しつつある。
4. 競合環境
同社の競合環境は世界的に見ても特殊な構造を持つ。まず国内市場では事実上同社が唯一のプレイヤーであり、HDマップを商用レベルで提供することができる企業はほかにない。2020年ころまでは国内外合わせて20社前後が類似した技術開発に取り組んでいたが、その多くは自動車メーカーから採用を得られず、倒産や買収により市場から撤退した。自動運転向けの地図は精度や更新頻度に対する要求が高く、量産車メーカーが安心して採用できるレベルに到達できた企業がなかったことが背景にある。生き残った会社のうちの1社が、北米でHDマップの開発・整備・販売を行っていたUshr Inc.である。同社は2019年にUshrを買収し、北米市場における事業基盤を獲得するとともに、技術連携やデータ統合によってサービスの強化を図った。この結果、日本・北米市場においては、同社が一強状態を確立した。かつて参入が噂されたGoogle LCCについても、現時点では自動運転向けHDマップで顕著な動きは見られず、実質的な競争相手にはならない。
欧州系では、オランダのHERE Technologies(Here Maps B.V.)、TomTom N.V.の2社がHDマップの提供で一定の存在感を持つ。特に欧州系自動車メーカー向けでは両社が優位だ。いずれも長年カーナビ地図を手掛けてきた企業であり、既存の顧客ネットワークを生かして自動運転領域に展開している。ただし、地図の詳細度や更新サイクルの面では、依然として同社のレベルに達しているとは言い難い。提供範囲も地域や機能によって限定的である。
こうした競合環境のなかで同社が持つ最大の競争優位性は、圧倒的なデータ量と品質である。同社は専用計測車両を用いて道路を走行し、レーザーやカメラ、衛星測位を組み合わせて路面・標識・構造物などの位置を細かく記録する。このデータが膨大であり、少なく見積もっても他社の5~6倍以上の情報量を持つとされる。加えて、同社は地図更新の仕組みを高度に自動化しており、道路工事や標識変更といった変化を短期間で反映できる点でも優位性を保っている。また、国内自動車メーカーが同社の地図を長年採用してきたことにより、実運用で蓄積されたノウハウも競争障壁を形成している。自動運転の開発では、地図・車載センサー・制御ソフトの3者が連携する必要があり、一度採用された地図を切り替えることには大きな負担が生じる。そのため、既存メーカーとの信頼関係は継続的な競争優位性として機能する。
総じて、前述の欧州系2社を除いて競合がほぼ存在せず、圧倒的なデータ量、高品質な地図更新体制、自動車メーカーとの強固な関係といった要素を背景に、同社はHDマップ市場において確固たるリーダーシップを維持すると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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3. 収益構造
同社の収益モデルは、大きくプロジェクト型とライセンス型の2つに分かれ、それぞれにオートモーティブビジネスと3Dデータビジネスがまたがる。プロジェクト型は、HDマップや3次元地図データの作成・更新を受託する業務や官公庁向け研究開発による収益で、主に自動車メーカーや官公庁を対象とする。たとえば、自動運転支援に必要な道路データを1から整備する業務や、既存地図の決まった範囲を定期的に更新する業務などが該当する。これらは原価に一定の利益を上乗せする契約形態で、作業量に応じて売上が増減するため、コストも人件費や走行計測などの変動費が中心である。
一方で、ライセンス型は既に整備済みの地図データやシステムを継続的に提供することで得られる収益であり、ストック型に近い特徴を持つ。オートモーティブ領域では、量販車にHDマップが搭載される際、販売台数に応じて自動車メーカーから地図の利用料を受け取る。また、法人向けに整備済みデータを提供する際のライセンスフィーや、開発で地図を利用するための利用料も含まれる。3Dデータビジネスでは、ViewerやGuidanceなどのサービス利用料、企業が地図データを閲覧・活用するための契約料がライセンス収入の中心である。これらは販売量により売上は変動するものの、コストはデータ更新やシステム運用といった固定費が大半であり、規模の経済が働きやすい構造を持つ。
2026年3月期中間期の収益モデル別売上構成比は、プロジェクト型が61.4%、ライセンス型が38.5%であり、ライセンス型は前年同期比15.2ポイント上昇した。プロジェクト型は自動運転やADAS向けの高精度3次元地図データ(HDマップ)の構築や更新など整備案件が中心で、顧客企業の開発計画に応じて収益が変動しやすい。一方で、ライセンス型は整備済みのHDマップや3Dデータを複数の用途・顧客に横展開するモデルであり、データ更新料やサブスクリプション収益が積み上がるため、収益の安定性が高い。同社はプロジェクト型によって高精度かつ広域の地図資産を継続的に拡充し、ライセンス型でその資産を自動運転・物流・インフラ管理などへ多面的に活用することで、持続的な成長と収益性の向上が両立する収益構造を確立しつつある。
4. 競合環境
同社の競合環境は世界的に見ても特殊な構造を持つ。まず国内市場では事実上同社が唯一のプレイヤーであり、HDマップを商用レベルで提供することができる企業はほかにない。2020年ころまでは国内外合わせて20社前後が類似した技術開発に取り組んでいたが、その多くは自動車メーカーから採用を得られず、倒産や買収により市場から撤退した。自動運転向けの地図は精度や更新頻度に対する要求が高く、量産車メーカーが安心して採用できるレベルに到達できた企業がなかったことが背景にある。生き残った会社のうちの1社が、北米でHDマップの開発・整備・販売を行っていたUshr Inc.である。同社は2019年にUshrを買収し、北米市場における事業基盤を獲得するとともに、技術連携やデータ統合によってサービスの強化を図った。この結果、日本・北米市場においては、同社が一強状態を確立した。かつて参入が噂されたGoogle LCCについても、現時点では自動運転向けHDマップで顕著な動きは見られず、実質的な競争相手にはならない。
欧州系では、オランダのHERE Technologies(Here Maps B.V.)、TomTom N.V.の2社がHDマップの提供で一定の存在感を持つ。特に欧州系自動車メーカー向けでは両社が優位だ。いずれも長年カーナビ地図を手掛けてきた企業であり、既存の顧客ネットワークを生かして自動運転領域に展開している。ただし、地図の詳細度や更新サイクルの面では、依然として同社のレベルに達しているとは言い難い。提供範囲も地域や機能によって限定的である。
こうした競合環境のなかで同社が持つ最大の競争優位性は、圧倒的なデータ量と品質である。同社は専用計測車両を用いて道路を走行し、レーザーやカメラ、衛星測位を組み合わせて路面・標識・構造物などの位置を細かく記録する。このデータが膨大であり、少なく見積もっても他社の5~6倍以上の情報量を持つとされる。加えて、同社は地図更新の仕組みを高度に自動化しており、道路工事や標識変更といった変化を短期間で反映できる点でも優位性を保っている。また、国内自動車メーカーが同社の地図を長年採用してきたことにより、実運用で蓄積されたノウハウも競争障壁を形成している。自動運転の開発では、地図・車載センサー・制御ソフトの3者が連携する必要があり、一度採用された地図を切り替えることには大きな負担が生じる。そのため、既存メーカーとの信頼関係は継続的な競争優位性として機能する。
総じて、前述の欧州系2社を除いて競合がほぼ存在せず、圧倒的なデータ量、高品質な地図更新体制、自動車メーカーとの強固な関係といった要素を背景に、同社はHDマップ市場において確固たるリーダーシップを維持すると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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